中国のAI・顔認識大手SenseTimeが米国のブラックリスト入りでIPOを延期

中国で最も価値のあるAIソリューションプロバイダーの1つであるSenseTime(商湯科技、センスタイム)は、7億6700万ドル(約872億円)の株式上場を保留すると香港時間12月13日に発表した。

この発表は、香港証券取引所がSenseTimeのIPOにゴーサインを出してから3週間後のことだ。12月10日、米財務省は同社を「中国軍産複合体企業」のリストに加え、同社が「対象者の民族性を判断できる顔認識プログラムを開発し、特にウイグル族を識別することに重点を置いている」と述べた。

前政権時には国防総省と財務省が共同管轄し、財務省のみの管轄へと変更されたこのブラックリストは、米国の投資家がSenseTimeの有価証券を購入または売却することを禁止している。

米国政府の決定を受けて、SenseTimeはIPOを延期し、潜在的な投資家の「利益を守る」ために、新たな上場スケジュールを記載した補足目論見書を発行するとのこと。

SenseTimeは声明の中で、次にように述べた。「当社は、今回の指定およびそれに関連して行われた非難に強く反対します。これらの非難は根拠がなく、当社に対する根本的な誤解を反映しています。地政学的な緊張の渦中に巻き込まれたことを遺憾に思います」。

2019年、SenseTimeは、米国企業との取引を制限する「エンティティリスト」に登録された。

SenseTimeのビジネスの概要については、以前の記事でご覧いただける。

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画像クレジット:Getty Images(Image has been modified)

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(文:Rita Liao、Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

米政府機関が禁止措置をすり抜け中国の監視技術を購入、Lorexは人権侵害に関与するメーカーDahuaの子会社だ

軍を含む少なくとも3つの米国連邦機関が、連邦政府での使用が禁止されている中国製の映像監視機器を購入した。

TechCrunchと映像監視ニュースサイトのIPVMが得た購入履歴情報によると、これらの各機関は、Dahua Technologyの完全子会社であるLorexが製造した映像監視機器の購入に数千ドル(数十万円)を費やしていた。Dahuaとは、中国政府のスパイ活動に役立つ技術であるとの懸念から、2019年国防費法により連邦政府への販売が禁止されている中国系企業の1つである。

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またDahuaは、イスラム教徒のウイグル人が多く住む新疆ウイグル自治区の少数民族を弾圧する中国の行為に関連しているとして、2019年に米国政府の経済貿易制限リストに追加されている。米国政府によると、中国はウイグル人を監視するための監視装置の供給に、Dahuaが一部製造した技術を用いたとしている。バイデン政権は新疆での人権侵害を「ジェノサイド」と呼び、中国によるウイグル人の監視、弾圧、大量拘束を通した「人権侵害と虐待に関与している」と同社を非難している

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この禁止令が発効した後に、連邦機関が連邦政府の請負業者からLorexの機器を購入したという記録が残っている。

記録によると麻薬取締局(DEA)は2021年5月、ワシントンD.C.を拠点とする技術サプライヤー、I. S. Enterprisesを通じて監視システム用のLorex製ハードディスクを9台購入している。DEAの広報担当者であるKatherine Pfaff(キャサリン・パフ)氏は、この購入は米国共通役務庁(GSA)が運営する政府のショッピングポータル(通称GSAアドバンテージ)を通じて行われたと述べ、GSAに関するコメントを留保したが、Lorexの機器の使用を停止したかどうかについては言及を拒否している。

回答を求めたところ、GSAの広報担当者であるChristina Wilkes(クリスティーナ・ウィルクス)氏はメールで次のように答えている。「GSAは連邦調達規則(Federal Acquisition Regulation:FAR)に基づいて、GSAアドバンテージで販売されているベンダーや製品を審査する手段を複数保持しています。請負業者は対象となる技術を販売しているかどうかを明記することを求めるFARの条項および規定に準拠しなければなりません。遵守していないことが確認された製品は、GSAアドバンテージから削除されます」。

GSAは、禁止された製品が禁止令発効後も購入可能であった理由について明かさなかったが、市販の既製品が2019年の禁止規定に準拠していることを明確化する、新たな検証済み製品ポータルを立ち上げるなどして改善を進めているという。

2019年の禁止規定は、国防権限法(National Defense Authorization Act、NDAA)の第889条という特定の条項として署名されたもので、連邦政府機関がHuawei(ファーウェイ)、Hikvision(ハイクビジョン)、Dahuaなどの特定の中国企業およびLorexなどのその子会社が製造した電子機器を調達および購入することを違法としている。また、889条は連邦政府の請負業者が禁止された電子機器を連邦政府機関に販売することも禁止している。国防総省は、第889条に基づき、食料品や衣料品などのリスクの低い物品を購入するための一部の例外を認める免除措置を受けているが、電子機器や監視装置は認められていない。

また購買記録によると、国防総省の財務管理と軍人への支払いを担当する、米国防総省国防予算経理局(Defense Finance and Accounting Service、DFAS)が2021年7月、ニューヨークのFocus Cameraという店を通じてLorex製のビデオ監視カメラを購入していた。

DFASの広報担当者であるSteve Lawson(スティーブ・ローソン)氏は、eメールで次のように述べている。「2021年7月、DFASの一拠点において建物内の孤立したエリアを監視するためのセキュリティカメラの必要性を確認しました。2019年ジョン・マケイン国防権限法(NDAA)の889条(a)(1)(A)と、特定の通信や映像監視サービスおよび機器に関連する制限を認識していたため、GSA契約を利用して調査を行いました。また、購入した製品や部品がFY19 NDAAで制限されていないことを証明する情報を提供するようサプライヤーに要求しています。今回のご連絡を受け、慎重を期してさらなる分析が行われるまでカメラとコントローラーを無効化いたしました。ご指摘をいただきありがとうございました」。

またこの記録によると、陸軍省が2019年から2021年にかけて、I.S.Enterprises、Focus Camera、そしてカリフォルニア州グレンデールを拠点とするJLogisticsという3つのベンダーからLorexの映像監視カメラと録画機器を購入している。

陸軍はメールによる声明で、これに関する責任は機器を提供した請負業者にあるとほのめかしている。

陸軍報道官のBrandon Kelley(ブランドン・ケリー)中佐によると「2020年8月13日、国防総省は2019年国防権限法889条およびPublic Law 115-232の禁止事項を実施しました。連邦契約でプロポーザルを行う企業は、Public Law 115-232で要求されるものを含む連邦調達規則および国防省の補足条項の遵守をSystem for Award Managementのウェブサイトで表明する必要があります。米国コードのタイトル18、または虚偽請求取締法に基づく民事責任は、企業が虚偽の表示をした場合に適用されます」とのことだ。

下院軍事委員会の民主党広報担当者であるMonica Matoush(モニカ・マトウシュ)氏は声明の中で、委員会は「国防総省がこれらの報告を調査し、立証された場合には被害を軽減し、将来の問題を防ぐために適切な行動をとることを期待する」と伝えている。

また、購入記録によると、禁止令が発効した後も他の連邦政府や軍の機関がLorexの機器を購入したとされている。TechCrunchはこれらの機関に問い合わせてみたが、返答してくれた機関の広報担当者は購入記録がいつ提供されたかについてすぐには確認できず、コメントも得られなかった。ある軍事機関は、回答には「数週間」かかると述べている。

上院情報委員会の委員長であるMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員(D-VA)は、TechCrunchに対して次のように話している。「今回のケースの詳細は聞いていませんが、政府の省庁が購入する商用機器の出所をもっと正確に理解する必要があり、こうした購入の意思決定をする人がリスクを認識しているということを確認する必要があると考えています。議会が2019年の法案にこれらの条項を盛り込んだのはこのためなのです。簡単に言えば、安全保障上のリスクがある企業や、中国のウイグル人などの少数民族に対する弾圧キャンペーンを助長するなど、人権侵害に積極的に関与していると判断された企業を、連邦政府の購買により支援することは絶対にあってはなりません。この主張が事実であれば、このようなことが二度と起こらないようにしなければなりません」。

I.S.Enterprisesの共同設立者であるEddie Migues(エディ・ミゲス)氏に今回の購入について尋ねたところ、同社はこの問題を調査中であると回答。Focus CameraとJLogisticsはコメントを求めても応じてくれなかった。

禁止された機器を政府に提供した請負業者は契約を失う可能性もあるが、この禁止令が発効する前、連邦政府の請負業者には遵守するための準備期間がほとんど与えられなかったと業界団体は主張している。

2020年、米国情報技術工業協議会は「このような広範囲にわたる要求事項の規則の策定に時間がかかったため、請負業者は法の方針を一貫して満たすことができない可能性がある」と伝えている

コメントを求めたところ、Lorexの広報担当者はTechCrunchに次のように回答してくれた。「Lorexの製品は、一般消費者および企業向けに設計されており、NDAAの対象となる米国連邦政府機関、連邦政府出資のプロジェクトおよび請負業者向けではありません。LorexはNDAAの対象となるいかなる個人や組織にも直接販売しておらず、購入者にはこれらの規制を熟知し、遵守することを推奨しています」。

関連記事:本記事はビデオ監視ニュースサイトIPVMとの提携によるものとなる。

画像クレジット:R. Tsubin / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

肉体労働を支える、ロボティクススタートアップFJDynamicsが約79億円調達

DJIの元チーフサイエンティストであるWu Di(ウー・ディ)氏が設立したFJDynamicsが、過酷な環境下で働く人々にロボティクステクノロジーを提供するという目標を推進すべく、シリーズBラウンドで7000万ドル(約79億円)を調達した。

同社の農業用ロボットの特徴を尋ねたところ、ウー氏は広報担当者が冷や汗をかきそうな答えを返してきた。「当社のテクノロジーはさほど特別なものではありません」。多大な労力のかかる産業のために、便利かつ安価なロボットを作ることが同社のビジョンだと同氏は話す。

「最先端のAIアルゴリズムを持っていても、業界での経験がないためにその技術が生産ラインや農場で活用できなければ、人々にとって何のメリットもありません」と同氏。

ウー氏がFJDynamicsを始める前に携わっていたテクノロジーは、あらゆる意味で最先端のものだった。ドローン大手のDJIではチーフサイエンティストを務め、そこで同氏は2017年にスウェーデンのフォーマットカメラメーカーであるVictor Hasselblad ABの買収を監督している。中国に戻る前の10年間をスウェーデンで過ごしており、その間にドメインスペシフィック・プロセッサーデザインの博士号を取得。また、ファブレス半導体メーカーのCoresonic ABで副社長、スウェーデンの高級スポーツカーメーカーKoenigsegg ABでディレクターを務めた経歴を持つ。

「これだけの一流技術を目の当たりにした後で、FJDynamicsをハイテク企業と呼ぶのはおこがましい」と語る創業者。色あせたチェックのシャツに細縁の眼鏡という姿で取材に応じてくれた。

私たちが座っていたのは数台のデスクが置かれた仮設のミーティングルームだ。オープンプランのオフィスが可動式の壁で仕切られている。テクノロジーの中心地である深圳にある同社は急速に事業を拡大しており、従業員も1000人に近づいている。

FJDynamicsの 創業者兼CEOのウー・ディ氏

2019年、ウー氏はDJIを離れ、FJDynamicsを創設した。同社は当初より農業用ロボットに焦点を当て、無人の芝刈り機や果樹園の噴霧器、飼料押し出し機などのツールを作っているが、徐々に建設業や製造業など、肉体労働に大きく依存するその他の分野にも進出している。

北京が国内の伝統産業のデジタル化を推進する中、FJDynamicsのような中国企業は投資家から熱い視線を浴びており、FJDynamicsにもTencentや国有自動車メーカーのDongfeng Asset Managementなどの有力な投資家が名を連ねている。DJIは初期の段階で同社に出資していたものの、その後株式を売却している。

関連記事:アグリテック企業FJ DynamicsにTencentが投資

同社は今回のシリーズBラウンドにおける単独投資家名を明かしておらず、中国の大手インターネット企業であるとのみ伝えている。今回の資金調達により、同社は「農業、施設管理、建設、園芸などの分野で、ロボットによる自動化テクノロジーを成長させるとともに、60カ国以上で提供している同社のESG製品の需要拡大をサポートする」ことができると話している。

これまでに多くの技術系の人材が、自分の会社を立ち上げたり他のスタートアッププロジェクトに移籍したりするためにDJIを離れている。ポータブルバッテリーメーカーのEcoFlow、ヘアドライヤーのZuvi、電動歯ブラシブランドのEvoweraなどはその代表的な例である。ウー氏は世界最大のドローン企業であるDJIの名誉あるポジションを去った理由として「高級品」を作ることへの違和感を挙げている。

「ロボティクステクノロジーは、多くの企業によってドローンや自律走行車に活用されていますが、 地球上の大多数の人はその恩恵を受けていません」。

「農業、建設業、園芸業といった分野の労働条件は肉体的に厳しく、このような仕事をしている人はまだ大勢います。ロボティクステクノロジーを使って彼らの労働環境をいかに改善するかということが問題であり、また単にロボットに置き換えるということでは解決しません」と創業者は話している。

買収したスウェーデンの農業会社SveaverkenのロゴがプリントされたFJDynamicsの牛用フィードプッシャー

FJDynamicsの人気製品の1つに自動フィードプッシャーがある。高品質な牛乳を生産するためには1日に約10回の給餌が必要となり、そのためには24時間体制でスタッフを配置する必要がある。例えば500頭の牛を飼っている牧場なら牧草を与える人が交代制で3人ほど必要になるが、貧しい国ではそれほど多くのスタッフを配置することができず、寒い季節でも1日中牛の世話をすることになる。

FJDynamicsは農家の仕事を少しでも楽にしたいと考えている。1台約2万ユーロ(約255万円)のビジョンガイド式フィーダーは、1日に最大500頭の牛に餌を与えることができる。2019年、同社は110年の歴史を持つスウェーデンの農業会社Sveaverkenを買収しており、これがFJDynamicsの飼料押し出しロボットの実用化に貢献した。

「当社のお客様とは、テクノロジーについてお話ししたことがありません。農家の人々は、作物の収穫量を向上させるのに役立つかどうかという点により関心があるのです。農家さんは皆、経済家なんです」。

「テクノロジーを手の届きやすい価格で」というビジョンを掲げているため、利益率は「控えめ」で、そのため経営陣は運用コストに対して慎重だ。

現在、売上の約40%が中国以外の約60カ国で展開されている同社。海外に進出する中国企業の多くは「中国」と名の付くものへの反感を恐れてその出自に対して用心深くなっているのだが、ウー氏はより積極的なアプローチをとっている。

「10年間ヨーロッパに住んでいようと、自分のアイデンティティを変えることはできません。そんなことは重要ではなく、中国人でも米国人でもスウェーデン人でも、顧客の利益となる優れた製品を作り続けていれば、ユーザーは必ずい続けてくれるのです」。

特に企業のグローバル展開においては、データのコンプライアンスが重要な鍵となる。FJDynamicsはハードウェアとソフトウェアを提供し、現地のパートナーがデータを使った「システム」の展開を支援する。中国国外ではMicrosoft Azureが主なクラウドパートナーとなっており、それにより「GDPRなどのデータプライバシー要件を満たしながら、弾力的な展開が可能に」なっているという。

「データを欲しないというのが我々の企業文化です」とウー氏。

高度なプロセッサーを必要とするスマートフォンやドローンとは異なり、FJDynamicsの製品には中国で手に入る比較的シンプルなチップが使用されているため、昨今のサプライチェーンの混乱の影響を受けにくいと創業者は考えている。

現在は最先端のテクノロジーを開発しているわけではないが、自身の知識を伝える方法を模索しているウー氏。農業ロボットを開発する合間に、深圳の南方科技大学で講義を受け持つこともある。

「私は製品(FJDynamics)と教育という2つのことにフォーカスしながら、シンプルな生活を営んでいます。さまざまなことを目にしてきましたが、人はお金で変わることはできず、また幸せになることもできません。シンプルな目標を持つことが重要で、そういったシンプルな目標の達成が人を幸せにしてくれるのです」。

画像クレジット:FJDynamics

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

深圳でロボタクシー実証を進めるDeepRoute、L4級自動運転ソリューションの価格を約114万円に設定

DeepRoute.aiの自動運転ソリューション「L4」を搭載した車両(画像クレジット:DeepRoute.ai)

中国・深圳とカリフォルニア州フレモントにオフィスを構える自動運転スタートアップ、DeepRoute.ai(元戎啓行)は、中国時間12月8日に野心的な自動運転ソリューションを発表した。

「DeepRoute-Driver 2.0」と名づけられたこのパッケージは、生産準備の完了したレベル4システムで、価格は約1万ドル(約114万円)。5つのソリッドステートLiDARセンサー、8台のカメラ、独自のコンピューティングシステム、そしてオプションのミリ波レーダーというハードウェアを使用していることを考えると、この価格設定は信じられない。

DeepRouteの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、LiDARが総コストの約半分を占めているという。「サプライチェーン全体の開発が進み、スケールアップすれば、コストはさらに下がると期待できます」。

2年前に設立されたこのスタートアップは、より成熟した競合相手に臆することはない。同社は8日のリリースでこう述べている。「DeepRoute-Driver 2.0は、洗練された効率的なL4アルゴリズムを誇るが高額な価格設定となっているWaymo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)などの既存のL4パイオニアや、価格は手頃だが完全な自動運転という点では機能が限られているTesla(テスラ)などの先進運転支援システム(ADAS)との差別化を図っています」。

中国のセンサーメーカーは、かつては法外な価格だったLiDARの価格を下げ、大量生産に適したものにしようと努力している。DJIが設立したLivoxや、シンガポール政府系ファンドTemasek(テマセク)が支援するInnovusionもその1つだ。

カールーフに設置されたLiDAR(画像クレジット:DeepRoute.ai)

DeepRouteのL4ソリューションでは、深圳に本社を置くRoboSenseのLiDARを2個、車体のルーフにメインのLiDARとして使用している。また、北京に本社を置くZ Visionの3つのLiDARセンサーを後輪の周りの前部、左部、右部に配置し、車の死角をカバーしている。Z VisionとDeepRouteは、中国のコングロマリットであるFosun Group(復星国際)の関連ファンドであるFosun RZ Capitalの支援を受けている。

DeepRouteのレベル4技術の低価格は、同スタートアップの薄利多売を意味するか、あるいはサプライヤーのマージンを圧迫しているのではないかと、ある自律走行車スタートアップの創業者はTechCrunchに示唆した。

テスト走行では、DeepRouteのレベル4システムは、深圳の繁華街のラッシュアワーの渋滞をナビゲートし、柔軟な車線変更、歩行者の優先、自動オン / オフランプ合流などのタスクを実行することができた。

設立からまだ2年しか経っていないが、DeepRouteを支えるチームには、中国の自動運転業界のパイオニアたちがいる。2019年にMaxwell Zhou(マックスウェル・ゾウ、周光)氏がDeepRouteを設立したのは、最後に所属していたRoadStar.ai(星行科技)を内紛で追い出された後のことだった。当時、RoadStar.aiは投資家から少なくとも1億4000万ドル(約160億円)を調達しており、自律走行車の分野で有望なプレーヤーと広く考えられていた

投資家たちは、周氏の新しいベンチャー企業を応援している。同社は9月には、Alibaba(アリババ)、Jeneration Capital、ボルボを傘下に持つ中国の自動車メーカーGeely(ジーリー、吉利汽車)などからシリーズBラウンドで3億ドル(約341億円)を調達したと発表した。

OEMや自動車メーカーが、将来の生産提携と引き換えに、AVスタートアップに資金を投入するのは珍しいことではない。例えば、同じく中国のMomentaは、ボッシュ、トヨタ、ダイムラーなどの大手企業から複数の戦略的投資を受けている。

DeepRouteはL4級ソリューションの顧客をまだ正式に確保していないが、同社の広報担当者によると「大手自動車メーカー」数社がレベル4技術を搭載した車に乗車し、「機能性と価格に感銘を受けた」とのこと。

「近々契約を締結できるという見通しに非常に前向きである」と広報担当者は述べている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

アプリストアの2021年消費者支出は過去最高約15兆円、新規インストールは1436億回を記録

アプリエコノミーは、2021年に再び新しい記録を打ち立てようとしている。米国時間12月7日に発表された、Sensor Towerによる2021年のグローバルアプリエコシステムのレビューによると、アプリの初回インストール回数は2021年、1436億回に達し、前年比0.5%増となったが、アプリでの消費者支出は同19.7%増の1330億ドル(約15兆円)と大幅に増加した。この数字には、Apple App StoreとGoogle Playにおけるアプリ内購入、プレミアムアプリ、サブスクリプションでの支出が含まれるが、中国にあるようなサードパーティのアプリストアは含まれない。

画像クレジット:Sensor Tower

この成長率は、消費者支出が21%急増して1111億ドル(約12兆6400億円)に達した2020年とほぼ同じだとSensor Towerは指摘する。

もちろん2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の直接の影響を受けて消費者は自宅で仕事をしたり、オンラインで買い物をしたり、友人とバーチャルにつながったり、より多くの娯楽コンテンツをストリーミングしたり、オンラインで授業を受けたりと、さまざまな行動上の変化を余儀なくされたためだ。こうした変化は、2020年には消費者のアプリ利用と支出の面で現れた。パンデミックがモバイルアプリの世界に影響を与えたこともあり、世界のアプリ収入は2020年上半期に500億ドル(約5兆6900億円)にまで急増したと、当時TechCrunchは報じた。

画像クレジット:Sensor Tower

こうしたパンデミックに起因する個人消費の変化は、2020年の新型コロナによる政府のロックダウンを超えて、2021年のモバイルトレンドに影響を与え続けるだろうというシグナルが早くからあった。例えば米国では、iPhoneアプリでの消費者支出は、2020年の平均136ドル(約1万5500円)から2021年には平均180ドル(約2万500円)に達する見込みだと、Sensor Towerは指摘していた。しかし、最終的には165ドル(約1万8800円)にとどまったとのことだ。また、2021年上半期の消費者支出はすでに新記録を達成し、世界全体では649億ドル(約7兆3900億円)に達した。

Sensor Towerが発表したところによると、世界全体で1330億ドルという記録的な支出の内訳は、App Storeでの支出が851億ドル(約9兆6900億円)で、2020年の723億ドル(約8兆2300億円)に比べて前年比17.7%増となった。また、Google Playの消費者支出は479億ドル(約5兆4500億円)で、2020年の388億ドル(約4兆4200億円)から23.5%増加している。App Storeの売上高はGoogle Playの約1.8倍と引き続き上回り、これは例年通りだ。

ゲーム以外では、2021年に世界で売上最多だったアプリは、中国版Douyinを含むTikTokだった。ByteDanceの短編動画アプリの各バージョンを合わせると、2021年は11月までに20億ドル(約2280億円)の売上高を突破し、年末までに23億ドル(約2620億円)に達する見込みだ。これにより、累計売上高は38億ドル(約4330億円)に達する。

同アプリは、App Storeのグローバルの支出額でもトップだったが、Google Playでは、TikTokは消費者支出額で第4位にとどまった。Googleの自社サービスであるGoogle Oneが第1位だった。年末までにGoogle Oneの消費者支出は10億ドル(約1140億円)に達し、2020年の4億4850万ドル(約510億円)から123%増だ。

画像クレジット:Sensor Tower

一方、世界のアプリのダウンロード数は伸び悩み始めている。全体としては、2020年の1429億回から1436億回へと0.5%増えているが、これは主にGoogle PlayでのAndroidアプリのダウンロードの伸びによるものだ。Google Playでのインストール数は、2020年の1085億回から2.6%増の1113億回に達した。

しかし、AppleのApp Storeでは、新規アプリインストール数が減少した。2021年のダウンロード数は、2020年の344億回から323億回へと6.1%減少するとSensor Towerは予想している。

TikTokのインストール数は、2020年の9億8070万回から減少したものの、世界全体で7億4590万回となり、引き続き最もダウンロードされたアプリだった(Appleは先日、iPhoneの無料アプリチャートで、TikTokが米国で年間トップのダウンロード数を記録したことを明らかにした)。Google Playでは、Facebookが5億90万回でトップとなり、Androidが普及している多くの新興市場で、同アプリが人気を博していることを示している。しかし、2つのアプリストア合計で2021年のFacebookのインストール数は6億2490万回で、2020年の7億780万回に比べて12%減となる見込みだ。

関連記事:アップルが2021年の米App Store Award受賞者と年間最もダウンロードされたアプリを発表

画像クレジット:Sensor Tower

モバイルゲームは、例年通り世界のアプリ売上高の中で大きなシェアを占めている。2021年のモバイルゲームへの支出は、App StoreとGoogle Playを合わせて896億ドル(約10兆2000億円)に達し、2020年の796億ドル(約9兆620億円)から12.6%増となる見込みだ。

しかし継続的な流れとして、パイ全体に占めるゲームの割合は縮小している。2019年には、アプリ全体の支出のうちゲームが74.1%を占めていたが、2020年には71.7%に低下した。2021年は再び低下し、アプリ内支出全体の67.4%にとどまっている。この変化は、ゲーム以外のサブスクリプションベースのアプリの増加によるもので、2021年は特にパンデミックから経済的恩恵を受けたストリーミングやエンターテインメントアプリの成長が顕著だ。

画像クレジット:Sensor Tower

App Storeでは、ゲームの2021年の消費者支出は523億ドル(約5兆9540億円)で、2020年から9.9%増だ。iOSにおけるゲームマーケットを牽引するのは、Tencentの「Honor of Kings(王者栄耀)」で、2020年の25億ドル(約2850億円)から16%増の29億ドル(約3300億円)だった。

Google Playでは、最高の売上を記録したのはやはりMoon Activeの「Coin Master」で、前年比13%増の約9億1200万ドル(約1040億円)に達した。全体として、Google Playでのゲーム支出はグローバルで2020年の320億ドル(約3兆6400億円)から16.6%増の373億ドル(約4兆2480億円)となる。

画像クレジット:Sensor Tower

ゲームのインストール数は、他のモバイルアプリのインストール数と同様に、App Storeでは前年比で減少し、2020年の101億回から2021年は86億回に減った。中国版「Game of Peace」を含む「PUBG Mobile」は、最多のダウンロード数(4750万回)を獲得した。Google Playでは、ゲームのインストール数は、2020年の461億回から2021年は467億回へと1.3%増加し、Garena Free Fireがダウンロード数最多となった(2億1880万回)。

2021年のトレンドは、2020年に異常なほどの盛り上がりを見せた後、ある程度、少し正常化した。しかし、例えば、消費者支出のうちゲームが占める割合が減少していることや、ダウンロード数ではAndroidがiOSを上回っているが売上高ではそうではないことなど、その他の傾向は変わっていない。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のAmazonアグリゲーターNebula BrandsがLVMH系投資ファンド主導で約57億円調達

2021年は、エグジットを目指している中国のAmazon(アマゾン)ベンダーにとってバラ色の年となった。ロールアップ(ブランドアグリゲーター)は、中国の輸出向けEC市場に資本を投入し、販売者をすくい上げている。例えばシリコンバレーのMarkaiが、中国ブランドを買収するためにPear VCやSea Capitalなどの投資家からシードラウンドで400万ドル(約4億5000万円)を調達したように、ロールアップ企業自体もベンチャー投資に支えられている。

そして中国をターゲットにした他のアグリゲーターも、より多額の資金を調達している。北京に拠点を置くAmazonアグリゲーターであるNebula Brandsは、シリーズBで5000万ドル(約57億円)を超える資金を調達したと中国時間12月7日に発表した。このラウンドは、コンシューマーテクノロジーに特化したグローバルなプライベートエクイティ企業であるL Catterton(Lキャタルトン)のアジアファンドが主導した。

今回のラウンドには、NebulaのシリーズAの投資家であるMatrix Partnersと、エンジェル投資家のAlpha Startup Fundも参加した。同社はこれまでにおよそ6000万ドル(約68億円)を調達している。

Amazonが巨大企業に成長したことで、中国のサードパーティベンダーの多くも繁栄し、数百万ドル(数億円)規模のビジネスになった。これらの輸出業者は、成長を維持するために、より大きな資本と人材を必要としており、業績の良い業者には2つの選択肢が存在する。さらに規模を拡大するためにエクイティ資金を得るか、ビジネスを売却して次に移るかだ。後者の場合、ロールアップの出番となる。

Nebulaの共同設立者であるWilliam Wang(ウィリアム・ワン)氏は声明でこう述べている。「中国のサードパーティベンダー市場は急速な成長を遂げており、世界中のAmazonのお客様に高品質な製品を効率的に提供することができます」。

「フルフィルメントby Amazon(FBA)のベンダーを集約してオペレーションを強化するモデルは、欧米の一部の市場ではすでに非常に効果的であることが証明されており、Nebula Brandsが主導する中国でも広がっていくことでしょう」。

Nebulaは新たな資金を得て、Berlin Brands Group、Razor Group、Thrasioなど、中国の販売者を狙っている海外のアグリゲーター各社と競合することになる。5月に設立されたばかりのNebulaは、すでに1社を買収しており、年末までにさらに数社を買収する予定だとTechCrunchに述べている。

Nebulaは現在、中国で50人以上の従業員から構成されるチームを運営しており、そのスタッフは「有名なeコマース企業、テクノロジー企業、金融企業での勤務経験から、市場に関する深い知識と、現場でのソーシング、アンダーライティング、オペレーションに関する豊富な経験を有しています」と述べている。同社の共同設立者は「上場企業」でCEOを務めたRyan Ren(ライアン・レン)氏、Lenovo(レノボ)で統合マーケティング責任者を務めたWilliam Wang(ウィリアム・ワン)氏、Wayfair(ウェイフェア)でサプライチェーン部門長を務めたHardys Wu(ハーディーズ・ウー)氏の3名だ。

画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

マイクロソフトが中国が支援するハッカーたちのウェブサイトを掌握

Microsoftは、中国政府が支援するハッキンググループが米国を含む29カ国の組織を標的にしていた多数のウェブサイトを掌握した。

MicrosoftのDigital Crimes Unit(DCI)の米国時間12月6日の発表によると、バージニア州にある連邦裁判所の許可により同社は、ウェブサイトのコントロールを奪いトラフィックをMicrosoftのサーバーへリダイレクトすることを認められた。同社によると、これらの悪質なウェブサイトは、国をスポンサーとするNickel(APT15)と呼ばれるハッキンググループが使用して、各国の政府機関やシンクタンク、人権団体などから情報を収集していたという。

MicrosoftはNickelのターゲットの名前を挙げていないが、同グループが米国とその他28カ国の組織を標的としていたという。。また「Nickelのターゲットと中国の地政学的関心の間に関連があることが多かった」とのこと。

2016年からNickelを追っていたMicrosoftはこの前の報告書で同グループを、政府機関を狙う「もっとも活発な」ハッキンググループと呼び、侵入と監視とデータの窃盗を可能とする検出困難なマルウェアをインストールする「高度に洗練された」攻撃を観察したという。ときには、Nickelの攻撃を利用してサードパーティの仮想プライベートネットワーク(VPN)の提供企業を侵害したり、スピアフィッシング作戦で認証情報を取られたこともあるとMicrosoftは述べた。さらに他のケースでは、Microsoft自身のExchange ServerやSharePointシステムの脆弱性を利用して企業への侵入が行われた。ただしMicrosoftの話では「これらの攻撃の一環としてMicrosoft製品の新たな脆弱性が見つかったことはない」とのことだ。

Microsoftのカスタマー・セキュリティ&トラスト副社長であるTom Burt(トム・バート)氏は次のように述べている。「悪質なウェブサイトのコントロールを掌握し、それらのサイトからのトラフィックをMicrosoftの安全なサーバーにリダイレクトすることにより、既存および今後の被害者を保護し、また同時に、Nickelの活動について詳しく知ることができます。私たちの妨害行為でNickelの今後の他のハッキング行為を防ぐことはできませんが、この集団が最近の一連の攻撃で依存していたインフラストラクチャの重要な部分を取り除いたと信じています」。

Nickelが標的とした組織は米国以外ではアルゼンチン、バルバドス、ボスニアとヘルツェゴビナ、ブラジル、ブルガリア、チリ、コロンビア、クロアチア、チェコ共和国、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、フランス、ホンジュラス、ハンガリー、イタリア、ジャマイカ、マリ、メキシコ、モンテネグロ、パナマ、ペルー、ポルトガル、スイス、トリニダード・トバゴ、英国そしてベネズエラといった国のものだ。

Microsoftによると、同社のDigital Crimes Unitは、24の訴訟を通じて、サイバー犯罪者たちが使っていた1万ほどの悪質なウェブサイトと、国民国家の関係者たちのおよそ600のウェブサイトを打倒した。そして2021年初めには、62カ国の被害者を偽メールで攻撃した大規模なサイバー攻撃で利用された悪質なウェブドメインを掌握している

画像クレジット:ilkaydede / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ラテンアメリカの「アリババ」を目指すMeru、海外から安全に商品を調達できるB2Bマーケットプレイスを構築

海外から商品を調達したり輸入したりする際には、どこかで問題が発生することがあり、企業は代金を支払った品を受け取れなかったり、あるいは何も届かないことさえある。

メキシコに拠点を置くMeru.com(メル・ドットコム)を共同設立したManuel Rodriguez Dao(マヌエル・ロドリゲス・ダオ)CEOと共同設立者のFederico Moscato(フェデリコ・モスカート)氏は、他社のために商品を調達する仕事をしていたとき、当初注文した商品を手に入れることができないなどの問題に直面し、このことを痛感した。

2020年、彼らはEduardo Mata(エドゥアルド・マータ)氏、Virgile Fiszman(ヴィルジール・フィスマン)氏、Daniel Ferreyra(ダニエル・フェレイラ)氏と共同で、中小企業が同じ運命を避けられるようにMeruを起ち上げた。同社は米国時間12月2日、シリーズAラウンドによる1500万ドル(約17億円)の資金調達を発表した。このラウンドは、Valor Capital(バロー・キャピタル)とEMLES Ventures(エムレス・ベンチャーズ)が共同で主導し、創業者グループによる個人投資も含まれている。これまでに同社は総額1700万ドル(約19億2500万円)を調達している。

Meruの技術には、シンプルなプロセスで、価格の非対称性なしに国内外のメーカーをサプライチェーンの他の部分と結びつけるマーケットプレイスとアプリが含まれており、まずは中国とメキシコの間で展開している。品質認証を受けた工場と直接取引していると、ロドリゲス・ダオ氏はTechCrunchに語った。

従来の調達方法では、中小企業は週に2日もの時間を費やし、最大5社の仲介業者を介して、取引しなければならなかった。しかも、平均して80%もの取引が詐欺に遭っていると、ロドリゲス・ダオ氏はいう。これに対し、Meruを利用する顧客は、数分で商品を選択して購入することができ、その際には商品を確実に、そして市場のベストプライスで受け取ることができるという保証も、同社で付けているという。

MeruはY Combinator(Yコンビネータ)の2021年冬のバッチに参加しており、今回の新たな資金調達は、最終的にはラテンアメリカのAlibaba(アリババ)になるという目標に向けて、Meruが中小企業のためのワンストップショップになることを支援すると、ロドリゲス・ダオ氏は述べている。

「私たちは中国でリモートワークを始め、グローバルな取引の中で、新興国でも同じような痛みが発生していることを知りました」と、同氏は続けた。

「私たちは、アリババのようにテクノロジーを駆使した流通によって、仕入れや調達を安全なものにしたいと考えています。そのために、サプライチェーン全体の関係者をつなぎ、彼らが割引価格を利用できるようにしています」。

Meruは開始からわずか1年で、すでに1万人以上の登録ユーザーを抱え、7つの商品カテゴリーを運営している。資金調達を支援するフィンテックのパートナーもいる。Meruがマーケットプレイスを起ち上げた2020年8月には6名だった従業員が、現在では中国とメキシコの両方で合わせて210名の従業員を擁するまでになった。

同社は今回の資金調達を、新たな業種やカテゴリーの追加、技術開発、チームの拡大に充てる予定だ。毎月の収益は40%から50%増加している。

「Meruは、ラテンアメリカの中小企業が、すべて単一のコンタクトポイントを通じて、アジアからより効率的に商品を購入できる統合的なB2Bマーケットプレイスを構築しています」と、Valor Capital GroupのマネージングパートナーであるAntoine Colaço(アントアーヌ・コラソ)氏は声明で述べている。「何千もの商品へのアクセスを提供し、すべての物流、請求、フォローアップのプロセスを管理し、金融ソリューションを組み込むことによって、Meruはラテンアメリカとアジアのグローバルなサプライチェーンのつながりを強化することに貢献するでしょう」。

画像クレジット:Meru.com

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国アリババがCFO交代を含む大規模な経営陣の再編を発表

Alibaba(アリババ)は、同社の最近の歴史の中で最大規模の再編成の1つとして、4人の幹部の役割を変更することを中国時間12月6日朝に発表した。

eコマースの巨人である同社のMaggie Wu(マギー・ウー、武衛)CFO(最高財務責任者)は2022年4月に退任し、後任には現副CFOのToby Xu(トビー・シュー、徐宏)氏が就任する。ウー氏は、Alibabaの方向性に大きな影響力を持つ人材で構成されるAlibaba Partnership(アリババ・パートナーシップ)のパートナーとAlibaba取締役会の執行取締役を引き続き務める。

ウー氏は、約15年前にAlibabaに入社して以来、同社の3件の株式上場に貢献した。2007年のAlibaba.com(同社のB2Bマーケットプレイス)の香港証券取引所への上場、2014年のAlibaba Group Holding(アリババグループ・ホールディング)のニューヨーク証券取引所への上場、2019年の香港証券取引所への上場である。Alibabaは、米中の緊張が高まる中、香港でのセカンダリー上場を推し進めた米国上場の中国企業の1つだ。

1999年に設立されたAlibabaは、2015年にJack Ma(ジャック・マー、馬雲)氏がCEOの座をDaniel Zhang(ダニエル・チャン、張勇)氏に譲り、さらに2019年に会長に任命したことで、すでに大きな再編を経験している。

ウーCFOは声明で次のように述べている。「本日行われたAlibabaのCFO交代の発表は、長年にわたる広範な準備の集大成であり、Alibabaの幹部継承計画の一環です」。

同氏はこう付け加えた。「市場には常に浮き沈みがありますが、Alibabaには野心的な長期目標があります。私たちはリレー選手のようなもので、会社を前進させるには、新世代の人材が必要です。私は、数年前に初めてCFOに就任した時の自分以上にトビー(・シュー)を信頼しています」。

シュー氏は、3年前にPwC(プライスウォーターハウスクーパース)からAlibabaに入社し、2021年の同社の投資家向け説明会に副CFOとして初めて登場した。Alibabaでは、中国でのスターバックスとの提携など、いくつかの大きな取引を監督してきた。

CFOの交代と同時に、ダニエル・チャンCEOは社内文書で、Alibabaは、国内および国際的なeコマースという2本立ての戦略を強化するための大規模な組織再編をすると発表した。

Alibabaの収益の柱である中国国内の消費者向けマーケットプレイスを長年にわたって指揮してきたJiang Fan(ジャン・ファン)氏は、新たに設立されたインターナショナルデジタルコマース部門を指揮する。インターナショナル部門には、同社が2016年に経営権を取得した東南アジアのAmazon(アマゾン)と呼ばれるLazada(ラザダ)が含まれる。また、Alibabaはトルコの主要なECプラットフォームTrendyolの過半数株式を取得し、南アジアで同社に相当する地位のDarazを買収している。

チャンCEOは社内文書の中で「今後も真のグローバル企業を目指していく中で、海外市場には多くのエキサイティングな可能性と機会があると考えています」と記している。

一方、中国国内の消費者向け市場と卸売市場は統合され、新たに中国デジタルコマース部門が設立され、Trudy Dai(トゥルーディ・ダイ)氏の監督下に置かれる。ダイ氏はこれまで、Alibabaの新たな成長ドライバーである、中国の低所得者層を対象としたバザー「Taobao Deals(淘宝ディールズ)」と、近隣の食料品店を対象とした「Taocaicai」の2つのサービスの陣頭指揮を執ってきた。

画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国eコマースのPinduoduoが利益のすべてを農業に投資する理由

ここ数年、Pinduoduo(拼多多、ピンデュオデュオ)は、Alibaba(阿里巴巴、アリババ)の最強挑戦者として広く知られてきた。Alibabaの小売プラットフォームにおける年間アクティブユーザー数が、9月までの12カ月間で8億6300万人だったと報告されている一方、Pinduoduoは9月までの四半期の月間平均アクティブユーザー数が7億4000万人を超えたと発表している。

新たな成長エンジンを求めて、Pinduoduoはライバル企業とは異なる道を歩もうとしている。電子商取引の巨人である両社はともに成長が頭打ちになり始めているが、Alibabaがクラウドコンピューティングに力を入れているのに対し、Pinduoduoが資金を投入しているのは農業だ。

Pinduoduoは8月に「農業分野と農村地域の重要なニーズに直面し、対処する」ことを目的とする100億元(約1770億円)規模の農業プログラムを発表した。この包括的な取り組みには、農業関連のスタートアップ企業に対する出資や、基礎研究や人材育成への助成などが含まれている。

このプログラムは利益を目的としたものではなく、この第2四半期に得られたすべての利益と「今後の四半期に得られる可能性のある利益は、この取り組みに充てられる」と、同社は約束している。

Pinduoduoの農業に対する投資は、農村部の貧困を緩和するための努力であり、中国政府が最近呼びかけている「共同繁栄」(物心両面の豊かさをみんなで共有すること)への回答であるという見方もある。しかし、同社は当初から農業がその中核事業であることを繰り返し主張してきた。

2015年に設立されたPinduoduoは、果物のオンライン販売からスタートし、徐々に商品カテゴリーを広げていった。多くの生産者にとってeコマースは有益だった。中国の農業は、数百万もの小規模な家族経営の農場が中心で、生産した農産物を全国に販売するためには、何重もの流通業者に頼らければならなかった。そのため、農家はわずかな利益しか得られないことも多かった。

農産物の販売業者を誘致するため、Pinduoduoは手数料を免除しており、先週の決算説明会では「将来の四半期」もこの方針を維持する予定だと述べた。農家が登録すると、Pinduoduoは彼らをデジタルストアの運営やマーケティングに長けた人材に育成する。注文が入れば、中国の電子商取引ブームの中で形成された成熟した配送ネットワークを活用し、サードパーティの物流サービスが農産物を消費者に届ける。

農村の農産物を都市部の家庭に届けようとしているのは、Pinduoduoだけではない。AlibabaのTaobao(タオバオ)は、以前から「農業関連の電子商取引」を重要な取り組みとしており、Kuaishou(クアイショウ、快手)のような動画アプリは、ライブストリーミングを通じて農家の販売を支援している。

関連記事:中国版TikTokのライバル「Kuaishou」はオンラインバザールとしても人気

しかし、Pinduoduoは販売だけでなく、農家の生産上の問題に関しても解決に役立ちたいと考えている。

2021年3月にColin Huang(コリン・ホアン)氏の後任としてCEOに就任したChen Lei(チェン・レイ)氏は「エンジニアとしての訓練を受けた私と私のチームは、農業のサプライチェーン全体に導入できる技術ソリューションを見つけることに専念してきました」と、決算説明会で語った

「当社の農業技術への取り組みは、需要と供給をマッチングさせることに留まらず、生産性、栄養組成、環境持続性を向上させるためのアップストリームな技術ソリューションを見出すことにまでおよびます。アグリテックの応用を強化することで、農業が技術に精通した若い世代にとって魅力的なものになることを、私たちは願っています」と、チェン氏は続けた。

販売や栽培のみならず、Pinduoduoは研究機関と協力して、肉や農作物などの生産物に業界標準を導入することにも取り組んでいると、同社の財務担当バイスプレジデントであるJing Ma(ジン・マ)氏は決算説明会で語った。

NASDAQ上場企業であるPinduoduoは、当然ながら投資家に恩義を受けている。第3四半期には、マーケティング費用の削減などにより、2四半期連続で営業利益が黒字となった。その一方で、同社は研究開発費に重点を移しており、これが第3四半期の営業費用の約19%を占めている。

Pinduoduoの農業投資が目に見える形で成果を上げるまでには、しばらく時間がかかりそうだ。例えば、Pinduoduoで販売している1600万人の農家にとって、同社の技術はどのように収穫量の向上に貢献するというのだろうか?

Pinduoduoはいくつか初期の成果を公表している。例えば、同社は2020年、世界中のスタートアップ企業に、最も甘く最も環境に優しいイチゴの栽培を呼びかけ、優勝したチームの精密農業ソリューションは、すでにいくつかの農場に導入されているという。

関連記事:アリババのライバルPinduoduoはなぜ中国の農業に投資するのか

画像クレジット:Pinduoduo / A strawberry grower on Pinduoduo

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国の配車サービス大手Didiがニューヨーク証券取引所の上場廃止へ

中国の配車サービス大手Didi(滴滴出行)は米国時間12月3日朝、ニューヨーク証券取引所の上場を廃止し、代わりに香港での上場を申請する手続きを開始したことを、Weibo(微博)への投稿で発表した

この決定は、中国政府が安全保障上の懸念からDidiに米国での上場廃止を要請したとBloombergが報じてから数日後のことだ。その際、TechCrunchはDidiにコメントを求めようとしたが、連絡が取れなかった。

上場廃止の動きは驚くべきことではない。ソフトバンクが支援するモビリティ企業Didiは、7月の超大型IPOの前に、データ処理の安全性を中国政府に保証できなかったことから、規制面で大きな圧力を受けていた。

ここ数カ月、中国はユーザーのプライバシー保護を強化したり、国境を越えたデータ転送を制限したりするなど、多くの新しいデータ規制を導入してきた。Didiの幹部は以前、同社がデータを中国国内に保存しており「他の多くの米国上場の中国企業」と同様に、米国にデータを渡したことは「絶対にあり得ない」と述べていた。

Didiの時価総額は現在376億ドル(約4兆2540億円)だ。同社の株式は、デビュー時には1株あたり15ドル(約1700円)を超えていたが、12月2日時点では7.8ドル(約880円)まで大きく落ち込んでいる。

画像クレジット:STR/AFP / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

Antがグループ収益の約4割占めていた小口融資事業にメス、中国の「分割」命令から約1年

2020年12月、中国政府はAnt Group(アント・グループ)に対し、史上最大の新規株式公開となる可能性があったIPOを中止した後、その事業を「是正」するためのガイドラインを示した。その中で規制当局は、Antにクレジット事業の見直しなどを求め、金融機関を監督するのと同じ一連の規制を受けるようにした。言い換えれば、Antはもはや「テック」企業と称して自由奔放に活動できないということだ。

関連記事:中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

それから約1年後、Alibaba(アリババ)系列のフィンテック企業である同社は、人気の高い消費者向けクレジット商品の再編をほぼ終えたことを示した。

2020年に提出された同社の目論見書によると、クレジットローン商品は2020年6月までの6カ月間でAntの収益の40%近くを占めていた。2つの主要商品は、仮想クレジットカードのように機能する、消費者の日常的な支出のために2014年に発売された「Huabei(花唄、ホワベイ)」と、その1年後、より大規模な消費トランザクションのためのクレジット商品として導入された「Jiebei(借唄、ジエベイ)」だ。

旧モデルでは、Antがオリジネートしたローンを、第三者である銀行などの金融機関が引き受けるという形をとっていた。同社の目論見書によると、2020年6月時点で、プラットフォームを通じて組成されたAntのクレジット残高の約98%は、パートナーの金融機関が引き受けるか証券化されている。

Jiebeiは2つのブランドに分割されたと、今週初めに複数のユーザーが報告している。Antの主力金融サービスアプリであるAlipay(アリペイ)では、サードパーティの銀行が提供するクレジットラインは「Xinyong Dai(信用贷=クレジットローン)」と呼ばれている。一方、規制当局の要請を受けて設立されたAntの消費者金融会社が提供するクレジットラインは、「Jiebei」ブランドのままである。

Huabeiも同様に再編を開始し、どのローンが銀行から独立して提供され、どのローンがAntの消費者金融会社から提供されているかをユーザーに示すようになった。Huabeiは、日常的な「少額」取引に焦点を当てていくと、Weibo(微博、ウェイボー)への投稿で述べている

「ブランドの差別化に伴い、クレジットローンサービスを申し込むユーザーは、ブランドの混同を避けるために、クレジットプロバイダーに関するより多くの情報を得ることができます」とも。

Huabeiはまた、中国人民銀行(中央銀行)が監督するデータベースに消費者の信用情報を提出していることにも言及している。同社は9月に消費者信用会社を設立した後、このルーチンを開始した。消費者信用会社は銀行と同様に、中央銀行に信用評価データを報告する必要がある。

画像クレジット:Ant Group

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

米国、中国軍の量子コンピューター開発に協力する企業として日本含む4カ国27社ををエンティティリストに追加

米国、中国軍の量子コンピューター開発に協力する企業として日本含む4カ国27社ををエンティティリストに追加

Han Xu/Xinhua via Getty Images

米国商務省は、国家安全保障上の懸念があるとして中国企業12社を貿易ブラックリスト、いわゆるエンティティリストに追加したと発表しました。これら企業は、中国軍の量子コンピューターへの取り組みを支援しているとされます。

11月24付で公表されたエンティティリストには先の中国企業含め、パキスタン、シンガポール、そして日本の4か国計27企業が新たに追加されています。また中国、パキスタンの企業のなかにはパキスタンで核開発や弾道ミサイルの計画に携わっている言われている企業13社が含まれています。

ジーナ・レモンド商務長官は声明において「国際的な通商・貿易は、国家安全保障上のリスクでなく、平和と繁栄、そして良質な雇用を支えるものでなければならない」と述べました。

なお、今回リスト入りした日本の企業というのは、Corad Technologyと称する中国企業の関連会社とのこと。Corad Technologyは2019年にイランの軍事および宇宙計画のためにに米国技術を販売したとしてリスト登録されており、関連会社は日本やシンガポールに所在しています。

その他の企業の多くは、中国軍による対潜水艦兵器の開発、暗号の解読、逆に解読不可能な暗号の開発などで量子コンピューターを活用する目的のため、米国の新技術を盗み出そうとしたとされます。またほかにはパキスタンの”安全でない核開発活動”に協力しているとされる3社が含まれています。

エンティティリストに登録された企業に部品やその他物資を供給する米国のサプライヤー企業には、事前にライセンスを得る必要が生じます。しかし、米商務省産業安全保障局(BIS)側は、これを許可する可能性は低いと考えられます。

量子コンピューターを軍事的に利用しようとするには、その方法などをこれから研究開発していく必要があります。そのためエンティティリスト登録だけでは、将来的な量子コンピューターの軍事利用を阻止することはまずできません。

とはいえ、開発を手助けする米国産のプロセッサーや関連機器の供給を止めることは、中国における軍事量子コンピューター開発の流れを少しでも弱めることにつながります。

米国は、中国の量子コンピューター開発が経済的な面だけでなく軍事的な面でも、米国が優位に立つための障害になると考えているということです。

(Source:U.S. Department of Commerce(PDF)Engadget日本版より転載)

元マイクロソフト執行副社長のハリー・シャム氏が率いる研究機関「IDEA」が深圳に誕生

IDEA(The International Digital Economy Academy、国際デジタル経済アカデミー)」は、2020年、香港との国境の川を挟んだ深圳の地の超近代的なオフィスビルの中にひっそりとオープンした。

香港とは地理的に離れているが、厳密には香港と深圳にまたがる「深圳-香港・革新技術協力区」という特別なエリアに位置する研究機関だ。名前を見れば一目瞭然だ。これは、深圳と香港の政府が、北京の支援と有利な政策を受けて、科学技術の研究を共同で行うためのものだ。

IDEAは、サッカー場540面分に相当する3.89km²の特区内に設立された組織の1つで、Harry Shum(ハリー・シャム)氏の発案によるものだ。著名なコンピューター科学者であるこの人物は、2013年から2019年までMicrosoft(マイクロソフト)の執行副社長を務めた他、Microsoftの米国外で最大の研究部門であるMicrosoftリサーチアジアを共同で設立した。

Microsoftの元同僚であるKai-Fu Lee(カイフー・リー)と同様に、シャム氏はAIの研究面とビジネス面の両方で活躍していた。現在、IDEAにいる彼のチームは「社会的ニーズに基づいて破壊的な革新技術を開発し、デジタル経済の発展からより多くの人々が恩恵を受けられるような形で社会に還元すること」を目指している。IDEAのリサーチディレクターには、Yutao Xie(ユタオ・シー)氏やJiaping Wang(ジェイピン・ワン)氏など、Microsoftのベテランが名を連ねている。

中国のインターネット企業に対する徹底的な規制強化は、北京がテック企業を敵視しているという見出しにつながっている。しかし、政府の意図はもっと微妙なものだ。金融市場のリスクやゲーム中毒、ギグワーカーの搾取などを助長してきた、社会や経済にとって有害とみなされるビッグテックを対象にしているのだ。

その一方で、中国は基礎研究を促進し、西洋技術への依存度を下げるという目標に固執している。Huawei(ファーウェイ)、DJI、Tencent(テンセント)などの巨大企業の本拠地である深圳では、政府が世界レベルの科学者らを採用している。ハリー・シャム氏と彼のチームは、その中でも最も新しい研究者の1人だ。

IDEAは、確かに話題性のある名前(そしてすばらしい頭字語)だ。習近平国家主席の演説では、テクノロジーが経済の原動力になるという意味で「デジタル経済」という言葉が出てくることがよくある。習近平国家主席は10月「デジタル経済は近年、世界経済を再構築し、世界の競争環境を一変させる重要な力となっている」と述べた。「インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーは、経済・社会の発展のあらゆる分野にますます組み込まれています」。

IDEAは、AIが金融、製造、医療などの産業をどのように変革できるかを検討している。今週、中国の大手クオンツトレーダーであるUbiquant(九坤投資)と提携し「金融取引市場のリスクモニタリングと回避 」や「ハイパフォーマンスコンピューティングシステムの基本的なインフラ」に関する研究を行う共同ラボを設立することを発表した。

IDEAは、近年、深圳に誕生した数多くの研究機関の1つにすぎない。政府の支援を受けて香港中文大学の深圳キャンパスに設立された「深圳データ経済研究所」もまた、中国のデジタル経済の発展のために活動しているグループだ。

画像クレジット:LIAO XUN / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Akihito Mizukoshi)

中国のAI・顔認識大手SenseTimeが香港でのIPOを準備中

中国最大級のAIソリューションプロバイダーであるSenseTime(商湯科技開発有限公司、センスタイム)は、IPOに向けて一歩前進した。メディアの報道によると、SenseTimeは香港証券取引所に上場するための規制当局の承認を受けた

2014年に設立されたSenseTimeは、Megvii、CloudWalk、Yituと並んで中国の「四大AIドラゴン」と総称されている。2010年代後半、SenseTimeのアルゴリズムは、現場のデータを実用的な洞察力に変えることを望む企業や政府から多くの需要があった。同社のAIモデルを組み込んだカメラは、24時間体制で街を監視している。ショッピングモールでは、同社のセンシングソリューションを利用して、施設内の混雑状況を追跡・予測している。

SenseTimeのライバル企業3社は、いずれも中国本土か香港での株式売却を検討している。Megviiは、香港証券取引所への申請が失効した後、中国のNASDAQ式証券取引所、STAR Board(科創板)への上場を準備している。

関連記事:中国最大級の顔認証ユニコーンMegviiが上海でのIPOを準備中

中国のデータリッチなテック企業が海外で上場する道は狭まっている。北京は、機密データを持つ企業が中国国外で上場することを難しくしており、欧米の規制当局は、大量監視を助ける可能性のある顔認証企業に対し慎重な姿勢をとっている。

しかしここ数年、中国のAI新進企業は世界中の投資家から求められていた。2018年だけで、SenseTimeは20億ドル(約2300億円)以上の投資を集めた。これまでに同社は、12回のラウンドを通じて52億ドル(約5982億円)という驚異的な額の資金を調達している。最大の外部株主には、SoftBank Vision Fund(SVF、ソフトバンク・ビジョン・ファンド)とAlibaba(アリババ)のTaobao(淘宝、タオバオ)が含まれている。ロイター通信によると、SenseTimeは香港での株式公開にあたり、最大20億ドル(約2300億円)の資金調達を計画しているという。

目論見書によると、SenseTimeは資本の大部分を研究開発に費やしており、2018年から2020年の間に50億元(7億8000万ドル、約897億円)以上の費用がかかっている。同社は過去4年間、純損失を計上しており、その主な原因は「優先株式の公正価値損失」である。その純損失は2021年の上半期に37億元(約666億円)に達した。6月時点での赤字総額は230億元(約4139億円)に迫る。

同業他社と同様に、SenseTimeは「スマートシティ」プロジェクトを収益化の柱としており、6月までの半年間の総売上高16億5000万元(約297億円)のうち、47.6%を占めている(2020年同期は27%)。同社の目論見書によると、SenseTimeのソフトウェアプラットフォームを利用している都市の数は、6月までに119に達した。

商業施設や賃貸マンションなど、企業のニーズに合わせた「Smart Business」ラインは、2021年上半期の収益の約40%を占めた。同社は残りの収益を、IoTデバイスに供給する「Smart Life」部門と、知覚知能を自律走行ソリューションに適用する「Smart Auto」から得ている。

画像クレジット:Gilles Sabrie/Bloomberg via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

Baiduのロボットタクシーサービス、2030年までに100都市での展開を目指す

Baidu(バイドゥ)は、自律運転の実現に向けた取り組みを強化している。中国のテック企業Baiduは、検索エンジンでその名を知られ、現在も収益を検索広告に大きく依存している。しかし、同社は自律運転への大きな賭けが将来的に報われることを期待している。

BaiduのロボットタクシーサービスであるApollo Goは、2025年までに65都市、2030年までに100都市での展開を目指していると、Baiduの共同創業者でCEOのRobin Li(ロビン・リー氏)は現地時間11月18日のアナリスト向け電話会議で語った。

これは、Baiduが大量のライセンスを現地の規制当局から取得しなければならないことを意味する。そして最終的には、これらの許可のうちどれだけがApollo Goに商業活動を許可し、サービスが実際にどれだけの乗車数を集めることができるかが、このビジネスの持続可能性を左右することになる。

今のところ、リー氏はBaiduが「おそらく乗車数では世界最大のロボットタクシーサービスプロバイダーである」と見積もっている。第3四半期だけで、Baiduは11万5000回の乗車を提供しており、同氏は第4四半期の乗車数を「みなさんが世界のどこかで耳にする報告数よりもはるかに多い」と予想している。

運転技術の向上という点では、Baiduはこれまでに1600万キロメートル以上のL4(自走式)走行距離を達成している。これは、第1四半期の報告書に記載された620万マイル(約997万キロ)から増加している。

しかし、これらの膨大な数字は、閉鎖された地域の指定ルートではなく、交通量の多い都市部の道路で実際にどのくらいの走行が行われているのかがわからなければ、意味がない。

中国の多くの自律運転車企業と同様に、Baiduもロボットタクシー事業を展開する一方で、先進的な運転支援技術を自動車メーカーやOEMメーカーに提供している。

Baiduは2017年から、オープンソースのApolloプラットフォームを通じて自動車会社に運転ソリューションを提供している。同プラットフォームは数百の企業ユーザーを蓄積しているが、同社は特定のパートナーとの緊密な関係を育んできた。例えば、中国のGeely(ジーリー)と合弁会社を設立して電気自動車メーカーのJidu Auto(ジドゥ・オート)を設立し、パートナー企業が500億元(77億ドル/約8940億円)を出資している。

画像クレジット:Baidu

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(文:Rita Liao、翻訳:Akihito Mizukoshi)

インターネット分野への投資が停止した中国で新興技術分野を開拓するTemasek

インターネット産業に対する中国の徹底的な締め付けにより、ゲームやeコマースなど、かつて人気を博した分野への投資家や新興企業の情熱が冷え込んでいる。しかし、投資家たちは中国でペースを緩めてはいない。2010年代の消費者向けインターネットブームは、Tencent(テンセント)やAlibaba(アリババ)のような巨大企業を生み出した。デジタル化がより伝統的な分野にも広がるにつれ「テック」業界全体でも新たな巨人の誕生が見込まれる。

例えば、Temasek(テマセク)のRohit Sipahimalani (ロヒット・シパヒマラニ)氏は、中国の医療テック、バイオテック、ヘルスケア、サステナビリティなどの分野に「膨大な機会」があると考えていると、日経アジアのインタビューに答えている。これらは「政府の政策に引き続き沿っている」分野だ。

実際、Temasekは最近、これらの分野でいくつかの中国のスタートアップに出資した。眼科・検眼機器サプライヤーのVision X、mRNAベースのワクチン・医薬品を提供するAbogen Biosciences、手術用ロボットを開発するEdge Medical Robotics、自律走行技術を提供するMomentaなどだ。

3月31日時点で、中国はシンガポール政府系企業の最大の投資先であり、3810億シンガポールドル(約32兆円)のポートフォリオの27%を占めている。

一方、Temasekは規制の見直しの中でインターネット関連企業への資本投下を停止している。

シパヒマラニ氏はインタビューの中で「今後数カ月のうちに規制が明確になり、それによって勝者と敗者がはっきりすると思いますが、我々はおそらくこの分野の規制が明確になるまで、資本投入を控えるでしょう」と述べている。

中国のテック産業の発展を形作る統一的な法律はない。この1年間、中国はIT分野を対象とした数多くの新しい規制を導入してきた。例えば、個人情報保護法はユーザーのプライバシーを保護することを目的としており、インターネットサービスがデータを収集する方法、ひいては収益に影響を与える。独占禁止法は、インターネット企業の自由な成長を抑制し、この分野に新しい風を吹き込もうとするものだ。一方で、オンライン教育の取り締まりは、国の所得格差の拡大に対処するための試みであるとの見方が多い。

業界関係者や投資家にとっての課題は、これらの新しい法律を分析するだけでなく、次の法律がいつ導入されるかを予測することだ。

シパヒマラニ氏は「中国では、実行される方法が少し無骨かつ迅速で、そのため多くの衝撃を与えてきました」と話した。

画像クレジット:Andrew Brookes / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

バイデン大統領、ファーウェイやZTEなど国家安全保障上の脅威になりうる通信機器に対する規制強化法案に署名

バイデン米大統領、ファーウェイやZTEなどなど国家安全保障上の脅威になりうる通信機器から政府を保護する規制強化法案に署名

Barcroft Media via Getty Images

バイデン米大統領が、国家安全保障上の脅威になりうる通信機器から政府の「機器認可プログラムおよび競争入札プログラムによる通信サプライチェーン」を保護するための「Secure Equipment Act」に署名しました。この法律によってHuaweiやZTEといった米連邦通信委員会(FCC)の「対象リスト」に掲載されている企業に対してFCCは免許の発行や審査プロセスを実施できなくなります。

FCCコミッショナーのブレンダン・カー氏は「我々はすでにこれらの企業の機器が国家安全保障に受け入れがたいリスクをもたらすと判断しており、これは私が “ファーウェイの抜け穴 “と呼んでいるものを粛々と、適切に塞いでいるということだ」と述べました。

2020年にFCCはHuaweiとZTEを国家安全保障上の脅威とみなし、中国政府(中国共産党)と緊密な関係にあると確認しました。しかし、米国の連邦予算が関与しない部分においては、それら企業は依然として通信機器としてのライセンスを申請できる状態にあり、カー氏はその”抜け穴”をなくすために今回の法制定を呼びかけていました。FCCは2021年より19億ドルの予算を投じて、米国内の通信企業がHuaweiやZTEの機器をリプレースための補助金プログラムを実施しています。

今回のSecure Equipment Actの成立に対し、2社は記事執筆時点でコメントを出していませんが、2020年にはFCCが提出した法改正案に対しHuaweiが「見当違いかつ不当に懲罰的だ」としていました。

FCCは今回成立した法律以外にも、すでに機器に付与されているライセンスを取り消し可能にする新たな法律を提案しています。また先月には、FCCが国家安全保障上の懸念を理由としてチャイナテレコムの米国子会社の米国内事業許可を取り消すことを決議しています。

(Source:ZDNetEngadget日本版より転載)

【コラム】中国の次世代ハッカーは犯罪者ではない、それが問題だ

中国には、犯罪者たちが国家に代わってサイバースパイ活動を行ってきた長い歴史がある。犯罪者から政府のハッカーになった者が、中国の国家安全部(MSS)に所属することで訴追から守られ、中国のスパイ活動の多くを行っている。驚くべきことだが、これは今に始まったことではない。例えば2020年米国司法省が発行した起訴状によると、2人の中国人ハッカーによる同時多発的な犯罪・スパイ活動が、2009年にまで遡ることができるという。また別のケースでは、MSSハッカーの別働隊であるAPT41が、2012年に犯罪組織として始まり、2014年以降は国家スパイ活動を並行して行うように移行したとサイバーセキュリティ企業であるFireEye(ファイアアイ)が主張している。ともあれ、それ以降、中国は変化のための基礎を築いてきたと考えられるのだ。

2015年に始まった相次ぐ政策により、中国は契約を結んだ犯罪者たちを、大学からの新しい血で置き換えるようになった。2015年における中華共産党(CCP)の最初の取り組みは、大学のサイバーセキュリティ学位を標準化することだったが、このとき参考にされたのが米国の人材パイプラインを改善するための国立標準技術研究所(NIST)のフレームワークである「National Initiative for Cybersecurity Education」(NICE、サイバーセキュリティ教育のための国家プログラム)である。その1年後、中国は新たに「National Cybersecurity Talent and Innovation Base」(国家サイバーセキュリティ人材・イノベーション基地)を武漢に建設することを発表した。基地のすべての構成部署を合わせると、年間7万人がサイバーセキュリティのトレーニングと認証を受けることができる。

同様に、2017年には、中国のサイバースペース中央管理局が“World-Class Cybersecurity Schools”(世界レベルのサイバーセキュリティ学校)」という賞を発表した。このプログラムは、米国の一部の政府機関が大学をサイバー防衛や運用における”Centers of Academic Excellence”(優秀アカデミックセンター)として認定しているのと同様に、現在11校を認定している。しかし、犯罪に手を染めていない新たな人材を確保したからといって、中国の作戦が変わる理由にはならない。

国家のハッキングチームを専門化する取り組みは、習近平国家主席の政治的目標である汚職の削減にも直結している。習近平氏が最近行った中国の国家安全保障機関の粛清は、政府の資源を利用して役人が私腹を肥やすことのリスクを示したものだ。契約ハッカーとその指示者との関係そのものがまさに、習近平氏が徹底した反腐敗キャンペーンの対象としてきた私腹を肥やす行為なのだ。

熾烈が増す環境の中で、国際的な反感を買ったり、海外で訴追されるようなオペレーションを行っている役人は、ライバルに寝首をかかれる可能性がある。内部調査員に狙われた職員は「黒監獄」に収監されてしまうかもしれない。中国の国家保安機関は、腐敗官僚を排除し、ハッカーを直接雇用することで、地下のハッカーとの関係を切り捨てていくだろう。

これらの施策の意味するところは、世界の企業や諜報機関が防御を続けてきた中国のハッカーたちが、10年後にははるかにプロフェッショナルな存在になっていることを示唆している。

より有能となった中国は、現在の中国とは異なる行動をとるだろう。中国公安部は、その犯罪行為やスパイ活動を隠すために不正なハッカーに依存していることから、一部のサイバー犯罪者の中国での活動が問題になっているにもかかわらず、それを容認している。犯罪行為が常態ではなくなれば、中国の国家保安機関はこれらの活動を組織内に移すことができるようになる。なぜなら政府のスパイ活動は国際関係上認められた行動だからだ。その結果、中国公安部はサイバー犯罪者に対してより多くの作戦を行うことが可能になる。アナリストは、戦術の変化を示す良い指標となる、内部に焦点を当てたこのような反犯罪活動の強化に注目すべきだろう。

このような中国のサイバー能力の変化は、標的となる国や団体のリストが増えるにつれて、海外でも感じられるようになるだろう。国家ハッカーの数が増えれば、長い間低迷していたスパイ活動が再び注目されることになるだろう。中国のハッキングチームはすでに最高レベルに達しているので、これらの作戦は過去のものよりも「洗練」されたものにはならないだろう。しかし、その頻度は高くなるだろう。

中国の保安機関に支えられたハッキングが着実に犯罪性の皮を脱ぎ捨てていく中で、今後10年間は、契約ハッカーや国家と関係する者が行うサイバー犯罪は減少していくことが予想される。しかし、このような凶悪な行為からの脱却は、スパイ活動や知的財産権の窃盗の増加と対になっている。あとから振り返れば、中国が犯罪者ハッカーに頼っていたことは、腐敗していて素人同然だった古い体質のMSSの名残のように見えるだろう。

この変化は徐々に進むと思われるが、保安機関内での取り締まりの噂や、犯罪グループの消滅や起訴の報告などの、一定の兆候を見ることができるだろう。時間の経過とともに、既存の犯罪者とハッキングスパイチームの間で、技術的な内容が徐々に分離されていくことが予想される。

しかし、スパイ行為そのものはルール違反ではないので、米国の政策立案者は、政府機関、防衛産業基盤、重要インフラ事業者などのサイバーセキュリティに引き続き優先的に取り組む必要がある。ホワイトハウスはすでにこの方向に進んでおり、2021年8月にはサイバー政策についてNATOの同盟国を集め、50万人分のサイバーセキュリティ関連の求人が必要であることを確認した。その一部として、米国国家安全保障局(NSA)が、システム全体のサイバーセキュリティを高めるために、2021年の初めに「Cybersecurity Collaboration Center」(サイバーセキュリティ協力センター)を立ち上げている。米国ではすでに、CyberPatriot(サイバーパトリオット)のようなコンテストを利用して、学生たちをよく整備されたサイバーセキュリティの人材パイプラインに送り込んでいる。サイバーディフェンスの認定を受けたコミュニティカレッジでの、再教育を目的とした新しいプログラムを作ることは、既存のリソースを活用することになるものの、米国内で幼稚園から高校までの教育を受けてこなかった新しい学生も惹きつけることになるだろう。

何よりも、政策立案者は警戒を怠ってはならない。中国が犯罪者を利用しなくなったからといって、その脅威がなくなったわけではない、ただ変化しただけだ。米国政府は、中国の次世代ハッカーに対抗するために、あらゆる選択肢を真剣に検討する準備をしなければならない。

編集部注:著者のDakota Cary (ダコタ・カリー)氏は、ジョージタウン大学のCenter for Security and Emerging Technology(CSET)のリサーチアナリストで、同センターのCyberAI(サイバーAI)プロジェクトに従事している。TechCrunch Global Affairs Projectは、ますます密接になっているハイテク分野と世界の政治との関係を検証している。

画像クレジット:ilkaydede / Getty Images(画像修正済)

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(文:Dakota Cary、翻訳:sako)

Tencentが初めてメタバース実現に向けたビジョンを語る

Tencent Holdings Ltd.のマーティン・ラウ社長(左)と、馬化騰会長兼CEO(右)(画像クレジット:Brent Lewin/Bloomberg via Getty Images)

Facebook(フェイスブック)がメタバースという新しいバズワードに未来を託そうとしているときに、Tencent(テンセント)がその時流に乗らないわけがない。

現段階では、Tencentのアプローチは、Facebookのメタバース部門への100億ドル(約1兆1400億円)の投資に比べてより慎重であるように見える。しかし、中国のソーシャルメディアとゲームの巨人から少しでも早期のヒントが得られれば、投資家の憶測の材料にはなるだろう。

中国時間11月10日に行われた決算説明会で、TencentのPony Ma(ポニー・マー、馬化騰)CEOは、メタバースに関する同社の考えを初めて明らかにした。

仮想世界をよりリアルに、そして現実世界を仮想体験でより豊かにするものは、すべてメタバースの一部となり得ます。

その後、同社の幹部が順番にこのタグラインに肉付けをしていった。彼らの定義がよく分からなくなる場面もあったが、Tencentのボスたちは「メタバース」に到達するための3つの一般的な「道筋」については意見が一致していた。

現在、中国のインターネット業界では全体的に取り締まりが強化されており、開発中のメタバースにもそれが影を落としかねない。Tencentは、ユーザーエクスペリエンスが「規制の枠組みの下で提供される」限り、中国政府の規制は「メタバースの発展を根本的に妨げるものにはならない」と考えている。

しかし、中国国内のメタバースがまだ初期段階にある今、その規制がどのようなものになるかを知ることは困難だ。

メタバースへの階段

メタバースへの最も明白な道のりは、同社の最大の収益源であるビデオゲームだ。それは、高度にインタラクティブなゲームであったり、1つの共通IPのもとに存在する複数のゲームであったり、ユーザーがゲームを作れるようなインフラなどもあり得ると、マー氏は語った。

これらのアイデアのいくつかは、Epic Games(エピックゲームズ)、Roblox(ロブロックス)、Discord(ディスコード)など、Tencentのポートフォリオ企業ですでに具体化し始めている。そう、Tencentはすべてを自前でやろうとしているわけではなく、戦略的価値を見出すことができる何百もの企業を支援しているのだ。

Tencentのチーフストラテジーオフィサー(CSO)であるJames Mitchell(ジェームズ・ミッチェル)氏は「Epicの例では『Fortnite(フォートナイト)』と『Rocket League(ロケットリーグ)』を一緒に見ることができ、Roblox(ロブロックス)の例では、複数の異なるいわゆるゲーム体験があります」と説明した。

マー氏によると、2つ目の道筋は「ゲーム化され、より多くのプログラム可能な体験をサポートする」ソーシャルネットワークである可能性がある。

そのようなソーシャルネットワークには、一連のツールが必要だ。ミッチェル氏は「3Dグラフィックス機能を提供するもので……サーバーベースのコミュニティを持つもの」そして「ゲーム会社が必要とするUGCやPGCのツールを提供するもの」の両方が必要だと説明している。

「そのため、Meta(メタ)自体やSnap(スナップ)などのソーシャルネットワークは、最も多くの資本を持っていますが、やるべきこともそれなりに多くあります」とも同氏は付け加えた。

さらにもう1つの道として「現実世界での体験を、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)で拡張する」という方法もあるとマー氏は指摘する。

ミッチェル氏は、Discordのような「すでに高度な機能を持つテクノロジーボットが存在する」ユーザー運営のコミュニティは「テキストと画像をベースにしたものから、より没入感のあるビデオをベースにしたものへ」移行する可能性があると考えている。

これら3つの計画を実行するために、Tencentはどれだけの能力を持っているのだろうか?同社は、適切な人材と技術を備えていると考えている。

TencentのMartin Lau(マーティン・ラウ)社長はこう述べた。「(メタバースの)原動力となるのは、やはりソフトウェアであり、ユーザーエクスペリエンスを提供するのに本当に役立つ技術であり、それはエンジンテクノロジーであったり、多数の同時ユーザーに対してより良いリアルな体験や忠実度の高い体験を提供する能力であったり、AI技術であったりします。それらが揃うことで、人によって異なる体験をカスタマイズすることができます」。

同社はメタバースの実現時期については明らかにしなかったが、ラウ氏は「おそらく人々が予想していたよりも時間がかかり、多くのイテレーションを必要とするでしょう」と認めている。

Tencentの将来に、Oculus(オキュラス)に相当するものはあるのだろうか?ラウ氏は、メタバースの実現に向けて「ハードウェアは必要条件ではなく、おそらく補助的な条件になるだろう」と考えている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)