Rocket Labが宇宙飛行ソフトウェア・ミッションシミュレーション企業ASIを45億円超で買収

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は米国時間10月12日、米コロラド州を拠点とする宇宙ソフトウェア企業Advanced Solutions, Inc. (ASI)を4000万ドル(約45億4000万円)で買収したことを発表した。今回の取引にはアーンアウト条項に基づき、CY2021の業績に応じて最高550万ドル(約6億2000万円)の追加支払額が含まれる。ASIの専門分野は、誘導・航法・制御(GNC)ソリューションを含む宇宙船フライトソフトウェア、およびミッションシミュレーションとテストソフトウェアだ。この買収は、Rocket Labが宇宙システム部門を強化し、真の「エンド・ツー・エンド」宇宙企業になるための取り組みを強化するものだ。

Rocket Labは創業以来、打ち上げを主な事業としており、Electron(エレクトロン)軽量物運搬ロケットの製造と飛行に関する独自の専門知識により、新興の商業打ち上げ市場において独自の地位を確立している。また、2020年、Sinclair Interplanetaryを買収し、宇宙船のハードウェアコンポーネントの開発・製造という点で重要な能力を加えた。ASIの20年以上にわたる宇宙ソフトウェア分野での経験は、複数の軌道および惑星間のミッションに利用されており、Rocket Labがミッションの打ち上げだけでなく、計画、テスト、運用などの面でも顧客に提供できるサービスを強化するのに役立つ。

今回の買収条件では、ASIチームはコロラド州に残り、同社の創業者兼CEOであるJohn Cuseo(ジョン・キュセオ)氏が引き続き経営を担当し、既存の顧客との関係も維持される。またこれによりRocket Labは、官民ともに宇宙産業が盛んなコロラド州に拠点を置き、チームを成長させることができる。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

フリーランスのマーケットプレイスFiverrが学習プラットフォームのCreativeLive買収

フリーランスのマーケットプレイスであるFiverr(ファイバー)は、米国時間10月7日朝、シアトルを拠点とするオンライン学習企業のCreativeLive(クリエイティブライブ)を非公開額で買収すると発表した。CreativeLiveは、ユーザーが動画、写真、デザイン、ビジネス、マーケティングなどのコースを受講できる起業家向けの学習プラットフォームだ。

企業とオンデマンドのフリーランサーをつなぐオンラインマーケットであるFiverrは、変化する労働環境の中で新しいスキルを身につけることができるCreativeLiveの力が、Fiverrのプラットフォーム上で買い手と売り手の変革を導く役割を果たすと説明している。

「Fiverrは単なる仕事のプラットフォームではなく、フリーランスのライフスタイル全体をサポートするものであると私たちは信じており、それには専門的な教育やトレーニングも含まれます」と、Fiverrの創業者兼CEOであるMicha Kaufman(ミカ・カウフマン)氏は、声明の中で述べている。「今回のCreativeLiveの買収は、この幅広い戦略の一環です。CreativeLiveが提供するコースは、内容の深さと水準の高さが並外れており、それらを私たちのコミュニティ全体に提供できることを楽しみにしています」。

CreativeLiveの掲げる講師陣には、ピューリッツァー賞、グラミー賞、オスカー賞受賞者、New York Times(ニューヨーク・タイムズ)紙のベストセラー作家、著名な起業家など、多彩な顔ぶれが揃っている。魅力的な学習体験を作り上げたCreativeLiveの専門知識は、Fiverrのプラットフォームに自然に適合すると、Fiverrは述べている。

CreativeLiveは、今後も独立したサービスとして存続し、シアトルにある現在の本社でチームを拡大していく。Fiverrが現在提供しているオンライン学習プラットフォーム「Fiverr Learn(ファイバー・ラーン)」は、買収後にはCreativeLiveに統合され、内容の拡大を図ることになる。

「私たちの未来は、創造や革新を成し遂げ、速いペースで仕事をする環境に適応できる人や会社にとって、有利なものになります」と、CreativeLiveの創業者兼CEOであるChase Jarvis(チェイス・ジャーヴィス)氏は、声明の中で述べている。「私たちはFiverrファミリーの一員となり、私たちのコミュニティやFiverrコミュニティ、そして現代の労働人口のために、経済的機会を高めることができる魅力的なコースを増やしていけることを、大変うれしく思います」。

CreativeLiveは「未来における創造性、学習、仕事の交差点に座る」ことを目指し、クリエイティブプロフェッショナルのためのオンラインコースに存在するギャップを埋めるために、2010年に設立された。以来、2000以上のクラスを提供し、1000万人以上のユーザーを獲得している。

同じ2010年に設立されたFiverrは、直近の会計年度において、160カ国以上にわたる400万人の顧客が、同社のプラットフォームに登録しているフリーランサーからサービスを購入したと述べている。同社は2019年にニューヨーク証券取引所へ上場を申請した

Fiverrは2021年2月、従来のプロジェクトごとに支払うやり方を拡大し、3カ月または6カ月のサブスクリプションで購入する方法を導入した。この機能により、Fiverrの売り手であるフリーランサーは、毎月一定の業務を提供することができるようになった。これは買い手(発注主)も売り手(フリーランサー)も、いつでもキャンセルすることが可能で、その場合は残りの月額料金の支払いは発生しない。

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画像クレジット:Fiverr

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Instacartが事前注文とケータリングソフトウェアのFoodStormを買収

オンデマンド食料品配達プラットフォームのInstacart(インスタカート)は米国時間10月7日、食料品小売業者向けにエンド・ツー・エンドの事前注文とケータリングを提供するSaaS型オーダー・マネジメント・システム(OMS)のFoodStorm(フードストーム)を買収すると発表した。両社は取引条件を明らかにしていないが、買収の一環として、InstacartはFoodStormの技術を自社の一連の企業向け食料品eコマースソリューションに統合する。

FoodStormは、マルチチャネル注文、注文管理、決済、フルフィルメントをカバーするSaaSを開発した。FoodStormの技術は、販売時点情報管理システム(POS)を含む複数のサードパーティのシステムも統合する。また、食料品店がフィードバックを集めたり、プロモーション機能を活用するためのCRM機能も提供している。

「我々の目標は、小売店のパートナーが売上を伸ばし、小売店の顧客の毎日の食事がそうした小売店からのものになるようにすることです。そのため、FoodStormの優秀なチームをInstacartに迎え、FoodStormのエンド・ツー・エンドの事前注文およびケータリングのプラットフォームをInstacartの主要な企業向けプロダクトに統合できることをうれしく思います」と、Instacartの最高技術責任者であるMark Schaaf(マーク・シャーフ)氏は声明で述べた。

14年前に設立されたFoodStormは、Bi-Rite Market、Mollie Stone’s Markets、Uncle Giuseppe’s、Roche Brothersなど、Instacartの既存の小売パートナー数社と提携している。Instacartは、FoodStormの技術をより多くの小売店に提供していく予定だ。

この新しい企業向けソリューションによって、小売業者がより多くの在庫をオンライン化し、顧客のニーズを満たしながらeコマース機能を強化することができるとInstacartは話す。また、顧客にとっても、この技術によってレストランのデリバリーに代わる、より手頃な価格のサービスが可能になるとも指摘する。

「食料品は非常に複雑な小売カテゴリーであり、FoodStormやInstacartのような法人レベルのソリューションは、私たちが食卓を支えるために頼っているこの業界の長期的な成功に不可欠です。Instacartのチームに加わり、小売業者が事業や顧客の絶え間ないニーズに応えるための新しい方法を創造することを楽しみにしています」とFoodStormのCEO、Rob Hill(ロブ・ヒル)氏は声明で述べた。

Instacartは、事前注文技術のソリューションが、食料品小売業者に大きな成長機会を提供すると話す。例えば、調理済み食品やケータリング商品(温・冷のおかず、ケーキ、寿司など)を食料品店で購入するInstacartの顧客は、購入しない顧客に比べて購入量が多く、買い物の頻度も高くなる。また、小売店にとっても、青果やパッケージ商品などの従来の食料品よりも、事前注文した商品や調理済み食品の方が一般的に利益率が高いと説明する。

Instacartは2021年初め、Andreessen Horowitz、Sequoia Capital、D1 Capital Partnersなどの既存投資家から、2億6500万ドル(約297億円)を調達した。この資金調達により、同社の評価額は390億ドル(約4兆3760億円)に達した。また、Instacartは最近、米国とカナダの一部の市場で、より迅速な配達サービス「Priority Delivery」を開始した。これは、少量の買い物やかなり急ぎのニーズのために、これまでは店に駆け込んでいた顧客を引き付けることを目的としている。

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画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトがOKRソフトウェア企業のAllyを買収

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間10月7日、OKR(objectives and key results「目標と主要な成果」の頭文字を取ったもので、経営者が個人や会社の進捗状況を測定する一般的な方法)ソフトウェアサービス企業のAlly.io(アライ・アイオー)を買収したことを発表した。両社は買収額を明らかにしていない。

マイクロソフトはAllyを、従業員エクスペリエンス・プラットフォームの「Microsoft Viva(マイクロソフト・ビバ)」ファミリーに組み込むことを計画している。同社によれば、VivaとAlly買収の背景には、会社の目標や目的を従業員に伝えるためのより透明性の高い方法を提供するという考えがあるという。

「従業員の仕事を会社の戦略的ミッションやコア・プライオリティと一致させることは、すべての組織にとって最重要課題です。そのためには、リーダーは企業の大きな選択に関する透明性を伝達するツールに投資し、組織のあるゆるレベルで意欲的な目標を達成して結果を報告するための方法を構築する必要があります」と、マイクロソフトのエクスペリエンス&デバイス担当チーフ・オペレーティング・オフィサー兼コーポレート・バイス・プレジデントであるKirk Koenigsbauer(カーク・ケーニグスバウアー)氏は、今回の買収を発表したブログ記事の中で書いている。

一方、Allyの方では、CEOで創業者のVetri Vellore(ヴェトリ・ヴェールール)氏は、これによって自社が単独で行うよりも、マイクロソフトの一員として製品をより早く成長させることができると語っている。

「Ally.ioは、Microsoft Vivaの一部として、リーダー、チーム、個人に、日々の仕事を会社の最も重要な目標に合わせて集中させる能力を、引き続き提供していきます。私たちは、Teams(チームズ)、Outlook(アウトルック)、Slack(スラック)、そしてあなたが毎日使っているそれ以外のシステムも含めて、チームが仕事をしているどんな環境にも、目標と目的をもたらすお手伝いをします」と、ヴェールール氏はAllyのウェブサイトに掲載されたブログ記事に書いている。

自分の仕事の目的を理解して、それが会社のより広範囲な目標とどのように合致するのかを理解することは、多くの人が自宅で仕事をするようになり、経営陣と直接対面する会議の機会がなくなった時代において、ますます重要になっている。これらの目標や可能性を明確にし、リモートで仕事をする社員が使うツールに組み込むことで、全員が同じ方向を向いて仕事を順調に進めていけるようになる。

マイクロソフトは今回の買収額を公表していないが、PitchBook(ピッチブック)のデータによると、Allyが最後に資金調達した時のポストマネー評価額は3億4500万ドル(約386億円)だった。この金額は、同社が2021年2月に調達した5000万ドル(約56億円)を含め、合計7600万ドル(約85億円)を調達した際に算出されたものだ。

Allyがマイクロソフトに売却されたことによって、OKRに特化したソフトウェア市場の統合が始まる可能性がある。この市場では、WorkBoard(ワークボード)、Koan(コーン)、Gtmhub(Gtmハブ)、Perdoo(パードゥー)、WeekDone(ウィークダン)など、多くの企業が首位を競っている。

これらのスタートアップ企業群は、ベンチャーキャピタルを惹き付けて、初期段階の収益を伸ばすという点において、驚異的な成果を上げてきた。そして今、Allyがエグジットを成し遂げたことで、これらの企業は、ベンチャー資金による成長アプローチをそのまま維持するか、それともメガテック企業へのエグジットの可能性をともなうデュアルトラックのプライベートラウンドにシフトするかを、選択しなければならなくなるだろう。

マイクロソフトが同じワシントン州に本社を置くAllyを買収したことを切っ掛けに、他の大手プラットフォーム企業が同じようなツールを買収して提供するようになるかもしれない。Salesforce(セールスフォース)、ServiceNow(サービスナウ)、SAPなど、買収に積極的な他の企業が同様の動きを検討し、これらの資産を市場から引き抜こうとするのではないかと想像することは難しくない。

しかし今のところ、市場を外れたのはAllyだけであり、この動きの結果から、市場の他の企業がどのように発展していくか、見守る必要がありそうだ。

画像クレジット:Chen Yuyu/VCG / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm, Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

データ+AI企業Databricksがローコード・ノーコード機能拡張のため8080 Labsを買収

Databricks(データブリックス)は米国時間10月6日、ドイツのスタートアップである8080 Labsを買収したと発表した。8080 Labsは、Pythonベースのデータ分析・操作ツールPandasの人気GUIである「bamboolib」を開発している。bamboolibは、データサイエンティストがコードを書くことなく、迅速かつ容易にデータを探索し、変換することを可能にする。8080 Labsは、bamboolibの無料コミュニティ版と、企業向けの機能を追加した有料プロ版を提供していた。Databricksは、これらのUIにフォーカスした機能を自社のLakehouse Platformに統合し、ローコード・ノーコード機能を拡張していく予定だ。

今回の買収は、8月に16億ドル(約1783億円)のシリーズH資金調達ラウンドを終了して以来、Databricksにとって初めての買収となる。当時、DatabricksのAli Ghodsi(アリ・ゴディシ)CEOは、この分野で資本力のある競合他社に対抗するために資金調達を行ったと話していた。競争の激しい分野で急成長している企業にありがちなことだが、そのためには、エンジニアリング人材とソフトウェア機能の両方を手に入れるための買収が必要になる。

ゴディシ氏は本日の発表でこう述べている。「2020年のRedashの買収と合わせて、ローコード・ノーコードのソリューションを好むより多くのユーザーに当社のユーザーベースを拡大していきます。Databricksにシンプルな機能を導入することは、専門知識の有無にかかわらず、より多くの人が大規模なデータセットを簡単に分析・探索できるようにするための重要なステップです」。

Databricksにとって今回の買収は、専門知識を持たないシチズンデータサイエンティストに同社のプラットフォームを提供することに新たな重点を置くことを意味する。「データとAIがあらゆる規模の企業にとって戦略的な優先事項になるにつれ、組織内の誰もがデータに基づいて質問したり行動を起こしたりする権限を持つことが重要になっています」と同社は声明の中で述べている。Databricksは、同社の自動機械学習ツールと組み合わせることで、より幅広いユーザーがデータから価値を引き出すことができるようになると主張している。また、プロの開発者にとっても、同社のUIツールでデータ変換を構築し、よりカスタムな実装が必要になったときにPythonコードをエクスポートすることで、負担が軽減されるとしている。

8080 Labsの共同設立者であるTobias Krabel(トビアス・クラベル)氏はこう述べた。「我々は、複雑なデータタスクをシンプルにし、データサイエンスと機械学習のパワーをあらゆるスキルセットのデータチームが利用できるようにするために8080 Labsを設立しました。オープンソースをルーツとし、レイクハウスというカテゴリーでデータ環境を再構築するという素晴らしいビジョンを持つDatabricksには無限の可能性があると考えており、チームの一員としてその旅に加われることをこの上なく嬉しく思っています」。

8080 Labsは4人のビジネスエンジェルからエンジェル資金を調達していたが、詳細は公表していない。

画像クレジット:Artur Debat / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

LiDAR開発会社OusterがSense Photonicsを買収、狙いは自動車業界

2021年3月にSPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて上場したLiDAR企業のOuster(オースター)は、ソリッドステート型LiDARのスタートアップ企業であるSense Photonics(センス・フォトニクス)を、月曜日の市場終了時に約6800万ドル(約75億7000万円)と評価された全株式を取得して買収すると発表した。

この買収が完了したら、Ousterは新たな事業部門としてOuster Automotive(オースター・オートモーティブ)を起ち上げ、現在のSense社のCEOであるShauna McIntyre(シャウナ・マッキンタイア)氏が、同部門を率いることになるという。この新事業部門では、Senseの最長測定距離200mのソリッドステート型LiDARを、Ousterが自動運転車用として計画しているマルチセンサーLiDARスイートに統合する。サンフランシスコを拠点とするSenseが開発したLiDARの特長は、以前TechCrunchの記事でも説明しているように、視野角の広さである。

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ニュースリリースによると、Ouster Automotiveは5社の自動車メーカーとの交渉進展を目指すというが、そのような可能性のある提携についての詳細は明らかにされなかった。もしこれらが確実なものになれば、2025年か2026年に生産が始まる見込みだという。

LiDARは、ほとんどの自動運転システムで重要な役目を担うセンサーだ。LiDARとは「light detection and ranging(光による検知と測距)」の略で、レーザーを使って離れた位置にある物体までの距離を測定し、周囲の3Dマップを作成する。Waymo(ウェイモ)やArgo AI(アルゴAI)などの企業が開発している自動運転システムにとって、LiDARはレーダー、カメラ、ソフトウェアとともに欠かせないものとなっている。

2021年2月、OusterのCEOであるAngus Pacala(アンガス・パカラ)氏は、ポッドキャスト「Shift(シフト)」で、LiDAR業界の将来は統合が進むだろうと述べていた。「LiDAR企業は今後5年以内に3~5社になるだろう」と同氏は語ったが、今回の新たな買収は、Ousterが同氏の予測を現実のものとする動きの先頭に立つことを示している。

Ousterは2021年前半に19億ドル(約2120億円)規模の取引で白地小切手会社との合併を完了し、競合のLiDAR企業であるLuminar(ルミナー)、Innoviz(イノヴィズ)、Velodyne(ヴェロダイン)と同様に、SPACルートで株式市場に上場を果たした。Ousterの株価は、2月に15.39ドル(約1715円)の年初来高値を記録したが、現在は7.41ドル(約826円)で取引されている。

Ousterの広報担当者にTechCrunchが確認したところによると、同社はSenseで働く従業員80人の大半がマッキンタイア氏とともにOusterに加わることを期待しているとのこと。

広報担当者は、次のように続けた。「Ousterの視点は常に、自動車製造会社が求めているのは、大量生産が可能で、数百ドル(数万円)という低コストで車体に組み込むことができ、長距離から短距離までカバーする、ソリッドステート型LiDARのマルチセンサースイートであるということを見据えています。それこそが、当社が提供しようと考えているものです」。

画像クレジット:Ouster

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Qualcommがマグナを退け、先進運転支援技術を手がけるヴィオニアを約5000億円で買収

Qualcomm(クアルコム)が、スウェーデンの自動車技術会社Veoneer(ヴィオニア)を買収することに決まった。より高い入札額を提示して、Magna International(マグナ・インターナショナル)を退けたことになる。

クアルコムと投資グループのSSW Partners(SSWパートナーズ)は、米国時間10月4日、ヴィオニアを1株あたり37ドル(約4100円)、総額45億ドル(約5000億円)で買収すると発表した。買収が完了したら、SSWはヴィオニアのArriver(アライバー)技術(センサーとソフトウェアを含む先進運転支援システムスタック)をクアルコムに売却し、他のティア1サプライヤー事業は維持すると述べている。

ヴィオニアは以前、マグナ社へ自社を売却することに合意していた。社がマグナより18%すなわち8億ドル(約890億円)高い金額で入札を行うまで、この取引は前進するかのように見えた。しかし、クアルコムの時価総額1648億ドル(約18兆3000億円)に対し、253億ドル(約2兆8000億円)のマグナは応札しなかった。

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これはクアルコムにとって、2021年最初の大型買収というわけではない。同社は半導体や通信機器の設計・製造で知られているが、現在はその事業領域を拡大しつつある。1月には、高性能コンピューティングのスタートアップ企業NUVIA(ヌビア)を14億ドル(1560億円)で買収することで合意し、通信以外の市場を模索していた。今回の買収は、自動車メーカーが当たり前のように新車に搭載するようになっているADAS(先進運転支援)技術にとって、特に好材料のニュースと言えるだろう。

クアルコムがヴィオニアの買収提案を行ったのは、マグナの提案から約1カ月後のことだったが、まったくの驚きというわけではなかった。両社は2021年の初めに、運転支援システム用のソフトウェアとチップを開発するための提携を結んでいたからだ。

ヴィオニアは買収合意を解消することになったマグナに対し、1億1000万ドル(約122億円)の違約金を支払う。この買収の完了は2022年になる見込みだ。

関連記事:創業2年アップルとグーグルで活躍したチップ開発者のNUVIAをQualcommが約1460億円で買収

画像クレジット:Veoneer

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NFTスタートアップのDapper Labsが有名バーチャルインフルエンサーを生み出したBrudを買収

「NBA Top Shot(NBAトップショット)」を開発したNFT(非代替性トークン)スタートアップ企業で、最近75億ドル(約8350億円)以上の評価を受けたDapper Labs(ダッパー・ラブズ)は、米国時間10月4日、興味深い買収を行った。暗号資産関連メディアのDecrypt(デクリプト)によると、Dapper Labsはバーチャルインフルエンサーを手がけるスタートアップ企業Brud(ブラッド)を買収し、32人の従業員全員を雇用するという。

Brudは、デジタルレンダリングされたソーシャルメディアのインフルエンサーキャラクターでよく知られており、特にLil Miquela(リル・ミケーラ)というキャラクターが有名だ。同社が2018年に投資家の注目を集めた際には、追従する他のプレイヤーをいくつか出現させたものの、バーチャルインフルエンサーという分野が爆発的な関心を集めることはなく、長年にわたり非常にニッチな領域に留まっている。Brudが作り出したキャラクターたちは、 Instagram(インスタグラム)上で架空の生活を送ってフォロワーを増やし、同社の評価額は1億2500万ドル(約139億4000万円)に達している。Dapperは買収額を明らかにしていない。

rev rはエンジニアを募集中! DMください

Twitter友達のみなさん、私は今日、BrudがDapper Labsに買収されたと発表できることにとても興奮しています。

私たちは、Flow Blockchain上でDAOによる分散化され、集団で所有するメディアとソーシャルの未来を一緒に作っていきます。

ここで最も適切な質問は、DapperのようなNFTスタートアップが、リル・ミケーラ(現在は単にミケーラ)に何を求めているのかということだ。

まあひと言でいえば「それほど多くは求めていない」ということになるだろうか。Brudの創業者であるTrevor McFedries(トレヴァー・マクフェドリーズ)氏は、暗号資産の世界に深く入り込んでおり、自分が設立した会社の焦点を、DAO(自律分散型組織)による集団的意思決定に移しつつある。Dapperの中心的な関心はそこにあるようだ。マクフェドリーズ氏はすでに、最も人気の高いDAOの1つである「Friends With Benefits(フレンズ・ウィズ・ベネフィッツ)」を共同設立している。DAOは、ユーザーがチームを組んで集団で投資判断を行うために役立つ。暗号資産界の開発者たちが、この分野で大胆なプロジェクトを作り始めたことから、この1年ほどで人気が高まっている。

マクフェドリース氏は、Miquelaの開発は継続するとしながらも、今後はDapper Labs内に新設されるDapper Collectives(ダッパー・コレクティブズ)という部門を率いて、同社の「Flow」(フロー)」ブロックチェーンを活用しながら、DAOをより使いやすく、新世代の暗号ウェブユーザーが利用しやすいものにすることに注力していくという。

画像クレジット:Brud

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

IDアクセス管理One Identityがライバル、エンドユーザー向けセキュアサインオンのOneLogin買収

サイバーセキュリティの世界では、IDとアクセスの管理の分野で企業を支援するサービスを中心に、さらなる統合が進んでいる。システムへの「ゼロトラスト」アクセスを管理するツールや、ログ管理その他のガバナンスサービスを企業に提供するOne Identity(ワンアイデンティティ)は現地時間10月4日、OktaやPingなどのエンドユーザー向けセキュアサインオンサービス分野の競合企業であるOneLogin(ワンログイン)を買収したと発表した。

10月1日に正式に完了したこの買収の諸条件は非公表だが、TechCrunchは引き続き情報を探っている。

背景を少し説明する。One Identityは現在、プライベートエクイティファンドのFrancisco Partnersが株式を保有するQuest Softwareの一部となっている。それ以前は、Dell(デル)の一部だった。Dellの合理化の際、Francisco PartnersはElliottと提携し、DellからQuestとその関連資産を2016年に買収した。当時の取引額は約20億ドル(約2200億円)だったと言われている。One Identityは約7500社の法人顧客を抱え、約2億5000万件のIDを管理しているという。

一方、OneLoginは2019年に最後の資金調達を公表した。PitchBookのデータによると、1億ドル(約110億円)のシリーズDで3億3000万ドル(約363億円)と評価された(PitchBookデータには、それに続く資金調達が掲載されているが、日付も金額も明記されていないことに留意されたい)。OneLoginは、Airbus、Stitch Fix、AAA、Pandoraなど約5500社の顧客を抱えている。QuestのCEOであるPatrick Nichols(パトリック・ニコルズ)氏はTechCrunchのインタビューで、両社合わせて約2億9000万件のIDを管理することになると語った。この数字には「人」だけでなくシステム上のM2Mのノードも含まれるという。

今回のM&Aは、セキュリティ業界が大きく変化するなかで行われた。Dellが資産を売却し、OneLoginが資金を調達してから数年が経過したが、クラウドサービスへの移行が進み、人々や企業がビジネスをデジタルで行うようになり、サイバーセキュリティの脅威は増大する一方だ(OneLoginは、IBMのデータを引用して、情報漏えいのコストが平均で386万ドル[約4億2830万円]に上ると推定しているが、これには企業の評判やユーザーの信頼に関する巨額のコストは含まれていない)。

こうした大きな流れの中で、ID管理は、それは得てして誤った管理だが、特に脆弱な分野となっている。悪意のあるハッカーは、高度な技術とヒューマンエラーの両方を利用し、さまざまな手法でシステムに侵入する。

今日の市場に存在するさまざまな脅威が向かう先を検討すると「そのうちの70%は、不十分なID管理が直接の原因となっています」とVerizon(ベライゾン)の調査結果を引用しながらニコルズ氏は話した。エンドポイントの数が急速に増加しているために、脅威は深刻になっている。ネットワークに接続する人が増えたのではなく、接続されるデバイスが増えているのだ。システム上のエンドポイントの半分は、特定の個人ではなくデバイスであることが一般的で「いったん侵入されてしまうと、パスワードを盗むのと同じことになってしまいます」。

同時に、長年にわたってサイバーセキュリティ戦略のさまざまな側面にポイントソリューションを使用してきた企業は、複数の機能を扱えるプラットフォームや大規模なツールセットを求めるようになっている。システムの活動をより統合的に把握し、複数の異なるサイバーセキュリティツールが意図せず競合するリスクを低減するためだ。

これは業界内で統合が進むことを意味する。One Identityの場合、エンドユーザー向けのツールを追加することで、社内のネットワーク管理を支援できるだけでなく、より充実したサービスを顧客に提供できると考えているようだ。同様に、OneLoginの顧客は、サイバー戦略を単一のプラットフォームに集約することに興味を持つかもしれないと考えている。

「企業は現在、サイバーセキュリティのプラットフォームプレイヤーが統合に向かうことに二重のメリットがあると考えています」とニコルズ氏はいう。1つは「効率性の向上」だが、もう1つは「法規制」だと指摘する。企業のサイバーセキュリティ課題への取り組み状況について規制当局が監視を強めるなか、システムのレジリエンスを高めることが求められている。

「One Identityに加わることで、当社の成長をさらに加速させ、両社の顧客にさらなる価値を提供することができます」とOneLoginのCEOであるBrad Brooks(ブラッド・ブルックス)氏は声明で述べた。「CIAM(顧客IDとアクセス管理)と企業で働く人の両方に対応したOneLoginの強固な統一プラットフォームと、One IdentityのPAM(特権アクセス管理)ソリューションを含む一連の製品を組み合わせることで、新規・既存の顧客のいずれも、世界規模で、この市場における唯一の統合IDセキュリティプラットフォームを利用できるようになります」。

この分野でM&Aの動きが今後も続くかどうかに注目したい。Oktaはこれまで非常に多くの買収を実行してきたが、市場には、IDに関する課題のさまざまな側面をカバーする独立系の企業が数多く存在している(Jumioはその一例だ)。

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統合後の両社は、PAM、IGA(IDガバナンスと管理)、アクティブディレクトリ管理およびセキュリティ、そして今回のIAM(IDとアクセス管理)など、数多くのサービスをカバーする予定だ。

「人と機械のID増加、クラウド化の進展、リモートワークの増加にともない、IDは新たな先端領域となりつつあります」とOne Identityの社長兼ゼネラルマネージャーであるBhagwat Swaroop(バグワット・スワループ)氏はいう。「OneLoginを当社のポートフォリオに加え、当社のクラウドファーストの統合IDセキュリティプラットフォームに組み込むことで、顧客がすべてのIDを一括管理し、重要な資産へのアクセスを許可する前にすべてを検証し、疑わしいログインをリアルタイムに可視化できるようになります。IDを核とすることで、顧客は柔軟なゼロトラスト戦略を導入し、全体的なサイバーセキュリティの態勢を劇的に改善することができます」と述べた。

画像クレジット:DKosig / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

「ハリウッドスタイル」の映像でサイバーセキュリティトレーニングを提供するArctic WolfがHabitu8を買収

「セキュリティオペレーションのコンシェルジュサービス」を提供するサイバーセキュリティ管理企業のArctic Wolf Networks(アークティック・ウルフ・ネットワーク)は、セキュリティに関するトレーニングとアウェアネス(意識向上)のためのコンテンツプラットフォームであるHabitu8(ハビッツエイト)を買収した。

Arctic WolfがシリーズF投資ラウンドで1億5000万ドル(約167億円)の資金を確保してから、わずか2カ月後に行われたこの買収の条件は明らかにされていないものの、この件に詳しい人物がTechCrunchに語ったところによると、買収は現金と株式の組み合わせで支払われたとのこと。Arctic Wolfは、この買収によって60から70の顧客を獲得するだろうと、この関係者は語っている。

Habitu8は、Sony Pictures Entertainment(ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント)、Walt Disney(ウォルト・ディズニー)、Activision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)でセキュリティトレーニングの取り組みを主導した経験を持つJason Hoenich(ジェイソン・ホーニッヒ)氏らが、2017年に共同で設立した企業だ。これまでに3回の資金調達を完了しているこのスタートアップは「ハリウッドスタイル」で制作された実写ドラマ形式の映像を使ってサイバーセキュリティ意識を高めるアプローチを取っている。この方法はセキュリティにおける人間的要素を強化するのに効果的であることが実証されていると、同社では主張している。

今回の買収により、Habitu8の学習プラットフォームと、Arctic Wolfが提供する「Managed Security Awareness(マネージド・セキュリティ・アウェアネス)」プログラム(同社によると、2021年5月のリリース以来「数百」の顧客に提供されているという)を組み合わせることで、業界初となるコンシェルジュ・サービスとしてのセキュリティアウェアネス / トレーニングのプログラムが誕生する。

「サイバーリスクをなくすためには、トレーニングとアウェアネスのプログラムが重要であることを、人々は知っています」と、Arctic Wolfの社長兼CEOであるNick Schneider(ニック・シュナイダー)氏は語っている。「しかし残念ながら、ほとんどのセキュリティ・プログラムで提供されているコンテンツは、低品質で退屈なものが多く、結局のところ、Netflix(ネットフリックス)のようなオンデマンドで高品質な体験を求める現代のユーザーのニーズに、効果的に応えることはできません」。

「Arctic WolfのプラットフォームにHabitu8が加わることで、現代的で高品質なセキュリティアウェアネス / トレーニングのプログラムをマネージドサービスとして提供し、それを当社の専門家によるコンシェルジュ指導と組み合わせることで、顧客のセキュリティ・オペレーション全体を大幅に強化することができます」。

ホーニッヒ氏はサービスデリバリー担当副社長としてArctic Wolfチームに参加し、セキュリティアウェアネスの管理と提供を主導することになる。

「データによると、人間がトレーニングのコンセプトを保持し、共感するためには、継続的で魅力的で記憶に残るコンテンツが必要だと言われています」と、ホーニッヒ氏はいう。「Arctic Wolf Managed Security AwarenessとArctic Wolfのプラットフォームに、私たちのハリウッドスタイルのコンテンツを組み合わせれば、あらゆる規模の顧客に向いた、市場で最も効果的で求められるソリューションになると、私は確信しています」。

Arctic WolfによるHabitu8の買収は、同社のロードマップに計画されている数多くの買収で、最初のものになる可能性が高い。同社は7月にTechCrunchの取材に対し、今後の12カ月間で「5~10件の買収」を行う予定であると述べていた。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイルゲーム会社Voodooがテーブルトップゲームやカードゲーム専門のBeach Bumを買収

フランスのスマートフォン向けゲーム会社であるVoodoo(ヴードゥー)が、カジュアルなモバイルゲーム市場における重要な買収を行った。同社は、イスラエルに拠点を置くゲームスタジオで、テーブルトップゲームやカードゲームを専門とするBeach Bum(ビーチ・バム)を買収すると発表した。

この買収では、Voodooは現金と株式の両方を提供し、リテンションボーナスも支払われるため、取引額について明確な数字を得ることは難しい。ある関係者によると、Voodooは総額で数億ドル(数百億円)を支払う可能性があるとのこと。Beach Bumが過去12カ月に7000万ドル(約77億7000万円)の収益を上げていることを考えれば、この取引の規模を察することはできるだろう。

Voodooは「Helix Jump」「Crowd City」「Hole.io」「Paper.io 2」などの、いわゆるハイパーカジュアルゲームでよく知られている。同社はゲーム開発会社であると同時に、パブリッシャーでもあり、他のゲームスタジオと提携して、配信やユーザー1人当たりの平均収益などを最適化する技術スタックを構築している。

これまでにVoodooは、Tencent(テンセント)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)から資金を調達している。最近では、Groupe Bruxelles Lambert(グループ・ブリュッセル・ランバート)が2億6600万ユーロ(約343億円)をVoodooに出資した。これにより同社の評価額は17億ユーロ(約2200億円)となっている。

Voodooは時間を無駄にすることなく、新たな資本を調達した直後から、外部成長の機会として買収対象を検討し始めていた。現時点における同社の従業員数は350名。Beach Bumで働く150名がそれに加わることになる。

米国時間9月30日に発表されたこの買収により、Voodooはそのハイパーカジュアルゲームのカタログに、いくつかのカジュアルゲームを加え、新たなセグメントに拡大することになる。Beach Bumは現在、App Storeで「Backgammon – Lord of the Board」「Spades Royale」「Gin Rummy Stars」という3つのゲームを配信している。

両社では、ビジネスモデルも少々異なる。歴史的に見て、Voodooはゲームの収益化をほとんど広告に頼ってきた。その一方で、Beach Bumは代わりにアプリ内課金に重点を置いている。このように、今回の買収は、Voodooの収益源を多様化させることになる。

「(Beach Bumは)今、さらに2つのゲームを開発中です。Voodooの意向は、Beach Bumをアプリ内課金への入り口にすることです。だからBeach Bumには、できるだけ多くのゲームを出してもらいたいと、彼らは考えているはずです」と、Beach Bum共同設立者の1人であるGigi Levy-Weiss(ジジ・レヴィ・ワイス)氏は筆者に語った。

レヴィ・ワイス氏は、VC会社であるNFXのゼネラルパートナーで、2015年にBeach Bumを共同設立した。同氏は現在、Beach Bumで運営上の役職には就いていないものの、取締役会の会長を務めている。

「イスラエルのゲーム業界は、ここ数年で大きく成長を遂げ、現在までに400社を数えるまでになりました。主に欧州やアジアのバイヤーによって、いくつかのイグジットが起きています。数カ月前には、イスラエルのゲーム会社であるPlaytika(プレイティカ)が110億ドル(約1兆2200億円)の評価額でNASDAQ(NASDAQ)にIPOしました」と、テルアビブを拠点とするシニア投資銀行家のAvihai Michaeli(アヴィハイ・マイケリ)氏は、筆者に話してくれた。

画像クレジット:James Yarema / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ZoomのカスタマーサービスソフトメーカーFive9買収が白紙になったいくつかの理由

ローラーコースターの乗車について話そう。

パンデミックの間に多くの人にとって仕事をする際の主要コミュニケーション手段となったビデオ会議のZoom (ズーム)が、クラウドベースのカスタマーサービスソフトウェアメーカーFive9(ファイブ9)を買収することはもはやない。2021年7月に発表された全額株式交換による取引でZoomは儲かるコンタクトセンターマーケットに参入するはずだったが、いくつかの大きな妨げが9月30日の結論につながった。

まず最初に、ここ数年ほぼ右肩上がりだったZoomの株価はこのところプレッシャーを受けていた。そのため、7月に147億ドル(約1兆6320億円)とFive9を評価したこの取引は、同社にとって現在はかなり少ない額となっている(取引が発表された日のZoom株は約360ドル[約4万円]で取引された。現在は260ドル[約2万9000円]ほどだ)

Zoomが中国に結びついているため、国家安全保障上のリスクを生じさせるかもしれないと懸念して米司法省が主導するパネルが調査していることをZoomが9月20日の週に明らかにしたとき、もちろんそれでは問題は解決しなかった。

創業者のEric Yuan(エリック・ユアン)氏は中国で生まれ、27歳だった1997年に米国に移住し、帰化した米市民だ(数年前にユアン氏はそこに至るまでにおびただしい数のハードルを乗り越えたことをTechCrunchに語った)。

Zoomはまた2020年に、一部のミーティングを中国のサーバーに誤ってルーティングし、そして中国の天安門事件を追悼するために同社のプラットフォームを使っていた活動家のアカウントを停止したことを明らかにした。開発チームの大部分は中国にいる(多くの多国籍企業と同じだ)と以前言っていた同社はその後、中国本土外にいる人に影響を及ぼそうとする中国政府からの要求は認めない、と発表した。

それでも命取りになったのは、議決権行使助言会社Institutional Shareholder Serviceによる、Zoomの成長が減速している懸念があり、買収に反対した方がいいというFive9株主への勧告だった。

勧告は聞き入れられたようだ。Five9は9月30日、合併計画は2社の「相互合意によって中止になった」というニュースリリースを出した。

それとは別にZoomも経緯全体を軽く扱う発表を出した。「Zoom:What’s Next」というタイトルの発表の中で、ユアン氏はFive9について「当社の顧客に統合されたコンタクトセンターを提供する魅力的な手段でした」と語り「とはいえ、当社のプラットフォームの成功の基礎となるものではなく、顧客に魅力的なコンタクトセンターのソリューションを提供する唯一の方法でもありませんでした」と付け加えた。

いずれにせよ、買収取引は明らかに期待されていた。買収が破談になったというニュースが発表されたとき、ZoomとFive9の株価はかろうじて変動しなかった。

画像クレジット:OLIVIER DOULIERY/AFP / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソニーがPS5版「デモンズソウル」を手がけたリメイク&リマスタースタジオBluepoint Gameを買収

ソニーがPS5版「Demon’s Souls(デモンズソウル)」やPS4版「Shadow of the Colossus(ワンダと巨像)」のリメイクで知られる、オースティンを拠点とするスタジオBluepoint Gamesを買収した。この買収の財務的な条件は明らかにされていない。ソニーがBluepointを買収するという噂は、ソニーが6月下旬に「Returnal(リターナル)」の開発元であるHousemarqueを買収した頃からネット上で広まり始めていた。ソニーは、Bluepointが今後も過去の作品のリマスターに注力するのか、それともPlayStation Studiosファミリーの一員となったことで全く新しいIPに取り組むのかについては言及していない。

Bluepoint GamesのMarco Thrush(マルコ・スラッシュ)社長はこう述べている。「PlayStationにはゲーム業界を代表する作品がたくさんあり、当社にとって、名作ゲームを新たなプレイヤーにお届けできることは何よりの喜びです。 PlayStation Studiosの一員になることで、私たちのチームはクオリティーの水準をさらに高め、今まで以上にインパクトのある作品をPlayStationコミュニティーにお届けします」。

本日の発表をもって、ソニーは過去1年間に3つのスタジオを買収した。この数字は、2019年に行ったSpider-Man(スパイダーマン)の開発会社Insomniac Gamesの買収を含めると、2年ほどの間に4社に増える。以前はファーストパーティのラインナップを強化するために外部の開発者を買収することにはあまり積極的でなかった同社にとって、これは大きな変化といえる。しかし、この1年で多くのことが変わった。Microsoft(マイクロソフト)が75億ドル(当時約7900億円)を投じてBethesda(ベセスダ)の親会社ZeniMax Mediaを買収したことで、ファンの要望が多い「Starfield(スターフィールド)」のようなゲームの多くがPlayStationでリリースされなくなった。ソニーは後れをとらないために、Bluepointにいるような人材を必要としている。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Sony

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

Netflixのゲームスタジオ初買収は青春ミステリーADV「Oxenfree」で知られるNight School Studio

Oxenfree」などのストーリー重視のタイトルで知られるインディーゲームスタジオNight School Studioは、米国時間9月28日、Netflix(ネットフリックス)に買収されたことを発表した。これにより同社は、Netflixが買収した最初のゲームスタジオとなった。

Netflixゲーム開発担当副社長のMike Verdu(マイク・ヴェルドゥ)氏は声明の中で、Night Schoolの「卓越した芸術性へのこだわりと確かな実績は、我々がNetflixのゲームの創造性とライブラリをともに構築していく上で、かけがえのないパートナーとなります」と述べている。さらに同氏は、Netflixは、メンバーシップに含まれており広告やアプリ内課金のない「あらゆるゲーマーとあらゆるレベルのプレイに対応した独占ゲーム」を提供していく予定だと述べた。

Night School Studioは、Disney Interactive(ディズニー・インタラクティブ)でシニアゲームデザイナーを務めていたSean Krankel(ショーン・クランケル)氏と、Telltale Gamesでリードライターを務めていたAdam Hines(アダム・ハインズ)氏によって2014年に設立された(Telltale GamesはNetflixのパートナーとして「Minecraft:Storymode(マインクラフト:ストーリーモード)」などのインタラクティブな番組を手がけていたが、閉鎖された)。

クランケル氏は、Night Schoolのサイトに掲載された声明の中でこう述べている。「Netflixは、映画やテレビ、そして今ではゲームメーカーに、優れたエンターテインメントを制作して何百万人もの人々に届けるための前例のないキャンバスを与えてくれます。我々のストーリー性の高いゲームプレイの探求と、多様なストーリーテラーをサポートしてきたNetflixの実績は、とても自然な組み合わせでした」。

クランケル氏はOxenfreeや他のNight Schoolタイトルのファンに対して、同スタジオはOxenfree IIの開発と「新しいゲームの世界を作り出す」ことを継続していく、と言って安心させた。

「Netflixのチームは、我々のスタジオ文化とクリエイティブなビジョンを守るために最大限の配慮をしてくれました」と彼は記している。

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Netflixがポーランド、イタリア、スペインにて会員限定でモバイルゲーム3作品を新たに提供
Netflixが会員向けにモバイルゲームのテストを開始、まずはポーランドで

今回の買収のニュースは、Netflixがポーランド、イタリア、スペインで新たに3つのカジュアルモバイルゲームを提供開始してから1日も経たないうちに発表されたもので「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」シリーズとタイアップした2つのゲームをリリースしてから1カ月後のことだった。

Netflixの第2四半期の株主へのレターでは、同社はゲームモデルを模索している初期段階にあり、ゲームをオリジナル映画やアニメーション、リアリティTV番組と同様に、もう1つのコンテンツカテゴリーとして捉えていると述べている。

モバイルゲームに取り組む前、Netflixは、4年前に「Choose Your Own Adventure(自分の冒険を選び取っていく)」スタイルの子ども向け番組を開始し、インタラクティブなストーリーテリングに初めて挑戦した。その翌年には英国のドラマシリーズ「Black Mirror(ブラック・ミラー)」の「Bandersnatch(バンダースナッチ)」というエピソードで、大人向けのコンテンツにこの双方向形式を取り入れた。それ以降、前述の「マインクラフト:ストーリーモード」や「Emily’s Wonder Lab(エミリーのワンダーラボ)」など、インタラクティブな子ども向け番組をさらに追加している。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

マイクロソフト・ナデラCEOがTikTok買収交渉を「これまでで最も珍妙な出来事だった」と明かす

マイクロソフト・ナデラCEOがTikTok買収交渉を「これまでで最も珍妙な出来事だった」と明かす

Anushree Fadnavis / Reuters

テクノロジー業界のトップらが集う招待制のカンファレンス「Code Conference 2021」で、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが昨年のTikTok買収交渉に関する体験談を回想し「これまでに取り組んだ中で最も珍妙な出来事だった」と語っています。

2020年8月、中国のByteDanceが親会社のTikTokに対して、ドナルド・トランプ前大統領政権はセキュリティと国家安全保障上の懸念があるとして、サービスを閉鎖するか、米国企業へ売却するよう迫っていました。TikTokはいくつかの企業との間で売却交渉を進め、その候補のひとつがマイクロソフトでした。

しかし、最終的に売却先として決定、公表されたのはOracleで、マイクロソフトはそこで手を引く結果に。最終的に、TikTokの売却話はバイデン新大統領がトランプ政権下でのTikTok禁止の大統領令を取り消したことでなくなっています。

一連の出来事に関して、ナデラCEOはCodeカンファレンスの舞台上で「まず覚えておいていただきたいのは、もともとはTikTokが我々のところへ来て買収を持ちかけたのであって、我々がTikTokのところに出向いたわけではないということです」と述べました。TikTokはセキュリティサービスを提供できるクラウドプロバイダーと手を組みたいと考えており、自らマイクロソフトにパートナーになって欲しいと連絡を取ってきたとのこと。

さらにナデラCEOは「トランプ大統領からは当初、TikTokの買収に関しておそらくなんらかの考えがあるように感じられていました。しかしある時期にそれが消えてしまいました」と述べ、「そして、私は交渉から抜けることにしました。奇妙なことでしたが、面白くも感じました」と語っています。

一方、今でもあのショート動画アプリを買いたいかとの問いに関しては、明確な返答は避けました。しかし、マイクロソフトには「クラウドプラットフォーム、セキュリティ技術、そして「コードベースを引き継ぐことができるエンジニア」がいて「最も適した立場」だったとして、取り引きが魅力的だったことを認めました。

(Source:GeekWireEngadget日本版より転載)

トヨタ傘下のウーブン・プラネットが先進的な車両OS開発加速のため米Renovo Motorsを買収

トヨタ自動車の子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)は、自動運転のような未来の交通技術への投資、開発、そして最終的には市場への投入を目指して、1年足らずで3件目の買収を行った。

今回の買収対象は、2015年にスタンフォード大学と共同開発した自動運転のデロリアンが自律的にドリフト走行をする動画を公開して大きな話題となった、シリコンバレーに拠点を置く自動車向けOS開発企業のRenovo Motors(レノボ・モーターズ)だ。買収の条件は公表されていない。Renovoはシリコンバレーのオフィスを維持し、1240人の従業員を持つウーブン・プラネットの事業に統合される。

ウーブン・プラネットは、2021年初めに高精度マップ生成スタートアップのCarmera(カーメラ)や、Lyft(リフト)の自律走行部門であるLevel 5(レベル5)を買収したが、Renovoを買収したのは、AVドリフトの技術のためではない。同社はRenovoの車両OSに興味があり、それが自社の取り組みを加速させるのに役立つかもしれないと考えているのだ。

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Renovoは、自動運転や地図、その他のモビリティサービスに関連するアプリを車内で動作させるためのOSを開発した。同社の「AWare OS」は、Google(グーグル)のAndroidが、スマートフォン市場でアプリ開発者がサービスを提供できるようにするのと同じような仕組みになっている。またある意味、Amazon Web Services(AWS)が提供するオンデマンドのクラウドコンピューティングプラットフォームと比較することもできる。このミドルウェアは、セキュリティを犠牲にすることなく柔軟に設計されており、他の企業がソフトウェアを展開するためのプラットフォームを提供する。

急成長し、今では統合されつつある自律走行車業界の中で、わずか30人の従業員を抱えるRenovoは小さな存在だった。しかし同社のOSは、Cruise(クルーズ)に買収されたVoyage(ヴォヤージュ)をはじめとする多くのAV開発者の注目を集めた。また、Verizon(ベライゾン)をはじめとする複数の投資家を惹きつけた。

Renovoの共同創業者兼CEOであるChris Heiser(クリス・ハイザー)氏は、最近のインタビューでこう語っていた。「Renovoが開発したIPは、自動車メーカーが将来やりたいことの中核をなすものだと認識されるようになってきたと思います。このような関係を構築し、どのようにして規模を拡大するのかを理解しようとしたとき、巨大な規模を実現するためには、自動車メーカーのリソースと後ろ盾を持ち、何百万台もの車を発売できるパートナーを見つけなければならないことが次第に明らかになりました」。

ウーブン・プラネットは、RenovoのOSを、2025年までに市場に投入する予定の自社のオープンな車両開発プラットフォーム「Arene」の商業化を支援する手段と考えている。

ウーブン・プラネット・ホールディングスは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(Toyota Research Institute – Advanced Development, Inc.、TRI-AD)を傘下に置き、投資部門であるウーブン・キャピタル(Woven Capital, L.P.)と、相互接続されたスマートシティの実験都市であるウーブン・シティ(Woven City)を運営している。トヨタ自動車は2月、富士山の麓に位置する裾野市の東富士工場跡地に着工した。

2021年初め、ウーブン・キャピタルは、8億ドル(約893億円)規模の戦略的ファンドを立ち上げるにあたり、自動運転配送車両のNuro(​​ニューロ)への投資を発表した。

画像クレジット:Renovo

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

スマホ事業を閉鎖したLGが自動車向けサイバーセキュリティのCybellumを264億円で買収、

韓国の大手テック企業であるLG Electronics(LGエレクトロニクス)は、かつて携帯電話分野でトップシェアを誇っていたが、現在は同事業を縮小している。同社は、次世代の自動車向けハードウェアおよびサービスという新分野への意欲の表れとして、イスラエルの自動車用サイバーセキュリティ専門企業であるCybellum(サイベラム)を買収すると発表した。Cybellumは「デジタルツイン」と呼ばれる手法を用いて、コネクテッドカーのサービスやハードウェアの脆弱性を検出・評価する。

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LGによると、この買収は複数の部分からなっている。

まず、1億4000万ドル(約154億円)でCybellumの株式の64%を取得する。次に2000万ドル(約22億円)をSAFE(Simple Agreement for Future Equity)ノートの形で「第4四半期の取引プロセスの終了時に」拠出する。残りの株式は「近い将来」(日付の指定なし)に取得する予定で、これは最終的なバリエーションと投資が確定する時でもある。

現在のところ、バリエーションが一定であれば、この取引の総額は約2億4000万ドル(約264億円)になると見込まれる(市場やCybellumの業績が影響する可能性もある)。

LGは、自動車関連のスタートアップへの投資家としての実績を積み重ねているが、今回の買収は、イスラエル(Cybellumはテルアビブ拠点)での初の買収となる。この取引は、LGがハードウェアだけでなく、自動車業界にソフトウェアソリューションを提供することに興味を持っていることを示している。

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「自動車業界においてソフトウェアが重要な役割を果たしていることは周知の事実であり、それにともなって効果的なサイバーセキュリティ・ソリューションが必要とされています」とLG Electronicsのビークル・コンポーネント・ソリューションズ・カンパニーのKim Jin-yong(キム・ジンヨン)博士は語る「今回の取引は、LGのサイバーセキュリティの強固な基盤を一層強化するものであり、コネクテッドカーの時代に向けてさらに準備を進めるものです」。LGは以前からこの分野に注目していた。

この取引は、Blumberg Capital、Target Global、RSBG Ventures(ドイツの業界大手RAGのベンチャー部門)など、Cybellumの投資家にとても良いリターンとなる。Cybellumはこの取引に先立ち、1400万ドル(約15億4000万円)強を調達していた。

Cybellumは、イスラエル国防軍のサイバーセキュリティ部門のOBであるSlava Bronfman(スラヴァ・ブロンフマン)氏とMichael Engstler(マイケル・エングストラー)氏の2人が2016年に創業した。同社は長年にわたり、ジャガーランドローバーや日産自動車など、同社の技術を利用する大物顧客を数多く獲得しており、提携先にはハーマン、豊田通商、PTCなどが名を連ねている。

ブロンフマン氏は電子メールによるインタビューで、当面はこれらの企業との協力関係を継続し、独立した事業体として運営していく方針を明らかにした。

Cybellumの技術とそのLGによる買収は、コネクテッドカーとサイバーセキュリティの世界におけるいくつかの重要な傾向を示している。

コネクテッドカーは、悪意のあるハッカーにとって新たな攻撃対象だ。しかも、自動車に搭載されている複数の部品や、自動車という大きなエコシステムの中で動いている多数のOEMや自動車関連の会社を考えると、攻撃対象として非常に複雑だ。自動車がより賢く、よりつながりやすく、最終的にはより自律的に進化していけば、その複雑さは増していく一方だ。

大きな課題の1つは、これらすべてに共通するサイバーセキュリティへのアプローチを開発することだった。LGは、この市場での既存のプレイヤーとして、その地位をさらに高めたいと考えており、自社の将来のビジネスと、業界の幅広いサービスニーズに対応するための投資を行っている。

Cybellumのアプローチは、システムの「デジタルツイン」を作り出すことだ。これは、エンタープライズITヘルスケア世界でも採用されている手法で、脅威を特定・評価すべく全体像を把握するためにモニタリングを行う。個々のコンポーネントの断片化を解消する方法の1つであり、車のシステムに負担をかけずにリアルタイムでイベントを監視することができる。

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「これは何よりもまず、セキュリティへの投資です」とブロンフマン氏はいう。「Cybellumはサイバーセキュリティの会社です。LGは大手自動車サプライヤーの1つとして、現在のコネクテッドビークルの時代や、自動運転車への移行に不可欠な要素であることを理解しているため、サイバーセキュリティを優先しています」。

LGは現在、Cybellumの提携先ではないが、ブロンフマン氏は、両社の最初の統合は2022年に実現する可能性が高いと述べた。

画像クレジット:Joan Cros/NurPhoto / Getty Images 

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Netflixが「チャーリーとチョコレート工場」などで知られるロアルド・ダール作品の管理会社と作品を買収

Netflix(ネットフリックス)は、Roald Dahl Story Company (ロアルド・ダール・ストーリー・カンパニー、RDSC)ならびに「Charlie and The Chocolate Factory(チャーリーとチョコレート工場)」「Matilda(マチルダは小さな大天才)」「James and the Giant Peach(おばけ桃が行く)」といったクラシック作品を含むロアルド・ダール氏の全作品の権利を買収すると発表した。買収条件は明らかにされなかった(買収は当局の承認次第だ)が、The Hollywood Reporterによると、Netflixは3年前にダール氏の16の作品の権利に「9桁」の額を支払っている。いずれにせよ、同社にとって過去最大の買収の1つになりそうだ。

買収のニュースはBloombergの報道で米国時間9月21日に表面化した。Netflixはダール氏の作品に関して大きな計画を持っていて、ここには「アニメーション、実写版の映画、テレビ、出版、ゲーム、没入型体験、劇場、消費者向けプロダクトなど」でのユニークな世界の構築が含まれていると同社CEOのTed Sarandos(テッド・サランドス)氏、RDSCのマネージングディレクターでダール氏の孫であるLuke Kelly(ルーク・ケリー)氏は声明で述べた。

ディレクターのTaika Waititi(タイカ・ワイティティ)氏と脚本家のPhil Johnston(フィル・ジョンソン)氏が「チャーリーとチョコレート工場」の世界をもとにしたシリーズに取り組んでいる、と両社は明らかにした。Netflixはまた、ソニー、Working Titleとともに「Matilda The Musical(マチルダ・ザ・ミュージカル)」の翻案も手がけている。

買収は、Netflixの過去のコンテンツ取引をはるかに超えているようだ。コンテンツ取引では同社は単にライセンス認可を他社からもらう。ライセンス認可で有名なのが「Marvel(マーベル)」で、Disney(ディズニー)と契約を結べずに「Daredevil(デアデビル)」と他のマーベル作品は結局キャンセルに終わった。当時、DisneyはNetflixのライバルとなるサービスDisney+の立ち上げを計画していた。

ロアルド・ダール氏の作品の買収で、Netflixは「これらの時代を超えた物語を新しいフォーマットでより多くの視聴者に届け、その一方で作品のユニークな精神と、驚きと優しさというユニバーサルなテーマを維持する」ことを約束する、とサランドス氏とダール社は述べた。「若い人々のパワー、そして可能性の物語とメッセージが今ほど適切だと感じられたことはありません」。ダール社は2020年、反ユダヤ主義的なダール氏の過去の発言についてウェブサイトに謝罪文を掲載したとBloombergは報じた。

編集部注:本稿の初出は​Engadget。執筆者のSteve DentはEngadgetの共同編集者。

画像クレジット:Netflix

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(文:Steve Dent、翻訳:Nariko Mizoguchi

サイバーセキュリティの格付けを行うBitSightがサイバーリスク評価VisibleRiskを買収、ムーディーズも約275億円出資

組織が攻撃される可能性を評価するスタートアップ企業のBitSight(ビットサイト)は、信用格付け大手のMoody’s(ムーディーズ)から2億5000万ドル(約275億円)の出資を受け、イスラエルのサイバーリスク評価スタートアップであるVisibleRisk(ヴィジブルリスク)を非公開額で買収した。

ボストンに本社を置くBitSightは、サイバーリスクが信用格付けに影響を与える可能性があることを長年警告してきたムーディーズから出資を受けたことにより、サイバーセキュリティ・リスク・プラットフォームの構築が可能になると述べている。一方でムーディーズは、BitSightのサイバーリスク・データおよびリサーチを、同社が提供する統合リスク評価に活用することを計画しているという。

この出資により、BitSightの企業価値は24億ドル(約2640億円)となり、ムーディーズは同社の筆頭株主となる。

ムーディーズの社長兼CEOであるRob Fauber(ロブ・フォーバー)氏は、声明の中で次のように述べている。「透明性を高め、信頼を可能にすることは、ムーディーズの使命の中核をなすものです。BitSightはサイバーセキュリティの格付け分野におけるリーダーであり、我々が協力することによって、さまざまな分野の市場参加者がサイバーリスクをより深く理解、測定、管理し、それをサイバー損害のリスクに変換することができるようになるでしょう」。

その一方でBitSightは、ムーディーズとTeam8(チームエイト)が設立したサイバーリスク格付けのジョイントベンチャーであるVisibleRiskを買収したことによって、BitSightのプラットフォームに詳細なサイバーリスク評価機能が加わり、サイバーリスクに対する組織の財務的エクスポージャーをより適切に分析・算出できるようになる。VisibleRiskは、これまでに2500万ドル(約27億5000万円)を調達しており、同社のいわゆる「サイバー格付け」は、サイバーリスクの定量化に基づくもので、企業は同業他社と比較して自社のサイバーリスクをベンチマークし、サイバー脅威が企業に与える影響をよりよく理解し、管理することができると述べている。

BitSightはVisibleRiskの買収後、リスクソリューション部門を設立し、チーフリスクオフィサーとCスイートの最高幹部たち、取締役会を含むステークホルダーに、重要な一連のソリューションと分析結果を提供する。この部門は、VisibleRiskの共同設立者であり、ムーディーズのサイバーリスクグループを率いていたDerek Vadala(デレク・ヴァダラ)氏が率いることになる。

BitSightの社長兼CEOであるSteve Harvey(スティーブ・ハーベイ)氏は、ムーディーズとの提携とVisibleRiskの買収により「デジタル化が進む世界における顧客のサイバーリスク管理を支援する」範囲を拡大することができると述べている。

2011年に設立されたBitSightは、これまでに総額1億5500万ドル(約170億5000万円)の外部資金を調達しており、直近ではWarburg Pincus(ウォーバーグ・ピンカス)が主導した6000万ドル(約66億円)のシリーズDラウンドを終了している。500人弱の従業員を擁し、各国政府機関、保険会社、資産運用会社など、世界中に2300を超える顧客を持つ。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

会計ソフトIntuitが約1兆3200億円でのメールインフラMailchimp買収と認める

米国時間9月13日午後、Intuitは同社がMailchimpの買収を進めているという根強い噂を認めた。120億ドル(約1兆3213億円)が投じられることで、有名なメールインフラ企業は同社の傘下に加わることになる。

Intuitは、メールマーケティングで知名度が高いとはいえないが、税金の計算をするソフトウェアTurboTaxでよく知られている(これと関連してレントシーキングの継続を求める政府へのロビー活動でも)。また最近では、Credit Karmaの買収と、やや昔に行ったMintの買収でも知られている。

Mailchimpの買収は現金と株の両方で行われる。

「なぜIntuitは、時価総額の10%も使ってメールマーケティング企業を買うのか?」今、あなたの頭の中に疑問が湧いていても当然だ。

プレスリリースによると、Intuitは、この買収が「同社による世界中の繁栄の強化と、同社がAIによるエキスパートのプラットフォームになることを促進する」と考えているという。いつもなら、同社のビジネス口調を読みやすい口調に翻訳すべきだが、ちょっとむずかしい。

同社はもっとわかりやすく、Mailchimpの買収で、同社が前から共有していた2つの戦略、すなわち小企業の成長のためのセンターになることと、小企業のミッドマーケットに革新をもたらすことを加速できるというべきだった。

この方がずっとわかりやすい。IntuitのQuickBooksサービスは中小企業によく知られている。おそらくIntuitは、小企業向けに販売できるサービスはもっとあるはずと考えている。少々無理も感じられるが、トップが到達した結論は、2つの企業のシナジー効果には、この買収の値札ショックを補償してあまりあるものがある、というものだ。

Intuitの株価は時間外でわずか0.15%上昇したが、これはウォール街がこの買収に対して肩をすくめているためだろう。しかも買収のリークのされ方と最終結果はややごたついた。それが、Intuitの株価にすでに織り込み済みだったかもしれない。

Mailchimpの本社のあるアトランタでは、この買収は歓迎されている。Mailchimpは、自己資本のみでやってきたことで有名だ。しかも、シリコンバレーの外で、ベンチャーキャピタル抜きでデカコーンになれるのなら、まさにその生きた証拠がここにある。

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット:Smith Collection/Gado

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