Apple TV+が学生を取り込む、Apple Music学生プランなら無料で視聴可能

Apple(アップル)は新ストリーミングサービスApple TV+の11月1日開始を前に、Apple MusicとApple TV+のバンドルサービスを学生向けに提供すると発表した。Apple TV+で最初のヒットになると噂される番組 「Dickinson」のスター、Hailee Steinfeld(ヘイリー・スタインフェルドのInstagramストーリーによると、Apple Musicの学生プラン会員はApple TV+を無料で見ることができる。

この発表は以前に9to5Macが発見していた。

スタインフェルドはファンの間で番組への期待を高めるために行われたInstagram主催のQ&Aで、「Apple Musicの学生会員はApple TV+を無料で利用できる」とバンドルサービスについて話した。

steinfeld announcement「学生メンバーは11月1日金曜日に彼女の番組を無料で見られるだけでなく、同じサブスクリプション契約でニューシングルのAfterlifeを聞くこともできる」と付け加えた。

Apple Musicの学生プランは月額4.99ドル(日本では480円)でApple Musicに登録されている5000万曲の楽曲をはじめ、ローカルラジオ局のライブ放送、アップルがまとめたプレイリスト、その他のオリジナルコンテンツを自由に聴くことができる。

Apple Music – Apple TV+バンドルは以前から準備中であると噂されており、ライバルのSpotifyがHuluと手を組み先手を打ってバンドルサービスを始めるきっかけにもなった。

しかしアップルは9月にこのTVストリーミングサービスを正式発表したとき、アップル製デバイスを新規購入した顧客にApple TV+を1年間無料で提供すると公表して世間を驚かせた

もちろん学生は大人たちのように高価なスマートフォンやタブレットをしょっちゅう買い換えたりしない。つまり「新規購入」の特典を受ける機会は少なく、TVシリーズを見るためには月額4.99ドルを払わなくてはならないいところだった。

ちなみにApple TV+のデビューと共に放映される番組は、公開に先立ち評論家から賛否入り混じった評価を得ている。ジェニファー・アニストン、リース・ウィザースプーン、スティーブ・カレルといったスターを揃えた「The Morning Show」は、「退屈」で「ちっとも面白くない」とまで言われた。しかし、Dickinsonは明るい材料であり、Apple TV+の大ブレーク作品になると言う人までいた。アップルがそうした評判やスタインフェルドの1240万人のInstagramフォロワーを活用して、さらに多くの視聴者を獲得しようとするのは当然の行動だ。

アップルは、Music/TV+バンドルについて、スタインフェルドの発表以上の詳細を公表していない。プレスリリースもApple TVのTwitterアカウントのツイートもない。つまりアップルは、スタインフェルド固有のファンベースという狭いターゲットに向けてニュースを告知したことになる。

これは期間限定のサービスではなく、Apple Music学生プランに無条件で付加される特典のようだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルの2019年7〜9月決算は約7兆円の売上、ウェアラブルとサービス部門が好調

Apple(アップル)はiPhoneが依然として売上の半分以上を占めるが、ほかの部門が順調になるにつれて徐々にその重要性は縮小している。

同社のQ4(2019年7〜9月期)の決算報告のあとの時間外で、アップルの株価はほとんど変わっていない。同社の1株あたり利益は、ウォール街の予測2.84ドルに対して3.03ドル、売上は629億9000万ドル(約6兆8500億円)の予測に対し640億ドル(約6兆9600億円)だった。

ビッグニュースの続きは、サービス部門とiPad、そしてウェアラブルが大きく伸びたことだ。iPhoneとMacの売上は縮小が続いている。

ご存知のようにアップルはもはや、iPhoneとMacとiPadの売上台数を公表していない。それは、台数の減少と単価の上昇を反映しているようだ。サービス、ウェアラブル、その他、そしてiPadは前年同期比で伸びたが、iPhoneとMacは売上のスランプが続いている。

  • iPhoneの売上は前年同期比で9%減少し333億6000万ドルに
  • サービス部門は18%増加して125億ドルに
  • Macの売上は5%ダウンして69億9000万ドルに
  • ウェアラブル、ホーム、アクセサリーは54%アップして65億2000万ドル
  • iPadの売上は17%の増で46億6000万ドル

同社は成長率の高い事業を増やし続けている。同社は米国時間10月30日、AirPodsのハイエンド機を発表したが、これはウェアラブル部門の平均売上単価を底上げするだろう。また、近くローンチするApple TV+も含め、同社は有料サービスが多くなっている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

43億円超を調達してHadoopから大ピボットを敢行したDatameerに投資家たちが期待

Datameerは、オープンソースのHadoop(ハドゥープ)プロジェクトに乗っかってデータ準備サービスを提供するスタートアップとして誕生したが、このほど4000万ドル(約43億5200億円)の投資を発表してHadoopからの大ピボットを敢行した。ただしこれまでと同じくビッグデータの仕事をしていくことには変わりない。

この投資は、同社の従来からの投資家であるST Telemediaがリードした。ほかにも既存の投資家Redpoint VenturesやKleiner Perkins、Nextworld Capital、Citi Ventures、およびTop Tier Capital Partnersらがこのラウンドに参加した。Crunchbaseのデータによると、同社の調達総額はこれで1億4000万ドル(152億3100万円)近くになる。

CEOのChristian Rodatus(クリスチャン・ロダトゥス)氏によると、同社の最初のミッションはHadoopをデータサイエンティストやビジネスアナリスト、それにエンジニアなどの人々にとって容易に利用できるようにすることだった。しかし昨年は、最大のHadoopベンダーである3社、ClouderaとHortonworksとMapRを不運が見舞った。その結果ClouderaとHortonworksは合併し、そしてMapRはHPEに安値で売られた

2年近く前に誕生したDatameerはこの状況を見て、自分も変わるべき潮時だと悟った。そこでまず、2つの新しいプロダクトの開発を始めた。これまでの顧客を失いたくはないので、同社のHadoopプロダクトの改造に着手し、それを今ではDatameer Xと呼んでいる。それは現代的なクラウドネィティブのプロダクトで、人気の高いオープンソースのコンテナオーケストレーションツールであるKubernetesの上で動く。HadoopではなくApache Sparkを使う。このピボットの3分の2は完了しており、すでに顧客の手に渡っている。

同社は、まったく新しいSaaSツールであるNeeboも発表した。これはデータサイエンティストに、どこから得たデータであっても処理できる能力を与える。ロダトゥス氏によると、これからはますます雑多なデータを相手にしなければならない。普通のデータもあれば、データアナリストやデータサイエンティストがPythonで書いたコードもある。SaaSのベンダーのダッシュボードにもデータがある。Neeboはこれらすべてをマネージドサービスの中でまとめて、データサイエンティストがインサイトを得られるようにする。TableauやLookerのようなデータ視覚化ツールも使える。数週間以内に一般公開できる予定だ。

このピボットをやり終えるためにも、今度の資金は重要だ。技術者を増員して工程を継続し、マーケティングと営業を充実して新製品を売っていきたい。楽にできるピボットというものはないけれども、でも投資家たちは同社が既存の顧客をベースに成長できる、と期待している。それに一般的にも、データサイエンスのためのツールにはこれからますますニーズがあるはずだ。同社の今後を見守りたい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ストリーミングラジオのSiriusXMがGoogle Nestデバイスでの音声操作をサポート

衛星ラジオファンに朗報だ。ストリーミングラジオのSiriusXMにおける、Google HomeデバイスやNest Miniスピーカーからのコントロールが改善された。SiriusXMにGoogleアシスタントのサポートがついに追加され、「ヘイグーグル、90s on 9を再生して」などといえば、音楽が流れる。

SiriusXMは、技術的には以前からこれらのスマートスピーカーと互換性があったが、再生するにはモバイルアプリを操作し、Chromecast経由で希望のラジオ局を指定する必要があった。今回のアップデートにより音声コマンドだけで再生できる。

Google(グーグル)によると、SiriusXMの機能は今週から順次ロールアウトされる。まずは米国とカナダで展開され、最初は英語、後にカナダでのフランス語がサポートされる。

もちろん、この機能の利用にはSiriusXMの購読が必要だ。Googleによると、Nestのすべてのスマートスピーカーとディスプレイには、SiriusXMの3カ月の利用権利が付属するという。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

市場調査プラットフォームMilieu Insightが約2.6億円を調達、東南アジアでサービス拡大

シンガポールに拠点を置く市場調査およびデータプラットフォームのMilieu Insight(ミリューインサイト)は10月29日、プレシリーズAラウンドでの240万ドル(約2億6000万円)調達を発表した。

MassMutual Ventures Southeast Asiaがリードした。資金は、プロダクト開発とマレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムのサービス立ち上げに使われる。同社のプラットフォームであるMilieu Surveysはすでにシンガポールとタイで利用可能で、契約締結済みのクライアント数は45を超えた。

2018年11月に発表したシードラウンドを含め、同社の調達総額は315万ドル(約3億4000万円)となった。GfKやYouGovなどのグローバル調査会社で働いていたCEOのGerald Ang(ジェラルド・アン)氏が2016年12月に創業した。中小企業でも使える市場調査やデータ分析ソリューションの提供を目指す。消費者セグメンテーションツールであるMilieu Portraitsは、消費者が好む製品、メディア、ブランドなどに関する分析ができる。MillieuStudiesは企業が独自のスタディを作成できるツールだ。

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COOのStephen Tracy(スティーブン・トレーシー)氏はTechCrunchにメールで「Milieu Insightが新しい進出先として東南アジア4カ国を選んだのは、消費者動向リサーチの需要が高く、市場も急速に成長しているからだ」と述べた。同社は、東南アジアの多くの国々におけるスマートフォンの急速な普及を踏まえ、モバイルデータに特化している。

「東南アジア全体への進出で楽しみな点は、これまでのテクノロジーとオートメーションへの投資のおかげで、かなり手ごろな価格で市場調査ソリューションを提供できることだ。例えば、リサーチスタディはわずか 350ドル(約3万8000円)で利用できる。我々のプラットフォームによって、これまでは金銭的に余裕がなかった慈善団体、非営利団体、学術機関、スタートアップなどもリサーチに支出を振り向けることができる」とトレーシー氏は説明した。

Milieu Insightの競争相手には、Milieu Studiesに関してはKantarやYouGov、Millieu PortraitsについてはGlobal Web Indexなどの従来の調査会社がある。トレイシー氏は、Milieu Insightの競争力はエンドツーエンドのソリューションにあると言う。「我々のプラットフォームはオーディエンス(消費者パネル)とSaaSサービスをつなぐ。企業はSaaSサービスから消費者プロファイリングデータにいつでもアクセスし、オーダーメイドの消費者調査を始め、結果を数時間で得ることができる。しかもセルフサービスで。これらすべてを単一のプラットフォームで提供できる会社は他にない」。

MassMutual VenturesのマネージングディレクターであるAnvesh Ramineni(アンベシュ・ラミネニ)氏はプレスリリースで「Milieuの優秀なチームがワールドクラスのプロダクトを開発し、本日のモバイルファーストの環境で、市場調査サービスを手頃な価格で利用することを可能にした。Milieuの今回のラウンドをリードできたことをうれしく思う。東南アジア地域全体に拡大する同社をサポートできることを楽しみにしている」と語った。

画像クレジット:Milieu Insight

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(翻訳:Mizoguchi)

オンデマンド貨物運送を斡旋するUber Freightがカナダに進出

Uberのサービスであるトラック運転手と運送会社を斡旋するUber Freightは米国時間10月30日、グローバル展開の一環としてカナダでアプリを立ち上げると発表した。

この進出によりUber Freightは、680億ドル(約7兆4000億円)とされるカナダのトラック産業に参入することになる。「同国のトラック産業は深刻なドライバー不足に直面していて、これにより輸送量が制限されている」とUberは指摘した。今回のカナダ進出は9月に発表された欧州への事業拡大に続くものだ。

2017年5月に立ち上げられ、テキサスの限定された地域で始まったUber Freightのオペレーションは全米に拡大し、欧州、そして今やカナダにも広がった。

「開始以来、我々はUber Freightと運送会社、世界を動かし続けているドライバーにとってのチャンスを可能なものにするためにオペレーションの拡大に専心してきた」とUber Freightを率いるLior Ron(リオル・ロン)氏は話した。

同社のプラットフォームは、運送業界の効率アップと荷物を載せないで北米を走行するトラックを減らすのに貢献するとしている。同社によると、米国とカナダを拠点とするローカルの運送会社とドライバーはUber Freightのアプリを使って国内貨物と国境をまたぐ貨物の運送を予約したり、請け負ったりできる。アプリはいま英語とフランス語で提供されている。

Uber Freightは、オンタリオ州とケベック州、そして米国の中西部と北東部につながる国境のあたりにフォーカスしている。そしてカナダ国内の他のエリアにも拡大する計画だ。AB Inbev、Niagara Bottling、Land O’Lakesといった企業を含む1000社超にサービスを提供している。

今年初め、Uber Freightはシカゴに本拠地を構えた。これは親会社がこの地域に年2億ドル(約217億円)超を投資するという大規模計画の一部だ。この投資には数百人の雇用も含まれる。当時、Uberは今後3年で同地域で2000人を新規雇用する、と話していた。この新規雇用の大半はUber Freightでのものとなる。

サンフランシスコとアムステルダムにもオフィスを持つUber Freightは、荷物の配送を含むあらゆる交通輸送で売上をあげるというUberの大きな事業戦略において、重要な一端を担うようになっている。Uberは、Uber Freightが独立事業会社としてスピンアウトした2018年8月以来、トラックプラットフォームにかなりのリソースをつぎ込んできた。それからというもの、同社はオペレーションを拡大したり、アプリを再設計したりしている。アプリの再設計には、新しいナビゲーション機能やアップデートされたマップビュー、スクリーントップにある検索バーなどが含まれる。

画像クレジット:Uber Freight

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(翻訳:Mizoguchi)

小さな農家のための農産物マーケットプレイス運営のWeFarmが14億円を調達

FacebookやInkedInなどの巨大ネットワークは、ソーシャルメディアの世界で強大な引力を発揮している。膨大な数のオーディエンスによってそのプラットフォームは、広告や情報を求める人たちにとって、非常に多くの人たちにリーチできる重要な場所だ。しかし、そうした成長と並行して、狭い特定の分野に特化したプラットフォームやネットワークの役割も消えてはいない。

米国時間10月29日、あらゆるコミュニティーの農家に焦点を当てた、そんなネットワークが成長を促進させる投資ラウンドを獲得した。

小規模農家(つまり大手農業ビジュネスに管理されていない農家)のためのマーケットプレイスとネットワークサイトWeFarm(ウィファーム)は、シリーズAの投資ラウンドとして1300万ドル(約14億円)を獲得した。より多くのユーザー(つまり農家)を増やし、農家の要求に応えるサービスを充実させるためにこの資金は使われる。

今回の投資により、WeFarmが調達した資金の総額は2000万ドル(約21億8000万円)となった。このラウンドは、True Ventures(トゥルー・ベンチャーズ)主導のもと、AgFunder(アグファンダー)、June Fund(ジューンファンド)、前回の投資会社であるLocalGlobe(ローカルグローブ)、ADV、 Norrsken Foundation(ノースケン・ファンデーション)その他が出資している。

WeFarmには、現在、190万人の登録ユーザーがおり、マーケットプレイスの提供を開始したところだ。農家と、種子や肥料などの農業資材や農具を扱う業者とを結びつけるもので、最初の8カ月間の運営で100万ドル(約1億800万円)を売り上げた。そこにビジネスの場があるという証だ。同社は、この成長は実際「AmazonやeBayのアリーステージよりも早い」と話していた。

WeFarmは英国ロンドンに本社があるが、同国以外のヨーロッパにもユーザーがいる。創設者でCEOのKenny Ewan(ケニー・ユワン)氏がインタビューで話したところによると、発展途上国の経済圏でさらに多くの堅調な活動や成長が見られるという。そこでは小規模農家が大半を占めているものの、農業従事者は近代的なデジタルサービスの恩恵をほとんど受けられずにいる。

「私たちは、世界の小規模農家のエコシステムを構築しています」とユワン氏。彼によると、世界にはおよそ5億箇所の小規模農地があり、そこで10億あまりの人が働いているという。広さは通常1.5から2ヘクタールほどで、米、コーヒー、畜牛、野菜といった主要商品作物を生産している。「おそらくこれは、グローバルサプライチェーンの75〜80%を占める地球最大の産業です。しかし、まだ誰も彼らのためのものを作っていません。さまざまなレベルでそれは重要な意味を持ちます」

一方、WeFarmが提供するサービスは二重構造になっている。無料で参加できるネットワークは、まずは相談所として機能する。他の農家と同じコミュニティーに暮らしながら、孤立しているような人たちが、農業や小規模農地に関する問題について、互いに質問したり助言を得たりできる。Facebookというより、Stack Exchangeといった感じだ。

それが、WeFarmの2つめの乗り物、つまりマーケットプレイスを自然に成長させる。ユワン氏は、始めは地元の商品供給業者と手を組み(そして重要なこととして業者を審査し)、農家との間を取り持ち、農家が必要とする資材やサービスの広範なエコシステムを築いてきたと話していた。

長期的には、その目的は、小規模農家が資材の交換を行ったり、作物を販売したりできる場所の提供に広がっていく。

販売資材への橋渡しに加え、WeFarmはそれを支える電子商取引の管理も手伝っている。例えば、アフリカなどの地域では、モバイルウォレットが事実上の銀行口座とクレジットカードの代役を果たしているため、SMSで支払いができることがとても重要になるのだ。

「私たちのユーザーの90%にとって、私たちが唯一の利用可能なデジタルサービスになっています。そのため、彼らの信頼に完全に応えることが重要なのです」とユワンは言う。「これは、地球最大の産業の信頼のネットワークであり、私たちはそれを確実に機能させなければなりません」。

True Venturesなどの投資家にとって、これは長期戦になる。金銭的なリターンは道徳的な見返りほど明確ではないかも知れない。

「ケニーとWeFarmのスタッフが世界の農家を力づける姿に、大変に感銘を受けました。その未来に、私たちは大きな可能性を見ています」とTrue Venturesの共同創設者Jon Callaghan(ジョン・キャラハン)氏は声明の中で述べていた。「この会社は、単にインパクトドリブンなだけではありません。WeFarmマーケットプレイスの目覚ましい成長は、食品サプライチェーンを通じて、小規模農家と、あらゆる人に利益をもたらすために彼らが必要とする、より多くのものとを結びつけるという、興奮させられるような商業的好機を実証しています。これはビッグな、地球規模のビジネスです」。

それでも、非常に大きなロングテールであることを考えると、小規模農家コミュニティーの基盤を固め管理ができる企業なら、同じように非常に価値の高いビジネスを手にすることができるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

LINEの2019年第3四半期は約339億円の赤字、コア事業は堅調だがLINE Payはマーケ費用大幅減に

LINEは10月30日、2019年12月を決算とする国際会計基準による9月期と、第3四半期(2019年7〜9月)の決算を発表した。今四半期の営業利益は57億円の赤字だった。

1〜9月までの9カ月の営業利益はマイナス約275億円、最終損益がマイナス約339億円の赤字(前年同期はそれぞれプラス約67億円の黒字、マイナス約60億円の赤字)だった。売上高(売上収益)は前年同期比10%増の約1667億円なので、微増収、激減益となったかたちた。

LINEアカウントをベースしたLINEマンガやLINE MUSICを含むコア事業は堅調で、前年同期比で1.3%増の180億円。LINEマンガの決済高は前年同期比で25.9%の62億円、LINE MUSICは46.0%増の29億円となった。広告事業についても前年同期から13.5%増の300.6億円。

広告事業は、ディスプレイ、アカウント、その他の分かれているが、特にディスプレイ広告の収益前年同期比で42.1%増と大幅に増えている。ディスプレイ広告とは「LINE News」の画面などに表示される広告のことだ。

先行投資の意味合いが強い戦略事業では、ショッピング、グルメ、トラベルの各領域が伸びている。ショッピングとグルメは前年同期比で83.4%増、55.5%増。トラベル領域については前四半期比で1.3%増となっている。決算に最もインパクトを与えたのはやはりLINE Payだ。グローバルの取扱高は、前年同期比で9.9%増の287億円、グローバルのMAU(月間アクティブユーザー)は52.1%増の554万人となった。なおグローバルのMAUについては、前四半期(2019年4〜6月期)の741万人から25.2%減となった。国内MAUも4〜6月期の490万人から286万人と41.6%減となった。7〜9月期は大盤振る舞いの還元キャンペーンを実施しなかったことが要因だろう。

決算資料を見ると、LINEはLINE Payで種まきを一段落させたことがわかる。主に還元キャンペーンの原資となるマーケティング費用は、2019年1〜3月期が41億円、4〜6月期が97億円だったのに比べ、7〜9月期は8億円と大幅に削減している。

理想のCMS開発運用環境としてサーバーレスを目指すWebinyが3700万円超を調達

英国ロンドンでサーバーレスのコンテンツ管理システム(CMS、Content Management System)を開発しているWebinyが、EUの投資企業Episode 1から34万7000ドル(約3700万円)のシード資金を獲得した。

Webinyの創業者であるSven Al Hamad(スベン・アル・ハマド)氏によると、Webinyはサーバーレスの環境用に作られた初めての本格的なCMSだ。「つまりWebinyはゼロからの完全に新規の開発であり、サーバーレスのファンクションの中でのみ動くアーキテクチャだ」と彼は語る。

同社はサーバーレスのウェブ開発ツールのニーズがあることに着目して、その構築を決意したアル・ハマド氏は「一点集中化がウェブ開発の未来だと信じているから、そのコミュニティを支援して思想を広めるために、最初のサーバーレスのコンテンツ管理システムを作り、それをオープンソースにした」と語る。

サーバーレスは、サーバーがないという意味ではない。その意味は、デベロッパーがサーバーなどのインフラストラクチャのリソースには一切配慮しないということだ。インフラの面倒はすべてクラウドのプロバイダーが担当し、何がどこにどれだけ必要かなどを判断して決める。インフラのスケールアップもダウンも自動的に行われる。

同氏が着眼したように、サーバーレスの理想的なユースケースはウェブサイトだ。彼によると、トラフィックが大洪水になるブラックフライデーのeコマースでは、クラウドサービスはニーズに対応してサーバーの容量をどんどん増やし続ける。サーバーレスのアプリケーションなら、デベロッパーから見てそれが完全に自動的に行われる。自分がサーバーを手作業で手配する必要がないし、トラフィックが落ち着いたときのリソースの削減についても同様だ。

サーバーレスの2大アドバンテージは、まず大きなDevOpsチームを確保して仮想マシンの確保などオペレーションサイドの作業をやらなくても済む。そしてデベロッパーはリソースについて悩む必要なく、自分の理想のウェブサイトを作ればいい。

「結果的にデベロッパーは新しいものを大量に速く作れるし、サーバーやネットワークの手配確保構成、ロードバランシングなどを一切やらないので、すべての時間をコンテンツの創造に費やせる」と彼は言う。

目下同社はユーザーのコミュニティづくりに専念しているが、今後は企業ユーザーにコンサルティングやサポートサービスも提供していきたいとのこと。

コンテンツ管理システムは、ウェブサイトを管理する低レベルのソフトウェアだ。有名な製品として、WordPressやDrupalなどがある。アル・ハマド氏によると、彼の企業のアイデアはニーズから生まれた。彼がある企業でウェブのデザインや開発をやっていたとき、既存のCMSに対するフラストレーションが溜まった。そしてデベロッパーが余計なことに時間と精力を取られない理想の開発方式としてサーバーレスに注目し、自分の会社Webinyを作ったのだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Facebookの従業員グループが政治広告の嘘を規制するようザッカーバーグ氏に要求

大統領選挙の政治広告をファクトチェックに送ること、マイクロターゲティングを制限すること、出費できる広告費に上限を設けること、選挙活動禁止期間を監視すること、または少なくともユーザーに警告すること。これらは、Facebook(フェイスブック)の従業員が、政治広告の偽情報に対処するようCEOマーク・ザッカーバーグ氏と会社幹部に宛てた公開嘆願書の中の対処案だ。

この書簡はニューヨーク・タイムズのMike Isaac(マイク・アイザック)氏が入手したもの。それは、「自由な言論と有料の言論は別物だ。政治家や選挙候補者のファクトチェックに関する私たちの現在のポリシーは、Facebookの根幹である精神を危険に晒している」と主張している。数週間前、Facebookの内部協力フォーラムに投稿された。

関連記事:Facebookは選挙キャンペーン広告を禁止し、嘘を止めよ(未訳)

この考え方は、私が10月13日にTechCrunchで公開した、Facebookは政治広告を禁止すべきと訴えたコラムの内容と重なっている。Facebookの政治広告で流される歯止めのない虚報は、政治家とその支持者によって、その主張やライバル候補に関する感情的で不正確な情報が拡散され、さらにそうした広告のための資金集めを助長している。

Facebookは、金持ちの不誠実な人間ほど大金を投じて大声で嘘を拡散できる現状を制限しつつも、各自のFacebook・ページでの自由な発言を許すことは可能だ。私たちは、Facebookがもし政治広告を禁止しなければファクトチェックを行うか、攻撃される恐れのない投票や寄付といった一般的な広告ユニットを使うこと、またはその両方を行うことを提案した。さらに、コミュニティーへのマイクロターゲティングが虚報に対して脆弱であり、簡単に寄付できるリンクはFacebookの広告を、同等のテレビやラジオのスポット広告よりも危険なものにすると批判した。

10月23日水曜日、ワシントンD.C.にて下院金融サービス委員会で証言するFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏(写真:Aurora Samperio/NurPhoto via Getty Images)

3万5000名のFacebook従業員のうち、250名以上が書簡に署名をした。そこではこう明言されている。「私たちは現状のポリシーに強く抗議します。それは人々の声を擁護しておらず、反対に、政治家の投稿は信頼できると信じる人々へのターゲティングにより、政治家が私たちのプラットフォームを兵器化することを許すものです」と。現在のポリシーは、選挙の品位を保つためのFacebookの努力をないがしろにし、虚報を容認し、嘘で利益を得ることを良しとしているというシグナルを発してユーザーを混乱させていると訴えている。

提案された対処策は次のとおり。

  1. 第三者によるファクトチェックを受けない限り政治広告は受け付けない。
  2. 政治広告と政治的でないオーガニック投稿との区別がつくよう視覚デザインを変える。
  3. カスタムオーディエンスの使用を含む政治広告のマイクロターゲティングを制限する。なぜならマイクロターゲティングは、政治家の誠実性を保つとFacebookが主張している世間の厳しい目から、それを隠してしまうため。
  4. 選挙活動禁止期間中の政治広告を監視し、虚報による影響と拡散を制限する。
  5. 政治家または候補者による広告への出費を、彼ら自身とその政治活動委員会を含めた合算で制限する。
  6. ファクトチェックを受けていない政治広告がひと目でわかるようにする。

これらのアプローチを組み合わせることで、Facebookは虚報が拡散される前に、または個々の主張の監視を行う必要性が生じる前に、政治広告を止めるか禁止することができる。

この書簡に対するFacebookの反応は「私たちは今後も政治的言論への検閲を行わない立場を維持し、政治広告にさらに踏み込んだ透明性を持たせるよう検討を進める」というものだった。だが、これは書簡の論点をすり替えている。従業員たちは、Facebookから政治家を追放せよとは言っていないし、彼らの投稿や広告を削除せよとも言っていない。警告の印を付けて、金によるリーチの拡大を制限しようと言っているだけだ。それは検閲には当たらない。

報道機関や、民主党ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員をはじめとする政治家たちからの反発にも関わらず、ザッカーバーグ氏は現在のポリシーを堅持している。議会証言の際にコルテス議員から、具体的にどんな虚報が広告では許されるのかと質問されたザッカーバーグ氏は言葉を詰まらせていた

しかしその後の金曜日、共和党のリンゼー・グラム議員がオカシオ・コルテス議員のグリーン・ニュー・ディール法案に賛成したとする、ファクトチェックの能力を試す目的で出された広告の掲載を取り止めた。グラム議員は実際には反対している。Facebookは、今後は政治活動委員会の広告をファクトチェックにかけるとロイターに話した。

Facebookにできる、政治家の広告のためのひとつの賢明なアプローチとして、ファクトチェックを重ねることがある。大統領選の候補者を手始めとして、より正しく精査できるようにデータを増やすのだ。嘘と判定されたものは、単に嘘を示すラベルを添付するのではなく、コンテンツをブロックする形でインタースティシャル警告を表示する。これは、一般向けにあまり目立ちすぎない、州ごとのターゲティングのみを許可する、政治広告の大きな断り書きと組み合わせて使うことができる。

広告料金の出費制限と選挙活動禁止期間の決定は、少し複雑だ。低く制限すれば、選挙活動の公平さを保つことができ、活動禁止期間を広げれば、とくに投票期間中は、有権者の投票を妨害するボーター・サプレッションを防止できる。おそらくこれらの制限は、Facebookが開設を予定し、モデレーションとポリシーの最高裁判所となる監督委員会に委ねられることになるだろう。

ザッカーバーグ氏の主張の核心には、時が経てば歴史は検閲ではなく言論に傾く、という考えがある。しかしそれは、テクノロジーは正直者にも不正直者にも平等に恩恵を与えるという前提に基づく理想郷的な詭弁に屈している。現実には、分別のある真実よりも煽動的な虚報のほうが、ずっと遠くまで、ずっと早く到達する。無数のバラエティーに富むマイクロターゲティング広告は、嘘つきを罰するように作られた民主的な仕掛けを無力化し威圧する。その一方で、盲信的な支持者の報道機関が正直者を非難し続ける。

ザッカーバーグ氏は、Facebookが真実の警察になることを避けたがっている。だが、もし彼が、その正しいと信じる思想信条から一歩退いてくれたなら、私たちやFacebookの従業員たちが提案するように、虚報を制限するための進歩的なアプローチの可能性が開かれる。

Facebook従業員が会社幹部に宛てた、政治広告に関する書簡の全文をここに掲載する。ニューヨーク・タイムズより転載。

私たちは、ここで働くことに誇りを持っています。

Facebookは、思いを発言する人々の味方です。討論し、異なる意見を交換し、考えを表現する場所を作ることにより、私たちのアプリやテクノロジーは世界中の人々にとって有意義なものとなります。

このような表現を可能にする場所で働けることを私たちは誇りに思うと同時に、社会の変化に伴い進化することが必然であると信じています。クリス・コックスもこう言っています。「ソーシャルメディアの効果は中立ではなく、その歴史はまだ刻まれていないことを、私たちは自覚している」

ここは私たちの会社です。

私たちは、この会社のリーダーであるあなたたちに訴えます。なぜなら今の路線が、我らがプロダクトチームが、この2年間、品位の保全のために達成した大いなる前進を無に帰するものであることを憂慮しているからです。私たちがここで働く理由は、それを重視しているからであり、ほんの些細な選択も、恐ろしいほどのスケールで社会に影響を及ぼすからです。手遅れになる前に、私たちはこの懸念を表明したいと思います。

自由な言論と、有料の言論とは別物です。

虚報は、すべての人たちに影響を与えます。政治家や政界を目指す人たちを対象にした私たちのファクトチェックのポリシーは、Facebookの根幹を脅かします。私たちは、現状のポリシーに強く抗議します。それは人々の声を擁護しておらず、反対に、政治家の投稿は信頼できると信じる人々へのターゲティングにより、政治家が私たちのプラットフォームを兵器化することを許すものです。

現在の状態で、広告料を受け取り市民向けの虚報をプラットフォームで公開すれば、以下の事態が予想されます。

広告料を支払ったコンテンツと類似のオーガニックコンテンツを、または第三者のファクトチェックを受けたものと受けていないものを、同列に表示することを許せば、プラットフォームへの不信感が増加します。さらにそれは、権力の座にある人、または権力の座に着こうとしている人による故意の虚偽報道キャンペーンから利益を得ることを私たちが是認しているとのメッセージを発することになります。

品位ある製品開発が無駄になります。現在、品位の保全を担当する数々のチームは、より文脈に即した形でのコンテンツの提示、違反コンテンツの降格といったさまざまな課題に懸命に対処しています。Election 2020 Lockdown(2020年大統領選挙ロックダウン)に関して、品位保全担当チームは、支持と不支持の難しい選択を行ったところです。ところが今のポリシーは、プラットフォームの信頼性を低下させ、彼らの努力を無に帰するものです。2020ロックダウンの後も、このポリシーには、今後世界で実施される選挙に危害を与え続けることになります。

改善案

私たちの目標は、従業員の多くが今のポリシーに納得していないことをリーダーたちに知ってもらうことにあります。
私たちは、私たちのビジネスと、私たちの製品を利用される人々の両方を守るための、よりよい解決策をリーダーのみなさんと共に作り上げることを望んでいます。この作業には、微妙な見解の違いがあることは承知していますが、政治広告を完全に排除しない方向で私たちにできることは数多くあります。

以下に示す提案は、すべて広告関連のコンテンツに関するものであり、オーガニックコンテンツは対象としません。

1. 政治広告に、他の広告と同じ基準を適用する。

a. 政治広告でシェアされる虚報には、私たちの社会に並外れた不利益をもたらす衝撃力があります。他の広告に義務付けられている基準に準拠しない政治広告からは、料金を受け取るべきではありません。

2. 政治広告には明確な視覚デザインを施す。

a. 政治広告とオーガニックな投稿との見分けに人々は苦労しています。政治広告には、はっきりそれとわかるデザインを施し、人々が簡単に話の流れを把握できるようにすべきです。

3. 政治広告のターゲティングを制限する。

a. 現在、政治家や政治キャンペーンは、カスタムオーディエンスなど、私たちの高度な広告ターゲティングツールが利用できます。政治広告の広告主の間では、有権者名簿(有権者に接触できるよう公開されています)をアップロードし、行動トラッキングツール(Facebook・ピクセルなど)や広告エンゲージメントを使って宣伝効果を高めるのが一般的です。これを許可することで生じるリスクは、有権者が、私たちが称するところの政治的発言に伴う“世間の監視”に参加しにくくなることです。こうした広告は、マイクロターゲティングされていることが多いため、私たちのプラットフォームでの会話は、他のプラットフォームでのものに比べて、ずっと閉鎖的なものになります。現在、私たちは、住宅、教育、クレジットのバーティカルマーケティングでは、差別問題の過去があるためにターゲティングを制限しています。同様の制限を政治広告にも広げるべきです。

4. 政治活動禁止期間中の監視を広げる。

a. 各地方の法令や規制に従い、選挙活動禁止期間中の監視を行います。世界中のあらゆる選挙における自主的な活動禁止期間を調査し、誠実な良き市民として行動します。

5. 個々の政治家ごとに、資金源に関係なく、出費制限を設ける。

a. 政治広告を掲載する利点として、発言を広く伝えられることがあると、Facebookは主張してきました。しかし、高明な政治家は大金を注ぎ込み大きな声で主張を行い、ライバル候補の声をかき消してしまいます。この問題を解決するには、選挙活動委員会と政治家の両方が広告を出す際には、個々の広告主ではなく、両者の広告費を合算して上限を設けます。

6. 政治広告のポリシーを明確にする。

a. もしFacebookが政治広告のポリシーを変更しないならば、政治広告の表示方法を更新する必要があります。消費者と広告主にとって、政治広告が、他の広告に適用されるファクトチェックを免除されていることは、すぐにはわかりません。私たちの虚報に関する広告ポリシーでは、元の政治コンテンツや広告には適用されないことは、誰にでも簡単に理解できるようにしなければなりません。とくに、政治的な虚報は、他のタイプの虚報に比べて破壊力が大きいためです。

そのため、政治セクションは“禁止コンテンツ”(絶対に掲載不可)から外し、“制限コンテンツ”(制限下で掲載可能)に移すべきです。

私たちは、実際の変化を確かめられるよう、オープンなダイアログでこれを議論したいと思っています。

私たちは、品位保全の担当チームの仕事に誇りを持っています。今後数カ月間、私たちはこの議論を続け、共に解決策に向けて協力できることを願っています。

今でもここは私たちの会社です。

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(翻訳:金井哲夫)

グーグルの検索結果からFlashを使っているサイトが消える

Flash(フラッシュ)の死が言われるようになってから長い年月が経つ。今でもまだそれは生きている。もう存在しないという説もあるが、最近の1カ月で迷子のようなFlashビデオやウィジェットをまったく見なかった人はいないだろう。その終わりを早めたいGoogle(グーグル)はこのたび、当然のような手段に出た。それは「ないふりをする」ことだ。

Googleは年内に、Flashを使っているコンテンツを検索結果に出すのを止めることを明らかにした。まともなサイト管理者なら誰もがそれを使わなくなってから何年も経つのに、今さらなんでそんなことをするのだろうと思うかもしれない。その答えは「昔のコンテンツがまだたくさん健在だから」だ。おそらくGoogleはウェブのロングテールに、その長い尻尾を巻き上げる機会を与えたいのだ。

Flashが検索に表示されなくなると、Flashを使っているサイトは完全に無視される。Flashを使っている店舗やビデオ、ゲームなどはすべて、Googleのクローラーがスキップする。それでも頑張ってFlashを使ってるサイトは、検索結果で下位に表示されるだろう。

関連記事:Adobe、2020年末でFlashのサポートを終了と発表

とはいえ、Flashを使っているサイトは最近少ないから何も気づかない人が多いかもしれない。それにメジャーなブラウザーはすべてデフォルトでFlashをブロックする。Flash本家のAdobeでさえ、見限った。

本当に良質なゲームがFlashを使っていて、どうしてもそれをプレイしたければ、それらを直接検索すればいい。そんなゲームを集めているようなサイトは、Googleの検索でも目立つように努力しているからだ。例えば「cool old flash games」(クールな昔のFlashゲーム)などで検索すれば上位に出てくるだろう。

これでやっとFlashも終わりか?そんなことはないだろうけど、今や生きてるとは言えない。でもFlashの墓の画像は、まだあと何度か使われるかもしれない。

画像クレジット: Bryce Durbin

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米アマゾンがプライム会員向けAmazon Fresh使用料を無料に

Amazon(アマゾン)は、Walmart(ウォルマート)やPostmates(ポストメイト)のような配達会社との競争にさらされているサービスをより魅力的なものにしようと、グローサリーの分野、特に配送を再びテコ入れする。米国時間10月29日、米国とその他の国の2000都市で提供している生鮮品配達サービスであるAmazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)のプライム会員向け使用料を無料にすると発表した。これまでは月14.99ドル(約1600円)の料金を課していた。

配送の無料化とともに、Amazonは急いでいる人のために1時間内配達と2時間内配達のオプションも提供する。Amazon自前のブランドサービス、そしてAmazon傘下のWhole Foods(ホール・フーズ)の買い物配達でもこのオプション配達サービスは引き続き利用でき、こちらも無料となる。このサービスを利用してみたいと考えているプライム会員はここでサインアップして、招待されるのを待つ必要がある(ウェイトリストについてAmazonは「グローサリー配達の急成長を考えたとき、人気のあるサービスになることが予想されるため」と説明した)。

「プライム会員はAmazonでの無料グローサリー配達という利便性が大好きだ。だからこそ我々はプライム会員向けに月14.99ドルの料金を廃止して、Amazon Freshを無料で利用できるようにした」とグローサリー配達VPのStephenie Landry(ステファニー・ランドリー)氏は声明文で述べた。「グローサリー配達はAmazonにおいて最も急速に成長しているビジネスの1つで、プライム会員特典で最もメリットを感じてもらえるものになると考えている」。

Amazon Freshの無料化は、Amazonがグローサリーサービスの利用を促進するための最新の価格戦術だ。と同時に、これは一般消費者をプライム会員に誘うものでもある。14.99ドルの料金は2016年に導入された。これはAmazonがAmazon Freshの顧客に課していた年299ドルの料金から減額されたものだ。それ以前は、年間99ドルの料金に加えてサービスを使用するごとに配送料がかかっていた。

どれくらいの人がAmazon Freshを利用しているのか、そしてこのサービスが現時点で儲かっているのか明らかではない。ただ、アナリストは今年初め、スーパーマーケットチェーンのWhole Foodsを傘下に収めているにもかかわらず、Amazonのグローサリーサービス事業が成長している一方で、その成長は減速していると予測した(加えて、Amazonがサービスをシンプル化し、食品や飲料のコストを減らす方策を模索する動きがあった)。

にもかかわらず、1年ほど前、別のレポートでは米国のグローサリー配送全体の3分の1をAmazonが占めているとされた。

グローサリー配送は扱いにくいビジネスだ。商品が腐敗するため、本や衣類、家電を配達するよりも気をつかう。しかし正しく行えば、継続的な収入につながることが多い。加えて、Amazonは迅速かつ無料の配達で、他のオンラインショッピングを利用したり、実在店舗(Amazonも同様に拡大するかもしれない)に足を運んでいた多くの消費者をひきつけた。

言い換えると、収益をあげていよういまいが、Amazonがグローサリー配送サービスの強化に投資するのは理にかなう。無料で利用できるようにするのはおそらく最大の強化策だ(次段階はキャッシュバックかも?)。

簡単に言うと、同社のスケールメリットアプローチに沿う場合、より多くのユーザーがより多く買い物するようになり、損失を帳消しにするマージンを後に稼ぐことになる。

しかし配送を無料にするという動きは、サービス利用者の数を増やすだけではないAmazonの昔ながらのやり方だ。無料というのは、すでに毎月12.99ドルを払っているか、Amazonプライム会費として年間119ドル払っているかしている人が対象となる。

同社は、オンライングローサリーショッピングと配送を手がける同業他社との絶え間ない競争に直面している。英国では、大手グローサリーチェーンのほぼ全てが直接(あるいはAmazon以外のパートナーを通じて)サービスを提供している。そして米国ではWalmartが先月、年間98ドルで無制限に配送を利用できるサービスの拡大を発表したばかりだ。今日までこのサービスはAmazonよりも安いものだった。PostmatesとDoordashもまたこの分野に風穴を開けようという野心を持っている。

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(翻訳:Mizoguchi)

クラウド営業支援「Senses」運営のマツリカが総額5億円を資金調達

写真右からマツリカ共同代表取締役 黒佐英司氏、飯作供史氏

クラウド営業支援ツール「Senses(センシーズ)」を提供するマツリカは10月30日、DNX Ventures、NTTドコモ、SMBCベンチャーキャピタル、いよぎんキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、9月13日時点で3.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズBラウンドに当たる。同社は今後、協業先や提携先、VCなどから追加調達を実施し、シリーズ全体では総額約5億円を調達して、年内に本ラウンドをクローズする予定だ。

マツリカは2015年4月の設立。マツリカが提供するSensesは、共同代表を務める黒佐英司氏が前職のユーザベース時代の経験を踏まえ、営業の「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」という営業支援ツールだ。

Sensesは、カード形式で直感的に案件管理ができるクラウド型のSFA/CRMシステム。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanなど、メールやカレンダー、名刺管理の外部ツールと連携し、情報を再入力せずに一元管理できる。またAIを活用して、蓄積された情報から営業の成功・失敗事例を解析。営業担当者にいつ・誰に・何を・どのように行動すればよいか、次の行動をサジェストしてくれる機能を持つ点が特徴だ。

利用料金は「Starter(スターター)」プランが月額2.5万円(1ユーザーあたり5000円)から、「Growth(グロース)」プランが月額10万円(1ユーザーあたり1万円)から。ほかに導入支援やデータ解析、セールスコンサルティングなどのサポートメニューを含む運用プランが設定されている。Sensesは2019年10月現在、利用企業数は1300社を超え、利用継続率は98%という。

今回の資金調達は、2016年4月のシードラウンドでの約5000万円の調達、2017年8月のシリーズAラウンドでの約1.3億円の調達に続くもの。マツリカでは、調達資金を機械学習・深層学習による営業行動予測や売上予測などのモジュール強化に充てるとしている。また、出資者であるNTTドコモ、いよぎんキャピタルとパートナーシップ協議を進め、地方展開の強化も図る考えだ。

Googleが新文書を作成する「new」ショートカットをマイクロソフトやSpotifyなどに公開

ちょうど1年前、文書、スライド、表計算など各種Googleドキュメントを簡単に作成できる新しいショートカットがリリースされた。このショートカットの実体はTLD(トップレベルドメイン)であり、検索窓にdoc.newと入力するだけで即座に新しいGoogleドキュメント文書が作れる。スプレッドシートが必要ならsheet.newでいい。

米国時間10月29日、 Googleはこのショートカットをサードパーティに公開したことを発表した。企業や組織は自社サービス用にnewドメインを登録すればアプリ内で「.new」ショートカットを利用できる。一部の企業はすでに登録を完了しており、Microsoftはアプリ内でword.newと入力すると新しいWord文書、Spotifyはplaylist.newで新しいプレイリストを作成できるようになる。

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通常あるサービスで新しい文書を作るにはまずサービスを訪問し、ログインし、メニューを開き、「作成」などのオプションを選択する必要がある。「.new」はこの一連の動作を一挙に実行する。

Google自身の「.new」は極めてスムーズに作動するが、一部のサードパーティのドメンの場合、まだ多少ぎくしゃくする。Googleドキュメントの場合、ユーザーはGoogleにログインしているのが普通なのでショートカットは期待どおりに作動する。

しかしサービスにログインしていない場合はひと手間増えることになる。 Mediumの場合、story.newと入力しても即座に新しいストーリー(ブログ記事)が作成されない。まずMediumにログインする必要がある。 もしメンバーでない場合は「Join Medium」という登録ページが表示されるだろう。この場合、新しいショートカットは新記事作成の手間を大きく省くことにならない。

こうした場合、専用の臨時アカウントを用意してすぐに新しい記事を書き始められるようにしたほうがいい。記事を公開する際にMediumに登録あるいはログインするよう求めたほうがユースケースの体験は向上するはずだ。

一方、Microsoft(マイクロソフト)のword.newはGoogleドキュメントの直接のライバルになるはずだが実はまだ機能していない。Googleでは「一部のショートカットはまだ稼働していない。近々運用が開始される」としている。

現在判明しているショートカットには、eBayのsell.new、Canvaのcanva.newとdesign.new、OpenTableのreservation.new、Cisco WebExのcreationwebex.newと letsmeet.new、Bit.lyのlink.new、 Stripeのinvoice.new、RunKitのNode.js APIでのapi.newとlaunch new、CodaのCoda.new、OVO Soundのmusic.new、GitHubのrepo.newなどがある。

Spotifyにはプレイリストを作るplaylist.newの他にAnchorを開始するpodcast.newを用意している。

こうしたサービスのラインアップをみると、「new」ドメインの登録はほかのトップレベルドメインの登録時ほどのゴールドラッシュ的騒動を起こしてはいないようだ。Spotifyのプレイリストを作る機能やマイクロソフトの(今後作動するようになる)のword.newなどは実用的価値が大いにありそうだが、ユーザーが常時ログインしているのでないサービスの場合はユーザー体験の改善にそれほど寄与しないかもしれない。

一部のnewは単に「取れるものは取っておいた」という程度だ。Drakeの運営するレコードレーベル、Ovo Soundのmusic.newなどがそうだ。面白いことにGoogle自身の音楽ストリーミングサービス、YouTube Musicはまだnewショートカットを取っていない。

Screen Shot 2019 10 29 at 10.31.11 AM

GoogleではHTTPSで安全にアクセス可能なドメインであれば登録の申し込みができるとしている。手続きは .app、.page、.devなどのTLD取得の場合に準じる。来月12月2日からLimited Registration Periodが開始されので2020年1月14日まで登録商標の所有者はその商標によってnewドメインを登録できる。

【Japan編集部追記】作動中のGoogleドキュメント向けnewショートカットは、doc.new、 sheet.new、slide.new、site.new、form.new。複数形などのバリエーションも有効。newドメイン登録規約はこちら

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

Facebookが初のヘルスケアツールを公開

Facebookのヘルスケア事業への新規参入を妨げたと言われるCambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)スキャンダルから1年半、ソーシャルメディアの巨人はPreventive Health(予防衛生)という名前のツールを公開し、ユーザーに定期的な健康チェックを促しサービス提供者と繋ごうとしている。

新サービスの立案者は同社のヘルスケア研究責任者であるFreddy Abnousi(フレディ・アブヌーシ)博士で、かつては匿名の医療データを収集し「ハッシング」という技術を使って2つのデータセットに存在する個人のデータを(CNBCの報道によると研究目的で)マッチングする秘密プロジェクトに関わっていた。

American Cancer Society(米国ガン協会)、American College of Cardiology(米国心臓学会議)、American Heart Association(米国心臓協会)、およびCenters for Disease Control and Prevention(米国疾病予防管理センター)の協力を得て、Facebookはユーザーが一定年齢層の健康を維持するために必要な一連の標準的検査を受けるよう促すデジタル催促状を開発している。

最初に焦点を当てたのは、米国の2大死亡原因である心臓病とガンに加えて、毎年数百万人の米国人が罹病するインフルエンザだ。

「心臓病は世界中の男女の最大の死亡原因であり、多くの場合100%予防が可能だ。人々が毎日アクセスするプラットフォームに予防リマインダーを導入することで、心臓の健康に関する事前行動を起こすためのツールをユーザーに提供できる」とアメリカ心臓学会議のRichar Kovacs(リチャード・コヴァクス)会長が声明で語った。

Preventive Healthツールを利用したい人は、Facebookのモバイルアプリの中で、どの協力企業がユーザーの年齢性別に応じて必要な検診を薦めているかを知ることができる。

このツールを使ってFacebookは検査が完了したことを記録し、将来の検査日程のリマインダーを設定してFacebook上で通知することができる。Facebookは検査を受ける機関の情報も教えてくれる。やらないことはと言えば、Facebookはいかなるテストの結果も収集しないことをユーザーに確約している。

「健康は特に私的なものであり、プライバシーと安全については最初から考慮している。たとえば、Preventive Healthを使ってユーザーは将来の検査のリマインダーを設定し、完了の印をつけることができるが、検査結果には当社も協力医療機関もアクセスできない」と同社が声明で語った。「Preventive Healthの利用に関する個人情報は、医療機関や保険会社と共有こともないので、保険の資格審査などに利用されることはない。

新しい健康ツールの利用者は、インフルエンザ予防注射を接種できる場所を探すためにも利用できる、と同社は言う。「インフルエンザワクチンには病気予防以上の効果がある。入院によるリスクを軽減し、慢性疾患を持つ人の深刻な医療状態を防ぎ、妊娠中や産後の女性を守る」と予防接種と呼吸器疾患国立センターのディレクターであるNancy Messonnier(ナンシー・メッソニエ)博士が声明で語った。「このような新しいツールがあるとユーザーは自分たちのコミニュティーで先陣を切ってインフルエンザと戦うための情報や設備をすぐに利用できるようになる」。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokのByteDanceが2020年第1四半期の香港での株式上場を否定

ByteDance(バイトダンス)は、Financial Times紙による早ければ来年の第1四半期に香港で株式を公開する計画であるとの報道に反応した。「第1四半期に香港で上場する予定の噂には、まったく真実はない」とTikTokを運営する同社の広報担当者は述べた。

同紙の報道によると、2012年に設立され、ソフトバンクを含む投資筋からの支援を受けているByteDanceは、上場の準備に向けて法律事務所K&L Gatesと契約し、最高法務責任者と元米国担当者を直接雇用し、TikTokが米国のユーザーのデータを中国当局に引き渡すことを強制されるという「国家安全保障上のリスク」を招く可能性があるとする米議員の懸念に対処しているという。

ByteDanceがIPOに向けて準備しているという推測は、同社の評価額を世界で最も価値あるスタートアップとなる750億ドル(約8兆2000億円)〜780億ドル(約8兆5000億円)へと押し上げた、30億ドル(約3300億円)の資金調達ラウンドを完了した昨年から始まった。

ByteDanceのアプリには、中国版TikTokに相当するDouyin、ニュースアプリのToutiao、そして同紙によればIPOの準備に向けて販売が計画されていル米国市場向けニュースアグリゲーションアプリのTopBuzzも含まれている。

9月のReuters(ロイター)の報道によれば、ByteDanceが今年上半期に70億ドル(約7600億円)から84億ドル(約9100億円)の収益を上げ、6月に計上したとされている。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

マイクロソフトが勝利しても米国防総省JEDIのサーガは終わらない

米国防総省のJEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)、つまり防衛基盤整備のための共同事業は、米国時間10月25日午後にスリリングな結末を迎えたが、まさにそうなるべくして、土壇場の逆転劇が展開された。本命のAmazon(アマゾン)が契約を逃したことには、大勢が息を飲んだ。当のアマゾンもそうであったに違いない。結局、100億ドル(約1兆900億円)を勝ち取ったのはMicrosoft(マイクロソフト))だった。

この契約は、最初からドラマにあふれていた。その金額もさることながら、長い契約期間1社総取りという性質に加えて政治までも絡んできた。政治の話は忘れられない。つまりはワシントンの話だ。アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾス氏はワシントンポスト紙を所有している。

調達手順全般に対するオラクルの激しい怒りもあった。8月にはトランプ大統領も出てきた。決定が下された2日前の10月23日には国防長官が身を引いた。10月25日夕方に発表された最終決定も含め、なんとも壮大なドラマだった。しかし、まだはっきりしないことがある。はたして、これで決着したのか、それともこの後、二転三転の物語が続くのか。

関連記事:マイクロソフトはアマゾンとの入札競争に勝って国防総省の1兆円相当のクラウドを作る

100億ドルとはどれほどか

マイクロソフト100億ドルの10年契約を手にしたことに腰を抜かす前に、去年、アマゾンがクラウド部門だけで90億ドル(約9800億円)の収益を上げていることを考えてみよう。マイクロソフトは前四半期の総収入を330億ドル(約3兆6000億円)と報告した。クラウド部門での収益は110億ドル(約1兆2000億円)だという。シナジー研究所は、現在のクラウド・インフラ市場は、年間1000億ドル(約10兆9000億円)規模と見積もっている(さらに成長中)。

ここで話題になっている契約は年間100億ドル相当だ。しかも、政府が取引解除事項のひとつを使えば、それだけの価値は得られなくなる。契約が保証しているのは最初の2年間だけだ。その後、3年間の継続オプションが2回あり、最後にそこまで辿り着けた場合だが残りの2年間のオプションがある。

米国防総省は、いつ足元をすくわれるともわからないハイテク業界の変わり身の早さを考慮して、このユニークな契約内容と1社との単独契約により、常にオプションをオープンにしておきたかったと認めている。契約企業が他社に突然潰されてしまうこともあり得るため、10年もの間、ひとつの企業との関係に拘束されることを嫌ったのだ。流れる砂のように急速に変化するテクノロジーの性質を考えれば、その戦略は賢明だと言える。

関連記事:ペンタゴンの100億ドルJEDIクラウド契約を大局的に見てみよう(未訳)

どこに価値があるのか

この取引の価値は契約そのものにはないとするなら、なぜみんなそれほどまで欲しがっていたのかという疑問が湧く。100億ドルのJEDI契約は単なる入り口に過ぎない。国防総省のインフラを近代化できるなら、政府の他の機関の近代化も可能だろうという話になる。そうしてマイクロソフトには、政府のクラウドビジネスというおいしい話への扉が開くのだ。

だが、マイクロソフトがまだおいしいクラウドビジネスにありついていないというわけではない。例えば2016年、マイクロソフトは国防総省全体をWindows10に移行させるための、およそ10億ドルの契約を交わしている。アマゾンも、政府との契約により利益を享受している。あの有名な、CIAのプライベートクラウドを構築する6億ドル(約650億円)の契約だ。

しかし、この契約の注目度の高さを見るに、これには政府からの通常の受注契約とは少し違う雰囲気が常に漂っている。事実、国防総省は「スター・ウォーズ」にちなんだ略称を使って、最初からこのプロジェクトに関心を集めようとしていた。そのため、この契約を勝ち取ることは大変な名誉であり、マイクロソフトは鼻高々だった。それに引き換えアマゾンは、いったい何が悪かったのかと思いに沈んでいる。オラクルなどその他の企業は、この結果をどう捉えているのか知るよしもない。

関連記事:JEDIの期限を目前にしてマイクロソフトは政府向けクラウドサービスを披露(未訳)

地獄は軽蔑されたオラクルのような怒りをもたない

オラクル。JEDIの提案募集の段階を通じて怒りを露わにしてきたオラクルを語らずして、この話は完結しない。提案募集が始まる以前から、同社は調達方法について不満を述べていた。オラクルの共同CEOであるSafra Catz(サフラ・キャッツ)氏は、大統領と夕食をともにし、契約手順は不公正だと訴えた。その後、彼らは米政府説明責任局に苦情を申し立てた。だが、契約手順に問題はないと判断された。

そして彼らは裁判所に訴え出た。だが裁判官は、調達手順が不公正であることと、国防総省に雇われたアマゾンの元従業員が提案依頼書の作成に関わっていたことの両方の訴えを退けた。彼らは、その元従業員が、契約がアマゾン有利になっていることの証拠だと主張した。しかし裁判官はそれに同意せず、彼らの苦情を却下した。

オラクルが決して譲れないのは、マイクロソフトとアマゾンというファイナリストに匹敵するクラウド技術を単純に持たないからという理由だ。クラウド技術で遅れをとっていたり、市場占有率がアマゾンやマイクロソフトの数分の1ということは決してない。問題は手順にあるか、誰かが意図的にオラクルを追い出したとしか考えられない。

関連記事:100億ドルのペンタゴンJEDIクラウド提案依頼に関するオラクルの抗議を政府が否定

マイクロソフトは何を提案したのか

決定に関する政治的な駆け引き(近く報告する)とは別に、豊富な経験と高い技術力を提示したマイクロソフトが選考段階で優位になったのは確実だ。選考理由を知るまでは、なぜ国防総省がマイクロソフトを選んだのかを正確に知ることはできなかった。しかし、今になって少しわかってきた。

まずは、国防総省との間に継続中の契約があったこと。前述のWindows10の契約のほかに、国防総省に「革新的な企業サービス」をもたらすための国防情報局との17億6000万ドル(約1920億円)の5年契約を結んでいる。

そして、軍隊がどこにでも設置できるポータブルなプライベートクラウドスタックAzure Stack(アジュール・スタック)がある。これは、クラウドサーバーでの通信が困難になる恐れのある戦場で、作戦遂行の大きな助けになる。

関連記事:JEDI落札前にも政府のセキュリティー対策で信頼を築き上げるマイクロソフト

これで終わりだなんてあり得ない

これでいいのだろうか?決定は下され、いよいよ動き出すときだ。アマゾンは家に帰って傷を癒す。マイクロソフトは意気揚々で物事は治った。だが実際のところ、ここはまだまだ話の結末などではない。

たとえばアマゾンは、ジェームズ・マティス元国防長官の著書を論拠にできる。マティス氏は大統領から「100億ドルの契約からベゾスを締め出せ」と命じられたという。彼は拒否したと書いているが、この疑惑がある限り、論争は終わらない。

ジェフ・ベゾス氏がワシントンポストを所有していて、大統領がこの新聞社を目の敵にしていることも指摘しておくべきだろう。事実、今週ホワイトハウスはワシントンポストの購読を停止し、他の政府機関もそれに倣うよう奨励した。

さらに、現国防長官のマーク・エスパー氏が10月23日午後に、突然この件には不適格であると担当から身を引いた事件があった。息子がIBMで働いている(クラウドとは関係のないコンサルティング業務)という小さな理由によるものだ。彼は、どんなに些細なことでも利害に関わる疑念を排除したいのだと語っていた。しかし、その時点ではすでにマイクロソフトとアマゾンに候補は絞られていた。IBMはまったく関与していない。

アマゾンが今回の決定に抗議するとしたら、オラクルの場合よりもずっと強固な証拠が必要になるだろう。アマゾンの広報担当者は「その選択肢は捨てずにいる」とだけ話している。

結論として、少なくとも今の段階では決定が下されたということだが、その過程では最初からプロジェクトの設計そのものにおいても論争が絶えなかった。そのため、アマゾンが独自で抗議行動に出たとしても不思議はない。なぜだか、それが自然に思える。

関連記事:ペンタゴンの100億ドル規模のプロジェクトJEDI(ジェダイ)が、クラウド企業たちを悩ます理由

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

ジャーナリストのFacebook Newsへの質問に対するザッカーバーグ氏の回答

Facebook(フェイスブック)のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏がジャーナリストやメディア企業の重役たちを目の前に登壇したときは、明るくおどけた様子すら見せていた。その時点で彼は、このイベントが10月第4週に行ったもののうち「今のところベスト」と説明していたが、報道界が懐疑的である理由を彼はよくわかっていた。

Facebookは、結果としてこの10年間、経済的に困難な状況を報道界に与えてきた主犯格だった。そのため、Facebookを再び信用することなど馬鹿げていると感じる人間は、出版業界には大勢いるTechCrunchの記者であるJosh Constineもその一人だ。

1つには、Facebookのアルゴリズムがどのように異なるタイプのコンテンツを優先させるのか、そしてアルゴリズムを変更することで出版界にどれほど甚大な被害が及ぶのかという疑問だ。

「私たちは、パートナーたちと力を合わせることで、情報の処理方法について、より透明性を高め、より多くの時間をかけて観察できるようになります」とザッカーバーグ氏は話し、続けて「安定性が大きなテーマだと思います」と語った。そこでFacebookは何かを「実験」として試そうとしているようだが、「それが急激な変化をもたらすようなら、みなさんのビジネスに採り入れることは難しくなるでしょう」と言った。

同時にザッカーバーグ氏は、Facebookのアルゴリズムは「私たちの事業の中でも、もっとも理解されにくい部分」だと論じた。具体的には、利用者になるべく長い時間Facebookを見て過ごさせるためだけにフィードを最適化しているという批判が多いことを挙げていた。

「それは真実ではありません」と彼は言った。「もう何年にもなりますが、すべてのフィード担当チームに対して私は【中略】利用時間の最大化を目的としたシステムの最適化を禁じてきました。私たちが実際に行っているのは、有意義な対話ができる限り多くできるよう促すことを目的にしたシステムの最適化です」

関連記事
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例えば「Facebookがアルゴリズムを友人や家族のコンテンツを他のタイプ(ニュースなど)よりも優先させるよう変更したとき、人気の動画が1日あたり実質的に5000万時間ぶん見られなくなった」と彼は言う。その後の収支報告では、Facebookの時価総額は米国市場最大の下げ幅を記録した。

ザッカーバーグ氏は、News Corp(ニューズ・コープ)のCEOであるRobert Thomson(ロバート・トンプソン)氏と共にニューヨークのステージに登場し、Facebook Newsの開始について討論した。ニュースは、Facebookの中に新設されるニュース専門のタブだ。トンプソン氏は、こんな簡単な質問から話を切り出した。「なぜ、こんなに時間がかかったのです?」

ザッカーバーグ氏はこれを受け流し、こう切り返した。「これ以上の褒め言葉はありません。私たちが現実に良いことをしたという意味ですからね」。

さらにザッカーバーグ氏は、Facebookはずっと以前からジャーナリズムに興味を抱いてきたと続けた。「インターネットのプラットフォームはみな、報道を支援するための資金援助や提携の努力をする責任があると思っています」と言うが、当初その努力はニュースフィードに限られていた。それは基礎的なアーキテクチャーであり、ニュースのためのスペースは十分に与えられていない。ほとんどの利用者の最大の関心事は友人や家族の話なので、なおさらだ。

そのためFacebook Newsは、ニュースにふさわしい場所として活躍することになる。ちなみに、メインのニュースフィードにも今までどおりニュースは現れるとFacebookは説明している。ザッカーバーグ氏はまた、いわゆる「エコシステムの混乱」を招いた過去の実験を踏まえ、本格開始前に問題なく運用できるかを確かめるのだと述べていた。

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特に彼はこのタブを、多くの人たちの興味を惹くように、Facebook MarketplaceやFacebook Watchと並べてFacebook内に表示させなければならないと話す。ザッカーバーグ氏は、これらのタブに対する大半のFacebook利用者の関心が低いことも認めている。しかし、そもそもの利用者数が膨大であるため、その数%でも数としては意味がある。

「(Facebook Newsは)おそらく数年内に、2000万から3000万のユーザーを獲得できると思います。それだけでも、十分に価値があります」と彼は言う。

Facebookは、Facebook Newsに参加する一部の出版社に出資もしている。ザッカーバーグ氏はこれを「長期の安定した関係とパートナーシップを多くの出版社と結ぶのは、これが初めて」だと言っている。

出資する出版社をどうやって選んだかに関する詳しい説明を、何人ものジャーナリストが求めていた。ザッカーバーグ氏は、それにはFacebook Newsに幅広いニュースを提供できるかなど、数多くの要素があると答えていた。これまであまりFacebookにニュースを流してこなかった出版社も対象になるという。また、有料サイトに掲載しているニュースを出してもらう場合には、その埋め合わせもしなければならない。

「厳格な決まりはありません。いずれは規則化されるでしょうが、限度を超えることはありません」と彼は話していた。

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ザッカーバーグ氏はさらに、近年、政治広告のファクトチェックに消極的な姿勢が批判されている中で、Facebookがいかにして正確さと品質を保つのかという質問を受けていた。

彼は、政治広告の話は今日の話題ではないと避けつつ「これは種類の異なる問題です」と言い返した。つまり、参加する出版社にFacebookの出版指針を守らせることと、Top Stories(トップストーリー)セクションに表示されるトップニュースの審査を行うジャーナリスト集団を雇うことにより、何を載せて何を載せないかを決める大幅な自由がFacebookにあるのだと彼は論じていた。

「質の高いニュース専用のスペースには、みなが発言権を持ち、意見を交換できるスペースに期待しているものとは別の期待を人々は抱いています」と彼は言う。

Facebookに批判的なニュースを載せるかどうかについては、ザッカーバーグ氏は、ブルームバーグが自社関連のニュースを(ほとんど)扱っていないことを知って喜んでいたようだ。

「そんなことができるとは知らなかった」と彼はジョークを飛ばした。そして真顔に戻ってこう話した。「良い悪いは別として、私たちは数々のニュースの中で大変に目立つ存在になっています。Facebookの活動に関するニュースを排除する行為は、ニュースタブにとって合理的なものとは思えません。将来に向けて信頼を高めてゆくためにはFacebook関連のニュースも客観的に扱うべきです」。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

10年間パブリッシャーをいじめてきたFacebook Newsを信頼してはいけない理由

本当にまた繰り返すのか?動画への方向転換があり、インスタント記事があり、ニュースフィードからニュースが消されることがあり、それでもなおFacebook(フェイスブック)は、新しい媒体をちらつかせ、ジャーナリズムをおびき寄せて檻に閉じ込めようとしている。

米国時間10月26日、FacebookはNews(ニュース)タブ公開した

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すでに、The Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)やBuzzFeed News(バズフィード・ニュース)などを含む約200社のパブリッシャーが参加しており、一部には資金援助が行われている。このプラットフォームの危険性を誰も学んでいないのだろうか。

他人の土地に勝手に家を建てれば、ブルドーザーで潰されても文句は言えない。Facebookがパブリッシャーへの資金援助を突然打ち切った数の輝かしい記録を思えば覚悟すべきだ。

2015年に私が書いた「Facebookはパブリッシャーをゴーストライターに変えて、スマートパイプにくだらないコンテンツを流すのか」という記事をもう一度掲載すれば済む話かもしれない。または、ユーザーにパブリッシャーのサイトを捨てさせてFacebookに取り込み、アルゴリズムで管理されたフィードに依存させることで、Facebookが報道事業を奪ったことに関する2018年の記事でもいい。

Facebookによるパブリッシャーいじめの記録

ちょっと時間を遡って、同社が報道界を翻弄して多くの人たちを傷つけてきた歴史を振り返ってみよう。

2007年、Facebookがニュースを扱うようになる前にもすでに起きている。同社は、無料のバイラル機能を大量に備えた開発者向けプラットフォームを立ち上げ、そこからZynga(ジンガ)などの企業も生まれた。しかしスパムがニュースフィードを蝕むようになるとFacebookはそれを打ち切り、Zyngaも見放した。Facebookがモバイルに移行する5年間で、大量のゲームが破棄されてしまった。Zyngaは完全に立ち直ることはできなかった。

2011年、Facebookは、読んだニュースを自動的に友人にシェアするソーシャルリーダーという種類のアプリで、オープングラフプラットフォームを立ち上げた。ガーディアンやワシントンポストといった新聞社は、競ってこのアプリを作り、バイラルなトラフィックを記録した。しかし2012年、同社はフィード投稿のデザインを変更し、ソーシャルリーダーアプリの存在感が薄れた。そのため読者数が大幅に減少し、多くのパブリッシャーはアプリの運用を取り止めた。Facebookは、そのプラットフォームを大幅に切り捨てた。

丸印は話題の記事の新デザイン移行期

2015年、FacebookはInstant Article(インスタント記事)を立ち上げた。アプリの中で新しいコンテンツをいち早く読み込めるというものだ。しかし、広告・購読のサインアップボックス、再循環モジュールを制限する高圧的なルールのために、パブリッシャーはインスタント記事による恩恵をほとんど受けられなかった。2017年後半、多くのパブリッシャーはこの機能を放棄した。

インスタント記事の使用量の低下(Columbia Journalism Reviewより)

