【コラム】次世代グローバル決済を生み出すAfterpayとSquareの融合

編集部注:本稿の著者Dana Stalder(ダナ・スタルダー)氏は、Matrix Partnersのパートナー。PayPalの元コマーシャルチーフ(製品、販売、マーケティング)で、現在Matrix Partnersでフィンテック投資をリードし、消費者市場やエンタープライズソフトウェアにも投資している。

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フィンテックにとって米国時間8月1日は重要な日となった。AfterPayがSquareと合併することに合意した。この合意により、近年最も高い評価を受けている2つの金融テクノロジー企業が1つの企業になる道を歩み始める。

AfterpayとSquareは、世界で最も重要な支払いネットワークの1つを構築するポテンシャルを有している。Squareは大規模なマーチャント決済ネットワークを確立しており、またCash Appを介して、成長著しい消費者向け決済サービスを提供している。しかし、歴史的にみてこの2つの事業は統合されていない。SquareとAfterpayは、これらすべてのサービスを1つの統合されたエクスペリエンスにまとめることができる。

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AfterpayとCash Appはそれぞれ数千万人の消費者を抱えており、SquareのセラーエコシステムとAfterpayのマーチャントネットワークは、いずれも年間数百億の決済ボリュームを記録している。オフラインレジとオンライン決済フローから、数タップで送金まで、SquareとAfterpayは次世代の経済的エンパワーメントの全容を物語ることになるだろう。

Afterpayの唯一の機関投資家として、私たちがどのようにしてここに至ったのか、そしてこの合併が消費者金融と決済業界の将来にとって何を意味するのかについて、いくつかの視点を共有したいと思う。

フィンテックにおける重大なイノベーション

世界の決済業界は、今後数十年間の勝者と敗者を決定する重大なイノベーションのサイクルを、5年から10年ごとに経験している。最近の大きな変化はNFCベースのモバイル決済へのシフトで、これについては2015年に寄稿しているが、主要なモバイルOSベンダー(VISA、マスターカードなど)はネットワークと消費者のニーズを巧みに橋渡しして、グローバルな決済スタックにおける地位を確固たるものにした。

AfterPayは、最新の決定的なイノベーションサイクルを引き起こした。シドニーのリビングルームでミレニアル世代のNick Molnar(ニック・モルナー)氏が構想したAfterpayには、ミレニアル世代はクレジットが好きではない、という重要な洞察がある。

ミレニアル世代は、2008年の世界的な住宅ローン危機の中で成人となった。彼らは若い頃、友人や家族が住宅ローンを積みすぎて家を失うのを目の当たりにしており、銀行に対する信頼はすでに薄れていた。また学生ローンもかつてない水準に達した。それゆえ、ミレニアル世代(そしてそのすぐ後に続くZ世代)がクレジットカードよりもデビットカードを強く好むのも不思議ではない。

しかし、パラダイムシフトを認識することと、それに対して何かを行うことは別物だ。ニック・モルナー氏とAnthony Eisen(アンソニー・アイゼン)氏は行動を起こし、最終的にそのコアプロダクトで歴史上最も急成長した決済スタートアップの1つを構築した。「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後で支払う)」そして無利息のサービスだ。

Afterpayのプロダクトはシンプルだ。カートに100ドル(約1万1000円)分が入っていて、Afterpayでの支払いを選択した場合、銀行カード(通常はデビットカード)に対して2週間ごとに4回に分けて25ドル(約2730円)が請求される。無利息で、リボルビング債務もなく、適時支払いにかかる手数料もない。ミレニアル世代の消費者にとっては、高い金利やリボルビング債務といったクレジットカードの欠点を気にすることなく、デビットカードを使ってクレジットカードの第1のメリット(後で支払いができること)を享受できることを意味するものとなった。

良い面ばかりで、悪い面はない。誰が抗えるだろうか?ミレニアル世代を主な成長セグメントとしていた初期のマーチャントは、公正な取引を獲得した。Afterpayへの支払い処理にわずかな手数料を支払うだけで、かなり高い平均注文価値(AOV)と購入へのコンバージョンが得られる。これはwin-winの提案であり、多くの実績を得て、新しい決済ネットワークが生まれた。

画像クレジット:Matrix Partners

真似することが最もすばらしいお世辞となる

Afterpayは2016年から2017年にかけてはオーストラリア以外ではあまり知られていなかったが、2018年に米国に進出してビジネスを立ち上げ、2年目にして1億ドル(約110億円)の純収益を上げたことで注目を集めた。

Klarnaは米国でのプロダクト市場の適合性に苦慮していたが、Afterpayを模倣すべく事業を転換した。またAffirmは、従来からのクレジット事業を主な事業としており、売上の大部分を消費者利益から得ていたが、独自のBNPLオファリングに着目して導入した。その後PayPalが「Pay in 4」の提供を開始し、つい数週間前にはAppleがこの分野に参入するというニュースが報じられた。

Afterpayは世界的な現象を生み出し、今では業界のメインストリームプレイヤーに支持されるカテゴリーとなっている。このカテゴリーは今後10年間で世界の小売決済のかなりのシェアを獲得する軌道に乗っている。

Afterpayは、他とは一線を画している。同社は事実上あらゆる指標において常にBNPLのリーダーであるとともに、顧客のニーズに忠実であり続けることで、その地位を確立してきた。同社はミレニアル世代やZ世代の消費者をよく理解している。それはAfterpayユーザーとして人々が体験する、同社の声、トーン、ライフスタイルブランドに顕著に表れており、マーチャントネットワークにおいて戦略的に構築され続けている。それはまた、負債商品を旋回するユーザーに対して、Afterpayはクロスセルを意図していないという単純な事実からも明らかだ。

最も重要な点は、こうした消費者に対する理解の姿勢が、競合他社と比較した使用状況の測定基準に反映されていることにある。これは人々が愛着を持ち、利用し、信頼を寄せるようになったプロダクトであり、かつては得られなかった、伝統的な消費者信用を上回る良質で公正な条件を備えている。

Afterpay2021年度上半期業績発表

SquareとAfterpayの融合は完璧な調和

筆者はこれまで15年以上にわたって決済会社を手がけてきた。初期にはPayPalの黎明期を経験し、より直近ではMatrix Partnersのベンチャー投資家として活動している。しかしこれほどまでに、消費者やマーチャントに並外れた価値をもたらすポテンシャルを秘めた組み合わせは見たことがない。eBayとPayPalよりもはるかに優れている。

明確なプロダクトとネットワークの補完性を超えて、筆者とパートナーにとって最もエキサイティングな点は、価値と文化の整合にある。すべての人に向けられたより多くの機会があり、経済的なハードルが少ない未来のビジョンを、SquareとAfterpayは共有している。彼らがともにその未来に向かって前進する中で、筆者はこの組み合わせが勝者となることを確信している。SquareとAfterpayの融合により、世界の次世代決済プロバイダーが誕生するだろう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:AfterpaySquare合併決済サービスBNPLオーストラリアアメリカミレニアルコラム

画像クレジット:charles taylor / Getty Images

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(文:Dana Stalder、翻訳:Dragonfly)

日本のチャレンジャーバンクを目指すナッジが資金調達、次世代型クレジットカード「Nudge」今夏発行予定

日本のチャレンジャーバンクを目指すナッジが資金調達、次世代型クレジットカード「Nudge」今夏発行予定

日本におけるチャレンジャーバンク(新規に銀行免許を取得し金融サービスを提供する企業)を目指すナッジは8月11日、第三者割当増資による資金調達を行うと発表した。引受先は、共同リード投資家のSpiral CapitalとHeadline Asia、既存投資家のジェネシアベンチャーズなど。2月発表の第三者割当増資と合わせて、累計調達額は10億円超となった。また2021年秋ごろの最終クローズに向けて、国内外の投資家や事業提携先との協議を継続する。

2020年2月設立のナッジは、「ひとりひとりのアクションで、未来の金融体験を創る」をミッションとしており、サービス第1弾となる次世代型クレジットカード「Nudge」の発行を2021年夏開始予定という。これは、Android・iOSアプリから簡単に申し込める、使いすぎ防止機能などを備えた提携カード。提携企業や団体が開設する「クラブ」を選んで、カードを使うごとに好きなチームやアーティストを応援できる「クラブ機能」もある。AIを活用した独自の審査手法により。学生や非正規社員、兼業・副業、フリーランスなどでもカード発行が可能になるとのこと。また、利用金額の返済は月に1度の口座引き落としではなく、好きなタイミングでセブン銀行ATM(全国2万5000台以上)から実施可能。

「新たな価値観と行動様式をもつ金融機関のあり方」を模索しつつ、未来の金融体験を作り上げると語るナッジは、現在、チャレンジャーバンクになるために必要な各種事業者登録の準備を進めている。今回の資金調達には、一般向けサービス開始を見据えた関係者向けのクローズドベータサービスの開始と、体制強化を図る目的がある。また、サービス運用体制、顧客ニーズに合わせた機動的な機能増強、サービス開発、人員採用に継続的に取り組んでゆくという。さらに、社外取締役2名を増員して「金融機関に相応しいガバナンスの強化」も行うとしている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:クレジットカード(用語)チャレンジャーバンク(用語)ナッジ(企業・サービス)FinTech / フィンテック(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

成長が続くフィンテック向けソフトのCanopyも2021年上半期に顧客数が4.5倍に

Canopy Servicing(キャノピー・サービシング)は米国時間8月9日、1500万ドル(約16億5000万円)のシリーズAをクローズしたと発表した。このスタートアップは、フィンテックなどにソフトウェアを販売し、その顧客がローンプログラムを作成したり、その結果得られたプロダクトを提供できるようにしている。

同社は2020年に350万ドル(約3億8500万円)のシードラウンドを実施した。シリーズAはCanaanがリードし、Homebrew、Foundation、BoxGroupなどが参加した。Canopyによると、バリュエーションはシードラウンドからシリーズAにかけて5倍になった。

同社は現在までに1850万ドル(約20億3500万円)を調達している。

この記事のここまでは、新しいスタートアップの資金調達ラウンドを発表する他の記事とよく似ている。そういう記事は、ラウンドそのものや、誰が取引に関わったのかといった一連の情報で始まる。となると、次に来るのは、競合他社や成長率、最近の買収についての投資家のコメントなどだ。だがこの記事では、フィンテックの未来と、未来の金融テクノロジーの階層というものの形について、少し考えてみたい。

TechCrunchは8月2日の週に、CanopyのCEOであるMatt Bivons(マット・ビボンズ)氏と話した。同氏はフィンテックがどこに向かうのかについて興味深い見解を持っている。それについて議論し、Canopyが何をしているのかを見ていきたい。

キャノピー

多くのスタートアップと同様、Canopyも「かゆいところに手が届く」ことを目指して設立された。ビボンズ氏は、前職でローンの回収に関する問題に直面した。そして、学生向けのクレジットカードを作ることを目指すスタートアップを創業。だが、同氏と共同創業者のWill Hanson(ウィル・ハンソン)氏は、そのプロジェクトを経て、B2Bに特化したローン回収テクノロジーの開発へと会社の軸足を移した。

この決断の背景には、Canopyのスタッフが行った市場調査により、多くのフィンテックスタートアップがクレジット市場への参入を検討していることが明らかになったことがある。フィンテックスタートアップにとってクレジット商品は、当座預金や普通預金よりも経済性の面ではるかに魅力的だからだ。Canopyは、ローンの回収管理が大変なことを知っていたため、それに注力することにした。

ビボンズ氏は、Canopyをローン回収業務のための最新のAPIと位置づけ、ライフサイクルのどの時点でもローンの作成と管理ができるようにした。同氏は、このスタートアップが行っていることは、フィンテックの世界の一部を開発者向けに改良するという、いくつかの成功したフィンテック企業が実行したことと似ていると指摘する。

ここで、フィンテック製品の未来についてのビボンズ氏の見解が登場する。同氏によると、企業は将来、金融テクノロジーのすべてのレイヤーを一枚岩として購入することはない。そうではなく、フィンテック世界の各層を実装する必要がある場合、各々に最適なAPIを買うことになるだろうと同氏は考えている。この点が重要なのは、Canopyがあまりにも小さな製品分野をターゲットにしていると言えるからだ。その市場が大きくないわけではない。債務とその回収は課題がある巨大な領域だ。しかし、企業がニッチな分野に集中することが意味を持つのは、その企業のリーダーが、ある分野に特化したフィンテック製品が大規模なサービスの束に勝てると見込んでいる場合だ。

また、ビボンズ氏は、過去5年間のフィンテックの多くはデビットカードに注目しており、その例としてChime、Step、Greenlightを挙げた。次の10年は、クレジット商品が注目されるだろうと話す。それは、Canopyにとっても朗報だろう。

Canopyの共同創業者ら。CTOのウィル・ハンソン氏(左)とCEOのマット・ビボンズ氏(右)

重要な点として、金融オタク向けでもあるが、ビボンズ氏はTechCrunchに対し、同社のローン回収テクノロジーは同社が信用リスクを負う必要がなく、約90%の粗利益率を確保していると語った。筆者はあまりに四捨五入された数字を信用しないが、この数字はCanopyが開発したものが魅力的なビジネスに成長する可能性を示している。

同社は現在、従来型のSaaSを提供しているが、ビボンズ氏によると、いずれは利用量に応じた価格設定に移行したいと考えているようだ。同社のサービスの現在の形態は、1アカウントあたり月額約50セント(約55円)、年間約6ドル(約660円)だ。同社の顧客の約40%は、シードおよびシリーズA規模のスタートアップ企業だが、ビボンズ氏は、時間をかけて顧客規模のグラフの上の方へ移動していると話した。

その結果としての成長には目を見張るものがある。2021年2〜5月にかけ、Canopyの顧客数は4.5倍に増加した。もちろん若い会社だから、年初時点では全体の顧客数が大きい数ではなかったかもしれない。しかし、このような成長は、投資家が腰を上げて注目するようなものであり、したがって同社のシリーズAに驚きはないと言える。

フィンテックの成長はそれほど鈍化しているようには見えないため、Canopyが売っているものの市場は拡大するはずだ。最高峰の、よりこだわりのあるフィンテック製品が、厚い層をもつ製品を市場で打ち負かすことができるという同社の見解に基づけば、同社は興味深い軌跡を歩むことができるだろう。そして、シリーズAで資金を調達したことで、今後の成長に関しては、より具体的な問題で悩むことになるはずだ。

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【コラム】オープンバンキングが普及し、フィンテックと中小企業の蜜月が始まる
アフリカ初のカード発行APIを開発するザンビアのフィンテックUnion54
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カテゴリー:フィンテック
タグ:Canopy Servicing資金調達

画像クレジット:Chan2545 / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】オープンバンキングが普及し、フィンテックと中小企業の蜜月が始まる

本稿の著者Lee Li(リー・リー)氏はプロジェクトマネージャー兼B2Bコピーライター。TaoBao、MeitTuan、DouYin(現TikTok)のPMとして、中国のフィンテックスタートアップ界隈で10年の経験がある。

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これまで10年間で大きな成長を遂げたフィンテック業界。パンデミックに際してさらに大きな成功を収めた業界だが、多くの関係者が、この成功談はまだ始まったばかりで、フィンテックの次の10年はこれまでとは根本的に異なるものになると信じている、と聞けば驚くだろうか。

銀行の規制方法はパンデミックのはるか前から変化してきた。銀行業界の競争を促進する方法として、オープンバンキングや新しい決済サービス指令(PSD2)などの取り組みが提案され、大手金融機関が長い間支配してきた市場に、小規模で意欲的な金融サービス企業が参入できるようになった。

これらの取り組みが実施された今、その効果は、小規模金融サービス企業に活躍できる余地を与えるだけではないことがわかってきた。オープンバンキングでは、データをAPI経由で利用できるようにする必要があるので、中小企業の資金調達方法に革命が起こりつつある。金融資本ではなくデータが、フィンテックが成功するための最も重要な要素になったのだ。

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オープンバンキングとデータの自由

フィンテックが台頭し、中小企業との連携方法を再構築している現状を理解するには、オープンバンキングの理解が重要である。オープンバンキングは、過去10年間に政府や超国家の銀行規制当局の間で定着した概念で、現在、バンキングセクター全体にその影響が現れ始めている。

基本的に、オープンバンキングとは、APIを使用して消費者の金融データを第三者に公開するプロセスを指し、これにより、第三者が独自の金融商品を設計、構築、販売できるようになる。これらの商品の有用性(つまり、収益性)は、莫大な資本を保有していることによるのではなく、収集・保管しているデータに起因する。

オープンバンキングモデルにはいくつかの課題がある。1つ目の課題は、このような形でデータを共有することに対して常に利用者の同意を得るために、より厳密なシステムを開発する必要があるということである。フィンテックの黎明期には、利用者がデータを提供することに対してかなり寛容で、米国のユーザーの約60%がプライバシーよりもフィンテックを選ぶという調査結果もあった。しかし現在、オープンバンキングのシステムで共有されるデータの種類と量は、これまでの金融商品よりもはるかに多くなっている。

こうした懸念にもかかわらず、オープンバンキングへの取り組みは世界各地で進んでいる。欧州の新しい決済サービス指令(PSD2)は、大手銀行が金融情報を第三者と共有することを要求している。アジアでは、中国のAlipayやWeChat、インドのTezやPayTMなどのサービスによって、すでに金融サービス市場が変化しつつある。そして、これらのサービスが提供する機能により、米国の金融システムにもオープンバンキングを導入することを求める声が高まっている。

中小企業へのサービス提供

米国の銀行業界がオープンバンキングの有用性を受け入れ、あるいは法律によってオープンバンキングを認めざるを得なくなれば、次のように恩恵を受けるグループがある。

  • 利用者は、現在よりもはるかに詳細なデータ分析に基づく、まったく新しいバンキングや投資商品を利用できるようになる。
  • これらの商品を設計・構築するフィンテック企業も、自社商品をもっと利用してもらえるようになり、利益率が向上する。
  • どんなにオープンなモデルであっても、どの第三者が消費者データにアクセスできるか、アクセスするための要件は何かを決定するゲートキーパーの役割を果たすのは銀行なので、銀行が恩恵を受けるのは確実である。

しかし、オープンバンキングで最大の恩恵を受けるのは中小企業である。これは、必ずしもオープンバンキングの枠組みが、中小企業にとって有益な新機能を提供するからということではなく、中小企業は従来型の銀行から十分なサービスを受けてこなかったという事実を反映している、といえるだろう。

中小企業がサービスを受けられない理由はたくさんある。従来型の銀行では、複数の金融機関や金融商品を資本として保有している中小企業の総合的な財務状況を把握する能力が極めて限られているため、資金の提供が非常に難しいのだ。

銀行にデータを送信するために、旧式で時間と手間のかかるインターフェースを利用しなければならないこともよくある。そして(おそらく最悪なのは)、ほとんどの銀行で使用されているB2B決済システムでは、利用する企業へのフィードバックが非常に限られ、情報が少ないことで、企業にとって大きな負担となることだ。

新しい機能

このような欠点を考えると、フィンテック企業が中小企業への融資に熱心であることも、中小企業が新しい銀行商品やサービスを積極的に求めていることも、驚くべきことではない。そしてもちろん、この分野ではすでにいくつかのサクセスストーリーがあり、今日、特に欧州の中小企業が利用できるバンキングシステムの種類は、10年前に利用できたサービスよりもはるかに進んでいる。

オープンバンキングはこの変革を加速させ、一般的な中小企業が利用できる金融サービスを、いくつかの方法でさらに大胆に改善することを約束している。銀行が保有するデータに第三者がアクセスできるようになることで、多くの中小企業が、その財務状況を初めて正しく評価してもらえることになる。

フィンテック企業は、APIを利用してさまざまな種類の口座、保険、カード、リースなどの複数の国にまたがる情報にアクセスし、データをまとめて1つの全体像に統合することができる。

こういったことは、中小企業の信用力の評価に大きな影響を与えるだろう。現在、多くの中小企業が資金不足に陥っているが、これは銀行が「貸借対照表」モデルを使わずに信用リスクを評価することを躊躇しているためだ。中小企業のビジネス活動をリアルタイムで分析できれば、銀行は信用リスクをもっと正確に評価し、より多くの企業に融資することができるようになる。

実際、オープンバンキング先進国では、このような取り組みがすでに行われている。英国では、Lloyds(ロイズ)がビジネスツールボックスを提供していて、口座の取引データに加えて、企業や役員の信用調査を無制限に行うことができる。

オープンバンキングは、これまでよりもはるかに進んだ同業他社比較分析も実現する。APIを利用すれば、該当の市場で中小企業がどのような業績を上げているかをリアルタイムでフィードバックすることができる。英国ではこれもすでに実現していて、Barclays(バークレイズ)は同社のスマートビジネスダッシュボードで、マーケティング費用を最大限に活用するためのツールを提供している。このダッシュボードはカスタマイズも可能だ。

集約したアカウント上に構築されたインテリジェントなデータ分析によるインサイト、レコメンデーション、自動プロンプトなどの主要な機能は中小企業にとって非常に有益なので、これらの機能を提供するフィンテック商品の人気は高まるだろう。

銀行や代替融資機関にとっては、これらのモニタリングツールから得られる情報を活用することで、これまで資金提供が困難だった中小企業に対して、承認済みの融資枠をタイムリーに提供するなど、より積極的な融資を行うことができるようになる。

結論

中小企業は、データ分析に基づく付加価値サービスを受けて成長することができるのであれば、ほぼ間違いなく喜んで手数料を支払うだろう。これはフィンテック業界にとって重要なことだ。この分野のスタートアップ企業の中には、すでに巨額の資金を調達しているところもあり、オープンバンキングが技術と経済の関係の中心にあるのもそれが理由だ。

ここまで見てきたように、すでにフィンテックが成功していたとしても、それは物語の始まりに過ぎないと考えられる。オープンバンキングの取り組みに後押しされたフィンテックは今、バンキング革命の最前線にある。この革命により、各中小企業はそれに相応しいサービスを受けられるようになり、経済全体でそれらの企業の真の可能性を引き出せるようになるだろう。

関連記事:雇用維持のために誰もが利用可能な金融テクノロジーを

カテゴリー:フィンテック
タグ:コラムオープンバンキングオープンAPI銀行中小企業

画像クレジット:Richard Drury / Getty Images

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(文:Lee Li、翻訳:Dragonfly)

ザンビアから初めてY Combinatorに入学したスタートアップがアフリカ初のカード発行APIを開発

過去10年間、40以上のスタートアップがアフリカの国々からY Combinator(ワイ・コンビネーター)にやってきた。米国時間8月5日、ザンビア共和国がそのリストに加わり、初の参加企業となった Union54(ユニオン54)は最初をかざるにふさわしいスタートアップだ。

Union54(54はアフリカの国家数にちなんだもの)は、Perseus Mlambo(パースース・ムランボ)氏とAlessandra Martini(アレサンドラ・マーティニ)氏が立ち上げたフィンテック企業だ。同社はアフリカ初のカード発行APIの提供を目指して今年創業したばかりだ。しかし、Union54は突如現れたわけではない。2人が以前たちあげたスタートアップ、Zazu(ザズ)から生まれたたプロジェクトだ。

Zazuは2015年にザンビアでチャレンジャー・バンクとして設立された。アフリカ大陸のフィンテックがみなそうであるように、Zazuはユーザーがウォレットにつなぐことのできるデビットカードを自ら発行しなければならなかった。Zazuは国の提携銀行がカードを発行するまで数ヶ月またされることがほとんどだった。18ヶ月待たされたこともある、とムランボ氏は言った。

そんな中、2人のファウンダーは自身でカードを発行するために地域の銀行と交渉を開始した。しかし、銀行の対応は無気力だった。「処理業者や銀行には私たちの質問に答える能力も、私たちが求めていたプロダクトを提供する能力もないことがわかりました」とムランボ氏が本誌のインタビューに答えて語った。

そこでスタートアップはMastercard(マスターカード)を直撃した。カードを発行する会社と交渉できるのに銀行を待つ必要などない、ということた。最終的に同社は、Mastercardプリンシパル・メンバーシップを獲得した自称アフリカ初のフィンテックになった。

プリンシパル・メンバーになったZazuはカード発行銀行として活動する資格を得た。言い換えれば、彼らはデビットカードを発行できるようになり、それはアクワイアラーとして取引処理サービスを提供できることを意味する。

その過程でファウンダーらは、アフリカのフィンテックを本格的に推進するためには、どの国のフィンテックでも簡単にバーチャルまたはプラスチックのデビットカードを発行できるようにすることが不可欠だと気づいた。そこでチームはZazuからUnion54をスピンアウトさせた。 現在同プラットフォームには、プログラム可能なデビットカードをどのフィンテックでも発行できるAPIがいくつかある。

「私たちはメンバー資格を利用して、自身でカードを発行したいアフリカのフィンテックの支援もできるようになりました。当社に来てAPIを手に入れるだけで、長い時間交渉することなく今すぐ行動に移せます」とアフリカの他のフィンテックにサービスを提供することについてムランボ氏は語った。

同社のターゲットは、バーチャルまたはプラスチックのカードを発行するために数十万ドルもの初期費用を使いたくないフィッテックだとCEOは語る。Union54は、BIN(銀行識別コード)の付与、管理・調停プログラムなどを行うAPIを通じて数週間でカードを発行できると言っている。

こうしてUnion54は、アフリカ初のカード発行APIを謳う権利を得た。このチャンスに目をつけたフィンテックはほとんどない。多くの会社が決済ゲートウェイからウォレットまでその他のさまざまな分野に焦点をあててきた。興味深いのは、これらの分野の大物たちが結局は自社顧客にバーチャルカードやプラスチックカードを作ろうとして複雑な作業に直面していることだ。Union54はそのギャップを埋めようとしている。現在まだベータ段階だが、すでに数多くのお得意様がウェイティングリストに名を連ね、プラットフォームを利用していることを同社は誇っている。

「素晴らしいことに、利用しているのはただの企業はありません、アフリカでトップ5%に入るフィンテックです。そして私は常に、自分たちがアフリカ・フィンテックの黄金世代だと言っています。だから、この分野のリーダーとされる人たちが使うためのカード発行プロダクトにとって今は最適の時期です。これは、人々が毎日使いたいものを私たちが持っている、という意味なのです」とCEOは付け加えた。

ウェブサイトには、 同社のAPIのユースケースが8種類紹介されている:Ledger based(帳簿ベース)、アクワイアラー/ゲートウェイ、バイ・ナウ・ペイ・レイター(後払い)、信用組合、運送会社、デジタルバンキング、クレジットカード管理、および法人カード。

Union54を使用するフィンテックは、カードのデザイン、使用する通貨の設定ができるほか、誰が使うか、何に使うか、いつ使うか、どう使うかが書かれたカタログを作ることもできる。

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フィンテックはUnion54の利用料金をAPIを使用する毎に支払う。プラスチック・カードを作るためには7〜9ドルの固定料金および取引が成立したときの固定料金(非公開)を支払う。

ムランボ氏はYCの2021年夏組に参加したことで、初期の顧客をYCのネットワークから獲得することができたと語った。彼はYCについて、初日から役に立つプログラムだと説明している。

「Union54がザンビアで最初Y Combinatorに参加を許されたフィンテックであることを誇りに思います。アフリカ南部では2番目です。ご存知のように、世界の投資家がアフリカを見る時、アフリカ西部から考えることがほとんどです。私たちがY Combinatorに入ることで私たちの幅広い仮説のごく一部が実証されました。ザンビアのようにフレンドリーな国がアフリカの役に立てるのです」

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画像クレジット:Union54

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

今度はRobinhood株がおかしくなった

更新:Robinhood株の取引は乱高下のために停止された。同社の株価はRobinhoodアプリ自身で65.60ドルで止まっている。Yahoo Financeはもっと高い77.03ドルをつけていて、今日は驚きの64.59%高だ。事態は流動的だが、Robinhoodは停止中でも、取引が再開されれば再び上昇するかもしれない。たしかにどうかしている。

米国時間8月4日、消費者向け投資フィンテックのRobinhood(ロビンフッド)が時間外取引で急騰した。2021年になって GameStop(ゲームストップ)やAMC(エーエムシー)などの小さな会社の急騰を呼んだ異常現象は、Robinhood自身の株価にも影響を与えているようだ。投機フィーバーの最中、GameStopとAMCの株取引が行われた投資プラットフォームRobinhoodで起きている皮肉な現象をTechCrunchは認識している。

関連記事:GameStop株を買いまくる個人投資家たち、ボスのボスのボスのボスとの話

この日何が起きたかをYahoo Financeで確かめてみよう。


Robinhoodは予定範囲下限の1株当り38ドルで上場し、早期の取引ではIPO価格以下に沈んだことを思い出して欲しい。今や1株当りの価値は54ドルだ。

すごい。

いつもであればTechCrunchは、ここでジョークを飛ばしてこの小さなニュース記事を終わりにするところだが、RobinhoodのIPOは伝統的株式上場とは一味違っていたので、もう少し仕事をする必要がある。上場したとき、Robinhoodは株式の一部分を自社ユーザーの購入のために取り置きしていた。これによって、上場直後のRobinhood株保有者は、伝統的IPOと比べて一般投資家の割合が多くなった。

Robinhoodの初期のやや低調な取引実績に関する1つの仮説は、同社が自社ユーザーに株を買わせたことによって初期の一般投資家による株式需要が満たされ、結果的に上場時の需要・供給の相違が小さくなったというものだ。

状況は変わった。今何が起きているのか?先週、あるアナリストは同社株に1株当り65ドルという価格目標を設定した。他にも考慮に値する予測がいくつかある。しかし、Robinhoodの本日の急騰は、新たな買いまくりによるものと思われる。同社の株はまるでショートスクイズのように取引されている。市場参加者の中には、会社を限定的な空売り対象と見ていることから、この考えに懐疑的な向きにもある

Robinhood のIR情報をみても何もニュースはない。Robinhoodは最近売上報告をしていない。同社が最近提出したPFOF(payment for order flow、ペイメント・フォー・オーダー・フロー)売上に関する会計基準606号書類は、2021年第2四半期速報に同社が載せた予想売上と一致しているようだ。おそらく暗号資産は予想以上だっただろうが、特別目立ったものはない。

どうやらRobinhoodが上昇しているのは、実際上昇しているからというだけのようだ。これは2021年にはよく起きることであり、慣れる必要があるだけだ。

しかし我々の目的にとって最も重要なのは、IPO株の一部を自社ユーザーに売るというRobinhoodの決断は、公開企業となったユニコーンの異常な取引を抑制効果をもたらすことができなかったことだ。普通と違う方法で上場しても、馬鹿げたことは起きる。これでみんなわかっただろう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Robinhood新規上場

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

年間ユニークユーザー数1580万人の後払い決済サービス「NP後払い」をテレビ通販「ショップチャンネル」が導入

年間ユニークユーザー数1580万人の後払い決済サービス「NP後払い」をテレビ通販「ショップチャンネル」が採用

ネットプロテクションズは8月4日、ジュピターショップチャンネルが展開するテレビ通販「ショップチャンネル」に「NP後払い」決済サービスを8月1日から導入したと発表した。EC受注と電話受注への同時導入という。専門チャンネルを持つテレビ通販会社の電話受注に「NP後払い」が導入されるのはこれが初めてとのこと。

NP後払いは、クレジットカードの情報登録が不要で、商品受け取り後に支払いができるサービス。ネットプロテクションズの調べによると、ネットショッピングで後払いを望む人は全体の約20%ほどいるとのこと。そのニーズに応えるべく、2002年、未回収リスク保証型という形でリリースされた。NP後払いは、年間流通金額3400億円、導入企業7万社以上、年間ユニークユーザー数は1580万人(2020年4月1日~2021年3月31日におけるNP後払い利用者のうち、氏名・電話番号の双方が一致する利用者)にのぼるという。年間流通金額は前年比約16%の成長率を誇り、2021年3月までの累計利用件数は2億8000万件を突破した。

また、NP後払いで培った与信ノウハウとオペレーション力を企業間取引向けに展開した「NP掛け払い」サービスを2011年に開始。こちらも年間流通金額が前年比約27%の成長を見せている。さらに、実店舗でも利用可能で、1カ月の買い物をまとめて後払いできるサービス「atone」(アトネ)を2017年に開始、2018年には台湾でスマホ後払い決済「AFTEE」(アフティー)をスタートさせている。

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Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

フィンテック界を揺るがす超大型案件として、Square(スクエア)は米国時間8月1日、オーストラリアの「後払い決済(BNPL、Buy Now, Pay Later)」サービスの大手Afterpay(アフターペイ)を290億ドル(3兆1900億円)で、すべて株式を対価として買収すると発表した。

買収価格は、7月30日のSquareの普通株式の終値247.26ドル(約2万7200円)をベースとしている。この買収は、一定の条件を満たすことを前提に、2022年第1四半期中に完了する見通しだ。Afterpayの直近終値96.66豪ドル(約7800円)に対し30%以上のプレミアムがついたことになる。

Squareの共同創業者でCEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、2社のフィンテック企業が「共通の目的を持っている」と声明で述べた。

「私たちは、金融システムをより公平で、利用しやすく、包括的なものにするためにビジネスを構築します。Afterpayはその原則に従い、信頼できるブランドを構築しました」と同氏は声明で述べた。「力を合わせ、Cash AppとSellerのエコシステムを上手く結びつけ、店舗と消費者にさらに魅力的な製品とサービスを提供し、パワーを彼らの手に取り戻すことができます」。

両社の結合により、他に類を見ない巨大な決済企業が誕生する。この1年半の間に「後払い」サービスは爆発的に普及し、特に若い世代を中心に、クレジットカードを使わず、利息も払わず、オンラインや小売店でどこにでもあるような分割払いのローンを利用するという考えが広まっている。

6月30日時点でAfterpayはファッション、家庭用品、美容、スポーツ用品などの業界の大手小売業者を含め、全世界で1600万人以上の消費者と約10万の加盟店にサービスを提供している。

両社の声明には、AfterpayのSquareグループへの加入により、SellerおよびCash Appのエコシステムに関するSquareの戦略的優先事項が加速することになる、とある。Squareは、Afterpayを今のSellerおよびCash Appのビジネスユニットに統合する計画だ。それにより「小規模な加盟店」であっても、精算時に今すぐ購入して後で支払うという選択肢を提供できるようになる。また、この統合により、Afterpayの利用者は、Cash Appで直接分割払いを管理できるようになる。Cash Appの利用者は、アプリ内で直接、加盟店やBNPLが選べる。

Afterpayの共同創業者で共同CEOでもあるAnthony Eisen(アンソニー・アイゼン)氏とNick Molnar(ニック・モルナー)氏は、取引終了後にSquareに合流し、Afterpayのマーチャント事業とコンシューマー事業をそれぞれ統括する。Squareは、Afterpayの取締役 1名を同社の取締役として任命する予定だ。

Afterpayの株主は、保有する株式1株につき、SquareのクラスA株式0.375株を取得する。これは、Squareの7月30日の終値ベースで、Afterpayの株価が1株あたり約126.21豪ドル(約1万200円)だったことを意味する。

この分野での統合がさらに進むのだろうか。それはまだわからないが、Twitter(ツイッター)上では、次にどんな取引が行われるかが話題になっている。米国では、2021年初めにライバル企業のAffirm(PayPalの共同創業者であるMax Levchin[マックス・レヴチン]氏が創業)が上場した。7月30日の終値は56.32ドル(約6200円)で、初値や直近52週間の高値である146.90ドル(約1万6200円)を大きく下回った。一方、米国で急成長を遂げている欧州の競合企業Klarnaは、6月にさらに6億3900万ドル(約703億円)を調達し、資金調達後のバリュエーションは456億ドル(5兆160億円)という驚異的な数字になっている。

米国の消費者をめぐるBNPLの戦いは、今回の取引でますますヒートアップすることは間違いない。

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(文: Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

パンデミックの影響が鈍化し始めている

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

先週私たちの仕事は中国で始まりアフリカのスタートアップ活動を掘り下げもう一度中国を扱い、ラテンアメリカのスタートアップエコシステムを深く掘り下げ、そしてそしてRobinhood(ロビンフッド)IPOの再考で締めくくった。言い換えれば、実際にはほとんど何も起こっていなかったのだが。

金曜日にAmazon(アマゾン)の株が急落するのをみて驚いたことだろう。なにしろ、同社はこの四半期に1130億ドル(約12兆3940億円)をわずかに超える巨額の収益を記録したのだ。そして、パブリッククラウドビジネスであるAWSは、順調に進んでいるように見えている。

しかし、投資家はそれ以上の成長を期待しており、それに応じてシアトルを拠点とするeコマースプレイヤーAmazonの価格を設定していたのだ。Amazonが収益に対する期待を裏切って、2021年第3四半期の成長を「2020年第3四半期と比較して10%から16%の間」成長となることを予測したために、投資家たちがその株を手放したのだ。

しかし、金融プレスの一部が指摘しているように、投資家からひどい目にあわされているのはAmazonだけではない。Etsy(エツィー)とeBay(イーベイ)も今週下落している。投資家たちは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのおかげで電子商取引にもたらされた急成長期が、少なくとも鈍化していて、実質的には終わっている可能性を予想しているようだ。つまり、スタートアップを含む多くの企業で評価額がリセットされるということだ。

パンデミックの初期段階で減速したすべての企業が苦しんでいるわけでもない、Duolingo(デュオリンゴ)は成長が鈍化しているにもかかわらず、公開企業として力強い第1週を過ごした。しかし、デルタ変異種があろうとなかろうと、投資クラスは市場の枠組みを変えている。それを心に留めておくのが賢明だろう。

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それは新しい製品だ

先週から私の脳裏を離れないのは、Robinhoodが消費者投資に関するゲームをどれだけ変えたかということだ。もちろん、先週は主に同社のIPOとそのやや軟調な初期の取引実績について取り上げた。しかし、最終的なS-1/A申請書に埋もれているのは、Robinhoodの文化的影響に関する新しい証拠なのだ。

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同ユニコーンの申請書の冒頭に掲げられているのは2つの統計値だ。それは以下のようなものだ。

画像クレジット:Robinhood

げっ、と思ったかもしれないが、これが示しているのは膨大な投資アカウント数と、毎月のアクティブユーザー数だ。だが考えてみれば、これらは2021年3月31日の数字だ。それらはすでに古くなっている。同じ申請書内で、Robinhoodは、6月30日までの四半期に投資アカウント数が2250万に増加したことを示している。これは、1四半期で25%の成長だ。

当然のことながら、2021年の第2四半期には、二度と起こらないことがいくつか起きたが、それでもこれはなお驚くような結果だ。

Robinhoodの初期の投資家であるIndex(インデックス)のJan Hammer (ヤン・ハマー)氏は、彼の投資先の公開を受けてコメントを送ってきたが、同社の動向は、金融サービスを揺るがすためにハイテク企業によって行われている動きの一部なのだと主張している。Robinhoodのような企業は「古い金融商品に新しい塗装を施したものではない」と彼は書いている。

それは正しいと思う。そして重要な点は、時代遅れのウェブサイトや二流のモバイルエクスペリエンスを提供している市場の既存のプレイヤーたちを酷評しているところだ。たとえばZ世代が、Robinhood、eToro(イートロ)、M1 Finance(M1ファイナンス)でなければ代わりに何を使えば良いというのだろう。まあよくわからないがジョン・ハンコック(アメリカ独立戦争を資金面で支えた政治家)とか?。彼らが言うように、歯磨き粉はチューブに戻らない。

Fidelity(フィデリティ)とVanguard(ヴァンガード)は、一体どうすればRobinhoodのユーザーたちに自分たちのサービスに戻るように説得できるというのだろう?彼らはそうできるのだろうか?それともある世代の投資家たち全員が既存の金融プレイヤーを完全にスキップしてしまったのだろうか?強気のRobinhoodは後者のように考えているに違いない。そしてその見方を私も打ち消すことができないのだ。

Robinhoodの業績が、今後の何期かの四半期にどのように推移するかはわからないが、RobinhoodのMAU(月間アクティブユーザー数)や、M1のAUM(運用資産残高)などを考えると、フィンテックのスタートアップたちは信頼できる401(k)業者たちのいくつかを出し抜いたと言えるだろう。それはフィンテックたちが間もなくさらに深く掘り下げると、私が確信している市場だ。

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アフリカについて

アフリカに戻ってみよう、7月のデータはどうだっただろうか?私たちのアフリカ大陸の2021上半期の力強いパフォーマンスの調査は、6月で終わっていたので、いくつかのデータを追加しておこう。アフリカを情勢をウォッチするThe Big Deal(ザ・ビッグ・ディール)によれば、アフリカのスタートアップたちはこの四半期に71回のラウンドで3億800万ドル(約337億8000万円)を調達した。これは約37億ドル(約4058億2000万円)のランレートだ。よりシンプルに言えば、アフリカのスタートアップは、ベンチャーキャピタルの調達に関しては、これまでで最高の年を迎えている。

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ギグワーカーやクリエイターに金融サービスとしての福利厚生を提供するCatch

Catch共同創業者アンドリュー・アンブロジーノ氏とクリステン・アンダーソン氏(画像クレジット:Catch)

Catchは、すべてのギグワーカーが、彼らが必要とする保健医療や退職手当などの福利厚生を得られるよう努力している。

現在、本社をニューヨークへ移転中の同社は、フリーランサーや契約社員など企業からの福利厚生のない人たちに直接、健康保険や退職貯蓄、源泉徴収などの福利プランを売っている。

同社は現在、シリーズAで1200万ドル(約13億2000万円)の資金を調達中で、そのリード投資家はCrosslinkで、初期からの投資家であるKhosla VenturesやNYCA Partners、Kindred VenturesおよびUrban Innovation Fundが参加した。資金は、代理店パートナー網の拡大とボストンからの移転費用に充てられる。

共同創業者のKristen Anderson(クリステン・アンダーソン)氏とAndrew Ambrosino(アンドリュー・アンブロジーノ)氏はCatchを2019年に創業し、これまでに610万ドル(約6億7000万円)を調達しているので、総調達額は1810万ドル(約19億9000万円)になる。

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Catchの15名のチームがそのプラットフォームを連邦市場の38の州で売る承認を得るのに、2年近くを要した。アンダーソン氏によると、このような承認を得ているのは同社も含めてわずか8社だが、福利の受益者個人に直販しているのはCatchも含めて3社だけだという。

「現在、クリエイターやギグワーカーとして食べてる人たち、つまり個人労働者がどんどん増えているのに、肝心の健康保険を提供していない金融サービスが多い。多くの人に、企業の社員のような福利厚生がない」とアンダーソン氏はいう。

Catchの顧客の平均年齢は32歳だが、現在の提供物に加えて、収入源のセットアップを求める者が多い。つまり彼らは、税や退職後や病気休職などへの備えを、実際に貯蓄する余力がなくても求めている。

パンデミックにより、Catchの顧客の多くが全業種平均で40%の収入を失った。美容師や調理師などには、収入がゼロになった人たちもいる。

そこでアンダーソン氏とアンブロジーノ氏は、同業のプラットフォームやビジネスツールのメーカー、ギグのマーケットプレイス、給与事務代行企業などから成る代理店パートナーシップのネットワークを作り始めた。アンダーソン氏によると、今度の資金で社員数を増やして、さらにこのパートナーシップの拡大努力を続けたいという。

Catchのプロダクトは一種の保険業務だが、競合他社の多くは、たとえばStarshipのように、健康保険のための貯蓄口座といった一品目だけのところが多い。しかしアンダーソン氏によると、Catchはプラットフォームを提供し、個々のケースにより深入りしている。クラウドベースで企業のために給与計算や福利厚生、人事管理などのサービスを提供しているGustoというスタートアップがあるが、彼女はCatchをそのGustoに喩える。Catchも同じくエンド・ツー・エンドのサービスだが、対象は企業ではなく個人だ。

これまでの1年間で同社のユーザーベースは3倍増した。副業をする人が増えたことと、DoorDashとのパートナーシップが大きい。またアンダーソン氏によると、同プラットフォームの現在のユーザーは、得られる福利の目標が大きく、多くの貯蓄をする必要があるので、通常の5倍の残高を抱えている。退職投資と健康保険も、同じく増えている。

今後についてアンダーソン氏は、シリーズBはすでに考えているが、それは2年後だという。同社は、独自のHSAプロダクト(医療費貯蓄口座)と傷害保険なども検討しており、プロダクトの多様さで他と差別化したい意向だ。たとえばSpotSuper.mxEvenなどはみな、2021年7月にベンチャーキャピタルを調達して福利を賄っている。

Catchはまた、連邦市場以外のオーディエンスにもサービスを提供していきたい。今すでにその取り組みを開始しており、アンダーソン氏によると、米国籍を持たない者への金融保険サービスは悪質なものが多く、一見おいしそうなキャッチコピーの陰で、粗悪で内容の薄いサービスが提供されているそうだ。

アンダーソン氏は「非常に混乱した市場であるため、それを正していくのは大変なことです。若者は安いサービスしか買うことはできませんが、その場合は最初に条件をよく理解してもらうことが、とても重要です」という。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

メッセージ機能を含むPayPalの新しい「スーパーアプリ」が立ち上げ準備完了

PayPal(ペイパル)が自らを「スーパーアプリ」に変身させる計画が、立ち上げに向け動き出した。

PayPalのCEOであるDan Schulman(ダン・シュルマン)氏が、今週行われた第2四半期の決算説明会で投資家に向けて語ったところによると、同社の新しい消費者向けデジタルウォレットアプリの初期バージョンの「コードは完成」しており、同社はゆっくりと立ち上げに向け準備を整えているとのことだ。今後数カ月の間に、同社は米国内でのサービスを十分に強化し、四半期ごとに新しい決済サービス、金融サービス、コマース、ショッピングツールを提供していく予定だ。

これは、PayPalを、中国のWeChat(ウィーチャット)やAlipay(アリペイ)、インドのPaytm(ペイティーエム)の米国版にしようとするプロダクトの方向性の転換だ。こうしたアプリと同じように、PayPalはモバイル決済だけでなく、多くの消費者サービスをワンストップで提供することを目指している。

PayPalは過去の四半期で上記の新機能には、高機能な口座振替、小切手現金化、予算管理ツール、請求書払い、暗号資産サポート、サブスクリプション管理、今買って後で支払う機能などが含まれる可能性があると述べていた。また、2019年に40億ドル(約4400億円)を投じて買収したHoney(ハニー)のモバイルショッピングツールにより、商取引機能を統合するとも述べている。

これまでPayPalは、Honeyを単独のアプリケーション、ウェブサイト、ブラウザの拡張機能として運営してきたが、スーパーアプリには、取引検索や価格追跡など多くの機能を組み込む可能性があるという。

シュルマン氏は米国時間7月28日の決算説明会で、スーパーアプリには他にもいくつかの機能、すなわち、高利回りの預金、口座振替資金への早期アクセス、ピアツーピア決済以外のメッセージング機能(アプリのユーザーインターフェースにより家族や友人と直接チャットできること)などが含まれることを明らかにした。

PayPalは、これまでメッセージ機能を搭載する計画を発表していなかったが、今思えば、人々がチャットとピアツーピア決済を組み合わせることが多いという点で、この機能は理に適っている。例えばユーザーは、アプリから自動でリクエストを送るのではなく、自分で送りたいと思うかもしれない。また、お金を受け取った後に「ありがとう」などの感謝の言葉を伝えたい場合もある。現在、このような会話は、決済アプリの外で、iMessageなどのプラットフォーム上で行われている。だが、これは変わる可能性がある。

「これにより、プラットフォーム上で多くのエンゲージメントが得られるようになると考えています」とシュルマン氏は話す。「メッセージをやり取りするために、プラットフォームを離れる必要はありません」。

PayPalは、ユーザーのエンゲージメントが高まることで、アクティブなアカウント1件あたりの平均収益が向上すると見込む。

また、シュルマン氏は「暗号資産関連の機能追加」についても示唆したが、詳細は不明だ。PayPalは今月初め、米国内の適格なPayPal顧客を対象に、暗号資産の購入限度額を2万ドル(約220万円)から10万ドル(約1100万円)に引き上げた(年間購入限度額なし)。また、同社は2021年、消費者が暗号資産を使って何百万ものオンラインビジネスで決済することを可能にした。この場合、まず暗号資産を現金に換え、次に米ドルで決済する。

アプリのコードは完成しているが、シュルマン氏は今後もプロダクトエクスペリエンスを試行錯誤していく予定だと語り、初期バージョンが「すべてではない」と述べた。つまり、四半期ごとに着実にリリースし、新機能を追加していく予定だ。

ただし、初期の新機能としては、高利回りの貯金、ユーザーエクスペリエンスを向上させた請求書払い、請求先やアグリゲーターの増加、口座振替の早期利用、予算管理ツール、新しい双方向メッセージング機能などがあると話した。

すべての新機能をスーパーアプリに統合するため、PayPalはユーザーインターフェースの大幅な見直しを行う。

「明らかに、ユーザーエクスペリエンスは再設計されつつあります」とシュルマン氏は話す。「リワードとショッピングを追加します。また、クラウドソーシングや慈善団体への寄付など、寄付に関する機能も充実しています。さらに、今すぐ購入して後払いする機能も完全に統合されます。前回数えたところでは、スーパーアプリに搭載される予定の新機能は25個ほどになりました」。

また、デジタルウォレットアプリは、エンドユーザーに合わせてパーソナライズされるため、同じアプリは2つとない。これは、人工知能と機械学習の両方の機能を利用して実行され「各顧客の体験と機会を向上させる」とシュルマンは述べている。

PayPalの業績は、第2四半期の売上高については、ウォール街が予想した62億7000万ドル(約6900億円)に対して62億4000万ドル(約6860億円)となり、1株当たり利益は予想1.12ドル(約123円)に対して1.15ドル(約127円)となった。また、顧客からの総支払額も、アナリストが予想していた2952億ドル(約32兆4700億円)に対し、40%増の3110億ドル(約34兆2100億円)となった。しかし、eBayが独自のマネージドペイメントサービスに移行したことが影響し、第3四半期の見通しを下方修正したことから、同社の株価は下落した

なお、PayPalの新規アクティブアカウントは第3四半期に1140万件の純増となり、アクティブアカウント総数は4億300万件に達した。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

フィンテックRobinhoodの株価が初日の取引で8%下落

Robinhood(ロビンフッド)は米国時間7月28日の夜に、IPO範囲の下限である1株あたり38ドルの価格で公開を行った。その価格での評価額は約320億ドル(約3兆5578円)だった。

しかし、この米国の消費者向け投資・取引アプリRobinhoodの、株式取引が開始されると、株価は急速に下落し、浮動株としての取引が始まった最初の数時間で10%以上の下落を記録した。その後の取引でRobinhood株はある程度回復したものの、Yahoo Finance(ヤフー・ファイナンス)によれば8.37%減の1株あたり34.82ドル(約3811円)でその日の取引を終えた。

同社はIPOで5500万株を売出し、総売上高は21億ドル(約2299億円)となった。もし引受銀行が利用可能なオプションを購入するなら、この数字はさらに増える可能性がある。とはいえ、同社は現在、十分な資金を有しており、自分たちの思い通りに未来を描くことができる。

では、なぜ株価が下がったのだろう?2020年、多くの大手ブランド、消費者向けハイテク企業の周辺で見られた旺盛な投資騒動を考えると、Robinhoodがその日のうちに80%以上の上昇で終わらなかったことにむしろ驚くかもしれない。なにしろDoorDash(ドアダッシュ)やAirbnb(エアービーアンドビー)は派手なデビューを果たしたのだから。

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考えを口に出してみると、いくつかのことに思い当たる。

  • Robinhoodは、IPOの大部分を自社のユーザーに公開した。実質上Robinhoodは、一般投資家やトレーダーに、大口投資家と同じ価格とアクセスレベルで株式を提供することで、初期のリテール需要を縮小したのだ。良いアイデアだ。だがそうしたことで、Robinhoodは、その株式に対する未決済分株式への関心を低下させ、おそらくそれが初期の需給曲線を決定付けてしまったのだろう。
  • もしくは、同社が2021年第2四半期に取引量が減少する可能性があると警告したことで、一部の投資家たちを怖気づけさせたのかもしれない。

とはいえ、このミーム集中砲火型株価決定の時代に、Robinhoodのデビューがやや下降気味なのは、ちょっとした謎である。今後、同社の株価が落ち着きを見せていく中で、将来の業績に対する投資家の動向ををより深く掘り下げていく予定だ。

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タグ:RobinhoodIPO

画像クレジット:TechCrunch

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

借金に悩むユーザーに代わり債権者と交渉してくれるアプリを目指すRelief

Jason Saltzman(ジェイソン・サルツマン)氏はシリアルアントレプレナーだ。最初にSeamlessDocs(シームレスドックス)を共同設立し、それからニューヨークでコワーキングスペースのAlley(アレイ)を設立した。AlleyがVerizon(ベライゾン)とのジョイントベンチャーになった後、何か新しいものを作りたいと考えていたサルツマン氏は、債務整理と救済の分野に惹かれた。

その結果、サルツマン氏がBryan Okeke(ブライアン・オキキ)氏やRam Barrouet(ラム・バルエ)氏と3人で共同設立したRelief(リリーフ)が誕生した。このスタートアップは米国時間7月28日、Collaborative Fund(コラボレーティブ・ファンド)、BFV、Necessary Venture(ネセサリー・ベンチャー)、The Fund(ザ・ファンド)が主導するコンバーチブルノートにより、200万ドルを調達したと発表。このラウンドには、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏、Ben Kaplan(ベン・カプラン)氏、Elliot Tabele(エリオット・テーブル)、David Galanter(デイヴィッド・ギャランター)氏などのエンジェル投資家も参加した。

サルツマン氏の命題は、この分野の観察から生まれた。第三者の債権回収会社は多くの自動化ツールを使用しているが、同じサービスが債務救済を求める個人には提供されていない。Reliefは、機械学習アルゴリズムと団体交渉を利用して債務残高を減らすアプリだ。Reliefはユーザーに代わって計算を行い、債権者と直接交渉して、残高を(サルツマン氏によると半分以下に)減らすことができ、すべて無料で利用できる。

Justworks(ジャストワークス)とは異なり、Reliefはユーザーベース全体の力を使って債権者と交渉し、残高を減らしたり金利を下げたりする。交渉が成立すると、ユーザーが残りの借金を返済するための支払い計画も設定してくれる。

財政困難に陥っている人のために債務整理やローンを提供することは新しくはないが、ユーザーに代わって交渉する機能は、多くの類似プラットフォームでは広く提供されていない。

誤解のないように言っておくと、これはお金を節約するためのプラットフォームではない。Reliefのアプリは破産の代替手段であると、サルツマン氏は説明する。

当初は、Reliefはクレジット発行会社が示談交渉のために支払う費用から収益を得る。Reliefが債権回収業者の代わりになるわけだ。また、同社は債券を発行して、その利息で収益を得ることもできる。しかしサルツマン氏は、十分な数のユーザーを獲得することで、他の収益を上げる方法について創造的に検討を始めたいと希望している。

「信頼が最大の課題です」とサルツマン氏はいう。「私たちは消費者の家に入り込み、この恐るべき問題の汚名を返上しなければなりません。今のところ、解決策はありません。データによると、米国人の3人に1人がクレジットカードの支払いを滞納しているそうです。だからこそ、私たちを信頼してもらう必要があるのです」。

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タグ:Relief債務資金調達機械学習

画像クレジット:relief

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(文:Jordan Crook、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達

Monarch(モナーク)は、消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスクリプション方式のプラットフォームだ。このほど同社は480万ドル(約5億3000万円)のシード資金を調達した。

調達ラウンドをリードしたのはAccel(アクセル)で、SignalFire(シグナルファイア)も参加した。カリフォルニア州マウンテンビュー拠点のスタートアップは、2019年の創業以来の総調達額を550万ドル(約6億1000万円)とした。

共同ファウンダーでCEOのVal Agostino(バル・アゴスティノ)氏は、Mint.com(ミント・ドットコム)を作ったチームで最初のプロダクトマネージャーだった。当時同氏は、米国の家計をよく理解している人たちが「単なる予管理以上のソフトウェアソリューションを必要としている」ことを直に体験したことを話した。

「消費者は、将来の家計を計画し、さまざまな金融商品の損得を理解するためのツールを必要としていました」と彼は語った。

Monarchの目標は、人々のそんなニーズに対応するためのソフトウェアを提供して、家計の目標を設定し、それを実行するための詳しい将来計画を立てる手助けをすることだ。

「その後も顧客が自分の計画の進捗を追跡するのを助け、将来必ず起きる財務状態の変化に合わせて自動的に調節します」とアゴスティーノ氏は述べた。

Monarchは2021年にウェブとiOS、Androidアプリのプライベートベータをスタートした。料金は月間9.99ドル(約1100円)または年間89.99ドル(約9900円)。同社は意識的に、広告掲載や顧客の財務データの販売を行わない方針をとった。

そういうアプローチは「ユーザーの金銭的利益と相容れません」とアゴスティーノ氏はいう。

「サブスクリプションモデルのビジネスは、その精神を守り、ユーザーの利益を私たち自身の利益を一致させられるものだと思いました」と彼は付け加えた。一般公開して以来、Monarchは週に約9%のペースで有料サブスクライバーを増やしている。

画像クレジット:Monarch

Monarchが開業したのはパンデミックの最中で、その不透明感は人々の家計にも伝搬したとアゴスティーノ氏は考える。

「多くのユーザーがMonarchの予測機能を、転職や別の都市や州への移住などさまざまな『仮説』を比較するために使っていることがわかりました」と彼は言った。

2021年7月、TechCrunchでは似たようなミッションを掲げるスタートアップのBodesWell(ボーズウェル)が、American Express(アメリカン・エキスプレス)と提携してカードホルダーに財務計画ツールを提供することを報じた。MonarchとBodesWellはどちらも顧客が財務計画と将来を描くのを手助けする点で似ている、とアゴスティーノ氏は語った。

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AccelのDaniel Lenive(ダニエル・レビン)氏は、Monarchに出会うまでは時代遅れでもMintを使い続けていたと語った。

この10年、財務サービスは劇的に幅を広げ、多くの人々が証券や暗号資産の口座を持つようになった。

Monarchはいくつかの理由で傑出している、とレビン氏は語る。その1つがサブスクリプション製品であることだ。

「Mintでいつも嫌だったのが、客観的に見て、誤ったクレジットカードを私に薦めることでした」とレビン氏はいう。「私の取引データをすべて知っているのだから、最も特典の多いカードを教えるべきでしょう。Monarchは、ユーザーにとって最善のことを広告のために犠牲にすることは決してありません」。

また、Monarchは顧客のためのインフラストラクチャーとして役割も担う。そのためには全員の財務状態をモニターしなくてはならない。

「預金、クレジットカード、証券取引、不動産、暗号資産などすべてを監視しなければなりません」と彼はいう。「Monarchは、それを実行することを約束しています。それは恐ろしく困難な問題であり、Monarchはこの分野では新しいにも関わらず、この方面で明らかに先行していると思います」。

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タグ:Monarch資金調達サブスクリプション

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

B2B決済をキャッシュレス、フィーレスにするPaystandが約55億円調達

個人がお金を送ったり受け取ったりするのはとても簡単で、たくさんのキャッシュアプリがある。しかし、ビジネスにおいて企業が10万ドル(約1100万円)を同じように送金するのは容易ではない。

Paystand(ペイスタンド)はこの状況を変えたいと考えている。カリフォルニア州スコッツバレーに本社を置く同社は、クラウドテクノロジーとイーサリアムブロックチェーンをエンジンとして使い、手数料(フィー)ゼロで企業間決済を可能にするPaystand Bank Network(ペイスタンド・バンク・ネットワーク)を構築した。

同社は、NewView CapitalがリードしたシリーズCで5000万ドル(約55億円)を調達した。ソフトバンクのSB Opportunity FundとKing River Capitalも参加した。これにより、同社の資金調達総額は8500万ドル(約93億5000万円)に達したと、Paystandの共同創業者でCEOのJeremy Almond(ジェレミー・アーモンド)氏はTechCrunchに語った。

2008年の経済不況の際、アーモンド氏の家族は家を失った。同氏は大学院に戻ることを決意し、商業銀行業務をどのように改善できるか、デジタルトランスフォーメーションがその答えになるかをテーマに論文を書いた。企業側の視点から自身の会社のビジョンを見つけ出し、Venmo(ベンモ)が消費者向けに提供しているものを、Paystandは中堅の法人企業の顧客の商取引に提供していると語った。

「収益はビジネスの生命線で、お金はソフトウェアになりましたが、収益以外はすべてクラウドにあります」と付け加えた。

アーモンド氏によると、企業の決済の約半分はいまだに紙の小切手で行われており、フィンテックでは2〜3%の取引手数料がかかるカードに大きく依存しているという。同氏は、10万ドル(約1100万円)の請求書を日常的に送付するようなビジネスでそれは維持不可能だと話す。Paystandでは、取引ごとの手数料ではなく、月々の定額制を採用している。

Paystandのプラットフォーム(画像クレジット:Paystand)

一般消費者向けのサービスでは、Square(スクエア)やStripe(ストライプ)といった企業が、買掛金管理に特化し、既存のインフラの上にビジネスプロセスソフトウェアを構築するという手法をとっていた。

Paystandの世界観は、売掛金側の方が管理が難しく、なぜか競合他社が少ないというものだ。だからこそ同社は、ブロックチェーンや分散型金融を原動力とするフィンテックの次の波に乗り、カードに代わる自律的でキャッシュレス、フィーレスの決済ネットワークを提供することで、125兆ドル(1京3750兆円)規模のB2B決済業界を変革しようとしているのだ、とアーモンド氏は語る。

3年間にわたってPaystandを利用している顧客は、平均で売掛金のコストを50%削減し、取引手数料を85万ドル(約9350万円)削減するといった利益を得ている。同社では、毎月のネットワーク決済額が200%増加しており、顧客数も過去1年間で2倍に増加した。

同社は、今回調達した資金でオープン・インフラへ投資し、事業の成長を続けていくとしている。具体的に、アーモンド氏は、B2B決済をはじめとするデジタルファイナンスを再起動し、CFOの守備範囲全体を再構築したいと考えている。

「こういうものがあって欲しいと20年前から望んでいました」アーモンド氏は語る。「時には、こうしたセクシーではない分野にこそ、最大のインパクトを与えられるものがあるのです」。

今回の投資の一環として、NewView CapitalのプリンシパルであるJazmin Medina(ジャスミン・メディナ)氏がPaystandの取締役に就任する。同氏はTechCrunchに対し、このベンチャー企業はゼネラリストではあるものの、フィンテックとフィンテックインフラに根ざしていると述べた。

同氏はまた、B2B決済の分野がイノベーションの面で遅れているというアーモンド氏の意見に同意し、中堅企業のキャッシュニーズをプロアクティブに管理するためにアーモンドが行っていることに「強い確信」を持っている。

「決済業界には広大なブルーオーシャンがあります。そして、あらゆる企業は競争力を維持するために完全にデジタル化しなければなりません」とメディナ氏は付け加えた。「デジタル化されていないために収益が伸び悩んでいるとしたら、そこには重大な欠陥があります。だからこそ、今がその時なのです」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:PaystandB2B資金調達キャッシュレス決済手数料

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

Visaが送金や為替のAPIデベロッパーCurrencyCloudを約1060億円で買収

Visa(ビザ)が参加したラウンドで8000万ドル(約88億円)を調達してから1年半、送金や為替などのサービスを動かすAPIのデベロッパーであるロンドン拠点のCurrencycloud(カレンシークラウド)がさらに金融サービス大手に近づいている。Visaは現地時間7月22日、CurrencyCloudを9億6300万ドル(約1060億円)と評価する取引で同社を買収すると発表した

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この評価額は最後の資金調達からかなりの飛躍だ。情報筋によると、直近の資金調達でCurrencyCloudは約5億ドル(約550億円)と評価されていた。

(VisaはすでにCurrencyCloudに出資しているため、実際には出資分が引かれた額を支払う)

CurrencyCloudは、マルチ通貨ウォレット、為替サービス、口座管理などを動かすのに同社のAPIを使っている500ほどの顧客を180カ国に抱える。ここにはMonzo、Moneze、Starling、Revolut、Dwollaといった大手スタートアップも含まれる。既存の顧客はそのままに、Visaは金融機関やフィンテックなど自社の顧客に幅広いサービスを提供すべく、また顧客のために新たなサービスを構築するために、為替事業強化でCurrencyCloudのテクノロジーを活用する。

「CurrencyCloudは、小さなスタートアップから多国籍企業まで、すべての人により良い明日を届けるよう常に努力してきました。世界経済で金がどのように動くのか再考することは、Visaに加わる今、さらにエキサイティングなものになりました」とCurrencyCloudのCEO、Mike Laven(マイク・ラヴェン)氏は声明で述べた。「CurrencyCloudのフィンテック専門性とVisaのネットワークの組み合わせにより、国境を超えて金を動かしている企業にさらに大きな顧客バリューを届けることができます」。

送金や通貨振替は金融サービスで一大事業となることが見込まれ、そのチャンスは拡大している。eコマースが特に過去18カ月、かなり国境を越えていること、そしてサプライチェーンも同様であることが要因だ(世界の零細企業の43%が2020年に何かしら国際貿易のようなものを行ったとVisaは指摘している)。そして取引を促進するクラウドベースのモバイルサービスの台頭で、将来の展望において顧客はこれまでになくグローバル化している。

と同時に、送金と通貨振替はディスラプトの機が熟している分野だ。既存のサービスは往々にして高コストで非効率的だ。これらの要素すべてがCurrencyCloudのような会社のお膳立てをしている。同社は他の金融サービスがよりスムーズに行われるようサポートすべく、そうしたサービスに埋め込むことができる通貨振替の新しいツールを構築した。

イグジットは、既存の大手金融会社が次世代の金融サービスへと進むにあたってイノベートして新たなサービスにすぐに取り掛かるのが困難なため、テクノロジーに大きく賭けている小さくて俊敏なスタートアップを取り込むという古典的な例だ。VisaがCurrencyCloudのテックをうまく統合して活用し、CurrencyCloudのチームと協業できるかはすでにテストされたところだ。2社は今回の買収取引の前に戦略的パートナーだった。

「CurrencyCloudの買収は、Visaが世界の金の動きを促進するためのネットワーク戦略のネットワークで実行するもう1つの例です」とVisaのグローバル財務責任者Colleen Ostrowski(コリーン・オストロウスキ)氏は声明で述べた。「顧客や企業は国際送金したり、送金を受け取ったりするときに透明性、スピード、シンプルさをますます期待するようになっています。CurrencyCloudの買収で我々はクロスボーダーの支払いに関する悩みの種を減らして顧客やパートナーをサポートし、クライアントの顧客のためにすばらしいユーザーエクスペリエンスを開発することができます」。

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タグ:Visa送金CurrencyCloud買収

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

フィンテックUpgradeがビットコインリワード付きのクレジットカードを発行

フィンテックスタートアップのUpgrade(アップグレード)は米国時間7月21日、新しいクレジットカードを発行する。Upgrade Bitcoin Rewards Cardは、Visa(ビザ)ネットワーク全体で機能する古典的なVisaクレジットカードだ。しかし、支払いのたびに1.5%のビットコインリワードを得ることができる。

Upgradeは、ビットコインリワード付きのクレジットカードを発表した最初の会社ではないが、広く利用できる最初のカードだ。申し込みが承認されれば、すぐにバーチャルカードを使い始めることができる。

BlockFiは、2020年12月にビットコインリワード付きの独自のクレジットカードを発表した。その後すぐにGeminiも追随した。しかし、いずれのカードもまだ広く利用できない。数週間前、BlockFiはウェイティングリスト上の人々を招待し始めた。そのため、一般での利用開始はすぐにやってくるはずだ。

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Upgrade Bitcoin Rewards Cardは、クレジットスコアに応じて500〜2万5000ドル(約5万5000〜275万円)の信用枠を提供する。Apple Pay(アップルペイ)とGoogle Pay(グーグルペイ)に対応している。Upgradeの他のクレジットカードと同様に、月々の手数料、遅延損害金、返品手数料はない。

画像クレジット:Upgrade

基本的にこの新しいカードは、Upgradeの既存のクレジットカードとほぼ同じように機能する。しかし、すべての購入に対し、1.5%をキャッシュバックではなく、ビットコインで受け取ることができる。特定のカテゴリー、パートナー小売業者、ポイントシステムはない。シンプルで上限のないキャッシュバックプログラムだ。

8.99〜29.99%の利率が設定されているが、Upgradeは、毎月の料金を24〜60カ月で返済できる分割払いプランにまとめることを推奨している。分割払いにすると、固定金利で毎月均等に支払うことになる。

「Upgrade Cardカードは、すでに年換算で30億ドル(3300億円)以上のクレジットを消費者に提供しました」と、共同創業者でCEOのRenaud Laplanche(ルノー・ラプランシュ)氏は声明で述べた。「今日から、誰もがUpgrade Bitcoin Rewards Cardに申し込み、他のUpgrade Cardと同様に手頃で責任あるクレジットを享受することができ、さらにビットコインを所有することで潜在的な上振れと楽しみを得ることができます」。

同社は、ビットコインリワードのためにNYDIGと提携している。今のところ、ビットコインを使って多くのことができるわけではない。持ち続けるか売却するかを選ぶことはできる。例えば、自分のビットコインを他のウォレットに移す方法はない。リワードを売却する場合は、1.5%の取引手数料がかかる。

また、このカードは50州すべてで利用できるわけではないことも留意すべき点だ。ハワイ、インディアナ、アイオワ、ルイジアナ、ネブラスカ、ネバダ、ニューハンプシャー、ノースカロライナ、ワシントン、ウェストバージニア、ウィスコンシンの各州およびコロンビア特別区の顧客は、現時点ではUpgrade Bitcoin Rewards Cardに申し込むことができない。

再びUpgradeは、トップ・オブ・ザ・ファネル戦略として、製品のポートフォリオを多様化している。クレジットカードの種類の多様化が、この先、より多くのパーソナルローン獲得ににつながるはずだ。

公平を期すためにいうと、Upgradeは、毎月の残高支払い時にリワードを受け取ったら、債務を返済することを奨励している。しかし、同社は、個人がパーソナルローンを必要するときにいつでも同社のことが浮かぶような顧客関係を築きたいと考えている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:BitcoinクレジットカードUpgrade暗号資産

画像クレジット:Upgrade

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

カード決済のSquareがビジネス向け銀行口座を提供開始

一歩ずつ、Square(スクエア)は新しい銀行を一から作っている。米国時間7月20日、同社は新たなプロダクト、Square Banking(スクエア・バンキング)の提供を開始した。当座預金口座と貯蓄口座にデビットカードとローンを組み合わせたサービスだ。Square Bankingを使えば金銭のことはすべてSquareを通じて簡単に管理できる、とスモールビジネスを説得したいと同社は考えている。

当初決済処理サービスとして始まったSquareは、2019年にデビットカードをビジネス顧客向けに提供した。こうすることでビジネスオーナーは、Square支払いを通じて得られたお金を別の銀行に送金することなく使い始めることができる。

この日の発表で、同社はデビットカードからさらに拡大して、当座預金口座と貯蓄口座を提供する。売上があるたびに、オーナーはそのお金を新しいSquare当座預金口座で利用できる。月間利用手数料や信用調査、最低残高などはない。

そしてこれは従来どおりの当座預金口座なので、自分専用の口座と銀行支店コードをもらえる。つまり、自分の口座で資金を直接入出金できる。舞台裏では、現在当座預金口座はSutton Bankが提供しており、預金はFDIC(連邦預金保険公社)に保証されている)。

Squareは貯蓄口座も提供開始した。自社の決済サービスを通じて顧客の売上を管理していることを活かしたサービスだ。利用者はSquareによる販売売上から貯蓄する割合を決めることができるので、毎日考えることなくお金を貯められる。売上税、新規の機器など異なるビジネスニーズごとにフォルダーを作ることもできる。

現在Squareは、年利0.50%を提供しているが、この利率が保証されているのは2021年末までだ。Square内の貯蓄口座と当座預金口座の間の資金移動は無料で即時に実行される。貯蓄口座もFDICに保証されている。

画像クレジット:Square

さらにSquareは、ビジネスローンを同社が提供する他のバンキングサービスと統合する。ローンサービスの名称であるSquare Capital(スクエア・キャピタル)ではなく、「Loans」(ローンズ)と呼んでいる。Squareは、Square Financial Services(スクエア・ファイナンシャル・サービス)の承認手続きを最近完了し、この融資商品が今後の会社戦略で重要な位置を占めることを明らかにした。

従来のビジネローンと比べて、Squareは返済方法を単純にした。日々のカード取引から一定のパーセンテージを天引きするので、売上の多い日には多く、少ない日には少なく返済する。ただし、ビジネスを一時的に閉鎖した時は60日ごとに最低金額を返済しなくてはならない。

Square Bankingは、現在対面販売やオンライン販売の決済手続きにSquareを使っているスモールビジネスにとって特に興味深いサービスだ。その人たちはSquare以外のビジネス銀行口座も持っている可能性が高い。しかし、Squareがバンキング製品に機能を追加し続けるうちに、別の口座の利用頻度がどんどん減っていくことに気づくかもしれない。

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タグ:Square

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ユーザーが課題をクリアすることで請求書の支払額を減らせるPlay2Payのサービスとは?

決済サービスにゲーミフィケーションを取り入れることは、特に新しい概念というわけではない。

多くの企業がゲーミフィケーションとペイメントを独創的な方法で組み合わせようとしている。米国時間7月15日、そのような企業の1つであるPlay2Pay(プレイツーペイ)が、シリーズAラウンドで1300万ドル(約14億3000万円)の資金を調達した。

マイアミを拠点とするこのスタートアップ企業のミッションは単純明快だ。消費者が、ゲームをしたり、動画を見たり、アンケートに答えたりといったその日の課題をクリアすることで、請求額を減らせるようにしたいと考えたのだ。その減額率は平均30%(!)にもなるという。

Play2Payは、設立から5年間はブートストラップで運営されていたが、2020年6月にシードラウンドで個人のエンジェル投資家から、初めての外部資本となる750万ドル(約8億2000万円)を調達した。今回のシリーズAラウンドはTelesoft Partners(テレソフト・パートナーズ)が主導し、Harbor Spring Capital(ハーバー・スプリング・キャピタル)の他、元AT&T副会長のRalph de la Vega(ラルフ・デ・ラ・ベガ)氏、元Reuters(ロイター)CEOのTom Glocer(トム・グローサー)氏、Madison Dearborn Partners(マディソン・ディアボーン・パートナーズ)の共同創業者でシニアアドバイザーのJim Perry(ジム・ペリー)氏、Virtusa(バートゥサ)の創業者で元CEOのKris Canekeratne(クリス・カネケラトネ)氏などの個人投資家が参加した。

この決済プラットフォームは、企業と消費者の間の「価値交換」を仲介し、注目度やエンゲージメントを請求書の支払いに利用できる通貨に変換するという。その一方でブランド企業は、商品やサービスを宣伝する新しい方法を得られる。

Play2Payの創業者でCEOを務めるBrian Boroff(ブライアン・ボロフ)氏は「プリペイド携帯電話のユーザーには、携帯電話サービスの料金を支払うための代替手段が与えられるべきであり、無線通信事業者は、広告費を使った新たな宣伝モデルを採用するべきである」というビジョンに基づき、2015年に同社を起ち上げた。

そして現在、同社は自らを、大手サービスプロバイダーや金融機関の決済プラットフォームに直接統合された、世界初の「広告支援型決済レール」と位置づけ、ユーザーのエンゲージメントを請求書の支払いに直接変換する唯一の企業であると主張している。

画像クレジット:Play2Pay

この「オプトイン」サービスは、AT&Tメキシコ、米国のCricket(クリケット)、ブラジルのTIM、インドネシアのlndosat Ooredoo(インドサット・オレドー)、英国のLycamobile(ライカモバイル)などの通信事業者と提携し、それらの国々で1億人以上の携帯電話加入者に提供されている。

この報酬型アプローチは、ユーザーの心に響いているようだ。2020年6月から2021年6月の間に、このスタートアップのARR(年間経常収益)は300%近くに急増したと、通信業界のベテランであるボロフ氏は述べている。

同氏によると、プラットフォームに参加したユーザーのうち、約25%が毎日報酬を得ているとのこと。一方でサービスプロバイダーは、Play2Payプラットフォームで加入者にエンゲージメントすることによって、最大17%の収益拡大を実現したという。

「当社の事業モデルはB2B2Cです。世界中のティア1サービスプロバイダーが当社の請求書支払い機能を直接統合しており、その顧客層にサービスを宣伝することで、さらに利用者を増やしています」と、ボロフ氏はTechCrunchに語った。

そしてエンドユーザーは、価値と引き換えに自分のターゲティング設定を共有する。これを利用することで、ブランド企業やモバイルアプリの開発者は、Play2Payのユーザーに自社の製品やサービスを宣伝する際に、より多くの情報を得ることができる。

Play2Payのプラットフォームは、サービスプロバイダーやマーチャントには無料で提供されており、決済にはインターチェンジ、アクワイアラー、チャージバック、ゲートウェイなどのコストや手数料が掛からない。

その代わり、Play2Payはブランド企業やモバイルアプリの開発者から収益を得ている。これらのブランドや企業は、自社の製品やサービスを宣伝するために、Play2Payのモバイルユーザーへのアクセス料を支払うという仕組みだ。例えば、あるモバイルゲーム会社は、Play2Payのアプリから自社のアプリをダウンロードして一定期間(2時間など)ゲームをプレイしたユーザー1人につき、100ドル(約1万1000円)をPlay2Payに支払う。エンドユーザーとモバイルゲーム会社の双方が、目標達成に向けた進捗状況を把握できるように、Play2Payはその技術とパートナーネットワークを通じて、アトリビューション・トラッキングを行っている。それ以外のフォーマットとしては、動画の視聴やアンケートへの回答、そして従来型のネイティブ広告などがある。

これらの収益はすべてPlay2Payによって集約され、その大部分はアプリ内通貨の形でエンドユーザーに還元される。そして残りは、Play2Payプラットフォームを広める無線通信事業者パートナーなどのサービスプロバイダーと、サービスの運営と支払い処理を行うPlay2Payに分配される。Play2Payは、すべての現金を収集し、それに応じて各関係者に支払いを行う。

同社は今回調達した資金を、製品開発、人材採用、パートナー・エンゲージメントなどに活用する予定だ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Play2Pay資金調達決算ゲーミフィケーション

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アメリカン・エキスプレスがBodesWellと提携しファイナンシャルプランニング分野に進出

American Express(アメリカン・エキスプレス)は、BodesWell(ボーズウェル)という7人組のスタートアップの協力を得て、ファイナンシャル・プランナーとしての活動に乗り出すことになった。

この大手クレジットカード会社は先日「My Financial Plan(マイ・ファイナンシャル・プラン、MFP)」と名づけられた、初のセルフサービス型デジタル・ファイナンシャル・プランニング・ツールの試験運用を開始した。今回の6カ月間の試験運用は、7月11日よりアメックスのカード会員約2万5000人を対象に始まっている。

アメリカン・エキスプレスは2020年末に、投資部門のAmex Ventures(アメックス・ベンチャーズ)を通じ、ひそやかにBodesWellに出資した。それ以来、金融サービスの巨大企業は小さなスタートアップと手を組み、ユーザーのためのファイナンシャル・プランニング・ツールを開発してきた。この新製品は、ユーザーが自分の財務状況の全体像を把握し、住宅購入や引退といった人生における大きな目標の達成を支援するように設計されている。

TechCrunchは、新製品につながる投資と戦略を主導したAmex VenturesのJulia Huang(ジュリア・ホアン)氏と、BodesWellの共同創業者でCEOのMatthew Bellows(マシュー・ベロウズ)氏に話を聞き、詳細な情報を得た。

実は2人は、2019年にある委員会で同席した際に出会ったという。

「丸投げの貯蓄ツールではなく、自分の経済的な全体像を理解して、人生の決断がもたらす経済的な影響を計画するために使える全体的なツールという点に惹かれました」と、ホアン氏はTechCrunchに語った。

これまで70社以上のスタートアップを支援してきたAmex Venturesは、BodesWellへの出資を決定する前に「この分野をかなり広範囲に査定した」とホアン氏はいう。

ホアン氏は、ベロウズ氏と彼のスタッフを、アメックスのデジタルラボのチームに紹介し、アメックスの顧客向けに特化した製品の共同開発に乗り出した(ベロウズ氏はボストンを拠点としているが、同氏によればこのスタートアップは「グローバルに展開している」とのこと)。

「私たちの目標は、詳細な洞察と予測を提供し、全体的な計画を支援することで、カード会員のファイナンシャル・プランニングを民主化することです」と、ホアン氏はTechCrunchに語っている。

画像クレジット:Amex Ventures

ベロウズ氏は、クライアントや顧客が自らのファイナンシャル・プランを構築できるようにすることを目的として、2019年初頭にBodesWellを起ち上げた。

「多くのファイナンシャル・プランニング・ソフトウェアは、ファイナンシャル・アドバイザーを対象としており、彼らが実行する必要があります」と、ベロウズ氏はいう。「だから、ほとんどの人は、ファイナンシャル・プランニングの恩恵を受けることができません。(中略)私たちの願いは、より多くの人にその恩恵を拡大することです」。

BodesWellは、ユーザーにファイナンシャル・プランの構築の仕方を案内し、Plaid(プレイド)を介して他の財務情報と同期させることで「リアルタイムで更新」できるようになるため、より効果的に機能すると、ホアン氏はいう。

このツールは「収入、資産、支出、負債など、キャッシュフローを総合的に考慮し、ユーザーがドラッグ&ドロップでライフイベントを計画できるようになっています」と、ベロウズ氏は述べている。

米国では、約8500万の家庭がファイナンシャル・プランナーをつけていないと言われている。その理由は、プランナーの意図に対する不信感や、単にそのプロセスに困惑してしまうためなど、さまざまだ。

現在、このMy Financial Planは試験的に無料で提供されているものの、今後有料化するかどうかはまだ決まっていない。

「私たちはまず、この製品のお客様に対するエンゲージメントとパワーを測っているところです」と、ホアン氏はTechCrunchに語っている「私たちは、この製品がお客様の心に響くものであることを確認し、より多くの人々にとって役に立つものにするために、繰り返し提供していきたいと考えています。私たちの第一の目標は、お客様がこれを使い、価値を見出してくださることです」。

アメックス・ベンチャーズは、投資先企業の3分の2以上と「何らかのパートナーシップ」を結んでいるという。

「我々が出資するスタートアップのエコシステムに価値を提供するため、そのような形でポートフォリオに関与したいと私たちは考えています」と、ホアン氏はいう。

BodesWellはこれまでに、Cleo Capital(クレオ・キャピタル)、Ex Ventures(Exベンチャーズ)、Riot.vc(ライオットVC)、GritCapital(グリットキャピタル)、Argon Capital(アルゴン・キャピタル)などの投資会社や、HubSpot(ハブスポット)のCEOであるBrian Halligan(ブライアン・ハリガン)氏、Kintent(キンテント)のCEOであるSravish Sridhar(スレイヴィシュ・スリダー)氏などのエンジェル投資家から約150万ドル(約1億6500万円)を調達している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:American Express

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images (Image has been modified)

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)