ファイザーの元科学主任が設立したUnlearn.AIは「デジタルの双子」で臨床試験の高速化と改善を目指す

医療研究の分野では、双子は昔から重要な役割を果たしてきた。特に臨床試験では、遺伝的に近い2人の片方に処置を施すという方法で、双子は治療の有効性の測定に寄与している。米国時間4月20日、Pfizer(ファイザー)の元科学主任が設立し、AIを使ってこのコンセプトをデジタル化する方法を開発したスタートアップが、その研究をさらに進めるための資金を得たと発表した。臨床試験の検査に使用する患者の「デジタルツイン(デジタル上の双子)」のプロファイルを構築する機械学習プラットフォームUnlearn.AI(アンラーンAI)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した。

このラウンドは8VCが主導し、前回の投資企業であるDCVC、DCVC Bio、Mubadala Capital Venturesも参加している。

DiGenesis(ダイジェネシス)というこのスタートアップのプラットフォームは、当初は神経疾患、具体的にはアルツハイマー病と多発性硬化症に適用するためのものだったのだが、これらは有効な治療方法がいまだ確立されておらず、既に発症している患者を対象にした臨床試験の実施が非常に難しい。

Unlearn.AIは新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック関連の医療にはほとんど関わっていないものの、臨床試験の改善がなぜ重要なのかを知るいい機会を与えてくれた。この新型ウイルスに対抗するワクチンや治療法をみんなが緊急に競い合う中で、臨床試験のより効果的なアプローチの必要性が注目されている。そこはAIが力を発揮できる分野だ。

Unlearnは、現在のビジネスにおける提携先を公表していない。また実践的な臨床試験を、実際にどこまで実現できているのかも不明だ。今回の資金は、商業的展開に少しだけ近づくためのものと思われる。

「今回の資金調達は、私たちの成長にとって重要な布石だ。既にデジタルツインの研究を開始し、強力なエビデンスでその価値を実証し、臨床試験での成功の可能性を高めつつある規制当局との協力関係を大幅に前進させる力となります」とUnlearn.AIの創設者でCEOのCharles K. Fisher(チャールズ・K・フィッシャー)博士は声明の中で述べている。

「臨床試験は非常に困難な局面にあり、ここ数週間は深刻化する一方です。未来志向の投資家や提携企業の支援をいただき、極めて有能な私たちの人材をさらに成長させ、世界初のデジタルツインのアプローチを支える科学技術をさらに発展させられることを、とてもうれしく思っています」。

フィッシャー博士は、まさにテクノロジーと医療研究の集合体の中を歩んできた。製薬大手のファイザーで科学主任を勤めた経歴に加え、Leap Motion(リープモーション)で働いていたこともある。それ以前には、長年にわたり学術界にて生物物理学の勉強と研究を重ねていた。

Unlearnは昔ながらの機械学習の課題のひとつとして、いわゆるデジタルツインを構築するというアイデアに取り組んでいる。そこでは「デジタルツインを生み出すための疾病専用の機械学習モデルと仮想診療記録を構築するための、患者数万人分もの臨床試験のデータセット」が使われている。

これらは、単なる患者プロファイルとは異なる。デモグラフィック、臨床検査、生体指標に従って人と人とをマッチングさせてある。臨床試験と検査に必要な類似の人間、できれば双子を探す手間を、AIベースの双子を作ることで削減したいという考えに基づくものだ。

Unlearnは、2017年からこのプラットフォームの開発に取り組んできたが、双子(そして医療研究において遺伝子構造が類似した1組の人たち)を使った病理学や治療法の研究は、もう数十年前から始まっている。面白いことに、ある大人気の新型コロナウイルス監視アプリは、ロンドンのキングズ・カレッジ病院と、アメリカのスタフォード大学とマサチューセッツ総合病院が共同で行った長期にわたる双子の調査から生まれている

AIで「人」を作り出し、薬の有効性をテストする研究が広がっているが、それはコンピューターとアルゴリズムを使って薬品の組み合わや治療法を割り出しテストするという、さらに大きな課題へとつながる。以前は、長い時間と大きな資金を費やし、手で行ってきたであろうことだ(医療とは別の応用例として、製品開発がある。一般消費財のメーカーは、新しい石鹸やさまざまな製品の調合をAIプラットフォームで行っている)。

「Unlearnによるデジタルツインの先駆的な利用により、プラシーボを与えられる患者の数を減らすことができ、臨床試験にかかる全体的な時間も短縮できます」と8VCのプリンシパルFrancisco Gimenez(フランシスコ・ヒメネス)博士は声明の中で述べている。「医療とテクノロジーの交差点の投資家として、私たちは、最先端のコンピューター技術と革新的なビジネスモデルを組み合わせて医療の有意義な改善に取り組む企業に情熱を注いでいます。8VCはUnlearnをパートナーに迎え、無作為化臨床試験以来となる薬品の認可プロセスへの大きな挑戦に乗り出せたことで、大変に興奮しています」。ヒメネス氏は今回のラウンドにより、Unlearnの役員に加わった。

画像クレジット: Emsi Production Flickr under a CC BY 2.0 license.

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

数百名の学者たちがプライバシーに配慮したコロナウイルス接触者追跡を支持

世界中の何百名もの学者たちが、コロナウイルスの広がりを理解するための接触者追跡システム(contact tracing systems)がプライバシーを重視することを歓迎している。

300名近くの学者が署名し、月曜日(米国時間4/20)に公開された書簡が、自分などがCOVID-19感染者と接触したかを知るためのオプトインで非集権的な方法を共同開発するという、最近のAppleとGoogleの発表を賞賛している。

学者たちによると、その接触追跡アプリは、Bluetoothによる追跡を自動的に行い、位置データを集めて中央的な場所に保存するアプリに比べて、はるかにプライバシーをしっかり保護する。

書簡はこう言っている: 「接触追跡はよく理解されている疫病対策ツールだが、従来は手作業でやっていた。スマートフォンの接触追跡アプリは、状況によっては手作業による接触追跡よりも効果的だ。しかしその効果性に対しては異論もある。まず、その実装はユーザーのプライバシーを護るものでなければならない。そのことが、他の多くの問題の対策にもなる。たとえば、そんなアプリを利用して、望まざる差別や監視が行われがちだ」。

この学者たちからの推奨は、いちばん重要なタイミングでやってきた。個人のコロナウイルスへの接触を追跡する方法は、いろいろある。しかし非集権的なシステムは追跡データを一箇所に置かないから、プライバシー保護が優れている。しかし学者たちによると、データの集権的中央的な保存は「人びとに関する情報の侵害的な再構築を許すから、議論の余地なく排除すべきだ」、という。そしてそれは、「外部からの検査が可能でプライバシーの保護ができる設計になってなければならない」。

さらにまた、「現在の危機を口実に、人びとのデータを大量に集められるツールを作ってはならない。今だけでなく、今後においても」。

この書簡の数日前には、この同じ学術グループが、PEPP-PTと呼ばれる同様の接触追跡プロジェクトのサポートを取り下げた。このツールは、詳細が不詳の7つの国が使用している。そのうちの2か国、スペインとスイスは、非集権的な接触追跡ソリューションを求めていた。しかし、蓋を開けてみるとPEPP-PTは、プロトコルが独自規格の集権的中央的なもので、そのプロジェクトに関わった一部の学者も、オープンでないし透明性を欠くとして、プライバシーを重視するDP-3TプロトコルやAppleとGoogleのクロスプラットホームなソリューションの方をサポートするようになった。

この書簡に署名した学者の一人であるサリー大学のAlan Woodward氏はTechCrunchに、書簡は学術世界のコミュニティが「正しいやり方」と信ずるものを示している、と語った。

「これまで、この世界でこんなものを見たことがない」、とWoodward氏は語る。「わずかな人たちでなく、多くの人が懸念していることの表れだ。やり直しは困難だから、政府もこの声をよく聴いてから対策に着手してほしい」、とも。

関連記事: 新型コロナの接触者追跡とはどのようなものか?

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

マイクロソフトが新型コロナの元患者に血漿提供の可否を問うボットを開発

新型コロナウイルス(COVID-19)から回復した元患者の血液から取り出す血漿は、世界的パンデミックをコントロールしようと展開されている取り組みの中で、差し当たって活用できる有効な手法となる可能性を秘めている。米食品医薬品局(FDA)はすでに対象となる個人に献血を広く呼びかけている。そして今度はMicrosoft(マイクロソフト)がCoVIg-19 Plasma Alliance(ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金の一部を拠出している)の代理でオンラインスクリーニングツールを構築した。

マイクロソフトが財団のために開発した「CoVIg-19 Plasma Bot」は同社がテクノロジーを駆使して作った新型コロナ関連の最新ボット事例となる。同社が米疾病予防管理センター(CDC)向けに手がけた症状自己チェックサイトは、米国で初期に大規模展開されたものの1つだ。Plasma Botは個人が生物学上、そして健康上、血漿提供の条件に合致するか、個人が貢献したいかどうか、献血センターでの血漿回収に参加できるかどうかを判断するために、いくつかの簡単な質問をする。

新型コロナに感染し、完全に回復した人の血液から分離される液体である回復期血漿の使用は、多くの科学者や研究者が模索している治療方法だ。血漿の使用方法は主に2つある。1つは、予防や素早い回復のための免疫アップを目的に新型コロナ患者やリスクの高い人に直接血漿を注入するというもの。もう1つは高度免疫治療と呼ばれる治療法の開発だ。容易かつ効率的に大規模展開できるかもしれない治療法を開発するために提供された血漿から抗体を集める。

回復期血漿にかかる開発の試験や療法研究で最大のボトルネックが、血漿そのものだ。新型コロナウイルス感染症の元患者で完全に回復し、献血に必要な条件をクリアした人からしか集められない。

新型コロナウイルスを克服するために研究や開発が進められている他の多くの治療法と異なり、回復期血漿は他の呼吸器感染症の治療で既に効果が確かめられており、長く活用されてきた歴史がある。

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(翻訳:Mizoguchi

神戸市が新型コロナと戦うスタートアップを募集、2営業日以内のオンライン一次審査後に社会実装へ

神戸市は4月20日、新型コロナウイルス(COVID-19)蔓延に伴う経済停滞や市民生活支援などのソリューショを有するスタートアップを募集することを発表した。本日から募集を開始し、最短2営業日で一次審査を実施し、その後1週間をメドを2次審査と実証実験の開始時期を随時連絡するという、スピード感のあるプログラムだ。つまり、手を揚げたスタートアップから順に、1次審査、2次審査を通過すれば神戸市と共同で実証実験を進められる。募集終了の期限は現在のところ決まっていない。

募集テーマは以下のとおりで、対象となるスタートアップは創業年数や資金調達のステージを問わない。新型コロナウイルスと戦えるサービスや製品を開発しているスタートアップすべてが対象だ。同プログラムは専用のウェブページから申し込める。

  • データ解析
  • 感染恐れ確認
  • 困窮事業者支援
  • 市民生活支援などのための技術

採択企業への支援内容は以下のとおり。

  1. 市担当部署とのサービス開発に向けた調整
  2. 実証実験の実施協力
  3. 開発のための支援金提供(上限50万円/チーム)
  4. 成功モデルについての早期実装をサポート

審査により選ばれたスタートアップへは1件あたり上限50万円の事業資金が神戸市から提供されるほか、市民によるテスト利用や市役所業務の中での試行導入・実証実験などが可能になる。実証実験に成功したモデル(製品、サービス)については神戸市での実装も検討する。

担当者によると、このプログラムは4月上旬に発案し、神戸市役所でも異例のスピードで実現に漕ぎ着けたという。同市は2018年から柔軟な発想や優れた技術力を持つスタートアップと社会・地域課題を詳しく知る職員が協働して最適な解決手法を見出し、サービスとして構築・実証までを支援する「Urban Innovation KOBE」(UIK)と呼ばれる取り組みを進めており、今回のプログラムもUIKの枠組みの中で実施される。

そのほか神戸市は、米国サンフランシスコのベンチャーキャピタルである500 Stattupと共同開催のアクセラレーションプログラム「500 KOBE ACCELERATOR」を過去4年開催しているほか、2019年11月には、国連の機関であるUNOPS(United Nations Office for Project Services、国連プロジェクトサービス機関)との間で、テクノロジーを活用してSDGs(持続可能な開発目標)上の課題解決を目指すグローバルイノベーションセンター(GIC)の開設に向け、基本合意書(MOU)を締結。2020年4月にはUber Eatsとの提携による飲食店のデリバリーサービスの開始支援を始めるなど、スタートアップ企業との関わりが深い。

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接触者追跡とはどのようなものか?

コロナウィルスの蔓延を遅らせるために私たちが使える最良のツールの1つは、既に耳にしたことはあると思うが、接触者追跡(contact tracing)だ。しかし、接触者追跡とは正確には何であり、誰がどのようにして行うものなのだろうか、そしてそれについて心配する必要はあるのだろうか?

手短に言うなら、接触者追跡とは、潜在的な接触可能性に基いて他の人よりもリスクの高い人を予防的に発見し、可能であれば通知し、もし必要ならば隔離することによって、ウィルスの蔓延防止に役立てようとするものだ。これは実証済みの技術であり、スマートフォンはそれをさらに効果的にするのに役立つ ―— ただし、プライバシーおよびその他の懸念を払拭できる場合に限るのだが。

接触者追跡は人間の記憶に頼るものから機械の記憶へと移行

医療システムが伝染病の性質の理解を深める中で、これまでも接触者追跡は何らかの形で行われてきた。感染症と診断された人は、その人から感染した可能性のある人を特定するために、あるいはその人自身が感染した場所を特定するために、過去数週間に誰と接触したかを尋ねられる。

しかしごく最近まで、この手続きは非常にストレスの高い状況に置かれてしまった人が思い出す記憶に大きく依存してきた。そもそも当人はそのような状況に置かれるまでは、おそらく自身の動きや他人とのやり取りに特別な注意を払っていなかった筈なのだ。

この結果、接触者のリストは役に立つことは間違いないものの、完璧からは程遠いものとなる。そうした人びとが追跡できて、さらにその先の接触者も同様に追跡できれば、綿棒の1本も血液の1滴も使うことなく、感染可能性のネットワークを構築できるようになり、命を救ったり、重要な資源をより適切に割り当てることができるようになる。

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現代のテクノロジーなどを動員することで、今はすべてが変わったと思っているかもしれないが、実際のところ、現在病院で行われている接触者追跡はほとんどすべてが人間の記憶に頼るものだ。100年前から使っているものと変わりはない。

確かに、過去10年の間に私たちの周りに組み立てられた巨大なデジタル監視装置は、この種の接触者追跡を簡単に達成できるようになっているように思えるが、実際には、クリックしたり購入したりする可能性のあるものを追跡する用途以外には、びっくりするくらい役に立たないのだ。

都市全体に広がる多数のカメラとソーシャルメディアによって暗黙的に収集された位置データから、感染したひとの1週間の動きをつなぎ合わせることができたら、それは役に立つかもしれないが、そうしたシステムが悪用される可能性を考えると、それがそれほど簡単に実現できないことには感謝しなければならないだろう。他の、それほど悲惨ではない状況下でも、デジタルレコードから人物の正確な動きや接触を追跡する機能は、よくても不気味な存在であり、おそらくは犯罪的な匂いがする。

しかし、悪辣なデータ収集者があなたの動きや興味を利用して、あなたの知識や同意なしに広告であなたをターゲットにする場合と、世界的なパンデミックの流れを変えるために、日常的テクノロジーの中で禁じられていた機能を、人びと自身が情報を得た上で限定的な方法で利用することを選択する場合とでは、全く事情が異なる。そして、それこそが、現代のデジタル接触者追跡が目的とするものだ。

Bluetoothビーコン

現代のすべての携帯電話は、無線電波を使用して、携帯基地局、Wi-Fiルーター、そして他の電話と、お互いにデータを交換する。これらの送信だけでは、誰かがどこにいるのか、または誰が近くにいるのかを知るにはあまり良い方法とは言えない。Wi-Fi信号が確実に伝わるのは30から60メートルほどで、携帯の電波の場合は数キロほどだ。その一方、Bluetoothは設計上短距離(良好な受信が可能なのは約10メートル)であることが想定されていて、信号が急速に減衰するため、遠くからの迷子の接続を捕捉する可能性は低い。

私たちは皆、ワイヤレスイヤフォンが電話から音楽を受信するためにBluetoothを使っていることを知っているが、実際その用途は非常に大きな部分を占めている。しかし設計上、Bluetoothは常に、他のBluetooth対応デバイスを探して接触を試みている。このことによって、車はあなたが乗車したことを認識したり、スマートフォンは近くのスマートホームデバイスを検出できたりするのだ。

Bluetoothチップはまた、近くを通る他の電話やデバイスと、あなたが知らないうちに簡単な交信を行っている。そして相手が認識されない場合には、それぞれのメモリからできるだけ早くお互いを削除する。しかし、もし削除が行われなかったとしたらどうだろう?

世界中でテストされ展開されているタイプの接触者追跡機能は、現在、あなたの携帯電話がすでに、常時送受信しているものと非常によく似たBluetooth信号を使用している。違いは、接触した他のデバイスを、自動的に忘れないということだけだ。

システムが正常に機能していると仮定すると、ある人が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で病院に来たときに行われることは、基本的には手作業による接触者追跡のデジタル強化バージョンだ。人間の間違う可能性のある記憶を照会する代わりに、はるかに信頼性の高い電話の記録が照会される。それは最近接続できるほど十分に近づいた他の携帯電話を忠実に記録しているからだ(後で説明するように匿名で)。

それらのデバイス(そして、それがデバイスであって、人間ではないことに注意することが重要だが)は、現在COVID-19と診断された人の近くに最近いたことを、数秒以内に警告されることになる。受け取る警告には、影響を受けた人物が次に何ができるかに関する情報が含まれている。たとえば、アプリをダウンロードする、スクリーニングのために電話をかける、あるいは検査のために近くの場所を見つけるといった情報だ。

こうした接触者追跡手段は、その容易さ、迅速さ、および包括性によって、ウイルスの蔓延を阻止するのに役立つ優れた機会を与えてくれる。だとしたら、私たちは何故既にそれを利用していないのだろう?

成功と潜在的な不安

実際、上記の方法(またはそれに非常によく似た方法)を使用したデジタル接触者追跡は、米国やヨーロッパよりも早々とウィルスの攻撃を受けた東アジアで多数のユーザー相手に実装されていて、明らかに良い効果を見せている

シンガポールでは、TraceTogetherという名前のアプリが、政府によって接触者追跡の公式手段として推奨されている。韓国では、診断が下されたことがわかっている人々を追跡するための、いくつかのアプリが自発的に採用された。台湾は、高度に集中化されたヘルスケアシステムのデータを、数年前のSARSの発生中に稼働を始めた接触者追跡システムと突き合わせることができた。また中国本土では、WeChatやAlipayなどの普及率が極めて高いサービスを通じて、さまざまな追跡手順が実装されている。

関連記事:Outrunning COVID-19 twice

これらのプログラムはまだ進行中で、その有効性について結論を出すのは時期尚早だが、少なくとも伝わってくる話によれば、対応を改善しウイルスの拡散を制限することができたように思われる。

しかし、東アジアは米国とは非常に異なる場所だ。無数の理由から、台湾のシナリオをそのままここに(またはヨーロッパやアフリカなどに)適用することはできない。また、政府や民間企業の意図に懐疑的な人々にこの種の追跡に応じてもらうためには、プライバシーやセキュリティなどへ対する、もっともな疑問に対して答えを出しておく必要がある。

現在、米国ではいくつかの取り組みが行われている。現在のところ最大のものは、競合同士であるAppleとGoogleのコラボレーションだ。両社は携帯電話のオペレーティングシステムに追加できる、クロスプラットフォームの接触者追跡方法を提案している。

彼らが提案したシステムは、上記のようにBluetoothを使用するものだが、重要な点はそれを個人の身元と紐付けることはないということだ。携帯電話には独自に一時的なID番号が与えられ、他のデバイスと接触した際に、その番号が交換される。これらのID番号のリストは収集されてローカルに保存され、クラウドなどとは同期されない。そして、番号自身も頻繁に変化するため、どの番号もデバイスまたは場所に紐付けることはできない。

もしある人がウィルスに感染していると診断された場合、そしてそのときのみに、(人ではなく)病院が、接触者追跡アプリをアクティブ化することを許され、アプリがその患者の携帯電話に保存されているすべてのID番号に、通知を送信する。通知には、COVID-19と診断された人の近くに最近いたことが示される。繰り返すが、これは電話によって生成されたID番号であり、個人情報には関連付けられていない。前述のように、通知を受けた人びとは、妥当と思われる行動をとることができる。

MITも非常によく似たやり方で機能するシステムを開発しており、一部の州では居住者の間で推奨を始めたと伝えられている。

当然のことながら、この単純で分散化された、一見安全なシステムにも欠点がある、Markupのこの記事が良いまとめを提供しているので、以下にそれらを更に要約して示すことにする。

  • それはオプトイン方式である。 もちろん、これは長所でもあり短所でもあるが、多くの人が参加しないことを選択する可能性もあることを意味し、最近の接触リストの包括性を制限してしまうかもしれない。
  • 悪意のある干渉に対して脆弱である。 特にBluetoothは安全ではない。つまり、充分に能力のある攻撃者がいる場合、このやり方を悪用できる方法が複数有りえることを意味している。たとえば、Bluetooth信号を収集して模倣したり、市内を走り回ってその携帯電話を多数の携帯電話に「接触」させることができる。
  • 偽陽性や偽陰性につながる可能性がある。 プライバシーを維持するために、他者に送信される通知には最小限の情報しか含まれていないため、彼らはいつ、どのようにして接触したのか疑問に思うことになる。「4日前にこの人の隣に5分間ほど立った」とか、「ブロードウェイでこの人のそばをジョギングして走り抜けた」といった詳細は与えられないからだ。詳細が与えられないことで、人びとがパニックに陥って理由もなくERに駆け込んだり、警告を完全に無視したりする可能性がある。
  • 匿名性はかなり高いが、真に匿名なものはない。 システムは最小限のデータで動作するように見えるが、誰かがそれを手に入れれば、そのデータは依然として悪意のある目的に使用される可能性がある。大量のデータの非匿名化は、事実上現在データサイエンスの研究対象領域であり、こうした記録は、どれほど匿名のように見えたとしても、他のデータと相互参照して感染者を浮かび上がらせたり、プライバシーを侵害させたりする可能性がある。
  • データがどう扱われるかが明確ではない。 このデータは後に保健当局に提供されるのだろうか?広告主に販売されるのだろうか?研究者はそれにアクセスできるのだろうか、またどのように吟味されるのだろうか?このような質問には、十分に答えることはできるものの、現時点では少々謎が残されている。

接触者追跡は、コロナウィルスの蔓延を抑制するための取り組みの重要な部分である。自分の住む地域でどのような手段やプラットフォームが採用されるにせよ(おそらく州ごと、そしてひょっとすると都市ごとに違うやり方になるかもしれないが)、その効果を最大限に発揮させるためには、できるだけ多くの人が参加することが重要だ。

もちろんリスクはあるが、そのリスクは比較的軽微であり、対する利点はそうしたリスクを桁違いに上回るように見える。オプトインすべき時が来たときに、それを行う決断をすべきなのは、コミュニティ全体への配慮からだ。

画像クレジット: Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:sako)

CodementorのCode Against COVID-19事業でボランティア作のコロナ対抗ソフトウェアを登録/発見できる

ソフトウェアのデベロッパーをオンラインで教育するCodementorが、パンデミックと戦うソフトウェアプロジェクトCode Against COVID-19を立ち上げた。それはCodementorの収益事業ではなく、プログラマーたちを、援助を必要としている大学や非営利団体や地方行政などの機関および組織に結びつけることが狙いだ。

Code Against COVID-19が今展開している事業Safe PathsCovid Watchは、COVID-19の拡散を防ぎ個人のプライバシーを護るためのツールを作っている。またそれは、デベロッパーをHospital@homeのような草の根プロジェクトに結びつける。新型コロナウイルスの広がりを止めるためのジオフェンシングアプリ(境界線作成アプリ)を作っているUXデザイナーらにも、プログラマーの助けを提供する。

Codementorのプラットホームには今、世界中のデベロッパーが数十万人いる。そしてCOVID-19関連のソフトウェアを作るために、プログラマーの助けを必要としている企業や行政機関が多いことを知った同社は、そのコミュニティに呼びかけた。創業者でCEOのWeiting Liu氏によると、98%が協力の意思を表明し、そこから、プログラマーとプロジェクトを早く結びつけるCode Against COVID-19が発足した。

今のところ、無料または報酬が低くても長期プロジェクトに関われる、という登録プログラマーが200名あまりいる。

Liu氏が住んでいる台湾は、中国に近いにもかかわらず、ロックダウンをせずにCOVID-19の大規模なアウトブレークを防いでいる

Liu氏が本誌TechCrunchの取材に応えて語ったところによると、Codementorのチームは台湾政府のデジタル大臣Audrey Tang氏が指揮するソフトウェアプロジェクトの成功に刺激された。その中には台北の全市的警報システムや、配給品のマスクの在庫がある薬局などが分かる地図がある。後者は、長い行列ができるのを防止する。

「ソフトウェアで世界を変えられると信じてきた人にとっては、今が絶好の機会だ」、とLiu氏は語り、Codementorの台湾のチームはほかの国も助けたいと思っている、と述べた。「台湾の今の状況は幸運だ。ロックダウンで子どもたちと家に閉じ込められることもない。比較的安全だから、コミュニティを助けることができる」、と彼は言う。

プログラマーが出動するボランティア事業として、ほかにCoding DojoのTech for Americaがある。こちらは中小企業のWeb開発を助けている。またHelp with COVIDには、世界中から1万名あまりのデベロッパーが自作のCOVID-19関連ソフトウェアプロジェクトを登録している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AI画像認識で食事内容をモニターして糖尿病を改善するYes Health

Yes Healthは機械学習とコンピュータービジョンを利用して写真から食事の内容を認識し、糖尿病、肥満などの原因となる生活習慣を改善して医療コスト削減につなげようとしている。

AIテクノロジーをベースとしたYes Healthのアプローチに対して、Khosla Venturesがリードしたラウンドで600万ドルのベンチャー資金が投じられた。

Yes Healthのユーザーは毎日の食事内容をいちいちシステムに入力する必要がない。単に食事の写真を撮るだけでテクノロジーが入力を自動化する。同社のソフトウェアは画像からどういう食事か認識し、ユーザーやが健康管理の状況をモニターするのに役立つデータに変換する。

セールスポイントの一つはユーザーの使いやすさだが、もう一つは処理の全自動化だ。 人間の専門家が食事内容の報告を受けて判断するのではなく、コンピュータ・ビジョンがデータを生成し、システムが分析するため、サービスのコストが大きく削減できる。つまりユーザーが支払わねばならない料金も引き下げられる。

ファウンダーはPayPalの元幹部、Alexander Petrov(アレクサンダー・ペトロフ)氏で、自身が前糖尿病と診断されているという。Yes HealthはVirta HealthやOmadaなどが開発した療法を取り入れており、患者の自己管理を助ける。

ペトロフ氏は「他のサービスとの最大の違いは、ユーザー別のカスタマイズのレベルが高く、使い続けることが容易なユニークなシステムとなっていることだ。これを実現しているのが画像ベースの速攻アプローチだ…テキストが利用できるのはもちろんだが、画像を通じてデータをキャプチャし、システムに分析させ共有することができる」と述べている。

同社がスタートしたのは6年前だが、現在はカリフォルニア州の健康保険と医療のネットワークであるBlue Shield of Californiaなどと提携している。同氏は「Yes Healthには数万人の有料会員がいるが、目標は数百万人のレベルに達することだ」という。

消費者は健保などヘルスケア・サービスの一部または直接契約によってYes Healthを利用することができる。。同社は扱おうとしている市場は巨大だ。CDC(米疾病予防センター)のデータによると、2018年には3400万の米国人に糖尿病があり、8800万人が糖尿病予備軍だった。糖尿病患者の医療費は年間3270億ドル(35.兆円)という巨額に上る。一人当たりの医療支出も平均の2.3倍に達するという。

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックでこうした問題は新たな深刻さを帯びてきた。研究によれば、糖尿病や肥満などは新型コロナウイルスの重症化のリスクを高め、死亡率の増加をもたらしている可能性がある。

Khosla Venturesの創立パートナーでマネージング・ディレクターのSamir Kaul(サミル・カウル)氏はYes Healthへの投資を発表した声明で次のように述べている。

「(新型コロナウイルスの流行で)米国人これまで以上に強くは健康を意識するようになった。デジタルヘルスはイノベーティブなテクノロジーにとって最も重要な市場の1つになっている。Yes Healthはモバイルアプリを駆使したAIベースのソリューションにより、糖尿病のような困難で費用のかさむ生活習慣病を改善することに実績を挙げている。これは(Khosla Venturesの)ヘルスケアに関する方針に沿うものだ」。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

患者遠隔モニタリングのMedopadがHumaとしてリブランド

ロンドンを拠点とするMedopadは、デジタルバイオマーカー(血液サンプルや医師の診察によらず、アプリやウェアラブルを使用して病気や病気の進行状況、そして全体的な健康状態を測定可能な値のこと)に基づいて患者を遠隔モニターするための、医療従事者向けソフトウェアを開発するスタートアップである。そのMedopadに大きな変化が訪れようとしている。

同社はHumaという名前へリブランディングを行い、その初代取締役会議長に、元英国保健大臣のAlan Milburn(アラン・ミルバーン)氏を任命した。それに加えて、Humaは事業範囲を拡大するために2つのAIスタートアップの買収を発表した。メンタルヘルスに注力したBioBeatsと、心血管を専門とするTarilian Laser Technologies (TLT)である。

契約の金銭的条件は公開されていないが、BioBeatsの買収金額は約1000万ドル(約10億8000万円)だと推測されており、TLTの買収にはソフトウェア資産、多数の特許、そして現在FDAの承認待ちの非侵襲的な方法で血圧を継続的に測定する新しいハードウェアデバイスの獲得も伴っている。

いずれの買収も、Humaがバイオマーカーモニタリングを新たな分野(特にメンタルヘルス関連のバイオマーカーや、血圧に関連するすべての指標)に拡大し、慢性疾患その他の状態のモニタリングに加えて、人間の健康に関する分野に予防的で先を見越した拡大をするための役に立つだろう。

Humaは、その手の届く範囲を拡大するために、パートナーシップの強力なネットワークを構築してきた。スマートフォンでカメラに向かって話しかける様子をモニタリングするだけで、パーキンソン病の進行状況を測定する手法のテストに、Tencentと協力することも行われている。そして、製薬大手のJanssen(ヤンセン・ファーマ)とともに、発話された声に基いてアルツハイマーを診断する手法についても取り組んでいる。また、ロンドンのKings and Bartsや米国のJohns Hopkinsなどの主要な研究病院と密接に協力して、他のバイオマーカーテストを開発している。

しかし、そうした推進をしている初期研究の中には、Huma自身がBioBeatsやTLTが既に獲得済のものと同等の知識とチームを構築するには、何年もかかるものがある。それゆえに今回の買収に踏み切ったのだ。

これは、スタートアップがこの先も進める予定の行動パターンだ。

Humaは現在、英国の医療技術セクターでこれまで行われた調達の中で最大のもののの1つになることを目標に、今後数週間から数か月以内での資金調達に取り組んでいる(これまでで最大のものは、Babylon Healthによって昨年行われた、5億5000万ドル(約590億円)の調達である)。

この資金調達は、事業そのものの運営費用の捻出ではなく、より多くの買収を行うために行われるものだ。Humaはまだ、前回の資金調達(昨年11月にバイエルが主導した2500万ドル(約27億円)のラウンド)で得られたものよりも多くの資金を銀行に保有しており、CEO兼創業者のDan Vahdat(ダン・バーダット)氏によれば、すでに年間の収益目標を達成しているとのことだ(まだ4月ではあるが)。

その力強いビジネス業績を達成できた理由の一部は、新型コロナウィルスによるものだ。Humaは、病院のオーバーフローを防ぐことを目指すCOVID-19トラッカーを3月末に発表した。それはCOVID-19の確定例または疑い例ではあるものの、入院させるほど重症ではない人びとを、入院させる代わりにスマートフォン、スマートウォッチ、その他のデバイスを使用して遠隔から測定を行い、注意深くモニターするシステムだ。モニター対象から上がってくるバイオマーカーが、病気の悪化の可能性を示した場合には、状況が悲惨なものになる前に病院に来るように指示される。

世界中の多くの医療システムが、コロナウイルス感染の流入で限界に達しつつある現在、これは患者流入ををトリアージする試みの1つの方法であり、それは多くの場所で歓迎された。Humaは、数週間以内に複数の国で同社のサービスの公式契約を発表する予定だとバーダット氏は語った。

新取締役会議長のミルバーン氏は、その声明のなかで「Humaと一緒に働き、デジタルバイオマーカーを通じて人体の新しい理解を深め、ヘルスセクターの変革を支援できることを嬉しく思っています」と述べている。「私たちは健康を理解し、病気を診断し治療するための、突破口となりえる手段の非常に初期の段階にいます。そしてHumaは、こうした生命科学分野、イノベーションパートナー、そしてヘルスケアのための新しい有望な分野における、真のリーダーになることができるでしょう」。

画像クレジット: Busakorn Pongparnit (opens in a new window)/ Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート
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(翻訳:sako)

GE HealthcareとMicrosoftが新型コロナ患者の遠隔監視ソフトを立ち上げ

GE Healthcare(GEヘルスケア)は、クラウドベースの新型コロナウイルス(COVID-19)患者監視ソフトウェアをヘルスシステム向けに立ち上げるために、Microsoft(マイクロソフト)との長年のコラボレーションを拡張する。

GE Healthcareはもともと、同社のMural Virtual Care Solutionを今年初めの病院管理システム協会の会合でデビューさせるつもりだった。COVID-19の流行がその計画を台無しにしたとき、同社はMicrosoftのAzureクラウドを使用している病院に素早く提供できるCOVID-19アプリケーションにフォーカスするためにソフトウェアの提供を再設計した。当初はEdisonプラットフォームの新機能として提供する予定だった。

GE HealthcareとMicrosoftは2021年1月まで、このソフトウェアにかかるインストール以外の費用をすべて免除する。

ソフトウェアは、病院のスタッフが集中治療室の患者(呼吸器をつけている人も含む)をモニターできるハブとなるようにデザインされている。

Microsoftのグローバル・メディカル責任者を務めるDavid Rhew(デイビッド・リュー)博士が指摘したように、リモートツールは病院スタッフの感染患者への曝露を減らすのに役立ち、必須の個人保護具をとっておくのにつながるかもしれない。

「これはもともと、インストールするのに数週間かかり、サーバーを設置するのにも時間がかかるオンプレミスのソリューションとして構築されていた」とリュー博士は話した。「効率的にモニターするのに、これは明らかに素晴らしい手法だ。というのも病室に入らなくてもよく、個人保護具を使わず、暴露のリスクを減らせるからだ」

同社の発表によると、Muralをインストールすると、複数の場所にあるICUのベッド100床をベテランの看護師3人と集中治療医2人でモニターできる。ソフトウェアは、人工呼吸器や既存の患者モニタリングシステム、電子医療記録からリアルタイムでデータを収集し、1つの監視ハブに集約する、としている。

「ひるんでしまいそうなCOVID-19の勢いに直面しているが、私や仲間のヘルスケアワーカーが個人保護具を使うことなく重篤な患者を安全にモニターして看護するために、バーチャルICUテクノロジーの活用は必須だ」とオレゴン健康科学大学の医療能力責任者で救急医療副会長、麻酔学・周術期の教授であるMatthias Merkel(マティア・メルケル)氏は声明で述べた。「テクノロジーを通じて密接につながってサポートし続けられることで、我々はこれがなければ対応できなかっただろう地理的な距離も超えて患者の看護をより良いものにすることができる」

画像クレジット: Glow Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Scanwellが新型コロナ抗体テスト検証を1000人規模で開始

家庭での新型コロナウイルス(COVID-19)抗体検査については、科学者や医療関係者の間でかなりの議論がある。抗体を持っている個人を認証して経済活動を部分的に再開するプロセスにおいて必要なステップだと言う人もいれば、現在利用できるテスト手法の精度と効果に疑問を投げかける人もいる。あなたがどちらの側につくにせよ、さらなるテストが必要なのは確かだ。そしてスタートアップのScanwellが家庭での抗体検査をそれなりの規模で検証する取り組みを始めた。その一方で同社は診断にかかる緊急使用承認についてFDA(米食品医薬品局)と協議を続けている。

Scanwellは家庭用の抗体テストキット1000個を無作為に抽出した市民に配布するのにノースカロライナ州、そしてローリー拠点のWake Forest Baptist Health(ウェイク・フォレスト・バプティスト・ヘルス)の協力を得ている。この検証には州議会が10万ドル(約1070万円)を拠出した。対象者はウェイク・フォレスト・バプティスト・ヘルスのシステムに登録された患者の中から選ばれ、指先から血液を採取するキットが年間を通して毎月郵送で届く。これはウイルスと抗体を追跡するためであり、統計学的により多くの人を対象とした調査の縮図となる。

今回のScanwellのテストは、まだFDAから緊急使用の承認を受けていないため、研究目的でのみ使用することができる。FDAはこれまでのところ、遠隔診療で使用されているものも含め、COVID-19に関するいかなる家庭用テストも承認していない。しかしつい最近、「家庭用も含め、安全で正確な新型コロナウイルステストの利用を拡大するのは公衆衛生上の価値がある」とガイダンスをアップデートした。そして診断サービスの企業などと提携してテストの開発に積極的に取り組んでいる最中だ、としている。

すでに家庭用の尿路感染症診断サービスを展開しているロサンゼルス拠点のScanwell Healthは先月、家庭用の血清抗体テストの使用についてFDAの承認取得に取り組んでいると発表した。このテストキットでは、診断ラボにキットが到着すればわずか15分で結果がわかる。しかし新型コロナウイルスにかかる抗体テスト全体の精度については疑問が投げかけられている。そしてウイルスに感染し、回復した人の感染後の免疫の状態や期間についてもさまざまな意見がある。

免疫や回復した人をよく理解することは、外出禁止を徐々に緩和する上で重要な材料となる。免疫テストはその中核を担う。既存の分子テスト手法での感染テスト、そしてAppleとGoogleが実施しているシステムのような感染追跡とともに、大規模で行われる必要がある。

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(翻訳:Mizoguchi

米食品医薬品局が製造コスト25分の1の新型人工呼吸器を認可

米国食品医薬品局(FDA)は、ミネソタ大学が設計した新しいタイプの人工呼吸器「Coventor」(コベンター)の製造を認可した。このプロジェクトは既存モデルと同等の生命維持能力をもつ人工呼吸器を大幅な低コストで量産できるようにすることで、必要としている医療機関が早期に安価で入手できるようにすることを目的にしている。

Coventorは、FDAの緊急使用許可(EUA)を取得した最初の新型人工呼吸器だ。緊急使用許可とはその名が示す通り、FDAが通常発行する伝統的な医療機器の認可と異なり、不足している必要機器を提供するために一時的に認可したり、全承認行程を経ずに行う緊急時の対応だ。

新型コロナ・パンデミックは近代の記録ではこの種の危機としておそらく最大の事例であり、COVID-19による呼吸器疾患の重篤患者の治療には、殆どの場合挿管あるいは人工呼吸器による補助が必要になる。増え続ける肺炎患者のために人工呼吸器は米国内外で供給不足が続いており、新しい設計の機器や他の医療用呼吸器具を改造して補完するなどいくつもの解決策が提案されている。

ミネソタ大学のCovnetorは、工学部と医学部の共同チームが開発した。卓上サイズの新型呼吸器は約1000ドル(11万円)で製造が可能で、原価で販売されれば、市価2万~2万5000ドルする現行の医療水準人工呼吸器を置き換える有力な候補になる。

医療機器メーカーのMedtronic(Teslaとも共同で人工呼吸器の製造計画を進めている)とBoston Scientific(今回の承認後にCoventorの製造、販売を担当する)の両社も設計に寄与した。ミネソタ大学は今日(米国時間4/15)、Coventorの仕様をオープンソース化し、世界中で製造できるようにすることも発表した。ただし他社が製造するためにはFDAまたは各国の公共保健機関の承認を得る必要がある。

画像クレジット:University of Minnesota

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

工事現場で対人距離監視と接触者追跡をするウェアラブルデバイス

以前に電気工事従事者の安全を守る専用ガジェットを開発したスタートアップが、新たな脅威、新型コロナウイルスから工事現場を守るニーズに応えようとしている。バンクーバーを拠点とするProxxiは、手首につけるウェアラブルデバイスの「Halo」を発売した。適正な対人距離として推奨されている6フィート(約1.8m)以内に別のバンドが近づくと振動で知らせるデバイスだ。

Proxxiは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続く中でも現場での作業は不可欠であり、しかも通知システムがなければ従業員同士が適正な距離を保つのが難しい業務でガイドラインを守るために、このデバイスを設計したと説明している。

このバンドは低電力Bluetoothを使ってほかのバンドと通信する。また、新型コロナウイルスの陽性患者が発生した場合に現場内での接触者追跡ができるように、どのバンドが接近したかも記録する。Proxxiによれば、プライバシーを保護するためにバンドは位置情報を追跡しない。また情報はバンド間で共有、またはProxxiに送信され、身につけている従業員の個人を特定する情報とは紐づけられない。

Estimoteの職場用接触者追跡ウェアラブルなど、同様の取り組みはほかにもある。Proxxiのアプローチは、アクティブな監視や周囲との適正な距離の通知を主眼としている点で他社と異なる。Estimoteのウェアラブルは、接触した可能性のある人に関するアラートを視覚的に提供するシステムに力を入れている。

ProxxiのHaloシステムは、簡単にすぐセットアップし、使い始めることができるという。また、スマートフォンとの接続や、スマートフォン経由でのセットアップも不要だ。

バンドの価格は100ドル(約1万7000円)で、5月4日に出荷を開始する。接触者追跡、および現場での対人距離に関するコンプライアンスと有効性の監視のために、モバイルアプリとウェブベースのダッシュボードが提供される。

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(翻訳:Kaori Koyama)

MITの在宅新型コロナ患者の動きと呼吸を検知するワイヤレス装置が遠隔治療をサポートする

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックは医療従事者に前例のない困難をもたらしている。中でも大きな課題はソーシャルディスタンス問題であり、自身が感染することなく診察と治療を行うためにまったく新しい取り組みが必要になる。

すでに陽性結果が出ている多くの人々にとって、自宅待機はさまざまな地域で大きな負荷がかかっている病院を避け、他の人達に感染を広げないための最善の選択だ。問題は遠隔医療の限界が明白である中、医者や看護師がどうやって遠方から治療を続けられるかだ。

MIT(マサチューセッツ工科大学)のCSAIL(コンピュータ科学・人工知能研究所)は今週、自宅にいる患者の健康状態を定期的にチェックするために作られた試験中の新しい機器を発表した。Wi-Fiルーターに似た外見のこのオプトインシステムは、患者の部屋の壁に設置する。

新しい機器は無線信号を使って患者の動きや睡眠パターン、さらには(最も重要な)呼吸などさまざまな活動を検知する。Emerald(エメラルド)と呼ばれるそのシステムは、人工知能を使って移動を追跡することで、個人を区別することができる。

現在このシステムは、ボストン郊外のHeritage Assisted Livingという介護施設でテストされている。「介護施設にいるような高いリスクの高齢患者にとって、直接診察することが困難な時に医療データを自動的に取得できるこのシステムが大きな恩恵であることは間違いない」と、同施設の保健責任者であるWilliam McGrory(ウィリアム・マクグローリー)氏はリリースでいう。

ワイヤレスシステムがなぜ、シンプルなウェアラブルよりも優れているのかというTechCrunchの質問に対して、CSAILの広報担当者はこのテクノロジーの本質は「設置したら忘れる」ことで、初期設定後、患者は何も操作しなくていいという点だと答えている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

創業1年目で共同創業者が去り一人に、絶望の日々を抜け出し美容D2Cで再挑戦

「仕事が忙しくて肌荒れしてしまっていた」という自身の経験から、カスタマイズサプリのD2Cブランド「FUJIMI」(フジミ)を始めたトリコの藤井香那氏。

FUJIMIはサイト上で無料の肌診断が受けられる。約2000億とおり以上の診断結果から、ユーザーの肌状態に合ったサプリメントやフェイスマスクをカスタマイズされ自宅に届く仕組みだ。

藤井氏が起業家を志したのは2017年。インターン先での社内起業を経て、自己資金で独立・起業した。共同創業者のエンジニアとメディア事業を展開していたが、伸び率が悪く早々に解散。「一人になってしまったときは絶望しかなかった。アニメを見て引きこもりの日々でした」と話す。

その後にピボットを決意。事業ピボットから10カ月間のプロダクト開発を経て、どのようにFUJIMIが誕生したのか。その道のりを聞いた。

藤井香那(@yuzukosyo_oden
1995年生まれ。横浜国立大学在学中にスタートアップの立ち上げに参加しセルアウトを経験する。その後、ユナイテッドの子会社を設立しアプリを運営。2018年4月よりトリコを立ち上げ、2019年3月にカスタマイズサプリ「FUJIMI」をリリース。

インターン先のセルアウトを経験し、起業家を志す

「大学1年生の冬に、大学の先輩が起業したゴロー(スマートフォン向けのアドテク事業やコンテンツ事業を展開)でインターンをはじめました。デザイナー志望だったので、学生時代はDeNAやGoodpatch、Cookpadのデザイナーインターンも並行して参加していて。今思えばかなり忙しい学生生活でしたね(笑)」。

大学4年生になった2017年、ゴローがユナイテッドにの子会社になり、アラン・プロダクツに社名が変更されることになった。この出来事が起業家を志す大きなきっかけとなる。

「入社当時は数人だった会社がたった2〜3年で大きな組織になったのを目の当たりにして、とても衝撃を受けました。それから、自分も経営に携わる立場になってみたいと思うようになったんです」。

起業家意識が芽生えた藤井氏はユナイテッドの社内起業支援制度を利用し、チャット型小説アプリ「ちょこっと」を立ち上げたが、うまくはいかなかった。

「『DMM TELLER』をはじめ、同タイミングで競合が一気に出てくる中、ユーザー数を伸ばすことができず。収益化に時間がかかってしまったため、1年でクローズしユナイテッドに回収されました」。

この経験から「事業にも採用にもすべて自分で責任を持って全うしたい」と思い、自己資金で起業することを決める。

初めての起業も方向性が合わず共同創業者が去り、アニメを見て引きこもる日々

2018年4月、エンジニアと共同出資をして創業。メディア事業を展開していたが売上が伸びず、プロジェクトの進め方で方向性が合わないのも相まって、1年も経たず解散してしまう。

「このときは本当にどん底で……。絶望の中、ずっと引きこもってアニメを見ていました。一人の期間中は、インターンの経験を生かし美容に関するキュレーションメディアを運営していました。

アフィリエイトで月100万円以上の売上はあったのですが、自分の納得できる事業ではなかったです。なぜなら、やっていることがインターン時代と変わらず何も成長していなかったから。自分はどうしたいのか、ユーザーはどのようなことを求めているのか、そんなことを考える日々でした」。

そんななか自身が肌荒れにも悩んでいたことから「本当に自分が使いたいと思うからこそお客様にも心の底からおすすめできる美容スキンケアアイテムを作りたい」と思い、再び事業を構想する。

「約10カ月かけてカスタマイズサプリを開発しました。その間にアラン・プロダクツがバイアウトされる前くらいの時に、同じシェアオフィスにいて当時から仲の良かった他社の女性デザイナーから久しぶりに連絡がきて。彼女と仕事の話をしているうちに事業に参画してくれることになりました。さらに彼女が紹介してくれた女性デザイナーも創業メンバーとしてジョインしてくれました」。

全員デザイナーという異色のメンバー。バンドで言ったらベースが3人のようなもの。

「そうですね(笑)。でも人がいないと事業は動かせません。デザインにとどまらず、それぞれがメディア運用、マーケティング、ディレクター、在庫管理などいろいろな業務を兼任したことで、一人ひとりのパフォーマンスの幅を広げることができました。また、全員デザイナーだからこそプロダクトやコーポレートサイト、InstagramやLPのクリエイティブはすべてインハウス。こだわりを持って作ることができています」。

起業家やVCが集まるシェアハウスのコミュニティからアドバイザーを見つける

サプリのD2Cは商品開発から製造、加工、流通までかなりの時間と費用を要する。その中でも特に欠かせないのが欠かせないのは製品のクオリティだが、FUJIMIは開発段階から機能性表示食品検定協会の理事を務めるサプリの専門家がアドバイザーとして関わっている。

プロダクトのない段階でなぜ、知名度のまだ低いスタートアップ企業がアドバイザーから協力を得ることができたのだろうか。

「当時、起業家やVCが多く集まるシェアハウスに住んでいました。そのコミュニティで事業の相談をしたら、まずアドバイザーの方を紹介してもらうことができました」。

「そして、『サプリはうさん臭くてダサいというイメージが根強い。でももっとおしゃれで効果的で、自分も飲みたいと思えるものを作りたい』と素直に話したんです。そしたら、『自分が挑戦したかったけれど実現できなかったことだから応援したい』と言ってくれました」。

アドバイザーの方とは論文なども参考にして、どのような組み合わせに効果があるのかを一緒に分析。10カ月かけて何度も試行錯誤を重ね開発に取り組んだ。

プロダクトが存在しないときに3000万円を調達

写真に向かって左端がXTech Venturesの手嶋浩己氏、右端がバルクオム代表の野口卓也氏

さらにプロダクトが存在しない2018年の段階で3,000万円の資金調達に成功している。調達先はXTech Venturesとバルクオム代表の野口卓也氏だ。

「XTech Venturesの手嶋さんはインターン時代の企業先でずっとお世話になっていました。私の事業へのコミットメントや経営方針などをずっと見ていていただいたので、出資の依頼をした際すぐに前向きなお返事をいただきました。手嶋さんから野口さんを紹介していただき、累計3000万円を調達。お二人のおかげで商品開発とマーケティングを強化することができました」。

2019年2月にクラウドファンディングを実施し集まった資金は254万円。目的はニーズ調査だったが美容感度の高い女性たちがSNSで話題になり、初期ユーザーを獲得にも成功した。

2020年2月にはカスタマイズできるフェイスマスクが誕生し、3月には初のポップアップストアも出店している。

「徐々にブランド認知が上がっているのを感じます。今後はリアル店舗展開も見据えていますが、集客に関しては引き続きオンラインでのリーチを徹底しようと思っています。今後もユーザーに寄り添いながら最適な方法で商品を届けていきたいです」。

Googleは偽情報の多いインドで主要アプリ総動員の正しい新型コロナ情報を提供

Googleの月曜日(米国時間4/13)の発表によると、同社はインドで、コロナウイルス関連のアップデートをまとめたWebサイトを立ち上げ、また検索とYouTubeでは、インド厚生省などの権威ある機関からの情報とユーザーの地元の詳細情報を目立たせることになった。

またGoogle Mapsと検索では、インドの30あまりの都市の1500以上の食事とベッドが提供されるシェルターをガイドする。Googleによると、インドに何百万人もいる出稼ぎ労働者は、政府が疫病対策として都市の3週間のロックダウンを命じたため仕事を失い、帰郷を始めている。

これらのシェルターは、Google Assistantに英語かヒンズー語で“food shelters”と尋ねても見つかる。Assistantはスマートフォンや、KaiOSを使っているフィーチャーフォン、あるいはVodafone-Ideaの電話回線から利用できる(インドのそのほかの言語もサポートを準備している)。

Googleはカリフォルニア州マウンテンビューに本社のあるアメリカの大企業だが、同社にとってインドは重要な海外市場のひとつだ。同社は各国の保健医療行政の意思決定を助けるために、COVID-19 Community Mobility Reports(各地の人の移動に関する情報)を発行している(日本版)。このレポートは、公園、駅、食料品店などの公共的な場所における交通や人の移動の、最近数週間の変化を、グラフで報告している。

Mapsでは、Nearby Spotという案内表示により、食料品や生活必需品を売っているインド各地のお店を見つけやすくしている。

YouTubeと検索は、重要なニュースやインド厚生省からの情報、および症状と予防と治療に関するそのほかの権威あるコンテンツを一箇所にまとめて見せている。またYouTubeがそのホームページにローンチした「Coronavirus News Shelf」(コロナウイルスのニュース集)は、このアウトブレークに関する権威あるメディアからの最新ニュースを集めている。

最近の数週間でGoogle Pay、Walmart PhonePe、Paytmなどの決済サービスは、コロナウイルスと戦うインドの首相ナレンドラ・モディ氏のファンドに簡単に寄付できるようになった。Googleによると、同社の決済サービスからの寄付の総額は1300万ドルを超えた。

以上のようなさまざまな措置により、インドを何年も苦しめているもう一つのアウトブレーク、すなわち偽情報の封じ込めができるだろう。メッセージングサービスには、政府がやっていることに対する、勝手な想像に基づく嘘の情報や、この疫病を広めている犯人、昔からある民間療法など、いい加減な情報が溢れている。しかも、こういった出鱈目を、一部のテレビニュースが真実として報じ、それがインドの数億の人びとに伝わっている。

しかし中でもインドでいちばん人気のあるメッセージングサービスWhatsAppは、この感染症に関する情報を一層充実させようしている

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Y CombinatorのW20デモデーに参加したスタートアップ(ヘルスケア、バイオテック、フィンテック、非営利団体)

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に対する懸念が高まる中、Y Combinator(Yコンビネーター)はこれまで慣れ親しんできた2日間にわたる米国サンフランシスコでの会合からイベントの開催方式を切り替え、デモデーのウェブサイトを通じて、招待された投資家とメディアにクラス全体を同時公開する方法で開催することを決定した。

さらに驚きなのが、投資家の動きが加速してきた事実を受け、YCがデモデー開催日を1週間前倒しにしたことだ。このため、デモデーのウェブサイトに録画したプレゼンを掲載するというプランは変更せざるをえなくなり、各事業は代わりにスライドに事業概要、今後の見通し、チームの経歴などの説明をまとめてプレゼンを行った。急速に進化する投資環境と相まって、この新たなスタイルがこのクラスにどのように影響するかは今のところはわからない。

プレゼンやウェブサイトのほか、場合によっては以前の記事から収集した情報をもとに、我々が集めたそれぞれのクラスの各事業のメモをまとめてみた。

読みやすさを優先し、全事業をすべて羅列するのではなくカテゴリー別にまとめている。今回はヘルスケア、バイオテック、フィンテック、非営利団体だ。ほかのカテゴリー(B2B、コンシューマー、ロボティクスなど)に関してはこちらから読むことができる。

ヘルスケアとバイオテック

Simple Strips
専用の血糖値計を必要とせず、スマートフォンのカメラで読み取り可能なストリップを開発し、グルコース検査を安価により多くの人に提供することを目指している。同社は6月にこのストリップのFDAの認可申請を行う予定とのこと。

nplex biosciences
新薬開発に必要なタンパク質パネルの評価を迅速、安価に実施する方法を提供。大手製薬会社を含め400万ドル(約4万3千円)以上の基本合意書が予定されている。

Healthlane
アフリカのユーザー向けに医師とのコミュニケーション、予約、検査結果の追跡を支援するアプリ。すでに採算が取れており、顧客定着率は98%とのこと。

Breathe Well-being
インドの慢性疾患(糖尿病など)のあるユーザー向けに減量をサポートする16週間のプログラム。同社は体重、食事、活動などを記録し、認知行動療法でストレス軽減の指導を行う糖尿病の個人指導を提供する。現在のMRR(月間定額収益)は1万1200ドル(約120万円)。

Dropprint Genomics
個々の細胞活動の解析時間とコストを削減できる「シングルセルゲノミクス」ソフトウェアで創薬を支援。同社は2か月で100万ドル(約1億840万円)以上の基本合意書を締結した。

Newman’s
インドネシアの男性向けデジタル診療所。同社は恥ずかしく感じる悩み(毛髪の悩み、勃起不全)や途中で放棄されることが多い問題(禁煙)に特化し、遠隔受診を通じてより容易、安価、内密に診断を受けることを可能にする。Newman’sについて以前書かれた記事はこちら

Menten AI
同社は「量子コンピューティングと機械学習」を合成生物学と組み合せて新しいタンパク質性製剤を開発しているという。

Loop Health
Loop Healthによるとインドの健康保険の大半が「入院のみカバー、通院は適用外」である。同社は専用の「Loop Healthクリニック」への無制限のアクセスとアプリを利用した遠隔医療を提供し、この状況の改善を目指している。

Synapsica Healthcare
「AIレポート作成アシスタント」。現在脊椎MRIに注力している同社では、測定の注釈と椎間板変性症の所見を自動的に行うことで放射線医師のレポート作成時間の80%を削減する。同社によれば現在10万ドル(約1083万円)を投資した放射線医学でのパイロットプログラムは250のカイロプラクティック・クリニックに選ばれているとのこと。

Volumetric
Volumetricは血管新生化されたヒト組織を作成する3Dバイオプリンターを製造している。2人の博士により創設された同社は製薬会社や科学者向けに感光性組織を販売している。同社は機能性組織、さらには臓器まで生成できるバイオプリンターとバイオインクの製造に資金を投じている。Volumetricについて以前書かれた記事はこちら

Ophelia
Opheliaは米国の300万人のオピオイド依存症患者に遠隔医療でリハビリの代替治療を提供している。同システムでは、患者は遠隔医療で受診し、発行された処方箋でブプレノルフィン/ナロキソンなどの治療薬を配達してもらい、偏見にさらされることなく治療を受けられる。創設者は長年のガールフレンドがオピオイド依存症で亡くなった後、同社を立ち上げた。Opheliaはこれまでに40人の患者の治療に当たってきた。

Lilia
「将来、女性は卒業記念に卵子凍結するだろう」と主張するLiliaは、卵子凍結保存コンシェルジェ・サービスだ。このスタートアップ企業はコンシェルジュサービスに500ドル(約5万4千円)、クリニックでの体外受精時にさらに500ドル(約5万4千円)の支払いを受ける。Liliaによれば総市場規模は330億ドル(約3兆5760億円)だという。

Equator Therapeutics
同社はエクササイズをすることなくカロリー燃焼を手助けする薬品を開発している。アンチエイジング薬品を開発する企業での経歴を持つ2人の博士とデータサイエンティストによって創設されたEquator Therapeuticsは、肥満と2型糖尿病の人々をターゲットにしている。

Altay Therapeutics
サンフランシスコのBayer Collaborator内にあるAltay Therapeuticsは、病気を引き起こすDNA結合タンパク質(転写調節因子)をブロックする小分子療法を開発した。同社の初回治療は関節炎、線維症、潰瘍性大腸炎、肝癌に焦点を合わせている。

Tambua Health
Tambua Healthは「耳で聞く」聴診器と高度なイメージングが可能な独自のソフトウェアを使って、X線を照射することなく肺を画像化する。

Abalone Bio
ライフサイエンス領域のシリアルアントレプレナーによって創設されたAbalone Bioは、数十億の抗体バリアントを発現する酵母細胞のライブラリを使って、薬品の対象を活性化したり阻害できる特定の抗体を生成している。遺伝子配列、機械学習、合成生物学を活用して抗体の組み換えタンパク質を作成し、その有効性をヒト細胞アッセイで確認している。同社は痛み、炎症性疾患、希少癌、希少腎臓病の治療薬を皮切りとしてターゲットにしている。

Felix Biotechnology
イェール大学の著名な研究者であるPaul Turner氏によって創設されたFelix Biotechnologiesは、抗生物質の効かないバクテリアと菌類に対する治療法を開発している。同社によると、これらの病原体は米国だけで毎年280万件の感染症例と3万5000件の死亡例を引き起こしている。平均すれば、米国で15分に1人が抗生物質抵抗性の感染症により死亡していることになる。2050年までに抗生物質抵抗性による死亡者は癌による死亡者を上回るとの警告が、すでに研究者から出されている。

Genecis Bioindustries
同社は食品廃棄物を生分解性プラスチックに変えている。Genecisについて以前書かれた記事はこちら

Candid Health
Candid Healthは保険会社への手続きを行い拒絶された申請に自動的に不服申し立てを行う、ヘルスケア業界向けの自動請求ソフトウェアを開発した。同社は支払いの5%を徴収する。

Ochre Bio
Ochreによれば臓器提供された肝臓はその数が不足しているにも関わらず多くが廃棄されているらしい。脂肪が多すぎて移植が成功しないためだ。同社は移植の前に処置を施す方法を見つけることで「肝臓を体外で若返らせる」ことを目指している。

フィンテック

Facio
ブラジルの銀行は問題を抱えている。五大銀行が市場を寡占しており、手続きは遅くカスタマーサービスは最悪で、実質金利は高く中小企業は相手にしない。Facioは負債の餌食になることから労働者を守り、従業員向けの低金利の短期ローンで経済的自由を提供することを目指している。これは雇用者と一体になって給与から直接ローン返済額を天引きする仕組みだ。

delt.ai
Delt.aiはサービスを受けにくいメキシコの中小企業とフリーランス向けに支払い、請求、コーポレートカードを取り扱うデジタル銀行だ。このスタートアップはラテンアメリカの500憶ドル(約5兆4190億円)を上回る企業預金市場をターゲットにしている。Delt.aiはラテンアメリカをターゲットにしたBrexやMercuryだ。

Nexu
ラテンアメリカのほかの多くのパーソナルファイナンス業務と同様に、自動車金融は割高でローテクな、気の遠くなる手続きだ。ラテンアメリカの自動車販売代理店向けファイナンス・プラットフォームであるNexuは、動的な信用評価を使って自動車購入者にわずか数秒でローンの承認を与える。創設者チームの出会いは、ウォートン校のMBA在学中だった。

Fondeadora
Fondeadoraは飽和状態のメキシコのフィンテックシーンに、従来の銀行に代わるネオバンクデビットカードで参入する。同社はアプリで取引ができる完全モバイルのデジタル預金口座を提供する。同社には6万5000人のユーザーと650万ドル(約7億450万円)の月間取引がある。メキシコのもう一つのデビットカードであるAlboは、現在、プラットフォーム上で取引を行う月間20万人のアクティブカスタマーのシェアを持ち、2600万ドル(約28億1780万円)の資金を調達している。メキシコの銀行は、複数のスタートアップを大成させるのに十分な問題を抱えている。メキシコの人口1憶3000万人の45%は銀行口座を持たない。つまり借入と貯蓄により資産を形成するための金融商品を持たないのだ。

Jenfi
アジアの小規模事業に収益に応じて通常1万ドル~10万ドル(約108万円〜約1080万円)の資金を貸し出している。Jenfiに関しては以前にもこの記事で伝えている。

yBANQ
インドの大規模B2B企業向け代金回収・会計調整システム。同社によれば1月下旬の立ち上げからすでに18社の顧客を獲得し、流通取引総額は約1万8000ドル(約195万円)に達している。

ZeFi
米ドルによる預金と「ステーブルコイン」暗号通貨を内部的に換金する預金口座。ZeFiが換金された資金を貸し付けて利息を得る仕組みだ。

Grain
Grainは既存のデビットカードを「責任のある」クレジット金額(現在は収入やキャッシュフローに応じて上限500ドル(約5万4千円))に結びつける。長期間にわたって信用情報の信用評価が最小あるいは不良になっている人の援助になることを目指している。同社によれば立ち上げから3か月で1000人の顧客と契約し、顧客当たり年間約80ドル(約8600円)の収入が想定されている。

CrowdForce
アフリカで地域の商店主を銀行の支店として活用し、銀行が遠距離にしかない場合に取引の仲介を行う。同社によれば先月の純収益は7万ドル(約760万円)で、顧客当たり年間平均20ドル(約2170円)ほどの収益がある。

Stark Bank
ブラジルのテクノロジー企業向けのB2B取引を取り扱うバンキングAPI。同社は立ち上げから1年あまりで1200万ドル(約13億円)の月間総取引額を見越している。

Bamboo
世界中の有価証券を購入するアフリカの富裕層向けのオンライン仲買業務。同社によればおよそ5か月前の立ち上げからすでに2100人を超える投資家を集め160万ドル(約1億7340万円)以上の取引がプラットフォーム上で行われているという。現在の月間収益は1万ドル(約108万円)を超える。

Swipe
「アフリカのBrex」を自称するSwipeは、アフリカの中小企業に給与と支出をカバーするクレジットカードを提供している。無料の経費・請求ツールを提供することからビジネスを始め、次いでクレジットカードを提供した。現在顧客は30社、発行したクレジットカードで2万ドル(約216万円)の取引が行われている。

goDutch
ルームメイトなど、請求書をシェアしているグループ内で費用を分割できる支払いカードだ。インドに注力している。代金は1枚のカードに課金され、それぞれのグループメンバーの口座から自動で引き落としが行われる。

Paymobil
Venmo式のアプリで暗号通貨のステーブルコインを使って世界中に送金するシステム。創設者のDaniel Nordh氏はCoinbaseでカスタマーデザインを率いた経歴を持つ。

Karat
Karatは銀行業務、ローン、クレジットカードをインフルエンサーに提供している。同社は彼らの人気度のデータをリスク管理に活用して、ローンの実質金利40%を達成し、平均返済期間は45日だ。創設者のInstagramでのインフルエンサー・ツール構築とゴールドマン・サックスでの債務の構成の経験により、すでに1000万を超えるフォロワーを持つスターたちと契約を結んでいる。

Homestead
Homesteadは自宅を所有する人向けに初期費用なしでガレージの賃貸物件への転用をサポートする。工事、入居者捜し、管理の費用はHomesteadが負担し、賃貸収入を所有者と分配する。カリフォルニア州の新しい法律では、州内の800万のガレージを居住スペースとして賃貸できるようになり、巨大な市場機会が生まれている。Homesteadの創設者たちはマサチューセッツ工科大学の建設・都市計画大学院で出会った。すでに100万ドル(約1億840万円)の売り上げを上げてげているスタートアップである。

Benepass
Benepassはスタートアップと小規模企業向けに福利厚生カードを提供している。従業員はBenepassデビットカードで支払いをすると税制優遇と、医療費支出口座、子育て、通勤、フィットネスや教育などの福利厚生特典を受けられる。購買履歴はアプリに記録される。雇用者には無料で提供されているがBenepassのテイクレートは6%だ。それでも何千ドルもの所得税と給与税を節税できる。優秀な人材の獲得をめぐって大手のテクノロジー企業と競っているスタートアップには、Benepassで従業員に大きなサポートを実感させることができる。

GAS POS
米国のガソリンスタンドオーナーは、コンピューターチップを搭載したクレジットカードの国際標準であるEMVテクノロジーを採用し、給油ポンプのアップグレードを競っている。GAS POSは北米の18万のガソリンスタンドがEMVを導入してセキュアな取引を行うための最新のPOSシステムを提供するために創設された。同社にはいくつかの収益源があり、支払い処理金額の3%の手数料、機器購入者への無料のSaaS、顧客に提供される翌日資金調達サービスがある。

YearEnd
YearEndは数字の上ではリッチな人向けの税務ソフトウェアを開発し、顧客の株式を最適化してスタートアップの従業員の税務申告を支援している。 このスタートアップは個人ユーザーに年間330ドル(約3万6千円)を課金し、YearEndを従業員手当として導入したい企業に売り込んでいる。

GIGI Benefits
インドのGIGI Benefitsは同国のギグエコノミーワーカー向けの福利厚生プロバイダーを目指している。この事業は昨年最もホットなY CombinatorスタートアップのCatch、ベンチャーキャピタルの支援を受けたTrupoなどの事業を手本に、健康保険や退職資金口座などをギグエコノミーワーカーに提供している。

Easyplan
Easyplanはインド版のQapitalやDigitとして、ユーザーが具体的な目標に向けてシームレスに貯蓄を行えるようにしている。

Haven
Havenは住宅ローンサービスの次世代プラットフォームだ。最新のカスタマーインターフェース、貸し手向けのより優れた払いモデルなどを提供している。

WorkPay
WorkPayは「アフリカのGusto」を名乗る、当地の中小企業をターゲットとした次世代型の給与・関連サービスだ。

Spenny
Spennyはインドの消費者向け貯蓄ツールで、購入額の端数を切り上げて貯蓄に回すことで顧客は貯蓄を始めることができる。

Kosh
Koshはアルゴリズムで強化されたインド向け貯蓄・投資プラットフォームで、良好な信用評価を持つ人が評価の低い友人を実質的に保証することで借り入れを支援するシステムだ。

非営利団体

Potential
Potentialは服役した過去のある人を仕事や生活資源に結びつけたいと願う非営利団体だ。同社は拘置所と雇用団体と連携し、より人に優しい雇用環境を作ろうとしている。

植物性流動食のKate Farmsが一般消費者市場への進出を目指す

Kate Farmsは、固形食を食べられない患者のために病院などが栄養補助食品として使っている植物性の流動食のサプライヤーだ。同社はこのほど、2300万ドルの資金を調達した。

会長でCEOのBrett Matthews氏によると、そのお金は消費者とヘルスケアプロバイダー双方からの、最近の大きな需要増に対応するための、生産能力の向上に充てたいという。

同社を創業したRichard Laver氏とMichelle Laver氏は、最初そのフォーミュラを娘のKateのために作った。脳性小児麻痺のKateは固形食を食べられず、市販のチューブ食もだめだった。その後企業のビジネスに育ったKate Farmsは、今では全米の病院に奉仕している。

Matthews氏は、息子が上部呼吸器系の疾患と自己免疫症に苦しんでいた。彼は最初、顧客として同社を知ったが、「自分の子が重症で、治療のためには食べ物がきわめて重要だった。同社の製品と医療品としての食品について、その後多くを学び、同社への参加と投資を決意した」、と語る。

Matthews氏は、Kate Farmへの最初の投資の次には取締役会の会長になり、そしてついに、CEOに登りつめた。

Kate Farmsはこれまでもっぱら、個人から資金を調達し、企業としての投資家とは縁がなかった。今回もその例に漏れず、資金は一連の大物投資家たちからやってきた。彼らの一覧は、次のようになる:

  • David Roux(Silver Lakeの共同創業者)
  • John Hammergren(McKessonの元会長で現CEO)
  • Gregg Engles(植物性乳製品代替食品のWhiteWave Foodsの元会長で現CEO)
  • Kristin Loomis(Lazardの元CEO、HHV-6 Foundationの常勤役員)
  • Pete Nicholas(Boston Scientificの創業者で元CEO)
  • Robert Zollars(Baxter Internationalの元社長、Diamond Foodsの会長、Cardinal Healthの執行副社長)
  • Celeste Clark(元Kellogg’s Global Nutritionのチーム管理団役員)

昨年調達を完了したそのお金は現在、COVID-19の疫病とそれへの政府の対応によって生じた需要増に応ずるための増産に使われている。Kate Farmsは、南カリフォルニアの高齢者配食事業に100万ドル相当の同社製品を寄贈している。サンタバーバラに本社のある同社は、100万ドルは22万5000食に相当する、と言っている。

同社の植物性で遺伝子組み換えでない流動食は、チューブ食(経管栄養)を必要とする子どもや大人の栄養状態を改善することが、臨床的に証明されている。Matthews氏によると、American Society for Parenteral and Enteral Nutrition(全米非経口および腸溶性栄養協会)の季刊誌に載った研究は、アトランタ胃腸病学連合が行なった臨床試験に基づいている。

氏は曰く、「小児科の市場では弊社製品が体重の増加を改善し、また、薬物耐性も改善している」そうだ。

Matthews氏によると、アメリカでは、チューブ食を必要とする人びとはおよそ70万名おり、そのほかにも同社製品によって栄養状態を改善できると思われる人びとが1億5000万名いる。その市場の大きさはアメリカでほぼ30億ドル、全世界では100億ドルだ。

でもKate Farmsは、もっと大きなご褒美を目指している。同社が声明で言っているように、植物性の乳製品代替食品の消費者市場の大きさは2017年で210億ドル、2024年には375億ドルに達すると予想されている。そしてUBS Investmentsによると、次の10年間には代替食肉が2018年の46億ドルから2030年には850億ドルに成長する。

「もちろん、今は医療食が中心だが、今後は大きく進化するだろう」、とMatthews氏は言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Googleの検索と地図で新型コロナの仮想診療サイトを強調表示(当面英語のみ)

COVID-19のパンデミックで医師と患者の双方が日常的な診療で実際に会うことを減らそうとしているため、仮想診療への関心が高まっている。でも患者は、今どんなものが利用できるのか知らないことが多いので、Googleは今後2週間かけて検索とマップスに、テレヘルスの所在を強調表示するオプションを導入する

病院や医師、メンタルヘルスのプロフェッショナルなどは、彼らの仮想診療サービスの詳細を検索とマップスのBusiness Profile(Googleマイビジネス)に加えられる。すると患者が検索したとき、「get online care」(オンラインの診療を受けましょう)というリンクが出て、サービスの提供者のWebサイトで詳しい情報を見られる。(目下英語のサービスのみ)

またアメリカでは、「すぐ診てくれるところ」(immediate care)などの語句で検索しても仮想診療の場所が表示される。検索結果には、そこに実際に行く場合と仮想診療オプションの両方が強調表示されるが、それは前にはなかったことだ。心配な人は、初診料の額なども知ることができる。

さらにGoogleは今後、病院などのヘルスケアプロバイダーのCOVID-19ページへのリンクも検索結果の上位に置く計画だ。外来に関する彼らの方針や、診察時間の変更なども詳しく表示される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

フランスが新型コロナ抑制のためのBLEを利用した感染者追跡アプリの準備を正式表明

フランスの保健相Olivier Véran(オリビエ・ベラン)氏とデジタル相のCédric O(セドリック・オー)氏は、フランス政府が新型コロナウイルス(COVID-19)拡大を抑制するためのスマートフォンアプリに取り組んでいることを正式に明らかにした。「Pan-European Privacy-Preserving Proximity Tracing」(PEPP-PT)というプロジェクトにゴーサインを出すものだが、このアプリの今後については慎重姿勢を崩していない。

新型コロナを追跡するモバイルアプリを使うことは欧州ではセンシティブな問題だ。数十もの非営利団体が政府に対して人権を尊重するよう共同声明を出した。

非営利団体が恐れるのは、政府が規制に反する広範の監視手法を強行する機会として利用すること、新型コロナ危機後も使用することだ。個人情報を適切に扱わなければEU市民は感染者追跡アプリを信用しないと予想されることから、欧州委員会は各国政府に「適切なセーフガード」を講ずるべきだと釘を刺した。

だからこそフランス政府は、Stop Covidアプリをリリースする前に、予防的に人々を安心させようとしているのだろう。声明によると、デジタル省はテックベースのこの試みをうまく機能させるために、保健省、法務省、高等教育・研究・イノベーション省と取り組んでいる。

先週明らかになったドイツのフラウンホーファーハインリッヒヘルツ研究所(HHI)が主導するPEPP-PTプロジェクトは、複数の国にまたがる数十の研究機関が共同で実施する。フランスのINRIAはそのメンバーで、フランス政府はPEPP-PTの取り組みの一環としてINRIAに喜んで協力している。

彼らは感染者追跡アプリを開発するためにオープンの基準に取り組んでいる。そうしたアプリは、同じアプリを使っている他のスマホを特定するのにBluetooth Low Energyに頼ることになる。もしあなたが感染者の近くにいると、あなたに通知が送られる。

そしてフランス政府は、フランス国内に住んでいる人を追跡するためのアプリが登場すると話す。そのアプリはPEPP-PTプロトコルを使う。

感染者追跡アプリに賛成する人は、そうしたアプリを積極的なウイルス検査や自己隔離と組み合わせれば、感染の連鎖を断つのに役立つだろう、と言う。

ル・モンド紙とのインタビューでオー氏とベラン氏は取り組みの詳細を語った。フランスはこのアプリをインストールするよう人々に強制せず、「Stop Covid」はBluetoothを使うだけだという。プロトタイプに現在取り組んでいるが、開発には3〜6週間かかるとのことだ。

それでも、フランス政府はアプリをリリースしないかもしれない。「Bluetoothは人と人の間の距離を測定するようデザインされたものではないため、テクニカル的な問題を解決できるか定かではない。そうしたアプリの展開が役に立つのかどうか、後で判断する」とオー氏はル・モンド紙に語った。

プライバシーに関しては、アプリはオープンソースでフランスの監視団体CNILに発言権がある、とオー氏は話す。TechCrunchはCNILにコメントを求めたが「コメントするには時期尚早」とのことだった。

さらに重要なことに、フランスでのPEPP-PTプロトコル実行についての詳細はまだ詰められていない。プライバシー専門家がシステムのデザインについて問答している。一部の専門家は可能な限り分散化すべき、と主張する。スマートフォンはあなたの社会的関わりを記録し(セキュリティとプライバシー対策のために頻繁にIDが変わるEphemeral Bluetooth識別子を介して)、定期的に感染者のEphemeral  Bluetooth識別子を探すというタスクを実行する。

PEPP-PTプロジェクトは現在、集中型アプローチと分散化アプローチの両方をサポートしている。つまり各国政府はどちらを実行するか決めなければならない。集中型のシステムでは、サーバーは各ユーザーに匿名化された識別子を割り当て、あなたの社会的関わりについてのデータを集める。各ユーザーは関わった人が感染しているかどうかをチェックするために識別子の状態を確かめることができる。これは単一障害点を生み出す。誰かが匿名の識別子を個人の名前とマッチさせることができるのではないかというリスクだ。

デジタル省はまた、フランスが新型コロナ感染拡大の状況を把握し、新型コロナ治療を改善し、フランスでのロックダウンを終わらせるためにテック全般をいかに活用しているかについて詳細に語った。

現在取り組んでいるアプリに加えて、フランス政府は人々に情報を提供するために公式ウェブサイトを展開し、患者の診察に遠隔診療サービスを勧めている。また、人々が国内をどのように移動しているのかを理解するために通信会社提供の集合データを分析し、新型コロナ流行を予測するためのビッグデータに機械学習を用いている。

画像クレジット: Geoffroy Van Der Hasselt / AFP / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナで需要急増中の遠隔診療コンサルTyto Careが約54億円調達

在宅健康診断デバイスと遠隔診療コンサルテーションアプリのプロバイダーTyto Care(タイト・ケア)が、新たなラウンドで5000万ドル(約54億円)を調達した。

声明によると、本ラウンドは Insight Partners、Olive Tree Ventures、 Qualcomm Venturesがリードし、Tyto Careの累計調達額は1億500万ドル(約114億円)超となった。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的パンデミックにより、需要が急増する中での資金調達となった。Tyto Careのツールキットは遠隔診療の診断ソリューションとして使われており、2019年だけでも売上は3倍超となっている。

同社は2019にBest Buyと提携し、American WellやTeladocなど主要遠隔医療プロバイダーのほとんどと協業している。

既存投資家のOrbimed、Echo Health、Qure、Teuzaなどが本ラウンドに参加したとTyto Careは声明で述べた。

今回調達した資金で、Tyto Careはすでにある診断プラットフォームをベースに新たなツールを購入したり構築したりするとともに、在宅健康テストキットを新分野に拡大する。

Scanwell Healthのような企業は、尿路感染症などの病気の在宅診断テストを提供している。Tyto CareのCEOで創業者のDedi Gilad(デディ・ジラッド)氏は、在宅で行えるさまざまな種類のテストに新しいプロダクトを用意する、とインタビューで話した。

Tyto Careの遠隔診療は現在かなりの需要があり、インスラエルの全病院で新型コロナウイルスに感染した隔離中の患者をリモート診察するのに使われている。他の病院ネットワークもまた同様の使用目的でTyto Careの診断ツールに目を向けている、とのことだ。

遠隔の医療検査はCOVID-19を引き起こすウイルスSARS-Cov-2への曝露から医療関係者を守り、感染していない患者が実際に医療機関に足を運ぶことなく基礎的な健診を受けられるようする。

「過去2年間、Tyto Careはそれまでよりも成長を加速させ、ヘルスケアのあり方の変革をリードしている。遠隔診療は新型コロナパンデミックで注目を集めている。我々のソリューションが、ウイルスとの戦いでヘルスシステムや世界中の顧客を支援していることを誇りに思う」とジラッド氏は声明で述べた。「今回の資金調達は遠隔診療の進化に向けた転換期に行われたものであり、新たな資金で我々は引き続き、最善のバーチャルケアソリューションでもって世界のヘルスケア産業を変えていくことができる」

画像クレジット: Tyto Care

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(翻訳:Mizoguchi