Boltという名のスタートアップが、電子商取引の小売業者たちに、Amazonとの競争の機会を与えようとしている。これまで1年間、公表されることなく運用されてきたこの支払いプラットフォームは、現在100ほどのオンライン業者へと広がってきている。それぞれは、カスタマーチェックアウト、支払い処理、そして不正検知のエンドツーエンドソリューションを含む、様々な展開段階にある。
同社の公式な設立は2014年である、当初はオンラインチェックアウトにおけるデジタル通貨の利用に焦点を当てていた。同社を率いているのが、このアイデアの実現のためにスタンフォード大学を辞めたRyan Breslowと、Eric Feldmanである。しかし、設立から1年間の実験の後、Breslowは小売業者のサイトにおけるオンライン決済体験を向上させる、他の方法があることを発見した。
「チェックアウト体験は素晴らしいものではありません。顧客が『チェックアウト』をクリックしてオンラインショッピングの支払いステップに入りますが、それは裏で何十種類ものツールが動いているのです」とBreslowは説明する。
そこで動いているツール群は、クーポン、ポイント、税金、そして送料などの計算を扱わなければならないチェックアウト体験に加えて、実際の支払い処理、支払いゲートウェイ、不正検知などにも関わっている。
「このように、電子商取引はレイヤリングするという哲学があり、そのレイヤリングによって断片化が生じています」Breslowは続ける。「Boltで私たちが得た洞察は、この仕組の断片化が更に激しくなるほど、オンライン小売業者のパフォーマンスは悪化し、Amazonが更にマーケットシェアを占めるようになるというものでした」。
この問題に対処するために、Boltは体験を最適化するためにデザインされた新しいチェックアウトプラットフォームを開始した。そこには小売店が必要とするすべてのツールが束ねられている。
それには、ロードタイムを加速するために様々な技法が使われた、より迅速で高性能なチェックアウトページも含まれている。例えばフロントエンドコードの事前処理などだ、これによりコードと必要な要素が既にロードされているため、サイトが新しいページにリダイレクトして、ゼロからロードし直す必要はない。
また、チェックアウトページでは、購入を完了するために顧客が通常入力する必要のあるフィールドの数が減っている。これはカートを中途で放棄する比率を下げる効果がある。
チェックアウトを開始する際に、Boltは「ゲストとして続ける」かログインするかの選択肢を提示することはない、Breslowによれば、顧客は自分の選択肢を後悔することがあるので、こうした選択肢が示されると40%がそこで手続きを止めてしまうのだという。
その代わりにBoltは、チェックアウト後の登録機能を提供している。顧客はサイトが支払いを取り込んだ後に、アカウントにサインアップすることができるのだ。
またBoltでは、顧客が請求先住所を入力する必要もない。これは、今日のオンライン支払い処理と根本的な違いがある点だ。
Breslowは、詐欺行為を減らすための手段として一般的に受け入れられている「請求先住所の要求」は、そうしても実際にはほとんど役に立たないと言う。
「より多くのデータが漏洩することで、私たちの個人的な生活がダークマーケットに晒され、顧客を認証するための貴重な識別情報が減っていきます」と彼は言う。顧客に対してこの情報の入力を要求する代わりに(この要求によっても顧客は離脱しやすい)、Boltは不正に対抗するテクノロジーを採用している(そして実際、それが完全なチェックアウト体験を支えている)。
たとえば、ページ上でマウスがどこを移動しているか、情報をフィールドへコピー&ペーストしているかどうか、ミスタイプを行ったかどうか、どれくらいの速度でタイプしたか、その他沢山の要素を追跡している。Boltは、顧客の行動パターンを分析することで、請求先住所を尋ねるよりも、より良い不正行為防止を行うことができると言う。
彼はまた、現在市場にある不正検知会社よりもBoltの方が優れていると言う。なぜならそうした会社はより保守的だからだ。このことは、偽陽性(すなわち正しい注文が怪しいものとして拒絶されてしまう)につながり、電子商取引業者の利益が減少することになる。
Boltの不正検出が信頼できることを顧客に保証するために、同社は不正による支払い取り消しの100%をカバーしている。
Boltの顧客の中にはまだソフトウェアを試用しているだけの会社もあるが、もしそうだとしても、テストするためにはある種の決意が必要である。すなわちBoltに対してその全ての支払とチェックアウト体験を委ねることになるからだ。
Boltはまた、小売業者たちの現在の決済業者に比べて、遜色ない処理手数料を提示することで、切り替えを促そうとしている。
Boltには現在約100社のクライアントがいるが、そのほとんどが中規模、すなわち扱い高が7から8桁(100から1000万ドル)規模の業者である。ここにはInvicta(腕時計)、Watches.com、Robert Wayne Footwear、Brian Gavin Diamonds、Adiamor Diamond Jewelry、State Bicycle Co.などが含まれている。
同社の技術が競合相手に比べて、高価なものであることをBreslowは認めている(月額費用に関して)。しかし同時に、それは売上の向上で埋め合わせることができると主張している。同社はトランザクションごとに安価でフラットなパーセンテージベースの手数料を徴収するが、どの場合にも10から50%の売上増がみられるということだ。(数字の幅が広いのは、他に比べてチェックアウト実績が芳しくないクライアントがあるからだ)。
まとめると、Boltはその迅速なチェックアウト、A/Bテスト済のチェックアウト体験、そして不正検知によって、Amazonのワンクリックチェックアウトが支配的な世界での対抗手段を、その顧客たちに対して提供できると考えているのだ。
Boltの30名のフルタイムチームには、共同創業社のEric Feldmanの他に、Google、Facebook、Twitter、そしてAirbnbからの転職者や、(デジタルギフトカードの)CashStarでの経験をもつ人材が属している。
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同社の調達額は公開されていない(「シードよりは多額です」とBreslowは語る)が、PayPal、Intuit、Splunk、StubHub、Oculusの創業者たちを含む多くの投資家たちや、スタンフォードのStartXファンド、スタンフォードのコンピュータサイエンスの教授Jay Borenstein、Streamlined Ventures、Floodgate(Mike Maples)、Great Oaks VC、Trevor Traina、Brainchild Holdingsなどからの投資を受け入れている。
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(翻訳:sako)