ソフトバンクがVR/AR開発ツールのImprobableに出資――調達総額は5億200万ドル

仮想世界やシミュレーションの開発ツールを手がけるロンドンのImprobableは米国時間5月11日、新たに資金を巨額な調達して同社のプロダクトおよびディベロッパー・エコシステムの拡大を図ると発表した。サンフランシスコにもオフィスを構えるImprobableは、リード投資家のソフトバンク、そして既存投資家のAndreessen HorowitzとHorizons Venturesなどが参加する調達ラウンドで合計5億200万ドルを調達した。

同社はバリュエーションを公開していないが、共同創業者兼CEOのHermann Narula氏によれば、今回投資家が入手した株式は全体の過半数に満たない数だという。今回の資金調達以前にImprobableが調達したのは5000万ドルのみ。当時のバリュエーションはおよそ10億ドルだった。

いくつかの数字付きで今回の資金調達のうわさが最初に流れたのは数週間前のことだった。

Narula氏が私に話してくれたところによると、今回のソフトバンクによる出資はVision Fundを通して行なわれたものではない。Vision Fundは1000億ドル規模の巨大ファンドで、Appleもパートナーとして参加している ― ただし、このファンドに関する正式なアナウンスはまだ行なわれていない。将来的にはVision Fundからの出資を受ける可能性もあるとNarula氏は加えた。

今回の資金調達によって、Improbableは大きな一歩を踏み出したことになる。VR/AR業界の他社と比べると話題にのぼることが少なかった同社のことを見て、「improbable(日本版注:起こりそうにもないの意)」だと感じた人もいるだろう。

「機は熟しました」とNarula氏は語る。「コアとなるソリューションを提案することができる状態になりました。エコシステムとテクノロジーに大きく投資するべき時が来たのです」。

Improbableの名を世に知らしめたのは、同社が開発したSpatialOSと呼ばれるプラットフォームの存在だ。昨年ローンチしたSpatialOSを使うことで、ディベロッパーは機械学習テクノロジーが利用された分散クラウドコンピューティング・ストラクチャーを用いて仮想現実の世界を細部まで作りこみ、構築することができる。

Google VRやUnreal Engineと同じように、SpatialOSは仮想現実世界の構築を加速するための方法を提供しているといえる。近い将来、私たちは様々なサービス―実用的なものから、そうでないものまで―を仮想現実の中で利用することになるだろう。

「私たちの目標は、巨大なスケールの仮想現実世界の構築方法を再定義する、巨大なスケールのインフラストラクチャーをつくり上げることです」とNarula氏は話す。

今のところ、SpatialOSによって作られたのはVR/ARゲームが多い―マルチプレイヤー・ゲームのWorlds Adriftなどがその例だ。Narula氏は、ゲーミング分野は今後も大きな市場になると話している:彼はSupercellとの協力関係は「今のところはない」と話しているが、Improbableがソフトバンクとのコネクションを獲得したことで同社とSupercellのあいだに良い関係が生まれる可能性はあるだろう。

Improbableとソフトバンクが手を組んだことは財務的な意味だけをもつものではない。これにより、Improbableは他のビジネス領域へとつづく扉を開けることができたのだ―その例が交通分野であり、次世代のマッピング技術や自動運転技術は現代のテックゲームの主役だ。Improbableのプラットフォームによって作られる仮想世界と同じように、同社にとっての市場機会は巨大なのだ。

今回の出資により、ソフトバンクのマネージング・ディレクターであるDeep Nishar氏がImprobableの取締役に就任する。

「Improbableがもつ技術は革新的なものであり、彼らのプラットフォームは世界中のゲーム業界にとって欠かせないものとなるでしょう」と彼は話す。「可能性はゲームだけではありません。彼らが生み出した巨大なスケールでのシュミレーションによって私たちがより良い意思決定を下せるような世界になるかもしれません」。

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(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Scope ARの拡張現実コンテンツ制作ツールWorkLinkがMicrosoft Hololens用バージョンをローンチ

Microsoftの3000ドルもするHoloLens開発キットは、去年から今年にかけてたくさん出た消費者製品よりも多くの関心を集めてきたが、忘れてならないのは、その拡張現実ヘッドセットが、企業の空間的コンピューティングの新たなスタンダードを目指していることだ。

今日(米国時間5/11)、カナダ、アルバータのScope ARは、拡張現実のコンテンツ制作プラットホームWorkLinkの、HoloLensバージョンを立ち上げ、たとえば企業の遠隔地の作業員に、複雑な機械の修理や組み立て方法をAR画面で教えられるようにした。

Y Combinatorが支援している同社のツールは、それを使ってCADのモデルを実物オブジェクトの上にオーバレイできる。そしてそれにより、専門家からの指示や助言を受けられる。問題が起きても、手の施しようを迅速に教えてもらえる。そんなARベースのコミュニケーションはタブレットとマーカーを使って行われることが多いが、同社がねらっているのは、今後はそれをヘッドセットベースで行うことだ。

2010年に創業された同社は、誰も知らない間に多くの有名企業を顧客に抱えるようになっているが、守秘義務のためにその名を明かせないことが多い。今ここで勝手に挙名できるのは、NASA, Boeing, Lockheed Martin, Toyotaなどだ。

HoloLensの問題は、それがコンテンツを載せやすいハードウェアではないことだ。デベロッパーにとってそれは、UnityでHololensボタンを押すほど簡単な作業ではない。技術的な難関を、乗り越えなければならない。

WorkLinkは、HoloLensの外向奥行きセンサーを利用して作業対象のオブジェクトの上に粗いメッシュをかぶせ、そこにARによる手取り足取りのインストラクションを付ける。それは同社によると、“PowerPointでプレゼンテーションを作るぐらい易しい”そうだ。顧客サポートに伝えるべきARコンテンツを、非技術系の社員でも容易に作れるようになる、という含意だろう。今そのためのユーザープラットホームとしては、iOSとAndroidとWindowsをサポートしている。

“HoloLensにコンテンツを載っけるのはこれがいちばん簡単”、とScope ARのCEO Scott Montgomerieは宣伝も怠りない。


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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Beatie WolfeがニューアルバムRaw Spaceのプロモで拡張現実を利用、あのベル研がテクノロジーで支援

シンガーソングライターのBeatie Wolfeは、テクノロジーを利用して、昔の音楽が持っていた不思議な力や身体性を取り戻そうとしている。

昨年はWolfeと彼女のNFCジャケットについて話をしたが、それはスマートフォンとジャケットをNFCで結んで、彼女のシングルを宣伝するWebサイトを開く、というものだ。

ニューアルバムのRaw Spaceでは、WolfeはNokia Bell Labs(昔のベル研を今はNokiaが所有)やDesign IOとパートナーして、5月5日から360度の映像無響室からストリーミングし、音はRaw Spaceのビニールバージョン(LPレコード)から流す。

そのビデオにはDesign IOが作った拡張現実のアニメーションが含まれ、曲の感情や考えを表す。一部のアニメーションはリアルタイムで作られるので、毎回内容が違う。

“こんなことを考えていた: 今のストリーミング全盛の世界でアンチ・ストリーミングを表現しようとしたら、どうなるだろうか?”、とWolfeは語る。“ストリーミング体験には、形や重さがあって実際に触(さわ)れるものや、強力なアートがない。それらを今の世代に生き返させるためには、どうすべきか?”。

彼女のこの企画は、ベル研で50年の歴史を持つExperiments in Arts and Technology事業の一環でもある。過去にはJohn CageやRobert Rauschenbergなども参加したコラボレーション事業だ。ベル研の社長でNokiaのCTO Marcus Weldonによると、その事業は昔ほど活気がないけど、Wolfeなどとのコラボレーションで新たに活を入れたい、という。

“今年は50周年記念じゃないか、そろそろやり方を再検討すべきだね”、と彼は語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

リアルタイムでトラックした卓球の軌道を表示、大阪大学発ベンチャーQonceptのスポーツAR


Qonceptの技術とプロジェクションマッピングを利用したデモ。リアルタイムでプレイヤーの打った球の軌道をトラックできる

C向けの顔認識でARを楽しめるアプリはいくつかあるが、スポーツ分野でもARの活用が進んでいるようだ。4月24日、画像処理技術を開発する大阪大学発のベンチャーQoncept(コンセプト)は、データスタジアムと共同研究機関「Ath-Tech Lab(アステック・ラボ)」を設立した。それと同時に、Ath-Tech Labの第一弾プロダクトである「卓球トラッキングシステム」が国際卓球連盟に採用されたことを発表している。

この卓球トラッキングシステムは、その名前が示すように、卓球のボールの軌道をトラックするプロダクトだ。ボールの軌道と速度が分かり、そうしたデータから選手がどこに打ち返しているか、ボールにスピンがかかっているかなども算出できると、Qonceptの代表取締役社長兼CTOを務めるのは林建一氏は説明する。この技術は、今年の世界卓球選手権デュッセルドルフ大会の国際映像での採用が決定している。

卓球トラッキングシステムは、2台のカメラでボールの3次元の移動方向や速度をトラックしている。これまでこうしたトラッキングを実現するには、高性能なパソコンやカメラが必要だったが、彼らのプロダクトは、Mac1台の処理能力があれば十分にトラックできるのが特徴だという。以下の動画はバレーボールでの軌道トラックの様子だ。

 

2008年7月に設立したQonceptは、スポーツに限らず、建築や自動運転でも活用できる画像処理技術を開発していると林氏は説明する。一方、データスタジアムはメディアやスポーツチーム向けにデータ分析のソリューションを提供している会社だ。Ath-Tech Labでは両社が協力し、スポーツ領域でのAR技術の研究開発を進めるという。

こうしたスポーツのトラッキングシステムはプロ向けに制作しているものだが、今後の展開として、スマホで使えるC向のトラッキングサービスを展開することも考えていると林氏は言う。例えば、草野球でも手軽に選手のデータを分析できるプロダクトを想定しているそうだ。

「広告などでAR技術が使われるようになってきましたし、SNOWといった動画アプリも基本的にはARです。ARが少しづつ浸透していきていて、それが動画でもっと応用されるようになると思います」と林氏は話している。

先日、Facebookは自社の開発者カンファレンスF8でARプラットフォームを発表したのも記憶に新しい。すでに広く普及しているスマホでARが気軽に利用できるようになるなら、もしかするとARはVRより早く人々が身近に利用するものになるかもしれない。

拡張現実のゴールドラッシュがやってくる!

ARのピクサーになるのは誰なのか?拡張現実コンテンツスタートアップのために、誰かがハリウッドの特殊効果エンジニアやアニメーションキャラクタデザイナーたちをかき集めなければならない。

今週行われたFacebookのカメラエフェクトプラットフォームのローンチが意味することは、突然18億の人たちが、現実世界に対するデジタルオーバーレイで楽しませて貰うことを待ち望むようになったということだ。そして今や、スタートアップは自ら、ユーザーベースをゼロから構築したり、人びとにソーシャルグラフを再構成させたり、キャプチャしたコンテンツをシェアする場所を作り上げたり、あるいは沢山のオブジェクト認識技術や空間認知技術を開発したりする必要はない。

彼らがしなければならないことは、視覚化されたイマジネーションの魔法で、人びとを楽しませる作品を作ることだ。FacebookはキラーAR体験が可能なことを証明するために必死なので、プラットフォーム上でフィーチャーされる機会は沢山あるだろう。この新しいメディアを使って人びとの注目を集める力を確立できるものなら誰でも、素晴らしいAR体験を構築するために、出資しようとする企業を集めることができる。ちょうどBuzzFeedが、BuzzFeed Motion Pictures広告クリエイティブチームを使って収益を挙げているように。

そしてFacebook ARで起きることのすべては「カメラで」行われるので、簡単に大規模なソーシャルネットワークで共有することが可能だ。ARは、ソーシャルメディアにおけるストーリーテリングための新しい語彙の一部となり、開発者たちにバイラルな成長手段を提供する。

FacebookのAR Studioツールは、拡張現実体験を比較的容易に構築させる。

この分野の専門家は、傑出したARコンテンツのスタートアップがいないことを教えてくれた。そこを埋めることに、大きなビジネスチャンスがありそうだ。Penrose、Baobab、そしてWithinという多くのスタートアップたちが既に、VRのピクサーになろうと争っていて、そのうちの幾つかは数千万ドルを調達している。ほとんどの人がVRヘッドセットを所有しておらず、仮に所有していたとしてもおそらく家のどこかで埃をかぶっているという事実にも関わらず、こうした現象が起きているのだ。

マーク・ザッカーバーグが、そのF8コンファレンスの基調講演で述べようとしていたことは、拡張現実メガネの登場を待っている必要はないということだ。既に私たちの身近な市場には沢山のARデバイスが存在している。スマートフォンのカメラだ。物理的な世界はとても大きいので、それをAR体験で覆うためには、外部の開発者たちに頼ることも必要になるだろう。それはFacebookが歴史的に取り込みを目指してきたことであり、Snapchatが敬遠していることだ。

新しいコミュニケーションメディアが大規模なユーザーを獲得しようとするときには、エンターテイメント空間に新しいプレイヤーが参入するチャンスとなる。そうしたことは、ラジオ、映画、テレビ、ウェブ、ビデオ、モバイルアプリ、そしてVRで起こった。ピクサーは、コンピュータレンダリングアニメーションの可能性を知り、それを早い時期から取り込んで、大成功したビジネスへと成長した。

いまAR時代が到来している。それは基本的に、過去のメディアとは異なる性質を持っている、なのでこの世界における勝者は必ずしも、組織構造やビジネスモデルの観点でピクサーのようなものである必要はないだろう。おそらく彼らは、Flappy Birdの開発者であるdotGearsや、YouTubeのチェンネルオーナーであるMaker Studiosのようにみえる者かもしれない。

それでも、この技術的なシフトは、金のシフトを否応なく招く世間の注目のシフトを予見している。ARがポシャるリスクは常に付きまとっている。VRはゆっくり成長してきたし、スマートウォッチのアプリで大金持ちになった者はまだいない。とはいえ、ポケモンGOの突然のブレークと、10代の若者の間での仔犬顔フィルターの流行は、SnapChatの人材募集コピーへと繋がった:「おもちゃは重要なアイデアへの前奏曲だ」。

機能に焦点を絞ったARユーティリティと、本格的ゲームが登場してくることは間違いない。私たちに別々のアプリのダウンロードを要求するものもあるだろう、そのため私たちがARに慣れてその価値を信じるようになるまで、待たされるものも出てくるだろう。しかし、FacebookのカメラエフェクトプラットフォームとAR Studioツールの登場は、Facebookアプリ内部で提供することのできる軽量AR体験のために、パワフルでバイラルな流通チャンネルを使うことができることを意味している。

どこかのスタートアップがキュートで愛らしい拡張現実キャラクターを作り、携帯電話があなたが違う場所や、違うものに囲まれていることを認識すると、そのキャラクターが面白い動きをするといった場面を想像してみよう。私の頭の中にはクリス・ファーレイがパンダに変身して、フレームの中に何があろうともお構いなしに下らないギャグをかましている映像が浮かぶ。

また別のスタートアップは世界のランドマークをとりあげて、ミニゲームを作ったりそれぞれからアーティスティックな効果を引き出したりすることができるし、世界ゴミ拾い競技(scavenger hunt)などを作ったりすることもできるだろう。観光客が、隣の人がエッフェル塔や自由の女神像に携帯電話を向けながら笑っているのは何かと尋ねることになるだろう。そして既にアプリがあることに気が付くのだ。

Facebookが開発したAR Studio開発ツールは、驚くほど簡単に使えるように見えるものの、コンテンツの開発には資金が必要だ。いくつかの勇敢なベンチャーキャピタリストたちが、元ディズニーや元ドリームワークスの従業員たちがARスタートアップを始めていることに対応し始めているようだ。またFacebookは、独占コンテンツのための事前支払いを行うことで、AR開発者エコシステムにシードを行うだろう。このやりかたはFacebook Liveが立ち上がる際に、同社がトップニュースパブリッシャーに支払いを行ったやり方と同様のものだ。

最もエキサイティングな点は、コンシューマーARプラットフォームの本当の可能性を知っている人は誰もいないということなのだ。私たちは、(18日のFacebookの発表後)文字通り4日目にさしかかり、新しいメディアはまだまだ少ない。あなたのアイデアは何だろう?

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(翻訳:Sako)

Facebook、ARカメラエフェクトの開発者プラットフォームをローンチ

Facebookは新たに「Camera Effectsプラットフォーム」をローンチした。これは、ARの画像フィルターとインタラクティブな体験を作成できるもので、そうしたエフェクトの制作のために外部の開発者の力を借りる。Facebookが開催したF8カンファレンス終了後、Facebookのスマホアプリのカメラ機能からエフェクトが使えるようになる。ただ、このCamera Effectsプラットフォームは将来的にメガネなどのARハードウェアにも対応できるように設計されているという。

Facebookは、最近ローンチしたFacebook内のストーリーズやカメラ機能、Messenger、Instagram、WhatsAppで何の考えもなくSnapchatをコピーしたと批判された。 ザッカーバーグはTechCrunchに対し、そうした施策は今日のCamera Effectsプラットフォームのローンチに向けた準備だったと話している。

Camera Effectsプラットフォームはオブジェクト認識を備える

Facebookは開発者のクローズドベータ版AR Studioツールへの登録受付を開始した。もう1つ用意したFrame Studioに関しては誰でも利用できる。Frame Studioでは、静的な画像を写真の上にかぶせるシンプルなフィルターを作ることができ、友達やページのファンに提供できる。Frame Studioを利用するのにコードの知識は必要ない。画像をアップロードするだけだ。当面の間、Facebookの承認がない限り、ブランディング目的のフレームや広告は認めないという。ただ、将来的にはこのプラットフォームでのマネタイズも考えていて、Facebookのスポークスマンは「私たちは人々にとって最高のプロダクトを提供することに注力しています。企業に対しては、それに参加するための有料の方法を紹介していきます」とした。

開発者であれば、ARのセルフィーマスクや企業の評価と言った情報を上乗せするツール、インタラクティブなゲーム、ザッカーバーグの言うところの現実世界では作ることのできない壮大なアートといったエンターテイメント性の高いビジュアル体験を作ることができる。また、一般ユーザでも、例えば友達にレストランで彼らのお気に入りのメニューを教えたりするのに、特定の位置にARメモを残したりする機能を用意する。

開発者はこのプラットフォームので正確な位置情報、オブジェクト認識、奥行き検知機能を活用したエフェクトを制作することができる。Facebookのカメラは例えばコーヒーカップのような特定のオブジェクトを認識したり、オブジェクトの表面を認識することができる。それにより、例えばコーヒーカップから湯気を出したり、コーヒーカップの中をサメが泳ぐような効果を制作することができる。

誰でもFrame Studioを使って、写真に上乗せする画像をアップロードできる。

開発者は、顔認識(個人認証ではない)、ジャイロスコープや位置情報と言ったセンサー、他のアプリから情報を取得するScripting APIにより、ARエフェクトを起動させることができる。このプラットフォームのローンチパートナーと彼らと提供するエフェクトがいくつかある。例えば、マンチェスターユナイテッドとは、サッカーの試合の情報を取得し、「GOOAAALL!」の画像と観客の声援を追加するエフェクトを用意した。ゲーム開発企業EAとは、ゲーム「Mass Effect」のテーマで、ユーザのゲームの進み具合に応じて異なるマスクのエフェクトを用意した。NIKEのエフェクトでは、ユーザーの頭にヘアバンドを乗せ、最近走ったルートの地図を写真に上乗せする。

AR Studioの開発者はFacebook Live用のエフェクトも制作可能だ。Facebook Liveのエフェクトは本日から利用できる。例えば、視聴者の投票機能「This or That」や配信者がハッシュタグによる画面に表示できる Giphy LiveのアニメーションGIFなどがある。

Facebook Liveの新ARエフェクトはCamera Effect プラットフォームのAR Studioツールで作成可能

現実世界は広大だ。FacebookのAR体験さえ受け入れられる。Facebookは開発者プラットフォームを解放することで、こうした体験を全て自社開発しないでもすむ。SnapchatはAR体験をコンシューマーに提供することにおいてスタートダッシュを得たかもしれないが、FacebookはARさらに数歩先まで進める戦略を持っているようだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Appleは拡張現実に賭けたらしい?

Appleはどうやら拡張現実(AR)に対する大きな賭けに出たらしい。新しいブルームバーグレポートによれば、AppleはiPhoneのため、そして更にはスマートフォンとペアリングして使う新しいメガネ型デバイスのための、拡張現実機能を開発しているのかもしれない。

仮説としてのメガネは影も形もないものの、Appleが水面下で何を開発しているのかを知ることは興味深い。それはまずチームの結成から始まっている。

新しい拡張現実チームをリードしているのは、明らかにMike Rockwellだ。以前彼は、Dolbyで新しい技術やハードウェアのために働いていた。拡張現実に関して言えば、Rockwellは昨年の春に、経験豊富なエンジニアのチームを結成している。

Bloombergによれば、チームのメンバーとして挙げられているのは以下のような面々だ。

  • Cody White。CryEngineから派生したゲームエンジンを担当していた、Amazonの元リードエンジニア。
  • Duncan McRoberts。Metaの元ソフトウェア開発ディレクター。
  • Yury Petrov。Oculusの元研究者。
  • Avi Bar-Zeev。AmazonとMicrosoftで働いていたエンジニアで、特にHoloLensの経験がある。
  • ハリウッドのヒット映画の特殊効果に取り組んできた様々なエンジニアたち。

Appleで他のプロジェクトに取り組んでいた、ハードウェアならびにソフトウェアのエンジニアたちもチームに合流している。Appleはまた、MetaioFlyby Mediaを、プロジェクトの取得を目的として買収した。全体としては、今や数百人のエンジニアたちが拡張現実プロジェクトに従事している可能性がある。

これらはクールに聞こえるものの、実際にAppleが売り物として何をユーザーに提供するのかについては何も語っていない。ブルームバーグのレポートでは、詳細についてはあまり触れられていない。

Appleは、カメラアプリを使って、セルフィーのフィルターやリアルタイムオブジェクト検知を行うような、基本的な拡張現実機能から始めるかもしれない。言い換えれば、すぐにでもiOSに組み込まれた、Snapchatスタイルのフィルターが出ることを期待できるということだ。それ自身は拡張現実ではないものの、写真を撮影した後に画像のフォーカスを調整させることで、Appleはポートレートモードを超えたものを提供できる。今のところ私たちが分かったのはここまでだ。

もしAppleが拡張現実を真剣に考えているならば、これ以上の何かがあるはずだ。ブルームバーグは、仮想データを周囲に表示できる新しい拡張現実メガネについて語っているものの、その新しいデバイスで何をしたいのかはまだはっきりしていないように聞こえる。

例によって、この情報は割り引いて聞いて欲しい。そしてiOS11が、Appleの拡張現実への賭けの行方を垣間見せてくれるかどうかに注目しよう。

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(翻訳:Sako)

Alibabaが車向けARダッシュボードメーカーのWayRayに投資

昨年その最初の自動車を発表して以来、Alibaba(阿里巴巴)は自動車業界へ深く入り込みつつある。この中国のインターネットならびに電子商取引の巨獣が、スマートカーテクノロジーの開発企業であるWayRayの1800万ドルに及ぶシリーズBラウンドで、トップ投資家となったことを、WayRayが発表した。

2012年に設立されたWayRayは、ホログラフィックナビゲーションシステムを製造している。その資金調達に関する発表によると、WayRayは前回調達した1000万ドルを既に、運転者が見る道路の視野上に指示や様々な情報を表示するARダッシュボードであるNavionの技術開発のために費やした。同社は消費者が手にすることのできるNavionを、2017年中に出荷する計画だ。

事前に用意されていた発表文書の中で、Alibabaグループのシニア投資ディレクターであるEthan XIeは「拡張現実のような先端技術の開発には巨大な可能性があり、様々な分野への応用、例えば自動車分野におけるWayRayのARナビゲーションのような応用があると信じています。拡張現実の可能性がその分野をエキサイティングで有望な分野にするのです」と述べている。

Alibabaは昨年の夏に、SAIC(上汽集団:中国の4大国有自動車製造会社の1つ)と共同開発したスマートカーRX5のプレオーダーを開始し、自動車業界へのデビューを果たした。RX5はAlibabaのYun OS(雲OS)を使っているが、同社はこの車をIoTエコシステムの一部にすることを狙っている。このエコシステムには同社の他のハードウェアや、Alipayなどのインターネットサービスが含まれている。

しかし、Alibabaのスマートカーには既にいくつかのライバルが現れている。例えばまた別の中国の巨大テクノロジー会社であるLeEchoが「初めての車両移動式エコシステム」として電気自動車のLeSeeを売り込んでいるし、またBaidu(百度)は、また別の中国4大国有自動車製造会社の1つであるBAIC(北汽集団)と共同でスマートカー技術と自動運転車を開発している。

WayRayはまた、AlibabaグループとSAICによるジョイントベンチャーであるBanmaテクノロジーズと提携を行うと発表している。Banmaによって2018年にローンチされるARナビゲーション並びに車内エンターテイメントシステムを開発するためだ。WayRayはこれは「世界初の、車向け量産ホログラフィックARヘッドアップディスプレイだ」と主張している。

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(翻訳:Sako)

地球儀とARアプリが合体&対話して地理の勉強がゲームのように楽しくなるOrboot

地理はクールだ。子どもたちが何と言おうとも。もっとクールなものがあるとすれば、それは拡張現実だけだ。それでは、この二つのクールなものを一つにまとめたものがあるとしたら、どうなるか? その名前はOrbootといって、なんだかとても楽しそうだ。ただし、クラスにiPadかAndroidタブレットがないとだめだけどね。

Orbootは、直径10インチの地球儀と、それ用のアプリ(iOSまたはAndroid)で、世界のいろんなことが分かり、またARでいろんなことができる。アプリ付きの地球儀をすでに持ってる人もいるかもしれないけど、でもあれは退屈だ、すごく。古典的な地球儀よりはOrbootのように本物の地球がいいし、表示をスワイプするだけよりは、実際に何かができた方が楽しい。

地球儀の上のさまざまなシンボルが、お話や動物や地図の中に現れると、子どもたちはそれとさまざまな対話ができる。たとえば象にいろんなものを与えてみて、象が好きなものを見つける。エヴェレストに登るための、いろんな登山道を調べる。ケニヤや中国の人のお話を聴く、ほかにも、いろいろできる。ぼくの甥っこなんか夢中になってたし、5年生ぐらいのクラスなら、順に親の出身国について知るのもよいだろう。

これを作ってる会社はPlay Shifuという名前で、スタンフォード大学とインド工科大学の卒業生が創ったスタートアップだ。AR製品はほかにもいろいろあるけど、いろんなことができる点では、Orbootがいちばんだろう。

Play ShifuはOrbootを始めるための資金をKickstarterで募集したが、目標額の15000ドルを4日で突破した。締め切りを延ばしているが、今なら、8つのレッスンがついて35ドルだ*。高くはないよね。もっといいのは、65ドルで二つ買って、ひとつを子どもの学校に寄付することかもしれない。〔*: 「動物」、「遺跡」、「食べ物」の三レッスンだけなら29ドル…各レッスンの目録と解説はKickstarterのページ上にある。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

混成現実の多様な可能性に賭けるMicrosoft、Windows 10用のデベロッパーキットを今月から提供開始

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Microsoftが前に言ってたところによると、PCの世界でみんながその名前を知ってるような、いくつかのOEMパートナーが今、Windows 10機の上で混成現実を体験できるためのヘッドセットを作っている。その最初の製品であるAcerの製品は、デベロッパー向けに今月発売される。また、その後の数か月は、ほかのパートナーたちのデベロッパー向け製品が次々と発表される。

そして、Windows Mixed Realityという新しいブランドが確立する。前にはWindows Holographicと呼ばれていて、技術的にはそっちの方が妥当、との声もある。

Microsoftは2018年のScorpio Xboxを皮切りにXbox Oneの系統も混成現実化していくつもりなので、今の一連の動きはそのための…とくにデベロッパーを意識した…下地作りという意味もある。またWindows 10は今後またCreators Updateが提供されるので、デスクトップOS上の混成現実にも、引き続き力を入れて行かなければならない。

Acerや今後のASUS, Dell, HP, Lenovoなどの混成現実ヘッドセットは、位置追跡機能がinside-out方式で、部屋の中などに外付けの位置追跡デバイスが要らない。その代わり、ヘッドセットの中にユーザーのまわりをスキャンするセンサー群があって、ユーザーの動きを正確に追跡し、仮想オブジェクトを正しく描画する。

Acerのキットがデベロッパーの手に渡るのは今日(米国時間3/1)で、1440×1440、リフレッシュレート90Hzの液晶画面を誇っている。オーディオ出力とマイク入力のための3.5mmジャックもある。Windows 10のコンピューターには、HDMI 2.0とUSB 3.0の両方を収めた単一のケーブルで接続する。

混成現実は多くの人びとにとって、仮想現実よりもおもしろいものになりそうだ。オフィスやそのほかの仕事環境でも、多様な機能やVR/ARコンテンツを付加できる点が、デベロッパー、ユーザー両方にとって魅力だ。VRだけだとVRが現実を完全に隠してしまうから、現実に対する多様な用途は期待しづらい。ただしもちろんMicrosoftにとっての勝敗は、デベロッパーのためのライブラリや、ユーザーのためのソフトウェアのクォリティーで決まる。ヘッドセットでデベロッパーキットを先行させるのも、そのことを意識しているからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Magic Leapがスイスを拠点とするDacudaの3D部門を買収 ― ヨーロッパ進出は同社初

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AR分野のスタートアップであるMagic Leapは、これまでに14億ドルを調達しているものの、いまだにプロダクトをリリースしていない。そんな同社は、コンピュータービジョンとディープラーニング事業の拡大とヨーロッパへの進出を狙い、同社2度目となる買収を行ったことが確認された。

Magic Leapは、チューリッヒを拠点とするコンピュータービジョン分野のスタートアップ、Dacudaの3D部門を買収したことが明らかとなった。Dacudaがこれまでに注力してきたのは、コンシューマー向けのカメラで利用する2Dおよび3Dイメージングのアルゴリズムだ(カメラだけではなく、カメラが搭載されたデバイスであればどんな物にも適用可能)。「ビデオを撮るのと同じくらい簡単に3Dコンテンツをつくる」ということだ。

DacudaはWebサイト上の短いプレスリリースで今回の買収を発表している。それによれば、Dacudaの3Dチームは全員Magic Leapに移籍し、創業者のAlexander Ilic氏はMagic Leap Switzerlandを率いることになるという。

「Dacudaは無事、当社の3D部門をMR分野のリーディング企業であるMagic Leapに売却しました。Dacudaの3Dチームは全員Magic Leapに移籍し、同社初となるヨーロッパでのプレゼンスを築いていきます。Magic Leapがチューリッヒにオフィスを持つことで、コンピュータービジョンとディープラーニング分野におけるリーダーシップをさらに強化することができます。そして、これからMagic Leap Switzerlandを指揮するのは当社の創業者、Alexander Ilicです。Peter WeigandとMichael Bornの指揮のもと、DacudaはSunrise、Crealogix、Unisys、SITAなどの顧客とともに、プロダクティビティ分野のソリューションに再度フォーカスしていきます」。

以上をご覧になると分かるように、この2社が具体的にどのように協働していくかという点は言及されていない。だが、この買収が最初に噂された先週(Dacudaのブログに3D部門の売却を示唆するポストが投稿され、LinkedInのプロフィールを「Magic Leap所属」と変更する従業員がいた)、Tom’s Hardwareは、この買収によりDacudaが開発した技術によってMagic Leapが1部屋分のスケールをもった6自由度(6DoF)トラッキングを手掛けるようになると予測した(3D環境におけるイメージキャプチャーセンサーを向上する)。

Magic Leapがヨーロッパに進出するのはこれが初めてのことだ。だが、それよりも重要なのは、同社が拠点とするスイスはコンピュータービジョン分野の研究開発において非常に評価が高い国だということである。

スイスにはAR/VR技術に取り組むスタートアップや学術機関が多く存在する。特に、コンピュータービジョンやディープラーニングの分野ではそれが顕著だ。そのため、Magic Leapがスイスでのプレゼンスを持つことで、同国のAR/VRシーンにダイレクトに入り込むことができる。

(このエコシステムに着目する大企業も多い。2015年にAppleによって買収されたモーションキャプチャーのfaceshiftも、チューリッヒ出身のスタートアップだ)。

今回の買収により、Magic Leapは良いタイミングで、人材強化とスイスのエコシステムへのコネクション作りを達成したと言える。ご存知の読者もいるかもしれないが、つい先日、Magic Leapのプロダクト情報役員の離脱、そして同社のテクノロジーとハードウェアがあまり良い状態ではないとするレポートリークするという事件があった。それにより、少なくとも短いタームでみた場合、Magic Leapは本当に45億ドルのバリュエーションに見合う価値を生み出せるのかという疑問が残ることとなった。

今回、買収金額などの詳細は明らかになっていない。Dacudaの創業は2009年で、CrunchBaseによれば、同社はこれまでに金額非公開の資金調達ラウンドを実施。それに加えて、Kickstarterを利用したクラウドファンディングによって54万2000ドルを調達している。この資金は、同社が2014年に発表した「PocketScan」と呼ばれる手持ちスキャナーの開発費用に充てられている(このプロダクトは過去にTechCrunchでもカバーしている)。

また、この買収について明らかになっていないことがもう1つある。それは、Dacudaの3D部門がこれまでに獲得したパートナーシップの行く末だ。

例えば、同社は昨年10月、スイスを拠点にAR/VRを手掛けるMindMazeとのパートナーシップを締結している。「MMI」と呼ばれる新しいプラットフォームを構築するためだ。MindMazeの説明によれば、このプラットフォームは「モバイルベースの没入型アプリケーションとソーシャルVR向けに開発された、世界初のマルチセンサリング・プラットフォーム」だという。また、同社は今後「位置トラッキングとマルチレイヤー・インタラクションの分野でGoogleのdayDream Viewがカバーしきれていない部分にアプローチするため、全世界のユーザーにテクノロジーを提供していく」としている。TechCrunchは現在、今回の件についてMagic Leapに問い合わせしている最中だ。彼らから何らかのコメントが得られれば、記事をアップデートしていく。

Magic Leapが他社を買収するのは今回で2度目となる。1度目は、同社が2016年に買収したイスラエルのサイバーセキュリティ企業、Northbitだった。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

視覚障害者も”見える”ようになるスマートグラス―、オックスフォード大研究者らが開発

世界の人口の1%(約7000万人)が視覚障害に苦しんでいると言われている。

コンシューマー製品が狙う市場規模としては、この数字は大したことがないかもしれないが、視覚障害者をサポートするテクノロジーの少なさを考えると、これは膨大な数だと言える。

昨年オックスフォード大学のプロジェクトから誕生したスタートアップのOxSightが、彼らの生活を変えようとしている。同社は、視覚障害者が身の回りのものを認識し、障害物を避けることを可能にするARスマートグラスを開発し、現在そのテストを行っている。彼らのプロダクトは、言うならば視覚障害者用の補聴器のようなものだ。

OxSightのスマートグラスは、将来的に杖や補助犬の代わりになるかもしれない。杖や補助犬でも近くにある障害物は避けることはできるかもしれないが、自分の周りの環境全体を感じとることまではできないのだ。

OxSightのスマートグラスは、将来的に杖や補助犬の代わりになるかもしれない。

これまでに彼らのプロダクトを試した人のほとんどは、生まれつき全盲ではなく、生活するうちに段々と視力が落ちてきた人たちだった。というのも、OxSightのスマートグラスは、光の認識であれ動きやモノの形の認識であれ、利用者にまだ残されている視力を増強する仕組みになっているからだ。

ユーザーの脳へは何も接続せず、ハードウェアは眼球とも情報のやりとりをしない。その代わりに彼らのスマートグラスには、身の回りの状況を理解するためのAR空間を再現する、透過ディスプレイやカメラシステム、コンピュータビジョンの技術が用いられている。

OxSight layers different Prisma-esc modes and that can be adjusted using hand controls.

OxSightはPrisma風のモードを複数準備しており、ユーザーはコントローラーで見え方を調整できるようになっている。

「視力を失いはじめると、モノの前後関係がつかみづらくなります」とOxSightのファウンダーで、身体制御を専門とする神経科学者のStephen Hicks博士は話す。「別々の場所にあるもののはずなのに、視界がぼやけて一緒に見えてしまいます。しかし私たちのスマートグラスは、モノの位置関係を把握し、それぞれの境目をハッキリ見せることができます。そのため、ほとんどの視覚障害者の目に残っている僅かな視力を使って、彼らはもっと直感的そしてインタラクティブに周りの環境と触れ合えるようになります」

私たちの脳が3次元空間を認識するときのプロセスは、現代のビデオゲームが床やソファー、壁といった要素をマッピングするプロセスと似ている。ゲームのシステムは、大きな物体を認識し、ユーザーとの距離感を測って3次元空間を再現しているのだ。OxSightのスマートグラスは、このコンセプトと私たちの脳の働き方を利用して、マンガのようなレイヤーをユーザーの周りに貼り付けているようなイメージだ。

最小限の視力が残っている人であれば、周りにいる人をスマートグラスが投影したハリボテのような姿で認識することができる。さらにその人の視力に応じて、色やズーム機能を使って見え方をカスタマイズすることも可能だ。視覚障害者といってもひとりひとりの状況は全く違うため、OxSightはユーザーがそれぞれ最適だと思う形で周りを認識できるよう、見え方を調整できるようにした。

A research participant wearing OxSight while bowling.

OxSightのスマートグラスをかけながらボーリングを楽しむ被験者。

「つまり、ユーザーは普通の人のように世界を認識できるようになります。しかしそれはあくまで、なんとなくどんなモノが眼前にあるのかというオーラを感じ取ることができるという程度に過ぎません。一方でこれは、例えば暗い場所で出入り口を見つけたり、障害物などをさけたりする際には大変便利なことです」とHicksは話す。「私たちのスマートグラスはモノの輪郭を目立つように強調するので、ユーザーはすぐに、そして直感的に周りを認識できるようになります。音で空間を認知する手法など、視覚障害者を助けるための手段は色々と考えられてきましたが、どれも習得までに時間がかかる、複雑で難しいものばかりでした」

スマートグラスを初めた試した人のほとんどは、「自由に動き回れる」「心配せずに外出できる」「バーやレストランといった視界の限られる暗い場所にも行ける」といったコメントを残している。さらに被験者の多くは、再び家族の顔を見ながらコミュニケーションがとれることに感動しており、特に二度と家族の顔を見ることができないだろうと考えていた人たちの喜びはひとしおだ。

The attached battery pack can be worn over the shoulder and has hand controls for adjusting to different lighting and settings.

付属のバッテリーパックは肩からかけられるようになっており、明るさなどの設定もバッテリーパック上で調整できる。

これまでこのようなデバイスの販売を試みた企業がないため、どのように市場で販売するかや、それにどのくらいの資金が必要になるかなど、製品化に向けてはわからないことだらけだ。一方でOxSightは政府・民間どちらからも助成金を受けており、慈善心溢れる投資家も見つけることができた。「大金を稼げなくても、OxSightはとても楽しいビジネスです。これから私たちが開発しようと考えているプロダクトはまだまだありますし、それが何かの助けになる人もたくさんいると思います」とHicksは語る。

OxSightが今抱えてている最も大きな問題が、何をMVP(実用最小限の製品)とするか、そしてどのようにプロダクトを市場で販売するかということだ。医療機器に関する規制はたくさん存在し、モノを認識する機能や形状、長持ちするバッテリーなど、コンシューマー向けプロダクトとは違った要件も満たさなければいけない。そこでOxSightは、視覚障害者をサポートすることにフォーカスし、このようなニーズに答えられるようなプラットフォームをつくろうとしている。一方で彼らは、ハードウェアの進歩に連れて、企業としても成長していきたいと考えている。最終的には、スマートグラスの核にあるAR技術と同じものを使って、認知症や自閉症、失読症に苦しむ人たちにも有益なプロダクトが開発できるだろうとHicksは話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

バレンタインのポケモンGO、ルアーモジュールの効果が6時間になり、レアポケモンの出現頻度もアップ

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マニア的ポケモンGOプレイヤーは、大幅に減ってしまったのかもしれない。しかしホリデーイベントを仕掛ければ、まだまだ(ある程度の)プレイヤーを呼び戻すことができる。そしてふたたび熱心にプレイし始める人もいることだろう。

そんなふうに考えるナイアンティック(Niantic)は、ハロウィーン感謝祭、そしてクリスマスなどにイベントを仕掛けてきた。そして、来たるべきバレンタインデーにもスペシャルイベントを行うようだ。

内容は以下の通りだ。

  • ピクシー、ラッキー、およびポリゴンなど、「ピンク」ポケモン(外見にピンク色が含まれているポケモン)の出現率がアップする。ラッキーやポリゴンは、たいていの場所で非常にレアなポケモンとして知られている。出現する傾向もよくわかっておらず、このバレンタインがゲットする大チャンスになるわけだ。これを機にポケモン図鑑の完成を狙っている人もいることだろう。
  • ピンクの「ベイビィポケモン」はタマゴを孵化させてゲットするわけだが、イベント中はベイビィポケモンの孵化率が上がることになるようだ。ナイアンティックによれば、対象となるのはピィ、ププリン、およびムチュールなどであるとのこと。なお余談ながら、個人的にはこれらベイビィポケモンが、タマゴからしか入手できないのが気に入らない。そのような設定にする理由がよくわからないのだ。
  • バディポケモンと一定の距離を歩いたり、あるいはポケモンをゲットしたり博士に送ったり、はたまた孵化させた際にゲットできるアメの数が倍になる。
  • ルアーモジュールの有効時間が「6時間」に延長される。通常は30分しか効果がないので、なんと12倍に延長することになるわけだ。

ルアーモジュールの効果時間を伸ばすことで、あらためて大勢の人の盛り上がりを復活させることができるのかどうかは注目してみたいところだ。ご存知のこととは思うが、ポケストップにルアーモジュールを配置すれば、周辺でのポケモン出現率がアップして、周辺の人みんなが恩恵をうけることができる。効果持続時間が長くなれば、近接したポケストップが一斉にルアーオンの状態になって、ひとびとが大挙して訪れるというようなことも期待されているのだろう。大勢の人が集まってニュースになったような場所に、ふたたびたくさんの人が訪問するようなこともあるのかもしれない。

バレンタインイベントは、2月9日早朝から、2月15日早朝にかけて実施されるとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H

VR・AR市場の今後の動き

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【編集部注】執筆者のTim Merelは、Eyetouch RealityおよびDigi-Capitalのファウンダー兼CEO。

私たちが2年前に言った「VR・AR市場は今後どちらも成長していくが、AR市場の方が成長に時間がかかり規模も大きくなるだろう」という当時は画期的だった考え方も、今ではすっかり受け入れられた。しかし両市場が本格始動してから12ヶ月が経ち、大手テック企業の戦略も見えてきたことで、私たちのVR・AR市場の成長に関する見方もかなり変わってきた。

私たちの新たな予測は、モバイルARが主な原動力となりAR・VRの市場規模が2021年中に1080億ドル(下振れして940億、上振れして1220億ドル)に達するというものだ。なお、そのうち830億ドルという大半のシェアをARが握り、VRの市場規模は250億ドルにとどまると考えている。

昨年の勝ち組・負け組

少し暗い話からスタートしよう。Facebook(Oculus Rift)とHEC(Vive)は、昨年出荷の遅れオーダーのキャンセルが発生し苦しいスタートを切った。またOculusのTouchコントローラーはRiftにバンドルされず、結局199ドルで別売りされることになった(つまりPCを含まないフルシステムの価格は798ドルでHTC Viveと同じ水準だ)。Samsungは、Galaxy Note 7対応デバイスとして開発されたGear VRで新規参入を試みたが、その野望の一部は文字通り煙となって消えてしまった。Magic Leapも14億ドルを調達したが、その技術についてはさまざまな憶測が飛び交っていた。

幸いなことにNintendo、The Pokémon Company、Nianticは自分たちでも予想していなかったほどの大成功をおさめることができた。Pokémon GOは最初の3ヶ月だけで6億ドルの売上を記録し、一年を通してみても2016年のVRゲームソフト市場全体の売上を上回るほどの大ヒットだった。Pokémon GOの成功にはさまざまな固有の要因が絡んでいるものの、これが大手テック企業のモバイルAR戦略に大きな影響を与えることとなった。

またSonyのPlayStation VRのローンチとともに、昨年の勝ち組となったのがGoogleだ。同社はDaydream Viewと名づけられたモバイルVRセッドセット・コントローラー、そして初となるTango対応のスマートフォンを発表した。さらにSnapがSpectaclesをローンチすると、(同製品は本当の意味ではAR製品ではないとはいえ)AR市場に勢いがつき、再びちょっと間抜けな近未来風メガネが人々の注目を集めた(今回は”Glassholes”の話もでていない)。

全てが出揃って、全てが変わった

VR・AR市場の数字は、今後同市場が描く軌道に比べればそこまで重要なことではない。昨年はじめに私たちは、VR・AR市場の売上額が合計で44億ドル(VRで38億、ARで6億)に達すると見込んでいたが、実際のVR市場の売上は27億ドルだった。しかしPokémon GOの予想外のヒットのおかげで、AR市場の売上が12億ドルに膨れ上がり、VR・AR市場全体の売上は39億ドルに達した(我々は11%ほど楽観的に考えていたということになる)。

それよりも重要なのは、過去12ヶ月の間に同市場の今後の方向性が根本から変わったということだ。

同じようで違う

GoogleがCardboard時代を経てDaydream Viewをリリースしたように、モバイルVRの分野では引き続き”Explorer”(無料〜100ドルのデバイスを購入する人)がユーザーベースの中心となるだろう。一方で昨年Samsungが苦しんでいたように、市場自体は当初思い描いていたような速度では成長できていない。2016年中にVRデバイスが思ったより普及しなかったことで、プラットフォームがスケールするのに必要なネットワーク効果が弱まり、全体としては当初よりも6〜12ヶ月ほど成長が遅れる可能性がある。モバイルVRの市場規模自体は今後大きくなっていくが、そこに到達するまでには思っていたよりも時間がかかりそうだ。

モバイルVRの市場規模自体は今後大きくなっていくが、そこに到達するまでには思っていたよりも時間がかかりそうだ。

SonyのPlayStation VRや近日中に発売予定のWindows 10 VRヘッドセットは、消費者向けの価格帯とパフォーマンスで、”Enthusiast”(400ドル未満のデバイスを購入する人)のニーズに応えるプロダクトとして今後VRの成長を支えていくだろう。特にWindows 10 VRは、インサイド・アウト方式の(HoloLensから引き継いだ)トラッキング機能を備えており、価格も299ドルに抑えられているということからゲームチャンジャーになる可能性がある。さらにユーザーはVRのためにPCを買い換える必要もないため、Windows 10 VRは本当に消費者向けのプロダクトだといえる。

FacebookとHTCのプロダクトは高価で、プラットフォームのシステム要件も厳しいため、SonyやMicrosoftによって、ボリュームの少ない”Specialist”市場(プラットフォームを含むシステムの合計価格が1500ドル未満)へと追いやられてしまう危険性がある。このニッチな市場は金持ちで溢れているが、一般大衆へプロダクトを普及させたいとするならば価格面で再考が必要になる。

名ばかりのAR

Pokémon GOの成功をうけ、AppleのTim Cookは同社が「ARに夢中になっていて、長期的にも(中略)AR市場への投資を続けたいと考えています。(中略)ARは大きな市場になる可能性を秘めています」と話していた。GoogleのSundar Pichai、FacebookのMark ZuckerbergMicrosoftのSatya Nadellaも口を揃えて早期AR市場の勝者はPokémon GOだと認めている。

しかしARが大衆市場を攻略するには5つの大きな課題をクリアしなければならない。

  • ヒーローデバイス(Apple製かどうかに関わらず、Apple製品のような品質のデバイスを指す)
  • 丸1日もつバッテリー
  • モバイルデータ通信
  • アプリのエコシステム
  • 通信会社によるデバイス代負担

ヒーローデバイスとはどのような見た目でいつ頃登場するのか、ということにばかり目が向けられているが、そのほかにも特に難しい課題が2つほど上記のリストには含まれている。

まずバッテリー技術に大きなブレイクスルーが起きないと、高度なARソフトを動かせる軽量スマートグラスは、モバイルバッテリーや交換用バッテリー無しに1日中稼働できない(これはエンタープライズ向けプロダクトとしては問題にならないが、消費者には嫌がられる)。これは大きな問題だ。さらに、デバイスがある程度普及する前に、新しいプラットフォーム向けのアプリ開発に注力するというのは、ディベロッパーのエコシステムにとって大きなリスクとなる。これは新しいプラットフォームがいつも直面しなければならない、卵が先か鶏が先かという問題だ。

それではApple、Google、Facebook、Microsoftといった巨大テック企業、そして大きな成長が見込めるARスマートグラス関連のスタートアップはどうすればよいのか?

本当のAR

モバイルARは前述の5つの課題を比較的短期間で解決し、大衆に浸透していくだろう。Mark Zuckerbergも同じ考えのようで「スマートグラスのように顔に装着するものではなく、スマートフォンこそが消費者向けARプラットフォームの主流になり、さまざまなAR機能が広く利用されるようになるでしょう」と語っていた。

スマートフォンは、1日中もつバッテリー、モバイル通信、アプリのエコシステム、通信会社によるデバイス代負担という、5つある課題のうち4つを既にクリアしている。さらに恐らく読者の多くは、この記事をヒーローデバイス(iPhone、Samsungや他社製のAndroidスマートフォン)で読んでいるころだろう。フルARデバイスになる上で、現状のヒーローデバイスに欠けているのは、センサーとソフトウェアくらいだ。

Pokémon GOからはモバイルARの本当の可能性を垣間見ることができる(業界の中にいる人はPokémon GOがARだと認めていないが)。そしてGoogleがLenovoと共同でローンチしたTango対応のスマートフォンが、本当のモバイルARに向けた第一歩となった。ヒーローデバイスとしての雰囲気はそこまで感じられないが、少なくとも成長スピードが弱まっているスマートフォン市場に再びイノベーションと成長を呼び起こす上でAppleやSamsungといった企業が利用できるテック業界の方向性を、このプロダクトからは感じ取ることができる。

そしてここで、買い替えサイクルというモバイルARの秘密兵器が顔を見せる。

買ったあとは無料

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VR・AR対応機器の数(単位:百万台) 出典:Digi-Capital

先進国のモバイル市場はほぼ飽和状態にあり、特に必要でもないのに定期的にデバイスを買い替えている消費者の存在に支えられている。なぜか理由はわからないが、みんな定期的にデバイスを買い替えているのだ。しかしこの買い替えサイクルも、2年間から3年間へと少しずつ伸びており、AppleやSamsungのような企業の頭を悩ませている。

10年間近く予想を上回り続けたiPhoneの販売台数・売上も昨年下落した。SamsungのKim Gae-younは以前「市場が停滞しても、何か大きな失敗をしないかぎり最終利益は確保できるでしょう」と話していたが、これは同社がGalaxy Note 7を投入する前の話だ。スマートフォン市場は既に成熟しており、再び成長するためにイノベーションを必要としているのだ。

モバイルARの分野において、Appleは主要テック企業の中で最も優位に立っている。

上記のような背景を考えると、AppleがMetaioを買収したのも偶然ではない。現在Apple社内で密かにプロジェクトに取り組んでいるMetaioのチームについては、業界内でさまざまな憶測が飛び交っている。同様にSamsungのSung-Hoon Hongも、同社の「視覚化エンジン」を利用することで、「触れられそうな」くらい「本当にリアルな」ホログラムをつくりだすことができるほか、ARはVRよりも「ずっとうまみのあるビジネス」になり得ると話していた。またQualcommのSeshu Madhavapeddyは、同社のフラッグシッププロセッサーによって、場所をとらずバッテリー効率が大幅に上がったスマートフォンベースのARが実現できると話す。

AppleとSamsungはモバイルARに関する具体的な計画を発表していないが、私たちは両社がAR対応スマートフォンを2018年(上振れで2017年、下振れで2019年)中にローンチするのではないかと考えている。その他の大手スマートフォンメーカーも同じようなスピードで開発を進めていくだろう。2017年中にARスマートフォンがローンチされる可能性もある一方で、もしもiPhone 7sとGalaxy S8が通常のスマートフォンとして今年発売されれば、恐らく来年iPhone 8とGalaxy S9の登場とともに大衆向けモバイルARは黎明期を迎えることになる。

スマートフォンを利用したモバイルAR戦略の良いところは、消費者が何も新しいことをする必要がないという点だ。いつものようにiPhoneやSamsung製のデバイスを買い換えるだけで良い。全てうまくいけば、ARスマートフォンはモバイル市場を蘇らせる原動力となる。新たな視点で世界を見ることができる魔法の窓を手に入れられるのに、従来のスマートフォンを購入したいと思う人はいないだろう。

待ちに待ったスマートグラス

しかし私たちが待ち望んでいる”本当の”ARスマートグラスはいつ誕生するのだろうか?

とにかくスマートグラスが欲しいという人は、ODGMetagが今年中に発売を予定しているプロダクトを購入できるが、この分野で前述の5つの課題全てが解決されるのは2019年以降になるだろう。そのため大手スマートグラス企業は、モバイルバッテリーいらずのスマートグラスでスマートフォンを完全に代替し、アプリのエコシステムが整うまでは、エンタープライズ市場(合計システムコストが1500ドル以上)や”Specialist”市場(1500ドル未満)にとどまることになると考えられる。つまりスタンドアローンのスマートグラスは、消費者がどうせ購入するであろうスマートフォンとは別物の贅沢品として、向こう数年のうちに富裕層向けの市場を築いていく可能性があるのだ。そして一般大衆への普及に向けた転換期は、スマートフォンの売上をスマートグラスが直接奪いはじめるころに訪れるだろう。

AppleやSamsungなどのスマートフォンメーカーも、モバイルARの延長としてスマートグラスの分野に少し遅れて(Robert Scobleの情報が間違っているとすると)参入するかもしれない。もしかしたらスマートウォッチのように、スマートフォンの(今回はかっこよくてディスラプティブな)周辺機器としてローンチされる可能性もある。GoogleやFacebook、Snap、中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)も今後この分野で大きな役割を担っていくことが期待される。

結局どうなるVR・AR?

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VR・ARの市場規模(単位:10億ドル) 出典:Digi-Capital

市場は今後さまざまな方向へ進んでいく可能性もあるが、大手企業の戦略について考えてみよう。今後戦略が変わることもありえるので、私たちはそのときの状況を見て、新たな情報を発信していく予定だ。

Oculusを20億ドルで買収し、追加で少なくとも5億ドルの投資を行って以降、FacebookはVR・AR業界で最大の投資家となった。さらに同社は、OculusをPCとモバイル部門に切り分けそれぞれのプラットフォームを発表しており、ここからFacebookの今後の動きを読み取ることができる。OculusのPC向けVR部門は、値段の高さもあり”Specialist”と”Enthusiast”市場にフォーカスし続け、Facebookのようなサイズの(何億から何十億というユーザー数を誇る)ビジネスにはならないだろう。またFacebookは、OculusのPC向けVR部門をハイエンドなテストの場として手元に残し、モバイルVR・ARビジネスをサポートするような役割を与えることができるほか、同部門を(Googleから独立したNianticのように)スピンアウトさせたり、ほかの事業と統合(ハイエンドPC向けVR市場をまとめあげるような存在に)したり、完全に売却したりする可能性もある。

OculusのモバイルVR部門は、SamsungのGear VRアプリストアを運営し続け、Gear VRのイノベーションを加速させる原動力となるような立場にいる。CEOのMark ZuckerbergがモバイルARへの熱意を名言しているFacebookは、スマートフォンメーカーではないため、AR市場でも本来のソフトウェア企業として力を発揮していく可能性がある一方で、Snapの後を追うような最近の動きをみると、Facebook版”Spectacles“が登場してもおかしくない。

ハードウェア、ソフトウェア、アプリストア、ディベロッパー、小売店舗という、Appleが持つエンドツーエンドのエコシステムを考慮すると、同社はモバイルARの分野において、主要テック企業の中で最も優位に立っている。ARに強い感心を示しているTim Cookのもと、Appleの動きは謎に包まれているが、同社に必要なのは、追加のセンサー、Metaioのソフト、そして真剣な思いくらいだ。

前述の通り、私たちはAppleが来年中(上振れで2017年、下振れで2019年)にARスマートフォンをリリースすると予測している。iPhoneユーザーはいずれにしろ新製品を買うことが予想されるので、AR対応iPhone購入にあたって発生する追加コストはゼロだ。Appleはアプリやディベロッパーのエコシステムの成長にも力を入れているため、長期的に見たAR分野での同社の動きとしては、iPhoneの周辺機器としてスマートグラスをリリースするというのが必然的なステップだろう。しかしAppleがスマートフォンの代替製品として、スタンドアローンのスマートグラスをローンチするという大胆な戦略をとるとはまだ思えない。繰り返しになるが、これはRobert Scobleの情報が間違っているという仮定の上に成り立っており、そうでなければ今年中にApple製のスマートグラスが登場する可能性もある。

Galaxy Note 7の事件があったとはいえ、Samsungは今後もモバイルVRの分野の主要プレイヤーとして活動を続ける可能性が高い。しかしFacebookがGear VRのアプリストアを運営しているため、SamsungがモバイルVRエコスステム全体を自社で整備していくとは考えづらい。モバイルARについては、ハードウェア企業としてのルーツに回帰し、アプリやソフト面ではパートナー企業に頼りながら、Appleと同じようなタイミングで新製品をローンチする可能性がある。また長期的には、Appleのようにスマートフォンの周辺機器としてARスマートグラスをリリースすると考えるのが妥当だ。

MicrosoftのSatya Nadellaは、高スペック・高価格を理由にHoloLensのAR・MRをエンタープライズ市場に向けて売り出そうとしているため、HoloLensがコンシューマー市場に登場するまでにはしばらく時間がかかるだろう。そのため、HoloLens上でMinecraftをプレイできるとしても、あくまでそれは職場の”研究”の一環としてしか実現しない。一方でインサイド・アウト方式のトラッキング機能を搭載したMicrosoftのWindows 10 VRは、低価格で強力なシステムも不要なため、PC・コンソール向けVR市場のゲームチェンジャーとなるだろう。さらにこれまで通り、HP、Dell、Lenovo、Acer、Asusといった企業が同社のハード面を支える。

またコンソール向けVRビジネスの拡大に向けて、Xbox One ScorpioにWindows VRヘッドセットがバンドルされる可能性が高い。ここまで製品が充実しているにも関わらず、Minecraft(人気ゲームだがプラットフォームではない)を除くと、Microsoftは特にモバイルVR・AR関連の取り組みは行っていない。明確な戦略が発表されない限り、Satya Nadella下のMicrosoftは、Steve Ballmer時代のMicrosoftがスマートフォンの商機を逃したように、モバイルVR・ARへのプラットフォーム移行のチャンスを逃してしまう危険性がある。

Google Glassの失態後、GoogleはVR・ARの分野において、いかにもGoogleらしい動きをとっている。つまり全ての分野をカバーしているのだ。VRの”Explorer”向けに低リスクでVRを試せるCardboardを販売している一方、同社のDaydream Viewは(Google製かどうかに関わらず)モバイルVR界を引っ張っていくようなプロダクトになる可能性を持っている。またTangoでの取り組み(自社製・パートナー企業製どちらも)によって、Googleは間もなく起きるであろうモバイルAR革命の最前線にいる。

しかし今後、モバイルVR・AR市場でApple対Googleという構造が出来上がり、最終的にはiOS対Androidと同じような状況になる可能性もある。つまり、高い利益率を誇るエンドツーエンドのモバイルARエコシステムを持つAppleと、コアとなる検索広告・Google Playの収益拡大を目的としたオープンで巨大なエコシステムを持つGoogleが対決することになる可能性があるということだ。消費者にとっては、どちらが勝利しても良い結果が待っている。またTangoの技術を使って、VR用にTangoとDaydreamを統合したシステムができるのではないかという噂もあるが、その実現には密閉型の現状のDaydream Viewに物理的な改変を加える必要がでてくるだろう。一方Google Glass 2について何か判断するにはまだ早過ぎる。

コンソール・PC向けVR市場では、SonyがPSVRで同社のコアとなるゲームからの売上を伸ばしていくだろう。一方HTCのCher Wangは、一般消費者がHTC Viveにアクセスしやすくなるように、価格面で新たな施策を打ち出すかもしれない。さらに同社はFacebookのように、PCとモバイル両方の市場を狙ってモバイルVRの分野に参入していく可能性もあるが、この分野でスケールするにはHTCのコアとなるスマートフォン市場でのシェアを伸ばさなければならない。さらに、今年中のローンチが予定されている一体型VRヘッドセットプロジェクトAlloyで、Intelも”Specialist”市場を震撼させようとしている。

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VR・ARの長期的なビジネスモデル 出典:Digi-Capital

最近盛り上がってきている(Snapを含む)VR・ARスタートアップの話はどうなっているんだと考えている人もいるだろうが、その点に関しては次の記事で。いずれにしろVR・AR市場はここから右肩上がりで成長していく。

2017年のはじまりはじまり。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

デトロイトの美術館がGoogle Tangoを利用して展示物の由来や歴史情報をARで加える

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拡張現実の話は最近ますます騒々しいが、GoogleのTangoはその騒ぎにまだ加わっていない。それどころか、この技術をサポートしている二つめのハンドセットASUS ZenFone ARは、先週CESで発表されたばかりだ。

でもTangoには、消費者製品に載ること以外にも、生きる道がありそうだ。Detroit Institute of Arts(デトロイト美術館, DIA)が、美術館に来る人たちの関心を高める方法を、テクノロジーの分野に見い出している。それは、バルセロナの国立カタロニア美術館(Museum Nacional d’Art de Catalunya)の、MWC(Mobile World Congress)とのタイアップ事業に続く動きだ。

そのときと同じく、展示を開発したのはAR専門企業を名乗るGuidiGoだ。DIAの展示はLenovo Phab 2 Proを利用して、同美術館の歴史的展示物に、それらの時代背景情報などを加え、いわゆる‘生きた歴史’を見せる。たとえば、次のようなものを:

  • エジプト展示室では来館者がデバイスを2000年前のミイラの上に掲げると、その内部の骨格のX線画像が見られる。
  • ベージュ色の石灰岩の彫刻を見ているときは、デバイスの画面に、数千年前のアッシリアの宮殿を飾った元の鮮やかな色が表示される。
  • イシュタル門の壁の前に立つと、来館者は古代バビロンの門のデジタルな再現の中を歩いて通ることができる。

Lumin(ラテン語で‘光’を表す)と名付けられたこの特別展示は、1月25日に始まる。来館者からのフィードバックに基づいて、展示を増やすことも計画している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Touch Surgeryは手術の教育訓練に拡張現実を大々的に利用、手術室で術中の医師のガイドにもなりえる

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外科医に、それぞれさまざまな特定の手術手順を教育訓練することは、費用もかかり困難だ。ロンドンのTouch Surgeryは、200種以上の手術手順の、スマートフォンやタブレットの上で行う教育訓練プログラムを作った。そしてCESでは、新しいタイプの、深く没入的な手術の教育訓練法…手術室でのアシスタントにもなりうる…を発表した。それは、スマートグラス(眼鏡)DAQRIと、Microsoftの混成現実(VR/AR)技術HoloLensを使用する。

“外科医たちと協働して今日最高の手術手順をさらに最適化およびスケールアップできれば、全世界の患者にとって安全な手術の教育訓練と実施が可能になると信じている”、と語るのはTouch SurgeryのCEO、ドクターJean Nehmeだ。“これまで、教育訓練のための出力先はモバイルデバイスだった。2017年は、新たなパイプラインにより、拡張現実のプラットホームも利用できる。

今週ラスベガスで行われているCESでは、同社はその拡張現実を初めてテストしている。

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Touch Surgeryの教育訓練コンテンツは、タップやスワイプという手術動作とはあまり関係のない手の動きでシミュレーションをするスマートフォンから、本物の手術室へ持ち込むことが重要な課題だ。外科医が手術用メスやそのほかの鋭利な器具を取り上げたまさにそのときに、これから始まる手術を助ける適切なARオーバレイが加われば(右図)、大いに助けになるだろう。

あまりにも未来的な話に聞こえるかもしれないが、手術中の外科医がHololensを装着している姿は、十分ありえるとぼくは思う。ARによるリアルタイムの教育訓練が適切なら、複雑な手術における失敗も防げるだろう。しかしただしそのときには、医師が教材や教育訓練システムの使い方を誤らないようにする、という別の課題が存在する。また、上のGIF画像を見たかぎりでは、ARが術中の手の上を浮遊しているのが気になる。

拡張現実の、手術室劇場での上映は、まだきわめて初期的段階だ。しかしそれによって手術がより安全迅速になり、合併症も減らせるなら、その将来の利便性を疑う理由はない。今は、自分が手術室に今いる執刀医になったつもりで、“ちょっとHololens持ってきて”、と言ってみたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AsusのZenFone ARはGoogle DaydreamtとTangoの両方を搭載した世界初のスマートフォン

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リークが多くてサプライズをぶっ壊したが、CESのステージに立ったAsusは、GoogleのVRプラットホームDaydreamと、同じくGoogleの3D AR*プラットホームTangoの両方を世界で初めてサポートするスマートフォンZenFone ARを発表した。〔*: 3Dとは、奥行き(深度, depth, z軸方向)情報もあること。〕

このデバイスはQualcommの最新機Snapdragon 821プロセッサーを酷使し、つねに充実した仮想/拡張現実体験を提供するためにRAMを6GB(!!!)搭載している。ディスプレイは5.7インチSuper AMOLED、2560×1440の解像度だ。

同社のTriCam(三つのリヤカメラ)システムは23MPのカメラを誇り、モーションセンス(動きセンサー)と奥行き追跡機能を持つ。カメラのレイアウトは、Lenovo Phab2 Proなどに比べるとおとなしい。

Google Daydreamによるモバイル上の仮想現実はヘッドトラッキング(プレーヤー、ビューワーの頭の動きや方向を追尾)の遅延が少なくてインタフェイスが統一されている。Tangoは奥行き感知機能をスマートフォンに持ち込み、スマートフォン上に奥行き感を伴う拡張現実を実現する。

TangoとDaydreamがおもしろいと思われるのは; ヘッドセットを着けないモードでは、Tangoが三軸(x, y, z)の位置情報/位置追跡を提供すること。ただしGoogleが強調しているように、Tangoの機能をDaydreamの中で利用〜実現できるわけでなない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VR・ARの普及に向けたデモの重要性

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【編集部注】執筆者のTim Merelは、Eyetouch RealityDigi-Capitalのファウンダー兼CEO。

もしもこれまでにVRやARという言葉を耳にしたことがないとすれば、あなたが住む島にはWi-Fiが飛んでいないのだろう。一方で、VRやARのことを知っていても実物は見たことがない、という人はたくさんいる。つまりVRやARが一般に普及するためにはデモが欠かせないのだ。過去のデジタルプラットフォームは、いかに大衆の心を認知から行動へと動かしていったのだろうか。

AKQAのファウンダー兼会長であるTom Bedecarreは「新しいテクノロジーは似たような過程を経て一般に普及していきます。最初のお客さんになるイノベーターやアーリーアダプターをひきつけるのは比較的に簡単ですが、垣根を超えてアーリーマジョリティやそれ以外の消費者の心を掴むのは大変難しいことです」と単刀直入に話す。

360度動画でさえ、高品質のVR・ARアプリを使って初めて本当の驚きや喜びを体験することができることを考えると、VRやARが一般に普及するまでには大きな壁を超えなければいけないとわかる。AR・VRの全てを体験するためには、実際にスコープを装着しないといけないのだ。言い換えれば、「これこそが本当の立体映像だ、この野郎」といったところか。

それではVR・AR企業は、どのようにしてアーリーアダプター以降の消費者にプロダクトを体験させているのだろうか。

無料=なかなかの価格設定

New York Timesはこれまでに、100万個以上のGoogle Cardboardsを読者にプレゼントしてきた。マクドナルドは”Happy Goggles“と名付けられたセットで、VRヘッドセットに変形するボックスを配布し、コカコーラも複数本入りのパッケージで同じようなキャンペーンを行った。

紙箱からアップグレードしたものだと、SamsungはVR対応の携帯電話にGear VRヘッドセットを無料でバンドルした結果、「何百万人ものユーザーにGear VRを配布し、100万人以上の月間アクティブユーザー」を獲得したと同社の広報担当者は話す。さらにSamsungは店頭デモも積極的に行っており、「アメリカ国内で1万5000軒もの店舗」にデモ機を導入した。VerizonもPixelの先行予約者に対して、GoogleのDaydream View VRヘッドセットをプレゼントし、中国のOnePlusも携帯電話とセットで3万台ものVRヘッドセットをこれまでに配布してきた。

ハイエンドのパソコンやコンソールにVRヘッドセットが無料でバンドルされることはないだろうが、Microsoftが新たに発表したWindows 10用VRヘッドセットの登場で、ハイエンドVRシステムの価格は今後下がっていくことが予想される。

一にも二にも実体験

Sony PlayStation Magic Labのトップを務めるRichard Marksは、「ユーザーに実際にVRを試してもらうというのは極めて重要です。というのも、VRで得られる体験は、ほとんどの人がこれまでに他のメディアで経験したものとは比べ物にならないですからね。これまでに私たちは40万人以上を対象にデモを行い、体験した人には友人にも宣伝するようお願いしてきました。また、PSVRを購入した人全員に無料のデモディスクを配布しているほか、VRヘッドセットを持っている人もそうでない人も一緒に遊べるよう、非対称マルチプレイゲームも併せて配布しています」

HTCで部長を務めるPearly Chenも、Viveをユーザーに試してもらうことの重要性を強調している。「百聞は一見にしかずという言葉の通り、VRの素晴らしさを伝えるにあたって、実際に消費者にVRヘッドセットを装着させて、彼ら自身の目でVRを体験させるよりも良い方法はありません。HTCでは、2015年の半ばからVive World Tourと呼ばれるプロジェクトに取り組んでおり、世界の主要都市や大学、イベント、展示会などを巡りながら、製品を宣伝すると共に、VRの普及に向けた草の根活動を行い、消費者からのフィードバックを集めています」

「また、引き続き大手小売店とのパートナーシップを深めていき、アメリカ国内で言えばMicrosoftストアGameStop、MicroCenter、中国だとSuningやGuomei、インターネットカフェなどにデモステーションを設置していく予定です。さらに台北には、多くの人にVRを体験してもらえるようなエンターテイメントセンターとしてVive Landをオープンしました。」

一般大衆向けのコンテンツやアプリケーションをつくる際には、どうすれば多くの消費者にその存在を知らせ、トライアルの効果を行き渡らせることができるのだろうか?

HTCは自社のプロダクトを消費者に届けるだけでなく、もっと広い視野で業界を眺めている。「VRエコシステム全体の発展に寄与するため、1億ドル規模のファンドであるVive Xを利用し、VRに関する全ての人やモノのためになるようなビジョンを持った企業をサポートしています」

AR・VRを利用したサービスを提供する教育系スタートアップのzSpaceは、店頭でのトライアルに関してもっと積極的なアプローチをとっており、ユーザーが店舗を訪れるのではなく、店舗がユーザーのもとを訪ねる仕組みを構築した。彼らはデモ環境を整えたバスを複数台用意し、アメリカ中の学校を訪れているのだ。CEOのPaul Kellenbergerは「私たちはこの方法に効き目があるからやっているんです。このプロジェクトによって、教師や生徒は遠い距離を移動したり、試したこともないシステムを買ったりする必要がなくなります。さらに、私たちのプロダクトの協力的な側面もあり、学校を取り囲む人を含めた教育コミュニティ全体が、その効率性を感じてくれています。また、このプロモーション活動のリターンはとても大きく、規模の大きな学校からの注文の中には、バスツアーがきっかけとなったものもありました。つまり、潜在的なユーザーがいる場所を実際に訪問し、トライアルのプロセスを簡素化することで、利益に直接的な影響があることがわかったんです。これは私たちのビジネスが成長する上で、とても大きな要因となるでしょう」と話す。

ポケモンゲットだぜ!

これまでに市場に出ているARスマートグラス(Microsoft HoloLens、ODG、Metaなど)のほとんどは法人向けのため、現状の製品を消費者向けのトライアルで試すのは時期尚早だ。しかしPokémon GOのおかげで、(業界の中にいる人はPokémon GOがARだと認めていないものの)既に大衆はARの存在を知っているばかりか、実際に体験までしている。Apple CEOのTim CookやGoogle CEOのSundar Pichai、さらにFacebook CEOのMark ZuckerbergMicrosoft CEOのSatya Nadellaも口を揃えて早期AR市場の勝者はPokémon GOだと認めている。つまり、これまでにPokémon GOが一時は5000万人という恐ろしいほどの月間アクティブユーザー数を記録したかたわら、全世界の(何億人とは言わずとも)何千万人という消費者が、自分はARを試して気に入ったと感じているのだ。

大きな問題は、今後数年のうちにスマートグラスが消費者市場に参入する際に、Pokémon GOによって広まったARの認知を、”本当の”ARプロダクトがどう利用できるかということだ。願わくは(失敗に終わった)Google Glassや(好評だった)SnapのSpectacles両方から得た教訓が、次世代のプロダクトに反映されてほしいものだ。

Snapの戦略勝ち

SnapのSpectaclesへの臨み方は、素晴らしいマーケティング戦略に他ならない。Spectaclesは、Google Glassによって数年間に渡りダメージを与えられた消費者のARに対するイメージを、(Spectaclesは本当の意味でのARではないとしても)ほぼ一手に回復することに成功した。

Spectaclesは一般消費者向けのカッコいいガジェットであり、ディストピア的未来を象徴するものではない。また、数に限りはあるがエリート主義的ではなく、Spectaclesを入手するために何時間も車を運転して自動販売機のもとを訪れる覚悟がある人であれば、(選ばれた”Glassholes“だけでなく)誰でも手に入れることができる。機能にこだわらなければ、Spectaclesの130ドルという価格も競合製品に比べるとずっと低い。

お金をかけないマーケティングの成功やSpectaclesビデオがバイラルに広がった結果、Snapchatの1億5000万人を越えるデイリーアクティブユーザーは、Spectaclesを使って撮影されたビデオを通して(実物をまだ手にできていなくても)自分がSpectaclesを使っているような体験をすることができる。さらにアーリーアダプター(一部からは課金ベータテスターとも呼ばれている)から収集したデータを利用し、SnapはSpectaclesをハード・ソフト両面から改善し、フルローンチに向けて準備を勧めている。CEOのEvan Spiegelとは大した男だ。

Call me maybe

消費者向けのARプロダクトが成功する上で重要な要素が次の5つだ。ヒーローデバイス(Apple製かどうかに関わらず、Apple製品のような品質のデバイスを指す)、モバイルデータ通信、丸一日もつ電池、(初期のスマートフォン同様)アプリのエコシステム、そして通信会社によるデバイス代負担だ。通信会社が徴収するデータ使用料と、そこから捻出されるデバイス代が料金面での鍵となってくるが、実際に通信会社は消費者がVRを体験する上でどんなことができるのだろうか?

Verizon Venturesでディレクターを務めるEd Ruthは、ARプロダクトが消費者市場に参入する準備ができた段階で、通信会社は大きな役割を担うことになると考えている。「店頭でのトライアルを超えて、通信会社は全国の店舗網を利用し、最終的にはスマートフォンの普及と同じやり方でARプロダクトを消費者のもとに届けることができる可能性があります。この新たな市場から得られるデータ通信料が、モバイル通信の成長を再活性化していくことになるでしょう。特に360度動画だけで考えても、通常のビデオの4~5倍の通信量が消費されることになります」と彼は話す。

改めて強調したいコンテンツの重要性

Baobab StudiosのInvasionAsteroidsといったハイエンドVRコンテンツから、Eyetouch RealityのようなVR・AR機器向けの次世代ビジュアルメッセージサービスなど幅広い可能性がある中、一般大衆向けのコンテンツやアプリケーションをつくる際には、どうすれば多くの消費者にその存在を知らせ、トライアルの効果を行き渡らせることができるのだろうか?

Penrose StudiosでCEOを務めるEugene Chungは、業界全体の動向について「新しい芸術的な表現方法としてのVR・ARの発展というのは、これまで前例がありません。このような大きな転換が最近起きたのは、動画関連の技術が進化したときでした。誕生したばかりのハードウェアがまだ市場に浸透していないため、今の段階ではVR・ARの本領が発揮されていませんが、その状況もかなりの速さで変わっています。PlayStation VRやGoogle Daydreamの誕生で、消費者が手にしやすいVRの市場がこれまでにないほど成長しています。テクノロジーに詳しい人の大部分は既にVRを体験していますが、消費者の大多数はまだVRに触れられていません。一般消費者がVRを体験してその力を理解すれば、普及率も上がってくるでしょう」と語っている。

Sketchfab CEOのAlban Denoyelは「ユーザーが自分でVRコンテンツをつくれるようになれば、普及率は上がってくるでしょう。家族や休暇の様子をVR用に(360度もしくは3Dで)撮影すれば、きっとVRシステムを使ってそれを視聴したいと思うはずです。そのため、ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツがVR普及の鍵となるでしょう。ターゲット層へのアプローチに関しては、ソーシャルネットワークのように、既にターゲットがいる場所へコンテンツを届けることが大切になってきます。だからこそ、アプリを介すことなくクリエイターから消費者へ直接コンテンツが提供できるWebVRが重要視されているんです」と話す。

若者にフォーカス

一般消費者には、あなたの姪から祖母まで色んな人が含まれている。しかしFacebookやSnapchatなど最近のテック界での成功例を見ると、大衆にターゲットを移す前のローンチ時に、若者の支持を集めたサービスが多いことに気がつく。そのため、VR・AR界も一般消費者にアプローチする前に、Pokémon GOやSnapのSpectaclesのように、流行に敏感な若者にプロダクトを試させる必要があるのだ。古い言葉で言えば”Ditto(同じ、前例にならって)”ということだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ARを用いた治療が、幻肢痛を和らげる

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幻肢痛は、不思議な神秘的な病だ:切断手術を受けた人たちが、そこには存在しない腕や脚にずきずきとした痛みや急激な痛みを感じる — 実際には存在しないということが治療を極めて困難にしている。ところが、拡張現実を用いた新しいタイプの治療が、最も難治の幻肢痛でさえ和らげるのに驚くほど効果的なのだ。

このAR治療法は、最初スウェーデンのチャルマース工科大学のMax Ortiz Catalanによって2014年に提案されその最初の、非常に有望な臨床試験を完了したばかりだ。チームは、幻肢痛が慢性化し他の治療法では効果のなかった14人の切断患者を選択した。

患者たちには、かつて失われた手を制御していた筋肉への信号を検出するために、筋電センサーが装備された。これらの信号は追跡され、分析され、仮想環境での動きにリンクされた — 画面上の手を開いたり、手首を捻ったりするのだ。

この初期位置調整が完了すると、仮想腕がライブウェブカムの患者の画像の、残っている腕の先に重ねられた。ユーザーが動きを考えると、仮想腕が動く。半月ごとに12回行われたセッションでは、患者たちは仮想腕を様々な場所に動かすことや、センサーをつかってレーシングゲームをすること、その他のことを求められた。

驚くべきことに、12セッションの終わりまでに、痛みは約半分に減り、痛みによる日々の活動や睡眠の妨げも、同様に減少したと報告された。4人の患者は鎮痛剤の量が減り、そのうちの2名は81パーセントの削減を行うことができた。半年後でも、その改善は継続しており、治療の効果が続いていることが示された。

「結果はとても勇気づけられるものです。特に、これらの患者が過去に最大4つの異なる治療法を試みて、満足のいく結果が得られていなかったことを考慮すると」とCatalanはニュースリリースで述べている。「また痛みが最後の治療に向かって継続的に減少していることもわかりました。痛みの軽減にプラトーがなかったという事実は、より多くのセッションでさらなる改善が達成できることを示唆しています」。

もしARの中で仮想手足を動かせば痛みを和らげることができるという考えが、奇妙なものに思えたとしても、安心して欲しい。それは実際に効果があるのだ。とはいえ、幻肢痛はあまり理解が進んでいない現象であり、時に治療の有効性は、その不思議さと見合うものだったりする。

幻肢に感じるかゆみも、また問題である:手足がないので掻くことができない痒みがそこにあることが、どんなに気の狂わんばかりのことかを想像してみて欲しい。ソリューションとして鏡を置くことで、無くなった手足がそこにあるようにみせることで、効果が出る幸運な人もいる。そして誰かがそれを掻くと、幻肢の痒みが消えるのだ。信じられないかもしれないが、こうした種類の鏡を使った治療法は確立された手法なのだ、必ずしも有効とは限らないのだが。

このARベースの方法は、次の論理レベルに引き継がれた鏡療法のようなものであり、この不思議ではあるがとてもリアルな状態を治療するための貴重なツールとなるのかもしれない。

次に控えているのは、同様に足を切断した30人の患者を使った更なるテストである。この最初の臨床試験についての論文はThe Lancetに発表された

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(翻訳:Sako)

MotorolaがMoto ZのTangoモジュールを出すかもしれない…むしろモジュールが合ってる技術か

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歩みは遅いけどしかし確実に、Moto Zはエコシステムができつつある。その将来性のありそうなハンドセットはしっかりとしたスペックを持ち、アドオンも多く、これまでのモジュール化ハンドセットとしてはいちばん完成度が高かった。でも、もちろん、それだけでは足りない。

Motorolaは足りないものを補うべく、デベロッパーに開放して改造を自由にし、このハンドセットの機能を充実多様化するために、ハッカソンまで開催した。

今週シカゴで行われたイベントで同社の社長Aymar de Lencquesaingは、報道陣を前に、同社のZハンドセットに近くTangoモジュールが提供されるかもしれない、と述べた。はっきりしない言葉だし、完全な発表ではないが、パートナーシップとしてはありえる話だ。

phab2

そもそも、Motorolaの親会社Lenovoは、このGoogleの拡張現実カメラ技術の、初めての実装製品を作って発売した企業だ(上図、Phab 2 Pro)。Tangoの現状は、一般消費者の購入動機になりうるほど完成度の高いものではないが、しかしそれでも、Moto Zのような多機能型スマートフォンのアドオンとしては十分だろう。

特別なハードウェア、それに新たにカメラや電池も必要とする技術だから、モジュールにするのがむしろふさわしいし、その方がインドアの3Dマッピングソフトウェアも本領を発揮しやすい。またそれによってMoto Zの、ハードウェア実験のためのプラットホームという位置づけもより確定し、今一般的な2年というスマートフォンのアップグレードサイクルとは無縁な位置を維持し続けられる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))