インドのミレニアル世代に投資の機会を与える「Jar」に投資家が注目

インドでは何億人もの人たちが銀行口座を持っているが、金融商品に投資している人はごくわずかだ。

例えば投資信託や株式に投資しているの人は3000万人に満たない。近年いくつかのスタートアップが、ユーザー、特にミレニアル世代のユーザーが投資しやすくなる環境をつくっているが、それでも数字はあまり変わっていない。

そんな中、あるインドのスタートアップがこの課題に挑戦するソリューションを見つけたと信じてサービスを立ち上げ、すでに良い感触を掴んでいる。

モビリティのスタートアップであるBounceの元ディクター、Nishchay AG(ニシュチェイ・エージー)氏と、Marsplay(マーズプレイ、後にFoxyに売却)の共同ファウンダーであるMisbah Ashraf(ミスバー・アシュラフ)氏は、2021年初めにJar(ジャー)を設立した。

公開から3カ月の社名を冠したAndroidアプリを使って、ユーザーは最低1インドルピー(約1.5円)から貯蓄を始めることができる。

Jarのユーザーは複数の方法で投資が可能で、数秒で始められる。アプリは電子決済のPaytm(ペイティーエム)と組んで定期的支払いを設定できる(PhonePe[フォンペ]のサポートも開発中)。同社はUPI 2.0定期支払いをサポートした最初のスタートアップで、貯蓄額は1日あたり1~500インドルピー(約1.5〜753円)の間で設定できる。

Jarアプリは、ユーザーのテキストメッセージを見て、それぞれの取引に応じて微小な金額を貯蓄する。例えばユーザーがある取引で31ルピー(約46.7円)使うと、Jarアプリは金額を10の位に切り上げて(この場合40)差額の9ルピー(約13.6円)を貯める。ユーザーは自分でアプリを立ち上げて自由な金額を投資することもできる。

ユーザーが一定金額をJarに貯めると、アプリはそれをデジタルゴールド(金)に投資する。

同社が金投資を使うのは、南アジア市場の人々がこの資産クラスに絶大な信頼を置いているためだ。

インドの人々には金に魅せられる独特の気持ちがある。地方の農民から都市の労働階級まで、ほぼすべての人がこの黄色い金属を隠し持ち、結婚式で宝石を誇示する。

インドの世帯には推定2万5000トンの貴金属がしまい込まれており、その価値はこの国の名目GDPの約半分にあたる。インドのこうした金需要によって、この南アジアの国は金の世界最大級の輸入国になっている。

JarのAndroidアプリ(画像クレジット:Jar)

「もし、次の5億人に機関投資を勧めることを考えるなら、市場に存在するその他の手段の有効性について説明することが私たちの責務です」とニシュチェイ氏は言った。

「私たちはお客様が最も信頼している道具を提供します、それが金です」と彼はいう。スタートアップはいずれ他の投資方法もいくつか提供する計画だ。

ファウンダーの2人は数年前、MarsPlayとBounceが何かシナジーを起こせないか両者が探っていたときに出会った。彼らは連絡を取り続け、2020年数多くの会話の中で、どちらも投資についてよく知らなかったことに気づいた。

「点と点が繋がり始めたのはその時でした」とミスバー氏はいい、子ども時代の話を語った。「私はビハール州の小さな町、ビハール・シャリーフの出身です。子ども時代、家族は深刻な借金に苦しんでいて、それは誤った金銭判断と貯蓄のないことが原因でした」と彼は語った。

「2人とも、典型的中流家庭がどんな道をたどるのかを理解しました。この階級の人たちは過去に何の手段をもったこともありませんが、その願望には終わりがありません。このため、一度稼ぐようになった人は、すぐに全部使ってしまいます」とニシュチェイ氏は言った。

「市場には、この人たちがスタートを切るのを手助けする製品が必要です」と彼はいう。

米国市場でAcorn(エイコーン)とStash(スタッシュ)がやっていることに似たそのアイデアは、受け入れられ始めている。アプリはすでに約50万ダウンロードを数える、とファウンダーたちはいう。投資家も注目している。

9月1日水曜日、Jarは450万ドル(約5億円)の資金調達を終え、Arkam Ventures(アーカム・ベンチャーズ)、Trive Capital(トライブ・キャピタル)、WEH Ventures(WEHベンチャーズ)らの著名投資家の他、Kunal Shah(クナル・シャー)氏(CREDのファウンダー)、Shaan Puri(シャーン・プリ)氏(元Twitch)、Ali Moiz(アリ・モイズ)氏(Stonksのファンダー)、Howard Lindzon(ハワード・リンゾン)氏(Social Leverageのファウンダー)、Vivekananda Hallekere(ヴィヴェカナンダ・ハレケー)氏(Bounceのファンダー)、Alvin Tse(アルビン・ツェ)氏(Xiaomi)、およびKunal Khattar(クナル・カッター)氏(AdvantEdgeのマネージング・パートナー)らのエンジェル投資家が参加したことを発表した。

「Jarのビジョンは、健全な財政へのミレニアル世代のニーズを、卓越したプロダクトイノベーションでいかに満たすかという当社の命題と共鳴します。ファイナンシャルプランニングと投資の非常に魅力的な市場において、ユーザーの行動を強く駆り立てるJarの能力に感銘を受けています」とラウンドをリードしたArkam Venturesのマネージングディレクター、Rahul Chandra(ラフール・チャンドラ)氏が声明で語った。

Jarアプリの取引量とAUM(受託資産)は毎月350%のペースで増えている、とニシュチェイ氏はいう。近いうちに提供サービスを増やすつもりだと同氏は述べた。

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画像クレジット:Jar

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

サムスンが2023年までに半導体、バイオ医薬品、通信機器事業に約22兆5900円の投資を発表

韓国の巨大テック企業ことサムスン・グループは、次世代通信とロボティクスなどの新規産業における国際的な存在感と優勢を高めるために、同社の半導体、バイオ医薬品、通信機器事業に今後3年をかけて2050億ドル(240兆ウォン/約22兆5900億円)を投資することを火曜日に発表した。

本出資はサムスン電子やサムスンバイオロジックスなどのサムスン関連企業によって進められる。また、同社の技術力と市場での優勢を強化するためのM&A計画も明らかにした。

これにより、サムスンは1543億ドル(180兆ウォン/約16兆9400億円)を用いて、2023年までに韓国において4万人の新たな雇用を創出することを期待している。

本発表は、サムスン電子の副会長Jay Y. Lee氏が、韓国開放日(光復節)前の8月13日に仮釈放になった数日後に出されることとなった。韓国ローカルメディアによると、同氏が釈放されれば、サムスンは大型投資を進めることができるようになるだろうと推測していた。

同社の声明によると、本資金は半導体、バイオ医薬品、次世代通信機器に使われることになるとのことだ。

サムスン電子は、引き続き同社メモリ事業のためのEUVベースの14サブナノメートルDRAMと200層超のV-NAND製品といった最新技術に注力すると同時に、高度なプロセス技術を開発し、同社のシステム半導体向けに人工知能(AI)とデータセンターを駆使して事業をさらに拡大させていく計画だ。

声明によると、サムスンバイオロジックスとサムスンバイオエピスは、CDMO(医薬品製造受託機関)事業をさらに拡大させるため、現在建設中の4拠点目の工場に加え新たに2拠点の工場を建設するとのことだ。

なお、韓国一の巨大コングロマリットことサムスンは、次世代OLED、量子ドットディスプレイ、高密度エネルギーバッテリーの開発と合わせて、進行中の新技術の研究&開発と、それらのAIやロボティクスといった領域での応用も引き続きサポートしていくこととなる。

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中国TencentがインドのPocket FMの投資ラウンドをリードへ、最大27億円規模か

Tencent(テンセント)が、インド・グルグラムに本社を置くPocket FM(ポケットエフエム)の投資ラウンドをリードする交渉が進んでいる。中国の大企業がインドマーケットで消費者インターネットのポートフォリオを拡大する最新の動きだ。

この件を把握している情報筋3人によると、すでにPocket FMに出資しているTencentはPocket FMの2000万〜2500万ドル(約22億〜27億円)のラウンドをリードすることで協議を進めている。提案された創業3年になるPocket FMの評価額は7500万〜1億ドル(約82億〜110億円)だと情報筋2人は述べた。既存投資家であるTimes InternetのBrand CapitalとLightspeedもラウンドに加わる。

ラウンドはまだクローズしていないため、条件は変わり得る。TencentとPocket FMはコメントを却下した。

Pocket FMは、ユーザーにポッドキャストとオーディオブックを英語やいくつかのインドの言語で提供する社名を冠したアプリを展開している。カタログは1万時間超にのぼると同社のウェブサイトにはある。オーディオブックを制作するのに同社は数人のクリエイターと協業している。

アプリはフリーミアムモデルで利用でき、有料のサブスクと広告が入る無料バージョンが用意されている。

今回の投資協議は、幅広いインドのスタートアップがオーディオ部門で事業を開始したり拡大したりしている中でのものだ。たとえばインドのソーシャルネットワークShareChatは2021年初めにClubhouseのような機能を立ち上げた。

Pocket FMはTencentがインドの消費者インターネット分野に賭ける最新の案件だ。Tencentはまた、音楽ストリーミングサービスのGaana、オンデマンドビデオストリーミングプレイヤーMX Playerの主要投資家でもある。

インド政府が中国企業によるインド企業への投資を許可制にする規則を導入したことを受け、Tencentは2020年にインドでの投資のペースを抑制した。ここ数四半期は活発になり、コンバーチブルノート付きの株式の代わりに社債を通じて投資している。

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画像クレジット:Arijit Sen / Hindustan Times / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

Best Buyがマイノリティ創業者の支援を専門とするVCに最大約11億円を出資

Brown Venture Groupのマネージングパートナーであるクリス・ブルック氏、パートナーのJerome Hamilton(ジェローム・ハミルトン)氏、パートナーのChris Dykstra(クリス・ディクストラ)氏、マネージングパートナーのPaul Campbell(ポール・キャンベル)氏。ミネアポリスにあるオフィスの外で

George Floyd(ジョージ・フロイド)氏殺害を受けて、Best Buy(ベストバイ)は2020年夏に有色人種コミュニティのサポートを「さらに推進する」ことを約束した。過小評価とテクノロジーの不平等の問題にこれまで以上に取り組むというBest Buyが自らうたったミッションの一環として、同社は米国8月5日、Brown Venture Group(ブラウン・ベンチャー・グループ)に最大1000万ドル(約11億円)を投資すると発表した。

ミネソタ州を拠点とするBrown Venture Groupは「先端テクノロジー」を手がける黒人、ラテン系、先住民のテックスタートアップに特化して支援することを約束している創業3年のベンチャーキャピタル会社だ。Crunchbaseのデータによると、2020年の資金調達総額のうち黒人とラテン系のコミュニティが獲得した資金はわずか2.6%だった。

Brown Venture Groupは5000万ドル(約55億円)を目標とするの第1号ファンドの資金調達を行っていて、同社幹部によると目標額の75%は目処がついている。これは、ミネアポリスを拠点とするBest Buyの「最大1000万ドル」投資するという約束がBrown Venture Groupが調達する資金の最大20%を占め、これによりBest Buyがこのファンドのリーディングパートナー(LP)になるかもしれないことを意味する。

Brown Venture Groupの共同創業者でマネージングパートナーのPaul Campbell(ポール・キャンベル)博士は、自身と共同創業者のChris Brooks(クリス・ブルック)博士が会社設立の初期に「複数の地元の人」から「資金はすべて海岸側にある」ためツインシティーズ(ミネアポリス・セントポール都市圏)を去るべきだと言われた、と話した。

「ごく初期段階に、我々はツインシティーズにとどまり、ツインシティーの物語にすると固く決心しました」とキャンベル氏はTechCrunchに語った。「ですので、ツインシティーズのエコシステムについて、そして誰に当社のリードLPになって欲しいかを考えたとき、Best Buyがリストの一番上にきました。Best Buyが当社のファンドのリードLPとなることに勝る喜びはありません」。

この件について2020年の売上高が470億ドル(約5兆1800億円)だったBest Buyは、今回の動きは「資金へのアクセスやテック産業における次世代サポートの欠如など、黒人・先住民・有色人種(BIPOC)起業家が往々にして直面する組織的な障壁をなくす」ことをサポートするのが目的だと述べた。

また「Brown Venture Groupとの提携では、テクノロジースタートアプ分野をより包括的で多様なサプライヤーの強固なコミュニティを作り出すものにすることに向けて取り組む」と同社は付け加えた。

Best Buyのファンド出資の発表と併せて、Best BuyとBrown Venture Groupは教育、メンター制度、ネットワーキング、資金へのアクセスを通じて若い起業家の成長をサポートすべく、Best Buy Teen Tech Centersで起業家プログラムを共同展開することも明らかにした。

代表者らの「包括的な」皮膚の色を示すためにこの社名を選んだBrown Venture Groupは、これまでのところクリーンエネルギースタートアップEcolution kwhを含む5社に投資した。

1000万ドルという出資額は2020年の売上高が470億ドルという企業にとってはわずかなものにみえる。Best Buyはこのイニシアチブは同社がBIPOC企業をサポートしようとしているいくつかの取り組みの1つにすぎないと話す。その他の取り組みには、BIPOCの学生のための大学進学と就業の機会を増やすために4400万ドル(約48億円)を拠出する計画や、2025年までにBIPOCと多様性がある企業に少なくとも12億ドル(約1320億円)を注ぐという約束が含まれる。同社はまた、2025年までに時間給ではない3つの新たな業務の1つをBIPOC従業員に任せ、テクノロジーチームで1000人を新規雇用し、うち30%を黒人、ラテン系、先住民、女性など多様な人材とする、と述べた。

「BIPOCの起業家が直面してきた困難を解決するために意義ある行動を起こすことを約束します」とBest BuyのCEO、Corie Barry(コリー・バリー)氏は声明文で述べた。「今回のような提携を通じて、もしかすると将来Best Buyのパートナーになるかもしれないテック産業における多様な革新者たちの、これまでよりも強固で活気のあるコミュニティの構築をサポートすることで問題解決に着手できると確信しています」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Best BuyVC投資マイノリティ

画像クレジット:Brown Venture Group

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトがインドのホテルチェーン「Oyo」に投資へ

Microsoft(マイクロソフト)はOyo(オヨ)への出資の最終検討段階に入り、インドのスタートアップを約90億ドル(約9850億円)と評価している、と本件に詳しい筋はいう。提案されている出資規模は不明。契約は7月30日にも締結される可能性がある、とある情報筋は言った。

Oyoは2019年に約100億ドル(約1兆950億円)と評価されたが、同社の主要出資者であるSoftBank(ソフトバンク)は、最近の四半期にインドのスタートアップの評価額を30億ドル(約3280億円)へと減額した。

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提案された取引条件には、OyoがMicrosoftのクラウドサービスに乗り換えることも含まれているという向きもある。いずれの情報筋も本件が非公開であることを理由に匿名を要求している。

MicrosoftおよびOyoのファウンダーでCEOであるRitesh Agawal(リテシュ・アガーワル)氏は 29日時点でコメントを拒んだ。

Oyoはインドで最も価値のあるスタートアップの1つであり、近年東南アジア、ヨーロッパ、米国をはじめとするさまざまな市場に積極的に進出している。しかし、 いくつかの間違い(「有害なカルチャー」、ガバナンスの遅れ、ホテルオーナーとの関係など)が成長に影を落としている。

同社がホテルオーナーとの関係を改善すると誓約した直後に、パンデミックがやってきた。それに対応してOyoは成長を減速し、世界の国々が都市封鎖する中、2021年3月に世界で数千人の従業員を解雇した。

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パンデミックは創業7年のスタートアップをサイクロンのように襲った、と2021年7月初めにアガーワル氏がBloombergTVに話した。「何年もかけて作り上げてきたものがたった30日の間に60%以上崩壊しました」と彼は語り、同社が株式上場の決断をしていないことを付け加えた。

Airbnbが支援するOyoは、銀行に7億8000万〜8億ドル(約854億〜876億円)の残高があり、全事業の支出を毎月500万ドル(約5億5000万円)に抑えていることを最近のバーチャルカンファレンスでアガーワル氏が言った(2020年12月時点で同社の預金残高は約10億ドル[約1095億円]だった)。

7月、アガーワル氏が上記のカンファレンスでコメントした後、Oyoは6億6000万ドル(約723億円)の借入を行ったことを発表した。その借金は以前の負債を支払うために使われたと本件に詳しい人物がTechCrunchに話した。

Oyoは30日の提出書類で、借入の条件に後日株式と交換するオプションが含まれていることを明らかにした。

2社間の取引が実現すれば、Microsoftにとってインドのスタートアップへの最新の投資になる。同社は東南アジア諸国でいくつかのスタートアップを支援しており、その中にはニュース収集と短編ビデオプラットフォームのDailyHunt(デイリーハント)、eコマースの巨人Flipkart(フリップカート)、物流SaaS会社のFarEye(ファーアイ)などがいる。

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カテゴリー:その他
タグ:MicrosoftOyoインドホテル投資

画像クレジット:Akio Kon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

独立系VCのSixty8 Capitalが社会的地位の低い創業者を対象とした22億円規模のファンドを設立

黒人、女性、ラテン系、LGBTQ+のスタートアップ創業者にとって、シリコンバレーにおけるVC投資のパイ獲得が困難であるということは間違いない。この事実に対処すべく、米国のど真ん中、インディアナ州のインディアナポリスに拠点を置くSixty8 Capitalが、社会的弱者のスタートアップ創業者らにアーリーステージ資金を提供するため2000万ドル(約22 億円)規模のファンドを設立した。

このファンドには、The Indiana Next Level Fund、50 South Capital、Bank of America、Eli Lilly and Company、First Internet Bank、Central Indiana Community Foundationなどの投資家が名を連ねている。また、インディアナ州を拠点とするベンチャー企業のAllos Venturesと連携しており、同社のPaul Ehlinger(ポール・エリンガー)氏がSixty8のベンチャーパートナーとなる予定だ。

「このファンドで有色人種や女性をはじめとする多様なコミュニティに直接資金を提供することで、彼らを力付けることが可能になります。多様な人々によって設立された、すばらしいソリューションを構築している企業に直接投資できるようになるのです。これがSixty8を立ち上げた理由であり、これまでになかったチャンスを見つけ出すことができると信じています。インディアナのコミュニティだけでなく、中西部や南部の一部にも良い影響をもたらすことができたらと期待を膨らませています」と同社のマネージングパートナーであるKelli Jones(ケリー・ジョーンズ)氏は話している。

インディアナポリスで育ったジョーンズ氏は、ニューヨークやロサンゼルスに移った後、音楽、テック、エンターテインメントなどに携わる仕事を経験。2016年にインディアナポリスに戻り、自分が育ったコミュニティの黒人がテック分野やそれ以外で仕事に就くための訓練を受ける手助けを開始した。それが黒人の創業者に焦点を当てたスタートアップインキュベーターの展開に繋がり、後にピッチコンテストに参加することになる。

同氏がともに働いていた創業者らが、インキュベーターやピッチコンテストの一環として始めたビジネスを成長させるチャンスを得るために資本へのアクセスを必要としているということが、その当時から明らかだったため、アーリーステージファンドのアイデアを具体化させていったと話している。同氏によるとインディアナ州はB2BのSaaSで知られており、そのエネルギーにあやかりたいと考えていた。

「インディアナ州はB2BのSaaSで有名で、ExactTarget、SalesforceAngie’s ListInteractive Intelligence、Genesysなどのすばらしい企業へのイグジットなど、地元のテクノロジー分野では本当にすばらしいことがたくさん起こっています。しかし多様性に関してや、有色人種、女性、LGBTQの創業者を増やすということについてはあまり議論されていないのが事実です」とジョーンズ氏。

同社は1社あたり25万ドル(約2700万円)から50万ドル(約5500万円)の投資で、シード、プレシードの他、Aラウンドへの参加も計画している。インキュベーターやピッチコンテストなど、他のベンチャーからのパイプラインが用意されており、また起業家精神に溢れたコミュニティにも精通していると同氏は話している。

同社は、多様性の問題や多様な人々が投資の意思決定を行うという課題に対処するためだけでなく、ベンチャーキャピタルの支援を受けた企業には到底見えないような企業にも投資することができるという戦略に基づいてファンドを設立したいと考えていた。

最初の投資先はQualifiというB2BのSaaS企業だ。大量の採用を行う企業がAIを使って書類選考をより早く行うというもので、これにより7~10日かかっていた審査期間を3日以内に短縮することができるとジョーンズ氏は話している。

同社の企業名の由来は1968年に遡る。全国で多くの抗議が沸き起こり、有色人種や女性、ゲイの権利のための平等性を求める声が多く上がった歴史的な時代である。2019年に同社を立ち上げた当初は別の名前を使用していたものの、多様なグループを力付けることに焦点を当てた会社として、この名前の方がふさわしいと感じたとジョーンズ氏は振り返る。

「偉大な指導者を失い、人々の心の中にあった炎が大きく燃え上がった1968年の公民権運動の時と同じように、人々は依然として行進し生き残ろうと声をあげ続けているように感じます。女性の権利、ラテンアメリカ人の権利、黒人の権利のために戦っていた当時、さまざまなことが起きていましたが、2021年の今もなお、当時から前進できていないように感じるのです」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Sixty8 Capital投資マイノリティ女性LGBTQ+

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

FedExがインドの物流システムのデジタル化を進めるDelhiveryに約110億円投資

世界の企業がインドでのプレゼンスを拡大しようとしている中で、物流大手FedEx(フェデックス)の子会社FedEx Express(フェデックス・エクスプレス)はインドのスタートアップDelhivery(デリバリー)に1億ドル(約110億円)を投資する。

IPOを数四半期内に控えているグルガオン拠点のDelhiveryは、7月16日に発表した今回の投資の2カ月弱前に2億2700万ドル(約250億円)を調達した。同社の評価額は現在30億ドル(約3300億円)だ。

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取引の一環として、DelhiveryとFedEx Expressは長期的な商業協定も結ぶ。FedEx Expressはインドの国際輸出入サービスにフォーカスし、DelhiveryはFedExに加えてFedEx Expressの国際プロダクトやサービスをインドマーケットで販売し、インド中でピックアップと配達サービスを提供する。FedExはインド国内事業に関連する特定のアセットをDelhiveryに移す。

「我々の目的は、インドとグローバルの企業、そして消費者に我々のネットワークへのユニークなアクセス、そしてテクノロジーとエンジニアリングの能力を通じて新たなプロダクトと機会をもたらすことです」とDelhiveryの共同創業者Sahil Barua(サヒル・バルア)氏は声明文で述べた。

Delhiveryはフードデリバリー会社として始まったが、2300超の市町村と1万7500の郵便番号区域をカバーするロジスティックサービスへとシフトした。同社は、貨物取引プラットフォームを通じてロジスティックの需給システムをデジタル化しようと試みているいくつかのスタートアップの1社だ。

画像クレジット:Bernstein

Delhiveryのプラットフォームは荷主、代理店、そして道路輸送ソリューションを提供している運送業者をつなげる。プラットフォームはブローカーの役割を減らし、Delhiveryで最も人気の輸送手段であるトラック輸送のようなアセットをより効率的なものにし、24時間営業を保証する、とDelhiveryは話す。

インドの経済発展を長らく妨げてきたロジスティクス産業の非効率性を解決するのにデジタル化は不可欠だ。稚拙な需給の計画と予測によってコストや窃盗、損害、遅延などが増えている、とBernsteinのアナリストは2021年6月にインドのロジスティックマーケットについてのレポートで書いた。

Delhiveryのウェブサイトによると、これまでに10億件を超える配達を行い「インド最大のeコマース企業や主要企業」と協業している。ウェブサイトにはまた、同社が1万を超える顧客と協業してきた、ともある。配達のラストマイルのために、同社の配達員は2平方キロメートル以下のエリアが割り当てられ、これにより配達員は配送回数を1日に数回に抑えて時間を節約できる。

インドのロジスティクスマーケットの獲得可能な最大市場規模は2000億ドル(約22兆円)を超える、とBernsteinのアナリストは指摘した。Delhiveryは2020年後半、パンデミックでより多くの人々がオンラインで買い物するようになり、増大する需要に対応するために車両台数を増やすべく、2年以内に4000万ドル(約44億円)超を投資する計画だと話していた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FedExインドDelhivery投資物流

画像クレジット:Joel Saget / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

半導体ウェハメーカーのSK SiltronがEVサプライチェーン強化へ米国で330億円投資

国際クリーン交通委員会(ICCT)の調査によると、電気自動車(EV)の生産と浸透という点で米国は特に2017年から2020年にかけて中国と欧州の後塵を拝してきた。しかし米国が主権を握っているパズルの重要なピースの1つが、スマートフォンからコンピューター、EVに至るまであらゆるものに使われている半導体の生産だ。そしていま、米国はその強みをさらに強化することになりそうだ。

韓国の半導体ウェハメーカーであるSK Siltron(SKシルトロン)の部門SK Siltron CSSは米国時間7月14日、ミシガン州ベイ郡に3億ドル(約330億円)投資し、高給技能職150人を雇用すると発表した。ベイ郡は米国の初の車産業集積地であるデトロイトからクルマで北に数時間のところに位置する。SK Siltronはすでに近くのオーバーンに拠点を持っていて、新しい工場は従業員の数を倍増させることになる。向こう3年間で投資はEV向けの高度な材料の生産とR&Dに充てられると同社はいう。

SK Siltron CSSの最高経営責任者であるJianwei Dong(ジャンウェイ・ドン)氏は、最初にこのニュースを報じたロイターに「当社は周辺のコミュニティにエンドカスタマーを抱えるため、3億ドルの投資はミシガン拠点の米国内EVサプライチェーンを構築するのに役立ちます」と述べた。

この新たな投資は、General MotorsFordといった老舗企業、TeslaそしてRivianなどの新規企業を含む米国の自動車メーカーがこれまでになく次々に新しいEVを発表し、電動化に投資している中でのものだ。

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また、中国と米国の貿易戦争が膠着状態にあるという要素もある。

中国は2010年から2020年にかけて世界中で生産されたEV車両の44%を担ったが、米国は半導体の手綱を握り絶えず中国が他のチップメーカーを買収するのを阻止してきた。ICCTのレポートによると、EV生産に投資して需要を刺激するという強固な政策は中国と欧州で成功した。バイデン政権のEV補助金と充電ネットワーク拡大のための1740億ドル(約19兆円)という予算は、米国が遅れを取り戻すのに役立つかもしれない。

「より持続可能な未来に向け、企業や末端消費者をサポートするためには確固たる新サプライチェーンを米国に構築することが重要です」と米商務長官のGina M. Raimondo(ジーナ・M・ライモンド)氏は声明で述べた。「自動車産業はEVの台頭で絶好の機会を手にしていて、SK Siltron CSSのような企業がクリーンな未来に向けた移行のサポートを拡大するのを楽しみにしています」。

SK Siltron CSSの事業拡大は州政府と地元自治体からの承認を得る必要があると同社は話したが、抵抗にあうというのは考えにくい。ミシガン州経済開発公社は、同州がEV関連の雇用を創出すべく、過去2年で90億ドル(約9890億円)を投資に注ぎ、EVトランジッション絡みで1万人超の雇用を生み出した、と述べた。SK Siltronは従業員の雇用で州と地元の当局と連携していて、70%が技能職の従業員、残りがエンジニアになると話した。

ウェハ101

ウェハは集積回路を作るのに使われる半導体の薄いスライスで、半導体チップを小さく、そして速くするのに役立つ。ウェハは半導体の残り部分のベースとなり、プロセス全体にとって重要な役割を担っている。半導体はバッテリーを高ボルテージで動かし、パワートレインを駆動させ、そしてタッチスクリーンのインタラクティブ性のような現代の車の機能をサポートするため、EVは半導体を必要としている。

SK Siltronのウェハは炭化ケイ素でできていて、通常のシリコン製よりも高パワーに対応でき、熱伝導もいい、と同社は話す。

「EVシステム部品で使われるとき、こうした特性によってバッテリーからモーターへの電力伝送がより効率的になり、EVの航続距離を5〜10%伸ばします」と同社は声明文で述べた。

ウェハはまた、5G通信装置にも使うことができ、SK Siltron CSSは追加の投資を検討しているとDong氏はロイターに話した。

カテゴリー:モビリティ
タグ:SK Siltron電気自動車半導体ミシガン投資

画像クレジット:SK Siltron

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

LG化学がEV用バッテリー生産拡大へ向け2025年までに5770億円を投資

韓国のLG Chem(LG化学)は、バッテリー材料事業の構築に今後4年で6兆ウォン(約5770億円)を注ぐ。この投資は、クルマの発明以来、モビリティ産業において最も変革的なものになるであろうシフトの中で、自動車メーカーや米規制当局が内燃エンジン車両から移行する目標を設定したことを受けてのものだ。

投資はアノード材料、分離膜、カソードバインダー、その他の重要なバッテリー部品の生産強化に注がれる。この投資には、韓国・クミ市での巨大なカソードプラントの建設計画が含まれ、工場が完成すれば同社の現在4万トンのアノード生産能力が2026年までに26万トンへと7倍になる。2019年7月に発表したように、LG化学はすでにクミ市に建設するプラントに5000億ウォン(約480億円)投資するとことに同意している。

同社はまた、リチウムイオンバッテリーのパフォーマンスを高めるのに使われる高度な材料であるカーボンナノチューブ(CNT)の生産能力を2021年の1700トンから2025年までに3倍超に拡大する計画だ。それを達成するために、CNTプラント2での生産を拡大し、3つめのCNTプラントの建設を2021年開始する計画だ。

サプライチェーンの面では、バッテリー部品に必要なメタルや他の原材料の供給で鉱業会社と合弁会社を立ち上げるとLG化学は述べた。同社は声明文で「金属調達の競争力を強化するために鉱業、製錬、精製のテクノロジーを持つ企業との、さまざまな方法での協力を積極的に追求する」としている。

LG化学はすでにバッテリーとバッテリー部品製造における最大メーカーの1社であり、Volkswagen(フォルクスワーゲン)やGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)、Tesla(テスラ)などを顧客に抱える。しかも世界のバッテリー材料市場は拡大するばかりで、マーケット規模は2021年の39兆ウォン(約3兆7470億円)から2026年までに100兆ウォン(約9兆6060億円)へと成長することが見込まれている。

バッテリーへの投資とともに、LG化学は追加で3兆ウォン(約2880億円)を生分解性ポリマーや植物ベースの生体材料のような持続可能な石油化学製品に、1兆ウォン(約960億円)を医薬品開発事業のラインに注ぐ、と明らかにした。

CEOのHak Cheol Shin(シン・ハクチョル)氏は、同社が持続可能な事業ポートフォリオにシフトさせるさらなる機会を模索している、と話す。「これは、LG化学の価値と持続可能性をアップグレードする、会社創立以来、最大の革命的変化となります。目に見える変化は2021年下期から出てくるでしょう」と述べた。

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画像クレジット:LG Chem

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

多国籍自動車会社ステランティスが2025年までに約3.9兆円を電気自動車に投資

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と、フランスのGroupe PSA(グループPSA)が合併して誕生した多国籍自動車メーカーであるStellantis(ステランティス)は、内燃機関からの脱却に向けた大規模な取り組みの一環として、今後4年間で電気自動車と新しいソフトウェアに300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資すると発表した。

世界第4位の自動車メーカーとなったステランティスは、General Motors(ゼネラルモーターズ)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)などのライバル企業と並んで、2020年代前半に電気自動車へ数兆円規模の投資を行うことになる。同社は2024年までに、Dodge(ダッジ)ブランドのマッスルカーと、Ram(ラム)ブランドのピックアップトラックの電気自動車を製造することを計画している。また、2025年までにはJeep(ジープ)ブランドのすべてのセグメントに、電気自動車またはプラグイン・ハイブリッド車を提供すると述べている。

その最終的な目標は、2030年までに欧州で70%以上、米国で40%以上の低公害車の販売目標を達成することだと、現地時間7月8日にオンラインで開催された同社初の「EV Day」イベントで、Carlos Tavares(カルロス・タバレス)CEOは語った。

ステランティスは、競合他社に比べて電動化が遅れているが、その理由の1つは、同社のラインナップの売れ筋がパフォーマンスモデルやヘビーデューティーモデルに偏っていることだ。同社は十数ブランドの自動車を設計・製造しており、米国ではジープ、Chrysler(クライスラー)、ダッジ、ラムがそれに含まれる。欧州の主要ブランドには、Fiat(フィアット)、Peugeot(プジョー)、Citroen(シトロエン)、Opel(オペル)などがある。

その電動化戦略を実現するために、2025年までに容量130ギガワット時以上のバッテリーを製造し、2030年までには北米と欧州に建設する5つの巨大バッテリー工場で、260ギガワット時以上のバッテリーを製造できるようにすると、ステランティスの幹部は語った。また、2024年までには搭載する車両に合わせて2種類のバッテリー化学物質を使い分け、2026年までに固体バッテリー技術を開発することを目標としているという。

画像クレジット:Stellantis

この巨大自動車メーカーは現在、4つの電気自動車専用プラットフォームを開発している。主に街乗り用の「STLA Small(STLAスモール)」は航続距離が最大500キロメール、上級乗用車の「STLA Medium(STLAミディアム)」の航続距離は最大700キロメートル、そして高性能なパフォーマンスモデルやマッスルカー用の「STLA Large(STLAラージ)」と、ピックアップトラックや大型SUV用の「STLA Frame」は最大航続距離800キロメートルとなる予定だ。ステランティスのRichard Palmer(リチャード・パルマー)CFOによると、同社では2020年から2024年の間にバッテリーパックのコストを40%削減することを目指しているという。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

累計ユーザー数30万人超のポイント投資「STOCK POINT」が三菱UFJ銀行をスポンサーに迎え新サービス開発に着手

累計ユーザー数30万人超のポイント投資「STOCK POINT」が三菱UFJ銀行をスポンサーに迎え新サービス開発に着手

株価など金融商品連動型ポイント運用サービス「StockPoint」(Android版iOS版)を手がけるSTOCK POINTは7月2日、三菱UFJ銀行をスポンサーとして迎え、新サービスの開発に着手したと発表した。2021年秋、新しいポイント運用サービス「STOCKPOINT for MUFG」を提供開始予定。

STOCKPOINT for MUFGは、誰でも気軽に資産運用疑似体験をスタートできるポイント運用サービスという。「投資=難しい」という固定観念の壁を越える「楽しい世界観」を実現すべく、サービス提供に向けて開発を進めるとしている。

STOCK POINTのポイント運用サービスは、買い物などでたまった所持ポイントの運用を行えるというもの。個別企業株の株価など金融商品の価格に連動して所持ポイント数が上下に変動し、金融機関に口座を開くことなくポイントを使い投資運用を疑似体験できる。現在、会員の約80%が20代から40代の若年層、また30%は投資未経験の者という。2021年5月末時点で累計ユーザー数が30万人を突破しており、従来投資に馴染みのなかった方が貯蓄から投資への一歩を踏み出せるサービスとして広がっているとした。

また個別株、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)に関しては、1株、1口価格相当以上のストックポイントが貯まると、現物金融商品との交換も可能。同社は、ポイント運用サービスを通じて、生活者が投資についての正しい知識を得て、自分らしい資産形成を始めるサポートを行うとしている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:資産管理 / 資産運用(用語)STOCK POINT(企業)StockPoint(サービス)投資(用語)日本(国・地域)

暗号資産投資家が自信を持って分散型金融の世界を航海できるようにする分析会社Nansenが約13.3億円調達

ここ数カ月、暗号投資家がその野心を市場よりも大きく膨らませている一方で、機関投資家は山のようなブロックチェーンデータを抱え、熟成された分析製品を使わずに、その意味を理解しようと躍起になっている。

ブロックチェーン分析のスタートアップ企業であるNansen(ナンセン)は、暗号トレーダーやヘッジファンドが、より自信を持って分散型金融の世界を航海できるようにするための製品を開発している。同社の製品は、約9000万個のイーサリアムウォレットにまたがるパブリックブロックチェーン情報を分析し、ユーザーに発展しつつある好機へ導く手がかりを提供する。

「Nansenの高品質なデータにより、投資家はスマートマネーがどこに移動しているのか、影響力のある投資家がどのポジションを取っているのかを追うことができます。また、投資する新しいプロジェクトを発見して、デューデリジェンスを行うことができます」と、NansenのCEOであるAlex Svanevik(アレックス・スヴァネヴィク)氏は、TechCrunchにメールで語っている。

このスタートアップは、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・​ホロウィッツ)が主導する1200万ドル(約13億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズしたばかりだ。a16zは最近、暗号資産市場を収奪するための22億ドル(約2430億円)もの巨大な暗号投資ファンドを発表している。今回の投資ラウンドには、Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)、Skyfall Ventures(スカイフォール・ベンチャーズ)、imToken Ventures(イムトークン・ベンチャーズ)、Mechanism Capital(メカニズム・キャピタル)、QCP Capital(QCPキャピタル)などが参加した。

Nansenの主な製品は、暗号資産の特定の階層を中心に設計されたダッシュボードのネットワークだ。

非常にホットなDeFi(分散型金融)の分野以外にも、Nansenはラベル付けされたデータベースを活用して、イールドファーミング、リクイディティプール、DEXデータにおける投資機会を見出し、さらにはトレーダーが特にホットなNFTコレクションを探し出すのを支援する。人気のあるダッシュボードの1つである「Token God Mode(トークン・ゴッド・モード)」では、投資家が特定のERC20準拠トークンのブロックチェーンデータを利用し、取引所における長期的な動きや、個々のウォレットでの注目すべき取引を見ることができる。

画像クレジット:Nansen

暗号資産業界は主に個人投資家を増やすことを目指しているため、Nansenの価格設定には、幅広い層の顧客を取り込むための努力が反映されている。同社は、トレーダーがさまざまな市場指標のリアルタイム分析を利用できるように意図された月額116ドル(約12800円)のパッケージを販売している他、週1回の電話相談、専用チャットグループ、業種別説明会など、より細やかなサポートを受けることができる月額2500ドル(約27万6000円)のプランも用意している。

チームは高レベルのデータの一部を同社のサイトで公開しているが、より詳細な最新のデータは有料顧客のネットワークのために取ってある。Nansenの顧客には、Polychain(ポリチェーン)、Three Arrows(スリー・アローズ)、Pantera(パンテラ)、Defiance Capital(デファイアンス・キャピタル)などの暗号資産中心の投資ファンドが含まれている。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Nansen資金調達暗号資産投資

画像クレジット:Nansen

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

リモート投資とビッグデータがカギ、パンデミック中に誕生したMoonfireが初となる65億円規模のシードファンドを設立

Moonfire VCのチーム

パンデミック渦中、ベンチャーキャピタルがZoomやGoogle Meetなどのビデオ会議ツールを用いて起業家からピッチを受ける「Zoom投資」なるものが台頭した。そして今、ヨーロッパの新たなシードファンドがこの方法を活用し、自らのモデルに組み込もうと目論んでいる。

Atomicoの元共同創業者であるMattias Ljungman(マシアス・ユンマン)氏は、2019年12月に同社を去った後Moonfireを設立したが、この新事業の詳細についてはこれまでほとんど明かされていなかった。先日、Moonfireは6000万ドル(約65億円)規模のシードステージの「データ駆動型」ベンチャーキャピタルとなることを明らかにした。リモートワークの新たな利点を活用して起業家らにもそれに適応させていくようだ。

正直なところ、ユンマン氏にはさほど選択の余地があるわけではなかった。2020年1月からファンドの設立、調達、クローズ、そして投資までのほとんどすべてをリモートで行った同氏。しかし、同氏によるとこれは裏を返せば「ニューノーマル」を継続することができるという証であるという。「Zoom投資を行っています。地理的制限がなくなり、またこの方法が皆にとって違和感のないものになりました」と同氏はもちろんZoomで話す。

Moonfireの第1号ファンドは、機関投資家、起業家、VCといった幅広い層のLPから資金を調達しており、米国のシードファンド投資会社であるCendanaがアンカーインベスターとなっている。加えてユタ州のSITFO(学校および機関投資家向け信託ファンド事務局)やReference Capitalなども参加。同社によるとこのファンドには上限を超過する応募申し込みがあったという。

同社は健康と福祉、仕事と知識、ゲーム、コミュニティとレジャー、資本と金融などの幅広い分野に焦点を当てていく予定だ。ヨーロッパにおける直近の投資先にはHumaans、Electric Noir Studios、Skunkworks、Pento、Awell Health、Mindstone、Business Score、Homerun、HiPeople、LoveShark、WillaPay、Oliva、Equifyなどが名を連ねる。

経験豊富なユンマン氏はAtomicoの共同設立者として、20年にわたってKlarna、Supercell、Viagogo、Climate Corpなど、テック系スタートアップからユニコーンになった多数の企業への投資実績を持つ。

Mike Arpaia(マイク・アルパイア)氏とCandice Lo(キャンディース・ロー)氏がユンマン氏とともにパートナーになる。元コンピュータサイエンティストのアルパイア氏は、Etsy、Facebook、Kolide、Workdayでの経験を活かしてMoonfireに参画。起業家としての経験もあるロー氏は、オペレーターから投資家に転身し、ヨーロッパと中国のUberでの経験や、英国のBlossom Capitalでのアーリーステージの投資家としての経験も持つ。

データこそが同ファンドの土台となるとユンマン氏は話す。「ベンチャーは人との関わりがポイントとなるビジネスですが、企業の発掘、スクリーニング、評価、創業者へのインサイトの提供などすべての作業を強化して最適化するためには、データやソフトウェア、機械学習がフル活用されるべきです。それにより従来のテーマ型投資を強化し、意思決定をより迅速かつ効果的に行うことができます」。

当然のことながら、最近ではどのVCもデータを駆使して投資を行っている。例えばロンドンのInreach Venturesはこのアイデアを見事に活用している数多くのVCの1つである。

これに対してビデオ電話でユンマン氏は次のように反論している。「至るところでソフトウェア、自動化、機械学習が活用されています。どの業界を見てもソフトウェアで溢れており、ソフトウェアは企業の発掘から管理、評価、サポートに至るまでプロセスのあらゆる要素に関わっています。我々はテーマを中心としたアプローチを続けていますが、それをソフトウェアと組み合わせることにより、まるでバイオニックスーツのように我々がやっていることを補強し、拡大し磨きをかけるのです」。

「現在、ヨーロッパのエコシステムは非常に大きくなっており、直感や人間関係、ネットワークに頼るというだけでは効率的ではありません。我々にとってはソフトウェアの活用が非常に重要です。弊社のデータベースにはすでに140万人が登録されており、こういった起業家の多くがすばらしい経歴を持っています。平均的な起業家の年齢も以前に比べてかなり高くなっています。1年に何千社もの企業を見ていると、本当の意味でのネットワーク効果を見出すことができます。データを構築すればするほど、ポートフォリオを構築すればするほど、そして投資を増やせば増やすほど、その知識が制度化されるので投資先企業への支援やサポートがより充実したものになります」。

Cendana CapitalのパートナーであるGraham Pingree(グラハム・ピングリー)氏は、声明の中で次のように述べている。「この1年間、欧州のスタートアップエコシステムの成熟と成長を見守ってきましたが、ポートフォリオの拡大を目指すMoonfireとパートナーシップを組む機会を得ることができとてもうれしく思っています。MoonfireはCendanaと同様に、創業者らを初期段階から支援することに情熱を傾けており、また新世代の創業者を育てるために必要なスキルと専門知識を持っています」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ビデオ会議投資MoonfireZoom投資

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

ゼンリンCVCと第1号投資先レイ・フロンティアが創る「地図と位置情報データで住み良い街」

カーナビソフトなど地図データで知られるゼンリンは、2021年1月にCVC子会社としてゼンリンフューチャーパートナーズ(ZFP)を設立、4月に25億円規模の第1号ファンドを組成した。5月には投資第1号案件として、位置情報データスタートアップのレイ・フロンティアに出資を決めた。ゼンリンフューチャーパートナーズ代表取締役社長の松下春喜氏、ゼンリンMaaS企画部部長の藤尾秀樹氏、そして第1号出資先レイ・フロンティア代表取締役CEOである田村建士氏に話を伺った。

現在も協業、出資依頼が多いゼンリン

元々、ゼンリンにはベンチャー企業から協業や出資の提案は多く寄せられていた。ゼンリンは、これまでもM&Aや協業・資本提携により事業領域を拡大してきたが、近年の飛躍的な技術革新に対応し、事業領域を拡大していくためには、より広範かつ多岐にわたる分野・業種のベンチャー企業との協業や資本提携が有効であると判断し、迅速な意思決定や投資実行が可能となるようCVC子会社を設立することにした。

ZFPは合計6名のチームで始まり、60社以上のベンチャーの調査を進めている。事業シナジーを活かして、既存事業の成長と新規事業の創出を目指す。MaaS、物流、防災などへの応用の他、AI、量子コンピュータなどの基礎技術分野など、幅広く業界調査を行なって、投資間口を広くとっている。現在投資決定している第2号案件は、リテール業界におけるビッグデータを利用して個人向けプロモーション分析を行っている企業とのことだ。またベンチャーのステージについても、アーリーからレイターまで幅広く出資を検討する方針だという。

個人利用時に感じた技術力の高さがスピード投資を後押し

レイ・フロンティアとは、以前から長崎での観光型MaaS実証実験において連携するなど協業関係にあったが、事業部門からさらなる連携強化のため、同社への出資についても検討して欲しいとZFPに連携があった。連携を受けたZFPでは、事業シナジー効果の検証に加え、DD実施の上、投資の観点からも検証を行い、同社への出資がさらなる連携強化に資するとの結論に至った。

ZFP設立の当初目的とおり、迅速な意思決定がなされ、事業部門から連携を受けた3月初旬から約2カ月後の5月26日には出資が実現した。

レイ・フロンティアには位置情報を数秒単位での位置情報の取得が可能な位置情報収集技術「Silentlog SDK」、AIを活用した行動分析プラットフォーム「Silent Analysis」の技術があり、ゼンリンの自動車用ネットワーク、鉄道路線、駅構内通路、歩行者用ネットワークなど移動に最適化されたデータベース「Mobility based Network」と組み合わせることでMaaS推進を行っていく方針とのこと。すでに長崎での観光型MaaS実証実験においてスマートフォン向けアプリ開発に取り組んでいるという。

ゼンリンMaaS企画部部長の藤尾氏は「実際にレイ・フロンティアのSilentlogを、自分の移動、旅行遍歴などをトラックするのに使っていました。スマホの消費電力が相対的に少なく、いちユーザーとしてもその高い技術力を感じたことも投資決定に活かされています」という。また、レイ・フロンティアの田村氏は「スタートアップ側からすると地図データの収集は骨の折れる業務。ライセンスの問題もありましたが、、今回の投資、提携で事業が進めやすくなりました」と語った。

ゼンリンは「ZENRIN Maps API」も展開しており、データと地図が組み合わさり、技術成長や官民連携を通して、良い街や生活が実現されることを期待している。田村氏も「実際に、三陸鉄道と提携しリアルタイム運行情報をアプリで提供した事例では、通学学生からの電話などでの問い合わせが激減しました。少しずつでもポジティブフィードバックを積み重ねた先に、住み良い生活が待っていると考えています」という。

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カテゴリー:モビリティ
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GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は米国時間6月16日、2025年までに電気・自動運転車に350億ドル(約3兆8722億円)を投資すると述べ、これまでに明らかにしていた額を引き上げた。2020年11月に発表した計画の額に80億ドル(約8850億円)を上乗せする。

同社は2025年までにグローバルマーケットでEV30種を展開し、2035年までに全ゼロエミッションに移行する目標を打ち出している。新たな投資で、GMは新しい電動商用トラックを北米の計画に追加し、米国での電動SUV組立能力を拡大すると述べた。

新たなEVモデルの充実したポートフォリオを構築するのに加えて、同社はEV革命をリードしようと多面的なアプローチを取って来た。同社はまた、LG Chem(LG化学)とのジョイントベンチャーUltium Cells LLCのもとに2つの新規バッテリー工場にも投資している。そしてGMは2016年に過半数の株式を購入した自動運転部門Cruise(クルーズ)にも投資した。

今回のニュースの前日には、Cruiseが電気自動運転車両Originの商業化に向け、GMの金融部門から50億ドル(約5531億円)の融資を受けたと明らかにした。Originの商業生産は2023年の開始が見込まれている。

GMはまたホンダとのジョイントベンチャーHYDROTECで水素燃料電池も製造している。GMは6月16日、第3世代のHYDROTEC電池を2020年代半ばまでに展開することも明らかにした。GMは大型トラックデベロッパーNavistar、そして航空機向けの水素燃料電池システムを開発しているLiebherr-Aerospaceとパートナーシップを結んでいる。

GMは6月15日に、燃料電池とEVバッテリーをWabtec Corporationに供給するとも述べた。Wabtec Corporationはピッツバーグ拠点の会社で、世界初のバッテリーlocomotiveを手がけている。

「GMはグローバルでの年間EV販売台数を2025年までに100万台超にすることを目指しています。そして当社は展開を促進するために投資額を増やします。というのも、米国で電動化のモメンタムがあり、当社のプロダクトポートフォリオに対する顧客の需要を目にしているからです」とCEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は声明文で述べた。

Fordも同様にEV投資を増やすことを5月に発表した。それまで同社は2023年までに220億ドル(約2兆4337億円)としていたが、2025年までに300億ドル(約3兆3187億円)投資すると述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

ミレニアル世代が熱狂?NFTを使ったコレクターズアイテムへの投資が今アツいワケ

コレクターズアイテム投資が熱い。Michael Jordan(マイケル・ジョーダン)がルーキーシーズンに着用した「NIKE AIR JORDAN 1(ナイキエアジョーダン1ハイ)」が競売大手サザビーズのオークションで15万2500ドル(約1670万円)で落札され、Kanye West(カニエ・ウエスト)着用の「NIKE AIR YEEZY 1(ナイキエアイージー1)」が180万ドル(約1億9400万円)で落札された。

ドイツでコレクターズアイテムを使ったNFT投資のためのプラットフォームを提供するスタートアップ Timeless InvestmentのCEOであるJan Karnath(ヤン・カルナート)氏は、「今後3年でコレクターズアイテムはミレニアル世代にとって、株、暗号資産に次ぐ妥当な資産になるでしょう」と予測する。それはなぜか。同氏が詳しく説明する。

Timeless InvestmentのCEOであるヤン・カルナート氏

ミレニアル世代はコレクターズアイテムに夢中

カルナート氏は「ミレニアル世代の42%がコレクター品と何らかの関係を持っており、23.2%がNFTを何らかの形で使用している」と指摘する。23%というのはZ世代の3倍、ベビーブーム世代の10倍に当たるという。冒頭で挙げたスニーカーブームも、こうしたミレニアル世代のトレンドを反映しているという。

スニーカーだけではない。ミレニアル世代が親しんだポケモンカードも注目されている。初版の未開封デッキが高値で落札された例もある。

カルナート氏は、世界でたった1つのコレクターズアイテムの投資額を分割して、より多くの人が投資できるようにすることで市場を活性化することを目指している。これにはNFTの技術が不可欠だ。

「NFTはミレニアル世代によって動かされる次の山です。これによって根本からの変化が起きるでしょう」とカルナート氏は語る。

同氏によると、2021年の第1四半期におけるNFTのセールスボリュームは、その前の四半期よりも20倍に成長しているという。

カルナート氏は「これは何を意味するのか?コレクターズアイテム市場の急激な成長が起きているということです」と述べる。

NFTならお金がないミレニアル世代でも投資しやすい?

カルナート氏は「こうした成長の影響を最も受けるのは、歴史あるブランドとIPホルダーです」と断言する。「アイコン的製品の可能性を解放することで、コレクターズアイテム市場が良い方に変わっていくでしょう」。

しかし、こうした流行にも問題がある、というのが同氏の見解だ。ミレニアル世代がコレクターズアイテムに注目しているといっても、その多くは成長するコレクターズアイテム市場に参加することができていない。なぜなら、この世代はコレクターズアイテムへのアクセスと、コレクターズアイテム市場に参加するための資本が乏しく、また、この世代は市場の理解と資産の流動性を十分保持していないからだ。

「当社はミレニアル世代向けのコレクターズアイテム投資をもっとやりやすくしたいのです。そしてこの成長は今後数世代は続くものだと思います。当社はコレクターズアイテム投資をより便利に、アクセシブルに、インデペンデントにしたいのです」とカルナート氏。

そのため、同社では投資案件を集め、保証している。また、投資案件を小さく「シェア」という形で分割することで、1回の投資を手頃な値段にし、1口50ユーロ(約6660円)で投資することも可能だという。さらに、同社のプラットフォーム上でコレクターズアイテムの取引も可能にし、ユーザーが売りたいときに売りに出せるようにしているという。

カルナート氏「当社のプラットフォームを使ってもらえれば、資産を再度売りに出すまでに2年、4年、と待っていただく必要もないです」という。

カルナート氏がイメージするコレクターズアイテム投資は、アクセサリーや服などのファッションをプラットフォーム上で売買するものに近い。ユーザーがコレクターズアイテムをプラットフォーム上で探し、投資し、必要に応じて他のユーザーと取引するからだ。

21分で決まったロレックス投資

Timelessが100日間コレクターズアイテム投資のプラットフォームを運用してみたところ、さまざまなことが見えてきたという。「まず、どのコレクターズアイテムも1時間以内に買い手がつきました。取引のスピードが早いため、決済などの処理が追いつかない場面もありました」。

この100日間でプラットフォームを使用した投資家は1125人。そのうち複数回取引した投資家は24%だった。

カルナート氏は、取引が行われたコレクターズアイテムから、3つの例を紹介した。

例えば、写真の一番左のスニーカー。シェア売り切れまでにかかった時間は16分。これに関わる通知設定を行なったユーザー(つまり、投資に興味を持ったユーザー)は2900人。発売されたシェアは360だった。

Timelessが実際に扱ったコレクターズアイテム

写真中央はロレックスの腕時計だ。こちらはシェア売り切れまでにかかった時間は21分。通知設定を行なったユーザーは2500人。発売されたシェアは1900だった。

「このロレックスはシェアを持ちたいユーザーが非常に多かったので、2〜3倍の値段でも売れたかもしれないですね」とカルナート氏。

一番右はナイキのスニーカーだ。このシェアは140売り出され、5分間で売り切れてしまった。通知設定を行なったユーザーは1825人だった。「当社では毎週木曜にコレクターズアイテムを出品するのですが、それを見るために通知設定していたユーザーが一定数いたことがわかります」。

ミレニアル世代を惹きつけるためにすべきこと

カルナート氏は「ミレニアル世代を惹きつけるためにすべきことは3つあります」と語る。

1つめはコレクターズアイテムも分割することだ。これをすることで、暗号資産ファンだけでなく、より広い層がコレクターズアイテムに投資しやすくなる。

2つめは、既存のアイコン的なコレクターズアイテムを再度世に出していくことだ。世の中には多くのおもしろいコレクターズアイテムがある。それをデジタルな方法で紹介することが重要だという。

3つめは、新しいアイコン的なコレクターズアイテムを創造していくことだ。歴史あるブランドと若い投資家やミレニアル世代を繋ぐには、新しいコレクターズアイテムが肝要だ。

TImelessが考えるブランドとユーザーの関係

「コレクターズアイテムブームはブランドのチャンスです。この投資の流行をうまく活用できれば、低コストで新しい購買層とつながり、高い収益を狙うことができます。私たちは今、高級ブランドのNFT版を創ろうとしています。当社はブランドとユーザーをつなげ、歴史あるブランドをNFTの世界に呼び込もうとしています」とカルナート氏は語る。

【Japan編集部注】本記事はCrypt Asetts Conference 2021中のセッションを再構成したものとなる。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFT投資コレクションミレニアル世代

Visaがデジタル化促進で銀行とフィンテックの協業を促すプログラムを拡大

銀行とフィンテックの関係は多面的だ。

あるときには彼らはパートナーだ。しかし別のときには片方が相手を買収したり投資したりする。

そして米国時間5月26日、決済大手のグローバル企業Visa(ビザ)による発表は、銀行とフィンテックの協業能力を促進することを目的としている。

具体的には、Visaは金融機関に「精査、そしてキュレートされた」テクノロジープロバイダーを迅速につなげるためのプログラム「Visa Fintech Partner Connect」を拡大したと発表した。

それが正確に何を意味するのか、筆者は同社のシニアバイスプレジデントでフィンテックグローバル責任者のTerry Angelos(テリー・アンゲロス)氏に話を聞いた。

「2020年のグローバルフィンテック投資は1050億ドル(約11兆4620億円)でした」とアンゲロス氏は話した。「ベンチャー、PE、M&Aの案件が2861件ありました。文字どおり1000億ドル(約10兆9160億円)超がフィンテックに向かっています。この額は米国の銀行のテクノロジー関係の予算の合計額を上回ります。その結果、フィンテックで起こっているイノベーションの多くがベンチャー資金によって賄われています。Visaはそのイノベーションを当社の顧客である銀行や処理業者、他のフィンテックに持ってこようとしています」。

このプログラムは2020年11月にまず欧州で始まり、現在は米国、アジア・太平洋、南米、CEMEA(中欧・中東・アフリカ)で展開されている。Visaは同社のクライアントの銀行や金融機関、そして他のフィンテックが「コストをかけずに、そしてバックエンドテクノロジーを自前で構築する複雑さをともなわずにデジタルファーストのエクスペリエンスを創り出す」ことをサポートできるフィンテックの発掘に取り組んできた。

それぞれの地域でローカルのチームがプログラムを運営し、口座開設、データ統合、分析・セキュリティ、顧客エンゲージメント、新規カード顧客サービス、オペレーションとコンプライアンスの部門のパートナーを調査し、管理する。

アンゲロス氏によると、これまでのところVisaはバックオフィス機能から新しいフロントエンドサービスに至るまで、さまざまなテクノロジーを提供するパートナー60社を特定した。Alloy、Jumio、Argyle、Fidel、FirstSource、TravelBank、Canopy、Hummingbird、Unit21などが含まれる。うち24社は米国企業だ。

「フィンテックが注力し、カバーしている多くが既存の銀行をディスラプトすることについてです。PayPalのようなフィンテックも含め、誰もが誰かをディスラプトしようとしています」とアンゲロス氏はTechCrunchに語った。「ベンチャーの数はもちろんかなり大きなものです。我々が認識しているのは、ベンチャーが支援している企業を当社の既存の顧客とペアリングする多大な機会があるということです。あなたが通常耳にする、我々vs彼らというアプローチとやや反対のものです」。

Visaの顧客はVisa Partnerウェブサイトを通じてプログラムパートナーと連絡を取り、実行費用の割引や値引き価格といった恩恵を受けることができる。

「Fintech Connectプログラムは興味深いフィンテック企業を特定してキュレートし、その後顧客がそうしたFintech Connectパートナーと関われるよう魅力的な商業提携をつくりだすのをサポートします」とアンゲロス氏は話した。

それで、Visaはそこから何を得るのか。

「当社の目標は、すべての顧客がより良いデジタルエクスペリエンスを消費者のために構築できるようにすることです。すべての銀行が顧客の役に立ち、デジタルエクスペリエンスを構築するための最新のツールを持っていればすばらしいと思います」と同氏は語った。

例えばパートナーの1社はバーチャルカードスタートアップのExtendだ。

「TripActions、Ramp、Divvyなど今日バーチャルカードを提供するフィンテック企業はあります。しかしVisaがしようとしているのは、『どうやって当社の銀行顧客に同じようなことをさせられるだろうか』と検討することです。ですので当社は誰もが利用できるよう、我々のエコシステムにイノベーションを持ち込んでいます」とアンゲロス氏は説明した。

これは例えば攻撃があっても動じない体制のための補完的なテクノロジーを持つTripActions、Ramp、Divvyといった企業もサポートする。

「純粋な受益者はうまくいけばそうしたレールに乗っているものにさらに支出しようとします。例えばB2B支出額は年間約120兆ドル(約1京3100兆円)です。うち20兆ドル(約2180兆円)にカードが使えると考えています。今日当社はそのうちの1兆ドルを扱っています。ですので、当社の顧客の銀行やフィンテックがB2B決済を可能にするこうした種のソリューションを構築できれば、残り19兆ドル(約2070兆円)をVisaはパートナーを通じて取りにいけます」。

はっきりさせておくと、Visaは時々スタートアップに投資もする。このイニシアチブはそうした取り組みとは異なるが、パートナーの数社はVisaから投資を受けている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Visa投資

画像クレジット:Kursad / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

ストックフォト大手Getty ImagesがソーシャルビデオテンプレートツールPromo.comに17.5億円投資

ソーシャルビデオツールのPromo.comが米国時間5月25日、シリーズBで1600万ドル(約17億5000万円)を調達した。ラウンドをリードしたのは、ストックフォトで知られているGetty Imagesだ。

ブランドやクリエイターなどが簡単迅速に特定のビデオが必要なときには、Promo.comで探せる。それは、写真をストックフォトサービスで探すときと同じだ。Gettyにもストックビデオがあるが、Promo.comはビデオクリップと、プロでなくても使える簡単なビデオ編集ツールの両方を提供している。

ブランドはPromo.comのライブラリでプロが作ったビデオクリップを選び、それにメッセージやロゴや独自の音声を追加する。そうやってカスタマイズしたビデオをダウンロードしたら、後はソーシャルのチャネルにポストするだけだ。

 

イスラエル最大の銀行の1つであるMizrahi-Tefahot Bankが、このシリーズBのラウンドに投資ではなく融資で参加している。Promo.comとGetty Imagesの間にはかねてから戦略的パートナーシップがあり、今回の投資でその仲はさらに深まり、PromoがGettyの膨大な量のビデオクリップの集積にアクセスすることになるだろう。

画像クレジット:Promo.com(スクリーンショット)

もちろん、ビデオサービスといえばPromo.comだけではない。2020年12月に700万ドル(約7億6000万円)を調達したBiteableは、企業がテンプレートを使って、ソーシャルにポストするための短編ビデオを作ることができる。合理化の行き届いたグラフィックデザインのプラットフォームであるCanvaも、独自のライブラリを使うストック映像のビデオエディティングをサポートしている。

ビデオのテンプレートは、VimeoもVimeo Createというサービスで提供している。それは、同社が買収したAI利用のビデオエディターMagistoから育ったサービスだ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Getty ImagesPromo.com投資動画

画像クレジット:Noah Seelam/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

アフリカのスタートアップへの投資は、観測されるようになった2015年以来、堅調に伸び続けている。その年、Disrupt Africa(ディスラプト・アフリカ)とPartech(パーテック)は独立して調査を行い、ベンチャーキャピタル投資額それぞれについて、1億8600万ドル(約202億円)と2億7700万ドル(約301億円)という異なる数値を示した。どちらも一大陸の数字としてはばかばかしいほど小さい。たとえば創業4年のSnapchat(スナップチャット)は同じ年に1回のラウンドで5億ドル(約544億円)調達している。しかし、アフリカと急成長中の米国スタートアップ1社への投資の格差は続いているものの、アフリカ大陸に入ってくるお金が増えているのは良い兆候だ。

2019年、アフリカのベンチャーキャピタル投資は史上最高額に達したとPartechのレポートが伝えている。Partechによると、アフリカの234社のテック企業が、250回の調達ラウンドで計20億2000万ドル(約2197億円)調達した。これは2018年のスタートアップ146社、ラウンド164回による調達額11億6300万ドル(約1265億円)から74%成長したことを示している。

2020年には新たな記録が達成されるだろうという共通の期待があったが、それはパンデミック前のことだった。このため、アフリカのテックエコシステムアクセラレーターであるAfricArena(アフリカリーナ)は、アフリカ大陸のスタートアップへの2020年のベンチャーキャピタル投資額を12億ドル(約1305億円)と18億ドル(約1957億円)の間になると予測した。そして、経験に基づく推測なのか計算された予測なのか、PartechとBriter Bridges(ブライター・ブリッジズ)の年末レポートは、総投資額をそれぞれ14億ドル(約1522億円)と13億ドル(約1414億円)と推定した。

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2021年、AfricArenaは最新レポートで、同大陸のスタートアップへのVC投資は22億5000万~28億ドル(約2447億〜3045億円)へと増えると予測している。達成されれば2019年の数字を超える大陸の新記録になる。

予測の背景にある論理的根拠をレポートの抜粋とともに紹介する。

2021年前半の第2四半期は、いくつかの理由で2020年第4四半期に似てくると予測します。ワクチン接種が有意な結果をもたらまでには期待していたよりも時間がかかる可能性が高くなりました。しかし、接種が始まったことで、たとえ実際どれほど長くかかるとしても、パンデミックの終わりに対する大きな不確実性が取り除かれ、時間だけの問題になりました。

その結果、私たちはシードからシリーズBにかけての投資が著しく加速され、いくつかのIPO(ナイジェリアのInterswitchなど)とともに、これまで見たことのないレベルまで投資行動を推進すると予測します。2020年4月現在の2021年への私たちの予測は、16億ドル(約1740億円)以下から30億ドル(約3262億円)以上まで幅があります。ワーストケースのシナリオは、アフリカ経済に対する長引く断続的な影響に基づくものであり、ベストケースのシナリオは、2021年第1四半期における完全復旧を織り込んでいます。上記の観察に基づき、現時点での当社の2021年予測は22億5000万~28億ドルの範囲になります。

4月30日現在、公表されたベンチャーキャピタル総額は8億ドル(約870億円)をわずかに上回る。BFA Global(BFAグローバル)のシニアベンチャービルダーであるMaxime Bayen(マキシム・ベイン)氏による。もしこのペースが2021年いっぱい続けば、アフリカ発スタートアップの調達総額は20億ドル(約2175億円)を超えるかもしれない。

画像クレジット:AfricArena

2020年にはアーリーステージ投資の数は増えたが、成長に賭けるグロースディールの数や、全体的な投資規模が減ったため、投資活動の減少を招いた。Partechによると、シードラウンドは前年比で80%成長し、全投資金額の64%を占めた。全体で、アフリカスタートアップはシードファンディングで2億2000万ドル(約239億円)を調達し、対前年比で47%の増加だった。シリーズAとBラウンドも同じく成長した。シリーズAは9%増(86ラウンド)、シリーズBは16%増(29ラウンド)だったが、投資規模はそれぞれ5%(4億4700万ドル、約486億円)と8%(4億4900万ドル、約488億円)減少した。

グロースディールも16%減少し、5000万ドル(約54億円)以上の完了した取引はわずか2件だった。2019年は10件で、そこにはInterswitch、OPay(オーペイ)、Branch(ブランチ)、Andela(アンデラ)などが入っていた。

2021年に20億ドルの壁を超えるための推進力は、VCが投資件数を増やし、スタートアップが2019年の大型グロースラウンドを再現することにかかっている。前者は、アフリカスタートアップが毎週のように資金調達を続けていることから実現しそうだ。しかし、後者についてはまだやるべきことがある。これまでに1回のラウンドで1億ドル(約109億円)以上調達したアフリカスタートアップは2社にすぎない。フィンテックスタートアップのFlutterwave(フラッターウェーブ)とTymeBank(タイムバンク)だ。

関連記事:アフリカの決済サービスFlutterwaveが約185億円を調達、企業価値が約1090億円以上に

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アフリカ投資

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカ、ラテンアメリカ、インドなどの新興市場では決済、融資、ネオバンクがフィンテック業界を掌握

ここ数年、新興市場ではテック関連の投資が活発に行われており、エコシステムの成長につながっている。

アフリカ、ラテンアメリカ、インドなど、これらの市場の一部では、それぞれの地域の傾向や投資に関する包括的な報告が出版社や企業により提供されている。しかし、地域間の傾向や投資を比較対照した報告はほとんどみられない。それも当然だろう。このような作業は骨の折れる仕事である。

そうした中、データ調査機関Briter BridgesとインクルーシブテックのグローバルアクセラレーターCatalyst Fundが発表した報告書は、この3市場の最重要セクターであるフィンテックに対して全体像の提示を試みるものだ。

本報告書「新興市場におけるフィンテックの状況レポート」は、新興市場全体にわたって投資、プロダクト、包括性という3つの指標で評価を行っている。

調査はアフリカ、ラテンアメリカ、インドの177のスタートアップと33の投資家を対象に行われた。ここで使用されているサンプルの規模はごく小さなものであるが、鍵となる所見は非常に印象的である。

それでは中身を見ていこう。

フィンテックは2017年以降、地域全体で230億ドル(約2兆5038億円)を資金調達している

新興市場に向けられた投資意欲はとどまるところを知らない。本セクターは過去5年間、前年比で最大の投資を受け続けている。

3億人を超えるアフリカの成人が、銀行口座を持たない世界人口の17%を占めている。2019年にアフリカ大陸でBranch、Tala、World Remit、Interswitch、OPayによる合計7億7500万ドル(約845億円)超に達する5つの大型取引が行われたことは理解に難くない。2020年は3億6200万ドル(約394億円)に低下したものの、Flutterwave、TymeBank、Kudaなどの企業がこの期間にかなりの額を調達している。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカでは、デジタルユーザーの基盤が拡大し、規制と改革が促進され、中小企業が活況を呈している。アフリカ同様、銀行口座を持たない人の割合は70%と高い。この地域のフィンテック企業はその事業機会をとらえ、NuBank、Neon、Konfio、Clipといった企業が享受するメガラウンドを獲得した。これまでの5年間で、フィンテック系スタートアップは合計100億ドル(約1兆886億円)を調達している。

インドのフィンテック系スタートアップは、2019年だけで48億ドル(約5225億円)という記録的な額を調達したことが報告書に記されている。そして2020年、同セクターは30億ドル(約3266億円)を調達し、CRED、Razorpay、Groww、BharatPeなどの著名な大手企業を含む過去5年間の合計額は116億ドル(約1兆2627億円)に達した。

アフリカの平均シードラウンドは100万ドル(約1億885万円)、インドとラテンアメリカの平均は400万ドル(約4億3540万円)

報告書によると、アフリカでの初期段階の取引は過去5年間で累計16億ドル(約1742億円)以上増加している。特にシードラウンドの平均規模は、2017年の75万ドル(約8250万円)から2020年には100万ドル(約1億885万円)に拡大した。

ラテンアメリカにおける過去5年間の平均シード取引額は約570万ドル(約6億2040万円)であったのに対し、インドでは約460万ドル(約5億円)であった。報告書では、後者のデータはCREDの3000万ドル(約33億円)のシードラウンドにより偏りが生じているとしている。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカはIPOに意欲的で、インドはユニコーンを産み、アフリカはM&Aへ向かっている

2020年StripeがPaystackを買収したことは、その規模とナイジェリアのフィンテック系スタートアップの地元出身というステータスにより、アフリカのM&Aのハイライトとなった。その他に大きな話題となったラウンドには、WorldRemitによるWaveの5億ドル(約544億円)の買収(これは大陸で最大のものである)とNetwork InternationalによるDPO Groupの2億8800万ドル(約313億円)の買収がある。

関連記事:インドのスタートアップは2020年に合計9660億円を調達、記録更新ならずも後半回復

アフリカのフィンテック市場ではメガ買収や7桁規模の未公開取引の数々に注目が集まっているが、ラテンアメリカのフィンテック市場ではIPOへの関心が高い。報告書によると、同地域のフィンテック企業は数回にわたり1億ドル(約109億円)のラウンドを行っており(Nubank、PagSeguro、Creditas、BancoInter、Neon)、M&A活動は希薄だ。しかし、Arco Educacao、Stone Pagamentos、Pagseguroなど、その多くが最近上場を果たしている。

一方、インドには25社を超える10億ドル(約1088億円)企業が存在し、毎年増え続けている。先月には8件新たに誕生した。こうしたユニコーン企業は、Paytmのような既存の企業からCREDのような新しい企業まで多岐にわたっている。

決済、クレジット、ネオバンクがフィンテック活動をリード

報告書によると、この3地域では決済企業がフィンテックへの投資の中心となっている。そのサブセット内では、B2B決済が支配的な位置を占めている。次に資金を得たフィンテックのカテゴリーは、クレジットとデジタルバンキングだ。

アフリカでは、決済スタートアップへの投資がクレジットやネオバンクを上回っている。Flutterwave、Chipper Cash、Wave、Paystack、DPOなどが挙げられるだろう。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカで最も資金を得ているフィンテック企業はネオバンクである。また、3つのプロダクトカテゴリーすべてに20億ドル(約2176億円)から30億ドル(約3266億円)の資金が集まっている唯一の地域でもある。そうした企業には、NuBank、Creditas、dLocalなどが名を連ねている。

インドではトップクラスの資金力を持つフィンテック系スタートアップは決済カテゴリーに属している。しかし、Niyo、Lendingkart、InCredのような9桁のラウンドを調達する企業が、クレジットやネオバンクで注目すべき存在となっている。

投資家は保険、決済、デジタル銀行の将来に期待を寄せている

5年後のフィンテックプロダクトの将来動向については、調査対象となった少数の投資家のほとんどが、保険、決済、デジタルバンキングモデルを選択肢としている。

投資プラットフォームや組み込み型モデルにも関心が集まっている。彼らの関心は農業や送金に向けられておらず、ウェルステックプラットフォームやネオバンクも優先順位が低かった。デジタルバンキングとネオバンキングが投資家の選択範囲の両極にあるのはなぜだろうか?確かなことはわからない。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

報告書の一部では、これらの地域で十分なサービスが行き届いていない消費者のことや、フィンテックスタートアップが彼らにどのようにサービスを提供しているかについて述べられている。また、これらのフィンテックスタートアップがファイナンシャルインクルージョンを促進しているかどうか、どのような機能やプロダクトがそれを可能にするかについても論じている。

そのすべてにおいて、アフリカがラテンアメリカとインドに何年も後れをとっているという明白な事実は、目新しい情報ではない。Briter BridgesのディレクターDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏に話を聞いたところ、アフリカ大陸がラテンアメリカとインドが現在位置しているところに到達するには5年かかるだろうと語っている。同氏はまた、現段階でインドをより良い市場にしているのは、他の市場のように大陸ではなく、オペレーションが一律的であるからだと付け加えた。

「アフリカの54カ国やラテンアメリカの20カ国よりも、1つの国を管理する方が容易です」と同氏はTechCrunchに語った。「アフリカでは、私たちは『アフリカ』というラベルを使いながら、4~6カ国にわたって言及します。ラテンアメリカでは基本的にブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアの4カ国で大手企業が台頭しています。一方、インドは1カ国です」。

同報告書によると、新興市場のほとんどのフィンテック企業は、作物保険、流通業者やベンダー向けのクレジットライン、KYC、電子商取引決済ゲートウェイ、医療金融、保険といったさまざまな分野に進出しているという。ジュリアーニ氏は、この状況が今後も続くと予想している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:アフリカラテンアメリカインド投資決済クレジットカード保険銀行金融

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)