30歳未満の消費者の90%がターゲット――新興市場の人々の生活を支えるフィンテック

【編集部注】執筆者のJoshua Matemanは、中国本土を拠点に金融、アントレプレナーシップ、テクノロジー、消費動向、農業、ゲーム、スポーツ、アートに関する執筆活動を行っている。

国家が繁栄するにつれて、国民は郊外から大都市や海外に移り住み、経済力をつけながらグローバル経済に参加する。

そして彼らは食べ物を購入し、電気料金を支払い、交通機関のICカードをチャージし、オンラインサービスの料金を支払い、海外から商品を購入し、ローンを返済し、親戚に送金しなければならない。

しかし、国民の93%が銀行サービスを利用できるアメリカとは違い、発展途上国の市民の多くにとって銀行は縁遠い存在だ。世界中で約20億人の成人が正規の金融サービスにアクセスできない状態にある上、彼らが利用できるサービスはプロセスが複雑で料金も高いものばかりだ。

この問題を解決するために、フィンテックスタートアップはさまざまなオンライン・モバイルサービスを開発しており、消費者にも歓迎されている。特に若い世代は段々とネット銀行を受け入れるようになっており、30歳未満の消費者の約90%はいわゆる新興市場に住んでいる。

Paul Wuが、モバイル通信キャリアのためにアプリストアの開発を行うGMobiを立ち上げたのは、2011年のことだった。その後、同社は外部サービスのためのモバイルウォレットをローンチ。現在ではGMobiに在籍する100人の社員のうち、約3分の1が同社のモバイルペイメントサービス「Reach Pay」に取り組んでおり、このサービスはGMobiの新たな収益源として急成長を遂げている。

台湾発のGMobiは文化的、言語的に近いことから、まず中国本土への進出を模索したが、AlipayとTencent Payという二大サービスがすでに市場を席巻していた。「もう中国本土には進出できません」とGMobiの本社で台北郊外の山を眺めながらWuは言った。「中国の競争は死ぬほど厳しんです」

そこでGMobiはインドに目を向けることにし、数年間の準備期間を経て、プリペイド携帯のチャージや送金ができるモバイルウォレットOxymoneyをローンチした。ユーザーのほとんどは社会経済的地位の低い人たちでパソコンも持っていないため、GMobiはモバイルでのサービスのみ提供している。

例えば、ニューデリーに移り住んだ農村出身の労働者が、故郷の親にお金を送りたいと考えているとする。現状だと、普通は街中にある送金業者の店舗を訪れ、用紙に必要事項を記入し、どう計算されているのかよくわからない料金を支払って送金を行い、それから数日〜1週間経って親が住む農村部の銀行にお金が届く。

しかしOxymoneyを使えば、上記のプロセスにおける無駄や面倒くささがなくなる。WuはOxymoneyのプロセスを、GMobiの役員室でホワイトボードとマーカーを使って説明した。現状のフローは「消費者→業者→お店→消費者」へと簡略化できると彼は言うのだ。

ユーザーがOxymoneyを使って送金すると、まず大手の送金業者のもとにそのお金が届く。農村部に住む親も銀行口座を持っていない可能性が高いので、その後お金は銀行口座を保有している村のお店のもとに届き、親はそこでお金を回収することができるという仕組みだ。

このプロセス全体にかかる時間は約1日で、ユーザーは送金額の1%を手数料として支払う。ミニマム料金は設定されていないが、GMobiの1000万人におよぶインドのユーザーは、通常1件あたり15〜30ドルを送金している。

「私たちは金融サービスを効率化することで、中産階級〜下位中産階級の人々の経済状況を改善する手助けをしたいと考えています」とWuは語った。「まだまだ銀行の店舗を訪れる人が多いので、これからも積極的に消費者を教育していかなければいけません」

インド全体としての動向も同社を後押ししている。スマートフォン市場の伸びが世界一のインドでは、2021年までに携帯電話の契約数が14億件に達すると予測されている。さらに、インド政府はG20に送金手数料の削減を急ぐよう要請しており、インドの都市化が進むにつれて(現在人口の3分の1が都市部に住んでいる)送金額も増えていくだろう。

デジタル・インディア」構想のもと、政府は通貨や決済を含め、生活のあらゆる側面の電子化を推し進めている。

「この構想のおかげもあって、私たちは急成長しているんです」とWuは話す。

デジタル化構想がスタートアップの追い風となっている一方で、それに異議を唱える人もいる。コメディアンのBill Burrは、デジタル化構想が進むにつれて第三者に自分の情報が管理されるようになってしまうことを危惧しており、ポッドキャストの中で「全員にマイクロチップが埋め込まれるような世の中に向かって進んでいる」と語った。

現状、GMobiは国内送金だけ取り扱っている。海外送金についても考えてはいるが、実際に取り組むとなると、文化的にもオペレーション的にも規制的にもかなりの負担がかかってくる

「各国でライセンスを取得しなければならず、一定の資本金が必要になる上、現地の銀行と接続するために別のプロセスも経なければいけません」とWuは言う。「そのため、海外送金をはじめるのは簡単なことではないんです」

反マネーロンダリング規制が厳しさを増す中、海外送金には時間がかかるだけでなく、送金者が銀行の窓口を訪れなければいけないということもよくある。しかし、100人の社員を抱えるdLocalはその状況を変えようとしている。

送金用のインフラを開発するdLocalは、企業やお店(先進国が中心)が顧客(新興国が中心)からの支払いを受け取れるような仕組みを提供している。

例えば、FacebookやAirBnB、Uberといった企業がアジアや南米でサービスを提供した場合、それぞれの市場でオペレーション上の違いがあるため、支払いを受け取るのにも一苦労する。そこでdLocalは、SMSやモバイルウォレット、オンライン送金、クレジットカード、データカード、デビットカード、さらには現金まで含めた150種類以上の支払い方法をカバーする単一のプラットフォームを運営しているのだ。

dLocalの共同ファウンダーでCEOのSevastian Kanovichは、成功の理由について次のように語っている。「新興国に住む人たちは海外でも使えるクレジットカードを持っていないため、それ以外の方法で決済をしたいと思っています。しかも実際に彼らがどんな決済手段を使いたがってるかというのは、国によってさまざまです」

9年前、まだ南米のウルグアイに住んでいたKanovichは、dLocalのようなサービスの需要を目の当たりにした。当時、消費者はオンラインで商品を購入しても、海外で使えるクレジットカードをもっていなかったため支払いを完了することができなかったのだ。Kavonich自身は海外対応のクレジットカードを持っており、よく友人にそのカードを貸していた。

「消費者側はオンラインで商品を購入する気があるのに、お店側には彼らのお金を受け取る準備ができていなかったんです」とKavonichは言う。

個人間の送金だと顧客確認(Know-Your-Customer: KYC)や反マネーロンダリング(Anti-Money-Laundering:AML)規制をクリアするのが難しいため、dLocalは取引関連の決済のみを取り扱っている。彼が各国の中央銀行とP2P決済について話したところ、「全く別の話で、P2P決済だとさらに規制が厳しくなる」ことがわかったのだ。

国によっては規制変化の見通しが立ちづらく、これが彼らにとっての障害となっている。「ゲームのルールが完全に固まっているということはなく、政府がルールを変更することもあります」と彼は言う。「これこそ、私たちにとって最大の脅威なんです」

このような課題はいくつかあるものの、Kanovichはそれに怯むことなく前に進もうとしている。dLocalは現在18か国でサービスを提供しており、今年中にその数を30か国まで増やす予定だ。特にトルコ、コロンビア、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、チリで人気のdLocalだが、Kanovichはアフリカやアジア太平洋地域に大きなチャンスが眠っていると考えている。

dLocalは「グローバル化の波にのって進み、大きなチャンスをつかもうとしています」と彼は言う。

その他に成長が見込まれる領域といえば仮想通貨が考えられるが、dLocalは現時点では仮想通貨をサポートしていない。Kanovichは個人的にはビットコインを支持しているが、彼によれば新興国の銀行はそこまで乗り気ではないようだ。「仮想通貨がもう少し一般に普及するまで待ってからでないと、各国の中央銀行を説得するのは難しそうです」

最近資金調達を行ったフィリピンのCoinsは、公共料金の支払いや送金、プリペイド携帯のチャージ、世界中のサイトでのオンラインショッピングを携帯電話から行えるサービスを運営しており、決済手段のひとつとして仮想通貨を受け付けている。

そもそもCoinsは「金融サービスのギャップを埋めるため」に設立されたと、ビジネスオペレーション部門を率いるJustin Leowは話す。「特に発展途上国では利用できる金融サービスにかなりの格差があります」

彼らの提供するサービスのひとつにP2P決済がある。海外へ出稼ぎに出た人をターゲットに、Coinsは従来の送金業者よりも安く、効率的に、早く母国へお金を送る手助けをしているのだ。これまで10%近くかかっていた手数料も、Coinsを使えば2~3%の範囲に抑えられる。

例えば、香港に住む出稼ぎ労働者が毎月の所得700ドルの半分にあたる350ドルを母国のフィリピンに送金しているとする。彼にとって35ドル(10%)と10.5ドル(3%)の手数料の差は大きい。

統計によれば、世界中で毎年6010億ドルが送金されており、そのうちの約75%が発展途上国に関連したものだとされている。さらに、世界銀行のデータによれば、国民の10%が海外に住んでいるフィリピンだけでも、年に280億ドルが国境を超えて送金されており、二大送金先のインドと中国への送金額は年間600億ドルにのぼる。

フィリピンの銀行では最低預入残高が高く設定されているため、人口の3分の1以下しか銀行口座を持っていない。銀行口座の保有者よりもFacebookユーザーの方が多いくらいだ。

「つまり、銀行はかなりの数の人にサービスを提供できていません。しかし、私たちはこれまでに開発してきたモデルのおかげで、彼らの需要を満たすことができるのです」とLeowは言う。

CoinsはビットコインやStellarなどの仮想通貨もサポートしている。「仮想通貨を扱っているからこそ、世界中の送金を扱うプラットフォームとして機能できるんです」と彼は続ける。

Coinsのインフラにはブロックチェーン技術が採用されているが、顧客は裏で何が起きているかを完全に理解する必要はないとLeowは言う。「顧客が気にしているのは、送金先にきちんとお金が届くがどうかということですからね」

その一方で、Coinsが仮想通貨をサポートしているからといって、銀行のビジネスが脅かされるわけではない。「私たちのサービスには(銀行が)必要なんです。その代わりに、私たちはこれまで銀行がリーチできなかった人たちを取り込むことで、彼らのビジネスに貢献しています」

このような動きは結果的に消費者のメリットに繋がる。従来の銀行は顧客の情報を十分に把握できていないことが多いが、テック企業は顧客の趣向や行動に関するデータを収集し、ニーズに合わせたサービスを提供することができるのだ。

そして、銀行口座を持たない人を対象にサービスを提供している企業には、金銭的、そして社会的なメリットがある。

「Coinsがターゲットとしている市場には心躍るようなチャンスが眠っていますし、私たちは大勢の人の生活に良い影響を及ぼすことができるんです」とLeowは語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Amazonはフィンテックでも強大な勢力になるだろうか?、答はイエスだ

月曜日(米国時間6/19)に中国の深圳で行われたTechCrunchとTechNodeのイベイトで、Ernst & YoungのフィンテックリーダーJames Lloydが、Amazonは巨大テクノロジー企業だが、今後はフィンテックでもトップに立つだろう、と予言した。

Lloydによると、彼は、Amazonは今後ますます、決済と貸付とクレジットスコアの分野への進出を大きくしていく。“彼らは自分たちのエコシステムの便宜に寄与するものなら何でも手を出す”、と彼は語る。Loydは、Amazonと、Alibabaの系列企業Ant Financial(元Alipay)は立ち位置として似ている、と言う。

Amazonの最近の発表では、同社は昨年、小額貸付で10億ドルを貸し付けた。Lloydは、Amazonがこの分野に今後一層注力する、と予想している。“彼らは大量のデータを利用できる立場にいる。どこの誰が向こう3か月の在庫準備資金としてどれだけ必要としているか、彼らには分かるのだ”。

彼が訝(いぶか)るのは、Amazonの東南アジア進出の遅れだ。“彼らの中核ビジネスであるeコマースに大きな疑問が一つあるとするなら、それは、Amazonはアジアで何をしようとしているのか、だ”。

企業向けの振替決済サービスAirwallexの協同ファウンダーでCEO Jack Zhangは深圳のステージで、ビットコインは国際的な商取引における長期的な決済手段にならないだろう、と述べた。

彼は、ビッドコイン市場に十分な流動性がある、と信じていないし、また、その不安定性にも懸念している。“それが国境を越えた決済の未来の姿だとは、思われない”、と彼は語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

リアルタイム送金でVenmoに対抗するZelleが、30以上の米国の銀行を従えて今月ローンチ

Venmoに対する米国銀行業界の回答が到着した。今月からZelleと呼ばれる新しい個人間支払いネットワークが、米国の8600万人以上のモバイルバンキング顧客に提供される。PayPal、Venmo、Square Cashといったライバルたちよりも、迅速なデジタル支払い手段を約束している。送金に一晩もしくは数日かかるのではなく、Zelleの利用者たちはお金を1つの銀行から別の銀行へほんの数分で移動させることができる。

これまでも銀行は、即時送金を提供する手段を持っていたものの、現行のシステムでは、顧客たちが口座をもち、口座に紐付いたルーティング番号を持っている必要があった。一方Zelleは、現在人気のある支払いアプリのように、より簡単な方法を提供することを目的としている。Zelleのユーザーが知る必要があるのは、相手の電話番号や電子メールのような情報だけだ。

実は顧客たちがお互いにデジタル支払いを行うことができるこのサービスは、Bank of America、Wells Fargo、そしてJP Morgan Chaseが協力してclearXchangeと呼ばれるジョイントベンチャーとして2011年から運用されていた。

だがコンソーシアムはその後数年の間、パートナーを増やすという意味では、遅々とした進展しか行うことができていなかった。しかし、昨年いくつかのテコ入れが行われた。clearXchangeは昨年の夏、より消費者に親しみやすい “Zelle”ブランドに変身した。その後10月には、clearXchangeを数年に渡って運営していた銀行傘下のEarly Warningが、Zelleが19の米国金融機関をメンバーに迎え、Zelleサービスを2017年の早い段階で開始することを約束すると発表を行なった。

Zelleの正式な開始はその約束には少し間に合わなかったものの、ついに提供が始まった。

今朝(米国時間6月12日)行われたEarly Warningからの発表によれば、Zelleは今週からパートナーに展開を始め、今後12ヶ月間にわたって継続していく予定だ。Venmoのようなスタンドアロンのモバイルアプリではなく、当初Zelleは参加している金融機関のそれぞれのモバイルバンキングアプリ内で利用できるようになる。

サポートする銀行のリストには、例えば以下のようなものが含まれている(アルファベット順で):Ally Bank、Bank of America、Bank of Hawaii、Bank of the West、BB&T、BECU、Capital One、Citi、Citizens Bank、Comerica Bank、ConnectOne Bank、Dollar Bank、Fifth Third Bank、FirstBank、First Tech Federal Credit Union、First Tennessee Bank、First National Bank、Frederick County Bank、Frost Bank、HomeStreet Bank、JP Morgan Chase、KeyBank、M&T Bank、MB Financial Bank、Morgan Stanley、PNC Bank、SchoolsFirst Federal Credit Union、Star One Credit Union、SunTrust Bank、TD Bank、USAA、U.S. Bank、そしてWells Fargo。

このシステムを機能させるために、Early Warningは、CO-OP Financial Services、FIS、Fiserv、そしてJack Henry and Associatesを含む、銀行業界のトップペイメント処理業者たちと戦略的パートナーシップを結んでいる。これらの合意は、Zelleをコミュニティバンクと信用組合へ拡大するのに役立つだろうと言われている。

一部の米国の銀行は既に、Zelleの基盤となっているclearXchangeネットワークを使用していた。2017年第1四半期には5100万件を超える取引がこのネットワークを流れ、取引金額の合計は160億ドルを超えた。Early Warningによれば、2016年には、このネットワークは550億ドルのP2Pトランザクションを行なったということだ。これはVenmoよりもはるかに大きい。Vemoの最近のレポートによれば、直近の四半期に於ける取引量は合計68億ドルということだ

Zelleの目標は、既存のclearXchangeネットワークを利用して、Venmoのように相手の電話や電子メールを知るだけで送金できるということを、消費者たちに周知させることだ。Venmoのように、Zelle迅速で個人的な支払いを提供しようとしている。例えば友人たちとの夕食の割り勘をしたり、ルームメイトたちから光熱費や家賃の分担金を集めたりする用途だ。

「断片化が消費者たちの欲求不満を募らせていました。一貫性のない方法が、銀行間での送金を難しくしていたのです」Early Warning ServicesのCEOであるPaul Finchは、Zelleの開始を告げる発表でこのように語った。「Zelleは背後にあるリアルタイムP2Pペイメント機構を使って、数百万人の消費者のために金融コミュニティを統合します」と彼は付け加えた。

「私たちは協力して金融から摩擦を取り除き、口座間での送金をシームレスかつ即座に行えるように努力しています。この送金革命は、現金と小切手に代わる現実的な代替手段を消費者に提供することになるでしょう」。

Zelleは銀行のウェブサイトとそれぞれのアプリで動作する。送金者が受取人の電子メールまたは電話番号と金額を入力すると、受取人は支払いを完了させる方法を説明する通知を受け取る。お金は数分後には利用可能となる。この後専用Zelleアプリも登場するだろうが、Early Warningは「数ヶ月のうちに」という以上にはっきりしたコメントは行わなかった。

Zelleが自分の銀行でいつ使えるようになるのかについては、それぞれの銀行に問い合わせて欲しい。金融機関の間で展開の状況は異なるからだ。

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(翻訳:Sako)

アーティスト向け収益管理プラットフォームのStem――運営元が800万ドルを調達

音楽配信サービスが一般に広がり、SpotifyやYouTube、Apple Musicなど、楽曲の流通チャンネルも増えてきたが、アーティストへの支払いプロセスにはまだ問題が残っている。

同じ曲に複数人のアーティストが関わっていると状況はさらに複雑化し、それぞれのプラットフォームでの収益から、誰にいくら支払うべきなのかというのがわかりづらくなってしまう。さらにアーティストは収入が予測しづらいという問題を抱えており、Milana RabkinをはじめとするStemの共同ファウンダーはそこに商機を見出した。そして同社は、アーティスト向け収益管理プラットフォームの更なる改善を目指し、この度Evolution MediaとAspect Venturesが中心となったラウンドで800万ドルを調達した。今回のラウンドには、他にも複数の戦略的投資家と既存株主のUpfront Venturesが参加していた。

Stemでは、各音楽配信サービスからの収益がエスクロー口座のようなものに一旦集められるようになっている。その後、事前に決められた割合に応じて、それぞれのアーティストに収益が分配される。Rabkinによれば、ある楽曲の制作に関わった全てのアーティストや共同制作者は、予めそれぞれが受け取る収益の割合に合意しなければならない。その後楽曲がアップロードされ、代表となるアーティストがそれぞれの分け前をプラットフォーム上で設定すると、従来のプロセスよりもかなり速く支払いが行われる。作品の公開後、だいたい30〜60日程度で収益データを確認できるようになるとRabkinは話す。

「これまでに誕生したフィンテック関連のツールは、小規模事業者のビジネスを支えるようなものばかりでした」とRabkinは語る。「アーティストやクリエイターも彼らと何ら変わりないはずなのですが、クリエイティブな人たちのニーズに合ったツールはこれまで存在しませんでした。IntuitはMintで小規模事業者の手助けをしていますが、収入が不安定で収益源の追跡が難しいアーティストの状況は彼らとは違うのです。Mintのアカウントに銀行口座を紐付けるだけであれば簡単なことですが、iTunesやYouTube、Spotifyといったサービスとの連携となると話は別です」

Stemが取り組もうとしている別の問題が、発表したコンテンツから収益をあげられない可能性のある共同制作者への支払いの徹底だ。業界経験の少ない人たちをはじめに、アーティストの中には純粋に販促やマーケティングの目的でコンテンツを公開する人たちもいるのだ。彼らがツアー資金を貯めるので手一杯にならなくてもいいように、Stemは新人アーティストも最初から収益を得られるような仕組みを構築しようとしているのだとRabkinは言う。

それぞれのプラットフォームからStemが収集するデータ自体に価値を見出す人もいるかもしれない。アーティストであれば、当該データからファンの情報を調べ、ターゲットの好みにあった楽曲制作に取り組むことができる。ツアーの計画や他のマーケティング施策に役立つ情報が得られる可能性もある。しかし、ここに収益関連の情報が加わることで、これまでよりもハッキリとファンのエンゲージメント度合いを掴めるようになるだろう。

「サプライチェーンと深く関係しているロイヤルティーの問題は、音楽業界の中でもなかなか解決の目処が立っていませんでした」とRabkinは話す。「しかし、新たなフレームワークや関係データベース内のデータを正規化するための素晴らしいツールが最近誕生しました。そのおかげで、昔は不可能だった方法で支払いに関する情報を簡単に追跡できるようになったのです」

また、Stemはアーティストへの支払いを管理するためにデータやお金を一か所に集めているだけなので、音楽配信サービスとは競合しないと彼女は言う。今のところは同社がこの収集プロセスを担当しているが、今回調達した資金を使って、Stemは既存のツールを音楽配信サービスの運営企業が使えるような形に変えていこうとしている。

そうは言っても、この業界でも今後競争の激化が予想されている。Kobaltも先月、7億7500万ドルの評価額で7500万ドルを調達したばかりだ。さらに、iTunesやSpotifyといったサービスが将来的にアーティスト向けのツールを簡略化することで、Stemのようなサービスがなくても各アーティストにきちんと支払いが行われるようになるかもしれない。しかし、シームレスなツールを構築することで、Frank OceanやChildish Gambino、DJ Jazzy Jeff、Anna Wise、Chromatics、Poolsideなど、さまざまなアーティストを顧客に迎えられることをRabkinは祈っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アクセラレーターとフィンテックが鍵を握る南米のスタートアップ界

【編集部注】執筆者のNathan Lustigは起業家で、チリのサンティアゴに拠点を置くシードステージ投資ファンドMagma Partnersのマネージングパートナーでもある。

南米のスタートアップは、クリエイティブなプロダクトを生み出し、現地だけでなく世界中の問題を解決しようとしている。しかし、外から南米のスタートアップシーンを見ている投資家の中には、同地域の魅力に気づきながらも手が出しづらいと感じている人もいるようだ。実際に、南米でのアーリステージ投資にはいくつかの課題があるが、そのハードルを越えるだけの価値があると感じられるような例を私はいくつも見てきた。

私が初めてチリのサンティアゴを訪れたのは、Start-Up Chileのパイロットプログラムに参加した2010年のことだ。当時チリではスタートアップに関する議論がほとんど行われておらず、スタートアップが何かを知っている人もほぼいないような状態だった。その後アメリカに戻って9か月くらいの間に、共同設立した会社が買収されたため、私は新興市場に眠るチャンスを求め、チリに戻ることを決めた。

それから数年の間、アントレプレナーシップに関する授業を行ったり、地元の起業家のメンターとして活動するうちに、気づけば私自身が南米企業に投資するようになっていた。これまでに30社以上のアーリーステージ企業へ投資してきた私は、南米のアーリーステージ投資の環境が現在これまでで1番良い状態にあると考えている。以下がその理由だ。

先陣を切ったVCのおかげで投資家の不安感が和らいでいる

アルゼンチンのNXTP LabsやブラジルのVox Capitalのように、南米で早くから活動を開始したVCのおかげで、他の投資家の参考になるような前例ができた。もともと南米の人々には、リスクを嫌い失敗をとがめる傾向があったが、彼らは誰よりも早く南米にスタートアップカルチャーを芽吹かせようとしたのだ。

しかし数多くの困難が、そんな先駆者的VCを待ち受けていた。まず彼らは、現地の起業家が南米とシリコンバレーは別物だと理解できるように、教育を施さなければいけなかった。VCの数にしても、企業の評価額にしても両地域の間には大きな隔たりがある。しかし彼らの経験が、最近増加傾向にあるアーリーステージ投資を考えているファンドや企業への良い教訓となっているのだ。

また、南米のスタートアップエコシステムが成長するにつれて、アーリーステージ投資のフローが大きく改善され、不安感もかなり和らいできているため、投資の数自体も増えている。2011〜2015年の南米の投資傾向についてまとめた、Latin American Venture Capital Association(LAVCA)のレポートによれば、VCが5年間で集めた資金の総額は23億ドルにおよぶという。

さらに過去数年の間に、以前VCから投資を受けたファウンダーが、エンジェル投資家やファンドのリミテッドパートナーとして、他の企業に投資するケースも見られている。コロンビア系アメリカ人で、起業家から投資家に転身したAndrés Barretoもそんなファウンダーの1人だ。GroovesharkやPulsoSocialなど、いくつものスタートアップを立ち上げた彼は、2012年にSocialatom Venturesを設立して投資活動をスタートさせた。コロンビアに拠点を置き、Firstrock Capitalと呼ばれる2つめのファンドの資金調達を最近終えた同社は、アーリステージ企業への投資を行うと共に、彼らの成長を促すような手助けをしている。

現在も積極的な活動を行っているSocialatom Venturesは、最近では南米でプロダクトを開発しながらアメリカ市場を狙うアーリーステージ企業への投資に力を入れている(注:私がマネージングパートナーを務めるMagma Partnersは、これまでに2度、Socialatom Venturesと共同出資を行ったことがある)。

南米に投資を呼び込むアクセラレーター

増加を続けるアクセラレーターや、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、サンティアゴ(チリ)、メデジン(コロンビア)といった南米の主要スタートアップハブで日々経験を積んでいる起業家の影響は、南米の投資エコシステム全体におよんでいると言って間違いないだろう。

南米のスタートアップシーンに入りこむなら今がチャンスだ。

2014年の調査では、アクセラレーターが存在するだけで、その地域のシード・アーリーステージ投資の数が増えることがわかっている。確かに私もこの”波及効果”を南米で目の当たりにしてきた。Start-Up ChileWayraをはじめとする、アーリステージ企業向けアクセラレータープログラムの数が増えるにつれて、南米のスタートアップ界自体が注目を集めるようになってきている。つまり、このようなプログラムの存在が、外部の投資家に南米の魅力を伝えているのだ。

投資活動を盛り上げるフィンテックスタートアップ

通常スタートアップは業界を問わず経済全体に影響をおよぼすが、南米でもっとも大きな変化が起きているのが銀行業界だ。というのも、南米では銀行口座を持っていない人の数がまだ多く、フィンテック企業にとってはそれが大きなチャンスになっているのだ。

Finnovistaによれば、南米のフィンテックスタートアップの数は最近1000社を突破した。フィンテック企業が南米、そしてグローバル市場でスケールする上で、既存企業との戦略的パートナーシップや政府からの認証、そして初期の活動を支える資金は欠かすことができないが、投資家は彼らの活動を支えている。

LAVCAの調査では、南米で2015年の資金調達額がもっとも大きかった分野はフィンテックだということがわかった。2015年の時点で、同分野はITセクター全体の投資額の30%を占めており、2016年前期を見てみるとこの数は40%に伸びている。

世界中でアクセラレータープログラムを運営しているStartupbootcampは、最近南米への進出を発表し、メキシコではFinnovistaと共同でフィンテックに特化したプログラムをローンチした。Finnovistaは、過去4年間にフィンテックスタートアップがどのように南米の金融サービスを変えてきたかを目撃しつつも、彼らは自分たちの力だけではスケールできないと考えているのだ。当該プログラムでは、メキシコをはじめ世界中から選ばれたフィンテックスタートアップに対し、資金面や運営面でのサポートを提供している。

ここ数年南米を飛び回り、優秀な起業家と世界中の投資家をつなぎ合わせてきたSeedstarsも、今年は南米のフィンテック市場に注目している。現地でのイベントを勝ち抜いた、コロンビアのクラウドファクタリング(売掛債権買取)企業Mesfixと、ブラジルのフィナンシャルプランニングサービスQueroQuitarは、ファイナリストとしてSeedstars Summitでプレゼンテーションを行う予定だ。

500 Startupsも南米でのシードステージ投資に力を入れており、International Finance Corporation(IFC)と共同で設立した1000万ドルファンドでは、今年中に現地のアーリーステージ企業120社へ出資しようとしている。

Googleも負けてはいない。南米のスタートアップ十数社がGoogleのLaunchpad Acceleratorに参加し、同社のネットワークやリソースを使いながら、自分たちの可能性を最大限発揮しようとしている。MicrosoftはブラジルでBR Startupsファンドを立ち上げ、アーリーステージとレーターステージのギャップを埋めることを目標に、これまで70社への投資を行った。決済サービス大手のVisaも、独自のアクセラレータープログラムをローンチし、ブラジルのフィンテックスタートアップに資金とノウハウを提供している。

少し前まではVCが他の地域に注目していたため、南米のスタートアップはアーリーステージでの資金調達に苦しんでいた。しかし同地域に対する見方が変わり、スタートアップエコシステムの成長を促そうとする動きが南米全体の民間・公的組織の間で広まっていった結果、資金調達のチャンスやスタートアップの数は継続的に増えている。さらに、ブラジルのNubankアルゼンチンのIguanaFixをはじめとする、スタートアップのサクセスストーリーが増えるに連れて、業界全体が勢いづいてきている。南米のスタートアップシーンに入りこむなら今がチャンスだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

フィンテック系ユニコーン企業TransferWiseが設立6年で黒字化

黒字化を果たしたユニコーン企業ほど珍しいものがあるだろうか? ロンドンを拠点に送金サービスを提供しているTransferWiseは、設立から6年が経過し、遂にこの度”利益を生み出している”状態に到達したと発表した。なお、以前TechCrunchでも報じた通り同社の評価額は11億ドルにのぼると言われている

具体的な数字を見てみると、月々の売上額は800万ポンドに達すると彼らは語っており、ランレートは1億ポンドに到達する勢いだ。また昨年には前年比で150%成長しており、今年の成長幅も同じくらいになると言われている。さらに月々の送金総額は10億ポンドにのぼり、ユーザーはTransferWiseを使うことで、1日あたり150万ポンドの為替手数料を節約できていると同社は話す。

参考までに、TransferWiseの2016年3月期の通期売上は2780万ポンドで、税引前損失が1740万ポンドだった。2017年3月期の業績はまだ発表されていないが、本日の黒字化のニュースを考えると、2016年3月期に比べて税引前損失額はかなり減っていることが予想される。

また、同社はこれまでに合計1億1700万ドル(約9100万ポンド)を調達してきた。主な投資家としては、Andreessen Horowitz、Peter ThielのValar Ventures、Sir Richard Branson、そして最近株主に加わったBaillie Giffordが挙げられる。

「設立からたった6年で損益分岐点に達したということが、私たちのビジネスを支える基盤の強さを物語っています」とTransferWiseの共同ファウンダーでCEOを務めるTaavet Hinrikusは声明の中で語った。「しかし黒字化はスタートに過ぎません。私たちがこれまでに築いてきたユニークなプラットフォームを使って、今後新時代の金融サービスを顧客に提供していくのが楽しみです」

“新時代の金融サービス”というのは気になるポイントだ。というのも、私は彼らがTransferWiseブランドのもと、現状の外国送金サービスを超えて新たな機能やサービスを開発していくと考えているからだ。

電話での取材中、Hinrikusは新しいサービスの詳細には触れなかったが、突っ込んで聞いてみたところ、追加の資金や規制対応が必要になる銀行ライセンス取得の「予定はない」と語った。つまり、しばらくの間TransferWiseがチャレンジャーバンク化することはないということだ。

とは言いつつも、もしも彼らにその気があれば、すぐにでも導入できそうなサービスはいくつかある。まずPayPal傘下のVenmoやBarclays Pingitのサービスのように、同じ国に住むユーザー間でのP2Pペイメントであれば、TransferWiseのインフラを持ってすれば簡単に実現できるだろう。また、海外でも使える為替手数料の安いデビットカードを同社が既に提供していないのも不思議だ。

もしも彼らがデビットカードの発行をはじめるのであれば、RevolutやHinrikus自身も投資しているカード統合アプリCurveをはじめとする、MasterCardの安い為替手数料を利用したサービスと直接競合することになる。

しかしHinrikusに言わせれば、100万人強のユーザーを抱え、信頼度の高い強固なブランドを築き上げてきたTransferWiseの方が、現状のサービスと近い位置(もしくはギリギリのライン上)にある新しいサービスを提供する上で有利なポジションにいる、ということなのだろう。確かに同社は設立当初から、TransferWiseブランドと素晴らしいプロダクトの確立にたっぷりと時間をお金をかけてきた。

競争が激化する中、外国為替はコモディティ化しつつあるとも言える。そこで私は、Hinrikusに過去6年間のTransferWiseの成功にとって、ブランドとプロダクトのどちらが大切だったかを尋ねてみた。すると彼は「それは究極の質問ですね」と答え、いつも通り一旦話を止めて言葉を選びながら「実際にはプロダクトがブランドをつくると考えています。素晴らしいプロダクトがブランド化しない状況の方が考えづらいですからね」と語った。

この点に関連し、彼はイギリスの海外送金市場におけるTransferWiseのシェアは10%程度だと語っており、確かに未だ4大銀行が同市場の約80%を占めているという話もある。しかし見方を変えれば、海外送金という分野ではTransferWiseが大手銀行の半分のシェアを握っているとも言え、既存のプレイヤーがこの状況に気付かないわけがない

「周りを見ると本当にたくさんのフィンテック企業が存在しますが、そのほとんどは従来の銀行を介して自分たちのプロダクトを販売しています」とHinrikusは付け加える。「フィンテック業界では、グローバルに活躍するような企業が今後数社しか出てこないだろうと私は考えており、TransferWiseはそのうちのひとつになれると思っています」

余談だが、先日HinrikusがTechCrunch宛に送った初めてのピッチメールのコピーをツイートしていた。6年以上前のこのメールが、フィンテックユニコーン企業の最初のメディア露出と売上に繋がったのだ。その後彼らが大きく成長し、現在では700人強の従業員を抱え、遂に黒字化を果たしたというのは感慨深いものだ。

Steve O’Hear(@sohear)
テック系メディアの記者の中で、恐らく一番初めにTransferWiseに関する記事を書いた私ですが、その記事が彼らにとって初となる1000ポンドの送金に繋がったという話を聞きました。

Taavet Hinrikus (@taavet)
@sohearあなたが最初の記者でしたし、いつもそのことをありがたく思っています。添付画像のメールがその証拠です。CC@andruspurde

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

”デジタル・インディア”の波に乗って個人ローンの改革を目指すCredy

ソーシャルレンディングプラットフォームのCredyは、個人ローンをインド国民にとってもっと身近なものにしようとしている。Y Combinatorの2017年冬期バッチに参加している同社は、個人ローンの契約プロセスを電子化し、P2Pローンをより多くの借り主・貸し主に広めることで、市民が資本へアクセスしやすい環境をつくろうとしているのだ。

Credyは、現在インドで起きている、いくつかの大きな制度改革の波に乗りながらビジネスを展開中だ。改革の影響で、今後個人の特定や信用力の把握が容易になり、電子決済も増えていくと考えられている。そんな改革のひとつめが、Aadhaar IDシステムと呼ばれる、世界最大の生体認証IDシステムの導入で、既に10億人以上のインド市民が同システム上に登録されている。

ふたつめの改革が高額紙幣の廃貨だ。昨年末に施行されたこの政策によって、流通通貨の85%以上(金額ベース)が使えなくなった。政策の効果や施行プロセスについては未だ議論の余地があるものの、高額紙幣の廃貨により、インドは間違いなく現金中心の社会から、オンラインバンキングや送金中心の社会へと変わっていくだろう。

上記のような背景の中、Credyは500億ドルの規模で年間30%の成長を遂げている個人向けローン市場を変えるべく誕生した。市場規模は既にかなり大きいように感じるが、Credyの共同ファウンダーでCEOのPratish Gandhiによれば、平均でインド市民7人のうち1人しか個人ローンを借りられないという現状を考えると、市場規模は今後さらに拡大する可能性があるという。

Credyのチームは、全てオンラインで行われるローン申請や、電子IDとのリンクによって、ローンを利用できる市民の数は劇的に増えていくと考えている。紙の書類が中心で、申請完了までに数日から数週間もかかってしまうような現状の借入システムとは違い、Credyのサービスでは、申請者が基本情報を提出すると、すぐに承認が得られるようになっている。

一旦申請が承認され、本人確認のプロセスを完了すれば、Credyのプラットフォーム上でローン契約を結び、お金を借りられるようになる。平均的なローンの金額は500〜1000ドルで、返済期間は6〜9ヶ月といったところ。

Credy自体は貸付を行っておらず、彼らはマーケットプレイスとして、貸し主(主に高所得者層の個人)と承認済みの借り主を結びつける役割を担っている。Credyの創業メンバーは、以前Goldman Sachsのリスク管理部門で勤務しており、そのときの経験がコンシューマー向けの市場で活かされているようだ。

同社のプラットフォーム上では、これまでに合計約300万ドル分のローン契約が結ばれているが、この数字はバンガロール市内だけのものだ。Y Combinatorからの投資や、送金をスムーズに行うための銀行とのパートナーシップを通じて、Credyは今後数ヶ月のうちに速度を上げてスケールしていこうとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

食糧難解決のカギは農家への貸付―、ProducePayが7700万ドルを調達

Pablo Borquez Schwarzbeckは、家族が営む農場で行われていた作業を愛しながら育った。しかし自分は農家に向いていないと感じた彼は、結局ビジネススクールの道を進むことにした。その後ロサンゼルスでProducePayを立ち上げたSchwarzbeckは、現在彼の生まれ育ったコミュニティに恩返しをしようとしている。

この度ProducePayは、生鮮作物を育てる農家に資金を提供するため、出資と借入で合計7700万ドルを調達した。森林地用の10億ドル規模のファンドや穀物の証券化など、一部の生産物には種々の資金策が存在するが、果物や野菜を育てる農家は借入に苦しむことが多い。

そこで同社は、長期保存できない作物を育てている農家のための資金調達モデルを考案したのだ。

ProducePayのサービスは、SchwarzbeckなりのAgricultural 2050 Challengeに対する取り組みだ。2050年までに90億人に達すると言われている世界の人口を支えるため、農作物の生産力向上や農業手法の変革が必要になってくると予測されており、2014年に発足したFarm 2050イニシアティブに参加している企業Innovation EndeavorsFlextronicsのLab IX)を筆頭に、テクノロジーへの投資こそが農業の未来を支えることに繋がると考えている投資家もいる。

一方Schwarzbeckは、農作物の生産量を増やすためには、農家が資本を手に入れやすいような環境を作ることが重要だと主張し、「多くの人が気付いていないようですが、農作物の供給量を増やす上で1番の障害となっているのが、農業を始めたいと考えている人や、生産量を今よりも増やしたいと考えている人の手元にお金がわたっていないことなのです」と話す。

ProducePayは、農家から事前に決められた価格で作物を買い取り、市場でその作物を販売している。販売された作物に関し、ProducePayの収支がゼロであれば、農家は1セントもProducePayに払う必要はなく、もしも利益が発生すれば、ProducePayの手数料を差し引いた金額が農家に還元されるようになっている。

農家は同社のサービスを利用することで、事前に収益を確定できるため、生産量やオペレーションの向上に繋がるインフラに投資できるようになるとSchawarzbeckは説明する。

さらにProducePayは農作物を担保にとっているため、万が一の場合も、農家は農場を手放さなくてすむ。1980年代には多くの農家が担保にしていた農場を失って廃業し、これが農業の産業化を早めるきっかけになった

CoVentureは、ProducePayの革新的なアプローチに感銘を受け、シードラウンドでの投資に続き、今回のラウンドではリードインベスターを務めていた。具体的に彼らは、700万ドルの出資のうち約500万ドルをカバーし、7000万ドルの借入のアレンジも行った。なお、出資を決めた他の投資家には、既存株主のMenlo Ventures、Arena Ventures、Red Bear Angels、Social Leverageが含まれている。

「ProducePayは、例えるならば(SaaS)企業に金融機能がくっついたような会社です」とCoVentureのパートナーで、ProducePayの取締役も務めているAli Hamedは話す。「CoVentureは、南米の農家を筆頭に、従来の金融システムの中で困り果てていた人たちに対して資金策を提供したいと考えています」。

社会移動を実現するためには、資本へのアクセスが不可欠だ。ProducePayは農家に新たな資金源を提供することで、(生活を脅かすことなく)彼らの生活水準の向上に寄与している、とHamedはSchwarzbeckと同じように語っている。

「生鮮作物の栽培や収穫はとても労働集約的な仕事のため、事前に多額の資本が必要になります。そのため、天然資源や適性に恵まれた人であっても、農業を始めたいと思ったときや、既存の農場の収穫量を増やすためにインフラ投資を行いたいと思ったときに、資金不足で思うような動きがとれないということがよくあります」とSchwarzbeckはメールでの取材に答えた。

農家にとって、ProducePayのサービスは大きな意味を持っている。

「毎年自分や家族の生活をリスクに晒す代わりに、農家はProducePayのローンを利用することで、ビジネスの可能性を最大化できると同時に、来年まで生き残れるかどうかを心配せずにすみます」とHamedは話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ヨーロッパの無店舗オンラインバンクN26の口座保有者が30万に達す、毎日1000ずつ増加中

スタートアップとして銀行を始めたら、ユーザーの獲得は困難、と誰もが思うだろう。でも2013年にベルリンで創業したN26は今やヨーロッパの17の国で利用でき、ユーザーのために開設した銀行口座は30万に達した。今では、毎日ほぼ1000人がN26に登録している。

ユーザーの大多数は今でもドイツとオーストリアの居住者だが、最近では新たな登録ユーザーの半数以上がこれら2か国以外なので、徐々にその差は縮まるだろう。今、フランスのユーザーは3万、スペインとアイルランドは1万だ。これらの国は登録受付を開始してからまだ数か月しか経っていない。

同社がこれまでに扱った取引総額は30億ユーロに達し、その60%は2016年のものだ。その年、カードの扱い件数は1億件、そして今では1時間に1900件の取引を処理している。2秒に1件である。

しかし、いずれも立派な数字だが、ヨーロッパの大手リテールバンク(庶民や中小企業対象)に比べれば微々たる量だ。N26は最近やっと銀行免許を獲得*したから、今後は成長に向けて舵を切れる。〔*: 銀行免許: ドイツとECBから。ユーロ圏のみ。〕

N26がヨーロッパ全域で数千万の顧客を獲得したら、他行と互角に競争できる。今のところは、将来性をはらんだ創始期だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Dymon Asiaが東南アジアにフォーカスしたFintechファンドの1stクローズを発表 ― 組成額の目標は5000万ドル

以前、ヘッジファンドのDymon Asiaは同社初となるベンチャーファンドの組成を目指すと発表し、ベンチャーキャピタル業界への仲間入りを表明していた。

Dymon Asia Venturesはフィンテック企業に特化したファンドで、組成額のターゲットは5000万ドルだ。そして今日(現地時間9日)、同ファンドはタイのSiam Commercial(SCB)などから2000万ドルを行って1stクローズを完了したと発表した。SCBは傘下のDigital Venturesを通してDymon Asia Venturesに出資しているが、その金額は非公開だ。Dymon Asiaによれば、同ファンドのファイナルクローズは今後12ヶ月以内に行なわれる予定。

シンガーポールを拠点とするDymon Asia Venturesでは、ファンドの組成期間中に12〜15社に投資を行う予定だ。同ファンドはすでに5社への投資を行ったと発表している:ブロックチェーンのOtonomos、金融のCapital Match、外国為替にフォーカスする4XLabs、トレーディング・プラットフォームのSpark Systems、そしてマーケティングサービスのWeConveneだ。

TechCrunchは、Dymon AsiaのパートナーであるJinesh Patel氏とChristiaan Kaptein氏に取材を行った。その取材で彼らは、同社がベンチャーキャピタル業界に参入したのは、マーケット内での競争力を維持するため、そして、アジアに新しく誕生したチャンスを掴むためだったと説明している。彼らがフォーカスするのは主に東南アジア地域だ。GoogleとTechCrunchによる共同調査によれば、東南アジアにおけるインターネットユーザーは現在2億6000万人。そして、その数字は2020年には4億8000万人にまで拡大する。その結果、デジタルエコノミーの経済規模は2000億ドルにものぼる見込みだ。

「現状を考えれば、この地域のフィンテックが注目される可能性は非常に高いと思います。私たちがフォーカスするのは主にB2B向けにビジネスを行うフィンテック企業です。なぜなら、B2Bにはまだ手のつけられていないチャンスが転がっていると思うからです」とPatel氏は説明する。

フィンテック企業のシリーズAラウンドに参加するファンドは数多くあるが、Dymon Asiaでは同社のリソースや知識を有効活用できるいくつかのカテゴリーに投資先を絞り、それらの企業に対して出資を行っていくという。

「シリーズAからシリーズBに進むのは難しいと考えています」とPatel氏は話す。「そのための資金を集めるのももちろんですし、規制や人材などの問題もあります」。

Dymon AsiaはシードステージからシリーズBの投資案件にフォーカスしていく。投資規模については、一般的には30万ドルから300万ドルの範囲だという。今回取材したパートナーたちによれば、その後のラウンド用に「大規模のリザーブ」も用意しているそうだ。

Dymon Asiaは単に投資家としての役割だけでなく、アイデアのインキュベーションも行っていく。同社はこれまでにも投資先のSpark Systems(FXのトレーディング・プラットフォーム)に対してインキュベーションを行ってきたが、今後の投資先にも同様の支援を行っていく。

また彼らは、VCの数は過去よりも急激に増えてはいるが、東南アジアにはフィンテックのスペシャリストが少ないとも感じているようだ。

「フィンテック企業、特にこれまでVCから注目されてこなかったB2B向けのフィンテック企業に必要なアテンションを与えてあげたいと考えています」とKaptein氏は話す。ちなみに彼には以前、TechCrunchにも東南アジアのフィンテックについてまとめた記事を寄稿していただいている。

「私たちに出資するのは戦略的な視点を持った投資家が多く、このファンドもそのネットワークの拡大版であるとも言えます。私たちは、長い間このセクターで戦ってきました。そのため、私たちが古くからもつネットワークを今回組成したファンドにも利用することができます」とKaptein氏は語っている。

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(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

モバイル専門銀行Atom Bankが1億ドル超を調達―、ミレニアル層をターゲットにしたサービスを展開

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イギリス発のスタートアップで、18〜34歳の消費者をターゲットとしたモバイル専門銀行を立ち上げたAtom Bankは、スペインの銀行BBVAが中心となったラウンドで新たに8300万ポンド(1億200万ドル)を調達した。なお、BBVAはAtomと似たサービスを提供している米Simpleの親会社でもある。今回のラウンドをうけて、Atom Bankの評価額(ポストマネー)は2億6100万ポンド(3億2000万ドル)に達したことが、同社との確認の結果わかった。またBBVAは、2015年11月に行われたAtomの1億2800万ドルのラウンドでも、リードインベスターを務めていた。

調達資金は、ユーザーベースとサービスの拡大、さらには貸出の原資として使われる予定だ。Atomは2016年4月に正式にローンチし、顧客はiOSAndroidの両OSに対応したアプリから同社のサービスを利用している。今日では、中小企業に対して住宅ローンやFixed Saver口座(金利固定の定期預金口座)、担保貸付といったサービスも提供されている。

今回のラウンドに関する発表の数週間前には、自分でスタートアップまで設立し、イノベーションの力を使ってファンを築こうとしている、テック起業家兼ミュージシャンのWill.i.amが、Atomの株式と引き換えに、コンサルタント兼顧問として同社に参加しようとしていると報じられていた。さらにこのニュースを報じたSky Newsは、Atomが1億ポンド近い資金を調達中だとも記していた。

Atomの広報担当者は、Will.i.amの件についてはコメントを控えているが、近々さらなる資金調達について発表予定だと話しており、もしかしたら追加調達元の投資家にWill.i.amが含まれているのかもしれない。

リードインベスターのBBVAは2940万ポンドを出資し、ポストマネーでも29.5%の持株比率を維持すると話している。前回の資金調達時の評価額は1億5250万ポンド(2億ドルちょっと)だったため、今回はかなりのアップラウンドだった。これでAtomの累計調達額は、2億1900万ポンド(2億6800万ドル)になる。

BBVAの持株比率が30%を下回っているのには理由がある。イギリス法のもとでは、30%以上の株式を保有している株主は、強制的に買収オファーを提示しなければならないのだ。

ブレグジットの影響で、イギリスの金融機関の行く末は未だハッキリしていないながらも、BBVAが限界点ギリギリで株式を保有し続けていることから、まだ何かが起きる可能性がある。

フィンテックはイギリスのテック業界の中で1番将来有望な分野だ。多くのスタートアップがその波に乗って、インターネットや携帯電話など新しいチャンネルを利用してプロダクトを提供しつつ、コスト削減を図っている。Atomにいたっては、マーケティング資料の中で初期の顧客のことを「ファウンダー」と呼んで彼らの機嫌を伺っているくらいだ。

Atom以外に類似サービスを提供している企業としては、Monzo(先日大型の資金調達を実施)、Starling、Tandemなどが存在する。

しかし全て企業にチャンスが残されている。イギリスの消費者は貯蓄講座などの金融商品に対して、長らく積極的に手を出してこなかったため、Metro Bankのような競合企業を含め、フィンテックスタートアップが従来の銀行に挑戦しようとしているのだ(AtomのCEOであるMark Mullenは、いわゆる「チャレンジャーバンク」のオンライン専門銀行First DirectのCEOを以前務めていた)。

Atomはサービスの利用状況に関して何の指標も公開していないが、まだサービスは初期段階にあり、ユーザー数もそこまで多くはないようだ。TechCrunchの取材に対し、現在のユーザー数は1万4000人で、その数は急速に伸びていると同社は語っていた。ちなみにイギリスの人口は6600万人で、Atomが特定の層を狙っているとはいえ、他の消費者の利用を制限しているわけではない。

いずれにせよ、将来的にユーザーベースを拡大できるよう、今のところ彼らは資金力の増強に力を入れているようだ。

「投資家からの反応には大変満足しています」とAtomのファウンダーで会長のAnthony Thompsonは語る。なお彼はAtom以前にも、Metro Bankを立ち上げてイギリスの銀行業界にディスラプションを起こそうとしていた。「Atomが著名な投資家からの支援を受けているということは、顧客にとってもプラスになります。彼らからの投資は、Atomの成長と将来へのプランに対する期待の表れです。これまでいくつかの施策に取り組んできましたが、銀行取引に対する私たちの新しいアプローチの革新性はまだ発揮されはじめたばかりです。Atomにはまだまだこれからも期待してほしいですね」。

今回のラウンドには、既存株主のWoodford Investment ManagementやToscafund Asset Management、他にも名前が公表されていない複数の投資家が参加していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

プログラミング能力のない人でも株式市場で独創的なアルゴリズム取引ができるAlgoriz

Computer screen displays laptop graph  of financial trends.

株取引の儲かるアルゴリズムを思いついたら、それを自分で実装するか、または優秀なデベロッパーに実装を頼めばよい。でも、そんなことをしてたら機会を逃す、とお思いのあなたは、一体どうしたらよいか?

そんなとき助けてくれるのが、Y Combinatorの2017年冬季で勉強中のAlgorizだ。ファウンダーでCEOのSoraya TaghaviはGoldman Sachsで実際に株の売買をやってた人、そのとき彼女は、アイデアのあるトレーダーと、そのアルゴリズムを実際にプログラミングできる人を結びつける必要性を痛感した。そこで彼女は、アルゴリズムをふつうの英語で書けばそれがアプリケーションとして動く、というプラットホームを作った。

まず、アルゴリズムの書き方はこうだ: “If SNAP is up 3% from yesterday, and the S&P is down, sell 100 shares of SNAP”(SNAPが昨日より3%上げてS&Pが下げたら、SNAPの株を100株売る)。そのプラットホームは、S&Pのほかにも、さまざまな指標をサポートしている: ボリンジャーバンド、指数的変動平均、変動平均の収束と発散、などなど。

利食いをするタイミングや、最大許容損失なども指定できる。Algorizはふつうの文章による入力をアルゴリズムに変換し、そのプラットホーム上で24/7動かす。

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自分が考えたアルゴリズムを、過去のデータを使ってテストできるし、もちろん時価で動かすこともできる。

Algorizにはまだ、実際の売買の機能はないが、市場が、そのアルゴリズムに該当する状態になってきたら、メールで通知をくれる。実際に売り買いをせよ、という合図だ。今後実際に証券会社の機能を実装したら、その利用(株の売買)に関してはもちろん手数料を取るが、Algorizの利用料は無料になる。実際の売買に他の証券会社を使う人は、Algorizの使用が有料になる。

Algorizは今後、そのプラットホーム上で優れたアルゴリズムを作ったトレーダーと、資金力のある人を結びつける、マーケットプレースにもなりたい、と言っている。またアルゴリズムの扱い商材も、普通株だけでなく、通貨や先物取引にも広げたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

イギリスのMonzoがシリーズCのクローズへ―、ヨーロッパで増え続ける”チャレンジャーバンク”

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最近増えているネット専門銀行(またはチャレンジャーバンク)のひとつで、イギリスに拠点を置くMonzoは、現在シリーズCのクローズ間近で、早ければ今週中にも資金調達が完了する予定だ。

複数の情報筋によれば、アメリカのThrive Capitalがこのラウンドのリードインベスターを務めているようだ。しかし調達額についてはまだわかっておらず、3000万ポンドという情報もあれば、それより少ないが2000万ポンドは超えるという情報もある。さらに、Monzoが近いうちに2回目のエクイティクラウドファンディングのキャンペーンを開始するということもわかっている。

Monzoの共同ファウンダー兼CEOのTom Blomfieldに、シリーズCの存在やリードインベスターについて尋ねたところ「現段階ではコメントすることはできません」という反応が返ってきた。

興味深いことに、イギリス人のシンガーソングライターTom OdellがMonzoに投資しているかもしれないという情報も入ってきている。ラッパー・プロデューサー兼テック起業家のWill.I.amが、イギリスの別のチャレンジャーバンクAtomとチームを組もうとしており、さらにAtomへ投資するかもしれないというSky Newsの報道を考えると、この話は一層面白くなる。

Monzo以外にも、ニューヨークに拠点を置くThrive Capitalから投資を受けたヨーロッパのフィンテック企業は存在する。Josh Kushnerが設立したThrive Capitalは、最近行われた独RaisinのシリーズCでもリードインベスターを務めていた。なおRaisinは、ヨーロッパ全体で利用できる貯蓄口座を提供している

Monzo(以前はMondoという名前で活動していた)はインターネット専門銀行、もしくはBlomfieldの言葉を借りれば「スマートバンク」として、今年中にユーザーが当座預金口座を開設できるよう準備を進めており、昨年8月にはイギリスの規制団体FCAおよびPRAから「条件付きで」バンキングライセンス取得した。

現在のところ、10万人以上のユーザーがMonzoのプリペイド版のMasterCardと、iOS・Android両OSに対応したモバイルアプリを利用している。Monzoユーザーは、リアルタイムでの出金記録や、カードの利用場所の地図表示、支出金額のカテゴリー別け、全ての出金情報がまとまったタイムラインといったサービスも利用できる。

Monzoはこれまでの資金の一部をクラウドファンディングから、そして大部分をロンドンのアーリーステージVCであるPassion Capitalから調達しており、累計調達額は1280万ポンドに及ぶ。昨年10月に公表されたブリッジファンディング(つなぎの資金調達)では480万ポンドを調達しており、その際の評価額は5000万ポンドだった。

一方で昨年末には、Monzoが大手銀行からの巨額買収提案を却下したと噂されていた。先週のインタビュー中にBlomfieldにこの件を尋ねたところ、彼はこの話が真実だと認めた。

提案を却下した理由について彼は、「彼らには別の目的がありましたし、そもそもとても厄介な会社なんです」とその銀行の古びたITシステムや、文化、考え方などを例に挙げながら話した。「古い体制が残っているとリスクをとらなくなり、根本的にはイノベーションが止まってしまいます。これこそが問題なんです」

さらにBlomfieldは、売却の可能性は完全には否定できないものの、スタートアップ銀行にとって早い段階で他社に事業を売却するということは、救済策をとることに等しいと言う。「早い段階での売却は、設立当初の目的を達成できなかったと言っているも同然です」

一方でシリーズCは依然進行中のため、Blomfieldや彼のチームの前にはまだ長い道が続いている。

Monzo共同ファウンダーTom Blomfieldとのインタビューの様子はこちらから。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

スマホ証券One Tap BUYが新たに15億円を調達、みずほ証券も出資

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3タップで株取引ができるアプリを開発するOne Tap BUYは、本日総額15億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先には既存投資家のみずほキャピタル、 モバイル・インターネットキャピタル、ソフトバンク、そして新たにみずほ証券が加わった。

One Tap BUYは有名ブランドや優良企業の株式を1000円単位で簡単に取引できるアプリだ。One Tap BUYは2015年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルに出場し、審査員特別賞とAWS賞を獲得している。クローズドベータ期間を経て、2016年6月に正式ローンチした。現在までのアプリダウンロード数は15 万件を超えたそうだ。20代から30代の年齢層が多く、全利用者の7割が投資未経験者という。

One Tap BUYは2013年10月に設立し、2016年7月にソフトバンクから10億円の調達を実施している。今回の調達を合わせると累計調達額は25億円以上となる。金額まで確認できなかったが、サイトの出資先を見るとDBJキャピタル、三生キャピタルなどの名前も並んでいるので、実際はもう少し調達しているだろう。

ローンチ当初は米国株のみの取り扱いだったが、今年2月からは3つの日本株ETFの取り扱いを始めている。One Tap BUYは今回の調達資金は、「新サービスに向けたシステム開発や、One Tap BUYの認知拡大に向けたマーケティング活動を推進する予定です」とリリースに記している。今回の調達ラウンドにみずほ証券が加わったということは、One Tap BUYがみずほ証券と連携し、日本株ETFのみならず個別株まで取り扱うことを検討しているということなのかもしれない。

大統領がツイートで上場企業の名を言ったら株の売り買いのタイミングを教えてくれるTrump2Cashアプリ

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株の売買は今やアルゴリズムトレードの全盛期だから、人間の心と頭による戦略的な売買はますます難しくなっている。でも、今では、トランプのはちゃめちゃなツイートの中に、企業の名前が一度あるだけで、上げ下げが生じるのだから、人間であるあなたが、ポジティブな、あるいはネガティブなセンチメントの逆張りをしてちょいと稼ぐことも、容易になった!

そこで、Trump2Cashという思わせぶりな名前のアプリが、おもしろそうだ。このPythonで書かれているボットはトランプのツイートフィードをウォッチして、そこに出てくる上場企業の名前に対するセンチメントを分析する。トランプがトヨタにNO WAY(ありえない)と言ったって? 特定株を空売りしよう! Fordが700名の雇用をメキシコからアメリカへ移すって?(ほんとはそうではないが)。買いだ!買いだ!買い買い!

プログラマーのMax Braunがこのアプリを試行のために作り、今ではTwitter上で、売りや買いを勧めている。彼は曰く:

ベンチマークの結果を見てもらいたい。これはあくまでもテストランであり、彼のツイートとマーケットのデータでアルゴリズムがどう振る舞うかを調べている。ご覧のように、ときどき企業を間違えたりセンチメントの判断を誤っている。しかし、正しい場合の方がずっと多い。その売り買いの戦略はときどき、ユーザーを戸惑わせるだろう。

しかし全体としてアルゴリズムは、二回に一度以上は成功している。下図のシミュレーションによると、アプリの立ち上げ以来、年額換算のリターンは全体で約59%だ。シミュレーションと使用したデータには制約があるから、ある程度眉に唾をつけてご覧いただきたい。

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アプリはここでダウンロードできるし、動かすのは簡単だ。毎日じっと見ていれば、トランプの言葉に反応してアルゴリズムが売り買いを決める様子を、ご覧になれるだろう。Mike Tyson’s Punch OutでGlass Joeが敵の弱点を電報で知らせたときのように、新しく雇ったこの資産運用ロボットは、あなたのポートフォリオをデータに応じてリッチにしてくれるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

100万円超の借入が5分で完了ーN26の新サービス

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N26はヨーロッパで1番の先進的な銀行になるべく、最近ものすごいペースでプロダクトの改良を行っており、新機能も多数追加されたほか、サービスを提供している地域も段々と広がってきている。そして新機能はいつも同じ「今あなたが使ってる銀行はダメだ。全てもっとシンプルにできるはず」というスローガンと共に導入される。そんなN26が小口融資の新機能を発表した。

数週間前にこの新機能のデモを見たときはなかなか感動した。ドイツに住んでいる人はアプリ上で融資申請をすることができ、アプリが基本的な質問をユーザーに投げかけながら、順番にフォームを埋めていくような仕組みになっている。

借りたい額や配偶者の有無、家を所有しているかといった質問に答えていき、クレジットチェックが終わると、年利と実際の返済額が表示される。さらにローンの返済期間もカスタマイズ可能だ。

例えば1万ユーロ(約120万円)借りたい場合、N26のアプリ上でクレジットチェックを終えると利率(例えば年利4.59%)と返済額(1万475ユーロ)が表示される。とても分かりやすく、N26はユーザーから何も隠そうとはしていない。そしてユーザーが表示された条件を受け入れると、特別な書類の提出も無しに約1時間後には、N26のアカウントに申請した金額が入金される。

現在のところ、この機能はドイツ国内でのみ利用可能で、借入額の範囲は1000〜2万5000ユーロ、利率が年利で2.99〜8.00%、返済期間は最大5年間となっている。このサービスの裏側では、N26自体が貸出を行っているローンもあれば、サードパーティーの金融機関がN26経由で貸し出しているものもある。

これこそがN26の強みで、同社は複雑なインフラをまとめつつ、消費者に対しては極めてシンプルな機能を提供しているのだ。N26のユーザーにとっては、返済金額さえ把握できれば、お金がどこから来ようが関係ない。

ドイツ以外の状況はどうだろうか?もしもN26の動向を追っている人であれば、同社がEU全体で有効なフルバンキングライセンスを取得したと知っているかもしれない。N26の共同ファウンダー兼CEO Valentin Stalfは、TechCrunch Disruptにて今後ヨーロッパの17ヶ国に進出すると話していた。そしてその17ヶ国に住む人たちは、既にN26で口座を開設できるようになっている。

しかしまだこれは序章に過ぎない。N26は将来有望な市場に注目し、既存のプロダクトを凌駕できるようなものをつくろうとしている。最初のターゲットはフランスだ。現在のところフランス国内のユーザー数は3万人しかいないが、1日あたり1000人のペースで増えている。さらにStalfは、フランスの商業銀行はヨーロッパの中でも最も利用料が高く設定されていると話す。

今の勢いが続けば、すぐにフランスのユーザーは何十万人という数になるだろう。そのためN26は、ベルリンのオフィスで主要諸国の国別担当マネージャーを採用中だ。フランスは、Jérémie Rosselliが担当することになっている。さらにN26はフランスの地元フィンテック企業と協力し、現在ドイツのユーザーが利用中の機能全てを、フランスでも使えるようにしようとしている。

ヨーロッパ中で金融商品を展開するというのは、単にスイッチをONにするよりも少し複雑な話だが、投資や貸出、当座貸越といった機能がそのうちフランスでも利用できるようになるだろう。そしてスペインやイタリアなど、他の国もその後に続くことになる。

  1. n26-credit-press-release-en

  2. n26-press-credit-en

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

子ども向けデビットカードのGreenlightー店舗や限度額など細かな設定が可能

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ジョージア州アトランタを拠点とし、3年前に設立されたGreenlightは、小中学生の子どもを持つ親であれば誰でも理解できるような問題を解決しようとしている。それは、どうすれば子どもにお金を渡すときに、子どもがそのお金をなくしたり、別の目的で使ってしまうか心配しなくてすむかということだ。

残高をチャージできるプリペイドカード自体は何ら新しいものではなく、MasterCardやVisa、American Expressも親をターゲットにしたデビットカードを発行している。しかしGreenlightは、考えうる全ての機能と手頃で分かりやすい料金体系、さらにはFDIC(連邦預金保険公社)補償が盛り込まれたプロダクトで、大手カード会社に挑戦しようとしている。なお同社は、シードラウンドで現在の経営陣とAdvanced Technology Development Centerと呼ばれる、ジョージア工科大学のインキュベーターから資金調達を行った。

私の7歳と9歳になる子どもも、遠足のお小遣いなどをいつもなくしてしまうので、私自身Greenlightのプロダクトには興味を持っていた。そこで、いくつか気になる点を共同ファウンダーのJohnson Cookに尋ねてみた。

TC:Greenlightは素晴らしいアイディアですが、カード業界は競争も激しいですよね。既存のプロダクトとの差別化はどのように行っていますか?

JC:Greenlightは、(私たちの情報によれば)店舗レベルでのコントロールができる初めてのカードです。つまり親は、スターバックスやファストフード店、近くのスーパーやアマゾンなど、店舗やウェブサイトを特定して、子どもがどこでいくら使えるかというのを設定することができます。この利用先のお店を限定できる機能が、子どもを持つユーザーの共感を呼んだということがわかっています。

TC:その他にはどのような機能がありますか?

JC:子どもにお小遣いをあげるというアクションも、アプリを使えばとても簡単に自動化できます。さらに今後、Greenlight Savings口座とGreenlight Givingをローンチ予定で、親と子ども両方が支出や貯蓄、寄付といったお金に関する全ての情報を確認できるようになります。お金の賢い使い方や、予期せぬ出費のための貯蓄の重要性、投資を通じて富を築く方法、信用力の重要性など、親がお金の面でも子どもを賢く育てられるような手助けをすることに、私たちは注力しています。

TC:通知機能はどうでしょうか?恐らく親にとってはこれが重要なポイントだと思いますが。

JC:カードが使用されるとすぐに親へ通知が飛び、どこでいくら使われたかというのが即座にわかるようになっています。さらに通知設定は、親用と子供用にカスタマイズすることができます。子どもがカードで何か購入したとき以外にも、支払いができなかったときや、子どもから新しいリクエストが届いたとき、残高不足や振込完了時、カードが利用できるようになったとき(または利用できないようになったとき)、メッセージを受け取ったときなどに、通知を受け取ることができます。

TC:料金は1世帯(子どもの数は最大5人)当たり4.99ドルに設定されていますが、どのような背景があってこの料金に落ち着いたんですか?そしてなぜ、決済ごとにユーザーから手数料をとるのではなく、月額制という形式にしたのでしょうか?

JC:私たちは、月額利用料と通常のカードのような加盟店手数料の2つを収益源としています。手数料のみを収益源とするプロダクトも存在しますが、私たちは子どもが毎月そこまで大金を使うことはないと考えています。さらに世帯ごとではなくカードごとに利用料を設定することも検討しましたが、家庭にいる全ての子ども(そして親)がGreenlightを使えるように、そして私たちが素早くシェアを獲得し成長するためにも、世帯ごとの利用料を設定することに決めました。

TC:子どもはGreenlightのカードをデビットカードのように使えるんですか?もしも現金しか受け付けていないようなお店の場合、子どもはこのカードを使ってATMから現金をおろせるんでしょうか?

JC:現在のところ、ほとんどの親がATMでの現金引き出しをできないようにしてほしいと希望している、ということがわかっています。将来的には、現金引き出し機能を希望する家族に対しては、親が引き出し上限額を設定できるような機能を追加していこうと考えています。

TC:例えば、子どもがお金が必要ということで電話してきた場合、親はすぐにお金を振り込むことができるのでしょうか? 

JC:Greenlight上の操作は全て即座に処理されるため、親が子どもから送られてきた支払情報を承認すれば、すぐにカードの残高がアップデートされるようになっています。レジの列に並んでいるときに、子どもがお金が足りないことに気付いても、その場で親にリクエストを送信して親が承認さえすれば、カードの残高は即座にアップデートされます。

TC:どのくらいの年齢の子どもをターゲットとして考えていますか?個人的には、中学生や高校生の子どもは携帯電話やApple Payを利用できるので、そこまで必要性を感じないのではないかと思っています。

JC:プロダクトのローンチ当初は10〜18歳くらいをターゲットとして考えており、これまでの実績値によると親がGreenlightにサインアップした家庭の子どもの平均年齢は12歳でした。子どもは初めての携帯電話を手にした途端、親離れをし始めて、親よりも友だちと過ごす時間が増えていくという話をよく聞きますが、このくらいの時期からGreenlightの解決しようとしている問題が、家庭の中で起こりはじめるんです。

TC:あるVCからGreenlightが300万ドルを調達中だと伺いました。

JC:その通りです。

TC:資金調達に関して、アトランタの状況はいかがでしょうか?一般的に言って、シードラウンドの後はシリコンバレーや東海岸の投資家と話をする必要がでてくると思いますか?

JC:アトランタの投資家は最高ですが、B2C事業を営むスタートアップや、コンシューマーブランドに詳しい投資家を探すには、アトランタを出てベイエリアやニューヨークへ行く必要が確かにありました。とはいっても、アトランタからは多くのフィンテック企業が生まれているので、コンシューマー向けのプロダクトに馴染みがない地元の投資家も、フィンテックの視点からGreenlightに興味を持ってくれています。

TC:これまでのプレゼンでは、投資家からどのような反応をされることが多かったですか?また、VCが1番注目している点はどこでしたか?

JC:お金に賢い子どもを育てる家庭をサポートする、というイメージを持ったコンシューマーブランドを築くことができるチャンスにVCは最も惹かれています。私たちがターゲットとする層は、これまで銀行から十分なサービスを受けられておらず、学校はお金の使い方までは子どもに教えてくれません。Greenlightのほかには、親が子どもにお金の使い方を教えることを目的にデザインされた、使い勝手の良いプロダクトは存在しません。

(もうひとつの質問について)私たちがこれまでに話をしたVCは全て、顧客獲得コスト(CAC)を知りたがっていました。ありがたいことに、私たちは1200人の顧客を最初の数週間で獲得できたので、平均CACも当初の想定よりかなり低く抑えることができました。

TC:確か3人のお子さんがいらっしゃいますよね。お子さんもGreenlightを使っているんですか?

JC:はい、うちには11歳、8歳、5歳の子どもがいるんですが、私が日々体験しているような、消費者が抱えているリアルな問題を、Greenlightが解決してくれていると自信を持って言えます。また、これだけパーソナルな事業を行っているので、家族との距離も以前より近くなりました。真ん中の8歳の子は、将来起業家になりそうなほど、いつも次々と新しいアイディアを考えつくんです。「お父さん、Greenlightの広告をスクールバスの中でもやろうよ」とか「お父さん、スーパーボウルでも宣伝した方が良いよね?」といった感じで。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アルゴリズムで10分審査、中小企業向け融資のクレジットエンジンが約1億円を調達

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中小企業向けのレンディングサービスを展開する日本のクレジットエンジンは1月30日、シードラウンドで総額1億1000万円を調達したと発表した。同社は2016年の9月末にDraper NexusVoyage Groupから約6000万円を調達しており、今回新たに米国の500 Startupsおよび500 Startups Japan、そしてフリービットインベストメントなどから約5000万円を調達してシードラウンドを完了した。クレジットエンジンは今回調達した資金をテスト融資用の原資や人員強化のための費用に充てる予定だ。

また、クレジットエンジンは本日よりオンライン融資サービス「LENDY(レンディ)」のベータ版提供を開始する。

LENDYは、中小企業がもつオンラインデータを活用したレンディングサービスだ。オンラインデータをもとに融資判断を自動で行う独自のアルゴリズムを利用することで、ペーパーレスで人件費を抑えたスピード審査を実現できる。

また、一度きりの信用評価をするのではなく、リアルタイムなオンラインデータを取得することで継続的な信用評価を行うことができる。クレジットエンジンは、この継続的な信用評価によって貸し倒れリスクなどを軽減できると主張している。審査の手続きにかかる時間は10分から15分程度だ。

現状の中小企業金融が抱える課題

クレジットエンジン代表取締役の内山誓一郎氏によれば、中小企業金融が抱える課題は「既存の金融機関が中小企業や個人事業主の資金ニーズに適切に応えられていない」点だと語る。現状、中小企業や個人事業主が利用できる融資サービスは大きく分けて3つある。伝統的な銀行や信用金庫からの融資、スピーディな審査や無担保で融資を受けられることが特徴のビジネスローン、そして売掛金をすぐに現金化できるファクタリングだ。

中小企業が銀行などから資金を借りるときに障害となるのが、煩雑な手続きと融資完了までにかかる長い時間だ。規模の小さな事業体がもつリソースは少なく、詳細な事業計画などを作成する時間がなかったり、そもそも提供できる担保がないこともある。また、融資が完了するまでに2ヶ月から3ヶ月もの時間がかかり、急な資金需要には対応できない。伝統的な金融機関では、決められた融資枠の範囲であればいつでも自由に融資を受けることができる「当座貸越契約」を結ぶこともできるが、この契約を取り交わすことができるのは規模の大きな優良企業に限られる。

一方で、急な資金調達のニーズに応えてくれるのが、融資完了までの時間の短さが特徴のビジネスローンやファクタリングだ。しかし、ビジネスローンは無担保で借りられるが金利が高い。また、この方法でも書類準備には手間がかかる。ファクタリングには売掛金回収の手間が省けるという利点はあるが、請求書を発行するたびに事務作業をしなければならず、手数料も高いという難点がある(調達金額の5%から20%程の手数料が一般的だ)。

リアルタイムにオンラインデータを取得し、独自のアルゴリズムで審査

2016年7月に創業のクレジットエンジンは、中小企業がもつオンラインデータを活用することで融資にかかる時間や手間をできるだけ減らすことを目指している。

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ここでいうオンラインデータとは、例えば、銀行のインターネットバンキングから取得する残高や入金などの記録、クラウド会計サービスから取得する会計データ、ECサイトから取得する日々の売上データなどを指す。また、通常の審査では利用されない企業やショップの口コミなどの定性的なデータも利用していくようだ。本日発表のプレスリリースでは、LENDYのサービス連携先としてAmazon、スマレジ、住信SBIネット銀行、freee、楽天銀行などが挙げられている。

取得したデータを元に、クレジットエンジンが独自で開発する審査アルゴリズムが自動的に審査判断を下す。審査に通った事業体には融資枠が設定され、以後その範囲内であれば自由に借り入れが可能になる。

内山氏によれば、同社は将来的に顧客とのコミュニケーションの自動化のためにチャットボットを利用する予定でだと話す。これが実現すれば100%に近い「全自動の融資サービス」が可能になるかもしれない。内山氏は、「(全自動の融資サービスは)技術的には可能だと思っている。将来的にはそのようなサービスを目指したい」と語る。

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クレジットエンジンは、LENDYを通してユーザーに最大100万円(正式版では最大1000万円までとなる予定)を短期で貸し付け、そこから金利収入を得る。金額の上限設定について内山氏は、「事業の開始資金など、まとまった資金を借りるための融資サービスでは、金利などの面で銀行や信用金庫が圧倒的に有利になる。そのため、小規模だが急な資金ニーズに応えるというマーケットが当社が狙える分野だと思った」と話す。

ベータ版における貸付利率は融資額が100万円以上の場合8%~15%、100万円未満では13%~18%だ。金利水準だけを比較すると、一般的なビジネスローンの金利とあまり変わらないことが分かる。これについて内山氏は、「最初から金利水準で攻めるのではなく、まずは利便性で差別化を図る。ただ、審査モデルの実績も積み上がっていけば、価格面でも勝負できる可能性はある」と話す。

日本でもレンディングサービスが普及する土壌ができあがってきた

現在、中小企業向けのレンディングサービスは欧米を中心に普及してきている。同様のサービスを展開する米国のOnDeckによる融資総額は50億ドルに達している。その背景にあるのは、クラウド会計など各種クラウドサービスの急速な普及だ。

クラウド会計サービスのQuickBooksOnlineを例にすると、同社のユーザー数は2010年頃を境に急激に伸び、2015年度におけるユーザー数は150万人となっている。「日本でもクラウド会計のfreeeやPOSレジアプリのAirレジなどの普及が急速に進んでおり、中小向けレンディングサービス普及の土壌はできあがっている」と内山氏は語る。

本調達ラウンドに参加したDraper Nexusの倉林陽氏も、伝統的な金融機関以外からのレンディングサービスは重要な投資テーマの1つだと語る。「オルタナティブ・レンディング分野は投資テーマとして2015年からEIRを交え調査しており、専業でSMB向けにこの事業に取り組むスタートアップ企業を日本で創りたいと思っていました。そこに内山さん含むクレジットエンジンが現れ、弊社のEIRだった井上氏が参画する形でチームが強化されたのを受け、出資を決めてシードラウンドの調達を支援しました」。

昨年12月、OnDeskとアメリカ大手金融機関のJP Morganとの業務提携が発表された。クレジットエンジンも「2年後をめど」に自社の与信システム・プラットフォームを伝統的な金融機関に提供していく予定だ。

500 Startup JapanのJames Riney氏は、「米国においてオルタナティブレンディング領域のスタートアップが成功した要因は、シームレスなオンライン体験をレガシーな業界に持ち込んだことでした。日本においても、いずれ同様のことが生じていくと考えられます」と日本のレンディング・ビジネスの将来を語る。

そこで懸念されるのが、日本の伝統的な金融機関がスタートアップの技術を受け入れる体制にあるのかどうかだ。前職のマネーフォワード社では中小企業向けのクラウドサービス部門に所属していた内山氏は、「伝統的な金融機関からもFinTechを取り入れたいという気持ちは伝わってくるが、現状ではまだ先進的な試みをしているところだけだ」とコメントしている。

ところで、クレジットエンジンのビジネスモデルは、不特定多数の個人などから資金を集めた資金を貸し付けるというP2P型の「ソーシャルレンディング」ではない。米国ではP2P型のレンディングサービスも増えてきていて、日本にもmaneoなどがある。

ソーシャルレンディングのモデルを選択しなかった理由について内山氏は、「LENDYは中小企業や個人事業主などをターゲットにしたサービスである以上、ある程度の確率でデフォルトが起こることは避けられない。そのため、個人から資金を集めるP2P型のモデルはLENDYには適さないと思った。それに加えて、P2Pでは資金調達コストが5%から8%かかる。多い時では10%かかることもある。デフォルトが発生することを考えると、そのコストでは成り立たないと思った」と説明する。

内山氏によれば、金融機関の融資サービスの対象とならない(従業員が20名以下の規模の)事業者は、全国で350万社を超える。現在、中小企業に対する貸し付け残高は160兆円で、その内の2兆円が無担保ローンの貸し付け残高だという。そのマーケットがクレジットエンジンの事業領域だ。

経費精算をシンプルに ー Spendeskが220万ドルを調達

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フランス発のスタートアップSpendeskは、設立から数ヶ月しか経っていないが、既にエンジン全開だ。25日(水)にクローズしたラウンドで220万ドル(200万ユーロ)の資金を調達し、リブランドを経た同社は、近々モバイルアプリのローンチと利用者全員へのコーポレートカードの発行を予定している。

もともとeFoundersの支援を受けていたSpendeskだが、ついに彼らの援助なしに独立してビジネスを展開する準備が整った。なお今回のラウンドには、Kima Ventures、Funders Club、エンジェル投資家のEdward Lando、Nicolas Steegmann、Frédéric Montagnonが参加していた。

さらに驚くべきことに、Spendeskのプロダクトを数ヶ月間利用した顧客企業のいくつかが同社への投資を決め、Birchbox、AB Tasty、La Belle Assiette、Tinycluesのファウンダーもラウンドに参加した。

Spendeskのゴールは極めてシンプルだ。前提として、フランスでは経費処理にとても手間がかかる。まず購入したもの全てに対して、ひとつひとつの商品が明記されたレシートが必要になる。2杯のコーヒーに3ユーロ使ったとしても、レシートの写真を撮らなければいけない。そのためほとんどの人は少額の費用は経費申請していない。

さらにフランスではコーポレートカードがアメリカほど普及していない。アメリカ企業であれば、取引銀行がほとんどの従業員に対してコーポレートカードを発行しているので、彼らは飛行機のチケットなどを購入する際に自分のお金を使わなくて済む。しかしフランスでは、一旦従業員が自分のクレジットカードで支払を行って、1、2ヶ月後に払い戻しを受けるという習慣が根付いているのだ。

また、経費処理は経理担当者や経理部の大きな悩みの種だ。彼らは大量のフォームを手書きで埋めて、いつもレシートを提出するよう依頼しなければならず、かなりの時間を無駄にしている。

Spendeskは上記のような問題を、包括的なエンタープライズ向け経費管理システムで解決しようとしている。システムのカバー範囲は、私が初めてSpendeskを取材したときから変わっていないが、個々の機能は以前に比べて進化した。

顧客はアカウントの作成後、Spendeskの口座に希望額を送金でき、そのお金はThe Bancorpが管理する口座内に安全に保管される。そして顧客はその口座から、各従業員にお金を振り分けることができるのだ。例えばある従業員は月1000ドルまで、別の従業員は月1万ドルまでといった具合だ。

すると従業員は、自分のクレジットカードを使わずに必要なものを購入できるようになる。オンラインで何か購入するときは、バーチャルMasterCardを使えばいいし、実店舗で何か購入するときはプラスチックのクレジットカードを使えばいい。

もしもチーム全員の航空券を購入しなければならないようなとき(自分の限度額を超える支払を行わなければならないとき)は、システム上で上司に決裁をお願いすれば通知が飛び、上司は内容を確認した後にSpendesk上で承認することができる。

既に一部の顧客はプラスチックのカードを使用しているが、今後Spendeskは利用者全員からのカード申請を受け付けるようになる。文字通り従業員全員分のコーポレートカードを発行することもできるのだ。

「これまで私たちはオンライン上での決済にフォーカスしてきましたが、そちらはとても上手くいっています」とSpendeskのファウンダー兼CEOのRodolphe Ardantは話す。「しかし交通費の精算で困っている人がまだいます」

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モバイルアプリは近日中に公開予定で、レシートの管理にきっと役立つだろう。カードで支払を行うたびにユーザーは即座に通知を受け取り、その通知をスワイプしてレシートの写真をとれば、全て完了だ。そして全てのレシートのデータは、経理部がアクセスできるデータベース上にまとめられる。

従来のクレジットカードと現代的なウェブ・モバイルインターフェースを組み合わせることで、Spendeskはリアルタイムで経費情報をトラックできるサービスを生み出した。現在同社は毎週3000件ほどの決済を処理しており、フランス、ドイツ、イギリス、スペインに拠点を置く数百社がSpendeskを利用している。DeezerやWebedia、Hostmaker、DrivyもSpendeskのユーザーだ。

本日調達した資金のおかげで、Spendeskは他のヨーロッパ諸国へ進出する際に、(これまでとは違う規制やポリシーを持つ)新たな銀行とパートナーシップを結ばなくてもよくなった。

SpendeskはSaaSモデルを採用しており、利用料は企業のサイズに応じて従業員ひとり当たり8〜15ユーロに設定されている。そして従業員の数が多いほどひとり当たりの料金は低くなる。さらに利用料はSpendeskの口座から引かれるため、顧客は「料金を支払っている」という印象を受けない。

今後のSpendeskが力を入れるべき分野は既に想像がつく。例えば数ヶ月前に私が仕事で中国へ行ったときは、現金しか使えなかった。つまりSpendeskを導入していたとしても、従業員が一旦建て替えなければいけない場面はよくある。今後Spendeskがどのように建て替え費用の処理をプロダクトに組み込んでいくか見るのが楽しみだ。これが実現すれば、企業は今使っている経費精算システムに別れを告げられるかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

フィンテックVCのMotive Partnersが誕生、1億5000万ドルのファンドを組成中

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現在ポンドの価値は過去50年間で最低の水準に達している(さらに下がる可能性もある)が、投資家の中にはこれをチャンスだと捉えている人もいる。

フィンテック界の起業家や投資家から構成されたチームが、本日Motive Partnersと名付けられたVCをローンチし、ロンドンとニューヨークにオフィスを開設した。ファンドの規模については明らかになっていないが、同社が今月はじめにアメリカ証券取引委員会(SEC:U.S. Securities and Exchange Commission)に密かに提出したForm Dには1500万ドルという金額が記載されていた。

しかもこの数字にはアメリカ分しか含まれていないため、イギリスにも本社を置く同社は、もっと大きな金額を調達している(もしくはしようとしている)可能性が高く、私たちもある情報源からそのような情報を入手している。

既に何百という数のVCが、フィンテックを専門に、または他の分野と併せてフィンテックスタートアップへの投資を行っている。そういった意味で、Motive Partnersは他社に遅れをとっているが、いくつかの理由を背景に同社はまだ勝機があると考えている。

まずは市場の大きさだ。Goldman Sachsの推測によれば、金融業界の年間売上のうち4兆7000億ドルが、フィンテック企業によって奪われる可能性がある。そこでMotive Partnersは、フィンテックスタートアップへ投資することで、4兆7000億ドルの市場を狙うことができると考えているのだ。

「私たちは金融サービスが今まさに変化の真っ只中にいると考えています。今後カスタマーエクスペリエンスの向上、テクノロジーを活用したシームレスなサービス、新しい業界基準、そして金融サービスへの”アクセスの民主化”が今後世界中で広がっていくでしょう。このような変化によって、専門家にとって素晴らしい投資のチャンスが、今後次々に生まれていくと考えています」とマネージング・パートナーのRob Heyvaertは声明の中で語った。

ふたつめは金融機関の幹部や投資家から構成されたMotive Partnersのチームだ。Heyvaert(FISのグローバルフィナンシャルソリューション部門の前コーポーレート・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント、Capcoのファウンダー兼CEO、IBMの証券・金融市場担当ジェネラル・マネージャー、Cimad Consultantsのファウンダー兼CEO)に加え、Stephen C. Daffron(Interactive Data Corporationの前CEO、Morgan Stanleyのテクノロジー・オペレーション部門のグローバルヘッド、Renaissance TechnologiesのCOO)やMichael Hayford(FISの前CFO兼コーポーレート・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント、Metavante Technologiesの社長兼COO)がファウンディングパートナーとして同社に参加している。

さらにAlastair Lukies(Monitiseのファウンダー、英首相のフィンテックアドバイザー)やAndy Stewart(BlackRock元社員)らが同社のパートナーを務める。

「ロンドンとニューヨークにいるスタッフは、フィンテックのエコシステムの最前線に立つべく、とてつもない努力を重ねています。両都市の著名な専門家のサポートとともに、私たちは社会と金融の関わり方に大きな変化をもたらす上で、有意義な役割を担っていくことに全力を尽くします」とLukiesは声明の中で語っている。

最初の投資案件に関する情報はまだ発表されていないが、昨夜Sky NewsLMRKTSに対するMotive Partnersの投資(金額は不明)について報じた。TechCrunchでも、この噂が真実であるという確認がとれている。

LMRKTSは、自社のことを”多角的に多方面をカバーする”専門家集団と表現している。同社の業務内容についてはウェブサイトから確認できるが、要点をまとめると、LMRKTSは大手金融機関の重複した外貨為替取引をみつけだし、それを解消することで金融機関のコストを抑えるようなアルゴリズムを開発しているようだ。

前アメリカ合衆国財務長官のLarry SummersもLMRKTSに投資しており、彼は同社の取締役まで務めている。もちろん有名企業の出身者や元官僚を取締役にしたからといって企業が成功するとは限らないが、理論上はデューデリジェンスこそ、Motive Partnersの専門性が発揮される部分だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter