URL1つで簡単カレンダー共有、「TimeTree」のJUBILEE WORKSが2.1億円を調達

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カレンダー共有アプリ「TimeTree」を提供するJUBILEE WORKSは、韓国Kakao Corp.の子会社であるK CUBE VENTURES Co.,Ltd.、西武しんきんキャピタル株式会社、東映アニメーション株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社ほか、国内外の投資家から総額2.1億円を調達したと本日発表した。これが同社にとって初の外部調達となる。

家族、恋人、同僚とかんたんにカレンダーを共有

JUBILEE WORKSが提供するカレンダーアプリのTimeTreeでは、家族や恋人、サークルの仲間などと簡単にスケジュールを共有することができる。アカウントの登録は不要で、チャットやメールを通してURLを送るだけでスケジュールの共有ができるのが特徴だ。また、1つのアプリで複数のカレンダーを持つことができるため、家族と共有するプライベート用カレンダー、同僚と共有する仕事用のカレンダーという形で使い分けることができる。アプリにはコメントや写真の投稿機能もあり、チャットアプリやメールを使わずに「この日はどこに行こうか?」などの予定の相談をすることも可能だ。

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JUBILEE WORKSの代表取締役である深川 泰斗氏に、Googleカレンダーなど他の予定管理アプリと比べたTimeTreeの独自性は何かと聞いたところ、「TimeTreeは開発段階から「共有すること」を前提に考えており、共有メンバーが予定を作成するとPUSH通知が届いたり、誰がいつ、そしてどの予定を更新したのかという履歴が残るなど、共有することに適した機能が整っています。また、Googleカレンダーではブラウザで複雑な設定をしないと共有ができないが、TimeTreeではURLをLINEやメールで送るだけで共有ができるという点も違いの一つ」だと話している。

海外メディアからも注目を集める

TimeTreeは2015年3月24日にサービスを公開後、2016年2月に100万ユーザーを獲得、同年8月には200万ユーザーを獲得するなど順調に成長を続けている。また、日本語や英語だけではなく、韓国語やロシア語など計13ヵ国語に対応しており、海外でもユーザー数を順調に伸ばしている。深川氏によれば、各国のアクティブユーザー数の割合は、日本が65%、台湾が10%、アメリカと韓国がそれぞれ5%、ドイツが4%、残りが中国、カナダ、香港、イギリス、フランスなどの国々だ。(「日本では家族や同僚とスゲジュール共有が多く、台湾やドイツでは恋人と共有する例が多い」と深川氏は話す)。

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「Fred」こと、代表取締役の深川氏

TimeTreeは海外のメディアからも注目を集めている。アメリカのスタートアップ系メディア、Product Hunt、LifeHackerロシア版などで同サービスが取り上げられ、フロリダ州の州議会議員から「便利に使っている」とメッセージを受け取ることもあったようだ。このような海外からの高い評価により、国内だけでなく、韓国やアメリカなど海外の投資家からの資金調達が可能になった。「我々が選んだ「時間」というテーマは、ある程度文化を問わず普遍性のあるものだと思っています」と深川氏は語る。

国際豊かなメンバーとユニークな企業文化

2014年に創業のJUBILEE WORKSのチームは現在18名で、韓国やシンガポール出身のメンバーもいる国際性豊なメンバーだ。また、同社では「ニックネーム制」を採用しており、代表取締役の深川氏は「Fred」、共同創業メンバーも「Frod」、「Stud」などと呼ばれ、社内では「社長」や「Fredさん」のように役職や敬称つきで呼ばれることはないという。このような企業カルチャーもJUBILEE WORKSの特徴の1つだろう。

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深川氏には保育園に通う子どもがおり、家族のあいだで「お迎えの交代を聞いてない」などのトラブルがあった。また、家族で週末どこに出かけるか考えているうちに、結局無駄に時間を過ごしてしまうこともあった。「必要な相手とあいだで必要な予定情報が見えるようになれば、このようなトラブルを解決できるのではないか」というアイデアから生まれたのがTimeTreeだ。

「Fred」率いるJUBILEE WORKSでは、今回調達した資金によってサービス強化のための人材確保とサービス拡大のための組織的実験を続けていくとしている。

Appleが日本にもR&Dセンターを開設、建物の完成は年内か

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Appleは今、R&Dの拡大に力を入れている。過去数か月で発表された新設のR&Dセンターは数知れず、同社の研究開発費は急増している新華社の報道によると、AppleのCEO Timは、最近の東京訪問時に、日本に新たなセンターを開設する計画だ、と発表した。

日本の新しいR&Dセンターの話は、これが初めてではない。以前の報道は、Appleが2016年または2017年をめどに新たなR&Dセンターを建築中、と述べている。

Cookは日本の総理大臣Shinzo Abeと会談して、Appleと日本に関するあらゆることを議論した。その後の記者会見で、官房長官Yoshihide Sugaが、AppleのR&Dセンターは12月に落成する、と報告した。

横浜に作られるそのR&Dセンターは、Panasonicの工場として使われていた建物を、Appleが入手して改築し、R&Dセンターとして使うことにしたものだ。

これにより、日本人の優秀な技術者を雇用しやすくなるが、彼らの担当部門はまだ不明だ。

Appleは今後、日本だけでなく、深圳やイスラエル、イギリス、フランス、スウェーデンなどにも新しいR&Dセンターを作る予定だ。これからは、Appleのどの製品にも、“designed by Apple in Cupertino and many other countries”(クパチーノとそのほかの多くの国々で設計された)、と表示されるのだろう。

出典: Apple Insider

〔訳注: 業界ではすでに周知の横浜綱島の建物の件が、Cookと総理の会談を機に、一般のニュースのレベルでも取り上げられるようになった、ということのよう。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ソフトバンク、最大10兆円規模となるテクノロジー分野の投資ファンドを設立

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ソフトバンクグループは10月14日、世界規模で主にテクノロジー分野へ出資することを目的とした「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(仮称)」の設立を発表した。ソフトバンクグループでは、今後5年間で少なくとも250億ドル(約2.6兆円)を出資する予定だ。

このファンドには、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が主要な資金パートナーとして出資を検討しており、PIFは今後5年間で最大450億ドル(約4.7兆円)の出資を実施する可能性があるという。また、他にも複数のグローバルな大手投資家からの出資について協議中ということで、ファンドの総額は1000億ドル(約10兆円)規模となる可能性がある。

PIFはサウジアラビアの国家経済にとって戦略的に重要なプロジェクトへの資金援助を目的に1971年に設立されたファンドで、同国の原油以外の分野での発展をサポートしてきた。現在PIFのチェアマンを務めるのは、サウジアラビア副皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏で、同国の多様な知識集約型産業を発展させるという「ビジョン2030」と連動する長期的投資戦略を取っている。

今回のファンド設立プロジェクトを主導するのは、ソフトバンクグループHead of Strategic Financeのラジーブ・ミスラ氏。元ドイツ銀行のニザール・アルバサム氏、元ゴールドマン・サックスのパートナー、ダリンチ・アリバーヌ氏がプロジェクトに参画している。

ファンドはソフトバンクグループの英国にある子会社が運用する予定で、投資活動の付加価値を高めるために、テクノロジー業界でのグループの投資運用能力、経験や事業ノウハウ、グループ企業のネットワークを活用。共同出資者となる資金パートナーと過去最大級の規模を目指す。

ソフトバンクグループではファンド設立の目的を「ファンドへの投資および投資先企業との提携を通じて、同社のグローバル成長戦略を加速させること」としている。同社は、9月にもARMをイギリス史上最大となる240億ポンドで買収したばかりだ。

ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は、ファンドの設立について「世界中のテクノロジー企業への出資をさらに推し進めることができる。出資先のテクノロジー企業の発展に寄与することで、情報革命をさらに加速させていく」と述べている。

MegaBotsが新ロボットの開発ビデオを公開―水道橋重工との対戦準備進む

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日本の水道橋重工業の巨大ロボットとの対戦に向けてシード資金の調達に成功したMegaBotsチームが、開発の現状を詳しく紹介するビデオの第一弾を公開した。

ここには過酷なテストや既存モデルが激しく転倒する様子などが収められている。全体で7分半ほどで、Megtesチームが戦闘で乗員を保護するメカニズムを開発するためにロボットに激しい打撃を与えているところが見られる。武器もモジュール式になり、バリエーションが増えた。威力も恐るべきものになる…かもしれない。

今朝(米国時間10/12)発表されたプレスリリースでMegaBotsは「既存モデルに対して実施されたほぼすべてのテストで乗員は死亡ないし重傷を負うような衝撃を受けるはずであることが判明した」と述べている。

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アメリカの国旗デザインのド派手な衣装で9月のTechCrunch Disruptに登場した開発チームだが、アメリカ・チームは日本チームとの対戦を非常に真剣に考えている。高さ4.5メートルのロボットが転倒し、その衝撃で乗員が死亡するというのはなんとしても避けねばならない事態だ。

そこで、MegaBotsのウェブ・ビデオ・シリーズのテーマはまったく新しいロボット、Mk. IIIの製作となっている。最新の映像を見た限りではMk Ⅲの戦闘準備は相当に進んできたようだ。新モデルにはF1やNASCARににヒントを得たというロールケージが備えられ乗員を保護している。

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MegaBotsではDARPAのロボティクス・コンテストの2位入賞者と協力して新しいロボット操縦システムを開発している。モジュラー式のアームに脱着できるガン、ドリル、チェーンソーなど『キャプテン・スーパーマーケット』的な武器も公開された。最終的にこのロボットは重量10トン(前モデルの約4倍)、最高速度は時速16キロ、製作費用は250万ドル程度になる見込みだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

EC基盤「BASE」と決済サービス「PAY.JP」運営のBASEが15億円の資金調達、今後は金融領域強化へ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

最近では金融×IT領域を指す「FinTech」というキーワードを見ない日はないが、そんなFinTech銘柄の大型調達が続いているようだ。昨日もウェルスナビが大型調達を発表していたが、今日はEコマースプラットフォーム「BASE」や決済サービス「PAY.JP」を手がけるBASEの大型調達のニュースが入ってきた。

BASEは10月13日、SBIインベストメントが運用するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合などのファンド、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、サンエイトインベストメント(既存株主)を引受先とした総額15億円の資金調達を実施したことを明らかにした。BASEでは今回調達した資金をもとにBASEおよびPAY.JPの事業拡大のための開発体制とマーケティングの強化を図るとしている。

EコマースポータルのBASEは店舗数約30万件、年間での流通総額は「3桁億円」(BASE代表取締役の鶴岡裕太氏)にまで成長した。「メルカリはこれにゼロが1つ多くて(流通総額で数千億円)、楽天はゼロが2つ多い(数兆円)。100倍だったら(挑戦することは)あり得るんじゃないか。もっとBASEを使ってもらえるのではないかと思っている」——鶴岡氏は現状についてこう語る。

同社は2016年1月にメルカリからの資金調達を実施。その後はメルカリ代表取締役の山田進太郎氏や取締役の小泉文明氏などからのメンタリングで組織運営についての考え方が変わったという。

「今までずっと僕がコミュニケーションの真ん中にいたが、今はピラミッド型。良くも悪くもウォッチできないところはあるが、結果として大きいチャレンジができることが分かった。『人がモノを作れる体制』を作らないといけないし、その体制を作れると、今までとはできることが大きく違ってくる。組織はすでに70人近くに成長して、今では元Googleといった人材も入社している。BASE単体でもまだまだ攻めるというメッセージを出していきたい」(鶴岡氏)

マーケティングも強化する。具体的なプランこそ話さなかったが。テレビCMについても「できるできないで言えばできる金額を集めた」(鶴岡氏)としている。また最近ではスマートフォンアプリのECモール機能も強化。さらなるサービス拡大を進めるとしている。

同時に今後より力を入れていくのが決済サービスのPAY.JPだ。PAY.JPで提供するID決済サービス「PAY.ID」はリリース45日で10万IDを突破。現在では20万IDを超えているという。

最近、決済領域のスタートアップの動きが急激に加熱している。連続起業家の木村新司氏が「AnyPay」を立ち上げ、Squareライクなクレジットカード決済からスタートしたコイニーが「Coineyーペイジ」を発表。また楽天傘下となったフリマアプリ「フリル」運営のFablicも決済領域に興味を持っていたスタートトゥデイからのMBOを発表した「STORES.jp」運営のブラケットも決済を強化することを視野に入れている。メタップスの提供する決済サービス「SPIKE」なんかもある。さらには米オンライン決済の雄、Stripeも日本に上陸している。

AnyPayの木村氏は以前TechCrunchの取材で、AnyPayをショッピングモールやフリマといった「マーケット」と結び付けて活性化を狙うと語っていたが、その考えで言えば、BASEはすでに30万店舗のマーケットと20万IDの決済が結びついた状態だ。今後はBASE外のサイトも含めてPAY.IDの導入を進めて、その経済圏を大きくする狙いだ。

「PAY.JPは『決済』だけをやりたいではない。インターネット上の個人を証明するということをやりたい。それと相性いいのが、決済、そして送金や融資といったビジネスだと考えている。インターネットではアカウントだけで人となりを証明しないといけない。今はコマースからスタートして、ペイメントをやっているスタートアップだが、将来は『金融』の会社でありたい」——鶴岡氏はこのように語るが、そんな同氏の構想を元にした新サービスも2017年の早いうちにリリースされる予定だ。

ロボット資産運用のウェルスナビが総額15億円を資金調達—SBI証券、住信SBIネット銀行と業務提携

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テクノロジーによる資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」を提供するウェルスナビは、10月12日、SBIホールディングス、SBIインベストメント、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、DBJキャピタル、インフィニティ・ベンチャー・パートナーズを引受先とする、総額約15億円のシリーズBラウンドの資金調達を発表した。同時に、SBIホールディングス傘下のSBI証券および住信SBIネット銀行との業務提携も発表。それぞれの顧客向けにWealthNaviのサービスを提供していく予定だ。今回の調達で、2015年4月の設立後の資金調達の総額は約21億円超となる。

WealthNaviは、国際分散投資をソフトウェアで自動化して、クラウド経由で個人投資家向けに提供する“ロボアドバイザー”サービスのひとつ。2016年7月13日に一般公開された注目のFintechスタートアップによる資産運用サービスだ。

ウェルスナビでは今回の資金調達及び業務提携により、次世代の金融インフラを構築するため、積極的に金融機関に対してWealthNaviのシステムをパッケージで提供していくという。

SBI証券との業務提携では、資産運用のロボアドバイザーサービス「WealthNavi for SBI証券(仮称)」を口座数約360万のSBI証券の顧客に向けて提供し、さらにアプリ間連携などを通じて機能や利便性を強化していく予定。また2016年9月から連携を強めてきた、独立系フィナンシャル・アドバイザー、SBI証券、ウェルスナビの3者間連携により、リアルとネットを融合させた総合的な資産運用サービスを、主に富裕層向けに提供していくという。

住信SBIネット銀行との業務提携では、口座数約260万の住信SBIネット銀行の顧客向けに、やはりロボアドバイザーサービスの「WealthNavi for 住信SBIネット銀行(仮称)」を提供していく。さらに、預金・カード・資産運用が自動連携した、日本初の少額からの資産運用サービスを2017年春より開始する予定だ。d14586-11-912088-3

こうした取り組みを通じてウェルスナビでは、「銀行・証券・ロボアドバイザー」の連携モデルを実現・普及し、地方金融機関のFinTech導入を支援するSBIグループとも連携して、次世代金融インフラの確立を目指すとしている。

シャープがさくらインターネット、ABBALabと手を組んで「モノづくり研修」開催へ

左からABBALabの小笠原治氏、シャープの村上善照氏、さくらインターネットの川畑裕行氏、tsumugの牧田恵里氏、ABBALabの亀井聡彦氏

左からABBALabの小笠原治氏、シャープの村上善照氏、さくらインターネットの川畑裕行氏、tsumugの牧田恵里氏、ABBALabの亀井聡彦氏

シャープ、さくらインターネット、ABBALabの3社は10月12日、IoTベンチャー企業を対象とする合宿形式のモノづくり研修「SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネット」を開催することを明らかにした。第1回の開催は11月の予定で、現在参加企業を募集中だ。

この研修はIoTベンチャー企業の早期かつ確実な事業化を支援するもの。3社それぞれの立場から、モノづくりに必要な知識、ノウハウを提供していく。

シャープからは100年以上に渡ってメーカーとして培ってきた量産設計や品質、信頼性確保などのモノづくりの技術やノウハウを提供。さくらインターネットは通信環境とデータの保存や処理システムを一体型で提供するIoTのプラットフォーム「さくらのIoT Platform β」を元にした、ソフト/サーバー技術およびプラットフォームの知識を提供。そして投資ファンドのABBALabは事業化にあたって必要な資金調達のコツを提供する。10日間のプログラムとなっており、参加費用は1社2人の参加で85万円。

SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットのスケジュール(仮)

SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットのスケジュール(仮)

この研修を通じて、ベンチャー企業のモノづくりに起こりがちな設計ミスや品質不良、納期遅れといった課題に対する基礎知識を身につけることができるとしている。

モノづくりのノウハウをスタートアップにも

今回のプログラムが発表された背景には「新たな経営体制になったことで、生まれ変わっていきたい」というシャープの強い思いがあった。

「シャープが生まれ変わっていくために、まずはスタートアップを支援して小さなビジネスの立ち上げをサポートできれば、必ず社会の役に立つだろうという思いはありました。またスタートアップを支援することで彼らが持つ熱意を社内に取り込み、技術者を刺激できればいいなと思っていました」(シャープの村上善照氏)

その思いに賛同した、ABBALabの小笠原治氏はこう語る。

「意外に思うかもしれませんが、ハードウェアのスタートアップには、基本的にモノづくりの知識がないんです。最近は課題を解決するためにハードウェアのスタートアップを立ち上げる人が増えてきているので尚更です。そういった人たちに、シャープさんが長い年月をかけて蓄積されたノウハウを伝えて、モノづくりの基本的な知識を身につけてもらおう、と。これまで、大手企業のノウハウが外に伝わる機会はなかったので、今回一緒にできて、すごく嬉しいですね」(小笠原氏)

スカラシップ制度も用意

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シャープはこれまでにこういったスタートアップに特化したプログラムを提供してきたことはなく、の技術ノウハウが知れる機会は、滅多にない。プログラムを見てもわかるが、この研修に参加することによって、シャープが培ってきた技術ノウハウを余すことなく知ることができるだろう。

しかし、スタートアップにとって気になるのが参加費用だ。スタートアップ支援プログラムの多くは参加費用が無料だが、この研修には1社2人の参加で85万円の費用がかかる。これについて、小笠原氏は次のように説明する。

「『スタートアップの支援でお金をとるの?』と思われるかもしれませんが、この研修ではシャープさんのブートキャンプに参加したからシャープさんとモノを作らなければいけないといった縛りが発生することは一切ありません。何の紐付きもない支援は難しいと思いますので、きちんとそこは線引きをして、『費用を払ってノウハウを買う』というスタンスにしています。また、プログラム中の成長度合いによって、ABBALabが費用を負担するスカラシップ制度も用意しているので、スタートアップによっては費用負担はなくなると思います」(小笠原氏)

7月に試験的に合宿を開催

こうした大企業がスタートアップを支援する取り組みの多くは、開催から数カ月も経過すると、「結局どうなったんだっけ?」となってしまいがちだ。しかし、このモノづくり研修はシャープ、さくらインターネット、ABBALabの3社が「本気でスタートアップの支援をしたい」という思いもと立ち上がったこともあり、すでに実績も出ているという。

今回発表した研修を、7月に試験的に開催。その研修から次のステップに進むスタートアップが幾つか誕生したため、正式な形で進めることになったそうだ。

7月の合宿に参加した、不動産向けIoTデバイスを開発する「tsumug(ツムグ)」の牧田恵里氏は研修に参加した感想を、こう口にした。

「私たちはいま、鍵のデバイスを作っているのですが、スタートアップで鍵のデバイスと聞くと多くの人が難しいと感じると思います。実際、私たちもそうでした。ただ7月のトライアルに参加して、安全基準や品質管理などシャープが量産する上で大事にしてきたノウハウを提供してもらえて、改めて鍵のデバイスが作れるかもしれないと思えました」(牧田氏)

実際、tsumugはABBALabからの投資を受け、シャープから量産サポートも受けるフェーズに入っているという。このような形の支援が、この合宿を通して一社でも多く増えていけばいいと考えているそうだ。

11月に開催される1回目のSHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットでは4社の参加企業を募集。最初は年間で16社の支援を目指していき、今後、その母数を増やしていくことも狙っていくという。

ドローン米も商品化、ドローンで田畑をセンシングするドローン・ジャパン

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ドローン・ジャパンは、米をはじめ田畑で農作物を生産する農家を支援するサービス「DJアグリサービス」を発表した(プレスリリース)。ドローンを活用して田畑の精密なリモートセンシングを実施、データ解析して生育状況を精緻に把握できるようにし、農家を支援する。ドローンによる精密かつ大量のデータ収集と、学術的なバックグラウンドを持つデータ解析により、例えば田畑に投入する肥料や農薬を減らしつつ生産性を高めることを狙っている。

価格は栽培期間ごとに1ヘクタールあたり4500円から(初期投資なし、ドローンの運用からデータ化解析まで含む)。2017年4月よりサービスを開始する。

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発表会から。左端がドローン・ジャパン代表取締役社長の勝俣喜一朗氏、右端が取締役会長の春原久徳氏。農業分野のデータ解析の専門家、ドローンの専門家、生産農家が集う異色の発表会となった。

同社のサービスを構成する要素は多岐にわたる。発表会ではドローンの専門家、農業分野のデータ解析の専門家、生産農家らが登場し、情報量が非常に多い内容となった。同社のサービスの重要な点を要約すると次のようになる。

  • 米MicaSense社のマルチスペクトルセンサーを搭載したドローンによるリモートセンシングサービスを実施する
  • ドローンの自律航行のためのソフトウェアArduPilotを開発するジャパン・ドローンズ社(Randy Mackay代表、今回の発表主体ドローン・ジャパンとは別企業)と協力する。例えばレーザーで測距するLiDARを搭載したドローンにより、高度が位置により変わる棚田に追従して高度を一定に保ちつつ飛行できるようにする。
  • ドローンのオペレータの集団「DJキャラバン隊」を組織し、データ収集にあたる。
  • ドローン運用管理では日立システムズのドローン運用統合管理サービスを活用する。
  • データ解析では、東京大学農学生命科学研究科の監修による「DJメソッド田畑数値比較システム」を開発、活用する。
  • 1〜2年後をメドに、水田の水温のデータを収集するため、水面を航行するドローンAigamo Droneを投入予定。
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同社のサービスの構成要素を示したスライド。複数分野のパートナーと手を組んだ。

パックご飯「ドローン米」を商品化

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ドローンを活用して栽培した米で作ったパックご飯「ドローン米」。海外へ輸出していく考え。

同社は農家支援のサービスを提供するだけでなく、生産した米の流通、特に海外輸出に目を向けている。その第一弾として、パックご飯「ドローン米」を商品化し、2017年3月より海外に販売する。すでに3件の農家が同社のDJアグリサービスの開発に協力しており、その水田からは2016年産の米が収穫されている。このドローンで栽培した米を使ったパックご飯が「ドローン米」だ。

「日本には海外の米が入ってこない代わり、海外に米をほとんど輸出していない。米をそのまま輸出すると関税が非常に高いが、加工品は別だ。パックご飯なら炊きたての風味が保たれる」(ドローン・ジャパン代表取締役社長の勝俣喜一朗氏)。

「日本のお米は年間800万トン作られているが、海外輸出は4000トン。しかし世界市場は2500万トンある。市場シェアでは0.04%。これを100倍にはできるんじゃないか」と勝俣氏は話す。

同社の第1号投資家が、エンジェル投資家の千葉功太郎氏である。千葉氏は自らもドローンを「よく飛ばしている」といい、今回はドローン市場の中核にある農業分野に目を付けた形だ。千葉氏は「世界で見ると、小麦やトウモロコシの栽培にドローンを活用する事例はあるが、米に特化してセンシングしたところが新しい。農家が抱える問題を解決し、中国を含むアジアに展開していける」と期待を話した。ちなみに、先日千葉氏がシードラウンド資金調達に参加したインフォステラ関連記事)は、人工衛星によるリモートセンシング需要をにらんだ人工衛星の市場を想定した企業の一社という位置づけとなる。

縫製マッチングプラットフォーム「nutte」、総額1億円の資金調達

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縫製に特化したクラウドソーシングサービス「nutte(ヌッテ)」を運営するステイト・オブ・マインドは、10月11日、総額1億円の第三者割当増資を完了したことを発表した。引受先はアクセルマーク、みずほキャピタル株式会社が運営するファンド、静岡キャピタルが運営するファンド、ガイアックスグループが運営するシェアリングエコノミーファンド、ほか個人投資家で、うち、みずほキャピタルとガイアックスは2015年11月に続き、2度目の第三者割当増資となる。

nutteは1点から縫製職人に依頼できる、日本初の縫製マッチングプラットフォーム。縫製を依頼したいユーザーと、登録した縫製職人をマッチングし、ファッションブランドの小ロット生産、アイドル衣装、着物リメイク、ペットアイテム作成など、企業から個人までさまざまな縫製の依頼を職人につないでいる。

元々縫製職人だったステイト・オブ・マインド代表取締役の伊藤悠平氏が、「小ロット注文と縫製職人を直接つなぐことで、職人が適切な所得を得られるように支援したい」という考えから、2015年2月にスタートしたnutteは、サービスリリースから約1年7カ月の2016年9月12日時点で会員登録数が1万人を突破。直近1年では約730%増加と大きく成長を遂げた。現在では、洋服など天然素材の染め替え、染め直しの「and Colors」や縫製資材のECサイト「糸柄市(いとがらいち)」といった、縫製に付随するサービスも展開を始めている。

2016年中には利用者数3万人、累計取引件数5000件、流通額2億円を目指すnutte。今回の資金調達で、開発体制やサポートなどの増強を図るとともに、資材ECや染めサービスなどの付随する事業についても開発体制を強化し、「縫製職人の活躍の場を増やす」という企業理念を実現すべく活動するという。

アララ、ブロックチェーン技術mijinの電子マネー分野への適用を表明、実証実験の成果を受けて

プリペイドカード/ポイントカードpoint+plus(ポイントプラス)」のサービスを運営するアララは、テックビューロが提供するプライベートブロックチェーン技術mijinを評価する実証実験を実施し、その結果を見て同社の実システムへの採用する方針を固めた。「1年以内に、世の中に出す新サービスにブロックチェーンを使っていく」と同社の代表取締役 Group CEOの岩井陽介氏は話している。なお、アララは2016年4月、テックビューロへ出資した会社の1社として名前が挙がっていた(関連記事)。point+plusにmijinを適用するプランはその時点で発表されていたものだ。

実証実験の結果、mijinを使い毎分3000取引(平均50取引/秒に相当)の取引を安全に実施できることを確認した。また、1取引あたりのコストを現行システムの30%程度まで削減できると見込んでいる。同社の報告書では「多対1で大量トランザクション(取引)が発生する当社point+plusのようなシステムにも(mijinを)十分適用が可能であるとの結論に達した」と記している。

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実証実験で用いたブロックチェーンのネットワーク。AWS上の4ノートにブロックチェーンをホストする。地理的に分散させたノードを使った実験も行っている。

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実証実験で構築したアプリケーションの概念図。

同社は、プリペイドカード/ポイントカードのpoint+plusをスーパーマーケットや外食チェーンなどに展開している。point+plusを活用したサービスには、例えば日本サブウェイの電子マネー付きポイントカード「SUB CLUB CARD」がある。このようなサービスの情報インフラとしてブロックチェーンを適用可能かどうか評価するため、電子マネー分野のユースケースを想定したアプリケーションをmijin上に構築し、性能、可用性、取引の整合性に注目した実証実験を実施した。実証実験の結果は報告書として公開する。

電子マネー系サービスへのブロックチェーン適用を表明

ブロックチェーンの実証実験は金融機関を中心に各所で進められているが、今回の取り組みは2つの点で注目したい。1点目は、比較的詳細な報告書が開示されること。2点目は、世の中に出すサービスでのブロックチェーン技術の適用を進める考えを明らかにしていることだ。ブロックチェーンの実証実験は日本企業でも多数多数行われているが、実システムへの適用を決めたことを表明している企業はまだ多くない。

同社の岩井CEOは「電子マネー事業を手がけているので、以前から仮想通貨には興味を持っていた。知れば知るほどビットコインは凄い。その仮想通貨を支えるブロックチェーンの有用性を我々のサービスにも取り込めばメリットがあると考えた」と語る。

同社が特に解決したかった課題の一つが可用性だ。「サーバーでアクシデントがあるとサービスが停止してしまう。例えばスーパーマーケットのレジで人が並んでいる状況でサーバーが落ちて決済できない状況が生じると、現場は大混乱をきたす。2重、3重の対策を取ってはいるが、より強固で安全性が高いシステムを作る技術としてブロックチェーンに期待している」(岩井氏)。

可用性とコストの両立、それにセキュリティの高さも魅力だった。「従来の情報システムのディザスタリカバリは高価につく。地理的に分散したノードに配置したブロックチェーンの場合、トランザクション処理系についてはディザスタリカバリが不要となる。それにマルチシグネチャ、複数の人が承認しないと取引を確定できない仕組みも、セキュリティ向上のために魅力的だった。内部犯行でも改ざんが困難となる」(執行役員 技術本部 本部長 開発部 部長の鳥居茂樹氏)。

実証実験では、mijinの機能であるMosaicを用いて仮想通貨トークン「アララコイン」を用意し、スマートフォン上のウォレットアプリにより社内電子マネーとして活用するユースケースを想定した。10万ユーザー、1024部門の組織を想定し、過去の取引の蓄積データとして560万取引の規模の環境を用意した。ブロックチェーンをホストする4ノードのうち2ノードを定期的にリブートして整合性に問題が出ないかを調べた。またAWSの東京とシンガポールの各リージョンにノードを分散し、地理的に離れたノード間通信のレイテンシが挙動に影響するかどうかにも注目して実験を行っている。

アプリケーションは内製

実証実験のアプリケーションはアララが内製していることは要注目といえる。「mijinの環境構築は(提供会社の)テックビューロに支援してもらい、それ以外はアララで用意した。mijinのアプリケーション開発に必要なNEM Core APIを使ってアプリケーションを構築した」(鳥居氏)。同社の報告書では、処理時間が極端に長かったAPI処理を発見して改善する一種のトラブルシューティングを実施したことも記している。ブロックチェーン上のアプリケーション開発ができるエンジニアの数はまだ少ない中、ブロックチェーン上のアプリケーションを自社開発する能力を育てつつあると見ることもできる。

「ゼロ承認」でmijinを使う場合の整合性を調べた

実証実験では整合性を重視している。その背景として、ノードの障害からの復旧、地理的に離れたノードの扱いがあるが、実はもうひとつ大事な話がある。同社はmijinをゼロ承認で使うやり方で問題が出ないかも調べたのだ。

このゼロ承認については少々の説明が必要となる。mijinや他の多くのブロックチェーン(ビットコインを含む)では「取引が確定するか否か」は厳密にいうと時間と共に0に収束していく確率値となる(この点を否定的に捉えて「ファイナリティがない」と表現する場合もある。なおORB1やHyperLedgerのようにファイナリティを重視する仕組みを取り入れたブロックチェーン技術も存在する)。そこでブロックチェーン上の取引では、ある一定数のブロックが生成されたことを確認した上で取引が確定したものとみなす慣習となっている。

だが、「一定数のブロックの生成を確認してから取引を承認する」やり方では、取引の実行から確定までに時間がかかりすぎる。だが、アララのサービスであるポイントカード/プリペイドカードのサービスでは、取引は瞬時に完結させることが求められる。「電子マネー分野では取引は瞬時に完結しないといけない」(岩井氏)。

そこで、今回の実証実験ではブロックチェーン上の承認を待たずに取引を確定させる「ゼロ承認」で取引を確定させる仕組みとした。厳密さを重視する考え方からは、このような仕組みにすると二重支払いのような不整合が発生する可能性をゼロにできないが、実証実験の結果では不整合は発生しなかったとしている。

なお、ブロックチェーン上の取引をゼロ承認で使う例は他にもある。例えばレジュプレスが展開するビットコイン決済システムのcoincheck paymentでは、ビットコインのパブリックブロックチェーンの上でゼロ承認で取引を確定させている。

今回アララが実施した実証実験は、いわばmijinのスペックが公称通りかどうかを確認した内容といえる。それだけでなく、アララがブロックチェーン上のアプリケーションの構築運用の経験を積む側面もある。ブロックチェーン技術への評価が定まっていない段階で、同社が実システムへの適用を目指して手を動かす経験を積んだことには敬意を表したい。

7月設立の慶大初のVC「KII」の投資1号は、AI開発の「カラフル・ボード」

慶應イノベーション・イニシアティブ」(KII)の山岸広太郎CEO(左)と、カラフル・ボード創業者の渡辺祐樹CEO(右)

慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)の山岸広太郎CEO(左)と、カラフル・ボード創業者の渡辺祐樹CEO(右)

kii-logoここ1、2年、大学発の技術系ベンチャーファンドが次々と立ち上がっている。すでに3号ファンドとなっている東京大学エッジキャピタル(UTEC)の145億円や京都大学イノベーションキャピタルの160億円など100億円を超えるファンドも少なくない。Beyond Next Venturesのような独立系VCや、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルなど事業会社によるCVCのファンドを含めると、2013年以降の大学発研究開発系のベンチャー資金は総額で約1300億円となっている。旧帝大だけでなく、2016年に入ってからは東工大や東京理科大もそれぞれ40億円規模のファンドを設立している。

慶應大学発の「慶應イノベーション・イニシアティブ」(KII)も、そうしたファンドの1つ。45億円のファンド規模で7月1日に設立されたばかり。1社あたり2億円程度、最大5億円ほどを開発に時間のかかることもある研究開発系のスタートアップ企業20社ほどに投資していく計画だ。KIIは元グリー副社長の山岸広太郎氏がCEOを務める、ということで、ちょっと関係者は驚いたかもしれない。山岸氏は日経BP編集記者、CNET Japanの初代編集長を経て、グリーを共同創業。グリーの副社長として10年間事業部門を統括してきた人物だ。

そのKIIの投資案件第1号となったのは、TechCrunch Japanでも以前に紹介したことのあるAI系スタートアップのカラフル・ボードだ。カラフル・ボードは10月11日、KIIに対する第三者割当増資により5000万円の資金調達を実施したことを発表した。カラフル・ボードは2011年の創業。2015年5月にACAをリード投資家とする1.4億円の資金調達などと合わせて、これまでに合計約3億円を調達したことになる。

カラフル・ボードを創業した渡辺祐樹CEOは、2005年に慶應義塾大学理工学部を卒業。フォーバル、IBMビジネスコンサルティング(現:日本IBM内のコンサルティングサービス部門)などでの戦略コンサルタントを経て起業している。学部在籍時には人工知能を研究していたが、研究者になることよりも技術で世の中に役に立つものを作り出したいとの思いからカラフル・ボードを創業していて、そういう意味ではKIIの投資1号案件にはピッタリという印象だ。

KIIの山岸CEOによれば、これまで慶應大学が直接出資したベンチャー企業は全部で13社。そのうち3社、ブイキューブ、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、サンバイオが上場しているほか、ハイテク素材のスパイバーなども注目株となっている。

大学発ベンチャー、あるいは研究開発系ベンチャーというと、医療・介護、バイオ、素材、ロボティクス、製薬などの分野が思い浮かぶ。一方、カラフル・ボードはファッションや食(味覚の定量化)へのAIの適用を進めているので、相対的には資金需要が小さい分野に思える。山岸CEOによれば、KIIの狙いは「慶應大学の研究成果を社会実装していく」こと。カラフル・ボードが持つAI技術そのものだけでなく科学研究で使われるようなセンサーデータや生体情報のセンシングデータなど、慶應大学でつながる複数の研究を融合させるような応用にも期待している、ということだ。KIIの投資領域は、IT融合領域(IoT、ビッグデータ、AI、ロボティクス、ドローンなど)、デジタルヘルス(医療・介護)、バイオインフォマティクス、(ITxバイオ)、再生医療など慶應大学が強いジャンルで、社会的インパクトの大きい分野だという。

カラフル・ボードはAIによるファッションアイテムのリコメンドアプリ「SENSY」からスタートして、ワインや日本酒の個々人の嗜好の分析と提案というB2B2Cモデルで技術適用の実証実験を進めてきた。三菱食品や伊勢丹と協力し、売り場でAIを使った未完診断を実施。試飲後に購買につながる「CVR」を向上させつつあるそうだ。顧客の味覚データの可視化して、これを売上データと重ねることで、これまでできていなかった商品ジャンルごとの売場面積の最適化や販促施策などが打てるようになる、という。カラフル・ボードのチームは現在研究者3人、エンジニア7人を含む14人。今後研究者やエンジニアを増やしていくという。

個人事業主の開業届けに必要な書類を出力する「開業 freee」——青色申告を手軽に

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クラウド会計ソフト「freee(フリー)」を手がけるfreee。同社は2015年5月、会社設立に必要な書類を出力できる無料ツール「会社設立 freee」を無料公開したことで話題を集めた。そんなfreeeが10月10日、今度は個人事業主向けに、開業に必要な書類を出力できる無料ツール「開業 freee」を公開した。こちらも利用は無料となっている。

開業 freeeでは、個人事業主が開業するために必要な「開業・廃業等届出書」「青色申告承認申請書(青色申告を行う場合)」「青色事業専従者給与に関する届出書(家族に給与を支払うか、家族への給与を経費にする場合)」「給与支払事務所等の開設届出(給与を支払う場合)」「源泉所得税に納期の特例の承認に関する申請書(給与を支払う場合)」の5つの書類について、サイト上の質問に回答していくことで出力することが可能だ。なお不動産業や旅行業などはそれぞれ業種ごとに別途届出が必要になるため、そのための書類は用意する必要がある。またサイト上でジャパンネット銀行の口座開設も可能なほか、クラウド会計ソフト・freeeも1カ月無料で提供する。

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開業により青色申告で控除を受けられるように

会社設立と個人事業主の開業には大きく異なる点がある。それは、会社設立であれば登記は必須だが、個人事業主は開業を税務署に届けることが必須ではないということだ。ではそこにはどういう違いが生じるのか? それは年1回行われる確定申告にある。

確定申告では(1)青色申告(65万円控除)、(2)青色申告(10万円控除)、(3)白色申告——のいずれかの申告方法を選択することになるが、手間のかかる青色申告のほうがより大きな額の控除を受けられる。月収20万円の場合、白色申告と青色申告(65万円控除)では年間で15万円以上納税額が変わるケースもあるという(シミュレーション結果は開業 freee上でも確認できる)。

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青色申告を行う(青色申告承認申請書を提出する)ためには開業の届出が必須になるのだが、freeeが独自にアンケートをとったところ、個人事業主の約3割は青色申告承認申請書を提出しておらず、そのうち約6割は提出しないことについて「特に理由はない」と回答しているという。つまり、「制度の構造が理解されず確定申告時のメリットを最大限受けられていない」(freee)のだそうだ。また、開業届の準備から提出までの期間を調査したところ平均11.2日、その後に提出する「青色申告承認申請書」については平均9.3日で、忙しい開業のタイミングで大きな負荷になっているのは事実のようだ。

開業 freeeではそういった開業届の手間を削減するほか、確定申告時に必要となる複式簿記で記帳したはクラウド会計ソフト・freeeで作成できるというわけだ。同社が会社設立 freeeを提供した際にも、設立したばかりの企業を囲い込む意図があるのではないかと報じたが、このサービスも個人事業主に利便性を提供すると同時に、彼らを囲い込むためのうまい施策となりそうだ。

「iPhone版DayDream」でGoogleに挑む──スマホVRコントローラーのVroomがKickstarterで出資募集中

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「DayDreamに対抗するVRプラットフォームを創りあげる」──こう語るのはワンダーリーグの代表取締役社長・北村勝利氏だ。同社はiPhoneや既存のAndroid端末でも使えるスマホVR用のモーションコントローラー「Vroom」を開発し、Kickstarterで出資の募集を開始した。目標金額は約100万円で、2017年1月後半の出荷を予定する。

Vroomは、ハコスコなどといった市販のVRビューワーと組み合わせて、iPhoneや既存のAndroidスマートフォンで使うことができるVRモーションコントローラーだ。加速度、地磁気、傾きの9軸センサーを搭載し、手の動きをVRの仮想空間に反映させることができる。筆者はエンジニアリングサンプルを使ったデモを見たが、iPhoneのスクリーン上に表示したVR空間上に、まるでOculus TouchかHTC Viveといった専用機のコントローラーで操作するごとく手の動きが再現されており新鮮さを感じた。

DayDreamはGoogleにしては「珍しくクローズド」

スマホVRを巡っては、Googleが今年春に最新のVRプロジェクト「DayDream」を発表。10月のイベントでは対応ヘッドセット「View」とスマートフォン「Pixel」を発表した。DayDreamの特徴は、手の3次元の動きをVR空間に反映できる”モーションコントローラー”を備える点にある。HTC Viveなどの据え置き型VRでは当たり前だが、これまでのスマホVRにおいてはモーションコントローラが存在しなかったこともあり、DayDreamの登場でスマホVRのリッチ化が進むとの期待が大きい。

一方でDayDreamは「Googleにしては珍しくクローズドなプラットフォーム」だと北村氏は指摘する。同氏は「ハードウェアはGoogleが指定したメーカーしか作れないし、アプリケーションはGoogleが審査したものしか動かない」とも話す。このクローズさを勝機と捉え、DayDreamに対抗する”オープンソース”なVRモーションコントローラとして開発したのがVroomだという。

「Macに対してWindows、iPhoneに対してAndroidが立ち上がったように、リーディングプロダクトがクローズドな仕組みで登場すると、これに対抗するオープンな仕組みが求められる。今そのポジションが空いたと判断した」(北村氏)

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ワンダーリーグの代表取締役社長の北村勝利氏

北村氏は、福岡県出身の実業家。25歳にして情報提供サービスを手がける会社を設立。以来25年にわたってソフトウェアやモバイルビジネスの分野で会社を経営し、次々に事業を立ち上げたシリアルアントレプレナーだ。エグジットはこれまでに4度も経験し、東芝子会社の社長を3年間務めたこともある。同氏が2004年に設立し、しばらく休眠状態に置いていたワンダーリーグ社を本格始動させたのは2014年。2015年までEスポーツアプリの開発を手がけていたが、今回新規事業としてVRに参入した。資本金は約1億3000万円(資本準備金9200万円)で、これまでアドウェイズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、B Dash Ventures、日本アジア投資、D2C R、ベルロックメディアから出資をウケている。

世界に500万人いるUnityユーザーに届けたい

北村氏は「ハードウェアで儲けるつもりはない」と話す。Vroomについても「誰でも採用できるオープンなVRコントローラーのプラットフォームを目指した」としていて、VroomのファームウェアやSDKも全てオープンにしている。Kickstarterで出資を募集したのは「世界に500万人いるUnityエンジニアの方々に届ける」ことが目的だと北村氏は言う。目標額が日本円にして約100万円と控え目なのは、このような事情もあるのだろう。

ではどこでマネタイズするのかというと、Unityのアセットストアにおいて、Vroomのアセットをエンジニア向けに販売したりする。「ソフト屋なので、Vroomのプラットフォームが広がれば支援業務で稼げる」と北村氏は語る。例えば中国メーカーが低価格なVRビューワーに、Vroomのプラットフォームを採用することも大歓迎なのだという。顧客としては全世界のスマートフォン向けアプリディベロッパーやVRビジネス参入検討会社、そして玩具メーカーなどを想定している。

また国内では、不動産や建設会社向けのAR/VRのソリューションにも取り組む。「VRを使えば住宅展示場と同じことがスマホ1台で行える。従来のスマホVRは『見るだけ』だったが、Vroomを使えば手を伸ばしてドアを空けることもできる。また既存のスマホやiPhoneを使えるので、数を用意することが必要な法人ソリューションに最適」と北村氏は述べた。

開発途中のデモ動画を見る限り、モーショントラッキングの精度は高いと感じた

来春に公開予定のVroom対応ゲーム TrainFaith。手を動かしてパンチを繰り出せる

来春に公開予定のVroom対応ゲーム Trainfight。手を動かしてパンチを繰り出せる

なお現時点でVroomの競合は、DayDreamを除いて存在しないという。大手メーカーが競合となる可能性ついては、東芝子会社の社長を3年間務めた経験から「大手はSDKが必要な製品は作りたながらない」と北川氏は語り、さらに「我々が既にオープンソースで出しているので、競合が出す意味もない」と付け加えた。

レレレ、「CoffeeMeeting」「TimeTicket」などをグローバルウェイに譲渡——山本氏は引き続きサービスを担当

レレレ代表取締役の山本大策氏(左)、グローバルウェイ代表取締役社長の各務正人氏(右)

レレレ代表取締役の山本大策氏(左)、グローバルウェイ代表取締役社長の各務正人氏(右)

“コーヒー1杯飲む時間を過ごす”をコンセプトにしたビジネス向けマッチングサービスの「CoffeeMeeting」、ユーザー同士が自分の空き時間を売買する「TimeTicket」などを提供するレレレは10月6日、グローバルウェイに事業を譲渡すると発表した。金額は非公開。

また今回の事業譲渡にともない、レレレ代表取締役の山本大策氏はグローバルウェイに参画。グローバルウェイ内に新設する「グローバルウェイラボ」にて、TimeTicketなどのサービスの運営・開発を継続する。法人としてのレレレは今後解散する予定で、実質的にはグローバルウェイがレレレを買収するかたちとなる。なお、事業譲渡後もサービス名等に変更はない。

レレレの設立は2012年5月。代表の山本氏はリクルートのMedia Technology Lab(MTL)の出身だ。同社はこれまでにインキュベイトファンドやEast Venturesから資金を調達。外部のデザイナーなどとも組みつつ、山本氏1人でサービスを開発してきた。TimeTicketは現在3万3000ユーザー。これまでのマッチング数は6000件。常時2万枚のチケットが販売されている状況だという。

さまざまなスキルを売買できる「TimeTicket」

さまざまなスキルを売買できる「TimeTicket」

グローバルウェイは4月に東証マザーズ市場に上場したばかり。企業の口コミ投稿や就職・転職支援を手がける「キャリコネ」を運営するほか、法人向けのクラウドサービスを提供している。

両者によると、今回の事業譲渡はグローバルウェイ側からオファーがあったものだという。

「レレレはこれまで4年で4つのサービスをリリースしている。これは1人だからこそできたスピードだとは思う。その一方で1つ1つのサービスの熱量が下がってしまったし、緩さはあった。だが今後に光が見えたサービスはある。これをどう成長させるかと考えた時にグローバルウェイと話ができた」(山本氏)

「キャリコネでやりたいのは、働く人を応援し、元気にすること。当初はビジネスSNSとして展開したがうまくいかず、口コミを中心とした現在のかたちにサービスをシフトした。(キャリコネは)口コミで働き方を『認識』し、転職で働き方を『改善』することを支援している。だが転職のゲートウェイを提供するだけでなく、転職しなくても学びによって自身の価値を向上させる『学習』もサポートしたいと考えていた」(グローバルウェイ代表取締役社長の各務正人氏)

働いている人同士がTimeTicketをはじめとしたサービスを通じて出会い、互いのスキルを学ぶ——グローバルウェイがキャリコネで作っていきたいのは単なる口コミサイト、転職サイトではないという。

キャリコネの年間ユニークユーザーは4200万人。今後はユーザーの送客などをはじめとして、連携した施策を進める予定。またTimeTicketなどのユーザー獲得に向けた広告出稿、開発メンバーの拡充なども進め、「今後数年間で億単位の投資を実行していく」(各務氏)としている。

なお今回の事業譲渡のスキームについては、「レレレの法人格を残して欲しいと思っていたが、事業に億単位の投資をするとなると貸し付けになるため(に事業譲渡というかたちをとった)。気持ち的には山本氏に引き続き社長として事業を進めて欲しい」(各務氏)と説明した。

インフォステラが6000万円を調達、人工衛星との通信手段を「クラウド化」で低コストに

人工衛星向けアンテナシェアリングサービスを手がけるスタートアップであるインフォステラがシードラウンドで6000万円の資金を調達した。フリークアウト、500 Startups Japan、エンジェル投資家の千葉功太郎氏に対して第三者割当増資を実施する。

同社のビジネスモデルは、人工衛星のための通信リソースを効率よくシェアすることでコストを下げ、使い勝手を高めるというものだ。いわば衛星通信インフラのクラウド化だ。同社は「宇宙通信分野のAWS(Amazon Web Services)になりたい」(取締役COOの石亀一郎氏)と話している。

打ち上げられる人工衛星の数は急増しているのに対して、人工衛星の運用に不可欠な地上局の運用コストは高価なまま──同社はここに目を付けた。

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インフォステラの提供するサービスの概念図。既存の地上局のアンテナ、同社の無線機、それにクラウドサービスを組み合わせ、人工衛星運用に欠かせない「通信機会」を効率よくシェアして提供する。

低コスト人工衛星の需要増に対応し、地上局との通信機会を提供

商用宇宙開発のブームについては読者はすでにたくさんの話題を耳にしていることだろう。イーロン・マスクのSpace X、ジェフ・ベゾスのBlue Originが再利用可能な打ち上げロケットを開発し、日本では堀江貴文氏が後押しする小型ロケットのスタートアップであるインターステラテクノロジズ(ITS)がチャンスをうかがっている。彼らが目指すのは、より低コストな人工衛星打ち上げ手段を提供することだ。背景には人工衛星の需要が急増していることがある。

特に超小型人工衛星の需要が急増している。以下のグラフを見てほしい。低コストを特徴とする超小型人工衛星(Cube Sat)の打ち上げ数を示すグラフだが、2013年から2014年にかけて打ち上げ数が年間100機のラインを突破して急増していることが分かる。「打ち上げる衛星の予約は先まで詰まっていて、今はロケットがネックになっている。安いロケットがあればバサバサ決まる状態にある」(石亀氏)。

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超小型人工衛星(Cube Sat )の打ち上げ数は急増している。Satellite Industry Reportより引用。

打ち上げ手段と人工衛星の需要が揃えば、次に解決すべき課題は通信手段の確保だ。人工衛星を追尾可能なアンテナを備えた地上局の設備は有限の資源だ。さらに、超小型人工衛星が投入される低軌道では人工衛星が視野に入る可視時間が短く、一つのアンテナで通信できる時間は1回あたり十数分にとどまる。つまり、人工衛星との通信機会は希少性がある資源なのだ。

こうした背景から、人工衛星向け通信手段を提供する企業は数が限られており(ノルウェーKSAT、スウェーデンSSCが寡占状態にあり、最近ではRBC Signalsが登場している)、価格も高止まりしているのが実情とのことだ。つまり、スタートアップの参入余地がある分野ということだ。

人工衛星の需要増に伴い、人工衛星と地上局との間のデータ通信の需要も急増している。例えばリモートセンシングによる地上の画像のデータを集めて気象、交通量などのデータを抽出する取り組みが盛り上がっているが、こうした分野では大量の画像データを人工衛星から地上局へ転送する必要がある。地表をくまなく撮影できる人工衛星を打ち上げても、通信機会を十分に増やさなければ取り出せる画像データが限られてしまう。

インフォステラが狙うのは、既存の地上局のネットワークを作り、通信機会という資源を効率よく配分し、低コストで顧客に供給することだ。衛星通信に必要なアンテナは既存の設備を借りる。ただし、通信機は自社開発のものを使う。衛星通信分野では標準規格が確立していないことから、幅広い周波数帯(バンド)に対応できる通信機を開発して適用することで通信機会を増やす狙いだ。

クラウドサービスは大規模なサーバーインフラを多数のユーザーでシェアし、手軽かつ低コストに時間課金で利用できるようにする。同様に、インフォステラのサービスでは世界各地に散らばる人工衛星用の地上局をパス(通信機会)単位の課金で利用できるようにする考えだ。地上局設備の初期投資なしに、人工衛星との通信機会(パス)を買うことができるのだ。

宇宙開発では、自分たちの人工衛星のために地上局のアンテナを設置してきた事例が多い。ただし、自分たちの人工衛星の運用に使うだけではアンテナの空き時間が長く、稼働率は低いままとなる。アンテナ保有者にとって、アンテナの空き時間を売ることができれば新たなビジネス機会となる。

創業メンバーは宇宙と無線のプロ

インフォステラは2006年1月の設立。創設メンバーはCEOの倉原直美氏、COOの石亀一郎氏、社外取締役の戶塚敏夫氏の3名である。

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超小型人工衛星「ほどよし」1号機の外観。形状は1辺約50cmの立方体で質量約60kg。

桑原直美CEOは人工衛星の地上システムのプロフェッショナルだ。東京大学で、内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択された超小型衛星「ほどよし」のプロジェクトにおいて地上システム開発マネージャーを務め、北海道大樹町における人工衛星データ受信用パラボラアンテナと運用管制システムの設置にも関わった。なお、「ほどよし」プロジェクトは人工衛星スタートアップであるアクセルスペースが参加していることでも知られている。

石亀一郎COOは、学生時代に宇宙ビジネスに関するメディアastropreneur.netを運営し、アニメグッズのフリマアプリを運営するセブンバイツのCOOを経験している。今回で2度目のCOOへの挑戦となる。社外取締役の戶塚敏夫氏は無線機メーカーのエーオーアール取締役専務だ。エーオーアールはインフォステラのシステムに必要となるユニバーサル無線機の開発も手がけている。

創業メンバー以外に、顧問として超小型人工衛星の第一人者である東京大学の中須賀真一 教授(前述の「ほどよし」プロジェクトの中心人物でもある)と、元ヤフーCTOで現在フリークアウト執行役員の明石信之氏が名前を連ねている。

アドテク、Web、IoTの技術を投入

ところで、今回のシードラウンドで筆頭に挙がっている投資家はアドテクノロジーを手がけるフリークアウトである。前出のフリークアウト執行役員の明石氏はインフォステラに対してエンジニアリング面での支援を行っているとのことだ。

ここでは取材内容から想像できる部分を記すに留めるが、アドテクノロジーと衛星通信との関係は、どうやらあるようだ。アドテクノロジー分野では、ユーザーが広告を閲覧する機会(インプレッション)と広告主のニーズとをマッチングする仕組みがビジネス価値の源泉となっている。一方、インフォステラのビジネスでは、人工衛星が地上局と通信できる通信機会(パス)という資源と、人工衛星を運用するユーザーとのマッチングがビジネスの根幹となる。この部分で、Webやアドテクノロジーで培った技術的なノウハウが役に立つ──らしい。

インフォステラでは、「今回のシード投資をテコにエンジニアの求人を活性化させたい」(石亀氏)と話している。同社が作り上げているのは、人工衛星用のパラボラアンテナと接続した通信機から取り出したデジタルデータをリアルタイムに処理し、さらにクラウドサービスに吸い上げて処理する仕組みである。いわゆるエッジコンピューティングやAWSのIoT向けの機能群などの最新技術を投入する必要があるとのことだ。

宇宙ビジネスに取り組む起業家が活躍し、人工衛星打ち上げが増え続けていることから、人工衛星向けアンテナシェアリングサービスの必要性も増していく。同社のチャレンジに期待したい。

宅配ネットクリーニングのリネット、独自のトラッキングシステム「エスコートタグ」を発表

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宅配ネットクリーニング「リネット」を運営するホワイトプラスは10月6日、富士フイルムイメージングシステムズと共同開発した独自のRFIDを用いたトラッキングシステム「エスコートタグ」を発表した。10月末からふとんの宅配クリーニング「ふとんリネット」で試験運用を開始する。

リネットは、ネット予約で集荷から配送まで頼める宅配クリーニングサービス。関東圏の30代から40代の共働き家庭を中心に利用が拡大。9月には会員数20万人を超えた。9月末からは「“家事の延長”からクリーニング体験を革新する」として「Love more」プロジェクトを始動、「物流」「生産」「商品」の3軸で改革を行っていくとしている。

第1弾として9月29日に発表されたのは、午前0時まで衣服を集配する「夜間便」と、衣類を工場からハンガーにつるしたまま配達する「シワなしハンガー便」の二つのサービスだ。クリーニングの集配が定期的なサービスであることに着目して独自の物流インフラを開発したもので、「物流」面からクリーニングサービスの革新につなげていく。

そして今回発表されたエスコートタグは「生産」のイノベーションとしての導入となる。ホワイトプラス広報・渉外グループマネージャーの中島規之氏によれば、エスコートタグは「クリーニングの生産性を2倍に効率化することを目指し、IoT時代への対応も視野に入れた独自のシステムだ」という。

エスコートタグのRFIDタグは、クリーニングに必要な耐水性、仕上げのアイロンやプレスへの耐熱性、業務用ドラム式洗濯機洗浄への耐衝撃性、ドライクリーニングへの耐油性などを備え、かつ薄く、軽く、柔らかい業界初の独自タグだ。この独自RFIDタグとこれに対応したリーダ/ライタ、アプリケーションを使ったエスコートタグシステムで、検品したクリーニング品の現在地をリアルタイムに把握。工場内で衣類がどの工程にあるかをトレース可能にする。

「エスコートタグ」のRFIDタグ

「エスコートタグ」のRFIDタグ

10月末からふとんリネットにて試験運用を開始し、今後は全工場への導入を目指す。将来的には工程を可視化し、ユーザーが宅配便のように自身のクリーニング品の状況を確認できるサービスを提供したり、注文後の依頼内容を柔軟に変更したりするなど、サービスの拡張も考えているという。さらに「大量のデータを活用することで、例えばクリーニングのタイミングをリコメンドするなど、お客様の満足度を向上するサービスを将来的に提供していきたい」と中島氏は話す。

リネットでは、10月中には物流・生産に続く3軸目の「商品」でも、業界初となる新たなサービスの投入を予定しているそうだ。ホワイトプラス代表取締役の井下孝之氏は「20万人突破は会員の支持のたまもの。現在までに総額で7億円の調達を実施してきたが、すべて品質と顧客の利便性向上に投資してきたことが評価されていると考えている」と話している。

「送料無料のラインを3000円から1900円に引き下げたり、子ども服の料金を標準価格の3割引に設定したり、独自の洗剤を開発するなど、これまでにもさまざまなイノベーションを起こしてクリーニング体験の変革を実施してきた。今回のLove moreプロジェクトはクリーニング革命の集大成とも言えるものだ。顧客からは常にシビアな目で見られている。品質の追求と顧客の利便性向上に対して、今後もより投資していく」(井下氏)

リファラル採用ツール「Refcome」のCombinatorがBEENEXTなどから5000万円の資金調達、開発・サポートを強化

左からBEENEXTの前田ヒロ氏、Combinator代表取締役の清水巧氏、Draper Nexus Venture Partnersの倉林陽氏、ANRIの佐俣アンリ氏

左からBEENEXTの前田ヒロ氏、Combinator代表取締役の清水巧氏、Draper Nexus Venture Partnersの倉林陽氏、ANRIの佐俣アンリ氏

リファラル採用(紹介採用)支援サービス「Refcome(リフカム)」を手がけるCombinatorは10月6日、BEENEXT、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersを引受先とした総額5000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

7月にリリースしたRefcomeは、効果的なリファラル採用を行うための施策設計のサポート(コンサルティング)に加えて、人事担当者、社員、社員の友人(採用対象)の3者に向けた機能を提供する。

社員への人材紹介依頼機能や、協力した社員の管理機能、そして友人の招待を促すメッセージの作成機能を提供することで、人事、社員の双方に余計な手間がかからないリファラル採用が実現する。利用料は導入企業の社員数やコンサルティング内容によって異なるが月額7万〜10万円程度。正式公開から3ヶ月で、すでに約30社9000人に利用されているという。

screenshot_667同社は今回調達した資金をもとに、開発および営業・サポート体制を強化。リファラル採用の支援だけでなく、より良い組織創りのヒントが得られるプロダクトの開発を目指すとともに、サポート体制を整えることで、企業ごとに最適化したリファラル採用の施策を支援できるようにするとしている。

「Incubate Camp」での優勝が資金調達の契機に

Refcomeの正式公開から3カ月で資金調達を実施したCombinator。その経緯には7月15日、16日に開催されたスタートアップとベンチャーキャピタリストの合宿「Incubate Camp」が大きく関わっている。

「BEENEXTからの投資はIncubate Campが開催される前に決まっていたのですが、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersからの投資はIncubate Campでの結果があったからこそ、決まったのではないかなと思っています」(Combinator代表取締役の清水巧氏)

Incubate Campはシードラウンドの資金調達およびサービスリリース済みで、さらなる事業成長を目指して資金調達を希望するスタートアップとVCが一堂に会し、2日間で事業アイデアを磨きあげる合宿イベント。今回参加した17社のスタートアップの中で、Combinatorは最も高い評価を獲得。その結果も相まって、3社のVCから資金を調達することができたという。

3人の投資家と一緒に戦おうと思ったワケ

もちろん、Incubate Campに参加していたVCは数多くいる。様々な選択肢が用意されている中、なぜCombinator代表取締役の清水巧氏はBEENEXT、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersの3社から投資を受けることにしたのだろうか?

「BEENEXTは前田ヒロさんがいたからです。前田ヒロさんには、スタートアップに特化した仲間集めプラットフォーム「Combinator」を立ち上げた頃から事業の相談に乗ってもらってたんです。その経験もあって、今回資金調達の相談をしに行ったら、その場で快諾していただけて。前田ヒロさんは起業家と一緒になって事業をつくっていくことに強みを持っている方だと思っているので、僕自身、一緒にRefcomeをつくっていきたいと思っていました」(清水氏)

清水氏自身、Refcomeはプロダクトマーケットフィットの少し前の段階と話しており、”事業・組織づくり”の観点から前田ヒロ氏が所属するBEENEXTを選択した。ANRI、Draper Nexus Venture Partnersを選んだ理由もそれぞれある。

「Draper Nexus Venture PartnersはIncubate Campでメンタリングを担当してくれたこともあるのですが、パートナーの倉林陽さんがSaaSの領域に強く、BtoBサービスのグロースの方法に精通していた方だったので、その方法を教えてもらいたいと思いました。ANRIの佐俣アンリさんはCombinatorの創業時から相談に乗ってもらっていて、僕のことをすごく理解してくれ方だと思っていました。また、すごくビジョナリーで大変なときも背中を押してくれるので一緒に戦っていきたいと思いました」(清水氏)

組織課題も解決できるようなサービスに

実際、3カ月間サービスを走らせることで見えたこともある。それはリファラル採用のハードルを下げられたこと。リファラル採用の導入・運用の簡略化させることで、「リファラル採用って何から始めて良いかわからない」という人事担当者の悩みに答えることはできた。

しかし、一方で「ツールを導入すればリファラル採用が上手くいく」と思っている企業も一定数出てきたという。その原因は、リファラル採用を運用していくための仕組みづくりができていないことにあるので、今後、清水氏はRefcomeを社員満足度や組織課題を可視化できるようにし、より良い組織づくりのヒントが得られるプロダクトにしていくそうだ。

また、企業によって最適なリファラル採用の手法が異なることもわかったため、カスタマーサポートの採用を強化。導入企業のサポート体制を整えることで、企業ごとに最適化したリファラル施策を支援できる基盤を整えていく。

「3カ月間サービスを運用していく中で、リファラル採用の導入ハードルを下げることはできたかなと思っています。ただし導入後、リファラル採用が定着していない企業も多くある。もちろん、リファラル採用の導入・運用の簡略化も継続して行っていきますが、リファラル採用をきちんと運用できるよう、組織づくりもサポートできるサービスにしていきたいと思っています」(清水氏)。Combinatorでは2016年中の導入企業100社を目指す。

語学学習サービス「HiNative」のLang-8が2億円調達——開発・マーケを強化し17年末250万ユーザーを目指す

Lang-8代表取締役の喜洋洋氏

Lang-8代表取締役の喜洋洋氏

「9年目にしてやっと『レバレッジをかけて伸ばす』ということの意味が分かってきた」——Lang-8(ランゲート)代表取締役・喜洋洋氏はこう語る。同社は10月5日、京都大学イノベーションキャピタル、East Ventures、ディー・エヌ・エーのほか、千葉功太郎氏、Justin Waldron氏(元 Zynga co-funder)をはじめとした個人投資家数人を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額2億円の資金を調達した。

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Lang-8の創業は2007年。当時京都大学の大学生だった喜氏が立ち上げたスタートアップだ。提供していたのは語学学習向けSNSの「Lang-8」。京都にてサービスを運営していたが、2012年には本社機能を京都から東京に移転。2013年にはOpen Network Labのインキュベーションプログラムに参加した。

SNSのLang-8を運営しつつ、2014年11月に正式ローンチしたのが新たな語学学習サービス「HiNative」だ。これはとある国の言語を学んでいるユーザーが「○○語(学習している言語)で□□はどう表現するか」という質問を投稿し、その言語を母国語に持つユーザーがテキストや音声で回答するというQ&A型のサービスだ。

積極的なプロモーションこそは行わなかったが、ユーザー数は徐々に増えていった。変化が起こったのは2015年末。SEOでウェブ経由の流入が増えたほか、YouTuberを起用したマーケティングが奏功した。これにともなって登録ユーザーも増加。2016年1月時点の6万人だった登録ユーザーは、9月末には4倍の24万人まで拡大した。

集まった質問は9月末時点で96万件。回答数は340万件に上る。対応言語数は120言語で、それらの言語の使われるほぼ全ての国からアクセスされているという。

「2015年は地道にリテンションを改善する施策を進めた。質問に対する回答が早いとユーザーの満足度が上がり、リテンションもよくなる」(喜氏)。質問に対して回答がつくまでの平均時間は2016年初の90分から約30分に短縮。今後は5分以内に回答がつくよう仕組みの導入も検討しているという。

ウェブ版「HiNative」の月間ユニークユーザー数

サービスの質を変えるとともに、冒頭の言葉のように、レバレッジをかけてユーザーを集めることにも力を入れる。「今までは広告でユーザーを増やすという発想がなかったが、薄く、長い時間を掛けるのは意味がない。経営者思考を持ってユーザーを大きく増やしていきたい。さまざまな国のユーザーを集めて、ユーザー数1000万人規模のサービスに育てれば簡単にはマネができない」(喜氏)。京都にいた頃のLang-8は、月次売上が10万円なんて報じられたこともあった、どちらかというと地道にユーザーを伸ばすスタートアップにも思えた。だが東京に拠点を移し、そこで出会った起業家が自社を追い抜くペースでイグジットするのも目の当たりにしたことで、焦りを感じ、戦い方も変えたという。

 Lang-8では今回の調達資金をもとにスマートフォンアプリエンジニアやウェブエンジニアなどの開発者を拡充していく。現在5人のチームだが、倍の10人程度まで増員していく計画だ。また、マーケティング施策も強化する。海外を中心にユーザーの認知を拡大し、今後は有料オプションや高度な学習向けの課金サービスに誘導を図る。Lang-8では、登録ユーザー数で2017年末に250万人、2018年末に1000万人を目標としており、最終的には「1億人のグローバルで使われるサービスを目指す」としている。

空きスペースのマーケットプレイス「SHOPCOUNTER」運営のカウンターワークス、数億円規模の資金調達

Shopcounterメンバー写真

写真左端がカウンターワークス代表取締役CEOの三瓶直樹氏、左から3人目がCFOの藪本祐介氏

物販やイベント用のスペースを貸し借りできるマーケットプレイス「SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」運営のカウンターワークスは10月5日、ジャフコを引受先とした第三者割当増資を実施した。金額や出資比率は非公開だが、数億円規模とみられる。また今回の資金調達を前に、カウンターワークスでは、9月に元みずほ証券のアナリストで、ノンバンクやVCの分析を専門としてきた薮本祐介氏をCFOに迎えている。

2015年5月末にサービスを開始したSHOPCOUNTERは、空きスペースを貸したいテナントユーザーと、スペースを短期間利用したいユーザーとをマッチングするサービス。登録ユーザーにはアパレルが多く、そのほかミュージシャンがアーティストブランドをライブに合わせて数日だけ展開したり、原宿のカフェをUCCが新製品プロモーションのために期間限定で借りたというケースも。「例えば、オンラインのみでサービスを提供するECなどのスタートアップが、実店舗を構えるより低コスト・低リスクでリアルの消費者にアプローチできて、適切な場所を探すために必要なサポートも得られる」とカウンターワークス代表取締役CEOの三瓶直樹氏は、サービスの利用シーンについて説明する。

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ローンチから約1年半を経た現在、SHOPCOUNTERはテナント、借り手ともに年間約300%の増加率となっているそうだ。いずれも法人ユーザーが多いという。三瓶氏は、今回の調達について「事業開発にある程度めどがついた現段階で、人材採用とサービス開発を強化し、投資によりさらにドライブしていきたい」と話す。

サービス開発については、既存サービスでも実施してきたUI/UX向上を引き続き行っていくほか、メッセージ機能の追加などで「スペースの貸し手は、借り手よりもこうしたサービスに慣れていないことが多い。そうしたテナントユーザー向けに、簡単にサービスが利用できるツールを提供したい」と三瓶氏は言う。人材についても三瓶氏は「デザイナー、エンジニアのほか、営業を強化し、スペースを提供するサプライヤー(テナントユーザー)を増やしていきたい」と話す。

また、サービス展開エリアについては「事業上、現在は東京を中心に展開しており、当面は都内のカバレッジを上げることに力を入れるが、同時に今後、大阪、福岡など地方の大都市への展開も視野に入れていく」と意欲を見せる。

スペース貸し借りのマーケットプレイスには競合に「スペースマーケット」などのサービスもあるが、三瓶氏は「リテール中心、法人中心でユーザーを獲得してきているのが我々の特徴。小売店のスペース登録についても、店全体、部屋単位だけでなく、1ラック、ひと棚だけ、といったスペースも提供できるようにしている」と差別化ポイントに自信を見せる。「これまではプラットフォームの成長に投資してきたが、中長期的にはコンシェルジュサービスの提供も考えている」(三瓶氏)

外国人宿泊客向けのチャットコンシェルジュ「Bebot」開発のビースポークが資金調達

ビースポークCEOの綱川明美氏

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訪日外国人向けの旅行サービスを手がける株式会社ビースポークは、アーキタイプベンチャーファンドを引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は非公開だが、前回の調達(2000万円)を大きく上回るとしている。この調達資金をもとに、10月末にサービスを開始するインバウンド向けのチャットコンシェルジュ型サービス「Bebot」の開発を強化する。

ビースポークは2015年10月に設立。同年12月にはエンジェル投資家(非公開)から約2000万円を調達し、2016年4月には日本の穴場を紹介する訪日外国人向けサイト「LEVERT」を公開している。なお現時点では黒字化しておらず、本格的なマネタイズに向けた取り組みとして今年6月から、訪日外国人向けのチャットコンシェルジュ型サービスBebotの開発に取り組んでいる。

Bebotは、チャットボットを活用し、ホテルや民泊施設で人的リソースを使わずに24時間外国人宿泊客への対応を可能とするソリューションだ。背景には、インバウンドの増加でホテル従業員の多言語対応が求められている事情がある。ビースポークCEOの綱川明美氏は「英語ができる人は韓国語ができず、韓国語ができる人は中国語ができない」と説明する。つまり、従業員の多言語対応には人を多く雇う必要があり、Bebotでは従業員の代わりにチャットボットを活用するというわけだ。

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具体的なサービス内容はこうだ。外国人宿泊客がホテルにチェックインすると、ルームキーとともにBebotのアクセスコードが発行される。BebotはチャットサービスのFacebook MessengerおよびSlackで利用できる。宿泊客は「Wi-Fiのパスワードは?」「鍵の場所は?」「おすすめの観光地は?」「六本木周辺でおすすめのバーは?」といった質問を自身が使い慣れたチャットで行える。綱川氏によれば「まるで日本に詳しいコンシェルジュが同伴しているような安心感」を訪日外国人に与えられるといい、また、宿泊客の施設外での行動データを可視化できる点も大きな売りだとしている。

マネタイズは、外国人宿泊客1人につき数ドル程度のコンシェルジュ料をホテルや民泊業者から徴収する。10月末にサービス開始予定だが、すでに複数のホテルチェーンと契約。都内の宿泊施設におけるインバウンド率は高い場所で80%台、低い場所でも30%台だといい、収益が期待できるという。なお、あくまでもホテル向けのソリューションとして展開し、ビースポークが直接一般ユーザーへ提供することは想定していない。

Bebotに類似するサービスとしては、訪日観光客にチャットで情報を提供する「FAST JAPAN」がある。しかし、FAST JAPANが一般ユーザー向けにサービスを提供するのに対し、Bebotはホテル・民泊事業者向けのソリューションとして提供する点で違いがあるという。

使い慣れたチャットサービスを使ってさまざまな質問が行える

使い慣れたチャットで宿泊施設や観光に関して質問できる

起業のきっかけは一人旅

ビースポークCEOの綱川明美氏は、もともとフィデリティ投信で機関投資家向けの商品開発に携わり、次にデロイトで国内大手金融機関の海外進出支援を担当。その後マッコーリーで機関投資家向けの日本株営業を行うなど、投資銀行でキャリアを積んできた。

ビースポークCEOの綱川明美氏

ビースポークCEOの綱川明美氏

綱川氏もともと起業に興味はなかったが、趣味で一人旅をするうちに、Bebotの着想を得たと話す。「旅行先で現地に知り合いがいれば体験に差があるんです。1人じゃ辿り着けない場所にも連れて行ってくれます。誰も居なくても友だちがいるような体験をどうやって味わえるか… ということで、Bebotを思いつきました」(綱川氏)。起業の際には投資銀行での経験が特に資金調達面で役立ったという。

ビースポークは、今回調達した資金を元手にBebotの開発および販売を強化。10月末のサービス開始時点では英語のみだが、年内に複数言語に対応。さらに飲食店やタクシーの予約機能も順次追加していくという。