20代の転職意欲を可視化ブーストするポジウィルが資金調達

ポジウィルは11月12日、STRIVE(ストライブ)、柳澤安慶氏、ほか個人投資家への第三者割当増資による資金調達を発表した。調達額は非公開。今回調達した資金は、採用やサービス開発、マーケティングとして活用し、事業基盤の強化を図るという。

同社は20178月設立のスタートアップ。転職そのものではなく、その前段階をサポートする点で一般的な転職支援サービスとは異なっている。転職希望者が同社のサービスを有償で利用することで、さまざまなアドバイスを専門家から受けられるのが特徴だ。

具体的には、累計1000人以上の利用実績があるオンライン有料転職相談サービス「そうだんドットミー」と、転職に向けた2カ月集中プログラム「ゲキサポ!転職」の2サービスを運営している。ゲキサポ!転職は、2カ月で税別30万円の費用がかかるが、2019年7月末のリリース以降、すでに100名以上が利用しているとのこと。

一般的な転職サービスは、優秀な人材を確保したい雇用主である法人から、採用が決定した人材の年収の3分1、もしくは月収3カ月ぶんほどの成功報酬を受け取るというのが基本的なマネタイズの仕組みだ。一方ポジウィルは、転職先を見つけるサービスでないため人材紹介業ではない。同社は転職希望者が、どういった仕事に就きたいのか、自分の価値はどこにあるのかといった就職活動の基礎的な部分を徹底的に鍛え直すことに特化している。

就職氷河期を経験している読者にとっては疑問符が3つほど付くサービスだが、現在の20代を取り巻く環境は当時とはまったく異なっている。リクルートキャリア出身でポジウィルの代表を務める金井芽衣氏によると「ゲキサポ!転職は20代のビジネスパーソンをターゲットとしており、若年層の就職活動に必要とされている」と語る。

スマートフォンやタブレット端末が普及した現在では、さまざまな企業に対してエントリーシートを一斉に送信できるほか、ネット企業を中心に積極的な採用活動を進めているので最近は人手不足が常態化している。特にプログラマーやエンジニアはかなりの売り手市場になっている。そして、多くの企業が事業内容だけだなく、社員教育方針、福利厚生などをウェブサイトに詳しく掲載しているため、多くの情報を短時間で集めることもできる。テクノロジーの発達によって、就職や転職を希望する側は情報過多になっているという現状がある。

その結果、「自己分析や明確な動機、会社への情熱がないままに就職が決まり、入社後に違和感を覚えて1年未満で辞めてしまう若者が増えている」と金井氏。「難易度の高い大学に努力して入った学生は特に、過去に必死に頑張ってきた経験があるため、入社後の仕事内容にやりがいや達成感を得られずモチベーションが下がってしまう傾向がある。彼らはもっともっと頑張って仕事をしたいと考えています」と続ける。ゲキサポ!転職はこういったビジネスパーソンに対し、2カ月間集中して自己分析や取り組みたい仕事などを洗い出したうえで、目的を持って転職に臨める環境を作るのが狙いだ。なお、実際の転職活動は転職者個人が進める必要がある。

同社は、転職希望者を入社させることで多額の成功報酬が得られる人材紹介業と一線を画するサービスを目指す。第一の目的は転職の成功ではなく、転職における個人の意向や可能性を転職者本人に深く考えさせること。転職市場で売り物にされないために、20代には少々高額な求職者課金型でサービスを展開しているわけだ。今後は同サービスのモデルを横展開し、子育てや介護などさまざまな悩みを専門家に相談できる有料課金サービスを育てていきたいとしている。

無料で手に入る情報は玉石混交で、その中から正しく役に立つ情報、自分に合った情報を見つけ出すには、結局は知識が経験が重要。有料サービスにすることで、本当に必要な情報に最短でリーチできる同社のサービスモデルの今後の横展開が楽しみだ。

ニオイ可視化センサーのアロマビットがソニーの新設ファンドから1億円を追加調達

ニオイを可視化するセンサーを開発し、関連サービスを提供するアロマビットは11月11日、Sony Innovation Fund by IGV(ソニーと大和キャピタル・ホールディングスが合弁で6月に立ち上げた新設ファンド)を引受先とした第三者割当増資の実施により、1億円を調達したことを明らかにした。

アロマビットは10月21日に日本たばこ産業およびEast Venturesから総額3.5億円の調達を発表しており、本ラウンドの調達金額は合計で4.5億円となる。また同社は3月にもソニーが運営するSony Innovation Fundから出資を受けたと発表している。

本誌でも何度か紹介してきたとおり、アロマビットが開発する小型ニオイイメージングセンサーは、さまざまなニオイの成分を複数の吸着膜で吸着し、重さの変化をセンサーで読み取ってパターンとして出力することで、ニオイのパターンを「可視化」するというものだ。従来のガスセンサーが特定の成分にだけ反応していたのと比べて、より生物の鼻に近い判断が可能となる。

同社は7月に、半導体素子を使った、より小型で高解像度のニオイセンサーの開発強化を発表している。感度が高い従来の水晶振動子型と並行して、高解像度・超小型のシリコンCMOS型センサーにより、スマホやIoT機器にも搭載可能なニオイセンサーの実用化を目指している。

アロマビット代表取締役の黒木俊一郎氏は、「顧客からのヒアリングによれば、次世代モビリティや自動運転、スマートファクトリー向けに、ニオイセンサーでなければ解決できない需要が明確になってきている」と述べている。世界的なハイテク機器メーカーやIT企業などから、ニオイセンサーのハードだけでなく、ニオイデータの活用についても協業案件が増えているとのことで、「今まさに、小型ニオイセンサー市場は立ち上がりのフェーズを迎えている」と黒木氏は見ている。

調達資金については前回発表と同じく、ニオイイメージングセンサーの開発強化・量産体制の整備とニオイデータベースによる新製品・サービスの開発強化、営業・マーケティング体制のグローバル展開へ投資していくということだ。

なお、アロマビットでは今回の発表に合わせて、ニオイの可視化・データ化テクノロジーがもたらす暮らしをイメージした動画を公開した。動画では、同社が実現しようとしている「ニオイ・カオリが可視化された世界」の一端を垣間見ることができる。

国際物流クラウド「Shippio」がシリーズAで10.6億円を資金調達

B2B向け国際物流のスタートアップShippioは11月11日、シリーズAラウンドで総額10.6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

Shippioは、オンラインで輸出入の発注・管理ができる「デジタルフォワーディング」事業を展開する。海上、航空、陸送、通関といった輸出入に関する手配を一貫して依頼でき、輸送状況や通関書類、連絡先などはクラウド上で一元管理することが可能だ。荷主は輸出入情報の一元化、貨物情報の可視化により生産性向上、貿易業務の負担軽減を図ることができる。

2018年12月の正式リリース後も、Shippioはプロダクトのアップデートを続けており、今年2月にはANAグループとの業務提携による航空輸送プロセス電子化・効率化の取り組みもスタート。4月にはアリババジャパングローバルB2Bサービスの海外輸送パートナーに認定されている。また7月には東京海上日動火災保険とともに、WebAPIを利用して外航貨物海上保険の申込データが自動連携するシステムを開発、保険申し込みの効率化を進めている。

サービスは2019年10月末時点で述べ108社が利用。米国・欧州・中国・ベトナムなど計30カ国を対象に輸出入業務が行われている。Shippio代表取締役の佐藤孝徳氏は、「今後、知名度のある大企業にも利用が広がるよう、接点を強化していく」と話す。調達資金を使って、展示会への出展などでタッチポイントを増やし、認知度を上げるプロモーション活動にも取り組んでいくという。

またShippioは現在、社員15名のコンパクトな組織で運営されているのだが、今回の調達資金を組織強化にも投資して「勝ちきれるチームづくりを目指す」(佐藤氏)とのこと。プロダクト面でも、顧客向け、Shippio社内のオペレーター向けのものに加えて、実際のロジスティックスを担うサプライヤーに向けたものも開発していく。現行システムでも、船舶のリアルタイムトラッキングを可能にするなど、ダッシュボードの進化にも取り組んでいくと佐藤氏は述べている。

国土交通省のデータによれば、全世界の港湾におけるコンテナ取扱個数は、2006年で4億168万だったものが、2016年には6億142万と、約1.7倍に増加している(単位は国際標準規格の20フィート・コンテナを1、40フィート・コンテナを2とする「TEU」)。佐藤氏は「貨物のトランザクションが増える一方、日本では少子化で物流に従事できる人の数は限られていく。このギャップをテクノロジーで埋める取り組みを、今の時点からやっていく。島国日本が貿易立国として、これからも成立する基盤を作りたい」と語る。

「デジタルフォワーディングは総合格闘技。テクノロジーに詳しくなければならないことはもちろん、各種法令や規制にも精通し、国をまたいでそれぞれのレギュレーションに対応していかなければならない。だが、疲弊している日本の物流を、テクノロジーを使ってアップデートしていきたい」(佐藤氏)

今回の調達ラウンドに参加した企業は以下の各社だ(★は新規株主)。

デジタルマーケティング事業を展開するFLUXが2億円を調達

デジタルマーケティング領域で複数の事業を開発するFLUXは11月8日、DNX Ventures、Archetype Ventures、有安伸宏氏を含む複数の個人投資家及び事業会社を引受先としたJ-KISS型新株予約権方式により2億円を調達したことを明らかにした。

同社はこれまでメディアの広告収益を増加させる「ヘッダービディング」の仕組みをSaaS型のプロダクトとして展開。今年1月の正式リリースから約10ヶ月で最大手パブリッシャーを中心に契約ドメイン数100以上を達成するなど国内市場シェアトップクラスに成長している。

今回の資金調達は既存事業である「FLUX Header Bidding Solution」の成長を加速させるための人材採用などに用いるほか、新プロダクト「FLUX LTV Analytics」の開発にも企てる計画だ。

FLUXは2018年5月にCEOの永井元治氏やCPOの平田慎乃輔氏らが立ち上げた。永井氏は戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニー、平田氏はカカクコムの出身。BtoBのデジタルマーケティング領域を軸に事業を検討する中で、平田氏が前職で食べログや価格.comなどメディア事業のマネタイズを経験し現場の課題を感じていたこともあり「メディアと広告出稿者側の間に存在する情報の非対称性」を解消していくプロダクトからスタートすることを決めたという。

現在の主力事業であるFLUX Header Bidding Solutionは特にメディア側の課題を解決するためのアドテクノロジーだ。

ヘッダービディングとは複数のSSPとGoogle AdSense/AdExchangeを同時にオークションにかけることにより、メディアにとって最も高い広告が落札される仕組みのこと。簡単に言うとフェアな入札競争によって広告収益を最大化できるテクノロジーで、メディア側の視点では従来発生していた可能性のある機会損失をなくし、より多くの広告収益を手にする機会が得られる。

ヘッダービディングの市場は米国で先行して普及し、すでに既に大手メディアの80%が導入しているそう。近年は日本でも拡大傾向にあり、冒頭でも触れた通りFLUXも出版社やweb専門メディアまで契約ドメイン数は100を超えている。

FLUXは自社のヘッダービディングソリューションをメディア向けのSaaSとして提供しているが、メディアとしては「広告収益が上がる分、このプロダクトにお金を払ってもペイする」という構造だ。

またFLUXではこれまでFLUX Header Bidding Solutionで蓄積してきたビッグデータや独自の分析技術などを用いて、購買における各ユーザーのLTV
(顧客生涯価値)を推定する新サービス「FLUX LTV Analytics」を今後展開していく計画だという。

導入企業がもつ顧客データとFLUXの保有データを統計と機械学習で処理し、限られたデータセットの中からユーザーごとのLTVを予測できるのが大きな特徴。分析したLTVセグメントや解約見込み率に応じてマーケティングコミュニケーション手法を変えたり、LTVが高くなる見込みのユーザーのみをターゲティングして広告を出稿したりといったことが可能だ。

たとえば顧客になる前に「この人がどれくらいのヘビーユーザーになってくれるのか(LTVがどのくらい高くなるのか)」が推論できればアプローチの優先度を変えることもできるし、顧客獲得後にも「LTVが高いと推論される人に対してはアップセルを訴求し、低い人に対してはチャーン対策をする」といった意思決定を早い段階ですることもできる。

まずはECやD2Cなど、ユーザーの行動がweb上で完結する事業を手がける企業をメインターゲットに、プロダクトの開発・導入を進めていきたいとのことだ。

金融のプロが最適な資産運用プランを提供、「資産のセレクトショップ」目指すOneMile Partnersが約1.3億円調達

「資産のセレクトショップ」をコンセプトに、個々人のニーズに合わせて厳選した資産運用プランを提供するOneMile Partnersは11月6日、Coral Capital、マネックスベンチャーズ、電通国際情報サービスなどを引受先とした第三者割当増資により総額約1.3億円を調達したことを明らかにした。

同社は個人の資産運用に関する三重苦(わからない、選べない、続けられない)の解消を目的として2018年11月に設立されたスタートアップだ。

代表取締役の小田嶋康博氏、取締役の原田慎司氏、取締役の泉田良輔氏ら経営陣はそれぞれが創業前にヘッジファンド、証券会社、生命保険会社などで勤めていた経験のある金融のプロフェッショナル。彼らが厳選した既存の金融商品を、各顧客のニーズや状況を踏まえて“適切に組み合わせながら提案する”というのがOneMile Partnersの事業の根幹であり、資産のセレクトショップを謳っている由縁だ。

原田氏と泉田氏はもともと2013年にナビゲータープラットフォームを立ち上げ、金融関連のプロダクトを複数手がけてきた。中でも「経済ワイドショー」をテーマにお金の話を解説する「LIMO」は、開始から3年強で多い月には月間1000万PVに達するなど、30〜40代の女性を中心にユーザーから反響が大きかったという。

一方でLIMOがある程度の影響力を持つメディアに育ったにも関わらず、それでも解決できない課題に直面し葛藤を感じることもあった。

「読者向けに有料で勉強会などを開催すると、わざわざ遠方から新幹線などに乗って参加してくれるような人もいたが、銘柄の選定の仕方など資産運用のレクチャーをしても最終的に実際の行動に移せる人は少なかった。立派な学歴や職歴がある人でも『本当に買っても大丈夫なのか』『このタイミングでいいのか』など選んだ銘柄に対して自身が持てず、前に進めないという人が多く、明確なペインがあった」(原田氏)

原田氏によると、日本株の勉強会でも米国株の勉強会でも、熱心なユーザーが集まるものの最終的には同じ課題に行き着くことが多かったそう。OneMile Partnersはまさにその状況を打破するために立ち上げた会社だ。

同社の事業構造は「ほけんの窓口」の資産運用版というとイメージしやすいかもしれない。顧客との接点となるリアル店舗を開設した上で、お金のプロによる無料相談や勉強会などを実施。顧客ごとのニーズや状況を踏まえながら個々に合わせた資産運用プランの提案やフォローアップを行う。

「一口に金融商品と言っても、保険や投資信託、株式、債券などその種類は多岐にわたる。『自分に合ったものがわからない』『何からやったらいいかわからない』というのが多くの人に共通する課題。自分たちが目利きをして商品をある程度絞り込んだ上で、顧客ごとのシチュエーションに応じて個別でカスタマイズをすることによって購入までのお膳立てをしていきたい」(原田氏)

泉田氏は「資産運用のラストワンマイルをきっちりサポートする」という表現をしていたけれど、いくら資産運用について学んでも結局金融商品を買わなければ目標達成や課題解決には繋がらないということをこれまでの経験で強く感じていたそう。

OneMile Partnersではそこにコミットするため、まずはオフラインの店舗を軸としてスタートするに至ったようだ。同社では丸の内に1号店となる店舗を開設し、2019年11月27日にオープンする予定。今後は各地に店舗を拡大していく計画だという。

また中長期的にはテクノロジーの活用にも取り組む方針。アプリなどを活用しながら複合的に顧客のサポートを行っていきたいとのことだ。

アグリメディアが4.5億円調達、シェア畑とあぐりナビの拡充・収益化を目指す

アグリメディアは11月1日、第三者割当増資により10月31日付けで総額4億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。引き受け先は、既存株主のグロービス・キャピタル・パートナーズ、REAPRA VENTURESのほか、新たに地域創生ソリューションが加わっている。内訳は既存株主が4億円、地域創生ソリューションが5000万円となる。

同社は、都市部の遊休農地を活用した「シェア畑」と地方の担い手不足を解消する「あぐりナビ」などのサービスを運営している、2011年4月設立の企業。今回の資金調達により、これら主力2サービスの拡充・収益化と、事業拡大に伴う人材採用と育成などにより経営基盤の強化を図るとのこと。併せて新規事業開発も進める。

シェア畑は、現在首都圏を中心に93カ所で運営。現地に種や苗、肥料、農機具、資材などがすべてそろっており、手ぶらで訪れて野菜作りを体験できるのが特徴だ。菜園アドバイザーから野菜作りについてのレクチャーを受けられるので、素人でも専用区画で年間30種類以上の無農薬栽培の野菜を収穫できるとのこと。

あぐりナビは、農業、酪農、牧場を中心とした求人サイト。就農希望者には希望者はキャリアアドバイザーのサポートが受けられるのが特徴だ。サービス開始5年で登累計録会員が5万人を突破しており、取引農家は北海道から九州まで計4200件を超えている(2019年9月時点)。会員のうち30代以下が約7割で、実際に新規雇用就農者(農家に従業員として勤務する人)の約4分の1が「あぐりナビ」経由で就農しているそうだ。さらに、農業への外国人の受け入れをサポートするサービスも展開している。

同社ではこれら2事業のほか、地元農家の新鮮野菜や旬の野菜の収穫体験とバーベキューを楽しめる「ベジQ」や、神奈川県清川村で「道の駅 清川」運営するなど、飲食・流通事業、企業や自治体へのコンサルト事業も手がける。

新たに株主に加わった地域創生ソリューションは、「ALL-JAPAN観光立国ファンド」を通じてホテルなどの宿泊施設から観光産業に関連するスタートアップ、地場伝統産業まで幅広い分野に投資している。アグリメディアは地域創生ソリューションから出資を受けるだけでなく、地域創生ソリューションのネットワークを生かして農業関連企業などとの協業を検討していくとのこと。

調剤薬局向けクラウド「Musubi」開発のカケハシが26億円調達、伊藤忠やアフラックが株主に加わる

カケハシは10月31日、シリーズBラウンドで第三者割当増資による26億円の資金調達を発表した。引き受け先は既存株主のDNX Venturesやグロービス・キャピタル・パートナーズのほか、新たに伊藤忠商事、電通ベンチャーズ、アフラック・イノベーション・パートナーズ、みずほキャピタルが加わった。今回の資金調達により累計調達額は約37億円となる。そのほか既存の引き受け先は以下のとおり。

  • STRIVE
  • 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • 千葉道場2号投資事業有限責任組合
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan)
  • SMBCベンチャーキャピタル

カケハシは、調剤薬局向けのクラウドシステム「Musubi」を開発している2016年3月設立のスタートアップ。患者の疾患や年齢、性別、アレルギー、生活習慣、検査値などのデータを基に最適化した服薬指導をサポートする。季節に応じた対応や、過去の処方や薬歴などを参照した指導内容の提示も可能だ。データを入力していくことで各種情報が蓄積され、より高い精度で患者に最適な服薬指導やアドバイスを自動提案してくれる。

Musubiはタブレットを使用するサービスで、服薬指導中に患者と薬剤師が一緒に画面を見ながら、話した内容をタップするだけで薬歴の下書きを自動生成できるのも特徴だ。調剤薬局といえば、医師から出された処方箋を手渡して薬をもらうだけの場所になりがち。通常は「(処方された薬を)ジェネリック医薬品に切り替えますか」「お薬手帳を持っていますか?」ぐらいの会話しか発生しない。

こういった環境にMusubiを導入することで「かかりつけ薬局」としての存在感が増すという。患者にとっては、診察を受ける医療機関はさまざまでも、薬を受け取る調剤薬局を1つに決めておくことで薬歴が集約されるので、調剤薬局で市販薬を購入する際の服薬指導やアドバイスの精度も増すはずだ。小児科や皮膚科などは平日でも混み合っていることが多く待ち時間が長い。深刻な症状を除けば、調剤薬局に相談して解決というケースも増えるだろう。

カケハシによると、今回調達した資金のうちの大半は、Musubi事業の拡大と新規事業の創出に必要な人材に投資するとのこと。同社は2019年2月に大阪に拠点を開設するなど首都圏以外での事業展開を進めている最中だ。

スキマ時間シェアのタイミーが20億円調達、22歳学生起業家が1年2カ月で

スマートフォンアプリで登録することで、空いている時間にすぐに働けて、すぐに報酬を受け取れるワークシェアサービスを展開しているタイミーは10月31日、総額20億円の資金調達を発表した。この20億円は累計額ではなく、シリーズBにおける第三者割当増資よる調達だ。引き受け先は以下のとおりで、そのほか複数のエンジェル投資家が名を連ねる。

  • ジャフコ
  • ミクシィ
  • SBIインベストメント
  • プロロジス
  • KIDS HOLDINGS
  • WDI
  • ネクシィーズグループ
  • ひだしんイノベーションパートナーズ
  • SBSホールディングス
  • JR東日本スタートアップ
  • The CFO Consulting
  • GOSSO
  • トランジットジェネラルオフィス
  • IMM Investment Group Japan

写真に向かって左から、取締役副社⻑の川島遼一氏 、代表取締役社⻑の小川 嶺氏

同社は、2018年8月10日にタイミーのサービス開始。現在では、飲食、小売、物流、オフィスワークなどさまざまな業界で2000社以上の企業が利用しているほか、ワーカー登録者数は25万人を超えたとのこと。

また2019年10月3日には、タイミーのシステムを活用したタイミートラベルを開始。働きながら旅行先の現地の人と触れ合えるサービスとして展開していく。現地までの交通費や現地での宿泊費を労働報酬に含めることで、行きたい場所を選ぶだけで資金がなくてもすぐに旅行に出かけれるのが特徴だ。現在、働き手はもちろんのこと、企業・地方自治体の連携も進めている。

同社によると、今回調達した資金は店舗や企業への認知拡大や新規ユーザー獲得のためのマーケティング費用、人材採用などに利用する計画だ。

同社の代表取締役社長の小川 嶺氏は「まずは首都圏に加え、サービス提供開始済みの関⻄・福岡を含む国内主要都市での立ち上げに注力し、その後に全国・全世界に広げられるよう事業を進めていく」と語る。今後の展開としては「蓄積した信用データやトラフィックデータを整理して、最適なレコメンドエンジンの開発やダイナミックプライシングの実装に挑む」とのこと。

個人的には今回のシリーズBの出資元に、岐阜県の飛騨・高山地域を中心に地方創生を目的に投資活動を進めているひだしんイノベーションパートナーズが入っている点に注目したい。首都圏や関西圏などの大都市部だけでなく、地方都市でも深刻な人手不足を解消するサービスとして、タイミーやタイミートラベルのサービスが受け入れられる確率は高いと感じる。地方都市での人手不足解消はもちろんのこと、飲食店が繁忙期になる夏休みや年末年始に学生などの帰省に併せた雇用創出も可能になるだろう。現在タイミーを利用するユーザーは若年層が多い印象だが、認知を向上させてUI/UXなどにさらに磨きをかけることで中高年やシニア層までを取り込めるようになれば、少子高齢化の日本での同社の存在感はさらに増すはず。そのあとは世界だ!

クラウド営業支援「Senses」運営のマツリカが総額5億円を資金調達

写真右からマツリカ共同代表取締役 黒佐英司氏、飯作供史氏

クラウド営業支援ツール「Senses(センシーズ)」を提供するマツリカは10月30日、DNX Ventures、NTTドコモ、SMBCベンチャーキャピタル、いよぎんキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、9月13日時点で3.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズBラウンドに当たる。同社は今後、協業先や提携先、VCなどから追加調達を実施し、シリーズ全体では総額約5億円を調達して、年内に本ラウンドをクローズする予定だ。

マツリカは2015年4月の設立。マツリカが提供するSensesは、共同代表を務める黒佐英司氏が前職のユーザベース時代の経験を踏まえ、営業の「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」という営業支援ツールだ。

Sensesは、カード形式で直感的に案件管理ができるクラウド型のSFA/CRMシステム。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanなど、メールやカレンダー、名刺管理の外部ツールと連携し、情報を再入力せずに一元管理できる。またAIを活用して、蓄積された情報から営業の成功・失敗事例を解析。営業担当者にいつ・誰に・何を・どのように行動すればよいか、次の行動をサジェストしてくれる機能を持つ点が特徴だ。

利用料金は「Starter(スターター)」プランが月額2.5万円(1ユーザーあたり5000円)から、「Growth(グロース)」プランが月額10万円(1ユーザーあたり1万円)から。ほかに導入支援やデータ解析、セールスコンサルティングなどのサポートメニューを含む運用プランが設定されている。Sensesは2019年10月現在、利用企業数は1300社を超え、利用継続率は98%という。

今回の資金調達は、2016年4月のシードラウンドでの約5000万円の調達、2017年8月のシリーズAラウンドでの約1.3億円の調達に続くもの。マツリカでは、調達資金を機械学習・深層学習による営業行動予測や売上予測などのモジュール強化に充てるとしている。また、出資者であるNTTドコモ、いよぎんキャピタルとパートナーシップ協議を進め、地方展開の強化も図る考えだ。

データ分析軸に日本企業の中国マーケティングをワンストップで支援するトレンドExpressが7億円を調達

投資家も含めたトレンドExpressのメンバー。前列中央が代表取締役社長の濵野智成氏

SNSなどのクチコミ(ソーシャルビッグデータ)から抽出した消費者のインサイトを活用して、日本企業の中国市場向けマーケティングをトータルで支援するトレンドExpressは10月29日、日本郵政キャピタルやDNX Venturesを含む複数の投資家より7億円を調達したことを明らかにした。

トレンドExpressにとっては2017年11月にDraper Nexusやアコード・ベンチャーズ、エボラブルアジアから1.8億円を集めて以来、約2年ぶりとなるシリーズBラウンドでの資金調達。同社ではさらなる事業成長を目指して消費者ビッグデータをベースとした新規プロダクトの開発や組織体制の強化、越境EC事業の拡大を進めるほか、M&Aにも取り組む計画だ。

トレンドExpressはマザーズ上場企業であるホットリンクの新規事業として2015年にスタート。その後2017年1月に分社化され、いわゆる“カーブアウト型”のスタートアップとして外部投資家から資金を調達しながら事業を展開している。

当初から軸にしていたのがソーシャルビッグデータを基にした日本企業の中国マーケティング支援だ。具体的には中国版Twitter「weibo」など様々なSNSやオンライン通販サイト「Taobao」を含むECサイトに散らばるクチコミを収集・分析し、そこから現地の消費者のインサイトを発掘して日本企業のプロモーションやブランディングに活かしてきた。

特徴はデータの収集・分析力と、それを用いてマーケティングの全工程を垂直統合型でサポートできることだ。トレンドExpressでは現状調査や戦略策定段階から、認知拡大、理解促進、購買促進、購入に至るまでの各工程ごとに自社プロダクトやソリューションを保有。もちろん部分的にはそれぞれ競合となるプレイヤーはいるものの、顧客のフェーズや要望を汲み取った上で、幅広い選択肢の中から最適な施策をワンストップで提供できるのが優位性になっているという。

マーケティグの各工程ごとに豊富な商品ラインナップを用意。これらをワンストップで提供できるのが強みだ

また代表取締役社長の濵野智成氏によると各施策の基盤となるデータの収集、解析力も顧客から選ばれる要因の1つだ。同社では様々なSNSなど、ソースとなるサイトからクローリングするだけでなく、各種サイトとAPI連携を進めることで多様なデータを収集。それに対して意味解析や心理判定などを実施しながら消費行動の裏側にあるインサイトを見出せるのが他社にはない強みなのだそうだ。

「商品がどのくらい売れているか、サイトのPVがどのくらい増えたかなどのデータやボリュームをフィードバックすることはどこでもできる。自分たちはそれだけじゃなく消費者たちの集合知や爆買いなどの行動に至った背景・要因、隠れた本音などを導けるコアな技術を持っているのがポイント。(特定のプラットフォームに偏ることなく)中国でここまでやれている企業はほとんどない。最近は中国の現地企業から依頼がくるケースも増えている」(濵野氏)

ホットリンクの新規事業として始まってから約4年、分社化してからはもうすぐで3年を迎えるが、これまでナショナルクライアントを中心に日本企業約300社の中国マーケティングを支援。トップ企業がこぞって顧客となっている美容・コスメ領域を筆頭に生活雑貨やヘルスケア、食品、小売、アパレルなど幅広い企業の海外進出をアシストしてきた。

事業の構造としては広告代理店のような色も強いが、自社開発のプロダクトを複数抱え単体のプロダクトのみを継続的に利用している企業もいるそうだ。

たとえば日本の商品が中国市場でどのように売れているのかをモニタリング・分析できる機能を備えた「中国トレンドEXPRESS」は月額制で提供。インサイトを基に記事や動画といったコンテンツを作成し、メディアへの露出と効果測定までトータルで行うPRサービスなども展開する。

2018年からは日本商品の爆買いブームの火付け役である「日本に在住する中国人ソーシャルバイヤー」を集めた越境ECサービス「越境EC X」をスタート。ソーシャルバイヤーとは小売店などで大量に仕入れた日本の商品を中国現地のSNSやECサイトを活用して販売するマイクロインフルエンサーのことで、彼ら彼女らに日本のメーカーが直接商品を紹介できる場所を用意した。

バイヤーにとってもアプリからメーカーからユニークな商品を直接仕入れられるのはメリット。今回の資金調達はこのプロダクトをさらに育てていくためのものでもある。

トレンドExpressでは今後も消費者ビッグデータを用いた商品ラインナップの拡充や既存プロダクトの強化を進めながら「まずは中国マーケティングと言えばトレンドExpressというブランドを早々に確立する」(濵野氏)ことを目指す方針。ゆくゆくは他のアジア諸国への進出支援も手がけていきたいという。

「日本国内の人口が縮小していく中で、日本企業は外需を取り込むべく今後一層グローバル展開を進めていく必要がある。その際のインフラとなるような存在を目指して、まずは需要の大きい中国市場向けの事業からしっかり拡大させていきたい」(濵野氏)

トヨタ自動車本体がリードしたラウンドで10億円超を調達したオプティマインドとは?

名古屋を拠点とするオプティマインドは10月24日、トヨタ自動車をリードインベスターとして、MTG Ventures、KDDIが設立しグローバル・ブレインが運営するKDDI Open Innovation Fund 3号、ほか1社を引き受け先とする第三者割当増資により、総額約10億1300万円の資金を調達した。

オプティマインドは、ラストワンマイルの物流ルート最適化を目指す古屋大学発のスタートアップ。昨年、オープンソースの自動運転OS「Autoware」を開発した加藤真平氏が取締役会長兼CTOを務めるティアフォーや、倉庫事業を中心にアートのサブスクリプションや物流網のオープン化などの事業を手がける寺田倉庫から数億円規模を資金調達していた。

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オプティマインドが開発する配送ルート最適化サービスの「Loogia」(ルージア)は、ラストワンマイルの配送ルートをAIを活用して短時間で計算するクラウドサービス。「どの車両が、どの訪問先を、どの順に回るか」という配送計画を、複雑な条件や現場の制約を考慮しながらAIが数分で作成し、ドライバーに効率的なルートを提供する。

具体的には、ベテランドライバーが走行したデータを取り込んで教師データとし、より精度の高いルートの算出やベテランドライバーのノウハウを共有。配送ルートの作成については、マンションなどの入り口の位置や道路幅などを考慮して最適な道順を算出するという。

同社が昨年、郵便局と共同で実施した実証実験では、ベテランドライバーと新人ドライバーでは、ルート作成に要する時間がそれぞれ平均14分、44分と30分の差が生まれたほか、移動時間についても平均34分、57分と20分以上の開きがあった。これをAIによって最適化することで、新人であってもAIによるルート作成が6分、移動時間が45分に軽減できたという。平均65分の配達先滞在時間を含めた総配達時間は、ベテランドライバーが113分、新人ドライバー+AIの組み合わせでは116分と、差が3分に縮まったという結果が得られた。

オプティマインドは今回の資金調達により、引受先と個別に取引強化を進める。具体的には、トヨタがが構築するモビリティサービス向けのさまざまな機能の提供を目指したオープンプラットフォームであるMSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)に、オプティマインドのルート最適化技術を導入して共同開発を進めていく。MTG Venturesからは経営や事業推進に関する知見、人的ネットワークを用いた支援を受け、オプティマインドの企業価値向上と経営体制の強化を図る。KDDIとは、IoT/AIを活用した「需要予測×ルート最適化」による配送ソリューションの共同開発を進めるという。そのほか、プロダクト開発体制の強化、人材の獲得・育成、マーケティング施策の拡充などにも当てられる。

 

月額16.8万円からのパーソナルドクター「Wellness」のベータ版提供開始、3500万円の資金調達も

パーソナルドクターサービス「Wellness」(ウェルネス)を運営するウェルネスは10月23日、同サービスのベータ版の提供開始を発表した。同時に、インキュベイトファンドと佐竹義智氏、中島聡氏、藤岡大祐氏、複数の医師を含む個人投資家を引受先とした約3500万円の第三者割当増資の実施も明らかにした。

Wellnessは、身体や心の課題・リスクと向き合い、ヘルスリテラシーを高めて効率的に予防ケアを行うためのパーソナルドクターサービス。健康理解度や課題を踏まえて専用のカリキュラムを考案してくれるほか、日々のオンラインコーチング、週1回のホテルのラウンジや自宅での対面レクチャーなどが受けられる。カリキュラム(プラン)は、月額16万8000円のベーシック、月額29万8000円のスタンダード、月額42万8000円のプレミアムの3種類が用意されている。それぞれレクチャーを受けられる期間と回数が異なっており、ベーシックは約1カ月間でレクチャー計4回、スタンダードでは約2カ月間でレクチャー計8回、プレミアムは約3カ月間でレクチャー計12回となっている。

同サービスは、創業者である中田航太郎氏が自らが医師として働いていたときに感じた患者との意識のズレを解消することを目指して開発されたそうだ。患者の中には、人間ドックの活用法がよくわからず、年齢や生活習慣に応じて適切な検査を受けてない人が多く、その検査結果を正確に読み解くことも難しいという現状があった。Wellnessでは、そういった患者に対して今後の健康を改善するための知識を提供する。具体的には、太っていると自覚している人には人間が太ってしまうメカニズムを解説しつつ、生活習慣に合わせて食事のタイミングや内容を提案してくれる。さらに肥満がリスクになる病気や、体重だけではなく血圧やコレストロールにも配慮した食事についてもレクチャーとコーチングを実施する。

同社では現在、有料カリキュラムを利用する前の無料カウンセリングを実施中だ。医師が専門的な立場かヒアリングして「健康上のリスクや課題」「健康のために知っておくべきこと」の2点をチェック後、専用のカリキュラムを提案してくれる。

ニオイ可視化センサーのアロマビットが日本たばこ産業、East Venturesから資金調達

ニオイを可視化するセンサーを開発し、関連サービスを提供するアロマビットは10月21日、日本たばこ産業(JT)および既存株主のEast Venturesを引受先として、総額3億5000万円を上限とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

アロマビットが開発するのは、小型ニオイイメージングセンサー。さまざまなニオイの成分を複数の吸着膜で吸着し、重さの変化をセンサーで読み取ってパターンとして出力することで、ニオイのパターンを「可視化」するというものだ。従来のガスセンサーが特定の成分にだけ反応していたのと比べて、より生物の鼻に近い判断が可能となる。

2014年12月の創業以来、水晶振動子をセンサー素子として利用した高感度ニオイセンサー製品の開発・実用化を行ってきた同社は、より小型でニオイ解像度の高いシリコンCMOS型センサーを豊橋技術科学大学と共同開発し、7月に設立を発表した子会社を通じて実用化を図っている。

アロマビットによれば同社の製品・サービスは、ニオイが密接に関連しそうな業界、例えば食品、日用品、コスメといった領域だけでなく、産業機械やロボティクス、モビリティや見守り・ヘルスケア、農業、マーケティングといった分野からも問い合わせや商談が増えているとのこと。国内だけでなく国外からの引き合いも多いという。

アロマビットは、2015年にEast Venturesと個人投資家からシード資金を調達。2017年2月にはみらい創造機構と個人投資家らから1億5000万円を調達している。その後、匿名の事業会社からの調達に続き、今年の3月には、ソニーのCVCであるSony Innovation Fundと既存株主の匿名事業会社から総額2億5000万円の資金調達を行ったことを明らかにしている。

今回の調達により、アロマビットはニオイイメージングセンサーのさらなる高機能化・小型化に向けた開発強化、量産体制の整備を進める。またハードウェアであるセンサーにより収集したニオイデータのデジタル化、データベース化による新製品・新サービスの開発強化や、海外展開も視野に入れた営業・マーケティング体制の強化も図る予定だ。

新株主であるJTとの協業の有無については、今回、具体的には明らかにされていない。ただ、主力のたばこ事業だけでなく、農業・医薬・食品など、アロマビットのセンサーが活用できそうな事業をほかにも多く展開する同社とは、いろいろな面での協業が考えられそうではある。

国内1200社のMAツール導入・活用を支援するtoBeマーケティングが5.7億円を調達

企業向けにマーケティングオートメーション(MA)ツールなどの導入支援サービスを提供するtoBeマーケティングは10月18日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額約5.7億円を調達したことを明らかにした。

今回はtoBeマーケティングにとってシリーズCラウンドという位置付け。NTTドコモ・ベンチャーズなど新規投資家2社に加えて既存投資家4社から出資を受けた。同社では調達した資金を活用してビジネスサイドや開発人材の採用を強化するほか、アナリティクス領域やeコマース領域への事業展開を加速させていく計画だ。

なおシリーズCラウンドの投資家陣は以下の通り。toBeマーケティングは2015年9月に3000万円2016年6月に2億円2017年10月に4億円を調達していて、累計調達額は約12億円となる。

  • DNX Ventures(Draper Nexus時代も含めシードから4回目の出資)
  • Salesforce Ventures(シリーズAから3回目の出資)
  • みずほキャピタル(前回シリーズBからのフォローオン)
  • SMBC ベンチャーキャピタル(前回シリーズBからのフォローオン)
  • NTT ドコモ・ベンチャーズ
  • HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND(博報堂DYベンチャーズ)

過去にも紹介している通り、toBeマーケティングは少し珍しいタイプのスタートアップと言えるかもしれない。

もともと2015年6月に「Salesforceに特化したMA導入支援会社」として設立。セールスフォース・ドットコムが開発するMAツール「Pardot」とCRMを組み合わせた導入支援サービスを中心に、これまで1200社を超える国内企業のデジタルマーケティング活用をサポートしてきた。

PardotやCRMを効果的に使うための武器として、自社開発のアプリケーション「MAPlus」シリーズを保有しているのも1つの特徴。セールスフォースが手がけるツールと連携してターゲット企業のデータベースを構築する仕組みや、リスト作成からDMの発送までをスムーズにする機能、IPアドレスから企業名などの企業情報を分析するサービスなどを揃えている。

当初はBtoBの事業を展開する企業のサポートを中心としていたが、今ではBtoC企業の顧客も増加。2017年10月に実施したシリーズBラウンドの時期と比べると、顧客数自体も約500社から約1200社まで拡大した。

toBeマーケティング代表取締役CEOの小池智和氏によると、この2年でサポート体制がよりシステマチックになり多くの顧客を支援できる仕組みが整ったことに加え、マーケット自体が活性化したことが大きな要因のようだ。

「多くの企業において、事業を成長させていく上でMAも含めたデジタルマーケティングの活用は避けて通れないものであり、当然のように力を入れていくべきものだという認識が広がってきた。こちらから『MAやりませんか?』とプッシュしなくても、問い合わせがくる状況。自分たちに限らず、業界の他のプレイヤーも伸びている」

「一方でMAツールやCRMを使っていかに成果を出せるかにより焦点が当たるようになってきた。今でもMAツールの導入支援が事業の中核ではあるが、近年は既存の顧客や『自分たちでMAツールを導入したものの、十分に使いこなせていない』という企業に対する伴走活用支援のニーズが高まっている」(小池氏)

toBeマーケティングではコンサルタントによる伴走活用支援だけでなく、MAツールの使い方に関するナレッジを集めたサポートメニュー「MAnaviサポート」も展開。またPardotなど各ツールごとに、業界や用途に合わせたテンプレートを用意して提供することで、MAツールに慣れていない顧客でも活用しやすいような工夫を重ねてきた。

自社プロダクト「MAPlus」やサポートメニュー「MAnaviサポート」は月額定額制モデルで提供している。まだ売上の割合としてはそこまで大きくないものの、これらの導入企業社数も増えてきているという

そういった背景もあり、今では新規顧客の売上よりも既存顧客のアップセル(伴走支援やMAPlusの追加発注など)が上回っているそう。会社の売上も先期は10億円を突破し、セールスフォースが主催する「PARTNER AWARD」でも創業以来4年連続で受賞(2019年度はAgile Integration Partner of the Year)している。

今後は引き続き既存事業を強化しつつ、ラインナップの拡充を進める方針。直近では既存顧客が新たにアナリティクスやeコマース領域のサービスを導入したいというケースが増えているそうで、それらの導入支援・伴走支援にも力を入れていく。

「顧客の幅が広がったり製品のラインナップが増えたりはしているが、一貫して『顧客のデジタルマーケティングを支援する』ということにフォーカスして事業を展開してきた。今後もそこはブラさずに、今はまだカバーできていない領域へのサービス拡張や、自社プロダクトのアップデートなどにも取り組んでいく」(小池氏)

東京五輪までに1000室の民泊の新規開業を目指すmatsuri technologiesが5.8億円の資金調達

2020年には東京オリンピックが開催され、目標とされている訪日外国人の数は約4000万人。だがみずほ総合研究所の試算によると、オリンピック開催中の8月には最大1万3700室程度の宿泊施設不足が発生する。ホテルやホテル従業員の深刻な不足が騒がれる中、それらの課題を民泊と不動産テックという切り口での解決を目指しているのがmatsuri technologiesだ。

2016年8月設立のmatsuri technologiesは民泊の管理・運用関連のソフトウェア「m2m」シリーズなどを提供すると同時に、前回の調達時に発表しているとおり、ファンドクリエイションと民泊マンスリーファンドを立ち上げ、すでに300室以上を借りている状況だ。そんな同社は10月14日、グロービス・キャピタル・パートナーズや朝日プランニングなどから合計で5.8億円の資金調達をシリーズBラウンドで実施したことを発表した。

matsuri technologies代表の吉田圭汰氏は「今回調達した資金を元に物件借り上げを促進する予定だ」と話す。より具体的には、2020年8月までに1000室の民泊の新規開業を目指すという。加えて、同社は民泊管理ソフトウェアを改善し、採用を強化する予定だ。

これまでに170万人以上の訪日旅行客の宿泊をソフトウェアを通じてサポートしてきたというmatsuri technologiesは「観光庁によると訪日旅行客の約6割は世帯年収500万円以下、特に低価格帯の宿泊施設に対するニーズが強くなっている傾向がある。2018年に施行された新しい法律『住宅宿泊事業法』によって、住宅を改装し、宿泊施設として合法的に提供できるようになった民泊は、時代の流れにマッチした宿泊施設の一形態だと考えている」と説明している。

“アクション促す動画”で動画マーケに変革を、インタラクティブ動画編集SaaSのMILが1.3億円を調達

SaaS型のインタラクティブ動画編集プラットフォーム「MIL」を提供するMILは10月15日、SMBCベンチャーキャピタル、マイナビ、フォーイットを引受先とした第三者割当増資により、約1.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社にとっては昨年8月に融資も含めて総額8000万円を調達して以来、約1年2ヶ月振り。今回集めた資金を活用してプロダクトの機能強化や新アプリの開発、アドネットワークなど配信面の拡張を進めるとともに、人員体制の強化に取り組む。

動画をインタラクティブにすることで一歩進んだ視聴体験を

MILはPRやマーケティングに活用する動画を簡単に“インタラクティブな動画”へと変換できる編集ツールだ。大雑把に言うと「動画内にタグを埋め込むことで、視聴者に何らかのアクションを促す」動画を簡単に作れる。

たとえば動画に映っているコスメや服をクリックすると商品詳細がポップアップ形式で表示されるようにしたり(購入ページへ誘導することもできる)、採用PR用の動画にでてくる社員をクリックするとその人にフォーカスした別の紹介動画に遷移するような仕掛けを作ったり。一般的な動画のようにただ再生してもらうだけではなく、視聴者に行動を促すことで一歩進んだ体験を提供できる点が特徴だ。

Webメディアの記事中にインタラクティブ動画を差し込んだ事例。動画内で子どもが着ている服にタグを付けておき、視聴者がクリックすると商品の概要がポップアップで表示されるようにしている。「詳しく見る」をクリックするとECサイトの商品ページへ遷移する

使い方としては、まずベースとなる素材動画を用意した上でMILの管理画面からタグを付けたい場面と該当箇所を選択し、ポップアップの作成など視聴者が実際にクリック(タップ)した際に起こる変化を設定していく。

用途はポップアップで詳細を表示するだけにとどまらない。ユーザーの選択によってその後のストーリーが異なる「ストーリー分岐」の仕掛けを取り入れることもできるし、動画内にアンケートや応募フォームを設置したり、電話番号をタップすればそのまま電話できる「電話リンク」を埋め込むことも可能だ。

レシピ動画×ストーリー分岐の事例。「豚肉」「鶏肉」「牛肉」の3つの選択肢が提示され、ユーザーが何を選ぶかで次に表示されるレシピが変わる

動画マーケティングで効果的なPDCAを回せる仕組みを確立

純粋な動画をインタラクティブ動画にすることで何が変わるのか。MIL代表取締役の光岡敦氏は「動画マーケティングにおいて効果的にPDCAを回せるようになることで、コンバージョン(CV)の増加が期待できる」と言う。

動画をインタラクティブ化することで視聴数や視聴完了率といったデータはもちろん、視聴者がどのリンクをクリックしたのか、最終的にCVに至った視聴者はどんな行動をとっていたのか(どの導線がCVに貢献したのか)といった数値も浮かび上がってくる。

現在MILでは動画アドネットワークとの連携を通じて、自社サイトだけでなく「外部の面」にインタラクティブ動画を配信できるような動きを強化しているところ。これによって媒体ごとに「このメディアのユーザーは積極的にアクションしている」といった結果もわかるという。

インタラクティブ動画の場合、改善の仕方は大きく2パターン。元となる動画クリエイティブ自体を変えるほか、同じ動画を基にMILを使ってタップできる場所を増やしたり、表示される内容を調整することで「WebサイトのABテスト」のような感覚で効果検証を重ねることができる。

「動画は取得できる数値がかなり限られているため、これまで振り返りが難しく結果的に納品ゴールになりがちだった。MILを使うことでちゃんと振り返りができて次の施策に活かせたり、施策を試している中でレポートの結果をみながらスピーディーにアウトプットを変えたりもできる。この点はこれまでの動画マーケティングでは実現できなかったことであり、顧客からも評判がいい」(光岡氏)

光岡氏によると、これまでは採用や商品のPR(動画コマースの文脈)での利用が特に多いそう。2017年12月のリリースから2年弱、2019年9月末時点で登録アカウント社数は433社、インタラクティブ化された動画は累計1200本を超える。

現在は月額3万円からの定額モデルで提供。8月からは1000視聴まで無料で外部公開ができるトライアルプランも始めた。

今後は今回新たに株主になったマイナビとは採用領域を中心に、フォーイットとはアフィリエイト領域で連携しながら事業を強化する計画。「(この市場では)ある程度リソースをかければ伸びることがわかってきているので、インタラクティブ動画の市場を一緒に作っていきたい」(光岡氏)という。

そのほかプロダクトの機能強化に加えてコンシューマー向けのアプリ(広く一般層向けにというよりは、インフルエンサーやアフィリエイター向けとのこと)の開発なども進める予定。中朝的にはMAツールを始め外部サービスとの連携などにも取り組むことで、MILをハブにインタラクティブ動画を通じて実現できることを広げていく方針だ。

最大の競合は“エクセル”、約550社が使う人事評価クラウド「HRBrain」が4億円調達

HRBrain創業者で代表取締役社長の堀浩輝氏

人事評価クラウドサービス「HRBrain」を提供する株式会社HRBrainは10月9日、三谷産業、サイバーエージェント(藤田ファンド)、みずほキャピタル、JA三井リースを引受先とした第三者割当増資により、シリーズBラウンドで約4億円を調達したことを明らかにした。

2017年1月リリースの同サービスは現在約550社に導入されるまでに拡大。今回の調達によりプロダクトの機能拡充と組織体制の強化を行い、さらなる事業成長を目指す計画だ。

なおHRBrainは2016年3月の創業で、TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルにも登壇した経験を持つスタートアップ。2017年12月のシリーズAラウンドではジェネシア・ベンチャーズ、BEENEXT、KSK Angel Fund、みずほキャピタルなどから2億円を調達しており、累計の調達額は約6億円となる。

人事評価をクラウド化「従来よりもシンプルでカンタンに」

HRBrainは従来エクセルやスプレッドシートなどで行われていたような「人事評価」をクラウド化し、より効果的かつ効率的に管理できるようにするサービスだ。

詳しくは後述するが「豊富なテンプレート」「面談/目標シートへのアクセス性の高さ」「集計作業の自動化」といった機能や仕組みが大きな特徴。これらに加えて約10名ほどのカスタマーサクセスチームによる顧客サポートを武器に事業を拡大してきた。

HRBrainのウリの1つは定番のMBOやOKRを始め、1on1やWill Can Mustなど幅広い目標管理フレークワークをテンプレートに落とし込んで提供していること。社内で目標管理制度が整備されていなくても、他社で成果に繋がっているテンプレートを活用すればすぐにスタートすることが可能だ。

OKRのフォーマット。各目標管理手法ごとにフォーマットが用意されているので、初めてのものでもすぐに使い始めることができる

当初は創業者である堀浩輝氏が前職のサイバーエージェント時代にやっていた手法をクラウド化するような形で始まったサービスだが、ローンチ以降対応できるフォーマットを着々と増やしてきたそう。近年IT企業だけでなく病院や出版社、飲食店、ガソリンスタンド、結婚式場など多様な業界で導入されるようになったのも「世の中の大抵のフォーマットに対応できるようになった」のが大きいという。

このようなフォーマットに沿って目標を設定した後は定期的に振り返りをすることになるが、「目標シートに紐付けて1on1のログを残せる仕組み」は導入企業の約7割が使う人気機能になっている。

メンバーと上司の間で毎回の面談の記録を残していき、いつでも簡単に検索してアクセスできる設計。これを基に期末の人事評価が行われれば、従来はブラックボックスになりがちだった各メンバーへの評価やフィードバックが透明化されることにも繋がるため、納得度もあがる。

これをエクセルやスプレッドシートなどで行うと閲覧権限の管理なども含めて手間がかかるが、HRBrainの場合は権限の付与などもスムーズなため導入企業からは評判が良いそうだ。

エクセルやスプレッドシートだと工数がかかってしまうのは集計作業も同様。こちらについては完全に自動化することですぐに社員全体の評価を可視化できるのはもちろん、人事担当者が創造的な仕事により多くの時間を使えるようにもなる。

このような一連の仕組みをSaaSとして月額3万9800円からまるっと提供するというのがHRBrainのビジネスモデルだ(従業員数に応じた従量課金制)。

導入企業は550社超え、ホリゾンタルSaaSとして拡大

前回のシリーズAから約2年。核となる機能は大きく変わらないものの、細かいアップデートに加えてカスタマーサクセス体制を強化することで着実に基盤を固めてきた。今年に入ってからはフルリニューアルも実施。カスタマイズ性やテンプレートを拡張するとともに、エンタープライズ向けとしてセキュリティやログイン管理機能の強化にも取り組んだ。

結果として幅広い業界に使われるホリゾンタルSaaSとして拡大し、導入企業数はすでに550社を突破している。

「日本中の企業で目標の設定や評価は行われているが、多くの企業ではもっと効率化できる余地がある。プロダクトを磨き込む中でシンプルではあるが深いものが作れているという手応えはある」(堀氏)

堀氏の話では顧客のタイプは大きく2パターンに分かれるそう。1つはまだ「これといった目標管理制度が社内に根付いていない」企業で、優れた目標管理制度を導入するための最短コースとして、テンプレートなどの機能やシステムの使い勝手、サポート体制などを理由にHRBrainを導入するケースが多い。

そしてもう1パターンがすでに目標管理制度を自社で導入しているものの、煩雑なオペレーションに課題を感じて効率化したいという企業。特に従業員数が数百名〜数千名規模の会社が典型例だ。

「社内に目標管理制度がない企業の場合、そもそも目標設定の考え方からセットでサポートすることで自社に合った手法を設計するところから伴走する。一方ですでに何らかの管理制度がある企業の場合、規模が大きくなるほど既存のフローを変えたくないという力学が働く。業界ごとの特徴なども押さえた上で、いかにHRBrainでも同様の形を再現できるか、ここ1〜2年はそのシステムやサポート体制を作り込んできた」(堀氏)

目標管理サービスの領域にはHRBrainの他にも複数のプレイヤーが存在する。たとえば過去に紹介したカオナビやOKRに特化したResilyなども近しい使い方ができるサービスだ。

ただ堀氏いわく「最大の競合はエクセル」。特にそれまでエクセルを使っていたエンタープライズの顧客にHRBrainを使ってもらうのはなかなかハードルが高く「オンボーディングが非常に重要。勉強会をやったり、管理者向けのサポートをこまめにやったり。運用開始に至るまでのプロセスを丁寧に、地道に進めることが成果として現れてきている」という。

今後は人事データベースなどサービス拡張進める

HRBrainでは次の打ち手として人事データベースの準備を進めている

この2年間だけでもエクセルからの乗り換え事例は何社もあり、その手応えは掴めているそう。今回の資金調達は「プロダクトが売れる市場がわかってきたタイミングで、それを一気に加速させるためのもの」(堀氏)だ。

新たに投資家とした参画した3社のうち、サイバーエージェントはHRBrainのメイン顧客の1社。AbemaTVなどサイバーエージェントグループの事業部やグループ企業などで積極的に同サービスを活用しているヘビーユーザーだ。

三谷産業とJA三井リースについては一緒にプロダクトを広げていく構想があり、三谷産業は販売代理店としてHRBrainの拡大をサポート。JA三井リースもファイナンス機能の提供や全国に拡がる顧客網を活かした営業協力などを通じてHRBrainを後押しするという。

このバックアップ体制の下、より多くの顧客への導入を目指していくというのがHRBrainの今後の打ち手の1つ。そして既存プロダクトと並行して関連するHRTechツールの開発にも着手する。

最初のターゲットとなるのは「人事データベース」だ。従業員情報や組織情報をシンプルに一元管理できるだけでなく、従来のHRBrainに蓄積されたデータと連携することで「パフォーマンスデータを経営のヒントとして使える」ような仕組みを考えているようだ。

「(目標管理データと連動することで)自分たちだからこそ実現できるサービスを提供できると考えている。データベースについては特にエンタープライズ企業から以前から要望が多かったもの。これがあれば顧客の対象が増え、成約率が上がることもわかっているので、少しでも早くリリースしたい」(堀氏)

堀氏の話では今後予定している人事データベースを皮切りに、HRBrainシリーズのプロダクトを増やしていく計画とのこと。最終的には人事評価を軸とした「タレントマネジメントプラットフォーム」を見据えているという。

「今後もファッションAIにフォーカスする」ニューロープが1億円調達

ファッション領域で人工知能による法人向けサービスを展開するスタートアップ、ニューロープは10月9日、大和企業投資、ディノス・セシール、中京テレビ、Reality Acceleratorを引受先とする第三者割当増資により、1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

画像検索から需要予測まで業界向けにAI活用

2014年設立のニューロープは、創業後、インスタグラマーと提携してコーディネートスナップを掲載する、メディアコマース「#CBK(カブキ)」をリリース。インフルエンサーマーケティングによるアパレルブランドのプロモーションなどにも取り組みながら、蓄積されたデータを活用して2015年10月からAI開発に着手し、2017年4月にはファッションに特化した人工知能「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」をリリースした。以降、AIによるファッション画像検索、スタイリング提案、トレンド分析、需要予測など、さまざまなサービスを法人向けに提供している。

メディアコマース「#CBK」

2018年にはReality Accelerator、大和企業投資、都築国際育英財団から約5000万円を調達したニューロープ。その後、ECサイトにタグを入れると自動で類似アイテムやオススメのコーディネートが紹介できるレコメンデーション機能を充実させ、「取引先も順調に増えている」(ニューロープ代表取締役の酒井聡氏)という。

また、ファッションにおけるトレンドや需要予測などもサービスとして展開。トレンド予測では、SNS上のスナップをAIで解析し、トレンド分析を行う「#CBK forecast(カブキフォーキャスト)」を企業へ提供している。

AI解析によるトレンド分析ツール「#CBK forecast」

需要予測については、取引先から過去売上データの提供を受け、統計分析により、将来発注が予測できる推定モデルを作成。現在5社ほどの取引先とともに実証実験を行っており、今後SaaSとして製品化を進めていくという。

今後もファッションに特化、プロダクト強化に投資

酒井氏は「レコメンド、トレンド定量化、需要予測など、さまざまなプロダクトを開発・提供していく中で、純粋にリソースが足りなくなってきた」と述べ、今回の調達資金について「主にエンジニア採用に充てる」と話している。またグラフィックボード調達など、開発環境の整備にも充て、全体に「プロダクト面を強化するために投資していく」としている。

ニューロープ代表取締役 酒井聡氏

今回、株主に加わったディノス・セシールとは、昨年からECと紙のカタログを連携させる取り組みを行ってきた。「従来はたくさんの紙のカタログを配布して、縦に売上を積むスタイルが取られてきた。そこへAI技術、スナップ情報などを用いて、顧客ごとにパーソナライズしたカタログを作り、配布するという施策を昨年行ったところ、よい結果をもたらしている。これまでの協業でも実績が出ており、今後も提携していく」と酒井氏は話す。

ファッションAIの世界では、ニューラルポケット(旧ファッションポケット)やSENSY(センシー)といったスタートアップがスタイリング提案アプリやサービスを展開しているが、最近ではその多くがファッションに限らない汎用AIの領域へ移っている。酒井氏は「ニューロープは今後もファッションにフォーカスし、ファッションに特化したAIを提供していく」と語る。現在展開するファッションのレコメンド、トレンド予測、需要予測に加えて、今後は「デザイン支援や来店客分析なども手がけたい」という。

ニューロープが展開を目指すファッションの各領域

「ドメインをファッションに特化することで、営業部隊は比較的スリムにできる。その分、プロダクトは(ファッションの)バリューチェーンのいろいろなところに対応したものを開発していくつもりだ」という酒井氏。ニューロープはもともとITをバックグラウンドにしたメンバーで構成されたチームで「これからもエンジニア中心でやっていく」としつつ、ファッション業界で培われた知識を糧に「業界の人と同じ船に乗ってやっていく気持ちで、業界の発展に貢献したい」と語っている。

また「台湾やタイなどで現地企業を訪問して提案したところ、感触は悪くない。プロダクトを利用してもらえそうだ」と酒井氏は述べ、「ファッションSaaSは言語にそれほど依存しない」として、海外展開も図っていく考えだ。

IT活用で小売店に“新しい仕入れの仕組み”を提供する「PORTUS」

店舗がもっと自由に商品を仕入れられるプロダクトを作ることからスタートし、ゆくゆくは小売全体をアップデートしたい——。今回紹介するのはそんな目標の下、テクノロジーを活用して小売業界の課題解決に取り組むスタートアップ「パークアンドポート」だ。

同社は10月8日、店舗向け仕入れプラットフォーム「PORTUS(ポルタス)」をローンチした。

PORTUSは「店舗が抱える『仕入れの壁』を取っ払い、幅広い商品を仕入れられるようにする」ことを目指したサービス。商品を扱うメーカーやブランドといったサプライヤーと店舗を適切につなぐことで、受発注の工数や与信を始めたとした既存の商流における課題を解決する。

メーカーと店舗が抱える受発注の課題をITで解決

これまで店舗が商品を仕入れようと考えた場合、電話やFAXでメーカーにアポイントをとった後、店舗の規模や与信などの基準をクリアして初めて取引が始まるという流れが一般的だった。その工程は時間と手間がかかるだけでなく、結果的にメーカー側の判断でNGになることも多々ある。

反対にサプライヤー側はどうか。こちらも取引方法がアナログな形式のため、1人の営業担当者が対応できる件数が限られ、なかなか取引の幅を広げられないという課題を抱えている。そこに上述した与信の問題も加わり、第三者機関の与信点数が低ければ面白そうな店舗であっても商品を提供できないことがあるそうだ。

パークアンドポート代表取締役の櫟山敦彦氏は新卒で入社した繊維商社時代にブランドビジネスに携わっていたこともあり、特に店舗側の課題を自身でも感じていたそう。ただヒアリングを重ねていくとサプラヤー側も大きな悩みを持っていることに気づいた。

「決して売りたくないわけではないのに、売れない状況に陥っている。与信がないとそもそも商品を提供できず、その解決策として先払いという手段もあるがお店側に負担がかかり導入しにくい。また『最低でも一定の数量以上は仕入れてください』という形で、店舗側がリスクを取る必要があることも多く、新しいブランドや商品に手を出しにくいとう課題もある。サプライヤーとしては営業効率なども考えると、小規模の店舗にごくわずかな商品を提供するメリットが少ないからだ」(櫟山氏)

両者を仲介する存在として問屋やBtoB仕入れサービスが存在するが、問屋の場合は結局与信の問題が付きまとう。また櫟山氏の話では既存の仕入れサービスはマッチングのみを担うプラットフォーム型が多く、結局担当者が自分で相手を見つけて交渉する必要があることも多いという。

そこでPORTUSの登場だ。このサービスは独自のバイイングサポートシステムとトライアルオーダー機能を軸に「サプライヤーの営業業務と与信の部分を巻き取って、自分たちが代行する」(櫟山氏)ことで、サプライヤーの営業クオリティを落とさずに今まで以上に多くの店舗へと商品を提供できるようにする。

バイイングサポートシステムは、簡単に言うと店舗の特性に合った商品をPORTUSがレコメンドする仕組みだ。店舗登録時に入力した店舗画像、取扱ブランド、商材の売上構成比などから店舗の特徴量を抽出し、特性にあった商品やブランドを提案するというもの。これをオンライン上で行うことで、従来の電話・FAXによる受発注業務や配送確認作業を効率化する。

櫟山氏の話では当初はサクセスチームによる人力のコミュニケーションを通じた提案がメインになるが、取引回数が増えていけば徐々にデータに基づいて機械的にレコメンドすることにも取り組むそう。

「同じような商品を扱っている店舗では、Aという商品がよく売れている」「その商品と一緒にBという商品が購入されている」といったようなデータから、各店舗に対して商品・ブランドを紹介するイメージだ(店舗は登録されているブランドから自身で商品を選ぶことも可能)。

さらにもう1つのトライアルオーダー機能で店舗側の仕入れのリスクを削減する。同機能はその名の通り、ブランドから商品を仕入れる前に「一定期間店頭に商品を置いて、顧客の反応を確かめた上で実際の発注を行える仕組み」だ。

従来の「買取中心の商流」では店舗側がリスクをとって一定の数量以上を買い取る必要があったことに加えて、既存のBtoB仕入れサービスでは事前に商品をチェックできないことが多く、アパレル商材のようにオンライン上のみで判断が難しい商品は発注しづらかった。

要は「売れるかわからない商品」をいきなり仕入れるのではなく、試験的に店頭に置いて顧客のフィードバックを得られるようにすることで、より多くの商品にチャレンジしやすくなる。Webサービスを作っている会社がα版やテスト版を作って周囲の人に試してもらう感覚に近いかもしれない。

「(バイイングサポートで)この商品どうですか?と提案しても、見たことがない商品をいきなり仕入れるのは少しハードルが高い。トライアルで実際に顧客の反応を確かめた上であれば仕入れやすいと考えた」(パークアンドポート共同創業者でCOOの近藤俊氏)

これらのシステムによって店舗とサプライヤー双方の負担を減らしつつ、実際に正式な発注に至った際にはサプライヤー側から10〜15%ほどの手数料を得るのがPORTUSのビジネスモデルだ。

目標は小売のアップデート、事業拡大へ資金調達も実施

PORTUSでは9月からユーザーの事前登録を始めていて、現在30以上のブランドと複数の小売店(数は非公開)がすでに集まっている。ブランド側はライフスタイル全般に及び、中には造花店や額縁店などからの問い合わせもあるそう。またCAMPFIREで累計数千万円の支援を獲得している「ALL YOURS」のような新興ブランドがリアルな商圏を広げていく目的で参画しているケースもある。

櫟山氏によると、ある店舗では実験的に「店舗スタッフが選んだ商品」と「PORTUSメンバーが選んだ商品」を置いてみたところ後者の方が売れたそう。そこからスタッフが顧客にどんなものが欲しいかを自ら聞き、PDCAを回していくような流れに繋がりつつあるようだ。

「今までは仕入れ先が限られていたので、顧客のニーズを聞いても仕入れに反映できないこともあった。PORTUSを通じてリアルな小売においてもどんどんPDCAを回せるような環境が作れれば、バイイングサポートの精度も上がってより面白い商品を提案することにも繋がるし、顧客のニーズに応えることもできる」(櫟山氏)

パークアンドポートのメンバー。左から2人目が代表取締役の櫟山敦彦氏、3人目が共同創業者でCOOの近藤俊氏

もともとパークアンドポートは「リアルな店舗における購買体験をもっと楽しくするにはどうしたらいいか」という思いから始まったスタートアップ。「店舗側が自由に仕入れができないこと」が原因で商品のバラエティが限定されたり、画一的な店舗が増えてしまうのではと考え、現在手がけるプロダクトからスタートすることを決めたという。

学生時代からかなりのファッション好き、ショッピング好きだったという代表の櫟山氏は新卒でブランドビジネスに携わっていたほか、前職のエアークローゼットでは対アパレルとの交渉やMDの統括、改善、複数の新規事業の立ち上げなどを担当していた人物。COOの近藤氏も楽天時代にEC事業に携わるなど、ITと小売の経験があるメンバーが中心だ。

パークアンドポートでは今回プレシードラウンドとして、インキュベイトファンド及び他1社のベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施したことも明かしている。

今回のラウンドでは金融機関からの融資も含めて総額3000万円を調達する予定。冒頭でも触れた通り「小売のアップデート」を目標に、各機能の強化やサービス認知獲得から事業拡大を目指す。

ミレニアル世代の共働き夫婦向け、家計簿・貯金アプリ「OsidOri」が5500万円の資金調達

夫婦向けに特化したお金の管理・貯金アプリの「OsidOri(オシドリ)」を提供するOsidOriは10月3日、ワールド・モード・ホールディングス、京銀輝く未来応援ファンド2号投資事業有限責任組合、インフキュリオン・グループ、グロービス・ベンチャー・チャレンジ2号ファンド、そして匿名の個人投資家を引受先とした第三者割当増資、ならびに複数の金融機関からの融資により、合計で5500万円の資金を調達したことを発表した。これにより、2018年6月に創業したOsidOriの累計調達額は1億円となった。

8月23日にリリースされたOsidOriは「共働き夫婦」の利用に最適化されたお金の管理・貯金アプリ。口座の入出金やクレジットカードの支出が自動的に反映される。

後述の3つの機能が特徴的だ。1、「家族のお金」と「個人のお金」を1つのアプリで管理。家族のお金の管理の画面は夫婦2人でシェアする形となるが、個人のお金は自分の専用画面で管理することになる。2、夫婦間でのお金のやりとりを簡単にできる。払った家賃や光熱費など、シェアしたい分を選びスワイプすることで共有することが可能。3、「家族貯金」。家族旅行、教育費用などの目標貯金を、夫婦一緒に始められる。

OsidOri取締役COO/CMOの中山知則氏いわく、「女性の社会進出や産後の社会復帰などが広がり、今や共働きは全夫婦の2/3以上の2400万人を超えている」といった社会的な背景があり、OsidOriの開発に至った。

そして同社いわく、ミレニアル世代の共働き夫婦のお金に関するルールは多くの場合ダブルインカムのため「お小遣い制」でなく「分担制」であることが多い。「共通口座にお金を入れあう」「家賃や食費等の費目を担当制にする」といったケースが多いそうだ。だが、いわゆる家計簿アプリは1人用であるがゆえに、夫婦で利用すると個々人の購買情報のプライバシーが守られない、という課題があった。加えて、家族分の領収書を月末に清算する手間を解消したり、夫婦が別々に貯金をしている際に生じる資産形成の不安を解消するのがOsidOriだ。

OsidOriのミッションは「誰もがお金に困らず、生きたい人生を歩める世界をつくる」。代表取締役CEO宮本敬史氏は自身の原体験を以下のように説明する。

「金融キャリアが長いこともあり、私は、銀行口座はもちろんのこと、証券、投資信託、ロボアド、クラウドファンディング、ソーシャルレンディング、そして仮想通貨といった、多種多様な金融サービスを利用し、資産は各サービスに分散していました。

一方、私の家族はまだ子供が小さく社会復帰できていない妻がおり、仮に私に万が一のことがあったら、これらの分散した資産は間違いなく忘れ去られるのではないか、と考えました。相続の際の手続きは手間も時間もかかりますが、それは口座を特定できている場合で、そもそも特定すること自体が難しいのではないかと(実際には確定申告の情報や、配偶者との記憶などをもとに探すようです)。

その時に私の脳裏に浮かんだのは、新卒で入社した信販会社の回収業務で、ご契約者様と接した際の経験でした。離婚をされた母子家庭のお母さんが、小さな子供がいるため満足に仕事ができず(子供が小さかったり、また複数いらっしゃると、正社員として働くのが基本的には難しくなるため)、生活資金に困り、それを借金で賄うなどして負のスパイラルに陥っていく、そんな家庭を多く見てきました。

私は、家族に何かあっても残された人がお金で苦労することをなくしたい、その思いから、家族のお金のシェアリングサービスを展開しようと考えたのが原点です」(宮本氏)。

調達した資金をもとに、OsidOriはアプリの機能強化や改善を急ぐとともに、銀行などの金融機関をはじめとした法人向けに提供するサービスの開発も進めていく予定だ。