23歳のバイオVCに投資戦略を聞く――老化防止ファンドのローラ・デミングは14歳でMITに入学した天才

ローラ・デミングはありきたりのベンチャーキャピタリストではない。いや、デミング自身がいろいろな意味でありきたりの人間ではない。

現在23歳のローラ・デミングはニュージーランド生まれて家庭で教育を受けた後、数学と科学、とくに老化を防止するテクノロジーに強い興味を抱くようにんった。デミングな11歳のときに老化防止の研究で著名な分子生物学者、Cynthia Kenyonにメールし、「家族とアメリカ旅行する機会にサンフランシスコの研究室を見学できないだろうか?」と尋ねた。Kenyonは見学を承諾しただけでなく、デミングの訪問の後、この研究室で働きたいという希望にもイェスと答えた。

ローラの希望をかなえるためデミング家はアメリカに引っ越した。結局家族もこの異例の決断を後悔してはいないだろう。ローラ・デミングは14歳の若さでMITに入学し、2年後、つまり16歳で大学をドロップアウトした。それはピーター・ティールのThiel Fellowshipプログラムに参加するためだった。さまざまな面で論議を巻き起こすベンチャー・キャピタリストのティールがその前年にスタートしたのは、大学をドロップアウトして「新しい事業を始める」20歳未満の若者に10万ドルの資金を供与するというプログラムだった。

「新しい事業」というのは始めてみてから何度も方向を変えることがある。しかしデミングの場合はそうではなかった。デミングの関心は徹底してアンチエイジングだった。デミングはいくつかのスタートアップの起業を経てベンチャーキャピタリストに転じ、老化防止の研究、開発を行うスタートアップを支援するLongevity Fundを設立した。このアーリーステージ・ファンドが2200万ドルに上る2回目の組成を完了したの機にTechCrunchではローラ・デミングにインタビューを試みた。

TC: あなたのキャリヤがカリフォルニア大学サンフランシスコ校の教授への1通のメールで始まったというのは驚くべきことですね。

LD: [Cynthia Kenyon] はすばらしい人です。今まで会った人の中で最高。

TC: 彼女の研究室ではどんなことをしたのですか?

LD: 私たちは小さい透明な虫を実験に使いました。実験用のゼリーの上に置くと透けてみえるので何が起きているかわかるのです。遺伝子を操作するとその結果が分かります。寿命を延ばしたのか縮めてしまったのか? 栄養供給を減らすと虫の寿命が伸びました。その状態である遺伝子をノックアウトして取り除くとどうなるか? 私はまったくの初心者でしたが、一番寿命の長い虫を作り出そうとする熱意に燃えていました〔笑〕

TC: MITではどんなことを?

LD: 私は物理を専攻しましたが同時にいくつかのラボでの研究も続けていました。そのひとつがLenny Guarente [寿命延長の研究で知られる生物学者]のラボです。とてもおもしろかった。私は科学者になるつもりでしたが、ティール・プログラムのこと知っている院生がいて応募してみたらと勧めてくれました。そこで応募してみたのですが、最近ティール・プログラムのディレクターの一人と話す機会があって、彼は私が失敗するだろうと思っていたそうです。もちろん当時彼は熱心に手助けしてくれましたが。.私が最初のファンドの組成を完了したとき、彼は「ここまでやるとは思っていなかったよ」と言ってました。

TC: なぜでしょう?

LD: ひとつには、ほんの少し前まで、ほとんどのベンチャーキャピタリストは老化防止研究になにかビジネスチャンスがあると思っていなかったということがあります。アンチエイジングという分野は非常に若いテクノロジーなので普通のVCたちは何も知らなかったのでしょう。しかし私は小さいころからずっとこの分野に強い興味があり、研究を続けてきました。ビジネスチャンスについての見通しとは別に、知識は豊富でした。老化防止というのは[多くの有力バイオテック企業が]ガンの研究をするのと似たところがあります。ガンの研究に将来性があるならアンチエイジングにも同じくらい将来性があるはずだと私は考えました。

TC: 1号ファンドの額はどれほどでしか?

LD: 総額で400万ドルでしたが、私は大いに満足しました。実際私はティール・プログラムの10万ドルは十分な額だと思っていました。サンフランシスコに来てみると、この額で起業し2年間やっていくことは十分可能でした。私が資金集めを始めたのは17歳のときで、実際若すぎて法律的には契約にサインできる年齢に達していませんでした。それ以前にお金の管理をした経験もありませんでいた。しかし私は投資家にアンチエイジングを説明し、投資を決意させることができました。さいわい何人かの重要な投資家を確保でき、私がこれぞと考えた5社に投資することができました。

TC: その重要投資家の一人はピーター・ティール?

LD: 私たちはLP(リミッテッド・パートナー)の具体的な名前は公開しないことにしています。

TC: 「わたしたち」ということですが、あなたはこのLongevity Fundの唯一のゼネラル・パートナーでは?

LD: そのとおりです。しかしこのファンドを運営するには大勢の人々によるオフィス運営が欠かせません。Longevityという組織はさまざまな分野のトップクラスの人材の協力によって成り立っています。ですから私がゼネラル・パートナーであっても業務のすべてを取り仕切きれるわけではありません。

TC: そうしたアドバイザーはいくぶんかのファンドの持ち分も取得する?

LD: そういう場合もあります。ただ若い層、特に院生クラスではキャッシュによる報酬を受けることを選ぶ場合も多いですね。私たちはそれぞれの場合に応じてベストのインセンティブを提供できるよう努力しています。

TC: あなたファンドの投資企業の一つはUnity Biotechnologyですね。 老化を逆転させる治療法を研究しているスタートアップですが、この会社は今週1億5100万ドルのシリーズBラウンドを実施していますね?

LD: そのとおりです。ただしLongevityのポートフォリオ企業はすべて [少なくとも]シリーズAのラウンドで3000万ドルかそれ以上を調達しています。

TC: Giそうした投資額から判断すると、SPV〔特別目的事業体〕を組成したのは一部の投資先が大ブレークすると考えてのことですね?

LD: 私たちの選んだ投資先にLPがフォロー投資してくれることを期待してます。双方に利益があるようできるかぎり努力中です。Unityの場合、私たちは最初期から最大の投資をしてきました。ファウンダーのNed Davisが驚くべき人物であり、彼のアンチエイジングの研究は必ず実を結ぶと信じたからです。

TC: 今回クローズした2回目のファンドはどのように投資する計画ですか?

LD: 8社から10社に投資していくつもりです。

TC: 最近、投資家が老化防止分野に突如関心を抱き始めたようです。これはあなたのファンドの運営を難しくしませんか?

LD: いいえ、そういうことにはならないと思います。最初のファンドを組成したとき、わたしたちは投資契約を結ぶ前に候補のスタートアップを最大6ヶ月にわたって観察してきました。スタートアップが実際に資金調達を始める前から調べていたわけです。LPがわれわれのファンドに利点を見出したのはそこです。Longevityがスタートアップについて詳細に知っているため、LPは投資する際にデューディリジェンスを細々とやり直す必要がない。どんな会社に投資するのか予めわかっているというのは有利です。わたしたちは会社のあらゆる面について調べ、[この分野で]ベストの会社だという確信を持ってからポートフォリオに加えてきました。

その上でいえば、これまで困難だったのは有望なスタートアップに新規の投資家を引き込むことでした。つまりアンチエイジングは有望なビジネスとなるということを納得させるのが大変だったのです。しかし今やそういう困難はありません。これはたいへんうれしいことです。わたしたちはポートフォリオ企業に適切な投資家を探し出すことに専念できます。老化防止が有力な市場に育ってきたのは素晴らしいことだと思います。

TC: あなたはアンチエイジング関係のテクノロジーについて豊富な知識があると思いますが、 若者の血を飲んで精気を維持するというバンバイアものはHBOの『シリコンバレー』のよい題材になりそうですか?

LD: [笑] 科学的に興味がないことはありませんが、メディアはいささかバンバイア・テーマを取り上げ過ぎる気がします。5歳児の血を飲んで若返る怪物についての記事なら数多くクリックされるが、老化の過程に関与する多様な遺伝子的要素を一つずつ検討することはあまり関心を呼びそうにないとメディアとしては考えるのでしょう。

〔日本版〕ビデオはTEDで講演するローラ・デミング(19歳当時)。デミングの経歴についてはティール・フェローシップ参加者を詳しく紹介した20 under 20(アレクサンドラ・ウルフ著、滑川・高橋訳)に詳しい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

YCの2017年夏学期デモデー2日目全チーム紹介――TCのオススメ7社も

Y Combinatorはスタートアップ・アクセラレーターのパイオニアであるだけでなく、最大の組織でもある。そこでここ数年、デモを1日で終わらせることは不可能になっていた。

そこでTechCrunchでは高速道路101号の混雑をものともせず、Y Combinatorデモデー2日目を取材するためマウンテンビューのコンピューター歴史博物館に向かった。なお2017年夏学期のクラスのデモの1日目についてはこちらの記事〔日本版ではTCがピックアップしたトップ7チームについて解説全文を訳出〕を参照のこと。


Standard Cognition – AIによる機械視覚利用した店舗支払システム

Standard CognitionはAIによる機械視覚を利用し、 店舗における未来的な支払システムを開発した。自動チェックアウトと呼ばれるこのシステムでは消費者は好みの商品を棚から取ってカートに入れ、そのまま店を出ることができる。いちいちレジで支払をする必要がない。Standard Cognitionではこのシステムは支払を効率化するだけでなく万引の被害の減少にも役立つと考えている。

Modern Fertility – 妊娠可能性を家庭でチェックするテクノロジー

Modern Fertilityは女性が家庭で妊娠可能性をテストできるテクノロジーだ。従来の専門クリニックでの検査にくらべてはるかにコストが低く、透明性も高い。ローンチしたのは1週間と少し前だが、Modern Fertilityはすでに7万人からの申し込みを受けている。申込者は毎年このテストを受けることとなる。現在同社は個人を対象としているが、企業との契約も考えているという。AngelList、Plaid、OpenDoorがすでに社員のためにこのテストを提供することを考慮している。

TechCrunch記事

Dharma Labs – ブロックチェーンを利用したp2pレンディング・サービス

Dharma Labsは資金貸付のために「始めてのプロックチェーン・プロトコルを開発」したとしている。同社は最近のICO〔暗号通貨のクラウドセール〕の成功を例に挙げ、「通常の株式同様に扱える暗号通貨資産に大きな需要があることは確実」としている。Dharmaではbitcoinテクノロジーを利用して少額資金の貸付を分散的に実行できるメカニズムを開発した。これにより「誰もが世界中の誰にでも資金を貸し付けることができるようになる」という。

Caelum Health – 「腹痛」などの軽い症状をAIで診断し処方箋薬より効果的な対策を提供する

Greo – 真剣なディスカッションを可能にするソーシャル・ビデオ・アプリ

WheelStreet – インド最大のオートバイ・レンタル・マーケットプレイス

Warren Payment – 支払などB2Bプロセスの自動化

OneLocal – 地域のスモールビジネスのためSalesforce的サービス

Flowspace – オンデマンドでスペースを貸し出す倉庫ビジネスのAWS

Goosebump – コンサート情報を教えてくれるメッセンジャー・チャットボット

Nimble – 学校向け入学希望者選別システム

Retool – 企業におけるプログラミングでコードの再利用を迅速、効果的に実行できるシステム

Dahmakan – 東南アジア市場におけるフル機能の食品配送サービス

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TechCrunch記事

Covetly – 各種収集家のためのeBayアプリ

TechCrunch記事

Original Tech – 金融機関向け融資申し込み審査テクノロジー

TechCrunch記事

Vanido – AI利用の音楽教師がまず歌唱を指導

Entocycle – 昆虫を利用した家畜飼料用再生可能タンパク源

TechCrunch記事

Guilded – eSports〔現実の選手データに基づくスポーツゲーム〕のチーム管理ソフト

TechchCrunch記事

Lambda School – Aプログラマー養成のオンライン・ブートキャンプ

TechchCrunch記事

Plasticity – 自然言語処理用API

TechchCrunch記事

Piggy – インドにおける退職資金投資プラットフォーム

TechchCrunch記事

Fat Lama – p2pテクノロジーを利用した保険付きレンタルのマーケットプレイス

TechchCrunch記事

Solve – 国際旅行者のための空港コンシェルジュ

TechchCrunch記事

Sunfolding – 太陽光発電施設向け太陽追跡ハードウェア

Enzyme – FDAの諸規定に対するコンプライアンスを提供するSaaS

Surematics –工場、油井など大規模なビジネス資産向け保険額見積もりシステム

Templarbit – サイバー攻撃からアプリケーションを防衛するシステム

Just Appraised – t自治体向け資産償却見積もりシステム

Advano – 現在よりエネルギー密度の高いリチム・イオン電池の開発

AutoHub – 中古車事業者向け自動車マーケットプレイス

Quilt Data – 企業のデータ利用のDocker

最近多くの大企業が「データ志向」を口にするようになったが、実際にはそのデータは企業の広い範囲に散らばっており、利用は容易ではない。Quiltでは効率的にデータソースを統合し、社内の誰もが共通認識を得られるようすることを目指す。このシステムはすでに大手銀行で採用されている。Quiltでは企業のデータ利用におけるDockerのような存在を目指している。.

Headstart – AIを利用した履歴書スクリーニング・システム

TechchCrunch記事

BillionToOne – 安全かつ確実な胎児の遺伝子診断

Bxblue – ブラジルにおける個人ローンのマーケットプレイス

TechchCrunch記事

Gameday – 誰でも簡単にプレイできるファンタジー・スポーツ・アプリ

Draft KingsやFanDuelのような本格的eスポーツ〔現実の選手のデータを用いるオンライン・スポーツ・ゲーム〕 はカジュアル・ユーザーを無視しており、プレイが難しすぎるとGamedayでは考えている。このギャップを埋めるためにFacebook Messengerを利用したシンプルなファンタジー・スポーツ・ゲームが開発された。Gamedayの週間アクティブ・ユーザー5万人のうち70%はファンタジー・ゲームを始めてプレイしたという。また60%はGamedayを20週以上にわたって連続して利用している。Gamedayではファンタジー・スポーツ市場で世界的な存在となるためできるだけ多数の言語をサポートする努力を行っている。

Read our previous coverage of Gameday here.

VIDA & Co. – アーティストがオンデマンドでアパレルのデザインを行うマーケットプレイス

LotusPay – インドにおける定期支払のサービス

Contract Simply – 銀行向けの大型建築プロジェクトにおける支払い業務効率化サービス

PreDxion Bio – 緊急救命室における重症患者を救う迅速な血液テスト

CarDash – 自動車修理のマーケットプレイス

Read our previous coverage of CarDash here.

HotelFlex – ホテルにおける深夜、早朝のチェックイン、チェックアウト支払いサービス

Read our previous coverage of HotelFlex here.

Muzmatch – 独身のムスリム向け結婚援助アプリ

TechchCrunch記事

Leon & George – 家庭、企業向け屋内植物の販売サービス

Value Voting – Tアメリカ政治の二極化を防ぐために政治グループがデータを共有、利用できるプラットフォーム

TechchCrunch記事

AssemblyAI – 目的に応じてき簡単にカスタマイズできる音声認識書き取りソフトのAPI

TechchCrunch記事

Loop Support – カスタマーサポートのSaaS

FriendSpot – 次世代グループチャット

Disclosures.io – 雨漏り、下水管破損など物件の問題情報を適切に開示する不動産業者向けのソフトウェア

Helix Nanotechnologies –最新のAIを利用したDNA修復によるガンなどの疾病の遺伝子治療

CureSkin – インドにおけるAI利用の皮膚科の診断と治療プラットフォーム

Py – 新しいプログラミング技術を教えるモバイル・アプリ

PyはPythonからiOSまで各種のプログラミングを教えるモバイル・アプリだ。ソフトウェア・エンジニアは新しい開発技能をマスターできるだけでなく、そうした技能を必要とする職を探す役にもたつ。データ・サイエンスやアプリケーション開発などのカテゴリーごとに習熟の度合いを示すランキング・システムを採用している。これにより求職者は自分の能力を効果的に示すことができるとPyでは考えている。月間アクティブ・ユーザーはすでに10万人となっており、30億ドルといわれるプログラミング教育市場において意味あるシェアを獲得するのがPyの目標だという。

TechchCrunch記事

HealthWiz – 社員の医療コストと減らすための企業向けSaaSプラットフォーム

CocuSocial – クッキングスクールなど近隣活動のためのマーケットプレイス

TechchCrunch記事

Rev Genomics – 遺伝子操作によるマリファナ収穫の増大

Tpaga – ラテンアメリカにおけるモバイル支払システム

NextDrop – インド都市部における飲料水のマーケットプレイス

Mystery Science – VRを利用して専門家が小学校の科学の授業を支援

小学校におけるSTEM〔科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学〕教育の重要性が叫ばれて久しいがMystery Scienceは教師に対してVRシステムを通じて科学の専門家による援助を提供する。教師はこの専門家の協力を得て効果的に科学を教えること可能になる。実はアメリカの小学校の94%には資格をもった科学の教員がいない。Mystery Scienceはこの問題を解決を目指している。科学専門家は毎日インターネットを通じて授業に協力する。

TechchCrunch記事

〔日本版〕TechCrunchが選ぶYCデモデー2日目のトップ7チームで選択されたスタートアップの紹介を訳出。ただしマリファナ増産を目指すRev Genomicsの記事は上記Mystery Scienceの記事に変更。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

YC 2017年夏学期デモデー1日目、50チーム一挙紹介

Y Combinatorの第25回のデモデーがスタートした。2017年夏のYCクラスには124社が参加している。YCでは毎年2回、夏と冬のクラスの卒業イベントが行われるが、今年の夏学期は12年6ヶ月の歴史の中でも参加チームの数が最大となった。内容はバイオテックからAIまで最近のテクノロジーのトレンドを反映したものとなっている。

YCのパートナー、Michael Seibelはイベントの冒頭の挨拶で「われわれはシリコンバレーにおけるダイバーシティーを前進させることに全力を挙げている と述べた。今回のクラスではファウンダーの12%が女性で9.5%がアフリカ系ないしラテン系(latinx *)だった。

こうしたパーセンテージはかなりの期間にわたって安定しているものの、YCは世界各地からスタートアップを受け入れている点で賞賛されるべきだろう。ひとつにYCのStartup Schoolがオンラインであるため国際的にスケール可能だという点がある。 今回は28%のスタートアップがアメリカ国外発だった。

Pykaは個人用自動飛行機をデモ。Y Combinatorのデモデーはカリフォルニア州マウンテンビューのコンピューター歴史博物館で開催された。

これまでのYC卒業生にはAirbnb、Dropbox、Stripeなどの著名企業に加えて、最近ではTwitch、Instacart、Coinbaseなどが含まれる。シリコンバレー内外からマウンテンビューに集まった投資家はどんなスタートアップが登場するか大きな期待を寄せている。

デモデーは2日にわたって開催されるが、以下は1日目に登場した50社だ。〔スタートアップのデモ内容についてはTechCrunchが注目するトップ7チームを訳出。他はチーム原文参照〕


Zendar – 悪天候下でも自動運転を可能にする高精細度レーダー

Zendarは自動運転車向けの高精細度レーダーを開発している。現在の自動運転車は車両が置かれた状況を認識するにあたってLidarと通常のレーダーに頼っている。レーザーを用いたLidarは精度が高いが悪天候下では能力が大きく低下する。レーダーは悪天候でも能力が落ちないが精度が悪い。Zendarは悪天候下でも高い精度で環境を認識できる機械視覚テクノロジーを開発している。これによりあらゆる天候下で実用可能な自動運転の実現が目的だ。Zendarによれば、向こう3年間で1000万台の自動運転車が製造されるという。Zenderは自社のテクノロジーができるだけ多くの市販車に採用されることを期待している。

Image via Sombre Lidar

Meetingbird – 企業チーム内におけるスケジュールの調整と最適化

TechCrunch記事.

Thematic – レビュー、調査記事のテキストを分析しテーマに対する評価を認識する

PullRequest – コード・レビューのマーケットプレイス

PullRequestは企業とコードレビューができるフリーのプログラマーを仲介するマーケットプレイスだ。プログラマーは企業で作成されたコードに問題点がないか調べ、副業とすることができる。PullRequestではAmazon、Facebook、Dropboxなどトップクラスのテクノロジー企業で働いた経験があるプログラマーをリクルートしている。優秀なプログラマーを揃えたことで、PullRequestには450社からの関心が集まっている。実際にサービスを利用するのはこのうちの一部ではあるが、
PullRequestはすでに通年換算で13万6000ドルの売上を得ている。同チームがターゲットしている市場ではスタートアップとFortune
500クラスの大企業を合計して400億ドル相当のコードレビューが行われている。PullRequestのビジネスの秘密はレビューを迅速、正確に実行するためのシステムの自動化にあるという。

Helium Healthcare – アフリカにおける医療記録の電子化

Darmiyan– アルツハイマー症を最大発病前15年で早期予測

Roofr – 衛星画像を利用した屋根の吹き替えの費用見積もり

CashFree – インドにおける支払い自動化

Skyways – 垂直離着陸できる大型輸送用ドローン

Mystro – Uber、Lyftなどのドライバーの業務を効率化し利益の増大を助ける

TechCrunch記事.

10 By 10 – 人材リクルートのためのマーケットプレイス

Honeydue – カップルのためのフィナンシャル・プランニング

TechCrunch記事

D-ID – 顔認識からプライバシーを守るテクノロジー

Life Bot – 誰でも簡単に使える音声対応アプリ

TechCrunch記事

Modular Science – ロボット農業

イーロン・マスクは人工知能に反対らしいが、Modular Scienceではロボットが野菜を栽培できるようにしたいようだ。このスタートアップではカリフォルニア州ペチュラで実際に野外テストを実施中だ。向こう半年以内に独自の農業ロボットを用いて野菜生育のプロセスの99%をロボット化するのが目標だという。
Modular Scienceでは1エーカー(4046平方メートル)あたり2000ドルの料金を考えている。同社によればこれは現在農家1「が労働者に支払っている賃金の半額だという。

Audm – オーディオコンテンツのサブスクリプション

TechCrunch記事

GameLynx – 次世代のモバイルeSport

Gopher – An app platform atop email

メールが好きな人間はいないが、われわれの多くは毎朝メールを開いている。Gopherではメールをベースにした自動化が簡単に実行できるプラットフォームを提供する。たとえば着信したメールの内容をSalesforceや会議の日程調整アプリに転送したりできるようになる。着信メールに対してフォローアップを返信する同チームの最初のメール拡張機能は1万3000の月間ユーザーを獲得している。また300人のデベロッパーがこのプラットフォームを利用するために登録している。いちいちメールを開き、別のアプリに送って処理するというわずらわしいことをする代わりにGopherでは必要な作業すべてをメールの着信トレイ内で済ませることができるようにする。


70 Million Jobs – 犯罪記録保持者の就職を助けるサービス

May Mobility – 都市部における自動運転交通機関

TechCrunch記事

Flock – Wi近隣の安全を守るワイヤレス・セキュリティー・システム

Indivio – ビデオ広告のA/Bテスト・システム

Relationship Hero – 人間関係の悩みを専門家が解決

ShiftDoc – ヘルスケア専門家向けマーケットプレイス

Dropleaf – インディー・ビデオゲームのためのNetflix的サービス

Sunu – 視覚障がい者のためのソナー式ブレスレット

Wildfire – 大学当局の承認を受けたキャンパス掲示板

OncoBox – 後期がん患者のための抗がん剤治療の決定を助ける

VergeSense – 建物、施設の管理をAIで効率化

Pyka – 個人用自動飛行機

Pykaは「一人乗り自動操縦飛行機」で空飛ぶ自動車の夢を実現しようとしている。同社はすでに重量180kgで30m以下で離着陸できる自動飛行機を製作している。規制当局により有人飛行が許可されるまでには膨大なテストが必要なのでPykaではニュージーランドに空中播種ビジネスのための会社を設立している。この会社では毎時600ドルの料金を得つつ有人飛行が許可されるために必要な飛行時間を蓄積中だ。ただし空中播種自体もアメリカで15億ドルの規模であり決して小さいビジネスではない。ZeeやGoogle Waymoなどに先駆け、Pykaは個人向け自動飛行のパイオニアとしての地位確立を狙っている。

Fastpad – インドにおける求人プラットフォーム

Gustav – 小人数の企業のための人材サービス

Forever Labs – 個人の幹細胞を利用した老化防止テクノロジー

Forever Labsでは老化に基づく疾患が生じた際、治療のために利用できるようユーザーの幹細胞を冷凍保存して将来に備えるシステムを開発している。幹細胞はネズミにおける実験では寿命を平均16%延ばす効果が認められている。しかし老化に伴って幹細胞の有効性は減少する。Forever
Labsでは現在20人の医師がこの治療を提供しているが、来年までにアメリカ全土の主要都市にサービスを拡大したい意向だ。同社によれば、幹細胞銀行は560億ドルの市場があるという。

TechCrunch記事

Ubiq – エンタープライズの遠隔会議のための画面共有システム

Airthium – 水素圧縮によるエネルギー蓄積システム

UpCodes – ビル建設におけるコンプライアンスを助けるサービス

TechCrunch記事

Cambridge Cancer Genomics – l血液検査による抗がん剤治療のモニター

HelpWear – 医療器具認定レベルのウェアラブル心臓モニター

Net30 – 建設作業員への支払いの迅速化

TechCrunch記事

Guggy – テキストメッセージをユーモラスなGIFに変換

Escher Reality – 拡張現実のデータ処理バックエンド

現実世界をARテクノロジーによって拡張するためには、正確なデータが必要だ。Escher Realityはユーザーのスマートフォン・カメラのビデオ・データを処理し、現実世界の中に位置づけることによりデベロッパーがARを作成することを助ける。Facebook、Appleも独自のARプラットフォームを開発しているが、EscherチームではiOSとAndroidを通じてデベロッパーがARアプリを開発できるようにする。すでに600人デベロッパーが待機リストに登録しており、ゲームスタジオその他の企業10社からも問い合わせを受けているという。また大ヒットしたロボットが登場する映画、『パシフィック・リム』のARアプリに利用する契約も結ばれている。Escher RealityがデバイスやOS独立にARを提供できるプラットフォームとなるなら多くのデベロッパー、ユーザーにとってAR世界への好都合な入口となるだろう。

TechCrunch記事

Carrot Fertility – 企業保険加入者の不妊治療を助ける

Feather – ミレニアル世代向けスタイリッシュ家具のレンタル

TechCrunch記事

Prism IO – 消費者のサービス離脱を防ぐ

PayFazz – インドネシアにおける銀行を経由しな支払いサービス

TechCrunch記事

Sixty– オンデマンドのウェブアプリ・サポート・プラットフォーム

Totemic Labs – 高齢者向け安全サポートシステム

Peergrade – 教師に生徒のフィードバックを伝え評価作業を助ける

Kestrel Materials – 温度に反応して特性を変える繊維

SMB Rate – スモールビジネスの信用格付けによりローンを得やすくするサービス

〔日本版〕* latinx スペイン語では名詞に性があるためは男性、女性双方に用いられるlatinxという新語が作られている(まだ利用者はさほど多くない)。なお、 1日目にデモした50社のうち、内容紹介を訳出した7社は次の記事と同じ。Check out TechCrunch’s picks for the top 7 startups from YC Demo Day 1

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

大学別スタートアップ数&調達額ランキング

【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerCrunchbaseの記者。

会社を立ち上げてVCから資金を調達する上で有名大学を出ている必要はない。しかし実際のデータを見てみると、出身校と資金調達には深い関係がありそうだということがわかる。

この記事では、スタートアップ投資を受けた起業家という観点から、アメリカの有名大学をランク付けしている。注目したのは卒業生が立ち上げたスタートアップの数、そして調達資金額だ。

もしも意外な結果を期待してこの記事を読んでいる人がいれば、ここで読むのをやめた方がいい。というのも、スタートアップエコシステムにいる人であれば、ほとんどの内容が想定の範囲内に収まるだろうからだ。もっと具体的に言えばスタンフォード大学がトップで、アイビーリーグや有名工科大学、研究大学がその後に続く、という結果だった。

もっとも多くのスタートアップを輩出した大学

ひとつめのランキングでは、過去1年間に100万ドル以上を調達したスタートアップのファウンダーの数を大学別にまとめている。先述の通り全くの予想外と思われるものはないが、前年比で数値が伸びた大学がいくつかあるのは注目に値する。マサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生によって設立され、100万ドル以上を調達した企業の数は134社だった(昨年は108社)。ワシントン大学も2015〜2016年の35社から2016〜2017年は41社に数を伸ばし、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の数値も同時期に39社から44社へと増加した。

ビジネススクールの状況

Crunchbaseではビジネススクールが他の教育機関と分けて記録されているので、ランキングも別のものを用意した(対象期間は2016年8月1日〜2017年8月1日)。スタンフォード大学が1位ではないということを除くと、このランキングにも大きなサプライズはない。スタンフォードの代わりにトップの座に輝いたのがハーバード大学だ(スタンフォード大学ビジネススクールの生徒数が800人強で、ハーバード大学ビジネススクールは1800人以上というのも関係しているだろう)。

調達金額は?

卒業生が立ち上げた企業の調達額合計は、これまでのランキングとは少し違う。というのも、ユニコーン企業や準ユニコーン企業の調達額はかなり大きくなるため、1社か2社そのような企業を輩出している学校が結果をかき乱しているのだ。

ニューヨーク市立大学バルーク校がその好例だ。同校の卒業生が設立したスタートアップで、過去1年間に100万ドル以上を調達した企業は4社しかない。しかしそのうちの1社が、公表されている情報だけを参照しても対象期間に40億ドル近くを調達したWeWork(ファウンダーのAdam Neumannが同校の卒業生)なのだ。シカゴ大学も同様で、東南アジアの配車サービス大手Grabが同校の合計調達金額の75%以上を占めている。

とはいっても、どの学校から調達額の多いスタートアップが輩出されているのか見るのはなかなか興味深い。以下が上位をまとめたランキングだ。

1社が合計調達額の半分以上を占めている学校の例は次の通り:カーネギーメロン大学(Argo AI)、ニューヨーク市立大学バルーク校(WeWork)、ハーバード大学ビジネススクール(Grab)、シカゴ大学(こちらもGrab)。

全体を見てみると、出身校によってスタートアップの規模が決まるということはなさそうだが、特色のある学校に通うというのはスタートアップをはじめる上でメリットがあるようだ。特にSTEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)やビジネスの分野で名の通った学校出身のファウンダーが目立った。さらに強固なテックエコシステムが存在し、ベンチャーキャピタルが集中する都市部の学校も良い成績を残している。

調査方法

Crunchbaseの出身校に関するデータでは、ビジネススクールとそれ以外が区別されている(ハーバード大学ビジネススクールのみを卒業した人はハーバード大学の卒業生とはカウントされていない)。しかし一部のデータにはこれが反映されておらず、ビジネススクールの卒業生がその大学の卒業生とカウントされている場合やその逆のケースもある。ランキングへの影響はほとんどないが、これにより多少の誤差が生まれている。

さらに、多くのビジネススクールは、従来のMBA以外にもハーバードのAMP(Advanced Management Program:学位なしの経営人材養成プログラム)のようなサーティフィケートや追加的な学位を授与している。ビジネススクール卒業生が設立したスタートアップ数のランキングでは、学位とサーティフィケートの区別はせず、データベース上の記載内容に則ってデータを分類した。しかし、調達額のランキングには短期プログラム修了生のデータは含まれていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

バーチャル望遠鏡サービスのSlooh、日食に向けて準備完了

コネチカット州のSloohという会社は、世界中に設置された数十台の望遠鏡のいずれかを使って簡単に(そして今は無料で)夜空を見ることのできるサービスだ。ログインして望遠鏡を選ぶだけで使える。自分で望遠鏡を制御して様々な宇宙空間を見ることもできるし、プロの天文学者に任せてただ宇宙の旅を楽しむこともできる。Sloohユーザーは、宇宙をのぞき込みながら発見したものをシェアすることもできる。

来たるべき日食を祝って、Sloohはこのイベントを遠方から見学したい人たちのために無料アカウントを提供している。4.95ドル払えば一カ月間望遠鏡を制御することもできる。

Sloohには8万人のメンバーがおり、ライブショウ(流星群や日食などの興味深いイベントの際に行われる望遠鏡ライブ中継)の視聴者は延べ2000万人に上る。無料アカウントのおかげで、登録者数は1万人増えた。

「われわれの望遠鏡は、世界最高水準の天文台に設置されている」とファウンダーのMichael Paolucciは言う。「こういう場所は、ふつうアマチュアや一般の人はまず利用できない」

全部で25箇所の天文台がSloohに映像を提供しており、望遠鏡の多くはユーザーが制御できる。

「あなたがSlooh望遠鏡をのぞいている時、世界中が一体となって驚きと共に空を見上げている」とSloohの天文学者、Paul Coxは言う。

本誌がSloohと最後に話したのは2009年に無人探査機LCROSSの月面衝突を彼らがライブ中継したときだった。今回の新たな取り組みは、世界を良い方向へ変えようとしているPaolucciの活動の一環だ。

「私がSloohを作ったのは、Cantor Fitzgerald銀行で働いていた親友のBlake Wallensが9.11に殺されたときだった」とPaolucciは言った。「Sloohは2003年、宇宙を共同探索することで人類をつなぐためにスタートした。私は国際望遠鏡ネットワークを構築し、特許技術を駆使して天体映像をリアルタイムで見えるようにした。望遠鏡を通じて宇宙を見ることによって、宇宙の中の自分たちの位置づけを考えることができる。これは平和と啓発を示す行動であると同時に、9.11を引き起こした狂信者の屈折した世界観に直面する機会でもあると私は考える。人々が世界の雄大さを自らの目で見られるようにすることが、究極的に霊的信仰の進化につながると信じている」。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

BitcoinウォレットのBlockchainがEthereumにも対応

Blockchainは世界で一番人気の高いbitcoinウォレットだ。そして今日からBlockchainユーザーは、Ethereumウォレットを作ってetherを保管できるようになった。

Blockchainは、CoinbaseやKrakenのような中央集権型取引所ではない。単なるウォレットでありユーザーは自分の所有する暗号化通貨を安全に保管できる。多くのサービスと比べてBlockchainは堅牢でハックされにくい。

ウェブまたはモバイルアプリを使ってBlockchainのウォレットを作る。ただし運営会社はユーザーの残高や取引内容を見ることができない。ウォレットのバックアップはBlockchainのサーバーに置かれるが、ウォレットの鍵はユーザーが自分で管理する。

この方法はかなり人気が高く、現在1400万件のBlockchainウォレットが作られている。また同スタートアップは、最近4000万ドルの資金調達を完了した。

bitcoinやetherを買いたいときは、Blockchainがいくつかの取引所と提携しているので、スムーズに手続きができる。米ドル、ユーロなどあらゆる通貨を送金して、bitcoinを受け取りBlockchainウォレットの中にいれることができる。

新たに加わったEthereumウォレットは、bitcoinウォレットとまったく同じように使えるようだ。同社は ShapeShiftと提携しており、Blockchainユーザーはbitcoinとetherを相互に両替できる。

これまでbitcoinウォレットに特化してきたBlockchainが、Ethereumを採用したのは興味深い動きだ。世界唯一の暗号化通貨などないことの証しとも言える。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

企業向けSaaSのWorkdayが、元Google従業員が始めた若いスタートアップPatternのチームを獲得

創業2年目でカリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とするスタートアップのPatternのチームは、密かにWorkdayに買収されていた。Workdayは2012年に株式公開を行なった財務管理と人事ソフトウェアベンダーだ。現在は時価総額209億ドルを誇っている。

買収の条件は明らかにされていない。Patter CEOのDerek Draperは、この買収を彼のLinkedInで発表したが、それ以上のコメントは拒否している。この移行の一環として、Patternは先週末の時点でPatternサービスを終了した。

Patternは営業担当者向けに顧客管理の負荷を軽減することを目標としていた。Felicis Ventures、SoftTech VC、First Round Capital、そして様々なエンジェル投資家たちから、昨年シードファンディングとして250万ドルの調達を行なっていた。(もしPatternが引き続き資金調達を行なっていたとしても、それは全く公表されていない)。

Draperと、その共同創業者たちであるZack Moy、そしてJosh Valdezはいずれも元Google従業員であり、1年前からはさらに5名の元Googleの同僚たちと会社を運営してきた。

DraperとValdezは、2012年にGoogleに売却された、ソーシャルメディアマーケティング会社Wildfireで出会った。

今週LinkedInでDraperは、彼と彼のチームが「この新しい冒険に乗り出すことに興奮していて」、Workdayで「未来を築く」ことを楽しみにしていると書いていた。

Workdayの過去の買収には、昨年買収した大型データ分析ベンダーPlatforaや、Workdayが昨年買収してすぐにシャットダウンしたオンライン学習会社Zaptionなどがある。この両取引の条件も明らかにされていない。

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(翻訳:Sako)

500 Startups 22期のスタートアップ36社一挙紹介――デモデーは10月24日

立ち上げ直後のスタートアップを支援、育成する500 Startupsの22回目のデモデーは10月24日に予定されている。36チームがこの22期のバッチに選ばれている。

500 Startupsではこのアクセラレーター・プログラムに参加するスタートアップは「グロースとマーケティングに関する総合的な支援が受けられる」としている。参加する各社はみなこの主張に沿ったものとなっている。業種は金融からデジタル・ヘルスまでさまざまだが、いずれも大きくスケールする可能性があり、かつそのためには有力な支援者を必要とするスタートアップだ。

ただし今回のデモデーはやや微妙なものになりそうだ。500 Startupsの顔だったデイブ・マクルーアが女性に対するセクハラを繰り返したことを認めて辞任した後だからだ。マクルーアはデモデーではいつも奇抜なコスチュームを身に着けて走り回っていることで知られていた。10月のデモデーにはマクルーアの姿はないはずだ―しかしある種の亡霊のようにつきまとうことになる。

しかしタイムマシンを作動させて現在のバッチに選ばれた36社を簡単に紹介しておこう(ABC順)。

Agentbong — アジア発のマーケットプレイスで、家庭における介護、家事補助などのサービスを希望する家庭と資格をもった信頼できる人材との間を仲介する

Botsociety — 会話的なインターフェイスをデザインしプレビューするためのプロトタイピング・ツール。

COR — 専門的サービスを提供する企業のプロジェクトを管理し、収益性を改善するためのプロジェクト・マネジメント・ソフト。

Core Labs — 資格情報、評判、口コミなどを総合して若い知識労働者を助ける「目的志向型」のマイクロ・ネットワーク作成サービス。

Cryptomover — 各種の暗号化デジタル通貨を総合したインデックスファンドを作成して投資家の安全性を向上させ煩雑な手間を省く。

curio.io — フィナンシャルタイムズ、ガーディアンなど一流媒体に掲載された優れた記事を注意深く選択し、プロが読み上げるキュレーション・サイト。

Cushion — ユーザーに代わって不当な手数料に対し銀行に抗議するボットを提供。

Elyse28 —ヘルスとウェルネスを維持するために一対一のアドバイスを提供する女性剥けブスクリプション・プログラム。

FalaFreud —モバイル・デバイスを通じて音声、テキストを通じて資格を有する専門家によろセラピーを受けられるブラジルのユーザー向けサブスクリプション・サービス(ポルトガル語)。

FreightRoll — ユーザーと信頼できる輸送会社、ドライバーとを仲介し、貨物輸送の手配を効率化するマーケットプレイス。

Fyodor Biotechnologies — 血液の代わりに数滴の尿を用いることで発熱の原因がマラリア感染であること非侵襲的に診断するテクノロジー。

Jones — 保険の適用を受ける際の煩雑なコンプライアンス・チェックを自動化して企業の負担を軽減する。

Judolaunch — ドイツ市場参入を目指す中小eコマース企業向けにグロースを助けるサービス。

LaborVoices — 実際に働く労働者の声により外注先企業の労働実態を明らかにしアパレル企業を守るサービス。

MailHaven — 郊外居住者が配線やWiFi接続の必要なしに安全に荷物や郵便の受取りができようになるスマート郵便受けと専用モバイルアプリのペア。

Mediation Online — ブラジルにおける企業と消費者との紛争を迅速、経済的、かつ強制力をもって仲裁するウェブ・サービス。

Mira — 新しいテクノロジーと機械学習にハイリスク・グループを生命保険に加入しやすくするサービス。

Mobile Forms — アフリカ企業の地域および国際的ビジネス展開をクラウドソーシングで助けるプラットフォーム。

Myndlift — 有資格セラピストの指導による「脳波トレーニング」でユーザーの集中力を増強する。

Next Play — 規模拡大可能な個人別メンターによる社員の能力開発プログラム。

Ohalo — 金融機関に対し、データの正当性確保やコンプライアンスを助けるブロックチェーン・ベースのデータ管理ツール。

OpenUp — オンライン、オフラインを総合して消費者行動における広告効果を測定する。

Payment24 — 企業における多数の車両の燃料消費、ガソリンスタンドへの支払処理を一括管理、不正請求を排除して効率性を高める。

Plum — ユーザーの金銭処理を自動化して貯蓄を助け不正請求を防ぐチャットボット。

Prodsmart — 工場におけるペーパーワークを追放し、スマートフォンを利用して製造過程の情報をリアルタイムで入手するトラッキング・システムをメーカー企業に提供する。

Public Goods — 健康によい家庭向け製品を手頃な価格でパッケージで提供する。

Rapa — 外国不動産を購入するアメリカ居住者に対して不動産抵当による新しい資金貸付の枠組み。

reDock — 大企業による複雑な提案募集に応募する専門知識企業がプロポーザルを作成するためにオンデマンドで 企業情報を発掘、カスタマイズするサービス。

Rever — 世界のバイク・ライダーがツーリングの体験や各種のノウハウを投稿、交換できるモバイルアプリ。

Sendoso — B2B企業が潜在顧客の注目を引きつけるためのメール、手書きメモ、ギフトなどのマーケティング・ツール一式を提供。

ShortPoint — コーディングの知識を必要とせずにOffice 365のような既存のコンテンツ・システムをを利用してイントラネットが簡単に作成、管理できるサブスクリプション・ベースのソフトウェア。

Sofy.ai — テスト、デプロイ、サポートなどソフトウェア・デベロッパーの時間を大量に食う反復的作業をインテリジェントかつ訓練可能なボットが代行する。

Texel — ユーザーの既存の行動、視聴データを分析し、VR/ARによるストリーミングの帯域幅を50%以上圧縮するテクノロジー。

TrueFace.Ai — プライバシーに注意を払う企業に対し顔認証システムをターンキー方式で提供する。

VCV — 求職者の履歴書や音声通話をAIを利用して自動的に予備審査し、面接のビデオ録画するなど企業の求人を効率化する求人用ボット。

WayPay — 中小企業向けオンライン支払いシステムを効率化し、地元または国際的企業のオンライン・システムと自動的に統合する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

スタートアップと企業のための概念実証プラットホームProoVがシリーズBで$14Mを調達

これまでいくつかの起業経験を重ねた二人の人物が、その間に何度も遭遇した問題を解決するためにProoVを作った。それは起業アイデアの有効性を投資家や大企業の幹部などに分らせるための、概念実証のやり方だ。

2015年に立ち上げたProoVは、今回シリーズBで1400万ドルを調達するまでに成長した。ラウンドのリーダーはHelios CapitalとMangrove Capital Partnersで、これにOurCrowdとCerca Partnersが参加した。同社の総調達額はこれで2110万ドルになり、シリーズAからBまでは18か月の間隔がある。

ProoVのねらいは、スタートアップの概念実証を迅速かつ効率的に行える場を提供することだ。関心あるスタートアップの概念実証を見るために、大企業は現代的なツールを多く使いたがるが、でも概念実証をお膳立てできる人材が社内にいないことや、現物の顧客データをテスト用に使うと規制に引っかかる、スタートアップというものへの一般的な不信、などの問題で行き詰まることが多い。そこでProoVは、概念実証を作って実行するサービスのプラットホームを提供して、これらの問題を回避する。

同社のプラットホームは、ある面ではスタートアップたちのアプリケーションストア、他の面では概念実証サービスのエンジンだ。エンタープライズの顧客は、同社が認めた1000あまりのスタートアップのどれかに接続して、ProoVが作ったデータにより概念実証を行う。データの構造は、顧客が実際に使うデータセットをベースにしている。このやり方だと、顧客企業の現物データをそのまま使うことは避けられ、規制の問題にもぶつからない。

目下、同社の顧客はおよそ125社で、その中にはGE, Amazon Web Services, AIGなどのビッグネームもいる。

ProoVの収益源は多様で、まず、このプラットホーム上で大企業相手に概念実証をやりたい、というスタートアップへの課金がある。しかし売上の大半は、このプラットホームを使って、関心のあるスタートアップの概念実証を行うエンタープライズからの会費と、個々の概念実証実演の料金だ。今同社は、会費と料金の組み合わせについて、複数のプランを設けることを検討している。

そして今回の資金の使途は、ニューヨークにオフィスを開いて15名ほどの営業を新規に雇用することだ。同社の現在の社員は37名。研究開発の拠点は、イスラエルだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

明日のBitcoin分裂を前に、やるべきことはこれだ

8月1日を目前に控え、あのBitocoin「ハードフォーク」が、暗号化通貨のカジュアルユーザーの間にちょっとした混乱を呼んでいる。知っておくべきことはこれだ。

簡単に言って、Bitcoinキャッシュ対応を明確に表明している取引所を使っている人や、自身のプライベートキーを管理できている人は問題ない。Coinbaseのような、Bitcoin Cashに対応していない取引所にbitcoinを預けている人は、Bitcoin Cashで取引きするつもりがないのでない限り、今すぐbitcoinを移動すべきだ。いずれにせよプライベートキーを自分で管理しておくのは良い考えで、そうすれば過去に利用したことのあるどの取引所からでもbitcoinを引き出すことができる。

もっと詳しく知りたい人は、Coindeskに行けば、最新情報がある。

ウォレットはどれを使う?

どんな場合も要点は単純:キーは自分で管理しなければならない。

私が使っているのはTrezor hardware walletElectrumで、持っているわずかばかりのBTCをそこで管理している。人によって結果は違うので特定の製品をを積極的に推すことはしない。私の心に潜む皮肉屋はどのツールも取引所も信用していない。

以下に、パソコン上にElectrumウォレットを作り、そこに手持ちのBTCを入れるやり方を示す。十分注意してほしい。全額を送り込む前に必ず少額でテストすること。

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それでも私は怖い

無理もない。それは、難解で、不安・疑念・不信(FUD)につけこむ積極的キャンペーンを特徴とするテクノロジーに対する、健全な態度と言える。もしあなたが、老後の蓄えをBitcoinにつぎ込んでいるのなら、フォーク前日の一本の記事以上にこの件を調べていることと願っている。いくらかでも持っているひとは、手持ちのBitcoinをパソコン上のローカルウォレットに移して、なりゆきを見守っていてほしい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

建設企業の請求決済事務をオンライン化して中小下請け孫請けの苦境を救うNet30

建築業界の請求と決済の処理は、今や破綻している。実際に払ってもらえるまで70日ぐらいかかるので、建設業者の多くは運転資本が枯渇する。そこで、Y Combinatorで育ったNet30は、その問題を解決しようと志(こころざ)した。

このプラットホームの上で建設企業は請求書を処理し、下請け企業などの銀行口座にオンラインで支払いを行う。これにより、今でも紙を使っていることの多い事務処理がデジタル化される(今はまだ、請求書をFAXで送り、支払いは小切手が普通郵便で送られてくるパターンも少なくない)。実はNet30のファウンダーは、実際に建設企業でプロジェクトマネージャーをやっていたCasey BellとAnthony Cirinelliで、元々は決済を早めるためのプラットホームとしてNet30を作った。

しかし実際に建設業者たちの話を聞いてみると、建設業界の請求決済問題には改善すべき点がたくさんあることが分かってきた。問題は非常に深刻であり、決済の遅れが建設企業の倒産の原因になることも多いのだ。

“すごく大きな問題だし、しかも業界全体に血液を送る心臓の部分だ。それなのに、請求と決済の業務を簡素化することに、誰も取り組まなかった”、とBellは語る。

建設のプロジェクトは通常、数十社もの下請け〜孫請けが関わり、各社が請求書を発行する。しかし個々の請求書は、複数の文書の束であることが多い。そこには、完了した仕事の詳しい科目分類や、署名入りの法的文書、コンプライアンス関連の文書などがある。そこに日付の間違いなど誤記がひとつでもあると、決済が遅れたりする。

建設業者が操業を続けるためにはキャッシュフローが必要だから、ちょっとした遅れが悪夢を招くこともある。Net30はひとつのプロジェクトに関わる企業をすべて集めて、すべての請求書が最初から確実に正しい、という状態を作り出す。そして下請け孫請けの透明性を高める。

建設業界の既存の請求事務ソフトウェアには、昨年Oracleが買収したTexturaなどがあるが、それなどはエンタープライズ級の企業が対象で、請求決済事務の現代化を誰よりも必要としている、膨大な数の中小建設企業のニーズに対応していない、とBellは語る。

中小建設企業向けのスタートアップとしては、青写真アプリのPlanGridや、コンプライアンス関連のソフトウェアを作るUpCodesなどがあり、とくに後者は、Y Combinatorの今のバッチの同窓生だ

“一般的に建設業界は、ディスラプト(破壊的改革)が非常に後れている業界だし、テクノロジーの採用も遅い。でも最近では、ソフトウェアの実装と利用がそんなに難しくないことを、彼らは理解し始めている”、とBellは述べる。“これらのソリューションを利用すれば、建設業界はもっと先進的で生産性の高い産業になるはずだ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Y Combinatorが10億ドルのファンドを調達している

Axiosの今朝の記事(米国時間7/21)によると、シリコンバレーのスタートアップアクセラレーターY Combinatorが最大10億ドル規模のVCファンドを調達している。同社は2年足らず前にも、最初の大規模ファンドとして、Y Combinator Continuityファンドと名付けたグロウスファンド(成長段階向けファンド)7億ドルを調達し、その担当者としてAli Rowghaniを迎えた

RowghaniはそれまでTwitterのCOOで、さらにその前はPixarのCFOだった。

今YCに確認を求めているところだが、最近の同社の投資のペースや、一般的にベンチャー投資家のファンド形成サイクルが短期化している傾向から見ると、同社の動きは意外ではない。

Axiosが着目するのは: YCはもはや、成長段階の投資を特別扱いして別立てにすることを、やめるつもりだ。今回の新たなファンドは、サイズや段階を問わずあらゆるスタートアップへの投資に充てられる、という。また、YCが後期段階の企業に投資するときは、対象をもはや、前のようにYC出身企業に限定しない。

Axiosの言う第三の変化は: YCの投資委員会の規模を、これまでの数年間に比べてやや小さくする。YCの社長Sam Altman, Rowghani, そしてContinuity FundのパートナーAnu Hariharan, そしてそのほかのパートナー代表、という4名構成になるようだ。それは、意思決定過程を迅速化するため、と言われている。

YCの有限投資家、すなわち機関投資家や資本をスタートアップに投じたいと考えている個人投資家には、Stanford University(スタンフォード大学), Willett Advisors, TrueBridge Capital Partnersなどが含まれる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

KanoのPixel Kitは、子供たちをプログラミングに熱中させる


度重なる遅れを経て、Kanoは最新の子供向けプログラミング製品、Pixel Kitをようやく出荷した。可愛らしくコンパクトでカラフルなこの製品は、子供たちのイマジネーションを呼び起こすに違いない。

79.99ドルのこのデバイスは、ピクセル化されたアクリル製Etch A Sketchのようにも見えるが、子供にやさしいこのガジェットの神髄は、子供たちがテクノロジーに親しみエレクトロニクスにできることは何でも作れるということを学ぶところにある。

子供たちは部品を組み立て、同社の提供するソフトウェア群を通じてデバイスを制御することで、プログラミングの基本に慣れることができる。ピクセルアートを方法的に作っていくことで、Pixel Kitは子供たちにアートとテクノロジーの両方と同時に関りをもたせる。

Pixel KitはComputer KitやScreen Kitに続く、増え続けるKano製品の最新作だ。他のデバイスが150ドルだったのと比べてPixel Kitはコンセプトに興味をそそられた親たちが買いやすい価格に設定されている。

ロンドンを拠点とするKano Computingは、これらの直観的で賢いキットを作るために投資家から1500万ドルを調達したほか、2度のKickstarterキャンペーンで、それぞれ140万ドルと64万3000ドルを集めた。

昨年9月にスタートした最新のキャンペーンでは、Pixel Kit、Camera Kit、およびSpeaker Kitという3つの新製品を披露した。

昨年Kanoが発表した新製品の詳細はこちら

Pixel Kitは目標出荷日の2016年12月から数か月遅れてやってきたが、価格は支援者が払った金額よりも安く設定されている(プレッジは99ドル、目標小売価格は129.99ドルだった)。

現在Kanoは別のキットの開発に重点を移しており、Pixel Kitに続きSpeaker Kitも出荷予定だと支援者に通知している。Kickstarterキャンペーンのコメント欄を見る限り、その他のデバイスの出荷予定日は更新されていない。

Pixel Kitは79.99ドルでKanoのサイトから購入できる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ミシガン州デトロイトのスタートアップシーンも熱い

額面通りに受け取って欲しい。デトロイトは3年前よりもベンチャー支援によるスタートアップを50%も増やしている。ミシガン州ベンチャーキャピタル協会(MVCA)の調査によれば、デトロイトには35のアクティブなベンチャー支援スタートアップがある。もちろん、これは他の地域に比べれば大きな数字ではないが、その成長は注目に値する。

偉大なミシガン州に住む私は、その成長を証明することができる。これまで、巨大で魂を打ち砕くような企業に支配されて来たこの土地のカルチャーの一部に、スタートアップが急速に入り込みつつあるのだ。ここ数年、スタートアップはデトロイト、グランドラピッズ、アナーバーの魂の一部となり、先の調査はその印象を裏付けている。

MVCAは、デトロイトよりは緩やかなペースではあるものの、ミシガン州は同様の成長傾向を辿っていると指摘している。過去5年間で、ミシガン州ではベンチャー支援スタートアップが48%増加している。

デトロイトをスタートアップたちにとって魅力的にしている点をいくつか挙げることができる。オフィススペースは安価であり、世界的な大学や企業の近いことから、人材も豊富だ。Dan GilbertやIlitch家のような、地域の実業家たちの中には、彼らのビジネスを取り囲む地域を活性化させるために、スタートアップに手を差し伸べているものもいる。

MVCAによると、州全体ではVCの資金の42%がライフサイエンス部門に、31%が情報技術に投資されている。しかし、デトロイトでは、その関係が逆になり、情報技術が投資の43%を占める一方で、ライフサイエンスが占める割合は23%になる。モビリティに対しては州全体で5%、デトロイトでは8%を占めている。

他の地域同様に、スタートアップへも目が向くようになれば、ミシガンのビジネスのためのエコシステムが完成する。そもそも大規模な自動車産業も、かつては意思の固い、時に非情な起業家たちの集まりに過ぎなかったのだ。

Billy Durant、Henry Ford、Walter Chrysler、そしてDodge兄弟は皆、会社をミシガンに設立したが、その成功は1夜にして成し遂げられたものではない。厳しい競争、企業化と資本の投下などを通して、これらの男たちはスタートアップから帝国を築き上げたのだ。そしてミシガン州は、他の地域と同様に、新しい起業家たちの集団が、自動車産業と同様の持続力を発揮して、産業を興すことができることを期待しているのだ。

かつての私は、FoundersとBellのビールが全米で買えるようになった今、ミシガンにやってくる理由はないね、と言う冗談を人々と言い合っていたものだ。しかし、それはもはや成り立たない。ミシガンに来て、デトロイトのダウンタウンの新しい活気を見て欲しい。そしてアナーバーへ車で45分飛ばして、何年も存在している活きの良いスタートアップシーンも見て欲しい。そしてグランドラピッズにも行き、醸造所やスタートアップでいっぱいの街をホッピング(ビールのホップにかけた駄洒落)して欲しい。最後にはミシガン湖に向かい、最高の湖へ連なる巨大な砂丘を眺めて欲しい。そしてもしフリントに来ることがあるならDMを送って欲しい。コーヒーでも飲もう。水も素晴らしい。

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(翻訳:Sako)

人の動きを撮るだけでなく動きの意味(ボディーランゲージ)を理解するCMUの巨大ドーム型スキャナー

Panoptic Studioは、カーネギーメロン大学(CMU)の研究者たちが作ったボディースキャナーで、現実の状況の中でボディーランゲージを理解するために利用する。このスキャナーは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の中でブラウン博士がマーティに、仲間殺しを防ぐために取り付ける物に似ていて、大きなドームの中で対話したり、お話したり、争ったりしている参加者を撮った何百ものビデオを作る。チームは、体の位置をプログラマーが理解するためのコードまでリリースした

このドームにはVGAカメラが480台、HDカメラが31台、Kinectのセンサーが10ある。それらは、ドームの中の参加者のワイヤフレームモデルを作る。なぜ? 彼らが考えていることを、コンピューターに教えるためだ。

准教授のYaser Sheikhはこう言う: “私たちは、声と同じぐらい、体の動きでコミュニケーションしている。いずれにしても、コンピューターはそのことを知らないけどね”。

下のビデオでは、あるグループが何かについて言い争っているところをスキャンした。コンピューターは手や頭のさまざまな位置と、言葉のコミュニケーションがあればそれも見て、二人が怒っているか、ハッピーであるか、議論しているのか、などを理解し始める。コンピューターに、何かを指さすなどのジェスチャーも理解させると、システムは話の対象…何について話をしているのか…も理解するようになる。

そうやってコンピューターがボディーランゲージを理解するようになると、自閉症や言語障害の人たちのしぐさを、リアルタイムで解読できるようになる。またこのシステムを団体戦のスポーツで使うと、各選手の気持ちや意思などを、彼らがいつどこにいたかも含めて、理解できるようになる。

プレスリリースより:

複数の人間をリアルタイムで追跡することには、とくにお互いがコンタクトしているようなソーシャルな状況では難問がいくつかある。単純に個人の姿勢を追うようなプログラムは、各個人がグループ内にいる状況では使えない。グループが大きいときには、とくにそうだ。Sheikhと彼の同僚たちは、ボトムアップのアプローチを採った。ひとつのシーンの中のすべてのボディーパーツをまずローカライズし(腕、足、顔、などなど)、次にそれらのパーツを特定の個人に結びつけるのだ。

 

このPanopticonはまだ、Super Bowlや、あなたのお近くのDenny’s(デニーズ)で使えるほど完成してはいないが、人びとの四肢やアクションの、さまざまな点雲に基づいて、彼らが今何をしているのかを当てることはできる。今あなたが、だれかをはたいたことも分かるのだ。

“この装置では、1回の撮影で各人の手の500のビューが得られる。また手の位置を自動的に注記する”、と研究者のHanbyul Jooは語る。“手はとても小さなオブジェクトだから注記は難しい。だから今はHDカメラを31しか使ってないが、しかしそれだけでも、大量のデータ集合が作られるのだ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ユニコーン企業に出会う確率がアメリカで1番高い地域はどこなのか?

【編集部注】執筆者のJason Rowleyはベンチャーキャピタリスト兼Crunchbase Newsのテクノロジー記者。

起業家がよく口にする「スタートアップを始めるのに最適な街はどこか?」という問いは、いつの時代も耳にする、なかなか答えが出ない問題だ。期待をもたせないために先に伝えておくと、この問いに正解はない。テックエコシステムではよくあるように、この問いにはいくつもの要因が絡み合っている。しかし、ひとつだけ言えることがあるとすれば、ネットワークは重要だということだ。

街のネットワーク

ネットワーク理論の中には、「同類性」と呼ばれるコンセプトが存在する。これは、性質の似た個体同士の方が、そうでない個体に比べて繋がり合いやすいということを意味している。つまり「類は友を呼ぶ」ということだ。それでは、もしある起業家がユニコーンクラブ(評価額が10億ドルを超える非上場独立企業の集まり)に入りたい、もしくは資金的な安定を求めている場合、その人はどの都市に拠点を置けばいいのだろうか?

この問いであれば、ちょっと捻りを加えて答えることができる。

活発なスタートアップエコシステムが存在し、ユニコーン企業もしくは調達額が5000万ドルを超える企業の数が多い大都市を見つけるというのはあまりに簡単だし、そこまで意義があるとも言えない(ネタバレ:全てに関してサンフランシスコのベイエリアが1番だ)。

そこで、アメリカでもっともユニコーン企業や資本が潤沢な企業の割合が高い地域について考えてみたい。つまり、ユニコーン企業や調達額の多い企業を、その地域で設立された企業の総数で割った数を以下で確認していく。

スタートアップを始めるのに”最適な”街探し

この調査にあたっては、Crunchbaseに掲載されている、アメリカ中の2003年以降に設立された3万3500社のデータを分析した(Aileen Leeの定義によれば、2003年がユニコーン時代の始まりとされている)。

このデータセットからは、設立前に資金調達を行ったとされる企業は取り除かれている(これは分析結果にノイズをもたらすエラーとした)。というのも、私たちが分析しようとしているのは、ソフトウェアを中心とするプロダクトやサービスを提供している”普通”の企業だからだ。同様に、資本集約的な事業(エネルギー、石油精製・採掘、製薬、医療機器等の生命科学事業)を営む企業も調査対象から外している。

そこから全体のデータを分析し、2003年以降に各地で設立された企業のうち、基準を満たすものをピックアップしていった。もちろん、設立年や拠点情報が掲載されていないために、対象データから漏れてしまった企業も存在するだろう。しかし分析対象となった企業の総数を考えると、これは誤差の範囲におさまる程度だ。

ユニコーンの生息地

ユニコーン企業に関しては、Crunchbase Unicorn Leaderboardを参照し、評価額が10億ドル以上の非上場企業、もしくは既にエグジットを果たした企業を対象とした。その結果、アメリカには現在144社のユニコーン企業が存在することがわかった。以下がユニコーン企業の数がもっとも多い5地域だ。

  • サンフランシスコ・ベイエリア:83社
  • ニューヨーク:22社
  • ロサンゼルス:8社
  • ボストンとシカゴ(同位):5社
  • ソルトレイクシティ:4社

ここまでは予想通りの結果だ。しかし、ユニコーン企業の数を2003年以降に設立された企業の総数で割ることで、ユニコーン企業の密集した地域が導き出せる。

「ユニコーン企業はどこにいるか?」という問いにこんな風に回答を導きだしたことで、規模の小さなスタートアップエコシステムの存在が浮き彫りになるという、意外ながらも面白い結果となった。

多額の資本が集まる成熟したスタートアップエコシステム

ユニコーン企業の分布を見て面白いと感じる人もいるかもしれないが、そこから得られる情報には限りがある。10億ドル以上の評価額がついた企業を144社見つけられたものの、そのほとんどは一箇所に集中しており、それ以外に特段分析すべきようなところもない。

それでは少し視野を広げて、次は”資本が潤沢な”企業の割合が高い地域を見ていきたい。下の地図に、2003年以降に設立された企業のうち、資本が潤沢な企業の割合が高い地域をプロットした。しかし、まずは対象企業の基準について説明しよう。

ここでは累計調達額が5000万ドル以上の企業を”資本が潤沢な”企業と考えた。個々の企業レベルで言えば、ほとんどが設立から数年が経ち、少なくとも資金調達ラウンドを2回経験した企業で、彼らはIPOやM&A、または自己資金での生き残りに向けて比較的順調に進んでいっていると言える。

エコシステムレベルで言えば、調達金額の多い企業がたくさんいるということは、多額の資金を現地企業に投じようと考える投資家がその地域にたくさんいるということを示唆している。あるいは、もしもその地域に投資家があまりいなかったとしても、現地企業には外から資金を調達するだけの力があるということがわかる。

そこからさらに分析結果に磨きをかけるため、2003年以降に設立された企業の数に下限を設定した。というのも、もしある地域で過去14年間に設立されたスタートアップの数が5社しかなく、そのうちの1社が5000万ドルの資金調達に成功したとする。厳密に言えば、その地域で設立された企業の20%が潤沢な資本を持つ企業ということになるが、母数が少なすぎるためこのデータは参考にならない。4匹の小魚しかいないプールの中でクジラを見つけても、私たちの目的からはズレてしまう。

そのため、ここでは2003年以降に少なくとも20社以上を輩出した地域を対象とした。こうすることで、ベイエリア外のたまたま10億ドル企業が誕生した地域ではなく、スタートアップエコシステムとしてある程度持続性を持った地域に目を向けることができるのだ。

こちらのインタラクティブマップからとった下のスクリーンショットには、各地域のスタートアップの総数に占める、資本が潤沢な企業の割合が示されている。リンク先の地図では、青い点の上にポインタをかざすと5000万ドル以上を調達した企業の数が表示されるようになっている。

すると、街としての規模は小さくとも、資本が潤沢な企業の割合が比較的高い地域が散見する。アイダホ州のボイシ(Boise)ヴァージニア州のアレクサンドリア(Alexandria)フロリダ州の”スペースコースト”エリアノースカロライナ州のシャーロット(Charlotte)は、全てベイエリアやボストンといった巨大スタートアップハブよりも資本が潤沢な企業の割合が高い。ニューヨークやシカゴ、ソルトレイクシティなど、ひとつ前の指標で上位につけていた地域は逆にランクダウンしている。

まとめ

スタートアップを始めるのに最適な地域というのは存在しない。サンフランシスコやニューヨーク、ボストンといった主要地域は、これまでに誕生したプロダクトや企業という点では確かに活気に溢れているし、素晴らしい地域だと言える。その一方で、生活費は高く、次の10億ドル企業をつくるのは自分だと息巻いている起業家も当然たくさんいる。

対照的に、シャーロットやソルトレイクシティ、ヒューストンといった比較的規模の小さな地域は、主要地域に比べれば生活費も安く、ベイエリアやニューヨークに比べて”打率”も高い。しかし、企業数の多くない規模の小さな地域という事実に変わりはなく、巨大企業の存在は単なる偶然であることも多々ある。

誤解のないように伝えておくと、ユニコーン企業と資本が潤沢な企業の数だけで、スタートアップの拠点を決めるというのは賢明とは言えない。そういった企業は、豊かで勢いのあるエコシステムがあるからこそ生まれるのであって、その逆ではない。規模が大きく活気で溢れ、資金調達やコネクション作りがしやすいエコシステムを選ぶか、それとも自分たちがそのようなエコシステムを作っていくのかというのは起業家自身の選択なのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

空港におけるVIP風コンシェルジュサービスを適価で提供するSolve

空港というのはなかなか面倒な場所だ。せっかく目的地に到着しても、通関手続きなどにいったいどのくらいの手間がかかるのかわからない。場合によっては数時間も待たされたりすることがある。

こうした不満に、簡単な解決策を提供しようとするのがSolveだ。空港の到着ゲートで待機するコンシェルジュサービスを提供しようとするスタートアップだ。通関手続きや、タクシーの搭乗などをサポートしてくれるのだ。

このスタートアップはY Combinatorの2017年夏クラスのひとつだ。空港の到着から、次なる目的地への移動をサポートすることを目的としている。

さきに「簡単な」解決策を提供しようとしていると記した。すなわち、類似のコンシェルジュサービスは、VIP向けのサービスとしてすでに存在している。Solveは、そうした既存サービスを、一般の人向けにも提供しようとする狙いをもっているのだ。空港の側も、こうしたエスコートサービスを容認しているところが多い(世界で500以上の空港が認めている)。しかし小規模のサービス会社が乱立して利用者にとってわかりにくいものとなっているし、またIT活用の面では大いに遅れた状況にある。予約窓口もわかりにくければ、また料金体系もよくわからない。未だに予約するのにファックスを使う会社すらあるほどだ。

Solveはこの業界に参入し、価格の透明性、利用の容易さを提供しようとしているわけだ。

もちろん、世界各地で利用するサービスであれば、場所による価格の違いはある。車からゲートまでのVIPサービスを利用する場合、南アフリカのケープタウンでは140ドルほどの費用となる。しかしモスクワで同様のサービスを受けようとすると、740ドルもの費用がかかるのだ。もちろん国による相場のようなものはあり、アメリカ国内においては、2人でエスコートしてもらう場合には300ドル程度が一般的であるようだ。サンフランシスコ国際空港やジョン・F・ケネディ国際空港などでも、その程度の価格となっている。それぞれの空港での費用についてはこちらからチェックすることができるようになっている。

なお、場所が異なれば受けられるサービスも異なるのが一般的だ。空港によってはエスコートサービスを受けるVIP向けに特別の通路(fast track)を用意している場合もあるし、そのようなものを用意していない空港もある。対象となる500以上の地域でさまざまな提供会社がサービスを提供しているので、サービスレベルにもばらつきがある。サービス提供会社と空港との力関係によって異なる部分もあるだろう。いずれにせよ、Solveは利用者を到着ゲートないしすぐ近くで待ち受け、そして手荷物検査、出入国管理や入管手続きを迅速に行うサポートをしてくれる。

サービスを構築する段階では、社員を各空港に配置して、自前のサービスを提供することを考えていたのだそうだ。しかし既存のサービス会社を通じて、より効率的なサービス提供を実現する方向に転換したわけだ。将来的には、Uberのようにコンシェルジュの写真やプロフィールをリアルタイムに提供することも考えているのだそうだ。もちろん、サービス利用者の情報を提供して、「馴染み」のコンシェルジュのサービスを受けることができるようにするというアイデアも温めているところだそうだ。

Solveを利用すれば、適切な金額(少なくともたいていの人が考えるよりも安い値段で)で大幅な時間短縮の恩恵に浴することができることになるかもしれないわけだ。もし、思ったほどのメリットがなかったとしても、衆目の集まる場所でVIP扱いを堪能することができる。それはそれで悪くないものかもしれない。

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(翻訳:Maeda, H

無名のユニコーンたち:資金がない状態から始まった35の大企業ーーVCは起業に必須ではない

【編集部注】著者のJoe FlahertyはFounder CollectiveのContent & Communityディレクターである。

ベンチャーキャピタルは麻薬だ、そしてVCでクスリ漬けになる可能性もある。しかしほとんどの創業者たちにとってそれは贅沢な悩みだ。より頻繁に投資家たちが耳にする質問は「私のスタートアップを支えてくれるVCを見つけるにはどうすればいいですか?」というものだ。こうした創業者たちは、過剰資本が彼らのIPOをどれほど厄介なものにするのかを心配してはいない。とにかく彼らは最初の条件規定書(term sheet)に署名してくれる誰かを(誰でもいいから)得ようと躍起になっている。

世の中の創業者たちの間で広く信じられているものの1つに、ベンチャーキャピタルは成功の前兆だというものがある。VCは多くの成功したテクノロジーベンチャーに見られる共通点だが、必須の条件というわけではない。特に初期段階では。

起業家は、ほとんどまたはまったく資本のない状態で、かなりのことを成し遂げることができる。資本によって洞察に富んだ会社になるわけではない。創造的に1ドルを10ドルを変えられないのに、何故100万ドルを1000万ドルにできると思えるのか?

スタートアップが進むことのできる方法を説明するために、以下に数千ドルあるいは額の汗だけを資本に始まった35社の例を示す。これらはみな私が「効率的な起業家精神」と呼ぶもののお手本となったものたちだ。

これらの企業の多くは、その後10億ドルの評価額を得ている、その中には10億ドルの収益を上げているものもある。しかしいずれもシードラウンドとみなされるもの以外で始まった企業はない。これらのスタートアップのほとんどは後にVCから資金を調達したものの、それはもう投資家からの資金調達の有無に関わらず成功できるという事実を確立したあとに過ぎない。現在でも、彼らの多くは広くは知られていない。彼らは、ハイテク業界の目に見えないユニコーンなのだ。

なので、投資家たちとのミーティングを慌てて予定する前に、これらのストーリーを読んで欲しい。これらは多くの創業者たちが抱いているVC中心の見方に対する釣り合いを取らせるものであり、資金調達について考える際に別の方法を提供するものだ。

以下に続くのは、こうした企業たちの簡単で簡潔な説明(彼らがとったアプローチ別に分類されている)と、それらの詳細を読むことができるストーリーへのリンクだ。忘れないで欲しい。ベンチャーキャピタルを受け入れることは、強制ではなく選択でなければならないのだ。これらの会社は、その方法を見せてくれる。

何かを生み出し、その後お金を調達する

ほとんどの業界で、もし顧客の本当の問題を解決してその費用を求めることができるなら、始めるためにベンチャーキャピタルは必要ではない。これについて考える際には3つの方法がある:

ワークフローの自動化

有益なプロダクトを生み出す最も簡単な方法は、日々のワークフローの一部を自動化することだ。これにより、構築しているものへの需要が証明され、プロジェクトのための資金調達源が確実に得られる。

MailChimp :共同創業者/CEOのBen Chestnutが、2000年にデザインコンサルティング事業を経営していたときに、電子メールニュースレターを発行したいという顧客が連続してやって来た。唯一の問題は、彼がそれらをデザインすることを面倒だと思っていたことだった。そこで、チームを退屈させないために、彼はプロセスを合理化するツールを作ることにした。 年商4億ドルのビジネスMailChimpは、このようにして生まれた。

Lynda:Lynda Weinmanは、1990年代後半に、ウェブデザイナー向けのツールの教師としてスタートした。書店でのセミナーは退屈だったので、彼女はやがて生徒たちをより良く指導できるトレーニング動画の作成を始めた。次々に作られたチュートリアルによって、彼女の会社はソフトウェア開発者とデザイナーたちのスキル向上を手助けして来た。彼女はコンテンツライブラリの構築を20年続け、その技術資産の蓄積はLinkedInが15億ドルで買収するまでに成長することができた。

資本効率の高い製品から始める

多くの起業家は業界リーダーに真正面から挑み、通常は失敗に終わることになる。これは特にハードウェアの場合に当てはまる。Appleのような会社と競争しようとする代わりに、こうした向こう意気の強いスタートアップたちはRadioShackによって残されたギャップを埋め、敬意を受け見習われる価値のあるビジネスを生み出した。

AdaFruit Industries:Limor Friedは、MITの学生の時代に、既製の部品で構成されたDIYキットを提供することで、彼女のDIY eコーマス帝国を開始した。Friedはエレクトロニクス商店で見られるものと同じビルディングブロックを商品化したものの、同時にユニークなコンテンツも用意して、スペースインベーダー筐体のレプリカを、ハンダ付けしたくなるような気にさせた。現在、彼女は85人の従業員を抱え、年間3300万ドルを稼いでいる。

SparkFunAdaFruitと同様に、Nathan Seidleが大学寮の部屋で、エレクトロニクスキットや奇妙な部品を、エキゾチックな新しいセンサーやシステムを試したいエンジニア仲間向けに売り始めたのが、SparkFunの始まりだ。現在、彼のeコマース帝国は154人を雇用しており、年間収益は3200万ドルだ。

既存の問題を解決し、既存のビジネスモデルを活用する

スタートアップはビジネスモデルの面で特に革新的である必要はない。より現代的な技術プラットフォーム、またはUXレイヤーの上に優れた製品を構築すれば十分だ。ここで見る企業は、どれも車輪の再発明を行なってはおらず、全てが真のバリューを生み出している。

Braintree Payments :オンラインで詐欺師に騙されることなく、お金を交換することは、ウェブ上での最も古い問題の1つだ。取引に関わる全ての当事者たちは、素晴らしい体験のためなら、公平な「税金」を支払うことには喜んで同意する。Braintreeはより良い技術ソリューションを構築し、8億ドルの買収に先行する、2回のVCラウンドで6900万ドルを調達する前に、4年間に渡ってそうした取引からの収益で生き延びていた。

Shopify:Shopifyの創業者は、スノーボーダーのためのeコマースサイトを開始したときに、ショッピングカートのソリューションを探していた 。しかし適当なものを見つけることができなかった彼らは、自分たちの痒みは自分たちで掻くことを決め、当時ホットだったRuby on Railsフレームワーク上に特注ソリューションを構築した。これは、より多くの人々にとっても完璧な解決策であることが判明し、創業者たちはそれが生み出す収入によって、6年の間独立したビジネスを運営していた。彼らは最終的にVCから資金を調達し、その後IPOを行い10億ドルの評価を受けた。

自立ルール

多くの起業家は「CEOを務める」という時間を無駄にしながら、戦略を策定しビジネスがどのように成長するのかの夢の組織図を描きがちだ。それをしてはならない。その代わり、自分が持っているリソースだけを使って、持っているアイデアを前進させるために、今日できることを見つけよう。

Ipsy:一般女性向けに、化粧品の詰め合わせボックスを、毎月サブスクリプションベースで送るサービスは、Birchboxのような先駆者のおかげで成長産業となっている。YouTubeスターのMichelle Phanは、先行者としての優位性は持っていなかったが、オンライン有名人(800万人以上のYouTubeフォロワー)としての地位、化粧品ブランドとのコネ、そして50万ドル以下のシード資金を活用して、化粧品サブスクリプションスタートアップを開始した。その後VCから1億ドルを調達する前に売り上げは1億5000万ドルに達している。

資本によって洞察に富んだ会社になるわけではない。

ShutterStock:Jon Oringerはプロのソフトウェア開発者で、アマチュア写真家でもあった。彼はこのスキルを組み合わせて、個人フォトライブラリから3万枚写真を使いフォトストックサービスを開始した。現在の価値は20億ドルである。資本効率が報われて、ついには彼を本当に自力で辿り着いた億万長者に変えた。

SimpliSafe:人々はハードウェアビジネスをブートストラップしようとする考えを嘲笑するが、SimpliSafeのChad Lauransはそれを実行した。彼は友人や家族から少額の資金を調達し、その後8年間に渡って家庭用セキュリティビジネスを構築して来た。お金を節約するために、最初のプロトタイプは文字通り自分でハンダ付けを行った。8年後、ビジネスは数十万の顧客を獲得し、数億ドルの収入を上げ、Sequoiaから5700万ドルのVC資金を手に入れた

どこから集めてもお金はお金 … (誰のお金も緑色)

資金調達は、数百万ドルが一度にやってくるとは限らない。創業者たちは助成金、インキュベーター、エンジェル、あるいはプリセールスなどからお金をかき集めることが可能だ。もっともやり手の起業家たちは、プロダクトを提供する前から支払いを集めることのできるビジネスモデルをデザインし、顧客を成長資金の源泉にする。

Tough Mudder:陸上競技起業家のWill Deanは貯金の7000ドルを使って、年商1億ドル以上の会社を生み出した。その秘密は、レースへの事前登録を販売し、そこで集まった売上を運転資金として、Tough Mudderを有名にした電化障害物コースを建設したのだ。

CoolMiniOrNot:CoolMiniOrNotは、マニア同士がDungeons&Dragonsのフィギュアをペイントする能力を自慢し合うウェブサイトとして始まった。最終的にサイトの創設者たちは、Kickstarterをチャネルとして活用して、独自のゲームをデザインして配布することを決めた。彼らは27回のKickstarterキャンペーンを実施し、3594万3270ドルの非希釈的(non-dilutive)資金を調達した。ゲームは続く。

売れ!売れ!売れ!

通常、最良の資金源は顧客だ。売ることには2つの利点がある。まず、まず直ぐにキャッシュレジスタを鳴らすことができること。第2に、顧客と共感するものをすばやく学び、それらの洞察を使って商品を洗練することができることだ。

ScentsyDNVB(Digitally-Native Vertical Brands)は大流行りだが、そうしたものは妙に凝った紹介ビデオやFacebookでの広告に過度に依存して売上を上げている。Scentsyは広告を買う余裕がなかった時代には、不要物交換会でロウソクを売っていた。それは格好良いものではなかったが、創業者たちは買い手と共鳴するための確かなメッセージを受け取っていた。今では年間収入は5億4500万ドルを超えている。

CarGurus:このアプリは、データ分析を活用して、顧客が中古車に関する最良の取引を見つけるのに役立つものだ。しかし同社のCEOは、年間5000万ドルの収益と利益率の高さの理由を、同社がライフサイクルの早い段階で営業チームを雇用したからだと言う。同社の350人近くの従業員のほぼ半数が、ソフトウェアを作成するのではなく、セールス電話をかけている。

LootCrate:LootCrate(毎月ギーク商品詰め合わせが届く定期便サービス)は制度的な資金調達を行なう以前に、既に60万人以上の顧客と1億ドルの以上の収入があった。彼らが非常に効率的だった理由の一部は、同社が設立した最初の週末から、顧客に課金を開始したことだ。創業者たちはハッカソンでランディングページをセットアップし、注文を集め、その資金を使ってパッケージを埋めるギークな商品を購入した。

マーケティングをケチる

スタートアップのマーケティング担当者は、無計画なブランドマーケティングで時間を無駄にしたくないだろう。効率的な起業家たちは、即座に付加価値のあるキャンペーンを必要としている。

Wayfair:この家庭用品のeコマース会社は、ブランド広告をスキップし、一般的な検索用語に完全に一致する何百ものドメイン名を購入したおかげで、最初の営業月から利益を上げることができた。このモデルは、最終的には同社が公開直前にシリーズAで1億6500万ドルを調達し、40億ドルの時価総額となるまで、10年に渡る利益性の高い成長を支えた。

創造的に1ドルを10ドルを変えられないのに、何故100万ドルを1000万ドルにできると思えるのか?

Cards Against Humanity:Kickstarterからのわずか1万5700ドルの資金で、Cards Against Humanityチームは最初の年に合計1200万ドルとなるビジネスを作り上げた。彼らはまた、一連の抜け目ないマーケティング上の妙技を披露した。牛の糞ピカソ作品の断片トランプ後のアメリカの虚無感を表現する大きな穴、 そしてトランプからの「緊急避難」バッグを販売し、さらに何の見返りもなしにお金を送ることを募った。これらのプロモーションは安く実行することはできないが、支払ったコストに見合う収入を得ることができて、一方沢山のフリーメディアに掲載して貰うこともできる。

GoFundMe:バイラルマーケティングはビジネスモデルのおまけとして扱われる場合には、当然ながら真面目に取り扱われることはないが、ビジネスモデルにきちんと統合された場合には非常にパワフルな道具となる。超効率的なコンバージョン率最適化手法(CRO:conversion rate optimization)と組み合わせることで、それは無敵なものになる可能性がある。GoFundMeの創業者たちは、このペアの力を使って、ビジネスを約6億ドルで評価される時点までブートストラップすることができた。

効率 > 資金

スタートアップは、しばしば彼らが調達した資金によって評価される。しかし、もっと重要なことは、それらの企業がいかに効率的に資金を使用しているかを尋ねることだ。効率性とは、ひたすら倹約するという意味ではない。その代わり、本質的に資本を組み合わせることでより効率的になる、テクノロジーもしくはビジネスモデルを中心にしたビジネスを指向する起業家たちを見つけることだ。

PaintNite:画家のモネとメルローの赤ワインを組み合わせるという考えはしばらく存在していたが、PaintNiteの創始者はこのモデルをより費用対効果の高いものにしたいと考えた。他の競合相手が、動きが遅く高価なフランチャイズセールスモデルに頼っていたのに対して、PaintNiteはアート教師たちと平日にワインを売りたいと思っていたバーにペアを組ませて、ベンチャーキャピタルから調達を行なう前年には3000万ドルの収益を上げるビジネスを作り上げた。

Plenty of Fish:2003年に設立されたこの出会い系サイトは機能も見かけも10年間ほとんど変化しなかった。他のサイトには、より多くの機能、鮮やかなグラフィックス、豊富なベンチャー資金が注ぎ込まれていたが、Plenty of Fishは無料で、そのリソースの大部分をスパムアカウントとの戦いに費やしていた。Craigslistと共に、Plenty of Fishの最大の資産は、「良質の魚がいる池だ」という評判だ。同社は時間の経過とともにサイトを改良したが、大量の資本注入は必要としなかった。最終的に同社は、5億7500万ドルで売却された。

Mojang:Minecraftの背後にいるレンガ職人たちは決してベンチャーキャピタルの資金調達を行わなかった。たった50人の従業員で、Microsoftに買収される前には、利益で10億ドル近くを稼いでいた。このスウェーデンのスタジオは、Zyngaにインスパイアされたソーシャルスパミングや略奪的な小規模取引のような流行には決して巻き込まれることはなかった。Minecraftはユーザーに定額料金を請求することで成長し、その結果25億ドルの買収が行われた。

幸運は”退屈”を好む

退屈は価値判断ではない。資本なしでなんとか成長できた、最も印象的で成功した企業の多くが、差し迫ってはいるものの、ある意味つまらない問題を解決することで繁栄してきた。もし難しい問題を解決すれば、顧客はそれに喜んで資金を提供する。

  • SurveyMonkeyは90年代のドットコムバブルで設立されて、同類のKosmoのような破壊力は持っていないと思われていたが、会社としてはより耐久性があった。同社はドットコムのクラッシュを生きのび、着実に9桁のランレートになるまでに成長した。開始から11年経って、やっと1億ドルを調達しただけだ。
  • ProtolabsはVistaprintが名刺作成に使っている、プラスチック射出成形を行なっている。現在の評価額は12億ドルである。
  • 13億ドルの価値を持つCventは、イベント管理ツールを開発し、 建設管理を行うTexturaは、6億63300万ドルで買収された。どちらのマーケットもホットで流行っているものとは思われていない。
  • Grasshopperは、15万の顧客と3000万ドル以上の年間収入を持つ電話ネットワーク会社だが、VCに関わったことはなく、最終的にはCitrixに買収された。
  • EpicはJudith Faulknerによって1979年に設立された。ウィスコンシン州に拠点を置くこの電子カルテプロバイダは、おそらく今日稼働している自己資金だけで大きくなった最大のソフトウェア会社である可能性がある。
  • eClinicalWorksは、世の中が「速く成長しよう」と声を揃えていた1999年に設立された。同時代の企業の多くがクラッシュし燃え尽きている。臨床データを管理するという、退屈だが利益を生む作業に力を注ぐことで、会社は生き残り、現在は4000人以上の従業員を抱え、年に3億2000万ドルの収益を生み出している。
  • Unityは、ゲーム開発のなかの(クロスプラットフォームや「バンプマッピング」などの)あらゆる退屈な部分にフォーカスすることで、モバイルゲーム産業のバックボーンとなることができた。彼らは資金調達をすることなく、何年も過ごして来たが、現在は15億ドル以上の評価を与えられており、他の多くのブランドゲームよりも成功している。
  • GitHubは、バージョン管理から苦痛を取り除き、資金調達前に既に、ハイテクエコシステムの重要な一部となっていた。
  • Qualtricsは、学校や企業の調査を管理するためのツールとして、ユタ州の地下室でスタートし、今では1000人の従業員を抱え、年に1億ドルの利益を掻き集める。

ファウンディングを受けられないものは幸いである

資本調達がほとんど不可能なときもある。私たちは数千万ドルの収益を上げ、3桁の成長率を達成し、その他の利点を持ちながら、少額の資金調達にさえ苦労している企業を見てきている。幸いなことに、このようなスタートアップは、このような明らかな不利な条件にも関わらず、最終的には勝つ傾向がある。

Atlassian:シリコンバレー、ニューヨーク、ロスアンゼルス、ボストンの外でスタートアップを始める利点の1つは、VCがあまりないことだ。これは呪い言葉のように聞こえるかもしれない。だが結局のところ、資金のアクセスが得られないのなら、それが何の役に立つというのだろう。それは変装した祝福かもしれないのだ。

このような孤立は、調達した何百万ドルで何をしようかと考える空想からあなたを守り、あなたの目の前にいる、実際にお金を払ってくれる顧客を幸せにするように強制する。オーストラリアに拠点を置くAtlassianは、自力で40億ドルの時価総額へと上った。もし同社がより安易な資金調達を行なうことができていたら、低品質の成長を追いかけ、いかに効率的に成長するかを見出す前に沈んでいた可能性がある。

スタートアップを始めて規模を拡大するのに、資金提供者たちからの許可は必要ない。

Campaign Monitor:資本効率の高い企業の奇妙な特徴の1つは、資金調達の最初のラウンドが、IPOからの収益に近いような、目立った金額になる傾向があることだ。Campaign Monitorの場合、最初の資金調達ラウンドの金額は、2億5000万ドルだった。 シドニーに拠点を置くCampaign Monitorは、ベンチャーキャピタルへのアクセスが容易ではなかったため、ビジネスを自力で始めて、ユニークなテクノロジーを構築した。そのテクノロジーは、Disney、Coca-Cola、そしてBuzzfeedなどへ優れた電子メール解析機能を提供するのものだった。2億5000万ドルの資金調達が、会社を助けるのか傷つけるのかは、やがてはっきりすることだろう。しかしそれは彼らのこれまでの成長に対する確かな評価の1つなのだ。

The Trade Desk:創業者のJeff Greenはプログラム広告業界を発展させるために独自の見解を持っていたが、現代的なアドテックの資金調達サイクルの終盤になってThe Trade Deskを開始した。この市場の過剰資本化は、投資家が悪いパフォーマーによって燃え尽きることと相まって、企業がそのライフサイクルを通した資金調達のあらゆるラウンドで苦労することになった。Greenは、申し分のないスタートアップCEOであり、同社の最初の6年間でベンチャーキャピタルから2640万ドルだけを調達し、ナスダックで取引される10億ドルの事業へと転換した。でもどうやって?より少ない資金を持つという制約を受け入れることで、最高のリターン活動に焦点を当て、資金の注入よりもむしろアイデアで動くイノベーションの文化を構築したのだ(情報開示:Founder CollectiveはThe Trade Deskの投資者の1つである)。

VCは完璧ではないし、最善のVCでも確かに思えるアイデアを見逃してしまうこともある。創業者たちがかつて、投資家たちに対して、やがて10億ドルのビジネスに育ったビジネスを売り込むことができなかった話を耳にすることは驚くほど普通のことなのだ。AppLovinの創業者Adam Foroughiは、その事業を14億ドルで売却したが、収益が多くてもベンチャーキャピタルから資金調達をすることは困難だった。「合理的な評価額(おそらく400万から500万ドル)だと思った金額では投資家を見つけることができませんでした。1年目の終わりまでに、私たちは利益を上げるようになっていて、月の収益は100万ドルを超えていました」。残りは、彼らが言うように、歴史だ。

覚えておくこと:VCを中心としたビジネスのデザインは避ける

あまりにも多くの創業者たちが、創業1日目からその事業をベンチャーキャピタル中心に考えて始める。かつてスタートアップは、何かを形作ったあと、お金の調達を考えたものだ。しかし今日では、彼らは何かを形作るためにお金を調達しようとする。創薬や航空機開発をしようとしているのでなければ、これは通常間違った判断だ。実際、リソースを使わずに前進することは、VCがあなたの会社に関心を持つようにするための最良の方法だ。上記で述べた企業たちは長期間資金を調達しないことを選択したが、彼らがそうしたときには、投資家に対する選択肢が生まれ、条件を設定することができた。

私たちのアドバイスは、ビジネスを未来永劫、自己資金だけでブートストラップせよというものではない。ベンチャーキャピタルは、AppleからZapposに至るまで、ほぼすべての大手テック企業に資金を供給してきた。単に、始めるためにはお金はいらないのだ、ということだけを覚えていて欲しい。スタートアップを始めて規模を拡大するのに、資金提供者たちからの許可は必要ない。したがって、VCが次にあなたに「合格です」と言ったときには、次の3つの原則を覚えていて欲しい。

  • 最初に資金がなくても、テクノロジーを武器にしたビジネスを離陸させることは可能だ。
  • 僅かな資金でテクノロジービジネスを迅速に拡張することは可能だ。
  • 彼らが取る資本の量を制限することが、創業者の最大の関心事であることがよくある。

自己資金で並外れた成果を出しつつある企業をご存知なら、是非お知らせ願いたい。

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(翻訳:Sako)

どんなに汗をかいてもさらっと乾いているウェアを微小流体工学の技術で開発するAtacama、すでに多方面から引き合い

激しいスポーツでどんなに汗をかいてもそのスポーツウェアは乾いているし、それだけでなく発汗がデザインの要素になる。世界でもっとも乾燥した砂漠の名前を借用したAtacamaは、微小流体工学の技術を利用して、まさにそんなテキスタイルを作った。National Science Foundationの補助金をもらっているAtacamaは、アパレルや自動車産業、ヘルスケアなど、さまざまな分野における、その技術の応用製品も探求している。スポーツウェアは、そのひとつの例だ。

医療の世界で微小流体工学が使われ始めたのは、1980年代の“lab-on-a-chip”デバイス(チップの上の実験室)からだ。それによって、血液などの液体の、非常に小さなサンプルを用いる研究が可能になった。微小流体工学のテキスタイルへの応用を考案したAtacamaは、それにより織物や編み物のほとんどすべてが乾燥状態を保つので、きわめて快適に感じる運動着などを作れる。今市場化されている水分を逃がすファブリックの多くは、汗を衣類の表面に引き出して早く蒸発させるが、微小流体工学は水分を小さな三次元のチャネル(channels, 水路)へ導き、液体の方向性をコントロールすることによって、それらを特定箇所に集めたり、テキスタイルから落としたりする。どこでその現象を起こさせるかは、製造者が決められる。

Atacamaの技術はカリフォルニア大学デイヴィス校の研究グループが作り、メンバーの一人だったSiyuan (Alex) Xingが現在のAtacamaのチーフサイエンティストだ。彼によると、直面した最大の難題は、微小流体デバイスを作るために使われている微小製造工程の多くが、フォトリソグラフィーでもレーザー切断でも、シリコンウェファーやガラスなどの剛体用に開発されたものであることだった。したがってそれらでは、ファブリックの上にチャネルを作るのが難しい。結局彼らが悟ったのは、“ソリューションはファブリック側から得られるものでなければならない”、ということだった。

チームはテキスタイルの製造方法を学習し、どの方法なら低コストで微小流体工学的なチャネルを作れるかを検討した。刺繍、織物、プリント、ニットなどあらゆる方法を調べ、またそれらのテクニックのために使われている最新の製造機械も調べた。

“たとえばニットなら、ジャカードというという一種の型紙を使ってさまざまなパターンをファブリックの表や裏に作り出している。パターンの解像度は一ループにまで小さくできる。それはほぼ100ミクロンぐらいで、しかも3Dだ”、とXingは語る。“刺繍では、針が一本の糸をファブリックの基質を通しながら操作するがそれは、微小流体工学チップの上の‘スルーホール’と似ている。テキスタイルの製造方法をどうやれば微小製造工程の代替になりえるか理解したので、テキスタイル中に微小構造体とそのパターンを作る出せる、と確信した”。

これらの発見についてXingらが書いたペーパーが、防衛産業やヘルスケア、自動車などの分野のメーカーに注目され、その後、友人が彼を、Men’s WearhouseやGymboreeでチームリーダーだったSusan Nealに紹介した。Xingは、企業顧客開拓のためにAtacamaの取締役になるよう、彼女に求めた。NealはAtacamaの技術のデモを見たあと、CEOを引き受ける決心をした。

“取締役会議で、彼らが開発したプロトタイプのシャツを見た。その実際の機能を見たとき、これはすごい!と感じた”、とNealは語る。

“それは、水分がファブリックの表面を移動するとき、その方向をコントロールできた。まず何よりも、私はそれまで、そんなものを一度も見たことがなかった。私はビクラムヨガをやり、その教室も開いているから、みんな、水分を逃すファブリックについてはよく知っている。汗を吸い取って拡散する素材だ。しかしAlexがデモしたのは、水分が皮膚からシャツの外へ移動するときの方向をコントロールし、その水分をシャツから外す(落とす)技術だ。シャツ本体は完全に乾燥していて、それはこれまでまったく見たことのないものだった”。

Atacamaの技術はこれまで、ポリエステルやナイロンのような化学繊維に適用されていたが、今は木綿やメリノウールのような天然繊維でもテストしている。その技術を使った消費者製品はまだ市場にないが、Nealによると、今数社とパートナーしてプロトタイプを開発している。液体がファブリックの表面のチャネルを流れるよう操作するAtacamaの技術は、アパレルのデザインに含めることができ、上で見たように、スポーツウェアのブランドの強力なセールスポイントになる。

いちばん分かりやすい用途はトレーニングウェアや、ドレスシャツなどのアパレルだが(袖の脇の下部分に汗がしみない)、応用分野はもっと数えきれないほどある。たとえば、保護着、高性能おむつ、包帯や帯布、ギプス、病院用各種リンネル(布帛類)などに使える。

“今、車のシートへの応用研究を求められている。とくに自動運転車に使われいる電子回路から水分や、こぼしたドリンクの被害を防ぐことに、関心が集まっているようだ”、とNealは語る。

“すごく新しい技術なので、科学者たちとの対話の内容もすごい。彼らはあちこちで、これはできるか、あれはできるか、と聞かれ、ラボに帰ると、さらにそれら以外の有益なアイデアを考えだそうとしている”、と彼女は述べる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

不妊治療関連サービスの市場はいまや30億ドル規模に拡大

2016年の統計で出産した人の年齢をみると、30歳代の人が初めて20歳代の人を上回ったのだそうだ。高齢出産のリスクについてはさまざまな調査が行われているが、出産の高齢化に伴う「問題」はそれだけではない。CDCの統計によると、アメリカでは8組のうちの1組のカップル(年齢問わず)が、何らかの原因による不妊に悩んでいるのだとのことだ。ますます多くの人が体外受精などの不妊治療を行うようになっているのだとのこと。

医療の進歩により、不妊に対処する可能性は増えてきているわけだが、しかしこうした治療は非常に高額になることが多い。アメリカにおける体外受精には1万2000ドルないし2万ドル程度の金額が必要だとのこと。無事妊娠できた場合にも、胎児の遺伝子検査などでさらに数千ドルの費用が必要となる。これでは平均的な収入レベルで手を出せるものではない。

それをなんとかしようとするのが、ベイエリアに拠点をおくスタートアップのFuture Familyだ。妊娠可能か否か、どの程度の時間が残されているのかを自宅で検査できる妊娠可能年齢テストなど、比較的安価な不妊検査/治療手段を提供している。

設立したのはSolar Cityを運営していたClaire TomkinsとEve Blossomだ。Claire Tomkinsは自身でも6度の体外受精を行なって、出産にいたるまでに10万ドルを費やしたのだそうだ。この自身の経験から、より多くの女性ないしカップルが利用できる不妊治療手段を提供したいと考えるようになったわけだ。

「治療費はあまりに高額で、大いに悩むことになりました」とTomkinsは述べる。「これまで医者にかかるようなこともなかったのですが、不妊治療を経験することで、経済的な負担を心から感じることになりました」。

他の女性も困っているのではないかと、自身と同様の治療をうけた人たちにインタビューするなどして、Future Familyの起業を決意したのだとのこと。

不妊治療を資金面からサポートしようとする仕組みは他にもある。医院でも、保険に応じた資金サポートを行なっているところが大半だ。中には不妊治療をまかなえる保険もあるので、治療を受ける際にはきちんとチェックしておくことが必要だ。Google検索でも、さまざまな費用オプションを見つけることができる。しかしFuture Familyでは休みなしの24時間体制で相談窓口を設けている。また体外受精や卵子凍結費用については頭金なしのローンなども提供している。さまざまな治療オプションについて検討して、可能な限り費用をおさえようとする提案も行なってくれる。ちなみにFuture Familyの提供する妊娠可能年齢検査は、一般的な金額の半分である300ドルで提供している。

卵子の凍結保存は、月額75ドルからの金額となっている。この金額には、1年間にかかる検査、治療、および保存のための費用がすべて含まれるのだそうだ。体外受精費用も、必要な額をすべて含んで月額換算125ドル程度から可能となっているようだ。

不妊治療関連を手がけるサービスは、最近になって数多く登場してきている。しかし市場規模も30億ドル近くにまで成長してきており、ビジネス的な可能性は大きいといえそうだ。

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(翻訳:Maeda, H