火星で着るマーズジャケットやホタルのように光るソーラーチャージジャケットなど「未来の服」を作る英Vollebak

Vollebakは、ロンドンを拠点とする設立6年目のアパレル企業で、顧客に直接販売を行っている。Vollebakのウェブサイトを訪れた人は、同社の服に付けられた誇張された宣伝文句に驚くことだろう。例えば「『防水』だけでは不十分な、大嵐のためにデザインされた」ジャケット「雨、風、雪、火から身を守ってくれる」パーカー「先史時代のヒトが着ていた柔らかい獣皮の感触と性能を再現した『氷河期』」フリースといった具合だ。

他の追随を許さないこのマーケティングセンスは、CEOのSteve Tidball(スティーブ・ティドバル)氏本人が生み出したものだ。彼は双子の片割れであるNick Tidball(ニック・ティドバル)氏と共同でVollebakを創設した。2人とも以前広告業界で働いた経験があり、またどちらも活発なアウトドア派なのだが、ここ数年は家族とVollebakでの仕事が忙しくアウトドアアクティビティはご無沙汰となっている。先に「未来の服」を作るVollebakについて行ったインタビューの中で、スティーブ・ティドバル氏は、こうしたコピーを自分で書いていることを明かしてくれた。

このインタビューの中で、彼は衣服の製作にどの程度テクノロジーが関与しているのかという私達の質問に回答し、また、まもなく終了するシリーズAでの資金調達などで、Vollebakがこれまでに約1000万ドル(約11億4000万円)の外部資金を調達したことも語ってくれた。シリーズAは、ロンドンを拠点とするベンチャー企業Venrexが主導し、Airbnbの共同創設者であるJoe Gebbia(ジョー・ゲッビア)氏やHeadspace CFOのSean Brecker(ショーン・ブレッカー)氏などが参加している。このインタビュー記事は、長さの調節と内容を明確にする目的に編集されている。

TC:あなたは、双子のニック氏とともにVollebakを立ち上げましたね。Vollebakの特色として、服につけられたコピーが天才的な感じがします。そのあたりのお話を聞かせていただけないでしょうか。

ST:5年前、Vollebakを立ち上げました。その前は、15年間、どちらも広告業界で働いていました。ですから、コピーがちょっとおもしろいとしたら、それは私達の以前の仕事と関係しているかもしれません。

私達はマーケティングの観点からいえば、信じられないほどシンプルなルールでVollebakを運営しています。そのルールとは基本的に「可能な限りお金をかけない」ことです。例えば、数年前、私達はディープ・スリープ・コクーンという最初の宇宙服を作りました。マーケティングでは、ターゲットが誰かを必ず考えますが、その時の私たちのターゲットはElon Musk(イーロン・マスク)氏その人だったので、SpaceXの向かいにある看板に空きスペースを見つけ、そこにポスターを掲げました。ポスターには「我が社のジャケットは出来ているけど、そちらのロケットはどうなっていますか?」と書きました。これはそれほどコストがかからない方法ですが、とてもおもしろいコピーだったので、次の週、NASAから電話がかかってきて、彼らと少し話をすることになりました。

TC:Vollebakの服は、宇宙旅行からサステナビリティまで、次の世紀に人々が経験しそうだとあなたが想像することが反映されているように思います。例えば、暗闇でもホタルのように光を放つソーラーチャージジャケットがありますね。自然界で最も優れたカモフラージュ方法の1つである、イカの適応迷彩を再現したと言える「ブラックスクイッド」ジャケットもありますね。どの程度テクノロジーが衣服製作に絡んでいるのでしょうか?

ST:私達がここ5年ほど技術面で焦点を当ててきたのは、マテリアルサイエンス(素材の科学)です。これはスタートアップとしてはアクセスしやすい分野なのです。AIや衣服型装置のようなもっと複雑なテクノロジーに焦点を当てようとするなら大変な額の資金が必要ですが、マテリアルサイエンスなら、スタートアップにも扱うことができるからです。これが私達が大変関心を持っている分野です。マテリアルサイエンスをどの程度製品に込めることができるか、ということは通常あまり追求されていないように思います。

私達が発売した商品で最もおもしろかったものの1つが世界初のグラフェンジャケットでした。グラフェンを最初に分離した科学者でさえ、グラフェンでなにができるかをいうことはできませでした【略】そこで、私達は、こちら側にはグラフェンが使われていて、こちら側には使われていない、これをテストして、どうなるか教えて欲しい、と彼らに言ったのです。私達は、グラフェンは驚くべき作用があり、熱を保存し再分配することができる、そしてグラフェンが保存できる熱の量には制限がない、という理論を持っていました。テストでは、驚くような結果が2つ出ました。ある米国人医師が非常に寒い夜のゴビ砂漠で過ごすことになったのですが、彼はまずグラフェンジャケットをラクダに巻きつけ、そのジャケットがラクダの熱を吸収した後、もう一度そのジャケットを自分で着込みました。そうすることで、彼は一晩暖かく過ごすことができました。

別のロシア人の友人の場合は、ネパールの山で凍死しそうになったのですが、グラフェンジャケットに最後の一筋の太陽光を吸収させたところ、ジャケットが温まり、彼はそれをインナーとして着ることにしました。この友人は、夜通し体を暖かく保ってくれたのが、グラフェンジャケットだと信じています。

TC:グラフェンシャツやセラミックシャツをどのように作るのですか?特別な織り機があるのですか?それとも3Dプリンターでしょうか?プロセスを教えて下さい。

ST:とても困難なプロセスを経る、というのがその質問への回答です。そのために、当社の製品は通常の衣服より値段が割り高です。具体的には、特殊な工場、特にヨーロッパの工場でそれらを作ります。そうした工場には、わずかな人しかアクセスできない非常にハイテクな機器が備えられています。

TC:生産期間は通常短期ですか?

ST:そのとおりです。最初は、資金があまりなかったので、可能な範囲でできるだけ多くの服を作りました。それらはあっという間に売り切れ、また作る、という形でビジネスは拡大していきました。私達の製品には非常に複雑で、非常に実験的な部分があるので、1万着も作るのは無謀なことです。そこで、うまく機能するか、改善点はあるか、などを見るために、最も実験的なものについては短期で生産しています。

TC:そうした実験的な新製品の1つが、マーズジャケットですね。どこで着るものなんですか?

ST:火星のために何かを作るといっても、結局それを地球で検証しなければならないのですから、その皮肉さがちょっとおもしろいですよね。しかし、火星や宇宙旅行が現実になった場合、そこへ出かける人の数や、そこに行った際に彼らが行うべき仕事は指数関数的に増加するでしょう。科学者、生物学者、建設業者、エンジニア、建築家などが必要になるでしょうが、彼らは何かを着なければなりません。ですから、私達は今のうちから作業を始め、月か、火星か、もっと軌道の低いところかを問わず、実際に行うべきタスクにはどんなものがあるのか検討し、それらがどんな作業か、そして対処すべき課題はなにか、といったことを考えたいと思っています。マーズジャケットには吐くためのポケットがついているのですが、これは無重力になるとヒトの前庭器官が混乱に陥るためです。

TC:前庭器官について知っているなんてすごいですね。あなたはマーケティングの天才だと思っていたのですが、科学者でもあるんですか?

ST:私は、科学者のフリをしているエセ科学者ですね(笑)。まあ、私達の周囲には本当におもしろい人達がたくさんいて、彼らは未来の戦争について考えていたり、今後の宇宙旅行について考えていたりします。私達はよく、うちの事業はWhatsAppの上で行われているね、と冗談を言っています。

TC:顧客からのフィードバックは主にどこで集めていますか?一部のD2Cブランドは、ソーシャルメディアやインスタグラムで活発に活動して、Slackチャンネルも持っていますよね。Vollebakはいかがですか?

ST:私は当初から、革新的なテクノロジーとフレンドリーな人々をメールでつなげたら素敵だな、という考えを持っていました。

TC:Vollebakは、サイトを通した直接販売のみを行っていますが、今後このスタイルが変わることはありますか?

ST:現在のスタイルを短期間で変えることはありません。私達のブランドにとって絶対的に重要なことの1つがお客様からフィードバックを得ることですが、現在の販売スタイルを変えることで、お客様とのつながりを失ってしまうことが心配です。例えば、お客様が当社のシャツ、あるいはジャケットでなにかよい経験をしたとしても、それを買ったのがどこかの小売店なら、お客様は私達と本当のつながりを持っていないことになります。これは情報の喪失だと感じます。

当社では、近々メタバース空間でより多くのことを行おうとしています。メタバースという考え方、つまり仮想世界と現実世界との間に競争や統合が起こるというアイデアがとてもエキサイティングだと思うからです。そのために現在、その空間ですごいものを構築しており、ある物を処理できる強力なスーパーコンピューターを探しているところです。基本的に、未来を決定づけると思うものは何でも深く掘り下げていくつもりです。

編集部注:インタビュー全体はこちらでお聞きいただける。インタビュー全体には、Vollebakの女性製品発売計画や資金調達状況なども含まれている。

画像クレジット:Vollebak

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

「5年分のリクエストキューが初めてゼロに」社内ツール作成の負担を軽減するAirplaneが約9.6億円を調達し飛び立つ

Airplane(エアプレーン)は米国時間12月9日、内部ワークフローを自動化する開発者向けツール「runbooks(ランブックス)」のプライベートベータ版の提供を開始し、Product Huntに投稿した。

Airplaneのrunbookでは、エンジニアがタスクとビルトイン統合機能(SQL、REST API、Slackなど)を組み合わせて、複雑なマルチステップのワークフローを構築することができる。独自のJavaScriptコードを実行し、それをSQLデータベースに投入したり、Stripe(ストライプ)からデータを結合し、その結果をSlack(スラック)で送信するワークフローを迅速に構築でき、エンジニア以外のチームメンバーもアクセスできるようになっている。

Airplaneは、Benchmarkが支援しているBenchlingの元CTOであるJosh Ma(ジョシュ・マー)氏と、デジタルインサイトのスタートアップHeapの共同創業者であるRavi Parikh(ラヴィ・パリク)氏によって2020年に設立された。開発者を念頭に置いた2人は、エンジニアが社内ツールの構築に費やし、製品エンジニアリングから離れていた時間を取り戻そうと考えた。

Airplaneの共同創業者ジョシュ・マー氏とラヴィ・パリク氏(画像クレジット:Airplane)

パリク氏はTechCrunchに次のように語った。「私たちはアイデアのブレーンストーミングに時間を費やしましたが、自分たちの会社で見た大きな問題点の1つは、社内ツールの不足でした。(既存の)ツールによって顧客データを扱い、データの削除やアカウント統合などの問題を解決することはできましたが、カスタマーサクセスチームは、最終的にエンジニアリングチームにタスクをエスカレーションしなければならないこともありました」。

それによって、毎日何十枚ものチケットが積み重なり、エンジニアリングチームの業務に支障をきたす可能性もある。同社の最初の製品は、ダクトテープで貼られたようなつぎはぎのスクリプトやcronジョブを安全で再利用可能なツールに変換する「Airplane tasks」だったとパリク氏はいう。

リモートファーストの同社は、サンフランシスコとニューヨークに拠点を持ち、設立から間もないにもかかわらず、すでに数社の有料顧客と数百人のユーザーが、管理業務、顧客のオンボーディング、承認フロー、長期的なタスクなど、さまざまなユースケースでAirplaneを使いタスクを構築・実行している。

今回の製品発表は、Benchmarkが主導したシリーズAラウンドで同社が850万ドル(約9億6000万円)の資金を得たことが後押しとなった。今回の投資の一環として、Eric Vishria(エリック・ヴィシュリア)氏がAirplaneの取締役に就任する。

この1年間で、SaaS企業である同社は3カ国で10名のチームに成長した。今回の資金調達により、Airplaneは従業員数を2倍に増やし、セルフサービス製品の構築など、製品や技術の開発に投資することができる。

「以前は数時間、数日、あるいは数週間かかっていたことが、Airplaneでは2分から5分でできるようになりました」とパリク氏は語る。「エンジニアは、デプロイコマンドを実行し、ユーザーインターフェースを設定するだけです。あるお客様からは、当社の製品を採用したことで、5年にわたり積み重なっていたリクエストのキューを初めてゼロにすることができたと言われたこともあります」。

画像クレジット:Cavan Images / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

職場での寄付やボランティア専用のプラットフォームを提供するDeedが約11.3億円調達

2021年の初めに書いたように、Deed(ディード)のミッションは明確だ。それは、多くの大企業が実施している従業員の寄付 / チャリティ / ボランティアプログラムを、より良いものにすることだ。モダンなUI、内蔵型コミュニティ管理ツールを備え、そして忘れないようにワークフロー(Slackなど)に接続することができる適切な箱を用意することだ。

その結果、Airbnb(エアービーアンドビー)、Stripe(ストライプ)、Box(ボックス)、Adidas(アディダス)などの大手企業を、ローンチ後すぐに顧客として獲得することができた。そして今、彼らは1000万ドル(約11億3700万円)のシリーズAを調達し、その活動を続けている。

先に、私はDeedの共同創業者であるDeevee Kashi(ディーヴイ・カシー)と電話で話をした。彼は、私に会社の最新情報を教えてくれるために、講演中のカンファレンスを抜け出して対応してくれた。彼によると、今回のラウンドはEarlybird(アーリーバード)がリードし、PruVen Capital(プルベン・キャピタル)、Y Combinator(Yコンビネータ)、Paua Ventures(ポウア・ベンチャーズ)がバックアップし、さらに戦略的な観点から非常に興味深い人物として、David Clarke(デビッド・クラーク)氏(エンタープライズワークプレイス管理ツールWorkdayの元CTO)、Uber(ウーバー)のCEO Dara Khosrowshahi(ダラ・コズローシャヒ)氏、そしてJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)のWndrco(ウォンドルコ)などが参加しているという。

同氏は、企業が従業員が本当に関心のある事を把握し、それに合わせて企業の取り組み(多くの場合「ESG」という言葉で括られる)をどのように形成するかを支援することにより注力していると教えてくれた。

「ESGへの投資は過去最高の水準にありますね。企業は多額の資金を投じていますが、その前に従業員の賛同を得られていません」と彼はいう。

「Deedの目標は、ESGとESGに関する戦略を『私』から『私たち』に変えることです。従業員が自分の関心事について行動を起こせるようにすることで、企業が従業員の実際の関心事に耳を傾け、発見できるようにするのです」。

そのためには、企業のソーシャルインパクトチームの担当者だけでなく、個々の従業員にも、プログラムや募金、ボランティア・キャンペーンを作成・管理する能力を与えることが必要だと彼はいう。「企業が従業員のためにプログラムを管理するのではなく、従業員自身が企業のためにプログラムを管理できるようにすることです」。

もう1つは、データチームを強化し、明確で実行可能な方法で「インパクトを測定し、報告する」方法を見つけ出すことだと彼は指摘する。

これに先立ち、Deedは2020年末にシードラウンドで200万ドル(約2億2700万円)を調達している。

画像クレジット:Deed

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Akihito Mizukoshi)

AIモデルのストレステストを行うRobust IntelligenceがシリーズBで約34億円調達

企業のAIモデルのストレステストを支援し、失敗を未然に防ぐAIスタートアップのRobust Intelligence(ロバスト・インテリジェンス)は、米国時間12月9日、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導する3000万ドル(約34億円)のシリーズB資金調達ラウンドを実施したことを発表した。このオーバーサブスクライブされたラウンドには、同社のシリーズAラウンドを主導した前回の投資家であるSequoia(セコイア)の他、Harpoon Venture Capital(ハープーン・ベンチャー・キャピタル)およびEngineering Capital(エンジニアリング・キャピタル)も参加している。

同社は、ハーバード大学のコンピュータサイエンスおよび応用数学の終身教授であるYaron Singer(ヤロン・シンガー)と、彼の元学生である大柴行人氏が共同で設立した。

Robust IntelligenceのCEOのYaron Singer氏(画像クレジット:Robust Intelligence)

シンガー氏は「AIはこれまで学術的な試みでした。私が大学院に通っていた頃は、AIは学術的な学問であり、ビジョンでした。その後、インターネット、データ、Google、データ処理が登場し、7、8年の間にその可能性に気づくこととなりました。今、私たちは、AI開発をソフトウェア開発と同じくらい厳密に行おうとしています。ソフトウェア開発は人類が60年前からやっていることですよね。それに私たちはAIを追いつかせようとしていますが、AIはまったく別の生き物です」と述べている。

シンガー氏が指摘するように、統計的な性質を持つAIは、予想外の行動を示すことがある。同社の使命は、このようなAIのミスをなくすことにある。

これを可能にするために「ロバスト・インテリジェンス・モデル・エンジン(RIME)」と呼ばれる、AIファイアウォールを核としたシステムをユーザーに提供している。このファイアウォールは、企業のAIモデルを包み込み、これらのモデルを常にストレステストすることで、ミスの発生を防ぐことができる。

「AIモデルとデータがあれば、ボタンをクリックするだけでストレステストを実行します。モデルが本番段階に入る前も、本番中も、データとAIモデルを自動的にテストします」とシンガー氏はいう。ここでのアイデアは、任意のモデルの故障モードを自動的に見つけるだけでなく、データドリフトなどの問題や関連する問題をキャッチすることだ。

画像クレジット:Robust Intelligence

ここで興味深いのは、AIファイアウォール自体が、あるデータポイントが間違った予測につながるかどうかを予測するAIモデルだということだ。「これは、AIや機械学習において、解決しようとしている最も難しい問題の1つです」。とシンガー氏は説明する。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・カーティウス)氏は「私がRobust Intelligenceの能力に初めて触れたのは、同社の初期開発段階でした。過去1年間に同社とその製品が成長するのを見て、同社の提供する製品がAIの信頼性のあり方を変えていることが明らかになり、我々Tiger Globalが重要なリソースを提供できると確信しました」。と語っている。

同社は、今回の資金調達を営業活動の拡大に充てる予定だが、大半は製品とエンジニアリングに充てられる。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Akihito Mizukoshi)

5Gネットワーク上で動作するアプリの開発を容易にするプラットフォーム「Shabodi」

市場の多くが5Gインフラストラクチャの構築と販売に注力している一方、見落とされている重要な部分として、5Gネットワーク上で動作するアプリケーションの開発があると、SineWave Ventures(サインウェーブ・ベンチャーズ)のゼネラルパートナーであるVivek Ladsariya(ヴィヴェック・ラドサリヤ)氏は述べている。だからこそ、Shabodi(シャボディ)のような企業を支援することに興奮していると同氏はいう。

「アプリケーション開発者は常にネットワークの複雑さを取り除きたいと考えており、Shabodiはそんなニーズに応えるための準備を整えています」と、ラドサリヤ氏はメールで語っている。

Shabodiは、企業やシステムインテグレーター、通信事業者が5G上での次世代アプリケーションの開発・展開を加速できるようにするために、シード資金として337万5000ドル(約3億8000万円)を調達した。

トロントを拠点とするこの会社は、通信業界のベテランであるVikram Chopra(ヴィクラム・チョプラ)氏とHarpreet Geekee(ハープリート・ギーキー)氏によって2020年に設立され、まずはそのアプリケーション・イネーブルメント・プラットフォームによる5Gの展開に注力している。2人が一緒に働くのはこれが二度目になる。

Shabodiはすでに顧客と協力し、5Gの展開を収益化して投資収益率を高め、そのネットワークの可能性を最大限に活用している。

「5Gはすべての人にとっては2〜3年先の話ですが、事業としては今、機が熟しています」と、チョプラ氏はTechCrunchに語った。「企業は複数の拠点に5Gを展開していますが、その上でアプリケーションを構築するには新たなスキルセットが必要であり、今のところ当社はそれに対応している数少ない企業の1つです」。

Shabodiでは、決済の分野でSquare(スクウェア)がやったことになぞらえて、シンプルなAPIを提供することで5Gを解きほぐし、開発者が予想外のコストや複雑さ、ドメインの格差なしに、インダストリー4.0のアプリケーションを構築できるようにすることを目指していると、チョプラ氏は述べている。

今回のシードラウンドは、Blumberg Capital(ブラムバーグ・キャピタル)が主導し、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、SineWave Ventures、MAVA Ventures(マヴァ・ベンチャーズ)、Green Egg Ventures(グリーン・エッグ・ベンチャーズ)、Maccabee Ventures(マカビー・ベンチャーズ)、CEAS Investments(シアス・インベストメント)、Supernode Ventures(スーパーノード・ベンチャーズ)、Lorimer Ventures(ロリマー・ベンチャーズ)が参加した。Shabodiは2021年初め、 Forum Ventures(フォーラム・ベンチャーズ)とCisco(シスコ)やYahoo(ヤフー)の元幹部が主導するプレシードラウンドを実施し、20万ドル(約2300万円)を調達している。

同社は15人の従業員と2つの特許を有しており、2022年には3つ目の特許を取得する予定だ。

チョプラ氏は、他の顧客については明らかにできないとのことだが、約10社ほどの企業と交渉中であると述べている。同氏によれば、今回の資金調達によって製品チームと営業チームを強化し、年内にはShabodiの最初の製品を公開する予定だという。

「この10年で最も影響力のある開発の1つである5Gの展開を加速させるために、業界の専門家からなるShabodiの先見性のあるチームに協力できることを誇らしく思います」と、Blumberg Capitalのマネージング・ディレクター、Bruce Taragin(ブルース・タラギン)氏はメールで語っている。「5Gはエンタープライズ・テクノロジーの多くの側面を崩壊させるでしょう。Shabodiのプラットフォームは、アプリケーション開発者、組織、業界全体が5Gを実現する方法を大幅に改善する可能性を有しています」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Wisdom、メンターシップのためのソーシャルオーディオマーケット構築を目指し約2.3億円調達

人生や生活のアドバイスを掘り起こし、また優れたメンターへのアクセスを提供するソーシャルオーディオアプリWisdomは2021年10月にiOSアプリをローンチしたが、このほど初期人気のおかげもあり200万ドル(約2億3000万円)のシード資金を調達した。

このシードをリードしたのはFirst Round Capitalで、多くのビジネスエンジェルたちが参加した。

この英国のスタートアップは、そのひねりを効かせたソーシャルオーディオが惹きつけているユーザー数を公表していない。しか同プラットフォーム上のメンターたちは、これまでおよそ60万回分の「見識と指導」を共有した。そしてアプリの公式ローンチから8週間で、230万分間、視聴、再生されてもいる。

Wisdomは1対1の会話形式を採用し、アドバイスとメンターによる指導がメインとなっている。オーディエンスの広がりはラジオ放送に近い。そのローンチの様子は、過去にTechCrunchも取り上げた

Wisdomによると、このプラットフォームのやり方はポッドキャスターたちの間で人気だという。

初期段階で人気のトピックには、気配りやソーシャルメディアなどもある。

インフルエンサーないしメンターとしては、初期に貢献したのがミュージシャンのKenny G(ケニー・G)や「Buffy the Vampire Slayer(バフィー 〜恋する十字架〜)」の俳優で「Spike」役のJames Marsters(ジェームズ・マースターズ)、野球で殿堂入りしたAndre Dawson(アンドレ・ドーソン)氏らとなる。

シードラウンドに関するコメントでFirst Round Capitalがこう声明している。「ソーシャルオーディオはまだ幼児期にありますが、CEOのDayo Akinrinade(ダヨ・アキンリナーデ)と一緒に彼女のWisdomのビジョンを間近に見ることは、すばらしい経験です。Wisdomは、とても重要なトレンドのひとつに乗っており、ソーシャルオーディオやアルゴリズムフレンドリーな設計は、さまざまな声を主役とするインパクトの強いコミュニティの強さを反映しています。これまで見過ごされていた多様な人たちが、すぐれたメンターたちにアクセスできる場をつくっているのです」。

First Roundはさらに続けて「今人気があるのはClubhouseの『カクテルパーティー的形式』だけですが、それは、もっと多様であるソーシャルオーディオの形式の1つにすぎないでしょう。Wisdomの、1対1の会話を多くのリスナーにブ配信して、タイマーが会話が滞らないように工夫するやり方は、ソーシャルオーディオというカテゴリーの中で傑出しています。私たちがSocial Audio Inc.とそのWisdomアプリへの投資を発表できることも、同じくすごいことです。このユニークな形式を持つアプリと立派なミッションがどこまで広まるか、それを見届けるのが待ち遠しい。

ダヨ・アキンリナーデ氏は初期成功の理由を、強力なコミュニティとメンターたちのおかげ、と述べている。そして「投資と、新しい投資家たちの専門的能力で私たちは、この稀有なコミュニティをさらに強く大きく育てることができる語る。

シード資金で機能のロードマップを作って行けるが、特に重要なのがコミュニティのエンゲージメントを盛り上げるための機能だと同社はいう。

Androidアプリは2022年初頭に出る予定だ。他には、DM(ダイレクトメッセージ)や検索と発見のAIアルゴリズムの強化、メンターのための収益化などが同社のToDoリストに載っている。

画像クレジット:Halfpoint Images / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

元SpaceXエンジニアたちのFirst Resonanceは製造OSをハードウェアメーカーに提供

First Resonance(ファースト・レゾナンス)は、ハードウェア製造のためのソフトウェアを作っている企業だ。同社のIon(イオン)プラットフォームは、製造ライン、サプライチェーン、エンジニアリング、デザインなどを管理しなければならない人々に、オールインワンの選択手段を提供する。今回、新たに1400万ドル(約15億9000万円)の資金を調達したことで、同社はその営業力を拡大し、世界のハードウェアメーカーに全面攻勢を仕かけることを目指している。

First Resonanceは、元SpaceX(スペースX)のエンジニアたちによって設立された。彼らは、SpaceXで開発に携わったプロセスが、ドローンや玩具、そして……他のロケットを作っている人々の役に立つと感じたからだ。

2020年夏に我々が初めて取材したとき、同社はまだ始まったばかりだった。今では勢いのある会社となり、より多くの大規模な顧客をターゲットとしながら、その勢いを維持したいと考えている。

「2020年、First Resonanceは最初の顧客を獲得したばかりでした。その年は、メーカーやハードウェアを製造している人たちが、自宅で仕事をしている人たちと工場をつなぐ手段や、複数の種類の工場をつなぐ手段を必要としていた時期でした。ちょうど私たちがこの会社で作っている製品が、それにぴったりはまったのです」と、共同創業者兼CEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏は語る。

2020年末には15社の顧客を獲得し、現在はその2倍の顧客に利用されているIonプラットフォームは、本格的にハードウェアを製造している人々にとって、価値があることを示している。その顧客には、電動垂直離着陸機をてがけるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)、自動操縦貨物飛行機運行を目指すReliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)、小型静止通信衛星企業のAstranis(アストラニス)などがいる。

「このような洗練された製品の製造方法を管理するだけでなく、部分組み立ての複雑さやそれにともなう高度な複数段階におよぶBOM(部品構成表)を管理することの複雑さ。【略】Ionが行っているのは、これらの企業がその複雑さを定義し、理解して、設計や製造プロセスを迅速かつ反復的に調整できるような粒度で支援することです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:First Resonance

その鍵となるのが、部品やプロセスの自動化された強力なトラッキングだ。同社のチームは、かつてSpaceXでロケットの再利用可能性に取り組んでいた際に、これを得意とした。

「SpaceXが他の企業と比べて決定的に違う点は、所定のロケットにどのシリアルナンバー、どのロットナンバーが付いているかを徹底的に把握していることです。どの部品が特定の条件にあてはまるか、あるいはエラーが出る可能性が高いかということが、わかっているのです」と、タラティ氏は説明する。「これこそが、私たちの顧客が直面している課題なのです。自動車メーカーは、すべての車両をリコールする必要があるため、何十億ドル(数千億円)もの費用がかかります。しかし、Tesla(テスラ)は最近、わずか3000台のModel Y(モデルY)をリコールしました。それはテスラが、そのレベルの粒度を持っているからです」。

初期の顧客は、この機能が非常に価値のあるものであることを理解し、より多くの要望を寄せている。部品の購入から納品、取り付け、サービスまでをトラッキングすることで、テスラのようなコスト削減の機会が生まれるだけでなく、洞察を掘り出すことができるデータベースも構築できる。

企業はずっと以前からこのような管理を行ってきたが、一般的には、レガシーなものから最先端のものまで、互いに連携していない5〜6種類のシステムを使用している。例えば、デザイン作業はライブのARコラボレーションセッションで行われ、クラウドに保存されて、最新の生産性スイートを介して配信されるが、それが工場や部品のワークフローに行くと、90年代から進化しておらず、そこですべてが滞ってしまう。それは決して優れた仕組みとは言えず、新型コロナウイルスが流行した2020年と2021年のプレッシャーによって、限界を超えてしまった企業もあるだろう。

「一般的なトラッキングツール、電子メールのテンプレート、スプレッドシート、断絶されたプロセスなどで乱雑な状態です。このような長く使っていた古いシステムから離れ、デジタルトランスフォーメーションを検討している顧客がますます増えています」と、タラティ氏は語る。

共同設立者でCOOのNeal Sarraf(ニール・サラフ)氏(左)とCEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏(右)(画像クレジット:First Resonance)

自社で新しいスタックを構築できるような大規模で資金力のある企業でさえ、Ionを利用することを選択していると、タラティ氏はいう。これは、1年と数千万ドル(数十億円)をかけて独自のスタックを設計するのではなく、市場で通用するプロセスの追加を選択して成功した他の企業を見習うためだという。

今回の1400万ドルを調達したシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)が主導し、Blue Bear Capital(ブルー・ベア・キャピタル)、Fika Ventures(フィカ・ベンチャーズ)、Stage VP(ステージVP)、Wavemaker(ウェーブ・メーカー)が参加した。この資金は、会社の規模拡大と改善、特に「市場参入チーム」の強化に充てられる予定だ。しかし、その製品も進化している。開発チームは、変化があったときに数秒で実行可能な洞察が得られるようにするため、より多くのデータソースをインテリジェンスストリームに統合することに取り組んでいる。また、SDKを拡張して、より多くの工場やハードウェアの種類に対応することも視野に入れている。

「当社の顧客は、柔軟でデータ駆動型のアプローチを非常に重視しており、Ionはまさにその要求に適っているのです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:Teera Konakan / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NFTサービスとブロックチェーン開発基盤を手がけるKyuzanが2.6億円のシリーズA調達

NFTサービスとブロックチェーン開発基盤を手がけるKyuzanが2.6億円のシリーズA調達

NFTサービスとブロックチェーン開発基盤を手がける「Kyuzan」は12月10日、シリーズAラウンドにおいて総額2億6000万円の資金調達を発表した。同ラウンドより新たにZ Venture Capital、ANRIを引受先としている。

2018年4月設立のKyuzanは、ブロックチェーンとNFTを活用したサービスと技術基盤を開発。GameWithと共同開発しているNFTゲーム「EGGRYPTO」(エグリプト)は、モバイルネイティブのNFTゲームとして2020年4月にサービスを開始した。MAUは1年で5倍と急成長し、直近の新規ユーザーの比率において日本よりも海外のユーザー比率が高くなっているという。

また、2021年4月からNFT開発プラットフォーム「Mint」(ミント)の提供も行っている。Mintは、独自のブランドの世界観を表現可能なオリジナルのNFTショップを構築できる。

調達した資金は、EGGRYPTOとMintの成長に向けて、プロダクト開発と人材採用に投資する予定。EGGRYPTOは、グローバルに急成長するNFTゲームになることを目指し、新たにPlay-to-Earnのゲームモードの開発と、マーケティングを強化する。Mintは、ブランドやコンテンツホルダー企業によるNFT導入支援を強化するため、プラットフォームの機能開発と導入サポート体制を強化する。これにより、日本をはじめとして、グローバルで利用されるNFT発行プラットフォームを目指す。

ハイブリッドチームがSlackで各々のオフィスタイムを調整可能に、Officelyが2.3億円を調達

会社が在宅 / 通勤のハイブリッドに移行するんだって?いい話だね!たとえ管理上の決定や、あなたの役割の特殊性によって、毎日は不可能だったとしても、在宅勤務はより主流になっている。

では、誰がいつオフィスに行くかをどのように調整すればよいだろう?毎週同じ日である必要があるだろうか?ランダムに日を選んで、机が使えることを期待するだろうか?もしその日に行ったのがあなただけだったらどうだろう?本当に通勤する必要はあったのだろうか?これらすべてをスプレッドシートで追跡すべきだろうか、それとも追跡するためだけにまったく別のツールが必要だろうか?

Officely(オフィスリー)は、多くのチームがすでに使用しているツールのSlackを介して、それらをすべて上手く処理したいと考えている。彼らは成長を始めるために200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを行ったところだ。

Officelyの主な売りはデスクの予約機能だ。これにより、どのオフィスにあるデスクか、または多数のデスクがある場合は、オフィス内の「どの付近にあるか」でデスクをグルーピングすることができる。ある日に何人の人がオフィスに行くのか、使えるデスクがあるのかを確認し、もし使えるなら予約することができる。他にもいくつかのカスタマイズ項目がある。例えば誰かが犬をオフィスに連れてくる場合にフラグを立てる機能などだ。アレルギーのためにその日は家にいたい人や、私のようにオフィスに少なくとも1匹は犬がいるときに出社したい人のために役立つ。

画像クレジット: Officely

カスタマイズ可能な健康診断調査表を設定して、熱を持っていなかったり既知の接触履歴がないことを確認したり、出社予定の朝に調査表に記入するように自動的に通知することができる。もし誰かが病気になった場合には、Officelyは連絡先の追跡を支援して、同じ日にオフィスにいた従業員のリストを作成することもできる。

彼らはまた「Officeチャット」機能の実験も行っている。この機能は、1日の初めに新しいSlackルームを自動的に作成し、その日に出社が予定されているすべての人を招待し、1日の終わりにルームをアーカイブする。家にいる同僚を悩ませることなく、ランチプランを計画するのに最適だ。

Officelyのテストインスタンスを起動してみたが、非常に円滑に使うことができた。デフォルトからカスタマイズするためのUIは、少々目立たないように感じられるが、それは主にSlackアプリの範囲内で動作しているからだ。しかしその一方で彼らは私がSlackアプリでできるとは知らなかったすばらしいこともたくさんしてくれている。チームTCは現在、オフィスで多くの時間を費やしていないので、ストレステストを行うことはできなかったが、見た限りでは、この先多くの人たちがオフィスに戻ったときにも上手く機能できるだろう。

Officelyは現在、小規模チーム用は無料だ(10人までの従業員と1カ所のオフィスに限定)。より多くの従業員または複数のオフィスがある場合には、月額でオフィス従業員1人あたり2.50ドル(約280円)が請求される(「Officelyを使用してオフィスを予約する従業員に対してのみ請求します」と彼らはいう)。500人以上の従業員がいる場合には、カスタム料金プランが提供される。

ところで、なぜSlack内ですべてを構築するのだろうか。共同創業者のMax Shepherd-Cross(マックス・シェパード=クロス)氏は私に「デスク予約ツールの興味深い挑戦課題は、ソフトウェアを効果的に使用するには、社内の全員が同じソフトウェアを採用する必要があることです」と語る。だが新しいウェブアプリに参加するように全員を説得するのは困難だ。一方、Slackなら企業のチームあれこれがすでに集まっている。

Officelyはピボット(方向転換)を行った企業だ。同チームは2017年に、ホテルの部屋の予約という別の焦点でスタートした。「私たちは新型コロナに押しつぶされました。一夜にして、私たちはすべての顧客を失ったのです」とシェパード=クロス氏は語る。「数週間眠れない夜を過ごしたあと、私たちはこれからのオフィスがこれまでのホテルのように運営されることに気づきました。【略】過去4年間ホテル用に構築していた予約インフラストラクチャ全体が、今ではオフィスに必要なのです」。

今回のラウンドはTEN13が主導し、エンジェル投資家のVu Tran(ブー・トラン。学習プラットフォームGo1の共同創業者)とAdam Schwab(アダム・シュワブ、travel co. Luxury EscapesのCEO)が参加した。

画像クレジット:Officely

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(文: Greg Kumparak、翻訳:sako)

人の意思決定が必要なワークフローをより簡単に構築できるようにするIkigaiが約15億円調達

MITの研究をベースにしたスタートアップIkigai(イキガイ)は、人間が関与するワークフローの構築をシンプルにしたいと考えている。従来のロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が反復的な作業のためのボットを構築するものであるのに対し、同社はプロセスの一部として人間が意思決定をしなければならないワークフローを簡単に構築しようとしている。

同社は米国時間12月9日、Foundation Capital、8VC、Underscore VC、およびさまざまな業界のエンジェル投資家から集めた1300万ドル(約15億円)のシードラウンドを発表した。

同社の共同創業者でCEOのVinayak Ramesh(ヴィナヤク・ラメシュ)氏は、MITでの研究や、2021年12月に買収したデジタルヘルスケアのスタートアップであるWellframe(ウェルフレーム)での研究で、RPAでは対応できない複雑なワークフローが存在することを発見したと話す。

「ユースケースがあることを目の当たりにしました。基本的には人間がデータに基づいて判断や意思決定を行い、データやルールが頻繁に変更されるために自動化が非常に困難な、組織でのマニュアルプロセスなどです」とラメシュ氏は筆者に説明した。

日本語で「あなたの目的」を意味するIkigaiはこの問題を解決するためのツールで、異なるデータソースを含むドラッグ&ドロップのワークフローを作成し、その一方で人間が判断するステップを組み込み、その結果をダッシュボードやスプレッドシートで表示することができる。ラメシュ氏らは、これを「AI-Charged」スプレッドシートと表現している。

画像クレジット:Ikigai

しかしラメシュ氏らは、Power BIやAirtableといった他の超高機能スプレッドシートのアプローチとは異なると考えている。「(それらのツールは)ワークフローに人間を必要としますが、意思決定やデータに基づくワークフローではありません」とラメシュ氏は述べ、決定ループを構築できることが自社製品の重要な差別化要因だとする。

現在、同社の従業員はエンジニアを中心に20人で、2022年には倍増させる計画だ。創業者たちは、会社の規模を拡大するにあたり、多様性のある包括的なチームを構築する必要性を確実に認識しているようだ。

「多様性があることで、さまざまな視点を持ち、さまざまなタイプの人たちが毎日出社してくるので、すべてが働きやすい環境になります」とラメシュ氏は話す。また、初期の従業員の多くが移民であり、彼らが米国で働くためのビザを取得するという困難なプロセスを乗り越えるための支援を行ってきたことも指摘する。

この会社のアイデアは、ラメシュ氏がMITの学生時代に行っていた研究から生まれた。実は、共同創業者でCTOのDevavrat Shah(デバブラット・シャー)氏は、MITのコンピュータサイエンスの教授で、ラメシュ氏の教授でもあった。シャー氏は、2019年にNike(ナイキ)が買収したCelect(セレクト)という別の会社も立ち上げている。

Wellframeの設立に協力した後、ラメッシュ氏は大学院に戻り、そこでシャー氏とつながった。このような製品のアイデアは時間の経過とともに顕著になるばかりで、彼らはさらに研究を始め、2020年に製品を作った。

画像クレジット:Sean Gladwell / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

インターネットの再構築を目指す「WWWの父」ティム・バーナーズ=リー氏のInruptが約34億円調達

関係者によると、Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)氏のスタートアップInruptが、シリーズAラウンドで約3000万ドル(約34億円)を調達したという。

Forte VenturesがInruptの新しいラウンドをリードしたというが、両者ともその額を公表していない。Akamai TechnologiesやGlasswing Venturesといった既存投資家はすべて参加し、新たな投資家としてAllstateとMinderoo FoundationのFrontier Technology Initiativeが参加した。

TechCrunchは2021年10月に、創業3年のInruptが3000万〜5000万ドル(約34億〜56億7000万円)の資金調達を交渉中だと報じている。

関連記事:WWWの父ティム・バーナーズ=リー氏のスタートアップ「Inrupt」が約34.2億円以上の資金調達に向け交渉中

InruptはWorld Wide Webの規格を作ったバーナーズ=リー氏と、科学者で技術者のJohn Bruce(ジョン・ブルース)氏が創業し、ユーザーデータのコントロールをユーザー自身に与えるプラットフォームで「インターネットの再構築」ことを目指している。Inruptのチームには、暗号のエキスパートであるBruce Schneier(ブルース・シュナイアー)氏がいる。

「ビジネスの変革は、人生のさまざまな部分が異なるサイロで管理され、それぞれが人生の縦割りの部分を管理することによって妨げられています。その一方で、データはそのサイロによって利用され、個人データがどのように悪用されているかについて、非常に合理的な懐疑心を持つ人々が増えています」とバーナーズ=リー氏はいう。

Inruptのプラットフォームでは、ユーザーが自分の個人データをPOD(Personal Online Datastores、 個人のオンラインデータストア)に保存できる。PODsは分散アプリケーションとの相互運用性があり、ユーザーが望めばいつでも切り離すことができる。TechCrunchが入手した投資家に対するプレゼンテーションで、InruptはそれはVisaのような企業のクレジットカード処理や、DNSの規格を商用化したVerisignのような企業の中核的インフラストラクチャのエミュレーションを目指すものだと述べている。

Forte Venturesを率いるHunter Hartwell(ハンター・ハートウェル)氏が、ブログで次のように述べている。「このアプローチでは消費者が自分のデータのコントロールを手中にし、政府や企業および彼らのアプリケーションの開発者は、新しいインターネットの時代とその規制の体制(GDPRなど)に、よりシームレスに移行できます」。

ハートウェル氏はさらに「私たちのInruptへの投資の趣旨はシンプルなものです。消費者も政府もそして多くの企業も、Web3という名で知られる真にオープンで協力的なウェブの移行を切望しています。Inruptのエンタープライズ向け堅牢サーバー、Enterprise Solid Server(ESS)は、そんな未来を実現するための技術的に最も高度で商業的実用性もある方法です。私たちの投資趣旨の中には、同社のトップレベルのチームが、政府と企業パートナーと広範な一般大衆の要求と期待を満たす、今のところ唯一の実行主体だという信念がある」と述べている。

現在のInruptの顧客は、一部の政府と企業だ。これまで同社が政府と契約を交わした国は、TechCrunchが先に報じたスウェーデンとアルゼンチンとバスクとなる。そのときの記事には、2020年の売上は22万5000ドル(約2500万円)、2021年は9月までで20万ドル(約2300万円)とある。

新たに得た資金は「ESSの政府および商用方面のグローバルな展開に向けられる」とハートウェル氏はいう。

画像クレジット:Pedro Fiúza/NurPhoto/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

軍用自動運転車両開発Robotic Researchが約258億円調達、商用分野に進出

過去20年間にわたり米国防総省向けにオンロードおよびオフロードの自律走行車を開発してきた自動運転技術企業のRobotic Research(ロボティック・リサーチ)が、シリーズAラウンドで2億2800万ドル(約258億円)を調達した。同社は、SoftBank Vision Fund 2とEnlightenment Capitalがリードした今回のラウンドで得た資金を商業分野での事業構築に使う。

Crescent Cove Advisors、Henry Crown and Company、LiDAR企業のLuminarもこのラウンドに参加した。

Robotic ResearchのCEOであるAlberto Lacaze(アルベルト・ラカゼ)氏によると、同社の商用部門ブランドのRR.AIは現在、AutoDriveと呼ばれるあらゆる車両で使える自動運転キットを米国、カナダ、オーストラリア、欧州、サウジアラビアの道路を走っている約150台の大型輸送バス、大型長距離トラック、ヤードトラックに搭載している。今後は規模の拡大が課題となる。

Robotic Researchはこれまで、米陸軍や海軍のトラックを自動化してきた。地図に載っていない、GPSも良い通信機能もない、そして道路も整備されていない地域で活動するトラックだ。また、同社の自律走行スタックには、ステレオやStructure from Motion(一連の2D画像から3D構造を推定するレンジイメージング技術)など、通常の商用自律走行車が使用しないセンサーも追加されている、とラカゼ氏は話す。その結果、悪天候の道路で自動運転トラックを走らせることをいまだに恐れている競合他社よりもRobotic Researchは優位に立っていると考えている。

「ほとんどの人は、ロボティクスを魔法のようなソフトウェアだと思っています」とラカゼ氏はTechCrunchに話した。「実際には、ロボティクスは切手収集のようなものです。滑りやすい道路や埃にまみれ線が見えない道路など、さまざまなエッジケース(特殊な問題をともなう可能性がある状況)を集めなければなりません。私たちはたくさんの切手を集めました。ある意味、軍事用アプリケーション向けの一般的な日が、商業用アプリケーションのエッジケースです」。

RR.AIはすでにその技術を広く展開していて、今回の資金提供は特に商用アプリケーションの拡大と産業化を目的としている、とラカゼ氏は話す。

Robotic Researchは2020年、コネチカット州交通局との契約を獲得した。この契約では、長さ40フィート(約12メートル)の電動バス3台を自動化し、CTfastrakの回廊を走行させる。計画は、自動化されたバス高速輸送ライン、バス隊列走行、精密なドッキングへとスケールアップしていく。バスはレベル4の性能を持っているが、安全のために人間のオペレーターが乗車するとラカゼ氏は説明する(SAE、自動車技術者協会の定義では、レベル4の自律性とは人間の介入を必要としないが、特定の条件下でのみ動作可能なシステムを指す)。

トラック輸送の分野では、RR.AIはカナダの製材所と協力して丸太の運搬を行っているが、米国関連の大きな発表を間もなく行うとしている。また、数カ月以内に農業分野でのパートナーシップも発表する予定だ。

RR.AIの市場戦略は「low hanging fruits」、つまり規制が少ない、あるいは規制を回避しやすい分野に焦点を当てることだ、とラカゼ氏はいう。

カメラ、LiDAR、レーダーなど、自動運転に必要なセンサーはまだ非常に高価なため、大型で耐久性の高い車両に搭載することで、センサーのコストを長期的に償却することができると指摘した上で「現コストでのセンサーを使って生産し、利益を生み出せるような分野に取り組みたいと思っています」と同氏は話す。

「オートノミー分野で創業以来、利益を出し続けている企業は、おそらく当社だけでしょう。それができたのは、小さな市場に専念してきたからですが、その間、そうした市場が現在の収益をもたらしてくれました。2025年までトラックの配備を待つ必要がないので、より早く成長し、より早く走行距離を伸ばせます」。

将来ロボットタクシーで運用することはRR.AIにとって問題外ではないとラカゼ氏はいう。同社の戦略は、規制環境が改善され、センサーのコストが下がるのを待ってから、新たな分野に進出するというものだ。しかし、RR.AIが快適な産業で規模を拡大しようとするとき、市場には十分な数の自動車が存在しないかもしれない。

「自社で自動車を生産していないため、自動車メーカーの生産に頼っています」とラカゼ氏は話す。「我々は、規制の観点から今すぐ配備することが理に適っている地域で利用可能な車両を見つけるために、あらゆる手段を用いて慎重に検討しています」。

画像クレジット:Robotic Research

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Gadgetはeコマースアプリ開発者の生産性を高めるプラットフォームを提供

カナダのオタワに拠点を置くGadget(ガジェット)は、Shopify(ショッピファイ)の元社員2名によって設立された開発者の生産性向上を支援する企業だ。同社はシード資金として、850万ドル(約9億6700万円)を調達したことを発表した。この資金調達ラウンドは、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)とBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)が主導し、OpenAI(オープンAI)の共同創業者兼CTOであるGreg Brockman(グレッグ・ブロックマン)氏、Klarna(クラーナ)のCTOであるKoen Koppen(コエン・コッペン)氏、Shopifyのデータサイエンス・エンジニアリング部門の責任者を務めるSolmaz Shahalizadeh(ソルマズ・シャハリザデ)氏などが参加した。

2020年にHarry Brundage(ハリー・ブランデージ)氏とMohammad Hashemi(ムハンマド・ハシェム)氏が設立したGadgetは、eコマースアプリの開発者がコードを書く時間を削減する方法を提供することを目的としている。同社のプラットフォームを利用することで、開発者は作業にともなう無駄な仕事を省くことができ、アプリの構築と拡張をより効率的に行うことができる。

「私たちがGadgetを起ち上げた理由は、自分たちでさまざまなものを作ろうとしていた時に、何かを実現するまでには、どれほど長い時間がかかるかということに不満を感じたからです」と、CEOのブランデージ氏は、TechCrunchによるインタビューで語っている。「発売前の準備に何週間もかかるのは、フラストレーションがたまります。私たちは他の多くの人が同じ問題を抱えていると考え、それを解決するものを構築したいと思いました」。

Gadgetは、開発者が必要とするツール、ライブラリ、API、そしてベストプラクティスを1つにまとめ、開発者が、内蔵ステートマシン、自動アクセス制御、即時のAPI生成、他のSaaSプラットフォームとの統合など、一連の高度なプリミティブにアクセスしながら、データモデルを定義し、コードを書くことができるようにした。

画像クレジット:Gadget

今回調達した資金を使って、Gadgetはサーバーレススタックを公開し、Shopifyを手始めにサードパーティのAPIとの接続を構築する予定だ。ブランデージ氏とハシェム氏は、Shopifyの製品やエンジニアリングに関する専門的な知識を活用するために、まずはこの大手eコマース企業に注力する。

将来について、ブランデージ氏とハシェム氏は、重要なソフトウェアをより容易に開発できるようにするために、息の長い永続的な会社を作りたいと望んでいる。ブランデージ氏は、まだ作られていない実現可能な役に立つツールがたくさんあると指摘し、Gadgetは同社でそれらのツールを実現したいと考えている。

「ソフトウェア開発は転換期を迎えています」と、SequoiaのパートナーであるMike Vernal(マイク・ヴァーナル)は声明で述べている。「私たちが使用するソフトウェアに多くを期待するようになったことで、開発者はその要求に追いつくために、構築に使うツールに多くを求めるようになりました。Gadgetのプラットフォームは、eコマースの開発者が拡張性の高いソフトウェアを驚くほど速く構築できるように支援するという約束を果たしています」。

画像クレジット:Gadget

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

実在しているような合成アバターがしゃべるプレゼン動画を簡単に作れるSynthesiaの技術

AIを利用して合成ビデオを作成するスタートアップ企業のSynthesia(シンセシア)は、不気味さとすばらしさの微妙な境界線をうまく渡り歩いている。

同社は米国時間12月8日、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)が主導するシリーズBラウンドを5000万ドル(約56億8000万円)でクローズしたと発表した。このラウンドには、GVおよび既存投資家のFirstmark Capital(ファーストマーク・キャピタル)、LDV Capital(LDVキャピタル)、Seedcamp(シードキャンプ)、MMC Ventures(MMCベンチャーズ)も参加した。

Synthesiaは、単なるテキストやスライドを使ったプレゼンテーションを、しゃべるアバター付きのビデオに変えることができる。ユーザーは俳優の演技から作られたすでに用意されているアバターを利用することもできるし、動画をアップロードして数分で自分自身のアバターを作ることもできる。また、ユーザーは録音した自分の声をアップロードすることもでき、その声を使って何でも言えるように変換させることができる。

このスタートアップ企業は、インターネット上の強力なツールのほとんどが悪用可能であるという事実を認識しているので、誰でもこのプラットフォームを利用できるようにするのではなく、企業顧客のみに限定している。同社の顧客は、主にトレーニング用ビデオにこのツールを使用しているというが、その他にもチームへの月例報告や、通常は電子メールで送られてくる情報の配信などにSynthesiaを使っているという。

おもしろいことに、創業者のVictor Riparbelli(ビクター・リパルベリ)氏は、ユーザーの行動は必ずしも当初の予想とは一致しなかったと述べている。ビデオ制作部門で多く利用されるというよりも、むしろ組織内の他の部門の人々がこのツールのパワーユーザーになっているのだ。

「Synthesiaを導入する以前は、PowerPoint(パワーポイント)でスライドデッキを作成したり、Word(ワード)で文書を書いたりしていた人が、今では実際に、動画コンテンツを制作することができるようになっています」と、リパルベリ氏はいう。「これこそが、AIの観点から私たちを急速に成長させている重要な点ではないかと思います」。

4月に1250万ドル(約14億2000万円)のシリーズA資金調達を実施して以来、Synthesiaはユーザーが独自のアニメーション話者の作成をさらに容易にする機能を追加しており、現在は1000種類のカスタムアバターがこのプラットフォーム上で使われている。リパルベリ氏は、顧客の一例としてErnst & Young(アーンスト・アンド・ヤング)を挙げた。この企業では、35人のパートナーがそれぞれのアバターを持ち、社内コミュニケーションと顧客とのコミュニケーションの両方に向けてビデオを作成しているという。

この「誰でもビデオを作ることができる」というコンセプトは、Canva(キャンバ)に似た雰囲気を強く感じさせる。評価額が400億ドル(約4兆5000億円)を超えたオーストラリアのスタートアップ企業であるCanvaは、デザイン部門以外の組織に、何でもデザインできる能力を解放した後、ロケットのように急成長した。Canvaは最近、独自のビデオ製品も発表しており、既存のデザインやスライドデッキをアニメーション化し、生き生きとしたビデオに変えることに力を入れている。

Synthesiaはさらに一歩進んで、無名の俳優や自分の会社のCEOなど、まるで実在の人物のように見えるアバターを使ったビデオを作成することができる。

このような難問に取り組んでいる企業はSynthesiaだけではない。イスラエルのD-IDという会社は、Disrupt 2021(ディスラプト2021)で実際にデモを行い、人物の静止画を動画コンテンツに変換する方法を披露した。

つまり、いくつかの意味で競争が始まっているのだ。AIやアバターを使って動画作成を容易にしようとする企業は、リアリティを高めたり、感情表現に順応性を持たせるといったことで競うだけでなく、ユーザーの安全性や自社プラットフォームの信頼性を確保することにも力を入れなければならない。

この種のツールが、多くの人々に誤解を与えたり、危害を加えたりするために使われる可能性があることは明白であり、このようなツールを作成する企業は、それが公正に使用されるということを保証する責任がある。

Synthesiaでは、明確な同意なしに誰かを合成することはないと明言している。また、この技術には同社が完全にコントロールしているオンレール体験を通してのみアクセスできる。

それはともかく、近い将来、あなたの部署の責任者やCEOのように見えるけれど実際は本人が出演していないビデオを見ても驚いてはいけない、ということだ。

画像クレジット:Synthesia

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(文:Jordan Crook、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CTOはテスラ共同創業者、硬い岩盤に触れることなくトンネルを掘るロボット「Swifty」を引っ提げPetraが脱ステルス

Petra(ペトラ)は、DCVCが主導したシリーズAラウンドで3300万ドル(約37億4000万円)を調達したと発表し、ステルス状態から脱却した。ACME Capital Congruent Ventures、8VC、Real Ventures、Elementum Ventures、Mac Venture Capitalがこのラウンドに参加した。

共同創業者兼CEOのKim Abrams(キム・エイブラムス)氏は、このニュースに関連したリリースの中でこう述べている。「当社は岩盤を掘削するまったく新しい方法を発明しました。これはトンネル工事の将来に大きな影響を与えることになるでしょう。ハイグレードな岩盤を貫き、手頃な価格でユーティリティ設備を地下に埋設するボーリングソリューションを提供することで、最終的に地域社会を山火事の危険から守り、災害の多い地域、特にシエラネバダ山脈、ロッキー山脈、沿岸地域で重要なインフラの安全性を確保することができます」。

このニュースは、同社が開発したロボット「Swifty」のパイロット版が成功したという発表を受けてのもの。同社によると、このロボットは、スークォーツァイト石(スー石英岩)に毎分1インチ(25.4mm)の速さで20フィート(約6.1m)のトンネルを掘ることに成功したという。この変成岩は硬いことで有名で、米国中西部の建築物によく使われている。しかし、その硬さゆえに、インフラ整備などのトンネル工事には手強い存在でもある。

画像クレジット:Petra

Tesla(テスラ)の共同創業者の1人であり、同社のCTOを務めるIan Wright(イアン・ライト)氏はこう述べている。「これまで、このような硬い岩盤をトンネルで貫くことができる工法はありませんでした。Petraの成果は、岩盤に触れずに効率的に掘削するSwiftyのサーマルドリル工法によるものです。非常に硬いスークォーツァイト石に20フィート(約6.1m)の穴を開けたことで、ハイグレードな硬い岩盤に実用的なサイズのトンネルを手頃な価格で埋設できる当社のユニークな能力が証明されました」。

このロボットシステムは、マシンビジョンを活用し、岩石に直接接触するのではなく、サーマルドリル工法を使って困難な素材をマイクロトンネル掘削する。同社はリリースの中でこう述べている。「Switfyは、従来のマイクロトンネル掘削法に比べて、数多くの斬新な利点を提供します。従来のマイクロトンネル掘削機は、単一の直径に合わせて専用に作られています。しかし、Swiftyは20~60インチ(約50.8〜152.4cm)の範囲の直径を掘削できる初めてのロボットであり、トンネル掘削のコストを劇的に削減することができます」。

同社は、このような穿孔技術の用途として、建設、インフラ維持、トンネル作成など、幅広い可能性を挙げている。

画像クレジット:Petra

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

小型SAR衛星の開発・運用を手がける九州大学発QPS研究所がシリーズBファーストクローズとして38.5億円調達

小型SAR衛星の開発・運用を手がける九州大学発QPS研究所がシリーズBファーストクローズとして38.5億円調達

小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うQPS研究所は12月9日、シリーズBラウンドのファーストクローズにおいて、総額38億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのスカパーJSAT、またスパークス・グループ運営の未来創生ファンド、日本工営、リアルテックファンド、三井住友海上キャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルの計8社。累計調達額は約72億円となった。

QPS研究所、自社開発した小型衛星用の収納式大型軽量アンテナにより、従来のSAR衛星の1/20の質量、1/100のコストで100kg 級高精細小型SAR衛星の開発に成功。現在は2025年以降を目標に36機の小型SAR衛星を打ち上げてコンステレーションを構築し、約10分ごとの準リアルタイム地上観測データサービスの提供を目指している。

このプロジェクトの実現に向け、2017年10月・2018年2月のシリーズA調達にて総額24億5000万円の資金調達を行い、2020年11月に総額8億6500万円の追加資金調達を実施した。これにより、当初のプラン通り衛星「イザナギ」「イザナミ」の2機の開発・製造・打ち上げに取り組んだ結果、2021年5月にはイザナミによる70cm分解能という民間の小型SAR衛星として日本で最高精細の画像取得に成功。衛星データビジネスの構築に向けた活動を本格化させた。

シリーズBで調達した資金は、2022年打ち上げ予定の衛星3号機~6号機の開発・運用の資金として使用する予定。同社が目指す小型SAR衛星36機のコンステレーションの実現に向け、着実に取り組むとしている。

お手頃な新技術でクリーンな水素製造を目指すDibiGasが約4.2億円調達

多くの産業プロセスの中心である水素は、将来主要なエネルギーエコシステムに組み込まれる可能性を有している。しかしながら、水素を分離・貯蔵するプロセスは、エネルギーロスが多く、コストも高い。今回シードラウンドで360万ドル(約4億2000万円)を調達したDiviGas(デヴィガス)は、既存の方法を凌駕する新しい技術でクリーンな水素製造ビジネスを実現し、新たなグリーン経済を推し進めようとしている。

一般的に、水素はクリーンで非常に便利な元素と考えられているが、その製造には多くの「クリーンではない」産業プロセスが関わっている。例えば、石油精製やプラスチック製造の過程ではさまざまな炭化水素や混合ガス、化学物質が排出され、そういった排出物から水素を分離するためにはさらなる処理とエネルギーが必要である。

化学反応よりもクリーンでシンプルな方法として、水素分離膜やフィルターを使って、水素ガスや二酸化炭素ガスを他の物質から分離する方法がある。しかしながら、これらの分離膜やフィルターは高温では機能せず、低圧で分離して得られたガスの一部は再加圧する必要があり(コストがかかる)、分離膜自体も一般的な酸性ガスの存在下では急速に劣化する。

水素製造産業はとてつもなく大きいが、現在のところ高価でエネルギー消費の多い選択肢と、安価で限定的な選択肢しかない。シンガポールにあるSOSV(エスオーエスブイ)のインキュベーターであるHAXでお互いを知ることとなったDiviGasの創業者2人は、このような弱点を持たない第3の選択肢を提供しようとしている。

同社はオングストローム(ナノメートルの10分の1)スケールの新しい「中空糸高分子膜」を設計したと主張する。原子サイズ(1オングストローム程度)のフィルターを設計したという意味ではない。このサイズの機能的特徴が、望ましい高度に分離された結果を生み出すことができるのだ。この場合は、ガスにわずかに異なる圧力をかけることで水素ガスと二酸化炭素ガスを分け(ダイバート)、分離(アイソレーション)することができる。

画像クレジット:DiviGas

同社の水素分離膜技術では、膨大な数の繊維を束ねてチューブを作り、そこにガスを送り込むだけ。化学反応は必要としない。他の分離膜とは異なり、この新しい分離膜は150度以下の高温でも機能する。硫黄と塩素の混合ガスに含まれる一般的な酸性化合物にも耐性があり、腐食性の高い、処理されていないガスを劣化することなく処理できる。また、分離された物質の純度に影響する選択性、対応できる圧力に影響する透過性という基本的な性能では、従来の分離膜と同等以上の性能を持つ。

DiviGasの技術は既存の分離膜技術と原理的には同じなので、最小限の作業でDiviGasの水素分離膜を導入できる。また、同社の水素分離膜で使用する繊維の製造は簡単ではないが、ことさらに特殊なものではなく、既存のプロセスが多く利用されている。共同創業者かつCTO(最高技術責任者)であり、新素材の生みの親でもあるAli Naderi(アリ・ナデリ)氏が説明するように、新素材はさまざまな最先端の技術革新の成果であり、その結果として製造も難しくない。

ナデリ氏はメールで次のように説明する。「二層構造の中空糸膜の開発では、経済性を確保するために、選択層(=外層)に使用する高価な機能性材料をできるだけ少なくして、機械的支持層(=内層)には市販されている安価なポリマーを使用しました。この膜は、標準的な紡糸ラインをカスタマイズして使うことで、同程度の価格で商業的に製造することができます」。

画像クレジット:DiviGas

共同創業者でCEOのAndre Lorenceau(アンドレ・ロレンソー)氏によると、よりシンプルでクリーンな水素と二酸化炭素の製造が可能であろうという同社の見通しは、業界関係者から非常に高い評価を受けているという。

「この製品を数千万個提供できるのはいつごろか、という問い合わせがきています。今回の資金調達ラウンドは、問い合わせに応えるためのものです」とロレンソー氏。

今回の資金は、メルボルンにパイロットスケールの工場を建設するために使用され、工場は2022年3月には稼働を開始する予定である。現在のところ、デモ用のユニット(分離膜に使用する繊維の束)を1つ作るのに数カ月かかっているが、クライアントによっては数百、数千のユニットを定期的に必要とするケースも想定される。1週間で製造できるようになれば、より大規模なデモを行ったり、小さな施設で実際に運用したりすることが可能になる。そうすれば、実際の注文を確保して、さらにその収益を本格的な製造プロセスに充当できるようになるだろう。

「今は(従来の分離膜の)2〜3倍の価格ですが、クライアントは気にしていません」とロレンソー氏(数量が増えれば価格は下がるだろう)。「『私が知っている技術、私が知っている製造工程、それをこの価格で提供してくれるなら最高だ』といってくれます。まだ販売していないのに、そういってくれるクライアントが大勢います」。

競合他社が動きの遅い企業や停滞しているスタートアップ企業ばかりなので、クライアントがせっつくのはそのせいだろう、とロレンソー氏は続ける。

「製材の大企業では専門の部署があり、(水素製造技術の)改善を行っていますが、時代遅れです。次世代のソフトウェア技術を構築するのがコンピュータサイエンスの旧態依然の博士たちではないのと同じ理由です。常に次世代の「ヘンなもの」にチャレンジする必要があります」「(停滞している)スタートアップも、目まぐるしく移り変わるベンチャーキャピタルの世界に慣れていない研究者たちです。優れた研究成果があっても、製造しようとすると手のひらサイズのものを作るのに10億ドル(約1100億円)もかかります。「製造可能性を考慮して……」と口ではいいますが、まったく考慮していません。だから私たちはこのようなスタートアップや大企業を追い抜くことができるのです」。

今回の360万ドルのラウンドは、Energy Revolution Ventures(エナジーレボリューションベンチャーズ)とドイツの工業用フィルターメーカーであるMann + Hummel(マンウントフンメル)が共同で主導した。ラウンドには、Entrepreneur First(アントレプレナーファースト)、Union Square Ventures(ユニオンスクエアベンチャーズ)のAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏、SOSV/HAX、Amasia VC(アメイジアブイシー)、Volta Energy Technologies(ボルタエナジーテクノロジーズ)、Climate Capital(クライメイトキャピタル)の他、数名の個人投資家が参加した。

画像クレジット:Shutterstock

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

ノーコードのセキュリティ自動化プラットホーム「Torq」が約57億円調達

オレゴン州ポートランドのTorqは、セキュリティをノーコードで自動化するスタートアップで、以前はStackPulseという名称だった。同社は米国時間12月7日、Insight PartnersがリードするシリーズBのラウンドで5000万ドル(約56億9000万円)を調達したことを発表した。上場企業であるエンドポイントセキュリティのプラットフォームSentinelOneが新たな投資家としてラウンドに参加し、またこれまでの投資家であるGGV CapitalとBessemer Venture Partnersも参加した。Torqの総調達額は、これで7800万ドル(約88億7000万円)になる。

関連記事:小さな企業でも突然のシステム障害に迅速に対処できるようにするStackPulseが29億円調達

最近では、ノーコード / ローコードのプラットフォームが流行しているが、セキュリティ分野ではあまり見かけない傾向にある。NS1、eToro、Armis、Healthy.ioなどがユーザーとして名を連ねるTorqは、使いやすいグラフィカルなインターフェースを用いて、セキュリティチームがセキュリティ製品間のルーティング・ワークフローを自動化することを支援する。その点では、Microsoft Power Automateとあまり変わらず、セキュリティに特化している点では同じだ。

Torqは、現代の企業がデータの安全性を保つために導入している複雑に入り組んだセキュリティツールをまとめることができるという点で期待されている。サービスのワークフローは、一定の間隔で、またはアラートから起動することができる。例えば、クラウドリソースへの特権的なアクセスを求める従業員からのSlackリクエストに反応したり、疑わしいファイルの分析プロセスを自動化したりするような、シンプルなワークフローだ。

画像クレジット:Torq

LemonadeのCISOであるJonathan Jaffe(ジョナサン・ジャッフェ)氏によると「Torqのオートメーションで私たちチームのセキュリティ管理が変わりました。一例を挙げると、Torqを使ってウェブアプリケーションのファイアウォールのブロッキングのルールを管理すると、悪質なトラフィックのブロックに要する時間が70分の1になり、捕捉率は90%を超えました。これはとても大きな改善です」という。

TorqのCEOで共同創業者のOfer Smadari(オフェル・アダリ)氏によると、以前の資金調達から今回までの間、同社はユーザー体験の改良に集中してきた。「ユーザー体験への投資を増やし、ユーザーが他のシステムにもっと容易に接続できて、複雑なワークフローを簡単に作ることが可能で、インターフェースのスピードと応答性を上げるようにしました。また、創業時から一貫して、大小さまざまなエンタープライズをサポートできるためにスケーラビリティとレジリエンスに重点的に投資してきました」と氏は述べている。

特に今回の資金で重点投資を行いたいのが、サービス利用がかなり大規模になっている顧客や見込み客への対応だ。アダリ氏によると、同社のサービスの上で顧客が動かしているワークフローの平均数が毎週2〜3倍ずつ増加している。「顧客は、一度始めたらその後の拡張はとても速い。私たちが、そんな成長をサポートできるほどのサービスのデプロイになっていることを、有事になる前に確認しなければならない」という。

Torq自身は、セキュリティのチームをルーチンワークから解放してセキュリティ業界の人材不足に対応することが目的でも、しかしアダリ氏によると、同社にとって当面の最大の課題が雇用だ。

しかしInsight PartnersのマネージングディレクターであるSteve Ward(スティーブ・ワード)氏は次のように述べている。「短期間でTorqが成功したことは、プラットフォームがビジネスのあらゆる側面にわたってより良い保護の提供を目指すセキュリティチームの仕事を楽にしてくれることの証明だ。同社の直感的なプロダクトと経験豊富なチームにより、Torqは急速に業界のリーダーになりつつある。成長を続けているTorqとの提携は、私たちを元気にしてくれます」。

画像クレジット:Torq

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ノーコードのセキュリティ自動化プラットホーム「Torq」が約57億円調達

オレゴン州ポートランドのTorqは、セキュリティをノーコードで自動化するスタートアップで、以前はStackPulseという名称だった。同社は米国時間12月7日、Insight PartnersがリードするシリーズBのラウンドで5000万ドル(約56億9000万円)を調達したことを発表した。上場企業であるエンドポイントセキュリティのプラットフォームSentinelOneが新たな投資家としてラウンドに参加し、またこれまでの投資家であるGGV CapitalとBessemer Venture Partnersも参加した。Torqの総調達額は、これで7800万ドル(約88億7000万円)になる。

関連記事:小さな企業でも突然のシステム障害に迅速に対処できるようにするStackPulseが29億円調達

最近では、ノーコード / ローコードのプラットフォームが流行しているが、セキュリティ分野ではあまり見かけない傾向にある。NS1、eToro、Armis、Healthy.ioなどがユーザーとして名を連ねるTorqは、使いやすいグラフィカルなインターフェースを用いて、セキュリティチームがセキュリティ製品間のルーティング・ワークフローを自動化することを支援する。その点では、Microsoft Power Automateとあまり変わらず、セキュリティに特化している点では同じだ。

Torqは、現代の企業がデータの安全性を保つために導入している複雑に入り組んだセキュリティツールをまとめることができるという点で期待されている。サービスのワークフローは、一定の間隔で、またはアラートから起動することができる。例えば、クラウドリソースへの特権的なアクセスを求める従業員からのSlackリクエストに反応したり、疑わしいファイルの分析プロセスを自動化したりするような、シンプルなワークフローだ。

画像クレジット:Torq

LemonadeのCISOであるJonathan Jaffe(ジョナサン・ジャッフェ)氏によると「Torqのオートメーションで私たちチームのセキュリティ管理が変わりました。一例を挙げると、Torqを使ってウェブアプリケーションのファイアウォールのブロッキングのルールを管理すると、悪質なトラフィックのブロックに要する時間が70分の1になり、捕捉率は90%を超えました。これはとても大きな改善です」という。

TorqのCEOで共同創業者のOfer Smadari(オフェル・アダリ)氏によると、以前の資金調達から今回までの間、同社はユーザー体験の改良に集中してきた。「ユーザー体験への投資を増やし、ユーザーが他のシステムにもっと容易に接続できて、複雑なワークフローを簡単に作ることが可能で、インターフェースのスピードと応答性を上げるようにしました。また、創業時から一貫して、大小さまざまなエンタープライズをサポートできるためにスケーラビリティとレジリエンスに重点的に投資してきました」と氏は述べている。

特に今回の資金で重点投資を行いたいのが、サービス利用がかなり大規模になっている顧客や見込み客への対応だ。アダリ氏によると、同社のサービスの上で顧客が動かしているワークフローの平均数が毎週2〜3倍ずつ増加している。「顧客は、一度始めたらその後の拡張はとても速い。私たちが、そんな成長をサポートできるほどのサービスのデプロイになっていることを、有事になる前に確認しなければならない」という。

Torq自身は、セキュリティのチームをルーチンワークから解放してセキュリティ業界の人材不足に対応することが目的でも、しかしアダリ氏によると、同社にとって当面の最大の課題が雇用だ。

しかしInsight PartnersのマネージングディレクターであるSteve Ward(スティーブ・ワード)氏は次のように述べている。「短期間でTorqが成功したことは、プラットフォームがビジネスのあらゆる側面にわたってより良い保護の提供を目指すセキュリティチームの仕事を楽にしてくれることの証明だ。同社の直感的なプロダクトと経験豊富なチームにより、Torqは急速に業界のリーダーになりつつある。成長を続けているTorqとの提携は、私たちを元気にしてくれます」。

画像クレジット:Torq

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

人と人とのつながりを視覚化するConnect the DotsがシリーズAで17.1億円を調達

営業が常に求めているのは、見込み客との接触を上手く進める何かだ。ターゲット顧客に勤める人を知っている誰かに紹介してもらえれば、その顧客が関心をもってくれる可能性は高まる。

Salesforce(セールスフォース)の元幹部は、そうしたコネクションを簡単に見つけられるようにしたいと考え、Connect the Dots(コネクト・ザ・ドッツ)というスタートアップを立ち上げた。

仕組みはこうだ。登録すると、Connect the Dotsは手元にあるメールアドレスをすべてスキャンし、さまざまな企業とのつながりを探す。データを収集したら、相互に関連付ける。企業を指定すると、知り合いがいるかどうかがわかり、そのつながりの強さが3つの色がついた点で示される。すべて緑色であれば、それは確かなつながりであり、メールでの紹介をリクエストできる。

Salesforceの36番目の社員として1999年に入社したDrew Sechrist(ドリュー・シークリスト)氏は、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏の初期の営業チームにいた。Salesforceが何者で、ホステッドソフトウェアとは何なのかを、誰も知らなかった時代に、それらを売り込んでいた。同氏は、人脈が販売促進につながることを早くから認識していた。同氏はベニオフ氏を「ナンバーワンのアルファネットワーカー」と呼んだ。初めの頃は、ベニオフ氏のところに行けばいつも誰かを紹介してくれた。そうすればプレゼンが首尾よく運んだし、飛び込みに比べ、売れるチャンスもかなり高くなった。

関連記事:20歳になったSalesforceから学ぶ、スタートアップ成功の心得

シークリスト氏は、電子メールが重要なコネクターになると考えている。「私たちには、人間関係を表す、延々と増える電子メールがあります。それをまとめて、価値あるものにする方法がなかっただけなのです。しかし、機械学習やその他の高度な技術により、データから価値を抽出し、誰が誰を知っているかを示す関係性をグラフに表せるようになりました」と説明する。

同氏は、LinkedIn(リンクトイン)も同じことができるように設計されていると認めるが、あまりにもノイズが多く、それゆえに信頼性に欠けるという。

「営業や採用担当者などがLinkedInで誰かに人の紹介を頼んでも、頼まれた側が実際にはその人をよく知らないということが続くため、疲れてしまうのです」。

そこでシークリスト氏は、もっと良い方法を開発したいと考えた。現在、Connect the Dotsでは、リクエストに応じてソーシャルグラフのベータ版を提供している。また、ソーシャルグラフを利用している人を知っていれば、Clubhouse(クラブハウス)方式でユーザーベース構築を始めることもできる。

同社は、500万ドル(約5億7000万円)のシードラウンドを使って製品を開発した。先にNorwest Venture Partnersがリードする1500万ドル(約17億1000万円)のラウンドを完了した。既存投資家であるCloud Apps Capital PartnersとVelvet Sea Venturesも参加した。これで累計調達額は2000万ドル(約22億8000万円)となった。

現在、同社の従業員は55名。本拠地はサンフランシスコだが、従業員は分散しており、セルビアには大きなエンジニアリングチームがある。シークリスト氏は現在、マイアミに住んでいる。同氏は、新たな資金で来年中にチームを倍増させる計画だ。

Salesforce出身の同氏は、最近チームにV2MOMを作らせた。この文書のアイデアはSalesforceから持ちこんだものだ。SalesforceによるとV2MOMとは「ビジョン、バリュー、ミッション、目標、手段を表すマネジメントプロセスとそれらの頭文字をとったもの」だという。

「ちょうどV2MOMを完成させたところです。先週、ヨーロッパと米国からメキシコに人を送りました。1週間かけて当社のコアバリューを定義しましたが、その1つが『インクルーシブ』です。私たちは、すべての人を受け入れることのできる会社と製品を作りたいと思っています」。

特に、従業員の大部分がセルビア人であることから、人種的な多様性を確保するのは難しいと認めている。それでも、来年には従業員数を2倍にする計画の下、多様性の確保に取り組んでいる。シークリスト氏の計画では、職場はこれからもほぼリモート環境のままだ。そのため、どこからでも人を集めることができるはずだ。

シークリスト氏は、パートナーシップのためのネットワーク企業であるCrossbeamと同様、ネットワークが「ネットワークのネットワーク」へと成長していけば、フライホイール効果が生まれ、多くの人々が製品を使い、製品の価値が高まっていくと期待している。2022年前半には、この製品を一般に販売したいと考えている。

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi