ナビタイムがアニメなどに登場するスポット情報整備、全80の「聖地巡礼」ウォーキングコースとロケ地観光情報20本公開

ナビタイムジャパンは11月17日、アニメや漫画、ゲームに関するスポットデータを独自整備し、作品にゆかりのある場所を訪れる「聖地巡礼」オリジナルコースと紹介記事の提供を開始した。全80コースのウォーキングコースは、ウォーキングアプリ「ALKOO by NAVITIME」(Android版iOS版)、「ALKOO forスゴ得」(Android版)、「ALKOO for auスマートパス」(Android版)で、ロケ地の紹介やアクセス情報をまとめた全20本の記事は旅行予約サービス「NAVITIME Travel」で提供されている。

アニメや漫画、ゲーム関連の「聖地」情報は、建物や公園、駅などに加え、道路上の特定の場所(階段や坂道、交差点、マンホール、モニュメントなど)といったより細かなスポットを示す特徴がある。ナビタイムジャパンは、全国900万件以上の地点データを扱ってきたノウハウを活かし、各作品のスポットを確認しデータを拡充。今回、コア技術である経路探索技術をもとに、複数のスポットを徒歩60分間ほどで回るコースやアニメの登場順でめぐるコースを作成した。

アニメ・漫画の舞台となる場所を訪ねる「聖地巡礼」は、地域活性化を促進する観光資源として多くの自治体に取り入れられており、幅広い世代から人気が高い。ナビタイムジャパンは2019年1月より、NAVITIME Travelにて「アニメスポット特集」を公開し、アニメ関連の情報発信に力を入れてきた。

今後は、自転車や自動車向けのコースを拡充し、移動手段に合わせた「聖地巡礼」を楽しめるようサービスの向上に努めたいという。

ナビタイムがアニメ・漫画・ゲームに登場するスポット情報整備、全80の「聖地巡礼」ウォーキングコースとロケ地情報記事20本公開

「ALKOO by NAVITIME」で提供しているウォーキングコースは全80コース。対象作品はラブライブ!、呪術廻戦、ガールズ&パンツァー、恋は雨上がりのように、名探偵コナンなど

ナビタイムがアニメ・漫画・ゲームに登場するスポット情報整備、全80の「聖地巡礼」ウォーキングコースとロケ地情報記事20本公開

「NAVITIME Travel」で提供している記事は全20本。対象作品は鬼滅の刃、天気の子、あひるの空、ヒプノシスマイク、東京リベンジャーズなど

Racketは発見されやすい99秒のマイクロポッドキャスト作成・配信アプリ

誰もが同じポッドキャストを聴いているような気がするとしたら、それはおそらく偶然ではない。音声ベースのエンターテインメントやソーシャルメディアは現在、かつてないほどの人気を博しているが、この媒体はいまだに、どうやってリスナーに見付けてもらうかという問題に悩まされている。ヒットしたポッドキャストが人気を博し、そのメディア帝国を拡大して、有名ブランドとの契約を獲得する一方で、新進気鋭の番組が聴取者を見つけることは難しい。

Racket(ラケット)は、そんな問題を解決したいと考えている。App StoreでiOS版が公開されているこのアプリは、すべて99秒以内の音声作品を、TikTok(ティックトック)のような縦方向のフィードでエンドレスに提供する。誰でも簡単に録音した音声をアプリ内で編集し、関連するタグを組み合わせ、カバー画像を追加して公開することができ、そのプロセスには1分もかからない。

同社はこの度、Greycroft(グレイクロフト)、Foundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)、LightShed Ventures(ライトシェド・ベンチャーズ)などの投資家から、300万ドル(約3億5000万円)のプレシード資金を調達したことを発表した。YouTube(ユーチューブ)チャンネル「LaurDIY」のLauren Riihimaki(ローレン・リヒマキ)氏、Jason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏、Steve Schlafman(スティーブ・シュラフマン)氏などのエンジェル投資家も出資している。Racketはこの資金を、エンジニアの増員、デザインの微調整、信頼性と安全性に関するリソースの拡大に充てる予定だ。

Racketのチームは以前、ソフトウェアレビュー会社のCapiche(カピチェ)で2019年から一緒に働いていた。Capicheが2021年4月にSaaS購入プラットフォームのVendr(ベンダー)に売却された後、チームはそのまま残って音声を使った実験を始め、Racketを作り上げた。

RacketのAustin Petersmith(オースティン・ピータースミス)CEOは、ユーザーが作成する音声コンテンツの未開発の可能性を信じている。TechCrunchとの対談で、ピータースミス氏はポッドキャストを他のジャンルのコンテンツ制作と比較し、「1億人がTikTokで動画を作成しているのに、現時点では100万人しかポッドキャスティングしていないことを考えれば、音声コンテンツの分野はまだまだ成熟していない」と主張した。

Racketのチームは、音声コンテンツには参入障壁があり、それがこのメディアの発展を妨げていると考えている。「音声コンテンツを制作する人がごくごく限られているというこの状況は、不思議な感じがします」とピータースミス氏は語る。「新しいポッドキャストが躍進することは不可能に近いのです」。

Racketでは、フォーマットを短く設定し、編集プロセスを非常にシンプルにして、最初からコンテンツの発見を中心に構築することで、この摩擦を減らすことを目指している。音声作品の長さを99秒以下に制限することによって、より多くの人が、長くてきちんと構成されたオーディオショーを作らなければならないのではないかという心配から解き放たれ、単にジョークを言ったり、最近あったことの話などを共有できるようになることを、このアプリは期待している。

「私たちは、人々が不完全でも豪華な機材を持たなくても大丈夫なんだと、もっと感じられるように、敷居を下げようとしました」と、ピータースミス氏は語り、Racketのフォーマットをポッドキャストのツイート版に例えた。

Racketでは、ユーザーは知り合いを見つけてフォローすることもできるが、ほとんどの場合、自分が探しているとは思わなかったものを偶然見つけるところに楽しさがある。ユーザーは関連タグが付いた「Rackets」を検索したり、あるいは単にサイコロを振って出たコンテンツを聴いてみたりすることができる。「私たちは、他の方法では共有されなかったような、本当に面白い洞察力に富んだことを言っている人たちへの流入を増やすことができると信じています」と、ピータースミス氏は述べている。

他のすべてのソーシャルプラットフォームと同様、Racketの成功は、人々がそこで作るコンテンツに懸かっている。このアプリはまだ公開されたばかりだが、テスト期間中には、このフォーマットに興味を持ったコメディアンたちが、お互いに招待し合うという小さなサブコミュニティの発生が見られたという。ピータースミス氏は、このユニークなフォーマットに興味を持った他のコミュニティが、有機的に広めてくれると期待している。

ポッドキャストは、洗濯中や通勤中など、何かをしながら聴くことが多い。しかし、どんなふうに使いたくなるかという点において、Racketにはもう少し能動的な感じがある。そのあたりはやはり、音声のみではあるがTikTokに似た楽しみ方ができる。積極的にスワイプして気になるコンテンツを探したり、コメント欄を眺めたりもできるが、携帯電話をポケットの中に入れたままにして、何が出てくるかわからないフィードを聴き続けることもできる。今のところ、コンテンツはかなりランダムに感じられるだろうが、しかしポッドキャストが長すぎると感じている人には、新たな楽しみとなるかもしれない。

「私たちは、画面をずっと見ていたいと思わない人たち向けのプラットフォームを提供したいと考えています」と、ピータースミス氏は語っている。

画像クレジット:Racket

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロソフトがWindows 11の提供範囲を拡大し配布ペース加速

マイクロソフトがWindows 11の提供範囲を拡大し配布ペース加速

Microsoft

マイクロソフトが、Windows 11の配布ペースをこれまでよりもさらに早めています。現在利用しているOSバージョンがWindows 10のバージョン2004以降で、なおかつ9月14日にリリースされたアップデートを適用済みであれば、直接Windows 11にアップグレードできるようになったとのことです。

引き続きWindows 10を使い続ける人に対しては今日、11月分の月次更新プログラムが配布され始めています。またマイクロソフトは今後はWindows 10に関してもWindows 11と同様、大型アップデートの配布ペースを年に1回に揃えるとしました。

Windows 10は少なくとも2025年10月14日のサポート終了日までは、セキュリティ面のアップデートは継続するはずです。とはいえ、新しい機能の追加はWindows 11に対しておこなわれることになり、マイクロソフトはすでにリソースの大半は新しいOSに割り当てているため、Windows 10についてなにかわくわくするようなトピックを聞くことはあまり期待しない方が良いでしょう。

マイクロソフトはWindows 11のシステム要件を満たさないハードにはこの最新OSのインストールを推奨しませんが、ユーザーが自己判断でインストールすることは可能としています。ただ、サポート外のCPUを使用している場合は、インストールはできてもアップデートができない可能性があります。

まだWindows Updateの項目にWindows 11へのアップグレード案内が来ない人も焦ることはありません。マイクロソフトは10月4日のリリース時に、2022年半ばまでに対象となるPCにアップグレードを提供する予定だとしていました。またさっさとアップグレードしたいという場合は「PC正常性チェックアプリケーション」を使って問題なくアップグレードできるかを確認して、インストールアシスタントやISOイメージから手動でアップグレードすることも可能です。ただ、お使いのソフトウェアがWindows 11にまだ対応していないことも考えられますので、問題発生時に対処する自信がない場合は、案内が来るまで待つ方が無難かもしれません。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

モバイルアプリのリリースプロセスを効率化するRunwayが約2.3億円のシード資金を追加調達

NVIDIAがエッジコンピューティング向け超小型AIスーパーコンピューターJetson AGX Orin発表

Runway(ランウェイ)は、ドレスレンタルのRent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)のiOSチームが直面した課題をきっかけに設立されたスタートアップだ。このほどベータテストを終え、モバイルアプリのリリースサイクルを簡易化サービスを公開する。同社いわく、モバイルアプリ・リリースの「航空管制」サービスだ。また同社はBedrock Capitalのリードで実施した200万ドルのシード・ラウンドで資金を追加調達した。

ラウンドには、Array Ventures、Chapter One、Breakpoint Capital、Liquid 2 Ventures、Four Cities、Harvard Management Seed Capital、SoftBank Opportunity Fund、およびさまざまなエンジェル投資家が参加した。

Runwayの構想は、Rent the Runwayの初期モバイル・アプリ・チームで一緒に働いていた、Gabriel Savit(ガブリエル・サヴィット)氏、Isabel Barrera(イザベル・バレラ)氏、David Filion(デビッド・フィロン)氏、およびMatt Varghese(マット・バーギース)氏という4人の共同ファウンダーから生まれた。前職で4人は、アプリのリリースには多くの無駄な時間が費やされ、Slack(スラック)などのアプリを使った社内コミュニケーションで多くの行ったり来たりが起きるなど、数々のオーバーヘッドがともないことを体験した。エンジニアリング、プロダクト、マーケティング、デザイン、品質管理などの部門すべてが、アプリのリリース・プロセスに関わる各自の役割に関して互いに状況を報告し合わなければならなかった。それは、今でもドキュメントやスプレッドシートの共有を通じてよく行われていることだ。

Runwayは、代わりにアプリのリリースサイクルにともなうさまざまな部分を管理することに特化した専用ソフトウェアを提供する。

そのシステムは、企業の既存のツール、GitHub(ギットハブ)、JIRA(ジラ)、Trello(トレロ)、Bitrise(ビットライズ)、CircleCI(サークル・シーアイ)などを統合して、何が行わているのか、どのアクションアイテムが残っているかなどの最新情報を全チームに送る。今年の春にベータ公開して以来、Runwayは対応するインテグレーション(統合)を2倍に増やし、現在はLinear、Pivotal Tracker、Jenkins,GitHub Actions、GitLab CI、Travis CI、Slack、Bugsnag、Sentry、TestRailなどにも対応しており、近々さらに増やす予定だ。

画像クレジット:Runway

テスト期間中、Runwayは少数の初期ユーザーによって使用され、3月時点でClassPass(クラスパス)、Kickstarter(キックスターター)、Capsule(カプセル)などが同プラットフォームを使って40以上のアプリをリリースした。

ベータ開始以来、顧客ベースは10倍に増え、現在Gusto(ガスト)、NTWRK(ネットワーク)、Brex(ブレックス)、Chick-fil-A(チック・フィル・エー)などのほか、エンタープライズ分野の大物企業も顧客リストに入っていると同社は語る(その1つは「人気のフード・デリバリー・アプリ」だと本誌は理解している)。顧客の何社かから、Runwayを旧方式に代えて使うことを支持するメッセージが同社のウェブに掲載されている。たとえばClassPassのモバイル責任者、Sanjay Thakur(サンジェイ・タクー)氏は、Runwayを使った結果、システムの「混乱が減り」、リリースに費やす時間も減ったと語った。

「エンジニアたちは私に、リリースマネージャーの仕事でて多忙を極める時期の負荷が軽減されたと言っています」とタクー氏は言った。

KickstarterのシニアiOSエンジニア、Hari Singh(ハリ・シング)氏は、Runwayのおかげで「状況が整理された」と話し、「チームの全員が同じものを見ているのはすばらしいことです。起きていることに関する主観的意見がなくなるました」と指摘した。

「Runwayはリリースを早くしただけでなく、リリースのことを心配する必要をなくすことで、メンタル面のストレスを軽減しました」とNTWRKのシニアソフトウェアエンジニアであるDave Cowart(デイブ・コォート)氏は言う。「かつてはリリースを必要以上にためらっていました。今はスムーズにいくことも最小限の努力ですむこともわかっています」

現時点で、3月以降にアーリーアダプターたち同プラットフォームを使ってリリースしたアプリは計700本を超えている。また同社は3月のベータ以来いくつか重要なプロダクト変更も行ってきた。

画像クレジット:Runway

たとえば、これまで手動で行われてきたタスクのさらなる自動化、不安定なフェーズのリリースを自動的に停止する、安定したフェーズのリリースの自動的な加速、アプリストアの「What’s New」セクションへの標準リリースノートの登録、段階パーセンテージの自動更新する(Andoidを含む)、アプリストアで最新ビルドを選択する、iOSのベータレビュー用の新しいビルドの送信、リリースサイクルの最後にリリースにタグ付けする、変更履歴の自動生成、リリースアーティファクトの付加、不足ラベルの追加、プロジェクト管理ツールのチケットにバージョンを固定するなどだ。

Runwayはさらに、ホットフィックス(緊急修正)リリースの迅速化、社外ステークホルダーに回覧する承認機能、スクリーンショット・ビュアー、承認ゲート、CIパイプはラインからアーティファクトダウンロードを直接生成する機能、回帰テストの統合、安定度監視の統合、TestFlightおよびPlay Storeベータ・トラック・テスティングの統合、コード中のバージョン番号の自動更新など高頻度リリースのための追加機能、役割、承認、アクセス管理リストのサポートなど様々な拡張を実施した。同社はSOC 2認証も取得した。

今なお取り組んでいる分野が、新規顧客の導入プロセスの簡素化だ。Runwayは幅広いプラットフォームとして作られているため、顧客が数多くのアプリやサービスをRunwayに接続する初期設定プロセスには時間がかかる。それでもRunwayは、多くのチームの異なるツールやプロセスに適応する同システム能力は、最終的にセールスポイントになるものであり、導入の障壁にはならないと信じている。

正式公開にあたり、Runwayは1アプリ当たり月額400ドル(約4万5900円)の標準プランを継続するほか、トップ企業の導入を見据えて大企業向けのカスタム・エンタープライズ価格を追加した。将来はインディーチーム向け新プライシングの追加も考えているという。

Runwayは新たな資金を、複数のフルスタックエンジニア(特に元モバイル・エンジニア)、成長とマーケティングを担当するフルタイム社員1名を含む新規雇用に充てると語った。同社はすでに、元シニアモバイルエンジニアを初のフルタイム社員として採用している。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

オンライン小売業者の偽チャージバック対策をAIで支援するJusttが計80億円を調達して登場

チャージバック軽減に取り組むテルアビブ拠点のスタートアップJustt(ジャスト)は現地時間11月16日、総額7000万ドル(約80億円)となる資金調達でステルス状態から登場した。

2020年2月にRoenen Ben-Ami(ロエネン・ベン・アミ)氏とOfir Tahor(オフィール・タホール)氏によって創業されたJusttは、オンライン小売業者に代わってチャージバック異議を完全に自動化する、と話す。同社は最近、コネチカット州グリニッジを拠点とするOak HC/FTがリードしたシリーズBラウンドで5000万ドル(約57億円)を調達した。このラウンドは、2月にZeev Venturesがリードした1500万ドル(約17億円)、2020年11月にF2 Venture Capitalがリードした500万ドル(約5億7000万円)の資金調達ラウンドに続くものだ。Justtの戦略的個人投資家には、PayPalの元社長David Marcus(デイビッド・マーカス)氏、Square Capitalの元代表Jacqueline Reses(ジャックリーン・ローズス)氏、DoorDashの幹部Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏などがいる。

以前AcroChargeという社名だったJusttは、年間経常収益(ARR)が2020年9月に比べて900%増加していると話す。従業員数は1年前の3人から110人超に増加している。同社は、シリーズBでの評価額については明らかにしなかった。

知らない人のために説明すると、チャージバックとは、クレジットカード会社が小売業者に対して、不正な取引や問題のある取引の損失を補填するよう要求することだ。Justtは、自社開発した人工知能を用いて、世界中の小売業者が偽のチャージバックに対処できるようにすることを目指している。

偽のチャージバックは「フレンドリー詐欺」とも呼ばれ、消費者がクレジットカードやデビットカードへの請求に不正に異議を唱えることで、金融機関が支払いをキャンセルし、小売業者が損失を被る。JusttのAI駆動の技術は、不正なチャージバックにフラグを立てるように設計されている。不正なチャージバックは通常、異議の85%以上を占め、年間1250億ドル(約14兆円)超の損失につながっているとJusttは話す。同社は、カードプロセッサーを統合している各小売業者に合わせたシステムを構築し、不正なチャージバック請求を否定する証拠を収集してその情報を小売業者に代わってクレジットカード会社に提出する。

最終的には、フィンテックのユニコーン企業Melioや、ブロックチェーンベースの決済会社Wyreなど、大企業を中心とした企業の社内チャージバック軽減プログラムに置き換わることを目指している。Justtは顧客のために月に1万件以上のチャージバックを処理している。

「チャージバックシステムは基本的に不正なものですが、多くの業者はその損失を単にビジネスのコストと捉えています。Justtではもっと良い方法があると信じています。eコマースの販売業者は、この古めかしいシステムを乗り越えるために誰かの助けを必要としているのです」とCEOで共同創業者のタホール氏は話した。

タホール氏は、Chargehound、Chargeback.com、Midigatorなど同業他社と自社は異なると考えている。これらの企業は技術的ツールを提供しているが「それでも顧客はテンプレートの作成や証拠の収集に必要な専門知識を備えた社内チームを維持する必要がある」。

「これらのシステムは、最適化と成功率の向上を顧客のチームに依存しており、Justtのようなフルサービスのソリューションは提供していません」とタホール氏は指摘する。

他の競合他社はフルサービスを提供しているが、顧客のチャージバック処理を支援するためにオフショアチームを使って証拠作成を手作業で管理していると同氏は主張する。

「技術的な要素がないため、オフショアチームは一般的なテンプレートに頼ってしまい、パフォーマンスの低下を招いています」。

同氏によると、Justtは調査チームが小売業者の精算プロセス、利用規約、確認メール、チャージバック理由コードなどを分析し、よりカスタマイズされたサービスを提供する点が異なるという。

同社のビジネスモデルは、潜在的な顧客のリスクを最小限に抑えるように設計されている。顧客の売上が回収されない限り、顧客には何の請求もない。

「我々のビジネスモデルはすべて成功に基づいています。統合費用や案件ごとの費用は一切ありません。当社が手数料を請求するのは、小売業者が取引詐欺の減少によって実際に節約できた場合のみです」とタホール氏はTechCrunchに語った。

Justtが設立されたのは、パンデミックによってオンライン取引が急増し、それにともなって不正なチャージバック行為が急増した時期だった。

「それ以来、当社のソリューションに対する需要はうなぎのぼりです。これは、オンラインビジネスやオンライン取引の一般的な成長と、経済的圧力、サプライチェーンの問題、配達遅延など特定のプレッシャーによって引き起こされたもので、不正取引の取り消しの増加に拍車をかけています」とタホール氏は話した。

同社は、新たに得た資金を製品開発、販売、マーケティングに「重点的」に投資する予定で、ここには販売とマーケティングの業務を米国と欧州に拡大することも含まれている。また、2022年にはイスラエルの研究開発部門の人員を3倍に増やすことも予定している。

タホール氏は「今回の資金調達により、ニューヨーク市に米国本社を設置し、西海岸のオフィス開設の準備を行うなど、北米市場への積極的な進出を計画しています。また、市場機会に応じて、欧州地域へのサービス提供にも投資していきます」と述べた。

Oak HC/FTのパートナーMatt Streisfeld(マット・ストリスフェルド)氏によると、Justtでは取引後に発生する不正なチャージバックによって失われた60〜80%の収益を取り戻すことができる。

eコマースブームでは不正チャージバックによる企業のリスクが高まっているにもかかわらず、不正なチャージバックを特定して追跡し、異議を唱え、失われた収益を回収するシステムを導入しているブランドはほとんどない、とストリスフェルド氏は指摘する。

「ほとんどのブランドは、これらの損失を単に帳消しにしています。これは持続不可能でコストのかかるアプローチであり、小売業者が新たな方法を模索する中で、Justtは今後5年間で記録的な普及を遂げるはずです」と同氏は電子メールに書いた。

画像クレジット:Justt

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

法人設立、会計、税金、規制遵守など煩わしいバックオフィス管理を行うSleek、ビジネス構築に集中したい起業家向けサービス強化

Sleekの創業者ジュリアン・ラブリエール(右)とエイドリアン・バーゼル氏(左)(画像クレジット:Sleek)

起業家や中小企業は、カンパニーセクレタリー業務、簿記、銀行業務、税務、給与計算、雇用サービス、保険など、サイロ化された機能への対応に苦労することがよくある。

フランスの起業家Julien Labruyere(ジュリアン・ラブリエール)氏とAdrien Barthel(エイドリアン・バーゼル)氏は2017年にSleek(スリーク)を設立し、起業家がシンガポールと香港で事業を設立して運営するのを支援した。Sleekは法人設立、行政、会計、税金、ビザから規制遵守まで、すべてを処理するバックエンドのOSプラットフォームを構築した。

同社の使命は、Sleekによってバックオフィスの煩わしさをすべて取り除くことで、ビジネスの構築に集中したい起業家やビジネスオーナーにとって最適なプラットフォームになることだと、バーゼル氏は述べている。

Sleekは米国時間11月16日、White Star Capital(ホワイト・スター・キャピタル)とJungle Ventures(ジャングル・ベンチャーズ)がリードする1400万ドル(約15億9800万円)のシリーズAラウンドを獲得したことを発表した。これにより、Sleekの総調達額は2400万ドル(約27億3900万円)となった。

この資金は、技術および製品開発の強化、人員の増強、既存市場でのプレゼンスの拡大、オーストラリアや英国を含む新規市場への参入に使用される。

英国市場への参入にともない、Sleekは、英国の法人設立管理会社で、2005年の設立以来、45万社以上の法人を設立してきたLtd Companies(Ltdカンパニーズ)の買収を発表した。Sleekは、既存のLtd Companiesのサービスに同社のスタックを加え、英国の中小企業向けのオペレーティングシステムを構築する。

Sleekは設立以来、シンガポールだけでなく、香港、オーストラリア、英国、フィリピンにも拠点を拡大してきた。

同社は、パンデミック時に顧客ポートフォリオの規模を2倍にした。興味深いのは、Sleekの顧客は経済全体の混乱の影響をあまり受けていないようだ、とバーゼル氏はTechCrunchに語っている。また、2021年初めには1000万ドル(約11億4100万円)の年間経常収益を達成したとバーゼル氏は述べている。

5000社以上のポートフォリオを管理しているSleekは、2020年に140万件以上の簿記取引を処理し、約7億ドル(約799億円)の収益を計上した。

Sleekは最近、中小企業の銀行口座開設を簡素化したSleekビジネスアカウントを発表した。これにより、起業家や中小企業の経営者は、Sleekアプリを使ってわずか1日で預金口座を開設し、取引を開始することができ、口座開設前の煩わしい書類作成の必要性がなくなった。さらに、ユーザーはSleekのダッシュボード上で、他の会社の指標と一緒に口座の詳細を確認することができ、会計や簿記のための銀行照合を効率的に行うことができる。また、送金やカード発行に対応した製品のリリースも予定している。

「Sleekビジネスアカウントのリリースにより、起業家のためのオペレーティングシステム(OS)を構築するという当社の製品ビジョンに、大きな一歩を踏み出すことができました」とバーゼル氏は述べている。

また、経験豊富なCFO(最高財務責任者)がビジネスインテリジェンスツールを介してクライアントの会計データにアクセスし、クライアントへの提案や分析(予算編成、戦略、資金調達)を行うCFOサービスを試験的に開始した。

「テクノロジーが人間の超効率化を可能にする未来では、人間は手作業よりも顧客へのアドバイスに多くの時間を費やします。現在、当社のカンパニーセクレタリーは、従来の会社の4~5倍多くのクライアントにアドバイスを行っていますが、その機能の100%自動化を実現し、クライアントへのアドバイスのみに集中できるようにすることを目指しています」と、バーゼル氏はTechCrunchに語っている。

White Star Capitalの創業者兼マネージングパートナーであるEric Martineau-Fortin(エリック・マルティノー・フォーティン)氏は「我々は、Sleekの優れたパートナーとなり、我々のグローバルなカバーエリアを活用して、すべての中小企業が抱える根本的な問題を解決し、ヨーロッパやオーストラリアへの成長を加速できると信じています」と語っている。

「Sleekは、世界中の起業家や中小企業が抱えるバックオフィス管理という、まだ十分なサービスが提供されていない領域の課題に取り組んでいます。Sleekの地域を超えた成長と急速な拡大は、プラットフォームの導入が加速していることと、それがエコシステムにもたらす価値を証明しています」。とJungle VenturesのマネージングパートナーであるDavid Gowdey(デビッド・ゴウディ)氏は語っている。

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

設計・建築事務所のプロジェクト管理を支援するソフトウェアを提供するMonographが約23億円調達

Monograph(モノグラフ)は、建築・設計の専門家がプロジェクトを管理するためのクラウドベースのプラットフォームを提供しているスタートアップ企業だ。同社は米国時間11月15日、シリーズBラウンドで2000万ドル(約23億円)の資金を調達したと発表した。このラウンドは、新規投資家のTiger Global(タイガー・グローバル)が主導し、Tishman Speyer(ティシュマン・シュパイヤー)と既存投資家のIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)およびHomebrew Ventures(ホームブルー・ベンチャーズ)が参加した。

今回の資金調達により、2019年に設立されてからMonographが調達した資金総額は2930万ドル(約33億6000万円)となった。同社の前回の資金調達は、2021年5月のシリーズAで、740万ドル(約8億5000万円)を調達している。

Monographを設立した3人の設計技術者であるRobert Yuen(ロバート・ユエン)氏、Moe Amaya(モー・アマヤ)氏、Alex Dixon(アレックス・ディクソン)氏は、いずれも建築学のバックグラウンドを持つ。同社のソフトウェアは、建築事務所がタイムシート、予算、人事、請求書の発行など、多くのさまざまな業務システムを管理するのに役立つ。これまでに5億ドル(約570億円)相当のプロジェクトが、このプラットフォーム上で実行されている。

サンフランシスコを拠点とする同社は、2021年にわずか8人でスタートした後、33人の従業員を抱えるまでに成長したと、CEO兼共同創業者のロバート・ユエン氏は、TechCrunchにメールで語った。新たに調達した資金は、製品チームとエンジニアリングチームのさらなる成長のために使用される予定だ。

新型コロナウイルス感染流行の影響で、新たな住宅のリフォームや建築の需要が高まり、小規模な設計会社の成長が加速していると、ユエン氏は書いている。業界で雇用が活発化する中、Monographは中核となるソフトウェア製品への投資に加えて、コンテンツの共有や求人情報の提供を通じて、その分野の専門家による仮想コミュニティを構築している。

ユエン氏は、プロジェクトマネージャーがプロジェクトレベルの財務状況をリアルタイムで確認できるMonographの予算管理ソリューションを、スプレッドシートに依存しているこの業界では特にユニークなものであると強調した。同氏によると、Monographを使用していない一般的なプロジェクトマネージャーは、プロジェクトの予算が不足しているのか超過しているのかを理解するために、平均で1カ月ほど待たなければならないという。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルチウス)氏は、同社のMonographへの投資に深く関わっている人物だ。同氏はTechCrunchにメールで次のように語った。

「Monographは、建築家による建築家のための製品です。それゆえに、プロジェクト管理に費やす時間を最小限に抑えるソリューションを提供する点において優れているのです」。

画像クレジット:Monograph

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Geoloniaが国連オープンGISイニシアチブにオープンソースの地図デザイン編集ソフトCharitesを寄贈

Geoloniaが国連オープンGISイニシアチブにオープンソースの地図デザイン編集ソフトCharitesを寄贈

位置情報テクノロジーのスタートアップGeolonia(ジオロニア)は11月15日、国連の「国連オープンGISイニシアチブ」(UN Open GIS Initiative)に参画し、同社が開発した地図デザイン編集ソフトウェア「Charites」(カリテス)を寄贈したことを発表した。

国連オープンGISイニシアチブは、国連活動支援局が平和維持活動の一環として行っている取り組み。国連活動に使用できるオープンソースのGIS(地理情報システム)の開発を目指している。そのプロジェクトのひとつに「国連ベクトルタイルツールキット」(UNVT)がある。地図が不整備な国や地域での国連の活動を支援するために、地理的状況分析やインフラ整備などに必要となるデジタル地図が使えるよう、関連するツールを揃えることを目的としている。

この活動に参画したGeoloniaのCharitesは、すでにオープンソースソフトウェアとして公開されているベクトルタイル地図デザインツール。これまでベクトルタイル地図のデザインには、膨大なJSONファイルの編集が必要であり、専門的な知識がなければ扱いにくいものだった。それに対してCharitesは、YAMLフォーマットを採用し、コードの記述が簡略化され、専門知識がなくてもデジタル地図の作成が可能になる。地図を海、線路、高速道路といったカテゴリーで分類でき、CSSを編集する感覚で、色、サイズ、ズームレベルなど、地図を見ながらリアルタイムでデザインが行える。

Geoloniaが国連オープンGISイニシアチブにオープンソースの地図デザイン編集ソフトCharitesを寄贈

Charites(カリテス)の編集画面

Geoloniaが国連オープンGISイニシアチブにオープンソースの地図デザイン編集ソフトCharitesを寄贈

地図をプレビュー表示しながら編集

また作成したデータは、MapboxMapLibreといった他の地図サービスにも反映できる柔軟性がある。こうした点が国連オープンGISイニシアチブから高く評価された。今後もイニシアチブのメンバーとして開発や協力を続けてゆくために、参画を決めたとのことだ。

CharitesはGitHubで公開されているため、誰にでも使える。日本語サンプルはこちら

業務プロセスを自動化するRPAを「自動化」するMimicaが6.8億円のシリーズA調達

RPA(ロボットによる業務プロセス自動化)導入を自動化するMimica(ミミカ)が、Khosla VenturesからシリーズAで600万ドル(約6億8000万円)を調達した。同社は今回の資金を、米国での販売チームの設立と製品の開発に使う予定だ。これまでのシード投資家には、英国のアクセラレーターEntrepreneur FirstやEpisode 1 VCなどがいた。

Mimicaの最初の製品であるMapper(マッパー)が対象とするのは「プロセス・ディスカバリー」の領域だ、すなわち「従業員のクリックやキーストロークからパターンを学習する」ことで、通常はビジネスアナリストが手作業で数カ月かけて作成する業務プロセスマップ(業務プロセスの見取り図)を生成するのだ。つまり「プロセスを自動化するための作業」を自動化するということだ。

MimicaはRPAチームを持っていて、データ入力、フォームへの入力、クレームやチケットの処理などの反復的な作業を行うソフトウェアボットを開発している。こうした市場規模は2027年までに1070億ドル(約12兆2000億円)に達すると予想されている。しかし、Mimicaによれば、UiPath(ユーアイパス)のようなRPAの巨人が提供するシステムを実際に導入することは難しく、Mimicaのシステムを使うことで導入を加速することができるという。

Mimicaのチーム

MimicaのAIは「自動化できる局面」を自動的に発見し、開発を加速できるボット用のプロセスマップを生成することで、導入のためのボトルネックを取り除くのだ。

CEOのTuhin Chakraborty(トゥヒン・チャクラボルティ)氏とCTOのRaphael Holca-Lamarre(ラファエル・ホルカ=ラマール)氏が、2017年にMimicaを共同創業した。ホルカ=ラマール氏は、計算論的神経科学と機械学習で博士号を取得た。チャクラボルティ氏は、スタンフォード大学で機械学習を学び、LinkedInで開発した教師付き学習モデルで特許を取得した。

2020年のローンチ以来、MimicaはDell(デル)、AT&T、Hexaware(ヘクサウェア)、Experis(エクペリス)、Ironbridge(アイアンブリッジ)と仕事をしてきた。

チャクラボルティ氏は次のようにいう「RPAは当社の技術を売り込むための最適な足がかりとなります、なぜならRPAを導入した企業はどこも大変な苦労を重ねているからです。手作業で自動化できる局面を探したり、プロセスマップを構築したりするのは拷問のようなものですし、不必要なものなのです」。

Khosla Venturesの創業者であるVinod Khosla(ビノッド・コースラ)氏は次のように語る「私たちがMimicaに投資したのは、彼らのチームがAIシステム構築の深い技術的専門知識を持ち、企業がプロセスを管理する際に直面する課題を十分に理解している、というすばらしい組み合わせだったからです」。

Mimicaの競合相手は、米国のFortressIQ(フォートレスIQ)やSkan(スキャン)だ。なおUiPathやCelonis(セロニス)のような他のプレイヤーも、競合するソリューションを開発している最中だ。

画像クレジット:charles taylo / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:sako)

Promoted.aiは膨大な商品があふれるマーケットプレイスで買い手と売り手をマッチングさせるツールを開発

現在、マーケットプレイスには多くの商品が溢れている。それらは買い手に見付けてもらうのをただ待つしかないため、売り手になるのは大変だ。Promoted.ai(プロモーテッド)は、そんなマーケットプレイスの検索で、買い手と売り手をマッチングさせるツールを開発し、人々があなたの商品を見つけるための手助けをしようとしている。同社はその仕事を継続するために200万ドル(約2億3000万円)の資金を調達した。

Promotedは、Pinterest(ピンタレスト)のエンジニア兼エンジニアマネージャーだったAndrew Yates(アンドリュー・イェーツ)氏とDan Hill(ダン・ヒル)氏の2人が起ち上げた会社で、買い手がもっと簡単に欲しいものを見付けられるようにして、それがリピート購入につながるようにしたいと考えた。そして売り手には、自分の商品が検索でどのように表示されるかをすぐに確認でき、販売を改善するためのツールを提供したいと考えた。

「私たちは、検索されたすべての商品について、誰かが興味を持って最終的に購入することになるのは何であるかを予測します」と、イェーツ氏はTechCrunchの取材に語った。「これは、完全なパッケージです。私たちが業界や顧客から発見したことは、適切な場所に適切なタイミングでデータを置くことができるように、データインフラが必要だということです」。

Promotedの技術は単なるアイテムではなく、全体像の最適化であると、イェーツ氏は説明する。つまり、大規模な販売者と小規模な販売者の間で注目度を共有するにはどうすればよいかを公平に考え出し、その上でユーザーがその検索に満足しているかどうかを考慮するのだ。

イェーツ氏とヒル氏は、2020年にベイエリアを拠点にPromoted.aiを立ち上げ、最近のY Combinator(Yコンビネータ)の冬期コホートに参加した。今回の資本投入では、同アクセラレーターに加え、主要な投資家としてはInterlace Ventures(インターレース・ベンチャーズ)とRebel Fund(レベル・ファンド)が資金を提供している。

InterlaceのマネージングパートナーであるVincent Diallo(ヴィンセント・ディアロ)氏は、この会社に惹かれた理由として「この分野ですばらしい経験を積んでいる」と感じられたチームの存在が大きいと述べている。

Interlaceは主にコマーステクノロジーに投資しているベンチャーキャピタルであり、ディアロ氏はPromotedが取り組んでいる2つのトレンドに注目した。1つ目は、小売業者がマーケットプレイスを開設することで、電子商取引や配送の幅を広げようとする動き。2つ目は、ある種の顧客行動やコミュニティの構築を通じて、市場のサブセットを獲得しようとする縦割り型のマーケットプレイスが増えていることだ。

「Amazon(アマゾン)の業績の大部分は広告マネージャと広告収入によるものです。そこで私たちは、このようなツールを構築することにチャンスがあると確信しました」と、ディアロ氏は付け加えた。

Promotedは企業向け案件をターゲットにしており、新たに調達した資金は人材雇用に充てる予定だ。しかし、同社の資金調達ラウンドは少し変わっていた。

同社のチームの大部分は、Facebook(フェイスブック)、Pinterest、Google(グーグル)の元エンジニアで構成されている。優れた人材をめぐり激しい競争が繰り広げられている環境の中で、同社の創業者たちは、従来のシード資金調達という方法を採るのではなく、創業時のエンジニアチームに株式を提供し、残りの資金を5万ドル(約570万円)以下ずつ個人エンジェル投資家から調達することにしたのだ。

「そのためには、いくつかのすばらしい資金に背を向けなければなりませんでしたが、その代わりに、優秀な人々、専門家、支持者のすばらしいネットワークを手に入れることができました」と、イェーツ氏はいう。「私たちは、優れた才能を確保するためには、エンジニアに直接株式を提供する方が良いと考えました。なぜなら、株式は非常に注目されており、経験豊富な機械学習や広告のエンジニアの現金給与は非常に高いからです。最終的には、チームを拡大するための追加資金を調達する予定です」。

Promotedはまだ若い会社だが、すでにHipcamp(ヒップキャンプ)やSnackpass(スナックパス)などのマーケットプレイス・アプリと連携しており、顧客はコンバージョン率の向上を実感している。例えばHipcampでは、Promotedによって総予約率が7%以上増加したと、イェーツ氏は述べている。

同社は今後、製品のローンチマネージャー方面に注力し、リスティング広告における広告マネージャーのようなツールを開発していく予定だ。

画像クレジット:Richard Drury / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

営業の「Salesforce疲れ」を解消、アップデート高速化ツールのWeflowがプレシード資金獲得

Salesforce(セールスフォース)のユーザーは、記録の更新にかかる時間に同じような不満を抱きがちだが、Weflow(ウィーフロウ)はこのような「Salesforce疲れ」を克服することを目指している。

ベルリンに本社を置くWeflowは、Salesforceの更新時間を短縮し、営業担当者の時間を奪うような忙しい仕事を減らすツールを開発している(まだプライベートベータ版だ)。

フォーチュン500社のうち83%の企業が営業の生産性向上のためにSalesforceを利用しているが、多くの営業担当者は営業以外の業務に時間の大半を費やしている

シリアルアントレプレナーのHenrik Basten(ヘンリック・バステン)氏とJanis Zech(ジャニス・ゼック)氏はFyber(ファイバー)でともに働き、収益チームを管理しながらこのことを身をもって体験した。彼らは、営業担当者がSalesforceの記録内の情報をすばやく追加してパイプラインを管理できるよう、Saleforceのデータベース上に構築された収益ワークスペースになるべく、2020年末にWeflowを立ち上げた。

「パイプライン管理のためのAsanaのようなソリューションを作りたいと人々は考えています」とCEOのゼック氏はTechCrunchに語った。「しかし、Salesforceはオープンなエコシステムで、その上に構築することができます。私たちは、営業担当者がパイプラインに入り、30ものタブを開いてメモを散らかしているのを観察しました。もし営業担当者が楽しんで使っていないのであれば、アップデートしやすい、よりモダンな体験を作ろうと考えていました」。

Weflowのパイプラインテーブル(画像クレジット:Weflow)

その仕組みはこうだ。ユーザーはSalesforceアカウントにサインアップしてパイプラインにアクセスし、数回クリックするだけで案件、タスク、メモ、アクティビティを更新することができる。すべてのデータはSalesforceに残る。営業担当者は通常、週に1回、2〜3時間かけてこの作業を行うが、Weflowを使えば20分に短縮できるとゼック氏は見込んでいる。

さらに同社は、Salesforce用に作られたモダンなメモ帳を作成し、ユーザーがテンプレートを構築することで、営業担当者が同じ質問をし、同じフィールドに書き込むことができるようにした。また、タスクマネージャーも用意されている。

そして米国時間11月12日、Weflowはそのツールを一般公開するために、Cherry Venturesがリードしたプレシードで270万ドル(約3億円)を調達したことを発表した。Christian Reber(クリスチャン・レバー)氏、Sascha Konietzke(サシャ・コニエツコ)氏、Chris Schagen(クリス・シャゲン)氏、Alexander Ljung(アレクサンダー・ユング)氏、Eric Quidenus-Wahlforss(エリック・キデナス・ウォルフォルス)氏、Andreas Bodczek(アンドリアス・ボドゼック)氏などのエンジェル投資家も参加した。

Cherry VenturesのパートナーであるFilip Dames(フィリップ・デイムス)氏は、創業者たちとはFyberの頃からの知り合いで、Weflowの話を持ちかけられたとき「この旅のサポートができてうれしかった」と話した。

デイムス氏は、Weflowのポートフォリオを見渡したとき、ほとんどのスタートアップが営業から始まっていて、営業ツールが「高価で不便」な場合は特に、そのプロセスを強化することは困難であることを指摘した。

そして「Salesforceの上に何かを構築することができれば、会社がどのような方向に進むことができるか、広いキャンバスが広がります」と付け加えた。「ジャニスとヘンリックは、ベンチャー企業のリターンを生み出すのに十分な大きさの分野で、ミッションを遂行しています。Salesforceは200億ドル(約2兆2780億円)の売上を上げており、それによって多くの新しいビジネスが生み出されています。インターフェイスを、これまで以上に使うのが楽しいものにすることで、顧客との時間をより長くとることができます」。

バステン氏とゼック氏はここ数カ月で10人のチームを結成した。現在、15社の共同開発パートナーが製品を試用中で、毎週数社ずつ追加されている。ゼック氏によると、この製品は来年初めに展開される見込みだ。

今回調達した資金は、マーケティングと製品開発への投資に充てる。Weflowは製品主導型で、ゆくゆくは無料版を提供する予定だとゼック氏は付け加えた。

「Salesforceについて誰と話しても、この問題は非常によく理解されています。ですので、私たちはこの問題を解決することに関心があり、良い出発点を持っているため、みんなを助けたいと思っています」とゼック氏は話した。

画像クレジット:Weflow / Henrik Basten and Janis Zech

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

オープンソースのクラウドインフラ可視化ツールを手がけるスタートアップ「CloudQuery」

開発者が複数のクラウドにコードをプッシュすると、どのインフラストラクチャを所有しているかを把握することが非常に困難になるため、通常はカスタムスクリプトを書くことが必要とされる。アーリーステージのスタートアップ起業であるCloudQuery(クラウドクエリ)は、これをもっと簡単にしたいと考え、その作業を代行するオープンソースのツールを開発した。同社は米国時間11月11日、350万ドル(約4億円)のシードラウンドを実施したと発表。このラウンドはBoldstart Ventures(ボールドスター・ベンチャーズ)が主導し、Work-Bench(ワークベンチ)、Mango Capital(マンゴ・キャピタル)、Haystack(ハイスタック)が支援した。

CloudQueryのCEO兼共同設立者であるYevgeny Pats(エフゲニー・パッツ)氏は、高いレベルでいうと「我々は、SQLで動くオープンソースのクラウドアセットインベントリー(ツール)である」と述べている。同氏は、以前起ち上げたスタートアップであるFuzzit(ファズィット)をGitLab(ギットラブ)に売却して、複数のクラウドプラットフォームで仕事をしていたとき、クラウド間のインフラをレイアウトしたり、すべてのピースがどのように組み合わされているのかを把握するのに苦労していたと語る。

さらに同氏が驚いたのは、そのために役立つオープンソースのツールが見当たらなかったことだ。HashiCorp(ハシコープ)のTerraform(テラフォーム)のように、インフラをコードとして書いている開発者が持っている種類の可視性を与えてくれるソリューションは存在しないように思われた。

そこでパッツ氏は、優れた起業家ならば当然やるべきことをやった。そのツールを作ることに着手したのだ。

「私が新たにCloudQueryを起ち上げて目指そうとしたのは、そのようなプラットフォームです。開発者がビジネスとセキュリティの目的を達成するために、新しいクエリエンジンを学ぶ必要がなく、知っているSQLを使って、ビジネスとセキュリティのロジックだけに集中できるようなエコシステムを構築したいのです」と、パッツ氏は説明する。

同社のツールは9カ月前に発表されたばかりだが、パッツ氏はこの問題を抱えているのが自分だけではないことを知った。すでに、Bloomberg(ブルームバーグ)、Salesforc(セールスフォース)、Zendesk(ゼンデスク)などの大手企業が導入し、スクリプトを書く多くの手作業に代わるツールとして使い始めている。

「(2021年の初めに)GitHub(ギットハブ)で公開してHacker News(ハッカー・ニュース)で発表したところ、3カ月も経たないうちに多くの開発者、DevOps(デブオプス)エンジニア、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)からかなりの支持と採用を得られたので、このオープンソース・プロジェクトの拡大と発展を続けるために、資金を調達してその機会を倍増させることに決めました」と、パッツ氏は述べている。

マネタイズの観点から、パッツ氏まず、コミュニティを構築したいと考えている。この製品が軌道に乗れば、オープンソースツールの使用にともなう複雑さを最小限に抑え、企業顧客向けにいくつかの特別な機能を提供するSaaSバージョンを構築する計画だ。

同社の従業員数は現在11名で、2022年の第1四半期までに14名に増やすことを計画している。オープンソースであるということは、コミュニティからの助けも得られるため、より無駄のない運営ができるということだ。また、パッツ氏によれば、完全なリモート企業であることは、より多様な人材を育成することに役立つが、雇用市場は厳しいため、よりチャレンジングであるという。

パッツ氏は、同社を完全なリモート企業として維持していく方針で、GitLabで働いていたときに学んだいくつかの教訓を、自分の会社で実践していくつもりだという。その1つが、適切なタイムゾーンでチームを構成することだ。世界中に人が散らばっていると、適切な時間にミーティングを行うことが難しくなるからだ。

画像クレジット:CasarsaGuru / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「Google Labs」の名が復活、AR&VR、Starline、Area 120が新設された「Labs」チームに移動

「Google Labs(グーグルラボ)」の名称が復活した。だが、今度のそれは実験的な製品やサービスを提供する消費者向けのブランドではない。Google(グーグル)のさまざまな革新的なプロジェクトや長期的な投資を1つにまとめることを目的とする組織再編のもとに設立された新しいチームの社内での名称だ。この新チームを率いるのは、Googleのベテラン副社長であるClay Bavor(クレイ・バーヴァー)氏。最近では「Project Starline(プロジェクト・スターライン)」として知られる最先端のホログラフィック・ビデオ会議プロジェクトなど、仮想現実や拡張現実におけるGoogleの先進的な取り組みを指揮している人物だ。

バーヴァー氏は、既存のARおよびVRへの取り組み、未来的なProject StarlineArea 120(エリア・ワントゥエンティー)と呼ばれる社内インキュベーター、およびその他の「将来性の高い、長期的な」プロジェクトを含む新組織を指揮していく。同氏はGoogleのSundar Pichai(スンダー・ピチャイ)CEOの直属となる。

2016年に開設されたArea 120は、起業家精神旺盛な人材をGoogleに定着させる方法として構想されたもので、チームがGoogleのデータ、製品、リソースを利用しながら新しいアイデアを試すことができる。

長年にわたり、この組織は数多くのプロジェクトを生み出し、成功させてきた。その中には、新興市場向けのHTML5ゲームプラットフォームで、現在は一部の国でGoogle Chrome(クローム)に統合されているGameSnacks(ゲームスナック)、珍しく外部スピンアウトとなった技術面接プラットフォームのByteboard(バイトボード)、AirTable(エアテーブル)のライバルでGoogle Cloud(グーグル クラウド)に移行したTables(テーブルズ)、A.I.を活用した会話型広告プラットフォームのAdLingo(アドリンゴ)、Google Search(Google 検索)とShopping(Google ショッピング)にそれぞれ移行したビデオプラットフォームのTangi(タンギ)とShoploop(ショップループ)、ウェブベースの旅行アプリでCommerce(コマース)に移行したTouring Bird(ツーリングバード)などがある。

Area 120では現在、職場用の短い動画プラットフォームであるThreadIt(スレッディット)、スペクトルマーケットプレイスのOrion(オリオン)、ドキュメントスキャナーのStack(スタック)などのプロジェクトをインキュベートしている。常に約20のプロジェクトが進行中だが、すべてのプロジェクトが公開されているわけではない。

しかし、以前の組織体制では、Area 120はGoogleのスンダー・ピチャイCEOへの報告系統が3層に分かれており、にも関わらず、ピチャイCEO自身がすべての出口に署名しなければならなかった。また、このグループは、グローバルパートナーシップおよびコーポレートディベロップメント担当プレジデントであるDon Harrison(ドン・ハリソン)氏の下に配置された雑多なグループの中にあった。今回の再編により、Area 120は他の革新的なプロジェクトと一緒に移されることになり、参加しているチームとその取り組みの認知度が向上する可能性がある。

Googleは、新しいグループの名称として「Labs」というブランドを社内で使用しているが、この名称が選ばれた背景には同社の豊かな歴史があり、決して退屈な選択というわけではない。かつてGoogle Labsというブランドは、ベータ版から一般公開に至ることも多いGoogleの対外的な実験に関連するものだった。

2002年から2011年の間に、Google Labsは、Personalized Web Search、Googleアラート、GoogleドキュメントおよびGoogleスプレッドシート、Googleリーダー、Google Shopper(現在のGoogleショッピング)、AardvarkというQuoraのようなQ&Aサイト、Google GoggleというGoogleレンズの前身、Gesture Search for Android、iGoogle、Googleマップ、Google Transit、Googleビデオ、Googleトーク、Googleトレンド)、Google Scholar、Googleソースコード検索、Google Suggest、Googleグループ等々、Googleの中核的な製品やサービスとなる製品を生み出してきた。

Googleの新しい計画は、Labsを対外向けのブランドにするわけではなく、スタッフは(Starlineなどの)プロジェクトチームに採用されることになるが、この組織再編自体は、Googleの大きな賭けのいくつかに向けられる注目を増大させることになるだろう。

また、これまでGmail、Googleドライブ、Googleドキュメント、Google Apps for Work(現在のGoogle Workspace)など、多くの著名なGoogleプロジェクトで製品管理を担当してきたベテランGooglerであるバーヴァー氏がLabsを率いるということは、革新的なアイデアを中核製品に変えた経験を持つリーダーがチームに配置されるという意味である。

スタッフへ向けたアナウンスで、Googleは今回の組織再編が、将来を見据えた新しい投資分野を全社的に起ち上げ、成長させることに重点を置いたものだと説明している。

「この組織の中心となるのがLabsと呼ばれる新しいチームで、テクノロジーのトレンドを推定し、将来性の高い長期的な一連のプロジェクトをインキュベートすることに力を入れます」と、Googleは述べている。

Googleは今回の組織再編を公に発表していない。しかし、社内の関係者からこの動きを聞いたTechCrunchが同社に確認したところ、バーヴァー氏の新しい役職を含め、我々が上述した通りの変更であることを認めた。

「クレイは、拡大した役割を担うことになります。彼の仕事は、当社の中核製品や事業を直接サポートする長期的な技術プロジェクトに集中することになるでしょう」と、Googleの広報担当者は語っている。

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Matterが誰もオススメに追いついていない現在に合わせたリーディングアプリの構築に向けて7.9億円調達

現在のインターネット用に高品質のリーディングアプリを構築することを目的とするスタートアップMatterが、非公開ベータテストの段階を終えて、GV(前Google Ventures)主導で実施された700万ドル(約7億9000万円)のシリーズAラウンドのクローズを発表した。Instapaper(インスタペーパー)やPocket(ポケット)といった記事を保存しておいて後で読むというテクノロジーは、現在のオンラインリーディングのやり方(例えばニュースレター、他のアプリのパーソナライズされた推薦記事、ソーシャルプラットフォームでの同僚からの推薦などを利用するリーディング)に追いついていない。Matterはその領域に参入するものだ。人々はリーディング素材を単にテキストとして読みたいわけではない。記事を音声で聞いたり、重要カ所を強調したり、読書仲間と議論したいと思っている。

こうした現在のリーディングアプリに対する不満を解消するため、Matterの共同創業者 Ben Springwater(ベン・スプリングウォーター)氏とRobert Mackenzie(ロバート・マッケンジー)氏(両氏はNextdoor在籍中に出会った)オンラインリーディングのための新しいツールの構築に取り組むことにした。

「オンラインリーディングはこうしたさまざまな問題点やユーザーの不満を抱えていましたし、メディアエコシステムは変化していました。ニュースレター、個人クリエーター、代替メディアが台頭してくると同時に、eリーディングに対する改善の可能性も取り沙汰されるようになりました。オンラインリーディング素材は画面に表示された単語の羅列ではありますが、さまざまな機能をオーバーレイしてもっといろいろなことができます」とスプリングウォーター氏は説明する。「より良いリーディング製品を開発する絶好のチャンスがやってきていることは明らかでした」。

2人の共同創業者は、エンジェルラウンドで資金を調達した後、2020年初めにMatterの開発を開始した。その後、スタートアップアクセラレーターY Combinatorの2020年夏のバッチに参加する。

Matterの当初の目的の1つは、何を読むかについてより良い意思決定ができるよう支援することだった。

最近は、新しいヘッドライン、ツイッターやその他のソーシャルアプリ、受信箱に届くニュースレターなど、実にさまざまな場所で読み物を見つけることができる。だが、Matterのいう「レコメンデーション(推薦)」グラフ(最善の読み物がフィルタリングおよびキュレートされて前面に表示される)と呼ばれるものを作成するアプリはない。

Matterが目指しているのは、次のようなことだ。アプリのホームページに、ツイッター上の「パブリックシンカー(Public Thinkers)」グループ(興味深いニュースやリンクを共有していることが多い)によって推薦された一連の記事の推薦コンテンツが表示される。Matterのチームが彼らのツイートに掲載された推薦記事をさらにキュレートして、アプリで共有する最善の記事を手作業で選択する。Matterのユーザーは、自身の推薦コンテンツをアプリにフィードすることもできる。ユーザーからの推薦コンテンツはアプリのチームによってキュレートされ、その一部がホームページに掲載される。

画像クレジット:Matter(ホームページから)

他の「後で読む」アプリ(PocketやInstapaperで提供されているものなど)と同様、MatterのユーザーもChrome拡張機能をインストールすることでアプリ内にリーディングリストを構築できる。あるいは、モバイルアプリ内に直接レコメンデーションを作成することもできる。ユーザーのリーディングリストはデフォルトではプライベート(非公開)になっているが、Matterのコミュニティに公開する記事をリストから選択することもできる。

この共有機能により、Matterはソーシャルネットワークに近い感じになる。つまり、ユーザーは記事を強調したことを非公開のままにしておくのではなく、記事を強調した上で共有できる。

「これは自分の読んでいるものをブロードキャストする方法の軽量版のようなものです」と強調機能についてスプリングウォーター氏は説明する。

Matterで誰かをフォローすると、その人と同じ記事を読むとき、その人が強調したカ所と注釈を付けたカ所が記事上にそのまま表示される。これは、デジタルパブリッシングプラットフォームMediumがそのウェブサイトとアプリで提供している機能に似ている。ただし、Matterでは、共有されているすべての読み物でこのオプションを利用できる。こうした強調カ所はユーザーのプロフィールにも保存されるため、自分がフォローしている人のサイトにアクセスして、その人が注釈を付けたり共有しているカ所を確認できる。

画像クレジット:Matter(ユーザーの非公開キュー)

Matterのユーザーは、Twitterなどのソーシャルネットワークに似たモデルで、他の人をフォローできる。これにより「この人の提案は気に入ることが多い」という人の共有を追跡できる。この機能は最近サービスを終了したNuzzelを思い起こさせる(Nuzzelは、ツイッターが2021年前半Scrollを買収したときいっしょに買収された)。Nuzzelには、ツイッターベースのリーディング推薦を行うためにちょっとした専用のフォロー機能が用意されていた。ツイッターに完全に依存しているわけではないが、他の人およびその人の読んでいるものや共有しているものをフォローするというMatterの考え方はNuzzelのフォロー機能と感覚が似ているような気がする。

また、コメント機能を使用すると、共有されている記事について議論できるが、ここでどの程度活発な議論が行われるかは、フォローしている相手によって異なる可能性がある。非公開ベータ期間中にモデレーションが問題になったことはなかったが、今後Matterの利用者がより広範に拡大していくにつれ、モデレーション機能に対応していく必要が出てくるだろう。

このアプリはオンラインリーディングおよび既存のリーディングアプリが抱える多くの問題点にも対応している。

例えばMatterを使えば、ニュースレターを2通りの方法で取得できる。メールが転送されるようにフィルターを設定する方法とMatter専用の特別なメールアドレスを使用する方法だ。

これにより、個々の記事を音声として聞くことができる。しかも、現在入手可能なリーディングアプリのロボットのような音声よりもはるかに聞きやすい音声だ。リーディング素材の収集場所であるTwitter、Notion、Readwiseといった他のアカウントと同期することもできる。また、ニュースサイトやニュースレターを有料定期購読している場合は、有料購読者限定コンテンツ全体を表示および保存できる。さらには、忙しくて記事を読む時間がないときには「スタッフのお勧め」で一週間の総まとめを読むこともできる。

画像クレジット:Matter(音声を聴く)

Matterは今後、サービスのパーソナライズを強化を進めていく予定だ。これには、共有されている記事のトピックを把握するためバックエンドで動作するセマンティックテクノロジーに投資するといったことも含まれる。ただし、具体的な導入方法については検討中だ。

「パーソナライゼーションの強化といっても限度はあります。ユーザーが何に関心を持っているのかを絞り込む一方で、ユーザーがシグナルを送って示唆している『読みたい記事』についても考慮して、目新しさとセレンディピティ(偶然の出会い)的な要素も十分に取り込むようにする必要があるからです」とスプリングウォーター氏は説明する。「人の関心は変わります。常にそこに正確に焦点を合わせ続けることは絶対にできません」。

Matterは非公開ベータ期間を終えると、誰でもApp Storeからダウンロードできるようになる。

M.G. Siegler(M.G.シーグラー)氏主導のGVからの投資の他にも、Outliers(アウトライナー)、Shrug(シュラッグ)、James Beshara(ジェイムス・ベシャラ)、Calvin French-Owen(カルビンフレンチオーウェン)など、多くのエンジェル投資家がMatterに投資している。また、200万ドル(約2億2600万円)のシードラウンドにはStripe(ストライプ)の共同創業者兼CEOのPatrick Collison(パトリック・コリソン)氏、前Stripeプロダクトマネージャーで現在は投資家のLachy Groom(ランシー・グルーム)氏、Eventbrite(イーブンブライト)の共同創業者Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏とJulia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏が参加した。

MatterはシリーズAラウンドで調達した資金を、経験の蓄積と成長、エンジニアとデザイナーの雇用、ウエブクライアントとAndroidクライアントの開発に充てる予定だ。

「第一世代の『後で読む』サービスはすばらしいものでした。多分、私自身、このサービスを誰よりも多用したと思います。ですが、こうした初期のサービスは古い時期に作られたものです」とシーグラー氏は今回のGVの投資の背景について話してくれた。「私たちは今、さまざまな方法で、さまざまなデバイスを使ってコンテンツを読んでいます。ですから、それに合わせた新しい専用のサービスを基礎から構築し直す必要がありました」。

「それに加えて、今はかつてないほどリーディングコンテツが豊富にあり、大半のコンテンツは以前に比べて質も大きく向上しています。ですが、そうしたコンテンツを見つけて提供する効率的な方法が必要です。これがMatterの最初の前提でした。ベンとロブがこのサービスをゼロから構想し、チームが成長を続ける中、現在の堅牢なアプリが構築されるまでの経緯をずっと見てきましたが、それはすばらしい仕事でした。ですから、私たちはチャンスに飛び付き、彼らが今のままのペースで成長を続けられるよう資金を提供したのです。Matterが一般ユーザーにどのように受け入れられ、より多くのスタッフの力でこのサービスがどのように成長していくのか、本当に楽しみです」と同氏は付け加えた。

MatterのiOSアプリは現在は無料だが、将来は、サブスクリプションモデルによって収益化を図る予定だ。Matterアプリは公開ベータの段階に入っており、招待を受けなくても実際に使ってみることができる。

画像クレジット:Matter

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

Discordがユーザーの反発を受けて暗号資産やNFTの調査を一時中断

Discord(ディスコード)の創業者でCEOのJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏は米国時間10月10日、NFT(非代替性トークン)事業に手を出す差し迫った計画はないと発表し、ユーザーたちを安心させた。

シトロン氏は今週初めのツイートで、Discordのユーザーインターフェースに統合された暗号資産ウォレットMetaMask(メタマスク)の画像を、「probably nothing(おそらく大したことじゃない)」という発言とともにツイートした(これは、NFTの世界では、これから大きな出来事になることを示す隠語でもあるのだ)。同氏は、このツイートを水曜日の夜に補足して、Discordが暗号資産ウォレットをアプリに統合する「現在の計画はない」と発言した。

また、DiscordはTechCrunchに対して、計画を明らかにするために以下の声明を伝えてきた。

「今週初めのツイートでご覧いただいた内部コンセプトモデルについて、多くのご意見をいただけたことに感謝しています。しかし現時点では、これを実製品として提供する計画はないということをはっきりお伝えしたいと思います。私たちは、Web3テクノロジーの可能性ならびに、Discord上のコミュニティ、特に環境に優しくクリエイターを中心としたプロジェクトを中心としたコミュニティが、積極的に集まってくることに期待しています。しかし、解決しなければならない問題があることも認識しています。今のところは、スパムや詐欺、不正行為からユーザーを守ることに集中しています」。

シトロン氏は、元のスクリーンショットを、会社の公式発表としてではなく月曜日の返信ツイートでさりげなくシェアしたが、熱狂的なDiscordユーザーたちがすぐにこのツイートに飛びついた。同社はすぐに、このスクリーンショットはコミュニティのハックウィーク・プロジェクトの一部であり、Discordアプリの近未来像ではないと説明したものの、騒ぎは大きくなるばかりだった。

暗号資産スペースを警戒したDiscordのユーザーたちは、すぐにお互いにNitro(ニトロ)サブスクリプション(Discordの有料プレミアムサービスで、プラットフォームに広告がない状態を維持しているもの)を解約するように声をかけ合い始めた。反発が広がる中で、憤慨したDiscordのファンは、Web3とNFTについての意見を求める同社の最近の調査をも槍玉にあげた。

このスクリーンショットは、暗号資産ウォレットの統合がどのようなものかを示す単なるモックアップに過ぎなかったが、Discord自身は実際に、ブロックチェーン技術が既存のミッションをどのように補完できるかを積極的に模索していた。現在そうした作業の一部は中断していて、Discordは、プラットフォーム上に賑やかな拠点築いているコミュニティたちと、価値観を一致させるための最善の方法を再検討している最中だ。

Discordのユーザーの中には、暗号資産のマイニングが環境に与える影響を理由として、シトロン氏のツイートに対する激烈な反応をする人もいた。またより広く「NFTの類」に異議を唱える人たちもいた。しかし、Discord内の多くのNFTコミュニティさえも、ユーザーたちは暗号資産ウォレットの統合が、プラットフォーム上で横行する暗号詐欺を悪化させるだけだという懸念を示していたのだ。

2万の「いいね!」がついたあるツイートには「すぐにNitroを解約して、他のものを選択しよう。理由はCEOのツイートで十分だ」と書かれていた。「大きな声を挙げて、すぐに収益を減らしてしまうことが、現時点では唯一の変化の方策だ」。

シトロン氏の補足が示したことは、Discordはコミュニティに耳を傾けているということ、そして多くのNFTプロジェクトがプラットフォームのサーバーを本拠地としているものの、Discordのユーザーたちは、同社が暗号資産ビジネスに決して関わって欲しくないと思っていることは明らかだ。

反発を好む企業はないが、Discordの暗号資産への初期的な関心に対する否定的な反応は、同社のユーザーが現在の製品をどれだけ楽しんでいるかを本当に示している。ソーシャルメディアのユーザーは皆、変化を恐れている。たとえばInstagram(インスタグラム)のUIが少し変わっただけでどんなツイートが行われているかチェックしてみると良いだろう、その中でもDiscordのユーザーは、今ある製品を守ることに特に熱心なようだ。

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画像クレジット:Discord

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

やりたいことを提案してくれる「ポケットの中のコンシェルジュ」を目指したシティガイドアプリ「Welcome」

旅行先でも自分が住むエリアでも、街を探索する際にはGoogleマップやYelp、TripAdvisorなど、訪れるべき場所やするべきことを教えてくれるツールが役に立つ。しかし、今日のツールはよりスマートで、よりパーソナライズされたものであるべきだと考えたスタートアップがWelcome(ウェルカム)だ。同社の新アプリは「リアルタイム」テクノロジーを活用し、ユーザーの好みの他、天気、季節、交通量、話題になっていることなど、その時の状況にまつわるさまざまな詳細情報を考慮して、より厳選されたお勧め情報を提供してくれる。

Welcomeの共同設立者であるMatthew Rosenberg(マシュー・ローゼンバーグ)氏は「ポケットの中のコンシェルジュ」のようなシティガイドを目指していると話している。

画像クレジット:Welcome

ローゼンバーグ氏自身が設立した最初の会社であるモバイル動画作成アプリCameo(カメオ)が、Vimeo(ビメオ)に買収されたのはパンデミック前のこと。その後、当時のガールフレンド(現在の妻)とともに旅行をしたことがWelcomeを作るきっかけになったという。旅行中2人はヨーロッパ、ラテンアメリカ、米国の各地を訪れた。すばらしい経験であり、結果的に2人の距離を縮めることになったと同氏は振り返る。

「しかし、たとえ美しい場所やすばらしい美術館にいても、すてきなランチをしていても、携帯電話にかじりついて次はどこに行こうかと考えている自分に気づきました」と同氏は話す。Googleマップや友人からのおすすめ情報を調べたり、レビューを読んだりして、常に次の目的地を探すのに必死になっていたのである。

この経験がきっかけとなり「単純な場所のおすすめという枠を超え、自分の生活や身の回りで何が起こっているかを観察して、よりスマートな提案をしてくれるような賢いツールはないのだろうか」と考えるようになった同氏。

画像クレジット:Welcome

これが今のWelcomeの開発へと繋がった。Welcomeは、インテリジェンス、レコメンデーション、パーソナライゼーション、さらには写真や動画などのメディアを組み合わせて、ユーザーがやりたいことを見つけられるようにするシティガイドアプリだ。

ローゼンバーグ氏はVimeoの社員であるPeter Gerard(ピーター・ジェラルド)氏、Mark Armendariz(マーク・アルメンダリス)氏、Mark Essel(マーク・エッセル)氏と同スタートアップを共同で設立。2019年にはWelcomeの初期バージョンを市場テストのような形で発表した。アイデアがみとめられてAccelからのシードマネーを獲得することができ、これが彼らが思い描いていたアプリのバージョンを構築するための十分な資金源となった。

そしてついにそのバージョンがApp Storeに登場した

Welcomeを最初に起動すると、自分の興味に関する情報を提供する項目や、Condé Nast(コンデネスト)、Lonely Planet(ロンリープラネット)、Eater(イーター)、Culture Trip(カルチャートリップ)、Food & Wine(フードアンドワイン)などの中から自分がフォローしたい出版社を選択できるというオプションが用意されている。こういったコンテンツがWelcomeのおすすめ機能を賢くしていくという仕組みとなっている。

画像クレジット:Welcome

アプリのホームフィードをスクロールすると、現在調べている都市の関連記事を見ることができる。地図上には、レストランならチーズバーガー、バーならマティーニグラス、ファーマーズマーケットなどの屋外イベントなら木といったように、その場所に関連したアイコンが候補として表示されるようになっている。

それぞれの場所をタップすると写真やビデオが表示され、道順やウェブサイト、電話番号へのリンクの他、UberやLyftを発注するためのボタンなどが表示される。また他のWelcomeユーザーに向けてアドバイスを残したり、リストをお気に入りとしてマークしたりタグを追加したりすることもできる。

地図の上部にあるボタンで、フード、ドリンク、アクティビティ、アートなどから選択肢をフィルタリングすることも可能だ。

アプリ自体は、ユーザーインターフェースも上手くデザインされているが、企業の評価やレビューなどのユーザー生成コンテンツの収集に重点を置いたアプリに比べると使い勝手はあまりよくない。

例えば自分が撮った写真や動画をどのようにその場所に掲載できるのか、すぐには理解することができなかった。自分のメディアをアップロードするための「追加」ボタンが目立つように設定されているカ所もあるが、そうではないところもある。実際には「追加」ボタンがないわけではなく右にスクロールしないと表示されないようになっていたのだが、その画面がスクロール可能かどうかさえもよく分からないようになっており、単に「追加」ボタンが存在しないように見えるのである(以下の例を参照)。

Welcomeのスクリーンショット

それでも、Welcomeの基礎となるデータや解析エンジンは非常に興味深い。チームが開発したカスタムツールは、出版社の記事に含まれるキーワードを拾い上げてタグに変換されるようなっており、最終的にはこの技術をローカルブログなどのあらゆるサイトに拡張し、ウェブブラウザーの拡張機能などを使ってユーザーがクリックして保存できるようにしたいと考えている。さらに同社はスプレッドシートやメモ、電子メールなど、意外な場所で人々が集めている旅行リストやメモを取り込む方法を提供したいとも考えている。

将来的には旅行コンテンツの制作者からの提案やガイドを統合して、より充実した提案をしていきたいと考えている同社。これにより、特定のクリエイターや出版社のプレミアム旅行ガイドを有料で提供するというビジネスモデルも可能になるだろう。また、チケットの予約など、アプリ内での取引を増やしていくことで、レベニューシェアの実施も計画している。

Welcomeは、一般公開前から世界350以上の都市で5万人以上のベータユーザーを獲得し、現在では650万を超える場所がデータベースに登録されている。公開時には、世界中の30万件以上の厳選レコメンデーションが提供されるという。

同スタートアップは、Accelが主導し、Lakestar Ventures(レイクスター・ベンチャーズ)が参加した350万ドル(約3億9300万円)のシードラウンドによって支えられている。このラウンドは2020年にクローズしたものの、まだ発表されていなかった。プレシード資金を含めてWelcomeはこれまでに420万ドル(約4億7200万円)を調達している。

Welcomeのアプリは当分の間、iOSでのみ無料でダウンロードが可能だ。

画像クレジット:Welcome

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

Ubuntu開発元Canonicalが仮想マシン管理ツールMultipassのM1 Macサポート発表、20秒でLinux環境起動

Raspberry Piで簡単に3Dポイントクラウドが作れる3Dセンシングシステム「ILT開発キット」発表
Ubuntu開発元Canonicalが仮想マシン管理ツール「Multipass」のM1 Macサポート発表、20秒でLinux環境を起動

Canonical

Linuxで最大のシェアを持つUbuntuの開発元Canonical社は9日(英現地時間)、M1チップ(系列)を搭載したMac上でクロスプラットフォームのLinuxを動作させる「最も迅速な方法」を発表しました。具体的には仮想マシン管理ツール「Multipass」(GitHub)がサポートされたということであり、これによりユーザーは1つのコマンドでM1 Mac上で仮想マシンイメージを起動し、わずか20秒でLinuxを実行できるとのことです。

アップル初のMac向け自社開発チップ「M1」は高性能かつ低消費電力が魅力ながらも、独自仕様のためmacOS以外のOSを動かすことが困難であり、Linux Kernelについても一応の動作が確認されてから、Linux Kernel 5.13 RCで正式サポートされるまで半年近くかかっていました。ついに10月には「基本的なデスクトップとして使える(GPUアクセラレーションはまだ使えず)」と宣言されながらも、今なおM1 Mac上で動かすまでは簡単な作業とは言えません。

そんななか、Canonical社はUbuntuこそが「M1 MacをLinuxコンピュータに変身させる最初のプラットフォーム」だと主張。今回のMultipassサポートに当たっても、プロダクトマネージャーのNathan Hart氏も自社が「開発者が市場にある他の選択肢よりも早くLinuxを使えるようにしたいと考えており、Multipassチームはその実現に貢献しています」と述べています。

Multipassの何が優れているかといえば、仮想マシン(VM)内のアプリを動かすにあたってコンテキスト(動作状態を保持する機構)を切り替える必要がなく、VM内のアプリをホスト端末(M1 Mac)から直接実行できるということです。

公式ブログによれば、Multipassの最新版1.8.0ではVM内のコマンドとホストOS上のコマンドを結びつけられる新機能「エイリアス」が利用でき、それにより「ユーザーはあらゆるLinuxプログラムをネイティブに近い状態で使えます」とのこと。例えばWindowsやMac上でDocker(仮想環境の構築ツール)を実行したい開発者にとって、エイリアスはその代わりになり得ると謳われています。

アプリやシステム開発から縁遠い一般人にとっては難解な話にも思えますが、要は「M1(あるいはM1 ProやM1 Max)搭載MacでLinuxの仮想マシン(サーバーなど)を構築してコマンド実行しやすくなった」ということです。

M1 Macの発売から約1年が経過し、アップルが全く仕様を明らかにしていないM1チップの分析がここまで進んだことは驚きとも思えます。が、上記のLinux KernelはGPUアクセラレーションはまだ使えず、今回のMultipassはそもそもグラフィック機能はサポートしておらず、いずれもM1チップを攻略しきっているとは言えません。

とはいえ、MacにゲーミングPC的なグラフィック機能を求めるのはコストパフォーマンスと見合っていない事実は、価格が数倍違うM1 Max MacBook ProとPS5のGPU性能が大差ないことでも再確認された感はあります。クリエイティブやソフト開発のプロ向け製品として、M1 Macは着実にシェアを伸ばしていくのかもしれません。

(Source:Ubuntu Blog。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

ゲームエンジン開発Unityが数々の大作映画を手がけた視覚効果のWeta Digitalを約1850億円で巨額買収

ゲームエンジンの開発で知られるUnity(ユニティ)は、Peter Jackson(ピーター・ジャクソン)氏が共同設立した有名な視覚効果会社のWeta Digital(ウェタ・デジタル)を、16億2500万ドル(約1850億円)もの巨額で買収すると発表した。

その名前を知らなくても、Weta Digitalの作品を見たことがある人は多いだろう。「ロード・オブ・ザ・リング」から「アバター」や「シャン・チー/テン・リングスの伝説」など「ぜひ映画館で見るべきだ」といわれるような映画では、Weta DigitalがVFXで大きな役割を果たしている可能性が高い。

これまでWeta Digitalは、視覚効果を生み出すアーティストのチームであると同時に、アーティストが使用するツールの多くを開発するエンジニアのチームでもあった。Unityが買収するのは、これらのツールとエンジニアチームであり、その一方で視覚効果のアーティストチームは、独自の新しい組織に分割される予定だ。

今回の買収により、Weta Digitalの275人以上のエンジニアが、Unityに加わることになる。VFXアーティストは、ピーター・ジャクソン氏が引き続き過半数を所有する新会社「Weta FX」にスピンアウトする。両社は今後も協力関係を続けていく予定で、Unityはこの先、Weta FXが「メディア・エンタテインメント分野における最大の顧客」の1つになると見ているという。

その一方でUnityは、Weta Digitalの数多くの自社製ツールの開発を引き継ぐ予定だ。例えば「City Builder」(「キングコング」などの映画で破壊された巨大な3D都市をプロシージャルに生成する)「Manuka」(最終バージョンですべてが非常にリアルに見えるようにするために役立つ物理シミュレーションを行うカスタムレンダラー)「Gazebo」(より高速なリアルタイムレンダラーで、アーティストが時間のかかる最終レンダリングの前にシーンを正確にプレビューするために使用される)、そして他にも、キャラクターを動かすためのリギング、顔のアニメーションやレンダリング、モーションキャプチャーの処理、髪の毛 / 毛皮 / 煙 / 何千年も前に放棄された都市の景観に生え茂る植物などをシミュレートするためにチームが構築した独自の技術のすべてだ。

Wetaの「City Builder」ツール(画像クレジット:Unity/Weta Digital)

なぜWetaなのか?UnityのSVPであるMarc Whitten(マーク・ウィッテン)氏に電話して、彼の考えを聞いてみた。

「10年前を思い出してみてください」と、彼はいう。「これは2Dの話ですが、どれだけの写真が撮影されていたか。きっと膨大な数でしょう。しかし、それから10年後……今はさらに驚異的に増えています。3Dも同じようなものではないかと私は思います」。

「ただし、1つ違いがあります」と、彼は続けた。「10年前の私でも、写真を撮ることはできると思っていました。今、2Dで同じように写真を撮ることができます。しかし、実際にはそれは10年前と大きく異なります。なぜなら、私がiPhoneのシャッターボタンを押すたびに、iPhoneは私を(写真家に)変身させるために、おそらく500万行の超高度なコードを実行しているからです。しかし、3Dでは、現在、個人的に何かをモデリングすることはほとんどできません。これからの10年で私たちがやるべきことは、同じアプローチを取ることです。つまり、この信じられないほど深い技術を、簡単に使えるようにすることです」。

言い換えれば、つまり、Unityは3Dでの構築をより簡単にする必要性が高まっていると考えており、それはWetaが過去数十年を費やして追求してきたことなのだ。

この買収契約の一環として、UnityはWeta Digitalが長年にわたって構築してきた膨大なデジタル資産のカタログも取得することになる。それは、都市や自動車、人々の3Dモデルから、雨の中で火から出る煙の仕組みを決定するアルゴリズムや、動物の群れが木々の間をどのように移動するかのシミュレーションまで、1つ1つ挙げれば切りがないほど膨大だ。これらのすべてが、潜在的にはUnityの製品に組み込まれ、クリエイターがそれを基に制作できるようになる可能性があるというわけだ。もっとも、ウィッテン氏は「明確に認められるIP」は含まれないので、次に開発するゲームに(ロード・オブ・ザ・リングの)Gollum(ゴラム)をドラッグ&ドロップできるようにはならないだろうと指摘している。

これ以前にUnityが行った最大の買収は、2021年の8月にParsec(パーセク)を3億2000万ドル(約365億円)で買収したことだった。当時、ウィッテン氏はこの買収がUnityのより大きなクラウドへの野望の一環であることを示唆していたが、今回の買収にも同じことが言えるだろう。

「(Weta Digitalの)ツールは……まさにこのパイプラインです」と、ウィッテン氏は述べている。「それぞれのツールは個々に強力ですが、このパイプラインに沿って連携すると、すべてが実にうまく機能します。あるツールで変更を加えれば、他のツールで照明や合成を行ったときに、それが正しい形で現れます。複数の人が本当に簡単に一緒に作業できます」。

「その先に私たちが考えているのは」と、同氏は続けた。「アーティストがMaya(マヤ)やHoudini(フーディニ)、Unityの中で作業をするときに、これらのクラウド機能が直接接続できるようにすることです」。

「このパイプラインをクラウドで利用可能にして、どこにいてもすぐに接続できるようにすることが重要であると、私たちは考えています」。

Unityによれば、この買収は2021年の第4四半期中に完了する見込みだという。Weta DigitalのCEOを務めているPrem Akkaraju(プレム・アッカラジュー)氏は、新たに設立されるWeta FXのCEOとして留任し、CTOのJoe Marks(ジョー・マークス)氏は、Weta DigitalのCTOとしてUnityに移籍する予定だ。

画像クレジット:Unity/Weta Digital/20th Century Fox

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

YouTubeがすべての動画の「低く評価」数を非公開に

YouTube(ユーチューブ)は米国時間11月10日、動画に表示されている「低く評価」の数を非公開にすることを発表した。この決定は、動画の評価に対する一般の人びとの判断材料に影響を与えるという点で、議論を呼ぶことになりそうだ。しかし、YouTubeは、この変更によって、クリエイターをハラスメントからよりよく保護すると同時に、ある集団がチームを組んで動画に低い評価を与える「低評価攻撃」を減らすことができると考えている。

同社によれば「低く評価」の数は公開されなくなるものの「低く評価」ボタンそのものは削除されないという。ユーザーは、これからも動画のサムダウンボタン(「低く評価」ボタン)をクリックすることで、クリエイターに個人的な低評価の気持ちを伝えることができる。一方、クリエイターは、もし望むならYouTube Studio(ユーチューブスタジオ)で、動画のパフォーマンスに関する他の分析結果とともに「低く評価」の数を追跡できるようになる。

この変更は、YouTubeが2021年初めに行った実験の結果を受けてのものだが、その実験の目的はこうした変更によって低評価攻撃やクリエイターへの嫌がらせが減るかどうかを確認することだった。

YouTubeは実験に際して「低く評価」の数が公開されていると、クリエイターの幸福度に影響を与える可能性があり、動画に低評価を与えようと呼びかける標的キャンペーンの動機となる可能性があると説明していた。それは正しい指摘だが、その一方で「低く評価」はその動画がクリックベイトやスパム、誤解を招くようなものであることを他者に知らせるための有用な役割を果たすこともある。

YouTubeはまた、プラットフォームに参入したばかりの小規模なクリエイターなどからも、低評価攻撃の対象として不当に狙われていると感じているという声を聞いたと述べている。実験の結果、小規模なクリエイターは、大規模なクリエイターよりも低評価攻撃の対象となっていることが確認された。

なおYouTubeは、TechCrunchの取材に対し、具体的な内容や実験で収集されたデータの開示は拒否している。しかし、今回の変更がユーザーとクリエイターの双方にどのような影響を与えるかについては「複数月」にわたってテストを実施し「影響の詳細な分析」を行ったと述べている。

同社は「低く評価」の数を削除するにあたって、たとえばサムダウンボタンの下に「低く評価」した数の代わりに「Dislike(低評価)」という文字列を表示するなど、さまざまなデザインを試していた(これは、同社が現在採用している動画の下にあるエンゲージメントボタンの列に大きな変化を与えないデザインだ)。

画像クレジット:YouTube

ユーザーの感情を伝えるシグナルの公開範囲を狭める、というアイデアを試みた主要プラットフォームは、YouTubeが初めてではない。YouTubeと同様の精神衛生上の理由から、Instagramは数年前から「いいね!」の数を世界的に表示しないテストを始めた。Instagramは「いいね!」の獲得に注力することは、コミュニティに悪影響を及ぼし、クリエイターがプラットフォーム上で自分自身を表現することの満足度が減る可能性があると考えている。しかし最終的には、FacebookもInstagramも判断を完全に下すことができず、「いいね!」を非表示にする権限をユーザーの管理に委ねることで、事実上現状を維持することとなった。

YouTubeの「低く評価」数の変更は、ビッグテックとその精神的健康への影響、特に未成年者への影響が社会的に注目されている状況の中で行われたものだ。企業は、そのユーザーベースをターゲットにして影響を与えるためのシステムの設計方法や、来るべき規制に備えてどのような変更を行うことができるかを再検討している。多くの市場で、議員たちは、YouTubeを含むハイテク企業の幹部たちを公聴会に招き、ハイテク企業のさらなる問題点を抑制するための法案を作成している。メンタルヘルスは、広告ターゲティング、プライバシー、誤った情報のアルゴリズムによる拡散などと並んで、規制の対象となる分野の1つに過ぎない。

YouTubeの場合は、13歳から17歳までのユーザーの保護とプライバシー保護を強化するとともに「不健全な」子ども向けコンテンツの収益可能性を削減することで、求められる変化のいくつかを先取りしようとしている。しかし、市場の大きな変化は、企業にプラットフォームの他の分野でも、幅広い人々に有害な可能性があることも考慮させるようになっている。

とはいえ、YouTubeはTechCrunchに対し、今回の「低く評価」カウントの削除は、規制の変化に対応したものではなく、クリエイターをサポートするためのものだと述べている。

広報担当者は「クリエイター、特に小規模なクリエイターをハラスメントや低評価攻撃から保護する責任がYouTubeにはありますから、積極的にこの変更を行っています」と述べている。

もちろんこれは、大手企業の間でクリエイターの人材獲得競争が激しくなっている中での展開でもある。今日のソーシャルプラットフォームは、特にTikTokの脅威が高り競争が激化する中で、トップクリエイターをひきつけておくための資金を用意している。例えば、YouTubeは2021年、ショートフォームビデオのプラットフォームを立ち上げるために、1億ドル(約114億円)のクリエイターファンドを発表した。そして、この1年ほどの間に、クリエイター体験を向上させることを目的としたいくつかの新しい機能ポリシーを導入してきた。

この「低く評価」数の変更は、本日(米国時間11月10日)より、すべてのデバイスとウェブを含むYouTubeのプラットフォーム上でグローバルで展開される。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

Cascade Labsが現場が使えるノーコードのデータ自動化プラットフォームで約6億円調達

Cascade Labsは、オペレーションチームによるデータワークフローの自動化を助ける。そのときチームは同社のノーコードツールを使って、さまざまなデータソースからデータを取り込み、必要に応じて変換し分析する。そしてその結果に基づいて、特定のプロセスが起動される。同社は米国時間11月9日、First Round Capitalがリードするシードラウンドで530万ドル(約6億円)を調達したことを発表した。このラウンドには、Redpoint PartnersやSusa Ventures、それに多くのエンジェル投資家が参加している。

Cascade Labsは、CEOのJake Fuentes(ジェイク・フェンテス)氏とCTOのJon Brelig(ジョン・ブレリグ)氏が共同で創業した。フェンテス氏は以前、パーソナルファイナンスサービスLevel Moneyを共同で創業しているが、同社は2015年にCapital Oneが買収している。ブレリグ氏は以前、InfoScout(現Numerator)を共同で創業。CTOだったが、2019年9月にCascade Labsの創業に参加した。

画像クレジット:Cascade Labs

ブレリグ氏によると、InfoScoutでは多くのOpsやアナリストたちがデータの分析に関しては高度なスキルを持っているが、その後、ワークフローの自動化に関しては技術がないことを見てきた。たとえばそれは、各週の複雑な報告書を、大量の手作業なしで作る、といった技術だ。

一方、フェンテス氏は、同じ問題をやや違う視点で見ていた。「自分の最後の企業をCapital Oneに売ったが、ご想像どおりそこは、分析が重視されるところです。しかし、仕事をよく知っている現場の人間が、我々にはアクセスできた大量のデータにアクセスできる範囲は、依然として限られていました。そこで私はCapital Oneを辞めた後、ジョンとこの問題を話し合うようになった。InfoScoutとCapital Oneで企業は違うけど『たぶんこれは実際には同じ問題なんだ』という認識からCascadeがスタートしました」。

企業がデータにアクセスして探求するツールは、当然ながらすでにたくさんあったが、フェンテス氏たちのチームは、データを調べることと実際にそれを活かすことの間に断絶がある、と主張している。「たとえばCapital Oneで必要とされていた偽のオペレーションが、まさにそのタイプだ。そしてInfoScoutは顧客に正しく奉仕することが必要だった。データをオペレーションに正しく活かすには、現在そこらにあるのとはやや違ったツールが必要だと思っている」とフェンテス氏は語る。

画像クレジット:Cascade Labs

きれいなダッシュボードをいくら作っても、データツールを作ることはできない。たとえばそのデータはスクーター企業を助けて、充電や修理のための夜間ピックアップをやることになるかもしれない。Cascade Labsでは、オペレーションのチームが、最もありふれたソースからデータを取り出すことができる。必要ならそれは、CSVのファイルでもよい。そしてそれを軸に、ワークフローを作る。それはごくベーシックなDXかもしれないし、その他の標準的なデータ操作かもしれない。Cascade Labsは、ちょっとした予測能力も提供する。通常は、それらのワークフローの終わりにはアクションがある。それは、修理が必要なスクーターの車種をメールで尋ねるというアクションかもしれない。

投資家を代表してFirst RoundのパートナーであるBill Trenchard(ビル・トレンチャード)氏は次のように語る。「今も進行中のトランスフォーメーションの先頭にはLookerがいたと思う。それは、実際にビジネスを動かしている組織の適切な人たちに、適切なデータをどうやって届けるか、という問題だ。その点でCascade Labsがやってることは、進化だと思う。彼らが今いる場所は、ノーコードのツールと、非技術系のクリエイターがまるでエンジニアのように作れるという、2つの動きの交差点だ。それが、モダンなデータスタックの勃興です。両者の組み合わせで企業はデータを、これまでありえなかったまったく新しい方法で活用できます」。

彼によると、ダッシュボードを作るような統合ツールは今たくさん出回っているが、Cascade Labsの仕事は正しいデータを正しい人に届けることだという。

画像クレジット:Cascade Labs

原文

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)