自動運転開発のAuroraが外部専門家による安全評価の諮問委員会を設置

2020年にUber ATGを買収した自動運転車両開発のAurora(オーロラ)が外部専門家のチームを作り、自己評価安全報告書の運用についての新たな詳細を公開した。そしていつか道路を共有したり、実際に使ったりする自動運転テクノロジーを警戒している消費者の信頼を獲得するための幅広い取り組みの一環としてウェブサイトを立ち上げた。

Auroraは米国時間6月3日、安全への全体的なアプローチに外部の視点を取り込み、進展並びに記録を当局や社会と共有する最善の方法に関する体制とアドバイスのギャップを探すべく、航空安全、保険、そして医療と自動車の安全の専門家(全員ニッチなAV産業外の出身だ)の協力を仰ぐことを明らかにした。こうした専門家による諮問委員会は、路上テストや開発などを含むAuroraの既存の安全に関する取り組みを増強するためのものだ。

「『我々が作れば、彼らは使うにようになる。iPhoneを見ればわかる』といった『Field of Dreams』的な分析をしていたと思います」とAuroraの安全責任者、Nat Beuse(ナット・ビユーズ)氏は最近のTechCrunchとのインタビューで語った。「我々は常にこうした他のコンシューマー向け製品と比較しています。それが実際に米国のあらゆるコミュニティにおける消費者のマインドをつかむものなのか、確かではありません」。

以前Uber ATGで安全チームを率い、その前には米運輸省で自動運転車両開発を監督していたビユーズ氏は、人々を運ぶロボタクシーであれ貨物を運搬するトラックであれ、最終目的はドライバーレスの車両が広く受け入れられることだと述べた。それはテクノロジーが安全だということを測定して社会に示すことができなければ達成し得ない、と語った。

「たとえごく少数でも自動運転車両に接する人が懸念を抱えれば、このテクノロジーの恩恵、広範な使用、有益な方法で我々の暮らしにもたらしえる抜本的な変化や影響を目にすることはないでしょう」と話した。「(社会の信頼を獲得するために)我々はさらに取り組まなければなりません。そうした信頼の獲得は政府とともに行うべきです」と付け加えた。

「『産業界が作っているのだから、自分たちで問題を解決しろ』というのが今までの考え方だったと思います。しかしこれはパートナーシップだと真に思います。もちろん、我々がテクノロジーを作っていて、大きな責任を負います。しかし政府もまた、我々が一般の人を参加させるようにするのを手伝うという非常に大きな役割を担っています」。

安全諮問委員会のメンバーには Intelligent Transportation Society of Americaの会長兼CEOのShailen Bhatt(シャイレン・バット)氏、Boeingで運航安全性を担当した元チーフパイロットDave Carbaugh(デイブ・カーボー)氏、Edge Case Researchの主席エンジニアでイノベーション戦略家のVictoria Chibuogu Nneji(ビクトリア・チブグ・ネジ)氏が含まれる。他のメンバーには、Biologueの会長で米運輸省道路交通安全局の元行政官であるJeff Runge(ジェフ・ルンゲ)氏、HITCH42の業務執行社員で米国道路安全保険協会の元会長のAdrian Lund(アドリアン・ルンド)氏、GHS Aviation GroupのCEO、George Snyder(ジョージ・スナイダー)氏がいる。

すでに会合を持った委員会は「テックに熱中していない」人で構成されている、とビユーズ氏は話した。

Auroraや業界他社にとって最も大事なことは、ドライバーレス車両に関して「どれくらい安全であれば十分に安全なのか」という漠然とした問題に答えることだ。これまで浸透して批判されるようになったメトリックは車両の走行距離と「ディスエンゲージメント」あたりの走行距離を比較するものだ。ディスエンゲージメントというのは、人間の安全オペレーターがコンピューターで動く車両を操作することを意味する業界用語だ。

「それは真のメトリックではない、とかなり自信を持って言えます。というのも、駐車場で運転してもインターラクションを生み出すことができ、それは街中を走行するのとはかなり異なるものだからです。高速道路を走行するのともだいぶ違います」とビユーズ氏は説明した。

Auroraは自動運転技術の業界団体Automated Vehicle Safety Consortium(AVSC)に加盟している。他にDaimler、Ford、GM、ホンダ、Lyft、Motional、SAE、トヨタも名を連ねているAVSCはより良いメトリクスの検討に取り組んでいる。新たに設置されたAuroraの安全諮問委員会はAVSCのプロジェクトとは直接協業していないが、取り組みを支えるかもしれない一般的なガイダンスを提供している。

こうした新たなメトリクスを認証するにはまだすべきことがたくさんあるが、Auroraの安全諮問委員会はかなり有望だと考えているものをいくつか持っている、とビユーズ氏は話した。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Aurora自動運転

画像クレジット:Aurora

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドライバーレスタクシーサービスWaymoがGoogleマップで予約可能に

フェニックスの郊外で自動運転車を使って営業しているライドシェアサービスWaymo Oneを、Googleマップでアクセスしたり予約したりできるようになった。

米国時間6月3日に行われたWaymoの発表によると、最初はAndroidユーザーのみだが、完全な自動運転車のライドシェア機能をマップアプリから使えるのはこれが初めてだ。この共同事業は、2つのAlphabet傘下企業を一緒にするだけでなく、大衆的知名度や親しみやすさを上げたいという、Waymoの意欲の表れでもある。

Waymoは米国でおよそ600台を保有しているが、そのうち300から400はフェニックスにある。ただし、そのすべてがWaymo Oneの運転手不在の自動運転車として使われているわけではない。Waymo Oneのサービスは運転者のいない完全な自動運転車だけを使い、運転席に安全管理者はいない。またGoogleマップに出現したら、それが確実に完全自動運転車であることを意味している。フェニックス地域ではテストのために走っている車両もあるが、Waymo Oneのサービスで使われている自動運転車の正確な台数をWaymoは明らかにしていない。

Waymo Oneが@Googleマップにいるよ。フェニックス都市圏にいてライドシェアオプションをタップしたら#WaymoDriverが動かしている完全自動運転車を呼べるんだ。

ただしプロセスでは、少々アプリを使い分ける必要がある。Googleマップでは、Waymo Oneの車両に直接アクセスして、予約や支払いをする方法がないため、Waymoアプリに移動して予約を完了しなければならない。ユーザーはまず、Android端末からWaymoのフェニックス都市圏(チャンドラーやメサ、テンピの一部を含む)にある場所への行き方や帰り方の入力が必要だ。またユーザーは、ライドシェアまたはトランジットのタブをタップすると、Waymoでの料金と到着時刻の予想が出る。

既存のWaymo One利用者はWaymoアプリに誘導されて乗車予約ができるが、新規利用者はPlayStoreに誘導されアプリをダウンロードすることになる。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Alphabet傘下で2021年初めに解散したLoon元トップがロボット配達Starship TechnologiesのCEOに

自律走行ロボティクス会社Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)が、新しいCEOを迎える。同社は米国時間6月1日、ロボティクス配達サービスの拡大を追求する中でAlphabet(アルファベット)傘下のLoon(ルーン)の元CEOであるAlastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏がStarship Technologiesを率いると発表した。

ウェストガース氏はこの前に、高高度の気球経由でブロードバンドを提供するというAlphabetの実験のLoonを2017年から率いていた。同社は2021年初めに解散した。解散を発表した最後のブログの中で同社は「商業化の実現可能性への道が思った以上に長く、リスクをともなうものであることがわかりました」と述べた。Loonで働く前にウェストガース氏はワイヤレスアンテナ会社Quintel Solutionsを率い、そして通信会社Nortel で副社長を、 Bell Mobilityではエンジニアリングのディレクターを務めた。

同氏はStarship Technologiesが事業を急拡大する中で同社に加わる。2020年初め、Starshipはいくつかの地域と大学のキャンパスで自律走行ロボット数百台を運用していた。同社は2021年5月、パンデミック以来、配達件数は4倍に増え、グローバルで150万回のマイルストーンを達成した、と明らかにした。

「自律走行配達は知っての通りロジスティックを変えていて、世界中の何十億という人にインパクトを与えています」とウェストガース氏は声明文で述べた。「Starshipのチームは2014年にロボット配達部門を創出して以来、何年もの間、テクノロジーとオペレーションを開発・洗練してきました。今回の機会はうれしいものであり、この業界をリードする便利で安全、そして環境に優しい配達サービスにより多くの人がアクセスできるよう、Starshipがキャンパスと地域で事業を拡大するのをサポートすることを楽しみにしています」。

Starshipの前CEOであるLex Bayer(レックス・バイエル)氏は同社を3年間率いた後、2020年12月に密かに社を去った。暫定CEOを務めた共同創業者のAhti Heinla(アーティ・ヘインラ)氏はCTOとなる。

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画像クレジット:Starship Technologies under a license.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

財政苦境に直面するイーロン・マスク氏のラスベガスループ地下輸送システム、The Boring Companyに賠償金数億円の可能性

米国ネバダ州の規制当局が課した制限により、イーロン・マスク氏のThe Boring Company(ザ・ボーリング・カンパニー、TBC)は、同氏初の地下交通システム「LVCC Loop(ラスベガス・コンベンションセンター・ループ)」の契約目標達成が困難になっている。

ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)のLoopシステムは60台以上の完全自律型高速車両を使い、展示ホール間で毎時最大4400人の乗客を輸送することになっている。しかしTechCrunchの取材によると、クラーク郡の規制当局がこれまでに承認したのは人間が運転する車両わずか11台で、さらに厳しい速度制限を設け、Tesla(テスラ)の「完全自律走行」先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」の一部であるオンボード衝突回避技術の使用を禁止しているという。そのようにブランディングされているものの、TeslaのAutopilotシステムは技術的には完全自動運転のレベルには達していない。Teslaとカリフォルニア州の規制当局との間で交わされたやり取りによると、内部的にも、Autopilotは特定の機能を自動化できる先進的な運転支援システムと見なされている。

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LVCCの母体であるラスベガス観光局(LVCVA、Las Vegas Convention and Visitor’s Authority)は、マスク氏にインセンティブを与え、TBCが約束を確実に果たすように促す契約を結んだ。契約は固定価格で、TBCがすべての支払いを受けるためには、特定のマイルストーンを達成しなければならない。この契約では、トンネル掘削完了、全体の作業システムの完成、テスト期間の終了と安全レポート、そして乗客を輸送できるという証明など、プロセスのさまざまな段階で支払いが行われる。最後の3つのマイルストーンは、何人の乗客を輸送できるかに関するものだ。Loopが1時間に乗客2200人の輸送能力を示すことができれば、TBCは440万ドル(約4億8000万円)を受け取ることができ、3300人を達成すれば再び同じ額をもらえる。4400人を達成した場合も同様だ。これらの輸送能力に応じた支払いの総額は、固定契約金の30%に相当する。

1時間に4000人以上の乗客を運ぶどころか、制約されたシステムでは1000人以下のキャパシティに制限される可能性があり、TBCは契約目標を達成できなかった場合、多額の違約金を支払うことになる。TBCは乗客から料金を徴収して収益を得ることはない(乗車は無料)。

【更新】本記事の公開直後にラスベガス観光局のSteve Hill(スティーブ・ヒル)代表は、今週行われた数百人規模のLoop試験で、予定されていた1時間あたり4400人の乗客を輸送できるキャパシティが実証されたとツイートした。これにより、後述の追加建設資金が確保される可能性がある。TBCは罰金を避けるためには、今後数カ月の間に実際のカンファレンスでこの数字をまだ達成しなければならない。TechCrunchは記事公開に先立ち数週間にわたり、LVCVA、クラーク郡、そしてTBCと何度も報道内容を共有した。実質的な回答をしたのはLVCVAだけで、キャパシティの問題や、子どもやモビリティの問題を抱える乗客についての未解決の質問については回答を得られなかった。

例えばTechCrunchが新たに入手した管理契約によると、CESのような大規模なトレードショーの際には、LVCCはTBCがシステムを運営・管理する1日ごとに3万ドル(約330万円)を支払うことになっている。しかし、2019年にTBCが締結した当初の契約書には、TBCが1時間あたり約4000人を輸送できない大規模なイベントごとに、30万ドル(約3300万円)の賠償金が課されると明記されている。

つまり、3~4日間のイベントで、TBCはシステムの運営費に加え数十万ドル(約数千万円)の損失を被ることになるのだ。パンデミック前の通常の年であれば、LVCCではこのような大規模なイベントを年12回ほど開催している。なお、TBCが車内広告などによる別の収益手段を計画しているかどうかは不明だ。

このキャパシティの問題は、すでにTBCにコストをかけている。契約では、TBCがパフォーマンス目標を大幅に下回った場合、マスク氏の会社は建設予算のうち1300万ドル(約14億3000万円)以上を受け取ることができないとされている。LVCVAはTechCrunchの取材に対し、契約に基づきTBCが1時間に数千人を輸送できる能力を実証するまで、建設費を保留していることを確認した。

年間20回ほど開催されるより小規模なイベントの場合、キャパシティ賠償金は適用されないが、契約によればTBCに支払われる1日あたりの使用料は1万1500ドル(約126万円)へと激減する。また、コンベンションの数にかかわらず、TBCは毎月16万7000ドル(約1830万円)の支払いを受けてシステムの稼働を維持することになっている。

米国時間5月25日に行われたLoopのキャパシティテストに参加したのはわずか300人と報じられているが、LVCVAの担当者は、1時間あたり4400人という数字は「十分に達成可能な範囲」と述べた。

管理契約によると、TBCは人間のドライバーチームの他にも、オペレーションセンター、メンテナンス・充電施設にスタッフを配置し、制服を着たカスタマーサービススタッフ、セキュリティスタッフ、フルタイムのレジデントマネージャーを提供しなければならない。

この料金体系は「予想される自律走行への移行」を考慮して、2021年末までにおそらく下方修正されることになっている。

画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

衝突警告システムは使用不可

Loopの初期運用に関する制限事項のいくつかは、クラーク郡の建築消防局に提示されたものだ。その内容は、ルート全体での制限速度を時速40マイル(時速約64km)に抑える、Loopの3つの駅構内では時速10マイル(時速約16km)に減速する、車両を11台までに制限することなどである。

クラーク郡消防局のWarren Whitney(ウォーレン・ホイットニー)副消防局長は、TBCからLoop内でTeslaの衝突警告システムを使用することは許可されていないと聞いている、と述べている。クラーク郡が米国時間5月27日に発行した交通システム運営ライセンスでは、Loopは「非自律走行」で「手動運転」の車両を使用しなければならないと規定されている。このライセンスは、計画されている62台の車両に対して発行された。クラーク郡当局およびTBCのいずれも、この運用制限に関する詳細な質問には回答しておらず、いつ、どのような場合に解除されるのかについても言及していない。

トヨタは以前、レーダーを使った衝突警告システムがトンネル内で正しく機能しない可能性があると警告していた。

衝突警告レーダーを欠いたTeslaが安全に「完全自律走行」できるかどうかは定かではないが、マスク氏は、車両からレーダーセンサーを取り除いてカメラのみを使用することを提案し、現在その計画を実行している。Teslaは2021年5月から、レーダーセンサーを搭載していない「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」の納車を開始した。レーダーセンサーがないことを受けて、米国道路交通安全局は、2021年4月27日以降に製造されたModel 3とModel Yには、自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、車線逸脱警告、ダイナミックブレーキサポートについて、同局の認定がなくなると発表した。またこの決定を受け、Consumer Reports(コンシューマー・レポート)はModel 3をトップピックとして掲載しなくなり、米国道路安全保険協会はModel 3のトップセイフティピック+指定を外す予定だという。

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テスラが車内カメラでAutopilot使用中のドライバーを監視

同消防局は他にも、何時間も続く可能性のあるバッテリー火災など、トンネル内での緊急事態への対応に懸念を抱いていた。ホイットニー氏はTechCrunchに次のように述べている。「電気自動車が事故を起こさずに炎上したケースは過去ありました。今のところ我々の計画は、まず人々を避難させ、その後、撤退して火が燃え続ける間待つことです」。

ホイットニー氏は、Loopシステムには多くのカメラや煙探知機が設置されていることに加え、毎分40万立方フィートの空気をトンネル内の両方向に移動させることができる「強力な」換気システムを備えていることを指摘した。これにより、乗客やドライバーは車の周りを歩いて脱出できるはずだという。TBCはそれほど深刻ではない事故のために、故障した車両を回収するための牽引車(これもTesla)を用意している。

TechCrunchの問い合わせに対し、TBCとクラーク郡はいずれも、Loopが車イス利用者、通常はチャイルドシートが必要な子どもや幼児、その他のモビリティの問題を抱えている人々、ペットや介助犬などの動物の輸送を許可するかどうかについては答えなかった。

消防隊員たちは、駅から遠く離れた場所で、2〜3台の他の車両が行く手を塞いでいるような事故を想定した地下システムでの訓練をすでに何度も行っている。ホイットニー氏は「11台であれば問題ありません」という。「しかし、クルマの数が増えてくるとそれは問題かもしれません。TBCは営利企業であり、効率を最大限に高めたいと考えていますから、キャパシティを増やそうとした時に、さらに議論が必要になるかもしれません」とも。

拡張計画

TBCは、既存のLoopでより多くの車両を使用したいと考えているだけでなく、すでにシステムの拡張を計画している。2021年3月末、TBCはクラーク郡に対し、LVCCの1駅から新しいResorts World(リゾート・ワールド・ラスベガス)ホテルまでの延長工事に着工したことを報告し、近くにあるEncore(アンコール・アット・ウィン・ラスベガス)までの同様の延長工事の許可も得ている。

さらにTBCは、ラスベガスのストリップやダウンタウンの大部分をカバーし、40以上の駅で数多くのホテルやアトラクション、そして最終的には空港を結ぶ交通システムを構築したいと考えている。そちらのシステムはTBCが資金を提供し、チケット販売によって支えられることになる。

このような拡張が可能かどうかは、TBCが比較的シンプルなLVCC Loopで約束した技術や運用をどれだけ早く実現できるか、また、トンネル内のタクシーがマスコミに書かれる量と同じくらい収益を上げられると実証できるかどうかにかかっている。

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画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Aya Nakazato)

テスラが車内カメラでAutopilot使用中のドライバーを監視

Tesla(テスラ)は、同社の電気自動車「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」のドライバーが先進運転支援システム「Autopilot (オートパイロット)」を使用する時、車内に設置されたカメラがドライバーを監視できるようにした。

テスラはソフトウェアアップデートで「バックミラーの上部に設置された車内カメラが、Autopilot作動中のドライバーの不注意を検知し、警告することができるようになりました」と告げている。ただし、同社によれば、カメラで撮影した画像が車外に出ないように、データにはクローズドループシステムが採用されているという。データ共有が有効になっていない限り、システムは情報を保存したり転送したりすることはできないとのこと。このファームウェアアップデートの説明は、多くのテスラ車オーナー、業界ウォッチャー、ブロガーたちによってTwitter(ツイッター)で公開されている。

テスラは、オーナーがAutopilotシステムを悪用しているという証拠があるにもかかわらず、車内のドライバー監視システムを作動させていなかったとして批判を浴びてきた。YouTube(ユーチューブ)やTikTok(ティックトック)には、テスラ車のオーナーがAutopilotシステムを悪用している動画が数多く投稿されており、中には後部座席に座って高速道路を走行している自分の姿を撮影している人もいる。Autopilot作動中のテスラ車でいくつもの死亡事故が発生していることから、同社の対応を求める圧力が高まっていた。

これまでテスラは、車内に搭載されたカメラは使用せず、ステアリングホイールのセンサーでトルクを測定することによって、ドライバーが運転中にハンドルから手を放していないと判定していた。しかし、ドライバーの中には、センサーを騙して人間がハンドルを握っていると思わせる方法を発見し、それをソーシャルメディアで公開している人もいる。

Brian Krause@bak112233

納車はどうでしたか?

緊急自動ブレーキや前方衝突警報が無効になっていませんでしたか?

納車時に特別なソースのソフトウェアのバージョンが適用されていませんでしたか?

Kevin Smith@spleck

納車はとてもスムーズでした。Summon(サモン)と車線逸脱防止機能は今のところ無効になっていて、追従距離は長く、ハードキャップは時速75マイル(時速約120キロメートル)で、自動ハイビームを使うにはAPの解除が求められ、ドライバー監視のための車内カメラ……まだ予想外のことは何もありません。

Consumer Reports(コンシューマー・レポート)の自動車テスト担当シニアディレクターであるJake Fisher(ジェイク・フィッシャー)氏は、TechCrunchに次のように語った。「コンシューマーレポートは何年も前から、テスラのAutopilotのような運転自動化システムには、カメラを使ったドライバー監視システムが必要であると訴えてきました。テスラの現行のシステムは、ハンドルに掛かっているトルクを感知するもので、ドライバーが道路を見ているかどうかは判断できません。この新しいシステムが有効であることが証明されれば、ドライバーの注意散漫を防ぎ、安全性を大きく向上させることができ、ひいては人命を救う可能性があります。他のモデルもすぐにアップデートされることを我々は期待しており、それらを評価することを楽しみにしています」。

テスラは、このドライバー監視システムの詳細(例えば、視線または頭の位置をトラッキングしているのかなど)や、これが手放し運転を可能にするために使われるのかどうかについては明らかにしていない。GMのSuper Cruise(スーパークルーズ)やFord(フォード)のBlue Cruise(ブルークルーズ)は、高速道路の特定の区域で、手放し運転を可能にする先進運転支援システムだ。これらのシステムでは、地図データ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサーに加え、運転者を監視するドライバーアテンションシステムを搭載し、ドライバーが運転に注意を払っているかどうかを確認している。

テスラのクルマには、運転支援システムのAutopilotが全車に標準装備されており、さらに1万ドル(約110万円)の追加料金を払えば、FSD(フル・セルフ・ドライビング)と呼ばれるシステムにアップグレードすることができる。これはElon Musk(イーロン・マスク)CEOが「いつかは完全な自動運転を実現する」と約束している機能だ。FSDは何年も前からオプションとして提供されているが、価格と機能が年々着実に向上している。

しかし、今のところ、テスラのクルマは自動運転車ではない。FSDには、駐車場などで無人のクルマを呼び寄せることができる「Summon(サモン)」機能や、高速道路の入口から出口まで、インターチェンジや車線変更を含めて車両の走行を導くアクティブガイダンス運転支援機能「Navigate on Autopilot(ナビゲート・オン・オートパイロット)」機能が含まれている。この機能はドライバーが車載ナビゲーションシステムでルートを設定する度にオンになる。

今回の動きは、テスラが北米向けのModel YとModel 3にレーダーの搭載をやめたとツイートしてから、わずか1週間後のことだった。これは、Autopilotやその他のアクティブセーフティ機能をサポートするために、レーダーなどのセンサー類を用いず、カメラと機械学習を組み合わせたものだけを使用したいというマスク氏の要望を実現したものだ。

自動車メーカーは通常、レーダーとカメラ、さらに場合によってはLiDARさえも組み合わせ、周囲の交通状況に合わせて車両の走行速度を調整するアダプティブ・クルーズ・コントロールや、車線維持および自動車線変更など、先進運転支援システムの機能を実現するために必要なセンシングを行っている。しかし、以前からマスク氏は、カメラといわゆるニューラルネット処理のみで、車両を取り巻く環境で起きていることを検知・認識し、適切な対応を行うシステムの可能性を喧伝してきた。このシステムにはブランド名を冠した「Tesla Vision(テスラ・ビジョン)」という名称が付けられている。

車両にレーダーを搭載しないという決定は、同社にいくつかの反発をもたらした。Consumer Reportsは、消費者に推薦できると評価した「Top Pick(トップ・トピック)」からModel 3を削除し、米国道路安全保険協会はModel 3から最高評価「Top Safety Pick+(トップセーフティピック+)」の指定を外す予定だと語っている。米国高速道路交通安全局は、2021年4月27日以降に製造されたModel 3とModel Yには、自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、車線逸脱警告、ダイナミック・ブレーキ・サポートに同局のチェックマークが付かなくなると発表した。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

55機のキングエア航空機に自律飛行機能をステルスモードを脱したMerlin Labsが搭載

Merlin Labs(マーリン・ラボ)の創業者であるMatt George(マット・ジョージ)氏は、バーモント州で飛行機の操縦を学んでいた時、バーリントン空港に入ってきたJetBlue(ジェットブルー)の航空機とあと少しで事故になる危機一髪の体験をした。それは「不安な体験」だったと、同氏はTechCrunchに語った。しかし、この体験は彼の心にずっと残ったという。その数年後、自身が設立した交通輸送の企業であるBridj(ブリッジ)がシンガポールのTransit Systems(トランジット・システムズ)に買収されたことをきっかけに、自律走行という地上の交通機関で起きているイノベーションを、どうやったら空に持ち込むことができるかと考えるようになった。

Merlin Labsを設立してから2年半が経過した現在、同社はステルスモードから脱し、航空ソリューション企業のDynamic Aviation(ダイナミック・アビエーション)と提携を結んだことを発表した。これにより、Dynamic Aviationが所有する55機の航空機に、Merlin Labsが開発した自律飛行機能が搭載されることになる。同時にMerlin Labsは、シード資金として350万ドル(約3億8500万円)、シリーズAラウンドで2150万ドル(約23億6000万円)を調達したことも明らかにした。それぞれFirst Round Capital(ファースト・ラウンド・キャピタル)と、Google Ventures(グーグル・ベンチャーズ)から名称変更したGVが主導し、Floodgate(フルードゲート)、Harpoon(ハープーン)、WTI、Ben Ling(ベン・リン)、Box Group(ボックス・グループ)、Shrug Capital(シュラッグ・キャピタル)、Howard Morgan(ハワード・モーガン)が追加出資している。

ジョージ氏によると、Merlin Labsはこれまで3世代の実験システムで、離陸から着陸までの自律飛行ミッションを「数百回」実施してきたという。同社は試験飛行をモハベ航空宇宙港にある専用施設で行っている。その最新のシステムは数カ月前に完成したばかりで、ジョージ氏はこの「Murray(マーレイ)」と呼ばれるシステムについて、あらゆる航空機に適用可能な後づけ自律操縦キットと表現している。人間のパイロットは地上で機体を監視し、緊急時には操縦を引き継ぐことができるが、Merlin Labsのシステムを後付けした航空機は、それだけで運航することができる。

画像クレジット:Merlin Labs Merlin Labs

しかしながら、同社のシステムを取り付けた55機のBeechcraft(ビーチクラフト)製双発ターボプロップビジネス機「King Air(キングエア)」が商業運航として空を飛ぶ前に、Merlin Labsは米国連邦航空局から追加型式設計承認を取得する必要がある。ジョージ氏は、Merlin Labが承認を取得するタイムラインについては言及しなかったが、規制が厳しく当然ながらリスクを嫌うこの業界では、必要なプロセスだ。

また、同社は航空管制官が航空機に直接「話しかける」ことができる機能も証明しようとしている。これは自然言語処理を用いて航空機が人間の言葉を理解し、行動に移すことができるというもので、機体は「高度な認知能力」を持って応答できるようになると、ジョージ氏は語っている。

「私たちは航空管制官が、パイロットの搭乗している他の航空機と同じように、航空機と対話できる必要があると確信しています」と、同氏はいう。「特別なインターフェイスは必要とせず、管制官が航空機に話しかけると、航空機がそのアクションを実行し、返答できるようにしなければなりません。これは私たちが取り組んでいる非常に重要な部分です」。

将来、Merlin Labsは航空会社になるつもりも、自ら航空機を運航するつもりもないと、ジョージ氏はいう。その代わりに、Dynamic Aviation(民間で最も多くのKing Air機を所有する)や、UPSやFedEx(フェデックス)などの大手物流企業に、サービスとして自律飛行機能を提供することを考えている。

「自律飛行は世界を飲み込みつつあります」と、ジョージ氏はいう。「空域を自動化できるということは非常に重要です。人々を結びつけ、世界全体をつなぐデジタルインフラを築くことができるのです」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドイツ下院が無人運転車の公道走行にゴーサイン、2022年までに全国で

ドイツでは2022年までに無人運転車の公道走行を可能にする法案が採択され、企業が同国内でロボタクシーや配送サービスを大規模に展開する道筋が示された。同国では現在、自律走行テストが認められているが、今回の法案により、人間の安全管理者が運転席にいないドライバーレスカーの運行が可能になる。

現地時間5月20日、ドイツの下院である連邦議会(Bundestag)で可決されたこの法案は、特にレベル4の自律性を持つ車両を対象としている。レベル4の自律性とは、SAE(Society of Automobile Engineers、自動車技術者協会)が定めた指定基準で、一定の条件や環境下でコンピュータがすべての運転を行うことを意味する。ドイツでは、これらの車両は地理的なエリアに限定される。

「将来的には、自律走行車は定常的に運行される公共の道路交通の指定された運転エリアにおいて、物理的に存在するドライバーなしで全国的に走行できるようになるべきである」と法案には書かれている。「これらの技術の可能性を引き出し、社会が参加できるようにするために、連邦政府は、対応するシステムを実使用環境に導入するためのさらなるステップが必要であると考えている」とも。

この法案はまだ、上院(連邦参議院、Bundesrat)を通過しなければならない。この法案には、ドイツの道路で自動運転車が最初に使用される可能性のある用途として、公共交通機関、ビジネスや供給のための移動、物流、従業員の交通手段となる会社のシャトルバス、医療センターや老人ホーム間の移動などが含まれている。

企業がドイツで商用の無人運転車を運行するには、賠償責任保険の加入や、自律走行を遠隔操作で停止できるようにするなど、さまざまなルールを遵守する必要がある。

すでにドイツでテストを行っている企業は、欧州最大の経済規模を持つ同国で優位に立てるかもしれない。例えばArgo AI(アルゴAI)は、ミュンヘン空港のイノベーションセンター「LabCampus」で自律走行車のテストを行ってきた。2020年6月にはバイエルン州の州都である同都市に欧州本部を開設し、2021年夏にはフォルクスワーゲンと共同で試験サイトを開設し、自動運転対応EVバン「VW ID.Buzz」のテストを行う予定だ。また、インテルの子会社であるMobileye(モービルアイ)も、ドイツでAVのテストを行っている

米国のいくつかの州や他の国では、テストや潜在的な商業展開に関する規制がある。先週、中国のロボタクシー企業であるPony.ai(ポニーエーアイ)は、カリフォルニア州で無人運転車のテスト許可を得た8番目の企業となった。Nuro(ニューロ)は同州の公道で商業運転ができる展開許可を得ている唯一の企業だ。一方中国でも、Alibaba(アリババ)が出資するAutoXなどの企業が公道でのドライバーレスフリートのテストを行っている。ドイツの法案はテストを超えて、通常の交通に無人運転を統合する方向に進んでいる。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:ドイツ自律運転

画像クレジット:Volkswagen Commercial Vehicles

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

北京市が自律走行車両の公道試験の許可をJD.com、Meituan、Neolixに

北京郊外の人は、人間の配達員を乗せて通りを注意深く走行する自律運転の配達ミニバンを近所で目にし始めることになりそうだ。

現地時間5月25日に開かれたモビリティ会議での北京市当局の発表によると、同市はJD.com、Meituan、Neolixに亦荘開発区域の専用の公道で自律走行する配達車両を試験する許可を与えた。同区域は北京市による経済・技術的成長を目的とする試験エリアで、自動運転ベンチャーのためのインフラを用意しようと5Gを積極的に展開している。

3社は荷物を配達するのにNuroのものと似ている、ボックスに車輪がついたかわいらしい車両を使う。中国の電気自動車スタートアップLi Autoが支援する創業3年のNeolixは、小売や監視、その他の市サービスのための自律走行車両にフォーカスしている。その一方で、テック大企業であるJD.comとMeituanは、無人配達が自社の中核事業にとって重要性を増していると考えている。

Meituanの自動走行配達車両(画像クレジット:Meituan via WeChat)

オンライン小売のJD.comは専属の配達スタッフを抱えているが、Meituanの方はレストランのテイクアウトを顧客に届けるのにライダーの全国ネットワークに頼っている。両社ともここ数年、社内で自動運転テクノロジーに取り組んでいて、中国で配達ドローンの小型車両をテストしている。

Neolixは2021年6月までに北京の路上で配達車両150台を走らせる予定だ。JD.comは展開する車両の台数を明らかにするのは却下した。Meituanにはコメントを求ることができていない。

試験を担当する北京市当局は5月25日のイベントで、亦荘開発区域での配達専用の車両の運用に関するルールも示した。ロボットは「非モーター車両」に分類される。これからするに車両は車ではなく自転車や電動スクーターに近い区分になるようだ。中国の都市の道路状況は、予測できない歩行者、リースに繋がれていないペット、無謀なスクーター利用者のおかげで米国の道路、あるいは歩道やバイクレーンよりずっと複雑だ。

さらに重要なのは、ロボットは「現場と遠隔に」セーフティドライバーを置く必要があると規則にある。

Neolixの配達ロボット(画像クレジット:Neolix via WeChat)

JD.comは、同社のテクノロジーによってリモートセーフティドライバーは運行中の配達ロボット最大50台をモニターできると話す。車両は物流センターやスーパーマーケットから周辺のオフィスビル、集合住宅、学校のキャンパスなどへと荷物を運ぶ。顧客はテキストメッセージで送られてくるピックアップ用のコードを使って注文したものをバンから直接取ることができる。

対照的に、試験エリアでのNeolixの車両は周辺のオフィスビルで働く人向けのスナックやランチを売って回るモバイル自動販売機のようだ。ユーザーはロボットに搭載された小さなスクリーンで注文してQRコードで支払いをすれば、アイススクリームや温かいお弁当をすぐさま入手できる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:JD.comMeituanNeolix中国北京自動運転ロボット配達

画像クレジット:JD.com’s delivery robot. Photo:JD.com

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタ出資の自動運転Pony.aiがカリフォルニア州から無人運転テスト許可を取得

中国のロボタクシースタートアップPony.ai(ポニーエーアイ)は、カリフォルニア州の当局から自動運転車両をセーフティードライバーが乗り込むことなしに3都市で試験する許可を取得した。

全部で55社がセーフティドライバー付きでの自動運転車両のテストを行う許可を得ているが、ドライバーなしの許可を得ている企業はずっと少ない。Ponyは同州でこの手の許可を得た8番目の企業であり、その他の企業は中国企業のAutoX、Baidu、WeRide、そして米国企業のCruise、Nuro、Waymo、Zooxだ。この中でNuroだけがいわゆる運営許可を得ていて、商業展開ができる。

自動走行車両のテストを管轄するカリフォルニア州車両管理局が発行する許可は、同州でのPony.aiの既存の活動を拡大する。同社は2017年からセーフティドライバー付きでの自動走行車両テストを許可されてきた。

新たな許可の下で、Pony.aiは自動走行車両6台をドライバーなしで、フリーモント、ミルピタス、アーバインの特定の道路でテストできるようになる。許可には制限がある。車両のスピードは時速72km以下で、良好な天候と小雨の状況でのみ走行が許される。試験はまずフリーモントとミルピタスで午前10時から午後3時の間に行われる。

こうしたドライバーなしのテスト許可を得ている企業は保険の証明か500万ドル(約5億4000万円)相当の債券を提出し、またテクノロジーでつながった遠隔オペレーターを訓練するなどいくつかのルールに従わなければならない。当局によると、ドライバーなしのテスト許可取得企業は、ドライバーレス車両が関わった事故が発生した場合、10日以内に州車両管理局に報告し、テストを止めた場合は年次レポートを提出する必要もある。

2016年に元Baidu開発者のJames Peng(ジェームズ・ペン)氏とLou Tiancheng(ルー・ティエンチェン)氏によって創業されたPony.aiは比較的短い期間に多くのパートナーや投資家を獲得した。2020年11月に同社は2億6700万ドル(約290億円)の資金調達後に評価額が53億ドル(約5770億円)に達した、と述べた。中国とカリフォルニアで事業を展開する同社は、トヨタからの4億ドル(約436億円)を含め、創業以来10億ドル(約1089億円)を調達した。Pony.aiはBosch、Hyundai、トヨタを含む自動車メーカーやサプライヤーといくつかの提携やコラボレーションを抱えている。

関連記事:後付け自動運転システムを開発する中国のスタートアップPony.aiが276億円の資金調達、評価額5476億円に

Pony.aiは小型車から大型トラックまであらゆるサイズの車両のためのアグノスティック・バーチャル・ドライバーと呼ぶものを構築中で、それはライドシェアとロジスティック(配達)サービスネットワークで運用される見込みだ。同社は2019年に、自社の自動テクノロジーを長距離トラックマーケットに応用するためにOEM、そしてサプライヤーと協業している、と話した。しかし同社はおそらくロボタクシーでの取り組みで最も知られている。

Pony.aiはカリフォルニア州フリーモントとアーバイン、中国の広州でライドシェアをテストしてきた。2019年にPony.aiの自動走行システムとViaの配車プラットフォームを搭載したHyundaiのクロスオーバー電動自動走行車両Konaが顧客を乗せて公道走行を開始した。BotRideという名称のロボタクシーサービスはドライバーレスではなく、常にセーフティドライバーが運転席にいた。BotRideの試験は2020年1月に完了した。

Pony.aiはその後、PonyPilotという一般向けのロボタクシーサービスをアーバイン地区で開始した。新型コロナウイルスパンデミックが世界に広がったため、Ponyはロボタクシーサービスの対象を人から荷物へとシフトさせた。2021年4月にPony.aiはeコマースプラットフォームのYamibuyと、アーバイン地区の顧客への自動走行ラストマイル配達の提供で提携したと発表した。新たな配達サービスは、新型コロナパンデミックをきっかけとするオンライン注文の急増に対処する追加の能力を提供すべく立ち上げられた、とPony.aiは当時述べていた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Pony.ai自動運転カリフォルニア中国ロボタクシー

画像クレジット:Pony.ai

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国Xpengが展開するLiDARを利用した自律運転EV

Elon Musk(イーロン・マスク)の、LiDAR(Light Detection and Ranging、光による検出と測距)に依存する企業は「破滅する」という発言は有名で、実際Tesla(テスラ)は、自動運転機能は視覚認識で成り立つという信念の元、レーダーを撤去しようともしている。しかし、中国のXpeng(シャオペン、小鵬汽車)は異なる考えのようだ。

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2014年に設立されたXpengは、中国で最も有名な電気自動車のスタートアップ企業の1つで、設立からわずか6年で上場を果たしている。同社はTeslaと同様、自動化を自社戦略の重要な課題と考えているが、Teslaとは異なり、レーダー、カメラ、Alibaba(アリババ)が提供する高精度地図、自社開発のローカリゼーションシステムの他、さらに最近ではLiDARを組み合わせて道路状況を検知、予測している。

Xpengの自律走行研究開発センターを統括するXinzhou Wu(ウー・シンヂョウ、吳新宙)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ「LiDARは、子どもやペットなどの小さな動く障害物や、運転中の誰もが恐れる他の歩行者やバイクに対しても正確に距離を測定し、走行可能な空間を3Dで提供してくれます」と話す。

「LiDARに加えて、位置や速度を示す通常のレーダー、基本的なセマンティック(意味的)な情報を大量に持つカメラがあります」とウー氏。

Xpengは、2021年下半期に納車を開始する量産型EVモデルP5にLiDARを搭載する。この車はファミリーセダンで、Alibabaのマップに掲載された中国の高速道路や一部の都市の道路を、ドライバーが設定したナビに基づいて走行することができるようになる。LiDARを搭載していない旧モデルでは、すでに高速道路での運転アシストが可能だ。

「Navigation Guided Pilot(NGP)」というこのシステムは、TeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしているとウー氏は話す。例えば車線変更、ランプへの進入、退出、追い越しの他、中国の複雑な道路状況ではよく観られる突然の割り込みに対する操作などを、すべて自動的に行うことができる。

「都市部は高速道路に比べて非常に複雑ですが、LiDARと精密な知覚能力があれば、基本的に3層の冗長性を持ったセンシングが可能になります」。

ADAS(先進運転支援システム)であるNGPでは、ドライバーはハンドルから手を離さず、いつでも車両をコントロールできる状態である必要がある(中国の法律では、ドライバーが路上でハンドルから手を離すことは認められていない)。Xpengの野望は、2~4年後にドライバーを排除すること、すなわちレベル4の自律性に到達することだが、実際の導入は規制次第とのことだ。

「しかしそれについてはあまり心配していません。中国政府はテクノロジーの規制に関して、実は最も柔軟だと思っています」とウー氏は話す。

LiDAR陣営

マスク氏がLiDARを嫌うのは、レーザーを使ったリモートセンシング手法のコストが高いことにある。ウー氏によると、初期の段階ではロボタクシーの上で回転するLiDARユニットに10万ドル(約1090万円)ものコストがかかっていたという。

「今では、少なくとも2桁は低くなっています」と話すウー氏。ウー氏は米Qualcomm(クアルコム)に13年在籍した後、2018年末にXpengに入社し、同社の電気自動車の自動化に取り組んでいる。現在は、Xpengの中核である、500人のスタッフを擁する自律走行研究開発チームを率いており、このチームの人数は2021年末までに倍増するという。

LiDARを搭載した新型セダンについては「次は、エコノミークラスをターゲットにしています。価格的にはミッドレンジと言えるでしょう」とウー氏は話す。

Xpengの車両に搭載されるLiDARセンサーは、深圳に本社を置くドローン大手のDJI(ディー・ジェイ・アイ)の関連会社であるLivox(ライボックス)が提供する。Livoxはより手頃な価格のLiDARが売りで、Xpengの本社かクルマで約1.5時間の広州を拠点とする。

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LiDARを採用しているのはXpengだけではない。Xpengのライバルで、より高価格帯の市場をターゲットにしている中国のNIO(ニーオ)は、2021年1月にLiDARを搭載したクルマを発表したが、このモデルの生産開始は2022年になる予定である。最近では、中国の国有自動車メーカーBAIC(北汽集団)の新しいEVブランドであるARCFOX(アークフォックス、極狐)が、Huawei(ファーウェイ)のLiDARを搭載した電気自動車を発売すると発表した。

マスク氏は最近、Teslaがカメラと機械学習による純粋なビジョンに近づくにつれ、製品からレーダーを完全に撤去するかもしれないと示唆している。マスク氏はTeslaの古いソースコードのコピーをXpengが持っていると主張しており、Xpengに好意的な感情を抱いていない。

2019年、Teslaは同社のエンジニアであったCao Guangzhi(ツァォ・グゥァンヂー、曹廣志)氏に対し、企業秘密を盗んでXpengに持ち込んだとする訴訟を起こした。Xpengは不正行為を繰り返し否定している。ツァォ氏は現在、Xpengに在籍していない。

供給の課題

Livoxは、ドローンメーカーであるDJIに「育てられた」独立した事業体であると主張しているが、ある関係者の話では、Livoxは別会社という位置づけの「DJI内のチーム」にすぎないという。DJIとの距離を主張する意図は、DJIが米国政府のエンティティリストに登録されているためだ。Huaweiを含む多数の中国ハイテク企業の主要サプライヤーがエンティティリストにより排除されている。

さらにXpengは、NVIDIA(エヌビディア)のXavierシステムオンチップ・コンピューティングプラットフォームや、Bosch(ボッシュ)のiBoosterブレーキシステムなどの重要部品を使用している。世界的に見ても、半導体の供給不足は続いており、自動車の幹部たちはチップにさらに依存するようになる自動運転車の将来のシナリオに悩み始めている。

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Xpengはサプライチェーンのリスクを十分に認識しているようだ。「第一に、安全性は非常に重要です。安全性の課題は国家間の緊張よりも重要です。新型コロナウイルス感染症に影響を受けているサプライヤーもありますし、複数の供給路を検討しておくことは、私たちが非常に重要視している戦略の1つです」とウー氏は話す。

ロボタクシーの攻勢

Xpengは、Pony.ai(ポニーアイ)や広州のWeRide(ウィーライド)など、中国で急増している自律走行ソリューション企業と手を組むこともできた。しかし、Xpengは彼らの競争相手となり、自社で自動化に取り組み、人工知能のスタートアップ企業を打ち負かすことを誓ったのだ。

EVメーカーとロボタクシーのスタートアップ企業の関係について、ウー氏は「自動車用の大規模なコンピューティングが手頃な価格で利用できるようになり、LiDARの価格が急速に低下している現在、この2つの陣営に大差はありません」。

「(ロボットタクシー会社は)量産車の開発を急ぐ必要があります。2年後にはすでに量産可能な技術になり、ロボタクシー企業の価値は今よりもずっと低くなってしまうと思います」とウー氏は続ける。

「私たちは、自動車産業に求められる安全性と検査の基準を満たす技術の量産方法を知っています。これは、生き残りを左右する非常に高いハードルです」。

Xpengにはカメラのみに頼る計画はない。LiDARのような自動車技術の選択肢がより安価で豊富になってきた今、なぜそれを利用せずにカメラのみにこだわる必要があるのか、とウー氏は問いかける。

「私たちは、マスク氏とTeslaに敬意を払い、彼らの成功を願っています。しかし、(Xpengの創業者である)Xiaopeng(何小鵬)の有名なスピーチにあるように、私たちは中国で、そして願わくば他の国でも、さまざまな技術で競争していきます」。

5Gは、クラウドコンピューティングやキャビンインテリジェンスと一体になって、Xpengの完全自動化の実現を加速させることになると思われるが、ウー氏は5Gの利用法についてはあまり詳しく語らなかった。無人運転が可能になり、ドライバーがハンドルから手が離すことができるようになれば、Xpengは車に搭載される「多くのエキサイティングな機能」を探求するだろう。すでにノルウェーで電気SUVを販売しているXpengは、さらなるグローバル展開を目指している。

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タグ:XpengLiDAR中国自律運転電気自動車ロボタクシー

画像クレジット:Xpeng

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

自動運転シャトルバスの仏EasyMileが72.5億円を調達

レベル5の完全な自動運転車が公道を走るのはまだ先のことかも知れないが、その一方で、限定された閉鎖的なキャンパス向けの、特定の用途の自動運転車やシャトルを製造している企業たちは、商用運行への道を歩んでおり、そのための資金を調達していると語っている。この度、乗客や貨物を運ぶシャトルバスを製造している、フランスのトゥールーズのスタートアップEasyMile(イージーマイル)が、シリーズBで5500万ユーロ(約72億5000万円)を調達した。

今回の資金調達は、今週初めにFCC(連邦通信委員会)の元議長Ajit Pai(アジート・パイ)氏を新たなパートナーに任命したSearchlight Capital Partnersが主導し、McWinとNextStage AMが参加している。また、これまでの出資者である鉄道業界大手のAlstom(アルストム)、Bpifrance(仏公共投資銀行)、自動車大手のContinental(コンチネンタル)も参加した。Searchlight Capital Partnersは、他にGet Your Guide(ゲット・ユア・ガイド)やUnivision(ユニビジョン)にも出資している。

EasyMileは自社を、自動運転シャトルの世界的リーダーであるといい、世界市場の60%で同社の車両が使用されていると主張している。同社の車両は、世界30カ国、300カ所以上で80万kmを走破したという。しかし、その一方でEasyMileは、その市場の小ささと新しさを示すように、同社は全世界で180台の車両しか配備していないのだと語る(興味深いことに、競合大手ののNavya(ナビヤ)もフランスに本社を置いている)。

EasyMileはこの資金を、閉ざされたキャンパス環境での商用展開を推進し、事業を拡大するために利用すると述べている。また、公共交通機関に自社の車両や技術を導入するという長期的な戦略にも引き続き投資していくが、より身近なユースケースに焦点を当ててきたことが、成長や新たな投資を呼び込むことにつながったと考えているとのことだ。

EasyMileの創業者でCEOであるGilbert Gagnaire(ジルベール・ガニエール)氏は声明の中でこう語る「私たちは、現実的なタイムフレームの中で提供できるものに集中し、今すぐにでも対応可能なニッチ市場のリーダーたちと提携してきました。「EasyMileの初期の投資家の方々全員に、今回のラウンドにも参加していただけたことは、当社の拡大計画に対する強い信頼の証です。そしてSearchlight、McWin 、NextStageをお迎えし、彼らの専門知識のおかげで当社の成長が加速することを大変うれしく思っています」。

EasyMileは評価額を公表しておらず、募集枠を超えたと同社が形容するラウンドで、これまでに調達した金額も公表していない。現在、同社に問い合わせ中だが、詳細が分かり次第、この記事を更新する。

EasyMileの車両には、人を運ぶシャトルバスのEZ10(イージー10)や、自動運転で荷物を運ぶ牽引式のトレーラーシステムTractEasy(トラクトイージー)などがあり、これまでに航空貨物の地上輸送のTLDで使われた他に、現在はPeugeot(プジョー)、Chrysler(クライスラー)、Fiat(フィアット)グループのStellantis(ステランティス)と共同で、EasyMileの技術を使った自動運転車の開発を進めていいる。

同社は挫折も経験している。2020年、EasyMileが事故を起こした後、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は同社が乗客を乗せてサービスを行うことを禁止した(乗客なしでの運行は禁止されていない)。この件に関する最新の状況については、同社に問い合わせている。

その点では、新しい投資家が規制上の問題にどのような影響を与えるのかが注目される。

Searchlight CapitalのパートナーであるRalf Ackermann(ラルフ・アッカーマン)氏は「EasyMileの成長にとって重要な節目であるタイミングで投資をできることを、大変うれしく思っています」と述べている。「彼らの持つ、堅牢で品質を重視したアプローチと業界をリードする技術を見て、この会社が商業的に拡大できる十分な立場にあると確信しました。その発展の道のりに参加できることが喜びです」。

自動運転分野での再編や、場合によっては縮小も見られる時期に行われたという点で、この資金調達は興味深いものだ。今週Lyft(リフト)がLevel 5(レベル5)部門をトヨタのWoven Planet(ウーブン・プラネット)に5億5千万ドル(約597億2000万円)で売却したばかりだ。EasyMileは、閉環境のシャトルを中心とした特定の市場に焦点を当て続けてきたことが、さらに多くの変化や障害が起こることが予想される未発達の市場ので、事業を進め、より多くの支持と注目を集めることができたとのだ考えている。

Benoit Perrin(ブノワ・ペラン)GMは声明の中で「今回の資本注入は、EasyMileの戦略の正しさを立証するもので、技術開発の最終仕上げとスケールアップ戦略を可能にしてくれるものです。私たちは技術を産業レベルにまで引き上げ、実際の商業サービスを提供します」と述べている。

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タグ:EasyMile資金調達自動運転フランス

画像クレジット:EasyMile

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

遠隔操作者なしのレベル4自律飛行ドローンをExyn Technologiesが実現

Exyn Technologiesは米国時間4月27日、航空業界で最高レベルの自律飛行を達成したと発表した同社によると今回の成果は、GPS信号が途絶えても、すべての空間と地図の計算をオンボードで行うことができる点にあるという。

Exynの自律飛行の定義は、自動車に適用される同様の基準に基づいており、同社のドローンはレベル4Aの自律飛行を達成している。同社によると、これはドローンが遠隔操作者なしで指定された3Dエリアを探索できることを意味するという。

Exynによる今回の成果は以前のレベル3からの大きな進歩だ。レベル3ではいつでも操縦を代わることができる人間操縦士が必要であり、ドローンは空域信号を伝えられないところに入ることができない。

航空機のレベル3の自律操縦には、ポイント・ツー・ポイント(点間)ナビゲーションという定義がある。そのためには人間オペレーターが、ロボットがたどるべき一連の位置を指定し、ロボットはベストを尽くしてそれに従わなければならない。自律操縦航空機のスタートアップであるXwingの自動飛行ユーティリティ機はこのレベルにあり、指定された航路に従う。しかし現実のユースケースでは、人間操縦士が操縦環境に関する詳細な知識を持っていないこともありえる。あるいはロボットが既存のマップにアクセスして学習し、その動きを報告することができないかもしれない。

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「私たちが開発した自律システムは暗く、汚く、危険な環境に導いてくれます」とExynのCTOであるJason Derenick(ジェイソン・デレニック)はいう。「危険な場所に置いて、必要な情報を集めるために送ってください。多くの場合、必要な情報は、通信と視覚の両方の観点で確認できる範囲の先にあります」。

Exynのドローンには、同社が自動偵察(scoutaunomy)と呼ぶ機能がある。その機能は、まずドローン自身が自分が飛べる箱状の空域を定義し、LiDARセンサーを使いすでに探求した空域と、これから探究する空域を判別し、自動でナビゲーションして正確で高精細の空域のマップを作る。ドローンはハードウェアを特定しない仕様であり、センサーが情報を集めて地図に落とす部分はユーザーが搭載したでもいい。

「3次元の地図を作成し、その上にカメラからのRGB情報を重ねることで、空間のフォトリアリスティックな3D表現が可能になります。熱や湿度のセンサー、放射線量の測定、ガスの測定、換気のチェックなどを行っているとしたら、それは非常に重要なことです。これは、現在の地下採掘にはない、非常に豊かなデータセットになるでしょう」と同社CEOであるNader Elm(ネイダー・エルム)氏は次のようにいう。

Exyn Technologiesの現在のユースケースの多くは鉱業関連で、Rupert ResourcesやDundee Precious Metalsなどが主な顧客だ。未知の領域の地図やデータマップが自動的に得られるので、鉱山労働者の安全を維持でき、事業の意思決定もより良質になる。同社は最近、スウェーデンの鉱業および建設業大手Sandvikとのパートナーシップを発表し、ExynのマッピングソフトウェアとSandvikのマッピング分析技術を統合する計画だ。

同社によるとExynは各国政府の諜報や監視、偵察業務にも利用されており、また核エネルギーや土木建設、ロジスティクスの分野でも使われているという。

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タグ:Exyn Technologies自動運転

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

エアバスとLuminarが提携を発表、LiDARを使い航空機の自動操縦や安全向上を目指す

Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)は、Airbus(エアバス)と提携を結ぶことで、そのLiDAR技術を、自動車のみならず航空分野にも拡大しようとしている。米国時間4月26日朝に発表されたフランス大手航空会社との提携は、LuminarにとってDaimler(ダイムラー)、Volvo(ボルボ)、Mobileye(モービルアイ)に続く企業との協業となる。これまでLuminarは、同社の光による検知および測距技術を、地上を走る自動運転車に適用することに専心してきた。

この提携によって直ちに民間航空機にLiDARが搭載されるわけではない。ダイムラーやボルボ、モービルアイと結んだ契約と異なり、今回は生産契約ではないからだ。とはいえ、最終的には生産化に結びつくことを目指している。今回の提携ではエアバスの子会社であるUpNext(アップネクスト)と協力して、新しい技術的なブレイクスルーを開発し、最終的には航空分野に応用することに注力する。

この取り組みは、民間航空機からヘリコプター、防衛、宇宙まで、エアバスのビジネスライン全体に試験飛行プラットフォームを提供するAirbus Flightlab(エアバス・フライトラボ)に組み込まれる。Luminarとエアバスは、最終的に安全な自律飛行を実現するために、LiDARを使って検知、認識、そしてシステムレベルの能力を向上させる方法を開発・テストする予定だという。

Luminarの創業者でCEOを務めるAustin Russell(オースティン・ラッセル)氏は、4月26日に発表した声明の中で「私たちは自動車産業で成し遂げたことを、約1兆ドル(約108兆円)の産業として確立されている航空産業に直接再適用することができます」と述べている。「自動化と安全性の向上により、当社の技術が道路から空へと広がることで、あらゆる交通における移動の仕方が一変すると、私たちは信じています。飛行の未来を定義するという共通のビジョンを加速させることを楽しみにしています」。

LiDARはレーザー光を用いて距離を測定し、精度の高い3次元マッピングを作成するもので、自動運転車業界では商用展開に不可欠なセンサーと考えられている。また、自動車メーカーも、消費者向け乗用車、ピックアップトラック、SUVの新型モデルに搭載する先進運転支援システムの機能と安全性を向上させるために、LiDARは重要なセンサーであると考え始めている。

エアバスは、都市部向けエアモビリティのような航空機の自律操縦運用において重要なステップである障害物の自動検出に、LuminarのLiDARと認識システムをどのように役立てることができるかに関心を持っている。両社は、このセンサーが「既存の航空機アプリケーションの安全性を大幅に向上させる」可能性もあると述べている。

ヘリコプターの安全性を高めることは、エアバスの使命の1つだ。同社は月曜日、コードネーム「Vertex(バーテックス)」と呼ばれるプロジェクトを通じて、ヘリコプターのFlightlabに数々の新機能を投入すると発表した。これらの技術は、LiDARなどのセンサーと障害物検知用ソフトウェア、自動操縦を強化するフライ・バイ・ワイヤ、機内の監視・制御を行うタッチスクリーンと頭部装着型ディスプレイなどで構成されており、ヘリコプターのパイロットの作業負荷を軽減し、安全性を高めることを目的としている。エアバスによると、これらのシステムを組み合わせることで、ナビゲーションやルートの準備、自動離着陸、事前に設定した飛行経路に沿った運行などが管理できるようになるという。2023年の完全なデモンストレーションに向けて、これらの技術をヘリコプターのFlightlabに段階的に組み込む作業が始まっている。エアバスは、同社のアーバン・エア・モビリティ・プロジェクトにおいても、自律飛行に向けたステップとして、この技術が活用されるだろうと述べている。

数年間の秘密裏な活動を経て、2017年4月に自動運転車の業界に突如出現したLuminarは、2020年末に上場企業となった。2021年3月には、Volvo Cars(ボルボ・カーズ)と協力して高速道路用の自動運転システムを開発し、最終的には他の自動車メーカーに販売することを目指すと発表した。この協業は、ボルボとの間で結ばれた既存の提携のもと、同社の自動運転ソフトウェア子会社であるZenseact(ゼンセアクト)とともに行うことになる。Luminarの創業者でCEOを務めるAustin Russell(オースティン・ラッセル)氏は、両社の技術を組み合わせて、市販車向けの「ホリスティック(全体論的)な自動運転車スタック」を開発すると述べており、ボルボはその最初の顧客となる。発表当時、ラッセル氏とZenseactのCEOであるÖdgärd Andersson(オッドガード・アンダーソン)氏は、このシステムを他の自動車メーカーにも提供する予定だと語っていた。

また、Luminarは2020年、株式上場に先駆けて、インテルの子会社であるMobileyeの自動運転車にLiDARを供給するサプライヤー契約を締結。この契約によって、LuminarのLiDARはMobileyeの第1世代の無人運転車に搭載され、ドバイ、テルアビブ、パリ、中国、韓国の大邱市で試験運転が始まっている。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

配車サービスのLyft(リフト)は、その自動運転車部門をトヨタの子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)に5億5000万ドル(約600億円)で売却した。自動運転車技術の商品化にかかる大量の費用と時間に対処しようと各企業の買収合戦が続いているが、これはその最新の動きだ。

米国時間4月27日に発表された買収の条件によると、LyftのLevel 5(レベルファイブ)と呼ばれる部門がWoven Planet Holdingに統合される。Lyftは5億5000万ドルを現金で受け取るが、そのうち2億ドル(約220億円)が先払いされる。残りの3億5000万ドル(約380億円)は5年をかけて支払われることになる。LyftのLevel 5に所属していたおよそ300人の従業員は、Woven Planetに移行する。2020年初頭には、米国、ミュンヘン、ロンドンで400人以上を数えていた同チームのメンバーだが、彼らは引き続きカリフォルニア州パロアルトのオフィスに勤務する。

2021年第3四半期に締結完了を予定しているこの契約により、4年近くにおよんだLyft独自の自動運転車開発は、公式に終了することとなる。

この買収で、Lyftは膨大な年間経費を削減できる。同社は、Level 5を売却することで、年間のnon-GAAP(公式な会計基準に沿わない)運営費は純額1億ドル(約108億円)の削減を期待しているという。収益性を追求するLyftにとって、この節約は極めて大きい。共同創設者で社長のJohn Zimmer(ジョン・ジンマー)氏は今回の発表で、この点を特に強調していた。

「契約が予定期間内に完了し、新型コロナからの回復が順調に続けば、2021年の第3四半期の調整EBITDA(償却前営業利益)では収益性が向上すると確信しています」とジンマー氏は声明で述べている。

この年間経費から解放されがLyftは、同社が創設以来ずっと本気で目指してきたもの、つまり、頼りになる配車ネットワークと、種類を問わずあらゆる商用ロボタクシーサービスが利用できる車両管理プラットフォームになることに資源を集中できるようになる。Lyftはすでに、自動運転車の開発企業数社との提携関係を結んでいる。とりわけ、40億ドル(約4340億円)規模のHyundai(ヒュンダイ)とAptiv(アプティブ)の合弁事業Motional(モーショナル)とWaymo(ウェイモ)だ。その目的は、他者の封じ込めだ。今回の買収では、Woven Planetは、Lyftのプラットフォームと車両管理データを使う商業契約も交わしている。

Lyftは、このWoven Planetとの取り決めは、独占契約ではなく、Motioalなど他企業との提携は今後も継続されると話している。MotionalとLyftは、すでに3年以上も提携を続けているが、これはそもそも、2018年にラスベガスで開催された技術見本市CESの期間中に、Lyftネットワークの自動運転車の試乗会を1週間だけ共同で行うことを想定したパイロット・プログラムだった(実際この提携は、Hyndaiとの合弁事業よりも前からある)。安全のために人間のドライバーを乗せて行われたこの短期の実験は、結局今日まで延長され、継続している。2020年2月には、同プログラムが提供したLyftのアプリを使ったAptive(今はMorional)の自動運転車による賃走が、10万回を超えた。Motionalは2020年12月、Lyftの配車ネットワークを使ったロボタクシーによる完全な無人運転での運行を米国の主要都市で2023年に開始すると発表している。

Lyftは、この新しくなった目標に向けた組織改編の最中だ。自動運転車の配車手配と乗車の顧客体験開発に取り組むエンジニア、製品マネージャー、データサイエンティスト、UXデザイナーは社内に残し、Jody Kelman(ジョディー・ケルマン)氏が彼らを率いることになる。このチームはLyft Autonomous(オートノマス)と呼ばれ、レンタカーとExpress Drive(エクスプレス・ドライブ)プログラムで使われる1万台以上の車両を管理する同社のフリート部門に組み込まれる。2019年に設立され、Cal Lankton(キャル・ランクトン)氏が率いていたLyft Fleet(フリート)は、2030年までに同社ネットワークの車両を100パーセント電気自動車に移行する事業も牽引することになる。この組織改編の狙いは、シェア、電動化、自動運転への取り組みをすべて1つ屋根の下で行うことにある。

その他にも、戦略的な改変がトヨタのWoven Planetで起きている。Level 5、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)、Woven Planetは、1200人の従業員からなる1つのチームに統合される。Woven Planetは、Level 5の買収はLyftから自動運転部門を切り離し、自動運転技術の安全性の加速的な向上に注力させるためのものであり、自動運転スタートアップAurora(オーロラ)など、トヨタの他のパートナーとの関係には直接影響しないと話している。

Woven Planet Holdingsは、すでに大きな波紋を呼んでいる新企業だ。これは、Toyota Research Institute Advanced Development Inc.(TRI-AD)に組み入れられた持ち株会社であり、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)として知られる投資会社、相互接続されたスマートシティーの実証都市Woven City(ウーブン・シティー)もここに含まれている。2021年2月、トヨタは富士山の麓、静岡県裾野市にある東富士工場跡地でWoven Cityの建設を開始した。

2021年の初め、Woven Capitalは8億ドル(約866億円)の戦略的ファンドを開設し、自動配送車両のメーカーNuro(ニューロ)への投資を発表した。

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タグ:トヨタウーブン・プラネットLyft買収自動運転

画像クレジット:Lyft

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

ファーウェイは自動車メーカーになることを否定し一次サプライヤーを目指す

ここ数カ月、中国のハイテク企業が次々と自動車分野への進出計画を発表している。検索エンジンを提供するBaidu(バイドゥ)をはじめとするインターネット企業の中には、自動車を生産するために従来の自動車メーカーと協力することを決断した例もある。Xiaomi(シャオミ)は(自社でスマートフォンを製造しているにもかかわらず、)ソフトウェアサービスで収益を上げるライトアセット企業であることを何年も強調してきたが、ここに来て自動車製造に参入する。業界関係者の間で次は誰かという話になれば、Huawei(ファーウェイ)の名前が挙がるのは当然だろう。

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通信機器やスマートフォンのメーカーであるHuaweiは、製造業としての歴史やサプライチェーン管理の経験、ブランド認知度、広大な小売ネットワークなどの点で、いくつかの純粋なインターネット企業よりも自動車の製造に適しているはずだ。しかし、同社は自動車ブランドを立ち上げるという報道を繰り返し否定し、Huaweiの役割は、自動車メーカーやOEM(相手先ブランドによる製造)企業の一次(ティア1)サプライヤーであることだとしている。

同社の輪番制会長であるEric Xu(エリック・シュー)氏は、最近、深圳で開催された同社の年次アナリスト会議で、Huaweiは自動車メーカーではない、と繰り返し述べている。

「2012年以来、中国の主要な自動車OEM企業の会長やCEO、ドイツや日本の自動車メーカーの幹部と個人的に関わってきた過程で、自動車業界にはHuaweiが必要だと気づきました。Huaweiのブランドが必要なのではなく、彼らは未来志向の自動車を作るために私たちのICT(情報通信技術)を必要としているのです」とシュー氏は語り、2018年に発案されたこの戦略に変わりはないという。

自動車の製造業は主に3つの役割で構成されている。1つ目はAudi(アウディ)、本田技研工業、Tesla(テスラ)といったブランド力のある自動車メーカー。間もなくApple(アップル)もここに名を連ねるであろう。そしてBosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などの老舗やここで取り上げているHuaweiなど、自動車の部品やシステムを自動車メーカーに直接供給するティア1企業。さらにNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)、NXP(エヌエックスピー)などのチップサプライヤーで、業界のプレイヤーたちが高度な自律運転車に向けて邁進する現在、その役割はますます重要になっている。Huaweiも自動車用チップを自社で製造している。

中国でロボタクシーを開発するスタートアップの幹部は「Huaweiは、次世代のBoschになることを狙っています」と、匿名でTechCrunchに話す。

Huaweiは、ティア1サプライヤーとしての地位を明確にしていて、これまでにBAIC(北汽集団)、Chang’an Automobile(長安汽車)、Guangzhou Automobile Group(広州汽車集団)という3つの主要な顧客を獲得している。

「このような綿密な協力関係は、あまり多くはないでしょう」とシュー氏は断言する。

レベル4の自律走行は実現したか?

画像クレジット:Arcfox Alpha S

中国国営自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランド、Arcfox(アークフォックス、極狐)は、現時間4月17日、(「Powered by Intel」ではなく)Huawei Insideの略語であるHuaweiの「HI」システムを搭載したAlpha Sモデルを初公開した。価格は38万8900~42万9900元(約650万~720万円)で、HuaweiのKirinチップを搭載したOS、HarmonyOS上で動作するアプリ、自動運転、急速充電、クラウドコンピューティングなど、Huaweiの機能を複数搭載している。

おそらく最も注目されるのはAlpha Sがレベル4を達成したことで、この点はHuaweiがTechCrunchに断言している。

ほとんどの場面で人間の介入を必要としない、つまりドライバーがハンドルから手を離してうたた寝することができることを意味する大胆な発言だ。

しかし、この主張にはいくつかの含みが残る。Huaweiの自律走行担当ゼネラルマネージャーであるSu Qing(スー・チン)氏は、最近のインタビューで、Alpha Sは「スキル」の面ではレベル4だが「法的」責任の面ではレベル2だと話している。中国では、安全運転者のいない自律走行車のテストが許可されているのは、制限された地域でごく少数の企業に限られており、都市部の道路を走る消費者向け無人走行車にはほど遠い。

結局、Huaweiの「レベル4」機能はデモの中で示されたに過ぎない。デモでは、Arcfoxの車両が(安全を確保するためにドライバーを乗せた状態とはいえ)人の介入なしに中国の混雑した都市を1000km走行している。この車の自動化を実現するのは、3つのLiDAR、6つのミリ波レーダー、13の超音波レーダー、12のカメラなどのセンサー群と、Huawei独自の自動運転用チップセットだ。

シュー氏はこの車の能力について「Teslaよりもはるかに優れている」と語る。

Huaweiの車両は、厳密な意味ではレベル4ではないという意見もある。この議論は、言葉の問題のようにも見える。

シュー氏は「あなたが今見ているHuaweiの車はレベル4であると断言できますが、あえてドライバーを乗せています」と話す。「レベル4のことは、あなたが長距離のMPI(Miles per intervention、ドライバーの介入を必要としない平均走行距離)を達成してから議論しましょう。これはただのデモです」。

前述のロボタクシー企業の幹部は「ドライバーを排除できなければ、レベル4ではありません」と主張する。「デモは簡単ですが、ドライバーの排除は非常に難しいのです」。

「Huaweiが主張するテクノロジーは、レベル4の自律走行ではありません」と、別の中国自律走行車スタートアップの役員は話す。「レベル4の現在の課題は、ドライバー不在にできるかどうかではなく、どうすれば常時ドライバー不在にすることができるか、ということです」。

レベル4であろうとなかろうと、Huaweiは自動車の未来への投資を止めるつもりはないようだ。シュー氏はアナリスト会議で、2021年はスマートカーの部品や技術に10億ドル(約1080億円)以上を投じる予定だと話している。

5Gの未来

5Gが無人運転車の開発を加速する上で重要な役割を果たすと考える人も多く、世界最大の通信機器メーカーであるHuaweiは、世界各地の5Gの展開で多くの利益を上げるだろう。しかし、シュー氏は、5Gは自動運転車にとって必須ではないと主張する。

「自律走行を実現するためには、クルマ自体が自律的である必要があります。つまり、外部からのサポートなしに車両が自律的に走行できなければならない、ということです」とシュー氏。

「自律走行のために5Gや5.5Gに完全に依存すれば、必ず問題が生じます。5Gの基地局に問題が起きたらどうなるか、想像してみてください。モバイルネットワーク事業者は、自社のネットワークをエリア全域に隈なく広げ、どのような状況でも絶対に問題が起こらないようにして、高いレベルの耐障害性を確保しなければなりません。モバイルネットワーク事業者にとっては非常に高いハードルとなり、非現実的です」。

Huaweiは、Boschの市場を乗っ取ることができれば、ティア1サプライヤーとしては十分に満足なのかもしれない。多くの中国企業が、将来の制裁を見越して、あるいは単に堅牢性に劣らない安価な代替品を求めて、欧米の技術サプライヤーから中国国内のサプライヤーへとシフトしている現在において、ArcfoxはHuaweiの自動車分野における野心の切っ先に過ぎない。

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タグ:中国電気自動車Huawei自動運転5GBosch

画像クレジット:Baidu’s autonomous driving car

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

自動走行車両の遠隔操作ソフトウェアOttopiaが住友商事のVCなどから9.7億円調達

イスラエル空軍やイスラエルの諜報機関、Microsoftでのサイバーセキュリティプロダクト開発の責任者など、ミッションクリティカルな環境でキャリアの大部分を送った後、Amit Rosenzweig(アミット・ローゼンツワイグ)氏は自動走行車両に注意を向けた。

この技術には、他のミッションクリティカルなシステムに必要なもの、つまり人間が必要だとすぐに気づいた。

「AIや機械学習で完全に解決されない境界ぎりぎりのケースが数多くあり、人間参加型の介入のようなものがあるべきだと考えています」とローゼンツワイグ氏は最近のインタビューで語った。「人間による監視のないミッションクリティカルなシステムは1つもありません。原子力発電所や飛行機も然りです。自動走行モビリティが存在するには、人間が必ずループに加わっているか、何らかのかたちでそこにいなければなりません。10年後、20年後でもそうです」。

その「ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間参加)」の結論は、ローゼンツワイグ氏が2018年に遠隔操作のスタートアップOttopia(オットピア)を設立することにつながった(同氏の兄弟であるOren Rosenzweig[オレン・ローゼンツワイグ]氏もまた自ら創業したInnovizというLiDARの会社を通じて自動走行車両業界に携わっている)。Ottopiaの初のプロダクトは、人間のオペレーターがあらゆるタイプの車両を何千マイルも離れたところからモニター・操作できるユニバーサルな遠隔操作プラットフォームだ。遠隔操作センターを作るために、Ottopiaのソフトウェアはモニターやカメラなどすぐに購入可能なハードウェア製品と組み合わされている。同社のソフトウェアにはアシスト機能も搭載されていて、遠隔から車両を操作することなくAVに「道順」を示す。

立ち上げ以来、従業員25人の小さな会社はBMWや固定ルートAVスタートアップのMay MobilityBestmileなどの投資家やパートナーを獲得してきた。Ottopiaは米国時間4月23日、Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)やMaven、イスラエルのスタートアップ投資にフォーカスしている住友商事のベンチャーキャピタル部門IN Ventureなどから900万ドル(約9億7000万円)を調達したと発表した。既存投資家のMizMaaとイスラエル企業NextGearも参加した。

HyundaiとIN Ventureは取締役の座席も確保した。Hyundaiの自動運転センターの代表を務めるWoongjun Jang(チャン・ウンジュン)氏と、IN VentureのマネージングパートナーEyal Rosner(エヤル・ロスナー)氏は現在、Ottopiaの取締役会に名を連ねている。

Ottopiaはこれまでに1200万ドル(約13億円)を調達し、そしてローゼンツワイグ氏はすでに会社の成長の資金を確保しようとさらに大きなラウンドに目を向けている。

差し当たって、同氏は2021年末までに従業員を50人に倍増させ、米国にオフィスを開設することにフォーカスしている。また、国防や鉱業、ロジスティックなど他の分野へと遠隔操作ソフトウェアの応用を拡大させていると同氏は述べた。しかしOttopiaのリソースの大半は引き続き自動車業界、特に自動走行の乗用車、トラック、シャトルの展開に向けられている。

「モチベーションは極めてシンプルです。シンプルですが、行うのは難しいのです。そのモチベーションとは、安価な自動走行輸送を実現に近づけることです」とローゼンツワイグ氏は述べた。「もちろん問題はAVがいかなるバックアップ、あるいは遠隔操作というかたちでのいかなる種のセーフティネットも持たずにな立ち往生したとき、乗客は『一体どうなっているんだ、なぜだ、なぜこれは動かないのか』と不安になるということです」。

別の問題は、AVが効率的な運輸サービスと組み合わされる必要があることだと同氏は指摘した。同社の最新パートナー企業である、オンデマンドシャトルと輸送ソフトウェアのViaが取り組んでいる分野だ。

今週発表されたこの提携の下、Viaは車両管理ソフトウェアをOttopiaの遠隔操作プラットフォームと組み合わせた自動走行車両を提供する。Viaは自前の自動運転ソフトウェアシステムを開発していない。2020年11月に同社は、オンデマンドの乗車シェアリング、公共交通、アクセスのしやすさを要する乗客のための交通機関の選択肢を統合した自動走行車両プラットフォームを立ち上げるためにMay Mobilityと提携したと発表した

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タグ:自動運転Ottopia資金調達

画像クレジット:Ottopia

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

運転席に誰も乗っていないテスラ車が事故を起こし後部座席と助手席の2名が死亡

米国時間4月17日、テキサス州ヒューストン郊外で、誰も運転席に座っていない状態で走行していたTesla(テスラ)の車両が立木に衝突し、男性2人が死亡した事故について、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は調査を開始した。

地元CBS系列のKHOU-TVが報じたところによると、この2019年型Tesla Model S(テスラ・モデルS)は、ゆるいカーブを曲がり切れず道路外に飛び出したという。ハリス郡第4分署のMark Herman(マーク・ハーマン)保安官は、このような事故は前例がないと地元記者に語った。

「我々の署では、このような事故現場を経験したことがありません」と述べた同氏は「通常、消防隊が到着すると、車両火災は数分で鎮圧されますが、今回は4時間近くも続きました」と続けた。この長時間の火災は、電気自動車のバッテリーが再発火を繰り返していたためと報じられている。

消火には11万リットル以上の水が使われた。犠牲者の1人は助手席に、もう1人は後部座席に座っており「事故当時、(運転席には)誰もいませんでした」とハーマン氏は述べている。

事故当日、テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社が2021年第1四半期の安全報告書を発表した際のニュースをリツイートし「Autopilot(オートパイロット)を作動させたテスラは現在、平均的な車両よりも事故の確率が10分の1近くまで減少しています」と述べた。テスラは、Autopilotを「一連の運転支援機能パッケージ」と表現し「積極的なドライバーの監視」が必要だとしている。

「NHTSAは、テキサス州ヒューストン郊外で発生したテスラ車の悲劇的な事故を認識しています」と、広報担当者はTechCrunchに語った。「NHTSAは直ちに特別事故調査チームを起ち上げ、この事故を調査しています。我々は、地元の法執行機関およびテスラ社と積極的に連携し、事故の詳細を調べており、より多くの情報が得られ次第、適切な措置を取る予定です」。

TechCrunchはテスラにコメントを求めており、同社からの回答があれば記事を更新する。

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タグ:TeslaAutopilot米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)自動運転アメリカイーロン・マスク

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

英ネットスーパーOcadoが自動走行システム開発Oxboticaに約15億円投資、他社配達事業展開支援を目指す

英国のネットスーパーOcado(オカド)は、他のグローサリー企業がオンライン注文と配達の事業を展開するのを手伝おうと、自社のテクノロジーの再販に向けて順調に進めている。同社は現地時間4月16日、事業成長において次の章になると確信しているものに投資する。自動走行システムを開発している英国のスタートアップOxbotica(オックスボティカ)の1000万ポンド(約15億円)分の株式を取得する

Ocadoはこの株式取得について、車両そのもので、そして梱包倉庫の内外からグローサリー注文を家庭に届けるラストマイルの車両に至るまでのオペレーション全般で使えるAI駆動の自動走行システムを開発するための戦略的投資ととらえている。今回の取引による初のプロダクトが、構造がはっきりしていない道ではなく倉庫のような閉環境で、おそらく2年以内に使えるようになると予想している、と同社は話す。

「1つのユースケースの取り組みに自らを縛ろうとはしていません」とOcadoの高度テクノロジー最高責任者Alex Harvey(アレックス・ハービー)氏はインタビューで述べた。しかし自動システムをあらゆるところで展開するために、さまざまな要素の中でも「規制対応する必要があるエリアがあることに気づきました」とハービー氏は付け加えた。株式取得の取引は非独占で、両社とも他のパートナーと協業できることを互いに確認した。

投資は、2021年1月に発表されたOxboticaのシリーズBの延長として実施される。石油・ガス大手bpの投資部門bpベンチャーズがリードし、BGF、安全装備メーカーHalma、,年金基金HostPlus、IP Group、Tencent、Venture Science、Doxa Partnersのアドバイスを受けた複数のファンドなどが参加したシリーズBの総規模は6000万ドル(約65億円)超となった。Oxboticaはバリュエーションを公開しなかったが、同社の共同創業者でCTOのPaul Newman(ポール・ニューマン)氏はインタビューの中で、最新の投資によりバリュエーションがアップしたことを認めた。

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今回のニュースのタイミングは非常に興味深い。米国のWalmart(ウォルマート)が、自動走行テック企業Cruise(クルーズ)の27億5000万ドル(約2991億円)という巨額ラウンドの一環として株式を取得したというニュースがあった翌日のことだ(実際24時間も経っていない)。

2021年2月までWalmartは、Ocadoの英国における大きな競合相手の1社であるASDAを所有していた。そしてOcadoは今週から運用が始まるKrogerのオンライングローサリー事業をサポートする取引で米国進出を果たした。ゆえに、この2社が繰り広げる競争は熾烈なものになりつつある。

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一般的に、2020年オンライングローサリーと配達サービスは大きく成長した。オンラインサービスのみを提供している先駆け的な存在のOcado、英国のTesco(実在店舗とオンラインネットワークを持つ)、米国のInstacartは記録的な需要を目の当たりにしたが、資金豊富でチャンスをつかむのに熱心、そして異なるアプローチ(1時間以内の配達、少量販売、特定のプロダクトなど)を持ち込む数多くの新規参入者との競争にも直面した。

Ocadoのホーム英国へは、他国のビッグネーム企業も進出を狙っている。そうした企業にはOda(元Kolonial)、チェコのRohlik(2021年3月に約250億円を調達した)、イタリアのEverli(以前はSupermercato24という社名で、約108億円を調達した)、オランダのPicnic(このところ資金調達を発表していないが、海外展開の野心を公にしたことを踏まえると、時間の問題のようだ)などがある。Ocadoもグローバル展開の野心を追求するために巨額を調達した。そしてそれは数十もの即配の小規模グローサリー配達事業者が出てくる前のことだった。

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そうした小規模事業者の多くにとって2020年は当たり年だった。少なからずそれはパンデミックのおかげだ。パンデミックでは多くの人が家にこもり、新型コロナウイルスに感染したりウイルスを広めたりしそうな場所を避けるようになった。

しかしいま、人々が「ノーマル」な暮らしに戻るとき、そうしたオンライングローサリーマーケットが将来どのようなものになるのかというのは大きな疑問だ。

先にTechCrunchが指摘したように、Ocadoはすでに需要が縮小する見通しを立てたが、それでもパンデミック前より需要は大きい。実際、ニューノーマルではおそらく競争がさらに激化するだろう。

それは、Ocadoなどの企業がさらに多くの資金を次世代のサービスとなりそうなもの、つまり効率的で純粋にテクノロジーで動くものへの取り組みに注ぐ理由の1つかもしれない。

コストを節約するために、まだほとんどテストされていない非常に高価な自動走行テックに大金を支払う理論的根拠は、長期的な視点に基づいている。ロジスティックはグローサリー配達オペレーションのコストの10%ほどを占める。しかし需要のピーク時、あるいは定期サービスが崩壊したとき、この数字はさらに大きくなる。

筆者が予想するに、新規事業を推進するための配達料無料サービスやグローサリーの割引など、費用を助成しているサービスが現在あちこちで展開されている(マーケットの競争が激しくなっている結果だ)ために、ロジスティックはさらに大きなコストとなっている。

そのため、この業界の大手が効果は数週間ではなく数年内に出てくるということであっても、そうしたコストを抑制し、オペレーションを迅速化するためにテクノロジー面での強みを生かす方法に目を向けるのは驚きではない。もちろん、投資家はそれが軌道に乗らないということでなければ目にするだろう。

Oxboticaとのコラボレーションに加えて、Ocadoは自動走行車両の能力を発展させながら、提携にさらに投資することを視野に入れていると話した。今回は初のOxboticaへの投資だが、他の多くのスタートアップにも投資し、次のステージのテクノロジーにともに取り組んだ。ここには、間もなく導入される物をつかむためのロボットアームを構築する研究、最近のロボット企業2社(KindredとHaddington)の2億6200万ドル(約285億円)での買収、ロボットスタートアップKarakuriMyrmexへの投資などが含まれる。

特筆すべきは、OxboticaとOcadoが互いを知らないわけではないということだ。両社は2017年にデリバリー試験事業で協業を始めた。デリバリーサービスがどのようなものか、以下の動画で確認できる。

「OxboticaとOcadoにとって、これは自動走行の未来に向けたビジョンを共有しながら提携を強化するすばらしい機会です」とニューマン氏は声明で述べた。「両社の最先端の知識とリソースを組み合わせることで、我々のユニバーサルな自動化ビジョンを暮らしにもたらし、引き続き世界で最も複雑な自動化の問題を解決することを願っています」。

しかし自動走行テクノロジーはおそろしく複雑で、規制や安全面でのハードルがあることから、一連のオペレーションから人をほぼ排除する完全商業システムからはまだ程遠い。

「規制と複雑さのため、Ocadoは都市部、あるいはCFCビルやCFCヤード内のようなアクセスが制限されたエリアを低速で走行する車両の開発は、消費者の家庭への完全自動走行デリバリーよりもずっと早く現実のものとなると予想しています」とOcadoは今回の取引についての声明文に書いている。「しかしながら、自動走行車両開発のすべての要素はコラボレーションのスコープに含まれます。Ocadoは2年以内に自動走行車両の初期ユースケースの初プロトタイプを披露することを想定しています」。

ニューマン氏は、道での自動走行はまだ数年は先のことである一方で、かつてほどにムーンショットコンセプトではなく、Oxboticaがすでにそれに向けて取り組んでいると指摘した。「少しずつ月に近づくことができます」と同氏は述べた。

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タグ:OxboticaOcadoイギリス自動運転資金調達

画像クレジット:Ocado

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動操縦フライトスタートアップのXwingが約43.5億円の資金を調達

Xwingのデモ飛行中、安全パイロットは操縦桿から手を離している(画像クレジット:Xwing)

Xwing(エックスウイング)は、商用貨物輸送機によるゲート・ツー・ゲートの自動操縦デモンストレーション飛行を初めて成功させてから2カ月後、もう1つの成功を収めた。同社は米国時間4月15日、4000万ドル(約43億5000万円)の資金を調達したと発表した。

同社はこの資金を使って、エンジニアリングチームを3倍に増やすだけでなく、最終的には完全に無人の商用貨物輸送機を定期的に飛行させることも視野に入れ、事業の拡大を目指している。

Xwingは、広く使われているCessna(セスナ)の「Grand Caravan 208B(グランドキャラバン208B)」などの航空機を、自動操縦で飛ばすための技術を開発してきた。しかし、それにはまず「知覚の問題、計画の問題、制御の問題」といういくつかの問題を解決しなければならなかったと、創業者のMarc Piette(マーク・ピエット)氏は説明する。これらの問題を解決するために、同社は一連のソリューションを考え出した。LiDAR、レーダー、カメラを飛行機に搭載し、舵やブレーキなどを制御するサーボモーターに改造を加え、これらすべてを適切に連携させることで、飛行機が空間内で自分の位置を理解し、自律的に飛行することを可能にした。

同社のAutoFlight(オートフライト)システムは、すでに200回近くのミッションをこなしているが、これらのフライトでは、安全のために人間のパイロットも同乗している。また、コントロールセンターには地上管制官が常駐し、自律飛行する航空機と人間の航空管制官との間を取り持つ役割を担う。

関連記事:無人飛行ソフトのXwingは短距離の地域型航空貨物輸送を目指す

「私たちは、自然言語処理を行ってコンピューターが管制官に応答するというような、(管制官との通信を)自動化することは想定していません」と、ピエット氏はいう。「安全性が最重要視されるアプリケーションでは、そのような方法は有用ではないと考えています。私たちが取っている方法は、航空機に代わって航空管制官と会話できる地上オペレーターを管制室に配置することです。これなら航空管制官にとってなんの障害もありません。管制官にしてみれば、航空機に乗っているパイロットと話すのと変わりませんから」。

画像クレジット:Xwing

自動操縦飛行に関しては、Xwingは米連邦航空局から研究開発用の実験的耐空証明書を取得しており、2020年8月にはOPA(optionally piloted aircraft、操縦士による操縦をオプションで可能とする航空機)用の特別飛行許可も取得している。

同社では、最終的には人間のパイロットを乗せずに飛行することも検討しているが、それは完全な安全の冗長性が確保されてからでなければならないと、ピエット氏は付け加えた。そのためには、すべてのセンサーやコンピューターシステムの冗長性を確保する必要がある。飛行機に乗る私たちにとって幸いなことに、商業航空の安全レベルは非常に高い。それは、航空スタートアップに求められる耐空性基準が高いことを意味する。XwingがターゲットとしているようなクラスIIIの小型航空機は、致命的な故障のリスクが1億飛行時間あたり1回以下であることを証明しなければならない。

Xwingの活動は、投資家からの注目も集めている。今回の資金調達ラウンドは、Blackhorn Ventures(ブラックホーン・ベンチャーズ)が主導し、ACME Capital(アクム・キャピタル)、Loup Ventures(ループ・ベンチャーズ)、R7 Partners(アールセブン・パートナーズ)、Eniac Ventures(エニアック・ベンチャーズ)、Alven Capital(アルブン・キャピタル)、Array Ventures(アレイ・ベンチャーズ)が参加。今回のラウンドを含め、同社はこれまでに総額5500万ドル(約60億円)の資金を調達している。

自動操縦飛行はXwingの事業活動の一部に過ぎない。同社は2020年12月1日に締結された大手物流会社との契約に基づき、有人による商業貨物輸送機の運航も行っている。

「私たちは、事実上の航空会社を設立したのです」と、ピエット氏はいう。Xwingは航空機にセンサーを取り付けてデータを収集することで、貴重な飛行時間を訓練アルゴリズムに反映させたり、パイロットが管制官と交信する頻度や航空機が受ける指示の種類などの有用なデータを収集している。

Xwingは事業の拡大と並行して、今後12カ月の間に従業員の大幅増員も予定している。技術面では、米連邦航空局から実験的な許可と免除を受け、人間の安全パイロットを同乗させた自動操縦による商業貨物便の運行を目指している。このマイルストーンも、今後12カ月以内に達成できるだろうと、ピエット氏は述べている。その後は人間のパイロットを外すことも検討しているが、その場合も空域における移動の制限を完全になくすためには、システムが認証を受ける必要がある。

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画像クレジット:Xwing

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードがGMやテスラに対抗し手放し運転機能の導入を発表

Ford(フォード)は、2021年モデルのピックアップトラック「F-150」と電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」の一部に、米国やカナダの高速道路で自動運転走行を可能にする新しいハンズフリー運転機能を、2021年後半のソフトウェアアップデートによって導入すると発表した。

フォードがTesla(テスラ)やGMの類似システムに対抗するために開発したこのBlueCruise(ブルークルーズ)と呼ばれるハンズフリー機能は、カメラやレーダーセンサー類とソフトウェアの組み合わせによって、アダプティブ・クルーズ・コントロール、車線中央維持、速度標識認識を実現するものだ。フォードはその開発において、約50万マイル(約80万5000キロメートル)の走行テストを行ったと、発表文とJim Farley(ジム・ファーリー)CEOのツイートで強調し、ベータ版ソフトウェアを顧客に提供するテスラのアプローチをそれとなく揶揄している。このシステムには、ドライバーの視線と頭の位置を監視する車内カメラも搭載されており、ドライバーの視線が道路に集中するように支援する。

このハンズフリー・システムは、フォードの「Co-Pilot360 Technology(コパイロット360テクノロジー)」を搭載した車両に、2021年後半に予定されているOTA(無線)ソフトウェアアップデートで提供され、手放し走行が許可されている高速道路の特定の区間のみで機能する。まずは北米の高速道路の10万マイル(約16万1000キロメートル)以上の区間で利用可能になる。

BlueCruise! 私たちは現実の世界でテストしているので、お客様がテストする必要はありません。

ただし、このシステムの利用は有料となる。BlueCruiseソフトウェアは、3年間のサービス使用料を含めて600ドル(約6万5000円)。ハードウェアのアップグレードは車両によって価格が異なり、例えばF-150は995ドル(約10万8000円)、マスタング Mach-Eは2600ドル(約28万3000円)の追加費用が必要だが、マスタング Mach-Eに設定されている仕様の中でも「California Route 1(カリフォルニア・ルート1)」「Premium(プレミアム)」「First Edition(ファースト・エディション)」にはBlueCruiseが標準で装備される。

現在では、ほとんどすべての自動車メーカーが何らかの運転支援機能を提供しているが、フォードは明らかに、最も有名で高性能なADAS(Advanced Driver-Assistance Systems、先進運転支援システム)を搭載しているGMとテスラに対抗し、シェアを奪うことを目指している。

フォードが、BlueCruiseを搭載した車両を初年度に10万台以上販売するという社内目標を達成するためには、このシステムが費用に見合うだけの価値があると、顧客に納得してもらうことが重要になるだろう。

GMの「Super Cruise(スーパークルーズ)」は、LiDARによる3Dマッピングデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサー類を組み合わせて使用し、運転席の乗員が注意を逸らさないように監視する「Driver Attention System(ドライバー・アテンション・システム)」も搭載する。テスラの運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」とは異なり、Super Cruiseのユーザーは必ずしもハンドルに手を置いておく必要はないが、目線はまっすぐ前を向いていなければならない。

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テスラのAutopilot機能も、カメラやレーダーなどのセンサー類にコンピューターの演算能力とソフトウェアを組み合わせたものだ。テスラの新車にはすべて標準装備されており、車線内における操舵、加速、制動を自動的に行う。テスラでは、ドライバーが注意を払っているかどうかを判断するために、ハンドルにドライバーが手を置いていることを感知するトルクセンサーを使用しているが、多くのオーナーはハンドルから手を離し、視線を道路から逸していられるようにするための裏技を見つけ、公開している。オーナーがFSD(Full Self-Drivingを意味するテスラ独自の名称)にアップグレードを希望する場合、テスラは1万ドル(約109万円)を請求するが、FSDは(その名称から想像するような)完全な自動運転システムというわけではない。だが、車線変更の自動化、信号や一時停止を認識して対処する機能、ルート上の車線変更を提案したり高速道路のインターチェンジや出口に向かって自動的に誘導するナビゲーション機能など、より高度な運転支援機能を備えている。

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フォードによると、BlueCruiseシステムはハンズフリーモードに移行すると、メーターパネルに文字を表示したり青色のランプを点灯させてドライバーにそれを伝えるため、色覚異常のある人にも認識できるという。

このハンズフリー・テクノロジーは、将来的に他のフォード車にも提供される予定だという。このシステムの使用を選択したドライバーには、ソフトウェアが改良を受ける度にアップデートが提供される。将来的には、ウインカーをタップするだけで車線変更ができる機能や、ロータリーやカーブを予測して車速を調整する機能などが追加される予定だ。地図データのアップデートも定期的に行われるという。

カテゴリー:モビリティ
タグ:フォード自動運転

画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)