AmazonのAWS re:Inventのストリーミング視聴はこちらから

NoSQLデータベースを夢見てやまないのなら、米国時間12月3日に開催されるAWS re:Inventの内容は最も回答に近いだろう。太平洋標準時朝8時(日本時間12月4日午前1時)に、クラウドコンピューティング分野の最先端をいく人々がAWSの次なる機能を紹介する予定だ。

Amazon(アマゾン)は、Google CloudやMicrosoft Azureとともに、ウェブのインフラを構築している。そして、無数のスタートアップが唯一のホスティングプロバイダーとしてAWSを利用している。従って、同社がクラウド分野でライバルを打ち負かすために何を準備しているかを見るのは興味深い。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

初のApple Musicアワード受賞者はビリー・アイリッシュとLizzo、LIL NAS X

アップルは今年からApple Musicアワードをスタートし、初の受賞者がApple Musicのエディトリアルチームの選考とストリーミングデータから選出された。Apple Musicアワードの頂点であるグローバル・アーティスト・オブ・ザ・イヤーの受賞者はBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)。日本時間12月5日午前11時30分から米国カリフォルニア州クパティーノのアップル本社にあるスティーブ・ジョブズ・シアターでビリー・アイリッシュがパフォーマンスし、その模様はライブストリーミングされる。

画像:Apple Music

Apple Musicアワードには5つのカテゴリーがある。エディトリアルチームが、グローバル・アーティスト、ソングライター、ブレイクスルー・アーティストのオブ・ザ・イヤーを選出した。アルバムとソングのオブ・ザ・イヤーは、ストリーミングデータに基づいて決定された。

ビリー・アイリッシュは、アルバム・オブ・ザ・イヤーと、兄のFinneas(フィンニア)と共同でソングライター・オブ・ザ・イヤーも受賞した。アルバム・オブ・ザ・イヤーは「WHEN WE FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」に対して贈られたもので、これはApple Musicで10億回以上再生され、2019年で最も多く再生されたアルバムだという。

ブレイクスルー・アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは「Cuz I Love You」を歌うLizzo(リゾ)。ソング・オブ・ザ・イヤーは、今年Apple Musicで最も多くストリーミングされたLIL NAS X(リル・ナズ・X)の「Old Town Road」だ。

アップルは受賞者に贈るトロフィーについて、プレスリリースで「磨かれた1枚のガラスシートと機械加工され酸化被膜で覆ったアルミニウムボディーとの間にAppleのカスタムシリコンウエハーを配しています」。

【中略】

「世界の音楽を皆様の指先に届けるデバイスを動かすのと同じチップがApple Musicアワードの真ん中に座っているのは象徴的です」と述べている。

Apple Musicアワードが今年スタートしたのは、ハードウェアの売上が伸び悩む中でアップルがサービスに力を入れていることの表れだ。アップルは今年、Apple TV+、Apple Arcadeと新しいサブスクリプションサービスを開始し、どちらもアップルだけで楽しめるコンテンツであることを前面に押し出している。

Apple MusicのライバルであるSpotifyも先日、独自のミュージックアワードを設ける計画を発表した。ストリーミングとユーザーエンゲージメントのデータに基づいて受賞者が決定される。第1回のSpotifyアワードは来年3月5日に、都市としてSpotifyの最大のマーケットであるメキシコシティで開催され、有料テレビサービスのTNTでラテンアメリカのスペイン語圏向けにライブ中継される予定だ。

アップルのApple Musicおよびインターナショナルコンテンツ担当バイスプレジデントであるOliver Schusser(オリバー・シュッサー)氏はプレスリリースで「Apple Musicアワードは、世界で好まれているアーティストの情熱、エネルギーそしてクリエイティビティを評価すべくデザインされています。初の受賞者たちは音楽的にも多様であり、深い社会的会話に火をつけ、文化に影響を与え、世界中のお客様を鼓舞しました。彼らを祝うことは私たちにとってもこの上ない喜びです」と述べている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

アトラエとユーフォリアが資本業務提携、アスリートのパフォーマンス向上目指す

アトラエとユーフォリアは12月3日、資本業務提携を発表した。アトラエはIT/ウェブ業界に強みを持つ求人メディアのGreen、ビジネスパーソン向けのマッチングアプリのyenta、組織改善プラットフォームのwevoxなどの事業を展開。ユーフォリアは、アスリートのコンディションや体調を管理するONE TAP SPORTS(ワンタップ・スポーツ)と呼ばれるシステムを開発・提供する企業だ。

人材系とスポーツ系で一見すると事業内容が異なる2社だが、アトラエではwevoxを活用してエンゲージメントスコアと競技パフォーマンスの相関分析を産学共同で研究するなど、スポーツ領域への取り組みを進めていたそうだ。一方ユーフォリアのONE TAP SPORTSは、選手の現在の体調やトレーニング記録、ケガの履歴などを一元管理でき、ラグビー日本代表をはじめ日本代表および国内外のプロチームを中心に30競技、300チーム以上の導入実績がある。そのほか、ジュニアアスリートや部活動などのアマチュア競技にも使われているそうだ。

今回の資本業務提携は、このwevoxをベースとした研究とONE TAP SPORTSのシナジー効果が見込めることから実現したようだ。今後は、両社が保有するコンディションをデータで可視化するノウハウを生かして、アスリートのパフォーマンス向上に貢献するとしている。アスリートだけでなく、一般ユーザーが怪我を予防しつつ安全かつ効率的にスポーツを楽しめる環境整備も進めていくとのこと。

CircleCIの継続的統合とデリバリーサービスがAWSのサポートを拡充

継続的インテグレーションとデリバリーのサービスを提供するCircleCIは1年ほど前から、そのコマンドやインテグレーションをサードパーティのサービスで容易に再利用するための方法としてOrbsを提供してきた。当然ながら、Orbsが最も多く使われるサービスといえばAWSであり、同社のデベロッパーもコードのテストやデプロイをAWSで行っている。米国時間12月2日、ラスベガスで行われているAWSの例年のデベロッパーカンファレンスre:Inventと日を合わせたかのように、同社はOrbsにAWSのServerless Application Model(SAM)のサポートを加えたことを発表した。これにより、AWS Lambdaのテストとデプロイを行う自動化CI/CDプラットホームのセットアップがとても容易になる。

同社によると、1年前にローンチしたOrbsを今では1万1000社あまりが利用している。OrbsのAWS用の利用の中で特に多いのは、例えばAmazon Elastic Container ServicesとElastic Container Service for Kubernetes(EKS)のイメージの構築とアップデートや、AWS CodeDeployのサポート、AWSのコマンドラインインタフェイスをインストールし構成するためのOrbs、S3ストレージサービスで利用するOrbsなどだ。

CircleCIの事業開発担当副社長Tom Trahan(トム・トラハン)氏は「最近ではますます多くの企業がLambdaやECS、EKSなどのマネージドサービスを使うようになっている。サーバーレスのエコシステムを管理しているAWSのプロダクトチームと協力して、LambdaにCI/CDのワークフローを加えたいユーザーのための出来合いのサービスを作ることはタイミングとしても理想的だ。Lambdaも最初の頃は、従来のソフトウェアのパターンとデリバリーのフローに従わないデベロッパーが多かった。しかしその後は徐々にLambdaの利用機会が増えて、それを最も有効利用するためには、プロダクション品質のコードを作るべきという風潮になってきた。そしてLambdaでも同じソフトウェアデリバリーの能力と規律を持つべきという理解が定着してきた」と語る。

トラハン氏が強調するのは、今はまだアーリーアダプターが多いし、最初からクラウドネイティブでやってるような企業が顧客として多いことだ。しかし最近では、そういう顧客の中にも従来型の企業が多くなっており、彼ら独自のデジタル革命が急速に進行しているという。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アマゾンが医療向け音声認識サービス「Amazon Transcribe Medical」を発表

Amazon(アマゾン)はAWSの文字起こしサービスであるAmazon Transcribeの新機能として、医療会話のサポートを開始した。これは米国時間12月2日、午前のAWS re:inventカンファレンスで発表された。機械学習に基づく新サービスであるAmazon Transcribe Medicalは、医師の診断などに関する会話を、人間の介入なしにリアルタイムで正確なテキストに変換するとアマゾンはコメントしている。

一部のサービスのように「カンマ」や「ピリオド」などと言う必要はなく、普通に話すだけでいい。変換されたテキストは、ERシステムやAWSのAmazon Comprehend Medicalなどの言語サービスに送り込まれて処理される。同サービスはHIPAA(医療保険の相互運用と責任に関する法律)に準拠しており、ユーザーのニーズに応じたスケーリングも可能で、前払金不要で使ったぶんだけ料金を支払う。

技術的な仕組みは次のようになる。マイクロホンから取り込んだ音声をパルス符号変調したデータをストリーミングAPIにWebSocketプロトコルを使って送り込む。APIは変換されたテキストに単語単位のタイムスタンプと句読点を加えてJSONのBlobオブジェクトとして送り返す。データはAmazon Simple Storage Service(S3)) のバケットに保存することもできる。

Amazon Transcribe Medicalは、2017年に公開されたAmazon Transcribeを基に開発され、アマゾンが医療分野への投資を増やし始めたときに登場した。音声技術と医療の融合には特に力を入れている。例えば、先週アマゾンはAlexaの投薬管理サービスを公開し、ユーザーは薬の追加や服用のリマインダーを音声で依頼できるようになった。

さらに同社は、音声アプリAlexaをHIPAA準拠に改善し、医療スタートアップのPillPackHealth Navigatorを買収し、社員向けの医療サービスとしてAmazon Careを提供しているほか、病院現場でのAlexa利用の試行も行っている。

医療分野で音声認識に力を入れているのはアマゾンだけではない。GoogleもGoogle Brainで参入し、MicrosoftNuancePhilipsなど既存の大手企業やさまざまなスタートアップもこの分野に加わった。Amazon Transcribe Medicalは、米国東部(バージニア北部)と米国西部(オレゴン)の両リージョンでまず提供される。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookが災害対応ツールを拡張し、WhatsAppと統合

これまで80あまりの国の300件の災害で通信のために利用されてきたFacebookのCrisis Response機能が拡張される。米国時間12月2日に発表された新しい機能の中には、WhatsAppの統合、現地体験情報のサポートと共有、人道支援データに災害や避難などに関連した地図を含めるといった内容が含まれる。

Crisis Responseは最初、災害時に家族や友だちが連絡し合うささやかな機能だった。2年前にFacebookはそれらのSafety Check(安全確認)、Community Help(コミュニティ支援)、Fundraisers(募金)などのツールを、中心的なハブであるCrisis Responseへとまとめた。

本日、Crisis Responseに新たに加わったのは、被災地の人々が見たものや考えたことなどの体験情報を共有する機能だ。それらは例えば、建物の倒壊や道路の封鎖といった情報だ。これまでは、援助の要求とそれらへの対応という通信がメインだったが、これからは災害そのものの情報が加わる。

さらに、FacebookのCrisis ResponseがWhatsAppから使えるようになる。ただし、まだ浅い統合で、すべての機能ではない。ヘルプのリクエストをFacebook MessengerだけでなくWhatsAppのメッセージでも送れる程度のことだ。

Facebookの人道支援データツールであるData for Goodが、100あまりの企業団体とのパートナーシップにより拡大される。また災害地図の提供により、救援団体が支援物資の送り先を知ることができる。それらのまとめられたデータの上では、人名は匿名化されている。

Facebookによると、今回のアップデートでCrisis Responseは国や地方の行政も利用できるようになる。とくに米国では、Crisis Responseは災害救援NPOのDirect ReliefやNational Alliance for Public Safety GIS(NAPSG)Foundationもパートナーになっている。

災害地図も改良され、特ににInternational Displacement Monitoring Centreの協力により、国内避難民関連の情報が地図上でわかるようになる。また通勤のパターンや観光客の人口などの情報も、より正しくなった。新しい機能は現在展開中だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米国サイバーマンデーのオンライン売上は1兆円超えの見込み

米国でのサイバーマンデーのオンライン売上は予想通り94億ドル(約1兆240億円)に達する見込みだ。Adobe(アドビ)の分析によると、この数字は前年比18.9%増で、ブラックフライデーの過去最高となったオンライン売上高74億ドル(約8100億円)を上回る。

アドビは、サイバーマンデーの米国東部時間午前9時の時点で、米国の消費者がオンラインでの買い物にすでに4億7300万ドル(約515億円)を使ったとしている。

同社の予想とレポートは、米国のオンライン小売サイトへの訪問回数が1兆回超、そして5500万件ものSKUがあるという想定に基づいている。加えて、Adobe Analyticsは米国小売トップ100社のうち80社の決済を追跡できる。

サンクスギビング(感謝祭)後の日数が短いという問題を、小売業者は賢くも1週間早くセールを開始することで解決した。この策は功を奏し、米国の消費者は11月1日以降、オンラインショッピングで721億ドル(約7兆8600億円)を使った。これは過去最多で、前年比16.3%増だ。

サンクスギビングとブラックフライデーの後にくるショッピングデーを意味する「Small Business Saturday」や「Super Sunday」といった言葉はまだ比較的新しいものだが、週末を通して消費者は74億ドル(約8070億円)を使った。

これまでのところトップセラー商品は、Frozen 2のおもちゃ、L.O.L Surprise Dolls、Paw Patrolのおもちゃ、そしてMadden 20やFIFA 20、Nintendo Switchといったゲームやゲーム機だ。Samsung(サムスン)のテレビやApple(アップル)のMacBookシリーズ、Amazon(アマゾン)のEchoデバイスもよく売れている。ブラックフライデーの11月29日から12月2日までの間にアップルは300万セットものAirPodsを販売したようだというレポートもある。

サイバーマンデーでは、テレビやおもちゃなどで大幅な割引が見込まれるとアドビは指摘する。割引率はテレビで平均19%、おもちゃで平均20%、コンピューターで平均18%とのこと。しかし、家具や寝具はギビングチューズデー(12月3日)のほうが10%オフと安くなりそうだ。

サイバーマンデーの売上は、通常の要因に加えて今年は悪天候の恩恵も受けるかもしれない。厳しい天候になると、消費者は家にこもって買い物をする傾向にある。例えば、米国ではブラックフライデーに2インチ(約5cm)を超える記録的な積雪があり、オンラインの売上は7%伸びた。

「このホリデーシーズンのオンラインショッピングは予想以上の伸びとなった。小売業者ははセール期間がいつもよりも短くなることを意味する短いホリデーシーズンを恐れ、消費者はそれに気づいた。一部のエリアでは、雪や大雨といった天気によって多くの消費者が外出を控え、オンラインでお得な買い物をすることを選んだ。ブラックフライデーだけでもオンラインで74億ドル(約8070億円)の売上があり、この数字は昨年のサイバーマンデーの79億ドル(約8600億円)に迫るものだった」とAdobe Digital Insightsの主席アナリスト兼責任者のTaylor Schreiner(テイラー・シュレイナー)氏は述べた。

「消費者は、今シーズン多用されたスマホの存在もあって、ホリデー期間中の買い物の仕方について認識を新たにしている。今年のホリデー期間中に消費者はスマホ経由の買い物で140億ドル(約1兆5300億円)使うと予想している」とシュレイナー氏は付け加えた。

アドビはまた、サイバーマンデーのゴールデンの4時間(午後10時から午前2時まで)に、サイバーマンデー売上全体の30%に相当する28億ドル(約3050億円)が使われると指摘する。これは、消費者がセールが終わる前に駆け込み的に買い物するからだ。ピークの午後11時から零時にかけては、1分あたり1100万ドル(約12億円)が使われる見込みだ。

サイバーマンデーのオンライン売上が94億ドルになるという同社の予想は、少なくとも概算ではほぼ正確であることが見込まれる。しかしセールが終了するまではっきりとした数字はわからず、もしかすると予想をやや下回るかもしれない。ちなみに、ブラックフライデーの売上高は同社予想の75億ドルを下回った。

Salesforce(セールスフォース)が出しているサイバーマンデー売上高の予想は、アドビのものより若干少ない。米国で80億ドル(約8700億円)を売り上げ、グローバルでは300億ドル(約3兆3000億円)になると予想している。この数字は対前年でそれぞれ15%増と12%増だ。

<画像クレジット: Klaus Vedfelt / Getty Images

関連記事:米国ブラックフライデーのオンライン売上は過去最高の約8100億円

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(翻訳:Mizoguchi)

AWSが量子コンピューティング・サービス「Braket」を発表

ここ数カ月、Google、Microsoft、 IBM他の有力ライバルがこぞって量子コンピューティングにおける進歩を宣伝する中、 AmazonのAWSは沈黙を守ってきた。またAWSには量子コンピュータ研究の部署がなかった。しかし米国時間12月2日、AWSはラスベガスで開幕したデベロッパー・カンファレンスのre:Invent 2019で、独自の量子コンピューティングサービスとしてBraket(ブラケット)を発表した。

現在利用できるのはプレビュー版で、量子力学計算でよく用いられるディラックが発明したブラケット記法が名称の由来だ。ただしこの量子コンピューティングはAWSが独自に開発したものではない。D-Wave、IonQ、Rigettiと提携し、これらのシステムをクラウドで利用可能とした。同時にAWSは量子コンピューティングの専門組織を整備し、 Center for Quantum Computing(量子コンピューティングセンター)とAWS Quantum Solutions Lab(量子ソリューションラボ)を開設した。

Braketではデベロッパーは独自の量子コンピューティング・アルゴリズムを開発してAWSで実行をシミュレーションできる。同時にAWSを通じて提携パートナーの量子コンピュータハードウェアを用いて実際にテストすることが可能だ。これはAWSとして巧妙なリスクヘッジ戦略だろう。

AWSとしては量子コンピュータを独自に開発するための膨大なリソースを必要とせずに量子コンピューティングをサービスにとり入れることができる。提携先パートナーは自社の量子コンピューティングのマーケティングやディストリビューションにAWSの巨大なユーザーベースが利用できる。デベロッパーや研究者はAWSのシンプルで一貫したインターフェイスを利用して量子コンピューティングを研究、開発することができる。従来、個別の量子コンピューティングにアクセスするのは手間のかかる作業であり、いくつもモデルを比較してニーズに適合した量子コンピューティングを選ぶのは非常に困難だった。

Rigetti Computingの創業者でCEOのチャド・リゲッティ(Chad Rigetti)氏は「AWSとの提携により、我々のテクノロジーを広い範囲に提供することが可能になった。これは量子コンピューティングというマーケットの拡大を大きく加速するだろう」と述べた。D-Waveの最高プロダクト責任者、R&D担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのアラン・バラツ(Alan Baratz)氏も同じ趣旨のことを述べている。

【略】

AWSが自社のデータセンターに直接量子コンピュータを導入したわけではないのが重要なポイントだ。簡単にいえばAWSは複数の量子コンピューティングに対して多くのユーザーになじみがある一貫したインターフェイスを提供する。個々の提携先企業はすでに量子コンピューティングを自社のラボやデータセンター内で稼働させていたが、それぞれインターフェイスが異なるため外部のユーザーがアクセスするのが難しかった。

これに対してBraketはAWSの標準的インターフェイスを通じて他のクラウドサービスと同様のマネージドコンピューティングを提供する。またデベロッパーはオープンソースのJupyter notebook 環境を通じてアルゴリズムをテストできる。Bracketにはこれ以外にも多数のデベロッパーツールがプリインストールされているという。また標準的量子コンピューティングやハイブリッドコンピューティングを開発するためのチュートリアル、サンプルも多数用意される。

また新たに開設されたAWSの専門組織は、研究者が量子コンピューティングのパートナーと協力、提携することを助ける。「我々の量子ソリューション・ラボはユーザーが量子コンピュータを開発している各社と提携することを助ける共同研究プロジェクトだ。これにより世界のトップクラスの専門家と提携し、ハイパフォーマンス・コンピューティングを推進できる」とAWSでは説明してる。

研究センター、ラボの開設はAWSにとって長期的な量子コンピューティング戦略の基礎となるものだろう。AWSの過去の動向から考えると、これはテクノロジーそのものの開発というよりむしろサードパーティが開発したテクノロジーに広い範囲のユーザーがアクセスできるプラットフォームを提供するところに力点が置かれるものとなりそうだ。

AWSのユーティリティ・サービス担当のシニア・バイスプレジデント、チャーリー・ベル(Charlie Bell)氏は次のように述べた。「量子コンピューティングは本質的にクラウド・テクノロジーであり、ユーザーは量子コンピュータにクラウドを通じてアクセスするのが自然だ。Braketサービスと量子ソリューション・ラボはAWSのユーザーがわれわれのパートナーの量子コンピュータにアクセスする。これにより新しいテクノロジーにどのようなメリットがあるのかは実際に体験できる。また量子コンピューティング・センターは大学を始め広く研究機関と協力し量子コンピューティングの可能性を広げていく」。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「投稿は偽物」と断じたシンガポール政府の命令にFacebookが屈する

Facebook(フェイスブック)は、フリンジニュースサイト(主流ではないニュースサイト)の投稿に訂正通知を追加した。この投稿については、シンガポール政府が虚偽の情報を含んでいると主張している。同政府が「フェイクニュース」に対して国境を越えて新法を適用するのは初めてだ。

シンガポール政府によると、フリンジニュースサイトのStates Times Review(STR)の投稿には「中傷的な非難」が含まれているという。同サイトの投稿には、内部告発者とされる人物の逮捕と選挙不正を非難する内容が含まれている。

シンガポール当局は以前、STRの編集者であるAlex Tan(アレックス・タン)氏に投稿の修正を命じたが、オーストラリア国民である同氏は「外国政府からのいかなる命令にも従わない」と述べた。シンガポール生まれのタン氏は、自身はオーストラリア在住のオーストラリア国民であり法律の対象外だと述べた。フォローアップの投稿で同氏は「不当な法律はすべて無視し、抵抗する」と述べた。同氏は、Twitter、LinkedIn、Google Docsにも記事を投稿し、シンガポール政府はそれらにも修正を命じるべきだと抗議した。

Facebookの通知には「この投稿には虚偽の情報があるとのシンガポール政府の主張を、Facebookは法律に従い通知する義務がある」とある。通知は投稿の下部に新たに表示されたが、投稿の内容そのものには変更はない。シンガポールのソーシャルメディアユーザーのみが通知を見ることができる。

Facebookは声明で「フェイクニュース」防止法の下で必要な表示を行ったと述べた。正式名称である「オンラインの虚偽情報および情報操作防止法」は10月に施行された。

Facebookの「透明性レポート」によると、政府が現地法違反だと主張するコンテンツをFacebookがブロックすることはよくあり、今年6月までに世界で1万8000件近いケースがあった。

シンガポールにアジア本部があるFacebookは、法律は表現の自由に影響を与えないと政府が保証することにより「明確で透明なアプローチで運用される」ことを期待すると表明した。

法律違反には重い罰金に加え、最長5年の懲役の可能性がある。偽のアカウントやボットを使用して偽のニュースを広めることも禁じており、罰金は最高で100万シンガポールドル(約8000万円)および最長10年の懲役だ。同法がシンガポール国内外問わず表現の自由を危険にさらすと批判する向きもある。

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(翻訳:Mizoguchi)

オンライン商標登録サービス「Cotobox」にAI活用の“ロゴ調査機能”が追加、最短10秒で同一または似ている画像を検索

オンライン商標登録サービス「Cotobox(コトボックス)」を提供するcotoboxは12月2日、同サービスに“AIを活用した業種別のロゴ調査機能”を追加した。

以前にもTechCrunch Japanで紹介しているCotoboxは、企業の商標登録の負担を減らすサービスだ。ブラウザ上で簡単に商標を調査し、出願から管理まで行うことができる。

商標の検索自体は特許情報プラットフォームを使えば行えるが、Cotoboxでは商標とともに業種を入力することで、既に登録済み、または登録の出願中の商標が存在しているか、簡単に無料でチェックすることが可能だ。3月のフルリニューアルにより、具体的に「どの商標と似ているのか」を把握すること、そして商標の検索条件及び結果を保存することができるようになった。

ユーザーが商標登録を希望する場合には、低価格でCotoboxの提携先の弁理士に出願依頼もできる。商標の調査をした後、1クリックで商標登録の依頼に進むと、Cotobox提携の弁理士が、商標調査の結果と、同サービス上でユーザーと行なったメッセージの内容をもとに、出願書類を確定させ、特許庁手続きを行う。商標出願の手数料は6000円からとリーズナブルな値段設定になっている。

そしてCotoboxは本日、「AIを活用した総合的な商標クラウドサービスの実現」に向けて、従来の文字商標調査に加えて、業種別ロゴ調査機能を提供開始した。

Cotoboxいわく、「自社のロゴと似ている商標が、他社によって既に登録又は出願済みになっていることが良くある」。知らずに特許庁へ出願手続きをすると、登録できないだけではなく、他社から商標権の侵害であるとの指摘を受けるリスクもあるという。

前述のような課題を解決するためのロゴ調査機能では、ロゴのJPEGファイルをアップロードし、業種を選択することで、同一、または類似したロゴ商標を表示する。AIの活用により、過去に出願された約92万件のロゴ商標の中から、同一業種の、同一または似ている画像を、最短10秒で見つけ出す。「同じまたは類似の商標なし」、「同じまたは類似と思われる商標あり」、「同じまたは類似の商標あり」といった判定もあり、ロゴの詳細な商標情報を閲覧することも可能だ。

 

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cotobox代表取締役CEOの五味和泰氏は、特許庁の特許情報プラットフォームには、図形をドラッグ&ドロップして検索する機能はなく、「どこで検索するのか、というのが課題としてあった」と話す。そして、弁理士は、Cotoboxのロゴ調査機能がなければ、申し込んだユーザーのロゴに関して、1から全て調査しなければならない。その場合、手間が発生するため、コストも嵩んでしまう。一方、Cotoboxではユーザーが検索機能を自分で使うため、弁理士の手間が削減され、リーズナブルな料金に設定できている。

2017年11月にサービス提供を開始したCotoboxでは、商標調査回数は70万回を超えたという。料金の高さを解決し、弁理士へアクセスしやすくしている。五味氏は「商標登録を後回しにしているケースは結構ある」と話した上で、「商標が取れなかった、もしくは誰かの商標を侵害していた、となると、少なくとも、そのサービス名は1回やめなければならない、もしくは名前を変えなければならなかったり、弁護士を雇って交渉をしなければならない」と加え、商標登録の重要性を説いた。

米国ブラックフライデーのオンライン売上は過去最高の約8100億円

オンラインでの売上高が過去最高の42億ドル(約4600億円)に達したサンクスギビング(感謝祭)に続き、ブラックフライデーでも過去最多の売上高となった。ただし、予想には届かなかった。Adobe(アドビ)の分析によると、ブラックフライデーに消費者が、コンピューター、タブレット、スマホでのオンライン買い物で使った額は74億ドル(約8100億円)だった。この数字は前年のブラックフライデーより12億ドル(約1300億円)増えたが、実際には75億ドル(約8210億円)としていたAdobe Analyticsの予測には届かなかった。一方、Salesforce(セールスフォース)の分析では売上高は72億ドル(約7900億円)で、こちらも予測を下回った。

人気を集めた商品としては、Frozen 2、L.O.L Surprise、そしてPAW Patrolのおもちゃがある。最もよく売れたビデオゲームは、FIFA 20(サッカーゲーム)、Madden 20(バスケットボールゲーム)で、ゲーム機はNintendo Switchだった。電子機器関係では、Apple(アップル)のMacBookシリーズ、ワイヤレスイヤフォンのAirpods、そしてSamsung(サムスン)のテレビがよく売れた。

ブラックフライデーの売上高のうち29億ドル(約3200億円)がスマホ経由だった。スマホでの買い物はオンラインショッピング全体よりも急速に増えていて、コンピューターを介してのウェブベースの買い物よりもスマホでの買い物が主流になる日も近いようだ。

「間もなくクリスマスがやってくるが、消費者は実在店舗に足を運ぶよりスマホでより買い物をした」とAdobe Digital Insightsの主席アナリストで責任者のTaylor Schreiner(テイラー・シュレイナー)氏は発表文で述べた。「たとえ消費者が実在店舗に足を運んでも、店舗にピックアップに行く前にオンラインで41%多く買い物している。モバイルは中小の小売業者にとって、これまでSmall Business Saturday(感謝祭の後にくるショッピングホリデー)以降のシーズンに近所の店舗で買い物をしていた人をさらに引きつける有効な手段となっている。大手小売が提供できないようなユニークなプロダクトやサービスを展開できる小売業者はSmall Business Saturdayに売上を伸ばすことが見込まれる」。

Adobe Analyticsは米国の小売トップ100社のうち80社の売上をリアルタイムに追跡し、ホリデー商戦期間中に5500万SKUと決済1兆件をカバーしている。一方、セールスフォースはCommerce Cloudデータと、世界30カ国超の買い物客5億人あまりをカバーする識見を活用している。

ブラックフライデーの売上高がアナリストの予測にわずかに及ばなかった理由の1つは、ホリデーセールシーズンの開始が早くなっていることだ。小売業者は長い間、多くの人が仕事を休むサンクスギビングの後にくるブラックフライデーをホリデーショッピングシーズンのスタートと位置付けてきた。しかし、小売業者が長期間のセール展開を望むようになり様相は変わった。

より多くの人が買い物するにつれ、人々はより高価なものを買うようになっている。今年のブラックフライデーの平均注文額は168ドル(約1万8000円)だったとアドビは指摘している。これは昨年のブラックフライデーより5.9%のアップで、過去最高の水準だ。

スマホ経由の売上高は前年比21%増だった。オンライン販売の61%がスマホからのもので、これは昨年から15.8%のアップとなった。

ブラックフライデーでは、年間売上が10億ドル(約1100億円)を超えるeコマース大手は、中小よりも好調だった。アドビによると大手のほうがスマホ経由の売上は多く、スマホでのブラウズの買い物率は66%だった。また、今シーズンの中小の売上が27%増だったのに対して大手の売上は62%増だった。

サンクスギビングセールでは大手の方が中小よりも成功を収めるというのにはいくつかの理由がある。1つには、大手のサイトの方が品ぞろえが多く、一部のアイテムでは大幅な割引を提供できることが挙げられる。大きな割引は消費者をサイトに引き込み、さほど割引されていない商品の購入に誘導する。あるいは、単にオンライン小売大手はより大きな割引を提供できるというのも理由だろう。

その他の要因として、大手がよりフレキシブルな配送オプションを提供していることがある。「クリック&コレクト」や「オンライン購入&店舗ピックアップ」は43%増えたとアドビは指摘する。だが、大手小売にとってすべてバラ色だったわけではない。いくつかの大手プラットフォームは実際、今年の商戦で苦戦したようだ。

「small business Sunday」と名付けられた、小規模店舗での買い物にフォーカスした日曜日にどのような動向がみられるのかにも注目が集まるところだ。消費者はこれまでのところ4億7000万ドル(約515億円)使っていて、アドビは30億ドル(約3300億円)を超えるとみている。また、ホリデーショッピングの目玉でもあるサイバーマンデーの売上は94億ドル(約1兆300億円)を超えると予想している。

画像クレジット:Leon Neal

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(翻訳:Mizoguchi)

アップルとグーグルの地図がロシアのクリミア併合を反映

国際政治というのはたいてい対応が難しいものだ。しかし対立の最中にあっても、地図や検索機能など公平なサービスを提供しようとする企業はどちらかの側につかなければならない。論争の的であるロシアによるウクライナからのクリミア併合に関しては、Apple(アップル)は少なくともロシアの肩をもつことにした。そしてGoogle(グーグル)もまたロシアの要望に沿う措置を取った。

黒海北部にある大きなクリミア半島は、クリミアを巡ってウクライナ国内が政治的に不穏な状態だった2014年にロシアの支配下に置かれた。世界のリーダーたちはこの動きについて「ロシアがウクライナの危機を利用するために故意的に扇動し、軍事力を持ってウクライナの主権を侵した」と表現した。

一連の動きについての議論はまだ続いている一方で(実際、動きそのものもある意味まだ続いている)、アップルやグーグルのような企業は地図アップデートのために、歴史の評価を待つだけの余裕はない。両社とも過去にはクリミアの都市をウクライナの一部として表記していた。しかしロシアが公に両社に苦情を入れ、クリミアをロシア以外の領土と表記することは犯罪行為ととらえられると警告した。そして、両社はロシアに譲歩した。

アップルの地図と天気のアプリはいま、ロシアから閲覧するとクリミアのロケーションをロシアの一部として表示する。ロシア当局は11月27日、「アップルは義務を果たした。アップル端末のアプリはロシアの法に則るものになった」と述べた。

もしあなたが米国から閲覧すると、アップル、グーグルともに中立的なスタンスのようなものを表示する。中立と呼ぶスタンスがあればの話だが。クリミア半島は、アップルとグーグルの地図ではロシアとしてもウクライナとしても表示されず、かなり特異な状態だ。

具体的には、Googleマップではクリミアとヘルソン州(ウクライナの州)の境の北部にははっきりとした線がある。これは他の州の間に引かれている線よりもずいぶん太い。境界線上のヘルソン州をクリックすると、説明とアウトラインが表示されるが、クリミア側をクリックすると何も表示されない。クリミアの都市をランダムにクリックすると、通常は国が表示されるところには何も書かれていない。

アップルとグーグルの地図では、通常はタマン湾をはさんで表示されるクリミアとロシアの境界線がない。湾をはさんだ片側はっきりとロシアの領土と表示されるが、もう片側は国の表示がない。

いつ、どのように地図に変更を加えることを決めたのか、私はグーグルとアップルにコメントを求めたので、返事があればアップデートする。両社とも、現地の法律を遵守しなければならないという事実によって決断を正当化することが考えられる。しかし、同じロケーションに2つの法律が存在している場合はどうなるのか。

アップデート:グーグルの広報は「我々は紛争地域を客観的に表示するよう務めている。Googleマップのローカル版があるところでは、名称や境界線の表示に関しては当地の法律に従う」と話した。

私の主張は、どちらかの肩をもつことではなく、アップルやグーグルのような企業がこうした状況にとても苦慮していて、そうした企業が提供する情報は完全なものでもなければ厳然たるものでもないということだ。今回のケースでは、場所によって異なる結果を表示し、国際的な懸念にもかかわらず特定の政府に譲歩し、論争を避けるためにサービスの一部を非機能的なものにした。

グローバル企業が提供するサービスで情報を調べるとき、心に留めておくべきことがある。それは、そうした企業は客観的なソースではないということだ。

画像クレジット:MLADEN ANTONOV/AFP/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

TikTokはウイグル人虐待に関する動画を削除したことを「人的ミスだった」と謝罪

TikTokは、新疆自治区でのウイグル人とイスラム教グループの虐待にことをみんなに調べて欲しいと投稿した十代の女性のアカウントを一時的に停止した一件を、公式に謝罪した。TikTokは「出来事の時系列に関する説明」をすると共に、そのバイラルな動画が11月23日に投稿されてから4日間、「モデレーターの人的ミス」のために削除されていたと話した。それはTikTokプラットフォームのコミュニティー・ガイドラインには抵触しないという( @getmefamouspartthreeのアカウトと問題の動画は今は復活している)。

だが、ツイッターで「ただ広く知ってもらいたいイスラム教徒」とプロフィールを書いている本人のFeroza Aziz(フェロザ・アジズ)氏は、TikTokの声明を拒絶し、こうツイートした。「私が以前に削除されたアカウントで投稿して削除された、関係のない前の風刺的な動画のために排除されたなんて信じられる? ウイグル人に関する3部構成の動画を投稿した直後に? うそよ」

TikTokが削除した動画で、アジズ氏はまず、見ている人たちにピューラーを使うよう求め、次にこう話している。「今手に持ってるその携帯を使って、中国で何が起きているかを検索してください。彼らが強制収容所を建設し、そこに罪のないイスラム教徒を放り込み、家族を引き裂き、誘拐し、殺し、レイプし、豚肉を食べるよう強制し、飲酒を強制し、改宗を強要しています。これは新しいホロコーストです。でも、まったく問題にされていない。ぜひ、このことを知ってください。新疆について知ったことを、今すぐ拡散してください」

TikTokはByteDance(バイトダンス)が所有する企業であり、問題の動画の削除は、北京に本社を置くバイトダンスが中国共産党の圧力に屈したためだとの説を呼び起こした(バイトダンスが提供するTikTokの中国版ドウインは、他の中国のプラットフォーム同様に法的検閲の対象になっている)。

中国に暮らすイスラム教少数民族への中国政府の指示による虐待は数年前から行われていて、およそ100万人の人々が強制収容所に拘束されていると見られているが、この事態が注目を集めたのは今月になってからだ。それは、2回にわたって漏洩した中国政府の重大な機密情報をニューヨーク・タイムズ国際調査報道ジャーナリスト連合が報じ、元収容者、目撃者、研究者の報告を裏付けたことによる。

アジズ氏は、バズフィード・ニューズに対し、中国少数民族の迫害については2018年から話題にしていると話している。なぜなら「私自身がイスラム教徒で、いつも抑圧され、仲間が抑圧されるのを見てきて、ずっと人権に関心があったから」という。

TikTokが謝罪投稿を行う前にバズフィードに掲載された記事では、アジズ氏のアカウント停止は、彼女が以前にオサマ・ビン・ラーディンの画像を含む別の動画に関係しているとTikTokは主張していた。その動画は、有名人をもてはやすネット上のネタを揶揄するもので、アジズ氏はバズフィード・ニューズに「あれは、究極的には彼だよねというブラックジョーク。まともな人間なら、絶対にそんなことは言わないから」と話している。TikTokの広報担当者は、「いずれにせよ、テロ関連コンテンツに関する規約に反する」と言っている。

「その動画が風刺であることは私たちも認識できますが、その分野に関する規約は、現在非常に厳格化されています。その手のいかなるコンテンツも、特定され次第、コミュニティー・ガイドラインと利用規約に違反したとみなされ、アカウントと関連デバイスは永久追放されます」とTikTokの広報担当者はバズフィードに話している。さらに、お化粧のチュートリアル動画を投稿しているアジズ氏の2つめのアカウントの停止は、前に停止されたTikTokアカウントにリンクされた2406のデバイスのブロックの一環とのことだ。

今日(米国時間28日)のTikTokの謝罪を受けて、TikTok USの安全担当責任者Eric Tan(エリック・タン)は、このプラットフォームはコミュニティー・ガイドラインと人間のモデレーターを「第二防衛ライン」として支えるテクノロジーに依存していると書いている。

「このプロセスが完璧でないことは、私たちも時折認識しています。本日の@getmefamouspartthreeの動画のケースのように、人は間違いを犯すものです」と彼は続ける。「しかし、こうしたミスが発生したときは、私たちは迅速に対処し修正します。トレーニングや、同じミスを繰り返すリスクを減らすための改善を行い、私たちが犯した過ちに対して、完全に責任を追うことにしています」

だがアジズ氏は、ワシントンポストにこう話している。「TikTokは、すべての問題を隠そうとしています。私は決して譲りません」

TikTokは、ユーザーの個人情報の管理に関するアメリカ政府による調査を受けることになり、論争が巻き起こっている。ロイターは27日、今年の第三四半期内に製品事業開発とマーケティングおよび法務部門をドウインから分離する計画をTikTokが立てていると伝えた。

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(翻訳:金井哲夫)

複数のサービスの状態を一元管理できるアドミンパネルを提供するForest Admin

企業が日常的にさまざまな複数のSaaSなどを利用している場合、ITの管理者はできればそれら全体の状態をたった1枚のパネルに集約し、しかもその個々をコントロールしたいと思うはずだ。その願いをかなえるフランスのForest Adminがこのほど、Notion CapitalとRuna CapitalからシリーズAで700万ドル(約7億6600億円)を調達した。

Forest Adminを使うと、ユーザーが今使っているデータベースやサードパーティのサービス、例えばStripe、Intercom、Zendesk、Google Analytics、Mailchimpなどなどを全部まとめて、すべてのデータを中央集権的に監視できる。

Forest Adminが提供するダッシュボードに重要なメトリクスが表示される。そしてそれらのデータを調べたり、部分的にまとめたりできる。特定のユーザーや特定部分のためのワークフローも作れる。具体的には、請求書の発行や返金処理、データのCSV化などだ。

そんなForest Adminは顧客企業の機密データを扱うこともあるので、データの安全性が重要だ。Forest AdminもSaaSだが、顧客のサーバーからデータを取り出すことはない。同社は顧客のサーバーにプラグインのインストールを求め、サーバーと直接通信する。そのプラグインが確実に脆弱性を作り出さないために、アクセスしてもいいIPのホワイトリストを作って、プラグインをVPNで隠すこともできる。またForest Adminではユーザーのパーミッションを管理できるので、社員ごとにアクセスできるデータを制限することもできる。

Forest Adminの社員数は20名。顧客は現在約2000社で、顧客の業界は金融、モビリティ(運輸交通)、オンラインリテールなど多岐にわたっている。今回の資金でForest Adminは、対応するAPIをもっと増やしたいと考えている。例えばGraphQLなども。そして対応するSaaSサービスもさらに増やし、アドミンパネルのモバイル化も進める計画だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

2019年感謝祭セールのオンライン売上は現在21億ドル、前年比20%増

大手ソーシャルネットワークのサービスダウンが相次ぎ、 実店舗の多くが閉店し、多くの人々が仕事を休む感謝祭(サンクスギビングデー)の米国時間の11月28日、バーゲンハンターたちはオンラインに集結してホリデーショッピングをスタートした。

Adobe(アドビ)によると太平洋時間午後2時現在、21億ドルがオンラインショッピングで消費されている。昨年同時期より20.2%多い。この数字は時間を追うごとに売上が伸びていることを示している。その前の午前10時の発表では、売上は4.7億ドル、前年比14.5%増だった。総合的に見て、売上パターンは今日の売上げを44億ドルとしてするAdobeの 予測に概ね沿っている。

EコマースバックエンドサービスのShopifyでは、1分当たり4500件の注文があり、毎分40万ドル近くが消費されたと報告(ライブ更新中)している。その中で全売上の66%はを占めたモバイル機器がアパレルとアクセサリーとともに人気のカテゴリーであり、都市別ではニューヨークが一番売れている。平均購買価格は78.66ドルだ。

Adobe Analyticsは米国のトップ100小売店中80店舗の売上をリアルタイムで追跡しており、ホリデーセール期間中におよそ5500万種類のSKU(在庫管理単位)と1兆件の注文をカバーする。一方Shopifyは、同社のAPIを利用しているさまざまなオンライン小売店のデータを利用している。

かつてはブラックフライデー(感謝祭翌日)がホリデーセールの初日と考えられていたが、感謝祭当日(物理的店舗のほとんどが閉店)を家で過ごす消費者たちによるネットショップでの買い物が増えたことで勢いが増した。今年の感謝祭は2018年の11月22日より1週間遅いので、セールス期間は圧縮され、熱狂度も高くなりそうだ。

TechCrunchのSarah Perez(サラ・ペレス)が昨日の記事で指摘したように、今年は多くのショップがブラックフライデーセールスを早めに仕掛けており、11月に入ってから本日28日までに530億ドルが消費されている。今年のホリデーセール全体の売上は1440億ドル近くになると予測されている。

ちなみに、アドビの分析による2018年のオンラインセールスは37億ドルだった。同社によると、今月はすでに530億ドルの売上を記録しているが、そのうちの27日間で10億ドル以上だったそうだ。20億ドルを超えた日は8日あり、11月27日は29億ドルだった。これは前年比22%増であり、ホリデーショッピングの期間を伸ばすためにスタートを最大限に早める小売店の戦略が功を奏したといえる。もう1つ興味深い傾向は、今月182億ドルの購入がスマートフォンから行われたことで、昨年より49.5%増えている。

「本日までの好調なオンライン売上は、ホリデーショッピングがこれまでになく早く始まっていることを示唆している。感謝祭前日にパソコンなどの人気商品が大きく値引きされるなど、今シーズンの目玉商品の多くがすでに出回っている。このことがオンライン売上の著しい伸び(前年比16.1%増)につながっている。小売店が見極めるべき重要な点は、早めのディスカウントが果たして全体売上の増加につながるのか、それとも消費者にホリデー予算を早めに使い切らせるだけなのかだ」とアドビの消費者製品・プラットフォーム担当副社長であるJason Woosley(ジェイソン・ウーズリー)氏は指摘した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

FacebookとInstagram、Messengerが世界中でダウン

米国時間11月28日の朝、Facebook(フェイスブック)が所有するさまざまなサービスで問題を経験したら、それはあなただけではない。Instagram(インスタグラム)、Messenger(メッセンジャー)、およびFacebook自体に影響を与える、大規模なサービス停止が発生しているようだ。

アプリは動作しているように見えるが、実際にはデータが取得できず、サーバがダウンする前にキャッシュされたものを表示しているだけだと多くのユーザーが報告している。また他のユーザーは、ページを読み込むことさえできない。

一方、Messengerのメッセージの場合にはいつまでも送られてこない状態のままだ友人との連絡にMessengerを使っているなら、プラットフォームを少し変えてみるのもいいかもしれない。

Down Detectorのユーザーレポートは、サービスダウンが太平洋の午前6時頃に始まったことを示唆している。また、InstagramはTwitter(ツイッター)にてサービス停止を認めた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Twitterは新しい会話機能を2020年に公開予定

Twitterが今年3月に公開したプロトタイプのtwttrアプリでは、返信をスレッドにしたり、目印を付けたりするなど、会話の新しい表示方法がテストされてきた。こうした機能がTwitter.comで発見され、メッセージボード風のサービスが提供されている。返信が元のツイートをした人に連結され、スレッド内のその他の人々は薄いグレーの線でつながっている。

twttrの目的は、Twitterのユーザーインターフェイスの大幅な変更を大規模なユーザーベースに公開する前に、Twitterのメインのアプリとは別のところで広く実験し、フィードバックを得て、必要に応じて反復することだったと思い出す人もいるかもしれない。プロトタイプのtwttrアプリでは3月の公開以降、主に会話のスレッド化がどのように機能するかが試されてきた。スレッド内で投稿者をラベル付けする方法もいくつかあった。

例えば現時点では、twttrでは元の投稿者、つまり会話を始めた人に小さなマイクのアイコンが付く。Redditと似た感じだ。タップするとカードのようなレイアウトでツイートの詳細が表示されるという方法もテストされている。

しかしメインの実験テーマは、今もスレッドそのものの表示だ。twttrが公開された後、限定された招待者のみが体験できた興奮が冷めて動きは遅くなった。twttは新しいアイデアを次々にテストするプラットフォームではなくなり、スレッドに関する細かな調整が主に導入されるようになった。会話の再デザインを超えたまったく新しい機能、例えば最近Twitterが導入した「トピック」のようなものがテストされることはなかった。

8月に、Twitterの会話デザインの責任者でtwttrの運営も担当していたSara Haider(サラ・ハイダー)氏が社内の新しいチームに異動すると発表された。代わって、Lightwellの買収でTwitterに加わったSuzanne Xie(スザンヌ・シャ)氏が会話デザインの責任者になった。シャ氏はその時点で、自分の役割のひとつはtwttrチームと協力してメインのTwitterアプリにtwttrの最も良い部分を取り入れることだと認めた。この取り組みは進行中のようだ。

有名リバースエンジニアのJane Manchun Wong(ジェーン・マンチュン・ウォン)氏は、twttrとまったく同じ会話のツリーレイアウトがTwitter.comで開発されているのを見つけた。

そして今週、この機能が調整され、パーマリンクからでも特定のツイートに注目できる機能が追加された。スレッド内でツイートをタップすると表示される、twttrにあったカード型のレイアウトも発見された。

ウォン氏はこの機能を表示するTwitter.comのA/Bテストには参加していない。調査能力を発揮して見つけたようだ。

Twitterは、ウォン氏の発見はtwttrの機能をTwitterに取り入れる幅広い計画の一部であることを認め、これは来年公開される予定だと広報担当者は述べた。ただし、ウォン氏の発見がすべて公開されるわけではなく、twttrの「最も良い部分」だけが取り入れられるのだろう(つまり、会話のスレッドは取り入れられるだろうが、ほかの変更についてはわからない)。Twitterは、twttrアプリを使ってさらに別の機能をどう実験するかを検討中だとも述べた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

フードメディアのChefclubが月間10億オーガニックビューを達成した背景

Chefclub(シェフクラブ)は調達額がわずか350万ドル(約3億8300万円)だったことから、これまであまり注目を集めてこなかった。しかしソーシャルメディアプラットフォームで徐々にメジャーなブランドとなり、今やTastemadeやTastyの直接の競合となっている。

これまでのレシピサイトやレシピブランドと異なり、Chefclubは食とエンターテインメントの交差点にひたすら力を入れている。Chefclubのビデオをいくつか見たら、おそらく「なんだ、これは」というような感想を持つだろう。

チーズがやたらと溶けているし、何でもかんでも揚げたりしている。筆者の周囲では、テレビの料理番組にまったく興味を示さなかった人たちでさえChefclubのビデオに取り憑かれている。

Chefclubの共同創業者であるThomas Lang(トーマス・ラング)氏は筆者に「我々は普通の人で、テレビや本で見るような料理のスキルは持ち合わせていない。キッチンのキャビネットを開け、普段の食材を使った。ずっと変わらずにそうしてきた」と語った。

この方針はとてもうまくいっているようだ。Chefclubには、複数のソーシャルメディアプラットフォーム全体で7500万人のフォロワーがいる。ビデオは1カ月に10億回再生され、2億人にリーチしている。同社は有料メディアには1セントも支払わずに、ユーザーベースを増やしている。

Chefclubはリーンな社風で従業員はたったの50人だ。チーム全員がパリにいて、そのうち3分の1はフランス人ではない。フランスのDNAが色濃いが、必ずしもすべてのコンテンツを世界のあちこちの地域に適応させなくてもいいことにChefclubは気づいた。ビデオの70%は世界中で楽しまれている。

ChefclubはFacebookを最優先にコンテンツを最適化している。多くのパブリッシャーから聞いているが、Facebookのアルゴリズムに対応して多くの人に届けるのはますます難しくなっている。しかしChefclubはFacebookのアルゴリズムの変更に常に対応してきた。この不断の努力が同社の成長の鍵だ。多くのメディアブランドはFacebookをあっさり諦めた。

Facebookに比べるとほかのソーシャルネットワークには対処しやすいようだ。Chefclubは現在、YouTube、Snapchat(フランスとドイツでは「ディスカバー」で提携)、Instagram、TikTokを積極的に使っている。Chefclubはヨーロッパとラテンアメリカではトップに立っているという。米国ではまだ成長段階で、2019年に米国で10億ビューに届こうとしている。

ではメディアの成長戦略をビジネスにどう生かせるだろうか。ChefclubはD2Cに力を入れている。同社はまずレシピ本を出した。本に載っているQRコードをスマートフォンでスキャンすると、ビデオを再生できる。レシピ本は同社のウェブサイトから50万部売れた。

最近は子供のための料理キット「Kiddoz」を発売した。この本には20種類のレシピが掲載され、使いやすい計量カップとアプリも付属している。

次に、Chefclubは小売業者と提携してブランドをライセンス化し、ブランドを冠した製品を販売しようとしている。近い将来、Chefclubブランドの調理器具やおもちゃを購入することになるかもしれない。

「我々には『ケーキの上のサクランボ』と呼んでいる、もうひとつのラッキーな収入源がある」とラング氏は言う。YouTubeなどのソーシャルプラットフォームから広告の分配金が入ってくるのだ。これが主眼ではないが、Chefclubは特段の労力をかけることなく、月に20万ドル(約2200万円)の広告収入を得ている。

さらにChefclubは、コミュニティのメンバーもコンテンツを制作してもらおうとしている。コンテンツをスケールするために、Chefclubはユーザーが制作したコンテンツをほかのメンバーに公開するプラットフォームを目指している。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Twitterが死亡したユーザーのアカウントを削除せずに「追悼する」方法を開発中

Twitter(ツイッター)は、ユーザーからの数多くのフィードバックを受けて、アクティブでないアカウントに関する方針を変更した。同社は今後、今週発表されていたアクティブでないアカウントを非アクティブにして「より正確で信頼できる情報を提供」する計画の前に、亡くなったユーザーのアカウントを「追悼する」方法を開発している。Twitterの名誉のためにいっておくと、同社はこの計画に対してかなりの量の否定的なフィードバックを受け取った後、迅速に反応しており、休眠アカウントの終了を進める決定においてユーザーが死亡しているケースは考慮されていなかったようだ。

米国時間11月26日にTwitterが非アクティブアカウント(6カ月以上ツイートしていないもの)の非アクティブ化を発表した後、所有者が亡くなったアカウントのコンテンツも削除されることを多くのユーザーが指摘した。TechCrunchに過去に在籍していたDrew Olanoff(ドリュー・オラノフ)氏は、この影響について個人的な観点から記事を書いており、Twitterに対して人的影響と潜在的な感情的コストを考慮して、この動きを再考するよう求めている。

Twitterは11月27日のスレッドで、アクティブでないアカウントに関する新しい考え方を詳しく説明し、現在のアクティブでないアカウントに対するポリシーは実際には常に適用されているが、その実施が徹底されていなかったと説明した。EUではGDPRを参照し、地域のプライバシー法に部分的に従っている。しかし同社は、死亡したユーザーのアクティブでないアカウントを「追悼する」方法を実装する前に、それを削除することはないとも伝えている。

Twitterはこれまで、同社のアクティブでないアカウントに関するポリシーを拡大または改善して、世界的なプライバシー規制に確実に対応すると述べてきたが、その変更が実施される前に広く周知する予定だ。

Twitterによる「追悼」で何が提供されるのかはまだ明らかになっていないが、一方ではFacebookにも同様の理由で導入した 「追悼アカウント」 機能がある。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

遺書、生命保険、遺産分けなど死後の準備を簡単にしてくれるアプリFabric

Fabric(ファブリック)は、親権者が行うべき家族の長期的な資金管理を楽にすることを目的とする新しいアプリだ。生命保険の支払い能力をスマートフォンで聞き取ったり、5分で無料の遺書を作成したり、配偶者やパートナーと協力して重要な金融口座や重要書類の管理を行うなどのサービスを、すべてワンストップで提供することを目指している。さらに、親権者は遺産の受取人、子どもの後見人、弁護士、ファイナンシャル・アドバイザーといった人たちに、アプリで直接コーディネートできる。

同社は2015年、インターネット銀行Simple(シンプル)の元COO、Adam Erlebacher(アダム・アーレバッハー)氏と、Simpleの前データ担当ディレクターのSteven Surgnier(スティーブン・
サーニエ)氏によって設立された。同社は昨年、生命保険を数千世帯に販売した後、ベッセマー・ベンチャーパートナーズが主導するシリーズA投資1000万ドル(約10億9000万円)を獲得した。

設立以来、Fabricは、生命保険を超えて、簡単に遺書が作成できるサービスや、家族の財産情報や法的情報を一箇所で管理できるツールを増やすなど、その他のサービスを拡大してきた。その同社は、現時点での目的を、現在の多忙な親権者たちが代理店の人間に会って複雑な生命保険製品の説明を聞かなくても済む、よりよい方法を提供することだと話していた。その代わりにFabricは、10分間で簡単に生命保険を申し込めて必要ならば有資格の専門家の助言が得られるサービスを提供する。同じように、遺書の作成作業も簡便化してくれる。

彼らの古巣であるSimpleは、実際の銀行口座を他行に持つ人に便利な窓口を提供する企業だが、Fabricも、Fabric自身の生命保険を販売するのではなく、Aランクの保険会社Vantis Life(バンティス・ライフ)が提供しているものを扱っている。

これまでFabricの一連のサービスは、ウェブ上でしか利用できなかったのだが、今ではアプリで利用が可能になり利便性が増した。現在はiOS版が提供されている。Android版は準備中だ。

「家族を持つときや仕事を始めるとき、お金はとくに厄介な存在となります」とアーレバッハー氏。「Everyday Health(エブリデイ・ヘルス)の調査によると、アンケートに応じた人の52%が、お金の問題で常にストレスを感じていると回答しています。そして、お金にもっともストレスを感じているのが38歳から53歳までの人たちです。親権者たちは、家族の長期にわたる経済的健全性をもっと積極的に管理したいと思っていますが、今日の埃をかぶった古臭いツールでは、それが適いません」と彼は話している。

Fabricのアプリを使えば、親権者たちは同社が提供するあらゆるサービスの恩恵を受けられる。電話で生命保険に申し込めば即座に承認されるといったオプションもある。またこのアプリでは、保険の契約情報を紛失しないよう、受取人と共有することもできる。

もうひとつ、遺書を無料で作成して、例えば遺書の確定に必要な証人なども含む重要な人たちと共有できる機能もある。さらに、配偶者は遺書の複写を持つことも選択できる。これにより、同じ内容の遺書をもう一部作る手間を高速化できる。

またFabricでは、ありがちなことだが、手続きが間に合わないときや緊急時にも、両親の資産を一括管理することで対処できる。今日、仕事をしている大人たちは、銀行口座がひとつだけという人は少なく、投資口座、確定拠出年金の口座、個人退職口座、クレジットカードの口座などを合わせて持っていることのほうが多い。しかし配偶者は、その口座の情報や、どこに口座を開いているかを知らないことも少なくない。

私たちがこのアプリの性能を試してみたところ(生命保険は購入していないが)、とても使いやすかった。最初に、経済状況の概要を把握するためにいくつか簡単な質問に答える。そして、自分に合わせて作られたホーム画面が開き、次にすべきことを提案するチェックリストが示される。当然、そこでは生命保険の申し込みも勧められる。それがFabricの収入源なのだから仕方ない。もし遺書をまだ作っていなかったり、仲間に加えたい婚約者がいる場合も、それに対処する機能がある。

オンライン記入欄は、ウェブブラウザー版と違ってスマホ版では画面が小さくなってしまうのだが、有難い工夫によって簡単に記入できるようになっている。例えば、電話番号を入力するときはテンキーパッドが現れる。住所検索機能も統合されていて、該当するものをタップするだけで、残りの部分は自動的に記入される。途中で保存できるので、作業が中断されたときでも(親ならよくあることだが)、あとで続きを再開できる。さらに、Excuter(遺言執行者)といった専門用語の解説もあるため、どのような財産を譲渡しようとしているのかを理解しやすくなる。

こうした業務内容だけにFabricでは、銀行並みにユーザーの個人情報保護に気を配っている。256ビットの暗号化、2段階認証、自動ロック、生体認証、その他のアダプティブセキュリティー機能を備えている。

親や家族の資産計画を助けたり、遺書を作成したり、その他さまざまなサービスをiPhoneで提供している企業はFabricだけではない。この市場には他のアプリも存在する。遺書作成アプリには、Tomorrow、LegalZoom、Qwillなどがある。モバイル端末で利用できるサービスを提供する保険会社も多い。だがFabricがユニークなのは、ユーザーインタフェイスを複雑化することなく、遺書と保険とその他のツールをひとつの場所に統合したことだ。FabricのアプリはApp Storeで無料でダウンロードできる。

【編集部注】日本に拠点がない海外の生命保険に入ることは保険業法で禁じられている。

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(翻訳:金井哲夫)