事業者向けのWhatsApp BusinessがiPhoneでも使えるように

WhatsAppが正式に事業者向けのアプリを発表してから1年以上になるが、最初にAndroidでのみの展開だったWhatsApp Businessアプリは今日からiPhoneでも使えるようになった。Facebook傘下のWhatsAppによると、WhatsApp Businessはデビュー以来、世界中の何百万もの事業者に受け入れらてきたが、顧客から最も多かった要望はiPhone用アプリの展開だった。

Androidバージョンと同様、iOSバージョンは小規模事業者がスマホ上で顧客とつながれるようにデザインされている。

つまり、事業者が事業内容や電子メール、住所、ウェブサイト、そして自動応答のあいさつやクイックリプライ、留守メッセージといったメッセージツールを含むプロフィールを作成することができる。

事業者はまたデスクトップコンピューターからもWhatsApp Businessを利用することができ、ここでは今年1月にチャットやクイックリプライを整理してフィルターにかけるツールの展開が始まった。その当時、「WhatsAppは500万の事業者が利用している」と答えていた。

iOSアプリはメキシコのiOS App Storeでテストされていたが、4月4日から正式展開する。

WhatsApp Businessプラットフォームは、インターネット初心者がウェブを利用するのにコンピューターの使用をスキップし、その代わりモバイルデバイスを通じてネットにつながるような新興マーケットにおいてWhatsAppの成長の鍵を握るものだ。そこでは多くのユーザーにとってWhatsAppはウェブへのポータルとなる(親会社のFacebookはもっとそうかもしれないが)。

メーンのWhatsAppアプリを通じてユーザーは友達や家族とつながり、関心事にフォーカスしているグループに加わり、ニュース(または、残念ながらフェイクニュースやでっち上げといったWhatsAppがいま防ごうとしているもの)を受け取る。事業者と簡単に連絡がつくというのは、顧客にサービスを展開するというだけでなく、収益をあげるという意味においてWhatsAppにとって明らかに次のステップとなる。

WhatsAppは、大量のメッセージを受信するBusiness API顧客に課金することで収益を得る。iOS向けの無料WhatsApp Businessアプリはブラジル、ドイツ、インドネシア、インド、メキシコ、英国、米国のApp Storeで今日から利用できる。

WhatsAppは「今後数週間内にさらにいくつかのマーケットで展開する予定」としている。

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(翻訳:Mizoguchi)

Uberの旅行コンシェルジュ版目指す「tabiko」が6000万円を調達

写真左からFAST JAPAN代表取締役の片野由勇岐氏、最高技術責任者のKrishna Prahasith氏

「目指しているのは旅行コンシェルジュ版のUberのようなサービス。数百万人がドライバーとしてUberに参加しているように、世界中からユニークなコンシェルジュが集まるプラットフォームを作っていきたい」

そう話すのは訪日観光客向けのチャットコンシェルジュアプリ「tabiko(タビコ)」を展開するFAST JAPAN代表取締役の片野由勇岐氏だ。

これまでは日本を訪れる観光客の悩みを、自社で採用したコンシェルジュがチャットを通じて解決していた同サービス。5月からはまさにUberやAirbnbのように、旅行情報を持つ人がコンシェルジュとして参画できる「コンシェルジュプログラム」をスタートする。

FAST JAPANは4月5日、同プログラムの基礎固めを含めてtabikoをより強化する目的で、複数の投資家より6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はDGインキュベーションとキャナルベンチャーズ、そして既存投資先であるKLab Venture Partnersの3社だ。

訪日観光客の悩み事をチャット上のコンシェルジュが解決

2017年2月にローンチされたtabikoはチャット上で訪日観光客にコンシェルジュサービスを提供するアプリ。観光地や交通情報の案内、宿泊施設・レストランの予約を始め、旅行に詳しいコンシェルジュが様々な相談に乗ってくれる。

チャットボットなど機械ベースのものではなくあくまで人間のコンシェルジュが対応する仕組みなので、幅広い悩みやちょっとしたリクエストにも応じられるのがひとつのウリ。「タクシーで忘れ物をしてしまったのだけどどうすればいいか?」といった困り事が寄せられる場合もあれば、「日本で彼女にプロポーズをしたい」という男性ユーザーを手助けするといった場合もあるという。

「旅行に関するプロダクトは増えてきているが、その多くは“予約”という領域に着目したもの。旅行者にとって必要なのは予約だけではない。tabikoは旅の始まりから終わりまで全てのサポートを、コンシェルジュと共にデザインしていきたいという思いで運営してきた」(片野氏)

現在は英語と中国語(繁体字)の2言語に対応。これまで広告によるプロモーションはほとんど実施しておらず、口コミを軸にオーガニック経由で約13万人の会員を獲得した。

ユーザーにとっては、検索エンジンや旅行系のメディアを通じて毎回苦労しながら調べていたような情報を、現地に詳しいコンシェルジュからすぐに仕入れられるのがtabikoを使うメリットだ。たとえばレストランの予約は日本を訪れる外国人にとって大きなペインポイントであり、片野氏によると毎月数千件のレストランをtabikoがユーザーに代わって予約しているという。

ローンチから2年を迎えた今年の2月にはサービスをリニューアルし、コンシェルジュに対してチップを支払える「Star Rewards(スターリワード)」機能を導入。ユーザーは各チャットごとにマイクロ課金ができるほか、コンシェルジュのプロフィールから大きめの課金をすることが可能になった。

「昨年はtabikoのコアバリューではないホテルや航空券の販売を通じてマネタイズをしようとしてしまっていた。そこを欲していたのは一部のユーザーで、全ユーザーにとって本当に価値となっているのはコンシェルジュの部分。マネタイズもその体験に紐付けるべきだと考えた」(片野氏)

Star Rewardsはまだ始まったばかりの仕組みではあるけれど、開始後1ヶ月で約10%のユーザーが1回はチップを払っていて、手応えを感じているという。

Uberの旅行コンシェルジュ版目指し、新たな取り組みも開始

冒頭で触れたように、tabikoでは5月から新しくコンシェルジュプログラムを取り入れる計画。自社で採用したコンシェルジュだけでなく多様な人材が同サービスに参画することで、今まで以上に幅広いニーズに応えられるプラットフォームへと進化させるのが狙いだ。

「(自社で採用したコンシェルジュだけに限定してしまうと)提供できる価値も限られてしまう。世の中にはローカル特有の情報やユニークな旅行体験を持つ人がたくさんいるので、そういった人にコンシェルジュとして参画してもらい、旅行者と繋がれるようなサービスにしていきたい」

同プログラムを通じてtabikoに加わるコンシェルジュは、隙間時間を活用しながら旅行者への情報提供を行う。片野氏の話では上述したチップの機能などとも連動し、獲得したStar Rewardsや対応したチャット数、需給バランスなどを加味した上で報酬を支払うモデルを考えているという。

またAirbnbのホストであれば、自身が同サービス上で掲載しているリスティングや旅行体験を積極的に紹介するのも問題ないとのこと。「ホスピタリティに溢れたコンシェルジュはtabikoの特徴」(片野氏)であり、その点ではAirbnbのホストと相性が良いというのが片野氏の考えだ。

今回調達した資金も、コンシェルジュプログラムを含めたプロダクトの基盤強化に用いる方針。今後は日本だけでなくグローバルでのサービス展開も見据える。

「コンシェルジュが増えてユニークな旅行体験を提供できるサービスができれば、より多くのユーザーが集まるようになる。このモデルが積み上がりコンシェルジュがtabikoを通じて稼げるようになるとスケールできるので、まずはそのモデルの構築を目指していく」(片野氏)

FAST JAPANは2015年11月の創業。片野氏は大学4年時にオンラインギフト事業で一度起業していて、同社が2度目の起業となる。もともとはLINEなどを通じて旅行の相談ができるチャットサービスや旅行メディアなどを展開していたが、サービスの軸を変える形で2017年2月にtabikoをスタートした。

創業期に現メルペイ取締役CPOの松本龍祐氏(当時はソウゾウ代表取締役)から、2016年にはKLab Venture Partnersなどから資金調達を実施。それ以降もベンチャーユナイテッドやエウレカ創業者の赤坂優氏を含む複数のエンジェル投資家より出資を受けているという。

中国テンセントが社債発行で6700億円調達へ

アジア最大のテック会社Tencent(テンセント)が60億ドル(約6700億円)調達しようとしている。香港に上場している同社が今日、社債発行を発表した。

Tencentは2018年1月に50億ドルを調達している。今回は5本立ての発行で、これは今週初めに報じられた内容とほぼ同じだ。その報道では、50億ドルを調達しようとしていると推測されていた。社債は4月11日に発行されるとTencentは話した。

新たに調達する資金を何に使うのかは明らかではない。Tencentは発表文では詳細を語っておらず、この記事執筆時点でコメントの求めにも応じていない。

「Tencentはかなりのキャッシュポジションと豊富な上場証券を持っていて、財務内容は健全だ。今後も引き続き財務面をしっかり管理し、資本支出、投資、収益の正しいバンラス維持に努める」とCFOのJohn Lo氏は発表文で述べている。

Tencentは、中国で人気のメッセージアプリのWeChaで知られている。また、儲けの多いゲーム事業、そしてフィンテック、クラウド、ソーシャルメディアなども展開している。加えて、中国外の企業への投資も増やしていて、RedditSnapTeslaなどに出資しているほか、中国の公共事業もサポートしてきた。

Tencentの成功は、アジアで初の5000億ドル企業になった2017年末がピークで、その後は紆余曲折をたどっている。特に昨年は中国政府がゲーム向けの新たなライセンスの発行を凍結したことで売上を大きく減らし、そして投資家にも背を向けられかなり苦しんだ。

しかし、2019年は明るい兆しが見えている。中国のゲームライセンス発行が再開し、またIPOで40億ドルを調達したMeituanへの投資のおかげで再び増収となっている。Tencentは収益面でのゲーム事業依存を見直そうと、大きな組織再編も実行した。直近の四半期決算は全体的に芳しいものではなかったが、ソーシャルメディアやクラウドコンピューティング、フィンテックといった新手の事業が成長を見せた。Tencentの株価は2018年末から20%ほど上昇していて、これにより時価総額は約4560億ドルとなっている。

イメージクレジット: Qilai Shen/Bloomberg

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(翻訳:Mizoguchi)

クラウド上でレンダリング可能なAdobe Dimension CC

アドビは米国時間4月3日、2Dおよび3Dの合成ツール、Dimension最新版のリリースを発表した。Creative Cloudの最新メンバーだ。新しいリリースには、2つのハイライトがある。1つは、まだベータ段階だが、クラウドレンダリング。もう1つは、AllegorithmicのSubstance Designerから、Substanceマテリアルをインポートできることだ。

Dimensionでのクラウドレンダリングは、クラウドそのものと、その長期的なビジネスについて、アドビがどのように考えているかを端的に表す機能だろう。ユーザーは、この新機能を使って、レンダリングの負荷から自分のマシンを開放し、それをクラウドに転嫁することができる。3Dコンテンツの生成には、どうしても多大な計算能力が必要となる。特に最終的に高解像度の作品に仕上げたいという場合はなおさらだ。最近のノートパソコンやデスクトップ機なら、そうした画像を生成するのに必要な性能は備えている。それでも、多くのリソースが必要となり、一時的にせよマシンの反応が悪くなることもある。ファンも高速に回転する。

クラウドレンダリングを実現するには、アドビとしてもクラウドリソースに対する出費が必要となる。それは安いものではない。そこで、この機能を使用するために、すべてのCreative Cloudユーザーに、15の無料レンダリングクレジットが提供される。1回のレンダリングごとに、1から3クレジットが必要となる。これは、画像の品質によって異なる。今のところ、この15のクレジットが、ユーザーが手にできる最大のものだ。ベータ期間中は、クレジットを買い足すことはできない。アドビは、ベータ期間終了後も、ユーザーに無料のレンダリング機能を提供したいと言っているものの、CCの有料メンバーが何クレジットもらえるのか、クレジットを追加購入する場合の料金体系はどうなるのか、などは明らかにしていない。

ベータ期間中は、画像サイズは2000×2000に制限されている。自動ノイズ除去は無料で利用できる。

この技術をアドビがどう扱っているかを見れば、ビデオのレンダリングなど、他にもコンピュータにとって重い処理に応用しようと考えていることがよく分かる。

Allegorithmicのサポートも、まったく驚きではなかった。アドビは、すでにこの1月に同社を買収していたからだ。Allegorithmicは、テクスチャやマテリアルを作成するツールを開発している会社で、ゲームのクリエーター、視覚効果アーティスト、デザイナーなどに利用されている。Dimensionは、Substanceのネイティブなファイルフォーマットをサポートするようになった。そのマテリアルは、スマートテクスチャと呼ばれるパラメータベースのものなので、利用するシーンに応じて簡単に調整できる。

その他の新機能としては、3Dモデル上の高解像度グラフィックの品質向上がある。たとえば、3Dのボトルの上にロゴを貼り付けるような場合だ。従来、多少ピクセルが荒い感じに見えていたのだが、今では高い解像度が維持されるようになった。さらに、DimensionもCCライブラリをサポートするようになった。これは、アドビのCreative Cloudに含まれるアプリ間でアセットを共有するためのサービスだ。たとえば、Photoshopで画像を編集すると、更新された画像がDimensionでもただちに利用可能になる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

MySpaceの大規模データ喪失の前に集めた45万曲をInternet Archiveがアップロード

先月、MySpaceが2016年よりも前までにアップロードされたユーザーデータの大半を失ったことが露呈した。その中には、2003年から2015年までの、おそらく数百万曲はあると思われる音楽もある。これは、このサイトをもう利用していないユーザーにとっても、いつまでもあるのが当たり前と思っていた人たちには大きな損失だ。それはソーシャルメディアといえばMySpaceと言われた時代から今日までのネット上のスクラップブックみたいなもので、利用者の中には一般消費者だけでなく自分の作品をMySpace上で宣伝していたミュージシャンもいる。しかしInternet ArchiveがホストしているMP3のコレクションで、失われた音楽と(そして思い出を)取り返すユーザーがいるかもしれない。

【Internet ArchiveからのMySpaceコレクションの通知】

そのコレクションはMySpace Music Dragon Hoardと名付けられ、45万曲が収まっている。失われた音楽は、推計によると1400万人のアーティストの5300万曲と言われているから、45万人は微々たる量だが、有名アーティストの初期の作品もある。Twitterのユーザー@pinkpushpopが見つけたのは、Donald GloverやKaty Perryなどだった(下図)。

【よそでは絶対見つからないのもあるわ】

Internet ArchiveのJason Scott氏によるTwitterのこの投稿によると、このコレクションを編纂したのは「匿名の研究者グループで、これまで彼らは音楽ネットワークについて研究し、その過程で1.3TBのmp3を2008年から2010年にかけてのMySpaceを調べるために集めた」。そしてデータ喪失を知った彼らは、そのコレクションをScott氏に提供した。

喪失はデータのマイグレーションの間に起きたようだが、MySpaceはその状況について口を閉ざしている。だから、データ喪失は偶発的ではなかった(故意だった)と思わざるをえない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Amazonサードパーティいじめをやめる、検索結果で自社ブランド商品を目立たせる宣伝廃止

あなたもAmazonの検索結果が、Amazon Basics、Mama Bear、Daily Ritualといった同社のプライベートブランドの宣伝に圧倒されている、とお感じではないだろうか。企業が大きくなって議員たちに詮索されることの多くなったAmazonは、同社のプライベートラベルの製品のバナー広告など、あまりにも露骨な宣伝を静かに削除し始めた。そのことを報じたCNBCは、Amazon上のセラー(売り手、出店者)やコンサルタントにも取材している。

自分のプライベートブランドのための強力なマーケティング活動により、その広告が検索結果では他社よりも上に出るというAmazonのやり方は、反トラストの懸念を招いている。同社の日に日に強まる米国小売市場に対する支配力は、何年も前から精査され監視されている。しかし先月は、マサチューセッツ州出身の上院議員で民主党の大統領選挙予備選の候補であるElizabeth Warren氏が、AmazonやGoogle、Facebookのような巨大インターネット企業は分割すべしと発言してから、その圧力がさらに強まった。Warren氏のこの提案では、年商250億ドル(2兆8000億円)以上のプラットホームは分割対象となっているから、Amazon MarketplaceとAmazon Basicsは分割され、買収したWhole FoodsやZapposもスピンアウトしなければならなくなる。

バナー広告はないが、「black jersey tunic」(黒のジャージーのチュニック)の検索でDaily Ritualが結果の上位を独占している

Amazonのプライベートブランドは、このプラットホーム上のサードパーティのセラーにとって急速に大きな脅威になりつつある。そのブランドは2016年には約10種類あまりだったが近年増え続けて、今や電池やスピーカー、赤ちゃん用ウェットティッシュなどではAmazon上のトップブランドになりつつある。Amazonプライベートブランドは、TJI Researchによると、現状で、Amazonのプライベートラベルが135種あまり、Amazonオンリーの独占ブランドが330種ある。

Amazonは効率のいいサプライチェーンを抱えて高い利益率を享受しているが、それもサードパーティセラーを苦しめる。しかも、競争のために値下げをしても、Amazon上の検索結果ではAmazonのブランドばかり検索結果の上位に出るから、サードパーティブランドに消費者が着目しない。つまり、値下げをしてもAmazonのプライベートブランドに対抗できない。

Amazonが最近、反トラストの嫌疑を避けるためにやったことの中には、サードパーティセラーに対する価格均等要件の廃止がある。これは、同じ製品を他のサイトでAmazon上より安く売ってはいけない、という要件だ。

本誌TechCrunchは今Amazonにコメントを求めている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

CloudflareのWarpはVPNなんて知らない人のためのVPN

2010年にTechCrunchのステージでデビューして以来、Cloudflareはインターネットの高速化と近代化に注力してきた。しかしモバイルについては、最近まで手つかずの状態が続いていた。米国時間の4月1日に、同社はWarpと呼ばれる新しいサービスを発表した。「VPNが何の略か知らない人のためのVPN」と銘打たれている。

実際にVPNが何の略なのか知らなくても、それほど恥ずかしくはない。VPNはVirtual Private Network(仮想プライベートネットワーク)の略だ。ユーザーと広域のインターネットとの間に入る仲介役として機能する。それによって、インターネットへの接続方法を、いろいろな意味でカスタマイズできるようになる。たとえば、見かけのアドレスを変更して、IPベースのトラッキングを回避することなどが可能となる。

こうしたサービスの問題点は、その多くがあまり善良とは言えないこと。これまでに聞いたこともないような会社に、インターネットのトラフィックをすべて委ねてしまうのは、あまり良い考えではないと誰でも思う。最も大きく、最も実績のあるVPNプロバイダーでさえ、まったくなじみのある名前とは言えない。さらに、そうしたサービスでは、反応の悪さなど、パフォーマンスの問題が発生しがちだ。ただでさえ、モバイルのウェブには問題があるというのに。細かな設定や調整が可能となっている場合もあるのが救いだが、普通のユーザーは、なかなかそこまでしない。

CloudflareのCEO、Matthew Prince氏のブログ記事によれば、Warpは、VPNの利点の多くを、何の欠点もなく提供するという。しかも接続スピードは速くなり、同時にプライバシーとセキュリティも確保される。

「私たちはこのアイデアに、3〜4年間も取り組んできました」と、Prince氏は言う。最初は、新たなブラウザを作るというアイディアもあった。「しかし、それはばかげた考えでした」とも。アップルとグーグルが潰しにかかるのは必至だからだ。また、今ではほとんどが、モバイル環境で使われるアプリベースで動いているので、最も効果的なのは、アプリと広域のインターネットの間のレイヤーに入り込むことだと考えている。「だからVPNなのです。しかも私たちにとって、まったく道理にかなったものでもあるのです」。

しかし彼らは、多くの小規模なVPNプロバイダーと競って、ニッチなパワーユーザーを横取りするようなことはしたくなかった。

「正直に言って、既存のほとんどのVPNユーザーにとっては、おそらくWarpは最適なソリューションではありません」と、Prince氏は認めている。「旅行中でもNetflixにアクセスできるように、実際とは違う国にいるように見せたいとしましょう。そのようなサービスを提供する業者はたくさんあります。しかし、私たちが狙っているのは、そのような市場ではありません。私たちは、もっと多くの人にとって魅力的なものを提供したいのです。すでにある市場を奪い合おうとしているのではありません」。

何百万ものユーザーにとって、欠点のないデフォルトのサービスとなるために、Cloudflareはそれほど多くの部分をゼロから開発したわけではない。ネットワーク分野の最先端にいる開発者によって生み出されているものを採用した部分も大きい。Wireguardによって開発された、もともと効率的なオープンソースのVPNレイヤーに手を加えて、さらに効率的なものにした。また、そこにNeumobによって開発されたUDPベースのプロトコルを追加した。Neumobは、Cloudflareが2017年に買収した会社だ。これに、世界中にある大規模なCloudflareサーバーのネットワークを加えれば、速くて安全なVPNサービスの出来上がりだ。ユーザーが普段利用している接続よりも優れ、高速なものとなるに違いない。

去年の今頃、Cloudflareが「1.1.1.1」というアプリによるDNSサービスを導入したことは、まだ記憶に新しいだろう。デスクトップとモバイル両方で使えるものだ。同社は、任意かつ無料のアップグレードとしてWarpを提供することで、そのアプリの存在価値をさらに高めている。

ところで、それはいったい何なのか? ユーザーがモバイルデバイスを使ってグーグル検索をしたり、アプリをアップデートしたり、その他もろもろ、インターネットを利用する際には、いろいろな手順が必要となる。たとえば、接続先の正しいIPアドレスを知るとか、保護された接続を確立するとか、そういったことだ。CloudflareのWarp VPNは、そうした手順をすべて代行する。これは他のVPNと同じだ。そして、普通は暗号化されていない通信も暗号化し、同時に高速化する。Neumobプロトコルを利用し、リクエストを独自のネットワークに通すようにすることで可能となるものだ。

こうした技術的な部分は、間違いなく公開され、やがて精査されることになるだろう。しかし、Cloudflareが主張するのは、Warpを使うことで、接続の品質が向上し、さらに安全も確保されるということ。DNS検索に付随するデータが収集されて販売されるといったことを防ぐこともできる。その中には、どのユーザーがどのサイトへの接続をリクエストしたかという情報が含まれているのだ。Prince氏のブログ記事では、あえて既存のVPNと直接比較することは避けたのだという。というのも、そのような比較は、これまでにVPNを使ったことがない何百万人もの人々には関係のないことであり、Warpがターゲットにしているのは、まさにそういう人だから、ということだ。

「それでも比較する人はいるだろうか? もちろん。Warpを褒めているツイートを見かけたら、私もリツイートするかって? 当然」、とPrince氏は言う。「ただし、私たちは既存のVPNプロバイダーから多くのユーザーを奪うつもりはないのです。それよりも、市場を拡大したいのです。私たちは世界最大のVPNになりたいと考えていますが、そのために他のプロバイダーから、1人のユーザーも奪いたくはないのです」。

そうした態度は、既存のVPNが持っている魅力的な機能のいくつかを、Warpがあえて備えていないことにも現れている。たとえば広告をIPレベルでブロックする、といったものだ。Prince氏によれば、彼自身も、会社の同僚も、特定のコンテンツを選抜するという考え方にはしっくりこないものがあったという。それは単に彼らの顧客の多くが、広告によって成り立っているサイトだからというわけではない。「インターネットの下部構造としてのパイプが、編集的な役割を果たすのは、どう考えても不気味なのです」とPrince氏は言う。「私たちがページのコンテンツに干渉し始めれば、たとえ人々が望むことだとしても、危険な先例となってしまうでしょう」。

Warpは無料で提供される。Cloudflareは、よりハイエンド寄りのサービスも計画していて、そちらは月額ベースで販売されるからだ。後に、エンタープライズ向けのバージョンが販売されれば、すでに出回っているデキの悪いバージョンを置き換えることになる。読者の中には、もう現在のバージョンを入手して楽しんでいる人もいるかもしれない。Prince氏は、子供が自宅のリビングに入ってきて「ねえママ、インターネットが遅いんだけど、ママの会社のVPN使ってもいい?」などと聞く日が来ることを空想しているという。ありそうもない話だが、大手インフラ企業のCEOにも夢があるのだ。お手柔らかに。

それまでは、Cloudflareの他のコネクティビティ機能と同様に、Warpは無料であり、それでいてほとんど制限なく使える。

とはいえ、1つだけ例外がある。それはまだ入手できないのだ。Cloudflareでは、Warpを4月1日に発表したかった。それは去年1.1.1.1を発表してからちょうど1年後となるからだ。しかしその日は外すことにした。4月1日だから(私はこれをみんなに言いふらしたかったのだが、技術運営チームに相談したら「やめてくれ、それは許可できない。そんなことをしたらネットワークがこける」と言われた)。というわけで、今できるのは、まず1.1.1.1アプリを入手し、Warpが使えるようリクエストして、順番待ちをすることだ。まだ発表したばかりなので、それほど長く待つこともないだろう… おっと。

18万1836番目だって?なるほど、わかったよ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Adobe After Effectsでビデオのコンテンツ対応塗りつぶしができるように

Adobeは米国時間4月3日、Creative Cloudの一員である特殊効果ソフトウェアAfter Effectsでコンテンツに応じた塗りつぶし(content-aware fill)ができるようになる、と発表した。この機能はかなり前からPhotoshopにあり、写真から何かを消したらそのあとを、まわりにあるもの〔例: 青空〕に基づいて塗りつぶすのによく使われる。ご想像つくと思うが、それを静止画でなく動画でやろうとすると、相当大変だ。その消すべきものがあったすべてのコマで、塗りつぶしをやんなきゃならない。

同社はその大変なことを、AdobeのAIプラットホームAdobe Senseiを利用して実装した。邪魔者のブームマイクなど要らないものを消すには、それをマスクすればよい。マスキングが完全に終わったら、このツールが自動的に消されたあとを追跡して、一部が何かの後ろに隠れていたときでさえも、その場所にふさわしいピクセルで填める。結果を微修正したければ、Photoshopを使って参照フレーム(reference frames)を作ればよい。

  1. Ae_Content-Aware-Fill_1-Before

  2. Ae_Content-Aware-Fill_2-Mask

  3. Ae_Content-Aware-Fill_3-After

このコンテンツ対応塗りつぶしは360度のVRプロジェクトでも便利に使える、とAdobeは言っている。360度だから何かをカメラの視界の外に隠せない。塗りつぶすしかない。

来週行われる今年のNABの年次大会でAdobeは、After EffectsとPremiere Pro用にたくさんのビデオ機能をローンチする。その一部はワークフローの改良にフォーカスし、たとえばFreeform Projectという新しいパネルでは、重要なものを視覚的に並べ替えたり、オーディオをもっと良くするツールがある。なお、AuditionとPremiere Proには、環境音を抑制するオートダッキング機能がある。

例によってAdobeは、アプリケーションのパフォーマンスアップにも力を入れている。たとえば、PremiereのGPUレンダリングはエクスポートの時間を短縮し、8Kビデオのマスクの追跡は最大38倍速く、HDのシーンなら最大4倍速い。

ビデオは今、黄金時代を迎えているから、放送や映画、ストリーミングサービス、デジタルマーケティングなどの分野でビデオのプロたちが、消費者からのより高度なコンテンツの要求に直面している。一方でプロダクションのタイムラインはますます短く、仕事の受注数は増え続ける。Adobeのデジタルビデオオーディオ担当ヴァイスプレジデントSteven Warnerは次のように述べる。「Adobe Senseiが提供するパフォーマンスの最適化とインテリジェントな新機能の数々により、ビデオのプロたちは、だらだらと長かったプロダクションの仕事を減らし、クリエイティブなビジョンに集中できる」。

そして、Twitchのストリーマーにはボーナスがある。これからはCharacter Animatorを使ってリアルタイムのアニメーションを作れる。それはこのツールを使っているColbert Show などでお馴染みの、ライブのアニメーションだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

1品注文OKで送料無料の生鮮食品EC「クックパッドマート」にAndroid版登場

クックパッドが手がける生鮮食品のECサービス「クックパッドマート」にAndroid版アプリが登場した。

クックパッドマートはアプリで必要な食材を選択するだけで生鮮食品が手に入るECサービスだ。同サービスは、スーパーなどの大型店ではなく、街のパン屋さんや精肉店などの小規模店舗や農家の人々とパートナーシップを結んでいる。それらの店舗が扱う「こだわりの食材」をアプリで購入することが可能だ。

だが、クックパッドマート最大の特徴は、それらの食材を1品から注文でき、しかも送料もかからないということ。購入した商品は地域にある「受け取り場所」と呼ばれるピックアップ地点(ドラッグストアやカラオケなどの店舗)まで届けられ、ユーザーがそこに商品を取りに行くという仕組みだ。

クックパッドマートは2018年9月にサービス開始。当初は2箇所だった受け取り場所は現在、東京都渋谷区や目黒区を中心に14箇所まで拡大。また、これまでは商品を翌日に届けるためには配送前日の午後6時までに注文しなければならなかったが、Androidアプリ公開と同時に発表したアップデートで、その時間を「配送当日の午前2時」までへと延長するなど、サービスの利便性は徐々に高まっているようだ。

ただ、ユーザーが受け取り地点まで取りに行くというサービスの仕組み上、この数字をできるだけ早く増やすことが直接サービスの利便性につながることを踏まえると、まだまだ受け取り箇所は少ない印象を受ける。しかし、1品から注文できて、かつ送料無料という同サービスは、特に共働き世帯などには非常に便利なサービスと言えるだろう。

まだ東京都内に住むユーザー限定のサービスではあるが、気になる読者は今回発表されたAndroid版、または以前からリリースされているiOS版をチェックしてみてほしい。

副業したい人と企業をつなぐシューマツワーカー、エン・ジャパンなどから資金調達

副業したい人と企業をつなげる「シューマツワーカー」を運営するシューマツワーカーは4月4日、エン・ジャパンおよび既存投資家のKLab Venture Partnersから資金調達を実施したと発表した。調達金額は非公開だが、関係者らの情報によると数億円規模だと思われる。また、エン・ジャパンとはこれに併せて業務提携も結んでいる。

シューマツワーカーはエンジニアやデザイナー、マーケッターなどの「副業社員」を、人材を求める企業に紹介するというエージェント型のサービスだ。これまでに約300件のマッチング実績があるという。

今回のエン・ジャパンとの業務提携では、ユーザーに対してこれまでの副業サポートだけではなく転職活動や独立・起業のサポートを共同で行っていく。また、エン・ジャパンが企業向けに提供しているフリーランス人材のマネジメントシステム「pasture」の顧客企業に対し、シューマツワーカーを利用する副業(フリーランス)人材の紹介も行う。

エン・ジャパン代表取締役の鈴木考二氏は今回の業務提携について、「直近では人材紹介サービス『エン エージェント』との連携により、副業で働く方のキャリア支援や、フリーランスマネジメントシステム『pasture』との連携も予定している」とコメントしている。

シューマツワーカーは2016年9月の設立。2018年5月にはKLab Venture Partnesなどから4000万円を調達している。

Google Driveが電子署名や機械学習ツールなど統合して事務処理自動化へ

Googleは米国時間4月3日、ファイル保存サービスDriveに、いくつかの新しいワークフローを統合したことを発表した。それによりこのサービスは、電子署名のDocuSignや、プロセス自動化プラットホームK2Nintexの機能を持つことになる。

これらの新たな統合はどれも一見平凡だが、ユーザーの日常の仕事をすこし楽にしてくれることは確かだろう。DocuSignの統合によって、Google Driveの中でドキュメントを作成、署名、そして保存できるようになる。合意の署名を交わしたら、請求やアカウントのオープン、決済などの事務処理もDriveの中でできる。

K2の統合はやや違って、同社の機械学習ツールにフォーカスする。それによってユーザーは、Googleの機械学習ツールを使って、ワークフロー上でモデルを訓練し、たとえばローンの承認否認判断を自動的に行い、さらにそのローンの申込から承認までに関するすべての情報をGoogle Sheetに保存する。この統合は、Drive内の大量のドキュメントを見つけやすくするなど日常的なユースケースにも対応する。

K2でGoogleとの連携を担当しているバイスプレジデントのEyal Inbar氏は次のように語る。「K2はオンプレミスとクラウドの両方で、ユーザーの情報管理を単純化する。Google Driveとの統合で次世代型のコンテンツ管理サービスを顧客に提供し、彼らが自分のアプリケーションの中で強力なワークフローを構築実装できるようにする」。

Nintexのソリューションはやや専門的で、HRにおける契約管理のライフサイクルを扱う。契約の管理というときわめて地味に聞こえるが、これまた、自動化によって恩恵を得る重要な事務処理のひとつだ。

画像クレジット: Jaap Arriens/NurPhoto via Getty Images/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Googleのレストラン電話予約サービスAI「Duplex」がiOS/Androidで使えるように

Googleは、DuplexのAI技術を利用した電話によるレストラン予約を行うGoogleアシスタント機能を、米国全土の英語版AndroidおよびiOS端末向けに提供開始すると発表した。今回初めてクロスプラットフォーム化したことで、広く利用されるための土台を作った。

昨年5月のGoogle I/Oデベロッパー・カンファレンスで披露された最初のデモで、Duplexのシステムがあまり人間そっくりにしゃべったために、AIボットはどこまで人間のように振る舞うべきか、相手に正体明かすべきかについて倫理的問題が直ちに持ち上がった 。デモがニセモノではないかと疑った人たちもいた。

当時明らかにされなかったのが、Duplexが現実世界の製品になるまでにどれだけ時間がかかるかだった。しかし、それは意外に早かった。

発表からわずか数カ月後、Duplexはニューヨーク、サンフランシスコなどの主要都市で公開テストに移行した。その後一年未満に米国43州でPixel 3ユーザー向けに公開された(ケンタッキー、ルイジアナ、ミネソタ、モンタナ、インディアナ、テキサス、およびネブラスカは 現地法の制約のために公開時は非対応だった)。

テクノロジーがコンセプトから運用へと進んだことで、Googleは通話のはじめにメッセージを追加してGoogleからの電話であることを伝え、なぜかかってきたかを説明するようにした。またGoogleは、レストランなどの店舗がこの種の自動発信を受け取るかどうかを選択(オプトアウト)できるようにした。

しかし、新技術を多くの消費者が利用するようになれば、興味を持った顧客を逃したくない店舗オーナーにとって、オプトアウトが現実的な選択肢であるのかどうか定かではない。

GoogleはTechCrunchに、Duplexを利用したGoogle Assistantのレストラン予約は、iOSおよびAndroid 5.0以上の端末の両方で先週配布が開始されたと伝えた。ニュースサイトの9to5Googleは、Googleのヘルプ画面の変更に気づき新機能公開について記事を書いた。

しかし、現時点ではすべての端末に新機能が届いているわけではないようだ。TechCrunchはGoogleに質問したが、配布が完了する時期については回答がなかった。

Duplexはその他の予約を行う機能も持っているが、現在はレストラン予約に絞っている。すでにGoogleと提携しているオンライン予約サービスを利用しているレストランでは、AssistantがReserve with Googleと直接連動して予約を確認する。

Assistantの予約を利用したい消費者は、Google Assistantアプリだけあればよい。Assistantは、予約時間、人数などの詳細を確認したあと、予約プロバイダーの1つを通じて予約する。Reserve with Googleには、数十社の提携プロバイダーがあり、さまざまな問い合わせに対応している。必要に応じてDuplexを使って自動発信を行うこともできる。

Duplexは、Google上で更新されていない営業時間などの店舗情報を確認するためにも利用できる。このデータは、店舗一覧の更新にも使われる、とGoogleは言っている。Googleによると、米国の残りの州にもDuplexを提供するべく準備中だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookがあなたのバーチャルコピー作成に一歩近づいた

ソーシャルメディアに現れる自分は、これまではちょっとマンガっぽく表現されてきた。このことは、Facebookという会社がVRアバターシステムのようなアバター設計のサービスにどうアプローチしているかを考える上で興味深い。

Oculus Avatarsシステムは数々の変遷を経てきた。以前は表情が硬かったが、米国時間4月3日に人間のように豊かな表情をつくれるアップデートを公開した。Oculusの「Expressive Avatars(表情豊かなアバター)」は、確かに不安を感じるものではあるが、野心的なものでもある。

同社はこのアップデートについて「ユーザーからのフィードバック、および機械学習、エンジニアリング、デザインに関する長年の研究と革新が実を結んだ」と述べている。

リアルに近づくと現れる「不思議の谷」の概念は幾度となく取り上げられているが、この表現はリアルに近づいているのに実際には何もないということがさらに不安な気持ちにさせる。それは確かだ。Oculusは当初、人間が実際にどのように見ているかに基づいてアバターシステムを構築する際に広く向きを変えることを重視していたが、最新のExpressive Avatarsのアップデートで方向性が変わったようだ。

ブログの投稿で同社は、リアリズムに舵を切ることのリスクは認識しながらもこのトレードオフには価値があると強調している。人々は、人間のように見え、人間のように振る舞うアバターで交流したいと望んでいることがわかったと、同社は述べている。

2016年、私たちは確実にわかっていることを表す目的で知らないことを示すことはしないという意識的な決定をした。それ以来私たちは、弊社のハードウェアを高い信頼性で動きをシミュレートするのにどう役立てるかだけでなく、機械学習とすでに理解されている前例によってかすかなシグナルを大きな社会的存在に変えられることについても多くを学んだ。

新しいアバターの口と目の動きは、これまで以上にリアルだ。Facebookが続けてきた小さなアップグレードは、成功への大いなる挑戦だった。

この方向性を選んだのは、ちょっと危険なことかもしれない。Facebookの本当の理想は、完璧なデジタルバーソンを再現することだ。同社はすでに、人間によく似たアバターシステムの設計を手に入れている。現時点での限界は、コンシューマが利用するシステムが貧弱であることと、センサーが正確に捉えたもの以外のやりとりや動きをそれほど高度に推論できるプラットフォームではないということだ。

Facebookの新しいアバターシステムは、米国時間4月3日にOculusのモバイルとPCプラットフォーム上で利用可能になっている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

スタートアップや中小企業向け、LINEでデジタル広告の相談ができる「デジプロ」リリース

オンライン上でリスティング広告やSNS広告の質問や相談を受け付けるオンラインチャットサービス「デジプロ」を手がけるHagakureは4月4日、同サービスのリリースを発表した。

デジプロでは「Google広告の入稿方法を教えてください」「リターゲティング配信に必要なことは何でしょうか?」「Google Analyticsで広告経由の数値を見ることができますか?」などネット広告に関する疑問に、広告代理店出身のHagakureのメンバーたちが応じる。

「ネットの記事で調べたけど、本当に正しいのか自信が無い」「いちいち調べている時間が無い」「委託業者の言っていることが正しいのか分からない」などの悩みを解決するのが目的だ。

利用料金は月額1万円で、登録後、送られてきたLINE@アカウントを友達に追加することで、同プラットフォーム上で質問を開始することができる。

Hagakureが想定するデジプロの利用者は「これから広告を使って自社サービスアプリを宣伝したいスタートアップ」「未経験なのにWEBマーケティングを任された担当者」「代理店や業者に依頼しているが、よく理解していない方」などだ。

Hagakureは2018年10月に設立された。Hagakureいわく、資金力が豊富かつ予算が大きい大企業は、「広告代理店に依頼し、分からないことは代理店に質問することができる」。だが、ベンチャーや中小においては、「自社のリソースで広告を運用するため、誰にも相談することができないというケースが目立つ」という。

Hagakure代表の奥雄太氏は、会社員時代はデジタル広告の運用を担当。旅行、アパレル、教育など、様々な業界のクライアントを見ていた。「既に広告を実施しており知識のあるクライアント」が対象だったが、デジプロのようなサービスの必要性は、プライベートでスタートアップや地方の中小企業の経営者の相談を受ける中で感じたという。

「広告の基本的なことを知らないことで、効率の悪い広告費の使い方をしていたり、商品やサービスを届けたい人に届けることができていない企業が多いと感じたことが(デジプロ開発の)背景にある。百貨店を探している人に対して、ぬいぐるみの広告を配信していたり、など。しかし、代理店に依頼するとなると最低出稿金額が決まっていたりする。そのため、周りに相談できる人がいないベンチャーや中小企業が多いと広告の相談を受ける中で感じた」(奥氏)

今後の展開として、奥氏は、デジプロ上で「SEOやグロースハックなどのデジタルマーケティング全般」の相談に対応できるようにしたいと述べた。また、相談対応メンバーも増強し、最終的には「自動化」もしていく予定だ。

また、チャット相談と学習コンテンツを組み合わせることから成る、動画とテキストによる、デジタルマーケティング人材を育てる「オンライン学習サービス」もすでに視野にある。

商品を広めたいメーカーとオフィスや施設をつなぐ「aircatalog」が約1億円を調達

商品のプロモーションを行いたい“メーカー”とその商品を配布したい“施設”をオンライン上でマッチングする「aircatalog(エアカタログ)」。同サービスを展開するquatre(キャトル)は4月4日、複数の投資家より約1億円を調達したことを明らかにした。

同社に出資したのはセレス、voyage ventures、ハックベンチャーズの3社。そのうちセレスとは業務提携も締結している。quatre代表取締役の横町享之氏に聞いたところ、今回の資金調達は現在同社が実施中の調達ラウンドの一環として行われたものだという。

aircatalogは「商品をもっと多くの人に体験してもらいたい」メーカーと、「顧客や従業員の満足度を高めたい」企業やホテルなどの施設をマッチングすることで、双方のニーズに応えるサービスだ。

商品のタッチポイントを広げたいメーカーはaircatalog上に商品情報とターゲットの情報を登録。するとその商品を配布したい施設からリクエストが届くので、メーカーが承認すればマッチングが成立となる。

これによってメーカーとしては自社の商品を本当に体験して欲しい人にだけ届けることができ、一方の施設側もコストをかけずに顧客や従業員に対して良いサービスを提供できるのが特徴だ。

たとえば美顔器を手がける美容家電メーカーとホテルの事例では、ホテル側で宿泊客向けに美顔器を体験できるプランを作成。アメニティ用品のような位置付けでターゲットユーザーに商品を体験してもらえる仕組みを作った。

aircatalogには商品の配布先として1万5000箇所を超える施設が登録されていて、ホテルやフィットネスジムの他、一般企業のオフィスも対象になる。ビジネスパーソン向けにコーヒーやエナジードリンクを訴求したいメーカーと企業がマッチングされる場合など、同サービスが企業における「無料の福利厚生ツール」の役割を果たすこともある。

横町氏によるとIT企業などがそのような用途で導入するケースが増えているそう。商品を提供する登録メーカーの数も約170社まで拡大しているとのことだ。

直近では新しい試みとして、最新家電など大型の商品を一定期間オフィスや宿泊施設に貸し出す「ディスプレイプラン」や、企業の社内イベントにメーカーが協賛してセミナー形式で商品体験の場を儲ける「セミナー型商品体験プラン」もスタート。

前者では空気清浄機とIT企業をマッチングした事例、後者ではユーザベースの社内交流イベントにキリンがドリンク協賛し、ビールセミナーとクラフトビールの提供を含めた商品体験会を実施した例などがある。

なお冒頭でも触れた通り、投資家の1社であるセレスとは業務提携も締結。セレス側では今回の提携について「セレスでは、モッピーをはじめとしたポイントサイト等の運営を通じて、インターネット上の価値を現実世界の価値へと転換するサービスを展開しております。セレスの運営するポイントサイト等の事業とquatreの運営するaircatalogは親和性が高いと考えており、今回の資本業務提携を締結いたしました」とコメントしている。

quatreは2014年12月の創業。2018年2月にはハックベンチャーズや名古屋テレビ・ベンチャーズから5250万円を調達済みだ。

グルメSNS「シンクロライフ」にレストラン検索不要の「AI厳選」機能が追加

グルメSNS「シンクロライフ(SynchroLife)」は、SNSとAI活用により、ユーザーのレストラン探しをサポートするアプリだ。ほかのグルメアプリとの大きな違いは、トークンエコノミーの概念を取り入れていること。良質なグルメレビューの投稿者にはトークン(暗号通貨)による報酬を付与する。また来店ポイントのような形で、飲食代金からの還元リワードをトークンで受け取れる仕組みもアプリ内に持っている。

シンクロライフを運営するGINKAN(ギンカン)は4月4日、同アプリへの「AI厳選」機能追加を発表した。従来のレストラン検索機能は廃止され、現在地点などのエリア情報に基づき、AIがオススメする店を写真中心のインターフェースから選ぶスタイルに変更された。

またSNSのタイムラインには、ユーザーの日頃の生活圏などから優良なレビュー投稿をパーソナライズして表示する「For You」フィードが登場した。

2018年8月にベータ版が公開されたシンクロライフ。今回の一連のレコメンデーション要素の強化により、「これまで以上に直感的に良質なレストランをすばやく発見できる」ようなユーザー体験の実現を図ったという。

確かに従来のグルメレビューサービスでレストラン探しをするときには、エリアやカテゴリーだけではまだ多くの店から候補が絞り込みきれず、レビューの文面など、さまざまな要素を自力でチェックして選んでいくので、決定までに時間がかかることもしばしばだ。

シンクロライフのAI厳選機能では、SNS上の人気指標やリピート指標などを分析しているため、あらかじめ一定以上の人気があり、投稿者のリピート率が高い店をレコメンドしてくれる。エリアやジャンルは指定することができるので、現在地だけでなく、これから訪れる旅行先などの土地勘のない場所でも、ほかのユーザーが薦めるレストランを知ることができる。

また新たな指標として「リピート希望」の表示も加わった。実際に来店して投稿したユーザーの評価指標をもとに「10人中8人がリピート希望!」といった表示がリスト上の各店に示される。

iOS版/Android版が提供されているシンクロライフは現在、155カ国・4言語(日本語、英語、韓国語、中国語)で利用可能。累積19万件以上のレビューが投稿されている。

GINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏は「もともとレストラン選びに時間をかけずに済み、検索しなくても表示されるシステムを目指して、レコメンドエンジンやロジックを改善してきた。今回のAI厳選機能で、ようやく作りたかったものができたというところ」と話している。

とはいえ、中には自分が選んだ細かい条件で検索をかけたいユーザーもいるのではないだろうか。神谷氏は「世の中には詳細な検索でレストランを探せるサービスは既にいくつもあるし、僕自身も利用している。だが、予算やシーンなどの細かい条件検索と“場所と食べたいものが大体決まっている人”向けの提案を両立するのは、インターフェースが複雑になって難しい」と述べ、「“大体決まっている人”へのサービスは、ありそうでなかったので、そこへフォーカスした」と答えている。

「シンクロライフは、テレビ番組や雑誌と同様にレストラン情報を眺めたいというシチュエーションには、SNSフィードでパーソナライズした表示を、場所と食べたいものが大体決まっている人には、AI厳選機能でレストラン提案を行う。“提案されたものからレストランを選ぶ”というのは、あまり体験したことがないユーザー体験になるのではないか」(神谷氏)

GINKANでは、今後もユーザーのアクションや閲覧データをもとに、さらにシンクロライフ収録レストランの評価の質を高めていく予定だ。

シンクロライフは、トークンエコノミーの概念を導入することで、レストランのマーケティング課題の解決に取り組むプロダクトでもある。今年3月にはこうした取り組みが評価され、MUFG Digitalアクセラレータのプログラム第4期に採択された。

神谷氏は「ユーザー体験に関しては、SNSとAIでハズレなしのお店選びを、ということで、消費者のニーズや課題に合わせたアップデートをして、最終形に近づいてきた。またレストランのマーケティング課題については、東急不動産の協力で飲食店来店客へのトークン還元の実証実験も行い、準備が進んでいる」と話す。

さらに「飲食店の広告宣伝費率の課題を、ブロックチェーンを活用した暗号通貨で解決した暁には、ユーザーである消費者は今までの『飲食店での食事で消費する』スタイルから『デジタルアセットをもらう』スタイルに変わっていく」と神谷氏は述べ、「一般消費者がアセットを持つ、ということでフィンテックの入口にもなるサービス」としてシンクロライフを構想していると語る。

今後、さまざまな金融機関やペイメント事業との接続により、ほかの暗号通貨への変換や資産運用、国内外での決済なども、シンクロライフで可能にしたいという神谷氏。「まずは飲食店の参加により、O2Oビジネスとしての土台を確立し、そこから加盟店の決済手数料の軽減やユーザーの支払いをシンクロライフで完結させるなど、課題を解決していきたい」と話している。

Google アシスタントが米歌手のジョン・レジェンドの声で喋れるように

昨年開催されたGoogle I/Oでも触れられていたが、Google アシスタントに米歌手のジョン・レジェンドの声が追加された。これからは、自宅で彼の美声を堪能できる。

米国時間4月3日からは、Google アシスタントに「Hey Google、レジェンドのように喋ってくれ」と伝えるか、設定画面からの変更で、ジョン・レジェンドの声をデフォルトに設定できる。レジェンドがスタジオで録音したセリフの中には、以下の問いかけへの返答も含まれている。

  • 君はジョン・レジェンドなのかい?
  • 君の好きな音楽のタイプは?
  • Chrissy Teigen(レジェンドの配偶者)って誰?
  • ジョークを話してよ

レジェンドのセリフは「イースター・エッグ」など、特定のコンテンツでしか聞くことができない。その他の質問には、標準音声が応えることになる。またレコーディングと並行して、Google(グーグル)の深層学習による音声合成技術「WaveNet」による、レジェンドの音声のGoogle アシスタントへの最適化も行われた。

Googleによれば、有名人による会話はGoogle アシスタントにて最も望まれている機能だそうだ。将来的には、さらなる有名人のトークが追加されるかもしれない。

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(文/塚本直樹 Twitter

安心して犬を飼うための良質な人間関係を構築するGood Dog

私は今、自分ちで犬を飼いたいと思っている。でも、まず、犬を見つけるのが思ったほど簡単ではないことに気づく。犬を手に入れられる場所は、ブリーダーやシェルターやドッグレスキューなど山ほどたくさんあるが、それらの施設や人びとのやってることがどこまでまともなのか、それが分からない。良質な提供者を、どうやって見つけるのか。

そんなとき助けてくれるのがGood Dogだ。同社は米国時間4月1日、David Tisch氏が率いるBoxGroupやFelicis、Slow Ventures などから670万ドル(約7億円)を調達した。今日立ち上がったばかりのGood Dogは一種のマーケットプレイスで、事前によく調査したブリーダーやシェルター、レスキューなどが自分たちの持ち犬を紹介するセンター的なサイトでもあり、ここ1カ所で納得と満足ができる犬探しを目指している。

Tisch氏はこう声明している。「JoshとLaurenにGood Dogの始まりから関われたことは幸運だ。自分でも犬を探してみてすぐにわかったのは、その過程が完全に破綻していること、だから720億ドルのペット市場には大きな機会が開けていると言える」。

Good Dogの共同ファウンダーであるLauren McDevitt氏とJosh Wais氏は、eコマース大手Jet.comの社員だったが、犬を家族の一員にしたくなって犬探しをしたとき、アイデアがひらめいた。McDevitt氏によると、犬探しでいちばん苦労したのは犬に関するスタンダードと、それを熟知したプロの不在だ。ドシロートのいいかげんな活動や商売が多いようだ。

彼女は曰く「どれがいいのか悪いのかさえ、わからない。誰のやってることが正しいのかもわからない。犬を危険な状態に置いている人たちもいるから、いい意思を持った人間がいい犬を見つけることが、とても難しくなっている」。

Good Dogは、犬を世話するために人間がやるべきことを、人々に教育することに力を入れている。また、この人たちにはどんな犬がいいかという相性も大事にする。それから同社は犬を探している人たちに、信頼できる、動物への注意の行き届いた提供者のプロフィールを調べさせ、彼らとの結びつきを取り持つ。

その際、位置やシェルターを指定できる。犬種だけを指定してもいい。

Wais氏はこう言う。「我々のミッションはいい人といい提供者を結びつけて、悪い人たちを減らすことだ。ペット業界はとっくに破綻しているから、このような人と人を結ぶ仲人業によって無責任な提供者を減らしていけるだろう。そこに、うちの商機がある」。

今のところGood Dogは全米の1000人を超える責任ある提供者からの犬を紹介している。提供者は、Good Dogに載せる前に同社独自の基準でふるいにかける。それにより、犬の健康や社交性(人慣れ)、安全性に配慮した提供者だけをGood Dogから紹介する。

ユーザーが犬を決めて実際にそれを買ったとき、Good Dogはおよそ100ドルの料金をいただく。ブリーダーやシェルターやドッグレスキューには課金しない。また犬の提供者は、Good Dogにお金を払っても載せてはもらえない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

日本人起業家がラーメンECで米国市場に挑む、「Ramen Hero」の挑戦

RamenHero創業者でCEOの長谷川浩之氏

近年日本でもスタートアップの支援を行う“アクセラレーター”プログラムが複数立ち上がり、業界を盛り上げるのに一役買っている。それでは「世界的に有名なアクセラレーターと言えば?」と聞かれて何を思い浮かべるだろうか。

日本人だと「Y Combinator」をイメージする人が多いかもしれない。TechCruchでもしばしばこの名前は登場するし、2013年には書籍にもなった。ただ、日本国内での地名度はそこまで高くないかもしれないけれど、米国にはこのY Combinatorに匹敵するほど著名なアクセラレーターがある。

それが先日“全米一と評価されるアクセラレーター”として紹介した「AngelPad」だ。

これまでPostmatesやMopubを始めとする有力スタートアップを輩出してきたこのアクセラレータープログラムは、Seed Accelerator Rankings Projectにおいても常にトップクラスの評価を受けてきた。

先日の記事は、まさにこのプログラムに直近で参加(卒業)したスタートアップ19社を取り上げたものだったのだけれど、実はその中に1社だけ日本人が起業したスタートアップが含まれている。

RamenHero」という社名からも想像がつくように、ラーメンに特化したEC事業を米国で展開しているチームで、創業者兼CEOの長谷川浩之氏によると日本人起業家としてAngelPadを卒業するのは彼らが初めてとのことだ。

今回TechCrunch Japanでは長谷川氏に話を聞くことができたので、彼が米国で起業しラーメン×ITで勝負を挑むことになった背景や、具体的なプロダクトの中身について紹介していきたい。

ラーメン特化のミールキットを米国で展開

そもそもRamenHeroとはどんなプロダクトなのか。簡単に言えばラーメンに特化したミールキットだ。

「Blue Apron」を知っている人であれば、そのラーメン版をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれない。自宅に冷凍の本格的なラーメンキット(麺やスープ、具が同梱)を配達してくれるサービスで、ユーザーは味噌や醤油、豚骨など約10種類のメニューから好きなものを注文できる。

単価は1杯あたり15〜17ドルほど。現地のインスタントラーメンなどに比べると高く、店舗のラーメンとだいたい同じくらいの料金なのだそう。2018年より本格的にサービスをスタートして、同年の合計売上高は約10万ドル、注文数は1900件を突破。直近ではサブスクリプション型のプランも始めた。

日本と米国におけるラーメン事情の違いにチャンス

正直日本でずっと暮らしていると、このサービスがどこまで重要があるのかわからないという人がいても不思議ではない。日本国内ならば、ある程度の規模の町には複数のラーメン屋があって、1000円前後で十分に美味しいラーメンが食べられる。

最近ではカップ麺や冷凍ラーメンのクオリティも上がり、僕がよく購入している某コンビニチェーンの冷凍ラーメンは200〜300円とは思えない味だ(もちろん人それぞれ評価は異なるだろうけれど)。

ただ長谷川氏によると、米国の状況は日本とかなり違うらしい。そもそも米国でラーメンを食べようと思うと、店舗に行くかインスタントの乾麺を買うかの2択が主流。乾麺は安さがウリで大学生が箱買いするようなもののため、基本的にちゃんとしたラーメンを食べようと思うと飲食店に行くことになる。

現在全米ではだいたい2.6万店舗の飲食店がラーメンを提供しているそうで、そのうち専門店は全体の5%ほど。その専門店ですら「正直美味しくないお店が多い」(長谷川氏)状況だ。一部では本格的なラーメンを食べられるお店もあるが、人気店は1〜2時間並ぶのが普通でそこに課題とチャンスがあるという。

「本格的なラーメンをもっと気軽に食べたいというニーズがあることは、去年1年間サービスを運営する中で確信をもった。加えて、現在米国のラーメン市場はちょうどトレンドの変わり目。ニューヨークを中心に本格的なラーメン店が少しずつ増える中で、今まで身近にあったラーメンとは全然クオリティが違うという認識が広がり始めている」(長谷川氏)

RamenHeroではいわゆるD2Cのモデルを採用し、麺は専門の業者、スープとトッピングは自社で製造。今は東京の名店で修行したメンバーがチームに加わりメニューの監修をしているという。

そのようにして出来上がった製品を自社サイトで販売。オンラインのサーベイや販売データを基に“データドリブン”でメニューを調整できるのも、ECならではの特徴だ。

先輩起業家から言われた一言が米国で創業するきっかけに

もともと長谷川氏は東京大学在学中に仲間と共同でスタートアップを創業。ところが卒業のタイミングでクローズすることが決まり、挫折を経験した。

「以前からゆくゆくはアメリカで挑戦したいという気持ちはあったので、一旦ゼロになったこともありアメリカに行ってみようと渡米を決めた。当初は長期滞在するなんて全く考えてなくて、東京で3年ほど修業した後でエンジニアとして戻って来れたらいいなと思っていた」(長谷川氏)

そんな長谷川氏の転機となったのが、米国滞在中に以前TechCrunchでも取り上げたAnyplaceの内藤聡氏の紹介で小林清剛氏(ノボット創業者)に出会ったこと。当時小林氏から言われた言葉に大きな影響を受けたそうだ。

「『従業員と起業家では使う筋肉が全く違うし、起業するにしても日本と米国ではやはり使う筋肉が違う。もし本当に米国で起業家として挑戦したいなら、すぐにでもその筋肉を鍛えた方がいいよ』と言われて。最初は驚いたし、覚悟も決まっておらず迷いもあった。それでも小林さんは日本でエグジットを経験し、米国市場の理解もある起業家。その考え方には納得できたので、覚悟を決めた」(長谷川氏)

こうして長谷川氏は米国に留まることになった。当時の様子は彼のブログに詳しく書かれているので詳細はそちらに譲るが、その後は内藤氏らと日本人×スタートアップをコンセプトにしたシェアハウスなどを運営。並行して自身でも会社を立ち上げ、試行錯誤を続けることになる。

「ラーメン好きの自分が、米国ではほとんど食べていない」

いくつものアイデアを試しては壊す。起業後しばらくはそんな日々を繰り返したという長谷川氏。その過程で生まれた「海外旅行者向けのチャットコンシェルジュアプリ」ではIncubate Campに参加し、出資をしてくれるという投資家にも出会った。

しかしながら、そのアイデアもシビアに見ればGoogleやFacebookなどデータを握るプレイヤーの方が上手くやれる余地が大きく「この領域で本気で一番を目指すのは難しい。自分でやる意義もないのではないか」という結論に至り、最終的には方向転換を決める。

「その経験を通じて学んだのが、自分が欲しいものであることに加えて、『なぜ自分がやるのか』という問いに対して明確に答えられる事業をやるべきだということ。他の企業と戦うことになっても勝てる確信が持てる領域じゃないと、長く続けられないのではないかと考えた」(長谷川)

そんな考えのもと、ゼロベースで次の事業アイデアを探していた時に行き着いたのが、子供の頃から大好きな「ラーメン」だったという。

「子供の時から家族で外食する際は毎週のようにラーメンを希望し、学生時代には毎日のようにラーメンを食べ歩いていた。そんな自分が、米国に行ってからはラーメンを食べる機会がほとんどなくなっていることに気づいて。結局のところ、行きたいと思えるような美味しいお店が少なく、あったとしてもたくさんの人が並んでいるのが原因。もっと気軽に食べれるようにできないかと思ったのがきっかけだった」(長谷川氏)

ラーメンの事業を本気でやるなら、そもそも自分がラーメンを作れないことには始まらない。長谷川氏は香川県のラーメン専門学校に通い、ラーメンに関する基礎スキルを磨くことに時間を注いだ。自分で作れるようになってからは米国に戻り、少しずつ検証を始めたという。

最初は知人のホームパーティなどで振る舞うところからスタート。思っていた以上に反響がよく、この体験をなるべく多くの人に届ける方法を考え、ECで展開することを決めた。

試験的に立ち上げた「Kickstarter」のプロジェクトは、小規模ではあるもののすぐに支援が集まり成功。本格的に事業化して以降の実績については、上述した通りだ。

AngelPadを卒業、今後はB2Bの展開も視野

長谷川氏も参加した、第12回目となるAngelPadのスタートアップアクセラレーラーコース

ラーメン版ミールキットのポテンシャルは、今回参加していたAngelPadからも評価された。

「印象的だったのは、最初の面談でラーメン市場の伸びや事業の特徴を必死で伝えようとした際に『いずれラーメンが、次の寿司やピザのような存在になることはわかっているから心配するな』と言われたこと。ニューヨークにもほんの数年前には全然ラーメン屋がなかったのに、ここ5年ほどで一気に増えた。彼らはその変化を体験していたので、市場や事業の可能性をわかってくれていた」(長谷川氏)

今後もプロダクトを改良しつつ多くの顧客にキットを届けることを目指しながらも、次の展望としてBtoBビジネスの展開も見据えている。

「全米でラーメンを提供している店舗に対して自分たちの商品を販売する。多くの店舗ではノウハウがないので業務用のタレを買ってお湯で薄めて作ったりしているが、流通している商品自体が限られているので味が似通ってしまう。専門店だけでなく、中華料理店などにも広げるチャンスがある」(長谷川氏)

C向けのラーメンキットとB向けの製品展開の両輪で熱狂的なファンを作ることができれば、このモデルを米国以外の国にも拡大していく計画。「ゆくゆくは『好きなラーメンのブランドは?』と尋ねられた時に、多くの人が思い浮かべるようなブランドを作り上げたい」という長谷川氏たちの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

日本の新しい元号がインターネットをほんの少し混乱させた理由

日本の明仁天皇はまもなく退位し、息子の徳仁親王に皇位を譲る。移行手続きの一環として、新元号、すなわち、新しい時代の名称が “Reiwa” に決まった。そこには数々の意味と隠された意味合いがあるが、インターネット経由でテキストが送信、表示される方式のために、ある種の公式な方法では名前がうまく表示されない。このためUnicodeは、それを可能にするためのアップデートを発行したが、現時点でReiwaのための文字は存在しない。これはすぐに修正されるちょっとおかしな問題だが、われわれが依存しているシステムが完璧ではないことを如実に表している。

誤解のないように言っておくが、漢字で “令和” と表示することはもちろん可能であり、なんの問題もない(多少の技術的な支障はあるが)。しかし元号はある種の状況や文脈においては1文字に合成される。たとえば、現行の(まもなく終わる)時代である Heisei は”平成”と書けるだけでなく、合成文字として”㍻” と書くことができる。これは2つの部品を詰め込んだだけだが、ある重要かつ公式な方法によって詰め込まれている。

日本の天皇制の歴史や政治にあまり深く関わらずに説明すると、この国には時代を時の天皇の(ほぼ象徴的な)統治に対応させた一種の独自カレンダーがある。これは重要であり、公式文書に使用されるほか、ある時代を指す省略表現としても使われる。「ああ、あれは平成10年のことだった」という具合に、われわれが「クリントン大統領時代の最後の年」と言うように使う。私の説明は間違っているかもしれないが、感覚は伝わると思う。

この慣習で最も興味深い部分は(実際、興味深い部分はたくさんあるが、今日のテーマに関してはこれが最も興味深い)、元号は事実上一から考案されることだ。そして日本語記法の特性ゆえに、そのことは、新しい名前をオンラインで正しく表示する方法が事実上ないことを意味する。

Unicodeは基本的に膨大な(約12万種類)なコードの集まりであり、われわれがタイプしたり送ったりしたい文字と図形に対応している。つまり、私が “Hey! ” と書けば、あなたの側でも私の側と同じものが見える。しかし、公式発表まで秘密が守られていて、他の日本語の単語の一部を全く新しい文字に組み合わせたシンボルをいったいどうやって作るのか? それはまるで、アルファベットに新しい文字を追加すると発表するかのようだ。

これは近代コンピューター時代に起きた初めての時代変更なので前例がまったくない、と昨年Unicodeはこの出来事を予測して発表した。Unicodeにできる唯一の方策は、やってくる文字のために場所を予約しておき、コードを表示するためのプレースホルダー図形を割り当てることだけだった( ㋿:左に見えているのは、文字が追加される前に見ているという前提で、 “32FF” コードのプレースホルダー)。

ある意味で、それがUnicodeがやるべき仕事のすべてだ。あとは、それぞれのフォントで表示される実際の文字を作るデザイナー次第だ。そして、こうしたアップデートはサーバーとデバイスのそれぞれに送り込まれる必要がある。そして、もちろん、それはすぐできることではない。一方、新しい名前を伝えるオンラインニュースのヘッドラインは、本質的にそれを表示できない! なんとも興味をそそる苦悩ではないだろうか。

名前そのものに関して、言語学上、文学上の意味合いについて議論する人びとによる多少の騒動もをった。日本語表記の複雑さと、音節の歴史、その表現方法が、さまざまな政治的、哲学的な含意と相まって数多くの解釈が可能になる。Nick Kapurによる、これまで私が見た中で最高の解説を読むと、Reiwaが極めて翻訳困難でありながら、その意味を明確に述べている理由を深く理解できるだろう。

これは様々意味でユニークなチャレンジであり、インターネットとは特に相性が悪い。まもなくその文字はわれわれの手に届き、発表から正しく表示できるまでの遅れが生んだわずかな不便さは忘れられていくだろう。しかし、世界はわれわれが当たり前だと思っているシステムにいつも変化球を投げてくる、というのは実に興味深いことだ。

5月1日にReiwaが公式に始まるまでには、すべてが整理されていることを期待しよう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook