1000億円超を調達しながら失敗に終わったEVのバッテリー交換ビジネスを復活させるAmple

今をさかのぼること13年とわずか、当時世界で最も力のあるソフトウェア企業の1つだったSAPでCEOへの道を歩んでいたShai Agassi(シャイ・アガシ)氏は、それまで専門的なキャリアを積み重ねてきた会社を離れ、Better Place(ベター・プレイス)というビジネスを始めた。

そのスタートアップは、勃興期の電気自動車市場に革命を起こし、電気自動車のバッテリー切れという恐怖を過去のものにするはずだった。消耗したバッテリーを充電されたばかりのものに交換する、自動化された電池交換ステーションのネットワークというのが同社のうたい文句だった。

アガシ氏の会社は、世界でもトップレベルのベンチャーキャピタルやグロースエクイティファームから約10億ドル(現在約1080億円。当時としては相当な額)を調達することになっていた。だが、2013年に会社は清算され、クリーンテック投資が受けた最初の波による多数の犠牲者の1つとなった。

今になって、シリアルアントレプレナーであるJohn de Souza(ジョン・デ・ソウザ)氏とKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏が、Ample(アンプル)というスタートアップによってバッテリー交換のビジネスモデルを復活させようとしている。彼らの提唱するアプローチは、電気自動車の定着によってはるかに大きな市場が出現しつつある今、Better Placeでは決して対応できなかった問題のいくつかを解決するものだ。

Statista(スタティスタ)のデータによれば、2013年に22万台しかなかった電気自動車が、2019年には480万台を数えるまでに増加した。

Ampleはすでに、投資家から約7000万ドル(約76億1366万円)を実際に調達している。投資家には、Shell Ventures(シェル・ベンチャーズ)、スペインのエネルギー企業Repsol(レプソル)に加えて、Moore Strategic Ventures(ムーア・ストラテジック・ベンチャーズ)も名を連ねている。ムーア・ストラテジック・ベンチャーズは数十億ドル(数千億円)規模のヘッジファンドであるMoore Capital Management(ムーア・キャピタル・マネジメント)の創設者であるLouis M. Bacon(ルイ・M・ベーコン)が個人で所有するベンチャーファームだ。調達した額には、2018年に報告された3400万ドル(約36億5670万)の投資、および日本のエネルギー・金属企業であるENEOSホールディングスから最近調達した資金を含め、その後のラウンドでの投資も含まれる。

Better Placeのビジネスとの類似について、ソウザ氏は「Better Placeへの投資案件に関わったためトラウマになってしまった、という人がたくさんいましたよ」と話した。「関わっていなかった人も、その件について調べた後は決して近寄らないようにしていました」。

AmpleとBetter Placeの違いは、バッテリーパックのモジュール化と、Ampleの技術を利用する自動車メーカーとの関係がバッテリーパックのモジュール化によって変化することにある。

Ampleの共同創設者兼CEOであるハッソウナ氏は「私たちのアプローチは、バッテリーをモジュール化してからバッテリーの構造部品であるアダプタープレートを用意し、アダプタープレートとバッテリーの形状、ボルト仕様、ソフトウェアインターフェースを共通にすることです。Ampleが提供するのは、これまでと同様のバッテリーシステムですが、タイヤ交換と同じようにAmpleのバッテリーシステムは交換可能なのです」と述べた。「実質的に、私たちが提供するのはプレートであって、クルマなどには変更を加えません。今や、固定式のバッテリーシステムを搭載するか、Ampleの交換可能なバッテリープレートを搭載するかという選択肢があるのです。当社はOEMと提携し、重要なユースケースを実現するために交換可能なバッテリーな開発しています。車の側はまったく変更しなくてもAmpleのバッテリープレートは搭載できます」。

Ampleは現在、5社のOEMと共同開発を進めており、すでに9モデルの車を使ってバッテリー交換のアプローチを検証した。それらのOEM企業の1社には、Better Placeとのつながりもある。

AmpleがUber(ウーバー)とのパートナーシップについて発表したことから、同社が日産のリーフにも関わっていることは明白になっている。ただし、Ampleの創設者たちは、OEMとの関係についてコメントを控えている。

Ampleが日産とつながっていることは明らかだ。日産は2021年初めにUberとのゼロエミッション・モビリティに関する提携成立について発表している一方、AmpleによればUberはAmpleがベイエリアの数カ所に設けるロボット充電ステーションを利用する最初の企業でもある。日産との協力関係は、同社のもう1つの部門であるルノーとBetter Placeとのパートナーシップを彷彿とさせる。失敗に終わった以前のバッテリー交換スタートアップにとって、それは最大の取引になったのである。

Ampleによれば、ある施設に充電設備を設けるのに、わずか数週間しかかからないという。また、料金システムは1マイルあたりに供給されたエネルギーに対して料金を徴収するというものだ。「ガソリンより10~20%安くなる経済性を達成しています。営業初日から利益が上がります」とハッソウナ氏は述べた。

Ampleにとって、Uberが最初のステップになる。Ampleはまとまった数の車両を持つ組織を重視し、名前は非公表ながら複数の公共団体とも、車両群をAmpleのシステムに加入させるよう交渉中だ。ハッソウナ氏によれば、まだUberのドライバーだけだとはいえ、Ampleは現在までにすでに何千回ものバッテリー交換を実施しているという。

ハッソウナ氏によると、車両には従来の充電施設でも充電が可能だ。同社の請求システムでは、同社が提供したエネルギーと、他の充電口から供給されたエネルギーを区別できるのだという。

「これまでのユースケースの場合、ライドシェアでは個人ドライバーが料金を支払っていました」とソウザ氏はいう。Ampleでは、2021年これから配置される5つの車両群について、車両群の管理者や所有者が充電料金を払うようになることを期待している。

Ampleのインスピレーションの源の1つとなっているのが、ハッソウナ氏が以前One Laptop per Child(ワン・ラップトップ・パー・チャイルド)というNPOで働いていた頃の経験だ。そこでは、子どもたちの間でノートパソコンがどのように使われているのか思い込みを考え直さざるをえなかったという。

「最初はキーボードとディスプレイの問題に取り組んでいましたが、すぐに課題は子どもたちが置かれている環境にあるということを実感するようになり、インフラ構築の枠組みを開発するようになりました」とハッソウナ氏は述べた。

問題だったのは、当初ノートパソコンを供給する仕組みを設計した時点で、子どもたちの家にはノートパソコン用の電源がないことを考慮に入れていなかったことだった。そこで、バッテリー交換用の充電ユニットを開発したのだ。子どもたちはその日の授業でノートパソコンを使い、家に持ち帰り、充電が必要になればバッテリーを交換できるようになった。

「企業が所有する車両群にはこれと同じソリューションが必要です」とソウザ氏は述べた。とはいえ、個人でクルマを所有している人にもメリットがあるという。「自動車のバッテリーは徐々に劣化していくため、所有者はこのようなサービスがあれば、クルマにフレッシュなバッテリーを搭載できます。また、時がたつにつれて、バッテリーで走行可能な距離も伸びるでしょう」。

ハッソウナ氏によれば、現時点ではOEMからAmpleにバッテリー未搭載の自動車が届き、Ampleが自社の充電システムをそこに取り付けるかたちになっている。それでも、Ampleのシステムを利用する車両の数が1000台を超える中で同社が期待しているのは、Ampleから自動車メーカーにバッテリープレートを送り、メーカーサイドでAmpleが独自のバッテリーパックを取り付けるようになることだ。

Ampleが現時点で対応しているのはレベル1とレベル2の充電だけであり、同社と提携する自動車メーカーにも急速充電オプションを提供していない。おそらく、そうしたオプションを提供することは自社のビジネスの首を絞めることになり、Ampleのバッテリー交換技術の必要性を排除してしまう可能性すらあるからだろう。

現在問題となっているのは、車両への充電にかかる時間だ。高速充電でも満タンまで20~30分かかるが、この数字は技術の進歩とともに下がっていくだろう。Ampleの創設者たちは、たとえ自社のバッテリー交換技術よりも高速充電の方が優れた選択肢として進化することがあるとしても、自分たちのビジネスを電気自動車の普及を早めるための補足的な段階だとみなしている。

「10億台のクルマを動かそうとすれば、あらゆるものが必要になります。それだけたくさんのクルマを走らせる必要があるのです」とハッソウナ氏は述べた。「問題を解決するために、あらゆるソリューションが必要だと思います。バッテリー交換技術を車両群に応用する場合、必要なのは充電スピードではなく、料金面でガソリンに対抗することです。今のところ、高速充電を誰にでも利用できるようにすることは現実的ではありません。5分間でバッテリーに充電できるかどうかは問題ではないのです。それだけの電力を供給できる充電システムの構築コストが、割に合わないのです」。

Ampleの創設者2人は、充電にとどまらず、グリッド電力市場にもチャンスを見いだしている。

「電力のピークシフトは経済に組み込まれています。この点でも私たちが役に立てると思います」とソウザ氏は述べた。「これをグリッド蓄電池として使うのです。私たちは需要に応じた電気料金システムに対応できますし、グリッドに電力を供給するようにという連邦指令もありますから、エネルギーを戻すことでグリッド電力の安定に貢献できます。Ampleの充電ステーションの数はまだ大きな効果を上げられるほど多くはありませんが、2021年事業を拡大すれば、貢献できるようになるでしょう」。

ハッソウナ氏によると、同社の蓄電容量は1時間あたり数十メガワットで運用されている。

「このちょっとした蓄電池を使って、交換ステーションの発展を促進できるでしょう」とソウザ氏は述べた。「ステーションの設置に驚くほど巨額の投資は必要ありません。これまでとは別の資金調達方法も活用しながら、複数の方法でバッテリーの資金を調達できると思います」。

Ampleの共同創設者、ジョン・ソウザ氏とハレド・ハッソウナ氏(画像クレジット:Ample)

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ample電気自動車バッテリー資金調達日産Uber

画像クレジット:Ample

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

燃費規制の罰金引き上げを延期する米国の決定にEVメーカーが反発

燃費基準を達成できなかった自動車メーカーに課せられる罰金の引き上げを延期する決定に、電気自動車メーカーが反発している。

従来の自動車メーカー(その多くは、現在ゼロエミッション車に多額の投資を行っている)を代表するロビー団体は、新型コロナウイルスによる大規模な混乱に業界が直面している時期に、罰金を引き上げ れば経済的に著しい影響があると主張。しかし、自動車産業に新規参入したEVメーカーは、罰金の仕組みが自動車の排出ガスを減らし、さらに低排出ガスまたはゼロエミッション(排出ガスをまったく出さない)技術への投資を促す強力で効果的な誘引になると述べている。

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2021年1月に発表したこの決定は、罰金の引き上げを、2019年モデルイヤーの初めから、2022年モデルイヤーまで延期するとしている。Tesla(テスラ)は、この延期が同社に「継続的かつ回復不能な損害を与え」、非遵守の重要性を軽減し「不公平な競争条件」を生み出しているとして、この判決の見直しを米国第2巡回区控訴裁判所に申し立てている。

CAFE(Corporate Average Fuel Economy:企業平均燃費)の罰金は、1975年に導入されて以来、一度だけ引き上げられた。自動車メーカーの平均燃費値が基準に満たない場合、1ガロンあたりの走行可能な距離が0.1マイル (約0.04km/L)増えるごとに生じる罰金が、5ドル(約546円)から5.50ドル(約601円)に上げられたのだ。米国議会はインフレの影響を是正するため、2015年に罰金の額を14ドル(約1530円)に引き上げることに決めたが、NHTSAと裁判所はそれをいつから適用するかについて議論を重ねてきた。2020年8月の第2巡回区の判決では、2019年モデルから罰金を引き上げることで決着がついたように思われたが、自動車メーカー各社は2020年10月、罰金引き上げの延期を求める申し立てを行っていた。

CAFE規制の罰金は、ゼロエミッションの自動車メーカーにとって大きな利益となる。排ガスを出さないクルマ(つまり電気自動車)を製造している自動車メーカーはクレジットを受け取り、燃費基準を達成できなかった他の自動車メーカーにそれを売ることができるからだ。テスラは規制当局に提出した最近の報告書の中で、他の自動車メーカーにクレジットを販売することで得られる金額は、2019年の5億9400万ドル(約649億円)から2020年には15億8000万ドル(約1726億円)に増えたと述べている。罰金の引き上げを遅らせることは、クレジットの増額を見込んで経済的意思決定を行った企業に害を与えると、テスラは主張している。

新規EVメーカーのRivian(リビアン)とLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)も、CAFE罰金の引き上げ延期に反対すると、TechCrunchに語った。

Lucid Motorsの法務顧問を務めるKevin Vincent(ケビン・ビンセント)氏は、TechCrunchに次のように述べている。「クレジット市場はEV産業全体にとって非常に有益なものです。EVの製造を始めようとしているすべての企業は、新興企業であれ既存のメーカーであれ、EVを製造する際に確かなクレジットを得られることが恩恵となるからです。多くの既存メーカーは、結局自分自身でクレジットを売買することになるので、燃費を向上させている先見性のある企業には恩恵があります」。

Rivianのパブリックポリシー担当VPで規制法務責任者のJames Chen(ジェームズ・チェン)氏は、TechCrunchに送られてきた声明の中で、CAFEやその他の排出基準を後退させることは、排出削減(温室効果ガスおよび基準汚染物質)、燃料効率の向上、外国産石油への依存度の低減、技術面のリーダーシップ、およびEVの普及において、米国を後退させるだけだと述べている。また、同社は「より厳しい排出ガス基準と、基準を満たせなかった場合の罰則強化を含む、EVの普及を促進する取り組みを強く支持する」と続けている。

NHTSAは、すでに製造されたモデルイヤーに遡って罰金を適用すべきではないという理由で、引き上げを延期した。自動車メーカーはすでに製造済みの車両の燃費を向上させる手段を持たないため「抑止効果がなく、法律の遵守を促進することがないモデルイヤーにまで、修正された規則を適用するのは不適切である」とNHTSAは述べている。

自動車メーカー各社もまた、ロビー団体「Alliance for Automotive Innovation(自動車イノベーション協会)」が提出した嘆願書および補足コメントの中で、新型コロナウイルス感染流行による経済的苦難を引き合いに出している。Mercedes-Benz (メルセデス・ベンツ)は、パンデミックによりサプライチェーン、労働力、生産に混乱が生じたと、NHTSAに述べている。

「このような厳しい経済状況の中で、遡って罰金率の引き上げを適用することは非良心的であり、新型コロナウイルスの経済的影響を考慮して規制緩和を促進しようとする政権の取り組みとは相反すると我々は考えます」と同自動車メーカーは述べている。

テスラは、新型コロナウイルスの感染流行を根拠とすることは、遅延の理由を示す具体的な証拠がない限り「通用しない」と、裁判所に提出した訴状の中で主張している。

また、カリフォルニア州やニューヨーク州など16の州の司法長官や、環境保護団体のSierra Club(シエラ・クラブ)、Natural Resources Defense Council(天然資源防護協議会)も、この延期に異議を唱えている。

NHTSAの決定は訴訟番号NHTSA-2021-0001として公開されている。テスラは第2巡回区に案件番号21-593で申請している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車NHTSA地球温暖化環境問題アメリカ

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

TuSimpleのIPO申請で明らかになった中国と関係がある自動運転スタートアップのハードル

米国と中国の政府が技術的なデカップリング政策を推進する一方で、民間のテック企業は両国のリソースを活用し続けている。自律走行車の分野では、中国のスタートアップ企業、あるいは中国とのつながりが深いスタートアップ企業が米中両国で事業を事業を展開したり、投資を模索するのはよくあることだ。

しかしこれらの企業が成熟してグローバルに展開するにつれ、中国との関係がより綿密に調査されるようになってきた。

サンディエゴに本社を置く自動運転トラック企業のTuSimpleは、今週NASDAQ(NASDAQ)にIPOを申請したが、その目論見書には、中国の資金源による規制リスクが記載されていた。

関連記事:中国の自動運転トラックスタートアップTuSimpleがIPO申請

米国時間3月1日、対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the United States)は、中国最大のマイクロブログプラットフォームSina Weibo(新浪微博)を運営するSina Corporation(新浪公司)の関連会社であるSun Dreamによる投資について、TuSimpleに書面による通知を求めた。Sun DreamはTuSimple社の最大の株主であり、クラスA株式の20%を保有している。WeiboのCEOであるCharles Chao(チャールズ・チャオ)氏とCFOのBonnie Yi Zhang(ボニー・イー・ジャン)氏は、ともにTuSimple社の取締役だ。

米国政府がSun Dreamの投資が同国の国家安全保障を脅かすと判断した場合、同投資家はTuSimpleから投資撤退するダイベストメントを指示される可能性があると、その要請書は指摘している。

WeRide.ai、Pony.ai、AutoXなど、中国に拠点を置く自律走行スタートアップはカリフォルニア州に研究所を置き、米国でのテストを行うための規制当局の許可を得ているが、ほとんどの企業は米国での商業計画を明らかにしていないようだ。

一方TuSimpleは今のところ米国に焦点を当てており、同社のレベル4セミトラックのうち50台は米国で、そして20台は中国で使用されている。

中国の自動運転スタートアップのある幹部は、匿名でTechCrunchにこう語った。「中国と強い繋がりがあることが、彼らの米国に焦点を当てた戦略にとって足かせになり得ます」。

TuSimpleは、IPO前の沈黙期間中であるためコメントを差し控えた。

このような障害は、米国市場(またはその同盟国)を狙う中国系テック企業にとっては目新しいニュースではない。有名な例では、CFIUSはByteDance(バイトダンス)が10億ドルを投じて買収したMusical.lyをTikTok(ティックトック)に統合する際に、国家安全保障に関する調査を開始した。2020年12月の時点では、CFIUSはByteDanceとの間で売却完了に向け「交渉を行っている」とロイターが報じていた

自動運転関連のベンチャー企業は中国との関係を断ち切るためにダイベストメントという道もあるが、Momentaの幹部が指摘したように、グローバルな結びつきが強い業界で短期的にサプライチェーンの独立性を実現するのは、より複雑なことかもしれない。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TuSimple新規上場中国

画像クレジット:TuSimple

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

長距離トラックの中継輸送から無駄な時間をなくすBatonが11.5億円調達

トラック業界では「休止と留置」の時間が効率と利益とドライバーの敵だ。トラックヤードで積替えのために過ごす休止時間と、スケジュールがずれた荷降ろしと荷積みの間に生ずる無駄な時間は、米国のトラック業界に年間20億時間あまりの損失を与えている。

8VCのインキュベーター事業から生まれたサンフランシスコのBatonは、このトラック業界の長年の問題を解決すると彼らが信じるビジネスを開発した。社名の「バトン」は、同社のビジネスモデルを表している。Batonは、混雑した都市部の郊外にドロップゾーンのネットワークを構築しており、パートナーから24時間設備をサブリースしている。長距離トラック運転手は、これらのドロップゾーンに荷物を積んだトレーラーを止めておくことができる。Batonは、クラス8の大型トラックを所有する地元の運送企業と契約して、そのトレーラーを届け先まで運ぶ。

Batonが開発したのは、トラックとドロップゾーンと倉庫と地元のドライバーを単一のAPIで調整するソフトウェアだ。顧客はそのAPIからの自動アップデートで、荷が届いたことをリアルタイムで知ることができる。

共同創業者のAndrew Berberick(アンドリュー・バーベリック)氏は、最近のインタビューで「長距離トラック輸送には無駄な時間がとても多い」と述べている。Batonの利点は、休止と留置で失われる大量の無駄な時間をなくし、さらに都心の渋滞で過ごす路上の時間も減らす。同社によると、米国のトラックドライバーの賃金は時間制ではなく距離制であるため、ドライバーの収入増にも貢献し、炭素排出量も減らす。

Batonの顧客は、CRSTのような長距離トラック輸送の企業だ。この非上場の運送企業は、Walmart のような米国最大の小売企業に荷物を運んでいる。また、さまざまな戦略的投資家たちも、Batonに投資している。最初の330万ドル(約3億6000万円)のシード資金は不動産企業のPrologisと8VCが2019年12月に投資した。そして現在はシリーズAでさらに資金と投資家を求めているが、そのラウンドをリードしているのは8VCとMaersk Growthだ。後者はロジスティクスの大手AP Moller-Maerskのベンチャー部門となる。

結局、BatonはシリーズAで1050万ドル(約11億5000万円)を調達し、共同創業者のNate Robert(ネイト・ロバート)氏とバーベリック氏によると、今の投資前評価額は5000万ドル(約54億6000万円)だったという。このラウンドに参加した投資家はPrologis、Ryder、Lineage Logistics、Project44のCEOであるJett McCandless(ジェット・マッキャンドレス)氏、KeepTruckinのCEOであるShoaib Makani(ショアイブ・マカニ)氏、Clarendon CapitalのオペレーティングパートナーJohn Larkin(ジョン・ラーキン)氏、I.S.Gの創業者Trace Haggard(トレース・ハガード)氏、そしてCooley LLCだ。

Batonのドロップゾーンはロサンゼルスに数カ所あり、同市における増設を計画している。ロバート氏とバーベリック氏によると、今後1年もしくは1年半で、アトランタとシカゴとダラスにも開設する予定だとのこと。

Batonの短期的な狙いは、人間が運転するトラック輸送の無駄の解消だが、ロバート氏によると、同社のビジネスモデルは、自動運転トラックにも適用できる初めてのアプリケーションになりうるという。「ただし、ハイウェイだけに限るべきだ。しかもそのためには乗り換えハブの全国的なネットワークが必要となる」とロバート氏は語る。

Batonはすでにこのアイデアのパイロット事業を行っており、ロバート氏はそれを「自動運転中継(autonomous relays)」と呼んでいる。この事業には、アリゾナとカリフォルニアの州境にある某自動運転トラック企業が協力している。

8VCのパートナーで共同創業者のJake Medwell(ジェイク・メドウェル)氏は次のように語っている。「ルートによっては、自動運転でしかも最終的には電動のトラックがスタンダードになるため、Batonのハブのネットワークとソフトウェアによる調整が中核的なインフラストラクチャーになるだろう。BatonによるDXで、トラック輸送業の自動化が可能になる」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Baton資金調達運輸トラック

画像クレジット:TSG Fleet Services

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ポルシェが電気自動車Taycanをサブスクプログラムに追加

Porsche(ポルシェ)は、米国の新規顧客ベース構築を目的とする広範な拡張の一環として、同社初の電気自動車Taycanスポーツセダンをサブスクリプションと短期レンタルプログラムに加えた。

さらにPorscheは米国時間3月25日、Porsche Driveサブスクリプションとレンタルプログラムの展開を従来の4都市から9都市へと拡大したことも明らかにした。現在、アトランタ、ヒューストン、フェニックス、カリフォルニア・アーバイン、ロサンゼルス、モントレー、サンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼに住む顧客に提供されている。2021年、そして2022年にかけて引き続き米国内でサービス都市を拡大する計画だと同社は話した。

同社のプログラムはフレキシビリティがすべてだ。それには価格がともなう。まずは車両1台のサブスクまたはレンタルプランで提供されるTaycan 4Sモデルの場合、同程度の2年間のリースの月間料金よりも20%ほど高い。Taycan 4Sは月3250ドル(約35万円)、Taycan後輪駆動は月2500ドル(約27万円)だ。

短期プランでのTaycan 4Sレンタルは、1〜3日間であれば1日あたり335ドル(約3万6000円)、4日以上だと1日あたり295ドル(約3万2000円)だ。価格には税金と手数料は含まれず、サブスク利用者はアクティベーション料金595ドル(約6万5000円)を払わなければならない。Taycan後輪駆動モデルは2021年春に加わる。

目が飛び出るほどのプログラム価格にもかかわらず、拡大を約束できるほど十分人気だ。Porsche Driveサブスクは大半のマーケットで1〜2カ月先まで予約で埋まっている、と同社の広報担当はTechCrunchに語った。

関連記事:ポルシェが月額27.7万円で911に乗れるサブスクリプションプランを追加、ロサンゼルスにも進出

Porsche Cars北米の会長兼CEOであるKjell Gruner(クジェル・グリューナー)氏によると、同社はこれらのプログラムを販売やリースの代替ではなく補足するものととらえている。Porsche Driveの顧客の約80%がPorscheは初めてという人だと同氏は話した。

Porscheは2017年に初めてサブスクプログラムをテストし、以来、試行錯誤してきた。現在、3つのプランがあり、すべてPorsche Drive車両サブスクプログラムの下で提供されている。サブスクは2020年にブランド変更された。最も充実しているプランは複数車両サブスクで、顧客は月単位でさまざまな車両を取っ替え引っ替えできる。シングル車両サブスクでは延長オプション付きで1カ月、あるいは3カ月間、1つの車両にアクセスできる。そしてレンタルでは、名称が示す通り短期レンタルを提供している。これはラグジュアリーなスポーツカーやSUVに1週間ほど乗りたい、あるいは週末に使いたいという人向けだ。

これらのプランにはPorsche Driveアプリからアクセスできる。ユーザーは車両を選び、車両配達やピックアップのコンシアージュサービスをアプリを通じて設定できる。サブスクプランは車両メンテナンスや保険をカバーする一律月額料金となっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:ポルシェ電気自動車サブスクリプション

画像クレジット:Porsche

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ベルリンの高級車配車サービスBlacklaneが約28億円調達、持続可能な移動手段として事業拡大を目指す

世界的にUber(ウーバー)の規模が拡大し続ける一方で、ドイツではより小規模なオンデマンド交通機関のスタートアップ企業が資金を調達し、特定のサービス分野をターゲットとするスタートアップにチャンスが残されていることを証明した。Blacklane(ブラックレーン)は、ベルリン、ロンドン、ドバイ、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、シンガポールをはじめとする16都市で、オンデマンドの黒塗りの高級車による運転手サービスを提供しているベルリンのスタートアップで、この度2200万ユーロ(約28億円)の資金調達ラウンドを終了した。

Jaguar(ジャガー)が起ち上げてロンドンで運営している電気自動車を使った配車サービス「Havn」の株式の過半数を2月に取得したBlacklaneは、今回の資金調達を利用して、持続可能な移動への取り組みを継続的に拡大するとともに、より柔軟な乗車オプションを提供し、既存のビジネスを継続的に拡大していくという。

新型コロナウイルスとそれにともなう旅行の減少、特に狭い空間を他人と共有したいと思う人々が減ったことで、Blacklaneの2020年の月次収益は99%減少した。だが、アップラウンドの評価額で行われた今回の資金調達は、そんな1年を経て、同社がいかに成長の兆しを見せているかを示すものだ。

「世界の旅行業界とモビリティ業界は苦境に立たされており、いくつかのプレイヤーは大幅な削減、休眠、事業停止の間で苦闘しています。Blacklaneはこれを、旅行者の新たなニーズに応える機会と捉えています」と、Blacklaneの共同設立者でCEOを務めるDr. Jens Wohltorf(イェンス・ウォルトーフ博士)は声明の中で述べている。「今回の資金調達のおかげで、レイオフをすることなく、イノベーションを迅速に進めていくことができます」。

同社によると、今回の資金は、既存の投資家であるドイツの大手自動車会社Daimler(ダイムラー)、アラブ首長国連邦のALFAHIM Group(アルファヒム・グループ)、btov Partners(ビートゥブイ・パートナーズ)からのものだという。アップラウンドによるとのことだが、Blacklaneはいかなる数字も開示しておらず、評価額も明らかにしていない。これまでの支援者には、日本の大手人材派遣企業であるRecruit Holdings(リクルートホールディングス)の戦略的投資部門も含まれており、2018年には約4500万ドル(約49億円)のラウンドを行うなど、同社はこれまでに約1億ドル(約109億円)を調達している。

今回の資金調達は、新型コロナウイルスの影響から旅行・交通系スタートアップにとって非常に厳しい1年となった後に行われたものだが、Blacklane自身も2020年のパンデミック発生後に月次収益が99%減少したと述べている。

同業他社の中には、フードデリバリーや他の交通手段(自転車やスクーターなど)など、他の分野に多角化することで、より中核的な配車サービス事業を補うことができた企業もある。その一方で、配車サービスは公共交通機関よりも安全な移動手段とも捉えられている。しかし、Blacklaneは、自分たちを「すべての人々が利用する乗り物」とは位置づけておらず、その中心的なユースケースは、高級ハイヤーや空港への送迎(これも死に絶えていた)であった。そのため、人々の移動が止まると、Blacklaneのビジネスは急落した。

パンデミックの前には、集中的なビジネスモデルで利益を上げることができそうだったことを考えると、Blacklaneにとっては特に悪いタイミングだった(2020年の財務状況が明らかになるにはもうしばらく時間がかかるが、同社から発表された直近の決算では、2018年に約1800万ドルつまり20億円近い純損失を計上している)。

しかし、Blacklaneがアップラウンドで資金を調達できた理由は、別の側面にある。

2020年の夏、交通機関や旅行会社が少しずつ回復の兆しを見せ始めたとき、同様に回復の兆しを見せたBlacklaneは、それと同時に多様化に向けて一歩を踏み出した。

2021年3月初めには、22都市で、注文までのリードタイムを30分に短縮した「ショーファー・ハイヤリング」というオンデマンドサービスを追加した(従来のサービスはもっと事前に予約が必要だった)。また、収益の基盤となっていた空港送迎がまだほとんど戻ってきていないことから、短距離サービスの料金体系を競争力を高めるように変更した。

さらに、Blacklaneは、ジャガーが設立した電気自動車サービス「Havn」の株式の過半数を非公開で取得。すでに同社が運用していたTesla(テスラ)の車両と合わせて、より持続可能な移動手段への移行を先導している。「世界的な旅行規制は、我々にとって、安全で持続可能な旅行に対する可能性をリセットするための一度きりのチャンスです」と、ウォルトーフ博士は声明の中で述べている。「Blacklaneは責任を持って回復し、人と地球の両方に配慮しながら成長を続けていきます」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Blacklaneドイツ資金調達電気自動車配車サービス

画像クレジット:Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電動キックスクーターシェアのLimeがアプリ不要の乗車機能を展開、予約料金も撤廃

Lime(ライム)はさらに多くの利用者を引きつけようと、電動キックスクーターをアプリのダウンロードなしに借りることができるなど、いくつかの新機能を展開する。

マイクロモビリティ企業の同社は米国時間3月24日、新規ユーザーにとっての障壁をなくしてスクーターへのアクセシビリティを向上させるためにデザインされた一連の機能を発表した。新機能には最長10分間の無料スクーター予約、最寄りのスクーターのレコメンデーション、ダークモードでのアプリ閲覧オプションなどが含まれる。

アプリ不要のエクスペリエンスはすでに同社の130のマーケットの半分超で提供されており、デベロッパーが使用状況をモニターし、分析している。この機能は電動スクーターでのみ利用できる。同社デベロッパーによると、無料の車両予約とレコメンデーションの機能は、同社の全マーケットで電動スクーターと電動自転車を借りるときに使うことができる。

「アプリやアプリに関連する機能を構築するために当社はライダーのフィードバックを使います」とシニアプロダクトマネジャーのVijay Murali(ヴィジャイ・ムラリ)氏はTechCrunchに話した。アプリストアのレビュー、機能あるいは機能の欠如についての顧客からのクレーム、顧客調査、世界中のライダーとの研究セッションなどを参考にしてデベロッパーが新機能に取り組む際の方向性を決める。最新のアップデートについて、同社のチームは顧客が求めている3つの項目で目標を設定した、とムラリ氏は話した。

「まず1つは、多くのユーザーがこの新たな交通手段を試す用意ができているものの、アプリをダウンロードしたりコミットしたりしたくないということでした」と同氏は述べた。「2つめは、当社の車両を頻繁に利用している人が持つ価格に関する懸念。そして3つめが特に大都市で最も近くにある車両を簡単に見つけられるようにすることでした」。

現在、顧客がアプリを立ち上げると、最寄りの車両へと案内され、無料で予約するオプションが提供される。これについて、ムラリ氏はスクーターに飛び乗るプロセスを合理化し、乗車を毎日の習慣にするのをサポートする、と語った。

アプリなしでの乗車機能は、マイクロモビリティの利用が初めてという人、アプリをダウンロードする容量がスマホに残っていない、あるいは高い国際データプランを使っている人向けだ。

この機能を使うには、顧客はカメラアプリでQRコードをスキャンする必要があり、そうすることでAppleのApp ClipsあるいはAndroidのInstant App機能につながる。すると顧客は乗車を確認し、Apple PayかGoogle Payを使って乗車を開始できる。テクニカル的にいうと、ユーザーは実際にはミニアプリをダウンロードしている。フルバージョンのアプリが100MBなのに対して、ミニバージョンはたったの10MBで、スマホに留まるのは8時間のみだ。平均的なライダーにとって、その作業はファイルやアプリをスマホで開けるかのようだ。アプリをダウンロードし、アカウントを作って決済方法を設定して使用方法を読むのには5分ほどかかるが、ミニアプリは30秒しかかからず、ずっと早い。

この機能は結果的にLimeアプリのダウンロードを少なくし、そのためユーザーデータも減少する。しかし現時点では販促により関心があると同社は話す。

「比較的高いダウンロードへの変換率も目の当たりにしています」と別のシニアプロダクトマネジャーZach Kahn(ザック・カーン)氏は述べた。「手間、そして決済方法や車両を選択する必要性を抑制すると、コンバージョンが増し、最初の乗車でそれなりの割合を占めます」。

同氏は、アプリなしの乗車を経由してLimeを利用するようになった人のコンバージョンレートを明らかにしなかった。ムラリ氏は、Limeがコストを排除した時にテストを行っている都市の多くのライダーが車両の予約をし始めたと語った。以前は予約の浸透率は低く、3%ほどだった。

「すべては、社会の異なるセグメントの人々、特にサービス提供が不十分のエリアの人々がLimeの車両にアクセスする際の障壁を少なくするためです」とムラリ氏は話した。「サービス浸透が不十分のコミュニティでは、スクーターに乗車するのにいくらかかるかというのが真っ先にきます。ですので、そうした不要な予約料金を排除することは、人々をもっと乗ろうという気にさせます」。

Uber(ウーバー)とAlphabet(アルファベット)の出資を受けているLimeはブロンクスで展開されるニューヨーク市のパイロット電動スクータープログラムを獲得しようとしている企業の1社だ。ブロンクスは多くの低所得コミュニティを抱え、公共交通手段が乏しいところだ。各企業はそれぞれにユニークなセールスポイントを持っている。例えばSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)はファーストクラスの安全機能とジオフェンスコンプライアンスの強化を選んでいる。しかしLimeの優位点は純然たるサイズと新機能をすばやく実行できる能力にあるとムラリ氏は話す。

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「当社はライダーファーストというだけではなく、どうやってそれを実行するかを正確に理解していて、そうした機能や改善がアプリで起こるようにします」とムラリ氏は述べた。「それが他社と差別化を図っている点です。どれくらいのスケールと早さで、どれほど重要な進展を遂げているか。たとえば当社はApp Clipsというかたちの新しいテックを持っていて、最初にそれをテストしてマーケットに持ってきて、そしていまあらゆるマーケットで展開中です」。

声明の中で、Lime はアプリレスの乗車を提供する初のマイクロモビリティ企業だと主張した。しかしAppleはSpinからのスクーターを借りてApp Clipsを宣伝したようだ。SpinもまたニューヨークのRFP(提案依頼書)に応じた。同社の広報担当は、同社が将来App Clipsエクスペリエンスを電動キックスクーターに持ってくるためにAppleと協業していると話した。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Lime電動キックスクーター

画像クレジット:Lime

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国の自動運転トラックスタートアップTuSimpleがIPO申請

TuSimple(ツー・シンプル)は多様な戦略的投資家集団が支援する自動運転トラックの会社で、Volkswagen AGの大型トラック部門であるThe Traton Group、Navistar,Goodyear、および運送会社のU.S. Xpressが出資している。米国時間3月23日、同社は上場申請書を提出した。

TuSimpleは、最近特に電気自動車や自動運転車のスタートアップでトレンドとなっている特別買収目的会社(SPAC)との合併ではなく、伝統的方法で上場しようとしている。

提出された書類によると、発行する株数と売出し価格の範囲はまだ決まっていない。TuSimpleは普通株をNASDAQ Global Select Marketにティッカーシンボル「TSP」で登録するつもりだ。Morgan Stanley、Citigroup、およびJ.P. Morganが引受会社になる。

3月23日に提出された同社のS-1書類によると、TuSimpleは償還可能型転換優先株の販売および株主からの借入を事業の主な費用に充ててきた。同社の主たる資金源は3億1080万ドル(約337億5000万円)の現金および現金相当物で、150万ドル(約1億6000万円)の制限つき預金は含まれない。現金および現金相当物は、主に銀行口座にある預金および預金証明書からなる。

S-1書類によると、TuSimpleの2020年営業損失は1億7790万ドル(約193億3000万円)で、前年の8480万ドル(約92億2000万円)から2倍以上なった。2018年の営業損失は4500万ドル(約48億9000万円)だったという。同社の2020年12月31日時点の累積赤字は4億520万ドル(約440億3000万円)だった。

普通株保有者に起因する2020年の純損失は1億9880万ドル(約216億1000万円)で、前年の1億4500万ドル(約157億6000万円)より増えた。

売上は2020年に180万ドル(約2億円)へと増加した。前年は71万ドル(約8000万円)だった。

2015年に設立されたTuSimpleは、今やAurora、Embark、Kodiak、Waymoが名を連ねる小さくても活気のある業界における自動運転トラックスタートアップのはしりだった。TuSimpleの創業チームおよび初期の出資者であるSinaとComposite Capitalは中国出身だが、多くの事業は米国内で運営されており、グローバル本社はサンディエゴにある。TuSimpleはエンジニアリングセンターとトラック基地をアリゾナ州ツーソンに置き、無人運転を支援する施設を最近テキサスに作った。なお無人運転車者は非常時用ドライバーが常時同乗している。TuSimpleは北京と上海でも操業している。

事業拠点とパートナーが米国主体であるにも関わらず、同社株式の大部分は中国投資家が保有している、とS-1目論見書に書かれている。クラスA株式の主要株主はSun Dream Inc.(20%)、Composite Capital Master Fund(7.28%)、およびNavistar(6%)など。現在NavistarはVolkswagen GroupのTheTraton Groupが所有している。TuSimpleの共同ファウンダーであるMo Chen(モウ・チェン)氏とXiaodi Hou(シャオディ・ホウ)氏は、クラスA株式をそれぞれ9.1%と8.5%持っている。2人はクラスB株式を50%ずつ保有している。

Sun Dreamを最終的に支配しているCharles Chao(チャールズ・チャオ)氏は取締役の1人だが、おそらく最もよく知られているのはSinaの会長としてだろう。SinaはWeiboの親会社だ。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TuSimple新規上場自動運転トラック

画像クレジット:TuSimple

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラがEV販売でビットコイン決済を米国で受け付け開始、2021年中に他国でも

Tesla(テスラ)は2021年初めにBitcoin(ビットコイン)を大量に購入し、大きく報道された。2021年2月初め、当時の価格で約15億ドル(約1633億円)分を購入した。その際、同社は取引を報告する米証券取引委員会への文書の中で、ゆくゆくは車両を購入する顧客から決済として仮想通貨を受け付けるかもしれないと記していた。そして今、Elon Musk(イーロン・マスク)氏はそれを現実のものとした、と話している。少なくとも米国の顧客はビットコイン決済を選ぶことができ、同社は支払われたビットコインを「ホードル(売らずに持っておく)」する計画だという。

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ビットコイン決済を受け付けるインフラに関しては、同社はサードパーティーのネットワークやウォレットに頼っていない。「内部のオープンソフトウェアだけを使い、直接ビットコインのノードを操作する」とマスク氏はTwitterで述べている。そして顧客がビットコインで支払う際は不換通貨に換金せず、仮想通貨のまま残すとも語った。

Teslaがビットコインの購入を明らかにした2021年2月、傍観者たちは現金残高転換への同社の新たなアプローチを称えたり、かなりの価格変動をともなう資産への連結のために同社の計画を批判したりした。また多くの人が、カーボンフットプリントを考えたとき、ビットコインのマイニングコストがTeslaの全体の使命と相容れないと指摘した。コメンテーターたちは今日、電気自動車のために送電網に負荷をかける仮想通貨を受け付けるという皮肉を指摘し、こうした懸念を繰り返した。

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ビットコイン決済のプロセスがどのように機能するかについては、Teslaはよくある質問コーナーで詳細を説明している。顧客は自身のビットコインウォレットから決済手続きを開始する。クルマの価値はまだ米ドルで設定されており、現在のレートに基づいて車両のデポジットの正確な額を入力する。Teslaはさらに、返金の場合、米ドルに連動する価値が購入の時と返金の時では変わり得ることに注意するようにも書いている。

マスク氏はまた、このビットコイン決済を「2021年後半」までに米国外にも拡大する計画だと述べた。マーケットによっては規制に関する手続きをともなうかもしれないが、明らかにマスク氏は取り組む価値があると考えている。一方で3月24日朝に明らかになったこのニュースを受けてビットコインはわずかに上昇している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Tesla仮想通貨Bitcoin

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

QuantumScapeが株式を売却し全固体電池の生産資金調達、市場価値を高める

逆さ合併により上場企業となったわずか数カ月後、QuantumScape(クオンタムスケープ)は、全固体電池のパイロット生産ライン拡張の資金を得るために株式を発行した。

QuantumScapeが規制当局向けの提出書類に記した内容によれば、1300万株の売却(引受人がオプションを行使すれば195万株が上乗せされる)による純利益は、1株あたりの公募価格を59.34ドルと想定した場合、8億9500万ドル(約97兆円)になると思われる。価格は米国時間3月24日に市場が閉じてから確定するとBloombergは伝えている。この資金はQS-0と呼ばれる大規模な予備パイロット生産ラインの建設と、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)との合弁事業の一環として作られる大型生産工場QS-1の建設の一部に使われる。

公募を開始してから数時間は投資家たちの反応は思わしくなく、価格は開始時点から13パーセント以上も下落した。この市場の反応は、公募の突然の発表に動揺してのことと考えられる。ちょうど6カ月前、QuantumScapeは特別買収目的会社(SPAC)のKensington Capital Acquisition Corp(ケンジントン・キャピタル・アクイジション)との合併に合意した。当時QuantumScapeは、合併によって7億ドル(約760億円)以上を調達できると話していたが、これには株式の私募(PIPE)5億ドル(約540億円)が含まれている。この資金調達は、Fidelity Management & Research CompanyとJanus Transactionという機関投資会社に支えられていた。

QuantumScapeは、この数年間、電気自動車の航続距離を飛躍的に伸ばし、高速充電を可能にする次世代技術である全固体電池の開発を密かに行っていた。同社は早くから、Kleiner PerkinsやKhosla Venturesといった高名なベンチャー投資企業の注目と資金を集めていた。Volkswagenがこの絵に乗ってきたのが2012年のことだった。同自動車メーカーはQuantumScapeに、2020年の2億ドル(220億円)を含む合計3億ドル(約325億円)の投資を行っている。この追加資金により、両社の共同開発は加速したと、Volkswagen Group Components(フォルクスワーゲン・グループ・コンポーネンツ)の会長Thomas Schmall(トーマス・シュモール)氏は当時話していた。

VolkswagenとQuantumScapeの提携の核心は、その合弁事業にある。それは2018年に発表された、全固定電池技術の開発と、開発後の商用規模での生産を目指すという内容だ。両社は、全固体電池の産業レベルでの生産ができるパイロットプラントの建設計画を公表した。そしてQuantumScapeは、Volkswagenから2億ドルの投資を受けたわずか4カ月後の2020年9月、Kensington Capital Acquisition Corpとの合併に合意したことを発表した。

QuantumScapeは2021年、カリフォルニアの予備パイロットプラントを20万平方フィート(約1万8600平方メートル)拡張し、生産能力を高め計画があることを発表している。同社の計画がうまくいけば、QS-0と呼ばれる予備パイロット生産ラインは、公表されている2倍以上の生産能力を持つことになる。QS-0の目的は、QuantumScapeが全固体電池の開発、テスト、システム調整、大量生産に向けた生産工程の確立のために使う予定の大量なサンプルを作ることにあると同社は話している。

予備パイロットラインは、Volkswagenとその他の自動車OEMメーカー、さらには他業種の潜在顧客向けに、十分な量の試作品を生産することにもなっている。QuantumScapeは、2021年後半にはQS-0の長期リースを確実にし、2023年には試作品の生産開始を予定している。

QuantumScapeはさらに、Volkswagenとの合弁事業で21GWhのバッテリー生産ラインを構築する計画も立てている。

「この公募による収益は、QS-0の拡張版の建設、QS-0の運営、QS-1 Expansion(エクスパンション)プラント建設の合弁事業経費、合弁事業で想定される負債の補てん、運転資本および一般の企業目的の自己資本割り当てへの、十分な資金供給を目的とするする」と同社は提出書類に記している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:QuantumScape全固体電池フォルクスワーゲン

画像クレジット:QuantumScape

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

中国自動車メーカーGeelyがTeslaら対抗でラグジュアリーなEVブランド「Zeekr」を立ち上げ

中国の自動車メーカーであるGeely Automobile Holdings(吉利汽車集団)はTesla(テスラ)や他の中国企業によって独占されてきたラグジュアリーな電気自動車(EV)マーケットのシェアを獲得しようと、プレミアムなEVの新ブランドを立ち上げる。

「Zeekr」という新ブランドの車両は親会社のZhejiang Geely Holding Group(浙江吉利控股集団)によって生産される。2021年第3四半期に出荷が始まる見込みだ。

最初にロイターが報じ、そしてGeelyが現地時間3月23日に認めたZeekrの立上げは、同社が中国でTeslaと勝負しようとしていることを示している。Teslaは中国で成功を収めており、直近の四半期決算によると2019年に29億ドル(約3150億円)だった中国での売上高は2020年に倍以上に増え、66億ドル(約7170億円)だった。しかし世界最大のEVマーケットである中国での競争相手はTeslaだけではない。

Zeekrはラグジュアリーなクルマを展開している中国のスタートアップであるLi AutoやNIOと争わなければならない。Geelyは2020年に販売台数が最も多かった中国ブランドで、4四半期連続で首位を維持したが、3月23日に公開された決算発表では2020年の純利益は32%減少した。

Zeekrブランドの車両はオープンソースのEVテクノロジーSustainable Experience Architecture(SEA)を使ってGeely Holdingが製造する。SEAでの航続距離は435マイル(約700km)でスマートコネクティビティオプションも提供すると同社は述べた。Geelyはこのアーキテクチャを傘下の9つのブランドで展開し、他のメーカーに販売する計画を持っている(GeelyはDaimler AGの少数株主であり、Volvo Carsの親会社だ)。

Geely Holdingの創業者Eric Li(エリック・リ)氏は、他の自動車メーカーがこのアーキテクチャーにアクセスできるようにするつもりだ、と声明で述べた。

SEAプラットフォームは、自らをEV生産とテクノロジーの主要ソースと位置づけるGeelyの計画の1つのピースにすぎない。GeelyとVolvo Carsは2021年2月、合併する計画を打ち切ったが、その代わり全ブランドや他のメーカーのEV向けの次世代のハードウェアとソフトウェアを開発する独立した会社を立ち上げると発表した。2社は新たなコラボの下でバッテリーと電動モーターを共同で調達する。

Geely Holdingはまた他メーカーのための生産でも大きな役割を引き受ける準備をしている。Apple(アップル)のメインサプライヤーである中国企業Foxconn Technology Group(フォックスコン・テクノロジー・グループ)と合弁会社を立ち上げる計画は、自動車メーカーの委託生産を狙っている。中国のテック大手Baidu(百度)とEVを製造するための別の会社で提携し、ここでもSEAプラットフォームを活用するとGeelyは述べた。Baiduは自動運転などインテリジェントな運転テクノロジーを開発していて、これは新会社に貢献することになるかもしれないと話した。

ZeekrはGeelyとGeely Holdingが共同所有し、持株比率はGeelyが51%、Geely Holdingが49%で、共同で20億元(約333億円)投資する。

関連記事:フォックスコンと中国Geelyが提携、次のテスラを目指し自動車メーカー向けに電気自動車、自動運転車、シェアリング車を開発

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タグ:Geely電気自動車Zeekr中国

画像クレジット:GREG BAKER/AFP/Getty Images / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWと米電気会社がEV充電スマート化のパイロット事業を拡充

BMW Group(ビーエムダブリューグループ)とカリフォルニアの公益事業会社Pacific Gas & Electric(パシフィックガス&エレクトリック)は、電気自動車(EV)が送電網の再生可能エネルギーの統合をいかにサポートできるかをテストして学習するためのパイロット事業を次の段階に進める。

第3段階に入るChargeForwardプログラムは、BMWのEVあるいはプラグインハイブリッドEVに乗っているPG&E顧客向けに展開されている。電気需要が低く再生可能エネルギーの供給が豊富なときに「スマートに充電できる」よう、約3000人のドライバーが任意でサインアップできる。ドライバーはプログラムに参加することで、サインアップ時の150ドル(約1万6000円)と年250ドル(約2万7000円)のインセンティブをもらえる。

このプログラムは、電気会社と自動車メーカーの間で展開されるこれまでで最も長期の提携の1つだ。第1段階と第2段階の参加者はそれぞれ100人と400人で、最新の第3段階では規模をかなり拡大している。内燃機関エンジン販売の漸減に備えている2つの産業にとってこれは賢明な同盟だ。電気会社にとって、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが徐々に増えている送電網に対する顧客需要の大幅増のプランニングを意味する。

画像クレジット:BMW

「誰かが土曜日の午前9時に家でクルマにプラグをつなぎ、その日の午後4時にクルマで出発すると仮定しましょう」とChargeForwardを監督しているBMWのエネルギーサービスマネジャーAdam Langton(アダム・ラングトン)氏は話し、次のように続けた。「ChargeForwardのソフトウェアシステムは車両と通信し、車両のバッテリーが半分以上充電されていて、フル充電するのに2時間必要だと判断します。そしてシステムはその人の家の電気料金のレート、再生可能エネルギーの可用性、周辺の送電網の混雑を評価します。その日、送電網の混雑はなく、太陽光エネルギーが午後に豊富になるとします。するとChargeForwardシステムは車両に午後1時に充電を開始して、午後3時までに充電を完了するよう指示します。そして出発前にバッテリーはフル充電されます」。

電力需要は、太陽光エネルギーのリソースがオフラインになるちょうどのとき、人々が仕事から帰宅する夜の早い時間にピークを迎える「ダックカーブ」型になる傾向がある。そして人々は夜の間にEVを充電しがちだ。この需要に対応するために天然ガスのような化石燃料のリソースが増える。

その結果はどうなるか?温室効果ガスが出る。MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らがEnvironmental Science and Technologyに発表した研究では、カリフォルニアの夜間のEV充電は、日中の充電より74%多く温室効果ガスを排出していることが示された(送電網によって違いはある。風が強い中西部やテキサス州では、風は夜強く吹く傾向にあるために夜間のEV充電は最も理に適っている)。

ChargePointプログラムは日中利用できるたっぷりとある再生可能リソースのメリットを生かし、その過程での温室効果ガス排出を削減するのが狙いだ。参加する顧客はBMWのChargeForwardモバイルアプリで充電の好みと出発時間を入力する。BMWはまた、顧客のロケーションに基づく再生可能エネルギーの可用性など、送電網についてリアルタイムの情報を受け取る。この情報を理想的な充電時間帯の算出に使い、結果を自動的に車両に送る。顧客はアプリを通じていつでも充電シフトのオプトアウトができる。

カリフォルニア州は野心的なクリーンエネルギー目標を追求していることで知られている。そこには、2045年までに100%再生可能で二酸化炭素排出ゼロの電気を達成するという画期的な目標を法律に成文化するというものが含まれる。また、2030年までにEVを500万台にするという目標も掲げている。同州では交通が最大の温室効果ガス排出源であることを考えれば、そうした目標の設定は驚きではない。

BMWとPG&Eは、EVが送電網に電気を供給できるようにする車両から送電網へのテクノロジーを開発するためにラボで協業もする。そうした双方向の給電機能では、非常事態の場合や、分散する小型発電所が送電網のバランスを終日とれるようにするのに、EVが大きなバックアップ発電機として使われるようになるかもしれない。

ChargeForwardプログラムの第3段階は2021年4月中旬に始まり、2023年3月まで続く。

カテゴリー:モビリティ
タグ:BMW電気自動車再生可能エネルギー

画像クレジット:Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

2025年までにすべての自動運転車に二酸化炭素排出量ゼロを義務づけるカリフォルニア州の法案

自動運転車を電動化する期限を設定する最初の州が、カリフォルニア州となる可能性がある。

2025年までにすべての自動運転車に二酸化炭素排出量ゼロを義務づける法案が、2021年2月中旬のカリフォルニア州議会にひっそりと提出された。提案されたSB 500法案は、Dave Min(デイブ・ミン)上院議員によって提出され、Union of Concerned Scientists(憂慮する科学者同盟、UCS)が賛同した。この法案は、配車サービス、配送、トラック輸送などのかたちで新たに登場しようとしている自動運転車業界に対して、直接的な影響を与えることが考えられる。

この修正案は、カリフォルニア州で取り組んでいる二酸化炭素排出を削減するさまざまな目標と一致しており、可決されれば自動車に関連する州の法律に加えられる。現在、州の法律では、Clean Vehicle Rebate Project(クリーン自動車補助金プロジェクト)やCharge Ahead California Initiative(電動化促進カリフォルニアイニシアチブ)など、ゼロエミッション車を奨励するプログラムが施行されている。

Gavin Newsom(ギャビン・ニューサム)知事は、今後販売される新車はすべて、2035年までに二酸化炭素排出量ゼロにする意向であると述べている。ただし、商用車は除外される。この法案が否決されれば、この意向が適用されることはない。提案された法案は初期段階にあるため、却下される可能性も十分ある。しかし、急成長する自動運転車業界や、カリフォルニアで自動運転技術を開発および商業化しようとする企業に対して、この法案が一石を投じている。また、電気自動車だけを使用する企業を後押しすることにもなり得る。

「気候変動に積極的に向き合っているカリフォルニアでは、重要な基準を定めてきました。私の提案したSB 500はこのような動きと一致しており、自動運転車が広く普及する前の段階でゼロエミッションを義務づけるための重要な一歩となります」とミン氏はTechCrunchに述べた。

法案の提案者たちは、今後開発されるであろう交通手段にこれまでの技術を活用することを望んでおらず、二酸化炭素を削減するうえで自動運転車が役立つ可能性と役立たない可能性を指摘している。カリフォルニア州では、他の州に先駆けて電気自動車を採用したり、二酸化炭素排出に関連するその他の政策を推進したりしているため、この法案の成否が国全体に波紋を広げる可能性もある。

「配車サービスや配送などの分野で自動運転車が登場するのは間違いないと思います。だからこそ、そのような分野で使用されるのが電気自動車であるというは、非常に重要です。平均的なドライバーは、走行距離が年に1万8000から2万1000kmになりますが、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)のフルタイムドライバーの走行距離は、4万8000kmを超えます」とUCSの輸送担当シニアアナリスト、Elizabeth Irvin(エリザベス・アービン)氏は述べた。

戦略

カリフォルニアの温室効果ガス排出量の半分近くが、交通手段から発生している。スモッグがかかるロサンゼルスの夕暮れはとてもユニークだが、自動運転車の業界に規制を課さないなら、商用車が自動運転となり、その動力源は化石燃料になるのは目に見えていると、法案の支持者たちは考えている。

自動運転車が普及することで楽な生活に慣れると、車に乗る人が大幅に増える結果として、排出量も劇的に増加する可能性があることを示す研究があることを、UCSがこの法案を支持する声明の中で指摘している。2040年時点で自動運転車がワシントンD.C.の都市圏の輸送システムに及ぼす影響を調べた研究によると、自動運転車によって車の走行量が2040年の基準に比べて66パーセントも増加することがわかった。

アービン氏がTechCrunchに語ったところによると、カリフォルニアですべての自動運転車に二酸化炭素排出量ゼロを義務づける政策が本格的に導入される前に、その政策を推進する戦略に関して、ソフトバンクが支援する自動配送スタートアップのNuro(ニューロ)や、General Motor(ゼネラルモーターズ)の自動運転子会社のCruise(クルーズ)などのさまざまな利害関係者との話し合いがUCSと重ねられてきた。

「業界のクリーンエネルギーへの移行を推進する取り組みを支持しています。このような取り組みはニューロが掲げる目標や価値と一致しています。自動運転車が自動車業界の礎となることを楽しみにしており、この取り組みが環境にも健康にもやさしい未来につながると考えています」とニューロの広報担当者は述べた。

画像クレジット:Nuro

2020年にOrigin(オリジン)という無人運転車を発表したCruiseも、同じ方向に向かっている。オリジンは、カーシェアリング向けに設計されており、GMが開発した全電動プラットフォームが動力源で、ホンダとの何年にもわたるパートナシップにより生み出された。Cruiseの自動運転車オリジンは、サンフランシスコでのテストが開始されていない。バッテリーのプラットフォームがGMの試験場でテスト段階であるが、自動運転車を本格展開するという熱い思いに変わりはない。テストの初期段階では、全電動のChevrolet Bolt(シボレー・ボルト)を使用する。これは、サンフランシスコの配車サービスや一部の配送サービスで展開される可能性がある。

関連記事:GMとホンダが協業開発した配車サービス用電動無人運転車が登場

「この業界は発足して間もないので、誰でも電気自動車をオプションに入れられます。既存の車両を改造するということではありません。最初に電気自動車を選択すると、現状を維持し続けて後で変更を強いられるということがありません」とCruiseの政府業務担当副社長、Rob Grant(ロブ・グラント)氏はTechCrunchに語った。

ハイブリッド自動車と電気自動車

自動運転車が電気自動車であるとは限らない。Ford Fusion(フォード・フュージョン)のハイブリッドやChrysler Pacifica(クライスラー・パシフィカ)のプラグインハイブリッドミニバンは、Argo AI(アルゴAI)、Aurora(オーロラ)、Waymo(ウェイモ)、Voyage(ボヤージュ)などの自動運転車開発企業に人気のある選択肢だ。

テクノロジープラットフォーム企業のアルゴAIでは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)やフォードなどの大手自動車メーカーと共同で自動運転システムを開発している。フォルクスワーゲンのID.Buzz(アイディーバズ)は、同社初の全電動自動運転車になる予定だ。フォードの手法はもう少し慎重で、ハイブリッドのフォード・フュージョンをベースに開発している。

「バッテリーを原動力とする電気自動車に最終的には移行したいと考えていますが、実行可能で収益性が高いビジネスモデルを開発するための適正なバランスも必要です。結果として、手始めにハイブリッド車を開発することになりました」とFord Autonomous Vehicles(フォードオートノマスビークルズ)のチーフエンジニア、John Davis(ジョン・デービス)氏は述べた。

デービス氏が概略した全自動の電気自動車を開発する際の課題には、車載技術で電気を使用することにともなう航続距離の減少、充電にともなう車の使用率の低下、バッテリーの劣化などがある。

「テスト結果よると、バッテリーを原動力とする電気自動車では、自動運転システムの計算処理に航続距離の50パーセント以上が消費されています。加えて、配車サービスでは乗客が快適に乗車できるように、エアコンやエンターテインメントのシステムが必要だと思われます。バッテリーが化学的に向上しており、コスト面でも改善が続いているので、このような問題に前向きに取り組んでいます」とデービス氏は述べた。

 DPAの画像(画像クレジット:Andrej Sokolow/Getty Images)

Waymoはロボタクシーのテスト完了後に、Phoenix(フェニックス)郊外でエリアを調整しながらサービスを開始した。カリフォルニアでのサービス提供に関して、Waymoからの公式な発表はないが、サービスを提供する方針であることを何年にもわたる活動が示している。カリフォルニア州Mountain View(マウンテンビュー)に本拠を置く同社は、サンフランシスコとその周辺で車のテストを周期的に実施しており、電気自動車のJaguar I-Pace(ジャガー・I-PACE)の試験も進められている。Waymoは、ニューサム氏が発出した直近の行政命令を支持すると述べたが、ミン氏の法案で言及されている文言を支持するまでには至らなかった。

「カリフォルニアで将来的にすべての自動車を電動化するという包括的な取り組みである、ニューサム知事が発出した直近の行政命令N-79-20で概略されている目標を、完全自動運転の技術を市場に初めて展開する企業として強く支持します。Waymoには、配車サービスからトラック輸送、地域の配送にわたる事業分野とパートナーシップがあります。電気自動車に関するカリフォルニアの政策が、さまざまな問題や政策の影響を受ける業界に適合したものとなることを願っています。現時点でこの法案は初期段階です。尽力されているミン上院議員と取り組んでいけることを楽しみにしています」とWaymoの広報担当者はTechCrunchに語った。

法案に詳しい業界情報筋の指摘によれば、現在の文言は単語を置き換えただけのかなり簡素な内容で、この会期で大きな進展を見る見込みはなさそうだ。同じ情報筋は賛同者や起草者を批判し、インフラの整備や小型車と大型車の区別に関する計画の規定が滞っていると述べた。自動運転が最初に普及する車種は、貨物を運ぶトラックであると予想されるが、自動運転トラックの開発はカリフォルニアではなく、アリゾナやテキサスなど規制が緩い州で進められている。自動運転の電動トレーラーも開発されてはいるが、テストされているのはディーゼル車がほとんどだ。このため、カリフォルニアで開発を進める企業は、大型車の適用除外を設けるように上院議員に直訴する可能性もある。

「プロセスの進展とともに法案の詳細が決定していくかどうかに注目していますが、この法案の目的が電動化の義務づけとなることが、UCSの願いです」とアービン氏は述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:カリフォルニア二酸化炭素電気自動車ハイブリッドカー

画像クレジット:Cruise

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

AIで電動キックスクーターを安全性をリアルタイムでモニターするSuperpedestrianが米国内で事業拡大

自己診断ソフトウェアを搭載した電動キックスクーターを製造しているスタートアップSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)は、今後2週間で新たに10都市へと大幅に事業を拡大するのに備えてプロダクトをアップグレードしている。

Superpedestrianは安全性の問題をどのように処理しているかという点でマイクロモビリティ分野における新進気鋭のプレイヤーとだと考えられている。同社は車両に搭載されるAIを開発した。このAIはスクーターの安全問題をリアルタイムでモニターして正す。そうしたアップグレードを提供するコードネーム「Briggs」という次世代のオペレーティングシステムはLINK電動スクーターの世界中の車両にアップロードされる。アップグレードにはジオフェンス能力や電池寿命の改善が含まれ、安全や信頼性を保証できるパートナーを探している自治体にとってSuperpedestrianをより魅力的なものにしている。

「スクーターマーケットは短い期間に多くの点でB2CからB2G(business-to-government)にシフトしました」とハーバード大学ケネディ政治大学院タウブマン公共政策センターの客員研究員であるDavid Zipper(デイビッド・ジッパー)氏は述べた。「自治体はスクーター事業者に認める許可の件数を減らす傾向にあります。これは、減りつつある利用可能な認可の1つを獲得しようと、スクーター事業者にこれまで以上にプレッシャーをかけています。テクノロジーが栄枯盛衰する中で、企業が自らをどう位置付けるかということが重要です」。

Superpedestrianは、ニューヨーク市などの都市との提携を獲得しようと争っている勝ち目の薄そうな電動スクーター企業の1社だ。ニューヨーク市はブロンクスでの電動スクーターパイロットプログラムの詳細を間もなく発表する。BirdやLime、Voiといった大手マイクロモビリティ企業も応札した。

Superpedestrianは現在、シアトル、オークランド、サンノゼ、サンディエゴといった米国の都市、そしてマドリッドやローマなどの欧州の都市で事業を展開している。

「自治体は、当社の100%のコンプライアンスに好感を抱いています」とSuperpedestrianのコミュニケーション担当EMEAディレクターRoss Ringham(ロス・リングハム)氏はTechCrunchに語った。「当社はこれまでに一度もマーケットから批判されたり、一時停止措置を受けたり、追放されたりしたことはありません。いいサービスを提供するために当局と協力することが重要だと確信しています」。

市当局は現在、スクーターが歩道に散乱しているという苦情を最も憂慮している。なので、歩道を空けたり、壊れたスクーターをすぐに診断し、誰かを派遣して回収させることはSuperpedestrianにとってアピールポイントとなる、とジッパー氏は話した。

LINKスクーターは Vehicle Intelligent Safety (VIS)システムで駆動している。車両1000台のヘルスチェックを乗車中ずっと行うために、VISはAIと73のセンサー、5つのマイクロプロセッサを組み合わせている。ソフトウェアは常に自己診断と自己修正をし、ブレーキ問題、電池温度の不均衡、内部ワイヤーの切断、透水といったものがないか目を光らせている。

「シートベルトがかつてクルマにとってそうだったように、VISはスクーターの安全性において大きな変化です。2013年以来、400万マイル(約643万km)超のテストとサービスを洗練しました」とリングハム氏は話した。「その結果、当社の車両のリコールや製造欠陥は世界中でゼロです」。

新たなアップデートではジオフェンスリアクションが22%早くなり、オンボードジオフェンスのキャパシティが3倍に、そしてジオフェンスの精度が7倍アップしている。これは、スクーターが乗車禁止ゾーンをこれまで以上に認識でき、速度を落としたり特定のエリアでの乗車や駐車を禁止したりすることでライダーコンプライアンスを改善することを意味する。

LINKのシステムのスピードと精度は、こうしたコンピューテーションがスクーターそのものでリアルタイムに行われている結果だ。LINKのシステムはジオフェンス関連の問題が感知されてからわずか0.7秒、最初の感知場所から4.6mで反応する。他のスクーター会社はジオフェンスを計算して遂行するのにクラウドコンピューティングに頼る傾向にある。これだと歩行者エリアや交通量の多いエリアでライダーがスピードを出して走行するのをやめさせるには遅すぎるかもしれない。

「当社の競合相手は通常、既製品を購入してホワイトラベルのアプリを使います」とリングハム氏は話した。「当社はそうしたやり方で安全性を他社に任せたりはしていません。つまり、当社のオペレーションや世界中の車両からの情報は、絶えず改善するために当社のエンジニアリングチームによって使われます」。

Bird、Atom、Joyrideといった企業は、独立したオペレーターが自前のライドシェアを立ち上げたり、車両を管理したりできるホワイトラベルのOSを提供しているが、LINKでみられるような安全性に特化したテックを提供している同業他社は多くない。

創業者でCEOのAssaf Biderman(アサフ・バイダーマン)氏によると、パフォーマンスを高めるためにエンジニアリングのチームがアップデートの度に詳細なログを引き出すため、スクーターは時間を追うごとにスマートになる。LINKのオンボードソフトウェアから集められる集合化・匿名化されたデータは、この新たな交通手段をサポートするためにより良いインフラをデザインできるよう市当局とも共有される。

「もし提携する当局が新たなアイデアを持っていれば、VISのおかげで当社は簡単にそれを追加できます」とバイダーマン氏は声明で述べた。「これはライダーのために車両を常に改善し、歩行者保護を強化し、都市に堅牢な安全性能を提供します。当局は市民に何も要求しないでしょう」。

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タグ:Superpedestrian電動キックスクーター

画像クレジット:Superpedestrian

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

新興EV企業のRivianが2023年末までに全米に1万基以上の充電器を設置すると発表

Amazon(アマゾン)やCox Automotive(コックス・オートモーティブ)、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)などが出資するEVスタートアップのRivian(リビアン)は、2023年末までに1万台以上の充電器を設置することを計画している。この充電ネットワークには2つの目的がある。1つは高速道路沿いに急速充電器を設置し、同社の電気自動車にすばやく電力を供給すること。そしてもう1つは、都市部から離れた公園や登山口などに隣接した場所にレベル2の充電器を設置し、同社のEVオーナーが冒険やレジャーを楽しんでいる間に、クルマのバッテリーを充電しておけるようにすることだ。

関連記事:RivianがEVピックアップトラック生産開始に向け2753億円調達

Rivian Adventure Network(リビアン・アドベンチャー・ネットワーク)と呼ばれる充電ネットワークは、600カ所以上の場所に3500基以上のDC急速充電器が設置され、Rivianの電気自動車の所有者のみが利用できるようになると、同社は米国時間3月18日に発表した。各場所には複数の充電器が備わり、高速道路や幹線道路沿いを中心に、カフェやショップの側などにも設置されると、同社は公式ブログで述べている。

さらにRivianは、米国とカナダの全域にレベル2のAC充電器も設置しており、こちらは2023年中に1万基を超える予定だという。この「Rivian Waypoint(リビアン・ウェイポイント)」充電器は出力11.5kWで、Rivianのピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」の航続距離を1時間の充電で最大25マイル(約40km)伸ばすことができる。このWaypoint充電器は、Rivianの顧客が通りそうな場所に戦略的に設置される。ショッピングセンター、レストラン、ホテル、キャンプ場、公園などで見かけることになるだろう。このWaypoint充電器は一般にも開放され、J1772プラグを持つ全ブランドの電気自動車が利用できる。まずはコロラド州にある42の州立公園すべてに各2基ずつ、2021年7月より設置が始まると、同社は述べている。

Rivianの創業者でCEOを務めるRJ Scaringe(RJスカーリンジ)氏は、2020年末のTechCrunchのインタビューで、充電、バッテリー、自動運転などについて幅広く語った際に、この2層目の充電ネットワークを追加するという決定は、Rivianの顧客層に直接アピールするものであり、同社のブランドや製品に対する信頼を築くために必要だと述べていた。

関連記事:EVメーカーRivianが独自の充電ネットワークをアクティブなレジャースポットにも展開する理由

RivianのアプローチはTesla(テスラ)と似ているが、いくつか明確な違いがある。テスラは現在、2万基以上のSupercharger(スーパーチャージャー)と呼ばれる急速充電器からなる独自の充電ネットワークを構築しており、その多くは、高速道路や交通量の多い市街地に隣接して設置されている。そして低出力な普通充電器のデスティネーションチャージャーは、高級ホテルやレストランなど、同社のEVオーナーが訪れる可能性のあるスポットに設置されている。

RivianのWaypoint充電器は、テスラのデスティネーションチャージャーと、設置場所の種類は異なるものの、目的は同じだ。しかし、テスラの充電器とは異なり、RivianのWaypoint充電器は一般に公開されており、電気自動車用コネクタの北米規格であるJ1772プラグを使用している。

今回の発表で、Rivianは急速充電器の設置場所を示す地図の画像を公開した。この地図はインタラクティブではないため、正確な位置を知ることは難しいが、ユタ州のグランドキャニオン国立公園やザイオン国立公園の近くに急速充電器が設置されていることが分かる。

画像クレジット:Rivian(スクリーンショット)

Rivian車のオーナーは、車載ナビゲーションや付属のアプリを使って、WaypointやRivian専用急速充電器の位置を確認できる。ドライバーはこのアプリや車内のスクリーンで、充電状況を確認することもできる。

Rivianの車両には、CCS(Combined Charging System、通称「コンボ」)という急速充電用の直流コネクタが採用されている。CCSは近年、欧州や北米で普及しているオープンな国際規格だ。そのため、RivianのトラックやSUVは、アダプターを使用することなく、サードパーティ製のCCS対応充電ステーションを利用することが可能だ。

Rivianは、その充電ネットワーク全体が100%再生可能エネルギーで駆動されることを明示した。これは、ソーラーパネルや蓄電システムを使うという意味ではない。TechCrunchの取材で、Rivianはソーラーパネルや風力発電は設置しないことを明らかにした。代わりに、100%再生可能エネルギーという目標は、電力会社とのパートナーシップによって達成される。Rivianによれば、可能な限り風力や太陽光を利用し、グリーン電力証書によって他の電力源と相殺するという。

これほど大規模なネットワークを構築するには資本が必要だが、Rivianはその調達には苦労していない。2021年1月に同社は、T. Rowe Price Associates Inc(ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ・インク)が顧問を務めるファンドや口座を中心としたラウンドで26億5000万ドル(約2885億円)の資金を調達した。この投資ラウンドに詳しい人物の話によると、Fidelity Management and Research Company(フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニー)や、AmazonのClimate Pledge Fund(気候変動対策に関する誓約のための基金)、Cootue(クーティー)、D1 Capital Partners(ディーワン・キャピタル・パートナーズ)などの既存および新規の投資家も参加し、Rivianの評価額は276億ドル(約3兆円)に達したという。

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タグ:Rivian充電ステーション電気自動車

画像クレジット:Rivian

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードが世界的なチップ不足を理由に特定の部品を使わずにF-150トラックを生産

Ford(フォード)は世界的なチップ不足と寒波による部品不足の二重苦により、一部の電子モジュールを搭載していないピックアップトラック「 Ford F-150」とクロスオーバー「Edge」を製造すると発表した。

フォードによるとこれらの車両は製造されてから数週間保管され、モジュールが入手可能になり、包括的な品質チェックが完了した時点でディーラーに出荷されるという。またチップ関連部品の不足により、ルイビル組立工場の2021年3月18日と19日のシフトをキャンセルすると発表した。同社によるとEscapeとLincoln Corsairの生産は3月22日にショートシフトで再開され、3月23日にフル生産を再開する予定だ。

世界的なチップ不足が長引く中、特定の部品を使わずに自動車を製造することを決定したのはフォードだけではない。GMは3月第3週の初め、一部のピックアップトラックに燃料管理モジュールを搭載しないで生産すると発表したが、これはこれらの車両が最高の燃費性能を達成することを妨げることになる。

フォードとGMはこれまで、チップ不足が2021年の業績に影響を与えるとのガイダンスを発表しており、2021年前半まで半導体不足シナリオが続けば、チップ不足によるコストは下半期の一部の生産補填を差し引いても10億〜25億ドル(約1100億円〜2700億円)の間になる可能性があるとしている。GMは2021年2月「世界的なチップ不足は2021年の生産、収益、キャッシュフローに短期的な影響を及ぼします」 との見通しを示した。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:塚本直樹 / Twitter

アマゾンがRivian製の配達EVテストをサンフランシスコでも開始

Amazon(アマゾン)は電気貨物車両を使った顧客への配達をサンフランシスコにも拡大する。同社は2021年に計16都市でRivian(リビアン)製EVを導入する予定であり、その中でベイエリアは2番目の実施となった。

テストを行う2番目の都市としてサンフランシスコを選んだいくつかの理由の1つは、その特徴ある道路と天候だと同社は説明した。Rivianとの提携でデザイン・製造されたAmazonのEVはフル充電で最大150マイル(約241km)走行可能だ。

同社はClimate Pledgeの一環として、2021年2月初めにロサンゼルスで電気貨物車両のテストを開始した。Climate Pledgeにはカスタム電気配達車両10万台の購入が含まれている。同社は2020年10月に初めてこの車両を披露し、2022年までに10万台展開することを目指していると述べた。

ベイエリアでの配達はまずはカリフォルニア州リッチモンドにある同社のステーションから始まる。同ステーションはAmazonが新型EV車両に合うように再設計している多くのステーションの1つだ。サンフランシスコ中心部に立地する新しい配達ステーションへの直近の2億ドル(約218億円)の投資は、同市での配達を大幅に増加させるという同社の意図を示している。

「すでに目にしてきたことから、これは最速の現代商業電動化プログラムの1つであり、非常に誇りに思っています」と同社のグローバル車両・プロダクト担当ディレクターであるRoss Rachey(ロス・レイチェイ)氏は声明で述べた。

街中での短距離配達向け車両の電動化の理論を理解している企業はAmazonだけではない。DHLは展開する車両の20%がすでにゼロエミッションのタイプだと話し、UPSはEV1万台を発注済みだ。そしてFedExは全車両を2040年までにEVに換えることを約束している。

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タグ:AmazonRivian電気自動車配送トラック

画像クレジット:Amazon

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lucid Motorsが中古EV用バッテリーをエネルギー貯蔵システムに再利用へ

Lucid Motors(ルシード・モータース)はラグジュアリーな電気自動車(EV)のバッテリーを2つの用途で使えるようデザインした。商業用顧客と住宅用顧客向けのエネルギー貯蔵システムをすでに実験している同社は電気自動車から出る中古バッテリーを再利用する方法にも目を向けている。

Lucidの初のEVであるラグジュアリーなセダンLucid Airは2021年下半期まで発売されないため、Lucidが数多くの中古バッテリーの処理に取り組まなければならないのは何年も先だ。それでも同社は、まだ展開されていないエネルギー貯蔵事業で中古バッテリーにどのように第2の役割を与えるかすでに計画している。

Lucidによると、同社の車両を動かすバッテリーモジュールはエネルギー貯蔵で使われる予定のものとまったく同じであるため「第2の役割」に適している。同社はすでに300kWhの設置型バッテリー貯蔵システムのプロトタイプをエンジニアリングラボに建設した、と同社の主任エンジニアでプロダクト担当上級副社長のEric Bach(エリック・バッハ)氏はTechCrunchに語った。そのシステムのバッテリーは新しいものだが、それらを中古バッテリーと交換することを妨げるような「テクニカル上の制限」はない、と同氏は述べた。同社のCEO兼CTOのPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏は以前、Tesla(テスラ)が新しいバッテリーを使っているようなエネルギー貯蔵システムをゆくゆくは構築する計画だと述べていた一方、同社がプロダクト向けの第2の役割への応用について言及したのは今回が初めてだ。

バッテリーは通常、一度EVから取り出されると充電容量は約70%となる。つまり、もう10年ほど活用できる可能性があることを意味する。General Motors(ゼネラルモーターズ)やFord Motor(フォード・モーター)、Audi AG(アウディAG)などの自動車メーカーは、残っている価値を引き出す目的で第2の活用パイロットプロジェクトをすでに開始した。

バッハ氏はLucid MotorsのEVで使われるバッテリーを、活用できる期間の終わりに達した後に専門のサービスセンターを通じて、あるいは顧客が車両を新しいものに交換するときに回収すると説明した。バッテリーが戻ってくると、バッテリーパックからモジュールを回収して品質チェックを行う。同社の車両はそれぞれバッテリーパックからモジュールレベルに至るまでのデータを提供するビルトインセンサーを搭載していて、各モジュールの状態を判断するのに使えるとバッハ氏は話した。物理的テストを終えると、モジュールは出荷される製品に配置されることになる。

貯蔵システムには部品が追加される。家庭向けシステムではDCからACへのインバーター、冷却システム、安全スイッチが含まれる。実際のバッテリーはLucidのプロダクトと一貫性がある。

Lucidは再利用のバッテリーを家庭と産業での応用にどのように振り分けるか決めていない。

「個人的には産業向け応用でのモジュール活用がより適していて、簡単だと思います。鍵となるメトリックはkWhあたりの価格ですから」とバッハ氏は話した。

Lucidの車両がクルマの解体業者に持ち込まれた場合、バッテリーパックをLucidに返す解体業者にインセンティブを与えるかもしれない、とバッハ氏は説明した。たとえそうならなくても、EVバッテリーの原材料の価格は上昇し続けているため、解体業者がバッテリーパックを企業やリサイクル業者に販売する事業を展開することは大いにあり得る。

まだプロダクトがなく、販売も少量から中量が予想される現時点で、Lucidは材料リサイクルそのものには着手していない。当面、同社はリサイクル事業を韓国のLG化学のようなバッテリーサプライヤーに委ねる。

「長期的には我々はまだスタート地点に立ったばかりです。数年のうちにバッテリー製造と、該当するエネルギー貯蔵デバイスを作るのに必要なすべてのもののフルバリューチェーンを計画することが想像できます」とバッハ氏は話した。「ですので、将来はボリュームが増えるにつれ必ず理に適います。より多くのサプライチェーンを含めて原材料を回収する持続可能な方法にすることにチャレンジする必要があります」。

LucidはLucid Airにピンポイントでフォーカスしており、家庭用バッテリーシステムを一般の人が目にするのは数年先かもしれないとバッハ氏は述べた。それまでLucid Airには双方向充電能力が搭載される。これにより顧客はクルマから家に給電できる。

「本質的にそれは今後展開される初の家庭バッテリーシステムです」と同氏は話した。

人的に、そして資金的にどれくらいのリソースをLucidがエネルギー貯蔵事業に注ごうとしているかは不透明だ。そうした詳細は同社の正式上場後まで乏しいままだろう。同社は2021年3月に特別買収目的会社であるChurchill Capital IV Corp.との合併を通じて上場会社となることで合意したと発表した。白紙小切手会社と電気自動車スタートアップとのこの手の取引としては最大とされている。

関連記事:EVのLucid MotorsがSPAC合併で上場へ、2021年下期に北米でLucid Airの販売開始

サウジアラビアの政府系投資ファンドが引き続き最大株主となる合併会社の株式価値は117億5000万ドル(約1兆2827億円)となる。PIPE(上場企業の私募増資)取引の価格は1株あたり15ドル(約1640円)で、仮の株式価値は240億ドル(約2兆6170億円)が見込まれる。

調達する資金はLucid AirとSUVのマーケット展開、ならびにアリゾナ州にある工場の拡張に使われる、とローリンソン氏は以前TechCrunchに語った。同社は生産能力を年36万5000台とするために今後数年にわたり3段階に分けて工場を拡張する計画だ。7億ドル(約764億円)かけた第1段階は2020年末に完了し、年間生産能力は3万台だ。

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タグ:Lucid MotorsLucid Air電気自動車バッテリー

画像クレジット:Lucid Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動キックボードのUnagiが新たに米6都市でサブスクサービスを展開

ポータブルでデザイン重視の電動キックボードを手がけるスタートアップUnagi(ウナギ)は調達した1050万ドル(約11億4000万円)を元にサブスクサービスを米国の6都市で新規展開する。

Beats Musicの元CEOであるDavid Hyman(デビッド・ハイマン)氏とMogの共同創業者が2018年に立ち上げたUnagiは米国時間3月17日、サブスクサービスをオースティン、マイアミ、ナッシュビル、フェニックス、サンフランシスコ、シアトルで開始すると明らかにした。同社はまたニューヨークとロサンゼルスの首都圏でもサービスを拡大する予定で、ここにはニューヨーク市の5区、ロングアイランド、ウェストチェスター、北部ニュージャージ、ウェストサイド、南東L.A.、サンフェルナンド・バレー、オレンジ郡などが含まれる。

これらのエリアは潜在消費者が計3000万人のマーケットだ。シリーズAのラウンドはEcosystem Integrity Fundがリードし、Menlo Ventures、Broadway Angels、Gaingelsなどが参加した。

今回のサービス拡大の6カ月前にUnagiは「All Access」サブスクサービスをニューヨーク市とロサンゼルスで試験していた

関連記事:電動キックボードのUnagiがニューヨーク市とロサンゼルス市でサブスクを提供開始

同社はサブスクサービスを提供する唯一の電動キックボード企業ではないかもしれない。同社は急速に知られるようになり、米国で最大のリーチをもつサービスになりつつある。Bird(バード)も2019年に似たようなサービスを立ち上げたが、その後の展開はなかった。

数年前にTechCrunchが「キックボードのiPhone」と名づけたUnagiはデュアルモーター搭載のModel Oneという電動キックボードを月49ドル(約5300円)で提供している。電動キックボードを所有するのに990ドル(約10万8000円)も払いたくない広い階層の人々がにアクセスしやすくするのが狙いだ。ハイマン氏によると、スリークなデザインで頑丈、そして驚くほど軽量な電動キックボードの販売は35歳以上の男性を主なターゲットにしている。一方で、Unagiのサブスクサービスはすてきなものは好きだがコミットメントは好まないというミレニアル世代のヤッピーたちに重きを置いている。

「当社のマーケットは純粋に都市部であり、企業理念は『もしあなたが当社の電動キックボードを持って3階上れなかったら、それは我々がしたいものではない』というものです」とハイマン氏はTechCrunchに語った。「所有以外のアクセスを好み、責任やメンテナンスの懸念を抱えたくないという消費者の世代があると思います」。

これはキックボードで育った世代と同じであり、彼らは路上で見かける電動キックボードの乗り方を直感的に知っている。部分的にはこれが電動キックボードが近年大成功した理由だと同氏は述べた。

グローバルの電動キックボードマーケットは今後10年は年8%ほどで成長し、2030年までに420億ドル(約4兆5720億円)に達すると予想されている。Unagiとカリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールが共同で行った調査に基づいて、シェアリングは電動キックボードマーケットの3分の1を占め、残りが所有とサブスクとなるとハイマン氏は推測している。サブスクモデルは、利用可能な電動キックボードを探したり、見つけても最後のライダーがそこら中にウイルスを咳で撒き散らしたのではないかと心配したりする必要がないため、シェリングモデルよりも魅力的だと同氏は話した。

Unagiのセールスポイントは、前もって価格が決められていること、そしていつでもサブスクをキャンセルできるため、心配いらずのエクスペリエンスとなることだ。月極料金にはメンテナンスや紛失・盗難・ダメージの保険が含まれている。ただ、いくつかの決まりもある。最低3カ月の利用、そしてセットアップ料金50ドル(約5400円)を払わなければならない。

ハイマン氏はサブスクモデルが成長するには少し時間がかかるが、成長すればUnagiの稼ぎ頭になると考えている、と話した。同氏によると、パイロット事業を展開した都市でサブスク電動キックボードの需要があり、2019年から2020年にかけてUnagiは450%成長した。しかし具体的な数字の公開は拒否した。

もしワクチン接種した人々が通常の通勤スタイルに戻ったら、電動キックボード熱は最終的に落ち着くかという質問に対して、同氏は「当社のプロダクトの主要なユースケースは通勤であるため、実際にはパンデミックで当社は打撃を受けたと考えています」と話した。

「都市では人々の乗車の大半は3マイル(約4.8km)以下です。そしてポータブルな電動キックボードを持っていることで何でもできます。持ち運びはかなり簡単で、施錠や盗難、あるいはアパートや地下鉄への持ち込みの心配をする必要はありません」と語った。

電動キックボードの重さは26ポンド(約11.8kg)で、畳んだときにどちらの車輪ででもバランスを取ることができる。ライダーの体重、そして1つのモーターで走行するかあるいは2つのモーターで他のライドシェア電動キックボードを追い抜くかにもよるが、フル充電で8〜15マイル(約12.8〜24km)走行可能だ。

サブスクモデルは電動キックボード販売とうまく噛み合っている。というのも、再利用できるからだ。サブスク利用者は新しい電動キックボードの提供は保証されず、前に誰かが所有していたものが回ってきがちだ。Unagiはハイエンドな材料での製造を約束しているため、定期的なメンテナンスで3〜5年、電動キックボードを利用できると同社は話す。

最終的にApple MusicになったMOGの音楽サブスクのようなサブスクビジネスモデルを作った経歴をもっているハイマン氏は、電動キックボードというかたちでハードウェア・アズ・ア・サービスを提供する個人的な理由がある。クルマより自転車が一般的なアムステルダムに同氏は3年間暮らしたことがある。

「通勤が3マイル以下の人がどれだけいるかを考えると、街にこれほど多くのクルマがあるという事実はばかげたものです。私たちは、街からクルマを追い出すことに夢中になっています」と同氏はいう。

【更新】以前の記事でUnagiは3カ月のサブスクリプションが必要とされていたが、同社はその要件を廃止することを決定した。

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タグ:Unagiアメリカ資金調達電動キックボード

画像クレジット:Unagi

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWが同社初の完全電気駆動セダン「i4」を公開、航続距離は最長590km

BMWは、2025年までに25車種の電動モデルを、そのラインナップに揃える計画だ。2021年は完全電気自動車(内燃エンジンを搭載せずバッテリーとモーターのみで走行する自動車)のSUV「iX」4ドアセダンの「i4」を発売し、その方向に向けていくつかステップを踏み出すことになっている。このドイツ車メーカーは現地時間3月17日、まずは同社初の完全電動セダンとなるi4の外観を公開し、併せてその予定されているスペックを少しだけ明らかにした。

関連記事:BMWが次世代電気自動車のフラグシップ「BMW iX」を発表

i4には何種類かのグレードが用意されるというが、最上級モデルの最高出力は390kW(530ps)で、停止状態から100km/hの速度まで約4秒で加速するという。

一度の充電で走行可能な航続距離は、欧州のWLTPモードで最長590kmまたは米国環境保護庁基準で最長300マイル(約482.8km)となることを、BMWは約束している。ロサンゼルスからラスベガスまで十分行ける距離だ。この航続距離はiXと同等だが、パワーはi4の方がiXをやや上回る。Tesla(テスラ)や他の競合モデルと比べたら短いが、同じ完全電気自動車のPorsche Taycan(ポルシェ・タイカン)やAudi e-tron(アウディ e-tron)を凌ぐ可能性は高い(両モデルともWLTPモードで500km以下)。

関連記事:アウディが同社初の電動スポーツセダン「e-tron GT」を発表、欧州では約1270万円から

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「スポーティな外観、クラス最高のドライビング・ダイナミクス、そしてゼロ・ローカル・エミッションを備えたBMW i4は、真のBMWです。BMWブランドの心臓部は、今や電気のみで鼓動するようになりました」と、BMW AGの取締役会メンバーであり、顧客・ブランド・販売部門を担当するPieter Nota(ピーテル・ノタ)氏は述べている。

現時点でi4の価格や詳細なスペックはわかっていない。発売は2021年後半の予定なので、夏頃にはもっと詳しい情報が明らかになるだろう。

「iXは目的に合わせて作られたクルマであり、壮観な、完全に新しいBMW Xシリーズの製品です」と、BMWの開発責任者であるFrank Weber(フランク・ウェーバー)氏は、今週初めのプレスイベントで語っていた。「しかし、人々が待ち望んでいるのは、完全な電気自動車のスポーツ・セダンをBMWが発売することです。【略】そしてi4には、BMW製の本物のスポーティセダンを、完全な電気駆動で実現するために必要なものが、すべて揃っています」。

実際、BMW初の完全電気自動車だった少々風変わりな「i3」とは異なり、i4は標準的な4ドアセダンだ(i3とは異なり、本物の後部座席用ドアを備えている)。これは、既存の4シリーズの精神を受け継ぐBMWのスポーティでなおかつ車内が広々とした電気自動車を求めている顧客に歓迎されるだろう。

BMWはiDrive(アイドライブ)オペレーティングシステムのバージョン8も発表した。この次世代のインフォテインメント・システムには、2枚の曲面ディスプレイを組み合わせた新しいダッシュボードレイアウトとビジュアルデザインが採用される。新型iDriveは、i4とiXに搭載されてデビューする予定だ。

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タグ:BMW電気自動車

画像クレジット:BMW

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)