bouncy、動画で記事を書く「動画ライター」を起用した新連載企画を開始

「動画ライター」という言葉がちょっと流行りはじめるかもしれない。

動画スタートアップのViibar(ビーバー)は9月7日、同社が運営するメディア「bouncy」において、各方面で活躍するライターやインフルエンサーを動画ライターとして起用し、彼らが“動画で記事を書く”連載企画「bouncy columns」をはじめる。bouncyは、ニュースからライフスタイル情報までさまざまな情報をスマートフォンで観やすい短尺動画形式で伝える動画メディアだ。

ライターといえば、通常は文字を使ってニュースやストーリーを伝える人のことを指すが、彼らがもつノウハウはたとえその手段が動画という形になったとしても活用できると話すのは、bouncy編集長の清田いちる氏だ。

「取材やレビューのやり方、視点や切り口や論点の設定、解説や説明の説得力、読者やネットを意識したコンテンツ作りのマインドといった部分は、テキストのライターでも動画ライターでも共通して使えるスキルだと考える」(清田氏)

bouncyは自社で培った動画制作のノウハウを動画ライターたちに提供する。ノウハウの伝授は対面による指導で行うほか、動画ライター用に整備したマニュアルも渡しているという。現時点でbouncy columnsへの参加が決定している動画ライターは、ライター兼ゲーム実況者の砂流恵介氏など3名。Viibarは年内に10名の動画ライターによる連載開始を目指すとしている。

動画ライターによる記事の配信は、本日よりbouncyのWebサイト、Facebook、Twitter、Instagramにて実施する予定だ。

TechCrunchっていったい何者なんだ?ーーTC Tokyo開催前に知っておいて損はない、僕たちの歴史

TechCrunch Tokyoの開催まで、いよいよあと約2ヶ月というところだ。これまでにも僕たちはさまざまな形でTechCrunch Tokyoを紹介してきた。それらの記事はこちらのページにまとめてあるので、ぜひご覧頂きたい。でも、TechCrunch Tokyoの紹介記事がSNSのフィードに入ってきて、それを通してはじめて“TechCrunch Japan”というモノを知ったという人もいるだろう。だから、この記事では「そもそもTechCrunchって何?」という疑問を解消したいと思う。

What’s TechCrunch?

TechCrunchが産声をあげたのは2005年のことだ。創設者はマイケル・アーリントンという人物。彼はAchexというインターネット決済分野のスタートアップを立ち上げ、のちに約3200万ドルで事業を売却したという経歴をもつ起業家(ちなみに、マイケルはその事業売却で「ポルシェを買ってちょっとお釣りがくる」くらい儲かったらしい)。そんな彼が“個人ブロガー”としてシリコンバレーにまつわる情報をガリガリと書き始めたのが「TechCrunch」の起源だ。

もともとブログとして始まったTechCrunchでは、今でもそのブログ文化を受け継がれている。例えば、TechCrunchはスタートアップやテックに興味のある“ブロガー”の集合体であると言える。僕の名刺に書かれている肩書の日本語表記は「記者」だが、英語表記では「Blogger」だ。また、どんなニュースを記事にするかという点にもその独自の文化が色濃く残っている。

TechCrunchでは、編集長などのいわゆる“Big Boy”たちがトップダウン式に掲載するニュースを決めるというよりも、基本的に記者自身が興味・関心を持つ分野のニュースを記事化することが多い(もちろんニュースの重要度も考慮するが)。それと、おそらくTechCrunchは文体も特徴的で、新聞など旧来メディアのニュースに比べると、砕けた、というかフレンドリーな表現が多いと感じる人もいるだろう。

個人的な想いも混ぜながら話すと、TechCrunchは、文字通り立ち上がったばかりのスタートアップが最初にインターネットニュースの世界にデビューする場であって欲しいと思うし、これからもずっとそんな存在であり続けたい。たとえ、注目度が低くてなかなか大手メディアに取り上げられなかったとしても、最低限デモできるプロダクトやサービスがあり、それを見た記者が「面白いなあ!」と感じれば掲載する。そんなメディアでありたいと思うのだ。

What’s TechCrunch Japan?

さて、ちょっとばかり感情的になって前置きが長くなったけれど、そんなTechCrunchの日本版である僕たち「TechCrunch Japan」は2006年に創設された。トランス・コスモスでシリコンバレー投資を担当している西田靖さんがマイケル・アーリントンに直接許可をもらい、TechCrunch(US版)の記事を日本語に翻訳したのが始まりだ。それから数年間かけて、僕のような国内のスタートアップニュースを執筆する記者も徐々に増え、今では日本発のスタートアップ関連ニュースも毎日掲載されるようになっている。

その後、時が経つにつれてTechCrunch Japanの運営母体はトランス・コスモス、DESIGN IT!、AOL Japan、そして現在のOath Japan(旧AOL Japan)へと移り変わっていった。まあ、運営母体が変わっていった理由は「大人の事情」だと説明できる場合もあるし、そうでない場合もあるだろう。2008年のリーマン・ショックのときには、日本のスタートアップ業界も冷え込み、TechCrunch Japanもその煽りを受けて閉鎖しかかったこともあった。そのときは、当時TechCrunch Japanの主力ライターだったTHE BRIDGE共同創設者の平野武士さんが閉鎖の危機を救ってくれた。

TechCrunch Japanによる日本独自記事の掲載や、冒頭でお伝えした年に1度の大イベント「TechCrunch Tokyo」の運営が始まったのは、現在B Dash Venturesでディレクターを務める西田隆一さんが編集長に就任していた時代だ。西田さんは今のTechCrunch Japanの原型を作った人物だと言えるだろう。

その後、西田さんの後任として編集長に就任した現Googleの西村賢さんは、TechCrunch Japanの拡大に貢献した。TechCrunch Tokyoが始まった当初は来場者が600人程度の小さなイベントだったが、現在では2500人以上の来場者を数えるまでに拡大した。TechCrunch Tokyoに登場したスタートアップ企業の累計資金調達額は、現時点で約400億円というところだろうか。

そんなTechCrunch Tokyoも今年で8回目の開催となる。西村前編集長の後任として新たにジョインした、元週刊アスキー編集長の吉田博英による新体制になって初めてのTechCrunch Tokyoだ。

体制は変わった。でも、スタートアップ業界に興味をもつ人々が満足するようなイベントを作りたいという気持ちは変わっていない。今年も、すでに発表しているGitHub CSOのJulio Avalos氏dely代表取締役の堀江裕介氏Top Flight CEOのLong Phan博士HEROZ代表取締役CEOの林隆弘氏をはじめ、豪華なスピーカー陣を用意してみなさんをお待ちしている。

通常4万円の入場チケットが1万8000円で購入できる「超早割」の期限は残り約2週間と迫ってきたので、ぜひこの機会に購入してほしい。

チケット購入はこちらから

“場所“をブックマークすれば旅行プランとガイドを自動で作れるアプリ「bitter」、フェンリルが公開

根強い人気を持つウェブブラウザ「Sleipnir」やモバイルブラウザ「Sleipnir Mobile」などを提供するフェンリルから9月6日、旅のプランが作成できるiPhoneアプリ「bitter(ビター)」がリリースされた。

bitterは、行きたい場所の情報が載っているウェブページを地図上にブックマークし、情報収集と旅行プランの保存・共有ができるアプリ。使い方はこうだ。まず、行きたいスポットを検索してページを表示する。閲覧中のページに、場所に関する情報が表示されていたら、自動的にスポット情報を抽出してマップ上にそのページのブックマークを作ることができる。また自分でページ上のスポット名を選択して、マップに登録することも可能だ。

検索して表示したページを「場所」ごとにブックマークできる。

登録されたスポットは、マップ上からでもリストからでも閲覧することができる。旅行前に行きたい場所の情報を予習して想像を膨らませるのにも、旅から帰ってきて復習するのにも使える。また「今いる場所から近い順」に表示することもできるので、旅行中に今から行こうとしている場所を確認するのにも便利だ。

登録しておいたスポットに関する情報を地図上、またはリスト表示で確認できる。

行きたい場所がある程度収集できたら、いよいよ旅のプラン作成だ。スポットを選択して、旅行の予定期間を入力すると、行きたいところを入れたルートを自動的に作成して、プレビュー表示することができる。自分でイチから地図を見て予定を組むよりは、楽にプランを作成できるだろう。距離から行き先の順序を判断してくれるので、知らない街などで移動プランを作成するには、重宝しそうだ。

行程に入れるスポットと日付を選び、ルートを作成する。

もっとも、スポットでの滞在時間などについては、自分で決めて入力する必要があるし、移動手段が登録されていない区間の交通機関については、自力で調べてメモしておかなければならない。飛行機での移動や船などを使う区間については、あきらめて手で入力した方がいいだろう。

作成した旅のプランは、テキストでシェアすることもできるので、一緒に行動する家族や友人への確認もスムーズにできる。

このアプリはフェンリルのクリエイターたちが、最新技術を取り入れたアプリをリリースしたり、即事業化は難しくても社内ベンチャー的に取り組める場として生まれた別ブランド「VanApp」からリリースされた。

フェンリルのデザイナーでbitterのプロダクトオーナーである末綱華英氏は、旅行、特に一人旅が好きだそうだ。「8年前、初めて一人でタイに旅行したとき、いろんな景色を見て、いろんな人に出会い、今まで知らない価値感に触れた。自分の知らない世界を見たことで、今まで狭い世界で培った尺度で物事を判断していたことを知った」(末綱氏)

「私のように一人旅で、同じような気づきを得た人にも多く出会った」という末綱氏は、開発のきっかけについて「そうした人たちとの会話の中で、もっと場所を探しやすく、調べた場所を集めやすく、地図に連携できたりできないか、と今のツールに要望がある人が多いことが分かった。そこで、旅行をする人にとって使いやすいアプリを自分で作れないかと企画し、開発することにした」と述べている。

末綱氏は「このアプリを通して、もっと旅に出たいと思ってもらえたら、とても幸せ」と言う。bitterの名称は「初めて出会う価値観を受け入れることや、いろんな体験を通して感じる喜びや苦しさ。楽しいことだけではないけれど大切にしたい“苦みをはらんだ体験”の接点になればと想い」名付けられたそうだ。

「女性が自主的に何かに取り組もうとするとまだまだ風当たりが強い面も多い。自分は旅に出ることでさまざまな価値観に出会い、前向きになれた。私のように、旅を通して自信をつける体験の場を、ひとりでも多くの方に提供したい。またアプリを通して、共感しあえることや、明日の計画・休みの計画を立てる時間を持つことで、明日への活力を提供できれば」(末綱氏)

アプリの収益化については、広告収入や蓄積データの活用のほか、受託案件へつなげることや機能追加によるユーザー課金モデルなどを検討しているとのこと。ただ、当面はユーザー数を増やし、ファンを増やすことに注力するという。

また、Android版リリースの予定もしているが、まずはiPhoneユーザーの動向を見て、iPhone版の改善から進めていくということだ。

スマホでプロのスタイリストがコーデ提案、チャットで相談もできる「SOÉJU(ソージュ)」

自分に似合う服を、できるだけリーズナブルに着こなしたい。ファッション誌の「着まわし特集」が今でも人気企画であることからも分かるように、これは私たちの永遠の課題だ。この課題を解決するために、ファッション×テック業界でも、日々さまざまなサービスが生まれている。採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」を無料配布し、体型データに合った服をオーダーメイドできるようにした「ZOZO」。ファッションの世界にサブスクリプションモデルを取り入れた「AirCloset」。そして着まわし提案アプリやD2C(Direct to Cunsumer:製造者から消費者が直接購入できる)ブランドの数々。

オンラインスタイリングサービス「SOÉJU personal(ソージュパーソナル)」は、ライフスタイルの変わり目でもあり、体型も変化する30代、40代の女性をメインターゲットにしたファッションのサービスだ。仕事や家事に追われて、なかなか毎日のコーデまで考えている余裕がない、というこの世代の女性に「自分の体や好みにピッタリくる着こなし」や「持っている洋服の見直し方」を、プロのスタイリストがオンラインで教えてくれる。

サービス利用の流れは以下の通りだ。まずは会員登録を行い、対面、もしくはオンラインで、スタイリストによる「ファッション診断カウンセリング」を受ける。カウンセリングの費用は1時間で5000円。体型タイプやファッション志向を診断し、似合うシルエットの服を提案してもらえて、対面の場合は試着体験ができる。そして、自分のライフスタイルや希望に合わせて、スタイリストが今後のスタイリングの方向性を提案する。

その後、定期的に「オンラインパーソナルスタイリング」が受けられる。6スタイルの着こなし提案画像をスマートフォンに毎月配信するマンスリープランと、3カ月に1度のシーズンごとに配信するシーズナルプランの2種類があり、費用はそれぞれ1回の配信当たり3000円だ。

オンラインパーソナルスタイリングでは、LINE@による「スタイリスト ホットライン」も提供。チャットで日々のファッションの悩みをスタイリストに相談することができる。回答は3営業日以内にもらえるので、大切な会食や商談の前にお勧めのコーディネートが知りたい、という具合に使えそうだ。

サロンでのカウンセリング、定期的な着こなし提案では、手持ちの服も含めて相談ができる。昔買って、あまり着なくなったアイテムからも、使えるものはコーディネートに取り入れて提案してくれる、ということなので、私のようにタンスの肥やしが捨てるに捨てられず困っている、という人にもよいかもしれない。

代官山に9月22日オープンするサロン「SOÉJU代官山」

ソージュパーソナルを運営するモデラート代表取締役の市原明日香氏は、「最初のカウンセリングで展示アイテムも試着してもらいながら、着まわししやすく、投資対効果の高いスタイルを提案していく」と話す。

ソージュパーソナルは、同社が2015年10月から提供するオンラインスタイリングサービス「Let Me Know」を前身としている。9月22日にカウンセリング用のサロン開設と自社商品ブランド「SOÉJU(ソージュ)」を立ち上げるにあたってサービスをリニューアルし、9月6日、先行予約を開始した。

市原氏は、「サービスの基本的な部分はLet Me Knowと同じだが、リニューアルで、よりシックで大人っぽいスタイルの提案に集中していく」と説明している。

「これまではセレクトショップと同じく、さまざまな色味やスタイルの洋服を取りそろえてコーディネートしてきた。これからは自社ブランドのソージュで、ベーシックでシンプルなアイテムを作るので、それらを使ったスタイル提案もしていく。着まわしがきき、その分、トップスや小物のスタイリングでいろいろなバリエーションを楽しんでもらえる」(市原氏)

モデラートがソージュブランドで商品開発しているのは、ベーシックなデザインで着まわししやすい、それでいて安っぽくならない、高級感のある素材で作ったアイテムだ。第一弾商品としてワンピース、ギャザースカートとタックパンツを展開する。

試作品を取材のビデオチャット越しに見せてもらったけれども、いずれも黒のシンプルなデザインで、確かにおしゃれが苦手な私でも、仕事着として取り入れやすそうだった。ブラウスやニット、ジャケットやスカーフなどの小物で工夫すれば、1週間の着まわしも考えやすいだろう。

市原氏は「D2Cモデルを取り入れ、海外のハイブランドが使うような上質な生地を使いながら、価格は市価の3分の2程度に抑えている」と説明。ワンピースなら、デパートなどで3万円以上するものを1万8000円からと、1万円台のリーズナブルな価格で提供するという。

またモデラートでは9月6日、D2C商品の本格展開に先駆けて、Makuakeでソージュの第一弾アイテムの販売プロジェクトを開始する。アイテム購入で、ソージュパーソナルのファッション診断カウンセリングの短縮版(30分)を受けられ、ソージュのアイテムと手持ちのアイテムやおすすめのアイテムを組み合わせた3種類のコーディネート画像を後日受け取ることができる。

モデラートは2014年12月、マーケティングのコンサルティング及びクリエイティブ制作会社として設立。代表の市原氏はアクセンチュアで経営コンサルティング、ルイ・ヴィトン ジャパンでCRMに従事していた。その後、子どもの看病を経て、フリーランスとして復職するときに、ファッションについての悩みに遭遇。「一度キャリアやファッションから完全に離れてしまうと取り残されてしまう」と感じ、「自分のクローゼットに入っているアイテムをどう自分の体型・雰囲気に合わせてコーディネートするか」で日々頭を悩ませていたという。

「インフルエンサーの着こなしをまねても自分には合わないことがほとんど。自分にあったアドバイスをプロのスタイリストから継続的に受けられれば」との思いと、同じような悩みを抱える同世代の女性の声を受けて、2015年にオンラインスタイリングサービスを始めた。

2017年7月には、前身のサービス Let Me Knowが500 KOBE ACCELERATORに選出された。またモデラートは、1号ファンドが組成されたばかりのFull Commit Partnersから、5月30日に2480万円をシードラウンドで調達している。

市原氏は「調達により、D2C商品の開発を早めることができた。今後は開設するサロンの機能拡充も進めていく」と資金調達と今後の展開について話している。

モデラート代表取締役の市原明日香氏

FacebookとTwitter:米国情報機関はもっと選挙妨害対策の力になれたはずだ

Facebook COO、Sheryl Sandbergは、プラットフォームとして海外からの選挙妨害防止に努力すべき点があったことを認めたが、政府も情報提供の強化に努めるべきだと語った。

これは米国時間9月5日に予定されている上院情報委員会公聴会を控えての発言だ。公聴会ではSandbergとTwitter CEO Jack Dorseyがソーシャルメディアプラットフォームの海外からの選挙妨害について証言する。GoogleのLarry Pageは招聘されたが出席を拒んだ

「われわれは、気づくのが遅すぎたし、行動も遅すぎた」とSandbergは用意された文書で語った。

この公聴会は、2016年大統領選挙でのロシアによる選挙妨害の後遺症といえる。ソーシャルメディア各社は、ロシア政府と密に協力していたとみられる外国人活動家らが誤情報を拡散し、選挙結果に影響を与えようとしたことを受け、にわかに注目を浴びている。選挙妨害は今秋の中間選挙も標的にしている。

FacebookTwitterの両社は、誤情報や偽ニュースの拡散に関わっていると思われるアカウントとボットをプラットフォームから削除した。Googleは昨年、同社サイトでロシアによる妨害行為を発見したことを報告した。

「われわれは、金銭目的の荒らし組織から高度な軍事情報作戦まで、敵を発見して戦うことに徐々に慣れてきた」とSandbergは言った。

しかしFacebookのナンバー2は、ソーシャルメディア各社がロシア妨害の全体像を理解するために、米国政府にはもっとできることがあったと語った。

「われわれは今後もサービス悪用の監視を続け、警察当局や他の業界にこれらの脅威に関する情報を提供していくつもりだ」とSandbergは言った。「2016年のロシアの活動全体に関するわれわれの知識は限られていた。それは米国政府やこの委員会がもつ情報や調査ツールを利用できなかったためだ」。

その後TwitterのDorseyも声明で自らの意見を述べた:「われわれが直面している脅威との戦いには政府パートナーや同業他社の多大な協力が必要だ」と言い、「われわれは、それぞれが他社のもたない情報を持っているので、情報を組み合わせることで脅威と戦う力はいっそう強くなる」と付け加えた。

SandbergとDorseyは両者ともに、政府のもつ民間企業が見ることのできない機密情報、すなわち国家機密とされる情報について微妙に言及した。

近年IT企業は、政府機関の保有する情報をアクセスする必要性が高まっている。増え続けるサイバーセキュリティーの脅威や国家レベルハッカーからの攻撃を防ぐために不可欠だ。背景にあるのは情報の共有 によって、豊富なリソースをもつハッカーに対抗することができるという考えだ。しかし、そのための法案導入には反対もある。脅威に関する情報を政府と共有することは、個人ユーザーのデータも収集され米国政府情報機関に送られるのではないかと反対派は恐れている。

それに代えてIT企業各社は、国家安全保障省の 情報アクセスを要求し、直面する脅威の理解を深め、各社が独立に将来の攻撃に備えようとしている。

報道によると、先月IT各社は秘密裏に集合し、海外からのプラットフォーム侵入に対抗する方法について検討した。しかし、Facebook、Twitter、Google、Microsoftらの参加者は、政府からほとんど洞察を得られなかったことに「落胆して会議を後にした」と語った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

知識不要、最短1分で動画を作れる「RICHKA」が5000万円を調達――月間の生成動画数は3000本以上

動画生成ツール「RICHKA(リチカ)」を提供するカクテルメイクは9月5日、ベンチャーキャピタルのNOWや佐藤裕介氏など複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

数100種類の独自フォーマットで知識なしでも動画を生成

RICHKAは動画制作の経験や専門スキルがない人でも、ブラウザ上から簡単に動画を生成できるクラウドサービスだ。

必要なのは動画の基となる素材(画像や動画)と、動画内で表示するテキストだけ。素材に関しては自分でアップロードすることもできるし、メディアの記事を動画にする場合などはURLを入力することで記事内の素材を抽出することもできる。

これらの素材をRICHKA独自のフォーマットに組み込むことで、複雑なものでなければ最短1分で動画を作成できるのがウリだ。

料金は月額10万円で20本の動画を作成できるプランをメインに提供。このプランではRICHKA側で毎月1本各社に合ったフォーマットをオーダーメイドで作成することで、ブランドイメージに合った動画を作れるようにサポートしている。加えて様々な用途に対応できるように数100種類のフォーマットを用意し、ユーザーが膨大な時間や手間をかけずとも、品質を担保した動画を制作できる環境を整えた。

カクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏によるとリリースから約10ヶ月で累計100社への有償導入実績があり、現在は月間3000本以上の動画が生成されているそう。大まかな内訳としては動画広告用のクリエイティブ、Webメディアやプラットフォームでの利用、その他の用途がそれぞれ3分の1ずつを占めるのだという。

以下の動画は、以前TechCrunchでも紹介した車コミュニティアプリ「CARTUNE」の広告配信用に作られたもの。車の画像素材と車種のテキストのみを使ったシンプルなものなので、これなら確かに短時間で作れそうだ。

課題となっている“制作コスト”を抑える仕組みが必要

松尾氏の話では、RICHKAを導入している企業のほとんどが「以前から動画を作りたいという思いはあったものの、制作コストがネックで1度きりで断念してしまっていた、もしくはそもそも試せていなかった」のだという。

「外注すると1本あたり数十万円、1週間かかることもある。内製するにしても相応のコストはかかるし、そもそも人材が必要だ。費用や時間といった制作コストを抑える仕組みがないとPDCAを回せないので、動画広告などを作っても正解がわからず悪循環に陥る。制作コストの重さこそが、動画コンテンツの普及を妨げる要因になっていると感じていた」(松尾氏)

カクテルメイクは2014年の設立以来、映像制作会社として数千本の動画コンテンツ制作を行ってきた。松尾氏が「動画関連で来るといわれるものは一通りやってみた」と話すように、ライブ配信や分散型動画メディアのコンテンツなど、制作した動画の幅は広い。

さらにさかのぼれば、松尾氏は前職でも経営者のインタビュー動画メディア事業に携わっていたというから、カクテルメイク創業前から数年に渡って動画制作と向き合ってきたことになる。

動画の制作コストがネックとなりPDCAが回しづらいという課題は、松尾氏自身も現場で感じていたもの。同時にこれまでカクテルメイクで貯めてきた動画制作やトレンドに関する知見、それをフォーマットに落とし込むノウハウを活用することで、この課題を解決するプロダクトを作れるのではないか。そのような考えもあって、約1年前に開発したのがRICHKAだ。

「たとえば動画広告であれば、1個あたり数千円のコストで近しいクリエイティブを1日に十数パターン作ることもできるため、『動画広告のABテストがしやすくなった、PDCAが回しやすくなった』という反応はよく頂くようになった」(松尾氏)

もっとライトな価格帯だと試しやすいという声も多く、今後はより安価に動画コンテンツを作れる新プランの提供も予定しているそう。今回調達した資金を基に人材採用とプロダクトの改良を進め、まずは2019年中に1000社への導入を目指す。特に動画広告におけるニーズを軸に考えていて、動画広告用のクリエイティブ制作ツールにおいてトップシェアを狙っていく方針だ。

またその先には「誰でもクリエイターの知見や脳みその中身を使えるようになり、クリエイター側にはストックの収入が入る仕組み」を作るという構想がある。

たとえば現在はカクテルメイクと一部のクリエイターで作っている動画フォーマットを、より多くの動画クリエイターが登録・販売できる仕組みなどを考えているという(WordPressで有料テーマを販売する感覚に近いかもしれない)。

「クリエイターじゃない人がクリエイティブを作れるようになる。クリエイターは知見を提供することで収益を得て、ライスワークをしていたような時間を新しいチャレンジの時間に使えるようになる。インターフェイスを通じた新しい“スキルシェア”のようなサービスを作っていきたい」(松尾氏)

写真左からNOW梶谷亮介氏、カクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏、NOW家入一真氏

“クリエイターの本拠地”目指すnoteは、日経新聞とのタッグで新たな出口を作る

「リリース当時からnoteはクリエイターの本拠地を目指してやってきた。そのために重視しているのがクリエイターの“出口を増やす”こと。言い換えると活躍の場を増やし、クリエイターが創作活動を継続できるようにすることだ。課金機能もそのひとつであり、出版社との連携も同様。今後はいろいろなジャンルのパートナーと組んで、この出口をどんどん増やしていきたい」——ピースオブケイク代表取締役CEOの加藤貞顕氏は「note」の今後についてそう話す。

2014年のサービスリリースから4年。今では作家やブロガーなどいわゆるザ・クリエイターだけでなく、幅広い層の個人が自分の趣味や考え、作品を自由に発信する場所になった。それこそTechCrunchでも紹介している起業家や経営者が、会社のビジョンやナレッジを共有する際に活用していたりもする。

そのnoteをクリエイターがさらに活躍できる場にするべく、ピースオブケイクでは8月に日経新聞社とVC2社から4億円を調達。特に日経新聞とは業務提携を締結し、双方の資産や強みを活かした取り組みを始めることを明かしていた。

noteは日経新聞とタッグを組むことで具体的に何を目指しているのか。そしてその先にはどんなプラットフォームを見据えているのか。

今回は加藤氏とピースオブケイクCXO(Chief eXperience Officer)の深津貴之氏に、同社のこれまでと今後の展望を聞いた。

ニッチなクリエイターが活躍できるインターネット的な空間を

最初にすごく簡単にnoteの紹介をしておくと、noteは個人のクリエイターが文章や写真、イラスト、音楽、映像などの形式でコンテンツを投稿できるメディアプラットフォームだ。SNSのようにユーザー間でフォローしたりコメントを通じてコミュニケーションを楽しんだりできるほか、コンテンツを販売する機能も備える。

加藤氏はリリース時の取材で「個人にブログ感覚で利用して欲しい」という話をしているけれど、最初から個人の場所にしたい、そしていろんなジャンルのクリエイターが集まる場所にしたいと考えていたという。

今noteではニッチな領域で、自分の好きなことをひたすら書いている記事がよく読まれるのだそうだ。自分の大好きなものについて熱く語れば、ちゃんと仲間が見つかって、何だったら商売にも発展する。最初から明確に描けていたわけではないというが、そういった空間ができれば「インターネット的で面白いのでは」という構想はあった。それは加藤氏が出版業界を経験していたことも大きく影響している。

「出版は物理的なものを作っていて出せる数も決まっているので、なるべくメジャーなところから順番にやるしかない。でも本当はいろんな人の声を届けられた方がいいはず。ニッチに行けば行くほど読み手や仲間が見つかる、noteはそういう場所にしたいし、徐々にそうなってきている」(加藤氏)

そしてもっと根本的な部分において、加藤氏がリリース前から大切にしていた考えがある。それが冒頭で触れた「クリエイターの本拠地」を作ることだ。今はnoteで人気になったコンテンツが書籍として出版されるケースも増えているが、これは当初から想定していた形だという。

「書籍はずっと個人のメディアとしての出口だった。それが少しずつネットに変わって言っているのが今の状況。以前は本を出版する時に宣伝媒体としてネットを使っていたが、現在はむしろ人々が携帯を見ている時間の方が長くなってきている。だったらネットを本場所にして、ネットに連載して、何なら課金もして。それを後から書籍にするアプローチがこれから広がっていくいくのではないかと考えた。その意味で、noteをクリエイターの本拠地にしたいという思いが最初からあった」(加藤氏)

クリエイターを小さく抱え込むことだけはしたくない

2017年10月には深津氏がCXOとしてジョイン。徐々にnoteで活躍するクリエイターが増えて来たのと並行して、noteのユーザー体験を向上するための取り組みを重ねた。結果としてこの1年弱でユーザー数や投稿数、検索流入数など、各指標が3倍〜5倍に成長している。

この成長のギアをさらに上げることが8月の資金調達の大きな目的で、ピースオブケイクでは事業面のシナジーも踏まえて出資先を探していたという。実際にタッグを組むことになった日経新聞社は、深津氏が約3年前から電子版アプリのアドバイザリーを務めている企業。両社が組むことで面白いことができるというイメージは以前からあったそうだ。

「noteとしてダメな戦略がクリエイターを抱え込んで、小さなユートピアを作ること。noteとしてクリエイターのキャリアを考えるなら、逆にもっとサービスを拡張して中のクリエイターがどんどん外に積極的に出ていくようになることが必要だと考えていた」(深津氏)

この積極的に出ていく場というのは、加藤氏が話す所のクリエイターの出口と同義だ。「noteに書くと出版できる、noteに書くと別の出口が開けるというのがやりたいこと。日経さんと繋がったことで新たな活躍の場を提供できる」と2人は口を揃える。

一方の日経新聞にとっても、スマホネイティブなミレニアル世代を中心に普段からnoteに訪れているようなユーザーとの接点を増やしたいという考えがあったのだろう。お互いが相手のユーザーに対して新しい価値を提供できるのではないかということで話が進み、資本業務提携に至ったのだという。

写真左からピースオブケイクCXOの深津貴之氏、ピースオブケイクCEOの加藤貞顕氏、日本経済新聞の渡辺洋之氏

日経新聞と組んで“note for ビジネス”を強化する

それでは具体的にnoteと日経新聞は今後どんなことに取り組んでいくのだろうか。加藤氏によると「まずは新聞に寄稿したり、一緒にイベントをやったり、セミナーをやったりといった人材輩出の部分がメインのパートナーシップ。その次にあり得るとしたらコンテンツ配信」だという。

「あくまでnote側の視点になるが、noteの中の才能をどうやって世の中に出していけるか。たとえばnoteで活躍している作家さんの発信や作品が日経BPさんで書籍化される。あるいはnoteで書いた論説が評価されて日経新聞や日経MJ、日経ビジネスなどで連載になる。そういったことを実現したい」(加藤氏)

もちろんその逆もある。たとえば日経新聞の記事をnoteに転載したり、もしくは新聞の記事をnoteに貼って記事に対する自分の意見を書けるようになったり。また日経に寄稿しているようなエコノミストや経済学者がnoteが書くことや、企業がIRニュースや会社の情報を発信するオウンドメディアとしてnoteを使うことも十分にありえる。

「これを機にビジネスパーソンとかがどんどん情報発信するようになれば、社会はもっと面白くなると思っている。今はまだ表に出てこない埋もれている情報がたくさんあって、そこを掘れば面白い人が絶対にいるはず」(加藤氏)

このようにクリエイターの出口を増やしつつ、並行してまだポテンシャルを発揮していない潜在的なクリエイターをnoteという場を用いて掘り起こす。この取り組みをあらゆるジャンルで展開していくことが今後のnoteの方針だ。

「『noteがビジネスに特化したものになるのでは』と心配される方もいるが決してそうではない。あくまでいろいろなジャンルがあり、その中のひとつがビジネス。そこの部分を今回日経さんとタッグを組むことでパワーアップしていく」(加藤氏)

「すごくざっくり言うと、noteは全方向。note for 小説家、note for 音楽家、note for 写真家などいろいろあるnoteのあり方の中の『note for ビジネス』について日経さんと組んでいくことになる」(深津氏)

たとえば今回の日経新聞とは少しスキームが異なるけれど、noteでは4月よりnote内で活躍するクリエイターを出版社に紹介するパブリッシング・パートナーシップを始めた。リリース時には3社だったパートナー数は8月10日時点で21社にまで増えている。

初めから終わりまでをサポートするプラットフォームへ

4年間かけて徐々に力をつけてきたnote。とはいえ理想の形からすると、まだ10〜20%ぐらいの完成度だという。

「例えば文章の場合、“文章を書く”のは全体の一部分でしかない。その前にはネタを考える工程があるし、公開した記事に対しても何かしらの反応が返ってくることもある。要は現時点でnoteを使っている時間は、note本来の守備範囲の10%くらい。手前にも後ろにもたくさんのプロセスがあるけれど、そこはまだタッチできていないところが多い」(深津氏)

noteでは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッションを掲げている。このミッションを達成するためには、深津氏の言葉を借りるとクリエイターを「初めから終わりまで」サポートする仕組みが必要だ。

noteで気になる記事を見つけて、自分も発信してみようと思ってもらうことが最初の1歩目。noteに来れば文章を書くためのエッセンスが学べ、それを元に書いた文章が書籍になったり、公演に繋がったり、仕事に繋がる。そしてその文章が「自分もnoteで書いてみたい」と思う次のクリエイターを連れてくる。

この一連の流れを作り上げることが、noteが目指している理想の形だ。「新聞や出版など旧来のメディアは業界全体でこれを実現していたけれど、ネット上にはまだその仕組みがない」というのが加藤氏の見解。noteを通じてコンテンツの流通、人材の育成、ノウハウの継承といった全ての要素をカバーしていきたいと話す。

「『僕はnoteで文章を学んだ』とか『初めて書いた小説はnoteにあげた』といった人がどんどん出てくるようなプラットフォームにしたい。そのためにはクリエイターにとって活躍の場がたくさん用意されているというのが理想。ビジネスだけでなく、いろいろな領域に広げていきたい」(加藤氏)

「ある意味、現代の“トキワ荘”のようなイメージに近い。noteのクリエイターネットワークが広がっていった結果、たとえばIT系のメディアがITに詳しい書き手を探していたらすぐに紹介できる、同様にデザイン系のメディアがデザインに詳しいクリエイターを探していてもすぐに紹介できる、そうやってクリエイターをどんどん輩出する起点を作るというのが大きなチャレンジだ」(深津氏)

いじめ防止プラットフォーム「STOPit」“助けたい、助けてほしい。そんなとき、いつでも相談できる環境を”

例年、夏休みが明ける時期になると子どもたちの自殺が増加する。自殺総合対策推進センターが8月7日に公表した「昭和48年度から平成27年度における、通学適齢期の自殺者数に関する分析(速報版)」によると、8月下旬・9月上旬に自殺者数が多く、8月下旬に自殺者数のピークがみられるという。

自殺対策の一例として、東京都福祉保険局は「都内在住、在勤、在学のいずれかで、自殺等の悩みを抱えている」主に若い世代を対象としたLINE相談窓口「相談ほっとLINE@東京」を2018年9月10日から2019年3月31日まで実施する予定だ。メッセンジャーアプリなどを用いた同様の取り組みは様々なかたちで行われているが、TechCrunch Japanでは米国発の「STOPit」という最先端の報告・相談プラットフォームを紹介したい。同プラットフォームを提供するストップイットジャパンは2017年、文部科学省主導による「夏休み明けに向けた官民連携によるいじめ防止強化キャンペーン」に参加していた。

2017年6月、同プラットフォームは米国で6000校・266万人が利用。ストップイットジャパンが設立したのは2015年10月。現在、国内では約170校・6万人にもおよぶ生徒に使われている。

STOPitはいじめなど様々な出来事を報告・相談することができるアプリ「STOPit」、組織担当者の管理ツール「DOCUMENTit」などからなるプラットフォームだ。学生などのSTOPitアプリユーザーは匿名で簡単に担当者に問題を報告。メッセンジャーを使うことで生徒たちは匿名・チャット形式で相談できる。報告・相談には証拠となる画像や動画も添付することが可能だ。

STOPitを導入している千葉県柏市では生徒の報告先を市教育委員会のいじめ・非行担当部署と少年補導センターに設定している。報告した生徒には必ず返信をしているが「学校に連絡してよいか」と確認するなど慎重な対応を行なっている。他には外部の専門窓口や学校が生徒たちのSOSを受け取るパターンもある。

ストップイットジャパンCEOの谷山大三郎氏によると、STOPitはいたってシンプルなプラットフォームだが、生徒からの承諾を得た上で教育委員会が対象校に報告したり指導することが出来るのが強みだという。

従来のチャットによる相談受付のみの場合「心の不安はある程度解消できるかもしれないが、いじめ自体はなくならない」(谷山氏)。一方、STOPitを使えば「どの学校のどの学年から連絡がきているか」を把握できるため、いじめが発生している学校の「組織的な課題」の解決につながる。

だが、すべての学生がスマホを持っているわけではない。そのため、ストップイットジャパンは生徒たちにSTOPitを「人を助けるツール」として使ってもらえるように導入校で講演や授業を行っている。また、STOPitにはブラウザ版もあり、アプリ版と同等の機能を使うことができる。

あくまで予定だが、生徒が報告・相談する先を教育委員会だけでなく警察やカウンセラーなど複数化することで生徒たちが「より相談しやすい」プラットフォームにしていきたい、と谷山氏は話していた。

日本版インスタカート「Twidy」が公開へ、まずはライフ渋谷東店を対象に最短1時間で買い物代行

スマホからサービス上に登録されているスーパーを選び、欲しい商品を注文すると、早ければ1時間以内で自宅まで届けてくれる買い物代行サービス「Instacart(インスタカート)」。“買い物にいきたいけれど自分で外に出るのは面倒”なユーザーの悩みを解決するプロダクトとして、年々アメリカでその勢力を広げてきている

クラウドソーシングのような形で個人のshopperに買い物を依頼できる仕組みが特徴で、シェアリングエコノミーの代表格として紹介されることも多い同サービス。2012年の創業以来10億ドル以上の資金を調達し企業価値も40億ドルを超えるなど、近年世界のスタートアップシーンを盛り上げてきた1社と言えるだろう。

そのインスタカートの“日本版”とも言えるプロダクト「Twidy(ツイディ)」がもうすぐ東京都内の一部エリアにてローンチされる。

第一弾としてTwidy運営元のダブルフロンティアではライフコーポレーションと提携。9月6日より渋谷区のライフ渋谷東店から、近辺のエリアの住民に対して同サービスの提供を始める。

Twidyは誰かに買い物を依頼したいユーザー(リクエスタ)と、代わりに買い物をしてくれるクルーを繋げるサービスだ。

ユーザーは希望の日時と買ってきて欲しい商品をサイト上から登録し、決済するだけ。リクエストを受けたクルーが買い物を代行して、最短1時間で自宅まで配送する。商品代金とは別で代行代がかかるものの、その分指定した商品がスピーディーに届くのが特徴。9月は代行代を無料で提供するという。

上述した通りまずはライフ渋谷東店からスタート。同社のネットスーパーの商品データベースと連携し、同じ商品をTwidy上で買える仕組みを構築した。今後は渋谷東店以外の店舗や他のスーパーなどが加わり、自宅の郵便番号を入れると対応している店舗が表示されるようになる予定だ。

メインの利用者として想定しているのは、小さな子どもを抱える育児中の共働き家庭。自分で買い物に行く時間が取れないという課題を解決するだけでなく、Twidyによってこまめに買い物ができるような環境を提供していきたいという。

ライフ渋谷東店でのTwidy対応エリア。11:00〜20:00の間で買い物のリクエストができる

買い物を代行する側のクルーについては、商品をピックするピッキングクルーと配達するドライビングクルーを分ける形を採用。まずはダブルフロンティアで雇ったパートスタッフが商品を選別し、それをパートナー企業のスタッフが運ぶ。今回は日経新聞と組み、新聞配達員が商品を届ける。

ダブルフロンティア代表取締役の八木橋裕氏によると、2月に実施した実証実験ではもともと配送を担当するスタッフがピッキングも担っていたのだけど、不慣れな場合も多く改善の余地があった。そこでピッキングについては買い物慣れしているパートスタッフに任せ、分業する形にしたのだそうだ。

八木橋氏が「将来的にはサービス名の通り、スーパーに足を運んだユーザーが“ついでに”他のユーザーの買い物も代行するような世界観を実現していきたい」と話すように、自分の買い物ついでにTwidyを使ってちょっとした副収入をゲットする使い方もできるようになるという。

収益源は利用時にユーザーが商品代とは別に支払う代行代金。現在は500円+α(商品の価格などに応じて一定%の金額が加算)を予定していて、Twidyの売り上げを差し引いた分をクルーやパートナー企業に支払う。実証実験時には20%をTwidyの取り分としていたそうだ。

パートナー企業にとっては空いているリソースを有効活用できる点がメリット。また商品を登録するスーパーにとっても、今まで逃してきたチャンスを掴むことができうる。

「たとえばネットスーパーをやっているような企業でも『物はあるのに運ぶ人がいない』ことがネックになって、機会損失が発生しているケースがある。まずはネットスーパーを持つ企業と組むところから始めて、ネットスーパーを持たないところとも連携を広げていきたい」(八木橋氏)

2019年3月中を目処にまずは8店舗まで拡大するのが目標。都心部をメインに、ゆくゆくは提供エリアや店舗のジャンル(たとえばドラッグストアやホームセンター、街角の和菓子屋など)も広げていく方針だ。合わせて商品をピックするクルーを選べるようにしたりなど、プロダクトの機能拡張にも取り組むという。

「最終的にはサザエさん(に登場する三河屋)のように、ご近所で助け合っていくような世界観のサービスを実現したい」(八木橋氏)

Twidyの運営チーム。1番右がダブルフロンティア代表取締役の八木橋裕氏

ダブルフロンティアは2013年の設立。代表の八木橋氏は前職のKDDI時代に「Skype auサービス」の立ち上げなどを担当した人物で、ダブルフロンティアでもこれまで海外発の新しいサービスとライセンス契約を結び、日本市場で展開するサポートをしてきた。

Twidyは自社ブランドによる新サービス。インスタカートをヒントに2017年に発案したもので、2018年2月に実証実験を経て今回のリリースに至る。

なおダブルフロンティアではTwidyの拡大に向けて6月にプラネットより5000万円を調達。今秋にも同社から5000万円の追加調達を予定していて、シードラウンドで合計1億円の資金調達を実施する計画だ。

誰よりも起業家に近い伴走者目指すーー元East Venturesの廣澤氏が10億円規模のファンド「THE SEED」設立へ

The Seed Capitalの廣澤太紀氏

「大学1年生の時に初めて『シード投資家になりたい』と思ってから6〜7年、その思いはずっと変わらなかった」——前職のEast Venturesから独立し、8月にシードラウンド向けのベンチャーキャピタル「The Seed Capital」(以下 THE SEED)を立ち上げた廣澤太紀氏はファンド設立への思いについてこう語る。

シード投資家を目指すようになったきっかけは、関西学院大学の1年生時にEast Venturesの松山太河氏のインタビュー記事を読んだこと。

「(記事を読んで)『若い人たちが結果を出して活躍していて、その人たちがコミュニティや次の若い世代に対してノウハウやお金を供給していく仕組み』があるということを知って。そういう環境自体に憧れがあったし、自分もその場に参加してコミュニティを作る人間でありたいなと思ったのが最初のきっかけだった」(廣澤氏)

その後少し時間を置いて、大学3年生時の2015年2月にEast Venturesへ参画。Skyland Venturesへの出向も経験し、VC2社でトータル約3年半ほど働いた後、26歳でTHE SEEDを立ち上げた。

ファーストクローズではマネックスグループ代表執行役社長CEOの松本大氏、メルペイ取締役兼CPOの松本龍祐氏、デザインワン・ジャパン代表取締役の高畠靖雄氏、ユナイテッド、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ無限責任組合員の村口和孝氏(適格機関投資家として出資)からの出資により数億円を調達。今後も引き続き出資者の募集を継続し、最大で10億円規模のファンドを目指す。

THE SEEDという名称の通り、投資の主な対象は創業初期のスタートアップ。1回の出資額は500〜1000万円の範囲がベースになるそうで、既存投資先への追加出資(フォローオン)も積極的にやっていきたいとのこと。領域についてはEコマースやtoB向けのビジネス、ブロックチェーンなどいくつか注目しているものはあれど、特に何かに限定することはないという。

実際すでに投資契約を締結した会社が1社、現在投資を本格的に検討している会社が2社あるそうだけど、どれも創業前後のステージ。登記をするところから手伝っている会社もあるようだ。

投資を決めた1社は大阪大学に在学中のエンジニアが立ち上げたスタートアップ。なんでも小学生から父親の影響でハードの開発をはじめ、中学生の時にロボカップ世界大会で入賞。高校時代はWeb受託事業を展開していた起業家なのだという。

廣澤氏の話では「全体の20〜30%をギークなエンジニア起業家に出資したい」と考えているそう。Ethereumのヴィタリック・ブテリン、Oculusのパルマー・ラッキー、Facebookのマーク・ザッカーバーグなど、世界を変えるプロダクトは若いエンジニアによって産み出されてきた歴史がある。THE SEEDでも世界を変えるプロダクトのはじめの一歩を共にすることを目標にしている。

起業家に寄り添う伴走者へ

もう少し廣澤氏の経歴について紹介しておきたい。ベンチャーキャピタリストとしてVC2社で働いていた約3年半のうち、前半の2年ほどはSkyland Venturesへ出向して2社を兼務。コワーキングスペース「HiveShibuya」の立ち上げや80〜100本ほどのミートアップの企画・運営といったコミュニティ作りを担いつつ、500名を超える起業家予備軍とひたすら会い続けていたという。

後半の1年半はEast Venturesに戻りPopshootやフラミンゴといった投資先のサポートに力を入れた。この期間は投資先のアプリマーケティング業務に取り組んだり、CEOと一緒にファイナンスのストーリーを練ったりなど、頻繁に起業家と顔を合わせながら現場に出て働く時間が長かったそう。

「それまではシード投資家になりたいという思いは強かった一方で、どうすれば起業家に貢献できるのか、どんな投資家になりたいのかが明確ではなかった」(廣澤氏)が、この3年半の経験を通じて自身が目指すべき方向も少しずつ見えてきたと言う。

「僕自身できる限り現場に立っていたいし、プレイヤーでいたい。起業家が最初の一歩を踏み出す所、起業の入り口から共にして、一緒に泥臭いことをやったり辛い時に話を聞いたり。誰よりも起業家に寄り添う“伴走者”のような存在を目指していきたい」(廣澤氏)

THE SEEDのテーマは「起業家に伴走する」ことだ

THE SEEDでは8月から投資先や投資候補先との個別相談会「THE SEEDトーク」を実施。並行して以前から廣澤氏がやってきた、スタートアップ界隈のコミュニティ作りにも取り組んでいくようだ。

たとえば関西の学生がスタートアップや起業に触れる入り口を作るコミュニティ「スタートアップ関西」は今後も続けていく方針。廣澤氏自身が関西の大学出身だからこそ「(東京と比べると)大阪や京都ですら情報格差がある」と感じていて、この格差をミートアップや情報発信を通じて少しでも埋めていきたいという思いがあるそう。THE SEEDとして関西拠点の開設も考えているという。

「スタートアップのコミュニティに対して自分ができることがあるとすれば、それはコミュニティの外にいる優秀な同世代や若い人たちを巻き込み、起業やスタートアップ業界に定着するサポートをすること。自分がこれまでやってきたことも活かせるし、一方で他の人がそんなにやっていない領域。このコミュニティをもっと広げていきたい」(廣澤氏)

店舗向け生産性向上アプリ「はたLuck」運営のナレッジ・マーチャントワークスが2.7億円を調達

店舗を抱えるサービス業向けに、生産性向上支援アプリ「はたLuck」や次世代幹部のための研修サービスを提供するナレッジ・マーチャントワークスは、総額2.7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はGMO VenturePartnersエン・ジャパンDDホールディングスブレインパッドバリュークリエイトの各社と、レオス・キャピタルワークス代表取締役社長の藤野英⼈氏ほか複数名の個⼈投資家。今回の調達は同社にとって、シリーズAラウンドにあたる。

2017年3月創業のナレッジ・マーチャントワークスは、店舗サービス業の次世代幹部向けに、事業・組織改革のための研修プログラムを提供。また、店舗の生産性向上を支援するクラウドサービスとアプリの「はたLuck」シリーズを運営している。

はたLuckは、店舗のシフト・タスク管理のほか、従業員向けのアンケートや目標管理機能、ビジネスチャット機能などを備え、店舗内のコミュニケーションのズレを可視化することで、生産性向上や従業員のロイヤリティ、エンゲージメント向上を促す。

ナレッジ・マーチャントワークスでは調達資金により、はたLuckの開発体制、AIによる店舗内データ分析の強化を図る。UI向上や、ゲーミフィケーションを活用した能力向上機能を発展させていくという。

ドライブシェアアプリ「CREW」運営のAzitが総額約10億円を資金調達

クルマに乗りたいユーザーと、マイカーに人を乗せたいドライバーとをつなげるマッチングアプリ「CREW(クルー)」を運営するAzit(アジット)は9月3日、総額約10億円の資金調達実施を明らかにした。第三者割当増資の引受先はEight Roads Ventures Japan、グローバル・ブレインモバイル・インターネットキャピタルクルーズの各社と複数の個人投資家。

CREWは、2015年10月からサービスを開始した、ドライブシェアのプラットフォームだ。アプリで出発地と目的地を設定すると、近くを走るCREWに登録済みのドライバーとマッチングをし、クルマで送っていってもらうことができる。

目的地に到着すると、乗った側・乗せた側が、それぞれ相互に評価する。乗った側のユーザーは、ガソリン代や高速代金などの実費とサービス利用料を、アプリを経由したクレジットカード決済で支払う。サービス利用料は、1ドライブ当たり20円のマッチング手数料と、移動のモニタリング、カスタマーサポートなどに対応するための「安心安全手数料」20円/分。都内の一般道で約15分乗車したとして、だいたい400円台から600円台ぐらいに収まるようだ。

またこれらの費用とは別に、ドライバーに対して任意の謝礼を支払うことができる。謝礼の有無や金額は、乗った方が自由に設定できる。

現在は実証実験中で、東京都内の一部地域と鹿児島県与論島を対象地域としてサービスを提供。都内では夜20時から深夜3時の時間帯で利用可能だ。

自家用車で人を運ぶドライブシェア、ライドシェアは、日本では許認可の問題があり、タクシーとしての許可を受けずにドライバーを抱えてタクシーサービスを提供(営業)することはできない。CREWでは「乗せてもらった側が支払うのは、実費とプラットフォームの利用料に加えて、乗る方が任意に決められる『感謝料』」という形を取ることで、「運送に対する直接の対価が発生しない『無償運送行為』にあたる」としている。これにより、いわゆる「白タク」ではない、合法のサービスであるとの解釈を採っている。

また、ドライブシェアサービスでよく問題となるのが、ドライバー、もしくは乗る側がどんな人か分からない、という点だ。CREWはドライバー、ユーザーともに登録が必要。特にドライバーに関しては、対面での面接や免許証・自動車保険・自賠責・車検証などの書類審査、SNS情報連携による身元の透明性確保などによるスクリーニングを行っているという。

Azitでは調達資金をもとに、CREWの事業拡大のための組織拡大、マーケティングを行っていくという。また、実証実験を行っている与論島と同様のローカルエリアサービスも含め、全国各地へのサービス提供にも取り組むとしている。

20の質問に答えて契約書を自動生成、「AI-CON ドラフト」がβ版公開――1.8億円の調達も

AI契約書レビューサービス「AI-CON レビュー」など、リーガルテック領域で複数のプロダクトを展開するGVA TECH。同社は9月3日、DBJキャピタルと西武しんきんキャピタルを引受先とした第三者割当増資により、約1.8億円を調達したことを明らかにした。

合わせてAIを活用した“契約書の自動生成機能”を備える「AI-CON ドラフト」のβ版の提供を始めたことも発表している。

弁護士が作る“法務格差”を解消するためのプロダクト

4月にも紹介した通りGVA TECHは弁護士の山本俊氏が2017年1月に設立したスタートアップ。同社ではビジネスにおける法務格差の問題を解決するべく、テクノロジーを駆使した複数のプロダクトを開発する。

法務の専門部署がないような企業が契約を交わす場合、通常は時間とコストをかけて弁護士に確認を依頼するか、十分な確認をせずに契約を締結するかのどちらかが多い。特に初期のスタートアップにとっては少しでも余分なコストを削減したいところだけれど、専門家に確認せずに進めた結果「契約書に潜むリスクを見落とし、自社が不利な契約を締結してしまった」なんてこともありうる。

山本氏自身も弁護士として複数の企業をサポートする中で「一方にとって圧倒的に有利な契約内容」になっている契約書を目の当たりにしてきたという。

その解決策としてGVA TECHが4月にリリースしたのが、AIによって契約書のレビューを自動化するAI-CON レビューだ。同サービスでは契約書のファイルをアップロードすると、1営業日以内に条項のリスクを5段階で判定し、修正案も提案。目の前にある契約書が自分にとって有利なのか不利なのか、人間に変わってAIがチェックしてくれる(現在はAIで判定した結果を弁護士が目視でチェックしているという)。

契約書のレビューにAIを活用するプロダクトとしてはつい先日も「LegalForce」を紹介したけれど、細かい機能面やアウトプットの内容には違いがありそうだ。

条項のリスク判定画面

修正案のレコメンド画面

AI-CON レビューは現時点で業務委託契約や秘密保持契約、投資契約など10種類以上の契約書に対応。無料の登録者数は1000社を突破した。

山本氏によると今の所は法務リテラシーが高い層を中心に、大手企業からベンチャー・スタートアップまで幅広い企業で使われているそう。今後はレビューの精度を上げることで、法務に関する知見がないユーザーでもより使いやすいサービスにすることが目標だという。

「今のAI-CON レビューは統計情報を元に契約書の内容が有利か不利かを判断しているので、この情報を自社として呑むかどうかを別途判断する必要がある。Google翻訳で英語を訳すのに近いような状態で、それ(機械的に翻訳されたもの)をベースに修正すれば業務の効率化にも繋がるけれど、出てきたものを完全に信じて使うにはまだ精度の改善が必要だ」(山本氏)

今後は「事業性も理解したレビュー」についても実現したいそう。これは利用者の事業内容や会社のフェーズも踏まえて条文の内容チェックや修正案の提案をするもので、「ここまでいくと弁護士のヒアリングにも近く、かなり使えるものになるのではないか」と山本氏は話す。

質問に回答すれば自社に合った契約書が自動生成

そしてGVA TECHがレビュー業務と並行して変えようとしているのが、前工程にあたる契約書の作成業務だ。

同社では6月よりAI-CON ドラフトという名称で主にスタートアップやフリーランス向けに、17種類の契約書テンプレートを無料で公開。今回新たにAIを活用した契約書の自動生成機能を追加して、β版として提供を始める。

「AI-CON ドラフト」利用イメージ

質問に回答していく様子

同サービスは契約条件に関する簡単な質問に20個程度回答することで、条件に合った契約書のテンプレートが自動で生成される仕組み。山本氏いわく「契約書作成時の弁護士によるヒアリングに近い」流れになっていて、「弁護士のヒアリングするパターン(各質問および回答)と条文群を両方機械学習にかけて、最適なものをマッチングするようなイメージ」だという。

「たとえばNDA(秘密保持契約書)の場合でも、入退社に関わるもの、業務提携の前提になるもの、業務委託と一緒に結ぶものなど条件ごとに最適な内容は異なる。質問に対する回答に沿った形でカスタマイズされたNDAのフォーマットが作られるのが特徴だ」(山本氏)

自動生成機能についてはリリース時点で対応しているのは秘密保持契約書のみ。9月中旬にはシステム開発契約・保守契約、アドバイザリー・コンサルティング契約、コンテンツ制作契約などの業務委託契約全般に対応する予定で、年内には販売代理店契約書、売買契約書など約20種類の契約書をカバーする計画だ。

ビジネスモデルとしては作成する契約書1通ごとに料金が発生する仕組みを検討しているが、まずはβ版として利用者あたり1通のみ無料で提供する。

「意外と自分の取引実態に合った契約書を持っている人は少ない。たとえば契約書の雛形をネットでダウンロードしていたり、自分の手元にないので相手方にもらっていたような場合、自分にとって不利な内容だと知らずに毎回使い続けてしまっているようなこともある。特にそういった人たちが、少しでも自社の取引実態に合った意味のある契約書を使えるようにしたい」(山本氏)

まだ限定的ではあるものの、これまで手がけていた契約書のレビュー業務に加えてドラフトの作成業務にも対応範囲を広げたAI-CON。契約書に関する業務は大きく(1)ドラフト作成(2)レビュー(3)交渉(4)契約締結(5)管理というプロセスに分かれるが、「AI-CONでは合意形成までのプロセスを効率化したい」という思いがあるそうで、今後も「AI-CON ○○」のように同シリーズのプロダクトが増えていくようだ。

GVA TECHではこれまでエンジェル投資家とチームメンバーから約6500万円を集めているが、VCからの資金調達は今回が初めてとなる。

調達した資金は主にエンジニアや法務人材などの採用とプロダクト強化に用いる計画。まずは2019年の春頃を目処にAI-CONシリーズ全体での登録者数5000社の達成を目指すという。

家計から仮想通貨まで、お金の専門家に無料で相談できる「おかねアンサー」正式リリース

専門家に、スマホやウェブから気軽に相談できるサービスが日本でも増えている。中でも分野を絞った専門家による相談サイトとしては、草分け的な存在の「弁護士ドットコム」や医師相談サービスの「アスクドクターズ」、AIの通知との組み合わせで中小企業の課題に専門家が答える「SHARES(シェアーズ)」など、さまざまなカテゴリーのものが出てきている。

セオリアが9月3日に正式リリースした「おかねアンサー」は、お金に関する専門家への無料相談サービスだ。一般消費者からの相談に専門家が回答。フィナンシャルプランナーや、税理士、社労士、司法書士など士業の専門家のほか、企業勤めの証券アナリストなども回答者として参加するという。

回答ジャンルには「家計」から「保険」「資産運用」「不動産・住宅ローン」「老後・年金」「税金」などのほか、今、注目度が高い「仮想通貨」もあり、お金に関する相談を幅広く受け付ける。

セオリアは代表取締役の堤健正氏と取締役CTOの造田知宏氏によって2018年1月に設立されたスタートアップだ。堤氏はエムスリーでアスクドクターズのプロダクトオーナーを担当し、その後DeNAでメディア事業やオートモーティブ事業を手がけていた人物。造田氏も同じくDeNAでゲームのデータ分析などに携わった後、メディア事業、オートモーティブ事業でリードエンジニア、プロダクトオーナーを務めた。

堤氏はセオリア設立とおかねアンサーを開発したきっかけについて、次のように語る。

「まずは父が銀行マンで、小さい頃から金融に興味があったこと。大学院卒業後の進路でもITベンチャーと金融業とで迷って、一度はITの道へ進んだが、いつかこの分野で勝負したいと考えていた」(堤氏)

さらに専門家への悩み相談と解決の原体験が、会社設立時にあったという。

「社会保険(厚生年金保険・健康保険)は、設立済みの法人の登記簿などの書類がなければ申請ができず、適用できない。設立月の社会保険をどうするか、ということで税理士に確認したところ『いったん国民年金・国民健康保険に加入するか、元の会社の保険を任意継続するしかないのでは』という答えだった。ところが社会保険労務士に聞いてみたら、さかのぼって適用できることが分かった」(堤氏)

堤氏はこのことから「こうした情報は個別でなかなか聞けない」ということと「適切な専門家に相談すれば早く解決する」という知見を得たという。「ただ一方で、それだけのことを確認するのに、専門家に面談を予約して1時間拘束して……となると重すぎる。また『専門家だからどの分野も分かる』というわけではなく、適切な人に聞かないと、質問によっては不利益になることもあり得ると知った」(堤氏)

もう一点、堤氏が事業立ち上げに踏み出した理由は、エムスリーでのアスクドクターズ運営の体験があったことだ。

「アスクドクターズについては、事業計画からプロダクト設計、体制づくり、アライアンスまで、いろいろなことを手がけた。事業を伸ばすためのKPI設計やプロダクトの品質向上のポイント、ユーザー数を伸ばすための工夫などは、システムなどに投資してお金をかければいいというものではなく、手もかけなければならない。そのノウハウを持っていれば、新しい価値が提供できるのではないかと考えた」(堤氏)

また「所得の伸び悩みや老後の不安が背景にある一方で、仮想通貨など、お金そのものの考え方が変わってきている」と堤氏は言い、「そうした環境のもと、お金に対する情報が求められている」と市場のトレンドも上向きであると分析する。

セオリアでは、エンジェル投資家の有安伸宏氏、砂川大氏、稲田雅彦氏ほか、複数名の個人投資家を引受先として、数千万円規模の資金調達を完了。「CGM(Consumer Generated Media:ユーザー参加によるコンテンツ生成メディア)に強い投資家が投資に参加してくれたことが、我々の強みとなっている」と堤氏は話している。

おかねアンサーは先に述べたように、現在は無料で提供されている。収益化については、アスクドクターズや弁護士ドットコムのような個人課金(既存のQ&A閲覧への課金)や事業者への広告、ユーザーと専門家との面談のマッチングで相談1回につき手数料を取るなど、いくつかの方法を検討しているそうだ。

「時期は明確には決めていないが、早期に10万件のQ&A登録を目指したい」という堤氏。「サービスのベースはあくまでもQ&A。アスクドクターズにせよ、弁護士ドットコムにせよ、同様のサービスでは成長に長い年月が必要だということは見てきている」と言いながら「いまはAIに可能性がある」と話す。

将来的なサービスの展開について、堤氏は「コンテンツテキストを学習データとして取り込み、自動回答や提案をすることも可能になるのではないかとみている。どういう悩みにはどう回答するとよいのか、Q&Aをデータベースから作っていくことで、AIで何かできるのではないかと考えている」と語った。

写真右からセオリア代表取締役 堤健正氏、取締役CTOの造田知宏氏

「ルトロン」の技術を活用したAI自動動画作成ツール「VIDEO BRAIN」提供開始、運営は総額15億円を調達

動画メディア「LeTRONC(ルトロン)」や動画広告サービスなどを運営するオープンエイトが、AIによる自動動画生成機能「LeTRONC AI(ルトロンAI)」を発表したのは2017年10月のこと。同社で内々に活用されてきたこの機能がついに8月28日、「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」の名で、一般企業向けにクラウドサービスとして提供開始された。

オープンエイトが運営するルトロンは、観光スポットやレストラン、イベントといったおでかけ情報や、美容、ファッションなど、女性向けの動画を配信するメディアだ。2016年5月のウェブ版公開を皮切りに、SNS、アプリなど複数チャンネルで配信される分散型メディアとして、オリジナルコンテンツを展開。アプリは100万ダウンロード超、SNSファン数はのべ約700万となり、提供する動画コンテンツは約8000本を数える。

ルトロンでは、AIを活用してユーザーの視聴履歴などを分析し、ユーザーごとの趣味嗜好に合った動画コンテンツを自動生成している。そのテキストマイニングや画像解析、自動編集など動画に関する技術を応用して、提供するのがVIDEO BRAINだ。

VIDEO BRAINで動画を作るのに、特別な知識は要らない。PowerPointでプレゼン資料を作ったことがある人なら誰でも、いや、もしかしたらそれよりもずっと簡単に、動画が作れるかもしれない。

写真・動画やテキストなどの素材を画面から入力していくと、AIエンジンがデータを分析し、100種類以上ある動画フォーマットから、おすすめを提案してくれる。動画や画像の長さ・大きさは編集が可能。入力したテキストからテロップとして配分される文言なども微調整することができ、最短3分で動画を書き出すことができる。

テキストと画像の入稿から、編集、プレビューと動画の書き出しまで、VIDEO BRAINを操作するところを見せてもらったのだが、「すごい」と思わず声が出たのは、画像に合わせてテロップテキストの配分が自動で終わったところ。動画を説明する文章として、5000文字ぐらい入力ができるそうなのだが、それらが各画像の内容に沿って、何となくいい感じに割り振られるのだ。

もちろん、自動の割り当てで気に入らないところは、自分で手を加えることもできる。テロップの修正以外も、画像サイズやシーンの入れ替え、秒数の調整などを「パワポ」レベルの操作でできるので、本当に動画制作の経験は必要ない。

TechCrunchに掲載されているものでも短めの記事なら、動画や画像素材を取り込んで、ちょっとした動画コンテンツが簡単に出来上がりそうだ。実際、クローズドでサービスを導入しているメディア企業で、ニュース記事を動画化しているケースもあるということだった。

オープンエイト代表取締役社長 兼 CEOの高松雄康氏によれば、クローズドで先行導入している企業は大手を中心に約10社。外部向けコンテンツや広告動画だけでなく、CSR活動や、飲食業でのオペレーションマニュアルといった従業員教育にも使われているそうだ。

高松氏は「広告など、動画の活用は広がってきたが、まだまだ予算が小さく、体制がないために取り組めないという企業は多い。また、社内向けマニュアルなど、そもそも大がかりな編集が不要で、必ずしも外部へ制作を依頼するほどではない場合もある。そういうケースでも、小さな予算で簡単に動画ができて、効果が試せる、という状況をVIDEO BRAINで提供したい」とサービス開始の背景について説明。「いろいろ試してもらって、動画を利用しようという企業の裾野を広げたい」と語った。

利用料金は月額15万円(契約期間1年間)。今後、素材のより適切なマッチングができるよう、さらにデータの学習・AIエンジンの改良を行っていくという。また高松氏によると「今秋には英語・中国語への対応を、年内には音声データへの対応も予定している」とのことだった。

オープンエイトでは、VIDEO BRAINの開発と推進を目的として、WiL未来創生ファンドを引受先とする約15億円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。また動画事業のアドバイザーに江端浩人氏を迎え、VIDEO BRAINの機能強化や販売促進、海外展開を推進するという。

楽天が仮想通貨交換業参入へ、みんなのビットコインを2億6500万円で買収

楽天は8月31日、連結子会社である楽天カードを通じて、仮想通貨交換業を営むみんなのビットコインの全株式を2億6500万円で取得することを明らかにした。

本株式取得は楽天カードと、みんなのビットコインの親会社であるトレイダーズインベストメントとの間で締結された株式譲渡契約に基づくもの。10月1日を株式譲渡実行予定日としている。

Eコマースを中心にトラベルやデジタルコンテンツ、金融など70を超えるサービスを運営する楽天。これらのサービスを楽天会員を中心としたメンバーシップによって結びつけ、独自の「楽天エコシステム」を拡大させてきた。

そのような環境において同社では2016年に「楽天ブロックチェーン・ラボ」を英国に設立し、ブロックチェーン技術の研究を推進。将来的にEコマースや実店舗での決済、個人間での決済手段として、仮想通貨による決済機能の役割が大きくなっていくと見込んでいるようだ。

仮想通貨の決済手段を円滑に提供していくためには仮想通貨交換所機能の提供が必要であること、 また楽天証券において、FX顧客を中心に仮想通貨による運用機会の提供を期待する顧客の声が大きくなっていることもあり、仮想通貨交換業への参入を検討してきたという。

今回買収したみんなのビットコインは、2017年3月30日に仮想通貨交換所のサービスを開始。2017年9月7日に仮想通貨交換業者の登録申請書を提出し、現在はみなし仮想通貨交換業者として営業している。2018年4月25日には関東財務局より業務改善命令を受け、現在は指摘事項の課題について改善を図っている段階だ。

楽天ではみんなのビットコインが仮想通貨交換業者の登録を目指すには、楽天グループの傘下で事業を強化することで、事業の安定や拡大の実現とともにユーザーへ価値を提供できると判断。株式譲渡に関する協議に入ったという。

株式取得の決定に至った理由として「これまでのみんなのビットコインによる仮想通貨交換業のノウハウと楽天グループの広範な金融事業におけるノウハウを合わせ、事業体制の確立を行うことで、早期の仮想通貨交換業者としての登録と今後の仮想通貨に関するサービス発展に向けた事業展開が期待できると判断し、今回の株式取得の決定に至りました」としている。

LINEがトークンエコノミー構想を発表、独自ブロックチェーンによる「LINEエコシステム」を公開

LINEは8月31日、独自開発したブロックチェーン技術を用いたトークンエコノミーの構築を目指す「LINE Token Economy」構想を発表した。

それに向けて自社開発のブロックチェーンネットワーク「LINK Chain」を基盤とした「LINEエコシステム」を公開。同システム内で利用できる汎用コイン「LINK Point(日本向け)」と「LINK(海外向け)」も公開している。なお詳しくは後述するがLINK PointとLINKはそれぞれ違った性質のものだ。

LINEによると今回発表したトークンエコノミー構想は「LINEが独自に開発したブロックチェーン技術を活用することで、サービス提供者とユーザーの関係をよりフラットにし、ともに成長していくことができる共創関係の構築を目指す」ものだという。

インターネットが普及して様々な情報やコンテンツを無料で受け取れるようになったと同時に、ユーザーはSNSや口コミサイトを始めとしたCGMにおいてコンテンツを生み出す生産者にもなっている。サービス自体の成長に大きく貢献しているユーザーも多いけれど、現在はそれに対して適切なインセンティブを還元できているものは少ない。

どうやらLINEではこの現状をトークンエコノミーを活用することで改善しようとしているようだ。

今回公開されたLINEエコシステムは、分散型アプリケーション(dApp)サービスが参加することでユーザーに対して汎用コインを付与することができる仕組み。これによってユーザーは同システムに参加するdAppサービスや、今後参加を計画している既存のLINEサービスに登録・利用すると、アクションやサービスへの貢献に応じてLINK PointやLINKを獲得できるようになる。

LINK Point(日本向け)の場合

LINK Chainによって評価の信頼性や透明性を担保し、ユーザーの貢献に対して適切な還元を行うことで活動が活性化されれば、さらにサービスも成長して大きな価値を生み出すことに繋がる。トークンエコノミーが上手く機能すれば、そのような好循環を作ることもできるだろう。

LINKエコシステムには今後他社のサービスも参加できるようになる予定。サービス提供者側にとっては、膨大な時間とコストをかけずにトークンエコノミーを導入できる点がメリットだ。

冒頭でも触れた通り、汎用コインのLINK PointとLINKはそれぞれ性質が異なる。LINK Pointは日本でのみ利用可能なコインで、日本国内に住むユーザーがLINEエコシステムに参加するサービス内でインセンティブとして獲得できるものだ。

獲得したLINK PointはほかのdAppサービスで使用することに加え、LINEポイントに交換して使うことも可能。LINEポイントは1ポイントを1円として、LINE Payでの決済やLINEサービスでの購入・決済時に利用できる。

一方のLINKは日米を除くユーザーに配布されるコインだ。グローバルの仮想通貨交換所「BITBOX」での取扱を予定。今後ユーザーがインセンティブとして獲得したLINKは、BITBOX上で他の仮想通貨との交換、取引が可能になるという(9月4日よりBITBOX上での取引に応じてLINKを無償配布する計画)。日本居住者であるユーザーは規制上、BITBOXでLINKの売買や交換等を行うことはできない。

LINK(海外向け)の場合。グローバルの仮想通貨交換所「BITBOX」にて9月より取扱予定

LINK PointとLINKは合わせて総数10億個が発行される計画。このうち8億個がLINK エコシステムに参加するサービス毎に設定された報酬ポリシーに沿って分配される予定だ。残りの2億個は予備として発行元であるLINE Tech Plusが管理するという。

なおLINEからLINKに関するホワイトペーパー(英語)が公開されているので、詳細を知りたい方はこちらも合わせて読んでみるといいかもしれない。

ブロックチェーンを活用した空間サービスのマーケットプレイス「Cryptorealty」にLayerX・ツクルバが参画

左から、LayerX代表取締役社長 福島良典氏、Property Access CEO風戸裕樹氏、ツクルバ代表取締役CEO村上浩輝氏

シンガポールを拠点とし日本と世界の不動産取引支援プラットフォームを構築するProperty Access Assetは8月30日、ブロックチェーンを活用したマーケットプレイスを創造するプロジェクト「Cryptorealty」を発表した。マーケットプレイスの対象となるのは、主に東南アジアの空間・サービスだ。

同プロジェクトにはGunosyとAnyPayの合弁会社として8月1日に設立されたばかりのブロックチェーン関連事業を行うLayerX、ならびにリノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」の運営などを手がけるツクルバがパートナーとして参画。LayerX代表取締役社長 福島良典氏はテクニカル・アドバイザー、ツクルバ代表取締役CEO村上浩輝氏はストラテジック・アドバイザーとして関与している。

以前にもお伝えしたとおり、Gunosyとツクルバは2018年5月よりブロックチェーン技術の不動産領域への活用にむけた共同研究を開始しており、LayerX設立以降、Gunosyのブロックチェーンチームは同社へ移行している。

Cryptorealtyへの関与はその共同研究の第一弾の成果になるのだと福島氏・村上氏は意気込んでいる。

Cryptorealtyは商業空間や空間を活用したサービスの創出・利用を、誰もが見える形で取引できるよう促すマーケットプレイス。空間・サービスを提供するオペレーターとプロジェクトを支援する支援者、そしてユーザーが空間およびサービスの利用権を販売や購入、レンタルをすることができる。

従来のREIT(不動産投資信託)やクラウドファンディングでは成しえなかった不動産領域での資金調達の課題の解決を目指す。

「REITでは非常に大規模なプロジェクトしかリスティングされず、かつ、例えば日本のJREITだと国内の投資家など限られた人しか買えなかったので、中小規模のデベロッパーにとってはファンディングの機会が非常に限られていた。クラウドファンディングでは、モノづくりのプロジェクトは相性が良いが、不動産のプロジェクトだと相性が非常に良くなかった。また、銀行からも資金を借りづらい。Cryptorealtyはそこを解決するようなプロジェクトだ」(村上氏)

Cryptorealty上ではオペレーターが自分たちの利用権をデジタルアセットとしてトークン化し、プラットフォームに登録する。サポーターやユーザーは利用権を買い、貸し出すことでリターンを得られたり低価格で高品質なサービスを利用できる。

Cryptorealtyの特徴は、ファンや応援者以外に、投資家の性質を持った支援者も集まりやすい点だ。福島氏は「従来のクラウドファンディングは基本的にファンが参加するもの、利用者が参加するものだったが、レンタルがあることによってユーザー以外のファンが参加できる」と説明する。

また、ブロックチェーンによる「トラストレス」な環境を整備することで、グローバルなオファーも期待できる。「ブロックチェーンを活用することで、利用権や所有権の移転や、それを“この時間で貸します”といったことが簡単にできる。ブロックチェーンは不動産領域と非常に相性が良い」(村上氏)

福島氏は「従来のプロジェクトは単純に仮想通貨で不動産が買える、というものが多かった。僕たちはもう少し踏み込み、トークンを絡めて今の世の中の不動産の課題を解決するものが作れないかと考えていた」と今回の参画について話していた。

UUUMが誰でも気軽に参加できるオーディションプラットフォーム「NOCHISTA」を公開

UUUM執行役員の市川義典氏

「今や個人がメディアになる時代と言ってもいいくらい、多くのファンを抱え影響力を持つ個人が増えてきた」——そう話すのは動画クリエイターやインフルエンサーのマネジメント事業を手がけるUUUMで執行役員を務める市川義典氏だ。

HIKAKINやはじめしゃちょーなど、国内でも屈指のYouTubeチャンネル登録者数を誇るクリエイターが所属することで知られる同社。現在は5800以上のYoutubeチャンネルに対するマネジメントやサポートを中心に、インフルエンサーマーケティング事業やイベント事業などを展開する。

そんなUUUMから、従来とは少し違ったオーディションプラットフォームが公開された。サービス名は「NOCHISTA (のちスタ)」。その名の通り“のちのスター”を望む個人が集まり、コンテンツを投稿し合うプラットフォームだ。

同サービスはパーティーおよびBloom&Co.とタッグを組み「のちスタ」の名称で昨年立ち上げたもの。今回サービス名をNOCHISTAに変更するとともに、機能面やデザインをアップデートする形で8月30日に新たにリリースしている。

誰でも気軽に参加できるオーディションプラットフォーム

NOCHISTAは動画や写真を投稿するSNSにオーディションの要素が組み合わさったサービスだ。インフルエンサーを本気で目指している人はもちろん、自分の特技や日常を誰かに向けて発信したい人が無料で参加し、動画や写真を投稿してコミュニケーションを楽しめる。

コミュニティを活性化する仕掛けとして、イベントやゲーム要素も導入。たとえば「流行りのオレンジメイクに関する動画を投稿してください」など様々なお題によって一定の制限を加え、初めてのユーザーでも投稿しやすくなるような設計をしている。他のユーザーからスターをもらうことで自分のレベルがどんどん上がる仕組みになっているので、楽しみながら自分の成長を実感できる点も特徴だ。

そして同サービスは“オーディションプラットフォーム”を謳っているように、オーディションと紐づいている点が既存のSNSとの最大の違いだろう。NOCHISTAではUUUM所属クリエイターへの登竜門となるオーディションイベントや、メディアとのタイアップイベント、UUUM人気クリエイター主催イベントなどを開催。受賞者には何かしらの形で世に出ていくチャンスが提供される。

開催予定のイベント。受賞者はUUUMのサポートを受けてインフルエンサーとして活動できる

「従来のオーディションは一般の人にとって敷居が高いというイメージがあった。個人が気軽に情報発信して影響力を持つような時代だからこそ、オーディションをプラットフォーム化することでより多くの人が参加できる仕組みを作りたいと思ったのがきっかけだ。TwitterやInstagramのように気軽に投稿してもらって、結果的に『実はそれがオーディションだった』くらいの感覚で使ってもらえるサービスにしたい」(市川氏)

昨年は約3600名がオーディションに参加し、そこから約20名がファイナリストに選出。協賛した企業などから何かしらの賞を受賞したクリエイターが10名ほどいて、それぞれ形は異なれど新たなチャンスを手にした。

UUUMと専属の契約を結んだ女性クリエイターも1人いて、現在彼女のYoutubeチャンネルの登録者は15万人を超えている。市川氏によると以前から他のSNSで活躍していたわけではないそうで、何気なくはじめたNOCHISTAをきっかけに多くのファンがつくようになったという。

もともと2年前にオーディションを実施した際の参加者が1000人。昨年が3600人なので1年で参加者が3倍以上になったことになる。市川氏も「3600人はなかなかいい数字。雑誌のオーディションともそこまで変わらない規模だと認識をしていて、今後も参加者は増えると思っている」と話す。

インフルエンサーに憧れる個人を応援するサービスへ

なぜインフルエンサーに興味を持つ人が急に増えてきているのか。背景にあるのはスマホの普及と、それに伴って普段接触するメディアが以前とは変わってきていることだ。

僕が子どもの頃は、家にいて暇な時間はテレビを見るか漫画を読むかで迷っていたけど、今は手元にあるスマホやパソコンから面白いコンテンツにいくらでもアクセスできる。当然接触するメディアやそこで活躍している人も違う。

「アンケートで好きなタレントを聞くとインフルエンサーの名前が上がってくることも増えてきた。なりたい職業も同様で、自分が子供の時はスポーツ選手や医者が人気だったけれど、そこにインフルエンサーがランクインしたりするような時代。若い人たちが憧れる対象も変わってきている」(市川氏)

特にここ2年ほどで一気に業界を取り巻く環境が変わってきたというのが市川氏の見解だ。それは単に世間でインフルエンサーの認知度が上がったことだけではない。市川氏によると広告主がクリエイターを見る目にも変化が起き、約2年前からナショナルクライアントが広告を出稿してくれるようになったという。UUUMが昨年マザーズに上場したことも、業界内外で大きなインパクトを与えた。

このような背景もあり、今後も次々と新たなインフルエンサーやクリエイターが生まれていきそうだ。NOCHISTAではそんな存在に憧れる個人がチャンスを掴むきっかけとなる場所を目指していくという。

「(旧版の「のちスタ」では)結果的に10万人以上のファンを抱えるクリエイターを輩出することができたので、こういう人をもっと増やしたい。本気でインフルエンサーになりたい人だけでなく、結果的になれたらいいなと思っている人でも気軽に参加でき、広く夢を叶えたい人を支えるプラットフォームを目指していく」(市川氏)

今年上場のHEROZ代表がTC Tokyoに登壇、“スタートアップ氷河期”と言われた創業当時を振り返る

11月15日、16日に開催する僕たちの年次イベント「TechCrunch Tokyo 2018」に登壇いただくスピーカーをまた1人紹介しよう。2018年4月20日に東証マザーズ市場へ上場したHEROZの代表取締役、林隆弘氏だ。

HEROZは、人工知能を活用したインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける日本のスタートアップ。各種AIエンジンを自社で作り上げる高い技術力が同社の強みだ。2017年にはHEROZリードエンジニアの山本一成氏が開発した将棋AI「Ponanza(ポナンザ)」が現役将棋名人に勝利。HEROZの技術力に一層の注目が集まった。

山本氏のほかにも、世界コンピューター将棋選手権で優勝した将棋プログラム「Apery(エイプリー)」の開発者である平岡拓也氏など優秀なエンジニアを多く抱えるHEROZ。総従業員数40名のうち約3分の2がエンジニアという、まさに“技術ドリブン”という言葉が相応しいスタートアップだ。

HEROZでは創業当初から培ってきたAI関連技術を活用し、ダウンロード数が約480万を超す「将棋ウォーズ」をはじめとする頭脳ゲームアプリを多数展開。そのBtoC事業が現時点における収益の柱だ。そのC向け事業に加え、近年のHEROZが「成長分野」と位置づけて注力をするのが、これまで将棋AIの開発で培った技術を標準化して法人向けに展開するBtoB事業だ。

HEROZの2018年4月期決算資料より

同社は機械学習やディープラーニングをサービスとして提供するMLaaS(Machine Learning as a Service)の「HEROZ Kishin」を開発。同サービスを金融、建設、品質管理など幅広い分野に展開している。2017年に資本業務提携を結んだハーツユナイテッド(現デジタルハーツホールディングス)との協業では、HEROZ Kishinによってソフトウェアテストやデバックを自動化するなどの実績をつくった。また、マネックス証券との協業では、AIがユーザーの投資行動を学習することでその後の投資技術の向上をサポートしたり、過去の取引データを分析することで不正取引の検知をするなどしている。

そんなHEROZの創業は2009年4月。“スタートアップ氷河期”と言われる時代だ。今でこそ「〇億円調達」という言葉をよく目にするようになったが、当時はリーマンショックのあおりで日本のスタートアップ業界も息を潜め、そうした資金調達のニュースすら少ないような状況だった。そんな中、HEROZは創業直後の2009年6月にジャフコなどから1億円を調達するなど当時から“大物ルーキー”として注目される存在でもあった。

今年のTechCrunch Tokyoに登壇する林氏には、上場年となる今年に改めて創業当初を振り返っていただき、氷河期と呼ばれる時代に起業家になることで得た経験、学び、苦労を大いに語って頂きたいと思っている。そのような経験談は、若い世代の起業家にとっても非常に有意義なものとなるはずだ。また、「将棋ウォーズのHEROZ」と称されたBtoC中心の時代から、BtoB事業にも重きを置く現在のビジネスのかたちへの変遷、そして、上場企業となったHEROZのこれからの戦略についても聞きたいと思っている。

残念ながら、学生限定の割引チケットである「学割チケット」はすでに売り切れてしまった。でも、9月18日までは、通常料金よりも大幅に割引された「超早割チケット」を手に入れることができるので、下のリンクからぜひ購入いただきたい。

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