初期費用0円のフリーランス独立支援―、日本のMOSO mafiaが「Summon」をリリース

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オンデマンドのサロン予約サービス「careL」を運営する日本のMOSO mafiaは2月17日、フリーランスのためのインスタントECサイト作成アプリ「Summon(サモン)」を2月10日に正式リリースし、1月にアイスタイルの戦略投資子会社であるアイスタイルキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。金額は非公開。アプリはiOS版のみでの提供となる。MOSO mafiaはTechCrunch Tokyo 2016で開催されたスタートアップバトルの卒業生だ。

Summonを利用することで、サービス業のフリーランスは簡単に事業用のWebサイトを開設することができる。実店舗は持てないが独立してフリーランスとして活動したいというニーズに応える。初期費用0円で事業運営に必要な最低限の機能を揃えることができ、開業時の固定費を抑えることもできる。利用者が提供するサービスをメニュー化してWebサイトに配置することも可能なため、Summon上で自分のサービスを販売できるだけでなく、そこで決済まで完結することができる。

MOSO mafiaは昨年11月25日からSummonのベータ版を公開し、現在までに150人の利用者を得ている。

Webサイト開設から決済までワンストップで提供

Summonの主な機能は3つ。予約機能、決済機能、サブスクリプション決済機能だ。

Summonの予約機能では、アプリ上に用意されたカレンダーを使って15分単位で予約を受け付けることができる。出張先への移動時間の計算もシステムが自動で行う(当初の移動時間計算は徒歩のみ。MOSO mafiaは今後、Google Mapのような電車や自動車での移動時間を計算する機能も導入する見込みだという)。

また、Summonの決済機能はオンライン決済プラットフォームである「Stripe」を利用している。そのため、Webサイトにクレジット決済機能を搭載するために事前審査などは必要ない。決済手数料は6%だ。

Summonはフリーランスの会員制サービスにも対応している。同サービスにはサブスクリプション決済機能も搭載されており、フリーランスである利用者は会員から毎月決まった額を受け取れる。

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MOSO mafia代表取締役の渡邉大介氏は、Summonによってフリーランスが開業するときのハードルを下げることが目標だと語る。「サービス業では、ほとんどの店が3年以内に廃業すると言われている。その要因は初期費用の高さと、家賃などの固定費の高さだ」。また、渡邉氏はサービス内容を伝える写真素材の用意もそのハードルの1つだと語り、プロフィール画像やサービスのイメージを無料で撮影する「Summon撮影会」というサービスも提供している。

ただ、Webサイトの開設ツールという枠組みでみれば同様のサービスを提供する企業は多く存在する。その点について渡邉氏は、「Web作成や決済サービスなど、1つ1つのサービスはすでに他社でも提供しているが、これは開業済みのフリーランス向けだと思っている。当社では開業支援にフォーカスし、よりC2Cに近い市場を取って行きたい」と語る。

また、この手のアプリの場合、開業時にはSummonを利用していても、事業の成長につれて実店舗を持つようになり、結果的にアプリから利用者が離れてしまうという懸念もある。この点についてはTechCrunch Tokyoスタートアップでも審査員から指摘されており、登壇した渡邉氏は「確かにその懸念はある。そのため、今後はアプリで店舗も管理できるような仕組みを作っていきたい」とコメントしている。

「美容業界はマッチングサービスを好まない」

ところで、欧米を中心とする海外では個人で開業したフリーランスと顧客を直接結びつけるマッチングサービスが人気だ。ロサンゼルス発のセラピスト・マッチングアプリ「Soothe」などがその例だ。Summonはマッチングアプリではなく、あくまでもフリーランスのホームページを開設して、そこに色々な機能を搭載させるという形式を採用している。そのモデルを採用した理由を聞くと、渡邉氏は「創業時にはマッチングサービスという形式も考えた。しかしその場合、サプライ側の数が増えないととサービスが成立しないという難点があった。また、Summonの利用者として想定される美容分野の人々は、マッチングサービスをあまり好まない。自分のブランドで勝負したいという人が多いからだ」と話している。

MOSO mafia創業者の渡邉氏は、同時に弁理士としても活動する人物。7年前に現代アートのシェアリングサービスを創業するも、当時はサービス運営に失敗。その後、弁理士として活動しながら2015年にMOSO mafiaを創業した。弁理士としてフリーランスの独立支援を行っていたことも、Summonを創った理由の1つだという。

Summonでは来年以降、動画配信でWebセミナーを提供できる仕組みや、動画カウンセリング、有料課金系のコンテンツを配信できる機能などを整えていく。

プログラミング教育用ロボットのOzobotが300万ドルを調達

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現在、市場にはプログラミング教育用のおもちゃがたくさん存在する。そして、そのほとんどがタブレットやスマートフォンとの連携を必要とするタイプのものだ。親たちは子ども達をなんとかスクリーンから遠ざけようとしているなか、みずからも父親である起業家のNader Hamda氏は、従来のおもちゃとは違ったプロダクトを開発したいと願っていた。また、高価な教育用おもちゃをいくつも観察していた彼は、手頃な値段でその代替品となるプロダクトを開発し、それを広く学校や学生に広めたいと思っていた。

彼が開発した教育用ロボット「Ozobot」は、ゴルフボール程度の大きさで、子どもが紙に描いた線をたどるロボットだ。異なる色の線を描くことでOzobotの挙動をコントロールすることができる。このロボットはオフラインで遊ぶこともできるが、専用のモバイルアプリを使ってOzobotを操作することも可能だ。また、このアプリはプログラミングを学べるような仕組みになっていて、子どもたちは自分が書いたプログラムをテキストメッセージを使ってロボットに送信することができる。それで近くのOzobotをコントロールするのだ。

Ozobotのスターターキットの価格は約60ドル。Ozobotのオンラインストアで購入することもできるし、Barnes & NobleやToys “R” Usなどの従来型の小売店でも取り扱っている。また、Hamda氏によれば、近日中にBest BuyとTargetでも取り扱いを開始する予定だという。これまでに、Ozobotはファミリーユーザーや教育者を中心に50万機以上のロボットを販売。同社はオリジナル版のOzobotの他にも、Bit やOzobot Evoエディションなどのロボットを開発している。

Ozobotの開発元であり、カリフォルニア州レドンドビーチに拠点をおくEvollve Incは現地時間15日、シリーズAで300万ドルを調達したことを発表した。これにより、同社はOzobotのさらなる向上を目指した開発を続けるとともに、アメリカ、フランス、韓国などに展開するOzobotに新機能や新コンテンツを追加していく予定だ。今回のシリーズAをリードしたのはTribeca Venture Partnersで、その他にも名称非公開のベンチャーキャピタルや、ZICO創業者のMark Rampolla氏をはじめとするエンジェル投資家も本ラウンドに参加している。

Rampolla氏は、これまで彼が所有するPowerPlant Venturesを通してエコロジー食品や農業分野のスタートアップに投資してきた人物だ。その彼がなぜエドテックに出資したのだろうか?Rampolla氏はTechCrunchの取材にこう答えてくれた。「家族や友人から調達したわずかなリソースしか持たないにもかかわらず、Nader氏はOzobotを完成させ、3000以上の学校に販売してきました。また、導入をした学校の教師からはすでに良い反応を得ています。この出資は、彼らのアーリービジネスの拡大を手助けするという目的があります」。

またRampolla氏は、ココナッツウォーターを販売するZICOがかつてそうであったように、Ozobotによってエドテックという分野に新しいカテゴリーが生まれる可能性もあると話す。彼によれば、ZICOが開拓したココナッツウォーターというカテゴリーには今では80以上のブランドが存在している。彼がZICOを創業した当時、アメリカ国内でココナッツウォーターを販売していたのは同社だけだったのにもかかわらずだ。Ozobotがこれから生み出すであろうカテゴリーとは、学生がもつスキルの上昇とともに成長する、手頃な値段の教育用ハードウェアというカテゴリーだろうと彼は話す。

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TechCrunchを訪れたOzobot CEOのNader Hamda氏

Ozobots CEOのNader Hamda氏は、「私たちのゴールは、子どもや大人がテクノロジーを消費するのではなく、それを創りだすという世界です。保育園児から博士号の学生にいたるまで、プログラミングを学ぶためのツールとしてOzobotを使ってくれればと思います。しかし、今のところは10代やそれ以下の子どもたちにフォーカスしていきます。そして、今後は新しい機能やコンテンツを追加することで、それよりも年齢の高い高校生にも深い体験を提供できるようなOzobotを開発していくつもりです」。

その新機能の1つが、それぞれのロボットが反応し合う「スマートソーシャルロボット」だ。これによって、互いが協力し合うようにプログラムされたロボットの「群れ」をつくることが可能になるとHamda氏は語る。また、同社は教室でそのまま使えるような教育カリキュラムを用意していく予定だ。

教育者たちは、みずから考えたOzobotの授業例をEvollveにシェアすることがしばしばある。その中でもHamda氏のお気に入りは、ある生物の先生が考えた授業だったという。その授業は、紙に描かれたヒトの体内図のなかでOzobotを移動させることで、食べ物が消化される過程を学ぶというものだ。

Ozobotの成長を加速する要因の1つとなったのは、同社とMarvel Avengersとのタイアップだ。配信元のディズニーは、Ozobotに取り付け可能な「着せ替え」を販売しており、それを装着するとOzobotが発する音や動きが変わるようになっている。なかでもIron ManやCaptain Americaなどが人気のキャラクターだ。同社は今年中にBlack Widow、Ultron、The Hulkの着せ替えも販売開始する予定だという。

Tribeca Venture Partnersの共同創業者兼マネージングディレクターであるBrian Hirch氏は、TechCrunchの取材に対して、コンシューマー向けハードウェアを開発するスタートアップに出資することが少ない同VCがOzobotへの出資を決めたのは、Ozobotが狙う市場の大きさが理由だったと語る。Gartner社による調べによれば、スマートトイの販売台数は今年の800万台から、2020年までには4億2100万台へ拡大するという。また、Juniper社は全世界でのスマートトイ販売台数が2020年までに112億台にまで膨れ上がると予測している。

Ozobotの競合となるのは、Dash & DotAnki CozmoBots_aliveOsmoなどの企業だ。しかし、Hirsch氏は、この市場は「勝者がすべてを獲得する」タイプの市場ではないと語る。80年代に流行したTransformers、Speak、Spell、そしてMinecraftなどのプロダクトまでを考えると、この市場に少数の勝者が存在しないことが分かるだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Watsonみたいにクイズにめっぽう強いQA Engineを開発したStudio Ousiaが1.5億円を追加調達

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Studio Ousiaが今日、Samsung Venture Investmentから1.5億円の資金を調達したことを発表した。Studio Ousiaは2016年4月にTechCrunch Japanでも取り上げたことがあるが、自然言語処理を得意とするスタートアップ企業だ。テキスト中に「ソフトバンク」という固有名詞があったときにそれが企業名なのか、野球チームのことを指しているかを区別するという「キーワード抽出」(アカデミックな世界ではエンティティ・リンキングと呼ぶそうだ)の技術や、質問応答システムの「QA Engine」などを開発している。

Studio OusiaのQA Engineは、従来からあるBM25やTF-IDFといった情報検索手法に加えて、最近ディープラーニングの文脈で注目されているCNN(Convolutional Neural Networks)を使っている。与えられた自然言語による質問文に対して、正解となる回答を予測できる。

2016年6月に開催されたNAACL(North American Chapter of the Association for Computational Linguistics)主催の歴史、文学、科学、芸術などの知識を問うクイズ・コンテストでは85問中64問に正答して優勝。2位の22問正解に対して大きく差を付けたといい、Ousiaによれば、この差は開発済みのキーワード抽出技術を使った成果でもあるという。

以下のNAACLのコンテストの様子を伝える動画で、Ousiaの技術概要の説明と、3人のクイズの得意なアメリカ人学生とOusiaのクイズ対決がみられる。IBMのWatsonが人気クイズ番組の歴代チャンピオンに勝ったときの映像を彷彿とさせる白熱具合だ。ちなみに2011年にIBM Watsonがクイズチャンピオンを負かしたときは2880個のプロセッサと16TBのメモリを搭載したモンスターマシンを使っていたが、Ousiaは学習時にGPUを使った以外は「普通のサーバー」でQA Engine動かしているそうだから、隔世の感がある。

ちなみにこのNAACLの大会で2位になったシステムですら、かつて人間のクイズチャンピオンとしてIBM Watsonに負けたという意味での「歴史的チャンピオン」となったケン・ジェニングスを打ち負かしているそうだから、なんだかもうクイズに関しては全く人間の出る幕は全くない感じだね。

Ousiaでは、このQA Engineは企業のコールセンターの回答支援システムや、人材マッチング、チャットボットに応用できる要素技術として、APIサービスとして提供していく予定という。すでに2017年1月にはチャットサポートの自動応答でクラウド会計のfreeeとの協業を発表している。Studio Ousiaは2007年創業で、これまでエヌアイディ、ニッセイ・キャピタルなどから累計2億円を調達している。

ゲーム感覚で楽しめるオンライン学習アプリのSmartUpが550万ドルを調達

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2015年、私たちは新しいオンライン学習サービスに興味をそそられた。それはモバイル中心のサービスで、ユーザーを学習という「遊びに誘い込む」ものだった。それこそがSmartUp.ioのアイデアだ。SmartUpは、ポイント制のゲームで学習のインセンティブを引き出すモバイルアプリだ。彼らの初期のプロダクトは、控えめに言っても、優雅さを欠き、コンテンツが「軽い」と言わざるを得ないものだった。しかし、それでも彼らは前進するのを止めなかった。

同社は現地時間14日、Notion CapitalとHong Leong Group(東南アジア最大の金融グループ)がリードする調達ラウンドで合計550万ドルを調達したと発表した。本調達ラウンドにはその他にも、Michael Birch氏(Bebo創業者)、Luke Johnson氏、Barry Smith氏(Skyscanner)、Alex Asseily氏(Jawbone)、Ed Wray氏(betfair)、Simon Patterson氏(Silverlake)などの個人投資家が参加している。

共同創業者のFrank Meehan氏は、私にこう話してくれた:「私たちに声をかけてくれた企業は、私たちのマイクロ学習フォーマットに興味を持ってくれました ― しかし同時に、そこに自分たち独自のコンテンツを組み込むことはできないかという要望もありました。そこで、新しいP2Pマイクロ学習プラットフォームを開発することにしたのです。そこでは、参加者の誰もがみずからコミュニティを創設することができるだけでなく、インタラクティブなコンテンツのチャンネルをつくることが可能です。テキスト形式、クイズ形式、動画形式、投票形式など、その種類はさまざまです。私たちがつくった無料かつオープンなコンテンツコミュニティもある一方で、ユーザーである企業も、みずからプライベートなコミュニティをつくることができます」。

彼らの新しいアプリはここからダウンロードできる。その中から「Browse Communities」という項目を選べば、彼らが顧客として獲得した企業をいくつか見ることができるだろう。「Launch」を選べば、スタートアップ向けのオープンコミュニティの中身を見て、このアプリがどのようなものか体験することができる。

企業はこのアプリを利用して、社内教育プログラム、プロダクト教育プログラム、新入社員教育プログラム、セールス資料、コンプライアンス教育プログラムなどを作成することができる。また、SmartUpを社外用の「アカデミー」として利用する企業もある。SmartUpの顧客企業は、そのアカデミーを利用してプロダクトの詳細を顧客に教えているのだ。つまり、これまでのブログやPDFというプロダクト教育のフォーマットから、顧客からフィードバックを受け取ることも可能な、SmartUpが呼ぶところの「マイクロ学習フォーマット」に移行することができる。

Lesson.lyGrovoEdCastなどの企業が注目を集め、オンライン学習分野がもう一度ホットな分野になるなかで今回の資金調達が実現した。Lesson.lyは、SmartUpと同じように「マイクロ学習」技術を採用するトレーニングシステムを開発する企業だ。また、Grovoも同様のマイクロ学習システムを開発しており、独自コンテンツを製作できる機能に特化している。

「Dropbox Paperも将来的に競合サービスとなりうるでしょう。もし彼らのサービスに教育プラットフォームが加わることになれば、それは確実です。私は彼らがそうするのではないかと予測しています」とMeehan氏は語る。

オンライン学習がいま注目を浴びているのには、企業がフェイストゥフェイスのトレーニングからデジタルなプラットフォームに急速に移行しつつあるという背景がある。巨大なPowerPointファイルによって行う社員教育ではなく、彼らはマイクロ学習を望んでいるのだ。教育を受ける者にとってマイクロ学習は本質的に分かりやすいものであり、気軽なコンテンツに慣れた若い社員にはこの方が受け入れられやすい。

SmartUpへの出資者「Founders Forum」による起業に関する教育プログラムのような、ハイクオリティなコンテンツが同社のサービスに存在するという事実も、おそらく彼らを後押しすることになるだろう。他のプラットフォームはこの分野に目を向けていないことが多いからだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

“検索しない”美容室予約アプリ「requpo」運営元が8000万円の資金調達、ビジネスモデル特許も

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美容室予約アプリ「requpo(リクポ)」を運営するリクポは2月15日、コロプラ、ベクトル、大和企業投資およびエンジェル投資家数人を引受先とした第三者割当増資により、総額8000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達自体は2016年の12月に実施しており、評価額や出資比率等は非公開。同社は2016年3月にもTLMとエンジェル投資家5人からシードマネーを調達しており、今回が2度目の資金調達となる。リクポは2015年12月の設立。代表取締役CEOの木崎智之氏は学生時代から事業の立ち上げを経験しきた人物で、美容・婚礼業界向けのウェブマーケティング会社の代表を務めたのちrequpoのビジネスを企画した。

ビジネスモデルで特許を取得

2016年7月に正式版がリリースされたrequpoは、美容室を予約したいユーザーが日時やメニュー、予算といった希望を登録すると、それに応じて美容師側からオファーが届くという“検索しない”サービスだ。(正式版リリース時にTechCrunchでも紹介している)

当時から「ユーザーが美容室の特徴や空き時間を調べて予約する」一般的な仕組みではなく、「ユーザーの要望に対して美容師側からオファーをする」という従来の常識に捉われないシステムを大きな特徴としていた。前回の取材時にはビジネスモデル特許を出願中とのことだったが、2016年11月に無事特許を取得。資金調達にあたっても、目先の数値の伸びよりもこの新しい切り口のビジネスモデルに対して投資家から共感を集めたという。例えばコロプラは主にエンターテイメント領域へ投資を行っているが、木崎氏によると「requpoの予約システムにエンターテイメント性を感じていただき、今回の出資につながった」そうだ。

様々な業界で「予約」の概念を覆すチャレンジ

リクポのメンバー。後列中央が代表取締役CEOの木崎智之氏

リクポのメンバー。後列中央が代表取締役CEOの木崎智之氏

これまではプロモーションに資金を投じてこなかったが、サービスリリース後にTwitterトレンドで19位に入ったこともあり、前回取材をした2016年7月に比べ「数はまだ大きくないものの登録ユーザー数で約13倍、美容師数で約3倍になり、美容師の登録希望が毎日届いている状況」(木崎氏)という。

美容室を予約したいユーザーとしては予約の手間が省け、美容師側としては新規顧客開拓に繋がるツールになりうるrequpo。双方からの反応も良いだけに、いかに認知してもらえるかが目下の課題だ。今回調達した資金を元に事業のスピードをあげるべく採用を進めるほか、プロモーションに力を入れていく。

並行して今後見据えているのがネイルやまつげエクステといった、美容室以外への横展開だ。「多くのユーザーにとって美容室は月に何度も訪れる場所ではないため、月ごとのサービス利用頻度も限られる。1人のユーザーに何度も使ってもらえるサービスになるように、まずは美容業界から予約の仕組みをリプレイスし予約を『作業』ではなく『エンターテイメント性のある楽しいもの』にしたい」(木崎氏)

“打率”5%も当たり前―、9割のVCに断わられる前提で資金調達を効率的にクローズするには?

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【編集部注】執筆者のNathan Beckordは、VCの投資を受けたスタートアップFoundersuiteのCEO。同社は資金調達を行う起業家向けに、CRMや投資家とのコミュニケーションを促進するツールを開発している。

年の変わり目は、起業家の間にも新しい風を吹かせる。新しい会社を設立したり、新たなプロダクトを開発したり、資金調達したりと、彼らに何か新しいことへチャレンジさせる力が新年にはあるようだ。

もしもあなたも、新たに資金調達を行おうと思っているならば、是非この記事を参考にしてほしい。それでは、早速はじめよう。

ステップ1:投資家候補をかき集める

資金調達は数のゲームだ。設立した会社がSnapchatくらいのレベルで成長していたり、これまでに複数の企業を上場させた経験があったりしない限り、起業家はたくさんの投資家にアプローチしなければならない。

「たくさん」の投資家にだ。

そのため、資金調達における最初のステップは、150〜200人ほどの投資家リストを作ることからはじまる。

資金調達の一般的な「打率」(プレゼンの数に対するコミットメントの割合)は、5%と言われている。ここから逆算すると、10人のエンジェル投資家にシードラウンドへ参加してもらいたいとすれば、まず200人をリストアップしなければいけない。

AngelListやFoundersuiteなどの無料サービスを使えば、投資家を分野や所在地から検索することができる。またCrunchbaseを使えば、自分たちのスタートアップに似た(競合ではない)企業を検索でき、そこから投資家情報も確認できる。関連キーワード・フレーズを使って(例:SaaS企業への投資で有名なVC/エンジェル投資家は?)、Quoraから投資家を探すというのも手だろう。

PitchBookMattermarkCB Insightsといった有料データベースには、さまざまな検索・フィルタリング機能が搭載されている。他にもTechCrunchPE HubTerm SheetInside Venture CapitalVenture Pulseといった、資金調達関連の情報を掲載しているニュースサイトやウェブマガジンも参考になる。

ステップ2:候補を絞る

資金調達は営業プロセスそのものだ。そして優秀な営業マンは、誰にどのくらいの時間を使うかというのを強く意識している。

この考え方は、営業と同じくらい(もしくはそれ以上に)資金調達でも重要になってくる。サンフランシスコからメンローパークまで1時間半かけて移動したのに、会いに行った「シード投資家」は20万ドルのMRR(マンスリーランレート)を求めていたり、そもそも新規の取引をやっていなかったりすると目も当てられない。

無駄になった半日という時間は、スタートアップ界では永遠に感じられるほど長い時間だ。

だからこそ、時間の無駄や頭痛や不安の種を減らすために、ステップ1で集めた投資家候補をしっかりと評価し、絞り込んでいかなければいけない。リストから候補者を外す際には、以下のような基準を参考にしてほしい。

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もともとのリストから、大体25〜30%くらいの数まで投資家候補を絞りこめれば、まずまずといったところ。きちんと候補を絞ることで、実際に投資家へコンタクトしだしたときの打率がかなり上がるようになる。

ステップ3:アプローチ方法を考える

このステップの目的は、ステップ2で絞り込んだ各投資家へのアプローチ方法を考え出すことだ。

最も有効なのは、共通の知人を通じた紹介だ(さらにその知り合いによって、投資家が過去に儲けを出していればベスト)。

ある投資家との繋がりを確認するためには、その投資家の名前をLinkedInの検索欄に入力し、1次もしくは2次コンタクトの中にその人がいないか確認すればいい。

もしも共通の知人がいないときは、アプローチしたい投資家のポートフォリオに含まれている企業のファウンダーにメールを送ってみるという「攻略法」もある。その際は、まず信頼関係を築くために、投資家がどんな人だったかや、どんな手助けをしてくれたかといった話をして、その後に紹介をお願いした方が良い。

最後の手段が、紹介無しで直接投資家にメールを送るという方法だ。この方法をとっているスタートアップを多く見かけるが、返信が来る確率が1%以下というのもザラだ。

ステップ4:進捗管理のためのシステムとプレゼン資料を準備する

これまでのステップで、投資家のリストを作って、その絞り込みを行い、各投資家へのアプローチ方法を考えだした。次は、実際に資金調達を行うための準備だ。

各スタートアップには、進捗管理システムを構築することを私は強く勧めたい。アプローチしようとしている投資家の数が多いため、投資家の名前や交渉の段階、会話の内容、確認事項やToDoといった事項の管理がかなり複雑になってくる。

ミーティング1回当たりに3つ、4つ確認事項が出てくるとして、100〜150人/社の投資家を相手にすると考えると、その複雑さがわかるだろう。

投資家候補や彼らとの膨大な数のやりとりを管理するためのシステムが必要だ。

多くのスタートアップがExcelやGoogle Docsを使って進捗を管理しているが、1週間もすればスプレッドシートがさまざまな情報で溢れかえってしまうことがよくある。

そこで最近流行っているのが、「かんばんボード」メソッドだ。各投資家を「カード」にして、新規→プレゼン済み→デューデリジェンス→コミット(または交渉決裂)と、交渉の段階に応じてカードを動かしていくというのがこの管理方法の概要だ。ファウンダーに人気のかんばんボードを利用した管理ツールとしては、FoundersuiteやPipedriveTrelloなどがある。

他にもSalesforceなどのCRMを、投資家情報管理の目的で使っている企業もある。どのサービスであれ、投資家候補や彼らとの膨大な数のやりとりを管理するためのシステムを導入すべきだ。

もうひとつこのステップで準備するのが、10〜20ページのプレゼン資料だ。別途1、2ページで、エグゼクティブ・サマリーと予測財務諸表を入れておくことも忘れないように。

プレゼン資料は、交渉時の「主力」として常に必要になる重要なアイテムだ。アドバイスが必要な人は、このガイドが参考になる。またインスピレーションが必要であれば、ここで有名スタートアップのプレゼン資料を見ることもできる。

ここまで準備ができたら、ステップ5へ進む前に、友人やアドバイザー、弁護士、知り合いの投資家を相手に、最低5回は通しでプレゼンを行ってほしい。資金調達中はプレゼン資料を絶えず調整していくことになるので、フィードバックを集めて資料を改良するという習慣をこの段階で身に付けておいた方が良い。

ステップ5:投資家とのミーティング(複数を同時並行で)

投資家候補のリストと管理システムが整い、ようやく本格的に資金調達をはじめる準備ができた。

このステップでは実際に投資家へアプローチし、契約獲得に向けて勢いをつけていく。

まずは、投資家の紹介に応じてくれた知人へメールを送るところからはじめよう。参考メールが以下だ。

題名:投資家紹介のお願い

本文:Jeffへ

自分で立ち上げたスタートアップの資金調達を今やっていて、Jeffが<Xさん、Yさん、Zさん>とLinkedInで繋がってるのを見たんだけど、簡単に紹介してもらえない?

次に、Jeffが紹介できると答えた投資家ひとりひとりについて、新しく簡潔なメールで紹介をお願いする。<>で囲われたところには、自分の会社の情報を入れて使ってほしい。

題名:<Felicis Ventures>の<Aydin Senkut>紹介のお願い|<Acme Analytics シードラウンド:毎月28%成長中>

本文:Jeffへ

現在Acmeで<100万ドル>のシード資金を調達しています。私たちは<商業用ドローンのための解析・支払ソフトを開発しています>。既に<69社の法人顧客>がいて、売上は毎月<28%>伸びています。

<Aydin>のアプローチやポートフォリオ(<例:Flexport>)は、私たちの会社と関連性が高く、是非一度お話したいと考えています。

Acmeの資料はこちらからご覧頂けます。
以上、宜しくお願い致します。

Jennifer

上記のように、会社概要に加えて、投資家にとって魅力的だと思われる指標やアピールになりそうな情報、さらにその投資家と話がしたい理由を3つのセクションに別けて書けば十分だ。

このメールを受け取ったJeffは、転送ボタンを押して、投資家に実際に会いたいか(オプトインのアプローチ)聞くだけでいい。こうすることで、Jeffはほとんど時間をかけず、かつ彼の大事なソーシャル・キャピタルを無駄遣いすることなく、Jenniferを投資家に紹介できる。

紹介者の忙しさと人脈の広さには相関関係があるため、紹介者の負担を減らすというのは極めて重要なことなのだ。

そして、リストに含まれている投資家全員分、上記のプロセスを繰り返す。これまでのステップの各項目をしっかりと行い、投資家が求めるものとプレゼン内容がある程度合致していれば、カレンダーはすぐに投資家とのミーティングで埋まっていくだろう。

ステップ6:ミーティングを繰り返しながら前進あるのみ

ここからが資金調達の本番だ。このステップでは、さらに勢いをつけていかなければならず、そうするための1番の方法は、ミーティングをたくさん行うことだ。毎日、毎週、資金が調達できるまで投資家とミーティングを重ねよう。

投資家はファウンダーの熱を感じることができ、それがファウンダーの自信に繋がり、さらにそれがスタートアップ自体の魅力を引き立たせる。逆に、資金調達が長引いてプレゼンの勢いが落ちると、投資家もそれを感じ取ってしまう。

ミーティングの形式は、カフェでのカジュアルなものから、オフィスでの正式なもの、スカイプを通じたものまでさまざまだ。ほとんどの場合、ミーティングの時間は30分から1時間くらいになる。挨拶を終えたら、まず忘れずに紹介者の話をして、もしも紹介者と親しい関係にあれば知り合ったきっかけについても触れるようにする。

プレゼンの流れはそのときどきで変わってくるが、重要な点はしっかりカバーできるように話を進めたい。

1、2分の間小話をしたら、いよいよプレゼンを開始する。私は投資家にどんな形でプレゼンを行えばいいか尋ねることが多い。「どのようにお話すればよいでしょうか?資料に沿ってお話するか、まずデモからお見せするか、このままお話をつづけましょうか?」といった感じで質問し、投資家をプレゼンに巻き込むのも手だ。

直接会わずにプレゼンを行うときは、画面共有ソフトをしっかりと準備し、ビデオ会議システムのソフトのアップデートに10分も浪費してしまうようなことがないようにする(実際にこれはよく起きる)。

プレゼンの流れはそのときどきで変わってくるが、重要な点はしっかりカバーできるように話を進めたい。さらに投資家からも、投資先企業にどのような価値を提供しているか(一般的な「付加価値」)や、投資が決まったら自分たちのスタートアップをどのようにサポートしてくれるかなどについて話を聞くことをオススメしたい。

そして「どのくらい興味を持って頂いていますか?」や「投資を決めるまでに、どのようなプロセスをとられていますか?これ以降のステップはどのようになっていますか?」といった質問でミーティングを締めくくる。

(この時点で、ステップ4で構築した進捗管理システムの存在に感謝することになるだろう。どういたしまして)

ステップ7:クロージングに向けて

20回もミーティングを繰り返せば、資金がすぐに集まりそう(約2ヶ月)か、時間がかかりそう(3〜6ヶ月)かなんとなく掴めてくるだろう。ほとんどの企業は後者のため、心配する必要はない。

ミーティングが上手く進めば、段々と投資家からも深い話がでてくるだろう。つまり彼らが興味を持っていれば、話題が評価額や投資条件へとシフトしていくはずだ。その後、プライスドラウンド(投資実行前の評価額が決まっている場合)であればタームシートを、コンバーチブルノートを発行する場合は、コミットメントレターを投資家から受け取ることになる。

一方で、15〜20回ミーティングを繰り返した後にタームシートをもらえなくても、諦めてはいけない。資金調達は数のゲームだ。ステップ1で触れた「打率」を覚えているだろうか?プレゼン数に対するコミットメント数が5〜10%であれば問題ないのだ。この数字を逆から見ると、90〜95%の確立で投資家に断られるということになる。だからこそ、断られるのもプロセスのうちだと割り切り、まだやりきっていないうちに諦めてはならない。

意思の弱いファウンダーはすぐに諦めてしまうが、賢いファウンダーは諦めどきを知っている。一般的に言って、最低でも50人/社の投資家と話し、それでも何の興味も持ってもらえないようであれば、一旦資金調達は諦めて、もっとトラクションを獲得してから再挑戦した方が良いかもしれない。

そうでなければ、パイプラインに残っている投資家と頻繁に連絡をとって、どうにか話を進めよう。自分の会社の最新情報や新機能を知らせるメールを送っても良い。ゴールは投資家から何らかの回答を受け取ることだ。もしも答えがNOであっても、パイプラインからその投資家の名前を消すことができる。粘り強さと少々の運があれば、きっと誰かが良さに気づいてくれるはずだ。

初めてのタームシートを受け取ったら、それを利用して他のファンド(やエンジェル投資家)に決定を急がせよう。口頭でのOKをもらったら、Paul Grahamのハンドシェイクディールの手順(The Handshake Deal Protocol)に従って、確約を得るようにする。コミットメントやタームシートの数が増えるにつれて契約力が強まり、クロージングは近づいてくる。

最後に

以上が資金調達のプロセスだ。無事クロージングを迎えたあとは、同僚や紹介者と祝杯をあげるなど「クローズ後の栄光」を楽しんでから仕事に戻ろう。次のラウンドは、もう12〜14ヶ月後に控えている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

イギリスの自動車購入サイト「Hellocar」が125万ドル調達

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自動車購入サイトを展開するイギリスのHellocarは現地時間11日、資金調達ラウンドで100万イギリスポンド(約125万ドル)を調達したと発表した。本調達ラウンドをリードしたのは、Innocent Drinksの創業者が創始したJamjar Investmentだ。その他にも、Zoopla Property Group創業者兼CEOのAlex Chesterman氏も参加している。また、Founders FactoryのCEOであり、lastminute.comの創業チームの1人でもあるHenry Lane Fox氏がHellocarの取締役に就任することも同時に発表されている。Hellocarは今回調達した資金を利用して、イギリスのマンチェスターにビジネスを拡大するとともに、既存チームの強化を狙う。

Hellocarを創業したのは自動車業界のアントレプレナー、Nic Carnell氏だ。Hellocarで、彼は自動車の購買プロセスから自動車ディーラーを取り除いた。イギリスの自動車業界を対象にした調査結果によれば、自動車ディーラーを信用していると答えたのは全体のわずか7%であり、80%の人々が自動車の購買プロセスにストレスを感じると答えている。

Hellocarがディスラプトしようとしているのは、450億ポンド規模(約560億ドル)とも言われるイギリスの中古車マーケットだ。同社はこのマーケットに透明性と利便性をもたらすことが目標だと話す。Hellocarに掲載されている自動車はすべて、イギリスの自動車協会による168項目の審査をクリアしている。購入したクルマは自宅まで配送されるだけでなく、もし購入したクルマが気に入らない場合、購入後7日以内であれば返金してもらうことも可能だ。

その意味では、HellocarはCarspring(Rocket Internet出身)やbuyacar.co.ukなどの競合他社と似ている。しかし、その点についてCarnell氏は、「私が思うに、Carspringのアプローチは機能的でかつ非感情的なものだと思います。その一方で、Hellocarは顧客に寄り添うサービスを提供し、エンドトゥエンドのカスタマーエクスペリエンスにフォーカスしています。私たちのWebサイトを訪れてから、購入後30日のフォローアップ電話を受け取るまで、顧客はそれを体験することができるでしょう」と語る。また彼は、「私たちは自動車1つ1つのクオリティにフォーカスしており、Webサイトにできるだけ多くの自動車を掲載しようという気はありません」と加えた。

Hellocarはイギリス自動車協会とのパートナーシップによって自動車の審査と保証を、そしてAvivaとのパートナーシップによって自動車保険を提供している。

Carnell氏によれば、Hellocarは現在、カーリース企業などとのパートナーシップ締結に向けて協議を重ねている最中であるという。それが実現すれば、Hellocarにリース企業のクルマが掲載される可能性もある。これにより、Hellocarはハイクオリティの自動車を確保することができ、リース企業は顧客へのダイレクトチャネルを獲得することができる。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

新世代プログラミング学習サービス「Progate」が1億円を追加調達して国際化を加速

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東大生が在学中に創業したプログラミング学習サービスの「Progate」(プロゲイト)が1億円の追加資金調達を実施したと発表した。フリークアウトグループDeNA、エンジェル投資家を引受先として第三者割当増資に応じた。2014年7月創業以来、同社はこれまでプレシードやエンジェル投資などで合計5000万円ほど資金調達をしており、累計資金調達額は約1億5000万円となっている。East Venturesが2014年11月に1500万円を投資しているほか、エンジェルと投資家として、ロンドンブーツの田村淳氏やメルカリ創業者の山田進太郎氏が名を連ねている。共同創業者の加藤將倫CEO(上の写真右)はTechCrunch Japanの取材に対して、追加資金により国際化に注力すると話している。

「スライド+コード表示+実行環境」の学習スタイルを確立

プログラミング学習サイトは日本語でも英語でも数多くあるが、これまでのプログラミングサイトとProgateが違うのはスライドを中心とした初中級者向けの学習コンテンツを、うまく実行環境と組み合わせることで、ブラウザだけで学習が完結すること。これは初中級ではメリットのあることだと思う。

書籍の延長である電子書籍やHTMLをのぞくと、プログラミング学習コンテンツとしては動画が多かった。講義形式の動画やスクリーンキャストと呼ばれる動画コンテンツが多数存在している。MOOCsの代名詞ともなったCourseraは基本的に教科書を読み、講義を聴講するスタイルだ。日本でベネッセとも提携しているUdemyも映像講座を基本コンテンツとしている。

実際にコードが書けるようになるには実践が必要だ。これはスポーツや楽器と同じ。講義スタイルのオンラインコースでも、たいていは課題やノルマのような提出物があったりするが、「講義→コーディング」というところに不連続面がある。ここでクセモノなのが「分かった気になって手を動かさずに済ませてしまうこと」と「実行環境を用意すること」の2つだ。

実際に課題をやってみると必ず詰まる。すると、自分がたいして分かっていなかったことが分かる。そして講義や教科書に戻る。そしてまた課題をやる、というのが正攻法。ただ問題なのは、「講義と課題」を行き来して最後までたどり着ける人は、実は少ないのではないかということだ。ぼくはUdemyの「実践Pythonデータサイエンス」を受講したものの課題はほとんどやっていない。講義は素晴らしい。Pythonのもすばらしい。しかし、すべての学習者がすばらしいわけじゃない。裏付けとなる客観データは持っていないけど、これはぼくだけの問題とは信じたくない。こう言うと必ずその筋のプロが憤然としてぼくに諭してくる。「課題やんないと意味ないよ」「分かった気になっても駄目だよ」。口を酸っぱくして経験者が言わなければならないのは、それだけぼくのような課題スキップによる落伍者が多い証なんだと思う。

講義と実践が分離している場合のもう1つの問題は、実行環境を用意する手間が大きいこと。

「最初に学ぶ言語」としてHTMLの学習を多くの人が推奨するのは、何の準備も要らず、しかも結果がすぐに表示されるからだ。しかし、UdemyでPythonを学ぼうと思うと自分でPythonの実行環境をダウンロードして用意する必要がある。実行環境を用意することを「環境構築」と呼んだりするが、これはこれで骨が折れることだったりする。

多くのプログラミング言語の教科書の1章目は「環境構築」の話だし、周辺ツールも含めたモダンな開発環境となると数冊の本を読まないと、その筋のプロが「快適」という状態にはならないことすらある。なぜそうなっているかというと、プログラミング言語はプロだけのものだったからだ。プロはUnixのコマンドラインの使い方を当然知っているし、生活の場ともいえる「シェル」や「IDE」の設定にハマった経験もあるのが普通だ。秘伝の設定スクリプトを先輩から譲り受けたりしてもしている。環境構築とういうのは、やりこむと盆栽のように楽しい面がある。でも作りたいものがあるからプログラミングを学びたいと考える初心者にはハードルでしかない。

そんなわけで、ブラウザに向かってコードを書ける環境というのが生まれてきた。その場で実行できて、どんどん学べるサービスとして2011年に話題をさらったのがCodecademyだった。ブラウザ上にコード実行環境があるという意味ではTopcoderやAtCoderといった「競技プログラミング」や、プログラミングの課題を解くことでゲームを進めるCheckIOといったサイトもある。日本だとPaizaというサービスを何度かTechCrunch Japanでも紹介している。

と、ここまでオンラインのプログラミング学習サービスの流れを書いて、やっとProgateのことが書けるのだけど、Progateは学習コンテンツであるスライドを見ながら、そのまま実行環境でコードを書いて試せる学習サービスだ。Progateで実際に少しコースをやってみて感じるのは、既存書籍の電子化やスクリーンキャストによる講義形式は、まだネットネイティブとは言えなかったのかなということだ。Codecademyと比べたときProgateがよく出来てるなと思うのは、コードを書いていて分からなかったら、またすぐに関連スライドを全画面ポップアップで呼び出せることだ。コーディング中にスライドを一括検索する機能もある。

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左が解説部でスライド呼び出しボタンが付いている。中央がコード編集、右が実行結果

 

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まとめると、こういうことだと思う。

かつてプログラミングの勉強は、多くの人は書籍で行っていた。講義も受けていたかもしれない。そしてコード実行環境のパソコンがあった。これらは独立して順番に電子化されてネットにやってきた。Progateは理論と実践の両方を1枚のブラウザ画面に入れてあって、いい感じにその2つを行き来できる工夫がしてある。この辺は、Progateの加藤CEOが自らが初心者としてプログラミングの勉強をしていた経験から考え付いた機能だそうだ。後発であることと、プログラミングというスキルの民主化から来る要請が背景にあると思うのだけど、Progateは新世代のプログラミング学習サービスと言っていいと思う。

実際、Progateの継続率や有料会員へのコンバージョンは高い。初級編を終わらせる人は全体の3〜4割だが、初級編を終わらせた人に限ると、その9割が中級編へと進むのだという。「ちゃんとやった人は続けてやってもらえる。中級編に進むところで有料会員になる人は約25%です」(加藤CEO)

法人需要に手応えを感じつつも、国際化にフォーカス

今のところProgateでは10言語で合計約50のレッスンを用意してある。提供コンテンツは、HTML、JavaScript、Ruby、PHP、Java、Pythonなど(これは人気順)だが、Gitやコマンドラインの使い方といったプログラミング言語以外のコンテンツもある。

レッスンは1つあたり3、4時間で消化できるサイズに区切っているという。2014年に起業して以来、6人ほどでコンテンツを作ってきた。徐々に知名度があがって現在ユーザー数は12万人、有料会員は5000人弱。すでに採算分岐点を超えつつあるそうだ。有料会員は月額980円で全レッスンが使える「プラス会員」と、チャットによるエンジニアのサポートが受けられる月額2980円の「プレミアム会員」がある。

法人向けの「Progate for Team」(1人あたり月額約4000円でボリュームディスカウトあり)や、中学・高校向けの「Progate for School」も展開している。「学校教師の方が使ってくれていて、ご意見箱から授業で使えないかと要望があったんです」(加藤CEO)というのが提供の背景で、学校向けでは約10の高校で授業教材として活用されるているという。また法人向けも問い合わせから要望のあった「一括支払い」に応えた形で、現在10社ほどで導入され、社内研修などに利用されているという。法人向けは進捗管理画面などもある。

積極的に法人営業をやれば事業の伸びは見えているように思える。加藤CEOによれば、すでにProgateで提供しているコンテンツ以外にも、自社でコンテンツを作ってProgateの枠組みで提供したいというプラットフォーム利用のニーズもあるという。日本のSIerなんかは自社フレームワークやレガシーシステムも多いだろうから、社内研修向けコンテンツの受託ニーズはありそうだ。

ただ、加藤CEOは注力するのは国際化。特に英語市場への進出だと言い切る。「国際化か法人向けかで悩んでいましたが、(メルカリCEOの)進太郎さんに国際化をやるしかないと言われて踏ん切りがつきました」という。3年ほど先行するCodeacademyは3000万ユーザーと桁が2つも違うが、「将来的にはCodeacademyと戦って行きたい」と加藤CEOは話す。今回の資金調達ラウンドで投資家として入っているフリークアウトが東南アジアに拠点を持つことから、東南アジアも視野に入れているそう。「小さく出してみて、どこの国で伸びるか、何が人気になるかを見ながらやっていく」(加藤CEO)。

現在は海外経験のある加藤CEOが英語化を進めているが、コンテンツの国際化を担当するチームメンバーを探しているところという。

初心者から「作れる人」を生み出す

プログラミング学習サービスや、コンテンツは非常に多く、従来からある書籍市場とも重なるところがある。では、どういう方面を目指すのか? 現在は初中級者向けに見えるが、もっとプロ向けコンテンツへも拡充していくのだろうか?

「初心者という入り口で終わるつもりは全くありません。ただ、ターゲットは圧倒的に初心者です。いちばんのKPIは「作れる人」が出ることなんです。起業したり、実際の開発をやる人が生まれること。実際、Progateで学習した人がその後にエンジニアとして就職したという話も出てきています」(加藤CEO)

プログラミング学習サービスは、その特性を考えると、プログラミング関連書籍市場のように「一人勝ち」のような状態にはならないのかもしれない。実際、Progateユーザーであっても、より中級以上のコンテンツが多いドットインストールを併用するユーザーもいるという。

Progate代表の加藤氏は2014年9月に東京大学を休学。2017年3月末に退学している。インターンを入れて現在はチームメンバーは15人。加藤氏と同じく退学したメンバーもいれば、卒業したメンバーもいるそうだ。

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Airsortedが150万ポンドを調達ー競争が激化するAirbnb物件管理サービス

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Airbnbホストに対して、物件の管理やコンシェルジュサービスを提供しているスタートアップは山ほど存在する。シリコンバレーのPillowやヨーロッパのHostmaker、さらにはオンデマンドモデルを採用しているBnbsitterなど例をあげるとキリがない。

そんな中、現在急成長中で規模が1番大きいと言われているのが、ロンドン発のAirsortedだ。同社は1000軒もの物件を管理しており、その数は過去6ヶ月間に4倍も膨れ上がった。

さらなる成長、そしてオーストラリア・シドニーへの進出のため、Airsortedはこの度150万ポンドの資金調達を行ったと発表した。Concentricがリードインベスターとなった今回のラウンドには、500 StartupsとPi Labsも参加していた。

2015年初頭に設立され、不動産関連のテック企業にフォーカスしたPi Labsのアクセラレータープログラムの卒業生でもあるAirsortedは、Airbnbのホストの手間を軽減し、最終的にはホストがもっと利益を上げられるような数々のサービスを提供している。具体的には、ゲストの管理や、宿泊料の最適化、マーケティング、クリーニング、洗濯などのサービスをホストは利用できる。

他社と比較したAirsortedの利用料について尋ねたところ、共同ファウンダー兼CEOのJames Jenkins-Yatesは、同社を新規で利用するホストのほとんどが、他社サービスからの「乗り換え」ではなく、Airbnbホスト向けのサービスを初めて利用する人たちだと言う。

「私たち以外にもホスト向けのサービスを提供している企業はありますが、市場の規模は大きく、成長スピードもとても速いです」と彼は言う。「私たちは常にホストの利益を第一に考えています。というのも、Airbnbを通して手にいれたお金で素晴らしい生活を送ったり、夢を叶えたりと、素晴らしい物語はいつもホストから聞きますからね。また、素早く動くことこそが最大の戦略だと考えており、ホストとゲストの両方に高品質なサービスを継続的に提供できるよう努力しています」

Airsortedは管理している物件の売上の数%を手数料としてとっているため、Jenkins-Yatesは、Airsortedとホストの利害が一致していると話す。

「私たちは、顧客であるホストが最大限の収益を上げられるように、宿泊料の最適化からゲストに快適に過ごしてもらう仕組みづくりまで、管理している物件の価値を上げるためにできることは何でもやります」と彼は言う。

「Airbnb自体はカリフォルニアの企業ですが、登録物件のほとんどが、旅行の目的地として人気のヨーロッパの各都市にあるということは見落とされがちです」と500 StartupsのMatt Lernerは声明の中で語った。「2年弱で3都市(ロンドン、エディンバラ、ダブリン)へ進出するというのは、簡単なことではありませんでした。しかしAirsortedは、このマーケットの可能性を証明することに成功し、今後もスピードを維持しながら物件数を伸ばしていくことでしょう」

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

写真を手にとる楽しみ ― 写真プリントサービスのChatbooksが1150万ドルを調達

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オンライン上には、たくさんの写真のプリントサービスが存在する。ドットコム時代のShutterflyをはじめ、Apple、Amazon、Costoco、Walgreenなどの企業が同様のサービスを提供してきた。この分野では新しいスタートアップが常に誕生しつづけている ― 私たちが撮る写真の数を考えれば、それは当然だとも言えるかもしれない。スマートフォンやソーシャルメディアの急激な普及もそれを後押ししている。

写真のプリントサービスを展開するChatbookは現地時間2月7日、新たに1150万ドルを調達したと発表した。本調達ラウンドをリードしたのはAries Capital Partnersだ。これにより、同社の合計調達金額は2000万ドルとなった。

Chatbooksの競合となるBlurb、Mpix、Snapfish、Picaboo、Sincerely、Groovebookなどの企業は、ユーザーにデザインツールや高品質の写真用紙、そして最愛の人に写真を郵便で届けるサービスも提供している。しかしその一方で、Chatbooksはアルバムやホリデーカードなどの作成にフォーカスするスタートアップだ。ユーザーはChatbooksのアプリを利用することで、InstagramやFacebook、Google Photos、スマホのカメラロールに保存された写真をまとめたリアルなフォトアルバムを作成することができる。

Chatbooksには、1度きりのプリントサービスと会員制サービスが用意されている。会員制のサービスでは、自分のお気に入りの写真や、ある期間中にもっとも「Like」を獲得した写真を自動的にアルバム化してくれる。このアルバム作成サービスとして創業したChatbooksはその後、写真単体のプリントサービスやホリデーカードのプリントサービスへもビジネスを拡大している。同社はステーショナリー用品を開発するRifle Paper Co.などの企業と提供を結んでおり、そのパートナーシップによってユーザーに高品質の写真用紙や、クラシックなアルバムデザインを提供している。

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Chatbooksのアルバム

夫婦でChatbooksを共同創業したNate Quigley氏とVanessa Quigley氏は、今回調達した資金を利用して国内外のマーケット向けに新しいプロダクトを開発していくと話している。彼ら夫婦には7人の子どもがおり、妻であるVanessa Quigley氏は、デジタルに保存された無数の写真からホリデーカードやアルバムに使う写真を選ぶのに相当な時間を費やしていた。そこでChatbooksのアイデアが生まれたのだという。

CEOのNate Quigley氏はChatbooksのサービスについて以下のように語る。「当時Vanessaが思いついたのは、手の中で写真を眺めることの重要性です。(中略)プッシュ通知もスクリーンもなしで、座りながら手の中にあるフォトアルバムを眺める ― 紙のページに写真があるからこそ、自分にとってそれがもっと重要なものになります。しかし、そこに到達するための手段をできるだけ簡単にしなければなりません。そうじゃなければ、人々は写真をプリントしなくなるからです。Chatbooksとは『大切なものを手放さない』ためのアプリなのだと私たちは思っています」。

最近では動画やGIFの作成がとても容易になり、それを簡単にシェアするための環境も整っている。そのため、Chatbooksは今回調達した資金を利用して動画を「フィジカルな資産」に変えることができるプロダクトを開発していく予定だ。それが具体的にどのようなプロダクトなのか、彼は詳細を明らかにはしなかった。ユタ州プロボに拠点をおくChatbooksでは、現在40人の正社員が働いている。本ラウンド以降、同社は人員の強化も図っていく。

Aries Capital PartnersのAndy Dent氏は、彼らがコンシューマー向けのサービスに出資することは稀だとTechCrunchに話してくれた。しかし、Chatbooksがもつ可能性を目の当たりにして、例外的に出資することを決めたのだという。「ご年配や親世代の人々、そして若い大学生にいたるまで、今では誰もが写真を撮る時代になりました。しかし、写真を撮り、それを店に持って行って現像していた時代に比べ、撮影する写真が多くなりすぎた現代では、写真そのものが持つ楽しみが失われているように思います。Chatbooksは、手頃な値段のサービスを通して、その楽しみを復活させてくれる企業なのです」。

彼は加えて、Chatbooksは今後もシンプルなユーザーエクスペリエンスと、手頃な価格でありながら高品質なプロダクトの提供にフォーカスしていくだろうと話す。またDent氏は、それまで写真プリントサービスを利用したことのなかったユーザー層を取り込むことに成功したChatbooksを賞賛している。Quigley氏によれば、Chatbooksユーザーの半分がそういった人々なのだという。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

理学療法士がチャットやビデオで指導してくれる遠隔リハビリアプリ「Regain」

リゲイン代表取締役の渡辺拓貴氏

スマートフォンで「健康」の領域にアプローチするスタートアップは増えてきたが、本日2月8日にサービスを開始した「Regain」は、スマートフォンを使って、腰痛をはじめとした“体の痛み”を緩和する、遠隔リハビリテーションのためアプリだ。

サービスを運営するのはスタートアップのリゲイン。代表取締役の渡辺拓貴氏は早稲田大学でスポーツ科学を、米カリフォルニア州立大学で理学療法技術を学んだのち帰国。ロンドン五輪の馬術競技選手のトレーナーなどを経験したのち、米国にてReturn to the Fieldを設立した。

リゲイン代表取締役の渡辺拓貴氏

リゲイン代表取締役の渡辺拓貴氏

当初はRegainの米国展開を進めたが、日本企業からの引き合いも多かったことから帰国し、新会社のリゲインを設立。同社にサービスを移管するかたちで国内でのサービスを展開する。これに合わせて、病院や高齢者施設の運営を手がけるキャピタルメディカのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるキャピタルメディカ・ベンチャーズと個人投資家数人からの資金調達も実施したことを明らかにしている。金額は非公開だが数千万円程度。今回の調達はプレAラウンドという扱いで、シードラウンドではDGインキュベーション、コロプラネクスト、連続起業家の柴田陽氏や元プロ陸上選手の為末大氏などが出資している。

Regainを使うには、まずアプリ上で体の痛み(位置や度合い)やリハビリのプランに関する質問に回答する。この回答をもとに、同社ががネットワークする約300人の理学療法士から最適な人物をマッチング。あとはチャット(無制限)やビデオ通話(30分、月2回まで)、動画によるリハビリの指導を通じて痛みの解消を目指す。現在はアプリはiOS版のみだが、今秋にはAndroid版の提供も予定中だ。

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当面は法人を中心にサービスを展開する予定で、料金は1社30人の場合、1ユーザーあたり月額5000円程度。すでにディー・エヌ・エーのほか、ヤマト運輸、フジクラ(ケーブルや電線のメーカー)などでの導入実績を持つ。

渡辺氏は事業会社の人事について、「常に事業の生産性向上と医療やリハビリなどにかかる費用を気にしている」と説明する。大きな会社であれば、月に数千件、合計で数億円の負担をしているケースもあるという。Regainの導入によって、大きな費用のかかるリハビリで社員の稼働が止まることのないよう、“予防”のための施策を提示していくとしている。また今後は、高齢者の転倒予防に向けたヘルパー向けのサービスなども提供していく予定だという。

岡山発のドローンベンチャー、ドローンデパートメントが数千万円の調達

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岡山発のドローンスタートアップ、ドローンデパートメントは第三者割当増資での調達を本日発表した。引受先は、個人投資家千葉功太郎氏とオプティマ・ベンチャーズだ。調達額は非公開だが、数千万円規模という。

ドローンデパートメントはドローンに関連するサービスをいくつか提供している。ドローンデパートメントの主力事業は、ドローンパイロットとドローン空撮を依頼したい企業や団体をつなげるサービスだ。空撮に特化した「ドローン空撮.com」と空撮以外の業務を依頼できる「SkyAgent」がある。

プロモーション写真や動画の撮影から、施設の点検、農薬散布、行政の災害時対策の実験まで様々な依頼が寄せられているとドローンデパートメントの代表取締役を務める白石和也氏は話す。ドローン空撮.comとSkyAgentでは依頼内容を精査し、適任のドローンパイロットを選定して依頼主に提案する形をとっている。これは、パイロットがそれぞれで保有しているドローンの性能やパイロットが持つ他のスキルが異なるためと白石氏は説明する。例えば、プロモーション動画の撮影だったら、空撮だけでなく動画の企画から制作編集までできるパイロットが適任だろう。ドローンデパートメントでは、そのように依頼主のニーズを細かくヒアリングして、パイロットを紹介する。

現在、全国のドローンパイロット約170名が登録している。依頼内容によって価格は異なるが、空撮写真なら2万円から、空撮と動画編集と音楽がセットになったプロモーション動画制作プランは15万円から依頼できる。

岡山だからこそできること

ドローンデパートメントは2016年7月に創業した会社だ。白石氏はもともとウェブ集客などの仕事を手がけていて、集客に悩んでいたドローンパイロットの友人に手を貸したのがきっかけでこの事業を立ち上げたと話す。今回の資金調達はサービス開発や営業活動といった運用資金に充てる考えだ。ドローンデパートメントの本社は岡山県岡山市にあり、今月にも東京オフィスを正式にオープンする計画だ。東京にオフィスを開設するのは、取引先が多く、営業活動の拠点にするためだという。

本社が岡山にあると営業活動やスタートアップ関連の情報が入手しづらいという課題もあると白石氏は話す。岡山発の企業でエクイティーファイナンスを実施したのはドローンデパートメントを入れて3社ほどで、スタートアップという働き方の選択肢があることもあまり広まっていないそうだ。ただ、岡山県に本社があることには同社にとってメリットもあると白石氏は説明する。東京のような人工集中地区ではドローンの飛行可能な場所は限られているが、岡山でなら土地の所有者や管理者の許可を得れば比較的容易にドローンが飛ばせる。そのためドローンを使った新たな試みや実験が行いやすいと白石氏は言う。例えば、ドローンデパートメントでは畑の鳥獣対策にドローンを活用するための検証なども始めているそうだ。また、岡山の地理的にも海に山、川、島がそろっていて、様々なシチエーションに応じたドローンの検証に向いている。岡山だからこそできることがあり、それを事業に生かし、ゆくゆくは地域の活性化にも貢献していきたいと白石氏は話している。

金属部品用の3Dプリンター「Desktop Metal」がBMWなどから4500万ドルを調達

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金属部品を製造できるデスクトップ型3DプリンターのDesktop Metalは現地時間2月6日、シリーズCで4500万ドルを調達したと発表した。Desktop Metalは、従来の金属加工機械を稼働させるスペースを持たなかったり、資金的なリソースを持たない小規模ビジネスやデザイナーに金属製品を製造する手段を提供している。本調達ラウンドでリード投資家を務めたのはGV(以前のGoogle Ventures)で、他にもBMW iVenturesLowe’sの投資部門なども参加している。今回調達した資金を合わせ、Desktop Metalはこれまでに合計で9700万ドルを調達済みだ。

金属部品を製造する3Dプリンターを利用することで、医療機器やロボット、F1カーや宇宙船などの各種車両のテスト部品を製造することができる。しかし、3D SystemsEOSArcamなどが販売する産業用の3Dプリンターはとても高価なものであり、その値段は何十万ドルにもなる。

創業者兼CEOのRic Fulop氏は、かつてバッテリーを製造するA123 Systemsを創業した人物。彼は資金調達を伝えるプレスリリースのなかで、今回調達した資金によって同社初の3Dプリンターを研究開発フェーズからプロダクション・フェーズへと押し上げることができると語っている。彼自身、Desktop Metalを創業する以前からこの業界にある複数のスタートアップにアドバイザーとして参加したり、出資を行ったりしていた人物でもある。North Bridgeのパートナーだった彼は、当時MarkForged、OnShape、ProtoLabs、SolidWorksなどへの出資を担当していた。

Fulop氏はまだ、Desktop Metalに使われているテクノロジーの詳細を明かしていない。しかし、彼はTechCrunchに金属の加工にはレーザーを使用していないことを教えてくれた。Desktop Metalは同社製品である3Dプリンター、およびそれに使用される合金を販売することで収益をあげる。同社の3Dプリンターを使用すれば、金属製のプロトタイプや部品を製造して、すぐにそれを試してみることが可能だ。エンジニアが道路の上で作った「キャブレター」をその場でクルマに取り付けることなんかもできる。

Fulop氏は、Desktop Metalは様々な業界に急速に普及する可能性をもったプロダクトだと話す。「コンピューターや自動車、医療機器から産業用機械にいたるまで、私たちは何らかの金属部品を使用したモノに囲まれています」と彼は話す。「たとえ今は、3Dプリンターによって製造される部品の割合は全体のほんの一部分でしかないとしても、現在世界中で製造されている金属部品の総額は12兆ドルにもなります」。今回の調達ラウンドに参加したBMWやLowe’sや、前回のラウンドに参加したSaudi AramcoやGEといった戦略的出資者たちは、この点に目をつけたのだ。

マサチューセッツ州バーリントンを拠点とするDesktop Metalの競合企業として、イスラエルのXJetなどが挙げられる。また、デスクトップ型3Dプリンターに利用できる金属を混ぜ込んだプラスチック・フィラメントを開発するVirtual Founderも競合企業の1つだ。

BMW iVenturesのマネージングパートナーであるUwe Higgen氏によれば、Desktop MetalはミュンヘンにあるBMWの施設で、クルマ業界における同製品の利用可能性を探っている最中だという。また彼は、今回調達した資金を利用してDesktop Metalは第1号プロダクトを発売する予定だと話す。加えて、ローコストな金属部品の製造手段は、クルマのデザインや開発の現場に即効性のあるインパクトを与える可能性を秘めていると彼はいう。長期的には、「この種のテクノロジーによって、クルマ業界や他の業界の部品製造の現場に存在した様々な問題が解決されることになるでしょう」とHiggen氏は話している。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

スタートアップが借入前に知っておくべきこと

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【編集部注】執筆者のMartin MacmillanはPollen VCのCEO。フィンテック企業である同社は、revenue recycling(売上のリサイクル)というコンセプトを考え出し、世界中のアプリディベロッパーに、事業の成長に関するコンサルティングサービスと売掛債権担保ローンを提供している。

アプリ・ゲーム事業を成長させるために資金調達を行う場合、スタートアップは株式を手放す以外にも、いくつか負債ベースのアプローチをとることができる。自分たちに合った調達手段を選ぶというのはとても重要なことで、誤った選択をすると、金銭面そして金銭面以外でもダメージを受ける可能性がある。

賢いディベロッパーは、売掛債権を担保に入れたりスタートアップ向けのローンを組んだりすることで、資金調達コストを抑えつつ、株式の希薄化を防いでいる。しかし多くの人は契約書の細部まで読み込んでおらず、契約内容に関して必要以上に譲歩してしまっているケースもある。それでは、どうすればこのような失敗を防ぐことができるのだろうか?

返済順位について理解する

正しい資金調達手段を選ぶ上で大切な点のひとつが、返済順位について知ることだ。企業が銀行やノンバンクから借入を行うときは、何かしらの資産を担保として差し入れなければならない。これが債権者の抵当権(英語では”lien”や”charge”)と呼ばれるものだ。そして企業が破産した際に、債権者はそれぞれの返済順位に応じて債権を回収することができる。

このときにしっかりと返済を受けるために、債権者は特定の事業用資産に対して正当な抵当権を設定しておかなければならない。しかし、全ての債権者が平等というわけではなく、一般的には以下のようなランク付けに応じて、返済順位が決まる。

  • シニア・セキュアード・ローン(Senior secured debt):特定の資産に抵当権が設定されているもの
  • シニア・アンセキュアード・ローン(Senior unsecured debt):抵当権が設定されていないローン
  • 優先株(Preferred equity):一般的には契約内容に従って、まずはVCファンドに対して返済が行われる
  • 普通株(Common equity):ファウンダー、エンジェル投資家、従業員などが保有している株式

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出典:Pollen VC

デットファイナンスを検討する場合、上記の返済順位を理解することは極めて重要だ。さらに、あるローンの担保にする資産についても、しっかりと把握しておく必要がある。というのも、その資産に抵当権を設定している債権者は、他の債権者よりも優先的に返済を受けることになるからだ。つまり、企業が破産したときに彼らは優先的に債権を回収することができる。また、既に担保に入れられている資産に、他の債権者が抵当権を設定することはできない。

担保に入れる資産は、借入資金の使途に合ったものを選ばなければならない。

担保に入れる資産は、借入資金の使途に合ったものを選ばなければならない。例えば、もしもあなたの会社が、事業の成長のために売掛金を担保に借入を行うとすれば、実際に売掛金だけを担保とするべきだ。一般的に、債権者はデフォルト時のリスクを抑えるために、できるだけ広い範囲に抵当権を設定しようとするが、きちんと担保とする資産が決まっていれば、他のものを保証として含める必要はない。

例えば、家を買うときにローンを組んだ場合、その家を担保に入れなければならない。しかし銀行は、自動車や将来的な収入(もしくは知的財産権)など、それ以外の資産に抵当権は設定しない。それと同じことだ。

財務報告とコベナンツ

借入を行う際に見落とされがちなのが、財務報告とコベナンツ(新たな借入についてなど、ローンに付随するオペレーション上のルール)だ。

債権者にもよるが、債務者の財務状況を常時把握するために、詳細な財務報告書の提出が求められることがほとんどだ。さらに、毎週報告書を提出しなければならないケースもあるため、スタートアップは報告書をまとめるためのリソースを社内から捻出できるかしっかりと検討しなければならない。代替案として、コストさえ合えば、報告書作成業務を会計士にお願いするというのもアリだろう。

債権者がここまで頻繁に詳細なレポートを求める主な理由は、会社の財務状況、具体的にはコベナンツがきちんと守られているかをしっかりと確認するためだ。彼らがチェックするポイントは、バランスシート上の負債のレベルや、返済を受けるだけの資産がきちんと残っているかなどだ。コベナンツで規定されている数値は、絶対値の場合もあれば比率の場合もある。例えばDSCR売掛債権回転率は、企業の返済能力を測る上で便利な指標だ。

最悪の場合を想定する

どんな形であれ、借入を行う際に大切なのは、「上手く行かなかった場合」のシナリオをいつも頭に入れておくことだ。債権者はリスクやマイナス面に目を向けがちな一方、アーリーステージの企業は、当然のように「上手く行った場合」のシナリオばかり考えている。だからこそ、借入を行う企業は上手く行かなかった場合のことをよく考え、どの資産であれば最悪手放せるかということを検討しなければならない。経営者は、会社のファウンダーや経営層だけでなく、投資家のことも守らなければいけないのだ。

もしもコベナンツが破られてしまった場合、債権者はすぐにでも抵当権を実行し、担保に入っている資産を回収してしまう可能性が高い。このプロセスはものすごいスピードで進む可能性があり、スタートアップは事務処理に追われるあまり、新たな契約を結んだり、他から資金を調達したりする暇さえないこともある。

借入に関する決断は、事業の成長に長期的な影響を及ぼす可能性がある。

財務状況が良く、多額の資金を投じて開発した新ゲームのローンチも間近という企業を思い浮かべてみて欲しい。この時点での経営指標はまずまずだが、その後新ゲームのローンチは遅れ、綱渡り状態に入ってしまったとしたらどうだろう。さらに既存のアプリやゲームからのキャッシュフローは減少し、他社から請け負ったプロジェクトの支払も遅れたとしよう。ここまでくると、この会社はコベナンツに抵触してしまい、ベンチャーローンの提供者は、担保権を行使せざるをえなくなる。その結果、企業は金策に走る間もなく、管財人の管理下に置かれてしまうのだ。

債務者の義務とは、あくまで債権者(上記の場合で言えばベンチャーローンの提供者)に対するものであって、その企業の株式を保有している投資家に対するものではない。そのため、破産申請を行った企業の知的財産は債権者への返済のために叩き売られ、残り物を株主やファウンダー、共同所有者の間で分け合うことになる。

ファイナンスに関する判断とその影響

アプリ業界にいる企業が借入を検討する際、事業内容を理解している債権者を選ぶということが重要だ。まず、業界やリスクを理解している債権者であれば、低い金利で借入を行える可能性がある。さらに、必要な分だけの資産を担保として差し入れればよいため、将来新たに借入を行うときにも負担になりづらい。

一方、さまざまな業界で貸出を行っている業者は、ある業界に特化した知識を持っていないことが多いため、リスクを過大評価し、金利は高い上、抵当権の設定範囲も広い傾向にある。

もしもあなたが、自分のアプリ事業のために借入を考えているとしたら、特に担保が絡む場合は、実際に契約書を結ぶ前に上記のような点を理解しておいた方が良いだろう。借入に関する決断は、事業の成長に長期的な影響を及ぼす可能性があるのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

スタートアップが借入前に知っておくべきこと

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【編集部注】執筆者のMartin MacmillanはPollen VCのCEO。フィンテック企業である同社は、revenue recycling(売上のリサイクル)というコンセプトを考え出し、世界中のアプリディベロッパーに、事業の成長に関するコンサルティングサービスと売掛債権担保ローンを提供している。

アプリ・ゲーム事業を成長させるために資金調達を行う場合、スタートアップは株式を手放す以外にも、いくつか負債ベースのアプローチをとることができる。自分たちに合った調達手段を選ぶというのはとても重要なことで、誤った選択をすると、金銭面そして金銭面以外でもダメージを受ける可能性がある。

賢いディベロッパーは、売掛債権を担保に入れたりスタートアップ向けのローンを組んだりすることで、資金調達コストを抑えつつ、株式の希薄化を防いでいる。しかし多くの人は契約書の細部まで読み込んでおらず、契約内容に関して必要以上に譲歩してしまっているケースもある。それでは、どうすればこのような失敗を防ぐことができるのだろうか?

返済順位について理解する

正しい資金調達手段を選ぶ上で大切な点のひとつが、返済順位について知ることだ。企業が銀行やノンバンクから借入を行うときは、何かしらの資産を担保として差し入れなければならない。これが債権者の抵当権(英語では”lien”や”charge”)と呼ばれるものだ。そして企業が破産した際に、債権者はそれぞれの返済順位に応じて債権を回収することができる。

このときにしっかりと返済を受けるために、債権者は特定の事業用資産に対して正当な抵当権を設定しておかなければならない。しかし、全ての債権者が平等というわけではなく、一般的には以下のようなランク付けに応じて、返済順位が決まる。

  • シニア・セキュアード・ローン(Senior secured debt):特定の資産に抵当権が設定されているもの
  • シニア・アンセキュアード・ローン(Senior unsecured debt):抵当権が設定されていないローン
  • 優先株(Preferred equity):一般的には契約内容に従って、まずはVCファンドに対して返済が行われる
  • 普通株(Common equity):ファウンダー、エンジェル投資家、従業員などが保有している株式

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出典:Pollen VC

デットファイナンスを検討する場合、上記の返済順位を理解することは極めて重要だ。さらに、あるローンの担保にする資産についても、しっかりと把握しておく必要がある。というのも、その資産に抵当権を設定している債権者は、他の債権者よりも優先的に返済を受けることになるからだ。つまり、企業が破産したときに彼らは優先的に債権を回収することができる。また、既に担保に入れられている資産に、他の債権者が抵当権を設定することはできない。

担保に入れる資産は、借入資金の使途に合ったものを選ばなければならない。

担保に入れる資産は、借入資金の使途に合ったものを選ばなければならない。例えば、もしもあなたの会社が、事業の成長のために売掛金を担保に借入を行うとすれば、実際に売掛金だけを担保とするべきだ。一般的に、債権者はデフォルト時のリスクを抑えるために、できるだけ広い範囲に抵当権を設定しようとするが、きちんと担保とする資産が決まっていれば、他のものを保証として含める必要はない。

例えば、家を買うときにローンを組んだ場合、その家を担保に入れなければならない。しかし銀行は、自動車や将来的な収入(もしくは知的財産権)など、それ以外の資産に抵当権は設定しない。それと同じことだ。

財務報告とコベナンツ

借入を行う際に見落とされがちなのが、財務報告とコベナンツ(新たな借入についてなど、ローンに付随するオペレーション上のルール)だ。

債権者にもよるが、債務者の財務状況を常時把握するために、詳細な財務報告書の提出が求められることがほとんどだ。さらに、毎週報告書を提出しなければならないケースもあるため、スタートアップは報告書をまとめるためのリソースを社内から捻出できるかしっかりと検討しなければならない。代替案として、コストさえ合えば、報告書作成業務を会計士にお願いするというのもアリだろう。

債権者がここまで頻繁に詳細なレポートを求める主な理由は、会社の財務状況、具体的にはコベナンツがきちんと守られているかをしっかりと確認するためだ。彼らがチェックするポイントは、バランスシート上の負債のレベルや、返済を受けるだけの資産がきちんと残っているかなどだ。コベナンツで規定されている数値は、絶対値の場合もあれば比率の場合もある。例えばDSCR売掛債権回転率は、企業の返済能力を測る上で便利な指標だ。

最悪の場合を想定する

どんな形であれ、借入を行う際に大切なのは、「上手く行かなかった場合」のシナリオをいつも頭に入れておくことだ。債権者はリスクやマイナス面に目を向けがちな一方、アーリーステージの企業は、当然のように「上手く行った場合」のシナリオばかり考えている。だからこそ、借入を行う企業は上手く行かなかった場合のことをよく考え、どの資産であれば最悪手放せるかということを検討しなければならない。経営者は、会社のファウンダーや経営層だけでなく、投資家のことも守らなければいけないのだ。

もしもコベナンツが破られてしまった場合、債権者はすぐにでも抵当権を実行し、担保に入っている資産を回収してしまう可能性が高い。このプロセスはものすごいスピードで進む可能性があり、スタートアップは事務処理に追われるあまり、新たな契約を結んだり、他から資金を調達したりする暇さえないこともある。

借入に関する決断は、事業の成長に長期的な影響を及ぼす可能性がある。

財務状況が良く、多額の資金を投じて開発した新ゲームのローンチも間近という企業を思い浮かべてみて欲しい。この時点での経営指標はまずまずだが、その後新ゲームのローンチは遅れ、綱渡り状態に入ってしまったとしたらどうだろう。さらに既存のアプリやゲームからのキャッシュフローは減少し、他社から請け負ったプロジェクトの支払も遅れたとしよう。ここまでくると、この会社はコベナンツに抵触してしまい、ベンチャーローンの提供者は、担保権を行使せざるをえなくなる。その結果、企業は金策に走る間もなく、管財人の管理下に置かれてしまうのだ。

債務者の義務とは、あくまで債権者(上記の場合で言えばベンチャーローンの提供者)に対するものであって、その企業の株式を保有している投資家に対するものではない。そのため、破産申請を行った企業の知的財産は債権者への返済のために叩き売られ、残り物を株主やファウンダー、共同所有者の間で分け合うことになる。

ファイナンスに関する判断とその影響

アプリ業界にいる企業が借入を検討する際、事業内容を理解している債権者を選ぶということが重要だ。まず、業界やリスクを理解している債権者であれば、低い金利で借入を行える可能性がある。さらに、必要な分だけの資産を担保として差し入れればよいため、将来新たに借入を行うときにも負担になりづらい。

一方、さまざまな業界で貸出を行っている業者は、ある業界に特化した知識を持っていないことが多いため、リスクを過大評価し、金利は高い上、抵当権の設定範囲も広い傾向にある。

もしもあなたが、自分のアプリ事業のために借入を考えているとしたら、特に担保が絡む場合は、実際に契約書を結ぶ前に上記のような点を理解しておいた方が良いだろう。借入に関する決断は、事業の成長に長期的な影響を及ぼす可能性があるのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

人工知能でサイト改善提案「AIアナリスト」の開発元が3.5億円の調達、電通との提携も視野に

Google Analyticsをサイトに導入すると訪問数やコンバージョン率など様々なデータが取れる。しかし、情報が多すぎて、具体的にサイトの何をどう改善させたらいいか迷ってしまうこともあるだろう。「WACUL(ワカル)」が提供するウェブサイト分析の人工知能「AIアナリスト」は、Google Analyticsのアクセス解析を元に、課題発見から課題ごとの改善方針提案まで自動で行うサービスだ。本日、WACULは総額3.5億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先は、電通デジタル・ファンドとジャフコの2社だ。

企業のマーケッターはサイトのパフォーマンスを改善するのに、Google Analyticsのデータを見て改善策を立案し、施策を実施した後は効果検証するといった一連の作業を行っているだろう。WACULのAIアナリストは、サイト分析からサイトの改善提案までを自動化する。またマッケッターがサイトの改善策を実施したら、その後のアクセス状況の効果検証までサービス内で把握できる。AIアナリストの利用料は月額4万円からだ。

WACULは、前職でユーザビリティコンサルタントを務めていた大津裕史氏が2010年9月に創業した会社だ。2015年6月にはジャフコより総額3億円の資金調達を実施した。AIアナリストは2015年4月にサービスをローンチし、登録サイトは9000を超えたそうだ。

今回の資金調達は、AIアナリストの開発を進めるとともに技術開発やR&Dに充てる考えだ。また、今回引受先に電通デジタル・ファンドが参加しているが、電通グループとは業務提携することも視野に入れているという。WACULはプレスリリースで以下のようにコメントしている。

「今回の電通デジタル・ファンドからの資金調達は、多くの広告・メディアに関する豊富なデータを持つ電通グループとデータ分析に強い弊社、両社の強みを活かした業務提携までを視野にいれています」

ロボットが自動で資産管理 ― フランスのYomoniが540万ドルを調達

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フランスのスタートアップ、Yomoniロボアドバイザーを開発する有望なスタートアップだ。貯蓄の一部を預けると、あとはロボットが自動的に株式や債券を売買してあなたのポートフォリオを管理してくれる。Yomoniは現地時間1日、既存投資家のCrédit Mutuel ArkéaとIéna Ventureから540万ドルを調達したと発表した。

同時に、Yomoniのマネジメントチームは自社株を買い戻して保有比率を引き上げている。

ロボアドバイザーという言葉に馴染みがないのであれば、Yomoniのことをフランス版のWealthfrontやBettermentと考えれば分かりやすいかもしれない。これらの米国企業は成長しつつあるが、フランスではロボアドバイザーは比較的新しい概念だ。

Yomoniは今回調達した資金を利用して人員の強化を図るとともに、サービスに新機能を追加する予定だ。その例としてYomoniが挙げたのは、子どもの将来のために資産を築いておきたい親に向けた新しいプロダクトだ。また、モバイルアプリの開発についても言及があった。

Yomoniを利用して資産運用を始める場合、自分が安全志向の投資をしたいのか、または逆にリスキーな投資をしたいのかを選ぶことができる。この選択によってポートフォリオの運用成果が変わることになる ― そしてもちろん、損失を出す可能性もある。しかし、これまでのところYomoniのポートフォリオは良い成績をあげている。2016年、Yomoniが管理するポートフォリオの資産価値は2.3〜7.1%上昇しているのだ。

Yomoniは今後、手数料によるマネタイズ方法を採用する予定だ ― 手数料率は、年間1.6%程度になるとのこと。先ほど述べたパフォーマンスは手数料を差し引いた後の成績だ。

Yomoniはこれまでに2000人のユーザーを獲得している。管理するポートフォリオの総額は1290万ドルだ(ユーザー1人あたり約6500ドル)。しかし、このトレンドは加速しており、Yomoniは2020年までに運用額を10億8000万ドルまでに引き上げたいとしている。同社はこの目標達成のためにヨーロッパ各国へビジネスを拡大することも考えているようだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

6週間先の価格を予測 ― オンライン不動産取引のKnockが3200万ドルを調達

Human hands holding little house and money.

オンライン不動産サービスのKnockがシリーズAで3200万ドルを調達した。リード投資家はRRE Venturesだ。Truliaの元役員が創業したKnockは、オンラインの不動産売却サービスを展開している。手数料は6%。しかし、従来の不動産取引サービスとは異なる点がある。Knockで不動産を売却する場合、ユーザーは売却前に相場相応のリターンを受け取ることができる。もし不動産を売却することができなかった場合、Knockがその不動産を買い取ることになる。

Knockや、その競合であるOpenDoorOfferPadが解決しようとする問題はシンプルだ:不動産を売却する、もしくは購入する場合、タイムラインは当てにならないのだ。オンラインの不動産マーケットプレイスというアイデアを植え付け、それと予測分析による価格予測を融合させることによって、これらのスタートアップは不動産取引に伴う痛みや不確実性を取り除こうとしている。

Knockは同社のモデルをアトランタとジョージアでテストしている最中だ ― この地域は不動産市場のボラティリティが低いことで知られている。先の不動産不況は、完全なる市場の崩壊だったと語られることが多い。しかし、ワシントンDCなどのいくつかの市場は、ラスべカスなどの市場に比べてダメージが少なかった。

「私たちが市場を選ぶときの基準は、地域経済がよく多様化されていることと、その市場のリスクが低いことです」とKnock CEOのSean Blackは説明する。

Knockによれば、同社の長期的な目標はすべての不動産市場へとビジネスを展開することだという。しかし、アイオワなどの農村部や、ニューヨークやサンフランシスコなどの活発過ぎる市場については、リスクを低減してユーザーのサービス利用を促すためには、より多くのデータが必要だとも認めている。

Knockでは、バランスシートに抱える不動産在庫は全体の10〜20%程度に留めたいとしている。競合企業であるOpenDoorでは、Knockよりも多くのリスクを許容している。彼らはプラットフォーム上のすべての不動産を買い取っているのだ。Knockの課題とは、彼らが買い取った不動産が逆選抜(アドバースセレクション)のプロダクトにならないようにすることである。言い換えれば、最悪な質の不動産在庫を抱え過ぎないようにするということだ。

そのため、Knockが取り扱う不動産には厳しい審査が課される。彼らがフォーカスするのは15〜50万ドルの価値を持つ不動産で、すべての不動産を詳しく検査して悪い部分を取り除いている。

しかし、在庫の質をどれだけ高めたとしても、不動産ビジネスでは適正な価格付けが重要だ。正しいデータを最初に得るものが不動作を最初に売買できる。つまりKnockは、自分たちのサービスが不動産の売り手、買い手にとってもっともシンプルで手間のかからないプラットフォームだということに賭けているのだろう。

RRE VenturesのRaju Rishiは、Knockのアプローチはそこまで資本を必要とするビジネスモデルではないと説明する。また、6週間先の不動産価格を予測することにフォーカスすることで経済的な不確実性を減らし、同社のコンピュテーショナル・モデルが乗り越えなければならない障害を減らしていると話す。

不動産を売却する個人はKnockによって保護されている。不動産が実際に取引される前に、ユーザーがKnockとの契約に合意することで、Knockは不動産の売却価格分の資金をリザーブしておく。保険会社の要領だ。

「不動産市場には浮き沈みのサイクルがあります。私たちはその波に上手く対応できるように準備をしておかなければなりません」とBlackは語る。「私たちが予測するのは6週間先の不動産価格だけでいい。不動産の取引は大統領選よりも頻繁に発生します。だから、予測も簡単なのです」。

もし必要とあらば、Knockは在庫の不動産を貸し出して経済的なダメージを軽減することもできる。Blackstoneもこれと似たアプローチを採用しており、在庫不動産を貸し出して収益を得ている。

Knockによれば、SEC提出書類に記載されているイニシャルクローズの金額は1250万ドルだという。また、今回のシリーズAで調達した金額はベンチャーデットであり、その負債をもって購入ができる不動産の制限はなしという条件だそうだ。本調達ラウンドには、RedpointGreycroftCorrelation VenturesGreat Oaks Venture CapitalFJ Labsも参加している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

アルゴリズムで10分審査、中小企業向け融資のクレジットエンジンが約1億円を調達

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中小企業向けのレンディングサービスを展開する日本のクレジットエンジンは1月30日、シードラウンドで総額1億1000万円を調達したと発表した。同社は2016年の9月末にDraper NexusVoyage Groupから約6000万円を調達しており、今回新たに米国の500 Startupsおよび500 Startups Japan、そしてフリービットインベストメントなどから約5000万円を調達してシードラウンドを完了した。クレジットエンジンは今回調達した資金をテスト融資用の原資や人員強化のための費用に充てる予定だ。

また、クレジットエンジンは本日よりオンライン融資サービス「LENDY(レンディ)」のベータ版提供を開始する。

LENDYは、中小企業がもつオンラインデータを活用したレンディングサービスだ。オンラインデータをもとに融資判断を自動で行う独自のアルゴリズムを利用することで、ペーパーレスで人件費を抑えたスピード審査を実現できる。

また、一度きりの信用評価をするのではなく、リアルタイムなオンラインデータを取得することで継続的な信用評価を行うことができる。クレジットエンジンは、この継続的な信用評価によって貸し倒れリスクなどを軽減できると主張している。審査の手続きにかかる時間は10分から15分程度だ。

現状の中小企業金融が抱える課題

クレジットエンジン代表取締役の内山誓一郎氏によれば、中小企業金融が抱える課題は「既存の金融機関が中小企業や個人事業主の資金ニーズに適切に応えられていない」点だと語る。現状、中小企業や個人事業主が利用できる融資サービスは大きく分けて3つある。伝統的な銀行や信用金庫からの融資、スピーディな審査や無担保で融資を受けられることが特徴のビジネスローン、そして売掛金をすぐに現金化できるファクタリングだ。

中小企業が銀行などから資金を借りるときに障害となるのが、煩雑な手続きと融資完了までにかかる長い時間だ。規模の小さな事業体がもつリソースは少なく、詳細な事業計画などを作成する時間がなかったり、そもそも提供できる担保がないこともある。また、融資が完了するまでに2ヶ月から3ヶ月もの時間がかかり、急な資金需要には対応できない。伝統的な金融機関では、決められた融資枠の範囲であればいつでも自由に融資を受けることができる「当座貸越契約」を結ぶこともできるが、この契約を取り交わすことができるのは規模の大きな優良企業に限られる。

一方で、急な資金調達のニーズに応えてくれるのが、融資完了までの時間の短さが特徴のビジネスローンやファクタリングだ。しかし、ビジネスローンは無担保で借りられるが金利が高い。また、この方法でも書類準備には手間がかかる。ファクタリングには売掛金回収の手間が省けるという利点はあるが、請求書を発行するたびに事務作業をしなければならず、手数料も高いという難点がある(調達金額の5%から20%程の手数料が一般的だ)。

リアルタイムにオンラインデータを取得し、独自のアルゴリズムで審査

2016年7月に創業のクレジットエンジンは、中小企業がもつオンラインデータを活用することで融資にかかる時間や手間をできるだけ減らすことを目指している。

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ここでいうオンラインデータとは、例えば、銀行のインターネットバンキングから取得する残高や入金などの記録、クラウド会計サービスから取得する会計データ、ECサイトから取得する日々の売上データなどを指す。また、通常の審査では利用されない企業やショップの口コミなどの定性的なデータも利用していくようだ。本日発表のプレスリリースでは、LENDYのサービス連携先としてAmazon、スマレジ、住信SBIネット銀行、freee、楽天銀行などが挙げられている。

取得したデータを元に、クレジットエンジンが独自で開発する審査アルゴリズムが自動的に審査判断を下す。審査に通った事業体には融資枠が設定され、以後その範囲内であれば自由に借り入れが可能になる。

内山氏によれば、同社は将来的に顧客とのコミュニケーションの自動化のためにチャットボットを利用する予定でだと話す。これが実現すれば100%に近い「全自動の融資サービス」が可能になるかもしれない。内山氏は、「(全自動の融資サービスは)技術的には可能だと思っている。将来的にはそのようなサービスを目指したい」と語る。

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クレジットエンジンは、LENDYを通してユーザーに最大100万円(正式版では最大1000万円までとなる予定)を短期で貸し付け、そこから金利収入を得る。金額の上限設定について内山氏は、「事業の開始資金など、まとまった資金を借りるための融資サービスでは、金利などの面で銀行や信用金庫が圧倒的に有利になる。そのため、小規模だが急な資金ニーズに応えるというマーケットが当社が狙える分野だと思った」と話す。

ベータ版における貸付利率は融資額が100万円以上の場合8%~15%、100万円未満では13%~18%だ。金利水準だけを比較すると、一般的なビジネスローンの金利とあまり変わらないことが分かる。これについて内山氏は、「最初から金利水準で攻めるのではなく、まずは利便性で差別化を図る。ただ、審査モデルの実績も積み上がっていけば、価格面でも勝負できる可能性はある」と話す。

日本でもレンディングサービスが普及する土壌ができあがってきた

現在、中小企業向けのレンディングサービスは欧米を中心に普及してきている。同様のサービスを展開する米国のOnDeckによる融資総額は50億ドルに達している。その背景にあるのは、クラウド会計など各種クラウドサービスの急速な普及だ。

クラウド会計サービスのQuickBooksOnlineを例にすると、同社のユーザー数は2010年頃を境に急激に伸び、2015年度におけるユーザー数は150万人となっている。「日本でもクラウド会計のfreeeやPOSレジアプリのAirレジなどの普及が急速に進んでおり、中小向けレンディングサービス普及の土壌はできあがっている」と内山氏は語る。

本調達ラウンドに参加したDraper Nexusの倉林陽氏も、伝統的な金融機関以外からのレンディングサービスは重要な投資テーマの1つだと語る。「オルタナティブ・レンディング分野は投資テーマとして2015年からEIRを交え調査しており、専業でSMB向けにこの事業に取り組むスタートアップ企業を日本で創りたいと思っていました。そこに内山さん含むクレジットエンジンが現れ、弊社のEIRだった井上氏が参画する形でチームが強化されたのを受け、出資を決めてシードラウンドの調達を支援しました」。

昨年12月、OnDeskとアメリカ大手金融機関のJP Morganとの業務提携が発表された。クレジットエンジンも「2年後をめど」に自社の与信システム・プラットフォームを伝統的な金融機関に提供していく予定だ。

500 Startup JapanのJames Riney氏は、「米国においてオルタナティブレンディング領域のスタートアップが成功した要因は、シームレスなオンライン体験をレガシーな業界に持ち込んだことでした。日本においても、いずれ同様のことが生じていくと考えられます」と日本のレンディング・ビジネスの将来を語る。

そこで懸念されるのが、日本の伝統的な金融機関がスタートアップの技術を受け入れる体制にあるのかどうかだ。前職のマネーフォワード社では中小企業向けのクラウドサービス部門に所属していた内山氏は、「伝統的な金融機関からもFinTechを取り入れたいという気持ちは伝わってくるが、現状ではまだ先進的な試みをしているところだけだ」とコメントしている。

ところで、クレジットエンジンのビジネスモデルは、不特定多数の個人などから資金を集めた資金を貸し付けるというP2P型の「ソーシャルレンディング」ではない。米国ではP2P型のレンディングサービスも増えてきていて、日本にもmaneoなどがある。

ソーシャルレンディングのモデルを選択しなかった理由について内山氏は、「LENDYは中小企業や個人事業主などをターゲットにしたサービスである以上、ある程度の確率でデフォルトが起こることは避けられない。そのため、個人から資金を集めるP2P型のモデルはLENDYには適さないと思った。それに加えて、P2Pでは資金調達コストが5%から8%かかる。多い時では10%かかることもある。デフォルトが発生することを考えると、そのコストでは成り立たないと思った」と説明する。

内山氏によれば、金融機関の融資サービスの対象とならない(従業員が20名以下の規模の)事業者は、全国で350万社を超える。現在、中小企業に対する貸し付け残高は160兆円で、その内の2兆円が無担保ローンの貸し付け残高だという。そのマーケットがクレジットエンジンの事業領域だ。

オハイオ州の自動運転車テスト施設が4500万ドルを調達 ― 66万坪の新施設を建設へ

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オハイオ州のTransportation Research Center(TRC)は新たに、自動運転車の研究とテストを専門に行う540エーカー(約66万坪)の施設を建設する。同施設には、12レーンの交差点や、組み換え可能な高速道路が50車線、そしてフットボールコート10面分のスペースが建築される予定だ。オハイオ州立大学、オハイオ州が運営するファンド、Jobs Ohioからの出資により可能になった。

この新しい施設では、都市部、農村部、郊外など様々なロケーションを再現することができる。また、さまざま交通状況や交通事故も再現することが可能で、ネットワーク・コネクティビティやスマート・インフラストラクチャーのテストも行うことができる。

TRCは「北米最大級の自動運転車のテスト施設」と呼ばれているものの、今月初めに公開された政府公認の自動運転車のテスト施設には含まれていない。それでも、TRCは合計で4500エーカー(約550万坪)ものテスト施設を有している。TRCは現在、Smart Mobility Advanced Researchの第2フェーズ、第3フェーズを実施するための資金、そしてTest Centerの建設資金を調達しようとしている最中だ。そのTest Centerには、フルスケールで再現された高速道路や、冬場でも利用できる室内テスト施設が含まれる。

TRCがあるのはオハイオ州コロンバスだ。ここは、同じくオハイオ州のダブリン、メアリーズビル、ユニオン群と協力して、公道での自動運転車テストを実現させようとしている地域だ。ホンダの北米拠点の多くはこの地域で展開されているため、自動車業界との結びつきが強い地域でもある。

TRCのような自動運転車の性能試験場はいま、有望な出資先として様々な大学やファンドから注目を集めている。自動車業界は新しい収益モデルを探そうと必死になっており、将来的に都市部での交通渋滞がより深刻な問題となると考えられているなか、自治体はTRCのような性能試験場を利用して将来の都市部における交通需要を予測しようとしているのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter