元TikTokコンテンツモデレーター2人が「精神的トラウマ」で提訴

TikTokのコンテンツレビュワー2人が、TikTokから不快な動画を削除するというひどい心痛をともなう作業に従事する中で、適切なサポートが受けられなかったとして同社を提訴した。NPRが最初に報じたこの訴訟は、米3月24日に連邦裁判所に起こされた

原告のAshley Velez(アシュリー・ヴェレス)氏とReece Young(リース・ヤング)氏は、それぞれカナダのハイテク企業Telus International(テルス・インターナショナル)とニューヨークのAtrium(アトリウム)という第三者企業を通じてTikTokのモデレーション作業を請け負っていた。ヴェレス氏とヤング氏は集団訴訟を模索しており、企業の慣行によって悪影響を受けたと主張する他のTikTokコンテンツモデレーターも訴訟に参加できるようになりそうだ。

訴訟では、ヴェレス氏とヤング氏が日常的に従事させられている「異常に危険な活動」の精神的リスクにもかかわらず、TikTokとByteDanceが適切なメンタルヘルスサポートを提供せず、カリフォルニア労働法に違反したと主張している。また、同社はモデレーターに対して、ノルマを達成するために大量の過激なコンテンツをレビューするよう強制し、さらにモデレーターが見たものについて法的な議論ができないよう秘密保持契約(NDA)にサインさせることによって、その害を増幅させたと主張している。

「被告は、アプリにアップロードされたフィルタリングされていない不快で攻撃的なコンテンツと、毎日アプリを利用する何億人もの人々との間のゲートキーパーである何千人もの請負業者に安全な職場を提供しなかった」と訴状にはある。TikTokとByteDanceは、このようなトラウマ的なコンテンツに長期間さらされることによる心理的リスクを知っていたにもかかわらず、労働者が過激なコンテンツに対処するための「適切な改善措置」を事後的に提供する努力をしなかった、と主張している。

訴状では、両原告が勤務日にどのように「児童の性的虐待、レイプ、拷問、残忍な行為、斬首、自殺、殺人」を含む過激で不快なコンテンツのレビューに12時間費やしたかを説明している。また、ヴェレス氏とヤング氏は、生々しいコンテンツ以外にも、ヘイトスピーチや陰謀論に繰り返しさらされ、それが精神衛生に悪影響を及ぼしたと訴えている。TikTokのコンテンツモデレーターであるCandie Frazier(キャンディ・フレイジャー)氏も12月に同様の訴訟を起こしたが、NPRの報道によるとこの訴訟はもはや前進していないようだ。

新しいTikTokの訴訟は、同じ弁護団が2018年にFacebook(フェイスブック)に対して起こした集団訴訟に続くものだ。同社は2年後、日常的にコンテンツの選別を任された結果、メンタルヘルスに悩む1万1000人以上のモデレーターに5200万ドル(約63億円)を支払うことで合意し、和解した。

画像クレジット:TOLGA AKMEN / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

米証券取引委員会「誰かがイーロン・マスク氏のツイートを監視しなくてはならない」

米国時間3月22日、証券規制当局は、自分たちにはTesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏を彼のツイートに関して召喚する権限があると発言し、連邦裁判所に対しこの会社幹部に好き勝手なツイートをさせないよう要請した。

マスク氏は、2018年にTeslaに関する特定のパブリックコミュニケーション、すなわち株価や株主価値に影響を与えるような乱暴なツイートについて事前承認を得るようマスク氏に求めた米国証券取引委員会(SEC)の行為を、「ハラスメント」「不当な行為」と呼んでいる。

当時マスク氏はSECの要求に従うことに同意したが、2021年同氏がTwitter(ツイッター)で自身のフォロワーに対してTeslaの持ち株の10%を売るべきかどうか質問し、その結果Tesla株が急落したことを受け、再び砲火を浴びた。その後マスク氏は160億ドル(約1兆9379億円)相当の株を売却した。そしてその直後の2021年11月にSECは、マスク氏が以前の合意に従っているかどうかを確認するために召喚状を発行している。

SECの調査に対し、マスク氏は2018年の同意判決を終了あるいは修正しようと試み、11月のTwitterでの問いかけに関する記録を要求する召喚状を破棄しようとした。

「2018年、SECによる処置を示談にするために、マスク氏は、Teslaに関連する公開発言の事前承認を必須にするTeslaの義務に従うことに同意しました」とSECのMelissa Armstrong(メリッサ・アームストロング)委員がニューヨーク市連邦裁判所に提出した書類に書いた。「マスク氏は、Teslaの義務が思っていたより不便であるとわかったから、あるいはTeslaの情報開示に関する制御と手続きが実際に維持、遵守されているかどうかをSECに調査されたくない、というだけの理由で修正最終決定を破棄することはできません」。

SECとの対立は2018年8月に遡る。当時マスク氏はTeslaを非公開化するための「資金を確保した」とツイートしたが、実際には買い戻しは行われず「数多くの不測の事態を招いた」とSECは説明している。規制当局は、Teslaの発言は詐欺的であり「虚偽で誤解を招く」ものであったと指摘した。マスク氏は潜在的財政パートナーとの契約条件や価格の交渉を一切しておらず、彼のツイートはTeslaの株価を6%以上急騰させ、著しい市場崩壊を招いたと規制当局は語った。

示談の結果、Teslaとマスク氏はそれぞれ2000万ドル(約24億円)の民事制裁金を支払い、マスク氏はTeslaの会長を辞任した。

その後マスク氏は、政府を批判し憲法修正第1項の下で言論の自由を行使した彼を罰したとしてSECを非難し、2018年から現在までのSECによる「数多くの要求」に対する不満を述べた。

「しかし主張された要求に関するマスク氏自身の歴史は信憑性に欠けるとともに、Teslaとマスク氏による新たな不法行為の可能性についても適切な審理が必要であります。これには、SECの2018年の要請行動を生じさせた行為も含まれます」とアームストロング氏は法廷提出書類で述べている。

それに加えて、同委員は、2018年の最終決定を修正してもマスク氏はTesla関連ツイートに対する監視から逃れられない、なぜなら同社の役員として「マスク氏は今もTeslaの開示に関する制御と手続きの対象だからです」と語った。

「マスク氏とTeslaがマスク氏のTwitterアカウントを使って投資家に情報を開示する限り、SECはTeslaの開示統制と手続きに関連する事項を合法的に捜査することが可能であり、マスク氏のTeslaに関するツイート、およびTeslaによる制御と手続きに関する公開発言の正確性もこれに含まれます」とアームストロング氏は語った。

関連記事:イーロン・マスク、TwitterでSECを挑発

画像クレジット:Yichuan Cao/NurPhoto / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

メタ、南アフリカで独占禁止法違反の疑いで起訴される

Meta(メタ)は、南アフリカの競争規制機関である競争委員会(Competition Commission)が、政府のスタートアップであるGovChatと#LetsTalkが同社のWhatsApp Business APIを使用することを阻止する意図が競争的でないと判断したため、起訴の危機に直面している。

2021年3月から同社に対する不公正行為の申し立てを調査してきた同委員会は、支配的地位の濫用や制限的慣行に関する苦情を裁定する競争審判所(Competition Tribunal)にMeta(旧Facebook)の起訴を付託した。

その付託の中で、規制当局はMetaに「最大ペナルティ」である米国企業の現地での売上高の10%の罰金を払わせるよう勧告している。

同委員会は、Metaが「2020年7月か同時期」に、GovChatと#LetsTalkが同社のWhatsApp Business APIを使用できないようにすると脅したと主張している。さらに、Metaはスタートアップによるデータ使用について不当な制限を課し、Metaの製品と競合する可能性のある新製品やサービスを革新して開発する能力を制限したと付け加えている。

「……WhatsApp Business APIへのアクセスを規定する規約は、GovChatがもたらす潜在的な競争や、Facebookが新しいサービスや製品の開発を可能にするために取得した膨大なデータなどの面でFacebookを保護し、競争から遮断するために設計されています」と規制当局は声明で述べている。

GovChatは、WhatsApp Business APIを使用してリアルタイムのコミュニケーションを促進する市民エンゲージメントプラットフォームとして、南アフリカ政府によって2018年に立ち上げられた。現在、政府のデータによると、870万人のアクティブユーザーを抱え、5億8200万件以上のメッセージを処理している。

GovChatは、道路の穴などの市民問題に関する警告や苦情の発信源となっているほか、新型コロナのパンデミック時の救難支援など、社会保障の申請処理に政府によって利用されてきた。GovChatのプラットフォームを通じて、これまで1330万件以上の申請が提出されている。

今回の送検は、南アフリカを含むアフリカ5カ国の競争監督機関が、アフリカのデジタルプラットフォームの出現と拡大を制限する障害に対する共同行動を促進することなどを議題とする覚書に署名した数日後に行われた。この合意の他の締約国は、エジプト、ケニア、モーリシャス、ナイジェリアである。

MetaはTechCrunchに送った声明の中で「WhatsApp(ワッツアップ)が市場から企業を排除しようとしたり、反競争的行為を行ったことを示す証拠はない」と述べ、一方でGovChatは「当社のオンボーディングプロセスを経ずにWhatsApp APIに組織を登録することにより設定条件に違反した民間企業です。これは、当社サービスの利用を希望するすべての組織に要求されるもので、当社のサービスを誰が利用しているかを把握し、組織が当社のプライバシー保護方針に同意していることを意味します。WhatsAppは、独自のWhatsApp Business APIと世界中のユーザーの利益を守るために、あらゆる合理的な手段を講じる権利を擁護します」と述べている。

また、南アフリカのWhatsApp広報担当者は次のように述べた。「WhatsAppは、信頼できる情報源から重要な情報を人々に提供するのに役立っており、南アフリカ国民と政府をつなぐ役割を担っていることを認識しています。だからこそ、国際的に認められた規制基準を遵守してGovChatと協力し、このサービスを提供したいのです」。

「ですが、GovChatは、国民とその情報を保護するために作られた我々のポリシーに従うことを繰り返し拒否し、国民よりも自らの商業的利益を優先させることを好んでいます。我々は、WhatsAppを悪用から守り、ユーザーを保護し続けます」と広報担当者は述べている。

世界的に見ても、Metaは反競争的な行為の可能性があるとして、さまざまな監視の対象となっている。つい先週、欧州委員会は、MetaとGoogle(グーグル)の間のオンラインディスプレイ広告サービスに関する協定(コードネーム「Jedi Blue」)がEUの競争規則に違反しているかどうかを評価するため、正式な反トラスト調査を開始した。

2018年9月のJedi Blue契約は、MetaのAudience NetworkがGoogleのオンライン広告枠入札プログラム「Open Bidding」に参加できるようにしたもので、この動きは他のアドテクサービスプロバイダーを排除して「オンラインディスプレイ広告の市場における競争を歪め、パブリッシャー、ひいては消費者に不利益を与える可能性がある」と欧州委員会は指摘している。

一方、米連邦取引委員会は、ソーシャルメディア大手のMetaが、約10年前にInstagram(インスタグラム)とWhatsAppを買収するなど、反競争的行為によってSNSの独占を違法に維持しているとして、メタを違法独占で提訴している。

本記事はMetaからのコメントを含め更新された。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Annie Njanja、翻訳:Den Nakano)

Waymo、ロボタクシーの安全性の詳細を秘密にすることを裁判所に認められる

カリフォルニア州の裁判所は米国時間2月22日、Alphabet(アルファベット)の自律走行部門のWaymo(​​ウェイモ)はAV技術に関する特定の詳細を秘密にしておくことができると判決し、同社は勝訴した。

同社は1月下旬、自律走行車の展開許可に関する一部の情報、およびカリフォルニア州車両管理局と同社との間の電子メールの一部を、身元非公開の第三者によって提出された公文書請求から削除するために、同局を提訴していた。

カリフォルニア州上級裁判所サクラメント支部による今回の判決は、少なくとも自律走行車業界においては、公共の安全に関わるが企業が企業秘密を含むと主張する情報への一般公開に関して、より広範な企業秘密保護の前例となる可能性がある。

Waymoは訴訟の中で、企業秘密の開示を迫られれば、自動運転技術への投資が損なわれ、車両管理局はもはや企業が自社の技術に関する情報を透明性を持って共有する安全な相手ではなくなるという「業界全体での冷え込み効果」があると主張した。

「Waymoがカリフォルニア州車両管理局に提出した許可申請書に含まれていた競争上重要な企業秘密の開示を除外する仮処分申請を裁判所が認めるという、正しい判断が下されたことをうれしく思います」と、Waymoの広報担当者はTechCrunchに語った。「当局と共有する詳細な技術情報は、必ずしも一般と共有することが適切ではないと認識している一方で、当社の自律走行技術と運用に関する安全性およびその他のデータをオープンに共有し続けます」と述べた。

カリフォルニア州でテストや展開を考えている他の自律走行技術企業と同様、Waymoもその安全対策や技術に関する情報を車両管理局に提出しなければならず、その後、車両管理局はより具体的な質問でフォローアップしていた。車両管理局はWaymoの許可申請情報の公文書請求を受けた際、企業秘密が漏れる可能性があると判断したカ所を検閲する機会をWaymoに与えた。Waymoはそれを実行し、車両管理局は主要部分を黒塗りにした状態で第三者にパッケージを送付した。Waymoによると、依頼者はこの黒塗りに異議を唱え、巻き込まれたくない車両管理局はWaymoに車両管理局に対して一時的な差止命令を求めるよう助言したという。その後、裁判官は2月2日に差止命令を出し、これによりWaymoは編集されていない形での資料の開示を永遠に禁止する差止命令を求めるための時間を稼いだ。

Waymoが訴訟を起こしたのは、同社のAVが特定の条件を識別して走行する方法、AVが人間のドライバーに制御を戻す状況を判断する方法、AV車両へのサポートを提供するタイミング、離脱事故や衝突事故への対処方法などの詳細を保護したいためだ。

「これらの研究開発には何年もかかり、莫大な資金を伴います」と、裁判所に共有されたWaymoの宣言文にはある。「WaymoのAV開発は、Waymoが2016年に独立する前、2009年にGoogleの一部として始まり、したがってWaymoのAV開発は12年以上にわたります。Waymoは、AV製品の研究開発に実に多大な投資を行ってきました」。

しかし、実際に企業秘密が含まれているかどうかは、その情報を一切見ることができないため、判断が難しい。

「問題は、その情報を他者と共有しないことによって純粋に経済的価値を得られるかどうかです」と、nuTonomy(Aptivが買収)の元顧問で、ニューヨークのイェシバ大学カルドゾ法科大学院の法学教授Matthew Wansley(マシュー・ワンズレー)氏はTechCrunchに語った。

例えば、物体を知覚する問題や、他の要因がどのように極端なものになるかを予測する問題を詳細に説明するソフトウェアの不具合は、技術の仕組みに関する情報が明らかになり、競合他社がそれを真似るか、特定のビジネスに対する自社の相対的な位置を評価する可能性があるため、非常に機密性が高いとワンズレー氏は指摘する。したがって、企業がそのような情報を公にしたくないのは理に適っている。しかし同氏は、当局がこの技術が完璧ではないことを知っていて、リスクをゼロにすることより、むしろリスクを減らすことに関心があると確信している。もし規制当局が守秘義務のもとにさらなる情報を求めたら、自身は情報共有に傾くだろうとも述べた。

「Waymoが提出した訴状に目を通しましたが、同社が話している情報のカテゴリはかなり広いです」とワンズレー氏は話した。「同社が送った情報の中に企業秘密があるのでしょうか ?おそらく、いくつかあるはずです。送った情報のすべてが含まれているのでしょうか? おそらく、ほとんどではないでしょう。ただ1つ驚くのは、同社が企業秘密だと言っているものが、実際にすべて企業秘密であった場合です。しかし、同社が当局と共有する具体的な情報を知らない限り、知ることは困難です」。

そして今、市民は知る由もない。ビジネス界はこの結果を成功だと思うかもしれないが、カリフォルニア州や一般市民は自律走行車に関して正当な公共安全の懸念を抱いているかもしれないし、当局が自分たちの代わりに判断してくれるとは思っていないかもしれない。

AV技術は非常に複雑で高度なものであり、また当局の多くの職員は必ずしも技術者ではない。市民は、公聴会や学術研究などを通じて、重要で社会に直結する決定が適切に行われているかどうかを検証する権利があると主張する人もいる。

「ある面では、これが単なるブラックボックスである場合、公共の乗り物に対する社会の信頼をどのように醸成するかという核心に触れるものだと思います」とAlston & Birdのパートナーで知的財産権訴訟を専門とする弁護士のRyan Koppelman(ライアン・コッペルマン)氏はTechCrunchに語った。「そして、これは自律走行車の根本的な問題で、データを入力し、データを出力し、その結果が安全であることを示しているだけなのです。ですので企業は、ブラックボックスで何が起こっているか、あなたは知る必要はない、ただ安全だと認識し、我々を信頼してくれ、というでしょう。そして、ブラックボックスを覗き見して署名した車両管理局を信用しなさい、それで社会にとっては十分でしょう、ともいうでしょう」。

Waymo側は、自社の技術に対する不安を解消するために、一般市民と共有している情報の幅を指摘した。例えば、AV安全報告書を発行し、米運輸省に安全自己評価を提出し、法執行機関との対話ガイドと安全手法の詳細な説明を公表している。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏、米証券取引委員会が「嫌がらせキャンペーン」を行ったと告発

Elon Musk(イーロン・マスク)氏がSEC(米証券取引委員会)から頻繁に注意を受けることに腹を立てていると思ったなら……それは正しい推測だ。マスク氏とTesla(テスラ)は、ニューヨーク州南部地区連邦裁判所に、SECが「ハラスメントキャンペーン」を行っていると非難する訴状を出した。SECは、Teslaの非公開化に関するマスク氏のツイートをめぐり、2018年のマスク氏との和解の一環としてTeslaの株主に4000万ドル(約46億円)を支払うという約束を破り、代わりにマスク氏とTeslaに対する「果てしない、根拠のない調査」にリソースを割いた、と主張している。

マスク氏とTeslaは、SECが「一方的に」召喚状を送っており、和解による同意協定をマスク氏が遵守しているかをSECだけでなく裁判所が監視するものだとしている。SECは、マスク氏が「政府に対する率直な批判者」であることを理由に報復しており、法律を公正に執行するよりも、憲法修正第1条の言論の自由を阻害することに関心がある、と主張した。訴状によると、不正行為の発見はない。

マスク氏とTeslaは、SECの不払い疑惑だけでなく、度重なる調査についても話し合う会議を含む「軌道修正」を裁判所に求めた。SECに株主への支払いを強制する一方で、マスク氏らが主張するハラスメントを裁判所が「終わらせる」ことを望んでいる。

我々はSECにコメントを求めた。SECは和解後の数年間、マスク氏のツイートについて何度も問い合わせを行い、2019年と2020年には、懸念される投稿をめぐってTeslaに書簡を送った。SECがそれらのツイートについてマスク氏に落ち度があるとは判断していないのは事実だが、それでもマスク氏が2018年の合意で義務付けられている事前承認なしに主要な財務トピック(生産水準や株式評価など)について議論していた、と主張している。Teslaはこれらのツイートは和解条件の対象外だと主張したが、状況は完全に明確ではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

WhatsAppハッキング技術やスパイウェアの販売業者が罪を認める

メキシコ人実業家が2月15日、イタリアとイスラエルから米国とメキシコの顧客にスパイウェアとハッキングのツールを販売したことを米連邦裁判所で認めた。

米司法省によると、米国とメキシコで複数の企業を経営するCarlos Guerrero(カルロス・ゲレロ)容疑者は、シグナルジャマー(妨害電波発生装置)、Wi-Fi傍受ツール、IMSIキャッチャー(「スティングレイ」と呼ばれ、人の電話を追跡できるる)、「WhatsAppメッセージをハッキングする能力」を持つツールを両国の見込み客に販売した容疑の罪を認めた。

検察は、ゲレロ容疑者がメキシコ政府の顧客と、商用および個人的な目的でツールを使用する個人客の両方に対して、傍受・監視ツールの販売を仲介していたと告発した。検察は、メキシコの市長が政敵の電子メールやソーシャルアカウントに不正にアクセスできるよう、ゲレロ容疑者が「承知の上で手配した」と述べた。また、ゲレロ容疑者は、当時南カリフォルニアとメキシコにいた米国のライバルの電話を傍受するために、自ら機器を使用した。

2014年から2015年にかけて、ゲレロ容疑者は訴状ではA社としか言及されていないイタリア企業の販売業者として働き、検察はハッキング装置と位置情報取得ツールを販売していたと述べている。この会社は、攻撃的な侵入ツールを製造していたミラノ拠点のいまはなきHacking Teamであると考えられている。同社は2015年にハッキングされ、ゲレロ容疑者に言及する大量のメッセージを含む内部メールがオンラインで公開された。

ゲレロ容疑者は、自身の会社Elite by Cargaを使って、名前は伏せられているイスラエルなどの企業が開発したハッキングツールを輸入していたことでも起訴されている。起訴状には、WhatsAppのメッセージをハッキングできる会社を含め、他のハッキングツールメーカーの名前はなかった。

メキシコで最も頻繁に使用され、支持されているハッキングツールの1つは、イスラエルのNSO Groupが開発した強力なモバイルスパイウェア「Pegasus」で、標的とするデバイスのデータにほぼ完全にアクセスすることができる。メキシコは過去20年間、約6100万ドル(約70億円)を投じて契約し、しばしばジャーナリスト、活動家、人権擁護者をターゲットにしてきた。NSOが繰り返し否定している、NSOの監視対象とみられる電話番号の流出リストによると、メキシコはリストの中で最も多くの電話番号(約700台)を標的にしているという。

NSOは、WhatsAppを使って個人の電話をハッキングできるとされる複数のイスラエル企業の1社だ。現在、WhatsAppの以前公開されたエクスプロイトを使って市民社会のメンバーが所有する電話1400台をハッキングしたとしてFacebookとの法廷闘争に巻き込まれている。NSOはかねてより、スパイウェアの販売先は法執行機関や諜報機関に限られるとし、Pegasusは米国の電話番号を標的とできないと繰り返し主張してきたが、米国内で外国の電話番号を標的にできることは知られている。NSOは、米国に拠点を置くWestbridge Technologiesという子会社を通じて、Phantomという米国の法執行機関向けのほぼ同一のスパイウェアも提供している。

NSOに、同社の技術がゲレロ容疑者によって販売または取り扱われたかどうかを尋ねる電子メールを送ったが、返事はなかった。

「今日の罪を認める答弁は、抑圧に使われるデジタルツールの拡散を食い止め、米国とメキシコの両市民のデジタルセキュリティを向上させるものです」と、米連邦検事Randy Grossman(ランディ・グロスマン)氏は述べた。「我々は、悪意のあるサイバー活動を阻止し、違法な監視を抑制するために尽力しています」

サンディエゴ・ユニオン・トリビューン紙によると、ゲレロ容疑者の会社の技術部長Daniel Moreno(ダニエル・モレノ)容疑者もHacking Teamの電子メールで言及されており、来週、同様の答弁をする見込みだ。

画像クレジット: Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

テキサス州司法長官、フェイスブックの顔認識技術をめぐりMetaを提訴

テキサス州司法長官Ken Paxton(ケン・パクストン)氏は、Facebook(フェイスブック)の顔認識技術の使用をめぐってMeta(メタ)を提訴した。司法長官室が米国時間2月14日に発表した。このニュースはウォールストリート・ジャーナルが最初に報じたもので、この訴訟では数千億円規模の民事制裁金を求めていると指摘している。同訴訟では、現在は中止しているMetaによる顔認識技術の使用が、生体データに関する同州のプライバシー保護法に違反していると主張している。

訴訟を発表したプレスリリースでは、ユーザーがアップロードした写真や動画に含まれる数百万件の生体識別情報をFacebookが保存していたと主張している。パクストン氏は、Facebookがユーザーの個人情報を「自社の帝国を拡大し、棚ぼた的巨額利益を得るために」悪用したと述べている。

「Facebookはもはや、人々の安全と幸福を犠牲にして利益を上げる目的で、人々とその子どもたちを利用することはありません」とパクストン氏は声明で述べた。「これは、テック大企業の欺瞞に満ちた商習慣の新たな例であり、止めなければなりません。私はテキサス州民のプライバシーとセキュリティのために戦い続けます」。

Metaの広報担当者はTechCrunchに「これらの主張はメリットがなく、我々は強く異議を唱えます」と電子メールで述べた。

この訴訟では、Facebookがその商慣行を隠すことで人々を欺き、アプリを利用するテキサス州民はFacebookが写真や動画から生体情報を取得していることに気づかなかったと主張している。また、Facebookがユーザーの個人情報を他の事業者に開示し、その事業者がさらに情報を利用していることにユーザーは気づかなかったと、詳しい説明なしに主張している。

「Facebookは往々にして、収集した生体識別情報を適切な時間内に破棄しておらず、テキサス州民を幸福、安全、セキュリティに対する増大し続けるリスクにさらしています」と訴状には書かれている。「Facebookは自らの商業的利益のために、顔認識技術を訓練し改善すべく故意に生体情報を収集し、それによって、世界の隅々にまで届き、Facebookのサービスを意図的に避けている人さえも陥れる強力な人工知能装置を作っています」。

Metaは2021年11月、Facebook上の顔認識システムを停止し、今後は写真や動画でオプトインしたユーザーを自動的に識別しないようにすると発表した。また、このシステム停止の一環として、10億点超の個人の顔認識テンプレートを削除するとも明らかにした。しかし、テキサス州当局はMetaにこのデータを調査のために保存するよう要請し、これによりシステムの完全閉鎖は遅れる可能性が高い。

Metaが顔認識に関する慣行で訴訟に直面するのは今回が初めてではない。2021年3月にFacebookは、イリノイ州民を侵害的なプライバシー保護行為から守るために作られたイリノイ州法に違反したとして、6億5000万ドル(約750億円)を支払うよう命じられた。このバイオメトリクス情報プライバシー法(BIPA)は、近年テック企業の足元をすくう強力な州法だ。Facebookを相手取った裁判は2015年に初めて行われ、Facebookが本人の同意なしに顔認識を使って写真にタグ付けする行為は州法に違反すると主張した。

関連記事:フェイスブックがイリノイ州のプライバシー保護法をめぐる集団訴訟で約694億円支払う

判決を受け、カリフォルニア州にある連邦裁判所による最終和解判決のもと、160万人のイリノイ州民が少なくとも345ドル(約3万9000円)を受け取った。最終的な額は、裁判官が不十分と判断したため、Facebookが2020年に提案した5億5000万ドル(約635億円)を1億ドル(約115億円)上回った。Facebookは2019年に自動顔認識タグ付け機能を無効にし、代わりにオプトイン方式にし、イリノイ州の集団訴訟によって拡大したプライバシー批判のいくつかに対処した。

6億5000万ドルという和解金は、通常の企業であれば大きな影響を与えるのに十分な額だろう。しかしFacebookは、FTC(米連邦取引委員会)が2019年に同社のプライバシー問題を調査し、50億ドル(約5776億円)という記録的な罰金を課したときと同様に、これを受け流した。

今回のテキサス州の訴訟は、プライバシー法の普及がMetaの業務だけでなく、すべてのテック大企業の慣行に大きな影響を与える可能性があることを示している。過去数年、はっきりとした同意なしにユーザーの顔を顔認識システムの訓練に使用したのは法律違反としてMicrosoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)を訴える訴訟が相次いでいる。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

カリフォルニア州当局がテスラを人種差別とハラスメントの疑いで提訴

カリフォルニア州公正雇用住宅局(DFEH)は米国時間2月9日、人種差別とハラスメントの疑いでTesla(テスラ)を提訴した。州裁判所に提出された訴状では、カリフォルニア州フリーモントにあるTeslaの製造工場での問題が指摘されている。

同当局は「労働者からの数百件の苦情」を受け、フリーモント工場が「黒人労働者が人種差別的な中傷にさらされ、仕事の割り当て、懲罰、給与、昇進で差別され、敵対的な職場環境を作り出している分離された職場」である証拠を確認したと、同当局の長官Kevin Kish(ケビン・キッシュ)氏が声明で述べた、とウォールストリートジャーナルは報じている

Teslaがハラスメントや差別の訴訟に直面するのは、今回が初めてではない。2017年には元工場労働者のMarcus Vaughn(マーカス・ヴォーン)氏が、フリーモント工場でヴォーン氏がマネージャーや同僚から繰り返し「Nワード」を浴びせられたという苦情をTeslaが調査しなかったとして、同社を相手取って集団訴訟を起こした

数カ月前にはTeslaは、同じ工場での差別と人種的虐待を見て見ぬふりをしたと訴えた黒人の元契約社員に、1億3700万ドル(約125億円)の損害賠償を支払うよう命じられたばかりだ。この訴訟で労働者のOwen Diaz(オーウェン・ディアス)氏は、人種差別的な中傷を受け、Teslaの従業員が人種差別的な落書きやかぎ十字、不快な漫画などの絵を同氏に残し、監督者はそれを止めるのを怠ったと主張した。

2021年末には複数の女性が、まさに同じ工場でTeslaがセクハラ文化を醸成していると告発した。女性たちは仕事中に差別、冷やかし、好ましくない言い寄り、身体的接触を受けたという。

関連記事:さらに6人の女性がテスラを職場のセクハラで訴える

Teslaは訴訟が起こされる前に公開したブログ投稿で、差別やハラスメントに強く反対していることを強調し、同社が苦情に対応し、多様性や公平性、包括性に取り組むために取ったとする対策を誇示して自社を擁護した。

「Teslaはこれまで、人種差別やハラスメントを行う従業員を含め、不正行為を行った従業員を懲戒解雇してきました」と投稿には書かれている。

「Teslaはまた、カリフォルニア州に残る最後の自動車メーカーです」と、同社が以前から指摘している点に言及した。「しかし、製造業の雇用がカリフォルニアから失われつつある今、公正雇用住宅局は建設的に協力するのではなく、当社を訴えることにしました。これは不公平であり、特に数年前の出来事に焦点を当てた申し立てであるため、逆効果です」。

Teslaは2021年に、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が「今後のTeslaの扱い」次第ではカリフォルニアでの製造活動を一切停止する可能性があると脅した後、本社をカリフォルニアからテキサス州オースティンに移した。同社は2020年5月、新型コロナウイルス感染症の拡散を阻止するためにフリーモントにある同社の製造施設を閉鎖した件でアラメダ郡を提訴していたが、この訴訟は後に取り下げられた。

DFEHはWSJに対し、黒人労働者はTeslaの監督者やマネージャーが人種差別的な言葉を使うのをしばしば聞いたり、工場内で人種差別的な落書きを見たりした他、肉体的により過酷な職務を割り当てられ、より厳しい処分を受け、職業上の機会も除外されたと述べている。

Teslaは2020年12月に初の多様性報告書を発表し、米国内の労働力の10%が黒人・アフリカ系米国人であることを明らかにした。取締役レベルでは黒人の割合は4%にすぎない。ヒスパニック・ラテン系の従業員は全従業員の22%で、ディレクタークラス以上では4%にとどまる。アジア系従業員は全従業員の21%で、このグループはディレクターレベルの従業員の4分の1を占めている。

WSJによると、DFEHは2月10日朝に訴状をオンラインで閲覧できるようにするという。

画像クレジット:David Paul Morris / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップル、オランダのマッチングアプリの代替決済システム使用に手数料27%を請求へ

裁判所の命令により、マッチングアプリの開発者はオランダでApple(アップル)のアプリ内課金システムを使用する必要はなくなった。また、これらの課金決済はAppleによって処理されないため、Appleはデジタル購入の際に通常の30%の手数料を取ることはない。しかし、サードパーティの決済システムを利用する開発者は、依然として手数料を支払わなければならない。Appleは27%の手数料を請求する予定だ。

オランダの反トラスト法問題を把握していない人のために説明すると、オランダ消費者市場庁はもともと、Appleが非常に特殊なケース、つまりマッチングアプリ開発者が販売する「superlike」や「boost」といったデジタルコンテンツでオランダの競争規則に違反していると指摘していた。

これは、Appleのアプリ内課金システムにとって、別の新たな脅威となる。韓国では、デジタル決済に関する新法に基づき、Appleはサードパーティーの決済システムを認めることに同意した。また、米国と欧州では、いくつかの訴訟が進行中だ。

オランダに関しては、Appleは外部決済を認めることはユーザーの利益にならないと主張し、反トラスト法に基づく決定について上訴している。

「これらの命令がユーザーの最善の利益になるとは思えません。当社はACM(消費者市場庁)の決定を受け、高等裁判所に上訴しました。これらの変更がユーザーの体験を損ない、プライバシーとデータセキュリティに新たな脅威をもたらすことを懸念しています。一方、当社は本日開始する、義務付けられた変更を行う義務があり、近日中にさらなる情報を提供する予定です」と同社は1月に述べた。

オランダの競争当局は、Appleが裁判所命令に従う最初の期限を過ぎていることからすでに500万ユーロ(約6億5000万円)の罰金を科しており、同社に選択の余地はあまりない。

Appleは現地時間2月4日、マッチングアプリの開発者がオランダで代替決済システムを利用する方法を説明するドキュメントページを更新した。これはかなり技術的なものに関する文書で、開発者がどのように代替支払いオプションを提供できるかを説明している。

しかし、Appleがアプリ開発者に手数料を請求する予定であることも書かれている。基本的に、Appleが取引を扱わないため、開発者はApp Storeの手数料を3%カットされる。しかし同社は、提供するさまざまなサービスに対して27%の手数料を請求することは、まだ正当だと考えている。

ACMの命令に従い、サードパーティのアプリ内決済プロバイダをリンクアウト、または使用する権利を付与されたマッチングアプリは、取引にかかる手数料をAppleに支払うことになります。Appleは、付加価値税控除後のユーザが支払う価格に対して27%の手数料を請求します。これは、決済処理および関連する活動に関連する価値を除いた率です。開発者は、サードパーティの決済プロバイダーによって処理された売上について、オランダの付加価値税(VAT)など、適用される税金の徴収と送金に責任を負います。

アプリ開発者は毎月、App Storeでホストされているアプリに関連するデジタル売上を報告する必要がある。その後、Appleは27%の手数料の請求書を送付する。

つまり、開発者はAppleの決済システムを回避することで、追加でかなりの収益を得ることはない。しかし、それだけではない。サードパーティの決済システムには技術的な費用もいくらか発生する。

マッチングアプリではよくあることだが、複数の国にユーザーを持つアプリ開発者の場合、同じアプリのバイナリを提出することはできない。開発チームは、オランダ語のアプリとオランダ語ではないアプリの2種類のバイナリをまとめて提出しなければならない。

Appleは、サードパーティの決済システムを使用することを可能な限り難しく、高価にしたいと考えている。ほとんどの開発者は、Appleのアプリ内課金APIを使い続ける可能性がある。

「Appleのアプリ内課金システムを使い続けたいマッチングアプリの開発者は、そうすることができ、追加で何かを行う必要ありません」とAppleは書いている。

しかし、それは同社がただ時間を稼いでいるように感じられる。App Storeは依然として、さまざまな管轄区域で独占禁止法の厳しい監視下に置かれている。Appleは、最初の裁判所命令や競争促進的な改革を回避する方法を見つけるだろう。しかし、規制当局が本当にAppleのアプリ開発者向け手数料を下げたいのであれば、もっと賢くなるはずだ。

 画像クレジット:TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Waymo、一部の自動運転車技術データをさらに22日間秘匿可能に

米国時間1月31日、Waymoは自動運転車の運用に関する一部の詳細データを一般に公表しないでもよい件に関して、小さな勝訴を勝ち取った。

Alphabet傘下の同社は先に、カリフォルニア州自動車局に対して、その自動運転車の展開許可証からの情報の一部を非公開とし、また、自動車局と同社との間のメールも、名称など非公開のサードパーティーから公開リクエストがあった部分を非公開にできるよう、訴訟を起こしていた。1月31日に判事はWaymoに対して、同社は一時的制限命令を発行して、非公開とされた情報をさらにあと22日間、非公表にしてもよいことになった。

これを恒久的な差し止めとしてWaymo側を安心させるか否かに関しては、2月22日に別のヒアリングが行われる。そのヒアリングでは、一部の情報が公開記録から永久かつ継続的に取り除かれていても良いか否かを検討する。

Waymoなどの自動運転車の開発者は、カリフォルニアでテストし展開するかぎり、州自動車局から一連の許可証を獲得しなければならない。カリフォルニア州の許可証を申請するために企業は、その安全対策と技術と、自動車局が通常求めるその他の情報を提出する必要がある。

Waymoの許可証に向けて記録公開リクエストがあると、自動車局は同社を招いて、企業秘密の部分を尋ねる。Waymoが、自動車局が尋ねた質問までも含めて企業秘密部分を指定すると、自動車局はそれら重要部分がブロックされたパッケージをサードパーティに送る。情報要求者がその黒塗りに抗議すると、自動車局はWaymoに、Waymoが消去部分のない公表を禁じる差し止め命令を要求しない限り、情報をリリースしなければならないと告げる。Waymoによると、自動車局は同社にアドバイスして、一時的な禁止令(一時的制限命令)を申請するよう勧めた。

今回のヒアリングで自動車局は、一時的な禁止令の申請に反対しなかったという。この件における自動車局のやや受け身の役割は、同局がどちらか一方の側にはつかない、というサインであり、最終決定を法廷に委ねている。

Waymoが守りたい(一般公開したくない)詳細は、自動運転車が何らかの状況を見つけても走行を続ける場合のやり方であり、人間ドライバーに任せるべきと判断するのはどんなときか、いつAV車隊のサポートを提供するのか、制御不能や衝突のインシデントにどう対応するのか、といった情報だ。同社は、サクラメントの州最高裁にこれらの件の訴訟を提出している。

同社の主張では、情報の公開はWaymoやAV技術への投資者にとって有害であるだけでなく「業界全体に水をさす」という。

訴状によると「AVのカリフォルニア州における展開に利害を有する市場参加者は、企業秘密の開示履歴が明らかとなれば、この技術を開発する貴重な時間とリソースへの投資に向かう積極性を失うだろう」という。

また他社も、どれだけの情報を自動車局と共有すべきかに関して引っ込み思案になってしまい、民間部門と行政との間の透明な対話よりも、業界は規制の精神の理解ではなく、規制を表面的に遵守するだけの態度を選ぶだろう。これによって、もしも自動車局がAVの規制を作って実施するために必要な全面的な展望を持っていなければ、技術の安全性が脅かされるだろう。これが、訴状でのWaymoの主張だ。

さらに他方では、Aptivが買収したnuTonomyの前法務部長で、ニューヨークにあるイェシーバー大学のカードーゾ・ロースクールの法学教授Matthew Wansley(マシュー・ワンズリー)氏は以前TechCrunchに、Waymoが隠したい情報のすべてが企業秘密といえるか、それは疑問だが、その隠された部分を実際に見ないかぎりは真相は分からないという。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米国35州・マイクロソフト・電子フロンティア財団がEpic支持を表明、アップル対Epic裁判はまだまだ続く

アップル対Epic裁判、米国35州・マイクロソフト・電子フロンティア財団がEpic支持を表明

CHRIS DELMAS/AFP via Getty Images

アップルとEpic Gamesが『フォートナイト』のアプリ内課金をめぐって揉めている訴訟はいったんは判決が下されました。が、両社とも判決を不服として控訴したため、法廷での戦いはまだまだ続く見通しです。

この訴訟については、米国35州の司法長官とマイクロソフト、そして電子フロンティア財団が、Epicを支持することを表明しました。各州の弁護士が控訴裁判所に提出した準備書面では「アップルによるApp Storeの管理は独占禁止法に違反しない」とする先の判決を覆すべきだと主張されています。

Epic Gamesがアップルに対して起こした「App Storeの管理が独占禁止法に違反する」ことを問う裁判では、アップルにはアプリ開発者がユーザーを独自の決済システムに誘導することを認めなければならないとの判決が下されました。

その一方でアップルが反訴した「問題は独禁法違反かどうかではなく、EpicがApp Store開発者としての契約に違反して独自の決済システムを使ったこと」に関してはアップルの主張が認められ、Epic側にはアップルが本来得るべきだった手数料の支払いが命じられています

これによりEpicは金銭的には敗北を喫した一方で、アップルに対して「12月9日までに開発者がアプリ内でユーザーを他の決済システムに誘導できるようにしなければならない」との判決が下されたことで、一定の勝利を勝ちえたはずでした。

アップルはこの命令に対して期日延期を要請し、一度は却下されたものの、12月には控訴裁判所が延期に合意したことで先送りに成功しています。つまりアップルとEpicとの控訴審が終わるまで、App Storeアプリ内に外部決済リンクを認めることは何年も先延ばしにされるかもしれないわけです。

さて今回、35の州政府が提出した準備書面では「アップルはiPhone向けのアプリ配信とアプリ内課金ソリューションを独占し続け、競争を抑圧し、年間ほぼ1兆ドル規模のスマートフォン業界で超競争的利益(競争の激しい市場で維持できる利益を超えた利益)を蓄積しています」と簡潔に書かれています。

またMSも準備書面を提出し、同社が隣接する市場で「競争を封じるためにiOSを支配する」ことを可能にすると主張。「アップルがオンラインサービスを持つ全ての企業とiPhoneユーザーの間に介入することが許されるなら、巨大なモバイル経済のほとんどはアップルの干渉と最終的な支配から逃れられられない」と述べられています。

MSは自社のクラウドゲーミングサービスをiPhone向けに展開する上で大きな制約を受けたこともあり、以前からアップルを遠回しに批判していました

アップルはEpicとの訴訟について「(先の)判決が控訴で肯定されることを楽観視している」として、勝利を確信しているとの趣旨をコメント。さらに我々は、App Storeは消費者のための安全で信頼できる市場であり、開発者のための絶好の機会であることを保証するために引き続き取り組んでいきます」と述べています。この声明は、米上院で審議されているアプリストア規制法案へのけん制も兼ねていると思われます。

しかしアプリ課金については、アップルに対して自社システム以外の決済方法を認めるようオランダや韓国ほか世界各国で圧力が高まりつつあります。そこに米国の35州も加わるとなれば、アップルもいつまでも現状を守り続けるのは厳しいかもしれません。

(Source:CNETFOSS PATENTEngadget日本版より転載)

グーグルの「欺瞞的」なユーザー位置情報追跡をめぐりワシントンD.C.などが提訴

米国時間1月24日、ワシントンD.C.、テキサス州、ワシントン州、インディアナ州は、ビッグテックに対する最新の訴訟を発表した。この訴訟は、ユーザーがその種のトラッキングが無効になっていると信じていた場合でも、Google(グーグル)は位置情報を収集してユーザーを欺いたと主張している。

ワシントンD.C.の検事総長Karl Racine(カール・ラシーン)氏は「Googleは、アカウントやデバイスの設定を変更することで、顧客が自分のプライバシーを保護し、同社がアクセスできる個人データをコントロールできると、消費者に誤って信じ込ませました」と述べている。「実際にはGoogleの説明に反して、同社は組織的に顧客を監視し、顧客データから利益を得続けています」。

ラシーン氏は、Googleのプライバシー慣行を、消費者のプライバシーを損なう「大胆な虚偽表示」と表現した。同氏の検事局は2018年、ユーザーが位置情報を保存しないと明示されたプライバシーオプションを選択している場合でも、iOSおよびAndroidの多くのGoogleアプリが位置情報を記録していることが判明したとAP通信が報じたのを受けて、Googleがユーザーの位置情報をどのように扱っているかを調査し始めた。AP通信は、プリンストン大学のコンピュータサイエンス研究者と連携して、その調査結果を検証した。

「この件に関するGoogleのサポートページには、次のように書かれている。『ロケーション履歴はいつでもオフにできます。ロケーション履歴をオフにすると、あなたが行った場所は自動的に保存されません』」とAPは報じた。「しかし、それは事実ではない。ロケーション履歴を停止した状態でも、一部のGoogleアプリでは、タイムスタンプ付きの位置情報が許可なく自動的に保存されている」。

この訴訟では、Googleが、ユーザーがオプトアウトすることが不可能な位置情報追跡システムを構築したこと、Androidのアプリ内およびデバイスレベルでのプライバシー設定によるデータの保護方法についてユーザーに誤解を与えたことを主張している。また、Googleは、ユーザーの利益に反する選択をさせるために、欺瞞的なダークパターンデザインを用いたとしている。

このような行為は、消費者を保護する州法に違反している可能性がある。ワシントンD.C.では、消費者保護手続法(Consumer Protection Procedures Act、CPPA)により「広範囲にわたる欺瞞的で非良心的なビジネス慣行」が禁止されており、検事総長が執行している。

ラシーン氏のD.C.検事局は、Googleに対する差止命令を求めるとともに、プライバシーに関して消費者を欺いて収集したユーザーデータから得た利益の支払いを同社に求めている。

関連記事:グーグル、広告ビジネスをめぐるテキサス州の反トラスト法訴訟で棄却を要請

画像クレジット:Alex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】セラノスの事件から学ぶべきことは?「友人は大切に」

Elizabeth Holmes(エリザベス・ホームズ)の詐欺事件の裁判は街中の評判になってきた(Silicon Valleyでも、もちろんTwitterでも)。4カ月にわたる裁判が一般の関心を大いに集めたため、取材するジャーナリストは法廷の席を確保して仕事をするために午前3時に起きる必要があった。物見高い見物人やJohn Carreyrou(ジョン・キャレルー)氏の暴露記事「Bad Blood」のファンが技術の歴史を自分の目で見ようと殺到したのだ。

関連記事:セラノスの元CEO、11件の詐欺容疑のうち4件で有罪評決

そうした物見高い見物人の1人が、サンフランシスコに拠点を置くアーティストのDanielle Baskin(ダニエル・バスキン)氏だった。氏はよく、手の込んだ戯れ(Blue Check Homesなど)でテック文化をやゆする。時には、それが実際の会社になることもある(Branded Fruitなど)。氏はSan Jose(サンノゼ)の裁判所にスーツケースを2つ持ってやって来て、ホームズにちなんだ海賊版商品を売った。ブロンドのウィッグや、赤い口紅、黒のタートルネック、血液栄養ドリンクだ。

それは、詐欺で裁判にかけられている人物に、自らを「ホーミー」と呼ぶ「熱狂的なファン」がいるという不条理をからかうジョークだった。しかし、バスキン氏はホームズの3日目の証言を観察したとき、Theranos(セラノス)がどうしてそこまで制御不能に陥ったのか、その本質を見抜いた。

「ホームズの裁判を見て私は、スタートアップ創業者への最大のアドバイスは、友人を持つことだと思いました」と、バスキン氏は休廷後にツイートした。「人生には、変なことを言ったときに『そんなことをいうとは、お笑いぐさだ』とか、『それは良くない考えだ』とか言ってくれる、親しく付き合える人が必要なんです」。

巧妙なトリック

連邦検事のRobert Leach(ロバート・リーチ)氏は訴訟の冒頭陳述で、どう見ても危険なまでに欠陥のある技術を基にホームズがどうやって評価額100億ドル(約1兆1400億円)の会社を作り上げたかを説明した。連邦検事によれば、ホームズの手口の1つは、セラノスに関する「虚偽の、誤解を招くような」メディア報道を使って資金を投資家から守ることだった。ホームズはFortune(フォーチュン)、Forbes(フォーブス)、Inc. Magazine(インク・マガジン)の表紙に載り、2015年にTIME(タイム)の世界で最も影響力のある100人の1人に選ばれ「技術の先見性がある人」と称賛された。大きな影響力のある非常に多くの人や組織がホームズは第2のSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)だと言っていたのだから、人々がホームズのビジョンを信じたのもっともだった。

「(元国務長官の)George Shultz(ジョージ・シュルツ)氏からエリザベスを紹介されたとき、彼女のプランは学部生の夢のように聞こえました。私は彼女に、見込みは大成功か大失敗、2つに1つだと言いました。その中間は見込めませんでした」。Henry Kissinger(ヘンリー・キッシンジャー)氏はTIME 100(タイム100)の推薦文で、ホームズについてそう書いた。「エリザベスが受け入れた選択肢はただ1つ、状況を変える、ということだけでした」。

キッシンジャー氏はその後も、ホームズを「今にもビジョンを実現しようとしている」「恐ろしいほどの唱道者」と呼んだ。しかしすでに、セラノスを取り巻く状況に一定の不確実性が生じていた。「セラノスの技術面を評価する人もいますが、予期される社会的影響は巨大なものです」と、キッシンジャー氏は推薦文の最後に書いた。

ホームズは誇大広告に取り囲まれていて、ジョージ・シュルツ氏のような投資家はホームズをまるで孫のように扱った。だからジョージ・シュルツ氏は、セラノスで働いていた孫のTyler Shultz(タイラー・シュルツ)氏から、ホームズはセラノスの技術の有効性についてうそをついている疑いがあると言われたとき、自分の孫のいうことを信じなかった。

「エリザベスは非常にカリスマ性のある人です」と、タイラー・シュルツ氏は今週CBS News(CBSニュース)に語った。「彼女は話すとき、相手にその瞬間自分は彼女の世界で一番重要な存在なんだと感じさせます。彼女の周りでは現実がゆがんでいるかのようで、吸い込まれそうになります」。

孤立と虐待

タイラー・シュルツ氏はセラノスの最初の内部告発者になったが、個人的、金銭的に大きな犠牲を払うことになった。自分の音声回想録「Thicker than Water(水よりも濃い)」の中で、David Boies(デビッド・ボイズ)氏のような著名な弁護士から脅され、私立探偵に尾行されたと述べている。しかしシュルツ氏は、回想録の中で短いが当を得た逸話を語った。いつもホームズを招待し、彼女の30歳の誕生パーティーも主催した祖父と一緒に食べた家族の夕食についての逸話だ。

「奇妙な状況でした。私の両親はいつもホームズに自分の両親を招待するようにと言っていました。私の両親は彼女がそうしているものと思っていました。その後、私の祖父母がエリザベスの両親と電話で話していたときのことですが、エリザベスの両親は彼女が30歳の誕生パーティーをしていることをまったく知りませんでした。ですから、彼女は両親とあまり良い関係ではないようでした」と、シュルツ氏は回想した。ホームズは裁判の間、大抵母親の手を握っていた。しかしシュルツ氏の記憶によれば、彼女の犯行時、家族はそれほど緊密ではなかった。

シュルツ氏は続けて、誕生パーティーの出席者について述べている。シュルツ氏とホームズの兄弟だけが30歳未満で、次に若いのはセラノスのCOOであるSunny Balwani(サニー・バルワニ)氏で、50歳近かった。バルワニ氏がホームズに会ったときホームズは18歳、バルワニ氏は37歳だった。2人は10年以上ひそかにデートし、セラノスのほとんどの従業員や投資家には知られなかった。2005年にホームズはバルワニ氏の所に引っ越し、間もなくStanford(スタンフォード)を中退した。

「彼はあらゆることで私の人となりに干渉しましたが、私はそれがよく理解できません」と、ホームズは証言した。

ホームズは法廷で涙ながらに、関係があった間、バルワニ氏に性的にも感情的にも虐待されたと説明した。何を食べるか、いつ寝るか、どのように行動するかコントロールされたと述べた。

ホームズは証言台で「彼は私に、ビジネスで自分がしていることがわかっていない、私の信念は間違っている、私の凡庸さに驚いた、自分の才能に従えば私は失敗する、と言いました」と話した。

被告側は、ホームズがどのようにバルワニ氏にコントロールされていたかを示す2つの資料を証拠として提出した。1つはホームズの日課のスケジュールで、もう1つはホームズの行動の仕方に関する指示を定めたものだった。ホームズによれば、これらのガイドラインは彼女が「新たなエリザベスになる」ために役立つとバルワニ氏から言われた。指示の中で「譲れない」こととして、会議の予定を明確に記載していない限り、ホームズは誰にも、特に直属の部下には5分以上は会わないものとされた。資料によれば、ホームズのライフスタイルは修道士のようだった。午前4時に起き、祈り、交渉をまとめ上げ、体を動かし、特定の食事だけを食べ、レクリエーションは一切しない。

ホームズのスケジュールはネットで広まり、一部のジャーナリストは、どんな感じかそのスケジュールを試してみることさえした。しかし、現実はそれよりずっと暗いものだ。虐待に関するホームズの説明を真剣に受けとめることは難しいだろう。ホームズは有名なうそつきであり、詐欺罪で有罪判決を下されたばかりなのだ。しかし、これらの資料がもし合理的なものであれば、それが示すものは、年上のパートナー兼仕事仲間によってあらゆる行動をコントロールされていた女性である。

ホームズは証言した。「彼は言いました。私は自分のすべての時間をビジネスに費やす必要がある、付き合うのはビジネスの成功に役立つ人だけにすべきだ、週7日働く必要がある、会社の成功に寄与することだけをする必要がある、と」。

これに関しては、ホームズの30歳の誕生パーティーに関するシュルツ氏の説明の方が納得がいく。ホームズはセラノスを大きくすることに全力を傾けていたので、友人はおらず、趣味も無かったようだ。両親と連絡を取って誕生パーティーに招待することもなかった。

ホームズは裁判で「もし私が家族と一緒にいたら、サニーはとても気分を害したでしょう。一緒にいるとビジネスに対する注意がそがれる、と彼は言ってましたから」と述べた。被告側は、2013年感謝祭週末のバルワニ氏の言葉を引き合いに出した。「君の家族がここにいると、僕は寂しいんだ。君は1日にせいぜい10秒しか僕と過ごさないからね」とあった。

ホームズに信頼できる友人がいたら、恋愛相手兼COOが何と言おうと、投資家に対して事実を曲げるのは行き過ぎだとか、信頼性に欠ける血液検査結果を患者に伝えるのは良くないとか、誰かたぶん言ってくれただろう。しかし残念ながら、このひたむきな起業家には話せる人が誰もいなかった。

創業者にはコミュニティが必要

だからといってホームズが罪を免れるわけではない。老練なパートナーにコントロールされ、虐待されたのは本当かもしれないが、詐欺を働いたのもまた事実かもしれない。その上、患者からだまし取ったということで有罪判決を下されることはなかったが、ホームズのうそのために、驚くほど間違った血液検査結果を示されたセラノスの顧客は大きな苦悩を経験させられた。

我々はテクノロジー業界がセラノスから学んだことについては多くを語るが、とても単純明快なことについては軽く扱ってしまっている。スタートアップの創業者には仕事以外の生活が必要なのだ。

我々は、自分のビジョンに献身して大きな犠牲を払い、社会生活を置き去りにして会社を大きくするエリザベス・ホームズのような創業者の価値を認める。しかし通常、そうしたハッスル型の文化による孤立した状況からは成功は生まれない。良くて燃え尽きるだけ、悪くすれば何百万ドル(何億円)もの詐欺罪につながる。

読者がスタートアップの創業者なら、おそらく第2のエリザベス・ホームズにはならないだろう。友人とくだらない映画でも見たりして(新型コロナウイルス感染症の状況が許すなら)、ただ普通のことをしていれば、近視眼的な間違いをすることはたぶんないだろう。

画像クレジット:Michael Kovac / Contributor / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

グーグル、広告ビジネスをめぐるテキサス州の反トラスト法訴訟で棄却を要請

米国時間1月21日、Google(グーグル)はテキサス州が主導する反トラスト訴訟中の訴因の大半を却下するよう連邦裁判所に求める申し立てを行った。同社は訴状の中で、テキサス州の訴訟は「信用できない」し、州は同社の広告ビジネスが独占禁止法に違反していることを証明できなかった、と主張している。

Googleの経済政策担当ディレクターであるAdam Cohen(アダム・コーエン)氏は、ブログの中で「Paxton(パクストン)州司法長官の主張は、光よりも熱に満ちており、この事件を裁判にかける法的基準を満たすとは思えない。訴状は、私たちのビジネス、製品、および動機を不当に表現したものであり、私たちは、妥当な反トラスト法上の主張を提示しなかったことを理由に、これを却下する方針です」と述べている。

テキサス州のKen Paxton(ケン・パクストン)司法長官は、Googleがオンライン広告の独占を違法に維持したと主張する訴えを2020年末に発表した。テキサス州は11月に初めて提訴したものの当時は編集されていた訴状を先週、新たに更新し、裁判官から訴状の詳細を公開するよう命じられる前だった。

アラスカ、アーカンサス、フロリダ、アイダホ、インディアナ、ルイジアナ、ミシシッピ、ミズーリ、モンタナ、ネバダ、ノースダコタ、サウスカロライナ、サウスダコタ、ユタ、ケンタッキー、そしてプエルトリコがこの訴訟に加わり、Googleの責任を問う訴訟に加わっている。。

関連記事:複数州にまたがる最新グーグル反トラスト訴訟は広告ビジネスが標的

Googleは、パクストン氏は「明確な事実がたくさんあるのに、それらを看過または誤解」しており、その中には同社がオンライン広告の支配を維持するために、Facebookとの取引で、新たに登場してきた「ヘッダー入札」と呼ばれる広告購入プロセスを封殺したという主張している。

The New York Timesの記事によると、2018年にFacebookはその関係を発表したが、Googleが自分の競合他社に「他のパートナーには提供しなかった、オークションで成功するための特別な情報とスピードの利点を与えた(そこには『勝率』の保証も含まれていた)」ことは公表しなかった。

自らも反トラスト法で苦境に立たされているMetaも同様に、同社にInstagramとWhatsAppを売却させる可能性がある反トラスト法訴訟の却下を裁判所に求めたが、裁判官は2022年1月初め、FTCの再提訴を許可するとの判決を下した。

関連記事:グーグルがGoogle Playの課金をめぐり大規模な反トラスト訴訟に直面

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラ株主、マスク氏がSolarCity買収を取締役会に強要と裁判で主張

Tesla(テスラ)の株主は、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が2016年に同社の取締役会にSolarCity(ソーラーシティ)を買収するよう強要したと裁判官に認定するよう求めている。この買収取引は、マスク氏が筆頭株主だった破綻したソーラー会社の「救済」だったというのが株主グループの主張だ。米国時間1月18日に行われたZoomでの公聴会で、株主らはマスク氏に買収取引で受け取った株式の返還とTeslaへの130億ドル(約1兆4918億円)の支払いを命じるよう求めた。

全株式による買収取引は当時26億ドル(約2983億円)と評価されたが、Teslaの株価はその後、大きく上昇した。

マスク氏は2021年7月に買収をめぐる10日間の訴訟で証言し、弁護団はマスク氏が当時85%の株主が承認したSolarCity買収に関連する取締役会の議論や交渉に関与しなかったと述べている。この買収についてマスク氏が不適切な影響力を行使したかどうか、また同氏や他の取締役が買収に関する情報を株主に隠していたかどうかが争点となっている。

関連記事:イーロン・マスク氏がSolarCity買収に関する訴訟で買収の正当性を主張

ロイター通信によると、株主側の弁護士Randy Baron(ランディ・バロン)氏は公聴会で「この訴訟は常に、SolarCityの買収がイーロン・マスク氏が巧妙に仕組んだ財政難からの救出、救済だったのかどうかが争点になっている」と述べたという。

組合の年金基金や資産運用会社による訴訟では、SolarCityは「一貫して利益を上げることができず、負債が膨らみ、持続不可能な速度で現金を使っていた」とし、同社が10年の歴史の中で30億ドル(約3442億円)超の負債を積み上げ、そのほぼ半分が2017年までに返済期限を迎えていたと指摘した。

マスク氏の弁護士は2021年7月、この買収はTeslaをエネルギー会社に変えるというマスク氏の長期ビジョンの一部だったと主張した。マスク氏は、SolarCityとTeslaを合体させることが、Teslaの蓄電製品「Powerwall(パワーウォール)」と太陽光発電パネルを組み合わせるというビジョンの鍵だった、と述べている

1月18日の公聴会で、マスク氏の弁護士の1人であるEvan Chesler(エヴァン・チェスラー)氏は、この取引は救済措置ではなく、SolarCityの財務は多くの高成長中のテック企業と同レベルだったと主張した。

ロイター通信によると、チェスラー氏は「SolarCityは何十億ドル(何千億円)もの長期的価値を築いていた」と述べた。

株主側の弁護士のLee Rudy(リー・ルディ)氏が、デラウェア州大法院のJoseph Slights(ジョセフ・スライツ)代理大法官に、宣誓証言と裁判の過程で株主側弁護士を繰り返し侮辱したマスク氏に対する侮辱罪を検討するよう求めたことから、その場は少し緊張した雰囲気になった。

スライツ氏は約3カ月後、自身の引退と同時期に判決を下す見込みだと述べた。マスク氏の巨額報酬に異議を唱える関連株主訴訟は、スライツ氏から別の判事に移管された

画像クレジット:Joshua Lott / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

FTCがMetaのVR事業を独占禁止法違反で調査中との報道

Metaに対するFTC(米連邦取引委員会)の反トラスト訴訟が、今週初めに重要なハードルをクリアしたことに続き、この同委員会はさらに、MetaのVR事業に対しても強い関心を寄せているようだ。

Bloombergの記事によると、FTCと複数の州の司法長官は、Metaのバーチャルリアリティ部門を「反競争的行為の可能性」で調査しているという。ニューヨークが州レベルの調査を主導しているとされ、MetaのVR体験のためのアプリを開発する外部のソフトウェア開発者とチャットしているとのこと。

記事によると、州と連邦の職員たちは、同社がどのようにして、反競争的な行いに関わり、VR市場における競争を妨害したかを調べている。職員たちはまた、同社がVRヘッドセット「Quest 2」の価格をどのようにして下げ、それを消費者にプッシュして競争をブロックしたかについても、関心を持っている。

FTCがMetaのアプリストアとハードウェア、ソフトウェアを調べている事実は、同社の買収案件が、次の時代のインターネットビジネスを定義する道標になるかもしれないこの反トラス訴訟における、唯一の視点ではないことを示唆している。

2021年12月、The InformationはFTCがMetaが申請しているVRフィットネスアプリ「Supernatural」の買収、その4億ドル(約456億9000万円)を超える取引を調べていると報じている。

今週初め、ある判事は、FTCがMetaの子会社であるFacebookに対して行っていた大規模な反トラスト法違反訴訟を継続できると判断し、これを阻止しようとする同社の取り組みを拒否した。2021年12月、Facebookは裁判所に訴えの却下を求め、ビッグテック解体推進派のLina Khan(リナ・カーン)FTC委員長に退陣を迫っていた。

FTCはその訴訟で、Facebookがソーシャルメディア分野のライバルを押さえ込むために市場力を乱用していると非難し、親会社のMetaにInstagramとWhatsAppを売却させるよう裁判官に求めるところまで踏み込んでいる。

「しかし、これらの理論を補強するために今回主張された事実は、特に被告が主張する独占の輪郭に関して、以前よりもはるかに強固で詳細である」とJames Boasberg(ジェームズ・ボースバーグ)連邦地裁判事は記している。

「……FTCは、その主張を証明するために、この先、困難な課題に直面する可能性がありますが、裁判所は、現在、弁論の要件をクリアし、証拠開示に進む可能性があると考えている」と述べている。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

英国でMeta集団訴訟、競争法違反で約3520億円求める

Facebook / Meta(フェイスブック / メタ)が数年にわたり英国でソーシャルネットワークでの支配力を乱用していたとして、強力な訴訟ファンドの支援を受けた競争法の専門家が、同社に対し競争法違反で数十億ドルの集団訴訟を起こす。原告側が勝訴すれば、Facebookは31億ドル(約3520億円)の損害賠償金を英国ユーザーに支払わなければならなくなる。

集団訴訟は、Facebookの親会社であるMetaを相手取っていて、現地時間1月12日にロンドンにある英国の競争審判所に訴状が提出された。

この訴訟では、4400万人の英国のユーザーが2015年から2019年の間にデータを搾取され、Facebookはそうしたユーザーに賠償金を支払うべきだと主張するという異例のアプローチを取っている。Facebookの支配により、事実上、他に実行可能なソーシャルプラットフォームがなかったユーザーの個人データやプライベートデータをFacebookはすべて奪い、その見返りとしてユーザーが得たのは、実質的に友人や家族に赤ちゃんや子猫の写真を投稿できることだけだったと主張している。

ライザ・ロブダール・ゴームセン博士

この訴訟は、国際競争法の専門家であるLiza Lovdahl Gormsen(ライザ・ロブダール・ゴームセン)博士(写真上)が主導している。ロブダール・ゴームセン氏は、Facebookの市場支配について英国議会で意見を述べ、それに関する法的な学術論文も執筆した。

ロブダール・ゴームセン氏の訴えは、Facebook(最近Metaに社名変更した)が英国のFacebookユーザーに対して「不当な価格」を設定したという考えに基づいている。

Facebookにアクセスを許可するために設定された「価格」は、英国ユーザーの非常に貴重な個人データの放棄であり、その見返りとして、Facebookが巨額の収益を上げる一方で、ユーザーは単にFacebookのソーシャルネットワークプラットフォームへの「無料」アクセスを得ただけで、金銭的補償はなかった。

この主張で重要なのは、Facebookがユーザーのデータを自社プラットフォームに閉じ込めることによってだけでなく、Facebookピクセルで他のウェブサイトでもユーザー追跡し、ユーザーに関する深い「ソーシャルグラフ」データを生成することによって英国ユーザーを「囲い込んだ」ということだ。

ユーザープロフィールがCambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)スキャンダルのような論争の中で何度も再浮上し、その市場利用を実証したことがロブダール・ゴームセン氏の主張を支えている。

ロブダール・ゴームセン氏の弁護士であるQuinn Emanuel Urquhart & Sullivan(クイン・エマニュエル・アークハート&サリバン)法律事務所は、Metaに書面でこの主張を通知している。ロブダール・ゴームセン氏は、影響を受ける人々、すなわち2015年10月1日から2019年12月31日の間に少なくとも1回はFacebookを利用した英国に居住するすべての人の代表を務める。

この「オプトアウト」集団訴訟は、Metaに対するこの種のものとしてはイングランドおよびウェールズでは初だ。オプトアウト訴訟であるため、Facebookの400万人の英国ユーザーは、損害賠償を求めるために積極的に訴訟に参加する必要はなく、訴訟からオプトアウトすることを選ばない限り、訴訟に加わることになる。

この訴訟に対する資金援助は、世界最大の訴訟資金提供者の1つであるInsworth(インスワース)が行っている。Quinn EmanuelとInnsworthは、過去にこの種の消費者集団訴訟を起こした実績がある。

Metaに関してはより広い背景があり、同社は米国での消費者集団訴訟、世界中での規制措置にも直面している。米連邦取引委員会(FTC)が起こした反トラスト訴訟ではInstagram(インスタグラム)とWhatsApp(ワッツアップ)のプラットフォームから分離される可能性がある。

ロブダール・ゴームセン氏は声明の中で、次のように述べている。「登場してからの17年で、Facebookは英国で友人や家族と確実に1カ所でつながることができる唯一のソーシャルネットワークとなりました。しかし、Facebookには暗い面がありました。市場支配力を乱用し、英国の人々に不当な利用規約を課し、個人情報を搾取していました。私は、Facebookにデータを搾取された4400万人の英国人のために、数十億ポンド(数千億円)の損害賠償を確保すべく、この裁判を起こします」。

筆者はロブダール・ゴームセン氏と電話で話したが、その際、Twitter(ツイッター)やMyspace(マイスペース)のような他のソーシャルネットワークが利用可能だったとFacebookは主張することができるかどうか尋ねた。

「TwitterやSnapchat(スナップチャット)などでは、人々は家族や友人と同じようにつながることができないと思います。Facebookはかなりユニークなやり方をしています」。

今回の訴訟は、Facebookピクセルが他のウェブサイトにも遍在していることにも基づいている。それがこの訴訟でどのような意味を持つのか、筆者は尋ねた。

「自分がFacebookのユーザーだと想像してください。自分のデータがFacebook.comで利用されることは承知しているかもしれません。しかし、ピクセルは、あなたがサードパーティのウェブサイトを利用するときに意味を持ちます。そのサードパーティのウェブサイトはもちろんFacebookとは何の関係もありません。つまり、Facebookは、あなたが実際にサインアップしたという以上に、ずっとたくさんのあなたのデータポイントを作り出しているのです」とロブダール・ゴームセン氏は述べた。

ユーザーは設定の奥深いところでFacebookのプラットフォームから自分自身を削除することは可能だが、実際には、ユーザーの大多数は削除方法がわからず、それが可能であることさえ知らない、と同氏は主張している。

ロブダール・ゴームセン氏は、英国国際比較法研究所(BIICL)の上級研究員、競争法フォーラムのディレクター、国際競争ネットワークの非政府顧問、Journal of Antitrust Enforcement(OUP)の諮問委員会の委員を務めている。

TechCrunchはFacebookにコメントを求めたが、記事公開時点では回答はなかった。

画像クレジット:Dr Liza Lovdahl Gormsen

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

PUBGの開発元が著作権侵害を主張、ライバルのゲーム会社とアップルやグーグルを提訴

人気バトルロイヤルゲーム「PlayerUnknown’s Battlegrounds(プレイヤー・アンノウンズ・バトルグランド)」の開発元であり、2021年の世界的なモバイルゲーム売上ランキングで第6位となった「PUBG Mobile(PUBGモバイル)」のメーカーであるKrafton(クラフトン)は、ライバルゲームメーカーであるGarena Online(ガレナ・オンライン)の「Free Fire(フリーファイア)」が著作権を侵害しているとして、アプリストアとGarenaを提訴している。

この訴訟では、Garenaのゲームが、オープニングからゲームの構造や遊び方、武器や防具、独自のオブジェクトの組み合わせと選択、ロケーション、全体的な配色や素材、テクスチャーなど、自社のゲームの数多くの側面をコピーしていると、Kraftonは主張している。

また、Google(グーグル)傘下のYouTube(ユーチューブ)も、侵害された素材の動画をホストしているとして、訴訟にその名を挙げている。

Garenaはこの訴訟に対して声明を発表し「Kraftonの主張は根拠のないものです」と、同社の広報担当者は述べた。

訴状によると、Garenaは、2017年にKraftonのBattlegroundsが発売された直後に、このゲームの要素をコピーした疑いのあるゲームの販売をシンガポールで開始したとされている。Apple(アップル)とGoogleは、アプリストアでこのゲームのモバイル版の販売を開始していた。このゲームは当初「Free Fire:Battlegrounds(フリーファイア:バトルグランド)」と呼ばれていたが、現在は「Free Fire」と呼ばれている。シンガポールでの訴訟は両社の間で和解に至ったものの、KraftonはGarenaとライセンス契約を結んだわけではないと、訴状には記されている。

その後、2021年9月28日にGarenaは「Free Fire MAX(フリーファイア・マックス)」という新タイトルをリリースした。これはAppleやGoogleのアプリストアで配信されている別のモバイルゲームだが、Free Fireと同じユーザー体験を提供することを目的としており、Battlegroundsの数多くの要素も侵害していると、Kraftonは主張している。同社は、この侵害したゲームが世界的な売上から「数億ドル」の利益を得たと指摘。AppleとGoogleも、このゲームをアプリストアを通じて配信することによって、手数料という形で利益を得ている。

その一方で、Kraftonは「Free Fire」および「Free Fire MAX」のゲームプレイの動画を配信しているYouTubeも、訴訟の対象として名前を挙げている。これらの動画は何億回も視聴されており、動画によっては1本で100万回以上も再生されている。また、YouTubeは、Battlegroundsの権利を侵害してドラマ化した長編実写映画も公開していると、訴状では述べられている。

Kraftonは、AppleとGoogleが問題を解決しようとしないため、裁判所に頼ることにしたという。同社によると、2021年12月21日にゲームの配信を停止するよう、両社のアプリストアに求めたが、拒否されたとのこと。また、YouTubeも侵害している動画を削除しようとなかった。

今回の訴訟は、Kraftonの後続タイトルである「PUBG:New State(PUBG:ニューステート)」が11月にリリースされた直後のことであり、このタイトルには多くの新要素が含まれている。この問題が解決されなければ、同社は最新作も「コピー」されることを懸念しているのだろう。

人気アプリやゲームのクローンは、アプリストアではよく見られる問題であり、サブスクリプション市場の成長により、その行為はますます増えている。実際、例えばAppleは今週、人気オンラインゲーム「Wordle(ワードル)」のクローンを、App Storeから一掃しなければならなかったばかりだ。Appleはクローンアプリで利益を失った別の開発者からの訴訟にも直面している。Wordleと同様、数年前に人気を博した「Threes(スリーズ)」や「Flappy Bird(フラッピーバード)」などのゲームもクローンの被害に遭っている。しかし多くの場合、これらのゲームはよりシンプルで、コピーしやすく、人気が落ちるのも早かった。しかし、PUBG Mobileのようなゲームの場合、コピーされることによる経済的な影響は、はるかに大きな規模となる。

アプリ情報分析会社であるSensor Tower(センサータワー)のデータによると、PUBG Mobileは2020年に27億ドル(約3070億円)を売上げ、2021年には29億ドル(約3300億円)に伸びている。ちなみに、Garena Free Fireの2021年の売上は約12億ドル(約1365億円)だった。

この訴訟は、2022年1月10日にカリフォルニア州中央地区の米国地方裁判所に提出された。Kraftonは、この問題を解決するために陪審員裁判を要求している。Kraftonが勝つためには、単に類似した「バトルロイヤル」スタイルのゲームを提出するだけでなく、Garenaが法的に侵害していることを裁判所に証明しなければならない。

Kraftonは、最近ではチーター(不正行為プレイヤー)に対する訴訟で勝訴するなど、しばしば自社のゲーム帝国を守るための行動を起こしている。Kraftonの子会社であるPUBG Corporation(PUBGコーポレーション)も、同じくPUBGのクローンをめぐってNetEase(ネットイーズ)を著作権侵害で訴え、和解に至ったことがあるが、2018年には「Fortnite(フォートナイト)」をめぐりEpic Gamesに対して同様の訴訟を起こしたものの、後にこれを取り下げている

なお、今回の訴訟に関してKraftonはコメントの要請に応じていない。

画像クレジット:PUBG MOBILE

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルのSonosへの敗訴で大手テック企業による知的財産権侵害問題が改めて明らかに

米国際貿易委員会(US International Trade Commission)は米国時間1月6日に、Googleがワイヤレススピーカーの技術でSonosが特許を持つイノベーションを侵害したと判決した。それは、知的財産権をめぐる複雑な抗争への、わかりにくい判決と思われるかもしれないが、それは米国のイノベーション経済と経済の国際的競争力を脅かしている問題を、改めて確認している。

その問題とは、知的財産権の盗用だ。

数年前にGoogleのような大手テクノロジー企業は、小さな企業の知財を買ったりライセンスするよりも、それらを盗んだ方が利益が大きいと判断した。GoogleやApple、Samsungなどはみな大金持ちなであり、法務の費用や、万一窃取と認められた場合の賠償金など気にしない。一例としてGoogleは、1420億ドル(約16兆1514億円)のキャッシュを有している。これは、多くの企業の1年の利益をはるかに上回っている。

大手テック企業は、こうして欲しいものを手に入れる。そして次は焦土作戦で、苦情を訴えたIP所有者を打ち負かす。訴訟を何年も長引かせて、正義を求める知的財産所有者に巨額の訴訟費用を課す。知的財産所有者の多くは、訴訟すらできない。それが自分を滅ぼすと知っており、自己の正当な権利を守ろうとする行為、すなわち長引き費用がかさむ訴訟が、自己を破壊すると承知している。

端的にいうと、大手テックは知的財産を盗むことから利益を得る。長年の訴訟で法務費用や賠償などが増えたとしても、それらは得られる利益に比べると微々たる額だ。

しかし、やり返す企業も少しはいるために、この途方もない権利侵害行為の存在が確認されている。GoogleがSonosを侵害した1件は、その明瞭な例の1つだ。

Sonosは、米国におけるサクセスストーリーの典型的な例だ。そしてGoogleによる、その技術に対する海賊行為は悲劇だ。Sonosはワイヤレススピーカーの画期的なイノベーションで特許を取り、2005年に革新的なスタートアップを創業した。Googleとは2013年にライセンス契約を結んだが、Googleはそのとき、同社の音楽サービスGoogle Play MusicをSonosのスピーカーに統合することで合意した。

しかしGoogleは単にこの契約を、Sonosの技術へのアクセスを得るために利用した。すぐに同社はSonosの技術を使って自社のデバイスを作るようになり、それらのスピーカーやオーディオ装置は、市場にあるSonosのスピーカーなどと直接競合するものだった。

Googleは、Sonosの開発費用を負担していない。検索エンジンの事業で大きな利益を得ているのだから、自社の新しい製品やサービスを下支えすることもできただろう。まさにそのとおり、GoogleはSonosの価格を下押しした。それは、特許海賊の常套手段である商業行為だ。

Sonosは最初、Sonosから略取した技術のライセンス料を求めてGoogleと協議した。Googleはその協議を何年も長引かせ、その間にGoogleの利益は膨らみ、Sonosはますます多くのお金を失った。7年後にSonosは、法廷で自己の権利を護る以外の選択肢はない、とい状態に追い詰められた。Sonosは、2020年にGoogleを訴えた。

Sonosは、国際貿易委員会にもGoogleを訴えた。この特別法廷は通常の裁判所よりも迅速に、侵害的な輸入を禁ずることができる。ただし、損害賠償はない。

2021年夏にITCの判事は、Googleが確かにSonosの5つのパテントを侵害したと判決した。先に同委員会は、この決定を再確認した。Googleは今でもSonosの主張を「根拠がない」とし、控訴を続けるつもりだ。

これは大手テック企業が、他人に特許のある技術を不法に利用する顕著な例にすぎない。あまりにも多いから、今では「略奪的侵害(predatory infringement)」と呼ばれている。法学者や政策立案者は「効率的侵害」(efficient infringement)と、皮肉な名前で呼んでいる。わかりやすくいえば、これは「海賊行為(piracy)」だ。

しかし大手テック企業は米国の特許システムに対する攻撃を続けており、海賊行為をさらに支持することを求めている。Googleなどの企業は長年、議会に対するロビー活動に数百万ドル(数億円)を投じて、規制当局に特許を弱体化し、排除させようとしている。つまり特許というシステムを、イノベーターに反するものに改装するつもりだ。たとえば彼らはパテント・トロールという怪物を作り出して、侵害で彼らを訴えようとする特許保有者を中傷している。あたかも、問題は彼ら自身の窃取行為ではなく、彼らと戦おうとする被害者たちのあつかましさだ、と言わんばかりに。

米国のイノベーション経済の中心的な推進者は特許に依存するイノベーターやクリエイターたちだから、ワシントンは彼らを護るために活動する必要がある。議会は、超党派のSTRONGER Patents Act法案を再提議し、成立させるべきだ。この法律は特許のシステムに均衡を回復し、ビッグテックがロビー活動で作り出した、略奪的侵害の戦術的実践の鍵となっている法規や制度をリフォームするだろう。

SonosのGoogleに対する法的勝利は、長年、政策立案者や法律家たちがいってきたことを確認している。すなわち、ビッグテックによる略奪的侵害は21世紀の海賊行為であり、Sonosは多くの被害者の1つにすぎない。ワシントンはこの海賊行為を終わらせる努力をすべきであるし、それができる。

編集部注:本稿の執筆者Adam Mossoff(アダム・モソフ)はGeorge Mason大学の特許法の専門家。STRONGER特許法について議会で証言しており、Hudson Instituteのシニアフェローでもある。

画像クレジット:erhui1979/Getty Images

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(文:Adam Mossoff、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米規制当局、グーグルがSonosのスピーカー特許を侵害と判決

米国際貿易委員会(US International Trade Commission、ITC)は、Googleがスピーカーと製造法に関する特許を侵害したとするSonosの訴え同意した。最初の決定は8月に出されていたが、今回判決が終結し、Googleは、Sonosの知的財産を侵害していると認められる製品を輸入できなくなる。Googleはその製品を中国で製造しているため、60日後に輸入禁止が適用されると、それらを米国へ送ることができなくなる。

Sonosは2020年に5つの特許に関してGoogleを訴え、その中にはワイヤレススピーカーをお互いに同期する技術もある。The New York Timesによると、侵害に該当する製品にはGoogleのHomeスマートスピーカー、Pixelとコンピューター、そしてChromecastデバイスが含まれる。輸入禁止となったGoogleの広報担当者は、この判決でデバイスの輸入と販売が中断することはないと述べている。

「私たちは本日の判決には同意しないが、ITCが弊社修正設計を承認したことには感謝する。私たちはさらなる見直しを求め、パートナーシップと知的財産に関するSonosの根拠のない主張に対して私たち自身を護っていく」と広報担当者はProtocolに語る。委員会は、最終判決でその新しい設計を否定しなかったため、Googleはそれらを実装することができる。

Nestのチームは最近、スピーカーグループの部分的変更を発表し、それを「最近の法的決定によるもの」と述べている。最も顕著な変更は、今後ユーザーは、グループ内のすべてのスピーカーのボリュームを一度に調節できなくなることだ。各スピーカーを、個々に調節しなければならない。

Sonosの法務担当最高責任者(CLO)であるEddie Lazarus(エディ・ラザロ)氏は声明の中で次のように述べている。「Googleは製品の機能を劣化または排除することで、ITCに科せられた輸入禁止を回避することもできるが、それでもなおかつGoogleはSonosの数十ダースもの特許を侵害している」。すなわち、Sonosにロイヤリティを払わないかぎり特許権侵害になるのだ。

以下は、その声明の全文となる。

ITCが本件で争点となっているSonosの5件の特許を明確に検証し、Googleが5件すべてを侵害していることを明確に裁定したことに感謝している。これは、特許訴訟では極めて稀な全面的勝利であり、Sonosの広範な特許ポートフォリオの強さとGoogleのコピー拒否の空虚さを浮き彫りにしている。これらのSonosの特許は、家庭用オーディオシステムを制御するためのセットアップ、複数のスピーカーの同期、異なるスピーカーの独立した音量制御、スピーカーのステレオペアリングなど、非常に人気の高い家庭用オーディオ機能に関するSonosの画期的な発明をカバーしています。

ITCが課した輸入禁止を回避する方法で、Googleは製品の機能を低下させたり削除したりできる可能性がある。しかし、Googleはこの輸入禁止措置を回避するために消費者の体験を犠牲にするかもしれないが、同社の製品は依然としてSonosの特許数十件を侵害し、同社の不正行為は続くだろうし、Sonosに対する損害賠償は今後も発生し続けるだろう。あるいは、他の企業がすでに行っているように、Googleは不正流用した技術に対して公正な使用料を支払うこともできる。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hiroshi Iwatani)