京都発HACARUSの衛星画像分析AIがドイツ「INNOspace Masters」イノーベション・コンペで2位受賞

京都発HACARUSの衛星画像分析AIがドイツINNOspace Mastersイノーベション・コンペで2位受賞

京都発のAIソリューションカンパニーHACARUS(ハカルス)は8月5日、ドイツで開かれた第6回「INNOspace Masters」イノベーション・コンペティションにおいて、ドイツ鉄道会社DB Netz AG主催のインフラ保守関連コンペで2位を受賞したことを発表した。

INNOspace Mastersは、「宇宙と地球との持続可能なインフラのためのイノベーション」をテーマにドイツ航空宇宙センターが毎年開催しているコンペティション。今回は2020年10月から2021年2月にかけて実施された。そこではドイツ航空宇宙センターやエアバスなど、4つの企業(団体)が課題を出しており、HACARUSはドイツの鉄道会社DB Netz AGによる主に鉄道関連のインフラ整備技術に関する課題に挑戦した。

HACARUSは、同社のスパースモデリング技術(少ないデータから全体像を把握する技術)を応用して、インフラ設備の状態を衛星画像で即座に分析、遠隔操作による監視と保守を行うAIシステムを提案した。構築後も状況の変化に柔軟に対応し、設備の現状を俯瞰した状態で把握できるというものだ。

また、「ヒートマップやバウンディングボックスなどのスマート機能」により設備の監視や保守が簡単に行え、一定の間隔で行う定期メンテナンスを行う従来方式から、設備の実際の状況にあわせてその時々で対処する保守システムへ転換できるという。

HACARUS代表取締役CEOの藤原健真氏は、「少ないデータで使えるAIを構築できる」同社の強みを、製造業や医療以外の分野にも応用できることを明白に示せたと話している。

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米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

icholakov via Getty Images

アメリカ合衆国統合軍のひとつ、アメリカ北方軍(NORTHCOM)は、Global Information Dominance Experiments(GIDE)と呼ばれるセンサー、AI、クラウドコンピューティングを組み合わせた「未来予測システム」を開発し情報面と意思決定面での優位性を獲得しようとしています。すでに3度目の実験を行っており、司令官いわく「11の戦闘司令部すべてが同じ情報空間で同じ能力を使って協力」して実施したとのこと。

NORTHCOM司令部および北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の司令官グレン・ヴァンヘルク空軍大将によると、このシステムは膨大なデータセットパターン、異常状態、トレンドデータを評価分析して、国防総省に「数日先を見通す能力」を提供することを目指しています。

わかりやすくいえば、映画『マイノリティ・リポート』でピタピタスーツを着て水浸しになっている予知能力者の役割を、AI技術で実現しようとしているわけですが、GIDEは決して10年単位の未来の話ではなく、すぐに利用できるツールの組み合わせで、リアクティブ(反応的)な情報収集からプロアクティブ(積極的)な情報収集環境を構築しているとのこと。

しかも、このシステムは数分とか数時間単位ではなく、数日単位で情勢を把握できるようなるとされています。たとえば何らかの社会的軍事的異変が起こるとして、それが数分後や数時間後なら、軍として対処するにも時間が少なすぎます。しかしもしそれが数日前にわかるのならしっかりと意思決定や戦略を練る余裕もでき、作戦指揮官たるヴァンヘルク大将にとっても部隊配置や大統領を含め各機関のトップと意思統一をはかることができ、大きな”備え”となるはずです。

GIDEシステムは収集する情報として、たとえばある場所に駐車する自動車の数が突然増えただとか、基地に飛行機が集中しはじめたといった、平時とは異なる手がかり、を予測の材料とします。しかしこのシステムだけで「明日どこそこで事件が起こるから」といった具体的な情報がわかるわけではなく、依然として多くの人々が情報を元に頭を使って手立てを考え、実際に動いて備えを講じる必要があります。それでも、テロのような奇襲攻撃を事前に察知できるようになれば、交渉によって戦いを避ける道も探れるかもしれません。それは、非常に価値あるシステムであるはずです。

(Source:U.S.DoD。Via The DriveEngadget日本版より転載)

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グーグルがPixel 6用にカスタムチップを開発、AIとMLを自社スマホの差別化要因にする

Google(グーグル)はさきほど、もうすぐ発売されるスマートフォン「Pixel 6」のニュースをぶちまけた。米国時間8月11日にSamsungの大規模なイベントがあるため、その前に行いたかったのだろう。それとも、秋の大々的な発表に数カ月先駆けて、多くの人の関心を集めたかったのかもしれない。今後のさまざまなリーク情報の、先手を打つという意味もあるだろう。

いずれにしても、Googleが次に出すAndroidスマートフォンの外観の第一印象としては、背面にあるカメラシステムの大きな新デザインが目立つ。これまでの正方形の構成が大きな黒いバーに変わり、ハードウェアの大型アップグレードへの強い意志を感じることができる。前バージョンと前々バージョンでのメインのポイントはソフトウェアとAIだった。

関連記事:グーグルが正式に新スマホPixel 6を公開、専用チップにTnsorを搭載

さらに興味深いのは、TensorがPixel 6とPixel 6 Proで新たにデビューするカスタムのSoCで登場したことだ。同社はこれまでずっと、混雑したスマートフォン市場で自らを差別化することに苦戦してきた。そのための同社の決定打が未だに出てこない現状において、Tensorを実装したカスタムチップは重要な持ち玉かもしれない。

それは、ハイエンドのシステムにおいてQualcommのチップを捨て、Appleに倣ってカスタムチップの道を進むということだ。ただしそのチップはベースがARMのアーキテクチャだ。それは今や世の中の至るところにあるQualcommのSnapdragonチップのベースでもある。そしてGoogleもその低価格製品A Seriesでは、コンポーネントのサプライをサンディエゴの企業(Qualcomm)にこれまで同じく依存している

画像クレジット:Google

「Tensor」という名前は明らかに、これまで多くのプロジェクトを牽引してきたGoogleのML(機械学習)システムであるTensorFlowに由来している。当然ながら、同社はAIとMLを、来るべきスマートフォンにおけるチップの基礎として位置づけている。Pixelのチームはこれまで長年、差別化要因として、コンピュテーショナルフォトグラフィー(計算写真学)といったソフトウェアによるソリューションを追究してきた。

「私たちのシリコンを設計してきたチームは、Pixelをもっと有能にしたいと考えました。例えばTensorがすべてのチップにあれば、すべてのチップをGoogleのコンピュテーショナルフォトグラフィーのモデルを動かせるようにカスタム化できるでしょう。ユーザーにとってそれは、まったく新しい機能であり、同時にまた既存機能の改善でもあります」とGoogleは述べている。

Tensorは、カメラシステムのアップグレードだけでなく、発話認識や言語学習などの改善でも主役となる。当然ながら、その詳細は秋の正式発売までは一般には発表されないが、今回の発表はPixelチームの刷新された未来の姿の紹介に終止していたようだ。スマートフォンにおいてもAIとソフトウェアにフォーカスすることは、まさにスマートフォン分野でGoogleがやるべきことの中心にあるはずだ。

2020年の5月に、Pixelチームの主要メンバーがGoogleを去り、それはチームの今後の変化の方向性を示していたようだ。当時、ハードウェア部門のトップであるRick Osterloh(リック・オスターロー)氏が、厳しい言葉を述べていたらしい。

「AIは私たちのイノベーションの未来ではありますが、今の問題は、私たちがコンピューティングの限界にぶつかっていることです。そのために、ミッションを全幅的に追究することが阻まれています」とオスターロー氏は本日のポストで書いている。「そこで私たちが挑戦したのは、私たちの最も革新的なAIと機械学習をPixelのユーザーに提供できるためのモバイルのテクノロジープラットフォームの構築でした」。

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画像クレジット:Google

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サブウェイ店舗でAIが表情・視線を基にメニュー提案、OKIがAI用いた感情推定技術を活用した提案型注文システムの実証実験

サブウェイ店舗でAIが表情・視線を基にお勧めメニュー提案、OKIがAI用いた感情推定技術を活用した提案型注文システムの実証実験

OKI(沖電気工業)と日本サブウェイ(サブウェイ)は8月2日、OKIの「AIを用いた感情推定技術」(感情AI技術)を活用した「提案型注文システム」の実証実験を開始したと発表した。場所はサブウェイ渋谷桜丘店。検証期間は2021年8月6日まで。同実証実験では、注文客の興味・関心が高そうな「オススメ」メニューを提案して注文時の迷いを軽減する機能の有効性と、店舗における接客業務の効率化、さらにウィズコロナ時代に求められる非対面・非接触操作による注文の有用性を検証する。

実証実験の概要

  • 目的:興味・関心推定技術を用いた提案型注文システムの有効性の検証
  • 期間:2021年8月2日~6日
  • 場所:サブウェイ 渋谷桜丘店
  • 実施方法:当該システムの使用後、アンケート回答
  • 実験参加者:当日募集(先着順)

感情AI技術は、深層学習(ディープラーニング)を用いて、人の自然な表情や振る舞いから潜在的な感情を推定する技術という。提案型注文システムは、OKIの接客支援ミドルウェア「CounterSmart」搭載の感情AI技術の1つ「興味・関心推定技術」を用い、セルフ注文端末のカメラから得た表情データと視線センサーから得た視線データから、独自のアルゴリズムにより、注文客の興味・関心が高そうな「オススメ」メニューを提案し注文をサポートする。

注文客にとっては、メニュー選択の迷いを解消できることに加えて、注文方法がわからないことによる焦り・緊張の緩和、また店舗スタッフにとっては、注文時間の短縮とスムーズな注文による生産性向上、ストレス軽減などが期待できるといしている。

同実証実験では、サブウェイの実店舗において、実験に同意した来店客に実際に注文をしてもらい、その使用感をアンケートにより収集して、サブウェイの注文スタイルに不慣れな場合でも容易に、かつ非接触操作で安心して注文ができるかを検証する。また1人あたりの接客対応時間の短縮など、効率化を検証するとしている。

OKIは、注文を完全に自動化した端末において、視線入力や音声入力などを組み合わせた非接触対応を実現することで、ウィズコロナ時代における感染症予防の「新常態」に適応した新しい接客サービスの提供を目指す。引き続きAIを用いた感情推定技術の社会実装に取り組み、少子高齢化による労働力不足、感染症予防など、社会課題解決に貢献するとしている。

なお同実証実験については、横浜国立大学、自然科学研究機構生理学研究所、エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所(NTTデータ経営研究所)を中心とした「生理学研究所COIサテライト拠点」活動の下で研究開発を進めているものという。同実証実験における各機関の役割は以下の通り。

  • OKI:感情推定技術を活用した提案型注文サービスの研究開発、プロトタイプの開発
  • サブウェイ:実証実験協力店舗の調整、提案型注文サービスの監修
  • NTTデータ経営研究所:OKI×サブウェイのマッチング、COI STREAM研究開発成果の社会実装支援

生理学研究所COIサテライト拠点は、文部科学省「革新的イノベーション創出プログラム」(COI STREAM)の研究開発拠点「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」のサテライト拠点のひとつ。

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マンガを独自技術でローカライズし短時間で世界中の読者に配信するシンガポールのINKR

デジタルコミックのプラットフォーム「INKR」のチーム(画像クレジット:INKR)

INKR(インカー)は、独自のローカリゼーション技術を用いることで、クリエイターが文化や言語の壁を越えて世界中の読者にリーチできるデジタルコミックのプラットフォームだ。これまで自己資金のみで運営してきた同社だが、米国時間7月28日、プレシリーズAの資金調達を行い、310万ドル(約3億4000万円)を調達したことを発表した。今回の資金調達はMonk’s Hill Ventures(モンクス・ヒル・ベンチャーズ)が主導し、マンガ配信会社TOKYOPOP(トーキョーポップ)の創業者兼CEOであるStu Levy(ストゥ・レヴィ)氏が参加した。

シンガポールに本社を置き、ホーチミンにもオフィスを構えるINKRは、2019年にKen Luong(ケン・ルオン)氏、Khoa Nguyen(コア・グエン)氏、Hieu Tran(ヒュー・トラン)氏によって設立された。同社によると、2020年10月に運営を開始して以来、月間平均ユーザー数は200%増加しているという。現在はFanFan(ファンファン)、Image Comics(イメージ・コミックス)、Kodansha USA(講談社USA)、Kuaikan(快看)、Mr. Blue(ミスター・ブルー)、SB Creative(SBクリエイティブ)、TOKYOPOP、Toon’s Family(トゥーンズ・ファミリー)など、70以上のコンテンツクリエイターや出版社と提携しており、これまでにマンガ、ウェブトゥーン、グラフィックノベルなど、800以上の作品を読者に提供している。

INKRのルオンCEOは、TechCrunchの取材に対し、このプラットフォームはまず、世界的なトップ出版社の翻訳コミックから力を入れていくものの、2022年には小規模な出版社やインディーズのクリエイターにも開放する計画があると語った。

INKRのプラットフォームの核になっているのは、独自のローカリゼーション技術だ。これによって、異なる市場に向けてコミックを準備するために必要な時間を、数日から数時間に短縮することができるという。

「コミックのローカリゼーションは、単に翻訳するだけではありません。ファイル処理、転写、翻訳、植字、効果音、品質管理など、多くの人が関わる多くの段階が必要な、時間のかかるプロセスです」とルオンCEOは語る。

INKRが配信している作品の一部(画像クレジット:INKR)

漫画の出版には、言語の違いだけでなく、日本の漫画、中国の漫画(manhua)、韓国の漫画(manhwa)、米国のコミックなど、世界各国のコミックスタイルの違いも考慮する必要がある。例えば、漫画には1ページずつレイアウトされているものもあれば、縦にスクロールして読み進めるものもある。左から右へ読む言語もあれば、右から左へ読む言語もある。

ルオン氏によると、INKRが独自に開発したAIエンジン「INKR Comics Vision(インカー・コミックス・ビジョン)」は、テキスト、セリフ、キャラクター、表情、背景、コマなど、コミックページ上のさまざまなフォーマットや要素を認識することができるという。また、人間の翻訳者のためのツール「INKR Localize(インカー・ローカライズ)」は、テキストの書き起こし、語彙の提案、タイプセットなどの作業を自動化することによって、正確な翻訳をより早く提供するために役立つ。

ローカライズ作業は、世界各地の異なる場所にいる人たちのチームによって行われるため、INKRはブラウザベースのコラボレーションソフトウェアを提供している。このプラットフォームは現在、日英、韓英、中英の翻訳に対応しており、今後も言語の追加が予定されている。快看漫画やMr.Blueなどの出版社では、中国語や韓国語で書かれた何千話もの漫画を英語に翻訳するためにINKRを使用している。

INKRはコンテンツ制作者に、広告サポート、購読料、各話ごとの支払いなど、収益化する手段の選択肢をいくつか提供している。ルオン氏によると、同社のプラットフォームはコンテンツを分析し、どの方法が収益を最大化できるかを判断してパブリッシャーに知らせ、得られた収益の一定割合を分配するという。

INKRと競って注目を集めているデジタルコミックプラットフォームには、他にもAmazon(アマゾン)が運営するComixology(コミクソロジー)や、韓国のNaver Corporation(ネイバー株式会社)が運営する出版ポータルのWebtoon(ウェブトゥーン)などがある。

ルオン氏は、INKRの競争力の強みとして、提供するコミックの多様性と価格の手頃さを挙げている。また、同社が起ち上げ前にデータとAIベースの技術に投資したことも、読者と出版社の両方に向けた強みとなっている。これによってユーザーは自分の読書活動に基づいてパーソナライズされた「おすすめ」作品を受け取ることができ、出版社は分析ツールを利用して消費傾向に基づく作品のパフォーマンスを追跡することができる。

Monk’s Hill VenturesのジェネラルパートナーであるJustin Nguyen(ジャスティン・グエン)氏は声明の中で、INKRの「独自のAIを活用したプラットフォームは、デジタル化とグローバル化を必要とするクリエイターやパブリッシャーの痛点に対応できます。多くの言語に、迅速かつ優れたコスト効率でローカライズすることが可能であり、それと同時に、分析ツールやパーソナライズされたインテリジェントなフィードによって、リーチと読者数の向上を支援します。私たちは、世界中の翻訳コミックに対する大きな需要に応えるために、彼らとパートナーシップを組めることを楽しみにしています」と述べている。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

豆腐業界初の検品業務AI自動化・省人化、日本IBMが徳島県・四国化工機の豆腐生産工場スマートファクトリー化に向け支援

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は7月28日、徳島県・四国化工機の割れや欠けのある豆腐を自動判定し検品する、豆腐業界では初めてとなるAIラインピッキングシステム「STI-ALPS」 (エス・ティー・アイ – アルプス。Shikokukakoki Tofu Inspection – AI Line Picking System)の開発を支援し、2021年6月から稼働を開始したと発表した。

近年豆腐業界は、原材料の値上がりや後継者不足などの理由から地域密着型の個人商店から広域流通に対応できる企業に集約する流れが顕在化しているという。また2020年、国の基準改正により国内で常温流通が可能になったことで、無菌充填豆腐の製造技術を有する四国化工機への需要が増加していたそうだ。

そのため四国化工機では、主力製品の豆腐の品質向上と増産を目指したAIの活用に加え、複数のロボット装置や無人搬送のフォークリストを備えた阿南食品工場新棟を新設し、スマートファクトリー化を推進してきた。新棟では全機器の状況が一元管理できるIoTを導入し、2021年6月から本格的に稼働を開始したそうだ。

また四国化工機では、これまでも画像検査装置の導入を試みたことがあったものの、良品・不良品を判定する項目すべてをルール化し設定する必要があり、豆腐の割れ目やくぼみ、欠けの大きさ・数・深さといった決まりのない形を設定し判別するのは非常に困難で、目視による検査を必要としていたという。

一方今回開発のSTI-ALPSは、大量の画像データをAI学習して良品・不良品の「特徴」をモデル化し製造ラインから自動的に取り除くものとなっており、負荷の高い検品業務を自動化・省人化しているという。また、複数カメラを活用することで、上面・側面・底面に加え、分割パックの内側も検査が可能。これまで長年の経験が必要だった検品の自動化で、作業の速度や精度の向上、品質の安定、コスト削減を目指すとしている。

さらに、ロボット装置や無人搬送のフォークリフトをSTI-ALPSと連動することで、不良品を排除して良品を箱詰めし、冷蔵倉庫へ移動する作業の省人化を推進する。例えば、これまで実施していた目視検査は1ライン3名体制で稼働していたが、無人稼働が可能になり、職場の働き方改革を促進したとしている。

なおSTI-ALPSでは、AIの学習と実行に最適なサーバー「IBM Power System AC922/IC922」と、コーディングや専門的なスキルを必要とせずウェブブラウザー操作でAIの開発・実行が可能な「IBM Maximo Visual Inspection」を利用しているという。

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持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日・海の日から実証販売

持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日の「海の日」から実証販売

AI、IoT、衛星リモートセンシングなどのテクノロジーを水産養殖に活かすことで食料問題と環境問題の解決に取り組む「ウミトロン」は7月21日、イオンリテールと共同で、おいしさ・安心・サステナブルの3点にこだわった養殖魚「うみとさち」を、7月22日の「海の日」から実証販売すると発表した。

この実証実験は、売り場にPOPやリーフレットを置き、商品にはQRコードを添付して、「生産者による品質や安心へのこだわり、海の持続可能性に配慮した取り組み」などを消費者に伝えるというもの。また、海の未来を考える料理人集団Chefs for the Blueに所属するミシュランシェフたちが考案した和洋中など6ジャンルの簡単レシピ、生産者や養殖魚に関する情報なども提供される。

実証販売は、東北、関東を除く本州と四国の「イオン」「イオンスタイル」で、7月22日から25日、さらに7月30日と31日に行われる。販売されるのは、「地域の生物多様性や水質保全など海洋環境に配慮し、国際基準に則った飼料・投薬使用を行なっている」真鯛商品。

ウミトロンのテクノロジーのひとつに、スマート給餌機「UMITRON CELL」がある。AIで魚の食欲に合わせた餌やりが可能で、複数真鯛事業者との大規模実証実験の結果、従来給餌量の2割削減を達成できた。魚の食欲をスマートフォンで確かめ、遠隔で餌やりを行うことで、これまでより少ない餌でも、出荷時のサイズや質が保ちつつ育成期間を1年から10カ月に短縮できたという。餌の海洋流出も抑えられる。

このようにウミトロンは生産現場の課題解決に取り組む中、消費者側の海の持続可能性に対する認識を高め、購買チャンネルを増やすことも重要だと感じていた。そこで「うみとさち」ブランドを立ち上げた。今回の実証販売の目的はそこにある。ウミトロンと同じく、持続可能な生態系づくりを支援しているイオンリテールの理念と合致したことから、この実証販売が実現した。

持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日の「海の日」から実証販売

真鯛商品イメージ(切り身)

持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日の「海の日」から実証販売

真鯛商品イメージ(刺身)

今後は、「うみとさち」の取り扱い魚種と商品形態を増やし、「サステナブルシーフードを(消費者の)日常生活の購買における身近な選択肢のひとつ」となるよう展開してゆくとのことだ。

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AIで生徒への指導を個別最適化する学習システムのatama plusがテマセクなどから51億円調達

AIでそれぞれの子どもに最適化した学習システム「atama+」を提供するatama plusは7月21日、シリーズBラウンドで約51億円の資金調達を実施した。既存投資家であるDCMベンチャーズ、ジャフコ グループに加え、新たにシンガポール政府系ファンドであるテマセク・ホールディングス傘下のPavilion Capital、米運用会社大手のティー・ロウ・プライスなどを引受先とする。今回の増資により、2017年4月の創業以降、金融機関からの融資を含む同社の累積調達額は約82億円となった。

苦手単元をAIで克服できる学習アプリ

atama plusは「基礎学力」習得にかかる時間を短くし「社会でいきる力」を養う時間を増やすことを目指し、AIで学習を個別最適化する「atama+(アタマプラス)」を全国の塾・予備校に提供している。駿台グループやZ会グループ、城南進学研究社などで導入され、2017年7月の提供開始から4年で導入教室数は2500以上となった。

atama+では、つまづいた原因を分析し、苦手ポイントの克服に本当に必要な単元を洗い出していく仕組みを導入している。2020年10月時点では生徒の累積問題解答数が1億件を突破しており、AI強化用データの積み上げを行なっている。

新型コロナウイルスの影響もあり、自宅でも使える「atama+」ウェブ版を開発。2020年7月にはオンライン模試の提供を開始し、12月には立命館とともにatama+の学習データを活用した入試企画を検討する共同研究会を立ち上げている。

今回の資金調達により、プロダクト開発の速度向上、顧客支援体制の強化を行い、UI/UXの改善を図るとともに、マーケティング活動への投資により、atama+の認知・利用拡大を目指すという。

代表取締役の稲田大輔氏は「教育を新しくすることで社会の真ん中から新しくしていきたいが、達成度はまだ0.1%くらいだと思っており、これから仕かけていく挑戦がたくさんあると感じている。今回の調達を機に、より多くの仲間とともに『基礎学力の習得にかかる時間を短くし、そのぶん増える時間で社会でいきる力を伸ばす』というミッション実現を加速させていきたい」と語っている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:atama plus資金調達日本オンライン学習人工知能

メンタルセルフケア・アプリ「emol」と第一生命グループが協業、ミレニアル世代向け保険商品を提供開始

メンタルセルフケア・アプリ「emol」と第一生命グループが協業、ミレニアル世代向け保険商品を提供開始

AIチャットを介したメンタルセルフケア・アプリ「emol」(エモル。iOS版。Android版は秋予定)を提供するemolは7月19日、アプリ上で第一生命保険および第一スマート少額短期保険(第一生命グループ)との協業開始を発表した。emolのアプリ上で、第一生命グループによるミレニアル世代向け保険の提供を開始する。

emolは、2020年9月から11月にかけて、第一生命と共同で、AIがユーザーの悩みに合わせて適切な保険商品をレコメンドするというDX実証実験を行ってきた。emolアプリ上で、AIとユーザーとの会話の中に保険に関する話題が出たときに、AIがヒヤリングを行い、適切な保険商品をレコメンドし、ユーザーに第一生命のウェブサイトへ誘導するという内容という。そこでユーザーが第一生命のウェブサイトへのリンクを実際にクリックした割合(クリック率。CTR)を測定したところ、TwitterやFacebookなどSNS広告のCTRを圧倒的に上回ったそうだ。

今回の協業では、emolアプリ上でユーザーがチャットでAIに悩みを話した際に、保険に関連する話題に合わせレコメンドする機能を採用。またemolアプリ上にAIが保険の診断を行う保険の窓口を設置し、いつでも対象の保険についてAIに質問できる場を提供する(emol保険の窓口は後日発表予定)。

第一生命グループは、スマホで契約ができるミレニアル世代向け新ブランド「デジホ」の保険商品として、「所得保障保険」(emolお仕事ほけん)、「コロナminiサポほけん」(emolコロナほけん)を展開する。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:emol(企業・サービス)AI / 人工知能(用語)第一生命保険(企業)保険 / インシュアテック / InsurTech(用語)メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

YouTubeの動画レコメンドAIは依然として悪行を重ねていることが大規模調査で判明

YouTubeの動画推薦アルゴリズムは長年、さまざまな社会悪を煽ってきたとして非難されてきた。YouTubeには、AIで増幅されたヘイトスピーチ、過激な政治思想、そして同社の広告インベントリに数十億人の目を釘付けにして荒稼ぎするための策略やデマの類があふれている。

YouTubeの親会社であるGoogle(グーグル)は、YouTubeのアルゴリズムが反社会的な動画を推薦していることをめぐって、ひどくなる一方の非難に対して時折対応策を講じているものの(いくつかのポリシー変更憎しみに満ちたアカウトの制限や削除など)、ひどく不健全なクリックベイトを表示するYouTubeの傾向がどの程度復活しているのかは不明だ。

だが、そうした傾向が復活している疑いは限りなく強い。

Mozilla(モジラ)によって公開された新しい調査も同じ考えを支持している。YouTubeのAIによって「他人の不幸を利用して利益を得る」、低級で、争いの種になる、偽情報の動画コンテツが増え続けている。人々の怒りに火をつけ、分裂や分断を縫い合わせ、根拠のない有害な偽情報を拡散するといった行為によって人の目を引く類の動画だ。これらは、悪質な動画を推薦するYouTubeの問題が同社の体質的なものであることを暗示している。つまり、動画の再生回数を増やして広告の表示回数を稼ぐ同社の強欲さの副作用だ。

YouTubeのAIは依然としてひどい行為をしているというモジラの調査結果は、グーグルが少なくとも表面的には改善を行っていると主張することでうまく批判を和らげていることを示唆している。

このようにYouTubeの戦略が曲がりなりにも成功しているのは、推薦エンジンのアルゴリズムの仕組み(と関連付けられたデータ)を世間の目と外部の監視から隠す主要な保護メカニズムが「経営上の機密事項」という都合の良い隠れ蓑によって機能しているためと思われる。

しかし、このYouTube独自のAIブラックボックスをこじ開ける可能性のある規制が、少なくとも欧州では、採択されそうだ。

YouTubeのアルゴリズムを修正するために、モジラは「常識的な透明性を規定した法律、監視の強化、消費者による圧力」を求めており、YouTube AIの過剰機能による最悪の事態を抑制するために、AIシステムに透明性を強制的に導入し、独立した研究者を保護してアルゴリズムによる影響を調査できるようにし、堅牢な制御権(「パーソナライズ」された推薦をオフにする権利など)をYouTubeのユーザーに付与するといったさまざまな法律の組み合わせが必要になることを示唆している。

YouTubeユーザーが観たことを後悔する残念な動画

YouTubeユーザーに対して行われている具体的な推薦に関するデータ(グーグルはこのデータを外部の研究者に対して定期的に公開していない)を収集するため、モジラはクラウドソーシングによるアプローチを採用した。具体的には、ブラウザーの拡張機能(RegretsReporter)を使用して、ユーザーが視聴したことを後悔しているYouTube動画を自己報告できるようにした。

このツールを使用すると、ユーザーに対して推薦された動画(以前再生された動画も含む)の詳細情報を含むレポートを生成して、YouTubeの推薦システムがどの程度機能している(場合によっては「機能していない」)のかを示す実態を構築できる。

クラウドソースで自主的に回答した(モジラの調査にデータが使用された)ユーザーたちは、感染拡大する新型コロナウイルスの恐怖を利用した動画、政治的なデマ「極めて不適切な」子ども向け漫画など、さまざまな「残念な動画」を報告している。レポートによると、最も頻繁に報告されたコンテンツカテゴリーとして、デマ、暴力 / グラフィックコンテンツ、ヘイトスピーチ、スパム / スキャムなどがある。

残念動画のレポートの圧倒的多数(71%)がYouTubeのアルゴリズムによって推薦された動画に対するものだった。これは、YouTubeのAIがユーザーにゴミのような動画を押し付けるのに大きな役割を果たしていることを明確に示している。

また、この調査によって、推薦された動画のほうが調査回答者が自分で探した動画よりも報告される可能性が40%以上高かったことも判明した。

モジラによると、動画推薦アルゴリズムが、YouTube自身のコミュニティガイドラインに違反しているコンテンツまたは以前視聴された動画と関係のないコンテンツをユーザーに提示しているケースがかなり多数見つかったという。つまり、明らかに推薦に失敗したケースだ。

今回の調査結果で特筆すべき点は、視聴して後悔する残念なコンテンツは、非英語圏国のYouTubeユーザーにとって、より大きな問題となるらしいという点だ。モジラによると、YouTube動画を視聴して後悔する確率は英語が一次言語ではない国のほうが60%高かったという。具体的には、ブラジル、ドイツ、フランスではYouTubeの動画視聴で後悔するレベルが「とりわけ高かった」(この3か国は国際市場として決して小規模ではない)。

レポートによると、パンデミック関連の残念な動画もやはり、非英語圏国でより広く見受けられた。これは、世界中で健康危機が継続している今大いに懸念される点だ。

今回のクラウドソーシングによる調査(モジラによるとYouTubeの推薦アルゴリズムに関する調査では最大規模)は、前述の拡張機能をインストールした3万7000人を超えるYouTubeユーザーのデータに基づいているが、このうち実際に動画を報告したのは91カ国、1162人の回答者で、彼らが指摘した3362本の視聴して後悔した動画に基づいてレポートが作成された。

これらのレポートは2020年7月から2021年5月の間に生成された。

モジラのいうYouTubeの「残念な動画」とは実際のところ何を意味するのだろうか。モジラによると、これは、YouTube動画を視聴したときの悪い体験のユーザによる自己報告に基づくクラウドソーシング型概念だという。しかし、モジラによると、この「人力」方式のアプローチでは、インターネットユーザーの実際の経験に重点を置いているため、社会的に主流ではない、あるいは弱い立場の人たちやコミュニティの声をすくい上げるのに効果的だ(狭義の法的な意味での「有害」という言葉を当てはめて終わるのとは対照的だ)。

モジラのアドボカシー担当上級マネージャーで、今回のプロジェクトの主任研究者であるBrandi Geurkink(ブランディ・ゲルキンク)氏は、今回の調査の目的について次のように説明してくれた。「我々は、YouTube動画視聴の泥沼にはまり込んでしまう人々の体験を掘り下げて調査し、よく言われる不快な体験を率直に確認して、そこに埋もれている傾向を把握したかったのです」。

「この調査を実施して、我々が予想していたことの一部が事実であることが確認されたことは本当にショックでした。調査対象人数も少なく使用した方法にも制限のある調査ですが、それでも結果は極めてシンプルでした。データは我々が考えていたことの一部が確認されたことを示していたのです」。

「例えばコンテンツを推薦するアルゴリズムというのは基本的に誤りを犯すものという事実が確認されました。推薦した後で、『おっと、これは当社のポリシーに違反しているじゃないか。これをユーザーに積極的に推薦すべきではなかったな』という具合に。非英語圏のユーザーベースではもっとひどい体験をしているということもあります。こうしたことは事例としてはよく議論されるのを聞きますし、活動家はこれらの問題を取り上げています。しかし、私が今回の調査結果で感じたのは『すごい!データにはっきりと現れているじゃないか』ということです」。

モジラによると、今回のクラウドソーシングによる調査で、ヘイトスピーチや政治的 / 科学的なデマなど、YouTubeのコミュニティガイドラインに違反する可能性が高い、あるいは実際に違反する膨大な数のコンテンツ例が報告され明らかになったという。

またレポートでは、YouTubeが「ボーダーライン上のコンテンツ」とみなす可能性のある多くの動画が指摘されていたという。つまり、分類するのは難しいが、おそらく許容範囲を逸脱していると思われる低質の動画、アルゴリズムによるモデレーションシステムでは対応するのが難しい動画だ(こうしたコンテンツは削除のリスクを逃れ長期に渡って掲載されたままになる可能性がある)。

これに関連してレポートで指摘されているのは、YouTubeは(ガイドラインの中で説明はしているものの)ボーダーライン上のコンテンツの定義を提供していないという問題だ。このため、多くの回答者が「残念」として報告している動画の大半はYouTubeのいうボーダーライン上のコンテンツというカテゴリーに含まれるのだろうという研究者の仮説を検証する手立てがない、とモジラはいう。

グーグルのテクノロジーとプロセスの社会的影響を独自に研究するのを困難にしているのは、研究の基盤となるテーマに掴みどころがない点だ。ただし、モジラのレポートによると、YouTubeへの批判に対するグーグルの対応は「無気力で不透明」だとして非難されてもいる。

問題は、それだけに留まらない。批評家たちは、YouTubeの親会社であるグーグルが、憎しみに満ちた怒りや有害なデマによって生まれるエンゲージメントから利益を得ていることを長い間非難してきた。グーグルが、ユーザー生成コンテンツという名目の下で低質コンテンツビジネスを擁護している間にも、AIによって生成された憎しみの泡によってさらに有害な(それだけに見るものを強力に惹きつける)コンテンツが出現し、疑うことを知らない無防備なYouTube視聴者はますます不快で過激なコンテンツに曝されることになる。

実際「YouTube動画の泥沼にはまる」という表現は、無防備なインターネットユーザーが暗く不快なウエブの片隅に引きずり込まれるプロセスを説明する常套文句となっている。このユーザーの思考回路の修正(洗脳)はAIによって生成された推薦によって白昼公然と行われており、YouTubeという主流ウエブプラットフォームから陰謀論のパンくずリストをたどるよう人々に叫んでいるのである。

2017年、オンラインテロとソーシャルメディアでのISISコンテンツの拡散について懸念が高まっていた頃、欧州の政治家たちはYouTubeのアルゴリズムを自動過激化と称して非難していた。

とはいえ、個々のYouTubeユーザーが過激なコンテンツや陰謀論動画を再生した後「過激化」されているという事例レポートを裏付ける信頼できるデータを取得するのは依然として難しい。

YouTubeの前社員Guillaume Chaslot(ギヨーム・チャスロット)氏は、algotransparencyプロジェクトによって、これまでYouTubeの独自テクノロジーを詳細な調査から保護してきた障害を排除する取り組みを続けてきた著名な批評家の1人だ。

モジラのクラウドソーシングによる調査は、チャスロット氏の取り組みを基礎として、ユーザー自身の不快な体験の各レポートを照合して、いろいろと問題の多いYouTube AIの全体像を浮かび上がらせようとしたものだ。

もちろん、グーグルのみが(詳細度と量の両面において)全体を保持しているプラットフォームレベルのデータを外部からサンプリングするだけで全体像は得られない。それに、自己報告では、モジラのデータセットにバイアスが導入される可能性もある。しかし、モジラはプラットフォームのパワーの適切な監視を支持する立場をとっているため、テック大手のブラックボックスを効果的に研究するという問題は、今回の調査にともなう重要なポイントだ。

レポートでは、一連の推奨事項として「堅牢な透明性、精密な調査、ユーザーに推薦アルゴリズムのコントロール権を付与すること」を求め、適正な監視なしでは、精神的損害を与え人を脳死状態にするコンテンツに、何も考えずにユーザーを晒すことで、YouTubeは今後も有害であり続けると主張している。

YouTubeの大半の機能において問題となっている透明性の欠如は、レポートのその他の詳細部分からも見て取れる。例えばモジラは推薦された残念な動画のうち約9%(200本近い動画)が削除されていることを確認した。削除の理由はさまざまだが、いつも明確な理由があるわけではない(コンテンツが報告され、おそらくYouTubeが同社のガイドラインに違反していると判断した後に削除されたものもある)。

合計すると、こうした一部の動画だけで、何らかの理由で削除される前の合計再生回数は1億6000万回にもなる。

また、残念な動画ほどYouTubeプラットフォーム上で高い収益を上げる傾向があることも今回の調査で判明した。

狂っているとしか思えない数字だが、報告された残念な動画は、回答者が視聴した他の動画よりも、1日あたりの再生回数が70%も多い。この事実は、YouTubeのエンゲージメント最適化アルゴリズムが、単にクリック回数を稼げるという理由だけで、(よく考えられた、有益な情報をもたらす)高品質の動画よりも扇動的な、あるいは誤解を与えるコンテンツのほうを偏って選択するという主張に説得力を与える。

これはグーグルのビジネスにはすばらしいことかもしれない。しかし、民主社会では、ばかげた情報よりも本物の情報に、人工的な / 増幅されたコンピュータ上のデータよりも正真正銘の公開された議論に、争いの種となる部族主義よりも建設的な市民の団結に価値を見出す。そのような民主社会にとって、YouTubeのアルゴリズムは明らかにマイナスだ。

しかし、広告プラットフォームに対する法的な強制力のある透明性要件がないかぎり、そして何より、監査当局による規制の監視と実施がなければ、今後もこうしたテック大手に、無防備なユーザーに目をつけ、社会的犠牲と引き換えに収益を上げる動機を与え続けることになる。

モジラのレポートでは、YouTubeのアルゴリズムが明らかに、コンテンツ自体とは無関係のロジックによって動いている実例も強調している。回答者が残念な動画を報告する前に視聴した動画についてのデータを研究者が持っているケースのうち、実に43.6%で、以前視聴した動画とまったく無関係の動画が推薦されているという結果が得られた。

レポートでは、このような理屈に合わないAIによる推薦コンテンツの急転換の実例を上げている。例えば米国軍の動画を見た人が、その直後に「口コミ動画でフェミニストを侮辱する男性」というタイトルの女性蔑視動画を推薦された例などだ。

ソフトウェア所有権に関する動画を見た後、銃所有権に関する動画を推薦された例もある。2つの権利(right)によって、YouTubeの推薦間違い(wrong)がまた増えたわけだ。

さらには、Art Garfunkelのミュージック動画を見た後「トランプのディベート司会者が民主党と深いつながりがあることが判明、メディアの偏向が限界点に」というタイトルの政治関連動画を推薦された例もある。

こうした間抜けな推薦に対しては「何だって?!」と反応するしかない。

こうした事例のYouTubeの出力は、控えめにいっても「AIの屁のようなもの」としか思えない。

寛大に解釈すれば、アルゴリズムが混乱して間抜けな推薦をしてしまったということなのかもしれない。とはいえ、レポートでは、こうした混乱によって、YouTubeユーザーが、右寄りの政治的偏向のあるコンテンツを見るよう仕向けられている多くの例が紹介されているのは、興味深い。

モジラのゲルキンク氏に最も懸念される点を尋ねると、次のように答えてくれた。「1つは、デマがYouTubeプラットフォーム上で明らかに大きな問題として浮上しているという点です。モジラの支持者や世界中の人たちに聞いた話によると、人々がオンラインに流れるデマについて懸念していることは明白です。ですから、その問題がYouTubeアルゴリズムで最大の問題として浮上しているという事実は大いに懸念されるところです」。

同氏は、もう1つの大きな懸念材料として、推薦動画の問題が非英語圏のユーザーにとって、より深刻になっている点を挙げ、YouTubeプラットフォーム上における世界的な不平等によって「十分に配慮してもらえない」という問題が、そうした問題が議論されているにもかかわらず起こっていることを示唆した。

モジラのレポートに対してグーグルの広報担当にコメントを求めたところ、次のような返事が返ってきた。

当社の推薦システムの目標は、視聴者をいつでもお好みのコンテンツと結びつけることです。ホームページ上だけで2億本を超える動画が推薦されています。システムには、視聴者に好みの動画を尋ねたアンケートの回答を含め、800億を超える情報が入力として与えられています。当社はYouTube上での体験を改善するための取り組みを継続的に行っており、2020年だけで有害コンテンツの推薦を削減するために30カ所を超える変更を実施しました。この変更により、システムによってボーダーライン上のコンテンツが推薦され、ユーザーがそのコンテンツを再生する率は1%をはるかに下回るようになっています。

グーグルはまた、YouTubeに対する調査を歓迎するとし、プラットフォーム調査のために外部の研究者を迎え入れるオプションを検討していることを示唆したが、具体的な内容については触れなかった。

同時に、モジラの調査における「残念な」コンテンツの定義について疑問を呈し、グーグル独自のユーザー調査では、ユーザーはYouTubeの推薦するコンテンツに概ね満足していると主張した。

さらに、実際の発言は引用できないが、グーグルは2021年はじめ、 YouTube向けに「違反再生率」(VVR)という指標の公開を開始した。これは、YouTubeのポリシーに違反しているコンテンツのYouTube上での再生回数割合を初めて公開したものだ。

最新のVVRは0.16~0.18%で、これは、グーグルによると、YouTube上で1万回動画が再生されるたびに、16~18本の違反コンテンツが見つかることを意味する。この数字は、2017年の同四半期と比較して70%以上低下しており、機械学習に投資したことが大きな低下の要因だとしている。

ただし、ゲルキンク氏が指摘しているとおり、グーグル自身のルールにYouTube上で再生すべきではないと明記されているコンテツの再生回数の増加に、どの程度AIが絡んでいるかをコンテキスト化および定量化するためのデータをグーグルが公開しないかぎり、VVRは指標としてはあまり役に立たない。この重要なデータがないかぎり、VVRは大きな見当違いとなる疑いが強い。

「VVRよりも奥深く、本当に役に立つのは、こうしたことに推薦アルゴリズムが果たしている役割を理解することです」とゲルキンク氏は指摘し、次のように付け加えた。「この点は未だに完全なブラックボックスです。透明性が向上しなければ、改善されているというグーグルの主張は話半分に聞いておく必要があります」。

グーグルは、YouTubeの推薦アルゴリズムが「ボーダーライン上のコンテンツ」(つまり、ポリシーには違反していないがグレーゾーンに入る問題のあるコンテンツ)を処理する方法について、2019年に同社が行った変更についても指摘した。この変更によって、この種のコンテンツの視聴時間が70%減少したという。

グーグルは、こうしたボーダーラインカテゴリーは固定されていないことを認めており、変化するトレンドやコンテキストを考慮に入れ、専門家と協力してボーダーラインに分類される動画を決定しているという。ということは、測定の基準となる固定ベースラインが存在しないということだから、上記の70%の減少という数字はほとんど意味がないことになる。

モジラのレポートに対するグーグルの反応で、英語圏以外の市場のアンケート回答者によって報告された経験の質の低下について言及していない点は注目に値する。ゲルキンク氏が示唆しているとおり、一般に、YouTubeが行っているという多くの緩和策は、米国や英国などの英語圏市場に地理的に限定されている(あるいは、まずそうした英語圏市場で対応策を実施してから、その他の市場に徐々に展開されていく)。

例えば2019年1月に米国で実施された陰謀論コンテンツの増殖を抑える変更は、数カ月後の8月になってようやく英国市場にも拡張された。

「YouTubeはここ数年、米国および英語圏市場についてのみ、有害な、またはボーダライン上のコンテンツの推薦について改善を実施したことを報告してきました」と同氏はいう。「この点について疑問を呈する人はほとんどいませんが、英語圏以外の市場はどうなったのでしょうか。個人的には、そちらのほうがもっと注目および精査されてよいと思います」。

我々はグーグルに対して、2019年の陰謀論関連の変更を全世界の市場に適用したのかどうかを確認する質問をした。同社の広報担当によれば、適用したという。しかし、非英語圏市場のほうが、より広範な残念なコンテンツが報告される率がはるかに高いままであることは注目に値する。

明らかに不釣り合いな高いレポート件数を見ると、その他の要因が作用している可能性もあるが、今回の調査結果によってもう1つわかったことは、YouTubeのネガティブな影響に関するかぎり、グーグルは、同社の評価を下げるリスクとコンテンツを自動分類する機械学習テクノロジーの能力が最も高い市場と言語に最大のリソースを投入しているということだ。

AI関連のリスクに対するこうした不平等な対応によって、一部のユーザーが有害な動画のより大きなリスクに曝されることは明白だ。現時点でも多面的で多岐に渡る問題に、不公平という有害な側面が追加された形だ。

これは、強力なプラットフォームが、自身のAIを自身で評価し、自身の宿題を自身で採点し、心底心配しているユーザーに利己的なPRで対抗する状態を放置していることがいかにばかばかしいかというもう1つの理由でもある。

(グーグルは、記事の背景を埋めるだけの上記の言葉だけでなく、自身を、検索と発見アルゴリズムに「権威」を組み込んだ業界で最初の企業であると説明している。ただし、そのような取り組みを正確にいつ行ったのか、そのような取り組みが「世界中の情報を編成し、世界中でアクセス可能かつ有益なものにする」という同社の掲げるミッションを情報源の相対価値を考慮に入れることなく、どのようにして実現できると考えているのかについては説明されていない。そうした主張には当惑してしまう。おそらく偽情報でライバル企業を惑わす不器用な試みである可能性が高いと思うが)。

規制の話に戻ると、EUの提案しているDigital Services Act(DSA、デジタルサービス法)は、説明責任の手段としての広範なパッケージの一部として、大手デジタルプラットフォームにある程度の透明性要件を導入するものだ。この点についてゲルキンク氏に質問すると「DSAは高い透明性を実現するための有望な手段」であると説明してくれた。

しかし、YouTube AIのような推薦システムを規制するには、さらなる法制化を進める必要があることを同氏は示唆した。

「推薦システムの透明性、ユーザーが自分自身のデータの使用許諾を与える権限を持つこと、そして推薦の出力は非常に重要だと考えています。これらは、現在のDSAでは、対応しきれない手薄な部分でもあります。ですから、この部分に腰を据えて取り組む必要があります」と同氏はいう。

同氏が支持を表明している1つの考え方は「データアクセスフレームワーク」を法律に組み込むことで、チェックを受けた研究者が強力なAIテクノロジーを調査するために必要な情報を十分に取得できるようにするというものだ。このアイデアは「透明性に関するさまざまな条項と適用可能とすべき情報の長いリスト」を法律で提示しようとする方法とは対照的だ。

また、EUは現在、AI規制に関する草案を審議中だ。法制化には、人工知能の特定分野への適用の規制に対するリスクベースのアプローチが必要となる。ただし、YouTubeの推薦システムが、より入念に規制されるカテゴリーの1つに収まるのか、あるいは、計画されている法律のまったくの範囲外になるのかは未定だ。(初期の委員会提案では少なくとも)後者の可能性が高そうだが。

「この提案の初期の草案では、人の振る舞いを操作するシステムについて規定しており、これはまさに推薦システムのことです。と同時に、それはある意味、一般に広告の目標であると考えることもできます。ですから、推薦システムがそうしたシステムのどこに分類されるのかを理解するのは簡単ではありませんでした」。

「DSAにおける堅牢なデータアクセスの提供と新しいAI規制の間には、うまく調和する部分があるのかもしれません」と同氏は付け加えた。「最終的に求められるのは透明性ですから、そうしたより高い透明性を実現できるのであれば、良いことです」。

「YouTubeもやろうと思えば十分な透明性を実現できたはずです。我々は、もう何年もこの問題に取り組んでいますが、同社がこの問題について何か有意義な対策を講じたのを見たことがありません。この点は我々も心に留めておきたいと思います。法制化には数年かかります。ですから、我々が推奨したことが一部でもグーグルに採用されれば、それは正しい方向への大きな一歩となるでしょう」。

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タグ:YouTubeGoogle動画人工知能Mozilla

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

​防災テック領域スタートアップのSpecteeが鹿児島県薩摩川内市で発生した河川の氾濫・被害状況をAIで解析・可視化

  1. ​防災テック領域スタートアップのSpecteeが鹿児島県薩摩川内市で発生した河川の氾濫・被害状況をAIで解析・可視化

​防災テック領域スタートアップのSpectee(スペクティ)は7月12日、鹿児島県薩摩川内市で2021年7月10日に発生した河川の氾濫による浸水状況について、AIでリアルタイムに解析し地図上にシミュレーションを行ったと発表した。

現在同社では、AIを用いて、SNSに投稿された画像や河川カメラ・道路カメラの映像から浸水深を自動的に割り出し、降水量・地形データなどと組み合わせて統合的に解析することで、氾濫発生から10分以内に浸水範囲と各地の浸水深を2D・3Dの地図上に表示する技術の開発を進めているという。被害状況をわかりやすく可視化することで、災害対応の迅速化に役立てていくことを目指しているそうだ。現在同技術を通じ得られる、各地点における詳細な緯度経度情報や浸水深(推定値)などのデータの提供を行っており、学術研究や企業の実証実験などで利用できるとしている。

7月10日に発生した鹿児島県薩摩川内市を流れる川内川・支流で発生した氾濫についても、開発中のAIによるリアルタイム浸水推定技術を用いて、SNSに投稿された画像を基に、浸水の推定範囲および深さを地図上にシミュレーションを実施した。ただし、掲載した図は同技術に基づいた推定値としており、現在同技術の開発と並行して精度検証を行っているという。

Specteeは、AI防災・危機管理ソリューション「Spectee Pro」を中心に、AIなど最先端技術を活用したビッグデータ解析を通して、災害関連情報や企業のリスク情報などをいち早く提供する他、デジタルツイン技術による被害のシミュレーションや予測などを実施。「危機を可視化する」をスローガンに、すべての人が安全で豊かな生活を送れる社会の創造を目指している。

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見守りタグ「biblle」のジョージ・アンド・ショーンが7000万円を調達、早期認知症の回復に向けた新規サービス開発

見守りタグ「biblle」のジョージ・アンド・ショーンが7000万円を調達、ヘルスケアAI事業を推進

位置追跡可能なタグとモバイルアプリによる見守りサービス「biblle」(ビブル)を展開するジョージ・アンド・ショーン(G&S)は7月7日、NTT西日本を引受先とする第三者割当増資による7000万円の資金調達を実施したと発表。NTT西日本との資本業務提携により、高齢者の認知症および軽度認知症(MCI)の早期発見のためのライフログ解析AIエンジンと、早期認知症の回復に向けた新規サービスの開発を進めるという。

G&Sはこれまでも、医療データに頼らず、日常的な生活習慣データを利用して認知症やMCIの発見する技術の開発を進めてきた。それを、その他の認知症早期発見や回復を目指したコンテンツやサービスと共に、必要な人にいち早く、できるだけ負担の少ない形で提供することが重要と考えたG&Sは、複数のパートナー企業と連携して、次の3つの柱を軸に社会実装を目指している。

ひとつは、「生活様式を変えない」ログ取得。高齢者の長期にわたる生活行動の記録データ「ライフログ」を、「biblle」や、高齢者施設用見守りシステム「施設360」(シセツサンロクマル)といった製品を活用して、当人に負担をかけずに取得する。

2つ目は、「気づき」を与える検知アラート。認知症またはMCIが疑われる人を高感度でスクリーニングし、当人に早い段階で認知症を疑うきっかけを与える。すでに、 認知症とMCIのスコアリング予測を行うAIプラットフォーム「Cognivida」(コグニヴィーダ)を高齢者施設に導入している。現在、認知症高齢者の検出精度は最大95%、MCIは最大81.8%とのこと(最大精度は睡眠データ利用時。センサーごとに推定精度は異なる)。検知に用いるデータは「位置情報の履歴」「睡眠サイクル」「家電利用の状況」「会話データ」などとしている。

3つ目は、「楽しみながら」の回復コンテンツ。食事、運動、コミュニケーション、脳トレなどを日常的に親しみながら継続できる回復コンテンツを提供する。すでに、食を通じて回復を促す動画コンテンツが展開されている。

これらの取り組みは、NTT西日本をはじめとするパートナー企業との連携で行われている。たとえば、NTT PARAVITAとは、睡眠情報を用いた認知機能推定のためのAI開発が進行中だ。今後は、投薬や医学療法との連携も重視し、医療機関や製薬会社との協力を推進してゆくという。

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モバイルアプリのE2Eテストにも対応するAIテスト自動化プラットフォーム「Magic Pod」のTRIDENTが3億円調達

モバイルアプリのE2Eテストにも対応するAIテスト自動化プラットフォーム「Magic Pod」のTRIDENTが3億円調達

AIテスト自動化プラットフォーム「Magic Pod」を運営するTRIDENTは7月7日、第三者割当増資による3億円の資金調達を発表した。引受先はSTRIVE、Angel Bridge。今後は、グローバル展開も視野に入れたMagic Podの発展および採用強化をさらに加速する。

ソフトウェアテストの世界では、多くのエンジニアやテスト担当者が「リリースのたびに同じ手作業テストを繰り返す必要がある」「テストのせいでリリースサイクルを短縮できない」「機能が増えるとテスト項目が増え、開発速度が落ちていく」といった課題を抱えている。しかし、こうした課題解決のための仕組みを自社で構築するには非常に多くの時間とコストを要し、多くの企業が今も非効率な手動テストに依存している。

同社はそうした課題を解決すべく、AI技術を活用し、ウェブサイトとモバイルアプリのE2Eテスト自動化プラットフォームのMagic Podを開発した。現在利用企業数は500社を超えているという。

TRIDENTは、自動テストコミュニティ「日本Seleniumユーザーコミュニティ」のリーダーを務めるCEO伊藤望氏や、自動テスト書籍の著者・翻訳者である玉川紘子氏・戸田広氏など、自動テスト分野の著名なエキスパートが参画。テクノロジーを駆使した理想的なソフトウェアテストを簡単に行える世界の実現を目指し、誰でも手軽に使える・スピーディーで・品質の高いソリューションの提供を行う。

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カテゴリー:人工知能・AI
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AIやバイオマーカーで患者のモニタリングと医療研究を進めるHuma、日立ベンチャーズなどが支援し142億円調達

世界中の多くの人々が、ワクチン接種で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が抑えられ、最終的には根絶できることを祈るような気持ちで見守る中、ウイルスの蔓延をモニタリングしてきた企業の1つが、その技術に対する強い需要を背景に、大規模な資金調達を発表した。

Humaは、バイオマーカーのデータと予測アルゴリズムを組み合わせて患者のモニタリングを行い、さらに研究者や製薬会社による臨床試験を支援している。同社はこのたび、1億ドル(約109億円)の株式発行と3000万ドル(約33億円)の融資を含むシリーズCで、1億3000万ドル(約142億円)の資金調達を完了した。後日行使できる7000万ドル(約77億円)の株式発行も追加すると、2億ドル(約219億円)まで資金を拡大できることになる。

Humaは、グルコース、血圧、酸素飽和度などを測定する診断機器からのデータに加え、患者がスマートフォンで提供するデータを収集しているが、今回の資金調達はそのデータを補強することを目的としている。測定できるバイオマーカーの種類を増やし、さらに多くの研究と試験に取り組むために、研究開発への投資を継続すること、ロンドンを拠点とし、ヨーロッパ、特に英国やドイツ語圏で好調なHumaのビジネスを、米国などの新しい地域で拡大していくことがその内容だ。

ラウンドには、世界的な製薬・ライフサイエンス企業であるBayer(バイエル)のベンチャーキャピタル部門であるLeaps by Bayer(リープスバイバイエル)と日立ベンチャーズが共同で主導、Samsung Next(サムスンネクスト)、Sony Innovation Fund by IGV(ソニーイノベーションファンド・バイアイジーブイ、ソニーの投資ファンド)、Unilever Ventures(ユニリーバベンチャーズ)、HAT Technology & Innovation Fund(ハットテクノロジー&イノベーションファンド)、Nikesh Arora(ニケシュ・アローラ、ソフトバンクの元社長でGoogleの元幹部)、Michael Diekmann(ミヒャエル・ディークマン、Allianzの会長)などの多数の戦略的・財政的に著名な支援者が参加。今後のビジネスチャンスを物語るものとなった。Bayerは2019年、まだMedopad(メドパッド)と名乗っていたHumaに対し、2500万ドル(約27億円)のシリーズBも主導している。

MedopadがHumaにリブランドしたのは2020年4月。ちょうど新型コロナウイルスのパンデミックが世界中で本格化した頃だった。それから1年、CEOかつ創業者のDan Vahdat(ダン・ヴァハダット)は、対面で直接診察するのが非常に難しい状況下、患者をリモートで監視する技術を提供する同社はさまざまな分野に懸命に取り組んでおり、成長を続けている、と話す。

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「パンデミックが発生した2020年は、健康面だけでなく、研究の面でも皆が悲惨な状況に陥りました」「いかにして治療と研究を分散させるか、がすべての基本です」。

その中には、早期からNHSと提携し、患者の酸素飽和度をモニタリングするために約100万台の酸素飽和度測定器を出荷したことも含まれている。酸素飽和度は、患者が緊急医療を必要としているかどうかを判断する有力な指標であることが早い段階から判明しており、この酸素飽和度測定器は病院が人であふれかえっていた時期に、遠隔で患者のトリアージを行うための重要な手段だった。ヴァハダット氏によると、再入院を3分の1に減らすことに直接貢献したという。

また、同社の技術は手術を予定していたにもかかわらず、延期された多くの患者のモニタリングも担う。英国だけでも480万人の患者が手術を待っているが(「衝撃的な数字です」とヴァハダット氏)、これらの患者にどのように対応すべきだろうか。自宅で心臓手術を待っている患者さんの場合、病状が急速に悪化する可能性がある。そこでHumaは、患者の状態を監視するための診断システムを構築した。病状を管理するだけではなく、状態が悪くなった兆候があれば、悪化して緊急を要するケースになる前に繰り上げて専門家の診察を受けられるようにしたのだ。

臨床分野の活動と並行して、Humaは多くの試験や研究にも取り組んでいる。その中には、緊急承認を受けて流通しているコロナワクチンの1つに関する第4フェーズ試験(承認後に行われる規制プロセス)も含まれる。

また、現在進行中の医学研究に不可欠なデータの提供も続けている。新型コロナに直接関係しないものとしては、Bayerの心臓の研究があり、新型コロナに関係するものとしては ケンブリッジ大学のフェンランド研究と呼ばれる、感染を早期に発見するための、より優れたバイオマーカー(具体的には、デジタル表現型)の研究が挙げられる。

さまざまな企業活動の成功により、HumaにはシリーズBの資金がまだ多く残されている。同社は人道的活動にも力を入れ始め、コロナ危機に瀕するインドやその他の国へのリソースの寄付も行っている。

医療とテクノロジーの架け橋となるスタートアップ企業の将来は明るいが、2020年は、公共の利益という大望を持った優れた企業に投資することがいかに重要であるかが示されただけでなく、彼らがブレークスルーを起こしたときには、企業と投資家にとって大きな意味を持つことが証明された年となった。赤字だったBioNTech(バイオンテック)は、新型コロナワクチンの研究とPfizer(ファイザー)との提携により、2020年最終四半期に10億ドル(約1100億円)以上の利益を生み出すという、まさに大転換を遂げた。

多くの投資家がHumaのような企業やHumaが提供する情報を継続的に支援することに熱心なのは、これが理由だ。

Leaps by Bayerの責任者であるJuergen Eckhardt(ユルゲン・エックハルト)氏は声明の中で次のように述べる。「Leaps by BayerのビジョンとHumaの専門知識と技術の協調は、予防と治療に関する世界的なパラダイムシフトを促進し、データとデジタル技術を使った研究活動を後押しすることになります」「私たちは、世界をより良い方向に変えるポテンシャルのある、最も画期的な技術に投資しています。Humaに初期段階から投資してきた私たちは、Humaがヘルスケアとライフサイエンスにおける主要なデジタルイノベーターの1つとして、どれだけ理想的であるかを理解しています」。

日立製作所の執行役副社長、小島啓二氏も次のように続けた。「Humaは、包括的な遠隔患者モニタリングプラットフォームを構築し、優れた実績を確立しています。私たちは、Humaと協力して、同社の世界最先端の健康技術をアジアの新しい市場に提供できることを非常にうれしく思います。ともに新しいデジタルヘルス製品を進化させ、世界中の人のための優れた医療と研究をパワフルに後押しできると信じています」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Huma人工知能資金調達新型コロナウイルス

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

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メンタルヘルスのセルフケアアプリ「emol」と早稲田大学が心理介入実験を千葉県市原市の職員対象に実施

AIチャットによるメンタルヘルスのセルフケアを目的とするアプリ「emol」(エモル。iOS版)を展開するemolは7月5日、早稲田大学大月研究室と共同でデジタルセルフケア・プログラムの開発を進め、千葉県市原市の協力でアプリによる心理介入実験を実施したと発表した。デジタルプログラムを実施しなかった群との比較において、デジタルプログラムを実施した群に抑うつ・不安への軽減がみられたという。

emolは、ユーザーが感情を記録でき、AIロボットの「ロク」がユーザーとの会話などを通してメンタル状態を分析しアドバイスしてくれるというアプリ。2018年3月からベータ版が公開され、以後改良が重ねられてきたが、2020年12月にAIによるレクチャーやデジタルセラピーの機能を実装して正式リリースとなった。Android版は2021年秋リリース予定としている。

オラクルが2020年10月に発表した報告によれば、日本を含む11カ国、1万2000人を対象に行った調査で、「仕事のストレスや不安を上司よりもロボットに話したい」と回答した人は68%、「メンタルヘルスのサポートを人よりもロボットに頼りたい」と回答した人は82%、さらに「仕事でのメンタルヘルスの改善にAIが役立った」と答えた人は75%いた。こうした背景を受けてemolは、早稲田大学人間科学部・大学院人間科学研究科大月友准教授が顧問を務める大月研究室と「アプリ内でACTを活用した心理療法の研究」を共同で行ってきた。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは、マインドフルネスや実践的な取り組みを基本とする認知行動療法の一種。emolと大月研究室は、「アプリでACTを実践できるデジタルプログラム」共同開発の一環として、2021年3月、千葉県市原市職員から希望者を募り、2週間にわたり実証実験を行った。実験終了の心理テストの結果から、実験の時期が市の繁忙期と重なったために、抑うつや不安のスコアは全体的に高くなっていたものの、このプログラムを使った群と使わなかった群を比較すると、使った群には軽減が見られ、一定の予防効果があったことが期待できるという。

今後は、新型コロナ禍の影響もあり、非対面でのメンタルヘルスサポートを求める声に応えて、24時間対応できるAIによる個人に合わせたメンタルヘルス介入を目指す。また、自治体、企業、学校で、産後うつ予防、小中学生のメンタルヘルス不調予防などの実証実験も行う予定。

なお今回の取り組みは、千葉県市原市の公民連携のオープンイノベーション推進事業「いちミラ~いちはら未来創造プログラム~」に採択されたことから、千葉県市原市の協力が得られたという。

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仕込み調理のアウトソース化を請け負うセントラルキッチンサービス「ロカルメ・オーダー」が生鮮食品の製造に対応

仕込み調理のアウトソース化を手がけるセントラルキッチンサービス「ロカルメ・オーダー」が生鮮食品の製造に対応

「フード産業を持続可能な仕組みへアップデートする」をミッションに、飲食店向けの食品OEMを行うスパイスコードは7月5日、大手居酒屋チェーンのテング酒場を運営するテンアライドと共同で、生鮮食品や日配食品の製造に対応したサービス「ロカルメ for 生鮮」を共同開発したと発表した。

スパイスコードは、飲食店のオリジナルメニューの仕込みや加工をオンラインで請け負うセントラルキッチンサービス「ロカルメ・オーダー」を運用している。セントラルキッチンや食品工場をオンラインでネットワーク化することで、仕込み調理のアウトソース化やEコマース製品の製造を小ロットでも行えるというものだ。これにより飲食店のシェフは、「毎日の仕込みやクリエイティビティの低い業務から解放」され、生産性を高めることができるという。

ロカルメ for 生鮮は、ロカルメ・オーダーを生鮮食品や冷蔵を必要とする日配食品に対応させたセントラルキッチンサービス。日持ちしない生鮮野菜などを使ったミールキットやサラダは、これまでセントラルキッチンサービスでの提供が不可能だった。そこを、AIで需要予測を行い、テンアライドのセントラルキッチンで製造することで、「最小のリードタイム」で提供できるようになった。生鮮食品の加工や、冷凍に向かないデリバリーメニューの製造をアウトソース化でき、また生鮮食品を使ったミールキットのEC商品化の立ち上げも早くできる。

ソフトウェア技術者で、スパイスコードを共同創設者しCEOを務める中河宏文氏は、「シェフである妻の話から食産業でのDXの実現が急務だと確信」して2019年にスパイスコードを設立。「テクノロジーの力を使って消費者起点のなめらかで、無駄のない食料生産・供給ネットワークを社会実装し、飲食店様、強いては『食』の社会インフラを担っていらっしゃる皆様が、より誇りと自信を持って価値を発揮できる環境を創出したいと考えています」と、スパイスコードは話している。

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ソニー「IMX500」採用、動線分析のリアルタイム処理も可能なエッジAIカメラ「S+ Camera Basic」高機能版登場

ソニー「IMX500」採用、動線分析のリアルタイム処理も可能なエッジAIカメラ「S+ Camera Basic」高機能版登場

「IoTテクノロジーの民主化」を目指すソラコムは6月22日、AIカメラ「S+ Camera Basic」(サープラスカメラベーシック)にAI処理機能を持つイメージセンサーを組み込んだ高性能モデル「S+ Camera Basic Smart Edition」(スマートエディション)を発表した。また6月23日には、「S+ Camera Basic」のAIアルゴリズムを開発するパートナー企業としてAI Dynamics Japan(エーアイダイナミクスジャパン)を迎えたことが明らかになった。

2020年7月に発売された「S+ Camera Basic」は、ソラコムのIoTプラットフォーム「SORACOM」を活用するAIカメラとして、商業施設の混雑度の可視化、工場や倉庫などの入退室管理、園芸施設の農作物管理などに利用されてきた。

今回発表されたスマートエディションは、ソニーセミコンダクタソリューションズ製のインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」を搭載。そのDSP(高速演算処理装置)により、イメージセンサーにAIモデルを適用でき、高速で動く人や物の動態トラッキング、工場レーンの不良品検出など、これまでは高速処理を行う外部機器を必要としていた高速画像処理をカメラ内部で行うエッジAIカメラとなった。

またソラコムでは、「S+ Camera」で実行するAIアルゴリズムを開発するAIパートナー企業を募集しており、このほどAI Dynamics Japanについて、SORACOMプラットフォーム活用するソフトウェアやサービスなどを提供する企業「SPS認定済テクノロジーパートナー」として認証した。AI Dynamics Japanは、米国ワシントン州に本社を構えるAI Dynamics(エーアイダイナミクス)のアジア市場の総括拠点として、2020年に設立された日本法人にあたる。「AIのコンビニエンスストア」をスローガンとする同社は、「誰もがAI技術を活用できる世の中」を目指し、AI技術の普及に取り組んでいる。

「S+ Camera Basic Smart Edition」は以下の特徴を備えている。

  • セルラー回線標準搭載:データ送受信はセルラー回線を利用するため、ネットワーク環境構築の必要やデータの漏洩リスクがない。通信切断時も自動で復旧可能
  • アルゴリズムの遠隔更新:専用のコンソールからアルゴリズムを遠隔操作で更新可能。OS停止時も自動で再起動するため、現場に出向く必要がない
  • かんたん設置:電源に接続するだけで利用可能。汎用マウントも利用できる
  • 7つのサンプルアルゴリズムを無料提供:顧客が自主開発したAIアルゴリズムのほか、ソラコムが提供するサンプルアルゴリズムも利用可能。現在提供中のサンプルアルゴリズムは、定期画像送信、顔検出、顔認識(プライバシー)、差分動画、数字・文字読み取り、物体検出、物体検出(動画)となっている
  • IMX500上で高速稼働するAIモデルを利用可能:ソニーセミコンダクタソリューションズ提供の有償または無償のAIモデルを利用可能

S+ Camera Basic Smart Editionの価格は7万1280円(税込、送料別)。本体、ACアダプター、汎用型マグネットマウント、SORACOM特定地域向け IoT SIMカード「plan-D サイズ:マイクロ」(データ通信のみ)を含む。

なお、「SORACOM Mosaic」「SORACOM Inventory」「SORACOM Harvest Files」「特定地域向け IoT SIM plan-D」の月額料金が別途かかる。

予約開始は6月22日、提供開始は2021年9月初旬を予定。

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データ分析の力で意志決定を行う経営層をDXする「Hogetic Lab」が5000万円を調達

データ分析の力で意志決定を行う経営層をDXする「Hogetic Lab」が5000万円を調達

「データの力で経営を再発明する」をミッションとするデータ分析スタートアップHogetic Lab(ホゲティックラボ)は6月23日、第三者割当増資と融資による総額5000万円の資金調達を発表した。引受先は独立系ベンチャーキャピタルmintで、借入先は日本政策金融公庫。

新型コロナウイルスの影響で、マーケティング、セールス、業務などの自動化といったDXを推進する企業が増えたものの、「こうしたDXへの取り組みは進む一方で、旧来より変化していないものがあります。それが”経営”です」とHogetic Labは話す。多くの企業では、経営のための意志決定は経営者などの直感に頼っていて、意志決定の過程と結果の蓄積がない。「そのため会社経営そのものは、実はそこまで進化していないと当社では考えています」という。それは、ディー・エヌ・エーの分析組織に在籍していた大竹諒氏(代表取締役CEO)と、白石裕人氏(取締役COO)がHogetic Labを共同創設した動機にもなっている。

Hogetic Labは、事業に関わるデータを集める分析基盤を高速・低価格で構築できるDCaaS(サービスとしてのデータ収集)「Collectro」(コレクトロ)、意志決定を行う経営層のデータリテラシーを飛躍的に向上させるサービス「BizSchola」(ビズスカラ)、収集データを経営に組み込み意志決定につなげるAIアルゴリズムモジュールを提供するサービス「Factolithm」(ファクトリズム)という3つのサービスを提供している。これらを連携することで企業のデータ利活用水準を向上させるという。「CollectroとBizScholaによって、あっという間にデータ分析ができる社内環境を整え、組織にデータ分析がフィットするまで我々が粘り強く並走します」とのことだ。

今回調達した資金は、Collectroのプロダクト開発とデータ分析に関わる社内体制の強化に利用される。

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フェイスブックがネットショッピングに関連する4つの新機能を発表

Facebook(フェイスブック)は、高校時代の同級生が飼っていた犬の写真を見て商品を購入するようなことが、さらに簡単にできるように、ショッピング関連の新機能をいくつか導入する。もちろん、Instagram Shops(インスタグラム ショップ)や「Facebook Marketplace(フェイスブック マーケットプレイス)」は、すでにアプリの下部ナビゲーションタブに大きく表示されている。しかし今回、その他のアップデートとともに、WhatsApp(ワッツアップ)でもショッピングができるようになった。

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Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは米国時間6月22日、Facebookの音声チャット「Live Audio Room(ライブオーディオルーム)」で、同社のプラットフォームに新たに導入されるeコマース機能を発表した。「Shops on WhatsApp(ショップ・オン・ワッツアップ)」「Shops on Marketplace(ショップ・オン・マーケットプレイス)」「Shops Ads(ショップ・アド)」そして「Instagram Visual Search(インスタグラム・ビジュアル・サーチ)」の4つだ。

ザッカーバーグ氏はFacebookの投稿で「毎月10億人以上の人がMarketplaceを利用しています。そこで私たちは、企業が自分たちのShops(Facebookショップ)をもっと多くの人に利用してもらえるように、Marketplaceに導入できるようにします」と書いている。また、企業はWhatsAppでもFacebookショップを表示させることが可能になり、ユーザーは商品を購入する前にその企業とチャットできるようになる。

画像クレジット:WhatsApp

2021年6月初めに開催された「F8 Refresh(F8リフレッシュ)」の基調講演で、FacebookはWhatsApp Business(ワッツアップ・ビジネス)のアップデートを発表した。それまで、ビジネスアカウントの開設には数週間を要していたが、今ではわずか数分で登録できるようになった。WhatsAppには全世界で20億人以上のユーザーがいるが、カスタマーサポートなどのためにWhatsApp Businessアカウントで毎日メッセージを送っている人は約1億7500万人ほどしかいない。FacebookはInstagramなどのプラットフォームでeコマース向け機能の強化を推進しているため、この取り組みをWhatsAppにも拡大しようとするのは理に適っている。

関連記事:Instagramはクリエイターの生活のためにアフィリエイトとショップ機能を導入

Shops on WhatsAppは間もなく導入が開始される予定で、Shops on Marketplaceはすでに米国ではオンサイトチェックアウトが可能になっている。

3つ目の機能であるShops Adsは、人々のそれぞれの買い物の傾向に基づき、より個人に合わせたショッピング体験を提供することを目的としている。「人々の買い物の行動に基づいて、企業が買い物客を最も購入する可能性の高い場所に送り込むことができる機能の提供を開始します」と、ザッカーバーグ氏は述べている。米国ではAR Dynamic Ads(ARダイナミック広告)の導入が始まっており、Huda Beauty(フーダ ビューティー)やLaura Mercier(ローラ メルシエ)などの企業は、この広告を利用して、顧客が購入する前にARで口紅の色合いを試せるようにしている。このようなAR試着体験は、Modiface(モディフェイス)やPerfect Corp(パーフェクト、玩美移動)とのAPI統合によって提供されるものだ。2021年初めには、Pinterest(ピンタレスト)がModiFaceと協力して、アイシャドウのAR試着を始めている。

画像クレジット:Facebook

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そして4つ目として、Instagramでは今後数カ月以内に、AIを活用したVisual Search機能のテスト導入を開始する。

「ショッピングディスカバリーは、多くの場合、ビジュアルディスカバリーから始まりますよね。良いなと思うものを見かけたら、同じような商品を他にも見たいと思ったり、その商品を手に入れる方法を知りたいと思ったりするでしょう」と、ザッカーバーグ氏は説明する。「そんな問題の解決を、AIが助けてくれるのです」。

このAIを使えば、人々は自分で写真をアップロードして(Instagramに投稿していない写真でもOK)、似たようなアイテムを見つけることができるようになる。この技術を採用したのはFacebookが初めてというわけではない。例えば、CadeeraDonde SearchStye.aiなどではすでに活用されている。しかし、Instagramのようなメジャーなプラットフォームにこの技術が導入されたら、我々の買い物の仕方が変わるかもしれない。それこそが、Facebookの現在の目標であるようだ。

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タグ:FacebookショッピングeコマースSNSWhatsAppInstagramAR人工知能ソーシャルコマース

画像クレジット:Instagram

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

開発期間も費用も短縮させるAI創薬プラットフォームのInsilico Medicine、大正製薬も協業

医薬品開発と創薬のためのAIベースのプラットフォームInsilico Medicine(インシリコ・メディスン)は現地時間時間6月22日、2億5500万ドル(約282億円)のシリーズC資金調達を発表した。この巨額のラウンドは同社の最近のブレイクスルーを反映している。そのブレイクスルーとは、AIベースのプラットフォームが病気の新たなターゲットを生み、その問題を解決するためにオーダーメードの分子を開発し、臨床試験プロセスを開始できると証明したことだ。

また、このラウンドはAIと創薬が引き続き投資家にとって特に魅力的であるという別のサインでもある。

Insilico Medicineは、1つの前提を中心に据えて2014年に創業された香港拠点の会社だ。その前提とは、AIがアシストするシステムが治療法のない病気のための新規創薬ターゲットを特定して新しい治療法の開発をアシストし、ゆくゆくはそうした治療法が臨床試験でどのような成果をあげるかを予想できるというものだ。Crunchbaseによると、同社は以前5130万ドル(約57億円)を調達した。

創薬を促進するためにAIを使うというInsilico Medicineの目標は特に目新しいものではないが、同社が実際に試験予知の初めから終わりまでを通じて新薬発見を実際に達成できるかもしれないことをうかがわせる、いくらかのデータがある。2020年に同社は特発性肺線維症という、肺の中の小さな気嚢が傷つき呼吸が困難になるという病気のための新薬ターゲットを特定した。

2つのAIベースのプラットフォームはまず可能性のある20のターゲットを特定し、そこから1つに絞った。そして動物実験で有望性が認められた小分子治療をデザインした。同社はFDA(米食品医薬品局)に新薬治験の開始届を提出しており、2021年後半あるいは2022年初めに臨床試験を始めることを目指している。

しかしここで注目すべきは薬ではなく、そのプロセスだ。プロジェクトは、通常複数の年にまたがり数億ドル(数百億円)もかかる前臨床医薬品開発のプロセスを期間18カ月、費用約260万ドル(約2億9000万円)に圧縮した。それでも創業者のAlex Zhavoronkov(アレックス・ザボロンコフ)氏は、Insilico Medicineの強みが主に前臨床医薬品開発を加速させたりコストを削減したりすることだとは考えていない。主な魅力は創薬における推測の要素をなくすことにある、と同氏は示唆する。

「現在当社はIPF(特発性肺線維症)だけでなく、16の治療に関する資産を持っています。それは間違いなく人々を驚かせました」と同氏は語る。

「成功の確率がすべてです。すばらしい分子で正しいターゲットを正しい病気につなげることに成功する確率は極めて低いです。当社がIPFやまだ話せない他の病気でそれを行うことができるという事実は、一般的にAIにおける自信を高めます」。

部分的にはIPFのプロジェクトとAIベースの創薬をめぐる熱狂によって展開された概念実証によって支えられて、Insilico Medicineは直近のラウンドでかなり多くの投資家を引きつけた。

ラウンドはWarburg Pincusがリードし、Qiming Venture Partners、Pavilion Capital、Eight Roads Ventures、Lilly Asia Ventures、Sinovation Ventures、BOLD Capital Partners、Formic Ventures、Baidu Ventures、そして新規投資家が参加した。新規投資家にはCPE、OrbiMed、Mirae Asset Capital、B Capital Group、Deerfield Management、Maison Capital、Lake Bleu Capital、President International Development Corporation、Sequoia Capital China、Sage Partnersが含まれる。

ザボロンコフ氏によると、このラウンドには4倍の申し込みがあった。

2009年から2018年にかけてFDAによって承認された63の薬にかかる2018年の研究で、薬をマーケットに投入するのに必要なR&D投資の中央値は9億8500万ドル(約1090億円)だったことが明らかになった。この額には失敗に終わった臨床試験の費用も含まれる。

そうした費用と薬が承認される可能性の低さは当初、創薬プロセスを減速させていた。2021Deloitteレポートによると、バイオ医薬品のR&Dの見返りは2019年に1.6%という低さを記録し、2020年にわずか2.5%に立ち直った。

AIベースのプラットフォームが、試験の失敗を減らすことができる豊富なデータで訓練されるのが理想だとザボロンコフ氏は思い描く。そのパズルの2つの主要なピースがある。ターゲットを特定できるAIプラットフォームのPandaOmicsと、ターゲットに結合するための分子を製造できるプラットフォームChemistry 42だ。

「我々をターゲット発見のための60超の原理を有するツールを持っています」とザボロンコフ氏は話す。

「あなたは斬新な何かに賭けますが、と同時にあなたの仮説を強化する証拠のポケットも持っています。それが我々のAIがうまくこなしているものです」。

IPFプロジェクトは論文審査のある専門誌で全文掲載されていないが、似たようなプロジェクトがNature Biotechnologyで発表された。その論文では、Insilcoの深層学習モデルは可能性を持つ化合物をわずか21日で特定することができた。

IPFプロジェクトはこのアイデアの拡大版だ。ザボロンコフ氏は知られているターゲットの分子を特定するだけでなく、新しいターゲットも見つけて臨床試験に導きたいと考えている。そして、将来の創薬プロジェクトを向上させるかもしれないそうした臨床試験のデータを引き続き集めている。

「これまで、提携して病気を治そうと誰も当社に申し込んでいません。もし実現すれば、かなりうれしいです」。

とはいえ、新しいターゲット発見へのInsilico Medicineのアプローチは断片的だった。例えばInsilico Medicineは新しいターゲット発見でPfizerと、小分子デザインでJohnson and Johnsonと、大正製薬とはこの2つで協業してきた。Insilico Medicineは6月22日にTeva Branded Pharmaceutical Products R&Dとの提携も発表した。Tevaは新薬ターゲットを特定するのにPandaOmicsを使うつもりだ。

2019年にNatureは、大手製薬会社とAI創薬テック企業の間で少なくとも20の提携があった、と指摘した。スタンフォード大学のArtificial Intelligence Index年次レポートによると、医薬品開発を追求しているAI企業の投資は2020年に前年の4倍の139億ドル(約1兆5390億円)に増えた。

創薬プロジェクトには2020年、民間AI投資から最も多い額が注がれた。これは部分的に、パンデミックによる迅速な医薬品開発に対する需要に起因している。しかしながら、創薬における過熱傾向は新型コロナ前からあった。

ザボロンコフ氏はAIベースの医薬品開発が現在やや誇大宣伝の傾向にあることに気づいている。「AIで動く創薬を支える実質的な証拠を持たない企業が迅速に調達できると主張しています」と同氏は指摘する。

Insilico Medicineは投資家の質で他社よりも優れている、と同氏は話す。「当社の投資家は賭け事をしません」。

しかし他のAIベースの創薬プラットフォームの多くと同じく、そうしたプラットフォームが臨床試験のふるいを抜けることができるのか、様子を見る必要がある。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Insilico Medicine資金調達創薬大正製薬人工知能

画像クレジット:phuttaphat tipsana / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Nariko Mizoguchi