米国でケンタやマックが活用する位置情報データスタートアップのBluedotが約9.8億円を調達

ジオフェンスと位置情報データのスタートアップで、Dunkin’(ダンキンドーナツ)、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルドなどに利用されているBluedotが、シリーズBで910万ドル(約9億8000万円)を調達したと発表した。

米国サンフランシスコに本社を置くBluedotは、自社の技術は競合のソリューションより精度が20倍高いと説明する。これはもともと、CEOのEmil Davityan(エミール・ダビティアン)氏が「車線レベル」の精度を必要とする有料道路の業界に関わっていたことによるものだ。

ダビティアン氏は筆者に対するメールで「それ以来、我々は位置情報ベースのソリューションを、小売店やレストランなどさまざまな業界に提供してきた。消費者のニーズとして優先順位の高い、価値のある非接触型のエクスペリエンスに取り組んでいる」と述べた。

同社はTempoという新しい製品をリリースして機能を増やしている。Tempoは、交通パターンなどのデータや車の乗り降りにかかる時間まで組み込んで、顧客が近づいてきたときにリアルタイムで通知するものだ。

パンデミックのため店先での受け取りやドライブスルーで接客する企業が増えている現在では、特に求められている機能だろう。顧客が店内に入ってくるにしても、おそらく接触を最小限にしたいはずだ。ちょっと気味が悪いように感じるかもしれないが、データは暗号化、匿名化されるとダビティアン氏は強調する。

「我々は個人データを収集しないし、位置情報データの追跡や共有、販売もしない。『プライバシーフレンドリー』であると主張することは簡単だが、それに集中し、ビジネスの基本とすることは本当に難しい」と同氏は述べる。

Bluedotによると、フットプリントは月間ユニークユーザー数で1年間に2,471%増加し、毎月1億2100万回の位置情報イベントを扱っているという。

同社はこれまでに2190万ドル(約23億5000万円)を調達した。今回の資金調達はAutotech Venturesが主導した。これまでに支援してきたTransurbanも参加し、新たにForefront Venture、IAG Firemark Ventures、Mighty Capitalも投資した。AutotechのAlexei Andreevm(アレクセイ・アンドレーエフ)氏がBluedotの取締役会に加わり、Mighty CapitalのJennifer Azapian(ジェニファー・アザピアン)氏がボードオブザーバーになった。

アンドレーエフ氏は声明で次のように述べている。「企業が接触を最小限にするためのソフトウェアは不可欠だ。今後、市場では非接触型のソリューションが好まれるようになると我々は見ており、Bluedotはその需要に応える態勢を整えている。特に誰もがモビリティとブランドの関わりを再考する現状では、消費者のエクスペリエンスとスケーラビリティを重視するBluedot独自のサービスは、あらゆる企業が今後成功する上で重要な要因だ」。

関連記事:位置情報データ分析のPlacer.aiがシリーズAで約13億円を調達

画像:Amin Yusifov / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

Slackがアップロードされた画像のEXIF情報削除を開始

Slackはアップロードされた写真のメタデータを削除するようになった。テックの巨人にとって取るに足りない変更にも思えるが、これで写真の出所を追跡することがずっと難しくなる。

パソコン上の文書でも携帯電話で撮影した写真でも、ほとんどのデジタルファイルにはメタデータが含まれている。ファイルサイズや作成した日時、人物などファイルそのものに関するデータだ。写真とビデオには、撮影した場所に関する正確な位置情報が入っていることも多い。

しかし、Slackユーザーにとってはこれが問題になることがある、ジャーナリストや活動家のように情報源の安全を守るために入念なセキュリティー対策が必要な人々だ。 写真の中のメタデータは、情報源を暴露したり通報者の匿名性を奪ったり、友好的でない政府が個人を標的にしやすくする恐れがある。ジャーナリストが記事を公開する前に写真のメタデータを削除したとしても、メタデータを含むオリジナルはSlackのサーバーに残っているかもしれない。ハッカーが侵入するにしても政府がデータを要求した場合でも、情報源が危険にさらされる可能性がある。

Slackは、位置情報を含め写真のメタデータの削除を開始したことをTechCrunchに正式に伝えた。
「当社が最近、Slackにアップロードされた画像から、GPS位置情報を含めEXIF(EXchangeable Image File、イグジフ)メタデータを削除するようになったことを正式に報告します」とSlack広報担当者が語った。

TechCrunchではこれをテストするために、位置情報を含む写真をSlackにアップロードした後、その画像をサーバーからダウンロードしてみた。サーバーから取得したファイルに位置情報はなかった。撮影したデバイスのメーカーやモデルなど、一部のメタデータは残っていた。

Slackは方針変更のきっかけについては語っていない。

関連記事:The Slack origin story

画像クレジット:Chris Ratcliffe/Bloomberg/ Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AppleとGoogleが新型コロナ感染チェック用モバイルアプリを共同開発、プライバシー保護も確約

AppleとGoogleは協力して個人が新型コロナウイルス(COVID-19)の感染リスクにさらされたかどうかをチェックできる分散型モニターツールを開発中だ。

濃厚接触を知らせるツールは、公衆衛生当局が新型コロナウイルスの感染を追跡し、人々に感染のリスクがあることを知らせて検査を受けるよう推奨することに役立つ。このアプリはBluetoothテクノロジーを利用し、新型コロナ感染者との接触を発見し、適切なフォローアップを送信する。

プロジェクトの最初のステップは、公衆衛生機関がそれぞれのアプリにこのツールを組み込むAPI の開発だ。次のステップではモバイルデバイスのOS、すわなちiOSおよびAndroid のレベルに機能を組み込み、ユーザーがオプトインするだけで別のアプリをインストールせずに接触追跡が可能がシステムが開発される。

このシステムは、デバイスに搭載されたBluetoothチップを使用し、短時間で変化する匿名化されたIDを発信する。 サーバーは過去14日間のIDについて他のデバイスのIDとの一致の有無を検索する。一致は2つのデバイス間の接触時間および距離をしきい値として判断を行う。

新型コロナウイルスに感染していたことが確認されたユーザーとの接触があったと判断された場合、ユーザーには「感染テストを受け、その間自主隔離を行う」よう通知される。

位置情報を利用した接触追跡はプライバシーの侵害の懸念をめぐって議論を呼び起こしているものの、多数の公衆衛生機関や大学の研究組織が採用しているテクノロジーだ。例えばAppleの「探す(Find My)」にヒントを得たMITのBluetoothツールがそうした例の1つだ。「探す」は従来の「iPhoneを探す」などと異なり、プライバシーを強く意識しており、位置情報を利用した追跡ツールでありながらユーザー以外は個人情報を知りえない。AppleとGoogleはプライバシー問題の困難の解決にあたってMITなどの組織が支援を求めたと述べている。

【略】

開発は2段階

AppleとGoogleは2週間前にこの共同プロジェクトをスタートさせた。まずAPIの互換性を確保し、できるかぎり多数のユーザーが同一のアプリを利用できるようにするのが最初の目標だ。

4月10日の説明によれば、ユーザー同士の接近をモニターするAPIは5月中旬にiOSとAndroidに導入される予定だ。AppleとGoogleによれば、これは比較的シンプルなタスクで、既存または開発中のアプリに組み込むことも比較的簡単なはずだとと述べている。APIを使う場合、アプリはユーザーに対して位置の追跡機能にオプトインするよう求める(このシステムは全体としてオプトインベースだ)。これによりデバイスに付与される短時間で変化する匿名の識別子をBluetooth機能を利用してブロードキャストする。同種のアプリをインストールしているユーザーはこのブロードキャストを受信し、これによって、誰とどのような接触があったかが特定可能となる。

プロジェクトの次の段階は効率のアップだ。つまり位置追跡機能をモバイルOSそのものに組み込むことにより、個別アプリをダウンロードする必要をなくすのが目標となる。ユーザーはOSから機能にオプトインすればよい。第1段階の感染警告アプリも引き続きサポートされるが、OSへの組み込みはさらに広範囲のユーザーに対応できる。このレベルは数カ月以内に実現できるという。

【略】

アプリの動作例

このシステムがどのように動作するのか、ひとつの例を図示してみよう。

  1. アプリのユーザー2人が一定時間、例えば10分間近くにいたとする。ユーザーのデバイスはBluetooth無線により識別子(15分ごとに変化し匿名化されている)を交換する。
  2. その後、ユーザーの1人が新型コロナウイルスに感染していると診断された場合、感染者はAPIを組み込んだ公衆衛生当局のアプリに知らせる。
  3. システムは感染が診断されたユーザーから過去14日間の識別子(匿名)をシステムに送信することを許可するよう追加の同意を求めることができる。
  4. 公衆衛生アプリには(同意を得て)感染者の識別子をダウンロードすることができ、アプリは感染リスクを伴う接触があったかどうか判断する。
  5. 接触があったと判定された場合、アプリはユーザーに今後どうすべきかさらに情報を提供する。

プライバシーと透明性

Apple、Googleはともに「プライバシーと透明性が公衆衛生アプリにおいて最重要」だと述べ、 リリースされるアプリは今後とも決してプライバシーを侵害しないと確約している。この点は、以前からACLU(米国自由人権協会)が提起してきた問題だ。

【略】

しかしACLUはこのアプリに対しては慎重ながら楽観的な見方をしている。

ACLUの監視、サイバーセキュリティ担当弁護士、Jennifer Granick(ジェニファー・グラニック)氏は次のようにコメントしている。

「位置情報を利用するこの種の追跡アプリは無料かつ迅速な検査と各種医療への公平なアクセスが広く保証されないかぎり効果がない。 またユーザーがシステム(の匿名性)を信頼できなければやはり効果的ではない。AppleとGoogleが、プライバシーの悪質な侵害と中央集権化のリスクを軽減するであろうアプローチを発表したことは事実だ。 しかしまだ改善の余地がある。位置追跡アプリがオプトインであり匿名性を確保した分散型であることを確認するため我々は今後も厳しく監視を続ける。このような機能は現在のパンデミックの期間に限り、公衆衛生の確保の目的でのみ使用されるべきだ」。

【略】

感染チェックのためのはAPIについて、Googleの ブログ記事はこちら 、Appleのスペックなどへのリンクはこちら日本語版解説はこちら)。

ACLUからのコメントによりアップデート済み。

新型コロナウイルス 関連アップデート

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

米政府はハイテク企業と協議し新型コロナとの戦いに位置情報を活す作戦を練る

Washington Postの最新報道によると、米国政府関係者は現在、携帯電話からのデータを新型コロナウイルスのパンデミック対策に活かす方法はないか、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)を含む複数のハイテク企業と検討しているという。この会談では、医療の専門家によるパンデミックと伝播を監視する可能性も話し合われている。携帯電話のデータを有効活用する有望な方法として集約し匿名化した位置情報の利用があると、その記事の情報筋は伝えている。

米国人の携帯電話から回収した位置情報は、公衆衛生の専門家が大まかな感染の広がり具合を監視しマッピングするときの役に立つ。専門家グループはすでにそれを理論化しているものの、当然のことながらあらゆる位置情報が追跡されると考えると、人々の反感は避けられない。特にそれが大規模に実施され、政府と業務提携をしている民間企業のみならず、政府の人間も含まれるとなればなおさらだ。

だがこれらの試みは、米疾病予防管理センター(CDC)による感染パターンの概要把握という目的のみに厳格に用途を絞ったもので、個々の携帯電話利用者は対象にしていない。Washington Postの情報筋は、いかなるかたちであれ、そこから政府のデータベースが構築されることはないと強調している。あくまで匿名化され集約されたデータからCOVID-19の伝播と拡散のモデルを知るためだけに限定される。

すでに、新型コロナウイルスのパンデミックに関連する問題で、世界の最大手級のハイテク企業が前例のない共同研究を開始している。情報を広めるための製品を扱う事実上すべての大手ハイテク企業は、3月16日に会合を開き、ウイルスに関するデマや誤情報の拡散に対処するため緊密に連携するとの声明を発表した。

ホワイトハウスも、ウイルスと米国の対応についてハイテク企業に助言をもらってきた。先週、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Facebook、Google、Microsoft(マイクロソフト)、Twitter(ツイッター)が参加した会合もそのひとつだ。AmazonのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)CEOは、現政権と定期的に接触している。Amazonは隔離、社会的距離の確保、収容さらには自宅待機命令に関する実質的な国際的指針に人々が対処する上で中心的な役割を果たし、ますます重要性が高まっているからだ。

今週初めに疫学者、企業幹部、医師、学会関係者が数多く署名した公開書簡が発表されたが、そこでもハイテク企業が貢献できるCOVID-19のパンデミック対策の概要が示された。そのひとつに(特にモバイル用OSを提供するAppleとGoogleに向けられているが)、ウイルス感染者と接触した可能性のある個人のために「本人の了承を得た上で、プライバシーを保護するOSの機能を接触者追跡に役立てる」といった提案がある。

もちろん、乱用を否定する保証があるなしに関わらず、広範に個人情報を収集しようという試みに警戒心を抱くのは自然なことだ。個人の自由か保護かの究極の選択を迫られ、その駆け引きが結果的に暴走するという歴史的な事例を見れば、なおさらそう感じる。New York Timesも今週伝えているが、これまで秘密にされてきたが実在していたイスラエルの携帯電話事業者とその利用者の携帯電話の自撮り写真などの個人情報データベースを使って、ウイルス感染者の位置情報を追跡しようという動きすらある。

それでも、プライバシーを保護しながらハイテク企業が持つ情報を活用する方法を探ろうという考えを、今すぐ止めさせるべきではない相応な理由はある。特に現在実施されている社会的距離を保つ措置による影響を知る上でも、そこには大きな恩恵が得られる可能性があるように思えるからだ。

画像クレジットAmin Yusifov / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

個人の位置情報販売で米連邦通信委が携帯4社に計約225億円の罰金

FCC(米連邦通信委員会)は最終的に、米国の携帯通信大手が、ほとんど何の制約も開示もなしに、加入者の位置情報を何年にもわたり密かに販売してきたことが法律違反だと正式に判断した。だが委員らは、桁外れの利益を稼ぐ企業が支払う金額として、2億800万ドル(約225億円)の罰金は「消費者の損害に見合っていない」と非難している。

罰金の金額は、T-Mobile(Tモバイル)が9100万ドル(約98億円)、AT&Tが5700万ドル(約62億円)、Verizon(ベライゾン)が4800万ドル(約52億円)、 Sprint(スプリント)が1200万ドル(約13億円)だ。(開示:TechCrunchはVerizon Mediaが所有している。これによる本稿への影響はほとんどない)。

この問題は発覚してから1年半以上続いている。最初の報道は、民間企業が加入者のリアルタイムの位置情報にアクセスし、金さえ払えばそれを誰にでも販売しているというものだった。こうした消費者のプライバシーのあからさまな悪用はすぐに批判の対象となった。携帯各社は遺憾の意を表明したが、販売プログラムをすぐに終了するどころか検証さえしなかった。販売プログラムはほとんど誰にも監督されておらず、コンプライアンスを確保するために責任は第三者に転嫁されていたことがわかった。

法律違反の内容を調査するよう要求されたFCCは調査に1年以上かけたが、その間ほぼ完全に沈黙を守った。身内であるFCCの委員らでさえ、問題の深刻さを考えればFCCの情報発信は足りないと指摘した。

ついにFCCのAjit Pai(アジット・パイ)議長は1月、「調査の結果は、各携帯会社が連邦法に違反しており、まもなく罰せられるというものだ」と発表した。注目すべきは、パイ氏が以前、名前が挙がっている主要企業の1つであるSecurus(セキュラス)で働いていたことだ。

2月28日、罰金の正式文書と委員会からのコメントが公表された。文書では、携帯各社の行為が悪かっただけでなく、手法もひどかったと説明されている。特にTモバイルの場合、停止すると表明した後もうまくやっていた。

Tモバイルは顧客の位置情報を本人の承諾なしに、受信を許可されていない第三者に開示した。このことが広く一般に知れ渡り、顧客の位置情報を保護するための安全対策が不十分であると同社が認識した後も、合理的な安全対策を取ることなく、顧客の位置情報へのアクセス権をほぼ1年にわたって販売し続けたことは明らかだ。そのため、顧客のデータが不正に開示される不当なリスクにさらすことになった。

一般的な受け止め方は、法律違反と判断して相当な罰金を求めることは称賛に値するものの、全体として見れば、Rosenworcel(ローゼンウォーセル)委員が述べたように「遅きに失した」というものだろう。

委員らによると、罰金の金額は犯罪の規模とはほとんど関係がない。なぜなら、犯罪の規模が適切に調査されなかった、または調査が試みられなかったためだ。Starks(スタークス)委員が長い声明で以下のように述べている。

数カ月間にわたり調査したにも関わらず、FCCは各携帯会社が不適切に扱った消費者データの規模を把握していない。

我々には権限と、この調査の期間を踏まえれば、時間も与えられていた。その権限と時間があれば、開示を強制して消費者の被害実態を理解できたはずだ。だが今回の通告で計算した罰金の金額は、携帯会社とロケーションアグリゲーター間の契約数、アグリゲーターと位置情報を利用するサードパーティーのサービスプロバイダー間の契約数に基づいている。各携帯会社が引き起こしたプライバシー侵害の損害額をこの計算方法で代替する必要はないし根拠も貧弱だ。各携帯会社には個人データを悪用された数千万人の顧客がいる。

そもそもFCCは実際の被害件数や内容を調査していない。契約数を開示するよう各携帯会社に要求しただけだ。スタークス氏が指摘したように、契約の1つ1つが、何千件ものプライバシー侵害に遭った可能性がある。

我々は、さらに多くの、おそらく何百万人もの被害者がいることを知っている。被害者らにはそれぞれ固有の被害状況がある。残念ながらFCCが実施した調査では被害件数がわからず、それが罰金の金額に反映されていない。

なぜ個々の携帯会社を追及しないのか。スタークス氏はSecurusが「とんでもないことをした」と言う。だが同社はまったく罰金を科されていない。FCCに罰金を科す権限がないとしても、同様の会社が他の法律に違反しているか判断できる司法省や地方当局に本件を引き渡すことができたはずだ。

ローゼンウォーセル氏が自身の声明で述べているように、罰金の計算方法そのものも最小限に抑えられているが、それ以上に非常に寛大な措置が講じられている。

FCCは、違反に対し4万ドル(約430万円)の罰金を求めているが、それは初日についてのみだ。2日目以降は1日あたり、違反ごとに2500ドル(約27万円)に減額されている。FCCは、法律上各携帯会社が負う可能性のある罰金を大幅に割り引いており、問題の大きさを考慮に入れていない。その上FCCは各携帯会社に、この計算から逃れる30日間のチケットを与えた。 この30日間の「脱獄自由」チケットは、どこからともなく湧き出てきた。

本件の調査が非常に長い期間にわたったことを考えると、違反した企業を召喚したり、市民から詳細な情報を集めなかったのは奇妙だ。一方、各携帯会社はFCCの質問に対する回答の大部分を、それに含まれる公開情報も含めて機密扱いにしようとしたが、スタークス氏とローゼンウォーセル氏が介入するまでFCCは携帯会社の主張に疑問を挟まなかった。

2億800万ドル(約225億円)は一見多額のようだが、数十億ドル(数千億円)規模の複数の通信会社がそれを分割して負担するため少額だ。各携帯会社が位置情報の販売契約期間に得た利益が、罰金よりはるかに大きい可能性を考えればなおさらだ。加入者のプライバシーが侵害された回数と、その侵害からいくら稼いだのかを正確に把握しているのは各携帯会社だけだ。こうした問題について当局が質問することなく調査は終了してしまったため、もはや知る由もない。

罰金を求める通告「Notice of Apparent Liability」は暫定的な所見にすぎず、各携帯会社は30日以内に回答するか実施延長を求めることができる。後者の可能性が高い。仮に携帯会社が回答すると(おそらく金額などに異議を申し立てる)、FCCは最終的な罰金の金額の決定にかけたいだけ時間をかけることができる。通告発行後、FCCには罰金を実際に徴収する義務はない。FCCは過去、ほとぼりが冷めた頃に徴収を拒否したことがある。もっとも、今回のような規模の罰金ではなかった。

「ついにFCCがこのひどい行為に対して罰金を求めたのはうれしいが、携帯会社にとっては事業を遂行するためのコストにすぎない」と民主党ニュージャージー州選出のFrank Pallone(フランク・パロン)下院議員(D-NJ)は声明で述べた。「これからFCCが罰金を徴収し、企業に完全な説明責任を果たさせるには長い道のりが待っている」

この問題を調査に持ち込むことになった唯一の力は世間の注目だ。そして世間の注目が政府に確実に義務を遂行させるためにも必要なのは明らかだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

位置情報データ分析のPlacer.aiがシリーズAで約13億円を調達

米国時間1月22日、位置情報と歩行者の状況を分析して小売業などのクライアントにデータを提供するスタートアップのPlacer.aiが、シリーズAで1200万ドル(約13億円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはJBV Capitalで、Aleph、Reciprocal Ventures、OCA Venturesなどの投資家も参加した。

画像: Placer.ai

今回調達した資金は、新機能の研究開発と米国での事業拡大に使われる。

Placer.aiは2016年に創業した。同社のSaaSプラットフォームはクライアントに対し、どこに不動産を借りるかまたは買うか、いつプロモーションを実施するか、どう資産を管理するかなどを判断するのに役立つ、リアルタイムのデータを提供している。

Placer.aiはクライアントがマーケティングや広告支出に関する決定を下す際に役立つよう、歩行者を分析し、さらに消費者のプロファイルも作成する。情報共有を許可しているデバイスからジオロケーションや近接するデータを収集して、こうしたことを可能にしている。Placer.aiの共同創業者でCEOのNoam Ben-Zvi(ノーム・ベン-ツビ)氏は、同社は匿名の集計データを提示し個人を特定するデータを収集しないことで、プライバシーを保護し規則に従っていると語る。また広告やローデータの販売もしていない。

Placer.aiは現在、JLL、Regency、SRS、Brixmor、Verizon(※)、Caesars Entertainmentなど、大型ショッピングセンターを含む小売業、事業用不動産、サービス業のクライアントにデータを提供している。

ベン-ツビ氏はTechCrunchに対しメールで次のように述べた。「これまで我々は事業用不動産の分野に集中してきたが、このことが小売業、サービス業、地方自治体へと(さらに消費財にも)有機的につながってきた。巨大な市場があるとわかったので、我々は核となるオーディエンスの様々なニーズに直接応えるような機能の構築に力を入れている」。

さらに同氏は、オフラインで大規模な事業を展開する小売業にとってはデータ不足が打撃となるが、「このギャップを効果的に解消することで、我々は持続可能な成長を促し、大企業を支援し、小規模な企業のリスクを最小化して積極的な戦略プランを加速させている」と付け加えた。

同様の分野を手がけるスタートアップには、Dor、Aislelabs、RetailNext、ShopperTrak、Densityなどがある。ベン-ツビ氏は、Placer.aiはより多くの種類のリアルタイムデータ分析を提供して差別化したいと語る。

同氏は「位置情報を分析する分野を扱う企業はたくさんあるが、我々は幅広い機能を有するリアルタイムのプラットフォームを持ち、国内のどこについてもアクション可能な深い洞察を提供できる唯一の企業という点で独自性がある」と述べた。

【情報開示】Verizon MediaはTechCrunchの親会社である。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

設定を無効にしてもiPhone 11が位置情報を共有しているように見える理由

セキュリティレポーターのBrian Krebs(ブライアン・クレブス)氏は、ユーザーが設定で「位置情報サービス」をオフにしても、最新のiPhone 11 Proがユーザーの位置情報を送信しているように見える理由をApple(アップル)に尋ねた。これは、アップルのプライバシーポリシーと、ユーザーの明確な意思表示に反しているではないかと。

画像クレジット:Getty Images

アップルはクレブス氏に対し、それは「所定の動作」であり、セキュリティへの影響はないと返答した。それでは、位置情報を漏洩させるバグではないかという疑念を晴らすことができなかった。

そしてクレブス氏は論理的な結論に達した。「つまりアップルは、iPhoneには位置情報を問い合わせる何らかのシステムレベルのサービスがあって、ユーザー各自がすべてのアプリとiOSのシステムサービスに対して設定をオフにしていても、それは動き続けていると言っているようだ」と書いている。

それは間違っていなかった。クレブス氏の記事が掲載されてから2日後、そしてアップルがこの問題に対するコメントを拒否してから半日以上経ってから、同社はようやく説明した。

クレブス氏が使っているiPhone 11 Proをはじめとして、新しいiPhoneにはUltra Wide Band(ウルトラワイドバンド、超広帯域無線)技術が搭載されている。アップルによれば、新しいiPhoneは「空間認知」機能を備えていて、他のUltra Wide Band(UWB)デバイスの位置を把握している。アップルは、この技術の利用方法として、ユーザーがAirDropによってワイヤレスでファイルを共有できるというもののみを宣伝している。しかしこれは、同社がかなり有望視している、位置に「タグ」を付ける機能にも使われると考えられている。これについては、まだ何も発表されていない。

「UWB技術は業界標準の技術であり、国際的な規制要件の対象となっています。つまり決められた場所ではオフにする必要があります」とアップルの広報担当者はTechCrunchに語った。「iOSは位置情報サービスを使用して、iPhoneがそうした禁止区域にあるかどうかを判断します。その際は、UWBを無効にして規制に準拠するのです」。

「UWBに関するコンプライアンスの管理と位置情報の利用は、すべてデバイス内で行われていて、アップルはユーザーの位置情報を収集していません」と同担当者は述べた。

この説明は、これまでの専門家の見立てを裏付けているように見える。Guardian Firewallの最高経営責任者で、iOSセキュリティの専門家、Will Strafach(ウィル・ストラファッチ)氏は、彼の分析によれば、位置情報がリモートのサーバーに送信されているという「証拠はない」とツイートしている

アップルは、次期iOSのアップデートで、この機能をオン/オフするスイッチを提供すると述べた。しかしストラファッチ氏は、他の多くの人たちと同様、そもそもなぜアップルが、そうした状況をはっきり説明していなかったのかという疑問を表明している

同社はもっと前にわかりやすく説明することで、うわさをつぶすことができたはずなのに、そうはしなかった。説明をしなければ憶測が拡まるだけだ。これは、この問題を報告してくれたクレブス氏の手柄だ。しかし、アップルの対応の遅れは、この問題を必要以上にかなり大きなものにしてしまった。

関連記事:iOS 13へのアップデートにあたって知っておきたいセキュリティとプライバシーの新機能

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

Facebookの情報収集に対抗するiOS 13のポップアップの奮闘やいかに?

スマートフォンのOSがプライバシー保護を重視する方向に変化すると、これまで陰で行われていたサードパーティー製アプリの活動が表沙汰となり、利益目的でユーザーの追跡や個人情報の収集を行う、巨大アドテック企業が展開した監視インフラが浮き彫りになってきた。

すなわち、今週末に一般公開されるiOS 13は、すでにFacebookの魅力的なアプリがBluetoothを使って近くのユーザーを追跡していることを突き止めたということ。

“Facebook”がBluetoothの使用を求めています。

Facebookはなぜ、こんなことをしたがるのか?Bluetooth(およびWi-Fi)のIDをマッチングさせ、物理的な位置情報を共有することで、同社のプラットフォーム上でのユーザー同士の活動をデータマイニングして、少しずつ情報を集めてソーシャルグラフを補完していくのが狙いだ。

こうした位置の追跡は、個人が(少なくとも)近くにいたことを物理的に確認できる手段となる。

それを個人情報と組み合わせることで、Facebookは人々とつながり続け、位置そのものの性質に関連する周辺データ(例えば、バーにいるとか、家にいるとか)を確保できる。それが、Bluetoothという短距離無線通信技術を逆手に取って、近接していると判断された人と人の関係性を推論するための、明確な道筋をFacebookにもたらす。

個人を対象にしたターゲティング広告を収入源とするFacebookには、人の交友ネットワークを詳しく知りたい明確な商業的理由がある。

Facebookは、人々がデバイスの接続などの善良な目的で使用するBluetoothに便乗し、その広告ビジネスを人々と“ペアリング”しようとしている。その卑怯な手口がiOS 13によって摘発されたわけだ。

広告がFacebookの事業だと、CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が米上院で話したことは、よく知られている。しかし、このソーシャルネットワークの巨大企業が出会い系サービスにも手を伸ばそうとしていることにも注目したい。同社はそこに、人々がどこで誰と時間を過ごしているかを詮索したくなる、新しい製品主導の誘因を持ち込もうとしている。

共通の好みなど無機的な信号に基づくアルゴリズムによるマッチメイキングは、別段、目新しくはない。今のところFacebookで考えると、同じページやイベントに「いいね」をしたといったものになるだろう。

しかし、誰が誰とどこでいつ会っているかといった、温かい血の通った信号(Bluetoothの機能を逆用して個人の物理的な位置を追跡することで人と人の交流に関する情報を収穫する)を加味すれば、Facebookは、人の行動をカーテンの影でこそこそ行っていた監視を、次のレベルに引き上げることができる。

Facebookのアプリのユーザーが、自分のデバイスで位置の追跡を許可すれば、つまり、位置情報サービスを有効にすると、人々の動きの追跡に対して無抵抗になってしまう。位置情報サービスは、GPS、Bluetooth、クラウドソースのWi-Fiホットスポットや携帯電話基地局の機能に関係している。

Facebookの出会い系サービスを使うには位置情報サービスが必要であることは驚きにあたらない。位置情報サービスが無効なとき、有効に切り替えるようアプリがユーザーに促すと、Facebookは私たちに明言した。またFacebookは、ユーザーが位置情報サービスを無効にしている場合は、位置の特定にWi-FiもBluetoothも使わないと私たちに述べている。

さらに同社は、ユーザーはいつでも位置情報サービスを無効にできると強調した。だが、Facebookの出会い系サービスを使いたくなければの話だ。

いつものとおり、Facebookはデータ処理の別々の目的をごちゃまぜにして、人々が自分のプライバシーを有効に守るための選択の幅を狭めている。そのため、Facebookの出会い系サービスのユーザーには、このサービスを使うか、またはFacebookによる物理的な位置情報の追跡を全面的に拒否するかの選択肢しかない。否が応でも、それしかない。

iOS 13の新しいプライバシー保護機能は、アプリのバックグラウンドでの活動をポップアップで知らせてくれるのだが、これは、AppleのCEO、Tim Cook(ティム・クック)氏が言うデータ産業複合体の不誠実な手法への明らかな対抗手段だ。手動でBluetoothの位置追跡(上記の例を参照)を無効にできる第3の選択肢を提供し、ある程度の管理権をユーザーの手に取り戻してくれる。

Android 10も、ユーザーによる位置追跡の管理権を拡大した。アプリの使用時のみ位置情報を共有できるという機能だ。しかしこのGoogle製OSは、アップルがきめ細かいポップアップで提示したものに比べるとずっと遅れている。

Facebookは、(自社にとって)厄介なスマートフォンレベルでのプライバシー保護環境の変化に対処すべく、先週、位置情報サービスの更新を行った。これは、iOSユーザーがiOS 13にアップデートした途端にFacebookのアプリから洪水のごとくあふれ出るであろうデータ取得関連の警告に、先手を打つものだ。

ここでFacebookは、「お知らせ」という形で通知を出し、バックグラウンドでの追跡戦術を積極的に表に引っ張り出そうとするアップルを混乱させる手に出た(ちょっと目先を変えただけで)。

Facebookは「Facebookでは、あなたの位置を知らせる相手を選べます」と主張するが、そこには厚かましいまでの矛盾がある(ユーザーはスマートフォンやタブレットの位置情報サービスを使って、追跡を拒否できると話している)。だが、位置情報サービスを無効にしても、Facebookがユーザーを追跡できなくなるわけではないことを、後から付け加えている。

自分の位置情報を収集して欲しくないという明らかなメッセージをFacebookにぶつけたところで、Facebookはそれを尊重するはずはない。あり得ない!

「それでも私たちは、チェックイン、イベント、インターネット接続情報などから、あなたの地位を把握できます」と書かれている。Facebookの「把握」という言葉をより深く理解するためには、これを「失敬」に置き換えるといい。

さらに厚かましいひと言は、個人情報の収集に対抗してOSがプライバシー保護対策を固めているのは、あたかもFacebookの手柄であるような主張だ。Facebookは、この前向きなお知らせを、こう締めくくっている。「私たちは、あなたがいつどのようにご自分の位置情報を共有するか、その管理方法をより容易にするための努力を続けてまいります」

広範な個人情報収集をもみ消すための誤解を招きやすい言葉(「容易にする」など)をFacebookが持ち出すのは、いつものことだ。しかしFacebookは、変革の風がびゅーびゅー吹きつけるなかで、プライバシーに関する罪を覆い隠す薄っぺらな木の葉が、いつまで耐えられると思っているのだろう。一寸先はわからない。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

iOS 13のプライバシー強化が競争を阻害するとアップルを非難するデベロッパー

アプリのデベロッパーのグループが、Apple(アップル)のCEO、ティム・クック(Tim Cook)氏に文書をしたためた。AppleのiOS 13に加えられるプライバシー重視の変更が、彼らのビジネスに悪影響を与えると訴える内容だ。The Informationのレポートによれば、デベロッパーは、アプリからユーザーの位置情報へのアクセスを可能にする機能について、Appleに反競争的行為があると非難したという。

AppleはiOS 13で、一企業としての大局的なプライバシー保護に対する取り組みの一環として、ユーザーの位置を追跡する機能の、アプリによる悪用を防止することを目指している。

現在、多くのアプリは、最初に起動された際に、アプリに対して位置情報の利用を「常に許可する」よう求めている。ユーザーは、これに1回タップするだけでいい。しかしその結果、多くの場合、実際に必要とされているより、はるかに多くの位置情報へのアクセスを、意図せずに許可してしまうことになる。

しかしAppleは、iOS 13で、アプリが位置情報へのアクセスをリクエストする方法を変更した。

起動時にユーザーに提示される確認についても、「1回だけ許可」という新たなオプションが追加された。これは、アプリが自分のニーズに合っているかどうかを判断するための猶予をユーザーに与えるためのもの。もし使えそうだと判断したら、アプリに対して継続的な位置情報のアクセスを許可すればいい。このオプションが、これまでにもあった「使用中のみ」および「許可しない」に並んで表示されるようになる。

「常に許可」のオプションも引き続き使用可能だが、ユーザーはiOSの「設定」を開いて、手動で有効にする必要がある。定期的に表示されるポップアップには「常に許可」のオプションも含まれるが、そのオプションはすぐに表示されるわけではない。

アプリのデベロッパーは、この変更が、あまり技術に詳しくないユーザーを混乱させる可能性があると主張している。

そのような変更がアプリに与える影響や、それに対するユーザーの行動を考えれば、こうしたデベロッパーの論点にも一理ある。アプリを機能させるためのスイッチを切り替えるために、いちいち「設定」を開かなければならないとなれば、ユーザーはそのアプリを使うこと自体をやめてしまいかねない。またこれは、Safariの広告ブロッカーや、iOSのキーボードを入れ替えるアプリなどが、けっして主流になれない理由を説明するものである。そうしたものも、iOSの「設定」を変更するという余計な手間をユーザーに課しているのだ。

とはいえ、AppleがiOS 13で導入する変更が、そうしたアプリを完全に機能不全にしてしまうわけではない。アプリを使い始めるための手続きを、うまくユーザーに説明することが必要となったのだ。いきなり「常に許可」を選ぶよう求めるのではなく、ユーザーに「設定」の変更方法を分かりやすく示したり、「常に許可」を選択してもらえるまでは、アプリの機能を制限しておく、といった配慮が必要となる。

また、デベロッパーの文書では、Apple純正の付属アプリ(「探す」など)は、このような扱いを受けていないことを指摘し、それが反競争的だという懸念を示している。

またこの文書は、AppleはiOS 13で、PushKitをインターネット上の音声通話(VoIP)以外の目的で使うことをデベロッパーに許していないことについても言及している。これは、一部のデベロッパーが、このAPIを悪用してユーザーの個人情報を収集していたことに端を発している。

レポートによると、その文書には「私たちは、一部のデベロッパー、主にメッセージングアプリのデベロッパーが、ユーザーのデータを収集するためのバックドアとして、これを使っていたことを理解しています」と記されている。「このような抜け穴が塞がれるべきであることには同意しますが、今Appleが(インターネット経由の音声通話機能へのアクセスを)無効にすることは、意図しない結果を招くことになるでしょう。それによって、リアルタイムの位置情報を正当な理由で必要とするアプリが、実質的に使えないものになってしまいます」。
(訳注:iOS 13では、バックグラウンドでVoIPサーバーに接続し続けることが禁止されると言われている)

この文書は、TileのCEO、CJ Prober(CJ プロバー)氏、Arity (Allstate)の社長、Gary Hallgren(ゲイリー・ホールグレン)氏、 Life360のCEO、Chris Hulls(クリス・ハルス)氏、デートアプリHappnのCEO、Didier Rappaport(ディディエ・ラパポート)氏、Zenly(Snap)のCEO、Antoine Martin(アントワーヌ・マーティン)氏、ZendriveのCEO、Jonathan Matus(ジョナサン・マタス)氏、ソーシャルネットワーキングアプリTwentyの最高戦略責任者、Jared Allgood(ジャレド・オルグッド)氏によって署名されている。

AppleはThe Informationに対して、オペレーティングシステムに対する変更は、すべて「ユーザーのためにする」ものであり、ユーザーのプライバシーを保護するためだと述べた。また、App Store上で配布するアプリは、すべて同じ手続きを遵守したものでなければならない、と念を押した。

これは、ユーザーのプライバシーの向上を狙った措置を誤ると、結果的にさまざまな弊害や使いにくさをユーザー自身に負わせかねない、という教訓と捉えることができる。考えられる解決策の1つは、個々のアプリ内で、iOSの「設定」画面を開けるようにすることだろう。そこで、アプリのすべての許可設定をユーザーが直接変更できるようにするのだ。位置情報へのアクセスから、プッシュ通知の許可、モバイルデータ通信の利用、Bluetooth共有の許可まで、すべての設定だ。

このニュースは、ちょうど米司法省がAppleの反競争的行為を調査することを検討している最中に伝えられた。AppleがThe Informationに伝えたところによれば、PushKitを利用していて、変更の影響を受けるデベロッパーの一部については、Appleも協力して別の解決策を探っているところだという。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

iOS 13では位置情報の利用を「1回だけ」許可できる

アップルは、アプリに対してiPhoneの位置情報の利用を1回だけ許可できるようにする。これまで位置情報の利用には「常に許可」「許可しない」「このAppの使用中のみ許可」の3つの選択肢があった。

「1回だけ」位置情報の利用を許可するのは、小さな変更ではあるが、プライバシーを重視する人々には魅力があるだろうとアップルは述べた。

アップルのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長、Craig Federighi(グレイグ・フェディリギ)氏は米国時間6月3日にWWDCで「アプリに位置情報を1回だけ共有できる。その後、アプリが位置情報を必要とするときにはあらためて利用者に許可を求める。これは初めて登場する設定だ」と話した。

あるアプリを使うにはリアルタイムの位置情報が必要だが、常に自分の居場所の情報を提供したくはない。そういうアプリをダウンロードする人に役立つ機能だ。

さらにアップルは、位置情報を利用するアプリはiPhoneにレポートの形式で情報を記録すると説明した。「だから利用者はアプリが何をしているかを知ることができる」とフェディリギ氏は言う。

アプリは利用者の位置情報を常にGPSから特定しているわけではない。たいていの場合、Wi-Fiネットワークの情報、IPアドレス、さらにはBluetoothのビーコンのデータも利用して位置情報を特定し、広告のターゲットの精度を上げている。位置情報の利用を1回だけ許可する設定について「こうした乱用を封じるものだ」とフェディリギ氏は語った。

きめ細かくなった新しい位置情報の許可の設定は、今秋登場のiOS 13に搭載される予定だ。

画像:Screenshot / TechCrunch

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

企業の“位置情報”活用を支えるレイ・フロンティアが三井物産から3億円を調達、モビリティ分野強化へ

写真左からレイ・フロンティア代表取締役の田村建士氏、三井物産モビリティ第一本部 交通プロジェクト部 部長の野瀬道広氏

人工知能を活用した位置情報分析プラットフォーム「SilentLog Analytics/SDK」を展開するレイ・フロンティアは2月14日、三井物産を引受先とする第三者割当増資により3億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を活用して組織体制を強化するとともに、国内外の企業に対し行動データの収集・分析サービスの提供を進める。三井物産とは注力分野のひとつとなるモビリティ領域において連携し、新サービスの開発などにも取り組む計画だ。

レイ・フロンティアは2008年の設立。2015年にICJとアドウェイズから数千万円規模とみられる資金を調達しているほか、2016年にもみずほキャピタル、イード、環境エネルギー投資、いわぎん事業創造キャピタルなどを引受先とした第三者割当増資を実施している。

収集から分析・活用まで、企業の位置情報活用をトータルで支援

アプリケーションやIoTデバイスなどから収集された“ユーザーの行動データ”を活用して、個々に最適化なサービスを提供しようという動きが年々加速している。レイ・フロンティアはその中でもユーザーを知る上で重要な要素となる“位置情報”にフォーカスした事業を展開するスタートアップだ。

位置情報を収集するための「Silentlog SDK」と収集したデータを分析する「SilentLog Analytics」を軸に、企業の位置情報の活用をトータルでサポートする。

もともとレイ・フロンティアはARアプリの開発からスタート。そこから位置情報に特化する形にシフトし、受託開発事業などを手がけていた。2015年に紹介した「SilentLog」は受託開発で培ったナレッジも活用して作った個人向けのライフログ管理アプリだ。

現在も約4万人のユーザーがいるという同サービスに蓄積された情報から、人の行動パターンを分析する独自のアルゴリズムを開発。そのアルゴリズムを始めとした知見は企業向けのSilentlog SDKやSilentLog Analyticsのベースにもなっている。

企業はSilentLog SDKをスマホアプリに組み込むことで、高密度な位置情報を取得することが可能。スマホに搭載されているセンサーデータを用いた独自技術によって、バッテリーの消費を一日平均3%にまで抑えながら数秒単位での位置情報を取得できる点が特徴だ。

このSDKを通じて収集した行動データやその他のデバイスから収集された情報をリアルタイムに匿名で分析するのがSilentLog Analyticsの役割。導入企業は機械学習処理が行われた位置情報分析データを基に、ユーザーの嗜好や行動特性などを踏まえた細かいペルソナを作成したり、個々に最適化した情報の配信したりといったことができるようになる。

同社の特徴はSilentLogを通じて自分たちで生のデータを集め、独自のアルゴリズムを作れること。そこに開発会社としていろいろな位置情報サービスの裏側を作ってきた経験を合わせることで「リサーチに近い段階からサービスの企画、アプリケーションの設計まで一気通貫で支援できる」(レイ・フロンティア代表取締役社長CEOの田村建士氏)という。

一例をあげるとイードと共同開発する燃費管理サービス「e燃費Ver.4.0」や宇都宮市の「うつのみや健康ポイント」を始め、災害時における人流分析運転挙動システム情報信託プラットフォームなど幅広いジャンルでなどでSilentLog Analytics が活用されている。

モビリティ分野では新サービス展開も計画

田村氏によると特に引き合いが多いのはモビリティ、ヘルスケア、都市開発といった領域。今回の調達先である三井物産はもともとモビリティ分野でレイ・フロンティアの事業展開をサポートしていたそうで、そこでの反応が良かったために出資へと繋がったそうだ。

近頃は「MaaS」という言葉を目にする機会が増えてきたけれど、レイフロンティアでは三井物産のモビリティ第一本部とタッグを組みながら、今後モビリティ関連の事業を手がける企業の位置情報活用を積極的にサポートしていく。

利用者の行動特性に応じた各種モビリティサービスの提供、行動変容を通じた混雑緩和や新たな移動・行動の創出、複数交通手段のシームレスな連携など、新サービスの開発も視野に入れながら各種サービスの展開を推進。国内に留まらず、海外企業へのアプローチも強めていく計画だ。

「ただの分析屋で終わるつもりはなく、リサーチから実際に作り込む部分までをしっかりサポートしていく。立ち位置としてはミドルウェアに近く、企業の位置情報活用に欠かせない重要な“モジュール”としての役割を担いたい」(田村氏)

What3wordsは世界をフレーズに分割する

もし///joins.slides.predict を訪れたなら、///history.writing.closets に行ってみよう。お金に余裕があれば ///cattle.excuse.luggage の Bananas Fosterもいい。もちろん、帰る前に ///plotting.nest.reshape に寄るのを忘れずに。

もし世界がwhat3wordsの考える通りになったら、それが未来の案内方法だ。ミュージシャンのChris Sheldrickとケンブリッジ大学の数学者Mohan Ganesalingamが設立したこの会社は、世界を3つの単語からなる名前で識別できる3メートル四方のブロックに分けた。ブルックリンのTotonno’s Pizzeriaなら ///cats.lots.dame、ホワイトハウスは///kicks.mirror.tops。3つの単語だけなので、簡単に見つけられて住所も面倒な緯度経度も必要がない。

世界を57兆個の小さな区画に分割してそれぞれにユニークな名前をつけたwhat3wordsに投資が殺到

チームがこのシステムを作ったのは、旅行者が人里離れた場所を見つけのはほぼ不可能だと知ったからだ。たとえば東京は住所を頼りに移動するのが著しく困難なことで知られているし、アラスカでユルト(移動テント)を借りるときのように、住所が絶えず代わってGPS座標が役にたたないケースもある。代わりに、///else.impuls.broom と運転手に言うだけで済む。

同チームは4000万ポンドの資金を調達し、現在産業界や旅行会社向けのマッピングAPIを開発している。ここで地図を見ることができる

「私は世界中で音楽イベントを運営していた。会場の多くが郊外だ。楽器もミュージシャンもゲストも迷子になった。GPS座標を教えようとしたこともあるが、正確に覚えて伝えるのは不可能だった」とSheldrickは言った。「これは、音声のために作られた唯一のアドレス・ソリューションであり、英数字のコードではなく単語を使う唯一のシステムだ」

もちろん、これには慣れが必要だ。単語の発音を間違えておかしな結果を生むこともあるかもしれないが、ポストモダン時代を生きていくための良い方法の一つとは言えるだろう。それに、場所によっては詩的に聞こえる名前もあるし、気に入らなければいつでも ///drills.dandelions.bounds に行くことができる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

いくつもの人気iPhoneアプリがユーザーの位置情報を売っている

いくつもの人気iPhoneアプリが“何千万台というモバイルデバイス”の位置情報を、データを売って儲けているサードパーティの会社と密かに共有している、とセキュリティ研究者のグループが指摘している。

お天気アプリやフィットネスアプリなどほとんどのアプリがきちんと作動するためにユーザーの位置情報へのアクセスを必要としているが、ダウンロード無料のアプリは収入につなげるために往々にして位置情報を共有している。

多くのケースで、そうしたアプリは正確な位置や他のセンシティブでユーザーの特定につながるようなデータを“絶えずいつでも”送信している。しかも多くの場合、位置情報がサードパーティと共有されるということを“ほとんど知らせていない”、とセキュリティ研究者はGuardianAppプロジェクトで述べている。

「センシティブな情報へのアクセスを許可することが、ユーザーの知らない、そして関わりを持ちたくない誰かに密かに自分のデータが送られる、ということを意味するかもしれない。そんな懸念なしに、人々は自分の携帯で好きなアプリ使うことができるようになるべきだ」と研究者の1人、Will Strafachは語る。

ネットワークトラフィックを監視するツールを使って調べたところ、研究者らはBluetoothビーコンやWi-Fiネットワークという名の下に位置データを収集する24の人気のiPhoneアプリを発見した。ユーザーがどこにいるのか、どこを訪れるのかを知るためだ。こうしたデータ売買で収入を得ている会社は、加速度計やバッテリー充電ステータス、通信ネットワークからもデバイスデータを収集している。


データ提供の見返りとして、こうしたデータ会社はデータを集めたアプリデベロッパーに金を払い、データベースを増強し、そしてユーザーの位置履歴をもとに広告を展開する。

彼らの多くが、個人を特定するようなデータは集めていないと主張するが、Strafachは緯度と経度の組み合わせで個人の自宅や職場を特定できると指摘する。

そうしたデータを収集しているアプリをいくつか挙げる。

ASKfmは10代をターゲットにした、匿名Q&Aアプリで、 Apple App Storeで1400のレートがつき、何千万ものユーザーを抱える。このアプリは”第三者とは共有されない”としてユーザーの位置情報へのアクセスを求める。しかし実際には位置データを2つのデータ会社、AreaMetricsとHuqに送っている。問い合わせたところ、このアプリデベロッパーはアプリが行なっているデータ収集は”業界の基準に適合していて、我々のユーザーにとっては許容範囲内だ”と答えた。

NOAA Weather Radarは26万6000のレビューがあり、何百万回もダウンロードされている。位置情報へのアクセスは”天気情報を提供するために使われている”。しかし3月から展開されたアプリの初期バージョンは3つのデータ会社、Factual、Sense360、Teemoに位置情報を送っていた。それからコードは除外されている。アプリを制作したApalonの広報担当は、今年初めに”いくつかのプロバイダーとかなり限定された簡単なテストを行なった”と話した。

Homes.comは、位置情報に基づいて”周辺の家を見つける”ことができる人気のアプリだ。しかしそのコードはー古いものだと思われるがーいまだに 正確な座標をAreaMetricsへと送っている。アプリメーカーは「昨年”短い間”AreaMetricsを使っていたが、コードはアクティベートされていない」と言っている。

Perfect365は1億人以上のユーザーを抱える美しいARアプリで、”ユーザーの位置情報などに基づいて体験をカスタマイズする”ために位置情報を求める。そして詳細はプライバシーポリシーを参照するようにと案内しているープライバシーポリシーでは位置データが広告に使用されると明記されている。このアプリは、今年BuzzFeedが調査結果を報じた後Appストアから削除されたが、数日後に戻ってきた。このアプリの最新のバージョンには、8つのデータ会社のコードが含まれている。この点について、アプリ開発元はコメントを避けている。

そしてリストはまだ続くーSinclairが所有する100以上のローカルニュースや天気アプリも含まれていて、これらはデータをトラッキングして収入を得ているRevealと位置情報を共有している。Revealが言うには、“ターゲット広告を出す広告主をアレンジする”ことで大メディア企業が売上を維持するのを手伝っている。

人気アプリのデベロッパーと、中には毎日何十億もの位置データを集めているところもあるデータ売買会社にとって、これは手っ取り早く儲かるビジネスだ。

データから収入を得ている会社のほとんどが、何も悪いことはしていないと否定し、ユーザーはいつでもデータへのアクセスを解除することができると言う。また、データを買う多くの会社がアプリデベロッパーに対して、位置情報を集めてサードパーティに渡していることを明言するように求めているとも言っている。

研究では、こうしたプロセスの実行はほとんど確認されていない、としている。

Revealは顧客に対し、位置データの使用をプライバシーポリシーに明記するよう求めているとし、さらにはユーザーはいつでもデータへのアクセスを解除することができると話している。HuqもReveal同様、自社のサービスを説明するという方策を“パートナーアプリが履行しているか確かめるために定期的なチェック”を実行している、と話す。コーヒーショップや小売店といった公共の場所から主にBluetoothビーコンデータを集めるAreaMetricsは、ユーザーから個人情報を受信することには“関心なし”としている。

Sense360は、集めるデータは匿名化されていて、アプリにはユーザーのはっきりとした同意を得るよう求めている、としているが、Strafachは彼が見たアプリのほとんどがそうした保険的な意味合いのある文言を含んではいなかった、と指摘した。しかし、Sense360はなぜ特定のアプリと手を切ったのか、というより具体的な質問に対しては答えなかった。Wireless Registryも、アプリ側にユーザーの同意を得るよう求めていると言っているが、ユーザーのプライバシーを確保するためのセキュリティ手段についてはおそらくコメントしないだろう。inMarketは、広告の基準とガイドラインに従っている、と文面で述べた。

Cuebiqは、データを蓄積して送るために“高度な暗号方法”を使っていると主張しているが、Strafachはデータがスクランブルをかけられているという“証拠はなかった”としている。Cuebigは、“トラッカー”ではない、と言い、そしていくつかのアプリデベロッパーはユーザーのデータを渡して収入を得ているが、ほとんどのアプリデベロッパーは分析のために使っている、とも言う。そしてFactualは広告と分析に位置データを使っているが、ユーザーからアプリ内での同意を得なければならないと話した。

Teemoにも話を聞こうとしたが、質問に答えなかった。SafeGraph、Mobiquity  、Fysicalはコメントのリクエストに応じなかった。

「実行に移さなければならない自己規制のようなものがあるにもかかわらず、ほとんどの会社の主張や行なっていることには法的責任を伴っていない」とStrafachは語る。

またStrafachは、ユーザーができることはそう多くないが、iPhoneのプライバシー設定で広告トラッキングを制限することで、位置情報トラッカーがユーザーを特定するのは難しくなる、と話した。

プライバシーポリシーがないアプリに対するAppleの取り締まりは来月実施される。しかし、ほとんどの人がそもそもプライバシーポリシーを読まないことを考えると、アプリ側がすぐに行いを改めるということはなさそうだ。


[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

Googleマップ、「現在地を共有」に相手のバッテリー残量を表示

2017年の初めにGoogleマップに 現在地を共有する機能が追加された。ユーザーはGoogleマップ上で近くにいる親しい友達や家族に自分の現在地を教えることができるようになった。この機能にちょっとした、しかし重要な情報が追加された。スマートフォンのバッテリー充電状態だ。

こういう具合だ。

なぜ相手のバッテリー情報などが表示されるのか不思議に思うユーザーもいるだろう。

友達の現在位置を知ろうとしても相手の携帯が死んでいれば反応はない。アプリ側でできることはない。たいていの位置情報共有サービスでは単に接続中のアイコンがぐるぐる回り続けるだけだ。ユーザーはどうして反応がないのかいぶかることになる。スイッチを切っているのか、電波が届かないのか、スマートフォンが盗まれたのか?

しかしバッテリー情報が含まれるようになれば、もうすぐ充電残量が失くなる状態だということがわかる。次に位置情報をアップデートしたときに反応がなければ「残量が失くなったのだろう」とかなりの確信をもって推測できる。

この機能に最初に気づいたのはAndroidPoliceで、 去る2月にGoogle Maps APKを解析したときに発見した。その後、「自分のGoogleマップでこの機能を見た」という報告がちらほら上がっていた。中にはバッテリーの残量が低くなっているときだけこの情報が表示されるというバリエーションもあった。しかし今日(米国時間8/2)から利用範囲は大きく拡大されたようだ。

なるほど便利な機能だが、Googleが最初に発明したわけではない。たとえば昨年Snapchatが買収したソーシャルマップのZenlyも2016年のスタート時点から同様の機能を備えていた。

画像:: NurPhoto / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

位置情報からライフスタイルを推測して広告を配信するジオロジックが1億円を資金調達

位置情報データをもとにした広告配信サービスなどを提供するジオロジックは6月22日、総額約1億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先はGenesia VenturesLINE子会社のLINE Venturesが運用するファンド、東急エージェンシーの各社・ファンド。ジオロジックにとって今回の資金調達はシリーズAラウンドに当たる。

ジオロジックが提供するアドネットワーク「GeoLogic Ad(ジオロジック・アド)」は、スマートフォンユーザーの行動を解析することで、ライフスタイルや興味などを推定して広告を配信するサービスだ。

「今近くにいるユーザー」だけでなく、ある地点を過去に訪問したユーザーを対象に広告を配信できるほか、大学、ショッピングセンター、工場などの施設の訪問者や、鉄道路線の利用者などにターゲティング配信ができる。

GeoLogic Adの面白いところは、「お店の近くに来たことがあるユーザーにクーポンを配る」といった従来の位置情報を使ったスタイルの広告配信だけでなく、「この行動パターンを持つユーザーはどういう人か」を推測して広告配信が行える点だ。

ジオロジックではアドネットワークのほかに、マーケティングのための独自の地理情報データベース「GeoGenome(ジオゲノム)」を保有している。

GeoGenomeは国勢調査などのデータをもとに、どの住所にどのような人がすんでいるか、町丁目単位で地域傾向を分類。住所に対して「超高級住宅地のエグゼクティブ」「子育てマイホーム」「超高齢化が進む農村」など36の地域クラスターが割り当てられている。

GeoLogic Adでは、この地理情報とスマートフォンの位置情報データを掛け合わせることで、ユーザーをプロファイリングする。

たとえば、同じ「六本木に夜いる人」であっても、一人暮らしなのかファミリーなのか、都心住まいなのか近郊に住んでいるのか、などで趣味嗜好は異なるはずだ。それらを行動データから推定することで、従来より広い範囲のユーザーに対して広告配信を行う。

またリアル店舗を持たないアプリやサイトなどの提供者でも、位置情報を活用してターゲティングを行い、広告を配信することが可能となる。

ジオロジックを設立した代表取締役社長の野口航氏は、NTTコミュニケーションズからサイバーエージェントに転職し、アドネットワークのアルゴリズム開発やマーケティングに従事。事業拡大にともない分割して設立されたマイクロアドでは京都研究所所長を務めていた。

その後2014年11月にジオロジックを創業。2015年2月に地理情報データベースGeoGenomeの提供を、2016年2月からはGeoLogic Adの提供を開始した。

写真前列中央:ジオロジック代表取締役社長 野口航氏

ジオロジックではこれまでに、乗り換え案内サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究所から2017年3月に資金調達を実施している。

GeoLogic Adは現在、広告主数300社を超え、同社の主力サービスとして成長。位置情報広告事業の伸びにより、同社は既に黒字化しているが、資金調達に至った理由について野口氏はこう話している。

「今回の調達は、事業会社であるLINE、東急エージェンシーとの連携の性格が強い。LINEと東急エージェンシーとの事業シナジーに加え、今年の位置情報広告市場の立ち上がりを確信し、そこで勝つための布陣を整えるため、資金調達に踏み切った。調達資金はGeoLogic Adの販売・開発体制の拡充に投資する」(野口氏)

各社との連携内容については「具体的にはまだ言えないが」としながらも、「LINEとは特にネット広告事業と連携し、O2Oの分野で協業を検討していく」と野口氏は言う。

また東急エージェンシーについては「チラシ広告のクライアントが多い点が強み」とし、「デジタル内でのチラシ的な商品の共同開発を考えている。また東急グループの持つ位置情報との連携や、投資先となっているスタートアップとの連携も検討していきたい」と野口氏は述べていた。

位置情報データ関連のスタートアップでは、データをAIも利用して統合的に解析し、施策の提案も行うプラットフォームを開発するクロスロケーションズが6月20日に数億円規模の資金調達を行ったばかり。今後も既存の地理情報データや位置情報プロダクトをちょっとひねった視点から、新たなサービスが生まれそうな分野だ。

「位置情報3.0」時代を支えるデータ活用プラットフォームへ、クロスロケーションズが数億円を調達

位置情報データ活用プラットフォーム「Location AI Platform」を開発するクロスロケーションズは6月20日、NTTドコモ・ベンチャーズ、アイリッジ、アドインテより資金調達を実施したことを明らかにした。具体的な調達額は非公開だが、数億円規模になるという。

今回調達した資金をもとにLocation AI Platformの開発体制を強化し、機能拡充や調達先各社との協業に向けたシステム開発を進める。

位置情報3.0時代へ

近年スマホを始めとする新しいデバイスやメディア、テクノロジーの登場によって、さまざまな領域でパラダイムシフトが起こり始めている。

クロスロケーションズが取り組む「位置情報データ」もまさにそのひとつ。同社で代表取締役を務める小尾一介氏は「世の中が『位置情報3.0時代』へと向かっている最中であり、全く新しいデータの世界へ突入しようとしている」という。

位置情報データがビジネスで活用される一例としてイメージしやすいのが、1990年代の後半から普及したGPS搭載のカーナビだ。小尾氏はこのような仕組みを位置情報1.0と説明する。その後スマホの普及で2.0の時代が到来。そして今、日本版GPS「みちびき」の本格運用や各種センサー、IoTデバイスなどの進化によって3.0時代を迎えようとしている。

1.0の時代は地図関係の情報などがメインで、そこに人の要素がでてくることはなかった。それが2.0以降になると、スマホのGPSからとれる位置情報データによって「特定地域にいる人に対して広告を出す」といったことも可能に。今後ビーコンやIoTデバイスが広がることで、位置情報の利用分野はあらゆる産業や公共サービス、家庭、個人へ拡大することも見込まれている。

クロスロケーションズのLocation AI Platformは、各種位置情報やGIS(地理情報システム)関連データを統合し、統計的なモデル化を実行。その上でAIによる特性把握やデータ活用の提案までをカバーするプラットフォームだ。

たとえば出店計画を立てる際や自社に来店する顧客を分析する際に、位置情報データを活用することで「このエリアにはどのような顧客層が普段訪れているのか」「自社店舗にはどのエリアから、どんな顧客が、どれくらい来店しているのか」といったことが分析できるのだという。

さまざまな位置情報データを統合・分析し、新しい発見を

Location AI Platformでは蓄積したデータの解析や統計、モデリングだけでなく、活用方法のレコメンにもAIを利用する計画。位置情報をもとに状況や目的に応じて適切な施策を提案する、といった機能を盛り込んでいく。

小尾氏の話では昨今、地図ナビゲーションやスマホゲーム、スマホ広告など各分野ごとに位置情報が独自の形で活用されてきたようだ。そのためGPSからの緯度経度情報、ビーコンなど特定地点に設置されたセンサーからの情報、携帯基地局の加入者情報など位置情報の種類や形式が別々に。結果として蓄積されたデータを統合的に管理したり、活用したりすることは難しかった。

もちろん各分野で集めた情報はビジネスに活かせるが、「データを重ね合わせることでより新しい発見や価値が生まれてくる」というのが小尾氏の見解だ。

クロスロケーションズはシンガポール発のスタートアップNearと、Google Japanの執行役員やデジタルガレージ取締役を務めた経験を持つ小尾氏ら、現経営陣の合弁により2017年11月に設立された。

Nearはかねてから位置情報データを活用した広告配信プラットフォーム「Allspark」を、日本を含むグローバルで展開。小尾氏は日本事業のアドバイザーを務めていたそうで、日本市場にある程度フォーカスしたプロダクトを作るため、Nearの日本チームのメンバーを中心にクロスロケーションズを立ち上げた。

同社ではNearが保有するデータと、ビーコンなどから取得したデータを持つパートナー企業から集めた情報をLocation AI Platformに統合し、位置情報3.0時代のスタンダードとなるプラットフォームを目指す方針。

今回のラウンドも純投資ではなく、ユニークな位置情報データやプロダクトを持つ3社との協業も含めた資金調達になるという。

Niantic、ポケモンGOの次はハリー・ポッターと発表――噂のARゲームは来年リリースへ

Niantic LabsのポケモンGOは世界的ヒットとなった。モバイルデバイスで作動するロケーション・ベースのAR〔拡張現実〕テクノロジーと膨大なファンを持つIP〔知的財産〕を組み合わせたことが同社の大成功のカギだった。ならばハリー・ポッター・シリーズをテーマにしても同様の熱狂的なファンの反応を期待してもよいはずだ。

Harry Potter: Wizards Unite〔ハリー・ポッター:ウィザーズ・ユナイト〕と題されたARゲームは2018年にリリースされる。開発はNianticとWarner Bros. Interactiveおよびその新たな子会社のPortkey Gamesだ。

NianticがポケモンGOスタイルのハリー・ポッター・ゲームを開発しているという噂は昨年、同社がハリー・ポッターのゲーム化ライセンスを取得したときから出ていた。しかし近くゲームが公開されるという噂はすぐに否定され、オリジナル記事もウェブから削除された。

ハリー・ポッター・ゲームの存在はついに公式のものとなったが、詳細はまだ明かされていない。リリース時期についても「来年のいつか」というだけだ。ただし内容についてはNianticのARゲーム、Ingressの影響を強く受けたものになる。このゲームではプレイヤーは2つの陣営のいずれかに所属し、現実世界を広く歩き回り、パワーアップ・アイテムを集め、ポータル地点を守り、コントロール範囲を広げていく。

このIngressの仕組みはハリー・ポッターの世界観に非常にうまく適合する。IngressのSF的設定を剥がせばその骨格はハリー・ポッターをARゲーム化するために生まれたといっていいぐらいだ。また当初Ingressで(後にポケモンGOで)収集された位置情報データベースがそのままゲーム化に活用できるはずだ。

アップデート: Nianticの公式発表はこちら。Harry Potter: Wizards Unite

画像:Warner Bros.

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebook、匿名位置情報を人道支援団体と共有へーー災害支援の効率化を目指す

Faceboookは新たなイニシアチブのもと、人道支援団体に対して被災地域のユーザーの位置情報を提供することを決めた。これにより、各団体は災害発生時に市民の避難場所や避難元となる地域を把握できるようになる。このFacebookの決定からは、ユーザー追跡データの大きな可能性を感じることができる一方で、同社はこのデータを使って他にどんなことができてしまうのかという問いが再び頭をよぎる。

Facebookで公共政策リサーチマネージャーを務めるMolly Jackmanは、ブログポスト動画の両方で新たな”ディザスターマップ”について説明しており、関連情報はまずUNICEFや国際赤十字赤新月社連盟、国連ワールドフードプログラムと共有されることになる。

提供情報は大きく以下の3つのカテゴリーに分けることができる。ちなみに、全てのデータはGPSのほか、ユーザーがFacebook上で何かしたときに生成される位置情報から収集されていると考えられる。

地域別人口密度マップ(Location density maps)からは、直近でユーザーがどこにいたかについての大まかな情報を掴むことができるので、時系列で並べたり他の情報と比べたりすることで有用な洞察を得られる。

ムーブメントマップ(Movement maps)は、近所内であれ異なる街のあいだであれ、ユーザーがいつ、どのように移動したかということを示すものだ。この情報があれば、その時々の避難場所や障害にリソースを集中させることができる。

安全確認マップ(Safety Check maps)には、どこでユーザーがFacebookの安全確認機能を利用したかが表示される。もしもユーザーが一か所に密集していれば、その場所は洪水の影響を受けにくい、もしくは地震の影響をそこまで受けなかったところだと考えられる。

どこに水を輸送し、どこに避難用のシェルターを設置すればいいかといったことを考える上で、上記のような最新情報がどれほど役に立つかはすぐに想像がつくだろう。もちろん全ての位置情報からは個人情報が取り除かれ、ひとつの塊として扱われる上、パートナーシップを結んだ各団体は「Facebookのプライバシースタンダードを尊重」しなければならないとJackmanは記している。

その一方で、今回のようにFacebookがユーザーデータを使って社会の利益になるようなことをしようとすると、同社は他に何ができるのかと疑わずにはいられない。

一体Facebookはユーザーの移動に関し、他にどのような情報を(恐らくは広告主のために)追跡しているのだろうか? 今回のような実験的な試みに自分のデータが使われているとユーザーはどのように知ることができるのか? 利用される情報にはFacebookのプラグインやクッキーから拾い集めたデータも含まれているのだろうか? 誰がデータにアクセスすることができ、データの粒度と匿名性はどの程度なのか?

Facebookには上記のような問いに回答する法的な義務はなく、私も同社に悪意があるのではと疑いたくはない。しかし、人道的な目的と私的な目的の両方を簡単に満たせるようなツールが誕生すると、なぜか前者の話しかきかないというのは気になる点だ。

いつもの通り、FacebookやGoogleのように大量のデータを保有している企業が「集めたデータは〇〇の目的では使いません」と明言しない限り、あなたのデータはまさにその目的でも利用されていると考えた方がよいだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

英ガトウィック空港、屋内ナビゲーション用に2000個のビーコンを設置

空港やショッピングモールなど複雑な構造をした施設の中では、なかなか目的の場所にたどり着けないことがある。Googleは3Dセンサーを搭載したスマートフォンを使って、GPSでは測定しきれない場所でもナビゲーション機能を使えるようにしようとしているが、それ以外の解決策になり得るのがビーコンだ。施設のいたるところにビーコンを設置すれば、スマートフォンがその信号を拾って現在地を特定できるようになるので、ユーザーはスムーズに目的地へ向かうことができる。

イギリスで2番目に利用者数の多いガトウィック空港は、数年間にわたる改革プログラムの一環として、この度ビーコンを使った屋内ナビゲーションシステムの導入を決めた。

ふたつのターミナルには、既に合計約2000個のバッテリー駆動のビーコンが設置されており、今後地図アプリを開くとより正確に現在地が表示されるようになる。さらにこのビーコンはARナビゲーションツール(冒頭の写真)にも利用される予定で、ユーザーはスマートフォンのスクリーン上に表示される矢印に従って進むだけで目的地にたどり着けるようになる。なお、このシステムではユーザーの現在地を誤差3m以内で特定できるとされている。

また、ガトウィック空港は自分たちのアプリだけでなく、各航空会社のアプリやサービスとも屋内ナビゲーションシステムを連携させようとしている。もしもこれが実現すれば、航空会社は搭乗口に現れない乗客に通知を送ったり、位置情報をもとにその人の荷物をおろすかどうかといったことを決めたりできるようになる。

空港内の小売店やテナントもこのシステムを使うことで、ユーザーが店舗の近くにきた際にマーケティングメッセージや割引情報を送れるようになる(少なくとも通知を受け取るよう設定しているユーザーに対しては)。

なお、ガトウィック空港はビーコン経由で利用者の個人情報を集めることはないが、列の長さを見たり、混雑を解消するために人の流れをコントロールしたりといった運営上の理由で「エリア別の人の密度」に関する情報は集める予定だと話している。

システムの開発にあたり、ガトウィック空港はイギリスのスタートアップPointrの協力を仰いだ。ソフトの開発やシステムの保守以外にも、Pointrは3D ARナビゲーションをサポートしたSDKをサードパーティに提供していく予定だ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

古地図やイラストの情報をGPSと連動する「Stroly」開発元が総額1.4億円を資金調達

地図と情報というと、商圏分析によるマーケティングや防災など、ちょっと堅めの活用方法を思いつきがちだけれども、IngressやポケモンGO、あるいはブラタモリの人気を見れば分かるように、もともと地図や位置情報って、それだけでも“楽しい”ものだと思う。2月にα版がローンチされた「Stroly(ストローリー)」は、イラストマップや古地図とGPSとを連動させて、地図の裏側にある“楽しさ”を垣間見ることができるサービスだ。

Strolyを開発したのは京都発のスタートアップ、ストローリー。同社は5月17日、大和企業投資、京銀リース・キャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、中信ベンチャーキャピタルの各社が運営する各ファンドを引受先とした総額約1.4億円の第三者割当増資の実施を発表した。今回の資金調達はシリーズAラウンドにあたり、ストローリーにとっては、初めての外部からの調達となる。

街歩きが楽しくなる地図のプラットフォームStroly

Strolyについては、2月のローンチ時の記事に詳しいが、ここで簡単に説明しておくと、縮尺や方位、位置情報が正確でない古地図やイラストマップでも、緯度・経度情報と照らし合わせて連動させ、現在地や地図上のポイントを表示することができるプラットフォームだ。スマホ上で表示させれば、江戸時代の地図を表示させながら街をぶらぶら歩く、なんてこともできる。

上野の森の錦絵にStrolyで位置情報をプロットしたもの

Stroly公開の前には、50くらいの自治体を顧客とした受託開発による、古地図と連動した地図の提供が多かった。しかし、案件ごとに個別にアプリを開発していてユーザーが横断的に利用できるものがなかったため、さまざまな機能を網羅したプラットフォームとしてStrolyを開発したという。

Strolyは企業や自治体向けでは、主にブランディングツールとして利用され、地図好きの商店主が参加する商店街や、街の文化保存会などで、街おこしに利用されるケースも多いそうだ。2月のリリースからこれまでに、京阪電車の1日乗り放題チケットの特典イラストマップや、上野文化の杜のイラストマップ古地図(江戸切絵図)錦絵に対応させたもの、神田祭の現代の巡行路明治初年の巡行路などが提供されている。

神田祭の巡行路(左が現代、右が明治初年のもの。明治の地図は皇居を上方向として書かれているため、北が右手になっている)

Strolyでは、自作のイラストマップを取り込んで正確な地図の位置情報と対応させ、オリジナル地図として表示することも可能だ。屋外の情報であれば、イラストでも古地図でも地図さえあれば(その地図のライセンスに問題がなければ)、どこでもGPS情報とマッピングでき、地図を多数持つ地図好きの有志とのコラボレーションによる、さまざまな地図の取り込みも進めているという。

地図を通して多様な世界の見方ができるプラットフォームへ

ストローリーは2005年に国際電気通信基礎技術研究所の社内ベンチャーとして始まり、2016年にMBOを経て、独立した。今回の調達資金は企業・自治体などのビジネス利用の促進と、開発のための人材確保に投資するとしている。開発では、Strolyに投稿された地図の利用状況をユーザーが見られる機能の将来的な実装や、ロックフェスティバルなどの大規模イベント会場での利用にも耐えるインフラ整備なども検討しているそうだ。また海外への進出もにらみ、多様な価値観を持つ、いろいろな国籍の人材を採用するとして、既に2名のフランス人を社員に迎えたという。

ストローリー代表取締役社長の高橋真知氏は、Strolyの目指す世界について「地図を通して、世界の多様な見え方をシェアできるプラットフォームにしていきたい」と話す。

地図とは元来、恣意的な位置情報を平面に表現したものだ。今や、戦時中には手に入れることもできなかった“正確な”地図が提供され、地図アプリで現在地まで分かるようになったが、地図の後ろに隠れたストーリーは簡単には見えてこない。Ingressのキャッチフレーズ「The world around you is not what it seems.(あなたの周りの世界は見たままのものとは限らない)」ではないけれども、“正しい”地図が必ずしも、その土地が持つ全ての顔を見せてくれるものとは限らない。

高橋氏は「そこに住んでいる人はその土地をどう見ているのか、過去の人はどう見ていたのか、未来にはどうなっていくのか。そういった情報はGoogle Mapだけでは意外と見えてこない。地図を通して街の新しい発見ができて、地域とのコミュニケーションにつながるようなサービスを提供したい」と言う。

「最終的には世界中から地図が投稿できるようにして『地図を投稿する文化』を創りたい。YouTubeがローンチした当初はみんな『誰が動画をアップロードするんだろう?』と思っていたはずだけれども、今では誰もが簡単に動画を投稿して、観光PRなどでも使われている。そんな感じで地図についても、みんなが緯度・経度の情報が付いたものをどんどん投稿するようになればいい。地図がトップダウンで提供されるものから、ボトムアップで共有されるものになればいいと思う」(高橋氏)