Googleのユーザーのリビングを乗っ取る準備が整ったようだ。GoogleはChromecastのバージョン2となる新製品、そしてAUX端子のあるどんなスピーカーでもインターネットとの接続を可能にするChromecast Audioを発表した。これらの小さなデバイスを実際に試した所、非常に強力なツールであることが分かった。
Chromecastは2013年に初めてローンチし、Chromeのブラウザ体験をテレビでもできるようにした。Chromecastは持っているテレビにコンテンツを映す安価な方法で、平凡なテレビをスマートにする製品だ。プロダクトの理念は「インターネットをコーパスとして見たいものを見よう」だとChromecastのプロダクトマネージャーを務めるMicah Collinsは私に話す。理念はそのままに、新しい端末の機能は格段に向上した。
Googleがリーチしたいのは、リビングのテレビだけではない。Chromecast Audioで、同社はスピーカーにもスマートな機能をユーザーに取り付けてほしいようだ。Sonosのようなものだが、Googleの頭脳を持つ。
物理的な端末とともに登場した新しいChromecastアプリからは、ユーザーがこれまでテレビで視聴できるなんて思ってもみなかったコンテンツも探すことができる。リモコンやゲームのコントローラーは必要ない。スマートフォンとWi-Fiがあれば十分だ。
Chromecast 2.0
オリジナルのChromecastは2000万台を販売した。新しいChromecastで最初に気づくことは、新色が登場したことだ。オレンジと黄色(珊瑚色とレモネード色)の2色だ。
また、新しくなった中身を収納するために外観が丸くなった。今月の始めにリークされた写真と一致している。これまでのようなスティック状ではないため、テレビに差し込みやすくなり、HDMIケーブルも内蔵されている。このようにすることは難しいと聞いた。
価格は?そう、価格。Chromecastの価格と他の競合の価格を比べてみよう。
Amazon Fire TV: 99ドル
New Apple TV: 139ドル、199ドル
XBox One: 349ドル
Chromecast: 35ドル
見事だ。
テレビに映っていた風景写真は今後、Google Photos、Getty Images、Facebook photos、500 PX、Pixirで管理することができ、完全にカスタマイズすることができる。現在どのような写真が映っているかは知らないが、たいていは砂漠とかの写真で特にそれぞれのユーザーと関連性のあるものではなかった。
劇的に変わったのは中身だとCollinsは言う。
クラウドから高い品質とパフォーマンスを届けることに特化したプロダクトを製作することができました。アプリと連携する製品を開発しました。ユーザーは、どこからでもアプリが使用できます。全てのユーザーにSDKからリーチでき、それが全ての基盤になっています。ここ2年間、私たちはこれを構築していたのです。
この優れた製品はスマートフォンから操作できる。何故ならそれが、誰もが理解できるインターフェイスだからだとCollinsは言う。Appleの世界観では、ユーザーはテレビのためだけに製作されたお気に入りのアプリの使い方を学び、全く新しいインターフェイスに慣れなければならない。
また、ハードウェアデザインで起きている最新鋭のことはモバイル端末で起きているという。何故、最新のAppleやAndroid OSとそれらの端末に及ばないであろう、新しいハードウェアを利用する必要があるのか。目標は次の8000万のChromecastユーザーを獲得することだとCollinsと彼のチームは言う。
ChromecastはスマートフォンのGPUを活用しているため、Chromecastを念頭においた、豪華でレンダリングの多いゲームが今後たくさん登場するだろう。
最高のインタラクションとコンテンツを提供するため、端末はHDMIケーブルと3つの異なるWi-Fiアンテナを内蔵していて、それがChromecastの秘訣だという。Googleが「adaptive antenna system(適応するアンテナシステム)」と呼ぶこのアンテナは、アルゴリズムが自動で最適な通信をいつでも選び取ることができるという。鍵となるのは、ユーザーからコンテンツを受け取りChromecastにできるだけ素早く、滑らかにストリームすることだ。
ゲームに関して、これは顕著だ。
GoogleはAngry BirdsのChromecast向けの特別版「GO」を発表した。年内にローンチするそうだ。デモを見ていたが、スマートフォンからテレビへのストリームは驚くほど速かった。少しの遅れもバグっぽい動作もなく、ゲームを試してみたい衝動にかられた。
ChromecastはスマートフォンのGPUを活用しているため、Chromecastを念頭においた、豪華でレンダリングの多いゲームが今後たくさん登場するだろう。
他には、Angry Birds Friends、WGT Golf、Monopoly Here and Now、Mini Motors WRT、Driver Speedboat Paradiseといったゲームが公開予定だ。
もちろんスマートフォンがコントローラーの役割を担う。
Chromecast Audio
このプロダクトのコードネームはHendrixだ。最適な名前だ。この端末の価格も35ドルで、平凡なスピーカーをインターネットに接続するスマートな端末にする。Sonos(あるいは他の端末も)を考えると分かりやすいだろう。新しく発表されたSpotifyとの連携も早く試してみたいところだ。
Collinsは、彼が話した全員がベッド横のテーブルのスピーカーやテレビと連携するサラウンド・サウンド・スピーカーやAUX端子がついたスピーカーなど何らかのスピーカーを自宅で所有していることを知り、このような端末へのニーズを見つけたという。
平凡なスピーカーに「キャスト」するのと、Chromecastでテレビに「キャスト」するのは同じ仕組みだ。Chromecast Audioは、高品質の機能がある、2ワットRMSとハイブリッドポートからは光デジタル音声出力が可能だ。賢い製品だ。
ユーザーはスピーカーに端末をつなげるだけで、Chromecastアプリを使い直接スピーカーから音楽を流すことができる。テレビや他に何かを接続する必要はない。音楽を再圧縮する必要もない。Chromecast Audio端末にコンテンツのソースを登録すれば、スマートフォンを他のことに使用できるようになる。スピーカーはスマートになり、音楽を流すという本来の役割を遂行する。
Jamboxや他のスピーカーはさよならだとCollinsと言う。「Bluetoothの接続は良くありません」。確かにその通りだ。Jamboxで音楽を聞いている時に電話の呼び出し音やiMessageの受信音が音楽と一緒に流れたことはないだろうか。そこで音楽を聞くという体験は台無しだ。Chromecast Audioのコストだけで、それらに難なく対応することができるようになる。
年末までにChromecastアプリは複数の部屋にあるChromecastとChromecast Audioの両方に対応する予定だ。
Chromecast アプリ
これらの新しい端末にはスマートフォンで使用できる新しいインターフェイスも登場する。Googleは、 iOSとAndroidのChromecastのアプリもちゃんとを目をかけている。
多くの人はテレビの前に座って、チャンネルを回すことだろう。私はスポーツ以外のテレビ鑑賞はデジタルビデオレコーダーを主に利用しているが、それでも寝る前にチャンネルを回してテレビを見ている。CNNでニュースを見て、ESPNでスポーツの試合のスコアを見るといった具合だ。
新しいChromecastアプリで、ケーブルテレビでユーザーが慣れ親しんだ番組を素早く、シームレスに変えることに応える。ケーブルテレビがComcastでないかぎり、本当に見たい番組にたどり着ける確率はこれまで50%程度だったことだろう。本題に戻そう。
「Googleが学んだことを活かして、サーフする体験を再現したいと思いました。つまり、遅滞のないウェブ体験と早い検索結果の表示です」とCollinsは言う。「その体験とノウハウをキャストのモデルでも再現します」。
アプリからのコンテンツの発見はこれまで以上に簡単になる。そうでなければならないのは、キャストできるコンテンツが大幅に増えたからだ。Chromecastのアプリは、Chromecast SDKに対応する端末のアプリをスキャンし、使用できるコンテンツとディープリンクする。例えば、HuluやNetflixなどだ。「3rd Rock」のドラマを検索すると、番組とマッチするコンテンツのあるアプリを見つけることができる。また、探しているものに関する補助的な情報も見ることができる。Googleプロダクトの代名詞的な機能だ。
Googleがテレビの検索を正しくする時期が来たようだ。これまで自社のスマートテレビや他のテレビメーカーとの連携ではできなかったことだ。それらの検索は良くなかった。新しいChromecastの一連の機能は、Googleが提供できる機能をうまく活用し、そのような問題を解決する。
Googleはさらに、何を見たいか検討もつかないユーザー向けのChromecastアプリにある「What you might like (ユーザーにおすすめ)」のエリアを刷新した。私としては、何か見たいものが予め頭にあるか、何も見ないかの二択にしている。見たいコンテンツの発掘は非常に手間で、一日の終わりには探すだけで疲れてしまっているからだ。
開発者向けにGoogleは「Fastplay(素早く再生)」と呼ぶ新しい機能を統合した。これは、基本的にはChromeのバックグランドのタブのようなもので、ユーザーが何をしたいかや次に何を見たいかを予測し、次に表示すべき情報をChromecastに送信する。例えば、ユーザーが「Seinfeld」ドラマの最初のシーズンの3話を見ているのなら、次は4話目が表示されるようにする。タップすると、素早く再生することができる。開発者はこの体験を自分のアプリに適した形で改良することができる。
スマートテレビとSonosはなくなるのだろうか?
これらの端末のデモを見て、私は「Sonosやスマートテレビは不要」と思った。Chromecastの端末があるなら、何故スマートテレビなどを購入しようと思うのかということだ。それらの体験は分かりづらく、押し込められてて、インターフェイスはアップデートすらしない。スマートテレビ専用のコンテンツやアプリを製作するチームと話をしたことがあるが、購入者はそれらを使用しないので、製作するだけ時間の無駄だと言っていた。
それに、テレビで面白いことができるようCPUの機能を搭載するのは簡単なことではない。オーディオでも、Sonosには同じことが言える。彼らのインターフェイスを使用しなければならないが、それが最高のものとは限らない。スピーカーの品質は良いが、すでにスピーカーを持っているなら、スマートなものをわざわざ購入する必要はないだろう。
Amazon、Apple、Microsoftはどう出る?
素晴らしアプリの製作を開発者のエコシステムに任せる方法でAppleとGoogleはハードウェアから利益を得ている。それらの開発ツールを簡単に使用できるようにすることにおいてGoogleは素晴らしい仕事をしている。もし企業が自社のアプリをテレビ画面に最適なように再構築することが簡単にできるようになるなら、さらに面白い展開が待ち受けているだろう。彼らはAppleとGoogle、両方のプラットフォームに対応するだろうか?きっとそうだろう。どれだけ簡単に活用できて、開かれているが素早く成功を手にする鍵となる。そのため、Ouyaのようなものが最初は良く聞こえたのだ。ゲームに関しては、世に出してXboxに乗せることは簡単になる筈だったが、期待されていたほどにはなっていない。
最終的に、全てはスマートフォンに集約してくる。ユーザーに新しいガジェットに飛び込ませないことで、Googleは最初から先頭に立っているのだ。Collinsはスマートテレビや彼らが新しいインターフェイスを搭載していることに関して「それらのインターフェイスは良くありません。タッチインターフェイスは人類の進化と言えます。物理的なものと同じように、ただ機能するのです。二歳児でさえ、本のページをめくる前にアプリを起動させることができるのです」と話す。
そしてもう一つCollinsは鋭い指摘をした。
「これ以上リモコンは要らないのです。」
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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter)