「キャリアメール」まだ4割のスマホユーザーが使用──MMD調査

eng-logo-2015かつては主要な連絡手段だった「キャリアメール」。スマホの普及後はLINEなどのメッセージアプリに押され、存在感が薄くなった印象も受けます。一方、MMD研究所の調査によると、スマホユーザーの約4割は、未だにキャリアメールを使い続けていることが明らかになりました。

MMD研究所はスマホユーザー2718人を対象に『メールやメッセージを1日にどれくらい送信するか』のアンケートを実施。その結果、全体の42.5%のユーザーは1日に1回以上、キャリアメールでメッセージを送信していることが明らかになりました。

●最も利用されているのはLINE

また「LINE」「SMS」「キャリアメール」のうち、最も利用されているのは「LINE」で、84.8%のスマホユーザーは、1日に1回以上LINEでメッセージを送信しているとのこと。

▲メッセージの種類別、スマホでメッセージを送信する回数のグラフ

なおSNSの利用割合もキャリアメール並となっていますが、今年5月には3キャリア共通のメッセージアプリ「+メッセージ」がリリースされており、その普及によって今後は利用割合の向上が見込めるかもしれません。

Engadget 日本版からの転載。

総務省認定iPhone修理業者がGoogle Pixelに熱視線を送るワケ

Google Pixel 3シリーズの日本国内の販売が始まって1カ月が経過した。SIMフリーモデルだけでなく、NTTドコモやソフトバンクがキャリアスマホとして取り扱うなど注目されたが、BCNランキングなどを見るといまのところ販売台数は芳しくないようだ。

一方でiPhoneは、XRの値下げなどもあり販売台数は予想を下回るという見方が強まっているものの、ランキング上では依然絶好調。2018年11月26日~12月02日のBCNランキングではトップ10に6機種がランクインしている。問題は、トップ3を占めているのが新機種ではなく、2017年にリリースされたiPhone 8シリーズだということ。

おなじく2017年に登場した旧モデルのiPhone Xも強い。新機種でトップ10入りを果たしているのは価格が抑えられたiPhone XRのみで、多くのメディアが大絶賛していたiPhone XSシリーズはトップ10圏外だ。XSシリーズの機能は確かに素晴らしいのだが「プライスパフォーマンスとは何か」を我々メディアはもっと深く考えて読者に伝えるべきだったのではないか。

iCracked JapanがGoogle Pixel 3の正規修理業者に

iCracked Store 渋谷。iCracked Japanでは北海道から九州まで25店舗を展開している

そんな中、総務省認定のiPhone登録修理業者であるiCracked Japanが、Google Pixel 3シリーズの修理サービスを開始した。総務省認定の登録修理業者とは、修理可能な端末と修理を行う箇所、修理方法などを詳細に記した申請書を総務省に提出して、国のお墨付きを受けている事業者のことだ。

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スマホには、Wi-FiやBluetoothなどの無線通信を行うチップが組み込まれており、資格のない人間が修理すると電波法に抵触するおそれもある。iCrackedは全国で20社に満たない数少ない登録修理業者の1社。これまではiPhoneの修理を専門としていた同社がなぜPixel 3に手を出したのだろうか。

この疑問をiCracked Japanで顧問を務める福島知彦氏に投げかけてみたところ、「iPhoneの修理事業が先細りになる前に、新たなメーカーの端末の修理スキルを高めておきたかった」とのこと。「Google Pixel 3シリーズは大手キャリアが扱う初めてのPixelなので、爆発的に売れるとは思っていない。しかし、今後Googleが本気で日本市場に挑むなら我々としても一緒に戦っていきたい」とのこと。

なお、iPhone登録修理業者は総務省が認定しているものの、アップル認定サービスプロバイダーとは異なり、修理後の端末はアップルの保証がなくなってしまうことがある。一方、Google Pixel 3シリーズの修理については、iCracked JapanがGoogleの米国本社と直接契約を結んでおり、正規の修理業者として認定されている。もちろん修理パーツもGoogle指定のもので、修理後もGoogleによるメーカー保証が失効しない。

iPhone XRが売れないと修理業者は窮地に?

さて、Google Pixelの正規修理業者の認定を受けたiCracked Japanだが、現在最も多く修理で持ち込まれる機種はiPhone 7シリーズだそうだ。「すぐに直してほしいという駆け込みは何件があるが、AppleCareの充実やアップル認定プロバイダーの修理代金の低価格化もあり、最新機種をiPhone登録修理業者に持ち込むユーザーは少ない」そうだ。そのため、発売から2年が経過し、アップルのメーカー保証やAppleCareによる延長保証が切れたiPhone 7シリーズの修理が多い。

ちなみに内部を分解してみると、Google Pixel 3シリーズに比べてiPhone 7シリーズは内部に張り巡らされている防水シールの幅が狭いことがわかる。iCracked Japanのサービス企画・技術研修担当の橋詰隆史氏によると、Pixel 3はフレーム部分と液晶パネルが一体化しているため、画面割れの場合はフレームを含むフロントパネルをすべて取り替える必要があるとのこと。しかも、防水シールがかなり厳重に張り巡らされているおり、しっかりと防水対策されているそうだ。

黒いテープが残っている部分がGoogle Pixel 3の防止シール。かなりの幅でびっしりと張り巡らされている

一方のiPhoneは、液晶パネルとケースが別パーツになっている。そのうえケース全体が金属なので、落下などで画面が割れた際にボディーが少し歪んでしまうことが多く、ここにコンマ数ミリの隙間が生じるだけで防水性能はほぼゼロになるとのこと。

iPhone 7用のケースに貼り付ける防水シール。実際に使われるのは、両端の1mmにも満たない部分だ。iCracked Japanでは画面割れの修理時に防水シールも貼り替えてくれる

冒頭で紹介したように、いま日本で最も売れている端末はiPhone 8シリーズ。来年や再来年にはメーカー保証やAppleCareによる延長保証が切れるiPhone 8シリーズが大量に出てくるため、iPhone登録修理業者の事業がいますぐ先細ることはないと思えるが、福島氏によると事業の分岐点となるのはiPhone Xなのだという。

写真左から、iCracked Japanで顧問を務める福島知彦氏、サービス企画・技術研修担当の橋詰隆史氏、関東第一エリア店舗統括SVの村岡雄哉氏

「iPhone 8シリーズまでは液晶パネルを採用しているので、さまざなメーカーから、さまざまなクオリティーの修理パーツを取り寄せられます。一方、有機ELパネルを採用しているiPhone X以降では調達できる修理パーツのバリエーションが少なく、そもそも単価が高い」とのこと。有機ELパネルの量産に成功しているのは一部のメーカーのみなので、修理パーツの価格が高止まりしているのが現状だ。

現在、最も修理台数が多いのiPhone 7の画面割れについて、iCracked Japanでは1万2800円から複数の価格設定がある。これは、アップルの純正品相当の液晶パネルだけでなく、さまざまなクオリティーの液晶パネルをユーザーが自由に選べるためだ。

このような理由もあり、iPhone登録修理業者にとって有機ELパネルを搭載したiPhone XSシリーズの失速より、液晶パネルを搭載したiPhone XRの販売不振は数年後の業績にダイレクトに響いてきそうだ。これまではiPhoneの圧倒的な人気によって、メーカーやユーザー、そしてメディアまでを巻き込んだ強固なエコシステムが構築されてきたが、中長期を見据えると周辺機器メーカーや修理業者はそろそろ経営判断が必要な時期に差し掛かっているかもしれない。

女性専用コワーキングism campusが渋谷・道玄坂に開設、メイクアイテムやネイルサービスも提供

リモートワーク、副業、フリーランス……柔軟な働き方が浸透する中で、ソフトバンクと合弁会社を設立して日本に進出したWeWorkや、Moneytree、nanaといったスタートアップを輩出してきたco-baなど、コワーキングスペース、コミュニティコワーキングは日本でもかなり身近なものになりつつある。

12月10日、渋谷・道玄坂にオープンした「ism campus(イズム キャンパス)」は、女性に特化したコミュニティコワーキングだ。運営するのは社員・役員が全員女性のスタートアップ、ism。ism campusは、女性が過ごしやすい環境・設備を備えたオフラインのコワーキングスペースと、オンラインの独自会員システムによるコミュニティにより、女性の仕事をバックアップ。異なる仕事やライフスタイル、考え方を持つ女性が気軽に集まり、時間を過ごせる場所を目指す。

ロールモデルの提示と働き方の工夫で働ける人は増える

ism代表取締役の鈴木碩子氏は、テック×スタートアップメディア「THE BRIGDE」(我々TechCrunchのライバルにも当たる)で、日本のスタートアップ動向を紹介してきた人物だ。2017年4月に自らも起業し、ismを設立。ismは現在、社員・役員とフリーランスとしてかかわるメンバーも含め、20人すべてが女性という、ある意味“とんがった”会社になっている。

鈴木氏は、2011年の東日本大震災をきっかけに「何かあったときに助けられるばかりでなく、自立してできることを」と志し、大学を中退。フリーのメイクアップアーティストとして独り立ちした後、スタートアップや大手企業、フリーランスなど、さまざまな規模・業種の経験を経て、会社を立ち上げた。

ism創業の目的は「多様な女性の働き方やライフスタイルのロールモデルを見せることで、女性の“働く”を応援すること」だと鈴木氏は言う。

「いろいろな経験をすれば、自分に合った働き方は見えてくる。だから私にとってはさまざまな規模・職種を経験したことがよかったけれど、同じやり方で働き方を探すことは、ともすればジョブホッパー的なキャリアになってしまい、オススメできない。だから『こうするといいよ』という働き方のモデルを見せられれば、と思って」(鈴木氏)

ismでは、時短・リモート勤務など多様な働き方と、その人その人に合った“得意な”仕事、“好きな”仕事を割り当てられるよう、工夫してきた。設立時から行っていたウェブコンテンツ制作事業に加え、今年8月には大阪・香川に拠点を置く⼀彩からバックオフィスアウトソーシング事業を譲り受け、香川にも事業所を設けた。

また11月には、女性のためのライフスタイルメディア「ism magazine」を公開。女性ロールモデルへのインタビューや仕事・ライフスタイルのノウハウなどを掲載している。

設立から1年8カ月。これまでのismの営みは、女性の“働く”ことによる社会貢献と“働く”ことの応援のための「実証実験でもあった」と鈴木氏はいう。

現在のismは、週3日出勤のフルフレックス。各自が出社時間や勤務時間を申請し、成果から給与をコミットする。「自分で決めることで自立した生活ができる」と鈴木氏は言う。また業務のやり取りにも使うSlack上に、互いをほめたり、助けを求めたりする「#えらいこチャンネル」「#よわいこチャンネル」を設け、社内コミュニティのような形でコミュニケーションを図り、これが思った以上に機能しているそうだ。

「難病のスタッフもいるけれど、成果を出して働けるような仕組みになっている」(鈴木氏)

ismメンバー。写真後列中央がism代表取締役の鈴木碩子氏。

前期は数千万円規模の売上を出し、今期は同じ売上を半期で達成したというism。今のところ「成果を出しつつ、自由に働くことを実現できている」と鈴木氏は“実証実験”の結果について説明する。「これを外にも展開して『もっと、わたしらしい』働き方に世の中を変えていこうというフェイズになった」(鈴木氏)

日本では、1990年代初頭にようやく専業主婦世帯と共働き世帯が同数になったばかり(総務省「労働力調査特別調査」に基づく厚生労働省資料)。つまり、働く女性が多数派になってから30年も経っていない。そのため、働き方を参考にすべきロールモデルがいないうえ、もともと男性の働き方をそのまま女性が踏襲する形になっているため、働き方がマッチしていないのが現状だ。

また、女性就業者は男性より1000万人少なく(平成27年 労働局調査年報)、出産・育児に伴い、女性のキャリアは一時断絶し、この世代の労働力率は下がる(内閣府男女共同参画局 主要国における年齢階級別労働力率)。さらに都市部では就労機会が多いので働く女性の事例も多様になってきているが、地方では量的にも質的にもケースが少ないため、特にロールモデルが見えにくい。

「副業、フリーランス、時短など、さまざまな働き方が出てきている中で、私たちに合う働き方とは何か。それを提示したい。またキャリアが断絶しない働き方といっても、上司もモデルがないから、育児中の女性の働かせ方が分からないのが実情。そんなとき『時短でもこういう成果が上げられて、こういう貢献ができるので、こういう時間と金額で働かせてほしい』と交渉するための知識があれば、お互いに納得して働ける」(鈴木氏)

鈴木氏は「今働いていない人が働けるように、働いている人は“引っかかり”をなくして、それぞれ数万円収入が上げられて、労働力不足も解消できれば」と話す。「働き方を工夫すれば働ける人はいっぱいいる。遊休リソースは社会的損失です」(鈴木氏)

女性の“活躍”よりは“幸せ”に働けるように

ismでは、ism campus開設に至るまでにも、女性の“働く”を支援する取り組みがいくつか検討されてきた。

「女性をテクノロジーで支援したい、ということで確定申告サポートのサービス提供を考えたが、みんな『お金を払って頼むほど収入をもらっていない』ということに行き当たる。では、お金が払えるぐらい働ければ、と思ったけれど、それではクラウドソーシングとの違いが分からないし、働き方そのものが変わるわけではないから、やりたかったこととはちょっと違うな、と思って」(鈴木氏)

そうして検討を重ねる中で「そもそもみんな、仕事が楽しいと思っているのかな」というところへ行き着いた。

「特に地方だと(ロールモデルが見えず)行き先がないから『結婚したい』になっているのではないか。楽しそうに働いている人が見えていない。フリーランスともなると母数が少なくサポートも少ない。そうなるとお金を得るのが難しくなる。夫の仕事の都合で地方へ移って、時間が合う求人がないので専業主婦だけど、実は簿記一級を持っている、という人もいる一方で、企業の側は『いい人がいない』と言っている。みんなもったいない」(鈴木氏)

ismにも子育て中のお母さん従業員がいる、ということだが、「仕事をしていない間は、社会とつながっていないという不安がある」と話しているそうだ。「仕事は社会とつながるためのきっかけになる。例えば離別・死別などで、子どもを抱えたまま収入が急になくなった、というときにも、キャリアを断絶せずに仕事を続けて収入を得ていることは、大事になるはず」と鈴木氏は言う。

オープンしたism campusは、ism magazineがネット上でロールモデルやライフスタイルを紹介するのに対し、リアルでロールモデルに出会える空間として、提供される。

「いろんな人に会える、話が聞ける。それが『楽しい』というのをきっかけにして、いつの間にか、楽しく働けるような場にしたい。女性の“活躍”よりは働く“幸せ”を考えたい。偉くなくても幸せに働いていく中で、生きていくすべを身に付けることができるような場として」(鈴木氏)

ism campusでは独自の会員システムを導入。月額で利用する会員は利用サービスの予約とコミュニティへの参加ができる。コミュニティは当初はSlackを使って運営するそうだ。キャリア相談や心理カウンセラーによるメンタルケア、副業や個人事業主として働く人ならバックオフィスの相談もできる。

また、毎月メンバーの要望や意見がかなえられる「夢が叶うチャンネル」も設置されるそうだ。「夢が叶うチャンネルについては、意見を言えば実現できる、というところをメンバーに可視化する意味もある」と鈴木氏は話している。

入退室にはQRコードを利用。電源、WiFi、コピー機といった仕事に必要な基本環境に加え、リラックススペース、ジャケットや名刺などの貸し出しサービスなども提供する。

女性ならでは、という点は、ドレッサーやヘアアイロン、メイクアイテムがそろった「ビューティーエリア」があることだろうか。ビューティーエリアでは仕事をしながら、ヘアセットやマッサージ、ネイルなど予約制のサービスを会員価格で受けることができる。

コミュニティとして、イベントや交流会の企画も準備しているとのこと。コミュニティ内での仕事の相談も可能で、ノウハウの共有や情報シェアもできる。「仕事をパッケージ化するノウハウ、教育ノウハウはismでも培ってきたので、一緒に仕事ができるように、と考えている」(鈴木氏)

ism campusは、スポット会員は1時間500円で利用可能。月額制会員の利用料は、平日昼利用できるDAYメンバーが1万2960円、平日23時まで利用できるNIGHTメンバーは1万6200円、平日休日を問わず利用できるFULLメンバーは1万9440円だ(いずれも税込金額)。

鈴木氏によれば、渋谷のism campusはモデルケースということで、これでもミニマムな機能だということだ。今後、他企業との連携によるサービス拡充も進める予定で、都内数カ所で展開したいと鈴木氏は述べている。

さらに鈴木氏は「地方ではキャリアセンターっぽい機能を提供していくことを検討している」と構想する。「経験のある人はいいとして、パソコンを触ったことがない、という人にいきなりアウトソーシングでリモートワークを依頼するのは、ハードルが高すぎる。アート作品を作ってもらってそれを売る、とか、お金を得るという体験そのものを、まずは提供してみたい」(鈴木氏)

ism campusでは「スポット会員も含め、半年で1000人ぐらい会員を獲得したい」と鈴木氏。「海外では女性のワークコミュニティ事例として、The Wingが入会8000人待ちという人気を誇っている。ただ、事例そのものが少ないので、日本なりのコミュニティにしていければ」と話している。

鈴木氏は、ismやism campusが実現しようとしていることについて「女性活躍何とか、とかフェミニズムとはちょっと違う」と言う。女性らしい、というよりは、「私らしい」働き方を突き詰めたい、というところだろうか。

「ある仕事が好きかどうかはやってみなければ分からないし、できると好きになる。極論すればそれをライトに経験できるようにしたのがism。やっていて苦じゃない、思いを持てる仕事は好きになれる」(鈴木氏)

ismとismの社員が成果を出している理由として、鈴木氏は「向いていないことを止める、ガマンしないこと」を挙げている。「自分も経験したことだけれども、人は『自分より明らかに仕事が速い人の仕事の仕方を知らない』ことが多い。私が1日かけてやっていた仕事を、1時間でできる人が現れたときに『任せよう』と決めた(笑)。仕事面での交流の機会がない、相談する場所がないと(それに気づかず)ガマンすることになりがちだ」(鈴木氏)

鈴木氏は「女性、男性にかかわらず、お互いに仕事を見合うことは大切だと思う」と話す。「男性だと達成欲でいくらでも仕事できるという人が多い感じだが、女性の場合は誰かの役に立てることがやりがいになるケースが多い気がする。モチベーションの場が違うかもしれない。男だからこう、女だからこう、ということではなくて、個性というものをあらためて認識すべきだなと思う。それが働き方の新しいカルチャーづくりにつながる」(鈴木氏)

Slackは日本の社内コミュニケーションに革命を起こせるか:CEOスチュワート・バターフィールド氏インタビュー

Slack CEOのスチュワート・バターフィールド氏

僕はメールが嫌いだ。社内メールで“よろしくお願いいたします”なんて書く時にはメンドくさくて吐き気がしてくる。そんな僕が朝起きてすぐにチェックするのはSlack、寝る前にスマホで最後に確認するのもSlackの通知。返事は短いカジュアルな文章で済むし、リアクションを追加したりもできるのでラクだ。ポケベルは来年にサービスを終了するが、ファックス、そしてせめて社内間のメールなど、レガシーなコミュニケーションツールにはその長すぎた歴史に幕を閉じてほしいと願っている。

ビジネスコラボレーションハブSlackの日本語版がローンチしたのは2017年の11月17日。当日開催されていたTechCrunch Tokyo 2017にてSlack TechnologiesのCTO、カル・ヘンダーソン氏がローンチを発表した。

それからほぼ一年後の2018年11月、Slack CEOのスチュワート・バターフィールド氏とSlack Japanカントリーマネジャーの佐々木聖治氏にSlackの日本での“これまで”と“これから”について話を聞くチャンスを掴めたので、みなさんにもその内容を共有したいと思う。

口コミ・SNSで広がったSlack Japanの一年目

Slackは現在、100ヶ国を超える国々の50万以上の組織、そして800万人を超えるアクティブユーザーを抱えている。日本ではアクティブユーザー数がすでに50万人を突破し、国別で世界第2位のマーケットに成長した。佐々木氏いわくアクティブユーザー数の多さの秘訣は、顧客のカスタマージャーニー・導入後のサポートに細心の注意を払うこと。

Slackはフリーミアムだが、国内では50万人のうち、15万人がすでに有償ユーザー。2018年9月にはヤフーが社員約11000人を対象に有償版を導入すると発表したが、導入先はIT企業に限らない。自動車・二輪車の部品を製造、供給する武蔵精密工業も2018年10月より本社全社員を対象にSlackを導入したと発表している。

バターフィールド氏は「IT系スタートアップやゲーム会社などは以前より導入していたが、より幅広い業界にご活用いただくべく動いている。ヤフーやソフトバンクはすでに顧客だが、金融、保険の業界とも会話を加速させているところだ」と話した。佐々木氏は「日本のマーケットに存在するあらゆるセングメントの企業にリーチしていきたい」と加えた。

またバターフィールド氏いわくアメリカでは多くのメディアに使われており100パーセントを少し下回るくらいのシェアを誇っているそう。日本でもメディア導入を加速させる狙いだ。

SlackではメッセージにEmojiでリアクションができるのが大きな特徴だと言えるだろう。返事をしなくても、たとえば目玉の絵文字を使うことで“見ましたよアピール”をすることができる。この絵文字機能は当然のごとく日本では特に重宝されているとバターフィールド氏は話した。

そんなこともあってか、たとえば転職した際に新しい職場で「Slackを使いましょう」といった具合にレコメンドするケースが多いそうだ。普及の経路に関しては「口コミ」が大きかったという。TwitterやFacebookなどのSNSでSlackの利用方法などについての投稿も目立つ。ミレニアル世代を中心にファンベースがここまで多いのはB向けプロダクトとしては異例なのではないか。バージョン3.56の新着情報にて通知音を公式に「スッコココ」と形容した際にもSNSで話題になっていた。

受信箱からチャンネルの時代へ

Slackの登場によりメールの歴史は幕を閉じるのか。バターフィールド氏は「1000年後もメールは存在しているだろう」と話した一方「Slackは社内間のコミュニケーションにおいて、メールに取って代わるツールとして今後さらに存在感を増していく」と強気に述べた。

社内でのコミュニケーションにおいてSlackはどのような活躍ができるのか。バターフィールド氏は「上層部の人間は権力を駆使し、情報を留める傾向にある。だがSlackでのコミュニケーションには透明度あり、それは困難だ」と話した。SlackではDMよりもチャンネルなど複数人の間でのオープンなやりとりがメインとなるからだ。Slackを使う上で最も理解・尊重するべきなのはコミュニケーションの「透明性」だとバターフィールド氏は述べた。

「個人間よりもチームや団体間でのやりとりを優先したほうが効率的だと言えるだろう。コミュニケーションの場を(メールの)受信箱から(Slackの)チャンネルに移すことで誰でも同じ内容を把握できる。最初はそれがきっかけでメールからSlackへの移行を決意するユーザーが多いが、そのシフトが完了するとSlackのより“深い”意味での利便性に気づくこととなる」(バターフィールド氏)

バターフィールド氏が言うSlackの「より“深い”意味での利便性」とは、他のソフトとの連携でより便利なプラットフォームにカスタマイズができるという点だ。たとえば、SalesforceやSAPなど他社ツールと連携して業務効率化を行うことができる。「そういった意味ではメールよりも優れたUXを提供できる」(バターフィールド氏)。2018年11月にはクラウド型人事労務ソフト「人事労務freee」がSlackとの連携を発表。これによりSlackで勤怠打刻を行い、人事労務freeeに反映させたり、給与明細の発行通知をSlackで受け取ることが可能となった。

少し話は異なるが、他のユニークな例としてディー・エヌ・エーではSlackで社内トイレの空き状況を質問すると答えてくれるチャットボットを導入しているという。バターフィールド氏いわく20万人ほどのデベロッパーが週に1.5万ほどの新しいインテグレーションを開発していて、たとえばSlackを社内のセキュリティーシステムと連携させ、来客があった際には通知が飛ぶようなシステムを構築している企業もあるのだとか。

事業拡大と“これから”のSlack Japan

Slack Japanは従業員を年内に30人以上に増員、100種類以上の国内サービスとの連携 、有効な使い方や成功事例を共有できるコミュニティの支援、などを目標にしてきた。佐々木氏いわく「従業員30人以上」は達成し、来年はより大きな組織へと成長し続けていくことを目指す。バターフィールド氏は東京拠点を「可能な限り早い段階で倍の規模に拡大したい」と話した。ヨーロッパでの拡大を進める一方、アジアでは“おそらく”シンガポールにオフィスを開く予定だ。連携サービス数に関しては公表していないが、「今後しかるべきタイミングで公表する」(佐々木氏)とのこと。

日本では競合にChatWorkの「チャットワーク」、LINEの「LINE WORKS」などがあり、ビジネスチャットは戦国時代を迎えているといっても過言ではないだろう。佐々木氏は「多くの潜在顧客はどのツールを導入するか選定している段階だ」と話していたが、2019年、この戦国時代にどのような展開が訪れるのか、目が離せない。

Slack CEOのスチュワート・バターフィールド氏とSlack Japanカントリーマネジャーの佐々木聖治氏

衛星による毎日全地球観測インフラの実現へ!東大宇宙系スタートアップが総額25.8億円調達

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する「協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合」は12月7日、東大関連の宇宙系スタートアップ3社に総額7億円を出資した。

小型光学衛星のコンステレーションによる全地球観測網の構築を目指すアクセルスペースに対して約3億円、小型衛星による宇宙デブリ回収を目指すAstroscale(アストロスケール)に約1.1億円(100万ドル)、「小型合成開口レーダ衛星」のコンステレーションによる地球観測を目指すSynspective(シンスペクティブ)に約3億円という内訳だ。

またアクセルスペースは、東大IPCからの約3億円を含め、シリーズB投資ラウンドとして総額25.8億円を資金調達している。引き受け先は以下のとおりで、31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースIがリードインベスターを務める。

左から、三井不動産ベンチャー共創事業部田中氏、同菅原部長、 アクセルスペース代表取締役中村氏、グローバル・ブレイン百合本社長、同社パートナー青木氏

・31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI(三井不動産/グローバル・ブレイン)
・INCJ
・協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(東京大学協創プラットフォーム開発)
・SBIベンチャー企業成長支援投資事業有限責任組合(SBIインベストメント)
・SBIベンチャー企業成長支援2号投資事業有限責任組合(同上)
・SBIベンチャー企業成長支援3号投資事業有限責任組合(同上)
・SBIベンチャー企業成長支援4号投資事業有限責任組合(同上)
・第一生命保険

アクセルスペースはこの資金調達によって、2020年に2機のGRUSの追加打ち上げを予定している。資金調達に併せて、2017年から延期されていたGRUS初号機の打ち上げと組織改編についても発表した。

GRUS初号機

GRUS初号機は、2018年12月27日にソユーズ(Soyuz-2)を使い、ロシア連邦ボストーチヌイ射場から打ち上げられることとなった。同社は、今後数十機のGRUS衛星を打ち上げ、2022年に毎日全地球観測インフラ「AxelGlobe」の構築を目指す。

組織改編については、中村友哉CEO、野尻悠太COOは留任となるが、新たに同社の共同設立者で取締役だった宮下直己氏がCTOに任命された。そのほか、CBDO(最高事業開発責任者)に山崎泰教氏、CFOに永山雅之氏が就く。なお、同社創業者の永島隆氏は取締役CTOを退任し、今後は上席研究員となる。

次世代プロエンジニアの養成所目指すTechBowlが資金調達、現役エンジニアが実践的な知見を伝授

中央がTechBowl代表取締役の小澤政生氏

次世代エンジニアが実践的な技術を学べるサービスを開発するTechBowlは12月7日、XTechVenturesとペロリ創業者の中川綾太郎氏から資金調達を実施したことを明らかにした。詳しい調達額については非公開とされているけれど、数千万円規模になるという。

TechBowlは2018年10月10日に設立されたばかりのスタートアップ。代表取締役の小澤政生氏はサイバーエージェントの出身で、同社にてエンジニア採用の関西エリア立ち上げや新卒採用の責任者を務めた後、新たなチャレンジとしてTechBowlを創業している。

目指すはプロエンジニアの養成所

そんなTechBowlが現在準備を進めているのが「次世代を担うプロエンジニアの養成所」の立ち上げだ。大雑把に分けると社会人向けのプログラミング学習サービスの領域に含まれるだろう。

先日DMM.comが「WEBCAMP」を運営するインフラトップを買収したニュースを紹介したけれど、すでに近しい領域のサービスを展開するスタートアップはいくつか存在する。「TechAcademy」を展開するキラメックスや「TECH::CAMP」を運営するdivなどがその一例だ。

各サービスごとに押し出している特徴が異なるように、TechBowlにも独自のウリがある。それが業界の第一線で活躍する現役バリバリのエンジニアによる実践的なメンタリングとそれに紐づくカリキュラム、そしてキャリア支援だ。

小澤氏によるとTechBowlのターゲットとなるのは全くのプログラミング未経験者ではなく、若手エンジニアや自分でプログラミングを学んでいる人など一定の経験があるユーザー。彼ら彼女らに対して「現場で本当に役立つ実践的なスキルを伝授する」というのが同社の目指しているところだという。

「特に地方はそうだが、そのような人たちがオンタイムでアドバイスを求められる人がいない。実際の開発現場で使われているスキルや経験について聞ける人、学べる場所となるとなおさらだ」(小澤氏)

この課題を解決すべく、TechBowlではメンターとしてITベンチャーで働く社会人エンジニアのみを採用。現時点ですでに約50名が所属しているという。サービス自体はまだ正式リリース前で、今はメンターによるオンライン面談のみを試験的に提供。今後はここにオンライン教材やオリジナルコンテンツ、勉強会・交流会、キャリア支援といった要素を組み込んでいく予定だという。

「プログラミングをゼロから学べるというよりは、開発してみたプロダクトの具体的なフィードバックをもらえたり、サービスの新機能を開発する場合の作法を学べるなど、現場経験があるプロメンターだからこそできる実践的なアドバイスを受けられる場所にしたい」(小澤氏)

企業とのコラボでより実践的なレッスンを

現在開発中だという教材に関しても、プロダクトを実際に作ることを重視したカリキュラムにする計画。オリジナルの教材だけでなく、企業とコラボしたものも準備する予定で「ある企業で実際に提供しているサービスに近しいものを開発し、その企業のエンジニアがメンターとしてフィードバックするような仕組みを考えている」(小澤氏)という。

あくまで例えばの話として、カリキュラム内でFacebookのクローンのようなサービスやその一機能を開発し、Facebookのエンジニアがメンターとしてサポートするといったようなイメージだ。

TechBowlはスキルの習得だけでなく出口となるキャリア支援にも力を入れる方針とのことなので、先の例では優秀な成績を納めた場合、Facebookからオファーが来るというのもありかもしれない。今のところはユーザーは基本的に無料でサービスを利用でき、企業側からマネタイズをする予定だという。

「教材やメンターとの交流を通じてその企業のことを知れるメリットもある。今は新卒のエンジニアの場合、インターンか会社説明会にエントリーするかの2択が一般的。それとは別の新しい選択肢にもなり得るのではないか」(小澤氏)

現在参画しているメンターに話を聞くと「いろいろな企業のエンジニアがメンターとして力を合わせ、業界全体で次世代のエンジニアを育てていく部分に共感してもらえている」そう。自分の技術や知見を有効活用できる、誰かに教えることで自身の勉強にもなるといったことに加え、他のメンターとの交流をメリットに感じているエンジニアも多いようだ。

それもあって今後はメンターとユーザー、メンター同士やユーザー同士が交流できる機会も増やしながらコミュニティを広げ「ゆくゆくは次世代を担うエンジニアの卵が日本で1番集まっている場所を目指す」(小澤氏)計画だ。

岡山大学が本気の大学・地域改革へ、起業マインドを育てる「SiEED」プログラムを来春開講

写真左から、岡山大学・研究推進産学官連携機構医療系本部長の那須友保氏、岡山大学の槇野博史学長、ストライプインターナショナルの石川康晴社長、SiEEDエグゼクティブアドバイザーの外村 仁氏、SiEEDディレクターの山下哲也氏

国立大学法人岡山大学は12月6日、ストライプインターナショナルとともに、岡山から未来創造に向けた新たな学びの場を通して、新たなビジネスが創出されることを目指すプログラムを発表した。岡山大学内に「SiEED」(STRIPE & intra Entrepreneurship Empowerment and Development)」と呼ばれる全学対象の教養科目として講座を開設する。

ストライプインターナショナルとは?

ストライプインターナショナルは、岡山が拠点で創業25年のアパレルメーカー。石川康晴社長が23歳のときに4坪のセレクトショップとして起業。その後SPA(製造小売り)となり、最近はライフスタイル&テクノロジーにも力を入れている企業だ。

社名は知らなくても、earth music&ecologyやKoeなどのブランド名で知っている読者が多いかもしれない。同社はアパレルメーカーの枠を超えてさまざまな社会貢献に取り組んでおり、その一環として岡山で人を育てるために「SiEED」を岡山大学とともに立ち上げた。

SiEEDにおけるストライプインターナショナルの初期の役割は、主に資金協力。具体的には、国内外の起業家や投資家などを講座に招く際の費用などを負担するそうだ。石川社長は「数年間の活動資金としては20億円程度を用意しているが、SiEEDプログラムへの取り組みはその後も死ぬまでやる」と非常に力強いコメントを残した。

石川社長によると、SiEEDユースといった小中高校生を対象としたプログラムも考えており、大学だけでなく地域を巻き込んでの改革を進めていくとのこと。

SiEEDの具体的な取り組み

エグゼクティブアドバイザーとしてSiEEDに参加する外村 仁氏(Scrum Venturesパートナー、前エバーノートジャパン会長)は、「海外で生活していたときに地方に誇りを持って生いる人々と出会い、日本でも地方出身、地方で働くことを誇れる環境を作りたい」と意気込みを語った。ちなみに石川社長とは、ストライプインターナショナルが外村氏がパートナーを務めるScrum VenturesのLPになったことで知り合ったとのこと。

日本では過去にあった課題を素早く読み解く能力が必要とされてきたが、現在では未知の問題をどう解決するかが重要であるとし、そしてこれからは新規の問題設定力を養うのが大事になると外村氏。そのためには若いうちから「役に立っているという実感」が必要だと語った。SiEEDの具体的なスケジュールとしては、4月に基礎編、8月に応用編の講座を開講する。2019年春には岡山でカンファレンスを開く予定とのこと。

ディレクターとして参加する山下哲也氏(500 KOBEリエゾンオフィサー)によると、SiEEDは起業そのものを目指すプログラムではなく、起業家精神・発想法を学ぶ場にしたいとのこと。基礎プログラムでは、次世代に求められる思考習慣と新基礎概念、応用プログラムではイノベーションの鍵となる専門知識や応用実践手法を学べるという。講座はインターネットで無料公開され、誰でも視聴することができる点にも注目だ。

地方の大学や地域の課題

岡山大学の槇野博史学長は、東京に一極集中している現状を打破し、SiEEDプログラムによって岡山大学が得意な医療やロボティクスなど分野の強化も図っていきたいとのこと。現在、国立の岡山大学いえども、少子高齢化による学生数の減少が深刻な問題になっているそうだ。医学部は5倍超の倍率を維持しているものの、他学部の倍率は2倍強まで下がってきているとのこと。こういった状況を打破するためにもSiEEDプログラムなどを通じて、岡山大学の魅力を高めていきたいとのこと。

SiEEDの座長で、岡山大学で研究推進産学官連携機構医療系本部長を務める那須友保氏は、卒業生の県内の人気の就職先が県庁や市役所になってしまっている現状を変えたい、起業やスタートアップへの投資は岡山で他人事のように捉えている現状を打破したいとコメント。岡山大学としては、学生の起業・投資マインドを高めるのが第1の狙いだが、講座をネットで無料公開することで、大学の教職員はもちろん、県庁、市役所の職員などに学んでほしいと呼びかけた。

Beyond Nextが名古屋大・他4大学の公認ファンド運営へ、医師起業家ファンドも設立

独立系アクセラレーターBeyond Next Ventures(以下、BNV)は12月6日、名古屋大学ほか東海地区の5つの大学発スタートアップへ投資を行う、大学公式ファンド「名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー2号ファンド(仮称・以下、東海広域5大学ファンド)」の運営事業者として選定されたことを発表した。

BNVではまた、12月3日に同社のFacebookページ上で、医師起業家への出資を行う「アントレドクターファンド」への取り組みについても明らかにしている。

BNVは2014年の設立後、大学発の研究開発型ベンチャーを対象としてBNV1号ファンドを立ち上げ、2016年にクローズ。ファンド総額は55億円を超える規模となった。また今年の10月には1号ファンドを超える規模のBNV2号ファンドを設立。BNV2号ファンドでは「医療・ライフサイエンス領域へ重点的に支援を行う」としている。

BNVのアカデミア、そして医療・ライフサイエンスへの最近の取り組みについて、同社代表取締役社長の伊藤毅氏に聞いた。

大学発シーズを起業前から成長まで一貫して支援

写真右から名古屋大学総長 松尾清一氏、Beyond Next Ventures代表取締役社長 伊藤毅氏

2019年春に設立が予定されている東海広域5大学ファンドは、東海地区産学連携大学コンソーシアムに参画する名古屋大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学、岐阜大学、三重大学の5大学発スタートアップへの投資を目的とするものだ。

5大学では、2016年にも日本ベンチャーキャピタルを運営事業者として、名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号投資事業有限責任組合(名大ファンド)を設立。名大ファンドの組成が25億円規模で完了したことから、新規ファンドの設立を準備し、今年8月から運営事業者の公募を行っていた。

BNVは、BNV1号ファンドで研究シーズの事業化経験も多数ある。名古屋大学発スタートアップでは、電子ビーム発生装置・素子の開発・販売を手がけるPhotoelectron Soul や、新品種創出プラットフォーム技術を持つアグリバイオベンチャーのグランドグリーンといった企業へ、創業期から出資や事業化支援を行ってきた。

またBNVでは、2016年8月に複数の大手事業会社とアクセラレーションプログラム「BRAVE」をスタートし、実用化・事業化を目指す技術シーズに対して、知識やノウハウ、人的ネットワークを提供している。

伊藤氏は「アカデミアの技術シーズに対する起業前からの支援やアクセラレーションプログラムを持つことが評価されたのではないか」と、今回ファンド運営者として選定された背景について話している。

BNVは、早稲田大学発スタートアップへの出資を目的とした、総額20億円規模の大学公式ファンド組成に関しても、ウエルインベストメントとともに大学と提携して支援を行うことが決まっている(関連記事)。

「これまで培ってきたアカデミアシーズの事業化ノウハウの知見や経験を広く社会に還元するために、複数の大学の公認のアクセラレーターとして事業化支援を行っていく」というBNV。「東海5大学の特許取得件数は合計すると京都大学と同じぐらいある」と伊藤氏は述べ、最大20億円規模で東海広域5大学ファンドの組成と、5大学発スタートアップへの起業準備や事業化支援、出資・成長支援まで、一貫したサポートが可能な体制構築を進めるとしている。

医師起業家ファンドは「医療変革のためのメッセージ」

BNV1号ファンドの投資先企業は、「社長かつ医師」が創業した医療・ライフサイエンス領域スタートアップが約3分の1を占める。キュア・アップサスメドといった医師起業家が創業したスタートアップについて、伊藤氏は「新しい医療・ライフサイエンス分野のプロダクト開発を、スピード感と柔軟性を持って実施できる。臨床医療だけでは救えない患者も救うことが期待できる」と語る。

そうした考えのもと、BNVがスタートした取り組みが「アントレドクターファンド」、医師起業家スタートアップを対象とした投資ファンドだ。

伊藤氏は「医療の現場は、閉鎖的で外部が入りにくい構造もあり、なかなか効率化されてこなかった。医療費増大が問題になる中で、新しい医療機器を使った治療法の確立や、そもそも病気になりにくくするための予防的アプローチなどの担い手は、比較的若いドクター起業家であると僕は信じている」と語っている。

「それを僕はBNV1号ファンドでの投資で実感した。病院やクリニックに新しい治療方法や医療を効率化するプロダクトが浸透するためには、治験をはじめとしたデータが求められる。国の承認にしても、現場の医療関係者を説得するにしても、データとエビデンスがすべてだ。それをきちんと取って説得できる会社でなければ、病院やドクターに評価してもらえない」(伊藤氏)

ヘリオス、メドピア、ドクターシーラボなど、医師起業家が創業し、株式上場を果たした企業の事例も出ていることから「若手の医師起業家は少しずつ増えている」と伊藤氏。「そのチャレンジを後押ししたい」と話している。

ところでBNVでは、2018年から東京都の委託を受け、創薬系スタートアップの起業や成長を支援するアクセラレーションプログラム「Blockbuster TOKYO(ブロックバスタートーキョー)」を運営。BNV2号ファンド設立時にも「特に、医療・ライフサイエンス領域に注力する」とコメントしており、2019年2月には、東京・日本橋にシェア型ウェットラボ「Beyond BioLAB TOKYO」の開設も予定している。

こうして見ると、この領域への支援は、BNVでは既に十分に手当てが進んでいるのではないかと思えるのだが、さらにアントレドクターファンドという形でフィーチャーした理由について、伊藤氏は「社会へのメッセージでもある」と説明する。

「増大する医療費や非効率な医療現場といった課題は、破綻を迎えつつある日本の医療の実情を見れば、今こそ真剣に取り組むべき。これを世の中に知ってもらうために、あえて強調している。僕たちにしてみれば、秘密にしておけばほかの投資家とも競争にならないので、その方がいいのだけれど、あえて『おいしい投資分野があるよ』と教えることで、他者からも医師起業家への投資機会を得たい。そのための明確なメッセージだ」(伊藤氏)

また「ドクターで、起業に少しでも関心があるという人たちに、臨床医師という道だけでなく、起業家としての道もあると知らせることも、アントレドクターファンドの目的」と伊藤氏は言う。

「効率化で医療現場がよくなれば、医師・医療関係者の長時間労働問題の解決にもつながり、よい医療を受けることができる患者さんにもベネフィットがある。もちろん医療費にも大きなインパクトがあるはず。アントレドクターファンドの取り組みを、医療変革のためのメッセージとして届けたい」(伊藤氏)

アントレドクターファンドの規模は10億〜20億円を予定している。第1号投資案件として投資を受けたのは、人工知能技術を活用してインフルエンザの高精度・早期診断に対応した検査法を開発する医療スタートアップ、アイリスだ。アイリスは2017年11月に救急科専門医であり、医療スタートアップのメドレー執行役員も務めていた沖山翔氏が創業した。出資金額は非公開だが、伊藤氏は「BNVがリードインベスターとして、積極的に支援していく」と話している。

クックパッドとパナソニックが食の領域でタッグ、“新しい料理体験”の創出目指す

クックパッドが展開するスマートキッチンサービス「OiCy」と、パナソニックが手がけるくらしの統合プラットフォーム「HomeX」。この両者が“新しい料理体験”の創出を目指してタッグを組むようだ。

クックパッドとパナソニックは12月6日、OiCyとHomeXが食・料理領域における戦略的パートナーとして共同開発を開始することを明らかにした。

以前詳しく紹介しているOiCyは「人と機器とレシピをつなぐ」スマートキッチンサービスだ。クックパッドに投稿されたレシピを機器が読み取れる形式(MRR: Machine Readable Recipe)に変換してキッチン家電に提供することで、レシピに合わせて機器を自動で制御できる仕組みを提供。

人と機器が協調することで“楽”と“美味しい”を両立し、かつ流れを止めないスムーズな料理体験の実現に取り組んでいる。

一方のHomeXは10月から本格始動した、くらしの統合プラットフォーム。家全体と生活シーンを総合的にとらえ、そこにインターネットやソフトウェア技術を融合することで「くらしのアップデート」を目指したプロジェクトだ。

今回のパートナーシップは料理に関するノウハウやデータを持つクックパッド(OiCy)と、家電から住宅設備まで「くらし」に関するさまざまな事業を手がけてきたパナソニック(HomeX)が、それぞれのアセットを活用して共同開発を進めるというもの。

具体的には『くらしの中で人と家が寄り添う「新しい料理体験」』の創出に向けて、HomeX対応住宅向けのサービスや新機能の開発に取り組む計画だという。

そういえば前回取材した際にクックパッドのスマートキッチングループでグループ長を務める金子晃久氏は「スマートキッチンの構想はクックパッド単体では実現できない」という話をしていた。

8月にはすでに10社とのパートナーシップを発表していたけれど、HomeXとのタッグでは今後どのようなサービスが生まれるのか、気になるところだ。

名刺管理のSansanが30億円を調達、法人向けサービスは7000社以上で導入

個人向けの名刺管理アプリ「Eight」や法人向けの「Sansan」を提供するSansanは12月6日、日本郵政キャピタル、T. Rowe Price Japan Fund、 SBI インベストメント、DCM Venturesから合計約30億円の資金調達を実施したと発表した。

2017年8月には未来創生ファンド、DCM Ventures、Salesforce Venturesから約42億円を調達したことを発表している。これまでの累計調達総額は約114億円だ。

Sansanは今回のシリーズEラウンドを通じ、「出会いから イノベーションを生み出す」という新たなミッションのもと「名刺を起点とした、イノベーションを生み出す事業の展開を加速していく」予定だ。旧ミッションは「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」。

Sansanは2007年6月に設立し、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を開発・提供。大手企業を中心に7000 社以上で導入されている。加えて2012年より個人向け名刺アプリ「Eight」を提供開始。現在登録ユーザーは200万人を超えている。

Googleが日本のAI/ML企業ABEJAに投資

GoogleがAIと機械学習を手がける日本のABEJAに出資した。Googleが直接、しかも日本で投資をすることは、とても珍しい。

投資額は公表されていないが、数百万ドルぐらいらしい。創業6年になるABEJAによると、同社のこれまでの調達総額は60億円(5300万ドル)だ、という。そしてCrunchbaseによると、同社が公開しているこれまでの調達額が4500万ドルだから、53-45=800万ドルになる。ただしこれには、Googleからの投資以外に2014年のシリーズA(これも非公開)も含まれているはずだ。

数字はともかくとして、この投資が注目に値するのは、Googleの日本における投資であるだけでなく、戦略的投資でもあるからだ。

ABEJAはこう声明している: “今後ABEJAとGoogleは、リテールや製造業など、さまざまな分野のAIとMLによるソリューションでコラボレーションして、AIソリューションのアプリケーションをより一層振興し、日本のAI産業の成長に貢献したい”。

同社の主製品は機械学習を利用する‘platform as a service, PaaS’で、現在150社あまりの企業顧客が、ABEJAを使って彼らのデータ集積から事業分析やさまざまな識見(インサイト)を開発している。同社によると、リテール向けの専用製品は顧客データと売上データに的を絞り、およそ100社に利用されている。

Google Cloud Japanの代表取締役(マネージングディレクター)Shinichi Abe(阿部伸一)は、次のように声明している: “ABEJAには強力な技術力とMLの専門的技能があり、そのコラボレーションの実績と、技術的ソリューションの効果的なデプロイメントで業界全般から高く評価されている。この投資は、リテールと製造業、およびその他の分野における革新的なソリューションで、ABEJAとのコラボレーションの道を拓くものである”。

Googleは、中国でAIと機械学習に大きく注力しており、昨年は北京に研究開発部門を開設した。しかし同社の研究とフォーカスの大半は、アメリカとヨーロッパが主力だ。Deep Mindの本社もヨーロッパにある。Googleは、インドシンガポールでもAI/ML関連の買収をしているが、それらの主な目的は、今後の成長市場における、Google製品のローカライゼーションだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ゼロ円タクシーも登場!DeNAのタクシー配車サービス「MOV」始動

ディー・エヌ・エーは、新世代タクシーの配車アプリ「MOV」(モブ)のサービスを東京都内で開始した。そして、そのサービス第1弾として乗客の利用料金(迎車料金+運賃+有料道路通行料)が無料になる「0円(ぜろえん)タクシー」の走行もスタートしている。

MOVの前身は「タクベル」で、神奈川県タクシー協会の協力のもと、2018年4月に横浜、川崎エリアでサービスを開始。同県内で提供エリアと提携タクシー会社を拡大してきたが、東京都内への進出を機にサービス名をMOVに変更した。

「0円タクシー」は、契約スポンサーと「MOV」の広告宣伝費によって乗客が支払う利用料金を無料にするフリービジネスモデル。スポンサーは、「MOV」で配車できるタクシーの車体ラッピングや、車内での自社商品、サービスの宣伝などが可能になる。乗客は無料でタクシーを利用できるだけでなく、スポンサーの新商品や新サービスなどの情報をいち早く入手、体験できるのも特徴だ。

「0円タクシー」の初回スポンサーは、日清食品の「日清のどん兵衛」に決定。都内の対象エリアで50台の運行を順次開始するという。車内の専用タブレットでは日清食品がこの冬新しく提案する「日清のどん兵衛 天ぷらそば」にたまごを入れてさらにおいしくする「ツキを『招く』月見そば」の プロモーション動画が流れる。

「MOV」アプリを起動すると、周辺を空車で走行中の「0円タクシー」のアイコンが表示され、タクシー会社選択画面から「0円タクシー by 日清のどん兵衛」を選択することで利用可能だ。なお12月26日から31日までの期間限定で「0円タクシー by 日清のど ん兵衛」に乗車すると「日清のどん兵衛 天ぷらそば」がプレゼントされる。

配車可能エリアは、東京・渋谷区、新宿区、港区、中央区、千代田区付近で、運行可能エリアは東京23区全域。運行時間は7時から22時、運行期間は12月31日のまでとなる。なお、アプリ経由以外では「0円タクシー by 日清のどん兵衛」には乗車できないので注意。

MOVとしては、2019年2月からはタクシー車内の乗客向けて後部座席にタブレットを設置。将来的には「MOV」で配車をしたユーザーだけでなく、QRコード決済機能や最適なコンテンツを配信するための性別・年代推定機能、提供コンテンツ拡充などを実施予定とのこと。

さらに今後、AIを活用してタクシーの需給予測をしながら経路をナビゲーションするシステム「AI探客ナビ(仮称)」も導入予定とのこと。運行中のタクシー車両から収集するプローブデータ(自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報)とタクシー需要に関連する各種データ(気象、公共交通機関の運行状況、イベント、商業施設などのPOI 情報、道路ネットワーク構造など)を解析し、乗務員をリアルタイムかつ個別にユーザーが待つ通りまで誘導する仕組みだ。タクシーの運転手は目的地入力をすることなく、この「AI探客ナビ(仮称)」に従って走行することで、効率的に乗客を探せるという。

CTO of the year 2018にはatama plus川原氏を選出

11月21日、東京・目黒にあるAWS Loft Tokyoにて、2018年に最も輝いたスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)を決める「CTO of the year 2018」が開催された。CTO of the year 2018は例年、TechCrunch Tokyoの初日の夜に「CTO Night」として開催されてきたイベントだが、今年は場所日程を変えての開催となった。

AWS Loft Tokyoは10月1日にオープンしたばかりのAWS運営のコワーキングスペース。AWSを利用している企業であれば10:00〜18:00の間、誰でも自由に利用できる。AWSの専門スタッフが常住しており、その場でサポートが受けられるのも特徴だ。

CTO of the year 2018は歴代優勝者を含む以下のメンバーで審査され、最終的にatama plusの川原尊徳氏を選出した。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー 取締役上級執行役員/最高技術責任者)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
松尾康博氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクト)
吉田博英(TechCrunch Japan編集統括)

■特別審査員
竹内秀行氏(2014年CTO of the year、ユーザベース チーフテクノロジスト、UB Venturesテクノロジーパートナー)
安川健太氏(2015年CTO of the year、ソラコムCTO/Co-founder)
橋立友宏氏(2016年CTO of the year、Repro CTO)
大竹雅登氏(2017年CTO of the year、dely CTO/執行役員)

■atama plus/川原尊徳氏

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Lean AI開発により、3ヶ月でプロダクトマーケットフィット
1年で大手塾の2割に導入するまで至った話

atama plusは2017年4月創業。創業9カ月目で5億円の調達に成功している。事業内容は、AIを活用して中高生の学びを個別にカスタマイズしたタブレットアプリを提供している。このシステムは全国の学習塾や予備校に導入されているとのこと。川原氏は新卒でマイクロソフトに入社して11年勤務したあと、atama plusを共同創業したCTOだ。

学習塾や予備校は、夏期講習でどれだけ人を集められるかが非常に重要で、4月創業の同社は、その年の夏期講習が始まる7月までにアルゴリズムを完成させる必要があったとのこと。そのため、Lean UX/Lean AI開発という手法を採用したそうだ。

そのうえで、アーキテクチャーの開発には、ブラックボックスの少ない「多数の小さなアルゴリズム」を利用することに決定。規模が小さいのでアルゴリズムへの修正が容易なのが特徴だ。アルゴリズムに問題データや正誤情報、所要時間などのデータを入力することで、習熟度の推定や単元間の関連性、学習優先度などを判断して、生徒それぞれが学習すべき教材を判断する。

また「ルールベースアルゴリズムとの共存」も開発の秘訣だったという。多次元のデータを扱えるモデルベースを重視するとルールベースアルゴリズムは排除されがちだが、ルールベースアルゴリズムは変更が容易という利点がある。これら2つのアルゴリズムをいいとこどりにより、ある単元を学習するためにどの単元を次元に理解しているべきかの依存度がわかる「依存関係グラフ」が完成したという。

同社は創業4カ月目から収益化を果たし、10カ月目で2週間講習受講者のセンター試験の得点が50%アップ。そして創業1年を迎えたころには、大手塾の2割にatama plusのシステムが導入されているそうだ。

■FACTBASE/前田 翼氏

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組織の外側にHRアーキテクチャを築く

FACTBASEは仮想通貨投資家向けのサービスを展開している会社。プレゼンでは、社内外のHRアーキテクチャを構築した話が中心となった。

前田氏はFACTBASEのCTOとして「2018年12月31日までに日本一仮説検証の早い開発チームを作る」というミッションをCEOと握って、アプリ開発をスタート。とはいえ、2018年前半は技術スタックのない状態だったという。その後、副業として携わったエンジニアの尽力で5月中旬にクローズド版のリリースに漕ぎ着ける。しかし、この副業エンジニアが二人とも卒業したことで問題が発生。この2人が中心となって開発していたことで、社内にノウハウがたまっていなかったそうだ。

とはいえ、フルタイムの人材を採用するコストや人材を教育する社内リソースがなかったとのこと。そこで考えたのが、社内開発とは直接関係な分野で同じ目標を達成する仲間を集め、勉強会の開催や書籍の出版などを実施。具体的にはReact Native OSSのコミュニティーを立ち上げ、ベアプロについては累計30回を以上を実施したという(React Nativeは、Facebookが開発したJavaScriptのフレームワーク)。

この結果、14人のエンジニアとの関係が深まり、14人の技術メンターがいる状況になった。その後、インターン1名とフルコミットメントするエンジニアが1名参加して開発が急激に加速したそうだ。社内リソースと予算が限られている中、社外のエンジニアとの深い関係構築によって開発の質とスピードがアップしたとのことだった。

■GVA TECH/本田勝寛氏DSC07799

リーガルテックへ凸って見えた楽しい踊り方
GVA TECHは2017年1月に創業、本田氏はGVA TECHにはCEOを除く1人目の社員として2017年9月に参加。同社はクラウドとAIを活用した契約リスク判定サービス「AI-CONレビュー」を提供している。

本田氏は入社後まず、内製化によってプロダクト化を進めたとのこと。入社前、AI-CONレビューなどはオフショア開発、つまり外注で開発していたそうだ。しかし、数多くの人が開発に参加していたこともあり、ファイルの差分やバグも多くコントロールも難しかったことから関係を断ち切って完全内製化の道を選んだという。

内製化にあたって、セキュリティ、スピード、イノベーション、面を取りに行く選択、という4つの柱で開発を進めたそうだ。ちなみにセキュリティについては、AWS Well-Architectedフレームワークを活用。開発スピードについては、さまざまな手法やツールを積極的に取り入れたという。

そのほか、コミュニティへの情報提供も積極的に進めたそうだ。そのうえで本田氏はチームビルディングに徹し、別にCPOに権限を移譲して開発スピードをアップさせたとのこと。本田氏はCTOとして、「TeamUp」ツールを利用して1 on 1時の内容をログ化して成長の促進を図ったり、「wevox」で開発組織力のモニタリングを実施したりしたという。

■カケハシ/海老原智氏

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2mmぐらい強くて? ニューゲームのCTOとしての取り組み

カケハシは2016年3月に設立、海老原氏はその2カ月後に入社したそうだ。同社は全国に6万店以上ある調剤薬局のSaaSを開発している会社。

調剤薬局が処理する処方箋枚数は年間8億枚あり、調剤薬局は患者と累計8億回も薬の受け渡しをしていることになる。同社は、この受け渡しのタイミングで「患者が健康になっていくための手助けができるのではないか」という想いで創業。現在、患者に対して実施した服薬指導の内容(薬歴)の記録を電子化する「Musubi」を開発・提供している。

海老原自身は同社で取締役CTOを務めているが、実際にはCPO/VPoE的な役割を担っているとのこと。CTOを二度経験していることを生かし、働き方の改善、組織や社内文化への理解度を深めるために尽力しているそうだ。具体的には、アジャイル/アーキテクチャ/DevOps/設置・採用/採用・組織化、という5つのフェースで自分の役割を変えていったそうだ。アジャイルのフェーズでは、開発手法だけでなく組織運営についても議論を重ねて意識を共有したとのこと。設置・採用フェーズでは、一時的にCTOの役割を返上して、調剤薬局へWi-Fi構築を含むPCへの設置などの業務も担当したという。現在は採用・組織化フェーズだが、今後拡大する業務内容を踏まえ、どこかのタイミングで再度アーキテクチャフェーズに戻ることを予定しているとのことだ。

■scouty/伊藤勝悟氏

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スケーラブルな開発組織を目指して~推測より計測~

scoutyに3人目のメンバー、1人目の開発者として入社。2018年7月から取締役CTOに就任。scoutyはエンジニアをヘッドハンティングするサービスで、SNSから公開されている情報をクロールして人材のデータベースを構築。このデータベースを企業の人事部が参照することで、自社に必要な人材にスカウトメールを送れるという仕組みだ。

ちなみにこれまでのデータ分析の結果、転職を希望するエンジニアはその直前にプロフィール写真を変える傾向が強いとのこと。伊藤氏は入社後、クロールの手法などに改良を加えたことで、データベースの登録者数を6万人から約13倍の80万人に増やしたそうだ。

伊藤氏がCTOとして取り組んだのは、開発人員と開発速度が比例する組織。一般的に人が増えると、コミュニケーションや調整タスクが増えるため開発スピードは鈍化するが、同社では7人までに増えた8カ月後の開発スピードは当初の2.1倍、残業時間は一人当たり7.4時間となったそうだ。

この開発チームを実現するために、それぞれの役割分担を明確化し、目的や責務などを明文化。そのうえで、妥協しない採用ポリシーによってチームを強化。具体的には、既存メンバーの平均よりも高い能力、既存メンバーが持っていない知識/経験、カルチャーマッチを重要視、という3つのポリシーを貫いたそうだ。この採用ポリシーを徹底するために、評価ポイントの設定、採点基準の明確化、それを基にした社内エンジニアの平均点の算出などを実施したとのこと。さらにカルチャーマッチをテストするため、採用候補者を社員全員が取り囲んで質問し、あらかじめ用意されたチェック項目を埋めていくという作業も行っているそうだ。

正直、このような仕組みを使うのは「めちゃくちゃ大変」だそうだが、スケーラブルな開発チームを運営していくために今後もやり続けていきたいと話を締めくくった。

■空/田仲紘典氏

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プロダクトから顧客や様々な職種へ

田仲氏は空で、CPO(Cheif Production Officer)として、ビジネス要件と技術要件の両軸を考える、顧客価値を作る仕事を担当している。

ホテル業界の課題として、料金設定の「手間」と「精度」があるとのこと。料金設定に関わるデータを得るには、1日あたり2~3時間の時間が必要で、合計すると月に60時間以上の時間を費やしているという。またノウハウが属人化しており、担当が変わるとやり方が変わるという問題もある。同社は、前者を「ホテル番付」、後者を「Magic Price」というサービスで効率化している。この2つのサービスを顧客が横断的に使うことを考えて、サービス基盤は共通化しているとのこと。

シンプルなUI/UX、統計学を利用したデータ分析手法、問題解決に取り組む体制によって顧客満足度90%を実現しているという。新しいバージョンは週1でリリースしているそうだ。

具体的には、AWSサービスを駆使することで、フロントエンド、バックエンド、インフラを構築。今後はホテルだけでなく、航空券やが外食など他業種にサービスをスケールさせるために、サービスの共通基盤とマイクロサービス化を進めて行くという。

■Voicy/窪田雄司氏

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サービスを最速で伸ばす先回りの技術

Voicyは、手軽に音声を生活のあらゆる場所に届けるサービス。今後は出力先を増やして事業を拡大したいとのこと。窪田氏はCTOの仕事を「未来を予測して事前に準備しよう」というスタンスでの臨んでいるとのこと。

具体的には、CEOは5~10年後の未来を見据えたうえで、経営・事業計画の直近の1年をどうするかという計画を立てる。一方CTOは、CEOを考える1年後よりも少し先の未来を見据えて行動するのが大事とのこと。このタイミングに何が起こって、何が必要なのかを事前に準備、把握しておくべきだとしている。

例えば、突然のアクセス増加に対してもリリース前から高負荷に堪えうるインフラ構成を用意。スマートスピーカーへのスキル提供やAPI連携についても事前に準備するなど、想定される出来事に対処していったという。

窪田氏は、事前準備した内容の90%は使われないため、エクストリーム・プログラミングにおける原則としてはYAGNI(機能は実際に必要となるまでは追加しないのがいい)を思い浮かべる人も多いと思うが、少し根性論かもしれないが「CTOならその予測を当てにいけ」という持論で進めたそうだ。そのためには予測の精度を上げる努力が必要とのこと。

さらにCEOとのコミュニケーションで、優先順位をすり合わせやお互いの仕事内容を共有することも重要と窪田氏。そのうえで、1年後や5年後、どうありたいか語り合うことも必要とのこと。「未来を予測し、技術の力で攻めの準備とリスクの回避を行い、サービスを最速で伸ばす」という言葉でプレゼンを締めくくった。

CTO of the year 2018の審査委員長を務めた、グリー取締役/上級執行役員/CTOの藤本真樹氏は「審査に関わるのは今年で5年目だが、間違いなく毎年レベルが上がっている。この賞に参加すること自体登壇者のレベルが上がっていることは、業界としても非常にいいこと」というコメント。

TechCrunchも審査員として参加したが、最後まで票が分かれ、最終的には協議のうえでの1位選出となった。TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルと同様、年々レベルがアップしているCTO of the year。来年はどういった企業が出場するのか、これから楽しみだ。

BASEが出店者向けに即時資金調達できる金融サービス「YELL BANK」をスタート

ネットショップ作成サービス「BASE」を運営するBASEは12月5日、ネットショップのオーナーが即時に資金調達できるサービス「YELL BANK(エールバンク)」の提供を開始した。

YELL BANKは、BASEに出店するショップオーナーを対象にした金融サービス。BASEの管理画面に資金調達のページが追加され、表示される3パターンの調達額から金額を選択し、規約に同意するだけで資金が調達でき、即時に管理画面の振込可能残高に反映される。

資金の支払いは、ショップの商品が売れる度に、売上代金から一定の支払率に応じた金額がYELL BANKに支払われる。支払いは商品が売れた時のみ。売上がなかった月に支払う必要はないため、出店者はリスクなく、資金の即時調達が可能となっている。

YELL BANKの運営は、1月に設立したBANKの100%子会社、BASE BANKが実施する。融資を実現するためにYELL BANKでは、BASEの店舗データを利用して与信を行い、条件を満たした出店者に対して金融サービスを提供。サービス利用可能なショップオーナーには、サービスの案内が順次送られるとのことだ。

具体的なスキームは、BASEのデータから各店の将来の売上金額を予測し、YELL BANKが出店者から将来の売掛債権を買い取る、というもの。調達可能な金額は1万円〜1000万円。初期費用、月額費用は不要だが、利用金額に応じて1%〜15%のサービス利用料がかかる。

BASE上では売上の実績などがあっても、既存の金融機関の融資を利用できなかったショップオーナーにとっては、新しい商品作りや機材導入などの資金を得るチャンスができることになる。

BASEは5月にも、出店店舗が独自のコインを販売して、店のファンから資金調達できるサービス「ショップコイン」をリリースするなど、ショップオーナーを資金面でも支援する施策を展開。ファッションやエンタメ・ホビーの分野を中心にショップを増やし、9月にはショップ開設数が60万を超えている

完全栄養ラーメンが「すごい!煮干しラーメン」のラーメン凪とのコラボで実現、12月10日より発売

1食で1日に必要な栄養素の3分の1が摂れる、完全栄養食品「BASE PASTA」を開発したフードテックのスタートアップ、ベースフードが、今度は完全栄養ラーメンを作り出した。しかも商品開発は「すごい!煮干しラーメン」で有名なラーメン凪とのコラボによるもの。商品名はその名も「BASE RAMEN すごい煮干し」という。

不健康、食べ過ぎ注意のイメージがあるラーメンだが、BASE RAMEN すごい煮干しなら、必要な栄養をバランスよく食べることが可能。摂りすぎを警戒すべき脂質、飽和脂肪酸、炭水化物、ナトリウム(塩分)、熱量(カロリー)を除いた栄養を、1食で1日の3分の1まかなうことができるそうだ。

BASE RAMENに含まれる栄養素
(1食当たりの推奨摂取量との各栄養素比較(ゆで調理後))
※推定値、栄養素等表示基準値に基づく
(脂質・飽和脂肪酸・炭水化物・ナトリウム・熱量を除く)

また完全栄養食品というだけでなく、オリジナル開発の超濃厚な煮干しスープで減塩を、麺の糖質も50%オフ(一般的な中華麺との比較)を実現したという。

BASE RAMEN すごい煮干しは12月10日から、ラーメン凪の都内7店舗を含む10店舗で販売を開始する。価格は1080円(税込)だ。

近くにラーメン凪の店舗がない人も、店舗と同じ12月10日からベースフードのサイトで「BASE RAMEN セット」が購入できるそうだ。BASE PASTAと同じく、噛むと味が広がるもちもちの雑穀麺だが、食感はパスタに比べてつるつるになり、ラーメンスープと合わせておいしい麺に仕上げたとのこと。セットにはBASE PASTA 細麺タイプ」2食分と「しょうゆ豚骨スープ」、「ラーメン凪監修 すごい煮干しスープ」が含まれる。価格は980円(税込)だ。

私も販売中のBASE PASTAを試してみたことがあるけれども、「噛めば噛むほど味が出る」不思議な食感で、塩分が少なめなのにちゃんと「味がある」のに驚いた。朝食・昼食がいい加減になりがちでラーメン好きな私としては、今回のラーメンも試してみたいところだ。

「楽天ペイ」「PayPay」「LINE Pay」が揃って12月17日から全国のミニストップで利用可能に

eng-logo-2015ミニストップは、2018年12月17日(月)より、スマホを活用したバーコード決済サービス「楽天ペイ(アプリ決済)」「PayPay」「LINE Pay」の3サービスを、国内のミニストップ2225店舗に(2018年10月末時点での店舗数)に導入すると発表しました。

ミニストップでは、現金決済以外に、クレジットカード、電子マネー、UnionPay(銀聯)カード(クレジットカード・デビットカード)等の決済サービスを既に導入しています。スマホの画面に表示されるバーコードを読み取ることで決済できるサービスを多数導入することで、利便性向上を図ります。ミニストップによると、バーコード決済の導入は、決済時間の短縮にもつながり、店舗オペレーションの負荷軽減にも寄与するとしています。

スマホ決済の導入に合わせて、各サービスが実施するキャンペーンも同時に実施します。

楽天ペイのキャンペーン

「楽天ペイ」は、楽天会員であれば、スマホアプリにクレジットカードを登録することで、支払いができるサービスです。ミニストップでは、スマホの画面に表示されるバーコードを店舗側が読み取る「コード表示」決済を導入します。支払い元となるクレジットカードが「楽天カード」であれば、「楽天ペイ」(200円につき1ポイント)と「楽天カード」(100円につき1ポイント)のそれぞれのポイントを貯めることが可能で、貯めたポイントは1ポイント1円相当として支払いに使えます。

「楽天ペイ」を初めて利用する人を対象に、キャンペーンにエントリー後、同月内の合計支払い金額が5400円(税込)以上で「楽天スーパーポイント」1000ポイントをプレゼントするキャンペーンを実施中です。

PayPayのキャンペーン

「PayPay」はソフトバンクとヤフーの合弁会社が提供するスマホ決済サービスです。支払い方法は、電子マネー(PayPayまたはYahoo!マネー)、クレジットカードの2種類から選べます。

ミニストップでは、スマホの画面に表示されるバーコードを店舗で読み取る「ストアスキャン」方式を導入。新規登録すると500円相当のPayPayがもらえる点も見逃せません。

ミニストップでは「PayPay」が実施中の「ペイペイで支払ったら20%戻ってくる!100億円あげちゃうキャンペーン」も適用されます。

PayPayでの支払い1回ごとに、最大20%が「PayPayボーナス」としてPayPay残高に還元される内容。上限は1カ月あたり5万円。更に抽選で40回に1回の確率で、支払い額の全額がキャッシュバックされます(最大10万円)。全額還元は、ソフトバンクとY!mobileの利用者は10回に1回、Yahoo!プレミアムの利用者には20回に1回と、確率が上がる特典も用意されます。還元金額が総額100億円に達したときは、キャンペーン期間の途中でも終了します。となるとしています。

実施期間は2018年12月4日(火)~2019年3月31日(日)まで。

LINE Payのキャンペーン

「LINE Pay」は、上記2サービスとは異なり、決済に加え、モバイル送金も可能なサービス。「LINE」アプリにクレジットカードや銀行口座を登録することで使えます。銀行口座からチャージして加盟店での支払いに利用できるほか、銀行口座を登録することで、LINEの友人同士での送金や割り勘も可能です。

「コード支払いで誰でも3.5%以上、最大5%ポイントバック!キャンペーン」を2019年7月31日(水)まで実施中。「LINE Pay」のQR/バーコードで支払うと、通常のポイント還元率(0.5~2%)に「+3%」を上乗せする、ポイント還元率を高める内容です。

スマホ決済サービス競合3社が一斉にコンビニで使えるという衝撃ですが、やはり使えるところが多いと利用者にとっても店舗にとっても嬉しい限りです。

スマホ決済サービス各社はあの手この手でユーザー数を増やす一方で、自分に合った使い方で慎重に選ぶのが難しくなりそうです。

Engadget 日本版からの転載。

AI開発ノウハウをオープン化するABEJA、米Googleから数億円規模と見られる資金調達

AIプラットフォーム「ABEJA Platform」などを展開するABEJAは12月4日、2018年6月に実施して42億5000万円を集めたシリーズCのエクステンションラウンドとして、Googleなどを引受先とした第三者割当増資を発表した。Googleからの出資は、同社の投資部門(GV)からの出資ではなく、Google本体からの出資となる。

調達金額は非公開ではあるものの、企業データベース「Crunch Base」によれば、シリーズC以前の同社の累計調達金額は、金額が公開されているものだけを合わせても約4500万ドル(現レートで約50億円)。同社が本日発表したリリースには「累計調達額は60億円を超えた」とあるから、非公開分やレート差分を考慮すると数億円台後半、もしくは10億円前後の規模だと推測できる。

ABEJAは2012年の創業で、当初よりディープラーニングを軸とするAIを活用したプラットフォーム「ABEJA Platform」の開発に取り組んできた。これは、ABEJAが蓄積した過去の開発実績やノウハウをオープンなプラットフォームとして提供するというもの。様々な業界、顧客に合わせたソリューションを提供しており、AIの本番運用を支援した企業数は現在150社を超えるという。

また、小売・流通業界、製造業界、インフラ業界向けに特化したパッケージサービス「ABEJA Insight」も提供しており、これまでに国内約100社への導入実績があるという。2017年3月にはシンガポールに法人を設立し、グローバル展開も果たした。

Google Cloud Japan代表の阿部伸一氏は、「ABEJAは、機械学習領域における優れた技術力のみならず、日本のAI市場において数多くの企業と実装レベルでの協業実績を持つ」とコメントし、ABEJAの技術力と導入実績を評価した。

ABEJAは今回の資金調達ラウンドの実施を受け、「引き続きAI、特にディープラーニングの活用により国内外問わず多様な業界やシーンにおけるビジネスのイノベーションを促進し、産業構造の変革に貢献する」とコメントしている。

1200万人が登録するカレンダー共有アプリ「TimeTree」が9.2億円のファイナンスを実施

家族や恋人、サークル、仕事など相手やシーンに応じて複数のカレンダーを簡単に作成し、共有できるアプリ「TimeTree」。同サービスを提供するJUBILEE WORKSは12月4日、2018年11月までに株式譲渡を含めて総額約9.2億円の出資を受けたことを明らかにした。

今回のラウンドには既存株主であるKAKAO VENTURES、 SMBCベンチャーキャピタルや個人投資家のほか、新規株主としてみずほキャピタルが参加。同社はこれまで2016年10月に2.1億円、2017年8月にも5.3億円を調達するなどしていて、これまでのファイナンス総額は約17億円になるという。

冒頭でも触れた通り、TimeTreeはスマホ向けのカレンダーシェアアプリだ。特徴は相手や目的に応じて“グループ専用のカレンダー”を複数作成し共有できること。開発段階からシェアすることを前提に設計しているからこそ、それをベースにした機能がいくつも搭載されている(この辺りの思想やサービスの背景は前回詳しく紹介している)。

一例をあげると、誰かが予定を作成・変更した際に通知が届く機能や各予定ごとにコメントや画像を投稿できるチャット機能、日程が決まっていない予定をメモして共有できるキープ機能などを備える。

カレンダーの共有はLINEやメールで招待URLを送るだけ。カレンダーを共有してないユーザーに個別の予定だけ共有することもできる。Googleカレンダーと連携しているので「仕事の予定はGoogleカレンダーに登録している」というユーザーもスムーズに予定を反映することが可能だ。

1300万は見込み数

2015年3月のサービスリリースから約3年半が経過した現在では登録ユーザー数が1200万を突破(2018年11月時点)。今回調達した資金はさらに多くのユーザーにTimeTreeを知ってもらうためのプロモーションと「予定による人と情報のマッチングプラットフォーム」に向けた機能開発に用いるという。

具体的には各ユーザーが自分で予定を入力して管理するだけでなく、各々にマッチした新たな情報に出会えるようなプラットフォームを目指し、以下のような機能群を開発する計画だ。

  • 予定情報を元にターゲティング可能な広告商品である「TimeTree Ads」(今夏より国内で展開済み)
  • カレンダー形式でインターネット上にイベント情報を発信可能な「公開カレンダー」
  • TimeTree外部から予定の入力や呼び出しを可能にする「TimeTree API」「TimeTree Plugin」

ブロックチェーン導入コンサルのBlockBase、家入一真氏ら率いるNOWから数千万円を調達

ブロックチェーン技術の導入コンサルティングを行うBlockBaseは12月3日、起業家の家入一真氏と投資家の梶谷亮介氏が代表を務めるNOWから資金調達を行ったと発表した。金額は非公開だが、数千万円規模の調達と見られる。

「ブロックチェーン」という言葉はすでに市民権を得ているように思うが、実際にその技術をビジネスに導入しようと思うと何から手につけていいか分からないという企業も多いだろう。BlockBaseはそういった企業向けにブロックチェーン技術の導入コンサルティングを行うスタートアップだ。コンサルティングの具体的な内容は以下の通り。

  • 課題の把握とプロジェクトスコープの再設定
  • 現場の技術者とチームを組み、プロダクトアウト的な高速プロトタイピングの実行
  • チームビルドを通じ、ボトムアップ的なロードマップの策定、経営層への提案支援

また、同社はブロックチェーン関連技術を活用した自社プロダクトの企画・開発も手がけている。BlockBaseによれば、特にビジネスのセクターや採用する技術に制限は設けておらず、今後もプロダクトのプロトタイピングを高速、大量に繰り返していく方針だという。

今回の資金調達ラウンドに参加したNOWは、2018年6月にCAMPFIRE代表の家入一真氏、ファンドや証券会社でスタートアップ投資やIPO支援などを行ってきた梶谷亮介氏が設立したVCだ。家入氏は連続起業家としてこれまでもエンジェル投資を行い、若手起業家に対してアドバスする立場にあった。NOWは、その家入氏が“VCでありながらエンジェル投資家である”という姿勢を維持しながら投資を行うというのが特徴のVCだ。

NOWはこれまでに、ブロックチェーンを政治コミュニティサービスに活用したPolipoliや、オープンソースコミュニティを運営するBoostIOなどに投資を行ってきた。なお、NOWは同日、BlockBaseへの出資とともに、新生銀行、大和証券グループなど計7社から20億円の出資を受け、セカンドクローズを実施したことも併せて発表している。

カスタマーサクセス管理ツール「HiCustomer」が正式リリース

右から3番目がHiCustomer代表取締役の鈴木大貴氏

B2B SaaSを運営するサブスク事業者向けのカスタマーサクセス管理ツール「HiCustomer(ハイカスタマー)」を開発するHiCustomerは12月4日、同サービスの正式ローンチを発表した。

まずカスタマーサクセスを簡単に説明しよう。カスタマーサクセスとは顧客の潜在的な悩みに対し積極的にアプローチし、解決すること。顧客からの問い合わせを待つ受動的なカスタマーサポートとは異なり能動的に対応を行うのが特徴だ。顧客によるサービスの継続的利用が不可欠なサブスクリプションモデルにとってカスタマーサクセスは特に重要だと言える。そんなカスタマーサクセスを管理するためのHiCustomerは担当者が「今、何をするべきか」を教えてくれる便利なツールだ。

HiCustomerは顧客スコアリング、コミュニケーション管理、利用状況分析が全て備わったカスタマーサクセスのためのプラットフォーム。CRMと異なり、サブスクに特化している。顧客のサービス利用ログから退会やアップセルの可能性のある顧客を推定し、売上最大化のために必要なアクションを自動で生成し提案する。

まず1つ目の特徴として、HiCustomerは顧客の健康状態を表す「ヘルススコア」を自動で算定。活動・利用頻度や満足度などをもとに顧客のプロダクトとの関係性を「Good」「Normal」「Bad」といったステータスで表示することができる。無償トライアル中で有償契約可能性が高い顧客、契約更新前に退会リスクがある顧客、安定運用中でかつアップセル可能性のある顧客など、顧客のプロダクト活用フェーズごとに対応すべき顧客を明確化することが可能だ。

2つ目の特徴は顧客個別の利用状況を時系列で分析可能な点だ。HiCustomerいわく通常のアクセス解析ツールでは利用ユーザー全体をマクロ視点で分析するケースが一般的だというが、HiCustomerではプロダクトの活用状況を顧客ごとに時系列で分析することが可能。これにより、各施策がどの顧客に影響を与えたのかが判明するため、カスタマーサクセスのPDCAサイクルを回すことが可能となる。

3つ目は売上最大化のため、顧客に対して行うべきアクションを自動で生成する点。同プラットフォームでは顧客の退会・アップセル兆候を検知し「今、何を行うべきか」をアラートで通知することが可能だ。HiCustomer代表取締役の鈴木大貴氏は「良い悪いの状態がわかった後、どのようなアクションを取るべきなのか、というところをもう少し踏み込んでプロダクト側からサジェストしたほうがより現場のTo Doに繋がるというのが明確にあった。リリース前にはその部分を重点的に作っていた」と話した。

なお顧客のスコアが変わった時や新しく顧客がユーザーになったタイミングでSlackのチャンネルに通知を飛ばすことも可能だ。これにより移動中でもリアルタイムで顧客の状態の変化を把握することができ、チーム内で即時にコミュニケーションを取ることができる。

HiCustomerは2018年4月にクローズドβ版をリリースして以来、500社以上が事前登録している。現在は累計30社がトライアル導入を果たしており、順次正式版の契約に移行しているという。正式版の導入企業は弁護士ドットコム(CloudSign)、グッドパッチ(Prott)、ベーシック(ferret One)、Wovn Technologies(Wovn.io)、SCOUTER(SARDINE)など(カッコ内はプロダクト名)。

2018年を「カスタマーサクセス元年」と呼ぶ人もいる。鈴木氏は「カスタマーサクセスに取り組む会社は僕たちと同じように社内の全員がユーザー目線になる。なのでお客さんたちの喜んでいる姿や課題解決している様をちゃんと理解した状態で仕事ができる。この母数を増やすことに繋がってくるので、やりがいのある領域だしプロダクトだ」と話していた。