ビットコイン販売所運営のbitFlyer、リクルートやGMO-VPから1億3000万円の資金調達

ビットコイン販売所「bitFlyer」を運営するbitFlyerが、リクルートグループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である合同会社RSPファンド5号のほか、GMOVenturePartners、Bitcoin Opportunityを割当先とした総額約1億3千万円の第三者割当増資を実施した。

bitFlyerは2014年5月に立ち上がったビットコインの販売所。「bitWire」と呼ぶ即時送金機能を備えるのが特徴だ。メールアドレス登録だけでビットコインの送付が可能(ただし売買などはできない)なアカウントが提供されるほか、銀行口座や住所などを確認することで、売買や各機能を利用できるアカウントや、1日の取引額の上限を拡大したアカウントを得られる。2014年10月にはGMOグループのGMOペイメントゲートウェイと資本業務提携も実施している。

今回の調達をもとに海外拠点の整備や人材採用を進めてサービス開発を加速するほか、プロモーションを実施するという。割当先はいずれも国内外での投資を積極的に行っており(Bitcoin Opportunityは米国ニューヨークに拠点を置くビットコイン特化ファンドだ)、さらなるグローバル展開を狙っていることがうかがい知れる。


オムロンのインキュベーションプログラムでは”ものづくりの匠”が技術支援をしてくれる

もはやIT系のメディアで「IoT」という単語を聞かない日はないんじゃないだろうか。実際IoTを含むハードウェア関連スタートアップのニュースに触れることは多くなっている。

そんな中、2014年に立ち上がった京都の老舗メーカー、オムロンのCVCであるオムロンベンチャーズがハードウェアに特化したインキュベーションプログラムを開催する。名称は「コトチャレンジ」。締め切りは週明けの2月2日。ちなみにプログラム名の「コトチャレンジ」だけれども、コトには事業の「事」、古都京都の「古都」、琴線に触れるものをという「琴」の3つの意味をかけているそうだ。

プログラムの参加対象となるのは、ハードウェアがキーになるようなサービスを作っているスタートアップ。プログラムが始まる3月からの3カ月でプロトタイプの完成を目指す。プログラムは京都での開催を前提としており、京都市内の「京都リサーチパーク」にオフィススペースを用意するほか、オムロンの事業企画担当者によるメンタリング、オムロンのものづくりの匠たちによる技術サポートなどが行われる。プログラムの最後にはデモデイを開催し、3カ月の成果を披露する。優秀なプロダクトに対してはオムロンベンチャーズからの投資も検討する。

ただ、「ディールソーシングのためのイベント」というよりかは、まずはテクノロジーを持つハードウェアスタートアップの掘り起こしという側面が強いのだそう。オムロンベンチャーズ代表取締役社長の小澤尚志氏は、「フルサポートするかというとまた違うかもしれないが、我々のようなメーカーの能力を持ったところがハードウェアスタートアップののエコシステム作りをしていきたい」と語る。

小澤氏はメーカーという立場から、「ホビーとしてはいいが、BtoB、BtoG(government:政府、官)に対してシビアに応えるには、さらなるテクノロジーの精度が必要。リアルなビジネスと組むのはこれからだ」と世のハードウェアスタートアップについて語る。プログラムでは、BtoB、BtoGのニーズにも応えられる製品の企画や設計での支援をするのだそうだ。

小澤氏いわく、オムロンにはスタートアップが簡単に使えない試験器もあるし、「歴史がある企業だからこそできるアドバイス」もあるそうだ。例えば今では一般的な血圧計も、ただ「血圧計を作りました!医療機器です」なんて言っても認められるワケではない。膨大な臨床試験や学会、WHOなどへの働きなど、さまざまなステップを経て初めて血圧計と認められたのだ。こういった経験に基づいたノウハウは、正直スタートアップだけではどうにもならないものだろう。

メーカーの技術者を巻き込んだハッカソンなどは時々見かけるようになったが、インキュベーションプログラムはそうそう多いものではない。スタートアップが集まる東京からすれば開催場所の遠さなどの課題はあるが、老舗メーカーだからこそできる支援には期待したい。


200億円規模のYJキャピタル2号ファンド始動–起業経験アリの役員らがパートナーに

ヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルは1月27日、ベンチャー投資ファンド「YJ2号投資事業組合」設立と、YJキャピタルの組織強化を実施したことをあきらかにした。

新ファンドの組成自体はすでに2014年11月27日に発表されているし、2014年12月に開催されたInfinity Ventures Summit 2014 fall Kyotoの記事内でも組織強化に関する内容を紹介しているがここであらためて整理すると、新ファンド「YJ2号投資事業組合」の規模は200億円。出資の内訳はヤフーが199億円、YJキャピタルが1億円となっている。

また、組織体制としては、これまで代表取締役を務めてきた小澤隆生氏が取締役となり、ヤフーのCFO室長、企業戦略本部長などを務めてきた平山竜氏が新たに代表取締役に就任する。さらに、ヤフー執行役員 パーソナルサービスカンパニー・カンパニー長の田中祐介氏、執行役員 CMOでワイモバイル取締役の村上臣氏、執行役員 検索サービスカンパニー長の宮澤弦氏、アプリ開発室本部長兼イノベーションサービスユニットユニットマネージャー、TRILL代表取締役社長の松本龍祐氏が新たにパートナーとなる。名前を見て気付いた読者もいるかも知れないが、実は新たにパートナーとなるのは、起業経験のある人物ばかり。

ファンドの設立自体は2015年の1月1日。すでにインドネシアで会員制ファッションサイト「vip plaza.com」を展開する VIP PLAZA INTERNATIONALへの出資が決定している。出資額は非公開だが、数億円程度と見られる。

R&Dを外部のスタートアップに出す

10億円からスタートし、30億円まで規模を拡大して投資を行った1号ファンド。投資先としては、フリークアウトやみんなのウェディング、レアジョブが上場。またAmingなども直近の上場を噂されていると好調な状況だ。小澤氏も「手応えはすごくある」と語る。だが一方で投資の規模については「R&Dを外部(スタートアップ)に出すという意味、そしてネット業界へ貢献するという意味でいうと、200億円でもまだまだ少ないくらい」なのだそうだ。

小澤隆生氏

小澤氏の言う「R&Dを外部に出す」というのが気になってさらに聞いてみたのだけれども、YJキャピタルの役割として、技術を持つスタートアップに投資をすることでヤフーグループだけではできないR&Dを外部で行う、という意味もあるそうだ。

「インターネットの世界は、社内だけですべてを作れないというのは明白。それは外に出すべき。外に出すとは『外注する』という選択肢もあるが『資本を出す』という選択肢もある」(小澤氏)

そして機が熟せばそのスタートアップを買収することも視野に入れるとのことだ。新代表の平山氏も「ヤフーなんて、いろいろやっているようでやりきれていないところがある。イノベーションは外で起こる印象があるので、そういったところにはタッチしていたい」と語る。

2号ファンドで注力する分野は創業期、もしくはレイターステージにあるモバイル、IoT、インターネット領域全般のスタートアップ。すでにインドネシアで投資実績があるように、東南アジアでも積極的に投資を行うという。東南アジアでは、コマースや金融といった分野がターゲットとなる。投資額のレンジについては「かっちり決まったものは無いが、ファンドの規模が200億円あるので、当然大きくなると思う」(平山氏)とのこと。またYJキャピタルはキャピタルゲイン目的の投資がメインになる。事業シナジーなどがある案件については、ヤフー本体が投資を検討する。

また小澤氏、平山氏からはコメントを得られなかったが、別の場所では、ヤフー取締役会長である孫正義氏も1号ファンドのパフォーマンスを非常に評価しており、グループ全体として投資に積極的なムードがあるなんて話も聞いている。

元起業家がパートナーになる意味

冒頭でお伝えしたとおりだが、今回新たにパートナーとなる4人は、いずれも起業経験があり、ヤフーへのバイアウトなどを経てグループに参画した人物。彼らを選んだ理由について小澤氏に聞くと「やるからにはとにかく自由で面白いことをやりたかった」ということだが、意識したのはGoogleのCVCであるGoogle Venturesなのだそうだ。

平山竜氏

Google Venturesでは、Googleが買収した企業の代表などが投資を手がけている。Diggなどを立ち上げたKevin Roseなどもそうだ。元起業家が投資担当になることで、実務面でも、精神面でも投資先にとっての大きい価値になっているという。小澤氏は新たな組織体制について、「YJキャピタルは日本で最も起業家がいるVC。ある意味反則ですよ。でも、どうせやるならこういうVCをやってみたかった」と語る。たしかに起業経験のあるベンチャーキャピタリストは日本にもいないわけではないが、僕も1、2人しか思い浮かばない。

新任パートナーは個人でもエンジェル投資を行っているが、それについての制限はしない。また小澤氏もヤフー参画前に行っていた個人投資を再開するという。パートナーらの個人で投資先をYJキャピタルの投資案件として検討する可能性もあるが、新任パートナーは投資委員会に参加させないことで公平性を保つとしている。小澤氏は「今のVC投資はクラブディール。人脈が極めて重要で、どこの会社でなくあなたとやりたいというところに投資する」と新パートナーによるエンジェル投資について語る一方で、「YJキャピタルとしてパートナーの投資先をどう見るかは別だ」とした。

なお小澤氏、平山氏のほか、新パートナーは、YJキャピタルのサイト刷新にあわせて鎌倉武士をテーマにした写真を撮影したとのこと。コーポレートサイトでも見ることができるが、以下にその他の写真(と歴史上のどんな人物に扮しているのか)を掲載する。

YJキャピタル代表取締役の平山竜氏:藤原秀衡

 

取締役の小澤隆生氏:太田道灌

 

新パートナーの村上臣氏:一般的な鎌倉武士

新パートナーの宮澤弦氏:源義経

新パートナーの田中祐介氏:北条時宗

新パートナーの松本龍祐氏:公暁


YouTuberと広告主をマッチング する「iCON CAST」、ex-Googler集団がリリース

YouTubeに動画をアップし、その広告収入で生計を立てている「YouTuber」。動画投稿だけで食べていけるクリエイターは一握りという指摘もある一方で、米国10代に影響力のある人物に関する調査では、トップ5をYouTuberが独占。若年層ではハリウッドスターの人気を凌ぐほどだと言われている。

こうした影響力を企業が見逃すはずはなく、多くのファンを抱えるYouTuberに自社商品を宣伝してもらう「YouTuber広告」が日本でも増えつつある。ただ、そのYouTuber広告で稼ぐクリエイターもごくわずか。案件が集中して単価が上がり、人気YouTuberの出演料は「1本あたり100〜400万円に上ることもある」(関係者)のだとか。

広告主からすると、自社のターゲット層と一致するファンを抱えるYouTuberを探すのは困難。前例の少ない広告がゆえにKPIの設定も難しい。だったら、とりあえず多くのファンを持つ人気YouTuberにお任せしてみよう、といった会議の様子も想像できる。

YouTuber広告の選択肢を広げる

「本来はYouTuberのポテンシャルも、クライアントのニーズも存在するにも関わらず、『出会い』の場が少ないがために、YouTuber施策の選択肢が制限されている」。こう語るのは、YouTuberと広告主をつなぐプラットフォーム「iCON CAST」を1月26日にオープンした、ルビー・マーケティング創業者の平良真人氏だ。

従来のYouTuber広告は、広告主が人気YouTuberを指名するケースが大半だったが、iCON CASTはYouTuber側で案件を探せるのが特徴。これまで声がかからなかったYouTuberのメリットはもちろんだが、広告主としても、自社商品と親和性の高いファンを持つYouTuberを起用しやすくなる。そうすれば、老若男女に愛されるYouTuberを起用するよりも、グッと限られた予算内でマーケティングが行えるというわけだ。

「僕らが狙うのは、上位だけでなく中堅層のYouTuber。現在はゲーム実況がうまくなくても、人気YouTuberにゲーム広告のオファーが来ていたりする。一方、米国は各ジャンルで得意分野を持つYouTuberが多く、数百人が100万人単位のチャンネル登録数を抱えている。日本でもジャンルに特化したYouTuberにニーズは来る。」(平良氏)

利用の流れはこうだ。YouTuberはiCON CASTに登録して、専用の管理画面で自分の得意分野(ゲームや化粧といったジャンル)のYouTuber広告案件に応募。案件を受託する場合、広告主と個別契約を締結すれば契約が成立する。

その後は、受託した案件の制作内容に沿って動画を作成。iCON CASTと広告主が動画を確認し、問題がなければ公開日に合わせてYouTubeに動画を公開する。広告主が動画の内容に納得しない場合は、1回に限り、修正作業が入ることになっている。

広告主は、専用の管理画面でYouTuber広告の詳細を決定し、案件を募集する。iCON CASTは広告主の要望と予算に応じて、YouTuberごとの特性、チャンネル登録数、動画の再生回数などを精査。広告主の案件とマッチするYouTuberをピックアップして提案する。

iCON CASTの収益源は、マッチング成立時に広告主が支払う業務委託手数料だ。広告料の20%を徴収する。なお、YouTuberがGoogleと個別に結んでいる「YouTubeパートナープログラム」経由の広告収益は、これまで通り100%得ることができる。

ルビー・マーケティングは現在、YouTuberを獲得するために、YouTuber専門のマネジメントプロダクション「MCN(マルチチャンネルネットワーク)」と交渉中。広告主についても順次、声をかけている。年内に1000人程度のYouTuber、数百社の広告主を獲得することを目指している。

社員15人のうち8割がGoogle出身

ルビー・マーケティングはもともと、GoogleやYahoo!、Facebookなどを使ったオンラインマーケティングを支援する会社として2014年1月に設立。実は平良氏をはじめ、同社社員15人のうち8割がGoogle Japan出身だ。「元Googleだから『どう』というのはありませんが、YouTubeの状況に明るいのは強みかも」(平良氏)。

平良氏はGoogleで中小企業向けの広告営業部門を立ち上げた人物。起業意識は「ゼロ」だったが、「魂がこもった中小企業の経営者」を何人も見ていくうちに、「自分のノウハウを使い、もっとスケールを持って中小企業を支援したい」と感じたのが起業のきっかけだったと振り返る。

iCON CASTのアイデアが浮かんだのは、ゲーム業界のクライアントから、海外のYouTuberを起用したゲーム実況広告の要望が出た時。その後も、別のクライアントにYouTuberの広告を提案すると、ゲーム以外の案件も決まり始めたことから事業化を決意したそうだ。


ダンボールとスマホでVR体験ができるハコスコ、パノラマ動画の共有サイトをオープン

ダンボール製の筐体にスマートフォンを差し込んでVRコンテンツを楽しめる「ハコスコ」。12月にANRIからの資金調達や博報堂との提携を報じたが、その記事内にもあったVR・パノラマ動画の共有サイト「ハコスコストア」を1月22日にオープンした。開発は、パノラマ動画システムを開発するカディンチェが協力している(カディンチェのパノラマ動画についてはこちらも参照して欲しい)。

ハコスコストアでは、最大500MBまでのVR・パノラマ動画を共有できる。視聴モードはハコスコなどVR用端末での閲覧に適した「Normal Virew」のほか、PCでの閲覧がしやすいように、パノラマ動画を展開して表示する「Flat View」など複数を備えている。もちろん誰でも動画のアップロードが可能。ただし、パノラマ動画に対応するカメラでの撮影は必須だ。自作したカメラで撮影した画像をソフトで加工して…ということもできるが、リコーのTHETA m15などを購入するのが一番手っ取り早いと思う。

ハコスコを使ったVRは、「たった1000円のダンボールキットとスマホだけでこんな体験ができるのか!」と僕も驚いたのだけれども、やっぱり課題となるのはコンテンツ。同社でも公式のコンテンツを用意したりしているが、正直なところ数が足りないと思っていた。

ハコスコでは、観光地やレジャー施設のプロモーション動画やイベントのプロモーション、ライブ会場の様子やその舞台裏、メモリアルイベントなどをストアにアップして欲しいとしている。


デジハリが「世界を変えるギーク」養成学校を設立、卒業生には起業支援も

デジタルコンテンツの人材養成スクールを運営するデジタルハリウッド(デジハリ)が、エンジニアを養成する「G’z ACADEMY TOKYO」を4月に開校する。

起業支援も視野に入れていて、審査に通過した卒業生にはデジハリが30万円、サムライインキュベートが450万円を出資。プログラミングスキルがゼロの人も歓迎するといい、「世界を変えるギーク」を育成したいという。

受講期間は4カ月。毎週土曜日に、プログラミング初心者の入門学習から応用、オリジナルのサービスを実装するまでを指導する。受講後は2カ月にわたって、著名エンジニアなどからなるメンターが、GitHubを使ってコードレビューを行う。

メンターは、BASEでCTOを務める藤川真一氏、世界で9人しかいないMicrosoft MVPに選ばれたデジタルハリウッド大学大学院講師の山崎大助氏、メルカリやアメーバなどのエンジニアが担当。LINEやGoogleのエンジニアとも交渉中という。

日本ではここ数年、オンラインや短期間でプログラミングを学べる教育機関が増えている。中高生が対象の「Life is Tech!」だったり、提携する人材紹介会社を経由して転職すれば受講料が無料になる「RainbowApps」、専門学校などがある。

米国では最大手のGeneral Assemblyや、授業料無料のApp Academy、4年制大学をディスラプトすると豪語するMakeSchoolなどがあり、2〜3カ月の短期間で集中的に学ぶ「ブートキャンプスタイル」の学校が隆盛。卒業生の多くは、Facebookなど自社でサービスを提供する「ユーザー企業」に就職・転職している。

デジハリがエンジニア養成学校を作ったのは、ユーザー企業で働くエンジニアを増やす必要性を感じたためだ。

SIerのエンジニアを日米で比べると、日本は77万人、米国は90万人で大差はない。その一方、ユーザー企業のエンジニアは米国が230万人で、日本は25万人と10分の1程度。同社スクール事業部事業部長を務める児玉浩康氏は、「プログラミングを丸暗記する人材では新しいサービスを作れない。世界を変えるギークな人材を養成するために学校を設立するに至った」と話す。

はたして、「世界を変えるギーク」はエンジニア養成学校から生まれるものだろうか。

この点について山崎氏は、「優れたプロダクトを世に出すには、子供の頃からプログラミングをやっていないとチャレンジできないと思い込んでいる人が多い。世界を変えるギークが生まれるチャンスを作っていかなければならない」と意気込みを語る。

プログラマーになる間口を広げるために、授業料を「後払い」にしていることも特徴だ。生徒は入学から2カ月間受講した時に、「実力がつかない」「自分には合わない」と判断すれば、入学金の5万円だけ払えば、授業料の20万円は免除される。

定員は50人。プログラミング初心者も歓迎で、入学するにはIQテストなどの試験に合格する必要がある。教室は渋谷・ヒカリエにあるレバレジーズ社内に設ける。

無事卒業した起業志望者は、サムライインキュベートから出資を受けられる可能性があるほか、IT企業を招待したデモデーを開催して就職・転職の斡旋も行うそうだ。


日本のユーザーの動画視聴時間は米国の2倍、ただし視聴本数は米国の半分

日本のユーザーが動画ストリーミングを視聴する時間は米国の2倍。だが一方で視聴する動画本数では米国の約半分になっている――インターネット視聴率やデジタルメディア分析を手掛けるコムスコアが1月21日に発表した「日本のパソコン経由の動画ストリーミングサイト利用状況に関するレポート」からそんな利用実態が明らかになった。

この調査は2014年11月に、家と職場でインターネットを利用する15歳以上ユーザーを対象にしたもの。まず国内オンライン動画サイトの日本国内トップ10を見ると、Google Sites(YouTube)のユニーク視聴者数が5066万人。2位がFC2 inc.で2100万人、3位がKadokawa Dwango Corporation(ニコニコ動画)で1973万人となった。YouTubeを擁するGoogleが2位の2倍以上の視聴者数を誇っているという。

動画視聴者がインターネット人口に占める割合を日米で比較すると、米国が89.4%であるのに対して日本は79.8%と10 %ほど低い。その一方で、日本では1動画視聴あたりの利用分数が10.2分なのに対して米国は2.4分と短い。また1視聴者あたりの1カ月の利用分数では日本が2747分だが、米国はその約半分である1254分となっている。では米国では動画が視聴されていないかというと、そうではなくて、1カ月の動画視聴回数をみると米国は517.4回で、日本(268.5回)の約1.7倍となっている。

つまり、日本では視聴する動画の数は少ないものの、長時間の動画を好む傾向にある。一方で米国では短い動画を次々に視聴するという傾向があるようだ。

photo by Evan Blaser


Uberの最大のライバルはSoftBankだった―アジア各地でタクシーアプリに大型投資

アメリカ在住の読者なら、Uberの最大のライバルはLyftとと考えるだろう。Lyftはアメリカの多くの都市でUberとサービスを激しく競い合っており、両社の戦術にはいかがわしいもの少なくない。しかし、意外にも、Uberにとってもっとも手強いライバルがアジアから現れた。さらに驚きなのはその相手が日本の巨大テレコム企業だという点だ。

2014年10月に2億1000万ドルをインドのOlaに投資するまで、SoftBankはスマートタクシー・ビジネスにはまったく関係していなかった。この投資はインドのスタートアップに総額100億ドルを投資するというSoftBankの一大プロジェクトの最初の例として発表された。

なるほどUberのライバルになり得るスマートタクシーへの最初の大型投資ではあったものの、OlaはSoftBankが投資した他の多くのインドのスタートアップの一つにすぎないと見られていた。

しかし、SoftBankの投資はOlaにとどまらず、東南アジアでは2億5000万ドルをGrabTaxiに、 さらに先週は6億ドルを中国のKuadi Dache〔快的打車、Quick Taxi〕に投資した。

これらのSoftBankAsiaの投資先はすべてUber的なスマートフォンを利用したタクシー配車サービスを運営している。SoftBankはこうした事業のアジア外への展開を狙っているに違いない。
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一方、Alibabaは2014年4月にアメリカでLyftへの2億5000万ドルの投資ラウンドを

リードした。Lyftによれば、この資金は「国際展開のために用いられる」とされた。当時、Alibabaがなぜアメリカのタクシーアプリのスタートアップに投資するのか、いささか奇妙なものと見られた。もっともAlibabaはアメリカでチャットアプリのTangoなど多数のスタートアップに投資しておりそうした北米市場進出の一環だろうと考えられた。

しかし、SoftBankとAlibabaは長く密接な関係を保っている。SoftBankがAlibabaへの最初期の投資家であることはよく知られている。しかも両社ともKuadi Dache(快的打車)に出資しているのだ。もしかするとSoftBankのタクシーアプリ戦略にはLyftも含まれることになるのかもしれない。今後SoftBankはLyftに直接に出資するか、あるいはAlibabaを通じて情報や戦略の共有を行い、タクシーアプリに関するSoftBankアライアンスの一環に組み込むことになるかもしれない。

ではSoftBankがこれほど大々的にタクシーアプリに進出しようとするその理由は何だろう?

大きな理由の一つは、SoftBankがアジアを中心とする新興のeコマース市場に進出しようとしているからだ。たとえば昨年はインドネシアのTokopediaに1億ドルを出資している。またインドのSnapdealの6億2700万ドルのラウンドにも参加しており、同じくインドのHousing.comも支援している。

SoftBankがこうした出資先を何らかの形でひとつのネットワークにまとめようとしていることは容易に想像される。その方式はアプリの統合かもしれないし、ゆるいアライアンスのような形になるかもしれない。あるいは情報やマーケティング戦術の共有などのなるかもしれない。

オンデマンド運輸が秘める巨大な影響力を考えれば、タクシーアプリを投資先に加えることは極めて重要だ。

オンデマンド運輸が秘める巨大な影響力を考えれば、タクシーアプリを投資先に加えることは極めて重要だ。

まず、タクシーアプリは何百万という人々が移動のために日々利用する。第二に、タクシーアプリを核とするオンデマンド交通システムはあらゆる種類のオフライン・サービスから利用される物流ネットワークのプラットフォームとなり得る。 たとえば、Uberのロジスティクス分野での可能性を考えてみるとよい

Andreessen HorowitzのBenedict Evansが的確に指摘したように、モバイル・アプリが将来も繁栄を続けるという保証はない。しかしモバイルの将来がアプリ・ベースになろうとウェブ・ベースになろうと、SoftBankはeコマースとオンデマンド交通のようなサービスの間には強力なシナジーが存在すると確信しているに違いない。このシナジーを具体化するもっとも手近な第一歩として選ばれたのがタクシーアプリなのだろう。

昨年Uberは25億ドルの資金を集めた。しかしSoftBankは時価総額は700億ドル(それでも孫正義CEOは「低すぎる額」と考えている)という巨人だ。SoftBankが参戦したとなれば、Uberは近々また資金調達を行う必要があるかもしれない。

SoftBankはこの件に関するわれわれの取材を断った。しかし広報担当者は、SoftBankが「世界各地で投資しているインターネット企業間のシナジーを最大化するよう努力している」ことを確認した。

また、「当面OlaとGrabTaxiの間で提携が行われる予定はない。しかしSoftBankは将来何らかのシナジーがあることを期待している」と付け加えた。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


「太陽光発電スマホ」を実現する仏ベンチャー、NTTドコモVなどから400万ユーロ調達

太陽光発電スマートフォンが早ければ今年中に商用化されそうだ。いわゆるガラケーでは、本体に搭載した太陽電池パネルで充電するモデルが2009年頃からいくつか登場しているが、スマホとなると商用化には至っていない。2008年に創業した仏のSunpartner Technologiesは、タッチパネルに透明な太陽光発電コンポーネントを組み込んで、太陽光発電スマホを実現しようとしている。

スマホやタブレットで太陽光発電を可能にするのは、Sunpartnerが開発する「Wysips Crystal」。マイクロレンズと太陽電池で構成される、薄さ0.5mm、透明度90%のコンポーネントだ。用途としてはフル充電することよりも、いくつかの重要な機能を使える最低限のエネルギーを発電することが主要機能だと、Sunparterは説明する。「例えば10分間太陽光に直接当てれば、待受けを100分、音楽鑑賞を10分、通話を2分行える」。

Sunparterは今夏までに、Wysips Crystal技術を組み込んで生産する液晶メーカーとの提携し、2015年末から2016年初めに最初のモデルをリリースしたいという。すでに携帯電話メーカー数社とは、Wysips Crystalを組み込むことで合意。日本では2014年10月に京セラと提携し、技術的・商用的な観点から評価する取り組みを進めている。

スマホやタブレットでの太陽光発電を実現するWysips Crystalの競合となる技術には、塗布型の有機薄膜太陽電池(OPV)が挙げられるが、「透明度は50%程度でディスプレイに利用できるほどの透明度ではない」とSunpartnerは指摘する。これに対してWysips Crystalは現状で90%の透明度を確保しているので、画面の視野角度が保たれるとアピールする。

スマホ以外には、スマートウォッチやデジタルサイネージ、窓ガラスなどの分野でも2015年に商用化する予定だ。

Sunpartnerは2014年夏以降、800万ユーロ(約11億円)の増資計画を進めていて、2014年12月末には第一期となる400万ユーロ(約5.4億円)の増資を完了。出資額は非公表だが、日本からはNTTドコモ・ベンチャーズが資本参加している。2015年早々には日本に事務所を開設し、国内メーカーとの協業を進めていくそうだ。


EC販促支援ツールを手掛けるSocketがB Dashから資金調達、元ミクシィ朝倉氏をアドバイザーに

Socket代表取締役の安藤祐輔氏(左)と朝倉祐介氏(右)

年初にEC業界の2014年総括・2015年予測の寄稿をしてもらったが、その中で2015年のキーワードとして出てきたのが「ウェブ接客」だった。その動きがいよいよ活発になってきたようだ。スマートフォン向けEC販促プラットフォームの「Flipdesk」を提供するSocketは1月20日、B Dash Venturesが運営するB Dash Fund 2号投資事業有限責任組合を割当先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。金額は非公開だが数千万円になるという。

また今回の資金調達に合わせて、元ミクシィ代表取締役社長の朝倉祐介氏をゼネラルアドバイザーに起用する。朝倉氏は現在米国を拠点に活動中だが、すでにメッセージやメールなどで密にコミュニケーションをとっているそうだ。詳細は明らかにされなかったが、朝倉氏も同社に出資をしているという。

Flipdeskはスマートフォン向けサイト上で、実店舗での接客のような体験を提供する販促プラットフォーム。予めサイトにタグを埋め込み、ユーザーの行動を自動で解析。訪問者状況に応じてクーポンを発行したり、キャンペーン告知などをしたりできる。例えばある商品ページに複数回訪問するのに商品購入に至らないユーザーに対してはクーポンを発行して購入を促す、特定の商品を購入したユーザーに対してはキャンペーンの告知をするといったように、ユーザーの行動に合わせて購買意欲を高める提案をして、購買率を上昇させるという。

Flipdeskでクーポンを出すイメージ

サービスは2014年9月に開始。すでに100社以上が導入を決定しており、うち40社程度が実際に導入済み。東急ハンズやWEGO、丸善&ジュンク堂ネットストアなどの大手ECサイトから、外資系のECサイトや人材情報サイトまで幅広い。

価格はトラフィックに応じた従量課金制で、平均で月額5万円程度となっている。またオプションでコンサルティングサービスも提供する。すでにROI(利用料金に対して得られた粗利益)で1000%を超えるサイトもでてきているそうだ。

Socketは2010年12月の設立。代表取締役の安藤祐輔氏は、高校を卒業してから消防士になり、その後筑波大学に入学。そして学生起業するというちょっと珍しいキャリアの持ち主だ(今回アドバイザーに就任した朝倉氏も、競馬騎手を目指したのち、東大に入学し学生起業するというこれまた異色のキャリアだったが)。

大学在学中に体育会系の部活をする学生向けの就職支援サイトを立ち上げて売却。その後ケンコーコムの外部コンサルとして海外拠点の立ち上げを支援するなどしてからSocketを創業した。Socket創業後も、メディア事業やライターネットワーク事業を立ち上げて売却するなどしてきたが、「これまで資金調達をするようなことはなかったが、業界に8年いてきっちり勝負をかけたい。やるならECと思っていたが、人の商材を売るとなると自社でコントロールできないところが大きい。であればASPをやろう」と考えたそうで、現在はFlipdeskの事業に注力している。

実は安藤氏と朝倉氏は共通の知人がおり、以前から面識自体はあったのだという。そしてレレレが手掛ける「TimeTicket」で朝倉氏が「相談に乗る」というチケットを販売した際に安藤氏がそのチケットを購入。資金調達などのアドバイスを求めたそうだ。そこから徐々に相談の機会が増えていたため今回正式にアドバイザーとなったという。ちなみに朝倉氏は、SSocket以外にも個人でエンジェル投資やスタートアップの相談などに乗っているとも語ってくれた。ただしあくまで「友人ベースで」とのことだ。

同社は今回の調達で人材を強化し、サービスのさらなる開発を進める。


「ボカロP」の次は「ロボットP」の時代が来る?

初音ミクは、ニコニコ動画に作品を投稿する著名な「ボカロP」(プロデューサーの意味)が原動力となってブームを牽引したけど、ひょっとしたらロボットに歌って踊らせる「ロボットP」の時代が来るかもしれない。

ソフトバンク子会社のアスラテックと産業技術総合研究所(産総研)が16日、音楽に合わせて人型ロボットを踊らせることができる制御システム「V-Sido × Songle」を発表した。アスラテックのロボット制御システム「V-Sido OS(ブシドー オーエス)」と、産総研が開発した音楽解析サービス「Songle(ソングル)」を使って実現した。

音楽に合わせてリアルタイムにロボットを躍らせる

V-Sido × Songleの仕組みを簡単に説明するとこうだ。

ウェブ上の楽曲を解析するSongleが、楽曲のビート構造(拍と小節の構造)と楽曲構造(サビ区間と繰り返し区間)にもとづいて、事前に用意された複数の振り付けパターンの中から動きを割り当てる。その上で、V-Sido OSのロボット制御技術が、インターネット経由でリアルタイムにロボットを踊らせる。

楽曲構造の区間ごとに振り付けを指定できるため、ロボットが踊っている最中に振り付けを変えられる。振り付けパターンを無視して歩行動作を指示することもできる。ライブ中に盛り上がっている客席の方向に歩いて行ったり、反対に静かな観客に向かって煽ったりと、インタラクティブな動きができるわけだ。

V-Sido OSは、事前のモーション設定なしにロボットを動せる制御システム。体制を自動的に補正するオートバランサーを搭載し、急な衝撃や不安定な足場でも倒れにくくすることができる。一般的なシリアル方式サーボモーターを制御できるほか、油圧や空圧で動くロボットにも対応。大きさや形状を問わず、汎用性が高いのが最大のセールスポイントだ。

これまで、ロボットがライブをしようとすると、事前にモーションをプログラミングする必要があった。イベントで引っ張りだこのソフトバンクのPepperなんかもそうだ。そのため、「アクシデントで音と動きがズレると微妙なことになる」とアスラテックでチーフロボットクリエイターを務める吉崎航氏は話す。「V-Sido × Songleはアドリブの効いた動きができるため、テレビの生放送にだって耐えうる」。

初音ミクムーブメントの再現を期待

楽曲はSongleに登録されている、ニコニコ動画やYouTube、MP3など80万曲が利用できる。主にボーカロイドの楽曲が大半を占めている。現時点で踊ることができるのは、V-Sido OSに対応しているロボット。2足歩行ロボットの「GR-001」(HPI製)や「ASRA C1」(アスラテック製)、ドールの形状をした人型ロボット「SE-01」(佐川電子製)などがある。今後は他の企業とも協力して、イベント利用や商品化を目指して実用化に取り組むという。

SE-01を開発した佐川電子の町浩輔氏は、「これまで人型ロボットを買っても、披露する場は競技大会ぐらい。ロボットにモーションを登録するのは難しいが、V-Sido × Songleで動きを制御できれば、ロボットが歌って踊る動画をYouTubeやニコニコ動画に投稿できる。初音ミクの『〜P』のように、今度は『ロボットP』の時代が来るのでは」と期待をのぞかせている。

アスラテックの吉崎航氏(左)と佐川電子の町浩輔氏(右)


ドリコムのスタートアップ支援プログラムで見つけた面白そうなプロダクト

ドリコムが2014年8月から運営している学生向けスタートアップ支援プログラム「Startup Boarding Gate」が、発足から約半年を経て実を結びつつある。1月14日に開催されたDemo Dayでは法人化した6つのチームがプロダクトを披露した。

どのチームにもドリコム社長の内藤裕紀氏が貴重な時間を割いて毎週のようにアドバイスしたそうで、「ピボットしたり、喧嘩したり、本当にいろいろあった……」と愛おしそうに振り返った。とはいえ、その6チームの中にもプロダクトの完成度や目指すビジョンのインパクトに差はあった。この記事では筆者個人の目から見て特に輝いていた3つのプロダクトを紹介しよう。

ドリコム社長の内藤裕紀氏

 

スマホ版「Flash」目指す

まず1つ目はモバイル環境に特化したライブラリ「CodeNext」。電気通信大の脇田英さん、谷口泰史さんのチームだ。PCインターネットにおいては異なるブラウザで画像や動画などのコンテンツを提供するためにFlashが用いられているが、それのスマホ版を目指すという。つまりiOSやAndroid、およびそのバージョンの差異を吸収するようなライブラリである。

海外にはいくつかの競合がある。代表的なのは「moju」と「Fyuse」だ。しかしmojuはiOSのみ対応、FyuseはAndroid版でベータのみ。どのライブラリもAndroidに完全に対応できていない。CodeNextはいち早くきっちりとAndroidに対応することで差別化を図る考えだ。さらにスマホに搭載されている重力センサーなどをフル活用し、アプリ操作に応用するような仕組みも付随させる。

彼らはすでにオリジナルの動画アプリ「ParaPara」をリリースしている。動画を撮影してアップロードすると、スマホの傾きに合わせて動き出す画像が作れるというものだ。

これをECサイトに応用すると、スマホを傾けることによって商品写真を3Dでぐりぐり見せたり、ピアスなどのアクセサリーが揺れたりなどの表現が可能になるという。さらに実際にバナー広告に用いたところ、GIFとはまた違った表現力を見せ、クリック率で10%の改善があったそうだ。

 

自転車の変速をオートマ化するハードウェア

2つ目は専修大学の藤堂洋弥さん、青柳龍志さんのチームが開発した、ロードバイクの変速をオートマ化させるハードウェア「Canaria Bicycle Compenents」だ。ロードバイクは一般的にハンドル部に付いているシフトレバーでギアチェンジする。ギアを重くしたり、軽くすることで、ペダルの回転を一定に保ち、それによって効率的にスピードを出せるようにする。

そういったギアチェンジを、自動車のオートマ車のように速度にしたがって自動化するのが、Canaria Bicycle Componentsの果たす役割だ。すでにロードバイクの自動ギアチェンジシステムは製品化されているが、とても高額なコンポーネントを必要とするのが課題だった。

Canaria Bicycle Componentsはスマホアプリとロードバイクのギア部分に取り付ける小型機器で構成される。ペダルの回転数をセンサーで計測し、回転数が上がると自動で重いギアに切り替わる仕組みのようだ。いまどのギアを使っているかは常にスマホの画面で目の前に表示されるそうだが、この部分はデモでは見られなかった。またユーティリティソフトにより細くギアチェンジの設定が可能。走行データや設定データの共有も行えるようになるという。

自転車乗りを走行に集中させ、より安全なサイクリング環境を提供するのが目標だという。いずれはロードバイクだけではなく、いわゆるママチャリのような低価格な自転車にも対応させる予定だ。価格は当初3〜5万円を想定し、工賃なども含むと10万円程度かかる従来の自転車部品メーカーへの優位性を保ちたい考えだ。

デモでは実際にロードバイクが用意された。ペダルの回転数を上げると、たしかにシフトレバーに触れていないのに、ギアがガチャガチャと切り替わっていく。ペダルをこぐ足をゆるめると、再びギアは戻っていく。この感覚はとても新鮮だった。

 

動画版Gunosy!? 観たいはずの動画を人工知能が届ける

3つ目は人工知能による動画キュレーションサービス「Liaro」。代表の花田賢人さんはチームラボで働きながら自然言語、画像解析などを研究している。その他のメンバーも全員がエンジニアで、各々が何らかの解析、および人工知能分野の研究に携わっているそうだ。

Liaroは動画版Gunosyといったイメージで、オンライン上のあらゆる動画をユーザーの好みに合わせて毎日配信する。バイラルメディアの場合、1日の平均動画視聴時間は1〜2分程度だが、Liaro経由で触れた動画の場合はそれが1日19分にも拡大すると花田さんは話した。

今後はアルゴリズムの実装を進め、スマホアプリやPCビューの開発に取り組む予定だという。価値ある動画はまだまだ埋もれがちで、テキスト中心のウェブページと違い探す手段も限られる。人工知能によって価値あるコンテンツを発掘し、届けることができるのではないかと考えている。


家計簿アプリ「Zaim」、意外と知られてない給付金を教えてくれるサービス

オンライン家計簿アプリ「Zaim」が1月16日、住んでいる地域や家族構成、家計簿の記録から、ユーザーがもらえる可能性のある、国や地方自治体の給付金を教えてくれるサービス「わたしの給付金」を開始した。月額300円のプレミアム会員は、世帯構成を登録すれば、自分の条件に合う給付金を自動的に抽出してもらえる。当面は、東京23区と神奈川県の2市(横浜市・川崎市)が対象となっている。

ふだん、給付金を意識していない人が見ると、こんなにもたくさんあるのかと驚きそう。実際、Zaim社長の閑歳孝子さんも飼い猫の去勢手術をしたとき、自身が住んでいた区で手術代の一部が給付されることを知ったそうだ。「まさか地方自治体からそんな補助が出るなんて知らない人は多いですよね」(閑歳さん)。Zaimのプレミアム会員は世帯構成に「ペット」を登録しておけば、こうした給付金の存在を教えてもらえるようになっている。

地方自治体や国のサイトでは給付金の情報を掲載しているが、どこに何があるかがわかりづらかったり、何が書いてあるのか理解できなかったりすることもしばしば。そこでZaimでは、シンプルに最低限の説明だけを掲載し、正確な情報は役所のサイトにリンクしている。一覧性が高いので、自分が対象となる給付金がすぐに理解できそうだ。

Zaimでは、過去4年間の支出をもとに、医療費控除の対象になる可能性のある支出を自動的に抽出するサービス「わたしの医療費控除」も開始した。プレミアム会員であれば、医療費控除の申請に必要な国税庁の「医療費集計フォーム」に、家計簿から医療費分を自動記入できる。無料会員は家計簿の記録をもとに、年間に支払った医療費と、手元に戻ってくる可能性のある金額がわかる。

Zaimは2014年8月にひっそりとプレミアム会員サービスを開始。銀行口座やクレジットカードの履歴明細を取得するタイミングを無料の人よりも優先度を上げたり、複数アカウントを使い分けられるようにしている。全体におけるプレミアム会員の比率は非公表だが、広告や法人向けAPI提供を通じて、徐々にマネタイズを進めているようだ。ダウンロード数は300万超に上るという。

これまでは銀行口座やカードの明細取得や、カメラ撮影によるレシート入力など、家計簿での「記録」面の機能を強化してきた。給付金や医療費控除に関するサービスは家計簿とは異なるが、閑歳さんは「もともとZaimは家計簿を作りたい、というよりも『お金を通して一人ひとりの暮らしを楽しく、いいものにしたい』と考えて始めた。今後は広い意味での家計サービスを展開したい」と話している。


対戦型脳トレアプリのBrainWarsが1000万ダウンロード達成――Supercell、Kingを目指す

トランスリミットの対戦型脳トレアプリ「BrainWars」が、全世界1000万ダウンロードを達成した。同社の設立は2014年1月14日。ちょうど創業1周年での達成となった。

日本はたった4.3%――高い海外ユーザー比率

BrainWarsはトランスリミットが2014年5月にリリースしたスマートフォンアプリだ。穴あきの計算式に、正しい式になるよう計算記号を入れる「四則演算」、指示された方向に画面をフリックしていく「フリックマスター」など、直感的な操作で楽しめる約20種類の脳トレゲームで世界各国のユーザーと対戦できる。対戦はリアルタイムだが、相手のユーザーが応じられない場合、そのユーザーの過去の実績をもとに非同期での対戦が行われる。

僕はリリースの1カ月ほど前にアプリのデモを見せてもらったのだが、その頃からトランスリミット代表取締役社長の高場大樹氏は「ノンバーバル、言語に依存しないサービス設計をしている」と語っていた。実際のところ、ユーザーが最も多いのは米国(25.4%)で、日本は4.3%と少ない。

2014年5月にiOS版をリリースしたBrainWarsだが、ノンプロモーションながらサービス開始から2カ月で2万ダウンロードを達成。そこから国内のIT系のメディアやブログなどで取り上げられ、さらに7月にApp Storeの「注目アプリ」として日米で紹介されるようになってから急激にダウンロード数を増やしたそうだ。9月にAndroid版をリリースするとダウンロードは更に増加。10月に300万、11月に700万を達成し、今回の1000万ダウンロードに至った。

高場氏は海外でのダウンロードについて、「特に米国ではApp Storeでの紹介がきっかけだが、それと同時に(対戦結果をシェアした)Twitter経由でのダウンロードが多い。ユーザーインターフェースもフラットデザインを意識したし、ノンバーバルでシンプルなゲーム性を追求している。そのあたりが海外でも受けたのではないか」と分析する。ダウンロード数だけでなくアクティブユーザーも気になるところだが、具体的な数字は非公開だという。ただし「一般のソーシャルゲームのアクティブ率は7日間で20%程度だと考えている。それよりかは大きい数字だ」(高場氏)とのこと。

ユーザーの「真剣さ」ゆえに読み違えたマネタイズ

BrainWarsは1プレイごとにハートを1つ消費していき、そのハートは時間経過によって回復するというソーシャルゲームなどでよくある仕組みを導入している。時間経過を待たずにプレイする場合は課金、もしくは成績上位で得られるコインを使ってハートを購入する必要がある。またコインは、対戦時に自分の得意なゲームを選択する際や過去の成績を閲覧する際にも使用できる。このコインの課金と広告によって、「すごく小さい額ではあるが黒字で運営している」(高場氏)というBrainWars。だが課金に関しては誤算もあったのだそうだ。

BrainWarsは「ガチャでレアキャラを引き当てればゲームを有利に進められる」というものではなく、地道にミニゲームに慣れていかなければいい結果を出せない。そんなこともあってか、前述の「得意なゲームを選択する」という機能を使わずにランダムに選ばれるゲームで正々堂々と戦いたいというユーザーが多いのだそうだ。高場氏もこれについては「鍛錬を積んで勝負をするという競技的な側面があり、ユーザーは(課金して自分に有利なゲームを選ぶことなく)真剣に勝負する。ここが課金のポイントだと思っていただけに誤算だった」と振り返る。また、具体的な数字は教えてもらえなかったが、課金率の低さも今後の課題なのだそうだ。そういった背景もあって、2月にも予定するメジャーアップデートでは、1人向けの新たなゲームモードを用意。ここでコイン消費を促すという。

LINEとの協業、2015年中にゲームを提供

トランスリミットは創業期にMOVIDA JAPANやSkyland Venturesなどから資金を調達。その後2014年10月にLINE傘下のベンチャー投資ファンドであるLINE Game Global Gatewayのほか、ユナイテッド、East Ventures、Skyland Ventures、Genuine Startupsから総額3億円の資金調達を実施している。同社はこの調達と合わせてLINEとの業務提携を発表。LINEのユーザー基盤を活用した新たなゲームコンテンツを開発するとしていた。

このLINE向けゲームの進捗については、「今はBrainWarsに注力しているところ。だが年内にはLINE向けの新規タイトルを1本リリースする予定だ」(高場氏)とした。またそのテーマについては、「『LINEに乗せて成果の出るもの』を考えているが、BrainWarsがベースになるか、まったくの新規タイトルになるか未定」(高場氏)なのだそうだ。

高場氏はこのほか、現状10人(インターン含む)の組織を年内に30人程度まで拡大する予定だとした。年内にはBrainWars、LINE向けタイトルに加えて、自社の新作タイトルも提供するという。「BrainWarsは1年で1000万ダウンロードを達成したので、2015年内に3000万を目指したい。また同時に年内に3ラインまで拡大して、1つ1つのアプリで売上を作って自走しつつ勝負をする。目標は世界で名前が通るデベロッパー。SupercellやKingと肩を並べたい」(高場氏)

トランスリミットのスタッフら。前列中央が代表取締役の高場大樹氏

 


nanapiの新サービスemosiは、テキストを使わずにコミュニケーションを実現する

ハウツーサイトの「nanapi」やコミュニケーションサービスの「Answer」、英語メディア「IGNITION」などを手掛けるnanapiが、実はひっそりと新サービスを公開している。その名称は「emosi(エモシ)」。App Storeにて無料でダウンロードできる。

emosiは、画像や動画、音声を投稿するコミュニケーションサービスだ。そう聞くとInstagramだってVineだってあるじゃないかと思うかもしれないけれど、このサービスがユニークなのは、テキストが投稿できないところにある。以前のバージョンでは画像にタイトル程度のテキストをつけることができたが、最新版ではそれすらできないようにしている。

アプリを立ち上げ、画面下部中央にある投稿ボタンをタップすると、「動画」「音声」「静止画」「アルバム」のアイコンが表示される。いずれかをタップして撮影、録画・録音(アルバムの場合は写真などを選択して)し、色みを変えるフィルターをかけて投稿できる。

投稿一覧画面。テキストがつくのは前バージョンまで

投稿一覧画面では、画像や動画はモザイクがかかった状態(音声の場合はアイコン)で表示されており、それぞれをタップしてはじめてその詳細が分かるようになっている。投稿を閲覧したユーザーは、一般的なコミュニケーションサービスでいうところの「コメント」のかわりに、画像や動画を投稿(リアクション)できる。リアクションで投稿された画像や音声には、Facebookの「いいね!」にあたる「Nice」というボタンが用意されている。投稿は匿名でも、ニックネームでも本名でも可能。デフォルトのアカウント名は「emosi」になっているが、そのまま利用することも、アカウント名を変更したり、自己紹介ページに自分の画像や音声、動画を登録することもできる。

nanapi代表取締役の古川健介氏に聞いたところ、サービス自体は2014年中にローンチしていたのだそうだ。だがプロモーションなどはしてこなかったこともあって投稿の数もまだまだこれからという状況。なので、コミュニケーションが成り立たずに画像1つあるだけ、という投稿も少なくない。だが中には、曇天のビーチの写真をアップしたユーザーに対して、他のユーザーが晴れたビーチの写真や青空の写真を投稿するとか、お弁当の写真をアップしたユーザーに対して、他のユーザーが別のお弁当や、カレー、焼肉、といったように次々に食事の写真を投稿する、「つらい」という音声に対して他のユーザーが爽やかな景色の写真を投稿する、といった不思議なコミュニーケーションが生まれている。

動画、または音声に特化して、特定のテーマに沿った投稿をしていくようなサービスも出てきているが、コミュニケーションをテーマにしながらもテキストがまったく使えないサービスなんて見たことがなかったので、その発想にはちょっとびっくりした。nanapiはなぜemosiを提供したのか。

古川氏はその理由についてこう語る。「チームラボの猪子さん(代表取締役の猪子寿之氏)が以前、『言語を介さないと怒りの感情はは長続きしない』と話していた。例えば格闘家が試合前に罵り合うのは、そうでもしないとそのあと殴れないからではないか。それはつまり、言語がない状態であればポジティブなやりとりしかできないということではないか」(古川氏)

そこで試験的にemosiをリリースしたところ、あるユーザーが落ち込んでいるような写真を投稿すると、それに対してまるで慰めるかのように、きれいな空の写真を投稿してくれるという画像だけのやりとりが起こったということもあり、サービスの作りこみを進めたそうだ。そういう経緯もあって、App Storeでのemosiの紹介には「ネガティブな感情をポジティブに変えてくれる、新感覚コミュニケーションアプリ」という説明がある。通報機能もあるので、公序良俗に反するような画像などは削除されるようだ。

nanapiがemosiに先行して手掛けるAnswerは、「即レス」をうたうテキストベースのコミュニーケーションサービス。2013年12月5日のサービス開始から約1年で総コメント数1億件(2014年12月22日時点)を突破している。emosiは当初、テキストではなくリッチメディアに対応した「次世代版Answer」という位置づけで考えていたそうだが、「さすがにサービスが尖りすぎていたので、別のサービスとしてリリースした」(古川氏)という。

また人をポジティブにすることをモットーとするこのサービス、ちょっと変わった機能が付いているそうだ。投稿をした人(Aとする)にリアクションした人(Bとする)がいたとして、そのBがまた新たに投稿し、それにリアクションした人(Cとする)がいたとする。そしてそんなCがまた新たに投稿をし、Aがリアクションするというような、A→B→C→Aという「リアクションの輪」ができたときに、その旨が通知されるのだそうだ。「お金を稼ぐのも大事だが、少しでも世界平和とか、世界を変えられるようなアプリを作ろうと思っていた時期があってサービスを企画した。人に親切にして、それがつながっていけば」(古川氏)


ミサイル着弾でも帰国しない、サムライ榊原氏が率いる新ファンドは「イスラエルと日本の架け橋になる」

創業間もないスタートアップを育成投資するインキュベーター。日本での草分け的存在として知られるサムライインキュベートが1月12日、5号ファンドを設立すると発表した。これまで国内約80社に投資してきた同社だが、新ファンドでは、シリコンバレーに次ぐ「スタートアップの聖地」と言われるイスラエルの企業に積極的に投資していく。

「聖地」から世界を狙うスタートアップを支援

TechCrunchでも報じたが、サムライインキュベート創業者の榊原健太郎氏は5月にイスラエルに移住し、7月に同国最大の商業都市であるテルアビブに支社を設立。起業家の卵が寝食を共にする住居兼シェアオフィスの「Samurai House in Israel」を構え、イスラエルから世界を狙うスタートアップを支援している。

イスラエルがどれくらい「スタートアップの聖地」なのかは、データが物語っている。人口わずか776万人のイスラエルにおけるベンチャーキャピタル(VC)の年間投資額は2000億円と、日本の約2倍。人口1あたりの投資金額では世界1位だ。SequoiaCapitalやKPCB、IntelCapitalといった世界の大手VCが現地のスタートアップに投資し、これらの企業をIT企業の巨人が買収するエコシステムができているようだ。

例えばFacebookは2012年6月、iPhoneで撮影した友達にその場でタグ付けできるアプリを手がけるFace.comを買収。このほかにも、Microsoftは検索技術のVideoSurfを、AppleはXboxのKinectに採用された3Dセンサー技術のPrimeSenseを、Googleは地図アプリのWazeを買収。日本でも、楽天がモバイルメッセージアプリ「Viber」を9億ドル(約900億円)で買収して話題になった。

ちなみに、TechCrunch編集者のMike Butcherは「テルアビブで石を投げればハイテク分野の起業家に当たる」と、スタートアップシーンの盛り上がりを表現している。実際のところを榊原氏に聞くと、「道端でも飲食店やクラブでも起業家だらけ」とのことで、本当らしい。

テルアビブの市役所には、TechCrunch編集者のコメントが掲げられている。左から2番目が榊原氏

ファンド規模は10倍に、要因は日本企業が注ぐ熱視線

新ファンドでは、イスラエルと日本のスタートアップ110社以上に投資する。イスラエルについてはファイナンスやセキュリティ、ヘルスケア、ロボティクス、ウェアラブル分野のスタートアップ40社が対象。この中には、ベネッセ出身の寺田彼日氏らが現地で創業した「Aniwo(エイニオ)」も含まれる。

日本人とイスラエル人の混合チームで構成されるエイニオが手がけるのは、起業数が年間3000社と言われるイスラエルのスタートアップの事業スライドを収集・公開するサービス「Million Times」。起業家や投資家、一般ユーザーが交流できるプラットフォームを作ろうとしている。榊原氏は「事業スライド版のGoogleを狙える」と評価していて、1000万円の投資が決まっている。

イスラエル企業の投資先としては、自分の足を動画撮影することで足の形をモデリングする、靴の通販サイトで使えそうな画像解析技術であったり、自分の周囲数十センチの空気だけを浄化するウェアラブル空気清浄機を手がけるスタートアップなどに投資する予定だという。

新ファンドの規模は約20億円になる見込み。サムライインキュベートの過去のファンドを見ると、1号が5150万円、2号が6200万円、3号が2億1000万円、4号が2億4000万円。創業間もないスタートアップを対象にしていることもあり規模が小さかったが、5号ファンドでは10倍となる。

ファンド規模拡大の要因の1つは、日本企業がイスラエルに注ぐ熱視線だ。前述の通り、イスラエルからはイケてるスタートアップが数多く輩出されていて、イノベーションを迫られる日本の大企業にとって、魅力に映ることだろう。かといって、イスラエルの現状はわからない。そんな大企業が、新ファンドへの出資を希望するケースが増えているのだという。

大企業マネーの背景には「過去のファンド実績がある」と榊原氏はアピールする。1号ファンドでは、スマートフォン向けの広告配信サービスのノボットが、創業2年目にKDDI子会社のmedibaに15億円で売却。3号、4号ファンドの実績は明かしていないが、1号ファンドは7倍、2号ファンドは10倍以上のリターンが確定しているという。

ノボット以外の投資先としては、個人が独自の旅行を企画して仲間を集うトリッピース、、個人がコンテンツを販売できるオンラインサロンプラットフォームを手がけるモバキッズ、スライド動画作成アプリ「SLIDE MOVIES」や日記アプリ「Livre」など他ジャンルのアプリを手がけるNagisaなどがある。

イスラエルの技術と日本企業の架け橋に

日本進出を狙うイスラエルのスタートアップにとっても、「渡りに船」の存在のようだ。日本の四国ほどの面積に人口がわずか776万人のイスラエルは国内市場がないに等しく、敵対するアラブ諸国からなる周辺国の市場も見込めない。だからこそ、「最初から欧米やアジアを視野に入れるスタートアップが多い」と榊原氏は話す。

「イスラエルの起業家は0から1を生み出すのが得意。イグジットの意識も高くて、『このプロダクトはキヤノンに使ってもらえる』とか『ドコモにピッタリ』とか言ってくる。新ファンドは、イスラエルの技術を日本企業と連携させる架け橋になれる。」

5号ファンドでは、イスラエルに登記するスタートアップについては、一律で1億円の評価をして、1000万円を上限に投資する。国内のスタートアップは引き続き、B2BおよびC2C分野に注目し、一律で3000万円の評価をして、450万円を上限に投資する。現時点でイスラエル企業15社、日本企業5社への投資が確定しているという。

ミサイルが飛んできても帰国しない「ラストサムライ」

3月の取材時に、「日本の住居を完全に引き払って、背水の陣でイスラエルに挑戦する」と語った榊原氏。移住後は支社設立のために、ヘブライ語を話す日本人に協力してもらって銀行口座を作ることや、イスラエル人の保証人探しに奔走することに始まり、現地でのプレゼンスを高めるために人と会いまくる日々だったと振り返る。

7月8日には、イスラエル軍がガザ地区への軍事作戦を開始。それ以降、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスとの争いで、イスラエルには1000発以上のミサイルが着弾している(ほとんどはミサイル防衛システム「アイアンドーム」が迎撃している)。7月末に実施したイスラエル支社のオープニングパーティーでは「ミサイルが飛んできても日本には帰らない」と宣言。現地では「榊原こそラストサムライ」と喝采を浴びた。

住居兼シェアオフィスのSamurai House in Israelでは、現地の起業家や投資家にアピールするために、毎週のようにイベントを開催。寿司を作ったり剣道を教えるなど、日本をテーマにしたミートアップを60回以上やってきた。「最初はどこにも投資できないんじゃないかと不安もよぎった」という榊原氏だが、今では「イスラエルは日本人にとってブルーオーシャンな市場。リターンを得るのは難しくない」と自信をのぞかせている。

Samurai House in Israelでは毎週ミートアップを開催している


リアル志向、フリマ、インスタントEC――激変するEC業界を振り返って2015年を展望する

編集部注:この原稿はイイヅカアキラ氏による寄稿である。イイヅカ氏はウェブ制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事したのち、フリーランスのデザイナー兼ブロガーとして活動。現在はウェブ接客ツール「KARTE」を開発するプレイドに所属しており、同社にてEC特化型メディア「Shopping Tribe」の編集長兼ライターを務めている。

2013年はEC業界にとって激動の1年と言われたが、2014年はその変化が着実に浸透していった1年となった。リアルとネットを繋げる動きが進み、スマートフォンの台頭による、新しい購買行動を創出する動きが目立った。

そして2015年、筆者はトレンドとなるのが「カスタマイズEC」と「ウェブ接客サービス」という2点だと考えている。ここではまず3大モール、フリマアプリ、インスタントコマースという切り口で2014年のEC業界の動向を振り返りつつ、あらためて2015年のトレンドについて考えていきたい。

無料化やリアル進出――3大モールはどう動いたか

まずは国内の主要3大モールである、楽天Yahoo!ショッピングAmazonの動きを振り返ってみよう。

2014年に最も大きな変化があったのはYahoo!ショッピングだろう。2013年10月に「eコマース革命」と銘打って手数料・月額利用料・売上ロイヤルティを無料にしてから約1年が経過したが、2014年には2つの大きな変化があった。

1つめは店舗数だ。eコマース革命以前は約2万件だった店舗数は2014年9月末時点で19万3000件と大幅に増加。1年で約10倍の店舗数に拡大した。

2つめは商品数だ。店舗数の拡大もあって、商品点数はeコマース革命以前から約5割増加した1.2億点となった。現在国内で商品点数ナンバーワンを誇る楽天市場の商品数は1.5億点であり、その数字に迫るものとなっている。2015年早々にも商品数で逆転することが予測される。

Yahoo!ショッピングの施策は手数料などの無料化だけではない。出店の敷居を下げるために、5分ほどで簡単にショップを作れる「ストアクリエイター」を1月22日から導入し、2月からは個人の出店受付も開始した。全体の割合としては法人が上回るようだが、出展を法人に限定する楽天市場の店舗数は4万1000店(2014年12月時点)であることを考えると、出店対象者が大きく広がっていることがわかる。

このように大きな変化は見られたものの、第2四半期(7月〜9月分)のショッピング関連の流通総額の伸びは前年同期比で10%増にとどまった。2014年は売れるモールになるための下地を作った1年であったといえるだろう。

楽天に関しては、リアルでの消費行動に関連するサービスの拡充が目立った。

店舗でチェックインするだけでポイントが貯まる「楽天チェック」を4月に開始し、楽天市場で人気のお取寄せスイーツなどを提供するリアル店舗「楽天カフェ」を5月に東京・渋谷にオープン。そして、コンビニなどの全国約1万2,600以上の加盟店舗で楽天ポイントの貯蓄・利用ができる「Rポイントカード」の発行を10月に開始した。楽天はこれまでも「楽天経済圏」という構想を都度語っていたが、そのリアルへの拡張ともいえる動きは、2015年も強化されていくことになるはずだ。

もうひとつの気になる動きは、米国でサービスを展開する2社の買収だ。買収したのはECサイトの購入履歴を集約するサービス「Slice(スライス)」とキャッシュバックサイト「Ebates(イーベイツ)」。いずれも米国におけるデータ収集という狙いもありそうだが、米国展開強化の一端と言えるだろう。

Amazonは、有名店のプライベートブランド商品を集めた「プライベートブランドストア」を開設するなど、2014年も専門ストアの拡充が多く見られた。また同時に2013年10月からはメーカーとコラボしてAmazon限定の食品販売を開始するなどしている。この背景にはAmazonが持つビッグデータの存在がある。同社は自らが持つデータをもとに、ユーザーの望むテイスト、モデル、カラー、デザインの限定商品を開発したわけだ。

店頭受取サービスを開始したことも重要な動きの1つだ。これまでも行っていたコンビニ受取の取り組みを拡張するものだが、ヤマト運輸と提携しすることで、ヤマトの営業所で最短当日受取が可能になった。ちなみにコンビニについては、ローソンでは翌日、ファミリーマートでは2日後に受け取ることが可能だ。

実は、セブン&アイが自社グループのECで購入した商品を対象に、セブン-イレブンの店舗で当日受取を可能にしようとする動きがある。同社は2015年のサービス開始を目標にしているが、Amazonはこれに先んじて実現した形だ。コンビニとの連携という点ではほかにもローソンと共同で、店頭のLoppi端末の電話などを使用した店頭注文サービスも開始している。今後もECをリアルに拡張する動きとしてコンビニが重要な役割を占めていくことになりそうだ。

米国ではさらに、ニューヨークに拠点を設け自転車による1時間以内の配送を実現する「Amazon Prime Now」を開始している。ほかにもドローンでの配送やタクシーの配車アプリを活用した配送など、さまざまな試みも進められている。Amazonの物流の強化はとどまるところを知らないようだ。

フリマアプリが躍進——メルカリ・Frilが好調

2014年はフリマアプリが注目された1年でもあった。

フリマアプリ市場を牽引したのは、メルカリの「メルカリ」だ。5月にテレビCMを開始してから、半年で約400万ダウンロードを伸ばし、12月時点で700万ダウンロードを突破した。月間流通総額は数十億円規模となり、フリマアプリの中では頭ひとつ抜けた存在となった。3月には14.5億円、10月に23.6億円と大型の資金調達を立て続けに行い、9月には米国版を正式にリリースした。

もう1つ、市場を牽引する存在となっているのがフリマアプリブームのきっかけとなったFablicの「Fril」だ。女性特化型ながら250万ダウンロードを突破し、月間流通総額は5億円を超える。9月には10億円の資金調達を実施し、その翌月からテレビCMを開始した。8月にはFril内にブランドの公式ショップを立ち上げるBtoCサービスも開始しており、こちらも好調のようだ。

LINEの「LINE MALL」も2014年3月から本格的にスタートし注目を集めた。誰ともかぶらない、かつ最も安い購入価格を設定した人だけが商品を購入できる「チャンスプライス」や共同購入が可能な「LINEグループ購入」、さらにLINEでつながっている友人にギフト商品を送ることができる「LINE ギフト」など、LINEのプラットフォームを活かした独自サービス展開をしている。

好調なフリマアプリが注目される一方で撤退を選択した企業も相次いだ。サイバーエージェントの「マムズフリマ(元 毎日フリマ)」や、ブランド品に特化したWhyteboardの「LISTOR(元 Whytelist)」、男性向けに特化したドウゲンザッカーバーグの「bolo」などは、フリマアプリに早い段階で参入していたもののすでにサービスを終了させている。

事業者の明暗が分かれたようにもみえるフリマアプリだが、2014年後半も新規参入があった。もっとも話題を集めたのは、11月に登場した楽天のフリマアプリ「ラクマ」だ。

実はメルカリは開始以来無料で提供してきた販売手数料を10月から有料にし、販売価格の10%が発生するに形に変更している。これを好機とみたのか、ラクマは手数料無料でサービスを開始している。そのタイミング、そして楽天のブランド力もあって注目を集めることとなった。この他に、SHOPLIST.comを運営するCROOZの「Dealing(ディーリング)」や、プリクラ機のトップシェア持つフリューの「Bijoux de Marché(ビジュードマルシェ)」も10月からサービスを開始しており、2015年も引き続きフリマアプリは注目の分野となりそうだ。

勢いの止まらないインスタントコマース

2013年から店舗数が増加する勢いが止まらなかったのがインスタントコマースだ。ブラケットの「STORES.jp」は2013年12月時点で6万店舗だったが、2014年11月には17万店舗に拡大。競合であるBASEの「BASE」は2013年10月時点で5万店店舗だったが、10万店舗(2014年11月)まで拡大させた。

STORES.jpは、この1年で親会社であるスタートトゥデイが展開する「ZOZOMARKET」や ハンドメイド素材大手のユザワヤ商事が展開する「ユザワヤマーケット」など提携するマーケットプレイスを様々な企業と共同でオープン。商品の露出機会を増やす施策を進めた。そして、ZOZOTOWNに出店する店舗が瞬時に自社店舗を開設できる「STORES.jp PRO」も3月に開始。ZOZOTOWNと在庫連携し発送もZOZOTOWNが行うため、店舗は負担を増やすことなく自社店舗を運営することを可能にした。

STORES.jpは2014年後半に店舗数の伸びが加速したが、2つの理由が考えられる。1つは、無料プランでは5点までだったアイテム登録の制限を撤廃したこと。もう1つはフォロー機能を開始したことだ。フォロー機能は、好きな店舗をフォローし、新着情報を取得できるようにするショップ利用客向けのサービスだが、この機能を利用するには会員登録をする必要がある。その登録手続きによって店舗も同時に開設されるため、これが店舗数の伸びにつながったものとみられる。

また会員登録によって、利用客が住所やクレジットカード番号をSTORES.jpに保存できるようにもなったのもポイントだ。STORES.jpのサイトで都度クレジットカードの入力が必要でなくなるという利便性は、それこそ楽天やAmazonのようなショッピングモールを利用しているユーザーからすれば無くてはならないものだ。

BASEは、開発者向けAPIの提供を10月に開始したほか、三井住友カードと提携しクレジットカード決済が店舗開設と同時に利用できるようになった。5月にはグローバル・ブレインから約3億円の資金調達を実施し、2015年以降にマネタイズを進めることも明らかにしている。

フリマアプリ、インスタントコマースの台頭したことに関して、共通しているのは売り手の敷居を下げたということ。これが本格的に浸透していったのが2014年なのではないだろうか。Yahoo!ショッピングもビジネスモデルを大きく転換し、この流れを加速させた。まだまだ足場を固めたレベルなのかもしれないが、2015年に大きな変化を生むような気がしてならない。

2015年に注目する2つの分野

冒頭で書いたとおりだが、筆者が2015年に注目している分野は「カスタマイズEC」と「ウェブ接客サービス」だ。

カスタマイズECは、ウェブ上で自分好みにカスタマイズし、自分だけの商品を注文できるサービス。日本では、10億通りのオリジナルシャツを作成できる「Original Stitch」などがサービスを展開しているが、技術革新が進み、ファッション・家具・食品など様々なジャンルから新サービスが登場しそうだ。3Dプリンタを活用したサービスも今後展開するものと思われる。

ウェブ接客サービスは、97%が何も買わずにサイトを立ち去ってしまうというECサイトの現状を打破すべく、接客をすることで購入率を高めようとするサービスだ。筆者が所属するプレイドでもウェブ接客サービス「KARTE」を開発しており、2015年に一般公開する予定だ。KARTEは来訪者をリアルタイムでどのようなお客様なのかを解析し、グループに分類した上で、その来訪者にあった接客(レコメンドやクーポンの発行など)を自動で行うというものだ。

これまでは、インターネットの特性を活かして多くの商品を多くの人に届けるために「効率化」ばかりに目が向いていた店舗も少なくないだろう。ウェブ接客により、リアル店舗のようにひとりひとりの訪問者にしっかりと対応していくことが、これから注目されるのではないだろうか。

2014年はさまざまな形でECへの参入、ECの利用の敷居を下げるようなサービスが登場したと感じているが、2015年にはそれらがどのように進化するのだろうか。また、新しいニーズを創出するどのようなサービスが登場するのか注目していきたい。

photo by
Maria Elena


【告知】TechCrunch Japanでは寄稿(ゲストコラム)を募集しています

ライターとアルバイト募集の告知をさせていただいたが、TechCrunch Japanでは寄稿も随時募集しているのでお知らせしたい。日本のスタートアップ界隈やテック・ビジネスも賑わってきていて、色んな意味でTechCrunch Japan編集部だけでカバーできる領域や量なんてしれてるなということだ。

ぼくらがいちばん求めている記事は、特定領域を専門に見ている人が書く、市場や業界の全体像と今後のトレンドの解説だ。海外の見聞録やイベントレポートも受け付けている。市場動向やデータ、体験に基づく知見を広くシェアすることで、産業界やスタートアップ業界、起業家、投資家、ビジネスパーソンなどの日々のビジネスやサービス開発に利するものを掲載できればと思う。

エッセイよりも分析記事が良いのだけど、読者に気付きを与えるものなら何でも歓迎だ。自分の体験に基づく問題提起や、吐露せずにいられない公憤をぶちまけたいというのでもいい。

掲載する執筆者にとってのメリットは、氏名や所属組織名、Twitterアカウント、サービス名とリンクを露出してTechCrunch Japanの読者に広められること(ネット上で使い続けているペンネームがあれば、それでもOK)。新しいビジネス領域であれば市場自体の認知ということもあるかもしれない。寄稿については原稿料はお支払いしていない。定期的に執筆するのであればライター契約をお願いすることになるので、これは別途ライター募集記事をご覧いただきたい。

原則として単発記事が寄稿の対象で、連載は受け付けていない。扱うテーマも「この辺のことを書きたい」ではなく、「モバイル決済の業界見取り図を作ったのでシェアしたい」「深センのIoT事情について現地視察のレポートを書きたい」といった具体的な形で提案していただいたほうが掲載できる可能性が高い。原稿をもらった後に、内容によっては不採用とさせていただく場合もあるし、たぶんぼくらは他媒体に比べて「ノー」という率が高いと思う。

自社や自社サービスの宣伝は、全体のバランスを取った上でお願いしたい。場合によっては、こちらで宣伝臭の強い部分を削除することもあるし、そこはバランスを取ってほしい。まあ分かりますよね?

これまでの寄稿記事の例を少し掲載しておこう。こういうのじゃなきゃダメってわけでもないけど。

POSデータをめぐる日本の決済業界とアドテク業界の攻防
日本人は世界一アプリにお金を払う人種? 1,000万ダウンロード分析して気付いた日本と海外の違い
日本の数年先を行く、米FinTech業界の次のトレンドは?
米西海岸と急接近、中国深圳や香港、台湾に根付くハードウェアスタートアップの今
シリコンバレーや東京にできない「地方スタートアップ」の戦い方とは
ユーザー獲得をハックする

ついでに書いておくと、TechCrunch Japanへのタレコミ、プレスリリース送付、取材依頼などは、引き続き tips@techcrunch.jp まで送ってもらえればと思う。本家TechCrunchへの掲載でグローバルにプロダクトをローンチしたいという相談は、 ken@techcrunch.com で、明示的にぼくに送ってもらえれば。


【告知】TechCrunch Japanではライターとアルバイトを募集しています

こんにちは! TechCrunch Japan編集長の西村賢です。いま、TechCrunch Japanではライターと寄稿原稿、それからアルバイト1名を募集しているので、この3つについてお知らせしたい。

まずは、ライター。

本家TechCrunchの英語記事を見たことのある人なら日々ものすごい勢いでブログ記事が公開されているのをご存じかもしれない。これはTechCrunchだけじゃなくて、The Vergeとか、Engadget、The Next Web、Pando Daily、VentureBeatといったスタートアップやガジェットに強いテック系ブログメディアでも同じことだけど、ライター(記者・編集者)の人材流動性が高く、どんどん新しいライターがTechCrunchに入ってきているから可能なことだったりする。TechCrunchのライターが何人いるのか正確に把握している人は米国の共同編集長も含めて誰もいないが(アメリカは契約社会なので、契約書を誰かが数えれば分かるけど)、だいたいコアに20人から30人ぐらいいて、ときおり寄稿する人も含めると、その2倍ぐらいの数はいると思う。

英語圏は、それだけカバーすべきネタとニュースがあるということで、ブログメディアはどこもビジネスとしては、そこそこうまくやっているようだ。TechCrunchから2012年に喧嘩別れしたPando Dailyなんかは4700万ドルも資金調達をやって良質なライターを抱え込み、オフラインイベントを積極的にやっていたりする。これもTechCrunchだけに限った話じゃないけれど、イベントや動画といった新しい取り組みによる収益の伸びも好調で、テック業界やスタートアップエコシステムの中で、TechCrunchを始めとするブログメディアは重要な役割を果たしている。

ぼくも中に入ってから分かったことなのだけど、本家TechCrunchには、2、3カ月に1人ぐらいのペースで「新しいヒト」が入ってきている。たいてい若い人で、突然テック・メディア界に彗星のように現れる。キャリアで言ってせいぜい経験5年くらいの人が多い。聞いたことのない媒体や競合媒体で経験を積んだ人がTechCrunchに転籍して来ることも良くあるし、起業家だったという人も多い。だいたい物凄い勢いで書き始めて、数カ月とか1、2年程度でスローダウンするか、レギュラーのライターになるかするヒトが多い。TechCrunchを卒業してベンチャーキャピタルにキャリア替えする人もいる。

そういうのを横目で見ていて、日本でも同様の仕組みが回る可能性があるだろうなと思ったのが、そもそもぼくがTechCrunch Japanの編集長をやってみようと思った理由だった。旧来型の「編集部」じゃなくて、ゆるやかに繋がって広がるブロガー・ネットワークを作る。これがビジネスとして回れば面白そう、ということだ。USのTechCrunch編集部はオンラインにYammer風の場があって、いつも噂話や他誌の記事について論評(といってもヒトコトだけだけど)をやっている。共同編集長のAlexiaに言わせると、こういう場(チーム)があるからオペレーション面でもメンタル面でもTechCrunchをやっていけるという。このいわばオンライン編集部に加わって以来、ぼくらも日本でも同様のものが作れたらなと思っている。今のところ過去1年で、岩本有平増田覚の2人がTechCrunch Japanの記者としてジョインしてくれたけど、まだ全然足りていない。

ぼくらがTechCrunch Japanで、どんな仲間を探しているか、箇条書きにしてみよう。

・テクノロジートレンドやスタートアップ動向を追うのが好き
・ビジネス全般に関心がある
・書くのが好きで、毎日1万文字書いても飽きない
・人に話を聞くのが好き
・英語でインタビューができる
・文章だけじゃなく写真や動画を作るのも好き
・すでに商業媒体で書いているけど取材対象や市場が退屈でしょうがない
・起業したい、あるいは起業したことがある
・投資業務に携わっていた
・聴衆やカメラに向かって話すのが楽しい(=イベントや動画もやってみたい)
・ライターが自分の意見の全く書かない「客観報道」なんて虚構だし怠慢だと思う

いろいろ書いたけど、大切なのは最初の3つ。働き方は応相談。フルタイムでなくて週に3日間だけやりたいとか、月間10本ぐらい書きたいとか、そういうのもあり。興味のある人は是非 ken@techcrunch.com にメールしてほしい。メールのタイトルは「ライター応募:」の書き出しで、お願いしたい。履歴書やLinkedInのリンクをつけてもらってもいいけど、過去に書いた記事やブログへのリンクを含めてもらえると分かりやすい。

もう1つ。英語が第一言語で日本語は初級・中級という東京在住のライターも募集している。日本のスタートアップ動向について英語で書ける人だ。国籍は問わない。これは時々ある話なんだけど、企業の広報業務をしている人はNG。PR業とメディア業が両立すると思っているとしたら、ぼくらとは話が合わないと思う。

続いて、アルバイトの話。

アルバイトといっても書ける人には書いてほしいと思っている。その条件は上のリストと同じだ。TechCrunch Japanでは大小のイベントもやっているので、それに付随する業務のサポートというのもある。情報や人が集まるメディアという場にいることで業界全体を俯瞰できるメリットはある。見聞と経験、ネットワークを広げるという意味で、若いときにメディアに身を置くのも悪くない。名刺一枚でどこにでも行けるし、多くの人が会ってくれるのがメディアにいるメリットの1つ。特に海外取材に出た時のTechCrunchのブランド力は強いし、後々のキャリアにとってもプラスに働くことと思う。もう1つ、最近個人ブログも含めて多種多様な「メディア」が出てきているが、編集長のぼくは紙媒体の商業メディアを10年、ネット媒体を10年やってきた人間だし、いまのスタッフはみんな経験豊富なので、編集や取材のスキルという点で、独学や個人ブログをやっているだけでは学べないことも学べるのかなと思う。

ただ、若い人に向けて1点だけ追記しておきたい。起業したいという人は、メディアよりも直接事業に携わる場に行くのが良いと思う。大手のネット企業に行けば、規模の割に権限や自由度も高くてやれることも多いだろうし、ド・スタートアップに行けば、事業が立ち上がる中で何が起こるのかを目の当たりにできる可能性が高い。今後テクノロジーの重要性は増すだろうから、どんな事業をやっていくにしてもネットやソフトウェアの得意な人が多い場に身をおくのが有利だと思う。

さて、寄稿についてもご案内したいが、長くなったので、これは別記事で


LINEからタクシーが呼べるようになった、黒船Uberを追い払うか

日本上陸時に「黒船」とも言われたUberに強力な対抗馬が現れた。LINEとタクシー大手の日本交通が提携し、1月6日に東京限定でタクシー配車サービス「LINE TAXI」を開始した。サービスの仕組みはUberとほぼ変わらないが、大きな違いはLINE TAXIが外部アプリをインストールせずに使えること。利用するにはLINE Payでのクレジットカード情報の登録が必須だが、カード情報を登録するのはUberも同じ。わざわざ別のアプリを探す手間が省けるのは、利用のハードルが下がりそうだ。

LINE TAXIは、LINEアプリ上からGPS情報もしくは手入力で乗車位置を指定すればタクシーを呼び出せる。配車までの待ち時間はLINE TAXIの地図上に表示される。支払いはLINEの決済サービス「LINE Pay」で事前に登録したクレジットカードで自動精算されるため、降車時に現金の決済が不要となっている。

東京限定のサービスでは、日本交通が手がける全国タクシー配車アプリを導入している都内3340台のタクシーが配車対象。まずは東京23区内、三鷹市、武蔵野市でスタートし、近日中に全国展開する予定だ。全国展開時には、全国タクシー配車アプリを採用する全国約2万3000台のタクシーを呼び出せるようになる。

日本交通の全国タクシー配車アプリは2011年12月に公開され、2014年12月時点のダウンロード数は150万件。アプリ経由の配車台数は200万台、売り上げは50億円を突破している。日本交通は、LINE TAXIを通じて自社および提携先が保有するタクシーの利用拡大につながるのがメリットと言えそうだ。LINEは、日本交通からLINE Payの決済手数料(料率非開示)を徴収する。

世界のタクシー業界で旋風を巻き起こしているUberだが、国内のサービス圏はいまだ都内のみにとどまっている。日本においては、国内5400万ユーザーを抱えるLINEの配車サービス参入が脅威になるかもしれない。