配車サービス用のEV生産に向けUberとArrivalが提携

組立ラインを廃止し、高度に自動化されたマイクロファクトリーを選んだ電気自動車メーカーのArrival(アライバル)がUber(ウーバー)と提携し、ライドシェアのドライバー向けEVを作ろうとしている。

Arrivalは年末までにクルマの最終的なデザインを明らかにし、2023年第3四半期に生産を開始する予定だ。Uberのドライバーらを設計プロセスに関与させ、ニーズに合わせた車両の製造を目指す。

Uberは2020年、ロンドンで2025年まで、北米と欧州で2030年まで、プラットフォーム全体では2040年までに完全な電気モビリティプラットフォームになると約束し、それを実現しようとしている。最近立ち上げた「Uber Green」で、乗客には追加費用なしでEVを選ぶ機会を、ドライバーにはサービス手数料軽減の機会を提供する。より多くのドライバーにEVを提供する8億ドル(約870億円)の計画の一環だ。

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2021年末までにEVドライバーの数を倍増するという目標を達成するために、Uberはドライバーの新車購入や借り入れを支援し、ドライバーへのインセンティブを厚くする。Arrivalの車両は、EVへの切り替えを希望するUberのドライバーへ推奨される車の1つとなるかもしれない。特に同社が2018年に始めたClean Air Plan(クリーンエアプラン)の「EVアシスタンス」の対象となるロンドンのドライバーに推奨される可能性がある。Uberの広報担当者は、Arrivalの車がどのような形で利用可能になるかについて明言を避けた。2020年9月、Uberは同様の取引でGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)と提携し、米国とカナダのドライバーに2020年シボレーボルトを割引価格で提供した。

「Uberは、ロンドンのすべてのドライバーが2025年までにEVにアップグレードできるよう支援すると約束しました。クリーンエアプランのおかげで、この野心的な目標を達成するために1億3500万ポンド(約180億円)以上が調達されました」とUberの北欧および東欧地域ゼネラルマネージャーのJamie Heywood(ジェイミー・ヘイウッド)氏は声明で述べた。「私たちが現在注力しているのは、ドライバーに対しこの資金でのEVへのアップグレードを奨励することであり、Arrivalとの提携はこの目標の達成に役立ちます」。

Arrivalの拠点であるロンドンは、輸送システム全体を2050年までにゼロエミッションにすることを目指している。2025年からロンドンと町の中心部にゼロエミッションゾーンを設け、2040年までにロンドンの中心部の周辺に、2050年までにロンドン全体に拡大する。Uberのドライバーがロンドンの最もホットな地域で働きたいならEVに変えるしかない。

Uberとの提携によりArrivalは乗用の電気自動車の開発に初めて参入することになる。Arrivalは商用販売ではなく商業車分野に重点を置いているため、既存の車両モデルはバンとバスとなっている。すでにUPSから1万台の専用車を受注している。

Arrivalは商用電気自動車の設計・製造の方法を変えたいと考えている。同社独自のバッテリーやその他の部品を社内で設計し、従来の製造工場よりもはるかに小さい複数のマイクロファクトリーで車両を製造することにより、車両をより速く、安く、はるかに少ない環境コストで製造するとArrivalは述べている。

同社の株式は2021年3月から公開市場で取引されている。従来の遅いIPOルートではなく、SPACであるCIIGと合併し、SPACルートにより公開市場に参入する多くのEV企業の1つとなった

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラがカナダ企業の特許を使い安価で環境に優しい新バッテリーを開発中

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は2020年9月にTesla(テスラ)のBattery Dayのステージに立ったとき、リチウムイオンバッテリーの価格を半分にすると約束し、ニッケル金属電極を作る際の汚れた、そして複雑な過程を最初から作り直すことで価格を抑制できると主張した。

「溝を掘って、溝を埋め、そしてまた溝を掘ってと、とてつもなく複雑です」と同氏はイベントで述べた。「それで我々は全体のバリューチェーンに目をやり、どうやってこれを可能な限りシンプルにできるのか、と言いました」。

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最もシンプルなルートにはカナダの小さなバッテリースタートアップ、あるいは少なくとも同社の特許出願が含まれているようだ。

公開記録によると、Battery Dayの2週間前、Teslaはトロント近くに拠点を置く小さな会社Springpower International(スプリングパワー・インターナショナル)から数多くの特許出願を計3ドル(約330円)で購入した。

それらの特許出願の1つは、Teslaの上級副社長Drew Baglino(ドリュー・バッリーノ)氏がBattery Dayにカリフォルニア州フリーモントにある同社工場に設けられたステージで描写したものに似ている、イノベーティブなプロセスの詳細をつづっている。特許出願の購入は、特許そのものが最終的に2021年1月認められたとき、特許にはSpringpowerの記載はなく、Teslaに発行されたことを意味する。

電気自動車バッテリー向けの電極製造は従来、かなりの量の汚染水を生み出す。電極材料1トンを製造するのに、アンモニアや金属粒子、有毒な化学物質を含む4000ガロンもの汚染水が出る。Springpowerのプロセスは費用のかかる水処理を排除し、賢くも薬液を再循環させる

バッリーノ氏のプレゼンテーションでも、水を再利用し、排水を作らない手法が述べられた。事業費の75%以上の抑制に加え、同氏は次のように述べた。「当社はまた、同じプロセスをリサイクルされた電気自動車とグリッドストレージバッテリーから出る金属粉の消費に持ってくることができます」。

TeslaはSpringpowerの知的財産以上のものを獲得したようだ。Battery Dayの1週間前に、Springpower Internationalのウェブサイトは1つのホールディングページに変わった。それから数カ月して、何人かのSpringpowerの研究者は彼らのLinkdInプロフィールを変えた。それからするに彼らは現在、Teslaで働いているようだ

Springpower InternationalのCEOであるMichael Wang(マイケル・ワン)氏はコメントの求めに応じず、同社の電話交換台へのコールにも応答がなかった。同氏のLinkedInのページには現在、Teslaのスタッフ(バッリーノ氏含む)からの何十ものアップデートが表示されている。

電話で連絡をとったSpringpower Internationalの上級役員はTeslaによる買収を認めも否定もしなかったが、TechCrunchにTeslaの広報チームを案内した(Teslaは広報担当者を置いておらず、同社に送ったメールに返事はなかった)。

Springpower Internationalは、部分的には中国のバッテリー会社Highpower Internationalによって、Springpowerの子会社の研究部門として2010年3月に深圳で創業された。しかしHighpowerは6カ月もせずして、Springpower Internationalのテクノロジーが商業化から程遠いと判断して10万ドル(約1090万円)の投資を取り消してSpringpower Internationalと手を切った。

カナダ政府が出資したプログラムの「客員起業家」であるJames Sbrolla(ジェームズ・スブローラ)氏が、創業されて間もなかったSpringpower Internationalを指導するために介入した。同氏は同社が少額の補助金を、そして最終的に2018年に340万カナダドル(約3億円)の持続可能テクノロジー賞を獲得するのを手伝った。しかし同氏は2020年後半以降、Springpower Internationalの誰とも連絡をとっていないとTechCrunchに語った。

スブローラ氏は同社が買収されたかもしれないと聞いても驚かなかった。

「スマートな人たちのグループです。それについて疑う余地はありません」と同氏は話した。「Springpowerのもののようなテクノロジーは環境への負荷の削減で大きなメリットがあります。そして大企業を引きつけることでずっと早く、そしてより簡単にスケール拡大できます」。

ありそうなことだが、Springpower InternationalがTeslaによって買収されたのなら、2019年に同じように密かに買収された別のカナダのバッテリー会社Hibarを含む12社ほどの企業の仲間入りをしたことになる。

マスク氏はリチウムイオンバッテリーの専門的な部分に関しては長らく国境の北に目を向けてきた。2015年にTeslaはカナダ・ノバスコシア州にあるダルハウジー大学の主任バッテリー研究者で教授のJeff Dahn(ジェフ・ダーン)氏と5年間の独占的パートナーシップを結んだ。ダーン氏の名は同社の数多くのバッテリー特許に掲載されており、2021年1月に同社はダーン氏とのパートナーシップをさらに5年間更新した。

マスク氏は自社バッテリー生産を実現し、現在のサプライヤー(パナソニック、LG化学、 CATL)への依存を小さくしようと取り組んでいる。「いま当社はこのプロセスを手にしていて、独自の電極の設備を北米に建てようとしています」とバッリーノ氏はBattery Dayで述べた。

マスク氏はTeslaの新しいバッテリーテクノロジーの複合的なメリットによって2万5000ドル(約270万円)の車両が実現するかもしれない、と付け加えたが、あまりに多くをすぐには期待しないよう警告した。「こうしたアドバンテージを実現させ始めるのにおそらく1年から18カ月、完全に実現するのに3年ほどかかるでしょう」。

おそらくそれまでにSpringpower Internationalの役割はもう少し明らかになるだろう。

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(文:Mark Harris、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

BMWグループならびにFord Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)向けの、20アンペア時(Ah)の全固体電池セルを両手に持つSolid Power(ソリッド・パワー)の製造エンジニア。この全固体電池セルはコロラドにあるSolid Powerの試作ラインで製造された。

固体電池(SSB)システムは、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきたもので、複数のスタートアップが最初の製品化を競い合っている。自動車メーカーたちが、この技術に対するトップ投資家群の一角を占めている。各社とも電気自動車(EV)をより安全に、より速く、そして航続距離を拡大するための突破口を求めている。

そんな中、Ford Motor CompanyとBMWグループが、電池テクノロジー企業Solid Powerへ資金を投入した。

コロラド州ルイスビルを本社とする、SSB開発のSolid Powerは、米国時間5月3日に、その最新のラウンドとなる1億3000万ドル(約142億2000万円)のシリーズBが、FordとBMWによって主導されたと発表した。このことは、その2社がSSBが将来の輸送を支えるものだと考えていることを示している。今回の投資で、FordとBMWは対等な株式所有者となり、両社代表者はSolid Power の取締役会に参加する。

また今回のラウンドで、Solid Powerは米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所からスピンアウトしたベンチャーキャピタルのVolta Energy Technologies(ボルタエナジー・テクノロジーズ)からも追加投資を受けた。

固体電池という名前は電解溶液を使わないことに由来している(Mark Harris記者が年頭のExtra Crunch記事で説明している)。通常の電解溶液は、可燃性で過熱の危険があるため、一般的にSSBは比較的安全だと考えられている。ライバルである電解溶液を使うリチウムイオン電池と比べたときのSSBの真の価値は、そのエネルギー密度だ。Solid Powerは、同社の電池は、既存の充電式電池に比べて50~100%エネルギー密度を向上させるとできるという。理論的には、よりエネルギー密度の高い電池を搭載した電気自動車は、1回の充電でより長い距離を移動することができる。

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この最新の投資ラウンドは、Solid Powerが自社史上最大のアンペア時間(Ah)出力を持つ電池セルを生産するために、製造力を強化するのに役立つ。FordならびにBMWとの個別の共同開発契約に基いて、同社は2022年以降、テストよ車両統合のために100Ahのセルの納入を開始する予定だ。

これまで同社は、2Ahと20Ahの出力を持つセルを製造してきた。Solid Powerはその声明の中で、2020年後半にFordとBMWによって、2Ahバッテリーセル「数百個」が検証されたと語っている。一方、同社は現在、標準リチウムイオン用の機器を使い、20Ahの固体電池をパイロットベースで生産している。

Solid Powerの広報担当者Will McKenna(ウィル・マッケナ)氏はTechCrunchに対して、9×20センチ22層で構成されてる20Ahパイロットセルとは対照的に、100Ahセルは、より大きな底面積とさらに多くの層を持つことになると語った(「レイヤー」とはカソードの数を指していると、マッケナ氏は説明した。20 Ahセルの中には22枚のカソードと22枚のアノードがあり、それぞれの間に全固体電解質セパレータが挟まれていて、すべてが単一のセルの中ににまとめられている)。

Solid Powerの製造法とは異なり、従来のリチウムイオン電池では、製造プロセスで電解質の充填と循環を行う必要がある。Solid Power によると、一般的なGWh規模のリチウムイオン製造施設における設備投資の5%から30%が、そうした追加工程に投入されている。

Solid Powerが自動車メーカーからの投資を受けたのは、今回が初めてではない。2018年に行われた2000万ドル(約21億9000万円)のシリーズAでは、BMWやFordの他、Samsung(サムスン)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volta(ボルタ)などからの資本金を集めた。同社は、OEMたちの注目を集めている新しい企業群の1つなのだ。他の注目すべき例としては、Volkswagen(フォルクスワーゲン)が支援するQuantumscape(クアンタムスケープ)とGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)によるSESへの資金投入がある。

Fordは自身でも先進的な電池技術を研究していて、1億8500万ドル(約202億円)で電池R&Dラボを開設する予定であることを先週発表している

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画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

中国Xpengが展開するLiDARを利用した自律運転EV

Elon Musk(イーロン・マスク)の、LiDAR(Light Detection and Ranging、光による検出と測距)に依存する企業は「破滅する」という発言は有名で、実際Tesla(テスラ)は、自動運転機能は視覚認識で成り立つという信念の元、レーダーを撤去しようともしている。しかし、中国のXpeng(シャオペン、小鵬汽車)は異なる考えのようだ。

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2014年に設立されたXpengは、中国で最も有名な電気自動車のスタートアップ企業の1つで、設立からわずか6年で上場を果たしている。同社はTeslaと同様、自動化を自社戦略の重要な課題と考えているが、Teslaとは異なり、レーダー、カメラ、Alibaba(アリババ)が提供する高精度地図、自社開発のローカリゼーションシステムの他、さらに最近ではLiDARを組み合わせて道路状況を検知、予測している。

Xpengの自律走行研究開発センターを統括するXinzhou Wu(ウー・シンヂョウ、吳新宙)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ「LiDARは、子どもやペットなどの小さな動く障害物や、運転中の誰もが恐れる他の歩行者やバイクに対しても正確に距離を測定し、走行可能な空間を3Dで提供してくれます」と話す。

「LiDARに加えて、位置や速度を示す通常のレーダー、基本的なセマンティック(意味的)な情報を大量に持つカメラがあります」とウー氏。

Xpengは、2021年下半期に納車を開始する量産型EVモデルP5にLiDARを搭載する。この車はファミリーセダンで、Alibabaのマップに掲載された中国の高速道路や一部の都市の道路を、ドライバーが設定したナビに基づいて走行することができるようになる。LiDARを搭載していない旧モデルでは、すでに高速道路での運転アシストが可能だ。

「Navigation Guided Pilot(NGP)」というこのシステムは、TeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしているとウー氏は話す。例えば車線変更、ランプへの進入、退出、追い越しの他、中国の複雑な道路状況ではよく観られる突然の割り込みに対する操作などを、すべて自動的に行うことができる。

「都市部は高速道路に比べて非常に複雑ですが、LiDARと精密な知覚能力があれば、基本的に3層の冗長性を持ったセンシングが可能になります」。

ADAS(先進運転支援システム)であるNGPでは、ドライバーはハンドルから手を離さず、いつでも車両をコントロールできる状態である必要がある(中国の法律では、ドライバーが路上でハンドルから手を離すことは認められていない)。Xpengの野望は、2~4年後にドライバーを排除すること、すなわちレベル4の自律性に到達することだが、実際の導入は規制次第とのことだ。

「しかしそれについてはあまり心配していません。中国政府はテクノロジーの規制に関して、実は最も柔軟だと思っています」とウー氏は話す。

LiDAR陣営

マスク氏がLiDARを嫌うのは、レーザーを使ったリモートセンシング手法のコストが高いことにある。ウー氏によると、初期の段階ではロボタクシーの上で回転するLiDARユニットに10万ドル(約1090万円)ものコストがかかっていたという。

「今では、少なくとも2桁は低くなっています」と話すウー氏。ウー氏は米Qualcomm(クアルコム)に13年在籍した後、2018年末にXpengに入社し、同社の電気自動車の自動化に取り組んでいる。現在は、Xpengの中核である、500人のスタッフを擁する自律走行研究開発チームを率いており、このチームの人数は2021年末までに倍増するという。

LiDARを搭載した新型セダンについては「次は、エコノミークラスをターゲットにしています。価格的にはミッドレンジと言えるでしょう」とウー氏は話す。

Xpengの車両に搭載されるLiDARセンサーは、深圳に本社を置くドローン大手のDJI(ディー・ジェイ・アイ)の関連会社であるLivox(ライボックス)が提供する。Livoxはより手頃な価格のLiDARが売りで、Xpengの本社かクルマで約1.5時間の広州を拠点とする。

関連記事:テスラの中国ライバルXpengがDJI系列LivoxのLiDARセンサーを採用へ

LiDARを採用しているのはXpengだけではない。Xpengのライバルで、より高価格帯の市場をターゲットにしている中国のNIO(ニーオ)は、2021年1月にLiDARを搭載したクルマを発表したが、このモデルの生産開始は2022年になる予定である。最近では、中国の国有自動車メーカーBAIC(北汽集団)の新しいEVブランドであるARCFOX(アークフォックス、極狐)が、Huawei(ファーウェイ)のLiDARを搭載した電気自動車を発売すると発表した。

マスク氏は最近、Teslaがカメラと機械学習による純粋なビジョンに近づくにつれ、製品からレーダーを完全に撤去するかもしれないと示唆している。マスク氏はTeslaの古いソースコードのコピーをXpengが持っていると主張しており、Xpengに好意的な感情を抱いていない。

2019年、Teslaは同社のエンジニアであったCao Guangzhi(ツァォ・グゥァンヂー、曹廣志)氏に対し、企業秘密を盗んでXpengに持ち込んだとする訴訟を起こした。Xpengは不正行為を繰り返し否定している。ツァォ氏は現在、Xpengに在籍していない。

供給の課題

Livoxは、ドローンメーカーであるDJIに「育てられた」独立した事業体であると主張しているが、ある関係者の話では、Livoxは別会社という位置づけの「DJI内のチーム」にすぎないという。DJIとの距離を主張する意図は、DJIが米国政府のエンティティリストに登録されているためだ。Huaweiを含む多数の中国ハイテク企業の主要サプライヤーがエンティティリストにより排除されている。

さらにXpengは、NVIDIA(エヌビディア)のXavierシステムオンチップ・コンピューティングプラットフォームや、Bosch(ボッシュ)のiBoosterブレーキシステムなどの重要部品を使用している。世界的に見ても、半導体の供給不足は続いており、自動車の幹部たちはチップにさらに依存するようになる自動運転車の将来のシナリオに悩み始めている。

関連記事:Google、Intel、Dell、GMなどテックと自動車業界のCEOたちが世界的なチップ供給不足問題で米政府と討議

Xpengはサプライチェーンのリスクを十分に認識しているようだ。「第一に、安全性は非常に重要です。安全性の課題は国家間の緊張よりも重要です。新型コロナウイルス感染症に影響を受けているサプライヤーもありますし、複数の供給路を検討しておくことは、私たちが非常に重要視している戦略の1つです」とウー氏は話す。

ロボタクシーの攻勢

Xpengは、Pony.ai(ポニーアイ)や広州のWeRide(ウィーライド)など、中国で急増している自律走行ソリューション企業と手を組むこともできた。しかし、Xpengは彼らの競争相手となり、自社で自動化に取り組み、人工知能のスタートアップ企業を打ち負かすことを誓ったのだ。

EVメーカーとロボタクシーのスタートアップ企業の関係について、ウー氏は「自動車用の大規模なコンピューティングが手頃な価格で利用できるようになり、LiDARの価格が急速に低下している現在、この2つの陣営に大差はありません」。

「(ロボットタクシー会社は)量産車の開発を急ぐ必要があります。2年後にはすでに量産可能な技術になり、ロボタクシー企業の価値は今よりもずっと低くなってしまうと思います」とウー氏は続ける。

「私たちは、自動車産業に求められる安全性と検査の基準を満たす技術の量産方法を知っています。これは、生き残りを左右する非常に高いハードルです」。

Xpengにはカメラのみに頼る計画はない。LiDARのような自動車技術の選択肢がより安価で豊富になってきた今、なぜそれを利用せずにカメラのみにこだわる必要があるのか、とウー氏は問いかける。

「私たちは、マスク氏とTeslaに敬意を払い、彼らの成功を願っています。しかし、(Xpengの創業者である)Xiaopeng(何小鵬)の有名なスピーチにあるように、私たちは中国で、そして願わくば他の国でも、さまざまな技術で競争していきます」。

5Gは、クラウドコンピューティングやキャビンインテリジェンスと一体になって、Xpengの完全自動化の実現を加速させることになると思われるが、ウー氏は5Gの利用法についてはあまり詳しく語らなかった。無人運転が可能になり、ドライバーがハンドルから手が離すことができるようになれば、Xpengは車に搭載される「多くのエキサイティングな機能」を探求するだろう。すでにノルウェーで電気SUVを販売しているXpengは、さらなるグローバル展開を目指している。

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画像クレジット:Xpeng

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

上海モーターショーで注目を集めていたEVたち

2021年で19回目を迎えた上海モーターショーでは、電気自動車やハイテク自動車が数多く出展された。中国、欧州、米国の自動車メーカーが集い、SAIC(上海汽車)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Liuzhou Wuling Motors(柳州五菱汽車)のジョイントベンチャーによる低価格志向の​​Wuling Hong Guang(五菱宏光)Miniから、高級車のMercedes(メルセデス)EQSまで、あらゆる価格帯の最新製品が披露されている。

一部の自動車メーカーは、規制当局が許可しさえすれば自律走行を実現できることを示唆する表現を用いて、ドライバー支援システムの機能をアピールした。ただし明確にしておくと、これらのシステムは自律的ではない。他の自動車メーカーはこの主張には触れなかったが、自社の車のソフトウェア機能を公表。この動きはTesla(テスラ)の人気が高まって以来続いているものだ。

このショーで我々の目を引いたものを本記事で紹介しよう。TechCrunchのRita Liaoによる中国の自動車に関する記事もお見逃しなく。Teslaが中国において自社の電気自動車の品質に関する苦情が広がる中、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいることを伝えている。

関連記事:批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

Audi(アウディ)

Audiは2021年、中国のパートナー企業であるFAW(第一汽車) やSAICとともにスポットライトを浴びた。3社は、Audi A6 e-tronコンセプトカー、Audi Q5Lのアップデート、Audi A7L、まだベールに包まれているSUVスタディAudi concept Shanghai(コンセプトShanghai)など4つのワールドプレミアを発表している。

Audi Q5L SUVは、FAW-VW(FAW-フォルクスワーゲン)ジョイントベンチャーの長春工場で引き続き製造される。一方、2021年内に生産開始予定のAudi A7Lリムジンは、SAIC Audi(SAICアウディ)ジョイントベンチャーが製造。中国市場向け上海製モデルとなるAudi A7Lには、適応型エアサスペンション、後輪ステアリング、四輪駆動などの機能が搭載される。

A6 etron

展示のAudi A6 e-tron(画像クレジット:Wu Kai/VCG via Getty Images)

A6 etronコンセプトは、馴染みのあるA6とは趣を異にする。このオール電気自動車はAudiの「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」で構築されており、同プラットフォームは2022年後半に始まる同社のCおよびBセグメント生産車の基盤アーキテクチャになる予定だ。

Audi A6 e-tronコンセプトはA6と同じ要素も共有する。広いクーペルーフアーチと短いオーバーハングを備えたスポーツバックとして設計され、22インチ(約56cm)の大径ホイールがその外観を仕上げている。A6 e-tronコンセプトは、合計350kWの出力と590ポンドフィート(約973Nm)のトルクを発揮する2つの電気モーターを装備。その充電アーキテクチャはPorsche Taycan(ポルシェ・タイカン)と同じ800ボルトを提供し、WLTP基準で434マイル(約700km)の航続距離を実現する。

BYD

Warren Buffet(ウォーレン・バフェット)氏が出資するBYD(比亜迪)は、Teslaと高いセールスを競い合い「Han(漢)」シリーズの販売台数は2020年の発売以来着実に増加している。

BYD Han

展示のBYD Hanの車両(画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images)

BYDのHanフラッグシップシリーズには、電気自動車3台とハイブリッド車1台が含まれている。中国の漢王朝にちなんで名付けられた高級電気セダンシリーズは、2020年販売を開始した。BYDの長距離EVは約375マイル(約600km)走行可能で、同社によると、その「ブレード」バッテリーパックは従来型のバッテリーパックよりも安全性が高いという。

Geely Holdings Inc.(吉利控股集団)

中国の自動車コングロマリットである同社は2021年の上海モーターショー会場のかなりの部分を占め、最新のものを含む複数のブランドを展示。Polestar(ポールスター、極星)、Volvo Cars(ボルボ・カー)、Lynk&Co(リンク・アンド・コー、領克)、Geometry(几何)、そして新しいZeekr(極氪)ブランドがEVを出展している。

Geometry Pro

2021年上海モーターショーで発表された几何A-Pro(画像クレジット:Geometry/Geely Holdings)

Geelyのマスマーケットブランドは、そのGeometry A車両の新しい拡張バージョンを発表した。「Geometry A Pro」と呼ばれる同モデルは、150kWのバッテリーを搭載し、1回の充電で600km(372マイル)走行できる。同ブランドは2019年にローンチし、これまでに3モデルを展開。AモデルとCモデルが中国市場で販売されている。グローバルパートナーの選定に向けて、Geometry Cの輸出を年内に開始する計画だ。

Lynk & Co. 05

画像クレジット:Geely holdings/Lynk & Co.

同社はLync&Co.05のプラグインハイブリッド型の最新版を発表した他、年内に公開される電動パワートレイン搭載のLync&Co.製品で採用するScalable Product Architecture(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ、SPA)も初めて披露した。

Polestar 1 Special Edition

2021年上海モーターショーでのPolestarのラインナップ(画像クレジット:Polestar/Geely Holdings)

Geelyが所有するVolvoのEVパフォーマンスブランドの展示では、ハイブリッド電気自動車Polestar 1とオール電気自動車Polestar 2の他、マットゴールドの2021年スペシャルエディションが注目を集めた。同車両がオール電気ではなくハイブリッドであることは確かだが、この特別バージョンは特筆に値する。

同スペシャルエディションは、カーボンファイバー強化ポリマー製の軽量ボディ、純正トルクベクタリング機能を備えたツインリア電気モーターに加え、曙ブレーキや調節可能なオーリンズダンパーなどの高性能コンポーネントを搭載。パワートレインは619HP、738ポンドフィート(約1000Nm)を引き出し、WLTP基準による純電気航続距離は60マイル(97km)。特注のマットゴールドカラーがエクステリアとブレーキキャリパーに施され、ブラックホイールを装着する。

Volvo XC40 Recharge

Volvo XC40の車両、2021年4月20日の上海モーターショーで公開(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty)

このスウェーデンのブランドは、2030年以降の新車販売をすべて純粋なバッテリー式電気モデルにする計画で、同社初のオール電気自動車XC40 Rechargeを本ショーに出展。同社の次のEVはC40になることを発表している。

Zeekr 001

Zeekrは2021年上海モーターショーで同ブランド初モデルの電気自動車を発表(画像クレジット:Zeekr/Geely Holdings)

Zeekrは同ブランドのフラッグシップであり、初モデルとなるEV、Zeekr 001を披露した。ブランド名Zeekrは、Generation Z(ジェネレーションZ)のZと「geek(マニアックな技術や知識を有することを表す)」を組み合わせたもので、ソフトウェアを前面に押し出すことを意図している。

Zeekrによると、同ブランドの車はオンラインや中国各地のエクスペリエンスセンターでも販売され、最終的には欧州や北米にも拡大する計画だという。Zeekr 001にはデュアルモーターが搭載されており、4つの車輪すべてに動力を供給。566ポンドフィート(約767Nm)のトルクを提供し、0mphから60mphまでの加速は4秒未満。1回の充電による航続距離の推定値は700 km(434マイル) を超えるとしている。

Zeekrブランドは今後5年間で5車種を市場に投入する計画で、そのすべてがGeely Holdingsの純電気SEAアーキテクチャをベースに開発される。

Mercedes(メルセデス)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーでEQBとEQSをはじめとする数車種を披露。いずれも同社の成長中のEQブランドの一部である。

EQB

メルセデス・ベンツの新しいEQB(画像クレジット:Mercedes-Benz)

同社は今回のショーで、コンパクトなマスマーケット向けのオール電気SUVを発表した。内装を中心にGLBを思わせる同車種は、2021年中国で発売される予定だ。欧州向けのグローバルモデルをハンガリーで生産し、2022年には米国で発売を開始する。

内燃エンジンGLBのスタイルを受け継いでいるのは一目瞭然だが、EQBのエクステリアの差別化要素として、前後に配される連続したライトストリップなど、電気EQブランドで共通するデザインが採用されている。アルミホイールは最大20インチ。グレードによってはローズゴールドやブルーの装飾トリムが施される。メルセデスは、パワートレインや航続距離、価格の詳細についてはまだ明らかにしていない。

EQS

Mercedes EQS 580 4MATIC(画像クレジット:Mercedes-Benz)

メルセデス・ベンツは上海モーターショーに先立って、自社ブランドEQのワールドプレミアを開催した。EQSは、電気だけで動く高級セダンとしては初めて、同社の新ブランドEQとして発売される。米国市場に最初に導入されるモデルは、329HPのEQS 450+と516HPのEQS 580 4MATIC。これは中国市場にとっても重要な車両となるだろう。

Sクラスのオール電気版となるこのモデルには、テクノロジーが詰め込まれている。例えば、車には350個のセンサーが搭載されており、距離、速度、加速度、照明条件、降水量、気温、座席の利用状況、ドライバーの目の動き、同乗者の会話などを記録する。TechCrunchはEQSを試す機会も得た。その時の印象はこちらの記事で紹介している。

関連記事:【レビュー】2022年のメルセデス・ベンツEQSはラグジュアリーEVの未来に賭ける、ただし賭金は高い

NIO(上海蔚来汽車)

Nioは、1月に発表されたET7の詳細を明らかにした。同社はまた、合計100カ所の自社ブランドの電力交換ステーションと、500カ所の充電ステーションおよび1万を超える充電設備を含むその他のインフラを中国の8つの省で展開すると発表した。

Nio ET7電動セダン、2021年4月19日月曜日の2021年上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Nio ET7

ET7はNioの電気自動車のフラッグシップセダンだ。同社はこの車のインテリアを正式に発表した。インテリアにはストームグレー、サンドブラウン、エーデルワイスホワイトの3色のアースカラーがあしらわれている。同社は、既存のクラウドホワイト、スターグレー、ディープ・ブラック、サザンスターに加えて、サンライズ・ベージュ、ルミナス・オレンジ、アークティック・グリーンなど、可能性のあるエクステリアカラーについても若干の情報を提供した。

ET7の150kWhバッテリーは、中国のNEDCテストプロトコルにおいて621マイル(999km)という桁外れの航続距離を実現している。NEDCのテストは楽観的な推定値を出すことで知られており、欧州のWLTPテストに比べてはるかに少ない可能性は高いだろう。

Nioはまた「高速道路、都市、駐車場、バッテリー交換などのシナリオで、リラックスできる安全なポイント・ツー・ポイントの自動運転体験を段階的に提供する」と主張する、自動運転技術NIO Autonomous Driving(NAD)についても強調した。その表現は、この技術が野心的なもので、依然としてドライバー支援システムのカテゴリー下に属することを示唆している。加えて、中国の規制では、ドライバーがハンドルを握った状態で常にコントロールできることが求められている。

Nioは今後数カ月以内にET7の生産を開始し、2022年第1四半期に発売する予定だ。

SAIC-GM(上汽通用)

SAIC−GM−Wuling Automobile(上汽通用五菱汽車股份有限公司)は、SAICとGeneral Motors、そしてLiuzhou Wuling Motorsのジョイントベンチャーで、5000ドル(約54万円)を下回る低価格帯のHong Guang Mini EVを発表した。

Hong Guang Mini EV

Wuling Hong Guang Mini電気自動車、SAIC-GM-Wuling Automobile製(画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images)

本稿のメイン写真にも採用されているWuling Hong Guang Mini EVは、2021年中国で最も人気を集めたEVの1つで、2月だけで5万7000台以上が販売され、価格は4230ドル(約46万円)となっている。このフェザー級EVは、最高効率かつ少ない構成部品で生産される。広西チワン族自治区の麗水工場では毎分1台の新車が生産されており、1台が完成するまでわずか4時間ほどだ。最も基本的なモデルは、AからBへのユーティリティ用に開発されたもので、インテリアもフード下もシンプルで機能的な車両に仕上がっている。

この愛らしいMiniの滑らかな走りは時速62マイルを超えることはなく、1回の充電による航続距離は約75〜110マイル(121~177km)で、市街を短時間移動するのに最適だ。5600ドル(約60万円)のモデルへのアップグレードにはエアコンとパワーウィンドウが含まれており、これはHVAC換気システムとシンプルなラジオを備えた標準モデルの簡素な性質を示している。

Toyota(トヨタ)

この日本の自動車メーカーは、2025年までにToyota bZブランド7車種を含む15車種のオール電気自動車を全世界で発売することを発表、新しいbZブランドは上海モーターショーでデビューした。

Toyota bZ46

Toyota bZ4X、2021年4月20日の第19回上海モーターショーで展示(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty Images)

Toyota bZ4Xは技術的には単なるコンセプトに過ぎないが、その重要性は無視できない。上海モーターショーで発表されたこのコンセプトカーは、トヨタの新しいオール電気自動車ラインアップの幕開けとなる。

トヨタの新しいbZブランド(beyond Zeroの略)は、サイズやデザインの多様なバリエーションで使用できる専用の基盤プラットフォームを備える。同社によると、このような幅広い選択肢を単独で用意するのは難しいため、さまざまな分野の専門知識を持つパートナーと共同でシリーズを開発しているという。トヨタはスバルにbZ4Xの開発を依頼し、BYD、ダイハツ、スズキもbZシリーズのパートナーだ。

トヨタはbZ4Xを日本と中国で生産する計画で、2022年半ばまでに世界中で販売を開始したいとしている。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーを通じてIDブランドにおける3台目の電気自動車を発表した。この製品は中国市場向けに特別に設計されている。

VW ID 6

Volkswagenは2021年上海モーターショーで全電動式のID.6 CROZZとID.6 Xを初公開(画像クレジット:Volkswagen)

VW ID.6には、中国北部で製造されるID.6 CROZZと南部で製造されるID.6 Xの2つのバージョンが用意されている。ID.6はVWの最もゆとりのあるIDブランドモデルで、最大7名まで乗車可能だ。この車両は4つの特徴的な構成要素を持ち、航続距離は最大588 km(中国NEDC)となっている。

Xpeng(小鵬)

Xpengは上海モーターショーで3台目の車両を発表したが、その1台はLiDAR(ライダー)を使って高度なドライバー支援システムの能力を高めることを目指すものだ。

Xpeng P5

XPengのP5電気自動車、2021上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Xpeng P 5はこの中国の自動車メーカーにとって3台目の車種だが、LiDARセンサーを内蔵して生産されるのは初めてだ。同社によると、セダンの前部の両側に組み込まれた2つのセンサーは、天候や暗闇に関係なく、歩行者、他の車、自転車、スクーターなどを検知して識別することができる。

Xpengの会長兼CEOのHe Xiaopeng(何小鵬)氏は、P5は同社史上最も先進的で技術的に野心的なモデルだと語った。

LiDARセンサーとソフトウェアを組み合わせることで、高度なドライバー支援システムを実現し、完全自動化に向けて前進させるという。センサーとソフトウェアシステムは堅牢だが、車両は自動運転ではない。TechCrunchのLiaoが報じているように、XpengのNavigation Guided Pilot(NGP) システムはTeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしており、自動的な車線変更、ランプの出入り、他の車両の追い越し、そして中国の複雑な道路状況でよく見られる、別の車の急なカットインを操作することができる。しかし、ドライバーはハンドルを握ったままでいなければならない。2〜4年後にレベル4の自律走行を実現するという目標を掲げているが、現実的な推進は規制にかかっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車中国上海

画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】GMの最先端技術を戦略的な価格で実現したシボレー・ボルトEUV、「スーパークルーズ」追加でテスラModel Yと互角に

2022年型Chevrolet Bolt EUV(シボレー・ボルトEUV)は、Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)よりもわずかに長くて大きく見えるが、その少し角ばった車体には数多くの最先端技術が手の届く価格で詰め込まれている。シボレー・ボルトEUVと、オプションで追加できる先進運転支援システム(ADAS)の発表により、GM(ゼネラルモーターズ)はADASと電気自動車を大衆の手が届く価格で提供する自動車メーカーになる。

今回発表された改良型「ボルトEV」と新型「ボルトEUV」(EUV:SUV型電気自動車)は、GMが声高に宣言してきた「今後4年間で30車種の電気自動車を発表する」という目標の一環である。筆者は、GMの先進運転支援システムSuper Cruise(スーパークルーズ)を搭載したボルトEUVのプロトタイプ車両に2回試乗する機会を得た。

ボルトEVとボルトEUVは基本的に似ている部分もあるが、互いにまったく異なるモデルである。ボルトEUVの方が車体が大きめで、スーパークルーズなど、利用できる機能がボルトEVよりも多い。ちなみにスーパークルーズとは、認可されている道路区間でハンズフリー運転を可能にする先進運転支援システムだ。ただし、このシステムは標準装備ではないため、2200ドル(約24万円)の追加料金を支払ってアップグレードする必要がある。ちなみに2022年型ボルトEVはスーパークルーズには対応していない。

ボルトEUVの基本概要

ボルトEUVには288セル、65キロワット時(kWh)のバッテリーパックが搭載されている。最高出力は200馬力(hp)、最大トルクは360ニュートンメートル(Nm)だ。メーカー推定航続距離は満充電時250マイル(約402キロメートル)で、急速充電(DC充電器で30分充電)すればさらに95マイル(約152キロメートル)走れる。

住宅用の電源(240V)を使った場合、100%充電できるまで約7~8時間かかる。ほとんどのボルトEUVオーナーは住宅用電源で充電するとシボレーは想定している。そのようなオーナーをサポートするために、シボレーは家庭用のEV充電器設置サービスを提供するQmerit(キューメリット)と提携し、ボルトEVまたはボルトEUVの新車を購入またはリースする顧客に、通常であれば2000ドル(約22万円)かかる家庭用EV充電器の設置サービスを無料で提供することを決めた。これはかなりのインセンティブになると思う。

GMがHmmer EV(ハマーEV)やCadillac Lyric(キャデラック・リリック)をはじめとするEVに搭載すると発表した新しいUltimum(アルティウム)バッテリーは、ボルトEUVには採用されていない。ボルトEUVの車台は2021年型ボルトEVと同じく「BEV2」と呼ばれる電動プラットフォームだ。前述したように、スーパークルーズは標準装備ではないため、追加したい場合はオプション料金を支払う必要がある。

スーパークルーズは、2017年に導入されて以来、2018年にはCT6、2021年にはCT5と、キャデラックのモデルにのみ搭載されてきた。有料アップグレードが必要ではあるが、ボルトEUVはGMがラグジュアリー車以外でスーパークルーズを導入した初のモデルである。

ボルトEUVのベース価格は3万3995ドル(約370万円)で、現在ディーラーに並んでいる2021型ボルトEVより2500ドル(約27万円)安い。2022年型ボルトEVも3万1995ドル(約348万円)で、2021年型ボルトEVより4500ドル(約49万円)安い。シボレーの広報部によると「誰でも手が届く価格でEVを提供する」ことを目指しているとのことだ。もちろん、7500ドル(約82万円)の連邦税控除の対象となっていた前身モデル各種と価格面で整合させる目的もあるのだろう。この連邦税控除は各自動車メーカーの米国内納入台数が20万台に達すると廃止されるのだが、GMはその上限台数をすでに超えているからだ。

初期限定モデルLaunch Edition(ローンチ・エディション)のメーカー希望価格は、オプションでスーパークルーズを追加でき、照明付き充電ポートとスペシャルバッジが付いて、4万3495ドル(約474万円)だ。この記事の執筆時点でローンチ・エディションの予約枠はすでに完売しているが、LTトリムまたはプレミアトリムであればまだ予約可能だ。しかし、2200ドル(約24万円)の有料アップグレードでスーパークルーズを追加できるのは、ベース価格3万8495ドル(約419万円)のプレミアトリムのみである。ちなみに、ここで紹介した価格はどれも州または地方自治体によるEV対象の税控除や割引を考慮する前のものだ。

対照的に、Tesla(テスラ)のModel Y(モデルY)の中で最もお買い得なロングレンジモデルでも、インセンティブを考慮する前のベース価格は4万1990ドル(約457万円)だ。テスラの「Full-Self Driving(完全セルフ運転)」機能(実際はセルフ運転ではなく運転支援システムなのだが)を追加するには、さらに1万ドル(約109万円)かかる。

スーパークルーズの使用感

スーパークルーズはすばらしいシステムなのだが、実用面ではまだエラーが多い。スーパークルーズとは、米国各地の認可された道路区間(合計すると約32万キロメートル以上)で、ハンドルから手を、ペダルから足を離して自動運転することを可能にするシステムである。

筆者が2回目に試乗したとき、ボルトEUVのエンジニアリング、開発、検証、テスト、製造を統括するチーフエンジニアのJeremy Short(ジェレミー・ショート)氏は次のように語ってくれた。「渋滞や衝突事故をゼロにする可能性を持つ完全自動運転の技術は開発しがいがある。自動運転は今後10年が本当に楽しみな分野だ。スーパークルーズが今実現している機能を本当に開発できるなんて、5年前には想像もしていなかったはずだよ」。

とはいえ、スーパークルーズには改善の余地があるため、GMは今後も開発を継続していく予定であり、それはボルトEUV用のスーパークルーズも同じだ。筆者がボルトEUVの1回目の試乗でマリーナ・デル・レイからバーバンクへ行き、ラッシュアワーのロサンゼルスに戻ってきた際、スーパークルーズは「少し調子が悪い」感じがした。ハイウェイの広い車線の中で大きく蛇行することが多く、時速30マイル(約50キロメートル)以下になると、交通量が非常に多い認可道路の1つである405号線で、まるで車線を見失ってしまったかのように隣の車線に寄ってしまい、手動運転に切り替わったことが何度もあった。

2022年型シボレー・ボルトEUV(画像クレジット:GM)

それから数週間後、2回目のプロトタイプ試乗でカーソンから出発して50マイル(約80キロメートル)ほど走行したときは、スーパークルーズはかなり安定して作動した。しかし、筆者も、別のプロトタイプ車両で筆者の後ろを走っていたショート氏も、時速10マイル(約16キロメートル)以下になるとボルトEUVのスーパークルーズがおかしな動作をすることに気づいた。前を走っているクルマが減速すると、ボルトEUVも適宜減速するのだが、その後にクルマが流れ始めて加速すると、まるで車線を見失ってしまったかのように車線から逸れてしまい、そのうちに、手動運転に切り替えるための警告音が鳴ってスーパークルーズがオフに切り替わるのだ。

試乗を終えたショート氏も「低速時に蛇行しましたね、私も気づきました」と言っていた。そして、蛇行せずに走行することをスーパークルーズのシステムに教え込むために、もっとエンジニアを呼んで、同じ車両で同じ道路を走らせないとだめだな、なんてジョークを飛ばしていた。同氏によると、低速走行時には、カリフォルニア州の車道でよく見かける奇妙なコンクリート路面加工をAIが車線区分線だと誤認識し、それがスーパークルーズに影響する可能性があるとのことだ。「これは、軌跡がわかる曳光弾のようなものです。インプットされるデータが多いほど、車両はより正確にデータに沿って動こうとします」と同氏は述べる。

スーパークルーズは、すでにキャデラックCT5やCT6などのモデルに広く搭載されているとはいえ、継続的に学習し更新されていくシステムだ、とショート氏は語る。車の重量、可能速度域、寸法、ステアリング、ブレーキ、センサーまでの距離やその機能は、モデルによって異なる。そのため、スーパークルーズを新しいモデルに採用する際は、その都度センサー、ソフトウェア、データ処理機能に手を加えて更新することが必要だ。例えば、2022年型Cadillac Escalade(キャデラック・エスカレード)に搭載されたスーパークルーズには自動的に車線を変更する機能が含まれている。しかし、2022年型ボルトEUVには対応するセンサーが搭載されておらず、自動的に車線変更する機能は備わっていない。

ショート氏は次のように説明する。「スーパークルーズの詳細はモデルによって異なるため、処理するデータや提供する機能も異なります。ボルトEUVに搭載されたスーパークルーズは、エスカレードに搭載されるスーパークルーズと同じタイミングで開発されましたが、この2つのモデルはステアリングもブレーキもまったく異なるため、それぞれのスーパークルーズもやはり異なってきます」。

スーパークルーズは、先進的なレベル2の自動運転システムとして認定されている。ドライバーは依然として油断せずに周囲の状況に注意を払う必要があるが、スーパークルーズが利用可能な道路では、ハンドルから手を離したり、ペダルから足を離したりできる。ハンドルに搭載されたセンサーがドライバーの視線を追跡し(夜間や色の濃いサングラス着用時にも追跡できる)、ドライバーが映画を観たり、居眠りしたり、スマホを見たりしていないか、きちんと前方に注意を払っているかどうかを監視する。スーパークルーズの起動中でも、前方の道路からあまり大きく外れた場所を見ることはできない。例えば、時速65マイル(約105キロメートル)で走行している場合、10.2インチのインフォテイメント画面に手を伸ばしてラジオのチャンネルを変えることくらいはできるのだが、それでも、視線が数秒以上逸れただけで警告音が鳴る。

ショート氏は筆者からの質問に答えて次のように説明してくれた。「ロサンゼルスからラスベガスまで長距離ドライブをする場合、ドライバーはまるで『前列シートに座っている同乗者』になったように感じると思います。ドライバーも同乗者も道路状況に注意を払い、危険がないかどうか前方を見ることでしょう。私もスーパークルーズを使ってこの区間を走ってみましたが、同乗していた友人と同じ程度の疲労しか感じませんでした。つまり、ドライバーとしてずっと運転するときほど疲れなかったのです」。

その他の機能

通常はまる1週間かけて試乗して余すところなくレビューするのだが、今回の2022年型ボルトEUVではそれがかなわなかった。とはいえ、このクルマが持つ特徴の一部をレビューする時間は取ることができた。

シボレーの車載インフォテイメントとナビゲーションをつかさどるシステムを動かすのは、GMのInfotainment 3ソフトウェアだ。このシステムの音声制御には自然言語処理が実装されているため、筆者は最寄りの充電ステーションを音声制御ですばやく検索できた。

ただし難点があった。音声で検索すると同システムに複数の充電ステーションが表示されたのだが、どのステーションが利用可能か、営業時間中なのか、営業時間外なのか、GMが提携している充電サービス企業EvGoのネットワークに加盟しているかどうか、といった情報は表示されなかったのだ。さらに、スーパークルーズの使用中は検索結果の表示ページを移動できない。なぜなら、ドライバーの視線が前方の道路から逸れると、モニタリングシステムがそれを検知するからだ。

EvGoの充電ステーションを見つけるにはmyChevroletアプリを使う必要があり、見つかった充電ステーションまでの道順を車載ナビゲーションシステムに送信しなければならない。運転中は一部の機能がロックされて使えなくなる。また、ショート氏が指摘するように、myChevroletアプリのページを移動することもできなくなる。

ボルトEUVが市場に出てしばらく時間が経った頃にこの問題がどのような展開を見せているのか、楽しみに待ちたいと思う。そうは言っても、テスラの充電ステーションほどシームレスな体験は難しそうだ。

総評として、2022年型シボレー・ボルトEUVは、現在利用できる自動運転支援テクノロジーの中で最先端の機能を電気自動車に搭載し、それを入手しやすい価格で提供しているモデルだと思う。1回4時間のプロトタイプ試乗を2回体験してみて、コンパクトでありながら広い車内スペースが確保されているボルトEUVは、パワーの面でもテクノロジーの面でも、テスラのモデルY、ボルボのXC40リチャージ、フォードのマッハE、フォルクスワーゲンのID.4などと互角に渡り合えるモデルだと感じた。

関連記事:2021年フォルクスワーゲンID.4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

カテゴリー:モビリティ
タグ:Chevrolet電気自動車レビューSUVGM

画像クレジット:GM

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

「街の電動化」を目指すRevelが50台のテスラ車で全電動配車サービスを開始予定

Revel(レベル)は2018年、ニューヨーク市ブルックリン区でドックレス方式による電動モペットのシェアサービスを開始した。後にそれは、クイーンズ区、マンハッタン区、ブロンクス区、さらに米国内の他の都市にも拡大された。2021年になり、同社はニューヨーク市内で電動自転車の月間サブスクリプションサービスを立ち上げ、同時にブルックリン区のベッドフォード・スタイベサント地区に電動車両用充電ハブを建設する計画を発表した。そして今、Revelは全電動、全Tesla(テスラ)の配車サービスをマンハッタン区に展開しようとしている。

かつては、方向性が定まらず、いろいろな形態の交通手段に場当たり的に手を出しているように思えたRevelだが、ニューヨーク市を手始めに、各都市に独自の電動化インフラを展開するという、計算された戦略がようやく見えてきた。これは、創設者でCEOのFrank Reig(フランク・レイグ)氏が当初から力強く宣言していたことだった。

「創設初日から、我々のミッションは街の電動化でした」とレイグ氏はTechCrunchに語った。「そのために私たちは、都市で必要とされる電動交通手段を提供し、その実現に必要となる電動車両インフラの構築を行ってきました」。

50台のRevelブランドのTesla Model Yを使って2021年5月末に開始を予定している新配車サービスは「都市内の移動をことごとく電動化する」という目標への次なるステップとしては、ごく自然な流れだとレイグ氏は話す。利用者は、電動モペットの予約に使うアプリで、そのまま配車サービスも受けられる。同社によれば、開始当初はマンハッタン42番街より南の地区で展開され、第1フェーズの需要とデータを見ながら、次第に対象地区を広げていくという。

Revelの配車サービスの立ち上げは、3年前に電動モペットのシェアサービスを開始したときと似たアプローチをとっている。共同創設者のPaul Suhey(ポール・スーイ)氏の話によれば、それはまずは小さい地域から始めて、街全体をカバーするという最終目標に向けて徐々に広げてゆくというものだ。

同社はまだ、ニューヨーク市タクシー・リムジン委員会に認可事業者の申請を出しているところだ。Revelは第一の認可は得たものの、正式な許可証を取得するまでには、まだいくつかの手続きが残されている。

「正式な許可証が交付されて準備万端整うのを待たずに、この段階で計画を公表した理由に、ドライバーの募集があります」とスーイ氏はTechCrunchに話した。「ドライバーを雇い入れるには、まず情報を広めなければなりません。私たちは今の時点で、ドライバーを雇って確保しておきたいのです」。

Revelの対顧客相場は、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)と同等になる予定だとレイグ氏は話すが、ドライバーはギグワーカーに頼ることはせず、全員を雇用するという。

「同じ料金で、私たちは完全な電動化を実現し、同時にニューヨーカーを雇用することで、ぎりぎりの生活費でやっているニューヨーク市民に保険リスクと資産減価償却のすべてを押し付けるようなことはしません」とレイグ氏。

給料で支払うかたちは、Revelの利他主義によるものだけではない。ドライバーを雇用することが、TeslaにRevel向け仕様の車両を製造させる大きな条件になるため、理に適っているのだ。Revel向けModel Yは「Revelブルー」で塗装され、室内の温度や音楽をコントロールできる客席用のタッチスクリーンが装備される。助手席は新型コロナの社会的距離ガイドラインに従うためと、後席の乗客が脚を伸ばせるように取り外される。

だが、もっと重要なこととして、カリフォルニア州のProposition 22(住民立法案22号)の問題がある。Uber、Lyft、Postmates(ポストメイツ)といった企業は2億ドル(約217億円)のキャンペーンを展開してカリフォルニア市民に賛成の投票を呼びかけた。この法案とは、アプリベースの企業は労働者を福利厚生が受けられる従業員として扱わなくてよいとするものだ。法案は通過した。しかしレイグ氏には、その金があれば、幻滅したドライバーが抜けた欠員を埋めるために常に人材募集し続ける必要はなくなり、堅実な働き手を惹きつけ確保できたはずだとの持論を掲げている。

「車両に関して言えば、それが安全対策にもなります」とレイグ氏。「私たちが車両を保有しているため、加速、速度、ブレーキングなど、車の詳細な情報を常に把握できるのです。私たちが雇用し訓練したドライバーには、各シフトの終わりに安全スコアが示されるので、運転技術を磨くことができます。さらに、保険費用と保険責任を減らすことにもつながります」。

Revelは、街の電動化を進めつつ、そのビジネスモデルをその先の展開の足場にしようと考えている。配車サービスの提供は、新しい事業の構築という意味に留まらない。これは同社の充電事業の創設を加速する意味も持つ。Revelは、電気自動車のニワトリとタマゴの問題を解決して、独占的な電動化事業を確立を目指している。ニワトリとタマゴとはつまり、電気自動車の潜在的購入者は充電スタンドが拡充されたなら買いたいと考えている一方で、充電スタンドの展開を計画する企業は、電気自動車がもっと売れたなら建設できると考えているという問題だ。

「私たちが企業として行っているのは、都市における電気自動車の導入推進と、利用できる電動交通手段の拡大に尽きます」とスーイ氏。「それが電気自動車、電動自転車、電動モペットであれ、いろいろな形での利用を人々は願っています。私たちは、都市の電動化を、もっと幅広いものとして考えているのです」。

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タグ:RevelTesla配車サービスProposition 22電気自動車ギグワーカー

画像クレジット:Revel

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

GMが電気自動車推進で充電ネットワーク7社と提携、アプリでチャージャー案内も

GM(ゼネラルモーターズ)は米国時間4月28日、公共のチャージャーの検索や電気使用料の支払いなどを含む、電気自動車(EV)充電に関するあらゆる側面に対処しようと、4部構成計画を明らかにした。2025年までに発売する予定のEV30種に顧客を引きつける方法を模索している中でのものだ。

Ultium Charge 360と呼ばれるプラン(同社が今後展開するEVに活用されるプラットフォームとバッテリーにちなんだ名称だ)は家庭や道路でのEV充電のアクセス、支払い、顧客サービスをカバーすることを目的としている。プランの一部は今後18カ月以内に提供が始まる、と同社のEV責任者Travis Hester(トラビス・へスター)氏は述べた。同社はサードパーティの充電ネットワークプロバイダーであるBlink Charging、ChargePoint、EV Connect、EVgo、FLO、Greenlots、SemaConnectの7社と提携を結んだ。EVドライバーはGM車両ブランドのモバイルアプリを使って、チャージャーの場所やチャージャーが現在使われているかどうかなど、米国とカナダで展開されている計6万基のチャージャーのリアルタイム情報をチェックできる。こうした機能はGMがChevrolet、Cadillac、GMC車両の所有者向けに作った既存アプリに組み込まれる。

初となるGMとEVgoの充電サイトは現在、ワシントン州、カリフォルニア州、フロリダ州で利用できる。サイトは最大350キロワット出力で、1つのサイトにつき平均4台のチャージャーが設置されている。GMとEVgoは2021年末までに急速充電500基を設置する計画で、順調に進んでいる。

プランは単にいくつのサードパーティネットワークとGMが提携したかではない、とへスター氏は指摘した(ただし、発表されたパートナーのリストにElectrify Americaがなかったのは留意すべきだろう)。

「充電インフラが当社の顧客にとっていかに重要か、そしてEV浸透においてどのように大きな役割を果たすかを当社は理解しています。そして経験あるEVオーナーはこれが単にネットワークの数の問題以上に複雑であることを知っています」とへスター氏はメディア向けの説明会で述べた。

例えばGMアプリはどのようにステーションを探すのかについての情報をルートとともに示し、充電料金の支払いについての情報も提供する、とへスター氏は述べた。GMはモバイルアプリのアップデートを継続する。また、家庭での充電向けに充電アクセサリーや設置サービスも提供する計画だ。そして2022 Bolt EUVまたはBolt EVを購入・リースした顧客向けに、Qmeritとの提携のもと、レベル2の充電能力の標準設置をカバーすると明らかにした。

Plug and Charge能力など、発表で欠けていたものもいくらかあった。Plug and ChargeはEVのドライバーがステーションに乗りつけ、充電プロセスを開始したりその代金を払うためにアプリを立ち上げることなしに、プラグを差し込んで車を充電できるテクノロジーだ。アプリを立ち上げずに車両は充電インフラと交信することができ、決済はその充電プロセスに統合される。GMでEVインフラ建築の主任を務めるAlex Keros(アレックス・ケロス)氏は、Plug and Chargeについて何も発表しなかったが「シームレスなエクスペリエンスが顧客エクスペリエンスの重要な部分となる」ことをGMは認識している、と述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:GM電気自動車充電充電ステーション

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードが約200億円かけてEV向けバッテリーセル開発ラボを新設

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)はバッテリーセルとバッテリーを開発して製造するために1億8500万ドル(約201億円)のR&Dバッテリーラボを設置する。おそらく自社でバッテリーセルをつくることに向けた最初のステップだ。またラボの設置は、同社がバッテリーで走る電気自動車への移行において、もはや賭けではないという、消費者や他の自動車メーカーに向けた別のシグナルだ。

同社の幹部は、Fordがいつバッテリー製造をスケール展開するのか、タイムラインを示すのは却下したが、同社がこの施設をそうした未来の基礎を築くためのものとする意向であるのは明らかだ。

ミシガン州の南東に立地するFord Ion Parkでは、従業員150人超がバッテリーテクノロジー開発や研究、製造に取り組む予定だ。施設の面積は約20万平方フィート(約1万8580平方メートル)で、2022年末に開所する。同施設は近くのミシガン州アレンパークにある同社のバッテリーベンチマークテストラボのサポートを受ける。アレンパークのラボではすでにバッテリーセル製造と化学をテストしている。また、周辺ではディアボーンに同社の製品開発センターが、ロスビルにバッテリーセル組立と電動モーターのプラントがある。

新設する施設は、電動システムエンジニアリング担当ディレクターを務めるAnand Sankaran(アナンド・サンカラン)氏が率いる。サンカラン氏は施設について、次世代のリチウムイオンとソリッドステートのバッテリーを含む「ラボスケールとパイロットスケールのセル組立」のための「学習実験室」と形容した。

Fordは段階に分けてのBEV(Battery Electric Vehicle、二次電池式電気自動車)への移行を考えている、と同社のプロダクトプラットフォームオペレーション責任者のHau Thai-Tang(ハウ・タイ-タン)氏は説明した。BEVがアーリーアダプターに購入される最初の段階では、Fordは外部のサプライヤーパートナーと取り組んでいる。同社は現在、さらに多くのプロダクトをマーケットに投入し、BEVがマーケットシェアを拡大する第2段階に備えている。「第2段階に向けた次のトランジションの準備では、我々はFordが最終的に垂直統合へ向けたフレキシビリティと選択を持てるようにしたいと考えています」とタイ−タン氏は話した。

「電動革命をリードするための当社の計画は明らかに、当社がバッテリーエネルギーの密度における達成進捗具合とコストに左右されます」と同氏は4月27日に記者団に述べた。

「Ford Ion Parkチームの結成は、Fordが垂直統合して将来バッテリーを製造することにおける成功要因です」とも話した。「すばらしい走行距離、低コスト、高い品質を備えた大容量のバッテリーセルの供給と展開をうまくコントロールするのに役立ちます」。

これはバッテリーセルの米国内製造にとって大きな後押しとなりそうだ。バッテリーセル製造は現在、パナソニック(Teslaの主なサプライヤー)や、韓国拠点のLG化学、Fordの現在のバッテリーサプライヤーであるSK Innovationなどアジアの企業に独占されている。経営陣は、グローバルパンデミックと半導体不足によって、国内で管理されたサプライチェーンを持つことの重要性が浮き彫りになった、と述べた。

「バッテリーに関しては、かなり資本集約的な事業となることはわかっています。世界トップのサプライヤーは売上高の大きな部分をR&Dにあて、バッテリープラントを建設して動かすのに必要な資本的支出はかなりの額です。ですので、これを踏まえると、Ford専用の施設を持つために必要なスケールとボリュームは大きな考慮事項です。このトランジションの進行をどれくらい強気にとらえているかについてこれまで語ってきました。我々はいま、どこかの地点で垂直統合がすばらしいレベルであることを楽しむために十分なスケールがある、という地点にいます」とタイ-タン氏は述べた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Fordバッテリー電気自動車

画像クレジット:Ford

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

あらゆるテクノロジーが詰め込まれたメルセデス・ベンツEQS 2022年モデル、350ものセンサーで実現された数々の新機能

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、数週間かけてじらし広告、発表、生産開始前の試乗イベント(TechCrunchも参加)を重ねた後、ついに米国時間4月15日、カモフラージュを取り去り、テクノロジーを詰め込んだフラッグシップ超高級セダンEQS(メルセデスSクラスの電気自動車版)を公開した。

注目の大半はその外観に向けられているが、TechCrunchが注目しているのは、そのテクノロジーだ。マイクロ睡眠警告システム、142cmのハイパースクリーン、超大型のHEPAエアフィルター、運転者の要望やニーズを直感的に学習するソフトウェアなど、さまざまな技術が搭載されている。No.6 MOOD Linenと呼ばれる新しい香料まで採用されており、その香りは「イチジクの新緑とリンネルに包まれている」ような感じ、と説明されている。

「何か1つを取り上げることはできません。この車は100の様々な要素で構成されているからです」とDaimler AG(ダイムラー)の取締役会会長でメルセデス・ベンツ社長のOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏はいう。「そして、その100の小さな要素にこそ、メルセデスのメルセデスたる所以があります」。

メルセデスは、このテクノロジーにパフォーマンスとデザインを組み合わせれば、買い手は惹きつけられると確信している。この車はメルセデスにとっていちかばちかの賭けだ。同社は、北米でEQSが成功を収めることによって、全米での販売開始時に問題を起こした(今はすべて解決済み)EQCの記憶を払拭できると踏んでいる。

基本概要

最新のテクノロジーについて説明する前に、基本事項について概説しておこう。EQSは、メルセデスの新しいEQブランドとなる超高級純電気自動車で、米国市場に導入される最初のモデルは、329馬力のEQS 450+と516馬力のEQS 580 4MATICだ。メルセデスはこれらのモデルの価格を公開していないが、パフォーマンス、デザイン、レンジについて詳細な情報を提供している。

米国で販売予定のEQSの車長は5.2mを若干超える(正確には5.217m)くらいで、メルセデスSクラスのバリエーションに相当するサイズだ。

メルセデスEQS 580 4MATIC

このモデルの空気抵抗係数は0.202で、Tesla Model SとLucid Motors Airより若干低く、世界で最も空気抵抗の少ない量産車となっている。すべてのEQSモデルは後車軸に電動パワートレインを備えている。EQS 580 4MATICは前車軸にも電動パワートレインを備えており、全輪駆動を実現している。EQSの最高出力は329~516馬力で、車種によって異なる。メルセデスによると、最大630馬力の高パフォーマンス車種の生産も計画されているという。EQS 450+とEQS 580 4MATICのどちらも、最高速度は時速209kmだ。EQS 450+の時速96kmまでの加速時間は5.5秒だが、高出力の上位車種は4.1秒で同じ速度に達する。

EQSでは、2種類のバッテリーのどちらかを選択できるが、メルセデスが詳細を明らかにしているのは1つのバッテリーのみだ。最高負荷構成のEQSには使用可能エネルギー含有量107.8 kWhのバッテリーが搭載されており、European WLTP(国際調和排出ガス・燃費試験方法)による概算では1回の充電で769キロメートルまで走行できる。より厳しい基準であるEPAによる概算では、この数字を下回る可能性が高い。

メルセデスによると、EQSは、直流高速充電ステーションで最大200kWまで充電できるという。自宅または公開の充電ステーションでは、オンボードの充電器を使用して交流で充電できる。

それでは、EQSで使用されている注目すべきテクノロジーをいくつか紹介しよう。

ADAS(先進運転支援システム)

EQSにはさまざまな運転者支援機能が搭載されている。この機能を実現しているのは、車に組み込まれている超音波、カメラ、レーダー、ライダーなどの多様なセンサーだ。ADAS機能として、適応走行、加速動作調整機能、車線検知、自動車線変更、ハンドル操作補助(最大時速209kmで車線走行)などが組み込まれている。このシステムは、速度制限標識、オーバーヘッドフレームワーク、工事現場の標識も認識し、一時停止や赤信号を無視すると警告する機能もある。

さらに新しい機能として、時速19kmに達すると自動的に作動するマイクロスリープ警告機能がある。この機能は、運転車のまぶたの動きをドライバー用ディスプレイのカメラで分析することで実現されており、MBUX Hyperscreen搭載車種でのみ利用できる。

必要に応じて運転操作に介入するアクティブ補助機能もある。アクティブ死角補助では、時速9.6~199kmの速度範囲で側面衝突の可能性があることを視覚的に警告する。それでも運転者が警告を無視して車線変更を開始すると、速度が時速30kmを超えている場合は、衝突直前に一方的にブレーキ操作を介入させて修正操作を実行するという。この機能は駐車中でも作動し、車や自転車が近くを通過している場合に車を発進させないよう警告する。

緊急停止補助機能も用意されており「運転者が交通状況に反応しない時間が続いている」とセンサーとソフトウェアが認識すると、ブレーキを稼働して走行中の車線で車を停止させる。ブレーキ操作は急には行われない。運転者が反応していない場合は、まず音声で警告し、その後、計器群に視覚的な警告が表示される。車が徐々に減速される間、これらの警告が継続的に発出される。ハザードランプが点灯し、触覚による警告として運転席のシートベルトが一瞬締まる。最後に、追加の警告としてメルセデスのいう「短く強いブレーキ操作」が適用され、車は減速して停止する。必要に応じて、1回車線変更することもある。

また、オプションでDRIVE PILOT(ドライブパイロット)機能も用意されている。これは、SAE Level 3対応の条件付き自動運転システム機能で、これによりハンズフリーの運転が可能となる。欧州では規制により、公道を走行する量産車にこのレベルの自動化を実施することは禁止されている。この件について、ケレニウス氏はドイツのメディアに次のように語っている。「2021年下半期にドイツで最初の量産車向けLevel 3システムの認可を取得する寸前まできている」(Automotive News Europeの記事より抜粋)。

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学習するクルマ

EQSには驚くべき技術的な仕かけが数多く搭載されているが、その多くは運転者の動作を学習するよう設計された基盤AIに依存しており、ソフトウェアと、驚くほど多数のセンサーで実現されている。メルセデスによると、機器にもよるが、EQSには最大350のセンサーが組み込まれる予定で、距離、速度、加速、ライト点灯条件、降雨、気温、座席専有率、運転者のまばたき、同乗者の話し声などが記録される。

これらのセンサーによって取得された情報は、電子制御ユニット(コンピューター)によって処理され、その後、ソフトウェアアルゴリズムが処理を引き継いて判断を下す。TechCrunchの試乗レビュー担当者Tamara Warren(タマラ・ウォーレン)によると、半日試乗しただけで、EQSが運転者の好みを学習する能力に気づいたという。

メルセデスは、これらのセンサーとソフトウェアの連係動作について、例えば、対話型で、さまざまなパラメーター(アクセルの位置、速度、回復動作)に反応するオプションの走行音など、さまざまな例を使って説明した。

直感的な学習機能が明白にわかるのは、MBUX情報システムとのやり取りを介して学習される場合だ。このシステムは、ユーザーにしかるべき機能をしかるべきタイミングで予測的に表示する。センサーは環境とユーザーの動作の変化を感知し、変化に応じて反応する。メルセデスは、第1世代MBUX(2019年型Mercedes A Classに搭載)から収集したデータで学習した結果、大半のユースケースはナビゲーション、ラジオ / メディア、電話の各カテゴリーに当てはまることがわかった。

このユーザーデータに基づいて、第2世代MBUZ(EQSに搭載されるもの)のレイアウトが決められた。例えば、ナビゲーションアプリは常に、ビジュアルディスプレイユニットの中央に表示される。

画像クレジット:Mercedes-Benz

MBUXでは自然言語処理を採用しているため、運転者はいつでも自分の声でラジオ局を選択したり、社内環境を制御したりできる。しかし、メルセデスは、EQSの直感的学習機能を強く推奨している。この機能では、運転者がクルマを使い込むにつれて、通常はメニューの深い階層に埋もれている項目が前面に表示されるようになったり、時間や場所に応じて前面に出てきたりする。

「このクルマは運転者を人として認識し、運転者の好みや動作を学びます。次に使いたいオプションを、運転者が考える前に提示してくれるような感じです」とケレニウス氏は説明する。

「お腹が空く前にピザが配達されるようなものです」とケレニウス氏は冗談交じりに続け「直感的という意味ではまさに画期的です」と付け加えた。

メルセデスによると他にも20を超える機能があるという。例えば誕生日リマインダー機能は、ユーザーに関係のある人の誕生日を人工知能の助けを借りして自動的に知らせてくれる。階層なしのインターフェイスに表示されるこうした提案モジュールは「マジックモジュール(Magic Modules)」と呼ばれ、次の原理で動作する。運転者が数日続けて、夜帰宅途中に特定の友人や親戚に電話すると、今日この時刻にこの相手に電話をするかどうか提案してくる。名刺は、連絡先情報と写真(保存されている場合)付きで表示される。MBUXが行うすべての提案は、ユーザーのログインプロファイルと関連付けられる。つまり、他の誰かが自分のプロファイルでログインして、同じ夜にそのEQSを運転したとしても、この推薦は表示されないということになる。

運転者が帰宅途中にいつも特定のラジオ番組を聴く場合は、その番組を聴くかどうかが提案される。定期的にホットストーンマッサージを利用している場合は、低温でマッサージ機能を作動させるかどうか自動的に提案してくる。

こうした提案は運転機能にも適用される。例えば、自宅車庫までの私道が急勾配だったり、同じような減速バンプを通過して自宅近くに入っていく場合、MBUXはそのことを記憶する。そして、GPSの位置がその区域に近づくと、車体を上げて地面からの距離を確保するよう提案してくる。

健康とウェルネス

上述の各種センサーにはさらに高度な用途がある。運転者はさらに一歩進めて、スマートウォッチ(Mercedes-Benz vivoactive 3、Mercedes-Benz Venu、またはその他のGarmin互換ウォッチ)をEQSの「エナジャイジングコーチ」に接続できる。エナジャイジングコーチは運転者の動作に反応し、1人ひとりの気分に応じて「Freshness(リフレッシュ)」「Warmth(暖かさ)」「Vitality(活力)」「Joy(喜び)」などの中から1つのプログラムを提案してくる。スマートウォッチは、Mercedes meアプリを介して、ウォッチ装着者のバイタルデータ(心拍数、ストレス度、睡眠の質など)をエナジャイジングコーチに送信する。組み込みのGarminウェアラブルによって記録された心拍数は中央ディスプレイに表示される。

これが実際にどのような役に立つかというと、実は、ユーザーの要望とAIシステムが判断したユーザーの要望に合わせて、ライト、車内環境、サウンド、座席などが調整されるのだ。もちろん、これはすべて、音声アシスタント「Hey Mercedes(ヘイ、メルセデス)」に統合されているため、運転者は、自分の気分をいうだけで望みのプログラムを起動できる。

運転者が「ストレスを感じている」というと「喜び」プログラムが起動され「疲れている」というと「活力」プログラムで休憩をとるよう促される。

メルセデスSクラスのオーナーには、こうしたオプションはすでにお馴染みかもしれないが、メルセデスによると、EQSではシステムがさらに強化されているという。具体的には、新しい3つのエナジャイジングネイチャープログラムとして、森の中の空き地、海の音、夏の雨が追加され、トレーニングとヒントも用意された。各プログラムでは、音響生態学者Gordon Hempton(ゴードン・ヘンプトン)氏の助言を受けて作成された、異なる没入型サウンドが再生される。例えば「森の中の空き地」では、鳥のさえずり、葉の擦れる音、そよ風を組み合わせた音が再生され、温かみのある音風景と淡い香りが車内に満ちる。

海の音では、柔らかい音楽風景、波の音、カモメの鳴き声が生成される。これに空調システムからの風が加わってプログラムが完成する。一方「夏の雨」では、落ち葉の積もった屋根に落ちる雨粒の音、遠くの雷鳴、パタパタと音を立てる雨、環境音景などが生成される。

画像クレジット:Mercedes-Benz

さらに、休憩が必要な長距離ドライブ向けに、パワーナップ(積極的仮眠)機能が追加された。パワーナップを選択すると(間違っても運転中に選択しないよう注意)、入眠、睡眠、目覚めの3つのフェーズからなるプログラムが実行される。運転者の座席は安静位に移動し、窓とパノラマサンルーフが閉じて、空気イオン化が起動される。心地よい音と中央ディスプレイに映し出される満天の星空によって入眠が促される。目覚めの時刻がくると、音楽景が起動され、香りが立ち、簡単なマッサージと座席シートの通気が開始される。座席が元の位置に戻り、サンルーフの裏張りが開く。

音声

先ほど述べたとおり「へイ、メルセデス」音声アシスタントは、自然言語処理を使用しているため、多くの要求を処理できる。メルセデスによると、音声アシスタント機能はさらに強化され「へイ、メルセデス」という起動キーワードを言わなくても電話を受けるなどの特定のアクションを実行できるようになったという。また、クルマの機能説明もできるようになった。

音声アシスタントは同乗者を音声で識別することもできる。実際、車内の各座席には個別のマイクが設置されている。同乗者の音声を学習したアシスタントは、そのユーザーの個人データと職務を参照できる。

EQSの音声アシスタントは後部座席からでも使用だ。

これらの個人プロファイルは「Mercedes me」の一部としてクラウド上に保存される。つまり、プロファイルは新世代のMBUXを搭載した他のメルセデス車でも使用できるということだ。セキュリティは組み込まれており、PINも使用でき、顔認識と音声認識を組み合わせて認証を行う。これにより、個人設定へのアクセスやデジタル決済処理の確認を車から実行できるという。

スクリーンとエンタテイメント

最後に、画面について触れておこう。すべての画面についてだ。142cmのハイパースクリーンが最も注目を浴びているが、EQSでは車内に複数の画面が設置されている。重要なのは、これらの画面が相互にやり取りする方法だ。

ハイパースクリーンは実は3つの画面で構成されているのだが、3つとも共通のガラスカバーに接着されているため、見た目には1つのディスプレイに見える。運転席ディスプレイは31cm、中央ディスプレイは45cm、助手席のディスプレイは31cmだ。MBUXハイパースクリーンはタッチスクリーンになっており、触感フィードバックと力フィードバックを返すこともできる。

「最初のデザインと実際の完成品についてときどき考えるのですが、『1メートル41cmの曲面ガラスを車内に搭載するなんて、突拍子もないアイデアだ』と思うことがあります」とケレニウス氏はいう。「それ自体が1つの作品であり、テクノロジーアートなのです」。

画像クレジット:Mercedes-Benz

後部座席に多くの注目が集まっているが、これはEQSが同グレードのSクラスと同様、オーナーが運転手を雇って使うことが多い車だからだ。後部座席はすべてシステムに接続されているため、メルセデスはこれを後部座席エンタテイメントシステムとは呼ばず、マルチ座席エンタテイメントシステムと呼んでいる。

運転者が2人の後部座席同乗者に異なる映画を見せたい場合は、メインスクリーンで映画をドラッグし、それを見たい同乗者の方へスワイプするだけで、後部座席のプログラムが調整される。後部座席の同乗者も、隣の同乗者のスクリーンに映画をいわば「投げる」ようにスワイプして渡すことができる。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:メルセデス・ベンツレビュー電気自動車音声アシスタント

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

テスラの第1四半期売上高は74%増の1.1兆円、EV生産台数も大幅増

米国時間4月26日の株式取引開始直後に米国の電気自動車会社Tesla(テスラ)は2021年第1四半期決算を発表した。その後、同社の株価は下げた。

ここ数カ月多くのSPAC(特別買収目的会社)との合併を模索してきた電気自動車(EV)・バッテリースタートアップのマーケットにとって、一般的にポジティブなTeslaの決算はこの分野のハードウェアに対するマーケット需要が続いていることを強調し、業界にとって大きな恩恵となり得る。

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数字に目を向けると、2021年第1四半期にTeslaは103億8900万ドル(約1兆1237億円)を売り上げ、粗利益は22億1500万ドル(約2396億円)、純利益は4億3800万ドル(約473億円)だった。

修正後純利益は10億5200万ドル(約1137億円)で、非GAAPベースで希薄化後の1株あたり利益は0.93ドル(約100円)となった。マーケットは売上高102億9000万ドル(約1兆1132億円)、修正後の1株あたり利益は0.79ドル(約85円)を予想していた。同社が収支を発表した後、同社の株価は時間外取引で約1%下げている。

Teslaは前年同期に比べ急激に成長した。前年同期は売上高59億8500万ドル(約6475億円)で、純利益はわずか6800万ドル(約73億円)だった。2021年第1四半期の売上高は前年同期比で74%成長し、車部門の粗利益率は1%近く(0.95%)改善した。粗利益総計の改善はわずかに少なかった(0.70%)。純利益は1850%増と爆発的に増え、修正後純利益も304%増と驚くべき成長を見せた。

第1四半期にTeslaの営業活動によるキャッシュフローは16億4100万ドル(約1775億円)だった。同社はキャッシュを生み出すペースで快適に自社で資金をまかなうことができる。これは、現金・現金同等物計171億ドル(約1兆8501億円)で第1四半期を終えたという事実によって強調されている。

売上高75%成長を分析すると、自動車生産の売上高は76%成長した。同社は18万338台を生産し、前年同期の10万2672台を大きく上回った。納車台数は前年同期比109%増の18万4877台だった。

Teslaの太陽光発電・蓄電事業もしっかりと成長した。太陽光発電の展開は163%増の92MWで、蓄電の方は71%増の445MWhだった。

同社はスライドで投資家に対し「今後複数年にわたって納車台数は平均年50%増となると予想しています」と説明した。同社はまた、Tesla Semiの納車が2021年始まり、複数展開しているプロダクトに加わることで売上ソースが追加される、とも述べた。

今後について、投資家は調整後の希薄化後1株あたり純利益0.99ドル(約107円)、売上高113億9000万ドル(約1兆2323億円)を予想している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Tesla電気自動車決算発表

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

【レビュー】2022年のメルセデス・ベンツEQSはラグジュアリーEVの未来に賭ける、ただし賭金は高い

2022年に発売予定のMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)EQSを1日試乗して過ごし、このドイツの自動車メーカーが、電動化に数十億ドル(数千億円)を投じて成し遂げたことの詳細を間近で見ることができた。

EQSは、メルセデス・ベンツのMBUXインフォテインメントシステム、新しいエレクトリックプラットフォーム、および性能の向上を組み合わせた入念に設計されたフラッグシップセダンだ。EVであることを付加的な要素とするフルサイズの高級セダンの新たなベンチマークを確立することは、容赦ない探求といえよう。

この高級セダンは、メルセデスがEVで将来何を提供できるか、そしてその先のさらなる可能性を米国の消費者に示そうとしている。大きな賭けだが、同社は北米でのEQSの展開が成功すると見込んでいる。

画像クレジット:Mercedes-Benz

「これは完全なる新時代の始まりです。当社はこれまでに、ハイブリッド車、ICE、BEVで完全にフレキシブルなプラットフォームを構築してきたからです」とEQブランドの責任者であるChristophe Starzynski(クリストフ・スタジンスキ)氏は語り、メルセデスは2025年までにEQEと2台のSUVを含む3台の電気自動車を米国のポートフォリオに追加すると付け加えた。「私たちが徹底して設計、開発し、すべての技術をバッテリー電気自動車に搭載したのは、これが初めてです」。

EQSは、メルセデス・ベンツの最高級ラグジュアリーセダン、Sクラス(基本価格11万ドル、約1200万円)から派生した全長17フィート(5m超)のフラッグシップモデルだ(これまでのところEQSの価格は公表されていない)。このクルマには同社史上最高の技術が搭載されている。多くの顧客は搭載されているあらゆるオプション機能に関心がないかもしれないが、すべてが広大なインフォテインメントクラウドに保存されているか、1度のソフトウェアアップデートで実現するというのは知って損のない事実である。

ファーストドライブ

フル装備のEQSは飛躍的な前進を遂げており、この新しいSクラスはもはや次の時代を感じさせる。

筆者が試乗したEQS 580 4MATICモデルは、56インチ(142cm)のHyperscreen 、ヘッドアップディスプレイ、音響ガラス、後部座席のエンターテインメント、空気濾過システムを搭載していた。スタジンスキ氏によるとこれらの仕様は新型コロナウイルスのパンデミック発生前から存在したそうだが、その新鮮な輝きを感じずにはいられない。

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本稿執筆時点では、この車の外観の詳細は4月15日に公開されるまで非公開となっている。筆者が試乗した車両には部分的に覆いがかけられていたため、Aピラーの彫刻的なニュアンスについてはあまり説明できない。

画像クレジット:Mercedes-Benz

5歳の娘を連れて、EQSが店頭に並べられたメルセデス・マンハッタンのディーラーに足を運んだ。試乗車に近づくと、運転席のドアが自動的に大きく開いた。ブースターシートの見晴らしの良い場所から、娘は目の前に浮かぶ後部座席のスクリーンで遊び、そして「キラキラした虹の乗り物」と娘が称するピンクと紫の環境照明をキャビンに選んだ。

今後10年のEV販売の中心となる中国において、運転手付き車というのは高級車の前提条件でもあるため、後部座席での体験がどうなのかはかなり重要な要素だ。

画像クレジット:Mercedes-Benz

その一方で、筆者のような背の高い者にとっては、首の付け根を支える枕がアクセントになっている広々とした運転席はこれまでで最も快適な乗り心地だった。シートベルトを締めると車の雰囲気が一気に盛り上がる。照明とサウンドのデザインの魅力にぜひ注目して欲しい。

EVの控えめな駆動音を補うためのソフトな音響の波を楽しむこともできたが、私たちはほどなくして、15台のBurmesterスピーカーから5歳児のお気に入りのBarbieのサウンドトラックを聴くことにした。(5歳の子どもを連れてくることには残念な妥協がともなう。)

EQSで起きていることすべてが56インチのHyperscreenのOLED(有機EL)で映し出される。スクリーンはドアからドアまでの間に3つのディスプレイに分かれているが、実際に見てみると写真で見るほど邪魔には感じない。楕円形の輪郭はゲーマーのコックピットのような雰囲気を醸し出している。

MBUX機能は、ハンドルの右側にある17.7インチ(45cm)のメインOLEDスクリーンに組み込まれている。自分でタッチスクリーンをカスタマイズすることも可能だ。この高性能コンピューターシステムには、24ギガバイトのRAMと46.4ギガバイト / 秒のRAMメモリ、8個のCPUコアが搭載されている。

画像クレジット:Mercedes-Benz

ユーザーエクスペリエンス

Apple製品が象徴するように、シンプルさは優れたデザインの特徴である。それとは対照的に、メルセデスは常に驚くほど多様なユーザーエクスペリエンスのオプションを提供し、情報にアクセスするための複数のアプローチを提供することに力を入れてきた。この傾向は、ハンドル、アームレスト、メインスクリーンのコントロール機能を通じてEQSに引き継がれている。テストドライブでは、コントロールに関する複数のオプションが気になった。スマートフォンの新機能に慣れるのに2週間かかるのと同じように完全に適応する時間がなかったからなのか、それとも単純にやり過ぎなのかはわからない。ヘッドアップディスプレイには気づいたが、車の中で見るには多すぎる感があった。

画像クレジット:Mercedes-Benz

筆者が興味をそそられたのは、MBUXシステムが時間の経過とともにドライバーの行動を学習していることだ。乗車が終わる頃に、スクリーンモジュールがアクティブシートのマッサージをもう一度使いたくないかと筆者に思い出させてくれた。つまり、他のコントロール機能を無視して、最も使いたいものに集中することができた。音声コマンドはまずまずだったが、筆者の高音テノールはこのシステムの足を引っ張った。筆者を常に理解してくれる自動車の音声システムにはまだ出会っていない。

EQSのエクスペリエンスにはアナログの空間は存在しない。グラフィックスはシャープで、立体的かつ鮮明だ。残念だったのは、タッチスクリーンに指紋がついてしまったことだ(写真を撮る前に良質のスクリーンスプレーとクロスを持ってくること)。もう1つの難点は、ハンドルが筆者よりも大きな手を持つ人向けに設計されているようで、ハンドルに内蔵されているすべての機能にアクセスするのが少し面倒に感じられたことが挙げられる。そのため、筆者は下を向いて適切な場所を探さなければならなかった。最終的にはMBUXのセンター画面で設定を調整することに落ち着いた。

EQSのユーザーエクスペリエンスで筆者が最も気に入った点は、レンジに関するメッセージングだ。ダッシュボードの多様なスクリーンには常に残りの走行距離、目的地までの計算が現実的かどうか、充電可能な場所などが表示されていた。

レンジ

そのバッテリーについて。筆者が運転したモデルには107.8kWhのバッテリーパックが搭載されており、全輪駆動システムで使用される2つの電気モーターに電力を供給していた。欧州のテストによると航続距離は470マイル(約750km)だが、米国EPAのテスト基準ではこれより低くなる可能性がある。マンハッタンからビーコンという小さな町まで往復125マイル(約200km)ほど運転し、充電する心配もなく戻ってくることができた。

画像クレジット:Mercedes-Benz

スクリーンを開いてクリック1つで表示されるChargePointオプションを見てみた。200kWのDC急速充電器が設置されているステーションも識別でき、それによると充電時間は15分ほどだという。バッテリー寿命に関する消費者の不安を解消するために、メルセデスは購入後10年間、または15万マイルまでバッテリーの容量低下を補償する保証を付けている。

各種の機能

このドライブ自体は、517馬力と406ポンドフィートのトルクが作動したかのようなパワフルな性能を発揮した。EQSは空気抵抗係数0.20を実現し、競合他社を凌駕している。これはクルマ愛好家にとってうれしい事実だが、一般ドライバーには必須の知識ではないかもしれない。

長いセダンを快適に操れるようになるには往々にして時間がかかるものだが、Sクラス同様、EQSはそのプロポーションを優雅に扱い、標準的な後輪ステアリングのおかげで簡単に方向転換できる。これはSクラスの安全機能とADASシステムを反映している。ドライブの設定にはクラシックとスポーツが用意されていて、ハンドルコントロールやアームレストを介して実現できる。筆者は概してスポーティなドライバーであり、このモードがもたらす軽快なフィードバックが気に入った。

「もちろん、さらに進化させていくつもりです」とスタジンスキ氏は述べ、ADASの機能はソフトウェアアップデートによって改善される予定であると付け加えた。ライト設定などのカスタマイズ可能な更新もダウンロードできる。

EQSドライブの最大の差別化要因は、バッテリー回復システムだろう。インテリジェント回復モードは、バッテリーを最適化し、ドライバーの動作を制御する。通常の回復でインターフェアレンスが減少している。筆者は高速道路でワンペダルドライブを楽しんだ。このサポートをまったく選択しないことも可能である。

画像クレジット:Mercedes-Benz

米国でEVが主流になる時期は間近に迫っており、バイデン大統領のインフラ計画が承認されれば、予想以上に急速に普及する可能性がある。しかし、自動車メーカーが米国の消費者の注目を集め、売り上げを伸ばそうとするなら、テスラを追い抜く以上のことをする必要があるだろう。Automotive Newsに掲載されたExperianの調査によると、2020年の米国自動車販売台数に占めるEVの割合はわずか1.8%だったという。

抜本的な変革には、時間と資金、そして長期的なコミットメントが必要だ。次世代のメルセデス・ベンツEQSは、EVの部分はもはやニュースバリューではなく、ラグジュアリー車への期待という転換点に一歩近づいている。

【追記】筆者は2018年にメルセデス・ベンツが主催したサミットシリーズのプログラムでメルセデス・ベンツEQフェローを務めており、EQのホームページでも紹介されている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:メルセデス・ベンツレビュー電気自動車

画像クレジット:Tamara Warren

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(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

ファーウェイは自動車メーカーになることを否定し一次サプライヤーを目指す

ここ数カ月、中国のハイテク企業が次々と自動車分野への進出計画を発表している。検索エンジンを提供するBaidu(バイドゥ)をはじめとするインターネット企業の中には、自動車を生産するために従来の自動車メーカーと協力することを決断した例もある。Xiaomi(シャオミ)は(自社でスマートフォンを製造しているにもかかわらず、)ソフトウェアサービスで収益を上げるライトアセット企業であることを何年も強調してきたが、ここに来て自動車製造に参入する。業界関係者の間で次は誰かという話になれば、Huawei(ファーウェイ)の名前が挙がるのは当然だろう。

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通信機器やスマートフォンのメーカーであるHuaweiは、製造業としての歴史やサプライチェーン管理の経験、ブランド認知度、広大な小売ネットワークなどの点で、いくつかの純粋なインターネット企業よりも自動車の製造に適しているはずだ。しかし、同社は自動車ブランドを立ち上げるという報道を繰り返し否定し、Huaweiの役割は、自動車メーカーやOEM(相手先ブランドによる製造)企業の一次(ティア1)サプライヤーであることだとしている。

同社の輪番制会長であるEric Xu(エリック・シュー)氏は、最近、深圳で開催された同社の年次アナリスト会議で、Huaweiは自動車メーカーではない、と繰り返し述べている。

「2012年以来、中国の主要な自動車OEM企業の会長やCEO、ドイツや日本の自動車メーカーの幹部と個人的に関わってきた過程で、自動車業界にはHuaweiが必要だと気づきました。Huaweiのブランドが必要なのではなく、彼らは未来志向の自動車を作るために私たちのICT(情報通信技術)を必要としているのです」とシュー氏は語り、2018年に発案されたこの戦略に変わりはないという。

自動車の製造業は主に3つの役割で構成されている。1つ目はAudi(アウディ)、本田技研工業、Tesla(テスラ)といったブランド力のある自動車メーカー。間もなくApple(アップル)もここに名を連ねるであろう。そしてBosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などの老舗やここで取り上げているHuaweiなど、自動車の部品やシステムを自動車メーカーに直接供給するティア1企業。さらにNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)、NXP(エヌエックスピー)などのチップサプライヤーで、業界のプレイヤーたちが高度な自律運転車に向けて邁進する現在、その役割はますます重要になっている。Huaweiも自動車用チップを自社で製造している。

中国でロボタクシーを開発するスタートアップの幹部は「Huaweiは、次世代のBoschになることを狙っています」と、匿名でTechCrunchに話す。

Huaweiは、ティア1サプライヤーとしての地位を明確にしていて、これまでにBAIC(北汽集団)、Chang’an Automobile(長安汽車)、Guangzhou Automobile Group(広州汽車集団)という3つの主要な顧客を獲得している。

「このような綿密な協力関係は、あまり多くはないでしょう」とシュー氏は断言する。

レベル4の自律走行は実現したか?

画像クレジット:Arcfox Alpha S

中国国営自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランド、Arcfox(アークフォックス、極狐)は、現時間4月17日、(「Powered by Intel」ではなく)Huawei Insideの略語であるHuaweiの「HI」システムを搭載したAlpha Sモデルを初公開した。価格は38万8900~42万9900元(約650万~720万円)で、HuaweiのKirinチップを搭載したOS、HarmonyOS上で動作するアプリ、自動運転、急速充電、クラウドコンピューティングなど、Huaweiの機能を複数搭載している。

おそらく最も注目されるのはAlpha Sがレベル4を達成したことで、この点はHuaweiがTechCrunchに断言している。

ほとんどの場面で人間の介入を必要としない、つまりドライバーがハンドルから手を離してうたた寝することができることを意味する大胆な発言だ。

しかし、この主張にはいくつかの含みが残る。Huaweiの自律走行担当ゼネラルマネージャーであるSu Qing(スー・チン)氏は、最近のインタビューで、Alpha Sは「スキル」の面ではレベル4だが「法的」責任の面ではレベル2だと話している。中国では、安全運転者のいない自律走行車のテストが許可されているのは、制限された地域でごく少数の企業に限られており、都市部の道路を走る消費者向け無人走行車にはほど遠い。

結局、Huaweiの「レベル4」機能はデモの中で示されたに過ぎない。デモでは、Arcfoxの車両が(安全を確保するためにドライバーを乗せた状態とはいえ)人の介入なしに中国の混雑した都市を1000km走行している。この車の自動化を実現するのは、3つのLiDAR、6つのミリ波レーダー、13の超音波レーダー、12のカメラなどのセンサー群と、Huawei独自の自動運転用チップセットだ。

シュー氏はこの車の能力について「Teslaよりもはるかに優れている」と語る。

Huaweiの車両は、厳密な意味ではレベル4ではないという意見もある。この議論は、言葉の問題のようにも見える。

シュー氏は「あなたが今見ているHuaweiの車はレベル4であると断言できますが、あえてドライバーを乗せています」と話す。「レベル4のことは、あなたが長距離のMPI(Miles per intervention、ドライバーの介入を必要としない平均走行距離)を達成してから議論しましょう。これはただのデモです」。

前述のロボタクシー企業の幹部は「ドライバーを排除できなければ、レベル4ではありません」と主張する。「デモは簡単ですが、ドライバーの排除は非常に難しいのです」。

「Huaweiが主張するテクノロジーは、レベル4の自律走行ではありません」と、別の中国自律走行車スタートアップの役員は話す。「レベル4の現在の課題は、ドライバー不在にできるかどうかではなく、どうすれば常時ドライバー不在にすることができるか、ということです」。

レベル4であろうとなかろうと、Huaweiは自動車の未来への投資を止めるつもりはないようだ。シュー氏はアナリスト会議で、2021年はスマートカーの部品や技術に10億ドル(約1080億円)以上を投じる予定だと話している。

5Gの未来

5Gが無人運転車の開発を加速する上で重要な役割を果たすと考える人も多く、世界最大の通信機器メーカーであるHuaweiは、世界各地の5Gの展開で多くの利益を上げるだろう。しかし、シュー氏は、5Gは自動運転車にとって必須ではないと主張する。

「自律走行を実現するためには、クルマ自体が自律的である必要があります。つまり、外部からのサポートなしに車両が自律的に走行できなければならない、ということです」とシュー氏。

「自律走行のために5Gや5.5Gに完全に依存すれば、必ず問題が生じます。5Gの基地局に問題が起きたらどうなるか、想像してみてください。モバイルネットワーク事業者は、自社のネットワークをエリア全域に隈なく広げ、どのような状況でも絶対に問題が起こらないようにして、高いレベルの耐障害性を確保しなければなりません。モバイルネットワーク事業者にとっては非常に高いハードルとなり、非現実的です」。

Huaweiは、Boschの市場を乗っ取ることができれば、ティア1サプライヤーとしては十分に満足なのかもしれない。多くの中国企業が、将来の制裁を見越して、あるいは単に堅牢性に劣らない安価な代替品を求めて、欧米の技術サプライヤーから中国国内のサプライヤーへとシフトしている現在において、ArcfoxはHuaweiの自動車分野における野心の切っ先に過ぎない。

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タグ:中国電気自動車Huawei自動運転5GBosch

画像クレジット:Baidu’s autonomous driving car

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

ホンダは2040年までに北米における販売の100%EV達成を目指す

本田技研の新しい目標は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという大目標の一環として、2040年までに北米における販売台数の100%をEVにすることだ。CEOの三部敏宏氏は、内燃機関からの移行計画を4月23日の記者発表で述べたが、それは彼が2021年4月初めに同社最高位役員になってから初めての発表だった。

このところ伝統的な自動車メーカーは相次いで、無公害車の生産比率を上げてカーボンニュートラルを達成すると発表しているが、今回はその最新のケースとなる。GM(ゼネラルモーターズ)は2035年までに北米規格の軽負荷車輌からガソリン車とディーゼル車を廃止する計画だ。マツダ、三菱および日産はいずれも、2050年までに炭素排出量をゼロにすると述べている。本田技研の目標は日本の電化計画にも沿うものであり、そこでは2030年までに排出量を46%カットするとなっている。

本田技研はこの計画にすぐに着手し、2030年までに販売台数の40%、2035年までに主要市場のすべてで80%をEVにする予定だ。2020年代の後半には、この日本で2番目に大きい自動車メーカーは北米で、同社のプラットフォームに基づく一連の新しいEV車種を立ち上げる。このプラットフォームは、ホンダの広報担当者によれば「ボディーとEVの三大部位であるバッテリーとモーターとインバーターの共用性を増し、同時に高いスペース効率とバッテリー搭載効率を実現した」というものだ。

本田技研と同社アキュラ事業部はまた、2024年にGMのUltium(アルティウム)バッテリーを用いる大型EVを2車種を導入する。同社とGMのコラボレーションは今後さらに深まり、本田技研は商用トラックや電源装置など一連の製品にGMの燃料電池技術を適用していく予定だ。

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タグ:honda電気自動車カーボンニュートラルGM二酸化炭素

画像クレジット:Drive Oregon

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

部品サプライヤーBoschが環境規制が強まる中、合成燃料と水素燃料電池に活路を見いだす

Bosch(ボッシュ)の経営幹部は米国時間4月22日、2025年までに内燃機関を禁止するというEUが提案した規制について、議員たちはそうした禁止が雇用にもたらす影響についての議論を「避けている」と批判した。

同社は新規事業、特に燃料電池事業で雇用を創出していると報告し、こうした雇用の90%超を内部でまかなっていると述べたが、電動輸送革命のすべてあるいは大半は雇用に影響するとも指摘した。格好の例として、ディーゼルのパワートレインシステムを作るのに従業員10人を要し、そしてガソリンのシステムでは3人を要するが、電動パワートレインの場合1人だけだと記者団に語った。

その代わり、Boschは電動化とともに再生可能な合成燃料と水素燃料電池に活路を見出している。水素から作られる再生可能な合成燃料は水素燃料電池とは異なるテクノロジーだ。燃料電池は電気を生み出すのに水素を使い、一方で水素由来の電池は改造された内燃機関(ICE)の中で燃焼する。

「もし再生可能な水素と二酸化炭素由来の合成燃料が道路交通で使用禁止のままであれば、機会は失われます」とBoschのCEOであるVolkmar Denner(フォルクマル・デナー)氏は述べた。

「気候変動に関する活動は内燃機関の終わりではありません。化石燃料の終わりなのです。電動モビリティと地球に優しい充電パワーが道路交通をカーボンニュートラルにし、再生可能燃料も同様です」。

電動ソリューションには、特に大型車を動かすという点で限界もある、とデナー氏は述べた。Boschは2021年4月初め、テストトラック70台の燃料電池パワートレインを作るために中国の自動車メーカーQingling Motors(慶鈴汽車)と合弁会社を設立した。

水素燃料電池と合成燃料に関するBoschの自信はバッテリー電動モビリティから除外されていない。自動車・産業部品の世界最大のサプライヤーの1社である同社は、社の電動モビリティ事業が約40%成長していると述べ、電動パワートレインの部品の年間売上高は2025年までに5倍の50億ユーロ(約6488億円)に増えると予想している。

しかしながらBoschは今後3年間で燃料電池パワートレインにも6億ユーロ(約778億円)投資するという「オプションを保留にしておく」と述べた。

「究極的には欧州は水素経済なしに気候中立を達成することはできないでしょう」とデナー氏は話した。

Boschは2021年も続いている世界的な半導体不足の影響を免れていない。取締役のStefan Asenkerschbaumer(シュテファン・アーセンケルシュバウマー)氏は、半導体不足が2021年「予測されていた回復を抑制する」リスクがあると警告した。台湾の半導体メーカーの幹部は2021年4月初めに、状況は2022年まで続くかもしれない、と投資家らに伝えた

関連記事:Google、Intel、Dell、GMなどテックと自動車業界のCEOたちが世界的なチップ供給不足問題で米政府と討議

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タグ:Bosch気候変動電気自動車水素燃料電池

画像クレジット:Krisztian Bocsi/Bloomberg / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

キャデラックのフラグシップ全電動車「リリック」は約650万円から

全電動クロスオーバーCadillac Lyriq(キャデラック・リリック)は、GMの高級車ブランドのフラグシップだ。2022年初めに米国市場に投入されるが、最低価格は6万ドル(約650万円)を少し下回ることに決まった。

諸費用を除いたこの車両価格は、リリックの量産モデルに関して発表された具体的な内容のうち、最後に残されていたものだ。GMが最初にリリックの展示用モデルと公開したのが2020年8月だった。水曜日、同社は量産モデルの最終仕様とともに、価格も発表となった。

リリックは、GMが2025年までに販売を予定している電気自動車30車種のうちの1つに過ぎない。これはキャデラックにとって極めて重要な車両であり、販売が低迷しているこのブランドの新たな標準になることを目指している。GMが大々的に発したメッセージは、この車の発売は間近であり、2021年9月より予約販売の招待状を含むメッセージを送信する、というものだ。

リリックは当初、2022年後半から米国で生産される予定だった。しかし、仮想開発ツールと車両の土台となる柔軟なUltium(アルティアム)プラットフォームを使えば開発をスピードアップできると幹部たちは考えた。

このUltium電気アーキテクチャーとUltiumバッテリーは、GMのキャデラック、ビュイック、シボレー、GMCの各ブランド、さらにCruise Origin(クルーズ・オリジン)自動運転シャトルにも幅広く使われることになっている。このモジュラー式アーキテクチャーは、19種類の異なるバッテリーとドライブ系の設定変更が行える。400ボルトと800ボルトのパックに対応し、容量は50キロワット時から200キロワット時まで。前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動の構成も選べる。

2023年型キャデラック・リリックの充電ポート(画像クレジット:Cadillac)

後輪駆動のリリックは、100キロワット時のバッテリーパックを搭載し、キャデラック内部の見積もりでは300マイル(約483キロメートル)以上の走行が可能だという。EPA電費はまだ公開されていない。またリリックは190キロワットでの急速充電にも対応する。10分間で76マイル(約122キロメートル)走れるだけの充電ができる計算になる。家庭での充電用には、19.2キロワットの充電モジュールが用意される。同社によれば、これを使うと1時間の充電で52マイル(約83キロメートル)走れるという。

GMでは「ブラッククリスタル」グリル、33インチの縦型LEDタッチスクリーン、AKGサウンドシステムなど、そのエクステリアとインテリアに豪華さがにじみ出るクルマを目指した。流れるようなルーフラインと幅広のボディーは、現代的で挑発的な外観をかたち作っている。この「ブラッククリスタル」グリルには、オーナーが近づくと歓迎の気持ちを表す「振り付けされた」LED照明など、ダイナミックな機能が組み込まれている。LED照明は、分割されたテールランプ・デザインでリアにも続いていく。

エクステリアとインテリアのカラーは2種類。ボディーはサテンスティールメタリックまたはステラ・ブラックメタリック。内装はスカイクールグレーまたはノワールとなる。また、金属の装飾にレーザー彫刻を施した木材をあしらい、内装を仕上げている。

画像クレジット:Cadillac

リリックには、GMのハンズフリー運転支援機能であるSuper Cruise(スーパー・クルーズ)も装備される。これは、ライダーによるマップデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサー、さらにハンドルを握る人の集中力を監視するドライバーアテンションシステムを組み合わせたものだ。Tesla(テスラ)のAutopilot(オートパイロット)と違い、Super Cruiseのユーザーはハンドルに手を置いておく必要がない。ただし、視線はまっすぐ前を向いていなければならない。

GMのシボレー・ボルトのように、リリックにも、ワンペダルドライブと説明される機能が装備される。電気自動車には、通常回生ブレーキ機能が備わる。リリックでも、車両の減速率や完全停止の状態を、ハンドルに設けられた感圧パドルでコントロールできる。

このクルマは、テネシー州スプリングヒルにあるGMの組み立て工場で生産される。GMによれば、この工場を電気自動車の生産に対応させるために20億ドル(約2160億円)を投じたという。GMと合弁事業パートナーであるLG Energy Solution(エナジー・ソリューション)は2021年4月、23億ドル(約2480億円)をかけて、バッテリーセル生産工場をスプリングヒルの組み立て工場の隣に建設するとも発表している。

関連記事:GMとLG化学の2つめのEVバッテリー工場は2023年後半開所予定

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タグ:GMキャデラック電気自動車Super Cruise

画像クレジット:Cadillac

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

Tesla(テスラ)は、その電気自動車の品質に関する苦情の衝撃が中国のインターネット上で広がる中で、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいる。

Teslaの副社長であるGrace Tao(グレース・タオ)氏は、今週開催された上海モーターショーの中で、中国のビジネスニュースの21st Century Business Herald(21世紀ビジネスヘラルド)に対して、Teslaが中国向けにゼロから設計した新製品を検討していると述べた。この中国で開発された車両は、世界でも販売される予定だと彼女は付け加えた。

中国時間4月19日に開催された同イベントでは、1人の女性がTeslaのブースに現れ、Tesla車の上によじ登って、同社製のブレーキに欠陥があると叫んだ。その後、この女性は車両を傷つけたとして拘束されたが、TeslaはマイクロブログプラットフォームWeibo(ウェイボー、微博)上で、彼女のクルマが事故を起こしたのは品質上の問題ではなく、制限速度を超過したためだと書き込んだ

しかし、その様子を撮影した動画がネット上で拡散されたため、当の抗議者は多くの人の共感を集めることになった。それに乗じて多くのユーザーが、Teslaの問題を訴えたのだ。「Tesla stand turned into stage for defending rights」(Teslaのブースが権利を守る舞台となった)というハッシュタグを付けた投稿が、Weibo上で2日間に2億2千万回以上の閲覧回数を記録した。

Tesla中国は、事件を受けてWeiboに掲載した声明の中で「私たちは当初から、国や権威ある第三者機関と協力して、みなさまから寄せられた問題を徹底的に検証したいと考えています。そのようにすることで、消費者のみなさまのご安心いただきご理解いただきたいと願っています」と述べている

「しかしながら、まだその願いは叶えられていません。それは、お客さまとの私たちのコミュニケーション方法に問題があるのだと思われます。また、お客様がこれらの問題をどのように解決なさりたいのかを、私たちが決めることはできないのです」。

欧米同様、中国でもTeslaはカルト的な人気を博している。また同社は、Apple(アップル)と並んで、中国で確固たる地位を築いている数少ない米国のハイテク企業の1つだ。2020年Teslaは、全世界で約50万台の自動車を出荷し、中国は同社の収益の20%を占めている。

関連記事:中国当局がテスラを品質問題で召喚

しかし、その一方で、中国国産車メーカーたちとの競争も激化している。Xpeng(シャオペン、小鵬)、Nio(ニオ)、Li Auto(リオート、理想汽車)などの資金力のあるスタートアップや、Huawei(ファーウェイ)などのハイテク企業の支援を受けた既存の自動車メーカーが、Teslaの市場を奪う準備をしている。中国でデザインされた車両はすでに、愛国心の強い人たちの間で受け入れられつつある

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中国政府がTeslaに対してより厳しい目を向けていることも同社にとって不利な材料だ。2021年1月には、中国内で数万台のリコールを実施した直後に、品質問題の件で現地の規制当局に召喚されている。中国政府は、国家安全保障上の懸念から、軍事施設でのTeslaの使用を制限していると、2021年3月にThe Wall Street Journalが報じている。それを受けてElon Musk(イーロン・マスク)氏は、もし自社のクルマがスパイに使われたら、会社は閉鎖されるだろうと述べた

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タグ:中国Tesla電気自動車

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

GMが高性能なリチウム金属バッテリー開発SESの約150億円資金調達をリード

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、リチウム金属電池デベロッパーSESの1億3900万ドル(約150億円)の資金調達をリードすることで、大手車メーカーが繰り広げているさらに高性能な電気自動車向けバッテリーの開発競争に加わる。

VolkswagenにはQuantumScapeがあり、FordはSolidPowerに投資し(Hyundai、BMWとともに)、そして今、米国と欧州で最も大きな自動車メーカーであるGMがSESに賭ける。

「当社はR&D開発を超えています」とSESのCEOであるHu Qichao(フー・チーチャオ)氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。「この資金調達の主な目的は1つには主要材料である陽極と陰極のリチウム金属電解液の改良を図ることです。2つめに、現在のセルの大きさをiPhoneのバッテリーサイズから車で使えるものへと改善することです」。

そして3つめの要素もあるとフー氏は話した。それは、同社のセルのパフォーマンスを監視・管理するアルゴリズムの能力を高めることだ。「これは当社、そしてOEMパートナーが気にかけていることです」とフー氏は説明した。

GMからの投資は、GMとの6年近くにわたる協業の集大成だと同氏は述べた。「当社は2015年にGMとの協業を始めました。今後3年間で我々は標準の自動化承認プロセスに取り組みます。『Dサンプル』を通じて『A』サンプルから『B』サンプルへと移行するものです」。SESの車載バッテリーの商業化前の最終テスト段階だ。

一方、米国のEV販売で首位を走るTeslaはバッテリーをよりパワフルで効率的なものにするためにバッテリーのフォームファクターに目を向けていて、使っている化学はさほど違わないとフー氏は話した。全固体電池は、バッテリーをよりパワフルでリサイクルしやすく、潜在的に一層安定したものにするバッテリーテクノロジーにおける段階的な変化を示している。

Mark Harris(マーク・ハリス)氏は2021年初めにTechCrunchで次のように述べている

多くの種のSSB(全固体電池)がありますが、 それらはすべてバッテリーの陽極と陰極の間で動く電子(電気)のための液体電解質を欠いています。リチウムイオンバッテリーの液体電解質は電極の構成物質、バッテリーの形やサイズを制限します。液体電解質は通常は可燃性であるため、リチウムイオンバッテリーは熱で暴走しやすく、爆発さえします。SSBはさほど可燃性ではなく、より多くのエネルギーをためて早く動かすために、金属電極や複雑な内部デザインを使うことができます。これにより高パワー、そして急速充電対応となります。

SESの取り組みは、GMからだけではなくバッテリーパック大手SK Innovation、シンガポール拠点の政府系投資会社Temasek、半導体メーカーApplied Materialsのベンチャーキャピタル部門Applied Ventures、中国大手自動車メーカーShanghai Auto、投資会社Vertexなど以前の投資家の注意も引きつけた。

「GMは急速にバッテリーセルのコストを下げ、エネルギー密度を改善しています。SESのテクノロジーとの取り組みは、低コストで走行距離を延ばしたい顧客により良いEVパフォーマンスを提供する、驚くほどの潜在的可能性を秘めています。GMや他企業による今回の投資によってSESは取り組みを加速させ、事業を拡大することができます」とGMエグゼクティブバイスプレジデントでGM Venturesのテクノロジー担当最高責任者兼プレジデントのMatt Tsien(マット・ツィン)氏は述べた。

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タグ:General MotorsSES資金調達バッテリー電気自動車

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラ車オーナー向けアプリ「TezLab」を使えば充電する電力の「クリーン度」がわかる

Tesla(テスラ)の電気自動車オーナーは、自分のクルマに供給されているエネルギーの種類を正確に把握することが可能になった。テスラ車のためのFitbit(フィットビット)のような無料アプリ「TezLab(テスラボ)」に、エネルギーミックス(化石燃料による発電と再生可能エネルギーの種類と正確な割合)を表示する新機能が加わったのだ。これを使えば、米国内のSuperchargers(スーパーチャージャー)やサードパーティの充電ネットワークから供給される電気が、どのように発電されたものなのか、その種類と割合を知ることができる。

「私たちはエネルギーに関連するデータの出所を追跡しているため、ツーソンやブルックリン(あるいはどんな場所でも)で充電した時、その電気がどこから供給されているのか、そのエネルギーミックスはどうなっているのか、知ることができます」と、TezLabのCEOで共同設立者であるBen Schippers(ベン・シッパーズ)氏は最近のインタビューで説明している。「その結果、自宅で充電しているか、スーパーチャージャーで充電しているか、またその充電量に応じて、どれだけの炭素が大気中に排出されているかを知ることができるのです」。

Tomorrow(トゥモロー)のプロジェクトであるElectricityMap(エレクトトリシティマップ)がエネルギーデータを提供し、TezLabはそれを消費者向けアプリに組み込んだ。このアプリはダウンロードすると、テスラのオーナーがいつ、どこで充電しているかを認識することができる。そして新たにアプリに追加されたエネルギーミックス機能が、その電気のクリーン度や汚染度などの全体的な情報を、オーナーに提供する。

例えば、ラスベガスにあるテスラのLinq High Roller Supercharger(リンク・ハイ・ローラー・スーパーチャージャー)は、V3スーパーチャージャーで、1台当たり最大250kWのピーク充電レートに対応している。また、テスラのソーラーパネルとPowerpack(パワーパック)エネルギー貯蔵システムを使用し、充電器を作動させるのに必要な電力を生成・貯蔵していることで注目を浴びている充電施設だ。

TezLabのデータによると、この充電器で供給される電気のエネルギーミックスは、太陽光による発電が1.7%。再生可能エネルギーの主なものはフーバーダムによる水力発電で65.6%。残りの約33%が天然ガスによる発電だ。

カリフォルニア州ホーソーンにあるテスラのスーパーチャージャーは、いち早くソーラーパネルを設置したが、そのエネルギーミックスは、太陽光0.2%、原子力5.5%、天然ガス13.3%、石炭27%、風力49.9%となっている。

ワシントン州のセントレア、レブンワース、モーゼスレイク、シアトルなどの「最もクリーンな」スーパーチャージャーのトップ10は、水力発電のおかげでこの目標を達成できた。太陽エネルギーを最も多く利用しているスーパーチャージャーは、いずれもカリフォルニア州の同じ電力網に位置しており、バーストウ、オックスナード、カバゾン、サンディエゴ、モハーベ、イニョカーン、サンマテオ、シーサイド、サンタアナにあるスーパーチャージャーでは、太陽光が22.7%、風力が15%となっている。残りのエネルギー構成は、蓄電池0.2%、バイオマス2.9%、地熱5.6%、水力6.3%、原子力6.6%、天然ガス40%だ。

TezLabを作り出したHappyFunCorp(ハッピーファンコープ)は、モバイル、ウェブ、ウェアラブル、モノのインターネットデバイス用のアプリケーションを構築しているソフトウェアエンジニアリング会社で、その顧客には、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)をはじめ、数多くのスタートアップ企業が含まれる。同社共同設立者のシッパーズ氏(現会長)とWilliam Schenk(ウィリアム・シェンク)氏をはじめとするHFCのエンジニアたちは、テスラの主にソフトウェア主導型のアプローチに惹かれた。特にテスラのAPIのオープン性から生まれるチャンスに興味を持ったという。テスラのAPIは、技術的にはプライベートなものだが、エンドポイントは部外者でもアクセスできる。リバースエンジニアリングすると、サードパーティのアプリがAPIと直接通信することが可能になる。

関連記事:TezLabアプリはテスラ車のためのFitbitだ

2018年に配布が始まった当時、TezLabはオーナーが電力消費率や総走行距離を記録したり、ドアの施錠・解錠や冷暖房など、車両の特定の機能を制御できる機能を備えていた。その後、テスラのオーナーがスーパーチャージャー・ステーションを評価できる機能など、主にコミュニティの構築に焦点を当てた機能がさらに追加された。

これらのデータはすべて匿名で集約されている。TezLabはそのデータを販売するつもりはないという。同社はこれらのデータから得られた見解をウェブサイトに掲載しており、例えば、モデル別の所有者の内訳、平均走行距離、平均充電時間などを知ることができる。

TezLabは他の電気自動車の発売に合わせて、Ford Mustang Mach-E(フォード・マスタング・マックE)などをアプリに追加している。

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タグ:TezLabTeslaエネルギー再生可能エネルギー温室効果ガス電気自動車炭素アプリ

画像クレジット:Tesla

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMとLG化学の2つめのEVバッテリー工場は2023年後半開所予定

GM(ゼネラル・モーターズ)とLG Chem(LG化学)は米国時間4月16日、米国で2つめとなるバッテリーセル工場を設置する計画を発表した。23億ドル(約2500億円)をかけてテネシー州スプリングヒルに建設し、GMが2020年代半ばまでに立ち上げる計画の電気自動車(EV)30モデルに搭載するセルを生産する。

GMの既存のスプリングヒル工場の隣に設置されるプラントの建設は間もなく始まる、と同社の会長兼CEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は記者会見で述べた。バッテリー工場は2023年後半に完成し、1300人を新規雇用する。

フル操業するようになれば、ジョイントベンチャーの2つのバッテリー工場の生産能力は70GWhを超える。これはネバダ州にあるTesla(テスラ)のギガファクトリーの2倍だとLG化学エネルギーソリューションのCEOであるJong Hyun Kim(キム・ジョンヒョン)氏は指摘した。ネバダ州スパークスにあるTeslaの工場は部分的にパナソニックとの提携によるもので、生産能力は35GWhだ。

GMのEVへのシフトの基礎となるのはUltiumプラットフォームと、スプリングヒル工場で作られる予定のUltiumリチウムイオンバッテリーだ。これらの新しいバッテリーはレアアースのコバルトの使用が少なく、現在のGMのバッテリーよりもエネルギー密度が高くて小型であるために効率のいい共通セルデザインとなる、とバーラ氏は話した。

「この多用途性は、幅広い車種により多くのバッテリーパワーを搭載し、顧客に良い価格で提供できることを意味します。何百万という顧客がEVを所有できるようサポートするEVテクノロジーにおける真の革命であり、暮らしや世界を変えます」。

GMは少なくとも10年間、リチウムイオンとエレクトロニクスのサプライヤーとしてLG化学を使ってきた。両社は2009年から協業を始めた。GMがChevy Bolt EVを開発して発表した際に両社の関係は深まった。2019年にGMとLG化学はバッテリーセルを大量生産するために合弁企業を立ち上げ、GMはEVへと軸を移し始めた。当時、両社は新しい合弁会社に最大23億ドルを投資し、オハイオ州北東部のローズタウンエリアにある製造工場敷地にバッテリーセル組立プラントを設置し、1100人超を新規雇用すると述べていた。

ローズタウンのUltium Cells LLCバッテリーセル工場製造施設の鉄骨工事は2020年7月に始まった。同工場は300万平方フィート(約27万8700平方メートル)の広さがあり、Ultiumバッテリーセルとパックを大量生産する。ローズタウン工場の年間生産能力は30GWhだ。

GMの基礎を成す電動アーキテクチャとともにローズタウン工場で生産されるバッテリーは、Cadillac、Buick、Chevrolet、GMCブランド、そして2020年1月に発表された自動走行シャトルCruise Originなど幅広いプロダクトで使用される。Cadillac Lyriq EVと、今秋発表され、2021年第4四半期に生産が始まる全電動のGMC HummerはUltiumバッテリーシステムを搭載する。GMはLyriqを2021年8月6日にバーチャルイベントで発表する計画だ。

「Ultium」と呼ばれるこのモジュラーアーキテクチャ(バッテリーと同じ名称だ)は19種のバッテリーとドライブユニットのコンフィギュレーション、容量50kWh〜200kWhの400〜800Vのパック、そして前輪・後輪・四輪駆動のコンフィギュレーションに対応する。新しいモジュラーアーキテクチャの核心は新工場で製造される大判ポーチのバッテリーセルとなる。

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タグ:GMLG化学工場電気自動車バッテリーUltium

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi