【レビュー】アップルの最新位置情報デバイスAirTagの第一印象

Apple(アップル)の新しい位置情報デバイスAirTag(エアタグ)を、手に入れてから数時間使っているが、ほぼ宣伝文句通りに動作しているようだ。セットアップの流れは、AppleがAirPods(エアポッズ)用に開発したものから明らかな影響を受けたシンプルでクリーンなものになっている。U1チップで実現されている精密検索機能は、実用性指向の拡張現実(AR)の実用的な例として機能していて、画面上に仮想矢印やその他の視覚的な識別情報を表示することで、AirTagをすばやく見つけさせる。

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あまりお馴染みではない方のために説明すると、AirTagの基本的な仕組みは、Bluetooth(ブルートゥース)のビーコン技術を利用して、iOS 13以上を搭載した近くのデバイスに自分の存在を知らせるというものだ。これらの静かな「発信」は暗号化されていて、通りすがりの人には(通常は)検知されない(特にオーナーと「一緒にいる」場合には)。つまり、どのデバイスが実際にAirTagを「見つけた」のかは、Appleも含めて誰にもわからないのだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

ちなみに「一緒にいる」とは、AirTagが登録されているものと、同じiCloud(アイクラウド)アカウントにサインインしているデバイスが、近くにあることを意味している。Bluetoothの通信範囲は、その場の状況や信号反射にもよるが、一般的には40フィート(約12.2メートル)程度だ。

個人で非常に限られたテストしかしていないが、AirTagの位置特定範囲は、Bluetoothの基本的な期待値に沿っている。つまり、たくさんの障害物や壁、信号反射の阻害などによって、阻まれる可能性がある。例えば別の部屋にあるAirTagからの最初の位置情報を取得するのに30秒以上かかることもあった。とはいえ、位置情報を受け取った後は、デバイスの位置を特定するための指示がすぐに更新されて、数インチ(数センチ)単位で極めて正確に表示されるようになった。

近くのAirTagを探すのはこんな感じ

AirTagは、ユーザーが交換可能な標準的なCR2032ボタン電池で1年間動作する。ある程度の時間、水に浸かっても大丈夫な程度の防水性も備えている。バッグ用のレザーストラップや、ラゲージタグ、キーリングなど、デザイン性の高いアクセサリーがたくさん用意されている。また、たくさん寄せられた質問にお答えしておくなら、この機能はなぜか新しいApple TVのリモコンには搭載されていない。

分解されたAirTagの写真からは、Appleのハードウェアへの強いこだわりを見ることができる。ケースの中の電池接点は、小型機器にありがちな単純な折り曲げ式の突起ではなく、ケース内部の留め金と3つの圧力接点を介している。これによって、バッテリー交換時のねじれや曲がり、経年劣化による接触不良などが起こりにくくなり、デバイスの長寿命化が期待できる。

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ここまではいい感じだ。さらにテストを重ねていく予定だ。

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保護機能

位置情報に関連する製品なら何でもそうだが、AirTagsにとってもセキュリティとプライバシーは最重要課題であり、Appleはいくつかの保護措置を講じている。

AirTagを共有することはできない。AirTagは特定の1人が所有することを想定している。自分のiCloudファミリー共有グループに入っている他のメンバーができることは「近くに未知のAirTagがある」という警告を自分のデバイスに出ないようにすることだけだ。そのため、AirTagは共有鍵や、家のペットなどに使う際にも便利だ。他のiOSデバイスのように、家族の「探す」アプリにAirTagが表示されることはない。「Find My(探す)」アプリ内にはすでに「アイテム」専用のセクション「持ち物を探す」が設けられていて「探す」機能が組み込まれたアイテムもそこに入る。

画像クレジット:Matthew Panzarino

持ち主としばらく離れていたAirTagは、動かされる度に音を鳴らすようになる。この「しばらく」というのは現在は3日間に設定されているが、変えることが可能だ。またAirTagの使われ方を観察して、将来的にはAppleがデフォルトを調整するかもしれない。この機能によって、近くにいる人にその存在を知らせることができる。

画像クレジット:Matthew Panzarino

その他のプライバシー機能としては、AirTagが持ち主の近くではなく、他者である誰かの近くに置かれた場合、しばらくしてからその他者に「警告」する機能がある(例えば、バッグやクルマの中に入れて一緒に移動した場合など)。そのときその他者は、AirTagの位置を特定するために音を鳴らしたり、シリアル番号などの情報を調べたり、電池を外して動作を止めたりすることができる。

もちろん、AirTagを紛失モードにして、警告音を鳴らしたときにAirTagを見つけた人と個人情報を共有することもできる。またAndroid(アンドロイド)を含むNFC搭載のスマートデバイスを持っている人なら、誰でもデバイスにタッチすることで、そのAirTagのオーナーが選択した情報が掲載されたウェブページを見ることができる。もしそうしたくなければ、単にシリアルナンバーだけでも良い。

このシナリオは、自分の前に他人のAirTagがあることを知らせてくれるiOSデバイスを持っていない場合を想定している。もし紛失モードになっていなくても最終的にはAirTagは音を鳴らすことになり、AirTagオーナーはそれをコントロールすることができない。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleが多くのエッジケース(極端な場合)を考慮していることは明らかだが、出荷が進むにつれて、何らかのケースが出てくる可能性があるので、それを見守る必要がある。

アップルには、市場における明確な優位性がある。

  • AirTagの位置を確認できる機器が、世界に10億台近くあること
  • U1ワイドバンドチップを内蔵し、iPhoneに搭載されている同様のU1チップと通信することで、超高精度(インチ単位)の測位を可能にしていること
  • 競合他社のタグにはない、プライバシーに配慮した機能が満載なこと

なお、Appleは、ウルトラワイドバンド(UWB)無線を搭載したサードパーティー製デバイスが、iPhoneに搭載されているU1チップにアクセスできるように、チップセットメーカー向けの仕様の策定を「2021年春以降」に行うと発表している。これにより、AirTagのようなU1を内蔵していないアクセサリーでも検索機能に対する精度が上昇することが期待される。もちろん、AppleはAirTagと同様の基本的な検索機能を提供したいと考えているBelkin(ベルキン)、Chipolo(チポロ)、VanMoof(バンムーフ)などのサードパーティー製デバイス向けに、「Find My(探す)」メッシュネットワーク全体を開放している。Tile(タイル)は、Apple社の優位性がこの市場への参入を不公平なものにしていると先の議会で証言したものの、UWBバージョンのトラッカーも提供する計画を発表した。

もしAirTagsが屋外で紛失してしまったらどうなるかを見るのが楽しみだ。手に入れてからまだ12時間も経っていないので、エッジケースや公共スペースでの一般的な実用性などをテストすることがまだできていない。

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デバイスは日本時間4月23日午後21時から発売の予定だ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleトラッカーAirTagレビュー

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

【レビュー】レーダーで睡眠をトラッキングする7インチの第2世代Google Nest Hub、やっとSoliの良い使い道が見つかった

Nest Home Hubは、初期バージョンがリリースされて2年半になるが、今でも市場に出ている製品の中では筆者のお気に入りのスマートスクリーンの1つだ。これは、このカテゴリーの製品の改善率が悪いということかもしれないし、Google(グーグル)が最初からかなりしっかりとした製品を作ったということかもしれない。堅牢だがシンプルな素材でできた筐体の外観は市場でもトップクラスだ。サイズもちょうどよく、機能面でもグーグルがじっくりと考えて作り込んだことがよくわかる。

こうした類の家電製品はこれまで何十年も(需要を維持しようと)毎年大きなアップデートを発表してきたため、消費者もそれを当たり前のことだとみなすようになっている。そういう意味では、今回の第2世代デバイスには少しがっかりした。新しい機能はほとんど見当たらない。睡眠トラッキング機能が追加され、スピーカーの低音パワーが強化されたが、正直にいってそのくらいしかない。

多分、今回の新バージョンで一番興味深いのは、グーグルのエンジニアが自ら課した制限の下でどのようにしてこの新機能を実現したのかという点だ。筆者は、リリース前のイベントでGoogle Home Hubを見て、カメラを内蔵しないことにした理由を尋ねたときのことをはっきり覚えている。グーグルやAmazon(アマゾン)などの企業はその頃、こうしたデバイスでできるかぎり多くの情報を収集することに注力していた。

画像クレジット:Brian Heater

筆者は当時、カメラを内蔵しないというグーグルの方針に賛辞を送った。そして今回の第2世代デバイスでその方針が維持されたことをうれしく思う(もちろん、容易にそう思えたのは、間もなくカメラ搭載型のNest Hub Maxがリリースされると知っていたからだ)。新しいEcho Hubもテストしてみたが、このデバイスは部屋中どこに移動しても追いかけてくる。これを見て、内蔵カメラを搭載しないというグーグルの考えをますます称賛する気持ちになった。

Nest Hubが人気のベッドサイドデバイスとなったのは、間違いなく、この「内蔵カメラを搭載しない」という決定があったからだ。寝ている姿やベッドで行うあらゆること(クラッカーを食べたり、ホラー映画を観たりなど)をカメラで撮影されて自分のことを学習されるのを嫌がる人は多いだろう。

人気のベッドサイドデバイスの第2世代を設計するとなれば、睡眠トラッキング機能を組み込むことなど誰でも思いつく簡単なことだ。しかし、問題がある。睡眠トラッキングにはカメラを使うのが至極当たり前の方法のように思えるが、カメラが内蔵されたらユーザーは間違いなくベッドサイドにこのデバイスを置くのを嫌がるだろう。では、どうすればよいか。運が良ければ、どこかの会社が大金を投入して開発したものの、何に使ってよいかわからないテクノロジーが見つかるかもしれない。

そんなテクノロジーが見つかる確率ははたしてどのくらいあるのだろうか。実は、グーグルにいればその確率は驚くほど高い。

Project Soli(Soli開発プロジェクト)は、グーグルによくある変わりだねプロジェクトの1つだ。Project Soliはクールなテクノロジーだが、どんな問題の解決に使えるか、用途を探しているところだった。チームが見つけた最初の問題は、ユーザーはタッチスクリーンに触り過ぎるという問題だったのだろう。そこでこのテクノロジーをPixel 4に組み込み、カスタムのポケモンゲームなどとやり取りできるようにした。しかしPixel 5がリリースされる頃には、このテクノロジーはほぼ忘れ去られていた。

画像クレジット:Brian Heater

カメラを使わない睡眠トラッキングがSoliテクノロジーの用途として非常に理に適っているのは明白だ(ただし、電子機器に組み込まれた実質的な小型レーダーをベッドの脇に置くというのは最初は奇妙な感じがするかもしれない)。グーグルの製品概要ページには以下のように記載されている。

Sleep SensingではMotion Senseを使ってディスプレイの最も近くにいる人の睡眠をトラッキングします。Motion Senseは低エネルギーレーダーを使って、動きと呼吸を検出します。Nest Hubには他のセンサーも内蔵されており、いびきや咳などの音、部屋の光や温度などの環境要因を検出します。Sleep Sensingはこのようにして、就寝時刻や睡眠時間だけでなく、睡眠の質も判定します。

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もちろん睡眠トラッキング機能を追加したからといって、このデバイスが家電製品の中でユニークな存在になるわけではない。あらゆる製品が睡眠関連機能をこぞって導入しているからだ。そして、それは当然の流れだと言える。多くの人が慢性的な睡眠不足に悩まされているためだ。新型コロナウイルス感染症のせいで睡眠不足になる人が増える随分前から、この傾向はあった。このデバイスを他社製品と比較してユニークなものにしているのは、ユーザーにもベッドにも触れないで睡眠トラッキングを実現できると謳っている点だ。

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ここ数年で数十台のフィットネストラッカーやスマートウォッチをテストしてきた経験から言わせてもらうと、手首にウェアラブルデバイスを装着して眠るのは最悪だと断言できる。ただでさえ睡眠不足で困っているのに、そんなものを付けたらとても寝られたものではない(睡眠不足でなければ、そもそも睡眠トラッキング機能などに興味を持たなかったとは思うが)。

筆者は、もし自分で本物の睡眠トラッカーを買うなら、マットレスの下に置くWithings Sleep Tracking Matのようなタイプの製品を検討するだろう。体に触れる感覚は最小限で済むし、ベッドの近くに画面を置く必要もない。睡眠トラッキング機能が追加されたという点だけで新しい Nest Hubをお勧めすることはできないが、ベッドの脇にスマートディスプレイを置くことを検討しているなら、このデバイスは市場で最高のモデルの1つであり、他のデバイスよりもはるかに購買欲をそそられる。

画像クレジット:Brian Heater

Soliによる睡眠トラッキングの欠点の1つは、デバイスの設置場所の柔軟性に欠けるという点だ。例えば、筆者はナイトテーブルを持っていないため、間に合わせに椅子を使ってテストする必要があった。また、デバイスはベッドの(上側や下側ではなく)横、つまりマットレスと同じ高さに置く必要がある。また、画面は睡眠中、ユーザーから30~60センチメートルほど離れていなければならない。

キャリブレーションも実行する必要があるが、非常に簡単で、デバイスをあちこち動かさない限り、1回実行するだけで済む。筆者はこの1回のキャリブレーション実行時に、Echo Showの新しい機能の1つがNest Home Hubにはないことに気づいた。Echo Showでは画面の傾きを手動で上下に動かすことができる。これは大変使い勝手が良いので、今後、すべてのスマートスクリーン製品に導入されることを望みたい。

筆者は睡眠トラッキング機能を数日間使用してみて、非常に正確であることに気づいた。デバイスがベッドの端から60センチメートル離れていることを考えるとなおさらだ(ネタバレ:筆者はかなり寝相が悪い)。オンボードのウェルネス機能を使ってさまざまな情報を掘り下げて確認することもできる。睡眠時間や全体的な睡眠の質などの標準的な情報に加えて、夜中に咳をした回数、いびきをかいていた時間(分)の合計、夜中の呼吸数なども教えてくれる。

その他に利用可能な情報として、部屋の温度(まだあまり活用されていない組み込みの温度計を使用)、睡眠の質(覚醒 / 睡眠/ 不安定に分類される)などがある。こうした情報はかなり基本的なものだが、現在のハードウェアで最終的にどの程度詳細な情報まで掘り下げられるようになるのかは興味深いところだ。呼吸器の健康状態に焦点を当てていることを考えると、睡眠時の無呼吸を検出することなど簡単なように思えるが、それにはアップデートが必要になる可能性が高い。また、規制当局による精査の対象にもなる。

画像クレジット:Brian Heater

睡眠に関する限り、既存のハードウェアを使って改善できる余地は十分にあるように思われる。グーグルによるFitbit(フィットビット)の買収が正式に締結された今、そのような改善を実現できる可能性は非常に高くなった。Fitbitの機能との緊密な統合を期待したい。現時点では、目覚まし時計や寝室のスマート照明などと睡眠との統合は慎重に検討する価値があるだろう。

グーグルは希望価格を50ドル(約5530円)下げて99ドル(日本では税込9900円)とした。これにより、今回のアップデートがかなりマイナーだったことに対する不満は確実に和らぐだろう。Nest Hubは、リリースから2年半経過したが、Googleアシスタントによるサポートやソフトウェアが提供されていることもあって、販売中の製品の中では今でも最高のスマートスクリーンの1つだ。今回の新バージョンは、筆者がお勧めする最高の睡眠トラッカーというわけではないが、近くに置いて使うスマートディスプレイや目覚まし時計を探しているなら、悪くない贈り物だと思う。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:GoogleGoogle Nestスマートディスプレイ睡眠レビュー

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Sonos Roamはほぼ完璧なポータブルスピーカー

Sonos(ソノス)が2021年3月に発表した新型スピーカーは、さまざまな点において同社のこれまでの製品とは大きく異なる。米国では4月20に発売される(日本では2021年夏に発売予定)この「Sonos Roam(ソノス・ローム)」は、内蔵バッテリーとBluetooth接続を備えたコンパクトなポータブルスピーカーだが、無線LANストリーミング、マルチルーム機能、音声アシスタントのサポート、そして驚くほど優れた音質を備え、Sonosシステムの一員であることに変わりはない。

基本仕様

価格169ドル(約1万8500円、日本での価格は未定)のSonos Roamは、高さ168mm×幅62mm×奥行き60mmと小さなサイズで、重量は430グラム。カラーはマットホワイトとブラックの2色から選べる。また、IP67規格に準拠しており、水深1mまでの場所で30分以内の耐水性を備えている。

スピーカーの操作系は本体の側面片側に配置されており、マイクボタン、ボリュームコントロール、再生 / 一時停止ボタンが備わる。これらはすべて物理ボタンが採用されており、他のSonosのスピーカーに見られるようなタッチセンサー式ではない。外へ持ち出すことを想定したスピーカーとしては、雨や水に濡れてタッチ操作が効かなくなる場合も考慮した、理に適った設計と言えるだろう。

背面には電源ボタンがあり、その隣に充電用のUSB-Cポートも備えている。スピーカーの底面に組み込まれたレシーバーを介して、ワイヤレス充電も可能だ。専用にデザインされたマグネット式充電アダプター(別売り)の他、一般的なQi対応のワイヤレス充電器と組み合わせて使用できる。

Sonos Roamは、Wi-Fiストリーミングに加えて、Bluetooth 5.0であらゆるデバイスと接続することができる。Apple(アップル)製デバイスとWi-Fi接続するためのAirPlay 2にも対応しており、箱から取り出して電源を入れればSpotify Connectにもすぐにつながる。内蔵のバッテリーは、フル充電で最大10時間の再生が可能で、スリープ状態のスタンバイモードでは最大10日間保持される。

デザインと性能

本機はSonosからこれまでに発売されたスピーカーの中で最も小型の製品だが、このカテゴリーのデバイスとしては、その小ささは間違いなく大きなプラス要素だ。全体のサイズはレッドブルの缶を少し高くしたような感じといえば、携行性の高さがおわかりいただけると思う。Sonos初のバッテリー内蔵ポータブルスピーカーだったSonos Move(ソノス・ムーブ)と違って、Roamはバッグに入れて本当にどこにでも持ち運べるように設計されていることが感じられる。

小さなサイズにもかかわらず、Sonos Roamは迫力のあるサウンドを発する。おそらく、このサイズのポータブルスピーカーとしては、筆者がこれまで聞いた中でベストだ。その内部にはデュアルアンプ、ツイーター、そしてSonosが独自開発した楕円形ミッドウーファーが詰め込まれており、通常の小型スピーカーでは得られない低音と中音を忠実に再現する。Roamはそのサイズから予想するよりかなり大きな音を出すことができるが、それと同時に音質はクリアで歪みのない状態を維持する。

Roamの優れた音質を生み出す鍵の1つとなっているのが、Sonosの自動チューニング技術「Trueplay」だ。これは周囲の環境に合わせて音質を積極的かつ継続的に調整する機能で、これを作動させるにはマイクを有効にする必要があるが、ほとんどの設定でオンにしておく価値がある。Wi-FiだけでなくBluetoothでストリーミングする際にも利用でき、サウンドに大きな違いをもたらす。この機能は、スピーカーの向きが水平から垂直に変わったときの調整にも役立つため、このサイズと価格帯の他のスピーカーと比較して、Roamが優れている理由の1つとなっている。

この価格であれば、Roamは音質だけでも勝負できるが、Sonosシステムに特化した機能を追加することで、真のカテゴリーリーダーになることができた。例えばRoamは、自宅システムに接続してSonosアプリ経由のWi-Fiストリーミングに備えた状態のまま、バッテリーを保持するスタンバイモードに移行できる(これは便利だ。電源ボタンを5秒間押し続けると、本当の意味での電源オフになり、さらに長くバッテリー残量を維持できるので、旅行の際などスピーカーを使用しない時にはそうした方がいい)。

Roamの驚くべき機能の1つに、再生 / 一時停止ボタンを長押しすると、聴いていた音楽をシステム内の最寄りのSonosスピーカーに受け渡すハンドオフ機能がある。まるで魔法のようなこの機能は、Roamをポケットに入れて家の中を歩き回ったり、庭で雑用をするときに優れた能力を発揮する。

結論

Sonosは、旅行に適したポータブルスピーカーを初めて発売するまでに長い時間を費やした。しかし、その長い時間を賢く使ったことは明らかだ。Sonos Roamは、200ドル(約2万2000円)以下で購入できるポータブルスピーカーの中で、最も考え抜かれたデザインと豊富な機能、そして最高のサウンドを備えている(さらに、多くのもっと高価な製品と比べても優れている)。たとえ自宅にSonosシステムを持っていなくても、ポータブルで頑丈なBluetoothスピーカーを探しているのであれば、この製品は選ぶ価値がある。もし、あなたがすでにSonosユーザーであるのなら、さらにその価値は増すだろう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:スマートスピーカースピーカーオーディオSonosAirPlayレビュー

画像クレジット:Darrell Etherington

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

2021年フォルクスワーゲンID. 4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

かつては電気自動車の分野において素人だったVolkswagen(フォルクスワーゲン)が今、その未来をテクノロジーに賭けている。3万3995ドル(約370万2700円、連邦政府または州による補助金の適用前の価格)から入手可能な5人乗りフル電動クロスオーバーである新しいフォルクスワーゲンID.4は、EVを主力製品にしようとするフォルクスワーゲンが初めてグローバル市場を目指して取り組んだ成果であり、2050年までにカーボンニュートラルを実現するというさらに大きな目標への一歩でもある。

結論から言えば、VW ID.4は、バランスよく融合されたテクノロジー・快適性・デザインをより手頃な価格で提供しており、Tesla Model Y(テスラ・モデルY)のような手頃な価格帯のモデルが少ないために空白地帯が残っている市場の一部を攻略しようと狙っている。VW ID.4のテクノロジーは堅実なもので、現実離れしすぎてクロスオーバーの平均的な購入者がしり込みするということはないが、1つ問題がある。充電拠点が不足しているために、他社の充電ステーションを見つけてそこに行かなければならないのだが、それがかなり面倒で、手間がかかるのだ。

VWの製品担当シニアマネージャーであるMark Gillies(マーク・ギリース)氏はTechCrunchのインタビューに対し「当社は、富裕層だけでなく、他の何百万人もの人々にも乗ってもらえる大衆向けの電気自動車メーカーになりたいと思っています」と述べた。

その言葉に偽りはないだろうが、ちょっとした問題がいくつかある。例えば、インフォテインメントシステムの反応が少し遅い。これは近日中に予定されているアップデートで改善されるだろう。また、前述のように充電拠点が不足している。もしフォルクスワーゲンがこれらの問題に取り組むことができれば、VW ID.4は活況を呈するクロスオーバー市場にしっかりと食い込む可能性がある。しかし、大衆がガソリン車に近いドライビング体験を提供する完全電動自動車を望み、VW ID.4が「大衆向けのクルマ」になる未来は実現するだろうか。

画像クレジット:Volkswagen

2021年のフォルクスワーゲンID.4クロスオーバーは、VWブランド初のグローバル市場向け全電動自動車だが、VWグループ全体としては以前にも消費者向け電気自動車を発売したことがある。VWグループは、2013年にすでにカリフォルニア州限定のフォルクスワーゲンe-Golf(e-ゴルフ)を発売しており(2020年販売中止)、同社のラグジュアリーパフォーマンスブランドPorsche(ポルシェ)では、2019年に全電動Taycan(タイカン)の販売を開始した。

発売当時のe-Golfは、同社にとってはどちらかというと二次的な位置付けで、カリフォルニア州限定で販売された。カリフォルニア州では電気自動車や充電インフラのインセンティブ、環境規制が比較的しっかりしている。対照的にID.4は「Beetle(ビートル)以来最も重要なフォルクスワーゲンの市場デビュー」の1つであり、全米で販売される予定だ。

際立つテクノロジー

画像クレジット:Volkswagen

ID.4のダッシュボードレイアウトや車内の雰囲気を見ると、フォルクスワーゲンは、ガソリン車のデザインをベースにしたのではなく、テスラを参考にしたようだ。

ID.4のインテリアデザインは、自動運転の未来を感じさせる。ステアリングコラムもインフォテインメントシステムも、完全に無くなる日を思い浮かべることができる。モジュール式カップホルダー、収納スペース、ワイヤレス充電パッドを備えたセンターコンソールも、いずれは改造して乗客スペースを増やし、ID.4のインテリアのフィーリングを今よりもっとオープンで広々としたものにできるかもしれない。

ID.4にはPro(プロ)、Pro S(プロS)、1st Edition(ファーストエディション)の3つのトリムがある。Proには10インチのタッチスクリーンが付属しており、Pro Sと1st Editionでは、12インチのインフォテインメント用タッチスクリーンがダッシュボードの中央にマウントされている。

画像クレジット:Abigail Basset

センタースクリーンの方に手を伸ばすと、システムに近づく手の動きを室内カメラが感知して、スクリーン内のアイコンが反応する。ID.4の車内にある数少ないハードタッチ式ボタンはどれも、どちらかというと医療機器グレードの触覚感知ボタンで、空調やオーディオから、オプションの固定式パノラマガラスルーフの遮光スクリーンの開閉や、ドライビングモード、ドライバーアシスト機能まで、あらゆるものをコントロールできる。コツをつかむまでに少し時間がかかるが、慣れてしまえば、スライダー式ボタンのように機能し、押す強さを少し変えたり、左から右に少しスライドしたりして、音量や温度を調整できる。

「ハロー、I.D.」

フォルクスワーゲンはこの新しいID.4で、ボタンの代わりにハンズフリーの音声コントロールを採用したが、我々が試乗したときは、このシステムはまだベータ版のように感じた。

ドライバーも同乗者も、タッチスクリーンまたは特定の音声コマンドを使って、ID.4の一般的な機能やインフォテインメントの多くを利用できる。「Hello I.D.(ハロー、I.D.)」というと、車内のどの方向から声が発せられたのか(同乗者なのかドライバーなのか)をシステムが感知して、フロントガラス下部の細長いライトが点灯し、その話者が次に発するコマンドに対応する準備ができたことが示される。

画像クレジット:Abigail Basset

今のところ、使えるコマンドはかなり限られており、キーフレーズ(「ハロー、I.D.」)を言うか、ハンドルにある音声コントロールボタンを押して起動する必要がある。ナビゲーションコマンドなどの基本的なことに加えて「寒い」とか「ジョークを聞かせて」といったこともいうことができ、ID.4のシステムは、声が発せられた側の温度を上げたり、シートベルトにまつわるジョークを言ったりして反応する。

試乗したのはロサンゼルスやロングビーチの界隈のみだったのだが、システムの反応は他の市販の音声システムと比べてとても遅く、Sirius XM(シリウスXM)のチャンネル変更などの操作で、接続の確保がスムーズにできなかった(特定のチャンネルの数字や名前が見つからない、という音声が繰り返し流れた)。システムが機能しなくなることもよくあり、コマンドを認識できない場合や接続できない場合に最終的に音声コントロールシステムをキャンセルするのにも、約10秒かそれ以上かかった。

反応の遅いナビ

また、ID.4のナビゲーションシステムも少し反応が遅く、精度も良くなかった。それで、元に戻ってGoogle(グーグル)マップやワイヤレスAndroid Auto(アンドロイドオート)システムをナビとして使った。ちなみに、GoogleマップとワイヤレスAndroid Autoは、Apple CarPlay(アップルカープレイ)とともにID.4の全ラインアップに搭載されている。しかし、ID.4に搭載されたナビゲーションシステムには、曲がり角に近づくとフロントガラスに沿った細長いライトの右側または左側が光って、進むべき方向を示してくれるという便利な機能がある。

インフォテインメントの画面は、ちょうど携帯電話かタブレットの画面のようだ。アプリのページやウィンドウをスワイプしていくと、目的のページにたどり着く。残念ながら、反応の遅いネットワーク接続(インフォテインメントシステムでは4G接続のバーが3~5本表示されているのにも関わらず)と、時間のかかる読み込みが相まって、ページをスワイプしているときに時々画面がフリーズし、次のページを読み込んでいるときにページの半分のみが表示されることがあった。

ここで補足説明をしておく。筆者は幸運にも、ロサンゼルスの記者のために用意された試乗用車両のうち複数台について、十分な時間をかけて試乗する機会が3回あったのだが、遅延やフリーズを経験した車両は1台だけであった。フォルクスワーゲンの広報担当者の話では、試乗車のソフトウェアは顧客が受け取る最終バージョンではなく、オーナーに届く前にアップデートされるので、筆者が経験した奇妙なもたつきや音声コマンドの問題は解決されるはずだという。

画像クレジット:Abigail Basset

ID.4には、Car-Net(カーネット)サービスを通じて2021年中にAlexa(アレクサ)の機能も搭載される予定だ。これには、離れた場所からクルマをモニタリングするのに役立つ、シンプルで使いやすいアプリが含まれる。オーナーはこのアプリにログインして、自分のID.4の位置、バッテリー残量、充電状態を確認できる。

VWは、メイン計器パネルや変速レバーの配置を含め、ID.4車内のデザインについて数多くの興味深い選択をしている。通常のクルマのようにこれらのアイテムをダッシュボードやセンターコンソールに取り付けるのではなく、直接ステアリングコラムに取り付けた。ハンドルを動かすと、計器パネルとトランスミッションつまみも一緒に動く。ハンドルに取り付けられた5.3インチの画面上で、スピードや移動方向から、航続距離、走行距離、基本的なナビゲーション情報まで、あらゆる情報が提供される。運転モードの切り替えには、標準的なボタンやシフトレバーではなく、ハンドルの右側にあるひし形のつまみを使う。

ID.4の始動・停止ボタンはコラムの右側のあまり目立たない所にあるが、そのことはあまり問題ではない。クルマを開錠して運転席に座ると、ID.4の電源が入り、運転の準備ができる。シートベルトを外して車から出ると、ID.4の電源が切れる。クルマに友人や家族がいるときにちょっとした用事で外に出る場合などは少し面倒だが、ID.4の乗客は、ドライバーが車内にいなくても、インフォテインメント画面に表示されるコントロール項目を使って、少しの間エアコンや暖房などを続けて使うことができる。

画像クレジット:Abigail Basset

EVへの乗り換え

フォルクスワーゲンは、自社の調査でクロスオーバーオーナーの約30パーセントが電動クロスオーバーを検討することがわかった、と述べている。ID.4が参入するのは、トヨタRAV4やホンダCR-Vなど、ガソリン車やハイブリッド車の超人気モデルがひしめく競争の激しいクロスオーバー市場だ。フォルクスワーゲンは、自社の調査に基づいて、消費者はまったく航続距離の心配をしないはずだと述べている。ほとんどのクロスオーバーオーナーの走行距離は1日あたり約60マイル(約97キロメートル)で、バッテリーシステムの航続距離はEPA推定で約250マイル(約402キロメートル)だからだ。ID.4は、125キロワットで、5パーセントから80パーセントまで38分で充電できる。

家でのフル充電には約7.5時間かかると推定されているが、外出時の場合、フォルクスワーゲンはID.4のオーナーに、最初の3年間はElectrify America(エレクトリファイ・アメリカ)のDC急速充電器を無料・無制限で使える特典を提供している。良い話だが、少し補足説明が必要だ。フォルクスワーゲンは、ほとんどの人が通常の住宅電源で一晩充電すると予測していると述べており、オーナーが外出先で公共の充電ステーションを使う頻度はそれほど高くないと同社が予測していることは明らかである。なぜなら、少なくともID.4の発売時点では、利用可能な充電ステーションをスムーズに見つけることは難しいからだ。

画像クレジット:Volkswagen

エレクトリファイ・アメリカはVWの子会社だが、その営業体制はフォルクスワーゲンとは完全に切り離されている。エレクトリファイ・アメリカは、全国で550の充電ステーションと2400を超えるDC急速充電器を運営しており、ID.4の車載ナビでも「充電ステーション」を検索できるが、ナビには近くの充電ステーションがすべて表示され、どれがオンラインで利用可能かはわからない。オンラインで利用可能なエレクトリファイ・アメリカの特定の充電器を見つけるために、オーナーは携帯電話を取り出して、エレクトリファイ・アメリカのアプリを開く必要がある。それから、特定の充電器の位置情報をAndroid AutoやApple CarPlayに送ってナビゲートできる。残念ながら、現時点では、エレクトリファイ・アメリカのアプリはAndroid Autoに表示されない。

このプロセスはかなり面倒で、充電ステーションに向かう前に安全に終わらせるには、オーナーはクルマを路肩に止める必要がある。少なくとも現時点ではそうだ。フォルクスワーゲンは、2021年中に実現する無線アップデートによって、エレクトリファイ・アメリカのステーションと車載ナビがもっとシームレスに統合されると述べている。

朗報がある。Pro Sモデルと1st EditionモデルのEPA推定換算燃費は、市街地走行で104 MPGe(ガソリン換算でリッターあたり約44キロメートル)、幹線道路走行で89 MPGe(同約38キロメートル)、市街地走行と幹線道路走行の組み合わせで97 MPGe(同約41キロメートル)である。

ID.4の際立った特徴の1つは、運転方法だ。ID.4のトランスミッションモードには、Bモードつまりブレーキモードが含まれている。これはどの電気自動車にもある、ことの他便利な設定で、1つのペダルで運転ができる。ブレーキから足を放すと、ID.4は少しスピードダウンし、電気を再生してバッテリーに送り返す。これは、交通渋滞にはまったときに真価を発揮する優れた機能で、フォルクスワーゲンは意図的に、ワンペダル運転を他の電気自動車ほど挑戦的なチューニングにはしていない。初めて電気自動車のオーナーになる人が馴染みやすいようにするためだ。

路上では、ID.4は安定感があり、見かけほど大きくは感じない。俊敏だが、出足が速すぎるわけではなく(VWは0~97キロメートル毎時のタイムを公表していない)、手に汗握るということはない。確かに、タイヤから煙を出して走ったり、ロケットのように駆け抜けるクルマではない。

かなり丸みを帯びた形をしているので、路上でスピードを出すとわずかに風切り音がするが、乗り心地は快適で安定感がある。時速32キロメートルを下回るスピードでは(バックにしたときも)、あの特徴的な電気自動車の音を出して歩行者に注意を促す。ウィンドウが閉まっていると車内では気づきにくいが、ガレージで車の手入れをしている隣人のそばを通ると、きっと家に着いたときに「宇宙船のような音がするクルマを運転していたのはあなたですか」と尋ねるメッセージが届くかもしれない。

ADAS(先進運転支援システム)の形式と機能

画像クレジット:Abigail Basset

VWのTravel Assist(トラベル・アシスト)は、同社のレベル2自動運転システムのブランド名である。このシステムは時速0~153キロメートルの範囲で機能する。Travel Assistは、適応可能なクルーズコントロールと車線維持システムの両方を使って、前方の道路と他車に追従する。オートバイが突然車線に入ってくれば、計器画面上でオートバイの画像が車の直前に表示される。そのオートバイがランダムに急ブレーキをかける場合、ID.4はそれに対応して自動的にブレーキをかける。前方の交通が停止した場合、ID.4のTravel Assistは流れが再開するまで待機する。Travel Assistは、交通の動きに対する人間の反応に非常に近い反応を示す。異常に長く待って車間距離が開きすぎる(車列が間延びする原因になる)ことも、加速しすぎることもない。

このシステムは、ひどい交通状況での長時間運転を耐えやすいものにしてくれる。筆者は、ラッシュの時間にロサンゼルスの405号線で激しい渋滞にはまり、通勤に1時間かかったが、その間も、システムを稼働させ続けるために静電容量方式のハンドルに軽く手を置いておくだけでよかった。

スケートボード型パワートレイン

VW ID.4には、MEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブマトリックス)と呼ばれる新しいスケートボード型プラットフォームが採用されており、201馬力、310ニュートンメートルのトルクを発生するAC永久磁石同期モーターがクルマの後部、後軸の上に搭載されている。これは旧型ビートルによく似ている。発売時点では後輪駆動モデルしかないが、2021年の終わりまでには302馬力の四輪駆動モデルが発売される予定だ。

フォルクスワーゲンは、ID.4のバッテリーをパナソニックから購入し、82キロワット時、12モジュール、288パウチセルのバッテリーパックを中国とドイツの自社工場で組み立てる。間もなく米国の工場で生産が始まる予定で、電気モーターもフォルクスワーゲンが自前で作る。

画像クレジット:Volkswagen

すべてが詰まったVW ID.4によって、電気自動車は、Jaguar I-Pace(ジャガー・Iペース)、Tesla Model Y、Polestar(ポールスター)、Audi e-tron(アウディ・eトロン)など、高価でラグジュアリーな全電動クロスオーバーを買う余裕のないクロスオーバー購入希望者層にも手の届きやすいものになる。

さらに、VW ID.4には7500ドル(約81万6000円)もの割戻金が支払われる可能性を考えると、ホンダCR-VやトヨタRAV4をはじめとする人気の高いガソリン車クロスオーバーにも十分対抗できる。VW ID.4が真に際立っているのは、先進のテクノロジーと手頃な価格が、航続距離を心配する必要のない魅力的なEVの中で融合している点である。VW ID.4は「大衆向けのクルマ」になるだろうか。その答えが出るまで、今しばらく見守ることにしよう。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenレビュー電気自動車

画像クレジット:Volkswagen

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

Amazon Echo Show 10レビュー、「回転するスクリーン」モーション機能は無効化していい

新しいスマートホームデバイスが登場するたびに、新たな疑問が湧く。利便性を得るためにはプライバシー、セキュリティ、そして他には何を諦めればいいのかという疑問だ。新製品を自宅に導入し、こうした話題を持ち出して評価するのは、アンチテクノロジー派だからというわけではない。

筆者について言えば、自宅のスマートホームテクノロジーは大したことはない。大型のスマートスピーカーを2台と、もう1つ小型のスマートスピーカーを持っているが、主に、各部屋に音楽をストリーミング配信するのにネットワーク接続が便利なためだ。安心のために、インターネットに接続された煙感知器を使用していて、以前長期間家を離れていた頃は火事になっていないことを確認していた。それから、スマートライトもいくつか使用している。理由は言うまでもないだろう。

Google(グーグル)がファーストパーティーのスマートスクリーンであるGoogle Home Hub(現在のGoogle Nest Hub)を発表した時、カメラを搭載していないことは賢明な判断だと思った。もちろん、同社は大型のMaxモデルにカメラを搭載しているため、望めばカメラのオプションはある。こうした製品の大半にとって、ビデオカメラはあって当たり前の機能だ。そして当然のことながら、新しいEcho Show 10(エコーショー10)のようなスマートスクリーンは、仕事と家庭の境界がかなり曖昧になってきている多くの人のために、電話会議の機能も備えている。

画像クレジット:Brian Heater

その点、Amazon(アマゾン)はよくわかっているようだ。デバイスの上部に大きな物理的な目隠しのボタンを追加している。ボタンを右にスライドさせると、右上のカメラは白いレンズカバーで覆われる。黒いスクリーンフレームとはコントラストになるため、離れたところからでもカメラが隠されていることが簡単にわかる。カメラを覆うと「カメラオフ / モーション機能無効」といったポップアップ通知が表示される。

この「モーション」とは、アマゾンの最新Echo Showの代表的な機能である回転するスクリーンのことだ。同社は、この新しいテクノロジーをこのカテゴリーでのゲームチェンジャーとして位置づけている。正確で静かなモーション機能を実装したことは良い仕事と言えるが、一方でこの追加機能は、間違いなくプライバシーの問題を再燃させるだろう。

画像クレジット:Brian Heater

周囲に溶け込むようなホームデバイスを作るというコンセプトは、この機能には当てはまらない。Echoは、人物追跡を使用して、ディスプレイが常にユーザーの方を向いているようにするとともに、ユーザーの意識をEcho自体にも向けさせる。デバイスが人物追跡に画像処理とAIを使用していることに薄々気づき、なんとなく理解していても、実際のところ大抵は気にならなくなってしまうだろう。どのみち、今ではほとんどすべてのものにカメラがついている。そういったデバイスはもはや、日常的に使用しているソーシャルメディアやサービスの一部だ。しかし、デバイスが部屋の中にいるユーザーの動きに物理的に追従すれば、ユーザーはこのデバイスを意識せざるを得ない。

数日間Echo Showを使用した限りでは、この機能を必要と感じたことはあまりなく、ギョっとさせられたことさえある。机の上で、この記事を執筆しているパソコンと並べてEcho Showを置いているが、この機能は普段無効にしている。そのうち慣れるものかもしれないが、この機能を使う時は比較的限られているし、必要ならば手でディスプレイをこちらに向けて、スクリーンの角度を調節すればいいので、固定した状態で使おうと思っている。スクリーンの調整はいつもしていることだ。何の問題もない。

アマゾンは、デフォルトでスクリーンをどの方向に向けておきたいか、左右にはそれぞれどの程度回転させたいかなど、セットアップの過程でこの機能についてひと通りの説明と設定の機会を提供している。留意すべきことは、Echo Showのシステムは、ユーザーが設定スライダーで調節するまで、実際に何が「真っすぐ」に相当するのか認識していないということだ。この設定は後からでも調節できる。「モーション設定」オプションもある。このオプションでは、ユーザーを追跡させて使うアプリケーションを制限したり、音声で確認しないとモーション機能を使用できないようにしたり、またはこの機能を完全に無効にしたりすることができる。

関連記事:アマゾンの新しいEcho Show 10は利用者の動きをカメラで追跡する

もちろん、筆者は使用していない間はカメラのカバーを閉じておきたい性分なので、このカバーはなかなかいい具合だ。カメラが覆われた状態で、デバイスのモーション機能を作動させることはできない。デバイスは追いかけている対象を視認しておく必要があるからだ。スクリーンのモーション機能には、カメラを無効にし忘れたことを気づかせてくれるという、思いがけない副次的効果があることも付け加えておく。

アマゾンは当然のことながら、そしてありがたいことに、Echo Show 10の発表にともないプライバシーについても言及している。製品ページには「プライバシー」について8つの記載事項があるが、以下はそのキーメッセージだ。

マイク / カメラのオン / オフボタンや内蔵カメラを覆うためのカメラカバーなど、アマゾンは、何重ものプライバシー保護対策を用いてAlexa(アレクサ)およびEchoデバイスを設計しています。モーション機能は声やデバイス上、またはAlexaアプリからでも無効にできます。モーション機能を提供するための情報処理はすべてデバイス上でのみ行われるため、取得された画像や映像がクラウドに送信されることはありません。

画像クレジット:Brian Heater

特筆すべきは、追跡機能は顔認識のような類ではなく、人の漠然とした輪郭を使用していることだ。処理に使われる画像は、個人としてはもちろん、通常では人の識別に使われるものではなく、まだらなヒートマップのように見える(ただし、ペットと人間の区別はできる)。特にこの点は、同社にとって政治的な論争を呼ぶ話題となっている。

関連記事:アマゾンが顔認識技術を地方警察には1年間提供しないと表明、FBIへの提供についてはノーコメント

モーション機能は、主にユーザーのストレスを減らすためのものだ。アマゾンは、既存のEcho Showのユーザーが、例えば料理中にキッチンで使う時、デバイスの向きを変えなければならないことを例に挙げている。音声の指向性も、スクリーンの動きに連動する。これは、最近のEchoのモデルで360度オーディオから距離を置く同社の動きと一致している。モーション機能は、デバイスの用途や、どれだけデバイスの周りに人がいるかにより一長一短がある。また、ビデオ通話中のユーザーの動きに追従させるためにも使用できる(競合企業がズームとトリミングを組み合わせて実現している機能だ)。

アマゾンは、スマートスピーカーの「スピーカー」の部分を重視し、最近の世代のデバイスのオーディオを改善するために苦労していた。新しいEcho Showは確かにその恩恵を受けている。筆者はメインのサウンドシステムとしては使わないだろうが、机の上に鎮座するこのデバイスは、前面がスクリーンに覆い隠されていても、サイズのわりにはすばらしい豊潤なサウンドを提供してくれる。

10.1インチのスクリーンも手頃なサイズだ。筆者はテレビやラップトップの代わりとしてこのデバイスを使うことはないだろうが、動画を手早く観るにはちょうど良いサイズだ。YouTube(ユーチューブ)はこのフォームファクターに完璧にフィットする短尺動画で市場を独占しているので、アマゾンがグーグルとここで提携できないのは残念だ(その気になれば、内蔵ブラウザを介してYouTubeにアクセスすることもできるが、それでは到底エレガントなソリューションとは言えない)。

画像クレジット:Brian Heater

アマゾンのPrime Video(プライムビデオ)は確かに良い長編のコンテンツやシリーズ物のシェアを持っている(大量の駄作も含まれているが、時にはそれがおもしろかったりする)。しかし、アマゾンが最も得意とするところは、サードパーティーと提携し、自社の製品を強化することだ。そして、それはアマゾンがEchoでのエクスペリエンスを向上させてきたもう1つの手法でもある。動画の面ではNetflix(ネットフリックス)とHulu(フールー)がデバイス上で利用できるようになり、音楽の面ではApple Music(アップルミュージック)とSpotify(スポティファイ)が追加された。

追加されるとうれしいサードパーティー製のアプリはまだいくつかあるが、これらのラインナップはかなり堅実な出発点だ。いうまでもなく、スポティファイのようなサービスは音楽再生のデフォルトとして設定できる。スポティファイに対応していることで、かなり使い勝手が良くなる。正直なところ、Amazon Music(アマゾンミュージック)は、現時点ではプライムビデオほど魅力のあるサービスとは言えないからだ。そして、スポティファイのような使い勝手を良くしてくれる追加サービスは他にもある。

ソフトウェアの観点から見て間違いなく最も魅力的な追加サービスであるZoom(ズーム)は、後日サポートされる。今のところ、通話は他のAlexaデバイスとSkype(スカイプ)に限定されている。ズームや他のサードパーティー製の電話会議ソフトウェアには、特に、前述した家庭と仕事の境界の曖昧さも手伝って、ウェブ会議ツールの新境地を切り拓くチャンスがある。

実際のところ、現在筆者の机の上に陣取るEcho Showは、パソコンで仕事をしながら通話をするのに最適だ。Echo Showの導入については、用心すべき点もあるものの、楽観的に捉えている。少なくとも、13メガピクセルのカメラを定期的に活用するための妥当な理由ぐらいは思いつくだろう。

画像クレジット:Brian Heater

差し当たって、カメラとスクリーンのモーション機能の両方を活かすのにふさわしい使用例は、簡易的な防犯カメラだろう。防犯カメラは「近日リリース予定」の機能の1つであり、実現するにはGuard Plus(ガードプラス)に加入する必要がある。ガードプラスを使用することでEcho Showにスマートセキュリティカメラの役目も果たさせ、外出時にジオフェンスを設定できる。つまり、留守中の家に誰かがいることが検出された場合、Echo Showはアラートを送信する。

2021年2月には、アマゾンが壁かけ型のスマートホームハブに取り組んでいるという噂が流れている。基本的に、さまざまなコネクテッドデバイスのためにAlexa対応のタッチスクリーンコントロールとして機能する、そのフォームファクターは確かに理に適っている。今のところ、Echo ShowとAlexaモバイルアプリの間に割って入る余地はほとんどないが、確かにまあ、壁かけ型のスマートホームハブのようなデバイスがあれば、空間によりプレミアムな雰囲気を醸し出すことができるだろう。

適切に配置されたEcho Showは、多くの人のニーズに応えてくれるだろう。実際、Echo Showは筆者のワンベッドルームのアパートで良い仕事をしている。音声やタッチで照明をコントロールすることができ、当然のことながらスクリーンでは、アマゾンが販売するRing(リング)などのセキュリティカメラからの映像を監視できる。リングのような付加的なサービスにより、スマートスクリーンのカテゴリーは極めて魅力的で機能性に優れたものとなってきた。

Echo Show 10は249ドル(日本では税込2万9980円)で、2018年のEcho Showよりも20ドル(約2200円)高い。新しい機械的な回転機構がこの増額にどの程度影響しているか推し量るのは難しい。しかし、アマゾンはモーション機能がない安いモデルも提供している。筆者なら上に概説した理由により、ほぼ確実にこのモデルを選ぶ。繰り返すが、誰もが筆者と同じ不安を抱くとは限らない。

全体的に見て、これはShowファミリーへのよく練られたすばらしい追加モデルだ。そして筆者について言えば、従来通り自分で向きを変えながらEcho Showを使っていこうと思う。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AmazonレビュースマートディスプレイEcho Show 10

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

オンライン会話の気疲れを減らすビデオコミュニケーションツール「Around」

コロナ禍でオンラインコミュニケーションでのコミュニケーションが増えた。プライベートでも「Zoom飲み」なども行われ、広く利用されているが、その一方で「Zoom疲れ」という言葉も生まれている。オンラインとはいえ、お互いに顔を表示させるコミュニケーションは気疲れしてしまうことが多いものだ。現在、Clubhouseといった音声のみのボイスチャットも人気だが、顔を映し出しながらも気疲れしにくいビデオコミュニケーションツール「Around」にも注目が集まっている。

Aroundは、2021年に行われたシリーズAでWing、Forerunner VenturesおよびSlack Fundから1000万ドル(約10億9000万円)、総額1520万ドル(約16億6000万円)を調達した。CEOであるDominik Zane(ドミニク・ゼーン)氏のブログによれば、複数人が遠隔で共有ドキュメントをわかりやすく作成、編集、管理できることで人気のMiroNotionがそうであるように、コミュニケーションについても、シームレスで同時接続的にしたいと考えているという。また同社自体、米国とヨーロッパに拠点を置くリモートチームであり、自らそのコンセプトを体現しようとしている。

AroundはGoogle、Slack、Appleのアカウントまたはメールアドレスでサインアップでき、パソコンで利用可能(MacOSとWindowsに対応済み、Linuxは追って対応)だ。アプリも用意されており、Google Chromeもサポートしている。モバイル版も今後リリース予定とのこと。ちなみにSlackと連携しておくと、Slackでコマンドを打つだけで起動できる。

顔は見えても気疲れが少ない

自社ホームページでも「創造性を阻害する疲労感を減らそう」というキャッチコピーを掲げるAroundだが、そのツールは顔を映しながらも気疲せずに会話できる工夫を盛り込んだ設計になっている。

まず特徴的なのは、基本的に映し出されるのはユーザーの顔だけで、表示範囲が非常に狭い点だ。Clubhouseのアイコンのように小さな丸に囲まれて顔のみ表示されるので、散らかった部屋、膝に乗ってきた猫、話しかけてくる子供たちなどは映り込まない。また、Instagramのように簡単にカラートーンも変更できるため、起きぬけでメイクをしていなかったとしても、フィルタを変えてしまえばそれもわからない。

小さな丸い切り抜きであれば映り込む背景が絞られ、どんな状況下からもミーティングに参加しやすい(ホームページのスクリーンショット)

また、参加者の顔が一覧表示されるタイプのビデオ会議ツールの場合、それらが共有中の資料や他作業のウインドウの邪魔になることもあるが、Aroundでは丸い顔アイコンのみが表示され、かつその大きさも簡単に変えられるため、煩わしさもない。

作業画面を邪魔せず、顔も確認できる(ホームページのスクリーンショット)

仕事でも使える必要十分な機能

Aroundには、画面共有の他に、ノート機能や共有画像をストックしておける機能がある。画像ストック機能は「Image Sharing」メニューから利用可能で、都度画面共有を切り替えたり、過去のチャットを遡って共有されたリンクを探したりしなくても、会話の中で登場した資料や画像をすぐに一覧で確認できる。

顔の表示方法や機能の切り替えがメニュー化されていてスイッチしやすい

ノート機能は「Notes」メニューから利用でき、従来、ZoomやWebEXで使ってきたチャット機能よりも長い文章を表示できるため、会話の流れを追いやすい。全員にメモを見せながら会話の流れをテキスト化することもでき、テレカンが終わったら自動メールでその内容を送ってくれる(今まではGoogle DocksかWordをわざわざ立ち上げ、Zoomで画面共有しなければならなかったあの作業だ)。

マイクは全員そのままで

また、これまでのビデオコミュニケーションツールでは、同じ部屋にいる者が同じビデオ会議に参加するとハウリングが発生してしまう。そのため発言時以外はミュートにしたり、1台のPCを複数人で使ったり、外づけのスピーカーを用意する、もしくはわざわざ別の部屋に分かれて参加するといった手間があった。

しかしAroundは、近くで同時にマイクオンにしていてもハウリングを起こさない(EchoTerminatorというソフトウェアを特許出願中とのこと)。また、人間の声とその他の声を識別し、私たちを悩ませてきた消防車のサイレンや犬の吠える声も抑えてくれる。

加えて、昨今問題視されがちなユーザーの個人情報やチャット、音声データの保有方法についても配慮されている。サービス提供者がそれらを保有し続けていることに対する気持ち悪さや、サイバー攻撃による個人情報流出を懸念する人も少なくないが、同社の公式FAQによれば、ビデオのストリームのみユーザーに転送し、処理はユーザー自身のデバイスで実行されるとのことだ。

Aroundは現在、パブリックベータ版で無料で利用できる。2021年後半にチームライセンスプランについて公表するとのこと。現状でも一度に30人まで参加可能であり、ベータ版でも十分に活用できそうだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Aroundビデオチャットレビュー

アストンマーティンDBXは老舗ブランドの野心と苦心が共存する高級SUV

Aston Martin(アストンマーティン)DBXは同ブランド初のSUVであり、英国を象徴する高級車メーカーにとって、これ以上ないほど大きな賭けだ。

これまでのアストン車と同様、DBXは客観的に見て美しいクルマだ。その彫刻的なフォルムは、大胆で伸びやかなプロポーションを持ち、私立学校の送迎に並ぶSUVの群れの中で際立つだろう。美しさ、性能、個性を高い次元で表現した豪華なデザインだ。超高級SUVセグメントでは遅れて発売されたクルマでもあり、他社の同種のモデルと比べると、車内テクノロジーや燃費の良さには欠ける。2020年夏に海外で発売されたDBXは、米国では2020年後半に17万6900ドル(約1920万円)からという価格で販売が始まった(日本での車両価格は2299万5000円から)。アストンマーティンが用意した我々の試乗車は、オプション満載で配送料込の価格は20万5186ドル(約2220万円)にもなる。

それは高級車購入者の予算を巡って2種類のクルマが争う時代の物語と言ってもいいだろう。モビリティの分野で電動化が急速に進みつつあるのと同時に、SUVの需要は急増し続けている。アストンマーティンは、2023年までにその販売台数を1万4000台に増やすという目標を掲げていたが、これは小規模なブテックブランドとしては大幅な増加だ。しかし、新たな経営陣の下、「プロジェクト・ホライゾン」と呼ばれる組織再編戦略の一環として、この目標を1万台にまで後退させることになった。

新型コロナウイルスの影響で売上を大きく落とした年の後、新たな筆頭株主と新CEOが就任した。DBXの運命がどのように決定づけられるかは不明だが、アストンマーティンの将来はこのクルマの成功に掛かっている。

同社によると、2020年に販売されたDBXは1516台と、予想を上回ったという。本格生産の初年度となる2021年には、同社の世界販売台数のうち40%から60%を、DBXが占めるようになると同社は見ている。

二車物語

エンジニアリングと車内体験の両方において、クラス最高の技術をいかに構築するかということは、専門知識を貸してくれる大規模な自動車メーカーの傘下にない小規模なスーパーカーメーカーにとって悩みの種となっている。アストンは2013年にMercedes-Benz AG(メルセデス・ベンツAG)と、エンジンと電気アーキテクチャの開発で提携を結ぶことで、この問題を解決しようとした。2020年夏までメルセデス・ベンツのAMG部門を率いていたTobias Moers(トビアス・ムアース)氏がアストンの新CEOに就任したことは、アストンが将来に向けてダイムラーの技術的パフォーマンスをいかに重要視しているかの現れだ。

アストンマーティンは最近F1レースに復帰したばかりだが、そのモータースポーツにおける長い伝統を反映し、DBXにはスポーツカー並みのパワーが与えられている。メルセデスAMGから供給される4.0リッターV8ツインターボ・エンジンは最高出力550psと最大トルク700Nmを発揮し、停止状態から100km/hの速度まで4.5秒で加速する。

DBXのインテリアは、乗員が移動のための時間を過ごす場所として(あるいは単に籠もる場所としても)総合的な感覚で高得点が付けられる。すべてがBridge of Weir(ブリッジ・オブ・ワイル)製レザーで包まれ、後部座席の同乗者も伸び伸びと快適に座っていられる余裕がある。スキーブーツウォーマーを備えたスノーパックなど、気の利いたオプションも用意されている。

画像クレジット:Aston Martin

インテリアに関するもう半分の物語は、超高級車セグメントにおける車載技術の役割についてより現実的な疑問を浮かび上がらせ、アストンのジレンマの核心に迫る。つまり、アストンは常に、その技術供給元であるメルセデスの進歩に比べると、少なくとも1世代は遅れるだろうということだ。DBXは18万ドルからという価格のクルマだが、最新モデルならその半値で買えるクルマでも、より高度な車載機能を備えているだろう。

ユーザー体験

アストンマーティンDBXには、メルセデスが1998年に導入し、2014年に改良を受け、2016年に再びアップデートされたインフォテインメントシステム「COMAND」が搭載されている。技術面における数年はほとんど一生に値する。

問題は、ヘッドユニットを交換すればいいというような単純なことではないと、アストンマーティンの広報を担当するNathan Hoyt(ネイサン・ホイト)氏はTechCrunchに語った。

「車両全体の電気的アーキテクチャがきちんと作動するように、すべて見直さなければならないのです」と、同氏はいう。「私たちが以前発表したメルセデスとアストンマーティンの間のより緊密な提携は、私たちが当面の間はメルセデス・ベンツの技術を使用し続けることを意味しています」。

アストンマーティンが古いシステムを押し付けられている間、メルセデス・ベンツはより技術的に高度な新しいインフォテイメントシステムである「MBUX」に移行した。2018年に導入されたこのシステムは、すでにアップデートも受けている。いつになればMBUXがアストンマーティンのクルマにも搭載されるのかということについては、まだ何も発表されていない。

実用面で言えば、それはタッチスクリーンを持たない2021年の高級車ということになる。代わりにあるものは、クラシックと呼ぶにも無理がある(そう呼べるものなら、おそらくまた別な価値があるはずだ)あまりにも不格好なプラスチックの塊だ。2014年頃のMacのキーボードを思い出して欲しい。DBXにはApple CarPlay(カープレイ)が標準装備されているが、Android Auto(アンドロイドオート)には対応していない。

画像クレジット:Aston Martin

洗練された金属製のノブなどではなく、単なるプラスチック製のボタンが、天然木を使った高級感のあるインテリアの他の部分と調和が取れていない。エアベントやギアセレクターにもプラスチックが使われている。

公平に考えれば、何でもかんでもタッチスクリーンを使って操作するというのは、車内テクノロジーの最良の解決策というわけではない。多くの自動車メーカーのダッシュボードには、直感的に操作できずイライラするような触覚テクノロジーがあまりにも多く使われている。

画像クレジット:Aston Martin

傑出したテクノロジー

アストンはDBXのインテリアにおいて、従来のメルセデスのシステムとの差別化を図るために、できる限りの仕事をしてきた。そのクリエイティブな発想は、センタースタック上の10.2インチディスプレイに表示されるDBXのために作られた巧みなグラフィックに現れている。例えば、アダプティブクルーズコントロールの作動を示すアイコンとして使用されているのは、 James Bond(ジェームズ・ボンド)の愛車であるDB5だ。

アストンはテクノロジーによる利点を、先進性とそして全体のムードを高めるために利用した。

アンビエント照明は、2つのゾーンで64とおりの異なる色に変えられる。出力790ワットの専用サウンドシステムは、13個のスピーカーと密閉型サブウーファーを搭載し、ロードノイズを打ち消すノイズ補正技術も採用されている。その快適なキャビンとスピーカーの迫力ある音は、誰もが映画館へ足を運んでいた頃のハイエンドシアターにいる気分を運転しながら味わえるし、アストンのオーナーであれば、自分だけのホームシアターに逃げ込むこともできる。

ADAS(先進運転支援システム):形状と機能

DBXに自動運転機能は搭載されていないが、アストンはアダプティブクルーズコントロール、前後パーキングセンサー、車線逸脱警報、レーンキープアシスト、ブラインドスポット警告機能などの安全機能を標準装備することでそれを補っている。

各機能は、前述のプラスチック製ボタンに集約されている。アダプティブクルーズコントロールはステアリングホイールの左側にあり、手元で車間距離と車速を調整できる。レーンキープアシストのボタンは、センターコンソールの右側にある。

センターコンソールに備わるスイッチを操作するためには、ドライバーが一瞬、視線を下に落とさなければならず、その間は道路から目が離れてしまう。車線逸脱警報が作動すると、ダッシュ上のライトが点灯し、ステアリングを微かに振動させ、ドライバーに注意を促す。その他のスイッチは、ドライブモードやエアサスペンションの設定を変更するためのものだ。

キャラクター研究

米国では、アストンのイメージといえばジェームズ・ボンドに限定されるかもしれないが、英国の自動車文化の愛好家にとって、アストンは情緒、重厚感、重要性に満ちたブランドだ。私は2010年にイングランドで開催されたアストン100周年記念式典に出席したが、そこでは英国中でブランドの伝統に対する愛が溢れているのを目の当たりにした。

Andy Palmer(アンディ・パーマー)前CEOの下で、アストンは未来を追求してきた。ウェールズにはDBXを生産するための近代的な工場が建設された。しかし、アストンの本質的な魅力の一部は、少数の愛好家に向けた数千台のクルマのために、いくつかの部品がいまだに手作業で作られていることにある。クルマが複雑にコンピューター化されたシステムになるほど、手作業による組み立ては責任が増すことになる。

DBXの進む道は、BMWグループが所有するRolls-Royce Cullinan(ロールス・ロイス・カリナン)や、VW傘下の集団に属するBentley Bentayga(ベントレー・ベンタイガ)、Lamborghini Urus(ランボルギーニ・ウルス)、Porsche Cayenne(ポルシェ・カイエン)のような、6桁(数千万円クラス)の夢のクルマに対し、潜在顧客のドライバーが何を望むか、何を必要とするかにかかっている。あるいはTesla(テスラ)もその中に入るかもしれない。

画像クレジット:Aston Martin

洗練された技術や機能がより重要視されるようになれば、アストンマーティンはどうやって遅れを取り返すかを再考する必要に迫られるだろう。それは例えば、堂々としたクラシックな魅力を倍増させることかもしれないし、あるいは将来追加されるパワートレインを使って、21世紀の自動車メーカーとしてのメッセージを後押しすることかもしれない。後者の可能性が高いと思われる。

既存の契約を元に、2020年にメルセデスと合意した提携拡大によって、アストンマーティンは2027年まで、メルセデスの電気、マイルド / フルハイブリッドのパワートレイン・アーキテクチャを含む幅広い技術を利用できることになっている。

アストンマーティンは最新の決算発表において、ハイブリッドSUVを提供することが同社にとって重要になると指摘している。メルセデスAMGの元CEOで、新たにアストンマーティンのCEOとなったトビアス・ムアース氏は、プラグインハイブリッドのDBXを2024年までに投入すると語った。完全電気自動車も同社の計画に含まれており、こちらは2020年代の中期を目標にしている。

問題はハイブリッドやEV技術の投入に合わせて、アストンマーティンがインフォテインメントシステムに必要なアップグレードを施すことができるかということだ。

数千万円クラスのSUVにもなると、トップの空気は薄い。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Aston Martinレビュー

画像クレジット:Tamara Warren

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(文:Tamara Warren、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

これがTechCrunch編集スタッフが愛用するキーボード

キーボードほどパーソナルなものはあまりない。しかし、リモートワークのガイドでは見過ごされることが多い。こんなに選択肢があるのになぜ標準装備のキーボードを使うのか?本記事ではTechCrunchの編集スタッフが使っているキーボードをご紹介していく。退屈なものも、USキーボード以外のものもある……、そしてどれも少々汚れている。

ホコリやこびりつきやその他汚れ全般についてはご容赦いただきたい。キーボードというものは無作法で掃除がしにくく、それでも私たちはキーボードが写真に耐えられるようできるだけのことはした。私はエアーダスターを2缶使ったが、それでもキーボードは幼稚園の砂場のように見える。

なお、この記事にスポンサードはないし、キーボードが売れてもTechCrunchには何も入らない。記事ただ、自分たちの道具を見せたかっただけだ。

Danny Crichton(ダニー・クライトン)

画像クレジット:Danny Crichton

国境を超えての仕事は過酷だ。言語を超えてはなおさらだ。だから外国語キーボード(私のは韓国語)を使えることは神のめぐみだ。それは、コンピューターを使って20年経った今もキーの位置を知らないかのように雨だれ式にタイプしているからかもししれない。

では、みなさんも外国語キーボードを買うべきか?いえいえとんでもない。とりわけ外国で買うものではない、私がソウルの海外特派員だったときにやったように。なぜなら保証は全世界では通用しないらしいから。もう1つ、私の最後の「スペースホワイト」キーボードの「E」はついに壊れ(運悪く英語のEと同じくらい韓国語のㄷ/ㄸ は頻繁に出てくる)、合衆国内で外国語キーボードの個別キーを特注するようには世界ができていなかった。

そこで私は新しくスペースグレイのキーボードを買った。そしてAppleは、韓国語キーボードのEキーのホワイトの交換品を見つけられなかったので、私にタダでキーボードをくれた、なぜならAppleは親切だから。というわけで、今、私はグレイの韓国語キーボードを2台持っている。1つはデスクの上に、もう1つは私が今タイプしているものをうっかり壊してしまったときのためにクローゼットの中で待っている。外国語キーボードを買ってはいけない。実際、そもそもキーボードを買うべきではない。もちろんライターになるべきではない。Clubhouse(クラブハウス)のルームで叫ぶだけにして、次のポストテキストの世紀に移動しよう。

Devin Coldewey(デヴィン・コールドウェイ)

画像クレジット:Devin Coldewey

私はこのVarmilo (ヴァーミロ)V87M テンキーなしPBTキーキャップ付きCherry(チェリー)赤軸キーボードをつい最近買ったところだ。すばらしくしっかりした感触で非常に心地よくタイプできて、かつて使っていたちゃちなキーボードより重厚な音がする。ただし、メディアキーの配置は気に入らない。

これの前には、漆黒のDucky One前面刻字版を使っていて、そちらのほうがずっと良かった。しかし私はCherry黒軸を注文し、使ってみたら私には合わなかった。少々余分な力が必要で、途中に「引っかかり」のようなものを感じて体が受けつけなかった。それでもDIPスイッチで調整したりメディアキーをプログラミングするのはDIY的感覚で好きだったが、誰にでもお薦めできるものではないことがわかった。

Varmiloの感触と造りを、Duckyのキーキャップや柔軟なカスタマイズとDas Keyboard 4のメディアコントロールやかわいらしいボリュームホイールを全部組み合わせられればいいのだが。しかし今私は、特許が切れて市場が開放されたノンCherryスイッチに惹かれている。誰かスイッチのサンプルを送ってくれ!

Romain Dillet(ロメイン・ディレット)

画像クレジット:Romain Dillet

こちらが私の退屈なAppleキーボード。フランス語バージョンなのでQWERTYキーボードだけの人生を送ってきた人には少々奇妙に見えるだろう。しっかり働き、信頼性も高く、何時間でもタイプしていられる。何よりも重要なのは、存在が気にならず書くことに専念できることだ。

Lucas Matney(ルーカス・マトニー)

画像クレジット:Lucas Matney

AppleがワイヤレスのスペースグレイMagic Keyboard(テンキー付き)を149ドル(日本では税別1万4800円)で売っていて、同じ製品のシルバーが129ドル(税別1万2800円)なのは、企業価値2兆2000万ドル(約213兆6000億円)の会社として少々奇異に感じるが、おそらく私のような世間知らずをだましてダークグレイの色彩に余計な20ドル(約2140円)を払わせている事実こそが、驚くべき成功を収めた理由なのだろう。

ここ数年、Appleは一部ハードウェアのエントリー価格設定が保守的だが、その機器で使うアクセサリーの価格も釣り上げ始めた。他のIT機器とマッチした外部キーボードを欲しいという私の願望はApple以上に状況を語っているが、Tim(ティム・クックCEO)よ、本当に私から20ドル多くもらう必要ある?

Darrell Etherington(ダレル・エザリントン)

画像クレジット:Darrell Etherington

Keychron K3 Ultra-slim(キークロン・K3ウルトラスリム)メカニカルキーボードは、小さな底面積と薄型デザインの恩恵をすべて享受しながら、もっと大きなキーボードの満足感あるタイピングアクションを維持している。ホワイトまたはRGBのバックライトに、Gateron MechanicalまたはKeychron自身のオプティカルスイッチを選べ、タイピング感触のソフトさ、クリック感、抵抗感などの好みに応じてさまざまなオプションがある。

Taylor Hatmaker(テイラー・ハットメーカー)

画像クレジット:Taylor Hatmaker

このキーボードは2021年2月に新しいPCを自作した時に買った。私は仕事では主にAppleキーボードを使い、ゲームにはPS4コントローラーを使うので、このキーボードはあまり使っていない。ところが数週間前、生まれて初めてメインのキーボードにコーヒーをこぼしてしまった。予備に持っていたLogitech K380を使おうとしたが、かなり新しいものであるにもかかわらずいくつかのキーがキーキー音を発したので、頭がおかしくなった。

というわけで、美しいとしかいいようのないレインボーカラーのCooler Master SK622を私の日常キーボードにすることになった。これが初めてのメカニカルキーボードだ!青軸を選んだのは赤軸の感触が好きになれないからだが、この音に慣れるのは少々大変だ。たぶん理想的には茶軸がいいのだろう!でも感触は非常によく、(私のように)タイピングが非常に速いけれども非常に変てこ、なぜなら正しい方法を習ったことがない、という者にとってもすばらしい。

Natasha Lomas(ナターシャ・ロマス)

画像クレジット:Natasha Lomas

仕事で使っている道具について語ることはあまりない……。きれいに掃除していることを除いては。白さは今となってはAppleの望む鮮明さではない。「S」キーの刻字はある理由により少々すり減っている。それ以外、不満はない。私はMBP(MacBook Pro)ノートパソコンのキーボードに依存するのを止めなくてはならなかった。なぜなら欠陥がひどかったからだ(「B」と「N」のキーが効かなかったり、2重にタイプされたりとキーボードルーレットのようだった)。バッテリも十分長持ちする。充電するにはAppleの高すぎるアダプターを探す必要があるが。

不満が1つあった。しばらく使っているとBluetooth接続が不安定になり、CAPS Lockキーを押したとき理由もなくMBPが死のクルクルを始める。キーボードのBluetoothをオフ / オンすると元にもどるようだ。

Matt Burns(マット・バーンズ)

画像クレジット:Matt Burns

これはHappy Hacking Keyboard Professional 2(ハッピーハッキングキーボード・プロフェッショナル2)with a partial set of custom keycaps。そう、小さなキーボードにしては長い名前だ。完璧ではないが、大のお気に入りだ。ご心配なく、テンキーとメディアコントロールもある。ファンクションキー(これがキモ)経由で利用する。

ほとんどのキーボードより長い歴史があるHappy Hacking Keyboardは、元々UNIXプログラマー向けに作られた。私にとって小さなサイズはタイピングに最適で、キーは最新式スイッチのおかげですばらしい感触だ。このキーボードはTopre(東プレ)の静電容量キースイッチを使用し、メカニカルスイッチの感触とメンブレン方式の反応の代さを兼ね備えている。その結果は軽快なクリック音と最初はしっかり最後は柔らかいキータッチだ。

このキーボードには、ワイヤレス接続や静かなキースイッチを採用した新型がいくつかある。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:キーボードレビュー

画像クレジット:Darrell Etherington / Darrell Etherington

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(文:Matt Burns、翻訳:Nob Takahashi / facebook

マインドフルネス入門に最適、コロナ禍の不安解消やClubhouse疲れにも有効な瞑想アプリ「Calm」をレビュー

TechCrunch Japan読者の皆さんの中には、コロナ過で日々が不安で眠れない、もしくは最近大流行のClubhouseにハマりすぎて睡眠不足という人も少なくないのではないだろうか。ストレス軽減方法はいくつかあるが、そんな中でも、「今この瞬間に意識を向ける」という概念であるマインドフルネスは、コロナ禍以前から女性を中心に人気であった。スピリチュアルなものに思われがちな瞑想という言葉だが、マサチューセッツ工科大学のJon Kabat-Zinn教授(ジョン・カバット・ジン教授)などが、医学的にもストレス軽減効果があると発表し始めたことで、瞑想やヨガは日常生活に取り入れられてきている。

今回は、そんな瞑想アプリの1つである「Calm」の日本語版がリリースされたので、その体験記をお届けする。

ASMRから内省ツールまで揃う

カリフォルニア発で、メンタルヘルス業界のユニコーンで資金調達も順調なCalmは、190カ国7カ国語で利用可能。日本語版は2020年12月にリリースされた(Android版iOS版)。利用料金は年間6500円だが、現在7日間の無料版でお試し可能だ。

アプリをインストールすると、最初に目的を聞かれ、これに沿った毎日の内省プログラムを提供してくれる。アカウントはメールアドレス、Facebook連携、Apple ID連携で作成可能だ。

トップ画面では、美しい自然風景とともに、早速ヒーリングミュージックが流れる。フッターメニューは5つで、左の画像はマイページのもの。お気に入りに入れた音楽や、本日の内省タスクが並ぶ。

睡眠メニューを選ぶと中央の画像が表示される。雨の音、火の音、電車の音、猫の声、扇風機や洗濯機の音など、YouTubeでもPVが伸びている聴覚や視覚から刺激を受けることで感じる心地よさを意味する「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」系の音が並ぶ。その他にも心が落ち着くインストゥルメンタル・ミュージックや、ナレーターが30分から60分程度のショートストーリーを読み聞かせしてくれるスリープストーリーという機能がある。英語版アプリでは俳優のMatthew McConaughey(マシュー・マコノヒー)やKate Winslet(ケイト・ウィンスレット)が寝かしつけてくれることが話題になったが、日本語版アプリでは日本語のストーリーが用意されており、映画の吹き替えを担当する声優やナレーターの語りとともに眠りにつくことができる。

各サウンドは、タイマーをつけて、寝付くまでの指定の時間の間流し続けるということもでき、これが睡眠導入として大変効果的だ。バックグラウンド再生も可能なので、スマートフォンをスリープ状態にしても問題ない。

実際に私はCalmを使った初日に音楽の1つを15分タイマーをかけてベッドに入ったが、最近寝付くまでに2時間程度かかっていたところが、音楽の停止もわからないほどあっさりと眠りにつくことができた。

スリープストーリーの機能でも、言語が入っていると、言葉を聴こうと意識してしまい逆に眠れないのではないかと思っていたが、意外と語りかけられる優しい口調に安堵してしまい、話を聞いていたいのに眠ってしまうという感覚になった。

瞑想メニューでは、最初に選んだ「Calmを使う目的」に沿って、抱える課題を解決するためのレクチャーを受けることができる。ストーリーテリング方式で、自然の音をBGMにしながら、講師が穏やかにストレス解消や不安緩和の方法を教えてくれる。こちらは睡眠導入というよりは、日中や寝る前の瞑想状態やヨガの際に用いるもの。一つ15分程度なので目を閉じてヨガやストレッチをしながら学ぶのにぴったりだ。

Calmの特徴は、何と言っても度々自分の状態を問いかけてくれるところにあるだろう。忙しい日々の中では、自分が疲れていることやどういう精神状態にあるかを振り返る機会もなかなかない。寝る前に、メディテーションミュージックをSpotifyを流すだけでは(ましてや広告に意識を遮られながらでは)ダメで、Calmを開く習慣そのものがマインドフルネスの習慣となっていくということが体験できた。

Clubhouseにそろそろ疲れてきたという読者のみなさんは、時には定番の寝落ちではなく、Calmで穏やかな睡眠についてみてはいかがだろうか。

関連記事:コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始

カテゴリー:ヘルステック
タグ:メンタルヘルス レビュー

 

読み取りが最大33%高速化したドキュメントスキャナー「ScanSnap iX1600 / iX1400」実力チェック

PFUはパーソナルドキュメントスキャナー「ScanSnap iX1600」と「同iX1400」を2021年1月19日に発表、1月22日より販売開始した。両製品はScanSnapシリーズ史上最速の毎分40枚の読み取り速度を実現した新機種。iX1600は4.3インチタッチパネル液晶を搭載した「同iX1500」の後継にあたるフラッグシップモデル、iX1400はタッチパネル液晶とWi-Fi機能を省きUSB接続専用とすることで低価格を実現した高コスパモデルだ。

左がiX1600(税込5万2800円)、右がiX1500(税込4万1800円、いずれもPFUダイレクト価格)

スキャナーの最重要スペックの読み取り速度をアップグレード

前述のとおりiX1600はiX1500の後継モデル。今回進化したポイントは、ドキュメントスキャナーで最も重要なスペックである読み取り速度だ。自動解像度モード / ノーマル(150dpi) / ファイン(200dpi) / スーパーファイン(300dpi)で30枚・60面/分から40枚・80面 / 分へと33%、エクセレント(600dpi)で8枚・16面 / 分から10枚・20面 / 分へと25%高速化されている(※解像度はすべてカラー / グレーの場合)。

iX1600とiX1500はこれ以外のスペックは基本的に変わらない。外観、サイズ、重量も同一だ。ただしタッチパネル液晶のデザインが変更され、またiX1500で限定色だったブラックが標準色として用意された。

なお、USBインターフェイスの表記が、iX1600は「USB 3.2 Gen1」、iX1500は「USB 3.1 Gen1」となっているが、これは発売時期による呼称の違い。どちらも通信速度5Gbpsの「USB 3.2 Gen1x1」が採用されており、パフォーマンスに違いはない。

一方、iX1400はスキャナーとしての基本性能はフラッグシップモデルのiX1600と同等。省略されているのは、タッチパネル液晶、Wi-Fi通信機能、添付ソフトの「Kofax Power PDF Standard」「Kofax Power PDF Standard for Mac」。PCやMacにUSBケーブルで直結する必要があり、細かな操作や設定作業は「ScanSnap Home」で行なわなければならないが、マイナス1万円の高コスパが魅力である。

iX1600はタッチパネル液晶、iX1400はScanボタンを操作部に用意。どちらもPCまたはMac用ソフトウェア「ScanSnap Home」から操作できる

背面ではiX1600とiX1400の見分けはつかない

トレーを全開にしたときの奥行きは494mm、高さは293mm

iX1600はタッチパネル液晶のデザインがiX1500から変更。ボタンの配置が整理されたほか、左上のアイコンから接続するデバイスやユーザーを簡単に切り替えられるようになった

Wi-Fi機能非搭載のiX1400はUSBケーブルでPCまたはMacと直結する必要がある

専用ソフトウェア「ScanSnap Home」の記事作成時における最新バージョンは「2.0.20.3」。「フォルダに保存」「メール送信」「プリンタで印刷」画面で、スキャンしたイメージデータを編集する機能などが追加されている

これはiX1600の同梱物一覧。ACアダプター、電源ケーブル、USBケーブル、ガイド、説明書などの基本的な構成は同じ。ただし、iX1400には「Kofax Power PDF Standard」「Kofax Power PDF Standard for Mac」のライセンスは省かれている

iX1600とiX1500のスキャン速度を実測

さて、iX1600は読み取り速度が最大33%高速化されていると謳われているが、実際にどれだけの性能アップを果たしているのだろうか?今回A4サイズのカラーカタログ20枚を使用して、iX1600とiX1600のスキャン速度を比較してみた。

結果は下記のグラフのとおり。スキャンが終了するまでの所要時間はiX1600が31.75秒、iX1500が42.08秒、スキャンデータがPCに保存されるまでの所要時間はiX1600が33.13秒、iX1500が44.73秒となった。実際、読み取り中の動作音や用紙を飲み込む速度も明らかに違う。大量のドキュメントを一気に読み込む際に大きな恩恵を受けられるはずだ。

カラーモードは「自動」、画質設定は「自動」でスキャンを実施。なお、両製品ともにWi-Fi 5(11ac)の無線LANルーター経由で、Windows 10搭載ノートPC(Core i7-11370H)と接続している

iX1600とiX1400のどちらを買うべきか?

iX1600とiX1400のどちらを購入するかは悩ましい選択。使いやすさという点では当然タッチパネル液晶を搭載したiX1600のほうが上。セットアップは画面に手順が表示されるので簡単だし、紙詰まりなどのトラブルが起きたときにも対処方法が画面に表示されるのでわかりやすい。ドキュメントスキャナー初心者にお勧めなのは間違いなくiX1600だ。また、複数ユーザーで共有したり、クラウドサービスと連携して活用したいのならWi-Fi非対応のiX1400は選択肢からはずれる。

しかし筆者は現在iX1500を利用しているが、タッチパネル液晶で操作するのは「Scanボタン」を押すときぐらい。紙資料をどんどんPCに取り込んで、データ化したいだけならiX1400でまったく不足はない。

繰り返しになるが両機種にスキャナーとしての基本性能に違いはない。最新ScanSnapの利便性を最大限に享受したい方、または現時点でどのように活用するか定まっていない方はiX1600、ドキュメントスキャナーをある程度使い込んでおり用途が決まっている方はiX1400を選ぶことをお勧めする。

「名刺・レシートガイド」を使えば、サイズの異なる用紙もまとめてスキャニングできる。確定申告のための膨大なレシートを前に呆然としている方に、iX1600とiX1400が頼もしい相棒となってくれることは間違いない

関連記事:在宅勤務で人気のドキュメントスキャナーScanSnapに新モデルiX1600登場、有線接続で安価なiX1400もラインアップ

カテゴリー:ハードウェア
タグ:PFUレビュースキャナー

(文:ジャイアン鈴木)

ハッセルブラッドX1D II 50Cレビュー、100万円超のレンズキットを持ち人がいない街中へ

放置されたスクールバスに潜り込み、荒廃した廊下に不法侵入し、つかの間の雷雨を避けて、夜遅くまで誰もいないチャイナタウンの通りをさまよった。夏の2週間、私はこの上なく幸せだった。

ニューヨーク市は封鎖されていた。狭いアパートに隔離されていた私は、意気消沈して落ち着きがなかった。何か創造的なことをしたいと強く願っていた。ありがたいことに、レビュー用のHasselblad(ハッセルブラッド)X1D II 50Cが届いたので、スタジオの上司たちの承認を得て、ソーシャルディスタンスを守りながら屋外での撮影に出かけることにした。

花や建物などの日常的な写真を撮るのは、1万ドル(約105万円)超のカメラキットにはもったいないので、代わりに友人と私は楽しくて小さなプロジェクトに参加した。それは、私たちの好きな映画にインスパイアされたポートレートを撮影するというものだ。

画像クレジット:Veanne Cao

マスクと手指消毒液を用意して、X1D II 50Cと80mm F1.9レンズ(被写体に近寄らずクローズアップ撮影するのに最適)を使って、ニューヨークのあまり馴染みのない風景の中でその性能を試してみた。

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最後の写真について面倒に巻き込まれる前に言っておくと、Alex(アレックス)とJason(ジェイソン)はプロのスタントマンで、持っているのは小道具のゴム製の拳銃だ。彼らは香港映画の傑作「Infernal Affairs(インファナル・アフェア)」(スコセッシのリメイクよりずっと良い)のラストシーンを再現している。

このカメラは、いくつかのアップグレード(大型化して反応も改善された背面のタッチディスプレイ、整理されたメニュー、テザリング機能、速くなった起動時間とシャッターレリーズ)を受け、価格と使いやすさの点で、従来より若干親しみやすくなっているもののX1D IIは基本的に先代モデルと変わらない。だから私は、標準的なレビューは省いた。

画像クレジット:Veanne Cao

それは何であり、何でないか

X1Dに関する最も一般的な不満は、オートフォーカスの遅さ、シャッタースピードの遅さ、バッテリーライフの短さだった。X1D IIではこれらの点が改善されているが、それほどではない。私はこのラグを邪魔だと思うよりも、性急でなく落ち着いた撮影スタイルのために脳を切り替えることにした(嬉しい副作用だ)。

X1Dのレビューでも言及したが、最近ではApple(アップル)をはじめとするスマートフォンメーカーが、簡単にすばらしい写真を撮影できるようにしている。そんな手軽さが、日常の平凡さを過剰に捉える文化を生み出した。必要以上にたくさん撮ってしまう。私も同罪だ。私のiPhoneのカメラロールにある画像の90%は、間違いなく「撮り捨て」も同然と言えるだろう(残りの10%は私が飼っている犬の写真で、彼はすばらしくフォトジェニックだ)。

しかし、X1D IIは決して簡単なカメラではない。時にはイライラすることもある。初心者であれば、基本的なこと(ISO、F値、シャッターを切るタイミング)を覚える必要があるかもしれない。だが、それに見合う価値はある。1枚の写真が良く撮れたときには、圧倒的な満足感が得られる。しかもその写真は、5000万画素で、細部までしっかりと描き込まれており、壁に飾る価値がある。X1D IIに大金をつぎ込んだからといって、すぐに良い写真家になれるわけではない。だが、そうなるための励みにはなるはずだ。

スタジオの人工的な照明や不自然なセットのない屋外での撮影は即興の練習になった。私たちは実存の街灯やネオンや陽光を求めて街中を歩き回り、撮影に適した場所を発見したり、あるいは上手くいかない場合は場所を変えたりした。

私たちは目的を持ち、探索していた。

このカメラを使った2週間から私が得たもの、それは「一旦止まって、自分の行動が意味あるものにすること」である。

レビューに使用したレンズキット:税別1万595ドル(約112万円)
ハッセルブラッド X1D II 50C ミラーレスカメラ ボディ:5750ドル(約61万円)
ハッセルブラッド 80mm F/1.9 XCD レンズ:4845ドル(約51万円)

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Hasselbladカメラ写真レビュー

画像クレジット:Veanne Cao

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(文:Veanne Cao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

6980円のスマートリモコン「Nature Remo mini 2」実機レビュー

Natureの「Nature Remo」(ネイチャーリモ)はスマートリモコンにカテゴライズされる定番ガジェットだ。念のためおさらいしておくと、Wi-Fiと赤外線通信機能が搭載されており、スマートフォンから「Nature Remo」経由で、赤外線リモコンに対応したエアコン、テレビ、照明などの電子機器をコントロールできる。

初代のNature Remoが発売されたのが2017年10月16日。それからソフトウェア、ハードウェアがアップグレードされ、現在では4機種が現行モデルとしてラインナップ。また、Amazon Echo、Google Nest(旧Google Home)、Apple HomePodといったスマートスピーカーとの連携に対応している。

プログラミングの知識がある方なら、Nature Remoシリーズに対応する「Nature Remo API」が公開されている点も興味深いだろう(個人利用は無償で利用可。なおNatureは、FAQにおいてAPIの使用方法や組み込み方などは個別に案内しないとしている点に注意)。

2020年12月24日、シリーズ最新モデルとして「Nature Remote mini 2」が発売された。他モデルと比較しつつ、どのような点が進化したのかレビューしていこう。

Nature「Nature Remo mini 2」。価格は税込6980円

Nature「Nature Remo mini 2」。価格は税込6980円

対応家電、搭載センサーの異なる4モデルを用意

現在シリーズでは、「Nature Remo 3」「Nature Remo mini 2」「Nature Remo 2」「Nature Remo mini」の4製品が現行モデルとして販売されている。

Nature Remo mini 2の進化点は、まずBluetooth Low Energyに対応し、セットアップが簡略化されたこと。ただし、Nature Remo 3のようにスマートロック「Qrio Lock」、めざましカーテン「mornin’ plus」との連携機能は利用できない。

ふたつ目の進化点はNature Remoシリーズのデザイン上のアイデンティティーだったボディー天面の丸いLEDライトを廃し、側面に小さなLEDライトを配置したこと。Natureによれば「寝室でも光を気にせずに使いたい」というユーザーの声に応えた変更とのことだが、側面のLEDは直接覗き込まないと点灯しているのかわからない。詳しくは後述するが、この仕様変更については評価が分かれると思う。

3つ目の変更点はNature Remo miniと比較して、赤外線の飛距離が約2倍に強化されたこと。広い部屋でも確実に家電をコントロールできるようになったわけだ。

Nature Remo mini 2の付属品は、取り扱い説明書とUSBケーブル(1.5m)のみ

Nature Remo mini 2の付属品は、取り扱い説明書とUSBケーブル(1.5m)のみ

本体天面。丸いマークは存在するが、従来モデルのようにLEDライトは天面に内蔵されていない

本体天面。丸いマークは存在するが、従来モデルのようにLEDライトは天面に内蔵されていない

本体底面。上にあるのは壁掛け穴、左下にあるのはリセットボタン

本体底面。上にあるのは壁掛け穴、左下にあるのはリセットボタン

端子はmicroUSB。右にあるのはステータスランプ

端子はmicroUSB。右にあるのはステータスランプ

  1. 6980円のスマートリモコン「Nature Remo mini 2」実機レビュー

SSID選択・パスワード入力を省略したことで、セットアップが快適化

Nature Remo mini 2自体のセットアップの流れは下記の通り。

モデルの選択→USBケーブルを挿す→Bluetooth使用を許可→セットアップの実行→Wi-Fiパスワードの入力→設定完了

従来モデルではセットアップ時にNature Remo自体のSSIDを選択して、パスワードを入力しなければならなかった。一方Nature Remo mini 2では、多くのWi-Fiネットワークの候補から接続先を選ぶ必要がなくなり、パスワードを入力する手間をひとつ省けたのは、ネットワーク機器の設定に慣れていない方にとって大きな進化だ。

「Nature Remo」アプリでアカウントを作成したあとに、「Remoをセットアップする」を実行すると、Bluetoothの使用許可を求められる。ここで「OK」を押せば、Nature Remo mini 2とNature Remo 3はデバイス一覧に自動的に表示される。旧モデルのようにSSIDを選び、パスワードを入力する必要はない

「Nature Remo」アプリでアカウントを作成したあとに、「Remoをセットアップする」を実行すると、Bluetoothの使用許可を求められる。ここで「OK」を押せば、Nature Remo mini 2とNature Remo 3はデバイス一覧に自動的に表示される。旧モデルのようにSSIDを選び、パスワードを入力する必要はない

LEDライトはやはり天面にあってほしい

LEDライトの変更は、個人的には使い勝手が悪くなっていると感じた。従来モデルのLEDライトが明るすぎるという意見があること自体は理解できる。しかしネットワークや、Nature Remoのサービスのトラブルが発生した際にすぐ気づけるように、LEDライトはある程度目立ったほうがいい。

もし寝室で光を気にせず使えるようにするのであれば、正常に動作しているときはLEDライトを減光する、もしくは消灯するなどの設定を用意してもよかったと思う。側面のLEDライトはNature Remo mini 2だけの仕様であってほしいというのが率直な感想だ。

これは初代のNature Remo。部屋を暗くしていると、LEDライトが点灯したときに煩わしく感じることはある

これは初代のNature Remo。部屋を暗くしていると、LEDライトが点灯したときに煩わしく感じることはある

Nature Remo mini 2のLEDライトは小さく、側面に配置されている。なんらかのトラブルが起きているときにすぐ気づけず、ストレスがたまりそうだ

Nature Remo mini 2のLEDライトは小さく、側面に配置されている。なんらかのトラブルが起きているときにすぐ気付けず、ストレスがたまりそうだ

赤外線は壁に反射させても軽く7m(実測)まで到達

Nature Remo mini 2の進化点で個人的に最も気に入ったのが、赤外線の飛距離が約2倍に強化されたこと。Nature Remo mini 2の赤外線の飛距離について、スペック表に具体的な記載はないが、筆者が実際に試したところ壁に反射させても軽く7mは到達していた。反射による減衰がなければ、もっと遠くまで到達しているはず。部屋の中央のテーブルや壁などに設置しておけば、よほどの大豪邸でなければ部屋全体の家電をカバーできるはずだ。

仕事部屋から出ても4m強の距離しか確保できないので……

仕事部屋から出ても4m強の距離しか確保できないので……

壁の反射を利用して7m強の距離をとってリモコン操作してみたが、まったく問題なくディスプレーをオンオフできた

壁の反射を利用して7m強の距離をとってリモコン操作してみたが、まったく問題なくディスプレーをオンオフできた

Bluetoothを搭載しているのにQrio Lock、mornin’ plusと連携できないのは残念

Nature Remo mini 2は赤外線通信を利用するスマートリモコンとしては上位モデルと遜色ない。ただ、湿度・照度・人感センサーを利用する機能はともかく、せっかくBluetoothを搭載しているのにスマートロック「Qrio Lock」、めざましカーテン「mornin’ plus」と連携できないのは残念だ。ハードウェア的に可能であるなら、ぜひともBluetooth機能をNature Remo 3と同等にアップグレードされることを期待したい。

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カテゴリー:IoT
タグ:Apple HomePod mini(製品・サービス)Amazon Echo(製品・サービス)ガジェット(用語)Google Nest(製品・サービス)スマートリモコン(用語)Nature(企業)Nature Remoレビュー(用語)日本(国・地域)

Boston DynamicsがSpotを遠隔操作するインターフェース「Scout」発表、リモートでドアを開けられるように

Spot(スポット)が工場施設の階段を上っていくところを見るのは何かしっくりこない。何年もの間、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボットたちによる美的で印象的なパフォーマンスビデオを見続けてきた後では、この四足歩行ロボットが、ロボット研究者たちが好んで口にする退屈で、汚れがちで、危険な仕事をしているところは興味を引かないのだ。

しかし、同社がSpotの販売を開始してから6カ月半が過ぎ(Boston Dynamicsによれば400台以上が売れたという)、購入した企業はそれらの先進的な機械を、いくつかの極めて地味なシーンへと投入している。米国時間2月1日の朝、私はそうしたロボットの1台を、自分の机からくつろいだ態勢で操縦できる機会を得ることができた。

今週、Hyundai(現代、ヒュンダイ)が所有するロボットのパイオニアBoston Dynamicsが、ロボットを遠隔操作するためのブラウザベースのインターフェースScout(スカウト)を発表した。またこの発表には続いて、セルフ充電式の「エンタープライズ」版や、すでに発表されていたSpot Arm(スポットアーム)も加わる予定だ。すべての新しいハードウェアは、すでにBoston Dynamics社のサイトから入手可能で(価格は「見積依頼」形式だが)、Scoutはどのバージョンのロボットとも互換性がある。

画像クレジット:Boston Dynamics

とはいえ、同社はセルフドッキング型のエンタープライズ版とのペアリングを推奨している。結局のところ、ロボットの1回の充電あたりの動作時間は約90分なので、人間の介入なしに、状況監視でロボットを使うのであればおそらくそうする方がよいだろう。

実際に何度かSpotを直接操作してみたが、ご想像の通り多少は練習する必要がある。Boston Dynamicsの見積もりでは、完全にスピードを上げるのには約15分かかるとのことだったが、1~2分後には、私はロボットにBoston Dynamicso本社の階段を昇り降りさせることができていた。ありがたいことに、この7万5000ドル(約788万円)のロボットには、カメラや他のセンサーがたくさん内蔵されていて、本当にバカなことはできないようにしてくれている。

画像クレジット:Boston Dynamics

システムはBluetoothゲーミングコントローラーでも動作するが、私はキーボードを使うことにした。もしこれまでPCゲームやったことあるなら、きっとおなじみの基本的なWASD式の操作を行うことができる。一方、矢印キーを使えば、4つのカメラを切り替えて四方を見ることができる。ロボットを上方から見下ろしたような景色を見せてくれる、terrain(地形)モードなどのいくつかの追加ビューが用意されている。それはおそらく、目の前の障害物すべてを表示するための最良の方法だが、それでもさまざまなビューを一度に見るためにピクチャー・イン・ピクチャーを行うこともできる。

私自身は「クリックして進む」を多用していることに気がついた。その動作は基本的には言葉が示しているとおりだ。地面上の地点をクリックするとSpotがその場所に向かって歩いて行く。この機能は主に接続に問題がある場面を想定して設計されている。たとえばどこかの石油採掘基地に、かわいそうなSpotが投入されたところを想像してほしい。

画像クレジット:Boston Dynamics

「ある発電所で、設備故障が疑われた事例がありました。もし本当に故障していたとしたら、人間の検査担当者にとっては危険だった設備を、ロボットを使うことで、繰り返し検査することができました」と、SpotのチーフエンジニアであるZack Jackowski(ザック・ジャコウスキー)氏はTechCrunchに語った。「つまりシステムを使い、何回もパイプを検査することで、高くつくシステム停止を回避することができたのです」。階段を上り下りさせるためにロボットを配置する「階段モード」もある。この機能は手動でオンオフを切り替える必要があるのだが、ロボットは通常モードでも階段を上ることができるはずだ(私はデモの最中にこれを行ったが、スタッフは誰も心臓発作を起こすことはなかったようだ)。当面の間、この遠隔操作機能は視覚情報の収集に限定される。ジャコウスキー氏は「建物の規模へ拡張できる、いろいろとすごい計画を立てていますが、まず最初に提供したいのは視野を提供することです」と付け加えた。

エンタープライズ版では、ロボットの底部に新しいドッキングコネクタを装備したほか、CPUを強化しワイヤレス接続性を向上させている。ドックとの同梱か単体での出荷となる。

残念ながら、新しいアームを実際に回転させることはできなかったが、ジャコウスキー氏はその機能について、詳細をいくつか教えてくれた。「アームコマンドは、『アームをここへ動かせ』とか『この物体を持ち上げろ』とか『このバルブを回せ』といったかたちで出すことができます。するとロボットは『もしこのバルブを回すのなら、まずあそこに立つ必要があって、次に重心をどのように移動して、バルブを動かすためにどのような部品を腕に装着している必要があるのかを判断する必要がある』ということを自分で考えるのです」。

関連記事:ロボティクスの先駆者Boston DynamicsのCEOがヒュンダイによる買収後の展望を語る

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston DynamicsSpotレビュー

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

約25万円の「Xperia PRO」実機レビュー、ターゲットはYouTuberや報道カメラマン

約25万円「Xperia PRO」実機レビュー、ターゲットはYouTuberや報道カメラマン
開発発表からおよそ1年越しに発売日が決まった「Xperia PRO」。税込で約25万円という価格設定に驚いた方も多いでしょう。

しかし、単なる高性能スマートフォンを求める層に、ソニーモバイルも「Xperia PRO」を売る気は無いようです。それは「Xperia PRO」が、放送や写真のプロフェッショナルに向けて開発された業務用スマートフォンだからです。スマートフォン単体で使うメリットはほとんど無く、αシリーズなどのレンズ交換式一眼カメラやプロ向けビデオカメラと組み合わせて初めて威力を発揮します。

Xperia PRO

Xperia PRO

レンズ交換式の一眼カメラなどと組み合わせて初めて威力を発揮する

レンズ交換式の一眼カメラなどと組み合わせて初めて威力を発揮する

というのも、「Xperia PRO」はスマートフォンとしては珍しくHDMI端子を搭載します。これをレンズ交換式カメラと接続することで、カメラの外部モニターとして利用できます。「Xperia PRO」のディスプレイは長辺だけ見れば4K(3840 x 1644)解像度で、HDR表示かつBT.2020の広色域に対応しており、高性能なモニター画面として利用できるわけです。

カメラの外部モニターとして利用している様子

カメラの外部モニターとして利用している様子

画面をダブルタップで拡大・縮小。細部のピントのズレも大画面で確認できる

画面をダブルタップで拡大・縮小。細部のピントのズレも大画面で確認できる

画面をダブルタップで拡大・縮小。細部のピントのズレも大画面で確認できる

画面をダブルタップで拡大・縮小。細部のピントのズレも大画面で確認できる

画面をダブルタップで拡大・縮小。細部のピントのズレも大画面で確認できる

また、YouTuber向けのユースケースとして重要なのが、高速な5Gや4G通信に対応し、かつ汎用なAndroid OSを搭載する点です。これによって、出先で高級ミラーレスカメラ「α9」で撮影中の映像を、「Xperia PRO」経由でYouTubeにリアルタイム配信できます。

汎用の配信アプリ「StreamLabs」も利用できる

汎用の配信アプリ「StreamLabs」も利用できる

プロカメラマン向けのユースケースとしては、プロスポーツ試合の撮影が挙げられます。従来、カメラマンは撮影した写真をハーフタイムにまとめて、雑誌の編集部や新聞社などに伝送していました。しかし「Xperia PRO」と一眼カメラを組み合わせれば、カメラマンは撮ったそばからリアルタイムで写真を納品できるようになります。報道現場においても速報性の向上に威力を発揮します。

こうしたプロ向けの用途では『安定性』が何より大事。Xperia PROでは数時間にわたる映像伝送も安定してこなせるよう、放熱設計を工夫しています。

本体はα7シリーズなどソニーのミラーレスカメラと質感が共通。まるでカメラを持っているような手触りです。また、筐体に金属ではなく樹脂を使うことで、一般的な消費者向けのスマートフォンに比べて5Gの電波をつかみやすくしているほか、デバイスの4つの側面に配置したアンテナにより、「ミリ波」と呼ばれる、5Gの周波数の中でも特に高い周波数の電波もつかみやすくしていると言います。

筐体の手触りはαシリーズと瓜二つ。樹脂を採用して5Gの電波を透過しやすくしている

筐体の手触りはαシリーズと瓜二つ。樹脂を採用して5Gの電波を透過しやすくしている

基本は一眼カメラなどと組み合わせて使う「Xperia PRO」ですが、本体には「Xperia 1 II」と同等仕様のカメラを搭載します。なお、レンズは本体から飛び出しておらず、むしろ引っ込んでいます。これは、レンズに対する外光の影響を抑える意図をもった設計です。

背面カメラは35mm換算で16mm(広角)・24mm(標準)・70mm(光学3倍望遠)のトリプルレンズ構成

背面カメラは35mm換算で16mm(広角)・24mm(標準)・70mm(光学3倍望遠)のトリプルレンズ構成

SoCにはクアルコムのSnapdragon 865を採用。その後継となるSnapdrgaon 888が登場した今となっては型落ち感が否めませんが、あえて最新SoCではなく1世代古いSoCを搭載したのは、安定性を重視した結果なのかもしれません。

その他、12GBのRAM、1TBまでのmicorSDXC、512GBのストレージを搭載。防水防塵はIP68等級に対応します。FeliCaは非搭載です。

イヤホンジャックもしっかり搭載する

イヤホンジャックもしっかり搭載する

側面の「Xperia PRO」ロゴがカッコいい

側面の「Xperia PRO」ロゴがカッコいい

側面の「Xperia PRO」ロゴがカッコいい

「Xperia PRO」は日本ではSIMフリーモデルとして展開される予定です。販売は、ソニーのインターネット直販サイト「ソニーストア」に加え、銀座、札幌、名古屋、大阪、福岡天神にある実店舗、さらには一部家電量販店でも購入できます。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Xperiaガジェット(用語)スマートフォン(用語)Sony / ソニー(企業)レビュー(用語)

2画面スマホ「LG VELVET」は画面が曲がる先進性より、折り畳める実益を重視する方にお勧め

LGエレクトロニクス・ジャパンは、2画面スマホの第3弾となる「LG VELVET L-52A」(エルジー ベルベット)を2020年12月18日に発売した。ディスプレー折りたたみ型スマホ「Galaxy Z Fold2 5G SCG05」は税抜25万9980円と高価だが、LG VELVETは税抜8万8704円と9万円を切っている。2画面の間にベゼルが入るが、大画面を持ち歩く点ではコスパに優れた端末なのだ。

LGエレクトロニクス・ジャパン「LG VELVET L-52A」。価格は税抜8万8704円

LGエレクトロニクス・ジャパン「LG VELVET L-52A」。価格は税抜8万8704円

LG V60 ThinQ 5Gよりもさらにコスパを重視

LG VELVETはOSに「Android 10」、SoCに「Snapdragon 765G」(2.4GHz+1.8GHz、8コア)を採用。メモリー(RAM)は6GB、ストレージ(ROM)は128GBを搭載している。

ディスプレーは約6.8インチFHD+有機EL(1080×2460ドット)。「LGデュアルスクリーン」を装着することで、2画面を利用可能になる。なお従来は必ずLGデュアルスクリーンが同梱されていたが、LG VELVETは7万488円で本体のみを購入可能だ。

カメラはリアに標準(約4800万画素、F1.8、1/2.0インチ)、広角(約800万画素、F2.2、1/4.0インチ)、深度(約500万画素、F2.4)、フロントに標準(約1600万画素、F1.9、1/3.0インチ)を搭載。望遠カメラは含まれていないが、約4800万画素の高画素イメージセンサーを活かし、最大10倍のデジタルズームが可能だ。

通信機能は5G、Wi-Fi 5(11ac)、Bluetoothに対応。防水防塵性能はIPX5/IPX8、IP6Xで、FeliCa機能も搭載されている。

スペックを総括すると、ミドルレンジクラスのSoCが採用されており、前モデル「LG V60 ThinQ 5G L-51A」の下位モデルと位置づけられる。SoC、メモリー(RAM)、カメラ、Wi-Fiなどは差別化されているが、ユーザー体験を大きく左右するディスプレーは同じサイズの有機ELを採用。LG VELVETはLG V60 ThinQ 5Gよりもさらにコスパを重視したモデルといえよう。

  1. 2画面スマホ「LG VELVET」は画面が曲がる先進性より、折り畳める実益を重視する方にお勧め

LGデュアルスクリーンのフタ部分には日時や通知を確認できるサブディスプレーを装備。本体カラーはオーロラグレーとオーロラホワイトの2色が用意

LGデュアルスクリーンのフタ部分には日時や通知を確認できるサブディスプレーを装備。本体カラーはオーロラグレーとオーロラホワイトの2色が用意

右がLG VELVET本体、左がLGデュアルスクリーンの画面。LGデュアルスクリーン側にもノッチ(切り欠き)が存在する

右がLG VELVET本体、左がLGデュアルスクリーンの画面。LGデュアルスクリーン側にもノッチ(切り欠き)が存在する

LGデュアルスクリーンは360度回転させて、本体の背面に回せる。この点はGalaxy Z Fold2 5Gより優れていると言える

LGデュアルスクリーンは360度回転させて、本体の背面に回せる。この点はGalaxy Z Fold2 5Gより優れているといえる

LGデュアルスクリーン装着時、本体下部には磁力で吸着する充電コネクターと3.5mmヘッドフォンジャックを用意。LG VELVET本体にはUSB Type-C端子が装備されている

LGデュアルスクリーン装着時、本体下部には磁力で吸着する充電コネクターと3.5mmヘッドフォンジャックを用意。LG VELVET本体にはUSB Type-C端子が装備されている

本体右側面には電源ボタン、左側面にはボリュームボタンとGoogleアシスタントキーが配置されている

本体右側面には電源ボタン、左側面にはボリュームボタンとGoogleアシスタントキーが配置されている

強制的にワイドモードで表示する「WideMode for LG」は必携アプリ

LGデュアルスクリーンの使い勝手は従来モデルから変更はない。基本はふたつの画面に異なるアプリを表示して利用するが、「ワイドモード」に対応したアプリならふたつの画面をまたがって全画面表示できる。

LGデュアルスクリーンのワイドモードは「Whale」、「Chrome」、「Gmail」などの一部アプリでしか利用できないが、「WideMode for LG」をインストールすればほかのアプリでも強制的にワイドモードで表示可能となる。LGの2画面スマホユーザー必携のアプリだが、すべてのアプリで正常に動作することが保証されているわけではない点は承知しておこう。

Androidのマルチウィンドウ機能を利用すれば最大3つのアプリを表示できる

Androidのマルチウィンドウ機能を利用すれば最大3つのアプリを表示できる

一部アプリは「ワイドモード」を設定可能

一部アプリは「ワイドモード」を設定可能

ワイドモードを有効にすれば、ふたつの画面をまたがって全画面表示できる

ワイドモードを有効にすれば、ふたつの画面をまたがって全画面表示できる

ウェブページなどは横持ちすると中央ベゼルが行間に来るので閲覧しやすくなる

ウェブページなどは横持ちすると中央ベゼルが行間に来るので閲覧しやすくなる

非対応アプリでも「ワイドモード」を利用可能にするアプリが「WideMode for LG」

非対応アプリでも「ワイドモード」を利用可能にするアプリが「WideMode for LG」

「WideMode for LG」をインストールすれば、電子書籍リーダー「Kindle」でもワイドモードを利用可能となる。ただし、見開き表示には対応していない(鈴木みそ氏「ナナのリテラシー1」より)

「WideMode for LG」をインストールすれば、電子書籍リーダー「Kindle」でもワイドモードを利用可能となる。ただし、見開き表示には対応していない(鈴木みそ氏「ナナのリテラシー1」より)

AnTuTu Benchmarkの総合スコアは321161

LG VELVETのパフォーマンスをチェックするために「AnTuTu Benchmark」を実行したところ、総合スコアは321161という結果になった。1月10日時点のAnTuTu Benchmarkのランキングで「HUAWEI Mate 40 Pro」が661059だったので、LG VELVETはその約49%のパフォーマンスということになる。一般的な用途には十分なパフォーマンスだが、3Dゲームなどのためにより高い性能を発揮する2画面スマホが必要なら、Snapdragon 865を搭載するLG V60 ThinQ 5Gを選ぶことをお勧めする。

「AnTuTu Benchmark」の総合スコアは321161、「Geekbench 5」のMulti-Core Scoreは1919、「3DMark」のWildlifeのスコアは1662

「AnTuTu Benchmark」の総合スコアは321161、「Geekbench 5」のMulti-Core Scoreは1919、「3DMark」のWildlifeのスコアは1662

発色が濃い傾向があるが好ましいカメラ画質

カメラ画質はやや実際の色よりも発色が濃い傾向があるが、個人的には好ましく感じた。望遠カメラは搭載されていないが、約4800万画素のイメージセンサーを搭載しているおかげで、10インチ以下のディスプレーで鑑賞するなら実用レベルだと思う。

特に高く評価できるのが夜景を撮影するための「ナイトビュー」モード。夜景を撮影すると明るい看板や照明などが白飛びする端末が多いが、LG VELVETのナイトビューでは白飛びを抑えてくっきりと撮影できる。今回は試せなかったがイルミネーションの撮影などでも威力を発揮するはずだ。

広角カメラで撮影

広角カメラで撮影

標準カメラで撮影

標準カメラで撮影

標準カメラで撮影(2倍デジタルズーム)

標準カメラで撮影(2倍デジタルズーム)

標準カメラで撮影(10倍デジタルズーム)

標準カメラで撮影(10倍デジタルズーム)

標準カメラで撮影

標準カメラで撮影

標準カメラで撮影(ナイトビュー)

標準カメラで撮影(ナイトビュー)

ディスプレーが曲がる先進性よりも、折り畳める実益を重視する方にお勧め

前述のとおりLGデュアルスクリーンを装着したLG VELVETは画面の間にベゼルが入る。未来感という点ではGalaxy Z Fold2 5Gのほうが上だ。しかし、ふたつのアプリを同時に使う場合にはまったく気にならないし、ワイドモードで全画面表示した場合でも実用上はほぼ問題にならない。ディスプレーが曲がるという先進性ではなく、折り畳める実益を重視する方にとって、LG VELVETはコスパに優れる、もってこいの端末といえる。

一方の画面をゲームコントローラーとして利用できる機能も用意されている

一方の画面をゲームコントローラーとして利用できる機能も用意されている

 

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ハードは飛躍的に進化したPS5だが、ソフト不足・品不足は深刻

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は2020年11月12日、「PlayStation 5」を発売した。

PS5は、先代上位モデル「PlayStation 4 Pro」と比べて、CPUとGPUの処理性能向上をはじめ大幅な進化を遂げた。読み書き速度が高速なカスタムSSDの搭載、光の反射を実際にシミュレートするレイトレーシングの実装、リフレッシュレートを60Hzから120Hzへ引き上げ、8K出力への対応、没入感を高めるためのハプティック技術・アダプティブトリガー・3Dオーディオ技術と、PS5を特徴づけるポイントは数々ある。

さらに、Proの付かない「PlayStation 4」と比べた場合、これに4KとHDRへの対応が進化点に加わるわけだ。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation 5」(スタンダードモデル:4万9980円、デジタル・エディション:3万9980円)

ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation 5」(スタンダードモデル:税抜4万9980円、デジタル・エディション:税抜3万9980円)

筆者はLGエレクトロニクス・ジャパンから48V型のゲーミング推奨4K有機ELテレビ「OLED48CXPJA」を借用して、120fps対応の「Fortnite」を実際にプレイしてみたが、ヌルヌルとした滑らかな動きには驚かされた。筆者レベルのゲーマーでも臨場感アップというメリットが得られるし、ハイレベルなプレイヤーなら勝率が着実に向上するはずだ。

LGエレクトロニクス・ジャパン「OLED48CXPJA」は、HDMI2.1(VRR/ALLM/eARC)、HFR(4K/120Hz)、NVIDIA G-SYNC Compatible、AMD FreeSyncテクノロジー、HGiG、応答速度1msに対応した48V型ゲーミング推奨4K有機ELテレビ

LGエレクトロニクス・ジャパン「OLED48CXPJA」は、HDMI2.1(VRR/ALLM/eARC)、HFR(4K/120Hz)、NVIDIA G-SYNC Compatible、AMD FreeSyncテクノロジー、HGiG、応答速度1msに対応した48V型ゲーミング推奨4K有機ELテレビ

「Fortnite」は「設定→グラフィック」で「120FPSモード」を有効にできる

「Fortnite」は「設定→グラフィック」で「120FPSモード」を有効にできる

大幅な進化を遂げたPS5。しかし、ゲームラインナップに不満

ゲーム機として飛躍的な進化を遂げたPS5だが、現状ゲームのラインナップがあまりにも物足りなさすぎる。記事執筆時点でPlayStation Storeには41本のPS5用ソフトが並んでいるが、そのうちPS5独占タイトルは11本(3本は未発売)だ。筆者は、PS5用の「Marvel’s Spider-Man:Miles Morales」の後は、PS4用の「The Last of Us Part II」をプレイし、今はPCで「Cyberpunk 2077」を遊んでいる。自分が選り好んでいるとはいえ、PS5用ゲームを1本しかプレイしていないのだ。

PlayStation Storeで調べてみると、12月18日~3月1日の間にPS5用ゲームは「サイバーシャドウ」の1本しかリリース予定がない(1月26日調べ)。3月2日発売予定の「龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル」、5月8日発売予定の「BIOHAZARD VILLAGE」クラスのビッグタイトルをもう少し早めに投入してほしかったところだ。

  1. ハードは飛躍的に進化したPS5だが、ソフト不足・品不足は深刻

    ※「振動機能」と「トリガーエフェクト」への対応については記事執筆時点のPlayStation Storeの表示に準じている

実際にPS5を使っていて感じる不満点

筆者はすでにPS4からPS5に完全移行しているが、細かな部分で不満がある。ひとつ目は「×」が決定、「○」がキャンセルに入れ替わったこと。グローバルスタンダードに合わせたこと自体は納得しているものの、PS4用ゲームとPS5用ゲームを交互にプレイしていると非常にストレスがたまる。実装が煩雑になるのだろうが、PS5自体、そしてPS5用ゲームに従来の「○」が決定、「×」がキャンセルで利用できる設定を用意して、ユーザーがPS5用ゲームしかプレイしなくなったときに、自分のタイミングで移行できるようにしてほしかった。

混乱を避けるために「○」と「×」の機能を入れ替えるための移行期間がほしかった

混乱を避けるために「○」と「×」の機能を入れ替えるための移行期間がほしかった

ふたつ目の不満点はSSD(PCIe 4.0対応NVMe SSD)を装着するための拡張スロットがまだ使えないこと。SIEは、PlayStation.Blogにおいて、「M.2 SSDによる拡張機能は、PS5の発売後にシステムソフトウェアアップデートによる対応を予定しており、対応するストレージの種類などの情報とあわせて後日ご案内予定です。」としている。

PS5の本体SSDの容量は825GBだが、実際にゲームのインストールに使える容量は667GB。筆者はあっという間にストレージがいっぱいになってしまい、本体背面にスティック型SSDを装着しているが、持ち運びなどの際にやはりジャマだ。スティック型SSDにより当面容量不足で困ることはないが、背面をスマートにするために早く拡張スロットにSSDを装着したいと考えている。

PS5の拡張スロットにはPCIe 4.0対応NVMe SSDを装着可能

PS5の拡張スロットにはPCIe 4.0対応NVMe SSDを装着可能

筆者が現在使用しているバッファローのスティック型SSD「SSD-PUTAシリーズ」。ケーブルがないぶんコンパクトに装着できる

筆者が現在使用しているバッファローのスティック型SSD「SSD-PUTAシリーズ」。ケーブルがないぶんコンパクトに装着できる

3つ目は、ゲーム機としてではなくメディアプレイヤーとしての不満。まずPS5専用リモコン「メディアリモコン CFI-ZMR1J」に「Disney+」のボタンが用意されているが、日本ではPS5用に「Disney+」アプリはリリースされていない(記事執筆時点)。もうひとつが個人的には深刻で、PS4と同様にPS5も「Abema」アプリが提供されていないのだ。このため結局メディアプレイヤーとしてはPS5ではなく、ほかのストリーミングデバイスを利用している。できるだけテレビの配線を削減し、リモコンの数も減らしたいので、PS5が積極的に多くのストリーミング配信サービスに対応することを望みたい。

米国ではPS5で「Disney+」アプリを利用可能。せめてほかの配信サービスを割り当て可能だとよいのだが、アプリが利用できなければ邪魔なだけだ

米国ではPS5で「Disney+」アプリを利用可能。せめてほかの配信サービスを割り当て可能だとよいのだが、アプリが利用できなければ邪魔なだけだ

「Abema」アプリはPS4時代から提供されていない

「Abema」アプリはPS4時代から提供されていない

時期が未定だとしても予約を受け付けて「抽選販売」から救済してほしい

PS5は発売からすでに2ヵ月以上が経過しているが、現時点でまだ製品が店頭に並んでいないどころか、通販サイトなどを含めて予約すらできない。現状ほとんどのショップ、通販サイトで抽選販売が実施されているが、何度も抽選に応募するのは手間だし、落選したときの失望感は非常に大きい。

心配なのはいつまでも「抽選販売」が続いて、PlayStationの既存ユーザーの気持ちが離れてしまうこと。それを一番理解し、恐れているのはソニー・インタラクティブエンタテインメント自身のはずだ。時期が未定だとしても最低限予約を受け付けるような体制を整えることを、SIEに強く望みたい。また、もし増産が難しいのなら、できるだけ早く、こまめに今後の生産計画をアナウンスしてほしいと思う。

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PlayStation 5は発売日に店頭販売されない

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超コンパクトな家庭用トレッドミルTreadly 2はアプリでコミュニティとの連携も可能

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行が続く中、自宅でアクティブに過ごすための選択肢がますます重要になっている。Treadly(トレッドリー)はコンパクトで使いやすく、魅力的なスマートコネクテッド機能を備えた家庭用トレッドミルを開発することに注力しているスタートアップだ。同社は最近、第2世代の製品を発表した。この「Treadly 2 」と名づけられた新モデルは、超コンパクトで、ハードウェアの改良により使用者の体重制限も引き上げられ、さらにワークアウト時間を延長する冷却機能も追加されている。

基礎知識

Treadlyのデザインは、おそらくあなたが想像するよりもずっと小さい。ベース部分の高さはわずか9.4cm、重量は35kgだ。デッキ全体の長さは142cmで、幅は63.5cm。可倒式のハンドルは、速いペースでジョギングする際には伸ばすことができ、ウォーキングを行うだけなら畳んでおける。

デッキにはディスプレイが内蔵されており、スピード、総歩数、時間、距離などの主要なデータを白黒でシンプルながら見やすく表示する。手すり部分には手動で操作する各種コントロールが装備されているが、ベーシックモデルでは専用のリモコンで、アップグレード版の「Treadly 2 Pro」ではBluetooth経由でTreadlyアプリ(現在はiOSのみだが、Androidも近日中にリリース予定)を使って操作することもできる。

また、Treadly 2にはBluetoothスピーカーが内蔵されており、スマートフォンを接続して好きなアプリで音楽を再生しながらエクササイズに励むことが可能だ。TreadlyのiOSアプリでは、コミュニティやライブビデオと連携し、繰り返しワークアウトを行うこともできる。ユーザーはグループに参加したり、自分でグループを作ることもでき、他の人が運動している様子を見ながら一緒に運動したり、ユーザー同士が歩数や距離などの課題を出し合える機能も用意されている。

デザインと機能

Treadlyのデザインは前述のとおり非常にコンパクトで、狭いスペースにもフィットするサイズだ。使わないときには、ほとんどのソファの下に収納できるし、縦に置けば壁際やクローゼットの中に片づけることもできる。ミニマルなデザインは魅力的で、そのまま部屋に置いておいても一般的なエクササイズ器具ほど目立たない。

デッキに内蔵されたディスプレイは、コンパクトなサイズを維持しながらも、ホームジム器具に求められるすべてのフィードバックの数値を表示できる。もしこれが可倒式のハンドルバーに装備されていたら、運動中に定期的にチェックするのも簡単になるが、そうすると間違いなくバーを畳んだときに邪魔になる。それに多くの人にとって、統計的な数値が見づらいくらいの方が実はちょうどいいのかもしれない。思ったよりも数字が伸びていかないと、必要以上にワークアウトがきつく感じることがあるからだ。

ベーシックモデルには、有能でコンパクトなリモコンが付属する。ストラップがついているので、トレッドミルを使用している間には腕にかけておけば見失うことはない。Bluetoothスピーカーは期待するほどすばらしい音ではないかもしれないが、運動中に音楽を流すには必要十分といったところだろう。他にスピーカーやイヤホンを用意せずに済む。

画像クレジット:Treadly

実際にTreadly 2を使ってみたところ、確かに走ったり歩いたりする運動は可能だが、いくつか注意点もある。まず、本当の意味でのインドアランニングを期待してはいけない。このサイズのトレッドミルとしては、確かに耐荷重は優れているものの、最高速度は時速8kmほどなので、ほとんどの人にとっては低強度のジョギングにしかならない。ハンドルバーを下げると時速6kmまで落ちる。早歩きするくらいの速度だ。

Treadly 2はコンパクトな製品にもかかわらず、特に新しく改良された冷却システムのおかげで、時速8km以内で使用する分には使用時間に制限がなく、いつまでも走り続けることができる。これはすばらしい特長だ。室内に籠もって座りっぱなしのライフスタイルを改善するためと考えれば、Treadly 2の速度設定は、フィットネス上級者を除くほとんどの人にとって十分だろう。

結論

このTreadly 2は利便性、ソーシャル機能、ガイド付き使用、コネクテッドコントロール、省スペース設計を見事に融合させたコネクテッドトレッドミルで、ベーシックが749ドル(約7万8000円)、プロが849ドル(約8万8000円)と、価格も手頃な範囲に収まっている(すべてニューイヤーセール特別価格)。人気のエクササイズバイク「Peloton(ペロトン)」と同様、ほとんどの人が実際に長期的に使用する可能性が高い。この未曾有の時代の長い冬の間、アクティブに過ごすには最適だ。

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画像クレジット:Treadly

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(翻訳:TechCrunch Japan)

サムスンGalaxy S21 Ultraレビュー、カメラの洗練もすばらしいが価格引き下げにも注目

Galaxy S21 Ultra(ギャラクシーS21ウルトラ)は戦車だ。大きくて重い(前機種の218gに対して228g)鈍器のような電話だ。これは典型的なSamsung(サムスン)の携帯電話である。つまり全部盛りでもまだ満足できないときに買うようなハンドセットなのだ。実際、おそらく同社の2つのフラッグシップライン間の最大の差別化要因となっているかもしれないS Penの機能まで採用されている。

その点をはじめとしたS21のアップデートは、製品ラインの論理的な延長線上にある。今回Samsungは、型破りなことはしていないが、同社にとってそれは必ずしも必要なことではない。型破りではなくても、この製品は普通に手に入る最高のAndroid(アンドロイド)端末の1つであることに変わりはないからだ。同社はその点に磨きをかけようとしていて、それはより実験的なGalaxy Zラインに投入されている基本的な変更とは一線を画している。

Samsungが早い段階で5Gに全力投球したのは、もちろん評価に値する。同社は次世代ワイヤレスに対する対応という意味で先行しており、そのフラッグシップライン全体への採用を真っ先に行った。5Gは驚くべきスピードで実用化が進んだ機能だ。そこにはQualcomm(クアルコム)が中位のチップに対して強力な推進を行ったことが大きく影響している。実際、iPhone 12は、5Gへの対応を主要なセールスポイントとして使用しても許された、最後の主要フラッグシップになるだろう。

この対応が一巡したことで、スマートフォンメーカーたちは、戦うためのおなじみの場所に戻りつつある、特に画像処理が主戦場だ。UltraのS Pen機能はさておき、この世代の最大のアップグレードのほとんどは、カメラ側に加えられたものだ。もちろん、そこに驚きはない。カメラは常にSamsungが注力してきたものの1つだ。まあその変更は、いまや多くのメーカー同様に、大部分がソフトウェアによるものなのだが。

画像クレジット:Brian Heater

とはいえ、注目すべきハードウェアの変更点もいくつかある。新しいSモデルは、最近覚えている限りの変更の中でも、最も大きな外観上の変更が加えられている。私が最初この製品について書いたときは、歯切れの悪い表現をしていたが、それは2020年から2021年にかけてガジェットブログでずっと苦労している問題のせいだ。つまり実際に手にとって触ってみることができなかったからだ。私はやっとこの製品をニューヨークの街中で数日持ち歩くことができたので、いまやほぼ確信をもって、それがまずますの製品だということができる。

最も目立つのは、大きく出っ張ったカメラハウジングだ。前回「ブルータリスト」という形容を行ったのは間違いではなかった。製品を実際に使ってみての感想は、かなり良いものだ。デザインの選択には何というか……工業的なものを感じる。そしてそれは、4つのカメラホールと、レーザーオートフォーカスセンサーと、フラッシュを搭載したUltraのデザインに顕著に表れている。それは驚くほど分厚い金属で作られた、大きくて立派なカメラ部の突起だ。これは一部には「折り畳み式」の望遠レンズのせいでもあるのではと思っている。

Samsungから送られて来たのはPhantom Black(ファントムブラック)モデルだ。このカラーは、同社が発表時に驚くほど長い発表時間を割いていたものだ。それはApple以外では滅多に見ることがないような、色へのこだわりだった。気になる場合はここに長い動画がある。どういえばいいかわからないが、とにかく良いつや消しの黒だ。私は新しいメタリックバックが気に入っている。たとえガラス美術館のコーニングが味方になってくれたとしても、ガラスバックはいつか事故が起きるような気がしてならないのだ。

曲面を描くディスプレイは、いつものように角が丸くなっているのがいいアクセントになっている。画面自体はすばらしい、まあSamsungのディスプレイはいつもそうなのだが。S21、S21+、S21 Ultraの画面サイズは、それぞれ6.2インチ、6.7インチ、6.8インチだ。不思議なことに前のバージョンよりも0.1インチ小さくなったUltraを除くと、他の画面サイズは変わっていない。Ultraの画面サイズの件は実際には気がつくことはないが、これまでずっと、ディスプレイに関してはともかく大きい方が良いと主張してきた会社としては、奇妙な選択だ。

Eye Comfort Shield(アイ・コンフォート・シールド)はありがたい機能だ。時間帯や自分の使い方に応じて、画面の色温度を調整してくれるというものだ。これまでナイトシフト機能やそれに似たものを使ったことがあるならそれが何かはおわかりだろう。これはスクリーンのホワイトバランスをゆっくりと黄色の方向に向かってシフトさせる機能で、ブルーライトを削減し、体内時計が乱れるのを防ぐ。この機能はデフォルトではオフになっているので、設定を変更する必要がある。

また、使用しているアプリに応じて46Hzと120Hzの間でリフレッシュレートが入れ替わるDynamic Refresh Rate(ダイナミックリフレッシュレート)機能を導入している。これは、バッテリーをいくらかでも節約するために導入された機能だ(5Gと一緒に120Hzを使うと、かなりの電力消費量になる可能性がある)。切り替えによる視覚的効果は気がつきにくい。実際私は、使っている最中にそれに気がついたとはいえない。もちろん、少しでも多くの果汁を絞り出すための、新しい手段開発への努力には称賛を惜しまない。

Samsungの新時代が捨て去ってしまったものも、同様に注目される。今回の新Sモデルでは、同社はついに拡張可能なストレージを放棄し、一時代の終わりを告げることになった(Zラインの動きを踏襲したものだ)。まあそれは理解できる。これらのデバイスは、128から512GBの容量で提供されている。大多数のユーザーにとって、microSDスロットは無駄なものだったのだ。確かに私が使う必要は一度もなかった。同社によれば「消費者が利用できるストレージの選択肢を広げてきたために、スマートフォンでのSDカードの利用が著しく落ち込んでいました」ということだ。

もちろん大きな内蔵メモリにはコストがかかる。とはいえ、大抵の場合、長年連れ添った差別化要素との別れはちょっぴり辛いものだ。同社はまた、ヘッドフォンと電源アダプタの同梱を止めたが、最近同じようなことをしてきたAppleを揶揄するいくつかの広告は削除している。ヘッドフォンジャックのときと同じだ。

画像クレジット:Brian Heater

同社は最近の声明の中で、持続可能性に関してAppleに似た説明を行った。「私たちは、より多くのGalaxyユーザーのみなさまが、すでにお持ちのアクセサリを再利用し、より良いリサイクル習慣を促進するために、日常生活の中で持続可能な選択をなさっていることに気がつきました」。この結果、箱の厚みはそれ以前のSラインのものと比べて半分近くになった。

前述したように、カメラはいくつかの重要な違いがあるが、これまでのものと極めてよく似ている。S20 Ultraは1億800万画素広角レンズ(f/1.8)、1200万画素超広角レンズ(f/2.2)、4800万画素(f/3.5)望遠(4倍ズーム)レンズを搭載していたが、一方S21 Ultraは1億800万画素広角レンズ(f/1.8)、1200万画素超広角レンズ(f/2.2)、1000万画素(f/2.4)望遠(3倍ズーム)レンズ、1000万画素(f/4.9)望遠(10倍ズーム)レンズを搭載している。最大の差別化ポイントはデュアル望遠レンズだ。

画像クレジット:Brian Heater

どれだけズームしたかによって、デバイスが望遠レンズを切り替えてくれる。このデバイスは10倍の望遠を必要とする距離では、多くの競合よりもはるかに良い仕事をしてくれるだろう。しかし、100倍までズームアップできる機能は、理屈の上ではすばらしいものだが、高い倍率では実際の画像は急速に劣化する。ある倍率以降に画像は印象派のスタイルをとり始めるが、これは大抵の場合特に役立つものではない。

もしSamsung(でも誰でも良い)が、そうしたノイズをちゃんとした画像に変換できるようなコードを書くことができたなら、それは真に画期的なことになるだろう。それでもZoom Lock(ズーム・ロック)機能は、ズーム中の手ブレを最小限に抑えるのに役立つ良い追加機能だ。画像を拡大するほど、偶発的な動きが急速に増える傾向があるからだ。Super Steady(スーパー・ステディ)機能も動画撮影用に改良されている。

ポートレートモードが改善された。複雑な形状では問題が発生する傾向があるものの、これはどんなものを使っていてもほぼ必ず遭遇する問題だ。Samsungは、異なるボケレベルから焦点の調整やその他の効果までを含んだ、たくさんのポートレート後編集機能を提供することで、そうした問題に対応しようとしている。カメラソフトの多くがそうであるように、遊べるポイントはたくさんある。

  1. 7C150A6F-1372-4853-9236-230539E559C3

  2. 7A874D94-184A-4551-A714-9E30A7411E08

  3. 3F9DFC3E-4574-4B6F-878F-81C3FE4DF6D0

  4. 628F7137-66E4-404B-A8D5-7B3BB769B71C

  5. 53041669-4F85-4FA5-89E7-198147D822BD

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  7. 397C12B0-F593-40BA-8DD5-93DE3165229A

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その他の主要な追加機能としては、8Kビデオの1フレームから高解像度の画像を引き出すことができる、すてきな追加機能8Kスナップがある。正面と背面の撮影を同時に行うVlogger(ブロガー)モードもある。誰かがこれのためにソーシャルな利用法を見つけることは間違いないだろうが、少々ギミックな感じがする。まあ大部分のユーザーが存在を忘れてしまう機能だろう。オプションの追加は一般的には良いことだが、カメラのソフトウェアは、ナビゲートするためのメニューが膨大なものになってしまった。

ほとんどのユーザーは、すばやく写真や動画を撮影することを望んでいるのだと思う。S21の下位機種はその目的にはぴったりだ。そのハードウェアは、最小限の努力ですばらしいショットを撮らせてくれるくらいにはちゃんとしている。一方、サードパーティ製のアプリの力を借りることなく、ひたすら機能を掘り下げて、デバイス上で最高の画像を得ることを本当に追求したい人にはUltraがお勧めだ。このハイエンドデバイスは、手当り次第といってよいほどすべての選択肢を取り込んでいる。

画像クレジット:Brian Heater

S Pen機能の追加は、おそらくUltraが採用したものの中でも、最も注目すべき興味深いものだ。これは同社の2つのフラッグシップの間の境界線を、実質的に曖昧にしていく動きの中でも、最も目立つもののように思える。おそらくこの先Samsungは、次のNoteをさらに差別化するための動きをするか、あるいは単に時間をかけて両ラインを融合させようとするかのどちらかだろう。

もちろん、1つの大きな違いはある。S21にはペンスロットがないのだ。つまりそれが意味するのは、

  1. スタイラスは別売
  2. もしペンをなくしたくないと思っているのなら、S Penホルダーつきのケースを買う必要がある(当然別売だ)

ということだ。

画像クレジット:Brian Heater

たまたまNoteのS Penが手元にあったので使ってみたが、使用感はかなり滑らかだった。私自身はスタイラス派ではないことは、これまでも表明してきたが、Samsungは長年にわたるソフトウェアの改善に良い成果を積み上げてきた。S Penは、何世代にもわたってアップデートされてきたおかげで、驚くほど汎用性の高いツールとなっている。でも正直なところ、もしS Penが重要ならNoteを買うことをお勧めする。

各部品はSamsungのハイエンド機器に期待できるものとなっている。これには、新製品のSnapdragon 888(少なくとも一部の市場では提供)や、Ultraでは12GBまたは16GBのRAMと、128GB、256GBまたは512GBのストレージが提供されることも含まれている。バッテリーは2020年と変わらず5000mAhだ。5Gでリフレッシュレートが高いにもかかわらず、1回の充電で1日半以上の適度な使用を続けることができた。

結局、S21はS20に比べて大きく変化はしてはいない。どちらかといえばより洗練されたといったところだ。しかし、Samsungにとっては大きな変化を意味している。なにしろ今回の製品ライン全体を、これまでよりも200ドル(約2万1000円)安い価格で実現したのだ。S21は799ドル(約8万3000円)、S21+は999ドル(約10万4000円)、S21 Ultraは1199ドル(約12万4000円)からだ。どれも決して安いとはいえないものの、この200ドル(約2万1000円)の違いは、エントリーレベルの機種を買う際の衝撃を和らげるためにせよ、ハイエンド機種を選ぶ際の痛みを取り除くためにせよ、決して小さいものとはいえない。

これは、新型コロナウイルスの流行の中でさらに絶望的に落ち込んだ、ここ数年のスマホ販売の低迷を明らかに反映したものだ。企業がそうした課題をしっかりと受け止め、スマートフォンに1000ドル(約10万4000円)以上の費用を支払うことを気にかけて、単にフラッグシップの「lite(ライト)」バージョンを提供する以上のステップに踏み出す様子を見ることができたのは好ましい。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:SamsungGalaxyレビュー

画像クレジット:Brian Heater

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(翻訳:sako)

サムスン Galaxy Buds Proレビュー、優れたサウンドとノイキャン性能を持つAirPodsの強力なライバル

ワイヤレスイヤフォンで興奮するのは久しぶりかもしれない。メーカー側で展開が乏しかったからではない。実際はその逆だ。家電分野において、ワイヤレスイヤフォン部門は他のカテゴリーに比べてとても早く成熟した。大半の大手ハードウェアメーカーはワイヤレスイヤフォンの開発にしっかりと取り組み、それらの多くはかなり安い。

Samsung(サムスン)がこの部門に参入してしばらく経つ。同社に借りてこれまでに試したいくつかのモデルを気に入っていた。音質は良く、かなり快適で、全体的に万能だ。実際、商品を試して最後に筆者が提起した問題の1つは、SamsungがApple(アップル)のAirPods ProやSony(ソニー)のWF-1000XM3に匹敵するプロダクトを展開していないということだった。

そのラインナップ上の穴が、Galaxy Buds Proによって埋められた。Galaxy Buds Proは、Galaxy Buds LiveやGalaxy Buds+よりも上位となるハイエンドモデルだ。ネーミングの慣行はもう少しなんとかしても良さそうだが、全体においては些細な不満だ。Buds Proの価格は199ドル(約2万600円)で、Buds Liveより30ドル(約3100円)、 Buds+より50ドル(約5200円)高い。さらに重要なことに、Buds Proと最も類似しているAirPods Proと比べても50ドル安い。

AppleのAirPods Proと同様、Galaxy BudsはSamsungのデバイスと連携するよう特別に設計されている。他のAndroidデバイスともペアリングできるが、この場合ソフトウェアインテグレーションの重要な部分を使えない。これは正直なところ、どのスマホメーカーも自前のヘッドフォンを開発するという流れが今後主流になるということのようだ。そしてもちろんSamsungは、そうすることが合理的であるといえるだけの十分なマーケットシェアを持っている。

もしあなたが他のAndroidデバイスでGalaxy Budsを使いたいなら、Galaxy Wearablesアプリをダウンロードすることでペアリングできる。アプリを使わずにマニュアルでもペアリングできるが、その過程でかなりの機能を失うことになる。従来のGalaxy Budsモデルと同様に、ケースにはペアリングのための物理ボタンがない。

数世代のデバイスを展開し、Samsungは確かに基盤を整えた。そして2017年のHarman / AKG買収は明らかに一定の品質のオーディオアクセサリーを開発する能力において重要な役割を果たした。そのすべてがここに集結している。Samsungはデザイン面で確かな選択をした。充電ケースはかなりコンパクトだ。実際、筆者はパッケージを開けたときに少し驚いた。AirPodsケースほどの長さはないが、少し分厚い。いずれにせよ、Powerbeats Proと違って持ち歩くには十分コンパクトだ。

サイズを考えたとき、バッテリーのスペックはかなり印象的だ。Samsungによると、イヤフォン本体で5時間駆動し、ケースを使うと18時間となる。アクティブノイズキャンセリング(ANC)とBixbyをオフにすると、イヤフォンの駆動時間は8時間に、ケースを使った場合は28時間に延びる。筆者の場合、午前中の長い休息時にケースへの収納の心配をすることなくBuds Proをたっぷりと使えたといっておこう。他のワイヤレスイヤフォンではそうはいかない。

Buds Proは11mmのウーファーと6.5mmのツイーターを内蔵する。音楽あるいはポッドキャストを聴くときサウンドは全体的にうまく組み合わされている。もし音にこだわりがあるなら、アプリにあるイコライザーを触るといい。スライダーではなく6つのプリセットが用意されていて、完全自在に調整できるわけではない。しかしアプリでいじり回す必要性を筆者は感じなかった。

ANCもしっかりしている。この機能をオフにするまで、通りの騒音をかき消すのにいかに役立っているか筆者はさほど認識していなかった。オフにするには側面のタッチパネルを長押しするか、アプリで操作する。タッチパネル長押しではANCとトランスペアレントモードの切り替えや途中でのオフモードのスキップがデフォルトでできる。イコライザーのようにANCの程度も調整できる。

もしあなたが真のSamsungファンなら、Seamless Switchも使える。電話がかかってきたときにタブレットとスマホの間で切り替えできるものだ。気が利いたその他のSamsung特有の機能にはGalaxy S21でのビデオ撮影時に、イヤフォンを間に合わせの小型マイクのように使うことができるというものがある。置き忘れたBuds Proを探すのにSmartThingsアプリを使うことも可能だ。

イヤフォンそのもののデザインは、かなり豆に似ているBuds Live以来、流線型になっている。プレッシャーを和らげるために耳と接触するエリアを最小化するようデザインされている、とSamsungは話す。みんなが購入前にあらゆるイヤフォンを試せないのは残念だ。どれくらい自分の耳にフィットするかは、明らかに極めて個人的なものだからだ。

ただ、Buds Proを長い間装着すると、筆者の片耳が痛む傾向にあるのに気づいた。AirPods ProやPixel Budsではなかった問題だ(この点においては Powerbeats Proも素晴らしい)。そして半ば定期的にBuds Proをいじって、その過程でタッチメカニズムを起動しているのに気づいた(これはアプリでデフォルトオフにできる)。

Galaxy Buds Proでの筆者の問題のほとんどはかなり些細なものだ。もしあなたがSamsungユーザーならラインナップに加えるのに値する商品であり、素晴らしいイヤフォンだ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:SamsungGalaxyGalaxy Budsイヤフォンレビュー

画像クレジット:Brian Heater

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(翻訳:Mizoguchi

フルHDながらリモコン付きの格安ストリーミングデバイス「Fire TV Stick」(第3世代)

Fire TV Stick」(第3世代。税込4980円)は、Amazonのストリーミングデバイスで最も安価なエントリーモデル。上位モデルとして4Kに対応した「Fire TV Stick 4K」(税込6980円)、処理能力が高いキューブ型の「Fire TV Cube」(税込1万4980円)がラインナップされているが、Fire TV Stickは上位モデルより優れている点がある。それは最新モデルということで、新UI、新機能がいち早く提供されていること。というわけで本稿では、Fire TV Stickのおさらいをしつつ、新UI、新機能についてレビューしていこう。

Amazon「Fire TV Stick」(第3世代)。参考価格は税込4980円

Amazon「Fire TV Stick」(第3世代)。参考価格は税込4980円

メジャーバージョンアップされた「Fire OS 7.2.2.8」を採用

Fire TV Stick1.7GHz/クアッドコアのプロセッサー、8GBのストレージを搭載。OSは「Fire OS 7.2.2.8」を採用している。Fire TV Stick 4KのOSは「Fire OS 6.2.7.7」なので、Fire TV StickのOSはメジャーバージョンアップされているわけだ(それぞれ2021年1月4日時点)。

Fire TV Stickのソフトウェアバージョンは「Fire OS 7.2.2.8」

Fire TV Stickのソフトウェアバージョンは「Fire OS 7.2.2.8」

通信機能はWi-Fi 5(11ac)、Bluetooth 5.0 + LEをサポート。同梱の「Alexa対応音声認識リモコン」はFire TV Stick本体とBluetooth経由で接続するが、テレビをコントロールするために赤外線(IR)送信機能も搭載されている。

サイズ/重量は、Fire TV Stick本体が86×30×13mm/32g、リモコンが142×37×16mm/43.4g。このほかにHDMI延長ケーブル、USBケーブル、電源アダプター、単4電池2本、スタートガイドが付属する。

Fire TV Stick(第3世代)同梱品一覧

Fire TV Stick(第3世代)同梱品一覧

Fire TV Stick(第3世代)本体のサイズ/重量は86×30×13mm/32g

Fire TV Stick(第3世代)本体のサイズ/重量は86×30×13mm/32g

端子は、HDMI出力とmicroUSB(電源用)を用意

端子は、HDMI出力とmicroUSB(電源用)を用意

Alexa対応音声認識リモコンには、左上から電源、音声認識、ナビゲーション、選択、戻る、ホーム、メニュー、早戻し、再生/一時停止、早送り、音量アップ、音量ダウン、ミュートボタンを配置。また、音声認識ボタンの上にマイクが内蔵されている

Alexa対応音声認識リモコンには、左上から電源、音声認識、ナビゲーション、選択、戻る、ホーム、メニュー、早戻し、再生/一時停止、早送り、音量アップ、音量ダウン、ミュートボタンを配置。また、音声認識ボタンの上にマイクが内蔵されている

ACアダプターの仕様は、入力100-240V~0.15A、出力5V 1A、容量5W

ACアダプターの仕様は、入力100-240V~0.15A、出力5V 1A、容量5W

Fire TV Stick 4K、Chromecastとの違いは?

Fire TV Stickを、比較的価格帯が近いストリーミングデバイスであるFire TV Stick 4K、「Chromecast with Google TV」(税込7600円)と比較してみよう。下記に映像、オーディオ規格の違いをまとめてみた。

映像、オーディオ規格の違い

最大解像度がフルHDであること以上に大きな違いが、Fire TV StickのHDR方式にDolby Visionが含まれていないこと。実際にFire TV StickとFire TV Stick 4KでNetflixのDolby Vision対応コンテンツを見比べてみると、ダイナミックレンジ云々以前に色合いがまったく異なっている。Dolby Vision対応テレビで制作者の意図通りの映像を観たいのなら、Fire TV Stick 4K、またはChromecast with Google TVを選ぶべきだ。

フルHDながらリモコン付きの格安ストリーミングデバイス「Fire TV Stick」(第3世代)

対応サービスの違い

一方、Fire TV Stick/Fire TV Stick 4Kと、Chromecast with Google TV最大の違いは対応サービス。

Netflix、Amazonプライム・ビデオ、YouTube、Hulu、U-NEXT、AbemaTV、TVer、Spotifyなどほとんどのメジャーサービスはどちらでも利用できるが、YouTube MusicはFire TV Stick/Fire TV Stick 4Kに非対応、Amazon MusicはChromecast with Google TVに非対応だ。自分が利用している全サービスに対応しているストリーミングデバイスを選ぶか、どちらのストリーミングデバイスにも対応しているサービスに乗り換えるか悩ましいところだ。

Apple TV(Apple TVアプリ)はFire TV Stick/Fire TV Stick 4Kで利用できる。2021年1月4日時点では、Chromecast with Google TVはApple TVに対応していないものの、今年初旬からサポートすることが<a href="https://blog.google/products/google-tv/apple-tv/"  width=

Apple TV(Apple TVアプリ)はFire TV Stick/Fire TV Stick 4Kで利用できる。2021年1月4日時点では、Chromecast with Google TVはApple TVに対応していないものの、今年初旬からサポートすることが2020年12月16日に発表されている

新世代Fire TV Stickの新UI、新機能の使い勝手は?

さて、Fire TV Stickの新UIは目的のコンテンツにたどり着くまでの時間が着実に短縮されている。旧UIはホーム画面の上に項目を配置し、下にコンテンツのサムネイルがずらりと並ぶメニュー構成で、長いスクロール操作を強いられていた。

その点、新UIはメインメニューが画面中央に配置され、まずは左右移動で「ライブラリ」「ホーム」「探す」「ライブ」「アプリ」などの項目を選び、それに応じて切り替わる画面下のサムネイルからコンテンツやアプリを選択する構成に変更されている。

また旧UIでは「ジャンル一覧」がサムネイルの最下層近くに配置されていたが、新UIではメインメニューの「探す」の中に「映画」「TV番組」「キッズ&ファミリー」「アプリストア」の大カテゴリーを用意。さらにその下部に「おすすめカテゴリー」として、「アクション」「サスペンス」「アニメ」「お笑い」「バラエティ」「ドラマ」「ホラー」「日本映画」「時代劇」「韓国ドラマ」などを配置している。旧UIのジャンル一覧よりもカテゴリーが具体的なので、より絞り込まれたコンテンツから好みの作品に出会えるはずだ。

これは旧UI。画面上に、検索、ホーム、ライブ、マイビデオ、映画、TV番組、アプリ、設定が並ぶ

これは旧UI。画面上に、検索、ホーム、ライブ、マイビデオ、映画、TV番組、アプリ、設定が並ぶ

これが新UI。画面中央に、アカウント切り替え、ライブラリ、ホーム、探す、ライブ、アプリ、設定と並んでいる。このメインメニューで選択項目を切り替えると、画面下側のサムネイルが変化する

これが新UI。画面中央に、アカウント切り替え、ライブラリ、ホーム、探す、ライブ、アプリ、設定と並んでいる。このメインメニューで選択項目を切り替えると、画面下側のサムネイルが変化する

「探す」の中に、音声やテキストによる「検索」と、「映画」「TV番組」「キッズ&ファミリー」「アプリストアな」どの大カテゴリー、より具体的な「おすすめカテゴリー」が配置されている

「探す」の中に、音声やテキストによる「検索」と、「映画」「TV番組」「キッズ&ファミリー」「アプリストアな」どの大カテゴリー、より具体的な「おすすめカテゴリー」が配置されている

「ライブ」では、ライブ対応アプリの前に「番組表」やチャンネルがサムネイル表示されるようになった

「ライブ」では、ライブ対応アプリの前に「番組表」やチャンネルがサムネイル表示されるようになった

「マイビデオ」は「ライブラリ」に変更。「ウォッチリスト」と「購入とレンタル」だけが表示されるシンプルな構成になった

「マイビデオ」は「ライブラリ」に変更。「ウォッチリスト」と「購入とレンタル」だけが表示されるシンプルな構成になった

マイメニューでアプリを選択すると、対応アプリならコンテンツが画面下に表示され、すぐに視聴を開始できる

マイメニューでアプリを選択すると、対応アプリならコンテンツが画面下に表示され、すぐに視聴を開始できる

しかし、メインメニューで「Netflix」や「YouTube」を選択してもコンテンツは表示されなかった(2021年1月4日時点)。早期対応に期待したい

しかし、メインメニューで「Netflix」や「YouTube」を選択してもコンテンツは表示されなかった(2021年1月4日時点)。早期対応に期待したい

新たに搭載されたのが「プロフィール」機能。最大6つまでプロフィールを登録可能で、プロフィールごとにダウンロードしたアプリ、その表示順、視聴履歴、ウォッチリストを管理できる

新たに搭載されたのが「プロフィール」機能。最大6つまでプロフィールを登録可能で、プロフィールごとにダウンロードしたアプリ、その表示順、視聴履歴、ウォッチリストを管理できる

フルHDながらリモコン付きの格安ストリーミングデバイス

前述のとおりFire TV Stickは、Amazonが販売する最廉価のストリーミングデバイスだ。参考価格は税込4980円だが、11~12月のタイムセールでは税込3480円、1月のタイムセールでは税込3980円で販売されていた。最大解像度はフルHDだが、音声認識リモコン付きのストリーミングデバイスとして他社の追従を許さない価格設定といえよう。

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カテゴリー:ハードウェア
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