IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

昨年から既定路線ではあったが、IBMのRed Hat(レッドハット)買収が完了した。買収価格は340億ドル(約3.7兆円)とテクノロジー企業のM&Aとしては史上最大級となる超大型案件だった。

IBMがLinuxの巨人を買収しようとしていることを最初に発表したのは昨年10月だった。その後、米司法省はこの5月に合併を承認し、続いて先月下旬にEUが無条件で合併を承認したことで最終的に障害が取り除かれた。

IBMは「Red Hatは引き続き、CEOのJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏のもとで独立の企業として運営される」と述べている。 ホワイトハースト氏はIBMの経営陣に参加し、IBMのCEOであるGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏の直属となる。

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滑川海彦@Facebook

VMwareがマルチクラウドロードバランシングのAvi Networksを買収

VMwareは、ユーザーのデータセンターの仮想マシンの構築と管理を助ける企業から、オンプレミスでもパブリッククラウドでも仮想マシンがどこにあってもそれらの管理を助ける企業へと変わる努力を続けてきた。米国時間6月13日に同社が買収を発表した設立6年のスタートアップであるAvi Networksは、クラウドとオンプレミスの全域にわたってアプリケーションのデリバリを均衡化するサービスで、まさに今のそんなVMwareに合ってる企業と言える。なお、買収の価額は公表されていない。

Aviは、うちは昔のロードバランサーの現代版だ、と主張する。彼らが昔と呼ぶ時代には、アプリケーションは頻繁に変わることもなく、企業のデータセンターにオンプレミスで棲息していた。しかし、企業がますます多くのワークロードをAWS、Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドに移行させている今日では、Aviのような企業がもっと現代的なロードバランシングツールを提供しなければならない。それらのツールは、ロケーションやニーズに応じてソフトウェアのリソース要求を均衡化するだけでなく、要求の背後にあるデータを調べる必要がある。

図表提供: Avi Networks

VMwareもユーザー企業のインフラストラクチャを、それらがクラウドやオンプレミスのどこにあっても顧客企業が一貫したやり方で管理できるよう努めてきた。Aviの買収もその努力の一環であり、今回は主にモニタリングとロードバランシングのツールを手に入れたことになる。VMwareのネットワーキングとセキュリティ事業担当上級副社長を務めるTom Gillis氏は、この買収が同社のそういうビジョンによくフィットしている、と言う。「この買収は弊社のVirtual Cloud Network(仮想クラウドネットワーク)ビジョンをさらに前進させる。そこでは、ソフトウェア定義の分散ネットワークアーキテクチャがすべてのインフラストラクチャに行き渡り、そのすべてのパーツを、パブリッククラウドにあるオートメーションとプログラマビリティで統合する。Avi NetworksとVMware NSXが結びつけば、企業は新たな機会への対応力を増し、脅威に対して強く、新しいビジネスモデルを作ってすべてのアプリケーションとデータにサービスを届けられるようになる。それらがどこにあっても」。

Aviの共同創設者たちはブログ記事でこれと同様の気持ちを表明し、さらに強力に前進できる企業になる、と期待している。彼らは曰く、「VMwareとの合体を決意したのは、両者のビジョンとプロダクトと技術と強力なマーケティングと企業文化の相性がきわめて良いと判断したからだ。私たちはこれからも継続して弊社のミッション遂行に努め、マルチクラウドのデプロイメントをオートメーションとセルフサービスで加速化して、顧客のアプリケーションサービスの現代化を助けていきたい」。というわけなので今後に期待しよう。

今後はVMwareの一部になるAviの顧客の中には、Deutsche Bank、Telegraph Media Group、Hulu、Ciscoなどがいる。Aviは2012年に創業され、Crunchbaseによればこれまでに1億1500万ドルを調達している。主な投資家は、Greylock、Lightspeed Venture Partners、Menlo Venturesなどだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

脅威インテリジェンスのスタートアップがプライベート・エクイティ会社に戦略的身売り

あなたがもしかして気づいていなくても、セキュリティ企業は今どきのホットな商材だ。米国時間5 月29日は、Palo Alto Networksが2つのセキュリティスタートアップを買った。今週初めには、FireEye(JP)がVerodinを2億5000万ドルで買った。そして本日、プライベート・エクイティ企業であるInsight Partnersが、脅威インテリジェンスのベンダーのRecorded Futureを7億8000万ドルで買ったことを発表した。

Insightが買ったRecorded Futureは、顧客企業が今直面している外部からのサイバー脅威をよく理解するための情報を生成する。今日の世界でそんな企業に、買うだけの価値があることは容易に理解できる。同社は、GlaxoSmithKline(グラクソ・スミスクライン)やMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)、The Gap(ギャップ)、 Verizon(ベライゾン)など顧客数400社を誇っている。

当然ながらRecorded Futureにとって今回の身売りは、自分が成長を続けるための方法だ。CEOのChristopher Ahlberg氏は声明でこう述べている。「Insightとの関係が進化して、Recorded Futureは現在と未来のクライアントにもっと良く奉仕できるようになった。当社の技術的ロードマップのすべてのポテンシャルを有効活用できるし、また、当社のソフトウェアが、当社のコミュニティが直面しているもっとも困難でユニークなインテリジェンスのチャレンジに、真のソリューションを提供できるようになったからだ」。

同社は2009年に創業され、Crunchbaseによればこれまでに5800万ドルを調達している。最新のラウンドは2017年の2500万ドルで、それはほかでもないInsight Partnersがリードした。彼らは同社が気に入ったらしくて、会社全体を欲しくなったのだ。

今回の買収は、これまでの投資家、GV(Googleのベンチャー部門)、In-Q-Tel(CIAのベンチャー部門)、IA Ventures、Balderton Capital、Mass Mutual Venturesなどからの投資も買い上げることになり、彼らに大きなリターンを与える。

Palo Alto Networks to acquire container security startup Twistlock for $410M(Palo Alto Networksがコンテナのセキュリティを提供するTwistlockを4億1000万ドルで買収、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ARによるビジュアルな遠隔会議をサポートするStreemが類似企業のSelerioを買収

遠隔会議のソフトウェアにコンピュータービジョンの技術を組み合わせたAR企業Streemが、同じく拡張現実の応用企業であるイギリスの小企業Selerioを買収した。

両社は昨年共に、Betaworksのアクセラレーター事業VisionCampに参加し、コラボレーションをしたり、別々にARにおけるコンピュータービジョンの問題に取り組んだりした。

Streemの持ち味はパワーアップしたSkype通話みたいなところにあり、たとえば各種ホームサービスのプロバイダーが家の持ち主とチャットする場合、多くのビジュアルデータを得られる。たとえば電話口で機器の30桁のシリアルナンバーを口頭で伝えるのではなく、画像や映像で分かる。それらのビジュアルデータから間取りを計測したり、その家の特徴に関するノートを取ったりできる。

ポートランドに本社を置く同社は、これまで1000万ドルあまりの資金を調達しているが、最近も新しいラウンドを完了したばかりだ(詳細情報は未発表)。

Selerioの専門技術は、空間の意味的な構造を理解することだ。同社は、ケンブリッジ大学における研究から生まれた。すでにシード資金を獲得しているが、額は公表していない。投資家はBetaworks、Greycroft Partners、GGV Capitalなどだ。同社の3名の社員は全員Streemに加わる。

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Magic Leapがホログラム遠隔会議システム開発のベルギーのスタートアップを買収

レイア姫からオビ=ワンへのホログラムメッセージが、現実になりそうだ。少なくとも、拡張現実に。

Magic Leapは米国時間5月16日、ベルギーのスタートアップであるMimesysの買収で合意に達したことを発表した。そのチームはこれまで、スター・ウォーズのような立体ビデオ(Volumetric Video)通話をMagic Leapのプラットホームで実現しようとしていた。そして買い手であるフロリダのARスタートアップMagic Leapは、彼らがやってることを気に入ったようだ。まだ、その取引の詳細は得られていない。

Mimesysのウェブサイトによると、チームはMagic Leapに加わるがBNP ParibasやOrangeなどのエンタープライズクライアントへのサービスは継続する。同社のビデオ会議技術は、今年のCESで初めて紹介された。そのビデオ通話では、Magic Leapのヘッドセットに通話相手の3D表現が視覚化される。

立体ビデオの技術には、まだかなり欠陥がある。Mimesysが研究開発してきたソリューションはIntel(インテル)の奥行きカメラであるRealSenseを使って映像をPC上で収集編集し、それをユーザーのヘッドセットへストリーミングする。今の立体ビデオ映像のほとんどがそうだが、Mimesysの初期の成果もノイズを排除できない。でもMagic Leapが買収したということは、同社はもしかして、エンタープライズの顧客にアピールする独自の外付け奥行きカメラを作ったのかもしれない。

今は、ビデオ通話に革命をもたらすと称するプラットホームがとても多いけど、どこも問題を抱えている。要求する帯域が、これまでの通常のネット利用に比べて桁外れに大きいからだ。人間のリアルタイムの3D映像を送るARでは、なお一層難しいだろう。Magic Leapが約束している技術の多くがそうであるように、この立体映像によるビデオ通話も、実現の鍵を握るのは5Gの普及ではないか。

関連記事: なぜMagic Leapに大金を投ずるのか?

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

多機能化を目指すウェブサイト構築ツールSquarespaceがオンラインアポ管理のAcuity Schedulingを買収

ウェブサイトビルディングツールを開発する創業2003年のSquarespaceは米国時間4月23日、初めての買収を発表した。相手は企業がオンラインのアポイントメントを管理するためのサービス、今年で13歳になるAcuity Schedulingだ。

SquarespaceのCEOであるAnthony Casalena氏によると、同社はすでに、ウェブサイトの構築だけではない多様なサービスの複合体に成長しているが、今後はさらにオンラインのプレゼンスやコマース、マーケティング方面のツールも提供していきたい、という。

これまでSquarespaceは、さまざまなプロダクトを自作してきたが、しかし今回は、Squarespaceのページ構築ツールがすでにAcuityのスケジューリングを統合しているので、同社を買収するのがむしろ理にかなっているとCasalena氏は語る。

彼は曰く「AcuityのCEOであるGavin Zuchlinski氏は素晴らしいビジネスを作ってきた。同社の今日までの成長はとても自然で無理がなく、45名の社員全員が仕事をよく理解し、極めて顧客中心的な企業文化を育んできた。そのプロダクトも素晴らしい。あれだけのものをうちでゼロから自作していたら、どれだけ時間がかかるかわからない」。

Acuity Scheduling logo

計画では、時間をかけてSquarespaceとの統合をより密にしていくとともに、従来どおりのスタンドアローンなプロダクトとしてのAcuityもサポートを続ける。Acuityのチーム全員がSquarespaceに加わり、Zuchlinski氏は同社のAcuity担当副社長になる。

Squarespaceの今後の買収の可能性について聞くとCasalena氏は曰く「これまでは自分の会社のことしか眼中になかったけど、でもこれぐらい大きくなってしまうと、どうしてもまわりに目が行くね。そして、世の中には良いものがいろいろあることが、わかってくるんだ」。

なお、同社が昨年立ち上げたメールマーケティング機能がベータを終了し、本番化とともにキャンペーンのスケジューリングやアナリティクスの改良などの新たな機能が加わった。

関連記事: WebサイトビルダーSquarespaceがユーザーのビジネスツールの一環としてメールマーケティングを提供

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Gizmodo/Onionグループを投資ファンドのGreat Hill Partnersが買収

テクノロジーニュースのGizmodo、風刺サイトのOnionを運営するメディアグループに新しいオーナーが誕生した。非上場企業投資ファンドのGreat Hill Partnersがこれらのメディアを買収し、G/O Mediaと改称したことを発表した。

この買収の一環として、G/O MediaのCEO(兼投資家)にJim Spanfeller氏が就いた。Spanfeller氏は以前、Forbes.comのCEOを務めており、Daily Mealを運営するSpanfeller Media Groupを創立したことでも知られている。Spanfeller氏は次のように声明を出している。

デジタルメディアの世界は最近再び根本的な変革期を迎え、読者と広告主の多様化したニーズに応えられるユニークなチャンネルとして再認識されつつある。この分野における最大のプレイヤーとしてG/O Mediaはこのダイナミックな状況を活かすために理想的な立場にある。すばらしい実績を挙げてきたチームと協力してさらにオーディエンスを拡大し、読者の生活を豊かにすると同時に広告主にも一層高い価値を与えるために努力できることを喜ばしく思う。

声明によれば、新しいG/O Media Groupは月間ユニーク訪問者が1億人いるという。GizmodoグループにはGizmodo自身に加えてDeadspin、Jezebel、Kotaku、Lifehackerなどのサイトがある。当初はGawker Mediaの一部としてスタートしたが、Gawkerがハルク・ホーガン氏ことTerry Bollea氏との訴訟に敗れて倒産した後、Univisionに買収された。

この買収はスペイン語系テレビネットワークのUnivisionが英語メディアにおけるプレゼンスを高める努力の一環で、同グループは同時にThe Onionの株式も取得した。しかしUivisionは こうした英語メディアを損失処理し、買い手を探していると報じられていた。.

Wall Street Journalはいち早く、Great HillがGizmodoをポートフォリオに加えるべく交渉を始めていると報じた。新たな記事では買収額はUnivisionが2016年に支払った1億3500万ドルより大幅に安いと述べている。Great Hillは以前Vivek Shah氏が出版社のZiff Davisを買収するのを助けた。同社は後にj2 Globalに売却された。.

一方、BustleのオーナーBryan Goldbergに別途買収されて再建されたGawkerだが、今年に入ってライターが大挙会社を去るなど苦戦している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

メールAPIのMailgunが過半数株をThoma Bravoに売却して再びオーナーチェンジ

メールのAPIを提供しているMailgunが、株式の過半数をプライベート・エクイティ企業Thoma Bravoに売却すると発表した。同社はその条件を公表していないが、これは同社の8年の歴史の中で二度目のオーナーチェンジになる。

Mailgunは、デベロッパーが自分のアプリケーションにメールの機能を組み込むためのAPIを提供している。同社のデータによると、そのAPIを使っている顧客は15万社あまりいる。

投資を発表するブログ記事の中でCEOのWilliam Conwayは、これにより同社はその能力を拡大し、製品開発のスケジュールを早めることができる、と言っている。買収される企業がよく言う言葉だ。

そのブログ記事でConwayはこう述べている。「数百万ドルを製品開発に投じてユーザーの能力を高め、メールに関する多くの知見が得られるようにし、顧客に他に類のない体験を提供できるようにする。またユーザーがアプリケーションに組み込んだメール機能のスケーラビリティを高め、強力で安定的な通信機能をアプリケーションに賦与する」。

同社は2010年に操業し、2011年のY Combinator冬季を受講したが、その後の履歴が複雑だ。2012年にはRackspaceに買収され、2017年には単独の非上場企業に戻った。そのときは、別のプライベート・エクイティ企業Turn/Riverが同社に5000万ドルを投資した。今日の株式売却で、Turn/RiverはMailgunの少数株主として残ることになる。

Mailgunの主な競合他社はMailchimpやSendGridなどだ。Thoma Bravoには、これまで主にエンタープライズソフトウェアの企業を買ってきた履歴がある。いちばん最近では、同社はApttusの過半数株を買った。そのほか同社は、SolarWinds、SailPoint、Blue Point Systemsなどにも投資している。

Thoma Bravoは現時点でコメントの求めに応じていない。

関連記事: Email delivery service Mailgun spins out of Rackspace and raises $50M…MailgunがRackspaceからスピンアウトし5000万ドルを調達(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

個人化サービスのDynamic Yieldをあのマックが買収、ドライブスルーのメニュー充実へ

マクドナルド(McDonald’s)が、「個人化(パーソナライゼーション)を行う企業Dynamic Yieldを買収することで合意に達した」と発表した。

発表にその価額は含まれていないが、情報筋によると3億ドル(約330億円)あまりだ。マクドナルドの、これまでの20年間で最大の買収だ。

Dynamic Yield自身の説明によると、同社はeコマースや旅行、金融、メディアなどの企業に、Amazonのような個人化されたオンライン体験の提供を可能にする。

マクドナルドによると、同社はその技術を利用してドライブスルーのメニューをそのときの天候や、お店の混み具合、メニューアイテムのトレンドなどに合わせてカスタム化する。またお客がオーダーを始めると、その選択に基づいて追加メニューをおすすめする。

実は同社は、2018年に米国内の数店でこのやり方をテストした。2019年には本格展開の予定で、その後国際展開もする計画だ。またこの方式をセルフサービスのキオスクやマクドナルドのモバイルアプリなど、他の部門にも導入するつもりだ。

マクドナルドの社長でCEOのSteve Easterbrook氏は、声明でこう述べている。「テクノロジーは私たちの回転率向上計画の重要かつ必須の要素であり、顧客に最大限の便宜を提供することによって顧客体験を向上させたい。この買収で弊社は、テクノロジーとデータが弊社の未来に演ずる役割を増強し、また、顧客により個人化された体験をより早く提供したいというビジョンの実現を早めたい」。

関連記事: McDonald’s begins testing Mobile Order & Pay ahead of nationwide launch:マクドナルドがモバイルによるオーダーと支払いをテスト中(未訳)

Easterbrook氏が述べている同社のテクノロジー導入計画は、2017年の3月に初めて発表され、そのときは同社のモバイルアプリや、同社の未来型店舗が強調された。

マクドナルドによると、買収後もDynamic Yieldはスタンドアローンの企業として操業を続け、既存および将来のクライアントにサービスを提供していく。また同社の中核的技術であるパーソナライゼーション技術への投資も続ける。

Crunchbaseによると、Dynamic Yieldはこれまでに8330万ドルを、Innovation Endeavors、Bessemer Venture Partners、Marker Capitalなどから調達している。またNaver(メッセージングアプリLineとSnowのオーナー企業)、Baidu、The New York Times、Deutsche Telekomなども同社に戦略的投資を行っている。

Dynamic Yieldの共同創業者でCEOのLior Agmon氏は、声明でこう述べている。「私たちは7年前に、顧客中心型の企業は個人化が中核的な営為であるべき、との前提のもとにDynamic Yieldを始めた。今回、マクドナルドのような代表的世界企業に加わり、人びとの日常生活に本物のインパクトを与える方法のイノベーションに取り組めることは、とても喜ばしい」。

画像クレジット: Bloomberg / Getty Images

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AirbnbやPinterest、他社買収が活発な米国のユニコーン企業

(編集部注:筆者Jason RowleyCrunchbase Newsのベンチャーキャピタルとテクノロジーを専門とする記者だ)

10億ドル企業にするには、良い発想や最適のタイミング以上のものが必要だ。才能、専門性、運用の有効性、そして幸運。これらが全てが成功しているテックスタートアップの要件だ。今日最も成功している(少なくとも最も企業価値の大きな)テックユニコーンの多くがそれらなしに成功は成し得なかった。

企業の合併・買収(M&A)は、急速に事業拡大している企業価値の大きなテクノロジー企業にとっては主要な成長ベクトルとなり得る。これは20173月に初めて我々のCrunchbase Newsに最初の記事を投稿したとき以来、我々が随時取り上げてきたトピックだ。それから約2年たち、我々は最初の記事に立ち戻りたい。というのも、事態はかなり速く動いているからだ。そして最近では新たなユニコーン企業が続出している。これらのうちのどれが最もM&Aマーケットで最近活発なのだろうか。

最も買収の動きが活発な米国ユニコーン

これまでに多くの買収を行なっている米国のユニコーン企業を紹介する前に、まず最初に「ユニコーンって何?」という質問に答えよう。この言葉は通常、企業価値10億ドル以上となったベンチャーが支援するテック企業に使われる。Crunchbaseではこうした企業をUnicorns hubで追跡している。2011年後半にCowboy VenturesAileen LeeVCのセッティングで初めてこの言葉を使い、オリジナルの定義ではユニコーンは最初のテックバブル後の2003年以降に設立された企業であることが明確に示されている。我々がここで使うユニコーンの定義もこれに倣う。

下のチャートでは、まだ株式を公開していない、または(まだ)買収されていない米国拠点のユニコーンが行なった、明らかになっている買収件数を示している。これはCrunchbaseデータのスナップに基づいているもので、この記事を読者が読む頃には数やランキングは変わっている可能性があることはご承知願いたい。読みやすさや適当なサイズを維持するために7件以上の買収を行なった企業のみを扱っている。

想像がつくかと思うが、このランキングは2年前に我々がまとめたものとはいくぶん異なっている。20173月時点でランキング入りしていたいくつかの企業は株式を公開したり、買収されたりしている。

どの企業がユニコーン卒業?

我々の前回の分析時には23社を買収していたDropboxはその数週間後に株式を公開し、その後さらに2社を買収した(20191月下旬にHelloSign23000万ドルで201711月には額は非公開ながらVerstを買収した)。20189月に株式公開したSurveyMonkeyは、IPOを通じてエグジットする前に、明らかになっているだけでも6社を買収した。

トップランクに残っている企業は?

どの企業がまだトップランクに残っているだろうか。宿泊マーケットプレイス大手のAirbnbは、それまで4位だったのがDropboxが公開企業になって空いたトップの座に収まった。Airbnb20173月以来、6社を買収した。直近のものはデンマークのイベントスペース・会議室の貸し借りマーケットプレイスを提供するGaest.comだ。まだ手続き中であるこの案件は20191月に発表された。

WordPressの母体企業Automatticは依然2位のままだ。Automatticは我々が最後にユニコーンのM&Aをまとめてからさらに1社買収している。デジタル出版プラットフォームのAtavistだ。そのほか、オープンソースソフトウェアのコンテナ型仮想化のDocker、写真共有と検索サイトのPinterest、企業向けソーシャルメディア管理会社のSprinklr、ベンチャーが支援するメディア企業Vox Mediaもトップランクに残っている。

新手は?

ランキングではまた注目すべき新登場の企業もあった。ここでは最も注目すべき3社にフォーカスしよう。The We CompanyCoinbase、そしてLyftだ。(またStripeUnity Technologiesにも言及しておこう。どちらも初めてリスト入りした)。

The We CompanyWeWorkの親会社だ)は過去2年間で10社を買収した。今月初めThe We Companyはスペース活用とWi-Fi指紋採取を使ったビジターの追跡を行うEuclidを買収した。他の買収案件にはMeetup201711月のCrunchbase Newsに詳細がある)があり、買収額は2億ドルとされている。また2017年後半にはコーディングとデザイントレーニングプログラムのFlatiron School買収した。この買収でFlatiron SchoolはいくつかのThe We Companyの商業スペースを永久利用できるようになった。

最も有力な一般消費者向け暗号通貨企業という立場を強固なものにするために、Coinbaseはこの頃M&Aに積極的だ。最近同社は、イタリア拠点のブロックチェーン分析とインテリジェンスプラットフォームの企業Neutrinoを買収する計画を発表した。我々が伝えたように、Coinbaseはコンプライアンスを高めるためにこの買収を行うようだ。1月、同社はデータ分析企業Blockspringを買収した(買収額は非公開)。また、他の買収で最も注目を集めたのが20184月に行なったEarn.comの案件だ。Coinbaseはこの買収に12000万ドルを払った。

そして最後にLyftだ。この会社は専ら米国にフォーカスしてライドシェアと交通サービスを展開している。同社は2012年に設立されて以来、わかっているだけで10件の買収を行なっていて、最も直近のM&A案件は都市部でバイクシェアを展開するMotivateであり、20186月に買収した。Lyftの最大のライバル、Uberはこの記事執筆時点で6件の買収を行なっている。Uberは、LyftMotivate買収の数カ月前にJUMP Bikes2億ドルで買収した。ここでもまたライバル関係にあるLyftUberで構造上の類似点がみられる。激しい競争が、資金調達でも2社を競わせていて、M&A戦略でも同様だ。

最後に

長期的な事業の成功は、往々にしてニワトリが先か、たまごが先か的な話になる。買収したスタートアップのおかげで企業が成功するのだろうか。それとも、企業が成功していて事業を拡大する余地があるから買収するのだろうか。それは多くの場合、どちらも正しい。

非公開企業の部門を占有するユニコーン企業(買収案件の数で上位でなかったら買収金額で上位なのは確かだ)は、成長という名のもとに今後も資金を調達し続ける。成長は、マーケットでの地位を確立し拡大するという従来の方法でやってくる。あるいは、急速な事業拡大、そして表面上は投資家へのリターンの最大化という名のもとに、M&Aでは新たなマーケットに参画するルートや、さらに立場を固めるための方策を手に入れることができる。これら企業が最終的にエグジットするとき、そうした戦略が功を奏したかどうかが明らかになる。

イメージクレジット: CattallinaShutterstock

原文へ翻訳:Mizoguchi)

Amazonが家庭用メッシュルーターのEeroを買収してEcho製品拡販のベースに

Amazonが、同社のスマートホーム製品系列を大きく拡大しようとしている。同社は今日、ベイエリアの家庭用メッシュルーターのスタートアップEeroを買収する意図を発表した。それは、Alexaをコネクテッドホームの主要機能に育てようとしている同社にとって、相性ぴったりの製品だ。

創業5年目を迎えるEeroにとっても有意義だ。同社は家庭用メッシュルーターの分野に早くから参入し、高名な投資家たちからの支援も受けたが、苦戦していた。昨年は同社のワークフォースのほぼ1/5、30名の社員をレイオフした

Amazonはなんと言ってもお金持ちだし、昨年はAlexaをHuaweiやNetgearのルーターに接続するデモをしていたから、このカテゴリーに目をつけていたのだ。そしてそれも合理的な判断だ。家庭内ネットワークの圏域を拡大するメッシュルーターがあれば、Echo Dotsなどのデバイスを、家のどの部屋にも置ける設計にできるだろう。

Amazonは近年、RingやBlinkなど、いくつかの著名なホームオートメーションスタートアップを拾い上げて、家庭内のAlexaを軸とする独自のスマートホームエコシステムを育てようとしている。多くの場合Amazonはスタートアップのブランドをそのまま維持するから、それはEeroにとって嬉しい徴候だ。ただしRingに関しては、そうならなかったけど。

AmazonのSVP Dave Limpがプレスリリースで述べている: “Eeroのチームにはとても感銘を受けている。彼らは、コネクテッドデバイスをつなげばすぐにそれが使えるようなWi-Fiのソリューションを、非常に早い時期に発明した。私たちもそのビジョンを共有して、スマートホームの体験をより容易にし、顧客のためのイノベーションにこれからも引き続きコミットしていきたい”。

買収はまだ、お役所の承認を待つ段階で、価額等の詳細は公表されていない。

関連記事(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

バックアップ/リカバリーサービスのCarboniteがエンドポイントセキュリティのWebrootを買収

ボストンでオンラインのバックアップとリカバリーサービスを提供しているCarboniteが昨日(米国時間2/7)、エンドポイントセキュリティのベンダーWebrootをキャッシュ6億1850万ドルで買収する、と発表した。

同社は、そのクラウドバックアップサービスにWebrootのエンドポイントセキュリティツールが組み合わされば、顧客により完全なソリューションを提供できる、と信じている。実はWebrootの履歴はクラウドに先立ち、創業は1997年だ。Carboniteが提供しているデータによると、Webrootは2018会計年度に2億5000万ドルの売上を報告している。同じ時期にCarboniteの売上は2億9640万ドルだった。

CarboniteのCEOで社長のMohamad Aliは、この買収を同社のサービスの多様化の機会、と捉えている。彼は声明の中でこう述べている: “ランサムウェアのような脅威が日増しに進化している中で、われわれの顧客とパートナーはますます、強力でしかも使いやすい、総合的なソリューションを求めている。バックアップとリカバリに、エンドポイントセキュリティとスレットインテリジェンス(threat intelligence, 脅威情報)を組み合わせたものは、他と明確に差別化されるソリューションとして、単一の総合的データ保護プラットホームを提供する”。

この取引はCarboniteのバックアップ製品を強化するだけでなく、同社に新しい顧客ももたらす。Carboniteは主に付加価値再販業者(VARs)に売っているが、Webrootの顧客は主に14000社のマネージドサービスプロバイダー(MSPs)だ。顧客層は重複していないので、MSPのチャネルからCarboniteの市場を拡大できる。Webrootの全顧客数は30万である。

Carboniteの買収は、これが初めてではない。過去数年間にいくつかの買収を行っており、たとえば1年前には1億4500万ドルでDellからMozyを買収した。その買収戦略は、同社の核となるバックアップとリカバリーサービスにさまざまなツール加えて、より総合的なプラットホームになることだ(下図)。

図版提供: Carbonite

今回の買収は、手持ちキャッシュに加えてBarclays、Citizens Bank、およびRBC Capital Marketsからの合計5億5000万ドルの融資を利用している。規制当局の承認を得て、この四半期内には買収が完了するものと予想されている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonの2018年の買収は総額16.5億ドル、そのトップはPillPackとRing

このほどAmazonがSECに提出した10-Kファイル(年次報告書)は、同社が昨年行った昨年で最大の二つのM&Aのお値段を明かしている。それによると同社は、Ringにキャッシュで約8億3900万ドルを払い、PillPackに7億5300万ドル、そのほかの買収の合計で5700万ドルを払っている。

GeekWireが、そのファイルを最初に見つけて記事にした。

Amazonは昨年の早い時期に、同社のスマートホーム事業を支えるためにRingを買っている。それは2017年のBlinkの買収の直後だ。当時Ringの買収価額は、10億ドル以上とも報じられている。一方PillPackの買収は昨年の夏に行われ、“10億ドル弱”と報じられた。

今回のSEC提出書類では、買収価額は“取得された正味のキャッシュ”、とされている。つまりその取引の時点において買収された企業が帳簿に記載していた現金と負債を勘案した金額だ。報じられた額(10億前後)より低いのは、そのためである。

Amazonは2018年に行ったそのほかの買収の個別の価額を明かしていないが、買収の目的について次のように言っている: “Amazonが顧客により効果的に奉仕できるための技術とノウハウの入手”。でもそれらの一部はばれており、たとえばインドのTapzoの買収や、サイバーセキュリティ企業Sqrrlの買収は、いずれも4000万ドルと報じられている。

2018年の総額16億5000万ドルは、Amazonでは二番目に買収額が大きかった年だ。最大はその前の2017年、Whole Foodsを130億ドルあまりで買った年だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Dropbox、e署名とワークフローのHelloSignを2.3億ドルで買収

今日(米国時間1/28)、 DropboxHelloSignを買収することを発表した。HelloSignは電子署名と軽量のドキュメント・ワークフロー・サービスを提供するスタートアップで、買収価格は2億3000万ドルだったという。

Dropboxのエンジニアリング担当副社長、Quentin Clarkは「この買収は単にDropboxのサービスに電子署名機能を追加するだけでない」という。2017年にHelloSignが追加したワークフロー機能が買収の本当の鍵だったという。ClarkはTechCrunchの取材に対して次のように述べた。

HelloSignのユニークな点は、APIやワークフロー製品への投資が、われわれの長期的な方向性と非常によく一致している点にある。Dropboxに機能が増えるというのに留まらず、幅広いビジョンの下にわれわれの事業を拡張していくために役立つ。現在のDropboxソリューションの核心はストレージ機能だが、われわれは長期的にこれを拡大していくビジョンを持っている。

Dropboxが昨年追加したエクステンション機能もこの文脈で見る必要がある。実際にHelloSignはDropboxエクステンションのローンチ時点で機能を提供した企業の1つだった。。 Clarkによると、同社は引き続きDropboxソリューションの拡張をサードパーティーに求めていくが、今日の買収により他社との提携を必要としない独自機能が提供され、すでにエクステンションを介してDropboxに連携されているという。
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インテグレーションのスピードアップ

Deep Analysisのファウンダー、プリンシパルアナリストのAlan Pelz-Sharpeは、この市場を長年モニターしてきたベテランだが、「HelloSignがエクステンション・サービスのパートナーであることが重要。買収した企業を本体に統合することが通常の場合よりはるかにスピードアップされる。また大企業以外の企業では大部分の文書がオフラインで個別処理されている。HelloSignが不動産、保険、顧客社員関係などの一般的なソリューションに加えて、すでにDropboxの既存のエクステンション機能を備えている。このためHelloSignの各機能がDropboxの事業拡大にすばやく利用できることを意味している」という。

Pelz-Sharpeは、買収金額からするとDropboxがこうした能力を強く欲していたことが推定できると付け加えた。「財務指標からすると非常に高い価格だがこうした急成長分野における有望スタートアップの買収としては不合理な金額ではない。同時にここまで価格がアップしたことは他にもHelloSignの買収に意欲的な企業があったことがほぼ確実に推定できる」と述べた。

HelloSignのCEO、Joseph Wallaは、同社のブログ記事でこう述べている。

Dropboxのメンバーとなることで、HelloSignが上場大企業のリソースにアクセスできるようになり、これまでよりいっそう広い市場に参入できるようになる。Dropboxと連携させることで、幅広い顧客によりシームレスなドキュメントワークフローを提供し、われわれのソリューションのインパクトの拡大を劇的に加速することができるだろう。

HelloSignは独立を維持する

元Box、元EMC Documentumで現在はHelloSignのCOO、Whitney Bouckは「われわれは後も独立したブランドとして運営される」と述べた。つまりHelloSignはDropboxファミリーのメンバーとなるが、運営形態は現状のままということだ。またClarkはHelloSignの社員全員がDropboxで雇用されることを保障するのが買収条件の一環だったと示唆している。【略】

エンタープライズワークフローを専門とするConstellation Researchのアナリスト、Alan Lepofskyは、「HelloSign買収でDropboxは有力なエンタープライズ向けワークフローツールを獲得したわけだが、エンタープライズのドキュメント管理に高い実績、ノウハウを持つWhitney Bouckをスカウトできたのも大きなボーナスだ」と述べた。また 「これはもちろん人材獲得のための買収ではないが、Dropboxは、エンタープライズ向けにサービスを拡大する事業分野ですでにリーダーと認められているWhitney Bouckを獲得することにも成功した。Bouckは彼女の以前の雇用者であるBoxとの競争でDropboxに大きな助けになる可能性がある」 とLepofskyはTechCrunchに述べた。

DropboxのClarkは、「現在のエクステンションとは別にHelloSignの機能ををDropbox本体にバンドルしていくかは具体的に説明するには時期が早すぎる」と語った。しかしClarkはHelloSignが独自の顧客を持つ独立ブランドとして運営されていても、両社それぞれのプロダクトを統合する方法を見出すだろうと期待してると述べた。

HelloSignはサンフランシスコを本拠として2011に創業したスタートアップだが、これまでに1600万ドルしか資金調達を行っていない。今回の買収は投資家には大きなリターンを約束するものだし、もちろんHelloSignにとっても理想的なエグジット(現金化)となった。

買収手続きは2019年第1四半期中に完了できる見込みだという。通常どおり、規制当局による承認を必要とする。


(日本版)恋人がデートに契約文書とスキャナー、携帯発電機を持ってやってきた。なんでスキャナー? HelloSign使えば? というCM(音に注意) DropboxのHelloSignエクステンションを利用すれば契約書をDropboxに保存して関係者の電子署名を求めることができるという。

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滑川海彦@Facebook Google+

MicrosoftがPostgreSQLデータベースを加速するCitus Dataを買収、顧客をAzure化か

Microsoftが今日(米国時間1/24)、Citus Data買収したことを発表した。Citus Dataは、PostgreSQLデータベースのスピードとスケーラビリティの向上をサービスとして提供している。同社のPostgreSQLエクステンションはオープンソースのプロダクトで、PostgreSQLデータベースを分散データベースに変換する。NoSQLやドキュメントストアが騒がれている今日でも、リレーショナルデータベース、とくにPostgreSQLは今だに成長市場であり、その理由の一部は、Citusのような企業が、その限界を克服するツールを提供しているからだ。

当然ながらMicrosoftのねらいは、Citus Dataのチームとの協働により“Azureの重要なエンタープライズ機能のPostgreSQLへのデリバリを加速し、重要なPostgreSQLワークロードが確実にAzure上で動くようにする”ことだ〔PostgreSQLユーザーのAzure化〕。Citusの協同ファウンダーたちも、彼らの声明文で同じようなことを言っている: “Microsoftの一員としてわれわれはこれからもPostgreSQLをベースとする素晴らしいデータベースの構築に力を入れ、ユーザーに画期的なスケーラビリティとパフォーマンスおよび彼らが必要とする障害時自己回復力を提供していく。われわれは、この分野におけるイノベーションの推進を継続する”。

PostgreSQLは言うまでもなくオープンソースのツールで、そしてMicrosoftも今やオープンソースの主要なコントリビューターであることは周知の事実だから当然かもしれないが、同社はPostgreSQLのコミュニティとの協働も強調している。Microsoftのスポークスパーソンの言い方では、“この買収は弊社のオープンソースへのコミットメントの証(あかし)であり、Azure PostgreSQLのパフォーマンスとスケーラビリティの向上が目的である”、となる。

Citusの現在の顧客は、リアルタイムアナリティクスのChartbeatや、メールのセキュリティサービスAgari、そしてPushOwlなどだ。名前は挙げないが、Fortune 100社企業も多いという。同社はクラウドからのDBaaS(database as a service)とオンプレミスのエンタープライズバージョンの両方を提供している。そして無料のオープンソースエディションもある。今後も当分それは変らないが、Microsoftは徐々に、CitusがホストしているサービスをAzureへ移行させていくのではないか。

買収の価額は公表されていない。2010年に創業したCitus DataはY Combinatorのインキュベータ事業を卒業し、これまでKhosla Ventures、SV Angel、Data Collectiveなどから1300万ドルを調達している。

関連記事: CitusDBがPostgreSQL用の列取り出しツールをオープンソースで提供開始, 複雑なクェリの効率をアップ

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SQLツールの古参IderaがTravis CIを買収して継続的インテグレーションをメニューに加える

オープンソースの継続的インテグレーションサービスTravis CIは、ベルリン生まれだが世界的にも人気が高い。その同社がこのほど、オンプレミスとクラウドアプリケーション向けにさまざまなSQLデータベース管理ツールを提供しているIdera買収された。この買収は、Circle CIなどそのほかのCIサービスがTravis CIにマーケットシェアを奪われつつあったまさにこの時期に行われた。

プライベートエクイティ企業TA AssociatesがオーナーであるIderaによると、Travisは同社の試験ツール事業を補完し、現在の顧客の利益にもなる。IderaのTesting Tools部門に現在あるのは、TestRail、Ranorex、Kiuwanなどのツールだ。IderaでTravis CIを担当することになるゼネラルマネージャーのSuhail Malhotraは、こう語っている: “Travis CIから得られる事業価値はすばらしい。もっと多くの顧客が、もっと良い結果を迅速に得られるよう、努力していきたい”。

Ideraは明らかに、DevOpsビジネスへとレパートリーを広げていきたいのだと思われる。継続的インテグレーションは言うまでもなく、そのための重要なビルディングブロックだ。それでもなおIderaは…多少は知られているとしても…今日の最先端の技術で知られている企業ではないだけに、やや違和感はある。しかしTravis CIは70万のユーザーをIderaに持参し、その中にはIBMやZendeskもいる。買収の価額は不明だが、これは確かに、CIのエコシステムにおける大きな商談だ。

Travis CIのファウンダーKonstantin Haaseは今日の発表声明で次のように述べている: “Ideraのチームと共に成長の次のステップに進めることは喜ばしい。弊社の顧客とパートナーがIderaの豊富なポートフォリオを利用できることになり、そのソフトウェアビジネスを次のレベルへとスケールアップできるだろう。弊社の目標はできるかぎり多くのユーザーをTravis CIに惹きつけるとともに、そのオープンソースのルーツとコミュニティにとどまることだ”。

これはかなり定型的な声明文だが、今後果たしてIderaは、Travis CIを同社の稼ぎ頭のひとつへと、育てていけるだろうか。お手並みを拝見したい。

Haaseのブログによると、Travis CIのユーザーにとっては何も変らない。“新しいパートナーからのサポートにより、弊社のコアプロダクトの拡張と改良のための投資ができ、Travis CIは世界最良の継続的インテグレーションと開発のソリューションになるだろう”、と彼は書いている。そしてまたTravis CIはオープンソースの世界にとどまり続ける: “それがわれわれの本質であり、成功の源泉だったのだから”。

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AWSが早くも今年ニつ目の買収、今度はクラウドリソース最適化のTSO Logic

AWSは新年早々から買い物マニアだ。まず先週はイスラエルのディザスタリカバリ(クラウドの災害復旧)屋さんCloudEndureを買い、そして今週は、クラウドのリソースの有効利用を企業に教えるバンクーバーのTSO Logicだ。

両社とも、買収価額は明かさない。

Amazonはこの買収をメールで確認し、TSO LogicのWebサイトにあるCEO Aaron Ralloの声明を読め、と言っている。Ralloはそこで、“TSO LogicがAWSの家族に加わることはとても嬉しい”、と述べている。

同社はワークロードやアプリケーションに関するデータを分析し、リソースのニーズ優先かコスト優先かなどの要求を勘案しながら、それらを動かすためのもっとも効率の良い場所や、ニーズとコストの正しいバランスを見つける。

ワークロードのバランスは、クラウドのパブリックvs.プライベートにおいても重要だ。11月にAWSのre:Inventで発表されたAmazonのOutpostsは、ワークロードの載せ方をオンプレミスとクラウドとの間でバランスするためのツールだ。同社はそれを便利に利用する。

関連記事: AWSのクラウドをそのままオンプレミスのデータセンターに持ち込むAWS Outposts

TSO Logicは成長しているスタートアップの体の一部になって、クラウドのワークロードを最適化する方法を見つける。そしてときにはスポットインスタンスすら使ってワークロードを安いクラウドオプションへ移し、顧客のお金を節約する。

企業がますます多くのワークロードをクラウドに移していくと、そのコスト管理が難しくなる。そこでTSO Logicのようなツールが、クラウドリソースのより効率的な利用法を知るための手助けをする。

Microsoftgが2017年に買ったCloudynも、これと同様のサービスだ。大手クラウドベンダーたちが好位置を取ろうとして頑張ると、こんなサービスが常備薬になる。高いお薬でも、MicrosoftやAmazonにはお金がたくさんある。

Amazonのスポークスパーソンによると、同社はバンクーバーで操業を続け、社員たち全員にAmazonの職階が与えられる。

関連記事: Update: Amazon has acquired Israeli disaster recovery service CloudEndure for around $200M…Amazonが CloudEndureを買収(未訳)

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今年この10社のM&Aトータル額は870億ドルだった

総額880億ドル近くにのぼる10件の注目を引くディールがあったこともあり、今年M&Aの動きは活発だった。企業は財布の紐を緩め、巨大な買収に金をつぎ込んだ。この880億ドルにはDell再上場するためにVMwareトラッキングストックに払った230億ドル超と、我々のリストには載っていない他のいくつかの10億ドル超のディールは含まれていないのは記すに値する。

昨年の大きなディールにはIntelによる150億ドルでのMobileEye買収Ciscoの37億ドルでのAppDynamics買収が含まれるが、大きなディールはさほどなかった。今年2件の大きな買収を行なったAdobeは昨年はほぼ静かで、小さな買収1件のみだった。Salesforceもまた2017年はおとなしく、活発だった2016年のあとでデジタル・クリエイティブ・エージェンシー1社の買収に終わった。SAPも2017年は買収1件で、Gigyaに3億5000万ドル払った。Microsoftは9社買収と活発だったが、主に小さなものばかりだった。おそらくみな、2018年のためにお金を貯めておいたのだろう。

対照的に今年は、大きな動きとなった。もしくは、元に戻ったというべきか。あらゆる面でそうした動きが見て取れる。

軌道修正やマーケット成長を模索する大企業は、買収対象をあさり、高価だがつまらないものを持ち帰ってきた。ディールのいくつかはまだ規制に絡んでの認可待ちの状態で、2019年前までにクローズしそうにない。しかしながら、こうした大きな資金が投入されたベンチャーが買収サイドが望んだ通りの配当を払うことになるのか、それとも風の中の塵といったM&Aになるのか、判断するにはまだ早い。

IBM、Red Hatを340億ドルで買収

今年断トツで最大かつ派手な案件はIBMによるものだ。社運をかけて340億ドルという驚異的な額でRed Hatを買収した。IBMはこの買収をハイブリッドクラウド事業の強化につなげたいようだ。これは大きな賭けであり、IBMが組織として成功したかどうかは数年内にわかるだろう。

Broadcom、CAテクノロジーズを185億ドルで手中に

チップメーカーのBroadcomが今年2番目に大きな額を払ったこのディールは予想されていないものだった。大枚を払ってBroadcomが得たのはITマネジメントとソフトウェアの古い会社だ。おそらくBroadcomは、チップ製造以外の分野に事業拡大する必要を感じ、CAがそれを補う手段となった。しかしこれはどちらかといえば高い買い物だった。

SAPが Qualtricsを80億ドルで買収

IBMやBroadcomの額には及ばないが、SAPはIPO直前だったQualtricsを先月買収し、いまだ80億ドルという莫大な額を払い続けている。SAPは、QualtricsがSAPのバックエンドのERPシステム内にある運用データと、フロントエンドにあるQualtricsの顧客データをつなげるのに一役買うと考えている。それが正しい考えだったかは今後明らかになる。

Microsoft、GitHubを75億ドルで買収

6月、Microsoftはデベロッパーにリポジトリを提供しているGitHubを唐突に買収した。かなりの額だったが、Diane GreeneはGoogleがGitHubを買収できなかったことに後悔の念を示した。それは、クラウド企業はデベロッパーのハートを掴むのに一生懸命だからだ。MicrosoftはGitHubユーザーにプロダクトを出すよう働きかけるチャンスを手にしたが、MicrosoftがあまりにプッシュしすぎるとGitHubユーザーは急停止するかもしれず、踏み込むときには注意しなければならない。

Salesforce、MuleSoftを65億ドルで獲得

Salesforceは2018年のM&Aパーティーで取り残されたわけではなかった。3月にこのCRM大手はAPIインテグレーションベンダーのMuleSoftを65億ドルで買収すると発表した。Salesforceにとっては大きなディールだった。というのも、Salesforceは買収に積極的だが、それらは通常、より小さい規模のものだからだ。しかしMuleSoftの件は鍵となる買収だった。なぜかというと、買収によりSalesforceはオンプレミスだろうがクラウドだろうがどこにでもあるデータにアクセスできるようになるからだ。これはSalesforceが前進する上で鍵となりえる。

Adobe、47億5000万ドルでMarketoを掴み取る

Adobeはクリエイティブクラウドに強みを持つ強固な企業になった。一方で事業のマーケティング面で収入を生み出そうとの試みを展開してきた。そのためにもMarketoを47億5000万ドルで買収し、今年初めに16億8000万ドルで買収していたMagentoと組み合わせてすぐさまマーケティング事業を推進している。

SAP、CallidusCloudを24億ドルで買収

SAPはここで名の挙がっている他のテック大企業のいくつかのようには多くの買収はしない。しかし今年は2件買収を行なった。Qualtricsを80億ドルで買収しただけでなく、CallidusCloudも24億ドルで手に入れた。SAPはERPソフトウェアを使ったバックオフィスの管理で知られているが、買収によりクラウドベース、フロントオフィスの売上プロセスをミックスさせることになる。

Cisco、Duo Securityを23億5000万ドルで手中に

Ciscoは過去さまざまな種類のソフトウェアサービスの買収に熱心だった。そして今年はDuo Securityを23億5000万ドルで買収し、セキュリティー部門に加えた。ミシガン拠点のこの会社は自前のモバイルデバイスを使いながらのアプリを企業が確保できるようにサポートしている。Ciscoがセキュリティ戦略を前に進める上で鍵を握る要素となるかもしれない。

Twilio、SendGridを20億ドルで買収

Twilioにも今年動きがあった。このリストに載っている他のテック大企業と同じリーグではないが、Twilioのプロダクトセットを推し進めるかもしれないと、SendGridを手に入れるのに喜んで大金を払った。コミュニケーションAPI企業として名をはせるTwilioはSendGridに同じ性質の精神を見出し、このAPIベースの電子メールサービスを手に入れるのに20億ドル払った。

Vista、Apttioを19億4000万ドルで

Vistaエクイティパートナーズはこのリストに載っている唯一のプライベートエクイティ企業だが、企業のテクノロジーに関心がある。企業がオンプレミスの資産とともにクラウド資産をも理解するのを手伝う会社をApttioとともに立ち上げる。Apttioは、先月Vistaが19億4000万ドルで買収する前は公開企業だった。

イメージクレジット: akindo / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

誰かがあなたの会社を買おうとするときのための、親切なVCからの10のアドバイス

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今年私は6つのエグジットに関わるという幸運に巡り合うことができた。そのプロセスは順調に進むこともあれば、建付けの悪いジェットコースターのような場合もあった。以下に挙げた10のアドバイスは、いずれも私の経験から抽出したものだ。誰かがあなたのスタートアップに買収のオファーを出した場合に役立てて欲しい。

1.買収しようとしている者の動機を理解する

まず理解する必要があるのは、買い手があなたのスタートアップを欲しがっている理由だ。戦略的な製品や技術なのか、ユニークなチームなのか、またはかなりの収益率があるからだろうか?GoogleやFacebookなどの戦略的買収者は、あなたの技術、チーム、時にはそのユーザー牽引力さえも欲しいと考える。未公開株式投資会社(PE)のような財務的関心から買収を行う者は、収益と成長についてより多くのことを気にかける。買い手の動機が、複数の供給者がいる中で、突出して大きな影響力を持つものになりたいというものである可能性も高い。

早い段階で価格について話し合うことも大切だ。経験の少ない創業者が、会社のしっかりとした価値を提示するのはやや難しいかも知れない。しかしこれは、議論の本気度を評価するための重要なステップなのだ。そうでなければ、買収者があまりぱっとしない価格の下で、気の入らない交渉に入ってしまう可能性が高い。より冴えないケースでは、あなたの戦略や製品のロードマップについてもっと知りたいと真剣に考えないかもしれない。

2. 「とりあえず様子見」は禁物。見送るか、完全にコミットするかだ

M&Aプロセスは、創業者が自分の会社に対して行うことのできる、最も影響のある行為だ。もしやり方がまずければ、そのプロセスは最終的に会社にダメージを与える可能性がある。創業者たちには決断を下す前に、以下の3点についてよく考慮するように強くアドバイスしたい:

いまが正しいタイミングなのか?売却を決心することは、未経験の創業者たちにとってはとても厳しい選択だ。多くの場合、会社を売る機会そのものも実行するタスクの1つとなり、楽しめるものになる。連続起業家精神は、多くは見られないものであり、そしてそれは1人の創業者が手に入れることのできるもっとも影響力のある基礎になるだろう。売却に対する反応は理解できる。一晩で自分の銀行口座に何百万ドルものお金が振り込まれる機会は、ほとんどの創業者にとって無いからだ。さらに、配慮しなければならないチームもいる。通常みな住宅ローンを抱えたり、学費を蓄えていたり、その他数えきれない様々な出費の事情があったりする。こうしたニーズが決定の際に考慮されなけれなならない。

それは実際にあなた自身が下した決断なのか?ほとんどの投資家たちは、M&Aのことを、あなたの会社がさらに大きくなる可能性があって、活用される資本を増やす機会として考えている。しかし、VCが確信を失ったところに、まあまあの買収話が来たときや、より大きな競合相手が同じ分野へ参入しようとしているという情報を掴んだときには、あなたに対して売却を迫ってくるかもしれない。もちろん、最良のポジションは、あなた自身の運命をコントロールし、収益性を究極的なBATNA(“best alternative to a negotiated agreement”:交渉の最低ラインを決めることができる、相手から出されたもの以外での最も良い条件)として利用できる立場に立つことだ。

どのくらいの期間会社に留まる必要があるのか?主張の食い違いがあるときには、価格交渉の余地は大きくはないかもしれないが、その他の取引条件は交渉可能だ。最も重要なことの1つは、会社に留まらなければならない期間と、エスクローに積む売却代金の額、もしくはアーンアウト(”earn-out”:買収後の業績の伸びなどに応じて買い手がさらに支払うことを約束する金額)の額である。

3.チームを管理する

買収者からの興味をひいたなら、何はともあれ多くのM&A取引は成立しないということを、即座に関係者全員に周知させること。なぜなら本当に成立しないことが多いからだ。このことは2つの理由から重要だ。

まず経営幹部たちが、個人的な収益の見込みを想像し始めること、そして彼らがビジネスを動かす際にKPIにばかりに目を向けてしまうことだ。そして取引が成立しなかった場合には、上級チームは意気消沈し、やる気を失い、漏れ出る不満の声を聴くようになるかもしれない。こうした雰囲気はすぐにチームに浸透し、企業文化にとって致命的なものとなる可能性がある。あなたの勝利の瞬間と思われていたものが、あっさりとチームの士気を破壊するものに転じてしまうのだ。

これは、一般にM&Aプロセスの中で最も難しい部分だ。取引を実現するためにはエグゼクティブチームが必要だが、人間の心の最も深い場所にも突き当たってしまうのだ。内部の期待を管理することは、外部のプロセスを管理することと同じくらい重要であるという事実を認識しよう。

4.1年は維持できるくらいの十分な現金を持つ

あなたの会社が強みを背景に売却を考えているのなら、バランスシート上の現金不足から、コントロールできない状態に陥らないように、十分な資本を持つようにしよう。私はこれまで、あまりにも多くの企業が、M&Aの議論を始めた後にビジネスの手綱を緩めてしまい、その結果数字が悪化し余裕が無くなって、買い手につけこまれる結果になったケースを沢山見てきた。理想的なシナリオでは、銀行に少なくとも9ヶ月分の現金が必要だ。

5.銀行家を雇う

会社に真剣な興味が注がれたり、会社の売却をしたいと考えたならば、銀行家を雇おう。VCたちは、あなたをいくつかのしっかりした事務所に紹介することができるはずだ。買収交渉は難易度の高い交渉である。銀行家への依頼には費用がかかるが、初心者が陥る高価な間違いを避ける手助けをしてくれる。彼らはまた古典的かつもっともらしい言い方で、あなたが言いにくいことも相手にズバズバと切り込んでくれる。これは買収後の関係にも良い方向に働く。

私から唯一指摘しておきたい落とし穴は、銀行家は既存の作戦に沿って動き、十分に創造的ではない傾向があることだ。それでも、あなたが過去には考えられなかったような買収者とのコミュニケーションを持っている場合には、潜在的買収者の候補を増やすことができる。

6.第2の入札者を見つけよう…そして3番目…そして4番目も

最も難しいアドバイスだが最も価値がある。できるだけ早く第2の入札者を探そう。交渉のイロハだ。手強い競合相手がいなければ、交渉は長引きがちになる。

理想的には、スタートアップを立ち上げながらも、同業他社との対話を続けて来ているのが望ましい。今こそ、連絡先に電話をかけて、取引が進んでいることを知らせよう。そしてもし取引に関わりたいなら急いだほうが良いと言おう。

排他的交渉期間に入るまでは、潜在的な買収者たちと話し続けよう。ゲームの後半に新しいプレイヤーを追加することを恐れないように。あなたはM&Aの裏チャンネルを通して、どれだけ多くの情報が広がっているかに驚くことだろう。仕事にとても役立つライバルにさえ気がついていないかもしれない。

ある買収者との距離が遠かったとしても、もし相手がこちらに予備プランがあることを知っていたならば、重要な条件を交渉する際に貴重な手がかりを提供することができる。評価額は既に決まっているかもしれないが、前払いの額とアーンアウトの額、従業員のロックアップ期間、その他の様々な詳細に、もし本当の代替案を持っているならば、より有利に交渉することができる。もちろん、成長し利益を生み出すビジネスを手にしていること以上に、良い代替案は存在しない!

7. データルームの構築を開始しよう

創業者たちはピッチ資料やスプレッドシートで驚くほど膨大な金額を調達することができるが、自身のスタートアップを高額で売ろうとする段になると、買い手たちは既存のドキュメントを読みたがる。ときにはそれは、エンジニアリングミーティングの議事録に及ぶことさえある。財務記録、将来見通しのモデル、監査記録、ならびにその他のスプレッドシートが精査される。大手の買収者は、人事制度、給与尺度、その他の人事資源の細部に至るまで調べることさえ希望する。交渉が進むにつれて、ほぼすべての詳細を買い手と共有することが期待される。こうした情報のまとめを遅くならないうちに早めに開始しよう。

あるCEOは、精査のピーク時には、自社の従業員よりも多数の人間が買収者側から送り込まれてきていたと語った。自社のCFOと法律顧問に対する十分なケアを心がけて欲しい。この期間中の彼らはほとんど休めていない可能性が高い。

8. ボードメンバー内の情報管理は厳格に。小規模株主に注意

創業者たちは、厳しい状況に置かれアドバイスを求めて飢えているが、交渉に関する情報を部外者に漏らすという誘惑は避けるべきだ。例えば、キャップテーブル(資本構成表)に載った小規模の株主は、あなたと同じインセンティブを持つボードメンバーよりも、報道機関に情報をリークする可能性が高くなる。情報が漏れて、買収者が怖気づいてしまい、台無しになった取引を私たちは知っている。

口は災いのもとだ。

9.もし避けられないのなら、リークを逆に利用する

リークは迷惑なもので、回避することは可能だが、もし本当に起きてしまったならば、それを利用してしまおう。もし報道機関があなたの会社が買収されたと報道したのに、まだ実際には買収されておらず、排他的交渉期間に入っていないなら、他の買収候補者がそれを知るようにしてみよう。もしそれまでに潜在的な入札候補者たちの興味を引くことに、あまり成功していなかったとしたら、 Bloomberg、The Wall Street Journal、あるいはTechCrunchによるレポートは、単純なメールでは引き起こせない関心を集めることができる。

10.突然の通信途絶は覚悟しておく

創業者たちが5億ドルの買収を受け止める方法と、Googleのような巨人がそれを受け止める方法の間には大きな違いがある。創業者にとっては、これは人生を変える瞬間であり、10年にわたる努力の賜(たまもの)であり、そしてチームの努力が証明された日だ。だがGoogleの企業開発担当者にとって、それは単なる火曜日に過ぎない。

この現実が意味することは、ゴールに向けての優先権と数十億ドルの取引を求め激しく殺到する競合たちのために、あなたの会社の買収話が途中で無くなってしまう可能性もあるということだ。創業者たちにとって、それまで生産的に進んでいた話が突然途絶してしまうことは恐ろしいことかもしれないが、そうしたことは想像よりも頻繁に起きている。良い銀行家なら、落ち着いて、あなたよりも良い情勢分析をできるはずだ。それは彼らの仕事であって、あなたの仕事ではない。

M&Aのプロセスに備えるためのアドバイスはいくら述べても終わりはないが、これは創業者として経験する最も質の高い問題の1つであることは覚えていて欲しい。実行に焦点を当てよう。だが多くの起業家が決して味わうことのないマイルストーンに到達することは本当に気分爽快だ!

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(翻訳:sako)

IBMはLotus Notes/DominoをインドのHCLに$1.8Bで売る…まだまだユーザー企業は多い

IBMが昨夜(米国時間12/6)、同社が1995年に行ったLotusの買収の残存部位をインドのHCLに18億ドルで売却する、と発表した。

IBMは当時Lotusに35億ドルを投じた。その中の大物は、NotesとDominoとPortalだった。これらは長年、IBMのエンタープライズビジネスの大きな部分を占めていたが、しかし昨年Big Blueは撤退を始め、開発の部分をHCLに売り、営業とマーケティングは手元に置いた。

今回の発表で、このラインへのIBMの関与は解消する。このプラットホームの開発部分が手を離れ、そしてRedHatに340億ドルを投じたIBMは今キャッシュが欲しい。だから、Lotusの他の部分を持ち続けることには意味がない、と決断したのだ。

インドのエンタープライズIT大手HCLにとっては、Notes/Dominoビジネスの構築を継続できる機会を、この買収でより確実なものにできる。HCL Technologiesの社長でCEOのC Vijayakumarは、次のように声明している: “これらのプロダクトの大規模なデプロイは、世界中の何千もの多様な業種と市場の企業に接近できる絶好の機会をわが社に与える”。

Constellation Researchでエンタープライズのコラボレーション分野の注視を続けているAlan Lepofskyは、この売却が、IBMがこのところ疎遠にしてきたソフトウェアにとって再出発の機会になる、と見ている。“IBMの最近の10年間に比べると、HCLはNotes/Domino にもっと本格的な関心を持っている。今後積極的に投資して、ブランドの若返りに努めるだろう”、と彼は語った。

Lepofskyによると、NotesとDominoを古いと感じる人も多いと思われるが、実際にはさまざまな企業で現役で使われている、とくに多いのがEMEA(Europe, Middle East and Africa)ヨーロッパ中東アフリカとAP(Asia Pacific)アジア太平洋地域だ、という。

彼によると、今回の売却によってIBMはコラボレーションの分野から完全に手を引くことになった、という。“IBMのコラボレーションは終わりだ。いち抜けだ”、と彼は言う。

IBMは今、独自のクラウドビジネスを開発中だから、それとNotes/Dominoは方向性が違いすぎる。10月のRedHat買収が示すように、同社はプライベートとハイブリッドのクラウドをサービスとプロダクトのメインに据える気だから、Lotus NotesやDominoのような古顔の出番はなくなってきた。

この売買を規制当局が承認し、完了するのは、来年半ばと予想されている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa