KPCBに加わって半年たったアリエル・ザッカーバーグにVCになった感想を聞いた

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昨年11月のアリエル・ザッカーバーグがベンチャーキャピタリストになるというTechCrunch記事が出た後、アリエルはKleiner Perkins Caufield & Byersに加わった。それから半年たったので、アリエルを私のポッドキャストに招いてVCの世界に入った感想を話してもらったら面白いだろうと考えた。

さいわい、アリエルはベンチャーキャピタリストになるにあたってどこがもっとも困難だったか、過去の経験がどのように役立ったかを実に率直に語ってくれた。アリエルはKPCBに加わる以前、Googleに勤務しており、次いでスマートフォン・アプリのHuminに参加し、エンジェル投資やプロダクト・マネージャーを務めた。

われわれの会話は多岐にわたったが、その中には兄のマーク・ザッカーバーグが今後はあらゆるプロダクトで人工知能が利用されるようになるだろうちう信念や、偉大なファウンダーとなるにあたって何が必要なのかベンチャーの世界に入ろうとする人間が地位を確立するにはどのようにすべきか、などが含まれた。アリエルは月曜朝のKPCBの全体会議で自己紹介としてムーンウォークをアカペラで歌ったことも話してくれた。

〔日本版〕アリエル・ザッカーバーグはFacebookのファウンダー、マーク・ザッカーバーグの1番下の妹。記事の筆者のハリー・ステビングズ自身がポッドキャストでアリエルにインタビューしている。ロンドン育ちのため英国風の英語。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

創業期のスタートアップとエンジェル投資家を結ぶ「Tokyo Angel Network」、ANRIが立ち上げ

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独立系ベンチャーキャピタルのANRIが、創業前後のスタートアップとエンジェル投資家のマッチング支援に乗り出した。2月3日より「Tokyo Angel Network」を立ち上げる。まずはGoogle Docs上で、スタートアップがエンジェルに対して事業や資本政策のメンタリングを希望するスタートアップを募る。

Tokyo Angel Networkに参加するエンジェル投資家は川田尚吾氏(ディー・エヌ・エー共同創業者)、木村新司氏(グノシー・アトランティス創業者)、山田進太郎氏(メルカリ・ウノウ創業者)、笹森良氏(フンザ創業者)、赤坂優氏(エウレカ創業者)、佐藤裕介氏(フリークアウト・イグニス創業者)、中川綾太郎氏(ペロリ創業者)の7人。応募するスタートアップの事業プラン対してANRIがスクリーニングを実施。一定基準(具体的には公開していないが、市場性や実現性、起業家の熱意といった話だろう)を満たしたスタートアップをエンジェルに紹介するという。ただしANRIはあくまでプラットフォームを運営するという位置付けになっており、応募するスタートアップへの投資の権利や義務を持たない。

このネットワーク、あくまでメンタリングのためのマッチングであり、それ以上の内容はうたっていない。だが、ここでエンジェルと話す機会を得てコミュニケーションをとることがきっかけとなって、将来的に投資や支援に繋がる可能性は決して低くないだろう。

VCとエンジェルで担えることは違う

ANRI代表パートナーの佐俣アンリ氏いわく、エンジェル投資をめぐる課題として、「スタートアップは良いエンジェルへのアクセス方法がない、一方でエンジェルはスタートアップからたくさんの連絡が来てしまうのが困る」ということがあるのだという。エンジェルへのアクセスがないゆえにシードVCからの調達を受けたあとにエンジェル投資を受ける、なんていうケースも少なくないそうだ。

日本でエンジェル投資家による出資といえば、数百万円程度というケースが少なくないので、シードファイナンスでバリュエーションが上がった後になると、エンジェルの持てる株式は非常に少なくなる。以前にも触れたが、そもそもエンジェル投資というのは「リターンありき」という話ではなく「スタートアップへの還元」という意味合いがある。なので持てる株式の割合がすべてではないのだが、それでもエンジェルこそが最初にスタートアップを支援すべき、というのがTokyo Angel Networkの考えだ。

「VCが担えることと、エンジェルが担えることは違う」と佐俣氏は語る。もちろんVCにはいろいろなバックグラウンドの人物がいるが、同氏は「僕は起業家出身ではないので、メンタルやチームの雰囲気について言ってあげるようなことしかできない」と自らについて語った上で、「例えばSEOの話なんかは3カ月でトレンドが変わる話。であれば現役でその領域を見ているエンジェルに力を貸してもらうのが一番いい。またイグジットして少し経った起業家したエンジェルなら、現役とは違う、達観したアドバイスもできる。何より尊敬している人のお金を預かることにこそ責任感と自信になるのではないか」とした。

米国ではAngel Listのようなエンジェル投資家のマッチングプラットフォームがある。もちろん日本では法律やエンジェルの数も違うので(そもそもこの数年で自らのスタートアップをイグジットさせた起業家が増えたことで、やっとエンジェルに関する話題も出てきたのではないか)そのまま持ってくるというわけにもいかないのだろうが、Tokyo Angel Networkも将来的にはそういったプラットフォームを目指すとしている。

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Josh McGinn

iSGインベストメントワークスに3人目のキャピタリスト、元CAVの佐藤真希子氏が参画

左からiSGS インベストメントワークス取締役の菅原敬氏、同取締役の佐藤真希子氏、同代表取締役の五嶋一人氏

左からiSGS インベストメントワークス取締役の菅原敬氏、同取締役の佐藤真希子氏、同代表取締役の五嶋一人氏

2015年10月にスタートしたばかりのベンチャーキャピタルがわずか3カ月で社名を変えると聞くのは珍しいケースだが、ポジティブなニュースだ。アイスタイル子会社のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)・iSG インベストメントワークスは1月19日、元サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)のキャピタリスト、佐藤真希子氏が参画。取締役 マネージング・ディレクターに就任することを発表した。またこれとあわせて商号を「iSGS インベストメントワークス」に変更することをあきらかにした。いずれも2月1日開催の臨時株主総会で決議する予定だ。

iSG インベストメントワークスは、昨年10月にアイスタイルキャピタルから社名を変更してスタートしている。それまで代表取締役社長を務めていたアイスタイル取締役 兼CFOの菅原敬氏が取締役に異動し、元コロプラの五嶋一人氏が代表取締役社長に就任している。社名のiSGは両氏の頭文字から取ったものだ。今回新たに佐藤氏が参画したことから、佐藤氏の頭文字「S」を付けて「iSGS」と社名を変更するのだという。

佐藤氏はサイバーエージェントの新卒1期生。同期はiemo代表取締役・DeNA執行役員の村田マリ氏などをはじめ、サイバーエージェント内外問わずIT業界で活躍する人物も多い。主に営業を担当した後にCAVへ出向。産休を挟みつつ、足かけ9年投資事業に携わり、2015年に同社を退職した。2012年上場のメディアフラッグ、2013年上場のフォトクリエイトをはじめ、LiB、ビザスク、トークノート、groovesなど多くの投資経験を持つ(ちなみに佐藤氏は元フォトクリエイトで現在スペースマーケットの代表を務める重松大輔氏と結婚している)。

「CAVでは最高の経験をさせてもらった」と振り返る佐藤氏。しかし、キャピタリスト10年目を迎えるにあたって、「今まで以上に自分の判断で自分が決めた人に入れる(投資する)、そして最後まで責任を持ってその人を見ていくということにチャレンジしたい」と思って独立を考えた。プライベートでは3人目の子どもを出産して復帰しており、「女性起業家の活躍が紹介されるように、女性VCのロールモデルになっていきたい。実は女性VCは現場で活躍し続けるよりミドル・バックオフィス業務に移ることが多い。もちろんそれも価値ある仕事だが、結局はダイバーシティ。フロントに立ち起業家と接し続け、色んな見方で事業を見ていかないと見えないこともある」(佐藤氏)と語る。

その後、独立してベンチャーキャピタルの組成、スタートアップのインキュベーション事業の立ち上げに向けて動いていたが、最終的に、退職間もなくから声が掛かっていたiSG インベストメントワークスへの参画を決めた。「ベンチャーキャピタルなのに社名に『ワークス』と入れているのは、『起業家と一緒に汗をかく』という意味がある。メンバー3人とも営業、ファイナンス、買収先の経営まで事業畑を長く続けて来た。私も投資先の営業から、リストラ、経営の再生と泥臭いところまでやってきている。そこに一緒にやって欲しいと声をかけてもらった。1人ではできることの限界があるが、チームで起業家をサポートしていきたい」(佐藤氏)。

同社は現在ファンドの組成中。スキームの詳細は公開されていないが、本業とのシナジーを求めるCVCではなく、独立性の非常に高いファンドになるという。また、投資対象は「インターネット+アルファ」「既存産業+インターネット」が中心。シードからレイターまでのステージのスタートアップに対して、数百万円から数千万円程度の投資を行う。すでに昨日紹介したウィンクルのほか、ヘルスケアスタートアップのサイマックスなどに出資している。また既存ファンドのセカンダリー投資をバルク案件を組成して買い受ける「バルクセール」や、ある企業の株式のVC分を全部、あるいは経営者の分も買い受ける「バイアウト投資」も行う予定。さらに、佐藤氏が参画したことで、スタートアップコミュニティの創造、大企業とスタートアップの連携なども進めて行くという。

トラベル情報のSkyscanner、Yahoo Japan他からの1.92億ドルでアジア進出を加速

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今日(米国時間1/12)、イギリスのエジンバラに本拠を置くトラベル検索エンジンのSkyscannerは1億2800ポンド(約1億9200万ドル)のベンチャー資金を調達したことを発表した。 同社は評価額を明らかにしていないが、Financial Timesは評価額は16億ドルと推定され、めでたくユニコーン〔評価額10億ドル以上のスタートアップ〕の仲間入りをしたと報じている

Skyscannerの創立は2003年で、今回の新規資金は同社が国際市場を開拓し、そのために必要な企買収を実施するために利用されるという。今回はアジアから新しく投資家とが参加した。そのうちの2社はマレーシア政府の戦略的投資のためのファンド、Khazanah Nasional Berhadで、もう1社はすでにSkyascannerのベンチャー・パートナーである日本のYahoo! Japanだ。

ファンドマネージャーのArtemis、独立の投資マネージャー。Baillie Gifford、非公開証券会社のVitruvian Partnersもこのラウンドに加わった。SAPとSequoiaはこれ以前からのパートナーだ。

同社は公式ブログ記事で、今回のラウンドは一次投資、二次投資の2部に分かれ、それぞれ新しい投資額に応じて株式の持ち分(率は非公開)を得たとしている。

共同ファウンダー、CEOのGareth WilliamsはFinancial Timesとのインタビューで、「新しい資本はわれわれの株式の換金性を高めるので、一部の株主は株式をすべて手放すことなく、一部を売却することができるようになるだろう」と述べている。

この3年、Skyscannerはアジア市場への参入の努力を重ねてきた。中国最大の検索エンジン、百度やYahoo! Japanと提携し、日本、中国、シンガポールにオフィスを開設した。また中国のトラベル検索のスタートアップ、Youbibiを買収している。

Skyscannerサイトは毎月5000万人が利用している。しかしこの分野にはライバルがきわめて多い。Kayak、Expediaに加えて中国からもQunarやCtripのようなサビスが現れている。またGoogleのフライト情報、Google Flightsも手強いライバルだ。Googleはフライト情報処理ソフトのスタートアップ、ITA Softwareを2010年に買収したのを機としてFlightsのサービスを提供開始している。

画像:: Ditty_about_summer/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

グロービスが総額160億円の5号ファンドを組成、年金基金の出資は「VCの悲願」

gcpちょうど1年前の年始、僕はインキュベイトファンドが組成した110億円の3号ファンドについて記事にしたのだけれども、2016年も年始に大型のファンド組成のニュースがあった。

ベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)は1月4日付けで第5号となる新ファンド「Globis Fund V, L.P.、グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合」を組成した。一次募集(ファーストクローズ)は約140億円。出資するのは三井住友信託銀行、日本政策投資銀行、大同生命保険、マスミューチュアル生命保険株のほか、国内大手企業年金基金を含む国内外の大手機関投資家。ファンド総額は160億円の予定だが、すでにそれ以上の出資要望があるそうで、3月末の最終募集(ファイナルクローズ)を前に、すでに募集が完了している状況だという。

GCPでは1996年に1号ファンド(5億4000万円)を組成。1999年に2号ファンド(200億円)、2006年に3号ファンド(180億円)、2013年に4号ファンド(115億円)を組成。累計120社以上への投資を行っている。直近の投資先上場企業としてはピクスタやイード、カヤック、ブイキューブなど、TechCrunchの読者もよく知るIT企業が多い。

投資領域は「6 Tech」ほか、投資額は1社最大20億円超に

5号ファンドで投資対象とするのは、「6 Tech」(FinTech、HealthcareTech、EduTech、HomeTech、AutoTech、FrontierTechの総称)のほか、シェアエコノミーやAR/VR、IoT、AIなど。GCPパートナーの高宮慎一氏いわく、「IT(Information Technology:情報技術)&IT(Industry Transformation:産業の変革)の領域。2016年に『来る』という領域かどうかに関わらず、ファンドが終了する10年先までを見据えた投資を行う」とのことだ。

投資対象とするのはシードマネーを調達済みで、シリーズA以降の調達を検討しているアーリーステージのスタートアップが中心。GCPというとレイターステージの資金調達を手がける印象が強かったのだけれども、よくよく考えてみると、メルカリやスマートニュースなどもアーリーステージでの投資だ。内訳としては「ざっくり45%がアーリーステージ、35%がミドルステージ、残りがレイターステージ」(高宮氏)なのだそう。具体的には1社あたり数億円〜最大で20億円超の出資を行う予定だという。

昨日はシード特化のVCであるSkyland Venturesの新ファンドのニュースがあった。その中でパートナーの木下慶彦氏が自身の投資スタンスについて、進捗報告のために起業家の時間を取るようなことをしないためにも「ノーハンズオン」だと語っていたが、GCPのスタンスは、バリバリの「ハンズオン」なのだそう。もちろん投資対象のステージも違うし、事業内容によって出資先ごとにVCが支援するべき内容は異なるので、どちらが正しいという話ではない。

GCPのハンズオンの中で特徴的なのは、3R、すなわちIR、PR、HRの業務支援だという。投資担当以外のキャピタリストや親会社であるグロービスのスタッフ、社外のパートナーなどと連携して各種のリソースを提供するのだそうだ。例えば元証券会社の引受担当者がIRまわりのコンサルティングをしたり、グロービスの広報チームがPRの支援をしたりするほか、GCPが投資先企業の人材ニーズをとりまとめてヘッドハンターに共有。一括で広く人材の確保を進めるといったこともしているそうだ。

年金基金からの出資は「VCの悲願」

ファンド組成のニュースはこれまでいくつもあったが、少し珍しいのは、「企業年金基金などの機関投資家が出資している」という内容だ。高宮氏はこれについて、「ある意味では国内VC、ひいてはベンチャー業界の悲願ではないか」と語る。

それはどういう意味か? 100億円超のファンドを組成するとなると出資者1組織ごとに10億円ほどの額を集める必要が出てくる。かといって10億円もの資金を出せるような組織なんてそうそうはない。そこで銀行や保険会社、政府系金融機関などの機関投資家からの出資を仰ぐ必要があるわけだ。そんな機関投資家の中でも、年金基金といえばリスクに対して非常にセンシティブな運用を行ってきたところだ。例えば2015年には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が年金の運用において、四半期での損失を出したと批判を浴びた。もちろん短期的に見れば8兆円近い損失という大きな話だ。だがたった1つの四半期の損失という見方もできる。長期的に見ればGPIFは高い運用成績を上げており、しかもベンチマーク(運用成果を測定し、評価するための基準)と比較しても良い結果となっている。

しかしそういったネガティブな反応を意識する以上、年金の運用はセンシティブにならざるを得ないというのは致し方ないところ。とはいえ年金基金は数千億円を超えるような運用総額を誇っているわけだし、代替資産(株式や債権以外の資産。不動産もVCへの出資もこれにあたる)に長期的視点で腰をすえて投資するプレーヤーであるという意味でも、機関投資家の中でも大きな存在だ。米国においては、年金基金からの資金がVC業界の発展を支えてきた側面が大きいとも聞く。

そんな背景がある中で年金の資金が入ることについて、高宮氏は「もちろん我々の成果が評価されたということや、そのIRを行った結果ではある」とした上で、「それ以上に、ベンチャーというハイリスクハイリターンな領域に、年金の大きなお金が流れ始めたということが大きい。GCPだけの話ではなく、VC業界、ベンチャー業界全体に意味があること」(高宮氏)と説明する。

2015年3月に発表されたJapan Venture Researchのレポートでは、スタートアップの調達額は増加(一方でその社数は減少)というトレンドが紹介されているが、米国と比較すれば国内VCの投資額はまだまだ小さい(2012年度で米国VCの投資額は国内VCの約24倍という数字もある。リンク先はベンチャーユナイテッド チーフベンチャーキャピタリストである丸山聡氏のブログ)。今回の発表は「GCPが大きなファンドを1つ作った」というだけ(もちろん、「だけ」といっても大きなファンドができることは国内のスタートアップコミュニティにとっては大きな意味がある)の話だが、背景を読み解けば「国内VCに流れるお金の変化」という大きな兆しの見える話とも言えそうだ。

BASEとメルカリがタッグ、最大4.5億円の出資を含む資本業務提携

左からBASE共同創業取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

左からBASE取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

今日から仕事が始まる人も多いだろうが、早速大きなニュースが飛び込んできた。ネットショップ開設サービス「BASE」を提供するBASEは1月4日、フリマアプリ「mercari」を提供するメルカリとの資本業務提携を実施したことをあきらかにした。

今回の提携に伴い、BASEはメルカリを引受先とした最大4億5000万円の第三者割当増資(マイルストーン達成による最大額)を実施する。出資比率は非公開。また元ミクシィ取締役CFOで、現在メルカリ取締役を務める小泉文明氏がBASEの社外取締役に、メルカリ プリンシパルエンジニアの長野雅広氏がBASEの技術アドバイザーに就任する。

サービス面での連携も検討中だというが、具体的には明らかにされていない。BASEでは今後採用活動やマーケティングを強化するとしている。近いうちにも採用向けのイベントなどを共同開催するほか、アプリでの送客やマーケティングなどで協力する予定だという。

同じビルでスタートしたBASEとメルカリ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏の2人が語ったところによると、両社はもともと非常に近い関係にあった。BASEは2012年に六本木一丁目にあったビルで業務を開始したが、そこはpaperboy&co.(現GMOペパボ)創業者であり、BASEの共同創業・取締役である家入一真氏が当時手がけていたプロジェクト「Liverty」や、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」のハイパーインターネッツなど、家入氏が関わるスタートアップが数多く入居していた。

2012年にZynga Japanを退任し、約1年かけて世界一周を旅行。再び起業の準備をしていた山田氏もそのビルを拠点にしていた。また両社はともにベンチャーキャピタルのEast Ventures(EV)から出資を受けることになる。そのためビルの取り壊しが決まった際の移転先も同じ、六本木にあるEVのインキュベーションオフィスだった。

もともと家入氏と山田氏は同世代(家入氏は1978年生まれ、山田氏は1977年生まれ)の起業家として、また個人投資家として親交が深かったが、これに鶴岡氏も加わるかたちで「ときどき事業の相談をしたり、お互いが人の紹介をしたりしていた」(鶴岡氏)のだという。創業当時22歳だった鶴岡氏からすればひとまわり年上で、起業家経験の長い山田氏はメンター的な存在の1人だった。今回の発表も、もともとVCなどからの資金調達に動いていた鶴岡氏が山田氏に相談したことがきっかけなのだという。

BASEの店舗数は現在20万店舗。流通総額で見れば、年間数十億円後半の規模にまで成長した。「これまで出店者を増やすことに注力してきたが、2016年からは購入者を集めるフェーズになる。購入者を集めるノウハウを持っているのがメルカリ。彼らの持っているノウハウで学べるモノがあればなんでも学んでいきたい」(鶴岡氏)。メルカリは2013年からの2年半で日米2700万ダウンロードを達成。この短期間でテレビCMを含むマーケティングも経験している、この速度で成長を遂げたスタートアップはそう多くない。

メルカリ、今後はスタートアップ出資を加速

メルカリについては、2015年12月に黒字化を達成していることを報じたばかりだが、本格的な出資はこれが初めて。山田氏は今後、スタートアップへの出資や買収を「積極的にやっていきたい」と語る。

CtoCコマースだけでなく、BASEのようなスモールBtoCのコマースを自社でやる可能性はなかったのかとも思ったのだが、メルカリの山田氏は「現在リソースの9割をmercariの米国展開に使っている。またCtoCといっても、サービスCtoCのような領域もあって幅が広い。なのでBtoCについては連携してやっていくのがいいと思っている」と語る。

またBASEについては、代表同士だけでなく、経営陣や社内のキーマンらに親交があり、文化的にも近い(小泉氏いわく「ミクシィやフリークアウト、paperboyなど出身の『ネット大好き企業』の集まり」だそう)ことも出資の動機になったという。なお今後BASEを買収する可能性についても聞いたのだが、「BtoCとCtoCなので実は全然サービスが違うし、ブランディングも違う。権限や責任を与えて自走できるのが筋肉質な組織を作ると考えている」(小泉氏)とのことだった。

クラウド会計のfreeeがFinTechファンドなどから10億円を調達、年間の調達額は45億円に

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフト「freee」をはじめ、クラウド給与計算ソフト、会社設立支援ツールなどを提供するfreeeは12月28日、SBIホールディングス傘下のSBIインベストメントが運用する「FinTechファンド」などを引受先とした合計10億円の第三者割り当てを実施したことをあきらかにした。同社の2015年の資金調達額は8月の調達とあわせて45億円。同社の発表によると、未上場企業においては年内で最大の額になるという。

freee代表取締役の佐々木大輔氏

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフトのfreeeはこれまで40万件以上の事業所が利用。12月には三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など11の銀行との協業も発表している。これはfreeeのユーザーである中小企業や個人事業主の会計データを、ユーザーに許諾を得た銀行が閲覧できるようになるというもの。今後銀行側では、会計データを与信にした融資など、新たな金融サービスを企画・検討していくという。

またfreeeは12月16日にメディア向けの説明会を開催しているが、その際には、現状のfreeeはまだサービスの第1段階であると説明。今後は、会計事務所向けに、経営判断のためのレポーティング機能や分析機能、マーケティング機能などを提供していく。

その説明会の際に同社が強調していたのが、「10年後になくなる職業として公認会計士が挙げられているが、そうはならない」ということ。

多くの職業が今後コンピューターで置き換えられるとした2013年のオックスフォード大学のレポートでは、人工知能の発展により10年後には会計士の仕事がなくなるとも言われている。だが今後、企業のリアルタイムな経営パートナーになっていくことで、「なくなる職業」にはならないというのがfreeeの主張だ。freeeをはじめとする会計ソフトは、毎月ではなく、リアルタイムにレポートを閲覧できる。このリアルタイムな数字をもとに、素早い経営判断を支援していくことが求められているのだと。前述の機能強化は、この方針に沿ったもの。具体的なスケジュールは未定だが、2016年中にも順次新機能が提供される見込みだ。

freeeの今後のプロダクト開発について

freeeの今後のプロダクト開発について

Alibaba、上海のレストランの宅配スタートアップ、Ele.meに12億5000万ドル出資か

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Alibabaグループは上海の料理宅配サービス、Ele.meに12億5000万ドルを出資する方向だと中国のニュースサイト Caixin〔財新〕が報じている〔URLは中国語記事〕。この投資が行われればAlibabaはこのスタートアップの株式の27.7%を握り、最大の株主となる。

われわれの Crunchbaseによると、Ele.meはこれまでに10億9000万ドルのベンチャー資金を調達している。投資家のリストにAlibabaのライバルであるTencentとJD.comが含まれている点が注目だ。Ele.meが実施した最大の資金調達は今年8月に発表された6億3000万ドルに上るシリーズFラウンドだった。

TechCrunchはAlibabaとEle.meにコメントを求めている。

この投資が実施されればAlibabaのO2O戦略は大幅に強化されるはずだ。 O2Oというのはオンラン・トゥー・オフライン、ないしオンラン・トゥー・オンラインの頭文字で、eコマースのプレイヤーはオンラインで金を使う顧客にオフラインでも金を使わせようと努力している。逆に、というか、同時に、普段は実店舗で買い物をしている顧客をオンライン消費に引き込む努力でもある。

Alibabaの他のO2O分野での投資には中国最大のモバイル支払サービス、Alipay、eコマース・チェーン、Suning〔蘇寧電器〕、タクシー配車アプリのDidi Kuaidi〔快的打车〕などがある。

画像: aaron tam/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

クラウドソーシングでマンガ制作——フーモアがデジガレなどから2億円の資金調達

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クラウドソーシングでマンガ制作を行うスタートアップのフーモアは12月16日、デジタルガレージ傘下のDGインキュベーションおよびDK Gate(講談社との合弁。今回が初の投資となる)、アドウェイズを引受先とした合計約2億円資金調達を実施したことを明らかにした。

フーモアは2011年11月の設立。クラウドソーシングの仕組みを利用してゲーム向けのイラストや3DCGなどを制作してきた。競合サービスであるMUGENUPなども詳細は違えど同様のスキームを採用しているとも聞くが、制作工程を分業する独自のスキームを採用、さらに、国内外で約3000人のクリエイターをネットワーク化することで、短期間で高品質な制作物の量産を実現しているとしている。売上高は非公開だが、2年目以降、前年比500%、230%、140%というペースで成長しており、現在は売上高数億円という規模になっているという。

このノウハウを元に、2015年1月からはマンガ制作の新規事業を開始。漫画制作の工程についてもイラスト同様に分業することで、スマートフォンに特化したマンガの制作を行っている。ディー・エヌ・エー(DeNA)の「マンガボックス」をはじめとしたスマホ向けのマンガアプリが登場しているが、そこに配信するマンガ——スマホ向けゲームのコミカライズや「マンガ広告」、すなわちネイティブアドなど——をこれまで1年弱で150本以制作してきたという。

以前、とあるスタートアップがマンガ広告を作成して漫画アプリ上で配信したが、コンバージョンは「通常広告と比較しても厳しい結果が出た」なんていう話を聞いたことがあった。通常の広告と同じように、マンガ広告も演出や構成が重要だし、なによりコンバージョンまで導かないといけない。またフーモアのように制作に特化しているのであれば短期間に漫画を量産し、品質を落とさないことも求められる。このあたりの課題を解決するために、分業型のクラウドソーシングのスキームが有効だと説明する。

フーモアでは今回の出資もとに、マンガを使った広告素材の制作、オリジナル作品の制作を進めていく予定。

2015年最後のテクノロジーIPOは成功―Atlassian株、32%アップで時価総額は58億ドルに

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おそらくは2015年最後のテクノロジー系新規上場になるであろうAtlassianが、今日(米国時間12/10)初めて取引された。

共同作業と生産性向上のためのソフトウェア・ツールのメーカー、Atlassianは上場初日を32%のアップで締めくくった。Atlassianは上場以前、33億ドルの会社評価額で資金を調達していた。この株の値上がりで同社の価値は60億ドルに近づいたことになり、今年最強の上場会社の一つとなった。

今回シリコンバレーでもっともホットな会社となったAtlassianのプロダクトでは、もっとも知られているのはSlackのライバルのチャット・プラットフォーム、Hipchatだろう。少なくとも当面は、だがAtlassianは投資家の強い信任を得ていることがはっきりした。

今回のパフォーマンスは予想されないことではなかった。 Atlassianのソフトウェアには独特のキャラクターがあって、これが惹きつけるのは投資家ばかりではない。同社は第3四半期の売上も昨年の6790万ドルから今年の1億180万ドルへと大幅なアップを達成している。.

最近、上場したり上場を希望していると報じられたりした会社は売上を伸ばしているものの赤字幅も拡大している。こういう会社は利幅の拡大という目標にもっと注意を払う必要がある。最近の投資家は以前より損失の拡大に神経質だ。この点は最近四半期決算を発表した後のBox株価の乱高下を見ればよい。【略】

Atlassianは売上と利益を伸ばしている。利益率はそこそこだが、手持ちキャッシュも増加させた。こうなれば投資家としては自ずから満足ということになるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

FiNCがANAほか東証一部上場企業などから第三者割当増資を実施、今後は事業提携も

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スマートフォンを活用したダイエット指導サービスなどを手がけるFiNCは12月7日、ANAホールディングス、全日空商事、クレディセゾン、第一生命保険、三菱地所、吉野家ホールディングス、ロート製薬、キユーピー、 ゴルフダイジェスト・オンライン、ネオキャリア、Fenox Venture Capital、グッドパッチおよび、既存株主から第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額や出資比率は非公開。

FiNCでは今回の資金調達をもとに、人工知能による新サービスおよびプロダクト開発を行うとしている。今後はプロダクト開発に向けての人材を採用するほか、ウェルネスプラットフォームを強化するためM&Aや事業出資、マーケティングやプロモーションなどを進める。

ソフトバンクが10月に開催した新製品発表会の中で、IBMの人工知能「IBM Watson」を活用したヘルスケアサービス「パーソナルカラダサポート」(2016年3月以降提供予定)をFiNCとソフトバンクの共同開発で提供することが発表されていた。今後はこの製品や新プロダクトの開発を進めるということだろう。

またFiNCは10月にソフトバンクやANA、ネスレ日本、みずほ証券など発起人20社による「ウェルネス経営協議会」を設立すると発表している。今回の出資企業の一部はその発起人企業でもある。

専用ボックスで1カ月保存可能な総菜を提供する「オフィスおかん」、運営会社がYJキャピタルなどから資金調達

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冷蔵庫や専用ボックスを設置して、1ヶ月保存可能な惣菜やご飯、スープなどをオフィスに提供する、“社食版のオフィスグリコ”とも言えるサービス「オフィスおかん」。サービスを提供するおかんが11月25日、YJキャピタルのほかSMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、シーエー・モバイルの4社を引受先とする第三者割当増資を実施したことをあきらかにした。金額は非公開。ただし数億円規模の資金を調達したと見られる。

おかんの創業は2012年12月。福井県にある総菜屋チェーンが保有する技術を用いて、冷蔵庫で約1カ月間保存可能な総菜を提供している。もともとは個人宅向けに毎月1回商品を配送するサービスを展開していたが、現在は法人向け事業に注力。東京23区内のオフィス向けにサービスを展開している。

導入企業はすでに200社以上。従業員5人程度のスタートアップから、1000人以上の上場企業まで、導入企業は幅広い。「もともと渋谷からスタートしたこともあって、当初は渋谷周辺のIT系企業への導入がメインだったが、現在では老舗メーカーや建設業、コンサルに士業、結婚式場など幅広く利用されている。社食があるような企業であってもオープンしている時間は限定されているので、それを補完するかたちで導入するというケースもあるし、本社には社食があるが、支社には社食がないので、その不公平感を埋めるために支社に導入するというケースもある」(おかん代表取締役の沢木恵太氏)

現在1カ月に提供している総菜の数は数万食。もともと総菜を製造していた福井県の総菜工場に加えて、ほか全国5カ所の工場と提携。工場の空き時間を利用してオフィスおかんの総菜を製造している。

おかんは今回の調達をもとに、オフィスおかんの規模拡大と新サービスの開発を進める。システムやサプライチェーンの強化を進めるほか、マーケティングや営業の人員を増強するほか、「企業の中に販売チャネルを持っていることを生かしたC(コンシューマー)向けサービスを展開する」(沢木氏)という。東京23区以外へのサービス展開については、「問い合わせも多いので今後は対応していきたいが、配送などもあるため、まずは東京でサービスを展開していきたい」(沢木氏)としている。

Andreessen Horowitz、バイオテック投資に2億ドルを用意―新たなゼネラル・パートナーが就任

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シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitzが大々的にバイオテック分野に参入しようとしている。同社はAH Bio Fundと呼ばれる2億ドルのファンドを組成した。同時にこのファンドの運用の指揮を取る新たなGP(ゼネラル・パートナー)にVijay Pandeが就任した。

新ファンドはコンピューターとバイオテックの交差する分野の初期のスタートアップを主たる投資ターゲットとしている。HA BioはAndreessen Horowitzとして特定分野を対象とする最初のファンドとなる。またスタートアップがこのファンドで成功すれば、その後は今年3月に発表された15億ドルのメインのファンドが投資を引き継ぐことになるのだろう。

Pandeは知識、経験、人脈いずれをとっても新たなGPとして適任だと思われる。過去16年、スタンフォードの教授として化学と構造生物学を教えてきたPandeは、「割合としては少なくなるだろう」としながらも、大学における研究グループに今後も時間を割くとしている。

またPandeはこれまで数多くのスタートアップに関わってきた。シード資金を受けた感染症治療のスタートアップ、Globavirの共同ファウンダーであり、発足以来16年になる感染症研究のための分散コンピューティング環境、Folding@homeのファウンダーでもある。

ヘルスケアや機械学習などスタンフォード発のこの分野のスタートアップについて尋ねられて、Pandeは「どれも魅力的だ。私は菓子屋に入り込んだ子供みたいな状態で、どれに対してもノーといいにくい」と答えた。PandeはスタンフォードだけでなくUCバークレーやM.I.Tのスタートアップにも時間を割くという。Pandeは以前、バークレーでMiller Fellowを務めており、PhDの学位はM.I.Tで取得しているだけに、この方針を実行するにはまさに適任だ。

PandeはGPに就任する以前、昨年Andreessen Horowitzにパートタイムで関わったが、これは大いに役立ったという。バイオテックのビジネス的側面についてはAndreessen HorowitzのGPであり、以前のOpenTableのCEOであるJeff Jordanが詳しく、Pandeが適切なスタートアップを選ぶ手助けになるだろうという。ヘルスケアや保険業の専門家としては、以前人的資源管理のソフトウェア企業を創立したLarsDalgaardがやはりGPの職に就いている。

具体的なディスカッションの過程は不明だが、こうした専門家の助力はすでにPandeに最初の成果をもたらしている。ビッグデータを利用して新薬の候補を効率的にスクリーニングするアルゴリズムを開発している初期のスタートアップ、TwoXARにPandeは投資を決めている。 今後も続々と投資案件が決定されていくと期待してよいだろう。

Pandeの任命でAndreessen HorowitzのGPは9人となった。【略】

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

元GoogleのSebasitan ThrunのUdacity、急成長続く―シリーズDで1億ドルを調達、評価額は10億ドルに

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正統的なコンピュータ言語教育サイトとして有名なUdacityが、いわゆるユニコーンの仲間入りをする。この水曜に同社はシリーズDラウンドで1億500万ドルを調達したことを発表した。これにともなって、会社評価額はついに10億ドルの大台に乗った。これでユニコーン・クラブへの加入を果たしたわけだ。

シリーズDをリードしたのは国際的なメディアと教育のコングロマリット、Bertelsmannで、これにスコットランドのBaillie Gifford、Emerson Collective、 Google Venturesが参加した。同時に既存の投資家、Andreessen Horowitz、Charles River Ventures、Drive Capitalもこのラウンドに加わっている。

Bertelsmannの教育事業グループのCEO、Kay Krafftはこの投資にともなってUdacityの取締役に就任した。

Udacityの社長、COOのVish Makhijaniは声明の中で次のように述べた。「Udacityの使命はコンピュータ言語の教育を民主化し、全世界の何十億もの人々に手頃な料金で均等に習得のチャンスを与えることだ。コンピュータ言語の学習によりこれらの人々は適切な職を得ることができ、生活は大きく改善されるだろう。われわれは急成長を続けているが、目的の達成までの道のりは長い。今回の資金調達ラウンドで、Udacityの会社評価が10億ドルとなったことを光栄に思っている。われわれの歴史を振り返るとき、身の引き締まる思いだ。」

今回のラウンドは同社が世界的に規模を拡大しているさなかに行われた。この秋に入ってUdacityはサービスをインドに拡大している。

この資金調達のニュースは同社のnanodegreeプログラムのスタート1周年と重なった。Ucacityが認定するコンピュータ言語のnanodegreeは、現在シリコンバレーでも最大の企業であるGoogleやSalesforceで資格の一つとして認定されている。Udacityによれば、世界の168ヵ国で1万1000人がnanodegreeの取得を目指して各コースに登録しているという。

〔日本版:Udacityは元Google、元スタンフォード教授のSebastian Thrunが創立した企業。TechCrunch Japanでもたびたび紹介されている。〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

エンジェル投資家の役割ってどんなこと? TechCrunch Tokyoでコロプラ千葉氏とコーチ・ユナイテッド有安氏に聞く

スタートアップのエコシステムには、起業家だけでなく、彼らに資金や知見を提供する支援者がいるのは周知の通り。起業家が外部から資金を調達して事業のアクセルを踏む際に投資をするのは、ベンチャーキャピタルだったり事業会社だったりさまざまだ。

コロプラ取締役副社長 次世代部長の千葉功太郎

コロプラ取締役副社長 次世代部長の千葉功太郎

そんな支援者の中には「エンジェル投資家」と呼ばれる人たちがいる。TechCrunchの読者ならご存じかも知れないが、彼らは創業期のスタートアップに対しての投資を行う個人投資家たちだ。

一度自ら立ち上げた会社を上場させるなり売却するなりして利益を得た元起業家・元経営メンバーなどが、次の世代の起業家に対して資金を提供し、アドバイスを行い、人脈を紹介するというケースが多い。スタートアップ企業に投資をするだけでなく、ベンチャーキャピタルの手がけるファンドに対してLP出資するなどして、間接的に投資するケースも少なくない。ちなみにエンジェルという呼び名は、演劇業界における出資者からついているのだとか。

日本のネット領域では、ディー・エヌ・エー共同創業者の川田尚吾氏、ネットエイジ創業者の西川潔氏、現在クックパッド代表執行役兼取締役を務める穐田誉輝氏なんかの名前が挙がることが多い。ほかにも上場・事業売却した経営者らが若き起業家に支援をしているなんて話はちらほら聞くが、ここ数年のIPOやバイアウトによるイグジットで比較的若いエンジェル投資家が増えているのは確実な流れだ。

しかし、国内のエンジェル投資家がメディアなどに出て自分たちの存在をアピールすることは少ない。例えば僕たちがスタートアップの資金調達のニュースを書くときにも、「ベンチャーキャピタルの○○社および個人投資家などから資金を調達した」といった表現をすることがあるが、この「個人投資家など」は名前を非公開にしているエンジェル投資家であるケースも多い。クローズドな場を除いて大々的に自身の投資について語ることは少ない。

開催まで1週間弱となったスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」では、そんなエンジェル投資家をテーマにしたセッションを開催する予定だ。

コーチ・ユナイテッド代表取締役社長の有安伸宏氏の

コーチ・ユナイテッド代表取締役社長の有安伸宏氏の

このセッションにはコロプラ取締役副社長 次世代部長の千葉功太郎氏と、コーチ・ユナイテッド代表取締役社長の有安伸宏氏の2人が登壇する。いずれも本業では経営陣としての手腕を振るう一方、エンジェル投資家として積極的に若い起業家を支援している人物だ。

千葉氏は新卒でリクルートに入社したのち、ネット黎明期の2000年にサイバードに入社。様々なモバイルビジネスに関わったのち、2009年にコロプラ立ち上げに参画。同社を上場まで導いたのち、新卒採用や人材育成といった面で同社の成長を支えてきた。最近では子会社のコロプラネクストを通じて学生起業家への支援も積極的に行っているほか、個人でも多くのスタートアップに投資をしている。

一方の有安氏は新卒でユニリーバ・ジャパンへ入社したのち、2007年にコーチ・ユナイテッドを設立。語学や楽器レッスンのマーケットプレイス「サイタ」を運営してきた。2013年には同社をクックパッドへ売却。継続して事業を行いつつ、個人や「Tokyo Founders Fund(ノボット創業者の小林清剛氏や元ミクシィ代表取締役の朝倉祐介氏ら経営者8人によるファンド)」での投資活動を行っている。

セッションではエンジェル投資家として活躍する2人に、その実態を語ってもらえればと思っている。投資を始めた理由やそのスタンス、支援したい起業家の人物像、支援の手段や本業との兼ね合いまで、いろいろ話を聞ければと思っている。興味がある人は、是非ともイベントに遊びに来て欲しい。

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ラボ型オフショア開発などを手がけるエボラブルアジアが約6.5億円の資金調達

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エボラブルアジアは10月29日、Fenox Venture Capitalおよびヒトトキインキュベーター(日本たばこ産業(JT)とヒトメディアの合弁ベンチャーキャピタルだ)から第三者割当増資と株式譲渡により総額約6億4000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

エボラブルアジアは2007年の設立。オンライン旅行事業やオフショア開発事業などを展開。今回調達した資金をもとにこれらの事業拡大に注力する。

同社はベトナム・ホーチミンに子会社を立ち上げ、プロジェクトごとに一定期間の仕事量を補償してエンジニアを確保する「ラボ型」と呼ばれるオフショア開発なども手がけている。

このラボ型オフショアでは、成果が出たエンジニアチームを発注元の会社が買収したり、エボラブルアジアと合弁会社を作るかたちで独立性を高めたりする、というスキームもあると聞く。ヤフーが4月に立ち上げたベトナムの開発子会社も、同社のラボ型オフショアで開発していたチームがベースになっているそうだ。

NASDAQが非上場株二次市場SecondMarketを買収、スタートアップの株が売りやすくなる

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[筆者: Katie Roof]
NASDAQが、SecondMarket Solutionsを買収してその能力をNASDAQ Private Marketに合体させることで合意した。同グループは、DocuSignやPinterest、Shazam、Tangoなど非上場企業の株式の取引を支えていくことになる。

SecondMarketの現在のCEO Bill Siegelが、大きくなったNASDAQ Private Marketのビジネスを率いる。その本社は、サンフランシスコとニューヨークの両方に置かれる。業務は、最初の日から、通常通り継続して行われる。

買収の条件は公表されていない。

スタートアップの非上場期間が長くなっているので、株主たちのために流動性を提供すべきニーズも増している。NASDAQの執行副社長Nelson Griggsによれば、社員が自社株を売れるオプションを持てば、スタートアップは“多くの優秀な人材を吸引/保持できる”ようになる。

また企業にとっても、キャッシュ状況が楽になるので、IPOや売却に向かうプレッシャーが和らぐ。たしかにIPOをすれば一般的に株価は上がるが、住宅資金などのために、もっと前に株を売りたい社員もいる。

非上場でも、急速に成長している企業の株には需要がある。NASDAQ Private Marketは機関投資家にも働きかけて、彼らにも、これらIPO前のスタートアップの株式に関心を持ってもらう。

SecondMarketは2004年に創業され、これまで数度の“バージョンアップ”を行っている。非公開株のための二次市場としてはパイオニア的存在で、Facebookなどの人気株も初期にはここで取引された。

Facebookが上場した2013年からは、SecondMarketは、単発的な取引から企業がスポンサーになるトランザクションに焦点を移した。同グループは70社がスポンサーとなる株式公開買付け事業を仲介し、トランザクションの量として25億ドルあまりを処理した。

その間SecondMarketは、FirstMark Capital、Li Ka-shing、Social Capital、およびTemasek Holdingsから3400万ドルあまりの資金を調達した。

これまでNASDAQ Private MarketはSharesPostとのジョイントベンチャーだったが、これからはNASDAQがその完全なオーナーになる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

ニュースアプリ「Vingow」などを開発するJX通信社、共同通信デジタルと資本業務提携

JX通信社代表取締役の米重克洋氏(左)と取締役の

JX通信社代表取締役の米重克洋氏(左)と取締役COOの細野雄紀氏(右)

ニュースアプリ「Vingow」などを開発するJX通信社は10月15日、共同通信デジタルとの資本業務提携を実施したことを明らかにした。資本提携として、共同通信デジタルを割当先とした第三者割当増資を実施。金額は非公開だが、関係者らによると億単位の資金を調達しているという。

「NewsDigest」

「NewsDigest」

JX通信社は2008年の設立。2012年10月よりVingowを提供している。Vingowは、ユーザーがあらかじめ登録したキーワードに対して、最適なニュースを閲覧できるというニュースアプリ。その仕組みを実現するために、同社では独自のエンジンを開発。ネット上の記事をクロール・自動解析・要約している。

Vingowで行っている記事の収集から整理・編集・発信のという一連のプロセスを、SaaS型のニュースエンジン「XWire(クロスワイヤ)」としてニュースサイトなどに提供しているのが同社のコア事業だ。大きなところでは、T-MEDIAホールディングスの運営するポータル「T-SITE」などへの導入実績がある。

また2015年には、速報配信に特化したニュースアプリ「NewsDigest(ニュースダイジェスト)」の提供も開始。ダウンロード数は数十万件だが、速報ということでプッシュ通知も積極的に行っていることもあり(もちろん設定でオフにできる)「起動回数やアクティブ率は他のニュースアプリと比較しても非常に高いのではないか」(JX通信社代表取締役の米重克洋氏)という。
さらにこのNewsDigestをベースにした法人向けの速報検知サービス「FASTALERT」も開発。大手メディアや金融機関を対象に提供していくという。

速報検知の仕組みについて聞いたところ、「Vingowで1日5万件の記事を解析してきた。その中から例えばどういった単語がニュースに使われるかなどのデータを蓄積している。人によってはビッグデータと呼ぶかも知れないが、そういった情報をもとにニュース性を見ている」(米重氏)とのこと。

これについては同社取締役COOの細野雄紀氏が例を挙げて説明してくれたのだが、例えば「ソーシャルネットワーク上で話題になっている記事」という切り口だけで速報のニュースを集めようとすると、2ちゃんねるのまとめ記事なんかも頻出するそうだ。そこでその内容を「ニュースそのもの」かどうか、すばやく正確に判定するために、Vingowで培ってきたノウハウが生きているという。

今回の資本業務提携により、JX通信社は自社の技術を共同通信グループの報道現場に応用する取り組みを協力して進めるとしている。また共同での新製品開発も検討するほか、XWireの拡販などでも協力していくとしている。

スマートトイのMoffがバンダイナムコなどから1.6億円の資金調達——新領域と米国展開を強化

ウェアラブルデバイス「Moff Band」を2014年にリリースしたMoff。同社は9月7日、バンダイナムコエンターテインメント、ORSO、TomyK(既存株主でACCESS共同創業者である鎌田富久氏の会社だ)、個人投資家を引受先として、総額1億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

Moffは2013年10月の設立。大阪市主催のハッカソン「ものアプリハッカソン」をきっかけに、ウェアラブルデバイスの開発を目指すことになった(当時の話はこちらをご参考頂きたい)。2014年秋に日米で一般発売を開始したMoff Bandは、Amazon電子玩具カテゴリーで国内最高1位、米国最高2位を記録。販売台数に関しては明らかにしていないが、Moff代表取締役の高萩昭範氏いわく手応えは好調だという。

「Moff Band」

「Moff Band」

Moff Bandは内蔵する加速度センサーとジャイロセンサーによって人の動きを感知。Bluetoothで各種デバイスと連携する。例えば手を上下に振ることで、その動作に合わせて疑似的に楽器を演奏したりできる。

プロダクトは当初“スマートトイ”という触れ込みで製品を提供してきた。その先の構想はあったが、「いきなり(機能を)てんこ盛りにしても売れない。まずはベーシックなモノをと考えた」という。そしてトイというアプローチを通じて、「『体を動かす』ということはゲーム体験として通用するということが分かった」(高萩氏)という。そのため今後は低年齢層向けのトイにとどまらないプロダクトの展開を進める。

Moff Bandで取得した動作や姿勢の情報や独自のデータ解析技術を活用し、フィットネスやヘルスケアの分野でのゲーミフィケーション化を可能にするプラットフォーム「アクティブ・ゲーミフィケーション・プラットフォーム」を構築する。またパートナーとの事業開発も強化する。株主となったバンダイナムコエンターテイメントやORSOとのサービスの共同開発をすすめるほか、米国では10月以降大手玩具チェーン店と組んでの商品展開も予定している。

なおMoffは、米国展開の強化に向けて100%子会社の米国法人である「Moff USA」を設立したことも発表している。CEOには、米AppleやAT&T、ACCESS等で事業開発・アライアンス分野のVice Presidentを歴任したAlbert B. Chu氏が就任する。

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

わずか1万DLのアプリが月商1000万円を達成する事例も——アプリ制作ツール「Yappli」運営元が3.3億円を調達

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「1年目は本当に大苦戦、月の売上は数十万円で毎月微増を繰り返すだけ。『いいプロダクトを作ったから来て使ってよ』というのでは全然ダメだった」——ノンプログラミングでアプリを制作できるツール「Yappli」を手がけるファストメディアの取材は、代表取締役の庵原保文氏のこんな重たい言葉から始まった。

同社は9月1日付けでグロービス・キャピタル・パートナーズ、Salesforce Ventures(米Salesforce.comグループのコーポレートベンチャー事業部)、YJキャピタル(既存株主でもある)、個人投資家の川田尚吾氏を引受先とした総額約3億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。出資比率やバリュエーションは非公開。

ファストメディアは、ヤフーで同僚として働いていた庵原氏と共同創業者で取締役の佐野将史氏、取締役の黒田真澄氏の3人が2011年に立ち上げた個人プロジェクトからスタート。2013年にYappliを正式公開した。

Yappliはブラウザ上で機能をドラッグアンドドロップで配置し、クリエイティブをアップロードしていくことで、ノンプログラミングでスマートフォンアプリ(iOS/Android)を作成できるサービスだ。詳細は以下の動画を見てもらえばと思う。

ジオプッシュ(スマートフォンが特定のエリアにある際にプッシュ通知を送る機能)を含むプッシュ通知にも対応し、広告配信も可能、アプリの申請も代行する。冒頭で庵原氏が語るように、プロダクト自体は——初めてデモを見たリリース時から——イケていると思った。価格も月額9800円からと比較的安価で中小規模の会社でも使いやすい。だが、クラウドサービスとしてサイト上で販売していたところで有料ユーザーはほとんど増えなかったという。

同社はYJキャピタルからシードマネーを調達していたが、サービスインから1年経たずで売上は数十万円。さすがに「これでは危ない」となって方針を転換。大手企業をターゲットに営業を始めたところ、今度は驚くように案件が取れ始めた。新生銀行や日本ロレアル、女性アパレルのアダストリアホールディングスなどが次々と自社アプリの制作にYappliを導入。3人というスモールチームだったこともあって、サービスインから1年半経たずして単月黒字を達成した。

「革新的なサービスを作って数万円で手軽にスモールビジネスに提供しようとしたが、結局市場のニーズを見ていなかった。自社アプリを求めていたのはすでに顧客を抱えている大手企業。だがいざ制作会社に相談すると1000万円単位の見積もりが来るので、容易にアプリを制作できないという課題があった」(庵原氏)。そんな大手企業にこそプロダクトが刺さったのだという。「制作会社と比べれば10分の1程度で導入が可能。またノンプログラミングでアプリを作れるというのは、ITリテラシーの低いEC担当者であっても運用できるということ。そこも評価されている」(庵原氏)

サービスに登録する法人は、無料も含めて5000社。有料ユーザー(社数非公開)の7割はアパレル関連の自社アプリやブランドアプリだという。アプリはそのブランドのファンがダウンロードすることもあって、アクティブ率が高く、売上への貢献度も大きいケースが多いという。

「ブランドアプリであれば、アプリのプッシュ通知はメールマガジンよりも効果がある。ECサイトの売上全体のうち10%程度がアプリ経由というブランドも複数ある。1社だけだが、1万ダウンロードのアプリだけで月商1000万円を達成するという事例もある」(庵原氏)。プッシュ通知の開封率(通知が来て、そのアプリを起動すること)は約30%、通知から5分以内での開封率が5〜10%あるため、タイムセールなどを積極的に行うブランドも多いという。

同社では今回の調達を契機にサイト上で提供していた低価格帯のサービスの新規募集をいったん終了する。今後は人員を拡大し、サービス開発および法人営業に注力するとしている。