【インタビュー】アップルがiOS 15で明らかにした「ヘルスケア」の未来、同社VPが語る初期Apple Watchから現在まで

Apple(アップル)が最近開催した世界開発者会議(WWDC)の基調講演には、iPhone、Mac、iPadの新機能が詰まっていた。2014年に最初のヘルスケアアプリがデビューして以来ほぼ一貫してそうだったように、それらの新機能には、個人のヘルスケアや健康を中心としたアップデートが含まれている。Appleがこの分野で行っている取り組みの影響は、すぐには評価できないことが多い。例えば、ヘルスケア関係の新機能は一般に、Appleのデバイスのソフトウェアで行われるユーザーインターフェイスの全面的な見直しほど目立つことはない。しかし全体として見ると、Appleは、個人が利用可能な、最も強力でわかりやすいパーソナルヘルスケアツールスイートを構築したようだ。そして、その勢いが衰える兆しは見えない。

筆者は、Appleの技術担当VPであるKevin Lynch(ケヴィン・リンチ)氏にインタビューする機会を得た。実はリンチ氏は、2014年9月のAppleの基調講演イベントにおいて、世界の舞台ではじめてApple Watchのデモを行った人物であり、Apple Watchが大きく成長するのを見てきただけでなく、Apple Watchにおけるヘルスケアの取り組みの進展に欠くことのできない人物でもある。Apple Watchがどのようにして今日の姿になったか説明してくれた。また、将来の展望のヒントも与えてくれた。

「これまでの進展ぶりに驚いています」と、最初のヘルスケアアプリについてリンチ氏は語った。「このアプリは実は、Apple Watchから始まりました。Apple Watchで、カロリー消費アクティビティと『アクティビティ』のリングを完成させるための心拍数データを取ったため、心拍数データを保存しておく場所が必要でした。それで、データを保存する場所としてヘルスケアアプリを作りました」。

Appleのヘルスケアアプリは2014年に、Apple Watchのアクティビティデータを保存する簡単なコンパニオンアプリとして始まった(画像クレジット:Apple)

そこでAppleは、中心になる場所ができれば、他の種類のデータも保存できるシステムを開発して、プライバシーを尊重した方法で開発者が関連データをそこに保存できるAPIとアーキテクチャも構築できることに気づいた、とリンチ氏は語る。最初の頃、ヘルスケアアプリは基本的にまだ受け身の格納庫で、ヘルスケア関係のさまざまな情報の接点をユーザーに提供していたが、Appleは間もなく、それをさらに発展させて他にも何かできることはないか、と考え始めた。そして、アイデアのきっかけはユーザーからもたらされた。

ユーザーに導かれた進化

ヘルスケアに対するAppleのアプローチの主要な転換点は、ユーザーがApple Watchの機能を使って、Appleが意図した以上のことを行っていることにAppleが気づいたときに訪れた、とリンチ氏はいう。

リンチは次のように説明する。「私たちは、ユーザーに心拍数を示そうとしており、実際、ユーザーは自分の心拍数を見ることができました。私たちは、心拍数を消費カロリーの測定に使っていました。しかしある時、こんなことがありました。ワークアウトをしていないときに心拍数を見て、心拍数が高いことに気づいた一部のユーザーが【略】医師に診てもらうと、心臓の異常が発見されたのです。Appleはそのようなユーザーから手紙を受け取るようになりました。今でも、私たちがしている仕事について手紙が来ます。それはとてもうれしいことです。しかし、初期のそうした手紙の中にはヒントを与えてくれたものがありました。『待てよ、実は同じことをバックグラウンドで自分たちでできるんじゃないか』ってね」。

その後Appleは、心拍数が高い場合にアラートを通知する仕組みを開発した。ユーザーがあまり動いていないときにApple Watchが異常に高い心拍数を検出すると、それをユーザーに知らせることができる。休息時の高い心拍数は、潜在的な問題に関する良い指標である。Appleは後に、異常に低い心拍数の通知も加えた。これはすべてユーザーがすでに利用できるデータであったが、Appleは、目ざといApple Watchオーナーがすでに享受しているメリットを、先を見越して機能として提供できることに気づいた。

2017年、心拍数が高いことを知らせる通知がApple Watchに導入された(画像クレジット:Apple)

そこでAppleは、似たようなインサイトを探り出せる検討対象の分野を増やすための投資を大きく増やし始めた。ユーザーの行動によって研究対象の新たな分野が特定されるのを待つのではなく(リンチ氏によれば、これはチームにとって依然として重要であるが)、ヘルスケア機能の発展への道筋を切り開くために、臨床医や医療研究者の採用を増やし始めた。

その成果の一例が、WWDCで発表された「Walking steadiness(歩行の安定性)」である。これは、Apple Watch装着者の平均的な歩行の安定度を簡単なスコアで示す新しい基準だ。

リンチ氏は次のように説明する。「歩行の安定性【略】は実は、転倒の検出から得られたものです。私たちは転倒の検出に取り組んでいました。本当にすばらしい取り組みだったのですが、進めていくうちに、ただユーザーの転倒を検出するだけでなく、ユーザーが実際に転倒しないようにサポートする方法についてブレインストーミングを行うようになりました。転倒するその瞬間にサポートするのはかなり困難です。実際に転倒し始めたら、できることは限られています」。

リンチ氏は、Appleが2018年に導入した転倒検出機能のことを言っている。モーションセンサーのデータを使って、突然の激しい転倒と思えるものを検出し、転倒した装着者をできれば助けるために緊急アラートを送る機能である。Appleは、10万人が参加した心臓と運動に関する研究でユーザーの転倒検出データを調べ、それを歩行の基準に関する同じ研究でiPhoneから収集したデータと結び付けることができた。

「(心臓と運動に関する研究のデータ)は、この機械学習に関する仕事の一部でとても役立っています」とリンチ氏は述べた。「それで私たちは、特に転倒と歩行の安定性を中心とした研究に重点を置き、歩行の安定性に関する従来の測定データ一式を、真実を語る資料として使いました。アンケート調査、臨床観察、受診と医師による歩行の様子の観察も同様です。そして1~2年の間、研究対象の人が転倒することがあれば、転倒に先立つ測定基準をすべて調べて、『転倒の可能性を測る本当の予測因子は何か』を理解することができました。その後、それを基にモデルを構築できました」。

iOS 15におけるAppleのヘルスケアアプリの「歩行の安定性」に関する測定基準(画像クレジット:Apple)

実はAppleは、歩行の安定性の機能によって、ヘルスケアやフィットネスの業界では非常にまれなことを成し遂げた。個人のヘルスケアを中心として、臨床的に検証された、意味のある新しい測定基準を作ったのだ。ヘルスケアアプリでは、AppleのiPhoneのセンサーを通して受動的に収集されたモーションセンサーのデータに基づいて「とても低い」から「低い」または「OK」までのスコアが示される(リンチ氏の話では、iPhoneの方が、腰の位置にあるので測定基準をより正確に検出できるという)。おそらくこのデータは、ユーザーが本当に意味ある改善を実際に行うのに役立つだろう、とリンチ氏はいう。

「別のすばらしい点は、すぐに使えるということです」と氏は述べた。「変えるのが難しいものもある中で、歩行の安定性に関しては、改善するためにできるエクササイズがあります。それで、私たちはそうしたエクササイズをヘルスケアアプリに組み込みました。ビデオを見てエクササイズを行い、転倒する前に、安定性を改善するために努力できます」。

歩行の安定性というのはおそらく、ヘルスケアに関してAppleが重視する分野を最も効果的に具現化した機能である。持ち歩くデバイスが、周囲を取り巻く一種のプロテクターに変わるのだ。

「インテリジェントな保護者」

Appleのヘルスケアアプリは、追跡対象の測定基準を概観するのにうってつけである。Appleは、目に映るものを理解することを容易にする、入念に吟味した状況認識情報のライブラリを着実に構築してきた(例えば、研究室のアップデートされた新しいディスプレイでは、結果がiOS 15でわかりやすい言葉に変換される)。しかし、革新の点でAppleが比類のない位置にいる分野の1つは、先を見越した、または予防的なヘルスケアである。リンチ氏は、歩行の安定性の機能はそうした努力の進展の結果であることを指摘した。

「歩行の安定性に関する取り組みは、私たちが『インテリジェントな保護者』と考えているこのカテゴリーに属します。『どうすれば、他の方法では見ることも気づくこともないかもしれないデータを使ってユーザーを見守るサポートができるだろうか。そして、変化の可能性を知らせることができるだろうか』ということです」と同氏は語る。

「インテリジェントな保護者」のカテゴリーは実のところ、当初はApple Watchとヘルスケアの計画に含まれていなかったことをリンチ氏は認めている。

「最初の頃は、『インテリジェントな保護者』について今のような考え方はしていませんでした。Apple Watch初期にユーザーから寄せられた手紙によって、私たちは、本当に意味のあるアラートをユーザーに通知できることに気づきました。ユーザーからの手紙のおかげで、本当に意義深いひらめきを得られました」。

Apple Watchの転倒の検出(画像クレジット:Apple)

そのような手紙は、ヘルスケアの機能に取り組むチームに今もひらめきを与えており、チームに動機付けを与えてその仕事が正しいことを証明するのに役立っている。リンチ氏は、Appleが受け取った1通の手紙を引用してくれた。ある人が父親にApple Watchを買ってあげたが、父親は自転車で外出中に自転車から溝に落ちてしまった。Apple Watchはその転落を検出し、父親の意識がないことも検出した。幸いにも、Apple Watchは緊急連絡先と911番に通知するように設定されていて、その両方に通知が送信された。Apple Watchによって地図上の場所が息子に通知されたので、息子は現地に駆けつけたが、現場ではすでに救急医療隊員が父親(幸い大事には至らなかった)を救急車に乗せているところだった。

リンチ氏は次のように語る。「『人について私たちが感知して知らせることができることとして、他に何があるだろうか』と考えたことはたくさんあります。ヘルスケアに関する取り組みの中で、私たちは、臨床的な観点から人について知るべき真に意味のある事柄とは何か、という点について常に話し合っています。また、人について感知できることについて科学的な観点からどう考えるべきか、という点についても話し合っています。この2つの点が重なる部分にこそ、収集データを理解して活用するための鍵があります。あるいは、疑問に対して臨床的にしっかりとした根拠に基づく回答を出すためのデータを構築する新しいセンサーを開発するヒントが得られる可能性があります」。

個人のヘルスケアに対するコミュニティとしてのアプローチ

iOS 15でAppleのヘルスケアアプリに加えられる別の大きな変更は共有だ。ユーザーと家族や、医師など世話をする人の間で、ヘルスケアのデータを非公開で安全に共有できるようにする。ユーザーは、共有するヘルスケアのデータを正確に選ぶことができ、いつでもアクセスを無効にできる。Apple自体がデータを見ることは決してなく、データはデバイス上でローカルで暗号化され、受信するデバイスのローカルメモリーで復号化される。

iOS 15でのAppleのヘルスケアアプリの共有(画像クレジット:Apple)

ヘルスケアの共有は、インテリジェントな保護者に関するAppleの取り組みの自然な拡張である。これによって、個人のヘルスケアは、常にそうであった状態、つまり個人がつながっているネットワークによって管理される状態に引き上げられるからだ。しかも、現代のテクノロジーとセンサー機能によって拡張されている。

リンチ氏は次のように説明する。「見守り対象の相手はその情報を見たり、変化の通知を受け取ったりすることができ、見守る人は小さなダッシュボードで情報を見ることができます。特に年配者やパートナーの世話をする人にこれが大いに役立つことを願っています。一般的に言って、ヘルスケアの過程で相互にそうしたサポートができるようになります」。

リンチ氏は、単に他の方法では見いだせなかったデータを明らかにすることが目的ではなく、実際には、ヘルスケアに関連した家族間のコミュニケーションを活発にしたり、普通なら決して生じないような個人的なつながりの扉を開けたりすることが目的だということを指摘している。

「最近どれくらい歩いたかとか、よく眠れるかといった話を自然にすることがないような状況で、会話が促されます。そうしたことを共有する気があるなら、さもなければしなかったような会話ができます。医師とのやり取りでも同じです。医師とやり取りするとき、医師は患者の普段の健康状態をあまり見ていないかもしれません。サイロ思考になって、その時の血圧など、部分的にしか診ません。では、医師と話すときに、どうすれば短い時間で全体像を伝えて、会話の内容を豊かにするサポートができるでしょうか」。

医師との共有は、医療提供者の電子医療記録(EHR)システムとの統合に依存するが、リンチ氏によれば、そのシステムでは相互運用可能な標準が使用されていて、さまざまなプロバイダーがすでに米国を広くカバーする準備を整えている。この機能を利用する医療従事者は、ユーザーが共有するデータをWeb表示のEHRシステムで見ることができる。データは一時的に共有されるだけだが、医療従事者は患者のために、簡単に特定の記録に注釈を付けて、永続的なEHRに保存し、必要に応じて診断結果や治療過程をバックアップできる。

EHRには導入と相互運用性の点で困難な問題に直面してきた歴史がある。この点についてリンチ氏に尋ねると、同氏は、Appleが何年も前にEHRとの連携に取り組み始めた当時は、実際に機能させるためにApple側に多大の技術的な負担が求められたと語った。幸い、業界は全般的に、もっとオープンな標準の採用に向かった。

「業界は、もっと標準化された方法でEHRに接続する方向に大きく変化してきました。確かにAppleは、EHRに関するすべての問題に取り組み、改善を支援するために努力してきました」とリンチ氏は語る。

ユーザーとの長期的な関係を築くメリット

ユーザーと医師の両者にとって、Appleのヘルスケアアプリが持つ大きな潜在的メリットの1つは、長期にわたって大量のデータにアクセスできることである。Appleのプラットフォームにこだわり、ヘルスケアアプリを使ってきたユーザーは、少なくとも7年ほど心拍数のデータを追跡してきたことになる。その理由で、iOS 15の別の機能であるHealth Trends(健康のトレンド)は、将来に向けてさらに大きな影響力となる可能性を秘めている。

iOS 15のAppleの健康のトレンド機能(画像クレジット:Apple)

リンチ氏は次のように説明する。「トレンド機能では、長期的な変化を調べ、各分野で統計的に重要な変化の特定を開始します。最初は20ほどの分野が対象となります。注意すべきトレンドが現れ始めたら、それを強調表示し、その様子を表示することができます。例えば、休息時の心拍数に関する現在と1年前のデータを比較できます」。

これもまた、Appleの心臓と運動に関する研究と、Appleがその研究から継続的に引き出したインサイトの結果である。Appleはこの研究の間、提供するインサイトの微調整に大いに力を注いだ。活用できるインサイトをユーザーに提供すると同時に、過剰な負荷や混乱の増大を回避するためだ。

「健康のトレンドのような機能を扱う場合、インサイトでユーザーを圧倒したいとは思いません。しかし、示すべき関連情報がある場合は、それを抑えたいとも思いません。どのように調整すべきか考えました。私たちは、心臓と運動に関する研究で得たデータを調整することに力を注いだので、それが公開されている様子を見ると胸が高鳴ります。これは何度でも言います。これは長期的な変化を理解する本当に強力な方法になると思います」。

ヘルスケアの未来は「融合」にあり

Appleのヘルスケアに関する今日までのストーリーは主に、iPhoneやApple Watchに搭載されている、最初は別の目的を持っていたセンサーを通じてヘルスケアに関するすばらしいインサイトが継続的に提供されたことによって成り立っている。以前はまったく不可能で、実際的ではなかったことだ。その状況は、Appleが、Apple WatchやAppleの他のデバイスに統合できる新しいセンサー技術を探し出して、日常のさらに多くの健康問題に取り組むという、意図的な戦略へと進展した。また、Appleは引き続き、既存のセンサーを使う新しい方法を見つけ出している。iOS 15に追加された、睡眠中の呼吸数の測定が主な例である。一方で、さらに多くのことを行うため、次なる新しいハードウェアの開発にも取り組んでいる。

しかし、将来のヘルスケア機能の観点から見ると、さらに可能性を探るべき分野は、センサーの融合である。歩行の安定性は、iPhoneとApple Watchが単に独立して機能する結果ではなく、Appleがそれらを組み合わせて活用するときに得られる成果である。Appleのソフトウェアとハードウェアの緊密な統合によって強化される分野もある。そのような分野は、デバイスとそのデバイスに搭載されているセンサーで構成されるAppleのエコシステムとして増殖し、成長を続ける。

インタビューの最後に、AirPodsのことを考慮に入れるとどんな可能性が開かれるのか、リンチ氏に尋ねた。エアポッドにも独自のセンサーがあり、iPhoneやApple Watchでモニタリングされるヘルスケア関連データを補完できるさまざまなデータを収集できるためだ。

「現在すでに、いくつかのデバイス間でセンサーの融合を行っています。ここには、あらゆる種類の可能性があると考えています」とリンチ氏は語った。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:AppleiOSiOS 15WWDC 2021Apple Watchヘルスケアアクティビティ心拍数心臓インタビュー

画像クレジット:Apple

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトのナデラCEOがアップルに「Windows版iMessageを歓迎する」と呼びかけ

マイクロソフトのナデラCEOがアップルに「Windows版iMessageを歓迎する」と呼びかけ

ymgerman via Getty Images

マイクロソフトは本日未明に次世代OS「Windows 11」を正式発表し、それとともにAndroidアプリもWindows上で動く上にMicrosoft Storeアプリから入手できる見通しも明らかにしました。

その後MSのサティア・ナデラCEOはThe Wall Street Journalのインタビューにて、アップルのiMessage(日本名は「メッセージ」)をWindowsに迎え入れることを歓迎するなどを語っています。

ナデラCEOいわく、Windows 11の大きな目標の1つは「サードパーティ製アプリ市場への開放」であり、Microsoft Storeの枠を超えて創造性の中心になるということ。その上で「すべてのアプリ」が参加するよう招かれていると述べています。

その上で順調とは言えないのが、iPhoneとWindowsの連携です。WindowsとAndroidデバイスとは「スマホ同期(Your Phone)」から密に連携し、ついにAndroidアプリがWindows上で動くにいたりましたが、iPhoneとはそうではありません。この点につきナデラCEOは「もっと上手くいくようにしたい」と語っています。

さらにナデラCEOは、他の企業と同じくアップルがWindows上でやりたいことを行うのは歓迎されると述べ、その1つとしてWindows版iMessageの可能性にも言及したという流れです。

iMessageは(少なくとも米国では)アップル製品を代表するアプリであり、iPhoneやiPad、Macに共通で搭載されているものです。アップルは今年(2021年)秋にビデオ通話アプリFaceTimeをAndroidやWindowsにも部分的に解放すると発表済みですが、iMessageについてアップル製品の独占であることに変更はありません。

なぜ、アップルはiMessageを他のプラットフォームに解放しようとしないのか。先日のEpic Gamesとの訴訟のなかで、裁判資料として提出された社内メールからは、アップルが一度はAndroid版iMessageを検討しながらも、幹部らが「iPhoneユーザーが子供にAndroidスマホを買い与える際の障害を取り除くことになる」つまりAndroidに顧客を奪われることを懸念して、結局は取りやめにされたことが明らかとなっていました

おそらくナデラCEOもその資料には目を通していて、アップルの意図は織りこみ済みのはず。Windows 11とともに発表されたストアの刷新では、MSの決済システムを使う必要もない、MSに手数料を支払わなくても良いとされていますが、これは正にアップルがApp Storeの30%手数料を一部を除いて守り続け、自社システム以外の独自購入方法を認めないことと真逆と言えます。

MSはアップルに表向きはWindows版iMessageの歓迎を呼びかけることで、実は挑発しているのかもしれません。

Windows 11: Microsoft CEO Satya Nadella on the New ‘Start’ of the PC (Exclusive) | WSJ

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

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タグ:iMessage(製品・サービス)App Store(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Amazon / アマゾン(企業)Android(製品・サービス)Satya Nadella / サティア・ナデラWindows(製品・サービス)Windows 11(製品・サービス)OS / オペレーティングシステム(用語)FaceTime(製品・サービス)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Store(製品・サービス)Microsoft Teams(製品・サービス)

アップルは検索広告で中国での売上増を狙う

Apple(アップル)の検索広告は米国では5年前に始まったが、今週から中国本土でも始まる。

Apple Search Adsと呼ばれるこの機能は、App Storeにおけるユーザーのキーワード検索に基づいて開発者が広告枠に入札できるというもので、Google(グーグル)の検索広告と同じ仕組みだ。JPMorganの推計によると、Appleの年間広告収入は2025年に110億ドル(約1兆2200億円)を超えるというが、検索広告事業が占める割合はわからない。

国際的なアプリの中国進出をサポートしているAppInChinaの発行者であるRich Bishop(リッチ・ビショップ)氏によると「中国における検索広告の立ち上げが遅れたのは、中国では広告事業に対して政府の規制があるためです。Appleはそれを迂回する方法を見つけたようですが、決済を外貨で行なうことと、検索タブの広告は提供できないという制限があります」という。

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ついにアップルが導入開始した「アプリのトラッキングの透明性」について知っておくべきこと

Appleは、ユーザーがアプリによるデータトラッキングをオフにできるようにするなど、パーソナライズされた広告を抑制していますが、この動きは、第三者のデータに依存して広告を配信しているFacebook(フェイスブック)などのビジネスモデルを揺るがすことは必至だ。

これまで、中国はAppleにとって重要な市場だが、Huawei(ファーウェイ)といった地元企業の台頭により、iPhoneは同国におけるステータスシンボルとしての輝きを失いつつある。しかし、第1四半期には、Huaweiの売上が低迷したことやiPhone 12ファミリーの発売により、Appleのスマートフォン出荷台数は回復している。中国のApp Storeも、Appleにとって重要な収入源だ。

中国本土のユーザーに対して広告をターゲティングしたい開発者は、5ページのガイドラインでAppleが示している資格要件を満たさなければならない。広告主が取得する必要のある業界固有のライセンスが大量にあるため、AppInChinaのブログ記事では、外国企業が中国本土で広告を直接出稿することは実質的に不可能と述べている。

中国で検索広告に入札するには、政府の承認をすべて得ている地元のパートナーを見つける必要がある。

例えば中国に品物を輸入するアプリの要件は、インターネット上の付加価値事業を行なうための一般的なライセンスだけでなく、貿易や関税に関するさまざまな政府機関への登録が必要だ。AppInChinaによると、アプリを中国でリリースするだけでも、Appleはそういった許可を申請しなければならないかもしれない。以前のゲームアプリの取り締まりの例にも見られるように、Appleは今後も中国政府のルールを強制し続けるのだろう。

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タグ:Apple中国広告

画像クレジット:Miguel Candela/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

LAの築100年近い歴史的建造物「Tower Theatre」に新Apple Storeが6月24日オープン

米国時間6月24日、Apple(アップル)はロサンゼルスのダウンタウンに新しい店舗をオープンする。この店舗は、DTLA(Downtown L.A.の略)のブロードウェイ・シアター・ディストリクトに1927年にオープンしたTower Theatre(タワーシアター)を新たに改装したもの。この劇場は、ロサンゼルスで初めてトーキー映画用の配線が施された900席の劇場であり、同年には米国初の発声映画「The Jazz Singer(ジャズ・シンガー)」のプレミア上映が行われた場所だ。また、市内で初めてエアコンが設置された劇場でもあった。

「Apple Tower Theatre」は、同社にとってロサンゼルス市内で26番目の店舗となる。しかしもちろん、94年前に建てられた劇場への移転は、ショッピングモールなどに比べてかなりの労力を要する。この店舗は数年来の取り組みで、ランドマークに指定されたスペースを市と協力して修復する必要があったことも理由の1つだ。

画像クレジット:Apple

興味深いことに、2018年にLA Times紙に掲載された記事ではこのスペースについて「アップルがハリウッドの主要コンテンツクリエーターとして競争する気であるという宣言になるかもしれない」と指摘している。今にして思えば、妥当な話だ。Apple TV+はその翌年、2019年末にローンチされた。

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    画像クレジット:Apple

この劇場は1988年以降、ほとんど使用されていなかった。そのため、古い劇場の壁をピカピカにして現代的な店舗の雰囲気を出すために、さらに多くの作業が必要だった。もちろん、耐震性を高めるためのアップグレードも施された。

また、同社はこの劇場の象徴的な要素を維持することにも注意を払ったという。

画像クレジット:Apple

アップルはこう書いている。「Apple Tower Theatreは8番街とブロードウェイの角に位置しており、来場する方たちは、完全に復元された時計塔、ブロードウェイの再現された看板、きれいなテラコッタの外壁、改装された歴史的なブレードサインにすぐに気づかれることでしょう。ブロードウェイ側のドアをくぐると、シャルル・ガルニエによるパリのオペラ座にインスパイアされた堂々としたロビーに入り、大理石のコリント式コラムの間に、ブロンズの手すりが付いた豪華なアーチ型の階段があります」。

この店舗のオープニングは、アップルの新しいイニシアティブである「Creative Studios」のローンチも記念している。LAと北京の店舗が、このプログラムの最初の実施店舗となる。当初は8週間から12週間の予定で、クリエイティブアート分野のメンターグループを提供する。

画像クレジット:Apple

SVPのDeirdre O’Brien(ディアドラ・オブライエン)氏は、プレスリリースでこう述べている。「創造性と教育へのアクセスは、アップルのコアバリューです。ですから今日(6月22日)、ロサンゼルスと北京の『Apple Creative Studios』でキックオフし、2021年はさらにいくつかの都市でこの有意義なプログラムを実施できることを、とてもうれしく思っています。当社は長年、店舗を地元アーティストを迎えて教育とインスピレーションを与える場として活用してきましたが、『Creative Studios』は、もっとも芸術教育を必要としている人々に無料でそれを提供するもう1つの方法です」。

先週6月17日、Google(グーグル)はマンハッタンのチェルシー地区に初の小売店をオープンした。Apple Tower Theatre店は、現地時間6月24日(木)午前10時にオープンする。同社によると、同店舗を運営するために100人近くを雇用することになるという。

関連記事:グーグル初の常設店舗がニューヨークに現地時間6月17日オープン

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleApple Storeロサンゼルス

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

インテルのノートPC向けCPU市場シェアがAppleシリコンの影響で大きく落ち込む可能性、AMDはシェア堅持か

インテルのノートPC向けCPU市場シェアがAppleシリコンの影響で大きく落ち込む可能性、AMDはシェア堅持か

Apple

アップルがMacのプロセッサをインテル製から自社開発のAppleシリコンに2年かけて移行すると発表してから、1年以上が経過しました。その影響により、今後インテルのノートPC向けCPU市場シェアが大きく落ち込むとの予測が報じられています。

台湾の電子部品業界情報誌DigiTimesによると、M1チップを搭載した4台のMacとそれに続く(Appleシリコン搭載Mac)リリースにより、今年(2021年)のインテルはアップルからの受注のうち50%を失うとのこと。さらに、最終的にはアップルからの受注がゼロになることで、2023年にはインテルのノートPC向けプロセッサの市場シェアは80%を下回るとの見通しが述べられています。

そればかりか、アップルが自社開発した一連のArmベースプロセッサ(Appleシリコン)は、2022年にはインテルのシェアから大きな割合を奪う重要な役割を果たすとの情報筋の予想も伝えられています。

2023年にインテルのシェアが80%を下回るという概算は、具体的にはアップルに供給していた10%のシェアを失う一方で、AMDは10%のシェアを堅持するとの予想から。インテルはWindows PCやサーバー向けのCPU市場ではAMDとの熾烈なシェア争いを繰り広げる一方で、Macは一種の聖域ともなっていましたが、それが消え失せることは手痛い打撃となりそうです。

インテルはそうしたAppleシリコンが自社のビジネスに与える影響を認識しているようで、「Macにできないことがインテル製チップを搭載したPCにはできる」など複数のキャンペーンを展開しています。それに対しては結果的にインテル製CPUを採用した16インチMacBook Proを貶めていることや、MacがPCよりゲーム体験が劣るのはインテルと関係ない他社製GPUによるものではないかとの指摘もありました

現在のM1搭載Macは「低消費電力のわりに高性能かつ低価格」にこそ強みがあり、お金にも消費電力にも糸目を付けないインテル製チップ搭載のハイエンドPCにはピーク性能で及びません。が、32個もの高性能コアや128個ものGPUコアを搭載すると噂される次世代Appleシリコンが登場すれば、プロセッサ市場を一変させるゲームチェンジャーとなる可能性もありそうです。

(Source:DigiTimes。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)Arm(企業)Intel / インテル(企業)NVIDIA(企業)AMD(企業)CPU(用語)GPU(用語)

【インタビュー】アップル幹部が語る次期iPad OSのメンタルモデルとマルチタスクの強化

2021年のWWDCカンファレンスで発表されたiPadの新しいソフトウェアに、非常に大きな期待が寄せられている。iPadのラインナップ、特に大型のiPad Proでは、ここ数年、驚異的なペースでハードウェアのイノベーションが行われてきた。その一方、iPadのソフトウェア、特に複数のアプリを同時に使用できる機能や、プロのソフトウェア開発者向けのプロセスで使用できる機能のイノベーションが明らかに遅いことに、厳しい視線が注がれている。

そのような意見に反論しようとするかのように、iOS 15とiPadOS 15に関する2021年の発表では、マルチタスク機能の使い勝手が大幅に改善されていることや、システム全体に関する機能のほぼすべてに開発者向けAPIが塔載されていることが紹介された。筆者は、Apple(アップル)のワールドワイド製品マーケティング担当VPのBob Borchers(ボブ・ボーチャーズ)氏と、Appleのインテリジェントシステムエクスペリエンス担当VPのSebastien(Seb)Marineau-Mes(セバスティアン[セブ]・マリノー・メス)氏に、iPadOS 15のリリースについて話を聞き、これらのさまざまな改善点について意見を交わす機会を得た。

マリノー・メス氏は、Appleのソフトウェア担当SVPであるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏のチームメンバーであり、今回の新バージョンの開発において中心的な役割を果たした人物だ。

iPadには、SharePlay、Live Text、Focuses、Universal Control、オンデバイスのSiri処理、プロトタイプ作成ツールとして設計された新しいSwift Playgroundsなど、多くの新しいコア機能が搭載されている。ただし、iPad Proユーザーが最も期待しているのは、Appleのマルチタスクシステムの改善だ。

iPadOSに関するTechCrunchの記事を読んだことがある読者なら、ジェスチャーを重視したマルチタスクインターフェイスを批判する声があることをご存知だろう。筆者もその1人だ。条件さえそろえば便利かもしれないが、ジェスチャーシステムは見つけにくく、さまざまな種類のアプリを組み合わせた階層構造が複雑であるため、初心者はおろか、上級ユーザーでも、ジェスチャーを正しく使うことは少し難しかった。

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iPadが市場で唯一成功したタブレット端末であることから、Appleは、業界でどのようなパラダイムが標準として確立されるかを左右する唯一無二の立場にある。このようなデバイスで作業したらこのように感じられるようにすべきだ、このように見えるようにすべきだと言える立場にある企業はそうそうない。

そこでボーチャーズ氏とマリノー・メス氏にマルチタスクについて少し話を伺った。具体的には、iPadOS 15のマルチタスクの設計におけるAppleの哲学と、旧バージョンからのアップデートについてである。旧バージョンでは、指のアクロバティックな動きと、画面の端から飛び出す物体に対する強い空間認識が必要だった。

私が空間的な動きについて話すと、ボーチャーズ氏は次のように言った。「その通りだと思います。しかし私たちが考えているのは、一歩前進して、マルチタスク化により見つけやすさ、使いやすさ、高性能化を実現することです。これまでマルチタスクは上級者が利用していた機能ですが、もっと普及させたいと考えています。なぜならマルチタスクは多くの人々に役立つと思うからです。だからこそ見つけやすさや使いやすさが重要なのです」。

「空間モデルに関するあなたの指摘は、非常に核心をついています。私たちの目標の1つは、エクスペリエンスにおける空間モデルをより明確にすることでした」とマリノー・メス氏は語る。「明確な空間モデルでは、例えば分割表示にして、ウィンドウの1つを交換する場合、カーテンを開けて、別のアプリを横に押し込むと、そのアプリを見ることができます。これは隠れたメンタルモデルではなく、非常に明示的なモデルです」。

マリノー・メス氏はこう続ける。「もう1つの好事例は、スイッチャーアプリを使用してウィンドウを再構成する際に、分割表示の並べ替えやアプリの削除などをドラッグ&ドロップで行うことです。つまり「隠された」メンタルモデルではありません。ユーザーにとって明示的なモデルを使い、あらゆるアニメーションやアフォーダンスを通じて空間モデルを強化することを目指しています」。

マリノー・メス氏によると、Appleの今回の目標は、マルチタスクが選択肢の1つであることをユーザーに理解してもらうために、アフォーダンスを加えることだった。アフォーダンスはすべてのアプリとウィンドウの上部にある一連の小さな点であり、利用可能な構成を明示的に選べるためのものだ。これまではアプリをドックに追加して切り替えていた。同氏は続けて、このバージョンのOSでは一貫性が重要な指標だったと述べている。例えば、Slide Overアプリは、他のすべてのアプリと同じようにスイッチャービューに表示される。つまりボタンを使ってアプリの設定を選択しても、スイッチャーでドラッグ&ドロップしても同じ結果が得られるということだ。

マリノー・メス氏によると、ダッシュボードでは「実行しているすべてのアプリをひと目で見ることができる他、iPadのインターフェイスを使ってアプリをどのように操作しているかを示す完全なモデルが表示される」という。

この「ひと目でわかる」システムマップは、上級ユーザーにとっては歓迎すべきものだ。非常に積極的なプロのユーザーである筆者でさえ、開いているウィンドウの数と使用するタイミングを把握できないSlide Overアプリは、何よりも厄介だった。スイッチャー自体にSlide Overアプリを組み込む機能は、Appleが何年も前からOSに塔載したいと考えていた機能の1つであるが、今回ようやくiPadに塔載されることになった。組織の粘り強さこそが、取り組むべき重要な課題だったのだ。

「私たちは、強い信念を持って、iPadのどこに何があるかがわかるようなメンタルモデルを構築しています。そして粘り強さに関しては、あなたのおっしゃる通りです。例えばホーム画面についても粘り強く取り組む必要があると思っています。ユーザーはホーム画面や設定したすべてのアプリのどこに何があるかについて、非常に強いメンタルモデルを持っています。だからこそ、そうしたメンタルモデルをしっかりと維持しつつも、ユーザーがスイッチャーでアプリを再編成できるようにしているのです」。

マリノー・メス氏は、アプリが起動しているすべてのインスタンスやウィンドウを表示する新しい「シェルフ」機能についても言及した。同氏がいうには、シェルフ機能をシステム全体の機能ではなくアプリごとの機能として実装したのは、シェルフを特定のアプリと関連づけるほうが、構築しようとしている全体的なメンタルモデルに合致するからだ。2021年後半には、1つのプロジェクト中に多くの文書やウィンドウを一度に開いてアクティブにできる、より専門的なアプリがリリースされる。その時、このシェルフの価値をさらに強く実感できるかもしれない。

iPadOS 15では、上級者の要望に応えて、システム全体で使える豊富なキーボードショートカットも提供されている。インターフェイスが矢印キーで操作できるようになった他、多くの高度なコマンドも用意されている。ゲームコントローラを使ってiPadを操作することも可能だ。

「2021年の主な目標の1つが、システム内のあらゆるものを基本的にキーボードを使って操作できるようにすることでした」とマリノー・メス氏は述べ、次のように続けた。「そのため、キーボードから手を放したくなければ、放す必要はないのです。新しいマルチタスクのアフォーダンスと機能は、すべてキーボードショートカットで操作できます。新しいキーボードショートカットメニューバーには、利用できるすべてのショートカットが表示されるため、非常に発見しやすい環境が実現しています。ショートカットを検索することもできます。またこれは細かいことですが、MacとiPadOSのショートカットの合理化には、かなり意識的に取り組みました。そのため、例えばユニバーサルコントロールを使用している場合、ある環境から別の環境にシームレスに移動することができます。どの場所でも一貫性を確保することを目指しています」。

一方でジェスチャーも、ジェスチャーに慣れている既存のユーザーに配慮し、一貫性を保つために残される。

筆者がより興味深く便利だと感じた改善点の1つは、Center Window(センターウィンドウ)とそれに付随するAPIの導入である。メール、メモ、メッセージなどのいくつかのAppleアプリは、重なり合うウィンドウにアイテムをポップアウトできるようになった。

この新しい要素を加えたことについて、マリノー・メス氏は次のように語る。「非常に慎重に決断しました。フローティングウィンドウを使用できることで、新たなレベルの生産性がもたらされます。フローティングウィンドウの後ろにコンテンツを表示できるため、シームレスなカット&ペーストが可能になります。これは、従来のiPadOSモデルではできないことでした。またセンターウィンドウが分割表示ウィンドウの1つ、または全画面表示になり、その後センターウィンドウに戻ることができるようにして、他のマルチタスク機能との一貫性を保つことも目指しています。私たちはこれをすばらしい追加機能だと考えており、サードパーティーがこの機能を採用してくれることを楽しみにしています」。

最も強力なクリエイティブアプリの多くはサードパーティーによって構築されており、これらのアプリを真に役立つものにするには、こうした技術を採用しなければならない。そう仮定すると、Appleが発表したiPadOS 15の新機能の早期導入には不安要素がある。しかしボーチャーズ氏によると、Appleは、これらの新しいパラダイムや技術がプロ向けアプリにできるだけ多く採用されるように懸命に取り組んでいるという。その結果、2021年秋頃になれば、iPadは、プロが望む高度な作業を行うための快適なホストとして認識されるだろう、とのことだ。

iPadが存在するこのマルチモーダルな世界を可能にしているものの1つがユニバーサルコントロールだ。この新機能では、Bluetooth信号、ピア・ツー・ピアWiFi、iPadのタッチパッドのサポートを利用し、デバイスを互いに近づけ、マウスを画面の端にスライドして、MacやiPadにシームレスに接続することができる。ユーザーの意図を読みとって巧みに活用している事例だ。

カリフォルニア州クパチーノ。2021年6月7日、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長クレイグ・フェデリギ氏が、Apple Parkで開催されたAppleのWorldwide Developers Conferenceの基調講演ビデオの中で、ユニバーサルコントロールの使いやすさを紹介している(画像クレジット:Apple Inc.)

「プロユーザーかどうかに関わらず、1人でMac、iPad、他のiPhoneを持っているユーザーが多いということに気づきました。そして私たちは、これらを連携することが強力なパワーを発揮すると信じています」とボーチャーズ氏は言い、続けて次のように述べた。「AppleのContinuityモデルを拡張して、iPadOSというすばらしいプラットフォームを利用しながら、その隣でMacを操作できるようにするのは、当然だと感じました。大きな課題は、魔法のようなシンプルな方法でそれをどう実現するかでした。そしてセブ氏とそのチームがそれを成し遂げたのです」。

「これはContinuity機能とSidecarで築いた基盤の上に成り立っています」とマリノー・メス氏は付け加えた。「私たちはセットアップを可能な限りシームレスにする方法や、デバイスが隣り合っていることを検出する方法について、検討に検討を重ねました」。

「もう1つ考えたことは、人々が求めているワークフローとは何か、そのワークフローに不可欠な機能は何かという点でした。私たちは、プラットフォーム間でコンテンツをシームレスにドラッグしたり、カット&ペーストしたりする機能などが非常に重要だと思いました。それこそが体験に魔法をかけるものだと考えたからです」。

ボーチャーズ氏は「これによりすべてのContinuity機能がより見つけやすくなる」と付け加えた。例えば、Continuity機能の共有クリップボードは常に機能しているが、目に見えない。それをマウス駆動型の視覚的なモデルに拡張することは理に適っていると言える。

「当然ながら、プラットフォームのどこにでもコンテンツをドラッグできます」とボーチャーズ氏はいう。

「ボブ、あなたは『当然』と言いましたよね」とマリノー・メス氏は笑いながら言った。「しかし長年プラットフォームに取り組んできた私たちにとって、『当然』を実現するのは技術的に非常に難しく、まったく当然なことではないのです」。

iPadOS 15の有望な拡張機能が見られるもう1つの分野は「アプリ内」という考えを脱却した、システム全体に関わるアクティビティだ。例えば、アプリに埋め込まれるレコメンデーション機能、ビデオ通話が見つかると表示されるShareplay、あらゆる写真を、キーボードで検索可能なインデックス付きアーカイブに変えるLive Textなどである。

もう1つのシステム拡張機能はQuick Noteである。システムのどこからでも画面の下隅からスワイプして使用できる。

「Quick Noteではいくつかおもしろいことができます。1つはリンクです。SafariやYelpなどのアプリで作業しているときに、表示しているコンテンツへのリンクをすばやくQuick Noteに追加することができます。あなたはどうか知りませんが、私は調べものをするときに頻繁にこの動作をしています」とマリノー・メス氏はいう。

「以前は、カット&ペーストしたり、おそらくスクリーンショットを取ったり、メモを取ったりしていたことでしょう。それが今では、システム全体で非常にシームレスに、流れを止めずに行うことができるようになりました。逆に、Safariを起動中に、Safari内のそのページについて記載したメモがあれば、画面の右下隅にサムネイルとして表示されます。私たちは、このメモ体験をシステム全体に適用し、どこからでも簡単にアクセスできるようにしようと本当に努力しました」。

AppleがiPadOS 15とiOS 15に導入しているシステム全体にわたる機能の多くは、開発者が利用できるAPIを備えている。AppleのAPIは長い間、アプリを強化する手段として開発者に提供されるものではなく、多くの場合、フレームワークの一覧のプライベートセクションに存在していた。しかし最新のAPIは必ずしもそうではない。ボーチャーズ氏によると、これはシステム全体に「より広範なインテリジェンスの基盤」を提供する意図的な動きである。

この広範なインテリジェンスには、Siriが大量のコマンドをローカルスコープに移動させることも含まれる。そのために、Appleの音声認識の大部分を新しいOSのデバイス上の構成に移す必要があった。ボーチャーズ氏曰く、その結果、毎日のSiri体験が大幅に改善され、多くの一般的なコマンドが要求に応じてすぐに実行されるようになった。これまでは一か八かの勝負をしているようだった。Siriには、クラウドに届いたコマンドは決して戻ってこないという悪い評判がある。そうした風評をなくすことで、Siriの有用性に対する公共認識が改善する可能性がある。

Apple Neural Engine(ANE)がもたらすインテリジェンスをデバイスに導入することにより、システム全体、過去、現在、その瞬間のあらゆる写真に含まれるテキストをインデックス化することも可能だ。

「Live Text機能を使用できるのはカメラと写真だけでしたが、私たちは、Safariやクイックルックなど、画像があるところならどこでも、Live Textを使用できるようにしたかったのです」とマリノー・メス氏は語った。「私がLive Textのデモで気に入っているのが、Wi-Fi接続用の長く複雑なパスワードを入力するフィールドでLive Textを使用するデモです。キーボードでパスワードを表示して写真を撮り、写真の中のテキストをコピーしてフィールドに貼り付けるだけです。まさに魔法のようです」。

iPadOS 15の開発者向けサービスに関しては、筆者はSwift Playgroundsについて具体的に話を聞いた。Swift Playgroundsには、アプリを記述し、コンパイルし、App Storeでリリースできる機能が追加されている。iPadで初めての機能である。これは開発者が望んでいたネイティブのXcodeではない。しかしボーチャーズ氏によるとSwift Playgroundsは「単にプログラミングを教える」ためのものでから「多くの開発者が実務で使用する」ものへと進化しているという。

「ここで得られた有用な知見の1つは、多くのプロの開発者がSwift Playgroundsをプロトタイプ用プラットフォームとして利用していることです。何かを試してみたいとき、それがバスの中であろうが公園であろうが、場所を問わずに非常に簡単に使えるため、『コードを学びたい』ときに非常に便利です」。

「開発者であれば、作業しているデバイス上でアプリを実行できると優れた忠実性を得られるため、生産性が上がります。またプロジェクト形式がオープンであるため、XcodeとPlaygroundsの間を行き来できます。ボブがいうように、私たちが想定しているのは、他の開発環境を持ち歩かなくても、Playgroundsを使用して外出先で多くのラピッドプロトタイピングを実行できることです。そのためPlaygroundsは、2021年開発ツールに追加された本当に強力な機能になると考えています」と、マリノー・メス氏は付け加えた。

2018年に、筆者はAppleの新しいチームを紹介した。このチームは、(当時は明かされていなかった)新しいMac Pro、iMac、MacBook、iPadなどのマシンが関連するプロセスがうまく進むように、Appleが実世界のユースケースに対応していることを確認できるテスト装置を構築していた。当時注目を集めたデモの1つが、Logicなどの音楽アプリと緊密に連携することによってiPadの入力モデルがコアアプリを補完できるようにするものだった。タッチインターフェイスを使用して、より直感的にパッド上でリズムを刻んだり、色や音声を調整したりできるようにした。最近のAppleの取り組みの多くは、ユーザーがさまざまなコンピューティングプラットフォームをシームレスに行き来し、それぞれの強み(元々ある能力、携帯性、タッチなど)を活かしてワークフローを補完することを目的としているようだ。iPadOS 15の多くは、このような方向性を持っていると思われる。

「ソフトウェアが原因で十分に力を発揮できない作業デバイス」というiPadのイメージをiPadOS 15が覆せるかどうかの判断は、2021年後半にiPadOS 15がリリースされるまで保留にしたい。しかし筆者は、短期的には慎重ながら楽観的な見方をしており「アプリの枠」を超えた一連の機能強化、単一アプリの内外でマルチタスクを実行するためのより明確なアフォーダンス、そしてAPIサポートへの献身的な取り組みは、拡張を推進しようとするiPadソフトウェアチームの精神の表れだと感じている。概して良い兆候だと思う。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDC2021iPadOS 15iPadiPadOSインタビュー

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Dragonfly)

iPhoneのWi-Fi機能にバグ、特定の名前を持つWi-Fiスポットに繋ぐとすべてのWi-Fi機能が無効化(回避策あり)

iPhoneのWi-Fi機能にバグ、特定の名前を持つWi-Fiスポットに繋ぐとすべてのWi-Fi機能が無効化(回避策あり)

iPhoneを特定のSSID(ネットワーク名)を持つWi-Fiネットワークに接続すると、Wi-Fi接続機能が完全に無効化されるバグが発見されました。なお、この不具合は回避策が見つかっています(後述)。

セキュリティ研究者のCarl Schou氏はTwitterで、特定のSSID(「%p%s%s%s%s%n」)のWi-Fiネットワークに参加すると、その時点からiPhoneのすべてのWi-Fi機能が無効になることを実証した動画を公開しています。そればかりか再起動しようが、SSIDを変更しようが症状は直らないとのことです。

Schou氏は、この実験はiOS 14.4.2を搭載したiPhoneXSでも成功し(Wi-Fi環境が破壊された)、iOS 14.6でも同じ症状が確認できたと述べています。

ただし、全てのネットワーク設定をリセットして復旧はできると確認されています。すなわち「設定」アプリの「一般」>「リセット」>「ネットワーク設定をリセット」により工場出荷時状態に戻せば、再びWi-Fi接続機能が回復するとのことです。とはいえ、Wi-Fi設定ばかりかモバイル通信ネットワークやVPN設定も削除されることになり、ゼロからやり直すのは楽ではなさそうです。

なぜ、こうした不具合が起きるのか。記事執筆時点では明らかではありませんが、大手コンピュータヘルプサイトBleepingComputerはiOSがSSID名にある「%」記号がついた文字列をテキストではなく変数名またはコマンドとして解釈しているからではないかと推測しています。以前も、こうした特殊な文字列を受信するとiPhoneやiPad、Macなどがクラッシュするバグが発生した事例がありました。

かたやAndroidデバイスでは同じ名前のWi-Fiネットワークに繋いでも問題なかったとの報告もあり、iPhoneに固有の問題である模様です。

このバグが発生したからと言ってハードウェアが故障するわけではありませんが、アップルが公式にバグを修正したソフトウェアアップデートを配信するまでは、頭に「%」が付いたWi-Fiスポットには接続しない方が無難と言えそうです。

(Source:Carl Schou(Twitter)BleepingComputer。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:iOS(製品・サービス)iPhone(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Android(製品・サービス)バグ / 脆弱性(用語)

アップルが日本を含む170以上の国でApple Podcastサブスクリプションを開始、J-WAVEのチャンネルも

Apple(アップル)は米国時間6月15日、日本も含む170以上の国と地域で「Apple Podcast サブスクリプション」の提供を開始したと発表した2021年春に初めて発表されたこのサブスクリプションは、リスナーがお気に入りのポッドキャストの追加特典を有料で楽しめるというもので、広告なしでの聴取や、新エピソードの先取り聴取、ボーナスコンテンツや独占配信など、ポッドキャスト制作者はファンがお金を払ってでも利用したいと思うようなさまざまな特典を提供できる。また、2021年7月からポッドキャスト制作者が厳選した番組を集めた「チャンネル」と呼ばれる機能も導入される。これは例えば、クリエイターが共通のテーマを持つ番組を集めて独自のタイトルやアートワークを付けたり、無料と有料のコンテンツを別々に提供したりすることが可能だ。

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この新しいサブスクリプション機能は、当初5月に提供開始の予定だったが、6月に延期するとアップルからクリエイターにメールで通知されていた。これは、エピソードの遅延やアナリティクスの不具合など、バックエンドに発生したいくつかの問題がサービスに影響を与えたためと思われる。

アップルによると、ローンチ時には数千のサブスクリプションとチャンネルが用意され、毎週追加されていく見込みだという。

リスナーが番組のサブスクリプションを購入すると、デザインが一新されたApple Podcastアプリで自動的に番組がフォローされる。番組ページには「Subscriber Edition」のラベルが表示され、プレミアムな体験ができるかどうかを簡単に判別できる。

アプリの「今すぐ聴く」タブには、チャンネルを含む有料コンテンツにアクセスするための新しい行が追加される。

このアプリでは、番組ページや検索でチャンネルを見つけたり「今すぐ聴く」タブや「ブラウズ」タブでおすすめの番組を閲覧したり、Messages(メッセージ)やMail(メール)などのアプリで友人とチャンネルを共有したりすることができる。

アップルがポッドキャスト市場への投資を遅らせたことで、ライバル企業はポッドキャストのリスナーを増やすための先手を打つことができた。例えば、春にアップルがサブスクリプションを発表した時点で、ある業界レポートは、Spotify(スポティファイ)のポッドキャストリスナー数が、2021年に初めてアップルのリスナー数を上回るだろうと予想していた。

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このような激しい競争にもかかわらず、アップルはその膨大なインストールベースがクリエイターを引き寄せることに賭けている。これらのクリエイターは、サブスクリプションベースのiOSアプリと同様に、1年目はサブスクリプション収入の30%、2年目以降は15%を手数料としてアップルに支払うことに同意しなければならない。それに比べ、Spotifyでは、プログラムが軌道に乗るまでの2年間は収益から差し引くことはせず、その後も5%の手数料を取るだけだ。

サブスクリプション開始時のラインナップを見ると、多くのクリエイターやスタジオが、アップルの足元にはより多くの収益が得られる価値があると考えているようだ。

サブスクリプションを早くから採用したのは、Lemonada Media(レモナダ・メディア)、Luminary(ルミナリー)、Realm(レルム)、Wondery(ワンダリー)などの有名企業や、CNN、NPR、The Washington Post(ワシントン・ポスト)、Sony Music Entertainment(ソニー・ミュージックエンタテインメント)などのメディアやエンタテインメント系ブランドだ。

その他の参加しているスタジオは、Audio Up(オーディオ・アップ)、Betches Media(ベッチズ・メディア)、Blue Wire(ブルー・ワイヤー)、Campside Media(キャンプサイド・メディア)、Imperative Entertainment(インペラティブ・エンタテインメント)、Lantigua Williams & Co.(ランティグア・ウィリアムズ)、Magnificent Noise(マグニフィセント・ノイズ)、The Moth(ザ・​マス)、Neon Hum Media(ネオン・ハム・メディア)、Three Uncanny Four(スリー・アンカニー・フォー)、Audacy(オーダシー)のCadence13(ケイデンス13)とRamble(ランブル)、Barstool Sports(バーストゥール・スポーツ)、Jake Brennan(ジェイク・ブレナン)氏のDouble Elvis(ダブル・エルヴィス)、Headgum(ヘッドガム​)、iHeartMedia(アイハートメディア)のThe Black Effect(ザ・ブラック・イフェクト)、Big Money Players(ビッグ・マネー・プレイヤーズ)、Grim & Mild(グリム&マイルド)、Seneca Women(セネカ・ウィメン)、Shondaland(ションダランド)、Relay FM(リレイFM)、Tenderfoot TV(テンダーフットTV)、Radiotopia from PRX(ラジオトピア・フロム PRX)、Pushkin Industries(プーシキン・インダストリーズ)、QCODE(キューコード)などがある。

画像クレジット:Apple

ニュースカテゴリーでは、The Athletic(ジ・アスレチック)、Fox News(フォックス・ニュース)、Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)、Bloomberg Media(ブルームバーグ・メディア)、Politico(ポリティコ)、Vox Media(ヴォックス・メディア)の他、ABC News(ABCニュース)、Axios(アクシオス)、Billboard(ビルボード)、Bravo(ブラボー)、CNBC、CNN、Crooked Media(クルックド・メディア)、Dateline、Entertainment Weekly(デイトライン・エンタテインメント・ウィークリー)、Futuro Media(フトゥーロ・メディア)、The Hollywood Reporter(ハリウッド・リポーター)、LAist Studios(ライスト・スタジオズ)、National Geographic(ナショナルジオグラフィック)、MSNBC、NBC News(NBCニュース)、NBC Sports(NBCスポーツ)、New York Magazine(ニューヨーク・マガジン)、The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)、SiriusXM(シリウスXM)、SB Nation(SBネイション)、Southern Living(サザン・リビング)、The Verge(ザ・ヴァージ)、TODAY(トゥデイ)、VICE(ヴァイス)、Vogue(ヴォーグ)、WBURなどの新聞、雑誌、放送局、デジタルパブリッシャーのチャンネルもある。

子ども向けのポッドキャストは、GBH、Gen-Z Media(ジェンズィー・メディア)、Pinna(ピナ)、Wonkybot Studios(ウォンキーボット・スタジオズ)、PRXのTRAX(トラックス)などから配信されている。

アップルは独立系のクリエイターがサブスクリプションを提供していることも紹介しており、Adriana Lozada(アドリアナ・ロザダ)氏の「Birthful(バースフル)」、Beth Silvers(ベス・シルバース)氏と Sarah Stewart Holland(サラ・スチュワート・ホランド)氏の「Pantsuit Politics(パンツスーツ・ポリティクス)」、Glynn Washington(グリン・ワシントン)氏の「Snap Judgment(スナップ・ジャッジメント)」、Martina Abrams Ilunga(マルティナ・エイブラム・イルンガ)氏の「You Had Me At Black(ユー・ハッド・ミー・アット・ブラック)」などが掲載されている。

国際的なサブスクリプションやチャンネルも提供されており、オーストラリアのABC、LiSTNR(リスナー)、SBS、ブラジルのAbrace Podcasts(アブレース・ポッドキャスト)、カナダのCANADALAND(カナダランド)、Frequency Podcast Network(フリークェンシー・ポッドキャスト・ネットワーク)、デンマークのGoLittle(ゴーリトル)、フランスのEurope 1(ヨーロッパ1)、Louie Media(ルーイ・メディア)、Radio France(ラジオ・フランス)、ドイツのDer Spiegel(デル・シュピーゲル)、Podimo(ポディモ)、ZEIT ONLINE(ツァイト・オンライン)、イタリアのIl Sole 24 Ore(イル・ソーレ24オレ)、Storielibere.fm(ストリエリベレfm)、日本のJ-WAVE、韓国のBrainrich(ブレインリッチ)、ロシアのlibo/libo(リボ / リボ)、アラブ首長国連邦のFinyal Media(フィンヤル・メディア)、英国のBroccoli Productions(ブロッコリ・プロダクションズ)、Content Is Queen(コンテント・イズ・クイーン)、Guardian(ガーディアン)、Immediate Media(イミディエト・メディア)などがある。

サブスクリプション料金は月額0.49ドル(約54円)からだが、人気のある番組は月額2.99ドル(約329円)「Luminary」のように月額4.99ドル(約548円)のチャンネルもある。価格の目安になるだろう。Apple Card(アップル・カード)のユーザーは、サブスクリプション料金の3%がキャッシュバックされ、Apple Wallet(アップル・ウォレット)で確認できる。

サブスクリプションに加入するとiPhone、iPad、Mac、Apple Watch、Apple TV、CarPlay、HomePod、HomePod miniなどのアップル製デバイスで聴くことができる。

サブスクリプションは、Apple Podcastアプリのデザイン変更と同時に発表された。このアプリには使い勝手に関する多くの不満が寄せられており、ユーザーの中にはサードパーティ製のアプリを探す人も少なくなかった。アップルはユーザーからのフィードバックに応え、iOS 14.6のアップデートでいくつかの問題に対処している。その他の「ライブラリ」タブのアップデートは、今後のリリースで予定されており、おそらくiOS 14.7で行われるだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleポッドキャストサブスクリプションiOS

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルが新型ワイヤレスイヤホン「Beats Studio Buds」発売、Android / iOS高速ペアリング、ノイキャン搭載で税込1万7800円

2019年に発売された時、Powerbeats Proは際立っていた。2年以上が過ぎた今も、市場で最もバランスの取れたワイヤレスイヤフォンの1つであり続けている。変わって欲しい点はもちろんいくつかある。2019年当時でさえ、ケースがあきれるほど大きかった。2021年になると、当時のケースはいっそうばかばかしく見える。そして、もちろん、ノイズキャンセリングは中級イヤフォンではほぼ標準になった。

数週間にわたる噂とリーク(世界一有名なアスリートの耳に着けられたあからさまなチラ見せを含む)を経て、Beats(ビーツ)の最新商品がついにベールを脱いだ。Beats Studio Buds(ビーツ・スタジオ・バッズ)の登場だ。これは、同社がすかさず述べたように、Powerbeats Proを置き換えるものではない。それも販売され続ける(しかし独自のアップグレードがない、ともいっていない)。

BeatsはApple(アップル)傘下ではあるが、このブランドはほとんどの面で従来どおり経営されている。Appleが手をつけるはるか以前から、大成功を収めたブランドだった。だから、明らかに壊れているもの以外は直さないことを選んだ。そして、テクノロジーは明らかに両陣営で共有されているが(たとえばPowerbeatsはH1チップを使っている)、Appleは自社ブランドのオーディオ製品(AirPodsなど)とBeats製品群との間に明確な線を引いている。BeatsがAppleのイベントに決して登場せず、翌週大きな発表をするのには理由がある。

画像クレジット:Brian Heater

AirPodsと比べて、Beatsの製品ラインは少々複雑だ。新しいStudio Budsは完全ワイヤレスイヤフォンだが、名前は同社の高級オーバーイヤーヘッドフォンから借りている。しかし新しいBudsはPowerbeats Proより本体もケースも明らかにコンパクトだ。さらに注目すべきこと、そして正直驚いたのが、その価格だ。

150ドル(日本では税込1万7800円)のStudio Budsは、発売から2年経ったPowerbeats Proの実勢オンライン価格である160~200ドル(約1万7600〜2万2000円)よりも少し安い。発売時は250ドル(約2万7500円)だったことを忘れてはいけない。さらに、AirPodsよりも50ドル(約5500円)安く、Galaxy Buds(ギャラクシー・バッズ)よりも20ドル(約2200円)安い。手に入る内容を考えればうれしい価格だ(ただし280ドル[日本では税込3万3000円前後]のソニー WF-1000XM4をレビューしたばかりなので私の基準が少々ずれているかもしれない)。

このソニー製品はもちろん別格だ。多くの人のためには他の中級ヘッドフォンと比較するほうがずっとフェアだろう。その意味で、Studio Budsの性能はかなりよい。最大の新機能はアクティブノイズキャンセリングで、これはPowerbeats Proが発表された時には標準からほど遠かったこと思い出して欲しい。しかし昨今ではこの価格帯でこれがないと大きな欠落に感じてしまう(Googleさん、あなたのことだよ)。

画像クレジット:Brian Heater

もう1つ最初に触れる興味深い機能が、iOSとAndroid双方との高速ペアリングで、Studio Budsはその方面の先駆者となった。これがApple製品から出てきたのがちょっとおもしろいが、Appleはその部分でちょっとした自由を手に入れたのかもしれない。これは小さなことだ。つまるところ、ほとんどの人はiOS / Androidのワンタッチペアリングを1度しか使わないのだから。しかし、製品をできるだけ多くの潜在顧客に利用しやすくすることの利点は数多くある。

関連記事:【レビュー】ソニー新型「WF-1000XM4」は高性能ワイヤレスイヤフォンの新基準、2年待っただけの価値がある

新しい流線型デザインを私は気に入っている。上で述べたように、ケースはPowerbeatsよりずっと小さい。それでありながらStudio Budsの公式バッテリー寿命はイヤフォン単体で8時間、ケースを含めて計24時間だ。これはかなりの持続時間で最近急速に標準となりつつある。ケースの底面にはUSB-Cポート(AppleオンリーのLightningを離れた)があり、5分間の充電で1時間の再生時間を得られる。

画像クレジット:Brian Heater

ケースはAir Pods Proより幅が広く少し厚いが、楽にポケットに入る。少々安っぽいプラスチック感はあるが、マットフィニッシュの感触は悪くない。ブランディングはBeatsでは普通のうるささで、大きな白いボールド体の「b」が黒の背景に置かれている。イヤフォン本体にもロゴがあり、位置によって 「9」にも「6」にも見える。ケースのフタはカチッと閉まり、イヤフォンはマグネットですっきり収まる(ただしPowerbeats同様、正しい向きを見つけるのに少々コツがいる)。

イヤフォンもかなりコンパクトだ。イヤーフックはなくなった。正直これは賛否の分かれるところだ。私はPowerbeats Proのイヤーフックがいいと思わなかったが、イヤフォンのデザインによって耳に痛みを感じる人がいることを考えれば、負荷を耳たぶにかけるイヤーフックは最も心地よい選択肢だろうと感じている。

このStudio Budsはかなり快適で、私は着けたままワークアウトできたが(防水性能はIPX4)、ずれないようにするのに苦労したことも何度かあった。もちろんこれはPowerbeatsにはなかった問題だ。絶対に動いて欲しくないなら、ちょっと押し込んで固定することをおすすめする。

Beatsが復活させてくれたデザインで私の大のお気に入りなのがハードウェアボタンだ。Powerbeatsにもあったが、Studio Budsにもあった。気持ちの良いかすかなクリック感は完全タッチ式ボタンよりも好きだ。シングルクリックで再生 / 一時停止、長押しでアクティブノイズキャンセリングのオン / オフができる。

画像クレジット:Brian Heater

アクティブノイズキャンセリングはもちろんうれしい新機能だ。周囲の雑音に対してよい仕事をするが、ハイエンドシステムと同じ感覚を得ることはできない。音質もここ数年進歩している。Beatsは8.2 mmドライバーとさまざまな工夫によってこの価格帯として十分な音を提供している。「ボーッと座ってクラシカルソナタやエクスペリメンタルジャズのレコードの機微を楽しむ」イヤフォンではないが、「日常生活をしながら音楽やポッドキャストを聴く」には堅実なヘッドホンだ。

このイヤフォンにはよいところがたくさんあり、Powerbeats Proよりずっといい2021年の買い物だ。たとえ先行機種が発売された時ほど革新的ではないとしても。

Beats Studio Budsは本日予約受付開始で、6月24日に出荷予定だ。

【Japan編集部注】Beats Studio Budsの日本での価格は税込1万7800円。今夏発売予定となっており、希望者は通知を受けることができる。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleBeatsイヤフォン

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルがWWDCでひっそり発表した7つのセキュリティ新機能

Apple(アップル)は、米国時間6月7日に行われた世界開発者会議(WWDC)の基調講演で、セキュリティとプライバシーに関する取り組みを大々的に紹介した。それは、デバイス内だけでSiriの音声認識を行えるようになったことから、どのアプリケーションがいつ自分のデータを収集しているのかをこれまで以上に簡単に確認できるiOSのプライバシーレポートまで、多岐にわたる。

2時間(!)にも及んだMemoji(ミー文字)だらけの基調講演では、セキュリティに関する話題が多く取り上げられたが、WWDCの開発者向けセッションでは、セキュリティとプライバシーに焦点を当てたいくつかの新機能がひっそりと紹介された。その中から最も興味深く、そして重要なものをいくつか振り返ってみよう。

iCloud キーチェーンによるパスワード不要ログイン

アップルはパスワードの廃止に向けて最も進んだ取り組みを行っているテック企業の1つだ。「Move beyond passwords」と題した開発者セッションでは、WebAuthnとFace IDやTouch IDを利用したパスワード不要の認証方法となる「Passkeys in iCloud Keychain」のプレビューが公開された。

iOS 15とmacOS Montereyに搭載される予定のこの機能を使えば、ユーザーはアカウントの作成時やウェブ、アプリでパスワードを設定する必要がなくなる。代わりに、ログイン時にはユーザー名を選択し、Face IDまたはTouch IDを使って本人であることを確認するだけだ。Passkeyはキーチェーンに保存され、iCloudを使ってアップル製デバイス間で同期されるので、パスワードを覚えておく必要も、ハードウェア認証キーを持ち歩く必要もない。

アップルの認証体験担当エンジニアであるGarrett Davidson(ギャレット・デビッドソン)氏は「ワンタップでサインインできるため、現在のほとんどすべての一般的な認証手段よりも簡単で速く、しかも安全です」と述べている。

ただし、今すぐにこの機能がiPhoneやMacで利用できるようになるわけではなさそうだ。アップルによると、この機能はまだ開発の「初期段階」であり、現在はデフォルトで無効になっている。しかし、アップルのこの動きは、忘れがちで、複数のサービスで再利用されることが多く、そして結局はフィッシング攻撃を受けることになるパスワードをなくそうという機運の高まりを示している。

Microsoft(マイクロソフト)は以前よりWindows 10をパスワード不要にする計画を発表しており、Google(グーグル)も最近「いつかパスワードをまったく必要としない未来」を目指して取り組んでいることを認めている。

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macOSのマイクロフォンインジケーター

macOSには、マイクがオンになっているかどうかを示す新しいインジケータが加わる(画像クレジット:Apple)

iOS 14の導入以来、iPhoneユーザーは、どのアプリケーションがマイクにアクセスしているかを、ステータスバーの緑またはオレンジのドットで確認できるようになった。この機能がデスクトップでも利用できるようになる。

macOS Montereyでは、どのアプリケーションがMacのマイクにアクセスしているかを、コントロールセンターで確認できるようになると、MacRumorsが報じている。この機能は、カメラが使用されている時にMacのウェブカムの横で点灯するハードウェアベースの緑色のランプを補完するものだ。

セキュアペースト

「メールのプライバシー保護」から「プライバシーレポート」まで、多数のプライバシー保護ツールが搭載されるiOS 15には、クリップボードのデータを他のアプリケーションから保護するための「Secure paste(セキュアペースト)」という機能も新たに搭載される。

この機能では、ユーザーがあるアプリから別のアプリにコンテンツをペーストする際、2つ目のアプリはペーストが完了するまでクリップボード上の情報にアクセスすることができない。アプリがクリップボードのデータを取得すると通知しても、それを防ぐための手段が何もなかったiOS 14と比べると、大幅に改善されている。

アップルは次のように説明している。「『セキュアペースト』では、デベロッパはユーザーがコピーした内容にアクセスすることなしに、ユーザーが別のアプリケーションからデベロッパのアプリケーションにペーストするまで中身を見られないようにできます。デベロッパが『セキュアペースト』を使うと、ユーザーは『セキュアペースト』から通知されることなくペーストできるようになり、ユーザーに安心感を提供することができます」。

些細なことにように聞こえるかもしれないが、この機能は2020年明るみに出た大きなプライバシー問題を受けて導入されることになった。2020年3月、セキュリティ研究者は、TikTok(ティックトック)など数十の人気iOSアプリが、ユーザーの同意なしにユーザーのクリップボードを「盗み見」し、非常にセンシティブなデータにアクセスしている可能性があることを明らかにした。

Apple Cardの「Advanced Fraud Protection(高度な不正防止機能)」

決済詐欺は新型コロナウイルスの影響でこれまで以上に蔓延しており、アップルはこれを何とかしようとしている。9to5Macが最初に報じたように、同社はApple CardのユーザがWalletアプリで新しいカード番号を生成できる機能「Advanced Fraud Protection」のプレビューを公開した。

この機能は、iOS 15の最初の開発者ベータ版には含まれていないため、詳細は不明だが、アップルの説明によると、Advanced Fraud Protectionを使えば、オンラインで買い物する際に、ユーザーが新しいセキュリティコード(チェックアウト時に入力する3桁の数字)を生成できるようになるようだ。

現時点では「Advanced Fraud Protectionにより、Apple Cardのユーザーは、定期的に変更されるセキュリティコードを持つことができ、オンラインでのカード番号の取引をさらに安全なものにすることができます」と、簡単に説明されているだけなので、我々はアップルにさらに詳しい情報を求めているところだ。

SiriでApple Watchのロック解除が可能に

新型コロナウイルスの影響によりマスクを着用する機会が増加したことから、アップルはiOS 14.5で、Apple Watchを使ってiPhoneのロックを解除できる機能を導入した。これによってユーザーはマスクを着用したままでも、Face IDの代わりにApple Watchを使って、iPhoneのロック解除やApple Payの支払い認証が可能になった。

iOS 15ではこの機能の適用範囲が拡大し、Apple WatchからSiriにリクエストして、電話の設定を変更したりメッセージを読み上げたりするのと同じ様に、iPhoneのロック解除ができるようになる。今のところ、ユーザーはiPhoneのロックを解除するためには、PINやパスワードを入力するか、Face IDを使う必要がある。

「マスクなどの障害物でFace IDが顔を認識できない際には、Apple Watchとの安全な接続を使用して、Siriにリクエストしたり、iPhoneのロックを解除することが可能です。Apple Watchはパスコードが設定されていて、ロックが解除されており、手首につけてiPhoneの近くにある必要があります」と、アップルは説明している。

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OSのバージョンアップとは独立したセキュリティアップデート

iOS 15にすぐにアップグレードしたくないiPhoneユーザーにもセキュリティアップデートを確実に提供するため、アップルは機能面のアップデートとセキュリティアップデートを分離させることにした。

2021年後半にiOS 15がリリースされると、ユーザーは最新バージョンのiOSにアップデートするか、iOS 14のままで最新のセキュリティ修正プログラムだけをインストールするかを選択できるようになる。

「iOSは『設定』アプリから、2種類のソフトウェア・アップデートの仕様を選択できるようになります」と、アップルは説明している(MacRumorsより)。「最新バージョンのiOS 15がリリースされたらすぐにアップデートして、最新の機能と最も完全なセキュリティアップデートを利用することができます。また、iOS 14を使い続けても、次のメジャーバージョンにアップグレードする準備ができるまで、重要なセキュリティアップデートを受けることができます」。

これは、以前よりAndroidユーザーに毎月セキュリティパッチを提供してきたGoogle(グーグル)にアップルが倣った形だ。

Macで「すべてのコンテンツと設定を消去」が可能に

これまでMacを初期化するには、macOSがインストールされているデバイスを完全に消去してから、macOSを再インストールしなければならない手間のかかる作業だった。ありがたいことに、それが変わる。アップルは、iPhoneやiPadには長年導入されてきた「すべてのコンテンツと設定を消去する」オプションを、macOS Montereyにも採用する。

このオプションを使えば、ワンクリックでMacを工場出荷状態に戻すことができる。「システム環境設定では、現在インストールされているオペレーティングシステムを維持したまま、すべてのユーザーデータとユーザーがインストールしたアプリケーションをシステムから消去するオプションが提供されます」と、アップルは述べている。「Apple SiliconまたはT2チップを搭載したMacシステムでは、ストレージが常に暗号化されているため、暗号化キーを破壊することでシステムを瞬時にかつ安全に『消去』することが可能です」とのこと。つまり、macOS Montereyでも、この機能が使えるのは「Apple SiliconまたはT2チップを搭載したMac」に限るようだ。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:AppleWWDCWWDC2021プライバシーmacOS 12iOS 15

画像クレジット:Apple / live stream

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジョブズ追放後のアップルが1990年にスピンオフした伝説のベンチャー「General Magic」とは?

ジョブズ追放後のアップルが1990年にスピンオフした伝説のベンチャー「General Magic」とは?スマートフォン誕生の知られざるドラマを描く米国ドキュメンタリー映画『General Magic』日本語字幕版の配信が、11日から各動画配信サービスにて開始されました。7つの米国映画祭で最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞し、シリコンバレーで「最も重要な失敗企業」と呼ばれた伝説的ベンチャーの物語が家にいながらにして観賞できるようになりました。

タイトルのGeneral Magicとは、アップルから1990年にスピンアウトしたベンチャー企業のこと。現代のスマートフォンの原型ともいえるPIC(Personal Intelligent Communicator)を考案し、開発に着手。そこに集まったのがMacintoshプロジェクトの代表的な開発者や後のAndroidの父(アンディ・ルービン)、iPodを手がけたアップルのテクノロジー担当上級副社長(トニー・ファデル)といった、シリコンバレーのスター達でした。

ジョブズ追放後のアップルが1990年にスピンオフした伝説のベンチャー「General Magic」とは?

このPICがどれだけ未来を期待されていたかといえば、アップル以外の米国企業としてはAT&Tやモトローラ、日本企業ではソニー、松下電器産業(現Panasonic)やNTTなども出資・提携していたほど。その成果は「Magic Cap OS」を搭載したソニー製の「Magic Link」などの形で製品化されており、1995年には新規株式さえ公開されました。

ジョブズ追放後のアップルが1990年にスピンオフした伝説のベンチャー「General Magic」とは?

しかし製品が高額すぎたことや、インターネットに接続できなかったこと(ちょうど90年代半ばに一般ユーザーもアクセス可能になっていた)動作が重くソフトウェアも不安定だったことが重なって販売台数は伸び悩み、株価も下落。最終的には2002年に破産し解散にいたっています。

そんなGeneral Magicの設立から17年後にiPhoneとAndroidが発表され(Androidは新規プラットフォームの概要のみ、搭載製品の発売は翌年)、どちらにも元General Magicメンバーらが重要な役割を果たしています。現代のスマートフォンは、かつての若者達が夢を追い続けた結果だったというわけです。

ジョブズ追放後のアップルが1990年にスピンオフした伝説のベンチャー「General Magic」とは?

映画『GENERAL MAGIC』は、そんな才能あるエンジニア達がスマートフォンの先駆けとなるPICの開発を進めながらも、やがて解散へ追い込まれていく過程を描いたもの。後にiPodやiPhone、AndroidやeBayを生み出した各メンバー達へのインタビューと、若きスティーブ・ジョブズも登場する当時の貴重な映像を交え、“壮大な失敗“が最終的に世界をどのように変えたのか、現代社会に求められるイノベーション(技術革新)を掘り下げた内容となっています。

さすがに90年代半ばの技術力ではPDAサイズに全ての処理能力を詰め込むのは不可能だったため、端末とサーバーのやり取りによりアプリケーションを実行する……という発想は、まさに今でいうクラウドの先取り。あまりに早すぎたゆえに志半ばに終わり、後に技術力が追いついてから開花した「最も重要な失敗」を追体験することで、考えを深めたいところです。

上映時間は90分。配信プラットフォームは以下の通りです。

AppleTV(iTunes store)/Amazon PrimeVideo/FOD/GYAO! ストア/Google Play/Youtube/クランクイン!ビデオ/J:COMオンデマンド/TSUTAYA TV/DMM.com/dTV/TELASA/ひかりTV/ビデオマーケット/music.jp/U-NEXT


Copyright(c) 2019 Spellbound Productions II LLC All rights reserved.

(Source:PR TIMESEngadget日本版より転載)

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元Adobe CTOでクラウドの導師ケビン・リンチが、Appleの技術担当VPに

カテゴリー:その他
タグ:iPhone(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Andy Rubin / アンディ・ルービン(人物)Andy Hertzfeld / アンディー・ハーツフェルド(人物)Android(製品・サービス)Kevin Lynch / ケビン・リンチ(人物)General Magic(企業)John Sculley / ジョン・スカリー(人物)Steve Jobs / スティーブ・ジョブズ(人物)Tony Fadell / トニー・ファデル(人物)Bill Atkinson / ビル・アトキンソン(人物)Megan Smith / ミーガン・スミス(人物)PDA / パーソナル・デジタル・アシスタント(用語)日本(国・地域)

オフィス再開に向けて大手テック企業はそれぞれ柔軟なワークモデルを検討中

先週、Apple(アップル)は、2021年9月以降社員を週3日のペースでクパチーノのキャンパスに出勤させる予定だと発表した。自宅で仕事をするという柔軟性に慣れてしまった社員の中には、それに反対する者もいた。

パンデミック以前には、一部の例外を除き、ほとんどの社員が毎日オフィスに出勤していた。しかし、2020年3月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し、従業員が在宅勤務を余儀なくされると、企業はすぐに同じ建物の中に座っていなくても、スタッフの高生産性は維持できることに気がついた。今やこの流れを押し戻すことは難しいように思える。

個々の企業にとって完全なリモート勤務と、個別に定義するハイブリッド(たとえばAppleのように、オフィスにいる日もあれば自宅にいる日もある)勤務とのバランスを取るのは決して簡単ではなく、一律の答えは存在しない。実際、今後は流動的になっていくのかもしれない。

そこで、各社のアプローチの違いを知るために、Apple以外の大手テクノロジー企業5社に、オフィス再開についてどのように考えているか聞いてみたところ、各社とも何らかのハイブリッドワークを採用しようとしていることがわかった。

  • Google(グーグル)はAppleと同じように、オフィスで3日、家で2日というアプローチをとっている。「私たちは、ほとんどのGoogler(グーグラー、グーグル従業員)が約3日をオフィスで過ごし、2日を自分の好きな場所で過ごすハイブリッドなワークウィーク体制に移行します。オフィスに来ている時間はコラボレーションに集中するため、製品分野や機能によって、チームがオフィスに集まる日を決めることができます。もちろん仕事の性質上、週に3日以上現場にいなければならない役割もあるでしょう」と、GoogleとAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)は、最近のブログ記事の中で書いている。
  • Salesforce(セールスフォース)は、社員の役割に応じて幅広い選択肢を用意している。ほとんどの社員は、ほとんどの時間を自宅で仕事をし、週に1~3日、同僚との共同作業や顧客とのミーティング、プレゼンテーションのためにオフィスに出社することができる。また、オフィスの近くに住んでいない人はフルリモートで、自ら選択した人や仕事でオフィスにいる必要がある人は週に4~5日出社することもある。
  • Facebook(フェイスブック)はリモートワークを拡大しており「6月15日より、Facebookは会社全体のすべてのレベルにリモートワークを開放し、リモートでできる役割の人は誰でもリモートワークを申請できます」と従業員に書面で伝えている。
  • Microsoft(マイクロソフト)はこの件をマネージャーに任せているが、ほとんどの役割は少なくとも部分的にはリモートで行うことになるだろう。最近のアナウンスでは従業員に対して「私たちは、現場にいることが必要な従業員もいれば、職場から離れた場所で働くのに適した役割やビジネスもあることを認識しています。しかし、ほとんどの職種では、マネージャーとチームがうまく機能していることを前提に、一部(50%未満)の時間の在宅勤務を、現在の標準だと考えています」と伝えている。
  • Amazon(アマゾン)は当初、ほとんどオフィス内での勤務という方針を検討していたが、今週従業員にもっと柔軟なワークスケジュールを提供することに決定したことを発表した。「当社の新しい基準は、週3日のオフィス勤務(具体的な勤務日はリーダーチームが決定)とし、週2日まではリモートで勤務できる柔軟性を残します」と、同社は従業員へのメッセージで述べている。

大手のテック企業は、ほとんどの社員が出社時間をある程度自由に決められるようになっているが、ポストパンデミックに向けてスタートアップ企業はどのように仕事を捉えているのだろうか。私が話を聞いたスタートアップ企業の多くが、オフィス中心のアプローチを想定しておらず、リモートファーストのアプローチをとっている。Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が最近、ポートフォリオのスタートアップ企業226社を調査したところ、ポートフォリオ内の企業の3分の2が、大企業と同様のハイブリッドなアプローチを検討していることがわかった。実際に、87社が週に1〜2日程度の出勤を考えており、また64社はオフィスをまったく持たず、集まりは社外で行うだけだった。一方「自宅での仕事は一切行わせない」と答えたのはわずか18社だった。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストで、長年にわたり分散型勤務を研究してきたDion Hinchcliffe(ディオン・ヒンチクリフ)氏は、テック企業はパンデミックの最中にその効果を確認できたことで、柔軟なワークモデルを採用する可能性が高まっていると述べている。

そして「多くのハイテク企業は、オフィスを再開するに当たりある程度の柔軟性を維持するでしょう。これは特に多くの従業員からの評判が良いからです。また、心配されていた生産性の低下も、ほとんど杞憂に終わったのです」と語る。しかし、彼はそれがすべての企業に当てはまるわけではないことも強調した。

「ある種の企業、特に保護すべき知的財産をたくさん持っていると考える企業や、その他の機密性の高い仕事をしている企業は、自宅で仕事を続けることには消極的になるでしょう」と続ける。しかし、そうした企業の多くは、この15カ月間、そのような活動を続けてきたのだ。Appleのようにハイブリッド化することは、その議論をさらに混乱させるだけだろう。

「その中にはもちろん、以前から在宅勤務を推奨していないことで有名なAppleも含まれています。週に3日はオフィスに出勤するという新しい方針は、彼らに少しは安心感を与えるでしょうが、実際には本当に安心することはできません」とヒンチクリフ氏はいう。

もちろん、企業はポリシーを設定することができるが、従業員からの反対がないとは限らない。Appleは今回それを確実に学んだ。労働者たちは、雇用主に指定された場所ではなく、自分で働く場所を選びたいと考えているようだ。特に、労働市場が逼迫しており、力が従業員側にシフトしているような状況では、在宅勤務のオプションを提供することが、競争上の優位性となる可能性がある。

これがどのように進んで行くのか、また従業員がどれだけ企業に対してより柔軟な働き方の実現を促す力を持っているのかを観察することは、興味深い。今のところ、ほとんどの企業はパンデミック以前に比べてはるかに大きな柔軟性を持っているものの、すべての企業がいつまでも従業員に完全に自宅で仕事をして欲しいとは思っているわけではないだろう。また企業は自社と従業員にとって何が最適かを判断していく必要がある。

関連記事:リモートワークは「自宅監禁」から柔軟性のある「どこでも勤務」に変わっていくべき

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:AppleGoogleFacebookSalesforceAmazonリモートワーク

画像クレジット:Susumu Yoshioka / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

Appleが買収したDark SkyのiOSアプリとウェブサイトが2022年末で終了へ

Apple(アップル)が2020年3月にDark Sky(ダークスカイ)を買収した後、かなりきめ細かな天気情報を提供するDark Skyアプリがおそらくなくなるだろうということは分かっていた。しかし同年7月にAndroid版が終了すると発表した一方で、iOS版の方ではなくすべき制限がいくらか残っていた。「今回」はiOS版は「ノーチャージ」になる、とDark Skyは述べた。

それから1年、Dark Skyのブログがわずかに更新され(9to5macが気づいた)、Dark Sky iOSアプリ、API、ウェブサイトの提供期限が案内された。共同創業者のAdam Grossman(アダム・グロスマン)氏は以下のように書いた。

既存顧客向けのDark Sky APIサービスのサポートは2022年末まで展開されます。iOSアプリとDark Skyウェブサイトも2022年末まで利用できます。

ここに解釈の余地が残されていることは指摘するに値するだろう。2022年末にシャットダウンするとは明言されておらず、ただ2022年末まで展開することを約束している。おそらくそれ以降の運命は流動的ということなのだろう。TechCrunchはこの点についてAppleに説明を求めていて、返事があるまでは今回の告知をシャットダウンが控えていることのヘッドアップとしてとらえる。

実際には今回の告知は逆にAPIとDark Skyウェブサイトのエクステンションだ。以前、ウェブサイトは2020年8月にシャットダウンされる予定だった。一方、APIは2021年末のシャットダウンが予定されていた。

今回のニュースの数日前に、AppleはiOSにビルトインされている天気アプリのオーバーホールをWWDCで発表していた。

[原文へ]

(文:Greg Kumparak、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルが2021年「アップル・デザイン・アワード」を発表

Apple(アップル)は2021年のApple Design Award(デザイン・アワード)優勝者を、バーチャル開催のWordwide Developers Conference(WWDC)の期間中に発表した。例年は会の終了時に行われていた。カンファレンスの前にAppleは、ファイナリストのプレビューを公開し、技術、デザイン、創意工夫を組み合わせたアプリやゲームの成果を紹介した。そして6月10日の夜に6つのアワード部門の勝者を発表した。

Appleは、各部門でアプリとゲームを1つずつ、勝者に選んだ。

Inclusive(インクルーシブ、包摂)部門の賞は、多様な生い立ち、能力、言語の人たちを支えた作品に贈られた。

2021年の優勝者は、米国企業、Aconite(アコナイト)の非常にわかりやすいゲーム、HoloVista(ホロビスタ)が選ばれた。ユーザーはモーション・コントロール、テキスト・サイズ、テキストのコントラスト、サウンド、視覚効果の強度を調整することができる。ゲームはユーザーがiPhoneのカメラを使って隠された対象を探したり、パズルを解いたりして進んでいく(TechCrunchの紹介記事)。

画像クレジット:Aconite

もう1つの勝者、Voice Dream Reader(ボイス・ドリーム・リーダー)は20以上の言語に対応したテキスト読み上げアプリで、適応調整と高度なカスタマイズ設定が可能だ。

画像クレジット:Voice Dream LLC

Delight and Fun(楽しさとおもしろさ)部門の勝者は、Appleテクノロジーによって強化された記憶に残る魅力ある体験を与えた者に贈られる。ベルギー発のPok Pok Playroom(ポク・ポク・プレイルーム)はSnowman(スノーマン、Altoのアドベンチャー・シリーズ)からスピンアウトした子ども向けエンターテインメント・アプリで、よく考えられたデザインと微細な触覚効果、サウンドエフェクト、相互作用を使用している(TechCrunchの紹介記事)。

画像クレジット:Pok Pok

もう1人の勝者、英国のLittle Orpheus(リトル・オルファウス)はストーリーテリングとサプライズと楽しみを組み合わせたゲームコンソール的体験を提供するカジュアルゲームだ。

画像クレジット: The Chinese Room

Interaction(相互作用)部門の勝者に輝いたのは、直感的なインターフェースと簡単なコントロールを提供するアプリだとAppleはいう。

米国拠点のいやみったらしいお天気アプリ、 CARROT Weather(キャロット・ウェザー)は、ユーモラスな予報、ユニークなビジュアルと楽しませる体験で賞を勝ち取った。Apple Watch(アップル・ウォッチ)の文字盤とウィジェットも提供されている。

画像クレジット:Brian Mueller, Grailr LLC

カナダ発のゲーム、Bird Alone(バード・アローン)は、ジェスチャーと触覚と視差にダイナミックなサウンドエフェクトを巧みに組み合わせ独自の世界に命を吹き込む。

画像クレジット:George Batchelor

Social Impact(社会的影響)部門では、デンマークのBe My Eyes(ビー・マイ・アイズ)が選ばれた。視覚障害者や弱視の人たちに、世界中の有志がカメラを使ってものを識別させる。現在30万人以上のユーザーが450万人以上の有志に支えられている(TechCrunchの紹介記事)。

画像クレジット:S/I Be My Eyes

英国のustwo games(アストゥー・ゲームズ)がAlba(アルバ)でこのカテゴリーの勝利を得た。環境の大切さを教えるゲームで、プレイヤーは野生生物を保護し、橋を修理し、ゴミをかたづけていく。ゲームがダウンロードされるごとに植樹も行っている。

画像クレジット:ustwo games

Visuals and Graphics(ビジュアル・グラフィクス)部門の勝者は「驚くような画像、巧みに描かれたインターフェースと高度なアニメーション」を特徴としている、とAppleは言っている。

ベラルーシ拠点のLoóna(ルーナ)は眠りの世界を提供する。リラックス運動とアトモスフェリック・サウンドにストーリーテリングを組み合わせることでユーザーが眠りにつくのを手伝う。このアプリは2020年末Googleの2020年「ベスト・アプリ」に選ばれた

関連記事:米Google Playが選んだ2020年ベストアプリは睡眠改善のLoóna、コロナ時代を反映

画像クレジット:Loóna Inc

中国のGenshin Impact(ゲンシン・インパクト)は、モーションブラー、シャドウ・クォリティー、フレームレートをプレイ中に再構成できるゲーミングのビジュアル限界を押し広げたことで勝者に選ばれた。

画像クレジット:miHoYo Limited

Innovation(イノベーション)部門の勝者はインドのNaadSadhana(ナードサダナ)、アーティストの演奏と公開を支援するスタジオ品質の音楽アプリだ。AIとCore MLを使用して音程の正確さのフィードバックを返し、マッチした伴奏を生成する。

画像クレジット:Sandeep Ranade

Riot Games(ライオット・ゲームズ)のLeague of Legends:Wild Rift(リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト)は、複雑なパソコンゲームの名作を元に、タッチスクリーン・コントロール、初心者のための自動ターゲティング・システムやモバイル独自のカメラセッティングなどを加えた完全モバイル体験を提供して賞を勝ち取った。

画像クレジット:Riot Games

2021年の勝者たちはハードウェアとアワードそのものの入ったプライズ・パッケージを受け取る。

勝者を特集したビデオはApple Developerウェブサイトのここにある。

「2021年のApple Design Awardの優勝者たちは、私たちが優れたアプリ体験に期待するものを再定義しました。彼らの正当に評価された勝利に祝福を贈ります」とAppleのWorldwide Developer Relations担当副社長、Susan Prescott(スーザン・プレスコット)氏が声明で述べた。「デベロッパーたちの仕事はアプリとゲーム・プレイが私たちの日常生活に不可欠な役割を具体化するとともに、新たな6つのアワード部門の模範例となりました」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDCWWDC2021アプリ

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

「アップルカー」実現に向け前進、BMW i3やi8の開発を指揮した新興EV企業Canoo元CEOがアップルに

Apple(アップル)は「Apple Car(アップルカー)」の呼称で噂されている自動車プロジェクトの開発を促進させるため、電気自動車会社Canoo(カヌー)の共同創業者で元CEOだったUlrich Kranz(ウルリッヒ・クランツ)氏を雇用したと、Bloombergが無名の情報源を引用して最初に報じた。TechCrunchがアップルに確認したところ、同社はクランツ氏の雇用を認めたが、職務内容や肩書きなどの詳細は明らかにしていない。

Canooが上場と新たなリーダーシップチームの結成に向けて舵を切った後、2021年4月にクランツ氏は同社の役職を辞任。それから数週間のうちにクランツ氏はアップルに引き抜かれたと報じられていた。今回のニュースが伝えられる数カ月前には、アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOが、謎に包まれたApple Carに、自動運転技術が主要機能として搭載されることを示唆している。自動車業界の最先端で数十年の経験を持つ幹部を雇用したことは、アップルが自動車の製造計画を進めていることを明確に示すものだ。

関連記事:ティム・クック氏が自動運転技術とApple Carについてヒントを出す

クランツ氏は、BMW AGの電気自動車部門で上級副社長を務めていた時に、スポーティな電気自動車「i3」と「i8」の開発を監督した。この経歴は、将来のApple Carにおける潜在的な美学について、我々にヒントを与えてくれるかもしれない。匿名の情報筋によれば、クランツ氏は、現在Apple Carプロジェクトの責任者を務めるDoug Field(ダグ・フィールド)氏の直属になるという。フィールド氏は、かつてTesla(テスラ)で「Model 3(モデル3)」の開発を指揮した人物だ。

アップルは依然として、その自動車の計画について口を閉ざしている。Reuters(ロイター)が12月に発表した記事によると、アップルは2024年までに「画期的なバッテリー技術」と「自動運転技術」を備えた電気自動車を生産する意向だという。それ以外には、どのようなクルマになるのか、どこが製造するのか、といったことは誰にもわからない。しかし、アップルがハードウェアとソフトウェアの両方を開発するだろうということは想像に難くない。

関連記事:「アップルカー」の噂が再燃、2024年発売を示す新たな報道

カテゴリー:モビリティ
タグ:AppleApple Car電気自動車自動運転

画像クレジット:Canoo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルの最新アクセシビリティ機能は手足や声が不自由な人へさらに寄り添う

Apple(アップル)はWWDC 2021で、さまざまなニーズに対応するアクセシビリティ機能を発表した。その中には、通常の方法でデバイスに触れたり話したりすることができない人々のための機能も含まれている。Assistive TouchやSound Controlなどの改良により、これらの人々はiPhoneやApple Watchと対話するための新たな選択肢を得る。

Assistive Touchは発表時にも取り上げたが、先日、その詳細が明らかになった。この機能は、Apple Watchを持っている人が、さまざまなジェスチャーを使って片手で操作できるようにするものだ。腕が欠損している人や腕を思いどおりに使えないといった四肢に障がいを持つ人々のコミュニティからの、Apple Watchを気に入っているが、鼻で電話に出るのにはうんざりだという声を同社が耳にしたことから生まれた。

関連記事:Apple Watchに検知した手の動きで操作する「AssistiveTouch」機能が追加

研究チームは、他の指と親指をくっつけたり、手を握りしめたりするジェスチャーをApple Watchが正確に人気する方法を開発した。これらのジェスチャーとそのダブルバージョンは、さまざまなクイックアクションを設定することができる。その中には、ユーザーの手首の動きを模した小さなドットである「モーションカーソル」を開くものもある。

手の不自由な人が多いことを考えると、音声操作に頼らずにジェスチャーでメッセージや通話、健康管理といった基本的な操作を行えるため、とても便利だ。

とはいえ、声も誰もが自由に使えるものではない。しかし、流暢に話すことができない人でも、基本的な音をたくさん出すことができるため、それらに意味を持たせてもいい(Siriには無理だけど)。「Sound Control」という新しいアクセシビリティオプションを使えば、これらの音を音声コマンドとして使うことができる。オーディオでもボイスからではなく、Switch Control(スイッチコントロール)からアクセスして、オーディオスイッチを追加する。

画像クレジット:Apple

セットアップメニューでは「click(カチッ)」「cluck(コツッ)」「e(イ)」「eh(エッ)」「k(クッ)」「la(ラァ)」「muh(ムフ)」「oo(ウ)」「pop(ポン)」「sh(シー)」などさまざまな音を選ぶことができる。音を選択すると、システムがその音を正しく理解していることを確認するための簡単なトレーニングプロセスが表示され、その後、アプリの起動、よく使われる質問、他のツールの呼び出しなど、さまざまなアクションを設定することができる。

Apple製品をスイッチシステムで操作したいという方に、同社は大きなサプライズを用意していた。かつてはゲームにしか使えなかったゲームコントローラーが、一般的な用途にも使えるようになる。Xbox Adaptive Controllerは、ボタンやスイッチなどのアクセサリーのハブとグループで、コンソールゲームのアクセシビリティを改善する。この強力なツールは多くの人に利用されており「Fortnite(フォートナイト)」を終えてポッドキャストを聞きたいときに、操作方法を完全に切り替える必要がないことに感謝するに違いない。

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iOSの機能の中で、アクセシビリティの観点からもう1つ興味深いのが「Walking Steadiness(歩行時の安定性)」だ。この機能は、iPhoneを持っている人なら誰でも利用でき、ユーザーの歩行の安定性を追跡します(ご想像のとおり)。この指標は、1日または1週間を通して追跡することで、人の運動能力がいつどのように向上するのかを実際に把握できる可能性がある。この指標は、Apple Heart and Movement研究で収集された、実際の転倒やそれにつながる不安定な動きなどのデータに基づいている。

最近、義足を装着した人、足の手術をした人、めまいに悩まされている人などは、いつ、どのような場合に転倒の危険性があるのかを知ることは非常に重要だ。本人は自覚していないかもしれないが、夕方以降や階段を上った後、長時間並んだ後などは、動きが安定しない。また、義肢に慣れたり、慢性的な痛みが軽減したりすることで、着実に改善していくこともある。

このデータを実際の理学療法士や医師がどのように利用するかは未知数だが、重要なのは、ユーザー自身が容易に追跡し、理解できることだ。

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さらにAppleのその他の支援機能として、音声コントロールの新しい言語、ヘッドフォンの音響収容力の向上、双方向補聴器のサポート、そしてもちろん、人工内耳や酸素チューブのメモへの追加がある。同社の担当者がいうように、機能面だけの違いではなく、パーソナライゼーションや楽しさの面でも違いを受け入れたいと考えているようだ。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

iOSアプリ内でそれぞれのサブスクの管理や返金が可能に、アップルがStoreKit 2を発表

iOSアプリの中でサブスクリプションを購入し、後でキャンセルしたりアップグレード、ダウングレードあるいは払い戻しをしたいと思ったことのある人なら、そのための変更や申請のやり方がわからなくて苦労したことだろう。中にはアプリをiPhoneから削除するだけでサブスクリプション料金を取られなくなると信じている人もいる。iPhoneの設定アプリやApp Storeを探し回って返金方法を見つけようとする人もいる。Apple(アップル)が今週のWWDC 2021で発表したStoreKit 2は、そんなユーザーの苦労を少し和らげてくれるかもしれない。

StoreKitはAppleのアプリ内購入を管理するためのデベロッパーフレームワークだ。ここ数年複雑さをましている分野だ。なぜなら、多くのアプリが1回の買い切りからサブスクリプション方式に切り替ええ、さまざまなコースや期間や機能の選択肢を提供しているからだ。

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現在、サブスクリプションを管理または解約したい人は、App StoreかiPhoneの設定から行うことができる。しかし、設定アプリからそこへ至るためにはApple ID(画面トップの自分の名前とプロフィール写真がある部分)をタップする必要があることに気づかない人もいる。設定アプリやApp Storeの使い方に慣れていないために挫折することもあるだろう。

ちなみに「アプリ内サブスクリプション」の返金を要求するにはさまざまな方法がある。たとえばメールの受信箱からAppleの領収書を探し出して、「Report a Problem (問題を報告)」リンクをタップすれば、問題があったときに返金を要求することができる。これは、サブスクリプションを間違えて(あるいは子どもが!)購入してしまったときや、約束されていた機能が目的どおりに働かなかったときなどに有用だ。

Appleは、専用ウェブサイト提供していて、そこではアプリやコンテンツの返金を直接要求することができる(「Apple 返金手続き」などのワードで検索すると、たいてい検索結果のトップにこのページが出てくる)。

しかし、多くのユーザーは技術に長けていない。そんな人たちにとって、サブスクリプションを管理したり返金手続きをする最も簡単な方法は、おそらくそのアプリ内で行うことだ。このため、多くの良心的アプリ開発者は、ユーザーをAppleのサブスクリプション管理や返金のページに誘導するリンクをアプリ内に設けている。

StoreKit 2は、デベロッパーがその種の仕組みをさらに簡単に実装するための新しいツールを導入した。

新しいツールの1つがManage Subscription API(サブスクリプション管理API)で、デベロッパーはユーザーをApp Storeにリダイレクトすることなく、アプリ内で直接サブスクリプション管理ページを表示することができる。またデベロッパーはオプションとして、ユーザーに「Save Offer(割引特典)」画面を表示して、解約を思い止まらせるための割引などを提案したり、サブスクリプションを中止する理由を尋ねる出口アンケートを行うこともできる。

新機能が実装されると、ユーザーはApp Storeでサブスクリプションの解約や変更を行う時とまったく同じ画面をアプリの中で見ることができる。解約後には、解約の詳細とサービスが使えなくなる日付の書かれた確認画面が表示される。

ユーザーが返金を要求したいときは、新しいRefund Request API(返金手続きAPI)を使えば、ここでもApp Storeや他のウェブサイトにリダイレクトされることなく、アプリ内で直接返金手続きを開始できる。ユーザーは表示された画面で、返金して欲しい項目を選択し、返金を求める理由にチェックを入れる。返金手続きはAppleが処理し、返金を承認または却下した通知がデベロッパーのサーバーに送られる。

しかし、中にはこの変更でもまだ十分ではないというデベロッパーもいる。彼らは顧客のサブスクリプション管理や返金の手続きを、プログラムによる方法を使って自分自身で行いたいのだ。ちなみに、現在ユーザーが返金申請の結果を受け取るまでには最大48時間かかるとAppleは言っているので、混乱を招く可能性もある。

「Appleは手続きを多少スムーズにしましたが、デベロッパーは未だに返金や解約を自身で主導することができません」とRevenueCat(レベニューキャット)のCEO Jacob Eiting(ジェイコブ・イーティング)氏は指摘する。この会社はアプリ開発者がアプリ内購入を管理するためのツールを提供している。「これは正しい方向への一歩ですが、誰が返金の責任を持つかに関して、デベロッパーと消費者の間の混乱を大きくする恐れがあります」。

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つまり、アプリの中で申請がやりやすくなったことで、ユーザーは返金手続きをデベロッパーが行っていると信じる可能性がある。実際には今と同じくAppleが行っているのに。

新しいプロセスが対応していないシナリオもあると指摘するデベロッパーもいる。例えばユーザーがアプリをすでにアンインストールしていたり当該デバイスをすでに所有していない場合には、従来と同じく他の方法で返金を申請しなくてはならないことだ。

しかし消費者にとっては、この種のサブスクリプション管理ツールができることは、今以上に多くのデベロッパーが、サブスクリプション管理や返金申請のボタンをアプリ内に置くようになり、体験が向上することを意味している。ユーザーがアプリを使うこともサブスクリプションを管理することも簡単にできるようになれば、デベロッパーは顧客維持や利用度の向上が見込め、App Storeのレビュー評価も高くなる、とAppleは述べている。

StoreKit 2の変更は、サブスクリプションと返金を管理するためのAPIに限定されていない。

デベロッパーは、新たにInvoice Lookup APIも利用できるようになり、ユーザーのアプリ内購入を調べて請求書を確認したり購入に関する問題を特定したりすることができる。例えばApp Storeですでに返金処理が行われているかどうかを知ることができる。

新しいRefunded Purchases API(返金済み購入API)を使うと、デベロッパーが特定ユーザーによる返金をすべて見ることができる。

新しいRenewal Extension API(更新延長API)は、使用不可期間が生じた場合に、デベロッパーが有効な有料サブスクリプションの更新時期を延期することができる。たとえばストリーミングサービスがダウンした場合などのカスタマーサポート問題に対応するためだ。このAPIを使うとデベロッパーは、年間2回まで、それぞれ最長90日間サブスクリプションを延長することができる。

そして、新しいConsumption API(コンテンツ消費API)では、デベロッパーがユーザーのアプリ内購入に関する情報をApp Storeと共有できる。これはApp Storeでの返金承認手続きの際に役立つ情報だ。ほとんどの場合、ユーザーは購入直後からコンテンツを使用し始める。しかしこのAPIを使うことで、App Storeはユーザーがアプリ内購入したものを一部あるいは全部使ったのか、あるいはまったく使っていないのかを知ることができる。

他には、ユーザーがアプリを再インストールしたり別のデバイスでダウンロードしたときに役立つ変更がある。これまでユーザーは、新たにダウンロードしたり再インストールしたアプリに、完了した支払い状態を「購入の復旧」によって手動で同期する必要があった。これからはその情報はStoreKit 2が自動的に取得するので、アプリはユーザーの支払状況を直ちに更新できる。

全体としてはStoreKitフレームワークにとって大きな意味のあるアップデートだが、デベロッパーが自身のサブスクリプション顧客に対するコントロールを拡大することに対するAppleのためらいぶりは、この会社がどれほどアプリ内購入を支配したがっているかをものがたっている。おそらくそれは、過去にデベロッパーによる返金管理を許そうとして痛い目にあったためだろう。

2021年5月、Epic Games(エピック・ゲームズ)対Appleの反トラスト裁判に関連してThe Vergeが報じたところによると、AppleはかつてHulu(フールー)にサブスクリプションAPIを提供したところ、Huluが高額のサブスクリプション・プランにアップグレードしようとしたユーザーに対して、App Storeを通じて自動的にサブスクリプションを解約する方法(訳注:Appleの手数料を回避するため)を知らせていたことを知った。AppleはこうしたAPIの誤使用を防ぐために行動を起こす必要があることを認識し、Huluは後にAPIへのアクセスを失った。それは、当該APIが広く利用可能になる前のできごとだった。

その反面、サブスクリプション管理と返金を、デベロッパーではなく、Appleに任せることは、Appleが詐欺行為防止に関連する責任をもつことを意味している。詐欺行為はユーザー、デベロッパー両方によるものがあり得る。また、ユーザーにはサブスクリプション請求を1カ所、すなわちAppleで管理したい、という要望もある。デベロッパーとの個別のやりとりは、一貫性のない体験になりがちでユーザーにとってありがたくない。

一連の変更が重要なのは、サブスクリプション収入がAppleの裕福なApp Storeビジネスに多大な貢献をしているからだ。WWDC 21の前にAppleは、2020年のApp Storeでのデジタル製品とサービスの売上が前年比40%増の860億ドル(約9兆4080億円)に伸びたことを報告した。2021年1月Appleは、App Storeが2008年に開始して以来、2000億ドル(約21兆8800億円)以上をデベロッパーに支払ったてきたことを発表した。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

iOS 15でSpotlightが大幅強化、アプリのインストールも可能に

Apple(アップル)はモバイルデバイス向けオペレーティングシステム「iOS 15」のリリースを控え、標準検索エンジンのSpotlight(スポットライト)を大幅に機能強化する。これは「Siriからの提案」の導入以来最大のアップデートになるかもしれない。新バージョンのSpotlightは、いくつか重要な検索場面でGoogle(グーグル)に取って代わる可能性がある。ウェブ画像、俳優、ミュージシャン、TV番組、映画などに関する情報などだ。さらに、ユーザーのフォトライブラリを探したり、連絡先の詳しい情報を知らせたり、アプリやそこに含まれる情報とより直接的に繋がれるようになる。App Storeのアプリを、Spotlightの外に出ることなくインストールすることも可能だ。

また、Spotlightはかつてないほどアクセスしやすくなった。

数年前のiOS 7で、Spotlightはホーム画面の左側の位置を離れ、どの画面を下にスワイプしても利用できるようになり、多くのユーザーが利用するきっかけになった。iOS 15ではiPhoneのロック画面からでも同じ下向きスワイプで利用できるようになる。

Appleは先日のWWDCの基調講演で、Spotlightの改善点をいくつか披露した。たとえば検索機能の新しいカードから俳優、映画、テレビ番組、ミュージシャンの情報を調べることができる。この変更だけでも、ウェブ検索のかなりの部分をGoogleやIMDbなどの専用アプリから奪える可能性がある。

この数年Googleは、Knowledge Graph(ナレッジグラフ)を通じてよくある検索結果をクイックアクセスできるようにしている。ナレッジグラフは、さまざまなソースから情報を集めた知識ベースで、それを使って標準の検索結果の上や横の情報パネルを表示することができる。俳優、ミュージシャン、番組、および映画のパネルも用意されている。

しかし、今iPhoneユーザーは、この情報をホーム画面上で見ることしかできない。

新しいカードには、Wikipediaの経歴や背景情報で見られる以上のものが入っている。対象のアーティストや俳優、映画、番組などのコンテンツを聴いたり見たりするためのリンクも掲載されている。ニュース記事、ソーシャルメディアのリンク、公式ウェブサイト、さらには探している人物や話題がユーザー自身のアプリにあるかどうか指示することもできる(例えば「Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)」を検索すると、SeatGeek(シートギーク)や彼女がゲストだった回のポッドキャストに誘導されることもある)。

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ウェブ画像検索でも、Spotlightは人物、場所、動物などをウェブで探し、ここでもGoogleが提供している検索分野に侵食している。

OS 15のスクリーンショット

iOS 15では、検索結果がリッチになってカスタマイズ検索もアップグレードされる。

連絡先を検索すると、名前と連絡方法を表示する以上のことを行うカードが出てくる。さらに、相手の現在の状態(これもiOS 15の新機能による)や、Find My(探す)から得た位置情報、メーセージの最近の会話、シェアした写真やカレンダーの予定、メール、メモ、ファイルなども見ることができる。

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パーソナル写真検索も改善された。SpotlightはSiriの知識を使って、自分の写真の中から人物、景色、物体などを検索できるようになる。そしてiOS 15の新しいLive Text機能を使って、写真の中にあるテキストを検索して、関連する結果を求めることができる。

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レシピのスクリーンショットや買い物のレシート、手書きのメモからでもテキストを簡単に取り出せるようになるかもしれない、とAppleはいう。

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Spotlightのアプリへの統合に関連するいくつか機能については、基調講演で言及はなかった。

Spotlightは、検索結果のマップにアクションボタンを表示して、店舗がユーザーを自社アプリに誘導することもできるようになる。これでは新機能が、サードパーティ製アプリをダウンロードやインストールすることなくすぐに作業できるApp Clips(アプリ・クリップ)を活用している。例えばSpotlightの中でレストランのメニューを開いたり、チケットを買ったり、予約を撮ったり、テイクアウトを注文したり、ウェイティングリストに加わったり、駐車料金を払ったり、価格を調べるなどさまざまなことができるようになる。

この仕組みが働くためには、企業や店舗がApp Clipsに対応する必要がある。

iOS 15のスクリーンショット

もう1つ、目立たないけれども重要な変更が、SpotlightからApp Storeのアプリを直接インストールできる機能だ。

これはアプリのインストール増加につながる可能性がある。検索してダウンロードする手順が省略される他、App Storeの検索をオペレーティングシステム全体でアクセスしやすくなるからだ。

またデベロッパーは、自分のアプリに数行書き加えるだけで、アプリ内のデータをSpotlightで発見可能にすることができるようになる。これはSpotlightがアプリ内コンテンツを検索するツールとして使えることを意味している。これもまた、ユーザーを従来のウェブ検索から転換させるAppleのやり方だ。

しかし、ウェブをクロールしてデータをインデックスしているGoogleの検索エンジンと異なり、Spotlightのアプリ内検索が働くためには、まずデベロッパーが採用する必要がある。

いずれにせよ、AppleがSpotlightをウェブ検索エンジン(Googleを含む)の潜在的ライバルと考えていることは明白だ。

「Spotlightは、あなたの『すべての』検索をスタートする共通の場所です」とAppleのソフトウェアエンジニアリング担当副社長であるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏が基調講演で話した。

もちろんSpotlightは「すべての」検索を扱えるわけではまだないが、どうやらそのゴールに向かって着実に進んでいるようだ。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルのRealityKit 2で開発者はiPhone写真を使ったAR用3Dモデル作成が可能に

Apple(アップル)はWorldwide Developers Conferenceで、RealityKitの大きいアップデートを発表した。デベロッパーがAR(拡張現実)体験の開発を始めるためのテクノロジー群だ。RealityKit 2の公開によって、デベロッパーはAR体験を開発する際にビジュアル、オーディオ、アニメーションをより正確にコントロールできるようになる、とAppleは述べた。しかし最も注目すべきなのは、Appleの新しいObject Capture APIがアップデートされ、iPhoneだけを使って3Dモデルを数分で作成できるようになったことだ。

Appleはデベロッパー向けの講演で、すばらしいARをアプリを作る上で最も難しいのは3Dモデルを作るプロセスだと指摘した。これまでなら数千ドル(数十万円)と何時間もかかっていた作業だ。

新ツールを使うと、デベロッパーはiPhone(またはiPad、デジタル一眼、あるいはドローンでも)だけを使い、被写体を下からを含むあらゆる角度から撮影して2D画像シリーズを作ることができる。

次にmacOS Monterey(モントレー)上でObject Capture APIを使い、わずか数行のコードで3Dモデルを作れる、とAppleは説明している。

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まず、デベロッパーはReality Kitで新規のフォトグラメトリーセッションを開き、画像をキャプチャーしたフォルダーを指定する。次にプロセスファンクションを呼び出して3Dモデルを要求された精細度で生成する。Object CaptureはAR Quick Lookに最適化したUSDZファイルを生成することができる。デベロッパーがiPhoneとiPadのアプリやウェブサイトにバーチャルあるいは3Dオブジェクトを追加できるシステムだ。3Dモデルは、Xcodeを書いてReality ComposerのARシーンに追加することもできる。

Appleは、Wayfair(ウェイフェア)、Etsy(エッツィー)などのデベロッパーがObject Captureを使って現実世界に存在する物体の3Dモデルを作っていると語った。オンラインショッピングが大規模なARアップグレードを迎えつつある兆候だ。

たとえばWayfairは、Object Captureを使って同社の売り手が商品のバーチャル表現を作るためのツールを開発している。これでWayfairユーザーは今よりも多くの商品をARプレビューできるようになる。

画像クレジット:Apple(Wayfairのツールのスクリーンショット)

Appleは、Maxon(マクソン)、Unity(ユニティー)などのデベロッパーが、Cinema 4DやUnity MARSのような3Dコンテンツ作成アプリの中で、Object Captureを使って3Dコンテンツを作っていることも話した。

RealityKit 2のアップデートには他に、デベロッパーがレンダリングパイプラインを厳密にコントロールしてARオブジェクトのルック・アンド・フィールを微調整するカスタムシェーダー、資源のダイナミックローディング、ARシーンの資源を管理するEntity Component System、RealityKitベースのゲームでARワールドをジャンプしたりスケーリングしたり探検したりできる機能などがある。

Shopify(ショッピファイ)のMikko Haapoja(ミッコ・ハーポヤ)氏というデベロッパーは、新しいテクノロジー(下記参照)をテスト中で、iPhone 12 Maxを使って撮影したリアルワールドのテスト結果をTwitterでシェアした。

自分でテストしてみたいデベロッパーは、Appleのサンプルアプリを、MacにMontereyをインストールして試すことができる。Object Captureに必要な写真を撮るためには、カメラアプリのQloneやApp Storeからダウンロードしたどの画像キャプチャー・アプリケーションでも使うことができる、とAppleはいう。秋にはコンパニオンアプリのQlone MacもObject Capture APIを利用するようになる。

現在、App StoreにはARKitアプリが1万4000以上あり、9000以上のデベロッパーが開発している。全世界で10億台以上AR内蔵のiPhoneとiPadが使用されていることから、Appleは世界最大のARプラットフォームを提供していることになる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルがShazamKitでAndroidも含む開発者にアプリのオーディオ認識機能を提供

Apple(アップル)は2018年に、音楽認識アプリShazamの4億ドル(約437億8000万円)の買収を完了した。そして今回はShazamのオーディオ認識能力を、ShazamKitという形で開発者の手に渡そうとしている。この新たなフレームワークでAppleのプラットフォームAndroid双方の開発者が、Shazamの大きな楽曲データベースと、さらに開発者が録音したオーディオによる独自のカスタムカタログも利用して、音楽を認識できるアプリを作成することができる。

すでに多くの消費者が、ボタンを押すと今聴いている楽曲を教えてくれるだけでなく、歌詞を確認したり、楽曲をプレイリストに加えたり、音楽のトレンドを調べたりすることもできるモバイルアプリShazamのことをよく知っている。2008年にローンチしたShazamは、Appleが買収したときすでに、App Storeにおける定番アプリの1つだった。

関連記事:Appleが曲名判別アプリのShazamを買収か?

Appleは、Shazamを単なる音楽識別ユーティリティとしてだけではなく、もっと良い使い方に導こうとしている。新たなShazamKitにより、開発者はShazamのオーディオ認識能力を利用して独自のアプリ体験を生み出すことができる。

新しいフレームワークは、3つの部分で構成されている。まずShazamカタログ認識は、開発者が楽曲認識機能を自らのアプリに追加する。カスタムカタログ認識は、任意のオーディオに対するオンデバイスのマッチングを実行する。3つ目は、ライブラリの管理だ。

Shazamのカタログ認識は、Shazamを代表するほど非常にポピュラーな機能だ。その環境でかかっている楽曲を認識して、そのタイトルやアーティストといった楽曲のメタデータを取り出す。ShazamKitのAPIは、楽曲のジャンルやアルバムの図柄など、その他のメタデータも返す。また、オーディオのどの部分がマッチしたのかも教えてくれる。

楽曲を照合する際、Shazamは実際には楽曲そのものを照合するわけではない。その代わりに、シグネチャーと呼ばれる非可逆的な表現を作成し、それと照合する。この方法により、ネットワーク上に送信する必要のあるデータ量が大幅に削減される。また、シグネチャーを使って元の楽曲を復元することはできないため、ユーザーのプライバシーも保護される。

Shazamのカタログは何百万曲もの楽曲で構成されており、クラウドでホストされ、Appleによってメンテナンスされている。新しい曲が利用可能になると、定期的に更新される。

ユーザーが開発者のサードパーティ製アプリを使用してShazamKitによる音楽認識を行う場合、Shazamライブラリに曲を保存したいと思うことがあるかもしれない。これはShazamアプリにインストールされているか、音楽認識コントロールセンターモジュールを長押しすることでアクセスできる。ライブラリはデバイス間でも同期される。

Appleは、認識した曲がこのライブラリに保存されることをアプリがユーザーに認識させるよう提案している。ライブラリへの書き込みに特別な権限は必要ない。

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一方、ShazamKitのカスタムカタログ認識機能は、Shazamの音楽カタログではなく、開発者の音声を認識することで、アプリ内で同期したアクティビティやその他のセカンドスクリーン体験を作り出すことができる。

これにより、生徒がビデオレッスンに沿って学習する教育アプリで、レッスンの音声の一部が生徒のコンパニオンアプリでのアクティビティの開始を促すことができる。また、お気に入りのテレビ番組を見ながら、モバイルショッピングを楽しむことも可能だ。

ShazamKitは現在、iOS 15.0以上、macOS 12.0以上、Mac Catalyst 15.0以上、tvOS 15.0以上、watchOS 8.0以上でベータ版が提供されている。Androidでは、ShazamKitはAndroidアーカイブ(AAR)ファイルの形で提供され、音楽やカスタムオーディオにも対応している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)