飲食料品ECのAoyamaLabが法人専用のデジタルギフトサービス「リモート手土産」を開始

飲食料品ECのAoyamaLabが法人専用のデジタルギフトサービス「リモート手土産」を開始

飲食料品ECスタートアップのAoyamaLab(あおやまらぼ)は3月17日、リモートワーク中の商談やお祝いメッセージに添付してデジタルで贈り物を贈る「リモート手土産」サービスを開始した。

リモート手土産は、リモートでの商談時の手土産や昇進などのお祝い、従業員へのプレゼントなど、様々なビジネスシーンで利用できるデジタルギフトサービス。

AoyamaLabは、法人間の手土産をギフトカードで贈るサービス「AOYAMA GIFT SALON」を展開しており、コロナ禍においてもリスクが少なく渡せる贈り物として利用者を拡大してきたという。今回、リモートワーク時代に合わせ、相手の住所がわからない状態でも贈れるデジタルギフトとしてリモート手土産を開始する。法人企業各社のビジネスの成功を後押しするサービスとして展開するとしている。

「リモート手土産」の特徴

  • 法人間ギフトとして厳選したラインナップから選択:有名店のスイーツ、お酒、高級牛肉、お米、レストランチケットなどを、法人間ギフトとして厳選した約300品から選択可能。これまでの商習慣における実物の手土産は、軽い・かさばらない・すぐ手に入るものに限られていたが、リモート手土産の場合自宅に直接送付するため、重いものや生もの、取り寄せ品など選択肢が広がっているという
  • 相手の住所が不要:リモート手土産の場合、贈り物を渡す相手にURLを送り、受け取った側が送付先住所を入力する。これにより、贈り物を送る際に住所を尋ねる必要がない。自宅住所を尋ねるハードルが高い取引先にも、気持ちのこもった贈り物を一言メッセージ付きで届けられるとしている
  • 無料ですぐ使える:法人アドレスがあれば誰でも無料で登録・利用が可能。贈り物を購入すると、最短で1時間以内にURLを納品し、すぐに使い始められるという

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ギフト特化EC「TANP」が5億円調達、豊富なオプションと独自のロジスティクス軸に事業拡大

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ECギフト / プレゼント(用語)日本(国・地域)

ギフト特化EC「TANP」が5億円調達、豊富なオプションと独自のロジスティクス軸に事業拡大

「TANP」を運営するGraciaのメンバーと投資家陣。前列左から4番目が代表取締役CEOの斎藤拓泰氏

ギフトプラットフォーム「TANP」を展開するGraciaは8月28日、グロービス・キャピタル・パートナーズなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、シリーズBラウンドで総額5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

Graciaにとっては2018年10月に1.2億円を調達して以来の資金調達で、本ラウンドを含めた累計の調達額は6.4億円になる。同社では今後も引き続きギフト体験に特化したプラットフォーマーとしてTANPのアップデートを行っていく方針。調達した資金を活用しながら人材採用と事業拡大を計るという。

今回同社に出資した投資家のリストは以下の通り。なおGraciaでは資金調達と合わせて、グロービス・キャピタル・パートナーズの⾼宮慎⼀氏が社外取締役に就任したことも明かしている。

  • グロービス・キャピタル・パートナーズ
  • スパイラルベンチャーズ
  • 福島良典⽒
  • 有安伸宏⽒
  • ⼤湯俊介⽒
  • 遠藤崇史⽒
  • ANRI(既存投資家)
  • マネックスベンチャーズ(既存投資家)
  • ドリームインキュベータ(既存投資家)
  • SMBCベンチャーキャピタル(既存投資家)

ギフトならではの豊富なオプションはユーザーの8割以上が活用

冒頭でも触れた通り、TANPはギフトに特化したECサイトだ。誕生日や結婚祝い、母の日などギフトを贈るシチュエーションや相手の性別・関係性に合わせて、豊富な品揃えの中からぴったりな商品を探しやすい仕組みを構築。そこにギフトならではの幅広いオプションを組み合わせ、良質な購買体験の実現を目指している。

この「オプションのバラエティ」とそれを支える「独自のロジスティクス」はGraciaが前回の調達時からさらに磨きをかけてきたポイントだ。

TANPでは複数種類のラッピングや紙袋を始め、メッセージカード、ドライフラワー、名前の彫刻、熨斗(のし)サービス、ダンボール内の装飾など豊富なオプションを用意。商品ごとにその数は異なるが、たとえば「誕生日や女子会で使えるバルーン」「結婚用のご祝儀袋」などユーザーの要望に合わせて細かいオプションを選択できるようになっている。

ギフトを購入する手段自体は百貨店や専門店のほか、既存のギフトECやAmazonのような総合モールECなどすでに複数の選択肢が存在するが「ギフトに特化することで実現した商品探しの体験やオプションの充実度」はTANPの大きな特徴だ。

Gracia代表取締役CEOの斎藤拓泰氏によると購入時に何らかのオプションを選択するユーザーは8割を超えているそうで、TANPが選ばれる要因の1つになっているのはもちろん、コアなファンを形成するきっかけにもなっているという。

TANPで選べるオプションの一部。商品ごとに種類は異なるが、オプションを組み合わせることで手軽に凝ったギフトを作ることができる

またギフトに特化してユーザー体験を作り込んでいることは、コンシューマー側だけでなくギフトを販売するメーカー側にとっても大きな意味を持つ。

TANPでは現在the body shop、gelato pique、DEAN&DELUCAなどの有名ブランドを筆頭に約300社ほどと取引をしている。斎藤氏の話では多くのブランドからは「(ギフト商品のみが掲載されているため)ブランドが毀損されるリスクが少ないことと、ギフトに特化したロジスティクスの仕組みを築いていること」が評価され、取引に至っているようだ。

現在はブランドの拡大に伴ってTANPで購入できる商品数も増え、色違いなども合わせると3000〜4000種類の商品を掲載。中には他のサイトには出品していないようなメーカーもいるため、TANP以外では手に入りづらいものもある。

「一見ギフトは自家需要とそこまで違いがないようにも見えるが、実際はメッセージカードを含む同梱物やラッピングなど専用のオペレーションが不可欠だ。メーカー側もギフトの取り組みを強化したい意向を持ってはいるが、どこに出店するべきかわからなかったり、ギフト用のオペレーションに自社で対応するのは難しいといった悩みを抱えていた。ロジスティクスの部分からしっかりと支援してもらいたいというニーズは大きい」(斎藤氏)

裏側のシステムはフルスクラッチで開発、ロジスティクスが強みに

GraciaはTANPの性質上ギフトにフォーカスしたECの会社に見えるが、実際はロジテックの会社と言っても過言ではないくらいロジスティクスの仕組み作りに力を入れている。

TANPを裏側で支えている在庫管理や発送管理、CS管理などに関する各システムは基本的にフルスクラッチで開発。それらを軸に社内のオペレーションを最適化することで「オプションのバラエティを増やしながらもビジネスとしてスケールできる体制」(斎藤氏)を時間をかけて構築してきた。

「テック企業ぽくないと言われることも多いが、実は表からは見えない裏側のシステムの部分でテクノロジーをフル活用している。ロジスティクスを効率的に回す仕組みなどは意外と難易度が高く、そこをフルスクラッチでやってこれているので開発力にもそれなりに自信を持っている」(斎藤氏)

ロジスティクスの体制は前回調達時に比べてさらに洗練されてきているそうで、1日あたりの最高発送数は1200件まで拡大。前回は「最も多い時で800件」という話だったから、オプションの数が増えたにも関わらず1日に対応できるキャパシティは400件分増えたことになる。

このような裏側の仕組みが整ってきたことに加えて商品数の増加などの要因も合わさり、事業規模も成長。売上の年次成長率は約400%ほどだという。

細かいアップデートにも日々取り組んでいて、最近ではAmazonのAPIを繋ぎ込み、地域のコンビニで24時間受け取れる機能を作った。ギフトは「いつまでに送らないといけない」という明確な期限があるからこそ、ユーザーからも好評のようだ。

「オペレーションの効率化が進んだことで対応できるオプションも増え、今まではあまり多くなかった『結婚』や『出産』のようなセミフォーマルなギフトの利用も増加してきている。ロジスティクスは作り込むのに相応の工数はかかるが、一度確立できればそうそう壊れない。この仕組みがTANPの競合優位性にもなるし、今回の調達では(トラクションなどだけでなく)ロジスティクスの部分を評価して頂けたと思っている」(斎藤氏)

今後は購入データの収集や活用も一層強化へ

Graciaでは今回調達した資金を用いて人材採用を強化するほか、マーケティングへの投資も行っていく計画。現在の強みにもなっているオプションやロジスティクス周りを引き続き磨いていくほか、年内にはアプリ版のリリースも予定している。

中長期的には「『ギフトを買うならTANP』という、ギフト市場における第一想起を獲得することが大きな目標」(斎藤氏)であり、それに向けて取引先のブランドや商品数の拡充なども含め、プロダクトをアップデートしていく方針だ。

特に斎藤氏が今後のポイントの1つに挙げたのが、TANPを通じて収集されたデータを活用した最適なギフト選びのサポート。現在もLINEを通じてユーザーにぴったりのギフトを提案する「プレゼントコンシェルジュ」を提供しているが、サービス上で自動でレコメンドできるような仕組みまでは構築できていないという。

「そもそも何を選んだらいいのかわからない」という問題はギフトを選ぶ際に多くのユーザーが抱えている根本的な課題だ。Graciaとしては購入データの収集や活用にも今後力を入れながら、ユーザーとメーカーを繋ぐプラットフォーマーとしてギフト市場でさらなる成長を目指す。

1品注文OKで送料無料の生鮮食品EC「クックパッドマート」にAndroid版登場

クックパッドが手がける生鮮食品のECサービス「クックパッドマート」にAndroid版アプリが登場した。

クックパッドマートはアプリで必要な食材を選択するだけで生鮮食品が手に入るECサービスだ。同サービスは、スーパーなどの大型店ではなく、街のパン屋さんや精肉店などの小規模店舗や農家の人々とパートナーシップを結んでいる。それらの店舗が扱う「こだわりの食材」をアプリで購入することが可能だ。

だが、クックパッドマート最大の特徴は、それらの食材を1品から注文でき、しかも送料もかからないということ。購入した商品は地域にある「受け取り場所」と呼ばれるピックアップ地点(ドラッグストアやカラオケなどの店舗)まで届けられ、ユーザーがそこに商品を取りに行くという仕組みだ。

クックパッドマートは2018年9月にサービス開始。当初は2箇所だった受け取り場所は現在、東京都渋谷区や目黒区を中心に14箇所まで拡大。また、これまでは商品を翌日に届けるためには配送前日の午後6時までに注文しなければならなかったが、Androidアプリ公開と同時に発表したアップデートで、その時間を「配送当日の午前2時」までへと延長するなど、サービスの利便性は徐々に高まっているようだ。

ただ、ユーザーが受け取り地点まで取りに行くというサービスの仕組み上、この数字をできるだけ早く増やすことが直接サービスの利便性につながることを踏まえると、まだまだ受け取り箇所は少ない印象を受ける。しかし、1品から注文できて、かつ送料無料という同サービスは、特に共働き世帯などには非常に便利なサービスと言えるだろう。

まだ東京都内に住むユーザー限定のサービスではあるが、気になる読者は今回発表されたAndroid版、または以前からリリースされているiOS版をチェックしてみてほしい。

“日本未発売”のオーガニック商品が買える「ナチュラカート」運営が2.6億円を調達

世界中の質の高いナチュラル&オーガニック商品を、日本にいながら“日本語”で、“日本の決済手段”を使って購入できるマーケットプレイス——cartが運営する「ナチュラカート」を簡単に紹介するとそんなところだろうか。

近年日本でも健康面や安心面に気を使う消費者を中心に、オーガニック商品が注目を集めている。ただcart代表取締役の橋本雅治氏いわく、日本は関連商品の流通量が非常に少ない「オーガニック後進国」だ。

予防医療の発達などの影響もあり良質な商品が豊富に出回っている欧米やオセアニアに比べ、日本では様々な規制なども影響して購入できる商品の数が限られているそう。そんな状況を変えるために橋本氏は2016年にcartを創業し、ナチュラカートを立ち上げた。

そのcartは2月13日、SMBC ベンチャーキャピタル、りそなキャピタル、三菱UFJキャピタル、アライドアーキテクツ、BEENOSを引受先とする第三者割当増資により総額約2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を活用して開発面やデザイン面を中心に組織体制を強化するほか、プロダクトの改善やマイクロインフルエンサーと連携した集客モデルの構築などを目指す方針。cartは2016年11月にもジャフコなどから3億円を調達していて、累計の調達額は約5.6億円になる。

海外で注目浴びる“日本未発売”のオーガニック商品を掲載

ナチュラカートは海外在住の個人や国内外のメーカーが出品するさまざまなナチュラル&オーガニック商品を購入できるプラットフォームだ。C2CとB2Cを組み合わせたハイブリッドモデルを採用していて、商品の出品者は大きく個人のバイヤーとメーカーの2タイプに分かれる。

C2CのモデルはファッションECの「BUYMA(バイマ)」を知っている人にはわかりやすい。海外にいるバイヤーが自分の気に入った商品を出品し、購入者から注文が入ったものを実際に買い付けて配送する。買い物代行にも近い仕組みで、ナチュラカートは双方を仲介する役割を担う。

一方のB2Cはブランドと消費者を繋ぐシンプルなマーケットプレイス。現在はオーガニック食品やコスメ、ナチュラルサプリなどを扱う国内外のメーカー約150社が出店している。橋本氏によると海外メーカーについてはほとんどが日本に進出していない企業なのだそう。「規制や流通面の複雑さなどが障壁になって、進出したくてもできなかった」メーカーが日本へ参入する際の選択肢として、ナチュラカートを選んでいるのだという。

サイト全体では約2000ブランド、3万点以上の商品を掲載。幅広いジャンルを扱っていて日本では未発売の商品も多い。マヌカハニーやハーブトニック、オーガニック粉ミルクなど海外で人気を集める商品を、現地に行かずともネットを介して気軽に購入できるのが特徴だ。

創業者はイデアインターナショナルを立ち上げた連続起業家

cart創業者の橋本氏はインテリア雑貨などを扱うイデアインターナショナルの創業者でもあり、2014年まで同社の代表取締役を勤めていた人物。上場も経験している、いわゆる連続起業家(シリアルアントレプレナー)だ。

イデアインターナショナル代表時には自社でオーガニックのコスメブランドを立ち上げたりもしていたが、「今に至るまでいろいろな参入障壁があり、なかなか日本国内に良質な商品が流通していかなかった」(橋本氏)ことを課題に感じ、cartを設立した。

創業時からcartに関わっているエグゼクティブ・アドバイザーの田中禎人氏は、上述したBUYMAを運営するエニグモの共同創業者。田中氏もオーガニック商品の流通面における日本と海外のギャップに目をつけ、BUYMAと同じようなモデルでこの問題を解決できたら面白いと考えていたのだという。

結果的にはB2Cモデルに知見がある橋本氏と一緒に、両者の得意領域を組み合わせるような形でスタート。ナチュラカートがC2CとB2Cの両方を取り入れているのはそんな背景があるからだ。

そのようにして始まった同サービスはもう少しでローンチから丸3年を迎える。その間にも「マーケットは間違いなく拡大している」というのが橋本氏の見解。たとえばイオンが食品やコスメの領域を中心にオーガニックのブランドを立ち上げたり、フランスのオーガニック専門スーパーであるビオセボンに出資したニュースなどは話題に上った。

オーガニックブランドを扱うアメリカ発のECサイト「iHerb(アイハーブ)」などの地名度も若い世代を中心に高まってきてはいるが、まだまだ海外の良質な商品が十分に流通しているとは言えない。cartでは今後もその土壌作りを継続していく計画だ。

今後はウェルネス視点を融合、将来はD2Cの展開も

cartのメンバー。前列左から2番目が代表取締役CEOの橋本雅治氏、後列左から2番目がCOOの越智幸三氏

今回の資金調達はまさにナチュラカートを一層拡大させるためのもの。調達した資金を活用して組織体制の強化やプロダクトの改善を測るほか、調達先のBEENOSとは越境ECノウハウの提供や海外の倉庫機能と連携した物流⾯での効率化など、事業上の連携も見据える。

合わせてこれまで着手していなかった新しい取り組みも計画中だ。ひとつは従来のナチュラカートで中心となっていたナチュラル&オーガニックジャンルに、ウェルネスの要素を取り入れること。cartでCOOを務める越智幸三氏は「近年オーガニック商品を求める消費者のニーズが変わってきている」ことがこの背景にあるという。

「家族や自分自身の健康を考えて、体に良い商品を使いたい。そんな健康志向でオーガニック商品を買う人たちが増えていて、(オーガニック商品を)ファッションで買う時代ではなくなってきている」(越智氏)

その要望に応える形で、ナチュラカートではより医療や科学的な視点から商品を選別する取り組みを考えている。具体的には「たとえばこの商品には水溶性食物繊維がどのくらい含まれていて、それにはどのような作用がある」など専門家の正しい解説を加えることで、各ユーザーが本当に欲しい商品を見つけやすい仕組みを目指す。

「医者やアスリートなど、エキスパートと連携することでユーザーにとってより価値のあるサイトにしていきたい。今まではユーザーの顕在化したニーズに依存していた側面が強かったが、何かぼんやりとした悩みがあった時に訪れても適切な解決策が見つかる場所を目指す」(越智氏)

この点については共同創業者の湯本優氏が医師/医学博士で、なおかつスポーツ医科学トレーニングやフィットネスの専門家であるため、湯本氏の知見やネットワークも活用できそうだ。

またもうひとつ、さらに将来的な構想としては「日本にない良質なものを取り扱うだけでなく、そもそも世にないものを作るというアプローチ」も検討していくという。いわゆる「D2C」的なアプローチだ。

もともとcartのメンバーはものづくり系のバックグラウンドを持つメンバーが多い。橋本氏はもちろん、COOの越智氏もユニリーバや西友でリアルな商品の企画や製造、販売に携わってきた。そこにナチュラカートで蓄積された販売データと、原料メーカーなどとのネットワークを合わせることで、cartオリジナルの商品を作ることも橋本氏の頭の中にはあるようだ。

「ナチュラカートはリサーチの場にもなる。どんな商品が人気なのか、どんな商品が求められているのか。その要望に十分に応えるものがないのであれば、自分たちで作ってしまってもいい。まだ会社として具体的な話が決まっているわけではないが、自分としては世の中にないものを作るチャレンジもしたい」(橋本氏)

世界最大ECプラットフォーム「Shopify」、日本向けローカライズを経て“より優れたグローバルプロダクト”へ

Shopify Japan Country Manager マーク・ワング氏

世界175カ国の60万以上の店舗で利用されているカナダ発・世界最大ECプラットフォーム「Shopify」。昨年末に日本市場への参入を果たしてからこの国でも徐々に存在感を高めつつある。現在では靴下専門店「Tabio」や金沢カレーの「ゴーゴーカレー」を含む数千もの国内ショップに利用されるプラットフォームへと成長した同社だが、日本市場のニーズに応えるためのローカライズにはかなり手を焼いていたようだ。

Shopify Japanトップのマーク・ワング氏は「日本は非常に難しいマーケットだ」と述べた一方で「我々をより良いプロダクトへと成長させてくれる」とも語った。日本市場参入後から続けられている徹底したローカライズにより培ったノウハウは、グローバルプロダクトとしての更なる発展にも役立っているのだという。

ワング氏は、J.P. MorganやCitigroup、Global Entrepreneurship Programで企業戦略や起業家支援を担当。2016年にShopifyのHead of Internationalization、2017年に同社のJapan Country Managerに就任した。

TechCrunch Japanはワング氏に、日本市場参入前後からこれまでの経緯や戦略、そして同社が日本EC市場をどう見ているのか、詳しく話を聞いてきたのでその内容を読者の皆さんにも共有したい。

Shopify“日本市場参入”の持つ意味

Shopifyのウリは誰でも「手軽にネットショップをオープンできる利便性」だ。ワング氏はとても丁寧に笑顔で取材に応じてくれた。Shopifyもまた、利用者にとって“技術的に”フレンドリーなプラットフォームだ。

あらゆるショップ運営社がエンジニアやプログラマーを雇わなくても、たとえコードが一行も書けなくてもオンラインストアを開設でき、世界を相手に販売を行える。そのような“簡単さ”は日本市場では特に重宝されるだろう。

総務省が2018年5月25日に発表した「通信利用動向調査」によると、13歳~59歳の年齢層でインターネット利用が9割を超えているが。だが、ワング氏いわく日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、国内リテーラー(小売業者)の若干24%しかオンラインにチャネルを持たない。

だからこそ「日本ではマーチャント(出店者)たちに対し、オンライン販売を開始し利益を向上させるためにサポート・教育の体制を強化する必要がある」とワング氏は語った。

マーク・ワング氏

「(日本では)24%のみがオンライン販売を実施しており、その半分ほどしかグローバルな販売を手がけていない。私たちのプロダクトの特徴は、ショップ開設後すぐにドメスティックおよびグローバルな販売が開始できるという点だ」(ワング氏)

そういった意味で「日本はShopifyにとって重要な市場だ」と同氏は付け加えた。

確かに、Shopifyは150カ国の言語、他国通貨にも対応しているほか、多彩なデザインテンプレートが用意されているので、日本だけでなく海外にも通用するデザインの店舗をすぐに開設することができる。

同社いわく「国内向けと海外向けのECサイトは、偽替・発送・決済の関係から、サイトを個別に構築する必要があった」というが、Shopifyは国内外のECサイトをまとめて管理できる機能を搭載している。

日本市場へ向けた“ローカライズ”

ローカライズと聞くと、言語やカスタマーサービスの対応が真っ先に頭に浮かぶとかもしれない。だが、Shopifyの日本ユーザーに向けたプラットフォームのローカライズについて話を聞いていると、「確かに」と思いクスッとしてしまう細かい部分がいくつかあったので紹介しよう。

日本では海外と違い、会計時に個人情報を入力する際に、ファーストネームではなくラストネームにあたる苗字が先にくる。住所に関しても都道府県、市区町村、町域、丁目番地、建物名、号室、といった順番は海外と逆なので、それに対応する必要があったという。

また、日本ではオンラインショップで会計を済ませている際に郵便番号をもとに住所の大半を自動的に入力してくれるが、これは日本の消費者にとって「必要不可欠なユーザーエクスペリエンスだ」とワング氏は話した。この自動入力は日本に導入後、アメリカでも同じような対応ができるようにしたのだという。細かい部分であるが、こういった部分が世界最大ECプラットフォームをより良いプロダクトへとブラッシュアップしているのだろう。

決済に関しても、日本ではクレジットカードの他にコンビニ決済という独特な方法があるのでそれに対応した。現在、日本でサポートされている主要な決済方法はPayPalやAmazon Pay、コンビニ決済、Shopifyペイメントなど。

2018年5月にローンチしたShopifyペイメントに登録すると、VISA、Mastercard、American Expressからの支払いが直接Shopifyを通して可能となり、他の決済代行のアカウントは不要となる。さらに、Shopify Pay、Google Pay、Apple Payを使用して素早いチェックアウトを顧客に提供できる。ちなみにShopifyペイメントは仲介手数料が0%だ。

ワング氏いわく、今後は「キャリア決済や後払いなどの支払い方法の導入も予定している」とのこと。

ロジスティクスに関しては、2018年7月よりオープンロジとAPI連携。ECサイトと倉庫をシームレスに連携する商品の保管・国内外への発送代⾏サービスを実現した。⽇本国内のみならず海外への発送も取り込みボタン1クリックで簡単に連携できる。

ワング氏いわくShopifyはパートナーやデベロッパーとのコミュニティーやエコシステムの構築を重視しており、「自分たちがベストではない」領域に関してはオープンロジに限らず今後も外部との連携を強化していくという。

また、FacebookやMessengerとの連携に続き、Instagramアプリ内で商品を販売できるように、日本でもニーズが増えているというInstagramショッピング機能との連携を2018年6月にローンチしている。これらのインテグレーションが簡単なのもShopifyの特徴の一つだ。

日本国内競合との差別化、今後の展開

日本には「楽天市場」といったモールがあるほか、ネットショップを無料で簡単に作成でき、ショップ開設数が50万店舗を突破した「BASE」の存在感も増してきている。だが、BASEがフリーミアムモデルを採用している一方、Shopifyはサブスクリプションモデルで利用料金は月額29ドルから。Shopifyには「Basic Shopify」(29ドル)、「Shopify」(79ドル)、「Advanced Shopify」(299ドル)の3つのプランが用意されている。全てのプランにおいて商品数・ファイルストレージは無制限になっている。

米国ではAmazonとも連携をしているということもあり、ワング氏は特に国内の競合を意識していた。Shopifyは利用料金がかかるが「ショップの成長に伴い自由にカスタマイズできる」ことが同プラットフォームの強みだという。Shopifyアプリストアにある2000以上ものアプリを使うことで、ネットショップをさらにカスタマイズすることができる

「私たちは出店者がまだ規模も小さく苦戦している初期の段階から関係を構築し、カスタマイズが必要となる段階に至るまで共に成長していきたいと考えている」(ワング氏)

また、上でも述べた通り、Shopifyはグローバルなショップ展開をサポートする。ワング氏いわく、ユーザーはそれまでドメスティックな販売に特化していたとしても、Shopifyに登録後「存在するとは想像すらしていなかった」海外需要を開拓したりすることもあるそうだ。

同氏は「以前はローカライズに力を入れていた」が「現在はドメスティック・グローバルのどちらの販売においても最も優れたプラットフォームになることを目標にしている」と語った。

グローバルな販売を目指す日本のショップ・オーナーにとって、Shopifyは今後もますます魅力的なECプラットフォームとなっていくだろう。ワング氏は今年中にも大きなニュースをいくつかアナウンスする予定だ、と話していた。

どこよりも使いやすいEC運営支援ツールを――福岡発のPearが約3500万円調達

EC事業者向けの支援ツールを開発するPearは12月13日、BEENEXT大和企業投資F Venturesの3社を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額約3500万円を調達したと発表した。今回の資金調達はPearにとってシードラウンドの位置づけで、同社初の外部調達となる。

写真中央がPear代表取締役の島井尚輝氏

福岡発のスタートアップであるPearは、複数のプラットフォームにまたがるEC運営の一括管理ツール「OMNI-CORE(以下、オムニコア)」を開発するスタートアップだ。

Pear代表取締役の島井尚輝氏が「使いやすさを重視した」と話すオムニコアでは、ITリテラシーが低いユーザーでも簡単に使いこなせるようにUI/UXを最適化している。同ツールを導入すれば、楽天市場やAmazonなど複数のECプラットフォーム間での在庫管理や注文管理、出品管理などを一括して行うことができる。

また、このような“管理”の機能のほか、簡単な質問に答えていくだけで自身のEC店舗が抱える問題点を明らかにし、それに対する解決策をタスクとして提案してくれるなど、“ECコンサルティング”の機能も備えていることが特徴的だ。

「EC運営を始めたばかりの人は、そもそもツールの使い方が分からなかったり、何から手をつけていいか分からなかったりするケースが多い。高度なコンサルティングを提供する事業者はいるが、このような初歩的な問題はシステムによるコンサルティングで解決することができる」(島井氏)

現在はベータ版を公開中のオムニコアだが、正式リリース後にはフリーミアムモデルでマネタイズを開始する。月商にして30万円以下のユーザーには前述したコンサルティング機能を無料で提供し、月商が増えるにつれて必要になる機能を有料で開放していく仕組みだ。高機能版の料金は月額2〜5万円程度になるようだ。

EC運営の一元管理ツールは、Hameeの「ネクストエンジン」やハングリードの「item Robot(アイテムロボ)」などが先行する分野だ。オムニコアはそれらの競合ツールに対し、独自のコンサルティング機能や使いやすさに注力することで差別化を図るという。

学生時代からWebサービス開発

Pearは2017年8月の創業。代表取締役の島井氏は学生時代から複数のWebサービス開発を手がけ、学園祭情報サービスの「学フェス」などをリリースした。これは、学園祭の実行委員がイベントをPRする場であり、学園祭を訪れたユーザーは、学フェスを使って学園祭内の催しモノや出店の場所を確認できるというサービスだ。登録ユーザーも2万人を超していた。

ただ、島井氏がこのサービスを持ち込んで東京のVCの前でプレゼンしたところ、「こんなんじゃ儲からない」と一蹴されてしまったそうだ。マネタイズする相手が学生だという点が気に入らなかったらしい。

学フェスでは出資を断られてしまったが、次にEC分野へと焦点を定めた島井氏は大学卒業後にオムニコアを自らの手で開発。チームメンバーも創業4ヶ月にして20人にまで拡大し、シードラウンドでの出資を勝ち取った。島井氏にとってある意味ではリベンジとも言えるオムニコアの正式リリースは、2018年春を予定している。

米モール最大手Simon Malls、EC企業向けポップアップスペースをローンチ

EC業界では現在さまざまな変化が起きている。多くの小売企業が実店舗からオンラインショップへの移行を画策するなか、逆にほとんどのECスタートアップは、できるだけコストを抑えながら、実店舗で消費者が商品を手にとって試せるような方法を模索している。そして、スタートアップとはあまり縁がないように思われる企業が、彼らに救いの手を差し伸べようとしている。その企業とは、アメリカで300店舗以上のショッピングモールを運営するモール界最大手のSimon Mallsだ。

同社は『The Edit』と呼ばれる「スケーラブルな小売プラットフォーム」をローンチ。これは簡単に言えば、ECスタートアップが自分たちの商品を陳列できるポップアップスペースのようなものだ。

創業間もないECスタートアップのための手頃でフレキシブルなポップアップスペース、ときいてショッピングモールを思い浮かべる人はほぼいないだろう。通常ショッピングモールに出店するには、長期契約を結び、高額な賃料を支払わなければならないため、スタートアップが出店するのはほぼ不可能だ。さらに各テナントのスペースは予め決まっているため、一旦契約を交わした後にスペースを拡大・縮小することもできない。

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しかしSimonは、ECスタートアップ用の共有スペースを作ることで、これらの問題すべてを解決しようとしている。彼らのサービスを利用すれば、スタートアップは従来のショッピングモールよりも大幅に低い賃料で、ネットショップだけではリーチできないような消費者ともつながりを持てる。またThe Editのサービスには、什器やディスプレイはもちろん、セキュリティやマーケティングサービス、さらには店舗内のBGMまで含まれており、利用料も1番安いプランが月額500ドルとなっている。

契約期間は1〜6ヶ月に設定されており、従来のショピングモールとの標準契約期間である10年に比べるとかなり短い。

もしもこの試みが成功すれば、Simonはアメリカ中のショッピングモールに同じようなスペースを構えるようになるだろう。テナントが決まらず空いたままになっているスペースの有効活用という狙いもあるのかもしれない。また、代わり映えしない地元のモールに飽きてしまい、何か新しいものを求めている消費者にとっても、The Editは魅力的な存在として映るだろう。

先週には、ニューヨークで2番目に大きいショッピングモールRoosevelt Fields(市内から車で45分ほど)に、トライアル用のスペースがオープンした。ファッションや食品、テクノロジーなど、多彩な出店企業の顔ぶれは、こちらから確認できる。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

Whole Foods買収はAmazonの利益にどのような影響をもたらすのか

【編集部注】執筆者のAlex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

Amazonは成長を重視するあまり利益を生み出していない(もしくは赤字でさえある)というのはシリコンバレーでよく聞く話だ。しかし同社は、以下のふたつの理由から常々このコメントを否定している

  1. 成長のために巨額の赤字を垂れ流す必要がなくなった。
  2. 最近(あくまでAmazonの企業としての歴史から言っての”最近”)誕生したビジネスの利益が順調に伸びている。

ここにWhole Foodsが加わることで話はさらに面白くなってくる。一般的に食料品小売業は利幅が薄いことで知られているが、既に指摘されている通り、Amazonの利益率はWhole Foodsを下回る。それでは、Whole Foodsの買収はAmazonの利益にどのような影響を及ぼすのだろうか?

私たちの計算には限りがあるということを予め理解しておいてほしい。Whole Foodsの商品が値下げされた後とは言え、Amazonが買収によって新しく発生するコストをどうするのか正確に予測するとなると、推測がかなりの部分を占めてしまう。つまり、値下げはこれから始まる長い物語の序章でしかないのだ。

Amazonを構成する三要素

Amazonの利益(もしくは損失)について議論する際には、同社のコア事業3つを頭に入れておかなければいけない。ひとつが北米でのEC事業、もうひとつが自称”海外”EC事業、そして最後がクラウドコンピューティングサービスのAWS事業だ。

同社は事業ごとの営業利益を決算書に記載しているため、(GAAPベースの純利益の方が指標としては望ましいとは言え)各ビジネスの成績をここから確認できる。以下が2017年第2四半期(リンク先PDF)のEC事業の業績だ。

  • 北米売上:223.7億ドル
  • 北米営業利益:4.36億ドル
  • 海外売上:114.9億ドル
  • 海外営業利益:-7.24億ドル

数字を見ればおわかりの通り、北米EC事業は営業利益を生み出しながら成長を続けている一方、海外EC事業は利益を犠牲に成長しているように見える。しかし、長期的なプランを重視することで知られるAmazonは、国内事業が海外事業の成長を(概ね)支えるような構図に満足している可能性が高い。

3つめとなるAWS事業は北米EC事業よりも好調で、海外EC事業によって生まれた営業利益の穴を埋めるほどだ。

  • AWS売上:41億ドル
  • AWS営業利益;9.16億ドル

上記全てを勘案すると[4.36億-7.24億+9.16億>0]となり、Whole Foodsを計算に入れる前の段階でAmazonの営業利益は黒字だとわかる。

(もっと丁寧に説明すると、Amazonの国内EC事業はもはや海外EC事業を(2016年第2四半期のようには)支えきれていないため、Amazon全体としての営業利益を確保する上で、AWS事業の重要性が増してきている)

それでは、Whole Foodsの売上と営業利益を計算に加えてみよう。

Whole Foods買収の影響

Whole Foodsの買収が完了したところで、同社がAmazonの利益にどのような影響を及ぼすのか考えてみよう(Whole Foodsの数字は、直近の四半期報告書からとったもの)。

  • 売上:37.2億ドル
  • 営業利益:1.8億ドル

まず、Whole Foodsの営業利益率は5%弱だ。しかしGadflyの指摘通り、Amazonの利益率はこれを下回っている。つまり、Whole Foodsの買収に伴ってAmazonに4つめの要素が加わることで、全社的な利益率は向上するかもしれないのだ。

ではWhole Foodsが加わることで、Amazonのビジネスモデルは変わるのだろうか? 変わったとしてもそこまで大きな変化はないだろう。というのも、AmazonはWhole Foodsよりもかなり規模が大きいため、1.8億ドルという営業利益がもたらすメリットもそれなりでしかないのだ。

先述の[4.36億-7.24億+9.16億]という式によれば、Whole Foods買収前のAmazon全体の営業利益は6.28億ドルになる。ここにWhole Foodsの数字を加えると[4.36億-7.24億+9.16億+1.8億=8.08億ドル]になる。

営業利益が8.08億ドルに増えることで、何か変化が起きるかどうかはわからない。ただ、営業利益が29%増え、売上が9〜10%増えるというのは確かだが、それを受けてAmazonが各事業への投資のあり方を変えるというのは考えが飛躍し過ぎているように感じられる。

AmazonがWhole Foods商品の値下げを行ったことで、Whole Foodsの営業利益は今後減少することが予想されるため、結果的に同社がAmazonの営業利益に与える影響も少なくなる。そのため、Whole Foods買収によるAmazonの事業戦略への影響も限定的だと言えるだろう。

結論として、Whole Foods買収によるAmazonの営業利益への影響は軽微で、恐らく買収のメリットは他事業へと広がること(プライムメンバーの増加など)になるだろう。また、Amazonの営業利益が既に黒字であることも注目に値する。結局のところ、巨人Amazonの前ではWhole Foodsも小人に過ぎず、その利益も取るに足らないものだということだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Amazonのインフルエンサープログラムにユーチューバーも応募できるように

商品のキュレーション・宣伝を通じてアフィリエイト収入を得ることができるAmazon独自のインフルエンサープログラムで、ユーチューバーの応募受付がスタートした。3月のベータ版ローンチからしばらくが経ち、先週の木曜日にはユーチューバーからの参加申請を受け付け始めていたことがこの度わかった。

「Amazon Influencer Program」と名付けられた同プログラムでは、これまでクローズドベータテストが行われており、インフルエンサーは所定のフォームを記入することで、参加申請できるようになっていた。

また、申請フォームはフォロワー数、コンテンツの質やエンゲージメント、Amazonとの親和性などをもとに審査されていた。

このプログラムの狙いは、ソーシャルメディアの力を利用した収益拡大だ。YouTube動画を含む各種オンラインコンテンツでは、インフルエンサーが気に入った商品をオススメする様子をよく見かける。これは企業から依頼を受けている場合もあれば、アフィリエイト収益を狙ったものもある。Amazonは独自のプログラムを通じて、この商流にもっと直接的に関わろうとしているのだ。

本件についてAmazonの広報担当者に確認をとったところ、「YouTube上のインフルエンサーに対しても、最近セルフサービスツールの公開を始めた。現時点ではAmazon Influencer Programへの登録しかできないようになっている」とインフルエンタープログラムの対象者を拡大したことを認めた。

同プログラムに参加したいユーチューバーは、専用のセルフサービスツールを使って参加申請できる。画面下部の「Get Started」と書かれたボタンをクリックすると、YouTubeアカウントの情報や参加資格があるかどうかについてのチェックが数ステップにわたって行われる。現状ではYouTubeアカウントが必須になっているが、今後は別の方法で参加資格をチェックする手段も追加されるようだ。

これに合わせて、Amazon Influencer Program用のウェブサイトも一新され、基本情報やプログラムの仕組みが新たに記載されている。

ウェブサイトの情報によると、参加が許可されたインフルエンサーにはカスタマイズ可能なAmazon上の専用ページが与えられ、そこにオススメ商品を登録できるとのこと。そして、バニティURLがサポートされたこのページで訪問者が商品を購入すると、インフルエンサーにコミッションが入るという仕組みだ。

さらに、このプログラムは従来のアソシエイトプログラムをインフルエンサー向けに拡張したもので、収益拡大を目的にAmazonへの新しい流入経路を提供するものだともサイトには記されている。

人気YouTubeチャンネルの「What’s Up Moms」「Mark Cuban」「Felicia Day」は既に参加が許可されたようで、Amazon上ではこれらのチャンネルのページが確認できる(なおベータ版の参加者数は公表されていない)。

しかしインフルエンサープログラムは、あくまでアフィリエイトプログラムの一環という位置づけのため、必ずしも紹介料が従来のプログラムに比べて高いというわけではない。つまり同プログラムは、インフルエンサーがオススメする商品を購入しやすくするための仕組みなのだ。

インフルエンサープログラム成功のカギを握っているのが、短くて覚えやすいURLを付けられるバニティURLのサポートだ。

バニティURLは「口頭でURLを伝える際や、直接リンクが貼れない環境では特に便利」だとAmazonは言う。具体的には、商品紹介動画などの中でURLを伝えるといった使い方が考えられる。

Amazonが動画関連の施策を打ち出したのは今回は初めてではない。同社は昨年「Style Code」というテレビショッピングスタイルのオンライン番組をローンチしたが、思ったような成果が得られなかったのか今年の5月には番組がキャンセルされてしまった。しかしインフルエンサープログラムの導入により、今後Amazonはユーチューバーを売り手に見立てた、HSNやQVCのような番組を作ることもできるだろう。

セルフサービスツールが公開されたことで、インフルエンサープログラムが本格的に始動したようにも感じられるが、そうではないようだ。申請内容はAmazonのスタッフによって手作業でチェックされるため、ほとんどの参加希望者にとって同サービスはまだベータ版の域を出ないと言える。

AmazonはYouTube以外のソーシャルサイト上で活躍するインフルエンサーも取り込もうとしており、Facebook、Twitter、Instagramなどが次なるターゲットになるだろう。

しかし先日ローンチされた「Amazon Spark」というInstagram風のサービスと、インフルエンサープログラムがどのように関わっていくのかはまだわかっていない。Amazon Spark上では、プライムメンバーがお気に入りの商品や感想を投稿できるようになっており、ここにインフルエンサーが自分のAmazonページのURLをリンクするといった使い方が考えられる。

Amazon Influencer Programはまだ実験段階にあるため、今後同社が対象者を拡大するにつれて、プログラムの内容も変わる可能性がある。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Walmart、Googleと音声ショッピングで提携――Amazon Alexaの独走に“待った”

本日(現地時間8/23)WalmartとGoogleは、音声アシスタント「Google Assistant」を通じた音声ショッピングに関するパートナーシップを結んだと発表した。今後消費者は、WalmartのEasy ReorderサービスとGoogle Express(Googleの宅配サービス)を併用し、何十万種類もの商品をスマートスピーカーに話しかけるだけで購入できるようになる。

さらにこのパートナーシップを受け、GoogleはGoogle Expressの会費を廃止し、サイトに登録されている各小売店の最低購入金額さえ満たせば、商品を1〜3日間で無料配送すると決めた。

これまでは月額10ドル(年額95ドル)の会費が設定されていたGoogle Expressにとって、これはかなり大きな変化だ。現在のところ同サービスでは、TargetやCostco、Kohl’s、Bed Bath & Beyond、PetSmart、Staples、Toys R Us、Walgreensなど大手小売店から、ファッション、家庭用品、ハードウェア、パーソナル・ヘルスケア用品、スポーツ用品、化粧品といった幅広いカテゴリーの商品を購入できる。

しかしGoogleは、会費のせいでGoogle Expressのユーザー数が伸び悩んでおり、特に音声ショッピング普及の障害になっていると考えたのだ。

「メンバーシップ制がだんだんとサービスの障害になってきていた」とGoogle Express担当GMのBrian Elliottは語る。「モバイルユーザーに対して、4.99ドルの配送料を支払うかメンバーになるかというオプションを説明するのは簡単だが、それでもユーザーにはいくばくかの負担がかかってしまう。しかし、さらにそれを音声だけで伝えるとなると、かなり難しいということがわかった」

なおGoogle Expressの利用者数や、同サービスを通じた売上額について、Googleはコメントを控えている。

これまでWalmartはGoogle Expressには参加せず、自分たちでオンラインの注文を処理していた。今年に入ってからは、(Amazon Primeとは違い)35ドル以上の商品を購入した全顧客に対して、無料の2日間配送さえ行っていた。

しかしGooge Assistantとの連携で、Walmartは音声操作という自社にはないテクノロジーを利用できるようになった。

音声ショピングこそが小売業界の未来だと考える専門家もいる。例えばRBC Capital Marketsは、音声ショッピングからの売上やプラットフォーム収益によって、Alexaは2020年までに100億ドルもの収益をもたらすことになるだろうと予測している。

もしもそうだとすれば、Walmartもその波に乗らないわけにはいかない。

そしてスマートスピーカーの分野でAmazonと肩を並べる主要プレイヤーといえば、Googleしかいないのだ(AppleのHomePodはまだ出荷が始まっておらず、サードパーティーアプリのサポートに関する計画も発表されていない。またMicrosfotのCortanaを搭載したスピーカー有力な対抗馬とは言えない)。

WalmartでEC部門のトップを務めるMarc Loreは、「(音声ショッピングは)未だ黎明期にある。しかし過去2年間でAI技術が発達し、今後の方向性が見え始めてきた」と音声ショッピングの野望について語った。

「将来的には音声認識テクノロジーの精度が桁違いに向上し、消費者のニーズを理解してそれに応えられるようにさえなるだろう。これによりショッピング・エクスペリエンスは大きな変化を遂げることになる」と彼は付け加えた。

Google ExpressとGoogle Homeの連携は今年の2月から既にスタートしており、Walmart以外の小売店も音声ショッピングに対応している。

しかしEasy Reorderサービスのおかげで、Walmartでは他社よりも簡単に音声ショッピングを楽しめるようになっている。というのも、Easy Reorderはオンライン・オフライン両方の購入履歴をベースに、個々の利用者の好みを理解しているのだ。例えば、いつも使っているブランドや商品のサイズ、さらには直近の購入日や頻度までEasy Reorderには記録されている。

そのため、実際に商品を注文するときは、「OK、Google」からスタートし、「ピーナッツバターを注文して」や「ピーナッツバターを再度購入」「ピーナッツバターを買って」「Walmartからピーナッツバターを買って」といった感じでGoogle Homeに話しかけるだけで済む。

購入しようとしている商品が35ドル(無料配送のための最低金額)以上であれば、2日以内の配送を希望するかどうか聞かれ、35ドル未満であればWalmartのカートにその商品が自動的に追加される(カートへはGoogle HomeとGoogle Expressのアプリからアクセス可能)。そしてカート内の商品の合計額が35ドルを超えた時点で支払いを促されるという仕組みだ。

まずはEasy Reorderにフォーカスしたサービスが提供される予定だが、音声ショッピングの分野で今後Googleとさらに協力関係を深めていこうとしているWalmartは、Googleとのパートナーシップという側面を強調している。

来年からは生鮮食品の音声注文も受け付ける予定で、ユーザーは予め袋詰された商品を実店舗で受け取ったり、家まで配達してもらったりできるようになる(受け取りオプションはユーザーの居住地域によって異なる)とのこと。さらに、顧客の好みや購買習慣に関するデータが集まるにつれて、システムがさらにスマート化していく可能性もあるとWalmartのLoreは言う。

Walmartのモバイルアプリ内にあるEasy Reorderの画面

「音声サービスが普及するにつれて、更なるパーソナライゼーションが要求されるようになり、結果的に各消費者の求めるものがそのままオススメ商品として表示されるようになるだろう」と彼は話す。「まだまだ実現には時間がかかるが、その可能性には大いに期待している」

Google ExpressおよびGoogle HomeとWalmartの連携は9月末からスタート予定だ。

まずはGoogle Homeだけが対象になるが、Elliottはその他のGoogle Assistant搭載デバイスも順次Walmartでの買い物に使えるようになると語った。

しかし、スマートスピーカー市場におけるAmazon優位の現状を考慮すると、WalmartはAlexaとも連携しないと、かなり大きなのチャンスを逃すことになりそうだ。ある予測によれば、今年中にはAmazonがスマートスピーカー市場の70%を占め、2020年までに1億2800万台ものAlexaデバイスが稼働することになるとさえ言われている。

そこでLoreに、WalmartがAlexaとも連携する可能性があるか尋ねたところ、彼はただ「No」とだけ答えた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Amazon・Alibabaの2強状態の中、EC企業に残された道とは

【編集部注】執筆者のHans TungはGGV Capitalのマネージングパートナー。

超巨大企業に勝つにはどんな手を使えばいいのか? 中国とアメリカという世界最大級のEC市場で戦う企業は、日々この問いに頭を悩ませている。

AmazonとAlibabaの大成功(時価総額はどちらも4000億ドル以上)をもってEC市場の戦いは終わった、と考えている人は多い。Amazonが本や家庭用品、電子機器、服、食料品など次々と新しいカテゴリーを制覇していく傍ら、Alibaba傘下のTmallとTaobaoもシェアを伸ばし、何百万という数のSKUを確保するなど、両社は本当の意味で世界中の消費者にとっての”何でも揃う店”になろうとしている。

しかし、ここで戦いを放棄するのは早計だ。最新の動向を注意深く見ていくと、まだまだグリーンフィールドと呼べるような分野があるとわかる。ミレニアル世代が中心の大衆市場にサービス開発時点から注目することで、新たなECユニコーンになれる可能性がまだ残されているのだ(ミレニアル世代の購買行動に関する詳細はこちらを参照してほしい)。

新しいトレンドを理解する上で大事なのは、”大衆市場”の再定義だ。売り手と買い手が各地域に留まっていた昔の経済では、大衆市場を狙うというのは、さまざまなカテゴリーの商品を可能な限り安い価格で販売するということを意味していた。つまり”毎日特化”でものを売る”何でも揃う店”になるということだ。

しかし、スマートフォンの普及に伴い状況は大きく変わった。今や世界の大衆市場は、ミレニアル世代の消費行動や好み、さらには中国で起きているライフスタイルの”アップグレード”に大きく影響されている(このアップグレードは旅行や家庭用品、ファッション、食事などさまざまな分野で発生しており、中国の消費者は安価でユニークなプロダクトを求めている)。

そんな中、個々のニーズにあったサービスを提供することで大きな成長を遂げているのが、Dollar Shave Club(ひげ剃り)や73Hours(中国の婦人靴ブランド)をはじめとする新しいeブランド、さらにはHouzz(インテリア・DIY)、DarbySmart(ものづくり)、Red(中国名Xiaohongshu、ビューティープロダクト)などの分野を絞ったマーケットプレイスだ。彼らはキュレーションとパーソナライゼーション、そしてコミュニティの力を使ってアメリカ・中国市場を席巻している。

キュレーションVS巨大倉庫

巨大企業と彼らの違いは「検索VSディスカバリー」という構図にまず表れる。AmazonやTaobaoは巨大な仮想倉庫のようなもので、明確な目的を持ったユーザーのニーズに応えている。消費者は自分が欲しいものを安く買うためにAmazonやTaobaoのサイトを訪れているので、欲しい商品を検索し、購入してサイトを去る、というのが一般的な流れだ。無料配送や翌日配達といったメリットもあるが、このようなサービスは消費者がスマートフォン上で明確な目的なしに楽しむには、あまりに無機質で情報量も多すぎる。

先述のeブランドや分野を絞ったマーケットプレイスは、このような巨大倉庫と真っ向から戦おうとはしていない。その代わりに彼らは、消費者の興味をひきそうなカテゴリーの商品をキュレートするなど、ディスカバリー要素に注力している。モバイルショッピングはある種のエンターテイメントになろうとしており、消費者は巧みに選び抜かれた商品群を眺めること自体をも楽しんでいるのだ。キュレーションのやり方はさまざまだが、その人気はアプリストアのランキングを見れば明らかだ。

インテリアやDIYが中心のHouzzのように、その道のプロがキュレーションを行う場合もあれば、ファッションがテーマのPoshmarkのようにKOL(キー・オピニオン・リーダー)をはじめとするユーザーがその担い手となるケースもある。また、価格が基準のサービスも存在する。HollarやWishは激安商品を販売しているほか、LetGoOfferUpはCraiglist風の中古品売買プラットフォームをモバイルフレンドリーな形で運営している。

彼らは、色んなカテゴリーの商品を今すぐ買いたいという消費者をターゲットにはしていない。その代わりに、彼らは(カテゴリーや価格ごとに)商品をキュレートし、消費者が手頃でユニークな商品をスマートフォン上で楽しみながら見つけられるような環境を提供しているのだ。

ネット上の自己表現としての消費

消費者はAmazonやTaobaoのことも気に入っているかもしれないが、それはあくまでツールとしてであり、サービスのキャラクターにひかれているわけではない。つまり、消費者は便利だからAmazonやTaobaoを使っているに過ぎず、自己表現のためにこれらのサイトを何度も訪れているわけではない。

AirBnBやRed(Xiaohongshu)、Pinterest、Houzzといったeブランドやマーケットプレイスは、ソーシャルサービス上のファンや、消費者に憧れを持たせると同時に刺激を与えるようなコミュニティの構築がとてもうまい。彼らはコミュニティや自分たちが提供している価値を文化的文脈に落とし込み、サブカルチャーの入り口のような存在になることで、ユーザーのロイヤルティーを高めているのだ。プロダクトのパーソナライゼーションとコミュニティの構築がうまくいけば、ソーシャルメディア上で口コミが広がる。これが現在アメリカと中国の両方で起きていることだ。

高級志向のEC企業も特定の価値観を反映したブランディングを通じて同じことをやっている。さまざまな体型に合う、”女性による女性のための”下着を販売しているLively、健康飲料のDirty Lemon、自分の髪にあったシャンプーやコンディショナーが購入できるFunction of Beautyなどがその一例だ。

ユーザーの好みに沿って提案商品を変えるサービスも存在する。ファッション系サブスクリプションサービスを提供しているStitchFixDiaは、ユーザーがどの服を購入してどの服を返却したか、という情報をもとに次に送る商品を変えている。AIを使って消費者の好みを反映した商品を販売・提案しているブランドは、詳細なパーソナライゼーションを差別化の柱にできるだろう。

業界や個別の戦略はさまざまだが、上述の企業に一貫して言えるのは、AmazonやAlibabaではなく彼らのアプリ上でプロダクトを購入したいと消費者に思わせるほどのパーソナル、そしてソーシャルなインセンティブを創り出しているということだ。これはオンラインに限った話ではなく、オフラインの小売企業も日々変化する消費者行動に手を焼いている。今後Walmartのように生き残りのためにM&Aを繰り返す企業が出てくるかもしれない。

Amazonに対抗するためにWalmartはJetを買収した

これからどうなるのか?

では、スタートアップはこの記事で触れたような強みを活かして、本当にAlibabaやAmazonに勝てるのだろうか? この質問に対する私の答えはイエスだ。EC市場にはまだまだ成長の可能性が残されている。

確かにAmazonとAlibabaはアメリカと中国それぞれの市場でかなりのシェアを握っているが、未だ両国のECの市場規模は、最大9兆ドルとも言われる小売市場の8%(アメリカ)、16%(中国)でしかない。まだまだEC市場には発展の余地があるということだ。将来的には昔の小売市場のように専門店が立ち並ぶようになるかもしれないが、そこにはエクスペリエンスとしての買い物という概念やAR・VR技術、AIを活かしたひねりが加わってくるだろう。

そんなEC市場で勝ち残っていくためには、これまで以上にミレニアル世代の価値観やコミュニケーションチャンネルに注目しなければならない。今後EC市場がさらに成長し進化していく中、キュレーションやパーソナライゼーション、コミュニティの創出に力を入れた企業こそが、ますます大きくなるパイの取り分を増やしていくことになるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Alibaba、インドネシアのEC企業Tokopediaに投資――ラウンド総額は11億ドル

Alibabaが東南アジア市場への攻勢を強めている。この度インドネシアのEC企業Tokopediaは、Alibabaを中心とする投資家から合計11億ドルを調達したと発表した。

評価額は公表されていないが、両社共にAlibabaがTokopediaの少数株主になったことを認めた。

2009年に設立されたTokopediaは、小規模小売店や大手ブランドが(東南アジア最大の経済規模を誇る)インドネシアの消費者に向けて商品を販売できるマーケットプレイスを運営している。同社は2014年にソフトバンクとSequoiaから1億ドルを調達しており、East Venturesやサイバーエージェント、Beenos Partnersも初期からの株主だ。Tokopediaによれば、名前が明かされていない既存株主の多くも今回のラウンドに参加したとのこと。

「Alibabaとのパートナーシップを通じてサービスのスケールや質を向上させ、小売店やパートナー企業がインドネシアはもちろん、国外でも円滑にビジネスを運営できるようにしていきたい」とTokopediaは声明の中で述べた。

「Alibabaのことは私たちの師匠かつロールモデルのような存在として考えている」とTokopediaの共同ファウンダーでCEOのWilliam Tanuwijayaは同声明の中で語った。「そんなAlibabaを株主として迎えることができ、大変嬉しく思っている。テクノロジーを活用して商業を民主化するというTokopediaのミッションの実現に向けて、今回のパートナーシップが大きな追い風になるだろう」

東南アジアには現在注目が集まっている。Googleが共著したレポートでは、同地域の年間オンライン消費額が2015年の55億ドルから2025年には880億ドルに増加すると予測されている。さらに人口世界第4位のインドネシアが、その半分を占めるようになるとも言われているのだ。

最近Tokopediaには中国からの投資に関する噂が立っており、先月にも同社がAlibabaやTencentの投資先であるJD.com(Tokopediaの競合企業)と会談を行ったと言われていた。

本日(現地時間8月17日)発表されたAlibabaの四半期決算は第1四半期に続いて好調で、海外ECビジネスの伸びは目を見張るほどだった。同社は前年比136%増の26億元(3億8900万ドル)という海外ECビジネスの売上の原動力として、これまでに20億ドルを投じてきた東南アジアのマーケットプレイス企業Lazadaを挙げた。502億元(74億ドル)の総売上額と比べるとそこまで大きな金額とは言えないが、Alibabaが東南アジアを攻め込んでいるのは間違いなく、今回のTokopediaへの投資がそれを証明する形となった。

インドネシア発のスタートアップに対する大型投資は過去1ヶ月でこれが2つめだ。Alibabaの前には、Expediaが予約プラットフォームのTravelokaに3億5000万ドルを投じ、同社の評価額は10億ドルを突破した。それ以前には、Go-JekがTencentを中心とするラウンドで12億ドルを調達したと報じられていた。本件は正式には発表されていないが、近いうちに公表されることになるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

クルーズとCandeeが協業でライブコマースチャンネル「SHOPLIST Live」を配信開始

モバイル向け動画の制作などを手がけるCandeeが、ライブコマース(動画コマース)に参入し、アプリ「Live Shop!」の正式提供を開始したのは6月7日のこと。そのCandeeが、今度はファストファッションの通販サイト「SHOPLIST.com by CROOZ(以下SHOPLIST)」を運営するクルーズと協業で、ライブコマースチャンネル「SHOPLIST Live」を配信することになった。配信開始日時は6月30日の20時を予定している。

Live Shop!ローンチ時の記事の中でも紹介しているが、ライブコマースは配信者と視聴者がリアルタイムにやり取りしながらアイテムを購入できる、いわば、TVショッピングの動画版×インタラクティブ版といったサービスで、新たな通販のプラットフォームとして注目を集めている。中国では既に、1回の生放送で視聴者数が数千人、年間売上二桁億円、といったライブコマースの事例もあるそうだ。

Live Shop!では、インフルエンサーやモデルがそれぞれ配信チャンネルを開設し、ライブ配信でファッションアイテムなどを紹介。視聴者はライブ中にコメントやスタンプを送って、配信者とリアルタイムにコミュニケーションを行ったり、紹介アイテムを購入したりできる。

一方のクルーズが運営するSHOPLISTは、レディースからメンズ、キッズまで、国内外のさまざまなジャンルのファストファッションアイテムをまとめて購入できる通販サイトだ。2012年7月のサービス開始から5年目となる2017年3月期には、売上高を約190億円規模まで広げている。

Candeeとクルーズでは今回の協業により、ライブコマースの特徴を生かしたECチャンネルとしてSHOPLIST Liveを提供し、EC市場の新しいビジネスモデルを作っていく、としている。

Candeeがライブコマースに参入、インフルエンサーが商品を紹介する「Live Shop!」

 

動画ストリーミングの新しいかたちとして注目を集めるライブコマース(動画コマース)。中国の動画配信プラットフォームでは、すでに個人が自撮りの動画を配信し、視聴者からデジタルギフトを受け取ったり、商品を販売したりなんてことが進んでいるようだ。例えば淘宝(タオバオ)上では、1回の生放送で視聴者数が数千人、年間売上二桁億円、なんていうライブコマースの事例もあるようだ。そんな動画コマースの波が日本にもやってきた。モバイル向け動画の制作などをてがけるCandeeは6月7日、ライブコマースアプリ「Live Shop!」の正式提供を開始した。

Live Shop!は、「ライブ配信× コマース× インタラクティブ」をうたうライブコマースアプリ。「ゆうこす」こと菅本裕子さんをはじめとしたインフルエンサーやモデルが、それぞれ自身のチャンネルを開設。定期的にライブ配信を行う。ユーザーはライブ配信中にコメントやスタンプを送ってリアルタイムのコミュニケーションを行ったり、配信者が紹介するファッションアイテムなどをリアルタイムに購入したりできる。

Candeeは2015年の設立。LINEの動画配信アプリ「LINE LIVE」内の番組をはじめとして、これまで1300本以上(ライブ配信は500本以上)の動画の制作、配信を手がけてきた。2016年12月にはYJキャピタルやTBSイノベーションパートナーズ、gumiを引受先とした総額12億円の資金調達を実施。さらに2017年5月には、ライブ配信に特化した映像制作会社のアポロ・プロダクションを完全子会社化するなどしている。

「これまでのクライアントワークでは、圧倒的なスピードで動画制作のトライアンドエラーを繰り返すことで、コンテンツ制作のノウハウを内部で持つようになった。ネット全盛の時代でも、プロのコンテンツが勝つ。マーケットについてはソーシャルゲームも参考にした。1人でなく、誰かと楽しむという流れは、動画にもやってくる。ソーシャルなビデオプラットフォームを作っていく」——Candee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏は新サービスについてこう語る。

前述の通り、同社はLINE LIVEの人気番組「さしめし」をはじめとして、数多くのライブ配信動画を制作してきた。キャスティングやコンテンツの制作力に加えて、ソーシャルな動画プラットフォーム運営、自社での商品在庫の管理まで、ワンストップで実現することが、同社の強みになると語る(ディー・エヌ・エーがノンプロモーションで展開する「ラッフィー」などもあるが、こちらはあくまで動画プラットフォームのみの提供となっている)。Live Shop!は2月頃に企画を立ち上げ、4月にはテストローンチ(App Storeでのアプリ公開)。そして今回の正式公開に至った。

Candee執行役員の椙原誠氏(左)とCandee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏

Candee執行役員の椙原誠氏(左)とCandee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏

ライブコマースはコミュニティに近い

番組を担当するのはCandeeがキャスティングしたインフルエンサーが中心。商品はいわゆる“プチプラ”、つまり低価格帯のファッションアイテムやメイクグッズが中心となる。プラットフォームの一般開放は予定しないが、今後はモデルやインフルエンサーのほか、アパレルブランドなどの参加を呼びかけていく。「映像活用したコンテンツはあるが、マネタイズできるプラットフォームは少ない。それができれば、プラットフォームに入ってくる人も増えてくる」(新井氏)

動画自体はアーカイブされるのでいつでも視聴できるが、商品購入に関してはライブ配信中に限定する。これは出演者とのインタラクティブなコミュニケーション、ライブの価値にこだわるためだという。出演者はインフルエンサーなどが中心。すでにそれなりの規模のファンがいることもあり、コミュニケーションの延長線上での購買が多いという。配信は長くて1時間程度。メイクのハウツーやファッションの紹介、料理に挑戦するなど、さまざまな企画を準備している。

「ユーザーからの質問にも出演者が回答するので、視聴者に納得感を持ってもらえる。番組の尺が30分から1時間ていどなので、衝動買いできるような単価の安い商品が売れている。通常のECであれば能動的に動かないと商品を購入できないが、ライブコマースだと、『憧れの○○さん(モデルやインフルエンサー)が紹介している』という、これまでとは違う切り口での販売ができる」(Candee執行役員の椙原誠氏)

僕もプレローンチ時の動画を見たのだが、出演者がファンの質問に回答しつつ商品を紹介し、「購入した」というコメントにお礼をする、というのがリアルタイムに行われるというのは、ファンにとっては嬉しいものになると感じた。新井氏は「コミュニティサービスに近い。ある種ファンになって、結果商品を買う、というもの。ライブの物販に近いかも知れない。ライブTシャツを買うのに素材はこだわらない。出てくる人の距離感で商品を購入している」と語る。

Candeeでは、今夏をめどに、月間60〜80点程度の商品の販売を目指す。すでにアンケート機能や抽選販売機能を導入しているが、今後はオークションやクイズといった機能も追加していく。また現在支払い手段はクレジットカードに限定されているが、Apple Payや後払いなど手段も拡大していく。さらにイベント企画、タレントマネジメントなどをてがけるアソビシステムとも提携。今後同社所属のタレントらも動画に出演する予定だ。

國光氏が語るソーシャルビデオプラットフォーム構想

6月7日、イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」内で、gumi代表取締役であり、Candee取締役会長の國光宏尚氏がこのLive Shop!についてプレゼンテーションを行っている。國光氏は新井氏、椙原氏同様に、「ソーシャルゲームが流行した理由はみんなでやって楽しいから。動画も一緒にみんなで見る方が楽しいはず」と説明した上で、(1)スマートフォンファースト、(2)ソーシャル、(3)インタラクティブ——という要素を持った動画による「ソーシャルビデオ革命」が起こると語った。Candeeではソーシャルビデオのプラットフォームを作り、今後さまざまなカテゴリの動画コンテンツを提供する計画だが、Live Shop!でチャレンジするEC領域はその第1弾という扱いだ。

また國光氏は2020年以降のメディアについて語った。2020年にはモバイル通信はより高速な5Gとなり、動画はより精細な4K・8Kとなっていく。だがテレビに関してはチューナーを変えない限り現状の4K・8Kの品質を得ることができない。スマホの方が明らかにテレビより画像が良くなる。いったん上(の品質)を見ると、ユーザーはもう戻れない——そんな背景もあって、2020年以降、「いよいよ通信が放送を飲み込む」(國光氏)とした。

gumi代表取締役であり、Candee取締役会長の國光宏尚氏

Amazonがインドで電子ウォレットのライセンスを取得

Amazonがインドで電子ウォレットのライセンスを取得したとMedianamaが報じた。今後同社はインドの消費者に対して、これまでよりもスムーズな決済手段を提供できるようになる。

現在のところインドの顧客は、何かを購入するたびに2段階認証のプロセスを経なければいけない。これは法律で定められたプロセスだ。しかし今回のライセンス取得を受け、今後彼らはAmazon上の電子ウォレットにお金をチャージできるようになる。さらにAmazon側も電子ウォレットの導入によって、キャッシュバックサービスの提供、迅速な返金といったメリットを享受できる。

これまでインド事業に50億ドルをつぎ込んできたAmazonは、贈り物やギフトカードの発行を可能にするため、2014年に電子ウォレットライセンスを持つ現地企業のQwikCilverへ出資していた。昨年12月にAmazon Payへと名前が変更されたこのサービスに電子ウォレット機能が実装されるのでは、との憶測もある。

実はAmazonは電子ウォレットのライセンスを3月に取得していたが、本日その事実が明らかになった。また数日前には、インドEC界のトップを走る現地企業Flipkartが、中国企業のTencent、Microsoft、eBayなどから14億ドルもの資金を調達していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

グッチのバッグが90分で届く―、東京、パリ、NYで即日配送

夕方行くパーティーに着ていく素敵な服がない。けれども、店舗に足を運んでいる暇もない。そんな時は、グッチを選ぶといいかもしれない。ECサイト「Farfetch」はラグジュアリーブランドのグッチとパートナーシップを締結し、わずか90分でファッションアイテムを配送するサービス「F90」を提供すると発表した。サービスは日本でも利用できる。

2008年に創業したFartetchは現在11都市にオフィスを構え、世界190ヵ国に向け商品の配送を行っている、ラグジュアリーブランドに特化したECサイトだ。Farfetchは4月12日にHuaweiと共催で、初のカンファレンス「FarfetchOS」をロンドンのデザイン・ミュージアムで開催し、「Store to Door in 90 Minutes(90分配送サービス)」、オンラインとオフラインをつなぐ「Store of the Future (SOF)」ベータ版、靴のブランドNicholas Kirkwoodとのカスタムオーダーシステムなどの新しい取り組みを発表した。

中でも注目なのは、グッチとの独占パートナーシップにより提供する90分配送サービスだ。Farfetchのウェブサイトやアプリからグッチの商品を購入すると、グッチの正規店から90分でユーザーのもとに届けるという。ロンドン、パリ、ミラノ、マドリッド、ドバイ、ニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミ、サンパウロ、東京の10都市でサービスを展開する。

90分配送サービスの対象となるグッチのアイテムの一部

FarfetchのファウンダーでCEOのジョゼ・ネヴェス氏はグッチとのパートナーシップについて以下のようにコメントしている。

「 顧客のニーズにあわせた、このサービスをスタートするにあたり、常に最先端のファッションと素晴らしいリテール体験を提供し続けているGUCCIは、最適なパートナーです。時間こそが、現代における贅沢品(ラグジュアリー)であり、誰もがより多くの時間を持つことを望んでいます(以下略)」

ネヴェス氏のコメントにもあるように確かに現代人の日々の生活は忙しく、アマゾンやUber Eatsをはじめとする商品の配送サービスは便利なものだ。ただ、Farfetchとグッチの配送サービスの便利さを余すことなく享受できるのは、6万円ほどする柄Tシャツや20万円はするショルダーバックを現物を見ずに購入を即決できるほどお金に余裕のある人に限られているようだ。

サイトを見てみたところ、現時点で日本の90分配送サービスで対象となる商品はショルダーバッグやウォレット、スカーフなどの小物類が多い。また配送可能な時間帯は、平日の11時から17時30分までとなっている。

Amazonが中東市場に進出―、現地のEC大手Souqを6億5000万ドルで買収

世界制覇に向けて動くAmazonの次の狙いは中東だ。中東市場進出のため、同社が現地のEC企業Souqを6億5000万ドルで買収したとする複数報道内容を、われわれの情報筋が認めた。アラブ世界のAmazonとも言われているSouqは、同地域最大のEC企業だ。契約書のサインの「インクはすでに乾いている」と、Souqに近い情報筋は語っている。

Souqは本件に関するコメントを控えており、同社CEOのRonaldo Mouchawarも、TechCrunchからのメールや電話には応えなかった。

Amazonも同様にコメントを控えており、広報担当者であるTy Rogersからは「Amazonでは噂や推測に基づいた報道に対してのコメントは控えております。ご連絡ありがとうございました」という返事を受け取っただけだ。

中東市場にとっては、今後大きな変化に繋がる可能性のあるニュースだが、買収額は投資家が願っていたほどではなかった。1年前にSouqが2億7500万ドルを調達したときには、10億ドルという評価額がついており、さらに昨年末にも実はSouqとAmazonの間で、Souqの株式の30%をAmazonに売却するという話が進められており、その際の評価額も同じく10億ドルだったのだ。

昨年eBayやUAEの小売企業Majid Al Futtaimとも買収交渉を進めていたSouqは、Amazonとの最初の交渉が決裂してから本日までに、買収額を5〜7億ドルの間で上下させながら、徹底的に議論を進めてきた。そしてようやく両社は、「お互いに飲み込める」金額として、6億5000万ドルでの買収に落ち着いたとある関係者は語る。

買収額はもともとのSouqの評価額よりも低くなってしまったものの、投資家は少なくとも今回の買収によって投資分プラスアルファのお金を回収できそうだ。Crunchbaseの情報を見てみると、SouqはこれまでにBallie GiffordやIFC Venture Capital Group、Jabbar Internet Group、MENA Venture Investments、Naspers、Standard Chartered Bank、Tiger Global Managementらから計4億2500万ドルを調達している。

Amazonは今回の買収によって、現地で既に大規模なオペレーションを行っているSouqの力を使い、これまでサービスを提供していなかった中東市場にすぐに攻勢をかけることができる。

Souqは、CEOのMouchawarがアラビア語のポータルサービスMaktoobのECビジネス以外をYahooに売却した後の2005年頃に誕生した(なお件のポータルサイトは、2014年に起きたYahooの海外事業縮小の一環として閉鎖された)。

現在Souqは、参加ショップ数や販売している商品の数では、中東市場最大のECサイトと言われている。同社のマーケットプレイスには、7万5000件のショップが登録されており、電子機器やファッション、家庭用品、カーアクセサリー(最近追加された)などを含む30以上のカテゴリーで、合計約200万点もの商品が販売されている。

Amazonは今回の買収で、マーケットプレイスだけでなく、Souqのフルフィルメントビジネスも手に入れることになる(物流とフルフィルメントは、地域を問わずAmazonのビジネス拡大において重要なカギを握っている)。さらに両社の契約の中には、Souqのオンライン決済代行サービスPayfortも含まれていると言われており、決済に関する専門技術や、中東市場向けにローカライズされた決済サービスまでAmazonの手にわたる可能性もある。

McKinseyのレポートによれば、中東市場の小売消費額におけるEコマースの割合は現在約2%程しかないが、今後EC市場が成長していく中で、SouqのおかげもありAmazonは重要な役割を担っていくことになるだろう。

盛り上がる中東のEC市場

同地域のEC市場を狙っている企業は他にも存在する。最近誕生した野心あふれるEC企業のNoon.comは、サウジアラビアの公営ファンドとドバイの不動産王Mohamed Alabbar(ドバイ・モールやブルジュ・ハリファ等を所有)から10億ドルを調達した。まだNoon.comはサービスを開始していないものの、地元メディアは「今週中」にNoon.comがローンチされると報じており、これもSouqの身売りに関係していると情報筋は話す。

昨夏の重要な出来事として、Alabbarを中心としたコンソーシアムが物流会社Aramex株式16%を取得した。これにより、Alabbarの所有するEmaar Retail Groupが持つ広大なオフライン店舗網を、デジタル面で補完する存在としてのNoon.comのローンチという、大きなプランのために必要だったインフラが整ったことになる。

Amazonも以前、中東進出に向けた物流パートナーとしてAramexへの興味を示していたと関係者は話しており、AlabbarらによるAramexの株式取得がAmazonにプレッシャーをかけることになった可能性が高い。

さらにAlabbarの動きによって、Noon.comがSouqのビジネスを脅かす存在になったということも、AmazonとSouqが再度交渉のテーブルにつくきっかけとなり、両社の契約を実らせる要因になったとある関係者は語っている。

究極的には、例え希望金額よりも売却額が低かったとはいえ、Amazonへの売却がSouqを前進させる上では最適の選択だったと言える。さらに投資家にとっても、Amazonに比べて経営面で劣るeBayや、オンラインではなくオフラインに強いMajid Al Futtaimより、Amazonの方がパートナーとして優れているだろう。

なおNoon.com以外にも、昨年6700万ドルを調達したWadiや、Rocket Internetの投資先であるNamshiなど、Souqと競合する現地EC企業は存在する。

Souqの買収によって、インドのようにAmazonがこれまで築いてきた近隣地域でのプレゼンスがさらに広がっていくことになる。ちなみに最近Amazonはインドに攻勢をかけ、FlipkartやSnapdealといった企業と戦いを繰り広げている。現在FlipkartとSnapdealは合併交渉を進めていると報じられており、これはAmazonによるインド事業への何十億ドルという投資と、それによる同社の業況の拡大に対する動きのようだ。さらにFlipkartがeBay Indiaを買収しようとしているという噂もある。eBayのインド事業はそこまで大きくはないものの、この話が実現すればインドのEC市場に大きな影響が及ぶだろう(eBayの広報担当者は本件に関して、噂や憶測に対してはコメントを控えていると語った)。

インド進出時に、現地企業を買収せず時間をかけて事業を作り上げていったAmazonの辛抱強いアプローチを考えると、中東市場に素早く進出するための現地企業買収という今回の動きは注目に値する。

これまでAmazonは、ゼロからビジネスを作り上げることをモットーとしていたこともあり、新規市場に進出する際は比較的時間をかけていた(ゆっくりとした拡大方針は、EC事業だけでなくEchoやAlexaといったプロダクトでも採用されており、アメリカでは大成功をおさめている両プロダクトも、海外ではこれまでのところイギリスとドイツにしか進出していない)。

東南アジア進出に向けたAmazonシンガポールのローンチは、当初今年のQ1に予定されていたが、年内のローンチへと計画が延期されたと複数の情報筋は語る。一方同社は、現在オーストラリアでのサービス開始に向けて準備を進めているとも報じられている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

オンラインストア「STORES.jp」がイベントなどで使えるスマホ決済サービスをローンチ

オンライン決済分野のプレイヤーと言えばPayPalSquareCoineyなどが思い浮かぶが、最近ではEコマースプラットフォームから派生した決済サービスも増えている。例えば、ネットショップが開設できる「BASE」は、決済サービス「PAY.JP」を展開しているし、ファッションを扱うモバイルECプラットフォームOrigamiも2016年5月に決済サービス「Origami Pay(オリガミペイ)」をローンチした。そして今回、新たにSTORES.jpが決済分野に参入するようだ。本日オンラインストアの作成サービス「STORES.jp」を展開するブラケットは、スマホでカード決済を受けつける「STORES.jp Payment」をローンチした。

STORES.jp Paymentは、例えばイベントや勉強会、屋外での物販などで短期的にカード決済を受け付けたい時に利用できるサービスだ。STORES.jp Paymentを利用するにはSTORES.jpのストアを開設している必要がある。ただ、ストアを利用しない場合は、STORES.jpの「ストア設定」からストアを非公開にすることでアプリ決済のみを利用することもできる。

カスタマーからの支払いを受け付けるには、まずアプリを起動して、カメラでカスタマーのクレジットカードの番号を読み取る。セキュリティーコードを入力したら端末をカスタマーに渡し、内容を確認した後「決済する」ボタンを押してもらって決済完了だ。

アプリは無料でダウンロードでき、利用するのに申し込みや審査などは必要ない。VISA、Master、American Expressでの決済に対応し、決済手数料は購入金額の5%だ。STORES.jpの商品在庫とSTORES.jp Paymentと連動させることもできる。アプリはiOSのみで提供している。

2008年10月に設立したブラケットはカーシェアリングサービス「CaFoRe」や靴のカスタマイズEC「Shoes of Prey」の日本版などを展開していて、2012年9月にSTORES.jpをローンチした。2013年7月にはファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの完全子会社となったが、2016年10月にMBOを実施している。その時、ブラケットの創業者で現在取締役会長を務める光本勇介氏はTechCrunch Japanの取材に対し、STORES.jpのユーザーベースをハブに、各種のサービスを提供していくという構想を話していた。具体的には、決済サービスを展開することも視野に入れているということだったので、その構想通り今回STORES.jp Paymentのリリースに至ったようだ。

複数のブランドで店舗をシェア―、Bulletinが提案する小売店の新形態

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スタートアップの世界にいると、物理的な店舗を設けるというのは少し古臭い感じがする。都市部で人気の地域に出店するためにバカ高い賃貸料を払って、ましてや長期間の契約を結ぶなど考えたくもないほどだ。

しかしY Combinatorの投資先であるBulletinは、実店舗で商品を販売したいと考えているブランドのために柔軟に使えるスペースを提供しようとしている。COOのAli Kriegsman(CEOのAlana Branstonと共に下の写真に写っている)は、自分たちのアプローチを「小売のためのWeWork」と表現する。

Bulltinは店舗となる場所をおさえ、さまざまなサイズ(少し棚が置いてある程度のものから、もっと大きいものまで)のセクションに区切ることで、顧客企業に販売スペースを提供しており、顧客は気に入ったセクションを1ヶ月単位で借りられるようになっている。

店を訪れるお客さんは、小規模で独立したさまざまなブランドの商品を、ひとつの店舗でまとめて見ることができる。恐らくブランドの入れ替わりのスピードも速いので、店を訪れる度に違った雰囲気を味わうこともできるかもしれない。

しかも通常の小売店と違い、ブランド側は「大きなスペースにある各ブランドの店舗」とKriegsmanが表現する各セクションを、自分たちの好きなように形作ることができる。具体的には、どの商品がどこに陳列されるかや商品の価格もブランドが決められるほか、陳列されていない商品をiPadでお客さんに見せたり、メールアドレスなどの顧客情報を集めたりと、自分たちがやりたいことを何でもできるようになっている(店内の販売員はBulletinのスタッフだが、各ブランドは販売員を教育することも可能)。

ブランドの中には、Bulletinのサービスを小売販売モデルのテストに使うところもあれば、新商品のローンチ時に1、2ヶ月だけスペースを借りるところもある。解約の1ヶ月前に連絡さえすれば、顧客は好きなタイミングで好きなようにBulletinのスペースを使えるとKriegsmanは話す(賃貸契約と準備には5日ほどしかかからないと彼女は付け加える)。

Ali Kriegsman, Alana Branston

実はBulletinは、YCの2017年冬期アクセラレータープログラムに参加する前に、昨年の助成金プログラムにも参加していた。Branstonによれば、当初ふたりは「素晴らしい新進気鋭のブランドを扱っていて、実際に商品を購入できるウェブマガジン」をつくろうとしていたが、その流れでニューヨークシティ周辺にポップアップストアをオープンしたところ、ポップアップストアの方が儲かることがわかったという。

「顧客は別に新しいオンライン販売のチャンネルを必要としていないことに、私たちはすぐに気が付きました」とBranstonは話す。ブランドが実際に必要としていたのは、人がたくさん訪れて「すぐに商品を販売できる」小売スペースだったのだ。

Bulletinはまだオンラインストアも続けているが、今はポップアップ戦略を続けつつ、そのノウハウを応用して長期的に店舗を構えることに注力している。同社は、昨年11月にニューヨークのウィリアムズバーグに初めての店舗をオープンし、現在各スペースは「キャンセル待ちの状態」だとKriegsmanは言う。

本日(米国時間2月21日)Bulletinは2つめとなる店舗をソーホーにオープンした。ウィリアムズバーグの店舗は家財を中心に扱っているが、ソーホーの新店舗は女性向けの商品を集中的に扱っていく(核となるテナントにはシャワーキャップのShhhowercapや、キャンドルのKeapなどが含まれている)。そのほかにもBulletin Pantry(食料品)、Bulletin Baby(子供用品)、Bulletin Wellness(健康用品)といった新しい店舗を現在計画中だ。

彼女たちの計画から考えると、今後はもちろん店舗を増やしていくことになるが、当面の間全ての店舗はニューヨーク内でオープンし、将来的にはロサンゼルスを皮切りに他の街にも進出していきたいとBranstonは話す。

さらにBulletinは、スペースの予約や売上情報の確認が簡単にできるソフトの初期バージョンを既にローンチしており、今後もソフトの改良を続けていくとKriegsmanは付け加える。

YCに加え、BulletinはこれまでにNotation Capital、Halogen Ventures、Jesse Draperからも資金を調達している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Lensabl、オンラインで手軽にメガネのレンズ交換

お気に入りの古いメガネやサングラスを使おうと思っても、レンズだけ交換するというのはなかなか難しい。特にサングラスだ!というかサングラスのレンズを交換する人なんて、そもそもいるのだろうか?さらにメガネ店でレンズを替えようとすると、新しくフレームごと買うより高くつくこともある。サングラスならなおさらだ。

Lensablという、カリフォルニア州ウェストウッド発のスタートアップが、そんな問題を解決しようとしている。古いレンズが傷ついてしまったり、視力が変わったり、さらにはレンズの色を変えたいと思ったときにも、Lensablに頼めばレンズだけ交換してくれる。

実際にレンズを交換するときは、Lensablのウェブサイトで、度の強さ、読書用や普段使いか、色、偏光・調光・ミラーレンズかなど、どんなレンズが欲しいかしっかりと伝えなければいけない。カスタマイズが終わったら、両目の視力や瞳孔間距離など、処方箋の情報をサイト上のフォームを通じて送信する。マニュアルで情報を入力することもできるが、不安な人は眼科でもらった処方箋のコピーをそのままアップロードしてもOK。

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注文後にLensablから箱が届くので、ユーザーはレンズを交換したいフレームをその中に入れて返送する。なお、送られてくる箱には、ちゃんとメガネの本数分の出荷ラベルが同封されている(Lensablが配送料を負担してくれる)。TechCrunchでもこのサービスを試してみようと、一度に数本のメガネを送ってみたところ、2週間くらいでヴィンテージフレームに自分で選んだレンズがはめ込まれて戻ってきた。品質は普通のメガネ店と比べても遜色ない。

Lensablはどんな形のフレームにも対応している。Spectaclesの色が付いた奇抜なレンズが気に入らなければ、Lensablに頼んでレンズだけ替えてもらえばいい。Spectaclesのレンズを色付きの調光レンズにすれば、暗いところではクリアに見えて、太陽が出ているところではサングラス代わりになってと、もっと頻繁にSpectaclesが使えるようになり、場所を問わずに「スナップ」できるようになること請け合いだ。

Lensabl lets users replace original lenses with any tint they want including mirrored.Lensablではミラーレンズを含め、もともとの取り付けられているレンズをどんな色のレンズにでも取り替えられる。

Lensabl共同ファウンダーのAndy BilinskyとMike Rahimzadehによれば、同社は2016年11月に静かにサービスを開始し、最近ではファッション業界から注目を集めている。現在はオンライン・オフラインを問わず、さまざまなブランドや小売店とのパートナーシップを結ぼうとしており、将来的には顧客がフレームを購入するときにLensablのサービスを使ってレンズを選べるような仕組みをつくろうとしている。

My producer rocking a vintage pair of Lensabl glasses.

Lensablでレンズを交換したヴィンテージフレームでキメるTechCrunchのFelicia Williams

実店舗型で処方箋なしのサングラス店を経営しているChilliBeansとは、既にパートナーシップを結んでおり、ChilliBeansでフレームを買ったお客さんは、Lensablでレンズを選べるようになっている。そのため、Costco OpticalやLensCraftersなど、全国に店舗を持つメガネ店がLensablの主な競合相手となる。

Lensablのレンズの価格は77〜397ドルに設定されており、今のところはアメリカ国内でだけ同社のサービスを利用できる。「遠近両用で琥珀色の薄い調光レンズ」のように複雑なオーダーは、単純なものや処方箋のいらない遮光レンズよりもちょっと高くつく。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter