ChatableAppsが聴覚支援アプリをリリース、ディープラーニングで話し言葉とノイズを区分

ChatableAppsが聴覚支援アプリのiOS版をリリースした。近々Android版もリリースされる予定だ。このアプリは、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏が支援し、聴覚神経信号処理に関するAndy Simpson(アンディ・シンプソン)博士の研究成果に基づいて開発されたもので、ほぼリアルタイムで背景雑音を除去し、1対1の会話を聞き取りやすくする。

ChatableAppsによれば、このアプリは市場にある他のソリューションとは異なり、現在のスマートフォンと標準的なイヤフォンで使える。Chatableアプリの初期の「臨床前」テストでは、従来の補聴器と同等、またはそれを上回る性能で、テスト参加者の86%がChatableAppsの「ユニバーサルな補聴器」の機能は既存の補聴器より会話に適していると回答したという。

2020年3月にChatableAppsの資金調達について取り上げた際、共同創業者のBrendan O’Driscoll(ブレンダン・オドリスコル)氏は筆者に対し、同社のテクノロジーとアプローチはノイズフィルタリングや他のDSP技術を使用していないため「かなりユニークだ」と語っていた。同氏は「実際には、話し言葉とノイズを区分する深層学習ニューラルネットアプローチだ。オリジナルの音声にフィルターを適用するのではなく、音を聞き、オリジナルの音から声の部分だけをまったく新しいオーディオストリームとしてほぼリアルタイムで再現する」と説明した。

つまり、不要な音にラベルをつけて除去する方法で背景雑音を取り除く従来のアプローチではなく、「VOXimity」と名付けられたChatableAppsのAIがユーザーにとって聞きたい声を識別し、新たに音声トラックを作る。作られる音声トラックは(多かれ少なかれ)元の音声と同じだが、背景の音が除去されている。この技術は、エンド・ツー・エンドのニューラルスピーチ合成と呼ばれている。

ChatableAppsのCEOのGiles Tongue(ジルス・タング)氏は筆者に対し、できるだけ早い時期にアプリをリリースしようと努めたことを説明した。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で耳鼻科に行けなくなったり、みんながマスクをつけるようになって口の動きから話し言葉を読み取ることができなくなったりした人々にとって、このアプリが困っている部分を埋められるだろうと認識したためだ。

タング氏は次のように述べた。「臨床前のテストがうまくいったので、新型コロナウイルスの影響で困っている人々を助けたいという聴覚の専門家からの緊急性の高い需要に応えるために、アプリをすぐにリリースすることにした。マスクで口の動きを読み取れない、あるいは緊急時に耳鼻科に行けない多くの人々に、我々はコミュニケーションを助けるライフラインを提供する」。

このアプリはソーシャルディスタンスの確保にも役立ちそうだ。タング氏は「話している人の横にスマートフォンを置き、あなたはBluetoothイヤフォンを装着すれば、3メートル離れても相手の話は完璧にくっきりと聞こえる」と補足した。

2020年3月のTechCrunchの記事以降、同社ではChatableAppsの価格モデルも再考した。有料サブスクリプションのみで展開する予定だったが、現在は一部の機能が制限された無料版としても利用できる。

同社は「このアプリは無料で利用でき、サブスクリプションに登録すれば高性能の音声増大および背景雑音除去機能をフルアクセスで利用できる」と説明している。サブスクリプション費用は、月額で1400円、年額で8700円だ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

グーグルが一部の従業員をオフィスに戻す計画を発表

Google(グーグル)とAlphabetのCEOであるSundar PichaiIn(サンダー・ピチャイ)氏はブログで、同社の労働環境を通常、あるいは少なくとも新しい通常に戻す計画の概要を述べている。

グーグルは2020年7月6日から、さまざまな都市の同社オフィスビルを開放し、物理的な作業スペースが必要な従業員に「制限のある交代制」でオフィスに復帰できるようにする。従業員には数週間に1日の交代制になり、常に約10%が出勤していることになる。

ピチャイ氏によると、この方法で問題がなければ2020年9月ごろには10%を30%に上げて「仕事の優先度によって誰にオフィス利用を認めるかを決めることになるが、オフィスで仕事をしたい人のほとんどが限られた形でそうできるようになる」という。

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全員をリモートワークにしたFacebook(フェイスブック)やTwitterの大胆にシフトしているのとは対照的に、グーグルのトップは従業員の将来に関する大げさな発言を避け、マネージャーと話ができるような配置転換を望む従業員や、職位によって異なる税金や健康保険のガイドラインを見直すことを奨励している。

ピチャイ氏も、従業員の仕事のやり方に関しては「より柔軟性と選択の幅が広がる」と予測しを重視すると予告し、同社の象徴的なオフィスへの愛着もにじませている。

「私たちのオフィスはコラボレーションとコミュニティを可能にするデザインになっている。私たちの偉大なイノベーションは、オフィスにおける数々の偶然の出会いの産物だ。私たちの多くは、失いたくないと願っている」とピチャイ氏は書いている。

「しかしそれと同時に、世界中にたくさんのオフィスを構えるようになってからは、分散型の仕事にも深く親しんできたし、この期間を通して学ぶであろう教訓に対して、広い心で受け入れる意思がある」。

それでもピチャイ氏は、2020年の間はグーグルの従業員の大半が在宅になると予測している。Googleの従業員たちがホームオフィスに慣れるために、新たに家具や機器を買うための費用1000ドル(約10万8000円)を会社が負担する予定だ。

一部の従業員のオフィスへの戻ることに関してピチャイ氏は、同社が新型コロナウイルスの拡散を防ぐために必要な予防措置をいろいろと講じているため、社内が以前と違っているように見えたり感じたりするだろうという。

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画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

家庭での血液検査が重視されるWithコロナの時代を前にThrivaが5億円を調達

Thrivaは2016年に、家庭でコレステロールのレベルといった血液の検査ができるスタートアップとして登場した。パンデミックの時代である現在、家庭における血液検査は、自分の健康は自分で予防医学的にコントロールしたいというトレンドとともに大きな話題になっている。

同社はこのほど、ベルリンのVC Target GlobalからシリーズAの拡張として400万ポンド(約5億2000万円)を調達した。これでThrivaの総調達額は1100万ポンド(約14億4000万円)になる。投資を行なったのはTarget Globalが新設したファンドであるEarly Stage Fund IIで、2019年の600万ポンド(約7億9000万円)のシリーズAを嵩上げする形になる。既存の投資家には、Guinness Asset ManagementやPembroke VCTがいる。

Thrivaは2016年から今日まで、11万5000件あまりの家庭内血液検査を処理した。興味深いのは、顧客がその情報を利用して自分の健康を改善しようとしていることで、Thrivaのユーザーの76%がその後の健康診断までに何らかの健康指標が改善された、と報告している。

同社は、個人の特徴に合ったヘルスプランや高品質なサプリメントも販売し、病院といったヘルスケアプロバイダーとのパートナーシップも広げている。

Hamish Grierson(ハミッシュ・グリアソン)氏とEliot Brooks(エリオット・ブルックス)氏そしてTom Livesey(トム・リヴシー)氏が創業したThrivaは、前年比で100%成長していると主張し、同社のロンドン本社はチームを50名に拡張した。

グリアソン氏は声明で「新型コロナウイルスの危機により、世界は前例のない課題に直面している。その中で我々みんなが、自分たちの健康と死の見方を変えることを強制されている」と述べている。

さらにTechCrunchの取材に対してグリアソン氏は、さらに次のようにも述べている。「検査を家庭で行う企業は他にもあるが、彼らが直接的な競合相手とは思っていない。Thrivaは検査企業ではない。弊社の家庭における血液検査は重要なデータポイントではあるが、それらは顧客との間に長期的な関係を築いていく端緒にすぎない。より良い健康をお客様の手に委ねるという我々のミッション実現のためには、ただ体の中で起きていることを知るだけでなく、長期的に効果を実験できるようなポジティブな変化をもたらすお手伝いが必要なのです」。

Target GlobalのパートナーであるRicardo Schäfer(リカルド・シェーファー)医師氏は「Thrivaのチームに初めて会ったとき、健康を自らの手に入れられるようにする彼らのミッションにたちまち魅了されました」といっている。

画像クレジット:WLADIMIR BULGAR / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

PathSpotがしっかり手洗いできているか確認するスキャナーを販売、感染症防止を支援

新型コロナウイルスは、感染症の予防に手洗いが大変に有効であることを大勢の人々に思い出させてくれた。PathSpot(パススポット)のCEOで共同創設者のChristine Schindler(クリスティーン・シンドラー)氏は、この3カ月間のために、3年間を費やして準備してきた。

「私は手洗いのことで頭がいっぱいです」と医用生体工学と公衆衛生の経歴を持つシンドラー氏は言う。その情熱と自身の経歴を結び付け、おもにタンザニアのキリマンジャロ山周辺の病院のために低価格な機器を開発してきたことからPathSpotは生まれた。

PathSpotのCEOクリスティーン・シンドラー氏

PathSpotは「食品のサービス、管理、貯蔵」のあらゆる場面で使えるとシンドラー氏が主張する、手洗いのための衛生機器を販売している。顧客の範囲は、レストランから梱包施設、カフェテリア、農場にまで広がっている。

PathSpotが販売するスキャナーは、洗面台の脇の壁に設置される。手を洗った人たこの衛生機器に手を入れると、手の衛生状態に応じて緑また赤のライトが点灯する。

技術面では手指消毒剤のPurell(ピュレル)に及ばないが、ある程度までのファクトチェックは行える。PathSpotは、可視光の蛍光スペクトルによる画像化で、人の手に付着した感染症を引き起こす細菌が含まれる恐れのある、特定の汚染物質を検知する。特定の波長の光を手に照射してその画像を取り込み、いくつものフィルターやアルゴリズムを通すことで危険な物質の存在を識別するのだ。

シンドラー氏によれば、2秒以内に両手のスキャンが完了するという。これは、最も一般的な伝達ベクターを探し出す。例えば、大腸菌のような食中毒を引き起こす恐れのある糞便物質などだ。

「これは、手を洗ったかどうか、または手に水滴がついているかどうかを判別するものではありません」と彼女。「手洗いは軽く見られがちなので、たいていの人たちは手は洗ったつもりでも、20秒間しっかり洗ったわけではなく、また、使うべきところで石けんを使わなかったりもするからです」。

だがこれが、新型コロナウイルスから人を守ってくれるのだろうか。新型コロナウイルスは現在、呼吸飛沫や糞便物質から伝播・伝染すると言われているとシンドラー氏は指摘する。PathSpotは、後者に対応できるという。

しかし、米国疾病管理予防センター(CDC)によれば、糞便物質に含まれる新型コロナウイルスが感染を引き起こすかどうかはいまだ不明だという。これまでに、人の糞便物質によって新型コロナウイルスが拡散したことを証拠付ける報告はなく、研究者たちはそのリスクは低いと考えている。

そうしたわけでPathSoptは、今のところは新型コロナウイルスに特別に対処できるわけではないが、日常的、そして感染症を引き起こす恐れのある汚染物質を見つけ出すことはできる。新型コロナウイルスの流行が始まってから、米国では人々の衛生意識が全体に高まっている。「この機器の利用率は、数百件の顧客の間で500%も上昇した」とシンドラー氏は話していた。

PathSpotのもうひとつの製品は、レストランとその従業員の衛生管理と教育を向上させるためのダッシュボードだ。「手の爪の下やアクセサリーの下にホットスポットがあれば、すぐにわかります」と彼女。「あらゆるホットスポットの場所を見ることができるのです」。

有効性について同社は、PathSpotを1カ月間使用した場合、汚染物質が75%減少し、6カ月間の使用で90%減少すると話している。

PathSpotは、サブスクリプションの月額料金で利用できる。これにはスキャナー本体とデータ解析用のダッシュボード、そして同社から実用的な助言が受けられるコンサルティングが含まれる。価格は、機器のサイズと数によって異なるが、シンドラー氏によれば「平均的なところで月額175ドル(約1万9000円)から」とのことだ。

PathSpotの競合相手には、これまで3180万ドル(約34億円)を調達したFoodLogiQ(フードロジック)、1320万ドル(約14億円)を調達したNima Sensor(ニーマ・センサー)、280万ドル(約3億円)を調達したImpact Vision(インパクト・ビジョン)、520万ドル(約5億6000万円)を調達したCoInspect(コンスペクト)が挙げられる。だがこれらの企業は食品とその調達に焦点を当てているのに対して、PathSpotはそれを扱う個人に焦点を当てているとシンドラー氏は主張している。

本日、同スタートアップはシリーズA投資として650万ドル(約7億円)の資金を調達したことを発表した。投資を主導したのは、Starbucks(スターバックス)とValor Equity Partners(バラー・エクイティ−・パートナーズ)が共同で創設したファンドValor Siren Ventures(バラー・サイレン・ベンチャーズ)だ。

新たな資金が追加され、PathSpotの知られている限りのベンチャー投資金は1050万ドル(約11億3000万円)となった。Valor Siren VenturesのパートナーであるRichard Tait(リチャード・テイト)氏は、PathSpotの取締役会の役員に就任する。

PathSpotは、その製品が一般の人々に受け入れられやすいこの時期に成長を遂げている。だがその主要な顧客であるレストランは、パンデミックの影響で不振にあえぎ、全従業員の給与支払いもまなならない状態だ。そこでPathSpotは、パンデミック後に台頭するであろう新世代のレストランに照準を合わせた。つまりデジタルに対応し、衛生を保つテクノロジーを採用せざるを得ない業者だ。

“新型コロナウイルス

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(翻訳:金井哲夫)

Fitbitが北米ユーザーを対象に新型コロナ早期検知の研究を開始

Fitbit(フィットビット)の運動量を追跡するためのウェアラブルデバイスは、新型コロナウイルス(COVID-19)やインフルエンザの早期検知に使えるかどうかを確かめるために多くの研究機関にすでに活用されている。そして今度は、Fitbit が自前のFitbit COVID-19研究を立ち上げる。この研究ではユーザーが自身のFitbitモバイルアプリからサインアップできる。

この研究は、新型コロナ感染症状が出る前に感染を正確に検知するためのアルゴリズムを開発できるかどうか探るために活用される。これを確かめるのに必要なデータを集めるため、同社は米国とカナダのユーザーで新型コロナに感染したか現在感染している人、もしくは感染を疑わせるインフルエンザのような症状を有している人に、研究のためにいくつかの質問に応えるよう依頼する。

質問に対する参加者の答えは、新型コロナウイルス感染を初期段階で警告できるパターンを特定するために、ユーザーのFitbitデバイス経由で集められたデータとペアリングされる。症状が出る前の感染検知には多くのメリットがある。個人がより素早く自己隔離でき、他人への感染を予防できる。

早期検知はまた治療面でもメリットがある。医療従事者が早期に治療を開始でき、最悪の症状を防ぐことができるかもしれない。最終的にどんな治療法が開発されるかにもよるが、早期の検知は治療効果に大きな影響をもたらす。

同社は、研究参加者に新型コロナウイルスにかかったかどうか、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのような症状があったかどうか、症状の内容、人口統計的情報、病歴などについて質問する。研究への参加は任意で、参加を決めてからそうした情報を共有したくないとなった場合はいつでも参加を撤回できる。

新型コロナ早期検知は、経済再開のための安全で実用的な職場復帰戦略をサポートするものになり得る。また、研究結果で明らかにされる精度やどのデバイスを使うかにもよるが、テストと併用することで診断を広範に行う手段になるかもしれない。確認された新型コロナ診断というのは必ずしもテスト結果を意味する必要はない。診断というのは、生体データや症状の出方などいくつかの要因に基づく医師の判断だ。総合的な新型コロナ抑制策によっては、ウェアラブルの活用は新型コロナの感染の規模と広がりの評価において将来大きな役割を果たすことになる。

“新型コロナウイルス

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(翻訳:Mizoguchi

グラクソ・スミスクラインとMammoth Biosciencesが携帯性の高い使い捨て新型コロナ検査キットを開発中

米国カリフォルニアに拠点を置く2017年設立のスタートアップMammoth Biosciences(マンモス・バイオサイエンス)は、新型コロナウイルス(COVID-19)に向けに、ゲノム編集技術の1つであるCRISPRベースの検査を開発するため、強力なパートナーと契約した。目指すのは、携帯性が高く使い捨て可能な検査プラットフォームを使って、正確で迅速な結果を得ること。同社は、新型コロナウイルス感染者のRNAからSARS-CoV-2を特定できる「DETECTR」プラットフォームを使用して検査を開発する。この検査は、Naturで発表された査読済みの研究を通じて、最近妥当性が認められた。

同社はすでにそのDETECTRプラットフォームを、米食品医薬品局(FDA)による緊急使用許可(EUA)申請へ送り込んでいる。また、グラクソ・スミスクライン(GSK)およびその消費者向けヘルスケア部門と提携して、広範な商用ならびに消費者利用が可能となるように、同社の開発と流通を拡張する予定だ。同社とGSKは、DETECTRに基づくC新型コロナウイルス専用の検査が、今年末までにFDA評価が受けられるように準備することを目指している。

目標は、まず米国内の医療施設で利用できるようにすることだ。新しい検査は20分未満で結果が得られ、患者から採取した鼻腔スワブ(綿棒状の検体採取キット)を使用してその場ですべての手順を実施できるため、医療施設での検査に対する現在の方法と比較して多くの利点を提供することができる。また完全に使い捨てであるため、医療専門家にとってより便利で、さらにはより安全なものである。

その後、パートナーたちは流通の拡大を計画しており、最終的には消費者に直接検査を届けるために店頭売りも考えられている。検査の性質から考えれば、他の在宅診断法と比べても管理はそれほど難しくない。これにより、感染した個人からの感染リスクをさらに低減し、検査をより実施しやすく、広範囲に広げることができる。

現在の開発タイムラインを考えると、少なくとも来年までは出荷されることはないだろう。しかし、進行中の世界的パンデミックの性質を考えると、継続的な戦略の1つとして、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を緩和するための検査機能の拡張への関心は続くだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:sako)

米食品医薬品局がColorの新型コロナウイルス高速検査技術を認可、LAMP法による検査工程を自動化

集団ゲノム検査サービスを提供するColorが、同社の新型コロナウイルス(COVID-19)検出技術に対し、米食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration、FDA)から「緊急時使用認可」を得た。同社によると、その精度は現在承認されている最良の方法と互角、そして結果を得るまでの所要時間は約50%早くさまざまな供給要件に応ずる。つまり、より多い検査をより早く、そして従来のようなサプライチェーンの厳しい条件がなくても実行できる。そしてColorはその検査プロトコルを、他の検査機関などに一般公開する。

3月にColorは、処理能力の高い新型コロナウイルス検査施設を立ち上げると発表した。その所要時間短縮の大部分は、遺伝子増幅法の一種であるLAMP法による検査工程各部の自動化だ。この工程の自動化は、既存のRT-PCR検査では不可能とされていた。どちらの検査も分子レベルの検査で、体の中に実際にウイルスが存在することを検出するが、LAMP法は以前にジカ熱やデング熱を検査するテクニックとして使われたことがある。

Colorは、自社開発したLAMP検査プロトコルを無料でほかのラボの独自の実装用に提供する。加えて、同社が集団でのスクリーニング検査や通常の検査用に得たデータに基づいて設計したプロトコルも提供して、労働者の安全を確保したうえでの職場復帰努力を助ける。プロトコルには2つのフェーズがあり、ひとつは職場に感染者が一人も確認されなかったが高い警戒体制を維持したいという場合、第2は感染者が何名かいて封じ込めが必要な場合だ。

Colorはすでにサンフランシスコと協力して、市民の生活に必要不可欠な最前線の行政職員に対し、同社の検査プロトコルを適用している。また、ほかにも、MIT(マサチューセッツ工科大学)とハーバード大学のブロード研究所やコーネル大学医学部ワイル研究所と共同で技術開発を進めている。今は多くの米国人が、ウイルスの拡散防止努力を継続しながらオフィスなどの再開を望んでいるが、Colorのような共同的取り組みには、知識の共有を早めその範囲を広げる利点がある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

歯列矯正装置のbyteが絶好調、2020年の売上高は108億円を予想

自己資金で創業した企業にみられる特徴の1つが、VCの支援を受けた競合相手より成長スピードが遅いことだ。外部から支援を受けずに行うマーケティングの費用は売上高に頼っていて、売上高は往々にしてマーケティングでの支出に頼っている。この2つの要素の微妙な関係は成長スピードを緩やかにする。それに比べ、VCの支援を受けた企業は売上をあげる前に資金を注入でき、これにより成長スピードを早めることができる。

byte(バイト)は自己資金でもっと早く成長できる方法を見つけ出した。2017年に設立され、2019年初めにプロダクトを立ち上げた同社は、会長のNeeraj Gunsagar(ニーラジ・ガンサガー)氏によると、売上高のランレートが2020年第2四半期に1億ドル(約108億円)に達する勢いだ。

同社は創業は初めてという人が自己資金で興したスタートアップではない。byteはシリアルアントレプレナーのScott Cohen(スコット・コーエン)氏とBlake Johnson(ブレーク・ジョンソン)氏によって設立された。コーエン氏は2011年に初めての会社を設立し(2016年にDeluxe Corporationに買収された)、ジョンソン氏とともに立ち上げたコーエン氏の2つめの会社Currencyは未公開会社に2019年に売却された。

そしてコーエン氏とジョンソン氏は、byteを次のステージへと成長させ、国際展開と次のプロダクトの展開に備えるために、TrueCarの元CMOで同社で8年過ごしたガンサガー氏に助けを求めた。

しかし話を戻そう。byteは目立たない歯列矯正装置を扱っていて、InvisalignやSmileDirectClubといった大手、そしてCandidのような小規模の在宅歯列矯正のスタートアップが競っている業界に参入した。しかしそうした競合相手とbyteの間には大きな違いがある。

まず、テクノロジーだ。治療プランには歯型を取るキット、目立たない矯正装置そしてHyperbyteと呼ばれるデバイスが含まれる。Hyperbyteは、歯列矯正をスピードアップするために、高頻度振動(HFV)で歯の根やその周辺の骨に微小パルスを送る口の中で使用するデバイスだ。

HFV治療はFDA(米食品医薬品局)に承認されており、歯科矯正医のクリニックで提供されている。しかし通常かなり高額になる。

Hyperbyteは、byteのサービスに含まれていて、サービス代金は1895ドル(約20万4000円)だ。bytePayという支払いプランも用意されていて、この場合、月々83ドル(約8900円)を2年ちょっと払う。一括払いの方が349ドル(約3万7600円)安い。同社はまた、歯列矯正と併せて使用できるホワイトニングのソリューションもパッケージに含めている。

byteのすべての治療プランは、医師免許を持っている歯科矯正医がレビューする。そして顧客は治療期間中に臨床面で何か問題があれば歯科矯正医または歯科医に相談できる。また、咬合治療に保険を適用できる場合もある。

別の表現をすると、byteは歯列矯正治療にかかるコストと時間を軽減するものだ。重要なことには、byteは軽度の咬合異常、そして少しの隙間やわずかな歪みといったさほどひどくはない歯並び、過蓋咬合のような複雑ではない問題を専門としている。

最も興味深いのは、byteが2020年第1四半期に爆発的な成長を見せたことだ。2020年1〜3月の売上高は前年同期の10倍だった。そして第2四半期も10倍成長の勢いを持続しているという。byteはまたTechCrunchに対して、新型コロナウイルス(COVID-19)前のEBITDAは良好だった、と述べた(すべての非公開企業にいえることだが、そうした数字はbyteのものでありTechCrunchは確認していない)。

利益がbyteの財政状態を改善している。最初の歯型取りキットにたどり着くまでの顧客獲得コスト(CAC)は、2019年末に平均189ドル(約2万円)だったが、2020年4月末までに88ドル(約9500円)に下がった。

CACの急激な低下にはいくつかの要因が絡んでいる。ガンサガー氏によると、Googleキーワードの価格は新型コロナウイルスパンデミックの最中に大幅に下がり、直接そしてオーガニックのトラフィックが倍に増えた。これはおそらく新型コロナパンデミックで自己磨きへの関心が高まったためだ。

高まる自己磨きの潮流に乗った企業はbyteだけではない。「自己磨きへの関心、この期間を有効活用しようというトレンドがある」とRakuten IntelligenceでマーケティングSVPを務めているJaimee Minney(ジャイミー・ミニー)氏はCNBCに語った。「本の売上が増えている。ゲームやパズル、そして健康・美容部門の売上も同様に伸び始めている。特に2019年と比較するとそうだ。私が今後注意を向けるのは自己磨きのものだ」。

これまでは、こうした状況で会社の成長を加速させるために他の企業はマーケティングにより資金を投じていた、とガンサガー氏は説明した。

「我々は事業拡大に伴って、顧客体験も収益性も犠牲にしない」とガンサガー氏は話した。「我々はシステムを通じてあまりにも多くの歯型取りキットを展開したくない。何故なら、テクノロジーと体験の点でしっかりとサポートできることを確かなものにしたいからだ。我々が投じる資金はすべてかなりの収益を生んでいる。さらに資金を投入しても目標とするCAC150ドル(約1万6000円)は下回っていて、今年の売上高は1億ドルを超える。しかし我々のNPS(ネットプロモータースコア)や顧客満足度がひどいものにならないはず、とすごく自信があるわけではない」

用心深い成長戦略を描く中で、ガンサガー氏とbyteは幅広いテックエコシステムを漠然と眺めているわけではない。成長のためにあらゆる犠牲を払い、結局失敗に終わったテック企業を我々は目の当たりにしてきた。歯列矯正の分野でもそうした例はある。例えばSmileDirectClubは2019年9月のIPO前にすばらしい成長を達成したが、返金と引き換えにNDAを求められたという顧客から批判を浴びた

byteのもう1つの重要な戦略は、今後立ち上げられる歯科医や歯列矯正医とつながることができるbyteProだ。ヘルスケア専門家を切り離すのではなく、ともに成長しようという考えに基づいている。

2020年6月から展開されるbyteProでは、歯科医や歯列矯正医はbyteのプロセスにこれまで以上に関わることになる。これからサービスの利用を始めるクライアントは、byteの歯列矯正プロセスに関わって欲しいとかかりつけの歯科医や歯列矯正医に依頼できる。またオンラインで注文しなくても歯型取りインプレッションキットをかかりつけ医のクリニックで入手することすらできる。一方で、歯科医や歯列矯正医はbyteProネットワークに加入して新規患者とマッチングしてもらえる。さらにbyteを購入した人が年間を通じてこれまでよりもクリーニングや他の治療など歯のことを気に掛けるようになる、とbyteは話す。笑顔をすてきなものにするために投資した人に、いい歯科医や歯列矯正医を引き合わせることをbyteは目的としている。

byteはVCの支援は受けていないが、女優で投資家のKerry Washington(ケリー・ワシントン)氏から小額の資金を受けている。ワシントン氏はThe WingとCommunityにも投資していて、byteではクリエイティブ・ディレクターを務める。

「ポートフォリオを引き続き増やすための方法を探していたとき、自分自身が関わることを誇りに思えるような企業にフォーカスしていた。誇りに思えることとは、プロダクトの質と人々の暮らしの質をいかに向上させるかというものだ」とワシントン氏は述べている。「声を上げられることは本当に重要だ。byteに関しては『もし口を開けられらないのなら、声を出すことはできない』といってきた。そして顧客から話を聞くとき、人々は笑ったり話したりすることを恐れる。私はbyteが多くの点で人々の暮らしをいい方向へと変えられるツールだと認識した」。

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(翻訳:Mizoguchi

フェイスブック、YouTube上で使える体が不自由な人のためのTobiiの視標追跡アプリ

今日までのアプリやサービスには標準のアクセシビリティがなく、通常のスマートフォンやマウス、キーボードなどを使えない人たちのための良質な代替手段がないことが多い。視標追跡(eye-tracking)技術のリーダーであるTobiiは、一連の人気アプリを視線でコントロールできる方法を発明した。

アクセシビリティの専門家であるサードパーティのデベロッパーと協力して同社がこれまでに作り上げたアプリはFacebook(フェイスブック)、FB Messenger、WhatsApp、Instagram、Google(グーグル)、Google Calendar、Google Translate、Netflix(ネットフリックス)、Spotify、YouTube、MSN、そしてAndroid Messagesだ。

これらのカスタムアプリは、Tobiiの視標追跡タブレットであるI-Series、またはTobiiのハードウェアとソフトウェアを使用するWindows PC用だ。

しかしこれまでのユーザーは、これらのサービスのための一般的なウェブインターフェイスを使うか、ネイティブアプリになんらかのレイヤーを追加する必要があった。しかしボタンやメニューなどは視標追跡向けに設計されておらず、小さすぎて操作しづらかったりことも多かった。

ニューバージョンもウェブアプリがベースだが、視標追跡を念頭に置いて設計されているため、大きくわかりやすいコントロールが用意されており、アプリの通常のインターフェイスが右側にある。シンプルな方向を示すコントロールはもちろん、コンテキストやアプリ固有の指定ができるコントロールもある。例えばネットフリックスを閲覧するときは「ジャンル」を使うことができる。

同社は上記写真に写っている1人のユーザーであるDelaina Parrish(デライナ・パリッシュ )に紹介している。彼女はInstagramなどアプリを使ってFearless Independence(怖くない自立)というブランドを立ち上げているが、脳性小児麻痺のため十分にアプリを使いこなせないことがある。彼女はTobiiのプレスリリースで「これらのアプリにアクセスできるようになり、毎日の生産性とコミュニケーションのチャネルが、プライベートと仕事の両方で改善され、多くのことを自分でできるようになりました」と語っている。

障碍者が使える「十分に良い」ツールやインターフェイスと、アクセシビリティを最初から目標として作られたものとの違いを課題評価することは難しい。新しいアプリは、互換性のあるデバイスなら今すぐ利用できる。

画像クレジット: Tobii

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

コンプレックスを武器に、美容医療アプリ「トリビュー」はどのようにして生まれたのか

国内の美容医療市場は右肩上がりだ。2009年の売上規模は2482億円、2014年では2833億円、2017年は2014年と比べると114.8%の3252億円に成長している。

美容脱毛サロンのミュゼプラチナムが実施した調査によると、美容医療を受けた8割の人がその事実を「隠さない」と回答。ひと昔前まで、美容医療は人知れずコソコソやるイメージが強かったが、今や“プチ整形は当たり前”の時代になりつつある。

2017年、国内で美容医療に関する情報収集がクリニックのHPやSNS上などに限られていたとき、いち早く口コミ・予約アプリ「TRIBEAU」(トリビュー)をローンチさせたのがトリビュー。代表の毛迪(モウ・デイ)氏自身も美容医療を何度か受けており、「ユーザーとして自分も使いたいアプリがほしい」という思いでサービスを開発した。アプリ立ち上げまでの道のりやコロナ禍におけるサービスの展望について話を聞いた。

毛迪(モウ・デイ)
中国生まれで5歳から日本育ち。 立教大学卒業後、2014年にリクルートへ入社。ゼクシィに配属され、国内大手企業を担当する。2016年に退職し、2016年にVCのアーキタイプへ入社。大企業向け新規事業立案や出資先の支援など行う。2017年にトリビューを設立。

ブライダル事業に興味を持てなかったリクルート時代

若いうちに仕事を任される環境で身におきたいと思いから、新卒でリクルートへ入社。ゼクシィに配属され、大手企業の広告戦略立案や広告制作ディレクションなどを任されていたが、ブライダル業界には興味を持てなかったという。

「ビジネスパーソンとしてのスキルは身に付く環境でしたが、肝心のサービスに対してはまったく熱量を持てず。部署異動も検討したのですが、リクルートの他事業で興味のある領域もなかったため、ほどなくして起業を考えるようになりました。

心から夢中になれて自分の価値を世の中に提供できる分野はなんだろう、と考えてたどり着いたのが『美容医療』でした」。

10代の頃から美容クリニックに通っていたというデイ氏。「施術を受けて見た目のコンプレックスが解消されると明るい気持ちになれます。見た目で悩んでいる人が前向きになれる選択肢の一つに美容医療がある世界を作りたいと思い、この分野での起業を決意しました」。

VCで働いて学びながら1年かけて起業準備

リクルートを退職し、起業するためのサービス案を考えるがなかなか納得いくプランが立てられない中、たまたま出会ったアーキタイプの中嶋さんから「うちで働いて勉強しながら起業準備をしないか」と提案が。

「当時、事業の進め方も知らなければ、スタートアップ業界の知り合いもほとんどいない状況。起業するは願ってもない環境だと思い、2つ返事でお世話になることにしました」。

2016年にアーキタイプへジョインし、1年間ほど大企業向けた新規事業立案や出資先の支援などを担当。アーキタイプでの経験はのちの企業や資金調達に大きく役立ったという。

「大手企業で社内ビジコンの事務局をするプロジェクトに参加したり、米国のスタートアップ企業で資金調達したところをレポートにまとめたりなど、今まで経験したことのない業務を任せてもらい大変勉強になりました。また、投資先のミーティングに参加させてもらったときは、実際にどのようなトラブルが発生するかなどケーススタディも知ることができました」。

日中はVC業務を行い、それ以外の時間は事業計画やサービス開発、資金調達などに充てた。最も苦労したのはエンジニア探しだったという。アプリ開発を依頼できるエンジニアを見つけるため、yentaやFacebookを使い100人以上にアプローチをした。

「プロダクトのない状態で会ってくれるエンジニアは本当に少ない。だから気になる人には片っぱしからメッセージを送りました。結果、yenta経由と友達の紹介でエンジニア2名が集まり、開発に半年ほどかけてローンチすることができました」。

初期ユーザーはTwitterのDMで獲得、1日100通送った

アーキタイプをめでたく「卒業」し、2017年7月に起業。同年10月にサービスをリリースした。最初の課題はユーザーの獲得。まずは整形垢(SNSで美容医療についての情報を発信するアカウント)として有名な人をリストアップし、毎日100人に「こういうサービスを作ったのでよかったら使ってください」とDMを送付した。はじめの返信率は5〜10%ほど。

「インターンの学生に作業をお願いして週次で進捗報告会を行いました。どういう文言だと返信率が高いのか、どういうアカウントだと拡散力があるのかなどのPDCAを回していました。この作業を1年ほど続けていたら、『もう使っています』という返信をいただくことが増えてきて。サービスが浸透してきていることを肌で実感できたため、この施策は終了しました」。

サービス開始から2年半。ユーザー座談会や謝礼キャンペーン、YouTubeチャンネルの開設などを経て、ダウンロード数は30万件を突破している。

今はオンライン診療で情報収集をする時期

新型コロナウイルスの感染拡大により、美容クリニックが休業したり渡韓での施術が中止になったりと美容医療業界も大きな影響を受けている。そこでトリビューは4月15日に自宅に居ながらオンラインで相談できる「TRIBEAUホームカウンセリング」機能をスタート。アプリ上のチャット機能から、美容クリニックにカウンセリングや施術の見積もりを無料で受けられる。

「外出自粛を要請されているいま、情報収集に時間をかけることをお勧めしています。TRIBEAUホームカウンセリングはリリース初日から数十人の利用があり、中には『美容医療に興味はあるけれど病院へ行く勇気がない』という人が病院予約へのワンクッションとして活用するパターンもありました。

口コミとあわせてオンライン相談も利用していただき、自分に合ったクリニックやドクターと出あう機会を増やしていけたらと思います」

メンタルヘルスをタブー視するアジアの文化に挑むIntellect

精神面の健康管理は、体の健康管理と同じくらい重要だ。しかしアジアではメンタルヘルスはタブー視されている。シンガポール拠点のスタートアップIntellect(インテレクト)はアプリによってメンタルヘルスにアプローチしやすくしたいと考えている。アプリでは、認知行動療法のテクニックに基づく自分で取り組めるエクササイズを提供している。

同社は消費者向けと企業向けのアプリを手掛けていて(企業向けアプリでは雇用主が従業員に厚生として提供する)、シンガポールやインドネシア、インド、中国にユーザーを抱える。

今年初めにベータ版を立ち上げて以来、ユーザー1万人と、スタートアップから大企業までさまざまな規模の企業10社がサインアップした、とIntellectの共同創業者でCEOのTheodoric Chew(セオドリック・チュー)氏は話す。同社は北京語とインドネシア語のバージョンの立ち上げを計画していて、ローカル版エクササイズを開発すべく現在研究者と取り組んでいる。ローカル版エクササイズには、日記づけや習慣に関するエクササイズが含まれる。ストレスや自己管理の甘さ、精神面でのバーンアウト、睡眠問題などをテーマとするショート音声クリップの「レスキュー・セッション」もある。

同社はプレシードラウンドで資金調達し、起業をサポートするシンガポール政府機関のEnterprise Singaporeも出資した。

米国や欧州では、一般的なメンタルヘルス問題にいかに対処すべきかをユーザーに一指南する自助アプリが増えている。新たに加わったものをいくつか挙げると、Headspace、MoodKit、Moodnotes、Sanvello、そしてHappifyなどがある。しかし自助アプリを展開する動きはアジアではまだ初期にある。

Intellectを立ち上げる前、チュー氏は2015年に楽天に買収された旅行予約マーケットプレイスVoyaginでアフェリエイト成長とコンテンツマーケティングの責任者を務めていた。そして同氏は自身の経験からメンタルヘルス分野に興味を持つようになった。

「私は不安の症状で一時期セラピーに通っていた。アジアでは(メンタルヘルスのセラピーを受けることに対し)社会的にマイナスのイメージがかなりあり、ツールはさほど多くない。米国や欧州ではすでに数多くあるが、アジアではまだまだだ」とTechCrunchに語った。

そして「ほとんどの人がメンタルヘルスについて話そうとしない。アジアではそうした傾向が強いが、メンタルヘルスという枠組みではなく個人の問題に取り組む、自己管理力や自信のなさに取り組むというふうにとらえ方を変えると、人々は態度をかなり変える」と付け加えた。

メンタルヘルスケア専門家のフィードバックをもとにIntellectは開発されたが、チュー氏は専門家のセラピーに取って代わるものではない、と強調する。その代わり、メンタルヘルスの話題が避けられる傾向が強い文化において、自身のメンタルヘルスを管理しやすい方法を人々に提供することを意図している。アプリにあるエクササイズは、気分の落ち込みや不安の解消だけでなく、自己主張の展開や批判対応といった職場や人間関係に伴う問題の解決にも使える。アプリの企業向けバージョンは、産業に合わせてエクササイズをカスタマイズできる。これはスタートアップや、大企業が提供できるような従業員サポートプログラムを持っていない中小企業のためのものだ。大企業が提供する従業員サポートプログラムには往々にして相談電話やメンタルヘルスケアサービス案内などのリソースが用意されている。

消費者向けアプリは月払いの定額料金ですべての機能が無制限に利用できる。ただし、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックのいまは無料で提供している。

ゆくゆくは、アプリ内でユーザーが利用できるメンタルヘルス専門家のネットワークを開発したい考えだ。

「当社は、セラピーは鬱と診断された人だけでなくみんなが利用できるもの、というアプローチをとっている」とチュー氏は語る。「3〜5年内に、毎日の悩みを解決できるセラピーコモンプレイスをつくりたい。また、より医療的な問題にも取り組みたいと考えているが、認知行動療法に基づくメソッドを使って日々の問題に取り組む方法としてとらえれば、ほとんどの人がメリットを得られると思う」

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(翻訳:Mizoguchi

催眠術で健康に、Mindset Healthの主張に投資家が1.2億円を賭ける

Chris(クリス)とAlex(アレックス)のNaoumidis(ナオウミディス)兄弟は、洋服販売の世界から催眠療法にやってきた。

2019年に、ニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、2人はもともと女性向けのP2P(ピアツーピア)方式のドレスシェアリングアプリでスタートアップ起業家の道を歩み始めた。オーストラリア生まれの兄弟は、スタートアップの世界で成功する能力に自信が持てずに気落ちしていたのだが、アプリがうまくいかなくなったとき、父親から催眠療法を試すよう勧められた。

その治療を受けたのをきかっけに、兄弟はMindset Health(マインドセット・ヘルス)を創設し、Fifty Years、YC、Gelt VC、Giant Leap VCさらに米国とオーストラリアのエンジェル投資家たちから110万ドル(約1億1800万円)の資金を調達した。

2019年12月にクローズしたこのラウンドは、小規模ながら数多くの投資家が参加しているわけだが、それは近年の精神的健康への投資家たちの関心の高まりを表している。

現代社会での生活に付きものともいえる精神障害の治療アプリは、この市場に大量に出回っている。セラピストとのマッチングをしてくれる企業もあれば、認知行動療養などの形で心の健康を支えるツールを提供する企業もある。マインドフルネスや瞑想を指導してくれる10億ドル規模の企業もあれば、催眠療法を提供する企業もある。

アレックスたちは、兄弟で受けた催眠療法からヒントを得た。「瞑想のようにできないだろうか。それを人々の役に立つ形で市場に送り込めないだろうか」とアレックス・ナオウミディス氏は私に話してくれた。

瞑想は数百万ドル(数億円)規模のビジネスだ。Calm(カーム)やHeadspace(ヘッドスペース)といったアプリは、何百万ドルものベンチャー投資をかき集め、数十億ドルの評価額を得ている。

アレックス・ナオウミディス氏は、彼らのアプリは治療用ではないと強調する。現在の規制では治療用として宣伝することができないのだ。「むしろ、自己管理ツールのようなものです」と彼はいう。「不安や『過敏性腸症候群』を持つ人たちが、家庭でそれらの症状を管理できるよう手助けして、治療努力を補完するのです」。

目標は、さまざまな症状に対処できる数多くのアプリをMindsetの傘下に揃えることだと、アレックス・ナオウミディス氏はいう。最初は、ごく標準的なメンタルウェルネスアプリとしてスタートしたが、今ではその汎用的なメンタルウェルネスMindsetツールキットに、過敏性腸症候群(IBS)に特化した製品であるNerva(ナーバ)も加わった。

Nervaのサブスクリプションは安くはない。99ドル(約1060円)の前払い金に加えて、3カ月のサブスクリプション料金として88ドル(約9400円)かかる。Mindsetのサブスクリプション料金は、ニューヨーク・タイムズの記者Nellie Bowles(ネリー・ボウルズ)氏が初めてこの製品を試したときは64ドル(約6850円)だったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行期間中の価格として、今は11ドル(約1180円)に値下げされている。

バウルズ氏は、こう伝えている。

最初のステップとして、アプリは友だちにメールかTwitterで「自分自身に打ち勝った者は最強の戦士である」という格言を伝えるよう私に進言する。次の19分間は、優しい男性の声で、私の心はスローダウンできると聞かされる。それにより不安は決意に変換される。この行程は日常の習慣にもなる。そうなれば、私は行動的な人間になれる。行動的な人間だ。

私は他にも生産性の向上のモジュールも試した。こちらは、はつらつとした若者の声だ。イケイケな感じで私の耳の中で、「私は自分に、自分が何になりたいか、何をしたいかを知ることと、そしてそれを効率的にやることの許可を与えた」という彼の言葉を繰り返すよう言ってくる。

こうした精神的健康のためのアプリは(どんなアプリもサプリも事業も同じだが)、その健康上の効能を裏付けるためには臨床研究が必要になる。Mindsetの製品開発にも医師が参加している。最初のMindsetアプリは、Michael Japko(マイケル・ジャプコ)博士との共同開発であり、IBSアプリはSimone Peters(シモーヌ・ピータース)博士とともに制作された。

どちらの博士も、治療コース開発の代償として同社から分配収益を受け取ることになっている。

共同創設者の1人は、彼らはこのサービスが成功をもたらすと非科学的に信じているのだと話す。プログラムの始めと終わりに、利用者は自分の症状を自己申告するのだが、プログラム修了者のうち90パーセントの人の症状が軽減されたという(登録者の中のどれだけの人が修了したかは不明)。

「私たちの考えは、このようなすばらしいプログラムを開発した研究者を助けて、デジタルで提供するということです」とアレックス・ナオウミディス氏はいう。「より使いやすくするために、私たちは世界でも有数の研究者たちと協力してきました」。

画像クレジット:Scar1984 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

コロナ後の世界、7つのシナリオ

編集部注:本稿はJon Evans氏による寄稿記事だ。Jon Evans氏はHappyFunCorpのエンジニアリング担当CTO。グラフィックノベル、紀行本など6作品を発表し、受賞歴もある著述家。2010年よりTechCrunchの週末コラムを担当。

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世界は大恐慌以来の深刻な経済危機に直面したのにもかかわらず、米国株式市場は昨年の同時期よりも高値で推移している。AirBNB、Lyft、Uberなどの米テクノロジー大手が従業員の20%をリストラする一方で、ビッグファイブと呼ばれる米IT大手5社が米国株式市場の時価総額の20%という記録的な割合を占めている。一体、何が起きているのか。

確かに、上記3社は新型コロナウィルス感染症のパンデミックによる直接的な打撃を受けている。しかしそれは他の業界も同じだ。いくつか例を挙げるだけでも、旅行、小売、接客、エンターテインメント、イベント、不動産、ビジネスサービスなどの業界が直接的な影響を受けているし、これ以外の業界も例外なく間接的な影響を受けている。

それでは、市場は全体として、その無限の英知に基づいて、どのような未来を予測しているのだろうか。「市場は、短期的に見れば投票機のようで、長期的に見れば計量器のようだ」という古い名言がある。その計量器で今、測り出されているのはどんな未来なのか。

筆者には、時代の行く末を示す大いなる抽選器の中でガラガラと回るくじ玉が7つ見える。

「V字型」シナリオ

未来のシナリオ:想定される未来の中で最善かつ最も苦労が少ないシナリオ。人間は新型コロナウィルスに勝利し、手洗い、マスク着用、物の表面の消毒などの簡単な対策により、その後の感染者激増を防ぐ。都市封鎖が終わると、人々は一斉に以前と同じ活動に戻る。一部の業界では数か月余分に時間がかかるかもしれないが、秋になれば学校やフライトが再開され、生活はおおむね通常どおりになる。それに続いて経済と雇用も通常に戻り、今回のパンデミックによる短期間かつ急激な不況は、11月になればV字回復する。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:40%ということにしておく。

現実的な可能性:これは途方もなく無知な妄想である。厳重な都市封鎖を実施しても感染者数は良くて横ばいという国が多い。マスク着用や手洗いは効果的で重要な対策ではあるが、それだけでは不十分だ。米国では、マスク着用が嫌で殺人事件が起こるという事態も発生した。最も重要な点は、人々が一斉に以前と同じ活動に戻ることは絶対にあり得ないということだ。実は、以前と同じように活動することを、都市封鎖が始まる前からすでにあきらめていた人々がいたことを示すデータがある。新型コロナウィルスが依然として流行する中では(当然ながら)外出が自粛されるため、都市封鎖の有無に関わらず、個人消費の低迷が続き、それに引きずられて雇用や経済の低迷も続く。

「赤と緑」シナリオ

未来のシナリオ:世界はグリーンゾーンとレッドゾーンに分かれる。グリーンゾーンでは、新規感染者数がゼロに近い状態が維持され、検査1回あたり50ドルを被検者に支給して貧困層の検査を徹底することにより検査の範囲と頻度が向上し、詳細な接触者追跡や自宅外隔離が強制されることにより、集団発生が追跡される。レッドゾーンからグリーンゾーンに移動する人は、グリーンゾーンに入る前にバッファ区域での隔離が課せられる。グリーンゾーンでは経済活動が非常に活発になるが、レッドゾーンでは新型コロナウィルスとの戦いが続き、経済は引き続き半昏睡状態となる。レッドゾーンとグリーンゾーンはほぼ半々であるため、全世界がレッドゾーンになる状態と比較すれば、世界経済へのダメージは半分だけで済む。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:おそらく7%程度では?

現実的な可能性:世界はすでにこのシナリオのような状態である。台湾、韓国、ニュージーランド、(建前では)中国、ベトナムはグリーンゾーンだ。欧州と米国までグリーンゾーンが拡大するかどうかは、わからない。カリフォルニア州は初動が速く、その後の州政府の対応も的確だったが、今では同州だけで中国全土の(報告されている)感染者数と同程度になっている。爆発してキノコ雲になったウランを元の爆弾の形に戻すことは難しい。しかし、十分な検査と追跡ができれば不可能ではない。一方で、政府がパンデミックの現実から目をそらしている州は、グリーンゾーンに転じるために必要なリソースを投じないだろう。こう考えると、不可能ではないとはいえ、筆者の私見では、米国や欧州が実際にグリーンゾーンになる可能性は低く、南米やサハラ以南のアフリカ諸国となるとさらに可能性は低くなると考えている。筆者の母国であるカナダはグリーンゾーンに転じる可能性が高いと考えたいが、分裂して機能不全に陥っている米国との関係があまりにも緊密であることを考えると、何とも言えない。

「ハンマーとダンス」シナリオ

未来のシナリオ:Tomas Pueyo(トマス・プエヨ)氏が数か月前に発表して話題になった非常に秀逸な記事がある。その中で同氏は、現在実施されている都市封鎖(「ハンマー」)の後も、感染者の増減が周期的にずっと続くと書いている。ふと思い出したかのような不定期なタイミングで感染者が急に増え、より厳重な都市封鎖が行われるなど、局地的に抑制策が強化される。しかし、医療崩壊に至ることはなく、ついにワクチンが開発されて普及するまで十分な時間を稼ぐことができる。その時点で集団免疫の実現からはまだほど遠いため、結果的により多くの人命が救われることになる。経済も周期的な波を経験する。勢いよく正常に戻った後に大々的に後退するというサイクルが2020年末まで続き、少なくともそのまま2021年に突入する。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:10%程度。

現実的な可能性:筆者はこのシナリオが実現する可能性は割と高いのではないかと考えている。都市封鎖によって感染者数が横ばいになり、ウィルスを減らせることはわかっている。怖いのは、機能不全と強硬姿勢が広まって、前述の「赤と緑」シナリオが実現不可能になってしまうことだ。少なくとも米国ではそうなる可能性がある。国民も政治家も「組織」と「独裁」の区別がつかず、都市封鎖のような原始的手段を好むからだ。そのような状況を考えると、「ハンマーとダンス」は一番ましな戦略だと思う。しかし、「ダンス」段階でオーバーシュートするリスクがあり、それがおそらく不可避であることが心配だ。とはいえ、経済の観点から考えると、これは良策とは言えない。人々は不安感を抱き続け、経済は(現在よりは緩和されるとはいえ)「ハンマー」対策による打撃を受け続けるからだ。

「特効薬」シナリオ

未来のシナリオ:ヒト感染試験によってワクチン開発が加速して、7種類のワクチンの生産工場が同時に建設されたとしても、実際に普及するのは、最大の期待を込めつつ慎重に見積もって、早くとも2021年に入ってしばらくしてから、あるいはそれより先になるだろう。しかし、ワクチンが唯一の治療方法というわけではない。もし単独あるいは他の方法と組み合わせて使うことで新型コロナウィルス感染症の危険性を緩和できる予防薬や治療方法を発見できれば、非常に良い効果がもたらされるだけでなく、この長引く戦いの流れが一気に好転する。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:少なくとも35%。医師や科学者が「もっと早くワクチンを開発しろ!」と急かされる声が今にも聞こえてきそうだ。

現実的な可能性:「幸せ探しをする少女ポリアンナ」のようだと言われてしまうかもしれないが、筆者はこのシナリオが実現する可能性はかなり高いのではないかと考えている。結論を下すにはまだ早いが、効果が期待できる治療法がひとつふたつと言わずいくつもあることを示す(非常に初期段階の)研究結果がすでに発表されている。ただし、「非常に初期段階の」研究であり、ヒドロキシクロロキンの場合のように、追加研究データによって治療薬候補から外される可能性があることは再度、強調しておきたい。とはいえ、この感染症に関する知識が深まるほど、より良い治療法にたどり着けるだろう。問題はどの程度良い治療法をどの程度早く発見できるかということだが、「かなり良い治療法を割と早く」発見できるというのは、少なくともあり得る答えだと思う。

「集団免疫」シナリオ

未来のシナリオ:引き続き医療崩壊を防ぎ、高齢者、免疫不全患者、糖尿病患者などを、最善を尽くして保護しつつ、いわゆる「集団免疫」を目指す。したがって、ウィルスと戦うことは基本的にやめる。残念なことに、集団免疫が実現する前に、それよりも多くの人がこの感染症の犠牲になることはほぼ間違いなく、高齢者を守ることも不可能に近い(「高度に訓練されたテナガザルが老人介護施設で働いているとでも思っているのか?」と発言した人がいた)ため、このシナリオでは、不要な犠牲者が多数出ることがほぼ確実であるばかりでなく、経済面でもほとんど効果がない。新型コロナウィルス感染症にかかるという、死ぬことはなくても、それまでの人生の中で最悪の経験をするリスクを冒してまで外出したがる人はいないからだ。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:せいぜい10%といったところだろう。一般市民が納得するシナリオでないことは彼らもわかっているし、経済面でも特段の効果は見込めないためだ。

現実的な可能性:これは「ハンマーとダンス」シナリオの中でも最悪のバージョンである。医療崩壊ギリギリのところで何とか持ちこたえるだけだからだ。人々はこれを「スウェーデンモデル」と呼ぶ。スウェーデンが今後どうなるのかはこれから見守るしかないが、スウェーデンの人口がニューヨーク市の人口とほぼ同数であることに注目してほしい。この同じシナリオを「ニューヨークモデル」と呼んだ途端に、その魅力は半減する。ニューヨーク市やイタリアのロンバルディ州の教訓があるため、西側諸国のほとんどの国は意図的に集団免疫を目指すことはないだろう。

「第二波」シナリオ

未来のシナリオ:現在の都市封鎖が緩和されると、すべてが元通りになったように見える。ときどき局地的に流行したり、引き続き多少の感染者が発見されたりするが、基本的には今にも消えそうな小さな炎のようなものになる。しかし、季節性化し、秋が到来すると、だれも予測せず兆候も見えていなかった予想外の第2波が突然襲ってくる。そう、あのスペイン風邪のときと同じだ。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:0%。

現実的な可能性:筆者もこのシナリオが現実になる可能性は非常に低いと思う。第一に、新型コロナウィルスが熱や湿気に弱いのであれば、エクアドルやブラジルで大流行している理由の説明がつかない。第二に、さらに重要な点として、スペイン風邪のときとは異なり、私たちにはスペイン風邪大流行から得た教訓がある。秋、そして冬になっても、世界の半分はアンテナを張り巡らしてあらゆるデータを注意深く観察することだろう。その全員がそろいもそろって前兆に気づかずに、第二波の奇襲攻撃を受けてしまうということはないと思う…ないと願いたい。

「連鎖」シナリオ

未来のシナリオ:これは、まったく別のシナリオというよりも、上記のシナリオの二次効果だ。「連鎖」シナリオでは、新型コロナウィルス感染症が引き金となって、まだ最初の危機に対処している間に、連鎖的に別の重大な危機が発生する。例えば、米国で今年11月の大統領選を延期しようとして、憲法の危機が引き起こされ、米軍の介入が必要になるといったことが想定される。他にも、食料価格が世界中で高騰した結果、多くの国々で食糧不足、暴動、革命が起こる可能性もある。あるいはブラジル、ロシア、インドなど、新型コロナウィルスの被害が特にひどかった国が崩壊するかもしれない。

市場と多数の政治家が想定していると思われる実現確率:0%。二次効果はそもそも市場や政治家が制御できるものではない。

現実的な可能性:非常に低い…でもゼロではない。だから心配だ。

関連記事:新型コロナ禍でのテクノロジー各社四半期決算まとめ

Category:ヘルステック

Tags:新型コロナウイルス 株式市場

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(翻訳:Dragonfly)
“新型コロナウイルス

MITが家電製品が出す電磁波から居住者の健康状態を把握するシステムを開発

自分の健康状態の全体像を把握するため、これからはApple Watchのようなデバイスを身につける必要はないかもしれない。MIT(マサチューセッツ工科大学)のコンピューター科学・人工知能研究所 (Computer Science and Artificial Intelligence Lab、CSAIL)の研究者が、ヘアドライヤー、ストーブ、電子レンジ、洗濯機などの家電製品がいつ、どこで使われているかを把握できる新しいシステムを開発した。研究者たちは、これらの情報を医療従事者に伝えることで、彼が介護を担当している人々の習慣や課題を知らせるのに役立つと信じている。

研究チームが考案した 「Sapple」 と呼ばれるシステムは、家に設置された2つのセンサーを使って、ストーブやヘアドライヤーなどの家電の使用パターンを測定する。位置センサーは、電磁波を利用して位置を特定し、ユーザーがその場所の境界を歩くだけでエリアをカバーするように調整できる。もう1つのセンサーは、家庭内のエネルギー使用量を測定し、そのデータを移動情報と組み合わせ、家で電化製品を使用しているときと、その使用時間を計測するため、エネルギー使用量と特定の人物の物理的位置とマッチングさせる。

研究者が「Sapple」と呼ぶそのシステムは、家の中に2つのセンサーを取り付け、デバイスの使用パターンを判定する。位置センサーはデバイスが発する電磁波からその場所を特定するが、検知範囲はユーザーが実際に歩くことによって指定できる。もう1つのセンサーは家全体のエネルギー消費を計測し、動きの情報と組み合わせてエネルギー利用のシグナルを人間の物理的な位置にマッチングし、家の中の誰かが器具を使っていることと、その使用時間を知る。

この方法では、スマートメーターなどを使う類似のシステムにある多くの問題を回避できる。家電にはそれぞれ特定の電力使用パターンがあるので、消費電力量によってどの家電が使われたのかはわかる。しかし、該当する家電がいつどのように使われたかを知るのは難しい。MITのシステムが提供する情報なら、医療従事者が患者が衛生に十分配慮しているか、食事を自分で作って食べているかなどを知ることができるわけだ。

このシステムにはプライバシーの落とし穴がたくさんありそうだが」、その使用目的が高齢者の介護など特定の用途に限られている。極めて省エネで、いま必要とされている疫病対策のための人と人の間の距離も維持できる。

IoTのスマートデバイスがまったく必要ない点でも巧妙なシステムで、単純なセンサーを2つ取り付けるだけなので、介護を受ける患者側に技術の知識も能力もいらない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TwilioのビデオプレーヤーがZocdocの遠隔医療サービスに採用

電話やメッセージの発着信サービスを展開するTwilioのビデオプレーヤーが、Zocdocが米国時間5月13日から顧客向けにローンチする新しいビデオコンサルサービスのバックボーンとして採用されることが明らかになった。両社は声明で発表した。

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行が米国のヘルスケア業界に影響を与える中、より多くのサービス提供者が医療相談を遠隔地から行うようになり、全世代の消費者がバーチャルケアに移行することを奨励している。

Zoomなどのほかの動画サービスと同様に、Twilioの動画サービスの利用は急増している。同社によると、ピーク時の同時参加者数は850%以上、1日の動画視聴時間は500%以上の増加という。また、ヘルスケア分野の顧客は同プラットフォームの帯域幅を90%増加させたという。

「Zocdocの新しい遠隔医療ソリューションは、医療従事者と患者がバーチャルケアを最も必要としている時代にビデオ訪問を利用しやすくします」とTwilioでヘルスケアサービス部門のグローバルヘッドを務めるSusan Collins(スーザン・コリンズ)氏は声明で述べている。「Twilio Programmable Videoのソフトウェアの俊敏性とクラウドのスケール性により、Zocdocは数週間でリモート訪問を利用できるようになった。我々は、顧客と医療従事者がヘルスケアプロバイダーにサービスを提供し、医療を必要とする人々に治療を提供し続けられることを誇りに思う」。

Twilioは、パンデミック期間中における新規顧客への売り込みの一環として、ヘルスケアや教育、非営利団体を対象に、6月30日までに登録した場合に限り3カ月間の無料サービスを提供する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

PTSDになったFacebookのコンテンツモデレーターに補償金総額約56億円が支払われる

Facebookは、仕事が原因で精神疾患になった現在と過去のコンテンツモデレーターに5200万ドル(約56億円)の補償金を支払うことで原則合意した。

The Vergeの米国時間5月12日の記事によると、この和解はこのソーシャルメディアプラットホーム上でコンテンツの調整に関わっていた間に、うつ病や薬物アルコール等依存症などの精神疾患に罹患した1万1000名あまりのコンテンツモデレーターを対象とする。

実は、この調査の契機となったのがThe Vergeだ。同メディアのシリコンバレー担当エディターであるCasey Newton(ケイシー・ニュートン)氏が、Facebookのコンテンツモデレーターはアウトソーシングの大手のCognizantによりフェニックスタンパで雇われ、ヘイトスピーチや殺人、自殺などの凄惨なコンテンツにさらされていると報じた。

Facebookは数千人のコンテンツモデレーターを雇って、大量のポストや画像など同サイトに投稿されるコンテンツをふるいにかけている。ほかのユーザーがルール違反の懸念のあるコンテンツを知らせてきたら、それをコンテンツモデレーターがレビューして採否を決めることが多い。

以前コンテンツモデレーターだったSelena Scola(セレーナ・スコラ)氏によると、彼女は心的外傷後ストレス障害(PTSD)になり、Facebookを訴えて現在と過去のモデレーターのための診断と治療事業のためのファンドを立ち上げるよう求めた。Cognizantは、The Vergeによる調査のあとコンテンツモデレーターの市場から完全に撤退した

予備的和解は、2015年以降のアリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、およびテキサスの各州のモデレーターが対象になり、一人当たり少なくとも1000ドルを受け取る。個々の被害補償額としては、最大5万ドル(約536万円)が支払われる。この訴訟を統括しているカリフォルニアの裁判所は、最終結審を今年の終わりごろ行う予定だ。

FacebookのスポークスパーソンはTechCrunchに対し「この重要な仕事を通じてFacebookをみんなにとって安全な環境にしてくれた人々に感謝する。私たちは今回および今後の和解を通じて、彼らにさらなる支援を提供したい」と語った。

あなたまたは誰かが助けを必要としている場合は1-800-273-8255、全米自殺予防支援電話に電話を。あるいは無料のテキストライン741-741、Crisis Text LineにHOMEとテキストを。米国以外では、国際自殺予防協会のデータベースをまず調べよう。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

赤ちゃんの睡眠モニターカメラとウェアラブルを販売するNanitが22.5億円を調達

新型コロナウイルス感染拡大でベンチャーの資金調達は全面的に不調だが、その中にあって、機械学習を活用したベビーモニターを開発しているNanitは2100万ドル(約22億5000万円)を調達した。

このラウンドには、これまでにも投資していたJerusalem Venture PartnersUpfront VenturesRRE Ventures、Rho Capital Partnersが参加した。同社の資金調達額の合計は5000万ドル(約53億7000万円)となった。Nanitは、今回調達した資金で引き続き製品を開発し、グローバルに拡大していくと述べた。

新型コロナウイルス感染拡大防止のために社会的距離をとるよう求められていることが、Nanitにとってはビジネスを急加速させる要因となっている。Nanitの調べによれば、赤ちゃんの祖父母やおじ、おばのいる家族が同社のアクティブユーザーの20%を占めている。

NanitのCEOのSarah Dorsett(サラ・ドーセット)氏は、ほかの投資家に打診したりあちこち回ったりすることなく今回の資金を調達できたと語る。同社はこれまでに15万台以上のカメラを販売し、30万人以上のユーザーが同社のアプリを使って乳児や1歳児をリモートで見ている。

睡眠モニター兼ビデオデバイスの価格は、壁に取り付けるタイプのカメラが299ドル(約3万2000円)、フロアスタンドタイプが379ドル(約4万700円)だ。現在、Nanitはモニター用デバイスを米国、カナダ、英国で販売している。

同社のアプリは最初の1年間は無料、その後は1カ月5ドル(約535円)で3人まで接続できる。1カ月10ドル(約1070円)で10人、1カ月30ドル(約3220円)で50人まで接続できるオプションもある。新製品として、ウェアラブルで呼吸をモニターするバンド、おくるみ、スリーピングバッグも19.99〜59.99ドル(約2150〜6440円)で販売している。

赤ちゃんの動きのフィードをライブで共有するだけではない。ドーセット氏によれば、赤ちゃんが笑ったりベビーベッドの中で動き始めたりしたときに記録する新機能の公開に向けて準備をしている。

ドーセット氏は発表の中で次のように述べた。「我々は2018年以降驚異的な成長を記録し、最新の資金調達は革新的なコンシューマ製品の市場における信頼と需要の現れだ。子供の誕生は、親だけでなく家族みんなにとって人生で最も重要な出来事だ。家族がどこにいても、我々のテクノロジーで家族をつなぎ、この新しい大切な道のりを共有できることを幸せに思っている」。

前述の呼吸をモニターするウェアラブルはBreathing Wearと名付けられたシリーズで、赤ちゃんの肌にセンサーを取り付けるのではなく、布にプリントされたパターンを読み取って呼吸の動きを監視する製品だ。

RRE Venturesのゼネラルパートナー、Will Porteous(ウィル・ポーテアス)氏は発表の中で「Nanitは、赤ちゃんを寝かしつけるという古くからの問題を解決している。同社の製品によって、我々は『ベビーベッドの中の生活』についての理解を深め、育児の喜びを家族で共有できる。同社は驚異的なプロダクトマーケットフィットを成し遂げ、同社が健康とウェルネスに関する家族や医師のさまざまな不明点を解決する立場にあると我々は確信している」と述べた。

画像:Nanit

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(翻訳:Kaori Koyama)

アルコール依存症と戦う患者を遠隔医療で支えるMonument

米国では18歳を超える成人1440万人が何らかのアルコール依存症だ。しかし、治療を受けているのは、そのうちのわずか7.9%。米国におけるアルコール関連死者数は、およそ8万8000人にのぼり、米国での予防可能な死因の第3位となっている。また、アルコール関連の疾患には2490億ドル(約26兆8000万円)が費やされている。

Monument(モニュメント)の共同創設者であるMike Russell(マイク・ラッセル)氏にとって、この数字は単なる統計ではなく自分自身の人生を覗く窓でもある。彼はこのアルコール依存症と闘う患者のための処方薬と治療を提供する遠隔医療サービスを展開している。この事業を始めたのは彼自身の治療法を探し求めた後のことだ。

今年の初め、会社設立を発表したMediumの記事(英語サイト)でも述べられているが、Monumentは、米国で最も一般的な治療法とされる更生施設や禁酒会の集まりほど注目されていないが、その他の治療手段があることにラッセル氏が気づいたことから生まれた。

ラッセル氏は以前、夜の娯楽のプロモーターであり、プロの酒飲みだった。クラブの売り込みを行うビジネスでは酒は欠かせなかったのだ。だが、夜遊びの世界から足を洗って起業家に転身したあとも、ずっと大酒を飲んでいた。その癖は、彼の最初にして失敗したスタートアップのVenue Tap(ベニュー・タップ)から、その次のハイテク業界への参入を守備よく果たせたオンデマンド掃除サービスのマーケットプレイスのMyCleanの時代まで貫かれた。

3つ目の、最も成功したスタートアップPaintzen(ペイントゼン)が買収されるころ、ラッセル氏は2つのことに気が付いたという。ひとつは、飲酒は現実に問題が大きいこと。もうひとつは、禁酒会や更生施設のほかにも頼れる手段があるということだ。

この2つの気づきから、彼はMonumentを創設した。シード資金はPaintzenを支援した同じ投資家グループから提供された。具体的には、Collaborative Fund、Lerer Hippeau Ventures、Red Sea Ventures, Datapoint Capital、Corigin Ventures、NextView Venturesなどが参加している。米国の東海岸と西海岸に分散するこれらの企業は、共通して同じ考え方に意識、そして資金を向けていた。「アルコールとドラッグの依存症治療は投資に値するビジネスである」という考えだ。

プライベート・エクイティ投資家も、医療分野への参入を目指して更生施設のネットワークに資金提供を行っているが、ベンチャー投資家は、医療の遠隔サービスのほうが、場所と場所を結ぶネットワークの運営費用を必要としない分、有意義な結果がもたらされると考えてている。医療が受けられること、そして医療を提供する人がいることは、場所とは関係がない。

同じくアルコールの乱用を防ぐことを目的としてベンチャー投資家から資金を得ているニューヨークのスタートアップのTempestとも違い、Monumentは、プラットフォームを入口にして人々をセラピストと結びつけようとしている。Tempestのアプローチは、断酒のためのサブスクリプション・サービスの一部として数々のツールを提供することが中心になっている。

関連記事:有料オンラインサービス「断酒の学校」運営のTempestがテクノロジー活用で回復支援

Monumentの資金調達は2019年12月にクローズされたが、1月にはラッセル氏は自身のブログに、同社は、依存症克服の方法に関する情報を求めるユーザーのコミュニティー構築と、患者予備軍を個々の症状に合わせた治療薬の処方と同じ目的の認知行動療法の提供が行えるセラピストや医師と結びつける活動を開始したと書いている。

Munumentの事業には4つの面がある。1つ目は、断酒を決意し、それにまつわる情報や支援を求める人たちが無料でアクセスできるコミュニティーがある。2つ目は、自宅待機要請の重圧の中で酒や薬物への誘惑が増していると感じるコミュニティーのメンバーが、無料で参加できるグループ治療セッション。これは、新型コロナウイルスの流行を受けて市場に同様の治療セッションを投入したRo(ロー)やHims(ヒムズ)やその他の企業とよく似ている。3つ目は、治療を次の段階に進めたいと考えているコミュニティーのメンバーのために、料金を払えば一度だけ医師の診察を受けて、飲酒の必要性や欲求を抑える薬を処方してもらえるサービス。そして4つ目として、隔週または毎週、セッションに参加したい人のための2つのコースのセラピーサービスを提供している。

「私たちはメンバーを、投薬治療に精通した、または薬を使わないほうがいいと判断できる医師とを結びつけます」とラッセル氏。(メンバーは)「合併症に詳しい有資格のセラピストにつながれます」という。

投薬のみのプランは19ドル(約2000円)。隔週のセラピストの診療と初回の薬の処方のための診察が受けられるコースは月額149ドル(約1万6000円)。医療管理に毎週のセラピーが受けられるコースは月額249ドル(約2万7000円)となっている。

現在のところ、Monumentのネットワークにはおよそ700人が参加し、米国時間5月11日にカリフォルニアでサービスを開始したのに伴い、無料コミュニティーのメンバーはさらに増えるものと期待されている。「治療プランは、ニューヨーク、ニュージャージー、そしてフロリダでベータ版が使えます」とラッセル氏。「公式ローンチでは、これらの3つの州に加えて、カリフォルニアとコネティカットが加わります」。

遠隔治療の提供企業は、米国の50州では免許なく事業できる。これは、新型コロナウイルスのアウトブレイクによる医療システムの負担を考え規制が変更されたお陰だ。ただし、同社がサービスを提供している州では、精神医療に関してはまだ免許を必要とする。「各州の医師免許を持つ医師、臨床医、セラピストをさらに集める必要があります」とラッセル氏は言う。

この会社を立ち上げるにあたり、ラッセル氏はMyCleanとPaintzenの共同創設者Justin Geller(ジャスティン・ゲラー)氏を共同創設者として招き、データサイエンティストのAmit Klein(アーメット・クライン)氏を最高製品責任者に迎えた。

「核心はデータにあります」と、同社でのクライン氏の役割の重要性についてラッセル氏は話した。「メンバーが治療に入ることで、私たちには医療効果がわかります。その一部がプランに、診断に活かされます。私たちは、年齢、性別、飲酒パターンを把握することで、その治療が有効か否かがわかるのです」

またラッセル氏は、匿名化データは使わず、第三者にその見識を売ることもないと強調していた。「それは2値アウトカムです」と、治療過程を監視するという同社の決断についてラッセル氏は言う。「私たちは成功例を追跡できます。治療の経験を重ねるにつれてデータセットが積み上がりますが、それは結果として個人のものとなります」。

新型コロナウイルスへの社会的対応が人々の精神衛生面へのストレスを強めている今ほど、Monumentにとって重要な時期はないとラッセル氏は語る。今このときも「人々はアルコールと苦戦しながら、生きるための必死の戦いをしているのです」とラッセル氏は話していた。“新型コロナウイルス

画像クレジット:10,000 Hours / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナ患者に早期警告する喉装着型ウェアラブル、NWUの研究者が開発

進行中のパンデミックによってあらゆる業界で大きな変化が生じているが、新型コロナウイルス感染症の影響を緩和するためのより長期的なソリューションの開発には、特に時間と労力を投資する価値があるだろう。ノースウェスタン大学の研究者がシカゴのShirley Ryan AbilityLabと共同で取り組み、新型コロナウイルスの感染者に早期警告を提供するウェアラブルデバイスを開発した同プロジェクトは、そういった取り組みの代表的な例である。

喉に装着できるよう設計されているこのウェアラブルデバイスは、約25人の個人によってすでに使用されており、自宅や診療所でのモニタリングを通じてその有効性に関する初期データが提供されている。関連ハードウェアが患者の咳や呼吸活動を監視し、研究チームによって開発された一連のアルゴリズムと連携することにより、初期症状や、感染が進行しより高度なケアを必要とする場合に発症する兆候を特定することができる。

この装置は24時間使用できるように設計されており、継続的なデータストリームを提供。症状が明らかに悪化してからでは早期治療の段階を過ぎてしまっており、通常の受診では頼りないが、この装置を使用すれば直ちに情報が提示されるため大きなメリットとなる。同ウェアラブルデバイスは切手サイズで薄いバンドエイドのような見た目だ。咳の音や頻度だけでなく、胸の動き、心拍数、体温、呼吸数も監視することができる。

同装置は特に発熱、咳、呼吸障害など、新型コロナウイルスの最も一般的な初期症状として医療専門家らが認識している症状をベースとして調整されている。同装置の開発チームをリードした、ノースウェスタン大学の研究者John A. Rogers(ジョン・A・ロジャー)氏によると、このウェアラブルデバイスが装着されるのは喉元にある「頸切痕」という部分で、ここは身体の呼吸経路の中でも「皮膚の表面付近で空気の流れが発生する場所」とのことだ。

このハードウェアにはさまざまな活用法があるだろう。第一に、最前線で働く医療従事者にとって貴重なツールとなる。起こり得る病気の早期兆候となるものを知ることができるため、同僚への感染を回避し、必要な治療を可能な限り効率的に受けることができる。第二に、すでに新型コロナウイルスに感染したと診断された人が、感染の経過や悪化する時期について貴重な情報を提供することができる。第三に、診療所内と自宅の両方にいる被験者からのライブ情報を用いて、治療の開発に取り組んでいる科学者に何が、どのように、どの程度うまく機能しているかの情報を提供するためにも活用することができる。

このデバイスは比較的簡単に生産が可能だ。チームによると毎週数百単位で生産でき、外部のサプライヤーに大きく頼る必要もないと言う。今回の危機に対応するために大量に必要となる可能性のあるハードウェアにとって、これは非常に大きな利点である。また、同デバイスはほぼ気付かれずに着用することができる上、臨床医と患者の両方にとって非常に使いやすい作りになっている。

OuraリングやKinsa体温計のように、生体からの測定値を監視するデバイスがウイルスの流行を抑えるのにどのように役立つかを考察中のプロジェクトが他にも進行中である。同ウェアラブルデバイスを手掛けた研究者らは、デバイス開発を管理するためにSonicaと呼ばれるエンジニアリング企業と連携してきた。これからはさまざまな機関と協力して(BARDAからの資金提供を含む)、より多くの場所にこのウェアラブルデバイスを導入し、広範囲に使用できるように製品化する可能性について検討していく予定だ。

関連記事:アップルが新型コロナ検査検体回収キットを開発する企業に約10億円提供

Category:ヘルステック

Tags:新型コロナウイルス ウェアラブル

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(翻訳:Dragonfly)

“新型コロナウイルス

現場の医師同士をつなぐ実名相談サービス「Antaa」が2.3億円を調達

医師同士の質問解決プラットフォーム「Antaa」を展開するアンターは5月11日、XTech Ventures、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三井住友海上キャピタルおよび個人投資家を引受先とした第三者割当増資により総額約2.3億円を調達したことを明らかにした。

Antaaは現在1万人を超える医師が登録している医師向けのコミュニティプラットフォームだ。このプラットフォームには医師同士のQ&Aサービス「AntaaQA」のほか、ユーザー間でスライド資料を共有できる「Antaa Slide」、医師向けのオンライン情報サイト「Antaa Media」、動画によるオンライン勉強会やイベントなどを開催するコミュニティ「Antaa Members」、医師向けの経営塾「Antaa Academia」など複数のサービスが含まれる。

主な収益源は医療機関や自治体の広報支援、製薬企業や医療機器メーカーのマーケティング支援など法人向けのもの。医師にはAcademia以外のサービスはすべて無料で提供している。

軸となるAntaaQAは、医療現場で何か困ったことがあった際にその領域に精通した医師にオンライン上で質問できるのが特徴。質問を投稿する際に「何科の相談なのか」「緊急を要するのか」をタグで設定することで、該当するユーザーに通知が届く仕組みだ。

たとえば当直担当の内科の医師が深夜に「子宮筋腫で入院中の患者がお腹を痛がっている」状況に直面した場合、AntaaQAを使えば産婦人科の医師から対応方法をレクチャーしてもらえる可能性がある。

アンター代表取締役で整形外科医の中山俊氏によると、実際に以前同じようなケースでAntaaQAが問題解決に役立ったことがあったそう。従来であれば緊急時は病院内の他の医師や知り合いにかたっぱしから電話をするなどして対処するしかなかったが、Antaaはそれに代わる有力なオプションになりえるという。

もともと同サービスは中山氏が実際に医療現場に立つ中で「1人の医師の能力だけでは限界を感じる瞬間があった」ことから、医師同士が繋がって情報共有できる仕組みの必要性を感じて立ち上げた。

「医師が不足している地域の医療機関や、都心であっても夜間医療の対応時などは現場の医師がたった1人で医療を行わなければいけない場面がある。自分自身も奄美大島出身で、もし島に戻って医師として働くとしたら、1人で診療しないといけない時が必ずあるはず。そんな時に医者同士が繋がって、助け合うことができればいいのではと考えた」(中山氏)

当初はプロダクトのニーズを探るためにLINEのコミュニティを開設し、中山氏自身がLINE@を通じてオンライン上で医師の質問に答えることから始めた。すると約1年ほどで100人ほどの医師から質問を受けるようになり、その過半数は直接面識のないLINE上でしか繋がりのない医師だったという。

「相談を続けているうちに直接会ったことのない医師からも『もし中山先生が何か困ったことがあったら聞いてください』と言われることが増えた。双方向でお互いが相談しあえるサービスには一定のニーズがあると感じ、ベータ版の開発を決めた」(中山氏)

現在Antaaは学習意欲の高い若手医師が多く集まるコミュニティになっていて、ユーザーの80%近くが30代以下の医師たちだ。その中には地方の若い開業医など周りに相談できる同業者が少ないユーザーも一定数存在し、場所の制約を超えてオンライン上で相談やディスカッションができるAntaaが重宝されているという。

直近では新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受け、2ヶ月弱でユーザーが約2000人増加した。日々新しい情報や論文が出てくる中で「最新の情報を医師同士が共有し合う場所として使われることが増えてきている」(中山氏)そうだ。

今回調達した資金はAntaaQAの機能性を改善するための開発に用いるほか、動画などのコンテンツ拡充などにも投資をしながら、医師にとってさらに使い勝手の良いサービスを目指す。