スマホ1つで作れるEC向けARサービスのカシカ、見る側は専用アプリ不要

AR(拡張現実)技術は10年以上前に登場したが、近年は大手スマホベンダーが特に力を入れ始めている。このような中、AR市場の拡大を見据え、商機をつかもうとしているのが、2017年5月に創業したカシカだ。

カシカはEC向けに商材をAR(拡張現実)化するサービス「カタチスペース」などを展開するスタートアップで、2021年7月から法人向けにカタチスペースの定額制プランを始めている。

そもそもARとは何か。カシカの奥健太郎代表は「カメラ映像にCGデータを重ねて表示する技術です。カメラの画面越しに見える風景に、実際には存在しないCGデータを重ねて表示することで、目の前にはない物体が見られるようになります」と説明した。

これまでにも何度かARブームはあった。直近では2016年に「ポケモンGO」、2019年には「ドラゴンクエストウォーク」などが世間を騒がせた。しかし、一般にはまだ浸透しているとは言えない状況だという。「問題点の1つは、ARを体験するには専用アプリが必要なことです。ARを見るためにアプリをインストールしなくてはいけないというハードルがありました」と奥氏は話す。

ただ、AR技術は日々進化している。近年ではアプリをインストールしなくてもARを見ることができる「ウェブAR」が登場し、海外ではアプリ開発なども進んでいる。ARについては、特にApple(アップル)が推進しているという。

アップルは2020年に、高精度のARカメラ機能LiDARセンサーをiPhone 12 Proに搭載している。2021年6月に行われたAppleのイベントでは、iPhone、iPadで撮影するだけで3Dデータを作ることができるmacOS機能「Object Capture」を発表。これにより、小売り向けに商品の3Dモデルが作れるようになるという。なお、Googleにおいても、スマホ版Googleマップの道案内機能でAR対応を進めるなど、AR推進の波は大きくなっているのだ。

「国内ではARを取り入れた展開が遅れていると言えるかもしれませんが、将来的にはAR撮影できるカメラを標準搭載したスマホが当たり前になると考えています」と奥氏は話した。

関連記事
iPhone 12 ProのLiDARスキャナーを使ったAR体験一番乗りはSnapchat
アップルのRealityKit 2で開発者はiPhone写真を使ったAR用3Dモデル作成が可能に

専用アプリ不要で、手軽にARを見ることができる

各プランの3Dスキャン・AR化は、カシカが開発した無料の「カタチスペース」(iOS版のみ)アプリで撮影・アップロードするだけ。また、SNSやECサイトへの共有用QRコードやURLの生成もできる。

奥氏はカタチスペースアプリについて「iPhone X以上に対応しており、iPhone・iPadの顔認証でロック解除機能が付いているインカメラや、背面に2つ以上レンズが付いている機種でARの撮影ができます」と説明した。なお、アプリによる撮影でAR化できるのは物体の片面だけだが、背面も含めた360度を3Dデータ化する場合は専門チームによる3Dスキャン「カタチスキャン」(別途追加費用)などで対応する。

ECサイト訪問者はスマホからサイト上のQRコードなどを読み込むだけで、AR化した商品イメージを確認できる。専用アプリをインストールする必要はなく、ブラウザから、iPhone、androidからARを見ることができるのだ。

また、コロナ禍でいわゆる「巣ごもり需要」が高まったことで、ECサイトは活況となっており、ARを活用できる機会は増えている。しかし、課題もある。

ECサイトで買い物をする時、サイト上の商品写真や動画、サイズ表記、色見本などの概要情報だけでは、商品を具体的にイメージすることは難しい。「ECサイトの返品率はリアルのおよそ2倍で、20%が業界標準となります。最も多いのはアパレルで29%、次いで家電が16%となっています。業者側にかかるコストは検品返品にともなう人件費も加わり、大きな負担になります」と奥氏は述べた。

EC事業者側はカタチスペースアプリによって手軽にARを作成可能で、サイト訪問者は専用アプリ不要でARを見ることができるため、画面越しでは伝えづらい大きさや質感、形状を簡単に伝えられるようにした。「プロ」プランでAR表示中の画面から商品決済ページへ直接進むこともできるという。自宅から商品確認や設置シミュレーション、購入までのフローをスムーズに実現し、商品到着後にイメージとの齟齬(そご)をなくす手助けをする狙いだ。

また、EC事業者側はコスト面でもメリットがあるという。「商品の3Dモデル製作費用やAR表示するための専用アプリ・ECサイト開発費用など、見積もりで100万円以上かかることも少なくありません。我々はすでにAR化するアプリを開発しています。3Dモデルを作るという作業ではなく、スキャンするだけであり、AR表示するところまでシステム化して一貫して提供できます。高品質のARを利用したい場合に、月額の費用に加え、専門チームの3Dスキャンによる費用が追加されるだけなので、EC事業者側は予算組みをしやすいと考えています」と奥氏は説明した。

奥氏は「2021年内にカタチスペースを30社に導入し、売上を1000万円、2024年までに500社に導入し、5億円の売上を目指します」と意気込む。

関連記事
フェイスブックの次期新製品は待望の「レイバン・スマートグラス」
消防隊がARヘッドセットで火災現場の作業状況を共有するQwake Technologiesのシステム
フェイスブックがネットショッピングに関連する4つの新機能を発表

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AR / 拡張現実カシカ日本eコマース

女優スカーレット・ヨハンソンがディズニーを訴訟、映画「ブラック・ウィドウ」の公開方法で

アベンジャーとしてのScarlett Johansson(スカーレット・ヨハンソン)の最盛期がバックミラーの中で遠ざかっていくような今日この頃、「Black Widow(ブラック・ウィドウ)」のスターは、契約違反でMarvel(マーベル)のオーナーであるDisney(ディズニー)を訴えた。訴状は今週、ロサンゼルスの高等裁判所に提出され、スタジオがスターとの合意に反して、映画を劇場公開と同時にDisney+でも公開したと申し立てている。

訴状は感情を混じえず次のように述べている。「ヨハンソン氏、ディズニー、マーベルそしてハリウッドの誰もが知ってるように、『劇場公開』は映画館に限定された封切のことである。ディズニーもこの約束をよく知っていたはずだが、その誓約への違反をマーベルに指示し、同作をそれが映画館で封切られたまさに同じ日にDisney+のストリーミングサービスで公開した」。

パンデミックは少なくとも短期間、映画が公開、消費される方法を抜本的に変えた。2020年、ディズニーとその他のスタジオは、映画をいきなりストリーミングで公開する方法を選んだ。映画館は必須のビジネスではないとして閉館され、映画館で観ることができる場合でも、遅れることが多く、観客数に減少が生じた。それを補う方法として、ストリーミングが選ばれた。最近では両者の違いが確定的なものとなり、映画館が再開しても同日ストリーミングが提供されている。

TechCrunchが入手した訴状のコピーによると、ストリーミングサービスに関するヨハンソン氏の懸念はパンデミック以前のものだ。訴状によると、ディズニーがストリーミングサービスであるDisney+を立ち上げたとき、ヨハンソン氏の代理人たちは、「ブラック・ウィドウが単独で劇場公開されることの確約をディズニー / マーベルに求めた。しかしそのときディズニーは、Disney+の会員数を増やすことに躍起になっていた。

訴状は2021年5月のマーベル主任弁護士からのメールを引用している。

映画の公開に関するスカーレットの前向きの意思を、私たちは完全に理解します。そして彼女の要求のすべては、映画が、私たちのその他の映画と同じく、広く劇場で封切られるという前提に基づいています。私たちは、それが計画の変更であることを理解し、これについて議論し、理解に到達する必要があります。その要求は、一連の(非常に巨額の)興行収入に基づいています。

(訳注:劇場公開への固執は「ストリーミングでの公開は、映画館の来館者そして興行収入を減らす」という前提に基づいている)

一方、ヨハンソン氏の弁護士であるJohn Berlinski(ジョン・ベルリンスキー)氏は、TechCrunch宛の声明で次のように述べている。「ディズニーが『ブラック・ウィドウ』のような映画をDisney+に直接公開して会員を増やし株価を上げようとしていることは公然の秘密だ。同社は新型コロナウイルスを口実に、その後ろに隠れてそれを行っているが、映画の成功の主因であるアーティストとの契約を無視し、その近視眼的な戦略を推し進めることは、彼らの人権を犯すことでもあり、それを法廷で証明しなければなりませんn。ハリウッドの才能がディズニーに対して立ち上がり、契約を尊重する法的義務があることを明らかにする行為は、ディズニーに対する最後のケースではないだけでなく、他のどんな企業に対しても行われるべきことです」。

この声明では、ディズニーが「新型コロナウイルスの後ろに隠れて」と述べているが、2020年に公開方式を考え直さなくてはならなくなったのはディズニーだけではない。残る疑問は、パンデミックは映画公開の意思決定において情状酌量の余地のあるものなのか、ということだ。本裁判の結果は、パンデミック後の大作の公開方法に対して、スタジオに大きな影響を与えるだろう。

更新:ディズニーは訴訟に対して次のようにコメントしている。

本件には、訴訟としての利害実体が何もありません。この訴訟は、新型コロナウイルスによるパンデミックの、恐ろしくまた長期にわたるグローバルな影響に対する思いやりのない無視であり、そのために特別に悲しくまた痛ましいものであります。私たちはヨハンソン氏の契約を完全に遵守しており、さらにまた「Black Widow」をPremier Access(Disney+プレミアアクセス)でDisney+上に公開することは、彼女がこれまでに受領した2000万ドル(約22億円)に加えて、さらなる報酬獲得を大きく強化するものであり、訴訟に値する被害は何1つありません。

関連記事
「マンダロリアン」シーズン2撮影用のリアル空間を創り出す巨大な高解像度LEDディスプレイをILMが公開
Disney+が今後数年以内にスター・ウォーズシリーズ10作品とマーベル・シリーズ10作品の独占配信を発表
開始1年でDisney+のサブスク会員が7300万人超え

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Disney+Disney映画新型コロナウイルス裁判動画ストリーミング

画像クレジット:Amy Sussman/Getty Images

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TechCrunch Japanのスタートアップコミュニティ「TC HUB」がJETROと連携開始

TechCrunch Japanが運営するスタートアップコミュニティ「TC HUB」にJETRO(ジェトロ、日本貿易振興機構)が新しいパートナーとして加わったので報告させていただきたい。

ご存じの方も多いとは思うが、JETROは2003年に設立された独立行政法人で、海外76カ所、国内49​カ所のネットワークを活用し、海外ビジネス情報の提供やスタートアップを含む中小企業等の海外展開支援、対日投資の促進などに取り組んでいる。スタートアップ支援の具体的な例をあげると、海外で開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でのブースをJETROが持ち、そこに日本のスタートアップを参加させるなどしている。

そのJETROがTC HUBのパートナーとなることで、TC HUBに参加するスタートアップはJETROが行う様々な支援への申し込みや担当者への相談をダイレクトにすることが可能になる。特に、海外進出をしたいがファーストステップとしてどのような方法をとれば良いのか分からないというスタートアップ経営者の方々にはぜひ活用していただきたい。

TC HUBへの参加は無料だが、招待制で以下の参加資格を設けている。

  • 過去にTechCrunch Japanへの記事掲載実績のある、もしくは掲載の予定が決まっているスタートアップ
  • TechCrunch Japanが主催する「TechCrunch Tokyo」や「Startup Battle」など各イベントへの登壇実績のあるスタートアップ

上記の参加資格を満たし、TC HUBへの参加を希望するスタートアップは以下のフォームから申し込み手続きをしていただきたい。たくさんのご応募をお待ちしている。

TC HUB、参加申し込みフォーム

インシュアテックの評価額を心配すべきだろうか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

皆さん、こんにちは!素敵な一週間を過ごせただろうか?私は眠りを覚ます胸焼けを感じながら32歳になった。ということで個人的には、ちょっとしたいいことも、悪いこともあった。だが、それでもマーケットは待ってくれない。全く、微塵も揺らぐことがない。つまり、インシュアテック関連株の下落や、この状況がスタートアップ企業にとってどのような意味を持つのか、また多数のIPOについてなどの話題は尽きないということだ。面白い!

さて新規上場企業であるKaltura(カルトゥーラ)、Couchbase(カウチベース)、Enovix(エノビックス)と行ったチャットの詳細に入る前に、まずインシュアテックについて話しておくことにしよう。

ここ1年ほどの間に、Root(ルート、自動車保険)Metromile(メトロマイル、自動車保険)、Lemonade(レモネード、レンタル保険)などの、インシュアテック系のスタートアップが続々と上場している。ここでは、現在の彼らのパフォーマンスがどのように見えるかを簡単なダイジェストでご紹介しよう。

  • Root:1株あたり7.72ドル(約853円)。IPO価格27ドル(約2985円)から71.4%ダウン。
  • Metromile:1株当たり7.26ドル(約803円)。合併後の高値から64.4%下落。
  • Lemonade:1株あたり86.97ドル(約9614円)。IPO価格の29ドル(約3206円)から199.9%上昇。

思い出して欲しいのは、RootとMetromileがLemonadeの後に取引を開始したことだ、つまりその下落は長い時間軸ではなく短い間隔で発生した。だからこそ、この状況が興味深いのだ。

何が起きているのだろうか?さて、(SPAC、IPOなどの)何らかの形で公開したインシュアテックの3社に2社は極めて厳しい状況にある。このことは、まもなく完了予定のSPAC主導の合併を進めているHippo(ヒッポ)にとって、良い兆候とはとても言えない。こうした大幅な下落は、インシュアテックスタートアップにとっては明るい材料ではない。彼らは、自分たちの価値に対する一般投資家からの疑問に答えなければならない。

LemonadeのIPO後の好調な業績は、懸念を払拭するものだろうか?難しい質問だ。同社は、自動車保険をはじめとする新しい市場への拡大に奔走している。最新の決算報告書によると、同社は今年初めにテキサス州の寒波により多少の打撃を受けたものの、その点を除くと、同社が他の2社がやっていないことをやっているのかどうかは明らかではない。ともあれ投資家が注目しているのは、RootやMetromileではなく、Lemonadeなのだ。IPOに向けてまだ規模を拡大している多くのインシュアテックスタートアップにとって、何故そうなるのかや、他の2社よりもLemonadeに近付くにはどうすればよいかを解明することは、重要な鍵となるだろう。

IPOの季節到来

この2週間、The Exchangeは上場する企業のCEOと電話で話し、彼らの最近の状況を学ぼうとしてきた。というわけで、以下に示したのはKaltura、Couchbase、Enovixの人たちとのチャットの電話メモだ。

Kaltura

  • メモ:オンラインビデオに特化したKalturaは、今年初めに株式公開を申請したものの、そのIPOを延期し、また別の資金調達イベントを行った
  • The Exchangeが、KalturaのCEOであるRon Yekutiel(ロン・イェクティエル)氏に話を聞いたところ、同社のIPOのタイミングは、2021年初頭の公開市場の混乱の影響を受けていたという。それは驚きではなかったが、確認できたことはよかった。
  • そしてその停滞の原因の一部は、Archegos(アルケゴス)の破綻によるものだったとイェクティエル氏はいう。それは理にかなった説明だが、私たちは初めて知るニュースだった。
  • イェクティエル氏は、株式公開が遅れたことを決して嬉しくは思っていないと述べた(公開は事前に公表できる唯一の資金調達だからだと彼はいう)。とはいえ初回に彼の会社が話をしていた投資家たちは、二度目のIPOに際しても変わらずKalturaを熱心に応援していると付け加えた。
  • CEOによれば、Kalturaの第2四半期の速報値は、年初に話していたことが実現していることを投資家に示すことになったという。また、継続的な成長のためには、新製品の取り込みが重要であるとも強調した。
  • イェクティエル氏は、20%の高値を記録した初日の値付けと取引結果に満足している。それ以上だと過剰で、それ以下だと不足だとも指摘している。
  • Kalturaの価格が3月のIPO時の価格帯に比べて低かったことについて、イェクティエル氏は「第一印象を与えるチャンスに3度目はない」と述べ、同社としては公開を完了させたかったのだと語った。そして、その通りにやりきった。自分の考えの中で迷子にならないためには重要なことだ。
  • 本記事執筆時点で、Kalturaは1株あたり10ドル(約1105円)のIPO価格から17.5%上昇している。

一つの逸話を紹介しよう。Kalturaはかつて、現在のTechCrunch Disruptカンファレンスシリーズの前身であるTechCrunch50イベントの、さらに前身であるTechCrunch40の初期において、物理的なトークンによる1票の差により優勝した。イェクティエル氏はそのトークンをまだ持っていて、チャットの最中に見せてくれた。素晴らしい!

Couchbase

  • The Exchangeは、NoSQLデータベース企業であるCouchbaseのCEO Matt Cain(マット・カイン)氏に話を聞いた。Couchbaseの価格は1株あたり24ドル(約2653円)で、IPO時の価格帯だった20(約2211円)ドルから23ドル(約2542円)を上回った。
  • この記事を書いている時点では、本日の取引で9.2%上昇し、33.20ドル(約3670円)となっている。
  • カイン氏は、かなり厳密な台本に基づいて受け答えをした。これは、失敗して刑務所に入ることを心配している上場したばかりのCEOとしては、ごく普通の状況だ。ということで求めていた詳細な回答は得られていない。しかしそれでも、Couchbaseもリモートでのロードショーが増加することによって、会議の密度を高めることができた企業だったことなどを知ることができた。
  • CEOは、Couchbaseの前にある機会の規模、すなわちオンライントランザクション処理データベースの世界についての議論に集中していた。彼は、世の中にこれ以上大きな市場を見つけるのは難しいと主張し、そのことが投資家たちに、彼の会社が何かを成し遂げられるかもしれないと期待させているのだ。データベースの世界の市場が、カイン氏が考えている位大きいのであれば、スタートアップ企業の活躍の場はたくさんあるだろうというのが私たちの解釈だ。
  • 私たちは、公開市場の投資家たちがオープンソース企業をどのように見ているのかを知りたかったのだが、彼からはあまり話を聞くことができなかった。それでも、この会社のIPOは非常に強力なものであり、OSSで作られていることは、イグジットを目指す会社にとって必ずしも不利ではないことを示唆している。

Enovix

  • The Exchangeは新しい公開企業Enovixの話を聞きたいと思っていた。同社がSPACで上場したばかりだからだ。なぜそれが重要なのか?なぜなら、SPACで上場を目指すバッテリーに特化した企業が他にもあるからだ。そのため、今回のチャットは後に続く仕事への良い地ならしとなった。
  • それに、公開企業と話すのは大好きだ。嫌いなひとがいるだろうか?
  • 「合併して新しいティッカーシンボルで取引を開始した」日は、彼の会社にとってIPOのようなものかとたずねたところ、創業者でCEOのHarrold Rust(ハロルド・ラスト)氏はそうだと答えた。もっともな答だ。
  • 私たちは、同社のSPAC合併日が第2四半期から第3四半期にずれ込んでいることに気づいた。それはなぜだろう?手短にいえば、会計に関するいくつかのSECの変更に起因している。チャットから受けた印象は大したことではなかったのだが、Enovixの合併日を少し遅らせる原因となった。
  • なぜSPACで株式公開を行うのか?現金だけでなく、その合併に関わるスポンサーも、業務知識という点で重要なリソースなのだとラスト氏は述べている。同社は、SPACスポンサーのネットワークからも採用を行っていて、これは注目に値すると感じられた(ほら、実際の投資家による付加価値だ!)。
  • まだ収益を上げていないもうひとつのバッテリー企業SES(SPAC間近)よりも自社の評価額が低い理由を聞かれたラスト氏は、SPAC取引における自社の評価額は交渉によるものであり、もし会社が成功するなら11億ドル(約1216億円)と評価されようが14億ドル(約1548億円)と評価されようが、実質重要ではないと答えた。
  • Enovixの 興味深い点は、 需要の高まるEV(電気自動車)向けの電池技術に着手していないことだ。 その代わりに、ハイエンドの電子機器をターゲットにしている。その理由は?バッテリーをハードウェアに搭載するためのサイクルが早く、価格競争力を持てるからだ。しかし、いずれはEVにも参入したいと考えている。
  • 同社の1株あたりの価値は17.33ドル(約1916円)で、Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)の評価では25億ドル(約2764億円)となっている。これは、予想されていたものよりも良い結果であり、SES自身の将来のデビューに向けての良い兆候だ。

盛りだくさんだった。ここまで私に付き合って、ささやかなThe Exchangeニュースレターを読んでいただき感謝している。世界のベンチャーキャピタル市場やエドテックなどに関する長文記事を読みたい方は、こちらからすべての記事がアクセス可能だ

ではまた、お元気で。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Nigel Sussman
原文へ
(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Uber Freightが物流管理ネットワークのTransplaceを約2475億円で買収

規制当局への提出書類によると、2018年にUber(ウーバー)からスピンアウトした物流事業のUber Freight(ウーバー・フレイト)は、プライベート・エクイティ・グループのTPG CapitalからTransplace(トランスプレイス)を約22億5000万ドル(約2475億円)で買収した。7月22日に発表されたこの取引では、7億5000万ドル(約825億円)がUberの株式で、残りは現金で支払われる。

Transplaceの買収はUber Freightの事業増強を象徴する動きだ。同社は既存市場でのシェア獲得とメキシコでの事業拡大を目指している。また、今回の買収は、Uber Freightの収益性向上を加速させ、2022年末までに調整後EBITDAベースでの収支均衡を実現する手段であると考えている。

今回の買収により、貨物の配送を必要とする荷主とトラックドライバーを結びつけるUber Freightのプラットフォームに、最大級の輸送・物流管理ネットワークを組み入れることになる。Uber Freightによると、同社の仲介業務はTransplaceのサービスとは独立して運営を続けるという。

「これは、Uber Freightだけでなく、物流エコシステム全体にとって大きな前進です」と、Uber Freightの責任者であるLior Ron(ライオー・ロン)氏は声明で述べた。「これは、一流企業2社の相互補完的な、業界内で最高クラスの技術ソリューションと卓越したオペレーションを結集し、荷主のサプライチェーン全体を変革し、最も重要な時期にオペレーションの回復力を実現し、コストを削減する業界初の荷主間プラットフォームを構築する機会です」

TransplaceのCEOであるFrank McGuigan(フランク・マクギガン)氏は、買収によって荷主がより高い効率性と透明性を享受できるようになると期待している。「全体として、荷主および輸送業者の空荷を大幅に削減し、高速道路や道路インフラ、環境に利益をもたらすと期待しています」と話した。

Uber Freightは2017年にスタートした。2018年8月には独立した事業部に分離されたが、すぐに勢いを増し、より多くの資金を必要とすることになった。Uberからスピンオフした後、拡大を続けた。Uber Freightはアプリのデザインを変更し、荷物の検索やフィルタリングをカスタマイズしやすくする新しいナビゲーション機能を追加するなどの改善を行った。

Uber Freightはカナダと欧州にも進出し、またシカゴに本社を設置した。これは、数百人の労働者の採用を含め、シカゴ地域に年間2億ドル(約220億円)以上を投資するという親会社の広範な計画の一環だ。Uberは2019年9月に、今後3年間で2000人の従業員を同地域で新たに雇用し、そのほとんどがUber Freightで働くと発表した。

Uberは昨年、貨物事業(Uber Freight)の株式を売却した。同時に、ニューヨークに拠点を置く投資会社Greenbriar Equity Groupが率いる投資家グループが、同事業のシリーズA優先株式による資金調達に対し、5億ドル(約550億円)の投資を約束した。この取引では、ポストマネーベースで同事業が33億ドル(3630億円)と評価された。

UberはUber Freightの過半数の所有権を維持し、Greenbriarから得た資金を使って、トラックドライバーと運送会社との連携を支援する物流プラットフォームの拡大を続ける。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Uber Freight

[原文へ]

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Zoomが約1兆6000億円で2000社以上の顧客持つクラウドコールセンターFive9を買収

Zoom(ズーム)は過去1年間の目覚ましい株価上昇を利用して、初の大型買収を行った。2年前のIPO時には約90億ドル(約9850億円)と評価されていた人気のビデオ会議会社は、米国時間7月18日夜、クラウドコールセンターサービスを提供するFive9(ファイブ9)を約147億ドル(約1兆6000億円)で買収することで合意したと発表した(全株式による取引)。

設立20年のFive9は、2022年前半に完了する予定のこの取引の後、Zoomの事業部門となると両社は述べている。

この買収案は、提供するサービスを拡大するためのZoomの最新の試みだ。この1年間でこのビデオ会議ソフトウェアは、複数のオフィスコラボレーション製品、クラウド電話システム、オールインワンのホームコミュニケーションアプライアンスを追加した。

関連記事:すべてがセットアップ済みのZoom専用27インチディスプレイが約6.4万円で登場

Citrix(シトリックス)やUnder Armour(アンダーアーマー)など、世界中に2000社以上の顧客を持ち、年間70億分以上の通話を処理しているFive9の買収により、Zoomは「240億ドル(約2兆6200億円)」とも言われるコンタクトセンター市場に参入することができるという。

Zoomの創業者兼CEOであるEric S. Yuan(エリック・ヤン)氏は、声明の中でこう述べた。「当社は常にプラットフォームを強化する方法を模索しており、Five9の追加は、当社のお客様にさらなる喜びと価値を提供するために、自然にフィットするものです」。

今回の合併により、両社はそれぞれの顧客基盤において「大規模な」クロスセリングの機会を得られると考えている。

Five9のCEOであるRowan Trollope(ローワン・トロロープ)氏は「企業はコンタクトセンターに多大なリソースを費やしていますが、それでも顧客にシームレスな体験を提供することに苦労しています」と述べている。

「企業がこの問題を解決し、より有意義で効率的な方法で顧客と接することを容易にするのが、Five9のミッションです。Zoomとの提携により、Five9のビジネス顧客は、Zoom Phoneを中心としたベストオブブリードのソリューションにアクセスできるようになり、より多くのメリットを実現し、ビジネスに真の成果をもたらすことができるようになります。これは、Zoomの『使いやすさ』の哲学と幅広いコミュニケーションポートフォリオと相まって、お客様が好みのチャネルを介してエンゲージすることを真に可能にします」とも。

両社は米国時間7月19日に共同でZoomコールを行い、今回の買収についての詳細を発表する予定だ。

関連記事
Zoomが会議でのリアルタイム翻訳を実現するためにドイツのスタートアップを買収
Zoomの会議を自動で文字起こしできるOtter.aiの新しいアシスタント機能
Zoomが同社プラットフォームでの事業立ち上げを支援する108億円のZoom Apps投資ファンド開設

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Zoom買収コールセンターFive9

画像クレジット:hapabapa / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

暗号通貨スタートアップのPhantomがマルチチェーンウォレット拡大のためa16zから資金調達

2021年、個人投資家がビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)を購入することに慣れてきた一方で、分散型アプリケーションの世界では、主流のユーザーベースを取り込むことに関してまだ多くの仕事が残っている。

Phantom(ファントム)は、暗号資産スタートアップの新しい層の1つだ。ブロックチェーンベースのアプリケーションを合理化するインフラを構築し、暗号通貨の世界をナビゲートするための、よりユーザーフレンドリーなUXを提供することを目指す。開発者ではなく、利用者にとって空間全体をより親しみやすいものにしようとしている。ユーザーは、Phantomウォレットをブラウザにダウンロードすると、アプリケーションとのやりとりやトークンの交換、NFTの収集などができる。

この暗号通貨ウォレットメーカーはシリーズAラウンドで900万ドル(約10億円)を調達した。ラウンドはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がリードし、Variant Fund、Jump Capital、DeFi Alliance、Solana Foundation、Garry Tanも参加した。今年の夏の初めにクローズしたこのラウンドは、市場全体の不安定な状態が続いているにもかかわらず、暗号資産の未来を受け入れるベンチャーキャピタルが出てきたことを意味する。a16zは先月、22億ドル(約2420億円)の暗号通貨ファンドを発表した。これは業界に特化した同社の投資ビークルとして最大だ。

画像:Phantom提供

CEOのBrandon Millman(ブランドン・ミルマン)氏、CPOのChris Kalani(クリス・カラニ)氏、CTOのFrancesco Agosti(フランセスコ・アゴスティ)氏の共同創業チームは、いずれも暗号資産インフラのスタートアップである0xから移った。

Phantomは現在、Solanaコミュニティーで最もよく知られており、そのブロックチェーン上のアプリケーションとして最適なウォレットとなっている。ミルマン氏がTechCrunchに語ったところによると、同社はより広範なネットワークとのインターフェースに取り組んでおり、現在、イーサリアムとの互換性を構築している。また、他のブロックチェーンの準備もしており、「マルチチェーンの世界」のための製品を目指している。

Phantomは、他のネットワークへの対応を進めると同時に、より洗練されたDeFiメカニズムをウォレットに組み込み、ユーザーが暗号資産に賭けたり、ウォレット内でより多くのトークンを交換したりできるようにしたいと考えている。

Phantom社によると、既存のウォレット製品のユーザー数は約4万人とのことだ。

人気の高いイーサリアムのブロックチェーン上で存在感を示すのは難しいことだが、Phantomの最も大きな課題は、新しい種類の暗号資産に興味のあるユーザーが、主流になるにはまだ長い道のりを必要とするアプリのネットワークにアクセスできるようにすることだ。

「この分野全体が『開発者が他の開発者のために作ったもの』という状態に陥っています」とミルマン氏は話す。「ハードルの高さはそのまま放置されていました。より高いハードルを目指す人はいませんでした」。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Phantom

[原文へ]

(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

今週の記事ランキング(2021.7.11〜7.15)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「これで誰でもディズニープリンセス、願いをかなえたARアプリへの捧げ物はあなたの生体情報!?」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

フェイスブックがクリエイターを呼び込む約1100億円のボーナス報酬プログラムを発表

Facebook(フェイスブック)は、同社アプリのエコシステムにクリエイターを繋ぎ止めるための新たなボーナスプログラムを通じて、2022年末までに10億ドル(約1100億円)以上をコンテンツクリエイターに支払う計画を発表した。Facebookの創業者兼CEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、自身のFacebookページで「すばらしいコンテンツを提供してくれるクリエイターに報いる」ための新たな資金調達について初めて公表した。

同社は、FacebookとInstagram(インスタグラム)にまたがる一連の新しいボーナスプログラムを通じてクリエイターに報酬を支払う予定で、これらのプログラムは「季節ごとに変わり、時間をかけて進化、拡大していく」という。このボーナスプログラムは、2021年夏の後半にはInstagramアプリ内に、年内にはFacebookアプリ内に専用ハブが設置される予定だ。

Facebookは、Facebook上でインストリーム広告を有効にして動画を制作しているクリエイターに、最初の新ボーナスを提供する。また同社は、視聴者がストリーマーに投げ銭を送ってファン特典を得ることができる「Stars」システムによるボーナスも拡大していく。動画やゲームのライブストリーミングを行っているクリエイターは、2021年10月までの間、Starsを介して支払いを送った視聴者の数に応じて、毎月ボーナスを受け取ることができる。

なお、Instagramでは独自のボーナスを導入する予定だが、これは最初は招待制となっている。今後数週間のうちに、米国のクリエイターはIGTV広告を有効にすることで、1回きりのボーナスを受け取ることができる。その他のボーナスは、TikTok(ティックトック)の短編動画の成功に対するInstagramの回答であるReels(リール)の作成や、Instagram Live(インスタライブ)で特定のマイルストーンを達成したクリエイターに与えられる。

Facebookがクリエイターへの支払いに乗り出したのは、TikTokと競合するプロダクトを現金でジャンプスタートさせようとする最新の取り組みにすぎない。Snapchat(スナップチャット)は、同社の短編ビデオ製品「Spotlight」で最も人気のあるビデオに毎日100万ドル(約1億1000万円)支給している。YouTubeは、TikTokのクローンである「YouTube ショート」のために、独自に1億ドル(約110億円)の資金を用意している。

TikTok自体も2020年、2億ドル(約220億円)のクリエイターファンドを立ち上げているが、同アプリはあまり心配する必要はなさそうだ(今はまだ)。SensorTowerのデータによると、TikTokは全世界で30億ダウンロードを突破した。これまでこの数字を超えたアプリは、WhatsApp(ワッツアップ)、Messenger(メッセンジャー)、Facebook、Instagramなど、すべてFacebookが所有するアプリだけだった。

関連記事
TikTokが約214億円の米国のクリエイター向けファンドを発表
フェイスブックが音声SNS「Live Audio Rooms」とポッドキャスト向け新サービスの提供を米国で開始

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookInstagramクリエイター報酬マーク・ザッカーバーグ

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

ツイッターが想定より利用者が少なかったストーリーズ機能「Fleet」を8月3日に停止へ

Snapchat(スナップチャット)、Instagram(インスタグラム)、WhatsApp(ワッツアップ)、Facebook(フェイスブック)などのソーシャルプラットフォームでは、一定期間で消えてしまうストーリー機能がクールな場所となっている。しかし、Twitter(ツイッター)に限っていえば、この製品自体が数日のうちに消えてしまうようだ。Twitterは、わずか8カ月前に一般提供を開始したエフェメラルな「ストーリーズ」のTwitter版である「Fleet(フリート)」が、2021年8月3日にサポート終了されると確認した。

同社によると、Fleetで最初にターゲットにしようとしていた、積極的でないTwitterユーザーの間でアクティビティが不足していることが理由だという。Twitterのコンシューマープロダクト部門の責任者であるKayvon Beykpour(カイヴォン・ベイクプール)氏は、同社は他の製品を開発する予定だと述べているが、それらの製品にエフェメラルな要素を取り入れるかどうかについては言及していない。

Clubhouse(クラブハウス)に代わるものとして開発されたSpaces(スペース)は、現在アプリ上部のFleetと同じ場所に配置されており、Fleetがなくなれば、横長のカルーセルを独占することになる。

一方、プロダクト担当VPのIlya Brown(イリヤ・ブラウン)氏のブログ記事によると、2021年6月に実施したばかりのフルスクリーン広告のテストなど、Fleetのために構築したものの一部は、アプリの他の場所で再登場する可能性があるという。

関連記事
ツイッターがストーリーズ機能「フリート」に縦型全画面広告を試験導入、米国でパイロットテスト開始
Twitter版ストーリーズ機能の「フリート」が高負荷に苦戦

これまでFleetについて耳にしたのは、TwitterがFleetを発表したとき、何らかのイタレーションを行ったとき、あるいは技術的な不具合に直面したときだけだったことを考えると、今回の発表は驚くべきことではない。バイラルな人気や注目を集めたFleetという意味では、あまりニュースはなかった。

何よりも今回の終了は、Twitterが自社製品をより多くのユーザー層に受け入れられるようにするために、また、傍でポップコーンを食べながら座って様子を見ているだけのユーザーをいかに開拓してエンゲージメントを高めるか、苦心している様子を浮き彫りにしている。

Twitterが2020年3月に一部の市場でFleetのテストを開始したとき、同社は、人によってはTwitterの永続的なフォーマットに抵抗を感じて、他のユーザーほど多くのツイートをしていないのではないかと考えていた。そこでTwitterは、ツイートを消してしまえばもっと多くの人が投稿するようになると考えた。それに、他のソーシャルプラットフォームでもこのフォーマットは人気を博していた(2020年にTwitterが動く前、同アプリはストーリー形式を導入していない数少ないソーシャルメディアの1つだった)。

少なくとも、Fleetが全世界で提供開始された当初、利用者が急増してクラッシュしたことをポジティブな指標と考えるとすれば、この機能の初期展開には期待が持てた。

しかし長期的に見ると、そのようなおとなしいTwitterユーザーはFleetにもあまり興味がなく、Fleetとしてストーリーを投稿しているのは、すでにかなりアクティブなユーザーだけであることがわかった。

ただし、どれだけのパワーユーザーがFleetを利用していたのかも明確にはわからない。Twitterは、Fleetの利用者数やその他の統計情報の提供を拒否した。

Fleetのユーザーエクスペリエンスに関して、Twitterが解決しなかった問題は他にもあった。例えばTwitterがSpacesを立ち上げたときに、Fleetと同じ場所に表示されたことは問題だったのか、混乱を招いたのか。あるいは、その明確さの欠如は、Fleetの災いの前兆だったのだろうか?

また、Fleetでは、Twitterがどのようにそのスペースに何を表示するかを決めたのか、完全には明らかになっていなかった。何千ものアカウントをフォローしていユーザーもいる中で、Fleetのために特定の人々をフォローする方法もなかったから、何を見られるかはTwitterのアルゴリズム次第だった。

Twitterは、これまでの実績が不十分であったとしても、より多くの実験を行うことに否定的ではないようだ。「大きな賭けはリスクが高く投機的なものですから、定義上、いくつかの賭けはうまくいかないでしょう」とベイクプール氏は語っている。「逆に、もしたまに機能を停止する必要がないのであれば、それは我々が十分に大きなスイングをしていないことの表れといえます」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TwitterSNS

画像クレジット:Twitter / supplied

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Aya Nakazato)

フォルクスワーゲンがソフトウェアと自律走行を前面に打ち出した新ビジネス戦略を公表

Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は、今後数十年にわたって競争力を維持するために、ソフトウェア、サービスとしてのモビリティ、バッテリー技術を強化していく。同社をはじめとする自動車メーカーは、自動車の発明以来最大のパーソナルモビリティーの変化に備えようとしている。

中央ヨーロッパ時間7月13日に同社の戦略を説明したHerbert Diess(ヘルベルト・ディース)CEOは、製造から収益ストリームに至るまで、あらゆる面での変革を強調した。フォルクスワーゲンのCFOであるArno Antlitz(アルノ・アントリーツ)氏は、従来の収益が内燃エンジン車の販売によるものであったとすれば、2020年代の残りは、EV販売だけでなく、ソフトウェア、自律走行、さらにはライドシェアリングからも収益が得られるようになると述べている。

そのために、フォルクスワーゲンは欧州に6カ所のバッテリーギガファクトリーを建設し、西ベルリンに8億ユーロ(約1043億円)のハードウェアプラットフォーム研究開発施設を建設するなど、活発に動いている。また、VWは自社の車載ソフトウエア部門であるCariadを強化しており、同部門はサブスクリプションやその他の販売を通じて、2030年までに1兆2000億ユーロ(約156兆円)もの収益を上げる可能性があると述べている。

フォルクスワーゲンは、自律走行についても大きな計画を持っている。同社はライドシェアリングやレンタカーの市場シェアをつかみ取りたいと考えており、統合されたAV(自律走行車)プラットフォームでそれを達成しようとしている。幹部たちは、10年後までには顧客がフォルクスワーゲンの電動AVタクシーやシャトルバスをリクエストできるようになるという鮮明なイメージを語った。プレゼンテーションで示された画像を信じるのならば、その際にはハンドルや運転席はないかもしれない。

「想像してみてください。あなたのおばあさんや8歳の息子さんが、お父さんやお母さんが運転しなくても、好きなときにフォルクスワーゲンのタクシーに乗ってお互いに会いに行けることを」と、ディース氏は提案した。「当社のモビリティアプリの1つを使えば、ID.BUZZがあなたと友達を迎えに来てくれる(未来を)」。

パーソナルビークルにはCariadが搭載され、2025年までに「レベル4の準備」が整うという。シャトルやタクシーのようなシェアードモビリティは、VWが所有・運営し、AV企業のArgo AI(アルゴAI)が開発した技術を使用する。フォルクスワーゲンは2020年6月、このスタートアップへに26億ドル(約2876億円)を投資した。

欧州最大の自動車メーカーであるVWは、MaaS(Mobility as a Service)への投資が功を奏すると予想している。Volkswagen Commercial VehiclesのCTOであるChristian Senger(クリスチャン・センガー)氏は、2030年までに欧州の5大市場だけで700億ドル(約7兆7445億円)以上の年間収益を見込んでいると述べた。ミュンヘンでのパイロットプロジェクトでテストされている自律型ライドシェアのID.BUZZは、2025年にハンブルクで商用サービスとして展開され、その後まもなく米国でも展開される予定だ。

画像クレジット:Volkswagen

これらの推定に沿って、同社は2025年にはBEV(バッテリー式電動自動車)の販売台数が全体の25%、2030年には50%を占めるようになると予測している。ICE(内燃エンジン)のマージンは、需要の減少、排出ガス規制の強化、税制面での優遇措置などにより、ますます厳しくなると考えられ、フォルクスワーゲンは2030年までに欧州でICEモデルの数を60%削減する計画だ。スケールメリットと工場コストの削減により、ICEとBEVのコストパリティは2〜3年以内に達成できるだろうとアントリーツ氏はいう。

これは楽観的な未来だが、フォルクスワーゲンは十分な自信を持っている。同社は、2025年の利益目標を従来の7〜8%から8〜9%に引き上げた。

「2030年までにモビリティの世界は、20世紀初頭に馬から自動車へと移行して以来の大きな変革を迎えることになるでしょう」とディース氏は述べている。「クルマの未来、個人のモビリティの未来は、明るいものになるでしょう」。

関連記事
EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで
Argo AIの新型LiDARセンサーでフォードとVWによる自動運転車の大規模な実用化が加速する予感
エイプリルフール用をうっかり誤発表「Volkswagenが米国法人を『Voltswagen』に社名変更」

カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenバッテリー電気自動車自律運転

画像クレジット:Volkswagen

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

今週の記事ランキング(2021.7.4〜7.8)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「任天堂が月額約5500円(3500年間)の賠償金を払わない海賊版ROMサイトに対して新たな訴訟」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

AIやバイオマーカーで患者のモニタリングと医療研究を進めるHuma、日立ベンチャーズなどが支援し142億円調達

世界中の多くの人々が、ワクチン接種で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が抑えられ、最終的には根絶できることを祈るような気持ちで見守る中、ウイルスの蔓延をモニタリングしてきた企業の1つが、その技術に対する強い需要を背景に、大規模な資金調達を発表した。

Humaは、バイオマーカーのデータと予測アルゴリズムを組み合わせて患者のモニタリングを行い、さらに研究者や製薬会社による臨床試験を支援している。同社はこのたび、1億ドル(約109億円)の株式発行と3000万ドル(約33億円)の融資を含むシリーズCで、1億3000万ドル(約142億円)の資金調達を完了した。後日行使できる7000万ドル(約77億円)の株式発行も追加すると、2億ドル(約219億円)まで資金を拡大できることになる。

Humaは、グルコース、血圧、酸素飽和度などを測定する診断機器からのデータに加え、患者がスマートフォンで提供するデータを収集しているが、今回の資金調達はそのデータを補強することを目的としている。測定できるバイオマーカーの種類を増やし、さらに多くの研究と試験に取り組むために、研究開発への投資を継続すること、ロンドンを拠点とし、ヨーロッパ、特に英国やドイツ語圏で好調なHumaのビジネスを、米国などの新しい地域で拡大していくことがその内容だ。

ラウンドには、世界的な製薬・ライフサイエンス企業であるBayer(バイエル)のベンチャーキャピタル部門であるLeaps by Bayer(リープスバイバイエル)と日立ベンチャーズが共同で主導、Samsung Next(サムスンネクスト)、Sony Innovation Fund by IGV(ソニーイノベーションファンド・バイアイジーブイ、ソニーの投資ファンド)、Unilever Ventures(ユニリーバベンチャーズ)、HAT Technology & Innovation Fund(ハットテクノロジー&イノベーションファンド)、Nikesh Arora(ニケシュ・アローラ、ソフトバンクの元社長でGoogleの元幹部)、Michael Diekmann(ミヒャエル・ディークマン、Allianzの会長)などの多数の戦略的・財政的に著名な支援者が参加。今後のビジネスチャンスを物語るものとなった。Bayerは2019年、まだMedopad(メドパッド)と名乗っていたHumaに対し、2500万ドル(約27億円)のシリーズBも主導している。

MedopadがHumaにリブランドしたのは2020年4月。ちょうど新型コロナウイルスのパンデミックが世界中で本格化した頃だった。それから1年、CEOかつ創業者のDan Vahdat(ダン・ヴァハダット)は、対面で直接診察するのが非常に難しい状況下、患者をリモートで監視する技術を提供する同社はさまざまな分野に懸命に取り組んでおり、成長を続けている、と話す。

関連記事:患者遠隔モニタリングのMedopadがHumaとしてリブランド

「パンデミックが発生した2020年は、健康面だけでなく、研究の面でも皆が悲惨な状況に陥りました」「いかにして治療と研究を分散させるか、がすべての基本です」。

その中には、早期からNHSと提携し、患者の酸素飽和度をモニタリングするために約100万台の酸素飽和度測定器を出荷したことも含まれている。酸素飽和度は、患者が緊急医療を必要としているかどうかを判断する有力な指標であることが早い段階から判明しており、この酸素飽和度測定器は病院が人であふれかえっていた時期に、遠隔で患者のトリアージを行うための重要な手段だった。ヴァハダット氏によると、再入院を3分の1に減らすことに直接貢献したという。

また、同社の技術は手術を予定していたにもかかわらず、延期された多くの患者のモニタリングも担う。英国だけでも480万人の患者が手術を待っているが(「衝撃的な数字です」とヴァハダット氏)、これらの患者にどのように対応すべきだろうか。自宅で心臓手術を待っている患者さんの場合、病状が急速に悪化する可能性がある。そこでHumaは、患者の状態を監視するための診断システムを構築した。病状を管理するだけではなく、状態が悪くなった兆候があれば、悪化して緊急を要するケースになる前に繰り上げて専門家の診察を受けられるようにしたのだ。

臨床分野の活動と並行して、Humaは多くの試験や研究にも取り組んでいる。その中には、緊急承認を受けて流通しているコロナワクチンの1つに関する第4フェーズ試験(承認後に行われる規制プロセス)も含まれる。

また、現在進行中の医学研究に不可欠なデータの提供も続けている。新型コロナに直接関係しないものとしては、Bayerの心臓の研究があり、新型コロナに関係するものとしては ケンブリッジ大学のフェンランド研究と呼ばれる、感染を早期に発見するための、より優れたバイオマーカー(具体的には、デジタル表現型)の研究が挙げられる。

さまざまな企業活動の成功により、HumaにはシリーズBの資金がまだ多く残されている。同社は人道的活動にも力を入れ始め、コロナ危機に瀕するインドやその他の国へのリソースの寄付も行っている。

医療とテクノロジーの架け橋となるスタートアップ企業の将来は明るいが、2020年は、公共の利益という大望を持った優れた企業に投資することがいかに重要であるかが示されただけでなく、彼らがブレークスルーを起こしたときには、企業と投資家にとって大きな意味を持つことが証明された年となった。赤字だったBioNTech(バイオンテック)は、新型コロナワクチンの研究とPfizer(ファイザー)との提携により、2020年最終四半期に10億ドル(約1100億円)以上の利益を生み出すという、まさに大転換を遂げた。

多くの投資家がHumaのような企業やHumaが提供する情報を継続的に支援することに熱心なのは、これが理由だ。

Leaps by Bayerの責任者であるJuergen Eckhardt(ユルゲン・エックハルト)氏は声明の中で次のように述べる。「Leaps by BayerのビジョンとHumaの専門知識と技術の協調は、予防と治療に関する世界的なパラダイムシフトを促進し、データとデジタル技術を使った研究活動を後押しすることになります」「私たちは、世界をより良い方向に変えるポテンシャルのある、最も画期的な技術に投資しています。Humaに初期段階から投資してきた私たちは、Humaがヘルスケアとライフサイエンスにおける主要なデジタルイノベーターの1つとして、どれだけ理想的であるかを理解しています」。

日立製作所の執行役副社長、小島啓二氏も次のように続けた。「Humaは、包括的な遠隔患者モニタリングプラットフォームを構築し、優れた実績を確立しています。私たちは、Humaと協力して、同社の世界最先端の健康技術をアジアの新しい市場に提供できることを非常にうれしく思います。ともに新しいデジタルヘルス製品を進化させ、世界中の人のための優れた医療と研究をパワフルに後押しできると信じています」。

関連記事
赤外線レーザーを応用し採血なしで血糖値を測定可能な非侵襲センサーを開発するライトタッチテクノロジーが1.2億円調達
メンタルヘルスのセルフケアアプリ「emol」と早稲田大学が千葉県市原市の職員対象に心理介入実験を実施
グーグルのアップデートで新型コロナワクチン接種記録と検査結果をAndroid端末に保存

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Huma人工知能資金調達新型コロナウイルス

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

神戸市と渋谷区がNOROSI Startup Hubを連携して始動、ライトな起業文化を育てる官民連携プロジェクト

NOROSI STARTUP HUB

神戸市と渋谷区は、2020 年に内閣府による「グローバル拠点都市」に選ばれている。スタートアップ・エコシステムの構築を目指して起業家支援を行なってきたが、VC や起業家コミュニティ、実証実験のフィールドなど、互いの環境を補い合う目的で、2021年7月6日に連携協定を締結した。第一弾として、地域の壁を超えて新たな働き方や価値創造に取り組む『NOROSI Startup HUB(ノロシ・スタートアップ・ハブ)』を開始すると発表した。

起業家育成、人材交流、PR支援といったことはもちろん、新型コロナウイルスの影響もあり一気に普及したオンラインコミュニケーションを促進し、実験都市の神戸と起業家集積都市の渋谷をつなぐ狙い。将来的には女性起業家支援も目指す。本日よりメンバー募集を開始、8月にキックオフ、9月にチームアップ、来年2月にDEMO DAYを予定する。

rriven

チームアップに用いられるアドリブワークスのtriven

チームアップにあたっては、SlackやZoomといった既存のツールも用いるが、今回主催を務めることとなった神戸のスタートアップ、アドリブワークスが提供するアイデア出しやチームアップを推進する「triven(トリブン)」を用いたり、神戸市と渋谷区含む日本各地のコワーキングスペース相互利用サービス「triven Pass(トリブン・パス)」の無料アカウントも特典として配布予定。同社は神戸新聞とトーマツが共同運営する官民連携コミュニケーションスペース「ANCHOR KOBE」と渋谷区のコンソーシアムいずれにも関与しており、そこから今回のツール採択に至ったという。

ANCHOR KOBE

写真のANCORKOBEやROKKONNOMAD、渋谷QWSが場所として協力

本プロジェクトに参加し、ビジネスアイデアを研磨していくにあたり、行政連携、実証実験の協力、両自治体ネットワークの活用、投資家からのメンタリングなどを受けることができる。最終的に実証実験までを目指すため、ある程度の神戸か渋谷へ関与することが望ましくはあるが、アイデア提案者、プロジェクト推進者のいずれかとして日本全土からアイデアを申込み可能。個人、企業の新規事業部門、大学の研究機関など幅広く募集している。

実証実験にスタートアップ支援と意欲的な神戸市

DEMO DAYではテスト画面を用いてのプレゼンも行うことからエンジニアも募集しており、神戸市に集積する大学や高専にも声がけを進めていく予定だという。神戸市は阪神・淡路大震災の教訓から医療機関や研究所の誘致を強化しており、山も海もある環境を生かして実証事件の場所としても機能するよう行政が推進してきた。さらに「若者に選ばれるまち」の実現のためスタートアップ支援に取り組んできているが、2025ビジョンでは、5年間で1000社の支援を目指す。すでにITスタートアップの聖地となっている渋谷区とともに、さらなる成長に取り組む。

新産業課チーム

若手も多く中途で構成される神戸市の新産業課メンバー

神戸市は、市長自らシリコンバレーの著名VC「500 Startups」と会談してイノベーションを自治体でどう起こすか学ぶなど、非常に意欲的な姿勢である。今回の連携を担当した神戸市新産業課のメンバーも、近隣住民や市役所職員からの登用でなく、従来新規事業等に関わってきた外部の人間を中途採用してチームを構成している。職員も「行政でここまで活動的に動かせてもらえる環境は稀有であり、ありがたく感じている」と語った。

【コラム】SPACブームは止まるところを知らず、消費者向けテクノロジーに変化をもたらしている

編集部注:本稿の著者Mike Murphy(マイク・マーフィー)氏はベンチャーキャピタルとプライベートエクイティの機会に焦点を当てたニューヨーク市に拠点を置く投資会社Rosecliff Venturesの創設者兼CEO。

ーーー

消費者向けテクノロジーは本質的にリスクの高い投資分野だ。最良のアイデアであっても、製品のストーリーがエンドユーザーに適切に販売されなければ、失敗に終わる可能性がある。統計ではその時点までのことしかわからない。結局は、顧客はその製品を信頼したいと思っている。

ストーリーをうまく伝え、市場のリーダーになった企業は従来、新規株式公開のルートを選んできた。つまり、自分たちのストーリーを、自分たちの商品を購入する人々ではなく、銀行主導の舞台で機関投資家に売り込んできたのだ。

しかしこの18カ月の間に、金融機関を通さず、優れた経営者と提携し、より直接的に公的資本にアクセスしようとする企業に新たな扉が開かれた。SPAC(Special Purpose Acquisition Company、特別買収目的会社)との合併だ。

適切な消費者向けテクノロジー企業にとって、SPACとの提携は公共資本へのより直接的なアクセスを提供するものとなる。これらの企業は、P&Lを通じて機関投資家を説得するのではなく、製品を利用している個人投資家を含む投資家に対して、長期的にどのような企業になり得るかを説明するためにより多くの時間を費やすことができる。

このような手段が証券取引所で人気を集めていることは間違いない。2020年には200社以上の企業がSPACとの契約を通じて株式を公開した。しかし、どのような資産が注目を集めたとしても、それが爆発的に拡大することを期待する関係者が出てくるだろう。

教訓はすでに得られており、おそらくさらに多くのことが起こるだろうが、SPACを景気回復の終わりを示すものとして扱う人々は間違っている。これらの手段は、従来の門番を排除し、個人投資家が企業のストーリーを買うか売るかを決定できるようにする一方で、公開市場への正当なルートを提供する。

SPACバブルの主張

まず、否定論者の懸念に対処することが重要だ。SPACの活動が急激に増加していることから、アナリストらはこの傾向は誇張されていると推測している。企業の上場が早すぎ、資金を失った者が公的資本を受ける前にそれにアクセスできるようになっていると主張している。

しかし、どのような時期に市場に参入するのが「早すぎる」のだろうか?2020年に最も成功したSPACのストーリーの1つであるDraftKingsは設立から約8年後に株式を公開し、FacebookはIPOまでにほぼ同じ期間非公開だった。一方、世界で最も利益率の高いAppleは、設立から4年に満たない時期に上場した。テニュアは投資家の心を動かす要因かもしれないが、テニュアがなかったからといって上場が止まることはなかった。

収益性がIPOの要件となることも稀であり、Uber、Tesla、Amazonはいずれも損失を計上しながら上場した不採算事業の代表例である。

こうした事例すべてにおいて、明確で一貫性のあるビジョン、強力なリーダーシップチーム、そしてリーダーがビジョンを実行するのを見届ける投資家の忍耐力が、従来的な成功のための財務指標を打開している。

市場はストーリーの評価方法を認識している

株式市場は四半期決算に執着している。1株当たり利益に対するアナリストの予想をわずか1セント下回るだけで、株価は急落する。しかし、すべての企業がこのように評価されているわけではない。多くの企業は、将来のビジョンと目標に向けた進捗状況を評価されている。SPACは、従来の投資を支援する十分な財務データがない場合でも、強力なチームやビジョンに投資する効果的な方法である。

バイオテクノロジー企業は、投資家が市場、特にパンデミック後の市場をどう見ているかを示す優れた時宜を得た例である。バイオテックは通常、開発中の治療法と、それが役立つ可能性のある患者について説明する対象となる市場の推定値、請求可能な価格、臨床試験のスケジュールなどを提供する。しかし、初期段階のバイオテクノロジー企業が医薬品を販売するのは何年も先になる可能性があり、利益を上げること自体は難しい。FDAは、承認申請前の最終段階である第II相および第III相試験の完了までの期間を最長6年と見積もっている。

それでも投資家はこれらの企業に資金をつぎ込んでいる。アナリストらは、詳細な調査の結果、新薬の臨床試験が進行する可能性があるとみているが、これらの企業は損失を出しながらも、株価が何年も上昇する可能性がある。市場はこれらのリスクをとることに対して高いリターンを期待するが、一定の価格に達する可能性がある。

消費者向けテクノロジーのストーリーテラー

SPAC路線は消費者向けテクノロジー企業にとって理想的な選択だ。SPACは従来のIPOよりも経営陣とビジョンに重点を置いており、この業界は常に先見の明のある企業に支配されてきたため、同セクターに恩恵をもたらしている。

SPACに投資している投資家たちは今後、Direct-to-Consumer(直接消費者に繋がる)テクノロジーに注目すると思われるが、それは従来の限られた意味でのD2Cではない。

消費者は、これまで以上に迅速かつ確実にアクセスできる商品やサービスを求めている。幸い、テクノロジーによってこれらの選択肢を増やすことに成功する傾向のある企業は、自社製品をエンドユーザーに直接届ける方法を知っている自然なストーリーテラーだ。必然的に、これらの企業はSPACの投資家から注目されることになる。

例えばフィンテックは、顧客の携帯電話に直接バンキング機能を提供し、多くの側面においてDirect-to-Consumerとなっている。2020年には、遠隔医療の革新により、ほとんどの医療予約が待合室からリビングルームに移行し、旧式の医療管理手法がデジタルシステムを採用することを余儀なくされた。

マットレスのような実店舗でしか入手できなかった商品が、CasperやPurpleなどの企業によって自宅に直接配達されるようになった。自動車メーカーの中には、ピザを注文するのと同じくらい簡単にクルマをデザインして購入できるところもある。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、テクノロジーを活用したより迅速なサービスへのアクセスの必要性が顕在化したことで、この傾向はさらに加速している。そして私たちが「平常に戻る」ためには、この傾向が高まることが必要だ。SPACは、これらのアイデアをより早く市場に投入し、これらの企業が需要を満たすために必要な資金を提供するために存在する。

この先にある道筋

憶測、否定、そして「バブル」のような印象にもかかわらず、SPACは何十年も前から存在しており、一瞬にして消滅することはなさそうだ。実際のところ、SPACとの契約のペースは落ち着くかもしれないし、トレンドが続くにつれてリスクプレミアムも高くなるかもしれないが、消費者向けテクノロジーの変化と同じように、SPAC自体も消費者に最良のサービスを提供するために進化するだろう。

SPACモデルは多くの点で、消費者向けテクノロジーの発展と非常に類似している。つまり、確立された構造の破壊を促進するものであるということだ。さらに、取得前のSPACへの投資家は、そのような投資に従来必要とされていた資本を必要とせずに、ベンチャーのような機会にアクセスすることができる。

最終的には、企業の成功は、目標を達成するか上回るか、あるいは何らかの要因で需要が引き伸ばされるかにかかっている。ルールは変わっていないし、リスクも報酬も変わらない。

関連記事
巨大なSPACが現われるかもしれない
世界最大のSPAC合併で配車サービスGrabがNASDAQ上場へ
SPACの作るグラフは誇大広告の限界を探るものになっている

カテゴリー:その他
タグ:SPACコラム

画像クレジット:PM Images / Getty Images

原文へ

(文:Mike Murphy、翻訳:Dragonfly)

生データを大規模なリアルタイム分析APIに変えるTinybirdがシードで約3.3億円調達

Tinybirdは、開発者がインフラやクエリ時間など、巨大なデータセットを扱う際に生じる煩わしい問題を気にすることなく、大規模なデータ製品を構築できるよう支援する新しいスタートアップだ。同社は大規模なデータを取り込み、SQLを使ってデータを変換し、そのデータをAPIエンドポイントで公開する。

ここ数年、アナリティクスやビジネスインテリジェンス製品は、我々がデータを扱う方法を大きく変えた。現在、多くの大企業では、データウェアハウスやデータレイクにデータを保存している。そして、それらのデータセットからインサイトを得ようとしている。

とはいえ、データの抽出や操作にはコストがかかり、時間もかかる。四半期ごとの業績を発表するためのパワーポイントを作成するのには有効かもしれない。しかしそれでは、最新のウェブ製品やデータ製品を作ることはできない。

「Tinybirdで取り組んでいるのは、開発者があらゆる規模のデータ製品を構築できるようサポートすることです。そして、当社はリアルタイム性に重点を置いています」と、共同創業者兼CEOのJorge Gómez Sancha(ホルヘ・ゴメス・サンチャ)氏は語ってくれた。

共同設立者のチームは、もともとCartoで出会った。彼らはすでにそこで、複雑なデータの問題に取り組んでいた。「毎年、人々は桁違いのデータを持ってきていました」とゴメス・サンチャ氏は語る。そこから生まれたのが、Tinybirdだ。

画像クレジット:Tinybird

同社の製品は、3つの部分に分けられる。まずユーザーは、自分のTinybirdアカウントとデータソースを接続する。すると、それらのデータソースから連続的にデータを取り込むことができる。

次の段階としてユーザーは、そのデータをSQLクエリを通して変換できる。コマンド行インターフェースに加えて、ウェブインターフェイスでもSQLクエリを入力し、複数のステップに分けて、すべてを文書化できる。クエリを書くたびに、そのクエリに従ってデータがフィルタリングされたりソートされるのを見ることができる。

3つ目は、これらのクエリに基づいてAPIエンドポイントを作成することだ。その後は、標準的なJSONベースのAPIのように動作する。それを使って、自分のアプリケーションでデータを取得することができる。

Tinybirdの特徴は、まるでリアルタイムでデータを照会しているかのような高速性にある。「当社のお客様の中には、Tinybirdを介して1日平均1.5兆行以上を読み取り、1日に約50億行をインジェストしている組織もあれば、数十億行のデータセットを照会するために当社のAPIに1秒あたり平均250回のリクエストを行っているケースも多くあります」とゴメス・サンチャ氏はメールで書いている。

舞台裏では、同社はClickHouseを使っている。しかし、Tinybirdがすべてのインフラを管理してくれるので、ユーザーがその点を心配する必要はない。

現時点で、Tinybirdは3つの有望なユースケースを特定している。顧客は、製品内アナリティクスを提供するためにTinybirdを使用することができる。例えば、ウェブホスティングサービスを運営していて、顧客にアナリティクスを提供したい場合や、オンラインストアを運営していて、顧客に購買データを表示したい場合など、Tinybirdはそのような用途に適している。

また、同社の顧客の中には、社内で共有できるリアルタイムダッシュボードなど、オペレーショナルインテリジェンスのためにこの製品を利用するケースもある。チームはより迅速な対応が可能になり、すべてが正常に稼働しているかどうかを常に把握することができる。

また、Tinybirdを自動化や複雑なイベント処理の基盤として使用することもできる。例えばTinybirdを活用することにより、トラフィックをスキャンしてリアルタイムに反応するウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)を構築することなどができる。

Tinybirdは、Crane.vcが主導するシードラウンドで300万ドル(約3億3000万円)の資金を調達した。また今ラウンドには、GitHubのNat Friedman(ナット・フリードマン)CEO、Algoliaの共同創業者であるNicholas Dessaigne(ニコラス・デサイーグ)氏、VercelのGuillermo Rauch(ギレルモ・ラウチ)CEO、GitHubのJason Warner(ジェイソン・ワーナー)CTO、元HerokuのCEOであるAdam Gross(アダム・グロス)氏、Collibraの共同創業者兼CTOであるStijn Christiaens(スティーン・クリスティアン)氏、Auth0の共同創業者兼CTOであるMatias Woloski(マティアス・ウォロスキー)氏、Hybrisの共同創業者Carsten Thoma(カーステン・トーマ)氏など、多数のビジネスエンジェルが参加している。

関連記事
AIリスク情報配信FASTALERTの「リアルタイムAPI」機能がアップデート、災害ビッグデータの網羅性が国内最大級に
Visaが欧州の主要フィンテック企業、オープンバンキングプラットフォームのTinkを約2380億円で買収
アップルがようやく開発者向けにスクリーンタイムAPIを公開

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Tinybird資金調達API

画像クレジット:Nana Smirnova / Unsplash

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

LINE側サーバーに相談情報が残らない、内閣サイバーセキュリティセンターのLINE利用ガイドライン対応SNS相談システム

LINEを活用したシステムを開発するタビィコムは6月28日、官公庁・自治体・団体が実施するSNS相談(いじめ・税務・法律・妊婦相談、窓口・問い合わせ業務など)事業向けの同社SNS相談システム「e 相談」において、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)のLINE利用ガイドラインに対応させたことを発表した。

内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は2021年4月、「政府機関・地方公共団体等における業務でのLINE利用状況調査を踏まえた今後のLINEサービス等の利用の際の考え方(ガイドライン)」を発表しており、政府機関・地方公共団体などはこれに準拠したLINEサービスの利用システムが求められている。

内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)のLINE利用ガイドライン(抜粋)

  • 「相談業務等のコンタクトポイントの一つとしてLINEサービスを利用する場合は、相談内容等の機密性を要する情報等がLINE社側に残らず、これらの情報は委託先等のデータベースに直接格納・保管されるシステム構成とすること」
  • 「各行政主体は、これらの措置を委託先に担保させるため、委託先に対して、事前にこれらの事項を確認したうえで各主体にLINEサービス利用の承認を求めるとともに、定期的に利用状況を報告することを委託先への仕様内容に含める、また、各行政主体は本ガイドラインに則って、委託先によるLINEサービス利用の可否を判断する。ただし、身体人命に危険が及ぶ可能性の高い相談事業(いじめ、虐待相談等)において、緊急性を要する相談(画像含む)がLINEサービス上で寄せられ、例外的にLINEサービス上で要機密情報を含む緊急対応をすることは排除されない。」

ガイドライン準拠システムについて自治体・団体から問い合わせがあったことから、タビィコムは、官公庁・自治体・団体ごとの運営ポリシーによって「従来型のLINE相談」と「NISCのLINE利用ガイドラインに対応したLINE相談」のどちらでも選択できるよう、e 相談の新機能としてリリースしたという。この仕組みは、企業・大学・医療機関など様々なLINE相談のニーズにも対応可能としている。

同機能では、LINE公式アカウントをコンタクトポイントとして利用し、LINEの中でウェブブラウザーを立ち上げ、ウェブチャットにより相談を行える。同チャットは、LINEが提供するウェブアプリのプラットフォーム「LIFF」を利用しており、相談内容は暗号化して通信を行うほか、LINE公式アカウントと友だちになった相談者のみが閲覧・利用できる。

またこれらはLINEのサーバーにはデータが残らない仕様となっており、すべてのデータは日本国内に設置されたサーバーにデータが暗号化されて保管される。利用者のプライバシーに関するアンケートや質問内容を行った際も、質問内容と回答結果が、LINEのサーバーにデータは残らない仕様を採用している。

このほか、e 相談は以下機能を備えているという。

  • LINEからの相談はウェブブラウザーベースの有人対応画面で相談員が応答
  • 定型文、スタンプ、画像などを送信できる
  • 相談を他の相談員に引き継げる
  • 過去の相談履歴を確認しながら相談員が対応できる
  • 相談受付時間、曜日が設定可能
  • 相談員が同時に対応できる相談数を設定可能
  • 相談先の部署ごとに相談内容の閲覧制限がかけられる
  • 警察などの関係機関と連携するために必要な情報を提供できる
  • ウェブチャットを利用した相談機能

また相談員に相談する前にAIなどによる自動応答メッセージやボット(Bot)を設定することで、相談員の業務負担軽減を図ることも可能だ。

関連記事
EUが第三国へのデータ移転に関する最終ガイダンスを発表
LINEがデータガバナンスに関する現状認識を発表、海外保管のトークデータを完全国内移転へ

カテゴリー:GovTech
タグ:個人情報 / 個人情報保護(用語)タビィコム(企業)LINE(企業・サービス)日本(国・地域)

Appleシリコン「M1チップ」搭載MacでLinuxのネイティブ動作がついに実現、Linuxカーネル5.13が公式サポート

Appleシリコン「M1チップ」搭載MacでLinuxのネイティブ動作がついに実現、Linuxカーネル5.13が公式サポート

Linux Kernel 5.13がリリースされ、M1チップ搭載Macの公式サポートが表明されました。これは4月に可能性が言及され、5月にはLinux Kernel 5.13 RC(リリース候補)がリリースされたことに続くもので、足かけ数か月にわたる苦闘の末にこぎ着けたかっこうです。

今回の発表は、前回のRCと同じくLinux生みの親であるリーナス・トーバルズ氏が自らメーリングリストで行ったものです。そのなかでトーバル氏はKernel 5.13全体の規模はかなり大きく、2000人以上の開発者から 1万6000以上のコミット(マージを含めると1万7000以上)が行われるほどだったと振り返っています。

そんなKernel 5.13では、AppleシリコンM1チップを含むArmアーキテクチャに基づく複数のチップがサポートされています。これによりM1搭載のMacBook Air、MacBook Pro、Mac miniおよび24インチiMacでLinuxをネイティブに実行できるようになります。

これまでにもParallelsの仮想環境Corellium社の移植版によりM1 Mac上でLinuxを実行することは可能でしたが、いずれもネイティブ動作ではないため、M1チップの性能を最大限に引き出すことはできませんでした。それがAsahi LinuxプロジェクトのHector Martin氏ほか多数の開発者が力を合わせたことで、ようやく現実のものとなりました。

しかしLinux情報サイトPhoronixによると、Linux 5.13では「Apple M1に対する初期のサポートとして、基本的な機能は提供されるが、グラフィックスのアクセラレーションはまだ提供されず、さらに多くのことを解決しなければならない」とのことです。M1の仕組み、特にGPUの仕様が非公開で独特すぎるために移植が苦戦していることは、早い時期から伝えられていました。

最新の Linux Kernel 5.13 では、Landlocked LSM、Clang CFI のサポート、システムコールごとにカーネルのスタックオフセットをランダム化するオプションなどのセキュリティ機能が搭載。ほかFreeSync HDMIもサポートされており、いつの日かM1内蔵GPUの力も発揮できるようになることを祈りたいところです。

(Source:LKML Archive on lore.kernel.org。Via:9to5MacEngadget日本版より転載)

関連記事
インテルのノートPC向けCPU市場シェアがAppleシリコンの影響で大きく落ち込む可能性、AMDはシェア堅持か
ファーウェイ独自OS「HarmonyOS 2.0」のオープンソース版がIoT機器向けに公開、Linuxか独自カーネルを選択可能
Linuxカーネル5.13のリリース候補版RC1がAppleシリコン「M1」搭載Macを正式サポート
6月公開予定のLinuxカーネル5.13がAppleシリコン「M1」搭載Macをサポート開始の可能性
NVIDIAとMediaTekがChromium・Linux対応リファレンスプラットフォーム開発で連携、RTX GPUとArm採用ノートPCを示唆
Appleシリコン「M1」MacでLinux直接起動を目指す「Asahi Linux」、独自ブートローダーm1n1開発

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Asahi LinuxApple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)Arm(企業)OS / オペレーティングシステム(用語)オープンソース / Open Source(用語)Linux(製品・サービス)Linus Torvalds / リーナス・トーバルズ(人物)

今週の記事ランキング(2021.6.20〜6.24)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「【解決法更新】Androidスマホで「Googleが繰り返し停止しています」エラー多発、Google Japanが「不具合を修正中」として解決策を試すよう呼びかけ」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

Snapがビデオで使える音楽の拡充でユニバーサル・ミュージックと提携

Snap(スナップ)は6月24日、世界最大の音楽会社の1つであるUniversal Music Group(ユニバーサルミュージックグループ、UMG)との複数年契約を発表した。QueenからJustin Bieberに至るまで、ユーザーは自分のSnapsの中で、そしてTikTokと競合するSpotlightで使うために広大なUMGのカタログから曲をクリップできる。

今回の発表に先駆けてSnapchatは昨年10月、Sounds機能を加えていた。この機能ではユーザーはSnapがライセンスを獲得した音楽で自身のSnapsを充実させることができる。機能を追加して以降、5億2100万本超のビデオがSoundsを使って制作され、310億回超閲覧されたとSnapは話す。

もちろん、Snapchatの音楽への投資はTikTokで使える音楽が増えていることへの直接の対応だ。昨年、Fleetwood Mac(フリートウッドマック)のレコードに収録された曲「Dreams」がTikTokで流行った後、1977年のアルバム「Rumours」がビルボードに再登場した。TikTokではダンスもよく流行っていて、そうしたダンスで曲が採用されたアーティストの売り上げを支えている。なので、TikTokやSnapchatのようなアプリがライセンスを取得した曲が多いほど、Nathan Apodaca(ネイサン・アポダカ)氏のような機会、つまり無料の宣伝は多くなる。

Olivia Rodrigo(オリビア・ロドリゴ)氏のようなZ世代アーティストは、すでに新しい音楽を宣伝するのにこうしたソーシャルプラットフォームを活用してきた。Snapでは、ロドリゴ氏の曲「Driver’s License」を使ったビデオが1000万本制作された、とSnapは指摘する。ロドリゴ氏はまた、記録破りのデビュー曲「Sour」を宣伝するためにSnapchatでAR Lensesを使った初めてのアーティストでもあったが、公平のために言うとロドリゴ氏はInstagramでもARエフェクトを共有した。

オリビア・ロドリゴ氏は新しいアルバムで「deja vu(デジャブ)」について歌っているが、Snapの発表からもデジャブ感を受けるかもしれない。TikTokはまた、2月にUMGと提携を結んだ。その前の2020年11月には、TikTokはソニーとの新たなライセンス契約合意を発表した。一方、Snapの音楽パートナーのポートフォリオにはWarner Music GroupやSony Music Publishingなどが含まれる。

これらの提携は独占ではない。「deja vu」を使ってSnapchat、TikTok、Instagramなどでビデオを制作できる。こうした提携は他者を出し抜くための、常に繰り広げられる戦いだ。もしTikTokがUMGと提携すれば、Snapchatは競争力を保つために同様にUMGと提携する必要があり、これは現在我々が目にしているものだ。我々の友オリビアが言うように、厳しい世界だ。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジットSnapchat

[原文へ]

(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi