大手がメタバースに夢中になる中、ARを食料品店での現実的な活用を構築する英Dent Realityが約3.9億円調達

AppleやFacebookが「メタバース」の未来に巨額の資金を投じる一方で、近年はARに勝機を見出そうとしているスタートアップに関するベンチャーの動きは明らかに低下している。Magic Leapなどの大型案件への投資で消耗した多くのVCはAR技術の短期的な成果についてテック大手にはチャンスが大いに残されていると見ているが、小規模のスタートアップも投資家にアピールするような参入の道を見つけようとしている。

ロンドンに拠点を置くDent RealityはARテクノロジーとハイパーローカルなマッピングの力を示す小規模なエクスペリエンスに特化し、まずは食料品店のような場所から取り組みを始めている。食料品店では、同社のARプラットフォームを利用して店内通路の詳しいレイアウトを買い物客に示し、店舗のデータベースと統合して特定の商品が置かれている棚のデータも提供する。AR機能を使うユーザーはスマートフォンをかざして目的の商品への経路を表示できる。

CEOのAndrew Hart(アンドリュー・ハート)氏は、オンラインの買い物客に対してパーソナライズをするツールが有益さを増しているため、小売店はオンラインのツールセットを実店舗の買い物客のエクスペリエンスに活かす方法に広く関心を持っていると語る。Dent Realityは食料品店で商品を見つけることに特化したプラットフォームではないが、同氏によれば食料品店は商品の密度が高いため技術のストレステストをするには理想的な場所だという。

同氏はTechCrunchに対し「我々が解決したい課題に対して最も難しい場所として食料品店を選びました」と述べた。

投資家はDent Realityの取り組みにチャンスがあると見ている。同社はPi Labsが主導するシードラウンドで340万ドル(約3億9000万円)を調達した。このラウンドにはSugar Capitalと7Percent Venturesも参加した。

Appleが開発者向けARプラットフォームのARKitをリリースしてからの数年間、ハート氏は自分が作った未来のAR技術のデモの多くをTwitterで紹介してきた。Dent Realityは未来へ向けたそうしたユースケースのいくつかを現在の開発者向けテックプラットフォームにしようとする取り組みだ。スマートフォンはARを利用するには完璧なデバイスではないが、同社は消費者に3Dインターフェイスの体験と操作を提供している。ハート氏は、3Dインターフェイスの利用の中心となるのは今後到来するARメガネだろうと考えている。

画像クレジット:Dent Reality

同氏は「一般にインターフェースは平らなスマートフォンの画面に制限されています。ARには平面のインターフェースでは実現できない、多くの可能性があります」と語る。

Dent Realityは今後、大規模なオフィスビルから病院、大学のキャンパスなどあらゆる場所で、ハイパーローカルなマップデータとAR、同社独自のアプローチによって、建物に新たなハードウェアインフラを導入することなく、公共のWi-Fiデータとスマートフォンのセンサーからユーザーの居場所を特定する取り組みを進めたい考えだ。

画像クレジット:Dent Reality

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(文:Lucas Matney、翻訳:Kaori Koyama)

英国、2022年から新築住宅・オフィスにEV充電器の設置を義務づける

英国政府は、2022年から英国のすべての新築住宅およびビジネスに電気自動車(EV)充電ステーションの設置を義務付けると発表した。この新しい施策は、毎年14万5千カ所の充電ポイントを追加することで、英国でのEV普及を促進することを目的としている。

「これにより、人々はEVの未来に備えた新築物件を購入することができ、また、英国内の新しい店舗や職場で充電ポイントを容易に利用できるようにすることで、今日のガソリン車やディーゼル車の給油と同じように簡単に利用できるようになります」とプレスリリースには記されている。

英国政府はすでに25万台以上の充電ポイントの設置を支援しているが、この新ルールにより、初年度だけで50%以上の増加が見込まれる。スーパーマーケットやオフィスビルなどの建物に加え、10台以上の駐車スペースを持つ大規模な改築も対象となる。ただし、設置場所の仕様や出力など、ルールの詳細はまだ公表されていない。

英国の野党である労働党は、ロンドンと同国の南東部には「イングランドとウェールズの他の地域を合わせたよりも多くの充電ポイントがある」と指摘し、新法はその点で役に立たないと主張している。また、低・中所得者層がEVをより購入しやすくなるような条項も含まれていないと、BBCは報じている。

英国政府は、予定よりも10年早い2030年までに化石燃料車の販売を完全に禁止することを目指している。同国政府は以前、英国内のEV充電インフラ整備に5億ポンド(約769億円)を投じる用意があると述べていた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

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(文:Steve Dent、翻訳:Dragonfly)

英Amazonで1月19日から英国発行Visaクレジットカードが使えなくなる

Amazon(アマゾン)がVisa(ビザ)との闘いをエスカレートさせている。2022年1月19日から、Amazonは英国で発行されたVisaクレジットカードの取り扱いを停止する。英Amazonの顧客にこの変更がメールで伝えられ、クレジットカード取引にともなってVisaが高額な手数料を課していることが理由であるとされている。Amazonの利用者は年末年始の買い物にはVisaクレジットカードを使うことができるが、その後はVisaデビットカード、またはMastercardやAMEXなど他のクレジットカードに切り替える必要がある。

Amazonの広報は発表の中で以下のように述べている。

カード利用にともなうコストは、お客様にベストプライスを提供しようと努力している企業にとって常に障壁です。こうしたコストは技術の進歩にともない減少してしかるべきですが、実際にはコストは下がらずむしろ上がっています。Visaの利用手数料が依然として高額であることから、残念ながら当社のAmazon.co.ukでは英国で発行されたVisaクレジットカードの利用を2022年1月19日に停止します。お客様は引き続きVisaデビットカードを含むすべてのデビットカード、およびVisa以外のクレジットカードを利用してAmazon.co.ukでショッピングをしていただけます。決済に関する状況が世界中で急速に変化する中、当社は今後もお客様のために革新を続け、世界中の当社ストアで速く、安く、包括的な支払い方法を追加し推進していきます。

一方Visaの広報は「Amazonが今後消費者の選択を狭めると脅しをかけていること」に失望していると述べ「消費者の選択が限られている場合に、勝者はいない」とした。Visaはさらに、カード会員が「2022年1月にAmazonが課す制限を受けることなく」ウェブサイトで英国発行のVisaクレジットカードを使い続けられるようにAmazonとの間で解決に取り組んでいると述べた。ちなみに、Amazonと他のクレジットカード企業との関係はもっと良好だ。英Amazonは現在、消費者向けクレジットカードでMastercardと、ビジネスカードではAMEXと提携している。

AmazonとVisaはお互いから有利な条件を引き出そうとして闘いを公開しているのかもしれない。Amazonはここ数カ月間、Visaに圧力をかけてきた。シンガポールのAmazonサイトでは9月15日からVisaクレジットカードでの購入に0.5%の追加料金を課し、その1カ月半後にはオーストラリアでもVisaでの購入に追加料金を課すようになった。どちらの場合もAmazonは、Visaクレジットカード以外の支払い方法を追加した顧客に対し、ギフトカード(30シンガポールドル / 約2500円、20オーストラリアドル / 約1600円)を提供した。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Håkan Dahlström Photography / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Mariella Moon、翻訳:Kaori Koyama)

英政府が国家安全保障と競争に関する懸念でNVIDIAのArm買収に対するより詳細な調査を開始

チップメーカーのNVIDIA(エヌビディア)が英国のチップ設計会社Arm(アーム)を400億ドル(約4兆5820億円)で買収する計画について、英政府は競争市場庁(CMA)に詳細な調査を行うよう指示し、英国の競争規制当局による綿密な調査が行われることになった。

英デジタル長官Nadie Dorries(ナディン・ドリーズ)氏は、競争および国家安全保障上の懸念を理由に、第2段階の調査を実施するようCMAに書面で指示したことを現地時間11月16日に発表した。

英政府は8月にCMAの予備調査の詳細を発表していた。調査では、この買収がデータセンター、IoT(モノのインターネット)、自動車分野、ゲームアプリケーションの市場における「実質的な競争の低下」につながる可能性があるとして、買収にともなう多くの競争上の懸念を指摘していた。

11月16日に公開されたCMAの第1段階報告書は、競争上の理由からより詳細な調査を推奨しているが、国家安全保障上の問題については判断を下していない。

2021年4月、英政府は国家安全保障上の理由で介入通知を出し、CMAに対してより詳細な調査が必要かどうかを判断するために、この取引の影響に関する報告書を作成するよう求めた。

ドリース氏は11月16日、国家安全保障上の利益は依然として「関連性がある」とし「さらなる調査の対象とすべきである」と述べた。

2002年に制定された企業法に基づき、デジタル長官は、国家安全保障上の問題を含むいくつかの公益上の考慮事項に基づいて、合併に介入するための準司法的な決定を下すことができる法的権限を有している。

ドリース氏は声明の中で次のように述べている。「NVIDIAが提案しているArmの買収に関する競争市場庁の『フェーズ1』報告書を慎重に検討し、さらに詳細な『フェーズ2』調査を行うよう要請することにしました。Armは、世界のテクノロジー・サプライチェーンの中で特異な地位にあり、この取引の影響を十分に考慮しなければなりません。CMAは今後、競争および国家安全保障上の観点から私に報告し、次のステップに関するアドバイスを提供します」。

「繁栄するテック部門に対する政府のコミットメントは揺るぎないものであり、外国からの投資を歓迎しますが、今回の取引の影響を十分に検討することは正しいことです」とドリース氏は付け加えた。

第2段階の調査への言及についてNVIDIAにコメントを求めている。

CMAは第2段階の調査を行い、その結果を政府に報告するまでに24週間(8週間の延長の可能性あり)を与えられる。つまり、少なくとも、NVIDIAによるARM買収は、取引の承認を得るまでにさらに数カ月の遅延が生じることになる。

デジタル長官は、国家安全保障上および(または)競争上の理由から、買収に関連して「不利な公益認定」を行うかどうかの決定を下すことになる。

国家安全保障の問題に関する最終的な判断は、英国の国務長官が行う。国務長官は、CMAの最終報告書を受け取ってから30日以内に判断を下す。

ドリース氏は、公共の利益に反する介入理由がないと判断した場合、CMAに案件を差し戻すが、CMAは競争上の理由で反対の助言をする可能性があり、また(あるいは)懸念を解消するために案件に条件を課すことができる。

つまり、国家安全保障上の理由と競争上の理由の両方、あるいはどちらか一方の理由で買収が阻止される可能性があり、承認にはかなりの障壁がある。

しかし、最終的に両方の懸念が解消され承認される可能性もある(CMAの第1段階の調査で重大な懸念が示されたため、競争面で懸念がなくなる可能性は低いと思われる)。

また、救済措置(特定の懸念に対処するための条件や制限)付きで取引が承認される可能性もある。

高まる懸念

NVIDIAによるArm買収計画は、英国内ではすぐに反対の声が上がり、Armの共同設立者の1人は、NVIDIAに買収されないように「ARMを救う」キャンペーンを始めた

世界的なチップ不足により、半導体分野におけるサプライチェーンの安定性への懸念が強まっている(ただし、Armは自社でチップを製造するのではなく、IPの開発やライセンス供与を行っている)。EUは最近、半導体供給に関する地域主権の強化を目的とした半導体法を制定する計画を発表した

欧州連合(EU)も10月末に独自の詳細な調査を発表するなどNVIDIAとArmの取引を直接調査しており、NVIDIAがArmを買収するための新たな障害となっている。

欧州委員会は、CMAの第1段階の調査と同様の見解を示し、NVIDIAとArmの合併に関する予備的分析では、多くの競争上の懸念があると述べた。

「欧州委員会は、合併した企業が、NVIDIAのライバル企業によるArmの技術へのアクセスを制限する能力と動機を持つことになり、提案されている取引が価格の上昇や選択肢の減少につながることを懸念しています」とEUの幹部は先月述べた。「ArmとNVIDIAは直接競合していませんが、ArmのIPは、たとえばデータセンター、自動車、IoTなど、NVIDIAと競合する製品の重要なインプットとなっています」と、競争担当のMargrethe Vestager(マルグレーテ・べステアー)氏は声明で述べた。

「我々の分析によると、NVIDIAによるArmの買収は、ArmのIPへのアクセスを制限または低下させ、半導体が使用されている多くの市場に歪んだ影響を与える可能性があります。我々の調査は、欧州で活動する企業が、最先端の半導体製品を競争力のある価格で生産するために必要な技術への効果的なアクセスを継続できるようにすることを目的としています」。

EUは2022年3月15日までにこの買収を認めるかどうか判断する。

10月のロイター通信の報道によると、欧州委員会はEUの綿密な調査を回避しようとするNVIDIAが先に提示した譲歩案に揺るがなかったという。

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

セキュリティスキルをゲーム化して教える英Immersive Labsが米Snap Labsを買収、気候変動も考慮して

サイバーセキュリティのスタートアップであるImmersive Labs(イマーシブラブズ)は、最近7500万ドル(約85億6000万円)のシリーズCラウンドをクローズして相当な資金を獲得したが、同社は「数百万ドル(数億円)規模」の株式と現金を組み合わせた非公開の取引で、米国のサイバースタートアップSnap Labs(スナップラブズ)を買収するとのこと。Snap Labsは、今回の買収以前にはベンチャー資金を調達していないことがわかっている。

最新のサイバー脅威インテリジェンスを「ゲーム化」して企業の従業員にサイバーセキュリティのスキルを教えるImmersiveは、今回の買収により、組織が社内でサイバー知識を身につけることを支援するための新たな力を得られるとしている。

サイバーセキュリティは技術チームだけの問題ではなく、会社全体のビジネスクリティカルな問題へと変化しているため、Immersiveのアプローチは、国際的にも多くの新規ビジネスを獲得しているようだ。一方のSnap Labsは、現在Accenture(アクセンチュア)、Mandiant(マンディアント)、CrowdStrike(クラウドストライク)と提携しており、米国での実績も十分にあるため、Immersiveのサービスを大幅に強化することになるだろう。

Immersive LabsのJames Hadley(ジェームズ・ハドリー)CEOは次のように述べている。「Snap Labsの買収により、お客様は、直面するリスクにピンポイントで対応した詳細でリアルな体験を通し、より優れたサイバー人材を育成することができます」。

ペンシルバニアを拠点とするSnap Labsは、共同創業者のChris Myers(クリス・マイヤーズ)氏とBarrett Adams(バレット・アダムス)氏によって2016年に設立された。

マイヤーズ氏は「2つのプラットフォームは自然にフィットしており、組み合わせることで、お客様がサイバー脅威に対する耐性をさらに高められるよう支援できると期待しています」と述べている。

また、これには気候変動に関する側面もある。Snap Labsは「エラスティックコンピューティング」を採用している。これは、サーバー上で仮想環境を継続的に稼働させて電力を消費するのではなく、使用するときだけ仮想環境を起動し、使用しないときは直ちにシャットダウンするというものだ。これは、各サイバー攻撃シミュレーションのカーボンフットプリントにプラスの影響を与え、全体としても大きな影響を与える。

ハドリー氏は筆者との通話で次のように語った。「Snap Labsの技術を利用することで、企業が自社のネットワークを仮想的に再現するなど、非常にクールなことが可能になります。お客様は複雑な規模の独自ネットワークを構築し、複製することで、マルウェアやペネトレーションテストに対するチームの戦闘力を試すことができるようになります」。

Immersive Labsは、英国の退役軍人を対象にサイバー職業訓練を行うTechVetsという慈善団体を無料で支援している。

画像クレジット:Chainarong Prasertthai / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

零細企業にハードウェア不要のカード決済を提供するNomodが3.8億円を調達

新興国の零細企業は、いくつかの理由でデジタル決済の利用にいまだに苦労している。1つには、そうした企業の多くはその規模ゆえに、世界のさまざまな決済システムから除外されていることがある。また、プロバイダーからハードウェアを調達するには費用がかかることも挙げられる。

英国を拠点とするフィンテックNomodは、追加のハードウェアなしに携帯電話でカード決済を受け付けるプラットフォームを提供することで、これらの零細事業者がカード端末を回避できるようにしている。同社は5000万ドル(約57億円)の評価額で340万ドル(約3億8000万円)のシード資金を調達した。

創業者でCEOのOmar Kassim(オマール・カシム)氏がTechCrunchに語ったところによると、加盟事業者ベースを獲得し、金融オペレーティングシステムを構築するのに、決済は同社のフライホイールとして機能する。

加盟事業者に対して、口座、カード、地域の決済ネットワーク、融資へのアクセスを提供するというのが同社の計画だ。この一連のサービスは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バングラデシュなど、Nomodが大きな加盟事業者基盤の構築を目指している主要市場では不可欠だ。

例えば、サウジアラビアでは、法人100万社超のうち銀行融資を受けられるのはわずか3%だ。アラブ首長国連邦では、ビジネス用の銀行口座を開設するのに半年近くかかる。また、バングラデシュでは、中小企業にとってカードPOSのハードウェアは非常に高価だ。

Nomodを使えば、加盟事業者は携帯電話にNomodをダウンロードして、対面での支払いや顧客からの支払いリンクを処理することができ、決済問題に対処できる。

顧客はVisa、Mastercard、American Express、Union Payなどのさまざまなカードを利用できる他、NFCやQRコードによる非接触型の決済も可能だ。また、加盟事業者は135種類以上の通貨で課金することができる。

「加盟事業者はいま、Nomodをインストールして3、4分でサインアップし、決済リンクを使った対面およびオンラインでの決済の処理を始めることができます」と、カシム氏はTechCrunchに語った。

オマール・カシム氏(NomodのCEO)

Nomodは、MENA(中東・北アフリカ地域)およびGCC(湾岸協力会議)地域の加盟事業者の獲得にフォーカスしてきたが、カシム氏によると、このプラットフォームはグローバル展開しており、欧州、米国、オーストラリア、アジアの40カ国以上からサインアップできるようになっている。

同社はナイジェリアと南アフリカの加盟事業者とテストを行っていて、近い将来、両市場でのサービス開始を見込んでいる、とカシム氏は話す。

「カードの受け入れはかなり均質な行為である、というのが当社の考えです。オーストラリア、インド、あるいはどこでやろうが、場所はあまり関係がありません。我々は、多くの市場で並行して行うことができると考えており、現在44カ国の加盟事業者が当社のプラットフォームを利用できるようになっています」。

今のところ、米国、英国、アラブ首長国連邦の加盟事業者はそれぞれの国の通貨(ドル、ポンド、ディルハム)で決済することができる。

しかし、南アフリカのように通貨の変動がある市場では、Nomodは多少のFXコストを適用している。カシム氏によると、このような市場で大幅に受け入れられれば、Nomodは加盟事業者のためにプラットフォームを最適化し、現地通貨での決済を開始するという。

YCの経歴によると、Nomodは自らを「Square(スクエア)からハードウェアを除いたもの」と表現しているが、2010年にStripe(ストライプ)がサービスを開始して以来、決済がどのように進化してきたかを考えると、この名前は示唆に富んでいるとカシム氏は確信している。

同氏によると、950億ドル(約10兆円)規模の企業が新たに立ち上げるとしたら、ハードウェアは必要ない。しかし、同氏の考えは、ほとんどの企業がウォレットやトークンを使ってフィンテック取引を行っているアラブ首長国連邦のような新興市場での決済の仕組みに基づいている。Nomodは、対面での決済を受け付けるStripeのリストにあるパートナーの1社だ。

「一部のプラットフォームでは、オンライン取引の約60~70%がApple Payによるものとなっています。最近では、消費者が積極的にデバイスにトークンを付けて決済していることも明らかになっています」。

Nomodの前に、カシム氏はeコマースのマーケットプレイスプラットフォームJadoPadoを運営し、中東・北アフリカ地域でAmazon(アマゾン)と競合するNoon(ヌーン)に売却した。

その後、いくつかのコンサルティング業務に携わり、フィンテックとネオバンクの波が英国を襲ったことに注目して、2018年にサイドプロジェクトとしてNomodを立ち上げた。それは、Stripeのアカウントを持っている人なら誰でも、対面での支払いができるシンプルなアプリだった。

このアプリを運営することで、カシム氏は将来の決済のあり方について2つの大まかなアイデアを得た。1つ目は、消費者向けのフィンテックでは、プラスチックカードがデジタルトークンやネイティブウォレットに取って代わられること。また、加盟事業者を対象としたフィンテックでは、従来のハードウェアからソフトウェア主導のソリューションへと移行するということだ。

「世界を見渡しても、決済のための有力なモバイルソフトウェアソリューションは現在ありません。だからこそ、支払いの受付のためのWhatsAppやTelegramのようなもの、あるいは決済リンクやサブスクリプションのようなものでの対面ソリューションを構築することにチャンスがあると感じています」。

2021年3月に正式にサービスを開始して以来、Nomodは約4500の加盟事業者を獲得した。同社によると、その総処理額は11.5倍に増え、ランレートは年700万ドル(約8億円)になっている。

Y Combinatorの夏季クラスを卒業したばかりのNomodは、Global Founders Capitalがリードした投資を獲得した。このラウンドにはKingsway Capital、Goodwater CapitalなどのVCや、DST Globalのパートナーを含むシリコンバレーや世界のエンジェル投資家たちが参加した。

画像クレジット:Nomod

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nariko Mizoguchi

カーボンオフセットのサブスクを行うEcologiがクラウドファンディングで資金調達

人々は音楽に定額料金を支払っているのだから、カーボンオフセットにも定額料金を支払い、気候危機に対する良心の呵責を和らげようとする人だっているはずだ。そう考えた英国のEcologi(エコロジ)というスタートアップ企業は、サブスクリプション会員から集めた資金を使って、アフリカやラテンアメリカなどの地域で10日ごとに100万本の木を植えたり、インドネシアの泥炭地を保護する活動などを行っている。そうすることによって会員のカーボンフットプリントを減らし、カーボンオフセットを購入することで会員の排出した二酸化炭素を相殺するというわけだ。

Ecologiは2021年4月、プレマネー評価額1650万ポンド(約25億2000万円)でシード投資ラウンドをクローズし、リードインベスターであるGeneral Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)とEntrée Capital(アントレ・キャピタル)から、405万ポンド(約6億2000万円)の資金を調達した。

3万5000人の個人および企業が利用しているこのサブスクリプションサービスでは、会員は毎月少なくとも12本の木を植えて「自分の森を育てる」ことができ、さらに幅広い炭素削減プロジェクトに資金を提供することで、自分のカーボンフットプリントをオフセットすることができる。

2019年の設立以来、これまでブートストラップで運営してきた同社は、領収書、証明書、取締役会議事録、財務諸表などもすべて公開台帳に載せている。

現在は、英国の投資クラウドファンディングプラットフォームであるCrowdcube(クラウドキューブ)では、目標額の200万ポンド(約3億500万円)を上回る資金を集めており、プレマネー評価額は7500万ポンド(約115億円)に達している。この資金は、製品の開発、チームの拡大、米国およびEUでの事業拡大に充てられる予定だ。また、同社は現在、B-Corp(ビーコープ)認証を待っているところだという。

2022年初頭には、企業向けのリアルタイムカーボンフットプリントソフトウェア「Ecologi Zero(エコロジ・ゼロ)」の発売を予定している。

これによって同社は、Normative(ノーマティブ)、Spherics(スフェリックス)、Plan A(プランA)といった他のカーボンフットプリントSaaSスタートアップと競合することになる。

Ecologiは、9カ月間で650%以上の成長を遂げ、2020年1年間で炭素削減による効果を330%増加させたと主張している。2021年1月におけるARR(年間経常収益)は300万ポンド(約4億6000万円)だったが、2021年は850万ポンド(約13億円)のARRで終える見込みだという。

同社はこれまでに合計で2500万本以上の木を植え、120万トンのCO2を相殺したと主張する。これらの木の大部分は、マダガスカル、モザンビーク、ニカラグア、米国、オーストラリア、英国、ケニアで植えられた。さらにインドネシアの泥炭地保護、トルコにおける埋立てガスからのエネルギー生産、インドにおける廃棄籾殻からのエネルギー生産などのプロジェクトを支援している。

共同設立者でCEOのElliot Coad(エリオット・コード)氏は次のように述べている。「コミュニティ・オーナーシップは我々の活動の中心であり、過去2年間の成長の原動力となってきました。だから、当社の熱心な定額会員のみなさまに、Ecologiの株式を所有する機会を提供することは、当然のことだと考えました。そこで私たちは、2021年4月にGeneral Catalystから出資を受けて以来、この3カ月間はベンチャーキャピタルからの出資を断り、コミュニティベースのクラウドファンディングを採用したのです」。

画像クレジット:Ecologi / Ecologi co-founder Elliot Coad

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイルゲームでオーディオ広告を配信するAudioMobがシリーズAで約16億円調達、グーグルなどが支援

AudioMobは「押しつけがましくない」オーディオ広告をモバイルゲームに配信するスタートアップだ。ポップアップするようなちょっとした広告はプレイヤーの気に障るようなものではなく、AudioMobはそのメカニズムをどうにかして解明したようだ。

AudioMobは、Makers FundとLightspeed Venture Partnersが主導するシリーズAで1400万ドル(約15億9500万円)を調達した。Sequoia Scout ProgramとGoogleも参加した。これまでの調達金額の合計は1600万ドル(約18億2200万円)となった。

AudioMobは今後も実験的なオーディオテクノロジーの開発、複数の国での特許申請、ロンドンとアブダビにあるオフィスの拡大を続ける計画だ。同社は、評価額が1億1000万ドル(約125億3000万円)程度であると主張している。

筆者は2020年にCEOのChristian Facey(クリスチャン・フェイシー)氏とCTOのWilfrid Obeng(ウィルフリード・オベン)氏に会った。同社が活発に動き出し早期のトラクションを得て、Ed Sheeran(エド・シーラン)やNas(ナズ)、そしてIntel、Jeep、KitKatなどのブランドと協業したころだ。

AudioMobは現在、中国を除くすべての国のモバイルゲームにオーディオ広告を配信し、特にアラブ首長国連邦、ドイツ、カナダでは成長が目覚ましい。

フェイシー氏は「我々は、AudioMobのビジョンに対して長期的な成功と我が社の未来を期待する投資家の熱い思いに感動しています。我々はオーディオで業界全体に革新を起こそうとしています。業界を適切なやり方でディスラプトする技術とチームを作り、最終的にはテック業界の新たなユニコーンになるでしょう」と述べた。

オベン氏は「利用者は邪魔をされたくない、広告主は広告を聞いてもらいたい、ゲーム開発者はリテンションに影響を及ぼさずに収益を上げたいと考えるものです。我々はこの3つのニーズをすべて満たすプロダクトを開発しました」と述べた。

Googleは2021年6月に、ヨーロッパの黒人ファウンダー基金の対象とする30社のスタートアップの1つとしてAudioMobを選出した

画像クレジット:AudioMob、共同創業者のクリスチャン・フェイシー氏(左)とウィルフリード・オベン氏(右)

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

英国労働党、党員データ流出の原因は第三者業者を狙ったサイバー攻撃と発表

英国の労働党は、第三者企業へのサイバー攻撃により、党員のデータが漏洩したことを確認した。

労働党は、全党員に送られ、同党のウェブサイトにも掲載されたEメールの中で、10月29日に名前の明かされていない第三者データ処理業者から「サイバーインシデント」の報告を受けたと述べている。

詳細はまだ不明だが、労働党によると、このインシデントにより「かなりの量の党データがシステム上でアクセス不能になった」という。インシデントに対応した人物がSky Newsに語ったところによると、この事件は労働党のサードパーティサプライヤーに対するランサムウェア攻撃だったとのこと。労働党はまだこれを確認しておらず、TechCrunchはさらなる情報を求めている。

また、侵害の規模も不明で、どのようなデータが流出したかもまだわかっていない。有料メンバーの財務情報を保有している労働党は、影響を受けたデータについて「党員、登録・提携している支援者、その他党に情報を提供した個人を含む」としている。

しかし、元党員や非党員にも多くの影響があったようだ。あるTwitter(ツイッター)ユーザーは、2009年に党を脱退したにもかかわらず、データ漏洩の通知を受け取ったと主張しており、他のユーザーは、党員になったことがないにもかかわらず、メールを受け取ったと述べている。また、労働党員ではないが、労働党系組合の組合員として政治献金を支払ったことでデータ流出の影響を受けたという人もいる。

労働党には約43万人の党員がいる。同党の声明によると、調査は進行中だ。国家犯罪対策庁(NCA)、国家サイバーセキュリティセンターにも報告し、情報コミッショナーオフィス(ICO)にも報告したという。

NCAのスポークスパーソンは次のように述べている。「NCAは、労働党に影響を与えたサイバーインシデントの犯罪捜査を主導しています。我々は、潜在的なリスクを軽減し、この事件の性質を評価するために、パートナーと緊密に協力しています」。最近、英国の各政党にデータ保護の実践を改善するよう促したICOも、今回の事件について積極的に調査を行っていることを確認している。

労働党は、今回の事件の全容、状況、影響を「緊急に調査」するために、攻撃を受けたサードパーティサプライヤーとも緊密に協力していると述べている。なお、今回の攻撃では、党自体のデータシステムには影響がなかったことを強調している。

労働党がランサムウェアの被害に遭ったのは、今回の事件が初めてではない。労働党は2020年、クラウドソフトウェア企業のBlackbaud(ブラックボード)が保管していたデータがランサムウェア攻撃を受けたとして、党員に警告を発した。当時、同党は、数年にわたる寄付者の情報が流出したと考えられると述べていた。

画像クレジット:Oli Scarff / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

持ち運びも簡単なスーツケースサイズの電気自動車用パワーバンク「ZipCharge Go」

ZipCharge(ジップチャージ)は、航続距離で不安を感じている人にガソリン車から電気自動車(EV)への乗り換えを納得させることができるかもしれない新しいタイプのEV用充電プロダクトを発表した。英国のスタートアップZipChargeは、Cop26気候サミットでZipCharge GoというEV用のパワーバンクを披露した。ZipCharge Goは、スーツケースほどの大きさで、重さは約50ポンド(約22キロ)。車輪と格納式ハンドルが付いているので、ユーザーはトランクに入れておいて、充電したいときには簡単に取り出すことができる。

同社によると、車にGoを30分間つなげると、最大20マイル(約32キロ)の走行が可能になる。さらに容量を増やしたバージョンでは、最大40マイル(約64キロ)走行分を給電できる。このデバイスは、タイプ2のソケットを備えたプラグインハイブリッド車とEVに対応し、30分から1時間で車をフル充電することができる。デバイスそのものの充電はコンセントに差し込むだけで簡単に行うことができる。また、ユーザーはアプリを使ってデバイスの操作やモニタリングを行い、充電をオフピークの時間帯に予約して電気代を安く抑えられることができる。

航続距離への不安は最近ではあまり問題にならなくなっているが、それでもまだEVへの乗り換えに踏み出せないでいる人がいる。この問題を解決するために、Gogoro(ゴゴロ)はスクーター用の交換可能なバッテリー技術を開発したが、EVのバッテリーは通常、交換できない。SparkCharge(スパークチャージ)にはRoadieというポータブルEV充電システムがあるが、Goのように持ち運びは簡単ではない。

とはいえ、ZipCharge Goはまだ発売されていない。InsideEVsによると、ZipChargeは、4kWhと8kWhのバージョンをリリースし、2022年の第4四半期に発送を開始する予定だという。最低月額49ポンド(約7600円)でリースすることができるが、1台分のお金を払うことを気にしないEV所有者や、充電設備を設置していないホテルなどの事業者は購入することもできる。ZipChargeはまだ価格を明らかにしていないが、The Sunday TimesのDrivingセクションによると、7.2kWの家庭用充電ポート設置と同程度の価格での販売を目指しているとのことだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:ZipCharge

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

需要に対する工場の対応力向上のため金属加工の製造サプライチェーン見直すFractory

新型コロナウイルスのパンデミックで甚大な被害を受けた製造業界。しかし最近、その活気を取り戻す兆しがいくつか見えてきた。その1つは、変動する経済やウイルスの感染拡大など不安定な要素によって需要が上下するなか、需要に対する工場の対応力を高めるべく、新たに取り組みが進められている点だ。柔軟なカスタム製造で新たに頭角を現しつつあるスタートアップ企業のFractory(フラクトリー)は、2021年9月初旬、シリーズAで900万ドル(約9億8900万円)の資金調達をしたことを発表し、その傾向を改めて際立たせる結果となった。

この資金調達は、初期成長やポストプロダクション、ハイテクのスタートアップなどに注力する欧州の投資会社、OTB Ventures(OTBベンチャーズ)主導で進められた他、既存の投資会社であるTrind Ventures(トリンド・ベンチャーズ)Superhero Capital(スーパーヒーロー・キャピタル)United Angels VC(ユナイテッド・エンジェルズVC)Startup Wise Guys(スタートアップ・ワイズ・ガイズ)、そしてVerve Ventures(ヴェルヴェ・ベンチャーズ)もこの調達に参加した。

Fractoryはエストニアで設立され、現在は英国・マンチェスターを拠点とする会社だ。従来、国内の製造業向けの強力なハブとして存在し、顧客と緊密な協力体制を築いてきた。そのFractoryが、カスタムの金属加工品を必要とする顧客がより簡単にアップロードや発注ができるよう、そして工場側もそれらのリクエストに応じて新規の顧客や仕事を獲得できるように、プラットフォームを構築したのだ。

FractoryのシリーズAは、当社のテクノロジーを引き続き展開し、さらに多くのパートナーをエコシステムに取り込む目的で用いられる。

現在までに、Fractoryは2万4000人もの顧客を獲得し、何百もの製造業者や金属関連会社と連携してきた。合計すると、250万個以上もの金属部品の製造を支援してきたことになる。

ここで整理しておくと、Fractory自体は製造業者ではなく、同社にはそのプロセスに参入する計画もない。業種はエンタープライズ向けソフトウェアであり、製造(現在は金属加工)を担当できる会社向けにマーケットプレイスを提供し、金属加工品を必要とする会社とやり取りしている。インテリジェントなツールを活用して必要な加工品を特定し、該当の加工品を製造できる専門の製造業者にその潜在的な仕事を紹介するというわけだ。

Fractoryが解決しようとしている課題は、多くの業界のそれと同じである。さまざまな供給や需要が発生し、変動が多く、一般的に仕事の調達方法が非効率なケースだ。

Fractoryの創設者兼CEOのMartin Vares(マーティン・ヴァレス)氏は、筆者に対し、金属部品を必要とする企業は1つの工場を得意客にする傾向があるようだと話す。だが、これはつまり、その工場が仕事に対応できない場合は企業が自力で他の工場を探さないといけないということだ。時間がかかるうえ、費用も重なるプロセスとなる。

「製造業は非常に断片化した市場で、製品の製造方法も幅広くあるため、その2つの要素が複雑に絡まり合っているんです」ヴァレス氏は続ける。「昔は、何かをアウトソーシングするには何通ものメールを複数の工場に送る必要がありました。とはいえ、30社ものサプライヤーに個別に送ることは到底できません。そこで、ワンストップのショップを立ち上げたのです」。

一方で、工場はダウンタイムを最小化するため、仕事の工程を改善できないか常に模索している。工場としては、仕事がない時間帯に作業員を雇ったり、稼働していない機械のコストを払ったりする事態を避けたいのだ。

「アップタイムの平均キャパシティは50%ですね」とヴァレス氏は、Fractoryのプラットフォームにおける金属加工施設(さらには業界全般の施設)についてこのように述べている。「使用中の機械よりも、待機中の機械の方がずっと多いんです。そこで、余剰キャパシティの問題を何としても解決し、市場の機能性を高めて無駄を削減したいと考えています。工場の効率性を高めること、これが持続可能性にもつながるのです」。

Fractoryのアプローチは、顧客をプロセスに取り込むスタイルだ。現在、これらの顧客は一般的に建築業界をはじめ、造船、航空宇宙、自動車といった重機産業に多く存在し、これらの顧客に、必要な製品を規定したCADファイルをアップロードしてもらっている。これらのファイルは製造業者が集まるネットワークに送信され、そこで仕事の入札と引き受けが行われる。フリーランス向けマーケットプレイスの製造業版といったようなものだ。その後、これらの仕事のうちおよそ30%は完全に自動で進められ、残りの70%については、仕事の見積書や製造過程、配達などのアプローチに関してFractoryが関与する形で顧客にアドバイスを行っている。ヴァレス氏によると、今後はさらにテクノロジーを搭載し、自動化できる割合を増やしていくとのことだ。RPAへの投資を拡大するだけでなく、顧客の希望や最適な実行方法をより良く把握するためのコンピュータビジョンについても投資を拡大する。

現在、Fractoryのプラットフォームは、CNC加工などの仕事を含め、レーザー切断サービスや金属の曲げ加工のサービスについて発注の支援を行っている。次の目標は、産業向けの3D印刷に対応することだ。石細工やチップ製造など、他の素材についても検討を進める。

「製造業は、ある意味では最新化がいつまでたっても進まない業界ですが、それも驚くことではありません。設備が重く、コストも高いため「壊れるまで修理はするな(触らぬ神に祟りなし)」というモットーは通常この業界では通用しないからです。そのため、せめて従来からある設備をより効率的に運用しようと、よりインテリジェントなソフトウェアを構築している企業が、ある程度基盤を固めることができているのです。米国で生まれた大手企業のXometry(ゾメトリー)は、同じくカスタム部品を必要とする企業と製造業者の架け橋を築いた企業ですが、そのXometryは2021年初めに株式を公開し、今では時価総額が30億ドル(約3,292億円)以上にのぼっています。他にも、Hubs(ハブズ)(現在はProtolabsによって買収)やQimtek(キムテック)などが競合として存在します」。

Fractoryが売り込んでいるセールスポイントは、一般的に顧客の地域に根差した製造業者を重視することで、仕事における流通の側面を低減させ、炭素排出量を抑えられるよう取り組んでいる点だ。ただし、会社の成長に応じて当社がこのコミットメントに遵守しつづけるのかどうか、そうであればどのようにそれを実現するのかは今後に注目だ。

現在のところ、投資会社はFractoryのアプローチとその急速な成長を証拠に、これからも業界に影響を及ぼすだろうと見込んでいる。

「Fractoryは、他の製造環境では見られないエンタープライズ向けのソフトウェアプラットフォームを生み出しました。急速に顧客を獲得している事実から、Fractoryが製造サプライチェーンにもたらす価値は明らかに実証されています。これは、イノベーション対応できるエコシステムを自動化し、デジタル化するテクノロジーです」Marcin Hejka(マルチン・ヘイカ)氏は声明でこのように述べている。「私たちはすばらしい製品と才能あふれるソフトウェアエンジニアのみなさんに投資しました。彼らは、製品開発に全力を注ぎ、圧倒的なスピードで国際的に成長しつづけています」。

画像クレジット:Fractory

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

非テック企業のAIアプリ構築を支援するプラットフォームPeakが約82億円調達

人工知能(AI)はますます多くのエンタープライズアプリケーションに組み込まれてきている。そうした中、企業、特に非テック企業がよりカスタマイズされたAI意思決定ツールを構築するのを支援するプラットフォームを手がけるスタートアップが、大幅な成長資金を獲得した。英国・マンチェスターに拠点を置き「Decision Intelligence」プラットフォームを構築しているPeak AIは、7500万ドル(約82億円)の資金を調達した。同社は今後もプラットフォームの構築を続け、新たな市場への進出を図り、来四半期には約200人の新規雇用を行うことを予定している。

シリーズCにはかなりビッグネームの投資家が参加している。SoftBank Vision Fund 2が主導しており、これまでの支援者であるOxx、MMC Ventures、Praetura Ventures、Areteもこれに名を連ねている。このグループはPeakの2100万ドル(約23億円)のシリーズBに参加し、同ラウンドは2021年の2月にクローズした。同社の調達総額は1億1900万ドル(約131億円)に達している。評価額については公表していない。

PeakのCEOであるRichard Potter(リチャード・ポッター)氏は、資金調達の迅速なフォローアップはインバウンドの関心に基づいており、同社が行ってきたことはその一端につながっていると語る。

PeakのいわゆるDecision Intelligenceプラットフォームは、小売業者、ブランド、製造業者などが在庫レベルを監視し、パーソナライズされた顧客エクスペリエンスを構築するために使用している。また、より効率的に機能するある程度の自動化機能を備えたその他のプロセスにも使用されており、異なるファクターを相互に測定してよりインテリジェントなインサイトを提供する洗練性も求められる。現在の顧客リストにはNike、Pepsico、KFC、Molson Coors、Marshalls、Asos、Speedyなどが名を連ね、過去12カ月で売上は2倍以上になった。

Peakは、次のようなことに取り組んでいる。AIは、現代の多くの先進的ITアプリケーションやビジネスプロセスの基盤となっているが、もしあなたが組織であり、特にテクノロジーに依存していない組織であるなら、AIへのアクセスとその利用方法は必ずしも自分に合わせたものではなく、他者が構築したアプリケーションによってもたらされることになる。よりカスタマイズされたソリューションを構築するためのコストは往々にして非常に高くつく。Peakによると、同社のツールを使用するユーザーの平均収益は5%増加し、広告費は2倍になり、サプライチェーンコストは5%、在庫保有(企業にとっては大きなコストだ)は12%減少したという。

Peakのプラットフォームは、その問題を解決するための「ノーコード」のアプローチではないことを指摘しておかなければならない。少なくとも今のところは、そのような組織のデータサイエンティストやエンジニアに向けたものであり、彼らが、AIツールから恩恵を享受できるかもしれないオペレーション内の各種プロセスを容易に特定し、それらを比較的少ない労力で構築できるようにすることを目的としている。

また、重要な役割を果たすさまざまな市場ファクターも存在している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を例にとると、企業における「デジタルトランスフォーメーション」の拡大と、消費者需要の高まりやサプライチェーンの逼迫に対応するためのeコマースプロセスの効率化の両方で、企業はよりオープンになり、自動化をインテリジェントに改善するためのツールへの投資に熱心になっている。

これはPeak AIの収益増加とも相まって、SoftBankが興味を示していることの一部だ。この投資家はしばらく前からAIに注目しており、そのような投資先企業に戦略的サービスを提供することを目的として、自社の投資ポートフォリオの1セクションを構築している。

これにはeコマースやその他の消費者向けビジネスが含まれ、Peakの顧客ベースの主要セグメントの1つを構成している。

特に、この分野に特化した最近の投資の1つが2021年に入ってマンチェスターでも行われており、D2Cビジネスのためのソフトウェアを開発し運営するThe Hut Groupの7億3000万(約803億円)ドルの株式を取得している(将来的にはさらに16億ドル[約1760億円]を取得する可能性もある)。

SoftBank Investment Advisersのシニア投資家Max Ohrstrand(マックス・オーストランド)氏は声明で次のように述べている。「私たちは、将来の企業がバリューチェーン全体を最適化できる集中型AIソフトウェアプラットフォーム上で運営されるという、共通のビジョンを持つパートナーを得ています。これを実現するには新しいタイプのプラットフォームが必要であり、リチャード(・ポッター)氏とその優秀なチームがPeakで構築したものに非常に感銘を受けています。彼らがDecision Intelligenceにおけるカテゴリー定義のグローバルリーダーになるのを支援できることをとても喜ばしく思っています」。

SoftBankの2つのマンチェスター関連会社が協力するかどうかは明らかではないが、そうなれば興味深いシナジー効果が期待できるし、何よりもSoftBankが関心を持っている分野の1つを強調するものになるだろう。

長期的に、Peakがどのように進化し、すでに顧客となっている組織のより幅広いユーザー層にプラットフォームを拡大していくのか、またその展開がどうなるのかを見るのは興味深い。

ポッター氏は、短期的にも中期的にも「技術的な傾向のある人々」が同社製品のユーザーになる可能性が最も高いと考えているという。例えば、マーケティングマネージャーのような人たちはそうしたことをしないだろうと思うかもしれないが、多くのソフトウェアツールの一般的な傾向はまさに、データサイエンティストが使っているのと同じツールのバージョンを構築し、技術に詳しくない人たちが、自分の使いたいものを作るプロセスに関与できるようにすることにある。

「データパイプラインを流す能力を民主化し、それらをアプリケーションで動作するように最適化できることが重要だと考えています」とポッター氏は付け加えた。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

英国宇宙庁が不要な衛星2機の除去プログラムに日本の宇宙スタートアップ「アストロスケール」を選定

スペースデブリ(宇宙ごみ)除去などの軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングスは10月26日、英国の宇宙庁UKSAの低軌道上の非協力物体(運動制御が不能になったドッキング機能を持たない衛星)2基の除去を検討するプログラム「COSMIC」(コズミック)に選定されたことを発表した。これは、ドバイで開催されている国際宇宙会議においてUKSAが行った発表を受けてのこと。

アストロスケールは2020年8月25日、軌道上での模擬デブリ(クライアント)の捕獲に成功している。この際使用された、民間企業としては世界初のデブリ除去技術実験衛星「ELSA-d」(エルサディー)のミッションで培われた技術がCOSMICで活かされる。ELSA-dは、本体である捕獲機(サービサー)と模擬デブリとをともに宇宙に打ち上げ、捕獲実験を行った。デブリは磁石でサービサーとドッキングする仕組みになっている。現在、ELSA-dは、サービサーの自律制御機能による「非回転状態のクライアントの捕獲」や「回転状態のクライアントの捕獲」の実証実験の準備が進められている。

これと並行して、欧州宇宙機関(ESA)の通信システム先端研究「Sunrise」(サンライズ)プログラムにおいて、複数のクライアントを捕獲し除去できるELSA-M(エルサ・エム)の開発を、ロンドンの通信衛星コンステレーション企業OneWebと進めている。

COSMICでは、このELSA-Mのサービサーを仕様変更して使われる。いったん低軌道に打ち上げられたELSA-Mは、クライアントの軌道へ移動してクライアントを捕獲し、廃棄用軌道まで降下してクライアントを大気圏に放出する(最終的に大気圏に再突入させることで燃え尽きさせる)。そして次のクライアントの軌道まで移動して、捕獲、放出を繰り返す。このミッションでは、軌道上での修復作業も想定されていて、宇宙空間での宇宙状況把握の実証実験も行われるとのことだ。

日本を本社と研究開発拠点を構えるアストロスケールは、イギリス、アメリカ、シンガポール、イスラエルに事業展開をしている。

フォードが約360億円を投じて英国のトランスミッション組立施設を電動パワーユニット工場に転換

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、2億3000万ポンド(約360億円)を投じて、英国・ヘイルウッドにある自動車用トランスミッションの組立施設を、電動パワーユニット工場に転換すると発表した。これが同社初の欧州における電気自動車用コンポーネントの自社組立施設となる。

The Times(タイムズ紙)によると、この投資には英国政府が自動車変革基金を通じて提供する推定3000万ポンド(約47億円)の資金が含まれているという。この投資により、約5000人の自動車関連の雇用が地域に創出されると、同紙は伝えている。

この工場で生産されるパワーユニットは、フォードが将来欧州で販売する電気自動車の乗用車および商用車に供給され、同社の電動化に向けた目標達成を後押しすることになる。フォードは2021年2月、2030年までに欧州で販売する乗用車のすべてを電気自動車に、商用車の3分の2を電気自動車またはプラグインハイブリッド車にするという欧州戦略を発表。同社は10億ドル(約1140億円)を投じてドイツのケルンにある組立工場を改修し、2023年にはそこで同社初の欧州製となる量販電気乗用車の生産を開始する予定だ。

関連記事:フォードが2030年までに欧州向け全車両を電動化

この電動パワーユニットは、内燃機関自動車のエンジンとトランスミッションの代わりとなるもので、バッテリーから供給される電気の流れを管理し、電気モーターの速度や発生するトルクを制御する。フォードはその生産を2024年半ばに開始する予定で、年間約25万台程度の生産能力を計画している。このパワーユニットはケルンの工場または他の工場の組立ラインに送られるのかという質問に、フォードは答えなかった。歴史的に、ヘイルウッド工場で生産されたユニットは100%が輸出されており、フォードは、エンジンやトランスミッションを「6大陸15カ国以上に輸出し、海外での売上は年間約25億ポンド(約3900億円)に上る」英国最大の輸出企業の1つとなっているという。

「電気自動車の製造を確保するための激しい国際的な競争の中で、英国が確実に利益を得ることが我々の優先事項です」と、英国のビジネス大臣であるKwasi Kwarteng(クワシ・クワーテング)国会議員は、声明の中で述べている。「本日の発表は、政府の資金援助を受けたものであり、英国経済の将来性と電気自動車の生産拡大計画に対する大きな信頼の証しです。これにより、ヘイルウッドの誇るべき産業遺産が将来にわたって維持され、北西部の高技能・高給の雇用が確保されることになります」。

フォードが電気自動車の生産を拡大しようとしているのは欧州だけではない。この自動車会社は電動化に向け、2025年までに300億ドル(約3兆4300億円)の投資を用意しており、そのうちの1つである中国でも努力の成果が実り始めている。10月18日、中国で最初に製造された電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」が組立ラインからロールオフされたのだ。中国の顧客は、フォードの直販ネットワークであるEVシティストアを通じて、年末までに現地生産のMach-Eを手に入れることができる。フォードは、2021年中に主要都市部で25店舗のEV販売店をオープンし、今後5年以内に100店舗以上に拡大する予定だという。

関連記事:フォードが電動化への投資を3.3兆円に引き上げ自社バッテリー研究開発を加速、30年までにEV比率40%

画像クレジット:Ford Motor Company

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電子レンジで温めるだけの植物由来食品を宅配するAllplantsが59億円を調達

ベジタリアン向け食事宅配サービスを提供するAllplants(オールプランツ)は、Draper EspritがリードするシリーズBラウンドで3800万ポンド(約59億円)を調達した。英国の消費者に、家で温める、植物由来のおいしい食事を提供することを目指す。

今回のシリーズBラウンドの規模は、ヨーロッパの植物由来食品の企業としては過去最大とのことだ。

ロンドンを拠点とするAllplantsは、2018年にシリーズAで750万ドル(約8億5500万円)を、またエクイティ・クラウドファンディング・プラットフォームのSeedrsを通じても資金を調達している。

同社によると、2017年の創業以来、収益は毎年2倍以上で推移しているという。

シリーズBに参加した他の新規投資家には「パーパス・ドリブン」の消費財ファンドThe Craftory、シリコンバレーを拠点とするTriplePoint Capitalに加え、イングランドの国際的なサッカー選手であるChris Smalling(クリス・スモーリング)氏とKieran Gibbs(キーラン・ギブス)氏、英国の独立系スナック菓子会社Proper Snacksの創業者でMBE(大英勲章第5位)のCassandra Stavrou(カサンドラ・スタブロウ)氏などがいる。

また、既存の投資家からFelix Capital(オートミールベースの代替ミルク「Oatly」を開発したベンチャー企業)とOctopus Venturesも参加した。

近年、欧米では、食肉生産にともなう気候変動への懸念が高まり、植物由来の代替品への関心が高まっている。

さまざまなスタートアップが肉に代わる便利な製品を幅広く開発してきた。Allplantsのような消費者に直接届ける食事や、Heuraのような植物由来の肉代替製品などの選択肢がそうだ。後者の製品はAllplantsの食品の原材料になるかもしれない。

関連記事:スペインの100%植物由来チキンのスタートアップ「Heura」が英国に進出

Alplantsは「植物由来の食品に興味がある人々」、つまりフレキシタリアンの消費者市場が急速に拡大していることが同社の成長要因だと分析する。同社によると、現在、英国だけで100億ポンド(約1兆6000億円)、先進国市場では年間1000億ポンド(約16兆円)の市場規模があるという。今のところ英国のみの展開だが、同社のウェブサイトには、世界進出も視野に入れているとある。

今回の資金は、ロンドン北部のウォルサムストウにある植物由来食品のキッチンを現在の6倍に拡張するために使用するという。急増する国内需要に対応する。

現在、同社のキッチンでは140人のシェフが24時間体制で働く。冷凍された状態で消費者に届けられるため、従来の電子レンジ食品と同様、食べる前にオーブンや電子レンジで再加熱する必要がある。

現在のメニューは、朝食、昼食、スナック、おやつ、夕食をカバーし、カレーやチリ、パスタやリゾットなど、さまざまな種類の世界の料理を提供している。肉の代替品としてはビーガンのタンパク源となる、ビーガンチーズ、豆腐、豆、ビーガンチョリソーなどが含まれている。

ユーザーは、宅配用に用意された料理の中から、1人分または2人分の量を選び、6食入りの箱を作る。

また、好みに合わせて「肉の代替品」のみの食事(いつも肉の塊がお皿にのっていることに慣れている人向け)や「最もチーズの効いた」料理(100%ビーガンのチーズを使用)のセレクションなど、バラエティに富むセットを販売している。

同社は、肉を使った食事を植物由来の食品に変えることが、環境への負荷を減らす最も効果的な方法の1つだと指摘する。植物由来の食事を週に1日増やすだけで、英国の平均的な消費者の食品からの二酸化炭素排出量を年間10%以上削減できるとしている。

さらに、シリーズBにおける計画として、他の販売チャネルへ迅速に進出する能力を構築するという。つまり長期的には、スーパーマーケットなどの小売店を含めたマルチチャネルでの販売を視野に入れているようだ。

今回の資金調達は、チームの大幅な拡大にも充てられる。料理学校で研修を受けたシェフをはじめ、オペレーション、イノベーション、マーケティング、テクノロジーなど、ビジネスのあらゆる機能に関して採用を予定している。

また、シリーズBの計画には、拡大する顧客層の好みに合わせて食事の範囲を広げることや、より幅広いカテゴリーの製品を開発することなどが含まれる。

Allplantsの創業者兼CEOであるJonathan Petrides(ジョナサン・ペトリデス)氏は、声明の中で次のように述べた。「我々が料理に関わり始めてからの5年間で、植物由来食品の需要が爆発的に増加していることを実感しています。我々には、このムーブメントをより多くの人々のキッチンに届けるためのエキサイティングな計画が多数あり、今回の投資はそれを可能にしてくれます」。

「食品の選択は非常に個人的なものです。ですから、品質と味は常に我々の最優先事項です。それが我々のすべての活動の原動力であり、顧客が妥協することなく、より多くの植物を食生活に取り入れることを可能にしています」とペトリデス氏は付け加えた。「我々は今、より多くのおいしいレシピや製品を想像して創造し、そして提供することができます。そして最終的には、植物由来の生活が我々の地球の未来にもたらす変革を加速させることができるのです」。

Draper EspritのパートナーであるNicola McClafferty(ニコラ・マクラファティ)氏は投資にともなう声明で次のように述べた。「今回の投資は、Draper Espritにとって非常にエキサイティングです。Allplantsは、今日の食品消費において最も急速に成長している複数の分野が交差する場所で、ユニークな位置にいます。消費者にとって非常に便利な方法で、味、持続性、栄養に配慮しながら高品質の植物性食品を提供しています」。

「ペトリデス氏と彼のチームは、非常に明確な価値観を持ち、信じられないほど力強い成長と忠実な顧客ベースを持ちあわせた、すばらしいブランドを確立しています。Allplantsは、消費者への直販ビジネスを拡大すると同時に、英国内および海外の新しいチャネルにも進出する可能性を秘めています。植物由来の食品に興味がある消費者に栄養、味、利便性を提供する、世界的なブランドになれると信じています」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンが米国外で初の4-Star Storeをオープン、評価4つ星以上の商品が並ぶ

Amazon(アマゾン)は、ロンドン中心部の南東に位置するモール、ブルーウォーターに4-Star Store(フォースターストア)をオープンした。このストアは米国外で初の4-Star Storeというだけでなく、同社が英国で初めて、非食品・非生鮮品を販売する店舗でもある。ニューヨークや米国の他の都市にあるAmazonの4-Star Storeと同様に、ブルーウォーターの店舗では、4つ星以上の評価を受けた商品や、eコマース大手の英国サイトでトップセラーになっている商品、トレンドになっている商品を販売する。

Amazonがオンラインで販売している評価の高い商品をすべて取り扱うことはできないため、店舗での品揃えは厳選されたものになるが、家電、玩具、ゲーム、書籍、キッチン、ホームなどのトップカテゴリーの商品を取り扱う予定だ。また、Kindle電子書籍リーダー、Fireタブレット、Echoスピーカーなどの自社製品だけでなく、英国内の中小企業の製品も販売する予定だ。

このストアには、ウェブサイトの特定のセクションに対応したセクションが設けられており、例えば「Most Wished For」では「欲しい物リスト」に登録された商品が紹介されている。また「Trending in Bluewater」では、地元のカスタマーが購入した商品が紹介され「Most Gifted」では、ギフトとして注文の多かった商品が紹介される。Amazonは、カスタマーのフィードバックや最新のトレンドに合わせて、定期的に商品を入れ替えていくとしている。

ストア内の商品には、商品の価格、平均星評価、カスタマーレビューの数が記載されたデジタルタグが付けられる。また、プライム会員でなくても、そのストアで買い物はできる。ただし、この店舗には、ロンドンのFresh食料品店のようなAmazonのJust Walk Out技術は搭載されない。Just Walk Outは、買い物客が棚から必要なものを手に取り、有人レジやセルフレジで支払いをすることなく、そのまま外に出られるというものだ。しかし、Amazonの英国サイトから購入し、翌日に店舗で注文品を受け取ることはできる。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moon(マリエラ・ムーン)氏はEngadgetのアソシエートエディター。

画像クレジット:Bluewater

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(文:Mariella Moon、翻訳:Yuta Kaminishi)

AI創薬のSyntheticGestaltが約12億円を調達、機械学習モデルの拡張・自社パイプライン拡充に向けウェット試験実施

AI創薬事業を手がけるSyntheticGestaltが約12億円を調達、機械学習モデルの拡張・自社パイプライン拡充に向けウェット試験実施

AIによる創薬事業を展開するSyntheticGestalt(シンセティックゲシュタルト)は9月29日、シリーズAラウンドにおいて、1100万ドル(約12億円、このうち400万ドルが株式、700万ドルが転換社債)の資金調達を発表した。引受先は英国政府系ファンドFuture Fundをはじめ、インキュベイトファンド、三井住友海上キャピタル、ほか2社。累計調達額は1400万ドル (約15億円)となった。

ロンドンと東京に拠点を持つSyntheticGestaltは、AI創薬事業を展開するスタートアップ。新薬候補物質を製薬企業に提供する「自社創薬」と、創薬システムを基軸としたケイパビリティをライフサイエンス系企業との協業にいかす「共同研究」の2つの事業を主軸としている。今回調達した資金は、機械学習モデルの拡張および自社パイプライン拡充のための各種ウェット試験にあてる方針。

SyntheticGestaltの創薬システムは、より多くの新薬候補物質を機械学習を用いて発見するために開発された。数十億の化合物から新薬候補物質をスピーディーに発見し、創薬における研究期間を大幅に短縮することが期待されている。また、従来の機械学習を用いた創薬と異なり、創薬標的タンパク質の構造情報を必要としないため、これまで治療薬の創出が困難であった標的も創薬の対象にできるという。

統合が進むRPA業界、Blue PrismがVistaに約1652億円で売却される

2020年来、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場は大盛り上がりだが、市場のパイオニアの1つであるBlue Prism(ブルー・プリズム)がVista Equity Partners(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)に10億9500万ポンド(約1652億円)で売却されることが、米国時間9月28日の午前、英国での申請により明らかになった。2020年、多くのRPAスタートアップ企業が大手ベンダーに買収されたが、今回の買収は、RPA分野のトップ3ベンダーのうちの1社が関与した初めてのケースだ。

これは込み入った取引で、申請書によればVistaは、Vistaファンドが間接的に所有するBali Bidco Limited(バリ・ビドコ・リミテッド)という企業を設立し、同社がVistaに代わって購入を行う。そのような金融メカニズムを使った理由は不明だが、最終的にはVistaがBlue Prismを買収し、2014年にVistaが43億ドル(約4796億円)で買収していたTibco(ティブコ)に統合する予定だ。

Blue Prismは、申請書内での自己申告によれば、先の3月の年次総会以降厳しい状況に直面し、選択肢を模索していたという。「Blue Prismの取締役会は、当社が直面している戦略上および経営上の逆風、経営上の重大なリスク、および株主のみなさまからのフィードバックを考慮して、さまざまな戦略的選択肢を検討しました」と同社は申請書中で述べている。

そうした選択肢の1つが売却であり、それが会社にとって最善の方法であると判断したのだ。Blue Prism社の会長でCEOのJason Kingdon(ジェイソン・キングドン)氏は、これがより強固な基盤を築くための最良の道であると考えている。

「VistaとTibcoが合併することで、私たちは次世代のインテリジェントオートメーションの最前線に立ち続けることができます。Tibcoの世界に広がる拠点と技術により、お客様に提供する製品の範囲を拡大することができるのです。また、株式非公開企業として、製品への投資やその他のM&Aの可能性を通じて新たな成長機会を追求するために、資金調達を拡大することができるのです」と、キングドン氏は声明で述べている。

私たちは、Blue Prismが売却を決断した理由を探るために、過去の営業成績を調査した。2021年4月30日までの6カ月間の売上高は8040万ポンド(約121億2000万円)で、実質為替レートベースで前年同期比24%増となっている。同じ期間に、Blue Prismは、営業損失を5380万ポンド(約81億円)から2090万ポンド(約31億4700万円)に圧縮した。

赤字の解消は進んでいたものの、不採算の程度に比べて成長が遅れていた。今回の取引が発表される前にBlue Prismの評価額は下落しており、一般投資家がBlue Prismの業績に満足していないことが示されていた。VistaはBidco(ビドコ)を通じてBlue Prismにプレミアムを支払っているが、Blue Prismの評価額は最近の下落が始まる前の2021年の初頭に比べて、さらに低くなっている。

同社の2021年上半期の収益を見て、それを1年分に推定してみると、Blue Prismは収益の約6.8倍で売却されたことになる。これは、Blue Prismのようにゆっくりと成長している企業の、ヨーロッパ市場におけるエグジットバリューを示しているので有益な数字だ。Vistaは、Tibcoとの買収・統合が有益なものになると確信しているようだ。

1997年に設立されたレガシーベンダーのTibcoは、企業内のデータソースを接続するための幅広い自動化サービスを提供しているが、Blue Prismは組織内のレガシーのありふれたタスクを自動化するためのRPAサービスを提供している。Blue Prismは、成長するRPA市場においてTibcoを手助けすることができるので、少なくとも理屈の上では、両社はうまく調和するはずだ。

2020年のガートナーのレポートによると、この分野のベンダーのトップ3には、2020年上場して話題になったUIPath、Automation Anywhere(オートメーション・エニウェア)、Blue Prismがが並んでいた。2020年のレポートでIDCは、RPA市場は2021年20億ドル(約2230億円)に達すると推定しています。これはRPAにまつわる宣伝文句を考えると控えめな金額だが、IDCは2024年までには59億ドル(約6570億円)に達すると予想している。

この業界では統合が進んでおり、2020年は小規模な企業が大規模な企業に買収されてきた。最近では、Salesforce(セールスフォース)がドイツのスタートアップであるServicetrace(サービストレース)を買収してMulesoft(ミュールソフト)と統合したが、これはVistaがBlue Prismを買収してTibco取り込むのと同じような種類の動きだ。MulesoftとTibcoはお互いを競争相手といえるだろう。

関連記事:Salesforceが熱いRPAに参入、Servicetraceを買収してMulesoftと提携

この取引は、Blue Prismの株主総会での承認と、通常の規制当局の手続きを経て行われる。このニュースを受けて、Blue Prismの株価は2.12%下落している。

画像クレジット:mbortolino / Getty Images

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(文:Ron Miller、Alex Wilhelm、翻訳:sako)

英国が自国のAI技術を「レベルアップ」させる国家戦略を発表

英国政府は、機械学習技術に関する英国の能力を長期的に向上させることを目的とした、初のAI国家戦略を発表した。

英国政府は、この戦略によって、今後10年間で英国内で開発・商業化されるAIの数と種類が増加することを期待していると述べている。

人工知能の開発と応用を優先して「レベルアップ」させるという計画は、AIの期待を謳ってきたこれまでの産業戦略やデジタル戦略に続くものだ。しかし、Boris Johnson(ボリス・ジョンソン)政権は、英国を「世界のAI大国」にするための10年におよぶ投資計画を発表し、少しずつ前へ進んでいる。政府広報によると、AIによる経済的利益を得るために、人材のアップスキリングやリスキリングなどの分野に的を絞って支援するということだ。

ここに政策的な意味があるかどうかは、まだ議論の余地がありそうだ。

特に、この戦略を裏付ける新たな資金が発表されていないのが気になるところだ。今のところ政府は、投資家が英国のAI企業にどれだけ資金を投入しているかを強調している(2021年1月から6月の間に、英国の1400社以上のテック企業に135億ポンド[約2兆290億円]を投入している)。また、政府は2014年以降、AI分野に23億ポンド(約3450億円)以上を投資していることを示している。

しかし「大学院での学習、再教育、幅広いバックグラウンドを持つ子どもたちが専門的なコースにアクセスできるようにすること」への継続的な支援など、今後政府がAIの開発支援にどれだけの資金を投入するかについては言及されていない。

その代わりに今回の発表では、果たしてそれが何を意味するかは置いておいて「AIにおける英国の能力を変革する」という宣伝文句が多く使われていたり、英国を「AIで暮らし、働くための最善の場所」と位置づけようとしているのが見て取れた(おそらくこれは、英国を「オンラインで最も安全な場所」にするという、オンライン安全法の制定に取り組む政府のデジタル政策のもう1つの論点に付随するものだと思われる)。

関連記事:英国が子どものためのオンライン安全法案の草案を発表

この戦略の初期段階では、将来のAI政策に役立てるためのデータ収集に重点が置かれているようだ。そして、おそらく最も興味深い要素は、英国の現行の著作権および特許規則をAIに焦点を当てて見直すというものだろう。

政府は貿易協定にAI条項を盛り込むことを検討するなど、地政学的な基準設定にも意欲を見せているが、この分野において英国が世界的な舞台で大きな力を発揮できるかどうかは未知数だ。

この戦略で発表された施策の中には、以下のような計画がある。

  • 英国の研究者間の連携と協力関係を強化し、英国のAI能力の変革を支援するとともに、企業や公的機関によるAI技術の導入と市場への投入を促進するために、National AI Research and Innovation Programme(国家AIリサーチ・イノベーションプログラム)を立ち上げる
  • ロンドンと南東部以外を拠点とするセクターでAIを継続的に開発することを目的とした、Office for AI(OAI)とU.K. Research & Innovation(UKRI、英国リサーチ&イノベーション)の共同プログラムを立ち上げる。「これは、アイデアの商業化に焦点を当てたもので、例えば、政府が投資、研究者、開発者に焦点を当て、エネルギーや農業など、現在はAI技術があまり使われていないが大きな可能性を秘めた分野での活動を行うことが考えられる」
  • UKRIとともに、AI技術の大規模な展開に必要な物理的なハードウェアを含む、英国の研究者や組織のためのコンピューティングパワーの利用可能性と能力に関する共同レビューを発表する。「また、このレビューでは、環境への影響を含め、AIの商業化と展開のための幅広いニーズを検討する」
  • 知的財産庁(IPO)を通じてAIの著作権と特許に関する協議を開始し、著作権と特許制度を通じてAIの開発と利用を最善の形でサポートすることで、AIが生み出すアイデアを英国が活用できるようにする。「また、今回の協議では、発明基準を満たさないAIが生み出した発明を保護する方法や、AI開発において著作権で保護された素材をより利用しやすくするための方策にも焦点を当てる予定だ」
  • AI Standards Hub(AI基準ハブ)を試験運用し「世界的なルール設定における英国の関与を調整」し、Alan Turing Institute(アラン・チューリング研究所)と協力して、公共部門におけるAIの倫理と安全性に関するガイダンスを更新し「技術が倫理的に使用されることを確認するための実用的なツールを作成」する。

また、政府の戦略では、AIについて「明確なルール、適用される倫理原則、イノベーションを促進する規制環境」を確立したいとしているが、英国はすでに規制の枠組みの定義化に遅れている。なぜなら、英国はリスクの高いAIの応用を規制するための包括的な提案がすでに検討されている欧州連合からは外れているからだ。

関連記事:欧州がリスクベースのAI規制を提案、AIに対する信頼と理解の醸成を目指す

英国政府の現在の政策は、データ利用に関する明確性の代わりに、同時的に現行のデータ保護体制を疑問視している。大臣たちは、国民の情報保護を弱めることで、AIなどのテクノロジーに対する人々の信頼とさらなる導入を(何らかの形で)後押しできると期待して、規則を弱めるという案を検討している。

特にAIのスタートアップやスケールアップについては、今後6〜12カ月の間に「民間資金のニーズと課題」を評価する計画が国家戦略に盛り込まれている。

また、同じ時期に「世界最高のAI人材を英国に誘致するため」に、新しいビザ制度を導入するとしている(もちろん、そこで何を発表するかは、その詳細にかかっている)。

しかし、英国のスタートアップ企業が、AIを強化する国家戦略の発表によって、AIモデルを研磨するためのあらゆる種類の興味深い政府データセットへのアクセスがすぐに可能になることを期待していたとしたら、この文書には、閣僚が「AIモデルのためにどのようなオープンで機械読み取り可能な政府データセットを公開できるかを検討する」と書かれているだけで、その特定のタスクに目を向けるのは今後12カ月後になるという。つまり、それは様子見ということだ。

「この国家AI戦略は、世界で最もイノベーションを促進する規制環境を構築し、英国全体の繁栄を促進して誰もがAIの恩恵を受けられるようにし、AIを気候変動などのグローバルな課題の解決に役立てようとする我々の意図を世界に発信するものです」と、新任のNadine Dorries(ナディン・ドリーズ)氏は、戦略の発表にともなう声明で述べている。

ドリーズ氏の名前に聞き覚えがないのは、Oliver Dowden(オリバー・ダウデン)氏に代わってデジタル・メディア・文化・スポーツ省(DCMS)の要職に就いたばかりだからだ。

「AIは、私たちが成長を促し、生活を豊かにする上で中心的な役割を果たすでしょう。私たちの戦略に示されたビジョンは、これらの重要な目標を達成するために役立ちます」とドリーズ氏は付け加えた。

ダウデン氏は、英国のデジタル政策(およびその他の広範な政策)を統括するDCMSのポストに1年余りしか就いていなかった。これは、前任者のNicky Morgan(ニッキー・モーガン)氏が半年強しかいなかったことを考えれば、長いと言えるだろう。

その前は、Matt Hancock(マット・ハンコック)氏(元大臣)がデジタル政策を担当していたため、ここ数年、英国の技術政策を担う政治家はかなりの数にのぼる。

そこでおそらく、国の深い技術力を育成する「長期的な」コミットメントを主張する第一歩として、政府はデジタル政策を担当する「長期的な」大臣の任命を検討してみてはどうだろうか。そうすれば、AIなどの国の技術力の底上げへの持続的な集中と、大臣レベルでは、テックにまつわる基本的なふるまいを理解するまもな能力があるというメッセージを示すことができるはずだ。

画像クレジット:Usis / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

「動画版ストリートビュー」を目指すHappaningの技術はマルチ視点ビデオで現実世界を記録し誤情報も防ぐ

スタートアップHappaningは、同じ出来事を異なる視点から見られるようにすることで、ビデオをより没頭的な体験にしようとしている。共同ファウンダーでCEOのAndrew Eniwumide(アンドリュー・エニウミド)氏が好む表現を使うなら「Googleストリートビュー、ただしビデオ版」だ。同社はそのユニークのテクノロジーが提供するマルチ視点ビデオは、ビデオに新たなユーザー体験をもたらすだけではなく、誤情報やディープフェイクなどの問題を解決する可能性をもっていると信じている。同じシーンを別の視点から撮影した検証済み映像は、ビデオ編集によって人を欺こうとする動画のファクトチェックにも使えるからだ。

しかし、その崇高な目標はさらに先を見ている。

米国時間9月22日、TechCrunch Disrup 2021のスタートアップバトルフィールドの「ワイルドカード」枠で公開されたHappaningのアーリーベータ版は、まずマルチ視点ビデオのコンセプトを紹介する。同社はこれを「ViiVid」テクノロジーとして商標登録している。これはユーザーが同社のモバイルアプリを使ってビデオコンテンツを作成し、同じ場所同じ時間に撮影された別のビデオと組み合わせるシステムだ。

ビデオの検証にブロックチェーン技術は使われていないが、コンセプトには類似点がある。Happaningは数多くの人々がmaster ledger(元帳)のようなものに情報を書き込むブロックチェーンの分散ネットワークのアイデアを借用している。ただしHappaningでは、同じ情報をすべて持っているノードは存在しない、ある人のビデオは誰のビデオとも異なるからだ。しかし、組み合わさることで、ある時間と場所で起きた真実をより詳しく見せることができる。

同社は複数ビデオストリームの同期、異なるビデオ視点間をスワイプで移動するユーザー体験など、自社テクノロジーに関係するコンセプトの特許を、チームの拠点がある英国および世界知的所有権機関(WIPO)で取得している。

このテクノロジーの最初の使用事例は、結婚式、コンサート、スポーツイベント、抗議運動、デモ行進、そのた大勢の人の集まる実世界イベントの記録だ。Happanningに記録した後は、同じイベントを異なる角度や視点かから撮影したビデオをタップして見比べることができる。例えばコンサートで後列からステージを見下ろしているビデオから前列のビデオに切り替えるところを想像して欲しい。

エニウミド氏は、ビデオが悪用されたり誤解を招くために使用されている問題を解決するためにHappaningのアイデアを思いついたと話す。彼はこの問題がソーシャルメディア全体に広がっていることを指摘し、誤情報源によるFacebook投稿が、信用あるニュースサイトの記事よりも6倍多く反応を得ていることを示す記事を引用した。

「昨今、うそつきメディアの手法は日に日に高度化し、360度ビデオまで登場しています。しかし、同時に私たちは、それらが悪用されたり、不用意な編集をされたり、偏見やディープフェイクに使われている事実も見てきました」とエニウミド氏はいう。ビデオが改ざんされず、本当に宣言どおりの場所で起きたこと検証できるアプリがあれば役に立つと彼は考えた。

「私はこれをGoogleストリートビューのビデオバージョンと呼ぶのが好きです」とエニウミド氏は続ける。「つまり、あなたがビデオを撮ったのと同じ場所で誰かもビデオを撮っていたら、時間と場所、音声や視覚的なヒントを使って私たちが同期します」。

そして、見ている人は自分の行きたい方向にスワイプすれば、Google Street Viewで別方向に移動できるのと同じように、別の角度や視点からシーンを見ることができる。

公開時点では、ライブストリームビデオに焦点を合わせているが、今後は自分たちの知的財産を一種の技術標準として開発し、ビデオをエクスポートしたり別のところで公開する方法を提供したいとスタートアップは考えている。Happaningのデビューバージョンは、ほぼMVP(実用最小限の製品)か技術デモというべきもので、全体のユーザーインターフェースと体験は開発が完了したようには見えない。しかしアプリは無料で利用可能で、勢いがつけば、長期的にサブスクリプションプランも考えている。

エニウミド氏には、英国のエンジニアリング企業、Detica、BAE Systemsなどでソフトウェア開発者および主要コンサルタントとして12年以上働いた経験がある。その後同氏はCFOのLeslie Sagay(レスリー・サゲイ)氏、CMOのJoanna Steele(ジョアンナ・スティール)氏、CTOのColin Agbabiaka(コリン・アグバジアカ)氏、インフラストラクチャー担当のAJ Adesanya(アジ・アデサニャ)氏らを迎え入れた。ただしチームの大半は現時点で同社のフルタイム社員ではない。

Happaningはこれまでにプレシード資金21万9500ポンド(約3300万円)を調達前評価額300万ポンド(約4億5000万円)で調達しており、調達前評価額450万ポンド(約6億7000万円)でシード資金50万ポンド(約7500万円)を調達することを目標にしている。

画像クレジット:Happaning

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook