東京五輪で「VRによるセカンドスクリーン」の提供目指す——コンテンツ制作のDverseが資金調達

11716121_850237768399499_887385314_n

人工知能(この数週間だけでも何度この文字を見かけたことか)と並んで注目の集まる領域がVRだ。VR特化のHMDであるOculus Riftは2016年第1四半期の正式発売が決まったようだし、視線入力に対応したFOVEなども製品化が進んでいる。1000円の段ボール製キットとスマホでVR体験のできるハコスコだってかなり驚く体験を提供してくれる。

VR向けのデバイスが登場すれば、次に必要となるのは「コンテンツ」だ。そんなコンテンツ、つまり360度対応の映像やCGの開発を手がけるスタートアップのDverseは7月13日、韓国のBonAngels Venture Partnersおよび日本のViling Venture Partnersからコンバーチブルノート(転換社債の一種)での資金調達を実施したと発表した。金額は非公開だが数千万円程度だという。

Dverseは2014年10月の設立。代表を務める沼倉正吾氏はCAD/CAMシステムなどを開発するゼネテックの出身。2013年にKickstarter経由でOculus Riftを入手し、前職時代から300人以上にヒアリングを実施。そこでVRのニーズの高さを感じて起業を決めたのだという。6月に開催されたVRコンソーシアム主催の「VRクリエイティブアワード」では、パノラマ部門の入賞作品に関わった。以下がその動画だ。

専用機とスマホにコンテンツを提供

VRと聞くとゲームやエンタメを思い浮かべがちだが、同社はOculusなどの専用機とスマートフォンでそれぞれ異なる方針でプロダクトを提供していくという。

前者では空間設計向けの「VRF-デザインシステム(仮)」や教育向けの「VRF-エデュテインメントシステム(仮)」を開発中だ。これらを使うことで、例えば工場やマンションなどを3Dで再現して、機材の導入、レイアウトなどを閲覧できたり、動画や文書だけでは習熟の難しい「熟練の技」などを仮想体験によって学んだりできるという。

screenshot_388

またスマートフォンに関しては、「100ドル以下のAndroidでも軽く動く、4K静止画+CGによる動的VRコンテンツが強みになる」(沼倉氏)とのこと。WebGLをベースにしており、特別なアプリをインストールしなくてもブラウザで閲覧可能。さらにテレビや雑誌などとに連動を想定して、URLやQRコードや音響すかしなどからコンテンツへの誘導が可能だという。現在開発中のコンテンツは今秋にも公開の予定。

11716121_850237768399499_887385314_n

スマートフォン向けコンテンツのイメージ

メディア連動は非常に重視しているポイントだそうで、2020年の東京オリンピックにおいても、「例えばテレビでは通常のスポーツの中継をしている中、セカンドスクリーンである手元のスマホでは審判やゴール前の360度の映像が見られるといったようなこともやっていきたい」(沼倉氏)としている。

「どっちが尊敬できる?」転職サイトのTalentBaseは“究極の2択”で求職者のスキルを可視化する

tb_top

tb05

「どちらのほうが頭がいいですか?」

ソーシャルデータと人工知能を使ってイケてる人材を探すサービス「TalentBase(タレントベース)」にこのたび、“究極の2択”に答えることで、求職者のスキルを可視化する機能が加わった。

求職者は「どちらのほうがコミュニケーション力がありますか?」や「どちらが一緒に飲みたいか?」といった質問に対して、提示される友達2人の中から1人を選ぶ。友達はFacebookでつながっているTalentBaseユーザーが出てくるので、回答にしばし悩むこともありそう。

友達からのポジティブな評価が20件以上集まると、ビジネス基礎能力やコミュニケーション能力、技術力、人間力など10種類の「定性スキル」がレーダーチャートに表示される。求職者は自己分析につながるし、求人企業もプロフィールでは伝わらない求職者の能力や特性がわかるというわけだ。

10角形のレーダーチャートで「定性スキル」を可視化する

10角形のレーダーチャートで「定性スキル」を可視化する

究極の2択にはこんな質問もある。

「どちらが尊敬できますか?」「どちらがリーダーシップがありますか?」「どちらのほうが熱意が強いですか?」「どちらのほうが折れない心を持ってますか?」「どちらのほうが話してて楽しいですか?」「どちらがルックスがいいですか?」「どちらのほうが頼りになりますか?」

ちなみに、自分がどんな質問で、誰を評価したかは相手に伝わるが、誰と誰を比べて評価したかは公表されない。もちろん、評価されなかった人には何も告げられない。

自分がポジティブな評価を受けた場合には通知が届くが、その内容を確認するには「ポイント」が必要となる。このポイントは相手を評価したり、自分が評価されたことをFacebookやTwitterでシェアすることで貯まる仕組みだ。

tb04

人工知能でイケてる人材と企業をマッチング

過去にもお伝えしたが、TalentBaseは自社で活躍する社員や興味のある人材を検索して登録するだけで、人工知能が自社に合った人材を推薦するサービス。

求人企業は、求職者のプロフィールやソーシャルサービス(Facebook、Twitter、LinkedIn、GitHub、Qiita)の利用状況をもとに算出した「スコア」を見て、気になる人材を「タレントプール」と呼ぶデータベースに追加する。この行為を繰り返すたびに、人工知能が企業の好みを学習していく。

ただし、この仕組みはSNSを活用していない求職者は不利になる。求人企業としても「SNSを活用しないイケてる人材」を発掘するのは難しい。こうした課題を解決しようとするのが“究極の2択”だ。TalentBaseとしては、SNSをもとにしたスコアだけでなく、定性的な能力や特性を踏まえて、人と企業のマッチングを図る狙いがある。

Facebook、Twitter、LinkedIn、GitHub、Qiitaの5サービスの利用状況をもとに、「ソーシャル」「ビジネス」「技術」の3項目でスコアを算出している

Facebook、Twitter、LinkedIn、GitHub、Qiitaの5サービスの利用状況をもとに、「ソーシャル」「ビジネス」「技術」の3項目でスコアを算出している

究極の2択は「評価ゲーム」という名称で今年3月のTalentBase公開時から提供していて、評価データは累積8万5000件に達した。いままでは自分がどんな質問で評価されたかのみを表示していたが、定性スキルをレーダーチャートとして可視化するようにした。

“究極の2択”というだけあって、なかなかにエグい質問が投げかけられるが、TalentBaseを運営するアトラエの岡利幸CTOは、「(求職者を)弱者と強者に分けたいわけではない」として次のように狙いを語る。

「自分の定性的なデータから、自分に似た定性スキルを持つ人が、どんな会社のどんなポジションで働いているのかがわかるようになることで、今までのレジュメや求人票ベースの選択ではなく、もっと人間らしい会社選びや人選びができるようになれば。」

“毛穴が見えない”美肌フィルター搭載で「リア充」の取り込みをねらう—サイバー子会社がライブ配信アプリ「宅スタ」

taku

ライブ配信サービスのツイキャスこと「Twitcasting」。サービス開始から5年で登録ユーザー数1000万人(4月時点)、累計配信回数で1億5000万回(3月時点)と大きく成長した。ディー・エヌ・エーの「Showroom」など競合サービスもあるが、アタマ1つ抜けた状態にあると言っていい。そんなライブ配信の分野にサイバーエージェントが参入した。

サイバーエージェント子会社のタクスタは7月9日、ライブ配信アプリ「宅スタ」を公開した。iOS、Androidに対応しており、App StoreおよびGoogle Playから無料でダウンロードできる。

宅スタは個人向けのライブ配信アプリ。Twitterのアカウントさえ登録すれば誰でもスマートフォン1つでライブ配信が可能になる。視聴のみのであればTwitterアカウントも必要ない。現時点ではAmeba IDとの連携は行っていない。

「宅スタ」の視聴画面

「宅スタ」の視聴画面

“初めての自撮り”に配慮した「フィルター」機能

最後発のライブ配信サービスとなる宅スタの最大の特徴は、動画の「フィルター加工」が可能なことだという。フィルターを使うことでユーザーは自分好みの映像でのライブ配信が可能になるとしている。

「初めての『自撮り』に配慮している」——タクスタ代表取締役社長の田久保健太氏はこう語る。ライブ配信の経験をしたことのないユーザーが宅スタのアプリを立ち上げ、配信ボタンをタップする。するとインカメラで自分の顔がどアップになるのだから、抵抗があるユーザーだっているだろう。

これを少しでも緩和するためにフィルターを導入した。配信ボタンをタップすると、デフォルトで「美肌」なフィルターがかかった状態になる。「どの距離で毛穴が見える、見えないというような細かいところまでバランスを調整した」(田久保氏)

また、あらかじめ撮影した静止画像と音声のみで配信する「静画モード」を用意。動画で配信したくない場所、もしくはタイミングでこのモードに切り替えることも可能だ。Twitterアカウントは複数登録して切り替えることも対応。「実際に原宿で女子高生にヒアリングしたが、多くの回答者が『本アカ(メインのアカウント)』『裏アカ(匿名など、メインアカウントでは言えないようなことを発信するアカウント)』『共通アカ(友人らと運用するアカウント)』の3アカウントを持っていた。このTwitterの利用スタイルに合わせた」(田久保氏)

タクスタ代表取締役社長の田久保健太氏

タクスタ代表取締役社長の田久保健太氏

住所や実名が投稿されないようにする「禁止ワード」の設定も可能。「Ameba同様の監視はするが、リアルタイムで何が起こるか分からない」(田久保氏)とのことで、可能な限り配信者の安全性には配慮したという。また低回線でも利用できるよう、画質とフレームレートを落とした低画質再生モードも備える。同社によると利用可能なデータ量を超過し、通信速度制限がかかった状態でも視聴可能とのこと(一応お伝えしておくと、音声のみの配信やNGワード設定などは競合にも用意されている)。

インターフェースはスマートフォンのスクリーン全部に画像が映る「縦画面」となっている。この画面下部、動画に重なるかたちでコメントや各種の通知が表示される。

また、視聴者は配信者に対して「エール」を送ることができる。画面右下のエールボタンをタップすると、配信画面に星が飛び出すエフェクトがかかる。エールは1日300回までに制限されている。将来的には星以外のエフェクトも用意する予定だそうで、ここでのマネタイズを検討しているようだ。

さらに配信者には「○○さんが入室した」「○○さんが最初のコメントをした」、視聴者には「今なら(他のコメントが少ないので)質問すれば回答がもらえるかも」といったニュアンスでコミュニケーションのきっかけを与える通知をすることもできる。配信後は配信回数やコメント数、エール数、配信時間などを知らせる簡単なアナリティクス画面が表示される。配信した動画は60日間保存されるが、設定によって無期限保存も可能だ。

ライバルはツイキャスとPeriscope、強みは「リア充」の取り込み

田久保氏は競合についてツイキャスと、Twitterが買収したPeriscopeだと明言する。

タクスタは2014年11月の設立。その以前はアメーバピグ事業を統括していたという田久保氏。競合サービスとの比較について聞くと、「アメーバピグを通じて、ローリテラシーで若い人たちの文化というのが分かってきた。(リテラシーは低いが)リア充なユーザーを無視してはいけない。言葉は悪いが、『暇なリア充』に使ってもらえば、大きくサービスが広がると考えている。そこをどう取り込むかがサイバーエージェントグループのプロデュース力ではないか。もちろんユーザー自ら移行することもあるだろうが、自分たちで配信者を育てていきたい」と答える。ただし、あくまで配信者の中心は一般ユーザー。現時点ではAmebaブログのように芸能人を積極的に取り込むことはしないという。

マネタイズについては未定だが、タイアップの動画配信などは検討しているという。また前述の通り、エールに関する課金の可能性もありそうだ。当面の目標については「半期が終わる2016年3月時点で日本一の動画メディアになりたいとは思っている。だがまずは質のいい配信者と配信内容が集まることが大事だと考えている。7月はユーザーに『アツい』と思ってもらえる空間作りをしていく」(田久保氏)

サイバーエージェントではAmeba、広告、ゲームに続く新たな事業の柱として「動画」を掲げている。タクスタ以外の動きとしては、3月にはテレビ朝日と新会社を設立。定額制動画配信プラットフォーム「Abema」を提供するとしているほか、直近の7月6日には、東京・原宿の竹下口に公開スタジオ「AmebaFRESH!Studio」をオープン。今秋リリース予定の生放送アプリ「AmebaFRESH!」向けの番組を配信する。なお今後は宅スタでもこのスタジオを使った配信・イベントなども検討している。

人工知能を使って不動産の成約価格を高精度で推定する「VALUE」——イタンジが新サービス

11717001_868003469947010_1205949794_n

「人工知能を使って○○をする」なんてスタートアップのニュースが増えているが、今度は人工知能を使って不動産の成約価格を推定するというサービスが登場した。仲介手数料無料のネット専業不動産仲介サービス「ヘヤジンプライム」を提供するイタンジは7月8日、人工知能を活用した不動産投資家向けサービス「VALUE」の提供を開始した。

VALUEでは、同社が開発した人工知能を用いて、REINS(不動産業者向けの物件情報データベース)に掲載されている物件の価格を解析し、相場価格から乖離した裁定取引(アービトラージ、利ざやで稼ぐこと)の可能性がある物件を抽出して、ユーザーに情報配信するサービス。転売益などを狙った国内外の不動産投資家をユーザーと想定している。利用料は月額5000円。

今後は不動産投資の分析ツールなども利用できる上位版サービスも提供する予定。また不動産仲介業者をターゲットにした広告での収益化も検討している。「不動産仲介業者は1人の顧客を連れてくるCPAが5万〜10万円かかっている。VALUEのユーザーを仲介会社に送客できれば価値は高い。今後はアジア圏の投資家もターゲットにしていきたい」(イタンジ代表取締役CEOの伊藤嘉盛氏)

伊藤氏は、不動産の価格設定について、「これまでは不動産業者の勘や経験——周辺、もしくは同様の条件の不動産価格、同じ物件の過去の数字など——をもとにざっくりとした数字を出していた」と語る。では正確な数字を出す場合にはどうしたかというと、「ヘドニック・アプローチ(マンション価格を専有面積や間取り、築年数などから回帰的に説明する方法)を用いていた。しかしその決定係数(回帰式の当てはまり具合、ざっくり言えば予測の精度)は0.8〜0.85(80〜85%の精度)。高いモノでも0.9(同様に90%)程度だった」(伊藤氏)のだそう。

これに対してVALUEでは人工知能でディープラーニング技術を用いて過去25年間の東京都内における不動産取引情報や金利、公示地価などを学習。その結果、決定係数は0.94、また実際の成約価格との誤差で見ると、±5%以内が35%、±10%以内が64%という高い予測精度を実現したという。ちなみに米国では不動産データベースサービスのZillowが2006年からサービスを提供しているが、同社でも誤差±5%となるのは30%程度だという。またこれ以上の精度に関しては「専有面積などに関わらず、何かしらの理由で相場価格より高い、もしくは低い価格でも売買される物件もある」(伊藤氏)ということで、高めるにも限界があるようだ。

最近では不動産仲介業社による物件の「囲い込み」の実情が報道されているが、「価格がブラックボックス化されており、売り手も正しい価格を理解していないために、最終的に値下げして売らざるを得ないケースもある」(伊藤氏)のだそう。こういった問題を解決するためにも正しい不動産価格を知ることは重要だという。VALUEはこの人工知能による価格推定の技術を用いた第1弾のサービスという扱い。同社では今後もこの価格推定技術をコアに「不動産×人工知能」のサービスを提供していくという。

 

自分の洋服で“おしゃれな誰か”が着回し提案、「クローゼット」が1.4億円調達

STANDING OVATIONの荻田芳宏社長

「洋服はたくさん持っているのに着ていく服がない」というのは、女性にありがちな悩みらしい。そのせいか、女性ファッション誌は毎号のように「着回し」特集を組んでいる。

ファッションに興味が薄い男性読者のために説明しておくと、着回しとは、1つの洋服を何通りにも着ることだ。彼女たちが愛読する雑誌には「着回しコーデ1週間」「着回し大作戦」のような見出しが踊るが、2014年1月に創業したSTANDING OVATIONが手がける「XZ(クローゼット)」は、アプリで女性の「着回し力不足」を解決しようとしている。

xz00

おしゃれな誰かが着回し提案

スマホで手持ちのアイテムを撮影してネット上の「ソーシャルクローゼット」に投稿すると、おしゃれな誰かが新しい着回しアイデアを提案してくれるアプリ。誰かが⾃分のアイテムを使ってコーディネートを作成するとお知らせが届く。

自分や他のユーザーの「クローゼット」からアイテムを選んでコーディネートが作れる

自分や他のユーザーの「クローゼット」からアイテムを選んでコーディネートが作れる

新品ではなく、自分がすでに持っているアイテムで、自分でも気づかなかった新しい着回しアイデアを発見できるのが特徴だ。例えば、「このトップスはスカートしか合わせたことがなかったけどパンツとも合わせられるんだ!」みたいな気付きがある。

誰かが⾃分のアイテムを使ってコーデを作成するとお知らせが届く様子

誰かが⾃分のアイテムを使ってコーデを作成するとお知らせが届く様子

昨年9月にiPhoneとAndroid向けのアプリを公開し、ダウンロード数は約5万2000、ユーザーの平均年齢は25歳。これまでに投稿されたアイテムは27万点に上り、平日でも毎日1000点、土日になると1日に2000点近く増えている。

着回しアイデア提案数は5万5000件を超え、STANDING OVATIONの荻田芳宏社長は「クックパッドで料理のレパートリーが広がるように、クローゼットで着回しバリエーションが増えている」と手応えを感じている。

アイテムを投稿するほど着回しアイデアが埋もれない仕組みに

その一方で、着回しアイデアが埋もれてしまう課題もある。

現在は、自分が投稿したアイテムが他人に使われた場合のみ、着回し提案のフィードバックが得られる仕組み。言い換えれば、他のユーザーが自分と同じアイテムを投稿してフィードバックを得たとしても、自分のもとには届かない仕様だ。こうした課題を荻田氏は認識していて、8月にアプリを大幅リニューアルする。

リニューアル後は、同じアイテムを投稿したすべてのユーザーに着回し提案が届く。「青いスカート」や「白いスニーカー」のように、自分が投稿したアイテムと似たアイテムに着回し提案が寄せられた場合にも、お知らせが届くようにする。アイテムを投稿するほど新たな着回しアイデアに出会えるようになれば、コミュニティがさらに活性化しそうだ。

アパレルメーカーへの課金も視野

9月にはスマートフォン向けサイトを公開し、着回し力がアップするような雑誌っぽい記事を掲載する。新たなユーザーを獲得するとともに、ネイティブアドでの収益を見込む。

自分の服に合うアイテムを不特定多数の人に聞けるQ&Aコーナーも設け、「気に入っているジャケットに合うアイテムを教えてください」のような質問を写真付きで投稿すると、おしゃれな誰かが提案してくれる仕組みを作る。

ファッション誌を意識した着回し提案記事(左)とQ&Aコーナー(右)

ファッション誌を意識した着回し提案記事(左)とQ&Aコーナー(右)

将来的にはアパレルメーカーへの課金も視野に入れている。

例えば、Q&Aにはアパレルメーカーが回答できるようになっているので、押し売り感なく自社商品を提案したり、良質な回答をすることでファンを増やせるかもしれない。現在はアパレルメーカーと交渉中で、クローゼット経由で販売した金額の一部を手数料として徴収するビジネスモデルを検討している。

「ファッションのクラウド化」は成立するか

競合に挙げられることが多い国内のファッション系サービスとしては、500万人が利用するコーディネート検索アプリ「WEAR」や、200万人が利用するコーディネート作成アプリ「IQON」がある。これらについて荻田氏は「どちらもコーディネートの参考にはなるが、着回しの解決にはつながらない」と見ていて、本人のセンス任せになってしまうと語る。

これに対して、クローゼットはおしゃれな人の知恵を集合知化して、自分だけでは気づかなかった意外な着回しを発見できるのが強みだとアピールする。荻田氏は「ファッションのクラウド化」をテーマに掲げるが、その成否は、クローゼットの最大の価値である着回し提案の回数が増え、その結果、アイテム登録数も増える好循環が生まれるかどうかにかかっていそうだ。

7月8日にはgumiベンチャーズ、DBJキャピタル、アイスタイルキャピタル、個人投資家を引受先とする、総額1億4000万円の第三者割当増資を発表。調達した資金は8月のアプリリニューアル、9月のスマホウェブ版の開発にあてる。

STANDING OVATIONは昨年11月に東京・渋谷で開催した「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルのファイナリストでもある。

STANDING OVATIONの荻田芳宏社長

STANDING OVATIONの荻田芳宏社長

Wi-Fi・電源無料のスペースも1席1時間単位でレンタル可能な「eichiii」が間もなくローンチ

eichiii2

スペースマーケットSHOPCOUNTER軒先ビジネスなど、空きスペースのオーナーと利用者をマッチングしてイベントやポップアップショップに利用するようなサービスが増えてきた。これらのサービスは建物だったりその1室だったりと、「ハコ」単位でのレンタルが中心だ。そのサービスはいわゆる「toB」のもの。会議や大規模なイベント、期間限定店舗などをはじめとして、数人から大人数の、おもに法人のニーズを満たすものが中心だ。

11659001_10203245068927629_2082151189_o

今回紹介する「eichiii」は「toC」、つまり個人のためのスペースのマッチングサービスだ。スペースを「ハコ貸し」するのではなく、座席単位でのマッチングを実現する。現在サイトにてユーザーの先行登録を開始しており、間もなく正式にサービスをオープンする。

eichiiiでは、ウェブサイト上でスペースを検索して1席1時間単位でレンタルできる。スペースはコワーキングスペースや貸し会議室、営業時間外の飲食店やカラオケボックスなど。サービス開始までに都内を中心に200アドレス(1アドレスに3〜4席を確保)を目指し、今後もその数を拡大していく予定だ。

「当初はノマドワーカーをターゲットにしていたが、フリーランスや中小企業の打ち合わせ場所のニーズも多い」(エイチ代表取締役社長の伏見匡矩氏)とのことで、1室単位でレンタルできる個室スペースなども用意する。

金額はスペース側が設定できるが、1席1時間500円程度が中心。スペースによってはフリードリンクや電源・Wi-Fiの無料利用などの設備もあるという。スペースに着いたユーザーは予約画面を店舗に見せて金額を直接支払うという仕組みのため、システムの導入などは必要ない。eichiiiは金額の30%を手数料として取得する(そのうち5%はユーザーにポイントとして還元される)。

伏見氏はP&Gのマーケティング担当として活躍したのちに、社外からリクルート新規事業提案制度「New RING」でグランプリを受賞し、メディア事業を手がけるエモーチオの立ち上げに参加。その後に起業を志し、ベビー用品レンタルショップ「Babyrenta」を運営するココロイロを立ち上げた。

「循環型社会を作りたいという思いが根底にあり、それどんなビジネスができるか考えたのがベビー用品のレンタルだった。だがモノのレンタルは小規模な事業。世の中を変えられると思って始めたが、これを続けても売上100億円を狙うのが限界」(伏見氏)。

またレンタルビジネスをやって、例えば「キャンプ用品を借りたい」という人がいるのではなく、「キャンプをやりたい」という人がいて、その目的のためにキャンプ用品が必要なだけ——つまり商品のレンタルよりも、「スペースで何かを達成すること」を支援することのほうが重要——という考えに至ったのだそうだ。そんな思いからeichiiiの開発に取り組んだ。

伏見氏はeichiiiで「早期にユーザー数3万人を目指す」としている。なお資金調達等は現時点で検討していないという。

トランスリミットが新ゲーム——シンプルだけどハマる物理演算パズル「Brain Dots」

brain

2014年5月に対戦型脳トレアプリ「Brain Wars」をリリースしたトランスリミット。Brain Warsは現在世界1300万ダウンロード、海外ユーザー比率は95%というグローバルなアプリに成長した。そんな同社が第2弾となるゲームアプリ「Brain Dots」をiOS、Android向けに公開した。App StoreおよびGoogle Playで無料でダウンロードできる。

Brain Dotsは物理演算を利用したパズルゲームだ。画面上に表示される青と赤の2つ点、これをくっつけるのがルールというシンプルなゲーム。2つの点をくっつけるためにユーザーは線や図形などを描くのだが、それらは物理法則に従って動くため、描いた線で道やてこを作ったり、描いた図形を点にぶつけて弾いたりすることで目的を達成する。同様の物理演算パズルでは、リイカの「Q」やKloonigamesの「Crayon Physics」などが有名だろうか。

Brain Warsでの成功と失敗

アプリは15言語に対応。Brain WarsではOSの言語設定に合わせて8言語でサービスを提供していたが、今回はゲーム内に言語設定機能を用意。「OSは英語だが、ゲームは日本語」といった細かい設定も可能にした。言語設定は豊富だが、ゲーム内容としてはBrain Wars同様にノンバーバルで知識を必要としないシンプルなものになっている。序盤の数ステージはヒントが出るが、実質1ステージでチュートリアルは終了。僕も記事を書くために実際にプレイしてみたが、ついついハマって数ステージ進めてしまった。

screen322x572

ステージは現時点で300まで用意。すべて無料でプレイ可能だ。線を描く時に使う「ペン」はステージクリア数に合わせて25種類以上提供される。

これらのペンはゲームクリア時や動画広告閲覧時に得られる「コイン」もしくは課金で購入可能。最初から利用できる鉛筆だけでもすべてのステージをクリア可能だが、ペンごとに線の色や太さ、点と図形、図形と図形が当たったときの摩擦の掛かりかたが異なるため、ステージを有利に進められるものも多いという。

また、プレイの様子は動画で録画されており、リプレイしたり、SNSで共有したりできる。同じステージでもさまざまな攻略法のあるゲームだ。動画コミュニティは盛り上がりそう。なお録画・共有プラットフォームには「Everyplay」を採用している。

「BrainWarasでうまくいったところ、うまくいかなかったところがある。うまくいったのは表示する言語を少なくして、世界の誰もが遊べるようにしたこと。一方でうまくいかなかったのは、ネットワーク環境(が遅いこと)によってリアルタイム対戦で遊べないユーザーがいたこと。それで今回は1人用ゲームをベースにした」—トランスリミット代表取締役の高場大樹氏はこう語る。

今後のアップデートでは、ステージクリア時間を競う「タイムアタック」の機能を提供。ネットワーク環境に依存せず、非同期で対戦ができるような仕掛けを盛り込む予定だという。ちなみに前述のQとCrayon Physicsについて尋ねてみたのだけれど、Qは「全く意識していないわけではないが、シンプルさで差別化している」と説明。Crayon Physicsについては知らなかったとのことだった。

トランスリミット代表取締役の高場大樹氏

トランスリミット代表取締役の高場大樹氏

マネタイズは人気ゲーム「Crossy Road」を参考に

マネタイズは動画広告とペンの販売による課金。高場氏は、Hipster Whale の人気ゲーム「Crossy Road」のビジネスモデルを参考にしていると語る。

このゲームはニワトリをはじめとしたキャラクターが道路を渡っていく距離を競うシンプルなモノだが、このゲームでも動画広告を閲覧することで得られるコインでさまざまなキャラクターを購入できる(他の条件でもキャラクターの入手は可能)。2人のクリエーターが12週間で開発したというこのゲームは、世界5000万ダウンロード、売上は10億円に上るという。

アプリは世界で同時配信する。またBrain Warsともアプリ間で送客を行う予定。目標については「前作が1300万ダウンロードくらいあるのでそれ以上に。Brain Warsは人(他のユーザー)と戦うゲームなので、負けてしまった人のプレイ継続に繋がらないところもある。そういう意味ではポテンシャル的にはこのゲームのほうが大きい。対象ユーザーも年齢、性別を問わず広いので、2000〜3000万ダウンロード、欲を言うともっと大きな数字を目指したい」(高場氏)としている。

2004年スタートのアクテビティー予約サイト「そとあそび」、B Dashから2億円の資金調達

screenshot_386

アクティビティ予約サイト「そとあそび」を運営するそとあそびは7月6日、B Dash Venturesを引受先とする総額3億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした(調達自体は2月に実施している)。

そとあそびは2004年にスタートしたアクティビティ予約サイト。そとあそびでアクティビティを紹介する「キュレーター」の山本貴義氏が1人で立ち上げたサービスだ。2014年にはガイアックスの元代表取締役副社長COOである中島裕氏が代表取締役社長に就任。有限会社から株式会社化した。

4月にJTBとの資本業務提携を発表した「あそびゅー」などの競合サイトはあるが、そとあそびの強みは質の高いアクティビティのみを掲載するという「キュレーション力」にあるという。掲載するアクティビティは、アウトドア経験の豊富な同社のキュレーターがすべて実際に体験取材をしたもののみ。「安全性や保険の有無、エンタメ性などを確認している。手間暇はかかるが『(そのアクティビティの)プロであること』と『(催行する)地域を知っていること』のどちらも達成できているか1つずつ見ている」(中島氏)

売上高は非公開。「初年度から伸びてきて事業者からは評価されているが、ここ数年は売上が横ばいだった。そこで体制を変更し、(中島氏が代表になり)チームを作って伸ばすことを進めてきた。今年度は送客人数ベースで前年比倍増のペース」(中島氏)

そとあそびでは今回の調達をもとに、人材を拡大。今期中(2016年3月まで)に現在30カテゴリ・1000件弱のプランを2倍の2000件まで増やすほか、システムの強化を進める。「競合はあまり意識していない。10年以上磨いてきた『丁寧に紹介していく』ということを続けて、そとあそびなら安心してアクティビティに申し込める、と思ってもらえるようにしたい」(中島氏)

元DeNA創業メンバーの渡辺氏が創業した「Quipper」をリクルートが約48億円で買収、現状と今後の狙いを聞いた

masa1

たぶんスタートアップ界隈でも気付いていた人はほとんどいなかったと思うけど、2010年創業のEdTechスタートアップの「Quipper」がリクルートに買収されていた。TechCrunch Japanの関係者らへの取材で分かったのは、4月1日にQuipperは全株式を47.7億円でリクルートに譲渡し、リクルート傘下でオンラインラーニングプラットフォームを始動させていたことだ。QuipperはこれまでにAtomicoグロービス・キャピタル・パートナーズなどから総額約1000万ドル(約12億円)の資金を調達していた。

quipper

創業者である渡辺雅之氏は、そのままQuipperに代表としてとどまり、新体制でグローバルな学習コンテンツプラットホームを狙いに行く。創業4年半でQuipperは世界5都市にオフィスを持ち、社員数100人規模のスタートアップにまで成長している。とはいえ、ヒト、カネ、ブランドなどリクルートが持つリソースとは比較にならない。新しい座組でグローバルに戦っていけることについて、Quipperの渡辺氏は「どんどん人も送り込んでもらっていて、モビルスーツに乗っている感じ。こんな強力な企業を敵に回さず、味方にできて、というか一緒になれて本当に良かったと思います」と話す。

フィリピン、インドネシア、メキシコなどで大きな手応えを感じているというQuipperの現状と今後の狙いについて、TechCrunch Japanでは渡辺氏に話を聞いた。

教師向け宿題管理ツールにピボットして150万ユーザーにスケール

渡辺氏は2010年にロンドンでQuipperを創業している。京都大学卒業後に入ったマッキンゼー時代の同僚、南場智子氏、川田尚吾氏らと1999年のDeNA創業に参加し、12年間の在籍のちにDeNAを卒業して渡英。現在QuipperのCTOを務める中野正智氏とロンドンで出会ったことで起業を決めた。ロンドンはEU域内の人ならビザなしで採用できるし、オックスフォードやピアソンといった教育系出版社の大手もあり、EdTechスタートアップを始めるには良い立地だと思ったという。

創業後最初の3年ほどはゲーミフィケーションを取り入れた4択式のモバイルのクイズなど、大人も含めたeラーニングのプラットホームとして事業を展開していった。OEMによるソリューション提供で黒字化した月もあったが、「でも、これじゃないなと思った。マーケット(創出)は悲願だった」と渡辺氏は振り返る。小さく黒字化したところで、受託ビジネスではスケールしない。

転換点となったのは2014年頭に「Quipper School」とリブランディングして、「K12」(小中高校)向けにフォーカスしたプロダクトを出したこと。

Quipper Schoolは、教師向けに「宿題」や授業中の「課題」といった教材コンテンツを提供するプラットホームで、先生が手作業でやってきた問題のプリントアウトや回収、丸付け、進捗管理といった業務をオンライン化して手助けするものになっている。MOOCsなどオンライン学習サービスでは継続率や終了率がなかなか上がらないという問題が長らく指摘されているが、Quipper Schoolは、すでに先生たちが日々やっている業務の効率を改善するツールとして打ち出したことで、「9カ国で15万人の教師に受け入れられていて、生徒も入れると150万人が利用している」のだという。無料で仕事が効率化することから、教師たちには受け入れるべき分かりやすい理由があるのだ。

create1

learn1

link1

意外なのは、途上国における教育現場へのICT導入の熱意だ。

「インドネシアやメキシコにはICTルームというのがあって、タブレットやPCがあります。教師の人材不足の中で、ネットを使って子どもたちに最高の教材を使わせたい、という危機感が強いのだと思います。Quipper SchoolはスマホもタブレットもPCも対応していますが、授業中はPCやタブレットを使う生徒が多く、放課後は中学生、高校生は圧倒的にスマホです。その辺は実は日本より進んでいるかもしれません」

Indonesia

Philippines

教材コンテンツを提供し、いずれはプラットフォーム化

Quipper Schoolでは実は教材コンテンツも作って提供している。現在、各国の学習指導要領に沿って現地の先生たちを集めて独自に制作した問題やレッスンを5教科分、総計40〜50万問程度そろえている。このため、例えばフィリピンでは、日本の都道府県に相当する20の地方自治体の教育委員会レベルで、学区全体で使うこととする指示が出ていたりするのだとか。

先生ひとり一人が教材プリントを自分で用意せずに済むわけだが、もちろん自分のオリジナル教材を制作して活用してもいいし、ほかの先生が作ったものを使うこともできる。これまでは各国の学習インフラになるのを優先するためにコンテンツは無料としてきたが、ここがコンテンツ・プラットホームとなれば、それが教育出版の大きなマーケットとなるのは想像に難くない。「ベースはしっかり作れた。ユーザーベース拡大はめどが付きました。今後はリクルートの強いセールス力でマネタイズも進めます。もともとリクルートとは事業提携の話をしていて、コンテンツ作りもうまいので一緒にやればブーストするとは思っていました。これまでもスタートアップとしては最適なことをやってきたと思いますが、リクルートと一緒にやり始めるとドライブ感が全然違います」。営業計画を立てて面でキッチリと抑えていくという馬力のある営業力が、リクルートのDNAに刻まれてるのではないか、と渡辺氏は笑う。「こんな強力な企業と戦わなくて本当に良かったと思います」。

グローバル展開は面の取り合い、スピード勝負?

すでにインドネシアでもフィリピンでも学習プラットホームとしてトップシェアを取ったというQuipperだが、いまは東南アジアでのさらなる展開に加えて、メキシコでの成長の手応えを感じて南米大陸を徐々に南下していこうと計画しているそう。ヨーロッパについてはロシアから展開を進めていく。タイ、ベトナム、トルコ、ロシアなどが次の展開ターゲットという。

途上国を中心に大きな手応えを感じていて、リクルートと組んだことで階段を10段ぐらい一気に登った感じというQuipperだが、渡辺氏は「アメリカには行けるかどうかは分かりません。中国も分からないですね」と話す。

グローバルなEdTech市場は、実は最終戦争に突入しようとしているのかもしれない。

Lynda.comが350億円ほど資金調達して2015年4月にLinkedInに1840億円(15億ドル)で買収されたり、Udemyが5回におよぶ調達ラウンドで合計1億1300万ドル(139億円)もの資金を集めたり、もう資金調達合戦の様相を呈している。

Lyndaは大人向けの動画ナレッジ習得コンテンツとして事業をスタートしているが「学習コンテンツのデリバリープラットホーム」と見れば、Quipperも同じだ。入り口は違っていても、どこも最終的には似てくる。そういう見方をすると、現在パワーゲームをやってるサービス含めて、EdTech系スタートアップで最終的に残れるところはいくつもない、というのが渡辺氏の見立てだ。東南アジアや中南米で手応えをつかんだいま、一気に面を取るためのブーストをリクルートと一緒にやる。それがQuipper買収の背景だという。

Quipperに似たプラットホームとしては、Amazonが買収したTenMarksや、Edmodoなどがある。教育系NPOのカーンアカデミーは宿題系のサービスもやっている。ただ、まだ北米のEdTechスタートアップは「アメリカに集中している段階」(渡辺氏)だ。メッセンジャーのLINEやWhatsApp、WeChatのように大きな地域ごとの群雄割拠となるのか、それともYouTubeのように支配的なプラットフォーマーが登場するのか分からないが、走りだすタイミングとしては今しかないのだろう。

「個人的な意見ですが、いいところまで来たベンチャーが、一気にビジョンを実現するためにリクルートのような大手と一緒にやるという選択肢はもっとあっていいと思います。スタートアップ企業として本当に単体として突き抜ければ別ですが、IPOとか、そういうゴールじゃなくて。リクルートとは、学習プラットフォームを作って世界中に教育をデリバーしたいというビジョンのレベルで完全に一致していて、非常に楽しみですし、使命感を感じています。」

オンライン教育のカギは人間関係と出口への結び付き

「いまはもともと自分がやりたかった理想型に近づいています。やりたかったことは、知恵のマーケットプレイスを作ることです。勉強したいものとか、すべきものが1箇所にあって、国境や貧富の差を超えてアクセスできるものです。テクノロジーやソーシャルを活用した効率的なプラットフォームを作っていきたいんです」

photo01

Quipper創業者でCEOの渡辺雅之氏

「最近カーンアカデミーも学校に入っていっていますが、結局、学習には伴走者が必要なんです。同じ目標を持った仲間や見守ってくれる人が必要ということが分かってきています。一人で砂漠で孤独に学習というのは絶対できません。人間関係のプレッシャーで学習を進めるのは1つの回答と思っています。学校では先生が強制力をもっていますし、友だちに負けたくないというのもあります」

Quipperではゲーム的にグループバトルをやったり、クラスでランキングを出す、誰が何%の正解かといったものも、すでに取り入れているそうだ。問題に答えていくと壁紙が変えられるゲーミフィケーションのようなものもある。

「数学と物理の壁が必要なのかとか、社会科の内容は本当に暗記すべきなのかとか考えると、今後は学習の概念も崩れていくと思うんです。コンテンツは学年やジャンルの壁を越えて行くでしょう」

学習の継続が難しいという課題については、人間関係のほかにも「出口」を結びつけるのが有効ではないかと渡辺氏はいう。

「一部の国でコーディング教育が始まっていますが、今後教育は職業教育とも密接に結び付いて行くでしょう。Quipper上での日々の学習が単純な点数アップや学力じゃない結果につながるようになる。就職につながる。大学奨学金につながるとか。どこよりも面白くて素晴らしい教育コンテンツとサービスを作るのは大前提ですが、人間やっぱり怠惰なので、学習の面白さや必然性を高めるために人間関係を活用したり、明確な出口への結び付きがカギと思っています」

ところで4年半に及ぶスタートアップの立ち上げでの苦労について聞くと、渡辺氏は「そもそも英語が大変でした」と苦笑い。「開発もマーケも世界中でやっているので労務面でも苦労しました。アジアの人とヨーロッパの人で共通するものと、国ごとに違っていいことを決めるとか。でもまあ、苦労といえば、最初の3年間なかなかサービスが立ち上がらなかったことですよね。今思い返せば、それが一番大変でした。ずっと面白くはあったけど。それに比べたら労務のこととか、そういうのはギャグみたいなものかもしれませんね」

「世界の果てまで、最高の学びを届けよう」というリクルートの学習サービスのビジョンと、「Distributors of Wisdom」というQuipperの社是って、実は全く同じなんですよね。この世界観の実現に向けて一緒に邁進していくのが今から楽しみだし、やり甲斐と責任を感じています」

inbound insightはSNSの情報をもとに訪日外国人の行動データを可視化する

inbound01

2020年に開催される東京オリンピック。その需要を想定した新事業や新サービスが次々にスタートしている。昨日のニュースだけを見ても、楽天がVoyaginを買収してインバウンド(訪日旅行者向け事業)を強化するとしているし、MAU(月間アクティブユーザー数)1000万人という数字を発表したRettyも、訪日外国人満足度ナンバーワンのサービスを目指すと語っている

今日もそんなオリンピック需要を見越した新サービスを紹介する。ナイトレイは7月3日、訪日外国人の行動データ可視化ツールとデータを提供する「inbound insight(インバウンドインサイト)」の提供を開始した。

ナイトレイはこれまで、場所や店舗の情報に特化したソーシャルメディア解析エンジン「T-Rexa(トレクサ)」を提供するなど、3年以上にわたりSNSのデータを元にした位置・移動・行動データ解析を行ってきた。

今回のサービス提供にあたり、言語判定や国籍判定、入出国判定などを常時解析する技術を新たに開発。これにより、訪日外国人が観光をする際の行動データについて可視化が可能になったのだという。

行動データの解析対象となるのは、Twitterや新浪微博などのSNSのうち、一般公開されているユーザ投稿の情報。投稿内容から地名やランドマーク名や、緯度経度の情報などをもとに位置を特定する。現在1カ月あたり約6500人の訪日外国人旅行者のデータ解析を実現しているという。

inbound insightは、ブラウザから利用できる行動データ可視化ツールと解析データ購入プランの2つのサービスを提供。ツールには無料プランと月額10万円のPROプランの2つのプランを用意する。

inbound02

無料プランでは、地図上でのヒートマップ表示、人気エリアランキング表示、行動データのグラフ化が可能。PROプランではこれに加えて、地図上での行動ルート表示、国籍判定(中国、香港、台湾、韓国、タイ)、性別判定(中国、台湾、香港)、ポイントデータ表示、クチコミ詳細内容表示、投稿写真表示の機能が提供される。

また解析データ購入プランは1カ月のデータで50万円となっている。投稿日時、緯度経度、住所、プレイス名、ユーザID、性別、推定国籍、投稿テキスト、投稿画像URLなど、必要な期間の解析結果をCSV形式で提供する。

ナイトレイでは訪日外国人の誘致を進める官公庁や観光業、ホテル業、商業施設、商店街等に向けて導入提案を進める。2015 年末までに行動データ可視化ツールを100社、解析データ購入プランを20社に導入することを目指す。

TechCrunch Tokyo 2015「スタートアップバトル」参加企業を募集開始

昨年のスタートアップバトルは家庭用プリンタで電子回路を印字できる「AgIC」が優勝した

昨年のスタートアップバトルは家庭用プリンタで電子回路を印字できる「AgIC」が優勝した

昨年のスタートアップバトルは家庭用プリンタで電子回路を印字できる「AgIC」が優勝した


本日チケット販売を告知したけど、TechCrunch Japanは11月17・18日、東京の渋谷ヒカリエで「TechCrunch Tokyo 2015」を開催する。昨年、800人規模の会場で立ち見が出るほどの盛り上がりを見せた目玉企画「スタートアップバトル」(以下、バトル)はもちろん今年もある。本日、参加企業の募集をスタートしたのでお知らせしたい。

バトルを簡単に説明すると、スタートアップが今年ローンチした、もしくはローンチ予定のプロダクトをプレゼンで競い合うというもの。昨年は113社の応募があり、書類審査に通過した12社が決勝に進出した。今年も決勝には10社前後に登壇してもらう予定だ。優勝チームには賞金100万円を贈呈する。

応募チームに特典

バトルに応募してくれたスタートアップには特典もある。まずは決勝に出場した全チームに、会場の展示ブースを無償で提供する。惜しくも本戦出場を逃したチームの中でも、何社かに同様の特典を用意する予定だ。

スタートアップバトルの応募要項は以下のとおりだ。締め切りは10月2日でまだまだ先と思うかもしれないが、エントリーシートはすべてTechCrunch Japan編集部が目を通している。「これは!」というプロダクトがあれば事前に取材させていただくこともあるので、条件に当てはまるスタートアップは是非、応募ページから早めに申し込んでほしい。

そうそう、それともうひとつ。昨年は米国のTechCrunchでも、スタートアップバトルの様子をロングレポートしている。今年も米国から本家TechCrunchスタッフが来日する予定なので、世界デビューを目論んでいるスタートアップにとっては大きなチャンスになるかもしれないね。

ちなみに昨年の王者は、家庭用プリンタで電子回路を印字できるプロダクトを手がける東大発ベンチャーAgIC。今年1月には1億円の資金調達を実施し、製品ラインナップを拡充している。イベント当日は創業者の清水信哉氏も参加し、昨年バトルで優勝して以来の成長ぶりを語ってもらう予定だ。

応募資格

  • 未ローンチまたは2015年1月以降にローンチしたデモが可能なプロダクト(サービス)を持つスタートアップ企業(未公開プロダクトを歓迎します)
  • 創業年数3年未満(2012年11月以降に創業)で上場企業の子会社でないこと。なお、このイベント以前に開催された他のイベントで受賞をしていないプロダクトを優先します。

応募受付期間

2015年10月2日(金)23時59分まで

審査について

  • 審査基準: 企業とプロダクトを対象にし、そのプロダクトの市場性やビジネスの成長性、またビジョンを実現していけるチームであるかを基準とします。
  • 事前審査:一次審査は書類審査とし、その後一部評価に必要な情報が足りない場合はインタビューやデモを見せていただく場合があります。選考を通った応募企業には運営事務局から10月9日までに審査結果を通知します。
  • 決勝戦: TechCrunch Tokyo 2015の2日目(11月18日午後)に行います。TechCrunch Japanが選んだ審査員によって最優秀企業を選出します。

「資金も溶かした、美しいだけじゃ食えない」アクティビティ予約のVoyaginが楽天に買収されるまで

楽天は7月2日、CtoC型のアクティビティー(旅行体験)予約サイト「Voyagin(ボヤジン)」を運営するVoyagin Pte. Ltd.の株式の過半数を取得したと発表した。株式取得の価格は非公開。買収に関してはすでに翻訳記事も出ているが、Voyaginのリリースから間もない頃から話を聞いている高橋氏に、今の心境を語ってもらった。

「インバウンド対応を強化」を狙う楽天

Voyaginは現地の魅力を紹介したい個人(ホスト)がアクティビティーを
企画してサイトに登録。それを旅行者(ゲスト)に販売できるCtoC型のアクティビティー予約サービスだ。

サービスは現在、日本語のほか、英語、中国語(簡体字・繁体字)で展開。日本のほか、インドネシアやインド、ベトナムなどアジアを中心に50以上の国と地域で約1700のアクティビティーを提供している。現地の個人ならではの文化体験や隠れスポットへのツアーなど、多種多少なアクティビティが並ぶ。

楽天では今回の買収の理由について、旅行予約サービス「楽天トラベル」との連携、LCCを中心にした国際線の増便や東南アジアから日本へのビザ要件の緩和、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどでの訪日旅行者の増加を期待。訪日外国人向け事業(インバウンド)を強化する狙いがあると説明する。

Voyagin代表取締役CEOの高橋理志氏

Voyagin代表取締役CEOの高橋理志氏

Voyagin(当時の社名はエンターテイメント・キック)では、2011年8月にVoyaginの前身となるインバウンド特化のアクティビティー予約サイト「Find JPN(ファインドジャパン)」をスタート。2012年12月からはVoyaginとしてサービスを展開している。

デジタルガレージグループのOpen Network Labが展開する起業家育成プログラムの「Seed Accelerator Program」の3期生(Find JPNとして)、6期生(Voyaginとして)にも選ばれている。

4000万円を溶かして得た気付き

「今だから語れるが、全然運営がうまくいかなかった。調達した4000万円を溶かしても成果が出なかった」——Voyagin代表取締役CEOの高橋理志氏は、こう過去を振り返る。同社は2012年3月にデジタルガレージから資金を調達。Voyaginのサービスを開発してきたが、サービスは鳴かず飛ばずという状況だった。

「失敗は一気にアジア8カ国に展開したこと。自分たちでは『こうやればうまくいく』という思い込みだけがあって焦りがなかった。自分だけじゃなくてみんな苦しいから創業期より『地獄』だった」(高橋氏)——3人いる役員の報酬は10カ月ストップした。さらに資金が尽きる前にブリッジの調達(次の調達ラウンドの手前に「つなぎ」の資金を調達すること)を行おうとするも、そんな状況の同社に出資するベンチャーキャピタルはいなかった。

そんなとき、シンガポール政府が関わるベンチャー支援プログラムが発表される。高橋氏は英語が話せることから、資金を調達してサービスを継続できるならと、支援の条件に合わせて法人をシンガポールに移した(これが現在のVoyagin Pte. Ltd.)。

全部自前の商品でなくていい

無事シンガポールで資金を調達したVoyagin。「最初はCtoCをやりたかった」と語る高橋氏だが、その方向を転換。「売れるものを売る」と考え、BtoCでさまざまなアクティビティを仕入れはじめる。例えば東京・新宿にあるアミューズメント施設「ロボットレストラン」もその1つだ。実は現在、オンライン予約の10%はVoyagin経由なのだという。

「言ってみれば個人の購入代行だが、『外国人が来るときに必要なモノを全部提供する』という方向に転換すると、サービスが当たりだした」——高橋氏は振り返る。「訪日旅行者ならロボットレストランくらいは知っているもの。VoyaginはSEO強いので、旅行者が検索してサイトにやってくる。そのページにランディングさせれば、他のアクティビティも買ってくれる」(高橋氏)。Voyaginの売上は非公開だが、予約は月間数千件程度だという。

高橋氏はVoyaginを「セブン-イレブンでいい」と例えて語る。サプライヤーの商品もあればプライベートブランドの商品もある。どちらがいいかではなく、その2つでユーザーのニーズをすべてかなえるのが大事だと。

「BtoCをやらなかったのはくだらないプライドだった。もともとやりたかったのは『Airbnb』だから、法人のセールスを手伝う必要はないと思っていた。でも会社がバリューを出すことで、旅行者に貢献しているのであればそんなプライドは必要なかった。当たり前の話だけど、自分が作りたいモノだではなくて、お客が欲しいモノを提供しないといけない。美しいだけじゃ食えません(笑)」(高橋氏)

実はこのあたり、いろいろ考えることがある。僕は「CtoCでアクティビティを提供する」とうたうサービスをこれまでいくつか見てきたが、なかなか苦戦しているように見えるところが多いからだ。

中にはサービスを売却した事例もあるが、それは金額や条件面でハッピーだったというよりは「手放さざるをえなかった」というような起業家もいる。また一方では競合サービスとしてVoyaginを名指しして、「彼らはBtoCに走ったが我々は違う」と語る起業家もいる。前者は現在新しい環境で活躍していると聞くし、後者は自分たちで魅力ある商品を提供して欲しいと思って応援しているが、アクティビティ予約は送客して1割2割の金額を手数料として得るビジネスだ。いかに成約件数を増やすかというのが大事なので、高橋氏の言う「美しいだけじゃ食えない」という言葉は重い。

東京オリンピックに向けてサービスを拡充

同社が勝負をかけるのはもちろん東京オリンピックの開催される2020年だ。「今後は楽天グループとして、そこに向けて最速でいいプロダクトを作るのが重要。すでに楽天トラベルは多言語対応もやっており、連携はいろいろと考えられる」(高橋氏)。インバウンド対応に関しては、アクティビティにかかわらず、交通やホテル、スキー場の予約など幅広くサービス展開したいと語る。

今後も高橋氏はVoyaginのメンバーを牽引していくという。「プライドを捨ててまで伸ばしてここまで来た。乗りかかった船なので最後までやりたい」(高橋氏)

プログラミング学習サイト「ドットインストール」がスポンサードレッスンを提供開始

1本当たり3分と短い動画でプログラミングを学べる初心者向けプログラミング学習サイトの「ドットインストール」がネイティブアドとも言える新サービスを開始した。これまでの学習コンテンツに加えて、企業か提供する開発者向け製品やサービスを紹介するレッスン動画を掲載する「スポンサードレッスン」で、第1弾はニフティによる「超速アプリ開発!ニフティクラウド mobile backend 入門」で、ニフティが提供するモバイル向けのBaaSサービスを紹介する動画となる。

dotinstall01

dotinstall02

ドットインストールは現在、約15万人を超えるプログラミング学習者を抱えていて、企業が提供する商品やサービスの内容を3分動画で分かりやすく訴求できるという。ドットインストールではこれまで、スクリーンキャストと呼ばれる画面で実際にコーディングの様子を見せながらテンポ良く解説する動画コンテンツを提供してきた。2011年11月の創業以来提供してきたレッスン動画は3200本、動画再生総数は約2250万回となっている。上位人気コンテンツとしては、HTML入門(全24回)、CSS入門(全22回)、JavaScript入門(全24回)、PHP入門(基本編)(全32回)、Ruby入門(全23回)、CSS3入門(全18回)、jQuery入門(全20回)などがあるが、最近はモバイル開発のコンテンツにも人気があるという。

2013年からはプレミアムレッスンや文字起こしテキストなどが利用できる月額880円のプレミアム会員サービスを開始(有料会員数は非公開)。また2014年4月からは1ユーザー当たり月額1880円の法人向けライセンスの販売も開始している。法人ライセンスはヤフーやドワンゴで導入例がある。

新しく提供する動画サービスは、このドットインストールで提供されている3分動画のフォーマットを踏襲する。ドットインストールは創業者で代表取締役社長の田口元氏による解説で知られているが、スポンサードレッスンを制作は、オープンソース紹介ブログ「MOONGIFT」の執筆、運営で知られるエンジニアの中津川篤司氏が担当する。

スポンサードレッスンの価格は、動画制作とコンサルティング、3カ月からの掲載、運用費用を入れて税別280万円から。依頼企業はドットインストール上での露出するだけでなく、レッスン動画を自社サイトやセミナー、営業資料などで利用することもできる。

ところでドットインストールといえば、人気ブログ「百式」のブロガーとしても知られる代表の田口元氏が、ドットインストールのシステム開発もこなす福永康司氏と2人体制でコンテンツを作ってきたが、自己資金だけでなく、外部資金を調達してスケールさせる道を選ぶことはないのだろうか? 市場規模が違うので英語圏との直接比較は意味がないが、例えば海外では1995年創業のオンライン学習サイトであるLynda.comが合計350億円ほどを資金調達して、2015年4月にLinkedInに1840億円(15億ドル)で買収されるというダイナミックなことが起こっていたりする。

田口氏はTechCrunch Japanの取材に対して「(外部からの資金調達は)どこかのタイミングではするかも」としながら、今のところはノウハウの蓄積に注力したいと話す。物量でコンテンツを増やすことによるクオリティ低下を懸念していて、むしろ進化の激しい技術にキャッチアップしてコンテンツを更新することの重要性などを過去3年ほどの運用で感じているそうだ。

ソニーがヤフーとタッグ、新規事業から生まれた製品を販売する「First Flight」

ff

業績面では2014年度純損益1259億円の赤字決算から、2015年度純利益1400億円の黒字へと転換の見通しが立ったと発表しているソニー。本業の業績回復に向けて動いている一方で、この1年、積極的な新規事業開拓を行っているのはご存じだろうか?

同社は2014年4月に平井一夫社長直轄のプロジェクトとして「Sony Seed Acceleration Program(SAP)」と銘打った新規事業創出プログラムをスタート。すでに電子ペーパーを使った腕時計「FES WATCH」やスマート電子工作キット「MESH」といったプロダクトを世に送り出している。

そんな新規事業創出プログラム発のプロダクトを紹介し、クラウドファンディングやECを展開するサイト「First Flight」が7月1日にオープンした。サービスの立ち上げにはヤフーが協力。ヤフーが2014年に実施した企業内起業家育成制度「スター育成プログラム」から生まれた新会社のリッチラボがサイトの開発、運営を担当した。

サイトでは、SAPから生まれたプロジェクトについて、プロダクトのアイデアを紹介・提案し、サポーター(支援するユーザー)から応援メッセージやフィードバックをもらう「ティザー」、期間内に一定数以上のサポーターの支持を集めてティザーで紹介・共創したプロダクトを商品化する「クラウドファンディング」、商品化されたプロダクトを広く販売する「Eコマース」の3つの機能を提供する。なおEコマースの機能はYahoo!ショッピング内の「First Flight」にて行う。

サイトローンチ時点には、MESHやFES WATCHを販売するほか、1台で家電ごとに機能を切り替えられるリモコン「HUIS」のクラウドファンディングを実施している。

SAPから生まれた「MESH」

SAPから生まれた「MESH」

1年で400件の企画が集まったソニーの新規事業プロジェクト

「SAPをやって分かったのは、ソニーの中に新しいことをやりたい人がいて、やりたいプロダクトがあるということ」——SAPを統括するソニー 新規事業創出部 担当課長の小田島伸至氏はこう語る。

SAPへの応募はプログラム開始から1年間で400件を超えた。応募されたプロジェクトは「オーディション」と呼ぶ審査に合格すれば、プロジェクトに合わせた予算が用意され、3カ月間そのプロジェクトに専念できる。そして3カ月後に改めて事業継続のジャッジを受けるのだという。製品は既存事業でなければオーケー。ソニーの社員がチームに1人いれば、社外からメンバーを募ってもいい。向上についても、SAP向けの開発リソースを確保できる体制だという。

クラウドファンディングをやって分かった「課題」

すでに世の中に出るようなプロダクトが生まれているが、課題もあった。FES WATCHとMESHはクラウドファンディング(FES WATCHはMAKUAKE、MESHはIndiegogo)を通じて告知・販売されていたが、クラウドファンディングでサクセス(支持・購入者が集まること)して、サポーターには商品が届いても、クラウドファンディングサイトでは、基本的にプロジェクトごとに期間を限定しているため、サクセス後の継続的な情報発信やコミュニケーション、製品のアップデートなどは難しい。

実はこの課題、別の場所でも聞いたことがある。クラウドファンディングを通じての初期のマーケティングや支援者集め、初期ロットの販売はとても大切だ。しかし一般的なその次のステップに向けた機能がなく、また別の「売り場」が必要になる。せっかくできたサポーターとのコミュニケーションだって途絶えてしまう。イベント開催などを前提とした「売り切り」のプロジェクトもあるのでそのプロジェクトの性質次第という話ではあるが。

もちろんソニーには既存の販売チャネルがある。だが小田島氏いわく「『大きいモノをたくさん売る』ものであり、小ロットで売るパスがなかった。そうなると売れるか売れないか分からないのに大量生産をする、ということになる。大きな金額がかかるし、それ以上に販売できるのが1、2年先になってしまう」とのこと。SAPが動き出す中でそんな課題が見えてきた。

スター育成プログラムでヤフーと接点

そういった動きと並行して、ソニーではスター育成プログラムなどを通じてヤフーとコミュニーケーションを取るようになっていた。リッチラボ代表取締役社長の鈴木辰顕氏も「プログラムの中でもハード、ソフトの面でソニーと何かできないかと話していた」と振り返る。「やる気があるエンジニアがいるのにプロダクトを出せない。また外の人に目利きをしてもらいたい。さらにハードウェアでも、ソフトウェアのようにベータを出して開発するということをしたかった」(小田島氏)「モノを作って売ることはヤフーとしても興味があった。それを決済や金融寄りの立場から何かできないかと検討していた」(ヤフー決済金融カンパニープロデュース本部プロジェクトマネージャーの真鍋拓也氏)

そんな経緯もあって、First Flightではリッチラボがサイト開発を担当(決済にはヤフーのFastPayを使っているそうだ)することとなった。IDから決済、販売、物流についてはヤフーのプラットフォームを活用。ソニー銀行もプロジェクトに参加し、決済まわりの調整に尽力した。

First Flightでは今後も継続的にSAP発のプロダクトを掲載する予定だ。「First FlightはSAPで訓練を終えた『見習いパイロット』がクラウドファンディングを使って初めて飛び立つ場。ここからさまざまなプロダクトが世に出て行けばいい」(小田島氏)

First Flightのプロジェクトメンバー。後列左からソニー銀行の中路宏志氏、ソニーの小田島伸至氏、ヤフーの真鍋拓也氏、リッチラボの鈴木辰顕氏、前列は開発を務めたリッチラボのメンバー

医療系スタートアップのメドレーが三井住友海上、MRT、グリーから3億円を調達

メドレーのメンバーら。左から2番目が石崎氏、3番目が
5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

医療系スタートアップのメドレーは6月30日、三井住友海上キャピタル、MRT、グリーおよび個人株主を引き受けとする総額3億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

今回メドレーに出資したMRTは、外勤紹介サービスの「Gaikin」、転職紹介サービスの「career」(いずれもMRTのコーポレートサイトで提供)、医局向けサービス「ネット医局」、ヘルスケア情報サイト「GoodDoctors」など、医療従事者向けのサービスを展開している。今後は、ジョブメドレーとGaikinのサービス連携、医師や医療従事者のネットワーク拡大、新サービスの共同開発を進めるとしている。

メドレーは2009年の設立。代表取締役の瀧口浩平氏は家族のがん治療の経験から、医療現場の効率化、情報の非対称性といった課題に気付き、それを改善すべく医療領域で起業した(同士は学生時代にも一度起業しており、これが二度目の起業となる)。

同年11月には医療・介護業界専門求人サイトの「ジョブメドレー」の提供を開始。2015年2月には瀧口氏と小、中学校時代からの友人である医師の豊田剛一郎氏を代表取締役医師として招聘。あわせてオンライン病気事典「MEDLEY」を公開した。また、2015年にはグリー傘下で介護施設の口コミサイト「介護のほんね」を提供していたプラチナファクトリーを株式交換により子会社化している。

同社にはこれまでにウノウ創業者でメルカリ代表取締役の山田進太郎氏やアトランティス創業者の木村新司氏といった個人投資家のほか、East Ventures、インキュベイトファンドなどが出資している。

社員数は現在約60人。役員を中心に、東大医学部卒業生も4人在席している。「2009年に創業した時は、医療分野をやりたいエンジニアなんかいなかった。だここ最近はApple Watchでヘルスケア情報が取得できるようになったりして、医療領域に注目が集まってきている」(瀧口氏)

医療情報の提供、「生半可な気持ちでやっていくつもりはない」

今回の増資を受け、メドレーでは前述のMRTとの協業に加えて、オンライン病気事典MEDLEYおよび医療系人材の求人サイトジョブメドレーのサービス開発を加速するとしている。

MEDLEYでは、医師や医療従事者が執筆する情報を、220人の専門医が校正。一度掲載された情報についても逐次アップデートするという体制を取っているそうだ。「病気を調べるときにパッと思い浮かぶ病気のサイトにしたい。将来的には疾患の基礎情報からQ&Aまでを網羅する。医者1人1人も時間が限られている。診断したあと、(MEDLEYの)URLや印刷物を渡して『聞きそびれ』をなくすようなものにしたい」(豊田氏)。

ここ最近では医療情報サイトもいくつか出ているが、その一部は、情報の信頼性に不安をおぼえるものも少なくない。例えば、ある医療情報サイトで「子宮肉腫」という項目が「良性の腫瘍」と説明されているのだが、実際は「良性の子宮筋腫と間違いやすい、悪性の腫瘍」なのだそう。競合サイトでこういった生死に関わる情報が正しく扱われていない背景を踏まえて豊田氏は前述のコンテンツチェック体制を強調。「サービスを生半可な気持ちでやっていくつもりはない」と語る。

またジョブメドレーも売上は伸びており(グラフを見せてもらったが、金額自体は非公開とのこと)、「採用決定数も競合比較で多くなっている」(瀧口氏)のだそう。

将来的には、遠隔医療分野を支援、効率化するサービスの提供も予定しているという。こちらも具体的な話は非公開ということだったが>、豊田氏いわく「医療は『サイエンスとアート』なんて言われることがある。そのサイエンスの部分をシステムに置き換えて、アート、つまりコミュニケーションなどのために医師が時間を使えるようにしたい」とのこと。

スペースマーケットがiOSアプリをリリース、今後はポップアップショップの紹介なども

space

昨年4月にサービスを開始した“ビジネス版Airbnb”こと「スペースマーケット」。野球場から映画館、果ては船まで、さまざまなスペースを1時間単位でレンタルし、会議や株主総会、研修、イベントなどに利用できるこのサービスが6月30日、iOS版のアプリをリリースした。App Storeから無料でダウンロードできる。なおAndroid版アプリは今後提供する予定。

アプリでは、レンタルスペースを検索して予約リクエストを送信。アプリ上で決済までを完了できる。設備等の気になる点を質問できるメッセージ機能も用意する。ただし、アプリ経由でのオーナー登録(貸したいスペースを掲載する)の機能は現在実装されておらず、今後対応する予定だという。

取り扱いスペースは3000件に

サービスを運営するスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏に聞いたところ、取り扱いスペースは現在約3000件。5月にはNPOと提携して群馬県桐生市にある遊休施設のレンタルを開始するなど、“地方創生”関連の案件なども積極的に開拓しているそうだ。

とはいえ、ビジネスの中心になっているのは結婚式場などの大きなスペースで企業の周年イベントや社員総会を開催するといったBtoBの案件。「今ホテルの宴会場を貸し切ると高い価格になるが、平日の式場などは安価に利用できる。我々にも競争力がついてきたので、スペースとの価格交渉もできるようになってきた」(重松氏)

事業面を見るとまだ赤字ながら、売上、利益ともに伸びているという。ただし売上は「季節要因が大きい」(重松氏)。会社行事などが集中する12月や3月、4月などは増加する一方、5月以降は下降ぎみだという。

今後はポップアップショップの紹介も

国内の競合を見渡すと、米「StoreFront」や英「Appear Here」のようにポップアップショップに特化したCOUNTERWORKSの「SHOPCOUNTER」が5月にスタートしているほか、またWiLなどが出資しており、安倍政権の特区構想に準拠するかたちで日本版Airbnb「TOMARERU」を提供する予定の百戦錬磨も、2014年末に「Jambalaya」なるスペースレンタルサービスをひっそりと開始している。古参の「軒先ビジネス」なども健在だ。

重松氏は「CM撮影やイベント開催、ポップアップショップなどはトレンドとして確実に『来る』と思っている。ちょっとしたスペースも、コンセプトを与えてやるとうまく回っている」と説明。今後はより広いニーズに対応していきたいと説明する。すでに同社のオウンドメディア「BEYOND」でも、そんな物件が紹介されていたりする。

TechCrunchの日英記事を並べて学習、「ポリグロッツ」が英語音声を搭載したぞ

いつもTechCrunchを読んでくれて、ありがとう!

勉強を兼ねて英語でTechCrunchを読んでいる人に朗報だ。英語学習アプリ「ポリグロッツ」で、TechCrunch Japanに掲載した日本語記事と、その原文である英語記事を同時に読み比べながら、さらに英文についてはネイティブによる音声を聞くことができるようになった。英語やんなきゃと思いつつも始めるキッカケがなかったり、継続できなくて悩んでいるなら、毎朝(あるいは毎晩)決まった時間に情報収集を兼ねてTechCrunchの記事で勉強してみてはいかがだろうか。以下、音声読み上げのデモ動画をご覧あれ。

ポリグロッツは8カ月前ににローンチした「読むこと」に重点を置いた英語学習アプリで、現在までに20数万ダウンロードとなっている。アプリの動作としてはRSSリーダーに近く、ネット上にある英文コンテンツを読むリーダーアプリだ。ポイントは「好きなものを読む」ところ。まず、次のようなジャンルから関心のあるテーマを選ぶ。

ニュース、ビジネス、スタートアップ、マーケティング、テクノロジー、スポーツ、エンタメ、音楽・映画、デザイン、ファッション、グルメ、ライフスタイル、小ネタ、運勢・占い、ゴシップ・セレブ、医学・医療

すると、ポリグロッツが各ジャンルでセレクトした英語圏の記事が、読了予想時間や難易度とともに表示される。例えば、ニュースならBBCやHuffington Post、The Japan Times、New York Timesといったものがある。日本に暮らす身としては、同じ英語圏ニュースといってもアメリカでいえばUSA Today、イギリスでいえばThe SunやDaily Mailといった完全に地元の人だけを相手にしてるローカル紙じゃないところがいい感じだ。テクノロジー分野はTechCrunchを始め、Mashable、CNET、The Virgeなどが入っている。

記事の分類として「日本語訳あり」というのも存在する。これはTechCrunchのように日本語・英語で翻訳記事と原文が両方一緒に読める記事を集めたものだ。「JP/EN」というボタンを押して、切り替えながら読むことができる。

polyglots02

polyglots01

ポリグロッツ創業者でCEOの山口隼也氏によれば、ポリグロッツはアダプティブ・ラーニングという教育メソッドをアプリの基本方針に採用している。学習者一人ひとりの興味やレベル(難易度)、読むタイミングにあわせて学習を進められるプラットフォームとしてポリグロッツの開発を進めている。

強制スクロールで目指せ200wpm!

ポリグロッツではリーディング学習のために、いくつか補助ツールが用意されている。

1つは自動スクロール機能。ポリグロッツを使ったリーディングは「自分のペースで読む」モードと自動スクロールによって読む「ペースメーカで読む」の2つのモードがある。映画の最後に出てくるスタッフロールのような自動スクロール状態で読む利点は、リーディング速度を意識して読めること。リーディング速度は1分間に読む単語数を使って「WPM」(word per minute)という単位で計測することが多いが、ポリグロッツではスクロール速度をWPMを使って調整できる。

日本人の英語学習者には、英語を読むことはできるけどリスニングが苦手という人は多いと思う。その原因の1つはインプットを理解する「吸収速度」が遅いことにある。

例えばテレビのアナウンサーが丁寧に話す速度は140wpm程度だが、早口な英語だと180〜200wpm程度と言われている。ぼくの個人的な感覚だとシリコンバレーの人たちは200wpmがデフォルトだ。一方、日本の平均的大学生だとリーディングで80〜100wpm、TOEICで800点前後の人でも120〜140wpm程度という話もあるから、リスニングで処理漏れが起こって理解できなくなるのは当然だ。ちなみに英語ネイティブのリーディング速度は250〜300wpmと言われている(wpmについては、こここここれこの本を見るといい)。

ポリグロッツは読了時間からwpmを計測して、日々読んだ英語の量やスピードをグラフ化してくれる。また、読んでいる最中に単語をクリックすると辞書が引ける。これは自動的に単語帳に入り、後から復習することもできる。記事を読み終わると、ほかのユーザーが調べた単語とその意味が表示されたりもするので、辞書を引くのが億劫な人にもいい。

冒頭で紹介した音声読み上げ機能は月額480円のプレミアム会員向け機能で、2週間で1記事までは無料。当初音声読み上げに対応するコンテンツパートナーは、TechCrunchとTech in Asiaの2媒体だ。音声付き記事は当初は1日1記事程度となる見込み。

プレミアム会員向け機能としては「オーディナリー・デイ」と呼ぶ、ロールプレイによる日常会話のやり取りによる学習コンテンツも利用できる。「帰りがけにビール買ってきてよ」というようなやり取りを英語でなんというかを選択肢で選ぶと、それについての解説を日本人の英語の先生と、英語ネイティブによる解説が、その場で日本語で見られるというものだ。

このほかポリグロッツには、端末上にある楽曲について、その歌詞と翻訳を表示して再生する機能や、雑誌をスキャンして辞書を引く機能などが搭載されている。以下がポリグロッツの各機能の紹介動画だ。

今さらリーディング? という人は過去の研究をググってみよ

ところで、いまさらリーディングなの? 問題はリスニングとかスピーキングでは? と思う人もいるかもしれない。

ぼくはリーディングを外国語学習の中心に据えるのは正しいと思う。第二言語習得研究では1970年代半ばにスティーブン・クラッシェンという研究者が提出した「インプット仮説」が、その後の研究に多大な影響を与えている。インプット仮説は5つの仮説を含むが、その1つは「第一言語(母語)であるか第二言語であるかを問わず、言語習得というのはインプットの理解を通してのみ起こる」という、ちょっと過激な主張だったりする。英会話学校のようなアウトプットの練習など必要ない、というのだ。必要なのは理解可能なインプットであり、それを通してのみしか人間は言語を獲得しないというのだ。

このインプット仮説には批判もあるようだけど、かつて特定の構文を繰り返してアウトプット練習することで徐々にしゃべれるようになるとしたリピートアフターミー式の「自動化モデル」への反省となり、今は多読やイマージョンプログラムなどインプット側を強調する外国語学習方法が注目されるという流れになっている。なのだけど、日本の英語学習アプリやサービスは全体にアウトプットの練習を強調しすぎていてバランスが悪いように感じている。英語教育の専門家も、英語が話せない真の原因はインプットが圧倒的に不足しているからで、英語学習におけるインプットとアウトプットの割合は「1:4」もしくは「1:9」くらいとし、インプットを多くせよと言っている

ちなみに個人的な話をすると、ぼくは十年以上前にwpmを計測しながら英語を学習したことがある。当初120〜140wpm(TOEIC900点程度)だったものが、ただひたすら毎日読み続け、聞き続けたことで250wpm程度にあがった(ちなみに200wpmくらいのときにTOEICを受けたら満点だった)。東京に暮らし、日本企業に勤めながらでも、目的意識をもったインプットさえ続けていれば語学力というのは上がっていくのだなというのがぼくの実感だ。

もう1つ、文字と音声の両方でインプットすることについても、少し書いておきたい。

アメリカでは13インチ以上のテレビには例外なく英語字幕表示機能(クローズド・キャプション)を搭載すべしとした法律が1990年に成立し、1993年から施行されている(Television Decoder Circuitry Actという)。これはもともと聴覚障害者や文盲でもテレビコンテンツにアクセスできるべきという理念から出たものだったが、実は英語を第二言語として習得中の移民や、英語を学んでいる子どもたちにとっても福音だったと言われている。字幕付き映像が第二言語習得にもたらす影響については結構いろいろと研究がある。例えばオランダの子どもたちがドキュメンタリー番組を見た場合に字幕があると英語の語彙をより多く獲得したという報告がある。よく引用されている論文だと、「Captioned television as comprehensible input: Effects of incidental word learning from context for language minority students」(PDF)というのがある。字幕付きで映像を見たり音声を聞いたりすることで、より偶発的な語彙獲得が起こるというのが研究者の間での一般的な見解のようだ(こうした議論に興味がある人は専門家が書いた一般向け解説書を読むと良いと思う。『外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か』(岩波新書、白石恭弘著、2008)あたりがオススメだ)

英語話者向けアプリや、インフィード広告の展開も視野に

photo01さて、ポリグロッツの山口隼也CEOは、海外でのビジネス体験などを通して抱いていた「なぜグローバルにビジネスの世界で活躍している日本人はこんなにも少ないのか?」という疑問に対して、その最大の原因を英語力(の低さ)に求めたことから、これを解決すべく2014年5月にポリグロッツを創業したそうだ。2015年3月末にはEast Venturesやエンジェル投資家からシード投資で2000万円を資金調達。秋ごろに追加の資金調達も予定しているという。

ポリグロッツは「日本語→英語」の学習アプリだが、その逆に英語話者向けの日本語学習アプリを「Mondo」という別アプリとしてもリリースしている。

今後ポリグロッツは専門性の高いコンテンツは、パブリッシャーとのレベニューシェアで展開を予定していて、例えば会計士向けの会話集などを有料モデルで展開していくという。また、外資系企業のPRや記事広告をインフィード広告で展開することも視野に入れているのだそうだ。実は日本市場にも参入している海外企業のマーケティングやPRの英語ブログというのは大量にあって、これを学習コンテンツ化するというアイデアも考えているそう。

最後に繰り返しになるが、英語でもTechCrunchを読んでみたい、あるいは両方読んでいるという人は、ぜひポリグロッツを試してみてほしい。

おこづかいアプリに中華ブースト、アプリストアのランキングはどこまで信頼できるのか

appstore

「App Storeにランキングがある以上、事業者はその上位を目指す。そしてそのためにはアプリの面白さも大事だが、広告にだってお金をかける。これはi-modeの時代から何も変わっていない」——あるネット広告代理店関係者はそう語る。リワード広告によるブーストみたいなものは「昔からよくある話」なのだと。

アプリストアにあるランキングは、ダウンロード数をはじめとした指標に基づいて作成されている。そのランキングの上位に入るのは、面白くて話題になっているアプリばかりとは限らない。アプリ開発者が広告で露出を増やし、ダウンロードを促したアプリだったりもするわけだ。もちろん広告で知ったアプリが面白くて話題になるというのもよくある話だ。

だがそんな広告手法の中でも、リワード広告を使った「ブースト」と呼ばれる行為について、その是非が問われている。アプリを開発するスタートアップや広告を提供する代理店ならもちろんのこと、アプリストアを利用するユーザーもその実態は知っておいたほうがいいだろう。なぜなら人気だと思ってダウンロードしたアプリは、極端に言えばランキングを「買って」いるかも知れないからだ。そんなアプリストアを取り巻く環境について紹介していこう。

アプリランキングに影響を及ぼす「ブースト」

まずはリワード、ブーストといった言葉について説明する。リワード広告とはユーザーが広告を通じてサービスの会員になったり商品を購入したりすると、その広告収入の一部が還元される広告のこと。この広告の仕組み自体は何も新しいモノではない。「会員になれば○○ポイント」なんて案件が並ぶポイントサイトなどは、読者のみんなもこれまでに見たことがあるのではないだろうか。

そしてブーストというのは、このリワード広告の仕組みを使って、アプリストアのランキングを意図的に急上昇させる行為のを指す。一番多いケースは「おこづかいアプリ」や「懸賞アプリ」(ここからはおこづかいアプリで統一する)と呼ばれるアプリを使って、短時間に特定アプリのダウンロード数を増やすことでアプリのランキングを操作するわけだが、これがアプリストアのランキングに与える影響は決して小さいモノではない。

僕は2013年に、「App Storeランキング騒動の実態–「懸賞アプリ」に対する業界の懸念」という記事で当時のブーストの状況について伝えた。それから2年ほどたった今、過激化するブーストの実態について指摘する報道エントリーが増えている。これらの影響もあってか、昨日今日というタイミングでもアプリストア上からおこづかいアプリが削除されている状態だ。

「おこづかいアプリ」によるブーストはいまだ健在

おこづかいアプリを使ったブーストの方法を詳しく説明すると次の通りだ。ユーザーがおこづかいアプリ上で紹介されるアプリをダウンロードしたり、そのアプリについてアプリストア上でレビューをしたりすると、その引き替えとしてポイントを得られる。ユーザーはこのポイントを貯めることで、Amazonギフト券などを得ることができる。

2015-06-30 3 15 52

おこづかいアプリに並ぶリワード広告

そんなおこづかいアプリ上で「ダウンロードすると○○ポイント提供」なんて紹介されているアプリの枠、それこそがリワード広告なのだ。広告主が広告代理店の提供するリワード広告ネットワークに出稿すると、そのネットワークを利用するおこづかいアプリにその広告が掲載されるのだ。

ポイントを得たいユーザーは当然おこづかいアプリの広告を経由してアプリをダウンロードするので、そのタイミングでダウンロードが集中し、結果としてそのアプリのランキングが上昇することになる。

おこづかいアプリへの広告掲載時間は、実は夕方17〜19時前後に集中している。その理由は何なのか? App Storeでは3時間ごとにランキングが更新されているが、その中でも最もダウンロードが活発になる“ゴールデンタイム”が19時以降だからだ。

Appleはランキングのロジックを公開していないし、ロジック自体も日々変化していると聞くが、「直近数時間で大幅にダウンロード数が増加することがランキング上昇に繋がる」というのはアプリ業界関係者の一致した意見。これを見越して17時にブーストが始まるのだ。

ランキング操作を意図するアプリは「規約違反」

ではこのブースト、つまるところ何が問題なのだろうか。

ユーザー目線で言えばまず、アプリストアのランキングが信用できないものになるということだろう。当たり前だが、アプリストアのランキングは本来「人気のアプリ」が並ぶべき場所だ。そこにCPI(Cost Per Install:1インストールごとの課金)100円程度のいわば“実弾”広告を使ったアプリが入るのだ。ランキングの信頼感は低下しかねないし、極論を言えばアプリビジネスの市場自体にも影響があるという声も聞こえる。

また、ダウンロード数を水増しできるのが問題だと指摘する人もいる。最近ではどんなアプリでも、ダウンロード数よりもアクティブユーザー数が重視される風潮がある。実際取材でもMAUやDAUといった数字を聞くことが多い。だが一方でテレビCMを見れば、「何百万ダウンロード突破」なんてうたっているアプリはまだまだ多い。アクティブユーザーなんかよりもダウンロード数は何より分かりやすい数字だ。ブーストでは、このダウンロード数も急激に増やすことができてしまう。

関係者へのヒアリングや僕が実際におこづかいアプリを見て調査したところ、ゲームアプリを除いては、SNSの「Twitter」、ニュースアプリの「Gunosy」、月額定額制の音楽アプリ「AWA」、ECの「Amazon」などなど、TechCrunchの読者になじみの深いアプリもブーストを行っている、もしくは過去にブーストを行っていたことが分かる。ここで名前を挙げたサービスはあくまで直近に確認できたものの一部で、全体の数は正直把握しきれない。テレビCMなどで「何百万ダウンロード突破」なんてうたっているアプリも少なくないのだ。

また、プラットフォーマーの規約を見れば、そもそもブースト事態が違反行為ではないのかという話もある。Appleの開発者向けの規約には次のような項目がある(もちろんGoogle Playにも同様の規約がある)。

2.25 Apps that display Apps other than your own for purchase or promotion in a manner similar to or confusing with the App Store will be rejected
(App Storeと類似、もしくは紛らわしい表示をして、他のアプリの購入やプロモーションするアプリをリジェクトする)

3.10 Developers who attempt to manipulate or cheat the user reviews or chart ranking in the App Store with fake or paid reviews, or any other inappropriate methods will be removed from the iOS Developer Program
(偽物のレビューや金銭を支払って書いたレビュー、その他不適切な方法でApp Storeのユーザーレビューやランキングを不正に操作しようと試みる開発者はデベロッパープログラムから削除する)

ブーストが「ランキングを操作しようと意図しているもの」だと考えれば、それは明確な規約違反だ。ただし、リワード広告に関わる代理店やお小遣いアプリ開発の関係者としては、「あくまでダウンロード支援の施策であり、ランキングが変動するのはその結果でしかない」という説明をすることが少なくない。言い分としては分かるのだけれど、実際におこづかいアプリがストアから消えつつある今、はたしてその言葉をそのまま受けられるかというと、正直難しい。

Apple Japanは回答せず、一方で米Appleは「不正」と認識

ではアプリストアを提供するプラットフォーマーはブーストの実情をどう考えているのか? 実は先週Apple Japanの広報部に電話で問い合わせたところ、「メールで質問を送るように」と指示されたため、メールで質問を送付している。しかし1週間近く経っても回答がないままだ。僕が確認した限りでは、別の媒体の記者なども同様の状況らしい。

回答のないApple Japanに対して「プラットフォーマーとしておごりがあるのではないか」と考えるべきか、はたまた「米国本社との関係上、日本法人では回答できない歯がゆい状況にあるのではないか」と考えるべきかはさておき、僕はちょっと面白いメールを入手することになった。以下にあるのは、あるアプリ開発者が、米Appleのアプリレビューチームに対して、「あるアプリがブーストを行ってランキングを不正に操作している疑いがある」と指摘した際の回答メールだ。

apple

概要を訳すと次のとおり。

We take ratings fraud very seriously and investigate each claim. Someone from this team will investigate and follow up as needed. Because we can only share communications about an app with its developer, you will not receive updates about this matter.
(レーティングの不正を非常に深刻にとらえており、調査を行う。ただし我々は開発者とのみアプリに関するコミュニケーションをしているので、今後あなたには更新情報をお知らせしない)

あくまで個別のアプリに対する説明ではあるが、アップルでもブーストについて状況を理解しており、不正だととらえているのだというわけだ。実際これまでもアップルは「広告を閲覧することでアイテムをもらえる」なんて広告も規約で禁止するなどしてきた。プラットフォーマーとその上でサービスを展開する事業者の狙いは異なる。自分たちの管理下で健全にサービスを運営したいプラットフォーマーと、その裏をかいて少しでも自分たちの価値を高めたい事業者たち。その行動は結局いたちごっこになってしまう。

アプリ開発者「ブーストは“危ないモノ”ではない」

これまではユーザーやプラットフォーマーの視点での話をしてきた。では実際にブーストを行うアプリ開発者やリワード広告を取り扱う代理店、お小遣いアプリの開発者はどう考えているのだろうか。

リワード広告を買う側である、あるアプリの開発者はこう語る。「サイバーエージェントやアドウェイズといった上場企業が広告商品として推奨、販売してくる以上は“危ないモノ”ではないと思っている」「結局のところその善悪を判断するのはプラットフォーマー。彼らの横暴さも知っている」「広告を売っている代理店の思いはいろいろあるのだろうが、買っている我々はあくまで提案された商品を買っているだけ。その存在を問うこともない」——結局のところ、ブーストはマーケティングのツールの1つだし、当たり前のように提案される商品だ。そこまで問題視することはなかったという。

前述の開発者が語るとおりで、リワード広告のネットワークを提供しているのはサイバーエージェント傘下のCAリワードやアドウェイズ、VOYAGE GROUP傘下のZucks、ユナイテッドなど上場企業(の子会社含む)も多い。リワード広告によるブーストが完全に禁止となると、その影響範囲は決して小さくないのは分かる。そんな背景もあってか、あるアプリ会社の代表は「リワード広告自体は数えきれないほど多くのアプリが使っている。これをとやかく言うことは、拡大するアプリ産業にマイナスの影響を与えかねない」と語っていた。

リワード広告のネットワークを展開する広告代理店などに話を聞くと、前述のとおり「規約的にはグレーだが、問題はない」という回答が大半だった。冒頭の代理店関係者の発言にもある話なのだが、i-mode全盛期の時代にだってランキングを操作するような広告手法は存在していたと聞く。当時、公式サイト(キャリア、つまりここではNTTドコモが認めたサイトのこと。i-mode公式メニューからアクセスできる)のランキングはMAUをベースにしていたため、勝手サイト(キャリア非公認のサイト。ブラウザで直接URLを叩いてアクセスする必要があった)に公式サイトの隠しタグを仕込み、MAUを水増ししていたなんてこともあったそうだ。

代理店サイドの回答とは異なり、お小遣いアプリ開発者は、前述の規約によってアプリがリジェクトされたり、開発者プログラムからアカウントが削除されたりする可能性があることは認識していたようだ。自社のアカウントでお小遣いアプリを提供している会社などは誠実なほうで、事実上休眠している法人や開発者個人の名義で開発者登録をし、実質的な運営者を隠しているケースも少なくない。ひどい話では、アップル側から再三の警告があったにもかかわらずにそれを無視し、「稼げるうちに稼げ」という姿勢で小遣いアプリを提供して、最後にはアカウントを削除された事業者もいたという。

「中華ブースト」で制裁を受けたスタートアップ

ところで代理店の話を聞いていく中で「中華ブースト」という聞き慣れない言葉を聞くことになった。これは今まで語られてきたブーストとは全く異なるものだ。一体どういうモノなのか。

これまで紹介してきたブーストは、実際にユーザー1人1人が端末にアプリをダウンロードすることで、短時間でアプリの大量ダウンロードを促すというものだった。一方の中華ブーストというのは、中国で日本のApple IDを割り振ったiPhoneを複数台用意し、機械的にアプリの大量ダウンロードを行うのだという。そんなものが本当にあるのだろうか。

ある代理店関係者が「過去の話」として語った仕組みはこうだ。数年前の中国では、複数台のiPhoneをPCと接続し、機械的にIPアドレスを変更して、当該アプリを何度もダウンロードするという手法があったのだそう。こういったことを行う事業者はネットワーク化され、アプリストアのランキングを大きく動かすことができたという。「中国では『CPI○○円』というような売り方でなく、『1週間ランキング1位キープで○○円』といった大胆な価格設定が行われていた。つまりそれを実現できるような(ブーストの)仕組みがあった」(関係者)のだそうだ。

だがさすがにこれはAppleの知るところとなり、対策がなされた。しかし手を変え品を変え、安価なリソースと機械的な仕組みを組み合わせたブースト手法が編み出されているという。

この中華ブーストの仕組みを日本に持ち込んで販売する広告代理店が存在する。実はこのブースト、金額面でも安価に効果があると一部では話題なのだそう。通常国内でゲームアプリなどをブーストする場合、CPIは80〜100円程度が一般的。だがこの代理店の提供する中華ブーストは、CPI50円程度と通常の約半額で実施できるのだという(これとは別に国内でもCPI十数円の非ゲーム専門ブーストがあるようだ。ここでは割愛する)。

だがこの代理店の仕組みが、機械的なものであれば「規約上グレー」なんてレベルの話ではない。僕は複数人から名前の挙がったその代理店に問い合わせたが、金額については「実際に国内の一般的な価格の半額程度」と回答を得たものの、その手法については聞くことができなかった。

しかしこの中華ブースト、プラットフォーマーからすればたまったもんじゃないし、危険な手法だ。実際、数カ月前にさかのぼるが、このサービスを利用したスタートアップにある事件が起きている。

前述の代理店経由でブーストを行っていたあるスタートアップのアプリが、ある日突然App Storeのランキングから除外されたのだ。アプリ名を直接検索すればそのアプリは出てくるのに、ランキングには一切表示されないのである。アプリ解析サービスに「App Annie」でもそのランキングを探ってみたが、数カ月の間、ランキングの数字自体がつかない状態になっていた。

その原因は何か? この事件を知っていた関係者は一様に「中華ブーストだ」と答える。その手法に気付いたアップルが制裁を行っていたのだと。そのスタートアップの“中の人”も「プラットフォーマーとの関係を考えて利用をやめた。(ブーストは)もう懲りている」として利用を認めた。代理店側はその因果関係については明言せず、「プラットフォームの上でのビジネスなので、(ブーストには)ある程度のリスクはある」とだけ語った。同社への今も問い合わせは、今も増えているのだそうだ。

「規約上グレー」な手法がアプリビジネスの価値を生み続けるのか

取材を通して分かったのは、アプリ開発者や代理店からすれば、規約を唐突に変更するプラットフォーマーだって褒められたモノではないということだ。こんな状況にコメント1つ出さないAppleの対応にも疑問が残る。だがそういったプラットフォーマーの行動の裏には、正攻法から中華ブーストのような危険な手法までを駆使して、ランキングの上位を取ろうとするプレーヤーの活動があるのも事実。プラットフォームでビジネスをする以上、守らなくてはならないルールはある。でもそういった両者の関係について、それこそ普段ランキングを見て、アプリをダウンロードしている読者にも知って欲しいと思っっている。

ただブーストを肯定する人たちにはちょっと考えて欲しい。「規約上グレーだ」なんて言っていたが、今プラットフォーマーが規制を強めている商品を売り続けることが本当にアプリビジネスの価値を生み続けるのだろうか?

今回話を聞いた代理店関係者のうち数人は、「本音を言えば、リワードによるブーストはそう長く続くビジネスではない」といったことを語っていた。ある人物は「PCとアプリを連動させるターゲティング広告を企画している代理店もいる。リワード広告の『次』をすでに探している会社も少なくない」なんて具体的な話もしていた。アプリ広告のビジネスにはまだまだ先があるんじゃないだろうか。

リワードにブースト、これが今日明日ですべてなくなるなんて思わないが、そろそろ別の方向に目を向けたほうがいい時期が来ているんじゃないだろうか。App Storeで「このアプリはなんでこんなに急に上位表示されるのか?」なんてランキングを疑ってかかるのはそろそろやめにしたい。

photo by
Blake Patterson

LINEが人気飲食店のネット予約サービスをひっそり開始、しかも人力で

lg01

lg01

LINEが一部地域で、ひっそりと飲食店のネット予約サービス「LINE グルメ予約」を開始した。

「デート」や「宴会」などのシーンから最大4店舗を選び、氏名や電話番号、来店日時、人数を入力すると、オペレーターが電話予約をしてくれる。飲食店のエリアやジャンル、予算などの詳細条件も設定できる。いわば人力の予約代行サービスだ。予約完了後はLINEで通知が届き、予約の依頼から完了まで最短10分で完結するという。

人気飲食店だけを厳選

人気飲食店の予約に特化していることも、大きな特徴だ。サービスの提供にあたっては実名型グルメサービス「Retty」と提携し、人気店舗を中心に9都道府県8500店舗を厳選。Rettyの画像や口コミといった店舗情報を掲載している。

ざっと見た限りだと、食べログの評価3.5点以上の店舗が多いような印象だ。逆に言うと、大手予約サービスが対応しているチェーン店は掲載していない。掲載店舗については、すべて許諾を取得している。

lg02

利用するには外部のアプリインストール不要で、LINEアプリから「その他>LINE App>LINE グルメ予約」を選択する。現在は試験的な「ソフトローンチ」という位置づけで、LINE公式アカウントを登録して整理番号を取得した順番に、利用開始の通知が届く。今後は段階的に利用できるユーザーを増やしていく予定だ。

LINEの飲食店予約サービスは初めてではない。2014年11月には渋谷限定で、空席情報をLINEのトーク上からリアルタイム検索できる「LINEいますぐ予約」を開始。予約希望人数をトーク上から送信すると、当日の空席店舗情報がわかるサービスだ。LINE グルメ予約は、事前の予約を受け付けている点が異なる。

あえて人力予約を採用した理由

国内の飲食店ネット予約サービスにはホットペッパーグルメやぐるなび、食べログなどのプレイヤーが参入しているが、対応店舗は大手チェーン店が中心。今年4月には飲食店向け予約台帳サービスのトレタとヤフーが機能連携し、「俺のフレンチ」をはじめとする人気店のネット予約を開始したが、電話予約しか受け付けない人気店は多い。予約システム導入の負担が大きいためだ。

店舗の負担となっているのは、オペレーション変更に伴う教育コスト、複数の予約サービスを使うことでのオーバーブッキング、キャンセルのリスクなどがあり、集客に困っていない人気店がわざわざネット予約を導入しないのもうなずける。LINEは店舗の負担をなくすために、まずは、あえてスケールが見込めない電話での予約代行という方法を採用した。

前述のとおり、LINE グルメ予約はユーザーに代わってオペレーターが電話予約を代行してくれるサービスだ。店舗側はネット予約のシステムが不要で、オーバーブッキングも回避できる。個人と紐付いたLINEを通した予約となるため、キャンセルの抑止力も働く。悪質なキャンセルを繰り返すユーザーに対してLINEは、LINE グルメ予約の利用を停止させる措置も検討しているという。

ずっと人力の予約代行を続ける?

それでは予約代行サービスをずっと続けるのかというと、そうではない。今後は、飲食店がコミュニケーションツール「LINE@」を通じて予約を受け付けたり、顧客を管理できる機能を提供する。LINEとしては、LINE@の有料アカウント(月額5400円〜)を増やす狙いがある。

もともとネット予約を受け付けていなかった店舗に、どうやってLINE@を普及させるのか。LINE グルメ予約を担当するLINEの杉本謙一氏は、「人気店でも、曜日や時間帯によっては集客のニーズはまだある」と勝算を語る。「LINE経由の予約でキャンセル抑止につながったり、予約のやりとりを簡素化できることもアピールしたい」。

ヴォラーレがアプリレビューサイト「Appliv」で海外進出——MAU600万人、アプリ版は100万ダウンロード

applivtop

ヴォラーレ代表取締役の高橋飛翔氏

ヴォラーレが提供するアプリレビューサイト「Appliv(アプリヴ)」が海外に進出する。同社は6月にフィリピン子会社を設立。今後現地の人材を採用して英語でのアプリレビュー記事を作成していき、9月末をめどにUS版のウェブサイトを立ち上げる予定だ。将来的には他の地域への展開も視野に入れる。

Applivは2012年8月にスタートしたスマートフォンアプリ向けのレビューサイト。アプリを1500のカテゴリーに細分化し、約6万8000件のレビューを掲載している。レビューはヴォラーレのライターが執筆したものに加えて、ユーザーの投稿も掲載。MAU(月間アクティブユーザーは)は600万人。

3月に提供を開始したスマートフォンアプリ版(iOSおよびAndroid)は、合計100万ダウンロードを突破した。アプリ版のダウンロード数は現在月間数十万件ペースで増加しているという。

appliv

iOS版の「Appliv」

ちなみにApplivはウェブ版とアプリ版でサイト構成が異なっており、ウェブ版が同社によるレビューが中心になっているのに対して、アプリ版ではユーザーレビューが中心(一部同社の「公式キュレーター」によるユーザーレビューもあるそうだ)になっている。またアプリ版はレビューが時系列で表示される「タイムライン」を用意している。

この理由についてヴォラーレ代表取締役の高橋飛翔氏は「ウェブとアプリではユーザーの導線設計が違っているから」と説明する。

ウェブ版は検索から流入するユーザーが中心。つまりどんなアプリをダウンロードしたいかというニーズが明確だ。一方でアプリの場合はニーズが抽象的。なんとなく(レビューを)見に行くので、「『友達のおすすめ感覚』でアプリを紹介している」(高橋氏)のだという。

Applivは広告モデルでサービスを展開しており、2013年からは「Appliv Ad」と呼ぶインフィード型のネイティブアドを展開している。アプリストアへの送客で課金を行う成功報酬型の広告となっている。