同じく2015年、Facebookは1日の動画再生回数が10億回に達したとして「動画への移行」を論議し始めた。ニュースフィードのアルゴリズムを動画優先に変更したところ、同年内に1日の動画再生回数は80億回に伸び、パブリッシャーの編集部では動画担当者を増やし、記事も文章から動画へと移行させていった。しかし後の訴訟により、Facebookは150〜900%に及ぶ視聴回数の水増しを認識していたことが判明した。2017年末までに、Facebookはバイラルな動画のランクを下げ、1日あたり5000万時間分の視聴(一人あたり2分以上)を削除し、後にパブリッシャーへのライブ動画のための支払いを削減。友だち関連のコンテンツに重点を移したことで、パブリッシャーが提供した大量の動画が破棄された。

2018年、Facebookは、家族や友だちのコンテンツを優先させるために、ニュースフィードでのニュースの表示率を5%から4%に減らすと発表した。Facebookが参照元となる数が急激に低下し、そのぶんをGoogle(グーグル)が獲得してトップのリファラーになった。だが、Facebookからのトラフィックが87%減少したSlate(スレイト)などのニュースサイトは大打撃を受けた。パブリッシャーの中には、見捨てられたと感じるところが少なくなかったのは想像がつく。

Facebookを参照元とするとらスレイトへのトラフィックは、ニュースよりも友だちと家族のコンテンツを優先させるという戦略の変更により87%落ち込んだ

傾向がおわかりだろうか?彼らが守りたいもの、守ろうとしたものに関するデータに従い180度の戦略転換を行い、それが周囲に与える大打撃を、ユーザーを思ってのことだと正当化するのがFacebookの常だ。それによりその他の利害関係者が優先されることになる。

死の情報収集サイト

私はよく、Facebookは、ユーザー、開発者、広告主との奇妙な四角関係にあると思っていた。しかしこのごろは、Facebookがユーザーとの虐待的な愛憎関係にあるように見えてきた。ユーザーの気を引きつつ、プライバシーを抜き取っているからだ。一方で、グーグルとの複占状態のおかげで、数値上の誤りを放置でき、開発者はユーザーが欲しいときや、データ上の大失敗の後に撤退したいときにアクセスやリーチを変更できることから、Facebookは広告業界を独占している。

いくつものしっぺ返しを喰らった挙句、ようやく最近になって、Facebookはいくばくかの愛情を社会に注ぐようになったようだ。だが、ニュースのパブリッシャーはそのいちばん下の階層にある。ニュースは、Facebookの中では大きなコンテンツではないため収益も少なく、ソーシャルネットワークの基礎にある友だちや家族のグラフには属さない。アップルやグーグルと違い、報道機関がFacebookにどんなに強く当たろうとも、すでに悪化している関係がこれ以上悪くなりようもない。

だからと言って、Facebookがニュースを意図的に軽視しているわけではない。FacebookはJournalism Project(ジャーナリズム・プロジェクト)の広報、ニュースリテラシー、ローカルニュースを専門に扱うToday In(トゥデイ・イン)に出資している。また、インスタント記事の失敗が及ぼした被害を埋め合わせしようと、パブリッシャーが有料サイトを立ち上げるのを親身になって手伝ってもいる。Facebookがそれを中心的な存在と考えるなら、スタッフはニュースをよく読むようになるだろう。この部門を支えていけば、醜聞に埋もれる中でもいくらかでも称賛が得られるようにもなる。

だが、Facebookの生き残りの中心になかったものが、その戦略の中心になることは決してない。ニュースでは勘定が合わない。鈍化する成長率を押し上げる主要な力にもなり得ない。Twitterの場合を思い出してほしい。Facebookよりもニュースに力を入れているTwitterだが、時価総額はFacebookの23分の1でしかない。そのため、少なくとも今の時点では、Facebookは報道系パブリッシャーの味方ではないことが明らかだ。

よくても気まぐれで、肝心なときに当てにならない友だちだ。何百万ドルを出資しようとも、確かにジャーナリズムの世界では大金だが、2018年のFacebookの純利益220億ドル(約2兆4000億円)に比べたらいくらでもない。

Facebookがパブリッシャーに提示するものには、すべてに条件が付く。ニュースタブが持続可能にならない限り、永遠に補助金は出ない。ニュースの編集部にとれば、計画や資源の分配が変更されるときは、まったく信用できないFacebookを信用せざるを得なくなる。

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パブリッシャーはどうすればいいのか?オウンドオーディエンスという考え方を、常に倍賭けで疑うことだ。

自分たちのサイトへ直接ユーザーを呼び込む。自前のサイトなら、ユーザーに購読を勧めたり、ニュースレターやポッドキャストを配信したり、ニュースフィードの中で見るほど魅力的ではないにせよ、充実したオリジナルの記事を送れる柔軟性がある。

ユーザーがいる場所でユーザーに会う。だが、彼らを自分たちの世界に連れ戻すことが大切だ。アプリを開発してダウンロードしてもらうか、ユーザーのすべてのデバイスにパブリッシャーのブックマークを付けてもらう。購読、イベント、商品、データ、調査などトラフィック中心の広告を代替収入源にする。多様な意見を持つ優れた才能が離職しないように報酬を増やすか新しく雇う。

盗用されたりリブログに書かれないスクープ、評論、分析、メディアとは何か?それを作る。どのサイトでもトップを飾る記事をいかにして目立たさせるか?そこに未来がある。他人のスマートパイプから拝借したつまらない記事を垂れ流す陳腐なパブリッシャーになってはいけない。

Stratechery(ストラテチェリー)のBen Thompson(ベン・トンプソン)が説いているように、Facebookは、かき集めたコンテンツ提供者から搾取を行うごとに、関心と広告主からの戦利品が増加する情報収集サイトだ。情報収集サイトにとって情報提供者は交換が利く使い捨ての存在だ。パブリッシャーは基本的に、Facebookニュースのゴーストライターとなる。情報収集サイトに依存するということは、自分の運命を奪われるということだ。

たしかに、ニュースタブをブレイクさせるための実験では分配金が発生するだろう。パブリッシャーは、Facebookの提示するものを受け取ることができる。ただし「彼らの事業の根っこを脅かさない限りは」だ。しかし、Facebookの態度を急変させる性質を考慮するに、パブリッシャーは地震の中でボーリングをするようなものかもしれない。

[イラスト:Russell Werges]

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Facebookがニュース専用セクション「Facebook News」を米国で限定公開

公開間近と噂されていたFacebookの新しいニュースセクションが米国時間10月25日についに登場した。同社はFacebook Newsを米国内で限定テスト公開し、Facebookアプリにホーム画面タブとブックマークが追加された。

Facebookのグローバルニュース・パートナーシップ担当副社長であるCampbell Brown氏(キャンベル・ブラウン)とニュース担当プロダクトマネージャーであるMona Sarantakos氏(モナ・サランタコス)はブログ記事で、今後もメインのニュースフィードにニュース記事は表示されると語った。ただし、ジャーナリズムに特化した専用タブを設けることで、「ユーザーが自分の読む記事を制御し、興味のあるニュースをFacebookアプリ内で探せるようにする」と付け加えた。

ブラウン氏とサランタコス氏は新しいニュースタブについて、ニュースパブリッシャーの助言を得て開発するとともに、今年米国で10万人以上のFacebookユーザーを対象に行った調査のフィードバックに基づいていると説明した。

Facebook Newsは、ユーザーが目にする記事を決めるために、人間の編集者とアルゴリズムの両方を使うようであり、これはユーザーや広告主が投稿したコンテンツの監視を躊躇していた会社としては意外な行動だ。中でも、Today’s Storyと名付けられたセクションでは、その日一番の全国ニュースをジャーナリストのチームが選んで取り上げる。

Facebook News

その一方で、Facebookはユーザーの興味と行動に基づいたアルゴリズムによるお勧め記事も提供する。見たくない記事、話題、出版社を指定して非表示にできるほか、ビジネス、エンターテイメント、健康、科学、技術、スポーツなど、扱いが少ないと日頃Facebookユーザーが感じているテーマの記事を見るための専用セクションもある。

「パーソナル化に関して、パブリッシャーは機械学習の限界を心配しており、たしかにそのとおりだ」と両氏は語る。「テクノロジーだけに頼って質の高いニュースを提供できるようになるまでにはまだ努力が必要だ」。

とはいえ、アルゴリズムが「Facebook Newsの大部分を選んでいる」と2人は説明し、そのアルゴリズムが「個人や独立組織を含むデジタル世代の新しいジャーナリズムの形を生み出す」ようになるべく努力を続けていると語った。

そのほか、Facebookアカウントとニュース購読をリンクしているユーザーが購読しているコンテンツを見るためのセクションもある。

Facebook News

どのパブリッシャーが参加するのか?両氏によると、FacebookのNews Page Indexに登録済みでかつ同社のパブリッシャーズ・ガイドライン沿っている必要がある。ガイドラインではニセ情報(第三者のファクトチェッカーが判別)やヘイトスピーチも禁止している。

Facebookは参加出版社のリストは提供していないが、News SectionのスクリーンショットにはThe Wall Street Journal、Time、The Washington Post、BuzzFeed News、Bloomberg、Fox Business、Business Insider、NPRなどの名前が見えた。広報担当者によると、その他に The Pos、BuzzFeed、LA Timesの参加も確認しているという。

Facebookに頼りすぎた結果失敗ニュースメディアも過去にはあったが、Facebookと一緒に仕事をするのをやめるつもりはないようだ。

一部のニュースメディアに対してFacebookが年間数百万ドルを支払っている(Recodeによる)ことも参加の理由になっているかもしれない。Facebook広報担当者は私に、「さまざまなテーマの記事を集めるために、事実に基づくオリジナル記事を安定供給する一部のメディアに対して支払いを始めた」と語った。

BuzzFeed NewのBen Smith(ベン・スミス)編集長はTechCrunch宛てのメールで、BuzzFeedは「喜んで参加する。Facebookはニュースがプラットフォームにもたらす価値を、率先して目に見えるかたちで示している」と語った。

また、Los Angeles Timesのコミュニケーション担当副社長のHillary Manning(ヒラリー・マニング)氏は、「Facebook Newsを通じて新たな人たちとつながることで読者を増やし、デジタル購読者基盤を成長させられると期待している」と(これもメールで)語った。Facebook Newsは米国内の限定されたグループのユーザーに本日から提供される。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook