フランスでヘイトコンテンツの24時間以内の削除をプラットフォームに強制する法案が可決

フランスの下院議会は、論争の的となっていた法案を可決した。法案はソーシャルネットワークとオンラインプラットフォームにおけるヘイトスピーチに対抗するものだ。

画像クレジット:Stéphanede Sakutin / AF / Getty Images

私が既に2019年に説明したように、これでオンラインプラットフォームは、フラグが立てられた反社会的なコンテンツを24時間以内に削除しなければならなくなる。さもなければ、この法律に違反したとして毎回多額の罰金を支払う必要が生じる。

反社会的なコンテンツとは、どんなものを指すのだろうか? 基本的にオフラインの世界で違反行為あるいは犯罪と見なされるものは、今やオンラインプラットフォームでも、反社会的なコンテンツと見なされることになる。特に殺害予告、差別、ホロコーストの否定といったものは、まっ先に挙げることができる。

最も極端なカテゴリーとして、テロリストによるコンテンツや児童ポルノについては、オンラインプラットフォームは1時間以内に対応しなければならない。

オンラインのヘイトスピーチが手に負えないものになってきている一方で、多くの人は、オンラインプラットフォームによるコンテンツの検閲が、あまりにも性急なのではないかと懸念を抱いている。そうした企業は罰金が科されるリスクを冒したくないので、法律に違反していないコンテンツでも、確信が持てないために削除する可能性がある。

基本的にオンラインプラットフォームは、自分自身を規制する必要がある。その上で政府は、彼らが適切な仕事をしているかどうかをチェックする。「銀行に対する規制機関と同じようなものです。彼らは、銀行が効率的なシステムを施設していることを確認し、そうしたシステムの運営を監査します。これについても同じように考えるべきでしょう」と、フランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オー)氏は2019年のインタビューで私に述べていた。

罰金には複数のレベルがある。最初は数十万ユーロ(数千万円)だが、悪質なケースの場合には、上限としてその会社の全世界の年間収益の4%に達する可能性もある。視聴覚最高評議会(CSA、Superior Council of the Audiovisual)が、こうした案件を担当する規制当局となる。

ドイツは既に同様の規制を採択しており、欧州連合レベルでの議論も続いている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

新型コロナは世界をどう変えるか? Parliaでならそれがわかる

Is Greta Thunberg a hypocrite?(グレタ・トゥーンベリは偽善者か?)」とググると、何千もの結果が得られる。それは、インターネットの上では「Q&A」というモデルがほとんど壊れていることの証明だ。かつてはYahoo AnswersやQuoraが、Web 2.0の「Read/Write Web(リード/ライトウェブ)」の若き希望の星ともてはやされたが、今は大量の検索結果のカオスがあるだけだ。率直にいって、Q&Aを革新しようと試みた人は多かった(「Mahalo」を覚えている人はいるかな?)けど、成果は乏しく、多くがゾンビサイトになってしまった。

でもよく見ると、何かに気づくだろう。Parliaというサイトが、「グレタ・トゥーンベリは偽善者か」の検索で3位に登場する。しかしParliaは、2019年10月にステルスでローンチしたばかりだ。ではなぜ、検索で上位にヒットするのか?

このQ&A分野の新人は最近、Bloomberg BetaやTiny VCなどからのシードラウンドを完了した。資金の額は公表されていない。

創業者で元ジャーナリストのTuri Munthe(トゥリ・ムンテ)氏によると、Parliaは「オピニオンの百科事典」を目指している。

ムンテ氏は「Parliaは一種のWiki(参加型共同編集サイト)であり、ニュースや現在行われている議論に対するすべての視点を整理し紹介する。神は存在するか? や、メッシは本当にロナルドよりも優れているのか? といった永遠の疑問も扱う。サイトの構築の仕方とその目標は、今日の社会の分極化や暴言、情報の引きこもり蛸壺化を解決することだ」と語っている。

Q&Aサイトの多くは、X対Yという対立項が登場して理性的な議論を進めるが、Parlia(議会、討議場)はすべての意見を整理しながら載せる。地球平面説も排除しない。規範的であるよりも記述的(ありのまま)を目指し、QuoraよりもWikiに近い。前者は、自分をエキスパートとして売り込もうとする人が多い。

Parliaのサイトはすでに活気がある。今の時代にとても合ってるような気がする。

現在、上位の話題は「How to stay healthy during quarantine at home?(家に隔離されていて健康を維持する方法)」や「What are the effects of spending long periods in coronavirus isolation?(新型コロナウイルスで長期間孤立したときの影響)」、「Will the coronavirus crisis bring society together?(コロナウイルスの危機は社会をまとめるだろうか?)」などだ。ユーザーは議論を静観したり、関心を示さなかったり反論したりとさまざまだ。

「2016年に、政治的コンセンサスの時代は終わったと気づいた。英国のEU離脱をめぐって大量の言葉が氾濫したが、離脱に賛成し反対する理由は、どちらもせいぜい片手で数えられるぐらいしかない」とムンテ氏はいう。

Brexitのような国を分かつような大きな問題でも、それをめぐってごく少数の有限の数の議論しかないため、あらゆることについてそうだろうと彼は考えた。だから例えば銃規制や避妊の是非、新型コロナウイルスへの対応、AIの脅威などなどの問題でも、すべての議論をマップに落とせるはずだ。

しかし、何のためにそんなことをするのだろうか? もちろんそれ自体が良いことだし、人びとが自分以外の人びとの考えを理解し、世界中の意見の分布や構成も理解するだろう。

ビジネスモデルには事欠かない。広告を載せられるしスポンサーもつく、会員制や寄付もありうる。また、データそのものが売れる。やり方が正しければ、文字通り意見や考え方の世界地図が得られるだろう。

ムンテ氏は、ユーザーはすべてGoogle検索からやってくると考えている。そしてParliaの「メディアとしてチャンスの総量は月間ページビュー換算で1億にはなる」という。

共同創業者のJ. Paul Neeley(ジェイ・ ポール・ニーリー)氏は英王立美術院の元教授で、ユニリーバのサービスデザイナーや英国内閣府も経験している。ムンテ氏自身は、メディアのエコシステムにおけるシステム的な問題をしばらく研究していた。最初はレバノンで小さな雑誌を創業し、2003年にはイラク戦争を報道、その後ネット上の写真代理店であるDemotixを創業してエグジット、次いでメディアにフォーカスするVC North Base Mediaを立ち上げた。

商業化すると、偏向が生じる恐れもある。しかしムンテ氏は「政党とは絶対に仕事をしないし、独自の倫理顧問委員会を設ける。しかし多様な意見のマップを知ることは、マーケティングリサーチや、さまざまな研究機関の役に立つだろう」という。

というわけで、Parliaのサイトでは「How coronavirus will change the world(新型コロナウイルスで世界がどう変わるか)」ということもわかるのだ。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナ接触者追跡アプリの拡大流用に警鐘、「中央集中型」支持の英国でも

英国政府による新型コロナウイルス接触者追跡アプリの開発計画について、その透明性と拡大流用に関する懸念を表明する公開書簡に、英国のコンピュータセキュリティ専門家とプライバシー専門家が多数署名した。

2020年4月初めに世界中の300名近くの学者が署名した同様の公開書簡に続き、177名の学者の署名を集めたこの書簡は、接触者追跡テクノロジーの使用に対する慎重な姿勢を促し、接触者追跡アプリを導入する政府には、プライバシーを保護する技術やシステムを使用するよう呼びかけた。

英国の学者らはこの書簡の中で、3月初旬からデジタル接触者追跡アプリの開発を行ってきたNHSX(英国国民保険サービスのデジタル戦略を担当する組織)に言及して「公衆衛生におけるデジタルソリューションの有効性は、関係する全分野の専門家による深い分析を経て判断するべきであり、関係するリスクが妥当であると言うだけの価値があることを証明する十分な根拠が必要だ」と述べた。

また「報道によると、NHSXは感染者とその接触者全員の非匿名IDを中央集中型データベースに記録するアプローチを検討している。このようなシステムはいずれ(本来の目的から逸脱した拡大流用により)監視システムとして利用される可能性がある」とも述べている。

NHSXのCEOであるMatthew Gould(マシュー・グールド)氏は米国時間4月28日、英国議会の科学技術委員会に出席して証拠を提出していた。グールド氏は、間もなく導入されるアプリに採用される「中央集中型手法」は限定的なものであり、プライバシー保護にとって分散型は安全、中央集中型は危険という「二分思考は誤っている」と主張して、NHSXのアプローチを弁護した。

データの中央集中型管理が必要であるとNHSXが考える理由を説明するために、いくつかのシナリオを紹介した。しかし英国の学者らによる今回の書簡は「公衆衛生当局がどの程度のデータを必要とするかという点については、グループ間で意見が真っ向から対立するのを見てきた」として、中央集中型管理が必要であるという主張に疑問を投げかけた。

「使用目的の達成に必要な最小限のデータのみを収集する、という通常のデータ保護原則を適用するべきだと考える。このテクノロジーにはプライバシー侵害につながる特性や関係するリスクがあることを考えると、アプリを信頼してもらうには、このアプローチが単に手っ取り早い方法だとか『あれば便利だ』とかいうのではなく、本当に必要な手段であることを示す証拠を、公衆衛生当局が公式に提示しなければならない」とこの書簡は続いている。

欧州ではここ数週間、政府主導の新型コロナウイルス接触者追跡アプリのアーキテクチャ選択をめぐって激しい議論が行われている。分散型アプローチを支持する国もあれば、中央集中型アプローチを支持する国もある。一部の国ではAppleに対して、ライバル企業のAndroidメーカーであるGoogleと政府が共同で開発している新型コロナウイルス接触者追跡アプリとの互換性を持つクロスプラットフォームAPIを採用するよう圧力をかけている

欧州で開発が進められている政府主導の接触者追跡アプリのほとんどは、Bluetooth近接通信を使用して感染リスクを計算するように設計されている。スマートフォンのユーザーがお互いに接近すると、仮名化されたIDがデバイス間で交換される。しかし、そのIDが中央管理サーバーに保存されると、サーバーを管理する当局がIDから個人を再特定できるようになるため、国家による監視システムが構築されるリスクがある、とプライバシー専門家は懸念している。

中央集中型のシステムに代わるものとして、デバイスに保存されるIDを使ったピアツーピア通信による分散型システムが提案されている。感染リスクもデバイス上で計算され、プッシュ通知を他のデバイスに送信する時だけリレーサーバーが使用されるため、ソーシャルグラフを示すデータが組織的に公開されることはない。

しかし、このような分散型構造でも、感染が確認された人のIDを他の人のデバイスに通知する必要があるため、デバイスレベルでデータが傍受され、個人が再特定される可能性は存在する。

欧州では今のところ、政府主導の接触者追跡アプリに分散型アプローチを採用することが主流になっているといっていいだろう。注目すべきことに、初めは中央集中型アプローチを支持していたドイツ政府も後になって、エストニア、スペイン、スイスなどと同じように分散型アプローチへと方向転換した。その結果、現時点で中央集中型システムを支持している主要国はフランスと英国だけになった。

フランスでもこの問題について、専門家による議論が続いている。フランスでは4月末、中央集中型と分散型それぞれのアーキテクチャについて懸念を表明する書簡に数名の学者が署名した。学者らは、どのような追跡ツールを使用するにしても、「生じうるリスクが妥当であることを示す重要な証拠を示す必要がある」と主張している。

英国の場合、NHSXが開発する追跡アプリに関する重大な懸念は、政府によるソーシャルグラフデータの中央集中型収集と個人の再特定だけではない。その仕様や機能の拡大流用も重大な懸念となっている。

グールド氏は先日、追跡アプリは今後も流用されるだろうと述べ、その際に使用されるバージョンでは位置情報などの追加データを任意で提供するようユーザーに依頼する可能性があると付け加えた。さらに、NHSXは追跡アプリの使用は任意だとしているが、複数の機能がアプリに実装されると、同意の意味合いが薄まり、拡大流用がアプリ使用の強制につながるのではないか、という疑問が生じる可能性がある。

別の懸念は、英国スパイ機関の表向きの顔であるGCHQ(政府通信本部)も、追跡アプリのアーキテクチャ選定に関わってきたという点だ。さらに、グールド氏は昨日の科学技術委員会で、中央集中型アーキテクチャ採用の決定にNCSC(英国国家サイバーセキュリティセンター)が関与してきたかと問われた際に、答えをはぐらかした。

この面でもさらに別の懸念が予想される。HSJ誌は米国時間4月29日、Matt Hancock(マット・ハンコック)保健相が最近、英国諜報機関に新たな権限を与えたと報じた。これにより諜報機関は、新型コロナウイルスのパンデミック中に、医療サービスのネットワークや情報システムの「セキュリティ」に関するものであればどんな情報でも、その開示をNHSに要請できるようになる。

データベース好きのスパイ機関がそのような権限を手にしている状況で、プライバシー侵害への不安感が和らぐわけがない。

英国のデータ規制当局が追跡アプリの設計プロセスにどの程度深く関与してきたのか、という点も気になる。先にICO(英国情報コミッショナー事務局)の執行役員であるSimon McDougall(シモン・マクドガル)氏が、自分は追跡アプリの計画書を見たことがない、と公の討論会の場で発言したことが報じられたが、実はICOは4月24日に「高い透明性とガバナンスを確保できるようNHSXを支援している」との声明を出していた。

また、グールド氏は先日の科学技術委員会で、追跡アプリが流用される際にはその都度、NHSXがデータ保護影響評価(DPIA)を公開すると述べた。しかし、DPIAが公開されたことはまだない。

グールド氏はさらに、追跡アプリは「技術的には」今後数週間のうちに使用できるようになると述べたが、アプリのコードを公表して外部レビューを行う時期については明言できなかった。

英国の学者らは今回の書簡の中で、DPIAを追跡アプリの導入直前に公開するのではなく「今すぐ」公開するようNHSXに要請した。そうすることで、追跡アプリの使用が及ぼす影響について公に議論できるようにし、政府が実装したと主張する安全対策とプライバシー保護対策を国民が自ら精査できるようにするためだ。

英国の学者らは、システムのユーザー(感染を自ら報告する人を除く)を非匿名化してユーザーのソーシャルグラフを特定可能にするいかなるデータベースも作成しないことを公式に誓言するよう、NHSXに要請した。

学者らはまた、新型コロナウイルスのパンデミックの収束後に、NHXSが「拡大流用を回避する」べく追跡アプリをどのように段階的に停止するつもりなのか、詳しい説明をNHSXに求めた。

データベースの件についてTechCrunchがNHSXの広報担当者に尋ねると、それは英国保健省やNCSCが決めるべき問題だという回答が返ってきた。これでは、政府がアプリユーザーのデータを拡大流用してプライバシーが侵害されるのでは、という不安感が和らぐことはない。

TechCrunchはNHSXに対して、追跡アプリのDPIAの公開時期についても問い合わせたが、この記事の執筆時点でまだ回答は得られていない。

アップデート:NHSXのスポークスパーソンから以下のような返答を得ている。

我々はデータ保護に関する取り決めを追って公開します。また、このパンデミックの驚異が去った後には、この接触者追跡アプリはただちに停止される予定です。その際、ユーザーから共有されたデータは削除しますが、法と倫理を鑑みつつ、将来のウイルス研究に役立つデータは保存されます。

また、これに続いてスポークスパーソンは以下のコメントを追加した。

ユーザーからの許可を得た場合を除き、ユーザーデータは常に匿名化された状態で保存されます。また、匿名化解除のためにデータを照合できる他のデータベースは存在しません。

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Category:セキュリティ

Tags:新型コロナウイルス 接触者追跡

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Dragonfly)

Uber Eatsがチェコ、エジプトなど7カ国から撤退、成長が見込めるマーケットに注力

オンデマンドフードデリバリーのUber Eats(ウーバー・イーツ)はいくつかのマーケットから撤退する。チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウルグアイ、ウクライナだ。

またアラブ首長国連邦(UAE)のUber Eats事業を、主に中東で配車サービスを展開している完全子会社のCareem(キャリーム)に移す。

「UAEでUber Eatsアプリを使っている消費者やレストランは数週間内にCareemプラットフォームに移行することになり、その後Uber Eatsアプリは使用できなくなる」と米証券取引委員会に提出された書類で事業移管について詳細に述べている。

「こうした決断は、いくつかの国に投資し、また別のマーケットでは撤退するなど、全マーケットにおいてUber Eatsが1番手か2番手でいられるようにするための戦略の一環として行われた」と書類には書かれている。

Uberの広報担当は、変更は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックとは関係なく、すべてのUber Eatsマーケットで1番手か2番手でいるために現在展開している戦略と関連するものであり、一部の国には投資する一方で別の国からは撤退することを意味する、と述べた。

例えば2020年初めUberはインドのEats事業をライバルだった地元企業のZomato(ゾマト)に売却した。インドではZomatoとSwiggy(スウィギー)がマーケットの2トップだ(売却の一環でUberはZomatoの株式9.99%を取得した)。

Uber EatsのライバルGlovo(グロボ)もまた、赤字削減と収益化を目指して競争力のある構造にしようと、2020年初めにいくつかのマーケットからの撤退を発表した。同社もまた、事業を展開するすべてのマーケットでシェア1位か2位のプラットフォームになることを最終目標としている。

オンデマンドフード配達業界は、収益化について大きな疑問に直面している。そして現在、そこに新型コロナ危機も加わっている(英国拠点の同業他社Deliverooは先週、大量のレイオフを明らかにした)。オンデマンド事業はかなりのマーケットシェアを握らなければ収益をあげることができないため、そのマーケットで誰がトップなのかが明らかになるにつれ、競合する事業者の数は減っていくようだ。

今回の撤退に関する声明文で、Uberは次のように述べている。「チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウクライナ、ウルグアイで事業を停止することを決めた。またアラブ首長国連邦でアプリの提供を停止し、事業をCareemに移す。我々がトップシェアを握っている世界中の他のマーケットにエネルギーとリソースを集中的に注ぐという戦略を引き続き展開する」。

証券取引委員会への提出書類によると、事業が停止または移管されるマーケットは、Eatsの予約件数の1%、2020年第1四半期決算(EBITDA)の赤字の4%を占めた。

「戦略を実行することで、節約できた分をより良い投資リターンが得られそうな優先すべきマーケットに振り向けることができる」とも書かれている。

Uberは2020年初めに「6000以上の都市」で事業を展開しているとしたが、Uber Eatsの広報担当は今回撤退してもこの数字に変更はない、と語った。

同社がどのマーケットを今後優先すべきと考えているのかについての質問には答えなかった。またUberが撤退するマーケットの事業の譲渡先を探したのかどうかについても明らかではない。

証取委への提出書類によると、チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウクライナ、ウルグアイの事業は2020年6月4日までに完全停止となる。

Uber Rides事業は影響を受けない、とも付け加えられている。

Uberに近い情報筋は、マーケット展開の見直しで同社がグローサリー配達など新たなビジネスラインにリソースを注ぐことができるようになる、と指摘した。

新型コロナパンデミックは多くのマーケットでオンデマンドフードデリバリー事業を一変させた。利便性を愛する顧客がロックダウンによりこれまでよりも自分で料理するようになり、多くのレストランが店を閉めていて(少なくとも一時休業)、こうした事態はプラットフォームプロバイダーにも影響を及ぼしている。

と同時に、グローサリー配達では需要が増えている。Uberは4月にフランスでのグローサリー配達を全国に拡大すべく、大手スーパーCarrefour(カルフール)との提携を発表した。また、スペインとブラジルでもグローサリー関連で提携を結んだ。

消費者が新型コロナ感染リスクを下げながら食材を確保する方法を模索する中で、グローサリー配達の需要はかなり増加している。

処方薬や個人用保護具など他の種のデリバリーもまた、オンデマンド物流事業者にとっては絶好のチャンスとなりそうだが、いくつの主要フードデリバリープラットフォームが参入するかにもよる。

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

VCファームPartechが100億円規模のシード期投資専門ファンドを立ち上げ

VCファームのPartech(パーテック)がシード期の投資を専門とする新たなファンドを立ち上げた。Partech Entrepreneur IIIという名称の新ファンドは同社にとって3つめのシード投資ファンドとなる。前のファンドのクロージングを発表したのは2016年12月のことだ。

PartechはプレシードからプレシリーズAまで、かなりアーリーステージにある企業を投資している。スタートアップのステージに応じて、わずか数十万ドル(数千万円)から最大数百万ドル(数億円)までの投資に応じる。そして同社は好調なスタートアップについては、その後に訪れるシリーズA、シリーズBでの再投資に積極的だ。

Partechは特に6つの分野にフォーカスしている。健康、労働、商業、金融、モビリティ、コンピューティングだ。かなり大雑把な分類だが、Partechはシード投資を専門とする投資家10人で構成するチームを有する。投資家らはパリ、サンフランシスコ、ベルリンに拠点を置いている。

過去にPartechは3つのシード投資を通じて22カ国で投資160件をクローズした。同社はフィードバックや紹介を行なったりポートフォリオの拡大を手伝ったりすることができる400人もの創業者のコミュニティを抱えている。そうした創業者たちの3分の1がシード投資のリミテッドパートナーだ。

投資160件のうち、スタートアップの17%で共同創業者の少なくとも1人が女性となっている。過去2年間でPartechが支援したスタートアップの29%のシード期に女性の共同創業者がいた。

Partechはここしばらく今回のファンドの立ち上げを展開していて、つまりファンドの一部を既に投資している。同社は新たなファンドを通じてスタートアップ40社以上に投資し、ここには新型コロナウイルス(COVID-19)による経済危機が始まってから投資を開始した10社が含まれる。

Partechが以前投資した企業には、Aiden.ai、Dejbox、Frontier Car Group、Pricematch、Streamroot、Alanなどがある。

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(翻訳:Mizoguchi

欧州が新型コロナ対策の接触トレース技術におけるプライバシー保護でAppleとGoogleにAPI変更要求

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染リスクを測るため、Bluetoothベースで接近度を追跡するいわゆる「プライバシー保護」規格を、EUの科学者や技術専門家が協同して開発している。またこの構想に基づき、彼らはAppleとGoogleに対して両社のAPI変更を要求している。

4月1日に発表されたPEPP-PT(汎欧州プライバシー保護接近度追跡)は、国境を越えたデジタル介入の足並みを揃えるために、接触追跡アプリの開発者に対して、スマートフォンユーザーのデータを標準化された方法で処理することを求めるものだ。また、新型コロナウイルスの流行が原因で勢いを増しつつある位置追跡ツールによる過度なプライバシー侵害のリスクを減らすことを目的としている。

米国時間4月17日、7カ国の国営アプリにPEPP-PTのアプローチを採用されることが明らかとなった。さらに40カ国の追加参加について話し合いが設けられている(アップデート参加が明らかとなったスイススペインは、同国はその実施を集権化することについて否定している)。

PEPP-PTのHans-Christian Boos(ハンス・クリスチャン・ボース)氏は「現在、多数の政府と話し合っているところです。一部の国は、国内のアプリをPEPP-PTの原則とプロトコルに基づいて製作すると公言しています」とウェブ会見の中で語っている。

「既に、7カ国が本構想に同調することが決定しています。また、参加に向けた話し合いを40カ国と様々なレベルで行っています」と同氏はいう。

ボース氏は、これら政府の一覧を公表すると述べたが、本記事の執筆段階では、まだ目にする機会は得られていない。私たちはPEPP-PTのPR会社へ情報提供を既に申し入れており、入手次第、本記事を更新する予定である。

また彼は「欧州の複数の国を巻き込むという今回の手法はうまくいきました」とも述べる。「政府はこれまでになかった素早さで決定を下しています。参加に向けて40カ国以上が話し合う今、私たちが扱う対象はもはや欧州だけに止まりません。プライバシーの保護をモデル化する、そして議題の中心に挙げることが私たちが強調したいことであり、この構想を他の地域にも広げられると確信しています」。

同会見に参加したイタリア政府の技術革新およびデジタル変革省でCTOを努めるPaolo de Rosa(パオロ・デ・ローザ)氏も、イタリアのアプリがPEPP-PTに基づき作成されることを認めている。

ローザ氏は「我が国は近日中にアプリを完成させます。もちろんこのモデルに基づいたものです」とだけ述べ、それ以外の詳細は控えている。

PEPP-PTの中核を成す「プライバシー保護」方針は、位置情報データを収集しないシステムアーキテクチャを使用していることに基づいている。その代わり互いに接近するデバイスは、匿名化されたIDを共有する。感染リスクが発生しと後にシステムが判定した場合、この匿名IDを使用して各個人へ通知が送られる。個人の接触情報がアップロードされるのは診断結果が出た後で、その後にそれまでに接触した他のデバイスへと通知が送られる。

PEPP-PTのスポークスマン兼コーディネーターを務めるボース氏は、2020年4月初頭に行なったTechCrunchの取材で、TechCrunchに対してプロジェクトが中央管理型と分散型の両方のアプローチに対応することを伝えている。前者では、IDは信頼できるサーバー(公衆衛生担当の政府機関が管理するサーバーなど)へアップロードされる。後者では、IDは各デバイスで管理され、そこで感染リスクも計算される。バックエンドサーバーは、情報をデバイスへ送信する役割のみを受け持つ。

この分散型システムにおいてAppleとGoogleは協調してサポートを行うとされている。このことが発表されたのはPEPP-PTの発表直後のこと。この2社のサポートにより、近日公開予定のAPIとシステム全体に利用されているBluetoothベースの接近度トラッキングによって、感染者の接触者トレーシングが可能となる。

世界人口の大多数を今回の構想に巻き込むために必要なのは、このわずか2社の協力を取り付けることだけだ。両社の参加によって、テクノロジーを利用した方法で新型コロナウイルスに対抗するという分散型の接触者トレーシング構想は大きく前進することとなった。

先日欧州議会で可決された決議案も、分散型の接触者トレーシングを後押しするものだ。

欧州議会は加盟国に対して「人々がセキュリティとプライバシー保護の両方のための基本的なプロトコルを確認できるように。また、アプリケーションのコード自体を公開し、政府が主張するような形で本当にアプリケーションが運用されているかを確認できるように、接触者トレーシングアプリの機能を完全に透明化する」よう働きかけている(委員会も、分散化を望んでいることを以前に示唆している)。

しかし、少なくとも7カ国の政府(およびPEPP-PTの主張によればその他多数)を含むPEPP-PTの支援者は、「プライバシー保護」の中央管理手法をあきらめていない。支援者の一部は、これを「疑似分散型」と呼んでいる。ボース氏は本日、AppleとGoogleの間で、両社のアプローチを変更できるかどうかの話し合いが行われていることを発表した。

現時点のAndroidとiOSでは、接触追跡アプリが分散型インフラを使用しない場合、バックグラウンドでBluetooth追跡を実行することはできない。これは、プラットフォーム側で一般のアプリがBluetoothへアクセスする方法を制限しているためである。つまり、そうしたアプリのユーザーが接近度追跡を機能させるためには、アプリを常に開いてアクティブにしておかなければいけないことを意味する。これではバッテリーの駆動時間が短くなってしまう。

また、Apple-Googleの共同モデルで採用されたリレーサーバーモデルが原因で、接触追跡データを中央管理に置くと(意図的な)制限もかかる。

「AppleとGoogleが歩み寄り、OSのレイヤーを開放してくれたことに感謝します。言い換えれば、Bluetooth測定と暗号化処理、およびそうしたタスクのバックグラウンド実行を常に安定して実行させるというOSの真の機能が使えるようになりました。モバイルエコシステムの巨人2社と、彼らが提供したプロトコルに注目してみれば、特に各国の政府側の観点から、話し合える余地は大いにあります」とボース氏はいう。

「PEPP-PTからも、いくつか話し合いたい点があります。私たちは選択肢を求めています。また、モデルの実装についても選択肢が必要です。両社のプロトコルの上へさらに中央管理型または分散型のプロトコルを作成しなければならないのであれば、どちらの利点も活かせずに終わるでしょう。話し合うべき内容は多くあります。しかし、彼らの決断とは別に、ハイテク業界で働く人々の多くはAppleとGoogleがこうした話し合いで非常にオープンな態度をとることを知っています。今はまだ、対立する時期ではありません。話し合いは継続しており、何らかの合意が得られる見通しです」。

AppleとGoogleへPEPP-PTが依頼した変更が具体的に何なのかは、はっきりしていない。私たちはウェブ会見の最中に詳細を訪ねたが、回答を得られなかった。しかし当グループと政府の後援者はテクノロジーの巨人の姿勢を崩し、Bluetoothの接触情報を中央の管理によってグラフ化し、全国の新型コロナウイルス対策組織へ配信しやすくすることを目指している。

現時点でAppleとGoogleのAPIは、サーバーレベルで接触情報のマッチングをブロックするよう設計されている。しかし、政府(またはその他の組織)が制約を回避して一部のデータを中央管理する方法は、まだ残されている可能性がある。

私たちはPEPP-PTがいう話し合いについて、AppleとGoogleに問い合わせた。本記事の執筆時点では、どちらの回答も得られていない。

イタリアと同様に、ドイツとフランスの政府も、PEPP-PTを支持して国営アプリを作成すると示唆している。これはつまり、もしAPIを変更する圧力が効かない場合は、かつてのAppleとFBIの対立と同じように、EUの巨大な加盟国たちとテクノロジーの巨人との対決が始まる可能性があることになる。

今回のエピソードでもう1つ重要な点は、PEPP-PTが依然としてプライバシーとセキュリティの専門家から激しい批判を浴び続けていることである。さらには、他の組織が開発中の「DP-3T」と呼ばれる分散型接触トレーシングプロトコルに言及した文章がPEPP-PTのウェブサイト上から削除されたことで、この批判はさらに勢いを増している。

また、CoindeskはPEPP-PTのウェブサイト上の記述が何も発表がないまま編集されていたことを指摘した。

DP-3Tの支援者は、PEPP-PTがいまだにレビュー用のコードやプロトコルを公開していないことを繰り返し問い詰めており、PEPP-PTを「トロイの木馬」とまで揶揄している。

PEPP-PT構想に参加し、かつDP-3Tを設計したETH ZürichのKenneth Paterson(ケネス・パターソン)博士は私たちの問い合わせに対して、連合が「Gapple(Google + Apple)」からどのような約束を取り付けようとしているのかについて明らかにしなかった。

彼はメールのやりとりでこう答えている。「彼らがシステムがどんな仕組みで動作するのか未だ明言していないため、(AppleとGoogleのシステムに対する変更について)何を求めているのか、私には何もいえません」。

4月17日にボース氏は、PEPP-PTのウェブサイトからDP-3Tへの言及が削除されたのは間違いだったと表明した。彼はこの事態を「コミュニケーションの失敗」が原因だとしている。彼はまた、PEPP-PTは規格化された技術を組み合わせた中に、DP-3Tの分散型プロトコルを含めることに今でも興味がある、と述べている。このため既に不明瞭な両組織の違いは、また新たに線引きされ続ける見通しである(また、プレスからボース氏へのメールは現在、Hering Schuppener社によってふるい分けされているのも興味深い点である。同社は、危機管理のPRを含む広報サービスを販売するコミュニケーション企業である)。

ボース氏はDP-3Tの排除に関して「遺憾に思います」と述べる。「実際は、一般社会に普及しているのと同じレベルで、様々な選択肢を用意したいと考えていました。それらの選択肢は今でも存在しており、その仕事に従事する同僚やその他の方々には深く感謝しています」。

「暗号化技術のコミュニティではこの話題の議論が活発に続いており、プロトコルを改善するのはいつでも望ましいため、私たちもそうした議論を奨励しています。私たちが見失ってはならないのは、ここで話し合うべきなのは暗号化についてではなく、伝染病の対策である点です。基盤となる転送レイヤーでプライバシーが守られる限り、政府はどんな選択肢もとれるためそれで十分でしょう」。

ボース氏はまた、PEPP-PTは米国時間4月18日午後に、ついに何らかの技術文書を公開すると語った。最初の発表から3週間後、しかも金曜の晩に発表することを選択したことになった。その後、7ページの「高レベル概要」文書がGitHubのこのリンクへ掲載された。しかし、レビュー用のコードにはほど遠い内容である(アップデート:このリンクはその後消去された)。また同時に、彼はジャーナリスト達に対して、細かい技術にこだわるのではなく新型コロナウイルスと戦う「大局」に注目するよう依頼している。

米国時間4月17日のウェブ会見では、PEPP-PTを支援する科学者の一部が、感染リスクを追跡する代替としてBluetoothがどの程度有効なのか、テストする方法を語ってくれた。

オックスフォード大学のビッグデータ研究所でナフィールド医学科教授および病原体力学のシニアグループリーダーを務めるChristophe Fraser(クリストフ・フレーザー)氏は、伝染を追跡するためにBluetoothの接近度データを使用する基本原理を説明し、次のように述べている。

「私たちが開発しているアルゴリズムは、各個人が互いに接近して過ごした累積時間に注目しています。目標は、スマートフォンの接近度データから、伝染の可能性を予測することです。理想的なシステムは、感染リスクが最も高い人々で必要な隔離を減らし、また感染のリスクがない人々へは、例え接近があったことが記録されていても、通知することはありません。

もちろん、それだけでは完全なプロセスとは言えません。しかし、この画期的なアプローチの重要な点は、情報や通知の正確度を検証できるようになることです。そのため、誰が通知を受け取り、そのうちどれだけの人が感染したのか、実際に把握できなければなりません。また、接触したと特定された人々のうち、どれだけの人がまだ感染していないのかも把握する必要があります。各システムに応じて様々な方法で検証を行うことは可能ですが、この手順を外すことはできません」。

フレーザー氏の話を踏まえると、デジタル介入の効果を評価することが不可欠となるはずだ。評価を発表することで、公共衛生の管轄機関が接触情報のグラフへより広範にアクセスできるようになる。ここでDP-3Tの分散型プロトコルでは、アプリのユーザーが疫学者や研究グループへ自発的にデータを共有することを明白に選べることに注目する必要がある。共有すれば、研究者は感染者と有リスクのユーザーとの交流を記録したグラフを再構築できる(言い換えれば、接近度グラフへアクセスできる)。

またフレーザー氏は次のようにも語っている。「数百万人に影響を与える隔離要請などの介入を行うのであれば、通知を出した時点での最大限の科学的な根拠、または入手可能な限りの証拠を提供することが本当に重要となります。それらの証拠を集める中で、ウイルスの感染についての理解が深まっていきます。実際、アプリの検証を行えばより深まるため、情報のフィードバックを受け取ることは不可欠でしょう」。

ボース氏によれば、現在テストや参照用に使用されているPEPP-PTに沿って作成されたアプリは、いずれも国家レベルの公衆衛生機関とはつながっていない。ただし、彼はイタリア企業の衛生システムへ接続してテストを実施する試験的なケースを挙げている。

彼は「バックエンドとアプリケーションのビルダーを提供しました。またプロトコルとサンプルコードを提供し、測定科学の内容など、多くの情報を提供しています。AndroidとiOSで、既に稼働しているアプリケーションが存在します。国家の衛生システムへ統合されていないだけです」と語っている。

PEPP-PTのウェブサイトは、Vodafoneなど構想を支援する数々の企業「会員」を掲載している。また取り組みを主導していると伝えられる、ドイツのFraunhofer Heinrich Hertz通信研究所(HHI)など、数カ所の研究機関も掲載されている。

HHIの取締役であるThomas Wiegand(トーマス・ウィーガンド)氏も、4月17日の会見に参加していた。注目すべきことに、彼はDP-3Tのホワイトペーパーの著者の1人でもある。しかし、GitHubの文書履歴によれば、4月10日に彼はREADME(前文)と著者一覧から削除されている。この変更に対しては何の説明も行われていない。

記者会見でウィーガンド氏は、暗号化とデジタル権利について活動する多数のコミュニティから反感を得るであろうと発言した。彼は、新型コロナウイルス接触追跡に用いる暗号化システムについての議論を「余興」とし、彼が欧州の「開かれた公共の話し合い」と呼ぶものが「欧州人である私たちをこの危機から救う可能性をなくすであろう」だという懸念を表明した。

彼はまたこう述べている。「私は単に、この問題の困難さを皆に理解してもらいたいだけです。暗号化はシステムを構成する12のブロックの1つにしか過ぎません。つまり、いったい何のためにここで集まっているか、皆さんに振り返っていただき、見直して欲しいのです。私たちはこのウイルスに勝利しなければなりません。さもなければ、もう一度ロックダウンが繰り返され、より深刻な問題が生まれるでしょう。皆さん全員にそれを考えていただきたいと思います。一丸となって協力すれば、ウイルスに勝てる可能性はあります」。

ウェブ会見では、利用されたZoomのチャットが人種差別的なスパム発言で乱されたことで、さらに不穏な空気が漂うことになった。ボース氏は会見を開始する直前に「技術に明るい人々から、Zoomはセキュリティに不安があるため使用するべきではないと聞きました。セキュリティとプライバシーについての構想を発表する場には合わないツールでした」と話した。

「残念ながら、同僚らの多くがこのツールだけを使っていることがわかったので、Zoomが改善するのを待つか、別のツールを使用する必要があります。もちろんZoomへデータをリークするのは私たちの意図することではないですから」。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Dragonfly)

EUのプライバシー専門家が新型コロナ接触追跡において分散型アプローチを推進

欧州のプライバシー専門家グループがBluetoothベースの新型コロナウイルス(COVID-19)の接触追跡のための分散型システムを提案した。このシステムは、データを集中管理するために局所に取り組むアプリよりも、より強力に不正使用や悪用からデータを保護することができると、グループは主張している。

グループが分散型プライバシー保護近接追跡(DP-PPT)と名付けたこのプロトコルは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、ベルギーのルーヴェンカトリック大学をはじめとする、欧州全土の7つ以上の研究機関の学者約25名によって設計された。

グループは、こちらでDP-PPTアプローチについて記載したホワイトペーパーを公開している。

このホワイトペーパーで重要なのは、この設計には、短期間のBluetooth識別子(ホワイトペーパーではEphIDと呼ぶ)を生成および共有するデバイスに基づいた、ユーザーのデバイス上における接触追跡とリスクに対するローカル処理が伴うという点である。

データをデバイスにプッシュするためには、バックエンドサーバーを使用する。つまり、感染者が新型コロナウイルス感染症と診断されると、保健当局が感染者のデバイスから感染期間中のEphIDの簡易表示をアップロードすることを認可する。アップロードされたデータは他のユーザーのデバイスに送信され、リスクの有無がローカルで計算され、適宜ユーザーに通知される。

この設計では、プールされたデータによってプライバシーリスクをもたらすような匿名化IDの集約を必要としない。そのため、システムを信頼してこのプロトコルを使用する接触追跡アプリを自発的にダウンロードするようにEU市民を説得することも容易になるだろう。これは、国家による個人レベルの監視には転用し難い設計であるからだ。

グループでは、ローカルで交換されたデータを盗聴したり、アプリを逆コンパイル/再コンパイルして要素を改変するなど、技術に精通するユーザーによって発生し得るその他の脅威についても議論している。包括的な論点は、「監視の忍び込み」(つまり、国家が公衆衛生上の危機に乗じて市民レベルの追跡インフラストラクチャを確立・維持するのではないかということ)につながる危険性のあるデータの中央集中型システムと比較して、こうしたリスクはより小さく管理しやすいということだ。

DP-PPTは、使用目的が限定され、公衆衛生上の危機の終結後は廃止することを考慮に入れて設計されている。

EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)のCarmela Troncoso(カルメラ・トロンコソ)教授は次のように記している。「DP-PPTプロトコルは、プライバシーが保護された近接追跡アプローチが可能であり、国または組織がリスクと不正使用を支持する手法を受け入れる必要がないということを示しています。法律によって厳密な必要性と妥当性が求められ、近接追跡の基盤として社会的サポートがある状況では、この分散型設計で、不正使用されることのない近接追跡の実行手段を提供できるのです」。

ここ数週間、欧州各国の政府が、新型コロナウイルスを追跡するさまざまな目的でユーザーデータを引き渡すようデータ管理者に迫っている。また、研究者が新型コロナウイルスに対抗するうえで役立つという症状報告アプリなど、民間企業によって複数のアプリが市場に投入されている。大手テクノロジー企業は、公的医療目的と主張してインターネットユーザーの永続的な追跡を再度パッケージ化するためのPRの機会をうかがっているものの、実際の用途は不明瞭だ。

通信会社によるメタデータの取得は、市民の追跡ではなく、新型コロナウイルス感染症の蔓延のモデル化を目的としていると、ECが発言

欧州委員会は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって引き起こされた公衆衛生上の緊急事態への対処の一環として、集約されたユーザーの位置情報を共有するようヨーロッパの通信会社に求めている。「欧州委員会は、集約され匿名化された携帯電話の位置データの提供について携帯電話事業者との議論を開始した」と本日発表した。

新型コロナウイルスに関する次の大きな技術推進は、接触追跡アプリである可能性が高い。接触追跡アプリは、近接追跡Bluetoothテクノロジーを活用して、感染者と感染していない人々との間の接触をマッピングするアプリだ。

これは、何らかの形式で接触追跡を実施しなければ、人々の動きを抑制することでなんとか低下させた感染率が、経済活動や社会活動が再開された後、再び上昇するリスクがあるからである。ただし、接触追跡アプリが政策立案者や技術者の望み通り、新型コロナウイルス感染症の封じ込めに有効であるかどうかについてはまだ疑問が残る。

ただし、現時点で明確なのは、設計上プライバシーを考慮して慎重に設計されたプロトコルがなければ、接触追跡アプリによってプライバシー、すなわち、人々の居場所など、やっとのことで手に入れた人権に対するリスクが実際に生じるということだ。

新型コロナウイルス感染症との闘いという大義名分で権利を踏みにじることは、正当でもなく、その必要もないというのが、DP-PPTプロトコルを支持するグループの真意だ。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichael Veale(マイケル・ビール)博士は次のように述べている。「集中化に伴う大きな懸念事項の1つは、システムが拡張可能であり、国家が誰と誰が近しい関係にあるというソーシャルグラフを再構築できるため、それに基づいてプロファイリングやその他の規制に展開できるという点である。このデータは、公衆衛生以外の目的で法執行機関や情報機関によって勝手に使用される可能性があるのです」。博士は分散型設計の支持者でもある。

「一部の国ではこれに対して有効な法的保護措置を講じることができるかもしれませんが、欧州に集中型プロトコルを導入することで、近隣諸国は相互運用を余儀なくされ、分散型システムではなく集中型システムを使用せざるを得なくなります。逆の状況も当てはまります。分散型システムでは、他の国々がプライバシー保護アプローチを確実に使用することで、世界全体で新型コロナウイルス感染症のBluetoothに基づく追跡を監視目的で不正使用することに対する厳しい技術的制限が課されます」。

博士は近接データの集中化について次のように付け加えた。「集中化はまったく不要です。設計によるデータ保護では、目的に必要なデータのみを使用するように、データを最小限に抑えることを義務付けています。データの収集や集中化は、Bluetoothの接触追跡には技術的にまったく不要なのです」。

4月上旬、TechCrunchではドイツのフラウンホーファーHHI研究所が指揮する、技術者と科学者で構成される別の団体によるもう1つのEUにおける取り組みに関する記事を公開した。その記事では、汎欧州プライバシー保護近接追跡(PEPP-PT)という名称の、新型コロナウイルス感染症接触追跡に関する「プライバシー保護」標準の取り組みについて報告した。

記事を公開した時点では、このアプローチについて、匿名化IDの処理で集中型モデルのみに用途が固定されるかどうかは明らかになっていなかった。今回TechCrunchに語ってくれた、PEPP-PTプロジェクトの共同創始者の1人であるHans-Christian Boos(ハンス・クリスチャン・ブース)氏は、標準化の取り組みにおいて、接触追跡の処理で集中型アプローチと分散型アプローチの両方をサポートすることを認めた。

この取り組みは、EUのプライバシーコミュニティの一部から分散型アプローチではなく集中型アプローチにとって有利になると批判されている。批評家たちは、ユーザーのプライバシーを保護するという主要な主張が損なわれると強く反発している。しかしながら、ブース氏によると、この取り組みは世界中におけるデータの取り込みを最大化するために、実際に両方のアプローチに対応している。

また、ブース氏はデータが集中化されているか分散化されているかにかかわらず、相互運用可能であると述べている(ブース氏は、集中化シナリオでは、PEPP-PTを監督するために設立された非営利団体が(資金調達については懸案中であるものの)、集中型サーバー自体を管理できることが望まれる。これは、人権のための体制が整っていない地域などでのデータ集中化によるリスクをさらに軽減させるためのステップであると述べている)。

「集中化と分散化、両方の選択肢があります」と、ブース氏はTechCrunchに語った。「ニーズに応じて両方のソリューションを提供し、提供したソリューションを運用していきます。しかしながら、私がお伝えしたいのは、どちらのソリューションにもそれぞれメリットがあるということです。暗号学のコミュニティからは分散化を望む声が多く、一方医療コミュニティからは、感染者に関する情報を所有する人が多くなり過ぎることを懸念するため、分散化に反対する声が多くあります」。

「分散型システムでは、感染者の匿名IDをあらゆる人にブロードキャストすることになるという基本的な問題があります。そのため、一部の国の医療関連の法律では完全に禁止されています。暗号化手法を導入しているとはいえ、IDをあちこちにブロードキャストすることになります。これは、接触の有無を特定する唯一の手段が、ローカルの携帯電話であるからです」とブース氏は続ける。

「これは、分散型ソリューションの欠点です。その他の点は申し分ありません。集中型ソリューションには、単一の運用者が匿名化IDへのアクセス権を持つという欠点があります(ユーザーはその運用者を信頼するかしないかを選択できます)。これは、匿名化IDがブロードキャストされている場合とほとんど変わらないといえます。そのため、問題は、1人の関係者に匿名化IDへのアクセス権を持たせるのか、このアクセス権を全員に持たせるのかということになります。これは、最終的にはネットワーク経由で匿名化IDをブロードキャストすることになるため、なりすましにつながることがあるためです」。

「誰かが集中型サービスをハッキングできる可能性があると仮定すると、その誰かはサービスが経由しているルーターもハッキングできるということも考慮する必要があります。問題点は同じなのです」とブース氏は付け加えた。

「そのため、私たちはどちらのソリューションも提供します。どちらかを信奉しているというわけではありません。どちらのソリューションでも適切なプライバシーを提供しています。問題点は、どちらについてもどの程度信頼するか決めなければならない、ということです。データをブロードキャストする対象の大勢のユーザーか、サーバー運用者か、どちらをより信頼すべきでしょうか。または、ルーターがハッキングされる可能性があるという事実か、サーバーがハッキングされる可能性があるという事実か、どちらを信頼すべきでしょうか。どちらを信頼することもあり得ます。両方とも至極もっともな選択肢です。暗号化コミュニティの人々の間では、宗教染みた議論であるともいえます。ただし、暗号化で求められる内容と医療で求められる内容の間でバランスを取らなければなりません。そして、私たちはどちらを選択すべきかを決定できないため、両方のソリューションを提供することにしました」。

「私は選択肢は必要であると考えています。国際基準の策定を目指しているのであれば、宗教じみた争いは排除しなければならないためです」。

また、ブース氏は、このプロジェクトの目的は、各データへのアクセスに基づいてリスクを比較し、リスク評価を実施するためにそれぞれのプロトコル(集中型と分散型)を研究することだとも述べている。

「データ保護の観点からすると、当該データは完全に匿名化されています。これは、位置情報、時間、電話番号、MACアドレス、SIM番号のうち、どれも付属していないためです。明らかにされている唯一の要素は接触、つまり、2つの匿名ID間に問題となる接触があったということです。わかるのはそれだけです」と、ブース氏は述べている。「コンピュータサイエンティストやハッカーに対して問いたいのは、彼らに接触に関するリストやグラフを提供した場合、それからどのような情報を得られるのか、という点です。グラフでは、情報は相互に結ばれた数字にすぎません。問題はどのようにしてグラフから何らかの情報を導き出すのかということです。コンピュータサイエンティストやハッカーは今それに取り組んでいます。どのような結果が得られるか見守りたいと思います」。

「この議論については正当性を主張しようとする人が大勢います。これは正当性に関する議論ではありません。正当なことを実行することに関するものです。つまり、私たちは、このイニシアチブで適切な選択肢であればどんなものでも提供します。また、集中型にも分散型にも欠点がある場合は、それを公表します。そして、できる限り、その欠点について確証を得たり、それについて研究したりしていきます。各システムの特性を公表し、人々が地域のニーズに合ったタイプのシステムを選択できるようにします」とブース氏は付け加えた。

「一方のシステムが運用可能で、もう一方が完全に不可能であると判明したら、運用が不可能な方を廃止します。これまでのところどちらも「プライバシー保護」という観点から運用可能であるため、両方とも提供する予定です。ハッキングや、メタ情報の取得が可能であり、許容できないリスクが明らかになったため、運用不可能であると判明したシステムについては、完全に廃止して提供を止めます」。

ブース氏が「課題」と述べていた相互運用性については、氏によると各IDを計算する仕組みについて最終的な調整段階に入った。ただし、ブース氏は相互運用性については引き続き取り組みが進行中であり、相互運用性は必要不可欠な要素だと強調した。

「相互運用性がなければ、システム全体が意味を成さなくなります」とブース氏は述べる。「なぜまだこの相互運用性を得ることができないのかは課題といえますが、私たちはこの課題を解決しつつあり、まちがいなくうまくいくでしょう。相互運用性を機能させるためのアイデアはたくさんあるのです」

「すべての国が相互運用を行わないとすれば、もう一度国境を越えて連携する機会は訪れないでしょう」とブース氏は付け加えた。「ある国にデータを共有しない複数のアプリケーションがある場合、感染追跡の実現に必要となる大規模な参加者を集めることはできないでしょう。また、プライバシーに対する正しい取り組みについて単一の場で十分に議論しないと、そうした正しい取り組みはまったく浸透しないでしょうし、他人の電話番号や位置情報を使用する人々も少なからず現れるでしょう」。

PEPP-PTの連合グループはまだプロトコルやコードを公表していない。つまり、参加を望む外部の専門家が、レビューを行うために必要なデータを入手できていない。そうした専門家は、規格案に関連する具体的な設計上の選択肢について、情報提供を受けたうえでフィードバックを行うことができる。

ブース氏によると、連合グループはMozillaライセンスに基づき、4月上旬にコードをオープンソース化するとした。また、プロジェクトへの「あらゆる適切な提案」について大歓迎だと述べている。

ブーズ氏は次のように語っている。「現在、ベータメンバーのみがコードにアクセスできるのは、ベータメンバーがコードを最新バージョンに更新すると約束したためです。コードの最初のリリースの公開時までに、データプライバシーの検証とセキュリティの検証を確実に実施したいと考えています(こうした検証はオープンソースシステムでは省略されることがあるのです)。そうすることで、大幅な変更が発生しないという確信を持つことができます」。

プライバシーの専門家は、このプロトコルに関する透明性の欠如を懸念している。このような懸念により、詳細が決まっていないサポートを保留するよう開発者に求めている。また、EU各国の政府が介入し、中央集中型モデルに向けた取り組みを推進して、基本設計やデフォルト設定に組み込まれるべきEUの中核的なデータ保護原則から逸脱しようとしているのではないかという憶測さえあった。

SedaG @sedyst ·2020年4月6日
このすぐには理解できないメッセージは、PEPP-PTコンソーシアムには透明性が欠如しているということを意味しています。また、(複数の)政府がこのプロセスに介入して集中型モデルに向けた取り組みを推進しているか、介入している場合はどの程度介入しているのかということについて述べています。
非常に憂慮すべき展開です。


Michael Veale @mikarv
新型コロナウイルス感染症のBluetoothによる近接追跡に関する重要事項

「PEPP-PT」プロトコルは確定されていません。分散型プライバシー設計(DP-3T)は、恣意的な利用や機能クリープを防止します。集中型ではこれらを防止できません。

分散型に対する明示的な条件付きサポートがない限り、PEPP-PTを支持しないようにしましょう。


Mireille Hildebrandt @mireillemoret 2020年4月6日 午後9時40分
私はこれを読んで、PEPP-PTでは「ユーザー」(政府、プラットフォーム)が望む内容に応じて、さまざまな構成を実現できる、という意味に解釈しました。そこがDPbDDとは異なっていますね。それに、パートナーは誰であるのか、どのようなNDAが関係するのか、どのようなダウンストリームデータフローを使用するのかという疑問に対する答えも得られませんでした。

現状では、EUで長年使用されてきたデータ保護法は、データの最小化などの原則に基づいている。もう1つの主要な要件は透明性である。また、4月上旬、EUの主要なプライバシー規制当局であるEDPSは、新型コロナウイルス感染症接触追跡アプリに関する開発を監視しているとTechCrunchに語った。

「EDPSは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと戦うための技術とデジタルアプリケーションの開発をサポートし、他国のデータ保護監督当局と連携してこれらの開発を注意深く監視しています。パンデミックと戦う上で保健当局が必要だと考えている個人データの処理について、GDPRは障害にはならないという見解を堅持しています」と広報担当者は語った。

「新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対する戦いにおいて、すべての技術開発者が現在取り組んでいる有効な対策は、最初からデータ保護を実装している必要があります(例:設計原則によるデータ保護を適用する)。EDPSおよびデータ保護コミュニティは、この共同の取り組みで技術開発者を支援する準備ができています。データ保護機関の指針については次の資料を参照してください。EDPB Guidelines 4/2019 on Article 25 Data Protection by Design and by Default、およびEDPS Preliminary Opinion on Privacy by Design」。

また、私たちは、欧州委員会が新型コロナウイルスに関連して多数のアプリやツールが突如出現したことに注目しており、その有効性と欧州データ標準への準拠について注視していることも把握している。

ただし、欧州委員会は同時に、デジタル化、データ、AIを中核とする、欧州圏の産業戦略の再促進の一環としてビッグデータアジェンダを推進してきた。さらに、4月6日付のEuroactivの報道によると、欧州理事会からリークされた文書には、EU加盟国と欧州委員会がデジタルドメインのすべての領域で今後の政策を通知するために、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックから得た経験を徹底的に分析する」と記載されていた。

そのため、EUにおいてさえ、新型コロナウイルス危機との接触リスクに関するデータが強く求められており、個人のプライバシー権を損なう恐れのある方向に開発が推し進められている。このため、国家によるデータの奪取を防ぐため、接触追跡を分散化しようとしている一定のプライバシー推進派から激しい反発が生じている。

欧州はデータの再利用を促進し、「高リスク」AIを規制する計画を立てている

欧州連合(EU)の議員は、あらゆる産業やセクターでデジタル化を推進し、欧州連合委員長のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏が「デジタル時代に適合した欧州」と掲げた課題を実現するため、欧州圏の新しいデジタル戦略に対する一連の提案を初めて立案した。また、これは、中国や米国に対する地域的な優位性を高めるための戦略として、新世代のデータ主導型サービスを強化するという目的で、ヨーロッパの大規模データセットのプールにある障壁を取り除くことに熱心な、欧州連合の「AIの奪い合い」とも言える。

ブース氏は、ベストプラクティスと見なされている「データの最小化」は、最終的には誰により大きな信頼を寄せるかという考え方に他ならないと述べている。「分散型アプローチおよび集中型アプローチについては、どちらもデータを最小化しているという意見があるかもしれませんが、1つのポイントでデータの最小化が行われていても、分散型システム全体でデータの最小化が実施されていることにはなりません」とブース氏は示唆する。

「問題は誰を信頼するのかということです。誰により大きな信頼を置くのか、これこそが本当の問題です。重要なデータは匿名化された接触のリストではなく、感染確定のデータであると理解しています」

「こうした問題の多くは、分散化と集中化の間で昔から行われてきた、宗教染みた議論において討論されてきました」とブース氏は付け加えた。「一般的に、ITは、分散化ツールと集中化ツールで揺れています。つまり、全面的な分散型または全面的な集中型のどちらか一方に決定することができないのです。どちらも完璧なソリューションではないためです。ただし、今回のケースでは、分散化と集中化の両方が有効なセキュリティオプションを提供すると考えています。また、どちらのアプローチも医療データを使用して実現が求められていることと、実現してはならないことに関して異なる意味を持っています。決定は全員に委ねられています」。

「私たちに求められているのは、両方のオプションを選択可能にすることです。また、ある機能についてその仕組み、相違点、リスクに関してじっくりと議論を交わし、単なる推測ではなく、適切な調査を行う必要があります」。

PEPP-PTの議論に誰が関与しているかという点について、プロジェクトの直接の参加者以外に政府と保健省が参加しているのは、「医療プロセスにPEPP-PTを組み込む必要がある」という実務的な理由からだと、ブース氏は述べた。「多くの国が、現在、公式の追跡アプリを作成しており、当然ながら、そのようなアプリはPEPP-PTに接続する必要があります」とブース氏は言う。

「また、私たちは各国の医療システムがどのようなものであれ、医療システムの関係者と話し合います。これは、医療システムとの最終的な境界にPEPP-PTを組み込み、検査と連動させる必要があるためです。感染症に関する法律とも連動させ、人々が、プライバシーや連絡先情報をさらすことなく地域の疾病対策予防センターと連絡を取ることができるようにする必要もあります。こうした点についても議論が交わされています」。

早期(ベータ)アクセス権を持つ開発者は、すでにシステムの簡易検査を実施している。PEPP-PT技術を利用する第一陣のアプリが一般的に出回る時期について尋ねると、ブース氏は、数週間以内でまもなくであると示唆した。

「そういったアプリのほとんどでは追跡レイヤーにPEPP-PTを導入するだけで済みます。医療プロセスとPEPP-PTを接続する方法を理解できるように十分な情報をすでに提供しています。アプリのリリースまでに長くかかるとは思いません」とブース氏は述べる。また、このプロジェクトでは、すぐに稼働させることのできる開発者リソースのない国を支援するために追跡参照アプリも提供している。

「ユーザーエンゲージメントでは、単なる追跡以上のことを行う必要があります。たとえば、疾病対策予防センターからの情報を含める必要があります。しかし、プロジェクトとして(より簡単)にこうしたこと開始するためにアプリのスケルトン実装を提供します」とブース氏は述べた。

さらに、ブース氏はこのように続けている。「先週以降私たちに電子メールを送信してくれたすべての人々が自分のアプリにPEPP-PTを導入してくれれば(幅広く導入してもらえる見込みです)、半数が導入してくれれば、滑り出しは非常に順調といえます。各国からの大量な人の流入と、従業員の復帰を特に望む企業の存在といった要因により、とりわけ、国際的なやり取りと相互運用性を実現するシステムの導入を求める声が強くあります」。

接触追跡アプリが、新型コロナウイルス(インフルエンザよりも感染性がはるかに高いことが判明している)の蔓延の制御に役立つかどうか、という広い観点に立って、ブース氏は次のように述べている「感染を隔離することが重要であるということがあまり議論になりません。この病気の問題点は、すでに感染していても無症状であることです。つまり、その人の体温を測定してそれで終わり、というわけにはいかないのです。過去の行動を調査しなければなりません。そして、デジタルを活用することなく、この調査を正確に実施できるとは思えません」。

「多くの病気が示しているように、感染の連鎖を隔離する必要があるという理論が全面的に真実であるならば(ただし、それぞれの病気は異なるため、100%の保証はないが、すべてのデータが隔離の必要性を示しています)、隔離こそがまちがいなく実行すべきことです。現在これほど多くの感染者がいるので、この議論には納得がいきます。世界は密接かつ相互につながっているため、世界各地で同じようなロックダウンが実施されることになるのでしょうか」。

「これこそが、R0値(1名の感染者から感染する可能性のある人数)が公表された時に、このようなアプリが市場に出回ることが納得できる唯一の理由です。R0値が1を下回ると、その国の感染件数が適切なレベルまで減ったことになります。また、感染症の関係者の言葉を借りれば、これは、病気を軽減するアプローチではなく、病気を封じ込めるアプローチ(今私たちが行っているような)に戻ることを意味するのだと思います」。

「接触連鎖評価のアプローチを使用することで、検査の優先順位が高まります。ただし、現在、人々は優先順位が正しいのかということではなく、検査のリソースに対して疑問を感じています」と、ブース氏は付け加えた。「検査と追跡は相互に独立しています。どちらも必要です。接触を追跡しても、検査を実施できないとしたら、追跡はいったい何の役に立つでしょうか。そのため、検査インフラストラクチャ『も』間違いなく必要です」。

画像クレジット:Rost-9D / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳: Dragonfly)

Cookie同意がいまだにコンプライアンス基準を十分満たしていないことが判明

アイルランドのデータ保護委員会(Data Protection Commission、DPC)により、オンライントラッキング業界がEUのプライバシーに関連する法律を未だに遵守できていないことが明らかになった。これらの法律は、少なくとも理論上は、同意なく行われるデジタル監視から市民を守るためのものだ。

画像クレジット:Tekke / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

DPCは昨年、40の人気ウェブサイトを対象に広範囲にわたる調査を行った。調査対象分野には、メディアおよび出版、小売、レストランおよびフードオーダーサービス、保険、スポーツおよびレジャー、そして公共セクターが含まれる。昨日この調査に関する報告書が発表されたが、それによると、Cookie(クッキー)およびトラッキングコンプライアンスについて、ほとんどのウェブサイトで、軽微なものから深刻なものまで多数の違反が見られることが明らかになった。

20のウェブサイトは、規制当局により「イエロー」と格付けされた。イエローはコンプライアンスに対し十分な対応とアプローチを取ってはいるが、深刻な問題が1つ以上指摘されたことを示す格付けだ。12のウェブサイトは「レッド」と格付けされた。これは、コンプライアンスに対する対処が極めて不十分、Cookieバナーに関する数多くの悪習、同意を得ずに設定される複数のCookie、不適切なCookieポリシーやプライバシーポリシー、eプライバシー法の目的への理解が不明確であることを意味する。さらに3つのウェブサイトは「イエローとレッドの中間」との評価を受けた。

38社のデータ管理者のうち「ブルー」(懸念はあっても、それが簡単に修正可能であり、概ねコンプライアンスの基準を満たしている)の評価を得たのはたったの2社に過ぎなかった。そして1社は「ブルーとイエローの中間」だった。

EU法は、データ管理者がユーザーをトラッキングする法的根拠としてユーザーからの同意に依存する場合、その同意は具体的で、十分な説明があり、ユーザー自らの意思で選択されるものでなければならないと定めている。昨年の追加判決により、オンライントラッキングに関するガイドラインがさらに詳細に定められ同意を示すチェックボックスに事前にチェックが入っている場合は無効であることなどが明示された。

しかし、DPCは依然として実質上の選択肢のないCookieバナーが存在することを確認した。 Cookie通知はあるものの、ユーザーが深い理解のないまま「了解」をクリックするだけのダミーバナーなどがその例だ(ユーザーからの「了解」というよりむしろ管理者側の「データはいただき」に近い)。

実際、DPCが報告書によると、データ管理者の約3分の2が、Cookieバナーの文言による「暗黙の」同意に依存している(例えば、「このサイトの閲覧を続行することにより、Cookieの使用に同意したものとみなされます」などの文言)。これは必要な法的基準を満すものではない。

報告書には、「一部のウェブサイトは、DPCがかつて発行した現在は効力のない古いガイドラインを利用しているようである。古いガイドラインではそのような通知が示されている場合は、『暗黙の』同意は獲得できるとしていた」とある。さらに、DPCのウェブサイトに掲載されている現行のガイドラインは「暗黙の同意には何も言及していない。そこで焦点が当てられているのは管理者の義務というよりは、むしろCookieに対する同意をユーザーが自らの意思でする必要があるという点についてである」と書かれている。

他に明らかになったのは、1社を除く全てのウェブサイトがランディングページにCookieを設置していることである。法的観点から、「多く」はユーザーによるCookieへの同意を不要にする法的根拠はない。DPCではこのようなウェブサイトには関連規制における同意免除は適用されないと判断しているからだ。

またDPCは、トラッカーの使用に関し「厳密に必要とされる」というコンセプトが広い範囲で悪用されていることを突き止めた。同報告書では「多くの管理者は自らのウェブサイトに設置されたCookieを『必要』あるいは『不可欠』な機能として分類しているが、そのCookieの当該機能はeプライバシー規制/eプライバシー指令に定められた2つの同意免除基準のどちらも満たしていないようである。これらには、ユーザーからチャットボット機能を開始したいというリクエストがある前にチャットボットセッションを設けるのに使用されるCookieが含まれていた。そのウェブサイトのチャットボット機能が全く作動しないものもあった」としている。

報告書には「一部の管理者が『不可欠』の基準を誤解している、あるいは不可欠の定義を、規制5(5)に提示されている定義よりもかなり広範なものとしてとらえているのは明白である」と書かれている。

報告書で強調されたもう1つの問題は、今回調査の対象となったウェブサイトの一部では、サードパーティベンダーが販売するいわゆる「同意管理プラットフォーム」(CMP)が使用されているにもかかわらず、ユーザーが同意の選択を変更または撤回するためのツールが欠落していることである。

これは、今年初めに行われたCPMの独立調査と一致している。そこには、違法行為の蔓延が指摘され、「不正なやり口と暗黙の同意が至る所に見られる…」と記されている。

DPCは「一部のウェブサイトには、不適切に設計された、あるいは意図的に偽装された可能性のあるCookieバナーおよび同意管理ツールも見られた」と報告に記し、インターフェースを「紛らわしく、誤解を招くものにする」ようにQuantcastのCPMを実装した例を詳細に説明している(ラベルのないトグルや、機能を果たさない「すべてを却下」するボタンなど)。

事前にチェックの入った同意を示すチェックボックスやスライダーの使用は珍しくなく、38社のうち10社の管理者が使用していた。DPCによると、そのようにして得られた「同意」は有効ではないという。

「管理者のほとんどのケースで、同意は“ひとまとめ”にされている。つまり、ユーザーは各Cookieが用いられている目的に対し個別に同意ができない」とDPCは記している。「Planet49社に下された判決で明確になったように、これは認められていない。Cookie1つ1つに対する同意は必要ないが、各目的に対する同意は必要である。同意を必要とする1つ以上の目的を持つCookieには、目的毎に同意を得なければならない」

またDPCは、Facebookピクセルといったトラッキングテクノロジーが組み込まれたウェブサイトも発見した。しかし、その運営者は調査に対しこれらを記載せず、かわりにHTTPブラウザCookieのみを記載した。これは、一部の管理者が自らのウェブサイトにトラッカーが組み込まれていることを認識すらしていないことだとDPCは見ており、

「一部の管理者においては、ウェブサイトに搭載されているトラッキング要素について認識しているかどうかすら明らかでない。小規模のウェブサイトで管理や開発を第三者に外注している場合は特に」と述べている。

報告書によると、「不適切な慣行、とりわけ、eプライバシー規制とその目的に対する不十分な理解」の観点からみると、今回の対象を絞った調査で最も問題があることが判明したのはレストランとフードオーダーセクターであった。(得られた情報が多くのセクタ―の中のごく限られたサンプルをベースにしているのは明白ではあるが)

ほぼ全面的に法への遵守がなされていないことが判明したものの、ヨーロッパの大手テクノロジー企業の殆どに対する主要規制機関でもあるDPCは、さらに細かいガイダンスを発行することでこれに対処している。

これには、事前にチェックが入った同意を示すチェックボックスを削除すること、Cookieバナーをユーザーの同意を「誘導」するように設計してはならないこと、また、却下オプションも同様に目立つようにしなければならないこと、また不可欠でないCookieをランディングページに設置してはならない、など具体的な項目が含まれる。ユーザーが同意を取り消す方法を常に用意し、また同意の取り消しを、同意をするのと同じように簡単に行えるようにすべきであることも定めている。

このような内容は以前から明確ではあったが、少なくとも2018年5月にGDPRが適用されて以来、さらに明確になっている。DPCは問題のウェブサイト運営者に体制を整えるためにさらに6ヶ月の猶予期間を与え、その後EUのeプライバシー指令と一般データ保護規則を実際に施行する見込みである。

「管理者がユーザーインターフェースや処理を自主的に変更しない場合、DPCにはプライバシー規制とGDPRの両方より与えられた強制執行力があり、必要に応じて、管理者の法律の遵守を促進するために最も適切な強制措置を吟味する」とDPCは警告している。

この報告書はヨーロッパのオンライントラッキング業界の最新動向をまとめたものである。

英国の個人情報保護監督機関(Information Commission’s Office: ICO )は何ヶ月にもわたり、ブログに厳しい内容を投稿をしている。同監督機関の昨夏の報告書によると、プログラマティック広告業界によるインターネットユーザーの違法なプロファイリングが蔓延していることが判明し、やはりこの業界に改革のため6ヶ月間が与えられた。

ただし、ICOは、アドテック業界の合法なブラックホールにはなんら措置を講じていない。今年初めにプライバシーの専門家の一人が述べたように、「英国での記録史上最大のデータ漏えいを終わらせるための実質的な措置」がなく、批判が集まっている。

英国が違法なアドテック業界の取り締まりに手をこまねいている「悲惨」な現状を、プライバシーの専門家らが批判

英国のデータ保護規制当局は、業界全般に見られる行動ターゲティング広告に関連する法律違反の取り締まりに再度失敗し、これをプライバシーの専門家から非難されている。ただし昨夏には、アドテック業界に違法行為が蔓延しているとの警告があった。

情報コミッショナー事務局(ICO)は、一部のオンラインのプログラマティック広告に含まれるリアルタイムビディング(RTB)システムがユーザーの機密情報を違法な形で処理している疑いがあることを以前にも認めていた。しかし、ICOは、法律への違反が疑われる企業に強制措置を講ずる代わりに、本日穏やかな文言を連ねたブログを投稿した ― その中で、ICOはこの問題は(さらなる)業界主導の「改革」によって修正可能な「組織的問題」だと述べた。

しかし、データ保護の専門家は、そもそもそうした業界の自主規制こそが、今日のアドテック業界に違法行為が蔓延した原因なのだと批判している。

一方アイルランドのDPCは、GDPRに関する苦情を数多く受けてはいるものの、FacebookやGoogleなどのテクノロジー大手のデータマイニングビジネス慣行に対する、複数の国際調査に着手する決断を下していない。これには人々のデータを処理するための法的根拠に関する調査も含む。

この汎EU規制が施行されてからの2年を振り返る審査が2020年5月に行われる。この審査が厳格な最終期限をもたらす可能性がある。

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(翻訳: Dragonfly)

英政府が新型コロナで苦戦するスタートアップ向けの330億円ファンド新設を発表

英国のテックスタートアップエコシステムからのプレッシャーが高まり、英政府は4月19日に多くの議論を経て「Future Fund(未来ファンド)」を新設する計画を発表した。英国の高成長企業、つまりスタートアップが十分な額の投資を受け、新型コロナウイルス危機の間も存続できるようにする。

まず、政府が税金を財源として合計2億5000万ポンド(約330億円)をBritish Business Bankを通じて新ファンドに拠出する。企業が投資として引き出すには、英国に登記された民間企業であること、民間の投資家から同額かそれ以上のマッチング資金を確保していること、過去5年間に少なくとも25万ポンド(約3300万円)を民間から調達していることが条件だ。「投資」の形式はコンバーチブルローンノート(株式に転換可能だが事前に転換価格が決まっていない貸付金)のようだ。

Future Fundは5月に設立される予定で、要件を満たすスタートアップに政府が12万5000ポンド(約1700万円)から500万ポンド(約6億7000万円)を投資する。ファンドの規模は引き続き「検討中」。つまり、将来もっと多くの税金が投入される可能性があるということだ。申請はまずは9月末まで可能だ。

一方、Future Fundのコンバーチブルローンが実際にどう機能するかについては混乱がある。英財務省の初期計画には「ローンが返済されない場合は株式に転換される」と記載されていたため、次の資金調達ラウンドで強制的に株式に転換されるのではなく企業に借入返済の選択権があると考える人もいる。

しかし批判する向きは、返済オプションがあるなら、英国の納税者はアップサイドはほとんどまたはまったく取れずに、ダウンサイドリスクに全面的にさらされると指摘している。理論的には、すばらしい業績を上げた企業は借入返済を選択する可能性が高く、すばらしくない業績の企業(または何とか破綻を免れている企業)は株式への転換を選択することになる。

簡単にいえばコンバーチブルローンノートは強制転換される方が有利だ。政府は、破綻しないスタートアップの株式を割安で取得し、破綻するスタートアップの株式と価値を相殺できる。

当初の議論がお粗末だったり、政府内で多くの人が返済オプションを主張したりしたにも関わらず、財務省の計画を知る情報筋によると、ありがたいことに、おそらく企業側がかなりのプレミアムを払うような特定の場合を除いて、株式への転換が強制されることになりそうだ。そのプレミアムは「100%返済プレミアム」で、借入が転換されずに返済される場合、納税者は利息も含めると2倍以上のリターンを得ることになる。

筆者は英財務省広報局に正式な説明を求めた。返信があり次第この投稿を更新する。なお、財務省が公表したタームシートで骨子の詳細がわかる。

約1000億円の研究開発支援資金

英政府はFuture Fundとは別に「研究開発を重点的に行う中小企業」を対象とする7億5000万ポンド(約1000億円)の支援も約束した。資金は、Innovate UK(イノベートUK)の助成金と融資に関する既存の制度を通じて提供される。

「国の研究開発助成機関であるInnovate UKは、英国の2500の既存支援先の要望に応じて最大2億ポンド(約270億円)の助成金と融資をすみやかに提供する」と英財務省は述べた。

「既存支援先へのサポートを厚くするため追加で5億5000万ポンド(約730億円)を用意した。また現在Innovate UKの資金を受けていない約1200の企業に対し17万5000ポンド(約2300万円)を提供する」

Innovate UKによる最初の支払いは「5月中旬」までに行われるとのことだ。

画像クレジット:Carlos Delgado / Wikimedia Commons under a CC BY-SA 3.0 license.

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(翻訳:Mizoguchi

フランスの配信サービスMolotovが教育用ビデオを提供

フランスでは3月に学校が休校になった。そこでフランスのスタートアップのMolotovは、自社のテレビ配信サービスを利用して幅広い年齢の子供向けコンテンツを提供する。特に、ビデオや演習などのコンテンツを提供するSchoolMouvと提携する。

Molotov for School」と名付けた新しいセクションから、子供向けのビデオを視聴できる。France 4、Arte、TF1、M6といったフランスのテレビ局の教育関連コンテンツが集められている。

このようなキュレーションの取り組みに加え、ユーザーはSchoolMouvのビデオもアプリから見ることができる。中学と高校のあらゆる科目をカバーする約1000本のレッスンがある。SchoolMouvの利用料金は通常は30ユーロ(約3500円)で、現在は15ユーロ(約1750円)に割引されている。

MolotovはSchoolMouvのビデオを5月15日まで無料で提供する。インタラクティブな演習は利用できないが、SchoolMouvのビデオを2020年5月まですべて視聴できる。クレジットカード情報を入力する必要はない。

さらにMolotovは、歴史上の出来事や科学の話題に関するドキュメンタリーも提供する。保護者は子供が学習についていけるように多くの時間をかけて教員と連絡を取り合っているが、Molotovは忙しい保護者の役に立つかもしれない。

Molotovはこの機に、現在1000万人の登録ユーザーがいることを公表した。2019年、通信・メディア企業のAlticeがMolotovの過半数の株式を取得すると発表した際、Molotovの登録ユーザー数は700万人だった。Alticeは過半数の株式を取得したが、Molotovは独立した企業として事業を継続している。

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(翻訳:Kaori Koyama)

英国テック業界の求人は新型コロナ影響で3月に31%減

新型コロナウイルス危機が続く中、英国テック業界の複雑な状況を示す雇用データが明らかになりつつある。これまで何カ月も何年も雇用は成長軌道にあったが、それがほぼ一夜にして変わったようだ。

TechCrunchが独自に共有された仕事サイトAdzuna(英国政府の「Find a job」サービスも運営している)とWorkinStartupsの数字によると、英国のテック分野トップ100社の雇用活動は3月に31%減少した。加えて、テック部門全体で2万5000人分の新規雇用が3月と4月で失われた。

また、いくつかのユニコーン企業が従業員を一時帰休とした一方で、テック分野トップ100社の50%以上が雇用を停止している。その結果、求人1件に対する応募者数は平均38人となった。これは英国のテック業界においては2008年の金融危機以来、最も激しい競争となる。

「私がこのデータで最もインパクトを受けたのは、欧州全体のテック企業の大半が現在の経済状況を非常に憂慮していて、VCからの『軍資金』があった企業やユニコーンステータスの企業ですら従業員を解雇・一時帰休としたり、あるいは新規採用をしていないという事実だ」とAdzunaの共同創業者Andrew Hunter(アンドルー・ハンター)氏は話す。

今後変わるであろう雇用のスピードに関しては、ハンター氏はVladimir Lenin(ウラジーミル・レーニン)の言葉「何十年も平穏な時間が流れ、それが数週間で崩れる」を引用し、世界が「現在時速500マイル(約804km/h)で動いている」と話す。

「雇用マーケットがここ数週間で急変しているのに驚いている」とハンター氏は語る。「英国の失業は今月倍増するだろうが、求人数は半分になっている。この相乗作用で痛々しいものになる」

調査ではまた、企業によって雇用活動に大きな差があることも示されている。例えばデータによるとAirbnb、GoogleそしてFacebookは明らかに欧州での採用を縮小している。Habito、Treatwell、Carwowなどは不動産テックやモビリティが現在直面している困難を反映して採用活動を全面的に一時停止しているようだ。

フィンテックユニコーンでは、現在TransferWiseが45人の求人を、Revolutは324人の求人を出しているが、新型コロナ危機前は2社の採用状況は同レベルだった。驚くことではないが、サブスク型のデリバリーサービスGousto、Hellofresh、Oddboxはいずれもかなりの需要増を受けて新規採用を拡大している。Amazonは1000人超、Deliverooも100人超を募集するなど雇用を増やしている。

「Monzoのような大企業は、今後数カ月後にわたって何千人も解雇するという苦しみを味わったり、夏にもっと思い切った対応策をとることを余儀なくされるよりも今、行動を起こした方が良いという考えのもとに従業員を一時帰休としたのだろう」とハンター氏は話す。

「トップ100社の次にくるテック企業の大半はかなり異なった状況にある。彼らにとっては生きるか死ぬかの状況であり、採用凍結や一時帰休は予防策ではなく必須の措置だ。基本的に現在の状況がどのくらい続くのか皆目検討がつかないというのは、スタートアップが今後6〜12カ月の資金調達で間違いなく苦労するということを意味している。危機に備え、コアではないイノベーションを一時停止するというのは現状では最善策のようだ」。

調査によると、テック企業のマーケティング、ソーシャルメディア、ITセールスの雇用が最も影響を受けており、募集は対前月比で60%超落ち込んでいる。想像できることではあるが、観光・旅行部門のテック企業ほぼすべてが採用活動を中止していることがデータで示されている。

それとは対照的にエンジニアリング求人は善戦しており、C++、Java、Ruby、PHPのデベロッパー採用は20%減にとどまっている。

「いくつかの異なる要素が雇用に作用していると考えている。現在のキャッシュランウェイ(キャッシュフローが赤字の間、手元資金で乗り切れる期間)でバーンレートをコントロールし、今後3〜6カ月で立ち直れるかどうか、などだ。そのため資金調達やキャッシュディシプリンがものをいう。もし私が旅行予約スタートアップを現在経営しているとしたら、例え銀行預金残高が健全なものだったとしても、最悪の事態に備えるだろう」

その一方でハンター氏は、VCやCEO、創業者たちは今回の危機により可能な限りの「ヘッジ」を余儀なくされ、回復や危機の後にくる上向き局面を描こうとしているが、実際のところこの危機がいつ終わるのか誰もわかっていないと指摘する。

「V字型経済回復とはならないだろう。しかし景気回復が始まるときにいい位置につけることができる企業が最も速く成長し、最大のマーケットシェアを握るはずだ。だからこそ差し当たって1、2年の計画にさほど大きな変更を加えず、活用できそうな機会をつかんでものにしようとしている企業がいる。これはAyrton Senna(アイルトン・セナ)の言葉にある通りだろう。『晴れた日には車15台を追い抜かすことはできないが、雨の日だったらできる』」

画像クレジット: Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

フランス競争当局がGoogleにニュース再利用の対価支払いを命じる

フランスの競争当局は、コンテンツのスニペット(Googleの「ニュース」アグリゲーションや検索結果に表示される抜粋)再利用に伴う対価支払いについて、掲載元と交渉するようGoogle(グーグル)に命じた

フランスは欧州議会でで著作権法の改正案が可決されたことを受け、ニュースに関する著作隣接権を国内法として施行した最初のEU加盟国となった。

さまざまな物議を醸している改正案の項目には、Googleニュースなどのアグリゲーターが切り取って表示するニュース記事のリード文などを適用対象とする著作権拡張規定が含まれている。欧州議会で2019年3月に著作権改正案が採決に付されたことを受け、掲載元の権利を拡張するフランスの国内法が2019年10月に施行された。

ドイツやスペインなどのいくつかのEU加盟国では、ニューススニペットの使用を対象とする同様の法案が先に可決されていた。だが、各国の議員らが望んだのとは裏腹に、Googleに支払いを強制するには至っていなかった。

例えば掲載元への支払いが義務付けられていたスペインでGoogleは、「Googleニュース」サービスから全面的に撤退した。だが、EU改正案のためロビー活動を行った掲載元側は、より広範に圧力をかけてGoogleへの締め付けを強めようとした。同社はこの種のコンテンツに対する支払いに関して厳しい姿勢を貫いてきている。

Googleは2019年9月のブログ投稿で、あからさまな皮肉は加えずに、詳細にこう書いている。「当社は広告を売る。検索結果ではない。Googleの広告は明確にそれとわかるよう表示されている。検索結果のリンクをクリックしたときに掲載元に支払いを行わないのは、1つにはこのためだ」

またEuractivが2019年に報告したように、フランスでもGoogleニュースのコンテンツの表示方法が変更されている。見出しとURLのみを表示し、他のほとんどの市場で表示されるテキストスニペットは外している。

フランスにおけるGoogleニュースのコンテンツ表示のスクリーンショット

しかし、フランスの競争当局はGoogleの戦術を一蹴した。支払いを拒否するためのGoogleの一方的なスニペット表示の撤回は、市場での支配的地位の乱用として成立する可能性が高いとの見方だ。当局は「深刻で直接的な損害を報道業界に与えた」と記載した。

Googleは欧州の検索市場で支配的な地位を占めており、市場シェアは90%以上だ。

当局は、Googleの「掲載元が無料の許可を示さない限り、さまざまなサービス(Google検索、Googleニュース、ディスカバー)内でより長い形式での記事の抜粋、写真、インフォグラフィック、ビデオの表示は行わない」とした一方的な措置を不公正な行為だとした。

「記事掲載元の大多数は、実際には保護されたコンテンツの使用と表示についてGoogleにライセンスを付与している。これについて交渉は行われず、Googleから対価を受け取ることもない。さらに、Googleの新しい表示ポリシーの一環として、掲載元や報道機関が付与したライセンスによって、以前よりも多くのコンテンツをGoogleが利用できる可能性が広がった」とフランス語で書かれている(筆者がGoogle翻訳で翻訳した)。

「このような条件下で、当局は実態に言及した上で、コンテンツの再利用に関する対価支払いについて誠実に協議するようGoogleに求める暫定措置命令を要求した」。

こうして緊急命令が出された。Googleには3カ月の猶予が与えられ、報道機関や掲載元との間で、コンテンツの一部の再利用に関する対価支払いの交渉を「誠実に」行うことになった。

現段階の調査でGoogleの乱用行為として当局が疑っているのは、不公正な取引条件の強制、脱法行為、差別的行為(すべての掲載元に対して支払わないという一方的なポリシーによる)だ。

命令の下で、Googleは交渉期間中、掲載元の希望に従ってニューススニペットを表示する必要があり、交渉プロセスを通じて合意された条件は法律施行日から(つまり2019年10月から)遡及適用される。

Googleはまた、意思決定をどう実行に移しているかに関する月次レポートを送る必要がある。

「この命令は、交渉を経てGoogleが実際に支払いの提案をすることを求めている」と付け加えている。

TechCrunchはフランス競争当局(FCA)の動きについてGoogleにコメントを求めた。同社のニュース担当副社長であるRichard Gingras(リチャード・ジングラス)氏は、声明で次のように述べている。「欧州著作権法が昨年フランスで施行されて以来、ニュースへのサポートと投資を増やすために掲載元と協力してきた。FCAの命令を精査するが、交渉を続ける間はFCAの命令に従う」。

Googleの広報担当者はまた、2019年の同社のブログ投稿に言及し「当社はすでにニュースの掲載元と協力して状況の把握に努めている」と強調した。

Googleはブログ投稿で、ニュースサイトへのトラフィック誘導、多くの掲載元が利用する広告技術の提供、「インターネットとともに出現したさまざまな出版市場に適した新製品やビジネスモデルを世界中のニュース掲載元が開発するのを支援するため」に3億ドル(約330億円)を注ぎ込んだ投資ビークルついて説明している。

暫定措置は欧州の競争当局が最近になって食器棚の奥から引っ張り出してきて、ほこりを払い始めた独占禁止法上のツールの1つだ。

EUの競争責任者であるMargrethe Vestager(マルグレテ・ベスタジェ)氏は2019年10月、チップメーカーのBroadcom(ブロードコム)に対し暫定命令を出し、同社の主要顧客6社との合意に基づく独占権条項の適用を停止させた。本件は引き続き調査を受けている。

競争委員会でEUのデジタル戦略を統括するエグゼクティブ・バイスプレジデントでもあるベスタジェ氏は、デジタルエコノミーの急速な発展に歩調を合わせるため、暫定命令を執行手段としてもっと活用すると述べた。これは、インターネット時代における市場での乱用削減に当局が効果的に対応できていないという懸念に対応する動きだ。

フランスの競争当局は、Googleの掲載元コンテンツの扱いに関する調査に関して、命令に基づく暫定的な保護措置は「実態」に関して決定が下されるまで有効であると述べている。

画像クレジット:Beata Zawrzel/NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

モバイル決済アプリのLydiaが医療機関などに寄付できる機能を導入

フィンテックスタートアップLydia(リディア)は本拠地のフランスで330万人ものユーザーを抱える、同国を代表するモバイル決済アプリだ。それゆえに同社は、当初2020年夏のデビューを予定していた機能のリリースにこの10日間ほど懸命に取り組んできた。その機能とは、チャリティーや病院への寄付を行うためのものだ。

Lydiaユーザーは米国時間4月6日、17のチャリティーから選んでお馴染みのLydia決済手順で送金できるようになった。友達や家族に送金するような流れだ。

寄付は0.5ユーロ(約59円)から可能で、そのつど完了する。定期的な寄付の設定やまとめた寄付は不可だ。

Lydiaはつい最近、少額融資や携帯電話保険、火災保険・公共料金支払いのための無料クレジットといった金融商品のマーケットプレイス「the market」を導入した。マーケットのメニューはプロフィールタブの中に埋もれていた。そして現在、同社はメニューをユーザーアカウントと決済履歴の横のタブに置かれており、その中に寄付のボタンが加わった。

別の方法で寄付することもできる。決済画面で金額を入力して「次へ」をタップするときに、いつもの受取手が並んでいるリストからチャリティを選んで送金することができる。この機能は現在Android端末で利用でき、間もなくiOS端末でも使えるようになる。iOSユーザーは目下、the marketのメニューからのみの利用となる。

Lydiaは17のチャリティを選んでいるが、今後さらに増える見込みだ。リストには公立病院(パリ、ナント、ストラスブール、グルノーブル、リール、ニース)、健康にフォーカスしているチャリティ、そして一般的な公益チャリティ(フランス財団、Fondation 101、世界の医療団、Epic、Action contre la Faim、フランス赤十字社、アベ・ピエール財団、対がん連盟、Réseau Entourage、La Maison des Femmes de Saint-Denis)がある。

もしあなたがLydiaユーザーでなくても、ウェブブラウザからクレジットカードやデビットカードでLydiaの決済を使うことができる(もちろんチャリティのウェブサイトから直接寄付しても構わない)。

また多額の寄付をし、所得税で控除を受けたい場合は、チャリティに直接依頼しなければならない。Lydiaは仲介するだけなので控除を受けるための書類を発行できない。

Lydiaは最終的にはチャリティに寄付する際、その額から手数料を差し引くつもりだ。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)危機対応として6月30日まで手数料を免除する。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

暖房としても使えるコンピューターサーバーで7億円超を調達したQarnot

フランスのスタートアップQarnotは、資金調達ラウンドで650万ドル(約7億500万円)の資金を獲得した。同社はちょっと変わった機能を持ったヒーターとボイラーを製造している。それらはコンピューターを搭載しているのだ。そしてコンピューターを熱源として使う。さらにQarnotは、そうしたちょっと普通ではないサーバーの上でタスクを走らせて、そのコンピューティングパワーも活用する。

今回の資金調達ラウンドに参加したのはBanque des Territoires、Caisse des Dépôts、Engie Rassembleur d’Énergies、A/O PropTech、それにGroupe Casinoの各社だ。

データセンターを設計する際には、電気をコンピューティングリソースと熱に変換することになる。データセンターは、強力な冷却メカニズムとして熱を取り除くための巧妙な新しい機構を常に求めている。

Qarnotのデータセンターは、熱と戦うのではなく逆に熱を利用している。同社が最初に作ったのはコンピューティングヒーターだった。つまり、サーバー機能付きの電気ヒーターだ。同社はこうした機器を、新築の建物の暖房器具を探している建設会社に売り込んでいる。

こうした建物に住んでいたり、そこで働いている人たちはヒーターを直接操作したり、モバイルアプリを使って暖房をコントロールできる。現在、約1000戸の賃貸住宅がQarnotによって温められている。

コンピューティングパワーの利用についてはBNP Paribas、Société Générale、Natixisといった企業が、それぞれのニーズに応じてサーバーをレンタルしている。またIllumination Mac Guffでは、このプラットフォームを使用して、アニメーション映画の3Dモデルをレンダリングしている。

暖房は季節の影響を受ける。そこでQarnotはスケーラブルなボイラーシステムも設計している。このボイラーでは、CPUサーバーまたはCPUとGPUを組み合わせたサーバーを1つにまとめている。さらにQarnotはGroupe Casinoと共同で、コンピューターラックで倉庫を温めるベンチャーも創立した。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ビデオ会議アプリのダウンロードが新型コロナ需要で過去最多の週6200万回

在宅勤務の推奨やソーシャルディスタンス(社会的距離)の励行、政府によるロックダウンなどにより、ビデオ会議アプリの需要が業務使用、個人使用のどちらでも増えている。その結果、30日に発表されたApp Annieの最新レポートによると、ビジネス会議アプリは3月に過去最多の伸びをみせている。3月14〜21日の週にはダウンロード数は6200万回を記録した。また、ソーシャルネットワーキングのビデオアプリHousepartyは、ロックダウンや自宅隔離が広がる欧州で空前の伸びとなった。

そうした成長は予想されていたが、App Annieのレポートではこうしたアプリがどれほど多くの新規顧客を新型コロナウイルスの影響を受けている期間に獲得しているのかを具体的に示している。

たとえば、iOS、Google Playでのビジネスアプリの3月上旬のダウンロード数は6200万回だったが、この数字は前週から45%増だった。また、アプリストア全体の中でその週に最も成長したカテゴリーだった、とレポートにはある。2019年のビジネスアプリダウンロード数の週平均からは90%増だった。

こうした成長の大半は、GoogleのHangouts Meet、Microsoft TeamsそしてZoom Cloud Meetingsなどによるものだ。

2月と3月に世界で最もダウンロードされたのはZoomで、特に米国、英国、欧州では引き続きかなりダウンロードされている。

記録的なダウンロード数となった週の数字は、米国における2019年第4四半期の週平均の14倍だった。英国においては第4四半期の週平均の20倍超がダウンロードされ、フランスでは22倍、ドイツでは17倍、スペインでは27倍そしてイタリアではさらに多い55倍だった。

アプリストア調査会社のSensor Towerのレポートでは、米国でのZoomのダウンロード回数は3月中旬に増えているが、3月9日の週以前に米国App Storeでの検索ワードトップ100の中に「Zoom」は入っていないと指摘している。つまり多くの新規ユーザーに、おそらく仕事メールでのリンクシェアやカレンダーでの招待、イントラネットサイトなどっでアプリのインストールページが直接送られたことを示している。

また3月には、GoogleのHangouts Meetも特に英国や米国、スペイン、イタリアで多くダウンロードされ、Q4の週平均ダウンロード数との比較ではそれぞれ24倍、30倍、64倍、140倍だった。

Microsoft Teamsもそこまでではないもののダウンロード数は増加し、Q4の週平均との比較ではスペイン15倍、フランス16倍、イタリア30倍だった。

消費者アプリをみると、 Z世代の間で人気のソーシャルビデオ会議アプリのHousepartyが欧州などで急成長した。これにはネットワーク効果が貢献したようだ。友達や家族がHousepartyを利用するようになるほど、このアプリはより役に立つ。そうして使用の輪はさらに広がる。イタリアでは3月21日までの1週間で、Housepartyのダウンロード数は2019年第4四半期週平均ダウンロード数の423倍にものぼった。

スペインではHousepartyの成長はより顕著で、3月21日までの1週間のダウロード数は2019年Q4の2360倍だった。それまではスペインではHousepartyはさほど浸透していなかったことも記すに値するだろう。COVID-19流行がなければ足掛かりを築くことはなかったはずだ。

ビジネス会議アプリと異なり、Housepartyはビッデオチャットをより個人的でソーシャルな体験にすることを目的としている。アプリを立ち上げると、あなたが話せる状態であること、誰がオンラインなのかが表示される。これは他のメッセージアプリと似ている。しかし参加できるライブのパーティや遊べるアプリ内ゲームが用意されていて、つまりこのアプリはバーチャルオフィス会議のためのものではない。

もちろんこの時期、ビジネスアプリだけがブームになっているわけではない。

Google ClassroomやABCmouseといった教育アプリ、それからInstacartのようなグローサリー配達アプリの使用も3月に急増している。

「社会的隔離の期間がどれくらいになるのか見通せない状況に直面し、ビデオ会議アプリは我々の毎日の習慣にかなりの影響力を及ぼす可能性を持っている。地理的バリアをなくし、かなりシームレスに働いたり社会的つながりを維持したりできる能力を持つ」とはApp Annieはレポートに記している。そして「世界にとって前代未聞の状況であり、モバイルにとってかなりダイナミックな時だ。我々は文字通り全部門で消費者行動の変化を目の当たりにしている」と結んでいる。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

言葉もわからない旅先での体調不良に困る旅行者と地元医師をつなぐAir Doctorが約8.4億円を調達

旅行者と旅先の医師をつなぐ、ヘルステックスタートアップのAir Doctor(エア・ドクター)が、シリーズAで780万ドル(約8億4000万円)を調達した。ラウンドはKamet Ventures(AXAが支援するベンチャービルダー)と、The Phoenix Insurance Companyが主導した。

2016年に設立されたAir Doctorは、海外で体調を崩し緊急ではないアドバイスや処置が必要な旅行者の力になることを目的とするスタートアップだ。同社は旅行者が旅行保険または福利厚生制度などを介してアクセスできる、ローカルな民間医師のネットワークを作り上げた。このプラットフォームは5大陸の42カ国で利用することができ、場所、言語、専門分野、および費用で検索できる。

「Air Doctorは創業者チーム自身の旅の経験から生まれました。外国で病気になって、誰に連絡すべきなのか、どうすれば必要な対応を受けることができるのかがわからず、恐ろしい気持ちになったからです」と語るのはAir DoctorのCEOで共同創業者のJenny Cohen Derfler(ジェニー・コーエン・ダーフラー)氏だ。

「製品開発責任者のYam Derfler(ヤム・ダーフラー)は、南アメリカを8カ月間旅行した際に、このアイデアを思い付きました。別々のタイミングで病気になった彼と彼の友人は、英語を理解する医師を見つけることが多く、まったくお手上げだと感じたのです」。

Air Doctorが当初、旅行中の患者に焦点を当てていたが、ダーフラー氏はすぐにこれは、旅行者一般を取り巻く医療エコシステム全体に影響を与えるものであることに気がついたと語る。

「地元の医師たちには、まったく新しい個人顧客のグループにアクセスするための信頼できる方法がありませんし、保険会社は面倒で問題のある医療サービスに莫大なお金を浪費していて、医療サービスに関連した顧客体験を向上させたいと思っています。そして旅行代理店は自社のパッケージに信頼できるサービスをバンドルしたいと思っているのです。すべての関係者にメリットをもたらすプラットフォームを構築する必要があることが、明らかになったのです」と彼女は言う。

Air Doctorは、医療専門家のグローバルネットワークとデジタルプラットフォームを組み合わせて、保険会社のコストを削減し、クレジットカード会社や携帯電話会社に付加価値の高いソリューションを提供することができる。ケア提供側から見た場合には、このシステムは医師の収入とデジタルでのプレゼンスを高めると同時に、海外旅行者にその母国語で「最高レベルの医療」を提供できると同社は主張している。

「私たちの目的は、世界中のすべての旅行者が、必要なときに経験豊富な地元の医師や専門家に連絡できるようにすることです。そうすることで、病院や観光客向けクリニックに行かなくても済むお手伝いができるのです」とダーフラー氏は付け加えた。

最初にAir Doctorの顧客となったのは、イスラエルの大手保険会社の1つであるThe Phoenixだ。同社はその後、このシリーズAラウンドに参加し投資を行った。The Phenixは、Air Doctorを自社の顧客に紹介することにより、請求コストを削減して損失率を削減することができた。これは救急サービスではなく外来診療所に患者を誘導することで支払いを削減できたからだ。

「私たちの最大のセールスポイントは、コントロールです」とAir DoctorのCEOは強調する。「旅行中に病気になったときには、自分の状況をコントロールできていると感じたいものです。私たちのオンラインプラットフォームは、患者が自分のニーズと好みに最も適した医師を選択できるように、幅広く地元の開業医に関する豊富な情報を提供することによって、患者が解決策を迅速に見つけるのに役立ちます。最も重要なのは、母国語を使った医療サービスへのアクセスを支援することです。これは、自分の状況をコントロールできると感じるという点で、最も大切なことの1つです」。

今回の最新のラウンドは、Air Doctorが2018年7月に行った310万ドル(約3億3000万円)のシードラウンドに続くものだ。今回の新たな資金は、Air Doctorの医療ネットワークと研究開発能力を強化し、保険、通信、そしてクレジットカード業界を横断した国際的な事業拡大のために使用される。

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(翻訳:sako)

YouTubeが新型コロナで欧州における動画視聴のデフォルトを標準画質に

YouTubeは、欧州でのストリーミング画質を標準設定に切り替えた。

TechCrunchは米国時間3月18日に、YouTubeにそうした措置を取る予定があるか尋ねた。そして3月19日に、広報担当がその措置を実行したことを明らかにした。この動きは先にReutersが報じた。

新型コロナウイルス危機下にあり、欧州委員会がストリーミングプラットフォームに対しインターネットインフラへの負荷を抑制するよう求めていることに対する一時的な対応となる。

ユーザーはビデオの画質をマニュアルで調整できるが、それでもデフォルト設定はパワフルな手段であり、通信量はだいぶ変わってくる。

YouTubeの広報は設定の切り替えを認め、TechCrunchに以下のような声明を送ってきた。

人々は、信頼できるニュースや学習コンテンツを探すために、あるいはこの不透明な時に誰かとつながることを求めてYouTubeを訪れる。使用のピーク到達はまだ数えるほどしかないが、ネットワークの使用容量を抑制するためにシステムを自動的に調整する手段がある。我々は欧州中の当局(Ofcomを含む)、政府、ネットワークオペレーターと連絡を取っていて、英国ならびに欧州の全通信において一時的に標準画質をデフォルトとする。ユーザーに快適な体験を提供しつつ、システムへの負荷を最小化する取り組みを続ける。

Netflixも3月19日に、同様の理由で欧州において標準画質を30日間デフォルトとすることを発表した。

インターネットマーケットを担当するEU委員のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏はこのところ、インターネットインフラへの負荷抑制における協力を求めてプラットフォームの幹部たちと協議していた。欧州では多数の人が自主隔離の一環として自宅に留まることを推奨されたり義務づけられたりしている。

欧州委員会は、デジタルエンターテインメントサービスの需要が爆発的に増えた場合にオンライン教育やリモートワークに影響が出ることを危惧している。そのため、プラットフォームに協力を求め、ユーザーにはインターネットインフラへの増大しつつある負荷を管理するよう求めている。

ブルトン氏は新型コロナウイルス危機下にある間、ビデオの画質を下げてもらうために、GoogleのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏とYouTubeのCEOであるSusan Wojcick(スーザン・ウォジスキ)氏と面会した。

そして今日、ブルトン氏はYouTubeの動きを歓迎している。「何百万という欧州の人々が、テレワークやオンライン学習、娯楽を可能にしているデジタルプラットフォームのおかげで、ソーシャルディスタンス(感染予防策として他人との物理的距離を保つこと)策を受け入れている。YouTubeがEUにおける通信のデフォルト設定を標準画質にすることで、COVID-19危機最中でもインターネットがスムーズに機能するようGoogleが協力してくれたことを歓迎したい。ピチャイ氏とウォジスキ氏が示した力強い正義に感謝する。我々はともに事態を注意深く見守る」とブルトン氏は声明で述べた。

Googleの広報は欧州での通信のピークにはこれまでのところ大きな変化は見られないが、多くの人が家にこもるようになって使用パターンに変化がある、と語っている。利用時間が拡大し、使用量のピークはいくぶん下がっている(同社は常に通信データをGoogle Traffic and Disruptions Transparency Reportで公開している)。

他の大手ソーシャルプラットフォーム同様、YouTubeも新型コロナウイルスに関連する誤情報の拡散に使われている疑いがあるとして調査を受けてきた。

しかしGoogleは、偽のコンテンツを抑制し、健康情報に関する当局のソースを目につきやすいようにするなど、積極的に取り組んでいるようだ。例えばCOVID-19の情報が入手できるよう、世界保健機関(WHO)や地元当局のホームページにユーザーを誘導している、とYouTubeの広報は述べている。

また、教育や情報提供目的での広告枠を政府やNGOに提供しているとも語った。これは、公衆衛生にとって有害なものとなりえる誤情報からユーザーを守るための方策をピチャイ氏が検討しているとの3月初めのブログ投稿と関連している。

広報はさらに、YouTubeは衛生当局のガイダンスに従うよう、そして人々に家に留まるよう促すキャンペーンを欧州で間もなく展開するとも付け加えた。

GoogleのCOVID-19流行への対応はかなり迅速だ。例えば、ワクチンを否定するコンテンツを除外する動きを2019年取り始めているが、このような人々の健康にとって有害となりえるような他の種類のコンテンツに対するアプローチよりも、COVID-19の脅威に対して同社はかなり積極的に取り組んでいるようだ。

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(翻訳:Mizoguchi

ゲームの人工音声をより「人間らしく」するSonanticが約2.8億円を調達

ゲームやそのほかのエンターテインメントの人工音声を「人間らしく」するイギリスのスタートアップであるSonanticが、230万ユーロ(約2億7680万円)の資金を調達した。

EQT Venturesがこのラウンドをリードし、前からの投資家であるEntrepreneur First(EF)とAME Cloud Ventures、そしてHorizons VenturesのBart Swanson(
バート・スワンソン)氏が参加した。なお、Twitchの共同創業者Kevin Lee(
ケビン・リー)氏も、初期の投資家の1人だ。

2018年にCEOのZeena Qureshi(ジーナ・クレシ)氏とCTOのJohn Flynn(
ジョン・フリン)氏は、ロンドンで行われたEFのインキュベーター事業に参加して同社を創業した。以前はSpeak Aiという社名だったSonanticは、世界のゲームとエンターテインメントの音声技術に革新をもたらしたいと考えている。同社は開発した人工音声技術を、ゲームスタジオがオンデマンドで使える「表情豊かでリアルな演技音声」と呼んでいる。すでにAAA(トリプルエー)のゲームスタジオ10社あまりとの研究開発パートナーシップを進めている。

Sonanticが解決する問題について尋ねると、クレシ氏は次のように答えている。「ゲームに会話を入れる工程は時間がかかり、高価で労働集約的な作業だ。この工程はキャスティング、スタジオの予約、契約、スケジューリング、編集、監督などなど、大量の調整作業を要する。音声つきのビデオゲームは、頻繁に変わるゲームデザインに付き合わされて1本のゲームが完成するまでに10年かかることもある。そのたびにゲームデベロッパーは、同じような繰り返し作業を強いられる。しかも途中で予算オーバーになったり、ゲームのリリースが遅れたりすることもある」

こういった問題を解決するためにSonanticは、クレシ氏が「オンデマンドで動的な演技音声」と呼ぶ技術を提供する。この技術は、キャラクターに求められる性別や個性、アクセントの特徴、声色、感情などに基づいて正しいタイプの声を作り出す。同社の人間の声に近いテキスト音声変換システムはAPIで提供され、ユーザーはGUIのツールで合成声優を編集し、変化させ、まるで人間の俳優に行うように監督(演技指導)する。

そのためにSonanticは、俳優たちといっしょに彼らの声を合成し、その際の演技指導も行う。「さらにその声のデジタルバージョンを提供することで、彼らの受動的収入源になり、俳優たちの助けにもなる」とSonanticのCEOは説明する。

経費を下げ、すぐに利用可能な音声モデルを用意していることで、Sonaticはゲームスタジオが短期間で繰り返しの作業が安価でできるようにしている。同社のSaaSとAPIによりいろんな音声演技を作って試すことも簡単で、ストーリーの細かい変更や編集、そして監督も楽にできるようになる。

一方でSonanticは怒り、悲しみ、喜びなどさまざまな感情のこもった音声を作り出す同社の技術をいずれ一般公開したいと考えている。同社によるとそれは、本当に有能な本物の俳優や声優にしかできない技能だそうだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ガソリンを車まで宅配するZebra Fuelが突然ロンドンの営業を停止

ロンドンのZebra Fuel(ジブラ・フューエル)は、あなたの車に燃料を「宅配」ではなく「車配」する。Robin(ロビン)とSaul Klein(ソール・クライン)兄弟のLocalGlobeや、Brent Hoberman(ブレント・ホーバーマン)氏のFirstminute Capital、そしてZooplaの創業者であるAlex Chesterman(アレックス・チェスターマン)氏といった投資家に支援されていた同社だが、突然顧客に「ロンドンでの配達をやめる」と告げた。これが完全な廃業を意味しているのか、それはまだわからない。

米国時間11月26日に顧客に送られたメールで同社は「ご不便をおかけしたことをお詫び申し上げます。これまでのご愛顧を感謝いたします」と言ってるだけで、詳細は何も述べていない。単純に困ったねとしか言えない。

Zebra Fuelの社員がポストしたツイートは(その後削除されたが)、廃業を暗示している。そのツイートには「昨晩Zebra Fuelはすごいことをした。次の機会にまたお会いしましょう」と書かれていた。同社の共同創業者であるReda Bennis(レダ・ベニス)氏にメールしたが、まだ返信はない。同社が前に使っていたPR代理店にもコンタクトしたので、何かがわかり次第お伝えしよう。

2016年にベニス氏とRomain Saint Guilhem(ロマン・サン・ギレム)氏が創業したZebra Fuelは、車の給油をオンデマンドで便利にしようとした。ただし事前予約制だから、本当のオンデマンドではない。ロンドンっ子がが同社のスマートフォンアプリで時間と場所を指定して予約すると、Zebra Fuelのミニバンのどれかと訓練された社員がやってきて車に給油してくれる。

同社のシード資金調達のときベニス氏は、ガソリンスタンドに並ぶのは不便で時間の無駄と思ったのが起業の動機だと語っていた。しかもドライバーは余計な往復ドライブをしなければならないし、待ってる間エンジンをふかしていなければならない。

Zebra Fuelのように燃料が車のところまで来てくれれば、そしてそれが大規模に普及すれば、無駄な排気ガスを減らし、渋滞も減るだろうというのが同社のピッチだった。

配達でありながら都心部のガソリンスタンドと値段が変わらないし、安いこともあるのは、スタンドと同じ卸売価格で同社の巨大タンクローリーにガソリンを仕入れ、同社のミニバンに小分けして配達しているからだ。ミニバンは、仕入れにはまったく関わらない。

以下は顧客に送られたメールの全文だ。

親愛なるZebraのお客様,
残念ながら私どもは、Zebra Fulelが今後ロンドンで燃料の配達をしないことをお伝えしなければなりません。

ご不便をおかけすることを深くお詫びします。これまでの私どものサービスを、気に入っていただけましたことを、期待いたします。

心を込めて,
The Zebra Team

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

データウェアハウスOSを提供するDataformが2億円超を調達

Googleの元社員たちが始めた英国のDataformは、企業によるデータウェアハウスの管理を容易にする。同社はこのほど、LocalGlobeがリードするラウンドで200万ドル(約2億1600億円)の資金を調達した。この投資には、多くの無名のエンジェル投資家たちが参加した。同社はシリコンバレーのアクセラレーターY Combinatorを、2018年の後期に卒業した。

Googleの社員だったLewis Hemens(ルイス・ヘメンス)氏とGuillaume-Henri Huon(ギョーム・アンリ・フォン)氏が創業したDataformは、データの豊富な企業がデータウェアハウスに保存したそれらのデータからインサイトを取り出せるようにする。データをマイニングしてインサイトやビジネスインテリジェンスを取り出すことは、通常ならデータエンジニアとアナリストのチームを必要とする。Dataformはそのタスクを単純化して企業がもっと高速かつ安価にそれができるようにし、データの有効利用を可能にする。

フォン氏は次のように説明する。「企業はこのところますます多くのデータを作り出して、それらをGoogle BigQueryやAWS Redshift、あるいはSnowflakeのようなクラウド上のデータウェアハウスに集中的に保存している。でも、BIツールを使って分析するなど、それらのデータを利用するためには、大量の生データをノイズのない、信頼性のある、アップツーデートなデータセットに変換しなければならない」。

「しかしデータの担当チームには、ウェアハウスのデータを有効に管理するためのツールがないことが多い。その結果、彼らは独自のインフラストラクチャを作ることとデータパイプラインの管理に多くの時間を取られている」、と彼は言う。

フォン氏によると、Dataformはデータウェアハウスにあるデータを管理するための完全なツールキットを提供して、その問題を解決する。それによりデータチームは毎日もしくはもっと頻繁に、新しいデータセットを作ってデータセット全体を自動的にアップデートできる。その処理全体をひとつのインタフェイスから管理でき、新しいデータセットのセットアップは5分ぐらいでできる。また同社は、これまでのベストプラクティスを使ってデータの管理を助けるオープンソースのフレームワークを提供している。その中には、再利用できるファンクションや、テストツール、依存性管理機能などがある。

今回のシード資金は、営業と技術両面の強化と拡大に充てられる。また、製品開発にも充当される。収益はSaaSの利用料金から得られ、通常はユーザーの人数に対して課金される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa