グーグルはロシアでの広告販売を停止しマイクロソフトは販売と営業の全体を停止

先週のロシアのウクライナ侵攻と隣国への侵略行為の継続に対し、テクノロジー業界からのさらなる応答としてGoogle(グーグル)とMicrosoft(マイクロソフト)は、どちらもロシアでの販売を停止していると言われる。

私たちの理解ではGoogleが停止したのは同社自身の広告の販売で、それは昨晩(米国時間03/03)始まって、その後の数時間で展開された。そのニュースは今朝、ロイターが報じた。

それはGoogleが初めてではなく、その前にSnapとTwitterもロシアでの広告の販売停止を発表した。ただし広告事業の規模は、Googleの方が相当大きい。

Googleが行うのはロシアにおけるすべての広告の停止であり、検索広告とYouTubeとディスプレイ広告のすべてが含まれ、停止は直ちに実行される。すなわちロシアの人たちは、広告のないGoogleのサービスやアプリを見ることになる。

ただし自国で独立のジャーナリストが前例のない弾圧に遭っているときであっても、ロシア以外の国では広告は健在で、ロシアの広告主がそのスペースを買うことは普通にできるし、それらの国で広告は普通に掲載される。

つまり、ロシアの出版物がGoogleの広告ネットワークを利用して国外で広告を掲出し、コンテンツの収益化を追求することは十分に可能だ。一方今朝ロシア議会で議決された法律により、軍に関する「不正な」情報を拡散した記者は最大で15年の懲役になる。

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一方Microsoftも、ロシアでの販売停止を発表した。今日のブログで同社は、「ロシアでのMicrosoftのプロダクトとサービスの今後のすべての販売を停止する」と言っている。

これには、Bingの広告やその他のMicrosoftのサービスも含まれるのだろう。目下本誌は、その確認を求めている。

そのブログ記事でMicrosoftの副社長Brad Smith氏がこう言っている: 「さらにまた私たちは、合衆国と欧州連合および連合王国と緊密に協力して、ロシアにおける弊社事業の多くの側面を、政府の制裁に準ずる形で停止しつつある」。

Googleの広告販売の制限という、対象の限られた動きは、同社が火曜日(米国時間03/01)に発表した措置の拡張だ。そこでは「情報の質の向上」という言葉が使われ、しかもそれは2月24日の早朝にロシアの侵攻が始まった直後、そしてヨーロッパの指導者たちがまる一日を費やして、ロシアの偽情報に対して断固たる行動を採るようテクノロジープラットホームに圧力をかけた直後のことだった。

最初Googleは、クレムリンにつながったメディアであるRussia Today(RT)とSputnikのYouTubeチャンネルをヨーロッパで禁じるつもりだったが、すぐにそれは、その二つのメディアのアプリを同じくヨーロッパではPlay Storeから外すことになった。それは、二つのメディアのYouTubeチャンネルに対する全EU的制裁が、法的有効になる水曜日(米国時間03/02)よりも前だった。

その前には、「ロシアの国営メディアがわれわれのプラットホームを利用して収益化を図ることの無期限停止」を発表していた。すなわち、RTのようなメディアはGoogleのプラットホームから広告収入を得たり、広告を買ったりすることができない。

しかしGoogleが今日確認したのは、特定メディアではなくロシア全域的に、広告の販売を凍結することだ。

広告販売の停止について、Googleの広報はこう説明している:

尋常ならざる情況に鑑み、私どもはロシアにおけるGoogleの広告を停止します。状況は急速に進化しておりますので、今後も引き続き適切な時期にアップデートを共有いたします。

現時点では、有料の消費者向けサービスやGoogle Playのアプリ販売など、広告以外の販売は停止しない。また、ロシア人が検索やマップ、YouTubeなどの情報サービスにアクセスすることも従来どおり可能だ。

ロシアがウクライナに侵攻して以来、Googleからの発表は細切れ状態だが、危機の進展に伴い一貫性のある対応を編み出すことが、Googleにとっても難しいからだろう。

それに対しMicrosoftは、もっと決定的だ。今週初めには、ロシアの「国が支援する偽情報」を狙った各種措置の包括的なパッケージを発表し、そして今日はそれを総括的な販売禁止に拡張した。

今週初めには、Apple(アップル)もロシアでの製品の販売を停止すると言い、Apple Payなど一部のサービスも制限した。また同社のApp Storeからは今週、RTとSputnikを全世界的に外した。ロシア市場だけは例外だ。

Facebookの親会社であるMetaの出方は、よくわからない。侵攻が始まったときこのソーシャルメディア大手は、RTとSputnikの降格など一連の制限を発表したが、本稿を書いている時点(米国時間03/04)では、このアドテックの大手でもある同社は、ロシアにおける広告の販売を停止していない。これについても、本誌は一応質問状を提出した。

もちろん、デジタルサービスへのアクセスという点では、ロシア人が今直面している難儀は私企業による禁止だけではない。ロシアの銀行に対する広範な制裁によって、同国では、一部のテクノロジーサービスへのアクセスも困難になっている。

(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: NurPhoto/Getty Images

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顧客体験プラットフォームのプレイドがKARTE Signals発表、ファースト・パーティ・データ活用し自社サイト内外で一貫した顧客体験実現

顧客体験プラットフォームのプレイドがKARTE Signals発表、ファースト・パーティ・データ活用し自社サイト内外で一貫した顧客体験を実現

CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」(カルテ)を提供するプレイドは2月2日、ファースト・パーティ・データ活用によりサイト内外で一貫した顧客体験を実現するソリューション「KARTE Signals」(カルテ シグナルズ)の提供開始を発表した。KARTE Signalsは広告ソリューションとの連携を前提にしており、第1弾としてGoogle広告およびFacebook・Instagram広告への提供を開始する。

顧客体験プラットフォームのプレイドがKARTE Signals発表、ファースト・パーティ・データ活用し自社サイト内外で一貫した顧客体験を実現プレイドのKARTEは、ウェブサイトやアプリを利用する顧客の行動をリアルタイムに解析・可視化し、個々の顧客に合わせた自由なコミュニケーションをワンストップで実現するCX(顧客体験)プラットフォーム。

KARTE Signalsは、KARTEと顧客に関わるあらゆるデータを統合する「KARTE Datahub」を介して、自社サイトを訪問・利用する顧客のファースト・パーティ・データをサイト外での体験向上に活用できるサービス。自社サイトでの行動データだけでなく、自社CRMの購買データやオフラインのPOSデータなどもすべて統合。このKARTE Signalsと広告ソリューションを組み合わせることで、顧客の広告に触れる体験の向上と広告配信の最適化をKARTEというSaaSプロダクトにおいて実現する。

認知拡大から購買促進・継続利用までサイトの内外問わずあらゆる接点・チャネルで一貫した施策実施が可能としており、KARTE Signalsは今後、Google 広告・Facebook/Instagram広告以外の広告ソリューションへの提供も展開するという。

またSaaSとして提供することから、別途の環境整備やデータ基盤構築の必要もなく、自社内だけで運用を完結させることも可能だ。KARTE Signalsと広告ソリューションの連携についても開発は不要で、手間をかけずに広告予算の最適化を図れるとしている。

KARTE Signalsの特徴

  • あらゆるデータの収集と統合をワンストップで実現。ファースト・パーティ・データの活用を最大化
  • 広告媒体プラットフォーマーを横断して広告の一括配信を実現
  • KARTE独自の接客のデータ、機械学習を活用した予測モデル、オフラインのデータなどファースト・パーティでしか得られないデータを使った最適な広告運用が可能に
  • ピクセル欠損を補うために、FacebookのコンバージョンAPIを容易に利用可能に

昨今サード・パーティ・クッキー規制が本格化し、プライバシー保護がますます重要になる中で、ブランドのミッションは顔の見えない顧客を対象にしたコンバージョン最大化よりも、顔の見える顧客との関係構築とLTV向上へとシフトしている。

このような環境においてKARTE Signalsと組み合わせてオンライン広告を展開すれば、適切なプロセスによって取得したファースト・パーティ・データを活用し、顧客に合った広告を適切なタイミングで届けられるという。そのとき広告は有益な情報として機能し、エンゲージメントの向上に貢献するとしている。プレイドによると、イオンリテール、ポケットマルシェ、再春館製薬所などが先行し活用しており、その点についてすでに評価を得ているそうだ。

ポケットマルシェは、「新規ユーザーの獲得について、より継続的に購入してくれているユーザーのコンバージョンデータをKARTE Datahubから Google 広告に戻すことによって、私たちのサービスや目指す世界観と親和性の高いユーザーの特徴を捉えてアプローチできました」とコメント。再春館製薬所 海外本部は、「海外市場では、日本以上にFacebook広告のターゲティングが重要な位置づけです。サード・パーティCookie規制の影響もあり広告パフォーマンスは低迷、CAPI対応が急務でしたが、自社で対応するにはリソースの負荷が大きい状態でした。KARTE Signalsによって、サーバーのデータを直接Facebookサーバーへと連携させることができるので大変助かりました」と述べている。KARTE Signalsでオンライン広告のLTVやNPSなど指標を確認することで、広告の価値を顧客とのエンゲージメントの観点で評価できる。

広告詐欺師はパブリックドメインのコンテンツを利用して偽のTVアプリを作っている

広告主を詐欺から守り、ブランドの安全を守れるようにするサービスを開発するDoubleVerifyによると、最近の詐欺師たちは新しい策略を使って、インターネットに接続されたテレビから不正に稼ごうとしている。

プロダクト管理担当の上級副社長であるRoy Rosenfeld(ロイ・ローゼンフェルド)によると、そんな詐欺師たちにとってテレビは、少なくともウェブやモバイルに比べると、一見まともに見えるアプリを作ることが難しい。つまりテレビでは「コンテンツを生成するサイトやアプリを載せるだけ」という単純な仕事にならない。コネクテッドTV(CTV)アプリの場合は大量のビデオが必要になるので、詐欺師にとっても費用と時間がかかりすぎる。

同氏によると「そこで連中が始めたのは、パブリックドメインにある古いコンテンツを、面白そうなCTVアプリに見せかけて、プラットホームに提出することだ。でも、そうすると、昔の西部劇を見ようとしたユーザーがまったく違うものを見ることになる。詐欺師たちは、ユーザーをアプリストアに誘うだけでいい。

DoubleVerifyの報告書はもうすぐオンラインで提供されるが、それによると、同社はこれまでの18カ月間で1300本あまりの偽CTVアプリを見つけた。そしてその半数以上は、2020年に登場している。

詐欺師たちはどうやってパブリックドメインにある50年代60年代のテレビ番組や映画からアプリを作っているのか?報告書はその手法についても述べている。これらのアプリはRokuやAmazon Fire、Apple TVなどに提出されて公開承認を待つ。ひとたびアプリストアの承認が得られると、いかにも本物のようになり、偽のトラフィックやインプレッションを作り出す。

ローゼンフェルド氏はこれを、しばらく前に流行ったフラッシュライトアプリと比較して「正しいフラッシュライトアプリというものがあるとしても、ほとんどのアプリはそうではない。それと同じで、この偽コンテンツアプリも、パブリックドメインのコンテンツの全体を汚すものではない。『人々が消費して楽しんでいるものの中には違法なチャンネルやアプリがある』というだけのことなんだ」と語る。

つまり「パブリックドメインのアプリの多くが、広告詐欺のために提出され悪用されている」というだけのことだ。DoubleVerifyによると、広告主が偽のインプレッションに広告料を払わないようにするためには「業界の透明性基準に準拠するべきだ」という。もちろんDoubleVerifyによって認証された広告プラットフォームを通じて購入することを推奨している。

関連記事: DoubleVerify names adtech exec Mark Zagorski as new CEO(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

広告需要急減の中、Q1決算後のFacebook株価は10%以上アップ

新型コロナウイルスのパンデミックはFacebookの広告事業の成長を大幅に鈍化させている。しかし4月29日に発表されたFacebookの第1四半期決算を見た資家は十分満足しているようだ。

同社はアナリストの予想を上回る177.4億ドル(1.89兆円)の収入を得た。1株当たりでは1.71ドルという予想にはわずかに届かなかった。

同時にFacebookは月間アクティブユーザーがアナリストの予想、25.5億人を上回る26億人に達したと発表した。これらの結果に株価は時間外取引で10%上昇した。

四半期決算の発表後、時間外取引でFacebook株は10%以上アップした。第1四半期の広告収入は前年同期比17%の伸びを示した。しかしFacebookはパンデミックの影響が出る第2四半期の決算に予防線を張るために今回の決算を利用したようだ。デジタル広告はパンデミック危機の打撃をまともに受けて過去数週間で大幅な減少傾向にある。Facebookはリリースで「広告の需要の大幅な減少が見られた。またこれに関連して「2020年第1四半期末の3週間に当社の広告の入札価格が低下した」としている。

また2020年第2四半期のガイダンスは発表しないと述べた。 4月の最初の3週間の広告収入は前年同期比で伸び率ゼロだったといいう。 Facebook広告ビジネスは巨大になっても成長を続けており、 Q4 2019年第4四半期は対前年比で25%の伸びだった。

パンデミックに襲われた企業が広告をカットすることによっって崖から転落するような広告収入の減少がおきるというドゥームズデーシナリオを恐れていた投資家にとっては成長率がゼロになっただけというのは望外の喜びだったようだ。

出典:Facebook IR

Facebookの収入の大部分は174.4億ドル(1.86兆円)という巨大な広告収入から来ている。しかし「その他」の収入にはPortal from FacebookやOculusなどのハードウェア事業が含まれ、前年比80%も急増して2.97億ドル(317億円)に達している(取材継続中)。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

2万種類以上のオフライン広告商品を検索・発注できる「Bizpa」が5000万円を調達

様々な広告媒体の中でも、インターネット広告はここ十数年で大きな進化を遂げながらその勢力を拡大してきた。ユーザーの属性や興味関心、ネット上での行動を軸に細かくターゲティングができ、データを見ながらの効果検証もしやすい。加えて小ロットから注文でき、出稿までの作業もオンライン上でスピーディーに完結するものが多い。

一方で屋外看板やフリーペーパー、店舗内といったオフライン広告はどうだろうか。情報がいくつもの場所に散らばっていたり、価格相場が可視化されていなかったりと広告主側にとっては非効率かつ不透明な側面が多いのが現状だ。要はネット広告に比べるとレガシーな市場であると同時に、まだまだ改善できる余地が残されている領域だと考えることもできる。

そんな「オフライン広告市場のアップデート」に取り組むのが、2018年12月創業のビズパだ。同社では2019年11月より、オフライン広告商品の比較・検討から掲載までの工程を一元管理できる「Bizpa」のベータ版を運営している。こ

今後は夏に正式版のローンチを予定しているほか、最適な広告商品をマッチングする機能の導入などプロダクトのさらなる進化を目指し事業を加速させる計画。そのための軍資金として、ビズパでは本日4月24日にCoral Capitalとラクーンホールディングス代表取締役社長の小方功氏からシードラウンドで5000万円を調達したことを明らかにした。

きっかけは前職時代に感じた「オフライン広告の課題」

Bizpaのアイデアは、石井氏自身が前職のラクーンホールディングス時代に感じたオフライン広告の課題から生まれたものだ。

石井氏は2000年に同社の創業メンバーとして入社し、取締役副社長として執行部門を統括。B2Bマーケットプレイス「スーパーデリバリー」やB2B決済サービス「Paid」などの立ち上げに携わるなど、同社の事業拡大や上場に貢献してきた。

石井氏によると前職時代にネット広告の限界を感じ、オフライン広告に取り組むために予算を準備していたそう。ただ、結果的にオフライン広告を出稿するには至らなかったという。

「ネット広告では同じ人に同じ広告が何度も表示され、ブランドイメージの毀損や費用対効果の観点で課題がある。そこでオフライン広告にもチャレンジしようと考えたが、そもそも自分たちにあった広告媒体を探すのが難しく、一方で代理店に頼んでも価格設定が高めでスモールスタートがしづらかった。出稿までの工程も非効率で、結果的に断念してしまった」

「代理店を中心にマーケットが構成されているため労働集約型の側面も多く、どうしても利益率の高い高価格の広告媒体や注文金額が大きい大企業がメインのターゲットになる。もちろんそれも必要な仕組みではあるが、そのレガシーな部分を取り除くことで、中小企業を始め誰でも簡単にオフライン広告を出稿できる環境を作れるのではないかと考えたのがBizpaを作ったきっかけだ」(石井氏)

そこでBizpaではプラットフォーム上にさまざまなオフライン広告商品を取り揃え、広告主が自分に合ったものを探して発注できる仕組みを作った。

現在は東京を軸とした関東エリアを中心に300媒体・2万4000種類以上の広告商品を掲載。街中の看板やデジタルサイネージから、フリーペーパーなどの紙媒体、大型書店の店内、漫画喫茶のブースなどその種類は多岐にわたる。

これまではWeb上に載っていなかったものや、Web上では埋もれてしまっていてたどり着くのが困難だった広告商品へアクセスできるようにしたのがBizpaの大きな特徴だ。

葛飾にあるプログラミング教室が地域限定のフリーペーパーに広告を出すことで効果的な宣伝に繋がった事例や、トラックドライバーの集客や求人を手がける会社がドライバーの利用者が多いサービスエリアのシャワーブースに広告を出稿した事例など、ユニークなマッチングが生まれてきているという。

小ロットから注文可能、広告掲載までの作業を一元管理

BizpaではECのような感覚で広告商品を物色しながら気になるものをカートに入れて購入し、その後のクリエイティブの入稿までをサービス上で行う。オフライン広告の発注に関する仕組みをワンストップで提供しているため、広告主にとっては一箇所で作業が済み効率が良い。

またそれらの広告を小ロットから試せるのもポイント。全体の約90%が20万円以下の商品となっているため、限られた予算の中で複数の媒体やクリエイティブをテストすることも可能だ。

「ネット広告の場合、まずは軽く試して、ABテストなどもしながら最適な形を検証できる。でもこれまでのオフライン広告は1回100万のように、一発勝負になりがちなものが多かった。それが仮に10万円から試せるようになると、予算の限られた企業でもスモールスタートすることができるし、複数パターンをテストすることもできる」(石井氏)

Bizpaを使うメリットがあるのは媒体側も同様だ。単価が安い商品の場合などは代理店が積極的に販売してくれないケースも多く、自ら集客チャネルを開拓しなければならなくなる。ただ自分たちにあったチャネルを見つけてくるのも簡単ではなく、結果的に埋もれしまって本来の価値を発揮できないでいる広告媒体も少ないないという。

そういった媒体にとってはBizpaは新しい集客チャネルとして機能する。しかも営業マンを増やさずとも使えるチャネルだ。

データ活用で最適なオフライン広告媒体が発見できるサービスへ

ベータ版ローンチから約5ヶ月、現在Bizpaには300媒体・2万4000種類以上の広告が集まり、広告掲載に関心を持つ数百の事業者が登録している。今後はベータ版期間に得られたフィードバックなどを基にプロダクトを改善しながら、今夏を目処に正式版をローンチする計画だ。

石井氏の話を聞く限り、これからのBizpaにおいては「ワンストップ」と「最適なマッチング」がキーワードになるだろう。

現在も注文から掲載までの作業をサービス上で完結できる仕様にはなっているものの、広告デザイン自体は広告主が自分たちで用意する必要がある。これが「オフライン広告をやったことのない人にとってはボトルネックになりうる」ため、デザイナーや制作会社とタッグを組み、クリエイティブの制作も含めてBizpa上でワンストップできる仕組みを検討しているという。

そしてもう1つのポイントが最適なマッチングだ。たくさんの広告商品が掲載されていたとしても、自分に合ったものが見つからなければ広告主にとって価値のあるサービスとは言えない。またBizpaの収益源はマッチング時の手数料のため、マッチング件数が増えていかなければ同社のビジネスもスケールしないことになる。

これについては各広告媒体・商品に対して「いかに属性データを持たせるか」が鍵になってくるとのこと。たとえば屋外の看板の場合、どんな人がそこを通るのか、近くには何があるのか、通行量はどのくらいかといったデータがわかれば、それを基に今まで起きなかったマッチングを実現できるという。

上述したトラックドライバーに訴求したい会社とドライバーがよく使うサービスエリアのシャワーブース広告をマッチングした事例のように、今まではその価値が埋もれがちだった広告媒体がどんどん発掘されていく可能性もあるだろう。

「近接データはGoogleマップなど見ればわかるし、地域ごとの世帯のデータや携帯の位置空間情報なども販売されている。昔に比べると属性データも取りやすくなっていて、今までわからなかったものがわかるようになってきた。それらのデータを活用した上で企業のニーズと最適にマッチングする仕組み作りに力を入れていく」

「テクノロジーやプラットフォームの思想を取り入れることで、オフライン広告をもっと良くしていける感覚がある。そういった意味ではディスラプトやリプレイスというよりは、アップデートというイメージだ。業界を前進させられるようなチャレンジをしていきたい」(石井氏)

YouTubeがスモールビジネス向けの短い動画広告制作用DIYツールを無料公開

YouTubeは、単発で低コストな動画を制作したいスモールビジネスのための新しいツールを米国時間4月14日に公開した。このツールを使えば、クリエイティブ分野での経験や技術的なノウハウがなくても誰でも簡単に制作することができる。その名もシンプルなYouTube Video Builder(ビデオビルダー)は、この数カ月間、少数の顧客企業がテストを続けていたのだが、新型コロナウイルス(COVID0-19)パンデミックの影響で、急遽一般向けにローンチされることになった。対面して動画を撮影することは不可能になり、スモールビジネスは何より資金繰りに窮している。

「特に顧客へのメッセージを迅速かつ簡単にアップデートする必要に迫られている事業者の声を多く聞く現在、Video Builderは動画を必要とするあらゆる規模の事業を支援します」とYouTube Adsの製品管理ディレクターであるAli Miller(アリ・ミラー)氏は言う。

ツールの使用に必要なものは、GmailやYouTubeといったGoogleのサービスにログインできるGoogleアカウントだけ。アカウントを持っていなくても、Google以外のメールアドレスをGoogleアカウントにリンクさせることも可能だ。動画の保存と配信には、自身のYouTubeチャンネルが必要になる。

使い方は非常にわかりやすい。Video Builderのベータ版では、会社の静止素材(画像、テキスト、写真など)をアニメーションさせて、YouTubeの無料オーディオライブラリの音楽と組み合わせることができる。また、メッセージの内容や目的に応じて、さまざまなレイアウトを選ぶこともできるとYouTubeは説明している。レイアウトの色やフォントの変更も可能で、6秒または15秒の動画が即座に作れてしまう。

動画が完成したら、自社のYouTubeチャンネルにUnlisted(限定公開)としてアプロードする。これは、チャンネルを来た一般の人たち全員に公開したくない場合だ。公開したければプライバシー設定を変更すればよい。制作した動画はウェブサイトに埋め込んだり、どこかのソーシャルメディアで共有したり、目的に応じてさまざまな形で公開することができる。望むなら、Google広告として動画を配信することも可能だ。

オリジナルの動画広告をDIYしたい事業者のためのツールは、既に市場に数多く出回っている。例えばVimeoは、スモールビジネスがプロフェッショナルなソーシャル動画を制作できるアプリを2月に公開した。2019年秋には、Facetuneを作ったLightricks(ライトリックス)が、スモールビジネスがソーシャルメディアの広告キャンペーンに使えるアプリ一式を公開した。さらに、動画編集ツールではAdobeやAppleといった老舗の他、Magisto(マジスト)、Canva(キャンバ)、PicsArt(ピクスアート)などといったメーカーの製品も多い。そのほとんどがテンプレート、簡単に使える編集ツール、ストック素材、クリックひとつで複数のプラットフォームで公開できるといった機能を備え、スモールビジネスの事業主をターゲットにしている。

YouTubeのVideo Builderの場合は、YouTubeの視聴に最適化された動画の制作が可能で、Google広告と統合できる点で有利になっている。

昨日までVideo Builderは、インテリアデザイン会社Havenlyやサンドウィッチ店Which Wichといった数百人規模の企業から、食品スーパーチェーンCentral Marketのような数千人規模の企業まで、幅広い事業者の協力でテストを重ねてきた。営業時間の変更や集荷、配達などの新サービスの告知に利用するケースもあれば、ブランドや代理店が補完的な動画の制作や新コンセプトの実験などに利用するケースもあった。

今回の一般公開により、希望者はベータアクセスを行ってから、デスクトップで利用ができるようになる。ツールは英語版のみだが、動画はどんな言語で制作しても構わない。登録したすべての人が楽に利用できることを確信しているとYouTubeはいう。

ミラー氏によれば、このツールは当初、YouTubeの動画広告を素早く簡単に作れる事業者向けのツールとして開発されたとのことだ。

「私たちは、事業者が顧客とのつながりを保てるようにするツールの開発を急いでいました。人々が自宅に待機するようになっても、Video Builderは新規顧客へのリーチを広げるためにYouTubeで動画制作を始めたい人々の、大きな助けになるものと信じています」と彼女は言い加えた。

この新ツールは、YouTubeがここ数カ月で公開してきた複数のビジネス向けサービスのひとつとして加わることになった。スタートは、2019年5月に公開された機械学習を使って複数の動画を短い6秒のクリップに簡単にまとめるBumper Machine(バンパー・マシン)だった。さらに最近では、低コストの動画編集などさまざまなサービスを提供するYouTube Creative Directory(クリエイティブ・ディレクトリー)に、新たなパートナーがいくつも加わっている

YouTube Video Builderは、ここで登録をすれば無料で利用することができる。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Redditが政治広告に対する方針をアップデートし会話と透明性を重視

Web評論サイトの名門で老舗のRedditが、政治広告のポリシーを更新して、出稿後24時間は読者のコメントを認めて掲載する、とした。同社はまたr/RedditPoliticalAdsというサブサイトを開設して、そこに広告主やそのターゲティング、インプレッション(その広告が表示された回数)、そして広告キャンペーンに投じた費用などの情報を公開させることにした。

これについてRedditはこう言っている: 「政治広告の出稿者がこれを機にコメントでユーザーと直接関わることを強く推奨する」。広告主情報を載せるサブサイトには、2019年1月1日以降のすべての政治広告キャンペーンの情報が載る。

同社によるとこのポリシー変更と新たな情報サイトによって、「ユーザーが直接かつ透明に政治広告の出稿者とコミュニケーションし、重要な政治的問題を議論し、広告キャンペーンとその背後の政治組織に関する率直な知見を持てる機会を与える」、という。

Redditの広告ポリシーはすでに欺瞞的な広告を禁じており、政治広告はそのメッセージとクリエイティブなコンテンツをRedditが手作業でレビューする、としている。また、許容する広告はアメリカ国内からのみとし、また州やローカルのレベルではなく、全国レベルの広告しか認めない。

24時間のコメント期間を過ぎたら広告キャンペーンのサイズが急に大きくなることを、防ぐ手立てはあるか、というユーザーの質問に対してRedditは、「そのようなアクティビティがあれば広告は再レビューされ不採用になる」と答えている。

2020年の大統領選を前にして、ソーシャルメディアの政治広告に関するポリシーが、さまざまにアップデートされている。2016年の選挙で政治広告に対して何もしなかったことを厳しく批判されたFacebookは、それでもなお、政治広告に対するファクトチェックを拒否している。一方Googleは、性や年齢層、人種など層的特性によるターゲティングを制限している。そしてTwitterは、政治広告そのものを禁じている

Politico誌のインタビューでRedditの法務担当副社長Ben Lee氏が、RedditがTwitterのようなポリシーを採用することはないだろう、と言っている。彼は、「政治広告を単に排除することは、この場合の正しいやり方ではない」、と言う。

そして彼によると、Redditのこの方針変更は「二つの重要なことを意味している。ひとつは政治広告に関する会話を奨励すること。そして第二は、透明性だ」、と述べた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

App Storeで警官配備の表示アプリが禁止され出会い系も困難に、アップルがガイドライン改定

Apple(アップル)は今週、デベロッパーにApp Store Reviewガイドライン改訂版を示し、どのようなアプリが許可され、あるいは拒絶されるのか、またアプリの動作として許されることを詳しく記述して注意を促した。同社によれば、今回のガイドラインの変更は、レビュー、プッシュ通知、アップルでサインイン(Sign in with Apple)、データの収集とストレージ、モバイルデバイスの管理、その他に影響を与えるという。かなり目立つ変更点としては、アプリが広告を通知として表示できるようになったこと、出会い系や占いアプリに対してのルールが厳しくなったこと、ユーザーが警察による取り締まりを回避することを助けるようなアプリをAppleが拒絶できるようする新ルールが盛り込まれたことなど、いろいろある。

最後に挙げた、警官のいる場所を表示するアプリに対する変更は、驚くべきことに、プッシュ広告や出会い系アプリに対する変更ほど注目されていない。しかし、これは今回のルール変更の中で最も注視すべきものだろう。

App Store Reviewガイドラインの以前のバージョン(2020年1月のスナップショットを参照)には、「アプリは法執行機関によって公開された飲酒運転検問所のみを表示できる」と書かれていた。そして「アプリが「飲酒運転」や「速度の超過」を助長するようなことをしてはならない」と記されていた。当然の懸念だろう。

今回改訂されたルール(セクション1.4.4)では、これまでの文言に加えて、「ユーザーが法執行機関を回避するのを補助することによって、その種類を問わず、犯罪を犯したり、犯そうとするするために使われるような」アプリをアップルは拒絶すると明記されている。

思い出してみれば、昨年アップルは香港の民主主義推進派のデモ隊が警官を避けるために使用していたクラウドソーシングによるマッピングアプリ「HKmap」を拒絶するという決定を巡って、やっかいな状況に巻き込まれていた。当初、アプリは承認されたが、同社は中国の国営メディアから「暴徒による暴力行為を助長している」と批判されると、その1日後に承認が取り消した。

このアプリでは、ユーザーは警官のいる場所、催涙ガスが使われている場所、その他の抗議活動に関する詳細など、クラウドソーシングによって集めた情報を、定期的に地図上にプロットして共有できる。アップルは声明の中で、そのアプリが「警官を待ち伏せして標的にする」ために使われていることが判明したため、削除したと述べた。

セクション1.4.4の変更前(上)と変更後(下)

新しいApp Store Reviewガイドラインでは、この種のアプリに関するアップルの最終決定を明記している。事実上、ユーザーが法執行機関を回避することを支援するアプリを禁止した。ただし、ガイドラインにも記載されているように、警官を避けるのは必ずしも「犯罪を犯す」ためとは限らない。アムネスティ・インターナショナルは、香港の抗議活動中に警察に拘束された人々が、殴打されたり、拷問を受けるなど、警察による残虐行為があったことを文書で報告している。つまりHKmapには、ユーザーが自らの身の安全を確保するために、警官を回避することを可能にするという面もあったことになる。

このようにアップルのルールにはあいまいな部分があり、アプリを拒絶したり禁止したりすることを決定する前に、そのアプリがどのように使われるのか同社として精査する余地を残している。

今回のガイドラインに関して注目すべき他の変更としては、アプリのデベロッパーが、プッシュ通知でマーケティングメッセージ(つまり広告)を送信できるようにするという更新(セクション4.5.4)も含まれている。これまではこのような動作は禁止されていた。この変更は、すぐにユーザーから抗議を受けることになったが、最初に考えられたほど悪くないかもしれない。

これまで禁止されていたにもかかわらず、多くのアプリが、すでにユーザーにスパム広告を表示していたのは明らかだ。これからは、そうしたアプリは、ユーザーインターフェース内で顧客の同意を得る必要があり、アプリ内にオプトアウトのための仕組みを用意して、ユーザーがプッシュ通知による広告をオフにできるようにすることが求められる。この変更により、アプリ内購入が可能だったり、広告収入に依存しているアプリについて、オプトアウトの仕組みを備えているか、少なくともレビュー担当者はチェックしなければならなくなる。

「こうしたサービスを悪用すると、デベロッパーの権利が取り消される可能性があります」と、アップルは警告している。また別の変更では、「占い」や「出会い系」アプリが、「ユニークで高品質な」体験を提供していない場合、スパムとみなされるアプリのリストに追加された。それに関連するセクション(4.3)では、アップルが過飽和だと認識していたり、より厳格なレビューが必要だと考えているアプリのカテゴリについてデベロッパーに注意を促している。

また新しいガイドラインには、App Storeに投稿されたレビューにデベロッパーが対応する方法を指示するセクション(5.6.1)が含まれている。そこには「ユーザーのコメントに返信する際には、敬意を持って接すること」や、無関係な情報、個人情報、スパム、マーケティング情報を文面に含んではならないと念を押している。またこのセクションには、デベロッパーがユーザーのレビューを求める際には、アップルのAPIを使い、ほかのメカニズムを利用してはならないことも明記している。これによりユーザーは、iOSの設定からすべてのアプリについてApp Storeのレビューの要求をオフに切り替えることができる。この文言は以前のガイドラインにもあったものだが、セクション1.1.7から同5.6.1に移動した。

最後にアップルは、既存アプリのアップデートを含み、今後のすべてのアプリは、2020年4月30日以降、iOS 13のSDKを使用したものである必要があると、デベロッパーに念を押している。それ以降のアプリは、すべて「Appleでサインイン」のログイン/サインアップ機能をサポートする必要もある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

小売を最適化するスタートアップTeikametricsは17億円を調達してAmazonと広告の次を目指す

小売業者のオンライン広告費を最適化するスタートアップであるTeikametrics(テイカメトリクス)は、1500万ドル(約16億7000万円)の追加投資を獲得した。同社は、Amazonで物品を販売する業者がより効率的に広告が出せるように支援することを目的に設立された。最近では同様のサービスをWalmart(ウォルマート)向けにも開始している。

CEOのAlasdair McLean-Foreman(アラスディア・マクリーン・フォアマン)氏は、どちらのプラットフォームでも、TeikametricsのFlywheel(フライホイール)プラットフォームで、商取引、在庫、価格設定といった小売りデータをもとに広告購入プロセスを改善できると話している。

フォアマン氏は、Amazonが「驚くほど閉じたループ」を作ったことを称賛している。そこでは「無数の顧客が、長期にわたって無数のサプライヤーと出会うことができる」という。その他のプラットフォームの中でも、ウォルマートのものは「価値的にもっとも近い」と同氏。

Teikametricsを利用すれば、小売業者(サードパーティーの販売業者も、Amazonとウォルマートがそれぞれのプラットフォームで販売する製品を売り込むブランドも含む)は、両方のマーケットプレイスでの広告キャンペーンを最適化でき、ゆくゆくは他のプラットフォームでも可能になると同氏は付け加えた。

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フォアマン氏によれば、同社は今年の後半、広告を超える製品を立ち上げるという。彼はTeikametricsで、同じデータを使って小売り「オペレーティングシステム」を開発しようと思い描いている。それは、在庫や価格設定など、小売業のあらゆる要素を最適化するものだ。

「とても複雑な問題、つまり単に広告を出すことよりも、ずっと動的で、ずっと複雑なものに対する、非常にシンプルな解決策を作るということです」と同氏は語る。

ボストンに本社を置くTeikametricsは、2018年にシリーズA投資で1000万ドル(約11億円)を調達している。新しいラウンドは、Jump Capital主導のもとに、Granite Point Capital、MITの計量経済学教授で科学顧問も務めるJerry Hausman(ジェリー・ハウスマン)氏、FacebookとUberで成長責任者を務めていたEd Baker(エド・ベイカー)氏が参加している。

Teikametricsは、現在、Clarks、Razer、Power Practical、Zipline Ski、マーク・キューバン氏のBrandsなど、3000を超えるブランドと契約している。また最近、Amazonの広告担当重役であったSrini Guddanti(シリニ・グダンティ)氏を最高製品責任者として迎え入れている。

広大な小売と広告の世界を見渡してフォアマン氏は「AIはほとんどバズワードです」と認めながら、しかし「私たちは現にAI第一でやっています。製品は自動化そのものです。インテリジェントな意志決定です」と主張した。

さらに彼は「広告は巨大なレバーを引くようなもので、それはまさにAIが大得意とする仕事です。しかし、その同じAIコンポーネントやソリューションを同時にさらに大きな問題に適用するのを、私はものすごく楽しみにしています」と話した。

画像クレジット:Teikametrics

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(翻訳:金井哲夫)

Netflixはそれでも広告を入れないと宣言

思惑やら投資家からの圧力止む気配がないが、それでもNetflixは収益増加の手段としての広告主体のビジネスモデルは導入しないと、米国時間1月23日にNetflixのCEOであるReed Hastings(リード・ヘイスティングス)氏は明言した。第4四半期の収支報告会にて、Google、Amazon、Facebookと競合することになるインターネットの広告事業に「楽に儲ける」方法などないとヘイスティングス氏は語り、広告を収益の柱とする選択肢を否定した。

ヘイスティングス氏は「GoogleとFacebookとAmazonは、膨大なソースから集めた大量のデータを統合しているため、インターネット広告において絶大な力を誇っています。それには経費がかかりますが、広告のターゲッティング効果と効率が上がります。そのため、これら3つの企業は、インターネットでの広告事業をこれからも牛耳ってゆくものと私は考えます」と説明する。

広告事業の規模を50億ドルから100億ドルに成長させるには、既存の広告業者から事業を「引き剥がす」しかないと、彼は話を続けた。そして、Amazon、Google、Facebookからインターネット広告事業を盗むのは「かなりの冒険」であり、「ぼろい商売ではない」とヘイスティングス氏。

「私たちには、もっとずっとシンプルなビジネスモデルがあります。ストリーミングと消費者の喜びにひたすらフォーカスするこです」と彼は言う。

CEOはまた、広告事業には参入しないというNetflixの戦略的決断には、ユーザーの個人情報を収集している周囲の企業への批判という点において、良い面があると指摘している。それに対抗しようとすれば、Netflixも加入者の個人情報をもっとたくさん収集しなければならない。それは「ユーザーからの搾取だ」と彼は断定し、我々がやりたいことでとは違うと話した。

「私たちは何も収集しません。私たちは、ただ加入者をハッピーにすることだけを考えます」とヘイスティングス氏は述べた。

もちろん、鵜呑みにはできない。Netflixは、オリジナル番組の継続か打ち切りかの判断に視聴者の個人情報を利用している。また全体的な視聴傾向から、新番組のゴーサインを出して続けさせるか否かの判断もしている。さらに、Netflixのサービスをユーザーがどう利用するかを観察し、ホーム画面にユーザーが好みそうな内容を表示させている。

同社はこの四半期に、Choose to watch(視聴を選択)と呼ばれる新しい視聴率の指標も導入した。少なくとも2分間、意図的に番組や映画を見た人の数をカウントするというものだ。この時間は、FacebookやGoogleのYouTubeのものよりもずっと長いが、テレビがそうしているように、番組を最後まで視聴した人の数を知るには、あまりよい方法ではない。

とはいえ、こうした視聴率調査の規模は、どれも巨大ハイテク企業の個人データ収集活動とは比較にならない。ヘイスティングス氏はコメントの中でそれを指摘している。

「私たちのモデルで、現実に大きな収益、大きな利益、大きな時価総額が得られるのは、戦略的に弱い立場をとっていること、つまりビッグスリーと競合するインターネット広告事業に晒される必要がないからです」と彼は言う。

広告を入れないビジネスという企業のスタンスをNetflixのCEOが再三訴えるのは、これが初めてではない。2019年第2四半期、Netflixは株主に送った手紙の中で、広告を入れないことが総合的なブランドプロポジションの一部であると投資家たちに念を押している。

「私たちが広告枠を販売するという思惑を目にしたときは、それはウソだと撥ね付けてください」と手紙には書かれている。

アナリストたちは、もしNetflixが広告入りの階層をサービスに採り入れたなら、年間収益は10億ドル(約1100億円)以上増えると見積もっている。

Netflixに広告を入れろとの圧力が増している背景には、ストリーミング界全体の状況の変化もある程度関係している。

現在Netflixは、Disney+とApple+という2つの大手ストリーミングサービスによる新たな競争に直面している。どちらも、視聴者を獲得するための無料プロモーションでローンチを支援している。さらに今後数カ月のうちに、Netflixは、モバイルストリーミングサービスQuibi、ワーナーメディアのHBO Max、NBCUのPeacockといった新しい競争相手を迎えることになる。株主への手紙では、いくつかの階層を設けたビジネスプランについて説明されていた。有料テレビの加入者向けの無料層、広告なしのプレミアム層、そして、広告が入る層などだ。

こうしたサービスが、先週、投資家たちに発表されたが、高評価だった。

HuluやCBS All Accessなど、他のテレビストリーミングサービスも、収益の一部を広告に依存している。その一方で、広告を柱とするサービスも台頭し始めている。RokuのThe Roku Channel、AmazonのIMCb TV、TUBI、ViacomのPluto TVなどだ。

しかし、広告を入れないというNetflixの決断は、広告がないことが重要なセールスポイントだと見ている加入者にしてみれば、喜ばしいニュースだ。

画像クレジット:Ernesto S. Ruscio/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Huluが視聴者による広告の選択や広告主と対話が可能なシステムを2020年に導入

Hulu(フールー)は、今年からいくつかの新形式の広告を出す準備を進めている。視聴者が注文をつけられる広告と、もうひとつは広告主と対話ができる広告だ。それには、スマートフォンで直接情報を送る方法と、QRコードを使う方法がある。数カ月後には、オリジナル番組に製品をデジタル挿入して広告機会を強化する方式を導入することも検討している。

これらの新形式広告は、よりユーザーフレンドリーな広告を作るための新しいアイデアに躊躇なく挑戦し、すでに革新的な広告エクスペリエンスを導入しているHuluの中でも後発に属する。たとえば去年、Huluは、視聴者がストリーミングを中断したときにだけ表示されるポーズ広告を取り入れた。先月は、新しい「一気見広告」を開始した。視聴者がドラマを一気見しているとHuluが感知したとき、企業が広告抜きのエピソードのスポンサーになれるというものだ。

こうした広告エクスペリエンスの目標は、できるだけ視聴者の邪魔をせずに広告を出す方法を見極めることだ。2020年、Huluは同時に、視聴者との関わり合いを高める広告にも力を入れる。

これから開始される選択式の広告(自分で筋書きを選ぶアドベンチャーゲームの広告板みたいなもの)の場合、視聴者は、そのブランドの広告の中から見たいものを選ぶことができる。たとえば、旅行代理店の広告の中でスキー休暇の広告だけ、あるいはビーチでの短期休暇の広告だけを見ることができる。しかも、それらのオプションはリモコンで選択できる。

さらにHuluは、視聴者が興味のあるブランドと対話できるようにするトランザクション広告も展開する。現在は、ビュー数の80%がテレビ画面での視聴となっていて、大きなテレビ画面でのやり取りを好まない視聴者が多い。むしろ、コンピューターやモバイル機器を使いたがる。この場合、視聴者が広告主の詳しい情報を知りたいとき、Huluはその情報を視聴者のスマートフォンに送信する。これは、Huluのユーザーアカウントに登録されている電話番号や電子メールアドレスを使って行われる。もちろん視聴者の承諾を得たうえでだ。または、広告に示されるQRコードをスマートフォンでスキャンすれば、即座に情報が得られる。

広告主が提供するその情報には、たとえば、そのウェブサイトへのリンク(小売業者のショッピングサイトなど)が盛り込まれている。「これは、視聴者第一のお約束に立ち戻るものです。つまり、できるだけ邪魔されず、より深い関わりが持て、機能的であることです。これにより、視聴者のエクスペリエンスと広告主のROIの両方を確実に高めることができます」と、Huluの広告プラットフォーム部門副社長 Jeremy Helfand(ジェレミー・ヘルファンド)氏は、先週、CES会場で交わした会話の中で述べていた。

これらの新しい広告形式は、Huluがその広告エクスペリエンスに関して打ち出している4つの大きな課題を具体化したものだ。ひとつはシチュエーション。ポーズ広告や一気見広告のように、視聴者の行動に寄り添うもの。ひとつはチョイス。視聴者が広告を選べるようにするもの。ひとつはトランザクション。視聴者がブランドとやり取りできるようにするもの。そしてもうひとつが物語との融合だ。スポンサーとの統合性を高め、ブランドと番組とを融合させて境目のないエクスペリエンスをもたらすというものだ。

Huluではすでに、物語と広告との融合をいくつか試しているが、この手法をさらに一歩進めたいと考えていると、ヘルファンド氏は話していた。「ポストプロダクションにより、ブランドを番組の中に溶け込ませる時代が来ると私たちは考えています」と彼は言う。つまりHuluは、デジタル技術でオリジナルドラマにプロダクト・プレースメントが行えるということだ。

「Hulu Kitchenの料理番組で実施されるのを、私たちは大いに楽しみにしています。理論的には、KitchenAidのミキサーをテーブルの上に置くことができます。実際にそこには存在していないにも関わらずです」と彼は言う。これは、Huluオリジナルの新しい料理番組シリーズのことだ。人気料理人Chrissy Teigen(クリッシー・テイゲン)、David Chang(デイビッド・チャン)、レストランチェーンのEater(イーター)が登場する。

デジタルな手法で映像にオブジェクトを挿入するこの広告技術はすでに存在するが、Huluがそれを自社開発するか、その技術ですでに事業展開している企業を買収またはパートナーにするかは、まだ決めていない。

「コンテンツに含まれるメタデータを読み出し、同時にコンテンツの映像をスキャンする必要があります」とヘルファンド氏は説明してくれた。「私たちはコンテンツを認識する作業を重ねてきました。Hulu内部ですでに進められているのですが、それには、広告に限らず、数多くの目的があります。また、サードパーティー企業も数多くあります。それを行うためだけの広告業界も存在します。私たちは、パートナー探しも並行して行っています」と彼は話す。

優先度が低い分野には、かつてHuluが約束していた広告付きのダウンロードがある。Huluは、広告が入るオフラインでの視聴ではなく別のモデルを考えている。それは恐らく、スポンサー付きダウンロードだ。だが目下のフォーカスは、スポンサー付きダウンロードではなく、ここで紹介した新しい形式の広告のほうにある。

「私たちは常に視聴者のエクスペリエンスのこと、いかにしたら最高の視聴エクスペリエンスをお届けできるかを考えています。そして、視聴者が広告に関与できるようにしたいという強い思いがあります。消費者には選択権があります。広告が入らないエクスペリエンスを望むか、広告に支えられたエクスペリエンスを望むか。もし、視聴者が広告に支えられた検索エクスペリエンスを選択した場合には、広告なしの場合と同じだけ快適なものにしなければならないと考えています」とヘルファンド氏は話していた。

画像クレジット:Lars Niki / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

FacebookはユーザーがゲームやARで遊べる広告フォーマットを拡充

Advertising Weekに先立ち、Facebookは3種類のインタラクティブな広告フォーマットの追加を発表した

まず1番目として、アンケート型の広告が、Facebookモバイルアプリのメインのフィードにも登場する。これは、すでにInstagram(インスタグラム)のストーリーで使われているものだ。2番目は、これまでFacebookとしてテスト中だったAR(拡張現実)広告が、この秋にもオープンベータとなる予定だ。そして3番目は、ゲーム会社に限らず、すべての広告主が、プレイ可能な広告を利用できるようになる。

Facebookは、米国時間9月18日にニューヨーク市で開かれた記者会見で、各フォーマットを披露した。

例えばE!は、あるテレビ番組を宣伝するために、インタラクティブなアンケート型の広告を掲載したところ、ブランドの認知度を1.6倍にすることができた。またVansでは、スケートボーダーのSteve Van Doren(スティーブ・ヴァン・ドーレン)氏を山から滑り下ろすゲーム型の広告を作成したところ、広告の想起率が4.4%上昇した。そしてWeMakeUpは、ユーザーがメークの色調をいろいろ試せるようなAR広告のキャンペーンを実施したところ、商品の購入が27.6%増加した。

Facebookの最高クリエイティブ責任者兼グローバル・ビジネス・マーケティング担当副社長のMark D’Arcy(マーク・ダーシー)氏は、プレイ可能な広告の当初の例は「まさに文字通りのゲームの仕組みが組み込まれ、ゲームによってブランドを拡める」ものに過ぎないが、時間が経つにつれて「あらゆる種類の」さまざまな相互作用が生み出されるだろうと述べた。

またダーシー氏は、アンケート、ゲーム、ARを広告に組み込むことは、新しいアイデアというわけではないと認めつつ、これまでは通常「重い」ユーザー体験であり、実現するには独立したマイクロサイトを用意したりする必要があったことにも触れた。そうしたものをFacebookの真正面に配置することで、同社はそれらを「超軽量で、楽しく、超スケーラブル」なものにしていくのだという。

その結果、より多くの広告主があれこれ試せるようになり、それにつれて、それらのフォーマット自体も進化するのだという。「12カ月後には、もしかすると6カ月くらい後でも、そうした広告を見てみれば、今とはまったく違ったものになっているはずです」。

こうした新しいフォーマットが、ユーザーのデータをどのように扱うのか、心配する人もいるだろう。Facebookチームによれば、アンケートを集計した結果のみが、広告主と共有されるという。個々のユーザーのデータは共有されない。同様に、AR広告を使ってユーザーが作成した画像は、デバイスのカメラロールに保存されるだけで、広告主と共有されることはないとしている。

画像クレジット:Facebook

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Instagramの発見タブから広告収入を絞り取るFacebook

Instagram(インスタグラム)の10億人を超えるユーザーの半数は、新しいコンテンツやクリエイターを見つけるため、月に一度は発見タブを開いている。今やFacebookの傘下に収まるInstagramは、その責務を果たすため、初めて発見タブに広告を入れることにした。しかし、発見タブ内のグリッドに対して、いわばマーケティング権限を持つユーザーに、いきなり広告を投下するのではなく、ユーザーが投稿をタップした後、同様の画像を見るためにスクロールを開始した時点で、初めて広告を表示することにしている。

このやり方なら、ユーザーに嫌がられたり、その場の上品な雰囲気を壊すことなく、発見タブを収益化できる、謙虚な方法と言えるだろう。Instagramのビジネスプロダクトマーケティング部門の責任者であるSusan Bucker Rose氏によれば、ユーザーはそもそも「何かを見つけるつもり」で発見タブを開いているので、広告も自然なものに感じられるのではないかと信じているという。「ユーザーは、新しいアカウント、人々、そしてブランドに触れてみたいと思っているのです」というのだ。

Instagramは、この広告枠をテストするために、まずは鳴かず飛ばずの自身のIGTV機能を宣伝してみることにしている。その後「数週間で、いくつかのブランドに開放することになるでしょう」と、Rose氏は説明する。その中には、大手企業も含まれているが、コンバージョンやビデオの視聴率、リーチの拡大を狙っている小さめの広告会社も名を連ねている。Instagramは今後数カ月の間に、この広告手法を広く一般に展開することをもくろんでいる。

広告主は、Instagramのフィードやストーリーズのスペースを購入するのに使うFacebookの広告マネージャやAPIを通じて広告枠を購入する。最初、広告主はInstagramの発見タブを指定して広告を掲載する必要があるが、そのうちにそれがデフォルトとなる。もちろん、そのオプションを解除することも可能だ。

Instagramの発見タブの広告は、以下のようにして表示される。まずユーザーが発見タブを開けば、いつものように、エンゲージメントの高い投稿が、スクロール可能なグリッドとして表示される。それらはユーザーの興味に基づいてパーソナライズされたものだ。ここでユーザーが写真やビデオをタップすると、まずその投稿がフルスクリーンで表示される。しかし、そこから下にスクロールし続けると、最初に選んだ投稿に似たコンテキストの投稿が次々と表示される。広告は写真やビデオとして、その中に紛れ込まされる。また、テーマを設定したビデオのチャンネルをタップして、クリップを視聴した後に、同様のビデオを求めてスクロールしたときも、Instagramのビデオ広告が表示されることがある。

Instagramは、今回の広告の導入を「ゆっくりと、かつ思慮深く」行うと表現している。これは、時間が経つに連れて、広告の露出がだんだん多くなっていくと言っているようにも聞こえる。

発見タブは、2012年から使えるようになっている。Instagram自体が登場してからほぼ2年後のことだ。これは、アプリの検索機能と「人気」タブを合わせたようなものだった。ユーザーのこれまでの行動から、アルゴリズムに従って分析した興味に合わせ、新たな人やテーマを見つけてフォローできる新しい方法を提案することを目的としていた。それにより、既存のつながりにとらわれない、新しい出会いを提供しようというわけだ。発見タブは、何度かの改良を経て、トピックチャンネルやハッシュタグを追加してきた。さらにInstagramの中で大成功となったストーリーズのようなフォーマットも追加された。ちなみに、最近発見タブに表示されるようになったストーリーズには、広告が掲載される予定はない。

しかし興味深いことに、こうした状況にもかかわらず、Instagramはこれまで発見タブ上の広告表示には手を出してこなかった。発見タブ内に表示される内容は、個人ごと異なる、というのが基本的なアイディアだ。アルゴリズムによって、ユーザーの好きそうな写真、ビデオ、あるいは何らかのテーマが選ばれて表示される。おそらくInstagramは、こうした発見タブのコンテンツの閲覧をじゃましたくなかったのだろう。

別の角度から見れば、これまでのところ、個人だろうがブランドだろうが、誰か特定の人の発見タブの中に、何かを表示することを積極的にリクエストしたり、その権利を購入するようなことはできなかったわけだ。とはいえ、だからといって、これを打破しようとした人がいなかったわけではない。試しに「how to get on Instagram Explore」などとググってみれば、その方法を解説するページがいくつも見つかる。

発見タブに広告を表示するという動きには、それなりの必然性がある。Instagram上でフィード広告による収益化が始まる前から、インフルエンサーやブランド、その他の企業は、直接買い物ができるリンクや、スポンサー付きのコンテンツを投稿することで、このプラットフォームを製品のプロモーションや、顧客とのコミュニケーションのツールとして利用してきた。Instagramによれば、今日では全ユーザーの80%が、Instagram上で少なくとも1つの企業をフォローしているという。ようやく、発見タブのアルゴリズムと必死に騙し合いをしなくても、企業はInstagramから、発見タブの中に自分のスペースを購入できるようになったのだ。

Facebookのニュースフィードの利用が危機に瀕している状況の中、Instagramのストリーズに注目が集まっている。それを収益化する方法はまだ研究中だが、Facebookは収益を増加し続けるため、ますますInstagramに頼ろうとしているようだ。しかしInstagramは、多過ぎる広告によって金のガチョウを絞め殺してしまうことがないよう、よくよく注意しなければならない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ターゲティング広告がパブリッシャーにもたらす利益はほとんどない

ユーザーのプライバシーを踏みにじるトラッキング技術を使ってウェブサイトの閲覧者に表示する広告を選ぶ行動ターゲティング広告で、パブリッシャーはどれほどの価値を引き出せるのか?

最新の調査によれば、パブリッシャーが得られる価値は、ターゲッティング広告を使わなかった場合と比較して、わずか4%増でしかないとのこと。

これは、なぜかくも多くのニュース編集室の予算が削られ、ジャーナリストが職を失い、それでいてアドテクノロジーの巨大企業は相も変わらず大儲けをして金庫を膨らませ続けているのかといった問題に挑発的な光を投げかける発見だ。

サードパーティーのクッキーがひしめく一般的なニュースサイト(TechCrunchも含まれる)を訪れたときは、そのパブリッシャーは本業の他に、ユーザーをプログラマティック広告システムに接続して貴重な個人データが吸い上げ、表示すべき広告の決定に使用するユーザーの閲覧傾向を販売して膨大な利益を貪っていると考えていいだろう。

オンライン広告市場は巨大化し、成長を続けている。IAB(Interactive Advertising Bureau、非営利団体インタラクティブ広告事務局)の資料によると、米国では、2017年に880億ドル(約9524億円)の収益を上げ、前年比で21%増加している。パブリッシャーは、コンテンツだけで大儲けしているわけではないのだ。

それとは対照的に、近年の調査によると、パブリッシャーの大半は、ディスプレイ広告の経済学に締めつけられていることがわかる。2015年のEconsultancyの調査では、そのうち40%ほどが、広告収入が停滞しているか減少していると報告しているという(それゆえ、購読の形式に手を伸ばすパブリッシャーが増えていると断言できる。TechCrunch自身もExtra Crunchを提供している)。

デジタル広告収益の大部分は、最終的にはアドテクノロジーの巨人、つまりGoogleとFacebookがさらっていってしまう。いわゆるアドテクノロジーの複占だ。eMarketerによれば、アメリカでは、この2社がデジタル広告市場での支出のおよそ60%を占めている。およそ765億ドル(約8兆2900億円)だ。

この2つの企業の年間収益は、デジタル広告費全体の伸びを正確に反映している。Googleの親会社Alphabetの場合、収益は、2015年から2018年にかけて、749億ドル(約8兆1083億円)から1368億ドル(約14兆8115億円)に増加している。Facebookは179億ドル(約1兆9382億円)から558億ドル(約6兆0424億円)と増えている(これに対してアメリカのオンライン広告費は、2015年から2018年にかけて、598億ドル(約6兆4745億円)から1075億ドル(約11兆6389億円)以上にステップアップしている)。

eMarketerは、2019年にはこの複占企業の合計シェアは初めて減少に転じると予測している。しかしこれは、パブリッシャーにツキが回って突如として大金が転がり込むからではない。もうひとつのハイテク巨大企業、Amazonがデジタル広告市場のシェアを拡大しているからだ。それは、eMarketerが呼ぶところの「複占の小さな凹み」の始まりと期待されている。

行動ターゲティング広告、いわゆるターゲティング広告は、トラッキング技術の拡散と規制対象とならない目立たない場所でのテクニックを助長するプラットフォームの力学により、オンライン広告市場を支配するようになった。そして、オンライン広告主の目からは、これが非常に効率的に見えたのだと報告書は書いている(測定と特定に疑問が残るものの、多くの研究はターゲティング広告は広告代理店にとって有益であり効率的だと考えているようだ)。

これが、広告の選択を脈絡要素(例えば、今見ているコンテンツや、使用中のデバイスのタイプや、今いる場所など)に依存する非ターゲティング・ディスプレイ広告を閉め出す原因となった。

この非ターゲティングディスプレイ広告は、今では例外的な存在となっている。クッキーがブロックされたときの予備的な地位に追いやられてしまった(とはいえ、プライバシーを保護をうたう検索エンジンのDuckDuckGoは、脈絡に依存した広告事業を黒字に転換させている)。

2017年にIHA Markitが行った調査では、ヨーロッパにおけるプログラマティック広告の86%が行動データを使用していたことがわかった。しかも、そのモデルによれば、非プログラマティック広告の4分の1(24%)も、行動データを使用していたという。

「2016年のディスプレイ広告市場の成長は、その90%が行動データを利用した形式や処理からもたらされた」と同社は見ている。また、2016年から2020年の行動ターゲティング広告は106%成長し、こうしたデータを使用しない形式のデジタル広告は63.6%減少すると予測している。

非ターゲティング広告ではなく行動ターゲティング広告を推すという経済的誘因は、広告主、サイトの訪問者、コンテンツ、行動データのすべてにおいて規模を拡大し、インターネットの分散した多様なオーディエンスから価値を引き出すことに依存している支配的なプラットフォームには自明の理に思える。

しかし、コンテンツ制作者と彼らが関わるユーザーのコミュニティにとって、プライバシー軽視の規模の経済に服従しようという誘因は、きわめて不明瞭だ。

オンライン広告市場に潜在する不均衡に対する懸念はまた、大西洋を挟んだ両地域の政治家や規制当局の、市場の透明性に対する疑問を誘発する。そして、透明性の大幅な改善が求められるようになる。

人のトラッキングで獲得できる賞金

来週、ボストンで開催されるEconomics of Information Security(情報セキュリティーの経済学)カンファレンスのワークショップで発表予定の新しい調査結果がある。この調査の狙いは、ひとつのパブリッシャーが、行動ターゲッティング広告を選んだ場合と、選ばなかった場合の価値を数量化して、デジタル広告の収益のパズルを解く新たなピースになることにある。

この調査については、以前、研究に携わった一人の学者が米連邦取引委員会の公聴会にて研究結果を引用したとき、その存在をお伝えしているが、今回初めて報告書の全文が公開された。

Online Tracking and Publisher’s Revenue: An Empirical Analysis」(オンライン・ターゲッティングとパブリシャーの収益:実証的分析)と題されたこの報告書は、次の3人の学者が共同執筆している。Veronica Marotta氏(ミネソタ大学スクール・オブ・マネージメント、情報および決定科学助教)、Vibhanshu Abhishek氏(カリフォルニア大学アーバイン校Paul Merageスクール・オブ・ビジネス准教授)、Alessandro Acquisti氏(カーネギーメロン大学ITおよび公共政策教授)。

「広告主のキャンペーンの有効性におけるターゲッティング広告のインパクトは広く実証されているものの、オンラインターゲッティングとターゲッティング技術がパブリッシャー、つまりウェブサイトの広告スペースを販売する業者にもたらす価値については、ほとんど知られていない」と彼らは書いている。「事実、行動ターゲッティング広告によるパブリッシャーの利益に関する社会通念は学術研究で精査されたことがほとんどない」。

「報告書でも簡単に触れましたが、複数の株主(小売り業者、パブリッシャー、顧客、仲介者など)のためのオンライントラッキングと行動ターゲッティングの共通の利益に関する主張があるにも関わらず、独立系の研究者からの経済的結果に関する実証的な評価は驚くほど少ないのです」とAcquistiは私たちに話してくれた。

「事実、評価のほとんどは市場の広告主側に焦点を当てられたもので(例えば、ターゲッティング広告のクリックスルーやコンバージョンレートによる増収の評価は非常にたくさん行われてきた)、市場のパブリッシャー側の評価は、ほとんど知られていません。この調査を始めるに当たり、私たちの予測を裏付けるデータがほとんど存在しなかったため、どんな事実が出てくるのか、純粋に好奇心が湧きました」

「私たちには、適格な予測の元になる理論的根拠がありましたが、それらの予測はまったく反対の結果なる場合もありました。ある状況では、ターゲッティングはオーディエンスの価値、広告主のビッド数を増やし、パブリッシャーの収益を増加させますが、別の状況では、ターゲッティングによって広告に興味を持つオーディエンス層が縮小し、それがディスプレイ広告の競争力を低下させ、広告主のビッド数を減らし、結果的にパブリッシャーの収益を減少させます」。

この調査のために、研究者たちは、ニュース、エンターテインメント、ファッションといった幅広いバーティカル市場のウェブサイトを運営するある大手パブリッシャー(企業名は明かされていない)が所有する複数のオンラインショップでの、1週間にわたる「数百万件」ものディスプレイ広告の取り引きのデータセットを提供された。

このデータセットには、サイトの訪問者のクッキーIDが使えるか否かの情報も含まれている。これにより、行動ターゲッティング広告と非ターゲッティング広告の価格の違いが分析できるようになる(研究者たちは統計的メカニズムを用いてクッキーを拒絶したユーザー間の系統的差異に対処している)。

上記のとおり、今回の最も大きな発見は、データ解析の対象となったパブリッシャーが得られた利益の上昇率は、非常に低かったというものだ。それは4%前後に留まる。つまり、平均的な収益の差額は広告1本につき0.00008ドルだ。

この発見は、ネット上で吹聴されている、行動ターゲッティング広告はパブリッシャー、ひいてはジャーナリズムを支えるために「必要不可欠」だとする、声高ながら根拠のない主張と真っ向から対立するものだ。

例えば、これは今月の初めにフリーランスのジャーナリストが公開した「An American Prospect」(米国の繁栄)と題した記事だが、その中に「サードパーティーのクッキーを使わないオンライン広告の掲載料は、同じ広告にクッキーを用いた場合のわずか2%だ」と書かれている。ただし、その数値的データの出所は確認されていない。

「この記事の著者が私たちに話したところによると、情報源は、Index ExhangeのAndrew Casaleが2018年に行ったスピーチだという。その中で彼は、購入者IDのない広告の依頼は、同じ広告でID付きの依頼に対して99%もビッドが低かったと話している。この情報に、アドテクノロジー業界の人たちから彼女が独自に聞いた、クッキーのない広告の価値の減少率は99%から97%という数値の中間値を加味している」。

同時に米国の政策立案者たちは、今になってプライバシー規制に関してヨーロッパに大きく遅れをとっていることを痛感し、インターネットのユーザーがアドテクノロジーの巨大企業によるトラッキングと顧客プロファイルの厳密な実態調査と、その恐ろしさの喧伝に慌てて力を入れている。

米上院司法委員会が今月の初めに開いた公聴会(「デジタル広告のエコシステムとデータ機密性と競争方針を理解する」ために招集された)では、巨大ハイテク企業を規制するか否かではなく、独占的な広告巨大企業をどれほど厳重に処置するかが話し合われた。

「それのために、今日私たちは集まりました。(インターネット上での消費者のプライバシーを保護するための)選択肢の欠如です」とRichard Blumenthal上院議員は言った。「GoogleとFacebookと、その他の市場を独占する企業が過剰にして驚異的な力を有していることは、紛れもない事実です。だからこそ、早急なプライバシーの保護が絶対的に不可欠なのです」。

アドテクノロジー業界が組織的に展開している「侵襲的な監視」とも言うべき行為は、「政府が行おうものなら断じて許されませんが、FacebookもGoogleも、建国の父祖が夢にも思わなかった権力を手にしています」とBlumenthalは続け、アドテクノロジー業界の監視複合体によって吸い上げられ利用されるいくつかの個人情報のタイプを示した。「健康、交際、位置、経済、非常に私的な情報、これらがほとんどなんの制限もなく、誰にでも提供されています」。

この「侵襲的な監視」を思えば、単純に脈絡によって提供される(そのためウェブユーザーをどこまでもトラッキングする必要がない)広告に対して、パブリッシャーにとって4パーセントだけ「プレミアム」なプライバシー蹂躙広告は、とんでもない詐欺に思える。パブリッシャーのブランドも、オーディエンスの顧客価値も、インターネットユーザーの権利とプライバシーも被害者だ。

ターゲッティング広告による増益はほんのわずかであることが、この調査で判明した。しかも研究者たちは、パブリッシャーのプライバシー規制に準拠するためのコストを加味しなければならないと指摘している。

「訪問者へのトラッキングクッキーの設定が無料で行えるとすると、ウェブサイトは確実に損をする。しかし、トラッキングクッキーの広範な利用と、さらに広範に行われているインターネット上でのユーザーのトラッキングは、プライバシー問題を引き起こし、とくに欧州連合においては、厳しい規制の導入を招くことになった」と彼らは綴り、International Association of Privacy Professionals(国際プライバシー専門家協会)による評価の引用へと続く。それによれば、フォーチュンのグローバル500に選ばれた企業は、EU一般データ保護規則に準拠するために、およそ78億ドル(約8444億円)を支出する計画を立てているという。

組織的にインターネット上のプライバシーを侵害するために多額なコストを費やしても、パブリッシャーが価値を得ることは難しい。こうも考えられる。迷惑なトラッカーでサイトを飾り立て、ブランドの評判とユーザーのロイヤリティを獲得しようとするパブリッシャーが負担するコストであろうが、もっと大きな社会的コストであろうが、それはデータを燃料にして弱い立場の人たちを操り搾取する危険性につながっていると。平たく言えば、何も見えていないということだ。

パブリッシャーはこの調査によれば、差益のために自社のコンテンツとオーディエンスという資産の剥奪に加担しているように思える。しかし、アドテクノロジー業界が不透明であるために、彼らを手中に収めている巨大広告企業の計らいで、彼らがどのような「取り引き」をしているかは、彼ら自身にもほとんどわかっていないことが推測される。

そのために、この報告書は、オンラインパブリッシング業界にとって非常に魅力的なものになっている。そして、アドテクノロジー業界で働く人にとっては、実に気まずいニュース速報でもある。

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行動ターゲッティング広告でパブリッシャーが利益を得ることはない。それは、インターネットでタダのものをくれるわけでもない。Googleなどのアドテクノロジー企業があなたのデータを売っているに過ぎないのだ。その企業が持っている価値は、監視もなく広告主に届けられる。

この調査は、ひとつのパブリッシャーが経験した、広告市場の経済のスナップショットを提供したに過ぎない。これが示した兆候は、大金をつぎ込んでプライバシー法に反対し、「行動ターゲッティング広告を潰せばインターネットから無料のものが消える」との主張を根拠にアドテクノロジー業界のロビイストが描こうとしている絵とは、はっきりと異なる。

これ以上不気味な広告は出さないと宣言しても、パブリッシャーの収益がわずかに減るだけかも知れず、まったく同じ破滅を導く指輪を持ってるわけではないことは明確だ。

「簡単に言えば、この調査は指摘されてきたものの実証的な確認がほとんどなされていなかった広告エコシステムの一部の、最初のデータポイントを提供するものです。結果として、これはデータの流れからどのようにして価値が生み出され、さまざまな株主に配分されるのかを透明化する必要性を強調するものとなりました」とAcquisti。この調査結果は、広告市場全体と照らし合わせて読むべきだと総括している。

この調査の反応を聞くべく、広告業界紙IABのCEOであるRandall Rothenberg氏にコンタクトをとったところ、彼はデジタルサプライチェーンは「あまりにも複雑で、不透明すぎる」ことに同意した。さらに、ターゲッティング広告が生み出す価値のうち、パブリッシャーに渡る量が比較的わずかであることに懸念を表明していた。

「身元不明のパブリッシャー1社の1週間ぶんのデータでは、予測可能な調査材料にはなりません。それでも、この調査は、ターゲッティング広告がブランドにとって膨大な価値を生み出すことがわかりました。この匿名のパブリッシャーが競売にかけた広告の90%以上が、ターゲッティング付きで購入されています。しかも広告主は、その広告に60%増しの特別料金を喜んで支払っています。しかし、その価値のほんのわずかしか、パブリッシャーには流れません」と、彼はTechCrunchに語った。「IABがこの10年間訴え続けてきたとおり、デジタルサプライチェーンはあまりにも複雑で、不透明すぎます。この価値の格差は、透明性の大切さを明らかにしています。そうすることで、パブリッシャーは、自分たちが生み出した価値から恩恵が得られるようになります」。

報告書では、アプローチの制限と、追加調査のアイデアについても論じられている。たとえば、クッキーの価値が、そこに含まれる情報の量によって変化する問題だ(これに関して、彼らは初期の発見についてこう書いている。「情報をほとんど含まないクッキーと情報をある程度含むクッキーとを比較したとき、情報は(パブリッシャーの観点からは)非常に貴重であるかに見える。しかしある時点から、クッキーに情報を追加してもパブリッシャーにとっての価値は高まらなくなる」)。また、「クッキーの有無が競売に変化をもたらす」仕組みの調査だ。広告の競売の力学と潜在的メカニズムの働きを解明しようというものだ。

「これは、ひとつの新しい、そして便利であって欲しいと願うデータポイントです。他の人たちの追加調査を必要とします」とAcquistiは、締めくくりとして私たちに話した。「調査活動の鍵は、積み重ねによる進歩にあります。より多くの調査研究が発展的に追加されることで、問題の理解はより深まります。この分野での研究が進むことを楽しみにしています」。

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(翻訳:金井哲夫)

オンライン広告をもっとプライベートするアップルの提案

長年にわたり、オンライン広告のおかげでウェブのほとんどが無料で使えるようになっている。ただ問題は、広告がみんなに嫌われていることだ。無神経に画面全体を占領したり、自動的に表示されたりするとき以外も、インターネット上のどこへ行こうと、彼らは私たちの動きを見張っている。

広告は、私たちがどこへ行き、どのサイトを訪れたかを追跡でき、個人の特徴を蓄積できる。広告をクリックしなくてもだ。もしクリックすれば、何を買ったかが相手に知られて、他のサイトにも報告される。だから、あなたが夜更かしをしてアイスクリームやネコの餌や、もうちょっとプライベートなものを買っていることが知れ渡ってしまうのだ。

簡単な対策として、広告ブロッカーという手がある。しかし、それではインターネットの発展や利便性の向上は望めない。そこでApple(アップル)は、評判の悪い広告トラッキング能力は使わずに、広告を存続させる中間地点を見つけ出した。

巨大ハイテク企業のアップルが考え出したのは、Privacy Preserving Ad Click Attribution(プライバシー保護型広告クリック・アトリビューション)。舌を噛みそうな名前だが、その技術的な能力は確かなようだ。

背景を簡単に説明しておこう。インターネットで何かを買うごとに、広告を掲載した店舗は、あなたが何かを買ったことを知り、同時に、同じ広告を掲載している他のサイトにそれが伝わる。広告がクリックされると、店舗は、どのサイトで広告を継続させるべきかを考えるために、それがどのサイトの広告なのかを知る必要がある。これがいわゆる広告アトリビューションだ。広告はよく、トラッキング画像を使う。見えるか見えないかのピクセルサイズの微小なトラッカーがウェブサイトに埋め込まれていて、どこでウェブページが開かれたかを監視している。この画像にはクッキーが仕込まれていて、ページからページへ、またはウェブサイト全体にわたるユーザーの移動状況を簡単に追跡できるようになっている。この目に見えないトラッカーを使うことで、広告をクリックしてもしなくても、その人が訪れたいくつものサイトを通じて、興味や何を欲しがっているかといった個人的な特徴の数々を、ウェブサイトが蓄積してゆく。

その概要を説明した米国時間5月23日公開のアップルのブログ記事によると、広告は、オンラインストアで何かを買ったことを他人に知らせる必要はないと、同社では考えているようだ。広告に必要な情報は、誰か(個人は特定しない)が、どのサイトの広告をクリックして何を買ったかという情報だけだという。

個人の識別などはもってのほか。その新技術を使えば、広告キャンペーンの効率を落とすことなく、ユーザーのプライバシーが守れるとアップルは話している。

アップルeのこの新しいセブ技術は、間もなくSafariに組み込まれることになっているが、大きく分けて4つの部分で構成されている。

1つ目は、広告をクリックしても、個人が特定されないようにするものだ。広告には、ユーザーがどのサイトを訪れ何を買ったかを認識するための、長大な一意のトラッキングコードが使われていることが多い。なので、キャンペーンIDの数を数十個に限定すれば、広告主はその一意のトラッキングコードをクリックごとに割り当てることができなくなり、ウェブ上で特定の個人ユーザーのトラッキングがずっと難しくなる。

2つ目は、広告のクリック回数の測定は広告がクリックされたウェブサイトだけで許可されるというもの。これによりサードパーティーは排除される。

3つ目は、ユーザーがサイトに登録したときや何かを買ったときなど、ブラウザーは広告のクリックとコンバージョンに関するデータの送信を最大で2日間、不特定な時間だけ遅らせるというもの。そうすることでユーザーの行動をさらに見えにくくする。そのデータは、他の閲覧データが関連付けられないように専用のプライベートな閲覧ウィンドウを通して送られる。

最後に、アップルによれば、これらをブラウザーレベルで行うということだ。それにより、広告ネットワークや業者が取得できるデータが大幅に制限される。

誰が何をいつ買ったかを正確に調べるのではなく、アップルのブライバシー広告クリック技術は、個人を特定せずにクリックされたこととコンバージョンのデータを送り返す。

「サイトを超えたトラッキングによる問題を訴えるブラウザーが増えているため、私たちは、プライバシーを侵害する広告クリックのアトリビューションを過去のものにしなければなりません」と、アップルのエンジニアであるJohn Wilander氏はブログ記事に書いていた。

この技術の中核となる機能の1つに、広告が収集できるデータの量を制限する技術がある。

「今日の広告クリック・アトリビューションの実践方法には、データ量に実質的な制限がなく、クッキーを使用するユーザーの、サイトをまたいだ完全な追跡が可能になります」とWilander氏は解説する。「しかし、アトリビューションデータのエントロピーを十分に低く保つことで、報告はプライバシーを保護した状態で行えると信じています」。

要約すれば、キャンペーンとコンバージョンのIDの数を64個に限定すれば、サイトを超えて移動するユーザーの追跡を可能にする一意の識別子となる長い一意の値を、広告主が使えなくなるということだ。アップルによれば、この数を制限しても広告主は広告の効果を知るための十分な情報が得られると言っている。それでも広告主は、例えば特定のコンバージョンIDを使い特定のサイトで48時間以内に行った広告キャンペーンのうち、どれがもっとも顧客の購入に結びついたかを知ることができる。

アップルは、この技術が広く普及すれば購入のリアルタイムの追跡は過去のものになると考えている。広告のクリックとコンバージョンの報告を最大2日間遅らせることで、広告主は誰が何をいつ買ったかをリアルタイムで知ることができなくなる。アップルによれば、誰かが何かを買った途端にアトリビューションの報告が送られる間は、ユーザーのプライバシーを守る手立てはないという。

アップルは、このプライバシー機能が今年の後半にSafariのデフォルトに切り替わるよう設定しているが、それだけでは不十分だ。同社は、他のブラウザーのメーカーもこの松明を手に取って一緒に走ってくれるよう、この技術をワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムで規格化するよう提案した。

最近のことを憶えている人なら、ウェブの規格はすべて成立するわけではないと思うだろう。哀れな運命を背負ったDo Not Track(トラッキング拒否)機能は、ブラウザーのユーザーからウェブサイトと広告ネットワークに追跡するなという信号を送れるようにするものだった。主要なブラウザーのメーカーはこの機能を受け入れたものの、議論が泥沼化して規格にはならなかった

アップルは、今回の提案は通ると見ている。その主な理由は、プライバシー広告クリック技術は、Do No Trackと異なり、他のプライバシー保護のための技術と協力してブラウザー内で効果を発揮できるからだ。Safariにはintelligence tracking prevention機能がある。GoogleのChromeMozillaのFirefoxなどの他のブラウザーも、プライバシーにうるさい人たちに対処するためにプライバシー機能を強化している。アップルはまた、ユーザーが積極的にこのプライバシー機能を欲しがると踏んでいる。その一方でこれは、広告やコンテンツのブロッカーをインストールするなどのユーザーの思い切った行動によって閉め出されることを恐れる広告主の懸念にも配慮している。

この新しいプライバシー技術は、先週公開になった開発者向けのSafari Technology Preview 82に搭載されている。ウェブ開発者向けには、今年後半に提供される。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

スタートアップや中小企業向け、LINEでデジタル広告の相談ができる「デジプロ」リリース

オンライン上でリスティング広告やSNS広告の質問や相談を受け付けるオンラインチャットサービス「デジプロ」を手がけるHagakureは4月4日、同サービスのリリースを発表した。

デジプロでは「Google広告の入稿方法を教えてください」「リターゲティング配信に必要なことは何でしょうか?」「Google Analyticsで広告経由の数値を見ることができますか?」などネット広告に関する疑問に、広告代理店出身のHagakureのメンバーたちが応じる。

「ネットの記事で調べたけど、本当に正しいのか自信が無い」「いちいち調べている時間が無い」「委託業者の言っていることが正しいのか分からない」などの悩みを解決するのが目的だ。

利用料金は月額1万円で、登録後、送られてきたLINE@アカウントを友達に追加することで、同プラットフォーム上で質問を開始することができる。

Hagakureが想定するデジプロの利用者は「これから広告を使って自社サービスアプリを宣伝したいスタートアップ」「未経験なのにWEBマーケティングを任された担当者」「代理店や業者に依頼しているが、よく理解していない方」などだ。

Hagakureは2018年10月に設立された。Hagakureいわく、資金力が豊富かつ予算が大きい大企業は、「広告代理店に依頼し、分からないことは代理店に質問することができる」。だが、ベンチャーや中小においては、「自社のリソースで広告を運用するため、誰にも相談することができないというケースが目立つ」という。

Hagakure代表の奥雄太氏は、会社員時代はデジタル広告の運用を担当。旅行、アパレル、教育など、様々な業界のクライアントを見ていた。「既に広告を実施しており知識のあるクライアント」が対象だったが、デジプロのようなサービスの必要性は、プライベートでスタートアップや地方の中小企業の経営者の相談を受ける中で感じたという。

「広告の基本的なことを知らないことで、効率の悪い広告費の使い方をしていたり、商品やサービスを届けたい人に届けることができていない企業が多いと感じたことが(デジプロ開発の)背景にある。百貨店を探している人に対して、ぬいぐるみの広告を配信していたり、など。しかし、代理店に依頼するとなると最低出稿金額が決まっていたりする。そのため、周りに相談できる人がいないベンチャーや中小企業が多いと広告の相談を受ける中で感じた」(奥氏)

今後の展開として、奥氏は、デジプロ上で「SEOやグロースハックなどのデジタルマーケティング全般」の相談に対応できるようにしたいと述べた。また、相談対応メンバーも増強し、最終的には「自動化」もしていく予定だ。

また、チャット相談と学習コンテンツを組み合わせることから成る、動画とテキストによる、デジタルマーケティング人材を育てる「オンライン学習サービス」もすでに視野にある。

Googleが広告詐欺に使われる3つの悪質なSDKをデベロッパーに警告

【抄訳】
数日前Googleは、BuzzFeedの調査で広告詐欺が発覚した人気アプリCheetah MobileとKika TechをPlay Storeから外した。そして今日(米国時間12/7)は、Googleのその後の調査により、これらのアプリの広告詐欺に使われた3つの悪質なSDKが見つかった。同社は今メールで、アプリにこれらのSDKをインストールしているデベロッパーに、その削除を要求した。要求に応じない場合は、そのデベロッパーのアプリがPlay Storeから取り去られる。

これらのSDKをインストールしたデベロッパーは、必ずしもそれが悪質なSDKであることを知ってはいない。Googleによると、ほとんどのデベロッパーが知らないだろう、という。

Googleはこのニュースを今日のブログ記事で共有したが、広告詐欺に関与したそのSDKの名前は挙げていない。

しかし本誌TechCrunchは、問題の広告ネットワークのSDKがAltaMob, BatMobi, そしてYeahMobiであることを別の筋から知った。

これらのSDKが使われているAndroidアプリの数をGoogleは共有していないが、しかしブログ記事によると同社はこの状況を深刻に受け止め、被害の規模を推計している。

ブログ記事の中でGoogleのセキュリティとプライバシーおよびAndroidとPlay担当VP Dave Kleidermacherはこう述べている: “報告によるとそれらのアプリは、アプリのインストールアトリビューションを悪用してユーザーが新たにインストールしたアプリのクレジットを詐称し、そのアプリのデベロッパーからダウンロードバウンティ(bounty, おまけ, ごほうび)を集めている”。Googleが追放した3つのSDKは、偽のクリックを作ることによってアプリインストールのクレジットを偽造していることが分かった。

【後略】

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

2024年、動画広告の国内市場規模は約2.6倍の4957億円にーーサイバーエージェント発表

サイバーエージェントは11月30日、インターネット広告業界に特化した研究機関のオンラインビデオ総研とデジタルインファクトと共同で、国内動画広告市場の動向をまとめた調査結果を発表した。

同レポートによれば、2018年の動画広告市場は昨年対比134%の1843億円に達する見込みだ。デバイス別でみると、その成長を牽引しているのはスマートフォン上の動画広告。スマートフォン向け単体の市場規模は1563億円と昨年対比143%の成長を遂げ、市場全体の85%を担う。一方のPC向けは280億円と推計されている。

動画興国市場の市場規模は今後も順調に成長すると見られており、2020年には2900億円、2022年には4187億円、2024年には4957億円に達する見込みだ。サイバーエージェントは同レポートにおいて「大手広告主を中心に自社製品・サービスのブランディングを目的にした動画広告の出稿が定着、その需要は引き続き増加傾向が見られる」とコメントしている。

次に広告フォーマット別の市場規模を見てみよう。同レポートによれば、2018年の市場規模全体に占める割合が一番大きいのは756億円の市場規模をもつインストリーム広告(動画プレイヤー内で配信されるタイプ)だった。次に大きいのはインフィード広告(コンテンツ間に表示される動画広告)で703億円だ。今後も市場規模全体は成長していくものの、この傾向は変わらず、2024年におけるインストリーム広告とインフィード広告の市場規模は、それぞれ2083億円、1784億円になる見通しだ。

同レポートでは、インストリーム動画広告の動向について「縦型フォーマットの提供が本格的に検討されるなど、ユーザーの動画視聴行動に最適なフォーマット提供に向けた研究や商品の開発が進んだ。また、ゲームやコミックなどのアプリケーション内で提供される動画リワードなどの広告フォーマットの需要も拡大した」とコメントしている。

Facebook、ブラックフライデーとサイバーマンデーをの前に広告システムが「断続的」中断

広告ネットワークの大規模なダウンの翌日、オンライン広告プラットフォーム最大手のFacebookは、広告主にとってもっとも重要なこの時期に今も広告システムの「断続的」問題を起こしている

同社広報担当者によると、ほとんどのシステムは復旧したが、断続的な問題が広告主に影響を与える可能性がある。

昨日(米国時間11/20)の大部分の時間、広告主はキャンペーンの作成や編集のためにAds ManagerやAds APIツールを使うことができなかった。

同社は既存の広告は配信されたと言ったが、広告主が新しいキャンペーンを設定したり、既存のキャンペーンに変更を加えることはできなかったと複数の広告ネットワークユーザーが言った。

Facebookによると、レポーティング機能は全インターフェースで復旧しているが、コンバージョン率のデータは米国では一日中、その他の地域では夕方に遅れがでていた。

ダウンの影響を受けたキャンペーンがいくつあったのか、広告プラットフォーム休止の補償や穴埋めをするかとうかについて、Facebookはコメントしなかった。

一部の広告主は今も機能停止状態にあり、不満を表わしている。

[メディアバイヤーがブロガーに費用を払うことをからかったり笑ったりするのは簡単だ。しかし私は違う。多くの中小ビジネス、なにやり私の生活はこのしくみに依存している。Facebookには説明責任がある。アドマネージャーが28時間停止していることで仲間の会社はすでに影響を受けている。]

これはほかにいくつもの部分に問題を抱えている会社にとって残念な状況だ。しかも、いじめやヘイトスピーチやFacebookの収益に影響を与えない誤情報などの問題と異なり、広告の販売はFacebookが金を稼ぐ手段そのものだ。

1年で一番忙しい買い物シーズン(すなわち1年で一番忙しい広告シーズン)に広告の反響を見ることができず、一部のデベロッパーが未だに断続的停止を経験しているのは悪い兆候だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Appleのクリスマス広告は美しい短編アニメだった――内気な少女が分かち合うことの大切さに気づく

Appleはいつもクリスマス・シーズンの広告には力を入れている。今年のクリスマス広告はキュートな短編アニメだった。 ピクサーのアニメにウェス・アンダーソン監督のタッチを加えたような仕上がりだ。

この短編は「贈り物を分かち合おう」(Share Your Gifts)と名付けられている。夢見がちなティーンエージャーの女性が主人公で、MacBookを使って何かを作っている。われわれにはそれが文章なのか詩なのか絵なのかわからない。

ともかく彼女は出来たものが気に入らず、プリントアウトをいつも緑色の箱に入れてしまう。紙が溜まりすぎてとうとう蓋が閉まらなくなる。

冬の寒い夜、彼女の愛犬がうっかり窓を開けてしまう。プリントアウトは窓から飛び出して宙を舞う。人に見られてはたいへんだと主人公は紙の後を追いかける。

最後に主人公は「分かち合う」ことの大切さを知る。美しく描かれているが、実際これは多くのクリエーティブな人々の実感をよく現していると思う。Instagram全盛の時代ではあるが、自分自身を深いところから表現する作品を公開することにはためらいを感じるものだ。

昨年までの広告と比べてサウンドトラックの雰囲気は大きく違う。これは16歳のシンガーソングライター、ビリー・アイリッシュが担当しているからだ。若い世代のアーティストの多くと同様、アイリッシュも両親と暮らす家のベッドルームでMacを使って作曲を始めた。この歌は兄弟の俳優、歌手のFinneas O’Connellとの共作だという。

面白いことに、今年の広告にはiPhoneもiPadもApple Watchも登場しない。 登場するのはMacだけだ。AppleにとってMacはきわめて重要なプロダクトだということを訴えたいようだ。ともあれ、ティム・クックはこの秋のビッグイベントでそう語っていた。

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滑川海彦@Facebook Google+