ウクライナ政府がロシア軍の追跡手段をDX、Telegramチャットボットを作成し活用・認証アプリで偽情報をブロック

ウクライナ政府がロシア軍の追跡手段をDX、Telegramチャットボットを作成し活用・認証アプリで偽情報をブロック

Thomas Trutschel via Getty Images

ウクライナ政府は、Telegramアプリにチャットボットを作成し、ユーザーがiPhoneを使ってロシア軍が侵入した情報を防衛側に報告できるようにしたと報じられています。

ロシアのウクライナ侵攻の始まりは、Googleマップやアップルのマップで察知されていましたが、今やウクライナ政府が意図的に個人向けテクノロジーを活用する事態にいたっています。

現地メディアのUkrainian Newsによれば、ウクライナのDX(デジタルトランスフォーメーション)省は「eVororog」または「eBopor」(英訳すると「e-Enemy」)など様々なチャットボットを作成したとのことです。これは独立したアプリではないため、ロシアもかつて(国内の)App Storeから野党支援アプリを削除させたように簡単にはいかないというわけです。

このチャットボットはTelegramの@「everog_botチャンネル」になっている—とミハイル・フェドロフ副首相が自らのTelegramチャンネルで説明しています。

フェドロフ氏によれば、他にデータを集める方法もあったかもしれないが、破壊工作員が偽の写真やデマを混ぜる恐れがあると示唆。そこでウクライナ国民であることを認証するため、DX省の無料アプリ「Diya」が使われているそうです。

ユーザーがチャットボットへの投稿を許可されると、目撃したものを正確に詳しく入力するよう求められるとのこと。そこで軍隊を見たか、戦車などの装備を見たかをiPhoneを通じて正確な位置を送信し、可能であれば写真やビデオを添付することになります。

Ukrainian Newsは、このチャットボットがどれほどの効果があるのか、まだ詳しく報じていません。しかしTwitter上では、20万人以上のウクライナ人が「eBopor」を使って1万6000人以上のロシア兵士や4000台もの車両の破壊に繋がったと主張しています。

どちらの陣営であれ人命が失われることは絶対にあってはなりませんが、ハイテクが悲惨な戦火の終結に貢献するよう祈りたいところです。

(Source:Ukrainian News。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

アップルがiPhone SEの生産をウクライナ侵攻とインフレ懸念で20%削減との報道

チップ不足が続く中、Appleの最新決算報告では、同社が予想を上回る成果を上げたことが明らかになった。他のほとんどの市場が縮小する中、AppleはiPhoneの販売台数で9%の伸びを記録している。サプライチェーンに関わる場合、最大手であれば有利になる多くある。

しかし、Appleのような巨大企業でさえ、世界情勢の影響を受けないわけではない。パンデミックの初期には、Appleは不確実性を理由にガイダンスを提供することを行わなかった。ここ2年間の世界の状況を考えれば、それはおそらく正しい行動だろう。そして現在、最新のiPhone SEは、世界的な問題の「パーフェクトストーム」のようなものになりつつある。

Nikkei Asiaが事情に詳しい情報筋からの話として報じたところによると、AppleはiPhone SEの生産を20%削減するという。ウクライナ侵攻とインフレのワンツーパンチのため、少しは消費者が減るだろうとは考えられていたのは間違いないが、その数字の大きさは同社の最新スマホにとって驚きだった。この落ち込みは、同四半期で200〜300万台に相当する。

2022年3月初め、Appleは隣国ウクライナへの侵攻を受けて、ロシアでの販売を停止することを発表した。同社は当時「我々は状況を評価し続け、取るべき行動について政府と連絡を取り合っている。我々は平和を求める世界中の人々とともに行動します」。

Appleにとって最大のライバルであるSamsung(サムスン)をはじめ、他の多くの主要な消費者向けハードウェア企業が同様の行動をとっている。両ブランドとも、日常的に米国内のスマートフォン市場シェアのトップ5にランクインしている。

世界的なチップ不足は、広範なインフレ問題とともに、依然として購買決定に影響を及ぼす要因だ。スマートフォンのような非必需品に分類される製品の販売数には、必ずこうした経済的な懸念が関係している。少なくとも、ユーザーが旧型の端末を長く使うようになるという効果はある。

SEへの影響とともに、AirPodsの注文数も2022年全体で約1000万と大幅に増加したという。一方、iPhone 13の生産台数減少は、季節的な需要の変動によるところが大きいとされている。

TechCrunchは、Appleにコメントを求めている。

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

ウクライナ・マリウポリのレトロPC博物館がロシアによる侵攻により破壊、500以上の歴史的コレクションが失われる

ウクライナ・マリウポリのレトロPC博物館がロシアによる侵攻により破壊、500以上の歴史的コレクションが失われる

Club 8-bit

ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、現地にあるレトロPCとビデオゲームを集めた個人運営の博物館「Club-8bit」が戦火により破壊されたと報じられています。500を超えるレトロPCやゲーム専用機など、15年近くにわたり集められたコレクションが爆弾により失われたとのことです。

このレトロPC博物館はマリウポリにあり、ドミトリー・チェレパノフ(Dmitry Cherepanov.)氏により運営されていました。今回のニュースはウクライナのコンピュータとソフトウェア博物館(Software and Computer Museum/所在地はキーフ)のTwitterアカウントにより報じられ、オーナーのチェレパノフ氏は無事だそうです。

しかしチェレパノフ氏はFacebookで、博物館だけでなく自宅も失ったと述べています。「マリウポルのコンピュータ博物館はもうないんだ」「15年間集めてきたコレクションから残されたのは、博物館の(Facebook)ページ、ウェブサイト、ラジオ局での思い出の断片だけだ」とのことです。

米Gizmodoは2019年に博物館にてチェレパノフ氏に取材していましたが、そこではソ連圏が独自のPCを作っていた頃からコンピュータを集め始めていたと語られています。

コモドール64やMacintoshといった西側のマシンのみならず、広く知られていないが歴史的には貴重な価値があったソ連圏の遺産まで失われてしまったわけです。

チェレパノフ氏は10年以上にわたってこれらのPCを収集・修復しており、自らのPC博物館を「1980年代のPC革命の広い範囲を見ることができる魅力的なものです」と語っていました。

自宅とコレクションが破壊されて以来、チェレパノフ氏はPayPal口座を開設し、同氏やウクライナの他の人々を支援するための寄付を受け付けています

ロシアによるウクライナ侵攻は現在進行中であり、すでに数千人の死者や負傷者を出しています。また300万人以上が国外への脱出を余儀なくされ、大規模な難民危機も広がる一方です。世界各国はロシアに対する経済制裁をしだいに強化していますが、これ以上掛け替えのないものが失われないよう、一刻でも早く戦火が終わることを祈りたいところです。

(Source:Software and Computer Museum(Twitter)。Via KotakuEngadget日本版より転載)

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも追加

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

Sergei Karpukhin / reuters

米連邦通信委員会(FCC)は25日、ロシアの情報セキュリティ企業Kaspersky Lab(カスペルスキー)を「国家安全保障上の脅威」に認定したことを発表しました。FCCによってロシア企業が「米国の国家安全保障に受け入れがたいリスクをもたらす」リストに加えられたのは、これが初めてのことです。

カスペルスキーは、China Mobile(中国移動通信)やChina Telecom(中国電信)とともに、25日付けでリストに追加されています。このほか、中国ZTEやHuaweiもリストに含まれており、全8社の名前が並んでいるかっこうです。

このリストで名指しされた企業の製品については、米国内の企業はFCCが運営するユニバーサルサービス基金(USF)を使って購入することが禁じられます。この基金は低所得者層や農村部、離島など採算が合わない地域でも、都市部と平等に通信サービスを受けられるようにする補助金であり、今回の措置が大手企業に与える影響の範囲は限定的と見られています。

FCCのBrendan Carr委員は「FCCは、我が国の通信ネットワークの安全確保に重要な役割を果たしており、対象リストを最新の状態に保つことは、そのために自由に使える重要な手段である」と表明。さらにカスペルスキーを含めた3社をリストに加えることを「スパイ行為やアメリカの国益を損ねようとする中国やロシアの国家支援団体による脅威から、我々のネットワークを守るのに役立つだろう」と説明しています。

この決定に対してカスペルスキーは、失望したとの声明を発表。「カスペルスキー製品の技術的評価に基づいておらず、政治的な理由によるものだ」との趣旨をコメントしています。

米国内でカスペルスキー製品に規制が課されたのは今回が初めてではなく、2017年末にも米トランプ政権が政府機関全体での使用を全面的に禁止する大統領命令を出しています。それを受けてカスペルスキーは評判を毀損し、営業を妨害されたとして米政府を相手に訴訟を起こしていました

また、今回の件に先立ちドイツの情報セキュリティ当局も、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、カスペルスキー製品を使うことは「相当程度」のサイバーリスクがあるとして、利用を控えるよう警告していました。日本政府も同じような対応を取るのか、注視していきたいところです。米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

(Source:FCCBleepingComputer。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

Spotify、言論弾圧を受けロシアでのサービスを停止へ

Spotify(スポティファイ)は、ロシアで新たに導入された言論の自由に対する劇的な規制を受け、ロシアでの同ストリーミングサービスへのアクセスを停止する予定だ。

3月上旬、ロシア議会は、ウクライナにおけるロシアの軍事作戦について同政府が「虚偽の情報」と見なすものを共有することを犯罪とする新法を制定した。この新しい規制は「戦争」という言葉を使ってウクライナでの戦争を表現することなどを含め、軍を貶めるような言論も罰するものだ。

CNN、ABC、BBCなどの西側報道機関は、最大15年の禁固刑を科すことができるこの法律を受けて、ロシア国内での放送や事業を取りやめた。Spotifyは主に音楽ストリーミングプラットフォームだが、政治や時事問題を取り入れたポッドキャストへの投資をこのところ増やしており、その方向性はすでに多くの論争を巻き起こしている。

Spotifyの広報担当者はTechCrunchにこう述べている。「Spotifyは、ロシアで信頼できる独立系ニュースや情報を提供するために、ロシアでのサービス運用を維持することが極めて重要だと考え続けてきました。残念ながら、最近制定された、情報へのアクセスをさらに制限し、表現の自由を排除し、特定のニュースを犯罪化する法律は、Spotify従業員の安全と、さらにリスナーをも危険にさらす可能性があります」。

Spotifyはさまざまな道を検討した結果、ロシアでのサービスを「完全に停止」することを選択した。このプロセスは、同社が移転に関連するロジスティクスを確保した後、4月上旬までに完了する予定だ。Spotifyは以前、ロシアでのプレミアムサブスクリプションを停止したが、無料版アプリは引き続き利用可能だった。

世界の大部分が恐怖の目で見ている中、クレムリンは情報の流れに対する支配を強め続け、先月からの行動を、一般市民の命を奪う血なまぐさい選択による戦争ではなく、人民解放運動であると偽って伝えている。このような動きとそれにともなう法的取り締まりは、ロシア政府と対立する、侵略であるという観点を共有する国内の人々にとって深刻なリスクとなる。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Den Nakano)

ロシアがMetaを過激派認定、FacebookとInstagramを禁止する一方WhatsAppは除外

ロシアがMetaを過激派認定、FacebookとInstagramを禁止する一方WhatsAppは除外

NurPhoto via Getty Images

モスクワの裁判所が3月21日(現地時間)、米Metaが過激派活動の罪を犯していると認定しました。同社のFacebookとInstagramは、すでにロシアでの活動が禁止されていますが、裁判所がそれを追認した形です。ただし、ロシア国内で人気の高いメッセージングサービスWhatsAppは、除外されるとのこと。これはWhatsAppが広く情報を普及させる能力を有していないからだとする裁判所のコメントをReutersが伝えています。

米Metaは、通常は攻撃的な内容として削除対象となる「ロシアの侵略者に対する攻撃(死)」に関する投稿を許可するという規約変更を行っており、ロシア当局はこれへの対応としてFacebookとInstagramをブロックしていました。

ロシア国営メディアのTASSによると、今回の判決により、Metaはロシアでのオフィス開設やビジネスが事実上禁止されるとのこと。ただし、そのサービスを利用している一般ユーザーがただちに過激派として非難されることはないとも伝えています。ただし、人権活動家のPavel Chikov氏は、ウェブサイトや店の入り口、名刺などにFacebookやInstagramのロゴを記載すると、最大15日間の禁固刑の根拠になり得ると指摘しています。

また、対象外とされたWhatsAppですが、デジタル著作権グループであるロシアの非政府組織RoskomsvobodaのSarkis Darbinyan氏は、WhatsAppはロシアで人気があり、政府や国営企業も利用しているために放置された可能性があるものの、一度に閉鎖するのではなく徐々に閉鎖しようとしているのかもしれないと述べています。とはいえ、ユーザーは徐々に離れているようで、ここ数週間でロシア内で最も利用されているメッセージングツールから転落、その座をTelegramに明け渡したとのことです。

(Source:ReutersEngadget日本版より転載)

Epic Games、「フォートナイト」有料コンテンツの収益をウクライナ人道支援に寄付へ

Epic Games、「フォートナイト」有料コンテンツの収益をウクライナ人道支援に寄付へ

Epic Games

Epic Gamesが、3月20日から4月3日までの2週間分の『Fortnite』における収益をウクライナの人々に向けた人道支援活動に寄付することを発表しました。プレイヤーはゲームをプレイし、V-Bucksやコスメティックパックといった有料アイテムを購入することが、ロシアによる軍事侵攻で苦しめられているウクライナの人たちの助けにつながります。

EpicはFortniteだけでなくギフトカードの販売による収益金も含めてDirect ReliefやUNICEFといったウクライナ支援を行っている計4つの団体に送るとしています。さらにマイクロソフトも、Microsoft StoreでのすべてのFortniteに関するコンテンツからの純収入を寄付することに同意したとのこと。Epicはさらに多くの組織が参加すると述べています。

ただ、ウクライナでは日々ロシアの攻撃が続いており、決済パートナーなどからの入金を待つのは時間がかかりすぎます。そのため、Epicはトランザクションを監視して有料アイテムの売上げ金額を速やかに送金する予定とのこと。

ゲームプレイにおける収益をウクライナ支援に充てるアイデアとしては、Riot Gamesが3月7~12日の間、『League of Legends』『Valorant』などにおけるバトルパスや『League of Legends』での新しいBeeスキンの販売による収益をプレイヤー募金として寄付するとし、3月9日の時点で200万ドル以上を集めたと発表していました。ほかにもItch.ioHumble Bundleといったゲーム販売プラットフォームが、収益全額をウクライナの被害者たちを支援する団体に寄付するバンドルを販売しています。

(Source:Epic GamesEngadget日本版より転載)

欧米の制裁でロシアから逃げ出すテック人材、この波は数十年続く慢性的な頭脳流出の最後かもしれない

欧米の制裁と政情不安により、ロシアでは国際的な事業を展開することが不可能になり、起業家やコンピュータープログラマー、その他教育を受けた中産階級の人々が国から脱出している。

ロシアのウクライナ侵攻により、何百万ものウクライナの人々が命の危険を感じながら故郷を追われた。しかし、この戦争は、ロシア人が母国を後にすることにもつながっている。筆者は、ロシアの起業家やベンチャーキャピタリストに話を聞き、彼らが祖国を離れた理由、あるいは離れようとしている理由を聞いた。しかし、海外で新たなスタートを切ろうとする彼らにとって、反ロシア感情や経済制裁は重荷になっている。

きっかけ

2月中旬、ロシアがウクライナ国境に軍隊を集め続ける中、Eugene Konash(ユージン・コナシュ)氏は、ロンドンにある自身のゲームスタジオDc1abのためにロシアにいるスタッフをリモートで働かせていたが、次第に心配になってきた。しかし、他の多くの人々と同様、コナシュ氏も本格的な侵攻は予想していなかった。

緊張が和らぐという期待は、すぐに消えた。ロシアがウクライナに全面戦争を仕かけていることが明らかになると、欧米諸国はロシアに制裁を加え始めた。企業もすぐにその影響を受けた。

コナシュ氏の従業員の1人は、銀行が制裁を受け、自分の口座への海外送金ができなくなった。ルーブルが暴落したロシアでは銀行の前に長蛇の列ができ、人々は慌てて貯蓄をドルに換えようとしたが、高額な手数料と政府が外貨の入手を制限していることに気づいた。

コナシュ氏にとって転換点となったのは、投資家から「このままロシアに重きを置いていては、投資できない」とはっきり言われたことだった。ロシアを拠点としていたチームも、離れる時期だと賛同した。

「1カ月前までは、どんなことがあってもロシアを離れないと言っていた連中が、荷物をまとめて、文字通りクルマで陸路国境を越えてカザフスタンに行こうと言い出したのです。というのも、ロシアを脱出する航空券は売り切れているか、非常に高価でしたので」とコナシュ氏は語った。

国際展開する多くのテック企業と同様、同氏のゲームスタートアップも、手頃な価格で質の高いプログラマーを確保できる東欧各地の開発者を雇用している。ベラルーシ出身の同氏は、旧ソ連圏の国々が科学と数学の教育に力を入れてきたことで、世界レベルのエンジニアリングと科学の人材が育ってきたことをよく理解している。

金融制裁はともかく、外国のテックサービスが禁止されるか撤退し始めると、ロシアからIT会社を運営することは現実的ではなくなってきた。

Google(グーグル)とMicrosoft(マイクロソフト)はロシア国内での販売をすべて停止し、ロシアはFacebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)をブロックしようとしたが、その結果はまちまちだった。一部のユーザーは、禁止された後もこれらの米テック企業のプラットフォームにアクセスすることができ、ロシアが中国のような強固な検閲機関を持つにはまだ少し時間がかかることを示唆している。FacebookとTwitterは、ロシアでのサービス復旧に取り組んでいると述べた。

「Unityのような開発ツールがいつブロックされるかは誰にもわかりません」と、2015年のクリミア併合とその後の西側による経済制裁を受けて国を離れたシベリア生まれのゲーム投資家は語った。「誰も外の世界にアクセスできない国で終わりたくはありません」。

この投資家は、ロシア政府による反対派への取り締まりを恐れて名前を伏せた。

ロシア国外に法人設置

7年前のクリミア侵攻の後、多くのロシア系企業は、ロシア企業を支援することにともなう政治的リスクや見栄えを懸念する投資家をなだめるために、別の場所に法人を設立し始めた。以前は、こうした企業の多くは、書類上は国外に拠点を置き、チーム全体はロシアにいることが多かった。しかし、ウクライナへの本格的な侵攻により、その流れは一変した。

「2015年以降、企業は合法的にロシアから流出するようになりました」と、最近モスクワのチームを国外に移したあるベンチャーキャピタルの投資家は指摘する。ウクライナ危機以前でも、この会社はロシアに拠点を置くスタートアップが国外で法人化され、国際的な事業展開をしている場合にのみ支援していた。

「物理的には、これらのスタートアップはまだロシアに拠点を置いています。物価が安いため、ロシアでR&Dを行うのでしょう」。この投資家は、ロシアと距離を置こうとしている会社にとってこの話題は「非常にセンシティブ」であるため、匿名を要望した。

4年前にAkimov(アキモフ)から姓を変えたNikita Blanc(ニキータ・ブラン)氏は、海外で設立され、モスクワで活動するスタートアップとしての生活は、つい最近までかなり楽なものに思えたと語った。ブラン氏の会社Heyeveryone(ヘイエブリワン)は、IR管理を自動化するツールを構築しているが、デラウェア州で法人化の手続き中だ。

ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアを離れる前にモスクワで働くニキータ・ブラン氏のチーム

Heyeveryoneは初めからロシア市場だけにサービスを提供するつもりはなかった。しかしブラン氏と同氏の妻は、いくつかのメリットのためにモスクワを拠点とした。それは、双方の両親が3歳の娘の世話を手伝ってくれること、当時はインターネットが高速で安価、かつ無料だったこと、モスクワには技術者の集まりが多く、同じ志を持つ創業者を見つけられたことなどだ。

脱出

ブラン夫妻のいいとこ取りの起業家生活は、ロシアのウクライナ攻撃で突然終わった。侵攻から3日後、ニキータ氏の妻ヴァレンティナ氏はベッドに横たわり、祖国ウクライナが崩壊するのを目の当たりにして打ちのめされていた。そして、ヴァレンティナ氏はロシアを去ることを決めた。

「仕事も手につきませんでした。私の家族の一部はウクライナ出身なんです」とヴァレンティナ氏は語った。「子どもを連れて去るのは困難なものになるでしょうが、この状況が変わるとは思っていませんでした。それで、それぞれ23キロの荷物をまとめて、片道切符を買いました」。

夫妻は幼い娘を連れて、現在ロシアの人材流出先として上位に位置するグルジアに移住した。トルコ、アルメニア、カザフスタン、タイなどと並んで、ロシア人にとって比較的物価が安価で入国しやすい国として人気がある。

最近モスクワを離れたベンチャーファンドは、ここ数週間で自社のスタッフや投資先企業を中心に数百人のロシア人を国外に引き揚げている。インターネット上では、数万人のロシア人が脱出計画を議論し、互いに助け合うTelegram(テレグラム)グループが急増している。

「ロシア人は最悪な状況に」

ロシアへの制裁が日々強化される中、移住希望者たちは急いで脱出計画を立てなければならない。どの国がまだロシアからのフライトを受け入れているのか、どうやってお金を移動させるのか。

制裁は、海外に逃れたロシア人、あるいはずっと前に逃れたロシア人にも影響を与え続けている。PayPal(ペイパル)、Mastercard(マスターカード)、Visa(ビザ)といった著名な金融インフラプロバイダーはすでにロシアでの業務を停止しており、これはロシアの銀行を利用している駐在員は海外でカードを利用することができないことを意味するに。エストニアは最近「制裁逃れや違法行為の可能性を防ぐため」ロシアやベラルーシの国民からのeレジデンシー(電子住民)申請を停止した。欧州連合(EU)の規制当局は一部の銀行に対し、EU居住者を含むすべてのロシア人顧客による取引を精査するよう指示したと報じられている

この広範な制裁の波は、一部の人にロシアのパスポートを手放すことを促している。シベリア生まれのゲーム投資家は、ロシア国籍によって米ドルベースの金融システムから切り離されることを恐れ、シンガポールの市民権を手に入れようとしている。

「ウクライナ人は世界中で難民として受け入れられているが、我々ロシア人は最悪な状況だ」とこの投資家は嘆いた。

また、5年前に資産の大部分を暗号資産に投資したブラン夫妻のように、暗号資産が制裁回避に役立つと賭けている人もいる。ゲーム起業家のコナシュ氏は、スタッフが今後ロシアで身動きが取れなくなった場合、Bitcoin(ビットコイン)とEthereum(イーサリアム)がクロスボーダー決済の最後の手段になると予想した。

Binance(バイナンス)やCoinbase(コインベース)などの大手取引所は、すべてのロシア人に全面禁止を科すには至らなかったものの、制裁を守ってターゲットとなる個人をブロックしてきた。BinanceのCEOは、取引は公開された台帳に記録されるため、政府が追跡しやすく、暗号資産は逃げ道にはなり得ないと主張した

しかし、EU規制当局は、ロシアとベラルーシに科された制裁がすべての暗号資産に及ぶと主張し続けており、米国の議員たちはロシアが制裁を逃れるために暗号資産を使用できないようにすることを財務省に促している

「冷静さは新しい通貨」

ロシアを離れる人は、家族や友人と離れるという困難もあるが、それ以上に最近の出来事に対する認識の違いによる苦悩がある。

「両親や年配の親族は、『ここは大丈夫だから戻れ』と言い続けています。ロシアはすばらしい国だと」とブラン氏は信じられないような、しかし悲しい口調で話した。

教育を受け、自由を求めるロシアの技術者たちは、おそらく後ろを振り返ることはない。筆者が話をした、国を出るか他の人の脱出を手伝っているロシア人は、自国の苦境を語るとき驚くほど冷静だった。それは部分的には、避けられない別れに対して精神的に準備してきたからだ。

「投資家であるSOSVは、私たちに起業家としてゴキブリのように新しい環境に柔軟に適応することを教えてくれました。この哲学が、今、不確実な時代を乗り越える支えになっています」とヴァレンティーナ・ブラン氏は話した。「冷静さは新しい通貨です」。

ブラン夫妻のような移住者は、数十年前から続くロシアの慢性的な頭脳流出の最後の波となるかもしれない。

「私が気になるのは、ソ連やロシアで生まれたすばらしいエンジニアリングや科学の人材に目を向けると、大半が機会あるごとにソ連の世界を離れていっていることです」とコナシュ氏は話した。

「ソ連崩壊後の世界には、誰が残るのでしょうか? 私にとっては、この頭脳流出の最後の波は、ソ連から生まれた数少ないポジティブなものである教育や文化科学の伝統に死を告げるものです」。

画像クレジット:People line up to withdraw U.S. dollars at a Tinkoff ATM in a supermarket on Tverskaya street in Moscow. Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

なぜWeb3の富裕層は現金ではなく暗号通貨を寄付しているのか

ロシアとウクライナの戦争が激化する中、暗号資産は海外の寄付者がウクライナを支援するのに不可欠なツールとなっている。このような状況下での暗号資産による募金活動の成功は、暗号資産保有者が慈善活動の目的を支援するためにコインを手放すという、2022年大流行した広範なトレンドを反映している。

世界中の慈善団体が、ウクライナを支援するために暗号資産による寄付を募っている。人気の暗号資産寄付プラットフォームEndaoment(エンダオメント)は、2月下旬の戦争勃発以来、ウクライナを支援する慈善団体が200万ドル(約2億4000万円)超を集めたと明らかにした。また、別の暗号資産非営利プラットフォームThe Giving Block(ザ・ギビング・ブロック)もすでに150万ドル(約1億8000万円)もの暗号資産による寄付を受けておりキャンペーンのウェブページによると、United Way Worldwide(ユナイテッド・ウェイ・ワールドワイド)やSave the Children(セーブ・ザ・チルドレン)などさまざまな認定非営利団体を支援するウクライナ緊急対応基金に2000万ドル(約24億円)を暗号資産で集めるキャンペーンを3月19日に発表した。

暗号資産を寄付のツールとして活用しようとしているのは、非営利団体だけではない。主要な暗号資産取引所との提携の詳細を説明している新しいウェブサイトによると、ウクライナ政府はすでにBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Tether(テザー)、Polkadot(ポルカドット)、その他の暗号資産で5400万ドル(約64億円)超を集め、主に軍資金として活用している。ウクライナ政府のデジタル変革省は、暗号資産を通じて寄付を呼び込む取り組みの先頭に立っており、新しいパートナー企業はこれらの寄付をフィアット通貨に換えてウクライナの中央銀行に送るのを支援するとウェブサイトにはある。

ウクライナ侵攻は、確かに暗号資産を寄付するきっかけとなったが、この仕組みは2021年にあらゆる種類の慈善活動で人気が急上昇した。

米国を拠点とする501(c)3非営利団体への暗号資産寄付を促進する非営利団体のEndaomentは、プラットフォーム上での寄付額が2021年に25万3000ドル(約3000万円)から2800万ドル(約33億円)へと100倍になった。The Giving Blockも、年次報告書によると、2021年の寄付額が6900万ドル(約82億円)超となり、前年比1558%増と急増した。

こうしたことから疑問が湧く。寄付者はなぜ現金ではなく暗号資産をおくることを選ぶのだろうか。

The Giving Blockの共同創業者でCEOのPat Duffy(パット・ダフィー)氏は、税制優遇措置が重要な動機付けだとTechCrunchに語った。

「もしあなたが何か慈善的なことをしたいと思っていて、価値を認められた暗号資産を持っているなら、その暗号資産は最も税優遇措置を受ける寄付の方法です」とダフィー氏は話した。

米国を拠点とする寄付者にとって、501(c)3団体に暗号資産を寄付する場合と、ウクライナのような外国政府に寄付する場合とでは、大きな違いがある。前者は寄付者に有利な税優遇措置がとられることが多く、後者はそうではない。

法的に認められた非営利団体に現金を寄付すると、寄付者は税控除対象となり、慈善団体に寄付した分だけ支払うべき税金を減らすことができる。暗号資産や株式などの資産を寄付することは、現金で寄付するよりもさらに有益だ。というのも、税控除に加えてもう1つの重要な税優遇措置を受けることができるからだ。

通常、暗号資産保有者が利益を確定するために、価値が上がった後にコインを売却した場合、その利益の最大37%をキャピタルゲイン税として支払わなければならない。しかし、コインを寄付すれば、キャピタルゲイン税を支払う必要はない。この2つの税優遇措置は、デジタル通貨の価値が上がり続けることを期待してできるだけ多くのデジタル通貨を保有したいと考える暗号資産保有者が、現金を寄付する代わりに実際に慈善団体にコインを提供することを望む理由の1つだ。

資産寄付の手段として人気があるのが、ドナー・アドバイズド・ファンドだ。暗号資産やその他の資産、現金を専用口座に拠出することで、即時税控除を受けることができ、時間の経過とともに価値を高めることができる。口座保有者は最終的に自分の裁量で口座内の資金を非営利団体に振り向けることができ、すべての資金をすぐに使用する必要はない。Fidelity(フィデリティ)の慈善寄付部門、Endaoment、The Giving Blockは、暗号資産を受け入れることができるドナー・アドバイズド・ファンドを提供している。

ダフィー氏は、税優遇措置は暗号資産を提供する寄付者の取引を促進かもしれないが、暗号資産による慈善活動の唯一の動機ではないと指摘した。暗号資産の寄付者は、株式や現金を寄付する寄付者よりも多額を寄付する傾向があると付け加えた。

「暗号資産に関わっている人、特に暗号資産を扱い始めたばかりの人は、最先端にいること、世界を変える何かの一部になることに関心を持っています」とダフィー氏はいう。

暗号資産分野のトレンドと同様に、アイデンティティとコミュニティの感覚が参加促進の中心的な役割を担っている。精通した慈善団体は最終的に寄付された暗号資産を使う前にフィアット通貨に変換しているが、この文化的な現象を利用している。

「暗号資産ユーザーのためのスペースをもうける非営利団体は、他の団体を凌駕しています」とダフィー氏は話した。

セーブ・ザ・チルドレンのような大きな非営利団体は、そのリソースと規模から、暗号資産寄付プログラムを構築することができたが、多くの中小規模の慈善団体は、このオプションを追求していない。暗号資産の寄付は、慈善事業全体のごく一部に過ぎない。Giving USAによると、米国の慈善団体は2020年に寄付者から推定4700億ドル(約56兆円)超を受け取った。

米国証券取引委員会のGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)委員長を含む規制当局は暗号資産が詐欺や不正行為と関連していることを指摘しており、非営利団体は関与することをためらっているのかもしれない。また、暗号資産による寄付の受け入れに対応する技術やインフラが整っていない団体もある。

インターネット上で強固なプレゼンスを持たない零細の非営利団体はときに、暗号資産の受け入れは「宝くじ」のようなものだと考える、とダフィー氏は話した。同氏は、このような考え方に注意を促し、オンラインプレゼンスを持たない非営利団体は、暗号資産の統合を構築する前に「基本に忠実であるべき」だと述べた。

EndaomentとGiving Blockの年次報告書によると、両プラットフォームで2021年最も多く寄付に使われた暗号資産はEthereumだった。Ethereumは、他の暗号資産を抜いて、2021年に両プラットフォームで最も寄付された暗号資産となり、以前から人気のあったBitcoinやChainlinkをも上回った。

暗号資産の寄付はコインだけにとどまらず、NFT(非代替性トークン)の慈善プロジェクトも寄付者の間で人気を博している。例えば、人気NFTアーティストのPplpleasrは、Endaomentのプラットフォームを利用して、自身のアート作品の収益をStand with Asians Community Fundに寄付した。それぞれの年次報告書によると、EndaomentとThe Giving Blockのプラットフォームでは、合わせて約2000万ドル(約24億円)のNFTによる寄付が行われた。

特にNFTは、非営利団体にとって長期的な寄付の流れを生み出す可能性を秘めている。Solana(ソラナ)ベースのNFTマーケットプレイスMetaplex(メタプレックス)は、寄付APIスタートアップChange(チェンジ)との統合により、自社プラットフォームのクリエイターがNFTの販売を通じて定期的なロイヤルティ支払いで事前活動を支援することを可能にしている。

Web3のクリエイターは、NFTの寄付を「自分の作品を通して遺産を残す」機会だと考えていると、Changeの共同創業者Sonia Nigam(ソニア・ニガム)氏はTechCrunchに語った。

「これは、従来の慈善事業ではなく、クリエイターの実用化に関するものです。スマートコントラクト技術によって、インパクトが製品自体に宿り、そして永続的に寄付することができます」とニガム氏は語った。

「NFTのコレクションが始まると、彼らは、例えばすべての二次販売のうち2%を気候変動との戦いにずっと提供するという目標を設定します。そうすれば、再販のたびにクリエイターの初志が失われることはないため、クリエイターにとってエキサイティングなものになります。非営利団体にとっては、定期的な寄付のルートを確保することは常に第一の目標です」。

2021年は暗号資産による寄付が牽引してきたが、特に3月のウクライナ支援のための迅速な資金動員は、暗号資産コミュニティが他のものを支援するための触媒となる可能性がある。

TechCrunch Disrupt SF 2017に登場したヴィタリック・ブテリン氏(Ethereum考案者)

ロシア出身のEthereum共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏は先週、暗号資産投資家Katie Haun(ケイティ・ハウン)氏のチームが主催したTwitterスペースの会話で、最近の支援キャンペーンによって開かれた可能性について語った。

「(ブロックチェーンと暗号資産分野の)本当に中核となる多くの人々は、自由を支持し、より民主的な組織化の方法をサポートし、人々が基本的なものとして平和的に自分の個人的および経済的生活を持つ能力を一般的にサポートしたいと考えてその分野にいると思います」とブテリン氏は述べた。

ウクライナでこうした権利が侵害されるのを見て、暗号資産コミュニティの関心が高まったと同氏は語り、このような意識の高まりは、著名な暗号資産プロジェクトに携わる多くの人がウクライナ人であることが一因だと分析している。

ウクライナを支援するための暗号資産寄付キャンペーンの成功は、暗号資産が「非常に迅速に資金を集めることができるかなり優れた手段」であることを実証したと同氏は付け加えた。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

米CISAとFBIが米国の衛星ネットワークへの脅威を警告、Viasatへのサイバー攻撃を受け

ウクライナでの戦争に端を発した欧州の衛星ネットワークへの最近の攻撃が、やがて米国にも波及する恐れがあるとして、米政府は衛星通信ネットワークへの「脅威の可能性」について警告した。

今週発表されたCISA(米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)とFBI(米連邦捜査局)の共同勧告は、衛星通信(SATCOM)ネットワークプロバイダーや衛星ネットワークに依存する主要なインフラ組織に対し、サイバー攻撃の可能性の高まりに備えサイバーセキュリティを強化するよう促すとともに、侵入が成功してしまえば顧客環境にリスクをもたらすと警告した。

この勧告では、脅威を受ける特定のセクターの名前は挙げられていないが、衛星通信の利用は米国全土に広がっている。推定で約800万人の米国人が、インターネットアクセスのためにSATCOMネットワークに依存している。衛星通信システムの分析を専門とするサイバーセキュリティの専門家、Ruben Santamarta(ルーベン・サンタマルタ)氏はTechCrunchに対し、ネットワークは航空、政府、メディア、など幅広い業界で利用されており、遠隔地にあるガス施設や電力サービスステーションなどでも利用されていると述べた。

サンタマルタ氏によれば、特に軍が注意すべきなのは、最近SATCOMプロバイダーのViasat(ヴィアサット)が受けたサイバー攻撃だ。2月に欧州で数万人の顧客が通信不能になった。被害の規模を示す一例だ。

「ウクライナの軍隊はこの種の衛星端末を使っていました」とサンタマルタ氏はTechCrunchに語った。「ウクライナ軍の代表の1人が、通信の面で大きな損失があったことを認めています。ですから、明らかに今、影響を受けている最も重要な分野の1つなのです」。

同氏は、例えば海運業界にとって、攻撃が成功すれば、サイバーセキュリティの問題だけでなく、安全への脅威となる可能性があるという。「船舶は安全運航のために衛星通信を利用しており、遭難信号を送信する必要がある場合、無線周波数またはSATCOMチャネルで送信することができます。もし、そのような救難信号を送れないとしたら、それは問題です」と同氏は述べた。

今回の合同勧告は、欧米の情報機関が先月、ViasatのKA-SATネットワークを襲ったサイバー攻撃の調査を開始し、ロシアの侵攻開始時に欧州全域で大規模な通信障害を引き起こしたと報じられた数日後に発表されたものだ。

この障害はまだ完全に解決していないが、ウクライナや欧州の他の地域で何万人もの顧客の衛星インターネットサービスに影響を与え、ドイツではおよそ5800基の風力タービンを停止させたという。

このサイバー攻撃は当初、分散型サービス妨害(DDoS)攻撃によるものと考えられていたが、その後疑問視されるようになった。Viasatはまだ技術的な詳細を発表していないが、攻撃者が衛星ネットワークの管理セクションの設定ミスを利用してモデムにリモートアクセスしたことを確認している。サンタマルタ氏によると、このことは、攻撃者が悪意のあるファームウェア・アップデートを端末に展開した可能性が高いことを示唆している。

「攻撃者は、正規の制御プロトコルを悪用してコマンドを出すために、地上局を侵害または偽装することに成功し、端末に悪意のあるファームウェア・アップデートを展開した可能性が高い」と同氏はこの攻撃の分析で述べている。

Viasatはウクライナ軍に衛星通信サービスを提供していることから、今回のサイバー攻撃は、ロシアの侵攻初期にウクライナ全域の通信を妨害しようとした可能性があるとみられている。

「私たちは現在、これが意図的で、それ自体独立した、外部要因によるサイバー事案であると考えています」とViasatの広報担当者であるChris Phillips(クリス・フィリップス)氏は話す。「Viasatによる継続的な、そして現在も続く対応により、KA-SATネットワークは安定しました」と同氏は述べ、フランス宇宙司令部のMichel Friedling(ミシェル・フリードリング)司令官が、この事件の結果 Viasatの顧客端末が「永久に使用できない」状態になったとのツイートに反論した。

「Viasatは、この事案で影響を受けた欧州の固定ブロードバンドユーザーへのサービスを再開するために、販売代理店と積極的に協力しています。私たちは重要なインフラと人道支援に重点を置いています」とフィリップス氏は付け加えた。「私たちは大きな前進を続けており、複数の解決作業が完了し、他の作業も進行中です」。

米政府の勧告によると、SATCOMネットワークを標的とした同様の攻撃のリスクが高まっているため、米国の組織は「悪意のあるサイバー活動の兆候を報告し共有するための閾値を大幅に下げる」べきだという。

画像クレジット:Al Drago / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi)a

PayPalがウクライナ人への直接送金を可能にするサービスを拡充

PayPal(ペイパル)は、ユーザーがウクライナ人に送金できるようにサービスを拡充すると、米国時間3月17日に発表した。この拡充以前は、ウクライナのユーザーはPayPalを使用して国外に送金することしかできなかった。これにより、ウクライナのPayPalアカウント保有者は、世界中の友人や家族と送金し合うことができるようになる。PayPalウォレットでお金を受け取ったウクライナの顧客は、対象となるMastercardまたはVisaのデビットカードやクレジットカードをリンクすることで、自分の銀行口座に資金を移すことができるようになる。

また、PayPalは、6月30日まで、ウクライナのPayPal口座への送金、またはウクライナのPayPal口座への入金の手数料を一時的に無料にすると発表している。同社の国際送金サービスであるXoom(ズーム)も、ウクライナの受取人に送金する際の取引手数料を無料にする予定だ。

今回のPayPalの発表は、ウクライナ政府から同国の人々が支払いを受けられるような新サービスを展開するよう同社に要請があったことを受けてのものだ。

ウクライナの副首相兼デジタル変革担当大臣のMykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏は、Twitterでこの拡大を称賛し、PayPalから受け取った手紙を公開した。

PayPalからの手紙には「我々のチームは、PayPalがどうやったらウクライナの人々に最善かつ迅速に追加サービスを提供することができるかを見極めるために集中的に取り組んできました」と書かれている。「このサービスは、ウクライナの人々が世界中の友人や親戚からお金を受け取るために役立つと信じています。また、他の国にいるウクライナ人難民にとっても、現在住んでいる場所でお金を受け取ったり、引き出したりすることができるので、助けになると思います」。

ウクライナの顧客は、ウクライナのPayPalウォレットからUSD、CAD、GBP、EURで送受信することができるようになる予定だ。顧客がPayPalウォレットから対象のデビットカードやクレジットカードに資金を送金するとすぐに、そのカードに関連する通貨で資金を利用できるようになる。

今回の発表は、PayPalが今月初めにロシアでのサービスを停止したことを受けて行われたものだ。PayPalだけでなく、Mastercard(マスターカード)とVisa(ビザ)もロシアでのネットワークサービスを停止しており、同国から撤退した決済企業はPayPalだけでない。

戦争が始まって以来、人々はウクライナの人々を経済的に支援する方法を探してきた。Airbnb(エアービーアンドビー)のCEOであるBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏は、世界中の一部の人々が、ウクライナのホストに経済的支援を送るため、宿泊するつもりがなくてもウクライナのAirbnbを予約していると述べた。また、ウクライナは、対ロシア戦の援助を求める人々から数千万ドル(約数十億円)相当の暗号資産による寄付を受けている

PayPalのサービス拡充により、ウクライナの人々を支援する、より直接的な方法が促進されることになるだろう。同社によると、これらの新サービスは本日から利用可能になるとのことだ。

画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ロシア、YouTubeに「反ロシア」広告を止めるよう警告

2月末にウクライナに侵攻して欧州で陸戦を開始したロシアが、外国のソーシャルメディア大手に対する最新の攻撃として、反ロシア的な「情報攻撃」がYouTubeを通じて広まっていると主張し、同国のインターネット検閲当局からGoogle(グーグル)に警告を発した。同国は動画共有プラットフォームの広告がロシア国民への脅しに利用されることをGoogleが許容しているとして、米国のハイテク企業が「テロ行為」に関与していると非難している。

ロシアの通信情報技術監督庁Roskomnadzorは現地時間3月18日、同庁ウェブサイトに掲載した声明の中で、YouTubeがロシアとベラルーシ間の鉄道接続を遮断するよう人々に呼びかけるターゲティング広告を配信していると主張している。

「YouTube管理者の行為はテロ行為であり、ロシア国民の生命と健康を脅かすものです」と規制当局は書いている(ロシア語から機械翻訳)。

「このようなアピールの発信は、米国企業であるGoogle LLCの反ロシア的な立場を明確に示しています」とも。

規制当局はまた「反ロシア動画」の配信をできるだけ早く停止するよう、Googleに警告した。

その声明はさらに、米国のIT企業全般、特にテック大手のGoogleとFacebook(フェイスブック)を所有するMeta(メタ)が「ロシア軍、メディア、公人、国家全体の信用を落とす」ことを目的とした「情報攻撃」の標的キャンペーンを展開し、ロシアとの「対立の道」を選んでいると非難している。

「Meta Platforms Inc.とGoogle LLCによる同様の行為は、ロシアの法律に違反するだけでなく、一般に受け入れられている道的規範にも反しています」とRoskomnadzorは付け加えている。

Roskomnadzorの警告について、YouTubeからすぐにコメントを得ることはできなかった。

国家インターネット検閲機関からGoogleへの直接の警告は、ロシアがYouTubeへのアクセスをブロックする前兆である可能性がある。

最近、FacebookInstagram(インスタグラム)がRoskomnadzorによってブロックされている。ウクライナ戦争と並行して、ロシア政府がデジタル情報領域への支配を強化しようとしているためだ。

FacebookとInstagramは、Metaがヘイトスピーチポリシーを緩和し、特定の地域のユーザーがロシアに向けた特定の種類の殺害脅迫を投稿できるようにすると発表した後にブロックされた。Metaのグローバルアフェアーズ担当社長であるNick Clegg(ニック・クレッグ)氏は、これを「自衛の表現としての言論の権利」を守るために行われた一時的変更だと弁明した。

ここ数週間、RoskomnadzorはTwitter(ツイッター)にも制限を加えている。

しかし、YouTubeはウクライナ侵攻以来、同社がロシアでのサービスにいくつかの制限を加えているにもかかわらず、大きな検閲を受けずに済んでいる。例えばユーザーへの支払いサービスを停止するなどだ(同社はロシアの銀行に対する西側諸国の制裁の結果、この措置を取った)。

この状況が変わりつつあることを示す1つのシグナルとして、18日ロシアの報道機関が、Roskomnadzorに近い情報筋の話として、早ければ今日か来週にもYouTubeがブロックされる可能性があると伝えており、ブロックが迫っていることを示唆している。RIA Novostiの情報筋は、来週末までにYouTubeがブロックされる可能性が「最も高い」と述べている。

ロシアとウクライナの間で激化しているサイバー戦争のもう1つの小さな指標かもしれないが、今日この記事を執筆していた際、Roskomnadzorウェブサイトの読み込みが著しく遅かった。また、CAPTCHAを導入したようで、DDoS攻撃を防止・軽減しようとしている可能性がある。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

ロシアの「グーグル」Yandex、メディア事業から撤退か

プーチン政権はウクライナでの戦争に関するロシア国内の情報共有について締め付けを続けており、その影響でFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Twitter(ツイッター)と同じくメディア分野の主要プレイヤーでもあるロシア国内のハイテク大手がメディア資産の再編に着手している。

現地時間3月15日のロシアの報道では、往々にして「ロシアのGoogle」と呼ばれる同国の大企業Yandex(ヤンデックス)がメディア部門の売却交渉に入っており、ロシアのソーシャルネットワーキング大手VKが買い手候補に挙がっていると報じている。

この件に詳しい情報筋はTechCrunch に、ニュースアグリゲータのYandex Newsと、レコメンダーエンジンと連携したブログプラットフォームのYandex Zenを含むメディア部門の売却交渉が「最終段階」にあることを認めている。今後あり得る売却の時期については確認できなかった。Yandexは報道についてのコメントを拒否した。

この噂は、欧州連合(EU)内部でYandexに制裁を加えるよう圧力がかかっている中でのものだ。ニュース部門はすでに、Yandexの主要幹部(現在は元)Tigran Khudaverdyan(ティグラン・フダヴェルディヤン)氏に関連した制裁を通じて、EU規制当局から目をつけられている。

フダヴェルディヤン氏は3月15日、ロシアのウクライナへの正当な理由なき侵攻に関してEUの制裁を受ける個人リストに加えられた。EUは、Yandexのニュース事業の元責任者であるLev Gershenzon(レフ・ゲルセンゾン)氏の告発を引用し、Yandex Newsがプーチン政権のプロパガンダを広める役割を担っていることを強調した(ゲルセンゾン氏は現在ベルリンを拠点としていて、LinkedInのプロフィールによると2013年にYandexを退社している)。

この発表に続いて、今度はYandexから別の発表があった。フダヴェルディヤン氏は、Yandex NV(オランダに本拠を置き、NASDAQで株式公開しているYandexの親会社)の副CEOおよび取締役を退任する(取締役会は、同氏がEUの制裁対象者となったことを知り「ショックを受け、驚いている」と述べている)。

EUは「我々は、政権に実質的な収入源を提供している経済部門に関与しているオリガルヒ(新興財閥)や政権所属のエリート、その家族、著名なビジネスパーソンをさらに制裁リストに追加している」と述べた。「この制裁は、プーチン大統領のウクライナ人に対する戦争にともなう誤情報やプロパガンダにおいて主導的な役割を担っている人々も対象としている。我々のメッセージは明確だ。ウクライナへの侵攻を可能にした者は、その行動の代償を払うことになる」。制裁対象者への罰則は、資産の凍結や欧州への渡航禁止などだ。

フダヴェルディヤン氏が制裁対象個人リストに加えられた理由は2つある。1つは、プーチン政権とその対ウクライナの戦争をほう助したと考えられるYandexと、そのニュース部門の経営監督を行ったこと。もう1つは、2月24日にクレムリンで行われたオリガルヒとロシア高官の会合にフダヴェルディヤン氏が出席し、差し迫った制裁の影響について話し合ったことだ。

Yandex NVは2月25日に取引を停止したが、その時の時価総額は68億ドル(約8110億円)だった。

「ティグラン・フダヴェルディヤンは、機械学習によるインテリジェントな製品とサービスを専門とする、ロシアを代表するテクノロジー企業であるYandexの執行役員だ」と、EUは公式通知で述べている。「Yandexの元ニュース部門責任者は、同社がウクライナでの戦争についてロシア人から『情報を隠すための主要な役割』を担っていると非難した」とある。

EUはまた、Yandexの検索エンジンのユーザーが検索結果に基づいてウクライナに関するより広範なニュースを読むことを抑止しているとほのめかす製品決定にも言及し、こう書いている。「さらに同社は、ロシア政府がロシアメディアの掲載内容に関して脅迫した後、同社の検索エンジンでウクライナに関するニュースを探しているロシア人ユーザーに対して、インターネット上の信頼できない情報について警告している」。

さらに、2月24日に西側制裁の影響について話し合う会議にフダヴェルディヤン氏が出席したという事実そのものが「同氏がウラジーミル・プーチンに近いオリガルヒの内輪メンバーの1人であり、ウクライナの領土保全、主権、独立、またウクライナの安定と安全を損ねたり脅かす行動や政策を支持または実行している」ことを示していると指摘した。

これに加え、Yandexの幹部として、フダヴェルディヤン氏はロシアのテック分野でトップ幹部の1人であり、EUは「クリミア併合とウクライナの不安定化に責任を負うロシア連邦政府にかなりの収入源を提供している経済部門」の1人だと説明している。

フダヴェルディヤン氏が役職から離れることが現実的な動きなのかは明らかではない。同氏はもう国際的に活動できないのか、あるいはYandexがEUの直近の非難から経営陣を遠ざけようとするためにこれを行ったのか。

同社に関してはここ数週間、国際的にさらに孤立するような動きがいくつもある。NASDAQ市場での取引停止に加え、投資家のEsther Dyson(エスター・ダイソン)氏とスタンフォード大学の経済学者Ilya Strebulaev(イリヤ・ストレブラエフ)氏という、国際的に知名度の高い長年にわたる2人の取締役が3月初めに取締役を辞任した。Yandexは、財務的にも制裁の範囲に関しても同社は安全な状態にあると主張している。

いずれにせよ、ニュース事業を完全に切り離すことは、Yandexをすべてのドラマから遠ざける1つの方法といえるかもしれない。

その点では、VKは興味深い買い手となるだろう。VKの創業者 Pavel Durov(パーヴェル・ドゥロフ)氏が会社のトップから追い出されようとしていたときのことを思い出して欲しい。クレムリンにつながる企業が支配するMail.ruがソーシャルメディアのプラットフォームを支配下に置いた後(現在はVKを所有している)、政府がすでにビジネスにおいて強い役割を果たしているとドゥロフ氏が考えたことが内部紛争の一因だった。当時クリミア半島に集中していたウクライナでの紛争勃発が転機となった、とドゥロフ氏は当時述べた。

Yandexは長年にわたり、国際的な事業展開に意欲を燃やしてきた。実際には、ロシア語圏の国々への進出や、トルコでの事業展開が主なものだった。同社は、法律に則って事業を行わなければならないと主張しているプーチンのロシア内で開発されている「中立的」なプラットフォームであるという姿勢を維持しようとしてきた。

しかし、現在のロシアの体制下で、Yandexあるいはどの企業も中立であり続けることができるかどうかは疑問だ。

中立の幻想

オンラインに適用される法的規制には、大規模なニュースアグリゲーターに適用されるメディアライセンス規則が含まれる。つまり、Yandex Newsは国のメディア規制当局が監督する公式登録に記載されたニュースソースしか表示できないため、本質的に「中立」はまだ政府の公式監査人によって認定されたものだ。独立系メディアも、その過程で締め出される。その最新例が、調査報道サイト「Bellingcat」(ウクライナに対する戦争について報道し、プーチンのプロパガンダに長年苦しめられてきた)の国内での禁止だ。

Yandex NewsとZenの売却計画に詳しい情報筋はTechCrunchに、Yandexは5年も前にメディア部門の売却を検討していたと語った。しかし、これらの製品と他のYandexの資産との統合をほどくことの複雑さが、メディア部門からの撤退に向けた動きを先送りした可能性が高いという。

それ以来、プーチン政権はロシアのメディアに対する規制を強化し、2021年はニュースアグリゲーターに外国のメディアソースを「外国のエージェント」とラベル付けすることを要件とするなど、規制強化の動きは明らかだ。

TechCrunchの情報筋によると、ウクライナに関する言論を制限する新しい規制が導入された後、Yandexのこの分野からの撤退の決定が最終的に加速したという。ロシア議会は2022年3月初め、ロシア軍に関する「虚偽」情報を広めたとみなされた人に最高で15年の懲役刑を科すという新しい法律を承認した。

この法律は、Yandex Zenのようなプラットフォームのブロガーに明白なリスクをもたらすだけでなく、テックプラットフォーム自体にも、そのアルゴリズムが制裁対象コンテンツを拡散させていると見なされた場合リスクをもたらす。

RTBが報じたように、Yandexは近年、ニュースの選別アルゴリズムについてロシアの政治家たちから注目されていて、トップニュースの結果に影響を与えたと非難されている(同社は繰り返し否定している)。

Yandexは最近、Zenプラットフォームにいくつかの変更を加えた。おそらく、そうした政治的リスク、そしていまや法的リスクを少なくするための措置で、開かれたオープンインターネットからコンテンツを取り込んでいたオープンレコメンデーションモデルから、購読ベースのコンテンツのみを推薦するように変更したが、これはレコメンデーションによる収入に依存しているブロガーの怒りを買った。

しかし、TechCrunchの情報筋は、Yandexが中立性を主張しながらメディア領域で事業を継続することが実行可能だとはもはや考えておらず、代わりに、メディアの影響をそれほど大きく受けない検索やその他のテックに焦点を当てたサービスに力を注ぐことを示唆した。

「このような規制への対処は、技術的なものだけでなく非常に難しい仕事です」と売却計画に詳しい情報筋は付け加えた。

検索大手の同社は、広告収入からの多角化を図るため、他にもさまざまなサービスや事業を行っている。クラウドやeコマースサービス、翻訳技術、自動運転車技術、さらに配車やフードデリバリーサービスなどだ。

ある人は、Yandexがテックにもっと集中するためにメディアをあきらめ「事業を再構築する方法を再調査」する必要があり、クレムリンの管理強化や対ロ制裁が強まる国際情勢に適応しようとしていると語った。

VKの参入

ロシアのソーシャルメディア大手VKが、Yandexのメディア資産を購入する可能性があると言われている

TechCrunchの情報筋3人はVKがYandexのメディア事業買収を交渉している企業の1社であることを認め、VK内部の情報筋によると、同社は2021年もYandexと取引の可能性を議論していたという。

「2021年、Yandex NewsとZenの買収について議論しました。しかし、Yandexが売却を望んでいるため、今が買収する良い機会です」とこの情報筋は匿名を条件に話した。

別の情報筋は、VKを現時点でのYandex NewsとZenの「最も近い」買い手候補とし「Yandexにとって時間が重要だ」と述べ「数カ月以内に」取引が行われる可能性も示唆した。

TechCrunchは、VKがYandex NewsとZenの買収を交渉しているという噂についてVKに公式コメントを求めたが、本稿執筆時点で回答はない。

VKはすでに、同社の消費者向けソフトウェア製品群の中にニュース製品を持っており、インターネットポータル「Mail.ru」を通じてニュースコンテンツを表示している。

VKの関係者は、Instagram(インスタグラム)がロシア市場から締め出されたことで生じたソーシャル分野の空白でYandex Zenが成長する可能性を指摘し、ビジネスの観点からすれば、欧米の大手ソーシャルメディアへの規制は、トラフィックを獲得できるため喜ばしいことだと述べている。

「我々はロシア、ベラルーシ、および他のロシア語圏の国々で唯一のメディアかつソーシャル(プレイヤー)になりたいのです」と情報筋は付け加えた。

Yandexとは異なり、VKは国際的な事業を拡大する野心を表明しておらず、成長努力を地元市場に集中している(ただし、Yandexが国際的に大きく成長する見込みは、欧米のロシアに対する制裁が強化されるにつれて低くなる可能性がある)。

一方、Yandex検索は、プーチン政権が好まないウェブサイトやアプリをすべてブロックし、ユーザーに提供できるコンテンツを制限できるインターネット規制の下で運営しなければならない(実際、そうなっている)。

例えば2021年9月、Yandexは政府の禁止措置に従うため、獄中のクレムリン批判者Alexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏が作成した戦術的投票アプリを検索結果から排除することを余儀なくされた。

また、ロシアの裁判所は、Yandexがキーワード検索システムで「スマート投票」というフレーズを使用することを禁止した。つまり、そのフレーズに関連するコンテンツを提案することはできない。だが、Yandexは判決を不服として控訴した。

クレムリンの規制と欧米の制裁がロシア経済に打撃を与え続ければ、技術系人材の流出につながる可能性がある。ITコミュニティは、数千人のテックワーカーが個人的なリスクを冒して最近の公開嘆願書で戦争反対の意志を公にしたように、最も外向きでグローバルなつながりを持つプロフェッショナルの 1 つであることを考えると特にそうだ。

そのため、クレムリンが自国のテック企業に対する業務上の制限をどこまで強化するかという問題がある。強化すれば、企業全体が海外に移ることもあるかもしれない(Telegramの創業者ドゥロフ氏が自身の会社だったVKをロシアに残したように)。

クローンの攻撃

国際的な事業展開を目指すロシアのハイテク企業は、ロシアが世界からますます孤立していく中で、選択肢を考えているに違いない。すでにクレムリンの勢力圏に完全に組み込まれている企業もあれば、制裁によって外国人が残した空白にローカル成長の新たな機会を見出そうとしている企業もある。

1つだけはっきりしていることは、ウクライナでのロシアの戦争が、ロシア国内のデジタル経済のあり方に大きな影響を及ぼしているということだ。

西側諸国は、ウクライナ侵攻を受けてプーチン政権に圧力をかけるための重要な手段として、テクノロジーをターゲットにしている。ウクライナのハッカー集団「IT Army」のような草の根活動が、ロシアの多くの機関や企業のウェブサイトやインターネット事業を組織的に狙ってダウンさせる一方で、米国とEUはロシアの銀行や企業幹部、その他Internet Research Agencyとして知られる悪名高い企業などの団体に制限を加えている。

欧米の制裁ではロシアの決済が崩壊し、サービス撤退を求めるかなりの圧力が強まったため、多くの外国のハイテク大手がロシアから撤退した。

活動の変化の一部は、ロシア自身によって起こった。Facebook、Instagram、Twitterなどの主要ソーシャルメディアプラットフォームは、ロシアのインターネットおよびメディア検閲機関であるRoskomnadzorによってブロックまたは制限されており、プーチン政権はデジタル情報領域に対する支配を強めている。

欧米の大手ハイテク企業に対する制限の必然的な帰結として、そのギャップを埋めるためにロシア企業が参入する機会が生まれるということがある。

例えば、ロイターは3月16日、InstagramのクローンであるRossgram(ロスグラム)が地元の起業家によって立ち上げられ、3月28日に開始予定だと報じた。ロイターは、この構想のPRディレクターがソーシャルネットワークVKontakteに投稿した文章を引用ている。「我々の開発者グループはすでに準備ができており、我々の同胞に愛される人気のソーシャルネットワークのロシア版アナログを作成する機会を逃さないことにした」。

一方、戦略イニシアチブ機関(これ自体はロシア政府が設立した非営利団体)が設立したベンチャーファンドのIIDFは、ロシアから撤退したり、事業を禁止されたりしているサービスを代替したり、真似したりする、すでに存在するか構築されているテックサービスの登録を開始した。この登録は、IIDFのアクセラレータという形で行われているため、そのギャップを埋めるために、新しいスタートアップに資金を提供するプログラムも展開していることが想像できる。

画像クレジット:Lilyana Vynogradova / Shutterstock

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(文:Natasha Lomas、Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウクライナ発の顔交換アプリ「Reface」が反戦キャンペーンに対するロシアユーザーの反発を受け同国から撤退

Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)などの主要ソーシャルネットワークが最近ロシア当局にブロックされ、ロシア政府がウクライナ戦争に関わる会話を完全制御しようとする中、ウクライナ発の顔交換アプリReface(リフェイス)は、自発的にロシアから撤退した。

プーチン大統領が2月末にウクライナ侵攻を軍隊に命じて以来、同スタートアップは、自社アプリをロシア政府によるメディア検閲を回避するために使う試みを早々に決定し、ユーザーに反戦メッセージをプッシュ送信し、ロシアに対する制裁を支持するよう呼びかけた他、ウクライナで起きている荒廃の画像をアプリで表示した。さらにRefaceは、ロシア人ユーザーに向けて位置ターゲットされたメッセージを送り、戦争に反対する運動に参加するよう呼びかけた。

この反戦キャンペーンの結果、数百万件という反戦メッセージがロシアのRefaceユーザーに届けられた。米国時間3月15日のブログ記事で、約1300万件の反戦プッシュ通知が送られたとスタートアップは語った(同社によるとロシアの同アプリのユーザーは200万人程度)。

しかし、その反戦コンテンツはロシアのユーザーから直ちにネガティブな反応を受け、キャンペーンは中止され、アプリは星1つのレビューで埋め尽くされた。以下にブログ記事のグラフを載せた。

画像クレジット:Reface

Refaceのブログには、同社はロシアのユーザーのネガティブな反応を、彼らがウクライナで壊された家屋や殺された女性や子どものことを気にかけていないことの証だと解釈しつつ、中には完全に否定的とは言えない言葉もあったことを指摘した(ただし、ほとんどがネガティブであるとも言っている)。

「私たちの努力が、ロシアの国を上げてのプロパガンダと争うには不十分であったことを認識し、当社はRefaceアプリをロシアのApp Store(アップ・ストア)およびGoogle Play(グーグル・プレイ)から削除することを決定しました」と同社は書いている。3月10日以前にアプリをダウンロードした人は今も使用できるが、新規のダウンロードとサブスクリプションは無効になっている。

「ロシアの市場やロシアと何らかの関わりのあるものから、いかなる利益を上げることも当社は望んでいません。この国によるウクライナに対する残酷な戦争のために起きている経済制裁や技術的孤立の影響を、すべてのロシア人が感じるべきです」とRefaceは付け加えた。

同社CEOで共同ファウンダーのDima Shvets(ディマ・シュベッツ)氏は、ロシアからアプリを撤退する決定はRefaceだけの判断であることを明言した。

「当社はロシアのインターネット検閲による制限は受けていません」と同氏がTechCrunhに話した。「ロシアの巨大な情報キャンペーンの後、撤退を決めました。ロシアとは一切接点を持ちたくなかったからです。

画像クレジット:Natasha Lomas/TechCrunch(スクリーンキャプチャー)

これはロシアにおけるインターネット体験がウェブの主流から取り残されつつあることを示す小さな兆候の1つであり、それはロシアの銀行、著名な企業幹部、その他の組織(たとえば悪名高いInternet Research Agencyという名の荒らし軍団)に対する西側諸国の正式な制裁措置によるだけでなく、 大企業から小企業までさまざまなテック企業が自主的に市場を離れたことによるものだ。

RefaceアプリのAI利用の顔交換エフェクトは元々純粋なエンターテインメント目的であり、ユーザーは自分の顔を有名な映画シーンのセレブと交換したりしていたが、開発チームの母国ウクライナで起きた戦争は、 穏やかな気持でアプリ運用するための状況を明確かつ著しく変化させた。

「以前、Refaceユーザーは自分をジャック・スパロウやアイアンマンと入れ替えて楽しんでいました。今私たちは、自分たちをゼレンスキー大統領と入れ替え、ウクライナ国歌とともに写真に息を吹き込むよう働きかけています。今やゼレンスキー氏には カニエ・ウェストより多くのInstagramフォロワーがいます。何というタイムラインでしょう!」とRefaceは消費者の状況の変化ぶりをブログ記事に要約した。

現在同社は自社アプリを使って、ロシア外でのウクライナ支援を呼びかけるために使い続け、ユーザーに、ウクライナ大統領、Volodymyr Zelensky(ヴォルディミル・ゼレンスキー)氏の人気ビデオクリップや、ユーザーがアップロードしたウクライナ兵士の画像と顔交換できるようにしている。

Refaceは作成された親ウクライナ合成メディアに、#StandWithUkraine(ウクライナ支持)のハッシュタグを付加して、こうした支持のビジュアルメッセージをソーシャルネットワークで拡散するようユーザーに呼びかけている。

ウクライナ国土で進行している実際の戦争とともに、オンラインで同時進行する情報戦争で起きた最近の出来事として、ウクライナ大統領がオンラインで自国の戦争努力を傷つけているように見せかけるディープフェイク映像が出現した。最近、ゼレンスキー氏が降伏しているように見せる改ざん動画が、Telegram(テレグラム)、およびFacebook(フェイスブック)とロシアのライバルサービスであるVKontakte(ヴィー・コンタクテ)などのソーシャルネットワークに出回っていることがわかった。

これらの偽動画の出どころがどこなのかははっきりしていない。しかし2022年3月、ウクライナの戦略コミュニケーションセンターは、ロシアが改ざん動画を流布して、自らの侵攻に対する一般大衆の認識を操作しようとしていると警告した

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画像クレジット:Efrem Lukatsky / AP

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウクライナのゼレンスキー大統領主演ドラマ「国民の僕(しもべ)」、米ネットフリックスが再放送

ウクライナのゼレンスキー大統領主演ドラマ「国民の僕(しもべ)」、米ネットフリックスが再放送―同氏を大統領に押し上げた作品

米ネットフリックスが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が主演を努めた人気ドラマ「国民の僕(Слуга народу:Servant of the People)」の米国における再配信を開始しました。

国民の僕(しもべ)は、さえない歴史教師の政治批判が隠し撮りされ、ネットでブームになったことから、あれよあれよという間に大統領に……というストーリーから始まるコメディ・ドラマシリーズです。

このドラマのストーリーをなぞるように、ゼレンスキー氏は大統領選に出馬して当選し、現在も苦境のウクライナを率いていることは、もはやおなじみかとおもいます。

この作品はもともと、ウクライナでは2015年から2019年まで放映されていたシリーズ。アメリカのNetflixでも以前に配信が行われていました。今回は、その配信が再開されたかたちとなります。

一方でネットフリックスは、ロシアにてそのサービスを停止しています。また国民の僕はYouTubeでも視聴することが可能で、こちらでは自動翻訳による日本語字幕も利用できます(再生リストはこちら)。

コメディアンから大統領へと転身し、自ら前線に立ちウクライナを鼓舞するゼレンスキー氏の出世作となった本ドラマ、今だからこそチェックしておきたいものです。

(Source:the VergeEngadget日本版より転載)

ウクライナ大統領、暗号資産を合法化する法律に署名

ウクライナ議会は1カ月前、暗号資産を合法化する法案を可決し、Bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)などの暗号資産の規制と管理の枠組みを準備した。そして現地時間3月16日、同国のVolodymyr Zelenskyy(ウォロディミル・ゼレンスキー)大統領は、法案「暗号資産について」に署名し、規制された暗号資産マーケットを運営するための法的枠組みを確立した。

「議会は暗号資産に関する法律を採択しました。数日のうちに大統領が署名して法制化されると思います。ですから、我々はできるだけ暗号資産に友好的であろうと努力しています。そして、戦時中もこの努力を続けています」と、ウクライナの副首相兼デジタル変革担当大臣のMykhailo Fedoro(ミハイロ・フェドロフ)氏は3月15日、TechCrunchのインタビューに答えている。

Cointelegraph(コインデレグラフ)やCoindesk(コインデスク)などデジタル資産に特化したメディアの報道によると、暗号資産取引所やデジタル資産を扱う企業はウクライナで合法的に活動するために政府への登録が必要となり、銀行は暗号資産企業向けの口座開設を許可されることになる。

この法律はまた、デジタル資産に関する国の政策を決定し、暗号を扱う企業にライセンスを発行し、金融監視機関として機能する権限をウクライナの国家証券市場委員会に与えると伝えられている(実際には、ウクライナの議会は2021年9月に暗号資産を合法化する法律を可決したが、ゼレンスキー大統領はその後すぐに暗号資産を管理するための新しい規制機関を立ち上げる余裕はないとして法案を否認した)。

もしあなたが、ウクライナでは暗号資産はすでに合法だったと考えていたのなら、それはあなただけではない。ブロックチェーン分析企業のChainalysisによると、正式な規制がなくても、2020年秋までにウクライナ人、ロシア人、ベネズエラ人は(この順で)デジタル通貨のアクティブな小売ユーザーの仲間入りを果たしていた。

当時、Chainalysisの調査責任者は「本当にテックネイティブな人口」や「勤勉なスタートアップ環境」など、いくつかのトレンドがウクライナを上位に押し上げているとCoindeskに語った(Coindeskはまた、東欧は他の地域よりもサイバー犯罪活動が盛んで、これも多くの取引量を牽引する役割を果たした可能性が高いと述べている)。

ロシアがウクライナに侵攻し、兵士と市民を同様に殺害し始め、人口4200万人の国から推定300万人が脱出するようになってから数週間、ウクライナは数千万ドル(数十億円)相当の暗号資産による寄付を受け、法律として成立したばかりの規制の種類は新たな緊急性を帯びてきている(NPRはポーランドに逃れたウクライナ難民、およそ180万人をワルシャワの人口にたとえた)。

新しい法律が施行されたことで、ウクライナ初の暗号資産取引所であるKuna(クナ)は、もはや同国が寄付金を暗号資産を扱っているサプライヤーに直接使うことを支援するだけに限定されず、暗号資産を切望されているフィアット通貨に変換することができる。一方、ウクライナはバハマに拠点を置く取引所大手FTXとも提携し、ウクライナの戦争活動を支援する暗号資産による寄付をフィアット通貨に換え、ウクライナ国立銀行に預けることができるようになった。

具体的には、Coindeskが3月14日に報じたように、FTX、KunaそしてとEverstakeというステーキングプラットフォームはウクライナ政府当局と提携し、Aid for Ukraineというユーザー向けの寄付サイトを立ち上げ、Bitcoin、Ether、Tether、Polkadot、Solana、Dogecoin、Monero、Icon、Neoで「自由のために戦っている人々を支援するため」の寄付を受け付ける。

世界中からの資金調達に関しては、暗号資産による寄付がカギを握っている。「我々は5500万ドル(約65億円)を集めることができました。そして、そのすべてはウクライナ軍の要望に充てられました」と、フェドロフ氏は15日にTechCrunchに語った。

Everstakeが指摘したように、この取り組みが「公的金融機関への暗号資産による寄付のリードを提供した最初の暗号資産取引所の例」であることが事実かどうかはわからないが、最初の1つであることは間違いないだろう。

確かに、ほんの数カ月前にニューヨーク・タイムズ紙でウクライナが「The Crypto Capital of the World(世界の暗号資産首都」という見出しで紹介されたときにウクライナ当局が期待していたようなことは起こっていない。

ウクライナのデジタル変革省の副大臣Alex Bornyakov(アレックス・ボルニャコフ)氏は想像を絶する事態が起こる前の11月に、記事の取材で「暗号資産企業にとって世界トップの権威の1つになる、というのが狙いです」と語った。

「我々は、これが新しい経済であり、未来であり、そして我々の経済を後押しするものだと信じています」。

画像クレジット:Vasenka Photography / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏するフェイク動画をMetaが削除

ウクライナ大統領Volodymyr Zelensky(ウォロディミル・ゼレンスキー)氏が軍に降伏を命じているフェイクビデオを、Metaは米国時間3月16日に削除した。動画は、ロシアによる隣国ウクライナへの残忍な侵攻と並行して行われている情報戦争において警戒を要する最新の出来事だが、以前からウクライナ政府とソーシャルメディア企業が予期瞬間でもある。

MetaのセキュリティポリシーのトップであるNathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏の説明によると、そのコンテンツは「操作されたメディア」に対する規則を破っているため削除された。マルチメディアによる偽情報の形式の1つで、公人が実際には口にしていないことを言ってるように編集した動画で表現されている。

このビデオは、誤解を招く操作されたメディアに対する、弊社のポリシーに違反しているため迅速に検討して削除し、他のプラットフォームの同僚たちにも通知した。

この誤解を招く動画のMetaによる削除はかなり早かったが、ロシア版FacebookであるVKontakte上ではすでに広まっているようだとAtlantic Councilのデジタル犯罪捜査研究所はいう。同研究所はさらに、Telegramのロシア寄りチャンネルが3月16日にゼレンスキー氏が国の降伏を呼びかけているディープフェイクを掲載したともいう。

国営テレビネットワークのUkraine 24も、ニュース表示が3月16日に同じ目的でハックされたと報じている。その表示は、Zelenskyからと称するメッセージがウクライナ国民に、ロシアの侵略軍への抵抗をやめるよう呼びかけている。

ロシアのハイブリッド戦争が始動。Ukraine 24のテレビチャンネルがハックされた。ニュース表示がゼレンスキー大統領の偽の降伏宣言を表示されるようになった。@ZelenskyyUaはすでにこのフェイクに反論して、彼が武器を置けと要求できるのはロシア軍に対してだけだと述べている。

ウクライナの大統領はすばやくその偽情報を否定して、侵攻の開始以来ゼレンスキー氏のコミュニケーションのスタイルとなったセルフィービデオで、Telegram上でメッセージした。

2022年3月初めにウクライナの戦略的コミュニケーションセンターが、ロシアは変造したビデオを使って侵攻の一般大衆の受け止め方を歪曲するかもしれないと警告した。そのセンターはウクライナ政府の文化情報政策省に属し「外部の脅威、中でも特にロシア連邦の情報攻撃を阻止する」ことに注力している。

同センターは3月2日にFacebookページで次のように述べている。「ウォロディミル・ゼレンスキーがテレビで降伏声明を述べているところを、自分が見ていると想像してみよう。姿も見えるし声も聞こえるからそれは事実だが、しかしこれは本当ではない。用心しよう。これはフェイクだ!」。

画像クレジット:Drew Angerer/Getty Images/Bloomberg, Getty Imagesより/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Slackがロシア国内のアカウント停止措置を開始、親会社Salesforceの対応に追従

Slackがロシア国内のアカウント停止措置を開始、親会社Salesforceの対応に追従

Oscar Wong via Getty Images

業務用コミュニケーションツールのSlackが、ロシア国内のアカウントを停止する措置を開始しました。Slackの親会社であるSalesforceはすでにロシアからの撤退を表明しており、これに準じた対応と考えられます。

ニュースサイトAxiosによると、Slackのアカウント停止は主に米国からの制裁対象になった会社や組織を対象に予告なく行われており、一切のデータのダウンロードやバックアップの機会も与えられなかったとのこと。

Slackは数多くの企業に浸透しており、社内におけるコミュニケーションやファイルのやりとりなど、利用する企業にとって重要なデータを多く取り込んでいます。そのためバックアップ手段を講じていない状態で突然利用できなくなった場合、業務への影響は非常に大きなものとなりそうです。

SlackはAxiosに対し「われわれは、事業を展開する他の国々における米国の制裁規制を遵守することを法律で義務付けられており、状況によっては事前通知なしにアカウントを即時停止するなどの行動を起こすことが求められている」と述べました。そして「法律で許可されている場合には、これらのアクションの影響を受ける顧客と連絡を取っている」とコメントしています。

なお、Slackとしては遮断した企業のアカウントのデータを削除はしていないものの、制裁によって遮断された組織はそれが解除復旧されるまではデータにアクセスすることもできません。

ちなみにSalesforceは、撤退は先週から開始しているものの、ロシア国内の顧客はごく少数であり「ロシアには重要な事業はない」と述べています

(Source:AxiosEngadget日本版より転載)

Ecosiaが検索による広告収益をグリーンエネルギーに投資

非営利的な検索エンジンであるEcosia(エコシア)は、ユーザーの検索結果に対して得られる広告収入の一部を、再生可能エネルギー分野のスタートアップ企業に提供することを始めた。

これは、Ecosiaが気候変動に注力するスタートアップ企業を支援するために、2021年立ち上げた3億5千万ユーロ(約456億円)の「WorldFund(ワールドファンド)」に追加されるものだ。

Ecosiaは、検索による広告収益で植林のための資金を寄付する活動も続けている(この活動は、Ecosiaの活動として最もよく知られている)。しかし、ベルリンを拠点とするこの検索エンジンは、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされたエネルギー危機を受け、グリーンエネルギーへの投資に「継続的に取り組む」ことにしたと語っている。

その最初の投資対象はドイツに焦点を当てている。特にロシアからのガス購入に依存しているドイツは、その経済がウクライナ危機の影響を大きく受けていることを意味する。

この戦争はすでに、世界に化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速させる新たな原動力を生み出している。気候危機に経済危機が重なったことで、再生可能エネルギーへの需要が急増する可能性がある。

しかし、化石燃料の利権者たちは、グリーンエネルギーへの急速な移行を阻止するため、すぐに反論を展開し、西側諸国が石油やガスの利用を進め、地球上の生命をより早く焼き尽くしてしまうように、ロビー活動を行っている。つまり、投資家が再生可能エネルギーに小切手を切ることに急ぐ理由には事欠かないというわけだ。

Ecosiaは、スタートアップ企業や自然エネルギーの取り組みに資金を提供するため、まずは2700万ユーロ(約35億円)を用意したという。その初期の投資の対象となるのは、ベルリンのスタートアップ企業であるZolar(ゾーラー)の供給ネットワークだ。Zolarは太陽光発電システムの設置を希望する顧客と、地域の計画・設置事業者を結びつけるプラットフォームで、ドイツ中の家庭へグリーンエネルギーを普及させることに貢献している。

Ecosiaは、Zolarの地域ソーラー販売ネットワークを通じて、小型ソーラーシステムにすでに2000万ユーロ(約26億円)を投資したと述べている。同時に、ドイツ全域でその他の再生可能エネルギープロジェクトにも投資を行っているという。

「現時点では、我々はドイツ全域の再生可能エネルギープロジェクトを支援しています。再生可能エネルギーへのさらなる投資は、Ecosiaが地域自然エネルギープロジェクトや起業家からの提案を評価した上で、他の国でも行われる可能性があります」と、広報担当者は筆者に語った。

Ecosiaのグリーンエネルギー投資の目標は、より多くの企業が再生可能エネルギーに投資することを促し、化石燃料を地中に埋めたままにしておくことがかつてないほど急務となっている今、再生可能エネルギーへの移行を加速させることであると、広報担当者は付け加えた。

Ecosiaの広報担当者は「再生可能エネルギーへの投資を、気候変動に留まらない規模に拡大したいと考え、助言を求めている企業や、欧州の化石燃料への依存度を下げるという意味で変化をもたらすグリーンエネルギーのアイデアを持つ起業家やコミュニティのプロジェクトリーダーは、当社のエネルギーチームに連絡してください」と述べ、最高執行責任者のWolfgang Oels(ウルフガング・オールズ)氏がこの取り組みを指揮していることを強調した。

Ecosiaは、検索による広告収入の投資先をさらに多様化し、将来的には再生可能農業も視野に入れることを示唆している。ただし、現時点では、グリーンエネルギープロジェクトに重点を置いていることは変わらない。

植林と再生可能エネルギーへの投資をどのように分配するかという質問に対して、Ecosiaは、エネルギー資金は応募者の能力次第であるため、正式な分配は行わない、つまり収益の分配は毎月ケースバイケースで決定されると答えた。

広報担当者によれば、Ecosiaは月次の財務報告書で「いつ、どのように」投資を行うか、利益の分配を公表するという(これは従来からの植林への寄付も同じだ)。

幅広い気候変動技術に注力し、資金調達を希望するスタートアップ企業は、Ecosiaの創業者であるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏がベンチャー・パートナーを務めるWorldFundに売り込むことをお勧めしたい。これまでWorldFundは、植物由来ステーキをてがけるスタートアップ企業のJuicy Marbles(ジューシー・マーブルズ)や、植林のためのフィンテック企業であるTreeCard(ツリーカード)、カカオを使わないチョコレート代替品を作るQoa(コア)などに出資してきた。

画像クレジット:Ecosia

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

欧州のスタートアップによるウクライナ難民支援状況

ベルリンに本社を置くバッテリー交換のスタートアップSwobbeeの創業者でCEOのThomas Duscha(トーマス・ダーシャ)氏は、3月初旬にポーランドにいる家族を訪ねた。そこでウクライナ危機に接し、それが行動を起こすきっかけとなった。

「数週間前まで妻と生まれたばかりの子どもと一緒にポーランドにいたのですが、いつもと変わらない様子だったのに、突然、ブラックホークのヘリコプターが飛んできて。大変なことになっているんです」とダーシャ氏は話した。「何かしなければと、すぐに決心しました」。

ロシアがウクライナへの侵攻を始めてから数週間経つが、国連難民機関の追跡調査によると、米国時間3月15日時点で300万人超のウクライナ人が国外に逃れた。うち180万人超がポーランドに向かった。ベルリンはポーランドとの国境に近いため、ベルリンのスタートアップをはじめ多くの人々が技術に裏打ちされた草の根的な活動を始め、物資の提供、国境を越える移送、難民のための仕事と家の確保に取り組んでいる。

ダーシャ氏は、LinkedInへの投稿で、ベルリンのテックコミュニティに行動を呼びかけることから始めた。

3月3日の投稿には「SwobbeeはモバイルエネルギーとVodafone Gigacubeを提供し、人々が愛する人と確実に連絡が取れるようにします」と書かれている。「3月11日には、私の故郷であるトマシュフ・ルベルスキへ緊急物資を支援者と共に車で届けに行きます。状況が刻々と変化する中で、我々は市長とよくつながっています。市長のチームはどこをどのように支援すればよいかを熟知しています」

ダーシャ氏はフォロワーに、ベビーフード、缶詰、おむつ、寝袋、救急用品、生理用品、薬、パワーバンク、懐中電灯、電池などの寄付を求めた。そして、ベルリンのモビリティやスタートアップシーンで活躍する多くの経営者や創業者、投資家たちをタグ付けした。

「タグをつけたからには逃げられない。彼らは助けが必要だ」と、ダーシャ氏がある投稿でTier Mobilityの幹部をタグ付けしたところ、Tierには10トンの物資があるが運送業者がいないとすぐに返事が来たという。「その5分後には、解決策が見つかったのです」。

Swobbeeは、国境に送る物資を積んだバンを提供するために、都市部の物流に特化したeモビリティ企業のOnomotionや、最近GoTo Globalに買収されたeモペットシェアリング企業のEmmyなどのスタートアップの協力を得ることができた。国境で物資を降ろし、ウクライナの難民をベルリンに連れ帰ろう、と一部の物流顧客から声をかけられさえした。

ポーランドのウクライナ難民に物資を届けるベルリンのスタートアップのボランティアたち(画像クレジット:トーマス・ダーシャ氏[SwobbeeのCEOで共同創業者])

3月11日金曜日、約30人が乗り込んだ6台のバンの車列には5000個のヘッドランプ、2000個のパワーバンク、その他基本的な日用品が積み込まれ、ウクライナ国境に届けられた。その際、近くにあるキャビン付きのダーシャ氏の家族の敷地がベースキャンプになったと同氏は話した。

「まず孤児院を訪れ、いくらかの物資を置いてから、国境近くで電力供給が不足しているので助けてほしいと頼まれた都市に行き、クリミアに直接持ち込まれ、現在キエフにある電源バッグやバッテリーなども置いてきました」と同氏は述べた。「翌日、私たちの半分はドイツに戻り、国境で人々を拾いました。ポーランドの東部はすでにかなり混雑していて、そこで人々を受け入れる能力は限られています」

ダーシャ氏によると、自身とベルリンのテックコミュニティはLinkedIn、Facebook、WhatsApp、Telegramといった主要通信プラットフォームの様々なチャットルームを使って、国境を越えた物資や人の輸送を調整している。また、自身と身近にいる誰もが自分の家でウクライナからの避難民を受け入れているという。

ダーシャ氏のクラウドファンディングへの寄付はこちらからできる。

「これほどの連帯感を見たのは初めてです」とダーシャ氏は話す。「戦争中でなければ、EU(欧州連合)に起こった最高の出来事と言えるでしょう。新型コロナウイルス感染症やナショナリズムの影響によって分裂していましたが、今我々は結束しています。私がこの地球に生まれてから、一丸となったEUは見たことがありません」

ダーシャ氏とSwobbeeは、現地で難民に物資を届ける、難民を輸送する、難民のために家や仕事を見つける、資金を募る、サイバー攻撃や偽情報と戦っている、より広範な欧州のスタートアップエコシステムの一例に過ぎない。

このリストは定期的に更新される。最新情報を再度チェックしてほしい。

現地での物資調達

大規模な商業荷主と中小の貨物輸送会社をつなぐプラットフォームのSennderはベルリンで物資の寄付を集めてウクライナ国境まで輸送すべく、他のスタートアップとチームを組んだ

スタートアップのViceroy GroupとPopupのチームによって設立された慈善団体Commerce4goodは、高齢者への食料、民間人への無線機器、生産者への布地など必要な物資を迅速に提供するために、ウクライナにサプライヤーと現場ボランティアのネットワークを構築した。寄付はこちらから。

Uberはポーランドの多くの都市で、赤十字の拠点に物資を届けるために無料で利用できるコードのリストを公開した。このプロモーションの有効期限は3月6日で、最大7ドル(約830円)を1回無料で利用できるというものだった。このプロモーションを継続するのか、するとしたらいつまで続けるか、TechCrunchはUberに問い合わせたが、返事はまだない。

10分で食料品を配達するベルリン拠点Gorillasは、ベルリンの倉庫から必要なアイテムを集めて寄付し、国境に物資を届けるべくWolne Miejsce(ウォルネ・ミエジスツェ)財団に送っている。顧客はGorillasのアプリで「ヘルプボックス」を1つ注文して国境に送ることができる。

La French Tech missionFrance DigitaleThe Galion Projectの連合はLeetchiでクラウドファンディングを開始し、ウクライナ難民への物資を調達するための資金集めを行っている。

ウクライナからの難民の輸送

避難した人々が自立した生活を取り戻せるよう持続可能なデジタルソリューションを生み出している英国拠点の非営利団体Techfugeesは、ウクライナの難民に輸送や移住の選択肢など多くのリソースを提供するために通常の倍取り組んでいる(免責事項:TechCrunchの編集長Mike ButcherはTechfugeesの共同設立者で社長でもある)。 寄付はこちらから。

同団体は、インバウンドのリードコンバージョンとスケジュール管理アプリChili Piperを手がける米国の財団Citizens of Our Planetと連携し、ウクライナから人々を脱出させる方法、ウクライナ国内から国境までの輸送手段、難民を受け入れるすべての周辺国の手続き、利用できる宿泊施設などをまとめた広範囲なドキュメントを作成した

オンデマンドの配車サービス、クルマやスクーターのシェアリング、レストランや食料品店の配達を行うエストニアのスタートアップで社名を冠したアプリBoltは、ウクライナでのすべてのサービス手数料をゼロにすると発表した。また、ポーランドとスロバキアのドライバーには、ウクライナ国境での乗車を受け入れ、難民の輸送を支援するようインセンティブを与えている。さらにBoltは欧州での各注文の5%を赤十字などのNGOに寄付していて、来週中に最大500万ユーロ(約6億5000万円)を寄付する予定だ。

企業価値30億ドル(約3550億円)のドイツの交通スタートアップFlixMobility傘下のバス輸送サービスFlixbusは、国籍を問わず難民に無料チケットを提供している。同社は、ポーランドのプシェミシルやジェシェフ、あるいはルーマニアのブカレストからウクライナとポーランドの国境にやってくる人々のために、追加の接続路を設けた。同社はまた、自社の車両やパートナーとの連携により、難民のために物資を輸送している。

Uberはポーランドとウクライナの国境で無料乗車を提供している。「POMOCLUBELSKIE」または「POMOCPODKARPACKIE」というコードでUber Aidを選択すると、国境とルブリンまたはジェシェフの間で乗車できる。このコードではそれぞれ70ドル(約8300円)までの無料乗車が可能だ。注意事項にはコードは3月12日まで有効と記載されているが、UberはTechCrunchにこのキャンペーンはまだ継続中だと述べた。

ウクライナ人のソフトウェア開発者Andrii Taganskyi(アンドリイ・タガンスキー)氏とEugene Gusarov(ユージーン・グサロフ)氏は、最悪の紛争地域から逃れる民間人のために相乗りと乗車を手配しようと、相乗りアプリのBlaBlaCarとウクライナのUberであるUklonを説得した。2人はBlaBlaCarに手数料をなくしてもらい、ウクライナ全土の1万7000人のドライバーにテキストを送信して、人々を安全に移動させるための支援を呼びかけてもらった。

「最初の3日間だけで、BlaBlaCarは5万人以上をウクライナ西部の安全な場所に輸送しました」とタガンスキー氏はインディペンデント紙に語った。その後、同氏とグサロフ氏はウクライナの保険会社を巻き込んで、7万人以上のバス所有者にBlaBlaCarへの参加を求めるテキストを送ったと述べた。

難民のための住宅

パリのスタートアップキャンパスであるStation Fは、フランスに避難してきたウクライナ人起業家に対し、Station Fの起業家向け住居Flatmatesで宿泊を無料で提供している

ドイツのユーザーが家具付きの仮住まいを探すためのプラットフォームWunderflatsは、ウクライナ難民の仮住まい探しを支援している。価格設定は住居を提供する側の裁量によるため、Wunderflatsは無料の宿泊施設を約束することはできないが、同社によると、支援に登録した家主の3分の2は無償提供を申し出ているという。

空き部屋を抱えている人は、ウクライナ難民をさまざまな方法で支援する新しいプラットフォームWe Help Ukraineに登録することができる。テック企業から慈善団体、広告代理店まで、実に多様な団体が設立したこのプラットフォームは、避難しているウクライナ人が経済面、医療面、心理面でのサポートを得たり、難民資格を取得したり、仕事を見つけたり、現地の語学教室に通ったりすることも支援している。

EU4UAは、難民とシェルターを提供できる人をマッチングするプラットフォームとして、パリに拠点を置くHRTechスタートアップJobgetherの共同創業者たちによって結成された。

ウクライナ国内では、テックに精通した国民が、難民のためのAirbnbやCouchsurfingと称されるPrykhystokなどのウェブサイトを立ち上げた。Prykhystokは、独創的な考えを持つウクライナの国会議員Halyna Yanchenko(ガリーナ・ヤンチェンコ)氏が考案したものだ。インディペンデント紙によると、母親であるヤンチェンコ氏は砲撃を受けているキエフから動けず、安全のために子ども2人を西部に送り、子どもと離れ離れになっているという。このウェブサイトには現在、全国5000以上の避難所が掲載されているとヤンチェンコ氏は話す。

また、Ukraine Nowというウェブサイトも近々立ち上げられ、出国途中にウクライナ国内で滞在できる住宅の情報をクラウドソーシングするオンライン・シェルター・サービスを提供する予定だ

テック系スタートアップのCasafariによるものを含め、Shelter UKRTakecareBnBIcanhelp.hostUkraineTakeShelter.comなど、他にも多くの住宅に関する取り組みが展開されている。しかし、宿泊施設のホストの身元を確認する検証済みの方法を打ち出しているサイトはほとんどないため、慎重に行動することを読者にはお勧めする。

ウクライナ人のためのテック職

UA Talentsは、故郷を離れざるを得なくなったウクライナ人が欧州連合の雇用主を見つけるのをサポートするために生まれた雇用プラットフォームだ。設立メンバーは、海外に住むウクライナ出身のIT起業家や専門家で、難民とその家族の生活を支援したいという思いからボランティアで活動している。

Jobs4Ukraineは、ウクライナ人の職探しを支援するために最近設立されたプラットフォームだ。このサイトには、すでに数十社の企業が潜在的雇用主として登録している。また、ソフトウェア開発からマーケティング、翻訳に至るまで、スキルシェアリングに協力するボランティアを希望する人も登録することができる。

また、高度な技術を持つウクライナ人の労働力活用を目指すプラットフォームとしてRemote Ukraineがある。高度な訓練を受けたテック人材をEUの企業に紹介している。単発の仕事から短期契約、フルタイムのものまで何でもある。このサイトでは、プロセスをシームレスにするために支払いも行っている。Techfugeesとのジョイントベンチャーだ。

Techfugeesは、英国や欧州のVCと協力して、移住中に家族を支えるためにリモートで働くことができる避難民を支援できるような資金をプールしている。Tech Nation U.K.および特定の英国VCとオンラインプラットフォームを立ち上げ、合理的なプロセスを形成する予定だ。Techfugeesはまた、欧州のVCと集団を形成している。

IT軍団

NGOが人道支援をこれまで以上にうまく調整できるよう、システムの近代化とデジタル化を支援する取り組みがいくつか始まった。Tech to the Rescueは、この目的のために非営利団体と技術系企業をマッチングさせるプラットフォームで、最近#TechForUkraineキャンペーンを開始した。脆弱なセキュリティシステム、時代遅れのソフトウェア、ユーザーフレンドリーなUIやUXの欠如といった問題を抱えるウクライナの慈善団体を、テックに精通した人が支援することを目的としている。

Code for Romaniaは、市民社会と国家のためにルーマニアのデジタル化を目指すボランティア組織で、全力を戦争タスクフォースに注ぐために2月24日に通常の活動を停止した。この組織と2700人超のボランティアのコミュニティは、ウクライナ危機に対するデジタルソリューションのエコシステムを考案するために協力し合っている。ルーマニアの緊急事態省と協力して、リソースやボランティアを管理するためのツールを提供し、避難民のための重要な情報を掲載したガイドを作成した。

Code for Romaniaのタスクフォースは、難民を安全な宿泊施設に誘導し、緊急支援を提供するソリューションにも取り組んでいる。

Techfugeesは、、現在の紛争地域と安全な地域をマッピングするオープンソースの迅速対応サイトを開発し、車で出国する人のための燃料マップも作成した。

誤情報、フェイクニュース、ディープフェイクと戦うAI駆動型プラットフォームCREOpointは、ウクライナでの戦争に関連して、ロシアのプロパガンダマシンなどから出回る偽データに対抗するために活動している。

スタートアップではないが、GoogleウクライナのAndroidスマホに空襲警報を送信している

それでも必要なものは?

「スペインやドイツ、オランダなど、ウクライナの人々が避難する国では、セラピストやセラピー能力、トラウマに対処できる人材が必要です」とダーシャ氏は話す。「土曜日に、生後2カ月の赤ちゃんと6歳と10歳の女の子を連れて到着した男性に会いました。彼らはキエフから逃げてきたのですが、ロシア軍に攻撃され、男性の妻は車の中で撃たれて死亡しました。男性は子供たちと高速道路の脇に妻を埋葬しなければなりませんでした」

It’s Complicatedのようなセラピープラットフォームは、ウクライナでの戦争の影響を直接受けた人に、無料のオンラインカウンセリングを提供している。一部のイスラエルのヘルステック企業も、ウクライナ人の心のケアに協力するためにチームを組んでいる。心の健康をサポートするAI駆動型のパーソナルコーチKai、特別なニーズや学習・感情面での困難を抱える学生を支援するプラットフォームAmplio Learning、デジタル医療サービス企業Femiなどだ。

ロシア軍に攻撃されている都市から逃げ出すウクライナ人が増える中、住宅も非常に重要になる。3月14日には、2週間前にロシア軍に包囲されたマリウポル市から、初めて民間人が出発することができた。ウクライナ当局は、市内に閉じ込められた市民が食料や医薬品の配送を断たれ、ロシアからの執拗な砲撃が人々の脱出を妨げていることから、同市での人道的大惨事を警告している。戦闘が始まって以来、マリウポルでは2000人以上が死亡した

多くの企業がNGOや政府と協力して支援を行っているが、次の大きなステップはまさに需要と供給の調整、構造、最適化だとダーシャ氏は話す。資源をより集中的に管理する必要があり、そのためには民間企業の協力が必要だ。

ウクライナ難民を支援している他のスタートアップの情報を持っている人、またはこの記事に掲載されているいずれかのソースとのつながりを望む人は、rebecca.techcrunch@gmail.comまたはmike@techcrunch.comまで連絡を。

画像クレジット: Techfugees

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(文:Rebecca Bellan、Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi