NASAの超音速ジェット機にはフロントウィンドウの場所に4Kディスプレイを設置

NASAの静音超音速航空機の実験機であるX-59 QueSSTは、コックピットが独特だ。本来ならフロントウィンドウがあるべき場所に、大きな4Kのスクリーンがある。なぜか?これが奇抜な外見を狙った飛行機だからだ。

ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)が2億4700万ドルの予算で開発したX-59は、ソニックブーム(衝撃波音)を発生させずに音よりも相当速く飛ぶとされている。というより、少なくとも地上の見物人にとっては「車のドアを閉める音」より大きなノイズをいっさい発生しない。

そのためには当然、なるべく流線型の形状が望ましい。だとすると、ジェット戦闘機のような突き出たコックピットはだめだ。というかむしろ、操縦士を先頭に置いて大きな窓をつける、というデザインが許されない。

コックピットはどちらかというと、小さくて変わった形をした翼の先端の上の面からつまみ出した小部屋のようで、その側面からの眺めはきれいでも前方には機首が見えるだけだ。

対策としてこの機には複数のディスプレイがあり、下の方にあるのは今の航空機にもある位置などの表示だが、上が4Kのモニターで、それはeXternal Visibility System(XVS、外部可視性システム)と呼ばれるものの一部になる。機の外部にある2台のカメラの像を縫い合わせ、前もってロードされていた地形データと合成される。

だからそれは現実の画面ではないが、パイロットはシミュレーターで過ごす時間が長いから、すぐ慣れるだろう。そして現実世界をどうしても見たいときには、そのための窓もある。

このロッキードとNASAの航空機は建造段階に入っているが、一部の部品は明らかにまだ設計途上だ。初フライトは2021年とされていて、このような実験機にしては欲張りなゴールだ。でもこの通称X-planeは、NASAが30年かけて開発してきた企画。もし成功したら、そのほかの静音超音速機の先駆者になり、かつてコンコルドなどがトライした超音速陸上空路便を未来に復活させるだろう。

ただしBoomに負けなければだが。

関連記事: JALとVirginが出資するBoomが超音速旅客機開発計画の詳細を明かす

画像クレジット: NASA

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAの探査機が至近距離で撮った小惑星ベンヌの写真がすごい

NASAが、地球近傍小惑星Bennu(ベンヌ)の、思わず息をのむような新しい画像を撮影した。探査船OSIRIS-REx(オサイリス・レックス)が、この地球外オブジェクトをめぐる第二の新しい軌道から撮った写真だ。この写真が撮影されたのは6月13日で、ベンヌの全長がかなり分かる。その半分に太陽の光が当たっていて、残り半分はほぼ完全な影だ。

この画像はベンヌのおもしろい特徴も捉えている。上の図で言うと小惑星の下の方に、その最大の巨礫の「出っぱり」のようなものが突き出ていて、比較的なめらかな輪郭がそこだけ破れている。OSIRIS-RExの撮影距離はその岩からわずか0.4マイル(約644メートル)で、フットボール場2面ぐらいだ(観客席等も含めて)。その距離から探査機のカメラは直径1.6フィート(50センチ弱、Xbox Oneのサイズ)という細かい精度で小惑星の表面を撮影できた。

この軌道は、太陽系内のオブジェクトを宇宙船が周回する軌道としては、そのオブジェクトへのもっとも近い距離の軌道として宇宙記録を達成した。これだけ近ければ、NASAの研究者たちは、くねくねと宇宙を旅する小惑星の表面からと確実に同定できる羽毛状のデブリを調査できるだろう。もっと至近の利益としては、これだけすごい画像を見られるのも距離が近いからだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

月面のピット(竪穴)をロボで偵察して月の可住性を調べるNASAのプロジェクト

月面探査車はクールだけど、崖面を垂直下降できたら探査のお仕事はもっとクールだろう。カーネギーメロン大学(CMU)の研究グループは、NASAから200万ドルの研究助成金をもらって、垂直下降ロボットの開発に取り組む。それは、月面のあちこちにある竪穴を探検する方法を探る研究プロジェクトの一環だ。

ピットとクレーターは違う。クレーターは隕石の衝突によってできた面的構造物だが、竪穴すなわちピット(Pit)は地球上の陥没穴や洞穴に近い。表面はアクセスできるが地下には大きな空洞があって、そこには各種ミネラルや水や氷があるかもしれない。それだけでなく、未来の月探検者のための、すぐに使えるシェルターになるかもしれない。

CMUロボティクス研究所のRed Whittaker教授は、インテリジェントで機敏で早足のロボットを使って行うこれらのピットの接近調査には重要なミッションがある、と語る。すなわち、月を周回する軌道上からの観測でピットの存在はすでに分かっているけど、でもその詳細はまだまったくわかっていない。たとえば、これらの陥没穴のような竪穴は、未来の月探検ミッションの役に立つのか?役に立つとしたらどのように?

Whittakerの素案は「Skylight」というコードネームで呼ばれ、ある程度自律性のあるロボットが表面のどこを調べるか自分で選ぶ。しかもその行動は、速くなければならない。月面が夜になればずっとオフラインになる。だから1回のミッションで実働時間は約1週間だ。

NASAの野心的なミッションでは、2024年に再び月面に宇宙飛行士を送る。そして2028年には月に基地を作る。そのための重要な情報を「Skylight」のような偵察ミッションが提供する。しかし時間は切迫している。ロボットがピットを偵察するミッションは、2023年の予定なのだ。

画像クレジット: NASA/GSFC/Arizona State University

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASA探査機OSIRIX-RExが小惑星ベンヌで接近軌道の宇宙新記録を達成

宇宙のニュースが好きな人なら、Bennu(ベンヌ)という名前を聞いたことがあるだろう。それは、今から200年後ぐらいにわれわれの惑星に衝突するかもしれないと言われている地球近傍小惑星だ。衝突の確率は低いが、他の多くの小惑星よりは高い。この小惑星が注目される理由はいろいろあり、特に最近の発見では「アクティブである」と言われる。自分の軌道上をコンスタントに進みながら埃を噴出し、まわりの空間にばらまいているのだ。

その発見に促されてNASAは、宇宙を旅する岩を周回する探査機OSIRIS-REx距離を小さくする(小惑星により接近する)ことになった。探査機は昨年、観察のためにベンヌに到着したが、それはいくつかの既知の地球近傍小惑星の中から、調査ミッションに最適として選ばれたからだ。

OSIRIS-REx探査機は現在、ベンヌの質量中心の3000フィート(915m)上空にいるが、この距離は地球上空の平均的軍用攻撃ヘリの巡航高度よりも低い。NASAの親切な画像が、そのことを示している(訳注:図中の探査機の高度はBフェーズ更新後のそれと思われる)。

NASAは、今回の新しい(低い)軌道のことを「Orbital Bフェーズ」(B軌道段階)と呼んでいる。それはベンヌに限らず記録的な低さで、太陽系内の地球外天体への接近軌道としてはこれまででもっとも近い。8月半ばまでこの軌道にとどまり、今後数週間は小惑星表面の定期的写真撮影を行う。上で述べた、埃の噴出とばらまきを調べるためだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

月に宇宙飛行士が再び降り立つ費用は3兆3000億円に?

NASAが計画する月への帰還計画には、次の5年で300億ドル(約3兆3000億円)もの費用がかかるかもしれない。今週行われたインタビューの中で、同機関の管理者ジム・ブリデンスティン(Jim Bridenstine)氏がそう示唆した。もちろん、これはあくまでも概算に過ぎない。とはいえこれは私たちが初めて目にした包括的な数字であり、莫大な費用ではあるものの、予想されていたものよりは安いものである。

ブリデンスティン氏はCNNとのインタビューの中で、NASAが月面に再び降り立つために必要な費用は、200億ドル(約2兆2000億円)から300億ドル(約3兆3000億円)の間になるだろうと示唆した。さらに月軌道プラットフォームゲートウェイ(Lunar Gateway)を充実させたり、恒久的な構造物を残したりといったことを行う場合には、追加のコストが発生する。

この数字を広い視野から眺めてみた場合、NASAの年間予算は約200億ドル(約2兆2000億円)であり、これは連邦政府の他の多くの政府機関や予算項目と比較してごくわずかなものだ。予想される追加費用は年間平均4〜60億ドル(約4400億円から6600億円)になると思われるが、支出はそれほど一貫してはいないだろう。例えば、NASAが来年に向けての追加予算として要求したのは16億ドル(約1700億円)だけだ。

関連記事:月に宇宙飛行士を送るNASAの新計画名称はアルテミス

2019年の時点で、月への再着陸にかかる費用が1960年代のアポロ計画と同じ(約300億ドル)だということに驚く人もいるかもしれない。だかもちろん、今回私たちは惑星間有人旅行をゼロから構築するわけではない。アルテミス計画を支える技術とインフラストラクチャ(実証済みのものも最近開発されたものも)には既に何十億ドルもの投資が行われている。

それに加えて、ブリデンスティン氏は、NASAがこの規模のミッションでは過去になかったほどの規模で、商用宇宙利用と提携することで、コストが削減できることを頼りにしている。コストシェアリング、共同開発、および内部ではなく商用サービスの使用によって、数十億ドルが節約される可能性がある。

ブリデンスティン氏がCNNに語った副次的な目的は「アルテミスプログラムに資金を提供するために、NASAの一部と共喰いになることがないようにすることです」ということだった。よって、他のミッションから資金を引き出したり、あるいは他のプロジェクトから技術や部品を選択することは考えられていない。

議会がその予算を承認するかどうかはまだわからない。今後5年間での技術開発と展開の基本的なスケジュールについては、さらに多くの懸念がある。たとえ何十億ドルを費やそうとも、すべてが計画通りに進んだとしても、NASAは月面への帰還ミッションがこの期間では不可能であることをただ知ることになるのかもしれない。例えば、SLSやOrionのプロジェクトは予算を超えており、繰り返し延期されている。

大胆で積極的なタイムラインは、NASAのDNAの一部だ。とはいえ彼らは最善の計画を立ててはいるものの、エンジニアとプログラムマネージャーたちが最悪の事態にも備えていることは確実だろう。彼らがやり遂げることを見守ろう。

画像クレジット: NASA

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(翻訳:sako)

NASAは国際宇宙ステーショの「商用化」を宣言、民間宇宙飛行士の受け入れも

6月7日に開かれたイベントで、NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)を地球の低軌道での商業活動のハブとする案を発表した。長い間、NASAは、宇宙での民間事業を支援する拠点としてISSを位置づける計画を練っていた。

「国際宇宙ステーションの商用利用の解禁をお伝えするために、私たちはここに来ました」と、NASAの首席報道官Stephanie Schierholzはカンファレンスの口火を切った。20の企業とNASAの職員がステージに上がり、この新たな商用化の発表と、その機会や計画に関する討論を行った。

計画には、民間宇宙飛行士がアメリカの宇宙船を利用してISSを訪問し、滞在することを許可する内容も含まれている。また、「宇宙での製造」、マーケティング活動、医療研究「などなど」、ISSでの民間事業の活動を許可するとNASAは話していた。

NASAは、5つの項目からなる今回の計画は、ISSの政府や公共部門の利用を「妨げるものではなく」、民間の創造的な、また利益追求のためのさまざまな機会を支持するものだと明言している。NASAの全体的な目標は、NASAが、ISSと低軌道施設の数ある利用者のなかの「ひとつ」になることであり、それが納税者の利益につながると話している。

NASAの高官から今日(米時間6月7日)発表された、5つの内容からなる計画は次のとおりだ。

  • その1:NASAは、国際宇宙ステーション商用利用ポリシーを作成した。搭乗員の時間、物資の打ち上げと回収の手段を民間企業に販売することなどを含め、初回の必需品や資源の一部を提供する。
  • その2:民間宇宙飛行士は、早ければ2020年より、年に2回まで短期滞在ができる。ミッションは民間資金で賄われる商用宇宙飛行とし、アメリカの宇宙船(SpaceXのCrew Dragonなど、NASA有人飛行計画で認証されたもの)を使用すること。NASAは、生命の維持、搭乗必需品、保管スペース、データの価格を明確に示す。
  • その3:ISSのノード2 Harmonyモジュールの先端部分が、最初の商用目的に利用できる。NASAはこれを、今後の商用宇宙居住モジュールの第一歩と位置づけている。6月14日より募集を受け付け、今年度末までに最初の顧客を選定し、搭乗を許可する。
  • その4:NASAは、長期の商用需要を刺激するための計画を立て、まずは、とくに宇宙での製造と再生医療の研究から開始する。NASAは、6月15日までに白書の提出、7月28日までに企画書の提出を求める。
  • その5:NASAは、長期にわたる軌道滞在での長期的な商業活動に最低限必要な需要に関する新たな白書を発表する。

商用輸送の費用を下げることは、この計画全体にとって、きわめて重要であり、その問題は繰り返し訴えられてきた。それは、費用を始めとするさまざまな問題を解決し、単に商用化を許可するだけでなく、実行可能なものにするための手助けを、民間団体に呼びかけているように見える。もうひとつの計画は、次の10年、さらにその先に及ぶ長期にわたり、民間団体からのISSへの投資を呼び込み、ISSを民間宇宙ステーションに置き換える可能性を開くというものだ。それは最終的に、寿命による代替わりの問題の解決につながる。

補給ミッション中のSpaceXのDragonカプセルがISSを離れるところ。

TechCrunchのJon Shieberが、4月、ISS米国立共同研究施設の次席科学官Michael Roberts博士をインタビューした際に、宇宙ステーションの商用化について話を聞いている。

Roberts博士は、ISSで民間団体が事業を行えるようになる可能性は一定程度あると明言していた。これには、たとえば、関心の高い製薬業界の前臨床試験や薬物送達メカニズムといった分野の「基礎研究」も含まれる。製造業界では、無重力や真空という環境を利用して、現在の製造方法の改善を目指す民間企業をRoberts博士は挙げていた。

重要な細目としては、ISSで許されるマーケティング活動の範囲の拡大がある。ISSに搭乗してるNASAのクルーは、マーケティング活動に参加できる(とは言え、カメラの前でいかにもクルーらしく振る舞う程度だが)。民間宇宙飛行士の場合は、広告や宣伝が許される範囲が大幅に柔軟化されるため、さらに大きな仕事ができるようになる。理論的には、もしこれがディストピアの方向に流れたならば、レッドブルの超絶エクストリームな宣伝活動がもっと増えるということだ。

NASAによれば、現在も50の民間企業がISSで実験を行っているとのことだが、今回の発表は、その機会を、より望ましい形と規模の枠組みに、時間をかけて整備させてゆくことを意味している。

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(翻訳:金井哲夫)

民間宇宙探査のパイオニアAnousheh Ansariは国際宇宙ステーションの商用化を歓迎

XPRIZEのCEOでProdeaの創設者であるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏は、イランで過ごしていた子供時代に宇宙飛行士になることを夢見ていた。しかし、ご想像のとおり、周りの人間はほとんどがその野心を理解してくれなかった。ところが2006年、彼女はロシア宇宙センターで私財を投じて訓練を受けてソユーズ宇宙船に乗り、個人資金で国際宇宙ステーション(ISS)を訪れた世界最初の民間女性となったのだ(しかもそれは、イランの民間人、そしてイスラム教徒の女性としても初だった)。

その当時NASAは、アンサリ氏が料金を支払ってISSに搭乗するというアイデアには興味がなく、むしろ明らかに嫌がっていた。それから13年が経った今週の初め、NASAは、ISSを「ビジネスに開放する」と公式に発表し、一晩の宿泊料を1人あたりおよそ3万5000ドル(約380万円)と提示した(これはあくまで宿泊料金。旅費は自分で考えないといけない)。今週、トロントで開かれているCreative Destruction Lab(創造的破壊研究所)イベントで、私はアンサリ氏に会い、今回の画期的な決定が宇宙ビジネスにどのような利益をもたらすのか、またこの分野での彼女の展望、さらに宇宙に特化したスタートアップ全般に与えられるチャンスについて話を聞いた。

「ほんと7年前の6日間、もっと長かったかも知れないけど、そのとき使っていたノートパソコンを持ってくればよかったわ。そこにはISSの賃貸化。それは現実になる!って書いてあったの。私には予知能力があったのね」とアンサリ氏は冗談を飛ばした。「でも、それは理に適っていると思います」。

宇宙ステーションを訪れ利用することで得られる商業的、個人的な利益に対するNASAの認識を考えるに状況が変化した理由はいくつもある。とりわけ大きな理由は、当初のミッションで設定されていた期間を超えて老朽化が進み、現実に機能上の寿命を迎えようとしていることだ。

「宇宙ステーションは【中略】、現在すでに寿命を延長した状態です」とアンサリ氏は言う。「なので、次世代への投資のために、(当初予定してたミッションに上乗せして)うまく利用して利益を生むことができるようになったのです」

最初に計画されていたミッションが事実上終了したとしても、まだしばらくの間は、民間企業がその施設を使うことで多大な恩恵を引き出せる。

「宇宙ステーションでの研究や実験には非常に大きな関心があるため、コストは劇的に下がると思います」と彼女は、NASAのガイドラインに提示された民間宇宙飛行士の費用に関して言い添えた。「とはいえ、それでもそこへ行くまでのコストはかかります。つまり、誰もが支払える額にはならないということです。しかし、一晩3万5000ドルの家賃を支払えば実験が行えるのです。それは驚きです」。

「多くの企業が、製薬、医療、健康などの本当にたくさんの企業が、それを利用して実験を行うと私は考えています」とアンサリ氏。「それに私はわくわくしています。実現してよかった」

5月15日、米国カリフォルニア州プラヤ・ビスタにて。写真に向かって左から、XPRIZEのCEOを務めるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏、XPRIZEの創設者で執行委員長を務めるPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏、Global Learningでエグゼクティブディレクターを務めるEmily Church(エミリー・チャーチ)氏。XPRIZEは、Global Learning XPRIZE財団大賞授与式のためにGoogleのプラヤ・ビスタ・オフィスを訪れた。(写真:Jesse Grant/Getty Images for Global Learning XPRIZE)

アンサリ氏にとって、宇宙の商用利用分野の成長は、XPRIZEの原点だ。彼女は昨年の10月から、この財団のCEOを務めている。アンサリ氏とその義理の弟であるAmir Ansari(アミー・アンサリ)氏が多額の寄付を行ったことでその名が冠された賞金1000万ドル(約11億円)のコンテストAnsari Xprizeは2004年に勝者が決まり、それが今日のSpaceXの事業の道筋を付けた。

「最初のコンテストは、2週間以内に2回宇宙に行くというもので、賞金は1000万ドルでした。繰り返しの打ち上げが可能であることを証明したかったのです。SFの話ではなく、商業的に可能だということを。しかも、妥当なコストで行えるということをです」とアンサリ氏は振り返る。「必須要件がありました。たしか、燃料の容積を除く95%が再利用可能であることです。2台のロケットを作って、ひとつを飛ばして、次にあっちを飛ばすとったやり方では主旨に合いません。それが本当にビジネスに利用できることを確かめられるよう、条件を整えたのです」。

そこで大切な要素は、民間企業でも手が届く投資レベルで商業的に実現可能な関心事になり得ることを、初めて実証することだった。もうひとつの大切な要素として、関係当局の認可のもとで、参加者が実際に打ち上げが行える環境を作ることがあった。

「私たちは規制当局と米連邦航空局(FAA)との協力のもとで、民間人の打ち上げがどうしたら可能になるかを探りました。FAAには、対処方法がわからなかったからです」とアンサリ氏。「彼らは、宇宙に何かを打ち上げたいという民間企業と関わったことがなかったのです。そこで私たちの働きかけと、NASAや規制当局と行ってきた実績から、彼らは門戸を開き、そのための部門を立ち上げました。今それは、FAA Office of Commercial Space Tranportation(民間宇宙輸送局)と呼ばれています」。

2017年から打ち上げられているSpaceXのCRS-11。SpaceXが民間ロケットを打ち上げられるようになったのも、XPRIZEが商用打ち上げ事業のガイドラインを確立したお陰だ

今日までの働きで、数多くの分野を開拓し、スタートアップのための道を切り開いてきたアンサリ氏だが、Creative Distruction Labの初日に行った基調講演で、参加していた起業家たちに対して、このチャンスに満ちた新しい分野についていくつかの要求を突きつけた。彼女は、「雲の上に存在するクラウドシステム」には多大な可能性があり、データ・ウェアハウス施設を宇宙で運用すれば、電力と熱管理の面で今すぐ恩恵が得られると指摘した。

彼女はまた、スタートアップに対して、自分たちが作るものの波及的な影響力を念頭に置くよう訴えた。具体例をあげれば宇宙デブリだ。より広義においては、急激な変化は自然に恐怖の反応を引き起こすことを忘れないで欲しいと話した。

「エンジニアは、おもちゃやテクノロジーで遊ぶのが、ただただ大好きなので、これは難しい問題です」と彼女は話した。「しかし、こうした考えを理解させるのは、ここに集った私たちの役目です」。

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(翻訳:金井哲夫)

NASAの月着陸船「スヌーピー」が宇宙に捨てられた50年後に発見か

NASAが1969年に月面着陸に成功する前には、数多くの調査ミッションが行われた。アポロ10号もその1つであり、実際の着陸を除くあらゆる模擬ミッションが実施された。宇宙飛行士のトーマス・スタッフォード氏とユージン・サーナン氏はアポロ10号ミッションで、NASAが「スヌーピー」というニックネームを付けた月着陸船で月面直前まで接近し、任務完了後に着陸船を宇宙に放った。

スヌーピーを地球に戻す意図はなかった。飛行士たちが作業を終えて宇宙船の司令室に戻ったあと、月着陸船は太陽を回る月よりも遠い軌道に送り出され、NASAがその軌跡を追うことはなかった。スヌーピーを発見するプロジェクトは、Nick Howes氏率いる英国のアマチュアたちのグループによって2011年に始められた。現在同グループは「98%の確度で」位置を確認したと主張しているとSky Newsが伝えている。さらにHowes氏は、もし位置が特定できればElon Musk氏のような人物が回収して重要文化遺産とし保存できるかもしれないと思いを巡らしている。

アポロ10号はNASAのアポロ計画で4番目の有人ミッションで、月着陸船を月面から8.5マイル(13.7km)以内まで飛ばす計画があった。テストは着陸船が最終着陸シークエンスでパワードディセント(ロケット推進力を利用した下降)を実行する直前まで行われた。「ピーナッツ」のテーマに合わせて、同ミッションの司令室は「チャーリー・ブラウン」と呼ばれた。

注目すべきは、このミッションに使用された燃料タンクには月面から戻ってくるための燃料が入っていなかったことだ。これは、テスト飛行中の宇宙飛行士が、アポロ11号のニール・アームストロング氏とバズ・オルドリン氏に先んじて、最初に月面を歩いた人類になろうとした場合に備えて課せられた意図的な制約だった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAの火星用ヘリコプターが2020年のミッションに向けて最終テストへ

NASAの火星用ヘリコプターであるMars Helicopterは、この赤い惑星を探検する未来の人類にとっても重要な実験だ。それはNASAの2020年の火星ミッションに積載され、地球以外の大気における大気よりも重い重量物の飛行試験に向かう。最後の一連のテストに合格した同機は今、2020年7月の火星打ち上げを目指して最後の準備作業に入っている。

この重量4ポンド(約1.8kg)で自動操縦のテスト用ヘリコプターは、火星探査車Mars 2020に乗って火星まで運ばれ、地球からの数か月に及ぶ長旅を経て、予定では2021年2月18日に、探査車が火星のジェゼロ・クレータ(Jezero Crater)に着地した後に展開される。ヘリコプターはカメラを搭載し、電源としてソーラーパネルがある。今回はそのほかのセンサーや科学的機器類はいっさいなく、火星で果たしてドローンを飛ばせるか?という唯一の疑問に答えることだけを目的とする。将来の実験では、地上車である探査車にはできなかったデータを集めるためにセンサーが載ったりするだろう。

これまでMars Helicopterは、打ち上げと着地をシミュレートする激しい振動環境や、火星の表面のような過酷な温度条件、そして電気系統と機械系統の完成度をテストされてきた。現在はソーラーパネルも取り付けられ、ローターの試運転も経て、あとは現実に近い条件での最終的なストレステストが残っているだけだ。

NASAのMars 2020ミッションは最短でも1火星年、地球上の687日間行われ、新設計のコンパクトカーサイズの探査車には、火星の表面よりも下の岩石や土を採取する新しいコアサンプリング(円柱状標本採取)ドリルが搭載される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAが火星の月探索模擬ミッションで45日間の隔離実験

宇宙は人間には過酷である。慣れていないというだけでなく、ほとんどの人が人生のほとんどを過ごすこの地球と、あまりにもかけ離れているからだ。人間が宇宙で暮らしたり働いたりするとどうなるかを知るために、研究者が多くの実験を重ねているのはそのためだ。たとえば、5月24日に開始された新たな実験では、4人組のクルーが45日間宇宙船に隔離され、生活と仕事をともにした。ただし、この惑星の境界から外に出ることなく。

実際、実験に参加したBarret Schlegelmilch氏、Christian Clark氏、Ana Mosquera氏、およびJulie Mason氏の4人は、ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターから一歩も外にでていない。しかしそこがポイントだ。これは、火星のふたつの月のひとつ、フォボスへ行くミッションをシミュレートした模擬生活・仕事空間なのだ。この実験はNASAが “Human Exploration Research Analog”(人間探査模擬研究)と呼んでいるもので、わざとらしい頭文字のHERAはギリシャの家族の神を意味するが、要するに有人宇宙飛行ミッションのシミュレーションだ。

ちなみに、この実験に参加している「乗組員」たちは実際の宇宙飛行士ではなく、「NASAが宇宙飛行士に選ぶタイプを模倣する」ボランティアであると、人間研究プログラムの模擬飛行プロジェクトマネジャー、Lisa Spence氏が声明で語った。模擬宇宙飛行士たちは、模擬宇宙船ミッション期間中監視され、長期間の隔離ミッションの及ぼす生理的および心理的な影響を研究者が観察する。

このミッションは、研究者が同じ条件で適切なクロスサンプルを得るために行われる4つのキャンペーンのうちの一つであり、このキャンペーンでは特に、乗組員のスペースとプライバシーが制限された環境で生活し仕事をすると何が起きるかを調べ、他の実験セットの場合と比較する。

これは、NASAが2024年まで計画している人類を再び月に送るミッションの前にやっておくべき重要な実験だ。なお、人間的要素と同様に重要である技術面でも最近進展があった

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAは月に機材を運ぶ初めての民間企業を選出

NASA(米国航空宇宙局)は、月に科学技術機材を運搬する初の民間企業として、AstroboticIntuitive MachinesOrbit Beyondの3社を選択した。これは、アルテミス計画の一部をなすCLPS(Commercial Lunar Payload Services、商用月運送サービス)プログラムに基づくもの。

米国時間5月31日にNASAが発表したところによると、各社の月着陸船がNASAの機材を運搬し、月面での科学的な調査と、2024年にNASAの宇宙飛行士が月を再訪するための技術の実証を可能にする。NASAは、各社の任務に対する対価として、合計で最大2億5300万ドル(約278億3000万円)を支払う契約を交わした。

「我々が選んだこれらの米国の民間の着陸任務の事業者は、米国が何十年ぶりかで再び月面を目指すことを代表しています。そして、これは我々のアルテミス月面探査計画にとって大きな前進となるのです」と、NASAの長官であるJim Bridenstine氏は述べている。「来年には、最初の科学技術研究活動が月面で行われる予定です。それによって、5年以内に女性としては最初の、男性としては何番目かの飛行士を月面に送り込むことが可能となるでしょう。こうした商用着陸サービスへの投資は、低高度の地球周回軌道以外での商業宇宙経済を構築するための重要なステップにもなるはずです」。

各社の提案には、各種の特殊な測定器の運搬も含まれていた。例えば、着陸船の位置を予測する装置、月面の放射線の強度を測定する装置、着陸船が月に与える影響を評価する装置、それにナビゲーションの補助装置といったものだ。

これはNASAと、NASAによって選ばれた企業にとってだけの勝利となるものではない。それはXPRIZEにとっても誇るべきものとなるはずだ。というのも、Astroboticはもともと、カーネギーメロン大学からスピンアウトして、2007年にGoogle Lunar XPRIZE(GLXP)競技に参加した会社だからだ。

ピッツバーグに拠点を置くAstroboticは、Space Angels Networkの支援を受けている。2021年7月までに、月の表側にある大きなクレーター「死の湖(Lacus Mortis)」に、最多で14回、機材を運搬するという約束で、7950万ドル(約87億4500万円)を獲得した。

ヒューストンを拠点とするIntuitive Machinesは、月のダークスポットにある「嵐の大洋(Oceanus Procellaru)」にやはり2021年7月までに5回の運搬を実現するということで、7700万ドル(約84億7000万円)を受け取った。一方、ニュージャージー州のエジソンに本拠を置くOrbit Beyondは、2020年9月までに、月のクレーターの1つ「雨の海(Mare Imbrium)」の中の平原に4回の運搬を実現させることになる。

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「これらの着陸船の運行は、民間企業との希望に満ちた協力関係のほんの始まりに過ぎません。それによって、私たちの月の、私たちの太陽系の、そしてさらに大きな世界の科学的な謎を解き明かすことに近づくのです」と、NASAの科学ミッション部門の副長官、Thomas Zurbuchen氏は、声明の中で述べている。「そこで私たちが学ぶことによって、宇宙に対する見方が変わるだけでなく、私たちが月に赴くミッションを、そしてやがては火星に赴くミッションを準備することができるでしょう」。

NASAのパートナーとなった企業は、最初から最後までの商業運搬サービスを実現することに同意している。つまり、機材の準備と運用、打ち上げ、着陸までの全行程を含むものとなる。

NASAが、こうした方向に一歩を踏み出したことは、月に対する取り組みだけでなく、今後、火星に宇宙船や飛行士を送り込むことにつながる道を切り開くことになる。

「今回の発表は、NASAと民間のパートナーとのコラボレーションにおける重要な一歩となりました」と、NASAのジョンソン宇宙センターのCLPSプログラムのマネージャ、Chris Culbert氏も、ヒューストン発の声明の中で述べている。「NASAは、産業界と協力して、今後の月探査を可能にすることにコミットしています。われわれが選んだ企業は、アメリカの変化に富んだ、小さくても活気に満ちた会社を代表する存在です。それぞれが、月に到達するための独創的かつ革新的な方法を持っています。彼らと協力して、われわれの機材を確実に送り届け、再び人類を月に立たせることができるようになることを楽しみにしています」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アポロ11号の50周年記念にレゴで作る月着陸船

アポロ11号の50周年、つまり最初の月面着陸の記念日が近づいている。それを祝うファンファーレが足りないなどということはないはずだ。レゴもそこに参加しない手はない。この月着陸船セットは、過去の宇宙計画のミッションを祝うための素晴らしい作品だ。そして、宇宙ステーションセットと打ち上げセットは、それぞれ宇宙計画の現在と未来を祝福するもの。

アポロ11号セットは、非常に魅力的な製品となっている。宇宙好きの子供も、その親も、もしかしたら祖父母も含め、当時のミッションを憶えている人も、話を聞いて憧れている人も、みんなで楽しめる。レゴはNASAと協力して、イーグル着陸船のレプリカを作った。なかなかオリジナルに似ているが、大きさはもちろんちょっと小さい。

2人の宇宙飛行士、クレーター、米国旗も付いている。ますます本物そっくりだ。精密に再現されたアセンダーモジュールは、実際にベース部分から切り離すことができ、2人の飛行士を中に収納することもできる。レゴの愛好家なら気になってしかたがないと思われるのは、いくつか金色に光り輝くブロックが含まれていること。これはレゴによる他の宇宙系作品でも使ってみたいと思うだろう。

アポロは記念すべき過去のものだが、アルテミスは将来のものだ。月に人を送り込むという、この将来のミッションには、非常に興味深い装置があれこれと使われることになるはずだ。ただし、まだ決定されたものは何もない。だからレゴも想像力をたくましくして作った部分もある。ただ個人的には、シャトルのデザインはちょっとあり得ないかなとは思う。

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でも打ち上げコントロールセットは素晴らしい。ミッションを制御する管制室、飛行士を送り届ける軌道車両、いかにもそれらしいロケット。完璧なSpace Launch System(NASAの多段ロケットによる打ち上げシステム)だ。かなりリアルな宇宙ステーションのセットもある。居室のセグメントは自由に組み替えができる。エアロック装置も、実際に機能しそうに見えるほどよくできている。

これらのセットが、あまり大きく作られていない点も気に入った。宇宙旅行について、子供たちに間違った印象を与えるべきではないからだ。それは暑苦しいドラム缶の中に潜り込んで、丘を転がり降りるようなものなのだ。そして、そのままその缶の中で数ヶ月を過ごす。常に他の飛行士が吐く息の匂いを嗅ぎながら。そして最後には火星に到着する。でもそれは、飛行機のファーストクラスとは程遠いものだ。

レゴで宇宙船を作ることは、私にとっても子供のころからの最高の楽しみだった。そして今でも、その想像にふけったりすることがある。ただ私の作品は、現実とはまったく切り離されたものだった。これらのセットが、現実とリンクしたものであるのは素晴らしい。まだ一種のファンタジーかもしれないが、かなり実現性が高いように感じられる。子供たちが数年後にLunar Gateway(NASAの月軌道上のゲートウェイ)を実際に目にしたとき、あっ、これ、前にレゴで作ったことがある、と思うだろう。残念ながら、これまでに私がレゴで作った宇宙船は、現実のものにはなっていない。

レゴショップに行って、自分用のセットを入手しよう。

画像クレジット:レゴ

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

月に宇宙飛行士を送るNASAの新計画名称はアルテミス

クールなミッションにはクールな名称が必要だ。そして、月定住と再び米国人を月に送るというNASAの新たな計画は、アルテミスという名称を得た。アポロ計画の最盛期から今年50年という節目にあること、新計画では女性を初めて月に送ることを鑑みたとき、うなづける名称だ。

名称はNASAのソーシャルメディアチャネルで発表された。そしてJim Bridenstine長官が昨日の記者会見で軽く触れていた。

「アポロには双子の妹アルテミスがいたことが明らかになる。アルテミスは月の女神となる。我々の宇宙飛行士部門は多様性に富み、かなり優秀だ。アポロ計画から50年が経ち、アルテミス計画が次の人類、そして初の女性を月に運ぶというのは素晴らしい」と長官は語った。

ギリシャ神話になじみのある人ならNASAが専門用語に含ませたヒントがわかっただろう。アルテミスは月の女神だった。しかしまた狩猟の神でもあった。そしてアルテミスの忠実な狩猟の友はオリオンだった。まるでNASAがいま開発中の多目的宇宙船のようだ。

月に加えて、アルテミスは当然のことながら天文学や宇宙飛行と関連がある。複数の衛星やミッションがこの名称を使ってきているし、金星と月にはアルテミスにちなんでつけられた谷などがある。しかし今回の命名はこれまでで最高のものだろう。

NASAに問い合わせ中だが、私が思うにアルテミス計画は月定住を確立するという来るべき大きなミッションに関係している。これには月面探査や、月軌道プラットフォームゲートウェイなど月や月周回軌道でのインフラ整備という大きなミッションが含まれることが予想される。

今回の発表は、NASAが月探査のミッションのためにとっておいた予算に新たに16億ドルを追加するとの発表を受けたものだ。

名称が女性のものであるのは意図的なものだ。アポロ計画は多くの女性のサポートのおかげで成功したが、ミッションは男性宇宙飛行士だけで行われた。しかし今回は異なる。女性も男性も宇宙へ行き、そして間違いなく女性でも男性でもない人もすぐに宇宙へ行く。

Bridenstine長官はこの計画は次世代を頼りにしていると話した。「私には11才になる娘がいるが、多様性に富んだ現在の宇宙飛行士団と同じように娘にも多様性の中にいる自分を見出してほしい」。

「月着陸の歴史を振り返ると、1960年代から1970年代にかけてはテストパイロットで、女性にはチャンスがなかった。今回の計画は、私の娘のような新世代の女の子たちが月に行くことを思い描けるようにするだろう」と発表後の質疑応答で語った。

アルテミス計画は10年以上はかかることが予想される。月に行くことは簡単ではなく、最初の成功すらもその後待ち構える、さらに大きく野心的なミッションの基礎となるにすぎない。

イメージクレジット: Flaxman

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(翻訳:Mizoguchi)

ベゾス、Blue Originの月植民計画と着陸船を公開

今日(米国時間5/9)、ホワイトハウスからほど近いワシントンの会場で、Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスが2024年までに有人月旅行を実現する計画の詳細を発表した。聴衆にはプレス、企業と政府の幹部に加えて大勢の中学生も招かれていた。同時にBlue Moonと呼ばれる月着陸船も公開された。

ベゾスによれば月は資源の宝庫だと言う。ベゾスが私費を投じて運営している宇宙企業、Blue Originは、今年中にNew Shepardロケットで有人宇宙旅行を行う予定だ。

イベントのステージは最初に月を歩いた人間、ニール・アームストロング宇宙飛行士の「人類にとって大きな一歩」という有名な言葉をモチーフにしていた。ここでベゾスは「人口が1兆人に達したとき人類はどこに生存のための資源を求めるべきか?」という非常に深刻な問題に答えようとした(こちらはベゾスの過去のビジョン関係の発言)。

宇宙というユートピアに進出する上で最大のハードルは、巨大通販会社のファウンダーとして熟知している問題、すなわちロジスティクスとインフラのコストを実現可能なレベルに削減する方法だ。

ベゾスは「われわれの世代の役目は宇宙旅行のインフラの構築だ。われわれは宇宙への通路を開かねばならない」と述べた。

アメリカ政府機関と特にNASAの研究によれば宇宙への道は月を経由するという。ベゾスが今日のイベントで月着陸船を披露した)理由の一つはそこにある。

アメリカのペンス副大統領はこの3月、国家宇宙委員会(National Space Council)の総会でNASAに対し、「2024年までにアメリカの有人宇宙船を月周回軌道に乗せ、月の南極に着陸させるためにあらゆる手段を活用する」よう指示した。

南極が目的地として選ばれた理由は氷だ。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「われわれの科学者の調査によれば、4.5億トンの氷が月の南極に存在する」と述べている。

月の自転軸の傾きにより南極には太陽の光が射さない極めて低温の場所がある。南極のクレーター中に摂氏マイナス160度という低温により蒸発を免れた大量の氷が埋まっているとNASAの科学者は推定している。氷はロケットの推進剤に利用することができる。

マイク・ペンス副大統領は3月の国家宇宙委員会総会で大統領のコミットメントが裏付けだとしてこう述べた。

今世紀、われわれは新たな野心を抱いて月に戻る。単にそこに行くだけではなく、永久に日照のない南極のクレーターの底の氷から原子力によって水をつくり、酸素や宇宙ロケットの推進剤を得る。そうした補給があればわれわれの宇宙船は数年ではなく数ヶ月で火星に到達できるだろう。

Y Combinatorが支援するスタートアップ、Momentusは水を推進剤とするロケットを建造中だ。このロケットは原子炉から得られた電力で水を加熱し、水プラズマによって推進力を得る。

しかしこれまでNASAの有人宇宙プロジェクトは予算の削減などにより遅延を重ねてきた。月に戻るというのは非常に高価な事業となる。NASAもアメリカ政府も推定金額がどれほどになるか明らかにしていない。(略)

「アメリカは月に戻る」というのは2017年にトランプ大統領が署名した宇宙政策指令1号(Space Policy Directive 1)に基づくものだが、NASA のプランの具体的内容は不明だ。

これがBlue Originが重要な役割を担って登場した背景だ。

今日披露されたBlue Moon月着陸船に加えて、Blue Originは2種類の宇宙ロケットを開発している。New Shepardロケットは低軌道を短時間飛行して宇宙飛行に関するテクノロジーやノウハウの収集を行うことを目的としている。ペイロードを地球周回軌道に打ち上げるのはNew Glennロケットの任務だ。 2021に最初の打ち上げが予定されており、45トンのペイロードを地球周回低軌道に投入できる。ロケットはどちらも垂直着陸によって回収され、複数回利用される。

先週、Blue OriginのNew Shepardは低軌道を弾道飛行して各種の実験を行うことに成功している。これは11回目のミッショだった。New Shepardは成層圏と宇宙の境界である高度100キロメートルまで上昇してカプセルを切り離した後、逆噴射と垂直着陸によって回収された。カプセルは慣性で上昇を続け、こちらはパラシュートによって無事回収された。

ベゾスはこのカプセルを一般人向け宇宙観光旅行にも利用する計画で、昨年のReutersの記事によれば、チケットは20万ドルから30万ドル程度だという。

一方、イーロン・マスクのSpaceXはこれとは異なるアプローチを採用してきた。SpaceXは大型ロケットを開発し、さらに超大型ロケットの開発に進んでいる。同社として「最新、最大のロケット、Falcon Heavyは63.8トンのペイロードを地球周回軌道に投入できるSpaceXではさらに惑星間飛行を視野に入れた次世代宇宙船、Starshipを開発中だ。こちらは100トンのペイロードを低軌道に乗せることができるという。Starshipの最初の打ち上げは2020年に予定されている。.

これ以外にも活動中の民間宇宙企業は数多い。スタートアップとしてはリチャード・ブランソンのVirgin Galacticを始め、Rocket Lab、Vectorなどが打ち上げプラットフォームの開発に取り組んでいる。スタートアップは現在の衛星打ち上げ事業の主流となっているロシアのソユーズ、アメリカのロッキード・マーティンとボーイングの合弁企業ULA、EUのアリアンスペースといった巨大企業のロケットと競争しなければならない。またロケット以外にも衛星、着陸船、制御システムなどの重要部分を開発、製造するスタートアップも多数現れている。

ベゾスはイベントで「月に戻るときが来た。単に旅行するのではなく、われわれはそこに留まるのだ」と宣言した。

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滑川海彦@Facebook

小惑星衝突に備えて緊急対応計画を練るNASAとFEMA

小惑星が地球に衝突するアルマゲドンに対応する計画となれば、NASA(米航空宇宙局)とFEMA(米連邦緊急事態管理局)に見落としは許されない

ESA(欧州宇宙機関)のSpace Situational Awareness-NEO Segment(宇宙状況地球近傍天体認識部門)やIAWN(国際小惑星警報ネットワーク)といった国際的なパートナーとともに、NASAのPlanetary Defense Coordination Office(地球防衛調整局)は、ある「卓上演習」に参加する。それは、地球に衝突する軌道上にある小惑星への対応方法のシナリオをシミュレートするものだ(『アルマゲドン』に出演したBilly Bob Thornton氏、Bruce Willis氏、Ben Affleck氏、Liv Tyler氏らが参加するかどうかは定かではない)。

NASAとその関連機関は、もう20年以上にわたって、潜在的な危険性を持つ地球近傍天体(小惑星、彗星、また地球から3000万マイル=約4830万キロ以内にある未確認物体)を実際に探査してきた。

この卓上演習は、災害管理計画立案に使用されるシミュレーションで、動員および対応について関連すると思われる組織に対し、起こりうる大災害の重要な局面についての情報を提供し、対応方法を特定できるようにすためのもの。

この「ハルマゲドン」演習(正式名称ではない)の参加者は、NASAのジェット推進研究所のNEO研究センター(CNEOS)が開発したシナリオを使用することになっている。

「これらの演習は、われわれ地球規模の防衛コミュニティとして、災害管理側にいる組織が知っておくべきことを理解するのに本当に有効でした」と、NASAの地球防衛担当官であるLindley Johnson氏は声明の中で述べた。「この演習は、われわれが互いに、そして政府との間で、より効果的なコミュニケーションを確立するのに役立つはずです」。

このようなシミュレーションは、National Near-Earth Object Preparedness Strategy and Action Plan(国家による地球近傍天体に対する準備戦略と行動計画)に規定され、実際には政府によって義務付けられている。

こうした組織が取り組もうとしているシナリオには、架空のNEO(地球近傍天体)の発見が含まれている。これは、3月26日に発見され、天文学者が地球に潜在的な危険を及ぼす可能性があると判断したことになっているものだ。ここで科学者たちは、2027年にその小惑星が地球に命中する確率を100分の1と見積もっている。実はこの100分の1という数字は、小惑星の衝突に対応するために、地球規模のコミュニティとして計画を開始する際の現実のしきい値なのだ。

そこから、シミュレーションの参加者は、探査と衝突回避のミッションのために準備可能なことについて議論する。さらに、もし衝突した場合の影響を軽減するための計画も検討する。

「NASAとFEMAは、継続的に拡大している米政府機関および国際的なパートナーのコミュニティとともに、定期的な演習を引き続き実行します」と、Johnson氏は声明の中で述べている。「そうした演習は、われわれが協力して取り組み、互いのニーズを満たしつつ、ホワイトハウスによる国家NEO準備行動計画に示された目的を達成す方法を学ぶための素晴らしい方法なのです」。

NASAがNEOの衝突演習に参加したのは今回が初めてではない。これまでにも、NASAは6回の衝突演習を完了している。そのうちの3回は国際演習(2013年、2015年、2017年)で、残りの3回はFEMAとともに(さらに国防総省と国務省の代表の参加も得て)実施した。

「緊急対応マネージャが知りたいのは、いつ、どこに、そしてどのように小惑星が衝突するのか、そしてその被害がどのようなもので、規模はどの程度になるのか、ということです」と、FEMAのResponse Operations Division(対応業務部)のLeviticus Lewis氏は述べている。

NASAは、映画「インデペンデンス・デイ」のようなシナリオにも対応可能なものとして、緊急対応計画を策定したかどうかは明らかにしていない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAや米海軍用のソフトロボットを開発するBreeze Automation

サンフランシスコにあるソフトロボット工学のスタートアップであるBreeze Automationは米国時間4月18日、カリフォルニア大学バークレー校で開かれたTechCrunchのTC Sessions、Robotics + AIイベントのステージに登場した。共同創立者でCEOのGui Cavalcanti氏がステージに立ち、同社がNASAや米海軍といった組織から委託されている仕事を紹介したのだ。

Cavalcanti氏が、前回TechCrunchのステージに登場したのは、2016年9月だった。その際は、パイロット用のサングラスと米国旗を身にまとい、戦闘ロボットリーグのMegaBots共同創立者としての登場だった。このBoston Dynamics出身者の最近の仕事は、控えめながらずっと真剣なものになっている。水中や宇宙空間のような危険な状況でのミッションに取り組むものだ。

サンフランシスコにある研究開発施設、Otherlabの一部として設立されたBreezeは、適応力の高いソフトロボット工学というコンセプトを開拓している。この会社のロボットアームは、中に空気を含んだ織物のような構造を採用している。

「Otherlabが約7年間に渡って発展させてきたコンセプトは、Fluidic Robot(流体ロボット)、油圧ロボット、そしてPneumatic Robot(空気圧ロボット)を非常に安価に開発するというアイデアです」と、Cavalcanti氏はイベントを前にしてTechCrunchに語った。「環境に対して高い耐性があり、非常に軽い素材で作られたものです。当初は、最もシンプルなロボットとはどのようなものか、そして最も軽いロボットとは、という問いから始めました。そしてそのアイデアが、繊維と空気で作られたこれらのロボットとして結実したのです」。

Breezeは、そうした原理を構造全体に適用したことによって、ソフトロボットの分野で多くの競合から差別化することができた。既存のロボットアームの先にソフトなグリップを付けたようなものとは根本的に異なるのだ。

「すべてが、大規模な工場から外に飛び出した瞬間に物を言います。そのとき、ロボットが現実の世界とどのように関わり合うのかという問題が、より切実なものになるのです」と、Cavalcanti氏は続けた。「私たちがやろうとしているのは、ソフトロボット工学に関する研究の成果をもっと取り入れ、完全に密閉されたシステムであることの利点を活かし、空気のように本当に柔軟な動力源によって動作させることです。予測不可能な、雑然とした環境で動かそうとした際に、何だかわからないものにぶつかったとします。周囲の状況をセンサーによってくまなく把握できるとは限らないからです。そんな場合、マニピュレータとアーム全体をソフトなものにすることには大きなメリットがあります。単なる作動体では、そうはいきません」。

Breezeは、現在進行中の仕事についていくつか説明してくれた。その中には、米海軍用に開発されたシステムもあった。HTC Viveヘッドセットを使って遠隔操作するものだ。他にも、NASAとの協業で開発を進めているロボットシステムもあった。中枢となるドライブシャフトを必要とせず、伝統的なロボットシステムからの脱却を可能とするものだ。

「今御覧いただいているのは、それなりの荷重がかかるロボットの関節ですが、全体を射出成形で作成することができます」と、Cavalcanti氏は説明する。「金属製のシャフトは必要ありません。ベアリングや、その類のものもまったく不要なのです。射出成形された部品、つまりプラスチックのパーツを組み立てれば、ロボットのできあがりです」。

Breezeが獲得した資金の大部分は、現在のところ米海軍やNASAのような連邦政府との契約によるものだが、同社はこの先、徐々に民間との契約にシフトしていこうとしている。「私たちの現在の使命は、技術をさらに強化して、実社会でのアプリケーションに対応させることです。今は、ほぼ100%それに集中しています」と、彼は言う。「そこを確かなものにできれば、私たちが探求したいと考えている民間用のさまざまな用途の可能性が開けるはずです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ボーイングの商用有人宇宙船Starlinerの初テストは8月に延期

一般人を対象とした商用宇宙旅行計画の進展は我々と宇宙の関係を一変させる可能性があるが、その一番乗りの栄誉はSpaceXが今年中に手にするかもしれない。最大のライバルであるボーイングがStarlinerシステムのテスト飛行を延期したからだ。無人飛行テストの第1回目はこの5月に予定されていたが、8月に延期されたことを米国時間4月2日、ボーイングが確認した。

Starlinerのテスト飛行延期の情報が浮上したのは先月だった。この時点ではボーイングは「Starlinerが利用する打ち上げ施設の日程が立て込んでいる」ことを確認するにとどまった。実際、Starlinerの打ち上げに適する「ウィンドウ」は5月には2日しかない。Starlinerを割り込ませれば国家安全保障上重要なAEHF5軍事通信衛星の打ち上げに支障をきたすおそれがあった。

宇宙事業でのスケジュールの遅れはいやというほど繰り返されてきた。世界の宇宙事業各社が独自の宇宙基地や発射施設を保有ないし建設しようとしているのはこれが理由だ。衛星発射の回数が増えれば発射施設の能力も拡大される必要があるというのは当然だろう。しかし独自基地の建設には莫大なりソースを必要とする。多くの事業者にとって、(米国東部にあるロケットセンター)ケープ・カナベラルの発射施設を利用する以外選択肢がない。

ただし、ボーイングが本当に5月に打ち上げを実施するつもりだったら、打ち上げロケットとStarlinerカプセルは現在よりはるか前にケープ・カナベラルに到着していければならなかったとNASAの宇宙飛行部門が指摘している。テストに必要な機材がケープ・カナベラルに来ていなかったということは打ち上げ延期が決定されたのがかなり以前であることを示唆する。ボーイングとロッキード・マーティンの共同宇宙事業であるUnited Launch Allianceは、すでにテスト発射準備を中止していた。つまり昨日の延期発表は誰もが知っていたことを再確認したにすぎない。

8月の無人テスト飛行が成功すれば、11月には有人テストが可能になるだろう。しかしStarliner計画はすでに何年も遅れており、今回もまた遅れが加算されることとなった。しかもボーイングに比べればはるかに若いライバルがすでに無人宇宙飛行テストに成功していることはさらなる屈辱だ。

SpaceXは有人飛行を7月に予定しているのでボーイングは悔しいかもしれない。しかし実情は、こうした事業は慎重さの上にも慎重さを重ねる必要があり、必要なだけの時間をかけるべきだ。この点、ボーイングの決断は正しい。なるほど一番乗りを逃がせば、会社の評価にとって追い風にはならないかもしれない。しかしそれは今後明らかになるStarlinerの能力、信頼性によって十分取り返せる。

別のプレスリリースでNASAとボーイングはStarlinerには研究、メンテナンスのためのミッションが追加されることを発表した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

インドの人工衛星破壊で400あまりの破片がさまざまな軌道上にばらまかれた

NASAのアドミニストレーターを務めるJim Bridenstine氏によると、インドが最近実施した軌道上防衛能力のデモンストレーションにより、400あまりの破片がさまざまな軌道内に散乱し、国際宇宙ステーションやそのほかの配備物を危険にさらしている。彼は米国時間4月2日に行われた市民参加の集会で、「こわい、とってもこわいことだ」と述べた。

先週敢行されたそのテストでは、インドのロケットが高度約300キロメートルに打ち上げられ、前からそこに置かれていた人工衛星に当たって破壊した。それは、1月に打ち上げられたMicrosat Rだと思われる。ナレンドラ・モディ首相はそのテストについて、誇らしげにこう述べた。「インドの優秀な科学者たちの素晴らしい能力と我が国の宇宙計画の成功が示された」。

世界中の宇宙関係者たちからの反応はそんなに温かいものではなく、一部はその行為を宇宙の軍用化に向かう一歩と非難し、またBridenstine氏らはもっと現実的な警告を発した。

彼はこう言った。「意図的に軌道上にデブリフィールド(Debris Fields,、残骸界)を作ることは人間の宇宙飛行と両立しない」。

「その一度のイベントによる400片のデブリを軌道上に認識した。われわれが今調べているのは10センチ以上の大きな破片約60個のみである。60個のうち24個は、国際宇宙ステーションの遠地点の上にある」。

これらの破片のほとんどはすぐに大気圏内で燃え尽きてしまうが、大きなものは追跡できるし、必要なら回避もできる。しかし、「これらのこと全体が悪しき前例になる」とBridenstine氏は示唆する。「どこかの国がやったら、他の国もやろうという気になるだろう」。

まさに彼の言うとおりだからこそ、今回インドはやったのだ。つい最近の2008年に米国もロシアもそして中国もすでにそれをやってしまった。だから米国にも責任の一端はある。でも、デブリを軌道上に送り込んでISSを危険にさらすようなことは、単純に良くない考えだ、と全員が合意するだろう。

インド宇宙研究機構のアドバイザーTapan Misra氏はIndian Expressに、6カ月以内にデブリはすべてなくなる、今回のミッションはいかなるリスクも生じないよう細心に計算されている、と述べている。彼によると、中国による今回と同様の迎撃ミッションは高度が今回の3倍近くあり、大量のオブジェクトを作り出したので、長年経った今でも探知の対象になっているそうだ。

軌道上のデブリは深刻な問題であり、今後打ち上げが増えるとともに問題も悪化する。しかしRocket Labのような一部の企業は事前対策を取ろうとしている。同社はなんと、宇宙銛(もり)という、打ち込んで後で回収できる装備を設計している。それは理論としてはたいへんクールだが、むしろ、そんなものが必要にならないことを願いたいね。

画像クレジット: AFP/Arun Sankar/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

初めて火星の空を飛ぶヘリコプター

Mars 2020のミッションは順調に進行中で、来年には打ち上げが予定されている。火星に送り込まれるハイテク装備の新しい探査機の中には、これもハイテクのヘリコプターが仕込まれている。ほとんど大気が無いに等しい惑星でも飛べるように設計されたものだ。火星の上空を実際に飛行する機体が送り込まれるのは初めてのことなので、その開発者たちは期待に胸を膨らませている。

「次の飛行では、火星の上を飛びます」と、JPLでこのプロジェクトのマネージメントを担当しているMiMi Aung氏は、ニュースリリースの中で述べている。最終版にかなり近いエンジニアリングモデルは、1時間以上飛行することができた。しかし、今回の2回の短いテスト飛行は、この小さな機体が実際に遠くの惑星上を飛ぶ前の、最初と最後の飛行となった。もちろん、ロケット打ち上げによる「飛行」は除いての話だ。

「ヘリコプターが試験室の中を飛び回っているのを見て、私は過去に同じ空間でテストされた歴史的な機体のことを考えずにいられませんでした」と、彼女は続けた。「この試験室は、Ranger Moonの探査機から、Voyager、Cassiniなど、これまでに火星に送り込まれた探査機のミッションを実現させてきたのです。その中に、私たちのヘリコプターがあるのを見て、私たちも宇宙探査の歴史の小さな一部になろうとしているのだと感じました」。

火星で活動中のヘリコプターの想像図

火星を飛ぶヘリコプターは、地球を飛ぶヘリコプターと、それほど大きくは違わない。もちろん、火星の重力は地球の1/3で、大気の濃度は1%ほどしかないから、相応の違いはある。たとえれば、地球の10万フィート(約3万メートル)上空を飛ぶようなものだ、とAung氏は説明した。

ソーラーパネルを備えているので、それなりに自力で探査できる

テストに使用された装置は、単に真空に近い状態を作り出すだけでなく、空気を火星に近い希薄な二酸化炭素混合ガスに入れ替えることができる。ただし、「重力軽減」システムは、ヘリコプターをワイヤーで軽く吊って、低重力をシミュレートするだけだ。

飛行高度は、なんと2インチ(約5cm)で、2回のテストの合計で1分間ほど浮上しただけ。それでも、このチームにとっては、1500ものパーツからできた4ポンド(約1.8kg)の機体を梱包して、火星に送り込む準備ができたことを確認するのに十分だった。

「素晴らしいファーストフライトでした」と、テストを担当したTeddy Tzanetos氏は語った。「重力軽減システムは完璧に機能しました。もちろんヘリコプターも完璧です。2インチの高さでホバリングできれば、必要なすべてのデータを収集できるのです。それで、この火星用のヘリコプターが、火星の薄い大気の中でも設計通りに自律飛行できることが確認できます。それより高く上がる必要はないのです」。

Mars 2020の探査機が着陸してから数ヶ月後に、このヘリコプターは分離され、最長でも90秒ほどテスト飛行を数回繰り返す。それが、大気より重い機体による別の惑星での最初の飛行となる。つまり、水素ガスを詰めた気球によるのではない、動力による初の飛行なのだ。

その機体は、ほとんど自動操縦で運航される。というのも、通信に往復で半時間もかかるので、地球から司令を送って操縦するのはさすがに無理なのだ。ヘリコプターは太陽電池とバッテリーを備えていて、小さな着陸用の足も取り付けられている。探査機から出発して、離れた場所を30日間以上も飛行することを試みる。その際には、約3メートルの高さで、探査機から数百メートルも離れた場所まで飛行することになるはずだ。

Mars 2020は、来年の夏には打ち上げの準備が完了すると見込まれている。目的地に到着するのは2021年のはじめごろだ。もちろん、それまでの間も、CuriosityとInsightは向こうで活動している。火星の最新情報は、まだまだ続々と入ってくるはずだ。

(関連記事:NASA chooses the landing site for its Mars 2020 rover mission
(関連記事:NASA shows off the design for its Mars 2020 rover

画像クレジット:NASA/JPL

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

女性のみの宇宙遊泳が中止に、適正サイズの宇宙服足らず

残念なことに、NASAは歴史的なミッションとなるはずだった女性のみによる宇宙遊泳の中止を発表した。

米国時間3月22日に予定されていたこのミッションの中止の理由は、女性宇宙飛行士にとって適切なサイズの宇宙服が十分に用意できなかったためだと説明されている。

宇宙遊泳に参加する予定だったAnne McClain氏は、以前着ていた大きな宇宙服では十分に動くことができないと語っている。

Anne McClain

NASAは、「McClain氏は最初の宇宙遊泳にて、ミディアムサイズの宇宙服(の上部分)が自分にちょうど合うことがわかった」と声明を出している。

しかしミディアムサイズの宇宙服は1着しかなく、その宇宙服はもうひとりの女性宇宙飛行士のChristina Koch氏が使う予定だ。Koch氏は宇宙飛行士のNick Hague氏と、太陽電池パドルにリチウムイオンバッテリーを装着する予定だ。

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ミッションの中止は残念がだ、悲劇ではない。世界最高の頭脳がセクシズムを克服しようとしても、宇宙服のサイズを変えることはできないのだ。

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(文/塚本直樹 Twitter