乾電池で動く家電製品をIoT化、「MaBeee」開発のノバルスが1.2億円を調達

乾電池に新しい価値を与える

最近多くのIoT端末が発売されているが、すでに家にあるスマートではない家電製品をIoT化できるのなら、わざわざ買い替えなくてすむし便利だと思う。ノバルスが開発する乾電池の形をした「MaBeee(マビー)」は、乾電池で動く電化製品にセットするだけで、正にそれを実現するIoT機器だ。ノバルスは本日、ニッセイ・キャピタル、みずほキャピタルから1.2億円を調達したことを発表した。今回の資金調達で、セールスマーケティングや開発のための人員強化を進めるとノバルス代表取締役、岡部顕宏氏はTechCrunch Japanの取材に答えた。

mabeee_howto

MaBeeeは単3電池の形状のIoT機器で、使い方はとても簡単だ。Mabeeeに単4電池を装着して、単3電池に対応する機器にセットする。これだけで、MaBeeeを搭載した機器は、専用のスマホアプリから操作することが可能になる。例えば、おもちゃのプラレールの場合、普通はスイッチを入れたら電車は一定のスピードでレール上を走り続ける。けれど、その電池をMaBeeeにした場合、プラレールを走る電車のオンオフをスマホから操作したり、スマホ端末を傾けることで電車の走行スピードを変えたりすることができるようになる。

ホビーやエンターテイメント以外でも展開を目指す

MaBeeeは今のところ、ホビー製品やエンターテイメント領域を軸に展開しているが、乾電池で動く製品なら基本的に何にでも活用することができる。今後は他の分野への展開も考えていると岡部氏は話す。例えば、ホームセンターなどで販売されているホームセキュリテイー用のアラームには、通常スマホへの通信機能はない。そういったものにMaBeeeを入れると、アラームが起動した時にMaBeeeからスマホに通知を飛ばすことができるようになる。他にも、例えば子供達が制作した工作にMaBeeeを搭載し、IoT機器のプログラミングを学ぶ機会を提供するなど、教育分野での活用もできると岡部氏は話す。「乾電池は幅広い用途で使われています。将来的には家の中で使うおもちゃ、教育、セキュリティーなど、いわゆるスマートホームのようにMaBeeeのアプリやプラットフォーム上で、乾電池製品やそれ以外の製品がつながっている状態になることを目指しています」と岡部氏は話す。

ノバルスはシードファイナンスでICJ(インクルージョン・ジャパン)から資金調達を実施している(金額は非公開)。今回の資金調達ではニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルが参加し、1.2億円を調達した。その資金でノバルスは、MaBeeeのソフトウェアとハードウェア開発、マーケティング、人材強化を進める予定だ。また、MaBeeeを他の分野で展開していくに辺り、他の製造メーカーとアライアンスを組んでMaBeeeの裾野を広げていきたいと岡部氏は言う。

岡部氏は前職はセイコーインスツルでハードウェア製品の開発に関わり、2015年4月にノバルスに立ち上げた。2015年11月にクラウドファンディングサイト「Makuake」で50万円を目標にキャンペーンを開始し、最終的には大幅に目標額を超える約640万円を集めることに成功した。そして2016年8月から、約140の家電量販店、玩具店、ホビー製品を扱う店舗などで販売するに至った。「大手企業にいると、新規カテゴリーの製品は出しずらいと感じることも多いと思います。けれど私自身もレールがない中で、1年前の自分には想像しえなかったところまで来ることができました。アイデアを引き出しにしまっておくのではなく、一歩踏み出せる人が増えれば、日本全国でもっと面白いものが増えると思います」と岡部氏は話す。

ちなみに、ノバルスは昨年11月にTechCrunch Japanが渋谷ヒカリエで開催したTechCrunch Tokyoのイベントに出展してくれている。「多くの方々にMaBeeeを知ってもらう良い機会となりました。テレビを含め、メディア露出やVCと知り合うきっかけにもなりました」と岡部氏から嬉しいコメントをいただいた。その時の様子がこちら。

  1. 7r8a6754

  2. 7r8a6549

  3. p1040891

SoftbankのARM買収完了―240億ポンド(3.3兆円)は英国最大のM&A

2016-09-06-arm-sb

今年のテクノロジー界で最大級―かつイギリス史上最大―の買収が確定した。今日(米国時間9/5)、SoftbankはARM Holdingsの買収手続きを完了したと発表した

ARMはSoftBankが7月に240億ポンド(現在のレートで320億ドル、当時は310億ドル)で買収する意向を示した半導体メーカーだ。この買収によりSoftBankはIoTの世界に向けて大きく飛躍することになる。ARMは9月6日付でロンドン証券取引所(LSE)での上場が廃止となる。SoftbankではARMを今後も独立企業として運営する意向を示している。

今回のニュースは、買収完了のために必要とされる規制当局による承認が得られ、最後の障害が取り払われた直後に発表された。ソフトバンクは買収を発表した声明で次のように述べていた。

「買収契約の条件に従い、SBG〔SoftBank Group〕は発行済、未発行を含めてすべてのARM株式(ただしSBGないしSBG子会社が取得済み株式を除く)を総額で約240億英ポンド(310億USドル、3.3兆日本円相当)のキャッシュで買収する。買収手続きの完了後、9月6日(グリニッチ標準時)をもってARMのロンドン証券取引所への上場は廃止され、公開企業ではなくなる」

Softbankはまた「この買収に伴う財務および営業への影響は手続きの完了を待って行う」とも述べていた。ARMとSoftBankの財務は今日から統合が開始される

これまでSoftBankはモバイル網および固定回線におけるインターネット接続サービスを消費者に提供してきた。しかしニュースが発表された当初からわれわれはARM買収がSoftbankがIoTテクノロジーにおいて飛躍していくための重要なピボット点になると報じてきた

SoftBankのファウンダー、CEO、孫正義は今年初め、それ以前に公表していた引退の意向を取り消したことでテクノロジー界を驚かせた。そしてARM買収が発表された。孫CEOによれば交渉開始から終了までわずか2週間だったという。この買収はある意味でSoftBankという会社が次の時代をどう生き抜いていくかを予め示すものといえるだろう。

この取引について一部では、Softbankは機を見るに敏だったと評している。 Brexit〔イギリスのEU離脱〕によってポンドの為替レートが低落した瞬間にARMをさらったというわけだ。この国民投票では過半数の有権者がイギリスがEUを離脱することに賛成した。これが経済に与えた影響は大きく、英ポンドの為替レートは大きく下がった。

しかし孫CEOはARM買収を発表したプレス・カンファレンスで「Brexitは私の決定に何の影響も与えていない。多くの人々がBrexitについて憂慮している。この国の経済に与える影響は良かれ悪しかれ複雑なのもとなるだろう。…しかし私の投資の決断はBrexitが原因ではない」と述べた。

なるほどSoftBankとARMが買収について交渉していた2週間にポンドの価値は16%下落したが、逆にARMの株価はほぼ同率でアップした。つまり差し引きゼロだった。また考慮すべき経済的要素は他にもあった。この買収に先立ってSoftbankはAlibaba株の一部を売却、同時にフィンランドの有力ゲーム・メーカーSupercellも売却した。SoftBankは90億ドル(1兆円)という巨額の資金を起債によって調達する計画を発表している。孫氏は「これは為替レートの変動に便乗してできることではない」と述べ「もっと早く買収したかったのだが、資金が手元に入ってくるのを待っていたのだ」とジョークを飛ばした

「私は遭難しかけている会社に投資することはない。私はパラダイム・シフトに投資する。…これは私の情熱であり、ビジョンだ」と孫氏は述べた。

事実、Softbankは常にパラダイム ・シフトのまっただ中にいた。孫氏は社員がたった16人だったYahooを通じて「パソコン・インターネット」に投資した。その後はモバイル化に巨額の投資を行った。SoftbankはSprintの買収を始めとして多数のモバイル関連企業を傘下におさめている。そして孫氏の信じるところでは、世界がIoTに向けてシフトしていくのは必然的な流れだという。

ARMはイギリスにおけるテクノロジー企業のサクセス・ストーリーの代表だった。スマートフォン時代の到来の波に乗ってARMのチップ・デザインはppleを始め、世界の有力モバイル・デバイス・メーカーが採用するところとなった。

ARMにとってスマートフォン・ビジネスは依然として重要な柱だ。先月も長年のライバルであるIntelがARMのテクノロジーのライセンスを受けてスマートフォンのプロセッサーを製造すると発表しているのは興味深い。Intelはこれによって自社のスマートフォン向けチップ・ビジネスを大きく加速できると信じている。

しかし将来にむけてさらに重要なのは数年前からARMがビジネスの本質を IoTにシフトさせている点だ。ARMは現在の稼ぎ頭であるモバイル事業がいつかは頭打ちになることを予期していた。

そしてARMの予期通りに事態は推移している。スマートフォンの販売台数の伸びは事実上ゼロになった。世界の多くの市場でスマートフォンの普及は飽和点に近づきつつあり、すでにスマートフォンを所有しているユーザーは簡単に新機種に買い替えなくなった。

なるほど現在でもいわゆる「つながった」デバイスは多数存在する。冷蔵庫や玄関のドアのカギといったダム・デバイスが続々とスマート化され、インターネットにつながるようになった。しかし真のIoT時代の到来はまだこれからだ。ARM(いまやSoftbankだが)はこのパラダイム・シフトをいち早く参入したことにより、同社がスマートフォンで収めたような成功をIoTでも収められると期待している。

Featured Image: a-image/Shutterstock

〔日本版〕原文冒頭のニュースリリースへのリンクは日本からは無効なので相当するウェブページに差し替えてある。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Microsoftの人工知能Cortanaで、冷蔵庫がもっとスマートに

liebherr-stage-refrigerators-and-freezers-1

MicrosoftがLiebherr(リープヘル)の家電部門と共同で冷蔵庫をもっとスマートに、もっと速く、もっと強く作り替えようとしている……おっと失礼、「よりスマートに」だけでした。2社による新たなコラボレーションにより、Microsoftはコンピュータビジョン技術(いわばコンピュータの目)をMicrosoft Cognitive Services Computer Vision API経由で提供し、冷蔵庫が自分で庫内にある物体を見分けられるようにするという。

なぜ「庫内に入っているものを判別する冷蔵庫」が必要なのだろう? 何か買い忘れて、またスーパーマーケットに走らなくてもいい、というのは1つの理由だろう。ここで用いているディープラーニングのアルゴリズムは、何百万点という食品パッケージの画像データを処理した蓄積に基づいて、新しい食品も学習できるという。いずれ市販された暁には、実世界のユーザーから収集したデータを使ってもっとスピーディーで、もっとスマートになるに違いない。

他社製の冷蔵庫では遠隔から庫内を確認できたりもするが、MicrosoftのデータサイエンスチームはLiebherrと直接協力して、この試作機を「学習する」冷蔵庫に育て上げた。そのおかげで、わざわざスーパーでの買い物中につながりの悪い携帯通信経由で低解像度の画像を表示して、人間の目で庫内の食品をチェックしなくても済むようになっている。

この冷蔵庫、現段階では試作品なので、まだ当面は現状の「知性のないまぬけな食品クーラーボックス」で何とかしのぐしかない。けれどももし、今すぐにでもちょっぴりMicrosoftのついた冷蔵庫を導入してみたい、ということであれば、こんな選択肢もあるようだ。

原文へ

(翻訳: Ayako Teranishi / website

Windows 10、ついに冷蔵庫のドアになって登場

samsung_fridge_win10

何千、いや、何百万という「Windows 10にアップグレードせずに粘っている」皆さま、長らくお待たせしました!アップグレードするかどうかはWindows 10搭載の冷蔵庫を見てから決める、とのことでしたので、本日はIFAショーの会場から、かなりイケてるニュースをお届けします。こちらはまだはっきりとした発売日も決まっていないただの試作品ではありますが、ひとまずご覧あれ。LG製の高級感ただよう冷蔵庫のドアに、フル機能のWindows 10タブレットがあしらわれています。

しかもこのタブレット、巨大です。サイズは27インチ、Intel Atomプロセッサー搭載(タブレット上部に内蔵)、デモの際には性能もかなり良さそうな感触でした。驚くほどほどレスポンシブで反応が良く、「スマート」と銘打って似た感じのディスプレイを搭載した他の家電よりもはるかに優れものです。

この冷蔵庫の最も「クール」なところは(←冷蔵庫だけあって、なかなかよく冷えたダジャレでしょう?)大きなタッチスクリーン画面が半透明になって、庫内の様子を見通せる点にあります。つまり、スクリーンの表面には向こう側に透けて見えている食品の賞味期限などをバーチャルにタグしておけるという訳です。腐りやすい食べ物の管理などに便利ですね。もちろんデモ機の庫内には4つくらいしか物は入っていませんでしたが、前述のとおりスクリーンは27インチあるとはいえ、実世界では庫内もスクリーンもすぐにぎゅう詰めになることでしょう。

もちろんその他にも、レシピの検索・表示やYouTube動画の再生など、スマートな冷蔵庫ドアにできそうな標準機能にも、Samsung のTizen式にすべて対応しています。(ちなみにこの日のデモではニュース映像が流れていて、プーチン大統領の額が大写しになっていたのが印象的でした。)

原文へ

(翻訳: Ayako Teranishi / website

980円から購入できるStroboのスマート窓センサー「leafee mag」ーーMakuakeに登場

Strobo代表取締役の業天亮人氏

Strobo代表取締役の業天亮人氏

Stroboは8月23日、IoT窓センサー「leafee mag(リーフィー・マグ)」の先行予約をクラウドファンディングサイト「Makuake」にて開始した。同社はこれまで、姿勢改善をサポートするスマホ連動型スマートクッション「クッシーノ」の開発など、オフィス向けのIoT製品の開発が事業の中心になっていたが、今後はコンシューマー向けのIoT製品の開発にも事業の裾野を広げていく。

leafee magは、Bluetoothでスマートフォンと連動するスマート窓センサー。窓にセンサーを貼り、鍵部分に専用マグネットを取り付けるだけで自宅の窓の戸締まりをスマートフォンから確認できるようになる(※鍵を閉めることは不可能)。これにより、朝、家を出るときに誰もが感じたことのある、「窓の戸締まりしたかな?」という日常生活の不安が解消される。

どうやって窓の戸締まりを検知するのか? 仕組みは非常にシンプル。センサーと専用マグネットの距離を測って、戸締まりができているかを確認。距離が10mm以内であれば閉まっているいると認識され、10mm以上離れれば開いていると認識される。

leafee magの利用イメージ

leafee magの利用イメージ

 

これだけ見れば、「また似たようなIoT製品が登場したのか」と思うかもしれない。確かにスマートホームを可能にするIoT製品は、すでに数多く誕生してきているが、leafee magは導入のハードルが既存製品に比べて低く、そして安価だ。

使用にあたって、必要なものはスマートフォンだけ。既存のIoT製品はブロードバンド回線やルーターといった機器を用意しなければならなかったが、leafee magは先立って準備しておくべき機器が一切ない。価格も1000円台(Makuakeでは980円から販売)と誰もが気軽にモノとインターネットがつながった生活を体験できるようになる。

既存のIoT製品は導入のハードルが高すぎる

この手軽さ、低価格を実現した背景には代表取締役である業天亮人氏のIoT製品への強い思いがあった。

「Stroboを創業する前にもインターネット家電メーカーを起業し、IoT製品の開発を行っていました。自分たちの中では、『これは上手くいく』という感覚があったのですが、蓋を開けてみたら、思ったように普及していきませんでした。なぜ上手くいかなかったのか、その原因はハードルの高さにありました。その製品はルーターやインターネット回線も用意していただければいけなかったですし、何より価格を1万円以上に設定していた。それでも当時は安い方だったんですけど、やはり導入のハードルが高いと誰も必要としないんだなと思いました」(業天氏)

この経験があったからこそ、誰もが気軽にモノとインターネットがつながった便利な生活を体験してほしいと強く思うようになり、価格1000円台のスマート窓センサー「leafee mag」が誕生したという。

「IoTによって、生活はもっと便利に、そして豊かになると思っています。しかし、まだまだコンシューマー向けのIoT製品のハードルは高い。僕たちのleafee magが、そんな状況を変えていく第一歩になればと思っています」(業天氏)

ユーザーの反応も上々、想定外の使い道も

すでにleafee magのユーザーテストは済んでおり、ユーザーの反応も上々とのこと。このユーザーテストによって、窓に取り付けるだけでなく、エアコンに取り付けたり、冷蔵庫に取り付けたり、様々な使い道があることも発見されたという。

「まさか、エアコンや冷蔵庫に取り付ける使い方があるとは思ってもみませんでした。でも、このユーザーテストを通じて、多くの人がモノとインターネットがつながった生活に便利さを感じていることも分かりました」(業天氏)

Stroboはまず、Makuakeでのプロジェクトの成功を目指す。ただし、プロジェクトに関わらず、モノとインターネットがつながった便利なライフスタイルを提供するためにも、コンシューマー向けのIoT製品の開発は今後も進めていくという。

エアコンや冷蔵庫に利用するケースも

エアコンや冷蔵庫に利用するケースも

あなたのIoT機器をボットネットの奴隷にしてはならない

Low Angle View Of Security Camera On Wall

【編集部注】著者のBen Dickson氏はソフトウェアエンジニア兼フリーランスライターである。ビジネス、技術、政治について定期的に寄稿している。

 

デラウェア州に本社を置く実店舗を持つある宝石店は、最近起きた多段DDoS攻撃(サーバーに大量のリクエストを送りつけダウンさせる攻撃)をしのいだ後、オンラインリソースへのアクセスができなくなった。

DDoS攻撃は目新しいものではないが、 このDDoS攻撃はIoTデバイスだけが使われたことに特徴がある。この特定の攻撃の背後に控えた元凶は、感染した25000台のCCTVカメラで構成されるボットネットだった 、これらは高帯域接続で武装し世界に散らばっていた。

IoTボットネットの増加は2016年のサイバーセキュリティのトレンドのひとつとして予測されており 、デラウェア州の宝石店のエピソードの背後にある技術的な詳細は、 IoTボットネットがいかに危険かに注意を向けされる例のひとつである。日々無防備なIoT デバイスがインターネットに接続することを受けて 、悪質なボットのオーナーはそのゾンビマシンによる不死なる忠実な軍隊の中にやすやすと新人を徴兵して行く – 彼らの次の目標は、あなたの家のスマート冷蔵庫、電球、ポット、またはドアロックになるかもしれない。

ここでは、 IoTボットネットについて知っておく必要があることと、この迫り来る脅威と戦うために何ができるかを解説する。

なぜIoTデバイスがボットネットの魅力的な標的なのか?

いまや常識になってきているように、IoTデバイスへの感染障壁は、PCやスマートフォンなどの汎用コンピューティングデバイスよりもはるかに低いものである。「パーソナルコンピュータやサーバーとは異なり、ほとんどのIoTデバイスは十分に保護されていないか、あるいは全く保護されていないのです」と語るのはサイバーセキュリティ会社Imperva IncapsulaのシニアマネージャーであるIgAl Zeifmanだ。「その多くが高速ブロードバンドに接続され、通常のコンピュータのような処理機能の多くを保有しているという事実にもかかわらずです」。

Imperva IncapsulaはIoTボットネットの迫り来る脅威について、2014年3月という早い時期から、何度も警告を出してきたことで有名である。

ZeifmanはCCTVカメラとウェブカメラは特別に注意を払うべきであると考えている。他の専門家によって行われた仕事がZeifmanの意見を裏付けている。Arbor Networksの研究者が最近、さほど有名ではないボットネットマルウェアのLizardStresserのコードが、IoTデバイスに感染させられたサイバー犯罪を発見した。インターネットに接続されたカメラのうち、対象となるデバイスの90パーセントが感染していたのである。研究者の一人Matthew Bingは、そのブログの記事の中で、銀行、ゲームサイト、ISPや政府機関に対するDDoS攻撃を行うために使われている、ボットネットノードが利用可能な累積帯域幅は、400 Gbpsに達していると述べている。

「不正なパケットがあったかどうかをチェックするために、最後に電球にログインしてtcpdumpを実行したのはいつですか?」

— Deepindher Singh

問題のいくつかはIoTデバイスを特徴づける固有の限界に由来している。「自身を保護するための、アンチマルウェア、アンチウイルス、そしてファイアウォールなどの実行は、デバイス自身の制約によって難しいので、伝統的なITセキュリティ手段をIoTデバイスに配備することが難しいのです」と語るのは、Subexのビジネス開発エキスパートであるPreetham Naikである。ここで言うデバイス自身の制約とは、計算能力や記憶容量の制限、ならびに例えばLinuxなどの既知のオペレーティングシステムの、機能縮小バージョンの利用を含むものである。

Zeifmanが指摘するように、高度なコンピューティング機能、高い接続性、そして貧弱なセキュリティの組み合わせは、IoTデバイスを「 ボットネット採用担当者のための理想的な候補者」にする。

また、IoTデバイスのほぼ自律的な性質も関連している。「基本的な問題は、ほとんどのIoTデバイスは特定の機能を実行することを意図されている『物』であるということなのです」こう語るのはIoTメーカー75Fの創業者兼CEOのDeepindher Singhである。「一度設定してしまうと、私たちはそれらが実際にインターネットに接続されていることや、攻撃に対して実際には脆弱であることを忘れがちなのです」。

それぞれのデバイスをモニタする方法がそもそもないか、とても面倒なウェブブラウザーまたはアプリを使ったアクセス方法の例を挙げながら、こうした限られたユーザインタフェースも、IoTデバイスが見過ごされがちな別の要因であると、Singhは信じている。「不正なパケットがあったかどうかをチェックするために、最後に電球にログインしてtcpdumpを実行したのはいつですか?」と彼は問いかける。

メーカーと消費者の両者に責任がある

変わらないIoTの制約だけが原因でもない。クラウドセキュリティ会社ZscalerのEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域のCISO(最高情報セキュリティ責任者)であるChris Hodsonが、SC Magazineで詳細に解説しているように、IoTデバイスのセキュリティ開発ライフサイクルは、しばしば厳しい市場投入までの時間やハードウェアのコストの制約によって、さっと片付けられたりバイパスされたりする。

「メーカーは手頃な価格で利益率を向上させるハードウェアコンポーネントを探しています」とHodsonは語る。「IoTデバイスの中にある、安価で軽量コンポーネントには、しばしば単にハードウェアがサポートできないという理由で、たとえば暗号化などの、基本的なセキュリティサービスの提供をしないものがあるのです」。

SubexのNaikは、メーカーが開発ポリシーとして「設計段階からのセキュリティ」を採用する必要性を強調している。「IoTデバイスが普通のIT機器よりも遥かに長期にわたって使われ続けることを考慮するなら」と彼は語る。「デバイスにパッチを当て保守することができる機能が、設計上の考慮としてとても重要になります」。Nikeはまた、メーカーがIoT製品に、サードパーティのコンポーネントを統合する際には、細心の注意を払って検討するべきだと強調している。オーストリアを拠点とするコンサルティング会社SECによって昨年の11月に公開されたレポートは、評価を受けていないコンポーネントがデバイス再利用される際の、セキュリティ上の懸念に光を当てている。

prpl財団のチーフセキュリティストラテジスト、Cesare GarlatiはIoTセキュリティがハードウェアやチップレベルで組み込まれている必要性を強調し、「そうしたパッチ当てが、管理者の優先リストに載っていない」という事実を指摘している。

防御者は全てのすべての穴を塞ぐ必要がある ‐ 攻撃者は1つ見つければよいだけだ。

GalartiのコメントもまたIoTボットネットの成長へとつながる別問題への警告である、それはIoTセキュリティに対する消費者の大いなる無関心だ

例えばLizardStresserボットネットはShodan検索エンジンで見つかったデバイスに対してディフォルト管理アカウントでの侵入を試みる、ほとんどの消費者はIoTデバイスのデフォルトの工場出荷時の設定変更を行わないため、これはたまたま上手く行っているとはいえ、とても有効な戦術である。

消費者がセキュリティにかかる手間を歓迎していないため、ベンダーはよりセキュアな製品をつくるための動機を与えられていない。「ベンダーたちは、この状況を変えようとしていますが、それにはコストがかかります」と語るのはFraunhofer Instituteの研究者、Steffen Wendzelである。「顧客がセキュリティに対して支払わないために、彼らは真の利益を得ることもできないのです」Wendzel共著の研究論文では、IoTの開発と利用のサイクルに関わる様々な当事者たちの意識の欠如が、いかに欠陥のある製品の生産につながるのかについてを説明している。

ZScalerのHodsonさらに、この点を「セキュリティがハードウェアの開発ライフサイクルの中に埋め込まれていることを、消費者たちが要求するまで、メーカーはその開発手法を変更する圧力を感じないでしょう」と、述べている。

メーカーが消費者を教育し、より厳しいセキュリティポリシーを強制することによって、ダメージの一部を制御することができるだろうと、Zeifmanは示唆している「例えば、より優れたパスワード管理ポリシーと定期的なファームウェアアップデートを実装するなど、もっとできることがあります」。

Naikは、ベンダーは複雑なパスワードを自社製品への要件にするべきであることを強調しつつ、この意見に同意している。「顧客は、パスワードの変更を強制されるべきで、かつ頻繁に変更すべきだ」と付け加えた。

IoTボットネットは単なるHTTP攻撃以上のものだ

現在大部分のIoTボットネットは、ウェブサーバーとアプリケーションサーバを標的としているが、それらをはるかに破壊的に利用することもできる。

クラウドのパワーとは、その弾力性と、進化しIoTボットネットの脅威を克服すために変化に適応する能力である。

「私はIoTボットネットの究極の目標は、スパムを送信することではないと思っています」とWendzel(Fraunhoferの研究者)は述べる。「その代わり、対象の物理的能力を実際に利用するのでなければあまり意味はないのです。環境データを集める(監視を行う)とか、環境に作用を及ぼす(物理的なアクションを実行する)とかですね。これこそが、IoTボットネットが従来のボットネットよりも遥かに深刻である理由なのです」。論文では、この件に関して彼はさらに詳しい説明を行っている。

「例えば、スマートシティ/リージョンのローカルプロバイダとして、石油やガスを販売している場合、その都市のスマートハウスを攻撃することができるのです」とWendzelは語る。「そうすれば、暖房のレベルを上げることもできます。その結果人々はより多くの石油/ガスを必要として、ほどなくもう一度あなたの石油/ガスを買うことになるでしょう」。

何がIoTボットネットから守ってくれるのか

例えばパスワードの変更とか不要な機能をオフにするといった、一般的な方針IoTセキュリティのための実践は、ディフォルト認証で力任せにスキャンするといった基本的(しかし効率的)な脅威に対する防御のためにはとても役立つ。

しかし、IoTボットネットの増加と歩調を合わせて、保護されていない脆弱なのIoTデバイスを標的として籠絡し、より高度な防衛措置が必要となる大規模なDDoS攻撃に使うための、より洗練された手法を、攻撃者は開発して来ている。

「このような攻撃の緩和策は、ネットワーキングとコンピューティングリソースをスケールアップすることと、悪質な訪問者を排除するために入力トラフィックを正確に分析することの、両方の能力に依存しています」とImperva IncapsulaのZeifmanは語りつつ、こうしたことはオンプレミスセキュリティツールではなく、クラウドベースのセキュリティソリューションを介して達成することができると考えていると述べた。

Imperva Incapsulaのクラウドセキュリティプラットフォームは、Zeifmanの説明によれば、入力トラフィックを検査し、その振る舞いや、特徴、IP履歴そして数百万のエンドポイントから収集した情報との相互チェックを経て、脅威を識別するための複数の機能を同時に実行するために、クラウドのパワーを活用するものである。プラットフォームは、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)やDDoS軽減システムを含む、複数のスケーラブルなコンポーネントで構成されている。

クラウドのパワーとは、その弾力性と、進化しIoTボットネットの脅威を克服すために変化に適応する能力である。「検出方法は、犯罪者が利用できるさまざまな攻撃ベクトルのように柔軟に変化させています」とZeifman氏は語る。「 IoTボットネットが進化するにつれて、セキュリティソリューションも進化しています。これはしばしば『猫と鼠の無限のゲーム』と表現されます」。

Subexのネットワーク監視プラットフォームは、特徴、ヒューリスティック、異常検出に基づく、3層の防御機構を介してIoTボットネットからの保護を行う。Naikによれば、新たな脅威の特徴は異なるIoTデバイスアーキテクチャをカバーするIoTハニーポットネットワークによって検出される;異常は、送信の周期性、ペイロードサイズ、プロトコルやポートなどのパラメータに基づいて、個々のデバイスの動作をプロファイリングすることによって識別される; IoT生態系への侵入は、統合された侵入検知システム(IDS)によって検出される;そして、 IoTウェブインタフェースは、WAFを介して保護される。

75FのSinghは開発元での正しい設計と開発ポリシーを強制することによって、IoTボットネットの広がりは食い止められるべきだと考えている。彼のスタートアップは、彼が次のように表現するパラダイムに焦点を当てている「すべてのオンプレミスデバイスを保護する 、セキュアゲートウェイを持つ」。IoTゲートウェイはセキュリティソリューションを実行するための高い能力を持ち、限られた計算リソースしか持たないIoTデバイスへの保護層を追加することができる。

75Fはまた、リモートTCPによるアクセスの必要性を最小限に抑えるために、デバイスおよびゲートウェイにタッチスクリーンやLCDディスプレイなどのUXモジュールを追加している。リモートアクセスが必要な場合には、ブルートフォース攻撃から保護するために、セットアッププロセスの一部として、固有のパスワードが生成される。

75Fは、出荷を急がず、その代わりにデバイスを徹底的に検証しテストする。これによって、ハッカーによって悪用される可能性のある無線(OTA-over-the-air)更新機構の必要性がなくなる、とSinghは説明する。

結局のところIoTボットネットはとりわけ脅威的な存在である。他のサイバーセキュリティーの脅威と同様に、防御者は全てのすべての穴を塞ぐ必要がある ‐ 攻撃者は1つ見つければよいだけだ。よって、IoTボットネットが、今そこにある危機になるに連れ、脅威を止めることができるのは、消費者、メーカー、ITプロフェッショナルを巻き込んだ皆の協調した努力にかかっているのだ。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

IoTの普及によるプライバシー侵害の脅威

iot

【編集部注】執筆者のChristine Bannanは、2016年度のEdelson PC Consumer Privacy Scholarship奨学生で、ノートルダム大学ロースクールの第三学年に所属。Electronic Frontier Foundationリーガルインターン。

モノのインターネット(IoT)が普及する中、消費者は企業による監視やデータ漏えいに屈しないためにも、セキュリティや個人情報保護対策の改善を訴えなければならない。しかし、変化を訴える前に消費者はまず現状を知る必要があり、そのためには各企業の透明性の向上が必要になってくる。

IoTの最も危険な部分は、消費者がどんなデータがどのような経路で集められているかわからないため、気付かないうちに少しずつ個人情報をさらけ出してしまっているということだ。モバイルアプリやウェアラブルデバイス、その他のWi-Fiに接続された製品が市場の「スマートじゃない」デバイスを代替していくにつれ、消費者は自分たちを監視する機能を備えた製品しか購入できなくなってしまっている。消費者にとって家電をアップグレードすること自体は普通のことだが、新しいデバイスが自分たちを監視することになるとは気付かないことがほとんどだ。

先日、電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation、EFF)に所属する活動家が、Samsung製Smart TVのプライバシーポリシーとジョージ・オーウェルの「1984」内の一節との不安になるような類似点をツイート上で指摘した。Samsungのプライバシーポリシーには、消費者に対して製品の近くで公にできないような内容の会話をしないようにという注意書きがされていたため批判が殺到し、Samsungは問題となったプライバシーポリシーを変更の上、Smart TVのデータ収集方法について明らかにしなければならなかった

しかし、ほとんどの人が購入したデバイスやダウンロードしたアプリのプライバシーポリシーを読まないばかりか、もし読もうとしてもポリシーのほとんどが法律用語で構成されているので、普通の消費者には理解できないようになっている。同様に理解不可能な利用規約がデバイスには通常同梱されていて、そこには消費者が製品で損害を被ったとしても裁判所で争うことができないように強制的仲裁条項が含まれているのだ。その結果、消費者のプライバシーは損なわれ、本当の意味での改善策もない状態で放置されてしまっている。

企業の透明性の向上は急を要する課題であり、IoTを利用する消費者のプライバシー向上のための施策の基礎となってくるだろう。そして企業の透明性の向上は、業界の自主規制か政府による規制にもとづいて、各企業がデータを収集する前に消費者から十分な情報提供に基づいた同意を得なければならないようにすることで実現できるだろう。

消費者はどのようなデータが集められ、それがどのように利用されているかという情報を要求しなければいけない。

ほとんどの場合、消費者がプライバシーの向上を求めれば業界団体がそれに応じるだろう。例えば、新車購入者がスマートカーのセキュリティや個人情報の扱いに不安を抱いているという調査結果への対応として、自動車工業会(Alliance of Automobile Manufacturers:自動車メーカー12社から成る業界団体)はプライバシーに関する基本原則をつくり、各社が従うことになった。

企業は業界全体で通用するサイバーセキュリティや保有データの最小化に関するベストプラクティスを構築し採択することで自己規制を行うことができる。ユーザーデータを収集するのであれば、収集する側の企業がデータ保護の責任を負わなければならない。逆に言えば、データ保護の責務を負いたくないのであれば、最初からデータを集めなければいいのだ。

Fitbitのように、自社のテクノロジーとプライバシー情報が密接に絡み合った企業も存在する。業界毎の自己規制を導入する利点は、顧客のニーズや集めるデータの敏感さに基づいた各業界の基準を設定できることにある。

多層構造のプライバシーポリシーこそ多くの企業で採択されるべきベストプラクティスで、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスがその良いモデルとなり得る。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、「法典」レイヤー、「一般人が理解できる」レイヤー、「機械が理解できる」レイヤーの3つの層から構成されている。

「法典」レイヤーは、実際のポリシーとして弁護士によって制定され、裁判官が参照することになるもの。「一般人が理解できる」レイヤーは、平均的な消費者が理解できるように、プライバシーポリシーを平易な文章で簡潔にまとめたもの。そして「機械が理解できる」レイヤーは、ソフトウェアやサーチエンジン、その他のテクノロジーが理解できるようなコードを指し、消費者が許可した情報にのみアクセスできるように設定されたものになるだろう。

このようなベストプラクティスは、消費者のプライバシーを保護する上で大きな進歩となるだろうが、それでも十分とは言えない。さらに企業が消費者との約束に法的責任を負うようにならなければいけないのだ。多くの業界で、利用規約に紛争前の強制的仲裁条項を含むのが一般的になっている。この条項によって、消費者は裁判で賠償を求めることができなくなってしまうものの、このような条項は判読できないほど小さく印刷されており、消費者はそれに気付かない場合がほとんどだ。

また、消費者金融保護局(Consumer Financial Protection Bureau)によって、集団訴訟を禁じた仲裁条項がさらに公益を害していることが判明した。というのも、裁判を通じて企業で何が行われているかを知るようになることが多いため、訴訟無しでは消費者がそのような情報を手に入れることができないのだ。そのため当局は、大方の消費者向け金融商品やサービスについて強制仲裁条項を禁じることを提案した

教育省も私立の教育機関に対して、紛争前強制的仲裁契約の利用を禁止し、彼らの食い物にされてしまっている生徒に学校を訴える権利を与える制度を提議した。連邦取引委員会も、IoT製品を扱う企業による紛争前強制的仲裁契約の利用を禁じるような制度の発案を検討すべきだ。

この問題は無数の業界に関係し、様々なプライバシー問題に示唆を与えるとても複雑なものであるため、有効な解決策を考案するにあたって、消費者、企業、政府の3者が協力し合わなければならない。消費者はどのようなデータが集められ、それがどのように利用されているかという情報を要求しなければいけないし、企業は消費者の期待に沿ったベストプラクティスを構築する必要がある。

そして連邦取引委員会は、自社で策定したプライバシーポリシーに反する企業に対して、不正を正し、消費者への説明責任を果たさせるような法的措置をとるべきだ。さらにはプライバシーが侵されたときに消費者が訴因を持てるよう、紛争前強制的仲裁条項の禁止についての検討を行うことにも期待したい。

しかしそれよりも前に、消費者はIoTデバイスがどのようなデータを集めているのかについて知ろうとしなければならない。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

AWSの新サービスKinesis AnalyticsはリアルタイムストリーミングデータをSQLで分析できる

aws_logo

AmazonのクラウドコンピューティングプラットホームAWSが今日(米国時間8/11)、リアルタイムのストリーミングデータをSQLのクェリで容易に分析できるツール、Kinesis Analyticsを立ち上げた。Kinesis Analyticsは、AWSのリアルタイムストリーミングデータプラットホームKinesisを利用するユーザー向けだ。デベロッパーは、Kinesisを使ってストリーミングデータを取り込み、それを自分たちのアプリケーションで使用する。

Kinesis Analyticsを使えば、入ってくるデータを継続的なSQLクェリでフィルタしたり操作することによって、データをアプリケーションがすぐにでも使える形にできる。

AWSのチーフエヴァンジェリストJeff Barrが今日書いているところによると、通常のデータベースクェリは基本的に静的なデータを見る。しかしストリーミングデータに対してKinesis Analyticsでクェリするようになると、このモデルは二義的になる。“クェリは長期にわたって行われ、その間にデータは、新しいレコードや観察結果、ログのエントリーなどとして毎秒何度も々々々変わる。データをそんな動的なものとしてとらえるようになると、クェリによるそれらの処理がとても理解しやすいことが、分かるだろう。パーシステントな(持続的な)クェリを作って、次々と到着するレコードを処理するのだ”、と彼は語る。

2016-08-11_0907

Kinesis Analyticsの主な対象はリアルタイムデータだが、ときには、ちょっとした遅れを挿入したり、到着したデータを集めてバッチ処理した方が、その集まったデータに見られるトレンドを見つけやすくなる。そんなユースケースのためにKinesis Analyticsでは、“ウィンドウ(窓)”をセットできる。窓には三種類あり、周期的なレポート用にはタンブリングウィンドウ、モニタしてトレンドを見つける用途にはスライディングウィンドウ、この二つでだめなときには、時間間隔を任意に設定できるカスタムウィンドウを作れる(何らかの対話性に基づく間隔でもよい)。

Kinesis Analyticsは、AWS Lambdaのように、サーバーレスで処理を行うAWSのプロジェクトの一環だ。このサービスの標準的なユースケースはIoTのアプリケーションだと思われるが、そのほかに、オーディエンス追跡システムや、広告の取り替え処理、リアルタイムのログ分析などにも好適だ。しかもSQLがそのまま使えるので、特殊なSDKをインストールしたり、新しい言語を勉強する必要はない。

このサービスは現在、AmazonのEU(アイルランド)、US East(ノース・ヴァージニア)、US West(オレゴン)の各リージョンで使える。料金は処理量に応じての従量制だ。処理量の単位は、仮想コア一つ、メモリ4GBの仮想マシン一台相当とする。それは、アメリカのリージョンでは1時間あたり11セント、アイルランドのデータセンターでは12セントだ。ただし料金は可変であり、たとえば追加のデータをバーストで処理するような場合には変わる。デフォルトの料金は、毎秒1000レコードというデータ取り込み量を想定している。サービスのスケールアップ/ダウンは、必要に応じて自動的に行われる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Wilson、パスの距離や回転数などを自動で計測するスマートフットボールのプレオーダーを開始

13882321_1318904708139204_2798944140010706665_n

キャッチボールをするのにゲーミフィケーションの要素などいらないだろうと、最初は思ったりもした。しかしビデオゲームが面白いのも間違いない。最新の技術を導入すれば、キャッチボールはより面白くて、そして役立つものになるかもしれない。

きっとそうした考えを持つ人がいたのだろう。スポーツ用品界の巨人たるWilsonからは、今年初めにインテリジェントなフットボールの見本品が発表されていた。昨年のバスケットボールに続いて発表されたこのWilson X Connected Footballは、通常のボールの中にセンサーを内蔵したものだ。キャッチボールをするだけで、さまざまなデータを自動で取得してくれるのだ。

収集するデータは、パスの長さ、速さ、スピンレート、スパイラルなどのデータで、これらのデータからプレイヤーのレベルを数値化してくれる。データはBluetooth経由でモバイルデバイスに送られるようになっている。ボール内部に内蔵されているバッテリーは500時間もつようになっている。これはパス20万回分に相当するのだとのこと。

データを使って友達との間で成績を比較して、リーダーボード上に公開することもできる。このフットボールがいよいよプレオーダー可能となったようだ。価格は200ドルとなっている。1ヵ月以内には店頭に並ぶ予定であるそうだ。もちろんこれは、2016年のNFLシーズン開幕にあわせたものだろう。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

車載部品メーカーのLearが他の車両や環境と通信できるユニットの供給を計画

harness

自動車部品メーカーのLearは、新しい高さの接続の波に乗ろうと考えている。そのために顧客である自動車メーカーに、彼らの製造する車両を路上の他の車両や、道路や信号機を含む公的インフラ、そしてクラウドベースのサービスと通信させるユニットを開発/出荷する計画を立てている。その部品はモジュラーなものであり、OEMメーカーも簡便な物理的アップグレードが可能となる。

Learのコネクティビティ担当副社長であるPraveen SinghがCrain’s Detroit Businessにで語ったインタビュー(Automotive New経由)によれば、Learが望んでいることはこの部品をわずか「2,3年で」市場に出すことだ。テストの目的のために、プロジェクトはArada Systemによってインストールされた、デトロイトのダウンタウンとミシガンに全体で使われているインフラ技術を利用している。Aradaは昨年Learによって買収された、Singh自身によって創業された移動体接続スタートアップ企業である。

Aradaは、他の車両や交通信号灯を含む、外部ネットワークと車両を接続する技術に特化している。同社が力を注ぐ部分の1つとして、車両とその環境間の接続の安全性の確保がある。なぜなら車両とその周囲との間の双方向通信は、潜在的な悪意を持つものにとって魅力的な機会を提供するからだ。交換可能なハードウェアと、標準的なセキュリティに着目した通信によるアップデート計画の両者を通じて、Learはこれから登場するモジュラーソリューションでもセキュリティの確保に注力する。

未来のスマートカーの接続ハブになりたいと思っている企業はLearだけではもちろんないが、同社は新しいサプライヤーに対してより懐疑的な旧来の企業から、最初に注目される位置にいる ‐ もちろん約束したものをきちんと提供できればの話だが、そのシステム上でのインフラストラクチャの顧客も売り込まなければならないことを考えると、それは容易なことではない。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

IoTの力を引き出すフォグコンピューティングとは

industrycloud

【編集部注】著者のBen Dicksonはソフトウェアエンジニア兼フリーランスライターである。ビジネス、技術、政治について定期的に寄稿している。

IoT(Internet of Things)がIoE(Internet of Everything)へと進化し、実質的にあらゆる領域へ侵入するにつれ、高速なデータ処理と分析、そして短い応答時間の必要性がこれまで以上に高まっている。こうした要件を満たすことは、現在の集中型のクラウド(雲)ベースのモデルで支えられたIoTシステムでは困難なことも多い。こうしたことを容易にするのがフォグ(霧)コンピューティングである。その分散型のアーキテクチャパターンはコンピューティングリソースとアプリケーションサービスをサービスのエッジ(界面)に近付ける。そのエッジこそデータソースからクラウドへの連続体の間で最も理にかなった効率的な場所である。

Ciscoによって提唱されたフォグコンピューティングという用語は、クラウドコンピューティングの利点とパワーを、データが作られ適用される場所へ近付ける必要性を指したものである。フォグコンピューティングは、IoT業界の主要な関心事であるセキュリティを向上させながら、処理および分析のためにクラウドに転送されるデータの量を削減する。

ではクラウドからフォグへの移行が、IoT業界の現在そして未来の挑戦を如何に助けるかを以下に解説しよう。

クラウドの問題

IoTの爆発的な成長は、実際の物体やオペレーションテクノロジー(OT)が、分析や機械学習のアプリケーションと結びつけくことに負っている。そうしたアプリケーションはデバイスの生成したデータから少しずつ洞察を収集し、人間が介在することなく「スマート」な意思決定をデバイスが行えるようにする。現在そのようなリソースは、主に計算パワーおよび記憶容量を所有するクラウドサービスプロバイダによって提供されている。

しかしそのパワーにもかかわらず、クラウドモデルは、オペレーションの時間制約が厳しかったり、インターネット接続が悪い環境に適用することはできない。これは、ミリ秒の遅れが致命的な結果を招く、遠隔医療や患者のケアなどのシナリオでは特に課題となる。同じことは、車両同士のコミュニケーションにも適用される、衝突事故を回避するための機構は、クラウドサーバーへのラウンドトリップに起因する遅延を許容できない。クラウドパラダイムは、何マイルも離れた場所から脳が手足に司令をだすようなものである。迅速な反射を必要とする場所では役に立たない。

クラウドパラダイムは、何マイルも離れた場所から脳が手足に司令をだすようなものである。

またそれ以上に、クラウドに接続されているすべてのデバイスからインターネットを介して生データを送信することには、プライバシー、セキュリティ、そして法的懸念が考えられる。特に異なる国家間のそれぞれの規制に関係する、取り扱いに注意を要するデータを扱う場合にはそれが問題となる 。

フォグの位置付けは完璧

IoTノードは作用する場所の近くに置かれているが、現状では分析や機械学習をこなすためのリソースを保有していない。一方クラウドサーバーは、パワーは持つものの、適切な時間内にデータを処理したり応答したりするためにはあまりにも遠く離れすぎている。

デバイスの配置されたエッジ近くで、クラウド機能を模倣するための十分な計算、ストレージ、そして通信リソースを持ち、局所的なデータ処理と素早い応答を返すことのできるフォグレイヤーは、完璧な接合場所である。

IDCによる調査によれば、2020年までに世界のデータの10パーセントは、エッジデバイスによって生成されることが推定されている。これは、低レイテンシと同時に総合的なインテリジェンスを提供する、効率的なフォグコンピューティングソリューションの必要性を促す。

フォグコンピューティングには支持母体がある。2015年11月に設立されたOpenFogコンソーシアムがそれで、その使命はフォグコンピューティングアーキテクチャにおける業界や学術のリーダーシップをまとめることである。コンソーシアムは、開発者やITチームがフォグコンピューティングの真の価値を理解するために役立つリファレンスアーキテクチャ、ガイド、サンプルそしてSDKを提供する。

すでに、Cisco、DellそしてIntelといった主要ハードウェアメーカーたちが、フォグコンピューティングをサポートする、IoTゲートウェイやルータを提供しているIoT分析や機械学習のベンダーたちと提携している。その例の1つが、最近行われたCiscoによるIoT分析会社ParStreamIoTプラットフォームプロバイダJasperの買収である。これによりネットワーク業界の巨人はそのネットワーク機器により良い計算能力を埋め込むことができ、フォグコンピューティングが最も重要なエンタープライズITマーケットにおける大きなシェアを得ることができるようになる。

分析ソフトウェア会社も製品を拡充し、エッジコンピューティングのための新しいツールを開発しいる。ApacheのSparkは、Hadoopエコシステム(エッジが生成するデータのリアルタイム処理に適している)上に構築されたデータ処理フレームワークの一例である。

クラウドによって得られた洞察は、フォグレイヤーでのポリシーや機能の、更新や微調整を助けることができる。

IoT業界の他の主要なプレーヤーたちもまた、フォグコンピューティングの成長に賭けている。最先端のIoTクラウドプラットフォームの1つであるAzure IoTを擁するMicrosoftは、フォグコンピューティングでの優位性の確保を目指して、そのWidows 10 IoTを、IoTゲートウェイ機器や、フォグコンピューティングの中核を担うその他のハイエンドエッジデバイスのためのOSの選択肢としてプッシュしている。

フォグはクラウドを不要にするのか?

フォグコンピューティングは効率を改善し、処理のためにクラウドに送られるデータ量を削減する。しかしそれは、クラウドを補完するために存在するもので、置き換えるものではない。

クラウドはIoTサイクルにおける適切な役割を担い続ける。実際に、フォグコンピューティングがエッジ側で短期分析の負担を引き受けることにより、クラウドリソースは、特に履歴データや膨大なデータセットが関わるような、より重いタスクをこなすために使われるようになる。クラウドによって得られた洞察は、フォグレイヤーでのポリシーや機能の、更新や微調整を助けることができる。

そして、集中化され非常に効率的なクラウドのコンピューティングインフラストラクチャが、パフォーマンス、スケーラビリティそしてコストの点において、分散システムをしのぐ多くの事例も、まだみることができる。これには、広く分散したソースから得られるデータを解析する必要がある環境などが含まれる。

フォグとクラウドコンピューティングの組み合わせこそが、特に企業におけるIoTの適用を加速するものなのだ。

フォグコンピューティングのユースケースは?

フォグコンピューティングの適用対象は多い、それは特に各産業環境におけるIoTエコシステムの重要な部分を支える。

フォグコンピューティングのパワーのおかげで、ニューヨークに拠点を置く再生可能エネルギー会社Envisionは、運用する風力タービンの巨大ネットワークの効率の15%向上を達成することができた。

同社は、管理する2万基のタービンにインストールされた300万個のセンサによって生成される20テラバイトのデータを一度に処理している。エッジ側に計算を移管することによって、Envisionはデータ解析時間を10分からたったの数秒に短縮することができ、これにより彼らは対応可能な洞察と重要なビジネス上の利便性を手に入れることができた。

IoTの会社Plat Oneは、同社が管理する100万個以上のセンサーからのデータ処理を改善するために、フォグコンピューティングを使っている別の事例である。同社は、スマート照明、駐車場、港、および輸送の管理、ならびに5万台のコーヒーマシンのネットワークを含む膨大な数のセンサーのリアルタイム計測サービスを提供するためにParStreamプラットフォームを利用している。

フォグコンピューティングは、スマートシティにもいくつかのユースケースを持っている。カリフォルニア州パロアルトでは 連携する車両群と信号機を統合する300万ドルのプロジェクトが進行している、うまくいけば他の車両のいない交差点で理由もなく待たされることはなくなる未来がやってくるだろう。

走行時には、運転パターンからリアルタイムに分析と判断を提供することによって、半自動運転車のドライバーたちの注意力の低下や、進行方向が曲がることを防ぐことを助ける。

また、警察の計器盤やビデオカメラから生成される音声やビデオ記録の膨大な転送データ量を削減することも可能である。エッジコンピューティング機能を搭載したカメラは、リアルタイムでフィードされる動画を分析し、必要なときに関連するデータのみをクラウドに送信する。

フォグコンピューティングの未来とは何か?

現在フォグコンピューティングは、その利用と重要性がIoTの拡大に伴って成長を続け、新しい領域を広げていく傾向にある。安価で低消費電力の処理装置とストレージがより多く利用できるようになれば、計算がよりエッジに近付いて、データを生成しているデバイスの中に浸透し、デバイス連携によるインテリジェンスと対話による大いなる可能性の誕生をも期待することが可能になる。データを記録するだけのセンサーは、やがて過去のものとなるだろう。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

MITの研究者たちが低コスト家庭内電力モニターデバイスを開発

mit-energy-monitoring-1

MITの研究者のチームが持ち家のオーナーたちのために、個々の家電がどの位の電気を消費しているかを知りやすくするためのデバイスを開発した。IEEE Sensors Journalの最新号で発表された論文で概説されたガジェットは、電力線の上に結束して固定する単純な手順で導入することができる。

切手サイズのセンサーは自身でキャリブレーションを行い、チームによって開発されたソフトウェアを使って個々の家電をモニターし、例えば冷蔵庫が霜取り動作に入った、といった時間セグメントを分離することさえできる。

またこのデバイスはユーザーのプライバシー保護の増強や、大量の情報のやり取りで帯域幅が消費されてしまうことを防ぐことを意識して、クラウドベースのサーバーに最小限の依存をするだけだ。これは大企業によって提供されるものに比べ、目立った特徴である。

このプロダクトが商品化されるのか、またそれはいつ頃かについての明確な言葉はないが、MITはこのセンサーが商品化されるときのコストは35から30ドルの間だと見積もっている。

原文へ
(翻訳:Sako)

デバイス自体の重要性が低下するスマートな未来

gears

【編集部注】執筆者のTom Goodwinは、Havas Mediaにおける戦略・イノベーション部門のシニアバイスプレジデント。

スマートフォンがポケットの中に入っている今では、Thomas Watsonの「全世界でコンピューターは5台ほどしか売れない」という有名な発言を笑うのは簡単なことだ。しかし、彼の予測のズレが40億台ではなく、たった4台だったとしたらどうだろう?

2000年代初頭、私たちは高価なストレージ機器や遅い通信速度が普通の時代に生きていた。そんな中未来を予測しなければならない人は、将来的に全てのデバイスがこれまでに作られたものを全て記録できるくらい情報処理機器やストレージが安くなるのか、もしくは、全ての情報を遠隔地に保存できるほど、将来通信速度が高速化し情報を遠くまで届けられるようになるのか、というジレンマに陥っていた。

当時から見た「将来」では、どちらもほんの一部が現実となっており、ローカルとクラウドベースのストレージという妥協案に私たちは落ち着いた。

後述の通り、未だに両者の戦いは続いているものの、あえて言えば、デバイスよりもクラウドに軍配が上がりつつある。スマートフォンは明らかに今後も洗練されて行くだろうが、そのペースは加速しているとは全く言えないし、むしろスマートさは段々と、そのデバイス用に作られたソフトウェアや、実装されているプラットフォーム、もしくはGoogle NowやCortana、SiriといったAIへのインテリジェンスの全面的なアウトソース自体に依存するようになっている。

事実、私たちは驚くほどシンプルな機器が蔓延していることに気付かされる。Amazon EchoやGoogle Homeのようなデバイスは、実質的にマイクとスピーカー、低音を生み出す大きなチューブ、そしてクラウドへの接続性だけで構成されている。クラウド上に全てのスマートさが詰まっていて、そこで情報が処理されているのだ。自動運転車は、道路状況や最短経路などの情報にアクセスしながら、全ての判断をローカルで行うようになるだろうか?それとも、単にデータをどこか別の場所にある情報処理拠点に送信し、指示内容を受け取るだけになるのだろうか?ヒューマノイドロボットが登場しても同じ問題が浮上してくる。

実際のところ、恐らく私たちは電子機器の役目について考え直し、電子機器とうまく機能しあうシステムの観点から考えるはじめる必要があるだろう。携帯電話やソフトウェア、ハードウェアの最小単位で考えるよりも、複数のデバイスや、プログラム、パートナーシップを含めたシステムという観点で考える必要があるということだ。

この考え方の変遷についてよく理解するためには、それぞれ7、8年毎に起きた4段階の変化(アナログ機器の普及、デジタルへの収束、デジタルオプティマイゼーション、システム統合)に沿って、電子機器発展の歴史を振り返る必要がある。

アナログ機器の普及

20世紀末頃におきたメディアのデジタル化以前の電子機器は、今日のそれとは全く異なる姿をしていた。メディアは全てモノとして存在し、今とは何もかも違っていただけでなく、各メディアは記録されている物理的なデバイスに基づいた名前がつけられていたのだ。

私のiPodは、3つの音楽デバイスに取って代わったが、最終的にはスマートフォンの登場で捨てられてしまうこととなった。

1995年頃、私はテレビ、VHSビデオプレイヤー、ウォークマン、ディスクマン、コードレス電話、デスクトップPC、CDプレイヤー、オーディオ機器のほか、それ以外にもたくさんのデバイスを所有しており、毎年何か新しいテクノロジーや、新しいエンターテイメントの手段が生み出されていた。1997年にはMDプレイヤーが登場し、1998年にはレーザーディスク、2000年にはDVDプレイヤーが誕生した。この時代は、「デバイスの絶頂期」にあたる言える。一例として、レコード店ではそれぞれの物理的な形式に合わせて、同じアルバムを同時に数種類販売しなければならないことがよくあった。

デジタルへの収束

デジタル化がその全てを変え、物理的なメディアがシンプルになっていく一方の時代に入った。私のiPodは、3つの音楽デバイスに取って代わったが、最終的にはスマートフォンの登場で、膨大な音楽コレクションやその他の多数のアイテムと共に捨てられてしまうこととなった。

年配の人は、何でも捨ててしまう世代や、1000ドルもするスマートフォンの行き過ぎに愚痴をこぼすかもしれないが、無駄なものがない人生は、私たち自身にとっても環境にとってもよっぽど高い価値を持つ。今では、ゲームをするのにも、テレビを見るのにも、世界中を移動するのにも、何も「持つ」必要がないのはもちろん、所有する必要さえない。実家にある私のロンリープラネットのコレクションは、高価で場所をとるデジタル時代以前の遺物を垣間見ることができる数少ない存在だ。

スマートオプティマイゼーション

2000年代後半に、スマートフォンが、時計からゲームコンソールや懐中電灯まで全ての機能を果たすことができる、決定的な汎用パーソナルデバイスとしての地位を確立した途端、スマートフォン以外のデバイスは、消費者から見て説得力のある存在意義を求められるようになってしまった。その結果、それまでは機能向上がもう出来ないと思われていた、たくさんのデバイスの最適化が進められた。テレビの機能を向上させたGoogle ChromeCastのようなデバイスが誕生したのだ。他にも体重を測るとともに天気予報を教えてくれる体重計や、PhilipsのIoT照明Hue、SonosのサウンドバーPlaybarなどが登場した。全てのアイテムが、今日のわがままな消費者のニーズを満たすために作られた素晴らしい例だと言える。

しかし、未だに上手く機能していないシステムや、使用例が重複しているものが存在する。私は、家電製品の次の時代が、人々の考え方の変化から始まると考えている。これからは、私たちの住む世界に存在するデバイスが、あるシステムの中のノード(点)として機能していると考えなければならないのだ。

パーソナルデジタルシステム

TeslaやEchoの最も素晴らしい点のひとつが、これまで長い間当然と思われていた、物理的なものは時間と共に劣化するという原則を覆そうとしている点だ。ソフトウェアのおかげで、前日に置きっぱなしにしていたデバイスの機能が、翌日目覚めると、比べものにならないほど進化しているのだ。これは新しい考え方で、このような製品は、ソフトウェア、ハードウェアそしてパートナシップの全てを勘案してデザインされている。いくつかの企業は、ユーザーエクスペリエンスが、製品単体の快適さよりもシステムへのアクセスに依存していると遂に気づいたのだ。

私たちは、大手テック企業がつくりだすことのできる、商業的パートナシップの視点から物事を考える必要がある。

電子マネーの便利さは、それを受け入れる小売店にかかっている。ドアを開くことができるスマートウォッチから、モバイル搭乗券を受付けている航空会社まで、私たちは、大手テック企業がつくりだすことのできる、商業的パートナシップの視点から物事を考える必要がある。つまり、各デバイスを、独立した形ある存在としてではなく、あるクラブのメンバーになるための物理的な入会トークンや、アクセス権の所有証明として捉えなければならないのだ。

一方、デバイスを製造する企業も、デバイスそのものではなく、ユーザーが所属するクラブを生み出す企業として考え方を一新する必要がある。将来的にデバイスメーカーは、そのデバイスが何をできるかだけではなく、そのデバイスを所有することで何ができるか、所有者のクラブに属することでどのような気持ちになれるか?また、どんなユニークな機能を開発したかではなく、どんなユニークな経験をユーザーに提供しているか?という質問に答えなければならないのだ。

自動車メーカーでいえば、自動車の性能よりも所有者の経験を重視し、自社が自動車製造業界ではなくモビリティ業界にいるといった考え方に変えていく必要がある。デバイスの所有者は、どのように自分が持っているデバイス群が機能し合っているかや、各デバイスがどんなユニークな経験を提供しているか、現実世界とデバイスがどのように交流しているかなどの観点から、自分たちが利用しているシステムにとってプラスとなる情報を生み出していかなければならない。

携帯電話やスマートウォッチ、タブレットは、段々と現実世界と仮想世界をつなぐ、クラウド上にある私たちの生活のハブへのアクセスポイントとして機能しはじめている。つまり、デバイスが両方の世界における、私たちの移動、購入、決断といった行動を形作っているのだ。今こそこの業界にいる全ての人にとって、それぞれのデバイスがどうすれば素晴らしい製品になるかだけではなく、どうすればより簡単で、早くて、良い生活への素晴らしい入り口となるかということを考えるチャンスだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)

野外活動でグループ内会話、イヤホン型ウェアラブル「BONX」がIndiegogoキャンペーン開始

fourcolors

2014年11月創業で2015年末にクラウドファンディングで2500万円を集めたウェアラブルデバイスの「BONX」が、音質や装着感を改善して再登場だ。この6月に社名をチケイからプロダクト名と同じBONXに変更した同社は、今日からIndiegogoでキャペーンを開始した。

登場時にTechCrunch Japanで紹介したとおり、BONXはパッと見た感じはスポーツタイプのBluetoothイヤホンの片側だが、これまで誰も解決して来なかった課題を解決しようとしている。それは「屋外活動や野外スポーツでは、グループで行動していても音声的には案外一人ぼっち」という問題だ。スノーボードや釣り、自転車、ランニングなど屋外で複数人で遊ぶようなとき、視界に仲間がいたとしても、距離や環境音、装備的な問題で会話が成り立たないケースは多い。

BONXを片耳にぶら下げ、ポケットに入れたスマホとBluetooth接続しておけば、専用アプリを通して他のBONX利用者と会話ができる。スマホ同士の通信はBONXが開発・維持するサーバーを経由して3G/LTEでつながっているので利用者同士は離れていてもオッケーだ。

BONX創業者でCEOの宮坂貴大氏によれば、2015年の最初のクラウドファンディングでは2016年2月までに2700台を出荷。サバイバルゲームで使ってみたとか、ドローン操縦で離れた地点でコミュニケーションできたなど想定外の用途でのユーザーの声が届いているという。その一方、「ハードもソフトももう少し作り込んだほうが良さそう」との判断から一般発売する予定をいったん延期して、今回Indiegogoにバージョンアップしたプロダクトを出すのだという。

UXと音質改善の積み重ね

photo02

BONX創業者でCEOの宮坂貴大氏

ユーザーからの悪いフィードバックとして最大のものは「ちゃんと動かない」というもの。これはAndroidアプリの安定性が低いことと、ハードウェア機能を使いこなすことから機種依存部分が想定以上だったことが原因で、「機種によっては反応が悪かった」(宮坂CEO)という。このため次バージョンでは外部の協力で多数のAndroid機種の動作検証とQAを進めたそう。

反応が悪い、というのは具体的には、グループに入っても相手の声が聞こえてこないとか、電話を取ったり写真を撮った後に、BONXアプリで音声通信が復帰しないというようなこと。このときユーザーには「話せなくなった」としか分からず、フラストレーションとなる。そこで最近は「相手がミュートしている」とか「相手の電波が悪い」といった音声ナビを入れたそうだ。

肝心の音質についてはユーザーからネガティブな声があったというよりも、むしろ「自分たちが理想とするほど上げられなかった」(宮坂CEO)ことから改善を続けている。

BONXが新しいのは、ユーザーが話しているときだけマイクで音声を拾って送り届けるという「発話検知」や、電波環境に合わせて通信量を自動調節したり再接続したりする「VoIP」、風切音などの環境音をキャンセルする技術だが、ここはまだ改善の余地があるという。というのも、これらの要素技術自体は目新しくないものの、ICレコーダーなどと違って声が聞こえたら0.1秒以下で反応しないといけないし、環境音は常時変化するので数十秒おきにサンプリングしないといけないといった独特の要件があるからだ。環境音だけでなく、スポーツなどである「バン」と弾けるような突発音も除去できるようになってきたそうだ。ほかにも音声の波形を見てマイクからの距離を推定し、ユーザーの声だけを拾うといった処理も入れている。こうした複合的な改善の積み重ねで音声コミュニケーションの質は上がっているという。

それほどユニークな音声処理エンジンを作っているのであれば、むしろそれをライセンスして外販すれば良いのでは、とも思って宮坂CEOに聞いてみたら、むしろ事情は逆らしい。Jawboneの創業者たちは後に「NoiseAssasine」と呼ぶことになるノイズキャンセリング技術を開発して、その技術をヘッドフォンメーカーなどに販売しようとしていた。しかし、本来の性能を出すにはハードウェア込みじゃないとダメだということで出てきたのがJawboneヘッドセットだ。処理エンジン単体では理想とするユーザー体験が実現できない、ということだ。

ともあれ、新しいBONXはIPX5で生活防水となり、見た目は変わらないもののゴムが柔らかく耳の付け心地が良くなるなど改良が進んでいる。まだ価格は未定だが、希望小売価格は1台が1万5800円で、2台以上セットで安くするそう。

BONXは現在社員が8人。駒沢公園というおよそオフィスを構えるのに相応しくない住宅街に拠点を置いているのは4月にリニューアルオープンした駒沢オリンピック公園スケートパークに最も近いからだとか。以前オフィス移転先として渋谷が挙がったとき、「スケートボードができないとオフィスじゃないだろ」という意見が出て宮坂CEOを含む社員が反対したんだとか。リアルユーザーだからこそ情熱を持ってプロダクト開発に取り組めるっていいよね。遊ぶために仕事をしているのか、仕事で遊んでるのか、仕事が遊びなのかとか、そういうのが分からない時代になって来てるのかもしれない。

BONXは2014年末創業以来これまでにNEDOの助成金や銀行や日本政策金融公庫からの融資、VCからの出資などで合計約3億円の資金を調達している。BONXはTechCrunch Tokyo 2015スタートアップバトルのファイナリストでもある。ところで、耳につけるIoTデバイスは、ウェアラブルに対して「ヒアラブル」という言葉で呼ぶ人たちもいて、ソニーがMobile World Congress 2016で披露した「Xperia Ear」やモトローラの「Moto Hint」、Bragiの「Dash」なんかも注目されている。

NFL、フィールドゴールの精密度調査などのため、試合球にデータチップの埋め込みを検討中

field-goal

アメフトプレイヤーのトム・ブレイディが関わったとされる「デフレートゲート」をご存知だろうか。試合球の空気圧を不正に操作することで、試合を有利に運んだとされるものだ。真偽はともかく、今後はそうしたことも行いにくく(不正が疑われることも少なく)なるかもしれない。

Toronto Sunの記事によれば、NFLは試合で用いるボールに、専用のデータチップを埋め込む予定であるらしいのだ。来月に始まる2016年のプレシーズンから利用を開始し、Thursday Night Footballのレギュラーシーズン・ゲームでも利用していくつもりであるらしい。ここでさまざまなデータを収集し、そしてゴールポスト間の幅を狭めるのが適切かどうかを示すデータなどを収集していこうとしているそうだ。TechCrunchでもNFLに確認をしてみているところだが、今のところ返答は得られていない。

ボールにデータチップを埋め込むことで、フォールドゴールがポストからどの程度の位置を通過したのかなどのデータを収集することができるようになる。ポスト間を狭めた場合に、どれだけのゴールが外れるようになるのかを予測することもできるようになるわけだ。昨シーズンのキック成功率は84.5%となっていて、エクストラポイントがあまりに簡単に与えられているのではないかとも言われ始めているところなのだ。

ESPNによれば、あるベテラン・クオーターバックもチップの導入に賛成なのだとのこと。唯一危惧するのは、チップなしのボールと感触が変わらないかということだそうだ。

ちなみに、NFLではさまざまな形でデータが収集されるようになっている。たとえばプレイヤーの肩パッドにRFIDチップを入れて、走る速さや距離などを計測している。この調子で「データ・フットボール」が進むことになれば、もしかすると選手の日常生活データがどのように試合に影響しているのかなどと計測し始める日がくるのかもしれない。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

フォトシンスの新スマートロック「Akerun Pro」、交通系ICカードでの開錠・施錠にも対応

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏

スマートロック「Akerun」シリーズを開発するフォトシンスは7月7日、オフィスや民泊物件などでの利用を想定して機能を強化した新プロダクト「Akerun Pro」を発表した。7月23日より契約者に対して順次発送を行う。本体価格は無料で、月額9500円のレンタルプランでのみ提供する。フォトシンスでは3年間で1万台の販売を目指す。

まずは従来のAkerun(7月7日開催の会見では「Akerun One」と呼ばれていたが、サイト上の表記に合わせて「Akerun」としている)についてご紹介。Akerunは2015年3月に発売された後付け型のスマートロック。一般的なドアの内側についた錠前の上に粘着テープで本体を貼り付けることで、専用アプリを通じた開錠・施錠が可能になるというものだ。

Akerun Proはこの従来機と比較して、バッテリー容量を2倍に拡大。またバッテリーに加えてACアダプタによる給電(停電時などはバッテリー駆動に切り換え可能)にも対応した。開錠・施錠速度は15倍にスピードアップしている。僕はこれまで従来機でのデモを何度も見る機会があったが、正直スピードの変化には驚かされた。

「Akerun Pro」のデモ

「Akerun Pro」のデモ

Akerun Proは本体に加えて、NFCリーダー(室内用と室外用の計2台)、ドアセンサーとBluetoothで接続して動作する。この組み合わせによってSuicaやPASMOをはじめとした交通系ICカードをはじめとしたNFC対応ICカードを使った開錠・施錠が可能になる(NFC搭載スマートフォンは非対応)。また専用のクラウドサービスで鍵や入退室の管理などもできる。ICカードを元にした勤怠管理なども実現している。

APIを提供することで、外部サービスとの連携も可能だ。例えば「その日最初の出社」を検知してオフィス全体の電気を付ける、「その日最後の出社」を検知してオフィスの電気を消す、なんてことも可能になる。

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏はAkerunについて「スマートロック」ではなく、「スマートロックロボット」だと強調した(ついでに言うと配布された資料にも「スマートロックロボット」と表記するよう指示があった)。例えば本体のボタンを押してドアを開錠したとき(内側からのみ本体操作で開錠可能)に本体スピーカーで雨が降っていることを知らせる、緊急地震速報をもとに自動開錠を行うといったことを実現するという。「(Akerun Proが)人間がすべきではない煩わしい仕事を奪う。クリエイティブな仕事ができるようにする」(河瀬氏)

フォトシンスでは3年間で1万台の販売を目指す。なおAkerun Proはレンタルでのみの提供となるが、個人利用などを想定して従来機も併売するとしている。

基板の実動プロトタイプを三日で作ってくれるTempo AutomationがシリーズAで$8Mを調達

unknown

今がハードウェア・ルネッサンスの時代であることには、寸分の疑いもない。クラウドファンディング、安い部品、ラピッドプロトタイピング、スケーラブルな製造技術、これらの好条件が揃っている今は、ハードウェアによるイノベーションの黄金時代だ。しかし、いくつかの障害が残っている。

サンフランシスコのTempo Automationは、それらの障害の一部…とくに、開発の最後の部分…を取り除くことを、目標に掲げている。同社のミッション声明は曰く、“電子製品の開発がソフトウェア開発と同じぐらい早くできる世界を作ること”。

言葉は大げさだけど、Tempo Automationが実際にやってることは比較的単純だ。少量のプロトタイプの製造納期を短縮し、設計ファイルをもらってから三日以内にボードを納品すること。

協同ファウンダーのShashank Samalaはこう説明する: “電子製品の現在の工程は大量生産向きに最適化されている。それは100万台のiPhoneを作るのには適しているが、少しだけ作るためにそんな工程を使ったら、数ページのメモを巨大な印刷機で印刷するようなことに、なってしまう。うちがまったくオリジナルに作ったのは、少量生産向けに最適化された自動化工程だ”。

同社はこのほど、Lux CapitalがリードしSoftTech, AME, Boltなどが参加したシリーズAのラウンドで800万ドルを調達した。資金は、今すでに能力の限界に近づいている製造設備の拡大に充てられる。プレスリリースはこう述べている: “弊社のサービスはたいへん評判が良くて、ほんの数か月で能力の限界に来てしまった。今では、創業初期のハードウェアスタートアップのほかに、誰もが名前を知っている大手消費者電子製品メーカーも、弊社の顧客になっている”。

同社の主なターゲットはスタートアップで、中でもとくにIoTのメーカーに力を入れている。顧客には大企業も数社いるが、同社はその名前を明かさない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

パナソニックがアクセラレーション、生体電位センサや言語解析の技術も開放

screenshot_587

大企業がスタートアップとコラボレーションして新しい事業を始める道を模索する——そんな動きはここ1、2年でかなり具体的なかたちになってきているのだけれど、大手エレクトロニクスメーカーのパナソニックもスタートアップとの共創を進めるのだという。パナソニックは6月27日、スタートアップのcrewwと共同で企業アクセラレータープログラム「Panasonic Accelerator 2016」を発表。同日より参加を希望するスタートアップの募集を開始した。エントリー期間は7月8日まで。

Panasonic Accelerator 2016では、パナソニックとスタートアップ企業、両者のリソースを掛け合わせたオープンイノベーションによる事業創出を目指すとしている。「家電・くらし」、「仕事」、「先端技術」という3点をテーマに、パナソニックとスタートアップによる革新的事業、マーケットの創造を目指すとしている。crewwは、スタートアップのマッチングから新規事業提案までをパナソニックと共同で行う。

と、これだけではよく分からないのでもう少し具体的に話を聞いたところ、ビエラブランドで展開するテレビや生活家電、レシピサイト「ウィークックナビ」とコラボレーションする事業や、グローバルで25万人のパナソニックグループ社員を対象にした新しい職場環境や福利厚生、採用効率化に向けた事業のプランを創出していくという。また、(1)脳や筋肉の活動をミリ秒オーダーで計測する生体電位センサ、(2)対話の記録や翻訳に欠かせない人工知能を用いた音声言語解析のノウハウ、(3)機械学習により医用画像の類似性を判定する画像診断支援システム——というパナソニックの保有する先端技術をスタートアップに開放する予定だ。

パナソニックではスタートアップごとに専任の担当者を割り当てて、上記の領域で具体的なプランを練り込んでいくという。最終的には採択スタートアップと協業の契約をして、フィールド実証や事業化の詳細検討を進める。詳細な条件等は明かされていないが、取り組みの内容次第では資金提供にも前向きだとしている。

スマートボタンのKwikが300万ドルを調達、Amazon Dashボタンに挑む

スクリーンショット 2016-06-23 17.16.57

Amazon Dashボタンが人気を集めていて、Kwikはこの市場で競合する余地があると考えている。テルアビブに拠点を置くこのスタートアップは、Amazon Dashに似たプロダクトを開発し、Domino’s、Budweiser、Huggiesといったブランドと提携し、文字通りボタンを押すだけでピザなどを注文できるようにする。

Kwikのチームはビジョンを達成するため、Norwest Venture Partnersをリード投資家にシードラウンドで300万ドルを調達した。Kwikはこの資金をもってイスラエルでベータテストを実施した後、アメリカに進出することを計画している。

「コンシューマーはスマートボタンの便利でシンプルな点を気に入っています」と Norwest Venture Partnersのパートナーを務めるSergio Monsalveは話す。「プレーヤー1社では広すぎる市場です」。

Monsalveは、ブランド側が配送や決済パートナーを選択できるというアプローチは、各企業がKwikと契約する後押しになると考えている。「彼らのオープンなエコシステムは多くのビジネス、そしてサプライチェーンに成長をもたらすことができます」。

コンシューマーはボタンを無料で利用できるが、Kwikは取引毎に手数料を得る。Kwikは配送業者とフルフィルメント・パートナーとをつなぐ。

KwikのファウンダーでCEOを務めるOfer KleinはTechCrunchの取材に対し「繰り返し使用するプロダクト」はボタンが便利になると話す。コーヒー、ペットフード、さらにはタクシーまでタップ1つで注文できる。

Kleinはスマートフォンアプリより物理的なボタンの方が便利であると主張する。例えば、インターネットに詳しくなく年配の人はこういった繰り返し購入する場合においてタップだけで注文できるシンプルさが気に入っていると話す。ただし、最初のターゲットとなるのはアーリーアダプター層であるとKleinは言う。

私たちの怠け度合いはピークに来てしまっているのかもしれないが、Kelinは「人は何も考えなくともピザやビールが届くことを望んでしまうものです」と話す。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

SamsungがIoTとの関わりを深化するために$1.2Bの巨額投資、高齢者のクォリティー・オブ・ライフに着目

SONY DSC

Samsungは、12億ドルという巨額の投資により、同社の物のインターネット(Internet of Things, IoT)との関係を次のより高いレベルへ上げようとしている。

今週DCで行われたイベントでエレクトロニクスの巨大企業SamsungのCEO Dr. Oh-Hyun Kwonが、同社の向こう4年間のR&Dプランを発表した。この投資は合衆国全体のおよそ15000名のSamsung社員の各種業務に行き渡る。Forbesによると、資金はオースチンのチップ製造研究所やパロアルトの研究センターなどSamsung自身のオペレーションのほかに、数社のスタートアップにも投じられる。

“IoT方面のイノベーターを至るところに探そうと思ったら、すべてのツールをスタートアップに対しても確実にオープンにする必要がある”、とKwonは語る。“それは互いを結びつけるテクノロジーであるから、そこに境界を作ったらイノベーションとスケールを妨げることになる”。

CEOはさらに、この投資により高齢化社会の諸問題の解決努力を支援し、高齢者が介護施設や病院に行くことなく、独立的な生活を送れるようにしたい、と述べた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))