果菜類の植物工場および完全自動栽培の実現を目指すHarvestXが5000万円を調達

果菜類の植物工場および完全自動栽培の実現を目指すHarvestXが5000万円を調達

果菜類の植物工場、完全自動栽培の実現を目指すHarvestXは1月18日、総額5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、独立系ベンチャーキャピタル「ANRI 4号投資事業有限責任組合」(ANRI)、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(AOI1号ファンド)、河合聡一郎氏、曾川景介氏、田中邦裕氏。

植物工場市場は、食料問題や農業人口の不足、また昨今のコロナウィルスによる食の衛生面・安全に対する関心の高まりとともに注目が高まっているという。しかし、レタスなどの葉物類の植物工場は展開を広げつつあるものの、果物類はミツバチを媒介とした虫媒受粉に多くを依存しており、受粉収穫の不安定さ、また飼育管理のコストが課題となっているそうだ。

HarvestXは、ミツバチに代わる手段としてロボットを活用した授粉・収穫技術の開発に取り組み、現在はイチゴを対象に受粉から収穫までの栽培の完全自動化を目指している。

同社は、農作物の完全自動栽培による食糧問題の解決をミッションとして掲げるスタートアップ。その実現の一歩としてイチゴの完全自動栽培の実現に取り組んでいる。東京大学主催「本郷テックガレージ」の支援プログラムにて立ち上げ、South by Southwest(SXSW)のTrade Show出展を目指す「Todai To Texas」や未踏IT人材発掘・育成事業を通じて、ロボットによる授粉・収穫技術の基礎となるプロトタイプの開発を推進してきた。

HarvestXが開発するいちごの自動栽培ロボットの自動授粉・収穫実証試験機「XV1」。デプスカメラとHarvestXが開発した画像処理アルゴリズムを用いて花と果実の認識を行い、特許出願中の専用アタッチメントで授粉と収穫を行う。さらに、初めて採用した自走台車により広い農園内における農作業を実証することを目指している

HarvestXが開発するいちごの自動栽培ロボットの自動授粉・収穫実証試験機「XV1」。デプスカメラとHarvestXが開発した画像処理アルゴリズムを用いて花と果実の認識を行い、特許出願中の専用アタッチメントで授粉と収穫を行う。さらに、初めて採用した自走台車により広い農園内における農作業を実証することを目指している

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:資金調達(用語)東京大学(用語)東京大学協創プラットフォーム開発 / 東大IPC(用語)農業(用語)HarvestX日本(国・地域)

20年間変わらない「農業の市場流通DX」に挑戦するkikitori、資金調達とJAとの協業を発表

青果を中心とする農業流通のDXを手がけるkikitoriは1月14日、グローバルブレインが運営を受託する農林中金イノベーションを引受先とした資金調達を実施し、3000万円を調達した。同社はこれまでにCoral Capitalから5000万円の資金調達を行っており、累計調達額は8000万円となる。

誰もが使うLINEを活用したDX

kikitoriは、農業生産者と卸売業者間で現状電話やFAXで行われている各種手続きのデジタル化を手がけるスタートアップだ。同社が展開する「nimaru」では、今や高齢者の間でもよく使われているLINEをアプリのインタフェースとして活用。生産者は、日ごろ使い慣れたLINE上で、卸売業者などに出荷連絡などを行うことができる。

アプリを使い始めるには、生産者は卸売業者があらかじめ用意したQRコードを読み取るだけでいい。インターフェイスにはその生産者が作っている野菜を選べるようにあらかじめカスタマイズされているため、生産者は数量や規格などを選ぶだけでいい。

卸売業者側は、nimaruのデータを使って各種帳票を自動で作成できるほか、10種類ほど存在する業者向け基幹システムとのデータ連携も可能だ。現状、生産者がnimaruを使い始めるのは卸売業者からの紹介がほとんどだが、nimaruを導入することで卸売業者のオペレーション負荷を削減できることから、nimaruを取引のある生産者にすすめるモチベーションが生まれる。生産者側も、これまでのような電話連絡だと担当者が捕まりにくいなど不都合があるため、LINEで簡単に利用できるnimaruであれば使うメリットも大きい。

20年間変わらない8割という数字

農業流通の分野でビジネスを行うスタートアップとしてまず頭に浮かぶのは、生産者と消費者を直接つなぐCtoC流通を手がけるスタートアップだ。しかしkikitori代表取締役の上村聖季氏は、「農協や卸売業者など、中間業者が存在する市場流通を変えることが大きなインパクトを生む」と主張する。農林水産省が2006年に発表した「食品流通構造調査」によれば、国内産青果物の約8割は卸売業者を通して食品製造業、食品小売業、外食産業に出荷されている。上村氏によれば、この8割という数字は20年ほど前から現在まで、変わっていないという。

画像:農林水産省「食品流通構造調査」2006年より

ではなぜ、この巨大流通のデジタル化が進まなかったのか。上村氏によればそれには2つの理由があるという。

まず1つ目に、これまでには農業流通のデジタル化を進める絶対的なリーダーがいなかったという理由がある。工業製品とは違い、農産物はその年の天候で収穫量が大きく左右されるという特徴があり、それに応じて生産者と卸売業者間のパワーバランスが変わる。不作のときは供給側の生産者の力が強くなり、逆に豊作の時は卸売業者側の力が強くなるのだ。そのため、生産者と卸売業者は古来から「持ちつ持たれつ」という関係性が保たれてきた。だから、たとえば卸売業者が「Aというツールを使うから生産者もそれに従ってくれ」とはいかず、生産者と卸売業者が共通で使う統一されたツールというものが生まれにくいという背景があった。

もう1つの理由は、高齢化が進む生産者に受け入れられやすいツールがなかったことだ。しかし、昨今ではスマートフォンの普及も進み、LINEのようなアプリケーションの浸透率も高まってきた。kikitoriも当初はネイティブアプリを開発していたが、生産者に受け入れられず、現在のLINEアプリという方法にたどり着いたという。

このような背景があることから上村氏は「農業における市場流通のDXは時間がかかる市場ではあるが、地道にプロダクトを磨きながら挑みたい」と話した。

農業流通DXで欠かせないJAとの協業

kikitoriはこれまで、日本各地に1500ほど存在する卸売業者を中心にkikitoriの営業を続けてきた。しかし、農業流通DXにおいて絶対に避けて通れない道がJA(農業協同組合)との協業だった。今回、kikitoriはJAグループの一般社団法人「AgVenture Lab(アグベンチャーラボ)」が始めた指名制のアクセラレータプログラムに採択され、今回の資金調達はその一環として実施された。今後、kikitoriはJA向けにnimaruを試験導入し、将来的に各地にあるJAへの全面導入を目指していくという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:農業

画像クレジット:kikitori

生産者と消費者を直接つなぐポケットマルシェが農林中央金庫から資金調達、生産者の登録促進で連携

生産者と消費者を直接つなぐポケットマルシェが農林中央金庫から資金調達、生産者の登録促進で連携

生産者と消費者をつなぐ国内最大級の産直アプリ「ポケットマルシェ」(Android版iOS版)を運営するポケットマルシェは12月21日、シリーズBエクステンションラウンドにおいて第三者割当増資を実施したと発表した。引受先は、農林中央金庫。

同調達は、2020年8月に行った8.5億円の資金調達に続くもの。シリーズBラウンドは、合計調達額9.9億円で終了し、今回の調達により累計調達額は15.5億円となった。また、あわせて農林中金と連携し、全国の生産者にネット直販の機会を提供していく。

ポケットマルシェは、生産者が消費者に食材をインターネット上で直販できるサービスを提供しており、2020年12月時点で約3800名の生産者と約25万名の消費者が登録している。今回「強い一次産業を実現する」という想いが一致したことにより、農林中央金庫から資金調達を実施するとともに、生産者の登録促進などで連携していく。

調達した資金は、「生産者の登録促進」「生産者の販売力強化」「プロダクトの改善」に使用する予定。生産者の登録促進においては、農林中金と連携し、全国の生産者にネット直販の機会を提供する。生産者の販売力強化では、ネット直販に関する教育コンテンツを充実させ、登録生産者の販売力強化に取り組む。またプロダクトの改善では、生産者および消費者の利便性を高めるべく、UI/UXを中心にプロダクトを改善する。

生産物の価値を発信し、コミュニケーションの中でファンを獲得して安定的な販売を実現するために、インターネットを利用した直販は有効なものの、「消費者にインターネットで直販をしている農家数の割合」は、2019年時点で0.56%と極めて少ない状況にある(「農林水産省 農業構造動態調査 / 確報 平成31年農業構造動態調査結果」)。2019年の農業就業人口の平均年齢である67.0歳(「農林水産省 農業労働力に関する統計」)、2017年の漁業就業人口の平均年齢である55.6歳(「農林水産省 漁業就業動向調査」より各階層の中位数を用いた推計値。65歳以上の場合は「70」を使用)に対して、ポケットマルシェ登録生産者の平均年齢は44歳(「登録生産者数2000名の「ポケットマルシェ」が生産者を対象としたアンケート結果を発表」)という。このことから同社は、特に高齢の生産者によるネット直販実施が進んでいないことが推測されるとした。

ポケットマルシェは、農林中金の持つネットワークを活用し、全国の生産者にネット直販の機会を提供することで、一次産業の成長を促進。高齢の生産者に対するネット直販のサポートも強化していく。またすでに、大分県や鹿児島県で、農林中金と連携して生産者による新規出品を実現しているという。

大分県漁業協同組合中津支店 ひがた美人生産者部会によるブランド牡蠣の出品

大分県漁業協同組合中津支店 ひがた美人生産者部会によるブランド牡蠣の出品。ひがた美人生産者部会に所属する生産者の平均年齢は60代前半で高齢化が進んでおり、大分県漁業協同組合中津支店の職員が出品や発送をサポートしている

ポケットマルシェは、全国の農家・漁師から、直接やりとりをしながら旬の食べ物を買うことができるプラットフォーム。提供は2016年9月。約3800名の農家・漁師が登録し、約9000品の食べ物の出品と、その裏側にあるストーリーを提供。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに消費者の食への関心が高まり、ユーザー数が約4.8倍、注文数はピーク時に約20倍となり、現在約25万名の消費者が登録、「生産者さんと繋がる食」を楽しんでいる。

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カテゴリー:フードテック
タグ:漁業資金調達(用語)食品(用語)農業(用語)ポケットマルシェ(企業)日本(国・地域)

アリババのライバルPinduoduoはなぜ中国の農業に投資するのか

Pinduoduoのスマート農業コンペ温室で作物の生長を見守る監視装置

2018年、Pinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)は、創設3年目の企業(未訳記事)でありながらNASDAQ上場で16億ドル(約1660億円)を調達(未訳記事)し、投資コミュニティに衝撃を走らせた。中国のオンラインショッピング利用者は、長年市場を独占してきたAlibaba(アリババ)やJD.comに取って代わる新サービスの登場に歓喜した。

しかし、Google(グーグル)の元エンジニアColin Huang(コリン・フアン)が創設したこのスタートアップ企業は、その野心をeコマースの先に据えていた。同社は、中国の農業の近代化と地方経済の活性化を目指す中国政府の要請に応えたのだ。

中国の日常生活は小売り、娯楽、教育、医療に至るまで、さまざまな側面が高度にデジタル化されてきた。しかし、農業だけが取り残されている。2017年後半からのMcKensey(マッケンジー)の報告を見ると、農業は中国で最もデジタル化が遅れている産業であることがわかる。Pinduoduoはこのギャップを好機と考えて、オンラインで果物を売ることから事業を始めた。時が経ち、PinduoduoはAlibaba(アリバナ)と並ぶ総合eコマースプラットフォームに成長した。しかし農業は「創業以来、ずっとPinduoduoの中心的な位置にあります」と、同社上級副社長Andre Zhu(アンドレ・ズー)氏はいう。

「スマート農業への投資は、私たちの事業の延長線上にあり、デジタル包括性を促進するという私たちの目標に沿ったものです」。

独立した部署を置くことはせず、同社はこの農業事業を、全社をあげたそして社会をも捲き込んだ取り組みとしている。その戦略および投資担当チームは、農業のあらゆる段階において、規模拡大のために同社が協力し得るソリューションの特定を主導している。実装段階では、実働部隊の力を借りて、さまざまな地方行政機関と、テクノロジーを試したいと考える伝統的な農家との仲立ちをしている。

「少なくとも下流の流通面、eコマースの農業製品用マーケットプレイスでは、中国は諸外国に比べて比較的進んでいるといえます」とPinduoduoの持続可能性および農業インパクト担当エグゼクティブディレクターXin Yi Lim(シン・イ・リム)氏はTechCrunchのインタビューに応えて話した。

2019年、60万件近い業者が農作物をPinduoduoを通して販売した。それは、1200万件もの農家がその業者に果物や野菜を供給したものと解釈できる。2020年8月、Pinduoduoは、2025年までに年間1450億ドル(約15兆円)相当の農作物を扱うと宣言した。2019年時点では、その額は210億ドル(約2兆1700億円)だった。

「しかし、私たちがさらなる投資を奨励し増やしたいと思っているのは、実は上流部です」とリム氏はいい加えた。

そのためこのeコマースの巨大企業は、農業のライフサイクルを遡る旅を続けている。それはつまり、流通インフラの構築や、農家にマーケティングの知識を与えるなどの事業だ。2019年には、同社のオンラインeコマースビジネス学校が、およを50万の農業経営者に教育を施した。

Duo Duo大学にて、Pinduoduoに店舗を開設し運営する方法を学ぶ雲南省の農家(画像クレジット:Pinduoduo

生産面では、Pinduoduoは数億人の購買者の購買行動を追跡し、何を植えて、どれほどの値を付けて販売するべきかを農家に教えている。このアプローチは、中間業者のコストを削減するための、同社の大規模な消費者直販戦略に従っている。

Pinduoduoはまた、農家のために農業の専門知識を収集したいとも考えている。同社は2020年、スマート農業コンテストを開催し、人工知能やネット接続機器を活用したイチゴの栽培を競うチームが世界中から参加した。評価はイチゴの甘さ、使用したエネルギーと肥料の量、AI戦略で審査された。優勝者のシステムは、Pinduoduoと雲南省政府との合弁プロジェクトであるAI管理のDuo Duo Farm(デュオデュオ・ファーム、Pinduoduoリリース)で展開され、同eコマースプラットフォームで農家が作物を直販できるようにする。

こうした例は、Pinduoduoの長期にわたる農業ゲームという氷山のほんの一端に過ぎない。この分野に投資(Pinduoduoリリース)する具体的な金額を同社は公表していないが、リム氏はこう話す。「この業界の他のプレイヤーと比較しても、私たちの農業への関与は、間違いなくずっと大局的です」。

同社は、中国国外にも投資のチャンスを探している。国内では、ドローンやセンサーなどに代表されるハードウェアの導入を安価に提供する企業が増えてきたものの、作物モデルや予測に関しては、大型の商業農場が広がる西側諸国に見られるソリューションのほうが成熟度は高いとリム氏は指摘する。

Pinduoduo農家の間でも、アグリテックを受け入れるところはまだ「比較的少ない」。なぜなら、同社のスマート農業の取り組みがまだ初期段階にあるからだ。しかし、eコマースの新参企業であるPinduoduoは、中国のアグリテックを促進するよい立ち位置にあるともいえる。

米国やオーストラリアと違い、中国では小規模農家がほとんどであるため、高度な農業機械を買える余裕がない。需要がなければ、アグリテックのスタートアップは資金調達が難しくなり、顧客を増やして販売価格を下げるための投資もできなくなるとリム氏は説明する。

「Pinduoduoは、すでにアグリテックのスタートアップ企業と幅広い潜在顧客プールとを結び付ける用意ができています。これで、最初の難関が少しでも楽に通過できるようになると思います」とリム氏。

もう1つ、農業にテクノロジーを投入すれば、広大な中国の農村地帯から若い人材が豊かな大都会に流出してしまうのを防ぐこともできる。

「長期的には、私たちは農業をより効率的で楽なものにします。農業という産業の構造を、全体的に変革してしまう可能性もあります。若い人たちが、自分も起業家になれる、このツールを使えば生産をもっとしっかり管理できる、と感じられるようになるでしょう」とリム氏は訴えた。

「いまは農家でなくても、現実的な新事業として農業を考える人も現れる可能性もあります」

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pinduoduo中国農業

画像クレジット:Pinduoduo

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(翻訳:金井哲夫)

中国のドローン大手DJIが支援するアグリテック企業FJ DynamicsにTencentが投資

2018年にTencentは、中国の伝統的な産業が最近ますますテクノロジーを利用して生産性を上げているため、自分たちもエンタープライズへの注力を増やすと宣言した(未訳記事)。同社の産業プロジェクトは、AIを利用して医療画像を選別したり、同社のメッセージサービスWeChatを利用して小売企業のための顧客管理ツールを作るなどさまざまだ。

最も新しいところでは、TencentはFJ Dynamicsに投資した。この中国のスタートアップは、スマートトラクターや田植え機など農業を自動化するソリューションを販売しているほか、港や工場用の無人車を世界中の顧客に販売している。Tencentとそのほかの匿名投資家からの投資は数億元(数十億円)に達している、とTencentは12月15日に発表している

2017年に創業されたFJ Dynamicsは、中国の複数の有名企業とつながりがある。たとえば同社の株主の中には、ドローンのメーカーであるDJIや中国の国有自動車製造企業であるDongfeng Asset Managementがいる。FJ Dynamicsは、その名前にも同社を知る手がかりがある。すなわちFJは「Feng」と「Jiang」の省略形であり、さらにそれらはDongfengとDJIの中国語綴から取られている。創業者でCEOのWu Di(ウー・ディー)氏もDJI出身で、氏はそこでチーフサイエンティスト(搜狐)としてチップの研究開発を率いた。

 

おもしろいことに、DJI自体も最近では農業用ドローンを強力にプッシュしている。

Tencentの投資部門のマネージングディレクターであるJeffrey Li(ジェフリー・リー)氏は、2020年4月のスピーチで次のように述べている。「中国社会はいま、生産性の向上に向けて舵を切りつつあり、そこにエンタープライズサービスの成長機会がある。米国では大量のベンチャー資本とプライベートエクイティ投資がエンタープライズにフォーカスした企業に投じられているが、中国では消費者を対象とする企業に比べるとエンタープライズにフォーカスしたビジネスは投資全体のごく一部でしかない。この傾向が変わって、投資が産業分野にも向かっていくためには時間がかかるだろう」。

中国で登記している企業であるFJ Dynamicsによると、同社はR&Dセンターが中国とスウェーデンとオランダにある。

カテゴリー:その他
タグ:FJ DynamicsDJITencent投資農業中国

画像クレジット:FJ Dynamics

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インドの農家に収穫した農産物の保管・販売サービスと資金を提供するAryaが約21.8億円調達

インドの農家が生産した農産物のうち、大規模な市場に届くのは約3分の1に過ぎない。それらの農産物を生産している人々は、ポストハーベスト(収穫後)サービスを活用することができるが、それ以外のすべての農家はその恩恵を受けられていない。

このポストハーベストサービスの欠落を埋めるため、農家、食品加工業者、取引業者、金融機関など、すべての利害関係者と協力して活動を続けているインドのノイダを拠点とするスタートアップが、新たな資金を確保した。

創業7年のAryaは米国時間12月15日、シリーズBの資金調達ラウンドで2100万ドル(約21億8000万円)を調達したと発表した。このラウンドは、新興市場のフィンテックに特化したベンチャー企業であるQuona Capital(クオナ・キャピタル)が主導し、従来から投資しているLGT Lightstone AspadaとOmnivoreも参加。一方、Aryaによれば、複数の名前が明かされていない貸金業者もこのスタートアップに追加のデットファイナンス(負債による資金調達)を提供しているという。

現在インドでは、ほぼすべてのポストハーベストの措置が、インド北部ラジャスタン州のコタや首都ニューデリーのアザドプル・マンディなどの主要な農業センターを中心に行われていると、Aryaの共同設立者であり最高経営責任者のPrasanna Rao(プラサナ・ラオ)氏は、TechCrunchによるインタビューで説明した。

この不均等な集中は、国内の何百万もの農家から、農産物を効率的に保管・販売するための合理的な選択肢や、キャッシュフローを維持するための資金調達の選択肢を奪っている、と同氏は述べている。

「私たちの信念は、現在十分なサービスを受けられていない市場の3分の2に対応すべきだということです。たとえばコーターのマンディ(市場)には、半径1km圏内に35の銀行支店があります。しかし、コーターから70~80km離れた場所に行くと、これが本当に減少します」と、以前は銀行で働いていたラオ氏はいう。

Aryaは前述の課題をすべて解決する。インドの20の州で1500以上の倉庫のネットワークを運営しており、そこでは総額10億ドル(約1040億円)以上の産物が保管されている。このネットワークにより、農家は自分たちの農場に近い場所に農産物を保管することができ、農産物の損失や大規模市場のような莫大な不動産コストを回避できる。融資面においては、Aryaは農家に3650万ドル(約38億円)以上の資金を提供しており、その協力銀行は9500万ドル(約99億円)以上を提供している。

「Aryaは、インドの農家という広大で十分なサービスを受けていない市場に対処しています。その半数は、これまでポストハーベストのための資金をほとんど得ることができませんでした」と、クオナ・キャピタルの共同設立者であるGanesh Rengaswamy(ガネーシュ・レンガスワミー)氏は声明の中で述べている。「小規模農家に金融を組み込んだフルサービスのデジタルプラットフォームと差別化された効率性を提供するAryaのユニークなアプローチは、インドの農業の未来を牽引するものと我々は確信しています」。

2020年初めにニューデリーが世界で最も厳しいロックダウンを実施(未訳記事)した際には、このスタートアップの提供するものが、新型コロナウイルス感染拡大の中、さらに有用であることが証明された。ロックダウンはサプライチェーンネットワークを破壊し、農産物の価格は20%以上も下落した。

この状況に対処するため、Aryaは独自のデジタルマーケットプレイス「a2zgodaam.com」を通じて、農家の青果物組織(FPO)とバイヤーを結びつけた。「即時流動性の必要から、これらの倉庫収入に対する借入れ需要が増加した。Aryaの信用ポートフォリオは前年比3倍に跳ね上がった」と、インドのAccelの共同創業者であるPrashanth Prakash(プラシャーント・プラカシュ)氏とOmnivoreの共同経営者であるMark Kahn(マーク・カーン)氏は先週の業界レポートで述べている(Seed To Scale記事)。

ラオ氏によると、Aryaはインド全土に倉庫ネットワークを拡大していくとともに、新たな資本を投入してそのフィンテックプラットフォームを「大々的に」拡大していく予定だという。さらにこのスタートアップは、未組織の倉庫を集約するa2zgodaam.comを活用し、金融機関や保険会社を独自に組み合わせ、農家が必要に応じて直接これらの倉庫を介して販売できるようにすることで、その成長を促進させる計画だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Aryaインド農業資金調達

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが20億円で組成完了

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

オイシックス・ラ・大地の投資子会社Future Food Fundが運営するフードイノベーション領域特化CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンド「Future Food Fund 1号投資事業有限責任組合」(FFF1号)は12月14日、食品業界以外の業界からの応募を含め総額20億円に到達、2020年12月をもって組成完了したと発表した。

FFF1号は、日本の食文化や食品業界の発展への貢献を視野に入れ、食領域に特化したスタートアップ企業を中心に投資する目的をもって設立。新たに西松建設、コメダホールディングス、国分グループ本社、オレンジページ、セブン&アイ・ホールディングスより出資を受け、募集を完了した。

FFF1号は、食領域に特化したファンドとしては日本国内で初の設立であること、リミテッドパートナー(LP)が14社加入したことから、多種多様な業界が食領域への関心を高く持っている結果と考えているという。

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

投資先の企業に対しては、LPとして参加する事業会社のプラットフォームを最大限に活用し、継続的な幅広い実行支援により、エコシステムを構築。スタートアップの持つ新技術や新サービスをより早く実用化・事業化していくことを目指す。

ファンド立ち上げからの実績としては、投資先企業の商品の販売やマーケティングサポートなどをすでに数社へ実施。投資先企業には、サブスクリプションで離乳食販売事業をしているMiL、畜産業にAI技術を用いているFarmnote、素材や製法にこだわったクラフトアイスクリーム製造事業をしているHiOLIなどがある。

これらの企業は、食領域における社会課題に取り組む事業を展開しているスタートアップ企業が中心。投資以外にも、企業間の連携や販売サポートなど様々な形での連携に取り組んでいく。

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

オイシックス・ラ・大地は、有機・特別栽培野菜、添加物を極力使わない加工食品など安心・安全に配慮した食品の宅配サービスを「Oisix」(おいしっくす)、「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の3ブランドで展開。

Oisixでは2013年7月に、必要量の食材とレシピがセットになった、主菜と副菜の2品が20分で完成するミールキット「Kit Oisix」を販売。2020年10月時点で、シリーズ累計出荷数は6500万食を突破した。

同社は「これからの食卓、これからの畑」を理念に掲げ、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決する事業を推進していくとしている。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:食品(用語)農業(用語)ファームノートFuture Food FundMiL日本(国・地域)

農林水産省が農林水産業のDXに向けビズリーチで人材公募、先進モデルとして官公庁全体への波及目指す

農林水産省が農林水産業のDXに向けビズリーチで人材公募、先進モデルとして官公庁全体への波及目指す

Visionalグループのビズリーチが運営する、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」は、農林水産省が取り組む農林水産業・食品産業のDXを推進できる人材の公募を発表した。期間は2020年12月8日から2021年1月4日まで。

農林水産省は、2019年に「デジタル政策推進チーム」を新設。同年に初めて農林水産分野のDXを推進できる人材をビズリーチ上で募集し、約900名の応募の中から2名を採用した。農林水産省では、この8月、省内のDX推進体制をより一層強化するため、「デジタル政策推進チーム」を含めた新たな組織として「デジタル戦略グループ」を設置。さらに民間のDX人材を採用することにより、農林水産業・食品産業におけるDXの早期実現を目指す。

日本の農林水産業を成長産業にするDX

日本の農林水産業は、農林漁業従事者の高齢化(基幹的農業従事者数140万人のうち7割が65歳以上)や労働力不足などに直面しており、生産基盤を強化し、生産性を向上させることが課題となっている。

今後、農林水産業を成長産業とするためには、労働集約型の「人手に頼る農業」から、デジタル技術を活用したデータ駆動型経営を通じて新たな農林水産業への変革(DX)を実現することが必要となる。

また、農林水産業のDX実現のためには、農林水産物の生産現場のほか、流通、加工、小売、外食・中食の各段階や、農山漁村を含めた「現場」におけるDXと、現場のDXを支える農林水産政策や行政内部の事務の効率化・利便性向上など、農林水産省の「業務」のDXを速やかに進めることが不可欠とした。

省内のデータサイエンティストを2024年までに100人に

政府発表の経済財政白書によると、官公庁や学校など公的機関で働くIT人材は、IT産業以外の産業全体の1%未満にすぎず、民間企業でもIT人材の獲得競争が激化している中で、優秀な人材をいかに採用するかが公的機関の課題となっている。

そのような中、農林水産省では2019年に初めて農林水産業分野のDXを推進できる人材をビズリーチで募集し、約900名の応募者の中から2名のDX人材を採用。

そして現在、民間人材の知見・経験を十分に活用して農林水産業分野のDX実現に向けたプロジェクトの企画・立案のほか、省内の業務のデジタル化や情報システムの高度化に向けた取り組みを実施。

また、データに基づく行政の推進のため、職員のデータサイエンティスト教育にも取り組んでいるという。農林水産省は、2024年までに省内のデータサイエンティストを100名に増やすことを目指しており、外部からDX人材を採用するだけでなく、組織内育成にも力を入れることでデータ活用に強い組織に成長することを目標にしているそうだ。

そして、今回新たに、農林水産業分野のDX実現を一層強力に進めるため、多様なプロジェクトの企画・立案・実行に携わる人材を公募するとともに、省内の情報システム開発に必要なIT関連業務に特化した人材を公募することとなった。今回の公募が行政のデジタル化に向けた先進モデルとなり、官公庁全体に波及していくことを目指す。

公募概要

募集職種名:「デジタル戦略グループ」配属 デジタル政策プロデューサー

  • 業務内容:農林水産業・食料産業の現場におけるDX実現に向けたプロジェクトの企画・実行。データに基づく農林水産政策の効果検証・企画立案への変革および行政事務の見直しによる国民の利便性向上・業務の効率化。その他、農林水産業のDX推進に対して有益な施策の立案等
  • 応募資格:「デジタル分野での事業推進・管理等に関する専門的知識を有すること」「デジタル分野での事業推進・管理等に従事した実務経験を5年以上有すること」「民間企業のプロジェクトでデジタル分野の知見を生かして企画・推進等の業務に携わり、成果を出した方」「大学卒業または同等の教養を有し、一定の事務調整能力(文章作成能力および関係機関との調整能力)を有すること」「当該任期を継続して勤務が可能であること」の5条件を満たす方

募集職種名:「デジタル戦略グループ」配属 システムプロデューサー/システムディレクター

  • 業務内容:DXの重要政策に係る情報システムの構築。農林水産省の重要プロジェクトに関わるシステム開発における、要件定義・工程の適正化。システム構築・運用業者および工程管理業者との調整。その他、多様な政策の遂行に必要な情報システムの構築等
  • 応募資格:「民間企業等において、情報システムに関わる企画立案、構築、管理等に携わった経験を有すること」「民間企業等において、情報システムのプロジェクトリーダーとして情報システムの内容、スケジュール管理、予算管理に携わった経験を有すること」「情報処理技術者試験のうち応用情報技術者試験(レベル3)以上の資格を有すること」「大学卒業または同等の教養を有し、一定の事務調整能力(文章作成能力および関係機関との調整能力)を有すること」「当該任期を継続して勤務が可能であること」の5条件を満たす方

労働条件

  • 任期付きの常勤の国家公務員としての採用を基本とするが、昨今の働き方を見据え、希望により、非常勤職員や業務委託契約での採用にも対応
  • 「給与」「就業時間」「待遇・福利厚生」などの詳細は公募ページに記載

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カテゴリー:GovTech
タグ:食品(用語)農業(用語)農林水産省ビズリーチ日本(国・地域)

米の銘柄判定をAI搭載スマホアプリで実現する「RiceTagプロジェクト」の実証実験が成功

米の銘柄判定をAI搭載のアプリで実現するRiceTagプロジェクトの実証実験が成功

総合米穀卸業のKAWACHO RICEと、東北地方の企業・サービスのクラウド化およびDX化を支援するヘプタゴンは12月7日、米の銘柄をAIで判定するスマートフォンアプリを開発し、実証実験に成功したと発表した。

米の流通過程において、異品種混入(コンタミ)を防止するための銘柄チェックは、資格を有した検査員が目視で行われているものの、現在の検査方法では、具体的なデータを示せないという課題があるという。

そこでKAWACHO RICEは、プタゴンと協力して、2019年夏頃にAIを用いた米の銘柄判定を行う「RiceTagプロジェクト」を立ち上げ。約1年をかけてAIの開発・実証実験を行い、検査対象からサンプリングで無作為に抽出した複数の米粒をスマートフォンのアプリで撮影するだけで銘柄を判定することに成功した。実証実験は、青森県産米4銘柄および秋田県産米4銘柄に対して行い、資格を有する検査員と同等以上の正解率を得られた。

今後は、さらなる精度の向上や判定できる銘柄を増やしていき、検査員の負担を減らすとともに、流通の過程でより正確に銘柄のチェックができるように実用化に向けて開発を進める。

KAWACHO RICEは、「すべては米からはじまる」を理念に、産地プラットフォーム米穀卸として、生産から消費までの米流通を総合的にコーディネート。

検査米をはじめ備蓄米や輸出米など多種多様な実績とノウハウを持ち、産地の有力生産者との強固な信頼関係の構築など、米作りを第一に、常にリスクヘッジを考えた栽培プランの提案・支援を実施。流通業者としても、時代の流れを敏感に察知し、取引先に最適なプランをご提案すると同時に、消費者ニーズに合わせた商品開発・販売活動も積極的に進めている。

ヘプタゴンは、「世界中の顔を知らない100万人よりも自分たちの身近な100人をクラウドで幸せにする」を経営理念に掲げ、主に東北地方の企業/サービスのクラウド化やDXの支援を実施。

地方ならではの課題を地方のことをよく知る地方の企業が解決する「ビジネスの地産地消」というビジネスモデルで、これまで200プロジェクトを超える実績を東北であげており、東北エリア初のAWS Partner Network(APN)アドバンストコンサルティングパートナーにも認定されている。

近年では、AI/IoT技術を用いた地方の企業/自治体のDX化にも力を入れており、先端技術を取り入れ成長する意欲的な企業とヘプタゴンが協力して、生産性の向上や業務の改善、新しい働き方の導入支援などを進めている。

なお、今回のAIおよびシステムのプラットフォームには、Amazon SageMakerを採用。開発環境や推論環境の構築が非常に簡単に行えるため、モデル開発に注力でき、また、KAWACHO RICEへ迅速に結果のフィードバックを行えたとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Amazon Web Services / AWS(製品・サービス)KAWACHO RICE機械学習(用語)食品(用語)農業(用語)ヘプタゴン日本(国・地域)

アフリカを次のグローバル食料基地にするSunCultureのソーラー揚水ポンプ

国連のレポートによると、人口増加の需要に対応するには世界の食料供給を2050年までに倍にしなければならない。供給量を増やすために新しい耕作地を確保するというプレッシャーが高まる中、次の世界の食料基地候補として世界の目はアフリカ大陸に向けられている。

アフリカ開発銀行によると、世界の未開耕作地の65%がアフリカにある一方で、アフリカ諸国は農業分野の生産性向上で大きな障壁に直面している。

アフリカでは80%の世帯が農業で暮らしているが、灌漑を使っているのは4%にすぎない。そして多くの世帯が安定した安価な電力にアクセスできていない。この2つの問題を解決しようと、SunCulture(サンカルチャー)を共同で創業したSamir Ibrahim(サミール・イブラヒム)氏とCharlie Nichols(チャーリー・ニコラス)氏は8年を費やしてきた。

新しい融資モデル、それから専用の太陽光発電で動く発電機と揚水ポンプでニコラス氏とイブラヒム氏は収入を増やすために同社の設備を使っている顧客のネットワークをすでに構築した。そうした顧客は価値の高い作物を栽培し、より広い面性を耕し、そして多くの家畜を育てることで収入を以前の5〜10倍に増やすことを目指している。

同社は事業をアフリカ中に拡大するために1400万ドル(約15億円)の資金調達をクローズしたばかりだ。

「我々は2050年までに食料生産を倍増させなければなりません。食物を育てるのに十分なリソースがあるところはというとアフリカです。農業に従事する人が大勢いて、広大な土地が広がり、リソースも豊富です」とイブラヒム氏は述べた。

アフリカの小規模農家は生産性を上げるにあたって2つの大きな問題に直面している、とイブラヒム氏は指摘した。1つはマーケットへのアクセスだ。これは食料の無駄の大きな原因となっている。そしてもう1つの問題は、気候変動によって悪化している安定した栽培条件の欠如による食料安全保障だ。

2020年初め、とある小規模農家は「雨季は予測できません。雨が降るはずなのに降らないかと思うと、突然降ったりします」とThe Economist紙で語っている

ニューヨーク大学を2011年に卒業したイブラヒム氏は長らくアフリカに引きつけられていた。同氏の父親はタンザニアで生まれ、母親はケニアで育ち、2人とも後に米国にたどり着いた。イブラヒム氏は成長する過程で東アフリカについての話を聞かされた。

ニューヨーク大学で経営学の学位取得を目指しているとき、イブラヒム氏はニューヨークで開催されていた新進の起業家のためのイベントでニコラス氏に出会った。当時ニコラス氏は米国の大規模ソーラープロジェクトで働いていた。

2人は友達になり、ニコラス氏が読んだ農業分野での再生可能エネルギー応用についての論文に端を発てビジネスの機会について議論した。

ニューヨーク大学後援の事業計画コンペティションで2位を獲得したのち、2人は事業計画が1位に値するものであることを証明しようと決心した。ケニア行きの航空券を予約し、ソーラー発電で動く揚水ポンプと発動機を販売する事業のパイロット試験立ち上げに挑んだ。

太陽光で動く揚水システムは概念上、何年も展開されている。しかし太陽光発電とエネルギー貯蓄の施設のコストが下がるにつれ、そうしたものを使うシステムは多くの人が利用しやすいものになった。

そうしたタイミングも作用して、SunCultureは他の企業がつまづいていたところで成功することができた。「多くのマーケットで再生可能エネルギーの発電コストが既存の電力コストと並んだちょうどそのときに我々はここにやって来ました。まさに多くの開発投資家が農業とエネルギーの結合に資金を投入しているときでした」とイブラヒム氏は話した。

当初、同社はエネルギー発生と揚水のシステムを、ナイロビのような都市に仕事を持ち、そして田舎に所有する土地で作物を育てる中所得の農家に販売した。こうした「テレフォン農家」はSunCultureの初期のシステムを導入するのに喜んで5000ドル(約52万円)を払った。

いまやシステムのコストは500〜1000ドル(約5万2000〜10万4000円)で、同社の「pay-as-you-grow(成長するにつれ支払う)」モデルのおかげで世界中の農家5億7000万世帯にとってアクセスしやすいものになっている。

アフリカで提供されるあらゆるタイプのソーラーシステムの中でSunCultureが人気のビジネスモデルになったのは、ちょっとしたひねりのおかげだ。イブラヒム氏によると、投資家はオフグリッドのソーラーエネルギーの開発と、M-kopa、Greenlight Planet、d.light design、ZOLA Electric、SolarHomeといった小売テック企業に10億ドル(約1040億円)近くを注いだ。さまざまな意味で、SunCultureはそのモデルを農業への応用へと拡大しているだけだ。

「我々はサービスと融資を組み合わさなければなりませんでした。これがうまくいったのは、我々の顧客が収入を4、5倍に増やしているからです」とイブラヒム氏は述べた。「収入のほとんどは消費にいっていました。生産に向けられるのは初めてです」。

SunCultureのハードウェアは300ワットのソーラーパネルと、440Whのバッテリーシステムで構成される。バッテリーは最大4つのライト、電話2台、プラグイン式の水中に沈める揚水ポンプをサポートできる。

同社のベストセラーのプロダクトラインは、2.5エーカー(約1ヘクタール)の農地の灌漑に対応する、とイブラヒム氏は話した。「他の応用に向けて、いまはまだ入り口地点にすぎないととらえています。アフリカで最大のソーラー企業になります」 。

Energy Access Ventures (EAV)、Électricité de France (EDF)、Acumen Capital Partners (ACP)、Dream Project Incubators (DPI)といった投資家から調達した1400万ドルで、SunCultureはケニア、エチオピア、ウガンダ、ザンビア、セネガル、トーゴ、コートジボワールに進出する予定だと明らかにした。

今回のディールではEkta Partnersがファイナンシャルアドバイザーを務め、その一方で米国際開発庁のケニア投資メカニズムプログラムのもとでCrossBoundaryが市場機会や競争についての分析を含む助言サポートを提供した。

カテゴリー:フードテック
タグ:SunCulture農業アフリカケニア資金調達

画像クレジット:SunCulture

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

新方式植物工場のプランテックスが農業機械大手クボタから資金調達、大規模マザー工場を建設

新方式植物工場のプランテックスが農業機械大手クボタから資金調達、大規模マザー工場を建設

人工光型植物栽培装置「Culture Machine」および植物成長管理システム「SAIBAIX」の開発を手がける植物工場スタートアップのプランテックスは11月30日、第三者割り当て増資による資金調達を発表した。引受先は、農業機械メーカー大手のクボタ

今回調達した資金は、同社事業の旗艦となる新方式植物工場(マザー工場)を建設・運営するための資金として活用。マザー工場の建設・運営を通じて、同社植物生産システムが、効率的・安定的であることを実証する。またクボタとの連携を強めることで、植物工場の企画・建設事業を国内外で推進する。

同社では、2019年より東京都中央区京橋に密閉方式の大型栽培装置を設置し、葉物野菜を生産。その野菜は、東京都内の大手スーパーマーケットで販売され、買い物客から高い評価を得ているという。今回調達した資金を活用してマザー工場を建設・運営し、野菜の生産量を拡大する。

世界初のクローズド・タイプ(密閉方式)の植物栽培装置「Culture Machine」。物の量産に最適な型装置タイプの「Type M」

世界初のクローズド・タイプ(密閉方式)の植物栽培装置「Culture Machine」。物の量産に最適な型装置タイプの「Type M」

棚ごとに機密・断熱されており、環境パラメーターを個別に制御可能

棚ごとに機密・断熱されており、環境パラメーターを個別に制御可能

密閉方式の栽培装置のプロトタイプ

密閉方式の栽培装置のプロトタイプ

また同社では、小型栽培装置を多数設置した植物栽培研究所(仮称)の設立を予定。大学、企業、研究機関と連携し、栽培品種の多様化、機能性野菜や薬用植物などの高付加価値植物の栽培に関する研究開発を加速。プランテックスは、密閉方式の栽培装置を用いて、従来の植物工場にはできない植物生産を実現し、植物工場産業を革新するとしている。

Culture Machineの小型装置「Type XS」。サイズは1.8×2.0×1.6mで、植物の栽培環境の条件の研究開発を小回りよく進める際に最適

Culture Machineの小型装置「Type XS」。サイズは1.8×2.0×1.6mで、植物の栽培環境の条件の研究開発を小回りよく進める際に最適

小型栽培装置を多数設置した植物栽培研究所(仮称)のイメージ

小型栽培装置を多数設置した植物栽培研究所(仮称)のイメージ

クボタは2019年6月、「イノベーションセンター」を立ち上げ、国内外のスタートアップ企業への出資や、協業交渉などを推進。プランテックスとの連携を強め、人工光型植物工場の事業化を共に推進することで、食料生産の効率化・供給安定化の実現に貢献する。

プランテックス独自開発の栽培装置Culture Machineは、栽培棚ごとに独立した密閉方式を採用し、装置内部に空調や養液循環システムを組み込んでおり、これにより各棚の栽培環境を高精度に制御可能。同社では、用途別に植物工場向けの大型栽培装置Type M、研究開発向けの小型栽培装置Type XSの2種類を提供する。

まず、大型栽培装置を用いることで、一般的な人工光型植物工場に比べ、生産の安定性と面積あたりの生産性を同時に高めることが可能。また、栽培装置を複数台並べることで、同一工場内で複数の栽培環境を設定できるため、一般的な人工光型植物工場では難しかった多品種栽培に対応できる。

また小型栽培装置を用いて、機能性野菜や薬用植物などの高付加価値植物の栽培に関する研究開発を実施。栽培環境を高精度に制御することで、植物の栄養成分や薬用成分を高めることを目指しているという。

さらにプランテックスの小型栽培装置と大型栽培装置とは、独自開発の植物成長管理システムSAIBAIXと連動することで、栽培環境および植物生育に高い再現性を備える。その結果、小型栽培装置で見出した高付加価値植物の栽培条件を、大型栽培装置による植物生産にただちに適用可能という。これら同社の栽培装置を用いることで、研究開発から生産までをシームレスにつなげられるとしている。

センサー、ソフトウェア、コントローラーからなる、植物成長制御システム「SAIBAIX」を開発。電気・種・CO2・肥料・水といったインプットと、植物成長というアウトプットを紐付けたシステムとなっており、センサー測定値・コスト指標値・植物の成長指標値をリアルタイムでコントロールできる

センサー、ソフトウェア、コントローラーからなる、植物成長制御システム「SAIBAIX」を開発。電気・種・CO2・肥料・水といったインプットと、植物成長というアウトプットを紐付けたシステムとなっており、センサー測定値・コスト指標値・植物の成長指標値をリアルタイムでコントロールできる

植物工場は、「省スペース・省資源で農村・都市を問わず、異常気象等の外部環境に左右されることなく、食と健康と安全・安心を提供できる」能力を特徴としている。食糧不足や環境問題など人類が抱える諸課題の解決に貢献する可能性を持つ一方、実用化して間もないことがありその生産技術は発展途上にあるという。

プランテックスは、高度なスキルを持つエンジニアリング企業として、植物工場の可能性を引き出した植物栽培装置と植物成長管理システムを開発するとともに、植物生産事業および研究開発事業の両面で利用されるプラットフォームを、様々な産業界に提供する。

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カテゴリー:フードテック
タグ:クボタ(企業)資金調達(用語)食品(用語)農業(用語)プランテックス日本(国・地域)

電通国際情報サービスと旭化成がブロックチェーン活用農業データ流通基盤の実証実験を実施

電通国際情報サービスと旭化成がブロックチェーン活用農業データ流通基盤の実証実験を実施

電通国際情報サービス(ISID)旭化成は11月27日、ISIDのブロックチェーン技術を活用した農業データ流通基盤「SMAGt」(スマッグ。SMart AGriculture Traceability)と、旭化成が展開するクラウド型生鮮品物流システム「Fresh Logi(フレッシュ ロジ)システム」とを連携させ、11月21日から都内大手小売りスーパーにおいて実証実験を開始したと発表した。

SMAGtは、農産品の生産履歴から出荷・流通・販売までをブロックチェーン技術を用いて記録する農業データ流通基盤で、現在まで複数の自治体・企業の協力を得ながら社会実装の検証を進めており、今回の効果検証もその一環となっている。

ISIDは、旭化成が展開するFresh Logiシステムでセンシングする輸送環境データをSMAGtに自動連携する仕組みを開発。商品に貼り付けたQRコードを読み取るだけで、SMAGtが管理する産地・農産品のトレーサビリティ(追跡可能性)や、流通・物流における経路情報に加え、Fresh Logiが管理する輸送品質情報までの取得が可能。

電通国際情報サービスと旭化成がブロックチェーン活用農業データ流通基盤の実証実験を実施

これにより、農産品のブランド価値発信、トレーサビリティによる食の安心・安全、さらには流通経路における輸送品質の可視化により、農産品の販路開拓や小売事業者の産地開拓、さらには輸出拡大への貢献が期待できるとしている。

ISIDは今後も、導入が加速しているスマート農業IoT機器・クラウドサービスや、物流・流通における外部サービスとの連携を積極的に進めていく。

効果検証の概要

  • 実施日:11月21日~22日、11月28日~29日、12月5日~6日の計6回
  • 実施場所:東京都内大手小売りスーパー
  • 対象:スーパーを利用する一般消費者
  • 検証のポイント:提供する一連の情報が、消費者理解の向上や新しい購買行動につながるかなどの効果を検証。同取り組みの事業化を目指す

検証の流れ

    • 農薬や化学肥料を可能な限り使用せず、町ぐるみで土づくりに取り組んでいる宮崎県綾町のこだわり農産品を、集荷業者による予冷後に、Fresh Logiボックスを利用して都内のスーパーまで配送
    • 店頭では、POPやディスプレイでの商品訴求。商品のQRコードを消費者がスマートフォンなどから読み取り、生産者のプロフィールや個々の生産履歴などの情報と、Fresh Logiボックスにて測定された輸送環境データおよびそのデータに基づく輸送品質評価を確認し、購入を検討

旭化成の「Fresh Logiシステム」は、「Fresh Logiボックス」を用いた、クラウド型生鮮品物流システム。ボックス内の環境(青果物の輸送・保管温度・湿度・ガス組成など)をセンシングすることで輸送・保管環境を可視化。さらに旭化成のインフォマティクス技術を活用して青果物の鮮度を推定・予測する。

「Fresh Logiボックス」は、旭化成建材の高機能断熱材「ネオマフォーム」を用い、冷媒・冷蔵システムがなくとも青果物の低温保持を可能にする運搬用ボックス。少量に分けて収納・運搬が可能なため、品目ごとに最適な温度で輸送ができない、ドア開閉時に青果物がヒートショックを受けて鮮度が落ちてしまう、といった従来の冷蔵車の運送時の課題を解決するという。また、ボックス内蔵のセンサーで輸送環境を可視化することで、青果物の品質の信頼性の向上を実現する。

SMAGtは、スマート農業技術の進展により取得・蓄積が可能となった農薬・堆肥などの使用状況や収穫時期・量の予測などの生産管理データはもとより、出荷・流通・販売データまでを、ブロックチェーン技術による耐改ざん性の高いプラットフォームで可視化できる仕組み。これにより農業事業者は、消費者に対し農産品の安全性や生産者のこだわりを信頼できる情報として提供したり、輸出規制に対応したデータを効率的に取得可能となる。

ISIDは、2016年より宮崎県綾町と共同で、ブロックチェーンを活用した有機農産物の生産・流通履歴から個々人の消費行動までを記録・可視化するシステムの構築に取り組み、実証を重ねてきた。SMAGtは、この知見をベースに、スマート農業データ流通基盤として、各種農業支援アプリとの連携や取引状況の可視化機能を新たに実装した。

ISIDは、「HUMANOLOGY for the future~人とテクノロジーで、その先をつくる。~」をビジョンに、社会や企業のDXを、確かな技術力と創造力で支援。金融・製造・ビジネスソリューション・コミュニケーションITの4領域で培ったソリューションの提供に加え、テクノロジーや業界・企業・地域の枠を超えた「X Innovation」(クロスイノベーション)を推進。顧客、生活者、社会の進化と共存に寄与するソリューションを生み出し続けるとしている。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:旭化成電通国際情報サービストレーサビリティ農業(用語)日本(国・地域)

水田向けスマート農業サービス「paditch」開発・運営を手がける笑農和が1億円を調達

水田向けスマート農業サービス「paditch」開発・運営を手がける富山県拠点の笑農和が1億円を調達

富山県を拠点にスマート水田サービス「paditch」(パディッチ)開発・運営を手がける「笑農和」(エノワ)は11月11日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による1億円の資金調達を発表した。引受先は、Monozukuri Ventures、三井住友海上キャピタル、スカイランドベンチャーズなど。累計資金調達額は1.7億円となった。

paditchは、水稲農家向けの水位調整サービス。今回の資金調達により、従来サービス「paditch gate02+」のデータを活用した栽培営農指導の強化や、遠隔で田んぼダム化可能な排水バルブ「paditch drain 01」の開発を行う。農家に寄り添い、現場の声を吸収しながら水管理を中心に稲の収量・品質アップに貢献するとともに、アグリテック業界の底上げと市場拡大を推進する。

水田向けスマート農業サービス「paditch」開発・運営を手がける富山県拠点の笑農和が1億円を調達

paditchは、農作業工程でもっとも時間と労力を要する水管理工程を遠隔操作・自動制御化した製品。スマートフォンのボタンひとつで水門や給水栓の開閉を一括で行える上、水位・水温に合わせた自動開閉、タイマー設定による自動開閉が可能。paditch導入により水管理の労力が80%削減したとの第三者機関である農研機構の実証結果も得られているという。

2020年11月時点で全国490ヵ所に導入されており、水管理の時間と労力の削減に加え、稲の収量・品質の向上にも貢献しているとした。

また、豪雨時や、夏場の高温時にリスクを冒して水門・給水栓の調整をしにいく必要がないため、農作業事故の防止にもつながっている。

農業は、高齢化に伴う離農・担い手不足・耕作放棄地の増加・異常気象などの問題が山積している。笑農和はこれら課題の解決に向けIT・IoT・AI・ロボットなどのテクノロジーを活用することで、富山発の次世代農業(スマート水田)の構築を目指すアグリテック系スタートアップ。

スマート農業を普及させることで、農作業の超省力化、1農家における耕地面積の拡大と収量増加による収入の増加、水路への転落防止などに貢献し、農業を支える。また、若い世代の人が農業を職業として選択する未来の創造にも挑んでいる。

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牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」が乳用牛・繁殖牛向け分娩検知機能を追加

牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」が乳用牛・繁殖牛向け分娩検知機能を追加

酪農・畜産向けIoTソリューション提供のファームノートは11月4日、AI活用の牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」の新機能として、乳用牛および肉用繁殖牛向けの分娩検知機能を発表した。2021年初頭に提供を開始する。

Farmnote Colorは、同社提唱の「Internet of Animals」を実現する牛向けウェアラブルデバイス。牛への負担が少なく手間が少ない首への装着型センサーデバイスとなっており、リアルタイムに牛の活動情報を収集する。AIを活用し反芻・活動・休憩データから発情や疾病兆候を検知し、酪農・畜産生産者の生産性向上に貢献する。

牛の生態や畜産現場を理解した獣医師社員が製品開発を担当しており、国内頭数シェア約11%、43万頭の保有データを新機能開発や精度向上に活用しているという。牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」が乳用牛・繁殖牛向け分娩検知機能を追加

牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」が乳用牛・繁殖牛向け分娩検知機能を追加新たな分娩検知機能では、分娩の兆候を検知し、生産者のスマートフォンやタブレットにプッシュ通知を行う。牛の繁殖においてセンサー1台で発情から分娩まで管理でき、DXの推進や省力化、さらなる生産性の改善が期待できるという。なお分娩ごとのデバイス着脱は不要で、つなぎ牛舎でも利用可能。

牛の分娩は酪農・畜産生産者にとって、経営の要となる子牛が誕生する重要な出来事という。生産者にとっては分娩予定日の前後から昼夜を問わず対象牛の観察が必要となり、年100頭程度の分娩が発生する牧場規模の場合、ファームノートは年間で約500時間の見回り労務とコストがかかっていると指摘。

1頭当たりの分娩見回りに要する時間を1時間/日、平均5日間と仮定。年間100頭分娩がある場合、1時間✕5日間✕100頭=500時間と試算している。

これは酪農・畜産生産者に肉体的・精神的な負担を強いるもので、Farmnote Colorでも分娩兆候の検知を期待する声があったという。今回の機能開発により、分娩当日に兆候の通知が届くことから約80%の見回り労務削減が期待されるとしている。

この約80%の労務削減については、Farmnote Color導入により分娩見回り労務を分娩当日のみとした場合、年間の分娩見回り労務は1時間✕1日✕100頭=100時間として、先に挙げた500時間に対し試算している。

2013年11月設立のファームノートは、「世界の農業の頭脳を創る」を経営理念に、農業とインターネットを融合させることで産業構造を変え、生産性と競争力の高い農業の実現を目指す企業。クラウド牛群管理システム「Farmnote Cloud」(Android版iOS版)やFarmnote Colorなどを開発・提供している。

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個人農家向け栽培管理アプリ「アグリハブ」がJA全農「Z-GIS」向けサービス開始

個人農家向け栽培管理アプリ「アグリハブ」がJA全農「Z-GIS」向けサービス開始

個人農家向け農作業管理アプリ「アグリハブ」(Android版iOS版)の開発を行うAgrihub(アグリハブ)は10月30日、全国農業協同組合連合会(JA全農)提供の営農管理システム「Z-GIS」(ゼット・ジーアイエス)へ向けたサービスを開始した。

同サービスでは、同時リリースの「アグリハブWEB版」起動用URLと圃場情報を含むExcelファイルを、アグリハブから出力しZ-GISに取り込むことで、Z-GISからアグリハブWEB版を起動可能。

これにより、アグリハブに登録している農家の圃場情報がZ-GISの電子地図上で可視化可能となり、これまで分散管理されていた情報を、圃場情報をもとに一元化できる。

また農家は、Excelベースでデータの集約や分析に特化したZ-GISと、農業日誌や農薬使用データをアプリを使って記録できるアグリハブの両サービスを円滑に利用できるようになり、さらなる作業性や生産量の向上、ひいては売上の向上につなげられるとしている。

アグリハブは、農薬検索・農業日誌・売上管理を行う農作業管理アプリ。農業日誌や農薬の検索・散布といった農作業の管理から農作物の売上管理まで、アグリハブのアプリ上で行える。快適な操作性とわかりやすいUIが評価され、現在8000人を超えるユーザーに利用されているという。その中からアグリハブとZ-GISとの連携を望む声があり、さらなる利便性向上のため同サービスを実現した。

JA全農の営農管理システムZ-GISは、圃場情報をインターネットの電子地図と関連付けることで、効率的な営農管理を実現するシステム。圃場の位置情報とExcelデータをひも付けて、圃場毎の作付計画や作業内容など、管理したい項目をExcelで追加・記録できる。記録した情報は地図上にわかりやすく「見える化」して、データをクラウド上に保管することで、複数名で共有可能。

2020年1月設立のアグリハブは、全国の農家へアプリの普及を進め、日本の農業の基幹システムとなることで、農業DX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引していくことを目指すスタートアップ。今後も継続してユーザーの利用シーンに合わせた機能追加を行い、農家の作業性向上に貢献していくとしている。

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農業×AIにより独自の農産物栽培方法を確立し農家支援を行うHappy Qualityが資金調達

農業×AIにより独自の農産物栽培方法を確立し農家支援を行うHappy Qualityが資金調達

農業×AIにより高品質・高機能な農産物を1年中安定的に栽培する方法を確立し、農業支援・青果卸売業務を展開するHappy Quality(ハッピークオリティー)は10月20日、資金調達を実施したと発表した。引受先はSony Innovation Fund、ベンチャー投資育成研究会。

調達した資金により、中部地方をはじめさらなるFC農家の展開に向けたマーケティング強化のほか、より高品質な栽培をしていくためのAI灌水システムの高度化、そして今後の事業展開に向けた採用強化を推進する。

Happy Qualityは、静岡県で「農業の新しいStandardを作る」というビジョンのもと、農家の減少や高齢化により匠の農業技術が失われるといった「農業における社会課題」を、「テクノロジー」で解決するためデータドリブン農業の実践・研究開発を展開。

現在、新規就農者が抱える課題として最も多い「所得が少ない」「技術が未熟」(農水省 平成23年度 ⾷料・農業・農村⽩書)という点に対して、市場流通や農学、テクノロジーといった専門知識を持つメンバーが研究開発を重ね、ビックデータやAI、光学センサーなどを用いて高品質・高単価なメロンやトマトの安定生産、FC農家からの全量買取および品質保証による高単価販売を実現してきた。

農業×AIにより独自の農産物栽培方法を確立し農家支援を行うHappy Qualityが資金調達

Happy Quality独自ブランド製品としては、「Hapitoma」(トマト)や「DOCTOR MELON」(メロン)を展開。

Hapitomaは「ストレス緩和機能」の機能性表示を取得済みで、光センサー選果機によって1粒ずつ糖度・形・リコピンを計測・選別し、厳しい基準をクリアしている。リコピンは通常のトマトの2倍以上のもののみを採用し、糖度別に6~10度のラインナップを用意している。

農業×AIにより独自の農産物栽培方法を確立し農家支援を行うHappy Qualityが資金調達

DOCTOR MELONは温室メロン出荷量日本一の静岡県で生まれた、甘さそのまま低カリウムメロン。カリウム濃度を低減化したことで、腎臓病疾患などカリウム摂取制限がある方も食べやすいという。またカリウム低減により、口内の刺激となるアレルギー抗原が低下、ピリピリとした刺激感が緩和、特有の青臭さも軽減している。

農業×AIにより独自の農産物栽培方法を確立し農家支援を行うHappy Qualityが資金調達

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カテゴリー: 人工知能・AI
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穀物サイロ内を泳いで内部の状況を監視するロボを開発するCrover

Croverのロボットプラットフォームは、最もセクシーなものでも、最もエキサイティングなものでもない。 特に、宇宙旅行を視野に入れて人生をスタートしたスタートアップにとっては、そう見えるだろう。しかし、ロボット工学と自動化の本当の未来は、雇用者が人間の労働者を見つけるのが難しい、退屈で汚く危険な仕事にある。穀物サイロの監視は、少なくとも、最初の部分で大きな存在意義がある。

Disrupt 2020で米国時間9月17日に開催されたセッションです、スコットランドのエディンバラを拠点とするCroverが、そのロボットソリューションを発表した。このロボットはアメリカンフットボールのような形をした小型のロボットで、穀物サイロの中を泳ぐように設計されており、農家に環境条件をよりよく理解してもらうことができる。温度や湿度は穀物の貯蔵に大きな影響を与え、環境条件が悪ければ最悪の場合、穀物貯蔵の大部分を破壊してしまう可能性がある。

Croverロボットは、従来の静的な方法よりもはるかに完全で的を絞った穀物貯蔵の分析を提供するように設計されている。ロボットはサイロの中に住み、分析する際にはサイロの中に飛び込む。 そのすべての情報はダッシュボード上に送られ、農家に内部で何が起こっているかのより完全な画像を提供するのだ。

ロボットの将来のバージョンは、これらの問題のいくつかに対処できるように設計される予定だが、少なくとも今のところは、ロボットが環境問題を特定したときにサイロの所有者が環境問題に対処できるようになっている。

ロボットは、サービスとしてのハードウェアのサブスクリプションモデル、いわゆるRaasで提供され、農家はロボット1台あたり年間約3000ポンド(約40万8000円)のコストで運営できる。なお価格には、ハードウェアとソフトウェアソリューションが含まれている。穀物のサイロごとに1台のロボットを必要とするシステムにしては割高になるが、Croverによると、穀物の損失はグループに年間約2 万4000ポンド(約326万円)のコストがかかることが多いとのことだ。

Croverは、フルタイムの従業員が6名、パートタイムの従業員が1名と、まだ非常に小さなチームだが、2年後には成長を始める準備ができている。これまでのところ、同社の資金は主に助成金と自己資本(ブートストラップ)でまかなっている。それでも、現在、スコットランドを含む英国で2台のロボットを試験運用しており、スペインやイタリアを含むヨーロッパの他の地域からもかなりの関心が寄せられているそうだ。

同社は現在、来年5月の製品発売を目指している。

画像クレジット:Crover

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(翻訳:TechCrunch Japan)

タイの食料サプライチェーン合理化のFreshketが約3.2億円を調達

バンコク拠点のFreshket(フレッシュケット)は新鮮な農産品を農場からテーブルに届けるプロセスを簡素化する。2017年に創業された同社はOpenspace Ventures(オープンスペース・ベンチャーズ)がリードするシリーズAラウンドで300万ドル(約3億2000万円)を調達した。

本ラウンドにはタイのプライベートエクイティファームECG-Research(ECGリサーチ)、Innospace(イノスペース)、そしてインドネシアの農業テクノロジースタートアップTaniHub(タニハブ)の創業者であるPamitra Wineka(パミトラ・ウィネカ)氏とIvan Sustiawan(イヴァン・サスティアワン)氏も参加した。また、既存投資家のフランス・シンガポールの食品複合企業Denis Asia Pacific(デニス・アジア・パシフィック)とタイのファミリーオフィスSeedersclub(シーダースクラブ)も出資した。

Freshketのテクノロジーには、農家や食品加工業者をレストランなどの事業者やタイ国内の消費者につなげるeコマースマーケットプレイスが含まれる。FreshketはCEOのPonglada Paniangwet(ポングラダ・パニアングウェット)氏とCMOのTuangploi Chiwalaksanangkoon(ツアンプロイ・チワラクサナンクーン)氏が共同で創業した。3年前にFreshketを設立する前はそれぞれマーケティング業界で働いていた。

パニアングウェット氏はTechCrunchに対し、彼女自身の家族が25年間農業に従事していたためにアグリテックに参入したかった、と話した。「この業界で上手くいったこと、上手くいかないことについて多くを学びながら育った」と同氏は述べた。「結局、この業界は退屈で、乱雑で、かなり手作業に頼っている」。

Freshketの目標は「食料サプライチェーン全体の後援者」になることだと同氏は付け加えた。

Freshketの前にパニアングウェット氏は、レストランや他の業者に届ける前に生鮮卸売市場で生鮮食品を仕入れ、カットして整える加工処理センターを始めた。同氏はサプライチェーンを簡素化し、農家の収入を増やし顧客が受け取る食品の質を上げるのにテクノロジーを活用することができると気づいた。

またマーケット機会も広がっていた。Euromonitor Internationalの2019年4月のレポートによると、タイにおける食品サービスマーケットはレストラン20万店超による年間購入額として77億ドル(約8180億円)の価値がある。

パニアングウェット氏の良き友だったチワラクサナンクーン氏はタイ最大の銀行の1つを辞めてFreshketを共同で創業した。同社のプラットフォームは、加工センターやサプライヤーを集約し、そうした業者を通常仲買人に頼る農家と直接つなげることでタイの細分化された農作物サプライチェーンをまとめた。Freshketはまた、作物の需要供給を予測するのに役立つデータをユーザーに提供している。

配達事業の運営費用、特に腐りやすい商品のものはかなり高くなる。費用対効果を確保するために、Freshketは生鮮食品を保管しない。その代わり、同社は農家を含むネットワークに需要に応えるためにどれくらいの商品を必要とするかを毎日伝え、サプライチェーンを計画できるようにしている。

パニアングウェット氏はまた、B2Bの食品配達事業は注文平均額が高く、ユニットエコノミクスを高めていると語った。Freshketの注文、倉庫、物流管理システムはすべてリンクしており、「このために当社は商品の流れを管理でき、追加の費用や人件費を抑え、コストベース全体を対処できるものにしている」と付け加えた。

FreshketのB2B業界における主なライバルは従来のサプライチェーン事業者だ。コンシューマー業界ではグローサリー配達スタートアップと競合する。Freshketはすでに合理化されたサプライチェーンを利用しており、同社は安い小売価格を提供する配達アプリと競争を展開している。B2B顧客に対するFreshketのセールスポイントは、正確な配達、豊富な品揃え、農産品の格付けだ。

Freshketが新たに調達した資金はサプライ管理テクノロジーを改善するのに使われる。将来的には融資や需要予測、価格マッチングなどのサービスにも手を広げたい、とパニアングウェット氏は話した。

東南アジアマーケットでは、さまざまな国の食品サプライチェーン合理化に注力しているスタートアップがいくつかあり、Freshketはそのうちの1社だ。他には、TaniHub(未訳記事)、インドネシアのEden Farm(未訳記事)、カンボジアのAgribuddy、シンガポール拠点のGlifeなどがある。

東南アジアのアーリーステージ企業を専門とするOpenspace Venturesにとって今回が3件目のアグリテック投資となる(他の2件はTaniHubと、シンガポールのグローサリープラットフォームRedMartだ)。

投資についての発表文の中で、Openspace VenturesのファンディングパートナーであるHian Goh(ヒアン・ゴー)氏は「高品質でイノベーティブなスタートアップにとってタイのマーケットは可能性を秘めていると我々は確信している。当社のタイにおける今年2件目の投資としてFreshketは我々の確信を反映している」。

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タグ:Freshket 資金調達 農業

画像クレジット:Chonticha Vatpongpee / EyeEm / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

形などが不細工な規格外の果物や野菜を販売するMisfits Marketが91億円調達

形などが不細工で規格外の農産物を販売する電子商取引プラットフォームのMisfits Market(ミスフィット・マーケット)は米国時間7月22日、8500万ドル(約91億円)のシリーズBラウンドをクローズしたと発表した。この投資はValor Equity Partnersが主導し、Greenoaks Capital、Third Kind Venture Capital、Sound Venturesが参加している。

Misfit Marketは、形の悪い安価な農作物をパッケージにして消費者に届けるサブスクリプションサービスとして事業を開始した。扱うのは、流通業者や食料品店の手に渡る前に農家が廃棄してしまったかもしれない作物だ。なぜなら形の悪い作物は、店に並べたところで結局は捨てられることが多いからだ。

そうした農作物には質が劣るわけではない。ただ、形のそろったものが山積みされた中から、あえてそれを選ぶ消費者がいないという問題があるだけだ。

Misfit Marketは、シリーズA投資を獲得してから取り扱い商品の幅を広げる努力をしてきた。現在は、チョコレート、スナック、チップス類、コーヒー、ハーブ、穀物、レンズ豆、ソース、スパイスも買える。利用者は、週1回配達されるボックスに、これらの商品をお好みでで加えることができる。どれも、通常の小売り価格の20〜25パーセント安い。これらの製品は、週に1日(木曜日)だけ提示され、ボックスに入れることができる。

Misfit Marketの基本理念は、食料品サプライチェーンの数々の構造的な非効率性に着目し、作物を安く手に入れ、節約できた経費を消費者に還元するというものだ。この非効率性には、販売期限の問題も含まれる。一部には販売期限の9カ月も前に陳列しなければならない商品もある。また無駄なミスもある(Misfit Marketと契約しているオリーブオイルのメーカーには、缶のラベルを上下逆さまに貼り付ける悪い癖があった)。

期限が重要になる商品でも、Misfit Marketは消費者に直接届けることができるため、流通業者や食料品店と同じルールに縛られることがない。それにより、物流業務をうんと高速化できる。

今回の資金調達の公表にともないMisfit Marketは、ニュージャージー州デランコに新しい倉庫を開設し、米東海岸、南部、中西部への対応能力が倍になるということも発表した。これにより、アラスカ、ミシシッピ、ルイジアナの各州にも配達の足がかりが広がり、さらにウィスコンシン、ミネソタ、アイオア、ミシガンの各州でのサービスが間もなく開始される予定だという。

画像クレジット:Misfits Market

画像クレジット:Misfits Market

膨大な食品廃棄問題を抱えた食品業界も、非効率のままでいたいと望んでいるはずがない。データ科学の面からこの問題に取り組むCrisp(クリスプ)などのスタートアップもある。私はMisfit Marketの創設者でありCEOのAbhi Ramesh(アビ・ラメッシュ)氏に、今後のサプライチェーンの効率化と、Misfit Marketの継続的な成長を妨げるものは何かと尋ねてみた。

「これだけテクノロジーが発達していながら、廃棄される農作物の量は絶対的にも相対的にも毎年増加しています」とラメッシュ氏。「この5年間と、それ以前の5年間の食品廃棄量を比較しても増えています。これは超長期的なリスクの1つですが、少なくとも私たちが目にしていること、そしてデータが示している食品廃棄物に関する方向性は、食品廃棄物の規模が大きくなっているということです」と語る。

Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の研究によれば、今後10年間の食品廃棄量は210億トン、金額にして1兆5000億ドル(約160兆円)相当となり、これから10年で3割増えることになる。

今回の投資を受け、Misfit Marketは新型コロナウイルスのパンデミックの最中にも急増させた人員の拡充を継続することにしている。同社は3月から400人を雇い入れている。それ以前の3カ月間では150人だった。現在の社員数は総勢750人。男女比も均衡が保たれている(男性51%、女性49%)。幹部チームは30%が女性で、20%は人種が混在している。

Misfit Marketは、総計で1億150万ドル(約109億円)を調達した。
画像クレジット:Misfits Market>

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(翻訳:金井哲夫)