第2四半期の成長頭打ちにTwitter株12%ダウン

今日(米国時間7/26)、Twitterは 第2四半期の決算を発表したが、きわめて不満足な内容だった。その結果、株価は一気に12%もダウンした―ツイートするのにかっこうの話題だったといえなくもない。

下に株価のチャートを掲げる。残念ながらこれが事態を要領よく表していると思う

今日の急落でTwitterは最近得た値上がりをほぼ帳消しにしてしまった。Twitterの前期の決算は同社にしては珍しくポジティブなもので、MAU〔月間アクティブ・ユーザー〕が予測を超えて伸びていた。それ以外の数字もアナリストの期待以上だった。しかし今期の決算では、ユーザー数は頭打ち、広告売上も不調というTwitterの病がぶり返し、市場は同社の将来に一段と強い疑念を抱くこととなった。

Twitterの株価は多かれ少なかれMAUの伸びに比例している。Twitterは最近メインのサービス以外に各種のプラットフォームを提供し、特にライブビデオに力を入れているため同社のサービスを実際に利用しているオーディエンスの数をMAUから正確に測ることは難しい。そのためTwitterではMAUの数字から距離を置こうと務めていた。広告をメインとするビジネスはどうしてもFacebookなど他の同種サービスとMAUの数字を比較されてしまうからだ。

株価急落は同社に長期計画の根本的な見直しを迫っているが、短期的な悪影響も大きい。Twitterは報酬体系がストックオプションに依存することを改めようとしているものの、株価を維持できなければストックオプションの価値は失われる。これは社員の士気を下げ、人材の獲得にも悪影響を及ぼす。そこでTwitterはハラスメントの防止やツイートの選択のアルゴリズムの改善などユーザー体験を改良するプロダクトを次々に公開してきた。

市場のMAU万能主義に対してTwitterはDAU〔1日当たりアクティブユーザー〕が重要であるというスタンスを取った。これは、Snapchatを運営するSnapもFacebookに対抗するために採用した戦略だ。目的は株式市場の目をDAUに向けさせ、これこそがサービスの価値を生む源泉だと納得させることにある。DAUの大きさはエンゲージメントの母数であり、現実に広告を見るユーザーの数だ。Twitterのユーザーは毎日何回もTwitterを開くので広告の価値はさらに高くなる。より大きなエンゲージメントはより高価な広告料金を意味する。これがTwitterが出直しに際して取った戦略だったが、うまくいくためにはもちろんDAUが伸びていなければならない。

ところがTwitterは未だにDAUの実数を公表しない。その代わりに、いかにもテクノロジー企業らしいが、成長率やら縦軸にラベルがないグラフやらを見せてきた。透明性は今後高まるのかもしれない。しかし現在の秘密主義はTwitterには広告メディアとして巨大な可能性があるという同社の主張を裏付ける助けにはならない。

画像: Bryce Durbin

〔日本版〕Twitterは2014年1月に69ドルの高値をつけたが、2016年5月に14ドル台まで下落。今年に入ってやや持ち直し、先月は20ドルまで回復していた。現在の株価は16.84ドル。

TechCrunch記事に掲載されたTwitter作成のDAU成長率(棒グラフにY軸がない)。

同じくMAUの四半期推移。対前年比5%の成長。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebook、Q2売上は予測を上回る93.2億ドル――ユーザー数の伸びはやや鈍化

Facebookのビジネスは2017年の第2四半期も依然好調だ。先ほど発表された決算資料によれば、売上は93億2000万ドル、GAAPベースの純EPS*は1.32ドルだった。アナリストの予測は92億ドル、 EPSが1.13ドルだったのでいずれも上回った。

売上増加率は対前年同期比で44.7%だった。2016年の第2四半期は59%のアップだったので、増加率はややスローダウンしている。この点についてはFacebook自身が「ニュースフィードに表示できる広告スペースが限界に近づいている」と投資家に警告していた。

ちなみに、広告スペースが限界に近くに連れて売上増加率が低下してきた経過は下の通り。

  • Q2 2017: 45 %
  • Q1 2017: 49 %
  • Q4 2016: 51 %
  • Q3 2016: 56 %
  • Q2 2016: 59 %

Facebookの売上のベースとなった月間アクティブ・ユーザー〔MAU〕は20億600万人で、前四半期の19億4000万人から3.4%増加した。前四半期のユーザー増加率は4.3%だった。Facebookの1日当たりアクティブ・ユーザー〔DAU〕は13億2000万人で前四半期は12億8000万人だった。対前年比では17%アップしている。決算発表直前のFacebookの終値は165.61ドルだった。時間外取引では若干下げたが、決算発表後後に反発し、1.35%アップして167.85ドル付近で取引されている。

第2四半期のFacebookの利益は38億9400万ドル、対前年比で71%アップした。Facebookの四半期利益がGoogleを上回ったのはこれが初めてだ。ただしGoogleの第2四半期の利益が35億2400万ドルと低調となったのはEUから課せられた27億ドルの独占禁止規定に基づく罰金のためだ。Googleではこの措置を不服として控訴している。

Facebookが計上したコストは49億2000万ドル、営業利益率は47%だった。前第1四半期は41%、30億6000万ドルの営業利益だった。従業員数は2万658人で対前年比43%のアップだ。Facebookが将来の規模の拡大をにらんで人材に投資していることをうかがわせる。資本支出(capital expenditure)は14億4000万ドル、現金及び現金等価物は354億5000万ドルに急増した。連年の黒字経営によりFacebookには必要とあれば大型買収を行うのに十分な手元資金がある。【略】

モバイルは今や広告売上の87%を占め、実額は80億ドルに上っている。前四半期は85%、前年同期は84%だった。広告売上総額は91億6000万ドルだった。

第2四半期にFacebookはエンタープライズ向けSNS、 Workplaceの無料バージョンのテスを開始した。Workplaceは企業向けコラボレーション・ツールとしてFacebookの有力な収入源となる可能性を持っている。今期、Facebookには500万の広告主が存在した。ビデオの5本に1本はFacebook Liveを利用したライブ配信だったという。

Instagramも引き続き拡大を続け、ユーザー7億人、 Directメッセージのユーザーは3億7500万人を数えた。Snapchat Storiesのデッドコピーと評されるWhatsApp Statusのユーザーも2億5000万人に上った。一方、Messengerの月間ユーザーは12億人の大台に達した

WhatsApp StatusはSnapchat Storiesのコピーが大成功

決算発表の電話記者会見でCEOのマーク・ザッカーバーグはAIがFacebookのビジネスに与える影響を論じ、「Facebookの人力によるコンテンツ監視の一部はやがてAIで置き換えられるだろう。大勢の目に触れる前に不適切なコンテンツをスクリーニングすることが可能になる。個人別のニュースフィードに適切な投稿を選択し、またフォローしていなくても興味あるページを配信するなどの面でAIは役立つ。広告ターゲティングもAIによって最適化が進むだろう。AIは〔Facebookの規模からして〕人力では不可能なレベルにFacebookを改良するはずだ」と述べた。

ザッカーバーグの発言でもっとも重要だったのは、WhatsAppのDAUが10億人に達し 、Snapchat Storiesのクローン、WhatsApp StatusのDAUが2億5000万人に達したことを明らかにした点だろう。

ただしザッカーバーグはMessengerの収益化に関してわずかに不満を感じているようだ。ザッカーバーグは「もう少し速い動きを期待したい。必ずそうできると信じている」と述べた。【略】

〔日本版〕*Facebookの決算資料によれば”Earnings per share attributable to ClassA and Class B common stockholders: diluted”〔クラスAおよびクラスBの普通株の1株当たり利益:希釈後〕についての数字。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

GoogleのCEO、ピチャイが親会社Alphabetの取締役に

GoogleのCEO、スンダル・ピチャイ(Sundar Pichai)が親会社、Alphabetの取締役に指名されたことが、今日(米国時間)、同社から正式に発表された

「スンダルはGoogleのCEOとして素晴らしい仕事をしてきた。Googleは規模、パートナー関係、プロダクトのイノベーションなどあらゆる面で力強い成長を遂げた。私はスンダルと仕事をすることを大いに楽しんでおり、Alphabetの取締役となることを嬉しく思っている」とAlphabetのCEO、Larry Pageは声明で述べた。

2015年にGoogle以外の事業を別会社に分離し、全体を持株会社としてAlphabetに再編する決定がなされたときからピチャイはGoogleの責任者を務めてきた。ピチャイは検索、広告、クラウド、マップ始めGoogleというブランド名がつく事業のほとんどを管轄している。AndroidとYouTubeもピチャイの監督下にある。

ピチャイは2004年にGoogleに参加し、Googleのコンシューマー向けプロダクト、エンジニアリング、検索などの責任者を務めてきた。

ピチャイが加わることになるAlphabetの取締役会のメンバーはラリー・ペイジの他に共同ファウンダーのサーゲイ・ブリン、元CEOのエリック・シュミット、Kleiner Perkinsのジョン・ドーア、Googleの上級副社長、ダイアン・グリーンだ。

Alphabetはこの後、株式市場が閉まるのを待って四半期決算を発表する予定。

画像: LLUIS GENE/AFP/Getty Images

〔日本版〕ダイアン・グリーンはVMwareの共同ファウンダー、元CEO

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

IT企業トップ5の時価総額合計はいよいよ3兆ドル

(編集部)この記事の寄稿者はAlex Wilhelm

Alex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長、TechCrunchのベンチャーキャピタル・ニュース専門のポッドキャストEquityの共同ホスト。 これまでの投稿:

Google Financeのデータによれば、今日(米国時間7/20)、テクノロジー企業のトップ5の時価総額の合計が3兆ドル〔336兆円〕を超えた。市場のテクノロジー・ブームは新たな段階に入ったと言えそうだ。

2000年のドットコム・バブルを象徴したのがNasdaq指数が5000を記録したことだった。New York Timesによれば、テクノロジー企業のビッグ5の時価総額が今や3兆ドルに達したことは、この分野が湧きたち、あらゆる面で新記録が生まれていることの表れだという。

現在の株式市場はテクノロジー市場といってもいい。まずはいくつかの数字を確認し、ここまで来た経緯を振り返ってみよう。

3兆ドルを超えて上昇中

Google Financeの数値をベースにCrunchBase Newsが作成したスプレッドシートによれば、ビッグ5(Apple、Alphabet、Amazon、Facebook、Microsoft)の時価総額合計は3.03兆ドルとなった。Yahoo Financeのデータでは3.002兆ドルだった。

なおWolfram Alpha(これについては後述)では2.978兆ドルという結果を出した。多少の誤差はあるものの全体として3兆ドルかそれ以上という点に間違いないようだ。

この額に達するまでにビッグ5はかなり波乱に満ちた経過をたどってきた。直近52週の最安値と比較すると、現在の株価の上昇率は以下のとおりだ。

  • Apple: 56.63%
  • Amazon: 44.61%
  • Facebook: 44.55%
  • Microsoft: 39.54%
  • Alphabet: 33.45%

52週の最高値と比較するとAppleは3.59%安、.Alphabetは0.24 %安となっているが、全体としてテクノロジー企業の株価が新たな水域に入ったことは間違いない。

さてここに問題はあるだろうか?

影響を考える

冒頭で述べたように、新記録というのはなんらかの頂点を表すことが多い。つまり普通でない事態だ。そしてテクノロジー分野ではこれが起きている。

私は5月にブログでこの点について書いたが、引用してみる。

ビッグ5は急速に13桁〔兆〕の領域に近づいている。テクノロジー企業のトップが現在のマーケットの勢いに乗って記録を更新するなら、あらなNasdaq
5000となるかもしれない。2000年のテクノロジーバブルのとき、この指数はある種の心理的なハードルとして意識されるようになった。テクノロジー・ビジネスが復調してNasdaq 5000が全く過去のものとなったは比較的最近だ。

それからわずか3ヶ月で1兆ドルは実現した。

もちろんテクノロジー企業にはネガティブなニュースもあった。これまで絶好調をうたわれてきた企業が閉鎖されたり、 大規模なレイオフを実施sたりしている。Theranosは危機が続いている。株式を上場したユニコーン・スタートアップの一部は、Blue Apronは苦戦している。しかし全体としてみればテクノロジー市場は好調だ。【略】

ここで。ビッグ5の時価総額の推移のWolfram Alphaのチャートをお目にかけよう。ご覧のように最近一度1兆ドル近くまで行ったが、実際に到達したのは今回が初めてだ。

とりあえずは良いニュース

私がテクノロジー・ビジネスについてCrunchbase Newsで書いてきた記事は非公開企業とそれに対するベンチャー投資に関するものが主だったが、公開企業に動向はこの市場全般を理解する上でも大いに参考になると思う。【略】

非公開企業の会社評価額と上場企業の時価総額はますます乖離していく傾向だ。このため上場に踏み切るユニコーン・スタートアップの数は予想より少なくなるだろう。また上場のためには会社評価額引き下げる必要も出てくるかもしれない。市場が過熱ぎみのときに上場するのは有利だが、これは同時に市場が乱高下したときに多大の損害を被る可能性があることも示している。

時価総額合計1兆ドルという事態は、説明も簡単でしないし今後の予想も難しいが、ビッグ5にとっては大きなマイルストーンとなったのは間違いない。

われわれCrunchbase Newsでは今後もビック5の動向を追っていく。当面、利食い売りが入るまでに株価がどこまで上がるか注目だ。

イラスト: Li-Anne Dias

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

書評「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」――ARPU、テイクレートが重要なわけ

すでにシバタナオキ(柴田尚樹)氏の新刊、MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣を読まれた読者も多いと思う。まだ読んでない(積んである方を含む)向きのために簡単に紹介してみたい。

柴田尚樹氏はシリコンバレーのモバイル・アプリ検索最適化ツールのスタートアップ、SearchManの共同ファウンダーで、その経営が本業だ(TechCrunch Japan寄稿記事

柴田氏はしばらく前から決算資料をベースにテクノロジー系企業のビジネスを解説する記事をnote上に発表していた。 この連載が増補、加筆されて日経BPから出版されることになった。シリアスなビジネス書としては異例のヒットになっている、

念のため情報開示しておくと、柴田さんとは2009年にサンフランシスコで開催されたTechCrunchカンファレンスで会って以来(オフでお会いする機会は少ないが)お友達だ。しかしそれと別に、これは間違いなく素晴らしい本だと思う。裏側帯に「ファイナンス・リテラシーは一生モノの仕事力」とあったが、起業家、起業家志望者はもちろん、少しでもビジネスに関係する読者全員に必ず役立つはず。

企業会計についての本は大型書店の棚をいくつも占領するほど発行されているが、どれも面白くない。面白くないという表現が適切でないなら、わかりにくい。これから資格を取ろうと勉強中の学生ならともかく、多忙なビジネスパーソンが割ける時間にも気力にも制限がある。しかしこの本はeコマースならYahoo!とAmazon、FintechならSquareとPaypalというように(少なくともTechCrunch読者なら)誰でも知っている有名企業の最近の決算を例として「読み方のカンどころ」が解説されている。読んでいくうちに自然と解釈の基礎となる会計知識も身につく仕組みだ。

本書は柴田氏の経歴の中から生まれたものだ。柴田氏は2010年にシリコンバレーでスタートアップを立ち上げるまで楽天の最年少執行役員だった。当時楽天では経営トップが毎週全社員向けに業界トピックスを紹介するコーナーがあり、柴田氏はその「台本づくり」を任されたのだという。役員は超多忙だし、とおりいっぺんの業界情報なら社員は皆知っている。

そこで柴田氏は「(当時すでに)楽天はECから金融、広告などさまざまな事業を運営しているので、競合他社は国内外にたくさんあります。ライバルの決算を分析して、そこから読み取ることのできるサービス動向や経営戦略を解説すれば、社員の日常業務にも役立つ」と考えたという。

目次は下のとおり。お急ぎの向きは自分の興味あるセクションから読み始めてもいっこうにかまわないが、できれば最初のページから順に読む方がお得だ。フォーマットがとても親切にできていて、「決算を読むカンどころ」となる知識が自然に身につくよう配慮されている。

第1章: 決算が読めるようになると何が変わるのか?
第2章: ECビジネスの決算
第3章: FinTechビジネスの決算
第4章: 広告ビジネスの決算
第5章: 個人課金ビジネスの決算
第6章: 携帯キャリアの決算
第7章: 企業買収(M&A)と決算
終章: 決算を読む習慣をつける方法

テイクレートとARPUを覚えるだけでも役にたつ

各章のトビラには「その章のカンどころ」と「重要な3step」が掲載されている。たとえば「ECビジネスの決算」の章なら

ネット売上=取扱高xテイクレート(Take Rate)

が「カンどころ」だ。

本文を見ると、取扱高は流通総額、Gross Merchandise Sales、テイクレートはMonetization Rateと表記される場合があると説明されている。eコマース・ビジネスではA社プラットフォームでの販売(流通)総額が1000億円でもそれがA社の売上になるわけではない。ごく一部がA社の売上になる。この率がテイクレートで、eコマース・ビジネスはこのテイクレートを中心に回っている。たとえばeBayのテイクレートは9.2%、個人出品の手数料課金は10%なのでeBayの売上は取引手数料が主だろうと推定できる。

eコマースにはeBay、アリババ、楽天、Yahooなどの多くのプレイヤーが存在し、ビジネスモデルはそれぞれ異なる。一見すると比較は難しいように思えるが柴田氏によればそれぞれのテイクレートを計算することで横断的な考察が可能となるという。

ただし、Amazonだけはやや異色だ。「Amazonはほとんど利益を出していないのになぜ株価がここまで上がるのだろう?」と不思議に思っている読者も多いかと思うが、柴田氏は「競合他社の斜め上を行くAmazonという異端児」の章で具体的に分析している。

もうひとつ重要なのは次の式だ。

売上=ユーザー数×ユーザーあたりの売上(ARPU)

ARPUはAverage Revenue Per Userの頭文字だ。民放テレビは視聴者から料金を取らないのになぜ成立しているかといえばもちろんスポンサーから広告費を得ているからだ(広告モデル)。NHKは視聴者から料金を徴収している(サブスクリプションモデル)。新聞・雑誌は購読料と広告費の両方から収入を得ている(混合モデル)。こうしたビジネス・モデルはオンライン・メディアの場合でもまったく変わらない。本書ではARPUをカギとして民放テレビ、Facebook、ヤフーなどの広告を主たる収入源とするビジネスが解説されている。ここではMAU(月間アクティブ・ユーザー)、DAU(1日あたりアクティブ・ユーザー)も重要な指標として取り上げられている。

柴田氏はFacebookの「地域別DAU&ARPU」の経年変化をグラフ化して非常に興味深い結果を得ている(図4-7)。柴田氏はFacebookの売上は「アジア+その他地域」に関しては、まだまだDAUが伸びる余地がある」と結論している。数字だけを見ていたのでは気づかないが、グラフ化すると北米、ヨーロッパ、アジアではまったく異なった動きになっていることが一目瞭然だ。余談だが、TechCrunch Japanはオンラインメディアなのでスペースは比較的自由だ。そこで「1日あたりアクティブ・ユーザー」などと繰り返しても困らない。しかし紙媒体やオンラインでもスペースに制限がある媒体ではDAUという単語をどう処理するから頭が痛いだろうと思う。

この調子で重要なポイントを挙げていくとキリがない。ともあれ本書に目を通していただくのがよいと思う。ちなみに本書のフォーマットだが章立てやトビラの構成などは日経BP出版局の中川ヒロミ部長がいろいろとサゼスションを出し、柴田氏が対応して原稿を書き、担当編集者の後藤直義氏が具体的なページに落とし込んだものだそうだ。noteに連載された内容が優れていたのはもちろんだが編集段階でのブラッシュアップも大きな役割を果たしていると感じた。

ちなみに柴田氏は本書のニックネームとして「より決」を提案されている。たしかにニックネームが必要なほど反響は大きく、Amazonでは予約段階で総合2位となった。惜しくも予約総合1位を逃したのはローラのSpeak English With Meを抜けなかったからだそうだ。本書にはKindle版も用意されている。

Snap株価、初めて上場価格を割る

いやはや。

Snapchatを運営する企業、Sapは株式市場でいささか苦しい状況にある。今日(米国時間7/10)の終値は16.99ドルだった。つまり上場価格17ドルを初めて公式に割り込んだことになる。

これは重大だ。なぜなら3月の上場以後、市場でSnapを買った投資家は全員が損失を被ったことになるからだ。 「損をさせられた」という評判はきわめて具合が悪い。

しかし社員や上場以前の投資家にはまだ希望がある。希釈後の時価総額は依然として238億ドルほどある。これは上場前のSnapの希釈後の会社評価額200億ドルより上だ(ここで希釈後というのはストックオプションを含めた発行済全株式という意味)。

Snapのロックアップ期間は150日だった。つまり社員や投資家は7月31日から株式の売却を始めることができる。しかし投資家の一部には投げ売りによってますます株価が下がるのを恐れる声もある。

Snapの最初の四半期決算は5月に行われたが、投資家には不満を抱かせる内容だった。次の四半期決算は8月の予定だが、その内容は株価に大きな影響を与えそうだ。

最近上場したテクノロジー企業で株価が低迷しているのはSnapだけではない。Blue Apronも先月末に上場したものの、株価は上場価格を下回っている

7月にはテクノロジー企業の上場はあまりなさそうだ。Redfinが唯一の上場となるかもしれない。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

デイブ・マクルーア、500 Startupsのゼネラル・パートナーも辞任

TechCrunchはデイブ・マクルーアが500 Startupsのゼネラル・パートナーを辞任したという情報を得た。リミッテッド・パートナーに送られた書簡によれば、共同ファウンダーのChristine Tsaiがマクルーアに辞任を求め、マクルーアもこれを受け入れたという。

われわれは500 Startupsに対しコメントを求め、マクルーアの辞任を確認した。マクルーアはすでに500の経営から離れている〔訳注〕。

リミッテッド・パートナーに送られた書簡によれば、Tsaiおよび経営陣は長期的な見地から500 Startupが成功を収めるためにはマクルーアが500グループのすべてののゼネラル・パートナーの職を含め同社から完全に離れることが最善であるという結論に達したという。500はアメリカだけでなく全世界に10を超える投資機関を持っている。

Tsaiはまた(当初報じられたものとは)別のセクハラが報告されたことについても調査を行い、「受け入れがたい行動であったという結論に達した」と述べている。。

Tsaiによれば、500はマクルーアに今後さらに同種の問題が発覚する可能性がないとはいえず、マクルーアを降板させことが必要だと考えた。しかしマクルーアは共同ファウンダー、ゼネラル・パートナーであり、そうするためには本人の同意が必要だった。マクルーアは辞任に同意した。

先週、マクルーアは500を襲った嵐の中心だった。 ニューヨークタイムズの記事でファウンダーのSarah Kunstに対してマクルーアが不適切な性的ほのめかしを行ったことが報じられた。マクルーアは500の運営中、女性に対して不適切な行動を取ったことが複数回あることを公開状で認め、謝罪した。昨夜、500 Startupsはオーストラリアの投資パートナー、LauchVicに対し、マクルーアのセクハラの苦情に対する社内調査を隠していたことについて謝罪した

社内調査が行われた時期、マクルーアの降板の経緯、また500との関係等についてはまだ不明な点がある。さらに取材中だ。

リミッテッド・パートナーに対するTsaiの書簡は下記のとおり。

〔日本版〕 原文はstepped down as CEOだが、500 Startup JapanによればCEOの職は新設されたものでマクルーアはもともとCEOではなかったという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

500 Startupsのデイブ・マクルーア、セクハラでCEO辞任――ゼネラル・パートナーには残る

500 Startupsのファウンダーであり顔だった著名な投資家、デイブ・マクルーアが会社の運営から退くこととなった。500 Startupsは非常に有名でありかつ大きな成果を挙げてきたアクセラレーター・プログラムだ。マクルーア自身が500 Startupsのイメージそのものだった。マクルーアの離任は最初にNew York Timesで報じられた。

職業的あるはメンター、投資家として女性に接する際にセクハラないし不当な性的行動があったという疑惑による社内調査の結果、失脚した著名な投資家はマクルーアが初めてではない。

InformationがBinary Capitalの共同ファウンダー、Justin Caldbeckのセクハラ問題を報じて以後、 ベンチャーキャピタルのコミュニティーでは多くの女性起業家がハラスメント(場合によっては不適当な物理力の行使)を訴えるようになった。

Uberへの投資の成功などで知られる有力投資家のChris SaccaもNew York Timesの報道を契機に投資事業から離れた。Saccaは今日(米国時間7/1)Mediumに謝罪を掲載した。【略】

Saccaが投資から離れた後、Saccaの元パートナー、Matt MazzeoはBinary Captialに参加していたものの、Coldbeckと共にBinariy Captalから去った

一方、500 Startupsの新しいCEO、Christine Tsaは次のように声明を発表した。

最近、テクノロジー・コミュニティーに属する女性に対し共同ファウンダーのデイブ・マクルーアに不適切な性的言動があったことが判明した。マクルーアの言動は受け入れがたいものであり、500 Startupsの企業理念に反する。【略】

このため、われわれは数ヶ月前に500の経営体制を抜本的に改革する必要を認め、私がCEOに就任することとなった。この職務は経営チームを指揮すると同時に500の日常業務全般を監督する。

デイブ・マクルーアの役割はゼネラル・パートナーとして既存の投資家に対する義務を果たす範囲に留められる。またマクルーアは過去の不適切な行動を改めるべくカウンセリングを受ける。【略】

画像: Jared Goralnick/Flickr UNDER A CC by-ND 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uber取締役、懲りずに女性差別発言――アップデート:ボンダーマンは辞任

Uberの取締役会にまだ一人、女性差別の意味がわかっていないメンバーがいた。今朝、Uberでは女性差別等の問題を根絶するための改革をテーマに全社ミーティングが行われた。Yahoo Financeで公開された録音によると、取締役の一人、デビッド・ボンダーマン(David Bonderman)は取締役会にさらに女性を加えることは「おしゃべりが増えるだけだと」と述べた。実際そう述べたのだから驚く。

録音によれば、取締役のアリアナ・ハフィントンは6:40頃に取締役会に女性を加えるメリットについて話している。

ハフィントン:現在取締役会に女性が一人しかいない〔ハフィントン自身〕が、近く二人目の女性が加わることを示すデータが多数あります。

ボンダーマン:実際は〔そうなれば〕おしゃべりが増えるということを示すデータだな。

ボンダーマンはUberのイメージを危機に陥れたこれだけの騒動にもかかわらず、なにも学ばなかったらしい。ハフィントンは「デビッド、デビッド。心配することないでしょう。あなたはしゃべることがたくさんありそうだから」とたしなめた。

そもそもボンダーマンは口を挟むべきではなかった。

ボンダーマンはこの発言を謝罪したという。New York Timesの記者、Mike Isaacによれば、メッセージは 「取締役会に対して、今日のミーティングにおいて同僚〔ハフィントン〕に尊敬を欠いた発言を行ったことを謝罪する。同時にUberの社員に不快の念を与えたことを謝罪する。深く反省している」というものだ。

ハフィントンはCEO、トラビス・カラニックの休職についても触れ、「最近不幸な出来事が重なったため」と説明した。ハフィントンは「〔カラニックは〕金曜日に母の葬儀を行った。またこの数ヶ月、Uberは〔深刻な出来事〕を経験してきた」と述べた。

Uberの取締役会」は日曜日に Covington & Burling法律事務所とエリック・ホルダー元司法長官のチームが作成した10箇条の勧告をすべて受け入れ、実施することを満場一致で決めている。しかしボンダーマンの発言を見れば、改革の実施は長い道のりになりそうだ。

アップデート: ボンダーマンは女性差別発言の責任を取って辞任した。

ハフィントンは「Uberは根本的な変革の時期を迎えており、デビッドの辞任はUberにとって適切な選択だった」と述べた。

画像: REUTERS/Shu Zhang

〔日本版〕デビッド・ボンダーマンはTPGキャピタルの創立パートナーでUberの社外取締役を務めていた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Verizon、45億ドルでYahoo買収完了――AOL含めメディア事業はOathに統合

VerizonのアメリカYahoo買収が正式なものとなった。先週、Yahooの株主は買収を承認していたが、Verizonは今日(米国時間6/12)、Yahooの買収手続きを完了したと発表した。Verizonは既存AOLと買収したYahooの資産をOathというグループに統合する。Oathにはメディア・ブランドが(TechCrunchを含め)50社前後含まれる。ユーザー総数は世界で10億人に上る。Oathの責任者には現AOLのCEO、ティム・アームストロング(Tim Armstrong)が就任する。

予想されていたとおり、長年YahooのCEOを務めてきたマリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)は辞任した。メイヤーは最近 2300万ドルの「ゴールデン・パラシュート」ボーナスを受け取っている。

マリッサ自身のコメントはTumblrのこの投稿を参照。簡単にいえばこのメモはこの5年間の成果の自慢だが―残念ながら―行間を読めばこの期間Yahooがいかに困難な状況に置かれていたかが分かる。

いずれにせよこの買収完了はインターネットの記念碑的な存在であった独立企業の終焉を告げるものだ。Yahooはもっとも歴史あるインターネット企業であり、西部の荒野のような混乱状態だったインターネットに秩序をもたらし検索事業を現在のような重要なビジネスとした会社だった。しかしGoogleの登場とともにYahooは後退し、自己改革の試みが何度も行われたが、そのつど非常に高価な失敗となった。結局、いまわれわれが眼前にしているような他の大企業グループの傘下に入るという結果となったわけだ。

Yahooの買収はオンライン・メディアにおける集中化のトレンドを象徴するものでもある。Verizonのような巨大企業は多数のメディアブランドのオーディエンスを一箇所にまとめて規模の経済をフルに利用しようとしている。広告経済でGoogleやFacebookのような強力なライバルに対抗していくには規模が重要となってくる。

Oathを管轄する,Verizonのメディアおよびテレマティクス担当プレジデント、Marni Waldenは、「〔Yahoo買収の〕完了はわれわれがグローバルなデジタルメディア企業としての地位を確立する上で重要な一歩だ。今やVerizonとOathの資産にはVRからAI、5GからIoT、パートナーおよび独自のコンテンツが含まれる。これらはグローバルなオーディエンスを獲得するすばらしい手段となるだろう」」と声明で述べた

キャリヤの伝統的ビジネスは衰退ぎみであり、それを補う努力に懸命だ。とはいえばVerizonは現在でも紛れもなく巨大企業だ。社員は16万1000人、2016年の売上は1260億ドル、モバイルビジネスでは1億1390のリテール・コネクションを持っている。

われわれが先週書いたとおり、今回のYahooとAOLの統合ではマーケティングや管理業務を中心に15%の人員カットが行われる。今日の発表ではこの点についての言及がなかったが、TechCrunchでは引き続き取材していく。

またマリッサ・メイヤーとともに退任する幹部のリストもまだ発表されていない。われわれが得た情報ではメイヤーにきわめて近かったYahooの上級副社長、Adam
Cahanも辞任し、CISO〔最高情報セキュリティー責任者〕のBob LordもYahooを去る。ただLordは問題の大規模な情報漏えいが起きた時点では責任者ではなかった。この情報漏えいによりVerizonはYahooの買収額を数億ドル減額したという。

AOL/Oathの広報担当者は他の退任者について明かすことは避け、Oathのグローバルな役割を強調するに留まった。

特に意外の感はないが、これに先立って、David Filo、Eddy Hartenstein、Richard Hill、Marissa Mayer、Jane Shaw、Jeffrey Smith、Maynard Webb Jr.はYahooの取締役をすでに辞任している

新組織に残る人材については、Jared Grusdがニュース部門(yahoo.comaol.com、 HuffPost、Yahoo Newsなど)、Geoff Reissがスポーツ部門、David Karpがピープルおよびコミュニティー部門(Tumblr、Polyvore、Cabana、Yahoo Answers、Yahoo View、Kanvas)、Andy Serwerがファイナンス・メディア(Yahoo Finance、Autoblog)、Michael LaGuardiaがファイナンス・プロダクト、Ned DesmondがTechCrunchとEngadgetをそれぞれ担当する。 【略】

Oathは単に統合されたメディアブランドというだけでなく、こうしたメディアを支える広告テクノロジーもOathに統合される。おそらくOne byAOLBrightRollのマーケティング、広告テクノロジーに力が注がれ、モバイルからビデオ、検索、ネーティブ、プログラムなど広告の全分野をカバーすることを目指すのだろう。

さらに取材中。

〔日本版〕ティム・アームストロングのメモは原文に掲載。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トラビス・カラニック、UberのCEOを一時休職――ホルダー勧告の内容公開

波乱の時期を迎えているUberだが、CEOのトラビス・カラニック(Travis Kalanick)は先月、両親がボートの事故に遭い、母親を失うという悲劇に見舞われた。カラニックはUberの改革の前にまず休暇を取って気持ちを静める必要があったようだ。トラビスは社員に向けて休暇を取ることを告げた。期限は明らかになっていない〔社員向けメモは原文に掲載〕。

カラニックは「この〔休暇〕期間中、会社はリーダーシップチームと私の指示によって運営される。きわめて重要な戦略的決定が必要になる場合は私が判断するが、リーダーシップチームには大胆かつ決定力をもって会社を前進させるため権限を与える。休暇の期間について現時点で予測するのは難しい。長くなるかもしれないし、短いものになるかもしれない」と書いている。

カラニックが復帰した場合も権限は縮小されることになるだろう。これは元アメリカ司法長官のエリック・ホルダー(Eric Holder)がUberに提出した調査報告と勧告に基づくものだ。ホルダーはセクハラ、女性差別問題を引き起こしたUberの企業文化について調査し、これを改めるための改革を提言した。ホルダーのレポートは「歴史的な経緯によりカラニック氏に集中していた権限の一部は上級経営チームのメンバーと共有され、あるいは移譲されるべき」だと勧告している。

Uberの取締役会はホルダーの勧告をすべて受け入れることを決定している。ホルダーの調査と勧告の内容は今日(米国時間6/13)、公開された

カラニックが関係する勧告には以下のものも含まれる。

  • ダイバーシティーの確保、社員からの苦情の処理、社員の満足度、コンプライアンスなど経営陣の報酬を基礎づける重要事項に関して数字に基づいた成果のレビューを行いリーダーの責任を明らかにする。
  • カラニック氏およびUberに関して運営の公正を確保するための独立の監視委員会および委員長職を設置し、また監査委員会の権限を拡大する。
  • カラニック氏および他の上級管理職にリーダーシップに関する広汎な研修を義務付ける。
  • ヒューマン・リソース・チームとその新たな目標についてカラニック氏および経営陣は公けの支持をさらに強める。

Uberは当面 CEOを欠いたまま新たな企業文化の建設という困難な(おそらくは長い)道に踏み出すことになった。

画像: Udit Kulshrestha/Bloomberg via Getty Images

〔日本版〕Uberとカラニックの進退問題についてはこちらの記事を参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uberのエミール・マイケル上級副社長、辞任――取締役会はホルダー勧告を全面受け入れ

Uberはエミール・マイケル(Emil Michael)上級副社長が会社を離れたことと確認した。

Recodeによれば、今朝(米国時間6/12)早く、マイケルはUberを去るという社内向けメールを出していた。

Uberのビジネス担当上級副社長を務めてきたマイケルは以前から何かと社外からの批判を集めていた。TechCrunchのライターを務めたこともあるサラ・レイシーを含むUberに批判的なジャーナリストのスキャンダルを探すために調査会社を雇うと発言したことが知られている。

Uberの取締役会は取締役全員が出席し、同社が契約するロサンゼルスの法律事務所で終日開催された。エリック・ホルダー元司法長官による報告書は これに先立って取締役会に提出された、マイケルの解任はその内容に含まれていたという。

Uberの取締役会は全員一致で勧告を全面的に採用することを決めた。この調査はUberにおけるセクハラ、性差別などに関する告発をきっかけに開始されたもので、ホルダー元司法長官とCovington & Burling法律事務所のパートナーである弁護士、Tammy Albarránがリーダーとなっていた。

Uberに関する議論は同社の元エンジニア、スーザン・ファウラーが「Uber社内にはセクハラ、性差別を含む構造的な問題がある」という告発記事を公にしたことから始まった。Uberではホルダーとは別のチームの調査にもとづき、解雇を含む数多くの処分が実施されている。

Uberはこの点に関してコメントを避けた。

画像:: Chris Goodney/Bloomberg via Getty Images

〔日本版〕Uberの社内問題に関しては記事中にもリンクがあるこのTechCrunch記事が詳しい。同社の共同ファウンダー、CEOのトラビス・カラニックの去就が注目されたが、取締役会はホルダー勧告を全面的に受け入れると決定したものの、カラニックについて結論を出さなかったもよう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uber取締役会、トラビス・カラニックの休職を検討――後任はガレット・キャンプか?

報道によれば、今日(米国時間6/11)、Uberはロサンゼルスで取締役会を開く。この8年のUberの歴史でも、もっとも重要な討議となる模様だ。

New York Timesの記事によると、最大の議題は、窮地に経つCEO、トラビス・カラニックを休職させるべきかだ。この問題に対する取締役会の態度は数ヶ月前に開始された元司法長官、エリック・ホルダーによる調査の結果に大きく左右されることになるという。

エリック・ホルダーの雇用者は有力法律事務所、Covington and Burlingで、調査の費用はUberが負担している。ホルダーのチームはここ数ヶ月で数百人のUber社員に面接し、同社の企業文化を明らかにしようと努めてきた。この調査は元Uberのエンジニアであった女性、スーザン・ファウラー・リゲッティが同社を批判した記事が大きな反響を呼び起こしたことがきっかけだ。ファウラーが執筆した記事はUber社内には性的差別とセクハラが蔓延していると厳しく指摘していた。

Recodeによれば、この問題を担当する取締役会小委員会はすでにホルダーの調査結果を読んでいる。メンバーはメディアの有力者、アリアナ・ハフィントンとビル・ガーリー、デビッド・ボーダーマンの3名で、ホルダーの調査の詳細は火曜日に社内に発表されるという。Recodeの情報源によると「大きなトラブルが連なる光景」が描写されているそうだ。

われわれはUberにコメントを求めているがまだ回答がない。しかし Wall Street Journalによれば、UberのCBO(最高ビジネス責任者)のエミール・マイケル(Emil Michael)は明日朝、辞任を発表するものと観測されている

マイケルは2014年後半以来、さまざまな批判を浴びてきた。Buzzfeedの記事によれば、ジャーナリストも出席しているディナーでマイケルはUberに批判的な相手のスキャンダルのタネを探すために調査会社を雇う件について真剣に話したという。この批判者には、シリコンバレーの著名なジャーナリスト、サラ・レイシー(Sarah Lacy)も含まれていた。

カラニックはTwitterでマイケルを厳しく批判したが、解任することはなかった。マイケルは ホルダーらのチームと並行して実施された別の調査(有力法律事務所、Perkins Coieによるもの)でも解任を免れた。Perkins Coieの調査はここ数ヶ月、人事部門に社員から提起された200件以上のいじめ、セクハラ、性差別などに関する苦情を調査していた。その結果20人の社員が解雇されている

Michaelが辞任することに対する取締役会の判断まだ明らかでない。しかしUberが次々に引き起こしてきた重大なミスや誤った行動の連鎖を考えれば取締役会がこれでが調査を打ち切ることになるかは考えにくい。

たとえば3月のNew York Timesの記事によれば、Uberは何年も前から法的紛争が起きている市場で規制当局を欺くためにプログラムを持っていたという。

先週はUberの幹部、エリック・アレクサンダー(Eric Alexander)が2014年にインドで女性乗客がUberのドライバーにレイプされたという事件で、被害者の医学的記録を不当に入手したことが明らかとなり解雇されている(被害者はUberを訴え、その後和解)。

またカラニックが2013年に社員向けに送った「社内での性的関係についてのガイドライン」も 先週公開されて批判された。

Uberとカラニックをめぐるこうしたネガティブなニュースはキリがないようだ。Uberは 長年に渡って敵対者の数を増やしてきた。Uberがこれ以上の泥沼にはまり込まないよう、抜本的な改革が必要だとする声は強い。

とはいえ、カラニックが永久にUberを離れるということは考えにくい。カラニックの同社に対する影響力はきわめて大きい。New York Timesも報じているが、カラニックは特別議決権株式により圧倒的な議決権を保有している。共同ファウンダーのガレット・キャンプ(Garrett Camp)、長年の腹心であるライアン・グレイブズ(Ryan Graves)も同様だ。両者とも取締役会のメンバーだ。しかしグレイブズは以前は同社の事業責任者であり、したがって人事管理部門もその責任範囲に含まれていた。

その他のUberの取締役にはガーリー、ハフィントン、ボーダーマンが含まれる。

New York Timesによれば定款上あと4人の取締役が任命可能だが、現在は空席だという。

人事管理部門の責任者としてUberの問題ある企業文化の形成に部分的にせよ責任があると考えられているため、グレイブズがカラニックの代理を務めることは考えにくい。

仮にカラニックが一時的にせよUberを離れることになれば、キャンプが後任となることは比較的容易だろう。もともとUberという共有経済の仕組を考え出したのはキャンプだった。またキャンプはスタートアップとベンチャー投資の世界で高い尊敬を受けている。キャンプはスタートアップ・アクセラレータのExpaを運営しており、StumbleUpon,の共同ファウンダーでもある(キャンプは同社を売却した後、再買収した)。キャンプの財産の主要な部分はUberの持ち分で、現在600億ドルから700億ドル程度の価値があるものとみられている。

キャンプにコメントを求めているがまだ回答がない(おそらくはロサンゼルスでの取締役会に出席しているのだろう)。いずれにせよカラニックの後任となればキャンプだろうとわれわれは考えている。

ともあれUberは大きな改革に直面している。さらに情報が得られ次第フォローしていく。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

LeEcoのアメリカ進出は失敗の典型―中国のコングロマリットの派手な上陸作戦の結果は大量レイオフ

1ヶ月以上前から点灯していた数々の赤信号の末、LeEco〔楽視〕のアメリカでの事業はついに人員の大幅削減に追い込まれた。LeEcoは中国の野心的なコングロマリットだが、アメリカだけで325人の社員をレイオフすることを明らかにした。私が受け取ったメールアドレスの変更通知の数からするとすでにレイオフは実行されているものと思われる。

月曜日のフットボール・ファンのように後知恵で試合を批評するのは簡単だとはいえ、惨事が起きたのは事実だ。しかもこのことは以前から予想されていた。LeEcoがアメリカで重要なスタートアップとみなされていたのはわずか1年前だという点には注意を払うべきだろう。大がかりで派手なプレス・カンファレンスが実施されたのはなんと昨年10月中旬だ。わずか7ヶ月でこの結果に終わるとは驚くべきスピードだ。しかしアメリカ事業には当初から事態を警告するシグナルはいくつも出ていた。

LeEcoはもちろん警報を無視した。同社は300人以上が職を失うという事態を招いたことを惨事とは認めず、何か悪いことが起きるたびに口にされる言い訳を持ち出している。つまり悪かったのは同社の戦略ではなく、資金調達で思わぬ障害を経験しただけだというわけだ。LeEcoはインドでレイオフを実行したときにも同じような声明を出した。

TechCrunchがコメントを求めたことに対する回答は、誰彼となく質問した者全員に送られるテンプレート・メールで、「消費者との間の壁を取り払おうとしたわれわれのビジョンは正しいと信じている。アナリストもこの点を認めている。今回、必要とする資金の調達ができなかったため、われわれはアメリカ事業において段階的アプローチ(a phased approach)を取ることとした」と書かれていた。

しかし「段階的アプローチ」というのは数百人をレイオフした後で使うべき言葉ではあるまい。そもそもこの会社の「スマート・ビジネス」そのものに問題があったというべきだ。国際的に展開して成功を収めた企業なら、中国とアメリカのように根本的に文化を異にする新市場への参入がいかに難しいか教えてくれるはずだ。われわれが掲載したAppleの中国進出の記事を見れば分かる。

LeEcoは「小さく始める」という戦略と無縁だった。無謀で派手な鳴り物入りが同社の本質だった。これが50エーカーに上るアメリカYahooの広大な跡地を高値で買わせ、金のかかった巨大な看板を立てさせた理由だろう。LeEcoの建設計画を聞けばアメリカ本社はまるでテーマパークのようなものになりそうだった。

アメリカで事業をスタートさせるに当たって、LeEcoは安いスマートフォンやテレビを売るだけが目的でないと宣言した。万人にすべてのもの提供するというのだ。いくぶんApple的、いくぶんNetflix的、いくぶんTesla的、いくぶんAmazon的というわけだ。VRヘッドセットやら自転車やら、加えてセレブのカメオにはトランスフォーマー・シリーズで知られるマイケル・ベイ監督まで動員した。同社はマット・デイモン主演の中国を舞台にしたアクション大作『グレートウォール』の製作にも出資し、ハリウッドの映画スタジオ・システムにも参入しようとした。

しかしこうした派手な車輪の回転は突如ストップした。LeEcoは約束のごくわずかな部分しか実現できなかった。LeEcoがスマートフォンを作る約束だけをしていたのならアメリカ市場を研究するチャンスはもっとあっただろう。失敗の可能性も低かったはずだ。しかし出だしで新市場の本質を見誤った場合、取り返すのは不可能だ。イカロスは太陽の側まで舞い上がって墜落したと言われているが、LeEcoはそれどころではない。世界に向かって「これから新しい太陽を作り、新しい太陽系を作る」と宣言した。

同社の今後の戦略がどうなるかは容易に想像できる。。同社はリストラ後、アメリカの中国語を話す家庭向けに「中国版Netflix」のようなサービスを提供しようとするだろう。同社はすでに中国語のコンテンツを持っているからこれは容易だし、マーケットもそれなりに大きい。アメリカ市場への参入の当初からこの道を選んでいればLeEcoの運命もかなり違ったものになっていたのではないか?

LeEcoの声明は大部分が無内容な企業語の大言壮語に過ぎない。企業も政治家も誤りを認めたがらず、失敗を自分の力の及ばない外部事情のせいにしようとする。そこでそうした外向きの発言ははともかく、社内では戦略の失敗を認めて今後の新戦略を立ててもらいたいものだ。どこからか再び資金が入ってくることを期待して小手先の修正でつないで済ませられる段階ではないだろう。

これはアメリカの消費者にとって安いスマートフォンの選択肢が一つ減ったというだけの話ではない。325人がある日突然職を失うというのは重大な事件だ。

画像: VCG/Getty Images

〔日本版〕LeEcoの沿革についてはWikipediaの楽視グループを参照。ただし記事末尾に「2016年 – 米テレビメーカーVIZIO買収」と書かれているが、これは今年4月に入って中止されている

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

大企業のあちこちに転がっている無駄なSaaS契約を掃除するMeta SaaSが$1.5Mを調達

Meta SaaSは、プロダクトの断捨離を手伝ってくれるプロダクトだ。CardlifeCleanshelfなどと同じく、Meta SaaSはユーザー(人や企業)のSaaS契約をすべて調べて、実際に使っているものと、さらに重要なこととして、使ってないものを教えてくれる。

Arlo GilbertとScott Hertelが作ったこのプロダクトは、Mark Cubanがリードし、Barracuda Networks, Capital Factory, Deep Space Ventures, BazaarvoiceのBrett Hurtらが参加したラウンドで150万ドルを調達した。Gilbertはかつて、iOS用の初めてのVoIPプラットホームを作り、HertelはDellのeコマース部門にいた。

同社は今、RetailMeNotをはじめ6社の顧客、計10000名の社員をサポートしている。そして同社が調べることのできるSaaSは、数百万にものぼる。

“うちの顧客は中から大ぐらいの企業が多い。そんな企業は、SaaSのライセンス管理が、大きな経費節減につながるからね。中には、毎年数百万ドルを溝(どぶ)に捨てている企業もある。最近の新しい競合他社は、小企業をターゲットにしてるところが多いけどね”、とHertelは語る。“ほかの競合他社はOktaなどのサードパーティからデータをもらってるところが多い。だからログインを調べるだけだし、ひとつのプラットホームに限定される”。

Gilbertが同社を創ったのは、自分自身がSaaSに無駄金を使いすぎていることに、気づいたからだ。

“2012年にiCallを売って、オフィスをたたもうとしたとき、Salesforce CRMのライセンスが40あることが分かった。社員が20人以上いたことは、ないのにね”、と彼は言う。

このプロダクトは“幽霊IT”を管理する。誰かが買って、忘れてしまったITツールのことだ。売って忘れられることは、SaaSのプロバイダーにとっては好都合だが、企業にとってはおそろしい。Meta SaaSは大企業にSaaSの断捨離サービスを提供する、初めてのプロバイダーのひとつだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Amazonが「世界を食い尽くしている」理由を考える

編集部:この記事は起業家のの執筆。経歴

私は昨年12月にソフトウェアのスタートアップを共同で創業し、毎月株主に向けて会社の進捗を報告するメモを送っている。しかし先月は自社の状況に関するメモではなく。われわれのビジネス(小売業)を待ち受ける根本的な状況の変化について書いた。

このビジネスでAmazonは支配的な地位を得ているだけでなく、今後ますますその地位は強化されると判断したからだ。これによってリテールビジネス全般にアポカリプスが迫っている。Amazonは世界最強の企業の一つだが、同時にその本質がもっとも理解さにくい会社でもある。そこで多くの人々からAmazonを分析した私のレターを公開すべきだというアドバイスを得た。

私の最初の会社は自動車部品のメーカーだった。われわれはAmazonに対するベンダーでもあり( Amazonはプロダクトの大口顧客だった)、同時に「マーケットプレイス」のサードパーティーの販売者でもあった(この場合われわれはAmazonに売上から一定の手数料を支払った)。つまり私はAmazonのビジネスについて通常知り得ないような経験をした。AWSを始めとするAmazonの各種の事業についても以前からフォローしてきたし、Amazonという会社は私にとってある種の強迫観念に近いものになっている。

一方、リテール・ビジネスは全体としてティッピングポイントを迎えつつあるというのがコンセンサスのようだ。テクノロジー系メディアもメインストリーム・メディアもAmazonという怪物のさらなる成長が小売業に決定的なコラテラル・ダメージを与えるだろうという記事を多数掲載している。Amazonのライバル(アメリカでは主としてWalmart)に対する優位性は維持可能なものであるのか、またライバルはAmazonのビジネスをコピーすることがでいるのかについても多くの議論が交わされている。

たとえばAmazon Primeの特急配送( 2日から1時間まで)やMarketplace(Amazonが販売するのと同じプロダクトを同じエントリーでサードパーティーが販売できる)、Amazon Goストア(レジなしの物理的店舗)からAmazonのドローン利用配送プロジェクトなどだ。

おそらくこうしたプログラムはすべてWalmartのような実力を備えたライバルなら数年で実現できるだろう。たとえば特急配送で利益が出せるかどうかは配送センターを消費者の近くに設置できるかどうかにかかっている。その点Walmartすでに全米150箇所以上の配送センターを持っている。【略】

こうした点を考慮してもなおかつAmazonは世界でもっとも強力な会社であり、Amazonがライバルに対して持つ優位性はまだ十分に理解されていない。向こう10年ほどの間にAmazonのリテール分野での拡大を止められるライバルは存在しないのではないか?

その理由はメディアやアナリストが好んで取り上げる「ブレットポイントの行列」、つまりアナリストが論じることを好むAmazonの事業の多様化にあるのではない。またジェフ・ベゾスのビジョンや企業文化も決定的要素ではない(もちろん私はベゾスは世界でもっとも優れたCEOの1人だと思っている。またAmazonの企業文化も尊敬している)。Amazonの優位性は事業の全てが外部に向けたサービス志向のアーキテクチャーを持っている点にある。Amazonは同社の事業のあらゆる側面をそれぞれ独立したプラットフォームとして公開し、市場での競争にさらしてきた。

「垂直統合」には落ち込みやすい罠がある。垂直統合(部品の内製化、供給メーカーの買収など)によって大幅にコストが削減できるというのがセールストークだが、実際にはそうはならない。当初実現された利益の増大は競争すべきライバルを失った「供給者」が凡庸化するにつれて帳消しとなってしまう。

自動車産業が典型的な例だ。自動車メーカーは部品メーカーを買収する垂直統合の時期の後で部品コストの急上昇を経験し、外注に戻るというサイクルを繰り返している。ライバルとの競争がない事業部は肥大化し、非効率化する。これを防止するために外部メーカーと競争させたりコスト構造について詳細な検討を加えるといった方法は社内官僚制を悪化させるだけで現実のコスト削減にはまったく結びつかないのが普通だ。

AmazonのSOA(サービス志向アーキテクチャー)の典型はやはりAWSだ(AmazonのエンジニアだったSteve Yeggeが2011年に発足当時のAWSについてa非常に面白い記事を書いている)。2000年代にAmazonの通販事業は驚異的なスピードで拡大を続けていたたが、当時はまだエンタープライズ・レベルのSaaSはメインストリームのビジネスとなっていなかった。そこでAmazonは独自のテクノロジー・インフラを構築する必要に迫られた。この社内インフラを顧客向けのサービス(AWS)として開放するという天才的なアイディアについてはすでに多数の記事が書かれている。この戦略は通年換算140億ドルという巨大ビジネスを生んだ。しかしこの金額自体はAmazonが自ら戦略の正しさを知ったという重要性に比べればいわばボーナスに過ぎない。Amazonはプラットフォーム企業になることは競争の喪失によるコストの増大やテクノロジーの停滞に対する効果的な防壁になると発見した。

Jeff Bezoz, CEO of Amazon.

(写真:Drew Angerer/Getty Images)

AWSのデビュー後、10年以上にわたってAmazonは社内向けに開発したツールを洗練させて外部向けのプロダクトとして事業化するという手法をきわめて意識的に繰り返している。最新の例はAWSのAmazon Connectだ。これはもともと自社の通販事業の連絡先管理のために開発されたツールだがAmazonはこれをクラウドベースのセルフサービスのプロダクトとして外部に公開した。この事業の売上も巨額に上っているが、本質はそこではない。本当の価値は、プラットフォームとして公開することにより、部内ツールが肥大化、非効率化することを防げるという点にある。

もう少し具体的にいえばこうだ。もしAmazon Connectがビジネスとして失敗したとしよう。 Amazon経営陣は数値化された結果(売上の減少など)によって自社の連絡先管理ツールのパフォーマンスがライバルに大きく劣っていと知ることができる。Amazonは事業の監査や競争入札といった資源を浪費し官僚制を肥大させるだけの手段を一切必要とせず事業のパフォーマンスに関する正確なフィードバックを得る方法を発見した。プラットフォーム化して外部に公開すれば、その事業が成功していれば利益を生むし、問題があれば直ちにその結果が出る。おおまかにいえば事業が生む利益は事業の質に比例する。数々の事業においてその質を判定する効果的な方法をAmazonは得た。

AWSは非常に目立ち、したがってわかりやすい例だが、この戦略(実行にはヘラクレスの功業的な努力が必要になる)はAmazonのあらゆる事業、部門において一貫して採用されている。Amazonでは膨大な数のサービスが外部から利用可能になっている。エコシステム全体のプラットフォーム化こそライバルがコピーすることがほぼ不可能なAmazonの優位性だ。

もっとも広く利用されている例はFBAプログラムだろう。Amazonに何か注文したときに「この商品は(社名)が販売し、Amazonが発送します」という文言を見たら、これがフルフィルメント by Amazonだ。

FBAプログラムを利用するサードパーティーの業者は商品をバルクでAmazonに送る(所有権はサードパーティーにある)。Amazonは注文に応じて商品を顧客に配送する。返品やサポートもAmazonが処理してくれる。しかも手数料は驚くほど安い。しかもFBAは Amazonサイトでの販売に限られない。AmazonのFBAマルチチャネルサービスはAmazonサイト外で受けた注文をAmazonが代行して販売してくれる。たとえばステンレスの携帯用魔法瓶、Hydro FlaskはShopifyに独自の通販ストアを持っている。Shopifyのストアで注文を受けるとHydro FlaskはFBA(外部APIを利用)でAmazonにその後の処理を任せることができる。

Hydro Flaskのメリットは明らかだ。同社の製品は中国で製造されており、Flexportのようなフォワーダーを通じてAmazonのフルフィルメント・センターに直接搬入される。Hydro Flaskは自社で在庫を保管、管理するという頭痛(とコスト)を避けることができる。Amazonにとっても種々の利益がある。a) 倉庫の収容能力の活用、b) 配送商品量の増大によるバーゲニングパワー、c)フルフィルメント・サービスの手数料(マーケットプレイスなど各種のサービスを含めた手数料売上の総額は2017第1四半期だけで64億ドル。これはAmazonの売上総額の25%になっている)、等々だ。

しかしこの場合でも長期的にみた真のメリットはAmazon自身の社内ツールの競争力の強化だ。膨大な人員を抱えるフルフィルメントはAmazonにとって最大のコストセンターだが、サービスを外部に公開することよってその能力は日々改善される。

FBAのようなマルチテナント、マルチャンネルのクラウドサービスを公開するのは、社内需要を満たすだけのサービスの構築とはまったくレベルが違う完成度を必要とする。社内のみのツールであれば、ハードコーディングされた素人っぽいやっつけ仕事でもいい。しかしそうしたシステムは改良していくことが不可能に近い。【略】

FBAのようなサービスでは〕処理上のエラーの総量は膨大なものになる。Amazon側で商品が失われたため無条件で何万ドルもの払い戻しを受けた業者をいくつも知っている。FBAを運営するために必要なテクノロジー上の能力に加えてこうしたコスト負担に無期限に耐えられる体力があるライバルは果たしてどのどのくらい存在するだろうか?

Amazonがむこう5年間のうちに小口配送サービス(UPS/FedEx/USPS)に参入することは間違いないと思われる。Amazonは最大のコストセンターを次々にプロフィットセンターに変身させてきた。最初はテクノロジー(AWS)で、次はフルフィルメント(FBA)、次はAmazonのオリジナルブランド商品という具合だ。Amazonはすでに40機の貨物機と何千台ものトレーラーを所有している。 10箇所以上の小口荷物仕分けセンターを開設して既存の配送業者への支払いの軽減に努めている。しかも小口配送サービスには、Amazon自身の膨大な社内需要が存在するだけでなく、アーリーアダプターの顧客となることが確実なサードパーティーの小売業者がFBAに多数参加している。

ここでUPS、FedExからRackspace に至るライバル各社に対してAmazonが持つ決定的な優位性は、同社が「ドッグフードを食べる」、つまり自社サービスの最大のユーザーであるという点だ。たとえばUPSは配送エラーについて通販事業者という緩衝帯を持っている。荷物の破損や行方不明、繁忙期の配送遅延などが起きると消費者はまず通販事業者を責める。業者は向き直ってUPSを責めるという順序になる。しかしAmazonの場合、緩衝帯は存在しない。パフォーマンスが劣っていた場合、責任を転嫁する相手はいない。Amazonの強みは単なる多角化ではなく、それぞれの事業が外部に公開されることでフィードバック・ループを完成させているところにある。このはずみ車が回り出すとライバルがこれに打ち勝つのはきわめて困難になる。【略】

〔Marketplace Web Service (MWS) APIや常時最低価格を維持するrepricersなどツール〕その他、いくらでも例を上げることができる。【略】「イノベーションのジレンマ」をAmazon以上に深く理解している企業は少ないに違いない。

そこで簡単にいえば、Amazonには誰も追いつけないというのが私の結論だ。AmazonがFBAを完成させるのに10年かかかった。仮にこれから5年でWalmartがその水準に達したとして、そのときAmazonはどこにいるだろう? この記事で私が紹介してきたのはAmazonのほんの上っ面に過ぎない。まだ知名度は高くないがSeller Fulfilled PrimeやDirect Fulfillmentなどは今後重要になるだろう。予見しうる将来、既存の大型小売業者がAmazonに太刀打ちするのは難しいだろう。しかしある種のバーティカル、たとえばペットフードのChewy.comのようなスタートアップには、すくなくとも短期的にはチャンスがあるかもしれない。

Amazonが打倒されるとすれば反トラスト法訴訟(しかし同社は小売業売上のわずかな部分しか占めていないので当分の間適用は難しだろう) または消費者が物理的な商品を購入する仕方に重大なパラダイムシフトが起きるような場合しか考えられない。没入的仮想現実がすべてを支配し人間は栄養を点滴で摂るようになるといったことにでもなれば話は別だ。しかしそうしたSF的事態が近い将来起きるとは考えられない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

クリエイティビティの罠――実務的な業務の重要性

【編集部注】執筆者のEliot Gattegnoは、ニューヨーク大学上海校でPractice of Business and Artsの客員准教授を務め、クリエイティビティとイノベーションに関する授業を行っている。さらに彼は、香港中文大学(深圳)のイノベーション・デザイン・アントレプレナーシップセンターのファウンダー兼ディレクターで、香港中文大学のビジネススクールでも教鞭をとっている。

今日のクリエイティブな職場では、実際に会社を動かしているクリエイティブでない仕事の重要性が分かりづらくなってしまっている。”クリエイティビティ”と呼ばれるものが、凝り固まった社会を変える特効薬としてもてはやされている一方で、このような考え方が、裏で会社を支えている仕事を犠牲にして、夢物語にフォーカスをあてるような企業を生み出している。

残念ながら、私たちのクリエイティビティに関する妄想はとどまるところを知らない。2000年には、「次の時代の勝者」となる企業は「今いるクリエイティブな人材を余すところなく」利用できるような企業だとする内容の本が出版され、2013年には多くの人が「社員のクリエイティビティを上げるためにテック企業が実践している12の変な制度」と題された記事を貪り読み、昨年にはクリエイティビティそのものを刺激する香水さえもが発売された。

しかし私たちは邪神を崇拝してしまっているのではないだろうか? 職場で”クリエイティブ”とされている事柄は、極めて薄っぺらいもののように感じられる(例えばビーズクッションや食べ放題の寿司ランチなど)。人々がクリエイティブだと思いこんでいるものは、オフィスの設計変更にはつながるかもしれないが、特に平社員レベルの人たちの仕事を変えるようなものだとは思えない。

社員がデスクについた(もしくはソファースペースにノートパソコンを持っていった)とき、彼らは本当に自由に創造性をはたらかせているのだろうか? それとも彼らは、会社を動かすために必要な具体的で明確なタスクをこなしているのだろうか? ほとんどの場合は後者だろう。結局のところ、誰かがコードをデバッグしたり、スプレッドシートを管理したりしなければいけないのだ。賢いマネージャーや経営陣であれば、あまり魅力的ではないが会社が機能するために必要な(ときに退屈な)仕事を、クリエイティビティで代替することはできないと気づいているはずだ。クリエティブでない仕事をしている人のこともきちんと評価しようではないか。

クリエイティビティ=投資

私たちの時代に誕生した驚くほど”クリエイティブ”なものを見てみよう。そうすれば、クリエイティビティとは一瞬の輝きではなく、むしろ孤独で長い旅なのだということがわかるだろう。例えばPixarは、素晴らしいアニメーション技術はもちろんのこと、彼らのビジョンやユーモア、そして感情表現で人々の称賛を集めている。しかし、誰が見てもクリエイティブな彼らの作品が完成するまでには、通常4〜7年の時間がかかる。そしてそのプロセスはスケッチにはじまり、ストーリーボード、モデリング、レイアウト等々、途方もないほどだ。

賢いマネージャーや経営陣であれば、あまり魅力的ではないが会社が機能するために必要な(ときに退屈な)仕事を、クリエイティビティで代替することはできないと気づいているはずだ。

どんなクリエイティブなものに関しても、その裏側には信じられないほどの量の修練や努力が隠されている。たとえ傍から見ると、一瞬の出来事のように感じられるようなものでもだ。ジャズマスターが”ゾーン”に入ったときの即興演奏(これには人生を通した練習が必要)から、”キャンプファイヤーの周りで順番に物語を語り合う仲間たち”のように聞こえつつも、形になるまで何ヶ月にも及ぶ準備が行われているThis American Lifeというラジオ番組まで、クリエイティビティの裏側には多大な努力が隠されている。クリエイティビティに欠かすことができないこの準備期間は、普通の企業にとってはかなり大きな投資を意味する。しかし他の人たちの言葉を信じれば、クリエイティビティにはそのくらいの価値があるのではないだろうか? 実はそうとも言い切れない。

”ボヘミアン”だけでは生きていけない

RedditやInstagram経由で、きらびやかな”ネット時代の寵児”を雇う企業も存在する今、”クリエイティビティ”自体が資格のように考えられがちだ。しかし数字を見てみれば、その考えは間違っているとわかる。『Economic Geography』に掲載されている調査では、”クリエイティブ層”と関連づけられることの多い生産性の高さというのは、その人のクリエイティビティよりも教育レベルによってほぼ決まるとされている。さらに、”ボヘミアン”(大卒資格のないクリエイティブな人たちを指して研究者がつけた名称)は、クリエイティブさに欠けつつも教育レベルの高い人に比べ、会社への貢献度が低いということがわかった。もちろん例外はあるだろうが、一般的に社員のパフォーマンスを左右するのはクリエイティビティではなく教育である、ということがこの調査からわかる。

実はクリエイティブな人たち自身もこの事実に気づいており、世界的に有名な作家の村上春樹氏は、クリエイティブな生活におけるトレーニングの重要さを上手く表現している。彼は自伝的エッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること』の中で、小説を書くという作業を長距離走に例えて説明しているのだ。彼は芸術家にとって「集中力と忍耐力」は才能と同じくらい重要で、「トレーニングを通じて会得、向上することができる」という意味では、このふたつの方が才能よりもずっと到達しやすい目標だと主張する。つまり、彼にとってクリエイティビティとはスタート地点でしかなく、目指すものを成し遂げるためにはトレーニングと確固たる労働倫理が必要だと言っているのだ。

ここで私が伝えたいことはハッキリしている。他の経歴を無視してInstagram上の輝かしいプロフィールだけに飛びつくなということだ。ほとんどの仕事に関して、まずはその仕事をこなせる能力を持った人が必要であり、クリエイティビティはその次にくる。この順番を間違ってはいけない。さらに企業は、候補者が画期的なアイディアの実現に向けてきちんと努力できる人なのかどうかを見極めなければいけない。

クリエイティビティの管理

他の大事な能力よりもクリエイティビティを重視するような企業は、そのうち問題に直面することになるだろう。『Accounting, Organizations and Society』の調査は、クリエイティビティを重視する企業ほど、社員の問題行動を防ぐための管理に時間を割くことになると示している。さらに管理が行き届かなければ、社員は個々のタスクに集中するあまり、チームや会社全体のゴールを見失ってしまうとされているのだ。これを考えると、企業が”クリエイティビティ”をビーズクッションあたりで留めているのにも納得がいく。というのも、締切を無視して各タスクに過度に集中するクリエイティブな人というのは、会社にとってかなりやっかいな存在だからだ。

重要なのは、スターのようなクリエイティブな人材だけでなく、社員全員が会社への貢献度をきちんと評価してもらえるような環境を構築することだ。

職場におけるクリエイティビティ向上の最前線に立っているGoogleでさえ、社内外で崇められている制度の一部は継続できないと気づいた。都市伝説のように語り継がれていた、就業時間の20%(1週間あたり丸1日!)を自分のプロジェクトに使え、Gmailの開発に繋がったとされている制度のことを覚えているだろうか? YahooのCEOになる前にGoogleに勤めていたMarissa Mayerは、その秘密に関して「Googleの20%ルールというのは、本当のところ120%のうちの20%ということなんです」と語っている

最近ではGoogleが20%ルールを実質的に廃止し、トップダウンのイノベーション(マネージャーが承認したプロジェクトなど)を優先していると言われている。中にはこの制度変更によって、これまで褒めそやされていたGoogleの自由でクリエイティブな文化が損なわれてしまうと考えている人もいるようだ。これは魔法か現実かをめぐる難しい問題だ。クリエイティビティが全くコントロールされていないと、社員は会社のゴールを見失ってしまうが、管理されたクリエイティビティなど、もはやクリエティブではないと言うこともできる。

私は職場にクリエイティビティなど必要ないと言いたいわけではない。誰かがスプレッドシートを管理して、電話に応えなければいけないように、誰かがGmailのような革新的なプロダクトを考えつかなければならないのだ。しかし、クリエイティビティが何よりも重要で、これこそ成功への近道だという考え方には同意できない。

誰かを採用する際には、年齢や性別、人種といった表面的な多様性だけでなく、「クリエイティブVS現実的」「内向的VS外交的」「夢見がちなイノベーターVS地に足の着いた実行者」といったそれぞれの性格も考慮しなければならないのだ。Slack Technologiesでは、アーティスティックな社員(例えば哲学の学位を持つ共同ファウンダー)とエンジニアの面白い組合せによって、会社とプロダクトの両方が大きく成長した。

重要なのは、スターのようなクリエイティブな人材だけでなく、社員全員が会社やプロダクトや企業文化に対する貢献度をきちんと評価してもらえるような環境を構築するということだ。そもそもクリエイティブな人とそうでない人を分けて考える必要もないのではないだろうか? 表面的なことだけにとらわれず、現代でもっともエキサイティングでクリエイティブなエンジニアをはじめとする、実務的な仕事にもしっかりと目を向けなければいけない。クリエイティビティを重視し過ぎると、何も実行せずに夢物語についてばかり考える会社になってしまう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Snap、初決算は期待外れで株価急落―上場後の値上がり帳消し

Snapの上場は成功したと考えられている。しかし最初の四半期決算はウォールストリートの期待に遠く及ばず上場の成功は完全に吹き飛んでしまった。

Snapの発表によれば、同社の2017年第1四半期の売上は1億4960万ドルで、1株あたり2.31ドルの損失だった。この損失は株式ベースの報酬によるものが大きかった。一方でアナリストは1億5800万ドルの売上に対して0.16ドルの損失を予想していた。簡単に言えば成績は悪かった。同時にユーザー数の伸びも鈍っていた

この結果を受けて、株価は延長取引時間に20%以上下落し、18ドルを割り込んだ。これは上場後の値上がりを帳消しにして当初の売り出し価格17ドルぎりぎりに戻ったことを意味する。

四半期決算の内容を考えれば株価の急落は当然のことと受け止められている。上場後最初の決算はビジネスの詳細が公になる最初の機会だ。そこで成長余力とコスト管理の能力に関して深刻な疑問が持ち上がった。Snapのサービスがクラウド上で運営されていること、FacebookがSnapでもっとも人気のある機能を積極的にコピーして戦いを挑んでいることも悪材料となった。FacebookはSnap的な機能をInstagramに導入している。Instagramはすでに億単位のユーザーを擁しており、Snapのユーザーの伸びへの影響が懸念されていた。これが事実そうであるかどうかは分からないものの、株価にとっては「そのように見える」だけで十分だ。

Snapの赤字は昨年同期の1億40万ドルから今期は22億ドルに膨らんだ。ただし このコストの大部分は株式ベースの報酬だ。決算報告によれば、Snapの株式公開に伴って社員への報酬として計上されたRSU(制限付き株式ユニット)が20億ドルに上っている。つまりこのRSUの分を除けば事態は一見したほど悪いものではないとも言える。しかしRSU分を除外してもSnapの赤字は前年同期比で2倍になっている。

なるほど上場後最初の決算というのはどんな企業にとって波乱の体験となることが多い。Snapはまったく新しいジャンルの広告ビジネスであり、ウォールストリートは営業成績の予測にあたって2年あまりのデータしかなかった。ビジネス自体は急成長している―2015年から2016年の間に6倍にもなった。しかしコストもそれに比例して急騰した。今後ウォールストリートはSnapについてユーザー数、コスト、売上構造など、あらゆる変化をきわめて注意深く研究することになるだろう。

〔日本版〕SnapはAWSクラウド上で運営されており、上場申請書によればAWSに対して毎年10億ドルを支払う契約をしている。RSUはストックオプションと似ているが株式自体を給与の一部として定期的に支払うことを約束する制度。Wikipediaに解説がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Qualcomm、iPhoneの米国輸入禁止をITCに提訴へ

QualcommはAppleに予想外の強烈なパンチを見舞うかもしれない。 Bloombergによれば、Qualcommは国際貿易委員会(International Trade Commission) (不公正貿易を排除してアメリカ産業を保護するための独立機関)に対してiPhoneのアメリカへの輸入を差し止めるよう訴えることを検討しているという。これはQualcomm対Appleの法廷闘争に新しい段階をもたらすだろう。

Qualcommは裁判所や他の機関よりITCの審理が迅速なことに着目している。これはQualcommにとって見逃せない有利な点だ。iPhone、iPadは全数が中国で生産されており、Appleはこれらの製品をアメリカで販売するためには中国から輸入しなければならない。

QualcommもITCがAppleに対して輸入の全面禁止の裁決を出すとは期待していないだろうが、Qualcommは時間を稼ぐと同時にその主張をさらに多面的に展開するチャンスを得ることになる。

先週金曜にAppleは金額が不公正であるとしてQualcommに対してロイヤルティーを支払うことを中止した。 これはQualcommにとって四半期で数億ドルの金額となる。QualcommはもちろんAppleよりはるかに小さい企業だ。

Qualcommは世界のスマートフォン・メーカーにとって最重要のチップセット供給者だ。システムチップもLTEモデムもQualcommが多い。Appleは長年Qualcomm LTEチップをiPhoneに組み込んでいる。iPhone 7ではAppleはサプライチェーンのリスクを低減するためにはLTEチップセットの納入企業をIntelとQualcommに分散した。

しかしチップセットの製造はQualcommのビジネスの一部門に過ぎない。同社はワイヤレス・テクノロジーに関し重要特許を数多く保有しており、たとIntelのチップセットを購入する場合でもQualcommにライセンス収入がもたらされる。チップセット製造からの売上がライセンス収入の伸びを上回っているとはいえ、ライセンス料は依然としてiQualcommの売上の3位を占めている。

Appleは「われわれはQualcommに過大なライセンス料金を支払ってきた。QualcommはAppleに不必要な数の特許の使用を強い、iPhoneの売上の一部を抜き取っている」と主張している。Appleは訴訟で10億ドルの損害賠償を求めている。.

QualcommとAppleは互いに提訴と反訴を繰り返しているがこれは巨大企業間での特許訴訟では珍しくない。

両社は互いに相手を真っ向からねじ伏せようとしている。Appleはこの訴訟でライセンス料金を値下げさせようと試みている。逆に Qualcommは特許ビジネスを守らねばならない。もしAppleに対してライセンス料の値下げを認めれば他のメーカーも一斉に値下げを要求してくるのは明らかだからだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

クリス・サッカがベンチャー投資から引退へ――元Googleの弁護士、Twitterの初期投資で大成功

元Googleの弁護士で、ベンチャーキャピタリストに転じてTwitterとUberに巨額を投資したことで知られるクリス・サッカ(Chris Sacca)は「そろそろ拍車をかけるのを止める時期だ」と述べた。つまりベンチャー投資から引退するという。

新しいブログ記事でサッカは「2009年にベンチャーキャピタル、Lowercase Capital,を創立したときに考えていた目的を達したからだ」と説明している。このベンチャーキャピタルは当初、Googleでの元ボス、エリック・シュミットや同僚だったYahoo CEOのマリッサ・メイヤー、またIndustry Venturesなどからの出資を受けたことが役立った。

サッカはInstagramの初期投資家としても有名だ。Lowercaseについては2015年のForbesの記事に詳しく報じられた。サッカはTwitterへの投資にあたっては4つの異なるファンドを組成して手に入る限りの株式を買い集めた。この中にはTwitter社員の持ち株も含まれていた。

サッカはForbesのインタビューに答えて「Twitter〔がスタートしたとき〕は『これは本当のビジネスになる、おもちゃなんかではない』と回りを説得しようとして何ヶ月も時間を無駄にした。そこで全部で自分でやることに決めた。私は自分自身でTwitterの株を買っていくことにした」と述べている。2015年に記事が掲載された時点でTwitterへの投資は50億ドルの利益を生んだという。

サッカは後年、このやり方を繰り返そうとしてUber株を買い進んだ。この強引な戦法はやがてサッカとUberのCEO、トラビス・カラニックの間を緊張させることになった。報道によれば、カラニックはサッカがUberの社員から持ち株を買い集めることを不快に感じたということだ。

ある時点でサッカはUberの4%を所有していたと報じられた(現在でも所有しているかもしれない)。しかし「Uberの運営に関して発言権がゼロなのは腹立たしい」とサッカは2月にツイートした

最近サッカはTwitterからは距離を置いている。3月にTwitterの公式アカウントにこう投稿している。「Twitter株式は2年近く前から持っていない。イヴ〔共同ファウンダーのEvan Williams)を経営陣に復帰させることがなくなって以後、私は希望を失った。このサービスは好きだが、株式は嫌いだ」。【略】

サッカは引退を表明したブログ記事で、「私には6歳以下の子供が3人いる。モンタナやカリフォルニアに家も3軒持っている」と書いている。また「パートタイムでベンチャー投資を試みたがうまくいかないとわかった。岸に腰掛けてつま先だけを水に浸すようなやり方ではダメだった」という。そこでLowercase Capitalのために自分で資金を集めるのは止めることにした(ただしパートナーの投資家、Matt Mazzeoが独自にファンドを組成するかもしれないと示唆している)。

ではサッカはこの後どうするのだろう? ブログ記事はこの質問に自分で答えている。「政治? ノー。(ABCのリアリティー・テレビ番組)Shark Tankにもっと出る? ノーだ」。

サッカは「別のテレビ番組なら出るかもしれない。もっとポッドキャストもする。これまでになかったようなもので、テーマは無限だ。役に立つと同時に物議をかもすような内容になるかもしれない」という。

Lowercaseのパートナー、Matt Mazzeoexecは大手のタレント・スポーツ選手エージェンシーのCAAで事業開発の責任者を務めた後、2012年にサッカのベンチャーキャピタルに加わった。Mattは数年前、Forbesのインタビューに答えて「クリスは金を稼ぐだけが目的の人間ではない。仲間が好きだからやっているのだ。彼が〔Lowercaseを〕辞めることはないと思う」と述べている。

しかし時は移り変わる。サッカにとってはこのビジネスを辞めるときが来たようだ。

〔日本版〕記事中のShark Tankはかつて日本テレビで放映された『マネーの虎』をベースにしたABCのリアリティー番組。起業家志望者がプレゼンし、投資家が審査員となり投資の可否を判断する。クリス・サッカはゲスト審査員として繰り返し出演した。マーク・キューバンがレギュラー審査員の1人。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+