サムスンが約2兆円でテキサス州テイラーに先端半導体工場建設を発表

Samsung Electronics(サムスン電子)は米国時間11月23日、先端ロジックデバイスを生産する半導体ウェハー製造工場をテキサス州テイラーに新設することを決定した、と発表した。

推定170億ドル(約1兆9580億円)の今回の投資は同社にとって米国における最大の投資となり、新工場がフル稼働すれば約2000人の新規直接雇用と数千人の関連雇用が創出される見込みだ。今回の投資により、Samsungが1978年に米国で事業を開始して以来、米国での投資総額は470億ドル(約5兆4140億円)超となる。

テイラー工場は、オースティンに現在あるSamsungの製造拠点から約16マイル(約25キロ)のところにあり、韓国・平沢の最新の新生産ラインとともに、Samsungのグローバルな半導体製造能力の重要な拠点になると期待されている。

テイラー新工場では、モバイル、5G、高パフォーマンス・コンピューティング(HPC)、人工知能(AI)などの高度なプロセス技術に基づく製品を製造する。

今回のSamsungの決定は、世界的な半導体不足が自動車や電子機器といった産業を弱らせているの中でのものだ。

同社は、先端半導体製造をよりアクセスしやすいものにし、急増する半導体製品需要に応えることで、世界中の顧客をサポートすることに引き続き注力すると述べた。

同社は、500万平方メートルを超えるテイラー工場の建設を2022年の第1四半期に開始し、2024年下半期の生産開始を目指す。

Samsung Electronicsのデバイスソリューション部門の副会長兼CEOであるKinam Kim(キナム・キム)氏は「テイラーに新しい施設を設けることで、Samsungは自社の未来における新たな重要な章のための基礎を築いています」と述べた。「製造能力の向上により、顧客のニーズにより良く応えることができ、世界の半導体サプライチェーンの安定に貢献することができます。当社はまた、米国で半導体製造を開始してから25周年を迎えるにあたり、より多くの雇用をもたらし、地域社会のトレーニングや人材育成を支援できることを誇りに思っています」。

製造工場の候補地として米国内の複数の場所を検討した結果、地元の半導体エコシステム、インフラの安定性、地元政府の支援、地域開発の機会など、複数の要素を考慮してテイラーへの投資を決定した。

報道によれば、アリゾナ州、ニューヨーク州、韓国などを候補地として検討したSamsungは、税制面で有利であることを理由にテキサス州ウィリアムソン郡を選んだ。7月にテキサス州当局に提出された書類によると、Samsungはテキサス州テイラーに半導体工場を建設するために(テイラー独立学校区からの)減税措置を申請した。

「Samsungは財政およびその他のインセンティブ(例:インフラやユーティリティーの支援)を通じてプロジェクトをサポートする強力な公的パートナーを求めています。このプロジェクトに関連して、Samsungはテキサス州企業基金からチャプター380およびチャプター381の支援に基づくリベートを求めています。加えて、提案されているプロジェクトの建設と運営を支援するために、特定のインフラやユーティリティーの改善、料金の引き下げ、その他の非現金給付に関連するインセンティブも追求しています」と文書にはある。

Samsungはまた、テイラー独立学校区(ISD)に、学生が将来のキャリア・スキルを身につけるためのサムスン・スキルズ・センターを設立し、インターンシップや採用の機会を提供するための資金援助を行う。

テキサス州のWayne Abbott(ウェイン・アボット)知事は「Samsungのような企業がテキサスへの投資を続けるのは、テキサスの世界クラスのビジネス環境と卓越した労働力のためです。Samsungがテイラーに新設する半導体製造施設は、勤勉なテキサス州中央部の人々とその家族に無数の機会をもたらし、半導体産業におけるテキサス州の継続的な卓越性に大きな役割を果たすでしょう」と述べた。

「テキサス州のパートナーに加えて、最先端の半導体製造を米国で拡大しようとしているSamsungのような企業を支援する環境を整えてくれたバイデン政権に感謝しています」とキム氏は述べた。「我々はまた、米国内の半導体生産とイノベーションに対する連邦政府のインセンティブを迅速に制定するために超党派でサポートした政権と議会にも感謝しています」とも語った。

世界最大の半導体メーカーの1社であるSamsungは8月に、グローバルプレゼンスを強化すべく、今後3年間で半導体、バイオ、IT、次世代通信ネットワークなどの分野に2050億ドル(約23兆6000億円)超の投資を行う計画を明らかにした。

先週、北米を訪れたSamsung Groupの事実上のリーダーであるJay Y. Lee(ジェイ・Y・リー)氏はワシントンD.C.で米政府関係者と面会し、第2の半導体工場と半導体のサプライチェーンについて協議した。リー氏はまた、ビジネス上の結びつきを強化するため、Microsoft(マイクロソフト)CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏、Moderna(モデルナ)やVerizon Wireless(ベライゾン・ワイヤレス)の幹部などハイテク企業のリーダーたちとも会談した。

Intel(インテル)は最近、アリゾナ州で2つの新しい半導体製造工場の建設に着手した。同時に、TSMCは120億ドル(約1兆3810億円)を投じるチップ工場の建設をアリゾナ州で開始し、10月には日本初の半導体工場の建設計画を発表した。また、Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)は、テキサス州シャーマンに新たに4つの半導体製造工場を建設する投資計画を発表した。

画像クレジット:JUNG YEON-JE/AFP / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIオンデマンド製造ロボットで設計反復の迅速化、Machina Labsが累計約18.6億円を調達し脱ステルス

77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

ロボットとAIを活用した製造プラットフォームを提供するMachina Labsは米国時間11月17日、1400万ドル(約16億円)のシリーズAを調達したと発表した。このラウンドは、Innovation Endeavorsがリードし、Congruent VenturesとEmbark Venturesが参加したもので、ロサンゼルスにある同社の累計資金調達額は1630万ドル(約18億6000万円)となった。

今回の資金調達により、同社は、NASAおよび米国空軍とのパイロット契約に続き、事実上ステルス状態を脱したことになる。ロボットプラットフォームの初期段階では、政府(特に国防総省)との契約が重要な役割を果たしてきたが、Machina Labsもその点では特別な存在ではない。

しかし、新たなラウンドで同社はさらなる成長を目指し、商業パートナーの受け入れを開始している。パンデミックの影響でグローバルサプライチェーンの多くがきしるように停止している中、米国内の製造業がさらに苦境に立たされていることを考えると、確かにタイミングは良いと言える。

画像クレジット:Machina Labs

Machinaの最初の取り組みは、シートメタル加工を中心としたもので、戦車の部品を設計したり、NASAの宇宙空間での製造の可能性を探ったりしているが、後者の部分は、明らかな理由からまだ先の話だ。現在、同社は地元ロサンゼルスの工場で、オンデマンドのMaaS(Manufacturing as a Service)を提供している。

共同設立者兼CEOのEdward Mehr(エドワード・メア)氏は声明の中で、次のように述べた。「この競争の激しい市場の変化のスピードに対応するためには、製造業を改革しなければなりません。当社のプラットフォームは、最新のロボット工学と人工知能(AI)を組み合わせたもので、優れたアイデアを持つ誰もが、迅速に、効率的に、低コストで部品を製造できるよう、ラピッドマニュファクチャリングへのアクセスを民主化します。このようなソフトウェアで定義されたロボット設備は未来の工場であり、その実現に向けて投資家のみなさまにご協力いただけることを大変うれしく思います」。

今回の新たな資金調達は、ロサンゼルスでの人員増強と、プラットフォームのさらなる研究開発に充てられる。

画像クレジット:Machina Labs

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

EVメーカーCanooのバッテリーサプライヤーにパナソニックを選択、施設拡大計画も発表

2020年に上場を果たした電気自動車メーカーのCanoo(カヌー)は米国の施設を拡大中で、Walmart(ウォルマート)で有名なアーカンソー州ベントンビルに本社と別の施設を設置する計画だ。

2021年11月15日に行われた第3四半期決算発表ではまた、パナソニックをバッテリーサプライヤーとすることや他の施設拡大計画についても発表した。施設拡大には、アーカンソー州フェイエットビルでの研究開発センター設立、同社の米国初のオクラホマ工場でのオペレーション拡大などが含まれる。さらに同社は、ライフスタイル車両の生産開始時期を2023年初頭から2022年第4四半期以前に前倒しすることも発表した。

2021年初め、同社は製造に関する2つの発表を行った。同社は、ライフスタイル車両の生産委託先として、オランダのVDL Nedcarを指名した。VDL Nedcarは、Canooが米国にメガマイクロファクトリーを建設している間、米国およびEU市場向けの車両を生産する。Canooはこれまで、VDL Nedcarの工場で2022年に米国および欧州市場向けに最大1000台の生産を想定し、2023年には1万5000台を生産することを目標としていた。CEO兼会長のTony Aquila(トニー・アクイラ)氏は8月に、2023年の生産台数を2万5000台に引き上げた。

Canooは6月、オクラホマ州に最初の工場を建設する計画を発表した。その際、オクラホマ州は、この施設と製造のフェーズ2を支援するために、3億ドル(約342億円)の非希釈型金融インセンティブを約束した。アクイラ氏は11月15日、オクラホマ州がさらに1億ドル(約114億円)のインセンティブを追加し、合計4億ドル(約456億円)としたと発表した。

「我々は引き続き、『Big News or No News』をモットーにしています。ですので、米国での高度な生産を加速させて2022年第4四半期の前に開始します」とアクイラ氏は声明で述べ、施設がある州や大学から約1億ドルの車両注文を目標にしていると付け加えた。

オクラホマ州の工場には今後、研究開発、ソフトウェア開発、カスタマーサポート、ファイナンスの各センターが設置される予定だ。

第3四半期決算は純損失が8090万ドル(約92億円)となり、前年同期の2340万ドル(約26億円)から約4倍に拡大した。

画像クレジット:Canoo

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォックスコンがLordstownのオハイオ工場を約262億円で買収

電動小型トラックメーカーのLordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)は、オハイオ州ローズタウンにある広さ620万平方フィート(約57万平方メートル)の工場を、Apple(アップル)のiPhoneの製造で知られる台湾のハードウェアメーカーFoxconn(フォックスコン)に正式に売却した。Lordstownの発表によると、この2億3000万ドル(約262億円)の取引は、2022年4月末までに完了する予定だ。

取引の条件は、両社が9月30日に締結した基本合意に沿ったもので、締結後にFoxconnは早速5000万ドル(約57億円)分の普通株を1株あたり6.8983ドル(約787円)でLordstownから直接購入した。Foxconnは11月18日までに1億ドル(約114億円)の頭金を、その後2022年2月と4月に5000万ドル(約57億円)を支払い、4月30日の手続き完了を目指している。

Lordstownの発表文によると、Foxconnは苦境にあるLordstownのピックアップトラック「Endurance」の製造を支援することにも合意した。両社はまた、北米および海外市場向けの商用車プログラムを共同で設計・開発する合弁会社も設立する。最後に、この取引が完了すると、Foxconnは今後3年間、1株あたり10.50ドル(約1200円)でLordstownの普通株式を購入できる170万のワラントを得る。Lordstownは、電気モーターの生産ライン、バッテリーモジュールとバッテリーパックの組み立てラインを維持する。

Foxconnは2021年初め、電気自動車スタートアップのFisker(フィスカー)と、FiskerのPEARプログラムに基づく新型車を北米で共同開発・製造する契約を締結した。その後、Lordstownが2019年にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)から購入したオハイオ州の工場でも、Fiskerの車両を生産することをFoxconnは示唆していた。今回の工場購入により、Foxconnは初の自動車工場を手に入れ、スマホやノートPCの製造以外の分野へ躍進することになる。

調査会社がEVトラックの予約台数を偽装していると告発したことで、米証券取引委員会と米司法省の両方から調査を受けているLordstownは、財政難に加えて、11月10日朝に辞任した社長のRich Schmidt(リッチ・シュミット)氏をはじめとする多くの幹部の逸失に直面している。Foxconnとの取引により、Lordstownは原材料や部品のコストを削減することができそうだ。Foxconnは、生産コストの削減や不安定なサプライチェーンに対応するために必要な強力なサプライチェーンネットワーク、ロジスティック能力、購買力を持っている。また、同社は電気自動車にとって非常に重要な、ソフトウェアとハードウェアの統合のエキスパートでもある。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Boschが528億円を追加投資し半導体製造能力を増強、ドイツとマレーシアの3工場を拡張

ドイツのテクノロジー&パーツサプライヤーであるRobert Bosch GmbH(ロバート・ボッシュGmbH)は、自動車や家電製品、パソコン、電動工具などあらゆる製品の生産に大打撃を与えている半導体不足に対応するため、チップ製造設備の拡張にさらに4億ユーロ(528億円)を投資する。

2022年を目標に、ドイツのドレスデンとロイトリンゲンにあるウェハー製造工場と、マレーシアのペナンにある半導体部品製造工場の拡張を行う。ドレスデン工場は、同社史上最大の投資となる10億ユーロ(1320億円)を投じて6月に開設された。同工場では、より大きなサイズの300ミリウエハーを製造しており、1枚のウエハーに搭載されるチップの数も多い。

ロイトリンゲンでは1970年から半導体部品を製造しており、2022年と2023年に約5000万ユーロ(約66億円)の投資が予定されている。ロイトリンゲンでは「クリーンルーム」を4000平方メートル以上拡大し、合計1万4500平方メートルになる見込みだ。クリーンルームはシリコンウエハーが半導体チップになる特別設計のところだ。Boschによると、この拡張で150人の新規雇用を創出する。

ペナンでは、Boschは新しい半導体テストセンターを建設し、2023年に操業を開始する予定だ。このテストセンターの広さは当初約1万4000平方メートルとなる。しかし、同社はペナンに10万平方メートル以上の敷地を持っており、最終的にはそのすべてを開発する予定だ。

今回の巨額の投資は、半導体の供給不足が長期化し、自動車メーカーの経営陣や業界アナリストが2022年まで続くと予測している中でのものだ。Ford Motor Company(フォード・モーター)とGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)の幹部は、今週行われたそれぞれの第3四半期決算説明会で、半導体不足は2022年、場合によっては2023年まで続くとの見通しを示した。

自動車メーカーやその他の企業に製品を供給するだけでなく、電動工具などの製品に自社製のチップを使用しているBoschにとって、これは賢明な動きだ。また、2030年までにEUの半導体生産量を世界の供給量の5分の1に引き上げることで、域内のサプライチェーンの回復力を高めることを目指している欧州連合にとっても朗報となる。

画像クレジット:Bosch

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi)a

フォードが約360億円を投じて英国のトランスミッション組立施設を電動パワーユニット工場に転換

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、2億3000万ポンド(約360億円)を投じて、英国・ヘイルウッドにある自動車用トランスミッションの組立施設を、電動パワーユニット工場に転換すると発表した。これが同社初の欧州における電気自動車用コンポーネントの自社組立施設となる。

The Times(タイムズ紙)によると、この投資には英国政府が自動車変革基金を通じて提供する推定3000万ポンド(約47億円)の資金が含まれているという。この投資により、約5000人の自動車関連の雇用が地域に創出されると、同紙は伝えている。

この工場で生産されるパワーユニットは、フォードが将来欧州で販売する電気自動車の乗用車および商用車に供給され、同社の電動化に向けた目標達成を後押しすることになる。フォードは2021年2月、2030年までに欧州で販売する乗用車のすべてを電気自動車に、商用車の3分の2を電気自動車またはプラグインハイブリッド車にするという欧州戦略を発表。同社は10億ドル(約1140億円)を投じてドイツのケルンにある組立工場を改修し、2023年にはそこで同社初の欧州製となる量販電気乗用車の生産を開始する予定だ。

関連記事:フォードが2030年までに欧州向け全車両を電動化

この電動パワーユニットは、内燃機関自動車のエンジンとトランスミッションの代わりとなるもので、バッテリーから供給される電気の流れを管理し、電気モーターの速度や発生するトルクを制御する。フォードはその生産を2024年半ばに開始する予定で、年間約25万台程度の生産能力を計画している。このパワーユニットはケルンの工場または他の工場の組立ラインに送られるのかという質問に、フォードは答えなかった。歴史的に、ヘイルウッド工場で生産されたユニットは100%が輸出されており、フォードは、エンジンやトランスミッションを「6大陸15カ国以上に輸出し、海外での売上は年間約25億ポンド(約3900億円)に上る」英国最大の輸出企業の1つとなっているという。

「電気自動車の製造を確保するための激しい国際的な競争の中で、英国が確実に利益を得ることが我々の優先事項です」と、英国のビジネス大臣であるKwasi Kwarteng(クワシ・クワーテング)国会議員は、声明の中で述べている。「本日の発表は、政府の資金援助を受けたものであり、英国経済の将来性と電気自動車の生産拡大計画に対する大きな信頼の証しです。これにより、ヘイルウッドの誇るべき産業遺産が将来にわたって維持され、北西部の高技能・高給の雇用が確保されることになります」。

フォードが電気自動車の生産を拡大しようとしているのは欧州だけではない。この自動車会社は電動化に向け、2025年までに300億ドル(約3兆4300億円)の投資を用意しており、そのうちの1つである中国でも努力の成果が実り始めている。10月18日、中国で最初に製造された電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」が組立ラインからロールオフされたのだ。中国の顧客は、フォードの直販ネットワークであるEVシティストアを通じて、年末までに現地生産のMach-Eを手に入れることができる。フォードは、2021年中に主要都市部で25店舗のEV販売店をオープンし、今後5年以内に100店舗以上に拡大する予定だという。

関連記事:フォードが電動化への投資を3.3兆円に引き上げ自社バッテリー研究開発を加速、30年までにEV比率40%

画像クレジット:Ford Motor Company

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

トヨタが米国でも車載用電池生産に約3800億円投資を発表、新会社を設立し2025年稼働を目指す

Toyota Motor(トヨタ自動車)は、他の大手自動車メーカーと同様に、電動化に向けて巨額の資金を投入している。同社は米国時間10月18日、米国での車載用電池生産に、今後約10年間で約34億ドル(約3800億円)を投資すると発表した。

この投資はトヨタの北米部門を通じて行われるもので、その第一歩としてトヨタの北米事業体であるToyota Motor North America, Inc.(TMNA)が、トヨタグループの総合商社である豊田通商とともに、米国で車載用バッテリー工場を新会社として設立する。2025年の生産開始を目指すというこの工場には、2031年までに約12億9000万ドル(約1430億円)の投資が予定されており、現地で1750人の従業員を新規雇用する見込みだという。なお、工場の場所は現時点では発表されていない。

今回の計画は、トヨタが2030年までに世界全体における電池供給体制の整備と研究開発を行うため、約1兆5000万円(約135億ドル)を投資するという大きな目標の一部であり、すでに電池開発の促進とラインナップの電動化に向けて巨額の投資を約束している他の自動車メーカーに追いつくためのものでもある。General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)など他の大手自動車メーカーも同様の、しかしさらに大きな投資を発表している。例えばGMは、2025年までに350億ドル(約4兆円)を投じて、電気自動車の生産能力を増強し、30車種の新型EVを世界市場に投入することを計画している。

関連記事:GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

トヨタはこの新工場で、まずはハイブリッド車用のバッテリーを製造すると述べている。新工場の生産能力は明らかにされていない。

トヨタの新工場建設計画は、他の自動車会社が最近発表した計画と足並みを揃えるものだ。Ford(フォード)は電池メーカーのSK Innovation(SKイノベーション)と共同で、114億ドル(約1兆3000万円)を投じて、米国内に2カ所のEV用バッテリーの製造拠点を設けると発表している。また、Fiat Chrysler(フィアット・クライスラー)とGroupe PSA(グループPSA)の合併により誕生した自動車会社のStellantis(ステランティス)も、LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と予備的な契約を結び、北米でバッテリーセルとモジュールを生産すると発表したばかりだ。

しかし、今回のトヨタの発表は、これら他の自動車メーカーとは少々異なる印象を与える。トヨタが他の電池メーカーと提携せず、車載バッテリーの完全な内製化を計画していることを明確に示すものだからだ。

トヨタは他の自動車メーカーと比べると、電気自動車の展開で遅れを取っている。同社は現在、米国でBEV(内燃機関を搭載せず、バッテリーだけで走る純粋な電気自動車)を販売しておらず、いくつかのプラグインハイブリッド車やハイブリッド車をラインナップに揃えているだけだ。しかし、2021年6月にはクロスオーバーSUV型BEVのコンセプトカー「bZ4X」を公開し、2022年にその量産モデルを発売すると発表した。同社は2025年まで世界全体でBEVのラインナップを15車種へと拡大することを目指している。

関連記事:フォードとSKが1.27兆円をかけEVとバッテリーに特化した2つの製造キャンパスを米国に建設

画像クレジット:HECTOR RETAMAL/AFP / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラがベルリンのギガファクトリーで巨大イベント、12月の生産開始を発表

Tesla(テスラ)CEO、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間10月9日、ベルリンの新しいギガファクトリーで大パーティーを開催し、まばゆい照明とテクノミュージックから観覧車、回転木馬、アーケード、ベジタリアン・フード・トラックまでを揃えた会場で、環境保護団体による訴訟で紛争中の工場における生産開始を発表した。

「私たちは数カ月以内、基本的に11月か12月の生産開始を目指しており、最初の12月中に最初の車両を出荷できることを願っています」とマスク氏がイベントで話し、数千人のファンの喝采を浴びた。「ただし、生産の開始はどちらかというと簡単な部分です。難しいのは大量生産につなげることです」。

量産は週に5000台か「願わくば1万台」とマスク氏はいう。同工場ではModel Y、およびバッテリーセル数百万個を生産する予定だ。Teslaは、300ヘクタールの施設に隣接する50GWh(ギガワット時)のバッテリー工場に58億ドル(約6520億円)を投資する計画を提示しており、マスク氏は年内のバッテリーセル量産開始を約束した。Volkswagen(フォルクスワーゲン)が計画するザルツギッター工場の生産能力は40GWhを予定している。

ベルリン-ブランデンブルクのTeslaギガファクトリー建設は、2年前に例外的な手続きによって当局の承認を得たのち、環境の懸念から最終承認を妨げていた地元の反対にも関わらず、ほぼ完成している。マスク氏の法外なイベントからは、現地の人々を取り込もうとする意図が感じられ、 「Stranger Things(ストレンジャー・シングス 未知の世界)」で、新たな別世界の扉を開くために、独立記念日の祭典を行って土地を貸しているロシア人たちの票を獲得し注意をそらそうとしたクライン市長の漫画的な行動を思い起こさせる。

2021年6月、フィンランドの政党である緑の同盟とブランデンブルク自然生物多様性保護連合は、環境破壊の懸念から工場の塗装部門、鋳造部門、プレス部門の機械試験の即時中止を求める訴訟を起こした。 2020年、複数のNGOが近隣の絶滅危惧種のトカゲとヘビの自然生息地を保護するために差止命令を要求した。

地元民は、オンライン住民協議プロセスで検討されている800件以上の苦情を提出しており、10月14日に締め切られる、とBloomberg(ブルームバーグ)は伝えている。それが過ぎてから環境当局による最終決定が下される。

こうした反対にも関わらず、Teslaの工場が認可される可能性は95%だとブランデンブルク州経済相は言っている。このTesla工場は、現在ヨーロッパ全体から広く雇用しており、ドイツ東部の主要な景気刺激策であると見ている多くの政党が賛成している。

マスク氏は批判派に対し、工場の水の使用は「比較的少なく」、バッテリー生産は「持続可能」であると言って工場を擁護した。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク氏がテスラ本社のテキサス州オースティン移転を発表

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、同社の本社をカリフォルニア州パロアルトから、最近テック企業やリモートワーカーが急激に増えているテキサス州オースティンに移転すると発表した。マスク氏はこのニュースを、2021年のTesla, Inc.年次株主総会でアナウンスした。この総会は、例年のようにベイエリアではなく、Teslaのオースティンにあるギガファクトリーで行われた。

また、マスク氏は、Teslaは今後もカリフォルニア州での活動を継続的に拡大し、フリーモントのギガファクトリーの生産量を50%増加させると述べたが、どのようにしてそれだけの生産量増加を実現するかについては詳しく説明しなかった。同工場では現在、年間約50万台のModel 3(モデル3)とModel Y(モデルY)、さらに年間約10万台のModel S(モデルS)とModel X(モデルX)を生産することが可能だ。

Teslaは2020年5月、新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するために、必要不可欠とみなされない事業を制限して、カリフォルニア州フリーモントにある同社の製造施設を閉鎖するよう命じられたことをめぐり、同州アラメダ郡を提訴し、自分の事業を州外に持ち出すと脅していた。同社はわずか2週間後に訴訟を取り下げたが、マスク氏は確かに気が立っており、こうツイートした。「率直に言って、堪忍袋の緒が切れた。Teslaは今後、本社と将来のプログラムを直ちにテキサス州かネバダ州に移すだろう。もしフリーモントの生産活動を維持するとしても、それはTeslaが今後どのように扱われるかにかかっている。Teslaはカリフォルニア州に残された最後の自動車メーカーだ」。

関連記事:テスラ工場の再稼働阻止を受け「本社と将来の事業基盤をカリフォルニアからテキサスかネバダに移す」とマスク氏

マスク氏は今回の株主総会では、アラメダ郡とのドラマについては触れなかった。むしろ、テキサス州への移転は、労働者にとってよりアクセスしやすい場所にあることが理由の1つだとしている。

「家を買うのも大変だし、遠くから通勤せねばならず大変です」とマスク氏は述べた。「ベイエリアでは、工場の規模を大きくするのには限界がある。オースティンでは、工場は空港からものの5分くらい、ダウンタウンからは15分のところにあります」とも。

同氏は、Teslaはコロラド川に近いオースティンの敷地に「エコロジカルパラダイス」を建設することを計画していると述べた。

イベントの中でマスク氏は、Cybertruck(サイバートラック)に関する最新情報も提供し、2022年末に生産を開始し、2023年には「量産」すると述べた。Tesla Semi(セミ)とRoadster(ロードスター)は2023年末までに生産が開始され、それに続くことになる。

マスク氏は遅延の理由として、継続的な半導体不足を含む複数のサプライチェーン問題を挙げている。

「特にSemiは多くのセルが必要で、たくさんのセル(と)チップを必要とします」と同氏は述べた。

Teslaは2017年にSemiのプロトタイプを、そして2019年にCybertruckを発表したが、両モデルともその後度重なる延期に直面しており、常にサプライチェーンの問題が挙げられている。

関連記事:テスラがセミトラックの発売を2022年に延期、Cybertruckの遅延も示唆

マスク氏が車両生産の状況を説明する前に、株主総会ではさまざまな議案が決議された
Institutional Shareholder Servicesが反対票を投じたにもかかわらず、マスク氏の弟であるKimbal Musk(キンバル・マスク)氏、21st Century Fox(21世紀フォックス)の元役員でメディア界の大物Rupert Murdoch(ルパート・マードック)氏の息子であるJames Murdoch(ジェームズ・マードック)氏が取締役に再選された。

株主会は、2021年12月31日に終了する会計年度におけるテスラの独立登録会計事務所としてのPricewaterhouseCoopers(プライスウォーターハウスクーパース)の任命を批准することを含め、ほぼすべての議題についてTeslaの取締役会の提案を承認した。しかし、投資家たちは3つの提案項目について取締役会の勧告に反した。通常、株主らはTeslaが設定したラインに沿って投票するが、2021年、投資家たちはTeslaの取締役を3年ごとではなく1年ごとに再選に立候補させることを決議した。

また、株主総会では、Teslaが従業員の多様化に向けた取り組みについて、より詳細な情報を公表することを求める決議がなされた。これは、Teslaが、フリーモントにあるEV工場での差別や人種的虐待を容認していたと告発した元黒人契約社員のOwen Diaz(オーウェン・ディアス)氏に、1億3700万ドル(約151億円)の損害賠償を支払うよう命じられた2日後のことだ。

関連記事:テスラに人種差別訴訟で151億円の支払い命令

Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)が出資する責任投資会社Calvert Research and Managementの副社長兼コーポレート・エンゲージメント・ストラテジストであるKimberly Stokes(キンバリー・ストークス)氏は「多様性に富んだインクルーシブなチームがより多くのイノベーションを支えることは、リサーチで明らかになっています」と述べた。「Teslaの2020年DEIレポートには、投資家が同社のパフォーマンスを長期的に同業他社と比較するのに、十分な量的・質的情報がありません。この報告書で1つ明らかになったのは、Teslaの顧客基盤が進化し、より多様化している中で、マイノリティの従業員が過半数を占めているにもかかわらず、テスラのリーダーシップは83%が男性、59%が白人であるということです」とも。

Calvertの提案では、Teslaに対し、人種と性別の包括的な内訳を含む、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに関する年次報告書の発行を求めている。

画像クレジット:Mason Trinca for The Washington Post / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

GMがより低コストで航続距離の長いEV用バッテリーの開発施設を建設中

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、ミシガン州ウォーレンのキャンパスに新しい施設を建設している。その目的は、バッテリーのコストを削減しながら航続距離を伸ばす画期的なセル技術を開発することだ。

GMは米国時間10月5日、このWallace Battery Cell Innovation Center(ウォレス・バッテリー・セル・イノベーション・センター)と呼ばれる施設の建設が始まったことを発表した。同社のグローバル・テクニカル・センターの敷地内に建設中のこの新施設は、2022年の半ばに完成する予定だ。敷地面積は約30万平方フィート(約2万7900平方メートル)だが、必要に応じて当初の面積の少なくとも3倍に拡張することを計画しているという。GMはこの施設に「数億ドル(数百億円)」を投資していると述べるだけで、建設費用については明らかにしなかった。

この施設の名前は、2018年に亡くなったGMの取締役で、同社のバッテリー技術に貢献したBill Wallace(ビル・ウォレス)氏から付けられた。同氏は、Chevrolet(シボレー)ブランドから発売されたプラグインハイブリッド車の「Volt(ヴォルト)」の初代および二代目モデル「Malibu Hybrid(マリブ・ハイブリッド)」、そして電気自動車「Bolt EV(ボルトEV)」のバッテリー・システムを開発したチームを率いていた。ウォレス氏はまた、GMとLG Chem(LG化学)R&D(現在のLG Energy Solution)の関係を築いた人物でもある。

すでにGMは、より安価でエネルギー密度の高いバッテリーの開発に取り組んでいるラボや研究開発施設を持っている。この新しいセンターは、同社の化学・材料サブシステム研究開発ラボやバッテリーシステムラボで行われているさまざまな取り組みをすべて結びつける役目を担う。

GMがこの新設で目指しているのは、1リットルあたり最大1200ワット時のエネルギー密度を持ち、コストを少なくとも60%削減したバッテリーを開発することだ。この目標は野心的であり、高尚だともいえるだろう。そしてこれはGMにとって、ラインナップの全車または大部分を電気自動車に切り替えるという計画を発表している他のすべての自動車メーカーと競争するための、重要なステップであるとも考えられる。

現時点において、GMのEVへの転換戦略の基盤となっているのは、Ultium(ウルティウム)プラットフォームとUltiumリチウムイオン電池だ。2020年に公開されたこの新しい電動車アーキテクチャとバッテリーシステムは、コンパクトカー、商用ピックアップトラック、大型高級SUV、パフォーマンスカーなど、GMのさまざまなブランドで幅広い製品に使われる予定だ。

GMは、このUltiumのバッテリーセルを製造するLGエナジーソリューションズとの合弁会社に、50億ドル(約5570億円)を投資する計画を発表している。両社は、オハイオ州北東部のローズタウン地区にバッテーセルの組立工場を設立し、1100人以上の新規雇用を創出するとともに、テネシー州スプリングヒルにも第二の工場の建設を予定している。

Ultiumバッテリーは、レアアースであるコバルトの使用量を減らし、単一の共通セル設計を採用することで、GMの現行バッテリーよりも小さなスペースで高いエネルギー密度を効率的に構成することができると、同社では述べている。

GMのグローバル製品開発・購買・サプライチェーン担当取締役副社長のDoug Parks(ダグ・パークス)氏によると、新設されるウォレスセンターは、将来的により手頃な価格で航続距離が長いEVの基礎となるバッテリーを製造するというGMの計画の重要な部分を占めることになるという。このような画期的な技術は、間もなく市場に投入されるUltiumバッテリーの世代にはまだ見られない。

ウォレスセンターでは、リチウム金属電池、シリコン電池、固体電池など、新技術の開発を加速させることが期待されている。また、このセンターでは、GMがLGと合弁で運営するローズタウンとスプリングヒルの工場をはじめ、米国内ある非公開の拠点を含むGMのバッテリーセル製造工場で用いることができる生産方法の改善にも力を入れていくという。

さらに特筆すべきは、この新施設では、一般的に携帯機器や研究用に使われる小型のリチウム金属電池セルを超えた、自動車に使用できる大型リチウム金属電池セルのプロトタイプを製造できる能力を持つようになるということだ。これらのセルはGM独自の方式で作られ、初期のUltiumバッテリーで使われるパウチセルの約2倍に相当する1000mm程度の大きさになる可能性があるという。

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラに人種差別訴訟で151億円の支払いを命令

Tesla(テスラ)は、カリフォルニア州フリーモントにある同社のEV工場で、差別や人種に関する誹謗を見て見ぬふりをしていたと告発した黒人の元従業員に対し、1億3700万ドル(約151億円)の賠償金の支払いを命じられたと、ワシントン・ポスト紙が報じた。サンフランシスコの連邦裁判所の陪審員は、2015年と2016年に契約社員として働いていたエレベーターオペレーターのOwen Diaz(オーウェン・ディアス)氏に、個人の人種差別雇用訴訟としては最大級とされる判決を下した。

ディアス氏は訴訟の中で「ジム・クロウ時代のような差別」に直面し、人種的な中傷を受けたと主張した。Teslaの従業員は、鉤十字の絵や人種差別的な落書き、侮辱的な漫画などを工場内のあちこちに残し、監督者は誹謗の阻止を怠っていたと主張している。「Teslaの先進的なイメージは、アフリカ系米国人従業員に対する屈辱的な扱いを覆い隠す飾りであった」と判決にある。

賠償金は、精神的苦痛に対して690万ドル(約7億5900万円)がディアス氏に支払われるが、大部分の1億3000万ドル(約143億円)はTeslaに対する懲罰的損害賠償だ。「米国で最も裕福な企業の1つが、自社工場での黒人に対する忌まわしい状況を清算しなければならないというのは、すばらしいことです」とディアス氏の弁護士であるLawrence Organ(ローレンス・オルガン)氏は話した。

「ここまでくるのに4年の歳月を要しました」とディアス氏はニューヨーク・タイムズ紙に語った。「肩の荷が下りたような気がします」。

Teslaの人事担当副社長Valerie Capers Workman(ヴァレリー・ケイパース・ワークマン)氏が判決を受けて書いたブログ記事の中で、同社は訴えを軽視した。「ディアス氏に加えて、他の3人の証人(いずれもTeslaの契約社員ではない)が、フリーモント工場のフロアで定期的に人種的な中傷(Nワードを含む)を耳にしたと裁判で証言しました」と同氏は書いている。「彼らは全員、Nワードの使用が職場では適切ではないことに同意していますが、ほとんどの場合、その言葉は『友好的』に使用されており、通常はアフリカ系アメリカ人の同僚も使用していると思われることに彼らは同意しています」。

Teslaは、ディアス氏の申し立てに対応して、2人の契約社員を解雇し、1人を停職処分にしたと付け加えた。そうした事実は判決を正当化するものではなく、同社は2015年と2016年の時点で「完璧ではなかった」ものの「大きな進展を遂げました」と述べた。同社は控訴するかどうか明らかにしていない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のSteve Dent氏はEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Tesla

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(文:Steve Dent、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMの米国工場は再生可能エネルギー100%への切り替えを5年前倒しで実施へ

ゼネラルモーターズ(GM)は2021年初め、2035年までに生産する車両、そして2030年までに生産方法の面でグリーン化を進める計画を発表した。このたび同社は「方法」という部分にいち早く取り組み、予定より5年早く2025年までに米国内の施設で再生可能エネルギーを100%使用することを述べている

この目標を達成するために、GMは、エネルギー効率を高め、施設に自然エネルギーを調達すると述べている。また、再生可能エネルギーを中長期的に貯蔵する技術を開発し「再生可能エネルギーの導入を支援するマイクログリッドを構築する」としている。

GMのサステナビリティ最高責任者であるKristen Siemen(クリステン・シーメン)氏は、次のように述べた。「当社は、気候変動対策が優先事項であり、すべての企業が脱炭素化をさらに迅速に進める必要があることを理解しています。それを実現するために、米国では(計画より)5年早く再生可能エネルギー100%を達成することを目指しています」。

また同社は、PJM Interconnectionという会社と協力して、その時々の送電網の炭素出力に基づいてエネルギー使用量を追跡する計画についても詳しく説明している。「GMは、供給されている電力のほとんどが化石燃料で構成されている場合、蓄えられている再生可能エネルギーの活用や消費電力の削減について、情報に基づいた判断を下すことができます」とも述べている。

生産する車両については、GMは2025年までに全世界でフルEVを30車種投入するする予定で、さらに「2035年までに新しい小型車(自動車、SUV、ピックアップ)のテールパイプ排出ガスをゼロにする」ことを計画している。この言い回しは水素自動車を含む可能性を示唆しているが、今のところGMは主にEVに焦点を当てているようだ。

しかし、GMの汚染削減計画は、政治的な風向きに左右され推移してきた部分もある。同社は、カリフォルニア州をはじめとする各州が独自に公害防止やゼロエミッションの要件を設定することを禁止するというトランプ政権の計画を支持したいくつかの自動車メーカーの1つだった。これにより、自動車メーカー各社は、前政権が要求していた年間5%の燃費向上を大幅に下回る、年間1.5%の燃費向上で許される。GMは、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏が大統領に選出された直後に、この訴訟から撤退した。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Veanne Cao

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

Lordstown MotorsがGMから購入した工場の売却をめぐりフォックスコンと協議中

EVスタートアップのLordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)は、2019年にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)から620万平方フィート(約57万6000平方メートル)の工場を購入して注目を浴びた。だが、現在は資金繰りに窮している同社は、その施設を台湾のFoxconn Technology Group(フォックスコン・テクノロジー・グループ)に売却する可能性が高いようだ。

関連記事:フォックスコンがLordstown MotorsとFiskerの電気自動車をオハイオ州の元GM工場で生産へ

このニュースを最初に報じたBloomberg(ブルームバーグ)によれば、早ければ今週中にも取引が完了する可能性があることを、匿名の情報筋が示唆したという。Lordstownの経営陣は、第2四半期の決算発表の際に、このオハイオ州北東部にある施設を、他の企業にリースすることについて、パートナーと「真剣な話し合い」を行っていると語っていた。だから売却のニュースはまったくの驚きというわけではない。

取引に関する金銭面などの詳細は明らかになっていないが、LordstownはFoxconnと並行して、この同じ施設で生産を行っていくとも報じられており、この取り決めは、悩める電気自動車メーカーにとって、最終的には利益となる可能性がある。現金収入とFoxconnが持つ大量生産の専門知識の両方を得られることになるからだ。

Foxconnといえば、Apple(アップル)のiPhoneを製造していることで知られているが、ここ数年は電気自動車製造の市場参入に向けて大きく歩を進めている。同社は2021年5月、EVメーカーのFisker(フィスカー)と、新しい電気自動車を共同開発・製造する契約を締結。また、タイの石油会社であるPTT PLCとも提携し、同国内の工場で年間最大5万台の電気自動車を製造することも計画している。

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Foxconnの野望はそれだけではない。この製造企業は自動車メーカーの委託製造業者になる構想も描いており、中国の自動車メーカーである浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)と合弁会社を設立し、EVの販売を目指すメーカーに、設計、研究開発、生産を提供しようと考えている。

Lordstownは、主力製品である電動ピックアップトラック「Endurance(エンデュランス)」の最初の生産車両を、2022年初頭に少数の顧客に届けることを目指している。この会社は、前CEOのSteve Burns(スティーブ・バーンズ)氏が会社の資金繰りを懸念して辞任した後、2021年8月に新しいCEOを任命した。Dan Ninivaggi(ダン・ニニヴァッジ)氏がCEOに就任したのは、Lordstownが16億ドル(約1780億円)のSPAC合併を発表してからわずか1年後のことだった。

Lordstownの株価は、52週高値で1株31.80ドル(約3530円)を記録したが、現在は7.88ドル(約875円)で取引されている。

TechCrunchはLordstownとFoxconnにコメントを求めている。回答があれば記事を更新する予定だ。

画像クレジット:MEGAN JELINGER / AFP / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMの電動配送トラック部門「BrightDrop」が中型バンを発表、最初の顧客はVerizon

General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)の配送トラック事業部門であるBrightDrop(ブライトドロップ)は、同社が商業・配送分野のラストマイルに焦点を当てる中、猛烈な勢いで売り込みを続けている。米国時間9月28日、BrightDropは2番目となる運搬車両をラインアップに加えることを発表した。予定されている最初の顧客は通信の巨人Verizon(ベライゾン)だ。

さらにGMは、主力車種のEV600バンの最初の量産準備が完了したことを発表した。FedEx(フェデラルエクスプレス)は年内に車両の受け取りを開始する(注文数は500台)。会社の歴史上最速の車両販売プログラムだとGMは声明で言った。

同社はEV600の2番目の顧客としてMerchants Fleet(マーチャンツ・フリート)を獲得しており、同社は2月に1万2600台購入すると発表している。

そしてVerizonは、新しい中型車EV410を現場保守とサービス部隊の一部で使用する。Verizon、GMともに発注の規模は明らかにしていない。

新しいバンは、積載容量400立方フィート(11.3立法メートル)で車体の全長は20フィート(6メートル)弱。GMはこの車両について、都市部などの混み合った場所で、特にオンライン食料品配達や通信保守業務などを行うのに適しているという。

同社は、EV600を使うことで車両管理部門は内燃機関車と比べて年間7000ドル(約78万円)節約できるという。

2車種とも、同社のUltium(アルティウム)バッテリープラットフォームを使用しており、航行距離は250マイル(402km)、重量は1万ポンド(4.5トン)以下。EV410はEV600に続いてカナダ、オンタリオ州インガーソルにあるGMのCAMI組立工場で製造される。GMは初期の少数生産についてはミシガン州の米国サプライヤーと提携するという。CAMI工場が2022年11月からのEV600増産への転換を行うためだ。

画像クレジット:General Motors

2021年初めのBrightDropの発表は、商業・デリバリー分野のラストマイル確保を進めるGeneral Motorsの市場機会の多様化に対する関心の強さを表わすものだった。そのために同社は、CAMI工場をカナダ初の電動デリバリー・バン製造施設に転換するために、約10億カナダドル(約879億円)を投資すると語った。

貨物・デリバリー向け電動車分野がGMをはじめとする自動車メーカーにとって膨大な機会であることは間違いない。Verizonは、FedExやUPSなどと同様、事業による炭素排出量の削減さらには完全除去を目指す多くの企業の1社だ。

画像クレジット:General Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Terran Orbitalが世界最大の衛星製造、部品工場をフロリダ州スペースコーストに建設

人工衛星製造会社のTerran Orbital(テラン・オービタル)は米国時間9月27日、3億ドル(約334億円)を投じてフロリダ州スペースコーストに世界最大の宇宙機製造施設を開設すると発表した。

この約6万1000平方メートルの工場では、年間1000基の人工衛星と100万個以上の衛星部品を含む「年間数千種類の宇宙機」を製造することができると、同社は声明で述べている。

2013年に設立されたTerran Orbitalは、同年に超小型衛星開発企業のTyvak(タイヴァック)を買収したものの、その後は目立たない存在だった。2017年には、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)が同社に少額出資している。Terranは現在、カリフォルニア州アーバインで約1万2000平方メートルの施設を運営しているが、CEOで共同創業者のMarc Bell(マーク・ベル)氏は、現在の製造能力やこれまで製造した衛星の数については公表していないと、最近のインタビューでTechCrunchに語っていた。

Terran Orbitalは、主に米国政府向けに人工衛星の設計、製造、エンジニアリングを行う受託製造会社である。ベル氏によると、Terranの仕事の約95%はNASAと米国防総省に関連するとのことだが、同社の商業顧客については明言を避けた。

同社は独自の衛星コンステレーションも開発する予定だと、ベル氏は付け加えた。これらの衛星は、合成開口レーダーの一種を使用し、雲や雷雨などの視界に影響を与える気象現象があっても、画像を撮影することができるようになる。Terranによると、これらの衛星の打ち上げは2022年末に開始する予定だという。

新たな施設は2025年に完成する予定で、約2100人の雇用を生み出すことが期待され、平均賃金は8万4000ドル(約935万円)になる見込みだという。この施設は、同州の航空宇宙開発局であるSpace Florida(スペース・フロリダ)とのパートナーシップのもとで建造され、同局がコンジットファイナンスを提供する。

フロリダ州のスペースコーストには、すでにSpaceX(スペースX)、Blue Origin(ブルー・オリジン)、Redwire(レッドワイア)などが施設を構えている。今回の発表によって、同地の発展はさらに進みそうだ。2020年は1200個以上の衛星が宇宙に打ち上げられ、前年の2倍以上の数が軌道に乗った。

画像クレジット:Terran Orbital

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードとSKが1.27兆円をかけEVとバッテリーに特化した2つの製造キャンパスを米国に建設

Ford Motor Company(フォード・モーター)とバッテリー製造メーカーのSK Innovation(SKイノベーション)は、114億ドル(約1兆2680億円)をかけてテネシー州とケンタッキー州に巨大工場キャンパスを建設し、バッテリーおよび次世代電動トラックのF-Seriesを製造する。このプロジェクトは1万1000人分の新たな雇用を生む、と両社は述べている。

2つのキャンパスに入る施設は、バッテリーセルの製造とサプライヤーパークへのリサイクルから組み立て工場まで、電気自動車を作るエコシステム全体を網羅するようにデザインされている。Fordは同プロジェクトに70億ドル(約7790億円)を投資しており、同社118年の歴史の中で、単独の製造プロジェクトにおける最大の金額だ。この投資は、Fordが以前発表した2025年までに電動自動車に300億ドル(約3340億円)を投入する計画の一環だ。

同社はさらに今後5年にわたりテキサス州を皮切りに全米でハイテクジョブトレーニングを行うために5億2500万ドル(約580億円)を費やす予定であることも話した。この投資はFordが今後次々と発売する電動およびつながる自動車をサポートする技術者の要請に特化している。

Fordの「メガキャンパス」計画(同社にとって世代で最初の施設)は、Mustang Mach-E(ムスタング・マッハE)、Ford E-Transit cargo van(Eトランシット・カーゴバン)やすでに15万台の予約注文が入っているF-150 Lightning pickup truck(F-150ライトニング・ピックアップ・トラック)など増え続けるEV製品群をサポートすることが目的だ。また、バッテリーのコストを1キロワット時当たり80ドル(約8900円)レベルまで下げる同社の戦略の一部でもある。

「これらの投資のタイミングは非常に重要です。なぜならバッテリー電気自動車への本格的転換はすごそこまで来ているからです」とFordの北米最高執行責任者、Lisa Drake(リサ・ドレイク)氏が米国時間9月27日のメディア会見で語った。「すでにその証拠は業界内に見られますし、今回当社自身の製品発表でも明らかになりました」。

そしてFordはEVの需要に関して強気だ。同社は2030年までにフルサイズピックアップ部門の3分の1が完全電動化すると予測している、とドレーク氏は言った。

画像クレジット:Ford

この日の発表は、Fordの来たるべきF-150 Lightningの生産能力を拡張して年間8万台の全電動トラックを製造するために2億5000万ドル(約280億円)を投入し、450人分の新たな雇用を創成する計画をはじめとする一連の投資計画に続くものだ。新たな資金と雇用はミシガン州、ディアボーンのRouge Electric Vehicle Center(ルージュ電気自動車センター)、Van Dyke Electric Powertrain Center(バンダイク電動パワートレインセンター)、およびRawsonville Components Plant(ローソンビル部品工場)の3カ所に振り分けられるとFordはいう。

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フォードがEV普及に向け、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materialsと提携

今回の発表は、FordがRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)との提携によって、製造スクラップと終末を迎えたEVのリサイクル、およびバッテリーの原材料を供給するクローズドループシステムを作る計画を発表してから1週間も経っていない。バッテリーやそれを作るための部品の供給を確保することの重要性は、自動車業界にバッテリーセル製造メーカーとの提携を促し、Redwood Materialsのような会社への注目が益々高まっている。

ドレイク氏は提携の詳細として、Redwood Materialsがテネシー州メンフィス近くのいわゆるBlue Oval City(ブルー・オーバル・シティ)キャンパスにリサイクル施設を構える予定であることを付け加えた。

テネシーキャンパス

テネシー州スタントンの56億ドル(約6230億円)をかけるキャンパスは、完成すると面積、人口ともに小さな村に匹敵する。3600エーカー(1457万平方メートル)のキャンパスはクローズドループ製造センターとして作られる。つまり、製造に使用された材料が新しいEVを作るために再利用できるという意味だ。

キャンパスには、SKと提携して運用されるバッテリー製造施設、サプライヤーパーク、および電動Fシリーズトラックに特化した組立工場が作られる予定だ。バッテリー製造施設は43ギガワット時のセル容量を生産する能力をもつ。組立工場は2025年の製造開始時点からカーボンニュートラルになるように設計されている、とFordはいう。

ケンタッキーキャンパス

Fordは、ケンタッキー州中央部グレンデールに位置する同キャンパスに、双子のバッテリー工場を建設する。そこで製造されたバッテリーは、2020年代後半にFordおよびLincoln(リンカーン)の新しい電気自動車製品ラインで使用される。リチウムイオンバッテリーの製造は2025年に開始する予定だ。

この1500エーカー(607万平方メートル)のバッテリーキャンパスを、FordはBlueOvalSK Battery Park(ブルーオーバルSK・バッテリー・パーク)と呼び、約58億ドル(約6450億円)の費用をかけ、5000人を雇用する。双子のバッテリー工場はそれぞれ最大43ギガワット時、合わせて年間86ギガワット時の生産能力がある。テネシー州の第3のバッテリーセル工場を加えて、総容量は最大129ギガワット時になる、とSKの執行副社長兼マーケティング全世界責任者のYoosuk Kim(ユースク・キム)氏は説明した。

全体では100万台の電気自動車を駆動するのに十分な容量だとドレイク氏は言った。

以前Fordは、同社のバッテリー電気自動車の世界計画のためには2030年までに240ギガワット時のバッテリーセル容量が必要だという。これはおよそ工場10カ所分の容量だ。また同社は、北米には140ギガワット時が必要であり、残りをヨーロッパ、中国など他の地域に割り当てるとも語っていた。

画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラのバッテリー生産拠点「Megafactory」がカリフォルニアで着工

Tesla(テスラ)の大型バッテリーシステムMegapack(メガパック)を生産することからその名が付けられた新しい生産施設「Megafactory(メガファクトリー)」がカリフォルニア州で着工した。

これまで未発表だったこのニュースは、ラスロップ市のSonny Dhaliwal(ソニー・ダリワル)市長が、一度削除された後に再度投稿されたFacebookへの投稿で確認された。ダリワル市長は「Teslaの最新の拡張であるMegafactoryの本拠地になったことを誇りに思います」と述べている。「未来のグリーンエネルギーは、私たちのコミュニティで生産されることになります」。

カリフォルニア州北部の小都市ラスロップにあるこの工場は、フレモントにあるTeslaの自動車工場の近くにある。ラスロップには、Teslaの87万平方フィート(約8万平方メートル)の配送センターもある。

Megapackは、Teslaの他のエネルギーストレージ製品と同様に、ネバダ州スパークスにあるGigafactory(ギガファクトリー)で製造されていた。MegafactoryはMegapackに特化した最初の工場となるが、同社のPowerwall(パワーウォール)やPowerpack(パワーパック)など他のストレージ製品の生産が新工場に移行するかどうかは不明だ。

この新工場は、Teslaのエネルギー部門の成長を後押しするものだ。Megapackは、家庭用バッテリーであるPowerwallとは対照的に、ユーティリティースケールのエネルギーストレージを目的としている。太陽光発電所や風力発電所を建設する公益事業者は、余剰エネルギーを蓄えて後で送電するために、発電設備を大型バッテリーと組み合わせるケースが増えている。先週、アリゾナ州の電力会社Salt River Project(ソルト・リヴァー・プロジェクト)は、100メガワット時のMegapackプロジェクトを稼働させたばかりだ。

Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは、2021年6月に行われた第2四半期の決算説明会で、これらのストレージ製品に対する「大きな需要」があることを確認し、Megapackは「来年まで基本的に完売した」と述べた。また、Powerwallの需要は年間100万台を超えると推定している。

マスクCEOは投資家に対して、ボトルネックの多くは単に生産能力の問題ではなく、セルの供給と世界的な半導体不足が生産量の上限を生み出していると語った。

「Powerwallには、自動車と同じチップがたくさん使われているので、どちらを作りたいのかという状態になります。クルマを作らなければならないため、Powerwallの生産量は減っているのです」という。

しかし、チップ不足は一向に解消される気配がなく、実際、ホワイトハウスは米国時間9月23日に、テクノロジーおよび自動車産業への継続的な影響に対処するため、半導体メーカーおよび購買担当者との2回目のサミットを開催する予定だ。

画像クレジット:Sonny Dhaliwal

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Yuta Kaminishi)

フォックスコンがタイのEV工場で2023年までに5万台の生産を開始と発表

台湾のスマートフォンメーカー大手であるFoxconn(フォックスコン)と、タイの国営石油会社PTT PLCが、タイ国内での電気自動車(EV)製造施設の開業に向けた合意を進めていることが明らかになった。この施設では、2023年までに車両の出荷を開始する予定だ。これまでFoxconnは、2022年にはタイと米国の両方に工場を建設する計画を発表していた。

6月にFoxconnとPTTは、EV生産で協力する覚書交わし、PTTが60%、Foxconnが残りの40%を保有する合弁会社を設立することとなった。タイ工場の初期生産能力は約5万台だが、フォックスコンはそれを2030年までには3倍に増やすとしている。Foxconnは、このタイ工場によって正式に自動車メーカーとしての地位を確立することになるが、同時にEVメーカーであるFIsker(フィスカー)と共同で米国にも工場を建設していて、こちらも2023年の生産開始を目指している。両社は、5月に「Project PEAR」と呼ばれる共同契約を締結した

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データと分析のコンサルティング会社であるGlobalData(グローバルデータ)のシニアオートモーティブアナリストであるBakar Sadik Agwan(バカール・サディク・アグワン)氏は「タイはEVの需給面ではかなり新しい国であり、生産しているメーカーも限られています」と述べている。「タイは、他の市場と比較して、自動車製造に適した政策と伝統を持っていて、Foxconnにとって大きな価値があります。また、中国ではByton(バイトン)と製造提携していますが、現在は保留になっていると言われています。中国は最大のEV市場ではありますが、EV市場が細分化されているために生産能力過剰の問題を抱えており、多くの自動車メーカーが十分なマージンを得ることができない状況になっています」。

タイ政府がFoxconnを支持しているのは、将来的にそれを「EVハブ」として現地生産を奨励することで、2030年までに総生産量に占めるEVのシェアを30%にまで高めたいと考えているからだ。

画像クレジット:SAM YEH/AFP/Getty Images

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

ボストン・ダイナミクスを買収した現代自動車が4足歩行ロボットを工場の安全監視に活用

Hyundai(現代自動車)がBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収を完了させたのは2021年6月のこと。この韓国の巨大自動車メーカーは、マサチューセッツ州に本拠を置くロボット企業の技術を、将来を見据えた多くのコンセプトモビリティ車に統合させるという壮大な計画を持っていることは間違いない。しかし現時点では、既存のロボットを活用することに、より力を入れているようだ。

現代自動車は米国時間9月17日「Factory Safety Service Robot(工場安全サービスロボット)」と名付けられたロボットを発表した。同社は発表文書の中で、簡潔にするためにすぐにこのユニットを「the Robot(このロボット)」と呼び始めたが「Factory Safety Service Robot」と何十回もタイプする時間がある人はいないだろうから、私もそうしたいと思う。

このロボット(わかるよね?)は基本的に、工場の安全点検用に開発された「Spot(スポット)」を改造したものだという。当然ながら、現代自動車は身近なところから始めることにしたようで、子会社であるKia(起亜自動車)のソウル工場で最初の試験運用を開始した。

Spot…ではなくこのロボットには、LiDARと熱検知カメラが搭載されており、空間内の高温になっている場所や火災の危険性、開いているドアなどを検知できる。何か異常を感知すると、安全確認用のウェブページを通じて警告を送信し、リアルタイムでその画像やデータを共有することができる。Spotと同様に自律的に動作することも、人間が遠隔操作することも可能だ。

「Factory Safety Service Robotは、ボストン・ダイナミクス社との最初のコラボレーション・プロジェクトです。このロボットは、産業現場における危険性を検知し、人々の安全を確保するのに役立ちます」と、現代自動車のDong Jin Hyun(ドン・ジン・ヒョン)氏はリリースで述べている。「私たちはボストン・ダイナミクスとの継続的な協業を通じて、産業現場の危険を検知し、安全な労働環境を支えるスマートサービスを、これからも作り出していきます」。

画像クレジット:Hyundai

全体的には、Spotに何ができるかを知っている人なら、センサーが追加されているとはいえ、このロボットの要点をほぼ理解できるだろう。ボストン・ダイナミクスは先週、このロボットにデータ収集機能を追加することを発表している。

画像クレジット:Hyundai

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMがシボレー・ボルトEVの生産停止を10月中旬まで延長

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、オリオン組立工場の操業停止を少なくとも10月中旬まで延長する。先日発表したシボレー・ボルトEVおよびEUVの安全性のためのリコールに関連したバッテリーパックの不足によるものだ。Bloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じたところによると、同社は10月11日の週まで同工場を休止する意向だ。

同社は声明で「今回の直近のスケジュール調整は、新型コロナウイルスに関連した国際市場からの半導体供給の制約により、部品不足が続いていることが原因です」と述べた。「私たちのチームは、需要は高いものの生産能力に制約のある車両への影響を最小限に抑えるために、創造的な解決策を見つけられると確信しています。状況は依然として複雑で非常に流動的ですが、GMは引き続き、需要の高いフルサイズトラックの生産を優先します」。

GMは先週、8月23日に始まったミシガン州の組立工場(オリオン組立工場)の操業停止を9月20日まで延長すると発表したが、遅れの原因への解決策がまだ見つかっていないことは明らかだ。その一方で、バッテリーサプライヤーであるLG Chem(LG化学)と協力し、製造工程と生産スケジュールの更新を継続するとしている。

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GMは先週、フルサイズトラックとフルサイズSUVの生産を今週までに開始すると発表したが、チップ不足のため、北米の他の5つの組立工場でも生産を減速すると発表した。同社によると、シボレー・シルバラード1500とGMCシエラ1500モデルを生産しているフォートウェイン組立工場およびシラオ組立工場のような一部の工場は、世界的な半導体不足の影響を一時的に受けた後、9月13日時点ですでにフル生産に戻っている。

シボレー・トラバースとビュイック・アンクレイブを製造しているミシガン州のランシング・デルタ・タウンシップ組立工場は、9月27日の週にさらに1週間の稼働停止を予定しており、10月4日の週に生産を再開する。同工場は7月19日から操業を停止している。シボレー・カマロとキャディラック・ブラックウイングの生産停止も27日の週まで延長され、以前に発表されたキャディラック CT4とCT5の生産停止も同様だ。カマロの生産停止は9月13日から、CT4とCT5の生産停止は5月10日からだ。

また、カナダのCAMI組立工場、メキシコのサン・ルイ・ポトシ組立工場、ラモス組立工場で生産しているエクイノックス、ブレイザー、GMCテレインの生産も10月11日の週に延期された。ブレイザーは8月23日、エクイノックスは8月16日から、それぞれ生産を停止している。

キャデラックXT4は、2月8日から生産を停止していたが、来週からカンザス州のフェアファックス組立工場で生産を再開する。GMによると、同じくフェアファックスで2月8日から生産を停止しているシボレー・マリブの生産は、10月25日の週まで停止する予定だ。

画像クレジット:Veanne Cao

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi