電話の詐欺を見抜くPindropが創業3年で早くもシリーズC、Google Capitalらから$75Mを調達

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Pindropは、電話の音声と発呼者に関するメタデータの両方を分析して、企業が電話詐欺にやられることを防ぐ。ローンチ時の2012年に調達した4700万ドルに加えて今日(米国時間1/28)同社は、Google Capital率いるシリーズCのラウンドにより7500万ドルを調達したことを発表した。

このラウンドにはGoogle Ventures、Citi Ventures、Felicis Venturesのほか、同社のシリーズAをリードしたAndreessen Horowitzと、シリーズBをリードしたInstitutional Venture Partnersが参加した。

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Pindropによると、同社の技術の主なユーザーは、保険企業、政府機関、小売企業、そして合衆国の4大銀行のうちの三つだ。これまでに同社がチェックした起呼は、合計3億6000万あまりになる。

このサービスはまず、かかってきた電話の起源(どこから)と、固定電話/セル電話/VoIPの番号など、いちばんベーシックなデータを調べる(詐欺電話はVoIPからがいちばん多いそうだ)。さらにそれに加えて、電話の音声を調べる。そのためにたとえば、周波数フィルターやコーデックのデータ、パケットロスやフレーム落ちなどを分析する。

これらのデータから各起呼のリスクプロファイルを生成する。そのプロファイルが詐欺の可能性を示唆していたら、エージェントが相手にセキュリティ関連の質問をすることができる。

Pindropによると、同社は新たな資金を国際展開に充て、また研究開発への投資も増やしたい、という。同社は今イギリスに10名の社員がいるが、今後はEMEA地域におけるプレゼンスを拡大したい。ラテン・アメリカではすでにサービスを提供しており、今年後半にはアジア太平洋地域にも市場を広げていく予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

BASEとメルカリがタッグ、最大4.5億円の出資を含む資本業務提携

左からBASE共同創業取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

左からBASE取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

今日から仕事が始まる人も多いだろうが、早速大きなニュースが飛び込んできた。ネットショップ開設サービス「BASE」を提供するBASEは1月4日、フリマアプリ「mercari」を提供するメルカリとの資本業務提携を実施したことをあきらかにした。

今回の提携に伴い、BASEはメルカリを引受先とした最大4億5000万円の第三者割当増資(マイルストーン達成による最大額)を実施する。出資比率は非公開。また元ミクシィ取締役CFOで、現在メルカリ取締役を務める小泉文明氏がBASEの社外取締役に、メルカリ プリンシパルエンジニアの長野雅広氏がBASEの技術アドバイザーに就任する。

サービス面での連携も検討中だというが、具体的には明らかにされていない。BASEでは今後採用活動やマーケティングを強化するとしている。近いうちにも採用向けのイベントなどを共同開催するほか、アプリでの送客やマーケティングなどで協力する予定だという。

同じビルでスタートしたBASEとメルカリ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏の2人が語ったところによると、両社はもともと非常に近い関係にあった。BASEは2012年に六本木一丁目にあったビルで業務を開始したが、そこはpaperboy&co.(現GMOペパボ)創業者であり、BASEの共同創業・取締役である家入一真氏が当時手がけていたプロジェクト「Liverty」や、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」のハイパーインターネッツなど、家入氏が関わるスタートアップが数多く入居していた。

2012年にZynga Japanを退任し、約1年かけて世界一周を旅行。再び起業の準備をしていた山田氏もそのビルを拠点にしていた。また両社はともにベンチャーキャピタルのEast Ventures(EV)から出資を受けることになる。そのためビルの取り壊しが決まった際の移転先も同じ、六本木にあるEVのインキュベーションオフィスだった。

もともと家入氏と山田氏は同世代(家入氏は1978年生まれ、山田氏は1977年生まれ)の起業家として、また個人投資家として親交が深かったが、これに鶴岡氏も加わるかたちで「ときどき事業の相談をしたり、お互いが人の紹介をしたりしていた」(鶴岡氏)のだという。創業当時22歳だった鶴岡氏からすればひとまわり年上で、起業家経験の長い山田氏はメンター的な存在の1人だった。今回の発表も、もともとVCなどからの資金調達に動いていた鶴岡氏が山田氏に相談したことがきっかけなのだという。

BASEの店舗数は現在20万店舗。流通総額で見れば、年間数十億円後半の規模にまで成長した。「これまで出店者を増やすことに注力してきたが、2016年からは購入者を集めるフェーズになる。購入者を集めるノウハウを持っているのがメルカリ。彼らの持っているノウハウで学べるモノがあればなんでも学んでいきたい」(鶴岡氏)。メルカリは2013年からの2年半で日米2700万ダウンロードを達成。この短期間でテレビCMを含むマーケティングも経験している、この速度で成長を遂げたスタートアップはそう多くない。

メルカリ、今後はスタートアップ出資を加速

メルカリについては、2015年12月に黒字化を達成していることを報じたばかりだが、本格的な出資はこれが初めて。山田氏は今後、スタートアップへの出資や買収を「積極的にやっていきたい」と語る。

CtoCコマースだけでなく、BASEのようなスモールBtoCのコマースを自社でやる可能性はなかったのかとも思ったのだが、メルカリの山田氏は「現在リソースの9割をmercariの米国展開に使っている。またCtoCといっても、サービスCtoCのような領域もあって幅が広い。なのでBtoCについては連携してやっていくのがいいと思っている」と語る。

またBASEについては、代表同士だけでなく、経営陣や社内のキーマンらに親交があり、文化的にも近い(小泉氏いわく「ミクシィやフリークアウト、paperboyなど出身の『ネット大好き企業』の集まり」だそう)ことも出資の動機になったという。なお今後BASEを買収する可能性についても聞いたのだが、「BtoCとCtoCなので実は全然サービスが違うし、ブランディングも違う。権限や責任を与えて自走できるのが筋肉質な組織を作ると考えている」(小泉氏)とのことだった。

FiNCがANAほか東証一部上場企業などから第三者割当増資を実施、今後は事業提携も

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スマートフォンを活用したダイエット指導サービスなどを手がけるFiNCは12月7日、ANAホールディングス、全日空商事、クレディセゾン、第一生命保険、三菱地所、吉野家ホールディングス、ロート製薬、キユーピー、 ゴルフダイジェスト・オンライン、ネオキャリア、Fenox Venture Capital、グッドパッチおよび、既存株主から第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額や出資比率は非公開。

FiNCでは今回の資金調達をもとに、人工知能による新サービスおよびプロダクト開発を行うとしている。今後はプロダクト開発に向けての人材を採用するほか、ウェルネスプラットフォームを強化するためM&Aや事業出資、マーケティングやプロモーションなどを進める。

ソフトバンクが10月に開催した新製品発表会の中で、IBMの人工知能「IBM Watson」を活用したヘルスケアサービス「パーソナルカラダサポート」(2016年3月以降提供予定)をFiNCとソフトバンクの共同開発で提供することが発表されていた。今後はこの製品や新プロダクトの開発を進めるということだろう。

またFiNCは10月にソフトバンクやANA、ネスレ日本、みずほ証券など発起人20社による「ウェルネス経営協議会」を設立すると発表している。今回の出資企業の一部はその発起人企業でもある。

予約台帳サービスのトレタがセールスフォースと資本業務提携、CRM機能を強化

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11月に累計登録店舗数4000店舗、登録社数2000社を超えたと発表している飲食店向け予約/顧客台帳サービス「トレタ」。サービスを提供するトレタは12月3日、米セールスフォース・ドットコムと資本業務提携を実施したことを明らかにした。

資本提携ではセールスフォース・ドットコムの投資部門であるセールスフォース ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施しているが、調達額やバリュエーション等は非公開。ただしトレタが公表している2015年7月時点での資本金が1億7995万円、今回の増資後の資本金は2億3991万円であることから、資本準備金に組み入れる金額を考慮しても最大でも1億数千万円程度の調達である可能性が高そうだ。

トレタは今回の資本により、営業体制や開発力の強化を図る。また具体的なスケジュールに関しては現時点では公開していないものの、セールスフォース・ドットコムが提供するクラウドCRMサービス「Salesforce Sales Cloud」とトレタの連携を進めて行くという。これにより、トレタに蓄積された顧客属性や予約行動などのデータを活用した顧客サービスを提供していく。

トレタと言えば、ITリテラシーの低い飲食店ユーザーでも利用できるシンプルさをウリにしてきた印象が強かったので、正直なところどこまでユーザーからCRMに対するニーズが高いのかはかりかねるところがあった。だが同社代表取締役の中村仁氏いわく、この1年でそのニーズは急激に高まっているのだという。

「たとえ今まで新規集客に重きを置いていた店舗でも、トレタを使ってどんどん顧客情報が貯まっていくのを見たら、それは『宝の山』だと直感的に理解してくれる。顧客情報をもっと活用したいという声は、日に日に高まっている。 ただ、CRMといっても単に『DMを送りたい』というレベルの要望にとどまっているのも事実。今回の提携を機に、より簡単で高度なCRMソリューション(による常連作り)を提案していきたい」(中村氏)

SECの新ルールで、株式クラウドファンディングがさらに近づいた

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平均的消費者、即ち非「高純資算者」が小規模な調達ラウンドで投資できるようにするアイデアは、6月以来検討されてきたが、先週発表された新たなルールによって、米国はいよいよ真の株式クラウドファンディングに近づいた。リリース全文はここで読めるが、要するに、新たな形態の投資へのドアは開かれた。

会社は、12ヵ月の期間中に最大100万ドル ― 近代の投資標準から見て大きい額ではない ― を調達できるが、資金は純資産10万ドル以下の個人からもやってくる。その個人は「2000ドルまたは年収の5%」を12ヵ月の間に投資することができ、それ以上金を持っている人は年収の10%を投資できる。「クラウドファンディングを通じて10万ドル以上の証券」を買うことはできない。

新たなルールでは、いわゆる監査要求が削除された。これはスタートアップに支払い能力があることを確認するために設けられていたもので、要求によってさらに約4万ドルの費用が加わり、最も安定したスタートアップ以外に投資家が接触する機会を明らかに阻害していた。

株式クラウドファンディングは、端的に言って、世界で最も新しく最も興味深い資金調達システムだ。すでに海外ではかなりよく知られているが、これまでSECはその拡大に対して非常に用心深かったので、今回の改訂は米国における真の株式クラウドファンディングシステムへの最大の一歩だ。では平均的スタートアップにとって、それはどんな意味を持つのか?まず、多くのスタートアップが現金を得る際に直面する、ネットワーク作りの障壁を取り除くことによって、ベンチャーキャピタルの重要性を減少させられる。しかし、金額を100万ドルで頭打ちにすることによって、SECは実質的に一つの信号システムを作っている ― 最大の調達者は伝統的VCファンドの興味を多く引けるが、小さな調達者は選択肢不足に悩まされる。

新ルールはJOBS法(「スタートアップやスモールビジネスが広い範囲の潜在投資家から資金を調達し、投資家に新たな投資機会を与える」ために作られた法律だ)の一環であり、同法の最初の成果の一つだ。

最終的に株式クラウドファンディングは、おそらく早期段階スタートアップが資金調達する主要な方法になるだろう。ほぼあらゆる人々 ― 友達から、衆愚、家族、オンラインファンに致るまで ― を巻き込むことで、人気のスタートアップは堅実なシード資金の調達が可能になり、それを元手にさらなる成功を目指せる。この裁定は90日以内に発効する ― IndiegogoのCEO Slava Rubinのような人々が、「株式クラウドファンディングがわれわれのビジネスモデルでどんな役割を演じるかを探究する」には十分な期間だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スマートトイのMoffがバンダイナムコなどから1.6億円の資金調達——新領域と米国展開を強化

ウェアラブルデバイス「Moff Band」を2014年にリリースしたMoff。同社は9月7日、バンダイナムコエンターテインメント、ORSO、TomyK(既存株主でACCESS共同創業者である鎌田富久氏の会社だ)、個人投資家を引受先として、総額1億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

Moffは2013年10月の設立。大阪市主催のハッカソン「ものアプリハッカソン」をきっかけに、ウェアラブルデバイスの開発を目指すことになった(当時の話はこちらをご参考頂きたい)。2014年秋に日米で一般発売を開始したMoff Bandは、Amazon電子玩具カテゴリーで国内最高1位、米国最高2位を記録。販売台数に関しては明らかにしていないが、Moff代表取締役の高萩昭範氏いわく手応えは好調だという。

「Moff Band」

「Moff Band」

Moff Bandは内蔵する加速度センサーとジャイロセンサーによって人の動きを感知。Bluetoothで各種デバイスと連携する。例えば手を上下に振ることで、その動作に合わせて疑似的に楽器を演奏したりできる。

プロダクトは当初“スマートトイ”という触れ込みで製品を提供してきた。その先の構想はあったが、「いきなり(機能を)てんこ盛りにしても売れない。まずはベーシックなモノをと考えた」という。そしてトイというアプローチを通じて、「『体を動かす』ということはゲーム体験として通用するということが分かった」(高萩氏)という。そのため今後は低年齢層向けのトイにとどまらないプロダクトの展開を進める。

Moff Bandで取得した動作や姿勢の情報や独自のデータ解析技術を活用し、フィットネスやヘルスケアの分野でのゲーミフィケーション化を可能にするプラットフォーム「アクティブ・ゲーミフィケーション・プラットフォーム」を構築する。またパートナーとの事業開発も強化する。株主となったバンダイナムコエンターテイメントやORSOとのサービスの共同開発をすすめるほか、米国では10月以降大手玩具チェーン店と組んでの商品展開も予定している。

なおMoffは、米国展開の強化に向けて100%子会社の米国法人である「Moff USA」を設立したことも発表している。CEOには、米AppleやAT&T、ACCESS等で事業開発・アライアンス分野のVice Presidentを歴任したAlbert B. Chu氏が就任する。

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

わずか1万DLのアプリが月商1000万円を達成する事例も——アプリ制作ツール「Yappli」運営元が3.3億円を調達

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「1年目は本当に大苦戦、月の売上は数十万円で毎月微増を繰り返すだけ。『いいプロダクトを作ったから来て使ってよ』というのでは全然ダメだった」——ノンプログラミングでアプリを制作できるツール「Yappli」を手がけるファストメディアの取材は、代表取締役の庵原保文氏のこんな重たい言葉から始まった。

同社は9月1日付けでグロービス・キャピタル・パートナーズ、Salesforce Ventures(米Salesforce.comグループのコーポレートベンチャー事業部)、YJキャピタル(既存株主でもある)、個人投資家の川田尚吾氏を引受先とした総額約3億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。出資比率やバリュエーションは非公開。

ファストメディアは、ヤフーで同僚として働いていた庵原氏と共同創業者で取締役の佐野将史氏、取締役の黒田真澄氏の3人が2011年に立ち上げた個人プロジェクトからスタート。2013年にYappliを正式公開した。

Yappliはブラウザ上で機能をドラッグアンドドロップで配置し、クリエイティブをアップロードしていくことで、ノンプログラミングでスマートフォンアプリ(iOS/Android)を作成できるサービスだ。詳細は以下の動画を見てもらえばと思う。

ジオプッシュ(スマートフォンが特定のエリアにある際にプッシュ通知を送る機能)を含むプッシュ通知にも対応し、広告配信も可能、アプリの申請も代行する。冒頭で庵原氏が語るように、プロダクト自体は——初めてデモを見たリリース時から——イケていると思った。価格も月額9800円からと比較的安価で中小規模の会社でも使いやすい。だが、クラウドサービスとしてサイト上で販売していたところで有料ユーザーはほとんど増えなかったという。

同社はYJキャピタルからシードマネーを調達していたが、サービスインから1年経たずで売上は数十万円。さすがに「これでは危ない」となって方針を転換。大手企業をターゲットに営業を始めたところ、今度は驚くように案件が取れ始めた。新生銀行や日本ロレアル、女性アパレルのアダストリアホールディングスなどが次々と自社アプリの制作にYappliを導入。3人というスモールチームだったこともあって、サービスインから1年半経たずして単月黒字を達成した。

「革新的なサービスを作って数万円で手軽にスモールビジネスに提供しようとしたが、結局市場のニーズを見ていなかった。自社アプリを求めていたのはすでに顧客を抱えている大手企業。だがいざ制作会社に相談すると1000万円単位の見積もりが来るので、容易にアプリを制作できないという課題があった」(庵原氏)。そんな大手企業にこそプロダクトが刺さったのだという。「制作会社と比べれば10分の1程度で導入が可能。またノンプログラミングでアプリを作れるというのは、ITリテラシーの低いEC担当者であっても運用できるということ。そこも評価されている」(庵原氏)

サービスに登録する法人は、無料も含めて5000社。有料ユーザー(社数非公開)の7割はアパレル関連の自社アプリやブランドアプリだという。アプリはそのブランドのファンがダウンロードすることもあって、アクティブ率が高く、売上への貢献度も大きいケースが多いという。

「ブランドアプリであれば、アプリのプッシュ通知はメールマガジンよりも効果がある。ECサイトの売上全体のうち10%程度がアプリ経由というブランドも複数ある。1社だけだが、1万ダウンロードのアプリだけで月商1000万円を達成するという事例もある」(庵原氏)。プッシュ通知の開封率(通知が来て、そのアプリを起動すること)は約30%、通知から5分以内での開封率が5〜10%あるため、タイムセールなどを積極的に行うブランドも多いという。

同社では今回の調達を契機にサイト上で提供していた低価格帯のサービスの新規募集をいったん終了する。今後は人員を拡大し、サービス開発および法人営業に注力するとしている。

マネーフォワードが10億円の資金調達、住信SBIや静岡銀行の顧客向けサービスでも連携

マネーフォワードの辻庸介社長

昨日はクラウド会計サービス「freee」などを提供するfreeeが資金調達の発表をしているが、そのライバルであるマネーフォワードも大型調達と業務提携を発表している。

自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」および会計をはじめとする中小企業向けのクラウドサービス「MFクラウド」を提供するマネーフォワードは8月25日、住信SBIネット銀行および静岡銀行との業務提携を発表した。またあわせて、住信SBIネット銀行を傘下に持つSBIホールディングス、静岡銀行、ジャフコ(既存株主)から総額10億円の資金調達を実施した。

マネーフォワードは2012年12月のスタート。ユーザー数は現在220万人。国内銀行を始め1800の金融機関に対応した自動家計簿・資産管理サービスとなっている。一方MFクラウドは会計・確定申告のほか、請求書発行などのクラウドサービスを展開。ユーザー数は40万で、全国1200以上の会計事務所への導入実績がある。

住信SBIネット銀行との業務提携では、11月をめどに同行のユーザーに対してマネーフォワードをベースにしたアプリ「マネーフォワード for 住信SBIネット銀行」を提供する。マネーフォワードではこれまでにもクレディセゾンと連携して公式の接続APIを利用しているが、住信SBIネット銀行でも公式APIを利用した連携となる。今後は各銀行向けに「マネーフォワード for ○○銀行」というかたちで各銀行ユーザー向けのアプリも提供していく予定だ。

また住信SBIネット銀行ではMFクラウドのユーザー向けに創業支援や融資、ビジネスカードの提供などを行う。さらに、SBIホールディングス傘下のSBIベネフィット・システムズとも確定拠出年金領域での新サービス開発を進める予定。

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静岡銀行との業務提携では、両社の経営資源を活用した中小企業向けの新規Fintechサービスを提供するほか、マネーフォワードユーザー向けに資産管理サービスを提供。さらに静岡銀行の業務エリアにおいて、同行がMFクラウドサービスの展開を支援する。

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マネーフォワードは業務提携に加えてMFクラウドのラインアップを拡充することも発表している。10月にマイナンバーの収集・保管サービス「MFクラウドマイナンバー」を提供するほか、今秋中に経費精算サービス「MFクラウド経費」を提供するとしている。

ヒートマップでユーザーの行動を解析する「Ptengine」、開発元のPtmindが約11億円の資金調達

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ヒートマップを軸にしたデータアナリティクスサービス「Ptengine」を提供するPtmindは、同社の持株会社であるPtmind Inc.が中国のCAC Capitalから約11億円(900万ドル)の資金調達を実施したと明らかにした。なおPtmind Inc.は2014年1月にも約6億円(500万ドル、投資家非公開)を調達している。

中国と日本からサービスを開始したPtengineだが、現在は全世界100カ国以上で利用されているという。国内ではディー・エヌ・エーやインテリジェンス、アスクルなどの大手をはじめとして、2万サイト以上の導入実績がある。

Ptmind共同創業者で日本カントリーマネージャーの安藤高志氏いわく、ヒートマップを軸にしたアナリティクスサービスでは最大のユーザー数なのだそう(同社がフリーミアムモデルでサービスを提供しているという理由もあるのだが)。「競合に該当するベンダーは20万円を超える価格でサービスを提供しているが、 我々はオンライン上で決済ができ、かつ価格は10分の1以下で利用可能だ。 予算のある企業だけでなく、小さなベンチャーから利用頂きたいと考えている」(安藤氏)

国内での直近1年間の売上高は、その1年前との比較で約7倍の成長だという。2014年後半からはその他の地域にも事業を展開しているが、現在海外ユーザー比率は全体の約3割なのだそう。2015年内には、米国にも拠点を設置する予定だ。

「品質重視」の医療情報サイトを運営するメディカルノート、ジャフコから2.5億円の資金調達

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医療情報サイト「メディカルノート」を運営するメディカルノートは7月20日、ジャフコを引受先とした2億5000万円の第三者割当増資を実施した。今後は人材を強化し、サービス開発およびコンテンツ制作大成を強化していく。

メディカルノートは病気の症状やその対策、治療法をはじめとした医療情報を掲載するサイト。記事は医師による寄稿のほか、医学生やライターによる取材記事が中心。それぞれの記事に対して、その分野に明るい医師がチェックを行うことで、信頼性の高い情報を提供するのが特徴だという。

サイトで公開されている記事数は現在約400件。寄稿や取材に協力する医師は100人以上だという。月間120件ほどの記事を掲載しているが、直近にも月間200件以上を公開できる体制を整えるとしている。

メディカルノートの設立は2014年10月。代表取締役の井上祥氏は横浜市立大学医学部を卒業し、同大学の大学院で医学教育学や消化器内科学を学んだ。そして在学中から医療書籍の編集・執筆に携わっていたが、オンラインで正しい医療情報を発信するべくメディカルノートを立ち上げた。井上氏は2015年春に大学院を卒業。そこからサービスを本格稼働させている。

「外来診療をやっているとカルテが文字通り山のように積み上がる。そうなると患者に対して1人1分の説明も難しくなることがあり、注意点を説明しても漏れてしまうということがある。またそもそも患者が知りたい情報があっても、(事前の)情報レベルが高くないと適切に質問できないということもある。そういう状況を変えたい」——井上氏は起業の経緯についてこう語る。

情報のスピードより品質を重視

先日資金調達を発表したメドレーのMEDLEYのほか、ディー・エヌ・エーのMedエッジ、サイバーバズのDoctors Me、Good Medicine JapanのcoFFee doctorsなど医療情報を提供する競合サービスは多い。これらに対してメディカルノートの強みは何なのか、井上氏は「記事と医師が結びついていること」だと説明する。

医療に関わる情報は、内容の誤りが文字通り命に関わる可能性だってあるため、正確さを求めるのは重要だ。メディカルノートでは、記事掲載のスピードを落としてでも医師によるチェックを徹底している。

ここまでなら競合サービスでも聞いた話なのだが(これすらできていない競合もあるようだが)、メディカルノートではチェックを行った医師の実名も記事に結び付けて掲載することで、記事の品質を高めようとしているという。現在は大学や病院のキーマンとなっている医師に協力を仰ぎ、より多様なコンテンツを発信できる体制作りを進めているという。

文末に掲載される医師のプロフィール

文末に掲載される医師のプロフィール

現状はマネタイズよりも「コンテンツ制作や協力者のネットワーク作りを優先する」(井上氏)という。具体的な話は聞けなかったが、井上氏は将来的な話として「今はどこにどんな症状の人がいるかも整理されておらず、患者も(症状を学ぶような)場所に困っている。患者に適切なソリューションをどう提供していくかは考えて行きたい」と語った。また資金調達を行う以上イグジット戦略も持っているが、「IPOは結局のところ手段でしかない。この事業を広げて社会に価値を出すことが重要」(井上氏)だという。

メディカルノートでは、今秋をめどに症状や地域に応じて医療機関を検索できる機能を提供する予定。「病気について検索してやってきた人が、最適な病院に行きつけるようなサービスにしたい」(井上氏)

医療系スタートアップのメドレーが三井住友海上、MRT、グリーから3億円を調達

メドレーのメンバーら。左から2番目が石崎氏、3番目が
5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

医療系スタートアップのメドレーは6月30日、三井住友海上キャピタル、MRT、グリーおよび個人株主を引き受けとする総額3億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

今回メドレーに出資したMRTは、外勤紹介サービスの「Gaikin」、転職紹介サービスの「career」(いずれもMRTのコーポレートサイトで提供)、医局向けサービス「ネット医局」、ヘルスケア情報サイト「GoodDoctors」など、医療従事者向けのサービスを展開している。今後は、ジョブメドレーとGaikinのサービス連携、医師や医療従事者のネットワーク拡大、新サービスの共同開発を進めるとしている。

メドレーは2009年の設立。代表取締役の瀧口浩平氏は家族のがん治療の経験から、医療現場の効率化、情報の非対称性といった課題に気付き、それを改善すべく医療領域で起業した(同士は学生時代にも一度起業しており、これが二度目の起業となる)。

同年11月には医療・介護業界専門求人サイトの「ジョブメドレー」の提供を開始。2015年2月には瀧口氏と小、中学校時代からの友人である医師の豊田剛一郎氏を代表取締役医師として招聘。あわせてオンライン病気事典「MEDLEY」を公開した。また、2015年にはグリー傘下で介護施設の口コミサイト「介護のほんね」を提供していたプラチナファクトリーを株式交換により子会社化している。

同社にはこれまでにウノウ創業者でメルカリ代表取締役の山田進太郎氏やアトランティス創業者の木村新司氏といった個人投資家のほか、East Ventures、インキュベイトファンドなどが出資している。

社員数は現在約60人。役員を中心に、東大医学部卒業生も4人在席している。「2009年に創業した時は、医療分野をやりたいエンジニアなんかいなかった。だここ最近はApple Watchでヘルスケア情報が取得できるようになったりして、医療領域に注目が集まってきている」(瀧口氏)

医療情報の提供、「生半可な気持ちでやっていくつもりはない」

今回の増資を受け、メドレーでは前述のMRTとの協業に加えて、オンライン病気事典MEDLEYおよび医療系人材の求人サイトジョブメドレーのサービス開発を加速するとしている。

MEDLEYでは、医師や医療従事者が執筆する情報を、220人の専門医が校正。一度掲載された情報についても逐次アップデートするという体制を取っているそうだ。「病気を調べるときにパッと思い浮かぶ病気のサイトにしたい。将来的には疾患の基礎情報からQ&Aまでを網羅する。医者1人1人も時間が限られている。診断したあと、(MEDLEYの)URLや印刷物を渡して『聞きそびれ』をなくすようなものにしたい」(豊田氏)。

ここ最近では医療情報サイトもいくつか出ているが、その一部は、情報の信頼性に不安をおぼえるものも少なくない。例えば、ある医療情報サイトで「子宮肉腫」という項目が「良性の腫瘍」と説明されているのだが、実際は「良性の子宮筋腫と間違いやすい、悪性の腫瘍」なのだそう。競合サイトでこういった生死に関わる情報が正しく扱われていない背景を踏まえて豊田氏は前述のコンテンツチェック体制を強調。「サービスを生半可な気持ちでやっていくつもりはない」と語る。

またジョブメドレーも売上は伸びており(グラフを見せてもらったが、金額自体は非公開とのこと)、「採用決定数も競合比較で多くなっている」(瀧口氏)のだそう。

将来的には、遠隔医療分野を支援、効率化するサービスの提供も予定しているという。こちらも具体的な話は非公開ということだったが>、豊田氏いわく「医療は『サイエンスとアート』なんて言われることがある。そのサイエンスの部分をシステムに置き換えて、アート、つまりコミュニケーションなどのために医師が時間を使えるようにしたい」とのこと。

解析ツールのユーザーローカル、YJキャピタルとEast Venturesから約2億6000万円の資金調達

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ヒートマップに対応したアクセス解析ツール「User Insight」やソーシャルメディア解析ツール「Social Insight」などを提供するユーザーローカルが5月25日、YJキャピタル、East Ventures引受先として約2億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。同社は今回調達した資金をもとに、ビッグデータ分析事業強化進める。

ユーザーローカルは2007年の設立。代表取締役を務める伊藤将雄氏は、もともと楽天のエンジニア・プロデューサーで、「みんなの就職活動日記」を事業化、法人化した人物。その後早稲田大学大学院にウェブ上の行動解析を研究し、その成果をベースにした製品を提供すべく、ユーザーローカルを設立した。これまで国内外25万サイト以上への無料解析ツールを提供しているほか、国内700社以上へ商用アクセス解析ツールを導入。月間70億PV以上のデータを分析しているという。

同社によると、顧客増による分析対象となるデータ量増大、スマートフォン・マルチデバイス領域やO2O分野での分析ニーズの高まりを受けて資金調達を実施したという。今後は大規模なインフラ投資のほか、業種に特化の解析サービスも提供していくという。すでに4月から、メディア業界に特化した「Media Insight」なども提供している。

人工知能がユーザー好みのファッションアイテムを紹介する「SENSY」、開発会社が1.4億円の資金調達

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最近人工知能関連のニュースが増えているが、今度はファッション領域に人工知能を利用するスタートアップの資金調達が発表された。カラフル・ボードは5月14日、ACAが運営するアジアグロース2号投資事業有限責任組合などを引受先とした第三者割当増資を実施。総額1億4000万円の資金調達を実施したと発表した。

カラフル・ボードが手がけるのは、ファッションセンス学習人工知能AIロボットアプリ「SENSY」。2014年11月にリリースされたこのアプリでは、ユーザーが画面に表示される提携ブランドの服を、気に入れば右に、気に入らなければ左に、とTinderライクにフリックして選択していくことで人工知能が感性を学習し、そのユーザーの感性に合ったファッションアイテムを提案してくれるというもの。気になるアイテムは提携ブランドのECサイトで購入できる。提携ブランドは2015年4月時点で2465ブランドとなっている。

アプリに搭載される人工知能「SENSY」(アプリ名と同じ)は、同社と慶應義塾大学、千葉大学で共同開発している。カラフル・ボードでは今後、ユーザーと同じ感性を持った、いわば「クローン」のAIロボットネットワークを構築。ユーザーに代わって情報収集したり、人と人がAIロボットを介して知識、経験、感性などを共有し合う世界観を目指すとしている。

また、Amazon.com傘下のShopbop.comのほか、イタリアのYOOX Groupと提携。今後は韓国、台湾など東南アジアへの展開を進めるとしている。

2014年のスタートアップ投資額、6年ぶりに1000億円超え―JVRが調査報告

リーマン・ショックの2008年以降下降線をたどっていた未公開ベンチャー企業の資金調達状況が2014年には大きく改善して、資金調達額は前年比1.58倍の1154億円となった。6年ぶりの1000億円超えとなる。2006年から継続して調査を続けているJVR(ジャパンベンチャーリサーチ)がまとめた数字だ。

1社あたりの調達額7250万円は前年比185%

1社あたりの資金調達額も中央値が7250万円と前年の4000万円から1.8倍と増えている。資金調達を行った企業の数は減少しているものの、1件あたりの金額が増えている。TechCrunch Japanでも日々お伝えしている調達額が増えていることは感じているが、この調査でも資金調達額の大型化が浮き彫りとなっている形だ。ただし、TechCrunchが主にIT関連のニュースをお伝えしているのに対して、JVRの調査にはヘルスケア、バイオ、医療、環境、エネルギー分野も含まれる。業種別の傾向としては、IT関連の企業数が増加傾向にあり、2014年は49%となっている。また、インターネットを利用したビジネスモデルを持つ企業の調達件数は2006年以来、ほぼ一貫して増加傾向にあり、2014年にその割合は80.5%となっている。

シード・アーリーからシリーズA、Bへ重心が移動

また資金調達を行った企業の設立年数を見てみると、設立1年未満の社数割合が減少する一方で、1年以上の割合が増加。1年以上5年未満が35%を占めるようになっている。調達額の大型化と合わせて、この傾向の背景には、2011年、12年に生まれたシード、アーリー対象のアクセラレーターの卒業組がシリーズAやBといった調達に成功する例が増えていることがある。以下のグラフは、それを顕著に示している。レポートでは「米国での一般的な調達額として、シリーズAで2億円、シリーズBで5億円、そしてシリーズCで10億円と言われているが、日本も同様の規模に近づいてきている」としている。

10億円以上の調達は7社→16社→25社と増加

資金調達の大型化により、10億円以上資金を調達した企業は前年比1.56 倍の25社だった。2012年に7社、2013年は16社だった。以下に資金調達ランキングの上位50社の一覧を画像で掲載する(クリックで拡大)。

以下の表は投資総額によるVCのランキングだ。投資金額のVCのランキングで上位31社中CVCが6社、外資VC7社と、CVCと外資VCが健闘しているのも目を引く。

優先株も実はすでに半数以上の63%で利用

かつて日本では優先株の利用はほとんどないと言われてきたが、ここ3、4年で一気に増えているようだ。JVRのレポートによれば、会社設立から上場までの資金調達で優先株を利用した企業数は2001年以降で1年当たり2、3社程度だった。これが今回VC9社の情報開示を受けて調査した結果、対象調査企業となった2014年に資金調達を行った127社のうち優先株の利用は59社で46.5%。この比率は、株式の種類が不明の企業を除外した場合には63%となる(調査に協力したVCは、ジャフコ、産業革新機構、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グロービス・キャピタル、東京大学エッジキャピタル、DBJキャピタル、サンブリッジグローバルベンチャーズ、グローバル・ブレイン)。ある独立系VCのキャピタリストによれば、今や投資案件は「ほぼ全て優先株」といい、エンジェル投資やレイターをのぞけば、優先株の利用はもはやVC業界でデファクトではないかと話している。背景には、もともと投資家が引き受けるリスクが創業者に比べて大きかった面が優先株によって緩和されて、より大胆にリスクを取って投資しやすくなることがあるという。特に残余財産の分配権が重要で、事業立ち上げに失敗した場合に投資を回収しやすくなるなどのメリットがある。

このほか、今回のJVRのレポートで目を引くのは海外比率だ。創業メンバーから日本のスタートアップとみなされるものの法人登記を海外で行っている「海外企業」の割合が8%となり、大阪(近畿)の6%を抜いてしまっている。より大きなマーケットを目指す海外志向が1つの傾向として数値に出ている形と言えそうだ。


アドテクのFringe81がアイスタイルやドコモから4.2億円調達-元楽天の尾原氏も参画

左からFringe81代表取締役の田中弦氏、執行役員の尾原和啓氏、取締役の松島稔氏

Fringe81は2月20日、アイスタイルキャピタル、NTTドコモ・ベンチャーズ、グリー、電通デジタル・ホールディングス、TBSイノベーション・パートナーズ合同会社を割当先とした総額4億2千万円の第三者割当増資を実施すると明らかにした。

同社は今回の資金調達をもとに、人材の採用や育成、研究開発を進めるという。引き受け先にはコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や事業会社も含まれるが、今後は事業・業務上の関係をより深化させるとしている。

Fringe81は「RSS広告社」として2005年にスタート。日本初となるRSS広告の配信を手がけてきた。2010年に社名をFringe81に変更して、RSS広告に加えて、第三者配信サーバの「digitalice」など、アドテク領域で複数の自社プロダクトを展開してきた。代表取締役社長の田中弦氏によると、金額は非公開ながら売上高は2期連続で1.7倍(毎期)のペースで増加している状況だという。

好調な業績のようにも聞こえるが、田中氏は「今までは広告主サイドの商品を作ってきたが、今後はサプライサイドのためのビジネスもやっていかないといけない」と説明。4月末をめどにリッチメディアに関する2つのプロダクトを提供する予定だという。「ニュースであっても、コミュニティであっても、メディアはもっと出てくる。そしてその人たちが一番困るのはマネタイズだ。そこをしっかりサポートする会社だとうたっていく」(田中氏)

元楽天の尾原和啓氏が執行役員に

2月5日には、「ITビジネスの原理」の著者である尾原和啓氏が同社の執行役員に就任している。尾原氏はマッキンゼー・アンド・カンパニーをはじめ、リクルートやGoogle、楽天などこれまで11社でコンサルティングから事業の企画や投資、買収などを手がけてきた人物。かつては田中氏が起業する以前、上司としてともに仕事をした経験があるそうだ。

「思いとしては、いいものが価値を認められて、世界が広がり、報酬がもらえるという世界を作りたい。日本と米国ではまだ広告単価に2〜3倍の差があるのでメディアであれば、いい記事を書いても、(米国ほど)収入が得られない。だが今アドテクは円熟期に入ってきている。不幸なことに日本ではゲームの市場が大きくなりすぎて、米国にあるようなブランド広告が(オンラインに)入らなかったが、それを日本的に丁寧に育てていき、日米の単価差を埋めていく」(尾原氏)


小さな上場より赤字を掘ってでも大きく成長する–ネット印刷のラクスルが40億円の資金調達

先日メタップスが43億円という大型の資金調達を実施したのに驚いたが、またもや大型の資金調達があった。日本経済新聞でも報じているとおり、オンライン印刷サービス「ラクスル」を手がけるラクスルは2月17日、第三者割当増資により総額40億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

引き受け先は既存株主であるオプト、グローバル・ブレイン、WiL、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ANRI、電通デジタル・ホールディングス、GMO Venture Partnersのほか、新たにリンクアンドモチベーション、グリーベンチャーズ、Global Catalyst Partnersが加わった。

業績は2013年12月から1年で10倍に

ラクスルは2009年9月の創業。当初はオンライン印刷の価格比較サービスからスタートし、その後オンライン印刷の一括見積もり事業を開始。現在では印刷会社をネットワーク化し、その非稼働時間を活用して安価な印刷を展開するオンライン印刷事業を展開している。

2014年2月には約14億5000万円の資金調達を実施し、テレビCMも放映したラクスル。会員数は現在約10万人、売上高は非公開ながら、「会員数とともに1年で5倍に成長している。2013年12月からの1年間で見れば約10倍に上る」(ラクスル代表取締役の松本恭攝氏)とのこと。

また今回の資金調達で印刷会社の買収でもするのかとも思ったがそういう訳ではないようだ。松本氏は「事業が立ち上がり、『投資をすれば拡大する』ということが見えてきた。ならば小さく上場するのではなく、もっと赤字を掘ってでもより大きく成長しようと考えた」と語る。

事業と組織の両輪で成長、マネジメントの目線を上げる

今回、リンクアンドモチベーションとグリーベンチャーズ、Global Catalyst Partnersが新たに株主となっている。松本氏は組織作りや海外進出といった面でのシナジーを求めたいと語る。

「事業と組織は両輪。両方が回って初めて会社がうまく回る。例えば(一度エグジットして)2社目の勝負をしている起業家は、組織がどんなことで転ぶか分かっている。だが私は転ぶようなことをことごとくやってきている。だからこそ今のうちに組織をしっかりと作りたい。またグリーは青柳さん(グリー取締役執行役員常務の青柳直樹氏)と話したことがきっかけだが、海外でのチャレンジ経験が豊富」(松本氏)。さらに米国のベンチャーキャピタルであるGlobal Catalyst Partnersについては、「日本のスタートアップとは違うマネジメント、非連続な成長を作るために目線を上げてくれる存在だ」(松本氏)と語った。

「チラシ印刷」にとどまらない中小企業の集客支援

同社のテレビCMを見たことがある読者の中には、大企業向けのチラシ・名刺印刷というイメージを持った人もいるかも知れないが、中心になっているのは、塾やフィットネスクラブ、接骨院に美容室など、商圏の限られている中小企業のチラシ印刷なのだそう(なお、名刺の取り扱いは全体の2割程度)。ちなみにサイトへの集客は「テレビCMは期待した効果が出ている」(松本氏)ということだが、何よりも口コミの効果が大きいのだそうだ。

今回の調達では、そんな中小企業向けのオフラインでの集客支援を実現するプラットフォームを構築していくのだという。「チラシを刷るというのは、つまりは集客の予算を預かっているということ。ネットでの集客、マーケティングは効率化が進んで新しいイノベーションが起きる一方、紙の市場ではほぼイノベーションが見られず、予算をかけられない中小企業がほとんど。そこにイノベーションを起こしたい」(松本氏)

すでにラクスルでは、チラシの印刷だけでなく、チラシのデザインや印刷したチラシのポスティングといった印刷の“前後”のニーズをカバーしつつあるのだが、こういった取り組みをより強化していく。最近ではウェブサイト上で簡単にチラシのデザインができるエディタも実装したし、今後はチラシのライティング講習なども試験的に手がけるという。

これまでは印刷会社の非稼働時間を使うことで「安価な印刷」をうたってきたラクスルが、どうして中小企業のオフラインでの集客支援というキーワードを掲げるのか? 松本氏はユーザーのニーズ、そして単なる価格競争からの脱却について語る。「ユーザーのニーズはほとんどがチラシの印刷であり、それはつまり集客に困っているということ。そして集客予算を預かっているのであれば、印刷は安い方がいい。だがそれだけ考えると、価値は結局値段に収束してしまう。安さを徹底的に追求して価値を作るということもあるが、安くても効果が出なければ意味がない。チラシという紙のメディアの価値を上げることを考えたとき、ほかにプレーヤーはいないと考えた」(松本氏)

印刷会社のサポートや海外展開も視野に

このほか、調達した資金をもとに、印刷会社のサポートを強化するという。例えば小さい印刷会社では、紙の仕入れなども(ボリュームディスカウントできずに)高価な場合がある。こういった材料の仕入れや機材のレンタルなども取り組む予定。すでに印刷機器メーカーのリョービMHI元代表取締役社長の堂本秀樹氏の参画も決まっている。

ラクスルではさらに、海外展開も視野に入れる。「海外は日本ほど価格競争が厳しくないし、『ネットの会社』として(印刷事業に)取り組んでいるところが少ない。APIの公開こそしていても、どっぷり印刷業につかっていて、それでいてネットの開発もできる、というところは少ない。そのあたりはラクスルが独自の価値を作れる」(松本氏)

同社では現在フルタイムの社員約30人(パートタイムのカスタマーサポートなどを含めると、日本とベトナムで合計約100人)を年内に2倍まで拡大する見込み。さらに、早期の会員数100万人を目指すとしている。


Amazonで9年間AWSを担当した技術者がアプリケーションの展開サービスDistelliを創業、初の資金調達へ

アプリケーションの、サーバ上への展開をやってくれるDistelliが今日(米国時間1/20)、シリーズAで280万ドルを調達したことを発表した。

Andreessen Horowitzがこのラウンドを仕切り、パートナーでIronPortのファウンダでもあるScott WeissがDistelliの取締役会に加わる。これまで自己資本のみで、シードを外部に依存していない同社にとっては、これが初めての資金調達だ。

DistelliのサービスはSaaSとしてクラウドから提供され、どこにあるサーバに対しても、そこへの展開を代行してくれる。サーバは、AWSやRackspace、Google Compute Engineなどのクラウドや、データセンターなど、どこにあってもよい。CEOでファウンダのRahul Singhはジョーク混じりに、Costcoで買ってデスクの下に置いたサーバでもいいよ、と言っている。ユーザの部屋の机の下にあるなんてことは、Distelliにはわからないし無関係だ。

このサービスは、指定されたサーバに小さなエージェントを送り込んで、展開の仕事をさせる。そのエージェントが動き出すと、Distelliがユーザに提供するダッシュボードからサーバのアクティビティをモニタできる。

SinghはAmazonの四人目の技術者社員で、9年間Amazon Web Servicesで大きなプロジェクトの展開を担当したから、いろんな問題解決の経験も豊富だ。彼曰く、コードを書きアプリケーションを構築するためのツールには良いものがあるが、展開に関してはまだまだだ。というわけで彼はDistelliを創業した。

彼は、Herokuは良い選択だが、良いのはあくまでもHerokuのサーバを使う場合のみだ、と言う。そうでないときは、ChefやPuppetのようなツールを使わなければならないし、展開スクリプトを書くのに貴重な時間を取られてしまう。開発過程が、その段階で超鈍足になってしまう。彼は、展開を代行するサードパーティサービスがぜひ必要だ、と考えた。

アプリケーションの展開とローンチをDistelliのエージェントがやってくれるから、開発チームは本来の仕事、良いコードを書くことに専念できる。サーバがクラッシュしたときのリスタートもエージェントがやるから、その点も楽だ。人間が従来手作業でやっていたことを、これからはソフトウェアがやってくれるのだ。

同社は2013年の3月にローンチし、社員はSinghを含めて6名と少ない。今、有料のユーザは15名/社である。それでも毎日が猛烈に忙しいから、去年の秋に完了した資金調達を今ごろやっと発表しているのだ。

Singhによると、今年は顧客獲得に注力したいので、安いのからお高いのまで段階的な料金プランにしたい、という。これまでは、サーバ1台あたりなんぼ、というシンプルな課金だったが、今後は、デベロッパ個人向けの無料プラン、中小企業向け、大企業向けという形にしたいそうだ。

そして同社の長期的な目標は、DevOpsたちのための総合的な、ワンストップのインフラ管理ダッシュボードを提供すること。それは、ハードがどこにあっても対応できる形にしたい。いわば今同社は、その中の‘アプリケーションの展開’の部分を、まず提供しているわけだ。

Singh曰く、“1年あまりやってきて痛感するのは、展開を負担に感じているデベロッパがとても多いことだ。彼らの得意なのはあくまでも、アプリケーションを設計してそのコードを書くことだから、展開は彼らにとって面倒な雑務にすぎない。その雑務を、楽に簡単にできるようにしたのが、うちのサービスだ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


グラフデータベースNeo4jのNeo TechnologyがシリーズCで$20Mを獲得、売上は各年倍々ゲームの急成長

グラフデータベースNeo4jを作っているNeo Technologyが、投資家たちからもその着実な成長を認められ、このほどシリーズCで2000万ドルを調達した。

このラウンドはCreandumがリードし、Dawn Capitalとこれまでの投資家Fidelity Growth Partners Europe、Sunstone Capital、およびConor Venture Partnersも参加した。

同社のこの前の資金調達は2012年11月の1100万ドル、今回を合わせて総調達額は4410万ドルになった。

複数のデータ間の複雑な関係は、グラフでしか表せないこともある。たとえばよく知られているFacebookのソーシャルグラフは、ユーザとその複数の友だちとのあいだの、さまざまな結びつきを表す。Amazonなどのeコマースのサイトでは、たとえば、[この人はAを買ったがBも好きかもしれない]といった、複数の実体間の関係をグラフで表現する。

実際にWalmartはNeo Technologiesの顧客だし、本誌TechCrunchの姉妹企業Crunchbaseは、Neo4jのグラフデータベースを使って企業間の複雑な関係を表現している。

同社の協同ファウンダでCEOのEmil Eifremによると、Neo4jの主なユースケースは二つある。ひとつは、Walmartのような企業がそのアプリケーションの基盤の一つとしてグラフデータベースを使って、買い手との関係を表す場合だ。

もうひとつのユースケースはMaster Data Management日本語Wikipedia〕のインフラとしてグラフデータベースを利用するもの。大企業などでは、多様なデータソースから拾ってきたさまざまなデータを関係付けてひとつのレコード(単位的データ構造…たとえば一つの顧客データ)を作らなければならない。それはきわめて不定形なデータ構造になるため、やはりグラフを使うのがいちばん便利だ。

“これはたいへん困難で骨の折れる問題だ”、とEifremは語る。“そういうデータ構造は、作るのも操作するのも極めて難しい。しかもデータは頻繁に変化している”。そういう厄介なデータ問題の、最適のソリューションがグラフモデルだ、と彼は主張する。

Eifremによると、同社は2007年にオープンソースのプロダクトとしてスウェーデンに誕生し、最初の2年はプロダクトの構築とコミュニティの育成に注力していた。今ではそのコミュニティが同社の生命線であり、そして2011年ごろから一般の顧客も増えてきて本格的な商用化が必要になってきた。

そこで同社は本社をカリフォルニアに移し、技術者だけをスウェーデンに残した。Eifrem自身はそのとき、居住する国を変え、また自分の会社を純粋なオープンソース企業から、オープンソースをベースとする商用企業に変える、という二重の変化を経験した。

彼は90年代の半ばに学生として合衆国にいたので、友だちも少なくない。だから本社の移転は、想像したほど難しくはなかった。商用企業への移行に関しては、それは最初から彼のビジョンにあったことなので、とくに問題はなかった。

“うちはオープンソースだけど、いずれは大きな会社になる、と考えていた。オープンソース企業が力を持つためには、ある程度大きな企業でないとだめだ、と思っていた”、とEifremは語る。

データベース市場全体の中でグラフデータベースが占めるパイはとても小さいが、今急速に成長しており、彼の会社も伸びている、だから投資家たちを惹きつけるのだろう、とEifremは言う。

同社の社員は今7〜80名、今回の資金で年内に120名への増員を考えている。2011年に本社を移転してから売上は各年前年比2倍〜3倍増加している。それを、投資家たちが見逃すはずがない。

彼も言う、“毎年倍々ゲームを繰り返していれば、会社も当然でかくなる。投資家たちも当然目をつけるよね”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Augmedixが1600万ドルを調達、Google Glassをかけた医者を見る日は近いか?


Google GlassはGoogleが思い描いたような評判を得ることができないでいるが、今日(米国時間1/12)Augmedixが1600万ドル獲得した資金調達ラウンドを見る限り、消えるにはほど遠いようだ。Augmedixは2012年に設立されたスタートアップで、医療専門家にGlassを活用した電子カルテソリューションを提供することを目指している。同社の初期シード投資家であるEmergence CapitalとDCM Venturesが共同でリードしたシリーズAラウンドは、Glassがまだ消費者の確信を得られていない中、市場のどこかでは開発の継続に大きな投資が行われているをとを示すものだ。

AugmedixがGoogle Glassのために調達した資金は計2300万ドルに上る。2014年にはシードラウンドで730万ドルを集めている。同社はすでに米国の10州でビジネス展開しており、従業員はサンフランシスコ本社の80名を含め100名を越える。新たな資金は、今後同社がヘッドマウント式患者情報システムをさらに広めていくために必要な雇用に役立てられるだろう。

デベロッパーはGlassプラットフォームを見捨てたと言う向きもあるが、それが一様な現象でないことは間違いない。Augmedixは今回の資金調達の発表に際して、同社のプラットフォーム戦略に関する変更に一切言及していない。同じくGlassに重点を置き医療機関に展開するスタートアップ、Pristineも9月に第1回ラウンドで540万ドルを調達している。デベロッパーのGlassへの関心がどうあろうと、医療のような特定分野ではその潜在力は高く評価されているようだ。

もちろんGoogleも、今でも最も野心的と言えるこのハードウェアプロジェクトに引き続き力を入れている。昨年末にはIntelバージョの噂が浮上し、またGoogleのAstro TellerはGlassへの変わらぬ自信をTechCrunchに語っていたが、消費者市場は成功する場ではないかもしれないことは彼も認めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Hadoopの利用を使いやすいSaaSで提供するAltiscaleが$30Mを調達

【抄訳】

Hadoopといえば、企業のデータセンターの複雑なオンプレミスのセットアップを連想しがちだが、Altiscaleはそういう複雑な部分をすべてクラウド上で面倒見て、かんじんのHadoopの利用インタフェイスだけをSaaSとして提供する。同社は、その使命の継続のために今日(米国時間12/9)、シリーズBで3000万ドルの資金を調達した。

このラウンドを仕切ったのはNorthgate、これに前からの投資家Sequoia CapitalとGeneral Catalyst Partnersが参加した。これでAltiscaleの資金調達総額は4200万ドルになる。

Hadoopは、ビッグデータを処理するためのオープンソースのプロジェクトだ。

【中略】

AltiscaleがHadoopのベンダとして特異なのは、最初から、企業が抱えるHadoopのワークロードをクラウドで処理するという、根っからのクラウド企業としてスタートしたことだ。ファウンダでCEOのRaymie Stataは曰く、Hadoopは簡単に使えるものではないし、仕上げの粗い部分もある。彼が前にいたYahoo!では、社内に大きな組織を作ってHadoopに取り組んでいたが、ふつうの会社にはそんな贅沢はできない。

それが、彼がAltiscaleを作った主な理由だ。サービスがクラウドにあれば、大から小までもっといろんな企業がHadoopを利用できるし、またビッグデータの処理についても相談に乗ってあげられる。処理の根幹だけでなく、ちょっとしたヘルプの相談もある。企業はそういう問題を自分で抱え込んで悩むのではなく、解決をAltiscaleに求めればよい。

そして彼によれば、Altiscale自身はHadoopのエキスパートだから、企業が解決に数日を要していたような問題も、数時間で解決してあげられる。それでなくとも企業のIT部門は、いろんな問題を常時、山のように抱えているのだから。

Hadoopのサードパーティベンダは数が多く競争も激しい。それらの中でHortworksは最近、IPOにこぎつけた。この前の3月にはClouderaが、シリーズFの資金調達に際して40億ドルを超える評価額を達成した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))