Express Logicを買収してAzureのIoT対応に本腰を入れるマイクロソフト

Microsoft(マイクロソフト)は決して買収を躊躇するような会社ではないが、米国時間の4月18日、サンディエゴのExpress Logicを買収することを発表した。Express Logicは、世界中で増殖を続けるIoTデバイスを制御するRTOS(リアルタイム・オペレーティングシステム)を開発した会社だ。

買収価格は明らかにされていない。

Express Logicは、絵に描いた餅のような大きな目標を掲げる会社ではない。23年ほど前からあり、(同社の言葉を借りれば)「組み込み用とIoT開発者向けの産業グレードのRTOSおよびミドルウェアのソフトウェアソリューション」を開発、提供している。同社のシステムによって稼働しているデバイスは約62億もあると豪語している。この数字はMicrosoftのAzure IoT担当取締役、Sam George氏の口から出たものではないが、彼も今回の買収を発表したブログ記事に書いているように、この人気には理由がある。

「このように広く普及しているのは、リソースに制約のある環境をサポートする技術に対する需要があるからです。安全性とセキュリティが要求される領域だからなおさらです」と、George氏は述べている。

Constellation Researchのアナリスト、Holger Mueller氏によれば、この大きな市場シェアは、Microsoftのプラットフォームの信頼性をただちに高めることになるという。「これはMicrosoftにとって非常に重要な買収です。まず戦略面では、MicrosoftがIoTへの大きな投資に真剣に取り組んでいることを示すことになります。また、製品の開発の面でも、広く使われているRTOSのシステムコードを手中に収めるという、重要なステップとなります」と、Mueller氏はTechCrunchに語った 。

Express Logicのアプローチの長所は、低電力および低リソース環境で動作し、その範囲の製品に対して折り紙付きのソリューションを提供できること。「かなり幅広いカテゴリの製品を開発しているメーカーが、Express Logicのソリューションによって得られるサイズ、安全性、セキュリティの利点を活用して、製品化までの時間を短縮しています。たとえば、電球や温度計などに使われる小型のセンサーから、エアコン、医療機器、ネットワーク機器などまでがカバーできるのです」と、George氏は続けた。

Express LogicのCEO、William E. Lamie氏は、今回の買収を発表した顧客向けのブログ記事で、Microsoftファミリーの一員となることで、同社はさらに成長できるという楽観的な見解を表明している。「即時有効で、我が社のThreadX RTOSと、それをサポートするソフトウェア技術、そして優秀なエンジニアがMicrosoftに加わりました。これによって、Microsoftがすでに持っている第1級のセキュリティ技術が、マイクロコントローラーの分野でも活かされるようになります」と、Lamie氏は書いている。

Microsoftは、十分な実績のある製品を持つ定評のある会社を手に入れたことで、AzureのIoTビジネスを拡大することができる。今回の買収は、昨年4月に発表したIoTへの50億ドル(約5600億円)の投資の一環であり、そこにはAzure Sphere、Azure Digital Twins、Azure IoT Edge、Azure Maps、そしてAzure IoT CentralといったAzureファミリーも含まれている。

「今回の買収により、何十億という新たなエンドポイントに対するアクセスの扉を開くことができます。それはAzureにシームレスに接続できるデバイスの数を増やし、新しいインテリジェントな能力を引き出すことができます。Express LogicのThreadX RTOSは、MicrosoftのIoTデバイスに対するサポートの拡大に貢献します。そして、われわれのマイクロコントローラー分野での第1級のセキュリティ技術、Azure Sphereを補完するものでもあるのです」と、George氏は締めくくった。

画像クレジット:metamorworks/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

熟練の匠の技術をAIに、製造業をスマートにするスカイディスクが8.6億円を調達

製造業に特化したAI×IoTソリューションを提供するスカイディスクは4月18日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により総額で8.6億円を調達したことを明らかにした。

今回の投資家リストは以下の通りだ。

  • SBIインベストメント
  • AJS
  • 中島工業
  • 鈴与商事
  • りそなキャピタル
  • 環境エネルギー投資
  • みずほキャピタル
  • DG Daiwa Ventures

スカイディスクにとってシリーズCとなる今回のラウンドには、VCに加えてこれまで同社が協業を進めてきた大手企業が参画している。AJSとは2017年10月に業務提携を締結し、主に旭化成グループの工場におけるAI活用を推進。2018年1月に提携を発表した中島工業とは、工場向け水処理装置にAIを組み込んだパッケージ商品の開発に取り組んできた。

また直近では2019年1月に鈴与商事と業務提携を締結。ファクトリーオートメーション機器とAIサービスを組み合わせたビジネススキームの開発を進めている。今後もそれぞれの取り組みを継続していく方針で、連携強化も見据えて各社から出資を受けた形だ。

スカイディスクでは調達した資金を活用して国内外でAIエンジニアの採用を進める計画。製造業向けAI開発ツールを充実させ、製造現場へのAI導入を加速させる。

ベテラン技術者の技をAIが解明し、再現

過去に何度か紹介しているように、スカイディスクではセンサデバイスの開発からAIを活用したデータ分析まで、現場でAI・IoTを活用するのに必要な機能をワンストップで提供してきた。

以前は製造業に限らず農業や流通、環境などさまざまな分野へのサービス展開を見据えて事業に取り組んでいたが、特に2017年10月に実施したシリーズB以降は需要の多かった製造業へと徐々にフォーカス。業務ヒアリングによる課題の抽出から目的や解決策を設定し、必要なデータをどのように集め、人工知能によってどう解析するかまでをトータルでサポートする。

事業の核となるのはセンシングデータから正常異常などの判定結果を提供する「SkyAI」だ。

これまでスカイディスクが蓄積してきたナレッジを活用し、データ整形・解析するためのモジュールと分野別のAI学習モデルをライブラリとして保有。顧客の課題に合わせて最適なものを組み合わせることで、時間やコストを抑えつつ、設備の保全や製品の検品、歩留まりチェックなどの業務を効率化できるのがウリだ。

同社によると自動車業界を始め、化学メーカーやプラントの現場で導入が進んでいるそう。たとえば製造時のプロセスデータとセンサから取得した波形データ、検査結果が紐づけられたデータなどを基に不良品の発生要因を見える化した事例や、事前に不良発生を予測できるAIを導入することで生産性の向上・機器の多台持ちを実現した事例などがあるという。

スカイディスクのユニークな点をひとつ紹介しておくと、製造現場における単純作業だけでなく、これまで熟練のベテラン技術者が「経験や勘」で実行していた高度な業務をAIでサポートしようとしていることだ。

労働力不足や高齢化により現場で高度な業務を担える人材が減っていく中で、同社では「匠の技を、AIに」というコンセプトを掲げる。ベテラン技術者の操作データを材料に、彼ら彼女らが持つスキルやナレッジをAIが解明し、再現することが目標だ。

以前紹介した「スマート聴診棒」はまさにその代表例と言えるだろう。このサービスはスマホのマイク機能を使って取得した“音”により、設備機器の異常診断ができるというもの。従来は熟練の技術者が聴診棒という棒状の器具を用いて、それぞれの機器から発せられる振動音を聞き分けることで成り立っていた業務を、データとAIを活用することで他の担当者でもできるようにした。

2019年の3月にはこの機能を「SkySound」としてモジュール化し、SkyAIの中の1機能としてAPI経由で使える形で提供している。

上述した例も含め、クライアントやパートナー企業との共創によって年間数十件のAIプロジェクトを進めてきたスカイディスク。今後も製造現場の人手不足を始めとする課題解決や生産性の向上に向けて、AIサービスの機能拡張やパートナーとの連携強化に取り組む計画だ。

スカイディスクは2013年設立の福岡発スタートアップ。2017年に実施したシリーズBラウンドでニッセイ・キャピタルなどから7.4億円を調達しているほか、2016年にも1億円の資金調達を実施している。

スマート水田デバイスを開発する富山拠点の笑農和がインキュベイトファンドから資金調達

創業期に特化した独立系ベンチャーキャピタルであるインキュベイトファンドは4月15日、スマート水田デバイスの「paditch」などを開発・運営する富山県を拠点とする笑農和(えのわ)への出資を発表した。出資額は非公開。

笑農和は今回の資金調達で、従来のサービスの「paditch gate02 」の機能追加を実施し「paditch gate02+」として提供する。加えて、開発およびカスタマーサポート体制強化のため、事務所を移転し人材採用を積極的に進めていくという。

paditch(パディッチ)は、水稲農家向けの水位調整サービス。gate02では、水温、水位を管理できるほか、水門の遠隔開閉、タイマー自動開閉。全体開閉、個別開閉、エリア開閉などが可能。減水時や何かが詰まった際にアラートを発する機能も備える。クラウドで管理されているため、スマホなどからの操作やデータの参照が可能だ。

笑農和はpaditchなどを活用したスマート農業を普及させることで、若い世代の人が農業を職業として選択する未来をつくることを目指す。

IoTのセキュリティサービスは需要急増でArmisは早くもシリーズCで70億円相当を調達

Armisは、エージェントを使わずにネットワーク上のIoTデバイスを保護する。その技術は市場のニーズにフィットしたらしく、同社の売上は前年比で700%も増加した。そしてそれは当然投資家の関心を惹き、彼らは同社にシリーズCのラウンドで6500万ドル(約70億円)を、同社の成長の加速を今後も維持するために注入した。

Sequoia Capitalがそのラウンドをリードし、新たな投資家としてInsight Venture PartnersとIntermountain Venturesが加わった。また、これまでの投資家Bain Capital Ventures、Red Dot Capital Partners、そしてTenaya Capitalも参加した。同社によると、これで調達総額は1億1200万ドルに達する。

同社は、ネットワーク上のデバイス管理の中でもとりわけ難しい問題を解決する。デバイスはあちこちにあるけど、それらの上でエージェントを動かせないとしたら、どうやって管理するか?同社の協同ファウンダーでCTOのNadir Izrael氏は曰く「古いデバイスは、ポートをスキャンしただけでシャットダウンしてしまうこともある。細心の注意が必要なんだ」。

そこでArmisは、受け身なアプローチでセキュリティの問題に臨む。まず、正常なデバイスのやることを観察し学習し理解する。それらは、動作の指紋のようなものだ。Izrael氏は次のように語る。「デバイスがネットワークの上でやることを観察する。彼らがどう振る舞うかを見る。そこから、必要なことをすべて見つけ出す。Amisの本質は、デバイスのビヘイビアを知るための大きなクラウドソーシングエンジンだ。基本的に、Armisのどのクライアントも、デバイスの動作をつねに学習している。そしてそれらの統計モデルや機械学習のモデルをもとに、マスターモデルを作る」。

データの取り方の詳細は聞かなかったが、いずれにせよ同社の技術はセキュリティの痛点を捉えているのだろう。同社は1年前に3000万ドルのシリーズBを発表したばかりだが、成長がはやく人手が足りないので、新たな雇用のための資金が必要になった。

急成長はそれ自身がスタートアップにとってチャレンジになる。今125名のワークフォースを年内に倍にしたいのだが、新しい社員たちと新しい顧客のためのシステムを即動くように整備することも欠かせない。

もちろん新社員は営業とマーケティング方面でも必要だが、そのほかにカスタマサポートの充実や、パートナーシップ事業によるシステムインテグレータやISV、MSPたちからの協力も重要だ。彼らは、同社のためにも顧客のケアをやってくれるだろう。

関連記事: Armis raises $30 million Series B as enterprise IoT security heats up(ArmisのシリーズB、未訳)

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

好みを踏まえて室温を自動調整、自宅をスマートにする「LiveSmart」が三菱地所らから3億円を調達

アプリやスマートスピーカーを通じて家電を操作できるサービス「LiveSmart」を運営するLive Smartは3月29日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により約3億円を調達したことを明らかにした。

同社に出資したのは三菱地所、みずほキャピタル、三井住友海上キャピタル、イノベーション・エンジン、加賀電子の5社。三菱地所とは住宅やマンションなどの住環境における「スマートライフの実現」に向けて業務提携も結んでいる。

Live Smartでは調達した資金を活用して開発体制やビジネスサイドの組織体制を強化するほか、プロダダクトの販売拡大やスマートホームの認知度向上に向けたマーケティング施策を展開する計画。なお今回を含めると、同社の累計調達額は5億円を超えるという。

スマートホームコントローラーを軸に快適な生活をサポート

Live Smartは現在個人向けと法人向けにそれぞれスマートホームサービスを展開している。

個人向けには自社開発のスマートホームコントローラー「LS Mini」を軸に、アプリやスマートスピーカーを介して家電を操作できるプラットフォームを提供。たとえば外出先からアプリやLINEを使ってエアコンを操作したり、Amazon Echoなどを用いて音声でテレビや照明を操作したり。ユーザーの日常生活を便利にする。

「各家電を一度の操作で全部オン/オフにする」「毎日7時に自動的に照明をつける」などのルールを設定すれば操作を自動化できるほか、独自のAI(Adaptive Intelligence)機能を搭載。この機能を通じて身長や体重を始めとしたパーソナルなデータと、自分が心地いいと感じる温度など“個々人の好み”を考慮した上で最適な環境を整えてくれる。

現在はエアコンのみに限られるが、AI機能をオンにしておくと「夜間に外の気温や日射量低下の影響で室温が変化するのを察知して、ユーザーが快適な温度を保つべく自動でエアコンを稼働する」といった使い方が可能だ。

一方で法人向けにはLS Miniの上位機種である「LS Hub」を中心に、主に不動産ディベロッパーに対して管理画面やライフアシスタントボットを用いたサービスなどを提供している。

Live Smart取締役の上田大輔氏によると「通信規格のバリエーションの多さ」と「オープンプラットフォームであること」が大きな特徴とのこと。個人向けのLS Miniでは赤外線とWi-Fi、法人向けのLS Hubではそれに加えてBluetooth、ZigBee、Z-Wave対応のデバイスと接続できる。

これによって家電を遠隔操作できるだけでなく、Wi-Fiカメラやスマートロックの「Sesame」に繋ぐことも可能。子どもやペットの見守り用途としてはもちろん、中長期的には不在時の荷物受け取りや家事代行サービスなどにも対応していきたいという。

またサービスだけでなくデバイスについても他社製品と積極的に連携していく方針だ。特に法人向けのサービスについては「Hubは自分たちで作るが、そこに繋がる他のデバイスについては気に入ったものを直接メーカーから買ってもらって構いませんという発想で進めている」(上田氏)そう。今後もオープンなプラットフォームを維持していく。

個人のスマートライフを支える社会インフラ目指す

Live Smartはエンジニアのバックグラウンドを持つ代表取締役CEOのロイ・アショック氏や、Amazon Japanにて玩具事業部の商品戦略部部長を勤めていた上田氏ら4名が2016年に創業したスタートアップだ。

元々アショック氏は海外のパートナーと共同で現在のLS Hubのプロトタイプを作っていたそう。ヒアリングの結果、日本の企業で一定のニーズがあることがわかり国内で会社を作ることを決断したという。

ちなみにアショック氏と上田氏が初めて出会ったのは、近所のレストランとのこと。「偶然隣の席で食事をしていた時に、『こっちの方が美味しいから食べてみなよ』と話しかけられたことがきっかけ」(上田氏)で仲良くなり、最終的には一緒に起業するに至ったのだという。

左からLive Smart代表取締役CEOのロイ・アショック氏、取締役の上田大輔氏

今回の資金調達を踏まえ、Live Smartではプロダクトの開発や他社との連携をさらに加速させる計画。これまでAmazon上でのみ販売していたLS Miniを家電量販店でも販売しチャネルの拡大を図るほか、三菱地所との協業や今後展開予定のライフアシスタントサービスの開発も進める。

三菱地所とは共同で住宅向けのサービスを作っていく方針で、三菱地所グループの住宅開発事業に対するスマートホーム機能の実装に加え、チャットボットやアプリを活用したマンション居住者向けサービスの拡充などを見据えているという。

そしてそこにも関わってくるのが、Live Smartが現在仕込んでいるライフアシスタントサービスだ。

これは上田氏の言葉を借りれば「(様々なサービス、デバイスと繋がった状態で)1人1人にコンシェルジュがつくようなもの」。LINEやFacebookメッセンジャーといたコミュニケーションプラットフォームを介して、家事代行サービスや宅配便受け取りが不在時でも簡単に利用できたり、チャットボット経由で地域のセール情報や便利な情報を入手できる仕組みを考えているようだ。

上田氏自身、Amazon在籍時に物流業務に関わることがあり、その時感じた再配達や不在時の荷物受け取りに対する課題感が起業にも繋がっているのだそう。「LiveSmartをきっかけに、いろいろな社会課題を解決できるのではないか」という考えは以前から持っていたという。

「自分達の中では『スマートホーム』よりも『スマートライフ』という表現をしている。(ライフアシスタントサービスなどの提供を通じて)人々の快適な生活を支える、新しい社会インフラの実現を目指していきたい」(上田氏)

インターネットの50年、われわれは何を学んだのか、そしてこれからどこへ向かうのか?

私と、私の大学の院生のチームが、最初のメッセージをインターネットで送信したのは、1969年10月のロサンゼルスの暖かな夕方のことだった。それが、世界的規模の革命の始まりだったとは、だれ一人考えてもみなかった。最初の2文字、具体的には「Login」の「Lo」を、UCLAのコンピュータ室でタイプ入力すると、ネットワークはクラッシュしてしまった。

それゆえ、最初のインターネットメッセージは、期せずして「Lo and behold(驚いたことに)」の最初の2文字と同じ「Lo」だったことになる。私たちは簡潔で強力、かつ予言的なメッセージを送信したのだった。

当時はまだARPANETと呼ばれていたが、それは政府、産業界、そして学界によって設計された。科学者や学者が、互いの計算機リソースにアクセスできるようにして、研究に必要な大きなファイルを交換し、時間とお金、行き来する手間を節約するためのものだった。ARPA、つまりAdvanced Research Project Agency(高等研究計画局。現在は先頭にDefense=国防を付けて、DARPAと呼ばれる)は、民間企業のBolt BeranekとNewmanに委託して、そこの科学者にルーター、つまりInterface Message Processorを実装させた。 UCLAは、この芽を出し始めたネットワークの、最初のノードとして選ばれたのだった。

1969年の12月の時点では、ノードは4つだけだった。それらは、UCLA、スタンフォード研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、それにユタ大学だ。このような最初期の段階を経て、このネットワークは指数関数的な成長を遂げた。接続されたホストコンピュータの数は、1977年までで100台、1989年までで10万台、1990年代初頭で100万台、そして2012年には10億台に達した。現在では地球の全人口の半数以上に行き渡っている。

その過程で、われわれは予期していなかったようなアプリケーションの出現に驚かされた。それは突如として現れ、またたく間にインターネット上で広範囲に行き渡った。例えば、電子メール、ワールドワイドウェブ、ピアトゥピアのファイル共有、ユーザー生成コンテンツ、Napster、YouTube、Instagram、その他のソーシャルネットワークなどだ。

こんなことを言うと、夢想家のように思われるかもしれないが、初期の段階では、オープンな雰囲気、コラボレーション、共有、信頼、そして道徳規範、といった素晴らしい文化を楽しんでいた。インターネットは、そのようなものとして構想され、育まれたのだ。その初期には、私はARPANETに参加している人を、全員個人的に知っていた。そしてわれわれは、皆行儀よく振る舞っていた。実際、そうした「ネチケット」へのこだわりは、インターネットの最初の20年間には維持されていた。

今日では、インターネットが異論の余地がないほど素晴らしく、オープンで、協力的で、信頼でき、さらに倫理的であると言う人は、まずいない。データと情報を共有するために生まれたメディアが、どうやって、そのような疑わしい情報が交錯する世界になってしまったのか。共同から競合へ、同意から不和へ、信頼に足るデジタルリソースから疑わしい情報の増幅器へと、いったいどうして変わってしまったのか。

その堕落は、1990年代の初頭に始まった。ちょうどスパムが初めて登場したころ、インターネットが消費者の世界に深く浸透するにつれ、インターネットを収益化しようという激しいまでの機運が高まった。これによって、詐欺、プライバシー侵害、偽ニュース、サービス妨害など、数々のダークサイドの勢力が勃興した。

そうして、インターネット技術の進歩と革新の性質も変化した。リスクを回避するために、「ムーンショット」という言葉に象徴されるような、初期の夢想的な文化がないがしろにされ始めたからだ。われわれは、まだこうした変化に苦しめられている最中だ。インターネットは、共通の価値観と正しい事実に基づいて、情報の分散管理、民主主義、そしてコンセンサスを促進するように設計されている。その生みの親たちが抱いていた大志を完全に達成するという点では、これは失望でしかない。

民間勢力の影響力が増すにつれて、彼らの方針と目標が、インターネットの本質を支配するようになった。商業利用の方針が影響力を持つようになると、企業はドメインの登録に対しても課金できるようになり、クレジットカードの暗号化が電子商取引への扉を開いた。AOL、CompuServe、Earthlinkのような民間企業は、やがてインターネットへのアクセス料として月額を請求するようになり、このサービスを公共財から私財へと転換させた。

インターネットを収益化することが、その景色を変えてしまった。一方では、それは大きな価値のある貴重なサービスを実現した。これには、普及した検索エンジン、広範な情報の宝庫へのアクセス、消費者の助成、娯楽、教育、人間同士のつながりなどを挙げることができる。もう一方では、それはさまざまな領域における濫用と支配につながっている。

その中には、企業や政府によるアクセスの制限、経済的なインセンティブが短期間でも企業の利害と一致しない場合にみられる技術開発の停滞、ソーシャルメディアの過剰使用からくるさまざまな形の影響、などを見て取ることができる。

こうした問題を軽減するために、何かできることがあったのではないかと問われれば、すぐに2つの方策を挙げることができる。まず第1に、厳格なファイル認証機能を提供すべきだった。つまり、私が受け取ったファイルは、私が要求したファイルの改変されていないコピーであることを保証する機能だ。そして第2に、厳格なユーザー認証機能も用意すべきだった。つまりユーザーが、自分がそうだと主張する人物であることを証明する機能だ。

そうした機能を準備だけしておいて、初期の段階では無効にしておくべきだった。その時点では、偽のファイルが送信されることもなく、ユーザーが身分を偽ることもなかったのだから。そして、ダークサイドが顕在し始めたときに、そうした保護機能を徐々に有効にして、悪用の程度に見合うレベルまで引き上げることで、悪用に対抗することができたはずだ。そうした機能を最初から提供するための簡便な方法を用意しておかなかったために、今さらそうすることは厄介だという事実に苦しんでいる。その相手は、この広範に拡がったレガシーシステム、インターネットなのだ。

誕生から50年が経過した今、インターネットはこれからの50年でどのように進化するだろうか? それはどのようなものになるのだろうか?

その未来を映し出す水晶玉は曇っている。しかし、私が50年前にも予測したように、それが急速に「見えない」ものになっていくことだけは見通せる。つまり、インフラとして目につかないものになるだろうし、そうなるべきものでもある。

電気と同じくらいシンプルで、使いやすいものになるはずだ。電気は壁のコンセントに差し込むという、拍子抜けするほど簡単なインターフェースで、直感的に利用できる。どのようにしてそこに届くのか、どこから来るのか、知る必要もないし、興味もないだろう。それでも、必要なときにいつでも使えるのだ。

残念ながら、インターネットへのアクセスは、それよりはるかに複雑だ。私がある部屋に入ったとする。その部屋は私がそこにいることを知るべきだ。そして、サービスとアプリケーションを、私のプロフィール、アクセス権、さらに好みに応じて私に提供するべきなのだ。私は、普通の人間とのコミュニケーションと同じように、話したり、手を動かしたり、触れたりすることで、システムと対話できるようになるべきだ。

われわれは、そのようなことが可能な未来に向かって急速に進んでいる。モノのインターネットにより、ロジック、メモリ、プロセッサ、カメラ、マイク、スピーカー、ディスプレイ、ホログラム、センサーを備えた環境インフラが整備されるからだ。そうした目に見えないインフラを、インターネットに埋め込まれた知性を持ったソフトウェアエージェントと組み合わせることで、上で述べたようなサービスがシームレスに提供されるようになる。一言で言えば、インターネットは基本的に、世界中に張り巡らされた神経系のような役割を果たすようになる。

これが、私が考える将来のインフラの真髄だ。しかし、すでに述べたように、アプリケーションやサービスを予測するのは非常に困難だ。まったく予期しなかったものが、爆発的な驚きとともに、忽然と現れることがある。何ともはや、頻繁に刺激的な驚きをもたらす世界規模のシステムを、われわれは作ってしまった。なんて面白い世の中なんだ!

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

原価管理の自動化で製造業をエンパワーする「GenKan」のβ版がローンチ

近年、製造業におけるテクノロジーの導入が活発だ。「インダストリー4.0」や「第4次産業革命」という考え方も広がる中で、IoTやAI、ロボットなどを用いた新たな仕組みが次々と登場し、徐々に現場での活用も進んでいる。

この業界は担当者の勘や経験、根性に頼ってきた側面が強いからこそ、ITを上手く使うことでより効率化できる余地も大きい。特に日本国内ではこれから人材不足が深刻化することが予想されるから、現場の生産性を上げるツールのニーズが一層高まっていくだろう。

本日3月15日にβ版が公開された「GenKan(ゲンカン)」も、まさにIoTデータを用いて製造業をエンパワーするプロダクトだ。

このサービスが取り組むのは、原価管理の自動化。手間のかかる「実績データの取得」「実際原価計算」「原価分析」という一連のフローを独自のアルゴリズムを用いて自動化することで、製造現場の実態を金額で見える化し、生産性向上に繋げようとしている。

IoTの導入は進むも「金額の見える化」は進んでいない

Genkanを開発するKOSKAは、代表取締役CEOの曽根健一朗氏や取締役COOの樋口海氏らが2018年10月に創業したスタートアップだ。

もともとは現在同社が所属する日本原価計算研究学会と、ものづくりとITの融合を目指すIVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ )の間で「ものづくり×IT×原価計算で何か新しいことができないか」と始まったプロジェクトがきっかけ。そこから実証実験を重ねつつ、KOSKAとして法人化した。

実際に大企業から中小企業まで、さまざまな製造業の現場を見てきた中で「(IoTなどにより)製造現場の見える化は進みつつあるものの、金額で見える化されていない」点を課題に感じている企業が多いことに気づいたそう。それがGenkanのアイデアにも繋がっているという。

「データを取得していたとしても機械のモニタリングタイムや中断時間の把握までしかできていないと、それを基に改善を試みたところで『結局今までと同じようなアクションしかできない』という状況に陥ってしまう」(樋口氏)

それに対してGenKanではデータ取得、原価計算、原価分析をそれぞれ自動化した上で、現場のオペレーションを増やすことなく「日々決算」や「適切なKPI、打ち手の設定」を実現できる仕組みを構築した。

データの取得から計算、分析までを一気通貫でサポート

全体の流れとしては、まず実績データとして現場のスタッフと製造機械の作業時間を「加速度センサ」「カメラセンサ」「重量センサ」を用いてリアルタイムに自動で収集。取得したデータや蓄積された生産データを基に、工場・製品・ライン・工程など細かい粒度で実際原価の計算を行う。

その結果から差異分析や要因分析を実施し、ダッシュボードや定期的なレポートによって経営状況を金額ベースで見える化するとともに、改善点の優先順位付けやKPIの設定をサポートするというものだ。

そもそも製造業の管理会計の現場では、実績原価を細かく把握できていないことが原因で収支管理の即時性に欠け「当月収支は翌月末、四半期の収支は翌四半期が始まるまで把握できない」という事態が発生しているそう。

GenKanでは現場の生産量や稼働状況を反映した実際原価をリアルタイムで更新されるため、1日単位で収支管理を行うことが可能。何か大きな問題が起こる前に危険なシグナルに気づき、早めに対応できるようにもなる。

生産データ画面

実際原価計算画面。センサーから取得したデータを基に、製造現場の実態を金額で見える化する

またそれらのデータを基に、現場に沿った形で改善のポイントを自動で提案するのも特徴だ。

既存の生産管理ソフトや管理会計ソフトは計算を行う部分にフォーカスをされていて「要因分析や差違分析にはそこまで得意ではない」というのが曽根氏やの樋口氏の考え。「現場と原価を繋げた分析サービスがない」ことから、そこに焦点を当てたレポートが自動で作成される機能を実装した。

改善ポイントなどが示された、原価分析レポート画面

中小企業でも効果的な原価計算ができる仕組みを

曽根氏の話では顧客ごとに違いはあれど、「取得・計算・分析」のどこかでつまづいてしまい“効果的な原価計算”をできずに悩んでいるケースがほとんどなのだそう。今では大きく「そもそもデータを自分たちで取得するのが難しい」タイプと「データは取れているので、それを上手く使いこなしたい」タイプの2種類に別れるため、それに合わせてβ版では2つのプランを用意している。

月額4万5千円からのセンサ取付プランでは全行程に対応。スタッフの日報や生産データ入力、ストップウォッチ測定などを通じて作業時間を測っていた場合など、データの取得段階から大きな手間やムラが発生していた現場をセンサーでサポートする。

もうひとつのデータ利用プランはすでにIoTデバイスなどを導入していて、データの取得までは自社でできている顧客向け。計算・分析業務を自動化することができ、月額3万円から利用可能だ。

今回話を聞いていてちょっと意外だったのが「データの取得はできている企業からも引き合いが多い」ということ。そもそもIoT端末から取得したデータを原価計算に利用するという発想が珍しかったそうで、「こういうのを待っていた」とポジティブな反応が多いのだという。

これまで武州工業や丸和電子化学など複数の企業と実証実験を継続。自動車部品メーカーや電子機器メーカーを始め、大量生産から少量多品種の業種まで10社近くの導入が決まっている。1月には3000万円の資金調達も実施済みで、今後は正式版の公開に向けてプロダクトの改良やターゲット顧客の選定を進める計画だ。

「原価計算研究学会は日本とドイツにしかない。それぐらい原価計算の分野において日本は進んでいるが、それでも一部の企業しかできていないことも多い。ただその知見や仕組みが日本を代表する大手の製造業を支えてきたことは間違いないし、ITを使えば中小企業でも膨大な手間やお金をかけずに、それに近いレベルまでたどり着けるはずだと本気で考えている。GenKanではそんな世界を実現していきたい」(曽根氏)

ラズパイより簡単なIoT開発ボード「obnize」が機器の遠隔監視に活用へ

独自の開発ボードを軸として、インターネット経由で簡単に様々な機器をIoT化できるプラットフォーム「obnize(オブナイズ)」。昨年“ラズベリーパイよりも簡単にIoTプログラミングに挑戦できるサービス”として紹介したこのプロダクトが、事業用途でも注目を集め始めているようだ。

開発元のCambrianRobotics(カンブリアンロボティクス)は3月12日、ティッセンクルップ・アクセス・ジャパンと協働で、obnizeを活用した在宅介護用階段昇降機(家庭用いす式リフト)の遠隔監視システムの実証実験をスタートしたことを明らかにした。

ティッセンクルップ・アクセス・ジャパンは階段昇降機の世界的メーカーであるドイツのティッセンクルップ・アクセス社の日本法人。同社が開発する介護用の機器にobnizeを導入し、運転状況やバッテリーの寿命、機器のトラブルなどをリアルタイムで遠隔から検知しようというのが今回の試みだ。

保守管理に人手をかけられない機器のIoT化を加速

在宅介護が増える中、家庭用のいす式階段昇降機は日本国内だけでも10万台以上が利用されているそう。オフィスビルのエレベーターなどに使われている遠隔監視や臨時対応システムは一般的に導入されておらず、安全性向上や人的コスト削減の観点で改良の余地があったという。

「最初に言われたのが、バッテリーの劣化を遠隔でモニタリングする仕組みが欲しいということ。劣化すると機器が突然止まってしまう可能性もあり、高齢者が実際に利用している間に止まると危ない。(obnizeを組み込むことで(『どうもあと3ヶ月くらいで寿命を迎えそうだ』といったことを遠隔から把握できるようになる」(CambrianRobotics代表取締役CEOの佐藤雄紀氏)

前回も紹介した通り、obnizeの特徴は機器をIoT化する際の“ハードルの低さ”だ。

obnizeを使えばインターネット経由でさまざまなプログラム言語から機器の制御が可能。従来IoTプロダクトを開発する際に障壁となっていた「組み込みデバイスにおけるファームウェアの作成(ハードウェアを制御するソフトウェア)」も必要ない。

幅広い用途で活用できることに加え、個人ユーザーが多いこともわかるようにコストの観点からも導入しやすいのもウリ。複数台をクラウドにつなぎ、リアルタイムで一元管理することも容易だ。

今回の実証実験ではWeb上からobnizeを搭載した機器の電圧を遠隔からリアルタイムで確認できるほか、発生したエラーを日付順で把握する機能や、ボタンを押すことで再起動する機能を提供する。

「遠隔から『何時にどんなエラーが起きたのか』がわかれば、現地に行かずとも状況を把握しサポートできる。中には一度再起動すると正常に動くようなケースも多く、(遠隔管理できるようにすることで)サポートレベルの向上はもちろん、保守・修理を担当するエンジニアの負担を減らすことにも繋がるのではないかと考えている」(佐藤氏)

両社では今回の実証実験を通じてIoTによる機器管理の精度を高め、将来的には全国のティッセンクルップ・アクセスの家庭用昇降機を遠隔で一元管理することを目指す計画。またCambrianRobiticsとしては「保守管理に人手をかけられない機器のIoT化」をひとつの軸に、様々な企業とobnizeを活用した取り組みを進めていく方針だという。

ニオイ“可視化”センサー開発のアロマビット、ソニーらから2.5億円を調達

ニオイを可視化するセンサーを開発、サービスを提供するアロマビットは3月4日、総額2億5000万円の資金調達を行ったことを明らかにした。第三者割当増資の引受先は、ソニーのコーポレートベンチャーキャピタルSony Innovation Fundと、既存株主で名称非公開の事業会社だ。

アロマビットは2014年12月の創業。小型のニオイイメージングセンサー、つまりニオイを可視化できるセンサーを開発し、センサーを使った製品や、取得したデータをもとにしたサービスを提供するスタートアップだ。

アロマビット代表取締役の黒木俊一郎氏によれば、社名には「共通言語による情報共有が難しかったニオイ(アロマ)を、データというデジタル言語(ビット)を使うことで言語化し、ニオイに関するコミュニケーションを楽にしたい」という思いが込められているそうだ。

目には見えないニオイを可視化する、と言われてもイメージが湧かない人も多いかと思うので、少しそのセンサーの仕組みを説明してみたい。

従来のガスセンサーは、ニオイに含まれる特定の成分(分子)に反応する。アロマビットが開発するニオイ識別センサーは従来型センサーと異なり、生物の鼻のように、さまざまな成分を含むニオイをパターン認識することが可能だ。

ヒトの鼻なら約300〜400のセンサー(嗅覚受容体)があり、ニオイ分子に反応する。生物はその複数のセンサー反応の組み合わせパターンで、嗅いだニオイを判断する。アロマビットのニオイイメージングセンサーは、これを機械で模倣したものだ。

このセンサーは、クォーツ時計やコンピュータのクロック発振回路にも使われる水晶振動子をセンサー素子として、その上にニオイ分子を吸着する吸着膜が設置されている。ニオイ分子が膜の表面にくっついたり離れたりして質量が変わると、素子の共振周波数も変化するので、その変化を計測することでニオイ分子の様子をデータとして捉えることができる。

アロマビットでは3年半ほどの初期開発を経て、この1〜2年は企業向けにニオイセンサーやシステムなどの提供を行ってきたが、2018年12月にはデスクトップ型のニオイ測定装置「Aroma Coder – 35Q」を製品化した。Aroma Coderでは、35種類のニオイ吸着膜が35素子に搭載されている。35種のセンサー出力データを一度で1つのパターンとして取得でき、合計で約5京通り(5×10の16乗)以上の「ニオイ可視化パターン」出力が可能だ。

Aroma Coderでは35素子を1つの装置に搭載したことで、測定時間を数分に短縮。よりニオイの「解像度」が高く、複雑なニオイを可視化できるようになっているという。

またアロマビットではデスクトップ型製品と同時に、企業が自社製品にニオイセンサー機能を搭載できる組み込み型センサーモジュールを、システム開発キット(SDK)として提供開始している。これは顧客企業がターゲットとなるニオイを指定すれば、それに応答しやすいニオイ感応膜5種類の組み合わせをアロマビットで選定し、カスタム化したセンサーモジュールと測定ソフトウェアを提供してくれるというもの。製品開発が進んだあかつきには、月産数個〜数万個で標準センサーモジュールの量産化も可能だ。

黒木氏は「この精度のニオイイメージングセンサーを小型軽量・低コストで、量産型で提供できる企業は、グローバルでもまだ出ていないので引き合いも多い。理論や実験段階でなく、製品が出ている点が我々の強み」と話す。

水晶振動子を素子に採用したのは価格弾力性の高さと量産可能性の高さからだというが、黒木氏は「今後はMEMS(微小電子機器システム、マイクロマシン)や半導体などにも応用したい」とも話している。

これまでに累計400社での採用がある同社プロダクト。導入されている業種は食品、日用品、コスメなど想像が付きやすいものから、産業機械、ロボティクス、モビリティ、農業など、ニオイの情報をどう使うのか、にわかには想像が付かない分野にも広がっている。

用途としては品質管理、商品開発などがあり、「これまで人に頼ってきた製品の品質管理を、データとして客観的に判別する」「ある香りにAという成分が含まれていることは分かったので、作りたい香りから逆算して足りない成分Bを知るために分析する」といった使われ方をしているそうだ。

産業機械、ロボティクスの分野では、産業油の変化をニオイで感知することでクオリティコントロールを行うといった例も。またモビリティの分野では今、MaaS(Mobility as a Service)展開が盛んで、車内外の異常検知などを目的にさまざまな車載センサーが積まれるようになっている。その一環としてニオイセンサーも取り上げられているようだ、と黒木氏は述べている。

黒木氏は「ニオイの可視化、センサーによるニオイデータのデジタル化は、五感の中でも一番遅れていたが、今後、大手企業が参加し、AIや機械学習によるニオイのビックデータ分析も始まることで、市場ができ、ニーズも一層増える分野になる」と述べ、「このトレンドを捉え、ニオイの可視化分野で、グローバルでデファクトスタンダードとなることを目指す。ニオイ可視化で世の中の役に立ちたい」と話している。

アロマビットでは、2017年2月にみらい創造機構と個人投資家らから1億5000万円を調達。その後、今回のラウンドにも参加している匿名の事業会社から資金調達を行っており、今回の調達はそれに続くものとなる。

今回の調達により、アロマビットでは既存製品の高機能化や小型化、量産化など開発を進めるほか、「セールスマーケティングのグローバル化を図り、北米、ヨーロッパなどにも進出したい」と黒木氏は述べている。また、ニオイのデータベース拡充を自社で行うことで、「ニオイセンサリングと可視化の分野で、世界レベルの競争優位性を確立したい」ということだった。

すべての靴をスマートなIoTシューズにするno new folk studioが2.5億円調達

スマートフットウェア「ORPHE」シリーズを開発するno new folk studioは2月26日、複数の投資家より総額で2億5000万円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先となったのはMTG Ventures、三菱UFJ信託銀行、Darma Tech Labs、Mistletoe。今回はシリーズAラウンドに当たり、累計の調達額は約3億5000万円になるという。

no new folk studioは靴型のウェアラブルデバイス(スマートフットウェア)を手がける日本のスタートアップだ。2016年には、動きに応じて音や色が変化するスマートフットウェア「Orphe」を発売。表現者をエンパワーする新たなツールとして、舞台演出やメディアアート業界で注目を集めた。

同社ではOrpheで培ったセンサリング技術を応用し、誰でも簡単に高度な行動解析を可能にするスマートフットウェアプラットフォーム「ORPHE TRACK」を今春を目処にリリースする計画。今回調達した資金もその開発に向けた人材採用などに用いる。

ORPHE TRACKは靴のソール部分にセンサーモジュール「ORPHE CORE」を埋め込むことで、どんな靴でもスマートにしてしまうというプロダクト。従来は専門の設備がなければ取得することが難しかった詳細な行動データを誰でも取得できるプラットフォームを目指すという。

一例として詳細なランニングデータを取得することで、ランニングフォームの改善に繋げられるランナー向けのプロダクトを今春一般発売する予定とのこと。その他このプラットフォームを活用して健康保険や情報銀行といった他サービスとの連携や、ヘルスケア向けのプロダクトの開発を進めていく方針だ。

アナログ工場にIoTを後付けできる信号灯状態検知ユニット

大阪を拠点とする西菱電機(せいりょうでんき)は2月20日、「信号灯状態検知ユニット」の提供を開始した。同ユニットは、工場の機械に後付けできる検知機で、電圧や照度の状態を監視する。

ゲートウェイを介して稼働台数、稼働時間、稼働率をリアルタイムに確認できるほか、データの蓄積が容易になる。工場機械の各種データをデジタルで保存できるので、各種管理ツールなどを併用すれば、予実管理、ランニングコストの分析などに役立つと考えられる。

税別の設置料金は、事前調査費が6万5000円/日、信号灯状態検知ユニットは電圧検知タイプが3万9000円/台、照度センサータイプ(3灯式)が5万3000円/台、3灯式以外の照度センサータイプが要問い合わせとなっている。そのほかゲートウェイ(4万円〜)、月額サービス(1000円〜)。取り付け調整(〜6万5000円/日)。

同社は、信号灯状態検知ユニットなどを開発・販売するIoT事業のほか、ドコモショップの運営などを手がける企業だ。

キングジムのタマゴ型リモコン「Egg」は小さくてコンセント不要、どこにでも置けるカワイイやつだった

文具メーカーのキングジムは、2月18日よりクラウドファンディングの「Makuake」で自社製スマートリモコンの支援募集を開始する。TechCrunch Japanは一足先にその実機を手にすることができたので、紹介しておこう。

キングジム製のスマートリモコン「Egg」は、家にあるテレビやエアコンなど、赤外線リモコンに対応した家電をスマートフォンで操作できるようにするためのデバイスだ。デバイスとスマホはBluetooth接続で、事前のWi-Fi設定などは不要。1タップで複数の家電の操作ができる「シーン設定」や、毎日同じ日に家電を起動させる「タイマー設定」などが搭載されている。スマホがEggに近づくと自動で家電が起動する「オートメーション機能」もある。また、IFTTアプリと連携すれば、Amazon Echoなどのスマートスピーカーにも対応させることも可能だ。

 

ただ、Eggの最大の特徴は、デザイン的にも機能的にも「どこにでも置ける」という点だ。Eggはこの手のスマートリモコンにはめずらしく、USBケーブルなどで充電するタイプではなく、電池駆動のデバイス。だから、Eggは置く場所を選ばない。サイズも缶ジュースの半分ほどと小さく、見た目も名前の通り、タマゴ型のシンプルなデザインなのでどんな場所にも馴染む。

たぶん実際にはこんなところに置くことはないが、ヘルシオの上にもちょこんと乗せてみた。

電池を本体に入れるためには、Eggの下側にある蓋を開ければいい。ただ、この蓋を開けるためには小さな溝にコインを差して回す必要があって、そのあとに蓋をパカっと開けるのも、ちょっと固くて一苦労だった。

ちょっと蓋が開けにくいEggだが、スマートホームを気軽に体験するためにはお手頃なデバイスだ。電池を入れ、専用アプリをダウンロードしていくつか設定をするだけで快適なスマートホームが手に入る。Eggは本日からこちらのページで支援の募集を開始。支援価格は7500円からだ。

Amazonは過去を見て未来を作る

この20年間で、スマート家電は夢から日常へと進化した。家電量販店Best Buyの中を歩けば、わずか数分でセットアップできる製品が並んでいる。素晴らしいことだ。おまけに簡単に使えるのも嬉しい。大手からも小さなメーカーからも、照明やドアの鍵やスクリーンが発売されている。しかし、そこに問題がある。規格が統一されていないことだ。そんな中で、自社で販売する製品を統合して消費者や量販店に提供するというAmazonの方法は、解決策になり得る。

もちろん、どのスマート家電も役に立つのだが、いっしょにしたときにうまく協調してくれない。スマートホームは、スイッチを入れれば電灯が点くといった具合に簡単なものでなければいけない。AmazonはメッシュWi-FiのスタートアップEeroを買収したことが、それを物語っている。2つ3つより多くのスマート家電からなるスマートホームを形成するのは、至難の業だ。うまく使えなくなる要因がいくつもあり、スマートホームがトランプタワーのように頼りなく感じられてくる。

平均的な消費者にとってベストなものは、Amazonにとってもベストだ。スマートホームをできる限り簡単で便利なものにするには、それを提供する企業は、どの入口からでも同じ感覚で使えるように環境を整えることが大切だ。これはAppleがスマートフォンで実施している方法であり、Appleは、長年、もっとも簡単でもっとも安全なスマートフォンの使用環境を提供してきた。

理屈からすると、Amazonは、Amazon EchoにEeroルーターを同梱させるとか、Echo製品にメッシュネットワークを組み込むことを考えるだろう。いずれにせよAmazonは、Fire TVとEcho製品がAmazonのコンテンツ配信サービスを安定的に利用できるようにするだろう。それが、Amazonがスマートホームで儲ける形だからだ。

Devinが素晴らしい記事を書いて説明しているが、メッシュネットワークは、すべての部屋に入り込もうとしたAmazon自身が生み出した問題の解決策となる。本格的なスマートホームにWi-Fiは不可欠だが、Wi-Fi以外のネットワークもあれこれ存在する。スマートホームとは複雑なものだ。その始まりは20年以上前まで遡る。

無線ネットワークがまだ一般に普及していなかったころ、マニアや金持ちが立てた家では、エレクトロニクスを利用するために他の方法に頼らざるを得なかった。今でも、そのころのプロトコルの新しいバージョンを使っている製品は現役だ。Z-WaveやZigBeeといった通信方式を使えば、ホームセキュリティー・システムに無線監視カメラを接続したり、通常ならネットワークとは無関係なコーヒーメーカーや電灯などを操作できるようになった。

後に登場した無線通信規格は、Z-WaveやZigBeeと競合することになった。2000年代の初めにInsteonが現れ、無線電波と電灯線網を利用した冗長なネットワークを提供した。2014年には、Samsungの協力を得たNest、Qualcomm、ARM、その他の企業がThreadネットワーク規格を導入し、現代的な冗長性と高度な安全性をもたらした。それだけではない。Bluetooth 5、Wi-Fi HaLow、そして見渡せる範囲で使える赤外線信号を使った製品もある。

こうした競合する通信方式によってグループが分かれるため、それらに属する製品を同時に使ってスマートホームを形成し、ひとつのデバイスですべてを操作することは困難になる。スマートホーム製品の初期段階である現在は、さまざまな製品の統一的なコントロールを可能にするために自社製品の使用を促すという形をAmazonとGoogleが作り上げている。

Appleはそれを実行し、なんとか成功した。HomeKitフレームワークでは、iOS機器を家の中央コントロールポイントとして使うようになっている。電灯を点けたければ、iOSに表示されるボタンをクリックするか、今ならHomePodに話しかけるだけでいい。宣伝のとおりに機能してくれるが、対応する製品はAppleの認証を受けなければならず、そのため使える製品の数はAmazon Echo対応のものよりも少ない。

一方、GoogleとAmazonは両手を大きく広げてスマートホームに入ってきた。あらゆる製品に対応する姿勢を見せた。

それが功を奏した。この2年間でスマート家電メーカーは、自社製品がGoogle AssistantやAmazon Alexaに対応することで大きく前進できた。先月開催されたCESでは、便器がAlexaに対応したと発表されてジョークのネタにもなったぐらいだ。

スマートトイレには恐れ入るが、これらネットワークに接続される製品のすべてが、それぞれにセットアップを必要とする。すべての電灯、暖房の温度調節器、トイレも、初めてのユーザーがスマートフォンのアプリを操作して快適に使うことを要求している。ネットワークの設定がどうなっているのか、トラブルが起きたときに何をググればいいのかをユーザーが心得ているものと想定されている。なぜなら、トラブルはかならず起きるからだ。

AmazonのAlexaアプリは助けてくれない。ひとつのアプリは、音声通話、スキルの設定、遠隔操作、Alexaへのアクセスなど、さまざまな機能がに支えられている。ひとつのアカウントにいくつものEchoを登録してしまうと、もう仕事が多すぎて手に負えなくなってしまう。

何かを変えなければ。

スマートホームが新しいデモグラフィックに売り込みをかけようとするなら、難しいものは取り除かなければならず、集中コントロールが最重要となる。ITに詳しくない人でも、音声コントロールハブをいくつか買ってきて、照明をつないで、暖房の温度調節器をつないで、それらすべてをひとつのアプリで操作するよう設定できなければならない。個々の製品のネットワーク方式が異なっていてもだ。

Amazonはすでに、異なるスマートホーム用無線プロトコルに対応するという大きな一歩を踏み出している。2017年、AmazonはEcho Plusを発表した。このバージョンのEchoスピーカーは、ZifBee(ZigBee用Philips Hue LEDライトシリーズ)に対応している。さらに2018年、AmazonはEcho Plusをアップグレードし、温度センサーを搭載して、インターネットがダウンしてもオフラインでスマートホーム・ネットワークを使ってスマート家電をコントロールできるようにした。

Amazonは、スマートホーム関連企業のポートフォリオを膨らませている。自社製のEcho製品に加えて、ビデオモニター付きドアベルのメーカーRing、無線ビデオカメラ・システムのメーカーBlink、そして最近では屋外用照明のメーカーMr.Beamsを買収している。これにEeroが加わり、AmazonによるWi-Fi環境を買い手に提案できるようになった。残るは、これらのデバイスの使用環境の統一だ。

どの企業でも、スマートホームで競争に勝ちたいと思えば、消費者の絶対的な信頼を得る必要がある。Amazonは、今のところ、ユーザーのプライバシーに関する問題を起こした回数がもっとも少なく、内容も比較的軽いもので済んでいる。Amazonが音声データを行政当局に渡していたことを、複数の記事が伝えた。またAmazonが所有するビデオモニター付きドアベルのメーカーの製品が近所を監視して個人の特定や差別につながるのではないかと問題を提起した記事もあった。

Amazonは、そうした中傷記事で評判を落とすことはないだろうが、製品の不良により高収益をもたらすサービスが提供できなくなることには耐えられまい。

スマートホームの世界を占領しようと戦いを続けているのはAmazonだけではない。Google、Samsung、そしてAppleは、この成長を続ける市場を真剣に見据えている。彼らは、Amazonがパイをすべて食べてしまう事態を許さないだろう。家電大手も、消費者に人気の製品を持つスマートホーム製品のメーカーの引き抜きを続けてゆくだろう。Arlo、ecobee、Belkin、Wyze Labs、sevenhugs、Brilliantのような企業を買収しようと目を光らせているのだ。これらの企業は、彼らが目指す分野で最高の製品を作っている。大手家電メーカーがこれまでに買収した企業の隙間を埋めることで、完全に統一された使用環境を消費者に提供しようと目論んでいる。

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(翻訳者:金井哲夫)

Fitbit、新デバイスInspireで健保と企業福利分野に進出

Fitbitから新しいフィットネスモニターが登場したが、これは店舗で購入はできない。

Fitbitは先週金曜日にInspireをひっそりリリースした。これは同社として始めての健保加入者ないし企業社員向けのプロダクトだ。会社や健保が補助するプロダクトを手がけることで企業ヘルスケアの分野に一層深く浸透しようというアイディアだ。

新しいデバイスはクリップがオプションとして付属するリストバンドだ。ベーシック版の機能は標準的で、運動、睡眠のモニター、カロリー消費の推計、設定されたスマートフォンへのアラートなどだ。ハイエンド・モデルには、GPSによる位置追跡、心拍数モニター、詳細な睡眠時分析が含まれる。プロダクト紹介のページに価格は表示されていないが、これはユーザーは料金を支払う必要がないからだ。

CNBCの番組でのインタビューで、 CEOのJames Parkは 、「われわれのユーザーは680万人に上る。この中には企業の福利厚生の一環のウェルネスプログラムのメンバーや健康保険に付帯する各種プログラムのユーザーを多数含んでいる」と述べた。今回発表されたInspireはFitbitの中でいちばん入門的デバイスだが、ユーザーを大きく増やすことが目的だという。Parkは「FitbitはUnitedHealthなどの健康保険と協力しており、全米27州の42のMedicare Advantageプランでカバーされるフィットネス・デバイスになった」と述べた。

コンシューマ市場の競争は非常に激しい。Fitbitが健康保険、企業福利厚生の分野に進出したのは賢明だ。ウェエラブル・デバイスがパイオニア的な物珍しいプロダクトではなくなるにつれてライバル間の競争は激化している。Appleはヘルスケア市場に全力投球している。ハイエンド市場はほぼApple Watchの独占で、健康保険分野への進出も検討している。これに対してエントリーレベルではXiaomiやパートナーのHuamiが30ドルといった低価格のプロダクトで勝負を挑んでいる。

Fitbitの上場は2015年で売出価格は20ドル、初日の終値は29.68ドルだった。新製品発表で金曜日の株価は6.48ドルまでアップしたが、それでも上場時点を大きく下回っている。金曜終値による時価総額は約16億ドルだった。

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滑川海彦@Facebook Google+

Raspberry Piのストアが開店Apple Storeよりもクールかな

Raspberry Pi Foundationが今日(米国時間2/7)、最新のプロジェクトを披露した。それはなんと、本物のお店だ。イギリスのケンブリッジに住んでる人は、甘くておいしいラズベリーパイをたくさん買って、いろんなクールなものを作れるぞ。

Raspberry Piは最初からずっと、子どもも含め誰もが気軽にプログラミングができることをねらっていた。だから、こういう実物店があることは理想的だ。同ファウンデーションは、ARMのプロセッサーを使った、いろんなI/Oポートのある、Wi-FiもBluetoothもある、とっても安いコンピューターをいろいろ作ってきた。

最新の主力機種Raspberry Pi 3 Model B+は、わずか35ドルだ。もっと小さくて安いのが必要なら、いろんなニーズに合うそのほかの機種もある。

たとえば今のあなたは、何かの物のインターネット(Internet-of-Things, IoT)プロジェクトのための小さなコンピューターが必要かもしれない。それなら、25ドルのRaspberry Pi 3 Model A+がいいだろう。RAMとポートはやや少ないが、性能はほかのRaspberry Piと変らない。省エネが重要なら、10ドル以下で買えるRaspberry Pi Zeroがある。

Raspberry Piにストアができるなんて、考えたこともなかった。でも上の紹介ビデオを見ると、こんなストアが欲しかった、と思ってしまう。今では機種も多様化しているから、自分のプロジェクトにあった機種をお店の人に尋ねられるのが、とてもいい。

このストアは、ショウルームとしても使う気だ。マグカップやおもちゃなど、関連グッズも買える。白と赤のキーボードやマウス(下図)も、クールだね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

JR東日本、紛失防止タグMAMORIOを本格導入 51駅にアンテナ設置

eng-logo-2015『駅に忘れ物が届いたよ』と持ち主のスマホに自動通知してくれる。そんな新サービスをJR東日本が2月18日に開始します。この「お忘れ物自動通知サービス」は、紛失防止IoTタグの「MAMORIO」(マモリオ)と提携して実施します。

「MAMORIO」は、約3000円の忘れ物防止IoTタグです。Bluetoothでスマホとペアリングし、同タグを取り付けた財布や鍵、バッグがスマホから一定の距離以上離れると、その位置と時刻をスマートフォンに通知してくれます。

また、駅や商業施設に設置した専用アンテナ「MAMORIO Spot」がMAMORIOタグを検知した場合に、その持ち主に自動通知する機能。そして、手元から離れたMAMORIOタグが、他のユーザーのMAMORIOとすれ違ったときにその場所を通知してくれる「みんなで探す(クラウドトラッキング)」機能も備えます。

JR東日本「試験運用で効果が見込まれた」

今回JR東日本は、首都圏・新幹線の主要51駅の忘れ物取扱所に忘れ物検知アンテナ「MAMORIO Spot」を設置。忘れ物の情報を所有者に通知することで、忘れ物の早期発見・引き渡しを狙います。

同サービスはこれまで東京駅・上野駅・大宮駅・千葉駅で試験運用していましたが、2月18日より本運用に移行します。その理由についてJR東日本は『(試験運用で)一定の効果が見込まれた』と説明しています。

忘れ物検知アンテナの設置駅は、東京、上野、松戸、取手、川崎、鶴見、東神奈川、横浜、大船、平塚、小田原、熱海、桜木町、磯子、 逗子、横須賀、三鷹、府中本町、立川、豊田、八王子、高尾、甲府、浦和、大宮、古河、小山、 小金井、宇都宮、黒磯、熊谷、高崎、新前橋、土浦、水戸、錦糸町、西船橋、津田沼、千葉、佐倉、 成田、成田空港、仙台、山形、新庄、盛岡、新青森、秋田、長岡、新潟、長野となります。

Engadget 日本版からの転載。

ソニー、留守でも生活支援サービス業者が開錠できる「MANOMA Entrance」を提供開始

eng-logo-2015ソニーネットワークコミュニケーションズが提供するスマートホームサービスMANOMAが、不在時でもサービス業者が家のスマートロックを解除し、家事代行などのサービスを受けられる「MANOMA Entrance」を3月1日より開始します。

MANOMAは、ソニーネットワークコミュニケーションズが2018年10月に発表したスマートホームサービス。Alexaに対応したAIホームゲートウェイを中心に、室内カメラや開閉センサーなどを組み合わせ、留守中の家の様子を確認したり、留守時に開閉センサーが作動すると警報を鳴らし、オプションでセコムが駆け付けるなど、セキュリティに強いのが特徴です。

関連記事:
SONY、スマートホームをより身近にするプラットフォーム「MANOMA」を発表

あらたに提供されるMANOMA Entranceは、予約した日時にサービス提供業者が自宅を訪問し、適切なスタッフであることを認証したうえで玄関の鍵を開錠します。あらかじめ鍵を預けておいたり、時間になったら自分で遠隔操作をする手間がないのが特徴です。

室内カメラを使って作業スタッフの様子を確認でき、必要なら直接スタッフとの会話も可能とのこと。

3月から開始するのは、家事代行のダスキン メリーメイドとベアーズ、ハウスクリーニングのおそうじ本舗、ペットシッターの麻生PETの4サービス。2月15日から順次、各サービスの申込受付を開始します。

なお、サービスを受けるには、MANOMAを利用しており、かつQrio LockとQrio HubをMANOMAに登録していることが条件となります。

今後、対応サービスとして、介護やヘルスケア、宅配、ECなどとの連携も検討しているとのこと。宅配業者と連携できるようになると、宅配ボックスも不要で配達員が家の中に荷物を置く、米AmazonのKeyのようなサービスが実現できるかもしれません。

関連記事:
アマゾン、配達員が自宅ドアを解錠する「Amazon Key」発表。留守中でも荷物が届く

Engadget 日本版からの転載。

安物のIoT機器は、たとえゴミ箱に叩き込んだあとでも持ち主を裏切り続ける

格安のスマート電球やセキュリティカメラを購入したときの最悪のリスクは、セットアップに手間がかかるとか、設定できることが少ないことだと考えるかもしれない。しかし、こうした雑なガジェットがセキュリティリスクであるのは、プラグインされている間だけではない。ゴミ箱の中にあるときさえ、あなたのネットワークを危険にさらすかもしれないのだ。

こうした、いわゆるIoTガジェットは小さくてかなり単純なものだが、それでもあらゆる目的と用途のために用いることのできる、本格的なコンピューターなのだ。それほど多くのことをする必要はないかも知れないが、機器が利用者のプライベート情報を暗号化しないまま世界にばらまいたり、アクセスしてきたものにルート権限を渡したりしないように。よくある基本的な予防策は講じておく必要がある。

Limited Resultsが(Hack a Dayを介して)調査を行った低コスト「スマート」電球の場合には、問題はそれらが接続されている間に行うことではなく、それらがその小さな頭脳の中に保存している情報と、その保存方法だった。

彼らがテストしたすべての電球は、内部のチップに保存されている情報を保護することに対するセキュリティを、まったく持っていないことが証明された。回路基板を露出させた後、数本のリード線を接続したところ、どのデバイスもそのブートデータを出力したあと、コマンド待機状態になった。

データは例外なく全く暗号化されていなかったが、そうしたものの中にはデバイスが接続されていたネットワークへのワイヤレスパスワードなども含まれていた。1つのデバイスなどは、RSAの秘密鍵も公開していた、この秘密鍵はデバイスが(更新や、ユーザーデータのクラウドへのアップロードなどのために)接続するサーバーへの、セキュアな接続を確立するために使われるものだ。こうした情報が、この電球をゴミ箱から拾い上げたり、屋外の設備から盗んだり、あるいは中古品として買った人なら、手に入るのだ。

「真面目な話、IoTデバイスの9割はセキュリティを考慮せずに開発されています。これは惨事以外の何物でもありません」とLimited Resultsはメールに書いている。「私の調査は、LIFX、XIAOMI、TUYA、およびWIZの4つの異なるデバイスをターゲットにしています(まだ全ての結果は発表されていない)。同じデバイス、同じ脆弱性、そして時にはまったく同じコードさえもが中に入っています」。

現在、これらのデバイスに上で公開されている特定の情報は、それ自体ではそれほど有害ではないものの、もし誰かがその気になれば、複数の方法でそれを活用することができる。ここで注目すべき重要な点は、こうしたデバイスに注がれた注意の全くの欠如である。コードに対してだけではなく、構造に対する注意も欠如しているのだ。そうした商品は、安全性も、セキュリティも、そして寿命さえ考慮していない市販のワイヤレスボードに、単に簡単なケースをとりつけただけなのだ。そしてこの種のことは、決してスマート電球に限定されるものではない。

こうしたデバイスは皆、AlexaやGoogle Home、もしくはその他の標準規格をサポートしていることを誇らしげに主張している。こうした主張は、ユーザーに対してこれらのデバイスが、何らかの形で認定され、検査され、あるいは何らかの基本規格に合格しているという誤った認識を与える可能性がある。

実際は、それらのすべての機器が、本質的に全くセキュリティを持たないことに加えて、中にはその(導電性の)金属ケースと基盤の間を絶縁しているものが、粘着性の適当な紙に過ぎないものもあった。このようなものを使っていては、漏電火事や少なくとも短絡事故が起きるのを待っているようなものだ。

他の種類の電子機器でも同様だが、ある機器が他の機器よりもはるかに安価であるのは、そうなるだけの理由が常にあるのだ。だが、安物のCDプレーヤーの場合には、最悪でも曲がスキップしたりディスクに傷が付くくらいだ。だが、安物のベビーモニター、安物のスマートコンセント、そして安物のインターネット接続ドアロックの場合には、そんな程度の被害では済まない。

私は別に、世の中のスマートガジェット全てに関して、プレミアムバージョンだけを買う必要があると言いたいわけではない。消費者たちが、そうした(いい加減に作られた)デバイスをインストールすることで、どのようなリスクに晒されることになるかに自覚的であるべきだと言いたいのだ。

あなた自身のリスクを限定したい場合に、簡単にできる手段のひとつは、スマートホームデバイスなどを、サブネットやゲストネットの上に隔離してしまうことである。自分のデバイスと、もちろんルーターが、パスワードで保護されていることを確認しよう。そしてパスワードを定期的に変更するなどの常識的な手段を講じよう。

画像クレジット: Limited Results

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(翻訳:sako)

無人コンビニの600が1億円調達、年内に500箇所への設置めざす

オフィスに設置する無人コンビニ「600」を提供する600は1月28日、シリーズAの資金調達ラウンドで朝日メディアラボベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタル、アプリコット・ベンチャーズ、AGキャピタル、ほか複数の個人投資家などから1億円を調達したと発表した。

600はオフィスに設置する飲食品や日用雑貨販売サービスだ。冷蔵庫タイプの本体は幅60cmとコンパクトのため設置しやすく、冷蔵保存ができるため取扱可能な品目は日用雑貨から、スイーツ、カップラーメンなど幅広い。本体の中には最大600品目の商品を置くことが可能だ。

ユーザーが600を利用するにはまず、本体に取り付けられたカードリーダーにクレジットカードをスワイプして扉をあける。各商品にはRFID(radio frequency identifier)タグがついており、このタグと本体が無線通信で情報をやり取りすることで、どの商品が本体から取り出されたかを把握する。あとは、画面の表示にしたがってカード決済を行うだけだ。

600ではどの商品がいつ、どれくらい売れたのかという購買データを取っているため、補充員がそのときの状況に応じて最適な商品を600内に並べることができる。寒い日はのど飴が売れるので多めに補充する、といった具合だ。

2018年6月のサービスリリース以来、600はこれまでに50箇所に設置済みで、LINEやKDDIなどの大手企業からLang-8、WOVN Technologiesなどのスタートアップまで幅広い企業に利用されているという。累計商品販売数は2万個だ。

600は今回調達した資金を利用して、無人コンビニの製造体制の強化および物流網の強化を図る。代表取締役の久保渓氏によれば、同社は2019年中に600の設置数を500箇所にまで拡大し、累計販売個数は20万個にすることを目指すという。また、2024年までには1万箇所への設置と平均日販3万円を達成することで、年間1000億円規模の取扱高を達成したい構えだ。

スマホやスピーカーで住宅をまるっとスマート化、「住宅のOS」手がけるSOUSEI Technologyが4.5億円調達

家の状態管理アプリなどを提供するSOUSEI Technologyは1月25日、あいおいニッセイ同和損害保険、京都大学イノベーションキャピタル、信金キャピタルから4億5000万円を調達したと発表した。リードインベスターは調達総額のうち3億3000万円を出資したあいおいニッセイ同和損保だ。

SOUSEI Technologyは、奈良県で注文住宅事業を行うSOUSEIのIT部門を2018年8月に分社化したことで誕生したスタートアップだ。現在、同社は住宅領域で2つのサービスを手がけている。マイホームアプリの「knot」は、マイホームに関する様々な情報を一括して管理できるアプリ。建築図面、住宅の取扱説明書などの書類やアフターメンテナンスなどの情報を管理できる。アプリには住宅の完成予定日までの日数や、次にいつ定期点検があるのかなどを確認できる機能もある。

同社はknotのほかにも「v-ex(ベックス)」と呼ばれるプロダクトも展開している。これは、専用デバイスを自宅に取り付けることで、家電の遠隔コントロールや住宅の状態管理などが行えるようになるというもの。スマホやスマートスピーカー経由でリモコン起動の家電(テレビ、エアコン、照明など)を操作できるようになるほか、温度・湿度・気圧をスマホアプリ上でチェックできるようになる。

v-exは2018年7月に販売開始。今後もさまざまな機能を追加することで様々なアプリケーションを備えた「家のOS」デバイスとして進化させていくという。

HOME OSデバイスの「v-ex」。写真は同社Instagramアカウントより。

SOUSEI Technologyは今回調達した資金を利用して、各サービスのマーケティングと開発能力を強化していく。特に、今回の資金調達ラウンドでリードインベスターを務めたあいおいニッセイ同和損保とは、本ラウンドを期に「InsurtechとReal Estate Techの新たなビジネスモデル実現を目的に共同で研究開発を行っていく」としている。