決算ラッシュの週のキーワードは「成長性」―Apple、Alphabet、Twitter、軒並み株価ダウン

2016-04-30-timcook-down

今週は決算発表のラッシュだった。IT業界のメジャープレイヤーのほとんどが決算を発表し、その数字が株価を揺り動かした。まったくクレージーな週だった。

ここで判明したのは市場は変わらぬ主題として「成長性」を非常に重視するという点だ。成長性に陰りが見えると市場はネガティブに反応する。これはウォールストリートの投資家の場合特に顕著だ。会社が成熟に近づいているほど反応は激しくなる。Facebookはアナリストの予測を売上でも利益でも軽く上回り、さらに依然として財務でもユーザー数でも十分に成長余力があるることを示した。これと逆に、Appleの場合は成長していないことが明白になった。成長していないというより、正確にいえば縮小している.のだ。

そういう次第で、株価のアップダウンの激しい週だった。MicrosoftとAlphabetの決算も含めて結果を簡単にまとめておこう。

そして大物だ。

Apple:11%のダウン。決算は完全な期待はずれ、13年ぶりの売上減少最大の「もの言う株主」、アイカーンが株を手放したと発言

この波乱の週のキーポイントを見ていく。

まずTwitterのマイナスはほぼそのままFacebookのプラスになっている。Twitterの決算で投資家に「SNSの広告収入は期待したほど急速に伸びてていないのではないか」という懸念が生じたとしてもFacebookのブロックバスター的決算でそうした不安は吹き飛ばされた感がある。Twitterは数百万の新しいユーザーを追加してユーザーベース数の減少という不安に応えたが、肝心の売上の伸びが予測を下回り、市場は鉄槌を下したFacebookの場合はその逆だ。

次に、さらに重要な点だが、Appleの成長エンジンはついにスローダウンし始めた。Appleはこの四半期のiPhonesを販売台数を5120万台と発表したが、その前の四半期には6120万台が売れていた。長年Appleはテクノロジー業界の風見鶏だった。Appleが成長しているなら業界も成長していると考えられていた。成長していないのなら業界を取り巻く環境に何か問題がある。しかし今回何十億ドルという価値が時価総額から削られたのはApple自身の問題だった。

そしてAmazonはついにウォールストリートが期待していたとおりのモンスターになりつつある。Amazonのクラウドビジネス、AWSは25億7000万ドルを売上げ、ジェフ・ベゾスの「AWSは通年で100億ドルを売り上げる」という目標を達成しそうだ。さらに重要なのはAmazonが4期連続で黒字を計上した点だ。これまでAmazonは利益という点では投資家を無視していると考えられてきた。それが着実に利益を出すようになったことは、Amazonの今後の新事業参入や国際展開に好影響を与えるだろう。

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【略】

もちろん株価がダウンした企業も依然として巨額の売上を上げ続けている。AppleとGoogleは10億ドル単位で利益を出しているし、Twitterの売上も億ドルの単位だ。しかし株価は成長性に連動している。成長中であり、成長が維持できることを示した企業の株価はアップする。投資家がそうした会社の株を所有することにメリットを見出すからだ。それがさらに株価を押し上げるという循環が生まれる。こうした企業の場合、ウォールストリートの投資家からの圧力を気にせず、自由に戦略を決められる。また人材獲得の面で問題に直面することもない。

決算発表はこの後も続くが、以上に見てきた企業に比べれば小規模な会社となる。だか原則は変わらないだろう。ウォールストリートは成長性を認めた会社の株価はアップさせ、成長性を欠くと認めればダウンさせるに違いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Red Hatが新しいOpenStack製品とクラウドツールセットでクラウド企業への変身を継続

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数年前にRed Hatは、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の成功に永遠に依存することはできない、と明言した。そして同社は、求めていた変化への道を、OpenStackとハイブリッドクラウドに見出した。

今日(米国時間4/20)同社は、そのクラウド企業への転身というビジョンを、OpenStack Platform 8Red Hat Cloud Suiteのリリースによりさらに前進させた。RHELは今でも同社の主力製品だが、同社のクラウドへの移行は固い決意と目的意識に貫かれている。

今回のRed Hatの発表は、オースチンで行われる今年のOpenStack Summitに合わせたかのように、その開会の1週間前に行われた。

OpenStack製品は、昨年リリースされたOpenStack Libertyがベースだ(最新バージョンのMitakaは、発表されたばかり)。Red HatのOpenStack Platformはリリースが新しくなるたびに改良が進んでいるが、今回の8では、複雑なシステムの頭痛のたねである管理性が向上し、またストレージとネットワーキングとコンピュートまわりのアップグレードが行われた。Red Hatが主要市場としてねらいを定めている通信企業や、Open
Stackへの移行を検討していて大きなネットワーキングを運用している大企業向けの、改良も行われている。

Cloud Suiteは、クラウドとDevOpsとコンテナ関連のツールセットで、このようなスイートに期待される、ツール集合でありながら単一のソリューションのように使える管理レイヤだ。それはRed Hat OpenStackにコンテナ環境OpenShiftと、プライベートクラウドをセルフサービス的にセットアップし管理するCloudFormsを組み合わせている。一種の統合化パッケージだが、これらのツールを個別に導入して、他社製品と併用することもできる。

企業は今、レガシーシステムを抱えながら、徐々にクラウドへ移行しつつある。Red Hatは、一方にRHELを置き、他方にOpenStackを置くことによって、両者の橋渡しを提供したいと考えている。多くの点で、Red Hat自身の昨今の変化が、そのまま顧客の変化の姿でもある。しかもそれは、必然的に起きていることだ。

Red Hat Cloud Infrastructureのプロダクト担当James Labockiは、こう説明する: “多くの顧客が既存のインフラストラクチャとアプリケーションを抱えている。弊社はその両方をRHELで支えているが、Red Hatのクラウドインフラストラクチャツールを使えば、弊社が提供するコントロールパネルと管理ツールによりそのインフラストラクチャを最適化して、より効率的に動かせるようになる”。

そういう、既存のインフラを生かしつつの移行は、うまく行ってるようだ。Red Hatは昨年、オープンソース企業としては初めての20億ドル企業になったが、最新の(3月の)決算発表では四半期売上が5億4400万ドルとなり、前年同期比17%の成長を見せた。まだ、売上の大半はRHELだが、クラウド部門も利益が出始めている。数字には、反論できないね。

〔ここにグラフが表示されない場合は、原文を見てください。〕
[graphiq id=”6f1Tc9GAZSZ” title=”Red Hat Inc. (RHT) Actual & Estimate Revenue – Last 5 Quarters” width=”650″ height=”503″ url=”https://w.graphiq.com/w/6f1Tc9GAZSZ” link=”http://listings.findthecompany.com/l/19060804/Red-Hat-Inc-in-Raleigh-NC” link_text=”Red Hat Inc. (RHT) Actual & Estimate Revenue – Last 5 Quarters | FindTheCompany”]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

急成長中のSlack、メッセージにスレッドをサポートする

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SlackのCEO、スチュワート・バタフィールドはウォルト・モスバーグのインタビューでメッセージにスレッド化を導入すると述べた。急成長中のSlackに欠けてた最大の要素が、これによって埋められることになる。

バタフィールドがモスバーグに語ったところによると、Slackは数ヶ月前から社内利用にスレッドを導入し、どのバージョンがベストかテストを繰り返していたという。万事順調であれば、次の四半期中にSlackではスレッドがサポートされることになる。

ユーザーインターフェイスがどうなるかなど詳細は明らかにされていない。しかし共同作業に最適のシンプルなUIはSlackのDNAに刻み込まれた特質なので期待してよいだろう。

現在はMicrosoftの傘下のYammer、CitrixのPodio、ConvoAddingなどビジネス向けメッセージ・サービスにはすでにスレッド化が導入されている。この重要な要素が追加されることでSlackは既存の共同作業支援サービスと同じ立場に立つことになる。Slackはますます普及の速度を速めるだろう。現在のSlackは共同作業に適したチャット・ルームに直接メッセージ機能が組み込まれたツールという感がある。一連のコメントがスレッド化されるとなればSlackのレベルは大きくアップし、さまざまな企業で業務のプロセスの不可欠の一部となるはずだ。

最近Slackは極度に簡素化された誰でも使えるインターフェイスとツールという点でシリコンバレーから強い注目を集めている。シンプルなツールがむやみに機能を増やすことは逆効果になる場合があるが、スレッド化は別だ。これは他のエンタープライズ・ツールにはすでに導入されており、ビジネス・ユースで決定的に必要とされる機能だった。

Slackはすでにシリコンバレーでもっともホットなスタートアップの一つであり、2700万人のユーザーを獲得し、最近のベンチャー投資では38億ドルと評価されている。1年前の2015年昨4月には28億ドルの評価額だった。Slackが約束するメリットの一つには、煩雑でノイズの多いメールを置き換えるコミュニケーション機能だけでなく、会話の全履歴を保存し、誰もが簡単に検索できるようになるという点がある。

またSlackはサードパーティーによるエコシステムも育成している。サードパーティー製のボットその他のアプリがこのプラットフォームの上に数多く現れている。Slackでは有力なアプリを作っているいくつかのサードパーティーに直接投資することを計画している。こうした努力がすべて積み重ねられたところにシリコンバレーの投資家がSlackに高い関心を寄せる理由がある。

今回発表されたスレッド化により、Slackはビジネスが使いやすいチャットルームという存在から、本当に総合的なエンタープライズ共同作業サービスに脱皮するものと思われる。Slackがエンタープライズでさらに大規模なユーザーを追加できれば、サービスの規模拡大も一段と加速し、新しいツールや機能を開発し、優れた人材を得るという循環が可能になるはずだ。

〔日本版〕スチュワート・バタフィールドはカナダ生まれの起業家でイギリスのケンブリッジ大学で修士号を取得している。日本ではFlicrの共同創業者として著名。

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OpenStackの第13リリースMitakaは大企業のプロダクションユースの増加に対応して管理性とユーザー体験に注力

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OpenStack Foundationが今日(米国時間4/7)、そのオープンソースのエンタープライズクラウドプラットホームの13回目のリリース、Mitakaをローンチした。

多くの点でこの新しいリリースは、2010年にRackspaceとNASAから孵化したこのプロジェクトの、さらなる成長ぶりを見せている。重要な機能を新たにたくさん加えることよりも(今回も多いことは多いが)、焦点はこのプラットホームをクラウドの運用者にとって管理しやすくすることと、全体的なユーザー体験の改良に置かれている。

“焦点の置きどころを変えたのは、ほぼ2年前ぐらいから、大企業や大きな組織がOpenStackを彼らのITの最前線で使い始めているからだ”、とOpenStack FoundationのCOO Mark Collierは語る。

そういう大型ユーザー、AT&TやComcast、SAP、Time Warnerなどは、デプロイが容易であることを強く求める。どう転んでもOpenStackが相当複雑なプロジェクトであることに変わりはないから、ユーザーはまず、デプロイに関してさまざまな意思決定を迫られる。そう強調するCollierによると、そのため今では、このプラットホームのコアなコンポーネントはなるべくデフォルトの設定で行けるようにして、ユーザー元におけるセットアップや構成の努力を省力化している。それらのデフォルトは、OpenStackの大型ユーザーの多くが開発してきたベストプラクティスに基づいている。そのひとつの例であるOpenStackの”Keystone“アイデンティティサービスは、アドミニストレーターがActive Directoryなどのアイデンティティサービスを統合でき、またセットアップのプロセスを単純化している。

さらにCollierによると、この新しいリリースはユーザー体験の改良にも力を入れ、デベロッパーがOpenStack用のより良質なアプリケーションを書けるようにしている。たとえばデベロッパーは、これからはOpenStackの統一化クライアントを利用できるので、ワンセットの呼び出しでプラットホーム上にさまざまなリソースを作ることができる。今回のMitakaリリースはSDKもアップデートし、デベロッパーがOpenStackの”Neutron”ネットワーキングスタックをずっと容易に使えるようにしている(その一部はまだ開発途上ではあるが)。

ここ数年の動きの中でCollierにとってとくに意外だったのは、多くの通信企業が今では、ネットワーク機能のソフトウェアによる仮想化を採用するためのデファクトの方法としてOpenStackを利用し、これまでのようにプロプライエタリで高度に専用機化されているハードウェアを使わずに、情報のルーティングを行っていることだ。とくに彼が注目したのは、たとえば今のAT&Tの顧客は、電話をかけるたびに、なんらかの形でOpenStackに触(さわ)っている可能性が高いことだ。AT&T以外にも、Deutsche Telekom, Telefonica, (AOLとTechCrunchの親会社)Verizonなどの著名企業が、今やOpenStackのユーザーだ。

Collierがもうひとつ強調するのは、OpenStackに対する関心の多くが、これまでは、それをプライベートクラウドの構築に利用している企業に由来していたが、しかし今では、とくにアジアとヨーロッパで、OpenStackをパブリッククラウドのデプロイに使用している企業もたくさんあることだ。ただし合衆国は、まだそこまで行っていない。DreamHostやRackspaceなど、OpenStackによるパブリッククラウドに力を入れているところも少なくはないが、ユーザー数で言えばAWSが圧倒的に大きいのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Amazon、ログイン・支払サービスをeコマース・プラットフォームに拡大―Money 2020で発表

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Amazonは今朝(米国時間4/4)、Amazonペイメントのサービスをサードパーティーのプラットフォームに拡大することを発表した。

世界のeコマース・プラットフォームの運営者やデベロッパーはAmazon Payments Global Partner Program〔Amazonペイメント・グローバル・パートナー・プログラム〕に参加することで、Amazonの支払プラットフォームを利用できるようになる。これらのサービスの傘下のマーチャントを訪問したユーザーはチェックアウトに際してPay with Amazon〔Amazonで支払〕というオプションが提供される。

現在、Amazon Paymentsは個別マーチャントのみ利用できる。参加したオンラインeコマース・サイトには「Amazonでログインと支払い」というオプションが与えられ、Amazonのツールを利用することができる。すでにユーザーの身元情報やクレジットカード情報を持っているAmazonがログインから支払まで代行してくれるのでオンライン・ショッピングにはたいへん便利な機能だ。

つまりeコマース運営者はAmazonの膨大なユーザーベースを利用して、顧客に自サイトにユーザー名、商品送付先、支払手段などの情報を改めて入力させる必要なしにショッピング体験を提供できる。またユーザーはサイトごとにパスワードやIDを管理する煩わしさを避けることができる。支払い手続きが簡素化、高速化されるのでマーチャントの成約率は向上し、売上も伸びる。

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今回のグローバル・パートナー・プログラムでは個別マーチャントがAmazonのプラットフォームを利用するというレベルからさらに一歩進めて、eコマースのプラットフォームを提供している大手プロバイダー自身にAmaznの支払サービスの提供を広げようというものだ。スタート時点でPrestaShop、Shopify、Future Shopなど多くの有力プロバイダが参加を表明している。これら各社のeコマース・プラットフォームを利用しているマーチャントは、今後、Amazonペイメントのツールを利用することが可能になる。

Amazonはさらにパートナーとなったプラットフォームに大して、上得意向け特別サービスやアカウント管理、キャンペーンの立案、技術サポートなどの付加機能を提供するという。Amazonによれば、参加プラットフォームーはパートナー・ディレクトリに登録され、Amazonが今後実施するマーケティングに参加する資格を得る。

新しいプログラムで提供されるサービスはパートナーの種類によってプレミア・パートナー、認証パートナー、認証デベロッパーの3種類に分けられる。プログラムへの参加は現在まだ「招待のみ」で、カバー地域はアメリカ、イギリス、ドイツ、日本の4カ国だ

このニュースはコペンハーゲンで開催中のMoney 2020カンファレンスでリリースされた。

Amazonのこの動きは、PayPalなど既存の支払サービスへの挑戦を一層強化する戦略を明らかにしたものだ(Apple Payは今年中にモバイル・サイトにサービスを拡大するという)。

プラットフォームへのサービスの拡大は、個別マーチャント向けペイメントが急成長しているというニュースに続いて発表された。サードパーティーへの支払サービスの拡大は長期間の実験を経て、 2013年に正式サービスとして開始された。今年1月、Amazonは「2015年に取引高は150%アップし、約8400万ドルとなった。マーチャントの数も200%増大した」と発表した。ただしマーチャント側からの正確な数字の発表はまだない。

いずれにせよ、Amazonはこの戦略を今後も強化していくだろうし、ライバルにとっては無視できない脅威となる。ことにモバイル分野ではそうだ。Amazonにはすでに2億8500万のアカウントが登録されており、 2300万人以上がAmazon以外のサイトでその情報を利用しているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Slackは、企業内コミュニケーションを今度こそ転換できるのか

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人生経験を積んだ人ならば、Eメールをやめて、企業内の通信手段を変えようと試みたことが何度かあるだろう。Slackはその最新事例にすぎないが、市場シェアと金を手に入れた。

例えば、今日(米国時間4/1)Slackは2億ドルの資金を38億ドルという巨大な評価額で調達した。同社が開業したのはわずか3年前で、既に5.4億ドルを調達済みだ。これはVCが財布のヒモを締め、スタートアップに価値を証明させようとしている昨今、驚くべき金額だ。Slackの名誉のために書いておくが、同社は人気のプラットフォームを作り、これまで270万人のユーザーを獲得している。

私は今世紀の始めからエンタープライズ市場を見ているが、似たようなコンセプトは2000年代初めにもあり、当時エンタープライズの寵児はインスタントメッセージング(IM)クライアントだった。読者が高価なノートパソコンの上にコーヒーを吹き出す前に言っておくと、IMは今日でいうSlackだった。手軽な通信手段として、電話やEメールを使うことなく同僚と即時に連絡が取れた。

事実、今のSlackとよく似て、IMベンダーたちはクライアントアプリを職場の中心に据えたがった。クライアントに統合すれば、複数のエンタープライズアプリ間を行き来しなくて済むようにもできると。しかし、われわれが現在IMクライアントを使っていないのは、そのビジョンが達成されることはなかったことを意味している。

早送りして2009年頃、企業内コミュニケーションツールの第2の波がEnterprise 2.0と共にやってきた。ブログ、ウィキ、チャットツール(Slackとは変わらない)等のWeb 2.0ツールを企業に持ち込めば、Eメールではなし得なかったユーザーエンゲージメントが実現できる。

ここでも多くのベンダーが現れては消えていった。最も有名なのはおそらくYammerで、同社は2012年に12億ドルでMicrosoftに買われた。このアプローチに対する批判の一つは、他の企業内フローから離れたツールだということだった。従来のIMツールと同じく、Enterprise 2.0ベンダーたちはそのツールに業務を統合しようとした。

しかし、IMと同じく、これらのツールがわれわれの作業形態を変えることはなく、未だに主要なコミュニケーションとしてEメールが使われている。どんなに作業に不向きであっても。

そして今また新しい波がやってきて、今回はSlackがその旗頭だ。シリコンバレーの寵児とは言え、よく見ると過去のツールと大きく変わっていない。ごく基本的なチャットクライアントであり、変ったことと言えば、今われわれはクラウドとモバイルの世界に住んでいるということだ。時間と共に、チャットボットを追加して、外部アプリをチャットクライアントに統合している。ちょうど15年前にIMクライアントがやりたがっていたことを。

われわれは、似たような技術の波が2つ、楽観的な見通しで現れては、企業に根付くことに失敗して消えていくところを見てきた。なぜ投資家たちが、今回は違ってうまくいくと考えるのか、私にはよくわからないが、クラウドとモバイルの組み合わせが、われわれに長年欠けていたものなのかもしれない。

彼らが正しく、今度こそ成功するのかどうかは、時を待つしかないだろう。今日ある人は、他の人々が失敗したことにSlackは成功することに2億ドルを賭けた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

CastleはY Combinator出身のドラグ&ドロップでアカウント乗っ取りを防ぐツール

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Castleの4人のメンバーはマウンテンビュー、スウェーデン北部に分散しているが、ユーザー自身が必要に応じて非常に簡単に統合できるシームレスなサービスを追求したという点でユニークだ。

ウェブサイトの運営者がCastleを利用するするにはJavaScriptで書かれたスニペットをhtmlのヘッダー内にドラグ&ドロップするだけでよい。 不審な、あるいは標準から外れたログインの試みに警告フラグを立てるなど、あとの仕事はCastleが引き受ける。カスタマー・サービスのサーバーに導入した場合、危険なアカウントを自動的に凍結する。外部から攻撃があった可能性があれば運営者にただちに通知する。

同社のCEO、Johann Brissmyrによれば、開発のきっかけは共同ファウンダーの前回のスタートアップ、SettleBoxという支払サービスを開発した経験だという。

「われわれはSettleBoxでは企業向け〔セキュリティー・サービスと付き合いが多かった。それらのプロダクトは今やわれわれのライバルだが。このときにユーザーの安全を守る使いやすいツールが欠けていることに気づいた。〔其の結果が〕Castleになった」Brissmyrは言う。

Castleの強みはユーザー・フレンドリーであり、セットアップがシンプルなことだ。これらはCastleというサービスの重要な部分をなす。ユーザー・インターフェイスはMixpanel、Google Analyticsといったプラットフォームからヒントを得ている。

いちどセットされるとCastleはバックグラウンドでサイト訪問者のあらゆる活動をモニターし、不審な動きの発見に努める。ユーザーやデバイスの新しいログイン場所、サービスの内容に照らして疑念のあるユーザーの行動なども重要なシグナルとなる。

「ログイン動作やパスワード変更なども含めわれわれはあらゆるページ閲覧をモニターしている。普通ではない行動を見つけ出すためだ」とBrissmyrは言う。

FacebookやGoogleがユーザーの行動をトラッキングしてブルートフォース攻撃やサイト乗っ取のり兆候を発見しようとする手法にCastleの機能は似ている。

また同種のセキュリティー・ソフトと同様、Castleも訪問ユーザーに「セキュリティー・スコア」を付与する。たとえば、Brissmyrの説明によれば、eコマース・サイトの顧客が同じデバイスで新しい場所からログインするだけならセキュリティー・スコアに変化はないが、新しいデバイスで新しい場所からログインが試みられるとスコアはアップする。【略】

Brissmyrは「脅威を感じるライバルは特にない。Google他のウェブ・サービスのプロバイダ〕のプロダクトとCastleは競争することになるが、彼らとはこの問題に対する集中力が違う。Castleはすでに非常に多くのサービスに統合されて能力を発揮している」と」は語った。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google、Boston Dynamics売却の可能性が浮上―二足ロボットが怖すぎて評判を傷つける?

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Googleの親会社、Alphabetはロボット開発の子会社の一つ、Boston Dynamicsに満足していないということだ。 Bloombergの記事によると、Alphabetの幹部は「Boston Dynamicsは、向こう数年のうちに大きな収益を生み出す可能性はほとんどないうえに、いっしょに仕事をしづらい相手だ」と考えているという。トヨタ、アマゾンは工場や倉庫業務で利用するためにBoston Dynamicsの買収に興味を示すかもしれいない。

しかし、いっそう興味深いのはGoogleの社内向けメールの内容だ。それによると、 Google自身がBoston Dynamicsに少々脅えているらしい。われわれは皆、先月公開されたBoston Dynamicsのビデオを見ているが、興奮させると同時に恐怖を呼び起こすような内容だった。人型二足歩行ロボットが何度倒されてもそのつど自力で起き上がるようすはまさにターミネーターだった。

2013年12月にGoogleはBoston Dynamicsと他の一連のロボット・スタートアップを買収した。その目的は、Google社内にロボット工学のエンジニアリング部門を立ち上げBoston Dynamicsと協力させるることだった。だがそれ以来ほとんど何も起きていない。.Googleは、レプリカントと呼ばれるプロジェクトで、誰でも入手可能なロボットをできるだけ速く出荷するはずだった。ところがAndy Rubinが去るというリーダーシップの変更に加えて、Google社内のロボット工学エンジニアとBoston Dynamicsのエンジニアの間で深刻な衝突が起きたためにこれは不可能になった。

Googleは社員数万人が働く大企業であり、こうした問題が会議で取り上げられたり部内のメールで議論されたりすれば、情報はいずれ外部に出てくる。すべてのGoogle社員はこのことを知っており、BloombergのBrad StoneとJack Clarkは情報を耳打ちされた。Bloombergにリークしたのは レプリカントやBoston Dynamicsには直接関係していないGoogle社員だろう。

Google Xの広報ディレクター、Courtney Hohneは 部外秘のメールで、「テクノロジー・メディアは興奮しているが、報道にはいくぶんの恐怖が混じっている。〔Boston
Dynamicsのロボットは〕人間の仕事を奪うレベルに達しているとして、ネガティブな意見が出始めた」と書いた。するとこのメールは公開性の高いGoogleフォーラムに転載され、結局Bloombergの記者が入手に成功した。

Hohneはこの後、 「われわれはGoogle内でBDの立場が本当はどうなっているかついて新たなメディアの大騒ぎを引き起こしたくない」と述べている。

Googleのロボット事業部のディレクター、Aaron Edsingerは、「Boston Dynamicsと仕事をすると『レンガの壁』〔のような秘密主義〕に突き当たることが多い」と述べた。報道によればレプリカント・プロジェクトは去る12月に閉鎖され、Googleのロボット・エンジニアは現在他のGoogle Xプロジェクトに取り組んでいるという。

Boston Dynamicsのエンジニアについていえば、彼らは現在新しい買い手が現れるのを待っているところだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google、近くモバイル検索をアップデート―サイトのモバイル対応がますます重要に

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サイトの表示がモバイル・デバイスでは見づらいとGoogleはモバイル検索における表示順位を下げてしまう。サイトがモバイル対応を進めることを促進しようとするインセンティブだ。今日(米国時間3/17)、Googleはこの方針を5月以降さらに強化し、モバイル・ページを持たないサイトのランキングを一層低くすると発表した。

モバイル対応をサイトのランキングのシグナルに含めることが発表されたのは昨年だった。目的はモバイル・ユーザーの検索体験を改善することにあった。幸い、大半のパブリッシャーはこれに従ったのでスマートフォンなどからコンテンツを見るのは以前よりずっと楽になった。

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Googleがサイトをモバイル化に対応させる努力を始めたのは2014年に遡る。このときにはモバイル・フレンドリーと認定されたサイトにそのことを示すバッジを付与するだけだった。その後数ヶ月して、前述のようにモバイル対応がランキングにも影響するようになった。

表示速度の改善は以前からGoogleの執念だった。数ヶ月前からGoogleはモバイルでサイトのロードを高速化するAMP(Accelerated Mobile Page)を導入している。

現在のところAMPの使用は検索ランキングのシグナルには含まれていないが、GoogleはAMPを強くプッシュしている。将来、AMPが検索順位に影響することになる可能性は高い。

Googleは自サイトがモバイル・フレンドリーであるかどうかチェックするためのツールを数多く提供している。これらのウェブマスター向けツールには「モバイル利用時のエラー」をすべてチェックできる機能が含まれている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google、企業のマーケティングを助ける分析ツール、Analytics 360をスタート

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今日(米国時間3/15)、Googleはエンタープライズのマーケティングを助ける一連のツールをリリースした。Google Analytics 360 SuiteはAdobeのMarketing Cloudや類似のサービスの直接のライバルになる。

Analytics 360 Suiteは既存のGoogleアナリティクスプレミアムの直接の後継となるもので、今回のリニューアルでAdometryも360に統合された。

Adometryは2014年に買収されたサービスだが、今後はAttribution 360と呼ばれる。またAnalytics 360にはエンタープライズ版のTag Managerや新規のツール(Audience Center 360、Data Studio 360、Optimize 360)が発表され、企業のマーケティングに新しいソリューションを提供する。

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Googleのプロダクト管理担当の上級ディレクター、Babak PahlavanはTechCrunchの取材に対して、「今回発表されたツールは企業マーケッターに新しいソリューションを提供し、最近普及してきたマルチスクリーン環境でさらに効果的に働けるようにする。マーケティング担当者、特に大企業のマーケティング担当者はデスクトップしかなかった時代の枠組みに依然として縛られていることが多い。しかしわれわれはユーザーの環境の変化を理解している。トレンドがさまざまデバイスの統合〔的運用〕にあることが新ツールの〔リリースの背後にある〕アイディアだ」と説明した。

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360スイートはそれぞれまったく異なる能力を持つ6種類のサービスだが、すべて相互に緊密に連携している。これによりマーケティング部門は強化され、広告部門はカスタマーのニーズをよりよく知ることができる。

新ツールの開発にあたっては、どれほど大量のデータを扱うことになっても使いやすさを失わないこと、またそのデータに基いてどんな行動を起こすべきかがはっきりわかるような情報を提供することが最優先された。

Pahlavanは取材に対して「ツールが複雑すぎると結局使われないことになる。われわれは単純さを心がけた。誰でも使いやすく共同作業もやりやすいツールを開発したところにわれわれのセールスポイントがある」と説明した。

ではこのツールにはどんな機能が含まれているのだろう? Google Analytics 360(メジャーアップデートを受けたGoogleアナリティクスプレミアム)の重要な基盤はDoubleClickも含めてGoogleが収集する膨大なデータを統合して計測可能ににする点にある。

その基盤の上に、Audience Center 360という今回開発された新しいデータ管理のプラットフォームが乗り、ユーザーがさまざまなツールを連携して利用できるようにする。ユーザーはサードパーティーのデータも利用できる。

Optimize 360もまったく新規のツールだが、これによってユーザーはサイトに掲出される広告に用いられるコピー、画像、スニペットに対し簡単にA/Bテストが実行できる。

しかし新規開発のプロダクトの中でいちばん興味深いのはGoogle Data Studio 360だろう。収集されたデータの分析と視覚化はすべてここで行われる。Pahlavanによれば、Data StudioはGoogleドキュメントの共有と作業の共同のテクノロジーを基盤としているという。これにGoogleのビッグデータ分析のプラットフォーム、BigQueryが統合されている。

Tag Manager、Analytics and Attributionは既存のツールに新機能を追加して新しい名称の下に統合したものだ。ただし旧Adometryの場合、Googleは「Attribution 360はゼロから作り直された」としている。新機能については、今後2、3ヶ月かけて順次公開される予定だ。

360スイートのうち4つのプロダクト(Audience Center、Data Studio、Optimize、Tag Manager)は現在、限定ベータテスト中だ。GoogleアナリティクスプレミアムあるいはAdometryをすでに利用しているユーザーは今後数ヶ月かけて新サービスのベータテストに招待されるはずだ。

画像:Justin Sullivan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google、Apps for Workのログイン対象を拡張―Office、Facebook at Workなどの利用が簡単に

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Googleは一般ユーザーが無料で使える一連のウェブベースの生産性ツールを提供しているが、それに加えてビジネス・ユーザーに対する対するサービスの分野でも意欲的だ。Googleはユーザーが他のオンライン・サービスにログインする際にSAML規格に基づいた安全な認証機能を提供している。

今日(米国時間3/14)、GoogleはApps for Workにライバルのさまざまなビジネス・ツールへのログイ機能を追加した。デフォールトで対象となるビジネス・ツールにはMicrosoft Office 365、Facebook at Work、New Relic、Concur、Box、Tableau、HipChat、Slackが含まれる。

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Google Apps for Workのプロダクト・マネージャー、Shashank Guptaは発表に伴うコメントで「ビジネス・ユーザーがGoogleの身元認証機能を利用すれば、アカウントに付属するセキュリティー機能をがすべてサポートされる。これはモバイルからの利用の場合、特に重要だ」と強調した。

Google Apps for WorkにおけるGoogleの認証機能をモバイルで利用する場合、モバイル・エンタープライズ・マネジメントと連携するため、パスワードの強化、ロックスクリーン解除やアプリ設定のカスタマイズなどセキュリティの大幅なアップが見込まれる。Guptaは「〔今回の新たなログイン機能は〕ハードウェアでは指紋ロック機能やソフトウェアではスマートロックなどGoogleが提供するさまざまなセキュリティー機能が利用できる」と述べている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)</P

データを発見しそれらの起源・出自を調べるLinkedInの社内ツールWhereHowsがオープンソース化

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LinkedInが今日(米国時間3/3)、WhereHowsをオープンソース化した。WhereHowsは主に同社の社員が、同社が生成するデータを見つけ、また同社のさまざまな内部的ツールやサービスで使われているデータ集合の出自を調べるために使っている、メタデータツールだ。

今では多くの企業が毎日のように大量のデータを作り出しているから、それらの情報のフローを全社的に管理することがほとんど不可能になっている。データウエアハウスに保存するのはいいけれども、結局のところ、同じようなデータ集合が大量に集積したり、元のデータ集合のいろんなバージョンが散乱したり、いろんなツールで使うためにデータ集合がさまざまに変形されていたりする。まったく同じデータが、名前やバージョンを変えて複数のシステムにあることもある。だからたとえば新製品開発をこれから始める、というとき、あるいは単純に役員が見るためのレポートを作ろうとするとき、どのデータ集合を使えばよいのか、よく分からないことが多い。

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LinkedInのShirshanka DasとEric Sunによると、同社もまさしく、この問題に直面していた。そこで彼らは、WhereHowsを開発した。それは、LinkedInのような大きな企業で、データに何が起こっているかを常時追跡するための、中央的リポジトリ兼Webベースのポータルだ。今では中小企業ですら、大量かつ雑多なデータの整理や管理に悩まされているだろう。LinkedInでは、WhereHowsが現在、約5万のデータ集合と14000のコメントと3500万のジョブ実行の、ステータスに関するデータを保存している。それらのステータスデータは、約15ペタバイトもの情報に対応している。

LinkedInはHadoopの大ユーザーだが、このツールはほかのシステムのデータも追跡できる(Oracleデータベース、Informatica、などなど)。

WhereHowsはAPIとWebの両方でアクセスできるから、社員たちはデータ集合の出自や由来を視覚化したり、注釈を加えたり、いろんなことができる。

DasとSunによると、LinkedInは、そのサービス本体に属していないプロダクトをこれまでも長年、オープンソース化してきた。その基本的なねらいは、会話を喚起することだ。ビッグデータの大きなエコシステムがあれこれのツールを採用すると、同社もそのことで結果的に得をする。これまでぼくが取材してきた多くの企業と同様に、LinkedInでも、オープンソースが同社の技術のブランドイメージを高め、すぐれた人材の獲得を容易にするのだ。

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企業向けFacebook at Wok、世界への拡大を控えてTelenorの社員3万6000人をユーザーに加える

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Facebookのエンタープライズ版、Facebook at Workのユーザー企業はセキュリティーを強化した独自の社内ソーシャル・ネットワークを構築することができる。まだ非公開ベータ版の実験中だが、待機リストに載っている利用申し込み企業は6万社にも上るという。カスタム・アプリ開発のプラットフォーム機能を追加したうえで今年末までに世界に公開される予定だ。

昨日(米国時間3/2)、Facebookは最新の大口顧客を発表した。世界13ヵ国で活動しカバーし、ユーザー数2億300万というノルウェーを本拠とするキャリヤ、Telenorの3万6000人の全社員が3月2日からFacebook at Workを利用し始める。

TelenorグループのCEO、Sigve Brekkeはわれわれの取材に対し、「Telenarはこのプロダクト最初期からのパートナーであり、Facebookと密接な協力の一環として大規模なテストに参加してきた。われわれは〔At Workの導入で〕社員が働く環境をまったく新しくしたいと考えている」と語った。一新されるのは、社員に対して送るCEOのメッセージの発表の仕方ばかりではないく、これまで各部門ごとに閉じられていたコミュニケーションを全社的に風通しよくすることも含まれる。

またBrekkeは「多くの社員がすでにメンバーとして日常利用しており、十分に慣れ親しんでいるという点からもFacebookはわれわれにとってもっとも自然な選択だった」と語った。Telenorの社員はデスクトップでも(また通信キャリヤという業務を考えればその方がいっそうありそうだが)モバイル・デバイスからも自由にFacebook at Workにアクセスできる。

Telenorはバングラデシュ、インド、パキスタン、ミャンマーなどの途上国のキャリヤも所有している他、 Telenorが大株主である総合通信グループのVimplecomを通じて他の14ヵ国でも活動している。先週MWCで発表されたInfraの開発に重要な役割を果たすなどFaceookとは長年にわって提携してきた。

Facebook at Workはこれまでも定期的に新規ユーザーの加入を報じてきたが、いくつかの理由でTelenorの参加の意義は非常に大きい。

Telenorはまず第一に世界的な有力キャリヤであり、Facebook at Workの国際展開の責任者、Julien Codorniouによれば、これまでAt Workに参加した中で最大の企業だ。実はスコットランドの銀行、社員10万人を有するRoyal Bank of ScotlandもAt Workに加入を発表しているが、全社員向けに運用が開始されるのは年末になる。同銀行は現在3万人の社員について独自の社内ネットワークへの参加のための作業を行っている。

企業向けAt Workの規模拡大がビジネスの将来にとって重要なのはもちろんだが、キャリヤをメンバーに加えることの利点の一つは〔キャリヤ側で十分なテクノロジーを持っているため〕Facebook自身がエンジニアを増員しなくてすむことだ。Codorniouによれば、At Workビジネスの拡大にあたってエンジニアの数がFacebook側で最大のボトルネックとなっているという。この点に関連してFacebookは先月Boxで長年副社長を務めたMonica Adractasを北米セールス部門のトップに引きぬいている。【略】

Quip、Box等と協力して新プラットフォームを開発

Codorniouによれば、At Workは年末までベータ版から実用版にグレードアップされ、その後多数の新機能が追加される予定だという。At
Workは現在無料だが、将来は企業に利用料金を課する機能も追加されるらしい。有料化を正当化するためにも新機能のリリースは重要だろう。

Facebook at Workは本体の機能をできるかぎり忠実に企業内利用に適合させようとしている。重要な例が今年リリースされたWork Chatアプリで、これはMessengerのAt Work版といってよい。また「いいね!」ボタンの内容の拡大も先週の世界への公開と同時にAt Workでサポートされた。

Codorniouによれば、将来、企業は追加料金を支払うことによって他の社内システムとAt Workの統合運用が可能になるという。この場合、料金の計算は利用人員、利用月単位となるという。

またFacebookはQuip(クラウド・ベースのワープロ。Facebookの元CTOが創立。世界のFBネットワークを利用)や、Dropbox、Box,とも協力が進んでいる。またFacebookはMicrosoftのOffice 365もなんらかの形で取り入れたいと考えているということだ。Codorniouが示唆したようなMicrosoftとの提携が実現すればFacebookにきわめて大きなインパクトをもたらすことになりそうだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Microsoft、Windows 10の「侵入後」セキュリティーツールを発表

Microsoftは今日(米国時間3/1)、新製品、Windows Defender Advaced Threat Protectionを発表した。ネットワーク攻撃による侵入が起きた後、IT担当者がWindows 10マシンへの脅威を検出するためのツールだ。

これまでのセキュリティー戦略の殆どは、悪役をネットワークの中に入れないことに集中しているが、どんなに会社が注意していても、いつかは防御が破られハッカーが侵入経路を見つける、という割り切った考えもある。攻撃が高度になればなおさらだ。

「サイバー攻撃は益々厚かましくなっている。サイバー犯罪者はよく組織化され、国家が支援する攻撃、サイバースパイ、およびサイバーテロ行為の増加は憂慮すべき状況だ。最高の防御をもってしても、高度なアタッカーはソーシャルエンジニアリングやゼロデー脆弱性を利用して、企業ネットワークに侵入する」とMicrosoftのWindowsおよびデバイスグループ執行副社長、Terry Myersonが新製品を紹介するブログ記事に書いた

Windows Defender Advanced Threat Protectionでは、どのWindows 10端末を監視するかをIT専門家が決められる。新しいツールは、Microsoftが長年蓄積し今も集め続けているセキュリティー情報データベースであるSecurity Graphに基づく機械学習を使って、問題を探し出す。ネットワーク上のWindows 10マシンを、膨大なセキュリティーデータと比較する。もしシステムが異常を発見したら、IT担当者に通知を送り、管理者がさらに調査を進める。

Myersonによると、機械学習が扱うのは問題の確率であり、必ずしも何かが起きたという確実な兆候ではないため、システムは管理者に問題の可能性を伝え、管理者が対処方法を考える。例えば、悪質なボットネットに指示を与えることが知られているIPアドレスが、データベースに登録されていれば、システムはネットワーク上のWindows 10端末がこのIPアドレスをアクセスした時、IT担当者に連絡して会社が攻撃を受けたかどうかを管理者が判断できるようにする。

もし実際に攻撃があったと管理者が判定すれば、影響を受けたマシンを隔離するための行動を起こせる。Microsoftは、将来のバージョンでより高度な修復ツールを提供することを約束している。

この製品が、現時点でWindows 10端末のみのセキュリティーに特化していることは注目に値する。旧バージョンのWindowsには対応しておらず、広範囲なネットワークでこの種の侵入を検出することはできない。これは、Windows 10端末に、高度な脅威検出機能をもたらすものであり、包活的なセキュリティーツールではない。

同社は製品の開発に当たり、50万台の端末で早期限定テストを行ってきた。近々大規摸なテストが行われる見込みだが、Myersonは正確な日付を明らかにしなかった。

IBMが昨日、侵入後の活動を支援する一連の動きを発表したことも指摘しておくべきだろう。攻撃を防ぐことだけでなく、侵入後の計画と対処方法についても市場があることを、各企業は気付きはじめている。

今日の発表は、Microsoftが市場のその部分に進出する最初の試みだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Gmailの企業ユーザー向けのセキュリティ機能が向上–DLPサービスをアップデート

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Googleが今日(米国時間2/29)、Gmailの企業ユーザーのための新しいセキュリティ機能をいくつか発表した。昨年同社はGoogle Apps Unlimitedのユーザーのために、機密データがメールに入り込まないようにするためのData Loss Prevention(DLP)機能をローンチした。そして今日同社は、このサービスの初めての大型アップデートを、サンフランシスコで行われているRSA Conferenceでローンチした。

DLP機能により企業は、メールに乗ってその企業のファイヤーウォールを出入りしてもよい機密情報の種類を指定できる。

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DLP for Gmailの今日発表されたもっとも重要な機能は、添付ファイルをOCRでスキャンして機密情報や不適切な言葉を見つける機能だ。前者はたとえばクレジットカードの番号、運転免許証の番号、社会保障番号など、後者は悪口や秘密プロジェクトのコードネームなどだ。

DLPはこれまでも添付ファイルをスキャンできたが、画像ファイルの中の社会保障番号などは検出できなかった。これからはDLPは、アドミンの指定に基づいて、それらの語や番号などのある画像ファイルも排除できる。

また今回のアップデートで、DLPが検出できる情報や、とくに個人を同定できる情報の種類も各国ごとに増え、とくに合衆国ではHIPPAデータも広くカバーすることになった〔参考資料〕。

さらに今日のアップデートでは、ルール違反の数に基づいてアドミンが容易に、メールの扱い方を変えることができるようになった。たとえば、クレジットカード番号が一つだけあるメールは当人に書き直しを命じるが、ルール違反が50件以上もあるメールは問答無用で拒絶する、といった扱い方のバラエティだ。

またこのサービスが提供している各種検出機能のゆるさや厳しさをアドミンが指定できる。これによりたとえば、違反の“偽陽性”を防げる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

IBM、ヘルス・アナリティクスのTruvenを26億ドルで買収へ―Watson Healthを大幅強化

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今日(米国時間2/18)、IBMは、Truven Health Analyticsを買収する意向を発表した。価格は26億ドルという驚くべき額だ。これはWatson Health事業部が2014年に創立されて以來、4回目の大型買収となる。

Watson Healthは2014年4月にIBMがPhytelとExplorysを買収したのを機に創立された。両社ともデータ処理をメインとするヘルス関連企業だった。

Watson Healthはその後、2015年8月に10億ドルでMerge Healthcareを買収した。これによりWatson Healthは膨大な医療画像データを所有することとなった。

今日の買収で、IBMはTruvenの大規模なクラウド・ベースのデータ・リポジトリにアクセスが可能となる。Truvenは社員2500人で8500のクライアントを持ち、その中にはアメリカの連邦政府や州の機関、またその従業員組合、健康保険会社、生命保険会社が含まれる。

Truvenの買収により、IBMは保険請求、治療内容、治療結果、医療費詳細、その他何百種類もの情報という宝の山を入手する。Watson Healthのバイス・プレジデント、Anil Jain(元Explorys)は「これは単にデータのための買収ではない」と強調した。

JainはTechCrunchのインタビューに対して「われわれは〔この買収で〕膨大なデータとそれを収集したリソースのすべてを入手する。〔しかし本当に価値があるのは〕豊富なデータに基づく洞察、深い知識に基づく洞察だ」と述べた。

Jainはまた大量のデータを意味あるものにするのは人間のエキスパートだとつけくわえた。そしてTruvenの買収によってWatson Healthに加わることになった2500人の社員には多数のデータ・サイエンティストや研究者などの専門家が含まれると述べた。

有力企業を次々に買収することと、それら企業の持つデータやノウハウを有機的に組み合わせて新たな事業部にすることはまったく別の作業だ。 Jainはこれが困難な課題であることを認めたが、同時にIBMは買収企業の統合には豊富な経験を持っていることを強調した。

「Watson Healthプラットフォームにはクラウドがあり、コアとなるテクノロジーがある。それらはクライアントの課題の解決のために役立てられる。ソリューションはわれわれが開発するものもあるが、われわれのパートナーが作るものある」とJainは述べた。

IBMのパートナーにはApple、Medtronic、Johnson & Johnson、Teva Pharmaceuticals、Novo Nordisk、CVS Healthなどが含まれる。

ヘルスケア・テクノロジーでいつもプライバシーが問題になる。たしかにIBMは膨大なヘルス関連情報にアクセスが可能だ。Jainは「この点についてしばしば質問される」と認めた。しかし「IBMは患者情報の秘密保護に関してHIPAAは(医療保険の相互運用性と責任に関する法律)の規定を順守している。またIBMのシステムは重大な疾病の診断に関して患者を特定できるような具体的な知識を持たない仕組みとなっている。われわれの目的はあくまでクライアンの業務を適切な情報提供によって効率化することだ。その情報が具体的にどのような個人に結びつけられるかについてはIBMは一切情報を持たない」と述べた。

これはつまり、ある患者に特定の症状が合った場合、Watson Healthは他の患者のデータを分析し、似たような症状を選び出し、症状のパターンを教える。ただしデータの背後にある個人については身元特定可能な情報を持たない仕組みになっているということだ。医師の指示に応えてWatsonはそうした症状に対するさまざまな治療法とそれぞれの成果を専門誌の論文から収集する。 こうした情報は医師の診断や治療法の選択に大きな助けとなる。

現在、Watson Healthを構成する各社はIBMによる買収以前と同じく、各地に散らばるそれぞれの本社で運営されている。これは当分そのままとなるはずだが、IBMはWatson Healthの新しい本社を,マサチューセッツ州ケンブリッジに 建設中で、運用開始は今年後半になる予定だ。

Featured Image: Matej Kastelic/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

IBM、新しいメインフレームを発表。セキュリティーとハイブリッドクラウドに重点

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メインフレームはまだ死んでいない。IBMは、同社の中規模エンタープライズ向けメインフレーム、z13を今日(米国時間(2/16)発表した。そこには数々の新しいセキュリティー機能が導入されている。最大4TBのRAMを塔載可能なz13は、IBMのこれまでのシングルフレームメインフレームに比べて最大8倍のメモリーを利用できる。

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IBMは、z13の処理速度はこれまで同社が同じ価格帯で提供していた一部のメインフレームよりも速いと言っているが、z13の焦点は明らかにセキュリティーに向けられている。

今日のメインフレームと標準的サーバーの違いは、メモリー制御、入出力、暗号化等の機能のために専用プロセッサーを数多く内蔵していることだ。

例えばz13は新しい暗号化ハードウェアを持ち、かつての2倍の速さで暗号・復号を行うことができる。暗号化機能を高速化するために、z13はIBMの以前のミッドレンジ機よりも多くのメモリーを積んだ暗号化コプロセッサーカードを塔載している。

「これによって顧客は、これまでの2倍の量の暗号によって保護されたトランザクションを、性能を損うことなく処理することが可能になる。これは、オンラインあるいはモバイル購入を従来の2倍量処理できることを意味している」と同社は言う。

セキュリティーを高めるために、z13はIBMのセキュリティー分析サービスおよび多要素認証(MFA)に対応して、認定ユーザーだけがシステムをアクセスできるようにしている。今回IBMは、初めてz/OSオペレーティングシステムに直接MFAを組み込んだ。

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他のクラウドおよびサーバー企業と同じく、IBMはハイブリッドクラウドにも注力している。同社がz13をこのユースケース向けに位置付けているのは当然だ。具体的に、IBMのセキュリティー機能は、エンドツーエンドのハイブリッド環境のセキュリティーを強化することによって、個人認証管理、データの保護および監視、セキュリティー分析および侵入監視を可能にしている。

残念ながらIBMはz13の価格を明らかにしていないが(実はどのメインフレームについても)、標準的z13メインフレームの価格は10万ドルを優に越えるものと思われる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

IBM、Ustreamを買収を確認―エンタープライズ向けクラウド・ビデオ事業部を新設

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今朝(米国時間1/21)、IBM はビデオ会議サービスのパイオニア、Ustreamを買収したことを確認した。同時に、IBMはすでに買収ずみの他のクラウド・ビデオ企業数社とUstreamとを合わせて、新しいクラウド・ビデオ・サービス事業部を立ち上げたことも発表した。

IBMのUstream買収の第一報はFortuneで、この記事によれば買収価格は1億3000万ドルだった。 IBMはこの価格については確認していない。

新事業部は買収された4社からなる。今回買収されたUstreamに加えて、IBMが12月に買収したビデオ・マネージメントのClearLeap、10月に買収したビデオ・ストレージのCleversafe、 2013末に買収した.大型ファイル転送ツールのAsperaがクラウド・ビデオ事業部を構成する。

新事業部の責任者にはClearLeapの買収を機にIBMに入社したBraxton Jarrattが選ばれた。Jarrattは「クラウド・ビデオ分野のエンタープライズ向けフルサービスを構築する上でIBMに欠けていたパズルの一片をUstreamが埋めることになるだろう」と意欲を見せた。

IBMには計画がある

TechCrunchの取材に対して、Jarratは「IBMがビデオ分野の企業を次々に買収したのは思いつきではなく、ビデオ・サービスにおける将来計画に沿ったものだ」として次のように述べた。

IBMはその場の思いつきで行動するような会社ではない。私が〔昨年秋の買収で〕IBMと関わるようになって、この会社には壮大なマスター・プランがあり、すべての行動はそこから割り出されていることに気づいた。これがIBMに感服した最大のポイントだ。多くの企業はライバルの動向に対する反応として買収を行う。IBMの企業買収はそういうものとは全く異なる。IBMはエンタープライズ向けビデオ事業について確固とした見通しがあり、Ustreamの買収と新ユニットの組織はそのマスター・プランに基づいた行動だ。

最近のIBMの企業買収の例に漏れず、今回もUstreamの買収はそのサービス・コンポネント自体を直接利用するという面と、Ustreamの機能をAPIとしてBluemixに取り込もうとする面がある。BluemixはIBMが力を入れているエンタープライズ向けPaaS(Platform as a Service)だ。「IBMでは新しいビデオ・クラウド事業にサードパーティのデベロッパーが積極的に参加することを期待している」とJarrattは述べた。

今月のCESで明らかになったことの一つだが、ユーザー企業はビデオ配信にあたって高度なアナリティクスの提供を望んでいる。IBMはこれに対し、新事業にWatson人工知能を導入する計画だ。Jarattは「ビデオの視聴者がいつ、どのくらいビデオを視聴ないしビデオ会議に参加していたか、どんな行動を取ったかなどの詳しい情報が「即座に得られるようになる」と語った。【略】

大きな野心

クラウド・ビデオ事業部の新設はIBMが広告、ストレージ、モバイル、コミュニケーションなどで新しい大きな事業分野を開拓し、ライバルとの競争を有利な方向に導くチャンスを与える。IBMはエンタープライズ・ビデオ分野に大きな商機を見出している。報じられている買収価格は、IBMのような巨大企業がゲームに参加するためのコストしてはむしろ安価なのだろう。

「われわれが問題にしているビデオ・ビジネスの市場は2019年には1050億ドル弱になると見込まれている。 2019年といえばそう遠くない将来だ。この分野ではわれわれがもっとも魅力あるサービスの提供者となる能力があることが判明するだろう」とJarrattは語った。

画像homard.net/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

スタックの誤謬―大企業が新分野参入でいつも失敗する理由を考える

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多くの企業が新分野に挑戦する際に「スタックの誤謬」を犯し、その結果、劇的に失敗する。

伝統あるデータベース企業が「アプリ化なんか簡単だ」と思ったり、バーチャル・マシンの企業が「ビッグ・データなんかなんということもない」と思ったりするのがよい例だ。われわれはこういう考え方を「スタックの誤謬」と呼んでいる。

スタックの誤謬とは、企業がこれまで積み重ねてきたさまざまなレイヤーの上にもう一段レイヤーを重ねる〔スタックする〕ことを「ごく簡単だ」と思い込むことと定義できる。

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〔日本版注〕漫画フキダシ:心理学者「心理学などというのは社会学の応用分野にすぎない」、生物学者「心理学などというのは生物学の応用分野にすぎない」、化学者「生物学などというのは科学の応用分野にすぎない」、物理学者「結局すべての科学は物理学の応用分野にすぎない。一番偉い学問をやっていてよかった」、数学者「おお、なんだきみらはそこにいたのか。まるで見えなかったよ」

漫画のクレジット: XKCD

数学者は往々にして自然界は結局数学の方法で描写できると信じている。つまり、数学者に言わせれば「物理学なんて応用数学の一分野にすぎない」etcというわけだ。

「ただのアプリにすぎない」―スタックの誤謬

実はビジネスの世界でもわれわれは似たような幻想に陥っている。データベース企業は「SaaSアプリなんてデータベースの簡単な応用分野にすぎない」と思っている。こういう幻想は、データベース企業にSaaSアプリを作り、ライバルとの競争に勝ち抜き、新事業を成功させるのは簡単なことだという誤った安心感を与える。

歴史が教えるとおり、下位のテクノロジー要素を苦労して開発したのはそれらのテクノロジーのベンダー企業だったにもかかわらず、クラウドのIaaS分野を支配しているのはオンライン通販から出発したAmazonだ。個別要素技術の開発のパイオニアだったVMwareはAmazonにはるかに引き離され、トップをうかがうどころではない。AWSのサーバーはすべてVMWareが開発し、現にそのコア・コンピテンシーである仮想化テクノロジー上で作動している。にもかかわらずこの市場のかけ離れた1位はAWSだ。またOracleはCRMのSaaS分野でSalesforceに勝てない。Oracleとしては「Salesforceなど単なるデータベース・アプリのユーザーにすぎない」と思っているだろう。実際SalesforceはOracleのデータベース・ソフトウェアを使っている。

Appleはチップを設計し、プログラム言語を作るといった上流から世界の都市に展開されたショップまで、市場の垂直統合に大きな成功を収めてきた。にもかかわらずスタックの誤謬と無縁ではいられない。Appleは一見単純なアプリ―写真共有や地図―を作るのがいかに難しいかを発見しているところだ。

振り返ってみるとこうした例は数多い。 IBMはIBM PCの設計、製造に成功したがそのハードウェアのレイヤーの上にスタックすべきソフトウェアのレイヤーについては深く考えることがなく、結果としてMicrosoftにOS市場を明け渡すことになった。

1990年代にOracleのファウンダー、ラリー・エリソンはSAPがERPを売ってグロテスクなまでに巨大な利益を得ていることに気づいた。ERP(統合基幹業務パッケージ)は各種業務プロセスを自動化するソフトウェアだが、その実体はいくつかのテーブルとそれらを接続するワークフローだ。エリソンは数千万ドルを投じて市場参入を図ったが、結果はまだら模様だった。最後にOracleは顧客管理、人事管理などの優秀なシステムで知られるPeopleSoftとSiebelを買収してアプリ市場で地位を確立することに成功した。

大企業がスタックの誤謬の罠に陥り続ける理由は?

スタックの誤謬はある意味で人間性の本質に基づくものだ。われわれは自分が熟知している分野こそ価値があると考えたがる。読者が仮に巨大なデータベース企業でチップを設計しているとしよう。CEOがあなたに「われわれはIntelやSAPと競争できるだろうか?」と尋ねたとする。「私がチップを開発したのはRDBソフトを走らせるためでそれ以上のことは分かりません」と正直に答えるエンジニアはまずいないだろう。逆に、それまでに蓄積されたチップ設計のノウハウをもってすれば、その上にERPアプリを走らせるという新たなレイヤーを重ねるのは簡単だと考えるに違いない。ERPなどといっても所詮はテーブルとワークフローにすぎない。

成功を阻むボトルネックは、ツールの詳細を知らないことによるのではなく、顧客のニーズを理解できないところに存在する。データベースのエンジニアは顧客が必要とするサプライ・チェーンの管理についてほとんど何も知らず、企業がどんなソフトを必要としているか理解できない。もちろんそうした分野を知っている専門家を雇い入れることはできる。だがそれは〔その企業の〕コア・コンピテンシーを向上させることにはならない。

プロダクト・マネージメントというのはどういうものを作ればいいかを知るというアートだ

イノベーションというのはスタックを下に降りる方が〔既存の知識を利用できるので〕がはるかに容易だ。逆にスタックを上に重ねるのは驚くほど難しい。

エンジニアがスタックを下に降りる場合、自分自身がそうした基礎となるスタックのユーザーであり、何が必要なのかを体験から熟知している。たとえばAppleは次世代のコンピューター・チップに何が必要とされるかを正確に知っていた。Appleは当初からチップ設計の技術を持っていたわけではない。しかし重要なのは顧客ニーズであり、Appleはその部分をよく理解していた。テクニカルな能力が必要ならライセンスを買うことも専門家を採用することもできる。しかし市場のニーズを根底かから正確に把握する能力は金を出せば手に入るというものではない。

これがAppleが半導体の設計と製造で成功を収める一方、マップ・アプリでは失敗した理由だ。

Google、Facebook、WhatsApp

Googleが別の良い例を提供してくれる。Googleはメールと検索の分野で圧倒的な地位を築いており、われわれの興味、関心がどこに向いているかを正確に知っている。しかし、一見するとささいなことに思える「それを利用したアプリ」を作ることができない。つまりソーシャル・ネットワークづくりで失敗している。

これはスタックの誤謬のもっともはなばなしいサンプルかもしれない。既存のレイヤーの上に新たなレイヤーをスタックしていくことは可能だ。難しいのはどんな新しいレイヤーを重ねたらいいのかを知るのが難しいことだ。

プロダクト・マネージメントというのはどういうものを作ればいいかを知るというアートだ

スタックの誤謬という現象は、大企業が一見すると自明なテーマ、つまり熟知している分野なので少し手をのばすだけで十分につかみ取れそうなにテーマに挑んでは失敗する理由を理解するための重要なヒントになる。その答えはおそらく、何(what )をすべきかがどのように(how)すべきかより100倍も重要だという点にあると思われる。

画像: Andrey Kozachenko/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AmazonのメールとカレンダーのサービスAmazon WorkMailがプレビューを終える…直接AWSからサービスを提供

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Amazonの企業向けメール/カレンダーサービスWorkMailが今週、プレビューを終えた。1年前にデビューしたこのプロダクトはAmazon Web Servicesを利用し、Microsoft Exchangeなどのレガシーソリューションに取って代わることをねらっている。

ただしWorkMailはMicrosoft Outlookのようなメールクライアントソフトウェアと競合するのではなく、それを統合する。またMicrosoft ExchangeのActiveSyncプロトコルを使用しているApple Mailなど、そのほかのメールクライアントからも利用できる。iPhone, iPad, Kindle Fire, Fire Phone, Android, Windows Phone, BlackBerry 10など、モバイルのメールクライアントアプリもだ。

また同社によれば、WorkMailのWebアプリケーションバージョンも提供される。

Amazonはこのところ企業顧客を取り込む方向に舵を切っているが、今回のプロダクトもその路線…Zocaloの買収による共有化ストレージサービスWorkDocsや、企業のIT部門がエンドユーザにクラウドベースのデスクトップ環境を提供できるサービスAmazon WorkSpacesなど…の一環となる。これら既存のサービスと同じくWorkMailも、Amazon Web Servicesのパワーを活用して、ビジネスユーザのニーズに直接奉仕することをねらう。つまりそれは、単なるバックエンドソリューションではない。

WorkMailは企業が利用するメールプロダクトとして、暗号化や、スパムやウィルスを事前に見つけるメッセージスキャン、メールボックスが置かれる場所(リージョン)の指定など、セキュリティ機能を強化している。とくにリージョンという要素は、Snowdenが政府による盗視行為を暴露して以降の今日、ヨーロッパの顧客には喜ばれるだろう。

ほかにもプレビューの段階でさまざまな機能が導入された。それらはたとえばKMS(AWS Key Management Service)の統合、ISO 27001, ISO 27017, ISO 27018証明への準拠、会議の場所、機器などを手配するリソース作成、ExchangeからWorkMailへ移行するためのマイグレーションツールなどだ。

そのほか同社は、この製品が一般公開される時点ではセットアッププロセスが今よりもずっと容易になる、と言っている。Microsoft Active Directory対応のSimple ADを使用するので、セットアップは10分で終わるそうだ。Apple MailやOutlookなど、OS X上のクライアントにも対応する。

まだ準備中の機能もある。それはたとえば、単一のグローバルアドレス帳のサポート、フリー(空いている)/ビジー(混んでいる)の情報提供、メールのジャーナリング機能、などだ。

Amazon WorkMailの一般公開時の料金は、これまでと同じユーザ一人あたり月額4ドル(メールボックスのストレージは50GBを提供)と、他社との競合を意識した設定になっている。一人あたり2ドルの追加料金で、一人あたりクラウドストレージが200GBのAmazon WorkDocsを利用できる。

WorkMailを利用できるAWSのリージョンは、U.S. East(Northern Virginia), U.S. West(Oregon), そしてEurope(Ireland)だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。