打ち上げオペレーションを軸に宇宙事業を近代化するEpsilon3が約3.2億円のシード資金を調達

数億ドル(数百億円)のミッションを抱えているのに、なぜ90年代に作られたソフトウェアを使ってそれを設計し、打ち上げているのだろうか?それは多くの新規宇宙企業が問うている問題であり、Epsilon3(エプシロンスリー)は、こうした企業のオペレーションを、スプレッドシートやWord文書から現代的で協調的な作業プラットフォームへと導く手助けをしようとしている。

TechCrunchは2021年、Epsilon3がデビューしたときに記事にしていた。それ以来同社は、打ち上げオペレーション用のOSをプロトタイプからプロダクトへと移行し、顧客と契約することに熱心に取り組んできており、現在ではその数は数十社になっている。そしてこのたび、プレシードで280万ドル(約3億2000万円)を調達した。

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「2021年は、初期の顧客にMVP(実用最小限の製品)を提供することに尽力していました」とEpsilon3の共同創業者でCEOのLaura Crabtree(ローラ・クラブツリー)氏は語っている。「新規のプラットフォームに乗り出すことをためらう人もいましたが、新しいやり方に適応しようとする意欲が感じられたことは、うれしい驚きでした」。

同社はまた、Y Combinator(Yコンビネーター)の2021年夏のコホートの一環として、自らの適応プロセスにも時間を費やした。

「私は航空宇宙の出身ですので、顧客のことは理解しています」と、SpaceX(スペースX)とNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)で働いた経験を有するクラブツリー氏は語る。「ビジネスの構築とその運営方法について学ぶために、YCに参加しました。自社が構築したいと考えるものから顧客が必要とするものへと移行し、構築すべきことの優先順位を設定するプロセスを開始することにおいて、YCの支援は大変有益なものでした」。

Epsilon3のプラットフォームは元来、打ち上げや衛星の継続的なオペレーションを行うための近代的手段として意図されていたが、それ以上の用途があることが、初期の顧客からも示されていた。

「このソフトウェアがさまざまな業界で幅広いユースケースを生み出していることに驚いています」と同社のCOOであるMax Mednik(マックス・メドニック)氏はいう。「実際に多くの顧客が、新しいハードウェアや統合、テスト手順のために当社のソフトウェアを使用しています。こうした企業は、チームが成長し、野心的な目標を達成しようとしているときに、WordやConfluence、Wikipediaを使ってもうまくいかないと感じているのです」。

画像クレジット:Epsilon3

「【略】のように、情報へのリンクが付いた巨大なスプレッドシートや、すべてのファイルが保存された共有ドライブ上の巨大なフォルダでなんとかやっていくことはできますし、当社が支援している一部の企業もそのようにしています。しかし、間違いを犯しやすいのです」と同氏は続けた。「何かをテストする際にデータを書き出したり、過去のすべての実行にアクセスしたり、監査履歴を保持したりすることが頻繁にあるような状況では、他のツールはうまく機能しません。同じデータのコピーを何百万も保持することになります。何らかの問題が発生した場合、膨大な時間を失う可能性があります」。

Epsilon3は、テスト中にデータを追跡して記録するライブテレメトリ用のAPIを有しており、等しく堅牢でありながら脆弱さが少ないテスト方法を実現している。また、多重オペレーターのサインオフなどの機能も備えており、これは複数の人がデータポイントやフローをチェックして検証する必要がある航空宇宙や防衛産業では必須の要件といえよう。

他のサービスやプラットフォームを統合することも、ユーザーフレンドリーであるためには重要である。全体として、宇宙関連事業の開発用ソフトウェアプラットフォームであるFirst Resonance(ファースト・レゾナンス)に似ているように聞こえるかもしれない。これらの企業は、軌道上に乗る資産の構築と打ち上げという、長く複雑なプロセスの異なる部分にそれぞれ適合しているため、競争相手ではなく仲間であることは理に適っている。

画像クレジット:Epsilon3

「私たちは(First Resonanceと)データのやり取りについてすでに話をしています」とクラブツリー氏。「彼らは設計とハードウェア部分に、私たちはその後のテストとオペレーションに関わっていますので、ユーザーにそのループバックを提供できればと思っています。他のツールからのデータ統合に向けた足がかりを築きたいと考えており、そこに生まれる大きな付加価値を見据えています」。

「多くの人がより充実した自動化サポート、そしてJiraのようなツールやインフラ、メトリクス、分析用の統合を求めています。当社のAPIの隣にネイティブ統合を構築することで、相互運用が可能になります」とメドニック氏は付け加えた。

同社にはまだやるべきことが数多くあるが、顧客はすでに手に入れているものに喜んでお金を支払っているようである。メドニック氏によると、同社は2021年からARR(年間経常収益)を50倍に拡大し、顧客数も3倍以上になったという。その中にはFirefly(ファイアフライ)、Astrobotic(アストロボティック)、OrbitFab(オービットファブ)、Venus(ヴィーナス)、Gilmour Space(ギルモア・スペース)、Stoke Space(ストーク・スペース)、その他まだ公表されていない企業も含まれている。

像クレジット:Epsilon3

「インフラサイドでは多くのレベルアップがなされました」と同氏は振り返る。「これほど大勢の人たちとテストしたことがあるだろうか、という感じでした。そう、私たちはベストを尽くしました。順調にいったと思います」。

「それ以上のものでしたよ、マックス。成功裏に進んだと思います」とクラブツリー氏は応じた。

「本当に、すばらしい成果が得られました」。

今回の資金調達の焦点は、プロダクトとチームの拡張を継続することに置かれている。同社は当初の3人の創業者チーム(Aaron Sullivan[アーロン・サリバン]氏が共同創業者兼チーフエンジニア)から計21人に成長した。まだ規模は小さいが、このようなスタートアップにとっては「ガレージ」段階をはるかに超えている。

280万ドルのシードラウンドには、プレシード投資家のStage Venture Partners(ステージ・ベンチャー・パートナーズ)とMaC Venture Capital(マック・ベンチャー・キャピタル)の他に、新たな投資家としてLux Capital(ラックス・キャピタル)、Village Global(ヴィレッジ・グローバル)、Y Combinator、Pioneer Fund(パイオニア・ファンド)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)、Broom Ventures(ブルーム・ベンチャーズ)が参加した。

画像クレジット:Epsilon3

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

コンピュータービジョンでレストランのオーダーエラーを解消するAgot AI

Agot AIの共同創業者エヴァン・デサントラ氏とアレックス・リッツエンバーガー氏(画像クレジット:Agot AI)

人工知能はいろいろな業界に浸透してきたが、レストランはその中でも後発となり、その主な導入動機はパンデミックとオンラインオーダーの導入となる。

レストランのAI導入は今後も増えるだろう。2021年には米国人の60%が週に1度以上テイクアウトまたはデリバリーを注文し、31%がデリバリーサービスを利用したMarket Study Reportの予想によると、世界のレストラン管理ソフトウェアの市場は年率25%で伸び、2025年には69億5000万ドル(約8034億円)に達する

しかしながら私たちはみな、フードデリバリーが持ってきたものが注文と違うという経験をしている。そこでAgot AIは、機械学習を利用するコンピュータービジョンの技術を開発し、最初はファストフード業界を対象にして、そのようなエラーが起きないようにした。

同社は3年前にEvan DeSantola(エヴァン・デサントラ)氏とAlex Litzenberger(アレックス・リッツエンバーガー)氏が創業し、レストランテクノロジーのオペレーションの側面や、従業員の成功報酬、レストランの顧客満足度の向上などの問題解決を目指した。

画像クレジット:Agot AI

同社のプロダクトは、オンラインからのオーダーに対する正しさをリアルタイムで確認し、修正が必要なら従業員に告げる。たとえば彼らは、チーズとケチャップを加えるのを忘れていたかもしれない。

同社はその技術を発表して以来、Yum! Brandsなどの大手サービスの協力のもとに、展開を進めてきた。Yumの場合、Agotは同社とのパートナーシップにより、その20のレストランでパイロット事業を行った。パイロットの結果が良ければ、Yumの100のレストランで実装する、とAgotのCEOデサントラ氏はいう。

Yum! BrandsのチーフストラテジーオフィサーであるGavin Felder(ギャビン・フェルダー)氏は声明で次のように述べている。「同社は常に、テクノロジーを利用する革新的な方法でチームのメンバーの能力を高め、私たちのレストランにおいて彼らと顧客の両方の体験を向上させようとしてきた」。そしてパイロット事業の初期的な結果は「私たちが料理を届けているすべてのチャンネルで、顧客にオーダーに忠実で正確なメニューを届けることができるという将来的に有望な可能性を示唆している」。

Yum! Brandsは、Agotの顧客であるだけでなく投資家でもある。以前の1200万ドル(約13億9000万円)のラウンドでは、Continental Grain Co.の戦略的投資部門であるConti VenturesやKitchen Fund、そしてGrit Venturesらとともに投資に参加した。これでAgotの総調達額は1600万ドル(約18億5000万円)に達した。

Agotは新たな資金を、技術チームの拡大と、その他のファストフードブランドとのパイロット事業、およびプロダクトの機能拡張に充てたいとしている。また、機能拡張により、デリバリーだけでなく、ドライブスルーや店内での顧客体験も改善していきたい。

同社は、小規模な概念実証レベルの展開で、オペレーションの能力を示してきたため、今後はより大きな市場とオーディエンスにその技術をスケールしたいという。

Agotは成長率などを明かさないが、同社のチーフビジネスオフィサーのMike Regan(マイク・リーガン)氏によると、彼がデサントラ氏と出会ったとき、彼自身は投資家だったが、オーダーの正確さチェックが今後大きなビジネスになることをすぐに理解し、またAgotがそれに対して総合的な視野で臨んでいることを知った。「それはまさにデジタルトランスフォーメーションそのものだった」とリーガン氏は言っている。

Toastのようなレストラン管理のパイオニアや、その他のスタートアップも、2年前ほど前からこのニーズに対応するようになり、それぞれ独自のアプローチを採っているだけでなく、ベンチャー資本も獲得している。

たとえば最近の数カ月ではLunchboxDeliverectOrdaZakSunday、そしてMargin Edgeなどが新たなラウンドを発表し、レストランを新しいオーダー方式に適応させていくことに向けて大金が流れ始めたことを示唆している。

リーガン氏によると、レストラン業界の現状は「厳しい」けれども、Agotは「社歴3年のスタートアップよりもずっと先を行っている」やめ、事業の成功という点でも、また今後の2年間で大多数のファストフード企業を顧客にしていける能力でも傑出しているという。

そしてデサントラ氏は「新たな資本がAgotを次のレベルのビジネスに押し上げる」と感じている。

「初期のパイロットでは成功を証明したし、現在および将来のパートナーを相手にスケールしていけることにもエキサイトしています。新たな資金はプロダクトの機能拡張と、顧客とそのオペレーションの分析、そしてドライブスルー向けの技術開発に充てたい」とデサントラ氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIAが約16億円を調達

トロントに拠点を置く、AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIA(オダイア)は、Flint Capital(フリント・キャピタル)が主導するシリーズA資金調達で1380万ドル(約16億円)を調達した。このプラットフォームは、データ分析、プロセスマイニング、AIを組み合わせ、製薬およびライフサイエンスの商業チームに予測分析を提供するものだ。この資金調達ラウンドは、同社が過去1年間でチームの規模を倍増させたことを受けて行われた。

このスタートアップは、製薬会社のコマーシャルチームが彼らの処方者について何を知る必要があるか判断するのを手助けし、最適なチャネルを通じて正しいメッセージを伝え、最終的には、治療薬を必要とする患者に届けることができるようにすることを目的としている。同社は、プロセスマイニング、カスタマージャーニーマッピング、AIの分野における長年の研究開発の後、2018年にトロント大学で設立された。

「初期の研究作業のいくつかは、ペイシェントジャーニーを分析し、AIと機械学習を使ってそれらのジャーニーを最適化することを中心としていました」とODAIA共同創設者兼CEOのPhilip Poulidis(フィリップ・プーリディス)氏は、電子メールでTechCrunchに語った。「それは、処方者の取引、匿名化された患者の医療請求データ、人口統計学的および社会経済学的データ、匿名化されたラボデータなど、多くの異なるが関連するデータソースの分析を含むために、時間をかけて進化しました。MAPTUALは、上記のデータセットを分析し、予測的洞察を提供するSaaSプラットフォームで、標的治療薬の理想的な候補となる患者を治療している医師の優先順位付けと動的なセグメント化を行うもので、こうした研究・技術開発の積み重ねが、MAPTUALの誕生につながったのです」と述べる。

米国時間2月10日に発表された資金調達ラウンドには、Innospark Ventures(イノスパーク・ベンチャーズ)、Alumni Ventures(アルミナイ・ベンチャーズ)、Graphite Ventures(グラファイト・ベンチャーズ)の他、BDC Capital(BDCキャピタル)、MaRS IAF(マーズIAF)、StandUp Ventures(スタンドアップ・ベンチャーズ)、Panache Ventures(パナッシュ・ベンチャーズ)などODAIAの現在の投資家が参加している。同社によると、新たな資金調達は、プラットフォームの機能強化や、市場拡大をサポートするための営業、マーケティング、カスタマーサクセスチームの拡充に充てられるという。

画像クレジット:ODAIA

プーリディス氏は「今回の資金調達により、製品およびソフトウェアエンジニアリングチームの拡大、商業チームの拡大、プラットフォーム統合パートナーシップの拡大により、製品ロードマップの開発を加速させます」と述べている。

同社は、パンデミックによって顧客向け医薬品ビジネスが変化し、現在はDXが主な優先事項であると述べている。将来についてプーリディス氏は、同スタートアップの目標は、ライフサイエンスデータの多変量データ解析と予測的洞察を1つのプラットフォームで提供することであると述べている。このプラットフォームには、ライフサイエンス企業が処方者とペイシェント・ジャーニーをよりよく理解し、データとAIを活用してリアルタイムに対応できるような機能と能力が含まれると概説した。

同社のシリーズAラウンドは、2019年に発表された160万ドル(約1億8600万円)のシード投資に続くものだ。このラウンドは、Panache VenturesとStandUp Venturesが共同主導し、BDC CapitalのWomen in Technology Venture Fund(ウーマン・イン・テクノロジー・ベンチャー・ファンド)、Inovia Capital(イノヴィア・キャピタル)、MaRS IAFが参加した。この投資家グループは、Toronto Innovation Acceleration Partners(トロント・イノベーション・アクセレーション・パートナー)、トロント大学のUTEST(ユーテスト)、N49P、Ontario Centres of Excellence(オンタリオ・センター・オブ・エクセレンス、OCE)、Autonomic.ai(オートノミック・ドット・エーアイ、Fordが買収)の共同創業者であるAmar Varma(アマール・ヴァルマ)氏などのプレシード投資家に参加した。

画像クレジット:ODAIA

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ローコードでサードパーティサービスを統合するプラットフォームDigibeeがシリーズAで約28.7億円調達

ローコード統合プラットフォームDigibeeは、今、すべての同類のプラットフォームが行っていると思われること、つまり資金調達を行う。米国時間2月3日、同社はSoftBank Latin America Fundが主導するシリーズAラウンドで2500万ドル(約28億7000万円)を調達したことを発表した。このラウンドには、ブラジルのKineaG2D Investmentsも参加している。

2017年に登場したDigibeeは、企業がコードを一切触ることなく、統合ワークフローを簡単に構築・展開できるようにするものだ。同じことを喜んでやってくれるプラットフォームは他にもたくさんあるが、Digibeeが他と異なるのは、統合を構築するだけでなく、その統合を再利用可能なビジネスロジックにすることにも重点を置いているサービスである点だ。1年前、同社は「Capsule(カプセル)」と呼ばれる組織全体で共有できる共通の統合機能のパックを発表した。

画像クレジット:Digibee

現在の顧客には、Accentureやブラジルの証券取引所B3、小売チェーンのCarrefourなどがいる。

「私たちは、グローバル企業のデジタル化の旅を支援しています。これにより、企業は経済的に高額な初期費用なしに成長・拡大することができ、人材はビジネスの推進に専念できるようになります。私たち自身は、米国と世界各地に拠点を設け、世界で最も革新的な企業を顧客にしていきたい」と、Digibeeの共同設立者兼CEOであるRodrigo Bernardinelli(ロドリゴ・ベルナーディネッリ)氏は語る。

同社によると、今回の資金調達は、米国での市場開拓戦略の支援に使う予定だという。

「私たちのプロダクトは、競合他社よりもはるかに優れたシステム統合の課題を解決しており、多国籍の顧客は私たちにグローバルな事業展開を求めています。そのためには、各ターゲット市場で優秀な人材を採用する必要がありました」と、ベルナーディネッリ氏はいう。

また、同社は事実上すべての機能において、従業員数を急速に増やす計画であることも明かした。

SoftBank Latin America Fundのアーリーステージ投資担当マネージングパートナーであるRodrigo Baer(ロドリゴ・ベア)氏は、次のように語る。「Digibeeへの投資に、とてもエキサイトしています。同社は、統合の費用という問題に挑戦しています。それは、ソフトウェア経費の50%以上を占めることもあります。それでも、企業は統合化によって、自他複数のシステムを接続してデジタルトランスフォーメーションを実現できます。Digibeeの営業力はワールドクラスのものなので、そのソリューションを市場化していく能力があります。これにより彼らのプロダクトは、グローバルなプレイヤーに育ちます」。

画像クレジット:Ed Peeters/EyeEm/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

新規事業開発パートナーのコパイロツト、誰でもプロマネを実践できるSuperGoodMeetingのスタートアップ向けプランを開始

新規事業開発、DX推進などプロジェクト推進支援を行うコパイロツトは、2021年6月に提供を開始した。定例会議・ミーティングを活用して不確実性の高いプロジェクトを最短で成功まで導くクラウドサービス「SuperGoodMeetings(SGMs)」の少人数向けプランを開始した。

同社は、2005年の創業以来、100社以上の企業にプロジェクト推進支援を実施。現在は、主に新規事業開発やデジタルマーケティング、DX(デジタルトランスフォーメーション)など大型プロジェクトの推進支援を行い、そのスキルセットを普及させるためSGMsの開発、提供を行っている。

定例ミーティングを活用したプロジェクト推進支援の経験から生まれたプロジェクトマネジメントSaaS

SGMsは、熟練のプロジェクトマネージャーたちが行っているファシリテーションや会議術を、誰でも簡単に実践できるようにしたウェブサービスだ。定例会議・ミーティングと合わせて利用することで、多様なメンバーを取りまとめ、複雑性の高いプロジェクトを着実にゴールへと導いていく。同サービスには、長年にわたり、コパイロツトで数多くのプロジェクト支援を手がけてきたメンバーの知見やノウハウが盛り込まれている。このサービスでは「プロジェクトの目標は何か」「いつまでに何をすべきか」「今、この会議で何を議論すべきか」を徹底的に可視化する。

会議運営を支援するのはプロジェクトをさらに推し進めるため

コパイロツトではこれまで、数々のプロジェクト推進支援を行ってきた。その経験から新規事業開発などの不確実性の高いプロジェクトにおいては、定例会議・ミーティングをより良い場にすることが、プロジェクトの質を上げることにつながるという仮説を立てている。

「Slackなどの非同期ツールで反応があまりない人がいる場合、その人の性格というよりも、プロジェクトの理解が足りていなかったり、関係構築ができていないことがその原因になっている場合もあります。定例会議で良く交流できていれば。非同期のコミュニケーションも円滑になるのではないでしょうか」と同社共同創業者の定金基氏はいう。そのため、SGMsは定例会議をベースにしたプロジェクト管理ツールとなっている。各自がマイルストーン(中間目標)を立てて、状況を書き込めるようになっており、定例会議で「いま何を意思決定すべきか」の状況把握がしやすく、議論を促す設計になっている。

左から共同創業者の定金基氏、プロダクトCOOの高山道亘氏

ツールの開発のきっかけは、社内にあったプロジェクト推進のための知見を体系的に整理し、メソッドとして社外に広く公開したことだ。そのメソッドを実践するために、Officeなど自由度の高い既存のツールや、その他のプロジェクト管理ツールなどを試したが、プロジェクト推進のための会議運営には特化していなかったため、限界があると感じた。そこで開発されたのがSGMsだ。開発にあたり、よりプロジェクトの参加者がプロジェクト全体の状況を理解し、自律的に動けるようになる環境づくりを支援する設計を意識した。

プロダクトCOOを担う高山道亘氏は「ユーザーのみなさまからは、『資料が点在せず、議事録、タスク、アジェンダが一元管理できた』『参加者のロール(具体的に何をすればいいか)が明確になった』といった声が寄せられています。今後は、よりチームとして使いやすくなるような機能の拡充や、他サービスとのAPI連携も視野にプロダクトを育てていきます。まだまだ一部の方にしかアプローチできていないので、分野・チーム規模に関わらず、プロジェクト推進に関わるすべての方に知っていただきたいですね」とプロダクトの拡張に意欲を示している。

スタートアップなどの少人数向けプランも登場

SGMsは、アカウント数制限なし、1プロジェクトまで無料。これまで有料プランは大規模利用向けの月額8580円(税込)のものだけだったが、2021年11月にスタートアップなどの小さなチームでも導入しやすい月額880円(税込)のプランが追加されている。

また、SGMsを使用したプロジェクト推進コンサルティングパッケージも展開している。

これまで従来のクライアントに導入を推奨してきていたが、広く多くの方に使って欲しいということからプランを拡充している。多様なメンバーで、変化の激しいプロジェクトに取り組んでいる幅広いチームに、ぜひ利用してみて欲しい。

レシピやメニューコスト計算機などのツールを一元管理、キッチンのDXを進めるMeez

プロ向けレシピソフトウェアと料理オペレーティングシステムを作成しているMeez(ミーズ)は、引き続きシェフのレシピ管理を支援するツールを開発するために、初のラウンドで650万ドル(約7億5000万円)を調達した。

MeezのCEOジョシュ・シャーキー氏(画像クレジット:エヴァン・ソン)

CEOのJosh Sharkey(ジョシュ・シャーキー)氏は、自身もキャリアの大半をシェフとして過ごし、2015年にニューヨークを拠点とするテクノロジー会社を法人化した。しかし、自身のレシピや調理工程を保存する場所を探すきっかけとなったのは、15年以上前にレシピや料理の作り方を記録していたノートを紛失したことだった。同僚たちは、標準的なGoogleやWord文書、スプレッドシートなどを使っていたが、シャーキー氏はさらにデジタルなアプローチを望んでいた。

「すべてをデジタル化するにはどうしたらいいのか、というアイデアがひっかかりました」とシャーキー氏はTechCrunchに語った。「在庫管理のためのツールや財務ソフトのようなものはありますが、キッチンで使うために作られたものや、私たちが実際に行っていることに関連したものはありませんでした」。

シャーキー氏とそのチームは、コラボレーションツール、レシピキーパー、進行、トレーニング、下ごしらえツールを1つにまとめたMeezを構築した。同氏はそれを「シェフのためのGoogle Drive」と呼んだ。

この技術には2つの構成要素がある。1つはユーザーがレシピをシステムに入れること、そしてユーザーと厨房の同僚の両方がレシピを拡張して使えるようにすることだ。また、成分量や単位換算、メニューコスト計算機、アレルゲンの自動タグ付けや栄養分析など、シェフが日々活用するリソースも備える。

このソフトウェアは2020年に発売され、MeezはすでにJose Andres(ホセ・アンドレス)氏やJean-Georges Vongerichten(ジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリヒテン)氏といった大手レストラン経営者や、Institute of Culinary Educationなどの料理学校を顧客に抱える。

今回の資金調達はStruck Capitalがリードし、Craft Ventures、Relish Works、Aurify Brands、Food Tech Angels、Branded Strategic Venturesが参加した。エンジェル投資家には、Snapの元製品責任者Bobby Lo(ボビー・ロー)氏、Shefの創業者でBento Boxの創業者兼CEOのKrystle Mobayeni(クリステル・モバイェニ)氏が含まれる。

Meezのソフトウェア(画像クレジット:Meez)

Meezは2020年12月に20の有料顧客からスタートし、今では高級レストランからファストカジュアル、料理学校まで多様なレストラン750以上に増えていて、シャーキー氏は2023年にこの分野を掘り下げる予定だ。また、この間、同社の売上高は前年同月比22%増と順調に伸びていて、これは同社独自のアプローチとデジタルの導入が厨房に浸透してきたことが要因だとシャーキー氏は話す。

「食の世界で普及曲線が初期段階に達しました」とも同氏は語る。「料理のプロは、より少ない労力でより多くのことを行う方法を認識し始めており、常に労働力に頼ることはできません。パンデミック以前はうまくいっていたことが、今はうまくいかないのです。レシピに頼るだけではもうだめで、コンテンツを運用できるようにするために、他にやらなければならないことがあります。以前はそれをする場所がなかったので、これは役に立つツールであり、必要なものです」。

シャーキー氏は、新しい資本をiOSアプリの開発や、メニュー計画、セルフオンボーディングの自動化などの技術開発に投入し、消費者への直接のレシピ提供の立ち上げとテストなどをするつもりだ。

さらに同社は2022年中に新しいレストランを引きつけ、チームを拡大する。Meezの従業員数は現在17人だが、2022年中に10人増やす予定だ。

「料理のプロは、地球上で最もクリエイティブで独創的な人たちに含まれます。しかし、彼らの仕事は物理的なものであるため、デジタル技術を活用してワークフローや共同作業のためのシステムを改善する方法には、ほとんど注意が払われていません」とStruck CapitalのCEOであるAdam Struck(アダム・スタック)氏は声明文で述べた。「ジョシュはプロのシェフであり、レストラン業界のオペレーターであり、テクノロジーの専門家であるという点で、ユニークな創業者です。彼は、ほぼすべての厨房を悩ませている問題点を、直感的で美しいデザインのプラットフォームに統合し、世界最大かつ最古の産業の1つである厨房の大きな問題点を解決することができました」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

配管工、電気工事士、機械工向けビジネス管理ツールを提供するFuzey

ロンドンを拠点とし、中小企業や個人事業主向けに「デジタル・ワンストップ・ショップ」と呼ばれるサービスを提供しているFuzey(フュージー)が、450万ドル(約5億1000万円)のシード資金を調達した。

このラウンドは、byFounders(バイファウンダーズ)が主導し、Flash Ventures(フラッシュ・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローパル・ファウンダーズ・キャピタル)、Ascension(アセンション)の他、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであるStephane Kurgan(ステファン・クルガン)氏、Amplo VC(アンプロVC)の創業者兼CEOであるSheel Tyle(シール・タイル)氏などのエンジェル投資家グループが参加した。

今回のラウンドにより、同社はHenrik Lysgaard Jensen(ヘンリク・リスガード・ジェンセン)氏とAlex Boyce(アレックス・ボイス)氏が2020年に設立以来、総額520万ドル(約5億9000万円)の資金調達を行ったことになる。また、この投資の一環として、byFoundersの投資家であるSara Rywe(サラ・ライウェ)氏と、Flash VenturesのパートナーであるLorenzo Franzi(ロレンツォ・フランジ)氏が、同社の取締役に就任した。

CEOのリスガード・ジェンセン氏とCOOのボイス氏は約2年ほど前に出会い、中小企業のデジタル化を支援することで意気投合した。配管工、電気工事士、機械工などの小規模事業者をターゲットにしている理由について、リスガード・ジェンセン氏は「ローカルビジネスはすべてのコミュニティのバックボーンである」と信じているが、ビジネス管理用に開発されたツールの多くは、このような事業者には手が届かないし、またこのような事業者を念頭に置いて設計されてもいないからだ。

他にもこのような種類の事業に注目しているスタートアップ企業はある。11月に1500万ドル(約17億円)を調達したPuls Technologies(プラス・テクノロジーズ)のモバイルアプリは、職人とオンデマンドの住宅修理サービスをつなぐものだ。また、2021年初めに6000万ドル(約68億円)の資金調達を発表したJobber(ジョバー)のように、もっと規模の大きな企業もこの分野には存在する。

ボイス氏にとって、個人的にも特にこの分野には思い入れがあるという。同氏の母親は中小企業の経営者で、革製のノートを使ってビジネスを行っていたが、常にノートの紛失を恐れていたと説明する。

「これらは私たちが取り組んでいるテーマです」と、ボイス氏はTechCrunchに語った。「新型コロナウイルス感染症の流行期間中に、どうすれば私たちは変革の担い手になれるかを考えました。消費者の需要が変化し、人々がテクノロジーをより重視するようになり、地元の商店とさまざまな方法で関わりたいと思っている状況を見て目が覚めたのです」。

そうして同社が作り上げたツールは、請求書など従来は手作業で紙に書いて行っていたことを、中小企業向けにデジタル化するものだ。顧客とのコミュニケーション、支払い、マーケティング、カレンダーなどを1つのダッシュボードにまとめ、事業を管理し、オンラインのプロフィールを充実させることができる。

ユーザーの中小企業は、メッセージングからソーシャルメディアまで、さまざまな方法で顧客とコミュニケーションをとることができる。また、請求書を作成して即時に支払いを処理したり、リードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための取り組み)を洞察する機能も用意されている。さらに、Fuzeyは文書のテンプレートやワンクリックカスタマーレビューも提供しており、簡単に顧客がレビューを残せるようにすることができる。

「レスポンスタイムは重要です。当社では、あらかじめ質問やコメントが定義されたレスポンステンプレートも用意しているので、顧客に迅速に対応することができます」と、リスガード・ジェンセン氏は述べている。「私たちは、この機能が20、30、40の時間的効果をもたらすと確信しています」。

6月に製品の販売を開始した同社は、今回の資金調達を製品開発と地域の拡大に活用する予定だ。Fuzeyはすでに、欧州、米国、カナダの一部の市場で事業を展開している。従業員数は現在10名で、顧客数、売上高ともに前月比で2桁の伸びを示している。

画像クレジット:Fuzey / Fuzey co-founders Alex Boyce and Henrik Lysgaard Jensen

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

規格外・余剰農産物の売却先をオンラインで農家とつなぎ食品ロスの削減を目指すFull Harvest

年間約40%の食料が廃棄されており、食料廃棄は世界で2兆6000億ドル(約294兆円)規模の問題になっている。Full Harvest(フルハーベスト)は、この問題は流通の問題であり、農産物のサプライチェーンをデジタル化することで解決できると考えている。

サンフランシスコに拠点を置く同社の農産物企業間取引市場は、農産物の買い手と売り手が、わずか数クリックで余剰または規格外の作物の取引を迅速に成立させる手段を提供する。農家にとっては新たな収入源となる。

創業者でCEOのChristine Moseley(クリスティン・モズレー)氏はTechCrunchに対し、生産者の大半はいまだにペンや紙、ファックスを使ってビジネスを行っていると語る。

「これは最も重要な産業の1つです。私たちはこの産業を自動化し、オンライン化することで、これまで解決されていなかったことを解決したかったのです」とモズレー氏は付け加えた。「例えば、売買には膨大な事務処理が必要ですが、オンボーディングプロセスを自動化することで、これまで数週間かかっていた作業が数分で済むようになります」。

そこでFull Harvestは、マッチングアルゴリズムや可視性を備えたスポットマーケットプレイスなど、バイヤーがサプライヤーの在庫を確認できる技術の開発に奔走した。また、第三者による監査・検証プロセスを構築し、一貫した仕様を提供することで、本来は救われるはずだが、廃棄されてしまう農産物の平均量を減らすことに成功した。拒否率は、業界平均10%に対し、同社は1〜2%だとモズレー氏はいう。

過去2年間で、Full Harvestの食品廃棄物削減効果は5倍になり、同社はこの勢いを維持するために追加資本を求めることになった。

同社は米国時間12月17日、シリーズBで2300万ドル(約26億円)の資金調達を発表した。Telus Venturesがこのラウンドをリードし、新規投資家からRethink Impact、Citi Impact、Doon Capital、Stardust Equity、Portfolia Food & AgTech Fund、および既存投資家からSpark Capital、Cultivian Sandbox、Astia Fund、Radicle Growthが参加した。今回の投資の一環として、Telusの投資ディレクターであるJay Crone(ジェイ・クローン)氏がFull Harvestの取締役に就任した。

Full Harvestを取材するのは久しぶりだ。TechCrunchは2016年、同社の旅が始まったときに紹介し、2017年に200万ドル(約2億2600万円)を調達した時に再び紹介した。2018年にはシリーズAで850万ドル(約9億6000万円)を追加で調達した。追加の資金調達をあわせると、現在の調達総額は3450万ドル(約39億円)だ。

同社は、Danone North America、SVZ、Tanimura & Antleなど、食品・飲料、加工業界や生産者業界のビッグネームと取引している。

「より持続可能なビジネスを構築することの重要性は、特に食品・飲料分野の企業にとって、かつてないほど明白になっています」とDanone North Americaのギリシャヨーグルト・機能性栄養食品担当副社長であるSurbhi Martin(スルビ・マーティン)氏は話した。「Full Harvestを通じてオンラインで農産物を調達し、通常であれば廃棄されてしまうような果物を当社の製品用に調達することで、より持続可能な食品を求める消費者の要望に応えています」。

Full Harvestのビジネスモデルは、同社のマーケットプレイスで行われるすべての取引の1%を取るというものだ。2020年から2021年にかけて、サプライチェーンに透明性を持たせた結果、売り上げは3倍になったとモズレー氏はいう。2018年当時、Full Harvestの従業員は約8人だったが、現在は35人にまで増えている。また、同社はカナダを含め地理的にも拡大した。

モズレー氏は、新しい資金で技術開発に投資する他、2022年には技術および製品チームの規模を3倍にし、北米での進出地域を引き続き拡大し、農産物の入手可能性、価格、仕様、持続可能性、品質、予測サポートなどのデータと市場インサイトの提供を進めるつもりだ。

食品廃棄物に取り組み、ベンチャーキャピタルから資金を調達しているのは、Full Harvestだけではない。2021年に限っても、企業から次のような発表があった。

このようにプロデュースの分野で技術革新を進めている企業もあるが、モズレー氏は、Full Harvestのユニークな点は、その専門性が持続可能な製品側にあることと、農産物サプライチェーンのデジタル化のリーダーとしての実績があることで、その両面で先行していると話す。

次は、物流技術に関する提携を確保し、さらなるスケールアップと提供可能なSKUの拡大を図る。

「これまで業界ではオフラインだったプロセスの自動化をある程度完了し、当社のテクノロジーとユーザーエクスペリエンスは大きく向上しました」とモズレー氏は付け加えた。

画像クレジット:Max / Unsplash

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

店舗の場所探しやサプライチェーンの最適化など、マップ上でのデータ可視化と活用を支援するCartoが約69億円調達

空間分析プラットフォームCarto(カート)がシリーズCラウンドで6100万ドル(約69億円)を調達した。多くの企業は、何らかの位置情報が結びついたデータを大量に収集している。Cartoは、そのデータをインタラクティブな地図上に表示し、より簡単に比較、最適化、比較検討、意思決定ができるようにする。

米国時間12月14日のラウンドは、Insight Partnersがリードしている。またAccel、Salesforce Ventures、Hearst Ventures、Earlybird、Kiboといった既存投資家の他、European Investment Foundも参加した。

多くの企業がデータ戦略に取り組み、何らかの知見を得ようとしている。まず、データウェアハウスを採用し、現在と過去のすべてのデータを1カ所に集約する。企業はAmazon Redshift、Google BigQuery、Snowflakeといった製品を利用している。

その後、ウェアハウスに蓄積されたデータを活用するために、さまざまなビジネスインテリジェンス、レポーティング、データ可視化ツールが用意されている。そのうちの1つが、空間分析に特化した製品を展開するCartoだ。

Cartoは、複数のソースからデータを取り込むことができる。過去のデータをローカルファイルとしてアップロードすることもできるが、ライブデータに直接接続することも可能だ。データベース(PostgreSQL、MySQL、Microsoft SQL Server)、クラウドストレージサービス(Dropbox、Box、Googleドライブ)、データウェアハウス(Amazon Redshift、Google BigQuery、Snowflake)との接続を提供する。

「この3年間で、データウェアハウスが台頭し、データウェアハウスをベースにしたアーキテクチャはほとんどなかったところから、支配的な実装になりました」と、CartoのCEOであるLuis Sanz(ルイス・サンズ)氏は筆者に語った。「そのため、我々はすべての主要なデータウェアハウスの上に空間的な拡張としてCartoを構築することに注力してきました。というのも、この傾向はちょうど加速しているところだからです」。

その後、顧客はSQLクエリを使ってデータを調べ、データを充実させることができる。特に、Carto独自のデータカタログを活用することができる。同社は、オープンデータソースと民間プロバイダーの両方から約1万のデータセットをコンパイルしており、約3600のデータセットがオープンデータだ。

すべての設定が完了すると、インタラクティブなダッシュボードが表示される。地図上を移動したり、レイヤーを選択・解除したり、実際の数字を見たりすることができる。まるで「シティーズ・スカイラインズ」をプレイしているような感覚になるはずだ。

顧客はCartoを使って、次の店舗を開くべき場所を探したり、屋外広告の予算を一部の地域に優先配分したり、サプライチェーンを最適化したり、適切な地域に携帯電話の基地局を配備したりしている。

地方自治体、銀行、消費財メーカー、クレジットカードネットワーク、そして交通機関、公共事業、通信事業といったインフラ企業など、さまざまな顧客を納得させることができるのはそのためだ。

「データウェアハウスの台頭により、企業はすべてのデータを1カ所で統合し、接続することができるようになりましたが、地理空間データも例外ではありません。そして今、我々のクラウドネイティブサービスによって、その上で空間分析を行うことができるようになりました。当社のSpatial Extensionは、主要なデータウェアハウスの上で動作し、その利点を最大限に活用します。そしてユーザーに高いパフォーマンス、拡張性、安全性を備えた地理空間分析のための完全なツールを提供します」とサンズ氏は声明で述べた。

基本的に、Cartoはデータウェアハウスへの移行と一般的なデジタルトランスフォーメーションの恩恵を受けている。より多くの企業がクラウドに移行すれば、そうした企業はCartoの潜在顧客となる。

画像クレジット:Timo Wielink / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

コーヒー2050年問題に挑むTYPICA、世界のコーヒー流通をDX

朝、目覚めたあとに、「まずコーヒー」という人は多いだろう。全世界でコーヒーは毎日22億杯飲まれている。つまり、(正確ではないが)世界人口の4分の1の人にとって欠かせない飲み物である。世界中で石油の次に多い流通量というのもうなずける。

しかし今のままでは、おいしいコーヒーを飲めなくなる時代がやってくるといわれている。「コーヒー2050年問題」だ。

その問題とは何か、何がその原因となっているのだろうか。コーヒー豆のダイレクトトレードプラットフォームを提供するTYPICAが開催したメディアセミナーで、それらに加え、同社の考える解決策や、実際に見られている成果について代表 後藤将氏に聞いた。

TYPICA代表の後藤将氏。普段はオランダを拠点としている(画像クレジット:YASUAKI HAMASAKI)

コーヒー2050年問題

私たちが普段飲んでいるコーヒーは、赤道を挟んで北回帰線(北緯25°)と南回帰線(南緯25°)に挟まれた「コーヒーベルト」と呼ばれる、地球上でもごく限られた地域で生産されている。そのため、消費量の多い欧米をはじめ、日本でも輸入に頼らざるを得ない。つまり、コーヒーは貴重な農産物なのだ。

しかし、過去30年間で世界のコーヒー生産は600万トンから1030万トンへと70%も増加している。

喜ばしいように見えるこの成長の裏にあるのが、これまで生産していなかった国のコーヒー業界への台頭だ。以前であれば主要な生産国はコロンビア、メキシコ、エチオピア、グアテマラ、エルサルバドルなどであったが、最近ではベトナムといった東南アジアでも生産が盛んになってきている。

もともと生産量の高かったブラジルと、近年になって生産を開始したベトナム。この2国による大量生産が、コーヒー生産の増加の85%を牽引している。

国別生産量の遷移。赤い線で表されている生産国は今後の生産が危ぶまれている

では何が問題なのか。

コーヒーの品種(原種)にはアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種があり、全流通の60%をアラビカ種が占めている。

このアラビカ種は、高品質で、いわゆる「おいしい」コーヒー。缶コーヒーなどでも、誇らしげに「アラビカ豆使用」とプリントしてあるものを目にしたことがあるだろう。

おいしくて高品質な反面、アラビカ種は病害虫に弱く手間がかかる。つまり、コストがかかるのだ。

しかし、気候変動による収穫量の減少、収穫可能なエリアの変化、買い手が価格を決める「先物市場」という取り決めなどにより、生産者が1年もの間、手間ひまかけて生産したコーヒーで生活できなくなりつつある。しかも、大量生産する国が生産量を上げてきたことから、需要と供給のバランスが崩れ、価格が下がり気味。流通量が増えれば増えるほど、小規模生産者の手取りが減り、コーヒーで生活できなくなってしまうのだ。

コーヒーは天候に左右されやすく、収穫後も果皮を発酵させたり、水洗いしたり、天日干ししたりと何かと手間がかかる

そうすると、生活のためにマンゴーやバナナといったリスクが少なくコストのかからない農産物へと添削する農家が増える。その結果、これまで小規模ながらも高品質で希少なコーヒー豆を輩出していた生産者が減り続け、2050年には「普遍的」で「平準化」されたコーヒーは飲めても、おいしくて高品質、かつ個性豊かなコーヒー(ケニア、メキシコ、エルサルバドルといった産地のもの)を飲めなくなってしまうと予測されているのだ。

セミナーの最中にふるまわれた3種の希少なコーヒー(画像クレジット:YASUAKI HAMASAKI)

これがコーヒー2050年問題といわれているものだ。

サステナビリティ×DX=TYPICA

では、30年後の世界にもおいしいコーヒーが存在し続ける方法はないのだろうか。

それを解決する1つの鍵は、生産者がコーヒー豆の生産で生計を立てられるようにすることだ。つまり、生産者が生活を続けられるようにすることが、おいしいコーヒーのサステナビリティにつながる、というわけだ。

TYPICAは、コーヒー豆生産者が国際価格で売らざるを得ない状況から、世界各地のロースターに適正価格でダイレクトトレードできるような仕組みを整えた。

それが、社名にもなっているコーヒー豆のダイレクトトレードプラットフォーム「TYPICA」だ。

TYPICAの仕組みはこうだ。

コーヒー豆の生産者がニュークロップ(収穫し精製したて)のコーヒー豆を、TYPICAのオンラインプラットフォームに登録(オファー)する。ロースターは更新されたオファーリストから、購入したい生産者のコーヒー豆を選び、価格を確認して予約する。単位は麻袋で、1袋に約60キログラムの生豆が入る。

購入個数により、手数料率が変化する。輸入にかかる費用などもわかったうえで、ロースターは購入する

予約数が確定したところで、TYPICAが総数を取りまとめ、輸入する。国内到着後、各ロースターに配分。在庫を持たず、在庫から受注分を配送するわけではないため、到着したばかりのフレッシュな生豆をロースターに届けられる。もちろん、在庫を持つことによる余計なコストもかからない。

一般的に、個人店のロースターが生豆を購入するのは問屋や卸業者からである。それら業者は、商社がコンテナ単位(約18トン)で仕入れて流通させたものを取り扱う。その結果、チェーン店ではないロースターは、「一般的」な「よく知られている」生豆を仕入れるほかない。独自性を打ち出すとしたら、焙煎方法やブレンドの比率を変更するぐらいしかなかったのだ。

しかし、TYPICAを利用することにより、名前を知ることがなかったような中小規模の農園が作る、高品質で希少なコーヒー豆に出会えるため、他店との差別化を図れるようになる。

国内で名前の知られていない中小規模の農園で作られたコーヒー豆の買い付けに不安を感じさせないよう、TYPICAでは次のようなものを提供している。

  1. サンプルリクエスト:オファーリストの中から、生産者(農園または精製所)の扱っている品種を選び、リクエストする。ロースターは、届いたものをカッピング(ワインでいうところのテイスティング)して購入を検討する
  2. カッピングコメント:カッピングしたロースターは、オファーリスト内にカッピングコメントを書き込める。それを参考にして購入を検討する
  3. 生産者情報:コーヒーの味を決めるのは品種だけでなく、エリアや標高も関係している。開示されている生産者情報をもとに味を予測し、購入を検討する

実際に、サービスを利用しているロースターの1人である石井康雄氏(Leaves Coffee Roasters)は、「新しい農園を発見することにより、他店との差別化が図れる。大規模ロースターのようなネームバリューがなくても、高品質なコーヒーを入手するチャンスが与えられている」とコメントした。

ケニアでコーヒーカンパニーを経営しているピーター・ムチリ氏(ロックバーンコーヒー)は、「生産者からロースターの元へ豆が届くまでの費用に透明性があるおかげで、生産者のモチベーションが上がっている。なぜなら、彼らにきちんとした対価が支払われていることがはっきりわかるからだ」とコメント。ボリビアで精製所を経営しているフアン・ボヤン・グアラチ氏(ナイラ・カタ)は、TYPICA側の人がインタビューのために生産者と会うので、信頼関係が生まれ、モチベーションもアップして、コーヒーの生産を続けるという意志が生まれている。また、ヨーロッパやアジアのロースターに、自分たちの豆が届く、ということも、彼らに良い影響を与えている」と語った。

なお、TYPICA自体のサステナビリティも気になるところだが、現在のところロースターから得る手数料(15~30%。購入袋数によって段階的に遷移)によってマネタイズしているという。

世界59カ国でサービスを開始したとはいえ、まだ赤字状態が続いている。「2025年が損益分岐点になるだろう。今は、投資を受けつつ、面を取りにいく段階にある」と後藤氏は語った。

コーヒーを愛するすべての人がコーヒーを愛し続けられるように

「これまで、ロースターが、離れた場所にいる生産者について知るすべはほとんどなかった」と後藤氏。「今回のように我々がオーガナイズしたイベントに、生産者とロースターにオンラインで参加してもらうことで、お互いの顔を見られるようになった。それが、ロースターにも生産者にも良い影響を与えている」という。

また、「今まで、中小規模の生産者は、世界にオファーできなかったが、TYPICAのプラットフォームを通じて、ダイレクトトレードが可能になった。ロースター側も中小規模の生産者からオンラインで購入できるようになった」と述べ、「これがコーヒー業界のDXたる所以だ」と説明した。

共同代表の山田彩音氏は「大規模生産されたものが大量に流通するようになったため、コーヒー豆の生産地に依る多様性が失われているという声がある。また、どのロースターに行っても、同じような品種しか置いていない。TYPICAというプラットフォームを利用することで、ロースターはオリジナリティを発揮できるし、客側としてはスペシャリティコーヒーを身近なロースターで楽しめるようになる。生産者の生活も守られ、持続性に役立つと考えている」と、TYPICAが果たす役割についてまとめたていた。

鈴木洋介氏(ホシカワカフェ)は、「遠い国にいる生産者も、私たちと同じように生活しているんだ、という意識を改めてもてるようになった。彼らの中には、自分たちが生産したコーヒーを飲んだことのない人がいることだろう。『あなたの育てたコーヒーは、こんなふうに焙煎されました』と、生産者に飲んでもらえる仕組みを作ってもらえたら」とコメントとともに要望を出した。

今後の展望については、「マンツーマンで、オンライン商談できる場を提供したいと考えている。言語の壁があるので、通訳付き。チケット制にして30分間、直接商談してもらえるようになる」と後藤氏。それがもたらす「おいしくて高品質」なコーヒーの持続性への効果について、次のように期待を込めて語った。

「これにより、中小規模の生産者であっても、世界中のロースターを相手に取引できるようになり、農園を続けるモチベーションを保ってもらえる。また、自分たちが販売した価格と、ロースターが購入した価格の差について透明性が保持されているため、搾取されているという気持ちが生まれない。正当な対価が支払われていると感じてもらえる。

コーヒー生産で生活できるようになれば、農園を続けたいと考えたり、もっと質の高いものを生産したいと試行錯誤したりしてくれるようになる。それが、多様で希少なコーヒーのサステナビリティへとつながるのだ」と後藤氏はいう。

画像クレジット:YASUAKI HAMASAKI

農家のDXを支援するFieldinがアグリテック仲間のMidnight Roboticsを買収

新型コロナが注目される以前から、農業ロボットにとってこの2年間は大きな意味を持っていた。人口増加と環境問題は、将来的に人々に食料を供給する方法を考える上で大きな原動力となってきた。またパンデミックは、多くの農家が現場作業員の確保に苦労していることから、その懸念に拍車をかけている。

2016年にテルアビブで行われたピッチオフ(投資家への売り込みコンペ)で優勝して、TechCrunchにでも紹介したFieldinが米国時間11月17日、Midnight Roboticsを買収する計画を発表した。外野からすると、お似合いのカップルだ。イスラエルとオーストラリアを経由し、現在はカリフォルニアを拠点とするFieldinは、農家のデータ収集と自動化を支援する。一方、Midnightはトラクターなどの農業機械にLiDARを利用したセンサー技術をもたらす。

Fieldinによると、同社の技術は1日程度で立ち上がるという。他の多くのサービスと同様に、同社は技術者を農場に派遣し、農家をサポートしている。少なくとも、新しい技術を手に入れなければならない既存の多くの技術に比べると、コスト的に楽だ。

この買収によって、Midnightの技術がFieldinの既存のソリューションに統合される。

Fieldinの共同創業者でCEOのBoaz Bachar(ボアズ・バチャー)氏は、プレスリリースで次のように述べている。「過去8年間、私たちは数百の農場と1万台以上のトラクターと、その他の農業機械をデジタル化してきました。大規模農業の世界ではどこよりも多いと自負しています。またその間、農場管理のベストプラクティスを伝えることができる大量の貴重なデータを集積しました。Midnight Roboticsを買収することで、農家はデータから得る洞察を自律的なアクションに結びつけるループを閉じることができます。農家は、自分が何をやるべきかを正確に知り、すべてを同じプラットフォーム上で、自律的に実行できます」。

Midnight Roboticsの共同創業者であるYonatan Horovitz(ヨナタン・ホロビッツ)氏とEdo Reshef(エド・レシェフ)氏はFieldinに移り、それぞれ自律担当最高責任者(chief autonomy office)とCTOになる。またこの買収により、両人はFieldinの共同創業者に名を連ねることになる。

画像クレジット:Midnight Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ソフトバンクが支援するインドの物流企業Delhiveryが約1130億円のIPOを申請

インドの物流スタートアップ企業であるDelhivery(デリバリー)は、新規株式公開で約9億9800万ドル(約1133億円)の資金調達を目指していると、現地の規制当局とのやりとりの中で述べており、世界第2位のインターネット市場で、他の多くのテックスタートアップ企業とともに公開市場を模索している。

10年の歴史を持つこのスタートアップは、6億6900万ドル(約759億円)相当の新株式を発行する予定で、残りの資金は既存の株式を購入するために利用されると、同社は申請書(PDF)で述べている

インドの新聞Economic Timesが今週初めに報じたところによると、4カ月前に30億ドル(約3400億円)以上の評価を受けていたこのスタートアップは、公開市場で60億ドル(約6800億円)以上の評価額での上場を目指しているという。

関連記事:インド物流市場システムのデジタル化を進める最大手DelhiveryがIPOに向け約304億円調達

SoftBank(ソフトバンク)、Tiger Global Management(タイガー・グローバル・マネジメント)、Times Internet(タイムズ・インターネット)、The Carlyle Group(カーライル・グループ)、Steadview Capital(ステッドビュー・キャピタル)、Addition(アディション)に支援されたDelhiveryは、フードデリバリー企業としてスタートしたが、その後、インドの2300以上の都市と1万7500以上の郵便番号を対象とした物流サービス一式にシフトした。

データインテリジェンスプラットフォームであるTracxn(トラックスン)によると、グルガオンに本社を置く同社は、これまでに13億7000万ドル(約1556億円)の資金を調達している。2021年3月に終了した会計年度では、5億1400万ドル(約583億円)の売上に対して5600万ドル(約63億6100万円)の損失を計上した。

2021年度のDelhiveryの業績(DelhiveryがIPO申請時に共有したもの)

同社は、貨物交換プラットフォームを通じて物流市場の需要と供給のシステムをデジタル化しようとしている数少ないスタートアップの1つだ。

このプラットフォームは、道路輸送ソリューションを提供し、荷主、代理人、トラック運送者を結びつけるものだ。仲買人の役割を軽減し、Delhiveryにとって最も人気のある輸送手段であるトラック輸送などの資産をより効率的にし、24時間体制のオペレーションを保証するものだと同社は述べている。

このようなデジタル化は、国民経済を長年にわたって低迷させてきたインドの物流業界の非効率性に対処するために非常に重要だ。Bernstein(バーンスタイン)のアナリストは、インドの物流市場に関する先月のレポートで、需要と供給の計画と予測が不十分なため、輸送コスト、盗難、損害、遅延が増加すると報告している。

Delhiveryは、これまでに10億件以上の注文を配送しており、同社のウェブサイトによると「インド最大のeコマース企業や大手企業すべて」と取引しており、1万社以上の顧客と取引しているという。最終目的地までの配送に関して、同社の配送者は、2平方キロメートルを超えないエリアを割り当てられ、1日に数回の配送を行うことで時間を節約している。

インドの物流市場のTAM(獲得可能な最大市場規模)は2000億ドル(約22兆7200億円)を超えると、Bernsteinのアナリストは2021年初めに顧客向けのレポートで書いている。同スタートアップは2020年末、パンデミックの中でオンラインで買い物をする人が増え、増大する注文需要に対応するため、2年以内に4000万ドル(約45億4500万円)以上の投資を行い、運送車両規模をする計画であると述べた。

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

DXを推進する日清食品がアプリを内製、ノーコード・ローコードで営業担当が25時間で完成

日本マイクロソフトが10月11日から14日にかけて開催中の「Microsoft Japan Digital Days 2021」では、生産性や想像力を高め、組織の競争力に貢献するソリューションや、その導入事例について学べるプログラムが提供されている。

Day 2の10月13日13時5分に行われたセッション「外注から内製化へ。製造業が取るべき次なる一手!日清食品グループが実現した『低コスト』『高スピード』のアプリケーション開発の世界」では、IT企業ではない日清食品がDX推進の一環として行ったアプリ内製化について語られた。その様子をレポートする。

登壇者は日清食品ホールディングスのCIO成田敏博氏と情報企画部係長武田弘晃氏だ。

老舗食品製造企業がアプリ内製化に取り組むようになった背景

日清食品ホールディングスCIO成田敏博氏

日清食品は1948年に設立された70年を超える老舗の食品製造企業だ。売上収益は約5000億円、営業利益が約550円という企業規模である。

2030年に向けた成長戦略テーマ「既存事業のキャッシュ創出力強化」「EARTH FOOD CHALLENGING 2030」「新規事業の推進」を達成するのに欠かせないのが「フードテックイノベーション」であるとしており、デジタルのみならずビジネスの変革も含むためNBX(日清ビジネストランスフォーメーション)としてDXに取り組んでいる。

取り組みを大きく2つの柱に分けており、その柱の1つ「効率化による労働生産性の向上」内に「ツールの最大活用」がある。

同社では、従業員にSurface Proを支給しており、ほとんどの業務がSurface Pro、つまりノートPCで行われているが、工場内作業中、取引先への移動中などではモバイル端末のほうが操作しやすい。腰を落ち着けて作業できる環境であっても、スキマ時間にノートPCを取り出し、起動し、テザリングをし、検索するといった動作は時間や手間がかかる。

そのため、ツール開発に「モバイルファースト」を掲げ、できるだけモバイルで業務を行えるようにすることを目指した。

しかし、製造業のためエンジニアを多数抱えることは現実的ではない。かといって外注では社内のニーズに迅速に対応できない。

そこで、2021年に入ってから内製化のため「ノーコード・ローコード」でのアプリ開発を検討。Power Appsを活用したアプリ開発に取り組むことになったのだ。

25時間で開発した営業活動を助ける商品検索アプリ

日清食品ホールディングス情報企画部係長武田弘晃氏

どの企業でもそうだが、日清食品グループでも営業担当者は商談など外回りが多い。移動中やスキマ時間に、得意先から質問されるであろう商品について調べるには、ノートPCよりモバイル端末に優位性がある。

とはいえ、商品データベースにアクセスするには、支給されているノートPCからしか行えず、開くのが難しい場合は社内の営業事務担当者に当該製品の検索を依頼していたという。場合によっては、検索してもらったものが正しいかを確認後、取引先へメールしてもらうということも行っていた。

これでは、営業事務担当者は、その都度、行っていたかもしれない作業の手を止めて、依頼に応えなければならないし、外回りをしている営業担当者にもストレスがかかってしまう。

そこで、すでにMicrosoft Listsに格納している商品データベースをスマホで検索できるような商品検索アプをMicrosoft Power Appsで開発することにした。

アプリの開発に要した時間は、開発のためのトレーニング、フィードバックを受けての修正の時間も含めてわずか25時間。内訳は、ハンズオントレーニングが2時間、大枠の作成に10時間、日清らしいデザインや使い勝手の追加に7時間、営業戦略部門へβ版の説明を行うのに1時間、そしてフィードバックを受けて行った機能の追加開発に5時間だ。

同アプリの特徴としては、商品検索時に品目コードでも略号でも商品名でも検索できること、入力文字列も全角半角、大文字小文字、ひらがな・カタカナを問わず直感的に利用できること、フィルターやソートはコンボボックスではなくワンタップで検索できるボタン形式を採用していること、ヘルプのキャラクターに同社のキャラクター「ひよこちゃん」を使っていることなどがある。

また、閲覧履歴を設けて移動中に調べた商品情報にすばやくアクセス可能にした他、手元にある商品のバーコードをスマホカメラで読み取って、当該商品の情報もクイックに得られるようにした。

フィードバックによって追加された機能は、商品情報を得意先へメール送信するというもの。おかげで、社内にいる営業事務担当者へ都度連絡する必要がなくなったという。

Power Appsを選んだ理由として武田氏が挙げた理由は3つ。1つ目はすでに同社内で使ってたMicrosoft 365製品群との相性が良いこと、2つ目はその契約範囲内で使えたため追加コストがかからなかったこと、最後は短期間でユーザーが望む機能拡張が行われていることだ。

これまでは、Microsoftパートナー企業に開発を依頼していたという武田氏。しかし「それでは社内ナレッジが蓄積できず、いつまでたっても自社開発が行えない」と考えた。それでは、社内のニーズに迅速に応えるというNBX取り組みの趣旨に反してしまう。

そこで、MicrosoftパートナーであるAvanade(アバナード)に、アプリ開発のハンズオントレーニングや開発に必要な情報のQ&Aといったサポートを依頼。その甲斐あって、25時間という短時間でのアプリ開発に成功した。

アプリβ版を営業戦略部門へ公開した際の反応は「早く使いたい」「いつから使えるの?」といったポジティブなもの。「ユーザーが、使ってハッピーになれるUI / UXであると確信した」という。

完成版のリリースには、事前告知として全国の営業担当者向けにデモを行い、ついでリリース時にイントラネットとオンライン社内報などを使って告知を行った。その結果、使い勝手の良さもあいまってリリースから短期間で浸透し、多くの人が利用するようになった。

成功の要因は開発環境にPower Appsを選んだこととユーザーファーストの思想

Microsoft 365とのシームレス連携を考えてPower Appsを選んだ日清食品グループだが、メリットが多かったという。それはUIの作成が容易だったこと、標準機能が充実していること、ローコードであることだ。

Power Appsを選んだこと以外に、プロジェクトの成功要因として、武田氏は3つのものを挙げた。

1つ目はユーザーファーストに基づいた開発を行ったこと、2つ目ははUI / UXにこだわったこと、最後はAvanadeのサポート力の高さだ。

「ソリューションファーストだったら、ユーザーがハッピーになるソリューションを開発できなかったはず。また、日清らしい親しみやすさや直感的な操作感へのこだわりをもって開発したため、ユーザーが使いたいと思うようなものを作ることができた。そしてこれらは、アプリ開発において不慣れだった自分たちの質問や相談にクイックに応じてくれたAvanadeの高い技術力なしにはなし得なかった」(武田氏)

外部にツール開発の依頼を出していれば得られなかったナレッジは、部内で共有した。それにより、Power Appsができることを把握し、アプリのメンテナンスも行えるようになり、ユーザーのニーズにアプリ開発で応えられるかもしれないという選択肢を持つことができ、同社のモバイルファーストをさらに推進することが期待される。

日清食品グループでは「ハッピー」「クリエイティブ」「ユニーク」「グローバル」という4つの思考をバリューとして捉えている。

アプリ開発の内製化は、ユーザーが抱く課題を解決するものになるため、またノートPCでは作業しづらい環境でもモバイルで業務ができるため、さらに使いたくなるUIであるため、ユーザーにハッピーをもたらすものとなる。

「製造、販売、倉庫といったそれぞれの現場で業務をしやすくするため、またBCP対策としても有効なモバイルファーストを今後も推進していくことで、日清食品グループのDX化をさらに推進していきたい」と武田氏は述べて、セッションを終了した。

ウェブ制作や動画制作を相談できるB2Bマッチングのユーティルが2.4億円のシリーズA調達、開発・運営体制を強化

企業のDX支援プラットフォームを展開するユーティルは10月14日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億4000万円の資金調達を発表した。引受先は日本ベンチャーキャピタル、コロプラネクスト、グリーベンチャーズ、岡三キャピタルパートナーズ、サイバーエージェント・キャピタル、basepartners 有限責任事業組合。

今回調達した資金により、事業拡大へ向け開発・運営体制の強化を図るとしている。また、AIやIoTなど取扱商材を拡大し、DXを併走するコンシェルジュとしてデジタル領域全体をカバーする相談カウンターサービスを提供する。

ユーティルは、「デジタル化をもっと簡単に」をミッションとして2015年4月に設立。企業のDX担当者向けにウェブ制作に関する相談カウンター「Web幹事」、動画制作に関する相談窓口「動画幹事」、システム・アプリ開発の「システム幹事」などを運営している。

旗艦サービスである「Web幹事」では、ウェブ制作の専門家が顧客に合った制作会社を無料でアドバイス。失敗しない制作会社選びを1つの窓口で行えるよう、専門家とともに5000社以上の制作会社データベースから比較検討できるという。

リピート率59%アップ!電子カルテ軸の鍼灸プラットフォームで受療者、鍼灸院、見込み客それぞれの課題を解決

日本マイクロソフトが10月11日から14日にかけて開催中の「Microsoft Japan Digital Days 2021」では、生産性や想像力を高め、組織の競争力に貢献するソリューションや、その導入事例について学べるプログラムが提供されている。

Day 1の10月12日13時35分に行われたセッション「世界の人々の健康をサポートする鍼灸メーカーがSaaS事業を提供するに至るまで(真のDXとは何かについて)」をレポートする。

登壇したのは、鍼灸鍼をはじめ医療機器の開発・製造・販売を行ってきたセイリン ICTプロジェクトリーダー 菊地正博氏とAzureを使ったeコマース開発を得意とするシグマコンサルティング プロジェクトリーダー 木下浩之氏だ。

鍼灸業界の発展を阻む課題をプラットフォームで解決

「鍼灸業界の発展を支えるプラットフォーム」というサブタイトルで進められた当セッション。2020年9月に「鍼灸つながるカルテ」「はりのマイカルテ」をリリースした背景がセイリン菊地氏の口から語られた。

鍼灸治療を受ける人(受療率)は年間560万人で、国内人口の約5.6%。受療したことがあるもののリピートにつながらない人は約2000万人いる。

「肩こり 鍼」などで検索するような鍼灸に興味のある見込み客は約670万人、健康やボディケアに関心のある層は2400万人いるものの、実際に鍼灸治療を受けるに至っていなかった。

鍼灸業界の発展には、受療したもののリピーターになっていない人や見込み客をいかに呼び込むかが課題だが、それには、立ちはだかる負のスパイラルを断ち切る必要があるという。

負のスパイラルには、受療者、鍼灸院、見込み客、他業界の抱くイメージや体験などがある。

受療者側には「施術の効果を感じられない」「本音を言いづらい」「保険適用外で治療費が高い」というもの、鍼灸院側は「来てくれなくなった理由がわからない」「それゆえ施術や接客レベルを上げようがない」「サービス改善のモチベーションが上がらない」というもの、見込み客にとっては未経験ゆえ「怖い」「効果が不明」「マッチする鍼灸院を探せない」という負の感情が、医療施設や介護施設など他業界からは「鍼灸による成果のエビデンスがない」「信頼できる鍼灸師が少ない」「連携するメリットが見いだせない」ため紹介・連携できないという課題があった。

そこで、セイリンではそれらの課題を解決する最適解が電子カルテを軸とした鍼灸プラットフォームであると考えた。

単なる電子カルテであれば、すでにさまざまな医療機関で採用されているが、これは、施術側が治療を記録するためだけのものではない。治療内容とともに、日常生活で気をつけるべき点などのフィードバックを患者に提供し、鍼灸師は受療者からの満足度に関するフィードバックや相談を受けられるようになっている。これにより患者の満足度は上がり、鍼灸師もサービスや技術向上のモチベーションを上げられる。

さらに、患者の症状と施術内容を鍼灸データベースに蓄積することで、これから施術しようとしている鍼灸師には最適な施術のレコメンドを、医療施設や介護施設には鍼灸治療を使うことのメリットなどを含むエビデンスを提供可能になる。

患者から受け取った満足度評価や感じられた効果も蓄積され、その情報は4月1日にリリースした鍼灸院検索サイト「健康にはり with はりのマイカルテ」でいずれ検索可能になり、新規ユーザーが自分にマッチする鍼灸院を探すのに役立てられる。

つまり「鍼灸つながるプラットフォーム」のシステムを導入することで、これまで鍼灸業界の発展を阻害してきた負のスパイラルを断ち切れるというわけだ。

とはいえ、タッチポイントであるアプリの使い勝手が悪ければ鍼灸師も受療者も手間と感じてしまう。

鍼灸師が使う電子カルテ「鍼灸つながるカルテ」はPC、タブレット、スマートフォンのマルチデバイス対応なうえ、入力しやすさを確保しているという。

また、治療前後の変化、治療内容など、通常、自分のものであるのにアクセスできないカルテの内容を鍼灸院から患者へ患者側電子カルテ「はりのマイカルテ」を通じて共有することで、受療者が施術の効果を実感でき、通院のモチベーションを上げられるような仕組みを作っている。

さらに、通常であれば鍼灸院に到着後に記入する問診票の内容をアプリを通じて事前に伝える仕組みもあるため、現状を落ち着いて入力できるうえ、到着後の待ち時間が減るというメリットがある。鍼灸師にとっては、患者が来院する前に情報を得られるので、前もって施術準備を行える。

患者に記載してもらった情報も含めた電子カルテの情報は、ビッグデータという形で鍼灸データベースに蓄積するが、それは教科書にも記載されていない内容だ。師匠たちから受け継いできた「暗黙知」が、システムに入れるすべての鍼灸師に共有され「形式知」となることが、業界全体のメリットになる。

また、蓄積された情報はエビデンスとしても機能するため、鍼灸治療を選んでもらえるよう介護施設や医療施設に交渉できるようになるため、また見込み客の認知度が上がるため、新規受療者の増加も見込める。

リピート率アップについては、鍼灸院「ニイハオ鍼灸院」の導入事例が紹介された。「はりのマイカルテ」導入前後3カ月で比較したところ、アプリ利用患者50人の来院平均回数が2.09回から3.32回へ59%アップ。未利用患者43人の平均来院回数が1.66回から1.71回であったことを考えると、カルテ共有の効果が高かったことがうかがえる。

菊地氏は、4月にリリースした受療者向け鍼灸院検索サイト「健康にはり」内の情報を定期的にアップデートしていくことで「針灸初心者でも安心して治療を受けてもらえるようにしたい」という。

最後に「鍼灸つながるプラットフォームにより、鍼灸治療に関する知を次世代に伝えること、針灸業界の発展を支え、受療率5%を15%にアップさせることを行っていきたい」と今後の抱負を語った。

針灸業界の発展を支えるプラットフォームをさらに下から支える

シグマコンサルティングの木下氏は、同社がAzureを使ったeコマースの知見をどのように鍼灸つながるプラットフォームに活かしたかということについて解説した。

これまで、針灸業界には同様のサービスがなかったため、ニーズを聞き取りながらゼロベースで実装。Azureがあったからこそ、1年半という短期間で行えたことを強調した。

とはいえ、カルテ情報の取り扱いには高度な機密性が要求される。

ここで、シグマコンサルティングの知見が活きてくる。eコマースでは、クレジットカード情報など財産に関係する情報のやり取りが必要になる。シグマコンサルティングには、PCIDSS(Payment Card Industry Data Security Standard。クレジットカード業界のセキュリティ基準)といったセキュリティ事項に対応した実績あり。今回のプラットフォームのシステム構成にも、Azure AD B2Cの認証の仕組みを導入することで堅牢なシステムをすばやく構築した。

データベースにはSQLを利用することで拡張性を担保しつつ、SaaSビジネスで重要なランニング費用低減を図ったという。

これまで器具販売を中心に営業してきたセイリンがSaaSビジネスを成功させるための事業支援も行ってきた。その中にはセイリンだけでなく、導入する鍼灸院へのサポートも含まれる。

セイリンには、営業活動の目標値として「鍼灸院が同システムを導入することによって成功体験を得る」というものを設定した。そのうえで、営業活動を可視化し、営業プロセスを見直ししやすくして商談内容に一定の品質が保たれるようにした。

鍼灸院へは、プラットフォームを利用することで成功体験を得られるようカスタマーサクセスチームを立ち上げて対応した。カルテの電子化、受療者とのコミュニケーション促進、予約業務の効率化など、いくつかのポイントを押さえて支援。サクセスが明確化されたことで、KGI・KPIも明確になり、次なるカスタマーサクセスを実現するためにプロジェクトを改善する必要があり、その点でも支援したという。

「これらの支援により、組織は自走型へと変化する。シグマコンサルティングは、開発からビジネスの成功までをサポートしていける」と、木下氏は締めくくった。

中小企業向けHRプラットフォームPersonioが約306億円調達、人事業務プロセスの自動化にも進出

この20カ月間でHRテクノロジーはスポットライトを浴びてきた。新型コロナウイルス(COVID-19)で私たちの働き方が変わったことで、仕事環境において人を管理する方法も変わらなければならなかったからだ。米国時間10月11日、中小企業に特化してこの問題に対処する方法を提供し大きなビジネスを構築してきた、ミュンヘンを拠点とするスタートアップ企業であるPersonio(ペルソニオ)が、同社のサービスに対する強い需要を受け、次のステップに向けて2億7000万ドル(約306億円)の資金調達を発表した。今回のシリーズEにより、Personioの評価額は63億ドル(約7140億円)に跳ね上がり、現在ヨーロッパで最も価値のある人事関連のスタートアップ企業の1つとなっている。

今回の資金調達は、Greenoaks Capital Partners(グリーンオークス・キャピタル・パートナーズ)が主導し、新たな投資家であるAltimeter Capital(アルティメット・キャピタル)とAlkeon(アルキオン)も参加している。このラウンドには、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Accel(アクセル)、Meritech(メリテック)、Lightspeed(ライトスピード)、Northzone(ノースゾーン)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)など、以前からの支援者も参加している。IndexとMeritechは、2021年1月に行われたばかりの同社の前回のラウンドを主導した。当時のシリーズDラウンドの評価額は17億ドル(約1920億円)で、10カ月で3.7倍に成長したことになり、Personioの成長の速さを物語っている。

関連記事:中小企業にHRプラットフォームを提供する独Personioが約130億円調達

Personioは現在、ヨーロッパの中小企業(通常、従業員数10~2000人)を対象に、採用・入社手続き、給与計算、欠勤管理などの主要な人事機能をオールインワンのプラットフォームで提供している。1月の時点では3000社だった顧客数は、現在5000社に達している。Personioは、今後もさまざまなツールを拡充していく一方で、CEOのHanno Renner(ハンノ・レナー)氏が「ピープルワークフローオートメーション(人事業務プロセスの自動化)」と表現する分野にも進出していく予定だ。

基本的にこれは、Personio以外のアプリケーションで行う人事関連の作業において、人事情報を自動入力したり、それらのアプリケーション内でアクションを起こしたりすることで、手作業では時間がかかっていた作業をスピードアップすることを目的としている。例えば、雇用契約書の作成・発行や、入社や退職時に特定のアプリへのアクセス権を切り替えるといったことが可能だ。

Personioのプラットフォームが、企業が大規模で多面的なプラットフォームを用意するのと同じように、中小企業のニーズに合わせて連携する一連のHRツールであり「中小企業のためのWorkday」と捉えられるとすれば、同社が現在追加している自動化ツールは、中小企業向けのUiPath(ユーパス)やServiceNow(サービスナウ)に対する答えだと捉えられるかもしれない。つまり、機械学習やロボティック・プロセス・オートメーションなどの技術を使って、人事関連のタスクに関わる忙しい反復業務を取り除くことができる。

「12ヵ月間取り組んできましたが、今では5000人のお客様にプロダクトをそのまま使っていただいて、そこから学んでいます」とレナー氏はインタビューで答えている。この問題の核心は、異なる領域にあるソフトウェアをより迅速に連携させることにある。例えば、内定者に契約書を発行する必要があるときに、ここで時間をかけてその内定者が別の会社で契約するようなことにならないに、また、解雇された従業員が会社のITシステムに侵入できるようなことがないようにする必要がある。「人事プロセスは人事部だけではありません。人事プロセスは人事にとどまらず、他の機能や部門にも影響を与えます。遅延は時間を無駄にするだけでなく、有害な結果をもたらす可能性があるのです」。

Personioはこれまで、中小企業向けの製品を開発することで、中小企業という収益性の高い顧客層を開拓してきた新興企業グループの一員であることをアピールしてきた。中小企業は、ヨーロッパだけでも2500万社以上あり、全企業の99%以上を占めている。しかし、中小企業はさまざまな業種や関心事によって細分化されており、IT予算も非常に少なかったり、もしくはまったくなかったりするため、見過ごされがちだ。

人事の世界では、それがさらに深刻な状態だったとレナー氏はいう。ほとんどの中小企業は、人事関連のデータをエクセルのスプレッドシートや、ただの紙で管理していたりする。「私たちが日々目にするのは、中小企業の70%が何らかのHRソリューションを持っていないという状況です」と彼はいう。

しかし、デジタルトランスフォーメーションが中小企業を完全に見過ごしていたわけではなく、先進的な中小企業は販売、財務、CRMソフトウェアを徐々に導入していきている。そしてその流れが人事に関する考え方にも「波及」してきていると彼はいう。

Personioは、このことが顧客に自動化を売り込む際にも役立つと考えている。一般的な中小企業では、平均して約40種類のアプリを使用しており、その多くが人事システムからのデータを必要としていると同社は推定している。Personioは、これらのアプリケーションに連動性を提供することで、これらのアプリケーションの動作を高速化することができると考えている。

同社にはまだまだ多くの成長余地が残っている。Personioが対象としている中小企業(従業員数10〜2000人)の数は170万社であり、これはまだ市場のごく一部に過ぎないからだ。

つまり、新しい自動化製品が軌道に乗るかどうかにかかわらず、Personioにはまだ成長の可能性が高いということであり、同社が必要とする前に都合よく調達された今回の資金は役に立つだろう。新技術の導入により、将来的には人事部門以外の中小企業にも自動化サービスを提供できる可能性が出てきたため、今回の評価額の大幅な上昇は、中小企業に人事部門を進出させるための大きなチャンスであると同時に、その多様化にも関係していると考えられる。

「小規模企業は欧州経済を支える存在ですが、従来の企業では長い間、十分なサービスを受けられず、見過ごされてきました。Personioは、従業員のライフサイクル全体にわたって人事業務プロセスを簡素化し、大手企業がもっていた機能を広く普及させ、生産性を一段階向上させてくれました」とGreenoaks(グリーンオークス)の創業者兼マネージングパートナーであるNeil Mehta(ニール・メータ)氏は語っている。「私たちは、世界有数のプライベート・テクノロジー企業の多くとパートナー関係にあることを幸運に思っていますが、Personioのチームは、まだ彼らのミッションに着手したばかりだと確信しています。「人事業務プロセス自動化」のカテゴリーを立ち上げることで、ヨーロッパ中の企業にさらに多くの価値を提供することができるでしょう。私たちは、Personioのスリリングなステージに参加できることを誇りに思うとともに、今後も末永くパートナーであり続けたいと思っています」。

長期的には株式公開も視野に入れているが、ここで強調したいのは、その「長期的には」の部分だ。Personioは現在5億ドル(約560億円)の資金を調達しているが、レナー氏は次のステップを考えるのは少なくとも18〜24ヵ月後だと述べている。「公開を急いでいるわけではありません」と彼は語っている。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、Akihito Mizukoshi)

グーグルがアフリカへの約1114億円の投資を再確認、容量20倍の高速海底ケーブル含め

大規模なインターネット企業にとって、発展途上諸国は最も成長のチャンスがある地域を意味する。今日、その中でも最も大きな企業の1つが、この問題に取り組むための戦略を発表した。

Google(グーグル)は、アフリカの「デジタルトランスフォーメーション」を支援するために10億ドル(約1114億円)を投資すると発表した。これには、インターネットの高速化を実現するための海底ケーブルの敷設、中小企業向けの低金利融資、アフリカのスタートアップへの出資、スキルトレーニングなどが含まれる。

この計画は米国時間10月6日、GoogleおよびAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏が中心となって開催されたイベントで発表された。会社の最高責任者をイベントのトップに据えることは、同社がこの賭けにプライオリティーを置いていることの証といえるだろう。

ピチャイ氏は次のように述べた。「私たちはこの10年で大きな進歩を遂げましたしかし、すべてのアフリカ人がインターネットにアクセスでき、手頃な価格で便利に使えるようにするためには、まだまだ努力が必要です。本日、アフリカのデジタルトランスフォーメーションを支援するために、5年間で10億ドル(約1114億円)の投資を行い、接続性の向上からスタートアップ企業への投資まで、さまざまな取り組みを行うことで、アフリカへのコミットメントを再確認できることをうれしく思います」。

Googleはこの投資を、ナイジェリア、ケニア、ウガンダ、ガーナなど、アフリカ大陸の国々で実施されるプロジェクトに投入すると述べている。

海底ケーブルは、南アフリカ、ナミビア、ナイジェリア、セントヘレナを横断し、アフリカと欧州を結ぶ。Googleのアフリカ担当マネージングディレクターであるNitin Gajria(ニティン・ガジュリア)氏は「アフリカ向けに建設された前回のケーブルに比べ、約20倍のネットワーク容量を提供することになる」と述べた。

「これにより、ナイジェリアではインターネット料金が21%下がり、インターネットの速度が向上し、南アフリカでは速度が約3倍になります」とガジュリア氏はいう。

デジタル経済の発展にともない、2025年までにナイジェリアと南アフリカで約170万人の雇用創出が予測されている。

また、Googleは、Africa Investment Fund(アフリカ投資基金)の設立を発表した。同社はアフリカ大陸のスタートアップ企業に5000万ドル(約55億7000万円)を投資し「Googleの従業員、ネットワーク、テクノロジーへのアクセスを提供し、彼らがコミュニティのために意義のある製品を構築することを支援する」としている。

さらに、パンデミックの影響で苦境に立たされているナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカの中小企業に対し、1000万ドル(約11億1000万円)の低金利ローンを提供する。これは、サンフランシスコに本拠地を置く非営利の融資組織であるKiva(キヴァ)とのパートナーシップにより行われる。Kivaは、アフリカで人々の生活を改善している非営利団体に4000万ドル(約44億6000万円)を提供することを約束した。

ガジュリア氏はこう述べた。「アフリカの革新的なテックスタートアップシーンにとても刺激を受けています。2020年は、技術系スタートアップへの投資ラウンドがこれまでになく多く行われました。私は、アフリカで最も大きい問題を解決するのに、アフリカの若い開発者やスタートアップ創業者ほど適した人材はいないと確信しています。当社は、アフリカのイノベーターや起業家とのパートナーシップを深め、支援していきたいと考えています」。

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Aya Nakazato)

【スタートアップバトル】過去の出場企業紹介 4:207

TechCrunch Tokyo 2021は、12月2、3日にオンラインで行うこととなった。そのメインとなる「スタートアップバトル」はもちろん2021年も開催する。

新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げるピッチイベント「スタートアップバトル」には、例年数多くの企業が参加、熱戦が繰り広げられている。投資家や大企業の新規事業担当者も多く参加、スタートアップバトルをきっかけに出資が決まったり、優秀な人材の採用につながることも少なくなく、日本スタートアップ業界における登竜門ともいえる存在となっている。

ここでは、そんなスタートアップバトルにおいて、2020年にファイナルラウンドに進出、見事優勝した207(ニーマルナナ)を紹介したい。

物流業界におけるラストワンマイルのDXを目指す「207」。同社は配送状況の確認や配送員とのコミュニケーションが可能な荷物の受取人向けサービス「トドク」、自動生成の配達マップや受取人の在宅情報や荷物情報を管理できる配達員向けアプリ「トドク サポーター」、そして配送員や荷物を効率的に管理できる物流事業者(法人)向けサービス「トドク クラウド」、個人宅向けの宅配荷物の増加に合わせたギグエコノミーを活用した「働きたい人のスキマ時間で荷物をお届けする」配送ソリューション「スキマ便」を提供している。

スタートアップバトルに出場した207のその後の軌跡は、以下の記事から確認できる。また、スタートアップバトルへの本登録は記事末のリンクで行える。出場登録締め切りは2021年10月11日(月)。

2020年12月
スタートアップバトル優勝者、物流革命を目指す「207」が配送員や荷物の管理サービス「TODOCUクラウド」提供

2021年10月
物流ラストワンマイルのDX目指す207が5億円調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

応募条件(詳しくはバトル応募ページに記載)

  • 未ローンチまたは2020年10月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業であること。
  • 法人設立3年未満(2018年10月以降に設立)で上場企業の子会社でないこと。

スタートアップバトルの応募はこちらから

【インタビュー】Misoca創業者が農業×ロボットにかける想い「有機農業を劇的に加速させすべての人に安心・安全な食環境を」

業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を政府が推し進めている。とはいえ、エッセンシャルワークと呼ばれる職種、つまり人々が日常生活を送る上で必要不可欠とされている医療・福祉や保育、小売業、運輸・物流などに関しては、重要度が高いのにDXが進まないというジレンマが生じている。

エッセンシャルワークの主な7つの職種の中に含まれていないとはいえ、農業も生活基盤に不可欠な仕事であることは疑念の余地がない。にもかかわらず、農業は最もDXが進んでいない分野の1つだ。

農業をロボットで変えようと起業した人がいる。トクイテン代表取締役豊吉隆一郎氏と共同創業者で取締役の森裕紀氏だ。高専時代にロボット研究に携わり、2011年にクラウド請求管理サービス「Misoca」を立ち上げた豊吉氏が、なぜ農業という分野を選んだのか、考える農業の未来などについて、豊吉氏と森裕紀氏に話を聞いた。

わずかなITツールで大きなインパクトを与えられる農業というフィールド

豊吉氏は、工業高等専門学校卒業後、Webシステム開発で独立し、2011年には後に20万事業者以上が登録するクラウド請求管理サービス「Misoca」を立ち上げた。

会社を売却した後もしばらくは同社内にとどまっていたが2018年11月に代表を退任し、2021年8月にロボット開発の知識を活かした有機農業を事業とする「トクイテン」を森氏と共同創業した。

ここで、疑問が生じる。なぜオフィスのバックヤード業務の効率化を進めるMisocaから農業へとシフトしたのだろうか。

実は、豊吉氏の実家は兼業農家。農業に幼い頃から親しんでいたという背景がある。農業に興味を持っており、家庭菜園まで行っていたところ、知り合いの農家の灌漑(かんがい、水やりのこと)システム開発に携わる機会を得たという。

「スマホから遠隔操作で畑に水やりをするシステムを作りました」と豊吉氏。「わずか数万円という費用に、自分の得意なプログラミング技術を使っただけなのに、『これで旅行にも行きやすくなる』ととても喜んでもらえた」と振り返る。

「これだけのことで、ここまでインパクトがあるのか」と、農業にITを持ち込むことの影響力の大きさに驚いた瞬間だった。

これほどまでに感動をもって受け入れられた理由を「農業分野ではDXが遅れているという現状がある」と豊吉氏は分析する。

「製造業なら、24時間、休まず人間以上のスピードでロボットが働けば、時間ごとの生産性は上がる。ソフトウェアなら、やはり人間が行う以上のスピードで正確に計算し続けられる。

しかし、農作物の成長スピードは、ロボットが入っても変わらない。そのため、コストをかけても無駄、という考え方があるのだろう」と豊吉氏はいう。

灌漑システム開発で、何度もその農家を訪れるうちに、成長していく作物を情を持って見つめるようになり、農業について真剣に学ぶため県の農業大学校1年コースに入学し、農業者育成支援検研修を修了。農業の素晴らしさと大変さを身をもって感じたという。

「20種類ほどの農作物を育てて収穫したが、在籍していた2020年の夏は特に暑かったため、熱中症で倒れてしまう人も出るほど過酷な状況だった。また、有機野菜は管理が大変で、そのぶん価格も高いのが現状。これを自動化できれば、大変な思いをすることなく農業を行え、有機野菜も一般化するのでは……との思いが強まった」。

そこで、高専時代の同級生であり、現在は早稲田大学次世代ロボット研究機構で主任研究員・研究院准教授となっている森氏と共同でトクイテンを立ち上げたのだ。

社名に込められているもの

それにしても、農業のスタートアップ企業名に「トクイテン」を選んだのはなぜだろうか。一体何の「特異点」なのだろう。

「それには3つの意味が込められている」というのは森氏だ。「ロボットの勉強会をしたときに、通常とは異なる(特異な)取り扱いをしなければならない場合のことを特異点というよね、という数学的な話が出た。自分たちがこれから挑む農業は、今までとは違うやり方で行うことが決まっていたという意味が1つ」と解説する。

続けて「宇宙論やロボット工学ではある種の状態が特異点に近づくと劇的に加速し変化することがあります。わたしたちの技術が浸透することで農業が劇的に変わるという意味の特異点。それから、人工知能も含め、新しい技術が出てきて加速度的に指数関数で物事が進んでいき、ある瞬間に世の中が劇的に変わるのも技術的特異点(シンギュラリティ)と呼ばれており、その意味も含んでいる」と森氏は説明してくれた。

「これまでの農業では、人が介入することで収穫(人が摂取するエネルギー)を得られたが、それを人間なしにまかなえるようにすることが、トクイテンの目指す農業。それは後から振り返ると、文明が変わってしまうほどの特異点になるのではないか。また、そういう特異点と呼ばれるような存在になりたい、という想いで、この社名を選んだ」(森氏)

農地法に守られているからこそ難しかった農地の取得

あくまでも、農業を事業の柱とするのがトクイテンなので、作物を植える土地が必要になる。しかし、その取得には苦労があったという。

それは、農地が農地法によって守られているからだ。この農地法では、地域の農業委員会から許可を得た農家または農業従事者以外に農地を売却してはならないと定められている。また、売却先の管理者が管理を怠り、害虫を発生させる、耕作を放棄して荒れ地にするといったことを防ぐため、信用を得ていることも重要になる。

「農地売却は二束三文にしかならないうえ、信用できない人に売ってしまうことで回りからつまはじきにされるなど、デメリットが多いため、売りたくてもそれをためらう農家が多い」と豊吉氏は解説する。

ここで活きてきたのが、農業大学校を修了したことや、地元の農業法人の土地を間借りし、有機トマトを苗から育てて出荷したという豊吉氏の実績だ。「この人たちなら、きちんと活用してくれる、というお墨付きをもらえた」と豊吉氏は振り返る。

「ようやく30a(アール)程度の農地売却の許可を得られそうというところまでこぎつけた。ビニールハウスを建て、来年の春から本格的に生産を開始したい」と豊吉氏は語る。

それでも国内で始めることのメリット

農地取得が難しいことに加え、国土の狭さ、台風が毎年来襲することも日本で農業のDXを進めることの難しいところだが、それでも日本だからこそのメリットがあると豊吉氏は考える。1つは水資源の豊富さ、そしてもう1つはロボティクスの強さだ。

「農業という業種で高齢化が進んでいることがDXを阻む1つの要因になっているが、高齢化が進んでおり、人手不足だからこそ、ロボットが活きてくる」と豊吉氏は説明する。

「まず、わたしたちはできあいの産業用ロボットに手を加えてすばやく現場投入し、実地経験を積みながら改善していくことを考えている。いちから作ると、1つの作業に特化したものができてしまい、年に数時間しか使わないようないくつものロボットで倉庫が満杯になってしまうこともあるからだ。

ただし、工業用ロボットは、人が近づかないところで作業するよう設計されているので、Co-ROBOT(人と一緒に作業できるロボット)という点ではまだまだ改善が必要。収穫作業や、人があまりやりたがらない運搬作業、農薬散布など、さまざまな作業を行える汎用性の高いロボットを目指したい」(森氏)

手間のかかる有機農業を劇的に加速させたい

2022年春に本格始動を予定しているトクイテン。まずはロボット×有機農業で作ったミニトマトを販売して収入を得るビジネスモデルを確立したいと考えている。

ミニトマトを最初の作物に選んだのは「ミニトマトが好きだったから」と豊吉氏。「嫌いな野菜だと、おいしくできたのかそうでないのかがわからないし、愛着もわかない。しかも、ミニトマトは、野菜の中で産出額が高く市場が大きい。また、最初のロボットは雨が当たらないビニールハウスの中で作業するものを作りたかったことと、品種によって、そこまで育て方に違いがないことも、選んだ理由」だと教えてくれた。

海外のベンチャー企業150社程度を調査し、有機農業を広げようとするところもあれば、作ったロボットの販売を事業の柱にしようとしているところもあったという。

豊吉氏は「ロボットを開発するが、それを単体で売るようなことは考えていない。あくまでも農業が主体で、農作物を売っていきたい」と語る。「ただ、蓄積されたノウハウを売って欲しいという要望が出たら、ロボットを使った有機農業の方法も含めたシステムという形で販売することもあるかもしれない」と展望を述べた。

「今は、有機野菜を作るのに手間がかかるため、一般的な野菜の2〜3割、場合によっては5割ほど高く販売されていて、なかなか手が出せない状況にある。でも、出始めは高くて手が出せなかった電気自動車を一般の人が買えるまでになっているのと同じように、ロボティクスによって、有機野菜が一般化するようになるとわたしたちは考えている。

今はまだ会社のメンバーが少なく、エンジニアをしている段階だが、農業分野の拡大や、有機野菜の一般化などにより、農業の特異点となれるよう邁進していきたい」と豊吉氏は語る。

画像クレジット:トクイテン

全米30万の自動車修理工場のDX化をサポートするAutoLeapが約20億円調達

500万ドル(約5億5000万円)のシードラウンド発表から9カ月後、トロントの自動車修理ソフトウェア企業AutoLeapが、今度は1800万ドル(約20億円)のシリーズAを獲得した。Bain Capital Venturesがそのラウンドをリードした。

シードラウンドをリードしたThreshold Venturesがこのラウンドにも加わり、同社の総調達額は2300万ドル(約25億5000万円)になる。

共同CEOのSteve Lau(スティーブ・ラウ)氏によると、AutoLeapは各地の自動車修理工場を21世紀のものとし、ワークフローをデジタル化するときの二重、三重の無駄な入力作業をなくす。顧客への見積もりや請求書、作業の見積もりなどはすべて、バックグラウンドの計算で処理し、営業とマーケティングをCRMと連携させる。アプリからのスケジューリングや顧客とのテキストでのメール、オンラインのレビュー機能もある。

関連記事:自動車修理業者の業務をデジタル化するAutoLeap、顧客との関係性「修復」を支援

2020年のシードラウンドと立ち上げ以降、同社は「予想以上に」成長した、とラウ氏はいう。チームとして同社は5倍の成長、顧客ベースは10倍に増加した。現在も毎月、成長は続いている。

「市場が提供している機会に私たちはうまくフィットしているという確信を、さらに持つようになりました。初期の顧客の1人に最近話を聞く機会があったのですが、AutoLeapを使うようになって最初の10カ月で売上が倍増したとのこと。彼らの生活も変わりました」とラウ氏はいう。

ビジネスを成長させることはラウ氏の天職だ。彼は共同CEOのRameez Ansari(ラミーズ・アンサリ)氏とともに、下請け専門の企業が自分の小さな事業を経営できるためのSaaSであるFieldEdgeの共同CEOを務めた。同社は3年で社員数200名にまで成長し、AutoLeapを創業できる基盤になった。

同社のチームは今、カナダと米国とパキスタンに分散している。顧客の85%は米国、残りはカナダだ。

ラウ氏の推計では、自動車のアフターマーケットは7000億ドル(約77兆7536億円)の業界であり、100万人の技術者が30万のショップにいる。

く「今は、この市場がペンからデジタルに移行するゲームの2回の表くらいです。大量の資本がこの市場機会を掴もうと躍起になって世界クラスのチームを起用し、私たちがもっと良いプロダクトと顧客サービスを提供できるようにしている」とラウ氏は語る。

彼の予想では、AutoLeapのワークフォースは1年後に今の3倍、そしてもっと多様な人材を抱えることになるだろう。

Bain Capital VenturesのパートナーであるAjay Agarwal(アジェイ・アガーウォール)氏によると「国の経済的なバックボーンは小企業であり、彼らは消費者ブランドやレストラン、リテールなどあらゆる分野で、自分が競争に生き残り顧客にもっと良い体験を提供するための、モダンなクラウドソフトウェアを求めています」。

さらにアジェイ・アガーウォール氏は「スティーブとラミーズは、独立した30万の自動車修理工場のデジタル時代への移行を支援しています。この巨大な機会に挑戦している彼らに協力すること以上にエキサイティングなことは他にありません。AutoLeapは、総合的なSaaSプラットフォームと組み込みの決済機能およびマーケットプレイスを組み合わせたサービスを、自動車修理ショップに提供しようとしています。それは、まだクラウドへの飛躍を行っていない最後の業種の1つです」という。

画像クレジット:AutoLeap/Rameez AnsariとSteve Lau, AutoLeapの共同CEO

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)