PayPalの中国における野心と苦戦、クロスボーダー決済に注力

過去数カ月、PayPal(ペイパル)は中国での事業拡大に向けて静かに準備してきた。

最近開催された、ダボス会議の中国版Boao Forumで、米国の決済大手PayPalは同社の中国での戦略がAlipayとWeChat Payの複占に挑むというものではないと述べた。その代わり、PayPalはクロスボーダー事業にフォーカスし、中国の小売業者が集金したり、中国の消費者が海外の商品購入の代金を支払ったりするためのゲートウェイを提供する。

これはもちろん儲けが多い分野だ。マーケット調査会社iResearchによると、中国のクロスボーダーeコマースのマーケット規模は2016年の約3兆元(約50兆円)から2021年には6兆元(約100兆円)近くへと急増した。

しかしこの分野は近年競争が激しくなっており、PayPalの参入は遅かったかもしれない、と中国で米テック大手に勤めるとあるマネジャーは話した。この人物はメディアに話すことを許可されていないため、匿名を希望した。

オンラインで商品を販売する中国の輸出業者にとって最大のマーケットプレイスの1つであるAmazonでは、小売業者が集金するための確立されたオプションがすでにある。高額な送金手数料はいうに及ばず、海外での銀行口座開設は小さな中国の輸出業者にとっては難しい。よって、そうした業者は往々にして、米国のPayoneer、中国のPingpongLianlianなどサードパーティの送金決済ソリューションに頼る。こうしたサービスの業者の売り上げを母国の銀行口座に振り込む手数料は比較的少額だ。

中国は外国為替と電子決済に関し、厳格な規定を設けている。しかしPayPalはすでに規制当局の認可を得ている。同社は中国の決済会社の株式を購入したのち、2021年1月に中国でオンライン決済の事業許可を得た初の海外企業となった。

政府からの認可の取得は最初のステップにすぎない。PayPalのアピールは主に、中国のeコマース輸出業者にどんなサービスを提供できるのかによるところが大きい。中国ではAmazonやeBayのような企業が溢れかえっている。

「最終的には、顧客はどのサービスが一番安くて使いやすいかを重視します」と前述のマネージャーは話した。

「中国のクロスボーダー決済ソリューションはプロダクト、スケール、手数料の点ですばらしい成果を上げました。PayPalに可能性があるとは思いません」。

それでも、PayPalアプリの広範なリーチを考えたとき、主要なマーケットプレイスで販売する代わりに自社オンラインストアを構築した輸出業者は、顧客からの支払いを受けるためのツールとしてPayPalを必要とするかもしれない。

クロスボーダー決済に関しては、PayPalはずいぶん前から中国で広く使われてきたTencentのWeChat Pay、Ant GroupのAlipayと競合している。WeChat Pay、Alipayいずれも中国の海外旅行客が中国国内と同様に海外の小売店でも決済できるよう、グローバル提携を積極的に進めてきた。そうした海外商品の国内での買い物では往々にして中国企業のeコマースアプリを使う。それらのアプリでは決済処理業者としてAlipayやWeChat Payを使う傾向にある。

現在保留されているAntのIPO目論見書によると、クロスボーダー決済はAntの主な成長目標にもなっている。同社の2020年上半期の売上高における海外事業の割合は約5%にすぎなかった一方、その大半はクロスボーダー決済によるものだった。目論見書を提出した当時、AntはIPOから得られる純利益の40%、額にして528億香港ドル(約7400億円)をクロスボーダー決済と業者サービス、海外での機能性の拡大にあてる計画を持っていた。

「PayPalがAntよりも安い手数料を提供できるかどうかにかかっています」と以前中国企業のクロスボーダーウォレット部門で働いていた人物は語った。「しかしPayPalは安い手数料では知られていません」。

関連記事:Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取

カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPal中国クロスボーダー決済Ant Group

画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

街中でETCが使える「ETCX」始動、駐車場やドライブスルーなどでクルマに乗ったままキャッシュレス決済

街中でETCが使える「ETCX」始動、駐車場やドライブスルーなどでクルマに乗ったままキャッシュレス決済ETCを高速道路の料金所だけでなく、街中のドライブスルーや駐車場、ガソリンスタンド、EV充電スタンドでの支払いに利用できる「ETCX」の会員登録受付が本日(4月28日)より始まりました。

「ETCX」は、現在利用しているETCカードおよび車載機を使って、ETCXのロゴマークが掲示してある加盟店で、自動車に乗ったまま代金などを支払えるサービスです。クレジットカード番号とETC番号をETCXに登録するだけで利用できます。

なお、加盟店側の導入コスト削減のためにアンテナ性能は通常のETCよりも落としてあり、支払い時には一旦停止する必要があります。

クレジットカード番号とETCカード番号をETCXに登録すれば利用できる

クレジットカード番号とETCカード番号をETCXに登録すれば利用できる

公表されている加盟店は現段階で2つのみ。新名神高速道路の鈴鹿PA(上り線)に併設のドライブスルー型店舗「ピットストップSUZUKA」で4月29日から利用できるほか、7月以降に静岡県の伊豆修善寺道路の料金所施設も対応します。なお、実証実験段階ではケンタッキーの一部店舗でもドライブスルーに導入していました。

一方で、ガソリンスタンドや駐車場での導入準備を進めているといい、ETCソリューションズの中村英彦社長は『今後3年以内に100か所以上で利用可能にしたい』との目標を掲げます。

この『3年間で100か所』という目標はかなり控え目に思えますが、全く新しいソリューションである点や、加盟店になるためにはアンテナ工事をする必要があるなど、店舗側が導入するハードルは決して低くはないとのこと。とはいえ、多数の利用者を抱えるETCサービスとの親和性が高いことから、長期的には日本全国への加盟店の拡大に自信を示します。

今後の展望については、一般道においても道路の混雑状況に応じて動的に課金する「ロードプライシング」との相性が良いと説明するほか、現在ETCを導入していない有料道路においても、簡易的なETCとして利用できると説明します。

余談ですが、ETCXサービスの提供主体は、ソニーペイメントサービス・メイテツコム・沖電気工業の3社が共同で設立した「ETCソシューリョンズ」となり、高速道路会社が提供する既存のETCとは異なります。ETCXは既存のETCシステムを流用する形でサービスを展開します。

(Source:ETCXEngadget日本版より転載)

カテゴリー:フィンテック
タグ:ETCX(用語)モビリティキャッシュレス決済(用語)日本(国・地域)

子供に照準を合わせたフィンテック「Greenlight」がシリーズDで283億円調達、評価額は約2倍の2500億円に

子どもにやさしい銀行口座として親に売り込んでいるフィンテック会社のGreenlight(グリーンライト)が、シリーズC調達ラウンドで2億6000万ドル(約283億円)を調達した。評価額は約2倍増の23億ドル(約2500億円)だった。

今回のラウンドは、ジョージア州アトランタ拠点のスタートアップが、12億ドル(約1300億円)の評価額で2億1500万ドル(約230億円)を調達してからわずか数カ月のことだ。最新ラウンドの結果、Greenlightの2014年創業以来の調達総額は5億5500万ドル(約600億円)を超えた。

シリーズDをリードしたのはAndreessen Horowithz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)で、他に既存出資者のTTV Capital、Canapi Ventures、Wells Fargo Strategic Capital、BOND、Fin VCおよびGoodwater Capital、新規出資者のWellington Management、Owl VenturesおよびLionTree Partnersが参加した。

2017年に子ども向けデビットカードを発行して以来、同社は300万以上の親と子どものために口座を開設し、アプリを通じて1億2000万ドル(約131億円)以上の預金を集めた。2020年9月に資金調達した際は口座数200万件、預金額5000万ドル(約54億円)だった。

全体では、前年比で売上は「3倍以上」、プラットフォームの親と子の人数は2倍以上に増え、過去1年間にチームの人数は2倍になった、とGreenlightはいう。

画像クレジット:Greenlight

「Greenlightはファミリー財務分野でまたたく間にリーダーになりました」とAndreessen HorowitzのゼネラルパートナーでGreenlightの取締役に就任予定のDavid George(デビッド・ジョージ)氏は声明で語った。「Greenlightは、親が財務に明るい子どもたちを育てる手助けをするために作られ、その使いやすい金銭管理ツールと教育コンテンツの画期的な組み合わせによって、同社は世界で最も愛され信頼される家族向けブランドになる好位置にいます」。

会社は自らのサービスがデビットカードだけでなく、アプリを使って親が口座に入金し、お小遣いやお駄賃を渡したり、子どもたちの使えるお金を管理したりできることをアピールしている。2021年1月、Geenlightは子どものための教育投資プラットフォームであるGreenlight Maxを立ち上げた。このプラットフォームを通じて、子どもたちはMorningstarによる分析とともに株式を調査できるほか、親が承認すれば、Apple(アップル)、Tesla(テスラ)、Microsoft(マイクロソフト)、Amazon(アマゾン)などの企業に実際に投資することもできる。

以前、TechCrunchが報じたように、これは世代全体を財務サービスプラットフォームに囲い込める可能性のある大きなビジネスであり、おびただしい数の会社が似たような看板を掲げて参入している理由の1つだ。Kard(カード)、Step(ステップ)、Till Financial(ティル・フィナンシャル)、Current(カレント)などが米国内で同様のビジネスを展開しており、Y Combinatorから最近出てきたMozper(モズパー)は、ラテンアメリカにこのモデルを持ち込もうとしている。(StepCurrentも大型ラウンドを本日、4月27日に発表しており、Till Financialはシードラウンドを先週発表した。ちなみにa16zはCurrentのラウンドもリードしている)。

関連記事
わずか6カ月で150万人以上集める10代向けデジタルバンキング「Step」が109億円調達、NBAステフィン・カリーらの出資も発表
貯金箱はもういらない、Till Financialの子ども用出費管理アプリがメリンダ・ゲイツ氏の支援を獲得

「私たちGreenlightのビジョンは、子どもたち全員が財政的に健康で幸福な人間に育つ世界を作ることです」とGreenlightの共同ファウンダーでCEOのTim Sheehan(ティム・シーハン)氏は語る。

パンデミックによって、パーソナルファイナンス(個人の財政)の良い習慣を身につけることの大切さがますます強くなっている、と同社はいう。

「家族が一緒に過ごす時間がかつてないほど増え、多くの人達がこれを子どもたちにお金について教える良い機会だと捉えていることで、当社製品に対する需要は高まっています」と同社はいう。

Greenlightの共同ファウンダーであるティム・シーハン氏とJohnson Cook(ジョンソン・クック)氏(画像クレジット:Greenlight)

Greenlightは新たな資金を、プロダクト開発を加速してプラットフォームに財務サービスを追加するとともに、戦略的販売パートナーへの投資と地域の拡大に使うという。現在の従業員275名に加えて、今後2年間にあと300名を雇い、特にエンジニアを増やす計画だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Greenlight子ども資金調達デビットカード

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

わずか6カ月で150万人以上集める10代向けデジタルバンキング「Step」が109億円調達、NBAステフィン・カリーらの出資も発表

Step(ステップ)はティーンをターゲットにしたデジタルバンキングサービスで、TikTokのスターであるCharli D’Amelio(チャーリー・ダミリオ)氏も支援している。米国時間4月27日午前、同社は1億ドル(約109億円)のシリーズCラウンドを完了したことを発表した。開業からわずか6カ月で150万人以上のユーザーを集めている。General Catalystがリードしたこの最新ラウンドは、2020年末に同社が開業後わずか2カ月で50万ユーザーを達成した時に発表したStepの5000万ドル(約54億円)のシリーズBからすぐのことだった。

最新ラウンドには、Stepの既存出資者であるCapture、Stripe、チャーリー・ダミリオ氏、The Chainsmokers、Wil Smith(ウィル・スミス)氏、Jeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏らのほか、新たにFranklin Templeton Investmentを迎えた。これは投資への参入を計画している兆候だ。俳優でミュージシャンのJared Leto(ジャレッド・レト)氏も参加している。Stepはさらに、NBAオールスターのStephen Curry(ステフィン・カリー)選手を出資者の1人であることを正式に発表した。これまでは知らされていなかった。Squareの幹部であるSarah Friar(サラ・フライアー)氏、Jacqueline Reses(ジャクリーン・レス)氏、およびGokul Rajaram(ゴクール・ラージャーラム)氏の出資も合わせて発表した。

この資金調達の結果、General CatalystのKyle Doherty(カイル・ドハーティ)氏がStepの取締役会に加わる。これまでにStepは1億7500万ドル(約190億円)以上を調達している。

画像クレジット:Step

CEOのCJ MacDonald(C・J・マクドナルド)氏によると、StepはシリーズBで得た資金をまだ使っていないが、追加の資金が同社の成長を加速すると信じている。

「私たちは最初の6カ月間で150万以上の新規アカウントを開設しました。1日あたり1万アカウト以上が作られており、これを何百万何千万もの世帯へと広げて、次の世代がお金に明るくなる教育を手助けできるように、やるべきことがたくさんあります」と同氏は語った。シリーズBの時点では1日あたり7000から1万アカウントが新規登録されてるとStepはいう。

「実際、この資金は必要ではありません」とマクドナルド氏は付け加えた。「ただ、市場に出る早さは極めて重要であり、成長を加速し、基盤づくりに投資することができると考えているからです」。

会社は、運用、技術、プロダクトおよびデザイン部門の雇用を計画中であり、現在の65名を2022年には2倍にしたいと考えている。

現在、Stepは、若者向けモバイルバンキングサービスという混み合った市場で競争しているが、13歳から18歳というティーンエージャーをターゲットにしているところはごくわずかだ。Stepのアプリを使って、ティーンはFDIC(連邦預金保険公社)の保証を受けている手数料無料の銀行口座と18歳になる前に信用を確立できる安全のVisaカードを利用できるようになる。アプリには友達に送金できるVenmo風の機能もある。

画像クレジット:Step

Stepのこれまでの成長は、口コミ、ソーシャルメディアの利用のほか、新規登録1件につき数ドル(数百円)を支払う人気の紹介プログラムなどさまざまな要素がのおかげだ。ダミリオ氏やJosh Richards(ジョシュ・リチャーズ)氏などのソーシャルメディアインフルエンサー、さらにはStepの出資者であるJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)氏などのセレブとの提携も活用している。

同社はカリー氏の発表もこのバンキングアプリの認知度向上に役立つと信じている。3人の子どもの父親であるカリー氏が、もし自分の子ども達にStepを使わせると言えば、注目を集めるに違いない。

追加の資金は成長の加速に焦点を合わせているが、Stepは、将来既存ユーザーの年齢が上がった時のことも考えている。同社はクレジットおよび融資の市場参入も計画しており、将来の投資への参入も視野に入れている。その時は出資者のFranklin Templeton Investmentが役に立つ、とマクドナルド氏は指摘する。

「Franklin Templetonはご存知の通り世界最大級の投資会社です。そして私たちが投資や顧客の将来について考えるにつれ、Franklin Templetonのような偉大なブランドがこのラウンドに投資してくれたことは、彼らが世界をどう見ているかの証だと思っています」と同氏は語った。

Stepの資金調達は、ライバルであるCurrent (カレント)とGreenlight(グリーンライト)というファミリーをターゲットにした2社が新規ラウンドを完了したのと同じ日のことだった。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Step資金調達10代デジタルバンク

画像クレジット:Step

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

NFTを利用してクリエイターが自分の知的財産を守るブロックチェーンのプラットフォーム「S!NG」

数年続いた暗号資産(仮想通貨)の冬の後に、NFTの春がきたが、爆発的な売れ行きの後に価格が落ち着くにつれて、、ブロックチェーンの創設者たちは、NFTへの投機的な関心が変化しても、時間をかけて成長できるような、より安定した機会を探している。

特に関心を集めているのが、NFTを利用してクリエイターをめぐる経済を変革し、作品をホストするプラットフォーム以上にアーティストの方が利益を得るようにすることだ。このような新しい取り組みの1つが最近立ち上げられたS!NG(「sing」と発音する)だ。S!NGは、ユーザーが自分のサーバーにファイルをアップロードし、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンの上でそれらのアップロードにタイムスタンプするというプラットフォームだ。非常にシンプルな仕組みで、野心的な枠組みを備えているため、アーティストは作品を制作する際に作品に対するクレジットを維持できるようにする。

このアプリを作ったチームは、アーティストが彼らの創作過程で自分の知財を自動保存できるプラットフォームを構想している。たとえば制作途上のメモや注記、簡単なデモなども保存できるため、それらの明確にタイムスタンプされたパンくず(ブレッドクラム)の足跡を見れば、権利をめぐる論争は起きないし、起きても簡単に片づく。アプリの名前からもわかるように、特にソングライターやミュージシャンをターゲットにしているが、同社の案内を見ると、写真家やライター、プログラマーなどさまざまなタイプのクリエイターを対象にしていることがわかる。

「非常に広範な目撃者と非常にプライベートなイベントの両方を対象にできる。コンテンツがそこらに漏れ広がることはないが、それが特定の時点に存在するという証明はとても広範なものになりうる」と同社CEOのGeoff Osler(ジェフ・オスラー)氏はいう。

iOSアプリそのものも、かなり単純明快だ。写真や動画、オーディオ、テキストファイルといったメディアをアップロードし、協力者などに関する注記も付けてそれらを提出し、ブロックチェーン上に登録する。ブロックチェーンがホストするハッシュによりファイルはプライベートであり、暗号化されたファイルはAWS上のS!NGのサーバーに保存されるため、初期の草稿であってもそれらが一般公開される恐れはない。アーリーアダプターはブロックチェーンのスタートアップがサーバーごと夜逃げしてしまったらどうなるのか、と心配するかもしれないが、それはNFTのメディアファイルを中央的なサーバーにバックアップしている多くのスタートアップの、すべてに対していえることだ。

画像クレジット:S!NG

クリエイティブの世界に人生の時間の大半を投じてきた人びとは、ぽっと出のアーティストのように作品がタダで見られたり聴かれたりすることではなく、著作権といった権利の問題を重視するだろう。作品が完成して一般公開されたら、公開されているリンクを辿ってオリジナルに行き着くことはできるが、S!NGが狙っているのは、公開が創作のもっと初期の段階で行われ、コラボレーション的な創作過程をサポートできることだ。以前は、アイデアの権利をめぐって法的な争いが起こりがちだった。

ミュージシャンでアドバイザーのRaine Maida(レイン・メイダ)氏が、次のように説明する。「何かを盗まれても、私を守ってくれるチームがあれば、どんな紛争でも解決し勝訴できるでしょう。でも16歳の子どもにはそれは無理なことであり、S!NGはそれに代わるものを提供します。争いに勝つということよりも、そもそも盗まれないようにするという点が大きい。コンテンツにはS!NGの透かしが入っているため、どこに保存し共有してもわかります。その子どもはブロックチェーンが何かを理解できなくても、S!NGが自分を守ってくれる会社であることはわかるでしょう」。

現状では、NFT(非代替性トークン)に基づく法的保護はまだ珍しいかもしれないが、S!NGのチームは、今後DocuSignなどの技術が受け入れられるのにともなって、ブロックチェーン由来の所有権証明は自然に判例の中に含まれてくるだろうと信じている。

同社がクリエイターたちの説得に成功して、S!NGのプラットフォームが彼らのツールに含まれるようになれば、今後、同社はさまざまな機会を通じて、ブロックチェーン上で信じられないほど多くの若いクリエイターたちをユーザーにできるだろう。現在のところ、NFTを金のための投機の一種と見ているアーティストが多いため、当面の間、同社の創業者たちは誇大な宣伝を避けることに注力していくようだ。

「率直にいって、何かが何兆億ドル(何百兆円)で売れたとか騒いでいるクレイジーな今のNFTブームにはまったく関心がありません。私に関心があるのは、ファンが1000人いる小さなアーティストたちが、自分のビジネスを維持するために15ドル(約1620円)の会費を払ってくれることだけです」とオスラー氏はいう。

関連記事:イーサリアムの「最古のNFTプロジェクト」CryptoPunksをめぐる驚くべき熱狂

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFTS!NGクリエイターイーサリアム

画像クレジット:WIN-Initiative

原文へ

(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国のeコマース大手JD.comが一部従業員にデジタル人民元での給与支払いを開始

中国のデジタル通貨導入計画は、同国のハイテクコングロマリットから多くのサポートを得ている。Alibaba(アリババ)と競合する中国のネット通販大手JD.com(京東商城)は中国時間4月26日、一部のスタッフに対し、同国の物理的な通貨の仮想版であるデジタル人民元での給与支払いを開始したと発表した(2021年1月から導入とのこと)。

中国ではここ数カ月、デジタル通貨の実験が盛んに行われている。先進的な経済政策で知られる南部の都市、深圳では、2020年10月に50万人の住民に1000万元(約1億7000面円)相当のデジタル通貨を配布し、そのお金で特定のオンラインおよびオフライン店舗で買い物ができるようにした。

関連記事:中国のデジタル人民元の大規模な実験が深圳でスタート

中国の他のいくつかの大都市も、深圳に追随している。これらの地域の住民は、デジタル人民元の受け取りと支払いを開始するために、指定された銀行を通じて申請する必要がある。

このデジタル人民元構想は、中国の規制当局、商業銀行、テクノロジーソリューションプロバイダーが一体となって進められている。中央銀行の指示の下、中国工商銀行(ICBC、Industrial and Commercial Bank of China)をはじめとする中国の6つの主要行がデジタル人民元を中小銀行やテクノロジーソリューションプロバイダーに配布し、新しいデジタル通貨のユースケースを増やすというもので、一見すると現物の人民元の流通を模したスキームに見える。

例えば、JD.comは中国工商銀行と提携してデジタル収入を入金している。同社は、中国で初めてデジタル人民元で給与を支払う組織の1つとなった。2020年8月には、東南部の蘇州市でも一部の公務員の給与支払いにデジタル通貨が導入された。

中国の大手テック企業は軒並み、中央政府が資金の流れをより正確に把握できるようにするため、デジタル人民元エコシステムの構築に積極的に参加している。

JD.com以外では、動画配信プラットフォームのBilibili(ビリビリ)、オンデマンドサービスプロバイダーのMeituan(美团、メイトゥアン)、そして配車アプリのDidi(滴滴出行、ディーディー)も、ユーザーが支払いをする際にデジタル元に対応し始めた。ゲーム・SNS大手のTencent(テンセント)は「デジタル人民元事業者」の1つとなり、デジタル通貨の設計、研究開発、運用業務に参加していく。IPOが頓挫した後、大規模な改革を行っているJack Ma(ジャック・マー、馬雲)氏のAnt Group(アント・グループ)は、中央銀行と手を組み、デジタルでお金を動かすためのインフラ構築にも取り組んでいる。通信機器大手のHuawei(ファーウェイ)は、同社のスマートフォンの1機種にウォレットを搭載し、デバイスがオフラインでもデジタル人民元を瞬時に使用できるようにした。

【更新】デジタル給与の導入時期を明確にするため、本記事は更新された。

関連記事:中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

カテゴリー:フィンテック
タグ:JD.com中国デジタル通貨デジタル人民元

画像クレジット:Costfoto/Barcroft Media / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

企業支出管理の戦い激化の中、Brexが460億円を調達し評価額は8010億円

企業支出管理スタートアップのライバルであるRamp(ランプ)が評価額16億ドルで合計1億1500万ドル(約124億4000万円)を2回に渡るラウンドで調達したことを発表してからわずか数週間後の米国時間4月26日、Brex(ブレックス)は4億2500万ドル(約460億円)のシリーズDをTiger Globalのリードで完了したことを発表した。

新たな資金はBrexにとってこれまで最大の調達額で、企業価値は直近の民間評価額の2倍以上だった。Crunchbaseのデータによると、Brexは2020年中頃のシリーズCで30億ドル(約3245億3000万円)をわずかに上回る評価額をつけられ、株式発行により1億5000万ドル(約162億3000万円)を調達した。

BrexとRampの資金調達合戦は、彼らのプロダクト・カテゴリーの対象市場がいかに活発であるかを顕著に示すものだ。成長する企業に特典付きコーポレート・カードを提供するだけだったその起源から大きく離れ、Brexと数多くのライバルたち(ユタ州のユニコーンであるDivvyAirbaseなど)は、コアビジネスであるクレジットカードを中心としたソフトウェアスイートを開発し、企業のあらゆる支出管理を支援している。

Brex、Divvy、Rampといったこの分野の最大手がソフトウェアやコンテンツに課金することを控え、収入源を取引手数料などに頼っているのに対し、Airbaseはソフトウェアで収益を得ている。

支出管理スタートアップのユニコーンらによるソフトウェア軍拡競争によって、これまで以上の支出管理スタートアップが現在の収入源に加えてソフトウェア売上を得ようとするとは思えない。いずれの収入も急速に伸びているので、短期的には顧客当たりの売上を増やさなくても顧客数の成長に頼っていられるからだ。

【更新】なんと、私は間違っていた。Brexは別のリリースで(だから当初見逃していた)、新たなサービスとして月額49ドル(約5300円)のBrex Premiumを提供すると発表した。詳しくは後報する予定だが、まずはこの記事を更新したかった。

ちなみにRampは、支出管理で年間予測10億ドル(約1081億8000万円)の売上を計上したことを公表した。この後輩スタートアップの数倍の企業価値をもつBrexは、その上を行くと想像できる。

TechCrunchはBrexに連絡を取り、2020年と2021年第1四半期の成長結果を尋ねた。当社はTechCrunch宛の声明を提供し「毎月数千社のテックおよび非テック顧客を獲得している」と主張した。Brexは第1四半期に「顧客総数」が80%増え、月間新規顧客数が5倍に増えたことも話した。

それこそが、レイトステージ投資家を喜ばせたタイプの成長だ。TechCrunchはBrex CEOのHenrique Dubugras(ヘンリケ・デュブグラス)氏に近々話を聞く予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Brex資金調達Tiger Global

画像クレジット:

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

貸付ファンドオンラインマーケット「Funds」のファンズが20億円超を資金調達、新たに地方創生関連ファンドの構想も

中央がファンズの藤田雄一郎代表

貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」を運営するファンズは4月27日、第三者割当増資によりシリーズCラウンドで総額約20億2556万円の資金調達を行ったと発表した。2016年11月に設立したファンズの累計調達額は32億円となる。

引受先は既存株主のグローバル・ブレインとB Dash Ventures、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、AGキャピタルで、新規引受先はANRIと日本郵政キャピタル、メルペイなどとなる。

今回の資金調達で、貸付ファンドの拡充や人員体制の増強、マーケティングなどに充てていく。また、ファンズは2021年度中にESGや地方創生に関する新たなファンドも出す考えだ。ファンズの藤田雄一郎代表にサービス概要や新たな取り組みについて聞いた。

貸付ファンドオンラインマーケットプレイス「Funds」

「Fundsは資産形成をしたい個人投資家と、資金調達をしたい、または個人投資家と接点を持ちたい企業をマッチングするプラットフォームです」と藤田氏は説明した。

個人投資家はスマホ経由で1円から、企業が事業資金調達のために組成したファンドに貸付投資ができる。貸付投資とは、このファンドと企業間の貸し付けに対し、個人投資家が出資することとなる。

Fundsへのユーザー登録費用や貸付投資の手数料、口座開設費用は掛からない。ファンズ自体は、Funds上で資金調達を行うファンドから業務委託料を徴収し、利益を得ているかたちだ。

ファンドはFundsで得た出資金を用いて借り手企業に貸し付けを行い、元本とそこから生まれた収益を個人投資家に分配する。

Fundsに参加する企業は、上場企業または監査法人などの監査を受けていることが前提だ。実際にFundsで資金調達を行う企業の85%は上場企業となる。

さらに藤田氏は「上場していても無条件でOKという訳ではありません。当然我々でも財務状況や事業計画などについて厳密に審査をします。審査の結果、事業の継続性に疑義があるなどの理由から、上場していてもお断りするケースもあります。このため個人投資家の方からは『資産形成をする上で安心度合いが高い』といった評価もいただいています」と話した。

全ファンドの8割が3時間以内に満額達成

2019年1月にFundsをリリースして以来、約2年で投資家登録数は3万人を超えている。これまで上場企業を中心とした29社が組成する約73のファンドを募集し、全ファンドの8割が3時間以内に満額申込を達成している。また、2021年3月末時点で分配遅延・貸し倒れは0件となっている。

Fundsにある案件では予定利回りが1~3%台が中心で、運用期間は平均で1~1年半となっている。貸し倒れのリスクなどを判断しなければならないが、個人投資家はファンドの募集時に予定利回り・運用期間が決められているため、先を見通したミドルリターン・ミドルリスクの資産形成ができるようになる。株式投資やFXのようにチャートにくぎ付けになり、値動きを追わなくて済むのだ。

藤田氏は「現状、日本において予定利回り型の金融商品は多くありません。サービスローンチ当初はボリュームを作ることに苦労しました。ですが最近は大手企業の参加やリピーター企業も増えました。実際に参加した企業の約7割がリピートするかたちです。地道に積み上げてきた実績によって、ファンドのボリュームも拡大し、2021年3月は公開ファンドの資金募集額が単月で10億円を超えました」と規模拡大に自信をみせる。

投資を通じたファン作りを支援するFCM

企業とってのメリットは、Fundsによって銀行融資や社債などだけでなく、資金調達の方法を多様化できる点だ。社債は信用格付けなどが必要だが、Fundsでは疑似的な社債として担保や信用格付けの取得はいらず、手間を省いてすばやく資金を調達できる。

さらに企業はこれまで顔の見えなかった個人投資家との接点を得るメリットもある。ファンズは2020年8月に電通と、投資を通じて個人投資家と企業との関係構築を支援するため「FinCommunity Marketing(フィンコミュニティマーケティング、FCM)」を共同開発した。

ファンズは現在、FCMをFundsの基本的な機能として提供している。企業はただファンドを組成して資金を集めるだけではなく、FCMを通じて個人投資家との交流会・イベントの企画や、出資者限定の優待券を設定するなど、企業へのファン化を促す戦略を練ることができるようになった。

FCMの取り組みに企業も乗り気だ。Fundsに参加する企業のうち約3割が、第一の目的を資金調達としていない。その3割の企業は「投資を通じたファン作り」を目的としているという。FCMによって企画したイベントなどを通じて、企業はFundsに登録する約3万人の個人投資家とのタッチポイントを得ることに重要性を見出しているのだ。

新たなファンドによる展開も

ファンズが三井住友信託銀行と進めているESG関連のファンド組成支援にも力を入れていく。

藤田氏は「グローバルではESG債、SDGs債というのはとても活況になっています」という。しかし、ESG債、SDGs債は格付けや認証取得における企業側のハードルが高く、いわゆる超大手企業が中心に発行している。買い手も主に機関投資家となり、幅広い企業や個人投資家が参入しづらい状況になっているという。

この課題を解決するため、Fundsで2021年度内に、ESG認証を行う外部機関の正式な認証を受けた貸付ファンドを出していく。企業はFundsで数千万円から数億円といった規模感でESG関連の貸付ファンドを組成でき、個人投資家からすればこれまでよりサステナブルな事業に対する出資へのハードルが低くなるのだ。

この他、ファンズは大手企業と手を組み、地域に貢献する貸付ファンドの募集も始めていく考えだ。

藤田氏は「全国展開を目指す地場の企業を支援するような、または地元の人が地元企業に投資できるような、地産地消型の地方創生貸付ファンドを考えています。こちらも2021年度内にいくつか出していきます」と新たな事業展開を語った。

関連記事:

カテゴリー:フィンテック
タグ:Funds資金調達日本投資プラットフォーム

画像クレジット:ファンズ

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay」が米国証券取引委員会に登録届出書を提出

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay(ピクペイ)」は米国時間4月21日、時価総額最大1億ドル(約108億円)となるIPOを行うためのForm F-1を、米国証券取引委員会(SEC)に提出した。同社はティッカーシンボル「PICS」で、NASDAQに上場する予定だ。

PicPayは、主に金融サービスプラットフォームとして運営されており、そのサービス内容にはクレジットカード、Apple Pay(アップル・ペイ)に似たデジタルウォレット、Venmo(ベンモ)型のP2P決済要素、eコマース、ソーシャルネットワーキング機能が含まれる。

PicPayのCEOであるJosé Antonio Batista(ホセ・アントニオ・バティスタ)氏は声明の中で「私たちは、人々や企業の交流、取引、コミュニケーションの方法を、インテリジェントでコネクテッド、かつシンプルな体験で変革したいと考えています」と述べている。

PicPayは現在、サンパウロに拠点を置きブラジル全土で事業を展開しているが、当初は2012年にリオの北に位置する沿岸都市ビトリアで設立された。同社は2015年に、巨大食肉加工企業のJBS SAを所有するブラジルの億万長者、Wesley Batista(ウェスレイ・バティスタ)氏とJoesley Batista(ジョエスレイ・バティスタ)氏兄弟の投資持株会社であるJ&F Investimentos SAグループに買収された。

PicPayの登記簿謄本によると、J&Fは「Operation Car Wash(洗車場作戦)」と呼ばれるブラジル史上最大の汚職スキャンダルに関与しており、2017年にブラジル連邦検察当局と司法取引を行っている。2020年12月には15億ドル(約1600億円)の罰金を支払い、さらに4億4260万ドル(約477億7000万円)をブラジルの社会計画に拠出することに合意した。とはいえ、J&Fは依然として同国の強力なコングロマリットであり、PicPayの強力な支援者として位置づけられている。

2020年はPicPayにとって爆発的な成長を遂げた年となり、同社のアクティブユーザー数は2840万人から2021年3月時点で3600万人にまで増加した。PicPayからTechCrunchに提供された2020年の財務報告書によると、同社の収益も2019年の1550万ドル(約16億7000万円)から2020年には7100万ドル(約76億5000万円)へと飛躍的に伸びている。しかし、同社はまだ利益を出しておらず、2020年にはその成長を後押しするために、1億4600万ドル(約157億2000万円)を投じている。

「当社のエコシステムにおける顧客ベースとユーザーエンゲージメントの成長は、当社のビジネスモデルの規模拡大性を示すものであり、顧客にとってさらなる価値を生み出す大きな好機の現れであると、私たちは考えています」と、声明でバティスタ氏は続けている。

フィンテックは現在、ブラジルで最も注目を集める分野の1つだ。同国では伝統的に4つの大手銀行が支配しているが、これらの銀行はテクノロジーへの対応が遅れ、非常に高い手数料を徴収している。そのため、この分野には大いに改善の余地があるからだ。

PicPayのIPOは、Banco Bradesco BBI(バンコ・ブラデスコBBI)、Banco BTG Pactual(バンコBTGパクチュアル)、Santander Investment Securities Inc.(サンタンデール・インベストメント・セキュリティズ・インク)、Barclays Capital Inc.(バークレイズ・キャピタル・インク)が主導している。

関連記事:ブラジルの無料クレジットマーケットプレイス「FinanZero」が7.7億円を追加調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:ブラジルPicPayモバイル決済新規上場

画像クレジット:PicPay

原文へ

(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

個人向け銀行ローンマッチングのクラウドローンが自動車遠隔制御IoT活用のFinTechサービスGMSと業務提携

個人向け銀行ローンマッチングのクラウドローンが自動車遠隔制御IoT活用のFinTechサービスGMSと業務提携

個人向け銀行ローンマッチングプラットフォーム「クラウドローン」を提供するクラウドローンは4月26日、自動車の遠隔起動制御を可能にするIoTデバイス「MCCS」を提供するGlobal Mobility Service(GMS)との業務提携開始を発表した。

同取り組みを通じ、これまで支払い能力はあるにもかかわらず、従来のローン審査には通らなかった起業直後の個人事業者や、非正規労働者、シングルマザーなどのクラウドローン利用者にも、IoT技術を活用し幅広くマイカーローンが組める機会を提供できるようになった(すべての者の審査通過を保証するものではない)。

2020年1月にリリースした「クラウドローン」は、利用者が事前に約3分の診断登録を行い、提携銀行から直接融資の提案を受け取れるというサービス。手軽にローンが比較できる点で、1年4カ月で利用者は1万3000人、マイカーローンも4000件超の依頼があるという。

2021年4月現在、すでに16行の銀行からローンの提案が行われているものの、ユーザーの年収・職種や現時点での借入状況から、十分な価値提供ができないケースがあったそうだ。

今回の提携で、サポートできる融資対象者を拡げられることが、国内事例ではまだ数少ない金融包摂を実現することとなるという。同社がビジョンとして掲げる「経済的に物事を選択する自由を提供すること」へ貴重な一歩になると考えているとした。

個人向け銀行ローンマッチングのクラウドローンが自動車遠隔制御IoT活用のFinTechサービスGMSと業務提携

現在、日本国内における自動車ローン不通過数は年間200万人とされ、融資審査では、年収だけでなく比較的収入が不安定とされる職種の場合ネガティブに判断されることがあるという。

このため、仕事や日常生活に車を必要とする方でも、ローンが組めないことで調達を諦めるか、維持費が高コストとなるリースなどの方法を検討しなければならなかった。

一般的には、銀行のマイカーローンは、不動産とは違い車に担保を設定できないため、滞納リスクを考慮すると融資審査については保守的な側面があるという。

そこでGMSは、2020年3月より国内の銀行と包括業務提携を実施。IoT技術を活用し延滞など契約条項に違反があった場合には、遠隔操作による車両エンジン起動停止を行い、車両回収や売却を行う仕組みを開始した。

車の利用制限を貸し手側に持たせることで、融資資金の回収を行いやすくすることで、ローンの利用の対象者を大幅に拡げることを実現した。

2013年11月設立のGMSは、「真面目に働く人が正しく評価される仕組みを創造する」をビジョンに掲げ、世界の貧困・低所得層約17億人の信用創造を行う金融包摂型FinTechスタートアップ。

自動車の遠隔起動制御技術を搭載した IoTデバイス「MCCS」で収集した車両データ(走行状況、速度等)と金融機関と連携して取得した金融データ(支払い状況など)をモビリティサービスプラットフォーム「MSPF」上で分析することで、ドライバーの信用力を可視化し、従来の与信審査には通過できなかった方へ、ローンやリースなどの金融サービスを活用する機会を創出する。

同社は、日本国内およびASEAN諸国(フィリピン/カンボジア/インドネシア)において低所得層の就業機会を創出する社会解決型のビジネスモデルが評価され、2020年10月時点で累計約56億円の資金調達を実施している。

貧困などの問題を解決する中に経済合理性を創出したビジネスモデルにより、豊かな社会の実現に向けて、国際社会に貢献するとしている。

クラウドローンは、「経済的に物事を選択する自由と、融資において情報格差のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、2020年1月より日本初の銀行提案型ローンマッチングプラットフォーム「クラウドローン」を提供開始。サービス提供開始後、約1年4カ月で登録されたローン案件は2万件を突破した。

関連記事
クルマを買えない世界の20億人を救う、新たな金融の仕組みーーGMSが11億円を調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:IoT(用語)金融包摂 / ファイナンシャル・インクルージョン(用語)クラウドローン(企業・サービス)Global Mobility Service(企業)日本(国・地域)

インド中央銀行がデータ保存規則違反でアメックスに対し新規顧客の追加を制限

インド中央銀行は、同国におけるデータ保存規則の違反を理由に、American Express(アメリカン・エキスプレス)とDiners Club(ダイナースクラブ)が新規顧客を増やすことを2021年5月から制限するとインド時間4月23日に発表した。

インド準備銀行(RBI、Reserve Bank of India)は声明の中で、2つのカード会社のいずれかを利用している既存の顧客は、5月1日に発効するこの新しい命令による影響を受けないと述べている。

インド中央銀行が、2018年に発表された同国のデータ保存規則へのコンプライアンス違反を理由に企業にペナルティを科すのは、今回が初めてだ。この規則では、決済企業はすべてのインドでの取引データを同国内のサーバーに保存することが求められている。

Visa(ビザ)やMastercard(マスターカード)をはじめとする複数の企業と米国政府は、これまでにインド政府に対し、規制当局の「自由な監督アクセス」を可能にするための規則を再考するよう要請してきた。

さらにVisa、Mastercard、American Expressの3社は、このルールを大幅に変更するか、完全に破棄するよう当局に働きかけていた。しかし、これらの努力が功を奏さなかったため、ほとんどの企業がルールを遵守するようになった。

American Expressの広報担当者は、現地時間4月23日夜に発表した声明の中で「RBIがこのような行動に出たことに失望している」としながらも「できるだけ早く」懸念を解決するため当局と協力していると述べた。

同国におけるAmerican Expressの顧客数は約150万人に上り、インドの外資系銀行の中で最も多くの顧客を獲得している。

「当社は、インド準備銀行とデータローカリゼーションの要件について定期的に対話を行い、規制遵守に向けた進捗状況を示してきました。【略】これにより、インドの既存のお客様に提供しているサービスに影響はなく、お客様は通常通り当社のカードをご利用いただけます」と同社は述べている。

Discover Financial Servicesの傘下にあるダイナースクラブは、インド最大の民間銀行(HDFC)との提携によりインドでクレジットカードを提供しているが、声明の中で、インドは引き続き同社にとって重要な市場であり「インドでの成長を継続できるよう」中央銀行と協力して解決策を検討している、と述べている。

2020年、インド中央銀行は、HDFC銀行のサービスが停電に見舞われた後、新規のクレジット顧客を追加したり、デジタル事業を立ち上げないよう命じた。

4月23日の命令は、インドのもう1つの主要外資系銀行であるCitigroup(シティグループ)が、収益性の向上を目指してアジアの消費者向け事業の大半から撤退する計画を発表した中でのことだ。13カ国で展開している同銀行の消費者向け事業は、現在売却先を探している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:インドAmerican ExpressDiners Clubクレジットカード

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

SoftBankが米国のヒスパニック系移民向けサービスに大型投資

ロサンゼルスを拠点とするスタートアップWelcome Techは移民コミュニティを対象とした大規模なデジタル・プラットフォームを構築中だ。このほどTTV Capital、Owl Ventures、SoftBank Groupが立ち上げた1億ドル(約107億9000万円)のSB OpportunityFundが共同でリードしたシリーズBのラウンドで3500万ドル(約37億8000万円)の資金を調調達した。

Crosscut Ventures、Mubadala Capital、Next Play Capital、Owl Capitalもラウンドに参加しており、2010年のWekcome Techの創立以来の調達総額は総額は5000万ドル(約53億9000万円)に達した。同社はテキサス州サンアントニオにもオフィスがあるが、2020年3月に800万ドル(約8億6000万円)のシリーズAラウンドを実施している。

移民によって、移民のために作られたWelcome Techは、その名が示すとおり、米国への移民を歓迎し社会に慣れることを助け、大きな成功を収めるために役立つプラットフォームとなることを目的としている。

こうしたサービスでは金融商品をリリースして移民の便宜を図り、その結果移民コミュニティの信頼を得ようとすることが多い。しかしWelcomeのアプローチは逆で、地域社会のニーズを理解するために全力を上げ、まずコミュニティの信頼を得ようと努力するという点で異なっている。

具体的には、Welcomeは設立後1年間「新しい国で成功するために必要な情報、サービス、教育リソース」を提供するプラットフォームの構築に注力してきた。当初の対象は米国におけるヒスパニック系コミュニティだった。

このプラットフォームはSABER es PODER(スペイン語で「知は力なり」)と名づけられた。目的はヒスパニック系コミュニティのメンバーに「広く認知されて信頼される」リソースとなることだった。

Welcome Techは、その後蓄積した知識、データを元に、半年前にバイリンガルで利用できるモバイルアプリとデビットカードを含む銀行サービスを開始した。さらに2021年1月には病院や歯科医院などのリソースを割引価格で利用できる月額制のサービスを開始している。

TTVキャピタルの共同ファウンダーでパートナーのGardiner Garrard(ガーディナー・ガラード)氏はヒスパニック市場は、人口6280万人という米国最大のマイノリティコミュニティだと指摘し、次のように述べた。

しかしヒスパニック系世帯の半数は銀行サービスをフルに利用できていません。口座を開設することができないためクレジカードやデビットカードなどのサービスを利用できない世帯が多数あるのです。これほど大きなコミュニティにサービスを提供していないのは記録的な失敗です。Welcome Techはこの問題に正面から取り組んでいます。

Welcomeの共同ファウンダーでCEOのAmir Hemmat(アミール・ヘマット)によれば、同社のプラットフォームには現在300万人弱のアクティブユーザーを持っているという最終的な目標は「デジタル・エリス島 」だという。ニューヨークの自由の女神の近くの小島、エリス島には移民局が置かれていたことがあり、米国社会において移民歓迎の象徴となっている。

ヘマット氏はTechCrunchの取材に対し「移民の成功を運任せにするやり方はバカげています。企業が魅力的な人材を確保しようとあらゆる努力を払っていることを考えてみましょう。国の場合はほとんど逆のことをしています」と語った。

画像クレジット:Welcome Tech

特に、ヘマット氏と共同ファンダーのRaul Lomeli-Azoubel(ラウル・ロメリ・アズベル)氏は移民の成功には金融サービスへのアクセスが不可欠だと以前から認識していた。

「我々は最終的な目的は移民のためのより良い未来とより幅広いプラットフォームの構築ですが、そのための基盤、第1歩は間違いなく金融サービスの提供です」とヘマット氏は述べた。

Welcomeはヒスパニック系コミュニティのために英語・スペイン語バイリンガルの無料の銀行口座を提供する。この口座は「コミュニティのニーズに合わせて高度にカスタマイズ」されているという。

最近、TomoCreditGreenwoodなど、ヒスパニック系コミュニティを対象とした新しいデジタル・バンキングが数多く登場している。Welcomeは、さらに広範囲なプラットフォームを提供することでライバルとの差別化をを図っている。月額10ドルのサービスをサブスクリプションすれば、医療の割引やテレビの無料のテレビチャンネルのなどのサービスを受けることができる。へマット氏はこう述べた。

この点を検討した結果、移民に対してはデータをコンピュータで処理した「お勧め」が十分提供されていないことがわかりました。多くの移民は試行錯誤や口コミに頼っており、こうした情報源は場合によっては詐欺的であったりするのです。移民が置かれているこうした厳しい状況を改善するには、これまでばらばらだった人々をプラットフォームに集約することが必要です。これがさまざまなカテゴリーの消費者により良いサービスや製品、有利な価格、優れた体験などを提供するための大きな一歩となると考えています。

関連記事
現金があるのにローンを組めない人向けサービスを提供するTomoCreditが約7.4億円調達
ラッパーのキラー・マイクが支援するマイノリティ向けデジタルバンクGreenwoodに大手銀行がこぞって出資

今回の大型ラウンドで得た資金は、こうした目的を実現するためにより多くのパートナーの確保すると同時にWelcomeの認知度を高めるために用いられるという。

SoftBankのOpportunity Fundで投資ディレクター、グロースステージ投資責任者を務めるGosia Karas(ゴシャ・カラス)氏は、TechCrunchの取材に対し「米国では、移民人口が急増しているにもかかわらず、十分にサービスは提供されていません。このギャップにより、新たな参入者が金融サービスを提供する絶好のチャンスが生まれています」と述べた。

SoftBankはターゲットとなる市場を真に理解し着実にデータを収集するWelcomeのアプローチにに特に魅力を感じたといいう。カラス氏はこう述べた。

フィンテックサービスの分野に飛び込む前にWelcomeのファウンダーたちは十分に準備を重ね、経験を積んでいました。何年もかけて、移民というオーディエンスに対する理解を深め、コミュニティにおける信頼関係を構築してきました。これによりターゲットを絞りこみ、そのニーズに適合したコンテンツの構築ができました。これはがバイリンガルの銀行アプリ、デビットカードなどのサービスを展開するための優れたバックボーンとなっているのです。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Welcome Tech移民SoftBank Group資金調達アメリカ

画像クレジット:Nattanitphoto / Shutterstock

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:滑川海彦@Facebook

貯金箱はもういらない、Till Financialの子ども用出費管理アプリがメリンダ・ゲイツ氏の支援を獲得

現代は、子どももティーンエイジャーも、出費管理の権限を広げたいと思っている。

今でも、その年齢層のための節約と出資を目的とした金銭管理サービスやアプリは数多い。とりわけよく知られている人気アプリの代表にGreenlight(グリーンライト)があるが、そこへ別の角度からアプローチするスタートアップが登場した。子どもたちの出費管理能力の改善を目指す企業だ。

Till Financial(ティル・ファイナンシャル)は、子どもたちを賢い消費者にするための家族向け連帯金銭管理ツールだと自らを称している。ニューヨークを拠点とする同社のバンキング・プラットフォームは、親子間で「オープンで正直」な話し合いを促すようデザインされている。このほど500万ドル(約5億4000万円)を調達し、そのゴールに一歩近づいた。

このラウンドには大勢の投資家が集まった。Elysian Park Ventures、Melinda Gates(メリンダ・ゲイツ)氏のベンチャーファンドPivotal Ventures、Magnify Ventures、Afore Capital、Luge Capital、Alpine Meridian Ventures、The Gramercy Fund、Stadium Goods(ステイディアム・グッズ)の創設者とCEOらによるファミリーオフィスSM Ventures、Lightspeed Venture PartnersのScout Fundなどだ。また、フィンテック企業Petal(ペタル)の創設者たち、酒類マーケットプレイスDrizly(ドリズリー)の創設者たち、Transactis(トランザクティス)の社長、1-800-Flowers(ワン・エイトハンドレッド・フラワーズ)の社長といったエンジェル投資家も参加している。

Tillの目標の1つに、子どもたちが「実践で学ぶ」手助けをして、自信を持って出費の判断ができるように育てることがある。同社は子どもに銀行口座と、デジタルと実際のデビットカードを与え、目標に基づいた節約を行わせる。たとえば、ある十代の若者がiPadを買いたいと思ったとする。Tillは、iPad購入のためのお金を貯められる銀行口座を開設し、おじいさんやおばあさんなどの家族に、その口座に同じ金額か、それ以上の資金援助ができるようにする。また、Netflix(ネットフリックス)やSpotify(スポティファイ)の利用料など、継続的な支払いも行えるようにして、毎回決まった日に必ずお金を払うというのはどんな感じかを体験させる。

「両親も現在の銀行のサービスも、節約という面に限れば重要な部分が欠けています。私たちは第一に、節約と出費を手助けして、子どもたちが『賢くお金を使う人』になるための準備を整えます」と、Tom Pincince(トム・ピンシンス)氏とこの会社を共同創設したTaylor Burton(テイラー・バートン)氏は話す。「Tillでは、子どもたちはしっかり考えて目的のあるお金を使う方法を学び、同時に両親は、透明性と信頼性によって信用を深めることができます」

ピンシンス氏は、この市場は明らかに手薄だと感じてる。

「旧来型の銀行は、子どもたちにはまったく関心がなく、初期のデジタルプレイヤーたちも、そこをまったく見落としています」と彼はいう。

子どもをターゲットにしたアプリは山ほどあるが、正しいプレイヤーのための空間が大きく残されているとピンシンス氏は考えている。

「現実に8歳以上18歳未満の子どもたちは、銀行口座を持たない最大の集団だということです」と彼は話す。「私たちは、お子さんの財布を握ろうと必死になっているのではありません。その財布の中の最初の製品になろうとしているのです」

たしかに、これは大きな市場だ。米国の平均的な中流家庭では、子ども1人あたり18歳になるまでにかかる費用は28万4570ドル(約3070万円)にのぼる

このプラットフォームは、すべての家族が無料で利用できる。これは早々にPayPal Ventures(ペイパル・ベンチャーズ)の運営パートナー兼COOのPeggy Mangot(ペギー・マンゴット)氏の目に留まった。彼女は個人的に、Tillのシードラウンド投資に参加している。PayPal以前、マンゴット氏は、子どもたちに責任ある出費の習慣を身につけさせることを目指したWell Fargo(ウェル・ファーゴ)の手数料なしのモバイル・バンキング・アプリGreenhouse(グリーンハウス)の開発を率いていたこともある。

マンゴット氏には3人の子どもがあり、子どもたちがオンラインで買い物をするときには彼女自身のクレジットカードを渡していたと振り返る。また、店に買い物に行くときや友だちと会うときには、現金を渡していた。

「しかしそれでは、子どもたちにお金の意味が伝わりません。モノの値段を本当に理解する機会がなく、所有している意識も芽生えません」と彼女は話す。「現金やカードを渡すのが私だけだからです」

マンゴット氏がTillに惹かれたのは、子どもたちの「尊厳を重視し介在してくれる」からだという。

また彼女は、お金に関する大切な教訓を小さい時期から学ばせることで、世の中にはもっと責任感のある大人が増えると信じている。

「早い時期から子どもたちにそうしたツールを持たせることで、独立して小切手や請求書を自分で管理しなければならなくなる前に、何年もかけて体験を重ねられます」とマンゴット氏はTechCrunchに話した。「これが広く受け入れられたなら、金銭的な意識と自信と管理能力に満ちた若者が、これまでになく増えることになるでしょう」

Tillは、交換手数料で収益を得ることはせず、ユーザー特典としての商品を提供する業者との提携で利益を出そうとしている。また、ユーザーが大人になり、別の必要性が生じたときに金融機関を紹介する紹介料で利益を得ることも考えている。

「お子さんたちの生涯の銀行になろうとは思っていません。私たちは最初の銀行になりたいのです」とピンシンス氏はいう。「なので、彼らが大人になったとき、私たちは彼らをハイタッチでプラットフォームから送り出し、最初の大学の学資ローンや最初のクレジットカードの契約へと導くことになります」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Till Financial子ども10代資金調達

画像クレジット:Till Financial

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:金井哲夫)

経費管理スタートアップのPleoがシリーズCで約110億円調達、新請求書支払いサービスを開始

経費管理ツールや「スマート」なカンパニー向けのMastercardを提供しているフィンテックの後発企業であるPleoは、2021年夏にシリーズCラウンドの資金調達を予定している。また今週中には、B2Bの請求書支払いサービスを開始する。

共同創業者でCEOのJeppe Rindom(ジェッペ・リンドム)氏は、電話で「私達はは2022年までの資金がありましたが、ここ数四半期で信じられないほどの勢いがあり、また多くのインバウンドからの関心が寄せられているので、夏にシリーズCでの資金調達を行い、1億ドル(約110億円)程度を調達する予定です」と語っている。

Pleoはこれまでに7880万ドル(約85億円)を調達している。前回の資金調達は2019年5月の5600万ドル(約61億円)で、主な投資家はSeedcamp、Creandum、Kinnevik、Stripes、Foundersなどだった。

PleoはDext、Soldo、Spendesk、Expensifyなどといくつかのレベルで競合している。

そしてPleoは米国時間4月21日、企業間の請求書支払いとサプライヤーの利用規約を統合し、追跡し、支払うためのプラットフォーム「Bills」をローンチした。このプラットフォームでは、国内送金を無料で行うことができる。

請求書はPleoのOCR技術を用いて自動的に処理され、重複していないかどうかを相互に参照し、真正性を確認した上で支払いが承認される。

さらに、管理者の承認管理や国内送金の無料化も実現する。

リンドム氏は「請求書の処理と請求書の有効性の確認に半分の時間を費やしていると管理者の66%が回答していることから、この複雑なプロセスを単純化し、エンド・ツー・エンドで概要を把握できるようにすることが私達の使命となりました」と付け加えた。

Pleoは、Tradeshiftの初期チームメンバーであったリンドム氏とNiccolo Perra(ニッコ・ロペラ)氏によって、2015年にコペンハーゲンで設立されだ。

関連記事

カテゴリー:フィンテック
タグ:Pleo経費資金調達コペンハーゲン

画像クレジット:Pleo founders

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ジェンダー差別疑惑を払拭、アップルが配偶者とティーンエージャーのための「Apple Card Family」を発表

Apple(アップル)は金融サービス巨人としての地位を徐々に確立しつつある。ユーザーの支払いカードを保管するデジタル・ウォレットを作り、独自のApple Card(アップル・カード)を2019年に提供開始した。米国時間4月20日の発表イベントで、Appleはその物語に新たな章を書き加えた。Apple Card Family(アップル・カード・ファミリー)は、パートナーや配偶者が共同でカードを保有し、13歳以上の家族にもApple Cardを使わせることができる。

Apple Card Familyは5月にまず米国でスタートし、ユーザーは最新バージョンのiOSにアップデートした後使えるようになる、とAppleが本日発表した。

発表のタイミングは興味深い。先月Appleおよび提携先のGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)は、Apple Cardの利用限度額などにおけるジェンダー差別疑惑を払拭したApple Cardが発行されて以来続いていた捜査の結果だ。

裁定の中で規制当局は、Appleの疑いは晴れたものの、この事例は信用度スコアにおける地域固有のジェンダーその他の差別、中でも配偶者とパートナーに関わる問題を浮き彫りにするものであると指摘した。

その意味で、この日の発表は驚きではないとする向きもあり、遅すぎたという人もいるだろう。

このサービスの発表は、問題を解決してそのストーリーを強調し、公正に行動する意志を、規制当局が察知するより早く正式に発表しようというAppleの努力を感じさせる。

「[Apple Card発行]当初に私たちが気づいたことの1つが、この業界では1枚のクレジットカードに2人の利用者がいる時の信用度スコア計算に公正さが欠けていることでした」とCEO Tim Cook(ティム・クック)氏が本日語った。「1人が良い信用履歴の恩恵に預かっているのに、もう1人は違う。私たちはこのしくみを再発明したかったのです」

(ちなみにこれは、別のレベルでも驚きではなかった。iOS 14.5のデベロッパー・プレビューは、AppleがApple Cardの複数ユーザーサポートを準備していることを暴露していた。成人の共同名義や家族が利用するための基盤づくりだ)

Cook氏が説明したように、配偶者やパートナーは利用限度額の共有と統合が可能になり、アカウントに関して同等の権利を持つ。「信用度の平等」構築のためだ。

「このソリューションは財政の公正化を後押しするものであり、ゲーム・チェンジャーです」と同氏は言った。実際、パートナーの1人に未払い負債があったり、債務不履行があったり、収益力に違いがあるような場合、そもそもパートナー同士が実際に財産を共有していれば、新しいしくみは収益力を高い側から他方に移す手段になる。これは理にかなったものであり、正直なところ遅すぎたといえる。

Apple Cardを13歳以上に使わせる際、限度額を設けることが可能で、ほかにも使い方に関する制御ができる。

これまた賢明な動きであり、Appleが全ユーザーのプライバシー・コントロールとデバイス毎のペアレンタル・コントロールで自身に「責任ある」テクノロジー企業の役割を与えてきたことの延長として、さらに新たな視点を加えて教育的ツールになろうとしている。

多くの親たちが、子供達の経済感覚を養うためにテクノロジーとアプリに目を向けている今、Appleがこの取組によって自身をパートナーとして位置づけようとするのは理にかなっている。

家族がより公平な方法で財政を管理できるようにする一方で、もちろんそこにはビジネス寄りの戦略がある。これによってAppleは、Apple Cardを使う潜在ユーザーのもっともっと大きな基盤を得る。多くのユーザーがDaily Cash(ウォレットのApple Cashカードで購入した金額の3%が毎日キャッシュバックされる)などのサービスを使い、カード番号もCVVセキュリティー・コードも有効期限も署名もない安全なチタン製Apple Cardを手にするようになる。

ちなみに、現在どれだけの人数がApple Cardを使っているのか、よくわかっていない。Cook氏は、2020年3月時点で310万人以上が使っていると推定されていたApple Cardを、「史上最も成功したクレジットカード発行」とだけ言った。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Apple

[原文へ]

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook

スタートアップの株式管理をソフトウェアで助けるシンガポールのQapitaが5.4億円調達

Qapitaの共同創業者たち。左からヴァムゼー・モハン氏、ラヴィ・ラヴラパルティ氏、ラクシュマン・グプタ氏(画像クレジット:Qapita)

シンガポールのフィンテックQapitaはスタートアップに、資本政策表やESOP(Employee Stock Ownership Plan、従業員による株式所有計画)を管理するソフトウェアを提供している。同社はこのほどプレシリーズAで500万ドル(約5億4000万円)を調達した。ラウンドをリードしたのはMassMutual Venturesで、Endiya PartnersとAvaana Capitalの創業者Anjali Bansal(アンジャリ・バンサル)氏やUdaanの共同創業者Sujeet Kumar(スチット・クマール)氏などのエンジェル投資家が参加した。

2020年9月にQapitaのシードラウンドをリードしたVulcan CapitalとEast Ventures、およびKoh Boon Hwee(コー・ブーン・フィー)氏、Atin Kukreja(アティン・ククレジャ)氏、Alto Partners、Mission Holdings、Northstar Group Partners、K3 Venturesなど、多くのエンジェル投資家たちも、この投資に復帰した。East Venturesの共同創業者でマネージングパートナーのWillson Cuaca(ウィルソン・クアカ)氏が、Qapitaの取締役会に加わる。

関連記事:スタートアップは鍵となる従業員に何%の株を渡せばいいのか

Qapitaは現在、インドネシアとシンガポールとインドのクライアントにサービスし、スタートアップに注力している。同社のソフトウェアで非公開企業は、キャップテーブル(資本政策表)をデジタル化して管理し、デューディリジェンスを行い、株を従業員に発行する。Qapitaは2019年にRavi Ravulaparthi(ラヴィ・ラヴラパルティ)氏とLakshman Gupta(ラクシュマン・グプタ)氏とVamsee Mohan(ヴァムゼー・モハン)氏が創業し、今では30名のチームに成長している。

同社の目標は、スタートアップによる株の発行をもっと容易にすることによって、インドと東南アジアのスタートアップのエコシステムにより大きな流動性と再投資を生み出すことだ。Qapitaは現在100あまりの企業にサービスを提供しており、新たな資金は機能をもっと増やすことと、法務、会計経理、秘書業務などのサービスプロバイダーたちとパートナーすることに投じられる。

プレス向けの声明でMassMutual VenturesのマネージングディレクターのAnvesh Ramineni(アンヴェシュ・ラミネニ)氏は次のように述べている。「今私たちがグローバルに目撃しているのは、上場市場と非上場市場との合体というトレンドだ。Qapitaは彼らのソリューションによって、当地域でそれを可能にしている。そのために同社は、キャップテーブルの作成やステークホルダーの管理、株式のデジタル化とその発行、そして流動性のソリューションといった一連のサービスを提供している。同社のチームは、経験と地域市場の理解とプロダクトの専門性という三点において、彼らのビジョンを提供するに十分な正しい組み合わせを有していると信じている」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Qapitaシンガポール資金調達

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Mastercardがオンラインコマースでの急速なDXに対応するためオンラインID認証Ekataを約918億円で買収

オンラインID管理の重要性が増す中で、Mastercard(マスターカード)は米国時間4月19日、ID認証企業Ekata(エカタ)を8億5000万ドル(約918億円)で買収したと明らかにした。

Mastercardは、オンラインコマースで起こっている急速なデジタルトランスフォーメーションを目の当たりにしている。この動きは新型コロナウイルスによって加速した。たとえパンデミックが収まっても、1度始まれば古い事業展開方法には戻らないであろうトランスフォーメーションだ。

Ekataの買収でMastercardは、アカウントを開いたり取引したりする際に詐欺ではないかどうかを示すことができるさまざまなシグナルを使って、決済取引する人物のオンラインIDをリアルタイムに認証できるソリューションを得る。Ekataは、人物が自分だと主張する人物であるかを予想するデータとスコアを提供している。IDであるという点を除き、クレジットカードのリスクスコアと違いはない。

MastercardのサイバーインテリジェンスソリューションのプレジデントAjay Bhalla(アジェイ・バラ)氏によると、それがEkata買収を決断した主な理由の1つだという。「Ekataを取り込むことで、当社はID能力を高め、消費者が新たなデジタル経済の中で自身を証明するのに安全でシームレスな方法を作ります」とバラ氏は声明で述べた。

両社は、Mastercardの詐欺検知ソリューションにEkataのスコアアプローチを組み合わせることで、悪意ある人物が悪事を働くためにオンラインプラットフォームを使うのを防ぐのに役立つと考えている。「オンライン決済の加速は、デジタルトラストを構築して世界中の詐欺と戦うための最大の機会の1つとして、グローバルなデジタルID証明を最前線に押し出しました」とEkataのCEOであるRob Eleveld(ロブ・エレフェルト)氏は声明で述べた。

以前はWhite Page Proとして知られていたEkataは、2019年6月にスピンアウトした。PitchbookとCrunchbaseのデータによると、Ekataは資金調達をしていない。まったく資金調達していない企業にとって8億5000万ドルというのはすばらしいエグジットかもしれないが、Lyft、Stripe、Equifax、Checkout.com、Intuitなど200の顧客を抱える平均的なスタートアップよりもEkataは明らかに成熟している。

EkataのID認証のようなソリューションがかつてなく必要不可欠なものとなり、Mastercardは手に入れたいと思っていた企業を獲得するのに喜んでお金を払ったと思われる。買収は当局の承認次第ではあるが、2020年VisaとPlaidの取引を却下したのは覚えておくべきだろう。Mastercardによると、当局のチェックをパスすれば、取引は6カ月以内に完了する。

関連記事:反トラスト法に阻まれてVisaがPlaid買収中止、フィンテック関係者に落胆の声が広がる

カテゴリー:フィンテック
タグ:Mastercard買収

画像クレジット:Nicolò Campo / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

約152兆円の購買力にも関わらず十分にサービスを享受できていない米国黒人対象のデジタルバンクFirst Boulevardが約5.4億円調達

2020年5月にGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏が殺害された事件は、米国で多くのことに火を付けた。そのうちの1つは、黒人コミュニティを対象としたデジタルバンクの増加である。これは恐らく予想外の出来事だろう。

黒人コミュニティに属する一部の人たちが、大手銀行は自分たちのニーズを満たしていないという考えを持つようになり、それをスタートアップのコンセプトにした。

そうしたスタートアップの1つFirst Boulevard(ファースト・ブールバード)(旧Tenth)は、Barclays(バークレイズ)、Anthemis(アンテミス)や、女優のGabrielle Union(ガブリエル・ユニオン)氏、Union Square Ventures(ユニオンスクエアベンチャーズ)のJohn Buttrick(ジョン・バトリック)氏、AutoZone(オートゾーン)のCFOであるJamere Jackson(ジャミア・ジャクソン)氏といったエンジェル投資家のグループから500万ドル(約5億4000万円)のシード資金を調達したところだ。

共同創業者兼CEOのDonald Hawkins(ドナルド・ホーキンス)氏が、カンザス州オーバーランドパークに銀行を創設したきっかけは、フロイド氏が殺害された後、友人のAsya Bradley(アシア・ブラッドリー)氏と、真の解決策が見えないまま同じ問題が繰り返されるという「悪循環から米国黒人が抜け出すために本当に必要なこと」は何かについて話し合ったことだった。

「フロイド氏の悲劇が黒人コミュニティを飲み込み、根深い問題に対してこれまでと変わらない抗議活動が起こるのを目の当たりにしてから、米国黒人が必要とする解決策は、財政面を重視したものであり、黒人コミュニティの中で生み出される必要があることがはっきりとわかりました」とホーキンス氏は述べた。

両氏にはフィンテックの経験がある。ホーキンス氏は、地方銀行や信用組合にリアルタイムな情報を状況に応じて提供することに重点を置く企業Griffin Technologies(グリフィン・テクノロジー)を設立した。そしてブラッドリー氏は、直近では、Synapse(シナプス)の創立チームメンバーであり収益責任者も務めていた。シナプスは、フィンテックプラットフォームを銀行機関に接続することで米国の非銀行利用者層に銀行サービスを提供できるようにする、Banking-as-a-Service(BaaS)APIを構築したプラットフォームである。

両氏は、米国にある黒人向けの銀行は19行ほどしかなく、保有している資産は合わせて約50億ドル(約5400億円)であることを発見した。

「そうした銀行のテクノロジーは間違いなく時代遅れなものでした」とホーキンス氏はいう。「私たちは既存のデジタルバンクのいくつかを詳しく調べ、米国黒人が求めているような方法でデジタルバンクを運営している人物を見つけ出そうとしました。そしてその時点で、蓄財活動という形である程度の財政安定を築けるように米国黒人をサポートするという課題に本気で取り組もうとしている人は誰もいない、ということがはっきりわかったのです」。

ホーキンス氏とブラッドリー氏は2020年8月First Boulevardを設立した。両氏は、米国黒人について年間1兆4000億ドル(約152兆円)の購買力を持つにもかかわらず、金融商品や金融サービスを「十分に享受していない消費者」だと考えている。このスタートアップの使命は、デジタルネイティブのプラットフォームを通じて「自分たちの財政状態を管理し、資産を築き、黒人経済に再投資する」力を米国黒人に与えることだ。First Boulevardは現在、サービスの提供開始を待っている利用希望者10万人を抱えており、第3四半期中にローンチする予定である。

新しい資本金の使用目的には、黒人ビジネスのマーケットプレイスの構築が含まれている。このマーケットプレイスでは、会員がCash Back for Buying Blackを利用できる。またチームの拡大、顧客基盤の拡大、手数料無料のデビットカードを提供するためのプラットフォームの開発、金融教育、会員の貯蓄や資産形成を自動化するためのテクノロジーの開発にも、資本金が使われる予定だ。

「不公平な扱いを受けたコミュニティは、その資産を集約することにより困難を打破できることが、歴史によって証明されています。黒人コミュニティの金融サービスに関して言えば、そうした資産を集約する力が長い間待ち望まれていました」とホーキンス氏は述べた。

First BoulevardのCash Back for Buying Blackプログラムでは、会員が黒人経営の企業でお金を使ったときに最大15%のキャッシュバックを得ることができる。

「最新の統計では、新型コロナウイルス感染症が流行してから、41%の黒人経営の企業が廃業していると考えられます」とホーキンス氏は述べた。「私たちは彼らをできる限りサポートしたいのです」。

First Boulevardは、受動的に資産を築ける方法を黒人コミュニティに提供することにも力を入れている。

「米国黒人は全般にお金の仕組みを学ぶことができませんでした。私たちは、マネーマーケットアカウントなどのマクロ投資、高金利の貯蓄、暗号資産といった資産を築くための手法、つまり米国黒人が今まで締め出されてきたことに会員を結び付けたいと思っています」とホーキンス氏は述べた。

First BoulevardのCOOを務めるブラッドリー氏は、現在の金融業界は黒人のニーズを満たすように作られていないと考えている。同社の目標は、黒人コミュニティ特有のニーズを理解し、賃金の早期獲得、切り上げ貯蓄機能、対象を絞った金融教育、予算管理ツールなどを提供することである。

ホーキンス氏とブラッドリー氏は、同社がサービスを提供しようとしているコミュニティを象徴する「真にインクルーシブな」チームを持つことを目指している。現在、20名のスタッフの60%が黒人、85%がBIPOC(白人以外の人たちを指す)である。そして首脳部の3分の2が女性で、その全員がBIPOCだ。同社は年末までにスタッフを50名に増やす予定である。

「フィンテックの世界においては、リーダーシップの観点から見ると、この数字は普通ではありません。それを考えると、非常に誇らしい気持ちです」とブラッドリー氏は述べた。

バークレイズとアンセミスが開始したFemale Innovators Lab(フィーメール・イノベーター・ラボ)の投資家であるKatie Palencsar(ケイティ・パレンツァー)氏は、同氏の会社が「デジタル革新が進んでいるにもかかわらず、人々の間では金融サービスへのアクセスが長い間課題になっている」ことを常に認識していると述べた。

「このことは特に、金融サービスが乏しい地域に住むことが多く、自分たちにサービスを提供してくれるプラットフォームを見つけるのに苦労している米国黒人に当てはまります」と同氏は言った。「First Boulevardはこの課題を深く理解しています」。

パレンツァー氏は、米国黒人が銀行を利用するだけでなく、実際に資産を築けるように支援するというFirst Boulevardの使命は、この市場では類まれなものだと信じている。

「First Boulevardは、米国内で拡大し続ける貧富の格差を認識しており、米国黒人やその仲間が自分たちのコミュニティに投資できるよう支援しながら、こうした人々が直面している制度上・構造上の課題に対処するデジタル・バンキング・プラットフォームを構築したいと考えています」と同氏は述べた。

同社は最近、Visaとの提携も発表し、Visaの新しい暗号資産APIスイートを他社に先駆けて試験運用することになった。またFirst BoulevardのVisaデビットカードもリリースする予定だ。

First Boulevardは、ここ数カ月間に登場した米国黒人向けのデジタルバンクの1つである。黒人や褐色人種のコミュニティ向けデジタルバンクPaybby(ペイビー)は最近、AIと生体認証技術を利用してユーザーにパーソナライズされたサービスを提供するネオバンクのWicket(ウィケット)を買収した。ペイビーのCEO兼創設者であるHassan Miah(ハッサン・マイア)氏は、同行の目標は「黒人および褐色人種コミュニティを対象とした、一流のスマートなデジタルバンク」になることだと語った。

ペイビーは、銀行口座と、PPP融資を迅速化する方法を提供することから始め、間もなく黒人および褐色人種コミュニティ向けの暗号資産口座を追加する予定だ。

「黒人の購買力は2024年までに1.8兆ドル(約195兆円)に成長すると予測されています」とマイア氏は述べている。「褐色人種の購買力は2兆ドル(約216兆円)を超えています。ペイビーはこの数兆ドル規模の市場のかなりの部分を獲得し、これらのコミュニティに収益を還元したいと考えています」。

2020年10月、Greenwood(グリーンウッド)は、同社がいうところの「黒人およびラテン系の人々や企業経営者のための初のデジタル・バンキング・プラットフォーム」を構築するために、個人投資家から300万ドル(約3億2000万円)のシード資金を調達した。

その時、Bounce TV(バウンスTV)ネットワークの創業者であり、グリーンウッドの共同創業者Ryan Glover(ライアン・グローバー)氏は「従来の銀行が黒人やラテン系のコミュニティの役に立っていないことは周知の事実だった」と述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:First Boulevardマイノリティ資金調達デジタルバンクアメリカ

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

印フィンテックZetaがシリーズDラウンドに向けソフトバンクと交渉中、ユニコーン目前か

デジタル銀行プラットフォームのフィンテックスタートアップZeta(ゼータ)は、新たなラウンドに向けて投資家らと最終的な交渉を行っており、ユニコーンの地位に少しずつ近づいていると、この件に詳しい情報筋がTechCrunchに語った。

情報筋によれば、SoftBank Vision Fund 2(SVF2、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)は、設立5年目のZetaに2億5000万ドル(約272億3000万円)規模のシリーズDラウンドを提案しているとのこと。この投資提案では、著名な起業家であるBhavin Turakhia(バヴィン・ターアクヒア)氏が共同設立したインドの同スタートアップを、2019年に行われた初の外部資金調達(シリーズC)の際の3億ドル(約327億円)から大きく引き上げた10億ドル(約1090億円)以上に評価している。

関連記事:フィンテックのZetaが初の外部資金調達で企業価値325億円に

このラウンドはまだ終了していないと、3人目の情報筋は指摘した。

ソフトバンクの広報担当者はコメントを差し控えた。

5年前に設立されたZetaは、銀行が最新のリテールおよびフィンテック商品を立ち上げることを支援している。そのテーゼは、銀行は主として時代遅れの技術で運営されており、今日、何億人もの顧客やフィンテック企業に最高の体験を提供するための時間や専門知識を持ち合わせていないというもの。

Zetaは、銀行が同社のクラウドネイティブでAPIファーストのバンキングスタックをコアフレームワークとして使用するか、またはその上にサービスを構築して、モバイルアプリやデビット・クレジット機能の改善など、すべての顧客に優れた体験を提供できるよう支援しようとしている。また、銀行がフィンテック企業とより効率的に連携できるよう、API、SDK(ソフトウェア開発キット)、決済ゲートウェイも提供している。

同社は、アジアやラテンアメリカのいくつかの市場で多くのクライアントを獲得している。

ターアクヒア氏は、弟のDivyank(ディビャンク・ターアクヒア)氏とともに、1998年に最初のベンチャー企業を立ち上げた。その過程で、ウェブ企業4社をEndurance(エンデュランス)に1億6000万ドル(約174億3000万円)で売却している。Zetaは、バヴィン・ターアクヒア氏が共同設立した3社目のスタートアップで、彼が立ち上げた他の企業にはビジネスメッセージプラットフォームのFlockとRadixがある。

最終的に確定すれば、Zetaは2021年4月だけで7社目のインド発ユニコーンになる可能性がある。先週は、同じくSoftBank Vision Fund 2の支援を受けたソーシャルコマースのMeesho、フィンテック企業のCRED、e薬局のPharmEasy、ミレニアル世代に特化した投資アプリのGroww(グロウ)ビジネスメッセージプラットフォームのGupshup、そしてソーシャルネットワークのShareChat(シェアチャット)がユニコーンの地位を獲得した。

【更新】本記事はラウンドがまだ終了していないことを明確化して更新された。

関連記事
インドのソーシャルコマースMeeshoが新たに330.3億円の資金を調達、評価額は約2312億円に
インドのハイエンド層にフォーカスしたクレジットカードを提供するCREDが新規ラウンドで評価額2415億円に
インドのミレニアル世代向け投資アプリのGrowwが91.2億円調達、新たなユニコーンに
顧客との会話型エクスペリエンスを支えるメッセージプラットフォームGupshupが約109億円調達しユニコーンに

カテゴリー:フィンテック
タグ:Zeta資金調達インドSoftBank Vision Fund

画像クレジット:Zeta

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

Pancake Bunnyを開発したDeFiスタートアップのMOUNDが約1.8億円調達

Pancake Bunnyで知られる分散型金融スタートアップのMOUNDは、Binance Labsが主導するシードラウンドで160万ドル(約1億8000万円)を調達した。他の参加者にはIDEO CoLab、SparkLabs Korea、Handshakeの共同ファウンダーであるAndrew Lee(アンドリュー・リー)氏などがいた。

高性能DeFiアプリ開発用のブロックチェーンであるBinance Smart Chainをベースに構築されたPancake Bunnyの現在の1日平均ユーザー数は3万人を超え、2020年12月のローンチ以来、総額21億ドル(約2300億円)以上のトータルバリューロック(TVL)を蓄積していると、MOUNDは述べている。

今回調達した資金は、Pancake Bunnyの拡大と新製品の開発に充てられる。MOUNDは最近Smart Vaultsを発表し、約1カ月後にはCross-Chain Collateralizationを発表する予定で、農業、融資、スワップを含む幅広いDeFiのユースケースをカバーするという同スタートアップの目標に近づいている。

Smart Vaultsは、レバレッジドローン商品の単一資産利回りを管理するためのものだ。また、レバレッジのコストが予想されるリターンを上回るかどうかを自動的にチェックし、MOUNDのクロスチェーンファーミングのために積極的に資産を貸し出すことができる。

Cross-Chain Collateralizationは、ブリッジトークンに頼らず、ユーザーがネイティブのブロックチェーン上にオリジナルの資産を保持できるようにするクロスチェーンイールドファーミングだ。BunnyプロトコルがイールドファーミングのためにBinance Smart Chain上の資産を借りるとき、ユーザーのオリジナルの資産は担保として機能する。これにより、ユーザーはネイティブなブロックチェーン上の資産を維持しながら、Binance Smart Chainの収益を生み出すための流動性を得ることができる。

Binance(バイナンス)のCFOであり、Binance LabsとM&Aの責任者を務めるWei Zhou(ウェイ・チャウ)氏は声明で「Pancake Bunnyの成長と実行に対するMOUNDのコミットメントはすばらしいものです。MOUNDのチームのライブ製品のデザインとサービスに関する専門知識が、私たちが投資を決定した主な要因でした。私たちは、MOUNDとともにDefiの視野を広げることを楽しみにしています」と述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:MOUNDDeFi資金調達

画像クレジット:Vicki Jauron, Babylon and Beyond Photography / Getty Images

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter