Spotify CEOがこれまで歴史的に阻害されてきたクリエイターのコンテンツに約115億円を投資すると発言

Spotify(スポティファイ)とJoe Rogan(ジョー・ローガン)氏の問題に関する最新情報が報じられた。SpotifyのDaniel Ek(ダニエル・エク)CEOは米国時間2月6日、ローガン氏が自身のポッドキャストで配信した過去のエピソードで有害な人種的中傷となる発言をしていたことについて、スタッフに社内書簡を送付した。現在は、これらの過去のエピソードのうち70本以上がSpotifyから削除されている。The Hollywood Reporter(ハリウッド・レポーター)に掲載されたこの社内書簡の中でエク氏は、歴史的に疎外されてきたグループの音楽やオーディオコンテンツの使用許諾、開発、マーケティングに、Spotifyが1億ドル(約115億円)を投資すると宣言している。これは、同社がジョー・ローガン氏との独占コンテンツ契約に支払った金額と同じだ。

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「1つの点を明確にしておきたい。私はジョーを黙らせることが解決策だとは思っていません」と、エク氏はSpotifyのスタッフに向けて書いている。「我々はコンテンツに関する明確な境界線を持ち、それを越えた場合には行動を起こすべきですが、声を消してしまうのは滑りやすい坂道です。この問題をもっと広く考えると、批判的な思考とオープンな議論こそが、本物の必要な進歩の原動力となるのです」。

Spotifyは2020年5月、ローガン氏のポッドキャスト「The Joe Rogan Experience(ザ・ジョー・ローガン・エクスペリエンス)」と1億ドル規模の複数年にわたる独占契約を締結、11年分のコンテンツが同プラットフォームでのみ配信されることになった。だが、すでに物議を醸しているローガン氏が、新型コロナウイルスに関する誤った情報を広めている極右陰謀論者のAlex Jones(アレックス・ジョーンズ)氏などのゲストを番組に登場させ、Spotifyユーザーの懸念をさらに募らせることになるまで、それほど時間はかからなかった。

最近では、業界で最も聴取されているポッドキャスターの1人であるローガン氏が、新型コロナウイルスに関する誤情報を広めたことでTwittert(ツイッター)から締め出されたウイルス学者Robert Malone(ロバート・マローン)博士をゲストに招いたことで、270人の医療関係者がSpotifyに誤報に関するルールを導入するよう求める公開書簡に署名するなど、緊張感が高まっている。

ローガン氏による誤った公衆衛生情報を流布する役割を果たしたことに対するSpotifyの不作為に抗議して、Neil Young(ニール・ヤング)氏、Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)氏、作家のRoxane Gay(ロクサーヌ・ゲイ)氏などの著名人が、Spotifyからコンテンツを引き上げた。

「私が考えていることの1つは、クリエイターの表現力とユーザーの安全性をさらに両立させるために、どのような追加措置を講じることができるかということです」と、エク氏は書いている。「これらの取り組みについて相談する外部の専門家の数を増やすように、私はチームに依頼しています。詳細を発表できる時を楽しみにしています」。

今までのところ、Spotifyは、新型コロナウイルスが実在しないと主張するような「危険で欺瞞的な医療情報」を促進するコンテンツを禁止するプラットフォームルールを掲げている(以前はなかった)。また、新型コロナウイルスに関する話題を含むポッドキャストには、コンテンツアドバイザリーを追加することも確約している。

このような広報面での悪夢のような出来事があったにもかかわらず、Spotifyは他のストリーミングサービスと比較して、その市場シェアを大きく失っていない。

画像クレジット:composite:Vivian Zink/Syfy/NBCU Photo Bank/NBCUniversal and TORU YAMANAKA/AFP via Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ハイパースペクトル衛星画像技術Wyvernが新たに約4.6億円獲得、スマートファーム施設での実験でも使用される

カナダのスタートアップ企業で、衛星画像技術を手がけるWyvern(ワイバーン)は2021年12月、450万ドル(約5億2000万円)のシードラウンド(新たな取り組みが発表されたおかげで終盤にほぼ倍増した)を実施し、Y Combinator(Yコンビネーター)への参加を発表したばかりだが、さらに今回、カナダのSustainable Development Technology(SDTC、持続可能な開発技術)プログラムを通じて、新たに400万ドル(約4億6000万円)の資金を獲得したことを明かした。

SDTCプログラムは、シード期、グロース期、スケールアップ期の各段階にあるスタートアップ企業に対し、官民の機関や企業とのパートナーシップを通じて、クリーンテックに革新を起こす可能性のあるプロジェクトへの資金提供を行うというもの。SDTCが提供する資金は、スタートアップ企業に株式の譲渡を要求するものではなく、また返済義務のあるローンでもない。その代わり、SDTCとそのパートナーが設定した測定可能な結果と成果物をもとに契約を結び、その目標を達成することで資金を得られる。

Wyvernの場合、SDTCは、BASFのxardio digital farming(ザルビオ・デジタルファーミング)、Olds College(オールズ大学)、SkyWatch(スカイウォッチ)、MetaSpectral(メタスペクトラル)、Wild + Pine(ワイルド+パイン)のコンソーシアムと協力。この3年間におよぶプロジェクトの概要は、オールズ大学にある2800エーカー(約11.3平方キロメートル)の「スマートファーム」施設を使って、Wyvernのハイパースペクトル衛星画像をテストするというものだ。

Wyvernは現在、自社の技術を実際に宇宙へ持って行くことに取り組んでいるため、資金が豊富にあることは非常に重要だ。同社は今後数年内に、最初の観測衛星「DragonEye(ドラゴンアイ)」を打ち上げることを計画している。

画像クレジット:Olds College

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NVIDIAがArmの買収を断念、Armはリーダーが交代し株式公開を模索

NVIDIA(エヌビディア)によるArm(アーム)の買収案件は見送られると、両社とArmのオーナーであるSoftBank(ソフトバンク)米国時間2月8日に発表した(PDF)。SoftBankとNVIDIAは、Armの買収に向けた取り組みを止めることで合意したのだ。

これにともない、Armでは大きなリーダーシップの交代も行われる。同社の現CEOであるSimon Segars(サイモン・シーガーズ)氏が同日付けで退任し、ArmのIPグループ社長であるRene Haas(レネ・ハース)氏(元NVIDIA VP兼コンピューティング製品事業本部長)がその任につくことになった。

買収が見送られたため、Armは買収の代わりに株式公開を模索しているという。現在の計画では、今後12カ月以内にIPOが実現する予定だ。

Financial Timesは、米国時間2月8日未明、この買収が破綻したと最初に報じた

今日の発表の直前にハース氏が私とのインタビューで語ってくれたように、シーガーズ氏が会社を去るという決断は、非常に個人的な選択であった。「彼は会社を上場させることと、その他諸々のために必要な時間とエネルギーが、自分のキャリアのこの段階において、自分が手を挙げたいと思えるものではないと判断したのです」とハース氏は語った。「だから、彼は退任することになりました。私が彼の後を継ぐことになります」と語った。

「レネは、上場再挑戦を目指すArmの成長を加速させるために最適なリーダーです。過去30年にわたるサイモンのリーダーシップ、貢献、そしてArmへの献身に感謝します」とSoftBank Group(ソフトバンクグループ株式会社)の代表取締役社長兼執行役員会長兼CEOの孫正義氏は述べている。

ハース氏は、今日のArmのビジネスがかつてないほど強力であることを指摘した。

「私たちは、この会社の次の章にとても熱意と興奮を感じています。というのも、この会社の業績は絶好調だからです。【略】Armのビジネスはかつてないほど好調で、収益性も高く、SoftBankに参加する前では見たことがないレベルです。しかし、おそらくもっと重要なことは、SoftBankに入る前と比較して、事業の多様化が進んだことです。クラウドやデータセンターのような分野でより強力な企業になり、自動車のような市場でもより強力な企業になり、IoTやメタバースといった将来の市場にも大きな機会があります」と彼は語った。

ハース氏は、NVIDIAとSoftBankの決断についてこれ以上コメントしない一方で、ついに取引が破綻したが、リーダー交代の話し合いはもっと前から始まっていたことを認めた。

「買収が成立しなかったことは残念ですが、同時に、今後の展望に非常に期待しており、次の章の開始が待ち遠しい」と述べている。それが具体的にどのようなものになるのか、ハース氏はまだ明言していないが、CPUやGPU市場への進出や、AI分野での取り組みを継続することに言及した。「これまでやってきたことを継続し、それを実行することが本当に重要になります。というのは、我々はビジネスを成長させる方法に関するレシピを提示し、それをぜひ継続したいからです」と語っている。

NVIDIAのCEOであるJensen Huang(ジェンスン・ホァン)氏も、これとほぼ同じことを言っている。「Armには明るい未来があり、我々は今後数十年間、誇りあるライセンシーとして彼らをサポートし続けるでしょう」と彼は声明で述べている。「Armは、コンピューティングにおける重要な変遷の中心にいます。私たちは1つの会社にはなりませんが、Armと密接に連携していきます。マサが行った多大な投資により、Arm CPUがクライアントコンピューティングだけでなく、スーパーコンピューティング、クラウド、AI、ロボティクスにまでその領域を拡大できるよう、Armを位置づけています。Armが次の10年で最も重要なCPUアーキテクチャになることを期待しています」と語った。

ある意味、今日の発表はサプライズではない。米連邦取引委員会が、合併後の企業が「NVIDIAのライバルを不当に弱体化させる」ことができるとして、合併を阻止するために提訴すると発表した後、BloombergはNVIDIAが計画を断念する準備をしていると報じていた。Armの本社がある英国でも、EUの反トラスト法規制当局と同様に、ここ数カ月で合併の障害にぶつかっていた。

結局、GPUとAIアクセラレーター市場を支配し、事実上すべてのスマートフォンやIoTデバイスを動かすチップのIPも所有するNVIDIAは、あらゆる警鐘を鳴らすことになったのだ。両社はおそらく、規制当局のプロセスを通過させるために、取引内容を大幅に変更するか、あるいは断念せざるを得なかっただろう。

NVIDIAがこの巨大買収計画を最初に発表したのは、2020年9月のことだった。当時、NVIDIAのCEOであるジェンスン・ホァン氏は、これによって自社が「AIの時代に向けて素晴らしく位置づけられた企業」を作ることができると主張していた。

この間、NVIDIAとArmの首脳陣は公の場で、この取引が最終的に規制当局の審査を通過する、と楽観的な姿勢を崩さなかった。何らかの反発があることは承知の上で、両社は常にこの取引の完了に多くの時間を費やし、発表から18カ月後の2022年3月を完了予定日としていたのである。しかし、ここ数カ月、両社はこの期日を逃すことになると認めていた。彼らはまた、2022年9月というちょっとした期限もあり、それを過ぎるとSoftBankは12億5000万ドル(約1443億円)の解消手数料を保持することになっていた、取引がなくなった今、SoftBankはいずれにしてもそれを保持することになったのである。

画像クレジット:SAM YEH/AFP via Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Disney+が米国で初めてライブストリーミングのテストを実施

Disney+は、米国時間2月8日、米国で初めてライブストリーミング機能のテストを実施し、オンデマンドのサブスクサービスの今後の変化を示唆した。今回のテストでは、大規模なイベントには挑戦せず、俳優でコメディアンのLeslie Jordan(レスリー・ジョーダン)と俳優でプロデューサーのTracee Ellis Ross(トレーシー・エリス・ロス)が司会を務める第94回アカデミー賞ノミネーションのライブストリームを実施した。このイベントは、Disney(ディズニー)傘下のHulu、さらにABC News Live、Oscars.comなどアカデミー賞が所有するさまざまなプラットフォームにもライブ配信された。

イベントの視聴者全員が1つのプラットフォームに視聴を合わせないので、このように幅広い配信はDisney+の負担を軽減することにもつながった。

同社は、Disney+でのライブストリーミングについて、今後どのような具体的な計画があるかについては言及を避けたが、同社のプラットフォームでライブコンテンツがどのようなものになるかを模索したいことは認めている。担当者は、これまでのところ、結果に満足していると述べ、Disneyは今後もこの種の体験をテストし続ける予定であると付け加えた。

「今朝のアカデミー賞のノミネーションで、米国のDisney+でライブストリーミングのテストを行いました。我々はその結果に満足しており、消費者に最高のユーザー体験を提供するための継続的かつ反復的なアプローチの一環として、テストを続けていきます」と、Disneyの広報担当者はTechCrunchに語った。

Disneyはすでに、Hulu with Live TVやESPN+など、ライブコンテンツを配信できる複数のストリーミングプラットフォームを持っているが、同社が米国のDisney+にライブスポーツを統合することを検討している可能性を示すヒントもある。あるスポッターは最近、例えばDisneyPlus.comサイトマップにリンク (https://www.disneyplus.com/espn/details/sport-event/)が追加されたことに気づいた。これは、同社がESPNの視聴者がDisney+からスポーツに容易にアクセスできるようなプランを検討していることの表れではないか、と彼らは推測している。また、インドのDisney+ Hotstarサービスではすでにスポーツのライブ配信を行っているため、Disneyが米国で同様のサービスを検討するのも無理はないだろう。

しかし、今日のテストが示すように、ライブストリーミングはスポーツのライブに限定されるものではない。すでにHuluでクロスストリーミングされている特別なイベントや、ファンに直接アピールできるようなイベント、たとえば人気のファンイベントD23 Expoからの配信など、Disneyが配信する意味があるライブイベントは数多くある。

また、ライブコンテンツが加わることで、記録的な成長が鈍化し始めた現在、サービスの魅力が増す可能性もある。

Disney+の加入者は、2021年第2四半期の1億360万人から第3四半期には1億1600万人に増え、第4四半期にはさらにわずか210万人増の1億1810万人になった。その鈍化は加入者増に関するウォール街の期待を裏切り、11月の最新決算発表の直後に株価を下げた。それでも、DisneyのBob Chapek(ボブ・チャペック)CEOは、2024年までにDisney+加入者数を2億3000万-2億6000万人にするという同社の目標は、依然として順調であると述べた。Disneyは米国時間2月9日に2022年第1四半期の決算を発表する予定だ。

画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

グーグルがGoogleアシスタントやGoogle One、Google Fiなどに新セキュリティ機能を追加

Google(グーグル)は米国時間2月8日、Safer Internet Day(セーファーインターネットデー、SID)に合わせて、Googleアシスタント、Google Fi、Google Oneを含むさまざまなアプリやサービスの新機能とともに、安全なオンライン体験に関する情報提供の拡大を目的としたパートナーシップを発表した。特に、教育系非営利団体であるKhan Academy(カーンアカデミー)に500万ドル(約5億8000万円)を寄付し、無料のオンラインセーフティレッスン開発を委託するとのこと。また、Googleは非営利の政策・政治団体と協力して「Campaign Security Project(キャンペーンセキュリティプロジェクト)」という新しい取り組みを行っている。このプロジェクトは、2022年の米国中間選挙に向けて、選挙の候補者やキャンペーン担当者にオンラインセキュリティに関するトレーニングを行うことを目的としている。

後者のプロジェクトのパートナー団体には、Veterans Campaign、Collective Future、Women’s Public Leadership Network、LGBTQ Victory Institute、Center for American Ideas、サンフランシスコ大学、Emerge、Latino Victoryなどが含まれている。米国外でも、Googleは国際選挙制度財団(International Foundation for Electoral Systems、IFES)と同様の取り組みを行っているという。

また、同社の製品ラインアップ全体で「安全性」に関するアップデートに分類されるいくつかの新機能が追加された。

手始めに、スマートスピーカーやディスプレイにカレンダーや連絡先などの個人情報を表示しないようにするGoogleアシスタントのゲストモード機能は、今後数カ月のうちに9つの言語でグローバルに利用できるようになるとGoogleは述べている。ゲストモードにすると、それを無効にするまで個人情報はプライベートに保たれる。これは、スマートデバイスの周りに他の人がいる場合を想定したソリューションだ。また、ゲストモードで録音された音声は、あなたのGoogleアカウントには保存されない。今回の拡張は、Nest Hub MaxやNest Audioなど、さまざまなデバイスが対象となる。

近い将来、T-Mobile(T-モバイル)やU.S.Cellular(USセルラー)などの米国のネットワークを活用したGoogleのMVNO通信サービスであるGoogle Fiには、Find MyやLife360アプリと同様の家族追跡機能が追加される予定だ。Google Fiプランを利用しているユーザーは、追加料金なしでFiモバイルアプリから自分の位置情報を家族とリアルタイムに共有できるようになる。このトラッキング機能は、一定の時間が経過するとオフになるように設定するか、手動で設定をオフにするまで有効にすることも、あるいは常にオンに設定することもできる。この機能は、Google Fiの既存のファミリー機能に追加される。ファミリー機能では、大人が家族のデータ割り当てを設定したり、不明な送信者が子どもにメッセージを送れないようにブロックすることができる。

8日に発表されたもう1つの新機能は、実は先週導入されたものだ。Googleは、Google Oneプレミアムサブスクリプションの一環として、iOSデバイスにVPNサービスを展開していることを指摘している。プレミアムクラウドストレージプラン(2TB以上)の会員は、iOS版のGoogle OneアプリからVPNを利用できるようになる。

Googleはまた、まもなく開始されるセーフブラウジング機能を予告している。3月から、ユーザーはGoogleのアカウントレベルの「強化されたセーフブラウジング」を選択できるようになり、オンライン上の脅威やGoogleアカウントに対する脅威に対して、より広範な保護を提供するという。この機能は、よりリスクの高いユーザーが利用することを目的としており、アカウント設定画面やセキュリティ診断を受けた際に利用可能になる。

画像クレジット:Alex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

グーグル、Chromeに過去の検索をスマートにグループ化する検索履歴ページを導入

Google(グーグル)は米国時間2月8日、Chromeのいくつかのアップデートを発表し、特に、ブラウザ上で過去の検索を再開する新しい方法を導入すると述べた。

「Journeys(ジャーニー)」と名づけられたこの新機能は、現在デスクトップ版のChromeで展開されており、過去の検索をトピックごとにスマートにグループ化することができる。この新機能は、関連する用語の検索を開始すると、ブラウザが自動的にハイライト表示する。また、ブラウザで有効にすると、新しいChrome History Journeyページに直接移動できる。

画像クレジット:Google

「Journeysは、あなたがどれだけサイトにアクセスしたかを考慮して、最も関連性の高い情報を前面に押し出し、次に試したい関連検索の有益な提案もします」と、ChromeチームのプロダクトマネージャーであるYana Yushkina(ヤナ・ユシュキナ)氏は発表で説明した。

何かを調べ始めてから、別のプロジェクトのために中断したことがある人は、以前に訪れたサイトに戻る方法を見つけるのがいかに難しいか知っている。どのブラウザの履歴リストも、しばらくするとすぐに扱いにくくなるが、これまでどのブラウザベンダーも、履歴リストにあまり注意を払っていなかった。競争が激化するブラウザ市場において、長い間手つかずだったこの領域に、各ベンダーの革新が続くと思われる。

画像クレジット:Google

Googleは、ブラウザが自分のためにこれらのクラスタを構築することに抵抗がある場合、ユーザーはこの機能を完全にオフにすることができると強調している。Googleは、Journeysはデバイス上でのみ履歴をグループ化し、クラスタはデバイス上で生成されるだけだと述べている。Googleアカウントには何も保存されない。

ところで、これらのトピックは、広告目的のクッキーを置き換えるGoogleの最新の提案であるTopics(トピック)とはまったく関係がない。これらのTopicsは、訪問したサイトを、あらかじめ設定された約300のトピックを中心にクラスタ化するもので、明らかに基本的な機能の重複が見られるが、Googleの広報担当者は、両者はまったく関係がないとのことだった。

関連記事:グーグルが脱クッキー技術「FLoC」を廃止、代わる新機能「Topics」を公表

この新機能は現在、英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、オランダ語、ポルトガル語、トルコ語のOSで展開されている。

Journeysに加え、Googleはさらに多くのChrome Actionsをブラウザに導入している。これは、アドレスバーで適切な種類のトリガーワードを使用することでアクセスできる機能だ。新しいアクションには「Manage settings」「Customize Chrome」「View your Chrome history」「Manage accessibility settings」「Share this tab」そして最も重要かもしれない「Play Chrome Dino game」などがある。楽しいが、数回クリックすれば同じ目的地に早くたどり着けるのに、本当にこれだけの文字を入力したい人がどれだけいるかはわからない。

モバイルユーザーのために、Googleは、Androidでいくつかの新しいChrome関連のウィジェットを導入している。例えば、恐竜ゲームにアクセスするためのものがあり(ここにテーマを感じる)、他のものはテキスト、音声検索、ビジュアルレンズ検索機能など、ホーム画面からの検索を開始することに重点を置いている。

画像クレジット:Jaap Arriens / NurPhoto / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Yuta Kaminishi)

アップル、iPhoneで非接触型決済を可能にする「Tap to Pay」機能を発表

Apple(アップル)は、iPhoneを非接触型決済端末にする新機能「Tap to Pay」の導入計画を発表した。同社によると、2022年後半に米国の事業者はiPhoneとパートナーが対応したiOSアプリを使ってApple Payやクレジットカード、デビットカードといったその他の非接触型決済を受け付けられるようになる。

この機能は、iPhone XS以降のモデルで利用できる。iPhoneを使ったTap to Payは、決済プラットフォームやアプリの開発者が、顧客の決済オプションとして自社のiOSアプリに組み込むことができる。Stripeは、新しいShopifyアプリでTap to Payを顧客に提供する最初の決済プラットフォームとなる。Appleによると、別の決済プラットフォームやアプリは2022年後半に加わる予定だ。

Tap to Payの提供が始まれば、事業者は対応するiOSアプリを通じて非接触型決済を利用できるようになる。会計時に、顧客にiPhoneまたはApple Watchを事業者のiPhoneに近づけてもらうと、NFC技術を使用して支払いが安全に完了する。非接触型決済を受け入れるために追加のハードウェアは必要ない。Appleはまた、iPhoneでのTap to Payでは顧客の決済データは保護され、この機能を通じて行われる取引はすべて暗号化されるとしている。

同社は、Apple Payはすでに米国の小売店の90%以上で利用されており、この新機能を使って顧客はよりシームレスに精算できるようになるとしている。Tap to Payは2022年後半に米国内のApple Storeの店舗でも導入される。Appleは、決済プラットフォームやアプリ開発者と緊密に連携し、米国内のより多くの事業者にTap to Payを提供する。Tap to Payは、American Express、Discover、Mastercard、Visaなど多くの決済ネットワークによる非接触クレジット / デビットカードで利用できる。

Apple PayおよびApple Wallet担当副社長のJennifer Bailey(ジェニファー・ベイリー)氏は「デジタルウォレットやクレジットカードで支払いをする消費者が増えている中、iPhoneでのTap to Payは、安全かつプライベート、そして簡単に非接触型決済を受け入れ、iPhoneのパワー、セキュリティ、便利さを活かした新しい精算体験を企業に提供します」と声明で述べた。

Appleによると、Tap to Payは今後リリースされるiOSソフトウェアのベータ版で、参加する決済プラットフォームとそのアプリ開発者パートナーが利用できるようになる。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

スキルシェアのココナラがVC業に参入、専門家と起業家のマッチングを提供

スキルマーケット「ココナラ」などを提供するココナラは2月9日、同社全額出資により新会社のココナラスキルパートナーズ(以下、CSP)を設立し、ベンチャーキャピタル事業を開始すると発表した。

CSPには、スキルのマッチングを手掛けてきたココナラならではの特徴がある。それは、通常のVCのように投資先に対して資金を注入するとともに、高度な専門スキルをもった「スキルパートナー」と起業家のマッチングして付加価値を提供するという点だ。創業から上場までを経験した起業家であるココナラ創業者の南章行氏のほか、ソフトウェアエンジニア、デザイナー、コンサルタント、弁護士といった専門家(現時点では10人)が起業家のサポートにあたるという。

CSP設立を発表した記者会見のなかで南氏は、「これまでにも起業家を応援したいと思う専門家はたくさんいたが、報酬スキームが成り立たないという点で実現が難しかった。CSPではそこを解決する」と話す。

CSPでは、通常8割程度とされる投資収益に対するLP(出資者)の取り分を7割程度とし、その分を専門家への報酬に充てる。LPの取り分は減るが、成功するかどうかの瀬戸際にあるスタートアップへスキルの支援も行うことで、全体の成功確率が引き上げられ、最終的な投資収益も増加するというのが同社の主張だ。

記者会見に同席し、CSPにLPとして出資するドローンファンド代表の千葉功太郎氏は、「スタートアップに流れるリスクマネーは増え、一昔前に比べると『お金を供給する』という観点では環境が整ってきた。放っておいても成長する1割のスタートアップがいる一方で、9割のスタートアップは消滅してしまう。起業家は総じてゼネラリスト集団であり、彼らには専門家が必要だ」と話した。

「(CSPを通じて)創業時のイメージである『主婦の副業500円』というイメージではなく、高度なスキルを含むあらゆるスキルのマッチングを行う企業としてのブランディングを確立すること。高度なスキルがスタートアップ業界に流れ込む道筋を作り経済の発展に寄与すること。新しい働き方を提示することでスキルを磨く方々の新しいロールモデルを作ること。この3つがココナラが新しくベンチャーキャピタル事業を始める理由です」(南氏)

CSPは現在ファンドレイズを行っている最中であるが、最終的には10~15億円程度のファンドサイズを目指すという。シード、アーリーステージのスタートアップへの協調投資を原則とし(複数のVCで1つの起業に投資を行い、CSPはリード投資家にはならない)、1件あたり1000~5000万円程度を出資していくという。

無人運航船プロジェクトMEGURI2040が世界最長距離の無人運航成功、北海道苫小牧-茨城県大洗の約750キロ・約18時間航行

日本財団は2月7日、大型カーフェリー「さんふらわぁ しれとこ」による無人運航の実証実験が成功したと発表した。2月6~7日にかけて、北海道苫小牧から茨城県大洗まで航行した。

同財団推進の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」は、2020年2月より5つのコンソーシアムと共同で、無人運航船の開発に取り組んでいる。これまで開発を進めてきた様々な船種の無人運航船は、2022年1月から3月にかけて、5つすべてのコンソーシアムで実証実験を行ってきたという。

今回の実証実験はその一環となるもので、約750kmと約18時間という長距離・長時間での無人航行の運航実証は世界初となる。

実証実験に利用された「さんふらわあ しれとこ」(全長190m、総トン数1万1410トン)には、実験のため自律操船システムを搭載。従来のAIS(船舶自動識別装置)とレーダーに加え、可視光カメラと夜間対応の赤外線カメラで海上を航行する他船を検出している。これらのセンサーやカメラで得られた情報から、AI学習によって他船であることを認識しているという。

他船を避航する際には、衝突回避のために開発したアルゴリズムにより避航操船を実施。陸上からの監視には、AR技術を活用。船上からの映像へ各種情報を重畳表示するよう開発したARナビゲーションシステムを利用した。

これらMEGURI2040で開発した自動離着桟システムや陸上モニタリング用ARナビゲーションシステムは、船舶の安全航行や船員の労働負荷低減に寄与すると目されており、ICTやAI、画像解析技術を利用する「未来の産業」として研究・開発が続けられている。

さんふらわあのような大型カーフェリーは、モノと人を同時に運ぶことができるため、国内の物流において重要な役割を担っている。特に北海道と関東の物流では海運が8割以上を占めており、その重要度はより高い。しかし国土交通海事局によると、国内旅客船の船員は2000年以降は約1万人から約7000人へと20年間で3割減少しているうえ、1回の航行が長時間である大型カーフェリーでは船員の労務負担が課題になっている。長距離・長時間での無人運航船の実証実験が成功したことで、船員の労務・作業負担の低減や、安全性の向上、オペレーションコスト低減への貢献が期待されている。

話者映像とPC画面を組み合わせ「非同期コミュニケーション」を支援するQudenのzipunkが5000万円調達、正式版も公開

B2BビデオコラボレーションSaaS「Quden」(クデン)を提供するzipunk(ジパンク)は2月7日、シードラウンドとして5000万円の資金調達を行ったことを発表した。引受先はOne Capital。同時にプランや機能を拡充した正式版を2022年2月よりリリースしたことを明らかにした。

調達した資金は、「プロダクト開発体制の強化」「PLG(Product-Led Growth)モデルの実践を通じたグロースサイクルの確立」「ユースケース・事例などのコンテンツ制作」、またこれらに必要な採用活動にあてる。

Qudenは、話者の映像とPC画面を自由に組み合わせた動画をワンクリックで作成・共有できるSaaS。テクニカルサポートやサービスの機能説明といったカスタマーサクセス業務に活用することで、顧客対応効率や顧客満足度が改善できるとしている。また、社内トレーニング用動画コンテンツや業務フィードバックに用いれば、繰り返し発生する定型業務やビデオ会議を削減でき、組織の生産性が向上するという。

同社は、Qudenを単なる画面録画ツールではなく「時間や場所に制約のない働き方を推進するコミュニケーションインフラ」と捉え、社内外のあらゆるワークフローに活用されるサービスを目指しているという。代表取締役CEOの兵藤佑哉氏は、「業務コミュニケーション手段として『非同期×動画』というフォーマットを活用することで、業務の中断を招く同期的(≒リアルタイム)なコミュニケーションを減らし、異なる時間帯や場所で働くメンバーとの協働がよりスムースになると考えています」とコメントしている。

またこの2022年2月にフリープラン(無料)と、より多くの機能を備えたチームプラン(月額750円)を用意し正式に公開した。フリープランの利用の際は、カード情報などは不要。話者映像とPC画面を組み合わせたビデオメッセージを作成・共有可能なQudenのzipunkが5000万円調達、正式版もローンチ

ジパンクは2019年12月に設立されたスタートアップ。「『働く』をもっと自由に」というミッションを掲げ、Qudenの開発と運営を行っている。

話者映像とPC画面を組み合わせ「非同期コミュニケーション」を支援するQudenのzipunkが5000万円調達、正式版も公開

B2BビデオコラボレーションSaaS「Quden」(クデン)を提供するzipunk(ジパンク)は2月7日、シードラウンドとして5000万円の資金調達を行ったことを発表した。引受先はOne Capital。同時にプランや機能を拡充した正式版を2022年2月よりリリースしたことを明らかにした。

調達した資金は、「プロダクト開発体制の強化」「PLG(Product-Led Growth)モデルの実践を通じたグロースサイクルの確立」「ユースケース・事例などのコンテンツ制作」、またこれらに必要な採用活動にあてる。

Qudenは、話者の映像とPC画面を自由に組み合わせた動画をワンクリックで作成・共有できるSaaS。テクニカルサポートやサービスの機能説明といったカスタマーサクセス業務に活用することで、顧客対応効率や顧客満足度が改善できるとしている。また、社内トレーニング用動画コンテンツや業務フィードバックに用いれば、繰り返し発生する定型業務やビデオ会議を削減でき、組織の生産性が向上するという。

同社は、Qudenを単なる画面録画ツールではなく「時間や場所に制約のない働き方を推進するコミュニケーションインフラ」と捉え、社内外のあらゆるワークフローに活用されるサービスを目指しているという。代表取締役CEOの兵藤佑哉氏は、「業務コミュニケーション手段として『非同期×動画』というフォーマットを活用することで、業務の中断を招く同期的(≒リアルタイム)なコミュニケーションを減らし、異なる時間帯や場所で働くメンバーとの協働がよりスムースになると考えています」とコメントしている。

またこの2022年2月にフリープラン(無料)と、より多くの機能を備えたチームプラン(月額750円)を用意し正式に公開した。フリープランの利用の際は、カード情報などは不要。話者映像とPC画面を組み合わせたビデオメッセージを作成・共有可能なQudenのzipunkが5000万円調達、正式版もローンチ

ジパンクは2019年12月に設立されたスタートアップ。「『働く』をもっと自由に」というミッションを掲げ、Qudenの開発と運営を行っている。

歩行者・モビリティ・ロボットが共存する空間の実現に向け、東京都千代田区丸の内仲通りで自動運転バスの走行実証実験

歩行者・モビリティ・ロボットが共存する空間の実現に向け、東京都千代田区丸の内仲通りで自動運転バスの走行実証実験

一般社団法人「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会」は、大丸有地区のスマートシティー化プロジェクトの一環として、丸の内仲通り(東京都千代田区)での自動運転バスの走行実証実験を行うと発表した。期間は2月18日から22日まで。歩行者専用通行時間帯となる「丸の内仲通りアーバンテラス」の実施時間中に、自動運転バスが運行される。

同協議会は、東京都千代田区にある大手町・丸の内・有楽町の3町域を合わせたエリア「大丸有地区」について、歩行者と「モビリティ・ロボット」が共存でき、「移動の選択肢を増やすことで、より便利で賑わいのある空間」にすることを目指している。そこで、自動運転バスの社会実装を目指すソフトバンクグループの企業BOLDLY(ボードリー)と共同で、低速の自動運転バスを走らせることにした。この実証実験は、2017年から続けられており、2021年3月には片道350mの走行実験を行ったが、今回はその規模を大きく上回る。

走行区間は、丸の内ビルディング前から国際ビルヂング前までの630m(歩行者専用となる全区間。往復約1260m)。この区間内には、信号のある交差点が1つ含まれる。そこを時速6キロ以下で、注意喚起のための音楽を鳴らしながら走行する。運行本数は、平日が13便、土日が20便となっている。

バスの運行状況は、大丸有地区の施設、イベント、交通機関などの情報を閲覧できるアプリ「Oh MY Map!」(Android版iOS版。大丸有地区まちづくり協議会が提供)でリアルタイムに見ることができる。

実証実験概要

  • 期間
    ・2月18日〜2月22日
    平日11:30〜14:30
    土日11:30〜16:30
  • 走行ルート
    ・丸の内仲通り(丸の内ビルディング前~国際ビルヂング前)
    Aルート(丸の内ビル発→国際ビル行)
    Bルート(国際ビル発→丸の内ビル行)
  • 乗降車位置
    ・丸の内ビルブロック(郵船ビル1階:ビル正面口付近)
    ・国際ビルブロック(国際ビル1階:ENOTECA 丸の内店付近)
  • 料金:無料
  • 走行便数
    ・合計64便
    平日13便、土日20便
  • 走行速度:時速6Km以下
  • 試乗人数
    ・約420人。1便(片道)あたり6名乗車
    ・試乗には「【丸の内仲通り】自動運転モビリティ実証実験 (2021年度)」で予約が必要(先着順)

ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す

ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す

NVIDIAへのArm売却断念、そして2022年度中にArmの再上場を目指すと発表したソフトバンクグループの孫正義社長は決算会見で、売却断念に至った経緯などを説明しました。

孫社長のコメントは下記の通りです。

「1年半前、コロナがこれからどのくらい地球上に災難をもたらすかわからないような状況で、我々は4.5兆円の資金化プログラムを発表しました」

「その一環として、Armを手放すことを意思決定したわけですけども、まあ泣く泣く意思決定したわけですね」

「でも、単純に手放したくはないので、売ったような買ったようなということで、Armを急成長しているNVIDIAと合体させて、我々がNVIDIAの筆頭株主になれれば、ArmとNVIDIAがくっつけばまさに鬼に金棒という状況になりますので、チップの世界で、圧倒的世界最強の会社ができると。その筆頭株主に我々はなるんだという願いで、ArmのNVIDIAへの売却を契約したわけです」

「しかしその後ですね、なんとGAFAに代表される主要なIT業界の企業が、こぞって猛反対。そしてアメリカ政府もイギリス政府もEUの国々もこれに猛反対という状況になりました」

「通常は独禁法で合併を阻止しようとする際、同じ業界、たとえば車のエンジンを作ってるA社とエンジンを作っているB社が合併しようとすると、マーケットシェアが大きくなりすぎるということで、独禁法で止められるということなんですが、NVIDIAとArmは全く違ったものを作っている。言ってみればエンジンとタイヤくらい違うわけですね」

「この違う事業をやっている2社の合併を独禁法で阻止するというのは、独禁法が始まって以来初めてのケースで、我々も驚いたわけですけども、なぜそれほど止めなければいけなかったのかというと、それは各国政府やGAFAに代表されるような企業が、それほど止めなければいけないというくらい、ArmがIT業界、シリコンバレーの殆どの企業がArmを直接あるいは間接的に活用している、欠かす事のできない最重要カンパニーの1つということなんですね」

「そして今日、さきほど、Armの売却を中止するということでNVIDIAと合意に至りました」

「NVIDIA側からしても、合併は今でもしたいという気持ちはたいへん強く、最後までその気持ちは大変強いという状況でしたが、これほど各国政府が合併を阻止する強い動きに出ましたので、これ以上は承認を得る努力をしても認められないだろうということで、合併を諦めるということで、NVIDIAと我々が合意にいたったわけでございます」

2022年度内に再上場めざす

「まあ我々としては、(Armの再上場は)プランBということになりますが、もともと我々がArmを買収したのが2018年で、そして5年後くらいの2023年ぐらいに再上場するということを、買収当時から実はコメントしておりました」

「我々はArmを買収して一旦非上場会社にしたわけですが、そこからもう一度新しいArmの製品群に先行投資をし、(新しい製品群の)準備が整ったところでもう一度再上場する、その期限はだいたい2023年くらいだと買収した当日から言っておったわけですが、ちょうどその時期に達したと。2022年度という2023年3月末までですから、ちょうど2023年になります」

「当初から思っていた期限で、再上場させるということで、もともとのプランに戻ろうということであります。NVIDIAとの合併という意味ではプランBになりますが、もともとオリジナルの案なのですから、むしろこちらがプランAなのかもしれない」

Armの黄金期がやってくる

孫社長はその後、2021年度にAWSがArmアーキテクチャを採用するなど、スマートフォンだけでなくクラウドにもArmの採用が進んだことを強調。

ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す
そして今後はEV、メタバースで爆発的にArmの需要が増えるとしたうえで「第2のソフトバンクの成長の鍵になるのがArmだ。Armが戻ってきた。これから黄金期を迎える」とし「NVIDIAとのディールも成功した欲しかったが、むしろこっちも悪くない。振り返ってみたらこっちのほうが良かったと思うようになるんじゃないか」「Armは半導体市場最大のIPOになる」とコメントしました。ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指すソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す

──なぜArmの急成長を見込んでいるのに再上場させるのか

孫社長:Arm株の25%はビジョンファンド1が持っています。ここには外部の投資家がいます。彼らのためにも上場株としての価値を作るのは我々の使命の1つ。2つ目の理由は、社員に十分なインセンティブを与えるため。エンジニア中心の会社ですから、彼らの労に報いるために、上場株のさまざまなストックオプションを提供していきたい。また、これから社会のインフラを担うようになるために、できるだけ透明性のある経営とするためにも上場するのが適切だろうと考えた。

──Armはどこで再上場させる?

孫社長:米国のNASDAQを目指している。

──Armはもともと英国の会社だが、なぜロンドンではなく米国での再上場を考えているのか

孫社長:Armの利用者は大半がシリコンバレー。また投資家もArmについて非常に高い関心を持っていると聞いている。そういう意味では、ハイテクの中心である米国のNASDAQが一番適しているのではないか。おそらくハイテクの中心のNASDAQに再上場すると思っているが決定ではない。

Engadget日本版より転載)

VRイベント「バーチャルマーケット」のHIKKYがシリーズA調達を70億円で完了、メディアドゥと提携し「メタバースと読書」追求

VRイベント「バーチャルマーケット」のHIKKYがシリーズA調達を70億円で完了、メディアドゥと提携し「メタバースでの読書」追求

「バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数」としてギネス世界記録に認定された

世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」をはじめVRサービスの開発ソリューションを提供するHIKKYは2月8日、シリーズAラウンドのセカンドクローズとして、第三者割当増資による5億円を調達したと発表した。引受先はメディアドゥ。シリーズAラウンドにおける調達総額は、2021年10月のNTTドコモを引受先としたファーストクローズの65億円を含め、70億円で完了したことになる。

またHIKKYとメディアドゥは、2022年1月18日に資本・業務提携を締結した。

メディアドゥは、2200社以上の出版社・150店以上の電子書店と取引があり、電子書籍流通において国内トップシェアという。「本との出会い方」や「読書の仕方」について、両社はメタバース空間を通し新たな幅広い体験に昇華させるとしている。同メタバース空間では、ユーザー同士やクリエイターとファンなどのコミュニティを創出し、ファンアートなどを介した交流やIPコラボの可能性を拡大予定。また、メディアドゥグループが取り組む世界最大級のアニメ・マンガコミュニティ&データベース「MyAnimeList」(マイアニメリスト)を通じたシナジーも追求する。

調達した資金についてHIKKYは、スマートフォン・PCブラウザー上で動くVRコンテンツ自社開発エンジン「Vket Cloud」(ブイケットクラウド)を中心としたVR関連サービスの開発体制の強化、同エンジンを用いたオープンメタバースの開発・運営、バーチャルマーケットやVket Cloudを含むVRサービス事業の国内外への拡大、新規事業であるVRコンサルティング業務、組織基盤強化などにあてる方針。

資金調達の目的と今後の展開

  • オープンメタバースの開発、およびサービスの提供
  • Vket Cloudエンジンの開発体制の強化
  • バーチャルマーケット事業の開発体制の強化
  • 海外展開を含めた事業拡大
  • 新規事業であるVRコンサルティング業務
  • 人材採用強化

HIKKYが掲げるオープンメタバースとは、「プラットフォームの壁を超えて人々が行き交う環境」「オープンワールドにおける大人数での体験やコミュニケーション」などを実現するサービスという。

HIKKYが掲げるオープンメタバース

  • プラットフォームの壁を超えて人々が行き交う環境
  • オープンワールドにおける大人数での体験やコミュニケーション
  • 独自ドメインでのオリジナルのコンテンツ展開
  • デバイスフリー&アプリレスでの簡単なアクセス
  • リアルとバーチャルを融合した体験の提供

今後HIKKYは、バーチャルマーケット事業によってつながった数多くのクリエイター、パートナー企業の力を借りながら、Vket Cloudを用いたオープンメタバースの開発・サービス展開を行う。また、オープンなメタバースにおいて、これまでの社会では評価されることのなかったあらゆる人の創造性やコミュニケーションが新しい価値として認められ、新たなイノベーションを生み出すべく様々なサービスを提供するとしている。

リモートでカットの指示が出せる撮影プラットフォームのSoona、シリーズBで約40.1億円調達

eコマースの劇的な成長と並んで、一部ではパンデミックが追い風となり、販売業者がオンラインビジネスに参入することを容易にするサービスの需要も増加した。Soona(スーナ)というスタートアップは、シリーズBで追加調達した3500万ドル(約40億1000万円)の資金をバックに、このマーケットに参入している。Soonaのプラットフォームでは、写真や動画の「仮想」撮影によって、ブランドのeコマース用ウェブサイトやマーケティングのコンテンツを作成できる。つまり、Soonaのテクノロジーを使えば、販売業者は別の場所で写真撮影を行うためにアイテムを送付してその結果を待つ代わりに、リモートかつリアルタイムでブランドの写真撮影プロセスに参加することができるのだ。

「私たちはブラウザで写真撮影に招待します。Zoom(ズーム)の会議に参加するのとそれほど変わりません」と、Soonaの共同創業者兼CEOであるLiz Giorgi(リズ・ジオルジ)氏は説明する。「カレンダーの招待をクリックすると、写真撮影の様子がブラウザに表示され、リアルタイムでキャプチャされる写真やビデオクリップをすべて確認できます。それらのアセットは操作できるので、お客様やチームはアセットのフィードバックをカメラマンに提供することができます」。

画像クレジット:Soona

Soonaの顧客は、構図の変更や、シーンの小道具の追加・削除、写真撮影のその他調整など、要望に応じてカメラマンとやり取りができる。その上、販売業者にとってサービスの前払いをしなくていいのはありがたい。写真1枚につき39ドル(約4470円)、ビデオクリップ1つにつき93ドル(約1万700円)を支払って、実際に必要なアセットだけ購入すればいいのだ。選び終えると、写真や動画は24時間以内に納品され、ウェブサイトやマーケティングチャネルにアップロードする準備ができる。また、いつでも過去の撮影記録にアクセスして追加のオーダーをすることもできる。

ビジネスの成功によって今回新たな資金の調達にこぎつけたSoonaは米国時間1月24日、Bain Capital Ventures(ベインキャピタルベンチャーズ)の取りまとめによって3500万ドル(約40億1000万円)の資金を新たに調達したとアナウンスしている。前の投資者であるUnion Square Ventures(ユニオンスクウェアベンチャーズ)、Matchstick Ventures(マチスティックベンチャーズ)、Starting Line Ventures(スターティングラインベンチャーズ)、2048 Ventures(2048ベンチャーズ)、Range Ventures(レンジベンチャーズ)もラウンドに参加し、Soonaの合計調達額はこれまでに5100万ドル(約58億5000万円)に達した。

ジオルジ氏のバックグラウンドは専門的なメディア制作だ。Soonaを始める前は、インターネットビデオ制作のMighteor(マイテアー)という自分の会社を経営し、その前はメディアおよびテレビの制作会社で働いていた。そうした経験を通して、コンテンツの作り方、特に美しいコンテンツの作り方を見定める目が養われた、と氏は述べている。一方、氏の共同創業者、Hayley Anderson(ヘイリー・アンダーソン)氏のバックグラウンドはアニメーションにあり、マイテアーのクリエイティブディレクターだった。マイテアーは後に、クリエイターネットワークのStandard(スタンダード)に買収された

ヘイリー・アンダーソン氏とリズ・ジョルジ氏(画像クレジット:Soona)

2人は2019年にSoonaを設立し、その年に最初の商品を発売した。最初の頃、Soonaの業務では、顧客に写真や動画の撮影のために実際のスタジオに来てもらい、ソフトウェアを使用して映像をすぐにアップロードして、顧客がすぐに購入できるようにしていた。しかしパンデミックのために、Soonaは再調整して仮想モデルに切り替えることを余儀なくされた。結果的には、このモデルを採用したことがビジネスの成長に役立った。パンデミックの最中に直接接触をともなう活動ができなかったときだけでなく、リモートワークが普通のビジネス環境になってからもそうだ。Soonaの収益は、2020年から2021年にかけて400%増加し、2021年から2022年にかけてさらに300%増加した。Soonaは年間収益の数字を公開しないが、ビジネス上の評価基準は非公開ながらも競争上の優位性に言及している。(参考までに)。

Soonaは現在、約1万の販売業者にサービスを提供しており、Wild Earth(ワイルドアース)、Lola Tampons(ロラタンポン)、The Sill(ザシル)、SNOW(スノー)、Birchbox(バーチボックス)などの顧客がいるが、サブスクリプションモデルではなく、取引ベースのビジネスをしている。ジオルジ氏は、これが商品市場に適していることが明らかになったと考えている。2021年は月ベースで、収益の63%はリピート客から得た。顧客の約60%は100万ドル(約1億1500万円)から500万ドル(約5億7300万円)のeコマースストアであり、その多くはShopify(ショッピファイ)を利用している。ショッピファイは化粧品、美容、健康、ファッション、履き物に強く、現在は消費者向けパッケージ商品や栄養商品の分野の成長が大きい。

「私たちのビジネスモデルは繰り返し型ではないかもしれませんが、ブランドでこうしたアセットが必要とされる頻度は高いレベルにあります。それで、こうした視覚的なアセットにいつどのようにお金を使い、投資するか、選択できるようにすることで、本当に簡単にSoonaを使い続けることができるようにしました」と、ジオルジ氏は述べている。「しかし、サブスクリプションを検討の対象から外しているわけではありません」。

現在、リモートでの写真撮影のために販売業者が商品を送付できるようにしている企業は、Pow Photography(パウフォトグラフィ)など他にもあるが、Soonaのようにリアルタイムではない。従来のeコマースサイト向けに「白地に商品」の写真、つまり白い背景の商品画像に主に重点を置いているライバルもいる。これは、たとえばリビングルームやキッチンセットの写真ショットで商品とモデルを組み合わせて作るリッチコンテンツなどとは逆である。一方、どちらかといえば市場方式で業者とカメラマンを直接結びつけようとする競合他社もある。

画像クレジット:Soona

しかし、Soonaの独自テクノロジーでは、オンラインでの写真撮影を計画するために必要なものをすべて顧客に提供する。人とペット両方のモデルやスタイリストを使用することもできる。モデルは、他のギグエコノミーの仕事と同様、契約ベースで働く。しかし、Soonaのカメラマンは、ギグワークとして仕事を請け負うか、フルタイムの従業員に移行することができる。現在、カメラマンは、フルタイムのスタッフとして約35人、請け負いで100人ほどいる。

Soonaは追加の資金を得て、モデルのサービスの市場を拡大することを目指している。この市場は現在、Soonaのビジネスで最も成長の速いセグメントの1つであり、実際、2021年のビジネス全体の20%を占めた。Soonaは、2022年にこのプラットフォームの規模を3倍にして、さまざまな人材のタイプを増やし、販売業者の顧客のために商品の見栄えをよくする新しい方法を取り入れることを計画している。また、精選したビジネスデータと販売業者の目標について尋ねることで、ブランドのためにどんなタイプの写真撮影をすればよいかに関する提案を増やすのに役立つテクノロジーにも投資する。Soonaはすでに、Amazon(アマゾン)およびInstagram(インスタグラム)推奨の撮影を始めており、類似のことをTikTok(ティックトック)で始める計画を立てている。

また、この会社は、APIプラットフォームを拡張して、ショッピファイ以外にも統合を拡大することも計画している。ショッピファイは現在、顧客ベースで55%を占めている。計画を進めるにあたり、Soonaは、たとえばKlayvio(クラビヨ)やBigCommerce(ビッグコマース)など、他のeコマーステクノロジー企業との統合に狙いを定めている。

この会社は、デンバー、オースティン、ツインシティーズに拠点を持っており、ミネアポリスの現在のチーム以外のエンジニアを増やすことで、エンジニアリングチームも3倍にする。商品チームも拡大する。

ジオルジ氏はSoonaの現在の評価額について話すことを避けたが、Soonaは女性が創業した次のユニコーンになる「道を歩んでいる」と考えている。「私たちは間もなくそこに到達します」と氏は断言した。

画像クレジット:Soona

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

理研ら国際共同研究チーム、医療ビッグデータとコンピューター科学を活用し卵巣がんの新しい治療標的を特定

理研ら国際共同研究チーム、医療ビッグデータとコンピューター科学を活用し卵巣がんの新しい治療標的を特定

高異型度漿液性卵巣がんにおけるLKB1-MARK3経路の機能異常

理化学研究所(理研)は2月7日、医療ビッグデータとコンピューター科学の活用により、卵巣がんの新しい治療標的「LKB1-MARK3経路」を特定したと発表した。卵巣がんの中でもっとも死亡者数の70から80%を占める「高異型度漿液性卵巣がん」の新しい治療法の開発につながると期待されている。

これは、理研、国立がん研究センター研究所国立がん研究センター中央病院東京大学米メモリアルスローンケタリングがんセンター米国立がん研究所の国際共同研究によるもの。

高異型度漿液性卵巣がんの研究では、ゲノム解析の結果、ほぼ全例にがん抑制遺伝子TP53の不活性化型変異が認められている。その症例の半数にはPARP阻害剤が有効な治療法とされるが、残りの半数の症例への治療標的が十分には確立されていなかった。しかし、個別の遺伝子変異に注目した従来型の研究手法では、これ以上新しい治療標的を発見できない可能性がある。そう感じた研究グループは、様々なアルゴリズムを用いてコンピューター解析を行う「ビッグデータ解析」による、遺伝子発現量の変化を定量的に評価する必要があると考えた。

研究グループは、高異型度漿液性卵巣がんのがん組織と正常卵巣組織の遺伝子発現量を比較解析するために、大規模なマイクロアレイデータ、RNA-seqデータ、臨床情報などが含まれる複数データベースの統合解析を行い、遺伝子発現変化が臨床予後に影響する遺伝子を抽出するために、新しい解析プラットフォームを構築。これにより、「LKB1-MARK3経路」のMARK3遺伝子が高異型度漿液性卵巣がんで発現抑制されており、その遺伝子発現量の低下が臨床予後の悪化に関わることがわかったという。

医療ビックデータ解析による新規治療標的の探索パイプラインと解析結果

医療ビックデータ解析による新規治療標的の探索パイプラインと解析結果

次に、ビックデータ解析の結果を臨床医学的に検証するために、高異型度漿液性卵巣がんの正常組織(卵管上皮細胞)と前がん病変(上皮内がん)、浸潤がんの患者由来検体を用いて、「セリンスレオニンキナーゼ(serine-threonine kinase)をコードするがん抑制遺伝子」であるLKB1と、「LKB1によって直接的にリン酸化修飾を受けるセリンスレオニンキナーゼ」であるMARK3のタンパク質発現量を評価した。

その結果、LKB1とMARK3からなる「LKB1-MARK3経路」のMARK3遺伝子が高異型度漿液性卵巣がんで発現抑制されており、その遺伝子発現量の低下が病状の悪化に関わっていることがわかった。さらにその後の解析により、MARK3は卵巣がん細胞株において抗腫瘍効果を発揮することもわかった。これは、マウスの皮下組織にMARK3を強制発現させた卵巣がん細胞株を移植する実験でも、明らかとなった。

卵巣がん組織におけるLKB1とMARK3のタンパク質発現プロファイル

卵巣がん組織におけるLKB1とMARK3のタンパク質発現プロファイル

今回の研究は、理化学研究所革新知能統合研究センターの情報科学技術を用いて、「医療ビッグデータを解析し、従来の医学研究手法でその結果を検証した」ものであり、その成果は「がん研究においても情報科学と医学が融合した学際的な研究手法が重要であることを示しています」と研究グループは話している。このビッグデータ解析手法は、異なるがん種や疾患の原因探索にも応用できる可能性があるとのことだ。

シンガポールのXR企業Refractが約6.8億円調達、ゲーム指向の全身モーションキャプチャソリューション「AXIS」開発を強化

シンガポールを拠点とするXR(エクステンデッドリアリティ / クロスリアリティ)スタートアップのRefract(リフラクト)は米国時間1月25日、Sea Limited(シー・リミテッド)がリードするシリーズAラウンドで約850万シンガポールドル(約6億8300万円)の資金を調達したことを発表した。他にも海外のファミリーオフィスや個人投資家が参加している。

今回の資金は、ウェアラブルで、ゲーム指向の全身モーションキャプチャソリューションである「AXIS(アクシス)」の研究開発の強化に充てられる。同社はまた、2022年後半のAXISの商用化に向けてチームを拡大し、急速に成長するゲーマー、テクノロジーアダプター、コンテンツクリエイター、フィットネス愛好家の市場の要求に対応していく計画である。このシリーズAラウンドで、Refractの調達総額は900万ドル(約10億2500万円)となった。

2018年、Refractの共同創業者であるChong Geng Ng(チョン・ゲング・ウン)氏、Michael Chng(マイケル・チャン)氏、Eugene Koh(ユージーン・コー)氏の3氏は、ゲーミング関連のプロジェクトに取り組む中で、次の課題に直面した。ゲーミングと身体活動のギャップをいかに埋めるか?RefractのCEOであるチャン氏がTechCrunchに語ったところによると、同氏らはそのソリューションを、プレイヤーが自分の体をゲームのコントローラーとして使うということに見出した。3人の共同創業者は、ゲーミングや他の業界のアプリケーションにおける最先端の技術イノベーションについて関連する文書や記事を精査した後、その市場にギャップがあることを認識し、Refractを設立した。

「Refractの目標は、ARおよびXRゲームのキープレイヤーになることです。今回の資金調達により、このプロセスを加速することができます」とチャン氏は語っている。

画像クレジット:AXIS

この資金調達は、Kickstarter(キックスターター)でAXISのクラウドファンディングキャンペーンを成功させ、Deep Dive Studios(ディープ・ダイブ・スタジオ)の買収によってXRゲームパブリッシング部門を立ち上げた直後に発表された。

AXISは、Perception Neuron(パーセプション・ニューロン)やRokoko(ロココ)、Xsens(エックスセンス)のような全身モーショントラッキングシステムとは異なり、リアルタイムのゲーミングやエンターテインメント用途に適している。またAXISでは、ユーザーはゲーミング用に7から10ノードまで、またはより高精度なモーショントラッキング用に業界標準の17ノードまでを柔軟に使用できる。AXISにはベースステーションは必要ないが、ユーザーのコンピューター接続にWi-Fiが必要となる。

「AXISは完全に無接続かつワイヤレスで、外部のベースステーションやセットアップを必要としません。すべてがボディ上にあり、独自のインサイドアウトトラッキング機能を備えています。これはHTC Vive(エイチティーシー・バイブ)の類に見られる、システムのオクルージョンやスペース要件といった一般的な問題に対処するものです」とチャン氏はTechCrunchに語った。

Refractは、ウェアラブルのAXISに代表される同社のテクノロジーとゲームを通じて、没入型でエンゲージメントの高いXRやVRの体験を、成長を続ける29億人のゲーマーに継続的に提供していくことを見据えている。

Deep Dive Studiosによって、Refractはさらに没入的なタイトルを制作できるようになる。現在開発中の格闘ゲーム「FreeStriker(フリーストライカー)」のような、AXISのすべての顧客に無料で提供されるオファリングのリストを補完していく。

Refractのソフトウェアスイートは、OpenVR(オープンブイアール)、OpenXR(オープンエックスアール)、Unity(ユニティ)、Unreal Engine(アンリアル・エンジン)などのプラットフォーム、既存のVRシステムやアプリケーションと互換性があり、ゲーム開発者やコンテンツクリエイターのアクセシビリティを高めている。チャン氏によると、AXISはOculus Quest 2(オキュラスクエスト2)などの人気VRヘッドセットとも連携できるという。

Refractは、このセクターにおけるさらなる垂直統合と水平統合を進めている。

Refractはすでに、バーチャルスポーツプログラムの一環として、World Tekwondo(ワールドテコンドー)のような組織との戦略的関係を確保している。同連盟と協働し、近い将来、バーチャルテコンドーをメダル競技にすることを目指していく。World Tekwondoは、このスポーツをゲーム化し、新しい領域を創出することで、より幅広い、技術に精通したオーディエンスにリーチするというオポチュニティを見出した。そしてこのパートナーシップが生まれた、とチャン氏はTechCrunchに語っている。またRefractは、トルコのイスタンブールで開催予定の2022年Global Esports Games(グローバル・eスポーツ・ゲームズ)でAXISをフィーチャーすることも計画している。

画像クレジット:Refract

「AXISは、高忠実度モーショントラッキングテクノロジーとキャプチャテクノロジーをより幅広いオーディエンスに提供する上で、大きな前進を果たします。この分野でイノベーションを起こし、より没入感のあるゲーミング体験を提供します」とRefractのエグゼクティブディレクターであるチョン・ゲング・ウン氏は語っている。「私たちの投資は、Seaや他の投資家たちが私たちのビジョンと創造性を強く信じていること、そしてXRゲーミング市場の未開拓である大きなポテンシャルを反映するものです」。

「Refractのようなシンガポールの会社が、XRやVRの革新的なテクノロジーの開発を推進しているのを見るのは、とてもエキサイティングなことです」と、Seaのデジタルエンターテインメント部門であるGarena(ガレナ)で戦略的パートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるJason Ng(ジェイソン・ウン)氏は述べている。「彼らの成長とシンガポールにおけるイノベーションエコシステム全体の発展をサポートできることを、私たちは大変うれしく思っています」。

「Seaや他の投資家たちは、Refractの才能と、AXISの持つ巨大なポテンシャルを認識してくれました。AXISのKickstarterキャンペーンにおける成功は、このビジョンを共有するゲーマーたちの献身的なコミュニティの存在を証明しています。2022年にAXISとFreeStrikerを彼らに提供できることを心待ちにしています」とチャン氏は語った。

画像クレジット:Refract

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(文:Kate Park、翻訳:Dragonfly)

【コラム】DAOに未来を任せられるか?今のところは無理だ

Coinbaseといった暗号資産取引所が、伝統的経済体制の支持者の目を暗号資産が提供する利益に目を向けさせるようになったのは、つい昨日のことのようである。

暗号資産などの分散型テクノロジーは、信頼を確立するための自動化された方法を提供することにより本当の社会的価値を生み出すことを約束するアプリケーションを生み出してきた。しかも、このアプリケーションは信頼を独占してきた従来の介在者(銀行や政府)によるサービスよりずっとコストがかからない。

前向きな思考の持ち主たちは、分散型テクノロジー革命に基づき、次なる大きなブレイクスルー、自律分散型組織について議論している。これは組織レベルでの信頼を保証できる可能性のあるテクノロジーである。しかし、DAOによる問題解決が現実的なものである一方、DAOの支持者はこれらの問題の性質を誤解し、利益よりも害をもたらすツールを提供しているのではないか。

分散型アプリケーションは、スマートコントラクトと呼ばれる、あらかじめ定められた条件が満たされた時に実行されるアルゴリズムで成り立っており、そのようにすることで一般的な意思決定を自動化する。スマートコントラクトは予測性を保証することで信頼を確立しており、あらかじめ定められた一連の動きが発生すると、トークンで支払いが行われる。

こうしたやり方を熱心に支持する人々は、DAOを信頼構築プロセスの次なるステップとみなしている。彼らは、一連のスマートコントラクトを統合して、彼らがスマートな「組織」と呼ぶものを作り出そうとしている。そこでは在庫管理、現金管理、価格設定といった事業上の決定や雇用さえも、あらかじめ定められたインプットを元に行われる。

極端な例として、Amazonのサードパーティセラーについて考えてみよう。このセラーは、さまざまな商品に対する関心のレベル、さまざまな施設での原料や生産コスト、配送コストといった一連のシンプルなインプットに基づいて事業を運営している。これらのあらかじめ定められたインプットをベースにすると、投資家にとって価値は、非常にシンプルに判断できるものであり、DAOはマネージャーが間違った、または自分の利益に基づく判断をする可能性を排除する。

事業者は、投資家の視点から見ると最適ではない意思決定をさまざまな理由(これはよくいっても不透明なもので、自己利益のためであることが非常に多い)でするものだ。例えば、よりコストの高いメーカーに切り替えるといった決定は、品質が低いことで製品が返品されることへの対策であるかもしれないし、あるいは、その新しいメーカーの経営者が自分のいとこだから、という理由によるかもしれない。

DAOを用いると、事業は一切人間の手を経ず運営され、すべての判断はスマートコントラクトによって行われる可能性がある。ある製品シリーズが売れなければ、生産量は自動的に削減され、価格も在庫が減るまで引き下げられるだろう。販売量が増えれば、生産量も増加する。生産コストが上がれば、それにあわせて価格も引き上げられる、といった具合である。そして、事前に定められた(そして事前に承認された)スマートコントラクトに基づき投資を決定したDAO投資家が利益を受け取ることになる。

しかし、小さな問題を解決するためにスマートコントラクトへ大きく依存すると、エッジケースと呼ばれるものの影響を受けることになる。仮に、メーカーでストライキや火災が発生したらどうなるだろう?注文を再開しても安全かどうかマネージャーが判断するよりも優れた判断をスマートコントラクトができるとは想像し難い。

これこそが、事業者がスマートコントラクトに加え従来のコントラクトを用いる理由である。現実には、ビジネスにおける関係性とういうのは、一連のスマートコントラクトで予測可能な範囲をはるかに超えて混沌として複雑な要素で成り立っている。もちろん、DAOはこうしたエッジケースの解決に社員やコンサルタントの形で人の手をかりることができるが、私が疑問に思うのは、人がスマートコントラクトが引き起こした問題を解決するのに招集されるのを快く受け入れるかどうか、ということである。

分散型ファイナンスは、定量化可能な経済的決定をより効果的に検証することで価値を生み出している。これが成功を収めてきたのは、単純な(または複雑なものでも)取り引きのための自動化信用メカニズムには、決定の利益を測定する単純な指標(経済的価値)しかいらないためである。

しかし、組織やコミュニティではいうまでもないが、取り引きにおける信用を解決するのと、関係性の中に信頼を確立するのとでは、大きな違いがある。人は取り引きから経済的価値を得るが、関係性や組織の一部であることから、また別の価値を得ている。私たちは、組織の一部であることからここが居場所であるという感覚を得、この場所の感覚から、最終的には自己感覚を得るのである。

この場所の感覚は、お互いにそしてグループ内で常に再交渉が行われている、相互関係の網から得られるものだ。そして組織的な関係においては、私たちは常に意思決定において競合する価値を常に比較検討する必要がある。「経済的な意味はないが、将来だれかが私を助けてくれることが期待できるような意思決定をすべきだろうか?」といった具合に。

Pierre Bourdieu(ピエール・ブルデュー)氏は、こうした価値の総体をフィールドと説明し、各人のフィールドはそれぞれが積み上げてきた歴史的環境や文化的環境に基づき異なるものからでき上がっていることを強調している。ブルデュー氏によると、これらの関係性をマスターするには、人はすべてに適用できるアルゴリズムではなく、彼が「ゲーム感覚」と呼ぶ直感が必要である。

このゲーム感覚は、夢想家と優れたビジネスマンを区別するものである。そして、もっと重要なことは、それが単なる良い人間と優れたマネージャーを分けるものであることだ。私にとって、DAOが欠陥のある既存のビジネス組織に取って代わることができるかを最終的に証明するには、スマートコントラクトがいつ従業員に休日を与えるのが最適がを判断できるようになることが必要だ。あなたがDeFi支持者なら、それを実現できるか努力してみて欲しい。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Bob Greenlee、翻訳:Dragonfly)

自動車用シミュレーションプラットフォームのMoraiがグローバル展開のために24億円のシリーズBをクローズ

自動運転システムの安全性と信頼性を検証するための自動車用シミュレーションツールを自動運転車の開発者に提供するMorai(モライ)が、米国、ドイツ、日本、シンガポールを中心としたグローバルな展開を強化するために、シリーズB資金調達ラウンドで250億ウォン(約24億円)を調達したことを発表した。

この新たな調達は、Korea Investment Partnersが主導し、KB InvestmentとKorea Development Bankも加わっている。このラウンドには、既存の投資家であるNaver D2 Startup Factory、Hyundai Motor Group、Kakao Ventures、Atinum Investmentも参加した。これによりこれまでの資金調達額は300億ウォン(約28億9000万円)となった。

MoraiのCEOであるJiwon Jung(ジワン・ジョン)氏はTechCrunchに対して、韓国に本社を置き84名の従業員を抱える彼のスタートアップが、2022年末までに世界中の人員を倍増させるためにこの資金を使用すると語った。

共同創業者のジョン氏、Jun Hong(ジュン・ホン)氏、Sugwan Lee(スガン・イー)氏の3人は、2018年に同社を設立し、自動運転車メーカーが実際のテスト走行をシミュレートできる自動運転シミュレーションプラットフォームを構築した。

多くの自動運転車メーカーが、自身の自動運転車の検証のために、安全性と信頼性を証明するためのシミュレーションテストを繰り返し行っている。

Morai SIM(モライSIM)と呼ばれるMoraiのシミュレーターソリューションは、高精細(HD)マップベースの3Dシミュレーション環境により、ユーザーにさまざまな仮想テストシナリオを提供する。Moraiの共同創業者であるホン氏はTechCrunchに対して、Moraiの最もユニークな特徴の1つは、現実世界の物体のデジタルレプリカであるデジタルツイン技術によって実現された、大規模なシミュレーションプラットフォームだと語った。Morai SIMは、すでに世界の20都市以上で展開されている。

1月に開催されたCES 2022では「Morai SIM」のSaaSモデル、通称「Morai SIM Cloud」が発表された。このサービスを使えば、ユーザーがローカルコンピュータにソフトウェアをインストールすることなく、クラウド上でシミュレーションテストを行うことが可能になる。その結果、ユーザーは運用するハードウェアに関係なく、無数のシミュレーション環境で自動運転(AV)ドライバーをテストすることができる。

Morai SIMが開発したデジタルツイン環境、ラスベガス(画像クレジット:Morai)

Moraiは、Hyundai Mobis(現代モービス)、Hyundai AutoEver(現代オートエバー)、Naver Labs(ネイバーラボ)、42dot(42ドッツ)などの100社以上の企業顧客や、韓国科学技術院(KAIST)、韓国自動車技術研究所(KATECH)、韓国交通安全公団(KTSA)などの研究機関を顧客としている。またNVIDIA(エヌビディア)、Ansys(アンシス)、dSPACE(ディースペース)などのグローバル企業ともパートナーシップを結んでいる。

ジョン氏は、同社のシミュレーション・プラットフォームは、自動運転をはじめ、UAM(アーバン・エア・モビリティ)、物流、スマートシティなどの分野に応用できるため、大きな成長が期待できると述べている。

同スタートアップは、2021年に170万ドル(約2億円)の収益を計上し、2018年から2021年にかけては226%の年平均成長率(CAGR)を達成した。2021年には、Moraiはサンフランシスコに米国オフィスを開設している。

ジョン氏は「自動運転シミュレーションプラットフォームにおけるグローバルな競争力をさらに高めるために、技術的な優位性を高めることに全力を注ぎます」と述べていいる。

Korea Investment PartnersのエグゼクティブディレクターであるKunHo Kim(クンホ・キム)氏は「Moraiのシミュレーター技術は、自動運転車の安全性と機能性の向上に重要な役割を果たすことが期待されています」と述べている。続けて「韓国だけでなく、世界の自動運転市場をリードする可能性を秘めているので、今後も成長を期待しています」としている。

画像クレジット:Morai

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

プレシジョン、東京都の新型コロナ患者向け宿泊療養施設にAI問診票「今日の問診票 コロナ宿泊療養者版」を提供開始

プレシジョン、東京都の新型コロナ患者向け宿泊療養施設にAI問診票「今日の問診票 コロナ宿泊療養者版」を提供開始

AIを用いた医療支援システムを開発提供するプレシジョンは2月7日、東京都の新型コロナウイルス患者向け宿泊療養施設に向けて、AI問診票『「今日の問診票」コロナ宿泊療養者版』の提供を開始した。宿泊療養施設の電子問診票の導入は、日本初となる。デモ問診のURLはhttps://u5000672.cl1.cds.ai/preMonshin/#/

これは、プレシジョンが展開しているAI問診票「今日の問診票」を、ホテルなどで宿泊療養する新型コロナウイルス感染者向けに特化させたもの。「今日の問診票」は、AIにより、聞き取った症状などに応じて質問内容が動的に変化する電子問診票。これに、同じくプレシジョンが展開している医療機関向けの医学情報データベース「Current Decision Support」(CDS)が組み合わされている。CDSは、日本の2000名の医師の協力で作られるデータベースで、現在3000疾患、700病状の所見、全処方薬の情報が掲載され、大学病院の8割、全国300以上の医療機関で使われているというものだ。

宿泊療養者の健康観察と説明は、現在は看護師が電話で行っているため、20分から40分という時間がかかり、看護師不足が深刻化する現場の負担は大きい。しかしこのAI問診票を使えば、健康状態の聞き取りや、その後の登録作業にかかる時間を半分以下に短縮できる。重症化のリスクもAIが判断してくれるなど医療機関の負担軽減となり、患者にとっても電話応答に比べ短時間で済み、自分のペースで回答できるため負担が減る。

プレシジョンでは、第6波の到来に備えて2021年10月から「『今日の問診票』コロナ宿泊療養者版」の準備を行ってきた。設計にあたっては、プレシジョン所属の医師や看護師が医療現場での業務フローの聞き取りを行ったり、実際に宿泊施設で働いたりなどして、「現場に即した運用フロー」が作り上げられている。2022年1月27日からテスト運用を行ったところ現場での評価は高く、2月7日から2つの宿泊療養施設で本格運用されることに決まった。

質問が終わると、患者の疑問に答える動画が閲覧できる。プレシジョンの社長であり医師でもある佐藤寿彦氏の監修による、よくある質問に答えたものだ。佐藤氏は、在宅療養をしている人にも役に立つと考え、酸素飽和度の測り方退所の時期に関する動画をYouTubeでも公開した。「今後も日々変わる状況に応じて更新をする」と佐藤氏は話している。